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田村公平君 九一年にドイツのバイエルン州の方、それからチェコスロバキアとの国境に近いところまで、リンゲライという人口八百人ぐらいのところでありますが、ここへ持ってきたんですけれ
ども、これは地元の新聞社がやった「山よ」というシリーズのドイツ編、私は取材に一緒に行ったものですから。
ドイツもやはり戦争に負けて戦後の復興期、河川、中小河川においても三面張りとか、それで生態系が崩れたというので、私なんか行ったときに、ちょうど三面張りをやめて昔のままの川になるだけしょう。それは、ちょうどあの九十一年ごろヨーロッパを低気圧が襲いまして風倒木がいっぱいできたものですから、その風倒木を昔でいう胴木、河川改修に使う、我々
子供のころは水中眼鏡をつけて潜ったら、石を押さえるのに蛇かごじゃなくして胴木で石を押さえて、それで信玄堤だとかそういうのをつくっておったんです。水の中へつかっている限り絶対腐らないわけですが、鉄で編んだかごに入れると、これは酸化して、やがて布団かごもどすっと落ちてしまう。あの国は過去をちょっと反省してというか、もとに戻そうと。かといって地域住民に水害があったらいけないので、そういうことも相談しながら、そうすると生態系が非常によくなったという話も地元の人、それから
行政の方々からもお伺いしました。
それで、非常にうらやましいなと思ったのは、リンゲライというところは
産業が何もありません。私の
田舎と同じように、牛を二、三頭飼っておって、民有林を持っておって、畑を持っていて、家族でいわゆる兼業農家みたいな、決して所得が高いとは言いません。したがいまして、デカップリング、いわゆる所得補償をやっております。だけれ
ども、そこの村の売り物は空気がおいしいということで、二週間とか三週間、フランクフルトとかそういう
大都市から、ドイツの場合は地方分権が進んでおりますから、
大都市といっても百万人
程度でありますけれ
ども、家族連れでやってきて、ただひたすら散策している。私なんかせっかちですから、こんなことやって何がおもしろいのかなと思うけれ
ども、非常に考え方が違うかもしれない。
けれ
ども、その根幹の中に、実は林間学校というのがありまして、私がちょうどお邪魔したときにはダイムラー・ベンツの若い工員さんが、新入社員でありますけれ
ども間伐から枝打ちから、それからシカが出てきて植えたものを食ったらいかぬものですから臭いものを塗ったり、山を守るというのはどういうことかと。そうすると、あなた方はダイムラー・ベンツの社員である、公害をまき散らす、そういうことで
環境にちゃんと留意しなさいということを二週間ぐらいかけて、自炊しながら、もちろん栄養管理のために栄養士さんがいますけれ
ども、そういうことをやっております。たまたま私が行ったときはダイムラー・ベンツの社員でしたけれ
ども、通常は学校の、ギムナジウムを含めて十三、四、五ぐらいの方々にそういう研修をしております。
それはどういうことかというと、こういう
環境の中で生きていますと。そして、そこに附属しておる、
研究所というほどのことじゃないんですが、大学から大気汚染、
森林学の権威が来ておりまして、私は今ここに七年おるんだ。なぜかというと、酸性雨の問題で
研究している。
日本の感覚で言いますと、大体そういうフィールドワークに五年ぐらい出ていくと大学べ帰っても教授のいすがない、もう後輩に追い抜かれている。あなたは大丈夫かと聞いたら、その大丈夫かと聞いた
意味がよくわからない、これは当たり前のことであって。そういう取り組み方をしておる。やはり息の長いことだと。
もう
一つ気がついたことは、人口八百人ですから、そこに小さな工場がありまして、間伐材を使ってヘアブラシとか、いわゆるブラシの柄をいっぱいつくっているわけです。つくった柄は
大都市に送り返してそこでもを植えて商品として出すんですけれ
ども、いろんな形があって、それを糸のこみたいなもので近在の主婦の人が切ってやっておったんです。プラスチックでやった方が安いじゃないか。いや、確かにそのとおりだ、しかしプラスチックは悪いんだ、溶けないしと。木でつくると確かに手間暇かかってコストは高い、しかしこれは
環境に優しいんだというふうにそこの工場長みたいな人が言うものですから、そんなこと言ったって消費者が言うこと聞かないんじゃないかと言ったら、心配するなと、そういうことを小学校で教育しているんだと。小学校でそんなことを教育してと言ったら、いや、教育すればわかってくるんです、必要な対価は払うべきだと。そんなことをやっていたらヒトラー・ユーゲントみたいになるんじゃないかとちょっと冗談言いましたら、いや、大丈夫だ、ヒトラーも悪いということをちゃんと教えてあるからと言っておりました。事ほどさように、
循環型、リサイクルというものが徹底しています。
飲み屋さんがリンゲライにはなかったものですから、役場のベーターさんという方の家に居候しておったんですが、酒屋はありまして、そこでワ
インを買ってきて、いっぱいボトルがたまって、ベーターさんに指示を受けて酒屋にその空き瓶を持っていくと一ドイツ・マルク返ってくる。瓶もそういうふうにしてやっています。
そういうことが本当の
意味での地球
温暖化防止につながると思いますし、そして我々は今確かに海に囲まれて島国といいますけれ
ども、ドイツなんて全部陸続きですから、いわゆる東ヨーロッパの社会主義が崩壊した。どんどん酸性雨なんかがやってきて
自分の
国土がやられておる。その中でどういうふうによその国と協力しながらその
対策を講じるのか。そのためにはデータの収集も必要だ。随分徹底してやっておるのに感心をいたしました。
中国がどんどん工業化していけば、これは当然のようにジェット気流に乗ってきてここいらに落ちてくるわけですから。私
どもの
高知県でも既に、確たる証拠があるわけじゃありませんが、酸性雨の被害が出てきております。そういうことを含めて、
ネットワークがいかに大事か、
循環型がいかに大事か。
るる申し上げましたけれ
ども、私
ども四国の命の早明浦ダムをお預かりしておる
水源地の人間といたしましては、実は
環境庁長官は香川県でございまして、大体四国四県、県庁所在地でついこの間まで渇水なんということはなかったんです。ところが、今や水源県である
高知県でも
高知市は渇水になります。これは何なんだろう。ここ二、三日異常に暑いですね。私は
CO2がどうのこうのややこしいことはわからぬけれ
ども、こんなに蒸し蒸し、九月といえばもう少しさわやかで、いまだに僕は夏服を着たままなんです。僕は皮膚感覚で、確かにこの国というか地球はおかしくなっているんじゃないか。これはやっぱり大変な問題だと思います。
我々の四国を例にとっても、ダム湖に沈んだ旧の村役場が出てきて、それをマスコミが写して。そうすると
高知に観光客が来なくなるんです、水がないと思って。これは香川県も同じです。ダム湖に沈んだところを何か見られることが非常に情けない思いがあります。
そういうもろもろの思いを含めて、当時の早明浦ダムなんというのはグリーンベルトもダム周辺
整備事業もなかったんです。
建設省の開発課というところは、ダム一丁つくればダム湖はおれのものだ、少々地すべりがあってもどうということはない、濁水が出ようと
関係ないぐらいの
時代もあったんです。それは、それほど水事情が大変だったからだと思います。今はそういうことはないように周辺
整備事業も随分やっていただいております。
るる申し上げました。長官、私
ども水の供給源でございますので、
環境について、今までのやりとりを含めて御見解をいただければありがたいと思います。