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1998-09-22 第143回国会 参議院 国土・環境委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月二十二日(火曜日)    午後一時二分開会     —————————————    委員異動  九月十八日     辞任        補欠選任      福山 哲郎君     北澤 俊美君      加藤 修一君     福本 潤一君  九月二十二日     辞任        補欠選任      北澤 俊美君     福山 哲郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         陣内 孝雄君     理 事                 太田 豊秋君                 松谷蒼一郎君                 小川 勝也君                 福本 潤一君                 緒方 靖夫君     委 員                 坂野 重信君                 田村 公平君                 長谷川道郎君                 山下 善彦君                 脇  雅史君                 岡崎トミ子君                 佐藤 雄平君                 福山 哲郎君                 弘友 和夫君                 岩佐 恵美君                 大渕 絹子君                 泉  信也君                 島袋 宗康君   政府委員        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君    事務局側        常任委員会専門        院        八島 秀雄君    参考人        中央環境審議会        企画政策部会長        上智大学法学部        教授       森嶌 昭夫君        京都大学経済研        究所所長     佐和 隆光君        環境総合研究所        所長        環境行政改革        フォーラム代表        幹事       青山 貞一君        元気象庁気象研        究所研究室長   増田 善信君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○地球温暖化対策推進に関する法律案(第百四  十二回国会内閣提出、第百四十三回国会衆議院  送付)     —————————————
  2. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ただいまから国土・環境委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十八日、加藤修一君が委員辞任され、その補欠として福本潤一君が選任されました。     —————————————
  3. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 理事辞任についてお諮りいたします。  弘友和夫君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事福本潤一君を指名いたします。
  6. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 地球温暖化対策推進に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、四名の参考人方々から御意見を聴取することといたしております。  参考人は、中央環境審議会企画政策部会長上智大学法学部教授森嶌昭夫君、京都大学経済研究所所長佐和隆光君、環境総合研究所所長環境行政改革フォーラム代表幹事青山貞一君及び元気象庁気象研究所研究室長増田善信君でございます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人方々には忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の会議の進め方について御説明いたします。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、参考人方々意見陳述は着席のままで結構でございます。  それでは、まず森嶌昭夫参考人お願いをいたします。森嶌参考人
  7. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 私は、本日は中央環境審議会企画政策部会部会長という立場意見を陳述させていただきます。  なお、このような意見陳述の機会を与えていただきましてありがとうございます。  中央環境審議会では、環境基本法に基づきます環境基本計画というのがございまして、環境基本計画進捗状況につきまして毎年点検作業を行っております。一昨年から昨年にかけましては、京都会議が開催されるということを受けまして、環境基本計画対象としている諸施策のうち、特に温暖化防止対策につきまして重点項目一つとして検討をいたしました。  昨年の六月にその結果を出してございますけれども、その際検討をいたしましたところ、政府におかれましては、関係閣僚会議決定としまして、地球温暖化防止行動計画という温暖化防止のための諸施策平成二年に決定しておられるところでありますけれども、これは非常に総合的なものではございますが、既存の施策をより地球温暖化防止に役立つという観点から運用していくというものでございまして、多くの施策が並べられておりますけれども、それらはもともと温暖化防止ということを目的とした施策ではないものも多いわけであります。さらに、国の行動計画ということでございますので、国の施策についてのみ計画が立てられておりまして、地方公共団体であるとかあるいはその他の事業者国民等主体についての直接の働きかけということはございません。  この地球温暖化防止行動計画が存在しているにもかかわらず、実際には、行動計画が策定されました平成二年から平成七年の五年間に、先生方案内のように我が国CO2の総排出量は九%も増加をしております。とりわけ民生運輸の分野では二八%の増になっております。その点で、全く効果はなかったというふうに評価するわけにはいきませんけれども、先ほど申し上げたような制約から、諸施策が行われているにもかかわらず、それらの間に有機的な関係、体系的な整合性がないということもございまして、ある程度の効果は見られるものの、当初予定されていたような一九九〇年レベルで安定化させる、そういう目的は達せられていないということに我々の評価、我々と申しますか、中央環境審議会点検結果は出ました。  そこで、点検をいたしました直後から昨年の八月以降、京都会議を迎えるということで、そもそも温暖化防止がなぜ必要であるのか、また我が国ではどのような温暖化防止のための取り組みがなされているか、これは民間も含めてでありますけれども、それからさらに温暖化防止に取り組むための技術的な対策等見通し等につきまして、いわば事実を整理するということでございましたけれども、中環審での企画政策部会検討をいたしまして、そして京都会議を迎え、京都会議決定によって、それに対応できるような施策を中環審としても考えたいということでございました。  さらに、これも御案内のとおりに、京都会議におきましては、我が国が二〇〇八年から二〇一二年の間に九〇年レベルの六%削減という義務を負うことになったわけであります。そこで、環境庁長官が「今後の地球温暖化防止対策の在り方について」という諮問をなさいまして、これを受けまして、京都会議の結果を受けて具体的にどのような施策が可能かということで検討を開始いたしまして、かなり集中的な審議をした結果、本年の三月六日に中間答申を出したところでございます。  そこでのこの中間答申の考え方でございますけれども、先ほど申しました政府の諸施策あり方から見まして、やはり温暖化防止という目的を正面から掲げて、そして総合的、有機的な施策体系をつくる必要があるということを考えたわけでございます。  具体的には、温暖化と申しますのは、これはすべての主体がかかわっております。国も地方公共団体事業者国民も、すべての主体がその活動によって温暖化にかかわっているわけでありますので、そこで温暖化防止の上での各主体責務を明らかにする、各主体温室効果ガス削減するという責務を負っているんだということを法律上明らかにするということがまず第一点。  それから第二点には、基本方針を策定しまして、それぞれの主体がどのような役割をなすべきかについて、枠組み条約というのがございますけれども、いわば枠組み的な法律をつくるということを考えました。  なお、基本方針内容につきましては、法律項目は書いてございますけれども、これらは直接環境庁所管法律のみならず、また直接に温暖化防止目的とした法律ないしは施策でないものについても、それらは温暖化防止に向けての配意をするというようなことも含めまして、基本方針をいわば全体的に中長期的な観点から施策整合性を図るということであります。  それから三番目には、すべての主体にかかわっております。その意味では、直接にこの法律権利義務を規定するものではありませんけれども、間接的に国民の生活にもかかわってまいりますので、それらすべての主体がどのような活動をするかということにつきまして国会の場で十分に御審議をいただいて、そして透明性のある法律とするということが必要であります。そして、法律に基づいて基本方針をつくる、そしてその基本方針は公表されるという形で透明性を確保していきたい。その一つの最も中核となるのは、これを法律に規定するということでございます。諸計画のように、事実上いわば行政的な決定、行政的な施策ということにとどまらないということが第三点であります。  さらに、本来ならば、京都会議ですべての事項が最終的に決定されているのでしたら、この提案をしております温暖化防止推進法案にもすべての事項をいわば確定的な形で提示ができるわけでございますけれども、一つには、国内的にもさまざまな施策が新たに展開される。その意味では、既にいろいろな効果のわかるものが施策のすべてではないということのほかに、最も重要なことは、御案内のように、いわゆる柔軟メカニズムと言っておりますけれども、排出量取引であるとかCDMとか共同実施というようなものは議定書には書かれましたけれども、中身はまだ決まっておりません。吸収源の扱いについてもこれからということでございます。  その意味で、国際的な取り決めがまだできていない段階で日本温暖化防止対策をとるにしても、国際的な合意と申しましょうか、交渉によっては変わってくるところはあるかもしれません。それにもかかわらず、少なくとも私は外国との関係がどうあろうとも国内施策はきちっと進めていくべきだというふうに考えております。  その意味で、温暖化防止を全体として取り扱う法律としてはまだ固まらないところがあるので、ともかく現時点でつくれるものと申しますか、現時点法律にできるところからしていく。そして、現時点でできている法律内容ももちろんですが、現時点では法律に盛り込むことのできない事項については逐次実際の事態が展開するに従ってつけ加える、あるいは国内的なものについては改正をするということで、一刻も猶予ができない、すぐさま温暖化防止対策に取りかかるべきであるという観点から、法律としてはやや不十分であっても、ともかく将来のためのフレームワークをつくってここで基本方針検討し、さらには各施策をそれぞれ進めるということが大事ではなかろうか、そういう観点で中環審答申を出したわけであります。  なお、私どもの中間答申を出す前後に省エネ法改正などがなされておりますし、それからまた、政府におかれましては温暖化防止対策推進本部を組織され、温暖化防止対策推進大網というものが六月に発表されております。そこでも既に取り組みが始まっているところでありまして、私は、中環審部会長としてこれらの取り組みを高く評価しておりますけれども、それにもかかわらず、やはり基本的な枠組み、しかも特に省エネ法の場合にはその対象がある程度限定をされておりまして、ダイレクトに民生あるいは事業所等対象にしておらないのみならず、中小企業についても必ずしも対象になっていないということ、それからまた、温暖化の中でも直接に対象となっているのは、化石燃料の燃焼ということを中心に考えておりますので、省エネ法は十分に有効に働き得る法律だとは思いますけれども、幾つかのところでまだカバーされていない点もございます。  それから、温暖化防止対策推進大綱につきましては、これは政府決定でございますから、やはり国会によって基礎づけられる必要があるのではないかという点から、私は、温暖化防止対策推進法をぜひ参議院においても御審議いただき、これを通していただきたい。中原審としては、ぜひ一刻も早く体系的、総合的に取り組む仕組みをつくっていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  8. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、佐和隆光参考人お願いをいたします。佐和参考人
  9. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) お手元にこういう資料がございます。短い時間になるべく多くのことを言いたいと思ってこういう資料を用意いたしました。  それでは、読ませていただきます。  まず初めに、昨年十二月の京都会議において何が決まったのかを確認しておきたいと思います。京都議定書の要点を列挙いたしますと次のとおりであります。  一、二〇〇八年から二〇一二年を目標年次とする。つまり、二〇一〇年を挟む前後五年間であります。二、先進国全体で一九九〇年比少なくとも五%削減する。三、国別差異化を施す。日本六%、アメリカ七%、ヨーロッパ諸国八%等の削減率であります。四、一九九〇年以降の植林、再植林などによる吸収源を加算する。五、六つの温室効果ガスCO2、メタン、亜酸化窒素ほか三つ二酸化炭素に換算して加え合わせたものを削減対象とする。六、共同達成を認める。七、排出権取引制度を導入する。八、先進国間の共同実施を認める。九、途上国との協力をクリーン開発メカニズムCDMとして制度化する。  温暖化問題は、科学政治経済を動かした過去二番目の事例だと言うことができます。最初の事例は、オゾン層を破壊するフロンガスの全廃を決めたモントリオール議定書であります。その意味で、温暖化問題についての意思決定は、次のような手順を踏んで行われるべきであります。  地球温暖化による危害を防ぐためには、例えば二一〇〇年の大気中の二酸化炭素の濃度をいかほどにコントロールすべきなのかの決定科学者にゆだねる。次いで、そうした目標を達成するためには、二〇一〇年までに二酸化炭素排出量を一九九〇年比何%削減するべきかを、科学者経済学者国際政治学者工学者らの衆知を集めて定める。そして、どのような地球温暖化対策を講じるべきなのかもまた専門家意見を十分に尊重して定めるべきだと私は考えます。  温室効果ガス、特に二酸化炭素排出削減するにはどんな対策が考えられるのでしょうか。大別すれば、それらを自主的取り組み規制的措置経済的措置三つにくくることができます。  市場を尊重する立場に立つならば、経済的措置、例えば炭素税燃費効率のいい自動車への優遇税制等が優先されてしかるべきであると私は考えます。別の言葉で言いかえますと、これからの温暖化対策を思案するに当たっては、自由化国際化という時代潮流との整合性に配慮すべきであります。自由化国際化がいまだしの時代、恐らく一九七〇年代ごろまでは企業消費者自主的取り組みが十分に功を奏し得たのです。しかし、自由化国際化の進んだ今日の経済社会を見る限り、自主的取り組み有効性は甚だしく減じたと言わざるを得ません。また、何かにつけ規制緩和の言われる折から、規制的措置はあくまでも経済的措置を補完するものと心得るべきであります。  一例を挙げますと、太陽電池普及させるための施策として、我が国では補助金制度が施行されていますが、ドイツのアーヘン市では太陽電池で発電された電力を通常の電気料金の十倍の値段で買い上げることが制度化されています。どちらも太陽電池普及させるための政府市場介入をねらった施策であり、しかるべき財政的措置を必要といたしますが、どちらの方式自由主義経済社会における対策としてスマートなのでしょうか。  私はアーヘン方式の方がはるかにスマートな施策だと考えております。なぜなら、補助金政策が奏功するには、政府市場の働きをあらわす微分方程式を熟知したラプラスの悪魔でなければならないからであります。つまり、補助金政策が奏功するには、いかほどの補助金をあてがえばいかほどの応募があるのかを政府はあらかじめ知る必要があるからです。神ならざる人間にとって、あるいは神ならざる政府にとって、そんなことは不可能であります。また、余計な人手を必要とするのも補助金政策の欠点であります。他方、アーヘン方式の場合、消費者の選択の自由に任せるというのがその利点であります。アーヘン方式のように市場を尊重する施策のことを経済的措置と言うのであります。  さて、京都議定書では、コミットメント期間は二〇一〇年を挟む五年間とされています。温室効果ガス排出を一〇%削減するとしたとき、それを一年間でやるのは確かに大変難しいことです。しかし、実際には十三年かけてやるのだということを見落としてはなりません。時間をかけてゆっくりとできるわけですから、消費者企業に対して急いで何かを禁止したり義務づけたりする必要は決してありません。人間だれしも時間を十分にかければ新しい環境に適応することは容易なはずであります。  次に、産業部門民生部門運輸部門二酸化炭素排出量削減可能性について私見の一端を披露させていただきます。  私の基本的な考えは、できるだけ無理のないところから、我慢する必要のないところから削減すべきだということであります。同じことを難しく言いかえれば、限界費用の安いところからということになります。こうした観点から削減可能性検討いたしますと、運輸部門民生部門での削減可能性を過小評価すべきではないとの結論に達します。低燃費車普及させること、そしてモーダルシフトを促すこと、省電力設計家電製品普及を図ること等により、別段さしたる不便を感じたりすることなく二酸化炭素排出量削減することができます。  近年の統計をよく見てみますと、経済成長エネルギー消費伸び関連性が往年に比べて薄くなったことを認めざるを得ません。その証拠の一つとして挙げられるのが、一九九〇年以降、経済成長率が相対的に低かったにもかかわらず、二酸化炭素排出量が顕著な伸びを示したことであります。九〇年から九五年にかけて二酸化炭素排出量は約八・五%もふえたのです。  その内訳を見ますと、産業部門は〇%、民生部門は一六%、運輸部門もまた一六%の勢いで伸びました。産業部門エネルギー需要経済成長の間には一定の関係があると見て差し支えありません。しかしながら、民生用運輸用エネルギー需要経済成長との間にはさほど有意な相関関係は認められません。九〇年から九五年にかけて運輸部門エネルギー消費がなぜそんなにふえたのかというと、燃費効率の悪い三ナンバーの高級車レクリエーションビークルがふえたからにほかなりません。また、民生用エネルギー需要がふえたのは、電力消費型の家電製品がこの問普及途上にあったからにほかなりません。私の見るところ、こうした趨勢はほぼ飽和状態に達しつつあるのではないでしょうか。  温暖化対策をやればまるで経済成長率が下がるかのような議論が横行しておりますが、そうした議論経済学のABCをわきまえない、全くのためにする議論だと言わざるを得ません。温暖化対策費用がかかるのは紛れもない事実ではありますが、だからといって温暖化対策経済成長率を低下させるわけでは決してありません。例えば、炭素税制の導入は、消費者から政府への所得移転をもたらすだけであって、政府が移転された所得の使い道を誤らない限り経済成長率が鈍化するわけでは決してありません。また、炭素税を導入すると同時に、レベニュー・ニュートラルな所得税減税を行えば、果たして消費はふえるのでしょうか減るのでしょうか。結論だけを申しますと、ふえるとも減るとも言えません。いずれにせよ、その絶対値は小さいと言って差し支えないと思います。  ただし、もし日本だけが炭素税を課するのだとすれば、エネルギー消費型輸出産業への適切な手当てを講じることが必要であります。例えば、鉄鋼業などがこのエネルギー消費型輸出産業代表例かと思います。したがいまして、例えば日本からの鉄の輸出に際しては水際炭素税を払い戻し、例えば韓国からの鉄の輸入に際しては水際炭素税を徴収するというのが一案であります。あるいはまた、スウェーデンにならってエネルギー消費型産業を免税にするのも一案であります。  温暖化対策の結果、産業がウイナーインダストリーとルーザーインダストリーに分かれることは避けられません。したがって、政府は、ルーザーインダストリーのロスを最低限に食いとめるためにはどうすればよいのかを真剣に検討するべきであります。ザ・ビッゲスト・ルーザーは石炭産業であります。大規模な石炭産業を抱えるオーストラリア、カナダ、アメリカ温暖化対策に消極的なのはそれゆえよくわかります。しかし、幸いなことに我が国には石炭産業はもはやないに等しいではありませんか。その意味で、日本温暖化対策の最もやりやすい国の一つだと言えます。低燃費車をつくることを得意とする日本自動車産業や省電力設計家庭電化製品をつくるのを得意とする日本電機産業は明らかにウイナーではないでしょうか。  また、同じ業界内でもウイナーカンパニーとルーザーカンパニーに分かれることは避けられません。その意味で、先日決まったばかりのダイムラー・ベンツとクライスラーの合併を京都会議の結果を色濃く反映した自動車産業界での世界的な再編の始まりだと解釈することができます。  以上申し述べましたとおり、今後数年間のうちに先進各国のいずれもがいや応なく温暖化対策を具体化する必要に迫られます。その際、経済的措置を優先し、その足らずを規制的措置で補うというのが市場経済の国であるはずの我が国における温暖化対策あり方だと私は確信いたしております。  最後に、排出権取引共同実施クリーン開発メカニズムなどの京都議定書により制度化された国際制度について簡単に意見を述べさせていただきます。  日本排出削減率は九〇年比六%ということですが、このことを言いかえますと、二〇〇八年から二〇一二年にかけての五年間に日本は一九九〇年の排出量の九四%の五倍の温室効果ガス排出する権利を得たことになります。すなわち、五年間の排出量が与えられた排出権以下になることを義務づけられたわけであります。この排出権を過不足に応じて取引しようというのが排出権取引にほかなりません。  例えば、ロシア排出権ロシアの一九九〇年の排出量の五倍となるわけです。ロシアの場合は削減率が〇%ですから、一九九〇年の排出量掛ける一掛ける五ということで五倍となるわけですが、ロシアは一九九五年に九〇年比三〇%もの意図せざる削減を行っており、恐らく多少の努力をするだけで当該の五年間の排出量排出権以下に抑えることが可能なはずです。したがって、ロシア排出権取引の売り手となり、日本アメリカなどが買い手となるものと予想されます。  それでは排出権の価格は一体いかほどかということになりますが、前もってそれを予測することは不可能であります。炭素換算一トン当たり二百ドルという説もあれば三ドルという説もあるといったぐあいに、諸説紛々のありさまです。京都議定書の中に排出権取引が盛り込まれたとはいえ、その中身については何も決まっていないのが実情であります。ことし十一月に開催されるブエノスアイレス会議の重要議題の一つが、排出権取引を初めとする国際制度あり方だと言われております。これらの国際制度についての私の見解は、後ほど御質問があれば幾らでもお答えいたします。  さて、地球温暖化対策推進法は、昨年十二月の京都議定書を受けて、そのコミットメント期間である二〇〇八年から一二年へ向けて、我が国のさまざまな主体が取り組むべき地球温暖化対策基本方針を定めるものとしてその意義を高く評価いたす思いであります。恐らく、次の課題は温室効果ガス削減のための有効な対策を講じることであります。温暖化対策推進法がその名のとおり有効かつ公正な温暖化対策推進するための礎石となることを願うものであります。  以上です。
  10. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、青山貞一参考人お願いをいたします。青山参考人
  11. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 環境総合研究所所長環境行政改革フォーラム代表幹事青山と申します。  私が発言します立場は、いわゆる環境NGOといいますか、そういう市民の総意、総意までいきませんけれども、そういうNGOの立場で発言させていただきたいと思います。  昨年から、重要法案に関しまして、衆議院、参議院、NGOをこういう公聴会にお呼びいただける機会が多くなりまして、そういう意味で私ども非常に国会議員の皆様に感謝しているところでございます。  私は、二種類資料をお配りしております。一つは、佐和先生と同じように、私の陳述内容を三枚のA4の紙にしたためたものでございます。もう一つは、京都会議が終わった後、後ろにおりますけれども、カナダから私どもの研究所に留学してきており、東京工業大学の大学院に行っておりますシンディーさんが中心になりまして、京都会議に参加されたNGO、専門家がそれぞれ英文で京都会議の総括を行ったものであります。既に五十カ国、百の海外NGOに送ってあります。英文でありますが、ぜひ先生方にも一読いただければと思います。  さて、今回の地球温暖化対策推進法案でありますが、私は環境NGOといいますか私自身の意見を申し上げるわけでありますが、先ほど委員長から忌憚のないということがありましたのと、この法案に関しましては、環境庁、通産省、他省庁、私自身シンクタンクをやっておりますが、実務上いろいろと知っていることがございますので、そういうものを他の公述人とは別に申し上げたいと思っています。  まず第一点は、法案のスキーム、骨格についての課題であります。  今回の法案は、いわゆる枠組み法案といえば格好はいいんですけれども、ほとんどが責務規定だけで義務規定が全くない。したがいまして、国際公約でありますCOP3の六%削減をするための担保法案となっていないということが第一の問題であります。  これは、一つの理由は、COP3が終わってからこの法案が出るまでの時間が非常に短く、環境庁自身の実務も三カ月弱、特別の部屋をつくってやっていましたけれども、かなり拙速、稚拙は否めないというのがあると思います。  本法案を指して、ちまたでは、事業者サイドでは事業者に余り害がないからあってもいいとか、あと環境NGOとか環境庁はないよりはあった方がいい、もしくは国際的世間体が保たれるというようなことをおっしゃっているというふうにやゆする向きがありますが、私自身はもちろん、世界で最初にCOP3の内容を担保する国内法、国内統制法と言いますけれども、統制措置をとることには反対ございません。ぜひ世界に先駆けてこのような法案をつくっていただきたい。  しかし、いわゆる骨組みが主であって内容が非常に乏しい。後で政省令、規則、規定、ガイドライン等で審議会とか環境庁が肉をつけるのかもしれませんが、初めから骨。しかも、環境庁は昨年十一月十八日に中間取りまとめといたしまして、「今後の地球温暖化防止対策の在り方について」、特に「我が国における制度的枠組みについて」という子細にわたる法制化に対する国内法の内容についての枠組みを用意していましたけれども、それの内容の恐らく二割ぐらいしか今回の法律案に反映されておりません。逆に、この行革下にあって新しく公益法人をつくるような組織的な話が非常に多くなっている。あと推進員といいます資格制度といいますか、そういうものをつくるような話が法案全体の目的と定義を外しますと半分ぐらいを占めている。これは全く十一月十八日の中間取りまとめにはないものであります。  ということで、本来二〇〇八年から二〇一二年の間に我が国が公約いたしました、加重平均の問題はありますけれども、六%温室効果ガス削減するということをあえて法律をつくって担保するという観点からしますと、今回の法律は理念、精神、責務、あと組織をつくる話であって、到底そのような六%を担保するものにはなっていないというのがまず第一の問題かなと思います。  それで次に、民間事業者が策定する実施計画というのがございます。これは、御承知のように通産省が省エネ法というのをちょうど同じ時期に次官会議を通しまして、環境庁がもたもたしている間にこれを出しました。それで、次官会議を通りまして閣議決定されましてこの法案の修正がなされたわけですが、もとより産業分野の伸びというのは少ないんですけれども、排出量全体に占める割合は約五〇%あるということですから、産業分野の温室効果ガス削減することは極めて重要な話であります。  しかし、昨年一年間、私どもは外務省、通産省、環境庁のこのCOP3の目標づくりのプロセスを外から監視していたわけでありますが、春の時点で案を出し、それについて国民意見をもらってCOP3に持っていく、もしくはAGBMに持っていくという話がおくれにおくれる、ついぞ十月六日に国会議員の皆さん及び社会に出るという、省庁間の非常に不透明性の高い目標づくりのプロセスを見てきたわけであります。  それと同じことが実はこの産業分野につきましては通産省と環境庁の間でありまして、結局、冒頭申し上げましたけれども、環境庁はみずから、今回出ている法案よりはるかに内容の濃いものを用意していたはずなんですが、結果的にその部分を全部はぎ取った中で通産省の次官会議に至る前に通産省の了解を得た。環境庁の企画調整局長初め、努力は認めますが、そういうことで通ったという経緯からして、もとより省エネ法で対応できる部分はCO2だけでありますが、それが結果的に内容をかなり緩めたということは否めないというふうに思います。  次に、二つ目に、大規模公共事業、土木事業、突出している我が国のこのような公共事業、土木事業が政府によって行われる。今経済が非常に悪いですから、民間企業が行うことによってCO2がふえるというよりは、公共事業、土木事業の突出によってCO2がふえる、温室効果ガスがふえるということが懸念されるわけでありますが、今回の法案では通産、建設、運輸、農水など政府の大規模な政策、施策、開発事業、予算的措置が、温室効果ガスに結びつく話が一切触れられていないということが大きな問題だと思います。  しかも、政府のさまざまな行政計画、法定計画、事業予算を見ますと、皆右肩上がりを前提とした将来の社会経済フレームになっております。それに基づいて道路整備五カ年計画とか電源開発基本計画エネルギー長期需給見通し、政府の行政計画ができておりますが、それらはいずれも右肩上がりになっております。それを何ら環境庁との間で調整することなくこの法案をつくっても、じゃ民間はまだしも政府みずからの話はどうなるのだということが私は大いに懸念されるところでございます。  それで、地球温暖化防止予算の七割から七割五分が道路建設費に充てられる、もしくは含められているという話がありまして、海外に行ってもこれは笑いの種になっております。一方、この温暖化防止のために今後原子力発電所を二十基つくっていくというような話もございます。これは非現実的な話でありますが、核廃棄物処理の問題でとんざしている現状にあって二十基の原発をつくる、今後温暖化の七五%の予算を使って道路をつくる、それとこの環境庁の基本方針と調整ができなければこの法案の意味は半減するというふうに思います。  次に、自治体が策定する実施計画というのがございます。自治体は御承知のように環境基本法のもとで環境基本計画、それ以前に環境管理計画、それから一九九二年のリオ・サミット以降はアジェンダ21のもとでのローカルアジェンダ21という計画をつくっております。環境庁は補助金も出しています。  そういう中で、自治体はかなりいろいろなこれに類する計画を過去つくってきました。さらにここで実施計画という目的もなければ目標もない。あと計画がどう達成されているかという、進行管理と言うんですけれども、それもない。そういう計画を入れた場合に自治体そのものが混乱を来す、当惑する。あと住民参加で過去の計画をつくっておりますから、住民にとってもまた何か新しい計画を国が考えたということになります。  ですから、これはするなということじゃないんですけれども、十分過去の環境庁が進めてきました環境系の計画との調整をしていただきたいと思います。  次、関連する組織づくりの課題。これは冒頭申し上げましたが、当初の環境庁の中間取りまとめには全くなかったものであります。しかし、目的と定義を除きますと、法案の半分がこれに関するものになっています。それで、行政改革、財政逼迫のもとで、言い方は悪いんですけれども、そういう公益法人、外郭団体をつくると思われるような内容、これは衆議院の本会議で武山百合子自由党議員がかなり具体的に申し上げていますけれども、やはりこの辺は既存のものを使うということもさることながら、本来の六%削減に向けて他省庁とすり合わせするなり協議するなり、透明性のあるルールをつくることが本題であるにもかかわらず、過半がこの組織づくりに向けられているという現実を私は非常に危惧するものであります。  最後に、情報公開、透明性の確保。これは今申し上げてきたとおりでありますが、昨年一年間を見ていて、COP3の内容が外交案件だという名のもとに一切草案も出されない、議員の皆様にも十月になるまで案すら国は出さない、そのようなことがあっていいのか。アメリカの場合には、上院、下院を私ども見ていましたけれども、早くから議会でも論議していました。  それは結果的にその内容がどうだとは違うと思うんです。プロセスだと思うんです。それで、言いますと、佐和先生等もおっしゃっていましたけれども、やはりそのプロセスを国民の前にちゃんと出せるような枠組みを中に入れていただきたい。都道府県が計画を出すとか事業者計画を公表するのとは別に、国の省庁問協議で、もしくは基本方針をつくるプロセスにおける透明性を高めることが重要だと思います。  もう一つ、この温暖化防止のもとになります排出量というのはあくまで計算で出てくる数値であります。ですから、そのもとになる燃料種類別燃料使用量とか、その背景にあります人口、世帯数、交通量、貨物取扱量、発電量等々の社会経済フレーム、数値を当然細かく国民に出すべきだと思います。今、インターネット時代であり、ホームページで幾らでもその情報は出せるわけでありますから、それを出していただきたい。毎年出していただきたい。さらに、国全体の排出量とは別に、少なくとも都道府県別の排出量を毎年出していただきたい。そうすれば、どの県がどう努力しているか、一極集中がどう進んでいるかということがこれらの社会経済指標及び温室効果ガス排出量から明らかにわかるわけであります。  これは外から監視する、もしくは住民が参加する、自治体がそれに関与する上でのインセンティブになりますということで、ぜひこれは非常にわかりやすい話ですし実現可能な話ですので、参議院での修正があると衆議院に行ってこれが難しくなるというような話もありますが、私は、今の衆議院、参議院のねじれ化の中で、ぜひ参議院の野党の皆さんには今の法案をよりいいものにする、骨組みだけじゃなくて少し肉をつけていただくという意味で、省庁問協議のルールと透明性を高める話と都道府県レベルでデータを出すというような話に関しまして修正をしていただければ幸いと思います。  以上であります。
  12. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  次に、増田善信参考人お願いをいたします。増田参考人
  13. 増田善信

    参考人増田善信君) 増田でございます。気象研究者として地球温暖化対策推進に関する法律案に対する意見を述べさせていただきます。  アラスカで氷河が解け浜名湖ほどの湖ができたと報じられ、ことしの異常気象も温暖化のせいではないかと地球の温暖化が心配されています。  国連の組織としてつくられている気候変動に関する政府間パネル、すなわちIPCCは一九九五年、既に地球温暖化の兆候はあらわれており、もしこのまま温室効果ガスを放出し続けるならば、二一〇〇年には地球全体の平均気温が現在より二度C上昇し、海面水位も平均で約五十センチ上昇するだろうと予測しています。そして、その結果、低い地域は水没するだけでなく、地球全体の生態系の変化、世界的な食糧難、猛烈な台風や洪水、風水害などの頻発、マラリアなどの熱帯、亜熱帯の疫病の多発などが懸念されるとし、CO2濃度を現在の水準で安定化するためには、その排出を直ちに五〇ないし七〇%削減し、その後もさらに削減する必要があると警告しています。  昨年十二月、気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締結国会議、すなわちCOP3が京都で開かれました。そして、この会議では締結国全体の温室効果ガスの二〇一〇年の削減目標を一九九〇年比で五・二%にするという議定書を採択して終わりました。主な国では、日本六%、アメリカ七%、EUすなわち欧州連合八%です。日本CO2削減は当初の提案どおり、二・五%にとどまりました。  IPCCがCO2排出量を直ちに五〇ないし七〇%削減する必要があると警告しているにもかかわらず、京都会議がこのような低い削減目標しか採択し得なかったことば極めて残念です。この京都会議出席していた島国ミクロネシアのファルカム副大統領が、我々の島が温暖化の最初の犠牲者になるときには全世界にとってもう手おくれだと嘆いたと言われています。本当にそのとおりだと思います。  このように、地球温暖化は人類の死活にかかわることであるにもかかわらず、COP3で決められた削減量は極めて不十分なものでした。それでもそれを達成するためには大変な努力が要るのです。  お配りした資料を見ていただきたいと思いますけれども、いかにそのことが大変かを示させていただきたいと思います。  この図で、実線は日本CO2排出量の変化を示したものですが、日本の九五年度のCO2排出量は九〇年比で既に八・三%もふえており、二〇〇〇年には一六・六%になると予想されます。したがって、日本CO2削減量が二・五%で済むとしても、二〇〇〇年以降のわずか十年間でCO2排出を約一九%も減らさなければならないのです。  これは国際的にも言えることです。鎖線は、気候変動枠組条約事務局の資料からのものですが、温室効果ガスの世界全体の九五年の排出量は、旧ソ連、東欧の経済活動の停滞により九〇年比で四・八%減少しましたが、二〇〇〇年には四・八%増加する見通しです。したがって、COP3で決められた削減目標五・二%を達成しようとすると、二〇〇〇年からの十年間で一〇%も削減しなければなりません。本当に大変な削減量なのです。  温暖化を防ぐためには発生源である温室効果ガスを減らすことですが、その九四%が化石燃料から出るCO2です。したがって、化石燃料の使用量を減らすことが急務です。そのためには日常的な省エネが重要ですが、家庭からの排出量はせいぜい六%足らずです。エネルギー転換部門、すなわち火力発電所からのCO2排出が最大で、実に三〇%に達しています。しかも、火力発電所では投入したエネルギーの三九%しか有効に利用されておりません。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンパインドサイクル発電や、発電と熱供給を同時に行うコージェネレーションなどの採用でエネルギー効率を高めれば、CO2を大幅に減らすことができます。  同様に、産業部門でも、むだに捨てられている熱エネルギーを電気に変えて利用する必要があります。運輸部門でも、路面電車の復活など公営交通体系を整備して車を減らせば大気汚染とともにCO2も減らすことが可能です。ところが、政府地球温暖化防止行動計画に関する予算は十一兆七千億円ですが、渋滞解消の名目で八兆四千億円が道路整備費です。方向が逆ではないでしょうか。  クリーンエネルギーの使用も重要です。実は私は、自宅の屋根に太陽光発電を載せて三年半、毎月発電量と使用量を調べています。その結果、太陽光発電が我が家で使う電力の約半分を賄ってくれています。もし我が国のすべての家庭の屋根に太陽光発電をつければ、CO2の総排出量を一六%削減できると試算されています。太陽光発電そのものは出力が小さいので動力には不向きですが、太陽光発電で水を電気分解して水素をつくり燃料電池に使えばクリーンなエネルギーが得られます。  政府は、原発はクリーンだと称して、温暖化対策の名目で二〇一〇年までに二十基の原発の増設を計画しています。しかし、チェルノブイリを初め「もんじゅ」や動燃の再処理工場の事故で明らかなように、深刻な放射能汚染をもたらしかねません。それだけでなく、何千年も高レベル放射性廃棄物を安全に管理しなければなりません。そのために冷却、換気などで大量な電気が必要であり、CO2が多量に出ます。クリーンだとは言えないと思います。  私は、この八月末から九月の初めにかけてアメリカに行き、事故を起こして解体中のスリーマイルアイランド原発、高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究をしているヤッカマウンテン、そしてサクラメント電力公社を見学してまいりました。  特に興味深かったのはサクラメント電力公社で、この公社は一九八九年六月に稼働中の九十一万キロワットのランチョ・セコ原子力発電所を閉鎖し、それ以後は、水力、コージェネレーション、太陽光、風力、地熱、バイオマス、天然ガスなど、いわゆるクリーンエネルギーで約百十二万人のサクラメント市の電力をほぼ賄っています。原発をやめ、しかも採算を上げながら二十年間でCO2を三〇%も減らす計画を実施中です。  デンマークやドイツが温暖化防止エネルギー対策で成果を上げていることはよく知られているように、技術的にはCO2を減らす方法はあるのです。問題は実行する意思があるかどうかです。  このように考えると、昨年のCOP3の温室効果ガス削減目標は極めて不十分だと思いますが、その完全実施を目指して政府がいち早く地球温暖化対策推進に関する法律案国会に提出されたことには心から敬意を表します。しかし、率直に申し上げまして、この法律案では、ただでさえ不十分な温室効果ガスの削波目標さえ達成できないのではないかと危惧しています。その箇所を二、三述べさせていただきます。  まず第一は、法案の各所に用いられている「排出の抑制」という言葉です。これでは削減の緊急性が伝わらないように思えますので、はっきりと削減という言葉を使っていただければと思います。  第二は、第三条二項に「当該施策目的の達成との調和を図りつつ」という言葉がありますが、「調和を図りつつ」という言葉が気になります。なぜかといいますと、一九六七年八月に施行された公害対策基本法に同じように「経済との調和を図りつつ」との文言があったため、実質的な施策が実施されず、この文言を削除するための国民的な大闘争が起こり、やっと一九七〇年十二月の公害国会で修正させたという苦い経験があるからです。  第三は、いずれも事業者関係するところで、温室効果ガス削減のための措置やその措置の実施状況などの公表が努力目標になっている点です。一九九〇年に地球温暖化防止行動計画が策定されながら、全く実質的な効果が上がらず、CO2排出量が既に一九九〇年の水準の九・六%以上も増加しているのは、この行動計画が努力目標だけを羅列していたからだと思います。  今回の法案では「政府は、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地球温暖化対策に関する基本方針を定めなければならない。」と規定し、基本方針には「国、地方公共団体事業者及び国民のそれぞれが講ずべき温室効果ガス排出の抑制等のための措置に関する基本的事項」が入っております。また、温室効果ガスの総排出量を含む実施の状況の公表を義務づけています。ところが、最大の排出者である事業者にはその公表が努力目標になっているのです。もし事業者が公表しなければ、総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画そのものが策定できなくなり、総排出量さえ算定できなくなるのではないでしょうか。これでは再び一九九〇年の行動計画の轍を踏むことになるのではないかと危惧されます。  本委員会におかれましては、これらの問題を含めて慎重に御審議いただき、本当に実効性のある法律をつくっていただきたいと思います。  ケニアには、「地球を大切にしなさい。それは親からもらったものではなく子供たちから借りているものだから」ということわざがあるそうです。二十一世紀の子供たちに本当にすばらしい地球を譲り渡すために御尽力くださることをお願いいたしまして、発言を終えさせていただきます。  御清聴どうもありがとうございました。
  14. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 脇雅史

    ○脇雅史君 自由民主党の脇雅史でございます。  きょうは、四人の参考人の皆様方、大変お忙しい中おいでを賜りまして貴重な御意見を承りました。まことにありがとうございました。  皆様方の御意見、若干ニュアンスに差がございまして、青山先生、増田先生は少し不十分ではないかという御意見でございましたが、総体的に見ますと、ニュアンスの差こそあれ、非常に重要な法案であるという御認識であったというふうに思います。  私も、この法案は極めて大事な法案だというふうに認識をしている者の一人でございます。特に、国際的に見ましてもなかなか我が国がいろんな意味でリーダーシップをとり得ていないという中で、この種の問題は日本にとって、私たち日本人にとって世界的にリードをとっていくために最もふさわしい課題ではないかなというふうに思うのでございます。特に、日本人は昔から自然と調和をしながら生きてきた長い経験と実績がございます。そういった経験を踏まえて、ぜひともこの法案をよりよい形で成立をさせていただいて、国際的にもリーダーシップをとっていきたいというふうに思うのでございます。  しかし、言うはやすし行うはがたしてございまして、これまで文明の方向と申しますのは欲望に応じて、とりわけ量の拡大という方向で来たわけでございますから、ここで減らすような方向に行こうという、まさに文明の転換と言ってもいい転機になるべきことでございますから、なかなかそう簡単にはいかないように思っております。先ほど来お話もございましたように、全国民の皆さんがこの法案の趣旨をよく理解して、そしてみんなでやっていくという体制をつくらなければ、なかなか目標の達成は困難なのではないかなというふうに思うわけでございます。  そこで、この法案の第一条、目的の規定というのが極めて大事なのではないかなと思うのでございます。法律の顔と言ってもいい目的の欄でございますので、ちょっとこの第一条について御意見を承りたいのでございますが、お持ちでございましょうか。  衆議院の方で御審議をいただいたときに、やはりそんなことからだろうと思うんですが、よりょくするという観点から目的の項の修正が加えられました。敬意を表したいと思うわけでありますが、私、一読をいたしまして、こういった方面にやや素人だという面もあるわけでございますが、非常にわかりにくい。目的を読んだときに、こう言っては失礼なんですが、特に修正を加えていただいた部分の文言がなかなかなじみにくい部分がございまして、一般の国民方々が目を通されたときに、この部分で少しくたびれてしまうと言ってはおかしいんですが、そんな心配をいたしております。  私の個人的な杞憂かもしれませんが、せっかくの機会でございますので、参考人の皆様方にそれぞれ専門のお立場からでも結構でございますし、国民の一人としての御意見でも構いませんので、この一条を読まれての率直な御感想をまず承りたいと存じます。恐縮でございますが、先ほどの御意見の陳述の順番にいただければ幸いでございます。
  16. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 私は法律家でございますので一般的には法律の条文に余り抵抗がないんですけれども、確かに脇先生のおっしゃるように、これだけ長くくっつきますとどこで切れるのかというようなことで難しいということはございます。しかし、いかなる法律においても、すべての人はそれを丁寧に読んですべて理解するということではなくて、場合によっては中間を飛ばしても構わないわけでございまして、私は衆議院の英知に対して何もけちをつけるつもりは全くございません。  確かに難しくはなっているけれども、少なくともこの法律が気候変動条約それからそれに続く京都議定書をきちっと履行するための法律であるということを示したという点では、わかりにくさが加わったにしても、もともとこの法律目的としていたところが明らかになったということで、私は差し支えないのではないかと。そして、くたびれないように途中は読まないでも済むというふうに、温暖化の問題が人類共通の課題であるというふうに、以前の法律のようにざっと目を通していただければいいのではないかというふうに思っております。
  17. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 私は、法律家の森嶌さんがお答えになった後に答えるのは大変答えづらいといいますか、ほとんど法律なんというのは読んだことがございませんでして、今初めてこれも拝見して、これは悪文と言うべきかなというふうに私も思いました。しかし、これをどう直せばいいのかということについては必ずしもはっきりした私自身の意見があるわけではございません。  修正後の方がさらに複雑になっているわけでございますね。とても一息に読める文章ではないですね。それからまた、いろいろ最近話題の「等」も出てまいりますね。  ですから、そういう意味で、私自身は法律専門家でないこと、そしてまた、文章のよしあしということについてはそれなりの見解は持っておりますが、決していい文章だとも思いませんが、趣旨そのものについては森嶌参考人がさっきおっしゃったとおり読めばわかるということで、その程度の印象しかございません。
  18. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 私は、目的に関しては、こういうものは今までいっぱい出てきましたから嫌というほどいろんなところで見ていますので、例えばこれ自身を高校生に読ませて、中学生に読ませてすぐわかるかということでいえば難しいと思いますが、ここについては余り特に意見とか文句はございません。  私は、きょうここへあえて来ましたのは、余りにも枠組み法といいますか、内容がない、骨ばかりだと。もしくは組織をつくる法案になっているということですから、あえて申し上げれば、早い話、目的の中に枠組み法であるというようなことを明記した方がいいのじゃないかと思います。  後で肉をつけますよと、環境庁の人間に聞けば聞くほど、とりあえず通してもらって、後で三年なり五年なり、森嶌さんと控え室でお話ししたときはすぐにでも改定をして肉をつけるんだと言っていました。ただ、五年先に肉がつく話になりますと、つまり私の言う法的統制措置で六%を担保する法律にするということになりますと、もう既に五年先になってしまう。  そうすると、今まででも皆さん申されていると思いますけれども、既に一九九〇年対比で一〇%、CO2に限ってもふえていますから、五年後に枠組みの上に肉をつけてそれぞれに義務規定を設ける、規制をする、経済的措置をするというようなことになりますと、明らかに遅いし、間に合わないということです。そちらの方こそ重要であって、あえて申し上げれば、ここでは内容の難しさというよりもこの法律枠組みを与える法律であるということを本当は明記した方が、つまり英語にした場合に、世界的に批判なり、恥をかかないと言うと失礼ですけれども、内容が、後の方に出てくるものがここに書いてあるものに必ずしもなっていないということの方が問題だと思います。
  19. 増田善信

    参考人増田善信君) 私は、衆議院で修正がなされました部分は、第三回締結国会議、COP3の内容というものを踏まえてこの法律案がつくられたその趣旨を目的のところへ示されたためであろうというふうに了解をしております。この法律案が人類そのものにとって大変重要な問題を含んでいるということをあらわしているという点では、こういう修正が入った点は評価をしております。  ただ、文章上の問題では恐らくいろいろ皆さん方御意見がおありだと思いますけれども、人類の未来にかかわった非常に重要な問題であるということを強調するという点では非常にこの修正はよかったと思っております。
  20. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうも大変ありがとうございました。  法律は正確さとわかりやすさが命ではないかという気がいたしておりますので、私どもこれからも努力をさせていただきたいというふうに思います。  ただいま目的の記述はともかく内容が大事であるという青山参考人の話がございました。私も全くそのとおりだと思うわけで、若干内容につきまして触れたいと思うのでございます。  この法律を一読いたしまして、私、もう一つ違和感を感じたところがございます。多分この法律を実効あらしめるためには、我々が一人一人エネルギー消費を減らしましょうと言うのは簡単ですけれども、そう簡単にはいきませんから、実際に何をやったらいいかといいますと、先ほど増田参考人からお話がありましたが、技術開発が極めて大事なのではないかなというふうに思うわけでありますが、この法律の中には技術開発というところは出てまいりません。わずかに三条のところで技術的な調査をしましょうということ、あるいは技術的なアドバイスをしましょうということは出てくるわけでありますが、それ以外には出てきません。  私は、実は、この法律では技術開発を促進すべきである、推進すべきであるということがあった方がいいのではないかというふうに個人的に思うわけでありますが、ないということについていかがお考えであるかということが一点。  そして、もし書くとして、技術開発ということに何らかのインセンティブを与えるような方策が要るのではないかということが第二点。  そして、我が国がこの分野で世界に貢献できるとしたら、最も可能な技術開発分野は一体どんな分野であろうかということ、これが三点目でございますが、やや技術開発ということでございますので、どちらからでも結構でございますので、御意見のおありの方からお願いをしたいと思います。
  21. 増田善信

    参考人増田善信君) 法律の中に技術開発の重要性という点を入れられるかどうかという点については皆さんで御検討願いたいと思いますけれども、やはり基本は二酸化炭素主体とした温室効果ガス削減するというところが基本にならなければいけないんじゃないかというふうに思っております。  そういう点で、削減のためには、技術開発がもう既にかなり進んで実際に実行しておるところがあるわけですから、先ほどもお話しいたしましたように、そこでわざわざ新しいものまでつくらなくてもできる可能性があるんですね。そういう意味では、先ほど佐和先生がお話しになったかと思いますけれども、政府がそういう技術開発を積極的に援助するような施策、そういうことが、これはもちろん政府だけじゃなくて地方公共団体も含めてですけれども、そういうところが援助をしていくようなやり方が大変重要じゃないかというふうに思っています。そういう点では技術開発はかなり進んでいると言ってもよろしいと思います。
  22. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。  それでは、もう時間がありませんので最後の御質問にさせていただきたいんですが、森嶌先生、中間答申を出されるに当たりまして非常な御苦労をされたと思うわけでございますけれども、先ほど来少しお話がありましたが、答申段階から比べて法案の中身がやや後退をしているのではないか、後退と申しますのは、削減をするという方向に対してしにくい方向に法案の中身がなっているのではないかという御指摘もございまして、また先日のこの委員会でも何人かの委員の方からその種の質問があったように思います。実際に苦労された部会長のお立場として、この法案をごらんになってどんな御意見をお持ちでございましょうか。
  23. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) お答えをいたします。  確かに現在の法案と中環審で出しました中間答申内容とは違っているところがございます。その一つは、先ほど青山参考人から御指摘がございましたように、産業界に関する点でありますが、私どもはこういう考え方がよいであろうということで中間答申を出しておりますけれども、それをどのような形で法律にするかということは審議会の役割ではありませんで、政府の責任でございます。  その際に、どういうふうなやりとりでそれについて国民がどう思うかということはともかくとしまして、できたものだけから判断をいたしますと、私どもは、要するに産業界が自主的にきちっと取り組んでほしいということであります。そのために例えば地方公共団体に報告をして地方公共団体からいろんなサジェスチョンをするということであります。御案内のように、現在、産業界は経団連を初めといたしまして自主的取り組みを始めております。そして、それについての自己評価もしておられます。  できたものから私が判断する限り、目的産業界はちゃんとやってくださるということでありますから、そこで私どもが提案した方式とは違いますけれども、ともかく現時点で動いているものを中環審としては、少なくとも私としては見守っていきたい。そして、先ほどから見直しという話がありましたが、五年以内に検討するということがありますので、問題があれば、五年以内ですのでいつやってもいいわけですので、私どもはそのときに検討をして、別の方法があるとすればそれを提案をすべきではないか。  私は、法律というのは、特にこういう新しい、しかもいろんな要素を持っている法律というのはどんどん問題があれば国会議員の先生方に変えていただければいいと思っております。中環審とこの法案との違いは一つの政策の選択のあり方であって、目的は同じでありますから、私どもと違ったからといってこれは悪いということではなくて、国会でお決めになることでやってみて、そしてそれが目的にふさわしくない、目的を達成しないものであれば改めて中環審としては別の政策手法を提言するということになろうかと思っております。
  24. 脇雅史

    ○脇雅史君 どうもありがとうございました。
  25. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 四人の参考人先生方、本日はありがとうございました。それぞれのお立場から温暖化防止の問題に取り組んでいらっしゃるわけですけれども、そうした面から御提言をいただきましたこと、これからも参考にさせていただきたいというふうに思っております。  時間が限られておりますので早速質問に移らせていただきますけれども、森嶌先生、地球温暖化防止計画目標達成できなかったその理由の一つとして、有機的、総合的な施策がなかったということを挙げられました。その反省を踏まえて温暖化防止推進法案枠組みなるものとして用意したという説明だったというふうに思いますが、そのねらいはよくわかりましたけれども、その法案そのものは有機的、総合的な施策を保障したものではなかったというふうに思うんです。その一つとして、この中では縦割り行政の問題というもの、これは解消できないというふうに私は思っておりますけれども、この点に関しては、先生、どんなふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。行動計画の失敗の教訓というものを生かしていくためにもぜひ先生の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  26. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) お答えをいたします。  私は、この法律、先ほど青山参考人がおっしゃいましたけれども、骨だらけというお話がありましたが、総合的な体系的な計画ができるかどうかということは基本方針をどのようにしてつくっていくかということであろうと思います。その基本方針はこの法案の提案者である環境庁が決めるものではありませんで、これは内閣総理大臣が決めます。そして、関係省庁の長でしたかと協議をするということも義務づけられております。  私は、役所の縦割りがどういうふうにしたって、この法律だけ、どんなにこの法律で書いたとしても、それ自身は構造的なものでございますので、むしろその中で、縦割りだということを私はここで強調したいわけではありませんが、現在の省庁問を前提とした上で総合的にやるとすれば、それは内閣総理大臣が責任を持ってお決めになる、その基本方針を策定していく中で政府としてはぜひ総合的、有機的な関連を持たせてやっていただきたいというふうに思っております。それでまた、それは公表されることになりますので、国民の目にさらされているということだと思います。
  27. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 青山先生にお伺いいたしますけれども、示されました温暖化防止推進法案によって森嶌先生が今指摘された問題点が解消されるかどうかということです。また、運用される際の注意点についてもお気づきの点があればお伺いしたいと思いますし、この法案のどこを修正すればいいというふうにお考えになっていらっしゃるか、その点についてもお聞かせいただきたいと思います。
  28. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 森嶌先生に御質問なさったことに関しまして、私は非常に深刻に受けとめております。  と申しますのは、昨年の衆議院の環境アセスメント法案、私、公述人で出たのでありますが、この一年をとりましても、環境影響評価法案、COP3の目標設定、通称PRTR、化学物質の情報公開、本法案、全部実は環境行政の二重行政と申しますか、忌憚なく言えば、通産省さんがことごとく類似のものを出される。その中で、環境庁のかなりのエネルギーがそれに費やされ、本来、国会審議なりNGOなり国民的な討議をすべきものがなかなかできないという現実がありました。  ですから、総合的、有機的とか言葉は幾らでも言えるんですけれども、この法案ができて、じゃ政府基本方針をつくるからうまく省庁間で有機的かつ透明性を保つものができるかといいますと、私は無理だと思います。早くちゃんとした情報公開法をつくっていただきたいというのがお願いでありますが、やはり省庁間協議、例えば補佐レベルから次官会議に至るまでのプロセスを要所要所で文書で出される、少なくとも外から見える、国会議員もさることながら、外から見えるようなルールをこの中に一つ本当は入れていただきたい。それがないと、同じことを今後も繰り返すと思います。  建設省、運輸省等は随分環境問題にも熱心になってきたと思いますし、通産省ももちろん熱心なんですが、熱心な余りかどうかわかりませんが、先ほど言いました、この一年をとっても四つの重要法案、政策にあって、ほとんど二重行政もしくは、はっきり言えば環境庁のやることに対していろんな意味で横やりと言うとあれですけれども介入されている。ですから、それをどうにかするためには、この法案に限っても、やっぱり省庁間の会議、協議だけじゃそれは表に出てきませんから、外に見える形でのルールを入れていただく。何とか会議というのがあればそこでの議事録は必ず公開するとか、そういうふうに思います。
  29. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 次に、温暖化防止推進法案は国に実行計画を定めることを義務づけておりますけれども、この実行計画はどの程度踏み込んだものにすべきというふうにお考えでしょうか。  佐和先生にまずお伺いしたいんですけれども、国が予算を出して行う事業、公共事業ですね、これは青山先生も先ほど触れていらっしゃいましたが、こういう公共事業によって排出される温室効果ガスの量を抑えることは実行計画の中に入れるべきだというふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか、温暖化防止の点から公共事業をどう組みかえていくべきかについて御意見を伺いたいと思います。佐和先生に伺って、その後短目に青山先生お願いします。
  30. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 公共事業に関しましては、私ども経済学者の間でもそのあり方についてはさまざまな疑問あるいは問題点が指摘されているわけでございます。したがって、可及的速やかに公共事業の見直しということはぜひとも必要である。その際に、やはりおっしゃるような公共事業に伴う温室効果ガス排出というようなことも見直しの一つのテーマに含めるべきではないかというふうに思っております。  以上です。
  31. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 公共事業に関しましては、私どもの言葉で計画アセスメント、今環境庁は戦略環境アセスとか言っておりますが、やはり計画の早期段階にあって環境配慮を盛り込むものを入れるべきですし、そういうものの延長で実施計画がつくれないと途中が全然抜け落ちて、道路整備五カ年計画、空港整備五カ年計画云々という計画にお金がついたときに、整備計画にお金がつくわけですけれども、そのときに国会審議される、もしくは判こを押されるということですから、もう少し早い段階からそれが外から関与できる枠組み、これは手続ですけれども、それをこれとは別の、環境庁が今検討されている法案といいますか制度の中でやっていただきたいというふうに思っています。
  32. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 増田先生にお伺いいたします。  先生がおっしゃいましたように、政府二酸化炭素亜酸化窒素、メタンのいわゆる三ガスの削減量につきまして、COP3の前の二・五%という数値を変えておりません。乱暴に言えば、削減量のふえた分は吸収源国際制度の活用で手当てできるという主張になっているわけなんですが、温暖化現象がこれだけ迫っているということでありますと、これは数字いじりのようなことをやっている余裕はないんじゃないかというふうに思うんです。五年以内に法律を見直して、それをもって京都議定書の担保法とするというふうに言っておりますけれども、本当にこの五年間という時間が私たちにあるんでしょうか。
  33. 増田善信

    参考人増田善信君) 先ほど私が資料を出しましたように、今までにもう既に八年たっているわけですけれども、このままいくとすると、ほぼ一六%ぐらい二酸化炭素だけでふえてきているという事態になっているんです。したがって、本当に二・五%でさえも大変な削減をしないといけないという事態だと思います。  そういう意味では、先ほどお話がありましたように、COP3でせっかくあれだけ大勢の人たちが集まって、温暖化問題の重要性という点では国際的に大きな世論を巻き起こしたと思いますけれども、出されてきた結論というのがその世論にこたえたようになっていないというところに私は非常にある意味では歯がゆいところを持っているわけです。  そういう点で、この後、例えばこの法案が五年以内に見直されるというような問題で果たしてできるかと言われると、この法案では、先ほども申し上げましたように、特に最大の排出者である事業者のところに対して公表という問題を努力目標にしているわけで、他の国及び地方公共団体はちゃんと公表することになっているわけですから、そこと同じような公表という立場をきちっととって厳密に精査をしていけばかなりのところまで削減が進んでいくのではないかというふうに考えています。
  34. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 佐和先生にお伺いいたします。  排出権取引吸収源についての議論が尽くされていないので具体的な国内対策を詰められないという消極的な考え方ではなくて、温暖化防止のためには排出権取引吸収源についてどう考えるか、もっと主体的に打ち出して国際社会に提案すべきだというふうに考えておりますが、日本政府はブエノスアイレスでの会議でどのような提案をすべきだというふうにお考えでしょうか。
  35. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 新聞報道によりますと既に提案されたそうですが、少なくとも私なんかにはそれは伝わってきません。ですから、依然として公開されていなくて我々にはそれが全くわからないわけです。  今現在、排出権取引に関しまして国際的に何が問題になっているかといいますと、議定書の中に出てきます文言で、排出権取引などはあくまでサプルメンタリー、補足的なものにとどめるべきであるという考え方があるわけです。ヨーロッパはそのことから排出権取引の量に対して一定の制限を設けるべきであると言っているのに対して、アメリカはそういう必要はないと。なぜならば、三十八カ国全体で最も安い費用削減をかなえるためには排出権取引というのは大変有効な手段である、だから制限を課すべきではないというようなところで大きく意見が分かれているわけですが、その対立に関してどういう意見日本政府が持っておられるのかについてはまたそれも伝わってまいりませんので、むしろ政府に聞いていただく方がいいんじゃないでしょうか。
  36. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 もう一つ佐和先生に伺いたいんですけれども、先ほどのお話の中で、経済的措置を導入することが心配されるほど困難ではないというふうに力説されたんですけれども、それは今後も先生には御指導をいただきながら議論を進めていかなければというふうに思っておりますが、運輸部門民生部門での削減可能性を過小評価すべきではなくて、例としてモーダルシフトを促すこともおっしゃいましたけれども、これは本当に不便を感じたりせずに移行することが可能でしょうか。
  37. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 輸送のモーダルシフトにつきましては、例えば貨物をトラックで輸送するのと鉄道で輸送するのを比べますとトン・キロ当たり十五倍の開きがあるわけです、その消費するエネルギーにおいて。同じく人が移動する場合も、人・キロで見たときのエネルギー消費量というのが乗用車と鉄道の場合は十倍の開きがあるというようなことで、今自動車の方に偏った輸送のモードを何とか鉄道の方に引き戻すということは、これは非常に効き目のある戦略になるというふうに思っております。  しかし、そのためには何をすればいいかというと、先ほどの御質問ではないですけれども、公共的に、公共事業としてもっと都市交通というものを整備するということがぜひとも必要なことだと。ですから、公共事業は何でも二酸化炭素排出増につながるというわけでは必ずしもないということじゃないかと思います。
  38. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 どうもありがとうございました。
  39. 弘友和夫

    弘友和夫君 公明の弘友和夫でございます。  本日は、四人の参考人先生方には大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、心より御礼を申し上げる次第でございます。  先ほどからのやりとりをいろいろ聞かせていただいておりますけれども、昨年の十二月の京都会議以降、法的な拘束力のある削減議定書というのが採択されたというんですか、温暖化に対して新しいスタートを切ったというのはよくわかるんですけれども、それに対する法案が非常に私は、青山先生の御意見に近いんですけれども、本当に骨だけといいますか、大骨も小骨もすべて抜かれたような法律案になっているという感じがするわけですよ。  ですから、一つ一つの条文がどうとかこうとかいうようにお聞きするのは余り気が乗らないんですけれども、そういう意味で、例えば先ほど森嶌先生、佐和先生は、いろいろな経過はあるけれどもこの法案を通した方がいい、また、五年以内に見直し規定があるから問題があればすぐにでも見直せばいいじゃないかというようなニュアンスだったと思いますし、また、青山先生、増田先生についてはそうじゃないように感じたんですが、もう一度整理をさせていただいて、端的にこの法案に対する評価というか、いろいろ先ほどからお伺いしているんですけれども、もう一つお聞かせしていただきたい。  そしてまた、八年から一二年の二〇一〇年に果たして六%削減ができるのかどうか。もう既に九%、一五%、この間の環境庁のあれでは、このまま放置しておけば大体三〇%ぐらい九〇年基準からいえば上がるんだというような答弁もございましたけれども、果たして九〇年レベルから六%削減できるのか。私は、今のこのペースで行ったら不可能に近いというふうに感じているんですけれども、幾ら今からいろいろ実行計画を立てたり何かしても、このやり方では難しいんじゃないかと思いますが、そういう点においてそれぞれの参考人先生方から端的に短く御意見をお聞きしたいと思います。
  40. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) まず、削減できるかということでございますけれども、逆に申しますと、何もしなければ絶対に削減できない、もっとふえる、ここで何かしなければならないということであります。  次に、ここで何かをするのにこの法律で十分かということでございますが、先ほども申しましたように国民の全部の生活にかかわってまいります。そして、普通の問題ですとあることをレギュレートすれば、規制すればそれで済みますけれども、いろんな場面でいろんなことがかかわってきますので、どうしてもこういう枠組みをつくらざるを得ない。そして、その中で、具体的には基本方針の中で、あるいは基本方針に基づいて、新しくつくっていく法律によって個々的に対応していく、それが全体の中で整合性を持っているということをしなければならないのではないか。  私の方から、参考人の方から申し上げるのはまことにあれですが、こういう基本的な枠組みをつくって、それが本当に生きてくるかどうかは、国会先生方いかにきちっと法律をつくっていって、この法律だけではなくて、次から次に各場面で出てくるような法律をつくっていただくかということにかかっているのではないかと思います。  私は、スタートとしてはいろいろ問題はあるでしょうけれども、少なくともこれでやることがまず必要なことだというふうに思っております。
  41. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) この法律がまさに基本方針を定めた法である、あるいは枠組みを定めた法であるという限りにおいて、この法律だけでは六%削減は不可能だというふうに私も思います。しかし、これは出発点として意味がある。この法律がもし私が先ほど申し上げましたような経済的な措置を今後講じることに何か制約を課するようなものであれば大問題ですが、幸いにもそういう形にはなっていないということで、そして今後は、例えば低燃費車普及させるためにはどうするか、太陽電池普及させるためにはどうするかということで、個々のそういうきめ細かな対策を講じていくということで、私自身は特に民生部門運輸部門エネルギー消費削減することによって日本の六%の義務を達成することは十分に可能だというふうに思っております。
  42. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 私は、一部繰り返しになりますが、今回の法律枠組みしかほとんど示していないということからして、逆に言いますと、大部分のことは実施計画基本方針を含め、また政府なり自治体、特に政府の中で環境庁と通産省、環境庁と他省庁との協議の中でその内容が決まっていくということに非常に不安を持っています。それは今さら申し上げません。透明性がない、決まったときには遅い、内容が不備ということですから、枠組みとともにぜひ調整のルールを一つぐらい修正で入れていただきたい。  それから、国民からこの法案の書かれていることで何がすぐに見えるか。実施計画は別にしますと、最後にあります総量、CO2なり温室効果ガスの総排出量を毎年出す。それに関しましては、毎年国全体の総排出量を出すだけでは極めて何もわかりません。私どもは、昨年、環境庁が出す出すと、春のうちに出すと言っていたその前の年の排出量を後ろにいます葛城君が通産省等からも情報をいただきまして一週間弱で計算しました。皆様のお手元にある私の英文の資料の中にそのグラフがあります。ほぼ環境庁のえらい時間かかって秋に出てきたものと同じであります。  ですから、国民にとってこの法案をもし生かすならば、それ以前の話とは別に、その部分の排出量、あと関連するさっき申し上げました社会経済指標、そういうものを毎年出す、できれば都道府県単位での数値を出すということがあれば、この法律をつくることにより国民、NGOがこれを見て、なるほど上がっている、下がっている、この県は頑張っているということで意味があるというふうに思います。  しかし、今のままの法律では恐らく六%、六%というのはCO2じゃなくて幾つかの温室効果ガスの加重平均ですから、CO2に限って言いますと、一九九〇年対比でほとんどゼロです。プラスでもいいぐらいになっていると思うんです。環境庁の試算、これもまだちゃんとしたものが出てきておりません。ですから、そのことも含めて、ほかのNO2はどうなんだ、HFCはどうなんだ、SFCはどうなんだ、SF6はどうなんだということは全然専門的な話ですけれども表へ出てきておりませんから、この法案だけでは多分そういうものとのすり合わせば難しいというふうに思っています。  ですから、やはり参議院で幾つか省庁間の調整のルール、透明性の確保及び国民、NGO、外に対しての環境指標を毎年都道府県単位で出すというようなことをぜひ入れていただきたいと思います。
  43. 増田善信

    参考人増田善信君) 私は、先ほども発言させていただきましたように、世界に先駆けてと言ってもいいようにこの法案を提案されたという点では評価をしております。ただ、内容的には、先ほどのように、もっと本当に実効性のあるものにしていただきたいという点を申し上げているわけです。  先ほど私が申し上げましたように、公害対策基本法の制定のときもそうだと思いますけれども、そういう意味ではこの法案そのものは公害対策基本法に相当するような基本法的な性格を持っているんじゃないかというふうに理解をしているわけです。  したがって、具体的には条例であるとか規則であるとかということで削減目標を明確にしていくというやり方をしていけば確実に削減が可能な方向に進め得る、その基礎になる法案であるというふうに考えております。そういう意味では、私は本当に抜け穴のないような立派な法案にしていただきたいということをお願いしたいと思います。
  44. 弘友和夫

    弘友和夫君 もちろん、この法律だけでは六%削減というのはできないわけです。いろいろな法律または条例等をつくっていかないといけない。だけれども、先ほどから論議になっているように、こういう言い方をしたら大変失礼ですけれども、果たして環境庁の実力でそういう法律なりあれはできるのかどうか。今までの論議の中でも、相当後退をさせられているじゃないか、先ほど森嶌先生が言われたように、まさしくそれは内閣総理大臣の力、それによってできるんだというようなお話がちらっとありましたけれども。  そこで、青山参考人にお聞きしたいんですが、この十四条で「関係行政機関の協力」、環境庁長官関係行政機関の長に対し、温室効果ガス排出の抑制等に資する施策の実施に関し必要な協力を求めることができると、こういうふうにございますけれども、今言ったように、環境庁からの呼びかけによって他の通産だとか運輸だとか農水だとかが本当に協力してそういうものができるのかどうかという大変な私は危惧というか、できないと思っていますけれども、参考人はどういうふうに。
  45. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 弘友議員と私もほぼ同じような、実務の現場にいますし、同じ考えを持たざるを得ない面があります。こういう文言で、「必要な協力を求めることができる。」とか「意見をすることができる。」ということが過去いろいろな場面で、こういう環境問題、例えば東京湾横断道路とか諌早湾干拓事業、さまざまありました。環境庁が意見を言う場があってもなかなかそれが十分の一もその相手に、現場、実務レベルで通らない。多分、環境庁が力が弱いとか能力がないとかということより、今までの歴史の中でどうしてもそういう立場環境庁があるということは間違いないと思います。  別に私は環境庁の応援団でも何でもないんですが、やはり今後の温暖化問題を考えるときに、環境庁自身がもっともっと調整能力なりを持っていただかなくちゃいけない。ただ、それを言ってもしょうがないので、やはり国民がプロセスを監視できる、参加と監視が可能な形でないとこういう「必要な協力を求めることができる。」とか「説明を求めることができる。」ということが生きない。  ですから、私はしつこく言っているようなんですが、もう少し透明性を高める温暖化論議、政策、例えば政策づくりの中でも今回の場合には基本方針、自治体でいいますと実施計画をつくる過程への国民参加、NGO参加が保証されないと、もしくは公衆の面前で省庁の基本方針づくりが行われるということがない限り弘友議員の危惧は私はぬぐえないというふうに思っています。ですから、何かの形でそういうルールを、条項を入れていただきたいと思います。
  46. 弘友和夫

    弘友和夫君 私もこの法案はいろいろ修正し出したらもう全部変えなければいけないような気持ちになるんで、今考えられるのは、青山先生から今言われましたようなそういうルール化というか透明性というか、そこら辺が一番大事な、もし手を加えるんであれば、そういう気持ちはあります。  佐和参考人にお伺いしたいんですが、先ほど自主的取り組み規制的措置経済的措置三つがある、その中で経済的な措置が優先されてしかるべきだと。それは大体同感なんですけれども、その後で、十三年あるんだ、だから一年とか二年じゃあれだけれども、十三年あるんだからゆっくりやってもいいんじゃないかというように私は受け取ったんですけれども、十三年あっても、それこそ今から実施計画をつくったりなんかして、四、五年あっという間にたって、あと残りは数年だと、その中でこれをやり遂げるというのは大変なエネルギーが要るんだと思うんですが、そこら辺について最後にちょっとお伺いしたいと思います。
  47. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 私が言いたかったのは、何かを義務づけたり、そういう強制的な措置というものは講じる必要がないということを言いたかったわけです。  ですから、経済的な措置というのは速やかに講じるべきである。そして、十年先ということを考えますと、例えば今現在町を走っている車で十年後も走っている車というのはわずか数%だと思うんです。言いかえれば、ほとんど一〇〇%車が入れかわる。ですから、その車が今走っている車よりは優位にといいますか、目に見えて燃費効率のいい車に置きかわるということを促すための、つまり低燃費車を買うインセンティブをこしらえるような政策を講じるべきだ、それは一日も早く講じてほしいというように思います。
  48. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 本日は、参考人の皆様にはお忙しい中、大変ありがとうございました。日本共産党の岩佐でございます。  まず最初に、私、この法律審議が行われていることを外国の方が知って、そして、今度の法律はあのCOP3を受けて日本が何か積極的にやろうとしている大変な法律だというふうに思ったけれどもどういう法律なんですかという質問を受けました。それで、この法律はなかなかいいものですというふうにちょっと言えなくて大変苦労したわけですけれども、日本二酸化炭素排出量というのは世界で四番目を占めています。そして、その国が地球温暖化対策推進する法律をつくるということですから、世界的にもやっぱり注目を集めているのではないかというふうに思います。  その点から、この法律を外国の環境に関心のある方々に説明する際に、これはいいものですよとか、あるいはいろいろあるけれどもとか、さまざま説明の仕方があると思うんですけれども、質問としてなじむかどうかわからないのですけれども、各参考人の皆様に、もし外国のそういう代表から聞かれたらどういうふうに答えられるのかということを伺いたいと思います。
  49. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 法律の制度といいましょうか、法律のつくり方、書き方はそれぞれの国によって違います。ほかの国であれば何十条もかけていろんなことも書き込んだりいたしますので違いますけれども、私は少なくとも国民を含めた日本のウイルと言いましょうか意思が削減に向けて動き出している、そしてそれに取り組むためのディバイス、道具が個々にできているんだという意味では、私も外国の環境関係の人とたくさんつき合いがありますけれども、少なくとも途上国の人たちとかって話をしたときには、ともかく日本がリードしてくれということを言っております。法律の個々的な条項について説明をしても、多分相手が法律家でも必ずしも説得性がないと思うんですけれども、国家といいましょうか国民の意思がCOP3を受けて始まるんだという、そこが私は重要であろうと思っております。  なお、温暖化防止という点を離れて、ごみの問題も資源の問題も全部あるわけですから、温暖化の問題を離れて我が国産業構造なりあるいは国民の参加の問題すべてを含めてこの法律の中に盛り込もうという、あるいは盛り込まれていなければ十分でないということであれば私はこの法律は十分でないと思いますけれども、それは一つ法律ではなし得るものではない。先ほど国会先生方参考人にあるまじき注文をつけましたけれども、ドイツなどが例えば循環経済法なんかをつくってどんどん動かしてきているわけです。そういう環境全体に取り組む行政それから産業あり方というようなものをそれこそ今後ぜひお考えいただきたい。  私は、温暖化防止という観点からのこの法律という限りで、先ほど青山参考人の方からいろいろ御指摘がありまして、私も御指摘の限りでは全く賛成なんですけれども、それじゃこの法律の中にそれだけ盛り込めるか、あるいは盛り込むことが従来の我が国の立法の仕方かということになりますと、これは決して理論的におかしいというのではなくて、法律家としては少ししり込みをせざるを得ないところがございます。  私は、温暖化防止という観点から取り組み始めたという点では先生にも外国の方に言っていただいて差し支えないと思います。条文を翻訳して見せれば、それは国によって法律の書き方は違いますので、これは一体何ですかと言われるかもしれません。  以上でございます。
  50. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 恐らく外国の方々がこの法律に関心を持たれるとすれば、その法律の中にどういう政策なり対策なりが盛り込まれているのですかということだと思うんです。先ほど来申し上げておりますように、いい悪いは別にして、この法律はあくまで基本法あるいは枠組み法のようなものであって、実はその中身は空っぽであると。しかし、空っぽなものがこの国では必要なんです、空っぽなものをまずつくって、個々の政策はまた別途その次の段階で考える、そういうことを英語で説明するのは大変難しいことだと思います。
  51. 青山貞一

    参考人青山貞一君) きょうここに来るに際して二名ほど随行傍聴者が構わないということで、ずっとこの問題で留学している後ろにいますシンディーさん、今も大学でやっています。修士論文もそれです。日本のCOP3をめぐる行政とNGOの要するに合意形成といいますか、その話をやっています。彼女が本来この部分だけは一分でも二分でも発言してくれればはっきりわかるんですが、やはり外国、特にカナダとかこの枠組みの中でも中心にいるNGOから見ますと、この話は枠組みもさることながら非常に不備だというふうに私の口から言うわけにはいかないんですけれども思うと思うんです。ですからそれは、シンディーさんが英語にして概要を送れば向こうからすぐにコメントが来る話ですし、ホームページで専門のを開けばわかりますから、私たちがというよりは外から評価してもらいたいと思います。  しかし、私は、冒頭に言いましたけれども、ないよりはあった方が国際的世間体がいいという評価があるというのがまさにこの評価である。あと、事業者はこの程度のものであれば何ら害はない。あっても、通産省が次官会議でオーケーを出したという背景は、そちらに環境庁の幹部がいらっしゃいますけれども、それ以外あり得ないわけです。  ですから、今まではそうかもしれませんけれども、これからは政治的な状況も変わってきているので、ぜひ参議院の本来の役割、学識経験者、知見者としての役割、専門性を発揮するという意味で、衆議院で通ったものであっても本来私は参議院がちゃんとしかるべき修正をすべきだと。そのポイントは幾つもじゃなくて、森嶌先生、青山さんの方は基本的に賛成だけれどもそれをやったら大変なことになると。僕は肝心なのは二つぐらいしか言っていません。省庁間の何らかの透明性を持った協議、ルールの問題、もう一つ排出量を都道府県レベルでちゃんと毎年出すということです。  ですから、ないよりあった方がましだという法律ばかりできても、私は実は環境問題を二十五年ライフワークとしてきた人間として非常に寂しい思いがします。最近の法律はそういうのが非常に多いんです。それは、決して環境庁がだめなんじゃなくて、そういうものに対してさまざまな介入、圧力があって、結果的に妥協の産物で、次官会議というのは御承知のようにそこに至る過程で一課長が反対してもその法案以前の政策が没になる。だから、そういうものこそ国会で変えていただきたいというふうに思います。
  52. 増田善信

    参考人増田善信君) 私は、この法律が外国からどう思われるかという点について言えば、先ほど言いましたように、今までは余り熱心じゃなかったと言われている日本でCOP3を受けて初めてこういう法律をつくろうとしているというか、そういう点では評価をされるべきだというふうに思っております。ただし、先ほどから青山先生を初めとしておっしゃっておられますように、内容的には本当にもっと精査をしていただいて、歯どめをちゃんとしていただくようなところが必要じゃないか。先ほどから繰り返し申し上げておるんですけれども、かつて公害対策基本法のときに失敗をしたようなことがないようにしていただきたいということです。  それはやはり、温室効果ガス削減することは今本当に差し迫っているという点はすべての人に理解していただきつつあるわけです。まして、これは環境庁だけじゃなくて、通産省だって恐らくそういう方向をとらざるを得ないところへ今来ているというふうに思います。そういう意味では、通産省とか環境庁などどいうような狭い範囲の問題ではなくて、本当に国全体として今この方向でやっていかなければいけないんだという点で、この内容を本当に外国の人に自慢のできる内容にしていただければというふうに思っております。
  53. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 最初の環境庁の何か原案では、事業者に対して排出計画を出させる、あるいは抑制計画を出させて、そしてそれを知事に報告するし公表する、あるいは計画が不備な場合にはそれをまた公表するとかという事業者規定があったけれども、それはどうも通産の省エネ法との関係で二重規制になるからだめだということでだめになったという話があります。  それから、ちょっと時間がなくなってしまったのでもう一点、自動車の問題なんですけれども、先ほどお話があったように自動車対策費、道路の対策費というのは異常に多いわけです。渋滞を防げばCO2排出量が少なくなるからということでどんどん道路がつくられているわけですけれども、私は総量がふえるということでこれは全く逆だというふうに思うのですけれども、その点について、大変申しわけないんですが、時間が限られてしまっていますが、森嶌先生とそれから青山先生にちょっとお伺いをしたいと思います。
  54. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) お答えいたします。第一の点につきましては、中環審中間答申は先ほど政府案ではとおっしゃったようなものであります。そして、私が先ほど申し上げましたように、私どもとしては、地方公共団体に届け出をして、そして報告をして、地方公共団体がそれに対して助言をするということが政策手法として望ましいと考えたわけでありますけれども、最終的な政府案はそうなっておりません。  ただ、私は、中間答申を出すからには、私は中間答申の方がいいと思っておりますけれども、しかし、それは一つの政策の選択だと。今のところ同じところに到達するかどうかわからないけれども、ゴールとしては同じはずなんだから、少しそういう形でやってみるのも一つのあれではないか、そして、十分でなければそれに対して再び中環審として意見を申し上げればいいというふうに考えているわけであります。  それから、第二の点は道路ですね。  これも、私は関連審議会の合同会議というのに環境庁の中環審委員として出ておりましたが、あそこで示された政府施策というのは、各省庁から出てきたものを全部盛り合わせをするということで、調整ができておりません。  私は、今後基本方針をつくっていく場合には、コストパフォーマンスの問題、それから、岩佐先生のおっしゃった、果たしてその施策がトータルとしていいかどうか、環境にプラスかどうかということも考えた上で、やはり予算も限られていることですから、将来的には十分検討をして、いろんな省庁から出てきたのを全部がちゃんことまとめて出してくるという方向、そういう方向でなく考えるのが私はこの法律の根本的な考え方だろうと思っております。
  55. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 簡単に申し上げたいと思います。  第一点目の工場、事業所に対する簡単に言えば総量抑制、総量規制的な手法。  これは、大気汚染防止法の中で環境庁、都道府県がずっと歴史的にやってきたものであります。これを、規制はまずいということでなくて、私は、これは健康に影響があるものであるがゆえに環境庁、東京都等の自治体がやってきたことであり、そこで積み上げた環境庁と都道府県の工場、事業所に対する排出割り当てとか規制は当然こういうところにも十分施策、手法として生かせると。それが結果的に通産省に行ったために、省エネ法の名のもとに、そこで非常にやりにくくなった。通産局の今の人員では到低都道府県がやるようなきめの細かな工場、事業所に対する指導とか立ち入りはできません。ですから、当初のものがなければいけないという意味で私は技術的な話ですけれども申し上げています。  二点目の問題は、委員おっしゃるとおりで、私は、これ専門にしております川崎公害訴訟の高等裁判所の証人にまでなっている人間でして、大都市における渋滞解消が例えば燃費改善にという話は間違いないでしょう。しかし、日本全体で道路をこれ以上つくっていく、あと環状系道路をがんがん整備していく、これは、例えばIEA、国際エネルギー機構のディレクターも日本に来て、それをやった途端にますます交通総量、走行量がふえるだろうと言っています。ですから、何で道路局がそういう予算を地球温暖化対策にぼこんと入れたのか私は理解に苦しみますけれども、もちろんきく部分ときかない部分があって、総体としては交通量はそんなにふやしちゃいけない。  それから、やるべくは、きょう脇先生からありましたけれども、例えば自動車分野の技術開発をどんどん進める。これは、メルセデス・ベンツが昨年の幕張に出しましたいわゆる燃料電池車というのがあります。これは僕は多分本命だと思っています。これは水素と水で電気をつくって、出てくるものは水だけ、しかもそれをうまく使うと家庭用の発電にも使える。ですから、建設省さんの膨大な予算をできればそういう方の技術開発に向けていただければ、まさにその膨大なお金が地球環境保全に役に立つのじゃないかというふうに思います。
  56. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ありがとうございました。
  57. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 四人の参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。社会民主党の大渕絹子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  まず、青山参考人にお伺いをいたします。  六%の削減目標の当面の達成方策ということで政府が原案を出されておりますけれども、この中に植林等の吸収源対策ということでマイナス三・七%という数字を盛り込んでおります。ドイツの連邦政府は地球変動のアドバイザー会議において、この吸収源の算入は、温室効果ガスの大気中濃度の安定化という長期的な目的にとって生産的ではない、気候や土壌、生物圏を保護するという目的とは両立をしない、排出量決定する上で不明確な定義や問題があり、議定書が悪用される懸念があるというような報告をなされておりますけれども、参考人はこのことに対して、実効性が本当にあるのかどうかということも踏まえてお答えをいただきたいと思います。
  58. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 私はその分野の専門でありませんが、少なくとも、共同実施とは別に、シンク、吸収源の話が出てきた背景を見ればわかると思います。  背景が出てきたのはアメリカだと思うんです。アメリカは、御承知のように、原子力発電所に関しましては新規を認めない、二〇二五年までに恐らくアメリカの通常の軽水炉は全部なくなる、つまり原発をアメリカは早い話がやめるということを選択したわけです。その原発をやめたアメリカが、さもなくても排出量が多いアメリカが、CO2を減らす、温室効果を減らすためには、当然火力発電所をふやさなくちゃいけないという背景があるわけです。しかし、それも限界がある。そういう中で吸収源の話を共同実施とともに、あとは排煙権の取引という、アメリカはもともとそれに近いことはやっていますが出してきたわけです。  ですから、その話を我が国もしくはドイツ、EUですね、アメリカのを真に受けるということじゃないんですけれども、それをそのまま持ってきても、恐らく環境庁も研究は端緒についたばかりだということを含めて、その科学的な根拠に関しましても必ずしも明確ではないということを含めて、それを過大に評価することは私は非常に危険だと思っています。
  59. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 同じ質問を、森嶌参考人、お答えをいただけますでしょうか。
  60. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 私も自然科学者でないので吸収源のことについて専門的なお答えはできませんけれども、私も青山参考人が今おっしゃったのと同じでありまして、やはりこれが出てきた背景ということを考えますと、国際交渉でございますので、いろんなものが今後出てまいりますのでそれに対する対策は立てておかなければなりませんけれども、正面からそれで削減のための方策として考えることには懸念を持っております。
  61. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  佐和参考人にお伺いをいたします。  温暖化防止のために原子力発電が二十基も建設を予定されているという計画が発表されて、私自身も驚いているわけでございますけれども、国際的に見てもあるいは国内の世論調査を見ても、温暖化対策としての原発というのを掲げる割合というのは非常に少ないというふうに思うのですけれども、佐和参考人はこの原子力発電の建設と温暖化防止政策というものの関連性についてどのようにお考えでしょうか。
  62. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 実際、京都会議におきましても原子力発電のことは正式の議題には全く取り上げられなかったというふうに聞いております。したがって、少なくとも国際的には原子力発電の増設を温暖化対策一つに数えるというのは恐らく日本だけではないかというふうに思っております。  ただ、少なくとも政府の現在の見通しの中では、その計算の根拠というのは私もよくわかりませんが、原子力発電の二十基新設ということがもう必要不可欠、これなしにはというふうに言われておりますが、私はその点については、やはりもう少し政府も数字の根拠というのを、なぜ二十基なのか、なぜ十基ではだめなのか、その辺の数字の根拠が一向に明らかにされていませんので、ぜひ明らかにして国民的な議論を喚起していただきたいというふうに思っております。
  63. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  炭素税の導入について、佐和先生が御質問があればもう少し詳しくお話をしたいというふうにおっしゃっておりますが、詳しくお話をいただけますか。
  64. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 炭素税に関しましては、なかなか政府の中でも意思統一ができていないんじゃないかというふうに伺っておりますが、いずれにせよ、御承知のとおり、北欧三国、それからオランダ、デンマークでは一九九〇年から九一年にかけて既に導入済みなわけです。そして、我が国もこれから二〇一〇年に向けて何らかの対策を講じなければならないというときに、果たして炭素税以外に有効なといいますかかなり大がかりな、先ほど申し上げましたように、例えば低燃費車普及させるためにどうするかとか、そういう割と細々したことも必要です。しかし、もう少し大局的なといいますか、全体にかかわるような何か対策を打ち出すとすればそれ以外に対策は考えられないと思います。ですから、やがて二十一世紀に入って数年後には恐らくこの炭素税の導入ということが一つ政治的な課題として浮上してくるものであろうというふうに私は確信いたしております。  それから先ほど、細かいことは申し上げられませんが、例えば炭素税を導入すれば、反対する立場の方はその理由として一つ経済成長が低下すると、今のように経済成長率が非常に低いときには確かに説得力がある理由かもしれませんが、先ほどの陳述の中で申し上げましたとおり、そんなことは全く経済学のABCに反する議論であります。  それから、炭素税をかけるとすれば、法外なとてつもない、今第二消費税と言っても言い過ぎではないほどの、税収が十二兆円ぐらいになるようなそういう高率の税金をかけなくちゃいけない、だからだめであるという議論もありますが、それについても十分反論の余地はございます。  ですから、そういう意味で、先ほど申し上げましたとおり、炭素税をもし導入するとするならば、エネルギー消費型の輸出産業に対する何らかの配慮を払うということ、それが最も重要なことであって、そういったことも含めてぜひ御検討いただきたいというふうに思っております。
  65. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  温室効果ガス排出枠のマーケット、いわゆる大気を売買する市場というのができることに対して、四人の参考人にそれぞれのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  66. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 私は基本的には否定的でありますけれども、これも先ほどから出ておりますようにアメリカが持ち出してきておりまして、バスに乗りおくれると言ってはあれですけれども、ちゃんとそれに対する対応といいますか考え方はしっかりしておかないと、嫌だからというので何も勉強しておかないということになりますと、実際に動き出したときに日本は大きなダメージを受ける、その意味では私はぜひきちっと勉強をしておくべきだというふうに思っております。経済学者ではないものですから、単にそういうふうに考えております。
  67. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 排出権取引に関しましては、先ほど申し上げましたその議定書の中にあります補足的ということをどう解釈するかという問題、これをとりあえず解決する必要があると思います。そして、さらにその次に大きな問題となるのは、その取引を国同士に限るべきなのか、あるいは民間企業にも排出権をいわば国内で配布してそして民間企業取引に参加させるべきなのかというようなことで、ですからいろんなバージョンがあり得るわけです。どのバージョンが最も現実的なのか、あるいは実現可能性が高いのかということにつきましてはまだまだその議論の過程でありまして、当分なかなか結論は出てこないのではないか。  しかも、これは当たり前のことを言うようですが、実は排出権取引というのは、先ほども最初私が陳述の中で申し上げましたとおり、二〇〇八年から一二年の随分先の五年間の排出量に関する取引なわけです。したがって、実際の取引がそんなに早く始まるとも思えませんし、ですからそれを当てにして努力を怠ればとんでもないことになる、ただでさえ円の価値がどんどん下がるとすれば、ますますその排出権取引市場から排出権を買ってくる値段が高くつくということにもなろうかと思います。
  68. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 私は環境庁の仕事を大気保全局でしているときに、相当前ですけれども、アメリカの硫黄酸化物SO2の排煙権取引の仕事、調査をやりました。バブルポリシーとかオフセットポリシーという名のもとにアメリカでは今市場までできている。アメリカでそういうことが行われる、それなりに稼働するという、いろいろな制度的なものだけではなくて、背景があると思うんです。  我が国の場合、たしか大阪の多奈川火力という発電所、関電ですけれども、その中でそれに似たようなことをやろうとしたことを聞いていますが、先ほどの工場、事業所に対するCO2の割り当て、総量規制の話も似ているんですけれども、環境庁はこの分野を非常に過去ちゃんとかどうかわかりませんけれども調査しています。  ですから、そういう過去やってきたものをどうこれからのこういう問題についてアプライするかということをちゃんとやっておくべきで、急に言われてそれに拙速にアメリカがやっているからいいだろうということでやるような話では困ると思うんです。かつ、日本経済システムがアメリカと全然違う、うまくいくいかないは別にして、違うという現実から考えるべきだと思います。
  69. 増田善信

    参考人増田善信君) 排出権取引の問題は、やはり本来は地球全体の温暖化ガスを削減するというのが目的なんです。そういうところに、力がありながらそれを排出権取引でわざわざ減らすのを減らすといいますか、少なくするなどというようなことが起こる可能性だって十分あり得るわけです。そういう点でいうと、これはもう本当にまずい方式だというふうに思います。そういう意味では、実際にできるところがまだまだ技術を伸ばして、技術を使って排出量をふやしていく方向へ行くのにマイナスの効果を及ぼす可能性があると思います。  例えば、かつて日本はいわゆるオイルショックのときに大変エネルギーを少なくすることに成功したわけです。したがって、一トンの鉄鋼をつくるのに日本を一〇〇とするとアメリカは一一八という形になっているというふうに環境白書では言われているわけなんです。したがって、一八%も同じ鉄をつくるのにも余計なエネルギーを使っているということなんで、本来はそういうところが日本並みにやっていくというのが全体の温暖化ガスを減らしていく道なんです。そういうときにアメリカがやるのを極端に言うとサボって、そしてほかのところで賄うなどというのは、本当に地球の将来を考えるとまずいやり方だというふうに思っています。
  70. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 最後に、青山参考人に伺います。  世界銀行ではいわゆるクリーン開発メカニズムの前倒しの制度としてプロトタイプ炭素基金というのを始めたいと。これには日本の東京電力とか新日鉄なども参加をしたい意向があるように聞いておりますけれども、こうした構想に対してのお考えを一分で、二十分までですので済みません。
  71. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 今の手法といいますかプロジェクトを私詳細存じませんけれども、やはりアジア開発銀行とか世界銀行とか、今までそういう分野で知見のあるところに日本政府なり企業が参加するというのは悪いことじゃないと思うんですけれども、やはり我が国の過去のさまざまな経験といいますか情報を生かしていただきたい。というのは、環境庁の方はみんなそういうところに今でも行っています、世界銀行、アジア開発銀行。ですから、うまくその中に人材的にも入る中で、ただそちらがやるから日本企業が入るのじゃなくて、うまく有機的な連携をとる中で施策展開してもらいたいと思います。
  72. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  終わります。
  73. 泉信也

    ○泉信也君 自由党の泉信也でございます。  まず、佐和参考人にお尋ねをさせていただきます。  私どもは、環境問題に限らずと言った方が正確でありますけれども、どちらかといいますと規制でありますとか、そういう押し込む、禁止させるというような姿勢で臨もうとする嫌いがあると思っております。先生の御提言は必ずしもそうではなくて、市場を尊重する立場、先生のお言葉で申し上げますならば、経済的措置でこの目標達成も可能だというお考えだと承りました。  そこで、この部分について、具体的にここに挙げてございますドイツの例でもうちょっと御説明をいただければ幸いでございますが。
  74. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 泉先生がどうしても規制の方に走りがちであるとおっしゃったのは、やっぱりそれは日本人だからだと思います。  日本という国は、行政のあり方をごらんになってもおわかりいただけるように、とても規制の好きな国なわけです。結果として一万一千個の規制をつくったという大変な国なわけです。それで、余りにも規制が多過ぎるということで今現在規制緩和ということが盛んに言われるようになっている次第かと思います。  要するに私が申し上げたいのは、例えば二酸化炭素排出削減しなければならない、そのためには化石燃料消費を抑制しなければいけない。そうすると、化石燃料消費を抑制するようなインセンティブをこの国の経済社会の中に埋め込もうじゃないかということなんです。  例えば炭素税というのも、炭素税をかけることによって化石燃料の値段を上げて、そしてエネルギー、ガソリンとか電力の料金を高くすることによってその消費を抑制させようということです。そのときに、例えば先ほど燃費効率のいい車の方に税金を安くして、そして燃費効率の悪い車の税金を高くすればいいというようなことを申し上げましたけれども、規制する立場に立てば、例えば六千ccのベンツに乗ることは禁止するというのが規制ですね。そうじゃなくて、六千ccのベンツに乗りたい人はどうぞ乗ってください、そのかわり高い税金を払ってくださいよというのが少なくとも私ども経済学立場からの基本的な考え方なわけです。  それから、ドイツの例に関しましても、やはり太陽電池をつけることを強制する、これから新築家屋をつくる人には三百万円の余計な出費させて屋根に太陽電池を備えつけることを強制するなんて、そんなばかなことはすべきじゃない。そうじゃなくて、インセンティブをこしらえる必要がある。  そうしますと、仮にアーヘンのように十倍の値段で買うということになりますと、通常、屋根に三キロワットの太陽電池をつけますと、平均して三千二百キロワットアワーの発電ができるわけです。そうしますと、今一キロワットアワー二十五円ですから二百五十円で買ってくれるわけです。そうしますと、電力を売ることによって年間に八十万円手に入る。そうしますと、屋根につけるのが三百二十万円ぐらいかかるとすれば、四年で元を取れるということになります。四年で元を取った後は、もう一遍二十五円に戻しますということに当然なるわけです。  そういうことで、やっぱり皆が、個々の家計あるいは消費者が損得勘定をして、これは得するから、じゃ、例えばハイブリッドカーを買おうとか太陽電池を屋根につけようと、そういうふうな措置を講じることをぜひこの国でもやっていただきたいというふうに思います。
  75. 泉信也

    ○泉信也君 ハイブリッドカー等に対する税制等は現在政府でも若干なされておるわけでありますが、なかなか有効打になっていないというのが私は現実ではないかというふうに思っております。  そこで、先生のペーパーの中にモーダルシフトを促すという御提言もいただいております。これも政府挙げて取り組んでおられるわけですが、例えば荷主の立場でいけば、時間コストも考えて最も安いモードを選ぶ。それを、先ほどの先生のお話でありますと、例えば鉄道に移そう、あるいは海運に移そうという、もう一つ何かインセンティブを働かせるいい知恵はないんでしょうか。
  76. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 荷物あるいは人の輸送を自動車から鉄道にシフトさせるためにはどういうふうなインセンティブをこしらえればいいかというのは、これは私もなかなかいいアイデアはございません。  幸いなことに、東京ではたまたま首都高速道路を二車線しかつくらなかったことのおかげで大変な時間コストがかかる、あれで走ると。その結果、あれだけの満員電車で皆が通ってくれる。そういう選択を皆がするということは、これは大変にラッキーだったというふうに思っております。
  77. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。  次に、青山先生にお尋ねをさせていただきますが、先生のペーパーの中で、最後のところにございます「関連する組織づくりの課題」というところと、最後の「情報の公開、透明性」のところについて、あわせてお尋ねをさせていただきます。  私自身も、今回の法律の中で公益法人をつくるというようなことについてはどんな意味があるのかなということを前回の委員会で質問させていただいたわけです。  民間の方々がこの温暖化対策にかかわるとすれば、どういう形でかかわっていただくのが一番いいというようにお考えでございましょうか。今の法律ですと、どちらかといいますと、官と民と分ければ官側に立った、あるいは官側のお手伝いをするという形での民間側の参画ではないかと思いますが、先生のお考えを少しお聞かせいただきたいと思います。
  78. 青山貞一

    参考人青山貞一君) まさに私も同じような、官主導の、官の指導のもとに民が温暖化に対するさまざまな活動を行う、もしくは絶えず普及啓発の対象、指導の対象となるような形でのこういう施策展開というのは僕は間違いだと思います。  情報は早く出せばいいわけで、その後どう使うか。私も二十五年間シンクタンクで政策立案、環境庁、建設省もやってきましたけれども、やはり私たちが行った調査を環境庁はただ持っているんじゃなくて、早く世の中へ出す。情報公開法があれば表へ出てくると思うんです。NGOも皆さんも一歩家に帰れば一市民であり住民であり消費者であるわけです。  ですから、愚民政策とまでは言いませんけれども、何か、何とかセンターをつくる、いろいろなそういう外郭団体、公益法人をつくって、僕が非常にいら立ちを感じていますのは、今回の地球環境、特に温暖化問題に関連して環境庁がつくった外郭団体の数、公益法人なんてこれはもう大変な数であります。そこに行きますと、ほとんど二、三人しかいないところもいっぱいあるわけです。将来天下りを考えているのかどうかちょっとわかりませんけれども。  今回の話を見ますと民法云々と、公益法人法の話まで出てきていますから、既存のものを使うとは言っていますが、ひょっとするとまた、今二万幾つあります都道府県の公益法人をさらにふやす可能性もある。  そこで、さらに僕が気になったのは、推進員というのがあるわけです。これは、環境カウンセラー制度という実に変な、環境庁が資格みたいなものを審査して、一般民間人をその中から選んで一種の資格を与えて、その人たちにほかの人たちを指導させる、話しさせる。そういう時代じゃありませんね、今は。  ですから、泉先生がおっしゃられるように、僕はこの規定が定義と目的を除くと全体の半分あるということ、もともとはこういうことは環境庁は去年の段階では法案の骨子で全然考えていなかったものが出てきたところに非常につけ焼き刃であり、かつ、ここで怒ってもしようがないんですけれども、こういうものをここでどさくさ紛れに入れちゃったということに、少し悪く言うと気になるところがあります。  もう一点は、やはりやるべきは透明性の確保。情報を早く社会に対して提供するという役割があれば、何も高度情報化時代、インターネット時代、実は私が代表になってやっております、国会議員の方もいっぱい入っています、自民党から自由党の方まで入っていますし、NGOも大学の先生も新聞記者の方もみんな入っています。四百人ぐらいで毎日こういう議論をインターネット上でしています。そこに早く環境庁の方が一本人れてくれればすぐ済む話を、何で今の時代、いろいろな組織をつくる、指導員をつくるのだということは非常に、僕はこの法案を読んだときに気になりまして、武山先生にそのことを申し上げたら本会議でそれを批判的に話してくださいましたけれども、やはりそうだと思います。  ですから、こういう公益法人とか外郭団体をこの法律によって何かまたつくるような話をメーンにするんじゃなくて、それはあくまでも既存のものを使ってもらう。環境庁はもう既にいっぱいつくっているものに一つそれの役割を持たせればいい。環境情報普及センターだ国際環境協力センターだと、もううじゃうじゃあるわけです。ですから、そういうふうに思います。
  79. 泉信也

    ○泉信也君 森嶌先生、この審議会のお立場で、今回の法案の中、必ずしも中間答申と一致したことばかりではございませんけれども、今、私が青山先生にお尋ねしました民間側の活用については、先生のお立場ではどんなお考えをお持ちでございましょうか。
  80. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) 私は、先ほどから申しておりますように、民間が対象ではなくて、まさに国民が参加をしてこなければ温暖化防止というのは成功しないわけです。さらに行政も、国民の皆さんがきちっと監視をしなければ行政は動かないとは申しませんけれども、動きにくいわけでありますので、私は、この問題に限らず、中央環境審議会はほかの審議会が公開される前から公開をしておりますし、資料も全部出しております。  ただ、先ほど青山さんが資料を出せばとおっしゃいましたけれども、必ずしもすべての国民が常に関心を持っていてくださるわけではないので、その意味では、パンフレットをつくったり、何かそういうこともしないといけないと思っています。  ただ、推進員とか何とかセンターというのが果たしてそれに十分かどうかまでは私は評価できませんけれども、青山参考人のような非常にきっちりとしたNGOもいれば、何だか知らないけれどもあと百年もたたなきゃ出てこないのに何で私がやることがあるんだという、そういう人たちもいます。それから、実際に調査をしますと、温暖化防止のためにやりたいとは思うけれども面倒くさいという人もたくさんいるわけでありまして、その点で私は、国民に参加をしていただくというのは当然のことでありますけれども、その参加をしていただくための仕組みというのはやっぱりつくらざるを得ないだろうと。それを官主導と言うかどうかというのは、これは見方の問題だと思いますけれども。
  81. 泉信也

    ○泉信也君 増田参考人にお尋ねをさせていただきますが、気象庁のOBというお立場でお尋ねをさせていただきます。  先日は気象庁長官においでをいただいて、気象庁がこの温暖化対策に取り組むためにいろんなことをやっていただかなきゃならないというふうなことでお尋ねをさせていただきました。OBのお立場で、今の気象庁がこの温暖化対策でまず第一にやらなきゃならない、そんなことはどんなことでございましょうか。
  82. 増田善信

    参考人増田善信君) まず、この法案にもありますように 「国は、大気中における温室効果ガスの濃度変化の状況並びにこれに関連する気候の変動及び生態系の状況を把握するための観測及び監視を行う」という、ここが大変重要な点だというふうに思います。  と申しますのは、こういう温暖化の問題も、過去百年以上のデータが基礎になって初めて最近本当に異常な現象が起こっているということが明らかになっているわけです。そういう点では、一回の観測をしただけでこれが異常か正常かということはわからないというのが地球物理現象の一つの特徴なんですね。それからまた、一点だけで観測してもこれが異常か正常かわからない。というのは、ある意味じゃあるスケールを持った周りと比較をして初めてそれが異常か正常かというのがわかるわけです。そういう点でいうと、長期的に観測が継続されるということが非常に重要な点だと思います。  そういう意味では、私ももう気象庁を退職して十五年になりますけれども、せっかく今まであったその観測地が、例えば測候所の夜間閉鎖だとかあるいは廃止などということでなくなってしまうというか、使えなくなってしまうというのは大変問題があると思うんです。特に温暖化問題と関連いたしますと、例えば初霜だとか初氷などというのは、本当に長期に観測をしておいて初めて最近その現象がほとんど起こらなくなってきているとかそういうようなことがわかるわけでございますけれども、夜間閉鎖などをやっている測候所だともう初霜だとか初氷などというのは観測できなくなってまいります。そういう意味では、本当に十分な体制をとっていただきたいというふうに思っているところです。  特に、ちょっと時間が超過して申しわけないんですけれども、それだけじゃない、過去の資料だけじゃなくして、これからは温暖化問題では例えば土壌水分などというようなものも大変重要になってくるわけで、そういうような点では、さらに新しい部門で気象庁が温暖化問題で観測を開始するというか、そういうここで言われている観測及び監視というところをもっと強めていただきたいというふうに思っています。
  83. 泉信也

    ○泉信也君 どうもありがとうございました。  以上です。
  84. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 四人の先生方、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。二院クラブの島袋宗康でございます。  まず最初に、環境庁長官はこの問の委員会において、地球温暖化問題への取り組み等の諸課題を克服するには、対症療法だけでは不十分であり、環境への負荷の少ない環境保全型社会に転換することが不可欠であると所信を述べておられます。私は、そのことが非常に大事であるというふうに同感をいたしております。  そこで、国民や社会の諸組織がそのような意義を持って行動していくためにはどのようなことを国家としてリードしていくべきか、その辺について四名の参考人方々にそれぞれ御意見を承りたいと思います。
  85. 森嶌昭夫

    参考人森嶌昭夫君) お答えをいたしますと申し上げますけれども、実はぎちっとしたお答えがあるわけではないんですが、私は、これまで二十世紀を通じて、特に日本の場合には戦後の経済成長の中で培われてきた産業構造があり、そしてそれを前提としたメンタリティー、産業界のメンタリティー、それから役所のメンタリティー、それから我々のような学者のメンタリティーというのもありますけれども、やはり地球環境問題というのは、こうしたメンタリティー、それから社会的な構造を、百八十度と言うのかどうかわかりませんけれども、大きく変えなければならないと思うんです。  その仕掛けというのは、この地球の温暖化防止というのもその仕掛けのうちの一つにはなると思いますけれども、それだけではとても間に合うものではありません。やはり技術者が技術的な開発をしながら温暖化環境負荷の少ない技術を開発していくということも必要でありますけれども、そうするためには開発した技術が使われるような仕組みでなければなりません。そういたしますと、その使われるためにはそのような市場がなければならない、それからまた、そのためにはそういうものを買う人がいなければならないということで、先ほど佐和参考人もおっしゃいましたけれども、やはり経済的なインセンティブを使うにしても一つだけではとてもできないわけで、私は、環境負荷の少ない社会をつくっていくということが少なくともここ十年、二十年のうちに転換をしていかなければもう間に合わないという感じは持っておりますけれども、そのためにはいろんな形の仕掛けをつくって、それを実行に移していかなければならないと思います。  やはり百年から五十年、少なくとも日本の場合、五十年かけてできてきたものを変えるためには、私は、法律ですので、エボリューションでなくてレボリューションで考えておりますけれども、それにしてもかなり劇的に変えて改革をしていかなければならないというふうに思っております。
  86. 佐和隆光

    参考人佐和隆光君) 三点ほど申し上げたいと思うんですが、一つは、先ほど来繰り返し申し上げていますように、そういったライフスタイルを人々が志向するような経済的なインセンティブを与えるということが一つ。  それから二つ目は、ライフスタイルの転換ということを考えてみますと、少なくとも私なんかが若かったころといいますか、恐らく一九七〇年代ごろまではこの国では質素倹約とか質実剛健というのが格好よくて、ぜいたくは格好悪かったんです。ところが、八〇年代後半のいわゆるバブル経済の時期にぜいたくは格好よくなったんです。結局、そのことが何を意味するかといいますと、ライフスタイルの美意識みたいなものがあるんです。みんな何が格好いいか、格好よく振る舞おうとしているわけです。そういう意味で、ライフスタイルの美意識をもう一遍二十年ぐらい前までに戻すだけでも随分と話が違ってくるというふうに思います。  それから三つ目は、ポール・ケネディという名前を皆様方御存じかと思うんですが、七、八年前でしょうか、「大国の興亡」という本を書いて大変話題になった歴史家なんですけれども、その人が別の本の中で、先ほど申し上げました北欧三国とデンマーク、オランダというこの五つの国は大変環境の意識が高い、この五つの国に共通して言えることは何なのかと問うた上で、その答えは、環境に配慮するに足るだけ十分豊かであること、二つ目が教育水準が高いことということを言っているんです。そして、確かにこの五つの国は一人当たりGDPは二万五千ドルを超えていますし、大学進学率も三七、八%というレベルです。  ところが、翻って日本について考えてみると、一人当たりGDPはほとんど四万ドル、大学進学率は四七%を超えました。にもかかわらず、それほどそういった循環型のライフスタイルを志向しないのか、環境に対して不熱心なのかというと、答えは明らかだと思うんです。つまり、本当は豊かじゃない、本当は教育水準が高くないということだと思うんです。  そういう意味で、やはりこの国を本当に豊かにし、そして教育水準といいますか知的レベルを高めることがぜひとも必要だと思います。
  87. 青山貞一

    参考人青山貞一君) 私は、大学を出てから九年ほどローマ・クラブの日本事務局にいまして、「成長の限界」という報告書が出た直後に東京で数十カ国を集めて、まさに今のような状況が来るぞということを、当時オオカミ少年とか言われましたが、そこの事務局にいた人間です。  ですから、ローマ・クラブにいた人間として、先生のおっしゃること一環境庁長官の言われた予防原則、未然防止、そういうことは非常によくわかります。ただ、言っているだけではどうにもならないということがありまして、今、日本で何が欠けているかということが一つ問題になると思うんです。  きょうも、これから四時から能勢のダイオキシンの参議院のヒアリングに私も呼ばれて、今度ダイオキシンの話になるわけでありますが、まさに大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会をここまで続けてきちゃった。二十年前にダイオキシンがごみを燃やすと出るということがわかりながら、昨年やっと大気系の規制だけ法律ができた。そういう国からしても、未然防止だと長官が言うのはいいんですけれども、行政、立法を第三者的に外からちゃんと促す力がなければいけない。それはNGO。  先ほど森嶌先生から何か随分いろいろなNGOがいると、確かにいるでしょう。それは何もNGOにいるだけじゃなくて、皆さんも同じでしょうし、国会議員も役人も同じだと思います。おかしな人もいればまともな人もいるわけです。  ですから、例えばアメリカとかヨーロッパですと、GOとPOともう一つNGO、大きな輪つかが三つあるうちの一つの勢力になっている。しかし、残念ながら、NPO法案が不備ながらできたのも最近ですし、NGO、NPOは財政的にも非常に難しい、弱い。それを大きくしないと、結局Gばかり大きくなったり、Gの中でいつも外から見えない、トランスペアレンシーのない中でけんかばかりしている、もしくは縄張り争いばかりしているということからしますと、私は、きょうここに呼んでいただいたことを冒頭感謝申し上げましたけれども、やはりNGOといいますか、広い意味での企業、行政以外のもう一つの極といいますか、それを大きくすることが地球環境問題を解決していく上で非常に重要だと。  今、首都圏を中心に六つの大学の非常勤講師をやらされています。みんな先生が私を呼ぶというのは、何でもはっきり言うから呼ぶんだと思うんですが、学生にそういうことを言っていきますと、今までと違った目の輝きをしています。ですから、教育というとおこがましいんですけれども、私の話を聞いて、大企業へ行こうと思ったけれどもNGOに勤めたい、青山先生のところはどうですかと。私のところはちょっと無理なんですが。  これからはそういうところにも大いに雇用機会をつくっていくような世の中、私と同じように地方議会やいろいろなところで発言することによって、こちらにいらっしゃる学者の先生とはまた一味違ったことを皆さんに申し上げられる、それがない限り日本は恐らく救われない。  もう一つは、やはり情報公開であると思います。アメリカに三十年おくれてまだ情報公開法ができない。アメリカでは電子情報自由法、インターネット時代における情報公開が一昨年できましたけれども、それがないからいろいろな問題が起こっているし、外から参加も監視もできないという現実があります。ですから、またお願いでありますが、ぜひ情報公開法を早く修正して通していただきたいと思います。  以上であります。
  88. 増田善信

    参考人増田善信君) 地球環境問題というのは自然現象じゃないんです、自然災害とは違う。といいますのは、やはり発生源が人間がつくり出したものであるということがはっきりしていると思うんです。そういう点でいうと、やはり人間のつくり出したものを人間が抑えられないはずはないという立場を明確にしていくことが非常に大事じゃないかというふうに思うんです。そういう点で、国際条約として今まで例えば規制の問題でいえばモントリオール議定書というのがつくられているわけです。それほど強力な国際条約が既にできている部分もあるわけです。  というのは、やはりオゾン層の破壊の問題というのが大変大きな危機感を与えた結果そういうふうになったわけですから、今の地球温暖化の問題もそういう立場で、本当にこれからの二十一世紀が大変な時代になるということを明らかにしていくことがまず第一に、いわゆる温暖化防止協定のようなものが国際的につくられる、日本のこういう例だけじゃなくて、この前のCOP3で出されましたようなあいまいな形じゃなくて、できればモントリオール議定書のような条約ができるのが最も望ましいというふうにまず第一に思います。  それからもう一つは、新しいものをつくると必ずその影響が出る可能性があります。例えば、オゾン層の破壊のためにフロンをやめたら代替フロンが温暖化の方に大変悪い影響を与えたというふうになりますように、先ほどもお話がありましたけれども、そういう点では前もってアセスメントをきちっとやるということ、規制をきちっとやるということとアセスメントを完全にやるというこの二つが実行されるならば、必ず地球環境の破壊は防ぐことができる、こういう立場をもっと大きくしていただくことが私は本当の意味の地球を救うことになるのではないか国会でもそういう方向をとっていただければというふうに思っています。  以上です。
  89. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 最後に、増田先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、ことしの台風の進路というのが、南西諸島、私は沖縄出身でありますから、今までは沖縄からまず北上するというふうなことでありましたけれども、ことしに限って非常に顕著に南西諸島に全く来ない。最近また二つ、三つ来ておりますけれども、ほとんど本土に直接進路をとっているというふうな状況からすると、この法律と非常に関連するような気もするんですけれども、気象庁OBとしてもしその辺の御見解がありましたらお伺いしたいと思います。
  90. 増田善信

    参考人増田善信君) 最近の異常気象が直接的に温暖化の問題と関係があるかどうかという点では大変難しい問題だと思うんです。ただし、私の最初の発言でも申し上げましたように、温暖化というのは、地面から出る赤外線が二酸化炭素に吸収されますので、地面付近は暖まるんですけれども、成層圏は逆に温度が下がるわけなんです。したがって、温度が下がるということは、大気が不安定になるという言葉を私たちは使うんですが、皆さんもよく、寒気が来ますと天気が悪くなりますとか大雨が降りますというふうに、上層に冷たい空気が参りますと天気が悪くなる。したがって、温暖化をするということは、台風だとかあるいは雷だとか、そういう非常に激しい大気現象が起こる可能性があるわけです。  それから同時に、温暖化は地球全体で一様に起こるんじゃなくて、北の方ほど温暖化が一般には激しいわけです。というのは、雪が解けるとその分だけ地面が出てきて太陽の光線を余計受けるということで、いわゆる正のフィードバックと申しますが、そういう形で北の方ほど温暖化が激しいんです。そうしますと、南北の温度傾度が、温度の傾きというか温度差が小さくなるんです。そういう点で今度は大気のジェット気流が弱くなる可能性というのが出てまいります。今の異常気象との関係はそういう形で出てきているのではないかというふうに思います。  ただ、直接的に現在の台風の進路がこの温暖化のせいであるかどうかという点については、十分な資料を持っておりませんし、答えを持っておりません。
  91. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席を賜り、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼申し上げます。  次回は来る九月二十四日午前十時に開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時五十二分散会      —————・—————