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国務大臣(
与謝野馨君) 自由党は、またその前身の新進党は、
平成八年の衆議院選挙のときから大幅減税を主張されていたということは私
どもよく承知をしております。私
どもはやや大きいなと素直に思ったことも事実でございます。
そこで、財政というのは一体どういうふうに運営していくのかといえば、オーソドックスには、やはり入るをはかって出るを制すというのは、私は今も財政の基本であろうということには変わりはありません。また、その歳入あるいは将来の歳入の見通しに基づいて、建設国債なり赤字国債をどの
程度発行しても無理なく元利が払えるかということも財政の運営をやっていく上には大切なことだろうと思っております。したがいまして、財政の節度というのは、どの時代であってもやはり国会も国民も皆考えなければならない大事な物の考え方であるというふうに私は思っております。
そこで、昨年の財政構造改革法と不況との関係でございますけれ
ども、実は私は財政構造改革法に深く携わっておりました。そのときの前提というのは、日本の
経済もやや持ち直してきて、大体二%前後の成長というものは将来
期待できるのではないかということを実は前提にあの財政構造改革法をつくりました。しかし、財政構造改革の内容について、あの当時は自民、社民、さきがけ三党が連立を組んでおりましたが、その三党間で考え方がまとまりましたのは六月でございました。これを
法律にするということが三党の意思でございまして、これを秋の
臨時国会に
法律という形で出したわけでございます。
そのころからそろそろ
景気が怪しくなったということでございます。これは実は後講釈でございまして、その当時、我々が気がついていたかといえば、気がついていなかったというのが正直なところでございます。国際的には、米国の
経済は好調でしたが、昨年の春からタイのバーツの通貨危機から始まりました
アジア全体の通貨危機の広がり、あるいは消費税が三%から五%になりました後の、その前の購入意欲よりは、消費税が導入された後はその反動として大幅に下がったとか、いろいろな事情が重なってまいりました。
私はまだこれははっきり検証をしておりませんけれ
ども、十月、十一月にかけまして起きましたある種の危機的な信用収縮、これは一つはBIS規制に何とか適合しようとして
金融機関が資産を圧縮し始めた。あるいは取り戻せるところからは取り戻すというふうに貸し出しをどんどん減らすような努力をした。
そういうことがあったときに、やはり国民心理に致命的な打撃を与えたのは、三洋証券の
破綻、山一証券の
破綻、北海道拓殖銀行の
破綻、こういうものが致命的な心理的な影響を与えたと私は思っております。統計を見ますと、国民の消費性向ががくっと下がりましたのは、山一のような大きな会社でも倒れるのかと、北海道のいわば国営銀行的な北海道拓殖銀行が倒れるのかということを目の当たりにしたときの国民の消費に対する冷めた目あるいは用心深さ、こういうものが重なって今の不況の
原因になったと私は思っております。
しかし、もう一つ考えなければならないのは、日本の
産業というのはそういう循環的な不況あるいは心理的な不況ばかりでなく、日本
経済そのものに潜む構造的な要因があって、日本の
産業がよって立つ国内のいろいろな指数を見てみますと、土地に関する税金は高い、労賃は高い、倉敷料は高い、運賃は高いという高コスト構造がやはり日本の
産業の競争力を奪っているという点では、そういう競争力の減退ということによる不況、現在の
状況ということもあわせて私は考えていく必要があるのではないか。
ただ、今の不況の
原因を一つの
原因に求めるということは多分無理だろうと思っていまして、外国との関係、日本の
産業構造のあり方あるいは信用収縮、もろもろのことがやはり重なって現在の不況に私はなっているんではないか。
そういうことを考えますと、我々が当初考えておりました成長率二%ぐらいを当てにした財政構造改革法というのは、現在のような危機的な
状況では成り立たないということはもはや明白なことだろうというのが私の今の心境でございます。