○佐藤道夫君 この問題はこれぐらいにいたしますけれ
ども、もし機会がありましたら
法律の
専門家の意見でも徴してみていただければありがたいと思います。
政府、特にそのトップである総理大臣はそんなに軽いものではない。あっちに首出し、こっちに首出し、こうやれああやれと、
法律の根拠もなしにそういうことができるのかできないのか。恐らく
行政法の
先生などに伺えば、それはということで私以上に明快な回答が得られるかと思います。
いずれにいたしましても、この
議論はこれで打ちどめにいたしまして、次は
株式の評価の問題であります。
今回の三党案につきましては、これは触れられていない。報道によりますれば、低価法か原価法かのいずれによってもいいということのようであります。それから、民主党案ははっきりと低価法ということを
法律で打ち出しておるようであります。
この
株式の評価というのは、実は商事
関係の基本である商法に規定があることはもちろん御承知と思います。商法の二百八十五の六でありましょうか、規定があるわけであって、
株式の評価はどうするか。これは、財産の評価は本来時価でいくべきなんですね。時価で幾らかということでこの会社の財産はと、こう打ち出すのが当然なわけですけれ
ども、
株式につきましては時価ではなくて原価だということを商法がうたっています、原価主義と。
これはなぜか。簡単に言いますれば、仮に千円で株を買います。しかし、株ですからいつも動いているわけで、百十円になったり九百九十円になったりする。ですから、大体のところは、財産としての株の価値は取得価格で表示しておけばわかるでしょう、そんなに大幅な変動もないでしょうと、こういう前提があるわけで、常識的な規定だと思います。
しかし、非常にまじめな
企業家が、やっぱり客観的にきちっと表示したいと言えば、これは時価で表示してもよろしいというふうに商法はしておるわけでありまして、これはいずれも平穏な
時代の、
経済情勢が落ちついている場合の株価の変動、これもさざ波程度の変動だろうと思います、それを前提にした規定であります。
これはこれでよくわかるんですけれ
ども、
バブルになりまして、
バブルは
一つの例でありますけれ
ども、
バブルがはじけまして株価が大幅に暴落する、こういう場合にどうするか。例えば、五千円で買った株がはじけた結果、一割の五百円も割って五十円も割ってほとんど無価値同様になっている、こういう場合にどうするか。
こういう問題もきちっと商法は対応しておりまして、御案内と思いますけれ
ども、暴落してそれがある期間内にもとに戻らない場合には時価によるべしと。要するに客観的に正しい価格でやれということですね。これはまただれが
考えても同じこと、常識的なことなのでありまして、暴落した場合に
バブル期の購入価格を有価証券報告書に掲げる、これはもうインチキ以外の何物でもありませんから、現在の価格を書きなさいというのが商法の
考え方です。
会計準則にいたしましても、それから
大蔵省の通達にいたしましてもすべて商法に基盤を置いて出されているわけであって、商法を無視するような、反するような会計準則とか
大蔵省の通達とかあればそれは完全に間違っておるわけですから、基盤はあくまでも商法による、これは当たり前のことだろうと思います。
ところで、今問題になっているのは、
銀行協会がこの前、自民党の池田政調会長に陳情をしたということが
新聞に出ておりました。要すれば、原価は取得価格で表示させてくれということを陳情した。こんなことは陳情で決まるんじゃなくて、もともと商法の解釈で決まる問題であります。当然なことだと言ってもいいわけであります。一体何だろうか、この
一連の話はと私は思うわけであります。
一番問題は、長銀の株、これは
バブル期に二千七百四十円していたんです。今はたったの十円。この長銀株というのは
金融機関が、
銀行がほぼ四割以上、五割近くを所持しておるわけです。それから、今あれこれと問題になっておるさくら
銀行、
バブル期には二千六百八十円、現在は二百三十四円、かわいそうなことであります。富士
銀行、三千六百六十円、三百四十一円。大和
銀行、この三行が今あれこれと言われておるわけですけれ
ども、千七百円のものが百五十三円、要するに
バブル期でこんなに高かったものがこうなっている。
そして、ここから先が大変大事な問題なんですけれ
ども、
銀行同士がお互いに株を持ち合っているわけです。長銀の株は、先ほど言いましたけれ
ども五割近くをほかの
銀行が持っている。そこで、これを有価証券報告書に書く場合に、
銀行とすれば高い価格、
バブル期で取得した価格で書きたい、そう思うのも当然でありますけれ
ども、これは率直に言えばインチキなんですね。そんなことは許しがたいことなんで、やっぱり有価証券にはきちっと現在の価格、商法に従って表示すべきではないのか、こう思うわけであります。
バブル期の価格を、どっちでもいいんだと自民党が言うからそうやろうと言えば、これは明らかに有価証券虚偽記載罪が成立いたしまして、自民党の池田政調会長はその教唆犯ということにもなりかねないわけであります。
それから、虚偽の記載をして目当すれば、これはタコ配当ということでまた商法違反の罰則がかかってくるわけなのでありまして、どうも余りにも便宜的過ぎるんじゃないか。
銀行も困っているから高い価格で表示していいんだというふうなことをそう簡単に私は言ってもらいたくない。そういうことは商法を改正してから、商法というのは基本六法の
一つですから、
議論すべきことではないのか、こう思います。
この問題は、一体だれにぶつけて回答をもらえばよろしいのかよくわかりませんので、とりあえず
金融監督庁に、今のようなケース、
バブル期に長銀の株が二千数百円していた、それが現在もう十円にもならない、これを二千数百円と記載すれば有価証券虚偽報告罪になるのかならないのか、それに従って配当すればこれはまたタコ配当になるのかならないのか、その辺をちょっとお答え願えればと思います。