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1998-10-08 第143回国会 参議院 金融問題及び経済活性化に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十月八日(木曜日)    午前十一時開会     ―――――――――――――    委員異動  十月七日     辞任        補欠選任      入澤  肇君    月原 茂皓君  十月八日     辞任         補欠選任      高嶋 良充君     内藤 正光君      畑野 君枝君     岩佐 恵美君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 石川  弘君                 岩井 國臣君                 岡  利定君                 塩崎 恭久君                 江田 五月君                 齋藤  勁君                 森本 晃司君                 笠井  亮君                 山本 正和君     委 員                 岩城 光英君                 加納 時男君                 景山俊太郎君                 金田 勝年君                 木村  仁君                 佐々木知子君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 三浦 一水君                 溝手 顕正君                 山本 一太君                 浅尾慶一郎君                 小川 敏夫君                 木俣 佳丈君                 小宮山洋子君                 内藤 正光君                 直嶋 正行君                 峰崎 直樹君                 簗瀬  進君                 海野 義孝君                 浜田卓二郎君                 益田 洋介君                 岩佐 恵美君                 緒方 靖夫君                 小池  晃君                 畑野 君枝君                 大渕 絹子君                 三重野栄子君                 月原 茂皓君                 渡辺 秀央君                 佐藤 道夫君                 水野 誠一君                 菅川 健二君        発  議  者  笠井  亮君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        株式会社住宅金        融債権管理機構  中坊 公平君        代表取締役社長        慶應義塾大学総        合政策学部教授  竹中 平蔵君        ケービーエム        ジーフィナン        シャル・サービ        スコンサル        ティング株式会        社理事長     西崎 哲郎君        全国銀行協会連        合会会長     岸   曉君        東京大学教授   神田 秀樹君        21世紀政策研究        所理事長     田中 直毅君      ―――――・―――――   本日の会議に付した案件債権管理回収業に関する特別措置法案衆議院  提出) ○金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案衆議院提出) ○競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案衆議院提出) ○特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案衆議院提出) ○金融機能再生のための緊急措置に関する法律  案(衆議院提出) ○金融再生委員会設置法案衆議院提出) ○預金保険法の一部を改正する法律案衆議院提  出) ○金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律の  整備に関する法律案衆議院提出) ○金融機能正常化に関する特別措置法案筆坂  秀世君外一名発議) ○預金保険法の一部を改正する法律案筆坂秀世  君外一名発議) ○金融監督委員会設置法案筆坂秀世君外一名発  議) ○金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律を廃止する法律案筆坂秀世君外一名発議)     ―――――――――――――
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、高嶋良充君が委員辞任され、その補欠として内藤正光君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 債権管理回収業に関する特別措置法案金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案金融機能再生のための緊急措置に関する法律案金融再生委員会設置法案預金保険法の一部を改正する法律案及び金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案、いずれも衆議院提出金融機能正常化に関する特別措置法案預金保険法の一部を改正する法律案金融監督委員会設置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律を廃止する法律案、いずれも筆坂秀世君外一名発議、以上十二案を一括して議題とします。  本日は、お手元の名簿の参考人方々から御意見を伺います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  本委員会は、現在、我が国経済に喫緊の課題である金融再生に関連する債権管理回収業に関する特別措置法案外十一案の審査を行っておりますが、本日は皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後二時間三十分にわたり委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、中坊公平参考人にお願いいたします。
  4. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 中坊でございます。  このたび、この議案を審議されるに当たりまして、債権回収現場で働いております私に対し意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを本当に心からうれしく、感謝いたしております。  債権回収現場で働いておるという立場から、三点ほどにわたりまして基本的な問題について考えていることについて申し述べたいと思います。  まず最初は、それでは不良債権回収ということは社会経済においてどのような位置づけを持っておるのかということであります。すなわち、今金融不安、信用収縮等のいろんな社会現象が起きておりまして、そのまず最初不良債権回収問題が一番の問題だと。なぜそこまで言われるのであろうかという問題であります。  私は、このことは例えて申し上げますならば、人間の体の血管流れの中にお金であるとか物が流れております。そして不良債権発生というのはそれがとまっておること、すなわち血の流れの中に血栓が生じたことではなかろうかと思うのであります。血栓が生じますと、当然のようにそこから先へは血が行かなくなってまいります。それが心臓であれば心筋梗塞にもなり脳梗塞にもなり、そこから先が壊死していく。このような血の塊が血管の中に生じた状態不良債権発生の問題ではなかろうか。  そういたしますと、不良債権回収ということは、構造的に考えますならばその血栓を取り除く作業である。すなわち、債権回収するということは担保物件が動く、不動産が動くということであります。同時に、そのところから当社のように担保権を有しておるもののお金が返済を受けまして金が流れるということであります。すなわち、回収ということは物が動き金が動くことになる。だからこそ、今この滞った状態の中にあってそれを急速に取り除くのが我々の作業ではなかろうかと思うのであります。  そういう意味におきましては、まさに現在の金融不安の中において、不良債権回収ということは基本的に極めて強力にまたスピーディーに行われなければならないものではないか、このように思うわけであります。  次に、二つ目には、それでは債権回収ということの本質であります。  不良債権回収というふうに申しますと、これは一般の物を売り買いする営業行為ではありません。すなわち、一方においては債権を払うのは嫌や、必ずこう言わはるわけでありまして、こっちは払えと言うわけでありまして、もう双方からそこに紛争争いが生じております。双方の強い要求が相重なっておるわけであります。その現場は、おわかりになりますように極めてきつい、汚い、そして危険だと、この三Kが伴う現場であります。  そして、そのような紛争を解決するためには、国家の建前といたしましては、これは司法をもって裁きなさいということになっておると思っております。  それでは、なぜ司法の役割にしておるのかという問題であります。  このことは、やはり司法というものは争い基準というものを法律をもって明確に定め、そしてそれを公開の、透明の中で行うということであります。すなわち、我々といたしましては、債権回収に当たりまして、その目的を達成するだけではなしに、その目的を達成する手法が重要である、その手法はまさに公正と透明で行われなければならない、申し上げているのはこのことであります。  そして、その公正というものを、公正というと非常に皆お互いにわかりにくい。だから、私はそれを三つだと申し上げてまいりました。その一つはやみの勢力とは手を結ばない、二つ目には血も涙もない回収はしない、三つ目には物事のけじめをつけます、この三つのことをもって私は公正だと申し上げてまいりました。  このようにいたしまして、実は不良債権回収というものは基本的に極めて司法の理念に基づいたクリーンなもので行われなければならない、強力かつスピーディーに、そしてクリーン不良債権回収は行われなければならない、このように思うわけであります。  最後に、三つ目であります。  先ほど言いました、いわゆる血も涙もない回収ということが、現在、当社債務者は全部で約十七万人、そのうち約十四万人が住宅ローン、三万人が事業者ローンの方でありますけれども、それぞれ住専という問題からおわかりいただきますように特化されております。債務者の方は、ある意味においてバブル被害者のような人たち一般の庶民であり、事業者ローンの方はどちらかといえばバブルで金もうけをしようとされた方々であります。そういう意味では特別になっておりますが、今回、私たち会社整理回収銀行一つになって、すべての金融機関に関連するものからとなってまいりますと、その対象が大変広くなってまいります。私のところにおきましても、現に事業者ローン一つにいたしましても、その一つ債務者がそれでは回収を急ぐ余りつぶれたらどうなるのか、そこの地域経済との関係ということは当然考えなければなりません。また、債権者間におけるものもまた問題になってまいります。  そのようにいたしまして、私はむしろ、今回、整理回収機構と大きなものになりますれば、血も涙もない回収はしないというやや消極的なことから、もっと積極的に血も涙もある回収ということに向けていかなければならないのではなかろうか。そして、一つ一つが個別的な案件でございまして、どれほどか一件一件を個別的に手づくりをもってきめ細かく、そして全体を洞察する力を持って回収していかなければならない。  私自身は、不良債権回収という問題は、先ほどからるる申し上げておりますように、極めて強力に、スピーディーに、クリーンに、そしてきめ細かく手づくりをもって、深い洞察力を持ってやる必要があろうか、このように考えておりまして、今後もこのようなつもりでやっていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  どうもありがとうございます。(拍手
  5. 坂野重信

    委員長坂野重信君) どうもありがとうございました。  次に、竹中平蔵参考人にお願いいたします。
  6. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 竹中平蔵でございます。このような機会を与えていただきまして、まず皆様方御礼を申し上げたいというふうに思います。  私はマクロ経済政策の勉強をしている人間でありますので、少しマクロの観点から今の金融経済全体についての意見陳述をさせていただきます。  実は、たまたま、十日ほど前ですけれども、ワシントン、ニューヨーク、ボストンを回りまして、また向こうエコノミストたち議論してくる機会がありました。ブルッキングス研究所とかハーバード大学とかジャパン・ソサエティでの講演をさせられたのですけれども、そのたびに実は日本コンフィデンスクライシスという言葉が今や一つのキーワードになっているということを実感します。コンフィデンスというのは信用、信任でありますから、信用危機だと。  実は、この問題の基本的な考え方ですけれども、日本株価がそのときどんどん下がって日本の株が売られている。向こうのディーラーの方たちなんかにも、アメリカ機関投資家日本の株を今どんどん売っているのかというふうに聞きましたところ、とんでもないという答えが返ってまいりました。そんなことはあり得ない、なぜならば、既にことしのかなり早い時点からまともなアメリカ機関投資家日本銀行の株を持っているところなど一つもないはずだ。それだけ実は日本銀行というのがアンダーウエート、極めて低く厳しく評価されているということの裏返しであったわけであります。  この不良債権処理等々について、この委員会で極めて真剣な議論がなされていたということは私も存じ上げております。この今のコンフィデンスクライシスを考えるに当たって、私はかねてから二つの基本的な視点があるというふうに思っておりました。  まず第一は、今の問題を引き起こしたのは言うまでもなくバブル経済バブル発生とその崩壊であったわけですけれども、重要な点は、バブル経済バブルというのは決して天から降ってきたものではないということであります。バブル経済を起こすにはそれを起こすなりの理由があった。  極めて短絡的に大まかに申し上げるならば、健全で競争的な金融市場を持っていた国ではバブルは起きていないということです。起きていたとしてもそれは極めて小さな規模であって、日本のようなことにはなっていない。したがって、やはり我々の目的は、不良債権を償却するというのは大事でありますけれども、それは単なるプロセスであって、あくまでも健全で競争的な金融市場をつくるんだ、それが結局は国民経済国民のためになるんだ。それがまず基本的に極めて重要な第一の視点であるというふうに思います。  第二の視点として、同時に、現状をどのように判断するかという現状認識の問題があろうかと思います。  これは例えば、最近の比較的アメリカなんかでもマーケットで信用されているある外資系証券会社試算でありますけれども、適切な貸し倒れ引き当てを見込んでいくとするならば、恐らく日本銀行部門全体が実質的な意味で今や債務超過であるというふうに考えておいた方がいいというふうに思います。この計算の根拠を私もつぶさにいろいろ検討させていただきましたけれども、この試算結果というのはかなり私は信用に値すると思います。  基本的な問題は、銀行がどのぐらいの不良債権を持っているかというのはだれにもわからない。恐らく金融監督庁自身にも現状ではわからないということが最大の問題であるわけですけれども、それでも現実問題として何らかの判断をしなければいけないというふうに考えるならば、私は、残念だけれども今、日本銀行部門全体で債務超過状態にあるというふうな判断をせざるを得ないのではないかと思います。  これはどういうことかというと、我々の社会にもし銀行というものがなくてもいいというふうに考えるならば、ほっておけばいいということだと思います。しかし、やはり銀行がなければ困るでしょう。預金も預けられないし、貸し付けも受けられない。信用創造機能は重要であるということを考えるならば、これは広い意味でありますけれども、広い意味で、ある意味銀行部門全体を政府が管理するという形において、具体的に言いますと極めて大規模公的資金注入を行わざるを得ないというふうに、少なくともマクロ経済を勉強している人間からは判断されるということであります。  その規模がどのぐらいかということは、これは厳密には先ほど申し上げましたように金融監督庁が今行っている検査の結果を待たざるを得ないわけでありますけれども、外資系証券会社試算等々に基づいて私なりに極めて個人的な見解として申し上げるならば、やっぱり今の時点で間違いなく数十兆円という規模が必要になるのではないだろうか。もう一つ明らかなことは、これは多分半年置いたら百兆円になっても全然不思議はない。  こういった議論というのは、実態がわからないだけに極めて幅の広い議論にならざるを得ないわけでありますけれども、一つ危機管理としてはやはりそういった極めて厳しい実態があるともう割り切りをせざるを得ないのではないかというふうに考えております。  さて、そういった意味での一種の緊急避難的な政策をとらざるを得ない、しかしその向こうには我々の目的というのは健全で競争的な金融市場をつくることである、こういった二つ視点を踏まえるとして、今後、ぜひ皆様方に御討議していただきたいというふうに思っておりますことを三点申し上げておきたいというふうに思います。  恐らくこれはある意味で皆さん既に、常に考えておられることだとは思うんですけれども、まず第一の点は、マクロ経済運営マクロ経済政策運営が極めて重要だという点であります。  先ほどから御紹介している一つ不良債権の額、さらには必要な公的資金注入額というのは、はっきり言いまして株価に極めて敏感に反応します。極端に言えば、今何らかの理由で急に株価が一万八千円とか二万円になったら、ほとんど大量の公的資金注入はしないで済むだろうということになります。したがって、公的資金注入する政策的コストマクロ経済安定化して拡大させる政策的コストというのをはかりにかけて考えるべきだ。これはその意味では、マクロ経済安定化させて、御承知のように九八年度マイナス一・八%という新しい経済見通しの改定がなされたわけでありますけれども、マクロ経済政策にかける政策コストというのをかなり払う必要があるのではないかというふうに考えられます。  しかし同時に、これをやると必ず何が起こるかというと、財政赤字が大変になります。財政赤字が大変になるというのは、長期的な課題もさることながら、私は短期的にも極めて大きな問題を引き起こす可能性があるというふうに思っております。  具体的に言いますと、日本国国債に対する格付が下がるということです。これはもう間違いなく下がります。国債格付が下がると一体何が起こるかというと、これは日本国の何かメンツがつぶれるとか、そういったぐいの問題ではなくて、現実問題として金融セクターにおける調達金利が極めて明確に上がってくると思います。どれだけ公的資金注入をしてマクロで支えても、金利が上がるとそれだけでまた日本金融部門は非常に大きな痛手を受ける。その非常に狭い板挟みの間に日本経済は立っている。その意味では、大規模マクロ経済政策を行う必要があると同時に、財政赤字を将来的にどのようにコントロールしていくかということについては、同時に極めて責任のある姿を示していく必要があるということだと思います。これが第一の点。  第二の点は、我々は今ともすれば銀行の問題としてこの問題を扱ってきた嫌いがありますけれども、銀行の問題というのは、これはある意味実体経済を映し出している単なる鏡にすぎないという点があるわけです。不良債権問題、銀行不良債権を抱えているということは何を意味するかというと、その向こう側お金を返せない企業がある、お金を返せない産業があるということです。この実態がなくならない限り、実は日本経済問題は何も解決しないということになる。  そのための施策というのが、実は当面はこれが銀行という一つの鏡に映し出されて今日の不良債権問題、金融システム不安ということになっているわけですけれども、その先にある土地をどのように動かすのかとか、もう明らかに構造不況的に見られる業種をどのように立て直すかなどという根本的問題こそが実は重要であって、不良債権処理公的資金注入は単なるその入り口にすぎないということであろうかと思います。これが第二の問題であります。  第三点は、実は銀行がここまで大きな問題になった最大理由は、日本銀行が大き過ぎるという基本的な問題にあります。日本銀行貸付残高を合計して単純にGDPで割りますと、一・三倍ぐらいの大きさになるはずです。これは、アメリカヨーロッパ諸国では大体〇・四倍とかそのぐらいですから、日本金融部門は明らかに肥大化して、そこが弱ったためにこういう今日のような問題が起きている。  何が重要かというと、銀行以外の代替的な金融ルートを急ぎ整備しないとこの問題はやはり解決しない。銀行部門が肥大化しているわけで、これをある程度小さくしていくということが中期的には見通されるわけですから、その意味では少々の公的資金注入を行ってもいわゆる貸し渋り的な現象というのは簡単にはなくならない。それに対処するためには新しい金融ルートを急ぎ整備しなければいけない、その問題が出てくるというふうに思います。これが第三点であります。  いずれにしましても、一九九〇年のバブルのピークから比べて、我々の社会は千二百兆円の資産を失いました。しかし、気がついてみると大変不思議なことでありますけれども、国民の平均的な生活水準は一九九〇年と今を比べると今の方が高くなっています。千二百兆円の資産を失った社会国民生活水準を上げているというのは、実はやはりこれはマクロ的に見るとどう考えても奇妙なことであって、つまりまさにバブルの清算、損出し損切りというのを先延ばししたのが今日の姿になっている。その痛みをやはり国民全体が厳しく自覚しなければいけないということではないかと思います。  ありがとうございました。(拍手
  7. 坂野重信

    委員長坂野重信君) どうもありがとうございました。  次に、西崎哲郎参考人にお願いいたします。
  8. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 西崎でございます。私の肩書はケーピーエムジーフィナンシャル・サービス・コンサルティング理事長と、まことにもってわかりにくい名前になっているんですが、これはアメリカビッグシックス、世界のビッグシックス一つKPMGピートマーウィックがつくった直轄のコンサルタント会社ということです。  きょう、私が著名な御先生方にまじって呼び出されたのは、多分、例の早期是正措置とか、これは私が部会長をやって基準をつくったんですが、あとディスクロージャーの作業部会長とか、金融関係、金融制度調査会でずっと二十年近くやってきまして、そういったこともあって呼び出されたのではないかと思います。  実は、ここへ来る途中タクシーに乗って、きょう国会の金融委員会参考人でと言ったら、タクシーの運転手はよく知っていまして、ラジオの中継を聞いているんですね。それで、あそこはもう大変今重要なことをやっているようなのでひとつ頑張ってくださいと言うので、大変国民の中で期待が高いようで、その委員会意見を述べさせていただく機会を得まして、大変光栄に思っております。  今度、金融再生関連法ということで法律が成立して、それによって本格的な破綻処理スキームが確立した、野党案を基礎に自民党の案も入れて。それで、なかなかこれまで本格的な破綻処理スキームというのはできなかったわけですが、ようやくそれが確立したということは大変高く評価できると思います。  しかし、問題は、破綻処理スキームと同時に一部破綻前スキームも入っているわけですが、もっと根本的な破綻前処理も含めた金融システムの破綻を、個別金融機関あるいはシステム全体、それをどう未然に防いで金融機関健全化させるか、金融システムの安定を図るか、そのためのつまり事前措置といいますか、これが極めて重要であることはもう疑う余地もないわけです。  これについて本日、自民党から国会に健全緊急措置法案ですか、提出されたということで、私はまだ内容を見ていないんですが、いずれにしてもこの破綻処理スキームとそれから健全化対策というのは、これは車の両輪で、どちらが欠けても全体としての安定は期待できない。この国会で、与野党協議の中でさらに実効性のあるそういうスキーム、法律が成立することを、しかも早期に成立することを非常に期待しております。  大所高所、あるいは基本的な分析、これは省略しまして、今度成立します金融再生関連法、それからこれから検討される健全化法案、それについて若干問題点を述べさせていただきたいと思います。  金融機能再生緊急措置法、これは今も言いましたように破綻処理の原則を非常に明確にした。それから、破綻処理スキームとして、野党案の特別公的管理に加えて金融管財人による管理、それから業務承継、承継銀行制度、こういう三つの選択肢が入って破綻処理方法が非常に多様化したという点。それから、破綻前の処理、さっき言いましたけれどもこれも含まれている。それから、資金援助、この道も開かれているということで、大変私はワーカブルなものになったということで評価しております。  ただ、問題は、これをどう運営していくかということが非常にポイントで、特に金融再生委員会の機能、位置づけが非常にかなめになってくると思います。実際、破綻処理の場合、これはある程度事前から把握しておく必要がある。さらに、例えば国際的な異変とかそういう突発的な事態が起きてくるかもしれない。そういったことに効果的に対応するには、情報収集あるいはいろんな金融情勢の分析、さらに今度は法律問題も入るわけですけれども、金融についての専門的な知識とか、あるいは金融再生委員会の下につく金融監督庁の監督・検査能力の向上、こういったものが非常に要求されるわけです。  したがって、細かい点は省きますが、三条委員会という制約を超えてこの金融再生委員会がどうワーカブルなものになっていくか、それで機動的な、スピーディーな決定、あるいは非常に効率的な対応策、これをどう打ち出していくかということで、まさにこの法律を生かすも殺すも運営にかかっているということが言えると思います。  一点、大蔵省との関係になるんですが、今度の金融再生委員会の設置法を見ても共管という部分があるわけですが、こういう今の危機的な状況のもとで最大限に効率的にやっていくとすれば、大蔵省の人材、それから蓄積した情報、これは要するに国民の税金で賄ってきたものですから、今大蔵省はめためたで、何か顔を出すとぶったたかれるということで引っ込んでいるようですけれども、これを活用しない手はない。大蔵省との提携といいますか連係動作というか、これはこの危機的な状況では非常に必要だということを強調したいと思います。  次に、早期健全化対策の方ですが、自民党の法案を私は読んでいないんですが、要するにポイントは銀行の資本増強をどうするかということで、過少資本行に対する公的資金注入、これは優先株あるいは普通株といろいろ段階に応じて分かれているわけですが、その最大の問題は、まずこの前提として、早期是正措置の強化も含めて自己査定を厳格にやらせる、それから引き当て、償却を適正にやる、特に第Ⅱ分類も含めてですね。それによって当然自己資本は減少してくるわけですから放置しておくと信用収縮が起きる、これをどう公的資金注入によって防ぐかということだと思うんです。  その場合に、今の考え方ですと、要するに申請方式になっているということですね。当事者の申し出によるか、あるいは強制するか、これをめぐっていろんな議論が行われているんですが、私は基本的には本当は強制すべきだと思います。しかし、強制するといっても技術的な問題も含めて無理がかかると思うんです。そうすれば、結果的に強制されるようなそういうスキームをいかにつくり上げるかということだと思うんです。  ですから、これは当然第Ⅱ分類の引き当てと関係してくるわけで、例えばアメリカではⅡ分類のうちサブスタンダードという範疇は平均で一五%引き当てしているわけですが、日本の場合、Ⅱ分類の細分化ということが議論されるようですけれども、細分化してアメリカ方式をとるか、あるいはなかなかこの細分化というのも実は難しいので、そうすると一般貸倒引当金として、これまでは無税ということで〇・三%だったのを五%とか一〇%とか、これは例えば大手銀行と地域金融機関を分ける必要もあると思いますけれども、分子に一部算入を認めるとかですね。いずれにしても、そういったⅡ分類の引き当てを一体どうやっていくかという問題と連動するし「それからもう一つは罰則ですね、経営責任をどうするか。  経営責任については、最終的に経営責任を追及するのはもう当然ですし、国がやらなければ株主が当然これはやるべきことなんですが、今の時点で並行してやると結局申請に走る。つまり、分母の圧縮は別に違法にならないわけですから、そのために強烈な信用収縮が起きてくる。都市銀行で十兆円と言われています。  したがって、当面の資本注入とこの経営責任の追及というのは切り離して、経営責任の追及というのは一定期間後に徹底的に行う。これは、今度の緊急再生措置関連法でも第三者委員会による例えば自己資本をなぜ毀損したかも含めて責任追及することになっていますから、切り離して、ともかくこの際、角を矯めて牛を殺すことは、これはせっかくのいろんなスキームができても実効が上がらないというふうに私は思います。  あと、ディスクロージャーの問題は省略いたしまして、地域金融の問題について本当に一言だけ。  現在、議論されているのは主として大手金融機関ということで、これはやっぱりマーケットとの関係では大手金融機関が対象になると思うんですが、地域金融機関をどうするか、これは非常に大きな問題です。もともと地域金融機関は例えば協同組織をとると初めから要注意先債権をとっているようなもので、この処理を誤ると地域金融が崩壊しかねないということで、地域金融機関対策をどう考えるかということをぜひ委員会でも検討していただきたいと思います。  最後に、先ほど竹中先生が百兆円でもとおっしゃいましたけれども、私も同様の認識を持っています。不良債権処理から金融安定化に五十兆円、既に三十兆円近くはもう確保されているわけです。それから景気対策の方も例えば五十兆円、合わせて百兆円。景気対策は二十兆円近く、これも約束しているわけです。いずれにしても、二〇〇一年四月からペイオフに移行するという前提で、九九年、二〇〇〇年、両年度かけて、本年度から、これだけの規模の思い切った公的資本の投入というのは必要だろうというふうに思います。  以上です。ちょっと超過して申しわけありません。(拍手
  9. 坂野重信

    委員長坂野重信君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 三浦一水

    ○三浦一水君 自由民主党の三浦一水でございます。  きょうは三人の参考人皆様方には、本当にお忙しい中、急な要請におこたえをいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。日ごろ金融あるいは不良債権の問題につきましては現場の中で、あるいは政策に本当に多大な貢献をいただいている皆様方であります。きょう、このようにいろいろと参考意見が聞けますことは大変光栄なことだと存じております。  私自身は金融は素人でございまして、地方の出身であることも付言をしておきたいわけでございますけれども、何と申しましても本当に厳しいなと思うのはこの経済の状況でありまして、景気の動向であります。地方におきましてはバブルの影響も、それで非常に大きな利益を得たという人も少なかったわけでありまして、逆に崩壊後の影響というのは大都市に比べると少ないというようなことが数年言われておりました。しかし、この二年ぐらいを見て私なりに感じておりますことは、本当に地方の隅々までこの厳しさというのがしみわたってきたのではないかと感じております。  卑近な例で申しわけないんですが、昔は田舎の町で一杯宴会をいたしまして、そして二次会でも行くと大体いい気分になりまして、帰ろうかというときにはタクシーを呼んでいたものなんです。ところが、最近はそのタクシーがなかなか呼べない。かみさんに手間をかけても、田舎のことですから、家から車を出して迎えに来てもらう、そんな状況が続いている。車内では夫婦の会話も弾むんでしょうからそれはそれでいいとしましても、ただこれがタクシー会社でありますとかあるいは代行運転の小さな業界でありますとか、このようなところでは本当に死活問題となっているわけでございます。  一方で、農業等の現場におきましても非常に農業生産物の売り値というものが下がってきております。私は熊本県の出身でございますが、新聞あるいはテレビ等で話題にもなっておりますけれども、イグサの価格が非常に下落をいたしました。これはとりもなおさず住宅の着工件数が非常にこの数年減ってきている、このことから畳の需要が伸びないということであります。そのようなことから自殺者まで続出しているというようなことでありますけれども、これがまた農家所得が減少する一伸び悩むという中での地方経済への悪影響と、非常にその辺に懸念を抱くわけであります。  これは経済対策、不況対策ということになりますと非常に範疇の広いことではありますけれども、きょうは本当にいろんな面で御苦労いただいている参考人皆様方でございますので、参考人として何かヒント、アイデア、そのようなもので一言二言、どうすべきかということをまず冒頭にそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
  11. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私の方は、率直に言って不良債権回収するということであります。  先ほど申し上げましたように、債権回収というのは血の固まっているのを取り除くことですが、同時にそのこと自体が一方においてへまをすると血管そのものを破るおそれもある、そういう点に配慮しつつ、しかも強力にやっていかないといけない。そこは基本的にやはりきめ細かさも要りますし、何でもかんでも法的措置がよいということには決してならない。世の中には急がば回れという方法があります。私自身事業者ローン債権に当たりましても、できる限り本人を生かせつつ、しかも回収していくということを具体的に指示してやっておりまして、先ほども三番目にも申し上げましたようなきめ細かさと、全体を洞察する視点から回収を行っていかないと、せっかく血栓を取り除くという大きな作用があっても、へまをすると血管そのものを切りかねない、このような点に配慮をしつつやっていかなければならない、このように考えて現場ではやっておりますし今後もやっていきたい、このように考えております。
  12. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 先ほど意見陳述の中でお話しさせていただいたこととダブるのでありますけれども、やはり何段階かに分けた政策の対応を考える必要があるんだというふうに思います。  まず、極めて短期的な対応としては、二つのことをぜひ実現していただきたい。これは先ほど申し上げましたように、銀行部門全体が今や実態的な意味債務超過であるというその厳しい認識に立って、大量一括の公的資金注入をこの際緊急避難として行う。これはもう緊急避難です。しかし、これは緊急避難でありますから、基本的な問題の解決ではありません。  もう一つ、その緊急避難を容易にするための思い切ったマクロ経済政策をとるということだと思います。例えば一つ言いますと、大規模なある程度のマクロ経済政策によって株価が上がれば、それによって不良債権の実質的な額が小さくなるわけですから、公的資金注入額も少なくて済むという極めてダイナミックな関係があるわけですから、これをワンセットにするというのが短期の対策としてはやはり避けて通れないことではないかというふうに思います。  三番目としては、私はこの際やはりバブルの清算を一気に行うという姿勢が必要だと思います。損出しを行うという姿勢が必要だと思います。先ほど、地方の経済は大変だというふうに御指摘がありました。それは事実としては全くそのとおりだと思います。  しかし、先ほども申し上げましたように、我々は千二百兆円の資産を失っているわけですから、これはもう生活水準を下げざるを得ないというやはり厳しい事実があるわけです。今が大変だというふうに考えることもできるけれども、今までが実力以上の生活を国民はしてきたんだという面が実はあるわけです。これは私は学者でありますから、あえてこういったちょっと突き放した言い方をさせていただいておりまして、皆さんはそうはいかないというのもわかりますけれども、このバブル損出し、例えば今の時点で欠損を全部出してしまったら、その欠損は将来にわたって繰り延べられるんだ、十年間繰り延べできるんだというような、例えばこれは一つの措置でありますけれども、そういった措置を、問題解決を先延ばしにするのではなくて、一気に先に前倒しにしてしまうという政策が必要だろうというふうに思います。  第四点としては、これはもっと長い話になりますけれども、やはり二十一世紀型の競争社会にふさわしいインフラをつくらなければいけない。これはもう自己責任、競争というのは原則になってこざるを得ないわけですけれども、同時に、その裏返しとしては、個人が安心して暮らせるセーフティーネットというのが残念だけれどもないわけです。どこの金融商品がいいか悪いか自分で選びなさい、それが自己責任だと。私はもうそのとおりだと思うんですけれども、ではそういったどこの商品がいいか悪いかを判断できるような材料、つまり情報があるのかというふうになると、情報開示はやっぱり不十分だ。それが私が申し上げるセーフティーネットとしてのインフラだと思います。  情報のないところで自己責任の果たしようなどないわけでありますから、その緊急の対策とある意味では非常にトレードオフの関係にありますけれども、そういった長期の競争社会にふさわしいセーフティーネットづくりというのを、少なくともそれに着手するということが必要ではないかと思います。
  13. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 竹中先生のとほとんど同じなんですが、ともかく今の日本金融機関について、例えば海外で見れば、先ほど申しましたように早期是正措置を導入して自己査定、引き当て、償却、自己資本比率ということで、これはつくったときのあれでは正確にこれが行われるという期待だったわけですが、これは一切信用しないということですね。銀行自身による自己査定は信用できない、公認会計士によるチェックも信用できない、検査・監督当局の検査も信用できない。だから、何をやっても信用できない。この一番の中心部門は、結局不良債権の分類と、それに対して正確に引き当て、償却をしたかどうか、これをはっきりさせない限りは信頼できないわけです。  ですから、当面のまず緊急策としては、さっき言いましたように特にⅡ分類を中心に適正な引き当てを積ませて、それによって当然自己資本は減少するわけですから思い切って注入する。これも一挙に、一斉にやるということが非常に大事だと思うんです。これがおくれるとますます、一時的には今マーケットは好感しているようですけれども、しかしまた同じことでロスが大きくなる一方である。  もう一つは、やはり景気対策、つまり金融不安と景気の落ち込みというのはまさに今スパイラル的に連動しているわけですから、景気対策の面でやっぱり思い切った対策を講ずる。これはすぐ財政赤字の問題に連動するわけですが、しかし二〇〇一年四月というのはいろんな意味で、この法律も二〇〇一年三月までということですし、ここで本当にペイオフができて日本経済、金融も安定化し、経済も回復軌道に乗っていく、そこまでの道筋をつけるかどうかというその時限的な対策として、ですから思い切ったこの際景気対策もやるべきだというふうに思います。
  14. 三浦一水

    ○三浦一水君 ありがとうございました。  西崎参考人にちょっと個別にお尋ねをしたいんですが、このような不況というのも、私は四十四歳でありますけれども初めてのような気がします。それと非常に特徴的なのは貸し渋り、去年は何だろうなと思って聞いておりました。ところが、そういうものが身近にもう非常に多く聞かれるようになり、私どもも政治にかかわっている立場ではよろず相談量的なところが時々ありますが、そこにもいろんな相談が来るような現況になっております。なぜ急にこのような現象日本に起きてきたのか。金融素人として非常に不可解な気もするわけであります。そういう中に早期是正措置がとられまして、四月一日から今日まで経過しているわけであります。国内基準につきましては一年間の猶予といったようなこともあるわけでございますけれども、実はこの面が大きな負担がひょっとするとあるのかなという感じもしているわけであります。  私は、金融機関としては非常に特殊でありますけれども、信用事業を営みます農協の理事をしております。そういうことで見ておりますと、もう昨年の中盤あたりから必死になってこの対応を各担当の職員はやってきた、そのことしかほとんど話が聞かれなかったというような状況でございました。農協でありますから、最終的には一八%を超える自己資本率もある、確保している。むしろ農協としては貸出先は今も少ない、貯貸率が低いといったような現状であるわけでございますが、これはいろんな各金融機関において一緒の現象であるかなと考えております。そのときに、我々も貸し渋りの対策につきましては、先般十月一日から施行ということで信用保証枠の拡大といったような措置もとらせていただきました。  ちょっと実例を聞いてみましたら、熊本市では四十ほどの申請が行われている、市としてもそれを認定する方向だと。そういう実績も上がりつつあるかと思うわけですけれども、私はどうしても根本的なことということになりますと、BIS規制に対応した早期是正措置の導入ということがこの貸し渋りということにつながってきているのではないか。  西崎参考人は座長として、いろんなアドバイスをいただきながら創設させていただきました制度でありますので、その背景を一番よく御存じかと思うわけでございます。その点、御見解をいただきたいと思います。
  15. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) この早期是正措置というのは、一昨年の暮れに検討会で基準を出して、それでさらに去年六月にそれをまた精査して、去年の中間決算から試験的に導入したと、大手銀行ですね。それで、ことしの三月期から正式に導入した。  なぜ早期是正措置の導入を決めたかというと、つまり日本金融機関バブルの崩壊に伴う膨大な不良債権の集積、要するにリスク管理体制ができていなかったという一語に尽きるわけです。  しかも、護送船団行政ということですべて保護されるというその安心感の中に、例えば金融機関にとって貸出資産をどう査定してそのリスクを格付するかということは基本的な仕事なんです。それで、欧米の金融機関ははるか前からこれをやってきている。日本金融機関は、それも銀行によりけりですけれども、それから引き当てというと無税引き当てでやってきたということ。これでは、日本金融機関に対する信頼が、そういう形で日本金融機関運営されると危なくてしょうがない、世界的にこんなリスク管理体制ができていない金融機関は危なくてしょうがない。ですから、これを金融機関本来の姿に戻す必要があるということでいろんな基準をつくったわけです。  ただし、この早期是正措置というのはアメリカがひな形で、アメリカの場合は金融破綻を処理して金融が安定した段階から二年間の準備期間を置いて、九一年に決めて九三年から導入したんです。欧州はまだやっていないんです。日本は金融不安と不況の中でこれを導入する。  ですから、当然貸し渋りは起きるだろうということで、検討会の答申もこの貸し渋りの問題に触れているわけですが、予想以上にそれが拡大したということは、全く私も予想していなかったほどこれが拡大したというのは、まさに去年の春以降の経済・財政政策のミス、この影響が極めて大きいというふうに私は思います。大体一九九六年の日本の成長率は四%、OECDでトップ、それで楽観して、つまり逆ブレーキをかけたということによって、本当はもう少しソフトランディングできるはずだったのががたんときたということも非常に私は大きいと思います。
  16. 三浦一水

    ○三浦一水君 重ねてお尋ねしたいと思うんですが、日本の金融の特徴というのは、銀行経営の間接金融の比率が非常に高いということをよく言われておりますし、もう一方では、リスクウェートについて考えますと、大企業も巨大企業もあるいは零細企業も同じような扱いであるというような問題点というべきものがあるように感じております。  私は、このような中で、中小企業信用保証のリスクウェートは一〇%といわず〇%でもいいんじゃないか、そのような感じもしますし、当のアメリカにおきましてもこの早期是正措置についての見直しの論議というものがにわかに高まっているというような話も聞くわけでございます。  この辺を踏まえまして、この早期是正措置を見直していくようなことが将来必要なのかどうか、その辺について重ねて所見を賜りたいと思います。
  17. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 早期是正措置の見直しは、これは基準を決めたときに答申の中でも二〇〇〇年度までに見直すということにしています。アメリカでも今、主として自己資本比率の見直しが行われているんですが、自己資本比率だけ高ければ銀行は安全ということは言えないわけです。これは資産内容によって非常に左右されるわけです。自己資本比率をアメリカは下げるというんじゃなくて、アメリカは今一〇%超ですが、自己資本比率以外のいろんな基準を考えていく必要がある。  それから、アメリカの場合、金融機関の内部統制、自己査定、リスク管理、引き当て、償却、こういったクレジットプロセスと言っているんですが、これはかなり完備されてきて、アメリカの場合は不良債権が起きるとすぐ償却しちゃうんです。マーケットで非難されるとすぐ償却。そのアメリカのそれぞれの金融機関のガイドラインを基準にして、それでガイドラインに合っているかどうかをチェックするという、そういう形で今修正しようという動きが出ているわけです。  日本の場合は、これがはるか前の段階でまだ、つまり今の早期是正措置でつくられている自己査定、つまり分類ですね、資産分類、引当償却、チェック、検査、それによって透明なバランスシートをつくると結果として自己資本比率が出てくる。このプロセスは、これはむしろますます強化する必要がある。ただ、それに対する自己資本比率基準を割った場合のペナルティー、あるいは逆に言うと公的資金注入、それについては私は大手銀行と地域金融機関との間で差があって当然だろうと思います。地域金融機関は初めから大手銀行がとらないリスクをとっているわけですから、正分類をとっているわけですから、大手銀行と同じような基準でそれを処置すれば地域金融は崩壊するというふうに思います。
  18. 三浦一水

    ○三浦一水君 もう一点、西崎参考人にお尋ねしたいのは、我々の地域の中におきましては、信用金庫なり信用組合なり地域の金融機関というものが非常に重要な役割を果たしているわけですけれども、ただいま金融不安の問題におきましては、いわゆる大金融機関により視点を当てた論議になっているかと思います。その辺を簡潔に、西崎参考人、将来あるべきこのようないわゆる組合金融機関の姿というものにお触れいただければと思います。
  19. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 地域金融機関といっても、第一地銀、第二地銀、協同組織系、つまり信用金庫、信用組合、それから系統その他たくさんあるわけです。  ただ、言えることは、日本にとって中小企業金融あるいは地域金融、それから地域経済の活性化、これはこれまでも主として地域金融機関が支えてきた、大都市の場合は別ですけれども。それから、今後の二十一世紀の地方の時代と言われるのを考えれば、いよいよ地域金融、地域経済の活性化、これはもう非常に重要になってくる。アメリカの場合は地域再投資法というのがあって、これは黒人に対する融資とかみんな含めているんですが、地域から集めた金の一定部分は地域に戻すということを義務つけているわけです。日本はそれがないわけです。  いろんな方策があると思うんですが、時間がもう限られていますので、いずれにしても私は特に協同組織系、これは自己資本の充実策も非常に限定されているわけです。協同組織系金融機関については、大銀行はもちろん、株式会社金融機関と比べてやっぱりいろんな配慮をすべきだというふうに思います。どうも時間のせいで細かく言えませんので。
  20. 三浦一水

    ○三浦一水君 中坊参考人に幾つかお尋ねをしたいと思います。  金融再生法案の中で、日本版RTCを中坊社長としてどのように見られているか、これを一点お伺いしたいと思うんです。関連をしまして、中坊社長がこれまでマスコミ等を通じましていろいろ御所見を発表されておりますが、株式会社形式に非常にこだわられているというようなこと、あるいは回収部門との統合を行うべきだということ、それから五年間の時限措置という問題については、これは削除すべきだといったような御要望をなさっているかと思います。  この点も含めて、日本版RTCのあるべき姿ということで御所見をいただきたいと思います。
  21. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) それでは、三点にわたってお答え申し上げたいと思いますが、まず整理回収機構日本版RTCというもの、今回の法案でも株式会社というふうにしていただいておりますが、私は大変結構なことだと思っておりますし、私たちの方もそのようにお願いをいたしました。  なぜ株式会社ということをお願いしたかといいますと、理由は大きく分けて三つあります。  その一つは、債権回収というのは単に物をお金にかえるというほど単純なことではないんです。先ほどからも申し上げておりますように、より個別的な案件にきめ細かく対応しないといけない。ある場合には、むしろもう少しお金を貸したり、あるいはゆがんだ土地をちゃんと直したり、あるいは暴力団をちゃんと追い出してきれいなものにしたりとか、いろんな柔軟なことが求められるわけであります。そういうことをやるという形からいえば、柔軟な形ということになりますと、やはり民間の会社でないとぐあいが悪いというのが一つであります。  その過程の中では、当然これからもいろいろな事態が発生して、人もふえたり減ったりしないといけない。そういうような場合に、一つの公法人になってまいりますと定員の方等に縛られる問題点も生まれてきます。要するに、柔軟に対応するためにはやはり民間会社の方によるべきではなかろうかと思うわけであります。  二つ目には、いわゆる効率的な経営ということを考えた場合には民活でありまして、会社の経営者というのは株主に対しては包括的な責任を持っております。しかし、どうしても公務員になりますと一つ一つの行為について上の決裁を得なければならないということになりまして、その意味においての効率的自立という意味からいいましても、やはり民間会社の方がいいのではなかろうかと思ったわけであります。  三つ目には、公法人にしてはという御意見も、要するに現在強力に債権回収をするに当たっては、いわゆる預金保険機構が今お持ちの特別調査権、このものをあなた自身がお持ちになる必要があるのではないでしょうか、持つとなれば当然のように債権者平等の原則を排することになるので、そのために公法人化ということも必要ではなかろうかというような御意見であります。  しかし、きょう現在、我々はその特別調査権を持っておりません。しかしながら、預金保険機構がお持ちでございまして、その預金保険機構と現在当社が連携をいたしておりまして、それで率直に言って余り、何らと言っていいぐらい不便は発生をいたしておりません。したがって、特別調査権はそういう公法人である預金保険機構がお持ちになり、その成果は我々が利用させていただくという現状のままでいいのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  それから二つ目には、今現在このような公的資金が投入された債権回収機関というのが、整理回収銀行当社二つに分かれておるというのは、やはり一つになってやる方がより効率的であり、より統一的に物事が行われるという意味では、二つを早急に一つにしていただくことが正しいのではなかろうか、このように思っておるから統合を急いでくださいということは申し上げてきた。  それから三つ目には、五年間の存続期間を排除してほしいということを申し上げました。  これは二つ理由があるんですが、一つは、先ほども申し上げておりますように、この仕事は三K、きつくて汚くて危険な仕事をさせて、それで有期限だと。それで働いたら、あるいは不良債権回収を早くしたらあなたは首だというので本当に社員がやれるでしょうか。やはり社員が一生この職場にいても自分が働き得ると考えさせていただかなければならない。そういう意味では、プロパー社員によって、しかも無限にやっていく必要がある。  そして二つ目には、なぜそのようなことを申し上げたか、なぜ当社のプロパー社員が必要かということであります。  先ほどからも少し問題になっておりましたように、我々はけじめをつけないといけない。特に先ほど、緊急避難的にはなされても、いずれにしても旧経営者のいろんな不公正な責任、紹介責任等のいわゆる管理者責任は追及していかないといけないわけであります。  それを追及していこうと思いますと、現行の我々のシステムのまま、これは住管機構におきましても整理回収銀行も同じでありますけれども、その責任がある相手方の社員が我々に出向してお見えになっているわけであります。すなわち、当社の社員にとってはまさに管理者責任を追及するということは二律背反そのものなんです。忠ならんと欲すれば孝ならずというようなやり方のもとに管理者責任を追及せよというのが現在のシステムであります。それは、正直言って指揮権をとっている私たちとしては大変な悲しみであり苦しみなのであります。そういう意味では、やはりそういうものと関係のない組織が追及しなければ決して十分な責任追及はできないと思います。そういたしますと、プロパー社員でなければいけない。プロパー社員であるためには、ある程度仕事が無限大であらねばならない。  そういう意味からいえば、当社としては、希望といたしましては、単に金融機関のことだけではなしに、公的資金が投入されておるようないわゆる公のいろんな団体があります。例えば国民金融公庫にせよ住宅公団にせよ、あちこちでいろいろ不良債権発生しておるわけであります。それが各所がそれぞれ別々にやっている。やはりアメリカと同じようにサービサーという構想、すなわち回収専門機関というのが存在してくるということは必要ではなかろうか。だからそういう意味では、当社は将来そのような公的なサービサーというふうに脱皮していくのが正しいのではなかろうか。その一里塚として、とりあえず今のように期限は無期限にして、株式会社にして二つを統一していただきたい、このようなお願いを申し上げ、この法案の中にはそのような方向で考えていただいていますことを我が社といたしましては大変感謝いたしておるわけであります。  どうもありがとうございました。
  22. 三浦一水

    ○三浦一水君 重ねてお尋ねをしたいんですが、十月二日付の読売新聞であったかと思いますが、「金融報道に足りぬ基本的意味の理解」ということでいろいろ御所見がございます。その最後のところに、「このところ強調されがちな市場原理至上主義は、そうした傾向に拍車をかける可能性もある。」と警鐘を鳴らしていらっしゃるわけであります。  この点について、少し説明をいただけませんでしょうか。
  23. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 先ほどから竹中先生、西崎さんの方から非常にマクロ的な話がありました。それはそのとおりだとは思うのでありますけれども、しかし競争原理ばかりの中で社会が突っ走ってよいのであろうかと私自身は考えます。というのは、自由競争という概念の中では、しょせんは最高の理念が効率ということになります。戦後一貫して我が国は経済至上主義、その効率一点張りでやってきたのではなかろうかと。  私は効率ということだけで社会を規制してはならないのではなかろうか、効率をもっても侵すことのできない権利というようなものを考える必要がある。人間の尊厳がそうでありましょうし、そしてまた環境問題がそうでありましょうし、我々弁護士の間でよく言っておりました人権問題もまたそうではないかと思うのであります。市場主義一般あるいは競争主義一般ということではいかがなものかという考えがあって言ったものでありまして、この金融問題につきましても、先ほども少し出ておりましたけれども、やはり受け皿となるべき銀行のモラルハザードの問題は私は極めて深刻な状況下にある。これから起こるのでなしにきょう現在起きておる、私はこのように考えておるものであります。
  24. 三浦一水

    ○三浦一水君 ありがとうございました。  次に、竹中参考人にお尋ねをしたいと思います。  先ほど早期健全化スキームに絡みまして、大量一括の資本注入数十兆、あるいは半年おくれればそれは百兆も必要性があるのじゃないかとの私見をいただきました。この辺をもう少し詳しくお聞かせいただければと思うのです。  それから、我が党としましてはきょうからちょうど健全化スキームについて、もう我が党ではございませんけれども、出させてもらったものが審議に入るわけでございますけれども、この健全化スキーム全体につきましても御所見をいただければと思います。  それからもう一点、ちょっと時間の制限もありますので、長銀の処理の中で日本リースに対する債権、放棄させるべきかさせざるべきか、するべきかせざるべきか、この点につきましても竹中参考人の御意見を賜れればと思います。
  25. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) まず、大量一括の資金注入の話ですけれども、基本的には実は先ほど中坊参考人のお話の中にありましたけれども、モラルハザードの問題というのはやはり極めて重要であるということは間違いないわけです。  実は、あえて言えば競争を阻害するような護送船団的なシステムがあったためにモラルハザードが起きたのであって、その意味では、ある意味で政府が丸抱えで公的資金注入をするということに対しては健全な競争市場からすると明らかに反するのではないかというのは、一般論としてはまさにあるわけだと思います。  ただし、冒頭で申し上げましたように、これは現状認識の問題だと思います。私は今の銀行部門全体が実態的な意味債務超過であるというふうに判断しておりますので、これは非常手段としてはそれをやらざるを得ないというのが基本的な認識です。  そのための一つの考え方としては、これは要するに第Ⅱ分類に対して一五%から二〇%ぐらいの引き当てを行っていってというようなことを積み上げていくと、実は私は、大手十九行だけでも二十五兆円ぐらいの公的資金注入がないとしかるべき資本比率を維持できないのではないかというふうに思います。大手十九行だけで二十五兆円であるということから判断して、日本全体で見ると四十兆ないし五十兆円という額が出てきても不思議はないですねというような判断です。  もちろん、これが将来本当に百兆円になるかということに関してはだれも自信がない、それはよくわからないわけでありますけれども、わからないからこそ一括でまず大きな枠を設定しておくことが必要なんだ。  これはある財界人のお言葉でありますけれども、例えばこれは一種の戦争状態なんだ、戦争において最もまずい作戦というのは、小出しに兵力を投入していってどんどん戦争に巻き込まれていくことが一番損なんだ、残念だけれども日本の今までの経済対策一つとってもそうなっていた可能性がある、その意味でやはり一括が必要であるということであります。  健全化のスキームそのものについてでありますけれども、私は、一括投入した上で、その上でモラルハザードを起こさせないようにするための非常に厳しいインセンティブをいかに与えるかということだと思います。  このインセンティブの与え方については、これはちょっと短い間では議論できませんけれども、例えばこういうやり方がある。自己査定を行ってもらって、自己査定に基づいて一括資金注入を行うけれども、その自己査定が違っていたらそれについては厳しいペナルティーを科すということであるならば、要するにこれまでのようないわゆる実態的な帳簿隠しはできないということになる。  もう一つは、出したお金はこれはいつかは返してもらわなきゃいけないわけですから、その返し方についての厳しいルールを設定しておく。そうなると、これはもし返せないということになると、全く公的管理に移りますよ、実質的な意味で清算過程に入りますよということでありますから、これはもう銀行職員一丸となって物すごい厳しいリストラをやらざるを得なくなる、これが基本的な物事の考え方であろうというふうに思います。  最後に、日本リースの話が出ましたけれども、個別の案件そのものについて、これは私見でありますけれども、個別のリース会社そのものに対して債権放棄をして、その部分を公的資金注入するというようなイメージを国民の多くは持ったわけです。これはやはり筋が違ったんだと思います。  その問題の根底にあるのは、日本リース云々という問題ではなくて、要するにこういうことです。飛べる鳥と飛べない鳥がある。これは銀行で、存続可能な機関と不可能な機関がある。存続可能なものについては、今思い切って資本注入してこれを再生しようというのが健全化スキームの基本的な考え方です。しかし、飛べない鳥、存続不可能なものについて資本注入を行おうとすると、これは国民は当然のことながら反発する。  つまり、こういうことです。これはそうするともうソフトランディングではなくて、飛べない鳥を無理に飛ばすというのはネバーランディングだと。ネパーランディングすると必ずデスとかクラッシュランディングするというのがマーケットのやはり論理でありましょうから、もちろん個別の銀行の名前でありますけれども長銀が飛べない鳥かどうかという判断は、これは厳密にはわからないわけでありますけれども、マーケットの多くはどうもそう判断していたようだ。そういった中で日本リースの問題が個別具体的に出てきたわけで、今申し上げたような考え方で対処していくべき問題ではないかというふうに思います。
  26. 三浦一水

    ○三浦一水君 今資本注入につきましては、重ねていく、一括的にというお話をいただいたわけでありますが、我が党の案で申しますと、八%以上の自己資本率のところに対してもそれは対象とすべきだといった案を出しております。  その点につきまして、竹中参考人の御意見を賜りたいと思います。
  27. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 基本的には判断基準をどこに置くかということに関しては幾つかの考え方があろうかと思います。私は、今の状況から考えると、八%というのはリスク資産に対する八%という考え方でありますから、もう少し厳しい基準を基本的には当てはめる方がいいと、今の日本の状況を考えるならば。そういった意味からいうと、私自身は個人的には、そういった厳しい状況を設定してもう少し自己資本を厚くしておくための手厚い資金投入を行うということには賛成であります。
  28. 三浦一水

    ○三浦一水君 どうもありがとうございました。
  29. 内藤正光

    内藤正光君 私は、民主党・新緑風会を代表して質問させていただきます内藤正光でございます。  本日は、中坊社長、竹中先生、そして西崎理事長におかれましては、大変お忙しいところをお越しいただきまして、本当にありがとうございます。私の持ち時間は三十七分、つまり十二時五十分ぐらいまででございますが、中坊社長にはおおむね五点ほど、そして竹中先生については三点ほど、そしてまた西崎理事長につきましては四点ほど、大所高所からの貴重な御意見をお聞かせいただきたいと思います。  まず、中坊社長にお聞きをしたいと思います。  中坊社長は、今月二日の読売新聞にてこのようにおっしゃっております。喫緊の課題である不良債権処理がなぜ重要なのかといった基本的な点がわかりやすく報道されていないんじゃないか、このようにおっしゃっております。私も同感でございます。  せっかくの機会でございますから、改めてお伺いをさせていただきます。なぜ不良債権処理が重要なのか、わかりやすく説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  30. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 最初意見のときに申し上げましたとおりでございまして、今不良債権回収するということになりますと、かえって社会的な混乱を招くのではなかろうかという意見等が現にマスコミでも報道されております。  しかし、全体として見たときに、不良債権回収ということがそれでは貸し渋りあるいは今のような信用収縮とどうつながっておるのかという点の明確な関係づけが明らかにされないまま報道されておるので、確かに我々の方といたしましても債権回収しようと思いますと、債務者は、そんなもん取ってもろたらわしらはつぶれる、そやからかなわんのや、嫌やと、必ずこう言う。そうすると社会混乱を招くんだよと、こういう言い分が出てくるわけであります。そういうことに対しまして、今の社会的な病気になっております金融不安というものと我々の不良債権回収ということを強力かつ緊急に急がなければならないということとの問題点がもう少し明らかになる必要があるのではなかろうかということをそこで書いたわけであります。  私としては、先ほどから申し上げておりますように、まさに不良債権発生しておるということは血管の中に血栓が生じておるのであって、血栓を早く取り除かなければ血が流れない、物が流れない、金が流れないわけですから、やはり強力な力を持ってこの血栓を溶かしていかないといけない。そして血の流れを起こしてこそ初めて経済も金融も流れるのではないか、こういうことを特に主張していきたい、このように考えてそこの欄は書いたものであります。
  31. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  次は、不良債権についてお伺いさせていただきたいと思います。  不良債権はいろいろありますが、中でも暴力団が不当に介入している不良債権がかなりあると聞いております。  そこで、社長にお伺いをさせていただきます。これらの債権回収に当たって、現行法で十分対処が可能なのか、あるいはまた新たな法律が必要なのか、現場の第一線での経験を交えて社長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) ただいまお尋ねになりましたように、現在当社が管理しております住宅金融債権管理機構現場におきましても、本当に数多い物件にいわゆるやみの勢力、端的に言えば暴力団がいろいろ担保物件に傷をつけるわけです。  故意の傷でありまして、一番単純なのは何々組が占有しておるという看板を立てるのに始まりまして、架空の賃借権あるいは架空にお金を借りておった抵当権、その他のいろんなことをして妨害を行っておるわけであります。その人たちは、その担保物件を処分しようと思いますと、そうなったらわしらに落とし前を払え、落とし前を払えばそれで許してやろう、こう言うわけであります。  仮に、大蔵省が発表なさっているように金融機関に八十数兆の不良債権があるとして、それじゃその人に、妨害をしておる人に仮にその一割を払うといたしましても、八兆円に上る大きな金がまたやみの勢力の中にこれが入っていくわけであります。このことは、債権回収ができたとしてもいわゆる二次公害がやはり発生するということを意味すると思っております。  そういう意味では、我々は債権回収という目的を達成するだけでは足りなくて、先ほど言う手法が大事であって、やはりやみの勢力とは手を結ばないで債権回収が可能なことにしなければならない、そういう意味では効率一点張りではいけないということであります。  さて、そういうふうに考えてまいりまして、それではどういう具体的なことかと申し上げますと、一番は警察との連携であります。警察が本当に摘発してくれないことには暴力団にはこたえません。そういう意味では、警察との連携こそが一番ではなかろうかと思っています。  警察との連携ということは、単純に言えば告発をまずすることであります。告発をするというのは正直に言って手間がかかります。警察の方も正直言って余りこういう犯罪になれておられなかった。そこで、今おっしゃるように立法上の問題ということになりますれば、御承知のように例えばこのような不動産について先ほど言う傷をつける、そういうのは財産隠匿罪とかあるいは公正証書原本不実記載とか、そのような罪名に相当するわけであります。ところが、そのような罪の最高刑というのは大概長くて三年、短ければ二年であります。  御承知のように、けんかをして殴って血がちょっと出ます。そうすると傷害罪になります。傷害罪は十年以下の懲役で、五倍なんです。末野興産のように財産を二千億も隠してもやはり二年以下の懲役かということになってくる。その意味における刑のアンバランスがあります。そうすると、警察の方にしてもどっちが大きな事件だということを考えますと、どちらかといえば大きな方、傷害罪の方がよい。だから、よく警察やらにこういう事件を申告いたしますと、それだったら殴られておいでえな、殴られたら警察が動いたるがなと、こういう話を皆さんもよく聞かれるわけですが、実はそこに根拠があると思うんです。その意味における刑の軽重が必ずしも私は現行法のままでよいのかという点を一つは思っております。  それから同時に、警察の方は従来はよく民事不介入の原則ということをおっしゃいました。そういうことをやると、うちとこは民事不介入の原則やからと。しかし、警察法を読みましても、警察の責務の中には国民の生命、そして身体及び財産を保護し、公の秩序を維持すると書いてあるわけで、財産権も本来警察が保護する対象になっているわけであります。したがって、民事問題であっても、そこに犯罪が同時に行われておるとすれば、犯罪を摘発するのはやはり警察の本来の職務であったと思うのであります。  そういう意味におきましては、民事不介入の原則ということは、もちろん警察権が多く乱用されることは問題ですから民事不介入の原則という意味はよくわかるけれども、それが警察権を行使しないと言いわけすることの大義名分になっていた点は直していただかないといけない。最近、警察の方もやっとその点にも明確に、我々の教科書は長い間そう書いていたけれどもこれは間違いであった、これからそれをなくします、削除しましょうというようなことをおっしゃっていただいていることはそれなりにいいことだろうと思っております。  そういうことで、当社といたしましても既に五十六件に上る告発を続けておりますし、また単に告発すればよいだけではありません。いわゆるセキュリティー対策、備えあれば憂いなしでありまして、うちの社員が危険にさらされておってはこのようなことはできません。そのためのセキュリティー対策、いわゆる我々としては月に一回はセキュリティーの日を決めて、いろんな応対の仕方あるいは防犯カメラその他の一連の措置を講じつつやっておるわけでありまして、こういう意味では、暴力団、いわゆるやみの勢力から各企業が自分たちの身も守るためのセキュリティー対策を各不良債権を抱えているところが実行していかれることが必要ではなかろうか、このように考えております。
  33. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  では、次の質問をさせていただきます。  社長は、ミスター住専こと庭山慶一郎氏から一億二千万円の私財を返還する合意を取りつけられました。そしてまた、現在は旧住専への紹介融資に問題があったということで住友銀行を提訴されております。  そこで、お伺いをさせていただきたいのは、金融機関のモラルとは、あるいはまた経営者のモラルとは何なのか。  そしてまた、それにつけ加えまして、ことしの三月、二十一の銀行に対しまして一兆八千億円もの公的資金、税金を注入したわけでございます。そしてさらに、早期健全化スキームという名のもとに新たな公的資金が今まさに投入されようとしているわけでございます。しかし、にもかかわらず、こういったことに対しまして金融業界からは納税者たる国民に対して何ら申しわけございませんといった言葉が聞こえてはまいりません。そればかりか、貸し渋りだとか信用収縮、あるいはデフレスパイラルといったものを人質にとって、税金投入は当たり前だと、そう言わんばかりの態度をとり続けているわけでございます。  こういったことも踏まえまして、金融機関のモラルとは何なのか、経営者のモラルとはどうあるべきなのか、社長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) その点に関しまして申し上げたいと思います。  私自身といたしましては、率直に名前を出して恐縮ではございますけれども、住友銀行に対しまして、その紹介責任を問うべく裁判をこの六月三十日に提起いたしました。しかしながら、実は提起をする前に、ことしの二月から全部で百三十四件あるうちの七十二件がなぜか住友銀行に集中しているんですよと、そういう事実を具体的に示しました。そして、話し合いをしたいということを申し出て六カ月の期間がたちました。  私自身がなぜ話し合いを求めたかということになりますと、一つは、うちの社員があなたの住友銀行からでも十四名来ているんだ、その人たちがおるのに、先ほど言う二律背反を強いるということはどれほどか社長として苦しい悲しいことなんだ、だからできる限りあなたの方がモラルを考えていただいて、旧住専をごみ箱として利用したという事実が大方わかれば話し合いをしてもらいたいということを申し出て、六カ月の間、八回にわたる交渉を重ねてきたわけであります。  しかしながら、御承知のように住友銀行は裁判を起こしてください、裁判で負けたら払うと、このような態度に出られました。そのほかの十一行もおおむね住友銀行に倣うとされておるわけであります。  私は非常に憤りと悲しみを覚えますのは、今の銀行の経営者がおごりの態度なのであります。なぜならば、その人たちにまず法律違反がなければということであります、裁判に負けないということは。すなわち、法律というのは言うまでもなく最低の道徳なんです。最低の道徳に違反しなければ何をしてもよろしいというのが自分たちの物の考え方だということになるわけであります。我々もその中において、もちろんあなたたちに請求しておるのは最低の道徳の法律にも違反しているから請求しているんですということで訴えの提起にも及んでおります。庭山氏に対しても同じ姿勢であります。  しかし、私として必要であるのは、もっと高いモラルというものを考えてやってくださいと。なぜならば、先ほどからもるる出ておりますように、金融システムが破壊されていくということのためには公的資金も導入しなければならない。この受け皿となるだけの資格というものは、最低の道徳ではなしにもつと高いモラルがあってしかるべきではなかろうかと思うのであります。いわんや、自分の社員を向こうへやった人がどれほど困るかということをわかり切っていながら、なおかつ裁判を起こせ、裁判を起こさなければ支払わないという姿勢を堅持されていることに対しましては、私は本当に激しい怒りと悲しみを覚えておるものであります。  同じようなことが旧経営者に対しても言えるわけであります。私たち自身は率直に言いまして、例えば旧経営者の責任についても、こういうことをした、しかし判断がちょっと甘かった、間違った、そういうものでは少なくともあなたたちに我々が不公正な案件だとして請求するものではない。庭山さんに対しても、あなたがなされた公私混同、別の言い方をすれば背任的な要素がある案件に絞ってあなたに請求をしているんですということを申し上げてまいりました。住友に対しましても、単なる紹介をしただけではなしに、その間にうその事実を言ったり重要な事実をわざわざ隠したり、そういうようないわゆる法律違反になるものだけしか請求はしていませんということは言い続けてきております。  したがって、そういうことである中において、なおかつその責任を明確に認められない。庭山さんはそういう意味では少なくともそれでは払いましょうということで、我々としても要するにこういう問題にけじめをつける。先ほど言ったことはどういうことかといいますと、私は三つのことが必要ではないかと思うんです。それはどういうことかというと、まずどういう事実についてということで具体的事実をはっきりさせることであります。二つ目には、損害額はどうして出てきたのかを明らかにすること。三つ目には、それをすべて公にするということによって初めてけじめはついたと考えておるわけであります。  そういう意味では庭山さんの件に関しましても、三件を具体的に両方でサインし、そして我々としては庭山さんがいただかれた退職金と、さかのぼって三年間の月給の手取り分というふうにして請求をしたわけであります。  仮に住友との関係にいたしましても、当然住友だけが悪いわけじゃありません。そういうものを紹介を受けた方の経営者の責任もあるわけでありますから、当然そこには過失相殺が出てくるものだろうと思っていますし、そういう意味における話し合いはしなければいけないと思っております。そういう意味でけじめをきちっとつけながら、そしてそれをすることが私をして言わしめればやはり今の経営陣にも求められるところではなかろうかと思っております。  そういう視点から、やはりモラルハザードの問題はこれから起こる問題ではなくて、今現に起きている問題にどう対応されるのかということこそがむしろ問題ではなかろうか、私はこのように考えております。
  35. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  時間の関係で社長に対して最後の質問をさせていただきます。  今度、日本版RTCこと株式会社整理回収機帯が創設をされるわけでございます。社長を初め住管機構の皆様が培われたノウハウだとか理念、そういったものは大いにこの新しい整理回収機構で役に立つと思います。  そこでお伺いをさせていただきます。この整理回収機構の創設に向けて社長から何か有意義なアドバイス等がございましたら、体制あるいは人員、いろいろな理念等、アドバイスがございましたらお聞かせいただけますでしょうか。
  36. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) お答えいたしたいと思いますが、まず私は先ほども少し申し上げましたように株式会社にしてほしい、民間会社にしてほしいということを言いましたのは、やはりいかなることをやりましても社員のインセンティブが必要であります。そのためにはやはり自立、いわゆる自分で収支が償うということでなければいけないのではなかろうかと思っております。  現行法のままでは、整理回収銀行もまた住宅金融債権管理機構も、自分の方が例えば二次ロスを出しても、要するに無限大に国の補助が出ることになっております。このようなものはいかがなものか。  我々は今のところ収支相償ってやってきております。それがゆえにこそ社員はまた頑張るのであります。私としては、この新しい会社の基本指針なるものが今出されておりまして、そこの中では、この新しい整理回収機構が自立経営を旨とすべしと。そのためには、それでは収支というものをどのようにとって、我々がというよりもこの整理回収機構がこれからの仕事をなさっていくのか、そういう点についても特別の御配慮をいただくということが必要ではなかろうか、このようなことを考えております。
  37. 内藤正光

    内藤正光君 社長、ありがとうございました。  では次に、竹中先生に三点ほど御質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点、金融機関の破綻の定義についてでございます。  預金保険法ではこのように定義されております。業務もしくは財産の状況に照らし預金等の払い戻しを停止するおそれがあること、または預金の支払いを停止したこととなっております。それに対して金融再生法案では、このことに加えて、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合、つまり債務超過でございますが、このように定義をされております。  このことを含んだ上で、先生は金融機関の破綻の定義をどうするべきで、明確な具体的な数値も挙げてお教えいただきたいと思います。
  38. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 私は法律の専門家ではありませんので、その法律上の定義云々について聞かれましてもほとんど答えるキャパシティーはありません。ただ、現実の経済実態に照らして少し意見を申し述べさせていただくとすると、破綻はなぜ困るか。  実は、一連のこの一月ぐらいのいろんな議論を聞いていて私が非常に感じたのは、破綻という言葉が実にさまざまな形で使われていたということだと思います。我々にとって一番困る破綻というのは、マーケットの中にほっぽっておかれて、具体的には北海道拓殖銀行や山一証券のようにマーケットの中で立ち行かないような形になる、これは資金繰りがつかないということが現実ですけれども、それが現実的な意味での破綻になります。そうなる可能性がある場合には、これを事前に政府はやはり管理する形に持っていく、そうすることで政府は二次的な意味で破綻と認定するということになろうと思いますから、そういう意味では、マーケットの中にさらされてやっていけなくなる可能性が非常に強い場合を法律上破綻というふうにすべきだというふうに考えます。  そのような意味でいきますと、政府が破綻を認定するというのは、これは法律の問題でありますから、少し矛盾する点も出てくるかもしれませんけれども、現実にマーケットの実態に照らして、これはもう立ち行かないという実態的な判断を金融当局が出してきた場合の裁量性というのは、私はやはり残しておくべきだというふうに考えます。そのような意味では、その破綻の定義が少し広がったということは、私は評価すべきだというふうに考えています。  なぜこういうことを言うかというと、我々経済学者は、ルールに基づいた行政をしろ、裁量を残してはいけないというふうなことを常に言ってきました。今申し上げていることは、少なくとも表面上は極めて矛盾していることを言っているわけでありますけれども、しかしながらアメリカやヨーロッパの金融行政を見ている限り、明確なルールはっくるわけです。しかし、いざ極めて異常な事態になったときには、金融当局は極めて大きな裁量権を発揮しているというのもこれまた事実だと思います。これは最近のアメリカのLTCMの例なんかを見ても、それはもうある意味では金融にとってはやむを得ない一つの性格なのであるのか。  これはちょっと付言して申し上げますと、アメリカという国は私は大変おもしろい国だと思っているんです。これは余談ですけれども、要するに基本的には極めてマーケットオリエンテッドで、自由でルールに基づくことをやるというふうに言いながら、第二次世界大戦のときの国内の経済のいわゆる統制の仕方を見ると、アメリカという国が一番統制しているんです。日本は実は十分に統制できていないんです。そのような意味では、平常時におけるルール、マーケットオリエンテッドと、それと非常時における極めて大きな裁量というのがある意味で結果的には共存するようなシステムを持っておかざるを得ない、それが現状ではないかというふうに思います。
  39. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございました。  次の質問をさせていただきます。  金融早期健全化法案で、過少資本行だとか、あるいはまた著しい過少資本行といった新しい概念が登場をしてまいりました。この過少資本行あるいはまた著しい過少資本行、その基準はどう定めるのが適当でしょうか、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  40. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) これも非常に難しい問題だと思うんです。今度の法案で書かれている四%云々という基準は、一つのめどとして私は非常にわかりやすい支持できるものではないかというふうに思っています。  ただ、これも法律の解釈の問題は私は余りできませんので、実態から判断すると、過少資本であるかどうかというのは何かというと、分母と分子の関係です。資本というのは分子なわけです。それが何を意味するかというと、分母によって決まってくるわけです。当面、経済実態判断として非常に重要な点は次のような点だと思います。  日本銀行は過少資本であるというふうにずっと言われてきたわけでありますけれども、自己資本の実額を見ていただくと非常にはっきりするわけですが、これは為替レートによって若干違ってきますけれども、日本のトップ銀行の自己資本額というのはアメリカのトップ銀行の自己資本額をはるかに上回っているわけです。日本銀行というのは、自己資本の絶対額で見る限り、世界でも類を見ないほど極めて大きな自己資本を既に持っているということです。  これは何を意味するかというと、貸し過ぎているということであります。だからこそ、先ほど申し上げたように貸し付けの総額を単純に足し合わせるとGDPの一・三倍になる。自己資本は持っているんだけれども、ある意味で非効率な貸し付けを行ってきたから、自己資本利益率を見ると世界の中でも著しく低い形になっていて体質改善を求められる。  そうすると、実態として何を申し上げたいかというと、日本銀行はその分母であるところの貸付額をかなり長期にわたって縮小していかざるを得ないだろうということです。したがって、その実態的な自己資本云々という判断はその時々でもちろん重要になりますけれども、長期的には分母の貸し付けそのものを圧縮していかざるを得ないという実態に備えた議論の方がむしろ、過少資本云々という議論は短期的には重要ですけれども、中長期的にはより意味があるだろうということになります。  その意味では、私は今回の法案で定められた四%云々、八%という基準は極めて当面の措置としては合理的なものであるというふうに思ってぜひ支持させていただきたいと思っております。それ以外のよりマクロ的な中期的な措置ですね、具体的にはまさに先ほど申し上げた代替的な金融ルートを急いで開拓するということ、その議論の方にぜひ向かっていただければありがたいというふうに思います。
  41. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  では、先生には最後の質問をさせていただきます。ただ、時間の都合で一分ぐらいでお答えをしていただきたいと思います一  さきの小渕総理が訪米をされた除、クリントン大統領が、存続可能な銀行、英文のステートメントではバイアブルという発言がございました。そこで、存続可能な銀行、バイアブルな銀行とはどう解釈したらいいかというのが私の質問でございます。  債務超過でなければ存続可能な銀行なのか、自己資本が一から二%でも存続可能なのか、あるいはまた資本注入をしなければ存続できないような銀行でもこれを存続可能と言うべきかどうか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  42. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 御指摘のとおり、クリントンはまさにバイアブルという言葉を使ったわけで、基本的にはバイアブルかノンバイアブルかという議論は金融問題を議論するときに極めて常識的な判断基準だと思います。  しからば、それをどのように判断するかというと、それは結論から言うと、先ほどまさに申し上げたように、実は実態的にはかなり裁量的な判断がなされているということだと思います。実は自己資本が著しく少なくなっていても、これは将来に対する期待の優劣をどう見るかという問題でありますから、その問題を高く見るということであるならば、一時的な措置としてこれを存続させるということは私は可能になってくると思います。逆に自己資本が今非常に高くても、将来の収益が極めて悲観的である場合は、その反対の解釈もあるであろう。  その辺は、実は極めて実態的な意味で金融当局の、これは恐らく金融庁ができるわけでありますからそこの大臣が実態的に判断する。その判断が間違っているというふうに思うならば、即座にその大臣をかえるということしかないわけで、そこは金融という問題の極めて固有の性格として、将来をどう見るかという判断にかなりゆだねざるを得ないのではないかというふうに思います。  ただし、一応のそれについても、けじめという意味では、先ほど言いましたような自己資本の比率と、それと債務超過云々というような問題をどこかで数字としては客観的な歯どめをつくっておいた上で、ある種の裁量権を認めるということではないかと思います。
  43. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございました。  次は、西崎理事長にお答えをいただきたいと思います。  銀行資産査定において、本来だったら第Ⅲ分類あるいはまた第Ⅳ分類に振り分けられるべきものが実際には第Ⅱ分類として計上されている、そういった見方がございます。これについて西崎さんはどのようにお考えでしょうか。
  44. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 分類基準は一応ガイドラインがあって、しかし特に第Ⅱ分類というのは一定の基準はないわけです。銀行によってまちまちなんです。しかし、そういう批判が出るということ自体、つまり日本金融機関早期是正措置による資産分類、資産査定、それが信用できないんだという、この方がはるかに大きいと思うんです。  では、なぜそういう批判が出てくるかというと、資産分類の場合に、その金融機関はまず現場が査定して分類して、それを独立した内部のチェック機関でチェックし、それからさらに今度監査法人にかけてチェックする。つまり、このプロセスが信頼されていないということだと思うんです。したがって、信頼を回復し、もしあらぬうわさというのなら、内部統制のシステムをはっきりつくって、これは外へはっきり公表できるわけです。  それから同時に、先ほど何回も言った適正な引き当て、償却をしているかどうか、これもはっきりさせる。そこへもってきて、監査法人のチェックが、日本の場合、これも信頼度にいろいろ問題があるということですから、このプロセスを非常に厳重にする。そういうことによって残念ながら徐々に回復していくしかないという状況だと思います。
  45. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  次は、分類債権の引き当て率について質問をさせていただきます。  ある銀行では第Ⅱ分類に対して一%、第Ⅲ分類に対して五〇%、第Ⅳに対しては一〇〇%という引き当て率となっております。しかし、多くのエコノミストの皆様あるいはまたアナリストの皆様は、例えば第Ⅱ分類は二〇%、ちなみに民主党は一五%と言っておりますが、そして第Ⅲに対しては七五%、第Ⅳに対しては一〇〇%ぐらいが適当であろうというふうに言っております。理事長のお考えになる適当な引き当て率はいかほどのものでしょうか。
  46. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 第Ⅲ分類と第Ⅳ分類についての引き当て、償却、これは実は早期是正措置を検討したときの部会、その後に公認会計士協会がつくったガイドライン、これはある程度できているんです。つまり、回収可能な担保それから保証、それを除いた全額を償却あるいは引き当てるということですね、第Ⅲ分類、第Ⅳ分類。  問題は第Ⅱ分類で、実はアメリカでもこの第Ⅱ分類の引き当て率というのは基準としては決めていないんです。金融機関判断に任せる。しかも、アメリカの場合、サブスタンダードという金利、元本の回収に問題が生じている債権と、スペシャルメンショシという注意していけば大丈夫だという区別をして、サブスタンダードについては大体一〇%から二五%、これは銀行判断ですけれども、検査監督当局としては平均すると一五%、スペシャルメンションについては五%という基準です。  日本の場合、今の第正分類を細分化してアメリカ式にするのがいいのかどうか、しかもさらにこれを義務づけるかどうかという統一的な基準、これはなかなか私は難しいと思うんです。  したがって、少なくとも細分化はいいと思うんですが、検査当局のガイドラインとして、私はやっぱりサブスタンダードについて一五%という水準は妥当だと思います。ただ、これを一般の引き当てということになると自己資本が減耗しますから、さっき私が言った一般貸倒引当金ということで済ませて、一部分子に算入を認めるという方法も非常に現実的なスキームとしてはあり得るんじゃないかと思います。  それから、さらに言いたいのは、地域金融機関の場合マーケットとはそれほど直結しないわけです。しかも、初めから第正分類をとるという宿命があるわけです。したがって、地域金融機関の場合はやっぱり引き当ては別に考えるべきだろうと思います。
  47. 内藤正光

    内藤正光君 残り時間一分となってしまいました。最後の質問をさせていただきたいと思います。  金融再生法案では、金融機関に対してさまざまな反対圧力があったわけでございますが、ディスクロージャーを義務づけたわけでございます。ディスクロージャーの基準につきましては金融再生委員会が定めていくわけですが、ここでお伺いしたいのは、どんなディスクロージャー基準を定めていくべきとお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  48. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 簡単にお答えします。  ディスクロージャーについては、今、大手銀行それから地方銀行も含めてSEC基準になってきています。これはアメリカと大体同じです。  Ⅱ分類をディスクロージャーせよと。アメリカもⅡ分類はディスクロージャーしていないんです。Ⅱ分類というのは、ちょっとあれですが、つまりリスク管理過程、金融機関のクレジットプロセスの段階で、重要なのは引き当て、償却を十分にしているかどうかというのをディスクローズする必要があるわけですね。それによって安心感を得る。正確かどうかということはきちっと公認会計士、検査当局がチェックする。ですから、公認会計士についても、日本のように同じ公認監査法人がもう十何年も同じところをやっているということはまず世界に例がないわけです。カナダは七年でかえていますし、アメリカの場合は、個人単位ですけれども、同じ公認会計士は六年以上やっちゃいけない。それからダブルで監査させる。  だから、そういうクレジットプロセスのシステムがしつかりすれば、これは当然格付会社なりが全部判断するわけですから、細かい専門的なディスクロージャーを一般消費者にするよりは、マーケットは十分それでわかるわけです。ですから、五分類のディスクロージャーの基準をどうするかというのは、とても短時間で簡単に言えませんが、そういう感じがいたします。
  49. 内藤正光

    内藤正光君 貴重な御意見をちょうだいいたしましたことに心から感謝をいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  50. 益田洋介

    ○益田洋介君 益田洋介でございます。公明でございます。  まず最初に、竹中先生に御質問をさせていただき、御教授をいただきたいと思います。  先日、ある友人と話しておりましたところ、ニューヨークの連銀の若手スタッフが、もうこれ以上金融検査官の数を、今でも二万人いて、とても日本金融監督庁の検査官の規模ではないわけでございますが、これ以上ふやしても質と量の充実という両面からは検査を厳密あるいは厳正にすることは望めないのではないかということから、いたずらに数をふやすのではなくて、自発的に各金融機関に自己申告をさせて、そしてもし申告の内容、プロセスに不備があった場合には厳重なペナルティーを科すという方法をとったらどうだと。これはプレコミットメントアプローチというふうに彼らは呼んでいるそうでございます。この提案をグリーンスパン総裁に報告したところかなり検討が進みまして、総裁はこの案にほぼアプルーブの姿勢を示すといって、さらに具体的にどういうふうにこの方式を固めていくのかということで、パイロットスタディーということで、調査しない、金融機関自身不良債権発生可能性まで申告させる。毎年それをウォッチして、その発生可能性を超えた分については議論をし、場合によってはその場合でもペナルティーを科すというようなシステムで。  このニューヨーク連銀の若手のスタッフがロンドンに行きまして、後ほどまたこれは御質問させていただきますが、BIS規制についても、非常に商品が多様化しているわけでございますので見直さなきゃいけないという議論の中で、この問題をバンク・オブ・イングランドの若手のスタッフに提案したところ非常に賛同を得て、今、米英両国の中央銀行においてこうした検査・監督方法が慎重に検討されておる。  一方、我が国では、金融監督庁に検査官は四百五、六十名ですか、だんだんふやしているといいますが、こうしたアプローチも我が国で検討されているのではないかという気持ちがいたしておりますが、先生の御所見をお伺いしたいと思います。
  51. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) プリコミットメントなアプローチについては、私も二週間ほど前に行きましたときに随分と議論を持ちかけられました。その意味では、今、益田先生おっしゃるとおりの一つの大きな流れになっているというふうに私自身も認識しています。  これは、考え方というのは極めてある意味でわかりやすくて、原則はもう自由にやっていかざるを得ない、事前のコントロールというのは現実にはできないわけだから。そうすると、それをどのように調整していくかということになると方法は一つしかないわけです。できるだけみんなにちゃんとやらせるんだと。みんなにちゃんとやらせる方法としては、事前のガイドラインというものをつくって、それに違反した場合は極めて厳しくそれをパニッシュするという方法しかない。  その意味では、日本についてもそういった金融に関する手続が極めて真剣に一つのルールとして、制度として定着をする方向に向かわなければいけないのではないかというふうに思います。ただし、日本の場合は余りにも検査の人数の絶対数そのものがけた外れに少なくなっているわけですから、そういったプリコミットメントと同時に、現状の事実の把握をするためだけでもかなりの人員の増強は必要である。それに加えて、その先には今言ったペナルティーというものを改めて科していく必要があるというふうに思います。  考えてみると、実は世界の先進国の中で今、人口一億以上の国というのは二つしかありません。日本アメリカだけです。そういった複雑で大きな国には、先ほど実は中坊参考人がモラルの話を持ち出されて、私もモラルは大変重要だと思うんですけれども、モラルだけには期待できないという厳しい現実もあるわけで、その意味でもパニッシュメント、ペナルティーがあって初めてそれなりのモラルが保たれるという面は非常に大きいのではないかというふうに思います。
  52. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  先ほどちょっと触れましたが、BIS規制の見直しというのが真剣に論議をされ始めているようでございます。  九月二十二日、ニューヨーク連銀のマクドナー総裁がロンドンで講演をいたしました。その講演の中で総裁は、BISの自己資本比率規制を早目に見直す必要性が大きくなっている、金融機関健全性を示す指標として既にもう時代おくれになっているんだと。一、二年の間に著しく新商品が開発され、例えばクレジットデリバティブとか債権の証券化などは飛躍的に発展している現況であるので、銀行が負っている信用リスクの規模や性格が大きく変わっている現状にかんがみて、九九年中にも見直しの案を日米欧主要国で進めたいという提案をされているそうですが、日本がどこまでこういう認識を実務者が今持っているのか、行政官の間にあるのか、私は非常に疑問に思っているのでございますが、この考え方について先生の御所見をお伺いしたいと思います。
  53. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) BIS規制の見直しの話というのはもう何年も前から出てきている問題だというふうに私は認識しています。  ただ、日本議論されるときには、これをネガティブな方向とポジティブな方向と、今二つでその見直しをやったらいいんじゃないかという議論を一部の人はしているのではないか。一つは、ネガティブな方向で今のBIS規制を、自己資本比率による規制を厳しく当てはめると一時的に日本だけではなくて非常に多くの地域でクレジットクランチが起こる。だから、自己資本を厳しく見るというのを一時的に緩めてはどうか、しかしこれはネガティブな意味での見直しの話です。  先ほどのマクドナー総裁の話はもっと全く別のポジティブな方で、自己資本だけではわからない、ある意味ではもっと多様な指標を入れてもっと厳しくその健全化の指標を見なければいけないということで、これはもう間もなく、一、二年の間にこういった話で私はこの議論がますます進んでいくのではないかというふうに思います。  この点に対して日本の専門家がどの程度議論をしているかということに関しては、御指摘のとおりかなりお寒い状況で、これは学者も議論しておりませんけれども、私が知る限り、当局においても金融関係者においても、目の前の不良債権という火の粉を払うことにきゅうきゅうとなり過ぎていて対応が極めておくれている。日本実態も踏まえた上でのあるべき健全化指標の考え方というのを急いで煮詰めなければいけないということではないかと思います。
  54. 益田洋介

    ○益田洋介君 確かに、先生御指摘のとおり、我が国の日銀総裁がロバート・ルービン財務長官と会見をした際に語ったということをその後の記者会見で発表され話題になっております。これは真偽の方は別にしまして、もう既にBIS規制の八%だ、四%だということで判断をしてはいけないという時代になっているんじゃないかというふうに私は痛感しております。  先生の論文を一つ読ませていただきました。九八年五月、ある雑誌に載ったものでございます。「アメリカの財政再建に学べ。」という、非常に感動いたしました。村田昭治先生から、ぜひこういう機会があったら竹中先生をお呼びするように、こういうことでございまして、声をかけさせていただきました。  その中で、これは私はもう耳にたこができるほど聞いたわけでございますが、この言葉は橋本内閣時代から現在に至るまで、総理、大蔵大臣によって使われています金融システムの安定化のためにと、これは間違いだと先生は御指摘で、これは常套句だが本当の実態を示したものじゃなく、むしろそれを言うのならば決済システムの安定化だと、このような御指摘があって、私も全くそのとおりであると思います。  今現在、政府が用意しております三十兆円、今度仮にこの法案が通過をしたとしますと、通過しないかもしれませんが、したとしますと変わるわけでございますが、現在のところ三十兆円の公的資金の準備がございます。そのうちの十七兆円は決済システムの安定化のためだけれども、十三兆円はそうじゃないんだと。この数字は決済システムの安定化のためにどれだけの数字が必要かというような実態がわかりませんと言えないことでございますが、この十三兆円について先生はどういうふうな、今度は船を乗りかえて同じような公的資金を、実は投入の仕方を変えるだけでございますが、現在ございますこの十三兆円の枠、その使用目的、それについて先生はどういうお考えですか。
  55. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 御指摘のとおり、公的資金という言葉をずっと日本は使うわけですけれども、これはもう何を言っているかよくわからないわけであります。英語で言うとタックスペイヤーズマネーですから、税金というふうに言う方がいいわけですけれども、それにしても、公的資金といっても実は複数の種類の公的資金があるということをぜひ国民に理解してもらわなければいけない。非常にわかりやすいのは、決済システムの崩壊を防ぐためのお金、この十七兆円はまさに預金者の預金を保護するためのお金で、これは非常にわかりやすいと思います。  ところが、残りの十三兆円というのはまさに資本注入のために使う。これを組みかえて、十三兆円の枠ではなくて別にという方向で議論がされるわけでありますけれども、ではこれは何のためなのか、決済システムの崩壊じゃなく何のためなのか。私は、これは一言で言うならばまさにベールアウトだと思います。  ベールアウトというのは緊急救済という意味でありますけれども、例えばあれだけ市場経済を重んじるアメリカでも、クライスラーという一民間会社がつぶれそうになったときに連邦政府は融資保証を行ったわけです。これは本来資本主義の原則には反するけれども、これは非常事態だ、やむを得ないと。まさに今の日本銀行状態はそうなっているわけです。  それによって極端な貸し渋りが起こると、今度は日本の産業全体がクランチを起こしてしまう。その意味では、日本経済に対するベールアウトであるという位置づけ、これしかもうないのではないかと思います。そういった説明をぜひしていただきたいと思いますし、ベールアウトとしてふさわしいお金の出し方を考えなければいけないということだと思います。
  56. 益田洋介

    ○益田洋介君 さらに、先生は同じ論文の中で、日本は今、八〇年代の初期にレーガン政権が行ったレーガノミックスに学ばなきゃいけない、それはどういうことかというと、大幅な減税を行って景気を刺激する、しかし同時進行的に同額の歳出の削減を何年かかけて達成する、そのことによって市場が活性化するんだと、こういうふうな理論をお述べでございまして、さらに減税の中身も問題であろうということもおっしゃっております。このスモールガバメント、マーガレット・サッチャー女史が政権をとりました七九年、それから十二年間、私は同じ時期にイギリスにおりまして、ビッグバンに至るまでの大改革というのを目の当たりに見てまいりました。  日本では、省庁の再編と称して国土交通省なんてとんでもないものをつくろうという、私はこれは廃案にすべきだと思っておりますが、そういうふうな要するに箱を変えて中身を移すだけの話で、政治家がこういう考え方をしておったら、私はレーガノミックスに学ぶということからむしろ逆行してしまうのではないかと思っておりまして、減税の中身、それからスモールガバメントをつくるというこの二点について、先生の御所見をお伺いしたいと思います。
  57. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 実は減税の中身とスモールガバメントをつくるということは一体の問題だというふうに思います。減税の中身としては、法人税率の国際水準への思い切った引き下げということが必要だと思いますし、もう一つは、これは政治的には大きな混乱が予想されますけれども、やはり最高税率の大幅な引き下げということが必要ではないかと思います。つまり、日本の累進税制そのものを考えないと仕方ないということだと思います。  これは、今の時代が実は非常に開けたいわゆるフロンティアの時代になっていて、技術というフロンティアがあり、さらにマーケットというフロンティアがあり、そのフロンティアの時代には、速く走れる能力のある、いわばビル・ゲイツみたいな人には思い切り速く走ってもらおうと。そういう人に足かせを課すような高い限界税率はあってはいけないということになると思います。  実は、政治経済の専門家の間では以前から知られた論理があります。それはどういうことかといいますと、累進構造のきつい国は必ず大きな政府をつくるという一つの教訓です。  どういうことかといいますと、皆さんが今一つ社会だとして、非常に極端な累進構造になっていて、前の一列に座っている人だけが高い税金を払っている社会だとどうなるか。大きな政府をつくられて困るのは高い税金を払っている人です。後ろの税金を余り払っていない人は大きな政府歓迎です。役に立たない公民館とか役に立たない道路をつくられても、ないよりはいいだろうというふうに考える。  ここで、私がもし政治家であって、何か公約を掲げようとすると、ちょうど真ん中の人に公約を立てる。これは中位投票命題というふうに言いますが、真ん中の人に公約を立てて幅広く支持を集めたいというふうに思いますから、この国が累進構造が高くて、それで民主的であればあるほど必然的に大きな政府ができてしまうという経験則があるわけです。だからこそ、小さな政府をつくったアメリカやイギリスは同時に税制のフラット化というのを八〇年代に行ったわけで、この事実はやはり重視される必要があるというふうに思います。
  58. 益田洋介

    ○益田洋介君 中坊社長に一問だけお願いしたいと思います。  先ほど来話題になっていると思いますが、住友銀行に対して債権回収のための訴を提起されました、四十八億円。これに対して銀行の対応は、訴訟で負ければ支払いますよと。逆に言えば、裁判所で法律違反があったという判定が下されない限り回収には応じないんだと。この姿勢といいますか、経営といいますか、物の考え方といいますか、そういうものに対して、社長はどのような御意見をお持ちでしょうか。
  59. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私自身は、先ほどから申されているように、このような金融不安の中においていろいろ緊急避難的なことが行われなければならない、これはわかるわけであります。しかしながら、同時に受け皿としての適格性があるかどうかということについても厳しい目がまた必要ではなかろうか。すなわち、受け皿というものが信頼がないところに基本的な金融不安の原因がある。信頼性があるかないかということは、その金融機関の信頼、経営者に信頼性があるかどうかということがまさに一つの重要な要素ではなかろうかと思うわけであります。  そのような時期にあって、旧住専の問題は確かに過去の問題であります。しかしながら、かつて旧住専をごみ箱のように利用したということはこの国会においてもるる幾つかの例が出されて審議をされてきたところであります。我々としては、まさにごみ箱として利用された分に関して住友銀行の倫理性を問うたわけであります。  ところが、先ほど言うように、いや、それは最低の道徳に違反しない限りはいいんだと。こういう御見解をおとりになるということは、きょう現在もなおかつ現下の問題になっている金融機関の経営者の理念というものはそこにあるということになるわけでありまして、私たちが今問うておる、旧住専の時代の問題を問うておることは決して過去の問題を問うておるわけではない、きょう現在公的資金が投入されようとしておるこの金融機関の受け皿としての適格があるかどうかということでありまして、私といたしましては、住友銀行がおとりの態度は決してその意味における受け皿としての適格性をお持ちだとは判断いたしておりません。
  60. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。(拍手
  61. 笠井亮

    笠井亮君 中坊参考人竹中参考人、そして西崎参考人、お三方、きょうは大変貴重な御意見をありがとうございました。  私は、まず中坊参考人に伺っていきたいと思うんですけれども、今からちょうど半年前になると思うんですが、三月二十七日に本院の財政・金融委員会で中坊参考人からもお話を伺いまして、住専法が二次損失に公的資金を投入するというスキームになっている中で、国民に二次損失をかけないようにということで社長初め住管機構が大変に御苦労されているとそのときもお話を伺いました。そして、今懸命に回収を図っておられるということで承知しております。  先ほど来質疑がありましたけれども、金融機関が抱える不良債権をやはり道理ある方法できちっと解決をするということは、日本経済が直面する重要問題の一つだというふうに私も思っております。ただ問題は、だれの責任で、そしてそのコストをだれが負担していくのかというところが非常に大事な問題になっているのかなというふうに思っておりまして、乱脈経営のツケを国民が負わされるいわれはないということは今多くの国民が思っているところだと思うんです。  そこで、先ほどもお話がありました、今もありましたし、文芸春秋の十月号でもお書きになっていらっしゃいましたが、日住金の庭山氏に対する責任追及の問題とか、あるいは住友銀行に対する経営者の責任追及、紹介責任の追及を苦労して執念を持ってやっておられるというふうに思うんですけれども、社長が住専処理に我が国の現状と未来が見えるという形で強調してこられて、そして今実際にその処理の問題、調査も含めて取り組んでこられて、大きな意味日本の金融に今一番どういう問題があるのかということを感じていらっしゃるか。特に自己責任とかあるいは自己規律という問題についてどのようにお考えかということについて、まず大きく伺っていきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  62. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私自身といたしまして.は、先ほども申し上げましたように住専問題の後始末をいたしているという立場から申し上げますと、先国会で修正法案を通していただきましたように、二次ロスの二分の一と国庫納付とを相殺するというような法律、私としてはまず国会の皆さん方にお願いいたしたいと思いますのは、なるほど非常に国会では大きな議論がされます、しかしながら同時に、それが現場に落としたらどういうことになるかという点についてのところもよくお考えいただきたいと思うわけであります。  先ほども申し上げますように、国民に二次ロスをかけないということであれば、あのように法律を直していただくべきものではなかったかと思うわけでありまして、そういう意味では、国会におかれましても十二分にそのような面についても御判断をいただいてお願いしたい、このように思います。  さて、今、笠井先生がお尋ねになっておられますように金融機関の今の問題、私はやはり今これほど困難になったときには、先ほどから竹中先生、西崎先生のおっしゃっていますような大変な大量の公的資金の導入も、預金者保護を初めといたしまして金融システム維持のためにはやむを得ないと思います。しかしながら同時に、そのこと自体はまさに罪なくして人を罰した、つぶれたことについては一般国民、私たち自身は、何でそんな税金をもって賄わないかぬのかということについての原始的な問題点を持っておるのは事実であります。  そのようなところに対して金融機関というものが本当に、いや自分たちがまずかったよと。先ほども言いましたように住専の問題の誤りも、本来金融というものは人に金を貸すものでありまして、物に金を貸すものではない。物に金を貸すのは質屋であります。質屋さんが物に金を貸すものでありまして、それを物だけ見て金を貸した、こういう失敗の重ね重ねが先ほどおっしゃるようにバブルの被害をもう一層大きくしたというのも確かに事実なのであります。  そのようなことに相なっていながら、きょう現在さらにまたその何十倍かの大きな金が流れようとしておるときに、今現在の金融機関の経営者の方が本当にその点についてどこまで自覚をされておるであろうかという点が私は極めて疑問ではなかろうか。そうでなければ、あのような総会屋さんの事件が何回も起こったり、官官の接待が起こるわけがないわけでありまして、基本的にあの方々というのは受け皿としての適格性をどこまでお持ちか、このことがもっと内部からの厳しい反省がない限り、へまをしたらまたどぶに金を捨てることに相なるのじゃないか、私はこのようなことを懸念いたしております。
  63. 笠井亮

    笠井亮君 三月のときに法案をめぐって私たちもいろいろ意見がありまして御意見を申し上げましたが、やはり今おっしゃったような点、私も共感できる部分がございます。  そして、あの文芸春秋の中でも書かれておりましたけれども、それにしてもお話を拝見しながら、住友銀行国民の声をいわば雑音視する、雑音であるかのように言うような言い方というのは大変に私も驚いたわけでありますけれども、そういう点では、今の金融機関の中に公共性についての自覚といいますか、そういうのが本当にあるのだろうかということを率直に思うわけです。  金融機関に、銀行法にも定められている、そして本来の役割であると言われている公共性というのを自覚してもらうためにはどういうことが大事だというふうに感じていらっしゃるか、その点はいかがでしょうか。
  64. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 確かに、今おっしゃるように、銀行法の一条の中に、それではどれだけ公共的責任というものがあるのがうたわれているか。実は私が見た限りでは、今の銀行法一条には欠けておるように思います。  私は、そういう点も含めまして、本当の銀行の経営者というよりも、銀行そのものをどのように運営していくべきかという公共的な使命を帯びているということの自覚が欠けておるのではなかろうかと思うし、そのための法整備その他がやはり必要ではなかろうか。私は、当然のように銀行法一条そのものをもう一度見直していただく必要があろうかと思っております。  そのほか、まさにおっしゃっていただきますように、私は銀行方々が、もうければよい、我々が強くてよければよいということだけの論理ではなしに、先ほど言いますように、例えば当社債権回収するにいたしましても、血も涙もない回収はしない、あるいは同時に地域経済を考える、いろんなことがある。だから、自己資本率がないから即貸し渋りに走るという論理に必ずしも直結しないと思うのであります。  当社を例にとりましても、確かに今債権回収を図っております。その中においては、貸し渋りのためににわかにその話が進まなくなったという話をよく聞きます。率直なところ、我々は今都銀の人に、僕らの債務者が物を売ると、どこから資金借りてくるねん、都銀やと言うたら、いやそれは危ないさかいやめとき、どこか、それはこの話はならぬ話やで、だからもっと考えなさい。  今現実に我々が債権回収を図っておる担保物件の移動にいたしましても、そこに資金を供与しておられるのは地方銀行であったり信用金庫であったりするわけです。むしろ小さな銀行の方がきょう現在貸し渋りを防いでおられるわけではなかろうかと思っております。  そういう意味からいえば、やはり大手の銀行を初めとして、そこらあたりがもっと根本的に物事をお考え直していただくことが必要ではなかろうか、このように考えております。
  65. 笠井亮

    笠井亮君 今大事な点もおっしゃったと思うんですけれども、私は今法案審議にかかわりながら、やはり今やるべきことというのは、野放図に公的資金を投入して、そういう意味ではモラルハザードを助長することではなくて、預金者保護とか、それから善意な借り手を保護する、あるいは決済業務という形で金融機関の本来の業務というか任務を自己責任と自己負担の原則で行わせるということでやっていく必要があると思いますし、そうしてこそ本当に業界に自己規律が生まれて、金融システムについても本当の信頼というのが内外にかち取れるんじゃないかというふうに思っているところなんです。その点で、この委員会でも我が党は金融正常化法案等四法案を審議願っているわけなんです。  それに関連しまして、今度出されている三党の共同修正案の中では、いわゆる破綻した銀行だけではなくて、それ以外の一般銀行不良債権まで買い取ることができるという道が開かれるようになっているというふうに思うんです。そうしますと、責任追及ということになりますと、破綻すればそれはまた責任ということは非常に明確になると思うんですけれども、そうではない銀行と、そしていろんな状況や理由がつくことになるのかもしれませんけれども、不良債権を買い取るということでそういうところからあれするとなりますと、責任追及でもなかなか困難が予想されるし、銀行の側からも、そんな追及されたらたまらぬ、今システムが大変だからとにかく入れてほしいんだ、あるいは不良債権を買い取ってほしいという話になると思うんです。  今おっしゃっていたようなモラルハザードといいますかモラルの欠如といいますか、そういうこととの関係で、一般銀行にもこれを広げて不良債権の買い取りをやるというような仕組みができるということは果たしていいのだろうかと私は思っているんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  66. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 確かに笠井先生がおっしゃる側面、私も先ほどから銀行のモラルハザードがこれほど問題であるということは言っております。しかし、他面、当初申し上げましたように不良債権がある、あるいはそこで債権が滞っておるということは、我が国経済全体の中でどういう役割を占めておるのかということ、そしてそれを回収することが、血栓を取り除く作業が必要だということもまた否めない事実ではなかろうかと思っております。  そういう立場から、私としては、血栓を取り除くという意味から、民間金融機関不良債権であったとしても、場合によっては、先ほどまさにおっしゃるように緊急避難的その他いろんな要請のもとにおいても全くそれはしてはならないことかどうかはもう一度考えてみる必要がある。直ちにすべしということになるかならないかは別問題にいたしまして、少なくとも血栓を取り除くという立場からは、やはり具体的現実の問題として考え合わせなければいけない。  そういう意味で、新しい会社整理回収機構の検討課題となっておることについては私は前向きに受けとめていきたい、このように考えております。
  67. 笠井亮

    笠井亮君 おっしゃるように、血栓を取り除く仕事というのは本当に大事だと思うんですけれども、一般銀行となりますと、これはまた抱えているものを公的資金で国の側に移してしまうとその分結局は国民の負担ということに、そういう意味では大きく言えばなるということで、この点はなかなか難しいのかなという気が私はしておって主張しているところなんです。  それで、もう一つそれとの関係なんですけれども、ではそうやって不良債権処理すると、先ほど規模の問題もいろいろ言われておりましたけれども、今、国会審議の中でいわば新しい日本版RTCといいますか整理回収機構が、短絡的にちょっとこういう言い方をさせていただきますが、できさえずれば不良債権処理というのは一気に進むかのような、そういう議論も一部にあるのかなというふうに思っているんですけれども、私は機構をつくってそこに権限を与えて強化すればできるというふうな簡単な問題じゃないんじゃないか、そうであればもうとっくにそういう形で考え出してやれたのかと。しかし、ここまで引きずってきてもなかなか処理ができない。不良債権処理というのはそう簡単にいくものじゃないということをいろんな現状も含めながら感じているところなんです。  本当にそういう点では、実際に携わってこられながら、処理していく上でいっぱい山がある、越えなきゃいけない問題があるというふうに感じておられると思うんですが、実際に本当に障害になっている問題、リアルな例でも結構なんですけれども、機構をつくる、それだけじゃとどまらない、本当にこういうことをしなければ抜本的にこの問題というのは解決できないんだという点で、御苦労されている点というので率直に御紹介いただければというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  68. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 多少手前みそな数字で恐縮ではありますけれども、当社は現実に債権回収が始まりまして、この九月末をもってちょうど二カ年間が終わりました。二カ年間の間に約一兆二千五百億のいわゆる債権回収したわけであります。この会社は大体住専法の中においては十五年と言われておりました。そしてその率は全体の約三〇%に達しております、一兆二千五百億という数字は。そうすると、かなり短縮されてなされておるわけであります。  しかも、このような経済不況の中で、そしてまたなぜこれだけ回収が進むのかというところが一つの大きな課題ではなかろうかと私自身も考えております。それにはやはり私が思いますのには、多くの社員の方々がそれぞれ国民に負担をかけてはならないという大義名分のもとに、一つ一つが小さな目標を持ってインセンティブに働いていただいたおかげではなかろうかと思っておるわけであります。  私は、これから生まれようといたしております整理回収機構も、基本において民間会社であらねばならないと言いましたのも、先ほども言いましたように親方日の丸になるとどうしてもだめなのであります。人間が本当に真剣に働くためには、身を粉にしてやるということになるためには、収支が償い、そして自立することであります。決して公の、もちろん全株国のお持ちの会社でありますから公の管理監督を受けるのは私はわかります。しかしながら、同時にこの会社が自立して、収支が償う会社に相なるようなシステムをどうかお考えいただいて、そのようなもとでなければ、また親方日の丸のことにされると私はこの会社たちまち今のようなことができなくなるのではなかろうかということを危惧もいたしております。
  69. 笠井亮

    笠井亮君 ありがとうございました。いただきました御意見参考にさせていただきまして、さらに審議の中で生かさせていただきたいと思います。  時間になってしまいまして、竹中参考人それから西崎参考人には早期是正措置の問題や公的資金規模の問題で大いに伺いたいところだったのですけれども、また別の機会にさせていただきます。きょうはありがとうございました。(拍手
  70. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 三人の参考人の皆さんには、本当に本日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。社民党の大渕絹子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  中坊参考人には、今回の法律の制定に当たりましては大変貴重な御提言をいただきながら、整理回収機構法律の中に盛り込まれていきましたことは、私たちも非常によかったことだというふうに思っております。これからも今までの住専の処理機構の中で培われましたノウハウを生かされて、この金融機関不良債権が本当に早急に回収ができるように御尽力をいただければというふうに思うところでございます。  そこで、この国会の審議の中で宮澤大蔵大臣は、長銀の処理に対しまして、この法案ができたら破綻処理がなされて、一時国有化の後、整理をされて、健全銀行へ吸収合併をされていくのがよいのではないかという趣旨の御発言をなさっておりますけれども、長銀の残し方といいますか、長銀の処理のあり方に対して、中坊参考人はどうしたら一番よいとお考えになるのか。ここは大変難しいだろうと思いますが、もし長銀というものが具体的に入ることによって答えられないとすれば、一般的にということでもよろしゅうございますが、御意見をお聞かせいただければと思います。
  71. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私は、率直に申し上げまして、債権回収現場の指揮官でありまして、竹中先生その他の方がおっしゃるように全体のことがよくわかっているというわけでは決してありませんので、おっしゃるように長銀の問題に関して、そういうようなことはなかなか私としてもはっきり申し上げられる立場にはありません。  ただ、私がこの国会でこのようなことを御報告させていただくことがあるいはあれかもしれませんが、当社の中には長銀が母体行となった第一住宅金融、それが当社では今第五事業部になっておるわけであります。そうすると、その第五事業部の幹部の方々は大方長銀から実は出向されてきているわけであります。そのような会社から出向されている方々の第五事業部が、実はこの二年の間、いつも一番たくさんきちっと回収を上げていただいているところなんです。その人たちが、きょう現在私の職場で現場で働いておられまして、本当に時に涙が出るようなかわいそうな思いで自分の親銀行がつぶれていくということを目の当たりにしながら、しかも現場ではそのゆえにこそ、逆に我々が債権回収をどの社の人よりも気張ってやらないといけない、このようになって懸命に働いていただき、その成果が上がっていることを私はいつも感謝いたしております。
  72. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございます。  長銀も今年の六月ごろでしたら、株価もまだ二百円になっておりまして、この時期に資金投入が、公的資金がスムーズに注入をされるようなことが行われていたら、今のような混乱を引き起こすことはなかったのではないかというような憶測もあるわけでございます。今日、この事態まで放置をしてきた当局の責任が私は厳しく問われるのではないかと思いますけれども、法律家の立場からはいかがでしょうか。
  73. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 法律家の立場では、正直言って何とも言えません。確かに行政であり、あるいはそのような問題でありまして、私としては現在の立場からは申し上げにくいところであります。
  74. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  竹中参考人にお伺いをいたします。  日本の個人金融資産残高の構成は非常に預貯金に偏っている。アメリカですと、私有価証券に四九%、そして現預金は一三%になっていますけれども、日本では有価証券はわずか一〇%、そして預貯金に五六%ということで、非常に貯金に頼らざるを得ないというのが今の日本の現実にございます。この預貯金に頼らざるを得ないという国民資産構造そのものが、私は今回のバブルを引き起こし、そして銀行に大きな不良債権を積み上げていった元凶になっているのではないかというふうに思いますが、この貯金にしか頼れない今日の日本の状況を変えていくための処方せん、これがいわゆるビッグバンということにつながっていくのかと思いますけれども、そのことを端的に教えていただきたいと思います。
  75. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 先ほどから、銀行融資ではなくて代替的な金融ルートが必要だということを何回か申し述べさせていただいているんですけれども、大渕委員の御指摘はまさにその点であると思います。  今まで日本には、非常に極端な二つ金融ルートしかなかったというふうに考えられる。  一つは、銀行を通して貸し付けで企業に行く、これはまさにローリスク・ローリターン。もう一つは、家計から直接に企業に行く、株とか社債、これは直接金融ですからハイリスク・ハイリターン。極端なローリスク・ローリターンと極端なハイリスク・ハイリターンしかなくて、人々は今の段階では老後に備えてローリスク・ローリターンの銀行に過大に偏ってしまう。重要なのは、やはりその中間にあるミディアムリスク・ミディアムリターンのルートがほとんどなかった。これは規制によって自由になされなかったということだと思うんです。  具体的に、ミディアムリスク・ミディアムリターンの典型として、やはり投資信託のようなものが自由にできてくる。それが市場で運用される。このお金がではどこに行くのか、どういうふうに企業に回るのかということを導かないと金融は完結しないわけでありますけれども、これは私はやはり広い意味でのノンバンクを通して企業に融資されるということだと思います。そうすると、二つの法整備、これはぜひ先生方にお願いしたいのでありますけれども、このミディアムリスク・ミディアムリターンの新しいルートを開拓するためには、やっぱり最低限二つのことを非常に急がねばならないのではないか。  第一は、こういった投資信託等々に安心して投資できるようなそういった法律、まさに金融サービス法のようなものだと思います。これができるかどうかというのはもう致命的に重要だ。もう一つは、今度はノンバンクが銀行から借り入れるのではなくて、市場から社債で調達してこれを企業に貸せるようにする、これは具体的にはノンバンク社債法のようなものだと思います。  この二つができれば、そのミディアムリスク・ミディアムリターンのルートは通る。これこそが金融における成長産業です。実は、銀行を通した従来型の金融というのは、これは金融における衰退産業です、はっきり言いまして。残念なのは、我々が今までこれを放置してきた余りに、この衰退産業に何十兆円という補助金を今出さざるを得ない状況になってきた。いかに今までの護送船団方式というのが高いコストについた政策かということを証明してしまったのではないかと思います。
  76. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  西崎参考人に、今度創設をされますサービサー制度についてなんですけれども、アメリカではもう長い間サービサー制度は定着をしておりまして、そしてその不良債権回収業務を通じながら多くのサービサーが淘汰されて、そして優良なサービサーしか生き残れないという市場を形成しながら、今の日本不良債権回収にまでもう乗り込んできているという実態があるわけでございます。  その中には、強力で迅速な強制執行体制があるということとか、あるいは債務者保護のための回収業者の取り立て行為に対する厳しい罰則を法律で規定しているとか、あるいはまたさっき中坊さんもおっしゃいましたけれども一血も涙もある債務者の最低限の生活保障、資産保全のための倒産法などというのがきちんと整備をされているというふうに、本当にメモ的に見ただけのことでしかわかりませんが、これらの中身について詳しく御存じでしたらお教えをいただきたいというふうに思います。  あと二、三分しかありませんけれども、お願いいたします。
  77. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 実は、私はその分野はそれほど専門じゃありませんで、不正確なことを言うとあれですから、後ほど資料で実態がどうなっているか、それをお届けしたいと思うんです。  ただ、いずれにしても、現実のこの不良債権処理、そのスキームから細かいところまでこれまでも随分、例えば担保不動産の処理とか特別目的会社をつくったりやっているんだけれども、なかなか動かないわけです。もちろん、景気の実態が非常に大きいんですが、もっと総合的に仕組みをつくっていかないと、それでさっき私は景気対策で五十兆円なんという大きいことを言いましたけれども、それはやっぱり二十一世紀にかけての先行的な、例えば市町村に土地を先行投資させるとか、ですから金融分野あるいはそういった不動産分野だけじゃなくて、もう全体的な包括的な立場で考えていかないととても難しいと思うんです。その点、ぜひ委員会でのあれを期待したいと思います。
  78. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 済みません。専門でないところを聞いてしまいまして、申しわけありません。  それじゃ、もう一つ最後に、今新しい破綻前処理法律をつくる中で、その資産の有価証券、銀行が持っている有価証券の評価を低価法にすべきであるかあるいは原価法にすべきであるかという議論があり、両論併記を言う者あり、あるいは原価法にすべきであると主張する者あり、どちらにも言い分があるわけですけれども、西崎参考人はどうお考えになりますか。
  79. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 仮に原価法をとっても含み損ははっきり出さなきゃいけないわけですし、マーケットはきちっとそれを評価して、つまり低価法、時価による自己資本比率をすぐ計算するわけですね。ですから、マーケットと直結している大手行については私は全く意味がないと思うんです。原価法をとってもマーケットは低価法で判断し、時価で判断し、マーケットのアクションを起こすということだと思うんです。  ただ問題は、地域金融機関の場合、低価法でいくと株が下がっている段階では自己資本比率は下がります。そうすると、それに伴っていろんなペナルティーが出てくる。資本注入あるいは経営上の問題とか、これは地域の小さい金融機関、協同組織系というのはそんなにマーケットとは直結していないわけです。  ですから、そういったところに私は選択制を認めて、低価法による混乱は防いだ方がプラスだと、そういうふうに思います。  大手銀行については、もう全く意味のないと言うと語弊があるかもしれませんけれども、マーケットとの関係では意味のないシステムだと思います。
  80. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。(拍手
  81. 月原茂皓

    月原茂皓君 自由党の月原です。  大変お忙しいところ、参考人にはわざわざお出ましいただいて、我々に教えていただけることを感謝しております。  最初に、中坊参考人に。  不良債権一つつくった原因として先ほどの議員の質問にも答えられておったんですが、私はやみの勢力というものに対して、抽象的にはやみの勢力は切ったらいいとか言えるんですけれども、住友銀行事件、別の意味の名古屋の住友ですね、それから和歌山の阪和銀行ですか、そういうようなところで現実に家族がおどされ本人が殺されていく、これを守らない限りどう言っても私は難しい問題があると思うんです。  昔の話ではないですけれども、日本が第二次世界大戦になだれ込んだところの原因で軍部のいろいろな将校がと言っておりますけれども、あのときにやっぱり一人一殺というものが一番私はきいたんだろうと思う。だから、本人と家族というものを守るということでなければ、どんなに口で言ってもなかなか債権回収というのは本気で取り組めない。これを守るということですね。それは中坊参考人先ほどおっしゃっておりましたが、それを実感されておると思うんです。  そういう意味で、警察が最近民事不介入の原則を解いて、そしてまたいろいろな面で協力しているということはいいことではありますが、参考人からもう一度、私はそういう意味のものができなければなかなか不良債権が、日本バブルの生い立ちからずっと見ていくとやみの勢力が入ってきておるわけです。だから、そこの点をどうずればいいかということをお話し願いたいと思います。
  82. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 先ほども申し上げましたように、不良債権回収というものがやみの勢力が非常に出てきやすいところでありまして、非常に汚いことになりかねない。だから、効率一点張りで債権回収に走ると大変なことが、二次公害が発生するのではなかろうか、このように考えられるわけであります。  ところで、そういうやみの世界とそれでは絶縁してやればいいじゃないかというけれども、それがなかなかできない理由は一体なぜなのか。私は、大きく分けると三つの立場からそれぞれ考えないといけないと思います。  まず、企業の側にとりましては、そのような事件を確かにおっしゃるように告発すればよいと。そうすると、告発といっても、事件がありましたからと警察に持っていったからといって、警察はしてくれはらへんわけです。やっぱり証拠がどうやあれがこうやと結構手間がかかる。手間がかかり、暇がかかり、お金がかかる、そういうことは企業家にとってまず好ましいことではない。それぐらいなら、先ほど言いましたように、涙金を払った方が早く解決できるというわけです。その上に、先ほどおっしゃったように、へまをすればそういう人と関係すれば自分の命がねらわれる。こういうものは、企業家にとっては、やみの勢力があったときにはそれと手を結ぶ方がやすいになりがちなんです。  同時に、二つ目に考えないといけないと思いますのは、警察側にとりましても、先ほど言いましたように、このようないわゆるちょっと頭が要るような犯罪というのは手間が要るわけです。その割に刑は軽い、小さな事件。そうすると、やっぱりやるのはおこがましい。そして民事不介入の原則がある。それから同時に、彼らの言葉をかりて言えば、民間の方も確かに悪いわけでして、はしごをおろすと、こう言わはる。すなわち、すぐ示談をしはるわけね。そうすると、告発してすぐ示談がついたら告訴そのものを取り下げてしまう。せっかく警察は捜査に入ったのに、はしごをおろされてしまう、こういうことをおっしゃいます。  それから三つ目には、このような小さな暴力なら暴力と対抗しておることをマスコミがどれだけ報道されるでしょうか。何かがあったら本当に洪水のように報道はされるけれども、一つ一つの小さな暴力と対抗している姿というのは余りマスコミは報道されない。  私は、このように考えてみますと、やみの勢力と手を切らないといけないということは抽象的に言っても、それがなぜ実現しないかということについてはこのようないろんな原因が複合的に関係しておるわけです。  しかしながら、今の三つの場合の全部に共通しているものが一つあるんです。それは自分たちが割に合うか割に合わないかだけで物を決めているということです。ここに私は問題があるのではないか。我が国においては、競争に勝つためには先ほど言いました効率、すなわちなるべく割に合うことをやる、割に合わぬことはやらない。この主義が、別の言い方をすればエゴが我が社会の中で充満してしまって、本当に責任であるとかそういうことを語る前に、パブリックを言う前に個人のエゴのみが非常に何か強調されてきた結果、やみの勢力との絶縁ができなくなってきておる。  そして、やみの力がどれほど強いかということは、暴力はいかにしても法律よりもなおかつ強いのでありまして、そういう意味の恐ろしさということを今考えなければ、不良債権回収は必ず二次公害を発生させ、やみの勢力を非常に大きなものにするのではなかろうか、そのことを危惧いたしております。
  83. 月原茂皓

    月原茂皓君 次に、竹中参考人にお尋ねしますが、大局的ないろいろな話は多くの方がされておるので重複を避けて、いろいろこれから資金を投入するとかの話が出てくる、結局国の債務がふえていく。そうすると、私はそれほどゴルフをしているわけではありませんけれども、ゴルフの例を挙げると、自分の実力以上におれはパーで回るんだというと物すごくかけ離れるものだから、一つ二つはむだにしても、後で振り返ったら、あれは惜しいことをしたな、あのとき慎重だったらなと、こういうようになるので、ダボぐらいのところをちゃんと基準に置いてやるとプラス、マイナスで努力するんです。  それと同じように、先ほど竹中参考人がおっしゃった点のことでお尋ねしたいんですが、どういう考えを持たれておるかというのは、国の債権というのは五百四十兆マイナスがある、国と地方合わせて。それがゼロになるのが正しい。それはそうでしょう。しかし、ある程度の額のものならば、家を建ててローンで払っておるのと一緒のように、管理可能な状態というものを国民に示すのが私はいいんじゃないか。そうすると、その目標が非常に、そこまで行ったらまた次のことを考えたらいいんです。  そういうようなところで、国債の管理という点から、適切な国債を抱えながら生きていく国家という基準というのは求めることができるんでしょうか。そのことをお尋ねしたい。
  84. 竹中平蔵

    参考人竹中平蔵君) 基本的にそういった客観的な基準があるかというふうに問われれば、やっぱりないというふうにお答えせざるを得ないと思います。ただ、幾つかの留意すべき事柄がある。  まず、日本はこれだけ貯蓄の高い国ですから、財政赤字をゼロにするなんてそんなことはあり得ない。そんなことをすると大変なことになります。かなりの国債を抱えてそれを国債として運用していくことは、国民としての貯蓄の運用手段としてもいいことです。ただし、一つだけ問題があるとすれば、それはやっぱり世代間の不公平だということになります。世代間のある程度の不公平があるということを理解した上でそれを管理していくのならばいいだろう。  具体的にどのぐらいの不公平が生じるかという一つ参考例を申し上げますと、これは世代会計という考え方があるわけです。今、六十代の日本人の方が生涯を通じて幾らの税金を払うか、年金の掛金を払うか、一方で幾らの公的サービスを受けるか、これは個人にとっての公的部門の収支決算。これを六十代の方について出してやる、一方で十代の方について出してやる。大体大ざっぱにこういう姿になります。  今ぐらいの財政の構造を前提にするならば、六十代の方は生涯を通じて払い込む税金よりも受け取るサービスの方が四千万円ぐらい大きくなるわけです。これは物すごい気前のいい政府、六十代の方には政府は国民全員にマンション一戸分ぐらいただでくれている社会です。しかし、社会全体ではただ飯はありませんから、必ずだれかが払う。これを十代について計算するとほぼこの逆になって、マイナス四千万になる。プラス四千万とマイナス四千万ですから、ネットで八千万の差。  恐らく、これは常識的に限界点を超えているだろうというふうに判断される。子供たちの方が我々まり豊かになるわけですから少し負担してもらう方がいいにしても、こういった社会だと安心して子供を産めないし、子供を送り出せない、そういう状態国民はもう既に肌で感じているのではないかと思うんです。  その意味で、やはり適度な、これは非常に難しいですけれども、国債が膨張していかないような、かつ、高齢化社会とともに我々の貯蓄は間違いなく減ってくるわけですから、これに対応した国債の管理は必要であるということだと思います。
  85. 月原茂皓

    月原茂皓君 最後に、再び中坊参考人にお尋ねします。  今非常に御苦労されていろいろ回収の仕事をされておるんですが、その観点から見て今後の一番大きな問題は、私は第正分類の細分化というかその評価だと思うんです。どういうふうにつかんでいくか、そういうことを精査するために今からどういうふうな、経験からいってどういう点が重点になり、どういう整備をしなければならないかということを教えていただきたいと思います。
  86. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) このことは当社に具体的にあった例でありますけれども、確かに住宅金融債権管理機構が旧住専から譲り受けました資産、それには一応大蔵省がおっしゃるように一つの譲り受け価格というものが検査の結果決められておりました。しかし、それはそれじゃ現場へ行かれて本当に担保物件を見てつけられた価格ですかといったら、いや、そうじゃないというわけでしょう。そうするとやっぱりそこで問題がある。実際見に行ったら先ほどのように暴力団がいっぱいおって、あるいはいがんでおってこないになっておった、これで一体どうなりますのやという話をしました。  また、信用枠というのがあって、これは何も担保はないけれどもちゃんと払っているからいける、そうしたら、価格を決めたときはあっても、我々が実際譲り受けたときは一年以上たっている。その間にいっぱい業者はつぶれているわけです。これでもやはりこの価格だとこうおっしゃる。だから、そういう点について私は問題がある。  だから、いずれにしてもつぶれました銀行、あるいはいろんな形で資産を譲り受けるときに、その譲り受け価格をだれがどのような方法で決めるかということについては極めて大きな問題があろうかと思います。  当社についてもそれで非常にもめました。私がたまたまとりまして、また大蔵省の方も是認してやっていただいたのは、見積譲渡価格ということにしたんです。  すなわち、当社ができましたのは七月二十六日です。そして、住専七社から資産を譲り受けましたのが八月三十一日なんです。その期間に担保の実査のしようがない、見ようがない。第一、うちの社員が入っていくのは十月一日ですから、人もいないのに精査のしょうがない。だから、私は、とりあえずはきょうのところは見積価格にしておいてもらえへんか、そしてそれから後に調べさせて、それで見積譲渡価格から確定価格ということにさせていただけませんでしょうかということをお願い申し上げ、大蔵省の方も是認していただきまして、旧住専七社から我々が資産を譲り受けましたときは、八月三十一日付の譲渡契約書におきます金額は見積譲渡価格ということに決めさせていただきました。  率直に言って、このようなきめ細かい対応がまた必要ではなかろうか。だから、Ⅱ分類、Ⅲ分類、どこで線切ったという単純なことだけではいけなくて、そのようなこともまた、今後新しいこの整理回収機構に引き継ぐ際の価格の決め方についてはいろんな御研究をいただきたい、このように考えております。
  87. 月原茂皓

    月原茂皓君 西崎参考人には時間がなくて申しわけありません。  以上で終わります。(拍手
  88. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 中坊参考人に対しまして、今、当委員会にかかっております債権回収業法案についてお尋ねいたしたいと思います。  実は、この五月にワシントンで日米首脳会談が開かれて、日本側の橋本総理に対してクリントン大統領が、日本銀行の抱えている不良債権はもう大変な問題である、早期に断固たる措置をとれと。私に言わせれば内政干渉だというんですけれども、橋本さんは恐れおののいて帰ってきて政府・与党の検討会を開いた。その席で出たと思われるんですけれども、特別調停委員会制度、これをつくったらどうだろうかと。今これは司法事務としてやられておるわけですけれども、手間暇がかかる。一方、不良債権処理はもう焦眉の急である、早期にやる必要がある、件数も多いということで特別委員会制度をつくれと。  準司法的な機関をつくりまして、そこに大量に銀行不良債権問題を裁かせる一つの考え方だろう、評価していいのかと、私はそう考えておりましたら、この特別委員会制度は一体どこへ行ったのかよくわからない。かわりに出てきたのがこの債権回収業に関する法案で、これは株式会社をつくって、そこで銀行の抱えている不良債権回収させよう、こういうことであります。  今この仕事は弁護士がやっておるわけでありまして、債権だから回収すればいい、何が何でも回収しろ、そういうわけでもないのであって、手続的にあるいは法律的に大変難しい問題が一件一件にあるし、債務者側の人権、これも考える必要があるわけであって、深夜に押しかけたり電話でどなったり嫌がらせをしたりということは厳に慎むべきことでありまして、それだからこそ、法律家である、また人権について深い関心を持っておる弁護士の仕事と、こうなっておるわけであります。  しかし、弁護士の数が足りない、何とかしょうということでこの会社案が出てきたとも聞いておりますけれども、今現在、弁護士が足りない、この分野はどうしているかというと、今、中坊参考人がおっしゃったやみの勢かである事件屋さんたちが大体解決しておるわけですね。彼らは弁護士法違反に恐れおののきながら、ひっそりと陰の世界をうごめいて不良債権というか債権回収に当たっておるわけであります。  この法案は、そのやみから彼らを引きずり出してきて公認してやろう、弁護士不信論に立って、そしてやみの勢力を公認しよう、事件屋公認論の法律ではないか、まことにもって理解しがたい法律だなと、こう考えておるわけであって、日弁連がよくこんなものをなぜ承認したのかと不思議でしょうがないわけであります。  それから、最初は、これは銀行の抱えている不良債権をどうにかしょうというところから出発したはずですけれども、法案をごらんになったと思いますけれども、いっぱい金融機関なるものが並んでおりまして、銀行以外の金融機関、最後には保険会社まで登場しておって、あれあれと、こう思っておりましたら、その先にさらにまたいろんな連中がぶら下がっておりまして、リース会社とかノンバンクまでこれはぶら下がっているんですね。  これは、多分に長銀の抱えている日本リースその他のノンバンクの問題が頭にあって立案者はこういうふうに、あの問題も大変だ、あれを解決しないと何ともならぬ、こういうことで始まったんだろうと思うんですが、これはもう明らかに、貸金業と言うと非常に聞こえはいいんですけれども、高利貸しなんですよね。銀行の関連会社だと言ってみたって、法律的にはもうほかの武富士その他の会社と全然変わらない、高利貸しなんです。  高利貸しの債権を取り立てるために国が一生懸命こんな法律をつくってやって、そしてこの制度を利用してくださいよと。弁護士に頼むと大変ですから、手間暇と費用ばかりかかりますから、我々はこういう会社で、高利貸しさんあるいはリース会社債権を簡単に取り立ててあげますよと、こう言っているような感じなので、私はとても承服できないなと思うわけなんです。  例えば、私が債権を取り立てようとしますと、弁護士に頼んで、手間暇もかかる、金も取られる。この制度を利用しようかと思うと、あなたはこれは利用できませんと。それはだれが利用しているかというと、あそこの高利貸しが利用している。何だこれは、形を変えた法のもとの平等に反する憲法違反の疑いすらあるような法案ではないのか、こういう気がしております。  日弁連の会長まで務められました中坊社長、こういう問題について、しかも特に人権感覚その他にもすぐれておるというふうに聞いておりますので、一体どう考えるのか、識見のほどを示していただければと、こう思います。
  89. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私たち一般にサービサー法と言っているこの法律が国会に今かかっているのは御承知のとおりであります。  私自身は、元日弁連会長という立場ではなしに、住宅金融債権管理機構の社長としてこの法案をつくられるに際しまして私自身にも意見を求められたことがありました。その席上、私は佐藤さんが今おっしゃっているのとほぼ同じようなことをそのときに申し上げてまいりました。  確かに、法律事務を独占したと言われている弁護士法七十二条、その前身ができましたのは昭和八年でありまして、いわゆる非弁護士の法律事務の取扱に関する法律という特別法ができたのが昭和八年、自来今日まで約六十年、このような事実が出ておった。これは、先ほどから言いますようにいわゆる債権回収という仕事は紛争処理ということであって、そこには当然汚いいろいろな問題が起きてくるから、そのために一定の職業に限ってでないとやらせないという法律がこのようになってできたのではないでしょうか、それを全く無視するようなことはいかがなものでしょうかということは、私自身もその際に申し上げたところであります。  したがって、今の法律を見ていますと、そういうこともあるのかと。要するに、弁護士が役員の中に入っていなければならないということにはなっているようでありますけれども、私はその際にも若干申し上げたのですが、それはやはり社長自身が弁護士でないといけないのではないでしょうか、そうでなければ、弁護士というのは日本弁護士連合会という明確な監督機関がありますから、そこですべてを取り仕切るということがまず必要ではないでしょうかというようなことを申し上げました。  しかしながら同時に、私自身は弁護士といたしましても極めてじくじたるものがあります。それは弁護士法七十二条で法律事務独占をしながら、本当に我々弁護士が全国のいろいろな問題の法的な需要にこたえておるのか。私がかねがね言っています二割司法そのものであって、多くの国民方々にまだ御迷惑をかけているのもまた事実であります。その意味におきましては、元日本弁護士連合会会長といたしましても極めて遺憾である、このようにも考えておるところであります。  したがいまして、このような法律ができてくる、そうしたら私としては、弁護士としては大変残念であり、また決していい方向ではないと思うけれども、しかし社会においてそのような要求があるのもまた事実であります。したがって、我々としては、何とかしてそのところを弊害の少ないようにしなければならない。  率直に言って、私がこの会社の社長になりましたのも、だれも余り引受手がないのをやりましたのもそのためでありまして、本当に今いささか司法の内部の責任を感じている人が少ない。だから、そのためにせめて司法の理念を持って回収に当たろうとして私も社長になったわけであります。  その意味におきましては、このような法律ができていくそれなりの原因もあろう、そしてまた、そのことについての弁護士の責任もあろう。しかし同時に、それはまた佐藤さんが今御指摘になったような弊害も呼ぶことになってくるわけでありまして、そのような弊害が何とかして起こらないようにこの法律が厳格に運用されていく必要があるのではなかろうか、私は現時点においてはこのように考えておるところであります。
  90. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後に、一言だけ。  中坊社長らしくない大変甘い考えだと思いますよ。こんなことをやれるのはプロの事件屋しかいないんですからね。社長は裏の方で頑張っているだけ、ただ座っているだけであって、一件一件手先になって頑張る、やるのは皆事件屋さんたちです。そのことをきちっと理解してください。  終わります。
  91. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人方々に一言お礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後四時に委員会を再開することとし、休憩いたします。    午後二時五分休憩      ―――――・―――――    午後四時開会
  92. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、畑野君枝君が委員辞任され、その補欠として岩佐恵美君が選任されました。     ―――――――――――――
  93. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 債権管理回収業に関する特別措置法案外十一案を議題とし、休憩前に引き続き参考人方々から御意見を伺います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。  本委員会は、現在、我が国経済に喫緊の課題である金融再生に関連する債権管理回収業に関する特別措置法案外十一案の審査を行っておりますが、本日は皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査参考にいたしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後二時間三十分にわたり委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、岸曉参考人にお願いいたします。
  94. 岸曉

    参考人(岸曉君) ただいま委員長から御指名をちょうだいいたしました岸でございます。  本日は、金融機能再生のための緊急措置に関する法律案を初め諸法案に関しまして、私どもの意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして、心より感謝を申し上げます。  まず初めに、諸先生方にはこれまで、我が国金融システムに対する内外の信頼を早期に回復させるための方策について、まさに不眠不休で御検討を重ねていただきました。金融界に身を置く者といたしまして、その御尽力に心からお礼を申し上げます。  さて、御承知のとおり、このところ内外のマーケットは我が国の金融システムに極めて敏感な状況にございます。今週月曜日には日経平均株価が終わり値ベースでは実に十二年八カ月ぶりに一万二千円台に下落いたしました。日経平均株価が三割、約四千円下落いたしますと、時価総額の減少額はブラジルやロシアのGDPに匹敵いたしますし、一割の下落でも香港やシンガポールのGDP並みの資産価値が消失いたします。我が国経済、金融の立て直しは急務であると存じます。  また、このところ邦銀の外貨資金の調達が厳しい状況になってまいりました。ジャパン・プレミアムも徐々に拡大する兆しが見えますし、邦銀との取引を控える海外金融機関もあらわれております。そうした中で、今後外貨調達が不可能になることも想定して、邦銀は何らかの縮小策をとらざるを得なくなりつつあります。  私どもの海外拠点では、お客様が取引のある邦銀から外貨資金を調達する際にかなり高いレートを提示されるとか、そもそもレートを提示してもらえない、あるいは三カ月以上の長目の資金を出してもらえないといったような御相談がふえてきております用地場の外銀から資金を調達できるのは業績優良な製造業におおむね限られており、特に海外新規進出案件で外貨資金の調達が厳しくなっております。すなわち、我が国企業の海外展開がかなりの制約を受けつつあります。  このような状況から早く脱するため、効果的な景気対策を実施していただくとともに、金融システムの安定化に向けた法案の早期成立を図っていただくよう心よりお願い申し上げたいと存じます。  昨日は、日経平均株価が前日比八百三円九十七銭という大幅上昇を記録いたしました。円相場は米国で一時百十八円台まで上昇いたしました。きょうはちょっと日経平均が反落してしまいましたけれども、昨日の上昇の大きな要因として金融システム安定のための法案成立見通しがあると言われておりまして、市場の期待の大きさが改めて確認できたように思われます。  そこで、御審議いただいております法案のうち、まず金融機能再生のための緊急措置に関する法律について申し上げますと、金融整理管財人によって破綻金融機関を管理する仕組み、受け皿金融機関があらわれない金融機関の受け皿となるブリッジパンク制度、さらには金融機関を国営銀行化する特別公的管理を盛り込んでいただきました。  受け皿金融機関がある場合に適用される現行預金保険法の資金援助という方法に加えて、新法が定めるスキームが加わることによりまして、さまざまな破綻のケースについて預金者と健全な借り手をともに保護しつつ、迅速に対応することが可能となります。  さらに、預金保険機構に金融再生勘定を創設して、ブリッジパンク、特別公的管理銀行に対する資金貸し付け、債務保証、損失補てんを行うことができることとなっておりますが、そのために必要な資金を調達する際には、別途国会の議決をいただくことを条件に政府保証を付すことが可能となっております。  こうした破綻処理のスキームが用意されれば、我が国金融システムの安定化に大いに資するものと考えております。  このほか、いわゆるサービサー法案につきましては、金融機関不良債権処理促進のみならず、不良債権の証券化市場育成のためのインフラとしての役割が期待できます。また、根抵当権確定の円滑化法案は、民間金融機関が自助努力の一環として進めている共国債権買取機構の買い取り再開に際して買い取り対象債権の拡大に非常に寄与するものであり、不良債権の実質的処理に大きな効果があると思います。さらに、競売制度改善二法案には競売手続の迅速化のための改正や妨害行為への対抗手段などが手当てされており、競売手続円滑化が期待されます。  こうした枠組みを整えていただくことによって、金融機関の自助努力による不良債権処理が実務面から促進されるものと期待しております。  さて、銀行に対する強い御批判をいただいておりますけれども、私どもはこれを国民の声として真剣に受けとめなければならないと考えております。  そこで、銀行の憲法とも言うべき銀行法第一条の目的規定を改めて読み返してみますと、業務の公共性の観点から、銀行信用秩序の維持、預金者保護、金融の円滑の三点を追求すべきとしております。さらに、銀行法の解説書には、銀行は契約自由や私的自治の大原則のもとに立ちつつも、第一に銀行業務を結ぶ膨大な信用組織の一端が破綻すると連鎖反応により広範囲に影響が及ぶこと、第二に銀行債権者は不特定多数の一般公衆であって一般企業の債権者とは異なること、第三に銀行の資金供給機能は経済活動に大きな役割を果たすことという三つの観点から公共性を有すると記されております。このうち現時点で特に重要な点は、現在のデフレ経済の中で信用創造機能をどのように維持していくかということであると思います。  我が国経済は、現在大変厳しい後退局面にあります。今週火曜日には政府経済見通しが改定され、今年度の実質経済成長率が当初のプラス一・九%からマイナス一・八%に大幅に下方修正されましたし、完全失業率や企業倒産件数は過去最高水準を続けております。このようなデフレ経済の状況下にあって大幅な信用収縮が発生するとすれば、それは資金繰り倒産を招いたり企業の資金需要にこたえられないなど、ただですら減収減益企業や赤字企業が増加している産業界の活動に極めて深刻な影響を与えるものと懸念いたします。私ども金融機関といたしましては、公共性のあかしとも言える信用創造機能を強く自覚して、デフレ下でもそうした極端な事態が生じないよう精いっぱい努めていかなければならないというふうに考えております。  その際、努力の効果を阻害するような制度が新たに導入されることになりますと、信用創造の機能が十分に発揮できないことになりかねません。例えば、有価証券の評価方法について検討されておりますけれども、ことし三月に原価法を選択することが認められたばかりであり、これを再び低価法に戻すということになりますと、縮小均衡を図らざるを得ない金融機関が少なくないように思います。また、各行一律に特定の引当率を義務づけるいわゆる強制引き当ての考え方も、回収不能分を超えた引き当てを求めることになりかねません。我が国経済がかつてなく深刻な状況であるだけに、このような制度面での金融機関信用創造機能を制約することのないようお腰いいたします。  なお、現在御審議中の法案に続いて、早期健全化のための法案が昨日上程されました。早期健全化スキームは、金融機能再生のための緊急措置に関する法律等が定める破綻処理方法に加えて、金融機関を破綻に至る前に早期に見直すための制度を用意していただくものであります。金融再生法案の施行と同時に廃止される金融機能安定化のための緊急措置に関する法律との間にすき間が生じないよう、このスキームにつきましても一刻も早く整えていただきたいと存じます。  もとより、金融界自身といたしましては、何よりもまず自助努力によってこの局面を切り抜けていかねばならぬことはよく承知いたしております。そのためには厳しくリストラを実施して体力を増強し、金融システムの安定化に向けてみずからの役割を果たしていかなければならないと考えております。  金融機関のリストラが不十分であるという御批判をいただいておりますけれども、例えばこの三月末に公的資金を導入した金融機関について申し上げますと、金融機能安定化のための緊急措置法の定めに基づきまして、今後三年間に役職員数、人件費、物件費、店舗数を、従来のリストラ計画に比べて厳しく削減する経営の健全性を確保するための計画を提出し、現在これを粛々と実施しているところでございます。  ちなみに、労働省の平成九年賃金構造基本統計調査によって従業員規模千人以上の企業における男子大卒者の賃金水準を見ますと、対象の主要十六業種中、銀行信託業は第七位と中位にありますし、また賃金の前年比増減率も、全産業平均が一・〇%増加したのに対し、銀行信託業は〇・五%減少いたしました。平成十年は減少幅がさらに拡大するものと思います。  今後、経営の健全性を確保するための計画の内容が実現するにつれて、金融界のリストラの実態について御理解をいただけるようになるのではないかと思います。また、仮に提出した経営健全化計画が予定どおり実施できず、引き受けていただいた優先株式が無配になるとか、劣後債の金利が払えなくなるとか、また元本をお返しすることができなくなるといった場合には、経営陣の責任が問われることは当然であります。  私自身といたしましても、三月末に公的資金を導入した際に預金保険機構に提出した健全性計画を確実に実現し、早期に公的資金をお返しすることによって責任を果たしたいと考えております。  最後になりますが、重要な法案が数多くある中で金融再生関連法案を優先して御審議いただいておりますことにつきまして、改めて心よりお礼を申し上げます。  以上で私の意見陳述とさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  95. 坂野重信

    委員長坂野重信君) どうもありがとうございました。  次に、神田秀樹参考人にお願いいたします。
  96. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 神田でございます。  本日は、本特別委員会において意見を述べさせていただく機会をいただきまして、どうもありがとうございます。  私は大学の法学部というところに籍を置いておりますので、本特別委員会で審議の対象となっております十二の法案のすべてについて十分間で意見を申し述べるということが期待されるのかもしれませんが、何分これらの法案をいただきましたのは昨日のことでありまして、それまでは新聞などを読んでいたにすぎません。そして、一晩で十二の法案のすべてを勉強しようと心がけてみたんですが、申しわけないことにできませんでした。そこで、法案をざっと読ませていただきまして、また本特別委員会御担当の調査室がおつくりになりました資料をざっと拝見した程度の状態であります。まことに恐縮ではありますが、そういう状態のもとで私の意見をごく簡単に述べさせていただきます。  なお、御審議の法案は十二本に上り、それぞれの法案の名前を覚えようと思ったんですが、大変ややこしいものですから、法案の番号で呼ばせていただきます。  私の見るところ、我が国の現在の状況はせっぱ詰まっております。何がせっぱ詰まっているかと申しますと、それは極端な言い方をしますと、後から振り返ってみると多少間違っていたと言われるかもしれないにしても、今は思い切った行動をしなければならない、そして思い切った行動をするかどうかが全世界の注目を浴びているということだと思います。したがいまして、思い切った法律の制定と、制定した法律の実行とを速やかにやっていただきたいというのが私の意見であります。  その意味で、一つ一つの法案につきましては細かい点まで検討しておりませんが、あるいは私自身、個々の点につきましては多少異なった意見を持つ部分があるかもしれませんが、あえて大ざっぱに申し上げますと、例えば衆第一号から衆第八号までの八つの法案、こういうようなものを速やかに成立させ、かつ速やかに実行に移していただくのが現時点ではベストではないか。そして、それで不都合がもし出てきたような場合には、またその時点で必要な修正などをして対応するというのが適切ではないか。すなわち、現時点ではとにかく法律をつくって行動に移すということが一番必要ではないかと感じます。  もう少し具体的に申しますと、私の意見は四点あります。  第一に、明確なルールに基づいた金融機関の破綻処理のための枠組みをつくって速やかに実現に移してほしいと思います。  第二に、法律をつくっただけでそれで解決という生易しい話とは私には到底思えません。つくった法律によるスキーム、すなわち破綻処理を実際にうまく実現してほしいということであります。  第三に、金融問題を処理することは我が国の経済にとって喫緊というか、超緊急とでも申しますかの課題であるだけではなく、世界の金融及び世界の経済にとっても超緊急の課題であり、今回の法律制定は、今後予定されるいわゆる破綻前の処理に関する法律制定とあわせて、世界に通用するものでなければならないということであります。  第四に、必要な場合には思い切った金融機関の国有化や公的資金の投入をしてしかるべきであると思います。  以下、簡単に敷衍して申し上げます。  第一に、明確なルールに基づいた金融機関の破綻処理のための枠組みをつくって速やかに実現に移していただきたいと思います。明確なルールとは何かという問題がありますが、衆第五号の法案の第三条に掲げられている破綻処理の六つの原則、こういうもので十分だと私は思います。法律的にはこの法案のような形で、減資ですとか営業譲渡といったことについて商法の特例を設けるのはぜひ必要なことと思います。  第二に、法律をつくりさえずればそれで問題は解決するというのであれば簡単なんですが、問題はそうではありませんで、つくった法律を実行に移して、それが成功をおさめなければならないということであります。その意味で、衆第五号等の法案の言葉で申しますと金融再生委員会ということになりますが、そういう組織が本当に独立して破綻処理を果敢に行うことができるような環境を速やかに確立していただきたい。そして、つくった法律を速やかに実行に移していただきたいと順うわけであります。  法律をつくるときには、とかく金融再生委員会のような組織の法律上の位置づけですとか権限などに目が行きます。それももちろん非常に重要なことではあります。しかし、それと同じに重要なことは、法律を動かすのは生身の人間であるということであります。つまり、十分なスタッフがいないと法律は動きません。  聞くところによりますと、金融監督庁は、特にマンパワーと申しますか、そういう点で新しい職務といいますか、激務と言うべきかもしれませんが、と緊張とで既に限界状況にあるように感じます。実際に現場で仕事をする人々のこともよく考えていただければと思います。つまり、集中的に破綻処理をするのであれば、一時的な話であるわけですから、思い切って人と予算とをつけていただきたいと思います。さもないと、どんなに立派な法律をつくってもそれを動かすことができない。その結果、結局失敗に終わり、世界的にも恥をかくことになることは目に見えていると思います。  アメリカは、御承知のように、一九八〇年代の金融危機に対処するために一九八九年に思い切った法律をつくりました。それを実行に移し、実際にその効果が出たのは一九九二年であります。つまり、法律をつくってから三年間かかったわけであります。このように法律はつくればそれで問題解決というわけにはいきません。この点を特に強調させていただきたいと思います。  衆第五号法案から衆第八号法案までと、参第一号法案から参第四号法案と呼ばせていただきますが、これらはいずれも金融機関の破綻処理のかなめとなる法律的な措置を提案するものと拝見いたしました。いずれも、私の意見の第一点であります明確なルールに基づいた金融機関の破綻処理のための枠組みをつくって、速やかに実現に移してほしいという観点からは十分評価できると思います。  ただ、まだよく検討しておりませんのであれですが、どちらかといえば私の意見の第三点及び第四点、すなわち世界に通用する措置であるべきことと、思い切った国有化や公的資金の投入もやるべき場合があるということから申しますと、衆第五号から衆第八号までの法案を成立させる方が望ましいように感じます。  また、衆第一号法案から衆第四号法案までについて簡単にコメントさせていただきますと、第一号法案の方は債権回収についてそれを担当できる機関をつくろうとするものですが、法治国家におきまして実際に債権回収が円滑にできないというのでは話になりません。したがいまして、このような法律はぜひつくって、かつ実行してほしいと思います。  また、衆第二号から衆第四号までの法案について申しますと、法律というのは世の中の役に立つために存在するはずのものであります。それが使えない、あるいは使いにくいというのは、大変に困ったことと申しますか先進国として恥ずかしいことだと思います。これら三つの法案は現在の民法や民事執行法その他の法律の使いにくいところを改善しようとするもので、これもぜひ実現していただきたいと思います。なお、法律家として、国有化ということについてちょっと一言だけ申させていただきますと、国有化というのは法律家の言葉で申しますと収用であります。収用というのは、私人の財産を強制的に、強制的と申しましても法律に基づいてということですが、取り上げるということであります。その場合には、憲法にもありますように正当な目的と正当な補償とが必要になります。  今回の国有化スキームはこれらの要件を満たしていると私は思いますが、特にそのような収用をする際には、もう一つ正当な手続ということにくれぐれも留意していただきたいと思います。  土地収用法という法律がありまして、その法律は手続規定だけでも物すごい数の条文があります。これはあるいは多過ぎるのかもしれません。しかし、手続は重要でありまして、法律家の言葉で申しますと手続的整理などと言っておりますけれども、そういった配慮は法治国家の基本中の基本であると思います。  国というのは権力であります。収用に当たっては正当な手続を保証してほしいと思います。金融機関の場合で申しますと、財産の収用と申しましても、債務超過であれば、例えばその株式はゼロまたはマイナスではないか、したがってゼロまたはマイナスで収用していいではないかとお感じかもしれませんが、問題は、だれがどうやってそれがゼロあるいはマイナスだということを判定するのかということであります。収用する者が自分で判定して、あなたの財産の価値はゼロあるいはマイナスですから、ゼロまたはマイナスでいただきますと言うのは、法律家から見ると問題であります。つまり、正当な手続を踏んで行う必要があるということであります。このことは、一言で申しますと、そういう手続の中で不満があるものについては裁判所へ行くなどのいわゆる手続的保証などと言っていますけれども、そういう配慮をしていただきたいと思います。  最後に、私は法律家として、今回の各法案の中では、新聞等で華やかに論じられている点よりも地味な点と申しますか、現在の民法や商法などの使いにくい点について特例を設けるという点にむしろ注意が行きます。  私は、我が国は明治以来、立派な民法や商法といった基本法をつくり上げてきたと思っておりますが、今回のような緊急措置をやろうといたしますと、こういった法律がそのままでは使いにくい面があるということが出てくるような気がいたします。繰り返しになりますが、法律は使いにくいのでは話になりません。使われるためにあるわけであります。使いにくい点は速やかに改善して、我が国をもっと法律が使われる国、すなわち法治国家にして、法律面でも先進国の仲間入りをさせていただきたいと思います。  その意味で、よく行革という言葉が使われるのに、法革という言葉が使われないことに私は不満を持っております。我が国は今後、司法制度の大改革を含めた法革をしなければなりません。そういう流れは必然だと思います。そういう意味でも私は、今回の金融問題関連の思い切った法律の制定と実行についての皆様方の御努力に大いに期待をさせていただきたいと思います。  以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  97. 坂野重信

    委員長坂野重信君) どうもありがとうございました。  次に、田中直毅参考人にお願いいたします。
  98. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 本日は、本委員会において金融システム健全化についての見解を申し述べる機会を与えられまして、大変光栄に存じております。  本日は、二点について私の意見を述べさせていただこうと思います。一つは、金融システム不安の累積過程を遮断するために、果敢な公的資金の投入を幅広く行っていただきたいという点でございます。もう一点は、今日の金融システム不安の背景の一つに、郵便貯金という国家金融部門を通じて民間金融部門お金流れにくい仕組みが構造的に組み込まれているということについての指摘でございます。  第一点の、金融システム不安を今日において回避し、デフレの累積的な過程を遮断するために、公的資金の投入を幅広く行っていただきたいという論点についてでございます。  現在の状況をどのように考えたらいいのか。幾つかの指標がありますが、例えば銀行の貸出平均残高というものがどのように推移しているかを考えてみてください。現在は信用の収縮がスパイラル的に起きている現状でございます。  一九三〇年代において、アメリカを中心として大恐慌が起きました。このときに世界の貿易量、アメリカの輸入量は月を追うに従って縮小し、これが三年近く続いたわけであります。それをちょうど時計のように十二に割りまして、今のようにして一月から十二月までを入れまして、一九二九年のときから毎月の世界の輸入量を入れてみますと、どんどん縁から内側に入っていくという過程がございました。これがデフレの累積的な過程でございます。  我が国において銀行、ここでは五業態をとってみましたが、これは都市銀行、信託銀行、それから長期信用銀行、地銀、第二地銀、この五業態の総貸出量の平残を月ごとにとって対前年比の伸び率をつくってみました。(図表掲示)  本来ならばお手元にこのグラフが行くべきでしたけれども、ゆうべ慌ててつくりましたのでこういうことになっておりますが、ちょうどここから始まりまして、この真ん中がマイナス三%、ここがプラス一%。月々を入れておきますと、今どんどん真ん中の方に対前年比でマイナス、今年度、四月に入りましてからは対前年比で見て二%以上のマイナスになってきていますが、どんどん内側に入ってきています。これがもし対前年比で五%とかあるいは極端なケースで一〇%という形で銀行の貸出残高がマイナスになっていくということになりますと、これはもう間違いなく信用システムの崩壊でございます。  現在では、銀行銀行を信頼しなくなりました。銀行間の資金には、プラス、マイナスといいますか余裕と不足がございます。これは構造的にあるわけですが、余裕のある銀行が、不足な銀行が手を挙げたからといって簡単には融通しないという状態になっています。銀行銀行との間に不信があることは御存じのとおりでございます。  そして、預金者と銀行との間にも不信感があり、今度は銀行と事業会社との間にも不信感がございまして、破綻の可能性が少しでもあり、そして自分の銀行がメーンでないならば早く貸し金を回収したいという形の銀行と事業会社の不信も大変高じてきているわけであります。  このように、経済を構成するところでかくまで信用不安、そして相互不信が拡大いたしますと、これは累積的な効果を持ち、大変なことが起きるわけであります。したがいまして、これを回避する幾つかの手段がございますが、公的資金を幅広く投入してこうした信用収縮の累積をとどめることが必要だと思います。  こうした見解に対して、当然反対がございます。それは、銀行に対して規律づけが緩くなるのではないか、銀行経営に対して規律づけが行われるべきであるにもかかわらず、大量の資金投入が行われるとこの規律づけが問題になるという意見がございます。確かにこれは問題でございます。  しかし、この累積過程の遮断と規律づけとは全く違う二つの目標でございます。公的資金の投入は累積過程の遮断のために使われるべきであり、銀行に対する規律づけに対しては他の手段でもってこれに当たられるべきだと思います。  この規律づけについても効率の観点が重要かと思います。国家あるいは国家機関が一々目を光らせるということになりますと大きな政府になってしまいます。これを行うのに最も適した方法は、民間のコーポレートガバナンス、企業統治の手法が使われるべきだと思います。  例えば、公的資金が大量に投入される場合に、その条件づけとして、民間銀行経営者に対して第三者割り当て増資という形で民間から増資をお願いするということを義務づけたらいかがでしょうか。この場合、民間の出資者は銀行の行動、銀行経営に対して監視、監督を行います。言うならば、納税者のお金が投入されて、そしてリスクを納税者のお金が負った場合に、その監視、監督を民間がいわば代行するということであります。私は、これが最も効率的な規律づけではないかというふうに思います。  二つ目的に対しては二つの手段が用意されるべきです。二つ目的に対して一つの手段で対応した場合は、極めて不都合なことが起こります。公的資金の投入は、確かに納税者のお金ですから効率的に使われるべきだけれども、けちって使えというのでは目的が達せられません。二つ目的に対しては二つの手段が提示されるべきであるという考え方は、オランダのノーベル賞学者ティンバーゲンによってもう何十年も前に議論されたことであります。もし、この点について私どもエコノミスト業界が十分国民に対して力量を発揮していないとすると、我が業界の能力不足と後世言われるのではないかというふうに思いまして、この点についての問題指摘をさせていただきます。  もう一点、郵貯の問題でございます。  郵便貯金は、現在も大変な増加をしてきております。九三年三月には百七十兆円であった郵便貯金は、ことしの三月には二百四十兆円まで七十兆円ふえております。この間、国内銀行銀行勘定の預金残高はわずか八兆円の伸びにとどまっております。郵貯は七十兆円、民間銀行は八兆円でございます。  もし、この伸びをそのまま伸ばしてみますと、今から十年後ぐらいには郵便貯金が銀行預金の残高を上回る可能性が出てきております。これは零細な貯蓄性の預金を郵貯が扱うという全体の設計を明らかに裏切る事実が起きているわけです。  総務庁の行政監察局も、限度額管理が郵便局によってなされていない、名寄せを行い限度額管理を徹底すべきだという勧告をしておりますが、現実には郵便局はそのようなシステムになっておりません。このように郵便貯金が、国家の金融部門が入り口においてどんどん資金を取るということは、民間銀行お金流れないということを意味しているわけであります。  他方、この国家金融部門の出口においては金融債の保有残高をこの間顕著に減らしております。九三年三月末には資金運用部の金融債の保有残高は十兆円でございましたが、今年の三月にはこれが四兆円になっております。そして、四月から六月までの三カ月においてさらに一・一兆円減らしまして、二・九兆円まで減らしている。  すなわち、入り口では大幅に郵貯という形で民間から資金を吸い上げ、そして出口のところでは銀行にかつてよりもお金を回さない、どんどんそれを吸収しているということでございます。    〔委員長退席、理事石川弘君着席〕  すなわち、国家の金融部門が、貸し渋りどころか貸し金の回収を物すごい勢いで行っている、これを放置しているというのが現状でございます。このように異常な膨張を遂げた郵便貯金をそのままにしながら民間銀行の貸し渋りについてのみ言及するということは、大きな図式を無視し過ぎているのではないかと思います。  二〇〇一年四月にはペイオフが解禁されます。通常の預金者の活動を想像してみますと、一千万円を超える部分については恐らく民間銀行の多くからこれを引き出し、郵便局に持っていくという行動が一般化すると思われます。したがいまして、二〇〇一年四月までにこの郵便貯金のありように対して根底的な変革を加えることが、金融システムの健全化にとっては不可避、不可欠だというふうに思います。  ところが、こうした意見が今では次第に銀行界の中からでも出にくくなっております。それは、郵便局と銀行との相互送金とか民間金融機関等のATM、CDとの相互利用が可能になる仕組みになってきまして、民間銀行の一部にはこの郵便局のネットワークを使いたいと意思表示されるところも出てまいりました。したがいまして、国家のお金、納税者のお金でもってこのネットワークの利便性を高めるという手法を放置し、そしてここに金融が、このネットワークを利用しようとする民間銀行が出てくる段階になりますと、この郵貯の問題点を指摘するという声は極端に少なくなっております。  国会における審議においても、この民間銀行の貸し渋り問題を議論するときに、民間銀行にそもそも金がない、あるいは民間銀行が金策に走り回るという背景に、郵便貯金の異常膨大があるということの指摘はなかなか国会の審議においても聞けない状態になっております。  私は、金融システムの健全化を二〇〇一年四月のビッグバンの本格開始に間に合わせるためには、この郵便貯金の異常膨大に対して少なくとも歯どめをかける、私の持論は分割・民営化でございますが、いずれにしろこの郵便貯金を放置したままでは我が国のシステムは成り立たない段階に来ているというのが私の理解でございます。  どうもありがとうございました。(拍手
  99. 石川弘

    ○理事(石川弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 加納時男

    ○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。  本日は、岸会長そして田中理事長、神田先生、大変貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。私ども、今、公的資金注入といったことも大きなテーマにして議論しているところでございますが、きょう先生方からは、ただいま公的資金じゃなくて知恵を注入していただきまして、まことにありがとうございました。これから、私の持ち時間は四十一分でございますが、なるべくポイントを絞ってお伺いしたいと思っております。  今お話を伺いまして、三つほど論点があるような感じがいたしました。第一は、岸参考人からお話がございました、特に重点を置かれました金融システムの安定化健全化、これについての基本的な原則は何かといったことが一つ関心事でございます。二つ目は、田中先生からもお話しいただいたところでございますけれども、経済活性化のための新しい発想、コーポレートガバナンスも含めた話でございます。三つ目は、新しい金融システムをどう構築していくのか。従来の銀行を中心とした金融システムから、きょう午前中には竹中平蔵先生から新しい間接金融一そういったものについての御提案もあったわけですが、今郵便貯金の話も田中先生からいただきました。こういったことも含めて、三つ目が新しい金融の流れをどう考えるか。この三つが今お話しいただいた中から浮かび上がってきたところでございます。  第一の問題でございますけれども、これまで私ども金融システムを議論していく場合に、原則として三つほど合意といいますかベースに考えていたことがございました。第一はインディペンデンスといいますか自己責任、自主性の原則。自分のことは自分で責任を持つ、破綻した金融機関というものは当然のことながら経営者、株主がみずから責任をとっていくという、自分のことは自分で責任をとるという原則。二つ目が、透明性といいますかトランスパレンシーの原則。当然のことながら公的資金を投入するような場合にはディスクロージャー、情報の開示が不可欠である、こんな原則が二つ目三つ目が、セキュリティーの原則といいますか安全性の原則。一たん事があったときの預金者の保護なりあるいは金融仲介機能の維持なり、いわゆるセーフティーネットの構築。こういった独立性というか自己責任、透明性、そして安全性といったことで議論してきたような気がします。  今般衆議院を通過した法案の提案理由一つの中にも六原則というのが入っておりまして、六原則は一々もっともなんですが、私風に理解するとこの三つの原則にいずれも整理できるのかと思っております。  今三人の先生のお話を伺ってはっとしたことがございます。といいますのは、この三つの原則というのは、どうも手段の原則のような気がしてなりません。もう一つ、もっと大切な原則、それは私風の理解では実効性の原則といいますか、エフェクティブネスと言った方がわかりいいかと思いますが、例えば金融システムの安定化であるとかクレジットクランチを是正していく、そのために先ほどの神田先生のお言葉をおかりすると思い切ったルールの制定と実行が大事だという御指摘、ごもっともでございます。田中先生からの果敢な公的資金の投入をということも、まさにこの実効性の原則だと思います。  これが実は大事であることがわかりながらも、さっき申し上げた三つの原則に我々は余りにもとらわれ過ぎて、かなり微に入り細をうがって議論してきた。それ自体とっても大事なんですけれども、その結果審議がどうしても時間がかかってしまって、その間に金融システムの状況が悪化をしてきたということを私ども政治にかかわる人間として反省を深くしまして、きょうのお話はいわば目からうろこが落ちたといいますか、第四の原則というのが実は大事ではないかと思うわけでございます。これについてのお考えを聞かせていただけたらと思っております。  あたかも十月三日にG7の共同声明が出まして、その中で、日本の景気回復が世界にとっても決定的に重要であり、金融関係再生法案あるいは早期健全化スキームの一刻も早い取りまとめと成立を要望する。いわば第四の原則、実効性の原則、果敢な法の整備、ルールの整備とその実行、その環境づくりというふうなことを先生から教えていただいたような気がします。  こういうルールづくりの原則といいますか、これについて何か御感想がありましたら、岸先生、神田先生、それから田中先生、一言ずつで結構ですが、お願いしたいと思います。
  101. 岸曉

    参考人(岸曉君) ただいま先生から三つの基本原則に加えまして迅速性、実効性という御指摘があったわけでございますけれども、全く先生の御指摘のとおりでございまして、ただいま我々は非常に厳しい市場の波にさらされているわけでございます。  先ほども申し上げましたとおり、先週には一万二千円台に株価が下落いたしましたし、海外市場における外貨調達の際のジャパン・プレミアム、これが四〇ベーシスぐらいで推移しておりましたのが、この半月くらいの間に六〇ベーシスポイント、つまり〇・六%くらいにまで一直線に上昇する、こういう事態になっております。しかも、そういうプレミアムを払ってもなかなか外国の市場参加者が日本銀行に対する枠というものを緩めてくれない、こういう状況にありまして、金融システムの現在の状況というものは全く猶予を許さない状況にございますので、昨日もこの法案の上程ということを受けまして株価が急上昇したわけでございますけれども、一日も早くひとつこの法案を成立させていただきまして、我々が使えるようにしていただきたいと存じます。  同時にまた、実効性という面で、やはりこの法律の細部の規定が我々実務家にとって使いやすいような枠組みにしていただきますようにお願い申し上げます。  以上でございます。
  102. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 私も、今御指摘の三つの原則プラス四つ目の原則とを含めて大賛成でありまして、今回の法案、それからこの後多分来るであろう破綻前早期健全化の法案についても、ぜひこの原則でルールづくりをしていただきたいと思います。  一点補足させていただきますと、実効性の第四の原則の中に含めていただいていると思いますけれども、先ほど申しましたように法律はつくれば終わりではありませんで、それを実行するアフターケアというんでしょうか、実現していく過程で人とお金が要るということであります。これは先ほども申し上げましたけれども、その点も実効性の原則の中で非常に重要なことだということを申し上げたいと思います。
  103. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 先生の言われました実効性の原則、私は大変感銘深く伺いました。  実効性を持つということは症状に対して最も効果のある処方せんを用意するということでございまして、もし患者がいろんな病気を併発している場合に、一つ一つ仕分けまして、この病状に対してはこの処方せん、この投薬が意味を持つ、他の病状に対してはまた別途違う処方せんを用意する、この総合でもって全体としての実効性を高めるということが重要なのではないでしょうか。  公的資金の投入一つを考えてみますと、公的資金の投入は大変なことでございまして、納税者のお金をリスクにさらすわけでございますから、リスクにさらす以上効果が出なければ、政府がこれを行う場合、納税者に対して申し開きができないことでございます。  しかし、その効果が出る一方、例えば銀行の規律が緩むというようなことがあってはならないわけですから、それに対しては別のものを用意するという、そういう実効性の切り分けということが極めて重要でございまして、銀行に対して納税者のお金を投入してリスクを納税者に負わせるということだけをもって、銀行に対してその一点をもって規律漬けを望むというのは、一つの手段でもって二つのことを実現しようとしているというととでございまして、世間で言うアブハチ取らずという話になりがちでございます。  これは、実効性は切り分けて適用されるべきだというふうに私は存じております。
  104. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  特に、神田先生の実効性についての条件整備が大事だということは、特に人や金、環境づくりというのは大切なこと、痛感いたします。また、実効性の切り分けという田中先生の御指摘もごもっともだと思います。  岸先生につきましては、もう少し具体的なことに若干入らせていただきたいと思います。大変申しわけないんですが、率直にかなりお耳にさわることも伺うかと思いますが、こういう場でございます、よろしくお願いいたしたいと思います。  現在、十三兆円スキームは廃止ということをめぐって新しい健全化スキームとの関係でいろんな議論が既に始まっております。私がどうしてもわからないのは、十三兆円スキームについて、そもそもあのスキームの発想そのものが間違っていたのか、いや、スキームの発想はよかったけれども若干詰めが甘かったところがある、いや、運用面で不十分なところがあったために十三兆円スキームが社会の信認が得られず市場からも信認されなかったのか。もっと詰めて言えば、十三兆円という考え方が悪かったのか、やり方が悪かったのか。何かが悪かったから今回廃止になっちゃうということでございます。  そういう意味で、そもそもどうでございましょうか、十三兆円スキームというのはどうお考えでございましょうか。
  105. 岸曉

    参考人(岸曉君) ただいま、本年三月に行われました公的資金の導入、十三兆円のスキームにつきまして間違っていたのではないか、こういう御指摘をいただいたわけでございますけれども、私の考えを率直に述べさせていただきますと、昨年十一月に大型倒産が連続して起こりまして、その後マーケットが非常に過敏な状況になっておりまして、金融マーケットにおいて行き詰まりが起こるんではないかという心理が非常に強く働いておったわけでございます。そういう中で株安、円安が進行いたしまして、三月期末を控えて自己資本比率のクリアというものが非常に銀行としては心配な状況にございました。  そういう中で金融安定化緊急措置法案ができまして、我々申請をさせていただいて資本注入をしていただいたわけでございますけれども、よくこれは横並び横並びと後から御批判を受けたわけでございますけれども、実際にはこれは銀行の間で相談したとか調整をしたとかということは全くございませんで、これは全部個別行の判断で行ったわけでございます。  参考までに私どもの判断について申し上げますと、三月中旬における三月期末のリスクアセット、おおよそ想定いたしましたリスクアセットに対しまして自己資本がどうかということでございますが、下期中に起こった株価の最安値、それから為替の最安値、これはいずれも一月でございました、日にちは違いますけれども。この下期中における最安値が期末、三月三十一日に同時に実現したら我々の自己資本比率はどうなるんだろうか。これは当然のことながらリスク管理上そういう計算をしたわけでございますが、そういたしますと、たしか九百億円前後だったと思いますが、資本が足らない、こういうことに相なったわけでございまして、その判断に基づいて一千億の申請をさせていただいたわけでございます。  たまたまこの一千億の銀行が多くて、そのために横並びというようなことが言われたわけでございますけれども、実は金利の方を見ていただきますと、例えば永久劣後債で注入を受けました銀行金利が、これは金融危機管理審査委員会がお決めになった金利でございますけれども、一番低い〇・九%から二・四五%と、一・五%以上も開きがあるわけでございます。  実は、マーケットにおける一・五%というのは大変な幅でございまして、〇・一二五というのを競っている世界の中での一・五%でございますから、これは横並びというようなものではなくて、金融危機管理審査委員会が個別行についての御審査に基づいてそういう大変な格差をつけて資本注入をされたと、こういうことでございます。  それでは、これが貸し渋りの方にどうだったんだと、こういうことが次に問題になるわけでございますけれども、一兆八千億注入されまして、いろんな計算はございますけれども、一兆七千百億が自己資本のプラスになった。自己資本比率の計算上の自己資本に一兆七千億プラスになった。一兆八千億のうち一兆七千億プラスになった。これがリスクアセットにどれぐらい効いたかというと、約十七兆円でございます。したがって、非常に目に見えにくいのでございますけれども、一兆八千億の注入によってリスクアセットを十七兆円減らさないで済んだ、あるいはふやせたと、こういう結果になるわけでございます。  では、この水準というものが期待水準に比べてどうであったか、貸し渋りというような御批判がいろいろあったわけでございますけれども、そういう期待水準に比べてどうであったかということになりますと、これは少し足らなかったのかなという気がいたしますけれども、今申し上げたような効果がございまして、マーケットの方もそれから六月くらいまで非常に平穏に推移したわけでございます。残念ながら、六月からは非常にマーケットの激しい個別行に対する攻撃が始まりまして今日に至っているわけでございますけれども、三月の公的資金注入はそういう面におきまして我々から見ますと大変効果があったし、横並びでもなかったというふうに認識しておるところでございます。  以上でございます。
  106. 加納時男

    ○加納時男君 大変に効果があったというお話でございます。  横並びでないということですが、横並びということでよく新聞に載っているのは、あのとき二十一行だったと思いますけれども、公的資金が投入された。確かに五百億円から二千億円ぐらいまで差があるわけです。それから、今おっしゃった劣後債のプレミアムでございますけれども、おっしゃるとおり〇・五から二・二%ぐらい、二・四でしたか、非常に大きな幅がある。これはわかるんです。    〔理事石川弘君退席、理事岩井國臣君着席〕  ところが、失礼ですけれども、大手都銀は九行あります。九行の注入額は幾らかというと、私が手元に持っている資料では九百九十億円が一行、あとの八つは全部一千億円。横並びでないとおっしゃって、それぞれの銀行がリスクアセット等を真剣に考えて出した金額なんだとおっしゃっても、出てきた結果が一行だけ九百九十億、あとは全部一千億円でずらっと並んでいて、御相談はないとおっしゃるけれども、これはやっぱり神の手か何かで相談されたのか、天の声が同時に響き渡ったのか、非常に不信感を持たれた一つであった。  私は、別に銀行を糾弾するとかそういう立場では決してないんですけれども、市民の立場であえて質問させていただきますが、そういう疑問がどうしても残ってしまう。これについてはもう一言何かおありかと思うんですが、ありましたらお願いしたいと思います。横並びではないというのは劣後債のプレミアムではわかりましたけれども、投入金額が同じというのはどういうことでしょうか。
  107. 岸曉

    参考人(岸曉君) これは全く相談の上で調整したわけではありませんで、これは私はここで断言できるわけでありますけれども、全く相談はございません。もし相談しておれば、もう少し格好よくでこぼこをつけてやったのではないかなというふうに思います。  以上でございます。
  108. 加納時男

    ○加納時男君 この件はこれ以上伺いません。今のお言葉を私は伺ったということにとどめさせていただきたいと思います。  もう一つどうしても疑問があるのは、せっかく十三兆円の大きな枠をつくったわけであります。先ほど神田参考人も田中参考人もおっしゃっているように、こういうときは果敢にやるものですよということなんですけれども、申請が二兆円、認められたのは一・八兆円、非常に小さいわけです。なぜあのときもっと大胆な申請をなさって一挙に解決するという勇気がなかったのか。この辺も市民レベルでは非常に、私も選挙運動をやってきまして多く質問を受けました。いかがでしょうか。
  109. 岸曉

    参考人(岸曉君) 今から振り返ってみますと、もっと果敢な申請を申し上げるべきであったのかもしれませんけれども一当時の状況を思い起こしてみますと、十一月の大型倒産以来、金融マーケットが非常に過敏な動きをしておりまして、あの法律の制定過程でもそうであったと思いますけれども、何とかマーケットの動揺というものを鎮静させたい、鎮静すればいい方向への回転ということになっていくのではないかというふうな期待を持っておりました。  その期待が非常に甘かったのではないかとおっしゃられますと、そういうことだったかなというふうな気がいたしますけれども、その後、アジアにおける経済危機の回復が一向にはかばかしくないとかいろんな海外要因その他ございまして、六月の市場の攻撃をきっかけとして今日のような状況、その間にまたアジアの問題、ロシアの問題、中南米の問題等が起こりましてこういう危機的な状況になっているわけでありまして、その時点ではこういうことで金融、経済がいい方向に向かっていくであろうというふうな見通しであったわけでございます。
  110. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  なぜ私がしつこくこんなことを伺っているかというと、きょうの毎日新聞にこんな記事が出ていたわけです。今回新しいスキームをつくろうということで、昨日衆議院に自民党から提案があったわけでありますけれども、経営責任の追及などハードルを高めていくと銀行が申請をちゅうちょする可能性は高いのじゃないかという記事が出ていて、私も非常にこれは気になるところなのでございます。  つまり、もう終わった十三兆円の話を私が繰り返し言っているように聞こえますけれども、実は前向きの話をしているつもりでありまして、これから新しい早期健全化スキームを新しい目でつくっていこうというときにまた銀行さんがちゅうちょされちゃって、大胆にやりましょうと言ったときに、経営合理化計画を出すとか責任ある経営体制の確立とか配当等で利益抽出がどうなるかとかいった経営健全化計画、こういったことを出すのは何かちゅうちょせざるを得ないというようなお気持ちがあるのかなと。あるとすれば、やっぱりこれも大事なことですから、それも踏まえて議論しなきゃいけないと思うので、前向きな話として何かコメントありましたら、何度も岸参考人で申しわけないんですけれども、間もなく次の参考人になりますので、ちょっとだけお願いします。
  111. 岸曉

    参考人(岸曉君) こういう金融早期健全化スキームをおつくりいただくということは大変ありがたいことであるわけでございますけれども、総合的に考えますと、まず第一の原則は、やはり金融農閑が自助努力をもってこの局面というものを切り抜けていかなければならないと、これは第一原則になるんだろうというふうに思うわけであります。  自己資本比率が問題になっているわけでありますけれども、資産サイドは貸し出しを除く資産だけでも私どもの銀行は四十兆円ございますし、そういうリストラといいますか企業努力としてこの見直しを行って、特に中小企業の金融等に影響を与えないでこのリストラを進めていくというようなこともぜひやらなくちゃならない。最初からそのリストラをやらずに公的資金をお願いするというのは、やはり我々の立場としてこれはやるべきでないだろうというふうに思っているわけでございます。  ただ、それじゃそういうのは要らないのかと、こうおつしゃられますと、それは決してそういうことではございませんで、自己資本比率のバーというのは期末が問題なわけでございます。ことしの三月末のように期末近くなってからマーケットが大荒れに荒れて、我々の力ではもう何ともならない、そういう市場の流れで自己資本比率が急に足らなくなるというようなことになりますと、そういうスキームを御準備いただいていなければもう何としてでもそのリスクアセットの方を減らさなくちゃいけないわけですけれども、短い期間に兆円単位のリスクアセットを減らすというようなことになりますと、これは経済に非常な波乱を起こすわけでございますから、こういうスキームを御準備いただいているということは我々銀行経営にとりまして大変ありがたいことだということでございます。  以上でございます。
  112. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  先ほど参考人が低価法と原価法との選択のお話をちょっとされました。これは非常に大事な問題で、実は私にとってもこれは悩み深い話なのでございます。理屈だけで考えますと、簿価と期末時価の低い方で評価する低価法というのは私は理論的だと思いますし、実態を厳密かつ客観的に評価する一つの方法として大変これは説得力のある方法だとは思うんです。    〔理事岩井國臣君退席、理事石川弘君着席〕  しかし同時に、私もさっき実体経済とか実効性の原則を申し上げましたが、実体経済あるいは景気回復、金融安定化の実効性を考えるときに、株価が急落したといった期末時点の時価、当然低い方といったらそっちになってしまうのは言うまでもありませんが、それをもとに評価をするとこれはもう評価損が出てしまって自己資本維持ということに走りますから、当然のことながらクレジットクランチが起こるというのは私はもう目に見えるようでございます。  BIS基準でも、条件にもよるのですけれども、原価法との選択というふうに私は読めると思っております。日本もこの三月に選択制をとったばかりだというようなことでございますので、私としては非常に悩み深いんですけれども、条件が整備されれば将来は低価法で私はいきたいなと思っているんですけれども、現在は原価法との選択というのがやはり実効性の原則から見ると大事かなとも思うんです。そこまでもう一言お願いできますか。そういう理解で岸さんのお話は理解していいかどうか、お順いしたいと思います。
  113. 岸曉

    参考人(岸曉君) ただいま先生がおっしゃられたとおりでございまして、一つもつけ加えることはございません。ありがとうございます。
  114. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。金融の専門の方々に褒めていただいたわけでございます。  これは神田参考人、田中先生からもいろいろ御意見があるかと思います。もしございましたら一言、低価法か原価法かというのは。よろしゅうございますか。  それでは第二のテーマ、あと時間が十二分でございますから十分できると思います。第二は、経済活性化のための新しい発想ということでございます。  実は、田中直毅先生の御著作を前からいろいろ読ませていただいているんですが、この間、十月一日の朝日の新しいコーポレートガバナンスで金融再生をという非常にパンチの効いた論文を読ませていただきました。先ほどもコーポレートガバナンスとおっしゃったので、それについての質問でございます。  先生のおっしゃっていることを一言で言えば、従来型の株の持ち合いというのはいわば安定株主工作であるとか相互不干渉ということがねらいだったんだろうけれども、今やそういう時代ではだめだ、新しいあるいは厳しい市場の目でもって選別をして産業が銀行の株を持てということだろうと思います。市場の目で株を持って、そこで出てくるのはもたれ合いじゃなくて相互牽制であるというのは大変私は力強い御提言だと思っているんです。  私のその理解が間違っていなければ、先ほど先生がコーポレートガバナンスとおっしゃったので、質問でありますけれども、このように産業が不況であり金融がフシン、二つのフシンですね、信用できない不信と振るわない不振、そういう二つのフシンがあると思うんですけれども、その中で、出資というものについては産業界でも大変な勇気が要ると思うわけでございます。その前には、岸参考人が今おっしゃったように、銀行の厳しい自己革新というのがなければとても産業界は貴重なお金を出資できないと思うんですけれども、この辺は先生はいかがお考えか。  さらには、もしこれをやっていった場合に、既に識者の間でも議論があるんですが、産業の銀行支配が起こるのではないかということがあります。あるいは産業の主導のもとに銀行を含めたグループの系列化という新しい系列化が生まれるのではないかという危惧もする方がおられますが、田中先生、御意見はいかがでございましょうか。
  115. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 企業統治の場合、株主は、もちろん産業でも結構ですけれども、機関投資家でも結構ですし、個人でもいいわけです。千二百兆の個人の金融資産があるというふうに言っていますけれども、現金と預金と貯金で七百兆円がございます。この七百兆円というのは異常に高くて、本来でしたら株式保有に回るはずでございますが、これまでの我が国の株式市場が投資家に対して十分の見返りを提供してこなかったこと、あるいは金融機関、金融仲介機関の少し行動が悪い、行儀が悪いということから株式市場にお金が回らなかったわけでございます。  現在、一体どのくらいのお金が新たに銀行に投入されるべきかという視点に立ってみますと、十九行ベースでいっても恐らく十兆円以上必要だという考え方は少ないというふうに思います。個人は現金と預金と貯金で七百兆円を今や上回るものを持っているわけでございますので、十兆円の資本調達を金融機関経営者が行うことは決して難しいわけではありません。  しかし、新たな株主は銀行経営者に対して極めて厳しい要求を行うわけですし、規律づけを欠いた行動があろうものならばこれはもうただではおかないという、そういう厳しい株主でございます。本来ならば、私は、個人があるいは機関投資家がこれを持つべきだ、しかし簡単にはこれが動かない幾つかの要件があるとすれば、便法として事業会社が持つこともまた認められてといいますか懲慰されてしかるべきではないかというふうに思っております。
  116. 加納時男

    ○加納時男君 今のお話は私なりには理解できたんですけれども、これも非常に新しい御提案でありますし、非常に私は大事な論点だと思うんですが、岸参考人、何かコメントございますでしょうか。あるいは神田参考人、ございましたらお願いいたしたいんですが。コーポレートガバナンスによる金融の再生という田中先生の御提案ですね。  もう一回ポイントだけ申し上げますと、要するに、産業に限らないんですけれども、機関投資家でも個人でももう一つ踏み込んでコーポレートガバナンスをやっていくということでございますが。
  117. 岸曉

    参考人(岸曉君) 私どもの方は、株式市場の担い手では従来ございませんでしたものですから、そういうことについてやってこなかったわけでございます。個人株主の問題というのは、非常に長い間我々のお取り引きのある証券会社さんのトップが問題意識として持っておられて、何とか個人投資家の層を厚くしたいということでいろんな努力を重ねてこられたわけでございますけれども、私の知る限りでは、残念ながらバブル崩壊後も個人株主の比率が年々下がっているような状況だと思います。我々も、ビッグバンによりまして業態別の垣根が低くなって、証券業務にも今まで以上にコミットしていくことに相なるわけでございますけれども、そういう過程におきまして、この問題につきまして私どもも私どもなりに取り組んでいきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  118. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  それでは、最後のテーマに移りたいと思うんですけれども、新しい金融の流れということでいろいろ伺ってみたいと思います。  特に、ここは神田先生にいろいろ伺いたいと思いますのは、最近、流れ懇というのができましたね。流れ懇、済みません、何でも略しちゃって。これは大蔵省の正式な名前は長いんですけれども、新しい金融の流れに関する懇談会、俗称流れ懇と言っておりますけれども、この流れ懇でもって最近論点整理が行われたと聞いております。どういうことが論点だったのか。  私は特に関心がありますのは、従来我々がなじんできた金融というのは、さっき田中参考人からもお話がありましたように郵便局ともう一つ銀行二つ流れがあるんですが、例えば銀行は家計から預金を預かってきて、それで企業に融資する、金融市場としてはこれが一般でございます、郵便局はちょっと別としまして。  実は、新しい市場型の間接金融というのが今提案されていて、我々も非常に関心を持っております。それは金融サービス業になると思うんですけれども、ファイナンスカンパニーが企業に対して融資をする、それでファイナンスカンパニーはCPを発行する、それは証券市場で流通するわけであります。それが機関投資家だとか運用機関がこれを買いまして、今度は受益証券の形で家計がそれをまた買うというので、非常にダイナミックな市場を展開していく。従来の今利息がほとんどつかないような金利で我々は預金していて、そういう銀行に預けて銀行がまた企業に貸すと、これしかないというんじゃなくて、非常にダイナミズムを持った市場を開発していく。アメリカなんかがそうなんですが、日本は全くそれと違った不思議な国だと私はかねがね思っているんです。  こういったことで、神田先生が今参加していらっしゃる流れ懇、新しい金融の流れ懇談会では、どんなことがそこで議論されているのか。郵便の問題も実は議論したいんですけれども、時間の問題がありますので、田中先生ならきっとこの後、郵貯の民営化の議論が必ず出ると思います。私も議論はしたいんですけれども、また次回にさせていただきまして、きょうはその流れ懇のところで最後にさせていただきたいと思います。神田先生、よろしくお願いします。
  119. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 今御指摘の流れ懇と略している懇談会は、今後の金融の流れというものは何かを展望し、そしてそれに対応するためには現在の法律制度あるいはルールをどう組みかえたらいいかということについて議論したものです。  時間の関係がありますので、今御質問いただきました市場型間接金融という聞きなれない言葉についてちょっと申し上げます。  日本は従来、間接金融優位だった、しかしこれがだんだん変わって、今後は直接金融が重要になるという言われ方がされます。そういう言われ方はややミスリーディングではないかというのが流れ懇で私を含めての一致した意見であります。  それはどういうことかといいますと、従来、間接金融と言っていましたのは、預金で受け入れたお金を貸し付けるという形で、銀行業務の基礎ですけれども、預貸し金とか預貸金という形でお金を流していたというのが従来型のやり方で、そういうやり方が今後は変わっていくでしょう。それはそのとおりなんですが、直接金融といいますと何かお金を必要とする、例えば企業が直接個人から株主になってもらうということを想定しがちですけれども、どうもそうではないんじゃないか。  今後は、確かに預金、貸し金という形態は変わるかもしれないけれども、いや、株式という形態に変わっても、個人が直接企業の株を持つ、そういうこともあるかもしれませんけれども、ではなくて、やはり個人は生命保険ですとか投資信託ですとか、そういう新しい金融仲介機関というんでしょうか、新しいという言い方が正確かどうかわかりませんが、を通じてやっぱり間接的だという意味で今後の姿は市場型間接金融。なぜ市場かというと、預金、貸し金ではない、株式であるとかあるいはそういうもっとマーケットの、市場型の金融商品だという、そういう意味であります。  私はちょっと感想をつけ加えさせていただきますと、今千二百兆円ある個人金融資産、そのうちの六〇%というんでしょうか、先ほど七百兆というお話がありましたが、預貯金であります。今後、預金、貸し金というルートがもちろんなくなるわけではありません。しかし、そういう形でのお金流れは変化していくと思われるわけです。  では、どう変化するかといっても、やはり六〇%のお金日本の個人は預貯金に預けているんですね、先ほどの〇・〇何%であれ。そういう選択を国民がしているということであります。それを無理に株に動かさせたらどうかというのは、私はやや無理があるように思います。それよりも、その預貯金のお金を市場型の商品を通じて運用するというか使うようなルートを考えるべきではないかと思います。    〔理事石川弘君退席、委員長着席〕  最後に一点、法律として何ができるかということがあろうかと思いますけれども、法律として一番重要なことは結局自由化ということだと思います。先ほどの話に結びつけさせていただきますと、三月の十三兆円スキームの場合でも、お話がありましたように民間の銀行といたしましては公的な資金を申請することはできたらしたくないはずだと思います。私ならそう考えます。それは当然いろんな条件がつくからであります。  ではどうするか。それは自分で立ち直りたいわけですけれども、そのときの選択肢というものがどの程度用意されているかということは、言ってみればどの程度自由化が進んでいるかということだと思います。  そういう意味で、法律的に言いますと、自由化を進める、ディスクロージャーを進める、そういったことを進めるということが一番大事なことで、そういう中で流れ懇では市場型の間接金融という名前で今後金融の流れが定着するというふうに展望したわけです。  以上です。
  120. 加納時男

    ○加納時男君 三人の参考人方々、ありがとうございました。ちょうど時間でございますので終わらせていただきます。(拍手
  121. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 民主党・新緑風会の木俣でございます。  きょうは、三人の参考人方々には、大変お忙しい中、参議院まで来ていただきまして本当にありがとうございます。きょうは十月八日でございます。金大中大統領が先ほど国会で御演説をされた記念すべき日でございまして、私も大変好きな大統領なのでございます。  その方のきょうのお話にもありましたが、大統領就任のときのごあいさつを若干読ませていただきます。尊敬する国民の皆さん、今日の苦しみの中でも国民の皆さんは驚くべき愛国心と底力を発揮されました。私たちは、IMF時代の衝撃の中でも与野党間の平和的政権交代の偉業を成し遂げました。国民の皆さんは国の危機を克服するために金集めに立ち上がり、既に二十億ドルを超える金を集められました。私は、黄金よりもっと貴重な皆さんの愛国心を限りなく誇りに思います。皆さんありがとうございます。こういう御発言でございました。  そしてまた、きょう、私が当選したとき、大統領になられたとき、既に対外債務実額一千五百五十億ドルに達していた、すぐに返済すべき短期外債が二百三十億ドルであった、それに対して日本最大の支援をしてくれたことを本当に感謝申し上げる、こういうお言葉でございまして、これは金大中さんの負債ではないわけでございますけれども、本当にこうやって感謝をされておるわけでございます。  私は、今回の金融危機は非常にわかりにくい、また知れば知るほどよくわからなくなるような、きのうも夜中の二時、三時まで話をしておりましたが、本当にこれは難しい問題かなということを感じますと同時に、一般にはわかりにくい問題でもあるかなということを感じるわけでございます。ただ、私が言いたいのは、全銀協の会長がきょういらっしゃいますので、もう少し全銀協の方が言っていただけなかったかな、前に出て言っていただけないのかな、そんな思いを持っておったわけでございます。私は批判をするために今おるわけではございませんし、私の役割というか国会議員の役割は、この危機に際して本当に国民と一致して守っていくことだと思っております。  ただ、今月七日の読売新聞の紙面上では、岸会長は、「三月末に資本注入を受けた公的資金金利を付けてお返しする。」というふうに述べていらっしゃいます。今の貸し渋りというもの、きょういみじくも田中参考人からいただきましたこれを見ておりましても、お返しするというような表現なのかなというのをちょっと伺いたいのでございます。
  122. 岸曉

    参考人(岸曉君) 実は、お返しするという表現が適当でなかったとしたらおわびを申し上げますけれども、お引き受けいただきました劣後債をマーケットで転売いたしまして、結果として公的資金回収していただく、こういうことをわかりやすいようにと思ってお返しするという表現をいたしました。劣後債を民間に転売する、結果として公的資金回収していただく、こういう意味で申し上げたわけであります。  金融危機管理審査委員会で御承認をいただいてお引き受けいただいたわけでありますけれども、緊急措置に関する法律の中にも、引き受けた優先株等、優先株や劣後債でございますけれども、これはできるだけ早期に処分をしなければならない、こういう規定になっております。私どもも、そういうことで三月末はこれを注入していただきましてクリアした、自己資本比率を高めたわけでありますけれども、期を越しましたらできるだけ早く民間で転売をさせていただきまして、法律の御趣旨に基づいて転売をさせていただいて回収していただきたい、こういうことだったわけでございます。  と申しますのは、今回の早期健全化スキームに関するテレビなんかのいろいろな報道とか御議論とかを伺っておりますと、国民の税金をもらうという表現が非常に多いわけでございます。確かに、おっしゃいますように非常にわかりにくい話でございますので無理からぬところがあるわけでございますけれども、十七兆円の方の最後本当に御負担になるという性質の資金と、一特注入していただきますけれども、これを民間に転売することによって金利とともに回収をしていただくという十三兆円の資金と性質が違うわけでございます。その誤解がもとになってこの早期健全化スキームの方の御議論に影響を与えてはぐあいが悪いなというふうな感じでそういうことを申し上げたわけでございます。  それから、そんなことを言いながら貸し渋りがあるじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、実は最近この貸し出しの数字というのがなかなか額面どおり受け取れないところがございまして、実はリスクアセットの対策、つまり自己資本比率を高めるために債権の売買、流動化等を行いまして、借りている方は何も影響がないわけでございますけれども、その債権がほかに移って貸し出しの計数からは落ちている、でもお金は借り手が依然引き続き使っている、そういうものもございます。それから、残念ながら不良債権になってそれを回収する、あるいはバルクセールと言っておりますけれども、非常に大きな割引率で転売する、これも実質的な不良債権処理で行っておるわけでございますけれども、そういう数字がございますものですから必ずしも額面の数字だけでは実態をあらわしていないのでございます。  私どもの東京三菱銀行に関して申しますと、今申し上げた不良債権の最終処理とか流動化とかという、そういう実態から外れた要因を控除して実態ベースで見てみますと、九月末は三月末に比べまして、余り大きくございませんけれども、九百億円の増加を見ております。  そういうことで、一方で非常に貸し出しを圧縮しながら、あたかも自分の金で返すというふうにとられますとまことに私の言葉が不適切で申しわけなかったと思いますけれども、そういうことでございます。
  123. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 ありがとうございました。  ただ、先ほど自民党の委員からも御質問がありましたように、十八兆円のうち十七兆円はリスクアセットを減らさないような仕組みができたと。ただ、自己資本比率が例えば八%ぐらいあるとすれば八分の一〇〇で十二・五倍ぐらいの減らさないで済むものができると思うんですけれども、実際には大分小さいんじゃないかなと思うのでございますが、そのあたりいかがでございましょうか。
  124. 岸曉

    参考人(岸曉君) 自己資本比率の計算でございますけれども、いろんなBISの細かな規定がございまして、何といいますか細かい話でわかりにくい話になってくるのでございますけれども、ティア1とティア2というのがございまして…豪
  125. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 簡単で結構ですから、また質問したいので。
  126. 岸曉

    参考人(岸曉君) ティア2というのが、ティア1を超えた部分は自己資本比率に算入されないということがありますものですから、そういう関係で十七兆円、一兆七千億に対してもっとふえるべきところが十七兆円、こういうことになったわけでございます。
  127. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 余りきょうの本題からそれることをおそれますのでそれは避けますけれども、要するに資本注入をした。本当に自分も資本注入していただきたいぐらいのものなのでございますが、冗談はさておき、当初資本注入したときに貸し出し余力は二十兆円ぐらい生まれるんだ、これは当時の金融危機管理審査委員会の今井委員がこうおっしゃっておるんですね、二十兆円ぐらい貸し出し余力が伸びるんだということでありますけれども。  先ほど田中参考人からいただいたもの、そしてまた、私はちょっと速報値で平成十年八月末のこの数字を見ましても、例えば月末の残高を見ましても、四、五、六、七、八月も、六月までは一・五、一・九、二・九、七、八月が三・三、三・二%増、大手十行ですね、これが。それから、長銀はもちろんマイナスでございますが、信託なんかでもすべてマイナスと、こういう状況でありまして、当初言われていたまさに貸し渋りというものがなぜ直らなかったのか非常に疑問でございます。  参考人お三方にぜひ伺いたいんですが、どういう御見解をお持ちでしょうか。
  128. 岸曉

    参考人(岸曉君) 計数資料の出場所が違いますので若干の食い違いがあろうかと思いますけれども、一番新しい数字で八月末の数字でございますが、これは全銀協で取りまとめた数字でございますけれども、八月末残の前年同期比、一年間でございますけれども、表面上は一・〇%の増加でございます。これは十九行でございます。一・〇%の増加でございますけれども、そのうち都市銀行は三・二%の増加でございます。  先ほど申し上げました債権の流動化でありますとか実質不良債権処理に伴う特殊要因、これを調整して実態で見てみますと、十九行合計ではプラス三・六%、それから前年同期比ではプラス五・九%ということでございまして、こんなことを申し上げていいかどうかわかりませんけれども、私から見るとみんな健闘しているなと、こういう数字なのでございます。
  129. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 私は専門が法律ですので、やや的外れなことを申し上げるかもしれませんけれども、私自身、貸し渋りの定義ですとか具体的な数字、いろんなことが公表されておりますけれども、その辺を必ずしもよく把握しておりませんけれども、貸し渋りというものがあるという前提でお話ししますと、なぜ解決にならなかったのかというと、私の感想は、金融機関としては、合理的な行動と言ってはなんですけれども、とった結果、貸し渋りの解決にならなかったということだと思います。  どういうことかといいますと、それは金融機関としてはBIS規制等に過敏に反応するためにどうしてもリスクをとらないというか、そういうリスク回避的な行動がより強く出た。しかも、先のことは見えないという状況でしたので、思うように貸し出しが伸びないということではなかったかと思います。  このことは逆に申しますと、前の御質問にあった点ですが、この十三兆円のスキームというものが、やはり今いろいろな意味で、そのスキーム自体が間違っていたと私は思いませんけれども、いろいろな意味で反省をして新しいスキームを考える時期に来ているのではないか。  すなわち、そのスキームは貸し渋り対策のためにやるのであればもっと別の方法があるわけです。ただ、あのスキームで貸し渋りもよくなると思ったんですけれども思ったようにならなかったということだとすれば、やはりその目的の手段ということで言いますと、貸し渋りということが本当にあって、それを解決するのでしたらもっと直接的な法律がつくれるわけですから、ぜひ皆様方にはそういうことも含めて検討していただきたいと思います。
  130. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 新年度に入りましてから、回収に注意を要する債権と言われている第Ⅱ分類債権について引当金を多く積まなければならない、しかもひょっとすれば国会で新たな法案ができれば、強制的に特定の比率を第正分類債権に対して引き当てをしなければいけないかもしれないという恐怖心に似たものが民間銀行経営者の間に走ったというのも、この貸し出しをできるだけ抑制したい、あるいは回収を急ぎたいという気持ちにあったように思います。  それから、この間、新年度に入りまして円安が続きました。このため、外で貸していた貸国債権の円価値が高くなってしまった。これがリスク債権がふえるという形になりまして、これも国内における貸国債権の管理に影響を持ったのではないかというふうに思います。  それから、長銀三行について言いますと、資金運用部の、先ほど申し上げましたけれども、金融債の持ち分が三月末から六月末の間に一・一兆円減らされています。償還期限が来たものについては資金運用部は新たには持たないという態度が極めて明らかでありまして、長期信用銀行三行は手元のお金がないという状態、どんどん減っていくという状態が起きていたというふうに考えますと、貸し金はふやせなかったというような事情がこれに反映しているように思います。
  131. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 ありがとうございました。  岸会長に伺いたいのでございますが、若干数字と例えばアンケートというものが大分違うように思うんです。きのう通産大臣も中小企業の三四%は貸し渋りを感じているという表現をされておりましたし、そしてまた、これは若干古いものでございますが、九八年三月二十八日の読売新聞で、このころでさえ非常に大手の都銀というのは貸し渋りが厳しくなったと、九一%で、地方銀行三五・四%、信金については五・二%、信組は一・〇%、こういうような数字が出ております。これだけ大手行に対する貸し渋りを感じる。  そしてまた、宮澤大蔵大臣も昨日の答弁の中で、中小企業は本当に、頭取というより支店長の靴を磨いてでもよく思われたい、それで貸してくれないかな、こういう思いまで持たれているという、大蔵大臣がそういう御発言までされているんです。  ですから、そのあたりは数字だけではなくて、まさに自民党が今提案されている早期健全化のスキームの中で、資本注入ということが主題でございますね。だから、これで貸し渋りが本当に解消するのかどうかということを、そういう定性的な話じゃなくて、どのぐらいの規模なんだということ、そしてまた、タイミングはどのぐらいのタイミングでやらなければいけないのかということ、それがもう何かぐちゃぐちゃになっているというのが今の国会の状況ではないか。  それが本当にわかりにくいんだけれども、市場の反応としては、どうも公金が投入されるであろうという中で、若干また欧米市場の債権金利のこともこれあり、株価もはね上がったりいろいろしておるわけでございますけれども、今本当にこの新しい法案が出されているスキームで資本増強が、注入がされたときに間違いなく貸し渋りがなくなると言えますか、ちょっと伺いたいんです。
  132. 岸曉

    参考人(岸曉君) 中小企業を中心に銀行の貸し渋りが非常にあって迷惑しているという声がたくさんあるということはよく承知をしておりますし、折に触れて昨年来、全銀協の会長名で傘下の銀行に対して、貸し渋りというような批判が出るような行動は厳に慎んでもらって金融の円滑化に努力するようにということを再三にわたって通達しておりますし、また私どもでもいろんな機会、例えば支店長会議でありますとかそういう機会に貸し渋りというようなことがあってはいけないということを注意しているところでございます。  それでは、自己資本比率だけが障害になってそういうクレジットクランチが起こっているのかというと、どうもそれだけで起こっているということではないと思います。この不況が非常に長引いておってデフレスパイラルと言われるような状況にあるわけでございますので、中小企業に限らず日本の企業がだんだん体力をすり減らしてしまって非常に限界に近づきつつあるというんでしょうか、そういう状況にございます。  それから、銀行の窓口から見ておりまして非常に心配されるのは、前向きの資金需要がほとんど出てこないのでございます。支店から申請書が上がってくるわけですけれども一そういうものの件数が非常に減っておりまして、ちまたで新しい資金を借りて新しい事業に乗り出そうというふうな行動をとられる方が非常に減ってしまって、身をかたくして安全第一ということでやっている、そういうふうな状況にあるように思います。  それで、私どもも、これは個別銀行の問題でございますけれども、東京三菱銀行としては、特に中小企業のお取引先については支店長みずからよく連絡をとって、そのお取引先がどういう状況にあってどういうことに困っておられるか、これからどういうことを希望されるのかというようなこと、我々としてどういうことができるのかということをよく御説明して、ではどうしようかということを同じ身になって、相手の身になって相談に乗ってくれと、こういうことを絶えず言っておるわけでございますけれども、基本的にはやはり景気が回復してきませんと、この貸し出しが円滑でないという御批判というのは残念ながらなくならないんではないかなという気がいたします。  以上です。
  133. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 ありがとうございます。  伺っているとますます混迷を深めるわけでございまして、ではどうしたらいいんだろうかというような気持ちがします。まさにモラルが本当に崩壊してしまっておるのかなという印象を受けるわけなんですが、要するに銀行とは何だろうなと、本当にそう思うんです。  中坊さんがきょう午前中いらっしゃって、要は公的な機関であるということ、もっと言うと、決済機能という、金融システムという問題、安定化ということが一つと、もう一つは貸し出しということで、いわゆる金融機能ということですか、この二つを持ったものをとにかく守らなきゃいけないんだと、これは本当にそう思うんです。  ただ、今のお話の中で、この不況のせいももちろんあると思うんですけれども、バブルがはじけちゃって構造的な複合不況だからもうどうしようもないんだというので本当にいいんだろうか。要するに、モラルをある程度維持するために信賞必罰というんでしょうか、やはり経営責任。例えば、三月の資本を注入したという時点で、ある意味でこれは酷な言い方かもしれませんが、銀行経営が失敗したのではないかというような言い方ができないのか、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、とすれば、要は責任ある役員は、経営陣は総退陣ということがないと非常にわかりにくいと思うんです。  田中参考人に伺いたいんですが、そういう考え方はちょっと厳し過ぎるでしょうか。
  134. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) バブル発生バブルの崩壊の途中においていろんなことが起きます。  銀行について言いますと、バブルの崩壊によって貸し金の内容が悪化しますので、それは自己資本が毀損されることにつながります。自己資本の毀損をもって経営責任をとるということならば、それは明らかに経営者に責任があった、バブル発生と崩壊の途上においてそれは私は銀行経営者にあった。しかし、それはそれぞれの局面において経営者が、例えば株主との間で、あるいは自己にお持ちになっている基準との間で個々に考えられることであって、それを何か公的な形で強制するという、そういう世界では我々はないように思います。  ただし、おっしゃいますように公的資金の投入があるケースについては、銀行に対して公的資金を投入するということは納税者のリスク負担でもってこれが行われるわけですから、状況に若干の変化が起きた。要するに、それは本来民間の自治によって決まることに対して経営者の責任を公的に問う局面も出てくるかというふうに思います。  だから、それを非常に強調して言いますと、各経営者はそれを恐れてとても多額の公的資金の投入を要請するということはないということになりますし、結果として果敢な公的資金の投入は行われないということになります。それは、恐らく多くの国民が期待することとは結果として反することになるというふうに思います。ここの切り分けこそが極めて重要でありまして、国民の多くは信用収縮が異常に起きることを望んではいない。他方で、それでは経営責任はどうかといったら、これは一連の任期の過程において個々の経営者が考えられることであり、あるいは株主との関係でこれが決まるという問題だというふうに思います。  したがいまして、公的資金の投入に伴って当然銀行経営が問われる土俵は変わることは明らかですが、それを余りにも過度に言い立てることは、銀行経営者の意識を萎縮させ、必要な信用創造機能を結果として損ねることになりますので、ここは我が選良の皆様あたりもそのメカニズムを御理解の上、私は問題を切り分けて考える必要があるというふうに思います。  さなきだにその責任のことを言えば、経営者もまた人間でございますので貝の中に閉じこもるという行動が出やすい。そして、リスクを持った債権はできるだけ回収に走るようにという指示は出さなくても、部下がそれを重んじて走り出すという可能性は当然あるわけです。市場メカニズムというのは本当に微妙なところがございまして、そこの切り分けをうまくやりませんと、結果としてその災害が我々一人一人の国民にも降りかかる、そういうメカニズムだと私は理解しております。
  135. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 ありがとうございます。  今のお話を参考にしますと、例えば二つのパターンがあるかなという感じがするんです。一つは、ちょっとこれは極端な話かもしれませんが、自己資本比率が八%というのが国際業務をする、支店を出す基準でございますが、これをとにかく四%でいいと。国内に特化して、国内におりながらも国際業務というのはできます。ですから、そういう意味で、四%でいいというふうに、要は背伸びしないというのが一つの方法であるのかなと。  もう一つは、強制注入、強制責任をとるという、新聞なんかでも意見を言われている方がありますが、そういうのがあるのかなと。今の田中参考人の御意見参考にしますと、そういうことを今ふと思うわけでございます。我が党の案だと、情報開示ということを先にして、その後でなければ資本注入できないということで、それもそれですごく正論かなと、こう思うのでございますが、混乱しているというのはそういうことでございまして、要は開示を先にした場合にいいものも悪くなってしまうということがやっぱりあるのかなと思ったりするんですね。そうすると、ではどうしたらいいのかなということでまた迷ってしまうわけでございます。  もうそろそろこれで終わってしまうんですが、今申し上げた点、もう一回申しますが、要は銀行というのは何をするためにあって何を守っていくんだということも含めて、今の自己資本比率の状況について、最後にお三方からお答えいただきたいと思います。
  136. 岸曉

    参考人(岸曉君) 銀行は、申すまでもなく金融仲介機能でもって事業をやってそれで成り立っておる私企業でありますので、一種の経済に携わる者の本能といたしまして、できるだけ仲介機能を競争して取り込んで、そして機能を果たして自分の存在を大きくしていきたいという、これは本能的なものでございます。  したがいまして、営業環境が許すならば、かつては過当競争過当競争と言われて御批判を受けたわけでありますけれども、そういう中に内在する衝動というのはありますので、我々は好んで今の状況でよしとしているわけではないわけでございます。今のデフレスパイラルというのは、バブル崩壊後、日本経済がまだストック調整が終わっていないというところに一番の原因があるわけでございまして、設備にしましても雇用にしましても実体経済規模に比べて過剰だ、特に借り入れが過剰だというギャップがございまして今日の困難な状態があるわけでございますので、一日も早くこういう状態を脱して前向きに、過当競争と言われるくらいに頑張れる時代が来てほしいなというふうに思います。  それから、さっき四%でもうやったらどうだというお話がございましたけれども、日本の電機とか自動車とかの産業がもう本当に隅々まで海外展開をしておりまして、その海外における企業活動を金融機関としては支援をしていきませんと日本のいわば命綱みたいな部分が切れてしまうということがございますものですから、我々は何とか八%を維持して海外における企業活動を支援していきたい、こう考えております。  長くなりましたが、以上でございます。
  137. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 簡単に感想を申し上げさせていただきますけれども、先ほどちょっと申し上げましたが、もし貸し渋りということの対策であれば、私は銀行への資本注入以外にももっと直接的ないろんな方策を具体的に検討されるべきだと思います。  それから、銀行とは何かということですけれども、私も少なくとも日本においては銀行は公共性があると思います。ただ、間違えるといけないのは、救うべきものは個々の具体的な銀行ではなくて銀行システムであり銀行という仕組みだということです。  このことは、破綻前、後ということでちょっと簡単に申しますと、公的資金を投入する以上、これは破綻前であっても後であっても幾つか条件が当然つくと思います、減資を前提とするとか、例えば経営者に交代していただくとか。しかし、その公的資金ということを別にして、破綻前と後とでは、先ほどお話ありましたけれども、例えば強制的に経営者に交代してもらうとかいうのは、大分私は考え方が違うと思います。破綻している場合には、株主はゼロですし、それから経営者も普通の事業会社であっても交代することになります。これは、破産手続、会社更正手続が始まればそういうことになります。  しかし、破綻していない場合は難問なわけで、その場合に私は、個々の金融機関に強制的に資本注入をするとか経営者がかわれとかいうのはいかがなものかと。それは、先ほどの言葉で言うと収用だということになります。むしろ選択権を与えて、したがってそういう意味では民間の側からの選択というか申し出を待ってやるという、そういうことであっていいというふうに私は思います。  それよりも重要なことは、そういうことで言いますと、もっと新しい銀行、新しい貸付機関というものをどんどんつくれるような自由化措置をして、そういう新しい銀行金融機関というものを通じて金融システムあるいは銀行システムという仕組みを守るという発想の方が私はすぐれていると思います。  以上です。
  138. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 銀行システムは大変微妙にできておりまして、たたいてもけ飛ばしてもこれは堅固なものだというものではないわけです。  きょう御議論ございましたように、自己資本に対して十倍以上の貸国債権を持っている、それはなぜかといえば預金を受け入れているからでございます。短期借りの長期貸しが銀行の機能だとしますと、銀行経営というのは、まさに周囲の情勢に常に気をつけながらみずからの行動についても自己点検が要るというそういう性格なんだろうと思います。  実際にそれではバブルのときにそれが満たされなかったのはなぜだろうかと考えてみますと、幾つかの要因がございましたけれども、一つの原因は、銀行資産の部分に株式を多量に保有している。これは、戦後のある時期、株式の相互持ち合いは不可欠だというふうに多くの人が考えて、結果としてそういうことになりました。個々の事業会社については五%以内でございますが、銀行が保有しています株式の保有総額は余りにも大きかった。バブルのときにはこれが含み益として、銀行経営者自身が微妙なバランスで銀行経営というのは成り立っているということをとかく忘れがちになったという面があろうかと思います。  しかし、今日のように株価水準がここまで落ちてまいりますとこれが逆に出まして、ちょっとした風の動きにも経営者は常に憶病になる。これが、少し危ない貸し金はできるだけ早く回収したいという心理に今追いやられているわけです。  そういう意味では我々は、銀行制度の設計をもう少し日本経済が堅調だったときに設計し直すべきだったというふうに思います。銀行は貸し金を出すときほど株式を保有するときに十分な注意を払っていたようには思えません。そういう意味では、我々は銀行制度の設計を、今の異常な信用収縮の時期が終わりましたら、新たな商業銀行の設計思想というものをもう一度議論せねばならない時期が来ているのではないかというふうに思います。
  139. 木俣佳丈

    ○木俣佳丈君 以上で終わります。  ありがとうございました。(拍手
  140. 益田洋介

    ○益田洋介君 大変御苦労さまでございます。既に六時を回ってしまいましたが、田中先生にまずお尋ねをしたいと思います。公明の益田洋介でございます。  冒頭の意見陳述で先生はきょう、民間金融の重圧に今なっているのは、膨大する郵便貯金量、それに加えて大蔵省の資金運用部の運用なんだというお話をされておりました。郵貯については、民間金融への信頼感の薄さがふえるに従って、この数年猛烈な資金の郵貯シフトが起きているということ、それから資金運用部につきましては、金融債の保有を随分激減させた上で、結果として民間銀行への資金還流が細ってきているんだというお話でございました。金融債の大蔵省の運用につきましては、実際に数字を見せてもらいましたが、確かに驚くほどの減り方でございます。  一方、私が非常に先ほどのお話で興味を覚えましたのは、郵貯をこのまま放置していくと二〇〇一年四月末のペイオフで大変なことになると。ですから、少なくともそれまでに先生のお考えでは郵貯を何とかしなきゃいけない、やはり幾つかの形に分けた分割の民営化という議論がなされ、先生はこれを御指摘なされた。この辺のお考えをもう少し詳しく御教授願いたいと思います。
  141. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 今、日本の中で信用度が高いものは何かという問題がございます。  かつては大蔵省あるいは大蔵大臣は大変信頼されていまして、大蔵省が言えば大丈夫だということだったわけですが、例えばこの一年の情勢を見てみますと、大蔵省あるいは大蔵大臣がインターバンクでデフォルトは起こさない、したがってインターバンクで、銀行間の貸し渋りは起きてはならないといかに注意をしても、それをもはや金融機関は聞かないということになっております。  これに対して郵便貯金については、今日に至るまで国民の間でこれは大丈夫だという根拠のない議論がまかり通っているというふうに私は思います。それは、郵便貯金を国家のバランスシートで言いますと負債に当たりまして、資産の部分に何が挙がっているかといいますと、これはいろいろな資金運用部で運用がなされているわけですが、例えば旧国鉄の債務が集められたところに対して貸し出しを行っているわけでありますし、国有林野事業に対しても郵貯のお金資産の部において回っております。また、北海道東北開発公庫、これは例として申し上げるんですが、例えば苫小牧東部とかむつ小川原に対しての貸し金がございますが、普通の言葉で言えばこれらはいずれも不良債権回収に懸念が残るものでございまして、大幅な引き当てを本来行うべきであります。  そういう意味では、郵貯を国家の中央政府の資産の部に挙がっているものは本来はきれいにされてしかるべきだ、すなわちその部分は毀損していると考えるべきであります。  にもかかわらず、国民の多くの方々は、郵便貯金は大丈夫だというふうに信じておられます。多分、それはいざという場合には納税者のお金でそうした資産、中央政府が持っています資産はきれいにされるからだというふうに思っておられるからでしょう。  しかし、それは納税者のお金をもってきれいにするということでございますから、一方で納税者は郵便貯金も持っている。自分の債権が、言えば請求権が保全されるのは税金を通じてきれいにされるからだと。税金とそれから自分の請求権は、右のポケットに入っているものと左のポケットに入っているものでございますから、右のポケットに入っている請求権を保全するために左のポケットから補てんしているということでございまして、実際には不良債権という性格のものになっているわけですから、私はもう少し疑問を持ってもいいのではないかと思っていますが、一般にはそういうふうには思われておりません。  このため、言うならばリスク債権がどんどん拡大して、規律なき拡大が現実に起きているわけであります。これはやがて納税者の負担となってはね返ってくるものでございまして、冒頭申し上げましたように、民間金融機関に資金還流を妨げているだけではなく、中央政府の資産の部において不良債権を拡大させていることにつながっている可能性が非常に高い。この検討を抜きにしては郵貯の問題は議論できないと思います。  多くの人は、これはこの勘定に持っていく限りにおいて何の問題もない、預金保険機構にも郵貯は入っていないではないか、ということはリスクがないことだというふうに感じてここに持ち込んでおられるわけです。しかも、それは少額の零細な貯蓄性のものとはもはや言いがたいものでございまして、これが異常膨張しているということを放置するというのは私はあってはならないことだというふうに思っております。
  142. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、最近欧米で盛んになっておりますBIS規制の見直しという点についてお尋ねしたいわけでございます。  これは八八年に合意をしたわけでございますが、合意当時からかなり問題があった、議論があった規制でございまして、まず第一に、八%という基準の根拠が全く明らかにされないままそういう数値が決められたということ。加えて、果たして金融機関健全性を証明する指標としてこれだけでいいのだろうかという疑問があったわけでございます。  しかし、出発して十年がたちました。最近行われた議論、例えば二月末、ニューヨークで行われたシンポジウムにおきましては、スイスの中央銀行は、八%の引き下げそれから見直しということの主張をいたしましたし、FRBのアラン・グリーンスパン議長などは、もう規制そのものが形骸化しているので、経済状況またマーケットの商品の内容もさま変わりしているのだから規制そのものを根本的に見直そう、こういうふうな八%という枠組みを設けるのはもうこれは通用しないんだと。そして、バーゼルの銀行監督委員会のデスワン委員長も、規制の中心部分について見直す必要があると。かなり皆さん積極的に踏み込んでこられておりまして、具体的なスケジュールに上る可能性が出てきている。  一方で、これを受けた形でニューヨーク連銀のマクドナー総裁は、この一両年に欧米において議論を前向きにして、九九年ぐらいにはまとめたいというふうなことまでの議論が立ち至っている。  この辺の動きについて、我が国がこれでまた取り残されてしまうんじゃないか。今の段階で、やはりこうした欧米のマーケット、市場また中央銀行の総裁との会合で、我が国の考え方がもしあるのであれば大いに話し合っていかなきゃいけないのじゃないかと痛切に感じております。
  143. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ちょっとここで申し上げたいと思うんですが、参考人方々、まことに懇切丁寧に答弁されておりますけれども、質疑時間が限られておりますので、答弁をなるべく簡単にひとつお願いしたいと思います。
  144. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) BIS規制の問題について私が持っています見解を述べさせていただきます。  なぜ自己資本比率規制というのが出てきたのかという由来を考えてみますと、アメリカのように銀行設立が基本的に自由なところではどんどん倒産が起きる、退出が起きるわけでございますが、そのときに銀行経営者に倫理観の欠如が見られるようになりました。これはどこかで規律づけが必要だということになるわけですが、どういう場合に規律づけができるかというと、自己資本すなわち株主が自分のお金を持ち込んだ比率が高ければ高いほど規律づけはうまくいっているという統計的な経験的な関係がございました。  したがいまして、きょうお話が出ていますように、銀行という大変微妙ではあるけれども、しかし重要な仕組みをちゃんと生かすためには自己資本比率はやはり高い方がいいという経験則がありまして、これは極めて強固な考え方だというふうに思います。  八%という数字に根拠があるかどうかということは、御指摘のように特別根拠があるとは思いません。ただし、大きな方向は自己資本比率を次々に改善していく方向に行くべきだという方向でございまして、幾つか見直しの議論がございますが、八は高過ぎるから四でいいという方向に私は国際的な議論が行くとは思いません。むしろ、それぞれの銀行の自主的な努力によって自己資本比率を高めるようなそういう自己査定、自己規律を働かせていくべきだというのが大きな流れでございまして、それを八というふうに決めるかどうかは、見直すという可能性はありますが、では下げてもいいという議論には私はなる可能性は非常に低いというふうに思っております。
  145. 益田洋介

    ○益田洋介君 ありがとうございました。  ですから、基本的に八%という数字にがんじがらめになってマーケットがシュリンクして、銀行方たちは八%という数字が重荷になってしまって、何だか知らないけれども日銀総裁はルービン財務長官との対談で失言をされたとかされないとかというニュースも取りざたされております。ですから、基本的にやはり我が国も参画をしてそういった議論の席に着いて、これから積極的にその規制の見直しというのをしていくべきではないか。何か非常に八%だの四%というむだな議論を皆さんが一生懸命になって国を挙げて国会じゆうでしているんじゃないかという印象を僕は受けてしまっているわけでございます。  次に神田先生に伺いたいのですが、長銀がこの三月期に決算をいたしましたが、決算の結果は黒字決算でございました。しかし、何を考えたのか二月に通った金融法案の十三兆円の枠を申請して、一千七百六十六億円、優先株が千三百、劣後ローンが四百六十六億円、公的資金注入を受けた。黒字決算をして優良な、これまた八%という話が当時出たわけでございますが、これは優にクリアしているという決算結果が出たということは、私はかなり監査法人の問題というのが問われるべきじゃないかという気がしているわけでございます。外部監査法人が監査をした結果、黒字であるという認定をしている。  私は、アメリカのSアンドしの事件のときにRTCが非常に厳しい、経営者に対しては取締役の善管義務の違反、それから株主に対しては監視義務の違反、そして監査法人に対しては外部の、これはオーディターのプロフェッショナルライアビリティー、日本的に言うと専門家としての義務違反というような、定着した日本語がないんでしょうけれども、に問われて、非常に多数の監査人が、監査法人が、また個人が訴を提起されて、そして実刑判決を受けている。日本ではこういう例はないんです。  確かに、国内法においても監査法人というのは顧客に対して守秘義務があるわけでございますが、一方でまた金融監督官庁に対しましては報告なり説明義務というものがある。二律背反するといえばそういうことになるのかもしれませんけれども、日本における監査法人のプロフェッショナルライアビリティーのガードというのは、常にディフェンスのメーンのエレメントはここにあるんです。守秘義務を守らなきゃいけない。顧客のそんな決算上の秘密を外へ漏らすことはできないんです。  この二つの義務、この二律背反、これを法律の専門家でいらっしゃる先生に、国内法でどういうふうに組み立てて考えたらいいのか、解釈したらいいのか、どちらを優先するのかというようなことについて、急な質問で申しわけないんですが、お聞かせ願いたいと思います。
  146. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) おっしゃるような問題は非常に重要な問題ですし、それから日本だけでなく外国でも問題になることだと思います。私は問題の所在は多少違うところにあるんではないかと思っておりますけれども、その守秘義務を含む問題をどう考えるべきかという点につきましては、私も守秘義務というものは重視されてしかるべきだというふうに考えています。  多少違うところに問題があるんではないかというのは、もし一言だけ申させていただきますと、監査法人の役割、特に銀行金融機関の監査というのは、本来これは昔から金融機関は規制産業ですから、当然現在の金融監督庁つまり監督当局の検査も受けているわけですね。一般の事業会社の監査とそういう意味では違う面があるはずなんですけれども、日本の場合にはやはり監査法人による監査というものをいろいろな意味で反省しなければいけない面があったんではないかと思います。  それは一言で言えば、現在日本銀行のバランスシートが信頼を失ってしまっている。それは先ほどもありました低価法か原価法かというルールがあるんですけれども、これはルール次第では黒字のものも赤字になるわけですね。不良債権をどういうふうに分類するか査定するかについても、借りた人が返さないと言っているのを、これをどうするのか。それを百なのかゼロなのか決めなければいけない。そこのルール次第では赤字にもなるし黒字にもなる。バランスシート上黒字であります、これは現在のルールのもとではルール違反ではありませんと言っても、市場はもう全然信頼していない、そういう事態まで生じかねているわけであります。  したがいまして、私は、現在こういう会計とか決算についてはルールをもう一度見直して、どういうルールにするかをきちんとする、そしてそれにのっとったバランスシートをつくる、その点でおかしなことがないかを監査法人がきちんと監査するという、このすべての面をやはりここでもう一度見直すというかつくり直していただきたいと思います。
  147. 益田洋介

    ○益田洋介君 岸会長には大変申しわけございません、時間が大分過ぎてまいりましたので、今度またゆっくりとお話をお伺いしたいと思います。  終わります。(拍手
  148. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  岸参考人にお伺いいたします。  先ほど、審議中の金融関連法案について大変ありがたいことと、そしてまた使いやすくしてほしい、一刻も早く成立をということを言われました。  具体的にお尋ねしたいんですけれども、昨日自民党が提出いたしました金融機能早期健全化法案について、全銀協の会長としてまた東京三菱銀行の頭取として具体的に要望されていること、それをお伺いしたいと思います。
  149. 岸曉

    参考人(岸曉君) 昨日、早期健全化スキームの法案につきまして全銀協で、常専務クラスでございますけれども集まりまして、これをみんなで議論して、どういうことをお願いしようかということでまとめたわけでございますけれども、一口に言ってやはり実務的で有効な枠組みをつくっていただきたいということでございます。  その第一は、先ほどからも御議論に出ております原価法、低価法の問題、この選択制を維持していただきたいということ。それから第二に、分類債権の引き当ての問題でございますけれども、当然のことながら分類ということにつきましては銀行回収可能性判断、評価が入って行われるものでございますし、それからそれに対してどう引き当てるかということは、それぞれの銀行の価値判断があって、これなら安全だろうということで引き当てているわけですから、一律の引き当て率とかあるいはそれを強制するとか、そういうことはぜひ行わないでいただきたいということです。  それから、全体的に公的資金注入いただくときに、やはり余り厳格な条件をつけられますと、我々としても非常にちゅうちょするわけでございますので、この点についてもぜひ御配慮いただきたい、こんなふうに思っております。
  150. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 この法律の適用について、全銀協加盟のすべての銀行に適用されるということで理解されているわけですね。
  151. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀行に適用されるというふうに理解しております。
  152. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 額についてですけれども、当面十兆円になっておりますけれども、この額についてどういう希望を持たれますか。
  153. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀行の経営の状況がどういう状態にあってどういうレベルにあるかということを我々知る立場にないものでございますから、当面の局面を乗り切るために幾ら必要かという判断は実際問題としてできないわけでございますけれども、スキームがあるということが、この金額については財政の方の措置をやっていただけば手当てされるわけですから、最初から幾ら必要ということじゃなくて、まずはひとつスキームをつくっていただきたい、こういうことでございます。
  154. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 どうなるかわかりませんが、成立したと仮定して、個別の話になりますけれども、東京三菱銀行は申請されますか。
  155. 岸曉

    参考人(岸曉君) 例えば再生委員会の規則でありますとか政省令でありますとか詳細な運用方法がまだ決まっておりませんので、またこの法案が修正があるのかどうかもわかりませんものですから、今の段階では決めておりません。
  156. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今の話は、優良銀行にも公的資金をという話になってくると思うんですけれども、その点で岸会長自身が初めからそういう立場だったのかなということを思うわけです。  例えば、私は手元に、昨年十二月二十日付の毎日新聞ですけれども、その中で「東京三菱銀行次期頭取に聞く」という中でこういうくだりがあるわけです。「金融機関の自己資本拡充への活用は、モラルハザードの問題がある、護送船団方式と言われかねず、難しいのでは。」と。  今言われた立場、きょう表明された立場とこの立場は明らかに違っていると思うんですが、変わったんですか。
  157. 岸曉

    参考人(岸曉君) その新聞の取材を受けました時点では、まず自助努力で自己資本の問題をクリアすべきであろうというふうに考えましたし、そういう見通しも持っておったわけでございますけれども、十一月にあのような大型の倒産が三件続いて起こりまして、市場環境が非常に難しくなってくる、それに加えて株安、円安によりまして自己資本比率というものが急速に悪化してまいりましたので、これはシステム全体のためには踏み切った方がいいだろう、こういうふうに判断いたしました。
  158. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 次に、ちょっと長銀問題に関連してお聞きしたいんですけれども、長銀系ノンバンクの日本リースが会社更生法の適用を申請しました。会社更生法が適用されれば、取引のある金融機関は融資高に応じて損失負担をすることになるわけですけれども、全銀協としてはこれにどう対処されるんですか。
  159. 岸曉

    参考人(岸曉君) これは、個社の取引に対する個別銀行の問題でございますから、全銀協は関与しておりません。
  160. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 しかし、債務引き当て等4は当然やられていくということになると思うんですね。
  161. 岸曉

    参考人(岸曉君) 引き当てはそれぞれ各銀行判断で当然いたします。
  162. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 当然そうなっていくと思うんです。そうすると、日本リースのことし四月末と五月末の借入金残高をまとめた資料があるんです。  委員長、申しわけありませんが、ちょっと手元に資料があるんですが、参考人に渡してよろしいでしょうか。
  163. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 参考人に渡してください。
  164. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 借入金の、金融機関ごとに月末残高が細かく書かれております。これを見ると、日本リースは各金融機関から総額一兆八千九百億円もの融資を受けていることがわかるわけです。このうち、全銀協傘下の都銀、地銀、信託銀などの金融機関からは全体の八四%、一兆五千八百億円もの融資を受けております。例えば、東京三菱で言うと八百五十億円の融資をしている。これら債権をすべて引き当てる、そういう処理をすると仮定すると、当然資本を食いつぶすことになると思うんですけれども、そういうことになりますね。その影響をどう考えられていますか。
  165. 岸曉

    参考人(岸曉君) 当然のことながら、更生法を適用申請したわけでございますから、引き当てるとしても、更生計画によりまして何%の債権が切り捨てられるのか、その再建計画がどう立つのかということにかかわってきますので、一律な数字はありませんけれども、相当な影響があることは事実であります。
  166. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 相当な影響があるということですけれども、もう一つの資料があるんですが、全銀協傘下の金融機関による長銀系ノンバンクへの融資は日本リースだけではないわけですね。お渡しした四枚の資料について、日本ランディック、エヌイーディー、日本リースオート、ファーストクレジットのそれぞれをまとめた借入金残高表がそれなわけですけれども、乱脈経営の実態が今大問題になっているこれらの四社の借入金残高の合計は何と一兆三千六百億円に上るわけですね。そのうち全銀協傘下の金融機関は全体の七〇%、九千六百億円を融資しているわけです。東京三菱は二百八十億円となります。  こうした企業への融資もきちんと回収しない、そういうもとで公的資金による資本注入を望む、それはやっぱりちょっと金融機関の立場として君は問題があるんじゃないかと思いますが、どう感じられていますか。
  167. 岸曉

    参考人(岸曉君) 両面があるのかなという気がいたします。  日本の金融の特徴といたしまして、間接金融が米国等に比べて非常に比率が高い、四四%というような比率でございます。かつ、日本銀行取引の特徴といたしまして、一つ会社一つ銀行ということじゃなくて、数行ないしは数十行の取引が錯綜しているといいますか、そのためにそういう一種の連鎖反応の心配ということがございますので、こういうことも十分考慮しながら対処していかなくちゃいけないだろうというふうに思っております。
  168. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私はこの機会に、多くは法人や企業が問題になるわけですけれども、個人への不良債権の問題、債権問題についてお伺いしたいと思うんです。  実は、この問題というのは非常に大きな社会問題になっておりまして、銀行が押しつけ的な融資を行う、その結果さまざまな形で被害者を、個人資産家の住宅が競売に付されるとかいろんな問題が起きております。そういうことに関連してなんですけれども、私がまずお伺いしたいのは、分類債権全体の中で個人債務者の占めている比率と額、これを全銀協と東京三菱の場合どうかを教えていただきたいと思います。
  169. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀協の数字は私ちょっと入手しておりませんので、東京三菱銀行の数字でございますけれども、本年三月末の個人向け貸し出し、個人向けといいましても御商売をやっている事業資金は会社と同じ性質ですから、個人の家計というのですか、そういう非事業の貸し出してございますけれども、全体が六兆五千七百九十二億円でございまして、このうち破綻、延滞となっております残高は百九十八億円、〇・八%、こういうことでございます。
  170. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 大型フリーローンによる融資で変額保険に加入した案件についてなんですけれども、変額保険はいつから売り出された商品でいつまでやられていたのか、それからまた件数と融資額、残高、それについていかがですか。
  171. 岸曉

    参考人(岸曉君) 変額保険は、昭和六十一年に大蔵の認可を得て、これは保険会社でございますけれども取り扱いが始まりまして、平成三年まで取り扱われたというふうに聞いております。  それで、私どもの銀行の関連貸し出しは本年三月末で二千四十億円でございます。  以上です。
  172. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 こういう中で、金利分枠をつくって前貸ししている額、それがどのぐらいあるのか、それもあわせて私はお伺いしたいんですけれども、それについては恐らく時間がかかってあれなので、こういう数字について後で聞かせていただきたいと思います。  私がこの問題を問題にするのは、実はきょう午前中に中坊社長が参考人としてこちらに見えて、銀行のモラルハザードはとんでもない、甚だしいということを怒りを込めて述べておられました。その中で、銀行はうそをつく、大事な情報を隠す、おごりの態度はひどいものがある、そう批判をしていたわけです。これが実際の今の銀行の状況。先ほど参考人が、銀行への社会的批判が非常に強いということを認められて言われていましたけれども、そういう中身みたいなところですね、銀行はエゴだ、そして自分のことしか考えていない、もうけしか考えていない、そういう話をされておりました。  そうした中で、先ほどからお話しになっているように公的資金を受ける、しかもそれだけじゃない、こういう個人資産家の資産を食いつぶすような、そういうことが実際に行われているわけです。  私は、その立場でこの問題を取り上げたわけです。やはり昨今非常に大きな問題になっている銀行のモラルハザード、そしてまたこういう変額保険等々の問題について、私ははっきり言ってこれは銀行による重大な人権侵害だと考えるわけです。その点で、こういう批判に対してどう答えられるのか、その点をただして、質問を終わりたいと思います。
  173. 岸曉

    参考人(岸曉君) ただいまの御批判、御指摘につきましては重く受けとめるわけでございますけれども、ぜひお断りして御理解をいただきたいのは、変額保険というのは銀行の商品ではなくて保険会社の商品でございます。保険会社がこういう商品を新たに大蔵省の認可を得てつくってお客様にお勧めをし、お客様がそういうものにお入りになりたいというときに、さらに保険料の払込金について銀行の貸し出しを受けたいという場合に、その中身をお伺いして判断したものでございまして、私どもの方はそういう手続をきちんと踏んで行ったというふうに思っております。
  174. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今言われたことは正確ではありませんけれども、これで終わります。  ありがとうございました。
  175. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党の三重身栄子でございます。  本日は長時間にわたりまして御教示いただいて、ありがとうございます。私がいただいております時間は十三分でございまして、ですから大変恐縮でございますが、神田先生と岸会長にお伺いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  まず、神田先生には二件でございますが、債権管理回収業に関する特別措置法、いわゆるサービサー法案についてでございます。初めにこの点について少し伺いたいのですけれども、不良債権の管理及び回収を業として行うサービサーはアメリカ不良債権処理で活用されたと聞いているところでございます。アメリカのサービサーは公正債権回収処理法、FDCPAでしょうか、という法律だそうでございますが、広く消費者、個人向けの債権回収についてサービサーによる過酷な取り立て行為が規制されていると聞いているところでございます。我が国の今回の立法は弁護士法の特例ということでサービサー業を規制する業法になっておりますけれども、このような法規制の方法の違いについていかがか、その点についてお伺いをしたいと思います。  先ほど先生は、法律ができたら使うんだというふうにおっしゃっておりましたので、そこらあたりも含めまして御教示いただければと存じます。
  176. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 御質問ありがとうございました。うまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、私の感想を申させていただきます。  日本アメリカはいろんな点で違いがあります。これを言い出しますと、例えば個人の回収ということで言いますと、アメリカは個人を保護するために、私どもフェア・デット・コレクションと言っていますけれども、いわゆる暴力的な取り立てを禁止する消費者立法があります。日本にはそれに当たるような立法はありません。  しかし、このサービサー法に関連することで申しますと、やはり最大の違いは、日本はこういう債権回収するのはまさに御指摘のように弁護士がやるものだという考え方で制度ができているのに対して、アメリカはそうでないということなんですね。ですから、非常に極端に言いますとアメリカはだれでも回収をしていい、しかし変なことが行われるといけないから暴力的な取り立てば禁止するとか、そういう形になっている。これに対して日本は、弁護士を通じてやれば変なことは行われないであろうという考え方だと思いますけれども、そういう仕組みになっているわけです。  それで、今御指摘のサービサー法案ですけれども、それは、そういう日本の仕組みに例外を設けてサービサーというものを認めていった方が、不良債権回収、それからそうでない債権回収も含めて一定の範囲ではより債権回収ということに資するのではないかという発想でして、私はその発想は正しいというか、そういう発想で法律をつくっていいというふうに思っています。  アメリカで活躍したというのも御指摘のとおりだと私も理解していますけれども、日米の違いがいろいろありまして、それは不良債権と一口に言いましても、日本の場合は返さないと言っている不良債権が、どうもちょっとうまく表現できないんですけれども、アメリカの場合には法的措置に訴えることがいかに重要かという面があるんですけれども、日本の場合には法的措置に訴えればどの程度取り立てられるのかということについてアメリカと同じかどうかがちょっとわからないんですね。しかし、そのことはやってみなければわからないので、今までは全然やっていませんので、やはりそれは債権回収という形で法律を使って回収に努めるべきだというふうに思っています。  ちょっとお答えにならなかったかもしれませんけれども、そんな感じを持ちます。
  177. 三重野栄子

    三重野栄子君 社長というか、そういう方は弁護士かもわかりませんけれども、働く人だとか頼む人は、暴力団と言ったら悪いですけれども、それを業としているのではありませんが、そういう特異な方が働かれて、そしてアメリカと同じようなことになるのではないかという心配をいたしますが、いかがでございますか。
  178. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 今の点は、相手が個人の場合と企業の場合でやはり分けて考えるべきだと思います。個人向けの貸し付けの取り立てにつきましては、私も、理想というか、アメリカのように暴力的な取り立てを禁止する法律、消費者信用法などと言っている分野に属するんですけれども、日本でも将来早い時期につくるべきだというふうに思います。その点はおっしゃるとおりだと思います。
  179. 三重野栄子

    三重野栄子君 それで、やはり状況を見ましてそういう方向になっていかなくちゃいけません。  その次に、さきの国会で金融ビッグバン関連法として成立いたしましたいわゆるSPC法でございますけれども、この法律によりまして、金融機関不良債権等を証券化していくことが期待されているわけでございます。何しろこの法律は九月一日から施行されているもので、今のところ余り設立されていないという状況のようでございますけれども、これを積極的に法律として改善すべき点がございますかどうか、御意見を伺いたいと思います。
  180. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 今御指摘のSPC法ですけれども、私の意見によれば、SPC法は不良債権処理するのにも役には立つと思いますけれども、債権の流動化とかセキュリタイゼーションとか呼ばれていることですが、何か解決困難のときに流動化を使えば解決ができるがごとく理解されていた時期があるんですが、これは手品ではないので、もともと不良なものは流動化してもだれも買ってくれないというのが基本だと私は思っています。  そうはいっても、アメリカでも不良債権処理するために流動化という仕組みが使われて、それがいわばうまくいったという例がないわけではありませんので、私はその意味でも多少は、多少はという言い方は変かもしれませんが、役に立つ面もあるのではないかと思います。  それで、どこを改善すべきか。まさに御指摘のとおりまだ始まったばかりなものですから、なかなか難しい面が、よくわからない面はあるんですけれども、私の感じは、当初考えていた以上に何かいろいろと条件があって、特にどういうスキーム、どういう計画で流動化をするかということを全部定款に書くとか、そういう事前の要件がちょっと厳し過ぎるように思うんです。  したがいまして、もっと機動的にやれるようにというのは、もし将来改善を考えるとすれば留意すべき点ではないかと思います。
  181. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  近い将来にわたりまして、私どもも現実を見ながら検討をしていかなくちゃならない課題だというふうに理解させていただきました。  次に、岸会長にお伺いしたいのでございますが、今のSPCに関連することでございますけれども、東京三菱銀行では海外に設立した特別目的会社、いわゆるSPCを活用して担保不動産を証券化された例があるというふうに聞いておりますけれども、海外の状況もお伺いいたしとうございますし、それから今後我が国のSPC法に基づいて担保不動産の証券化を行うお考えがおありか、あるいは東京三菱銀行だけというわけではありませんで、銀行協会の中でそのように広められるかどうか、そのために必要な法改正があればお答えいただきたいと思います。
  182. 岸曉

    参考人(岸曉君) 日本ではこのSPC法はもうごく最近のことでございまして、最近まではこういうスキームが準備をされていなかったものでございますから、日本でそういう債権流動化のための特別目的会社をつくるというようなことになりますと、いろいろと支障があって実際なかなかできなかったわけでございます。  しかしながら、債権の流動化というのは非常に我々にとって切実な問題でございましたので、外国におけるSPCを使いまして流動化を行ってまいりましたし、SPCの利用に限らずいろんな流動化の手法を追求し、利用してきたところでございます。  今度SPC法ができまして、わざわざ海外に持っていかなくても日本の国内でこういうことができるようになったわけでございます。さらに申し上げれば、例えば海外ですとSPCというのは本当に少ない費用で、わずか数千ドルでできるというふうに言われておりますけれども、日本では最低資本金三百万、もちろんこれでも普通の会社よりずっと下がっているわけでございますけれども、そういうことでございます。また課税の面でも、これが我々にとって非常に大きなコスト上の課題になるわけでございますけれども、SPCに対する課税を非常に優遇していただいておりますけれども、つまり普通の場合に比べて半分にするとか、登録免許税でございますとか不動産取得税でございますとか、さらにこういうものを優遇していただければ非常に利用がしやすくなる、こういうふうに思っておるところでございます。  全銀協としては、こういう主として税制上の問題等について御要望を申し上げているところでございます。
  183. 三重野栄子

    三重野栄子君 その税法の問題でございますけれども、海外では非常に安いといいましょうか、ないといいましょうか、そういうところでおやりになっているというふうに伺っておりますけれども、それを日本の場合、そうやってほしいですねというだけじゃなくて、具体的にこうしたらいいという御提言はございますでしょうか。
  184. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀協といたしまして、十一年度の改正の要望で、SPCにかかわる法人税、事業税については内部留保分についても非課税となるような措置をお願いしたい。あるいはSPCによる不動産取得にかかわる不動産取得税についてはただいま二分の一になっておりますけれども、できれば全免にしていただきたい。不動産取得にかかわる登録免許税につきましても現在の二分の一を全免にしていただきたい。それから、SPCへの根抵当権の移転時登録免許税、これも今は措置がございませんけれども、何か軽減措置を講じていただきたい、このような御要望を申し上げさせていただいております。
  185. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。  先ほど神田先生のお話もございますけれども、法律はできればやっぱり活用、生かしていかなくちゃならないわけでございますから、次の提言等も今いただきましたので、私どももその内容を十分検討させていただきまして、この金融問題がいつまでもごたごたしないように積極的に世界の皆さんとともに前進するように努力をさせていただきたいというふうに思います。  どうもありがとうございました。(拍手
  186. 月原茂皓

    月原茂皓君 自由党の月原です。きょうは参考人方々ありがとうございます。簡潔にお答え願いたいと思います。  まず、岸参考人にお伺いいたします。  低価法とか原価法の話はもう既に多くの議員がされましたので省略いたしまして、もうずばり入りますと、第Ⅱ分類を、先ほどのお話だと回収可能な銀行の観点からそういう分類をしていくのがと言っているんですが、幾つぐらいに分けたらいいか。数を四つとか五つとか、そういうふうによく雑誌とかを見ると書いてあるんですが、第五分類をどのくらいに分けていかれるお考えでしょうか。
  187. 岸曉

    参考人(岸曉君) アメリカにおきます分類債権を見てみますと、日本の第五分類がおおよそ二つに分かれておりまして、スペシャルメンションというのとサブスタンダードというふうに分かれております。限りなく白に近いものからグレーまであるわけですけれども、白に近い方はスペシャルメンション、グレーに近いのはサブスタンダードということで、私どもの方は、要注意先債権の中の貸し出し条件緩和債権というのと、三カ月以上延滞債権というのがこのⅡ分類の中のアメリカにおけるサブスタンダードというのにほぼ該当すると思っておりますので、大体その二つに分ければいいのではないかなというふうに思います。
  188. 月原茂皓

    月原茂皓君 そこで、引き当て率というんですか、これをその場合にどういうふうにお考えでしょうか。
  189. 岸曉

    参考人(岸曉君) 引き当て率の問題でございますけれども、これはどのぐらいが回収不能になるであろうかという銀行の評価、判断が入って決められるものでございますから、銀行によってその業種構成あるいは地域性等によりまして、それぞれの銀行で一律ではなくて、例えば過去の実績貸し倒れ率等を勘案して、これならば健全だと思える範囲まで引き当てているということだろうと思います。  アメリカの場合なんかでも、例えばテキサスの銀行なんかはエネルギー関係が非常に多うございますし、カリフォルニアなんかの銀行はエネルギーよりも不動産が非常に多いというようなことがございます。そういうのは、例えばエネルギーが陰ってくればそこで引き当てをたくさん積むとか、銀行健全性の見地から引き当て率を決めていく、これが適当であろうと思います。
  190. 月原茂皓

    月原茂皓君 そうすると、先ほど参考人がお話しになっておった、Aという会社が甲という銀行からも借りておる、Bという銀行からも借りておると。そういう場合に、仮に一緒に第正分類に入ったとしたら、今おっしゃったような分類が一致するのか、甲という銀行とBという銀行が。それから、その率は一致するのかということはどうでしょうか。
  191. 岸曉

    参考人(岸曉君) 銀行間のその分類の情報交換は全くございません。
  192. 月原茂皓

    月原茂皓君 その点は、私もどう言ったらいいか、どういうふうに判断したらいいかわかりませんけれども、これから先、もし回収の方に入ったとしたら、その場合にはそれをどう分類するかということは、やっぱり公的資金の問題にも関係ありますから、一致したものであることが好ましいですね、ある時点においては。しかし、銀行の段階では無理だというわけですね。健全銀行で活動しておる間にはそれぞれが違ってもいたし方ないということになるんですかね。  ただ、私がお話ししたいのは、その引き当て率によって、非常に引き当て率が低かったら銀行の方も利益に影響しできますね、当然。そして、配当していくわけですから、それが余りにも違うと、そこに預金者というか一般の人から見るとそこらは一致してもらっておかぬといかぬじゃないかという気持ちがあると思うんですが、そういう点から聞いておるわけです。
  193. 岸曉

    参考人(岸曉君) その部分はやはり金融監督庁の監督行政、資産査定のチェックというものであろうかと思います。
  194. 月原茂皓

    月原茂皓君 率の問題について、いろいろ五%とかなんとか、その率を今言っていただきたいとかそういう話をしているわけじゃなくて、また参考人のお話のようにそれぞれ銀行によって違うのは当たり前ですが、最近言われているのは余りにも低いんじゃないか。というのは、日銀が調べた、これも何を対象にして調べたかというとなかなか難しい話でしょうが、日銀が査定して三カ年後の損失率を見ると一六・七%だったという数字も出ているわけです。これはさらに分析しないと的確な表現はできませんが、一般に第正分類の分け方、それからそれに対する引き当て率というものが違う、また低目に言われておるというところが、私は銀行の経営の問題として注意していただきたいなということで質問したわけであります。  それで、次に神田参考人にお順いいたします。  これはもう非常に単純、簡単な話ですが、モラルハザードと法律というのはどういうふうにお考えですか。
  195. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 法律は、法律以外の仕組みとあわせてモラルハザードをできるだけ防ぐように機能すべきだという関係にあると思います。
  196. 月原茂皓

    月原茂皓君 午前中、非常に激しい参考人、有名な方が来られましておっしゃっておったので、私たち法律を勉強したころは法と道徳というのはよく聞かされた話ですが、余りにも道徳的なものを期待するならば、むしろそれは法律を改正してそれに近づけていかないといかぬと私は思うんです。それをなくして人格に期待するとかそういうのは、まあそれは度合いの問題ですが、しかしそこらのところを考えると、神田参考人から見て今現在の日本法律でモラルハザード的なものをもう少しレベルアップしてやるべき事項というのはどういうものがありますか。
  197. 神田秀樹

    参考人(神田秀樹君) 難しい御質問で、いろんなところにいろいろなものがあるというふうに言わざるを得ないと思います。
  198. 月原茂皓

    月原茂皓君 それは頭のいい人だからここでたくさんの表現もできるんでしょうが、そういう点がややもすると、確かに聖人君子であるべきだというようなことで銀行の頭取はもう大変な、頭取さんを前にしてあれですけれども、一般銀行の責任者というのは聖人でないといかぬ、常に的確な判断を下していかなきゃいかぬ、そういうふうな考えで、理想的なんですけれども、法律がやっぱり最低限の道徳ですから、法律を常に改正していく、そうしなければ逆に日本の国は法治国家でなくなってしまう、私はその心配をしておるわけです。そういうことでお尋ねしたわけであります。  最後に田中参考人にお尋ねしますが、G7とかIMFとかそういうところで、とにかく日本については早く決心せい、景気をよくせい、存続可能な銀行に十分な公的資金を迅速に供与せよと、そういうふうなことが言われておるわけで、それに対して日本の国は今法律を出しておるわけですけれども、一般アメリカで言えばブリッジパンクなんというのはもう時代おくれだ、そんなものは高く評価されていないぞというような書き方をしておる書物もあります。それからまた、公的資金の投入、こういうものは本当に異例中の異例だというふうに書いているわけなんです。  今出されておるこの主要な二つの話について、田中参考人からごらんになって、グローバルスタンダードと言うとちょっときざな言葉になりますけれども、どう評価されますか。日本の国内では評価されているのかもしれませんけれども、それは私の党は反対しておりますが、グローバルスタンダードからいってこの二つの法案は十分期待にこたえられるものであろうかということです。例えばブリッジパンクにしたって、これは大きいものについては使えないぞということがアメリカの方でも言われておるわけです、小さなときには対応されたわけですから。そういう点から率直な意見をお伺いして、私の質問を終わります。
  199. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 日本で早く不良債権問題を処理して経済健全化させろという国際社会の要請は、東アジアもそれからその他のエマージングマーケットもそうですが、彼らは自分たち経済が回復するためには輸出をしなければいけない、輸出を通じて債務を返済していくというその流れに乗りたい。現在、世界の最後の買い手は実質アメリカだけでありまして、二番目の経済規模を誇る日本がいつまでたっても買い手としてあらわれないということは世界のデフレに対して問題があるということから、ともかく早く日本経済健全化させてほしいという要請だと思います。  その中で、アメリカの主張も、この半年あるいは一年、数カ月のうちに変わってきたように思いますが、とにかくどんな手段を使ってでも早く脱皮してほしいと。アメリカ自身が年末にかけて成長減速に入ることがどうも確実になってきた、世界で買い手がだんだんなくなってくれば世界はえらいことになるというこの緊急度が、我が国に対して手段は何でもいいからとにかく立ち上がってこいということになってきていると思います。  御指摘のブリッジパンク、それから公的資金の投入、それはブリッジパンクを適用できるところはブリッジパンクでワンタッチで営業譲渡に至る。大きな銀行が営業譲渡に至るというのは、確かにデューデリジェンスも時間がかかりますし、そう簡単な話ではないと思います。しかし、規模の小さな銀行についてはブリッジパンクは適用に十分なると思いますので、営業譲渡のワンタッチとして国有化する、国の管理に入る、そして民間に売り放すということは可能かと思います。  しかし、一般論で言うと、今、公的資金の投入を通じて早く信用収縮のシステムから脱却してほしいというのが世界の声のように思われます。
  200. 月原茂皓

    月原茂皓君 どうもありがとうございました。大変参考になりました。(拍手
  201. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からは岸参考人にお伺いいたします。  最初は、政権党である自民党に対する銀行業界からの政治献金であります。  もう事ここに至れば、これはきっぱりとおやめになったらどうか、これだけの話であります。国民から見ると、これはもう実質贈収賄ではないか、こういう感情もあろうかと思います。  実は、先般、小渕総理にもう受け取るのをおやめなさいとこの委員会で言いましたら、大変苦しそうな顔をしておりましたけれども、最後には、やめる方向で検討することを幹事長に命じますと、こうおっしゃいました。今ごろ幹事長が頭を抱えて検討しておるんだろうと思いますけれども、お金というのは持っていく人があるから受け取る人が迷うわけであって、持っていく側が今この場でやめますと、こうおっしゃれば、もう幹事長あるいは小渕総裁の悩みも解消するわけですから、どうかこの場ではっきり、やめますとおっしゃってもいいし、あるいはまた、しかし自民党にはもう昔からお世話になっているので額をこれ以上ふやしてさらに献金を続けたいと思いますと、いずれでも結構ですが、どうぞはっきり結論だけでよろしいですから申してください。
  202. 岸曉

    参考人(岸曉君) 献金につきましては本年御要請を受けておりませんので、全く検討もしておりません。  伝えられる総理のお話を伺いまして、大変御心労をおかけして恐縮しております。
  203. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 やるのかやらないのかはっきりしませんが、まあやめるんだろうと思いますので、これはこれで結構だと思います。  それから、先ほどリストラに真剣に取り組んでそれなりの成果をおさめておると、こういう話でした。大変結構なことでございますが、ここに一つの資料がございまして、三和の渡辺名誉会長九十九歳、東京三菱堀江特別顧問九十五歳、富士岩佐顧問九十二歳、さくら河野名誉顧問九十歳、住友伊部相談役にして最高顧問八十九歳、これ別に東京の高齢者名簿を並べているわけじゃないんであって、これが今現在の銀行の顧問とか相談役とかの地位にある人であります。  それから、ついでですけれども、いずれも特別顧問で敬称は略します、東京三菱銀行堀江九十五歳、中村八十八歳、山田八十二歳、柏木八十歳、伊夫伎七十七歳、これは何か養老院、老人ホームかなんか、そんな感じすらするわけでありまして、リストラといっても下級職員の月給を多少削ると、そんなことは国民は全然わかりません。やっぱりこういう方々に思い切って、役に立っているかどうか知りませんけれども退いてもらう。そういたしまして、七十五でも私は高いと思うんですけれども、七十五になったらもうきっぱりと銀行からは縁を切ると、そういう申し合わせを全銀連でなさったらどうでしょうか。これも申し合わせをする気があるのかないのか。やっぱり、老人たちも大切にしていきたい、日本は老人天国だと、それも一つの考え方でありますから、結論だけで結構ですからおっしゃってください。
  204. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀協では顧問や相談役の問題について話し合いをしたり取り決めをしたりするつもりは全くございません。  私どもの個別銀行のことについて申し上げますと、私どもの相談役は、特別顧問、上場会社やそれに準ずる会社の商法で定められた役員を十二社務めておりまして、三菱商事、三菱重工、三菱電機、三菱自動車工業、本田技研等々の社外重役を務めております。これは、銀行のトップを務めました見識あるいは経験、そういうものを買われて先方から要請されたわけでありまして、時間的にも若干余裕がございますからそういうものを務めさせていただいているわけでございまして、先方の会社から見ると、やはり東京三菱銀行に籍を置いていると、こういうことが重要なことであろうというふうに思っております。
  205. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後に、一言。  全銀連の会長さんがそんなことを音頭をとってみんなで話し合おうということができないんですか。何のための会長ですか。接待係とかそういう名誉職なんですか、会長自体が。もっと実質のある話をしてください、銀行自体この問題を真剣に受けとめて。  以上でございます。(拍手
  206. 水野誠一

    ○水野誠一君 時間も限られておりますので、まず岸参考人に伺いたいと思います。  経営者として自行のかじ取りをされるということと同時に、業界に降りかかる大変大きな問題を解決しなければいかぬということで大変御苦労があると思います。  今論じられております法案、それからそれに伴う処理スキームは、現在金融機関が持っております病巣にメスを入れてそれを根治させるものであると思っております。先ほど神田先生も言っておられましたが、ともかく成立をさせて、まずいところがあればそれはまた随時直していけばいい、ともかく一日も早い施行が求められていると感じております。  でありますが、問題はその手術の後に真に健全な金融システムが実現できるのかということだと思います。言いかえれば、もう二度とがんにかからない体質ができるかどうか、ここが私は重要だと思います。往々にして、経済危機あるいは不祥事、こういうことが起きた後、のど元過ぎれば熱さを忘れるということはどんな業界にもよくあることでありますが、そういったことが二度と起きない体質改善というもの、これはやはり私は全銀協の役割といいますかリーダーシップということになると思うのであります。  どうもこういうことをいろいろジャーナリストの方なんかと話をしていますと、いや全銀協というのはそういうリーダーシップではなくて、むしろ大蔵省にかわるような護送船団方式的なれ合い、そういう体質の方が強いんだ、だから一行が思い切って体質改善をしようとすると、いやみんな横並びでという抑止をしてしまう、そういう役割が今までは強かったということを言われます。しかし、岸会長になられてから恐らくそういう体質は変わってくるのではないかという期待を持っておりますが、その点について例えればと思います。
  207. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全銀協の性格や機能につきましてはいろいろと御批判もいただき、また我々も問題意識を持って日ごろ考えているところでございます。  確かに、おっしゃいますように大蔵行政の規制が非常に強かった時代はそういう規制の仲介をするというのでしょうか、大蔵の行政の補完をするというのでしょうか、そういう機能が非常に強かったと思いますけれども、規制そのものがなくなってしまいましたものですから、全銀協はそういう意味での規制の一翼を担う機能というのは自然消滅をいたしました。  あとは、ではどういうことかということでございますけれども、一つは、決済システムというものを担っておりますので、これを支障のないように運営していく、そのためのもの。それからもう一つは、やはり銀行界として皆様からいろんな御意見を伺い、また我々の方からも情報を発信させていただく。例えば、きょう私は全銀協会長ということでここへ伺わせていただいていろいろ述べさせていただいているわけでございますけれども、こういう機能をこれからも十分に果たせるように、なるべく透明性のある協会運営を心がけていきたいと思って、今組織の問題をいろいろと議論しているところでございます。できるだけ改善をしていきたいと思っております。
  208. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう時間がございませんので、今のお話は承っておきます。  一つ短くお答えをいただければ結構なんですが、田中参考人に伺いたいと思います。  先ほどから何人かの委員からも質問があったんですが、銀行がリストラを進めているということは言われる。しかし、欧米の銀行、とりわけ日本に進出をして非常に画期的な成長を遂げていますシティパンクなんというのもありますが、そういうところの経営者に聞くと、それでもまだまだ日本は人件費にしろ経営コストがかかり過ぎているんだと、そういうことを言われるわけであります。  本当に銀行がこれから体質改善、これはリストラだけではなくて、言ってみれば金融システムのあり方を変えていくリエンジニアリングという視点からも銀行が変わっていかなければいけないと思うのでありますが、その点について、一言で結構でございますが御感想を。
  209. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 恐らくは、各銀行が業務の絞り込みを通じてリストラを実現されることと思います。  規制行政が長い時代にあって、必ずしもコストをそれほど削減する必要はなかったように思います。それは超過利潤が生まれる仕組みが、特に規模が大きい、相対的に効率的なところに超過利潤が生まれておりましたので、業務は何でもそろえた方がいいということで運営されてきたように思います。しかし、今後、自由化時代にあっては、恐らく相当戦略的に業務を絞り込まれたところが成功するということが明らかになりますし、金融人口は明らかに過大でございますので、恐らくそうしたリストラが観察されるのではないかと見ております。
  210. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。(拍手
  211. 菅川健二

    ○菅川健二君 改革クラブの菅川健二です。遅くまで参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。最後でございますので、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  まず、岸参考人には、私は財政・金融委員会で五月に、金融システム改革法のときにお目にかかっておるわけでございますが、その際、三月期の決算においてほぼ銀行においては不良債権処理については見通しが立ったという発言をされまして、我々としてもほっとしておったわけでございますが、その後、五カ月たったら大変な深刻な事態に陥っておるわけでございまして、その点、銀行の内部というよりも、内外の経済情勢の悪化というものが大変な影響を与えたんだろう、御心労も大変だろうと思うわけでございます。  ただ、これまで一番金融関係で問題になっておりますのは、御案内のように経営の実態につきまして、不良債権を中心としてもう一つどうもはっきりいたさない、したがって、病状がはっきりしないのにそれについての処方せんもどうも皆それぞれが勝手に判断をしておるというような状況がいまだ続いておるんじゃないかと思うわけでございます。  確かに、引き当ての問題とか、あるいは低価法、原価法の問題、そういったいろいろ物差しの違いがございますので大変難しい問題があるわけでございますが、各銀行がやはりそれぞれ思い切ってこの際必要な情報は開示していくという基本的な姿勢が必要ではないかと思うわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  212. 岸曉

    参考人(岸曉君) 全く先生の御指摘のとおりでございまして、我々できるだけ情報開示を進めて、預金者、投資家その他の御理解をいただいていきたいというふうに思っております。  開示でございますけれども、やはり比較可能性というのが非常に大事だということは、幾つか原則はございますけれども、その中では比較可能性というのが非常に重要だというふうに言われておりまして、そのため、全銀協でもリスク管理債権の開示基準、これはアメリカで行われている基準とほぼ同じものでございますけれども、そういう基準を設けまして、さらにその先いろんなセグメント情報を出して開示を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  213. 菅川健二

    ○菅川健二君 ひとつ積極的にお順いいたしたいと思います。  田中参考人には、金融機関の情報開示のあり方についてどのようにお考えか、お聞きいたしたいと思います。
  214. 田中直毅

    参考人(田中直毅君) 預金者も二〇〇一年四月以降はペイオフ解禁という形でみずからリスクを負わなければなりません。これまでディスクロージャーは、専ら株主に対して、投資家にとって必要な情報は開示されるべきであると一般的に上場会社に求められていたものが銀行にもあったわけですが、そのほかにペイオフ解禁という時代になりますと、預金者もまた銀行の内容を知る必要があります。  そういう意味では、ディスクロージャーに徹底を期すということはもう不可欠だと私は思っております。
  215. 菅川健二

    ○菅川健二君 もう一つ、現在、今度の健全化スキームで問題になっておりますのは、健全銀行に対する公的資本注入をすべきかどうかということが議論になっておるわけでございますが、現在の金融機関というのはオーバーキャパシティーであって、これからはビッグバンに対抗、対応するためには金融の再亀を進めなければならないという要請もあるわけでございます。  また、急に信用についての不安があるアクシデントによって起こるということもあるわけでございます。また、思い切ったリストラをやることによってさらなる優良銀行として世界に羽ばたいていくという、そのためにはその後の結果責任というものをきちっと踏まえる必要があるわけでございます。  いずれにしても、明確な政策目的のある場合においては健全銀行に対する資本注入の道も必要ではないかというふうに思うわけでございますが、全銀協の方としては、あるいは岸参考人としてはどのようなお考えを持っておられるか、お聞きいたしたいと思います。
  216. 岸曉

    参考人(岸曉君) 再編というお話があったわけでございますけれども、一つちょっと一般に思われておることと実態がどうも違う点がございまして、日本銀行の数が多いんではないか、もっと日本銀行は数が減るべきである、こういう御議論が割合に広く行われているわけでございます。  ところが、実はアメリカと比較いたしますと、九七年、昨年でございますけれども、商業銀行の数が日本は百六十二でアメリカは九千百四十四でございます。これは全く一けた違う、二けたに近く違う。アメリカ銀行が多いのでございます。これは多分小さな銀行が多いんだろうと、こういう推論が出るのでございますけれども、実は大手銀行九行くの日本の貸し出しの集中度でございますけれども、四九・四%でございまして、アメリカの大手十行は二七・七%なのでございます。ということは、寡占度は日本の方がずっと高いということでございまして、数の点から再編を進めるべきだということには多分ならないのではないかと思います。  ただ、今後ビッグバンを迎えまして、より効率的な経営を目指していかなければならないことはもう当然でございますので、そういう観点から、さらにリストラ、必要があれば再編というものを進めていくべきであろうというふうに思っております。
  217. 菅川健二

    ○菅川健二君 以上でございます。  どうもありがとうございました。(拍手
  218. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人方々に一言お礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心からお礼を申し上げます。(拍手)  明日は午前九時三十分に委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後七時二十分散会