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1998-08-18 第143回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年八月十八日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 海江田万里君    理事 前田 武志君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       飯島 忠義君    植竹 繁雄君       江口 一雄君    江藤 隆美君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       島村 宜伸君    下村 博文君       津島 雄二君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       谷津 義男君    横内 正明君       岩國 哲人君    上原 康助君       生方 幸夫君    小沢 鋭仁君       岡田 克也君    小林  守君       坂上 富男君    原口 一博君       藤村  修君    松崎 公昭君       石田 勝之君    上田  勇君       漆原 良夫君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    西川 知雄君       冬柴 鐵三君    丸谷 佳織君       鈴木 淑夫君    中井  洽君       中村 鋭一君    西村 眞悟君       野田  毅君    木島日出夫君       志位 和夫君    春名 直章君       矢島 恒夫君    秋葉 忠利君       伊藤  茂君    北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣 川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     西田  司君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      井上 吉夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 額賀福志郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹山  裕君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         内閣審議官   安達 俊雄君         同       白須 光美君         内閣官房内閣広         報官室内閣広報         官         兼内閣総理大臣         官房広報室長  上村 知昭君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         人事院事務総局         任用局長    森田  衞君         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         北海道開発庁総         務監理官    斎藤 徹郎君         防衛庁参事官  伊藤 康成君         防衛庁長官官房         長       藤島 正之君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁経理局長 大森 敬治君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         国土庁防災局長 林  桂一君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         証券取引等監視         委員会事務局長 舩橋 晴雄君         法務大臣官房司         法法制調査部長 房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         外務大臣官房長 浦部 和好君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  阿部 信泰君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         国税庁次長   大武健一郎君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         文化庁次長   近藤 信司君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         運輸省鉄道局長 小幡 政人君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設省都市局長 山本 正堯君         建設省河川局長 青山 俊樹君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         会計検査院長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局次長    深田 烝治君         会計検査院事務         総局第二局長  諸田 敏朗君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (北海道東北開         発公庫総裁)  濱本 英輔君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 八月十八日  辞任         補欠選任   越智 通雄君     飯島 忠義君   河村 建夫君     下村 博文君   岩國 哲人君     松崎 公昭君   岡田 克也君     藤村  修君   草川 昭三君     冬柴 鐵三君   西川 知雄君     石田 勝之君   鈴木 淑夫君     野田  毅君   西村 眞悟君     中村 鋭一君   志位 和夫君     春名 直章君   不破 哲三君     矢島 恒夫君   秋葉 忠利君     伊藤  茂君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     越智 通雄君   下村 博文君     河村 建夫君   藤村  修君     岡田 克也君   松崎 公昭君     岩國 哲人君   石田 勝之君     漆原 良夫君   冬柴 鐵三君     丸谷 佳織君   中村 鋭一君     西村 眞悟君   野田  毅君     鈴木 淑夫君   春名 直章君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     不破 哲三君   伊藤  茂君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   漆原 良夫君     西川 知雄君   丸谷 佳織君     草川 昭三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  きのうの菅直人君の質疑に関連し、原口一博君から質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原口一博君。
  3. 原口一博

    原口委員 おはようございます。民主党原口一博でございます。  小渕総理並びに関係大臣に、まず御就任のお喜びを申し上げたいと思います。また、同世代の郵政大臣におかれましては、古い政治の常識にとらわれずに果敢に改革をしていただきますように心からお願い申し上げます。  人柄小渕さんというふうに言われていますが、三十数年政治家をなさって人柄を売り物にできるというのはやはり見上げたものだというふうに思います。ただし、きのうの答弁を聞いておりますと、私は、橋本内閣のときの国会審議とよく似ているなというふうに思います。  パネルを用意してまいりました。財革法のときに私たちはこういうスキームを出させていただきました。財政構造改革は必要だけれども、それを一遍にやってしまうと地方もあるいは日本経済もつぶれてしまうんだ、だから、どうか橋本総理、思い直してくださいということで議論をやってきました。ところが、橋本総理財構法の成立に大変な強い意欲を示されて、結果的にはああいう形になってしまった。  去年の十月、総理お話をしたときにも、私はアジア金融危機の話をさせていただきました。アジア金融危機は今回飛び火するんではないか、ですから、こんな緊縮財政予算をやっちゃいけないという話をしましたら、そのとき橋本総理は、今大変微妙なときだからこのことについては議論を差し控えさせてもらいますという話でした。その数カ月後に、この経済不況の原因は、いや、アジア不況なんだというふうに言われている。そのときには国会では議論をしないで、そしてそれが終わってしまうと、いや、アジア経済がおかしくなったから日本経済もおかしくなったんだ、こんなことを言っている。  きのうの議論を聞いていると、まさに場面はアジアと、今回は主要銀行不良債権の問題でございましたが、主要銀行破綻があった場合にどうするんだ、そのときについては何もお答えにならない。あるいは、ブリッジバンクについて、それでその破綻が救えるかどうか、そのことについてもお答えにならない。  私は、きょう二十一分の短い時間でございますが、国民皆様に、人柄小渕総理にしばらく経済改革をやっていただいてそして日本経済を復帰させるのがいいのか、それとも小渕内閣そのもの政治空白だから早く解散・総選挙を打つ方がいいのか、その材料を提供させていただきたいというふうに思っています。  まず、きのうの質問に関連してでございますが、新しい検査基準をつくる。ところが、今金融監督庁検査に入っている、この検査については公表なさるんですかなさらないんですか、総理お尋ねをしたいというふうに思います。
  4. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現在十九行につきまして鋭意検査を続行中でございます。その検査結果が出ました暁のことについてのお尋ねでございますが、それぞれ各行別検査の報告を公表するということは非常な大きな影響を及ぼすことになりかねない。それは、お金を借りておられる各企業の実態その他等にも触れることでもございますので、その点については公表することはなかなか困難ではなかろうかと思いますが、十九行全体での大きな動きといいますか、そういうことにつきましてはこれから検討させていただきたいと思っております。
  5. 原口一博

    原口委員 個々の事例を公表してくださいと申し上げているんじゃありません。私たちはやはり、熱があるのかないのかはかる、熱があるのかないのかが知りたいわけです。なければそれでいい。あるのを、今度は逆に、金融監督庁がその体温計を取り上げてどこかの氷水か何かに入れて、熱は下がっていますよ、こんな表現をする。そういうことそのものに対する不信が今沸き起こっているんではないかというふうに思います。  もう一つ、これは先日の予算委員会の中で、私たちは、いわゆる不祥事を起こした四銀行大蔵省検査示達書を見ました。ここに書いてあるのはほとんど○○○、×××ですから、この内容は外に出しちゃいけないということで私たち見ましたから、ここには何も書いていない。しかし、あの何とかしゃぶしゃぶで接待を受けた人たち、その皆さんもしっかりと検査をなさっていた。私は、この検査の結果についてもしっかり公表する。  私たちが見た中には、その内容については言いません、どの銀行がどんなことをやっているか、それは信義にもとりますから言いません。しかし、その内容については、中には業態まで隠している。私たち国会議員にさえも業態まで隠している。どんなことが銀行で起こってきているのか。あるいはこの第四分類と言われるところについても、どんなことが起こっているのか、事細かく書いてある。ところが、その業態まで隠しているから、何が起こっているのか全くわからない。国民は、銀行で何が起こったのか全くわからないのに税金だけをそこにつぎ込まなければいけない。これは大変理不尽なことだというふうに思います。  私は、この検査の仕組みと、そして今まで問題を先送りにしてきた大蔵省影響力、これをきっぱりと分けるべきだというふうに思いますが、総理基本的な御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  6. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融機関情報開示そのものは、これはやはり金融機関経営透明性を高めまして、市場規律を、より経営自己規制を促すとともに、預金者自己責任原則確立のための基盤となることから極めて重要だ、このことは本質的にそう思っております。  そのために、不良債権情報開示等につきましても、しばしば申し上げておりますように、アメリカの、新しいシステム、SECの基準と同様の基準に従いまして情報開示が既に行われておるところでありますので、そういった観点に立ちますと、従来に増しての自己による検査、あるいはまたそれぞれの金融機関自体状況につきましてそのことを明らかにしていく方向になっておるとは承知をいたしております。  ただ、お尋ね金融監督庁で現在調査をいたしておりまする点につきましては、先ほど申し上げましたように、個別の企業経営内容を当事者の意に反して開示することになる等の問題があるほか、場合によりまして信用秩序の維持に不測の影響を及ぼすおそれがあるので、申し上げておりますように、公表することは適当でない、このように考えております。
  7. 原口一博

    原口委員 質問したことに答えていただきたいのは、私は、この先延ばしの大蔵行政企画はまだ大蔵にあるわけですね。ここときっぱり検査金融監督庁を切り離すべきじゃないかということをお尋ねしているんですが、総理、いかがでしょうか。
  8. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 必要な範囲におきまして切り離して、監督庁それから大蔵省、それぞれの分野において明らかにしていくことは当然だろうと思います。
  9. 原口一博

    原口委員 今のは切り離すということで理解してよろしいですか。議事録に残るので、切り離すということを総理お話しになったというふうに私は受けとめます。  現実は大蔵省外局になっている。ですから、私たちは、これを一刻も早く独立した本当検査機関にしなければいけないというふうに思っています。  ここに、四銀行銀行不祥事の資料、考察したものを持っています。国民皆様にはお見せすることができません。しかし、いかにたくさんの不正が行われてきたのか、いかにけしからぬことが起こってきたのか。それについて、本当だったらつぶれなくていい企業がつぶれ、そして失業しなくてよかった人が失業し、亡くならなくてよかった人が亡くなっている。このことに対する怒りをもっと真摯に政府は胸の中に置いて、改革を進めていくべきだというふうに思います。  もう一回、金融財政分離というのはなさるんですね。
  10. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御案内のように、行政改革会議及び国会における審議を経まして、本年六月九日に中央省庁等改革基本法が成立いたしまして、同法におきまして、金融監督庁金融庁に改組し、内閣府の外局とすることが規定をされております。  したがいまして、こうした形で金融庁として新たなる組織のもとで対応するということになりますれば、当然のことでございますけれども、その点についての分離はしっかりしていくものと考えております。
  11. 原口一博

    原口委員 総理から前向きの御答弁をいただきました。  今やはり海外はどう見ているのか。去年IMFが指摘をしましたけれども、低金利によってじゃぶじゃぶに金利をして、そして不良な銀行もそうでない銀行もわからなくなっている、このことが私たちの国の経済を大きく引っ張っているんだというふうに思います。本当にこの人とはつき合っていいのか、久間先生とつき合っていいのか、あるいは前田先生とつき合っていいのか、だれがどれだけ不良債権を持っているかわからないから、このこと全体が日本経済の足を引っ張ってしまっている。そして、銀行が何かおかしくなると今度は親が出てくる、親が出てきて体温計も操作する、そんなことじゃだめだということを強く訴えておきたいというふうに思います。  あと細かいことについては、金融特の中でさらに質問をさせていただきます。  さて、次にお話をさせていただきたいのは、今回の参議院選挙の民意ということであります。  一九八〇年代の選挙政権与党は、行政に依存をした人以外からもたくさんの票をもらっていました。しかし、九〇年代になると、行政から直接利益を得ている人たち、この得ている人たちに、自分に投票すれば分配をするぞと、この分配メッセージをしてもなかなか得票率が上がってこなくなってきている。多くの国民にさまざまな情報が行き渡って、私たちは、この古いタイプの政治分配型の政治が限界に来ているんだというふうに思います。  私たち民主党は、ターゲットはあくまで自立をした人たち。一人一人が自立をして、そして私たちが出すメッセージは、自分に投票をしてくれればあなたにこんな分配をしますというそんなげびたものではない。そうではなくて、一緒に価値を創造していこう、一緒に物事を考えていこう、前に進めていこうというメッセージだというふうに思います。  さて、こういう観点から今回の概算要求基準を見てみると、果たしてどういうことでしょうか。さきの参議院選挙の前に、ある与党政治家がこんなことを言っていました。今回補正予算をするから、まだ地元の皆さんで橋や道路をつけたいところがあったら自分のところへ言ってきてくれ、まだつけるから、自分に頼めばつけるから、こんなことを言っているんです。私は、そのことに対する怒りが今回の参議院選挙の大きな大きな無党派の意思としてあらわれたのではないかというふうに思います。  財政構造改革関連で、私たち本当に必要としている予算、これがどうなったかということをグラフにしてまいりました。例えば、有馬文部大臣おられますが、文部省予算。この文部省予算については、例えば国立学校特別会計への繰り入れ、マイナス二百十五億、それから義務教育教職員定数改善計画、これについてはマイナス三千七百十五人、こんな減になっている。これは文部省予算だけではありません。同じように、厚生省予算についてもさまざまな財政構造改革の減になっている。国民の一番不満あるいは不安に思っているところ、これは私たちの生活に身近なところがばっさりと切り捨てられているというところではないでしょうか。  総理にお伺いしますが、これらの予算の復活、これをなさるおつもりでしょうか。  カナダでは、一ドル教育費を削減すると七ドルその分のまた新たな負担を社会がしなければいけない、こういう事例も発表をされています。  私は、皆さんがおつくりになる予算リスト、これは国民のウイッシュリスト願いリストだというふうに思います。この願いリストと、今中央省庁でおつくりになる、あるいは自民党の中でおつくりになるこのリストが乖離してしまっている、このことが一番問題ではないか。  あわせてお尋ねをしたいのは、難病の問題であります。難病対策費として、これは重点化するんだ、重症の人に重点化するんだといって、軽症の人はその三分の一の負担をお願いをしている、このことによって浮くお金は六十億です。このことについて復活されるお気持ちはあるのか、教育予算とあわせてお尋ねをしたいというふうに思います。
  12. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 既に概算要求基準の方針につきまして、内閣として決定をいたしております。その中で、文教関係予算でございますが、一部の経費を除きまして、前年度当初予算と同額をされることといたしております。  なお、文教予算につきましては、心の教育の充実など教育改革の着実な推進に努めてきたところでございますが、教育は二十一世紀を確固たるものとするための基本であり、その重要性にかんがみまして、真に必要な文教施策については重点的に推進を図ってまいりたいと思っております。  なお、難病対策につきましてでございますが、本年五月より重症患者に重点を置いた見直しを行いまして、難病対策事業及び予算の大幅な充実を図ったところでございまして、その見直しの趣旨を踏まえ、施策の推進に努めてまいりたい、このように考えております。
  13. 原口一博

    原口委員 わかりやすい言葉でぜひお伝えいただきたい。難病対策費については、この六十億を僕は削減する必要はないというふうに思います。復活していただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  14. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと予算の所管のことでございますので私から申し上げさせていただきますが、御指摘の難病対策は、今総理からお話しのように、確かに四十種類の難病がございます。その中で、軽度なものと重度なものということを区分けをいたしまして、重度のものについては従来どおり全額医療費を負担しておりますが、軽度のものについては低額な自己負担をお願いしてございます。  これはなぜかと申しますと、難病制度が発足して二十五年経過をいたしておりますので、医学や医療の進歩を踏まえながら、全体として見直す必要があるということでこの措置をとらさせていただきました。  しかしながら、今総理お答えのように、難病対策としては二〇%増加いたしまして二百五十五億円を計上いたしておりますから、トータルとしては決して軽視しているものではございません。必要なところには必要な医療を給付していくというのが我々の考え方でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  15. 原口一博

    原口委員 理解できません。何となれば、そこで切り捨てられた人たち、この不況の中、先日、労働省からも障害を持った方の失業、雇用というものは大変厳しいということを報告になりました。このときに、切り捨てられる皆さんのお気持ちをぜひしんしゃくしていただいて、考え方を改めていただきたいというふうに思います。  総理、改めてお尋ねします。
  16. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 お尋ねの点についてでありますが、今御指摘のような難病対策あるいは文教関係、特に人員の問題等について御指摘がございましたが、政府といたしましては、さきのこの概算要求基準を決定いたしましたことに基づきまして、現在各省庁の予算要求を求めておるところでございますので、この基準に基づくことを政府基本的考え方として来年度予算編成に向かいたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  17. 原口一博

    原口委員 今の答弁を伺いまして、私は、私たち予算リストと今おっしゃったリストと、これを国民皆さんに判断をしていただいて、どっちがいいのかということを聞いてもらう必要がある。そういう意味でも、解散・総選挙をやってほしい。  最後に、大変残念なことですが、野中官房長官の沖縄に対する発言。  私は、官房長官が弱者に配慮し、そして沖縄についても大変なお力を注いでこられた、このことについては認めるものであります。しかし、今回の発言は容認することはできない。御釈明がございましたら、この場でお話をしていただきたいというふうに思います。
  18. 野中広務

    ○野中国務大臣 平成八年の一月二十三日、大田知事と橋本前総理お話しになりまして、普天間の基地の返還を求められました。さらに翌月、クリントン・アメリカ大統領と橋本前総理とが会談をして、その大田知事のお願いをいたしました。引き続いて四月の十二日、御承知のように、モンデール・アメリカ大使と橋本総理の共同会見において普天間基地の返還がもたらされたわけでございます。  委員御承知のように、SACOの最終決定は、沖縄県の要望を聞きながら、日米両国政府において基地の整理縮小そして土地の再編等を合意してまいったところでございます。その間、橋本総理は十七回に及んで沖縄県知事と会見をし、そして真摯に沖縄問題に、本当に私ども頭が下がるほど頑張ってこられました。さらに、梶山官房長官、村岡官房長官を初め関係閣僚もたびたび沖縄に入って頑張ってこられました。その成否が、選挙という手段で海上ヘリポート拒否という状態になったまま、ことしの二月六日以来、全然、沖縄から正式に知事として総理のもとに何一つ話がないということは、私は、沖縄のために不幸ではないのか、そういう気持ちを、私も沖縄にかかわってきた人間の一人として、強く持っております。  ある意味において私の発言は非常に強く響いて、私の言葉と人間の至らないせいかもわかりませんけれども、沖縄の現状は非常に厳しゅうございますし、失業率も倍増しております。そういう中において、ぜひ県当局は、みずからに預かった球を正式に政府に返してくるべきでないのか。  県民の現状を考えるときに、基地とリンクして考えない限り、沖縄のグランドデザインは描けません。そして、これからの基地縮小の問題も解決していかないということを、ぜひ知事はお考えをいただいて、そしてみずから行動を起こしてほしいという私の気持ちを率直に伝えたところでございます。御了承いただきたいと存じます。誠心誠意、沖縄の振興のために頑張ってまいりたいと存じております。
  19. 原口一博

    原口委員 終わります。
  20. 中山正暉

    中山委員長 これにて菅君、横路君、原口君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鐵三君から質疑の申し出を受けております。これを許します。冬柴鐵三君。
  21. 冬柴鐵三

    冬柴委員 平和・改革冬柴鐵三でございます。  きょうは、質問通告をあらかじめいたしませんでしたけれども、昨日夕刻に大きなニュースが入りましたので、冒頭二つほど追加してお尋ねしたいと思います。  昨夕刻、ロシアのキリエンコ首相がルーブルを、形式的には最高三二・九%になりましょうか、実質的にはもっと大きいと思うのですが、その切り下げを宣言され、また九十日間のモラトリアムを宣言するなど、大変衝撃的な会見をされました。  このニュースを聞きまして、私は、素人ではありますけれども、ロシアに対する最大の投資国であるドイツ・マルクはどう影響を受けるのだろうか、また、それがマルクと円との関係で、円の安値の材料になるのではないのだろうかという心配をいたしました。  実はことしの五月、私は日中議連ということで中国を訪問いたしまして、朱鎔基総理とお会いをいたしましたときに、総理は、人民元は絶対切り下げない、内外の圧力は大変なものなのだということをおっしゃいました。日本の国力が十分に発揮されているとは思えない、ぜひ日本が元気になっていただきたい、一日も早く元気になっていただきたいと言われたことを私は思い起こすのであります。円がこれ以上安くなるということは、必死に耐えていられる朱鎔基の人民元というものに対してまた大きな圧力をかけてしまうのではないか、そういう思いがいたしました。  このロシアのルーブル切り下げ、モラトリアム宣言というものがどういうふうに世界に影響するのか、そしてまた、日本はそれに対してどう対策をとるのか、その点について総理の御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  22. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私自身も、昨夕からのロシアにおきまする金融経済状況につきまして深い関心を持っておるところでございます。  日本は一貫してロシアの経済発展に協力をし、かつまた、大きく言えばロシアの改革につきまして我が国としてもできる限りの御協力を申し上げてきたつもりでございます。特に、IMFを通じての資金協力につきましても日本としての責任において協力をしてまいりましたが、残念ながら今御指摘のような状況に相なっておりますことは、まことに残念でございますし、また、このことが世界経済に大きな影響を及ぼしかねないということについて憂慮いたしておる次第でございます。  ただ、現在の状況につきまして、どのような状況になっているか、すべてについて掌握しておりませんので、いましばらく注視いたしていかなければならない、このように考えております。
  23. 冬柴鐵三

    冬柴委員 別の問題ですが、昨日のある夕刊紙、これはスクープのように思いますが、一面トップに「長銀・住友信託の合併 公的資金投入し支援 政府固める」、このような記事が躍っており、びっくりいたしました。  いわゆる公的資金を導入するということにつきましては、先国会金融機能安定化緊急措置法という法律が成立し、この定めに従ってのみ行われる、このように私は理解していたのですが、政府が腹を固めたということはいかにも行き過ぎだというふうに私は思いました。  そして、その下の方に、「公的資金の投入は本来、金融危機管理審査委員会の審査を経て決めることになっているが、異例の”超法規的”対応も辞さない考えだ。」一流紙がこのように一面トップで書かれるということは相当濃密な取材の結果だろうと私は思うわけですけれども、これはどうだろう。  しかし、私は、その目でもう一度この法律を読み直してみますと、大変複雑な手続が書かれていて、それには相当な時間が要るのではないか。  例えば、支援を求める銀行は、この法に定める協力銀行、協定銀行というところに公的資金の導入をお願いしたいという申し出をします。そして今度は、その両行から預金保険機構に公的資金を使うことについての承認申請を行い、そしてこの預金保険機構は、金融危機管理審査委員会という、相当グレードの高い委員会ですが、それを招集して、そしてそこの承認議決を得て初めて、協定銀行に対して公的資金の導入はよろしい、こういう承認をする。それから初めて劣後債の発行とか優先株の発行手続に入る。これは相当時間がかかるのではないのか、手続が複雑過ぎるのではないか、こういうふうに私、昨夜思ったわけでございます。  今般のルーブルの切り下げのような緊急事態が生じた。また今後、どの国でどんなことが起こるかわかりません。そういうものが特定銀行に波及をして、そしてその特定銀行がコール市場、短期資金調達の市場で資金を集めることができなくなる。そういうことで、黒字でありながら資金繰りのために経営破綻してしまうというようなことも起こりかねない。北海道拓殖銀行の例はそれに似た現象であったように思われるわけでございますけれども、この轍は絶対踏んではならないというふうに私は思うわけでございます。  この法の仕組みは、こういう緊急事態に対応できるのかどうか。もし対応できないものであるならば、超法規的というようなことではなしに立法措置が必要ではないのか、こんなふうにも心配するわけでございますが、その点について、大蔵大臣また総理の御答弁をちょうだいしたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は私の所管と申しますよりは金融監督庁長官のお仕事でございますが、お名指しでございますので。  まず最初に、このようなことを政府が腹を決めたという報道につきましては、そのようなことはございません。  次に、仰せのように、これらの手続は金融危機管理委員会のもとで行われる、そのような法律の規定でございますから、それをスキップするようなことはあり得ないことで、いわんや超法規というようなことは考えておりません。
  25. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今大蔵大臣が御答弁したとおりでございますが、私も昨夕新聞を拝見いたしまして実は驚いたわけでございまして、そのような事実は全くございません。  したがいまして、現在与えられた法律の中で適正にこれに対処するということに尽きると思っております。
  26. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私が聞いているのは、緊急事態が来た場合に本当に危機管理は大丈夫なのかということを聞いておるわけであります。大きな銀行経営破綻をするということは、その銀行だけの問題ではなしに、広く国民生活全体、ひいては世界の経済にも大変な影響を与える可能性があるわけです。  そういう意味で、法律に従ってやります、当たり前の話でございますが、法律の定めに従ってやっていたのでは、時間、間に合うのですかということを一点聞きたいわけでございまして、その点について、総理、もう一度お願いしたいと思います。
  27. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 昨日もしばしば御答弁申し上げさせていただきましたけれども、この不良債権問題につきまして、各金融機関状況につきましては現在検査をいたしているさなかでございますが、いずれにいたしましても、預金者の保護を徹底すると同時に、金融システム安定ということ、このことによりまして、日本発の金融恐慌というようなことは絶対起こしてはならない、こういう立場で全力を挙げて今努力をさせていただいておる、こういうことでございます。
  28. 冬柴鐵三

    冬柴委員 押し問答ばかりではいけませんので、とにかく、大銀行が突然、外的要因によって、黒字であるにかかわらず資金繰りが立たずに倒産する、こういうことは絶対起こしてはならないし、そういうことが起これば、これはこの内閣の責任ということだけではなしに、我々、本当国民全体がその負担を負わなければならないという観点で、どうか遺漏のないように頑張っていただきたいと思います。  それでは、通告した質問に入っていきたいと思います。  政治は結果責任であります。前橋本内閣経済失政というのは、私は、日本政治史上まれに見る大失政というふうに評価せざるを得ないのではないか、このような厳しい見方をいたしております。  平成八年のこの国の経済状況というのは、ようやくバブル崩壊後の長引いた不況を脱しまして、三・二%の経済成長を遂げるまでになってまいりました。しかしながら、これは病人でいえば退院をしてきたばかりの病み上がり体質でありまして、そういうところに大きな負担をかけるということによってインパクトを与えれば、この国は回復することができないデフレスパイラルに巻き込まれる可能性すらある、そういう予見をして、我々は、橋本内閣が急激な、性急な財政構造改革にのめり込むことに対しては、反対の議論を重ねてまいりました。しかしながら、橋本内閣はこれを強行されました。  平成九年四月一日からの消費税率の二%の引き上げ、また特別減税の打ち切り等々、超緊縮予算の編成等も重なりまして、この国の経済本当に奈落の底に落ち込むように、三・二%の成長をしていたこの国が本当に大きな影響を受けてしまいました。  当初、平成九年の一月二十日閣議決定では、平成九年度のこの国の経済の見通しというものに対しまして、そのような国民に対する九兆円を超える国民負担をかけたとしても、その影響は平成九年度第一・四半期、九年四月、五月、六月には影響を受けるものの、七月以降これを回復をして、そして通年すれば一・九%の成長を遂げる、このような見通しを閣議で決定されたわけでございます。  ところが、結果はどうでしょう。我々が予測していたようにマイナス〇・七%。これは、第一次オイルショックの〇・五%をはるかに超えて経済が落ち込んでしまったわけでございまして、この結果責任、これは大きいと思うのです。  企業の倒産件数は毎月記録を更新し、債務額も大きくなっています。そのことによって、経営者は蒸発、行方不明、一家離散、自殺、こういうことが行われております。きょうもそのようになっていると思います。また、失業者は二百九十三万人。茨城県一県の県民人口に相当するような人が今離職して、職業安定所に通っていられます。私どもも、ハローワーク、職業安定所を視察いたしましたが、本当にたくさんの方々が必死になって職を求めていられます。  このような結果に対して、これは前内閣がやったことでございますということは言えません。憲法六十六条三項には、内閣は、行政権の行使につき、国会に対し連帯してその責任を負う、このような規定があります。今の経済失政は、小渕さん個人も連帯責任の一人であります。すなわち、外務大臣、有力閣僚として橋本内閣を構成していられたわけでありますから、今私が申し上げた経済失政、そのまま、ぬぐうことのできない小渕総理の失政でもあると私は思っております。  したがいまして、これに対する総括、反省、そして多くの国民、先ほど挙げましたような失業した人たちのそのような心情を思うとき、その人たちに陳謝の意思、遺憾の意思を表明されてしかるべきだと思います。しかも、前の内閣がとっておられた経済政策を百八十度転換をされまして、今般、経済再生内閣として今から出発するという場合に、その前の、そのようなものを清算せずに出発するということは、私は許されないと思います。  総理の心情、そしてまた国民に対する遺憾の意を表していただきたい、このように思う次第でございます。
  29. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員御指摘のように、橋本内閣におきます私自身も閣員の一人としての責任を負っていることは当然のことだというふうに認識をいたしております。  顧みますれば、外務大臣という立場でございましたが、日本経済全体に対しての内閣としての責任を考えましたときに、今少しく発言をし、また考え方を申し述べることであったかと思いますけれども、橋本内閣総理大臣のもとで真剣に日本経済の回復のために種々の努力をされておられたことは、御案内のとおりでございます。  ただ、その過程におきまして、御案内のようにバンコクから発しましたアジア金融危機というものが突如起こってまいりまして、そういった原因もございますし、また金融機関にも図らざる破綻というようなことも起こってまいりまして、前内閣また前総理大臣も全力を賭してこの問題に対処いたしてまいりましたが、結果的には、大変残念ながら御指摘のように経済成長も三%を超えるような状況の中から再びまた低迷をしてくるということになりまして、その責任については深く認識をいたしておるところであります。  さすればゆえに、私自身今般この大任をいただきまして、新たなる気持ちを持ちまして、経済再生内閣ということで、これから種々の政策を打ち出すことによりましてこの軌道を回復していこうという懸命な努力をいたしてまいりたい、こう思っておりますので、御理解をいただきたいと存じます。
  30. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は弁解を聞いているわけではありませんで、結果責任、厳粛な結果責任でありまして、失政によって多くの国民が苦しい目に遭っている、耐えがたい状態に追い込まれている、そのような自殺をした人あるいは失業している人本人だけではなくその御家族の心情を思うときに、将来に対する希望を失い、また現在の生活において塗炭の苦しみをしていられるその人たちに対する陳謝の意が表されなかったことは非常に残念でありますが、もう一言ありますか、総理
  31. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 申し上げましたように、この内閣としてぜひこうした状況を脱却して、将来にわたって夢も希望も持てるような、そうした社会を実現するために、喫緊の課題といたしまして税制、財政あらゆる点の手法を通じましてこの回復に努力をする、このことが責任を果たすゆえんだと考えております。
  32. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に移ります。  私は、なぜ橋本内閣が平成八年十月の衆議院選を前にしてまでこの財政構造改革というものに性急にかつ急激に傾斜をしていったのか、その点についてなぜだろうと考えてみました。そのときに、この一冊の白書、財政制度審議会から平成八年七月十日に出された「—明るい未来を子どもたちに— 財政構造改革を考える」という白書に行き当たったわけでございます。  この白書はつくられるのに、約一年前、平成七年からいろいろな審議が集中的に行われた成果がここにまとめられていると思うのですが、平成七年当時の大蔵大臣であった武村正義さんは、中央公論の平成八年六月号にこういうことを書いていられます。「「財政赤字」といえばアメリカやヨーロッパの国の問題のように受けとめていたが、去年」すなわち平成七年になりますが、平成七年「の秋になると一転して日本こそが最悪の状況になってきていることを、深刻に認識せざるをえなかった。」このように書かれています。そしてまた、その当時のマスコミは一致して日本財政というのは世界最悪なんだということを喧伝されました。  私は、この平成八年七月の白書が出た時期、そしてその一年前からの審議の経過というものを知って、そして当時の橋本内閣総理大臣は、この白書の一貫した論調である今や主要先進国中最悪と言われる状態になっている我が国財政を今後どのようにして改革していくのかという命題に答えようとして、孫子に借金は残せないというような答弁を終始されましたけれども、そういうことになったんじゃないか。  また、日本国民も、当時マスコミを通じて知らされる日本財政状況というものを知って愕然といたしました。そして、日本政府に対する信頼というものに揺らぎというものが生じたと思います。そして、私は将来、老後本当に年金、福祉、医療、そしてまた介護というものをこの国に頼っていて大丈夫なんだろうか、こういう不安をお持ちになった。これが今回、減税をすれども個人消費がびくともしないというような根底にあるように思われてならないわけでございます。  そこで、もう一度ここを、若干、どういうことを書いてあるかをおさらいしてみたいと思うのですが、こんなことが書いてありました。  一般会計の債務の大宗を占める建設国債と特例公債、その総額は平成八年度末で二百四十兆円に達する見込みです。二百四十兆円という額は、幼児や高齢者も含めてすべての国民一人当たり百九十一万円の債務を負うことになります。この公債残高を一万円札の束で積み上げれば、何と富士山の六百三十倍、エベレスト山の約二百七十倍にもなりということで、こんなイラストつきで書かれています。  それで、その次のページとその次のページ、たくさん書いてありますから要約させていただきますと、国の債務はこの二百四十兆円という公債残高だけではありません。それ以外を足せば実に三百二十兆円がある。そしてそれ以外に、地方債、都道府県とか市町村債が百二十二兆ある。また、国鉄清算事業団等の、国民の税金で処理をしなきゃならない、いわばマスコミの言う隠れ借金、これも四十三兆円ありますということが書かれてありまして、足し算すれば四百八十五兆円の債務がこの国にはある、こういうことが書かれているわけです。GDPにほぼ匹敵する額でございまして、大変な額です。  そして、借金には利息を払わなきゃならないのは当たり前でございます。この白書では、利払い費だけでも十一兆七千億円となるほど過去の借金の山が大きくなっていることです。ちなみに、十一兆七千億円というお金があれば、関西国際空港が八つできます。十一兆七千億円は一時間当たりでは十三億円となり、平均的な小学校、十八クラス、約一・三校、一時間で建てられます。これは大変な話でございまして、こういうことがるる書かれてあります。  経済企画庁長官、お読みになっていると思うのですけれども、これをどう感じられますか。
  33. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 その当時の財政状況から申しますと、まさにそういう危機感があったことは事実だと思います。しかしながら、経済状況から見ますと、当時日本経済が上向きかげんであったと思っていたのは、やはり錯覚だったんじゃないかと私は思っております。  平成八年十二月に出しました平成九年度の見通しは、御案内のように一・九%のプラスという数字を出したのでございますが、実際はマイナスの〇・七%という落ち込みになりました。今にして思いますと、経済の天井といいますか、一たん落ちてきた回復の天井は去年の一月から三月ぐらいの間にあったのではないか。ところが、景況判断がややおくれまして、そのころ、まだまだ景気はよくなるというような見方があったものですから、財政再建をこの際やろうと政府は考えた。この景況判断の誤りが非常に大きな原因であったと思います。今から申しますと、私の立場としては言いにくいことでございますけれども、政府の景況判断は明らかに甘かったと言わざるを得ないと思います。  それに加えまして、年央から、七月ごろから、アジア諸国の経済が急激に悪化してまいりました。これは予想以上のことでございまして、これが加わった結果、非常に悪い状況が起こってしまった。それに消費者が反応いたしまして、消費の方が一・二%減少した。こういうことが重なって今日のような状況になった。確かに状況判断は甘かったと言わざるを得ないと思います。
  34. 冬柴鐵三

    冬柴委員 甘かったという言葉の前に誤ったという言葉も小さい声で言われたこと、よく聞いております。当時の政府の判断は、私はやはり誤りだったと率直に認めるべきだろうというふうに思います。  しかし、私はちょっと見方が違うんです。この白書が、債務の大きさと利息の大きさを非常に比喩を交えて、これを聞いた国民は大変心配されるのは当たり前でございます。  私、ここに、日本の誇る世界的な企業の有価証券報告書を持ってまいりましたけれども、名前は言いませんが、この報告書によれば、これは、平成十年三月、つい最近のあれですけれども、この会社、日本の誇る優良会社が、実に、債務の部を見ますと、二兆二千八百八十二億円の借金がありますと書いてあります。したがいまして、これを一万円札の束で積み上げれば、二万二千八百八十二メートル、富士山の六倍、でもまだその上に一万円札があるぐらいの借金の額である。そして、これに対して仮に三%の金利を払うと仮定いたしますと六百八十六億円ですが、一日に一億七千万円ずつ借金がふえる。  この点を見て、この会社、大変な会社だ、借金が大き過ぎる、こんなばかげたことを言う人はないと思うんですね。じゃ、財産どうなっているんだというところに行くと思うのです。それで、資産の部を見てみますと、三兆一千五百億円の財産があります、そして売り上げは二兆二千五十億円の売り上げがありました。こういうものを全部合わせて、ああ、これが日本の世界に誇る優良企業だという判断ができるわけでありまして、私は、その目で、日本の借金の額はわかった、それから利息の支払い額が大きいこともわかったけれども、じゃ、そこだけを強調して正しいんだろうか、資産の部はどうなっているんだろうということで、見てみました。  経済企画庁から出していられる国民経済計算年報、平成十年度、一番最新のものでございますが、これを見てみました。資料をお配りしていますね。  その資料の中で、一般政府の資産・負債というところの一覧表、これは億円の単位でございます。一番最後が億円でございます。これをちょっと、テレビも見ておられますので、視覚的に見ていただくためにこういうパネルも用意しました。  これによりますれば、この三番の負債の部では、平成八年十二月末、暦年ですから十二月三十一日現在では、負債はなるほど、先ほどの白書が言われたように、推定されたように四百七十兆八千八百八十四億円ある。大変な額でございます。このパネルでは、赤色で書かれた国債、借入金等四百七十一兆円ということで、四捨五入して一兆円がついていますが、そういうことになります。ここが大変強調されているのがあの白書だったと思います。  しかしながら、じゃ、資産はどうなっているんだというふうに見ますと、上の欄、一というところに、有形資産が五百兆八千四百十一億円あるということが書かれてありまして、このグラフを入れれば、この青色の部分がそれでございます。それ以外に、金融資産として現金通貨・通貨性預金、短期債券、これは外国の債券、長期債券等を買っているわけで、我が国は百二十兆の対外債権を持っているというのはこの中に入っていると思うのですが、三百九十三兆九千八百七十四億円のこういう金融資産もあります、これがこの黄色で書かれた部分でございます。  これを合わせて日本の国力だというふうに見なければ、ここだけ、負債、赤色だけを見て、これは大変だ、大変だと言われたのでは、国民も大変だと当然思います。  私は、じゃ先進国と比較して日本財政はどうなっているのだろうということで見てみました。そうすると、この正味資産、有形資産と金融資産から債務を引いた日本の純資産の額は、これで計算しますと四百二十三兆円ほどある。四のところに、正味資産、四百二十三兆九千四百一億円が日本の正味持っている資産であります、こういうことが書かれているのですが、企画長官、これは確認していただけますね。確認だけどうぞよろしくお願いします。
  35. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 そのとおりでございます。
  36. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これを前提にしまして、この年報で、GDPは、じゃ一年間で、平成八年暦年では幾らぐらい日本国民の英知と努力で富を稼ぎ出したのか、この額についても細かい数字が書かれてありますが、四百九十九兆八千六百十億円、約五百兆、この富を国民全体で稼ぎ出したということがこの中に書かれてあります。これも間違いないと思います。  それから、先ほどの利息のことでございますが、利息は国債を発行すれば払うのは当たり前ですが、また、外国の国債を持っていれば、向こうから利息をこちらは受け取るのも、これも当たり前の話でございまして、ここに、通貨預金、債券というのは、これは増殖していくわけでございます。この支払った、赤に表示された部分に対する借金の利息だけを考えるのではなしに、受け取った利息は当然そこで差し引き計算をして、差額が幾らあるかということが重大ではなかろうか、こんなふうに思いまして、この年報を調べてみますと、書いてありました。  七十五ページには、この平成八暦年一年間で我が国が払った利息は、十一兆七千億じゃなしに、それは国レベルの話でありまして、地方もあります、そういうことで、十八兆四千六百四十六億円を払ったと書かれてあります。大変な額でございます。しかしながら、受け取った方も大変な額でございまして、十四兆八千七百八十六億円受け取っていますということも書かれてあります。  したがって、その差額は三兆六千億ということになりまして、十一兆七千億というのは余りにも誇大な話でございまして、純粋に支払った金額は三兆五千八百六十億円でございます。そして、これを約五百兆のGDPと比較してパーセントをとりますと、私が計算したところでは、〇・七六%、一%にも満たない金額の負担であるということが計算上出ました。四捨五入すれば〇・八でございます。  御存じのように、OECDからエコノミック・アウトルックという大変権威のある報告書が出されていますが、この中でこういう問題について国際比較がされています。それで、その中を見てみますと、純粋利払い額がGDPに占める割合は、日本は〇・八%、〇・七六を四捨五入して〇・八だというふうに私言いましたが、このエコノミック・アウトルックによれば、OECD先進七カ国平均は二・八%だというふうに書かれています。  それで、内訳として、アメリカの二%、日本の〇・八%、ドイツの三・一%、フランスの三・六%、イタリーの九・五%、イギリスの三%、カナダの五・二%。〇・何ぼというのは我が国だけでございまして、その意味では、先進七カ国中最も利子負担率の軽い国が日本だというふうに私は読み取っているわけでございます。  そして、それ以外に、先ほどの負債、赤色から金融資産、とりあえずすぐ処分できるものを差し引いた残高が幾らあるのかということを見てみますと、七十六兆九千十億円でございます。この差額、七十六兆です。これは私の計算ではGDPに対して一五・三八%です。一五・四%と四捨五入できます。  これもこのエコノミック・アウトルックの中の先進七カ国比較をいたしてみますと、七カ国の平均は四六・九%でありまして、アメリカの四八・四、それからドイツの四八・一、フランスの四〇・九、イタリーの一一〇・五、イギリスの四四・三、カナダの六八・三に対して、日本は一五・四でございます。  ちなみに、この五百兆の中に占める純債務の割合、しかも固定資産は全部抜いて、五百兆というものを全部除外してもそれだけの借金だ。先進国中、私としては、ここで見る限りは最も内容はいいんじゃないかというふうに思うのですが、この白書では、前文に、「今や主要先進国中最悪と言われる状態となっている我が国財政を今後どのようにして改革していくのか」、こういうことで、先進国中最悪だ、こういうふうにここでは言っていらっしゃる。非常に乖離が大きい。  これによって財政構造改革に突き進まれたということになれば、この白書というのは大変罪が深いし、また、私がここでるる強調している趣旨は、日本国民にもそんなに借金まるけの国で将来不安だという心配をされることが非常に消費の喚起というものに障害になっているとするならば、これはありのままの姿を国民に見ていただいて判断していただくのがいいんじゃないかという思いで、きょうパネルをお示しした次第であります。  その点について、総理、どう思われますか。
  37. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 大変御勉強されましたことにつきまして今お話をお伺いいたしました。  率直に申し上げまして、すべてについて私自身のまだ勉強不行き届きのところがございます。ただ、お聞きをしておりまして、例えば国の債務、すなわち国債費等の支払いと同時に、今、債券に対しての利子その他の歳入の面がございました。この点につきましても、いかなるものをもってそうした数字が積算されているかという根拠もちょっと不明でございますので、これは専門家からまた御答弁もいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、御主張されておられることは、いわゆる財政審議会での報告書をもとにいたしまして、当時の内閣として、やはり極めて大きな債務がございますので、予算を編成する立場といたしましては、大きな国債費の負担というものが財政を硬直化して結局予算が組みにくいというような点も含めまして、そうしたことを強調された面もあるのかもしれません。  しかし、実態につきまして、いわゆるグロスとネットの国と地方の債務の残高につきましては、厚生年金その他のことから生じてまいります社会保障関係において歳入として換算される点について、先生もどういうふうにその点を計算されておられるかということもお聞きした上で、グロス、ネットの点をやはり勘案していかなければならないのではないか、このように考えております。
  38. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まさにそこが問題であるとは思いますけれども、この社会保障基金というのを算入するかどうかということは大問題です、確かに。この中にも、資産の中に二百二十三兆三千八百三十七という、金融資産の中に社会保障基金が入っている。しかし、OECDはすべてこの社会保障基金を織り込んで、そして一般政府部門の資産の中に入れているわけであります。  仮にこれを除くとしても、中央政府の百四十四兆、地方政府の三十八兆余の資産を全く無視している白書というのは、私はこれは行き過ぎだ、何ぼ何でも行き過ぎだと思います。そして、この白書が、公債残高の大きさを強調して、国民全体にこういう公債を孫子に残してはならないんだという主張を強調しようとされたことは、私はその心情はわかるんですけれども、しかしこれはミスリード、こういうことをしてはいけない、国民をばかにするにもほどがある、私はそう思います。  したがいまして、ある雑誌に、大蔵のOBが非公式の席で、今回は薬が効き過ぎた、こういうことを言ったというんですよ。言語道断、まさに言語道断だと思います。とんでもないことだと思います。私は、そういう官僚が主導して白書をつくったとするならば許されない、そういうことによって政治が動かされるということがあれば許されないということを申し上げて、次に移りたいと思います。  橋本内閣は、平成十年の二月とそれから平成十年の第一次補正で、二回、二兆ずつ、国民の貴重な財産の中から赤字国債、公債というものも充てて二兆円の減税、所得税、個人住民税の減税を二回にわたって行われました。  二回目の減税については結果はまだ見ることはできないと思うのですけれども、一回目の平成十年二月に執行された所得税及び個人住民税が消費に回ったのかどうかということは、検証することができるわけでございます。  結論的には、経済企画庁が出されている月例報告を見ました。ずっと読みますと、四月、五月、六月号の中で、平成十年の二月分、三月分、四月分等の個人消費というものが書かれてありますが、残念ながら減税がされた二月は、前年同月比ですけれどもマイナス四・五、それから三月はマイナス五・七、そして四月はマイナス二・一でございまして、企画庁のコメントは、家計調査で見ると実質消費支出(全世帯)は低調に推移している。全く二兆円の所得税、住民税減税は消費を刺激しなかった、拡大しなかったという結論がここから読み取れるのではないかというふうに思うのですが、長官、どうですか。
  39. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおりでございまして、予想したほどの消費の喚起はございませんでした。  なぜ消費がそれほど上向かないかということにつきましては、やはり国民皆さんに将来に対する不安があったということだろうと思います。その点では、御指摘のございましたように、長期にわたって非常に暗い予想を積み上げてきた。  これは内閣だけではなしにジャーナリストもみんな含めて、日本の将来に対して、少子・高齢化であるとか財政事情が悪いとか、あるいは産業がアジアに抜けていくとか、そういうようなことを積み上げて日本の未来を非常に暗く描き過ぎた。その一方で、短期的にはかなり景気が上昇している。短期楽観、長期悲観という形をつくったのですね。これが、内閣だけではなしにジャーナリスト、そういうものを含めて、日本が昨年からことしにかけてつくってきた非常な欠点であったと思っております。したがって、実際に減税が行われても消費にそれほどはね返ってこなかったという結果になったのじゃないかと思います。
  40. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私も、総論は全く長官がおっしゃるとおりに思っております。国民が未来へ根深い不安を抱いているということがそのベースにあるのだろう。  未曾有の倒産、あるいは失業者の、四・三というような未曾有の数字でございますが、人数にして二百九十三万人、御家族を入れればもう一千万近い人が繁栄する日本の中で取り残されたような大変な貧困、そして近い将来に対しても失望している。それからもう一つは、老後の年金、医療、福祉、そしてまた介護というものに本当に頼れるのだろうかということ。日本の信頼というものに、日本国家に対する信用というものに陰りが出たがゆえに、こういうことにまで心配をしなきゃならない国民が財布のひもを締めてしまっているのじゃないか、こういうふうに思います。  したがって、こういう問題についてはやはり所管の大臣が、心配すべきことは心配すべきこととして言わなきゃいけないけれども、また、こういう明るい面もあるんだということをぜひやはり言ってもらわなければならないのではないかと思います。  しかし、今回の減税が全く消費喚起しなかったことについて、私は、それ以外に二つ問題点があった。  一つは、課税最低限以下の世帯に対して一切減税という利益の均てんが行われなかったということが、非常に大きな視点だろうと思うわけでございます。  もちろん、所得税減税、住民税減税といえば、所得税を払った人、住民税を払った人、その人に返さざるを得ないわけで、払っていない人に返すわけにはまいりません。しかし、税金は所得税と住民税だけじゃないんです。消費税もあるわけです。この消費税というのは、生きている限り、生ある限り、きょう生まれた子供も、ミルクを飲ませてもらえばそのミルクの中に税金が入っている、紙おむつをしてもらえば紙おむつの中には税金が入っているわけでございまして、寝たきりのおじいちゃん、おばあちゃんもきっちり消費税は払っています。  二百九十三万人、何回も言いますが、この失業者の方々も、所得税も個人住民税も払う必要はありませんが、払えないわけでして、そういう人。また、所得の少ない、六十五歳以上の年金生活をやっていられる方、この国で一千五十万人いらっしゃいますよ。また、公的支援を受けなければ生活ができない、そのような要保護世帯が三百三十六万人いらっしゃるじゃないですか。所得のない寝たきりのおじいちゃん、おばあちゃんが四十万人いらっしゃる。こういう人たちに一切、減税だ減税だ、どこの話。今、職について働いて月給をもらっている人に返しているだけじゃないですか。  そういう人たちは、本当につめに火をともすような思いで、一円、二円安いということで、遠い百メートル先のスーパーまで買い物に行く。そういう人たちからも税金を取っているじゃないですか。その消費税を返す、そういう思想があれば、お金があればあれも買いたいという人たちお金を渡せば、この潜在的消費需要というものをもっと掘り起こすことができる、私はそういうように思うのです。  ところが、高いところへ土を盛ったってだめですよ。このお盆休みだって、本当に新幹線も満員、高速道路もいっぱい、そしてまた海外へも成田からどんどん出ていったじゃないですか。そういう人たちに減税だということで七万円も八万円も渡したって、その人たちは、いや、もう今買うものないよ、冷蔵庫もちょっと古いけれども回っているよ。そんな人に何ぼ包んだってだめですよ。私はその視点が落ちていたと一つ思う。  それから、もう一つは返し方です。  ほとんどの勤労世帯というのは源泉徴収されます。したがって、会社で計算されて、税金だけ除いた残り、正味手取り額が一枚の紙っぺらとともに銀行へ振り込まれているわけです。したがって、大きな税金を、所得税を負担しているにもかかわらず、我が国のタックスペイヤーは、先ほど民主党の方が言っておられたけれども、タックスイーターという税金食っている人に対する抗議の気持ちが薄い。重税感がない。この裏返しとして、減税があったという意識が全く薄いですよ。  だって、この減税分だけ、たくさん引かずに、平素より大きいお金自分銀行口座に振り込まれているにすぎないわけですから、目にも見えない、体でも感じない。そんな減税したって、これで、減税があったから物を買おうか、こんな気持ちは起こらないのが人情ですよ。私は、そういう人情を解していなかったところがこの所得税、個人住民税減税というものが消費を一切動かさなかった、その原因ではないか、こういうふうに思うんですが、総理、違いますか。どうでしょう、感想。
  41. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 消費税を二%引き上げましたゆえんのものは、将来に対する社会保障の費用を賄うためにはこうした財源を必要とする観点からやむを得ない措置として行ったことでございまして、そうした意味で、消費税の二%、特に地方に渡ります一%も含めましてこれを引き上げざるを得なかった、こういうことだろうと思っております。  ただ、消費税を引き下げれば直ちに消費に……(冬柴委員「引き下げるなんて言っていませんよ」と呼ぶ)そうですか。  そう考えておりますので、我々としては、ぜひこの税の引き上げについては御理解を賜りたい、こう考えております。
  42. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に進みますけれども、進むなという声もありますけれども進みます。  私は、勘違いしてもらってはいけませんけれども、消費税を五%から、大変な負担をかけたから今三%に引き下げろというようなことを言っていません。それは、引き下げる議論が始まった途端にまた買い控えが始まるからです。今大変な落ち込んでいる中でもう一回落ち込ませたら大変な話ですから、私はそれは言いません。  だから、いただいた税金を国民一人三万円ずつ、一億二千五百万掛けたら三兆七千五百億になると思いますが、それだけを国民に、全部の国民にお返ししたらどうだということを私は申し上げているわけです。そういうことを申し上げたいわけです。  そうすれば、今税金を、所得税は減税の結果、平成十年では四千七百万か八百万人しか納めることが必要じゃないようになってしまったと思います。  それから、個人住民税につきましても、ちょっと大蔵と自治省に通告したのですけれども、もう私、誘導させてもらいますけれども、たしか個人住民税は、平成十年は納税義務者は五千二百九十万と試算しておられたようですけれども、第一次で三百四十万人、第二次で三百五十万人、納税義務者がなくなりまして、現在では四千六百万人、国民全体から見れば三六・八%の人しか個人住民税は払わなくてもいいという状況になっています。  したがって、一億二千五百万人から引けば、実に個人住民税は七千九百万人、六〇%以上の人が負担していないのです。そしてまた、所得税につきましては、非課税の人が七千七百万人近くいらっしゃる。これも六〇%強です。そういう人たちには減税をやっても返らないのですよ、全然。もちろんその中には家族がありますから、家族分が返る人もあります。  しかし、私はここでアメリカの減税の事例をちょっと整理してきました。(パネルを示す)ここがゼロ%です、成長率、GDP。  それでアメリカは、七〇年から、オイルショックのあった七四年、七三年までは高い成長率を持っていました。七三年は実にGDP五・八%の成長をしていました。ところが、第一次オイルショックでどんとマイナス六まで落ちたわけですから、これは、足し算しますと実に一一・八%も落ちたわけですから、もう壊滅的な、経済が落ち込んだということが見られると思います。翌年もそうです。  ところが、ここでフォードさんが大減税をやりました。フォード減税。これは二百四十八億ドルのフォード減税。当時、邦貨換算率は三百四円ですから、七兆六千四百八十四億円という大きな、七兆数千億円規模の減税をやったんです、減税を一発。  このときに私が注目したいのは、二つの特徴がある。一つは、この七兆数千億という巨額の減税のうち、八五%までが所得二万ドル以下の庶民層に流れるように設計されたということ、これは大きいと思うんです。先ほど私が言っているように潜在的消費というものを持っている、その階層に八五%まで流した、この設計が一つある。  もう一つ、ユニークなんです。これは、その減税額を世帯ごとに財務省の小切手にして全部郵送したんですよ。そうすると、これを受け取った人は本当に、見て、例えば三万円で四人家族だったら十二万円の財務省振り出しの不渡りすることもない小切手が自分のところへ送られてくるわけですから、これをアメリカ人は、ワンショットアドレナリン、強壮剤の一発、今まで落ち込んでいたけれども、これを一発打ったら元気もりもりする、こういう比喩で楽しんだんですよ。それでマスコミも書き立てて、日本の新聞だって当時書いていますよ。非常に話題になった。ワンショットアドレナリン、物すごく効きました。ばあんと五・四%まで引き上げましたよ。そして、ずっと四年間黒字を続けているわけです。第二次オイルショックまで非常にこれは効いた。  これはこの二つの、庶民層に流したということと、目に見える形で減税があるということを国民がわかった、ワンショットアドレナリンというふうに言った。これはすばらしいことでして、日本内閣もそれを考えてくださいよ。  私は今回、先ほど言いましたように、一人三万円、消費税はみんな払ったわけですから、多いか少ないかは別。それを三万円ずつ、国民一人一人、貧富の差はない、老若男女なし。寝ておっても、全部まくら元に届けてあげる。ここまですれば消費は喚起すると思います。返し方でひとつ……。  レーガンの減税は大変な減税ですが、第二次オイルショック後はこんなことをやったんですね。レーガンは、六千五百三十億ドル、換算率二百二十八円、百五十兆ですよ。百五十兆の減税をやっていますよ、五年間で。一年間に三十兆ずつ減税しています。それはだから、その目から見れば、日本で二兆円やったといったら、ツーリトル、小さ過ぎるなとアメリカ人が言う意味がわかると思います。  そしてレーガンは、これは大変な双子の赤字を生んだとかいろいろな問題はあるけれども、その後就任された大統領の御努力等で、本当に今日のアメリカの経済の最盛期というものを招いた一つの基礎をつくったんだろう、私はそういうふうに思うわけでございます。こういう大胆、そして迅速、そして工夫、そして庶民の心のひだまで見通したような、人情の厚みのある、これは政治家しかできない話だと思うのですよ、そういう減税を小渕内閣やってくださいよ。  六兆円の恒久減税か恒久的減税か知りませんけれども、大変話題になっています。恒久的と言った途端に、似て非なるもの、恒久じゃないのですよ。恒久でないけれども、限りなく似ているということが恒久的減税なんですよ。私は、所信表明であなたが言われたときに、ああ似て非なることを言ったなというふうに思いました。  それはそれとして、とにかく六兆円の恒久減税をやっていただくことは当然でございますが、それ以外に、四兆円と言いません、三兆七千五百億でいいですから、国民一人当たり三万円ずつ国民のところへ届けてください。そして……(発言する者あり)いや、それはもうこれから景気が回復するまで毎年やったらよろしい、それを。毎年やりましょう。そういうことで、ぜひ景気を一挙に回復してほしい。先ほどのこの例のように、これは両方とも一挙に奈落の底からばあんと上がっているじゃないですか。こういうことをやってほしいですね、一日も早く。私はそう思います。  そこで、一人ずつに届けるのは二重払いがどうだとかややこしいとか難しいとかどうとかこうとか、そういうことを参議院の方でおっしゃったようですが、そういう先見にとらわれずに、またアメリカのことですが、アメリカでは低所得者層へ食料品引きかえ金券、フードスタンプというものをずっと出しているのです。この規模は非常に大きいのです。年間約三兆円。三兆円弱と言っていいと思います。それほど使って、五分位のうち一番下の方だと思うのですが、約二千五百万人の国民に対しフードスタンプを配っています。ちょっと見にくいのですけれども、その意匠はこういうものです。これは農務省ですが、政府から発行された、フードクーポンと書いてあります。ちょっとドル紙幣に似ています。もう二十数ランクあるのですが、所得等いろいろなことで不公平にならないようにしてあります。こういうものを、第五分位の一番下の二千五百万人ぐらいの人に毎年届けているのですよ。それで、これを指定された食料品店にその人たちが持っていけば、お酒やたばこはだめですよ、そういう嗜好品はだめですが、肉であろうが果物であろうが野菜であろうがパンであろうが、食料品とこれは引きかえてもらえる金券なんです。  こういうことができるのだから、これは外国でやっているわけだから、日本で、我々の友党の公明が言っているように、商品券で三万円、期限つき商品券を配ったら、これは完全に消費に回る、即効性もある、こういう工夫をしているわけですから、それはちょっと難しいよなんて頭からせずに、一遍ぜひ考えてみてください。総理政治決断、よろしくお願いします。
  43. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 参議院でのお尋ねにつきまして、私自身も今御指摘のように御答弁申し上げました。  それは、一つは、やはり商品券方式につきましては、給付された商品券を使うことができる業種、商品だけを優遇することにならないか、二重給付の防止をするための本人確認の問題、あるいは商品券の給付事務や換金のためのコストという難しい問題が存在をしておるということを申し上げました。  それから、先ほどアメリカの例をお引きになられました。  確かに、そうした減税による効果というものも目に見えてありましたことは今のグラフでも承知をいたしておりますが、日本の場合、なかなかアメリカのように小切手を用いて戻し減税を行うということにつきましては、米国のような一種の小切手社会でないというような点もございますし、また全国五千万人の納税者に対して小切手の発行を行うための膨大なコストもかかるという趣旨の問題も一方であるということを申し上げておるところでございます。  しかし、今委員が御指摘のように、今般の二回にわたる特別減税等を通じましても、いわゆる課税最低限が引き上がることによりまして、いわゆる納税人員というものが非常に少なくなっておるということでございますし、また、御指摘のように、課税最低限で税を納めておられない方々の中にもいろいろの階層の方々がおられます。もちろん、そうした方に対しましては、生活保護その他を含めまして社会保障的な対応によりまして対処いたしておる面もございますが、せっかくの御指摘でございます。そういった意味で、公平にかつ多くの方々にどのような対応をしたらいいかということも含めまして、せっかくの御提案でございますので勉強させていただきたいと思います。
  44. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大至急勉強していただきまして、この臨時国会にこれだけは補正予算として出してください。それでもう大至急これをやれるように、みんなで国会本当に頑張って、これは年内に配ってもらわなかったら、あなた、せっかく減税をやると言われたって、今、まだ八月ですよ、暑い暑い八月。いつやるんですか。来年の通常国会で補正をやって、そこで減税を協議する。そしたら、もう六カ月もあくじゃないですか。私は、やはりこの国会に補正、これだけは出していただいて、一人三万円ずつ返す、そういうメッセージを発してほしい。ぜひ、このときにやってほしい。ぜひやってほしいということを重ねて重ねてお願い申し上げます。  時間がありませんので、雇用対策とか貸し渋り、それから沖縄問題も若干勉強してきたのですけれども、かいつまんで私の言い分だけ申し上げたいと思います。  雇用対策の中で私が重視するのは、何ぼ何でも二百九十三万人の人がこの豊かさの中で失業していらっしゃってハローワークへ通っていられるということは許されない。一日も許されない。  とりわけ、私が視察をさせていただいたときに、四十五歳から五十五歳、まだ子供の教育費もかかる、住宅ローンも重圧だという人が、自分の意思にかかわらず非自発的離職をしていられる方がある。そして、そういう人たちがハローワークへ通っていらっしゃる。その心情を思うときに、そしてまたその御家族の困窮状態を思うとき、胸が痛くなるのは私だけじゃないと思う。政治が解決しなきゃならない。絶対しなきゃならない。  その中高年雇用のために格段の努力をしていただきたい。努力をしていられることはわかっています。しかし、求人は、百人来られるうち、たった十七人しかありません。したがって、ハローワークに何回失業保険をもらえる期間通っても、職にありつけるかどうかはわからないというのが実情であることを御報告しておきたいと思います。  それから、貸し渋り実態ですけれども、きょう皆さん方のお手元にこういう「貸付金残高比較」というものをお届けしました。これで言いたいことは、貸し渋り貸し渋りと銀行全部がやっているように言われるけれども、そうじゃないという実態がわかりました。これは、都銀九行は、平成九年三月から平成十年三月までの一年間に何と、一番右の合計欄の一番下を見ていただいたらわかりますが、十兆七千九百三十億円の貸付残高を減らしていますよ。十兆円。ここには、平成十年三月には、国の優先株とか劣後債を引き受けて巨額の我々の公的資金が入っているにかかわらず、こういう結論が出ている。これは、有価証券報告書から拾い出した数字であります。  それから、長信銀三行は、これも五兆八千六百六十三億円減らしています。それから、信託銀行七行のうち、五行で減らし、二行はふやしています。三角を書いてあるんですが、これはふやしているという意味で、努力していられることでございまして、二兆四千五百六十九億円減っています。そして、その最後のページでは、地銀、第二地銀を見ていただければ、地銀六十四行は頑張ってくれているんですよ。地銀まで巻き込んで貸し渋りをしているなんて言ったら怒られますよ。ここで見る限り、二兆四百八億円がふえています。  こういう実態を見ていただきたいんですが、各行別のも入っていますからそれを見ていただきたいんですが、今後、こういうものを資料として、大手十九行で十九兆一千百六十二億円の貸付金が減っているということは無視できないと思います。これについて、もう時間がありませんので答弁は求めませんけれども、こういう実態に基づいて、大蔵省そしてまた通産省、頑張ってこういうことが起こらないような手だてを考えていただきたいと思います。  最後に、沖縄のことですが、官房長官、先ほどの方に熱弁を振るわれて真情を吐露しておられたので、もう私重ねて申しませんが、沖縄という日本の全国土からいえば三%に満たないようなところに、日米安保条約に基づく広大な地域、区域を提供しているうちの実に七五%、四分の三まで沖縄に引き受けていただいている、そういう心情を十分理解しながら、ひとつこの人たちに安心を与えられるように頑張っていただきたいということを申し上げて、私の時間が来ましたので同僚議員にお渡ししたいと思います。  どうもありがとうございました。
  45. 中山正暉

    中山委員長 この際、石田勝之君から関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石田勝之君。
  46. 石田勝之

    石田(勝)委員 改革クラブの石田勝之でございます。平和・改革を代表いたしまして、冬柴委員質問に引き続き関連質問をさせていただきたいと存じます。  私は、時間が三十分ということで限られておりますので、順次質問を続けさせていただきます。  今国会の焦点であります金融再生問題の質疑に入らせていただきたいと思います。  日銀が出している都銀、長銀、信託、地銀、第二地銀、この五業態の合計の統計で、ことし一月から三月までの貸出額の対前年比及び四月から六月までの貸出額の対前年比率をそれぞれ示していただきたいと思います。
  47. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  日本銀行が発表しております五つの業態の貸し出し状況によりますと、資本注入前の平成十年一月から三月の間の総貸出平残、これは平均残高でございますが、対前年比は、五業態、都銀、長信銀、信託、地銀、第二地銀合計で〇・八%の減少になっております。また、資本注入後の平成十年四月から六月の間の平均残高の対前年比は、五業態合計で二・三%の減少となっております。
  48. 石田勝之

    石田(勝)委員 今お答えがありましたように、五業態で一月から三月までがマイナス〇・八、四月から六月までがマイナス二・三、このうち都銀が、一月から三月でマイナス〇・三、四月から六月で二・三等となっているわけでありますが、橋本内閣はさきの通常国会のときに、我々の反対を押し切って十三兆円の、金融安定化のための、自己資本比率を高めるための公的資金を投入いたしました。  そのときに銀行には約一・八兆円、その資金が投入されたわけでありますが、そのときに政府は、これは銀行救済ではないんだということを盛んに強調されておりました。銀行の貸し出し余力を高めるためで、貸し渋り対策になるんだ、こう強くおっしゃっていたわけでありますが、今の数字を大蔵大臣聞かれて、貸し渋り解消に私は全く効果がなかったと思いますが、長官がおっしゃった数字をお聞きになってどう思われるか、お答えをいただきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この資本投入をいたしました一つの目的は、我が国の金融機関が内外ともにややシステミックな危機にある、それを資本を充実することによって対応しよう、主な目的はそうでございましたが、確かに、これが貸し渋り対策になるという期待を申し上げたことは、そのとおりであります。それで、一般的に、殊にいわゆるマネーセンターバンクスにつきまして、現実にそのことはそうなっていないということも御指摘のとおりであります。政府が期待しましたのは、資本を強化いたしますと貸し出し余力が当然ふえるわけでございますので、そういう期待をいたしましたが、ただいままでのところその期待は実現いたしておりません。残念なことであります。なおしかし、資本が充実いたしましたことは確かでございますから、やがて改善をしてもらいたい、そういうことは切に考えております。
  50. 石田勝之

    石田(勝)委員 今、大蔵大臣が、貸し渋り対策は実現していない、こういう御答弁でありました。  資本注入後の四月から六月まで、今申し上げましたようにマイナス二・三%なのですが、これは月ごとを比較しますと、三月は五百二十七兆、それから四月は五百十六兆、五月は五百十四兆、六月は五百十三兆と、だんだん数字の上でも減ってきているわけであります。  そこで、金融監督庁お尋ねをしますが、では、資本注入した個別銀行の貸出額のその後の推移を具体的な数字で明らかにしていただきたいと思います。
  51. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今お話がありました資本注入後の金融機関の貸出残高の推移ということは、確かに、金融機関自身の融資姿勢のほかに貸し渋りとは関係のない債権の流動化といったようなものの要因によっても影響を受けているのではないかというふうに考えられます。したがいまして、御指摘の貸し渋り対策としての効果があったかどうかということを判断するという目的で貸出残高の推移をお示しするということは、誤解を招くということもあろうかと思いますので、慎重に扱う必要があるのではないかというふうに今考えております。
  52. 石田勝之

    石田(勝)委員 貸し出しの現状を、確かに今長官おっしゃるように、貸し出し動向だけで見るのは正確性を欠くというあなたの主張も私は承知している。しかし、客観的な物差しというのはこれしかないのですよ。これで傾向がはっきりわかるのです。だから出してほしいと言っているのです。ちゃんと答えてください。
  53. 日野正晴

    ○日野政府委員 お話しのような前提でございましたならば、この個別銀行ごとの貸出残高の推移を開示することはやぶさかではございません。
  54. 石田勝之

    石田(勝)委員 目的によって違うのですか。
  55. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほど冬柴議員からお話がありました業態別の貸出残高、これは昨年の三月期とことしの三月期の推移がございましたが、あれはグロスで、例えば都銀の場合には減になっているということでございますが、それを、さらにこの内訳を見ますと、銀行によりましては、中では国内業務あるいは国際業務ともし分けることができるとしますと、その国際業務は格別、国内業務につきましては貸し出しがかなり伸びているというところもございますし、それから、先ほど御指摘になりました……(石田(勝)委員「いや、各行別に出してくれと言っているんだよ」と呼ぶ)その目的、貸し出し、貸し渋りという目的だけを判断するのでなければ、それは各行別の貸出残高の推移を開示することはやぶさかではございません。
  56. 石田勝之

    石田(勝)委員 だから、資料は出すのですか、出さないのですか。やぶさかでないというのは何ですか、それは。
  57. 日野正晴

    ○日野政府委員 開示するということでございます。
  58. 石田勝之

    石田(勝)委員 今の答弁は、質問の仕方で答弁をころころ変えると。私は、先ほどから正確に聞いているのですよ。要するに、一—三月と公的資金を投入した四—六月の貸出額の増減比を各行別に明らかにしてくれと。宮澤蔵相もはっきり、当初貸し渋りの解消につながると思ったけれども、残念ながら現段階では実現をしていないということをはっきり大蔵大臣が認めておられて、私が言いたいのは、この十三兆円でブリッジバンクをつくるというのでしょう、だから、この十三兆円の中の二兆円を資本注入のために入れたわけでしょう。そして各行が、多いところで三千億、少ないところで一千億、二十一行が受けたわけですよ。その三月までのと、資本注入された三月以降のその比率を各行別に明らかにしろと言っているわけです。それを、やぶさかではないとかいう答弁は、この予算委員会答弁として私は不的確だと思いますよ。  ちょっとちゃんと答えてください。
  59. 日野正晴

    ○日野政府委員 繰り返しになりますが、御指摘の点については開示させていただきたいと思っております。
  60. 石田勝之

    石田(勝)委員 これ以上やっても押し問答になりますから、委員長予算委員会で資料の提出を求めたいと思います。
  61. 中山正暉

    中山委員長 理事会で検討させていただきます。
  62. 石田勝之

    石田(勝)委員 私の調査ですと、三月から六月の貸出額の末残の増減は、主要十九行のうち、具体名は避けるが四行が大幅にマイナスになっているのですよ。公的資金を入れた、貸出残高が減っているというのはどういうことなんですか。
  63. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答え申し上げたいと思います。  その貸出残高、これはもちろん、公的資金の導入あるいは株式の評価あるいはまた自己資本比率の一年猶予といったようなさまざまなツールを用いまして貸し渋りを解消しようということであったかと思います。ただ、貸出残高はネットで結局見ておりますので、それがいかなる理由によって減ってきたかということは、やはりかなり詳細に分析をしてみなければならないのではないかというふうに考えております。特に最近、債権の流動化、債権の売却ということが積極的に進められておりますので、こういった観点をも加えながら判断する必要があるのではないかというふうに考えております。
  64. 石田勝之

    石田(勝)委員 私、先に質問を進めますが、先ほどから押し問答していてもしようがないので先に進めさせていただきますが、せっかく大蔵省から独立した金融監督庁なんです。これまでの大蔵省と同じく情報隠しの体質を持っているのが金融監督庁じゃないのかなということを、先ほどからの質疑を通じてその点を強く指摘をさせていただきたいと思います。  さて、通産省の七月の調査によっても、依然として貸し渋りに遭っている企業が多いという調査結果が出ております。今後の貸し出し姿勢が厳しくなると懸念をする中小企業の割合が四カ月ぶりに上昇している、通産大臣、御案内だろうと思いますが。  さらに、東京商工会議所の七月に発表した中小企業の資金繰りに関するアンケートでは、これは、民間金融機関の四月から六月期の貸し出し姿勢が一月から三月期に比べて「緩やかになった」と答えた企業はたったの一・六%、逆に、さらに「厳しくなった」のは七%、「相変わらず厳しい」は三三・五%なんです。つまり、約四割の中小企業が貸し渋りを訴えている。こういうことから見ると、実態面でも貸し渋りの効果は、大蔵大臣おっしゃるように、あらわれていないということがはっきりいたしたわけであります。  我々野党は、もともと、十三兆円のうち約二兆円の資本注入については、貸し渋り効果にはちっともきかないということをこの委員会でも私再三申し上げてきました。それで、貸し出しをふやすことは自己資本比率を低下させる、こういうことがあるので、逆に自己資本比率を低下させないために貸し出しを金融機関はしなくなってしまうということで、これは銀行救済ではないかということをこの予算委員会でも再三にわたって議論をしてきたわけであります。そして、その国民の批判を受けたことで、大蔵省は、貸し渋りにきくということを強調したんですよ。  これは「金融に関する緊急対策について」という大蔵省が出されたパンフレットであります。当時の山口銀行局長も、貸し渋り解消には大変資するんだ、だから早く通さなきゃいけないんだということをここの委員会でも答弁されました。そして、この政府広報でも、中小企業を初めとして経済全体に必要な資金を円滑に提供し、景気や雇用の不安を払拭し、我が国経済を活性化させ、国民生活を豊かなものとするとともに、ひいては世界経済の安定化に貢献していくものであると、はっきりこううたっているわけであります。わざわざアンダーラインまで引いてあります。  そこで、私もここで、予算委員会で再三質問に立たせていただいて、その大蔵省の説明の中では、一兆円仮に資本注入すると十二・五倍の効果がある、こういうふうに答弁された。二兆円入れれば、計算上は二十五兆円の効果が出る、こういうふうに大蔵省は私にも説明したんですよ。それだけの効果が見込めるんですと。二兆円入れれば、貸し渋りの今の状況を考えたときに、二十五兆円の貸出枠が広がる計算になるということを大蔵省当局が私に説明したんですよ。  さらには、私は三月のこの予算委員会で、小渕総理橋本総理の隣で聞いておられたと思いますが、そのときに、国民の税金を使って資本注入するのであれば、せめて銀行協会の幹部に対して貸し渋りを解消するようにということを総理大臣として要請すべきだ、私はこのように橋本総理大臣に申し上げた。橋本総理大臣は、あなたのおっしゃるとおりなので、念頭に入れて、そして、近いうちに銀行協会の幹部と会うから、そのとおり貸出枠を広げるように私も要請をします、こういうふうに約束をして、確かに新聞で、その二日後か三日後だったと思いますが、橋本総理銀行協会の幹部に対して貸出枠を広げるようにという要請をしたというのは新聞記事で見させていただきました。  しかし、実態を見る限り、何らの効果が出ていない、貸し渋りは解消されていない、こういうことなんです、小渕総理。そうなりますと、橋本総理銀行協会の幹部に会ったのは子供の使いだったのか、こういうことになりますよ。あるいは橋本さんのパフォーマンスだったのか、あるいは銀行が強情なのか、私はこういうふうになろうかと思います。  手形を落とすのに今四苦八苦している中小企業がたくさんあるのです。それこそ青息吐息ですよ。まさしく息絶え絶えとして、本当に日々の資金繰りに苦労している中小企業があまたある、たくさんある。そういう状況の中で、再三通常国会予算委員会議論して、貸し渋りにはきかない、いや効果があるんだ。大蔵省は、十二・五倍になるんだ、そんなような説明もして、実態として、先ほど宮澤蔵相が認めるような結果。この状況を、小渕総理、最高責任者としてどう思いますか。  また、橋本前総理銀行協会に行って要請しても何ら効果がなかった、総理大臣が行っても何の効果もないというふうな状況総理大臣としてどう思われるか、お答えいただきたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時まだ金融監督庁はございませんで、大蔵省行政でございますので、まず私からお答えを申し上げます。  十二・五ということを申し上げましたのは、恐らく、自己資本比率を八といたしまして、一〇〇を八で割った数字、それを申し上げたと思います。当時、そういう議論を私どもも期待をし、信じておりました。しかし、結果としてそれがそうならなかったことは、事実として申し上げざるを得ない。それは、先ほど金融監督庁長官も言われましたように、例えばその間に株価が変動いたしております。そういう意味で含み益が減少しているかもしれない。また、東南アジア等々の事情もあって不良債権が増大をしているということもありそうなことでございます。  したがって、二つの間にすぐに関係をつけることには問題があるかもしれません。ただ、事情はともあれ、当時として私どもの期待は満たされなかったということは事実であります。
  66. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 橋本総理みずからそうした対応をされたにもかかわらず、今大蔵大臣が御答弁されたような結果になっておることはまことに遺憾だろうと思います。  したがいまして、それぞれの金融機関状況、今大蔵大臣が御答弁されたように、種々のその後の状況というような変化もあろうかと思いますが、いずれにしても、貸し渋りによって現下の経営状態が極めて厳しい状況の中で、それを乗り越えるためにこの資金を、金融機関からこれは貸し出ししなきゃならぬという状況にかんがみまして、私自身もさらなる努力を重ねてみたいと思っております。
  67. 石田勝之

    石田(勝)委員 政府大蔵省は三年前、木津信用組合あるいは兵庫銀行破綻した後、これで不良債権の峠は越えた、こう言いました。それからまた、国会で問題になった住専処理のスキームができたときも、この住専処理の突破口として不良債権が速やかに処理できる、こう言ったんです。そして、この前の国会では、資本注入の法案が成立したときも、これで金融システムは安定して貸し渋りに資すると言ってきたんです。ところが、今の実態からいって、すべて国民の期待を裏切る結果になってきた。政府大蔵省の見方がいかに甘かったか。今度その十三兆円を使ってブリッジバンクをつくる、こうおっしゃっているわけであります。だから、今まで峠を越えてきた、峠を越えてきたと言って、幾つ峠を越えりゃいいんだ、こういうことになるわけです。  さらに、こういう行き当たりばったりのびほう策ばかりやっていて、政府大蔵省のやっているのは出たとこ勝負じゃないか、全く戦略だとか一貫性に乏しい、私はこういう感じを強く受けるわけであります。  そこで、蔵相も今お認めになりましたが、小渕総理橋本内閣の今日までの金融行政の、今度ブリッジバンクをつくるとかいろいろ金融再生法案が出されておりますが、橋本内閣金融行政のどこをどう反省してどういうふうに変えていくのか、具体的に総理大臣からお聞かせいただきたいと思います。
  68. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いずれにいたしましても、現下、厳しいこの状況でございまして、そういった観点から、政府としては、今回こうした国会を開いて、ブリッジバンク法その他の法律案を提案いたしておる次第でございます。もろもろの政策のあり方につきまして、その反省も含みまして、一日も早くそうした法律案を国会で通過させていただくということが、この結果に対して責任をとる、こういうことだと思います。
  69. 石田勝之

    石田(勝)委員 総理大臣、今日までの金融の、峠を越えた、峠を越えた、峠を越えたときて、全然峠を越えているどころじゃないんです。余計暗やみの中へ入っていっちゃって、まさしく今、本当に息絶え絶えとしているんですね。そういう状況の中で、金融行政のあり方が、大蔵省あるいは政府のやり方が甘かった、そしてそこを、どこをどう反省してどうやっていくのかということを、これはもう総理の決意としてこの場で述べていただかないと、このブリッジバンク法案というか金融再生法案をこれから審議するわけでありますが、やはり過去の反省なくして出発はないんです。そういうことから考えて、総理大臣の決意をお聞かせいただきたい。
  70. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 さすればこそ、大蔵省のかつての銀行局が行政の責任を持ってこられたことに対しまして、いわゆる護送船団方式その他も含めましての反省から今日金融監督庁をつくって、そして新たなる行政の責任を負うというシステムに変えてきたわけでございます。  ただ、率直に申し上げますと、そうした姿が機能し始めましたのは極めて最近でございまして、そういった意味で、その金融監督庁あるいはまた大蔵省としての企画局、それぞれが分担をしてやるべきことが十二分に機能を発揮するまでに若干の時間を要したという点が反省になるのではないかと思いますが、いずれにしても、今までのあり方について、新しい制度をもって対応するということが、反省の上に立って、立脚して行ってきておることでございまして、この金融監督庁がこれからの責任を負っていくという形の中で結果を生み出していく、こういうことだろうと思っております。
  71. 石田勝之

    石田(勝)委員 それでは、大蔵大臣、きのう速水日銀総裁の発言やきのうの予算委員会での大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、ブリッジバンクの話を聞くわけでありますけれども、法律では大手は排除していない、こうおっしゃっております。しかし、運用では大手については破綻の前に別な方法を考える、こういうふうにお答えになっているのですね。ブリッジバンクは適用しない、こう聞こえるわけでありますが、そのように解釈してよろしいのかどうか。  速水総裁と大蔵大臣の答弁を聞いていますと、まあ確かに制度上、フレームでは大手も入るんだけれども、実際の運用ではこれは大手は入らない、破綻の前に別な方法を考えるんだ、こういう答弁まで出ておりますが、それは、大手についてはブリッジバンクを適用しないというふうに解釈してよいのか、お聞かせいただきたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、昨日申し上げたつもりでございましたが、言葉が不鮮明であったかもしれません。  基本的に、ブリッジバンクの制度は、いかなる銀行にも適用できるものでございます。また、管理人につきましても、法人でもなることが許されておりますので、サイズという意味で問題があるというふうには私は思っておりません。  他方で、きのう日銀総裁の言われましたことは、大手が非常な窮状に陥りました場合には、国内、国外的な影響も多いであろうから、ブリッジバンクの手続では時間がかかるのではないか、あるいは、少なくとももっとよりよい方法があるのではないか、こう言われたのだと思います。  そこは、正確に申しますと、今度は金融監督長官の御所管の問題になるのですが、法制からいいますと、確かに日銀総裁の言われるようなことも可能である、そういうふうに考えております。
  73. 石田勝之

    石田(勝)委員 まあ可能であると。そうすると、ブリッジバンクとは別な方法というのは、お答えになっておりませんが、これは何のことなんですかということなんです。それは合併のことですか、どうなんですか。
  74. 日野正晴

    ○日野政府委員 金融監督庁は法律を立案する立場にございませんが、でき上がった法律を執行するという立場からこの法律案を読ませていただいた限りでは、私としてはこういうふうに理解しております。  つまり、このブリッジバンク法案は、仮に破綻となった銀行の受け皿となる金融機関が見出せない場合に初めて適用されるというふうに私としては読めるわけでございます。したがいまして、受け皿金融機関ということになりますと、例えば合併でありますとかあるいは営業譲渡でありますとか、そういったことが考えられるのではないかなというふうに考えております。
  75. 石田勝之

    石田(勝)委員 長官ではなくて蔵相からお聞かせもいただきたいと思いますが、蔵相は、八月三日付のエコノミスト誌のインタビューで、「私自身は日本でも今後、いわゆる大手行の経営が破たんしてブリッジバンクを作る事態は想定していません。金融再編は合併という形になる可能性が大きいと思う。」こう発言されておりますが、どうでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もしそう申しておりましたら、それは法の解釈としては適当でございません。  改めまして、法の解釈としては、ブリッジバンクもその際に使うことができると申し上げます。
  77. 石田勝之

    石田(勝)委員 運用をどうするのかということを聞いているんです。  それで、合併奨励は護送船団方式の復活につながるんじゃないか、私はそう思うんですね。やはり、本来破綻すべき銀行、市場から撤退すべき銀行を合併で無理やり延命させるというのは、どう見ても問題先送りではないか、市場原理に矛盾していると私は思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 護送船団方式の基本的な考え方は、一番足の弱い船をも保護しよう、したがってすべてを助けるという考え方でございますが、このたびの問題はむしろ、金融機関の間に優劣が生まれて、優なるものは劣なるものを取り込むことがある、そういう意味でございますから、基本的に思想が違うと思います。
  79. 石田勝之

    石田(勝)委員 まだまだ質問したいわけでありますが、時間が参りましたのでこれで終わります。
  80. 中山正暉

    中山委員長 これにて冬柴君、石田君の質疑は終了いたしました。  次に、野田毅君から質疑の通告を受けております。これを許します。野田毅君。
  81. 野田毅

    野田(毅)委員 小渕内閣が誕生して初めての予算委員会であります。しかし、今最大の課題は何といっても経済問題、そういう中で、きょうは経済問題に重点を絞って質問を申し上げたいと思うんです。  質問に先立ちまして、率直に言って小渕総理は、私も二十六年議員生活をやってきた中で、個人的にはいろんな政策分野の中で一緒に仕事をさせていただいたりしたこともありました。そういう意味で本当にお祝いを申し上げたいんですけれども、しかし、残念ながら、素直に言えない心境にあります。  それは何といっても、総理が、総理になられて経済再生内閣ということを標榜しておられるわけですが、しかし、本当総理がどこまで今の日本経済状況について危機認識をお持ちであるのかということを、御就任以来いろいろな、国会における昨日来の答弁などを聞いておりましても、どうも疑わしいな。  そして、今までの経済政策をころっと変えたんですけれども、ただ政策さえ変えればいいんじゃないか、それで責任問題や過去の失政への問題は何か免責されている、そういう雰囲気が今内閣全体に充満しているんではないか、そんな思いをしています。そういう意味で、橋本さん一人の責任に押しつけて、何かすごく気楽だなという思いをしておるんです。実は小渕さん自身も橋本内閣の最重要閣僚の一人でもあったわけですから、そういう意味では、橋本内閣経済失政について連帯責任者であるという自覚がまずなければいけないんじゃないか、私はそう思います。  それから、大変自民党の皆さんにはお聞き苦しいかとは思うんだけれども、参議院選挙が終わった後いろんな党内論議が行われております。逐一報道されております。その中で感じますのは、参議院選挙に負けた反省ということは大いに取りざたされている。しかし、経済失政についての反省と、あるいは総括なり、あるいは経済失政によってつぶれなくてもいい中小企業がつぶれていく、中には自殺者まで出てくる、あるいはいわゆる不況を大不況という、深刻化させてきた、その問題についての反省と謝罪の声というのは少ないんですね。  だから、非常に危機感がいろいろ充満しているんですが、自民党の存続についての危機感はよくわかるんだけれども、日本の国の経済への危機感ということについての議論が、本当に自民党内でどこまで議論がされているのか本当に疑わしく感じておるのは残念であります。  そういう点で、本当は、総裁におなりになってまず私たちがやってほしかったことは、小渕内閣の組閣をどうするかということに思いをはせるのではなくて、今日のこういう厳しい経済の危機状況を乗り越えるために、今までの政策の失敗を総括、反省をした上で、どういう内閣をつくるべきかということを、まず与野党を超えて、この日本の危機をどう乗り越えるかという、そういう謙虚なところから、一緒になってどうやって乗り越えていくかという、そういう党首会談の呼びかけが本当はあってよかったのじゃないか。  だけれども、内閣だけは私たち自民党だけでやらせていただきますよ、だけれども日本経済は危機状態だから、この危機状態を乗り越えるのは与野党共通の責任ですよという、何かごちそうだけはいただいて、あとは、この危機状況を乗り越えるのは与野党の連帯責任ですよという、私はそんな姿に見えて仕方がない。このことが非常に残念でした。  ですから、総裁におなりになった後の第一声、これは多くの人も見ていたのですが、あれはテレビのぶら下がりか何かのインタビューだったのでしょうか、まず第一声が党のため、そして国のためという、私は、順序が逆転していたことを非常に印象深く、実は残念に思ったのです。この感想を申し上げさせていただきます。  そこで、今、石田委員からもお話があったのですが、本当経済の再生をやっていこうということであれば、前内閣経済政策の失敗をまず徹底的に総括するということからスタートしなければいけない。そこで、どこが間違っていたのか、あるいは政策のどれをどのように組み立て直すのか、国民に対するおわびと同時に、明確な説明をする責任があるのではないか、このことを指摘しておきたいんです。  特に、私たち自由党は、新進党以来一貫して、まず第一に行革減税、いわゆる十八兆、これは国際水準並みの、そしてサプライサイドから経済を民間中心の経済に切りかえていくために大事なんだ、そういう行革減税を訴えてきた。  そして消費税は、少なくとも今世紀、大改革をやっていこうとするなら、不良債権の処理自体が相当なデフレ要素を伴うわけでありますから、そういう意味で、今世紀は消費税は逆に三%に据え置くべきであるということを一貫して言ってきた。それは、不良債権処理の事柄の大きさを認識していたからそういうことを言ってきた。  そして、単に不良債権処理だけではない、構造的に行き詰まっている日本経済のシステム、言うなら、このシステムそのものをどう自己改革していくかという、その一環としての規制緩和であり、行革であり、地方分権なんだ、こういうことをパッケージとして私たちは強く一貫して主張してきた。それは御記憶のあるとおりだと思うのです。  その過程の中で、いっときは財政赤字が拡大することもあえて容認するということが必要なんだということも主張してきた。ただ、そのことに対して、今はどうやらそのようなところに歩みを進めておられるようにも見えるけれども、今日まで我々がそのことを一生懸命訴えてきた。  それは、何も野党だから言っているとか、党利党略的なことを言っているのではない。今の日本経済本当に乗り越えるには、与野党を超えて、そういう政策中心のことでやらなければだめなんだという思いで私たちはやってきたつもりだったが、その過程の中で、残念ながら与党皆さん方は、我々の建設的な提案に対して一顧だにしないで、むしろ財政赤字の拡大はいかにも無責任だと言わんばかりの批判をし続けてきた。  その否定したことを、今度小渕内閣になっておやりになろうとしているのですから、この点は、ぜひ総理自身、今までの橋本内閣における経済政策のどこがどう間違っていたのか、そして、財政赤字の拡大がいかにも無責任だと言わんばかりのことを言ってきたことを百八十度転換することになった、そのことについて、なぜそういう発想になったのか、今まではなぜ違うことを言ってきたのか、このことについて明確なる説明を、ぜひ今ここで国民に向かってしていただきたい。ぜひお願いします。
  82. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 橋本内閣として推進してまいりました六大改革というものは、しばしば申し上げておるように、基本的に私は正しかったと思っております。  その中で、お説のように、経済構造改革というものについて、いま少しくそのあり方等も中心的に検討をいたしてまいるべきだったとは思いますが、当時の環境の中では、どうしても財政改革ということが最大課題となりまして、そして、そのための法律案が制定をされ、一部修正をされましたが、そこに焦点が絞られてきたということであります。  一方、経済全体の歩みの中で懸命な努力をしてきたことも私は事実であっただろうと思っております。かなり状況の変化、しばしば申し上げておりますように、国際経済の中で、アジアその他における新たなる金融不安等の発生等に伴いまして、それに対応する経済の生きた動きの中で、非常に苦労を尽くされたということは認識をいたしております。しかしながら、結果的に経済の動きがとまり、非常に成長が減退してきたということの事実は結果として生まれてきたわけでありまして、そうした反省に立たなければならないとは思っております。  また、私自身の責任におきましても、閣内におって、こうした問題について、私としての勉強も行い、そして十分なる発言を必要としたのではないかと思っておりますが、いわば内閣におきましては私自身も経済閣僚という立場でもありませんでして、これをもって我が責任を阻却するつもりはありませんけれども、そういった点で十分なる努力があったかと言われれば、その反省すること、これやぶさかではありません。  よって、私自身がこのたびこうした立場に立ちました以上は、従来から本院におきましてもいろいろ御討議をされ、また自由党としても御主張された諸点の問題等も、十分この審議を通じて私自身も承知をいたしておりました。よって、私が内閣を組閣いたしました以上は、従来の発想でなくして、新たなる観点に立ちましてこの政策を遂行する。特に、経済再生内閣と銘打った以上は、あらゆる手法を通じてこの景気の回復に相努めるという形の中で、あらゆる手段を講じていくという中で、減税の問題あるいは補正予算の問題等につきまして私自身の考え方を明らかにし、そして、このことをこの国会でも御審議をいただくいろいろな考え方をいたしていきたいというふうに考えておる次第でございます。  したがいまして、私自身といたしましては、ぜひ衆知を集め、閣内にもそうした考え方をお持ちの方々にも御参加をいただきまして、新しい政策に向かって最善の努力をするということで、今始めさせていただいたということでございます。  どうぞ御理解をいただきまして、これからの政策についての御支持と御協力をお願いいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  83. 野田毅

    野田(毅)委員 今、これは聞いている人がよくおわかりだと思うので、今の答弁で私自身、ああ随分、しっかりと説明がわかったということには必ずしもなっていないだろうと思います。  ただ、今のお話の中で、経済再生内閣として、今小渕内閣になって提案されたことを二つおっしゃいましたね。それは、一つは補正予算の話であり、一つは減税のお話であります。  ただ、補正予算にしても減税にしても、今はまだ何も中身がないんですね。いろいろな構想は打ち上げられておりますが、実際にそれが法案なり予算になって審議されるのは、固まるのが年末、審議されるのが来年の通常国会。そういうことで、後でそれぞれについて議論をしていきたいと思うんですが、今お話がありましたこの二つで、本当に今の行き詰まっている日本の構造的な経済危機を再生できるシナリオになっているんだろうか。私は今お話のあった、これさえやれば日本経済は再生へのシナリオを歩んでいけるんだという話にはとてもとても思えない。その程度で日本経済が再生できると考えておられるのだろうか。  堺屋さんも今度お入りになって、何か経済戦略会議というのを今度おつくりになる。しかし、経済戦略会議がいつから議論を開始していつごろ終わるのか。巷間伝えられるところによると、どうやら本年度末というんですから、来年三月になってしまう。それまではいわゆる戦略なき経済政策が、また行き当たりばったりの政策が進行していくんじゃないか、私はそのように思えてしようがない。  したがって、具体的にどういう政策体系でやっていこうとするのか。そういう日本経済再生へのグランドデザインというものがしっかりと提示されて、それに対する一つのコンフィデンスというものがしっかりとでき上がって、そして初めて市場もしっかり反応してくる。そこで、初めて日本の再生への経済の歩みがスタートするんですよ。  だから、今既に市場では小渕内閣経済政策に対する不信ということが、まだでき上がって一カ月にもならぬうちに小渕内閣経済政策に対する不信が、市場からどんどん表現されているということ、このことを総理は一体どう受けとめておられるのでしょうかね。  ですから、二つお聞きしたいんです。そういう意味で、経済再生へのグランドデザインというものをいつお出しになるのか、まず、このことから聞きたいです。どうぞ。
  84. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 経済再生のグランドデザインをきちっと描いて、そしてスタートすべきだという御議論は、私もよくわかります。ただ、本内閣として、ともかく種々の政策を一つ一つ取り上げることによりまして、ある意味では、この内閣推進しながら各般の手段をこれから内外に求め、そして内閣としてもこれをつくり上げる中で進めていきたい、こういうふうに思っております。  ただ、減税と補正予算だけですべて再生するかと言われれば、さようなことではなかろうと思っておりますが、そのために、何よりも日本経済の現況の最大の課題が、何といっても不良債権の処理ということがなくしては国際的な信頼にもこたえられないという意味で今般この国会を開かせていただいて、政府としての考え方を明らかにし御理解をいただこうとしておるわけでございまして、これから日本経済再生のための大きな絵柄は描いていかなければなりませんが、当面できることからやっていこうという形で私どもはこの政策を打ち出させていただいておるということで御理解をいただきたいと思います。
  85. 野田毅

    野田(毅)委員 よくわかりました。ということは、今のところ戦略はない、だからできることからやっていきます、そういう御答弁だったように聞こえます。その中で当面不良債権処理を急ぐんです、総括すればそんなお話だったと思う。だから私は、市場が非常に不安に思っているんじゃないかと思うんです。  私は、大きく分ければ、小渕内閣に対する経済政策への不信というのが三つある。  一つは、例えば減税問題。当初の間、恒久減税というお話があった。であれば、少なくとも恒久減税というのは、法人税について言えば連結納税制度を含む国際水準並みの法人の実効税率にしよう、そして、所得課税については少なくとも累進構造そのものを含む税率全体、その見直しを抜本的にやるのだと思っていたのです。  ところが、どうやらいつの間にか何か定率だとかどうだとか、非常に技術的な話。そして、それが恒久減税かというと、いや、どうもそうではない。いつの間にか恒久的減税という言葉に変わってきている。これは、ちょうど橋本内閣のときに、政府と党が使い分けをして、政府は恒久減税と言い党は恒久的減税と言いという、そういうあいまいなあいまいな、そういう中に引っ張り込んできた。これがまだ見えない。  今だってまだ、中身はこれから政府税調だとか自民党税調だとかいろいろなところで練るわけでしょうから、まだ中身が何にもない。実施時期も、ことしすぐやるかと思ったら、そうじゃない、来年だと。一体効果はいつになるのでしょうか。  二つ目は、公共事業の追加の話。第二次補正の話も、結局は何だかんだ言いながら在来型の景気対策の延長線の発想、それしかないのではないか。今公共事業の追加ということは、それなりの効果はあるのでしょう。しかし、もっと大事なことは、それよりも違ったやり方の対策を打たなければ効果がないのではないか、そういう根本的な問いかけがなされている。  国がお金を吸い上げて国が使うというやり方ではなくて、民間にお金を残して民間の自己責任、みずからの才覚で経済を動かしていく方向に切りかえていこうというときに、相変わらず公共事業で景気対策をやるのだというこの発想、ちっとも従来とは変わっていないのではないか。こんなことでは日本経済の再生への展望は開けないのではないか。このことが小渕経済政策に対する不信の大きな理由。  そしていま一つは、今不良債権処理のお話もありましたけれども、要は、金融機関の再編、整理、淘汰の時代に入った中で安定した金融システムを構築するためには、一刻も早く優勝劣敗に基づく金融機関の淘汰を進めなければならぬということなんです。  だけれども、どうもこのところ行われている議論は、むしろ淘汰をする過程の中でいろいろ激震が起きることを恐れる余り、むしろ市場によって淘汰をさせるというやり方ではなくて、特に大手十九行については延命、救済をやろうとしているのではないか。もしそういうことになるのなら、日本金融市場あるいは日本金融システムというものは、結局大きな問題を先延ばしをし、さらに問題を拡大させるだけではないか。そういうことに対するしっかりしたメッセージが必ずしも伝わっていない。  後ほど触れますが、ブリッジバンク法案についても、では本当にこのブリッジバンク法案で、このブリッジバンクというやり方で大手行の破綻に対して対応できるのか。そうなっていない。そうなっていないからいろいろな発言がある。それを何か、このブリッジバンク法案さえ通れば日本金融システムの不安定、動揺は卒業できるのだと言わんばかりのやり方というのは決して市場から評価されていない。それよりも、もっと、いっときは混乱はするかもしれないが、そのことによって一刻も早くすっきりした、市場のルールと自己責任に基づく、そういう力が働く金融市場に日本を変えていかなければならぬ。その道筋がどうも見えない。このことが実は市場の大きな不信になっていると思うのです。  その点について、総理はどう受けとめておられますか。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的な政策の問題でございますので、まず私からお答えをさせていただきます。  小渕内閣基本的な政策のデザインはないではないかと言われますが、過般の小渕総理大臣の国会における所信表明で極めて明確に出ておると思います。  一つは減税であり、一つはいわゆる不良債権の処理であり、一つは……(発言する者あり)
  87. 中山正暉

    中山委員長 静粛に願います。
  88. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それらのことによりまして、基本的な政策のデザインが出ております。  その前に最初になされた決断は、財政改革法を凍結するということであります。このことは、野田委員が言われましたように、変節をしたのではないかと言われるほどの大きな政策的な一つの基盤になる問題でございます。  それをもとにいたしまして、まず減税でございますが、御承知のような減税案を私ども内部で決めました。その実行の時期は、所得税については、本年は減税がかかっておりますから当然一月一日でございます。法人税につきましては、当然来年度、来年の四月から始まる年度より有効である。これは、これ以外に方法がない、これが常套であることは野田委員は恐らくよく御存じでいらっしゃろうと私は思います。  御批判は、これが恒久的減税であるかないかということですが、御承知のように、過去において行われましたいっとき限りの減税は、例えば平成八年分の所得に関する減税、平成九年分の所得に関する減税と、はっきり対象を一年に決めております。そのゆえに、これは一年限りである。  私どもが今考えておりますのはそうではございません。したがって、法律も期限を設けることはない。恐らく当分の間というようなことも使う必要はないであろう。新しいスキームに基づきまして、永続的な、一年限りでない減税を考えておるわけでございます。これは、いずれ法案が出ますとおわかりいただけると思いますが、一遍限りの法律ではございません。  さらに、野田委員は、この際抜本的な減税、税体制をつくるべきではないかとおっしゃいましたが、御専門のお立場からお考えいただいて、このように世の中が変動し、かつ極端な不況の時代に、本当にことしから実現できる税制の基本的な改正ができるか。それは恐らく課税最低限等すべてのものを含むわけでございますが、それが現実的であるかどうかということは、これは野田委員ならおわかりいただけることだと私は思う。  ただ、私どもは、永続的な減税を考えておりますが、将来いずれの日にか日本経済が活性いたしましたときに本当基本的な税制改正をいたさなければならない、こう思っております。それが、総理が将来を展望してと言われたゆえんであります。  次に、予算編成方針ですが、先のことではないかと言われますが、御存じのように、概算要求は今月の末でございます。先のことではございません。ここで方針を決めなければ、予算編成ができない、要求官庁からも要求が出てこないのでございますから、この段階でシーリング等の問題を片づけざるを得ない。これは遠い問題ではない、現実に今の問題でございます。  しかも、それは従来型の公共事業ではないかとおっしゃいますけれども、二つの特別枠を設けることからでも明らかなように、私どもは従来型の公共事業についての批判をかなりよく知っております。したがって、二十一世紀を展望した新しい公共事業にいたしても考えたいし、また、いわゆる情報通信等についても、都市政策についても考えたいということを申しておりまして、これは各省に十分な、いわゆる新規の特別枠に対応するために十月までという期限を与えまして、新しい考えを出してもらって査定者と一緒に検討したいという気持ちでございますから、在来型の公共事業をそのままやっているという御批判は、私どもの気持ちの中にはございません。  もう一つの問題は、いわゆる不良債権の処理でございますが、六月二十二日に金融監督庁が発足をしてここで検査が始まったということが、いわゆる不良債権処理、野田委員がおっしゃいます護送船団方式でない金融機関をつくる第一歩であったと思います。  これが進んでいきますと、金融機関自身の間におのずから優劣感が生まれますし、また、市場ではそれを、株価とか財務処理等を見まして市場の評価がある。また、顧客にいたしますと、いい金融機関はいい金融商品を提供する、これは明らかなことでございますから、そういう意味で、おのずから金融機関の優劣があらわれる。それを、お願いをいたしております幾つかの法律案によって、いわばそのための受け皿を、受け皿というのは誤解を生じますから受け入れ体制をつくっていただきたい、それだけが今私どものやっていることでございます。  これで全部だとは申しませんけれども、内閣が発足してこれだけの日の間でこれだけの政策を明確にしたということは、私は評価をされていいと思います。
  89. 野田毅

    野田(毅)委員 不良債権の問題はもうちょっと後にしますが、今宮澤先生からいろいろ答弁があったのですけれども、例えば減税の話、素直におっしゃった方が僕はいいと思うのです。  それは、なぜいわゆる恒久減税ができないか、私がその事情はよくおわかりのはずだということでお逃げになったのだ、それはなぜか。特別減税、いわゆる定額控除方式というばらまき型の特別減税をやって、その結果課税最低限を引き上げてしまった、だから抜本改革に入れない。だから私たちは、あの特別減税を審議しておったときに、必ずそうなりますよ、抜本税制改革の妨げになりますよと言って反対したのですよ。まさにそれが障害になっているから、今のようなわけのわからない定率減税で、何か階層ごとにまたその定率減税の定率も変えようというのです。  ですから、いろいろおっしゃるが、技術論になりますが、所得税法の本法にある税率を変えようというやり方ではなくて、恐らく、当然のことながら、本法の税率は変えないでほかの何らかの特措法か何かで対応しようという話しかないんじゃないですか。それが恒久減税だとはとても考えられない。  本来、恒久減税というのは、単に期間の長さだけを言っているのではない。つまり、あるべき所得税体系の姿を恒久減税と言ってきたはずだ。だけれども、そこへ一気に今行けないから、過渡的な、そこへ行くための言うならつなぎ税制をやろうというのが今の宮澤大蔵大臣のお話だったと思う。  では、なぜそういうことになっているのか、それでは日本の望ましい税体系はどうなんだという議論はまだ先の話になってしまっている。だったら、その先はこうなるんですよということを示されて、そこへ行くまではこういう定率減税方式で行くんですよという、そういう展望があって初めて本当の恒久減税措置のステップになっていくんじゃないですか。それが見えない。ただ目先の定率減税、一年だけじゃありません、二年、いつまでやるかわかりません、だから恒久ですよなんと言うから不信が高まるということだと私は思いますね。  この点について、もう時間がどんどん迫りますからそれ以上深くは言いませんが、私はそういう意味で、しっかりと根本から立て直そうということであれば、なぜ望ましい税制の姿をお出しになれないんだろうか。今すぐできないのなら、なぜできないかということを説明して、そこへ行くまでの定率減税なんですよということを説明される必要があるんじゃないでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初におっしゃいました推理が私は違っていると思います。  先ほど申しましたように、一年一年の法律でその年分の所得を減税してまいりました。しかし、それは一年一年の所得でございますから、基本的には所得税法は残っているわけです。すなわち、今の所得税の課税最低限は三百六十一万円であって、あなたのおっしゃるように四百九十何万円ではないのです。そのことを私どもは言っておるのであって、それが怖いからこういうことをしたなんということは全然ございません。三百六十一万円は今いじるつもりもありません。  そして、それはそうであるかもしれないが、やがてその理想的な税体系というものはあるだろう、それをなぜ今言わないのだとおっしゃいます。それはわからないではないが、今の日本本当日本らしい、これが正常な日本だとは、私には、日本経済は正常な経済だとは思えないのです。ですから、今から正常な事態を考えてこういうことを言ってみるということ自身が現実的であろうか。野田委員もこちら側に何度もお座りになられましたので、その点はおわかりいただけるんではないかと思います。
  91. 野田毅

    野田(毅)委員 今のお話を聞いて、非常に残念に思います。  要は、じゃ何のために減税されるんですか、所得減税は。私は、非常に大事なポイントはそこだと思うんです。何のために所得減税をおやりになるのか。それは単に目先の景気対策ですか。むしろ、サプライサイドからしっかりと日本経済の枠組みを組み立て直そうというのが、本来、所得減税の最大の発想だったはずだ。目先の景気対策として、目先の消費喚起をしたいから減税をしようというんですか。  あるいは、先ほど公共事業のお話もありました。中身がどうのこうの言っているんじゃないんです。私たちは公共事業の不要論を言っているんじゃないんです。景気対策として本当に有効かどうかだ。  まさにそういう、言うなら、今までやってきた特別減税なり、今度定率減税をおやりになろうという、あるいは公共事業を追加しようという、それだけのお金があるんなら、まさに目先の消費喚起、短期的な景気、需要対策で言うなら、むしろ消費税を三年間なり景気回復まで三%に戻すという方がはるかに効果があるんじゃないですか。  つまり、何のために所得減税を論議しているかというと、目先の景気対策のためじゃなかったはずだ。私たちが恒久減税措置を言ってきたのは、目先の景気対策として言ってきたんじゃない。むしろ、日本の国の経済の仕組みをしっかりと根本から組み立て直そうという発想の中で税率体系を変えようと言ってきた。それを今やることが、結果としてある程度目先の経済政策にも役に立つのじゃないですか。これが所得減税の一番のポイントだったはずです。それは大蔵大臣おわかりのとおりだと思うんです。だけれども、結局いつの間にか、がちゃがちゃしてきた結果、何となく六兆円か七兆円減税すればいいんだろうというような発想になってしまった。  ですから、私は総理にぜひここを、宮澤大蔵大臣ばっかりですが、あなたが六兆円恒久減税とまず言い出した責任者なんです。総裁選挙をおやりになるときにそれを言い出されたんです。じゃ、六兆円恒久減税と言い始めた最大の理由は、そのねらいはどこにあったんでしょうか。これは、やはり言い出しべえである小渕総理に聞きたい。
  92. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日本の所得課税、法人課税の税率につきましては、やはり現下の状況からいえば、グローバルスタンダードと申しますか、先進国並みに税率を変えていかなきゃならないという発想を常々有しておったことは事実でございます。  と同時に、単年度として特別減税が本年度行われておるというような状況の中で、単年度としてこれを終わらせるということになりますと、その減税の恩恵に浴した方々も一方おられるということにもかんがみまして、そういう意味で、中長期的に日本の税制のあり方全体も、将来方向としてはあるべき税制の姿として考えておる。  しかし同時に、今日の状況を考えましたときに、この減税がなくなるということによりまして、国民的にはそれだけの全体の恩恵がないということでありますれば、中長期的な大きな、これから制度的な税制のあり方というものも遠く見詰めながらも、今日、その方向性に向かっての一つのあり方として、今申し上げたような所得ないし法人課税についての減税を行うということでございますが、当面はこのことを行うことによりまして現下の状況の中で景気対策にも大きく益するではないか、こう考えまして、今言ったような減税の方針を総裁選挙に打ち出させていただいた、こういうことでございます。
  93. 野田毅

    野田(毅)委員 この問題、私もある意味じゃ専門分野でもありますから、まだまだ本当はもうちょっと突っ込んでいきたいんですが、ほかに行きたいと思うんです。  というのは、大体議論を聞いていてよくみんなわかったと思うんですよ。今のお話の中で、当初、制度減税を意識しておられたんでしょう。つまり、定率減税は制度減税じゃないはずなんです。その制度減税をやろうと言っていた小渕総理の発想がなぜいつの間にか定率減税に切りかわってきたのかというのは、これはまた別の機会にしっかり聞いてみたいと思います。  私は、そういう意味で、本当に、冒頭、日本経済をパッケージとして明確なシナリオに従って、基本的なそういう政策体系に従ってやっていくということが日本経済再生へのコンフィデンスというものを、今一番大事なことはそこなんです。そこのところを、目先の何か景気対策だけやれば何とかなるんじゃないかというふうに聞こえて仕方がない。このことを申し上げておきたい。  そこで、さっき財革法お話にもちょっとあったと思うんですが、凍結を意思決定したことが非常に大きな決断だとおっしゃった。私から言わせれば、宮澤先生も戦犯のお一人だと私には見える。それはなぜか。一番大事なこの政策転換をするチャンスは去年の秋だったんです。そのときにやってはならぬことをおやりになった。それが財革法なんですよ。この財革法が致命的に株価を押し下げ、それが引き金となってその後のいろいろな金融混乱を招いて今日まで持ってきている。その財革法をつくった原因は、責任者たちはどなたたちかというと、実は宮澤さんも有力メンバーのお一人であった財政構造改革会議の、それに従って橋本内閣はおやりになった。そのときには宮下厚生大臣も中村法務大臣も財政構造改革会議のメンバーであります。私は、そのことの反省の一言ぐらいあってよかったんじゃないかな。そして、本当に政策転換を小渕内閣でやるんだと言うんなら、凍結とかそんなこそくなことをおやりになるんじゃなくて……(発言する者あり)廃止、そう、よくわかっている。それが当たり前の話じゃないですか。  本来、財政構造改革というのは、目先の予算編成の際の何か事業ごとのいわゆるシーリングというか、伸び率をどうのこうのというのが財政構造改革の話じゃないはずだ。それは目先の予算編成上の技術の話であって、本来の、財政構造改革と言う以上は大蔵省じゃ実はできないんですよ。各省の行政マターそのものなんですよ。大蔵大臣はそのことは十分おわかりになっているはずだ。だから、あの前の法案は目先の財政の帳じり合わせ法案なんです。構造改革になっていなかったのだ。  もともと構造改革は、各省全部、各省の行政の仕組みそのものに突っ込んでいかないとこれはできない世界なんです。それが財政構造改革なんですよ。ところが、名前だけ財政構造改革と言って違うことをおやりになっている。結果的に目先の渋ちん財政だけを強行した。そのことが結果として引き金を引いたんだ。  私は、この機会に、もう凍結だとかあいまいなことをやめて、はっきりとおやめになったらどうですか。財政構造改革法は廃止をする、そして、本当の意味での財政構造改革法案をそれにかえてつくるんだということぐらいなければ、それはとてもとてもできないんじゃないですか。それがなくて、どうして赤字国債だけ、あれだけ口をきわめて我々を厳しくののしってきた皆さんが、今度はいとも簡単に、減税財源どうしますか、いや赤字国債ですと。我々はそんな無責任なことは言っていませんよ。いわゆる行革減税と言ってきたのはまさにその点なんですよ。目先は赤字が拡大するかもしれないが、基本的には徹底した行革をやろう。  例えば予算の仕組みについても、補助金というものは、地方に対しては個別補助金はやめて地方に包括的に移しましょう、いろいろなことを我々は具体的に提案してきている。そのことが本当財政構造改革のはずだ。  私は、ぜひ、これはやはり各省マターでもありますから、小渕総理、どうせなら凍結なんてそんなこそくなことを言わないで、しっかりと、これはやめて別のものにつくりかえるというぐらいのことをおっしゃいませんか。
  94. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御主張はしかと承りましたが、財政構造改革法案につきまして、本院におきましても種々御議論がありましたが、これが成立をいたしました。そのゆえんのものは、やはり予算をつくっていく場合に、レベニュー・ニュートラルであるべきもの、そしてまた、国としての借金というものはできる限りこれを減少させていかなければならないという根本にさかのぼっての、そうした議論の上でこの法律が提案され、成立したものと思っております。  しかし、今日の経済状況を考えましたときに、少なくとも私自身が打ち上げました幾つかのテーマにつきまして、これを実行いたしますとすれば現行の法律のままではいかないことは御案内のとおりでございまして、したがいまして、この法律につきまして、その理念とするところは私は改めるべきものではないと思っております。しかし、委員御指摘のように、これを根本的に改革をしていくためには、行政改革の問題も含めまして、あらゆる観点から検討しなければならないと思っております。  いずれにいたしましても、来年度予算を編成するためには、現行法におきましてはこれが成立し得ませんので、この際凍結をいたして、そして来年度予算の成立をせしめていくということにならなければならない、こう考えておるわけでございますが、将来の方向として、現行法の財革法そのものが、すべての点にわたりまして、その凍結をする過程におきまして、種々検討をいたさなければならないということにつきましては、私自身もさらに勉強を重ねてまいりたい、こう考えております。
  95. 野田毅

    野田(毅)委員 結局は、これからまだ勉強を重ねる、それまでの間は凍結ということを越えられない、そういうことのようですね。  これはいつ結論を出すのですか。少なくとも、今おっしゃった凍結も、これは法案がまた要るのですね、当然のことながら。それだけのことをおっしゃりながら、全然その法案が今国会にも提出されていないのですね。ですから、最初私は言いましたが、経済再生内閣としてこれだけのことをやるのだ、やるのだとおっしゃっているけれども、どうもまだ腰が定まっていないように見える。目先の行き当たりばったりでおやりになっているのじゃないか。  そこで、もう時間の関係もありますから、ぜひこれだけ聞いておきたい。さっきちょっと触れましたが、財源問題。  我々が一生懸命言ってきたときに、あれだけ自民党の皆さん、口をきわめてののしってきたのだ。批判しているのじゃない、ののしってきた。そのみずからののしってきた政策をおやりになろうというのですから、まず率直に自己批判なり、それをおやりになったらいかがでしょうか、宮澤蔵相。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどからお話を承っておりまして、半分賛成だなと思うところも幾つかございます。賛成でない点もございますけれども。  それで、財政改革法というのは、やはり、例えば年金でありますとか、つまり、将来人が生まれない、そういうことによる人口の激減というものが長期計画をもう不可能にしておるということから、幾つかの点の改正はいたしたわけでございます。ただ、おっしゃいますように、いろいろ目標を立てて何%というのは本当に要るのかなとおっしゃるところは、そういうお考えもあろうなと思っておりますが。  それで、この凍結の問題は、結局、これから予算案あるいは税法等々を提出して御審議をいたしますときに、これは財政改革法の考え方と合わない、ともかく今の時点で合わないということになってまいりますれば、その同じ時点で提出をいたしまして、予算案等々と同じ時期に御審議を仰ぎたいと思っております。
  97. 野田毅

    野田(毅)委員 財源問題について一言反省の弁を聞きたいですね。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は大事な問題だということをよく知っております。いずれの時期かに本当に取り組まなければなりませんが、しかし、日本経済がやはり強くなりませんと、それだけの資力を生んでまいりません。したがいまして、まず経済の正常化をすることがこの際は先決であろうという判断をいたしました。
  99. 野田毅

    野田(毅)委員 私は、では、この数年間私たちが一生懸命主張したときに、なぜそれを攻撃してこられたのか、ぜひ聞きたい。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御主張にもいろいろ学ぶ点があったと考えております。
  101. 野田毅

    野田(毅)委員 学ぶ点があったという一言で、残念ですね。  午前の分がこれで終わったようですので、あとは午後に譲ります。
  102. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  103. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野田毅君。
  104. 野田毅

    野田(毅)委員 午前中、これからの、特に経済政策絡みについていろいろ質疑があったわけです。最後のところが多少、宮澤蔵相の答弁がちょっと放映されなかったところがあって、一番国民が聞きたかった反省の弁。今まで、財源がない、財源がない、財政赤字をふやすということは無責任だと言って口をきわめて厳しく批判してきたことを、今度はみずから小渕政権になっておやりになろうということになりましたわけですから、少なくとも、今まで批判をしてきたことは誤りであった、その点について、反省の弁、ぜひもう一遍、宮澤蔵相、聞きたいです。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたとおりでございます。
  106. 野田毅

    野田(毅)委員 先ほど申したとおりじゃなくて、もうちょっとはっきりおっしゃってください。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり、これはいろんな考え方がございますが、今の局面におきましては、将来の財源確保という問題は、今の問題としては決して忘れてはならない問題ではあるが、ただいまの優先はやはり景気回復であろうというふうに考えております。
  108. 野田毅

    野田(毅)委員 メンツとかそんなことじゃなくて、本当にコンフィデンスをしっかりつくろうというのなら、めり張りをつけて、間違っていたら間違っていたとそこははっきりおっしゃった方がいい。そして、路線を変えたんだということをはっきりおっしゃった方がいい。そうでなければ、またぐじゅぐじゅ、何か、あのときはあのときの考えでした、今は今の考えですというようなことだけやっているから、この先また考えが変わるかもしれないということになります。  時間の関係がありますから、次に移ります。  先ほど総理答弁の中でも、ともかく日本経済再生の中で、当面、最大の課題は不良債権の早期処理である、したがって、その不良債権の早期処理のためには、今回国会に出されておりますいわゆる金融関係の六法案を通してほしい、その六法案が通れば不良債権の早期処理はできるんです、こう言わんばかりのお話でありました。そういうことですか。
  109. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ともかく、現下の厳しい状況の中での不良債権処理につきましては、法的な根拠を持って対応しなければならないというところで、この六法案をまず通させていただきまして、それによって処理すべきものは処理していくということが必要でないか、こう考えておる次第でございます。
  110. 野田毅

    野田(毅)委員 私は、後で述べますが、必ずしも、金融関係の六法案が通ったから不良債権の早期処理がうまくいくというふうには思いません。では、なぜ今まで不良債権の処理がおくれてきたのか、この原因がはっきりしないと本質的な解決にならないと思います。  その点で、なぜ今日まで不良債権の処理がずるずるとおくれてきたのか、この点についてどうお考えなのか、どうぞ総理、お願いします。
  111. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 住専の処理がございまして、六千八百五十億円の国費の投入が行われました。その過程で、それぞれの金融機関状況も、またその持つ不良債権の額等も随時明らかになってまいりました。信用組合の破綻あるいは銀行破綻等が行われてまいりまして、最終的には大きな銀行の実態というものを十分把握をしなきゃならないという形の中で時間的経過を過ごさざるを得なかったということでございまして、そういった意味では、刻々と時間が差し迫ってきておる状況につきましては、今日までの過程の中で、その時点では最大の努力をしてきたと認識をいたしておりますけれども、結果的には、今日この不良債権問題が最大の課題で、この処理なくしては経済の再生はあり得ないというぎりぎりの段階に来ったということでございます。
  112. 野田毅

    野田(毅)委員 間接的に、不良債権の処理のおくれた一つの理由として、住専処理だけやればうまくいくと思っていたことが実は誤りであったという反省の弁が込められておる、こういうことだと思いますね。  住専の処理さえできれば不良債権処理は卒業できると思い込んでいた。あのときにいろいろ金融関係の、金融三法ですか、やったけれども、我々が指摘したのはそこだったのですよ。住専の処理だけやればいいというものじゃない、銀行だってつぶれるのですよ、不良債権処理をやっていけば。そのときにどうするかという枠組みを考えておかなければだめなんだと言ったときに、残念ながら当時の橋本内閣は、いや、銀行はつぶれません、それだけの不良債権を自前で処理する能力がありますということを言い切って、何もしないで放置してきた、こういうことが一つあったのですね。  そのことだけでは実はないと思います。不良債権処理が進まなかった最大の理由というのは、何といっても景気の追い風がなかった、このことが一番の根本原因でもある。この認識をしっかり持たなければだめだと私は思うのです。  結局、先ほどもお話がありましたが、自民党政権の中で、財政デフレ路線というか、景気を悪くする路線をやった。その結果、景気が悪化をした。景気が悪化をすれば、当然、通常の中小企業であれ、どんどんおかしくなる、元気がなくなる、倒産がふえる。倒産がふえれば、不良債権は積み上がる、あるいは、景気が悪くなるために地価がますます下落をする。当然ながら、担保価値は下がる、不良債権は積み上がる。つまり、無意識のうちにこの数年間橋本内閣時代にとった経済政策が、結果として不良債権が積み上がる政策をとってしまったということなんです。このことが一番の原因であるということを、ぜひしかと反省してもらいたい。そうでなければ、本当の意味での不良債権の早期処理は、こんな金融六法をやったってとてもとてもできるわけではない。  銀行だって、金融機関の再編淘汰の時代に入って、みずからの生き残りをかけて必死になって不良債権処理をしたがっているのは当然の話だ。だけれども、その体力を超えた状況になってしまっている。その不良債権の処理ということが、結果として、いいことではあるのだが同時に副作用も伴っている。体力が低下するわけですから、当然のことながら貸し渋りが不可避的に副作用として発生している。つまり、不良債権を処理するということは、その過程においてある意味では金融の信用の収縮活動を不可避的に伴う、こういう現実もあるのですよ。  ですから、そういう意味で私は、今不良債権処理が長引いてきた最大の原因は何かということでお伺いした中で、どうも住専のことだけあったのですが、問題は、今の経済政策が不良債権の処理をおくらせる、そういう姿をつくってしまったこと、いま一つは、銀行自身が、もちろんこれは自分の責任であるわけですが、もっと真剣な自己改革というか、徹底したリストラをまず第一義的にやらなければならなかったが、それが我々から見ても不十分であった、こういったことが本当は、不良債権の処理がずるずると延びてしまったその大きな理由なのではないか。そういうことから考えると、これから後、不良債権の早期処理をやろうということであれば、そのためにとるべき政策というものの方向性が出てくるわけです。  そういう意味で、今回いろいろ六法案があります、後で触れますが、それだけで本当不良債権の早期処理ができるのだろうかというと、必ずしもそうでもないな。ブリッジバンクにしたって、そのことが不良債権早期処理とは直結していない。したときに出てくる破綻をどうするかという話です。  そういう意味で、私は、まず不良債権を早期処理をするために最大の薬というのは、あるいは貸し渋りを防止するための最大の薬は、景気回復策ということを中心に据えるというこの発想がぜひ必要なんだ、このことをぜひ申し上げておきたい。総理、いかがですか。
  113. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 不良債権の処理につきましては、米国の例をとるまでもありませんが、SアンドLが、この処理が最終的にできましたのは、御指摘のように、景気の回復によってそれぞれの金融機関経営が安定をしてきたというところにもよるのだろうと思います。  そういう意味からいえば、やはり景気の回復、これが第一だろうとも考えておりまして、そのために今内閣といたしましては、幾つかの問題を取り上げて、積極的に取り組むことによりまして一日も早く経済を回復基調に乗せ、そしてそのことによりまして活性化を図って本問題の処理にまでつなげていきたいという思いがいたしておる次第でございます。
  114. 野田毅

    野田(毅)委員 今、貸し渋りのお話をしました。まさにこういう環境の中で不良債権をどんどん処理していこう、こういうことになる。  特に今、不良債権まではいっておりませんが、いわゆる問題債権、第二分類と言われる問題債権のところをさらにしっかりと厳しく査定しよう、こういうことになっていく。そうなれば、おのずからこれは自己資本比率に影響してくる。引き当てを積み立てるということになりますと、そういったことも出てくる。  それが、先ほども議論がありましたが、せっかく三月に十三兆の中から二兆円余り使って、二十一行に対して多額の二兆円のお金を使って資本注入をした。それは、体力をつければ貸し渋りが減るだろう、こういう発想で行われたと思うのですが、結果として四月以降ますます貸し渋りは強化されているというこの現実なんですよ。これはまさに、不良債権処理を促進しようとすればするほどこういった問題が現に起きてきているのですね。大企業は、みずから社債や何かで直接資金調達できるからまだいいのですが、本当に中小企業はもろにかぶっている。  そういう意味で、銀行がけしからぬ、けしからぬと言っているだけでも事態は解決しない。だから、まず第一に、貸し渋りをどう抑制するかということになれば、さっき言いましたが、何といっても景気の回復措置ということを思い切ってやるということが第一である。そして同時に、私は、中小企業の普通の企業まで貸し渋りに遭って資金繰りが回らなくて倒産に追い込まれているというこの悲痛な状況、これを考えますときに、何とかこれを救う道はないのか。  今度の金融六法案の中で、どこをどう見たって、現在進行中の中小企業に対する銀行の貸し渋りという状態を是正できるような法案というのは含まれていないのですよ。これは大事なポイントなんですよ。この法案が全部無傷で通ったとしたって、全然変わらないのですよ。そこだけは、これは総理よりも宮澤蔵相の方がいいのでしょうかね、六法案の中に、現在進行中の中小企業に対する銀行の貸し渋り、これを抑制できるような措置というのは入っていない、このことだけはちょっと確認をしておきたい。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、私はこう考えております。  野田委員も同じ御意見でいらっしゃると思うのですが、金融機関銀行に対していわゆる護送船団方式の行政が働いておりました間は、競争関係というものは成り立っておりませんでした。むしろ、そういうことをしないように行政指導が行われていた形跡がございます。  しかし、金融監督庁検査を始め、また銀行自身がいろいろ優劣について、仮に金融監督庁から是正措置を受けることもあるかもしれない。そうでないにいたしましても、いいところ、悪いところは市場でもって評価をされます、株価であるとか財務諸表であるとか。あるいは、顧客によって評価されます、いい金融商品、悪い金融商品。そういう形で競争が起こりまして初めて、貸し渋りというような状況についての基本的な市場経済による是正が行われるのではないか。  それは行政も大切でございますし、政府金融機関の貸し出しも大いに一生懸命いたしますが、基本はやはり銀行間に競争関係が働いて、お客をとり合うという言葉はよくないかもしれませんが、そういう状況を生み出すことが一番貸し渋りという状況をなくす早道だと思います。
  116. 野田毅

    野田(毅)委員 今、宮澤蔵相のおっしゃったこと、私は理想論だと思います。しかし、まだ理想論を展開できる環境が整っていないんです。  大手行が二十一行、資本注入を十三兆からしてもらった。だけれども、結果として、どの銀行も三月よりも四月以降もっと貸し渋りに熱心になっちゃっているんですよ。ですから、何のために二兆円の公的資金を資本注入したのか。大義名分はまさに貸し渋り防止のために入れたはずだった、しかしそうじゃなかった、これが現実だと思います。  そこで、これはどうやったら貸し渋りを防止できるんだろうか、あるいはその衝撃を少なくできるんだろうか。  私は、一つぜひやってもらいたいことは、各県に信用保証協会がありますね。ささやかながら一生懸命やっているが、大変大きな仕事をしています。そこで、どうせお金をつぎ込むんなら、お金を、十三兆の中から、各県の信用保証協会を最後は保険で担保しているわけですが、いわゆる中小企業信用保険公庫、ここに十兆円ぐらい積んでごらんなさい。そうすると、それを背景にして各県の信用保証協会が信用保証をやれば、銀行は喜んで金貸しますよ。貸し渋りの話じゃないですよ。  もちろん、いろいろなことがあって、今代位弁済額も大分膨れ切ってきておるようではあります。しかし、聞いてみると、昨年の代位弁済額が全国で約五千億ぐらいですかね、昨年度が。信用保証協会の基本財産一兆円ほどあります。現在、信用保証協会が平成九年度末でどれぐらいの信用保証行為を行っているか、言うなら保証債務残高、これが約三十兆ぐらいあるんですよ。それだけ大きな今仕事をしているんです。  ですから、言うなら、私は、この信用保証協会の限度額とかあるいは対象企業だとかいろいろなことも念頭に置きながら、抜本的にこれを強化する。銀行へ資本注入をして体力をつけさせて貸し渋りを減らそうという迂遠なやり方、あるいは銀行救済とも思えるようなやり方をするよりも、直接信用保証をつけてやる。銀行は喜んでそれは金貸してやりますよ。言うなら、分類債権からその部分は除外されるわけですから。私は、むしろそういう方がはるかに日本の九割以上を占める中小企業を、こういう今大事な不良債権処理を促進しようというときであるだけに、むしろお金の使い方はそっちへ使うべきである。  そして、そのことが同時に、いわゆるブリッジバンクみたいな形をつくらなくても、そういうようなつなぎ銀行をつくらなくても、銀行破綻したときに何が大事か。今ブリッジバンクの必要性が言われているのは、まさに善良で健全な借り手が困るからという話なんですから。私は、その信用保証の機能をリンクさせることによって、無理にブリッジバンクをつくるというよりも、その方がはるかに効率的であるということをあわせて申し上げておきたいんです。  この点について、いかがお考えですか。
  117. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生御指摘のように、中小企業に対する融資というのは相変わらず厳しい環境のもとに置かれております。これを貸し渋りという言葉で表現をしております。中堅、大企業に対する銀行の融資の態度は若干緩和は見られますが、中小企業に対する一般銀行の融資態度が依然として厳しいことは、野田先生御指摘のとおりでございます。  これをどう打開していくのかということでございますが、やはり、先生御指摘のように、信用保証協会が保証行為を行う、そして、その保証行為を行って一般の銀行が安心して貸せるという環境をつくるということは、政策としては今までもやってまいりましたし、こういう厳しい状況の中でとるとしたら、私は正しい方向であると思います。  ただ、保証協会のよって立つ基盤というのは、収入である保証料及び国及びそれぞれの県からのいわば助成で成り立っているわけですから、保証協会が元気よく保証をしていくためには、やはり保証協会の基盤というものを強化する必要がありますし、また、最後に事故がありましたときにそのことを始末する保険公庫の財政基盤をしっかりとさせる、そういう方向は、私は今後政府として進めていくべき方向だと思っております。  ただ、その財源が一体どこから来るのか、十三兆から来るのかどうかというのはよほど議論しないと結論が出ないことでございますが、中小企業に対しての融資枠を拡大するということは、やはり保証協会と保険公庫の基盤を強化する、それが全体として中小企業に対する融資の資金量を増大させる方向に働く、私どもはそのように考えております。
  118. 野田毅

    野田(毅)委員 ぜひこれはお考えを願いたい。  そのことが現在の貸し渋り問題だけでなくて、銀行破綻をしたとき、なぜ今問題か。いわゆるブリッジバンク法案が意図するところ、それは一つは預金者保護であり、一つは健全なる借り手保護である、こういうことなんです。その中で、健全な借り手、いわゆる一分類というところは、大体いろいろなところの銀行もいいお客さんは欲しいわけだからそれほど問題はないが、いわゆる二分類と言われる問題債権のところ、ここのところが一番きつい。そのことをみんな頭を痛めているからブリッジバンクの話が出ているんです。  むしろ破綻したときにそういったところの信用保証機能を、そういったところにバックアップしてやるということによって、この部分は無理にブリッジバンクをつくらなくても解決できるんじゃないか。むしろ、それをあえてつなぎ銀行をつくってそういう問題があるようなところを、言うなら国営的に国の信用だけでどんどんつないでしまうということになれば、いいお客さんは、自分本当に優良な借り手であってごらんなさい、そんなつぶれたところ、いつまでもつかわからないようなところといつまでも取引はしませんよ。必ずもっと元気ないい銀行と安心して取引するように動いていきますよ。  そうすると、ブリッジバンクと取引をいつまでも継続するお客さんというのは、一体どういうお客さんなのか。どこへ行ったって相手にされないお客さんなんだ。ということは、極端に言えば、ヘドロ的な部分しか残らないんだ。そういうヘドロ的な……(発言する者あり)いや本当にですよ、時間がたてばたつほど、いわゆるいい言葉で言えば、資産が劣化するという言い方をしているんだ。時間がたてば資産が劣化するということは、別のわかりやすい言葉で言うと、ろくでもないお客さんしか残らぬという話なんです。これを国の信用でつないでつないで、一体どうするんですか。国がそれを断ち切った途端に、国のために倒産することになるんでしょう。そんなようなところを一体だれが受け皿、その先引き受け手がありますか。下手したら、このブリッジバンクということは、結果的にそういう問題債権を、つまり問題のある借り主をずるずる公的資金で生き残らせていくという構図につながりかねないわけですよ。ブリッジバンク問題については、いずれ金融特でもっと詳しく議論をさせていただきたいと思います。  それよりも、今言いましたような、問題の、健全なる借り手、善良なる借り手にどういう対策を講ずるかという中で、今の信用保証機能ということを抜本的に拡充強化するということによってそれを乗り越えるということを、ぜひ我々は考えるべきだと思っています。  そして同時に、本当は、大手銀行の場合もそうなんでしょうが、もう一つ心配だったのは、インターバンクだとか、いわゆる単に預金者とそれから借り手だけではない、つまり銀行に対する債権者ですね、銀行が債務を負っている人、そういう立場をどうするかということが今実は大きな問題。インターバンク取引もあるでしょうし、海外とのいろいろな取引の、あるいはデリバティブその他の中で一番問題になっているのはそこの部分です。  さて、じゃそういったところにこのブリッジバンクというやり方が本当に適用できるのかどうか。これはもうきのうからもいろいろ議論されております。しかし、考えてみたら、これほど銀行の取引形態が多様化した時代はここ五年ぐらいです、世界的に見て。日本銀行もそうだろうと思う。そういう中で、いわばそういう特にマネーセンターバンクと言われる十九行ベース、こういう中で、もしどこかが一角が崩れて破綻するというようなことになったときに、これは世界史上やったことがない、経験したことのない世界に入るんです。だから、みんな不安で不安でしようがないんだ。それで実は非常に注目して市場がこの国会議論を眺めているんです。  しかし、政府の出しているブリッジバンク方式で、そういうような複雑な海外取引をも含むような十九行ベースのものがもし何かがあったときに、じゃこの法案の枠組みの中で本当に対処できるのかどうか。これについては、法的には対処できるようになっていますと言えばそれは済むでしょう。しかし、現実論として本当にそれができるのか。私は、とても難しい、混乱を助長するだけかもしれない、そのように思います。この点について宮澤大蔵大臣、よろしく、簡潔にお答えいただければありがたいです。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点はもう既にしばしばお答えいたしております。  法的にはブリッジバンクで救済ができるはずであるし、金融管理人も法人をも許しておりますので事務能力も大丈夫と思いますけれども、しかし、野田委員の言われますようにケースによりまして、殊に大きな銀行に仮にそういう必要が生じましたときに、もっとほかの道をとることが望ましいということは私はあり得ることであると思いますので、したがって、そういうこともあり得るであろう。ただ、法的には、御指摘のように、このブリッジバンクはそういうときにも機能するように書いてございます。
  120. 野田毅

    野田(毅)委員 事柄が大変微妙なものですから、特定行の名前は出しません。ただ、私は、ぜひ検討されなければならぬのは、今、日銀、そして金融監督庁銀行検査へ入っています。問題は、その銀行検査の結果をどのように生かすかということなんです。  そこで、私は、ぜひおやりいただきたいのは、そもそもそういうマネーセンターバンクの中で、国内的な取引だけであれば大したことないのです。しかし、今一番心配しているのは、海外その他へのいろいろな悪影響をみんな心配している。本来からいえば、そんなに海外が心配しなければならぬような銀行は、もうマネーセンターバンクであることをやめなければいけない、そうでしょう。大体、いつまでもBIS加盟にこだわっていること自体に問題があるのです。  つまり、BIS加盟銀行であるままの形で破綻をさせるというよりも、その前になぜもっと早く四%銀行にやらせないのか。なぜ海外の事業から撤退させないのか。海外の取引を撤退して国内の銀行になれば、いわゆる自己資本比率の規制は八から四に下がるのだ。そうすると、貸し渋りだってうんと減るはずだ。むしろ、いいお客さんが欲しいぐらいになるはずだ。それを八%というBIS加盟にこだわり過ぎるがために、今や貸し渋りは中小銀行よりも大手行の方がひどいのですよ。そうであれば、今度の銀行検査の結果で業務改善命令を出して、わかるはずですから、海外からの撤退を命令させたらどうですか。  だって、こんなにたくさん世界的に見てマネーセンターバンクがある国なんていうのは、それは日本経済の規模からいったって、今後の直接金融、間接金融のいろいろな姿からいったって、このままで永続することは逆立ちしてもあり得ない。世の中ではもう四つか五つでいいじゃないかとまで言われている。そういう環境の中で一体いつまで、つぶしたら大変だから残しますとか、やれブリッジバンクだとかなんとかいう形でそのままの規模で生き残らせようとするのでしょうか。  一刻も早く、すっきりした優勝劣敗の中で、きちんとした対応をすることなんだ。だからぜひ、今度の金融検査の結果でそういう海外からの撤退を、業務改善命令をまず出させる、それぐらいのことをおやりになるべきだ、まずそのことの方がブリッジバンクよりも大事だ、私はそう思います。いかがでしょうか。これは総理小渕総理、よろしくお願いします。
  121. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいま十九行に対して……(発言する者あり)
  122. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  123. 日野正晴

    ○日野政府委員 ただいま十九行に対して検査を行っておりまして、その検査の結果、資産の内容が、お話のように自己資本比率が国際業務を営む銀行としての八%からかなり下がっているといったような場合には、早期是正措置を発動いたしまして、お説のように海外の拠点を撤退させるように、その是正措置を発動していくことも考えております。
  124. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今検査に入っておりますので、その結果を見なければならぬかと思いますが、今、野田委員の御指摘につきましては承りましたが、その結果によって、改善命令まで出し得るものかどうかということにつきましては、さらに検討の必要があると思っております。それぞれの銀行自身が、みずからの力によって改善していくべきものもあろうかと思っております。
  125. 野田毅

    野田(毅)委員 もう時間が余りなくなってしまったので残念なんですが、多少答弁の食い違いがあるようですから、もう一遍きちっと後で速記録を見た上で、委員長に私から、場合によっては次の機会をお願いをしたいと思います。  そこで、今、実は大事な答弁であったと思います。本当は、大手行が破綻したときにブリッジバンクを適用できるとかできないとかいう議論ほどナンセンスなものはないと私は思っていたのです。もともと、そんなマネーセンターバンクともあろうものがそんな状況になっていることを、今まで何で放置してきたんだということなんですよ。  だから、これから国内バンクになれば、世界的ないろいろな海外との関係は遮断ができて、そうであれば、国内バンクとしてきちっとした法的処理をすればいいのです。そうなれば本当に私は、そういうことがきちっとできれば、まるで、さっき言いましたが、今度の金融六法案さえ通ればうまくいくというんじゃない、むしろ六法案とは関係ないんだ。だから、六法案を何とか通してください、通してくれなきゃ日本は大変になりますよ、だから早く通せ通せというようなことばかり言っていると、何かいつか来た道のような気がして、あの住専のときにも、この住専法案が通らなきゃ大変だ、大変だ、これさえ通ればうまくいくというキャンペーンがあった。何かすごく似ているような気がして、今回のブリッジバンク問題について、そのことを指摘をしておきたい。  そこで、もうあと数分になりましたが、同時に、もう答弁要りませんが、今検査の中でこれだけ注文しておきます。  検査を終えた後、いつまでに何をどのように進めていくのかというスケジュールを、そのときになって考えるのではなくて、今から明確に内外に明らかにしておくこと。これに対するいろいろな揣摩憶測が、また要らない不安や動揺を与えているということをぜひ肝に銘じておいていただきたい。それから、検査の結果、具体的な償却や引き当てのめど値を示すのか示さないのか。これは、検査が終わってから考えるのではなくて今から、どうするかという方針だけはしっかりと事前に示しておくべきであるということ、このことをぜひ指摘しておきたいのです。  そこで、時間がもうあとなくなってきたのですが、もう一つ、金融再生トータルプランという中で問題があるのは、いわゆる不動産関係権利調整委員会、この問題について、そのほかの法案も問題はあるのですが、一言申し上げておきたい。  それは、会社更生法などによらずに、委員会を隠れみのにして、いわば企業の再建を図るために銀行に債権放棄を強要して、そしてそれを無税償却を行わせる。言うなら、形を変えた公的資金によって会社救済をやろうという話に実はなっているんですよ。だから、そういう安易な債権放棄の促進ということは、いわば借り手のモラルハザードをもたらすわけでありますし、日本的美徳である当たり前の、借りたものは必ず返すという風潮を失わせてしまうということにもなりかねない、そういう問題がある。  それからいま一つ。どういうわけか、子会社への保証債務も対象にするということになっておりますので、いわばこれはゼネコン徳政令だと言われても仕方のない要素を含んでいるという、こういう問題を含んでいる金融関係六法案でありますから、この六法案が通りさえすれば日本不良債権処理や金融システム不安はなくなって、もうハッピー、ハッピーだということではないんだということを最後に指摘をしておいて、質問を終わります。
  126. 中山正暉

    中山委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。  次に、志位和夫君から質疑の申し出があります。これを許します。志位和夫君。
  127. 志位和夫

    志位委員 日本共産党を代表して、小渕総理質問いたします。  まずお聞きしたいのは、総理が、参議院選挙で自民党大敗という結果が出た、この国民の民意をどう受けとめているかということについてであります。  あなたが自民党総裁選に立候補するに当たって、こういう政見を出されております。「総合力・決断 政治の復権と日本の再生 —新しい安心を求めて—」という政見でありますが、この中で、「我が党が大敗を喫したことは、国民の激しい怒りが爆発したものと、深刻に受け止め、心から反省をしております。」このように述べられております。  そこで、私、お聞きしたいのですが、なぜ自民党は国民の激しい怒りの爆発を買うようなことになったのか、国民の激しい怒りの爆発というのは自民党の何に向けられたものだったのか、これを小渕総理にまずお答えを、端的に願いたい。
  128. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 自由民主党は、責任政党として内閣をお預かりして諸政策を遂行してまいりました。  その中で現下の状況を見ますると、経済、特に景気の状況というものは大変厳しい環境であるわけでありまして、こうした状況に至ります間、種々の努力は傾注いたしてまいりましたが、結果的には現在のような経済状況に立ち至っておることに深く反省をいたしまして、国民皆さんのあしたへの希望というものについて十分これが理解を示し得なかったということについて反省をし、そして今度の選挙の結果はこれをさらに厳しく見ながら対処いたしたいという気持ちを、そのような表現をもってあらわした次第でございます。
  129. 志位和夫

    志位委員 景気が厳しかったからこういう結果が出たのだと。しかし、景気が厳しいだけでは自民党は負けませんよ。自民党が間違った政治をやったから、国民が激しい怒りを爆発させたわけであります。私は、国民の激しい怒りの爆発というのは、何よりも橋本内閣経済失政に対して向けられたものだと思います。  今日の不況は戦後最悪と言われる深刻さを呈しておりますが、その中でも経済の六割を占める家計消費が極端に冷え込んでいるのが最大の問題です。消費大不況が最大の問題です。この原因と責任がどこにあるかについて、私はこの委員会で橋本前総理と何度も論戦をいたしました。私は、昨年四月消費税を五%に引き上げ、医療費を九月に値上げする、そういう九兆円の増税を国民にかぶせた、これがこの消費大不況の原因だ、その失政の責任を認めなさいということを繰り返し、この場で橋本前総理に申しました。しかし、橋本総理は最後までその誤りを認めないまま、ああいう結果になったわけであります。  しかし私は、この論争は決着がついたと考えております。最近になってようやく政府も、経済企画庁あるいは日本銀行などが、景気の後退は昨年の四月から始まっていた、つまり消費税の引き上げとともに景気の後退、景気の悪化が始まっていたということを公式に認定しました。私は、何よりもこの論争は国民自体が決着をつけたと思います。それが今度の自民党の大敗だと考えます。  ところが、総理は、本会議で、我が党の不破委員長が九兆円負担増が日本経済のかじ取りを誤ったと認めるのかと質問したのに対して、経済に与えた影響を否定するものではないが、極めて重要な改革だったと考えるとお述べになりました。  いいですか、今問われているのは、消費税という税金をあなた方が一般的にどう位置づけているかということじゃないのです。不況のもとで大増税をかぶせた、こういうやり方が経済のかじ取り、経済運営として間違っていたのじゃないか、このことが問われているわけですよ。これは正しいというふうに考えているのですか、間違いだと考えているのですか。これははっきりお答えください、総理
  130. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 当時の財政状況からかんがみまして、社会保障政策を遂行するというようなことを考えましても、財源としての必要性はあった、こう考えておりまして、当時としてこの二%のアップにつきましてはやむを得なかった、こう考えております。
  131. 志位和夫

    志位委員 私どもは、財源については当時も公共事業、国と地方自治体で五十兆も使っている公共事業の中に余りにもむだなものが多過ぎる、これを削ることによってこの問題は解決できるということも申しました。にもかかわらず、その警2告を無視してあなた方が増税をかぶせた結果が今日の事態を招いているのであります。  私、それではお聞きしたい。総理経済の専門家として起用された堺屋経済企画庁長官にお聞きしたいと思います。  あなたは、ことしの八月に発刊された「あるべき明日 日本・いま決断のとき」という本がございますね、これは最新刊だそうでありますが、この前書きで大変明快なことをおっしゃっている。「自民党をこれほどの大惨敗に陥れた原因は何か、」その二つ目に挙げているものとして、「経済不況である。」こう続けております。「特に昨年四月、消費税の引き上げや特別減税の停止など七兆円(医療費負担の増加を含めると九兆円)の増税を行った失政の責任は重い。」大変明瞭であります。つまり、九兆円の負担増は失政だと、失政ということは誤った政治だということですね、明言されているわけです。  この評価は閣僚になった今でも変わらないと思いますが、念のために確認しておきたいと思います。
  132. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私は、その考え方は変わっておりません。それが現在の不況の主たる原因とは思いませんが、一つの原因であるという考え方は変えておりません。
  133. 志位和夫

    志位委員 大変大事な答弁がされました。つまり、九兆円の増税は失政であるということを、この考えは変えておらない、これが経済企画庁長官の考えであります。(発言する者あり)経済企画庁の長官答弁としてそういうことは言われたわけです。  総理、どうですか。これは総理の考えも一緒ですね、そうなりますと。どうですか。失政だということを、失政をお認めになったわけですよ。失政だという認識は変わらない、こうおっしゃった。あなたも失政だと認識するんですね。
  134. 中山正暉

  135. 志位和夫

    志位委員 総理に聞いている、総理に聞いているんです。(発言する者あり)
  136. 中山正暉

    中山委員長 まず最初に、指名しましたから。
  137. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 その書物を書きましたときは、経済企画庁長官ではなしに、ただ一人の個人であります。したがって、それは、企画長官の意見ではなしに堺屋太一個人の意見として読んでいただきたいと思います。
  138. 志位和夫

    志位委員 個人の意見としてお書きになったものではあるけれども、今日でもその認識は変わっていないと今答弁なさったでしょう。九兆円の増税は失政だという認識を変えていないとおっしゃったんですよ。ですから、総理に、あなたも同じ見解ですかと尋ねているんです。
  139. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ただいま堺屋長官みずから御答弁申し上げましたように、それは個人としての考えであり、現時点において企画長官として、そのことについてはそうしたお考えは持っておるということではございますが、私自身は失政だと考えておるわけでございません。
  140. 志位和夫

    志位委員 今認めたでしょう。長官の御答弁として、認識は変わらないとおっしゃっているんですよ。だから、あなたの認識も同じ失政という認識なのかと聞いているんです。ちゃんと答えてください。今の答弁じゃ納得できません。失政なのかと聞いているんです。
  141. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 橋本内閣の行ってきました政治のすべてについて、これを失政だとは考えておりません。
  142. 志位和夫

    志位委員 いいですか。堺屋太一さんが書かれ、そして今も同じ認識だと言われているのは、こうですよ。増税を行った失政の責任、こう言っているんです。九兆円の増税が失政だった、こう言っているんです。全般的な評価を言っているんじゃありませんよ。九兆円の増税を失政と言っているんです。これをあなたも認めるのかと聞いているんです。ちゃんと答えてください。これは閣内不統一じゃないですか。ちゃんと答えてください。
  143. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 何度も申し上げますように、失政だとは考えておりません。
  144. 志位和夫

    志位委員 これでは本当に閣内不統一ですよ。あなたは失政と言い、その認識は変わらないと言い、あなたは失政と考えていない。閣内の意見が全然統一していないじゃないですか。
  145. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私は、その書物を書きましたときは、何ら閣僚でも議員でもありませんでした。したがって、私個人の意見を自由に書いたわけであります。しかし、今この地位につきましても、それを書いたときの意見が間違っていたとは思っておりません。  ただ、現在の状態として、全体の状況から見て、あの時点で橋本内閣がそれをなさったのは必要だったのかもしれないと思いますが、そのこと自体は、その部分だけを取り上げて言えば、私は、失政だったと当時も思っておりますし、今もやはりやらなかった方がよかったのだろうと思っています。今も、あのときやらなかった方がよかったと思っております。
  146. 志位和夫

    志位委員 いろいろ言われましたけれども、失政だというふうに思っていると言うのですよ。あなたは失政ではない、こちらは失政だ。これでは、本当にこれ以上質問できないじゃないですか。  堺屋太一さんは、国民にわかりやすく語る、これがモットーでした。それから、自分の調べた結果というものをうそをつかないで言っていくのはこれからの務めだ、こうもおっしゃいましたね。今、うそをつかないで、やはり失政だ、結論はそうだと言いました。必要だったのかもしれないというちょっと動揺もありましたけれども、しかし失政だと言っているのですよ。あなたは失政じゃないと言う、こちらは失政だと言う。これは、閣内の見解を統一してください。どっちなんですか。これは、失政だと言い続けるのだったら、解任しなければならなくなりますよ。
  147. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 考え方の相違というものは、いろいろ、それぞれの閣僚間においてもあるかと思います。閣内不一致というのは、政策についてそれぞれの閣僚の考え方、内閣の考え方に相違があるということを申し上げておるわけでございまして、それぞれの方々の御意見をもって内閣不一致という考え方はないと思いますし、今のような堺屋長官の、長官になられる前にお書きになりましたお考えをもって今日にあるということでありますが、そうした考え方を持っておられる方も含めまして、閣内におきましていろいろと論議を続けていくというのが、小渕内閣の民主的な対応だと考えております。
  148. 志位和夫

    志位委員 これは、これ以上押し問答をやっても、もう二人とも誠実な答弁をされないので、しようがないのですけれども、こちらは誠実だけれども、こちらが誠実じゃない。  それで、私は、閣内不一致というのは単に政策上の問題だけじゃないと思いますよ。やはり九兆円の負担増という経済運営の根本について意見が違うのですから、これはまさに閣内不一致であります。  ですから、委員長、これは内閣としての統一見解をきちんと求めたい。
  149. 中山正暉

    中山委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  150. 中山正暉

    中山委員長 速記を起こしてください。  理事皆さん方で今御協議をいただきましたが、後刻、理事会におきまして、速記録を見ることによりまして検討をいたしたいということに決定いたしましたので、質問を続行してください。志位君。
  151. 志位和夫

    志位委員 では、質問を続けます。  私は、この失政という問題についてなぜ冒頭にただしたかといいますと、失政を失政と認めませんと、正しい政治の方向性が出てこないからであります。この点で、小渕総理が橋本前総理と全く同じような無反省の姿勢に終始したことを大変残念に思います。  次に、減税の問題について私は伺いたい。  総理は、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税の実施を公約されました。そして、この減税を、景気に最大限配慮して行うものだと位置づけました。宮澤蔵相も、減税の位置づけとして、記者会見やインタビューなどで次のような趣旨のことを繰り返しお述べになっておられます。  不況になった際にどこに資金をつぎ込むかというのは、財政企業、家計の三つしかない。財政は公共投資の効果が疑問視されている、企業の設備投資は余り期待できない、そうだとすれば、家計につぎ込むしかない。国内総生産の一番大きな部分、すなわちこの家計ですね、これを厚くするしか経済の正常化の道はない。それはつまり減税ということになる。ここまでは私の認識と一緒であります。私は正しい認識だと考えます。  今度の政府の減税というのは、景気対策を最大の目的の少なくとも一つとして、わけても冷え込んでいる家計消費を温めるという位置づけで出されたものであるということは、これは、あなた方の位置づけとしてそういうものであることは間違いありませんね。これは総理、どうでしょう。
  152. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 減税だけですべて解決するとは思っておりませんけれども、申し上げましたように、本年度におきましても特別減税という形で還元をしておるわけでございますので、そういった意味で、今後とも、税制の面からも消費を拡大のできるような手法の一つとして役立つものと認識しております。
  153. 志位和夫

    志位委員 景気対策あるいは消費の拡大ということをおっしゃいました。ところが、政府の言う減税の中身はそうなっているか、家計を厚くするものになっているかというのが大問題であります。私は、二つの大問題を吟味してみたいと思います。  第一に、所得税、住民税の四兆円の減税についてであります。政府はこれを、所得税、住民税の最高税率を六五%から五〇%に引き下げることと定率減税を組み合わせて行うと説明しております。しかし、これは、ことし行われている四兆円の特別減税が打ち切られて、それにかわって行われるために、ことしに比べて実際に減税になるのはごく一部の高額所得者だけで、納税者の八、九割は増税になるということが一致して指摘されております。総理も本会議答弁の中で、ことしより減税額が減少する所得階層が生じるということを認めざるを得ませんでした。  そこでお聞きしたいのですが、この減税額が減少する所得階層というのは、納税者のどれだけの部分になるのでしょうか。大まかのことで結構ですから、これは総理の御答弁ですから、総理の認識をお伺いしたい。いかがでしょう。
  154. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私が申し上げましたのは、総額としてその程度の減税を行うということは、マクロで、全体の数字が今年度を下回ることのないようにということで申し上げました。  その詳細な、どのような手法で講ずるかということにつきましては、現在、大蔵省内部におきましても検討していただいておりますので、今お尋ねの点について、現時点における方式につきましては、事務当局から答弁をしていただきたいと思います。
  155. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  今年度の特別減税は、できるだけ景気に早く効果が発現するようにということで、定額方式をとらざるを得なかったわけでございます。来年の定率方式との組み合わせによる方式でございますが、景気の現状に配慮しつつ、恒久的な減税として行うという観点から、まさに税率の引き下げと定率方式の組み合わせが適当であるということになったわけでございます。  したがいまして、今回の減税と特別減税を比較するということ自体が適当でないというふうに考えているわけでございます。
  156. 志位和夫

    志位委員 比較は適当でないといっても、それは政府の勝手な理屈で、家計にとっては、一年限りの特別減税であろうと、あなたが恒久的な減税と言うそういうやり方であろうと、九八年に払う税金と九九年に払う税金が一体ふえるのか減るのかが家計にとっては問題なんですよ。家計を預かる者はみんな比較せざるを得ないのです。税金が重くなれば、それは消費を減らさなければならない、景気は悪くならざるを得ない、そういう問題なんですよ。  計算がこれからだということをおっしゃいました。しかし、政府が示している大枠ということはあるのですね。この大枠に沿って試算してみますと、どうしても逃れられない結果というのがございます。  四兆円の減税のうち、最高税率の引き下げ分で、私ども計算してみたら、大体六千億ぐらいになる。それから、定率減税分で三兆円を大きく上回るという計算をしてみました。そうしますと、こういう結果が出てまいりました。これは、政府の減税案を実行した場合の九八年と九九年の増減税額を所得階層別に見たものであります。  赤い棒が定率減税を一二%とした場合の増減税であります。上の方に行くと増税、下に行くと減税です。これを見ましてもわかりますように、年収一千万近くまで増税ですよ。  それから青い棒、これは定率一五%の減税とした場合です。この場合は、減税規模の全体から見て頭打ちが出てまいります。つまり、所得税減税の上限が出てまいりますが、頭打ち二、三十万という計算をしておりますが、それで見ますと、九百万円近くまで増税ですよ。給与所得者の、納税者の九一・一%、このぐらいまでの層が増税になる。  緑の棒ですね。これは最も定率を大きくとって、二〇%の定率減税とした場合です。この場合も頭打ちが出てまいりますが、これを私ども大体計算してみたら三・五兆円ぐらいの、定率分だけでですよ、減税になるのですから、最も減税幅が大きい場合でありますが、それでもごらんになればわかるように、年収八百万円まで増税ですよ、これ。八百万円といいますと、給与所得者、納税者の八七・〇%。ですから、どんな仮定を置いて計算しようと、政府が示している減税の大枠というのはもう決まっているわけですから、納税者の八、九割がことしに比べて増税にならざるを得ない。  私、総理に伺いたいのですが、ごく一握りの金持ちには減税する、しかし大多数の庶民には増税する。これでどうして家計消費がふえますか。家計消費を温める、家計消費を熱くするという目的、大義名分をうたっておきながら、やっていることは逆じゃありませんか。景気をますます冷え込ませるだけではないか。私は、家計と景気を考えたらこういうやり方はやるべきではないと考えますが、総理、いかがですか。総理に伺いたい。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今朝も申し上げましたが、平成八年、平成九年の減税はいわゆるその年分の所得に対する減税でございますから、一遍限りのものでございます。一遍限りの減税では将来の展望がわからない、国民はもう少し永続的な減税のプランを望んでいる、それが消費に貢献するという御意見が多うございましたので、このたびは一遍限りでなく、当分の間ということでない減税をいたしたいと思っております。  その際、平成八年、九年、今十年でございますか、課税最低限が四百九十一万円になった。それによって、恐らく数百万の納税者が納税者でなくなっておると思います。ただ、所得税の本則は三百六十一万円でございますから、それに返りまして、永続的な税制を考えようとしております。  したがいまして、志位委員の言われますことは別段異とするに足りません。一遍納税者でなくなった人が納税者になってこられるわけですから、そういう方々はまた所得税を少ないけれども納めていただくということになります。そのことは、しかし、この減税は一遍限りでないんだ、ずっと続くんだということによって国民に安心感を与える、そういうことがねらいであります。
  158. 志位和夫

    志位委員 一遍限りじゃないから国民に安心感が出て、まあ蔵相の言ったことをもう少しわかりやすく言えば、消費マインドが温まるだろうということでしょう。そして消費に向かうようになるだろうというのがあなたの意見だと思うのですけれども。  これをもう一回ちょっと見てほしいのですけれども、年収四百万から六百万ぐらいのところは、ことしに比べて来年の税金がどれだけ多くなるかといったら、七万円、八万円ですよ。年額これだけ多い負担になっていて、マインドは温まりますか。それは恒久的なものだと幾ら言ったって、実際に出ていく税金が多くなって、重くなって、マインドは温まりませんよ、これは。  それで、しかもマインド、マインドとおっしゃるけれども、あなた方、では将来どうするのか。小渕総理が「鈍牛、角を研ぐ」ですか、論文の中で、将来的には課税最低限も下げる方向でいくしかない、景気が回復したら消費に増税を負わすんだというようなことも否定されてないじゃありませんか。そうなってきたら、将来の見通しだってない。私は、家計から見たら、そして景気対策から見たら、国民の八割、九割がことしに比べて来年が増税になるというやり方はとるべきじゃないと思います。  それで、総理に今度はお伺いしたいのですけれども、結局一年限りの減税と恒久的な減税は比較の対象にならないんだというのですけれども、逆にお聞きしたいのですけれども、それじゃ、ことしに比べて来年が八、九割増税になっても構わない、こんな比較はどうでもいいというのが政府の立場ですか。八、九割は増税になっても構わない。比較の対象にならないというのはそういう意味でしょう。ことしと来年を比べても意味ない。ということは、逆に、それだけ増税になったって構わない、八、九割が増税になったって構わない、これが政府の立場ですか。総理、どうぞ。総理が手を挙げているんですから、総理
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 八、九割とおっしゃいますけれども、どうしてそういう数字がわかるんでしょうか。私どもの専門家でもわからないので。それは、ことし税金を払わなかった人が新しく納税者にまたなられるということは私はあると思います。しかし、それが八、九割というようなことは一向にどうも証明された数字でありません。
  160. 志位和夫

    志位委員 これは、私どもいろいろな政府の仮定に基づいて、きちんとした試算を行いました。政府の大枠というものがあるわけですよ。最高税率は五〇%に下げる、そして総額は四兆円だ、定率方式で行う。これだけのパラメーターが最初与えられたら、どうしたってああいう計算以外出てきようがないのです。  あなた方、そういう増税層が出てくると言いながら、一体どれだけの方が増税になるかも示さない。ことしと来年、これはどうなるかもわからない。こんなことでどうして景気対策になるか。  私、日本経済新聞が最近こういうコラムを書いたことを大変印象深く読みました。「消費性向は高所得者層で低く、低所得者層で高い。所得の高い層で減税しても消費はあまり増えない。所得の低い層で増税すれば消費は大きく減る。消費不振を打開するための政策としては、低所得者層の課税を増やすことはまったく逆効果である。」  全く逆効果なことをあなた方はやろうとしている。このことを指摘して、もう一つの問題に進みたいと思います。
  161. 中山正暉

    中山委員長 主税局長が手を挙げておりますので。
  162. 志位和夫

    志位委員 結構です。  第二の問題点でありますが、巨額の法人税減税の問題について伺いたい。  政府は、法人税の表面税率を四六%からさらに四〇%に引き下げて、二兆数千億規模の減税を行うと説明しています。総理は、八月十一日の本会議答弁で、法人課税を国際水準並みに引き下げる、こう説明されました。  そこで、事実の問題として総理に認識をお伺いしたいのですが、日本の法人税の負担率は国際水準に比べてなお高いという認識をお持ちでしょうか。端的にお答えください。
  163. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 細かい数字、すなわち四〇プロ前後というところにつきましては、それぞれの国々によって若干違うと思いますが、ほぼ同様の数字と理解いたしております。
  164. 志位和夫

    志位委員 要するに、四〇%にして同様になるから今の四六%は高いという認識ですか、そういうことですね。ちゃんとお答えください。
  165. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、地方課税も合わせてそういう数字だと思います。
  166. 志位和夫

    志位委員 高いという認識かということを聞いているのです。イエスかノーか、ちゃんと答えてください。
  167. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 四六%は四〇%より高いと思っています。
  168. 志位和夫

    志位委員 きちんとお認めにならないのだけれども、国際水準並みに引き下げるというのですから、今高いから国際水準並みにするということなんですから、今高いという御認識でしょう。  しかし、企業の実際の税負担というのは、税率と課税ベース、すなわち企業の利益の中で課税の対象となる範囲を掛け合わせたもので実際の税負担が決まるわけです。ですから、国際比較を行う場合は、税率と課税ベースを掛け合わせた実質の税負担で比較する必要が出てまいります。  私は、大蔵省にこの実質の税負担の国際比較の数字の資料を要求いたしました。文章で回答がございました。  大蔵省からの回答です。読み上げますと、「法人税の税負担の国際比較については、経済や税制等の環境が異なると企業行動も異なることから企業行動のモデルの選定が困難であり、また課税ベースの比較については(別紙)のとおり難しいと考えております」、難しい、比べられないという回答です。  そして、別紙でついているのが九六年十一月の政府税調法人課税小委員会の報告の税負担の比較の部分を述べた部分です。この結論は、「我が国の課税ベースは国際的にみて広いとは一概に言えず、「税率」と併せ考えた法人課税の「税負担」水準の高低の判断は容易ではない。」これが大蔵省の回答ですよ。  これは総理に一部お渡ししたいのですが、結構でしょう。
  169. 中山正暉

    中山委員長 どうぞお渡しください。
  170. 志位和夫

    志位委員 ちょっとお読みになっていただきたいのですが、結局、大蔵省の回答は、日本の法人税の税負担が高いか低いかを判断するのは難しい、わからない、これが公式回答なんですよ。  そうしますと、総理、国際水準から見て高過ぎるから下げるということは何の根拠もなくなってくる。国際水準並みに引き下げるというその根拠がなくなってくるじゃありませんか。総理、いかがでしょう。総理に伺っている。総理が手を挙げていますから、総理です。
  171. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 大蔵省並びに税制調査会、御信頼いただきましてありがとうございます。  つきましては、その数字そのものにつきましては、正確にそれぞれの立場で検討いたしておりますので、答えられる範囲で税務当局から答弁させていただきます。
  172. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 まず、お尋ねのございました法人所得課税の実効税率の国際比較を数字で申し上げますと、日本の場合四六・三六……(志位委員「聞かれていないことに答えないでください」と呼ぶ)アメリカ四〇・七五、イギリス三一・〇、ドイツが五一・六七……(志位委員「聞かれていないことに長々答えないでください」と呼ぶ)
  173. 中山正暉

    中山委員長 答弁中ですので、お静かに願います。
  174. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 フランス四一と三分の二ということで、この実効税率を比較いたしますと、ドイツを除きまして、日本は高い部類に属するわけでございます。  それから、第二点でございますが、法人の実際の税負担といいますのは、課税ベースに法人税率を掛ける、もちろん地方税を含めますが、それで出てくることは間違いないわけでございます。ところが、例えば日本には退職金という制度がございますが、外国にはございません。実は、そのようなことから、今年度の改正で引当金を二割に引き下げるように課税ベースの拡大を図っておりますが、そういう社会慣行が違う中で、その課税ベース掛ける税率の本当の税負担を比較するというのはなかなか難しいということを申し上げているわけでございます。  あと、もう一つ申し上げますが、例えば経済が国際化してまいりますと、日本の外国にある子会社から日本へ研究費の分担金を持ってくるというようなことがございます。この場合は、実は課税ベースの問題ではなくて、丸々この実効税率がきいてくるわけでございます。したがいまして、課税ベースの問題もございますが、国際的な資本移動等の問題を考えますと、この実効税率がどうあるべきかというのは、大変重要な問題であるというふうに認識しております。
  175. 志位和夫

    志位委員 政府税調のこの報告書、大蔵省から出された報告書ですけれども、「税負担の比較」とありまして、「法人課税の税負担の水準を比較する際には、税率だけでなく課税ベースの内容を吟味し、両者を併せて判断する必要がある。」こう書いてあります。つまり、物差しは両者を掛け合わせたものだということを認めているわけですよ。だから、あなたが幾ら実効税率——私は表面税率という言い方が正しいと思いますし、政府税調もそういうふうに最近言っているようでありますが、この表面税率を幾ら比較してもだめです。  それで、企業慣行云々の問題も言われました。私、この点で一番一つの見識ある試算として接したのは、政府税調の法人課税小委員委員の神野直彦東大教授が試算をされています。  よくこの法人税の税率の問題というのは、これは高過ぎると日本企業は外国に逃げていっちゃうから大変だという、空洞化と結びつけて議論がされておりますので、それとの関係で、神野さんは、日本企業にそれぞれの国の税法を適用すると法人課税がどのように変化をするかを比較した、非常に的確な比較の方式をとっております。  その結果、日本の大企業の直接税負担率は、つまり法人税の実質負担と社会保険料負担の合計は、アメリカ、ドイツの八一%程度、フランスの七六%程度。さまざまな引当金などで課税ベースが狭い、日本の場合。それから、社会保険料負担が低い。この二重の要因をちゃんと加味して計算すれば、こういう結果が出てくる。そして、神野さんの最後の結論は、アメリカやヨーロッパの先進諸国に比べれば、日本の税法はむしろ法人に低い負担しかもたらさない、これが結論でありますよ。だから、きちんとこれ、難しいと言っているだけではなくて、よく計算すればこういう計算の結果が出てくる。  しかし、少なくとも、比較できない、比較は難しい、つまり高いという根拠がないということは、ここははっきりしました。ですから、下げるという根拠もまたなくなりました。そして、法人税を下げたからといって景気がよくなるのか。これは、蔵相自身も、企業お金をつぎ込んでも設備投資は余り期待できない、こうおっしゃっているとおりですよ。消費不況の中で法人税を下げたって、設備投資に回りません。しかも、法人の三分の二は赤字法人。ここには法人税減税の恩恵はもちろん全くありません。中小企業にはほとんど恩恵はない。大企業、資本金十億円以上の大企業が、私が計算してみましたら、法人税減税分の五四%をとっちゃう。ソニーとかキヤノンとか、あるいはトヨタ、本田、こういう史上空前の利益を上げて、しかも人減らしでどんどん雇用不安をつくっているような企業にどうして減税やってやる必要があるのか。私は、本当に間違ったやり方だと思います。  政府の六兆円超の減税なるものの中身は、結局、家計につぎ込むと言っておきながら、庶民の家計からは増税で吸い上げる。つぎ込む先は一握りの金持ちと大企業じゃないですか。私は、景気対策として逆風にしかならないと思います。  私ども日本共産党は、消費税を三%に戻すことを中心に、人的控除などの引き上げで庶民に手厚い所得減税の恒久化、これを加えて総額七兆円規模の減税を行うことを提案しております。同じ七兆円規模の減税でも、私は、政府の提案している減税に比べて、景気回復、個人消費の回復の上で私どもの提案は明らかに利点があると考えております。  もう一枚パネルをつくってまいりましたが、第一に、この方式でこそ、ことしに比べてもすべての所得階層で減税になるということであります。  このグラフのうち、青い部分が九八年の政府が行った特別減税の減税分です。赤い棒の方が我が党の七兆円の減税案です。ごらんになっていただければわかるように、どの階層でも減税になる、これは唯一の減税方式だと私は思います。しかも、三百万円以下の所得階層の方、今の不況の中で一番苦しんでいらっしゃる低所得者層にも減税の恩恵が及ぶ。  第二に、この減税方式というのは、この赤の棒の中の濃い部分ですね。消費税の減税分が減税の中心をなしております。今の将来不安があって、所得税の減税ですと、どうしても貯蓄に回る分が出てくる、これはだれも否定にならないでしょう。しかし、消費税の減税というのは、消費して初めて減税が生まれる、消費と直結した減税であります。消費拡大と直結した減税であります。私は、これが中心に座っているということは、本当に同じ減税額でも消費拡大効果は格段に大きい、こう思います。これを実行に移せば、私は衝撃的な景気浮揚効果が生まれてくる、このように思います。  今、いろいろな立場の違いを超えてこの声がうんと起こってきている。将来の税制についての立場、いろいろな違いがあります。あるいは、高齢化社会の財源をどう求めるのか、これについても立場の違いがさまざまあるでしょう。しかし、そういう立場の違いを超えて消費税の減税が今大きな世論になっている。自由党も主張されています。財界筋からも、アメリカからもそういう声が聞こえてまいります。  八月十三日に発表されたIMFの日本に対する年次報告、これによりましても、何人かの理事は、短期的需要を刺激するための消費税減税についても検討されると言及した。これは時限つきではありますが、IMFでもそういう意見が述べられました。  それから、あなた方の大勲位、中曽根元首相が最近のインタビューの中で、景気の回復も、所得税減税より消費税を二年間だけ時限的に二%下げる、この方が需要を起こす上できく。これも時限つきではありますが、消費税を下げるしかないじゃないか。  私たちは、もちろん三に下げた後、廃止するという立場でありますが、しかし、当面の需要喚起策としてはこれ以外にない、こういう声が起こってきている。何よりも国民多数の声ですよ。八月四日に発表された日本経済新聞の世論調査では、景気対策として望むもののトップは消費税の引き下げ、五四・七%。所得・法人税の恒久減税の三九・九%を大きく上回っています。  私、総理に伺いたいんですが、なぜ国民がこれほどまでに強く消費税減税を願っているのか。なぜだと思いますか。
  176. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 志位書記長、まことにわかりやすいお話をされまして、御意見を兼ねて御質問をいただきましたが、ちょっと長くなりますが、私からも若干反論もさせていただきたいと思います。  まず、法人税について、大企業のみを引き下げて、そして減税をすることは好ましくないというお話がありました。しかし、当然のことながら、企業全体、中小企業にわたりましても法人税の減税ということはあり得るんだということで、いかにも大きな企業だけが減税の恩恵に浴するようなことは、誤解を招くゆえんじゃないかと思っております。  また、個人所得税につきましても、最高税率の引き下げにつきまして、いわば金持ち優遇ではないかというお話に近いお話でございますし、また、そうした方々の消費傾向は必ずしも多くないというお話でございましたが、そのことをそのように割り切ることは極めて不可能ではないかというふうに私は考えておりまして、そういった意味で、法人税の引き下げなくして、すべて所得税の減税をすればというお話で先ほどのパネルはでき上がっておるような感じでございまして、そういった点も含めまして、国民皆さんの御理解もいただきたいと思っております。  そこで、消費税の問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、このことは、国家の財政の中で、特に社会保障問題等につきまして必要な経費を賄うためにやむを得ないこととして二%の引き上げをさせていただいたということでございまして、この点も、しばしば申し上げておりますように、御理解をいただきたいと思っております。
  177. 志位和夫

    志位委員 いろいろな、反論と言われましたけれども、反論になっておりません。  私は、法人税の減税のすべてが大企業に行くと言っておりません。さっき言ったように、十億円以上の大企業が五四%をとってしまう、こういう事実を言ったわけですね。しかもそれが、空前の利益を上げ、人減らしをやっているような企業に減税をやるのが果たしていいやり方なのかという問題を言ったわけであります。  それから、消費税の増税は社会保障に充てるものだというお話でありましたけれども、私は、高齢化社会を支える財源を消費税に求めるという考え方をもしとったとしますと、結局、社会保障のためだ、高齢化社会のためだという考え方で、その財源を消費税に求めるという考えをとったとしますと、際限のない消費税の引き上げになっていくだろう。  私は、この財源というのは、国政上の浪費にメスを入れる。私はかねがね、国と地方自治体で五十兆もの公共事業を削ったらいい、このことを申してまいりました。むだな事業を削ったらいい。ところが、来年は三〇%もふやす。じゃんじゃんまた旧来型の公共事業をふやすという方向を一方でやっておきながら、消費税の減税はどんなことがあってもできない。これだけの国民多数の声があってもできない。  私は、なぜこれだけの国民の声がこれを求めているのかを伺いました。それについてのお答えは一つもありませんでした。今国民がこの問題についてこれだけ強い願いを示しているのは、経済の現状、暮らしの実態がまさに緊急事態であって、これを打開するには消費税減税しか方法がない、このことを国民は日々の生活の実感、これでわかっているからなんですよ。ですから、政府がこれまでの立場にこだわらず、緊急の景気対策としてこれを真剣に実行すること、検討することを私は強く求めておきたいと思います。  次に、金融問題について伺いたい。  この問題、私どもも、不良債権問題の適切な解決、あるいは金融機関破綻した際の預金者保護、まじめな借り手の保護を行う体制の整備が必要である、これは当然だと考えております。問題の核心は、不良債権処理のコストを一体だれが負担すべきかという問題であります。  この点で、ブリッジバンクを含む政府の処理策の最大の問題点は、国民には三十兆円もの負担を求め、足りなければ幾らでも積むと、際限のない負担を押しつけながら、銀行業界への負担増は一切求めようとしていないということであります。  不良債権というのは、もともと銀行の不始末です。しかも、個々の銀行の不始末にとどまらず、銀行業界全体がバブルの乱脈に踊ってつくり出した共同の不始末ですよ。ですから、その不始末を処理するためのコストは、国民の税金ではなく、銀行業界の自己責任、自己負担の原則で賄うのは私は当然だと思います。  この点で幾つかお聞きしたいのですが、まず、日本銀行業界は、アメリカに比べてもまともな負担をしていないという問題であります。  この問題は、私、一月のこの予算委員会質疑で詳細に明らかにいたしましたが、アメリカでは、八〇年代後半から九〇年代初頭にかけて商業銀行の倒産が相次ぎ、連邦預金保険公社、FDICの基金が底をついたときに、保険料率をそれまでの三倍の平均〇・二五四%に引き上げ、税金を使わずに、業界の自己責任で危機を乗り切りました。日本の保険料率は、引き上げたといっても〇・〇八四%と、アメリカのピーク時の三分の一の水準であります。つまり、日本銀行業界は、アメリカのピーク時に比べても、いわば世間並みの負担もしていない。これを引き上げるのは当然じゃないか。  この問題について総理に伺いたいのですが、総理は本会議答弁で、銀行の預金保険料負担は、金融機関の置かれている状況、国際的信認との関係にも留意し検討する、こうお述べになりました。  そこで、伺いたいのですが、どういう方向で検討するのですか、銀行業界に負担増を求める御意思がおありですか、総理に伺いたい。総理答弁ですから、総理、どうぞ。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 預金保険機構がいわゆる預金の無制限保護を二〇〇一年まで決定いたしましたときに、各銀行からいわゆる保険料負担、数倍の保険料負担を徴しました。それによってペイオフをいわゆる二〇〇一年まで延ばしておるわけです。銀行関係もそれだけの負担をいたしております。
  179. 志位和夫

    志位委員 数倍の負担をしたからもう引き上げる必要はないんだということですか。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少なくとも各銀行が現在決して経営が裕福な状況ではございません。したがいまして、それに対してさらに多くの保険料負担を求めることは、大銀行と小銀行の差を設けるということもまた理由に乏しいものでございますので、私は非常に難しいのではないかと思っています。
  181. 志位和夫

    志位委員 経営が裕福でないということをおっしゃいましたので、一つ、これも実は一月のこの予算委員会で大分議論した問題なんですよ。  宮澤さん、御存じないかもしれないけれども、銀行の利益に対する負担率、こういうもう一つの別の物差しで見ても、アメリカのピーク時は八%負担したのです。ところが、私、計算してみましたら、九七年の直近の数字でも、日本銀行負担率は全国銀行ベースで六・二%、大手銀行で四・八%。アメリカのピーク時に比べて、裕福じゃないというふうに言いますけれども、出している利益との関係でも、負担していないのですよ。  私、そもそもこの問題についての、大蔵大臣との議論になったので、あなたの考え方の基本が狂っていると思う。  私、大蔵大臣が昨年の十二月一日のこの委員会で、質疑の中で、銀行の保険料率を引き上げることについて、こういうことを言われたのを聞いてちょっと驚きました。「これからビッグバンに身軽になって乗り出して外国と競争しなきゃならないときに、自分のところに全く関係のないものをこれ以上しょわせていいんだろうか。」こう言いましたね。「もっとやれというのは昔の護送船団の思想ではないか、」こう言いました。つまり、不良債権処理を銀行業界の自己責任の原則で行う、その見地から負担増を求めるという議論に対して、昔の護送船団の思想だと述べて否定して、税金で負担するのが当たり前という議論を、この場であなたはおしきになったのですよ。そこから三十兆円が始まったのです。  それで、私は宮澤蔵相に聞きたいのですが、それではアメリカが到達した原則というのはあなたの言う昔の護送船団の思想かということです。  アメリカでは、一九八〇年代のSアンドL、貯蓄貸付組合の破綻処理に巨額の税金を使った苦い教訓を踏まえて、九一年に預金保険法を改正し、商業銀行破綻処理への税金投入を禁止し、破綻処理に必要な費用は銀行業界の自己責任、自己負担で賄うという原則を確立しました。この見地から目いっぱい保険料を引き上げたのですよ。ここにアメリカの金融行政の最新の到達点がある。  これは古い考えですか。昔の護送船団方式ですか、これは。端的にお答えください。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 簡単に比べることはできないと思いますのは、その際アメリカ政府が用意した金は二十兆円でございます。それだけのものをもって国庫が全損を覚悟してSアンドLの処理をいたしました。しかも同時に、殊に大銀行においてそうでありますけれども、アメリカの税制では不良債権と思われるものは自由にバランスシートから消しまして、それを損金処分とすることができる。我が国ではそういうことを簡単に許しておりませんので、その辺がいろいろ制度が一緒でございません。
  183. 志位和夫

    志位委員 商業銀行破綻処理に一円も、一ドルも税金を使わなかったというのは事実なんですよ、これは。SアンドLに使った苦い教訓、これがあって、そしてその結果、もう商業銀行破綻処理にはお金を使わないようにしよう、これを連邦議会でさんざん議論して決めたわけですよ。  これは、アメリカの財務省のリポートで「二十一世紀の金融業」という本があります。私は興味深く読んだのですが、SアンドLに税金を入れたことについて、「一三〇〇億ドルもの納税者負担を生じさせるという、大恐慌以降もっとも高くついた金融政策の失敗」と言っていますよ。大失敗だった。だから、もうこのわだちを繰り返さないということで、商業銀行は税金を使わないで処理するという原則をやったのです。  そのときにどういう議論がやられているかというのを私は拝見して、大変興味深かったことがあるので、この点をさらにお聞きしたいのですが、これは当時のアメリカの連邦議会の議事録であります。九一年の法改正で商業銀行破綻処理には税金を使わないということを決めた、FDICの、連邦預金保険公社の法律の改正をやったときの議事録であります。  そこで、GAO、会計検査院のバウシャー総裁が、銀行の保険料負担を引き上げることで預金保険機構の財源を賄うことの意義をこう力説しているのを、大変私は興味深いと思いました。「特別保険料による預金保険機構の基金の拡充には幾つかの明確な長所がある。それは、資本市場から好意的反応を受け、銀行経営者が自分たちの直面する問題に立ち向かうように促し、監督官が適切な時期に破綻銀行を閉鎖し処理費用を軽減するよう要求する動機を業界に与える。」  つまり、銀行業界の自己責任での解決という原則を打ち立ててこそ、業界が不良債権の問題を本気で解決するようになる。不良債権のコストを業界が負担しなければならないという原則になれば、仮に不良銀行が生まれたときは、業界でかばい合いをやらないで、金融村のかばい合いをやらないで、適切な時期にそれを処分するよう銀行自己規律が働く。そういう自己規律を確立する上でも銀行自己負担原則は大事なんだと。  これがアメリカの到達点なんですよ。これから学ぶべきですよ。あなた方がやろうとしていることは逆ですよ。特に、宮澤蔵相がやってきたことは、超低金利政策、銀行不良債権の無税償却、公的資金を使った株価の買い支え、三十兆円の銀行支援策、住専処理への税金投入。全部銀行を甘やかしてきた、銀行自己責任をあいまいにしてきた。だから大変なモラル破綻が今起こっているわけです。  私は、この問題を正しく解決する上でも、アメリカの先例に学んで、そういう銀行甘やかし政策をやめて、自己責任の原則によって、いわば銀行を厳しくしつける政策に転換する必要があると思います。こんなところに財政支出を使わないで、お金を使うんだったら国民の暮らしにこそ使うべきだ、消費税の減税や社会保障の拡充に大事な国民の血税は使うべきだということを最後に主張し、私の質問といたします。
  184. 中山正暉

    中山委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君から質疑の申し出があります。これを許します。伊藤茂君。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  185. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 社会民主党を代表して、幾つか質問をさせていただきます。  御案内のように、私ども社民党は、六月一日に閣外協力を解消いたしまして野党であります。野党としての筋を通していきたいと思いますし、そしてまた、村山内閣以来四年、その前の政権交代から五年、私は、日本の戦後の政治史の中でもいろいろと検討される大事な期間だったという思いを振り返りながら、政党のサイズは小さくとも、大きないい役割を果たせるように、誠実に真剣な努力を払ってまいりたいという気持ちでございます。  短い時間でございますから、閣僚の皆様、幾つか私どもとして大事に思うことを凝縮して質問させていただきたいと思いますので、恐縮ですが、そのように御答弁もお願いしたいというふうに思います。  経済問題が当然主力でございますが、その前に、特に総理の歴史観と申しましょうか、世界観と申しましょうか、二、三、特に我が党としては非常に気になる点でございますので、質問をさせていただきたいというふうに思います。  第一は、歴史認識と世界観にかかわる問題でございますけれども、これからこの国会でどう議論になるかわかりませんが、新たなガイドラインの関係についての認識にかかわる問題であります。  実は、先国会で、これを閣議決定して国会に提出をするその前の夜に、当時与党でございましたから、与党三党の幹事長、政調会長、六者会談と申しましたが、徹夜の、徹宵、夜を徹した議論をいたしました。そのときに、自民党の皆様の方から、明日どうしても閣議決定をしなければならない、オルブライトさんもいらっしゃっている、もう与党協議を打ち切ってもやるのだという発言がございまして、日ごろ温厚な私ではございますけれども、私も本当に頭にきまして、ああ、それならやめましょうというやりとりをしたことを忘れることはできません。  もちろん、私どもは昔の反安保、反自衛隊ではございませんので、これからの平和の時代にどういう目標を立てて、しかも、すぐれた具体性を持った努力をしていくのかということが政治に問われているというふうに思っております。  当時の与党間で三点、何遍も確認をいたしました。第一は、外務大臣であった総理御承知のように、有事に備える前に平和外交、平和の備え、平和戦略を誠実に積極的に実行する。第二は、憲法の枠内、そして安保の質を変えない、枠組みの質を変えない。第三は、近隣諸国に懸念を抱かせない。この三つは何遍も確認をいたしてまいりました。それぞれ、私どもの認識では問題が起きているというふうに思います。  どれだけこれからの時代のアジアに大きな役割を、ヨーロッパのOSCEのような、そういう時代に向けた努力を我が日本が果たせるだろうかという気持ちを持ちます。  あるいは、安保の枠組みにいたしましても、実際上極東の範囲は超えているのではないか。台湾海峡は除くべきだというのは私の持論でございますけれども、私の神奈川でも、新しい航空母艦が横須賀に今度参りますけれども、前のインディペンデンスでも、地元、県にも市にも無届けで夜間の離着陸の大演習をいたしまして、その上で湾岸出動しますといって出ていかれました。一体どうなっているのかと外務大臣当時に小渕さんにも申し上げたことがございます。  近隣諸国の懸念、これは言うまでもございません。  私が総理に伺いたいのは、こういう状況の中で個々のことをここで議論する意図はございませんので、これから秋に、中国、韓国、その首脳外交が行われるというわけでございまして、そういう中で、やはり二十一世紀アジア、あるいはアジア・ビジョンと申しましょうか、そういうものを、もうすぐ新しい時代が来るわけですから、その時代に向けての日本の憲法のもとに日本らしい大きな構想を積極的に出す、それが日本に問われているというのが今の時代ではないだろうか。それがしっかりしていればいろいろな対応も違ってくるということではないだろうかという気持ちがいたしますが、まず冒頭、総理の所信を伺いたい。
  186. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 自社さ間でまとめられたこの三点の問題、すなわち、いわゆる予防外交を最大限優先させること、第二、日本国憲法及び日米安保体制の従来からの枠組みを変えないこと、三、近隣諸国に懸念を与えないこと、いずれも重要なことと考え、私といたしましても、この線に沿うて他国の不信を招くことのないように最善の努力をいたしていきたいと思っております。
  187. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは、さらにお伺いいたします。  この間、組閣に当たりまして、直後に中川農水大臣の御発言がございました。従軍慰安婦にかかわることであります。本会議でも取り消しその他お話がございましたし、また、総理の方からも、戦後五十年に当たりましての八月十五日、当時村山総理の談話を尊重するという御発言がございましたから、これについては私どももそのように受けとめさせていただきます。  同時に、やはり必要なのは、もう一歩どうするかということではないだろうかというふうに思うわけでございまして、こういうことが年じゅう、夏になると繰り返されるという状況は変わりません。  実は、私の地元の横浜で南京問題についての映画の上映がございました。右翼が押しかけてきて上映中にスクリーンをナイフで切りつけるという事件が起こりまして、繰り上げて終わるというようなことがございました。そんなことがあちこちで起こる、非常に嘆かわしいことだと思います。  つい十日かちょっと前でしたが、NHKでベトナム対話という特集の番組がございまして、マクナマラさんとボー・グエン・ザップさんとか当時ベトナムで戦ったお互いの責任者が三日間ハノイに集まって、あのときどうだったのかと対話をした。非常に印象的な番組でございました。  そして、一番最後にマクナマラさんが、あの北爆のときその他、どんな敵でもコミュニケーションは大事だ、これがわかっていたらあんなたくさんの犠牲者を出さなくて済んだのにということを言われました。そして、なおかつこれを続けていこうというふうな話がございまして、その番組を編集した方が最後のコメントで、残念ながら日本にはこれがなかったという言葉を言われたことを非常に記憶をいたしております。  さまざま、韓国、中国、だれでも、歴史観その他をお互いにアジア本当の友人として共有し合う、そういう意味での努力が必要なときではないだろうかという気持ちがいたします。  先ほども申し上げましたが、江沢民さんもいらっしゃいます。金大中さんもいらっしゃいます。いろいろな重要な会話があるわけであります。それぞれ何か目の前のことをやるのですか、あるいは受け身でやるのですか、そうでないことが今問われている。例えば日中間でも、外務大臣も努力されているようですが、ここで何か重要な次の時代のステートメントをつくろうではないかという努力とお話もあるようでございますけれども、そういう積極性をどう発揮されるおつもりでしょうか。
  188. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 積極性というお言葉でございますが、日中におきましても日韓におきましても、それこそ最高責任者が訪日をされます。この機会に、両国とも新しいパートナーシップをさらに確認し合うという場面がなければならぬと承知をいたしております。  そういった意味におきまして、日中におきましても日韓におきましても、いろいろと考え方があろうかと思いますけれども、訪日前までにはそうした考え方を一致させまして、未来、二十一世紀に向けて両国の関係がより深まるように努力をし、また、努力をするための両国の約束はきちんといたしていきたいと思っております。
  189. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 実りある、二十一世紀も間近ですから、やはり次への方向が出るような、シュミットさんでしたか、雑誌に「友人のいない日本」という論文が三、四年前でしたか、ありまして、読んだことがございましたが、そんな時代ではもうないですから、国境を越えたさまざまな連帯が広がっておる今日でございますから、真の友情が広がるような、あるいは、先ほどのベトナム対話ではありませんが、歴史観を共通にできるような新たな努力を積極的に総理がなされるように、ぜひ期待をしておきたいと思います。  これらの観点が当面大きな問題として残っている沖縄問題にも関係いたしますが、時間がございませんので、また2プラス2などでどんなことをなさるのか、外務大臣、防衛庁長官、またこの問題については非常に強い御努力と御関心を持たれた官房長官でございますけれども、また別の機会に議論をさせていただきたいというふうに思っております。  もう一つ、総理に時代観、歴史観などで伺いたいことがございます。これは政治倫理に関する問題でございまして、橋本内閣当時に、連立から離脱をするというときの有力な一つの話題となりました。さまざまその経過は御案内のとおりでありまして、詳しくは申し上げません。  一点だけお伺いしておきたいと思います。幾つかいろいろな政治改革政治倫理、政治お金の問題についての議論が三党首直属の異例の協議会で行われました。半年もやったわけでありますが、一つだけ伺っておきたいのは、象徴的なことなんですが、政治資金規正法附則第九条でございます。  言うまでもありませんが、平成六年に議論して七年一月一日から施行でしたか、あの九条の中に、施行後五年後には政治家が労働組合や経済団体から政治献金は受け取らない、禁止するものとするということが書かれております。前倒しか、後倒しか、そのとおりやるのかどうか。自民党の方からは後ろ倒しだという話も随分実はいろいろと聞かされました。建設大臣もよく御承知のことでありますが、ということでございました。  やはり、こういうときですから、本当国民の御信頼を得られるものにするためには、少なくとも法律で決まっているものはそれができるようにちゃんとやる。また、そういう中で清潔なカンパをいただいて、いい政治ができるような基盤も考えていくという努力をしなければならないということだと思いますが、前倒しか、後ろ倒しか、法律のとおりにやるのかどうか、随分激しい議論がございまして、そういうものが解決つかないまま閣外協力を解消する措置をとるという経過になりましたので、その点、現総理としてはどうお考えでしょう。
  190. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、各党のよって立つ基盤である政治資金の問題でございますので、今の私の立場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、国民皆さんの信頼と信任を得て政治が行うということであれば、定められたことは実行していくものと考えております。
  191. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 本論であります経済問題に入らさせていただきます。  先ほど、失政であるかどうかという議論が何か同僚議員と経企庁長官、ございました。私は、あれを見ながら実はこう思っております。この参議院選挙の結果もそうなんですが、国民皆様から厳しい御批判を実は政府がいただいたという経過でございます。これは事実であります。  やはり私は、いろいろな経過があり、宮澤さん、総理を初めOB総理大臣などの偉い皆さん一緒に参加させていただきまして、財政構造改革等いろいろな議論を半年ぐらいやりましたですね。いろいろと振り返っております。何も悪かれと思ってやったわけじゃないので、何か今しなければならぬという気持ちでいろいろな議論をしたわけであります。しかし、振り返ってみますと、非常にやはり国民皆様から怒られる、大変な結果が出たということであります。  私は、政党政治家ですから、常にそれらの結果、状況、過去、現在、未来については、国民皆様に常に誠実でなければならない、それが政治家としてあるべき態度であろうというふうに思います。私も与党の一員でございましたし、それらの議論に参加した立場でございますから、やった経過、責任、あのときの状況などを振り返りまして、夜遅くまでいろいろと自分で振り返ってみて考えます。正直申しまして、反省をしなければならぬ。失政であるか。失政とか何かと決めつける言葉は使いませんが、私は自分で反省をしなくちゃならぬという気持ちでおります。  例えば、過大な負担が一挙に国民にのしかかった。確かに、減税先行で村山内閣の時代から十六兆五千億も先行減税をやったという経過なんですよね。だから、前からの経過からすると当たり前だという理屈はあるかもしれません。しかし、そのときの経済条件でそれをやったことがよかったのか悪かったのかなということを、改めて考えさせられます。  あるいはまた、緊縮予算を組みました。国の将来を考えましたら、大変な財政赤字ですから、これを何とかしなければ、国民の子孫の後々の子供たちの時代に、不幸を残しても幸せは残すことはできません。私どもが何とかしなくちゃならぬ、重要な政治の責任であろうと思います。  ただ、経済の生の動きの中で、あそこでああいう予算がよかったのかなということが結果としては問われているということがございます。正直に申しまして、経企庁の言うことを信用し過ぎました。堺屋さんは違いますよ。前の人、これは前のお役所の話なのですが。四—六のときには、四—六は消費税で落ちる、七月過ぎたら直りますよとさんざん聞かされて、ちょっと私どもも不勉強。それから、やはりアジア的視点、金融の問題ですね。振り返ってみて、そう思います。  私は、小さい政党ですが与党の一員でございました責任も含めまして、反省しなければならない、そういう気持ちを持ちながら、今、次どうすべきなのか。私は、何か、全部間違いだった、じゃ財政構造改革の将来も何もほうり投げていいみたいな無責任な考え方は全然持ちません。将来、それは大事なことであります。  そういうことを考えながら、やはりまじめな反省の気持ちを込めて、それをきちんとしながら次を考えるのが、政党として、政治家として国民皆様への誠実なあるべき態度ではないだろうかと思いますが、失政論争とは別に、総理、率直に、宮澤さんの前の話は伺いましたから、今総理であり、また前の重要な閣僚でございましたお気持ちを伺いたい。
  192. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 失政という言葉もまたひとり歩きしがちでございまして、すべて行ったことの政治が否定されるべきものだということを言われますと、しばしば申し上げておりますように、橋本内閣、六大改革といって、本当に次の世紀を目指して、やらなきゃならぬことに真剣に取り組んだことは事実であります。  しかし、経済の動向等につきましては、今伊藤先生御指摘のように、アジア経済の大きな落ち込みその他万般の予想を超えるような事態が生じたことによりまして、そのことによって適宜適切に政策を遂行してきたかどうかについての反省は持つべきものだと思っておりまして、その観点に立ちまして、私自身、この大役をお引き受けいたしました段階におきましては、財政構造改革の凍結も含めまして、新しい一つの経済政策を打ち出していきたい、こういう考え方を持ちましたのもそのゆえんでございます。
  193. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういう気持ちをしっかり持って、次どうするのかということがひとしく政治に問われている問題であろうというふうに思います。  金融問題について伺います。  私は、今三つの前提があるというふうに思っております。三つでも五つでもいいのですが、私なりに考えますと三つございまして、その第一は、迅速果断な実行が必要である。もう時間との競争だと思うのですね。これから恐らく九月から十月、十一月、まあ十一月はありませんけれども、時間がたったら、大蔵大臣もルービンさんとの会談の予定があるようですし、総理も日米首脳会議の予定があるようですし、私ども、きょう中国の友人をお迎えすることになっておりますし、アジアじゅうが注目をしているという中でございまして、もう時間との競争。本当にこれは果断な実行を求められているというのが第一だと思います。  二つ目には、政府の責任と議会の責任。政府が大きな責任を持っていることは言うまでもございません。まあ総理も、政府が出したものは何でも通すんだみたいなことは不可能でありますし、そうでないお考えは表明をされております。それから、やはり議会の責任。言うならば、私は前に、昔の湾岸出兵のときのアメリカの下院でしたか、二晩、三晩徹夜でやって、全員発言をして、一番最後に、たしか議長が今大使のフォーレーさんでしたか、壇上をおりて、諸君、我々の三日間の討論はと、これが議会だという姿がございましたが、やはり議会が真剣に議論し、お互いに協議し、そして責任を果たしていくということが問われる大事な時期ではないだろうか。政府の責任と議会の責任ということを思います。  それから、何といってもやはり三つ目には、信頼と責任、責任のある決断をしなければならないと思います。筋の通った責任のあり方をしなくちゃならぬと思います。そしてまた、内外に日本金融が信頼される次の時代をつくっていかなくちゃならぬ。それが原則ではないだろうか。  それで、総理にまず一つ伺いたいのですが、政府あるいは自民党が出された案を見ますと、どうしても救済型ですね。あえて私は清算型がいいとは申しませんが、改革型がいいと思いますけれども、救済型。ひどいところはゼネコン救済じゃないかと言う人もいますけれども、そうは思いませんが、救済型じゃないかというのですね。そういう印象というのは、今までの野党の友人の皆様の共通した印象ととらえているというふうに思うわけであります。そこはやっぱりきちんとしなくちゃならぬ。ハードランディング、ソフトランディングみたいな、ためにする議論は私はするつもりはございませんが、やっぱり救済型ではない、ここで大胆に改革をするのだということが必要ではないだろうかというふうに思います。  と申しますのは、かつて、この二年、三年前から、住専の後、与党大蔵省改革として、不勉強ですが、私が当時座長を務めまして、与謝野さんなんかと随分一緒にいろいろなことをやったわけであります。レポートを出しまして、そして、その結果として、財政金融検査監督の一括分離とか、あるいは証券局、銀行局をなくするとか、日本銀行法の改正とか、いいことをやったなという思いがいたしますけれども、あのときに、レポートの中で一番先に書いたのは、護送船団の思想との決別、それから自律ということでございまして、哲学を変えようということでございました。  昨日来の議論を伺っておりますと、何か行政が厳しいアンパイアの役割を果たすので変わるんだということであったわけでありますけれども、何かその辺があいまいな感じがいたします。  率直な感想を、これは大蔵大臣ですか、いかがでしょうか。救済型ではない対応をしなければいけない。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初に、財政改革法を私どもが議論いたしましたときに伊藤委員にも大変貴重な御意見を賜りましたことを、この席をかりましてお礼を申し上げます。  確かに、いわゆる護送船団方式というものは、大変に後まで、統制が外れました後も残りまして、それが今日に至ります競争のない金融機関状況を生じました。それから決別しなければ、結局金融機関も国内でも世界でも競争できませんし、また、消費者、利用者もこれから利便を受けることができないということが明らかになりまして、不良債権の問題をきっかけとしてそういう動きが出てまいりました。  殊に、六月の二十二日、金融監督庁検査が始まりまして以来、金融機関は、従来いわば自分勝手でありました債権の分類の仕方から、SECはもちろんでございますが、さらに、恐らく金融監督庁のマニュアルに従った分類の仕方に変えていかれることになると思います。それによりまして優劣がお互いの間では明らかになってまいりますが、そのことはまた、市場におきまして、ある銀行の株は高い、あるところはそうでない、あるいは考課状がどうである等々のことで、市場がそれを評価する。また、顧客は、ある銀行金融商品はいい、ある銀行のところはよくない、ハイリスク・ハイリターンといったようなそういう差別が生まれてまいりますので、初めてこれで競争型の金融機関が生まれる。従来からの決別をまだきちんとしておりませんが、検査が進み、さらに市場がそれを受け取りますと、銀行としては競争状態に入らざるを得ないところへ、もうちょっとでそこへ参ると思っております。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵改革の当時に役所の方に随分申し上げました、宮澤さん。機構が変わると改革です、同時に、やっぱりやる人の頭が変わらなくちゃならぬ、両方相伴って初めて改革が成るのだということを申し上げましたが、そういうことを決然とやるということがまさに今求められているというふうなことではないかと思います。そうでないと、先ほど来、公的資金に関連いたしましてたくさん御質問がございましたが、本当の意味で、納税者の皆さん国民皆さんの御理解と御協力が生まれないというようなことではないか。  次に、これはもう大蔵大臣に率直にお伺いいたします。  今までの本会議を初めとしたこの議論を聞いておりますと、一つの問題として、破綻処理機構の実施実体、処理の主体をどうするのかということで、政府案のこともございますし、それから民主党からの金融再生委員会の構想とかいう議論がなされております。私も、野党の一員として、三野党の皆さんともいろいろな議論は早くぜひしたいなというふうに実は思っているところでございます。  私は、今求められているのは、機構の形論以上に機能論ですね。どういうことをやることが必要なのか、何を打開しなければならないのか、そこからやはり考えていくということが議会としてはお互いに大事なことではないだろうかというふうな気持ちがするわけでございます。  それからもう一つは、これも大蔵PTをやった者の一人として思うのですが、金融庁、財務省にやがて変えるのだということになっておりますが、当分の間ということで、私どもも徹夜で議論しました。私は、なるべく早く、財政財政金融については、さっき言った厳しいアンパイア、そういう意味での立場を内外にきちんとするというような形ができて、やはり大蔵省金融企画局の時代じゃない、何かそういう仕掛けになっていくというのが流れとして望ましい。早くやった方がいい、当分の間ではないですね。その点、やはりきちんとする。  それじゃ来月やるかといっても実際問題難しいですから、そういう意味も含めましたやはり機能のあり方のプリンシプルをどうお互いに認識をして局面を打開して結論を出すかということが非常に大事なことではないかなというふうに思いまして、今すぐ宮澤さんに私のマニュアルかレポートを出して、これでいかがですかという段階に至っておりませんが、そういう気持ちを非常に深く持っておりますが、いかがでしょう。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆるブリッジバンクにつきまして、政府の御提案いたしました法案の趣旨は御存じをいただいておりますが、また、他の党におかれまして、それより、よりまさる案とお考えになりますものを御検討中であります。  私は、この制度そのものは別にイデオロギーに関係がございませんと考えますので、できるだけ簡素に、しかし効率よく運んでいく案ができましたら、それでいいのだと思っております。  いわゆる三条機関としての委員会といったようなものも御考慮のようでございまして、私は、今まで金融行政について大蔵省が必ずしも適切な行政をしてこなかったという御批判はそうであると思っておりますので、そこからいろいろな問題を切り離して、現に金融監督庁もできておりますけれども、そういうお考えに抵抗する気持ちはございません。願わくは、しかしできましたものが早い決定ができ、迅速な処理ができるような機構であってほしい、こだわりはございませんので、国会におきまして十分御審議の上、修正なりなんなりしていただければと自分で思っております。
  197. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間は幾らもございませんので、これは、大蔵大臣にこれだけはぜひひとつ申し上げて、御意見を伺っておきたいと思います。税制改革の問題でございます。  今出ている、選挙中から総理が公約、橋本さん以来公約されました六兆円以上とか、総理が所信表明で述べられました内容とか、大蔵大臣が言われている内容とかございますし、それからまた、総理が今検討中のいろいろな問題点もあるということは伺いました。  私は、細かいことは別にして、扱い方としてこう思うのですよ。恒久か恒久的か、大体恒久という言葉が悪いのだね、やはり当面と中長期というのが正しい言葉遣いだろうと私は思いますけれども、言葉の論争はやめにいたしまして、今すぐやはり景気対策を含めてやらなくちゃならぬことですね。景気対策と不良資産の処理、これは並行していますから、その関係は非常にありますから、今すぐ景気対策のためにやらなくちゃならぬことの効果あることは何か。これは、やはり国民から金持ち優遇じゃないかとかなんとか言われないような、本当にひとしくみんなに役に立つようなプランを考えるということだと思います。  同時に、私は大事なものは中長期の視点だと思います。やはり政府税調が去年、おととしでしたか、レポートを出されまして、二十一世紀の税制をみんなで考えましょうと加藤寛さんが出して、そのままになっておりますね。これは税の専門家の厚生大臣よく御承知のとおりですね。どうこたえるのか、私は国民的な課題だと思います。どういう公平な理解できる負担で、福祉国家、福祉を初めとしたどういう社会をつくるのですかということの国民的なコンセンサスをどう形成するのか。それがなければ、私は、我が国は立派な国になり得ないと思います。そういう議論をしなければならぬ。そういう上に立って、直間比率はどうですか、消費税の使い方はどうですかなんとかという議論がなくちゃならぬというのが今日の使命ではないだろうか。  したがいまして、私は、細かいことは別にいたしまして、具体的に今やるべきこと、景気対策ですね。と同時に私は、せいぜい二年ぐらい、今の加藤寛さんや何かが一生懸命やっているから、いい悪いじゃありませんが、今の政府税調、自民党税調、与党税調の仕掛けだけではない、思い切ったことでやはり次の時代をどう考えるのか。どういう負担でどういう社会をみんなでやりますか。コンセンサスをどう形成しますか。私は、それが本当のデモクラシーの国の基本だと思います。そういう発想が必要ではないかと思いますが、もう時間になりましたけれども、大蔵大臣、いかがでしょう。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、その感を実は深くいたしておりまして、今の日本経済状況は正常とは決して申せませんので、これが正常になり、また将来への歩みが明確になりましたときには、恐らく二十一世紀に向けての新しい税制をつくらなければならぬ。それは、今伊藤委員の言われました直間比率の問題もございましょうし、国のあり方をもう少し全般的に考えまして、税率構造を初め、すべての控除あるいは課税範囲あるいは財産課税等々全部を勘案して新しいものをつくらなければならないと思っていまして、そのことは、今そういうことができる状況ではございませんが、必ず将来考えなければならないと思っております。  それにつきまして、今度、一遍限りでない税制の御審議をやがて願いたいと思いますが、それは決して、将来あるべき抜本的改正の害になるような、その邪魔になるようなものを持っていてはいけないということだけは間違いなく考えてまいりたいと思っております。
  199. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから終わらせていただきますが、ちょっと十秒だけ、総理大臣、済みませんが、我が党として、今までの経過、それからあれを踏まえまして、ぜひ注文があるのですが、国鉄債務の問題に関連いたしまして、例の国鉄の前からある不採用問題が懸案になっておりまして、私どももさまざまの御相談をさせていただきますので、前向きに打開をされますように、これは最後に要望だけ申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  200. 中山正暉

    中山委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  201. 中山正暉

    中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び北海道東北開発公庫総裁濱本英輔君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  203. 中山正暉

    中山委員長 続いて、お諮りいたします。  最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  205. 中山正暉

    中山委員長 次に、坂上富男君から質疑の申し出があります。これを許します。坂上富男君。
  206. 坂上富男

    ○坂上委員 冒頭でございますが、委員長にお願いをいたしたいと思っております。  参議院の選挙で地元を回っておりましたら、次のような意見が相当ありました。  御存じのとおり、泉井石油商は証人に出て証言をされました。山崎拓氏に金を渡した、こういう証言でございます。それなのにかかわらず、国会では山崎拓氏をなぜ呼ばないのですか、こういうような話が私が座談会に行ったところから相当数出てまいりました。私もやはりこれは、泉井氏と山崎氏のいわゆる主張が相当食い違っておりまするので、特にこれは大変重大な問題でもありますし、泉井氏は確かに宣誓した証言だろうと思っておるわけでございますから、これはもう的確にひとつ真相を究明する必要があろうかと思いますので、まず、山崎拓氏の証人申請をいたしたいと思います。  その次、いま一つ、時間がありましたら防衛庁問題を質問させていただきますが、一言に申しますと、予算の決議がないのにかかわらず、たまたま前の予算の金を、過払いが返還になりましたものを予算の裏づけなくこれを費消しておる、こういう事実が私の調査の結果判明をいたしておりますので、この問題も徹底的な御究明をいただきたいと思っておりまして、防衛庁総務課長田中満雄氏、これを証人として申請をいたしたいと思いますので、御採用をお願いをいたしたいと思います。
  207. 中山正暉

    中山委員長 この委員会終了後に理事会を開くことになっておりますので、理事間で御協議いただくことにいたしたいと存じます。
  208. 坂上富男

    ○坂上委員 特に山崎氏のものは、前回からの申し送りでございます。これはもう、この国会でひとつきちっとしていただきたいことをお願い申し上げたいと思っております。  さて、これまでは各党幹部の皆様方から、各党の政策を織りまぜながらの政治姿勢、政策あるいは総論等の提案、提言、質疑が行われたわけでございます。私からは、まあ個別的な問題を摘出しながら質疑をさせていただきたいと思っています。  私の質問は事実についてのみの質問でございまして、意見はできるだけ少なくいたしまして、一問一答式、イエスかノーかでお答えをいただきたいと思っておるわけであります。簡潔、端的にお答えをお願いいたします。  また、今関係者の皆様方、参考人としてもお出かけをいただいておりますが、きのうからの問題がダブっておるのもあります。また、新しい問題がさっきまで提起をされたりいたしておりまして、大変質問がたくさんになっておるものでございまするから、あるいは、せっかく皆様方の中でお出かけをいただいておるかもしれませんけれども、質問が途切れて失礼をするかもしれませんので、この点もお許しをいただきたい、こう思っておりますので、冒頭御許可をいただきたいと思っております。  さて、総理本当に御苦労さんでございます。実は私は、総理の施政方針演説をお聞きしました。  我が新潟県は、八月の四日でございましたが、測候所始まって以来の集中豪雨を受けました。このことのために、多分、私は十数万以上の皆様方が被害に遭われたと思っておるわけであります。しかも、中には亡くなられた方も出ておるわけであります。でありまするから、私は、施政方針演説の中に、我が新潟県人あるいは東北、北陸の受けた皆様方に、本当に温かいお見舞いの言葉が冒頭出てくるのじゃなかろうか、こんなふうに期待をしながら座っておりましたが、出てまいりませんでした。なぜでございますか。
  209. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 所信表明につきまして、今坂上委員御指摘のように、新潟を初めといたしまして、大変な大きな被害が起こりました。改めてこの機会に、おくればせですがお見舞いを申し上げ、その復旧のために政府を挙げて全力で今取り組んでおる次第でございます。  ただ、所信表明に申し上げなかったことはあるいは申しわけないことかと存じますが、その後、御質問を通じまして、政府としての諸施策について、これを早急に行うべきだということにつきましては、政府の責任としてこれに十分対処するという私の考え方を申し上げさせていただいた次第でございますが、今御指摘をいただきますと、大変申しわけないというふうに思っております。
  210. 坂上富男

    ○坂上委員 やはり、言われて初めてやるような政治じゃいかないなと私は実は思っておるわけであります。  確かにそのようなことでございましたから、うちの代表質問のとき、冒頭にお見舞いを申し上げさせていただきまして、これに対する対策を要請いたしました。総理の方からは、きちっとこれにお答えのあったことは私も知っております。これはありがとうございました。ぜひともこの被害の回復のためにお力添えを賜りたいと思っておるわけでございます。  そんなような意味で、建設大臣が二度にわたりまして現地視察になりました。建設大臣のお話によりますと、大きな問題の一つに、福島潟放水路、平成十七年完成の予定でございますが、これはもう短期に、ひとつ短縮して完成させたい、こうおっしゃっておりますが、いつぐらい短縮しますか。  それから、新潟の通船川でございますが、これはもう下水工事がきちっとしていただかないと、またこういう水浸しになって、大変な事態になるわけでございます。これについてどうされるのか。  それから、今度は国土庁。国土庁は、激甚法、この適用について要請をしておるわけでございますが、どんな状況でございますか。  農水。ひとつ大臣の方、農水の被害、相当なものでございますが、どんなような考えであるか。  端的でいいです。
  211. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私も、八月六日に新潟地方、それから八月九日に佐渡へお見舞いと視察に参りました。そして、その後、県それから市町村から、いわゆる道路であるとか河川であるとか、土石流で災害に遭いました箇所の査定申請を早く提出をしていただくようにお願いをいたしております。それを一刻も早く査定をいたしまして、直ちに災害復旧に入るというところでございます。  それから、福島潟の放水路の事業の問題でございますが、私も上空から見せていただきましたが、確かにこれは、今回あれが完成しておればこれほどの大きな水害にはならなかったであろうということを目の当たりに見まして、それで現地の方々の御熱意も感じまして、平成十七年までに完成するということでございますが、それでは遅過ぎる、再度こういうようなことになるのではないかというようなことで、数年早めてやっていきたいと思っております。何年と言いましてそれができないとまた大変でございますから、とにかく数年は短くやっていきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  212. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 新潟県の集中豪雨災害の激甚災の指定でございますけれども、ただいま建設大臣のお話にありましたように、まずこの指定の前提であるところの被災額の決定という作業がございます。  私も、大昔ですけれども、この作業をやったことがあります、現地で。やったことがありますが、少し事態が落ちついてからできるだけ早くに現場に乗り込むということでございますので、したがいまして、若干時日をいただきたいのですが、もう早速にやりまして、この災害の指定基準に合うかどうかということを早急に検討して、速やかに対処する、このように考えております。
  213. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、大変な被災を受けた皆様方にお見舞いを申し上げたいと思います。  新潟県を中心にいたしました農林水産関係の被害は、現時点におきまして把握しているところでは、農作物につきましては、被害金額三十四億四千万円、農地、農業用施設等につきまして、これは漁業関係も含めておりますけれども、百十四億四千万円となっております。  当省といたしましては、北陸農政局長を初め担当官を直ちに派遣をし、共済団体等による調査も実施する等、被害状況の早期把握に全力で努めておるところでございます。  今後も、引き続き県、市町村あるいは関係団体と綿密な連絡をとり、最善かつ早急な災害復旧対策を実施するとともに、農業共済につきまして、迅速な損害の評価、そして早期支払いの指導を行う等、被害対策に万全を尽くしたいと思います。
  214. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。  さて、その次でございますが、総理財革法を凍結するという決意をなさったのはいつですか。総裁に立候補するときでございますか。それとも、外務大臣当時、腹にはあったのだけれども、発表だけしなかったのですか。これ、いつごろですか、この凍結の決意。その時期だけでいいです。
  215. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般自由民主党の総裁選出馬に当たりまして、種々の政策を発表するに当たりまして、財革法につきましても、その関連におきまして措置をいたしませんと私の考え方が実行できないということで、その時点で考えました。
  216. 坂上富男

    ○坂上委員 立候補するとき初めて過ちをわかった、こういうことでございますが、これはどうも、ちょっとやはりこんな程度のことじゃいただけないのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。  じゃ、総理、宮澤先生を蔵相にお願いをいたしました。そのときのこういう言葉があるのでございますが、これが決着しないと、就任していただかぬと、首班指名されても組閣ができない、断念せざるを得ない、ほかに考えようがない、こうおっしゃった。これ単なる口説き言葉ですか。笑い事じゃない。それとも、小渕総理本当の真意でございますか。どっちです。
  217. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私自身、スーパーマンでもありませんし、至らざる点、多々あります。しかし、この大任を負うに当たりまして、現下の特に不良債権問題の解決等、と同時に経済再生内閣ということを最大の重点課題として取り組む内閣といたしましては、本問題につきまして長きにわたりまして御経験を持たれる宮澤先生の御出馬をお願いしなければならぬということでございまして、私といたしまして、大変恐縮なことでございますけれども、ぜひ宮澤先生のお力を得て内閣としての方針を貫きたい、こう思いまして、私がそうした考えで御就任をお願いした、こういうことでございます。
  218. 坂上富男

    ○坂上委員 そうしますと、総理、単なる口説き言葉ではないんですね。これ、万一宮澤先生が閣外に去られるということになりますと、どうするんですか。総辞職ですか。
  219. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現下のこの内閣の抱えている重大課題につきまして、宮澤大蔵大臣におかれましても、全精力を傾けてこの諸問題に取り組んでいただけるものと確信をいたしております。
  220. 坂上富男

    ○坂上委員 直接のお答えがありません。これからの政局のために聞いているわけであります。万々一宮澤先生が閣外に去られる場合はどうするんですか、こういう話なんです。  だものでございまするから、もう少し決意をお話しいただかないと、せっかくこういうベストメンバーで臨んだんだ、特に一番の目玉は宮澤先生だ、こう言っておるわけでございまして、宮澤先生が御承諾いただかなければ組閣ができなかったわけ。もし宮澤さんが入閣しなかったら組閣断念だったですか。どうです。
  221. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 どこでどういう発言になっておるか記憶をすべていたしておりませんが、気持ちといたしましては、ぜひ今般、この重要な、この国会の最大の課題である問題に取り組むこの内閣として、宮澤先生のお力をいただきたいという気持ちを込めて私自身としてはお願いをいたしておるわけでございます。  それから、しからばおやめになったら、こう言われますけれども、それはこの内閣として果たすべきことを十分果たしていくということでこの内閣は一致結束をいたしておると思っております。私も微力ながらその先頭に立ってまいりたいと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
  222. 坂上富男

    ○坂上委員 宮澤先生については、いわゆるバブル経済発生の、どうも責任者じゃないか。それから、今度はバブル崩壊後のこれに対する措置の責任者ではなかったのか、総理でありましたから。したがいまして、どうもこの不良債権問題の解決のために宮澤先生を起用したことは間違いじゃないか、A級戦犯ではないか、こういうお話が参議院の本会議でありました。  そういうような状況に対しまして、小渕総理はこういうふうにお答えになっておるわけでございます。宮澤蔵相が以前に蔵相や首相に在任中、財政金融政策はその時々に適切と考えられる政策を講じておられたと承知をしていると答弁をしておられるわけでございます。  それに対しまして宮澤先生は、次のような答弁をなさっているわけでございます。  プラザ合意後、一般の予測に反して円は急騰を続け、円高不況が経験したことがない大きさで日本経済を襲った。政府は何度かにわたって補正予算を組み、しばしばドル買いの市場介入をした。これらは後に過剰流動性の原因となった。過剰流動性は不動産、株への投資に向かうということはわかっていたんだから、マネーサプライを質、量ともに抑えて金融機関の不動産投資を規制すべきであったと反省をなさっているわけであります。そして、蔵相をやめられまして九〇年に総量規制が行われたのでありますが、遅過ぎたし、穴があった、こういうふうに反省をなさっておるわけであります。  したがいまして、総理、宮澤先生はやはりこれだけの反省をなさっておるわけでございます。したがって、私は適任じゃないというふうにもおっしゃったんじゃないですか。それなのにあなたは、今言ったような、まさに三顧の礼をもって宮澤先生にお願いをした、こういうことでございますが、あなたの宮澤先生がやってこられた政策に対する認識は、非常に間違っているんじゃございませんか。もし間違っていないとするならば、私はまたこれから事実を指摘をしますが、率直に言って、どうですか。
  223. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 それぞれの時点における政策逐一をすべて承知をしているわけではございませんが、少なくとも、我が党における財政金融の最も経験の深い政治家のお一人であることは私認めるところでございまして、そういった点を含めまして、特に、今回の金融再生トータルプラン、こうしたものをつくり上げる過程の中で、宮澤先生も党内におきましてその中心になってお考えをおまとめをいただいたことでございまして、そうしたものを前提にして今国会に臨んでおるということでもございますので、そうした貴重な御経験、そして御見識、こういうものを生かしていただきたい、こう思いまして私としてはお願いした次第でございます。
  224. 坂上富男

    ○坂上委員 総理、宮澤先生の貴重な経験は失敗であった、失政であった、こうまで宮澤先生が反省なさっているんです。だとするならば、あなたの認識は誤りなんじゃないですか。さらに一歩あれしますと、大変失礼でございますが、大蔵大臣としての起用は誤りだったんじゃないですか。どうです。
  225. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今予算委員会におきましても、大蔵大臣とされましての御答弁等を総理としてお聞きをいたしておりましても、極めて適切なお考えをお示ししておるということでありまして、改めて私は、お願いしたことに誤りなかったことを確信いたしておる次第でございます。
  226. 坂上富男

    ○坂上委員 では、それだったら、まずお聞きをしましょう。  あなたは、国会答弁をなさったことは、つかさつかさで適切な施策、措置を講じられたと言っておりますが、講じられておりませんね。だから、みずから、私は顧みていろいろ過ぎれば過ぎるほど問題があったというようなお話があったわけであります。私は、非常に謙虚でいいと思っていますよ。しかし、だから私はと、ちゅうちょされたことがあったんだろうと私は思っているのです。  そこで、では、運命共同体になったわけでございますからお聞きをしますが、一両年というお話がありました。これはあれですか、来年の九月まで、自民党総裁の任期が来るまで、こういう意味ですか、一両年というのは。  それから、内閣の命運をかけるという意味ですが、これはどういう意味ですか。内閣総辞職という意味ですか。どういうことです。
  227. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 来年の九月といいますと、今から数えて一年でございまして、一両年ということは、両ということは二ということでございますので、よく日本語の用語としてはこういう使い方をされまして、沖縄返還のときも、両三年、こう言っておりました。したがいまして、少なくとも二年くらいをめどに回復基調に、ぜひこの日本の景気を回復させたいという強い願望を持ってそのことを申し上げたわけでございまして、そのことは、内閣の命運をかけるということは、内閣全体でそれが達成のために一致結束して努力をするという決意をこれまた申し述べたものと御理解いただきたいと思います。
  228. 坂上富男

    ○坂上委員 来年の九月はいわゆる総裁の改選になるんでしょう。そうしますと、九月を過ぎてまでも、そういうように、総裁でなくとも大臣を務めていられるんですか。自民党の対応はそうなんでございましょうか。これをひとつお答えいただきたいと思っております。
  229. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 自由民主党の総裁の任期は二年に相なっておりますので、私がお引き受けしましたのは橋本前総理の残任期間と心得ておりますので、来年のしかるべき時期には、党の規則によりまして、その任期は来るものと理解しております。
  230. 坂上富男

    ○坂上委員 そうすると、総理、あなたが自民党総裁の任期を終了するまでには、この回復はだめなんですか。どうぞ。
  231. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 懸命の努力を傾注いたしてまいりたいと思っております。
  232. 坂上富男

    ○坂上委員 結構です。  宮澤大蔵大臣にお聞きをいたします。  大臣は、昭和六十三年、八八年でございますが、十二月九日、大蔵大臣を辞任されました。この辞任の理由について、ひとつお話しください。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当時の記憶がございます。  昭和六十三年十二月九日、リクルート問題に元秘書が関係し、これについての私の国会での説明が的確でなかったことについて、私は深く責任を感じております、税制の抜本改革が衆議院を通過し、今参議院での御審議に当たり、私はこれまでの責任を明らかにするため、本日、大蔵大臣を辞任いたしましたと。
  234. 坂上富男

    ○坂上委員 バブル経済の発生と崩壊のいきさつ、私は一覧表をずっとつくってまいりまして、この真ん中ごろに、いわゆる不景気から今度は景気拡張期に入りました。そして、その当時は大臣は大蔵大臣でございました。そこで、この拡張期の中では、大臣は確かに総量規制を必要とするというふうに今反省をなさっておるわけでございますが、これがやっと九〇年の三月二十七日に成ったわけでございます。  いわゆるこの年、八七年から九〇年というのは、マネーサプライの伸長を容認して、資産価格の上昇を招くという事態であったわけであります。そこで、政策として必要なのは、金融引き締めへの転換がおくれていることに対して、非常に問題があった、こういう時期なんでございます。  そういう大事な時期に、いわゆるリクルートの問題があって、これは、実は私が、大変申しわけありませんが、宮澤先生に強く追及をいたしまして、結局のところ、国会は虚偽答弁となり、リクルートの江副証人が証人に喚問をされまして、宮澤先生がおっしゃっておることはすべて違うということがこの江副氏の証言によって判明いたしました。  だから、リクルートの責任をとっておやめになったことは間違いないのでございますが、そういう一番大事な時期にあったわけでございますが、今顧みられて、この辞任のときと、このような状況をお考えになって、先生、どうお思いでございますか、大蔵大臣。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、国会に対しまして申し上げましたことが的確でありませんでした。国務大臣として、国会に対して責任を負って辞任をいたしました。そのことにつきましては、今日に至るまで反省をいたしております。
  236. 坂上富男

    ○坂上委員 これは、これ以上追及をいたしません。  しかし、去年でございますが、第一勧銀それから野村証券問題から端を発しまして、また大変な疑惑問題が起きてまいりました。  そこで、私は、宮澤さんにつきましては、野村証券の内部告発をした人が、いわゆる宮澤さんが野村証券のVIP口座をお持ちである、こういうことを雑誌の中にも書いて、元首相と書いてありましたが、いろいろ聞いてみたら、どうも宮澤先生のようでございます。そこで、そのことを私は国会の中で指摘いたしました。宮澤先生、それについては否定をされませんでした。ただ国債だけがあるんです、こういうお話でございました。  宮澤先生、それは事実ですか、大蔵大臣。国債だけですか、このVIP口座。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのときの報道は私も知っておりまして、調査をいたしました。こういうことでございます。  昭和五十二年、福田内閣でございますが、あるいはもうちょっと早いかもしれません。そのとき以来、閣議で閣僚は歳費の一部をもって国債を買うという申し合わせがございまして、毎月、内閣の官房でございますか、各閣僚からその所要額を差し引きまして、口座を開きまして、その口座で国債を保有する、こういうことをいたしてまいりました。その口座が野村証券にございます。  今日もその口座はございまして、私は長年閣僚をいたしましたので、かなり何度も国債が買われておりまして、今日、まだ未償還のものが幾らかございます。口座云々という報道はこのことでございまして、私はそれ以外に口座を持っておりませんし、株の取引もいたしませんし、したがいまして、その口座がほかの用途に利用されていることはございません。
  238. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣として国会での答弁でございまして、これ以上要求することは失礼かと思いますが、しかし、事は事だけに、今申されましたことを証明できるでございましょうか。証明の方法、今申されたこと、宮澤先生。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この口座があることは、私は自分で調べまして、それ以上のものは全くございませんので、もしお疑いがございましたら、どうぞ御調査をお願いします。
  240. 坂上富男

    ○坂上委員 私は、大臣に証明をしていただきたい、こう言っているわけであります。証明できないならば結構でございます。確かに御答弁は御答弁でいただきました。だけれども、これは、やはり問題があって質問をし、問題になったわけでございまするから、これを証明する方法は、手だてはとられませんか、こう聞いているのです。  そういうことはしませんが、どうぞ、私が行って調べることは構わない、こういうことでございますか、では、行って調べますが。どうぞ。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何かあるという証明はできますが、何もないという証明はいたしようがございませんので、どうぞ、何かございましたら御指摘をください。
  242. 坂上富男

    ○坂上委員 こんなもの、証明は簡単ですよ、ちゃんと口座があるんだから。国債をいつ買った、そして何を買ったということが書いてあるわけですから、そこから証明してもらえば簡単じゃないですか。そういうことを言っているのです、あなたのためにも。どうぞ。
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 調べまして、何もないということを申し上げておるのです。ただいま、まだこの口座は国債を保有いたしております。それ以外のものは一切保有しておりません。
  244. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、総理、今、宮澤先生の辞任の事情それからいろいろの指摘等がございました。特に私は、問題にしたいことの一つは、国会での答弁が必ずしも的確でない、そしてそれが間違っていたということで、責任をとられておやめになったのです。そして、バブルに対する私の責任もある、こうおっしゃっておるわけでございます。でありまするから、このバブルから発生をいたしました不良債権の解消、措置の問題について、いわゆる景気回復のために必要だ、そして宮澤さんの方から、一番最適任だから御就任をいただいた、こういうことでございます。  これはどうでございますか、宮澤さんが本当に、私は辞退を申し上げたい、こうおっしゃっていたのを、さっき言ったようなお言葉で、宮澤先生にあなたは御承認をいただいた、こういうことでございます。  宮澤先生はそういう点について、いわゆる総理の、当時総裁なんでございますが、お話のときの御心境をもう少しお聞かせをいただきたいと思っておるわけでございます。  そこで、そのときの中に、悪い銀行を救うこととは違います、状況をどうやったらいわゆる悲劇的な結末にならないように収拾するかが大切だ、こうあなたは当時の総裁におっしゃっておるわけでございます。(発言する者あり)今も総裁ですから、総裁でいい、この間の話だよ。これについては、どういうような意味でございますか、これは。悪い銀行というのとよい銀行というものの区別はどうしたらいいのでございますか。それから、悲劇的な結末にならないように必死になって努力をする必要がある、よって就任だ、承諾をした、こうおっしゃっておるわけでございますが、これはどういう意味ですか、もう少し詳しく。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 悪い銀行といい銀行ということをおっしゃいまして、いわゆるグッドバンクとかバッドバンクとか言われますけれども、私が申しましたのは、一つは、経営が不振であることのみならず、それについて経営者の指弾せらるべき行為がある、あるいは不注意がある等々を一般的に悪い銀行。よい銀行というのは、そうではなくて、経営そのものが誠実に銀行業を営んでおる。ただ、一生懸命やりましても結果がよく出ないということもございますけれども、とにかくこれ以上破綻の救いようがないという銀行はどうも救いようがない。それはやむを得ない。  ただ、その結果、預金者が苦しむとか、あるいは善意のお客様が融資先を失うとかいうことは、これはやはり避けなければならない。悲劇的という意味は、そのような、起こります個人あるいは社会に対するコストということでございます。
  246. 坂上富男

    ○坂上委員 そうしますと、こう聞いていいですか。悪い銀行はあります、しかし悪い銀行の中にも善意な借り手もありますし、そういうようなことから見ますと、こういう人たちをどう救うかということをひとつやりたい、しかし悪い銀行については政府としては一切関与しない、こういうことですか。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日から申し上げておりましたとおり、銀行経営が行き詰まりまして、破綻する、債務超過になるというようなことになりますと、この救いようはございません。  ただ、その場合、預金者は保護されることがはっきりいたしておりますけれども、いいお客さんが路頭に迷うというようなことはなるべく避けたいと考えますので、ブリッジバンクのようなことをお願いいたしたいと思っておるわけでございます。
  248. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、大蔵大臣、悪い銀行というのは大蔵省から見ましても相当あるんですね。
  249. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現状でございましたら、監督庁長官の御所管でございます。
  250. 坂上富男

    ○坂上委員 就任をなさるときの会話の中にあるから聞いているんです。だから、宮澤さんとしては、大蔵大臣としての御答弁よりも、あなたの認識を聞いているんです。悪い銀行というのは、さっき説明がありました、あるんですね、こう聞いているんです。
  251. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ある、ないが大事ではございませんで、一般的に悪いものといいものはございますからということを言っておるわけです。
  252. 坂上富男

    ○坂上委員 悪い銀行とは言わないで、いいのと悪いのがある、こう言っているだけなんだ、こういうことですか。ちゃんと小渕さんとの会話の中に、悪い銀行、こう言っているんですよ。それを、いいのと悪いのがあるなんて言っていないんです。悪い銀行の結果、悲劇的な結末にならないように収拾をしたい、こうおっしゃっているのですよ、それで聞いているのですから。どうぞもう少し。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問の意味がもう一つわかりかねますが、しかしこの一、二年見ましても、経営が悪くて破綻した銀行はあるわけでございます。
  254. 坂上富男

    ○坂上委員 破綻した銀行を悪い銀行というのでございますか。どうですか。金融庁、どうぞ。
  255. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えしたいと思います。  恐らく不良債権と申しましてもいろいろな切り口があるだろうと存じます。法律上これを定義づけるといたしますと、来年の三月期からは罰則つきで、かつ単体のみならず連結でディスクローズすることとされております各金融機関の財務諸表の内容に盛られております不良債権は、いわゆるSEC基準と言われるものに基づいて計上される不良債権でございますが、不良債権につきましてはさまざまな切り口がございまして、そのほかにも、御案内のとおり、各金融機関が決算の前提としてそれぞれ自行が査定するという意味での不良債権もあろうかと存じます。
  256. 坂上富男

    ○坂上委員 余り議論していると時間がないから、少し進みましょう。  自己査定による不良債権は八十七兆円だと言われております。これ、業種別に上位五位までの業種を挙げていただきまして、不良債権が八十七兆円の中にどういう割合を占めているか御答弁いただきたいと思います。
  257. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  八十七兆円と申しましても、その大半はいわゆる二分類の債権でございますが、この二分類の債権は管理を怠らなければ恐らく回収されることがほぼ間違いないと言われるものでございまして、中には、現在は大変経営的に苦しい、したがって、利子も払えないけれども、間もなく例えば景気が回復すれば状況はよくなるだろうとか、さまざまな業種があるだろうと存じますので、必ずしもその二分類債権全体をとらえて不良債権と言うことは当たらないかと思います。  それから、御質問の業種ごとの不良債権額についてでございますが、自己査定を私どもが検査を通じましてさまざまな観点からその資産の内容を債務者別にいろいろ検討するわけでございますが、大変恐縮でございますけれども、実は業種ごとの例えばホテル業でありますとか旅館業でありますとか、医療、病院でありますとか、そういった意味での統計といいますか集計をしておりませんので、その点はなんでございますが、仮に集計をしたとしましても、これを公表いたしますと結局不良債権額の大きい業種に対する金融機関の融資態度に悪い影響を及ぼすのではないだろうかと考えられまして、そうなりますと、そういった業種の資金調達が大変苦しくなるということもございますので、慎重に考えてまいりたいと考えております。
  258. 坂上富男

    ○坂上委員 お聞きをしていますと、業種別の把握はまだしてありません、こういうことです。  だけれども、自己査定で八十七兆円出てきたわけであります。この中には結構回収できるものもあるでしょう、回収してもらわぬといかぬと思いますよ。だけれども、この八十七兆円の中で業種別にどういう割合になっているかということは、やはりこれは調べておくべきことなのではないですか。こんなものは調べなくたっていいのだ、八十七兆円がどことどこにどういうふうにあるかだけやればもうこの法案の審議はいいのだというようなことになるのですか。こんな程度の調査で私たちにこの六法案を何とか審議してくれなんというのは、本当に全く調査不十分ではないですか。きちんと答えてください。  もう一つ、国税庁おりますか。国税庁、競売になりますと交付要求しますね。だけれども、競売にならなくて今抵当権を設定しているもの、それから今あなたたちが競売しているものがありますね。これが今度は不動産調整法によっていわゆる調整をするとき、国税庁のこれはどうなるんですか、これもついでに答えてください。
  259. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  租税の賦課徴収につきましては、法律の規定に基づいて行っておりますので、金融機関不良債権の処理に関して国税の債権を放棄するということは、法律に規定がなくて許されないという状況でございます。
  260. 坂上富男

    ○坂上委員 自治省も聞きたいのです、それから労働省も聞きたいのですが、これは公租公課と言っているわけです。今御答弁ありましたとおり、いわゆるこの不良債権にどれだけ国税なりなんなりが差し押さえになっているのか、どれだけ担保設定してあるのかということは、私は照会したのです。そういたしましたら、その必要性は薄いという答弁なんです。  国税庁、今聞いておれば、これはきちっと出しておかなければ、不良債権の調整法が成立をして審査をするときの資料にならないんだよ。しかもあなた、調整が成立しても、法律の規定があるから絶対に放棄できないというんでしょう。放棄できないとするならば、これは一体どうするんですか。せっかく話がまとまったけれども、国税庁が、担保がついておって放棄しませんよ、法律の規定があるから。あるんだったら、あのオウムと同じように特別立法してください、こう言うのかね。どうですか。
  261. 日野正晴

    ○日野政府委員 まず、さきの御質問に対してお答えしたいと思いますが、金融監督庁としては、主要十九行の集中検査を通じましてこの不良債権の資産内容の的確な把握に努めてまいりたいというふうに考えております。(坂上委員「さっきの答弁も、国税庁の意見についてあなたは立場としてどう考えているのですか、この問題を。今これからあなたが、法案が通ったら処理しようとしているわけだ。どう考えているの」と呼ぶ)
  262. 中山正暉

    中山委員長 ちょっと、委員長の許可を得てください。  日野長官
  263. 日野正晴

    ○日野政府委員 私どもは与えられた法律を執行する立場でございまして、既存の法律に何か問題があるときには、私どもの役所には法律案を立案する権限といいますか、それはまだ大蔵省に残されておりまして、その大蔵省金融企画局を通じてお願いすることになろうかと思います。
  264. 坂上富男

    ○坂上委員 わかりました。じゃ、大蔵大臣、今の問題点の指摘、おわかりだと思いますが、これにどう対応するのです。
  265. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生御案内のように、今度の不動産関連権利等調整の仕事に当たりましては、譲り合いでもって、債権の放棄であるとかあるいは利払いの条件の緩和であるとか等々、いろいろなお互いの譲り合いというものが必要になってくるわけです。  そこで問題は、債権者の中に全然譲れない国税債権あるいは公租公課の債権があるということでございまして、これでは非常に動きにくいのではないかということ、この限りでは先生の御主張をここでは認めざるを得ないわけですけれども、私どもとしては、だから、それがあるからといってもうこのシステムが全く動かないというふうにも考えておりませんで、それを除外したところで私どもとしてのこの目的のそれぞれの譲り合いというものを考えてまいりたい、これが現時点での我々のお答えでございます。
  266. 坂上富男

    ○坂上委員 そこで問題なんですよ。  まず第一、公租公課が不良債権の場合どれだけあるのか、そして、国民がこれについてどれだけの損をしなければならぬのかということは明確にせいと言って私は文書で出しているのに、必要性は薄い、こういう答弁をしているんだ、私のところに。こういうようなことではいかない。じゃ、これまけてくれるの、放棄するのと言ったら、法律があって絶対できないんですと言うのです。こういうことを国土庁長官、予想していましたか。今もって予想していない。今指摘があって初めてわかったでしょう。こうやって、何兆円もきっと不良債権ですからあるんだろうと私は思いますよ。こういうものを押さえておいて、お互いに譲歩して調整なんてできますか。どうですか。
  267. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生は、非常にその公租公課の額が巨額に上っておって、この法律の働く余地が少ないというような前提でお話をいただいているわけですけれども、私どもとしては、これを動かして、それからまた、動かすに当たってはいろいろ準備もいたしますけれども、そういう考え方で取り組んでいきたい、こういうふうに考えておると申し上げたいと思います。
  268. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、公租公課は大体この八十七兆円の中で幾らと見ておられるのか、こう聞いているんですよ。あなたたちは、本当にそういうふうなことを満足に調査もしないで、それでばあっと通してくれ、こういうお話なんですよ。しかも、国税や公租公課は、特別立法しなければこれは免除にならないんですから。だから、これが八十七兆円の何%あるんだか、何割あるのかということを私は執拗に聞いているんだけれども、必要性がない、答えられないみたいな、そういうことなんです。どうですか。
  269. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  競売手続に交付要求した場合、今先生の言われたようなケースでは、滞納の国税の徴収見込み額の把握というのは、滞納手続が開始された段階で、個々の事案ごとに行うということになっております。したがって、金融機関不良債権に関して、債務者が公表されていない、しかも不良債権の大半が競売手続に入っていない状況下では、いわば徴収見込み額を全体として把握するということは困難だと申し上げたわけでございます。  なお、先ほどの先生の御指摘のございました国税と抵当権との優先関係でございますが……(坂上委員「そんなのわかっている、そんなの聞いていない」と呼ぶ)ただ……(坂上委員「いいから」と呼ぶ)はい。
  270. 坂上富男

    ○坂上委員 よく質問にそのとおり答えていないんだから、時間つぶしだ、これは。  さて、金融庁調査をして報告をするという、これはもう私のところなり委員会に出していただけるのですか。これは、あるいは百歩譲って、業種に迷惑になったとするならば、それこそ秘密会に報告をしてもらわなければ、御存じのとおり、さっきもゼネコンに対する徳政令じゃないかというお話も出ているわけです。だから、業種別のものをきちっと出す、公租公課をきちっと出す、そしてこの不良債権の八十七兆円のうち実質回収は幾らできるのか、そして国税で幾ら持っていかれるのか、そしてあとはどういうふうにして調整化するのかということは、この辺をやる場合には、調整をやる場合において極めて基本的なことなんですよ。頭を押さえつけて、立て立てと言っているようなものだ。国税庁長官、いつ出しますか。  それから、今の国税庁の話、これはどういうふうに皆さん理解しているの、運営に当たっては。
  271. 日野正晴

    ○日野政府委員 ただいま検査を行っておりまして、いつまでというふうにおっしゃいましても、なかなか期限を申し上げることはできませんが、できるだけ早くそういった作業を進めてまいりたいというふうに考えております。
  272. 坂上富男

    ○坂上委員 こんなの、八十七兆円がわかっているんだから、各銀行に聞けばすぐわかることじゃないですか。何でそんな四の五の答弁しているんですか。そんな答弁じゃ承服できないね。いつまでに出せるかはっきり言明しなさい。そうでなければ質問続けられませんね。  それから、国税の把握、租税の把握についてもどう見ているんですか。これは一番基本的なことなんですよ。だから、これを見ないうちは、この審議をしたら、国民に対して粗雑の、疎漏の審査になるんですよ。国民皆様方に申しわけないということになるわけであります。だから、きちっと出すべき資料を出しなさい、こう言っているわけだ。  答弁いかんによってひとつ対応したいと思いますから。
  273. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生、最初の前提がまず八十六兆円ありきということでやっているわけですけれども、これは自己申告です。しかもこれは、別に不良債権とかと言って自己申告したものではないんです。彼らが分類をした、自分たちの考え方で。その分類の八十六兆円の中の大宗は第二分類なんです。問題ではあるんですけれども、多くのものは注意さえしていれば問題なく回収できる、そういうものなんでございます。  それに対応して、抵当権だとかあるいは国税債権がどう対応しているかということを今ここで大問題にしなければこの法案の審議が進まないというようなことは、これは私は、皆さん聞いていておわかりのとおり、そういう関係にはない。これはまずはっきりと申し上げておきます。  それから第二番目に、徳政令というお話でございましたけれども、これは、先生がそういう話もあったじゃないかということで御引用になられたわけですけれども、これも、徳政令というのは、公権でもって債務の切り捨てをしてしまう、鎌倉時代にあった、あるいは足利時代にあったというようなことは我々聞いておりますけれども、そういうようなことではなくて、我々は、これは強権的に債務の免除を命令するというようなことは全く考えていないんです。相互に、互譲で、お互いに合意の上でこの問題の権利関係の調整をしていく、こういうことでございます。  しかも、その合意の中には、公正、妥当、それから遂行可能、債権のためのいろいろな法律の制度の三つの基本原則がちゃんと盛り込まれているんです。その点を御理解を賜りたいと思います。(坂上委員金融庁、さっきの質問答弁しなさい、いつ提出するのか」と呼ぶ)
  274. 日野正晴

    ○日野政府委員 検査の期間につきましては、従来、大蔵省金融検査部でやっておりましたときにはおおむね二カ月ぐらいを要していたようでございます。  私どもは、六月二十二日に四百三人という非常に小ぢんまりした体制で出発したわけでございまして、今度の検査も、従来行っていたようなかなり網羅的な検査というよりは、むしろ資産査定に重点を置いた、つまり、二分類債権に重点を置いた検査に今鋭意努めているわけでございまして、従来ほど期間はかからないと思いますけれども、とにかくできるだけ早くやるということでひとつお許しいただきたいと思います。
  275. 坂上富男

    ○坂上委員 八十七兆円が自己査定であることぐらいわかっているんです。それを前提に質問しているわけです。それは、だから生きるのが相当たくさんあるでしょう。生かしてもらわないと困るんです。だけれども、仮に半分生きて半分死んだらどうしますか。四十何兆円ですよ。大変な問題なんです。  だから、この中に幾らあるかということを、国税の公租公課、そして業種別、そういうことをきちっとしなければ、審査できるんですといって、審査するんですか、このままの状態で。早く出してもらって、必要ならばできるだけ審査をして、そして通るならば通ればいいし、だめならだめなように検討しようというのが今予算委員会の任務だから聞いているんですよ。それを、あなたの前提が間違っているがごときことを言って、とんでもない。八十七兆円というのはそういう意味の不良債権なんだ。だから、その辺をよく認識しなければ担当大臣としても私はいささか問題なんじゃなかろうかと思いますよ。今、租税のことがわからないで不良債権議論はできませんよ。  それからあなた、業種別がわからないでこういう議論ができますか。どうですか。
  276. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、業種別の不良債権額を集計して公表いたしますと、その不良債権額が大きい業種に対する金融機関の融資態度に悪影響を及ぼすばかりでなく、その企業の資金調達にも悪影響をもたらすおそれがございますので、慎重に考えてまいりたいと存じます。
  277. 坂上富男

    ○坂上委員 こういうような態度でいかがかなと思っておりますが、委員長に要請いたします。  ただいまの二点の資料、公租公課、大体八十七兆円のうちどれぐらい見たらいいのか、それから今言ったところの業種別、これを、どの業種で、上位五つ、そしてその割合はどれぐらいなのか、これはひとつ報告を求めてください。証言法によるところの申請をいたしたいと思います。  ぜひともひとつ対応していただきますことをお願いをいたします。
  278. 中山正暉

    中山委員長 後刻理事会で協議いたしたいと存じます。
  279. 坂上富男

    ○坂上委員 さてそこで、これはどっちへ求めるのでしょうね。破綻破綻というのは、一体法律上どういうことをいいますか。会社法の整理、それから会社更生法の原因、破産法の原因、これと比べてみてどういう違いが出るのか、御答弁ください。
  280. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 破綻につきましては、預金保険法に規定がございます。規定の趣旨といたしますところは、預金の支払いに困難を生ずるおそれがある場合、あるいは預金の支払いを停止した場合、そういう趣旨の条文の定義がございます。
  281. 坂上富男

    ○坂上委員 例を挙げます。  これは、債務超過、流動性危険が起きた場合を指しますか。どうですか。——大蔵大臣、わからぬの。今御答弁になったから、その御答弁を補足する意味で聞いているのです。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、預金保険法そのものは私の権限に入っておるのでございますが、そういう場合の判定は、実際問題としては長官の方に入っている。  もう一遍申し上げます。  預金保険法の第二条、「この法律において「破綻金融機関」とは、業務若しくは財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれのある金融機関又は預金等の払戻しを停止した金融機関をいう。」この実態については、これはやはり行政の判断になると思います。
  283. 坂上富男

    ○坂上委員 だから、債務超過は含むのかを聞いているのです。どうです。——どうぞ。お答えになるなら早く。
  284. 日野正晴

    ○日野政府委員 私どもの方は、この法案を通していただきまして法律になった暁にこれを執行する立場から解釈させていただきますと、今お話にありましたように、債務超過というような状態になったときには、恐らく流動性についてもかなり危ない状態になっているのではないか。つまり、ここで言う破綻というのは、静止的な状態での債務超過と、それから流動性の意味での破綻という、いろいろな解釈があり得るかと思いますが、先生がおっしゃったような場合にはもちろん破綻になるのではないかというふうに考えております。
  285. 坂上富男

    ○坂上委員 もう一点、善意の借り手とはどういうことですか。
  286. 中山正暉

    中山委員長 時間でございます。
  287. 坂上富男

    ○坂上委員 時間ですか。もうだめですか。
  288. 中山正暉

    中山委員長 時間が来ました。  これにて坂上君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君から質疑の申し出があります。これを許します。西川知雄君。
  289. 西川知雄

    西川(知)委員 平和・改革西川知雄でございます。きょうは、五十分、金融問題に絞って御質問をさせていただきたいと思います。  この金融再生トータルプラン、そしてこれに基づくブリッジバンク法案、この詳細については、また私も特別委員会の委員にさせていただいておりますので、そこで詳しく質問をしたいと思いますが、その前提条件として、きょうは、不良債権情報開示の問題と経営者の責任追及の問題、この二つをまず取り上げまして、そして公的資金導入の前提条件、この点について絞って質問をいたしたいと思います。  まず、不良債権問題、そしてこれにまつわる銀行破綻、そのおそれ、これに対応するものとしてブリッジバンク法案以下五法案含めまして六法案が提出をされているところでございますが、小渕総理総理は、この不良債権問題というのは極めて重要で、そしてこれに対する対策というものもきちんととらないといけない、こういうふうな趣旨の説明をされております。それと同時に、不良債権内容、これについて、SEC基準その他を駆使して十二分にその内容を判明させる、そういうことが必要であるというふうにおっしゃっています。また、今十九行に対する検査が入っている、その内容は十二分にまだわかっていない、こういうふうにおっしゃっております。  ところで、私はちょっと疑問があるので、これをお尋ねしたいのです。  ある事実があります。その事実にまた問題があります。その問題に対してどういう対応をするのが一番ベストかということで政策をつくります。そうですね。その政策がいいかどうか、これはまたその議論の余地がございます。ところが、今我々が、また政府がやろうとしていることは、不良債権、この実態がよくわからない。また、各銀行内容経営状況、そういうものもまだ十分にはわかっていない。そういうふうに、一体どういう問題がどの程度の重さを持って、そしてどんな質で、内容があるのかということが十二分にわかっていないわけですね。  そのときに、今ブリッジバンクの法案を出されております。私は、このブリッジバンクの法案というものが、一つの事実というものがわかっていた、そしてこの対策が一番いいというふうに出されているのならよく話はわかるのですが、前提となる問題点が十二分にわからないのに、どうしてこのブリッジバンク政府提案の法案が一番いいというふうにして法案を提出されたのか、その辺のところをまずお聞きしたいと思います。
  290. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 だれしも現下の日本経済の重要な課題として、金融機関における不良債権問題が、ある意味では最大の現下喫緊の解決しなければならない課題であることは承知をいたしておると思っております。  したがいまして、これに関しまして、特にアメリカの例その他を検討しながら、これに対処する道はいかなるものがあり得るかということにおきまして自由民主党の党内で十分検討した結果、いわゆる金融再生トータルプランによりまして、現下、法律を二法出させていただいており、四法を議員立法として提案させていただいて、現下の状況の中で想定される金融機関の今後の状況を判断しながら、この法律をもって対処いたすべきものとして出させていただいている、こういうことでございます。
  291. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは総理、現下の状況を勘案してというふうにおっしゃいましたが、現下の状況というのは何ですか。
  292. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 不良債権がそれぞれの金融機関におきまして想像を超えるような数字に相なり来っておりまして、そうした自己開示における数字その他を勘案いたしますと、それぞれの金融機関のあり方として健全なるものにはなり得ないのではないか、これを一日も早く解消しなければ経済の血液が体全体に回らないという状況を思うとき、それに対する対処として、この法律案を考えた次第でございます。
  293. 西川知雄

    西川(知)委員 想像を超えるというふうにおっしゃいましたが、どういうふうに想像されていたのか私はよくわからないわけでございます。とにかく大手の銀行が倒れるという場合もあるでしょう。また、平成三年から、実に破綻した金融機関というのは六十三件ぐらいあるわけです。そして、その中には小さいものもある。そして大きな銀行が小さく債務超過で倒れる場合もあるだろう。小さな銀行が大きな債務を負って債務超過で倒れる場合もあろう。いろいろなバリエーションがあるわけですね。こういうすべてのバリエーションに対応できるような今の法案かどうかということを、まずお尋ねしたいと思います。  総理に。委員長、法案がどういうことかということを聞いているわけですから、金融監督庁ではわかりませんよ。
  294. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えさせていただきます。  今先生が言われましたように、これからディスクロージャーを徹底したり、また不良債権の処理を進めていく過程におきまして、やはり経営困難に陥る金融機関が出てくることが予想されるわけでございます。  そういうときに、金融機関破綻をいかに処理していくかということでございますが、まず、民間の引受金融機関が登場しない場合でも、金融システムの安定と預金者の保護を確保いたしまして、迅速に金融の危機管理を行える体制を整備しまして万全を期すとともに、その民間の引受金融機関が登場しないために、善意でありかつ健全でありながら新たな取引銀行を見出せないような借り手の対策、これに資する体制を整備するというのがこの法案のまず趣旨、目的の大事な点でございます。
  295. 西川知雄

    西川(知)委員 今の説明は法案の提出の概要に書いてありますから、そんなことは全部読んでいますから、そういうお答えじゃなくて、私が政策判断として総理お尋ねしたいわけです。  それは、今言いましたように、金融機関破綻といってもいろいろな破綻の仕方があるわけですね。そして、我々が今まで経験したことのないような破綻、そういうことだってあるかもしれません。どんな破綻が起こり得るかわからない。  私もそういう国際関係の金融、そういうことの弁護士をずっとやっていましたから、昔はデリバティブなんというのはそんなになかったわけなんですよね。ところが、だんだんデリバティブというものが規模が大きくなって、裁定取引をやったり、スワップションをやったり、いろいろな面で大変新しい時代に入ってきた。その影響もありまして、きのう日銀の総裁が説明されたように、そのデリバティブがどうなるかということも国際金融マーケットに非常に大きな影響を与えるということなんですね。そして、この一年、二年の間に、またことしに、どんなことが、どういう理由で破綻が起きるかわからない。  そういうときに、一つの方策だけを、これが絶対いい、また、これがいいんじゃないかというふうに今出されているわけです。そして、その出され方が、今の不良債権内容銀行の実情がまだわからないのに、ぽんと出しておられる。これが私は非常によくわからないし、また、これでは十分じゃないんじゃないかというふうに思うのですね。  ですから、それに対応するためには、こういう今のブリッジバンクの方式、それは一つの案かもしれません。だけれども、例えばすぐに国有化する案とか、または金融整理管財人のようなものを置いてそこで処理するとか、また違う方法もあるかもしれません。いろいろな対策、それを準備しておくということが本当に危機に対する対応策、対処策ではないか、私はそういうふうに思うのですが、総理のお考えは、政治判断、政策判断としてどういうふうにお考えですか。
  296. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 内閣といたしましては、想定される種々の事態も考慮しながら、このブリッジバンク法を中心にいたしましての対処のための法律案を提出させていただいております。  しかし、この法案の審議の過程で、今委員がおっしゃられるようないろいろの事態ということを勘案しながら、それぞれ野党の皆さんにおかれましても、そのお考えを内容としての法案をおまとめいただくという過程で、国会におきましての御審議が十分行われる中でよりよいものが生まれるとすれば、それは新しい事態も含めまして対応のできるものであれば、それはそれとしてよい方向に向かっておると思っております。
  297. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、今の選択肢を設けるということについては、総理も、それがいいものであれば採用をする、また、そういういろいろな事態に対応するような施策というものを法律として用意しておくというふうなことを今言明されたと思うのですが、もう一度、私の解釈でよろしいですか。
  298. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 重ねてですが、政府といたしましては、この二法プラス議員立法四法におきまして事態に対処できるものとしておりますが、今後国会でのいろいろの御審議を通じながら、さらなるいろいろ御提案その他がございますれば、十分このことは話し合っていくようなものだと考えております。
  299. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、今、先ほど申しました情報開示のことについて少しお尋ねをしたいと思います。  SEC基準による情報開示というのが一つあります。また、自己査定、外部監査、そして行政当局による検査、こういうものもあります。目的はそれぞれ違うというふうに理解をしております。  例えばSEC基準というものは、投資家とか預金者に対して、この銀行の体力はこうなんだよというふうに厳しい基準で明らかにして、そして、果たしてこの銀行に対する投資家になっていいのかな、また預金していいのかな、こういうことを明らかにさせるための情報開示です。  もう一つの情報開示は、今、自己査定、自己申告というようなことが言われておりますが、これは銀行自体が自分の体力をチェックして、幾ら引き当てればいいのかというようなことを明らかにさせるためにやられる情報開示というふうに理解をしております。  ところで、総理、この二つの情報開示で、例えばブリッジバンクの法案がございます。そのときにいろいろな情報が必要です。不良債権の実態、そして債務者の実態、そういうものが必要です。政府の案では、善意かつ健全なそういう債務者を守るというためにこの一つの公的資金を使おうじゃないか、そういうことが必要ではないかというようなことが言われております。  ところで、この金融再生のためのトータルプランまたはブリッジ法案のために、今行われているSEC基準での、少なくともSEC基準に合うような形での情報開示、それをするための情報開示、それと自己査定をするための情報開示、この二つで十分とお考えなのか、または、それでは十分じゃないからもっと違う形の情報開示、そして検査、そういうものが必要と考えられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  300. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはひょっとして監督庁の御所管かもしれませんけれども、SECは、先生御承知のように、セキュリティーズ・エクスチェンジ・コミッションからかりまして、これは画一的な考え方でございますから、まあまあの成果が得られると思います。しかし、今度は、各行によるおのおのばらばらの評価基準というものは、これはある意味で非常に不安なものでございます。  そこで、問題は、評価基準を何かやはり一つの物差しに整理していく必要があるだろう。恐らく金融監督庁検査をされますときに、何と申しますか、マニュアルのようなものも多分だんだんお持ちになっていくのであろう。そのマニュアルによって各行を一つの基準検査をされる、そして、やがてそのマニュアルが各銀行自身の物差しになっていきましたら、恐らくは各銀行が同じ基準で区分けをすることになる、それはどうしても私は必要のように思います。
  301. 西川知雄

    西川(知)委員 総理、今の大蔵大臣の御答弁でよろしゅうございますか。
  302. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ただいまの答弁のとおりと存じております。
  303. 西川知雄

    西川(知)委員 私は意見がちょっと違うんです。と申しますのは、今の自己査定、これは各行によって違うということで、これをある程度統一していかなけりゃならないということは、私、前々から大蔵委員会でも実は指摘をしてまいりました。  そこで、今回、もしブリッジバンク法案のとおりであるとするならばどういう作業が行われないといけないかというと、先ほど坂上委員が時間前に言おうとされた、いわゆる健全または善意な借り手というものに対しては公的資金を入れて、その人たち破綻銀行からもう借りられなくなって、違うところへ行こうと思ったら貸してくれない、そういうことでは困るんで、善意かつ健全な債務者に対しては公的資金を導入をしましょう、こういうことを考えられているわけです。そのときに、果たしてその人がこの基準に合うかどうか、いわゆる今までの債務の履行状況はどういうことか、またその人の財務内容はどんなものかということがわからないとそういうことはできないわけです。  そういうことをするときに、私が申し上げましたように、今までのSEC基準なり自己査定、そういうもので十分なのかどうかということを私はお尋ねしたわけなんです。私の意見では、十分じゃない、基準が違うというふうに思うんですが、宮澤大蔵大臣、いかがでしょうか。
  304. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私がこの法律案の立案に党で立ち会いましたときの感じは、金融管理人が入りまして、そして銀行としての機能は、普通の機能はなくなるわけでございますが、預金の支払いと顧客の問題、金融管理人が厳しい基準を上からもらいまして、それで、その基準に従って顧客の選別をいたしますけれども、実際は、一々、個別のケースでございますから、私の当時考えておりましたことは、経営陣は全部退陣いたしますが、行員、審査部の人なんかは残っておりますから、実際、どのお客さんがいいお客さんでどのお客さんが問題があるということは、その人たちは知っているはずである、ただ、誤った経営者のもとでそれがそのとおり判断が行使できたかどうかわからない点がございますけれども、今度、管理人の下でございますから、自分の持っているノウハウを、エキスパーティーズを基準のもとで十分生かせるだろう、私はそういうふうに実は考えました。
  305. 西川知雄

    西川(知)委員 総理のお考えはいかがですか。
  306. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 党でおまとめをいただきました御本人が申されたことでございますので、そのとおりだと思っております。
  307. 西川知雄

    西川(知)委員 私は、今の情報開示、SEC基準自己査定による情報開示、この二つでは、ブリッジバンク法案における仕分け、正常債権と不良債権と申しますか、その仕分けはなかなかきついんじゃないか、役に立つ部分もあるでしょうけれども、直ちには役に立たないというふうに思っておりますので、ここで議論していてもなんでございますから、ぜひこれはもう一度御検討を願いたいというふうに思います。その御検討をしていただくかどうか、大蔵大臣、いかがですか。
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、西川委員のお考えを承っている友人たちがおりますので、国会議員といたしまして、それも十分考えさせていただきたいと思っています。
  309. 西川知雄

    西川(知)委員 次に、経営者の責任追及の実態についてお尋ねをしたいと思います。  宮澤大蔵大臣は、きのうの予算委員会におきまして、「倒産いたしました金融機関については、経営者は退任あるいは民事、刑事上の責任、あるいは金融管理人によってその責任を追及され、さらに告発の準備をしなければならない、あるいは、金融監督庁長官は取締役等の解任を命ずることができる等々厳しい準備をいたしまして、責任追及には甘くなりませんように一生懸命いたすつもりでございます。」こういうふうに述べられているわけでございます。  そこで、まず実態を知りたいのですが、平成三年から現在まで、私の理解しているところでは破綻した金融機関は六十三、そして処理済みの金融機関は二十五であるというふうに理解しております。そのうち、刑事訴追があったのは十一の金融機関であるというふうに理解しておりますが、まず、金融監督庁、これはどなたが回答されるのかわかりませんけれども、それでいいかどうか、御確認願います。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  310. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今お話しになった件数のとおりだと思います。
  311. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、その刑事責任を追及した十一件の中で、政府なり整理回収銀行なり、またその他の政府機関が告発した案件というのは何件でしょうか。——時間がありませんので申し上げますと、それは二件です。十一件のうち二件。これが整理回収銀行によって告発をされた案件であるということで、あとはその他の従業員なり現在の経営陣が告発をしたということになっております。  次にお尋ねしますが、民事訴訟、民事上の追及でございますが、理事長とか理事に対して損害賠償請求をされている案件は何件でしょうか。
  312. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  この表を計算いたしましたところ、十四件でございます。
  313. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、私はお尋ねをしたいのですけれども、この間大蔵大臣が、まず刑事上、民事上の責任追及というものをぴしっとやらないといけないというふうに申されましたが、まず、刑事上の責任の追及について厳しくやるということはどういうことなんでしょうか。私の理解しているところではこれは刑事裁判の中でやるということで、政府として刑事上の責任追及をぴしっとやるということはどういう意味なのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  314. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  このブリッジバンク制度におきまして、破綻金融機関の業務執行権等は金融管理人に専属するわけでございまして、そういたしますと旧経営陣は業務執行権等を失いまして、金融管理人は取締役等また取締役等であった者に対して報告を求めまして、そして破綻に至った経緯などの実態解明に努めるという条文がございます。その際、金融管理人は、それらの調査の結果、犯罪行為があったと考えられる場合には、告発に向けて所要の措置をとらなければならないことという条文もあるわけでございます。  大臣が答弁されました趣旨は、やはりあえてまた法律に、破綻に至った経緯などの実態解明に努めるということ、また金融管理人がそういう告発の措置をとらなければならないという規定をもって、経営者の退任及び民事、刑事上の厳格な責任追及という原則が貫かれているということを答弁されたものでございます。
  315. 西川知雄

    西川(知)委員 それは、法律の解釈は余り、法律をそう十二分に読んでおられるかどうか私は疑問なんでございますけれども。  金融監督庁長官が取締役等の解任を命ずることができるという条文は何条でしょうか。
  316. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 銀行法二十七条でございます。
  317. 西川知雄

    西川(知)委員 次に、法的責任、これがより厳しい責任を追及するための、今度の新しい法案でのどういう点が改正されて民事上、刑事上の責任をより厳しく追及するようになっているんでしょうか。その辺をお答え願いたいと思います。
  318. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、ただいま政府委員が申し上げました、金融管理人が、まず事態がここに至りました事情について取締役あるいは取締役であった者等から報告を求める、そしてその経緯の実態解明に努める、解明をするということが前段でございますが、その中で犯罪行為が疑われるという場合には金融管理人は告発に向けて必要な措置をとらなければならない、法案の二条の十一でございますが、こういう規定を設けておりますので、これが金融管理人にそのような義務を課したものと考えておるわけでございます。
  319. 西川知雄

    西川(知)委員 一つだけ指摘をしておきたいのですが、今度の法案の四十六条というのがございまして、これは、各金融機関の取締役または理事に対して、債務超過があった場合にそれをちゃんと自己申告をしなさい、破綻という理由が自分であると思ったらそれを申告しなさいということになっています。これをやらなかった場合には百万円以下の過料に処するということになっております。これだけに対しては刑事罰はございません。これがほかの犯罪の構成要件に当たるという場合はその刑事罰もプラスされますが、うそをついて債務超過になっていないよというようなことの場合には、これは行政罰の過料というものが百万円以下ということに今なっております。これは厳しい責任追及というふうに言えるのでしょうか、大蔵大臣。
  320. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われましたのは、この法案の二条の二の三項で、これは金融機関が財務内容を一番知り得る立場にあるものですから、申し出をしなければならないという、預金等の払い戻しを停止するおそれがあるときは、文書をもってその旨を金融監督庁長官に申し出なければならないという規定がございまして、それの罰則といたしまして、今先生が言われましたように四十六条に、この場合に申し出をせず、または虚偽の申し出をしたときには百万円以下の過料に処する。  これは、私どもとしては、罰則つきの申し出義務ということで従来にないものだと考えております。
  321. 西川知雄

    西川(知)委員 総理、いろいろな金融機関、証券会社も含めまして、我々は債務超過ではないというふうに言っていて、検査の結果がずっと、やってみたら債務超過であった、それを前々から前の経営陣は知っていた、こういうケースがかなりあるわけですね。  今の百万円で、総理、十分ですか。
  322. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、法律立案過程におきましてもろもろの状況判断をして、そうした過料に処する、こういうことに決定したんだろうと思います。他の法律事案との兼ね合いも考えてのそうした金額になっておるものと承知いたしております。
  323. 西川知雄

    西川(知)委員 私からするならば、現在の民事、刑事上の責任を追及するというその手だてとして果たして十分な措置がとられているのかどうか、これは私かなり疑問に思っております。  例えば、機構の職員が立ち入りをする、そしていろいろな報告を当事者から受ける、それを拒んだ場合とか、そういう場合については罰則規定があるということで、その面は割合強化されていると思いますが、今の議論でありましたように、私は、民事上、刑事上の責任追及というものを考える上で十分な措置がなされていないんじゃないか。  これから、公的資金を入れるかもしれない、これは議論するわけですが、そのときにこういうふうな現状では、言っていることはそのとおりだ、民事上と刑事上の経営者の責任を追及しないといけない、これはもっともです。しかしながら、先ほど私が挙げました、破綻金融機関の中で、整理回収銀行がこれを刑事告発をしたのはわずか二件しかない。そして民事上の案件も少ない。そしてまた、私、監督当局に、株主代表訴訟というものは一体何件ぐらいあるんだろうというふうに聞きましたら、新聞情報によると二件だ、そういうふうな回答が返ってきております。  私は、これでは本当に民事、刑事上の十分な経営者の責任を追及する体制がとられているのかどうか非常に疑問に思いますが、この点について、大蔵大臣、もう一度見直されるというような考えはございますでしょうか。
  324. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今の罰則のことは、総理お答えになりましたとおり、あるいはまた西川委員の方がよく御存じでいらっしゃるかと思いますが、ちょっと私ども素人にはわかりにくい従来のいきさつだとか横並びだとかいうものがございまして、一つ一つ見ますといかにも甘いという感じが素人にもいたしますが、そういう観点があるようでございますので、一度専門の政府委員を先生のところへ御説明に伺わせます。
  325. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、ちょっともとに戻りまして、公的資金を万が一導入する場合の前提条件として少しお尋ねをしておきたいことがございます。  まず、我々が一番心配しているのは、大体幾ら公的資金というものが使われるんだろう。それが十三兆の枠だと言う人もいるし、十兆円だと言う人もいるし、もっともっと多いと言う人もいる。公的資金というものは、そもそもこれは国民お金であるというふうに私は考えております。  まず、不良債権、この問題が起きたのは、銀行とそれを借りてきた債務者、その個別の、本当は個別の私的な問題なわけです。それに全然関係のない人は本来その取引に関係ないわけです。ところが、それがだんだん膨らんできますと、これを処理しないと、そしてまた金融機関が倒れてしまうと、それは市場がめちゃくちゃになる。これは困る。また、債務者も困るということで、そのときには、まあ仕方ないから公的資金を入れる場合もあり得るんじゃないかというふうに思われるわけです。  しかしながら、その他人事のことが一体自分にどれだけ影響してくるのかということがまずわからないと、自分お金を幾ら使っていいのかわからない。また、自分お金は幾ら要求されるのかもわからない。これでは、安心して、このシステムを助けようとか健全かつ善意な債務者を助けようというふうに思う人がいたとしても、一体自分お金はどれだけ使われるんだ、これがわからない限りお金は出せないと思うんですが、その辺についてどれぐらいの規模を考えておられるのか、小渕総理、いかがでしょう。
  326. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  この法案におきまして、預金保険機構は公的資金十三兆円の枠組みを活用いたしまして、今先生が指摘されたような状況が生じた場合に、設立の出資とかそれから貸し付け、保証ないしは補てんというようなことにその資金が活用されるわけでございます。この制度が一体どのぐらいの金額になるだろうかということは、現実には金融機関破綻が現時点でどの程度かということを予測することはなかなか難しいものでございますので、その点を御理解いただきたいわけです。  一つ申し上げられますことは、先ほど先生も言われました、善意でかつ健全な借り手、これが審査判定基準によって仕分けされるわけでございます。そういう借り手に対する債権のみがこのブリッジバンクには継承されることとか、基本的には自力で資金を調達しながらやはりやっていくというような点、または、今言いました審査判定基準との整合性に配慮しながら融資の指針に従って一定期間融資業務を行う、こういうような点を考慮いたしますと、その必要な資金はある程度限られたものになるんではないかと想定、あくまで想定されるわけでございます。  そういう意味で、十三兆円の枠組みの中で基本的に対応していくことになると考えております。
  327. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、小渕総理、十三兆円が大体マキシマムであるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  328. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 基本的にそうだと思っております。
  329. 西川知雄

    西川(知)委員 次に、情報公開でございますが、もう一回それに関連して戻りますが、要するに公的資金を何かに使うという場合に、一体どういうものに私の、また我々のお金が使われるんだろうなということは、みんな知りたいと思うんですね。  そこで、けさの民主党原口委員の方から、例えば示達書、これを出してほしいというような話がありましたときに、それは守秘義務に反する、また債務者にいろいろな悪い影響を与えるからそれはできない、こういうふうにおっしゃいました。  しかしながら、破綻が起きた、そして公的資金、我々のお金を使うというときに、幾ら、どういうために使われるのかということについては情報公開というものはすべきではないかと思うんですが、政治家としての御意見を、総理、お願いします。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  330. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、決定は危機管理委員会がいたすわけでございますけれども、その決定の内容についてはできる限り明らかにするということにいたしております。
  331. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、総理、どこに幾ら、どういう対象に使ったか、債務者の名前は当然挙げる必要はございませんが、それを明らかにするというような宮澤大蔵大臣の御答弁であったというふうに理解してよろしゅうございますね。
  332. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 さように存じます。
  333. 西川知雄

    西川(知)委員 それから、金融機関破綻をするというときに、その破綻というのは一体何かという質問が先ほどの坂上委員の方からございました。その内容質問するのではございませんが、今の法案では、それを金融監督庁が認定するというふうに私は理解しておりますが、それで大蔵大臣、よろしゅうございますか。
  334. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われましたように、金融監督庁長官がその認定の判断をされるということでございます。
  335. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、この破綻の定義というものが、預金の払い戻しの停止またはそのおそれがあるということで、その具体的内容というのは、債務超過または市場での資金がとれないとかそういうことによるということであるというふうに理解するんですが、これは非常に裁量的なまた抽象的な定義の仕方である、これを金融庁だけで本当にやっていいんだろうか。  今、金融監督庁、これが、いろんな大蔵省不祥事件等もありました。そして、こういう形になりました。まだまだ我々国民は、本当金融監督庁に任せておいて大丈夫なんだろうかというような気持ちを持っている人が多くいると思います。そのときに、どんなに一生懸命やります、また正確にやりますというふうに言われたとしても、やはりその判断が合っているか間違っているか、またはそれに対してチェック・アンド・バランスというものがあるということが私は本当に必要じゃないか。しかも、それに公的資金が使われる可能性があるとするならば、国民の代表者としてだれかが、金融監督庁の認定というものが本当に正しいのであろうか、間違ってはいないかな、そういうことをチェックする必要があると思うんですが、その基本的な方針について、総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  336. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  金融監督庁の設立のいきさつはもう委員十分御案内だと思いますが、従来の金融行政に対する反省も踏まえ、不透明な裁量的なものを排して、できるだけ透明性のある金融行政に転換するという観点から金融監督庁が設置されたものだというふうに理解しております。  そこで、私どもといたしましても、金融監督行政を進める上におきましては、できるだけそういう裁量的なものあるいは不透明なものを排していきたいと考えておりまして、今回のこの法律案の立案に際しましても、立案を担当された大蔵省金融企画局に対しましては、私どもの裁量を排するという観点から、できるだけ客観的な基準で、どなたが見ても破綻だというふうな観点でぜひお願いしたいということでお願いしてまいったところでございまして、でき上がった法案を見ますと、先ほどから御議論がありますように、預金保険法第二条四項の規定ぶりと同じになっておりますので、これは決して裁量の余地がないものというふうに考えております。
  337. 西川知雄

    西川(知)委員 総理金融安定化法について、三十九条に、総理は「この法律による権限を金融監督庁長官に委任する。」というふうになっております。委任するんですから、もともと総理の権限なわけです。  そこで、総理、今の金融監督庁長官、これはもう裁量がほとんどないようにしますというふうに言っておられますけれども、健全かつ善意な債務者とは何か、破綻とは何か、預金の払い戻し、この停止のおそれがあるものとは何か、これは裁量事項ということで非常に難しいことなんですね。これを細かく書けといっても本来は細かく書けないんですよ、どこまで。一生懸命やっても、物すごく一生懸命やっても確たる基準というものは余り出てこないんじゃないか。裁量の余地を少なくすることはできます。  そこで、一生懸命やるやるということを信じて、または裁量権を少なくするということを信じているだけではこれはやはりチェック・アンド・バランスということにならないんですね。自分は一生懸命やりますけれども、だれかがチェックするからこれはこういうふうにやらないといけないよということになるわけで、こういうチェック・アンド・バランスをするために、第三者、この第三者が金融監督庁の意見をよく聞いて、金融監督庁はこう思うけれどもということでその人に協議、相談をして、そしてその人が、公正な機関がそうだというふうな認定をするとか、そういうふうな仕組みをつくらないといけないと思うのですが、総理はその点についてはいかがお考えでしょうか。
  338. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融行政経済国民生活に重大な悪影響を及ぼすことのないよう、預金者保護、信用秩序の維持及び金融の円滑化等を図ることを目的とするものであり、議院内閣制のもとで、内閣みずから国会ひいては国民に対し明確な責任を負うべきものと考えております。  民主党の御提案にも金融再生委員会の三条委員会設置構想がございますが、三条委員会は内閣からの独立が認められる行政組織形態であり、金融行政のような内閣みずから責任を負うべき性格の行政はなじまないものと考えられております。  そこで、金融行政機構のあり方につきまして、三条委員会を新設することの是非も含めまして与野党を通じ広範な議論が尽くされた結果、国会における立法化がなされ、本年六月二十二日に新たな金融監督庁の設置が実施されたところでございます。また、行政改革会議及び国会における審議を経まして、本年六月九日に中央省庁等改革基本法が成立し、同法におきまして、金融監督庁金融庁に改組して内閣外局とすることが規定されたところでございます。  金融行政につきましては、こうした枠組みにより、明確な責任体制のもと、透明かつ公正な行政の確保が図られることとされており、金融監督庁または金融庁を監視する第三者機関を設けることは、いたずらに屋上屋を重ね、行政改革の理念にも反するものとなると考えられております。  政府といたしましては、今後、中央省庁等改革基本法等の枠組みのもとで、金融行政を着実に実施していくことが何よりも重要であると考えております。
  339. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、総理の御意見は、金融監督庁、それを信頼しろ、したがいましてほかの機関がチェックする必要はない、そういう御意見でございますね。
  340. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融監督庁、これをつくり、そして長官がおられます。内閣総理大臣としては、その長官に委任をいたしておるわけでございますので、それを信頼してまいる、こういうことでございます。
  341. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、健全な債務者とか善意な債務者、そういう判断というものも、最終的には金融監督庁、それがする、そしてそのビジネスが成功するかしないか、そういうことも行政庁がその権限を握ってやる、こういうふうに理解をすればよろしいのですね。
  342. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われました善意かつ健全な債務者に対する債権とそれ以外の債権のいわゆる仕分け、これは審査判定基準と法文上言われておりますが、この審査判定基準につきましては、金融危機管理委員会のもとに置かれました審査判定委員会という中立公正な審査機関によって、金融危機管理審査委員会においてあらかじめ定められた基準に基づいて判定するわけでございまして、その審査判定基準そのものもこの法律によりまして公表しなければならないということになっております。また、まさに全体の透明性を確保するためにも、この金融危機管理審査委員会の議事内容の公表も義務づけられております。  先生が言われますように、確かに、一方でいかにチェックするかという機構的な、制度的な面と、もう一つは、やはり内容を公表するというか、ディスクローズによってそういう面も担保をしてまいりたいというのがこの法案の考え方だということで御理解いただきたいと思います。
  343. 西川知雄

    西川(知)委員 きょうはせっかく日銀総裁に来ていただいて、質問の時間がなくてまことに申しわけないのですが、もしお許しいただければ最後に、今の日銀総裁は、情報開示ということについては非常に積極的に御発言をされていると思うのですが、個々の名前を出すということは伏せておきまして、それ以外の場合で日銀考査の結果というものを情報開示されるというおつもりはあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  344. 速水優

    ○速水参考人 お答えします。  私どもの考査の結果につきましては、日本銀行法第二十九条及び考査に関する銀行との契約におきまして秘密保持義務を私ども負っております。したがいまして、これを公開できないことは甚だ残念でございますが、御理解いただきたいと思います。
  345. 西川知雄

    西川(知)委員 時間が来ましたので、質問を終わります。
  346. 中山正暉

    中山委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、中村鋭一君から質疑の要求を受けておりますので、これを許します。中村鋭一君。
  347. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 前任の橋本総理には何遍か質問をさせていただきました。小渕総理には初めて見参をさせていただきます。よろしくひとつお願いを申し上げたいと思います。  総理は早稲田の英文出身でございますから、こういうときはできれば英語で、総理就任コングラチュレーションズと申し上げたいところでございますが、なかなかどうして、今度ばかりはとてもじゃないけれども、御就任おめでとうございますと申し上げるわけにはまいりません。ただただもう両手を広げて、オー・ノーと言うほかはないような、そういう印象でございます。  総理は、憲法六十五条、内閣法四条を御存じでございますか。
  348. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今委員の御指摘は、六十五条「行政権は、内閣に属する。」これでございましょうか。
  349. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 そうでございます。  私の方から申し上げますが、内閣法四条は、「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」こうなっているわけでございます。  そこで、お尋ねをさせていただきますが、内閣がその職務及び政策を閣議で決めることになっている以上、橋本内閣の重要閣僚であった現小渕総理は、橋本内閣におけるすべての閣議決定に当然ながら関与をしておられるわけでございますから、そのすべてにつきまして、当然ながら、当時の重要閣僚の一人として連帯責任を負うことに相なりますが、それはお認めになりますね。
  350. 中山正暉

  351. 大森政輔

    大森(政)政府委員 まず……(中村(鋭)委員総理に聞いているんだよ、総理に」と呼ぶ)御指名でございますから答弁いたしますが……(中村(鋭)委員「あなた、いつでも出てくるんだ、これ。一番要らぬときにあなたがいつも出てくる。もう私はあなたの顔、見たくない。簡単明瞭な質問だ。総理に答えてもらいたい」と呼ぶ)  まず、私の方から……(中村(鋭)委員「いやいや、あなたの答弁は聞いていない。冗談じゃないよ。あなた、いつでもそうだ」と呼ぶ)一般的な考え方についてお答えを申し上げたいと思います。(中村(鋭)委員「そんなしゃっつら見たくないよ。引っ込め」と呼ぶ)
  352. 中山正暉

    中山委員長 あなた、早く答弁してください。
  353. 大森政輔

    大森(政)政府委員 御質問は、憲法六十六条第三項の規定に関連する事柄であろうと思います。すなわち、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と規定してあるから、前内閣のすべての施策について小渕総理は責任を負うのじゃないかという御趣旨の御質問と承ったわけでございますが、この「連帯して」と申しますのは、内閣は国務大臣の全員で組織する合議体であるから、内閣の施策について一体として責任を負うという当然の趣旨を規定したものでございます。  この国会に対する内閣の責任の負い方と申しますのは、内閣がどのような措置をとるべきかは、憲法に規定がある場合を除きまして内閣が事案の軽重に応じて合理的に判断すべき事柄であり、前内閣においてはこのような観点から総辞職をされたものと理解するわけでございます。  したがいまして、小渕総理が、前内閣の閣僚の一員ではございましても、現在現内閣総理の立場におきまして、前内閣の施策について責任を負うということは憲法の規定の範囲外の問題である、これが一般的な考え方でございます。
  354. 中山正暉

    中山委員長 法制局長官、短くしてください。
  355. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 今出てこられた紳士は、顔は私はよく知っているが、あなたの現職名は知らない。私の知らぬ人間が、私が要求もしてないのにのこのこ出てきて、聞き取りもできぬようなことでだらだら長い時間費やしてもらっては困るのだ、こっちは。冗談じゃないよ。  総理、もう一遍聞きますが、閣議で決定されたことについては、簡単に言います、あなたは当然ながら閣僚の一人として責任をお持ちですね、そう確認をしたのです。
  356. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 法的なことにも及ぶこともございますので、改めて私から申し上げます。  憲法六十五条は「行政権は、内閣に属する。」と定め、さらに憲法第六十六条第三項は「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と定めておりますが、この規定は、内閣に帰属する行政権の行使について、これを国会に、民主的な統制のもとに置くという基本的な原理を明らかにする趣旨であると考えられます。  ここに「連帯して」と規定いたしておりますのは、内閣は国務大臣の全員で組織する合議体でありますから、内閣の施策について一体として責任を負うべきであるという当然の趣旨を明らかにしたものと解されております。  この規定を受けまして、内閣法第四条は、合議体たる内閣がその職務を行うことは閣議によるものとする旨定めております。  国会に対する内閣の責任の負い方として内閣がどのような措置をとるべきかは、衆議院における不信任決議に関する憲法第六十九条のようにこれについて定めた規定がある場合は別として、内閣が事案の軽重に応じて合理的に判断すべき事柄であると思っております。  私は、前内閣が総辞職した後に、憲法の規定に基づき国会の指名を受けているわけでございますので、いわば国会の信任を受けていると言うことができるかと思います。  そこで、法的にはこうした立場でございますが、前内閣におきまして私も閣員の一人としてございましたので、私自身が私自身として、そうした内閣における役割としてその責任を負っているということは、言うまでもないことだと思っております。
  357. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 それは総理、今一番最後の十秒ほどを一言言っていただいたらよかったのですね。それは堺屋大臣も今の答弁聞いてびっくりしておられると思いますね。普通の国民的な判断で言えば、あなた、前の内閣の閣僚だったのだから前の内閣の決めたことには責任ありますねというのですから、これはだれが聞いたって、ええありますよということになる。これは単純明快な話です、実にもうシンプルな話ですね。それがこれだけ時間を、もう十分ぐらい使ってしまっている。これは私はどうしてくれると言いたい、本当に。  そこで、責任をお持ちになっているとすれば、その閣僚であった橋本内閣参議院選挙でいわば国民の不信任を受けて惨敗という結果、辞任のやむなきに至ったわけでありまして、いわばそのことについて連帯責任を負うべき当時の小渕外務大臣が、国民から不信任を受けて自民党は選挙で惨敗、橋本内閣総理大臣辞任、総辞職、このときに当たって、ああ、あなたおやめになりますか、そうですか、では後は私が引き受けますというのは、ちょっと国民には理解がしにくいことである、こう思います。  それに、私、冒頭にもコングラチュレーションズと申し上げたいが申し上げられないのは残念だと言ったのですが、どうですか、あの選挙後行われました総裁選におきまして、小泉さん、梶山さん、そして小渕さん、ありとあらゆるマスコミの調査が、小渕さんはもう最低も最低も、はるかに下の方で、ずっと上に梶山さん、小泉さんがいた。そういう世論調査の事実があります。  そして、総裁選挙が行われて、その結果、まあ小渕さんに投票した方は、四百余名の投票権を持つ人たちでは一番多かったのでしょう。でも、日本国民は一億人以上います。その人たちの世論調査の結果は、あなた、人気がないと言っているのです。だめだと言っているのですね。にもかかわらず、あなたは総裁になり、自動的に、結果として総理大臣におなりになった。  これはその後の世論調査でありますが、八月六日の、これはフジテレビの一番新しい調査でありますが、「次の衆院選でどの党に投票するか」、自民党一七%、民主党三二・八%、これはちょっとうらやましい点がありますが。「小渕内閣を支持するか」、「支持する」二四・二、「支持しない」七一・八%ですよ。国民の七割以上が、小渕さん、あなたを支持しないと言っている。あなたの内閣はだめだと言っているのです、世論調査で。そうして、次の首相にふさわしいのはだれか。「菅直人」三九・二%、これもうらやましいが、しかし、我が党の「小沢一郎」七・二%、「梶山静六」八・八%。拮抗しておりますね、梶山、小沢が。あなたの支持率は、まあこれは実に情けないと言うほかない。「小渕恵三」三・二%ですよ。  このような支持率で発足した内閣が、果たしてこれから国民の全き支持を受けてやっていけるのか。今私が申し上げたように、橋本龍太郎さんに全責任を負わせて、負けた、だめだ、あなたやめなさい、後は私がやりますと言ったものの、これだけの支持率だ。そういう点について、小渕総理、どのように今感想をお持ちでございますか。
  358. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず訂正をお願いしたいことは、橋本前総理・総裁がおやめになられましたのは、みずからの責任を痛感して辞任をされたわけでございまして、私は、前総裁・総理から移譲されてこの立場にあるわけでありません。私は私なりにみずから決断をして、この場面におきまして責任を負う立場があろうかと思いまして党の総裁に立候補し、かつ当選をさせていただき、そして、本院におきまして内閣総理大臣に就任をいたしたということでございます。  そこで、私とて政治家の一人でございますから、世論の高い評価ということを望まないとは申しません。やはり、国民皆さんの強い支持に基づきまして内閣をスタートできるということは、これは望ましい願望でございます。ただ、内閣はスタートして、その実質の仕事にまだ取りかかっておらないわけでございまして、私としては、そうした世論を厳しく謙虚に受けとめながら、これからの行うことによりまして国民全体の理解を得ていきたいというふうに考えております。  また同時に、世論調査につきましても、一億一千万の方、こうおっしゃられましたけれども、そうした方々すべてにわたっての調査ということはなかなか難しいことだろうと思います。しかし、いろいろメディアが行っておることを否定することでもございませんので、私は、ある意味では厳しいスタートになること、承知をいたしましたが、これをできる限り努力をして国民の信頼をかち得ながら、願わくは内閣としてもできる限りの支持率をもって国政に当たることができれば、こう思っておる次第でございます。
  359. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 総理は今、スタートしたばかりだ、これからだとおっしゃいました。しかし、以前に細川さんが内閣を組織したときは、組織した直後の世論調査で支持率は七〇%以上あったのですからね。それは一つは覚えておいていただきたい。  それから、私が先ほど取り上げました世論調査は、これはフォー・エグザンプルですよ。例示をしただけです。ほかのどんな世論調査を見たって、あなたの内閣の支持率は同じような数字だったんですよ。だから、それは理解しておいてくださいよ。  それから、世論調査というのは、これは、一億二千万国民の中には赤ちゃんもいるわけですから、全部に聞くわけにいかぬでしょう。だから、こういうサンプルというのは、やはり千なら千、千五百なら千五百のサンプルを選んで、それの結果が非常に統計的に正確なものであることは学問的に証明されていることですから、国民みんなに聞いたわけじゃないからどうこうなんというのは、これは詭弁に属することだと思います。  官房長官にお尋ねをさせていただきますが、選挙の直後に、村上正邦参議院自民党幹事長は、新聞を見ていましたら、自民党の敗色が濃厚となったときにもう引き出しの整理を始めて、翌日には潔く参議院自民党幹事長の職を辞して、敗軍の将、兵を語らずだ、潔く私は幹事長を辞する、こう言っておやめになりました。あれほどの実力者がきっぱりと潔く身を引かれた点に、私は一つの潔さを感じざるを得ないのであります。  その点、野中官房長官は、また一面考えれば、あなたが、あえて火中のクリを拾うといいますか、これだけ評判の悪い内閣官房長官をみずから引き受けられた、その勇気には敬服はいたしますけれども、政治家として、あの参議院選挙の重責を担った最高責任者の一人として、あの敗戦の責めに任じなかったという点については、私は、一遍、野中官房長官のお気持ちをぜひ聞いておきたい。一方で、村上さんのような責任のとり方があります。じゃ、官房長官の今回の参議院選挙における責任のとり方とはいかようのものであったのか、その辺のお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  360. 野中広務

    ○野中国務大臣 このたびの参議院選挙におきまして、我が党は国民の厳しい批判を受けることになりました。結果として、比較第一党を確保することができましたけれども、多くの同志を失い、かつまた、選挙戦を通じまして、国民から自由民主党の政策さらには党としてのあり方に厳しい批判を受けたことを私どもは謙虚に受けて、そして、厳粛にその責任の重さを感じておるところでございます。  私は、それぞれこの苦しい戦いに涙をのんだ同志のことを思うときに、その責任は万死に値すると考えてまいりました。しかし、新しい内閣の発足に伴いまして、総裁より内閣の一員に入るように命ぜられまして、私の責任の重さを痛感しながら、この身を削り、そして日々命を削り、さらには針のむしろのような状態でございますけれども、何とかして、この国家存亡の危機に、身を捨てることによって少しでもこの国の将来に明かりあればと、日々厳しい道を歩ませていただいておる次第であります。  今、村上前参議院幹事長と比較をされましたけれども、党内の身の処し方について、とかく中村議員に私はお答えする立場にございませんので、その点は御了承を賜りたいと存じます。
  361. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 官房長官、私は、村上正邦先生の身の処し方は私の感想を申し上げているわけですから、それは、あなたに別にとやかく言ってもらう必要は全くないことですね。私は官房長官のお気持ちを聞いたわけで、それは確かに今承りました。針のむしろとおっしゃいました。せっかくひとつ御奮闘を、私からもお願い申し上げておきたい、こう思います。  構造改革法ですね、これはやはり小渕総理が外務大臣のときに、我々があれだけ反対をしたのに強引に成立をさせたわけでありますが、これはもう朝からの質問で随分出ておりますけれども、いかがでございますか、当時は、小渕総理はこの法案についてどのように理解をしておられましたか。いい法案だな、これは何としても成立させなきゃいけないな、そう思っておられたのですか。それとも、少しは疑問があったのですか。
  362. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 橋本総理が心血を注いでこの問題に取り組んでおられました。総理の意思を、これを生かされるということでございましたので、私は賛成をいたしました。
  363. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 この前の通常国会だったと思いますが、私、やはり予算委員会で全閣僚の皆さん橋本総理以下、小渕当時の外相にもお尋ねしましたね。今の予算案は最善ですかと聞きましたら、一人残らずの方が、小泉さん一人だけがやや異論があるようにおっしゃいましたが、あと全員の方が、一秒も一刻も早く予算を成立させてもらいたい、こうおっしゃった。当然ながら、構革法も上げてもらいたいということであったわけで、今も、一員として賛成させてもらいましたということは、当時は賛成しておられたわけですからね。  これは、法案成立後わずか三カ月で修正の方針を表明、この六月に法の修正を行いまして、今度はあなた御自身がそれを凍結する、こうおっしゃるわけで、猫の目のように変わる政府財政政策といいますか、これは、総理国民にこれをどのように説明なさるのですか。一秒一刻も早く予算を成立させてくれ、予算は最善だ、補正なんかとんでもない話だ、こう言って、構革法も絶対上げなければいけないのだと皆さんがやって、三カ月たたないうちに修正して、今度は凍結とおっしゃっているのですよ。どのように御説明なさいますか。国民皆さんにです。
  364. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 当時お尋ねされたことも記憶しておりますが、内閣として提案した予算案を、一日も早くこれを通過させていただきたいという気持ちは、内閣一致した考え方でございまして、私とて同様でございました。  そこで、その後に参議院選挙がございました結果、こうした鉄槌を下されたわけでございまして、そうしたことを考えますと、やはりこの事態、極めて異常なこの経済状況の中で、一刻も早くこれを再建していかなければならないという思いがいたし、私自身も、内閣におりましたこともさることながら、三十六年間にわたりまして自民党にあり、そのほとんどが与党であったことを考えますと、その責任を深く痛感をいたしております。  よって、私自身がみずからこの際考え方を改め、そしてこの事態に対して、あらゆる手段を講じてこの事態を脱却しなければならないという決意のもとに総裁に立候補し、かつ今こうした立場におるわけでございまして、そうした考え方を実行いたしてまいるとすれば、当然のことながら、財革法につきましてもこれを凍結いたさなければ実行できませんので、このことについてもぜひこれからお願いをしていかなければならぬと思っております。
  365. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 であれば、総理、あの節、予算をどうしても早く上げてくれ、それからまた財政構造改革法は成立させなければいけないと言ったのが、それが今、凍結、こうおっしゃっているわけで、それは政治家としてやはり見通しを誤った。人に責任を押しつけるわけにいきませんよね。やはり皆さんが一生懸命成立させようとなさった法律でありますからね。だから、そのことについて、これを凍結と今おっしゃるなら、やはり国民皆さんに、見通しを誤った、当時私も閣僚の一人であった、申しわけないと謝るお気持ちはないですか。
  366. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 財政構造改革法の基本的理念というものは、私は今でも正しいものだと認識をいたしております。いずれ将来にわたりまして、財政が健全化することによりまして、この日本の国が大きな借金を背負っていくという形でない姿が将来においては望ましいと思っております。  ただ、現在の状況を考えますと、先ほど申し上げましたようにこの事態はまことに緊急な課題でございまして、そのためには、この際、この改革法につきましても凍結をいたすことによりまして、あらゆる手段を講じて現在のこの経済状況を改善していかなければならない、こうした考え方に基づいて、私の考え方でそうした対応をとることといたした次第でございます。
  367. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 財政構造改革法は、私は理念法じゃないと思うのですね。イデオローグを法律に書いたものじゃないわけですからね。だから、それを数カ月で凍結だと言ったことを、基本的な考え方は間違ってない、そういうことはもうおっしゃらない方がいいと思いますよ。それは潔く凍結と。しかし我々は、凍結とおっしゃるならば何で廃止と言えないか、こう言っているわけです。その点についてはどうですか。もう廃止とはっきり言えませんか。
  368. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘いただきまして、理念も捨てよと言っておられるとは思いませんけれども、私自身はこの考え方の基本は正しいものと理解しております。したがいまして、凍結はありましても廃止はございません。
  369. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 ここから先は押し問答になりますから、もうやりませんけれども、私は、総理、あなたのお考えは全く誤っているということは、これははっきりと議事録に、私がそう申し上げたということはとどめておいていただきたいと思います。  三カ月先も見通せぬような内閣に、それは国民自分の運命をなかなかゆだねる気にはならぬと思いますよ。これからも今のようなことをおっしゃっているようでは、内閣の支持率は上昇しないと私は思います。  橋本内閣経済見通しを誤った。それで、経済見通しの発表を何かどっちつかずのような、バラ色のような、いわば粉飾経済見通しを発表し続けてきたわけで、一方では、政府のそういった発表を信じて、中小企業の社長さん方は、ここを踏ん張ればよくなるだろうと一生懸命頑張った結果、見通しが誤っているためにどんどん自殺をしていっている。本当にお気の毒な中小企業の社長さん方がおられるわけですよ。借金に追われ、自殺をし、倒産に追い込まれ。そういったものについてやはり政治は責任をとらなきゃいけない、こう思うのですが、現実に失業率が四%を超えて、そのように中小企業皆さん本当に困っていらっしゃる。この状況をどうすればいいとお考えですか。
  370. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 四・三%を超える失業率が示すように、大変厳しい環境であることは承知をいたしております。したがいまして、経済を活性化して、何としてもこうした状況を取り除くべく最大の努力をすると申し上げておるわけでございまして、個々のそうした失業問題に対する対応につきましても、内閣それぞれの担当の大臣、力を合わせて、この難局を乗り越えるべく種々の政策を打ち出し、そしてそれを実行していこうと努力しているところでございます。
  371. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 今のような答弁は、朝からずっと同じような答弁をしておられるのをテレビ等を通じて聞かせていただいておりましたが、私はやはり、本当に今こそ総理、蛮勇を振るっていただきたい、こう思いますね。  今、官房長官は、本当に針のむしろに座ったつもりで、身を捨てる覚悟だとおっしゃいました。皆さん同じ覚悟を持っていただきたいですよ。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれですよ。それは一生懸命頑張ってもらいたい。私は野党ですけれども、そのことを申し上げておきたい。平凡きわまる答弁で、まるで九官鳥か何かのように同じ答弁ばかり繰り返していては、国民は喜びませんよ。安心もしませんよ。目で見てわかる、耳で聞いてはっきり理解のできるしっかりしたグランドデザインを描いて、それを一生懸命実行していく。口では火牛になって、こうおっしゃいますけれども、今のような答弁をしておられるようでは、私は随分心もとない、こう思います。  堺屋長官に二、三質問をさせていただきます。  堺屋長官、御就任おめでとうございます。いや、しかし、よくまあ思い切って入閣をなさいましたね。それはいろいろな御感想がおありだと思いますけれども。  就任して、八月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出なさいましたね。報告は、景気の現状について、「低迷状態が長引き、はなはだ厳しい状況にある。」と総括し、橋本前政権が先月まで使っていた停滞を低迷に書きかえた、こういうことでございますが、新聞等で承知する限りは、停滞を低迷にかえたことを堺屋長官は、これが大変な改革であるようにおっしゃっていて、これをこう直させるだけでも大変だったようにおっしゃっていたんじゃなかったですかね。いかがですか。
  372. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 それほどの大きな改革だとは思っておりませんが、できるだけ実態をすべての人々にわかっていただける表現にしたということで、現在は停滞よりも低迷がふさわしい表現だと私自身が思いましたので、前例にとらわれることなく改革させていただいた次第であります。
  373. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 堺屋さん、あなたは停滞を低迷と言いかえるのは意味が違うようにおっしゃいますけれども、役人の皆さんは新聞等でも、結局それは一緒だ、同じことを別の表現に言いかえただけだと。要するに、これはシノニムです。同義語です。同意語です。停滞も低迷も同じですよ。それを言いかえたから、堺屋さん、あなたが経企庁長官になってから画期的に月例報告等々も国民のだれもが見てわかりやすい表現に改められたというものでもないと思うのです。  これは、私自身政治家になって時期もありますので役人の方々とお話をすることが多いのですけれども、堺屋さんに申し上げておきますけれども、例えば先日も役人の方が私のところへ法案の説明に見えましてすぐにおっしゃる言葉に、役人の方が、何々を担保いたします、こう言いますね。一般世間で担保といいますと、金貸してくれ、貸してやるわ、担保何があるのやというのが担保でありまして、ところが、この永田町で使う担保は全く意味が違う。  それからまた、図がありますね、図表なんかありますが、これも役人の方がすぐおっしゃる言葉に、ポンチ絵とおっしゃるのですね。ここにポンチ絵がありますが、ポンチ絵をごらんいただいてと、こうおっしゃるのですよ。私、念のために広辞苑を引いてみたのです。ポンチ絵、これは、風刺画、漫画と書いてあるのです。ところが、役人が私に示すポンチ絵なるものは、私なんかには理解しがたいような、それはやたら入り組んだ難しい図表ですよ。だったらポンチ絵なんて言わないで図表と言えばいいんじゃないのですか。だから、そういうところから私は堺屋さんに思い切って改革をしていっていただきたい。  堺屋さんも、マスコミ、テレビなんかよくお出になっていらっしゃるからおわかりだと思うけれども、こういったマスコミの世界では、やはり中学校三年ぐらいの子供がわかるような言葉でなければだめだというわけでしょう。だから、あなたがお書きになる小説にしたって、そんな、図表のことをポンチ絵、何かというと担保と言うような、そういう独特の世界の言葉、これはその世界だけに通用するイディオムでありますから。イディオムはいけない、シノニムもいけない。もう一遍ひとつ。
  374. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、霞が関の言葉とその他日本語と、かなり開きがあるのじゃないかと私も実感いたしました。  私は二十年前まで霞が関におったのでございますけれども、役人をしていたのでございますけれども、その間に大分霞が関語の方も変わっておりますし、一般日本語の方も変わっております。これからはできるだけ日本の全員の方々にわかる言葉、そしてお役人にもわかる言葉を使わなければいけない、この両方にわかる言葉をできるだけ使っていくようにしたいと思います。  今の月例はごくごく最初の一例でございまして、これからどんどんと情報皆さんにわかるようにしていきたいし、私自身も、国会でも、またその他のマスコミ等を通じまして、国民皆さん方に御理解をいただくようにできるだけの努力をいたしますので、よろしくお願いいたします。
  375. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 もう一つ堺屋長官にお願いをしておきたいのは、そういった表現を平易に、役人にもわかるし国民にもわかるように改めていただくのは大事なことですけれども、それ以上に大事なことは、例えば月例報告等、経企庁が提出するあらゆる書類等々にいつも真実が貫かれておらなければいけない。  もう一つは、客観的な評価というものがなされていなければいけない。役人がもしメンツ等々にこだわって、景気が相変わらずどんどん沈んでいっているのに、こういうことを発表したらおれの責任が問われるんじゃないかな、そういうようなことで、今まさにおっしゃいましたけれども、停滞を低迷と言い抜けるような、言いかえるようなことで糊塗していれば、やがて経企庁そのものが全く国民の信用を失うことに相なりますから、いつでも正確、冷静な分析、たとえ現状が厳しくとも、それをきっちりと国民政治家に伝える役目は経企庁。それで、どうすればいいのかという分析の後に方向性を我々に示していただく。それでなければ、堺屋さん、あなたが経企庁長官になった値打ちはありませんよ。
  376. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私も、大変気楽な身分で幸せに暮らしていたのを捨ててこの国難に当たる覚悟をしたわけでございますから、そう簡単におりるつもりはありません。  私は、経済企画庁にまず申しましたのは、経済企画庁は企画庁であって、調査庁や情報庁じゃないんだ。だから、これから経済の政策を企画していく官庁に戻らなきゃいけない。そのためにまず第一には、経済企画庁は、正直、迅速、わかりやすさ、この三つをモットーにしてまずやってみようじゃないかと全職員に申し上げまして、私自身、一人では微力でございますけれども、全員の御協力をいただいて、これからそういう、皆さんに正直で早くて、そしてわかりやすい企画庁になりたい、したいと考えております。
  377. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 その正直、迅速、わかりやすさの正直と迅速は、これはもうそのままおそば屋さんなんかにも通用するいい表現である、こう思います。  堺屋長官、先ほど共産党の志位さんの質問をたまたまテレビを見ておりまして、志位さんが取り上げられましたので、私はすぐに走って本を手に入れました。「あるべき明日」、よう売れているようでございますが。  ここのはしがきの部分でありますが、これは、選挙が済んでからこのはしがきをお書きになったんですね。  「自民党をこれほどの大惨敗に陥れた原因は何か、」「特に昨年四月、消費税の引き上げや特別減税の停止など七兆円(医療費負担の増加を含めると九兆円)の増税を行った失政の責任は重い。」こう書いておられますね。それから、その少し後に、「国民が今求めているのは、過去の経緯や官僚の権限にこだわることなく、新しい時代にふさわしい体制を実現してくれる政治の決断である。」  また、こうも書いていらっしゃる。「昨九七年、不況が進む中で増税を敢行、秋になるまで「景気は穏やかな回復過程にある」といい続けた官僚機構の無能さは問題である。九八年七月の参議院選挙における自民党の大敗は、無能な官僚たちに引きずられて無為に過した橋本内閣に対する国民の回答だった、といえるだろう。」「この国の再生に必要なのは、勇気と決断、そしてそれを実現する熱気、いわば夢を求める気持だ。」  これは実にいいことを書いていらっしゃいますね。特にこのくだり、官僚に引きずられて無為に過ごした橋本内閣に対する国民の回答だった、九七年、不況が進む中で増税を敢行、景気は穏やかな回復過程にあると言い続けた官僚機構の無能さは大問題、これは今でもそのお気持ちは変わっておりませんね。
  378. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 先ほども共産党の志位委員からそういう御質問がございました。私は、今もその考え方は変わっておりませんし、その本の前にも同じようなことを書いております。  私は、昨年の一月から三月までの間に景気は天井を打ったんじゃないか、そのことを去年の七月ぐらいから言い続けておりました。その当時は、私の意見はジャーナリストの中でも少数派でございましたけれども、その考え方は今も変わっておりません。  そして、その中に書いてある言葉でございますが、やはり日本の官僚機構はかなり、過去に、一回言ったことにとらわれてなかなか訂正をしない、それをずっと引きずってきたことが、秋まで景気が緩やかな上昇だったと言い続けたことも、やはりこれは無能と言っていいんじゃないかと今も思っております。それで私は、就任いたしまして、ことし一・九%成長するというのを、これは無理だと正直に言わせていただきました。  なお、その中にございます勇気と決断の話でございますが、これはまことにうれしいことに、小渕総理大臣の所信表明にも、きょうの勇気なくしてあすの我が身なしという言葉がございまして、私と全く同じ、国難に当たる気持ちで総理がいていただけると私は信じております。
  379. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 しかし、このはしがきでははっきり言って自民党を批判しておられるわけであります。自民党を批判しておられるが、その自民党の内閣に今おられて、閣僚の一員であるわけでございますが、本当に今いいことをおっしゃいましたから、これは堺屋さん、頑張っていただきたい、こう思うんですよ。  我々は頑張りますよ。頑張って、いつの日か現内閣を解散・総選挙に追い込んで、堂々たる野党の勝利をかち取りたい。そのときは、例えば菅総理大臣か、あるいは小沢一郎総理大臣か、そういったときには、私は個人的には、また堺屋さんに閣僚でひとつ参加していただいてもいいんじゃないかと。  ただ、それには前提がございます。あなたはこの中で、自民党が大惨敗を招いたのは橋本内閣の失政である、その失政の最たるものは九兆円の増税を行ったことである、こう書いておられます。それは今も、これは失政だとお認めになりました。では、九兆円の増税が失政であるならば、その九兆円の中に含まれております五兆円の増税は、消費税三%を五%にした、二%の増税による五兆円でございますから、当然ながら、論理の帰結といたしまして、堺屋さん、あなたは、現内閣が踏襲をしております消費税五%は三%に戻すべきである、そう考えなければおかしいことになりますね。そうですね。九兆円の増税をしたから橋本内閣選挙で負けたんですから。そうでしょう。そのうち五兆円は消費税。二%の増税で五兆円ですから。これは、あなたは今でも三%に戻すべきだとお考えですね。確認をしておきます。
  380. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 消費税については全然そう思っておりません。  私は、税制の構造としてやはり直間比率の問題がございまして、これは、消費税は五%にする、そのかわりにほかの減税をやって、増税にしなかったらあの時期はよかったんじゃないか。あの時期はまことに悪い時期でございました。景気が下り坂になった時期で、そのときに総量として増税をしたことを批判しているのでございまして、税制構造の改革は、私は政府税制調査委員でもございましたから、そのとおりに主張して、今はイコールフッティングもしくは全体として減税にすべきときではないか、こういう主張をいたしました。だから、今でも五%は私は支持しております。
  381. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 堺屋長官、少し詭弁になりますよ、それは。それはそうですよ。このはしがきの中であなたがはっきり書いているじゃないですか。もう一遍読みますよ。間違わないでちゃんと聞いてくださいよ。  「自民党をこれほどの大惨敗に陥れた原因は何か、」「特に昨年四月、消費税の引き上げや特別減税の停止など九兆円の増税を行った失政の責任は重い。」と書いていらっしゃるんですから。あなた自身が「消費税の引き上げ」と書いているんですからね。それはやはり、三を五にしたのはおかしいわけだ。あなたの答弁は、それはだめだ、それは通用しません。
  382. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 それは、九兆円という内容を書くために消費税と特別減税と医療を書いたので、消費税が悪いと書いたわけではありません。九兆円の増税の時期が悪かったと書いたのでありますから、その点は誤解ないようにしていただきたいと思います。
  383. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 私は誤解をしているつもりは全くありませんが、言葉の端的な意味において、消費税の増税を含む九兆円が橋本が今度選挙で負けた原因だとおっしゃっているから、消費税を三から五に上げたのが含まれるから、当然あなたの論理としては御破算に戻すべきだとお考えですねと言っているわけで、これはもう、あなたがどうおっしゃったってこれはだめだ。少なくとも失政はお認めになりました。  もう一遍、小渕総理にお伺いいたします。  同じ内閣の中に、橋本内閣は失政をした、こう言う方が閣僚としていらっしゃるのですが、あなたは橋本内閣には失政は一切なかった、こうお思いですか。
  384. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これもしばしば御答弁申し上げていますが、失政ということは何ぞやということになるかと思いますが、橋本内閣としては精いっぱい、今日の時点にかんがみまして、努力をし、七転八倒の苦労の中で過ごしてきたと思っております。しかし、その中で、財政構造改革に基づきまして種々の予算等を編成し、これを実行してきたということが現下の国際的な経済の動きその他にマッチしておったかどうかという点については、その時期その他については検討をいたすべきことはあったのではないか、このように申し上げているところでございます。
  385. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 何遍聞いても堂々めぐりになると思いますので、これまた私は同じことしか言えないのが残念でございますけれども、小渕総理、今のような答弁をなさっていたら内閣の命脈が尽きるのもそう遠くないことになりますよ、これを私は申し上げておきたいと思います。  橋本龍太郎氏が最高外交顧問に就任をなさいました。これは何をやっていただくために橋本さんにお頼みになったのですか。
  386. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現下、日本の外交問題はあまた課題はございますが、特にことしの秋から来年の春にかけましては、ロシアとの関係をぜひ正常化し、そして平和条約というものを締結した形の姿にしていかなければならぬ、こう思っております。  そこで、特に対ロ外交等につきましては、前総理といたしまして、ロシアにおける現大統領と大変個人的な信頼関係も深くいたしております。そういった観点から考えまして、これからの対ロ外交につきまして、今は一議員ではございますけれども、積極的にひとつお取り組みを願いたいということで、その過去の経験あるいはロシアとの深いつながり、こういうものをぜひ生かしていただきたい、こう思ってそのようなことにお願いをいたした次第でございます。
  387. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 総理、最近私が目にしただけでも、あなたは大蔵大臣には長老の宮澤先生にお願いして、いわば丸投げだ。経済分析等は堺屋さんに丸投げ。行天さん、これは財務問題、しっかり勉強してください、あなたにお任せいたします。とにかく何でもかんでももう人に丸投げで、では御自分の見識とか政治的力量とか、どこで発揮するのですか。  これはある新聞を見ていたら、実にうまい、そう書いている新聞もありますよ。そうやって、財政金融はもう宮澤さんに任せましたよ、経済見通しは堺屋さん、あなたに任せましたよ。行天さん、あなたもよろしく頼みます。ロシアとの交渉は橋本さん、あなたやってくださいよ。うまくいけば、おお、なるほどな、小渕総理大臣頑張ったね、こういうことになります。うまくいかなければ、いや、お任せしてあったんですからと、これは言おうと思えば言えないこともないわけでね。これは余り見識がなさ過ぎる、こう思うんですよ。  それで、今回また、経済戦略会議にトヨタ社長ら委員十人内定、こうありますが、これは小渕総理の発案でございますか、経済戦略会議、十人。
  388. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず前段についてでございますが、私は、政治家のリーダーシップといいますか、指導者像というのにはいろいろな形があると認識しております。かつてニクソン大統領が指導者とはということを書かれました。そういう形でみずから先頭に立って率いていくというのも一つの指導者像かもしれませんが、私といたしましては、あらゆる人材にそれぞれの立場で最善の努力をしていただく、これを総合的に結集をしていくことも私なりの姿だ、こう認識をいたしておるわけでございまして、そうした方々が全力を挙げてチームワークを一つにして事に当たっていければ必ず大きな成果が生まれるものだ、こういうふうに確信をいたして努力をしているわけです。  しかし、そのよって立つ責任は最終的に私に存することはしかと承知をいたしまして対処をいたしていきたいというふうに思っております。
  389. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 とにかく、これだけいろいろな方に諮問をなさる、相談なさる、あなたに任せると言う。これは客観的に私から見れば、無能なのか、ずるいのか、厚かましいのか、見識がなさ過ぎるのか。これはいかがかと思います。  特に橋本龍太郎代議士の場合は、我が党はベチューンの記念病院問題で追及をさせていただきました。きょうの昼のニュースでもやっておりましたけれども、アメリカではクリントン大統領がルインスキーなる女性との交際をはっきりと認めて、妻に悪いことをした、こう言って政治家国民に対してわびているわけですね。  ところが、我々がベチューン問題で李維平さんなる女性との交際を追及しても、ついに一遍たりとも橋本総理はそのことについて、あなた何を言っているのですか、絶対そんな事実はありませんと否定はされませんでした。肯定もされませんでしたがね。肯定はしないけれども一切否定はしない、口を緘していることは、我々の側から言えば、そういったことについてお認めになっていると思わざるを得ない、その女性との交際問題をですよ。これは認めておられるわけですね。  しかし、我々が、まだ明らかにされていない点で疑問を持っておりますのは、ベチューン記念病院に対して二十六億円というODA援助がなされた点について、橋本龍太郎代議士がその点にどのような関与をしていたのか。手伝ったのか、手伝っていないのか。口をきいたのか、きかないのか。便宜を図ったのか、図らないのか。それについて我々にはまだ何の説明も納得できる解釈も与えられていないわけであります。  そのような人にロシアへ行ってもらって、ついこの間まで外務大臣をやっていた、現在総理大臣をやっている方が、何でそういう人に頼んで地ならしや道筋をつけてもらわなければいけないんですか。これは私は、今からでも遅くはない、私がやりますと言ってお断りになった方がいい、こう思うんですよ。  その点について何かお考えはありますか。私はそう思いますが、総理はどうお考えですか。
  390. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御意見は承りましたが、私としては、力をかしていただける方には全員力をかしていただいてこの難局を乗り切りたい、こう思っております。
  391. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 最後に、八月六日付の読売新聞の朝刊に、堀之内久男元郵政大臣が一九九四年から九六年にかけて四つの政治団体の政治資金一億三千万円を野村証券虎ノ門支店での株取引に流用していたとの記事があります。さらに、翌七日付朝刊には、株流用は既に九三年、東京証券青山支店での取引から始まっており、さらに二千数百万円あると報道されております。  これが事実とすれば、いやしくも国民の浄財である政治資金を場合によっては元本ともにゼロになる可能性のある投機に運用した点で、これは見過ごすことのできない問題であります。しかも、政治資金規正法八条の三、政治資金の運用は、一、銀行預金や郵便貯金、二、国債や金融債の取得、三、元本保証のある金銭信託の三つに限定し、元本割れのおそれがある株取引での運用は禁止しております。  報道では、東京地検特捜も把握とありますが、法務省、認識しておりますか。
  392. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  お尋ねのような報道がなされていることは承知しております。しかし、検察当局がいかなる事実についてこれを把握しているか、あるいは把握していないかといったようなことは、捜査の内容にかかわることでございますので、答弁はいたしかねるところでございます。
  393. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 九五年からは、政党交付金の制度がスタートいたしまして、国民の血税が政党の政治資金に充てられているわけでありますが、政治資金収支報告書によれば、今回、株資金流用が明らかになった資金管理団体の堀之内久男後援会は、九五年から九六年にかけて自民党本部や自民党の宮崎県衆議院比例区第一支部から三千万円を超える寄附を受けており、税金の流用との疑念も抱かれかねない状況であります。帳簿上、政党交付金と流用資金は直接結びついていないようになってはおりますけれども、これは金に色がついているわけではございません。  この政治団体の代表者は堀之内議員本人でございます。疑念を抱かれるだけでも政治家として不適格と言わざるを得ないと思います。李下に冠を正さず、当たり前のことであります。瓜田にくつをいれずであります。  政治資金の運用を制限した政治資金規正法第八条の三は、リクルート事件の反省から、これはもう宮澤大蔵大臣もよく御存じだと思いますが、九二年に新たに設けられた規定であります。  今、我が国の金融システム再生を議論している大事なこんな国会の場で、政治に対する信頼が揺らぎかねないようなこういった事実があるならば、単に捜査の秘密だから言えませんというだけでは済まないと思いますが、小渕総理、御見解は。
  394. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 特定のこととしてでなく一般的に申し上げれば、政治家政治資金の運用につきましては、平成四年の政治資金規正法の改正によりまして、政治資金を株式運用等の投機的取引に用いることは禁止されておるところでございまして、十分承知をいたしております。
  395. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 政治資金を株取引に流用しただけでは罰則の規定はありませんけれども、この株取引が行われていた九四、九五、九六年の三年間、四つの政治団体の政治資金収支報告書には政治団体から堀之内議員への寄附や貸し付けを示す記載がないのですね。場合によっては、政治資金規正法第十二条の一項違反の虚偽記載あるいは不記載、こういう罪に当たる可能性がございます。これは、同法第二十五条、罰則規定がありまして、五年以下の禁錮、百万円以下の罰金の重い犯罪であります。こうした点についてきちんと捜査は尽くしておりますか、法務省。
  396. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  先生お尋ねの具体的事案の成否につきましては、捜査機関が収集した証拠により判断されるべき事項でございます。  また、検察当局が現在いかなる事項について捜査をしているかについては、捜査機関の捜査内容、活動内容にかかわることでございますので、先ほど同様、御答弁いたしかねるところでございます。
  397. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 時間でございます。  こういったケースは、与党議員だから手かげんするとか野党議員だからやるとか、そういう問題では絶対あってはならぬと思うのですね。検察は、これはもう本当にこういう問題には厳正に対処をしていただきたいと思います。  刑事訴訟法第二百四十七条には「公訴は、検察官がこれを行う。」とありまして、第二百四十八条には、犯罪の軽重及び情状により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができるとあります。つまり、検察のみが起訴権限を独占して、事件の処理について大きな裁量権も持っているわけであります。  いやしくも検察権が時の政権の顔色をうかがってみたり、その場のいろいろな都合で捜査を終局させてみたり、手かげんがあったりするということは絶対にあり得ないことでありまして、今回のようなケースは、これは私は単なる形式犯とは思えないわけであります。しかも、各党ともに、新井さんのあの事件のときに皆申し合わせて、国会議員の株取引は自粛しようと言ったのではないのですか。そうですね。そのようなことがあれば、今後ともに検察当局には庶民の立場から厳正に対処をしていただきたい。  これにつきまして、一言だけ法務大臣からお覚悟のほどをお伺いいたしまして、私の質問は、本日はこれで終わらせていただきます。
  398. 中村正三郎

    中村国務大臣 検察のやり方は、委員御指摘のとおりでございます。だからこそ、検察は常にどのような事件であっても、法と証拠に基づき、厳正、公平、不偏不党を旨として、刑事事件を適切に捜査、処理するべき職責を担い、現にそうしてきたと承知しておりますし、今後もそうであるのは当然だと思います。  特に、委員御存じだと思いますが、検察はその独立性を担保すると言うと、担保という言葉はまた怒られるかもしれませんが、法律に書いてございますので、検察庁法十四条で、私が直接指揮できるのは検事総長だけということで、検察の独立性も維持されておりますので、顔色を見るというようなことは決してないというふうに思っております。
  399. 中村鋭一

    中村(鋭)委員 終わります。
  400. 中山正暉

    中山委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。  次に、臼井日出男君から質疑の通告を受けております。これを許します。臼井日出男君。
  401. 臼井日出男

    ○臼井委員 臼井でございます。  自由民主党与党の立場で、小渕総理初め閣僚の皆様方に御質問させていただきたいと思っております。  今まさに日本の景気は低迷のさなかにある。こうした中、小渕総理は、自分がこの日本の再生のために先頭に立つ、こういう御決意をいただいたわけでございまして、私はその御決意に対して心から敬意と感謝をいたしているものでもございます。  特に、私は小渕先生とは昨年ロシア、中央アジアに御一緒させていただきまして、そのお人柄に触れております。特にそのお人柄のよさ、そして長年培った政治的な総合的な調整力というものには大変大きな期待をいたしておりました。  組閣の初めに、その調整力というものが大変いい意味で働いたと私は思っております。その一つが、大蔵大臣に宮澤元総理をお願いをしたということでございます。  よく一般的には、総理経験者を連れてきたという見方ももちろんあるわけでございますが、私もたまたま前期は自由民主党の政務調査会の中に籍を持っておりまして、今話題になっております債権不動産流動化トータルプラン、あるいはブリッジバンク構想等の金融再生トータルプラン、これに多少かかわりを持っておりました。まさに、宮澤元総理はその中で本部長として全体を統括する立場におられたのです。まさに、かつての総理経験者を連れてきたということではなくて、今最大の懸案である問題に対して自由民主党の中で最も権威ある立場にあって、多くのことに決断をしてこられた、その宮澤先生を大蔵大臣にお頼みになった。このことは私は大変大きな一つの決断である、こういうふうに思っております。  いま一つは、先ほどから大変明快な御答弁をしておられますが、堺屋太一さんを経済企画庁長官に御任命をされたということでございます。  私は、堺屋先生を前から存じているわけでありますが、大変バランス感覚に富んだ経済専門家、こう見ております。テレビ等を拝見をいたしておりますと、大変わかりやすいお話をしていただくということでございます。物事をわかりやすく率直にお話しになるそのお人柄、ぜひとも、政治家のなかなか古つわものの多い中ではございますが、ひとつこれからもそういう民間の方の持つよさというものをしっかり発揮していただきたい。遠慮をしていただきたくない。そのことが、私は、今非常に難しい問題の中で、国民にわかりにくい、難しい問題を処理をしなければならない小渕内閣の中で、大変いい清風というものを流すんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  ある人は、こうした難しい変換期の時期には剛腕の人がいい、剛腕の人にトップに立っていただいてやることがいいんだ、こういうことを言う人がおりますが、私は決してそうは思いません。人間の知恵、人知には限りがある。やはり多くの方々の知恵をかりながら、その中でもって新しい道を切り開いていくというやり方が一番いいんじゃないか、まさにそういう宰相が求められているというふうに私は思っております。  小渕総理には、ぜひとも多くの方々の意見というものに耳をかしていただきたい。それは、我々政治家ばかりではなくて、我々の後ろにいる多くの支持者、そして声なき声を持っている国民の声というものを少しでも多く吸収をしていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。  所信にございますとおり、一日も早く私ども日本がこの景気低迷を脱して、活力、再生が成るようにぜひとも頑張っていただきたいと思います。冒頭に、総理にその御所信をお伺いをいたしたいと思います。
  402. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 改めて御激励をちょうだいいたしまして、その御激励にこたえるべく心新たにこの重任に臨んでまいりたいというふうに思っております。  今、本題ではありませんが、昨年七月、臼井議員と御一緒にロシア並びに中央アジアを回りました。このときに御一緒に参りましたのが、先般タジキスタンでとうとい命を落とされた秋野さんでございまして、たしか彼が、タジキスタンに行くと大変危険なのでそこだけは行くのをやめようということで、中央アジア五カ国のうち四カ国をともに回ったことを思い起こしておるわけでございますが、改めて秋野さんのとうとい命を投げ出されたこのお気持ちを我々も十分受けとめながら、これからの世界に対する貢献に努めていかなければならぬというふうに思っております。  そこで、私自身の決意を述べろ、こういうことでございますが、申すまでもなく、この委員会が始まりましたときに深谷委員にもお答えを申し上げましたが、現在のこの時局というものは、まさに日本の近代史の中での大きな三つの改革の時期を迎えておるわけでございます。  第二の改革であった日本の終戦後の再生の時期、そして第一の明治維新のときを考えますと、いずれも外国の力というものが働いておったような気がいたしておりますが、今回も、いわゆるグローバルスタンダード、あるいは人によってはアングロサクソン・スタンダードと言われますけれども、やはり、そうした世界の中での日本が大きく改革をしませんと世界に伍していけないという、そういう中で、前の内閣も、六つの改革をやろうと試みて、それなりの実績も上げた点もございますし、御批判をいただいているような経済政策につきましての問題点もあったわけでございます。  私は、そうした意味で、ぜひこの機会、日本の今最大の課題が経済の再生であるということを考えましたときに、みずから力を振り絞ってこの難局に対処し、そして多くの方々のお力も得ながら、総合的にその力を結集することによりましてこの時局を打開してまいりたい。そのためには、いたずらに長きをもってたっとくということでなくて、この一、二年のうちにどうしても問題を解決し、特に経済につきましては、反転攻勢、すなわち、経済の成長におきましても将来回復の基調というものを見出していかなきゃならない、そのために、従来とってまいりました政策につきましても、減税にいたしましても、あるいは税制改正にいたしましても、その他多くの問題につきましても、この際御理解をいただいてまいらなきゃならぬと思っております。  特に、総裁選出馬に当たりまして私自身が考えました諸点につきましては、本来的に申し上げますと、組織政党としての自由民主党の中で十分な御理解をいただいた上でこうした考え方を申し出るべきところでありましたが、私自身が提案をいたしました減税あるいは補正予算の十兆円の問題等々につきましても、御支持、御理解をいただいて総裁選に当選をさせていただいたということでございますので、このことをしかと受けとめながら、これから政府の責任者として、ぜひこれが実現のために身を捨てて努力をいたしたい、こう考えておりますので、改めて御支持、御協力のほどを切にお願いしたい次第でございます。
  403. 臼井日出男

    ○臼井委員 今回の総裁選挙に当たって、マスコミがあたかも美人コンテストをするかのごとくこの総裁選挙のことを取り扱っているということについて、私は大変残念に思っております。  私は、宰相たる者のとるべき道というのは、やはり結果だと。したがって、今御決意のとおり、経済再生に向けて、ひとつ両一年しっかりと経済を軌道に乗せていただけるように、そしていろいろな御意見をいただいた方々に対しても、やはりよかった、こう言っていただけるような成果を得るようにさらに御尽力をいただきたい、こういうふうに思っております。  今回、政府・自民党でもって策定いたしました土地・債権流動化並びに金融システム両トータルプランは、あらゆる側面からいろいろ検討を加えている。これは、大変いい点だと私は思っております。  例えば、資産担保証券市場の整備、あるいは共同債権買取機構、CCPCの拡充強化、あるいはデューデリジェンス、適正評価の確立、あるいはサービサー、債権買い取り制度の創設、競売手続の迅速化と倒産法制の整備等を初め、今回法案として提出いたしております債権債務関係の整序の仕組み、そのための臨時不動産関係権利調整委員会等の、いわばそうした入り口の部分から、いかに不動産を動かそうと思っても、結局需要がなければ何にもならないわけでありますから、いわゆる出口の部分の土地整形あるいは集約化というもの、都市再開発の促進や住都公団や民都機構を活用した公的土地需要の創出、こういったいわば出口の部分、そこまで全部仕組んだということでございまして大変大がかりでございます。これがすべて動くということが私は日本経済再生の最も近道である、こういうふうに思っております。  このように大変内容が煩瑣でございますので、ぜひとも総理には国民に対してこの大切さというものをお話しいただきたい、このように思います。
  404. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 申し上げましたように、この内閣の最大の課題が日本経済の再生であるということでございまして、そのために総合経済対策の実施に全力を尽くしておるわけでございます。これは前内閣からもその実行を行ってきたわけでございますが、その中で十六兆円の補正予算等の執行もあります。なかなか、こうしたものが実際に効果を発揮するのには若干のタイムラグもございまして、いよいよこうしたものもこの秋口にかけては効果を発揮するというふうに認識をいたしております。  と同時に、やはり、国際的に我が国の経済に対して大きな赤信号が出ておりますのは、日本金融システムというものが実際保持できるものかどうかという点もあろうかと思っております。そういった意味で、今国会、こうした時期にお開きをいただいて、金融再生トータルプランとして自民党がまとめ上げてきた法律案を一日も早く通させていただきたいということで、御審議を願っておるわけでございます。  また、私自身、こうした立場になりますに際しまして私なりの考え方を明らかにさせていただいておりまして、そういう意味で、ぜひ総裁選挙にお約束をいたしたことを政府の公約として実現させていただきたい。そのために、言うまでもありませんが、さらに加えての十兆円の補正予算の問題、あるいは、恒久的な減税という意味で、中長期的には本格的な税制改正を行わなければならぬとは思っておりますが、当面、今のこの景気を回復するために大きな役割を果たすとすれば、次年度以降におきましても所得課税あるいは法人課税の軽減ということを図りつついかなければならないと考えております。  いろいろ先ほど来御批判をちょうだいいたしておりますけれども、私といたしましても、ある意味では極めて勇断を持って対処しているわけでございまして、御指摘いただきましたように、前の内閣の一員としておりましたことも事実でございます。そういった意味で、考え方を大きく変えながらこうした政策を打ち出しませんとこの段階は乗り越えられないということでございます。そういった意味で、これから諸政策につきまして、さらにこれから自民党を初めといたしまして種々の政策の御提起等をいただきますれば、このことを政治主導のもとでスピーディーに一つ一つ解決をしていきたいと思っております。  今日、経済戦略会議というものを設けさせていただきました。これは、実際の経済界等で活動されており、生きた経済活動に専心をしておられる方々の御意見等も拝聴しながら、その中で、これから打ち出すべき課題もありますればこれまた即反映をさせていきたい、こう思っておるわけでございまして、そうしたことを積み重ねながら、現在の状況を何とか乗り越えていきたいと思っておる次第でございます。
  405. 臼井日出男

    ○臼井委員 野党側から、金融破綻の処理案というものがようやく出てくるというふうに伺っております。まだ詳細わかりませんので詳しいことは申し上げられないわけでございますが、与党案と野党案とどこが違うのかというふうなことを考えますと、どうやら、政府案は大蔵省影響というものをいまだ強く受けているんだ、したがって、その大蔵省の力を排除する仕組みというものを考えたいというふうなこともあるように聞いております。  そこで、先般、金融監督庁というものが独立をした、大蔵との関係というものをはっきり決別をしている、こういうことからして、私はそうした危惧というものはないんじゃないだろうか、こういうふうに思っておりますが、今後それらのことについていろいろと議論が深まってくると思います。私はそういうことはないと考えておりますが、いかがでございましょうか。大蔵大臣にお伺いいたします。
  406. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のことにつきましては、過去に長い経緯がございましたので、そのような御批判があることは甘んじて受けなければならないと思っております。その結果、現在のような改編が行われましたが、どういう制度でありましょうと、関係省庁と緊密に連絡をしてやってまいらなければならないと思っております。
  407. 臼井日出男

    ○臼井委員 ぜひとも自信を持って法案成立にお願いをいたしたい、こう思っております。  六本法案が出ているわけでございますが、その中で、いわゆるサービサー法というものが出ております。従来弁護士しかできなかったこうした職務を民間の方に委託をしてやってもらう、こういうことでございます。  この中で一番問題になりますのは、手ぐすねを引いている暴力団等、そういったものをしっかりと排除できるのかということがやはり最大の関心事であると思っております。この点について、法案自体は衆法でございますが、成立をしたときにどのような決意を持ってこういうことに対処していかれるか、お伺いをいたしたいと思います。
  408. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かにあの法案、臼井議員も起案につきまして非常に御貢献されましたが、暴力団排除の部分が、現実に適用いたしますと最も難しい部分だと思います。そういう意味では、法の円滑な施行につきまして、政府部内、関係省庁、一生懸命協力体制をつくりまして、法の目的といたしますところを達していきたいと考えております。
  409. 臼井日出男

    ○臼井委員 弁護士会の御協力も当然のことながら得なければなりませんが、ぜひともそうした連携というものをしっかりとっていただいて、この法案が予定どおりしっかりと運営できるように頑張っていただきたいと思います。  金融再生トータルプランの中で、特にブリッジバンク法案というものが脚光を浴びているわけでございますけれども、きょうも大分いろいろこれについては御意見がございました。だんだんと一般の国民の方にも、単に銀行救済ではないということがこれらの質疑を通じてわかってきているように思います。  私も、やはりこの法案の中心的な課題というものは、善意かつ健全な借り手というものをいかにして保護していくんだというこの一点にあると思っておりますが、この点についてぜひともいま一度御説明いただきたいのと、また、いわゆる善意かつ健全な借り手というものをどのようにして他の悪質な借り手と峻別をしていくのか、そういう点についてもひとつお聞きをいたしたいと思います。
  410. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 従来から、銀行預金者に対しては一〇〇%の保証があるということは国民に理解していただいておりますが、銀行の長い間のお客様、取引をしておられる方々は、殊に地方におきまして倒産が起こりますと、何十年という縁を切られてしまうわけでございまして、現状ではなかなか新しい銀行を見つけるということは、これは容易なことでございませんので、いわば死活の問題になります。そのことは現に北海道におきまして図らずも起こっておりまして非常にお気の毒でございますが、そういうことを憂慮いたしますと、なかなか銀行の思い切った整理というものはできない。  したがいまして、そこのところをお客様に迷惑をかけないというシステムをつくりました上で、倒れる銀行はもう倒れなければならない、そういう処理をするということが貫いていけると考えておるわけでございます。  ブリッジバンクにいたしましたのは、大きな機構を新たにつくるとかいうことでなく、金融管理人に入ってもらいまして、そうしてあり姿でその仕事を続けていってもらえるならば一番これが、現に銀行に勤めておられた人々も今度は管理人のもとで働かれるということで、お客さんとの関係についても殊に審査の人たちは詳しいというようなことが利用できるかと思います。  ただ、大事なことは、いいお客様、信頼できるお客様というのは、その人たちが、個人的に知ってはおりましょうけれども、やはり個人的な関係に流れるということがあってはなりませんので、危機管理委員会で基準つくりましてそれに基づいて業務をしてもらう、そういうふうにいたしたいと思っております。
  411. 臼井日出男

    ○臼井委員 先般の北拓銀行破綻に関係をして、千葉でも、私どものよく知っている、大変一生懸命にやっている企業が関連倒産いたしまして、絶対もうああいうことはしてはいけないということを私は感じたわけでございます。  善意かつ健全な借り手という区別の仕方がいろいろあろうかと思います。峻別をすべし、こういう御意見もありますが、私は、こうしたメーン銀行破綻という環境の中でもって、通常であれば、厳しいけれども将来しっかりとやっていける、そういう企業はすべて救ってやる、そのぐらいのやはり決意をぜひとも持ってやっていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。  国民の間からは、過去に、破綻金融機関の役員が高額な退職金等を得て退職していく、しばらくしたらその金融機関破綻をしてしまった、こういう例もございます。そういうことに対して大変強い怒りというものあるいは不信感というものを持っている。そういう点に私は、我々これらの法律というものを現実のものとしていく政治家として、やはり配慮を払っていく必要があるのじゃないか、このように思うわけでございます。  このブリッジバンク法案を初めとする金融再生トータルプランというものを実のあるものにしていくためには、金融機関の責任追及、これを厳正にしていくということ、その姿勢というものが大切だ、こういうふうに思います。そのことをしっかりとやることによって初めて国民が納得と理解をしていただけるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  今までの責任追及というものが甘くはなかったのだろうか、今後どのような決意を持ってこの追及に当たっていかれるか、総理お話をお伺いいたしたいと思います。
  412. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融機関経営が悪化いたしまして破綻に至った場合、これまでも経営者の退任及び民事、刑事上の責任を厳格に追及していくとの方針に従いまして、不正や法令違反が明らかになった際には経営者や借り手の民事、刑事上の責任追及を厳正に行っておるところでございますが、今回のブリッジバンク法案におきまして、破綻した金融機関の業務執行権等を金融管理人に専属する制度を設けることといたしておりまして、この金融管理人が破綻に至った経緯等の実態解明に努めることになると思っております。  今後とも、破綻金融機関に対する経営責任等の追及については厳格に対応してまいらなければならぬかと思っておりますが、先般来お尋ねがいろいろございまして、現在までの、経営責任につきましての訴訟関係につきまして、その数につきまして監督庁からも御報告がございましたが、追及すべきものは厳格に追及していくという姿勢がありませんと、国民皆さんの信頼はかち得ないもの、こう認識をいたしておる次第でございます。
  413. 臼井日出男

    ○臼井委員 金融機関の貸し渋りという問題が大変大きな社会問題となっております。特に中小企業等への極めて厳しい影響というものが、きょうもいろいろ話に出ております。  私の仲間が銀行に行ったら、金を貸してくれなかった。そこで、たくさんチラシが入ってきている、金融会社からのが入ってきているので、そこのうちの一枚に電話をかけてみた、ちょっと来てくださいということで出かけたわけです。そうしたら、大手の五指に入るようなノンバンクを紹介してくれて、おかげさまで金を借りられました、だからつなぎの金ができたので、何とか会社はもっておるので私はいい、しかし、利息を一六%、一八%取られたと言うわけですね。  自分は、とにかく金が借りられて経営が何とかもったのでいいんだけれども、貸し渋りを一方でしていながら、一方では系列のそうした金融会社に金を流して高い利息でもうけているような、そういうふらちな金融機関があるんじゃないか、どうなっているの、調べてみてもらいたいというふうなことを私は言われたわけですね。そこで、大蔵の方に、一体どうなっておるんだ、調べているのかと言ったら、いや、そんなことは調べておりませんという返事でございました。  かつてバブルの時代に、金融機関が系列のノンバンクにたくさん金を流して土地を買いあさった、そのことも、後で調べてみたら実はそうだったという例があります。私は、このことについても、後で調べてみたら実はそういう事実があったということであってはならないのじゃないか。今どうなのか、今あれば改善をする、そういう姿勢を持ってやっていく必要があるのではないか、こう思っておりまして、これらの実態についてぜひとも調べてもらいたい、こういうふうに思っておりますが、このことについてぜひとも前向きの御返事をいただきたい、こういうふうに思います。
  414. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  このところの金融機関の融資動向を見てみますと、本年七月の全国銀行の月中平均の貸出残高は対前年比で二・三%の減となっておりまして、四月以降も減少幅はほぼ横ばいで推移しているものと認められます。  しかし、業態的には、都銀につきましては減少幅が改善しておりますし、また、地銀は、減少というよりはむしろややふえているということもございます。  また、金融機関から私どもが聴取しているところでは、貸し渋りとは関係がない債権の流動化によりまして、トータルとしての貸出残高が減少している面もあるというふうに聞いております。
  415. 臼井日出男

    ○臼井委員 正面からのお答えは得られなかったわけですが、ぜひとも、そうした貸し渋りの一方で系列のノンバンクに金を流してもうけている、そういった金融機関があるのかないのか、そういうことについて調べていただきたい。私は、この場からお願いを申し上げておきます。  総理、中小企業の、そういう人たち銀行に対する不信感というのは大変強いものがあるように私は思います。ぜひとも私は、各地区にある政府系の金融機関、中小企業金融公庫でも国民金融公庫でも結構ですが、そこに平成目安箱といいましょうか、そうした中小企業人たちの生の声を聞いて極めて迅速に対応してやる、そういうきめ細かい対策というものが、この際苦しんでいる中小企業人たちに対する国としての思いやりということで必要ではないか、こういうふうに思っておりまして、これについてどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
  416. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、金融機関からノンバンクに金を流して、そして高利の金を貸し付けておるというようなお話をお聞きしました。事実であるとすればまことにふらちなことであると思いますので、これは十分調査をいたすべきものと考えております。  中小企業にとりましては、やはり経営をしておりまして、ここぞというときに資金の調達が得られないために倒産のやむなきに至ったという企業は数多いのだろうと思います。そうしたときには、大変利息は高くとも何とか生き抜かなければならぬという形の中で、かなり高い金利の金を使用せざるを得ないという実態もあろうかと思います。  そこで、その原因になりますのは何といっても貸し渋りの問題があろうかと思っておりまして、そういった意味で、今、平成の目安箱というようなものを開設したらどうかということでございますが、政府としては、政府金融機関におきまして、昨年秋以降、本支店に特別相談窓口を設置しまして、随時相談を受け付けておりまして、できる限り親身な対応を指示しておるところだと聞いております。  また、事業者の生の声をくみ上げ、きめ細かく政策に反映するために、通産省の本省あるいは各地方通産局にも相談窓口を設置するとともに、ファクス等でも情報提供いただけるように、貸し渋り一一〇番を開設をいたしておるところでございます。  これらの相談窓口に寄せられた御意見等を参考にしながら、貸し渋り対策に万全を期してまいらなければならぬかと思っておりますが、なかなか、各中小企業、いよいよ切迫した状況の中で、こうした機関、窓口等も、あるいはそのことを知らざる点におきましてよき方策を発見できないということであってはいけませんので、今委員の御指摘のことも含めまして、さらに徹底して、親身になった話し合いの窓口を督励していかなければならない、このように考えております。
  417. 臼井日出男

    ○臼井委員 ぜひともそうした生の声に早く対応してやるということを進めていただきたい、こういうふうに思います。  いわゆるブリッジバンク関連法案で、経済の足を一番引っ張っております債権債務関係の整序、これをしていくことになっておりますけれども、今回の不動産関連権利等調整委員会、ここでどれくらい実際具体的にこれらの処理ができるんだろうか。これが一番の関心だと思うわけでございますが、このことについてお伺いをいたしたいと思います。
  418. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 臼井先生も党の金融再生トータルプランのプロジェクトチームの役員ということで、本法案の立案にも大変通暁され、また御努力をされたというふうに伺っております。  この法案の趣旨についてはもう既に御案内のことと思いますけれども、要するに、不動産絡みの不良債権につきまして、当債権の持ち主であるところの貸付金融機関のバランスシートから完全にこれを消去してしまう。そのためには、関係の不動産の権利について、みんな譲り合って、関係者が譲り合ってきれいにして、そしてそれを処分してしまう、そういうことを目的としているものであります。  もちろん、これを、譲り合ってという言葉にあらわれるように、何というか、余り無秩序にということではなくて、その結論の合意は、これはもう公正でなければいけない、また妥当でなければいけない、それから、むやみに譲り過ぎてしまって、実際、実行の段階になったらうまくいかなくなってしまった、こういうようなことがあってはならないということで、遂行可能性ということもその合意にはなければならぬ、こういうふうになっているわけであります。しかも、そのリード役になる調停委員会というようなものは、合議制ということでそういったことを担保していこう、こういう制度になっているわけであります。  そこで、こういう仕組みでもって問題の不良債権がどのくらい処理できるかという問題でございますけれども、私ども、あの立案の過程、実は私は若干間接的にしか立場上いなかったわけでございますが、それでも、不良債権の貸付先である債務者の中で、不動産の効果的な処分を通じて事業の再建を図ろうとする企業自体は、やはり相当の数に上っていると見られるというふうに考えております。  委員会の行う調停、仲裁は、当事者間の合意をベースとしたものでございまして、強制的に調整を開始するものではございませんから、我々の方から確たることを今申し上げることはできませんけれども、これによって問題の処理を図っていこうというケースは相当に上るだろう。これは、いろいろな法務の統計等々からもこういうことが言えようか、このように考えている次第であります。
  419. 臼井日出男

    ○臼井委員 今回のこのシステムによって、従来は銀行が一方的に債権をバランスシートから除いておったということを、債務者に対しても影響をしっかりと及ぼすということでございます。大変すばらしいシステムでございますので、ぜひともこのシステムがうまく作動するように御尽力をいただきたい、こういうふうに思います。  一連の金融再生トータルプランというものができ上がりますと、大どころはほぼ網がかけられた、こういうふうに思ってよろしいと思うわけでございますが、あと残されておりますのは、個人の破産法制というのが残っている、こういうことであろうかと思っております。  お伺いをいたしますと、平成十四年に仕上げるという予定を早めて、十二年までに仕組むんだということでお話を伺っておりますが、ところが、既に、かつてバブル時代にゆとりローンというのがございまして、こうしたローンを使って住宅を建てた方々の本格返済の期間がもう来ているということでもございます。政府系公庫におかれましては返済先送り等の措置をとっていただいているということでございますから、それなりに助かっているわけでございますが、私は、これらの救済について、民間金融機関に対しても、ぜひとも政府の主導でそうした措置が徹底できるような、そういったことを考えていただきたいと思っております。  どうでございましょうか。まず法務大臣、お願いいたします。
  420. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員御指摘の倒産法制の整備ということは、我が国においてこれは喫緊の課題であるということで、急いで整備を進めなければいけないということでございますが、今委員御指摘のとおり、平成八年に既に法制審議会に諮問してあるわけでありますが、それがまだ二年以上、二年半ぐらいかかるということでございまして、今、何とか早くこれができないかということをきょうも法務省の中で検討していたところでございます。  個人倒産の法制について特に今コメントされたのじゃないかと思いますが、これについても、個人版の更生法といいますか、そういったことについて検討を進めているわけでございます。
  421. 臼井日出男

    ○臼井委員 ぜひともこうした方々に対してしっかりと対応できるようにお願いをいたしたい、こういうふうに思います。  さらに、こうしたゆとりローンの方々と同じような形で、バブルの時代に融資一体型養老保険というのがございまして、それに加入をして、現在、その返済のために自分のうちも立ち退かなければいけない、こういうふうな非常に気の毒な環境にある方がたくさんおられます。東京周辺でも、この件について五百人前後の訴訟がある、こういうふうに伺っておりまして、この一つの問題、融資一体型養老保険に関して、個々の人たちが、五百人が訴訟をするというのは訴訟の中でも珍しいというふうに言われております。  これは、要するに、あのバブルの時代に土地も高くなって固定資産税も高くなった。したがって、自分の住んでいるうちを、自分が死んだとき相続税を払うと住んでいられない、売ってどこかに移らなければならない、そういうふうな環境が、この東京都を中心とする地域で起こってきたわけですね。  そこで、サラリーマンで預金もないような方が、自分の土地だけを担保として、一億あるいは二億を超えるようなお金銀行から借りて養老保険に入る、こういうことが結構行われておったわけでございまして、結局、バブルの破綻とともに、これらのものが成り立たなくなってきたということで、現在、返済金ばかり何億も、一億も二億も残っている、返済できないというふうな大変気の毒な方々が多いわけであります。  これは、単にもうけようということではなくて、何とか自分の住んでいるうちぐらいは子や孫に残してやりたいというふうな気持ちから入られた方が多いだけに、私は大変気の毒だと思っております。  ぜひとも、これらの融資一体型養老保険についても、救済の対象として何とかしてもらえないだろうかということで、研究をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  422. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  御指摘のありました融資一体型の養老保険といいますのは、通常の一時払いの養老保険につきまして、その保険料の相当額を金融機関から借り入れて、生命保険会社に一括払いの保険料として払い込むことを一つのパッケージとして販売されたものというふうに考えられます。  この場合、一時払いの養老保険という商品自体は認可事項でございますけれども、その保険料の調達方法は認可事項の範囲外となっておりまして、保険商品といわゆる保険料ローンとの提携について、これまで金融当局がこれを認可したという事実はございませんことをひとつ御理解いただきたいと思います。  その上で申し上げなければなりませんことは、この融資を行う金融機関の職員が、仮に保険契約の締結の代理あるいは媒介を行ったということは、これは保険業法に反しますし、また生命保険の募集人が、将来における契約者の配当等について、断定的な判断を示したり、あるいは確実であると誤解させるようなことを告げたり、あるいは表示したりするということ、これも保険業法に反する行為でございます。  一般論として申し上げますと、結局、保険料ローンというのは、保険会社と金融機関があらかじめ所要の提携事項を定めまして、金融機関が保険料の融資を行うものと承知しておりますので、それ自体は金融当局から何か問題とすべきものではないというふうに考えておりますが、今後ともこの問題は、いろいろ委員御指摘の点もございますので、注視してまいりたいと考えております。
  423. 臼井日出男

    ○臼井委員 ぜひとも研究をしていただきたいと思っております。  所轄が金融監督庁ということでございますが、大蔵の方に、私は、ある人が、これはバブルがはじけなくても、長生きすればするほど結局契約者が損をするというシステムというのはどだいおかしいというふうな内容のものをお示ししてあります。これがもし間違っているなら、どこが間違っているんだということを示してもらいたいということをお願いしてございますが、ぜひともそれをお願いしたい、こういうふうに思っております。  それから、もう時間が大分迫ってきておりますので、先ほど来いろいろ議論を聞いておりますと、野党の皆さん方から、昨年の消費税アップの時期に九兆円増税ということがしきりと出てくるわけですね。確かに、消費税の値上げとか医療費の値上げ、あるいは特別減税の中止というものを足していけば、九兆円の値上げになると思います。  しかし、この消費税の値上げというものを私ども政府・自由民主党が決めたのはもっと前であったわけでありまして、昨年の実施に先駆けること三回にわたって、五兆五千億ずつ先取り減税というものをいたしております。したがいまして、それをトータルすれば十六兆五千億ですね。その実施の時期に既に先払いしているということなわけですね。そのことを全く勘定に入れないで、単に九兆円増税、こう言われると、我々政府与党としては、それは違うじゃないかと言いたくなるのは当然だと思うのです。  そこで、私はぜひともお尋ねをしたいのは、確かに先取り減税十六兆五千億というものをやって、少なくとも増減税イーブンになるような形でもってやっている、そういうことを、きょうも志位さんのお話にも出てきませんでした。そういうものがちっとも出てこないというのは、私は、私ども政府・自由民主党のPR不足なんじゃないだろうか。その点は一体どういうふうにお考えになるのか、大蔵大臣にちょっとお伺いしたいと思っております。
  424. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、実はその感を深くいたしております。機会あるごとに解明をと思いながら、実は、ある意味で済んでしまったことなものでございますから、なかなか説明がしにくい。機会あるごとに、しかし我々が継続してやってきた努力、またその上にこの経済の回復というのは乗るのでございまして、それが全く無になっているということでは私はないと思いますので、まことに同感で、よく気をつけます。
  425. 臼井日出男

    ○臼井委員 私は、そのようにいわゆる恒久減税で気をつけなければいけないのは、この三兆五千億というものは全く話題に出てこなくなってしまったのと同じように、もうもらったものはもらったもので、あえて要求も何もする必要がないのでとかく忘れられがちだということがあろうかと思っております。しかし、私は、今回総理が、いわゆる恒久的減税でもまあ恒久減税でもいいわけですが、それを決断されたということは、本来の所得税の税のあり方の上からは大変すばらしい決断だと思っております。  そこで、今回野党の皆さん方は、特別減税まで入れて比較をして、やれ増税になるじゃないかなんということを言っておりますが、私は、あくまでも特別減税は特別減税であり、臨時的なものでありますから、特別減税を除いたものとの比較でよろしいと思っております。  ですから、ぜひとも所得税、住民税というものを六五%から五〇%まで下げる。今回、私は、多少下の方ももとに戻って、課税対象者がふえてもやむを得ないんじゃないかと思っておりますが、それも堅持をするということでありますから、その間の刻みも、ぜひとも本格的減税というものにふさわしい形に思い切ってしていただくことが私は大切なことじゃないか、こういうふうに思っておりますが、大蔵大臣、いかがでいらっしゃいましょうか。
  426. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一遍限りの減税はあくまで一遍限りでございまして、それが済みますと基本の所得税法に戻る。したがいまして、ベースは三百六十一万円でございます。このことは、もうごく常識的に判断すればそれ以外にないわけでございまして、その上で、さて今度どのような減税をいたすかということでございます。将来に、いずれの時期にかは基本的な税制をつくり直さなければなりませんので、それに邪魔になりませんように今度の減税もいたしてまいりたいと思います。
  427. 臼井日出男

    ○臼井委員 ぜひとも、いろいろな声がありますが、その声に惑わされることなく、本格恒久減税というものを貫く、こういう姿勢をしっかり貫いていただきたい、このように思います。  今回、総理が我が国の経済の危機的な状況を乗り越えるために総理直属の経済戦略会議というものをおつくりになられるということで、きょう新聞で正式なメンバーも決まって閣議の了解を得たというふうな記事も出ておりました。私は、総理が広く多くの方々の意見を聞くという姿勢というものを素早く実現されたものとして、この経済戦略会議というものは大変すばらしい措置であるというふうに考えております。  そこで、問題は、この経済戦略会議というものの権限、地位、そういうものをどういうふうに持っていくかということがこれから大変重要な問題だ、こういうふうに思っております。  政府には政府税調というものがございます。政府税調が、従来、税制については答申をしていただいて自民党と調整をするということになっておりますが、これも、必ずしも政府税調の答申そのものがすべてが正しいというふうには、実は私は思っておらないわけであります。かつて、政府税調の答申の中からいわゆる土地等の価額の一元化というものが行われましたけれども、この措置が大変、その後の固定資産税の調整等々でもって苦労する結果になった。  今でも私は、この土地評価の一元化というのはもっと慎重に考えるべきだと思っておりますが、要するに、これらの諮問の機関と党側の政務調査会あるいは税調との関係、こういうものをいかにしっかりとやっていくかということが大切だと思うわけでございますが、この辺についてのお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  428. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この経済戦略会議でございますが、もともと頭にありましたのは、アメリカの大統領府におきまして、こうした民間の方々を結集して大統領に対しての提言を行い、即実行するというようなシステムを見ておりまして、内閣を組閣いたしましたときに、こうした形ができないか、こう思ったわけでございます。  そこで、今般の経済戦略会議につきましては、いわゆる八条委員会ということにいたしました。これは、政府に関係いたしますのは約二百ぐらいあるそうでございますが、一部では、悪口を言われる方は、そうした中で政府の隠れみのではないかというようなことを言われる向きもなきにしもあらずでございます。  そこで、そうあってはいけないと思いまして、八条ではありますけれども、内閣総理大臣のところに自由濶達な意見を提案していただきまして、その中で、取り入れるものは即これは政策に反映していかなければならぬと実は思っておるわけでございまして、実は、私のところに今、毎日大部の手紙が届いております。この難局を乗り越えるためにはかくかくしかじかの考え方があるといってお届けいただいていますので、そうしたものもこの会議でひとつかけていただきまして、しかも、この会議は、できれば事務局は、従来はどうも役所の方々がみんなしっかり事務局をされておるわけでございますが、できればその事務局長などには民間の方々も取り入れながら、できる限り民間の考え方を取り入れながら、そしてこれを実行していきたい。  若干トップダウンになる嫌いがなきにしもあらずかと思いますが、その点は、党あるいはまたそれぞれのところに十分お話をしながら、スピーディーに実行あらしめる、こういう機関にしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  429. 臼井日出男

    ○臼井委員 もうそろそろ時間が来ているようでございますが、最後に、堺屋長官、いろいろお伺いをしたいと思っておりますが、私は常々、月例経済報告が、非常に数字が出てくるのが遅いのじゃないかと。二カ月、三カ月前の数字を今の状況のようにして聞かなくちゃいかぬということがやはりどうもいけぬのじゃないか、こう思っておりまして、不正確になってもいいということではありませんが、ぜひとも、この月例経済報告の数字の出方ももっと迅速にしていただきたい、こう思っておりますが、このことだけをお伺いをして終わりたいと思います。
  430. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ありがとうございます。やっと経済企画庁長官らしい質問をいただきまして、今までは前歴の、昔個人として書いたものばかりでございましたけれども、今回は企画長官として答弁させていただきます。  私は、企画庁で、まず、先ほども申しましたように、正直、迅速、そしてわかりやすさ、この三つをモットーにしておりますが、統計の面でも、アメリカに比べまして、一カ月から二カ月ぐらい統計の出るのが遅くなっております。それは、日本の統計が、極めて正確を旨といたしまして、早さの方を犠牲としている点があります。アメリカの場合は、速報値を出しまして、後で正確なものが出たときにひっくり返るようなこともあるのでございますが、これをどのようにしていけばいいか、これから事務局とも研究をして、速やかな統計を出せるようにしたい。  それから、全国、今は、例えば消費者物価でございますと、東京都だけが一カ月早いようになっておりますが、できるだけ全国の統計も東京と同じように早くとれるようにしたい。これを大きな課題として、日本情報を早め、正確に、そしてわかりやすくしたいと思っております。
  431. 臼井日出男

    ○臼井委員 終わります。
  432. 中山正暉

    中山委員長 これにて臼井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十九日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時七分散会