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1998-08-17 第143回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年八月十七日(月曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 海江田万里君    理事 前田 武志君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 通雄君    大原 一三君       奥山 茂彦君    加藤 卓二君       亀井 善之君    河村 建夫君       岸田 文雄君    斉藤斗志二君       島村 宜伸君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       深谷 隆司君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       谷津 義男君    横内 正明君       岩國 哲人君    上原 康助君       生方 幸夫君    小沢 鋭仁君       岡田 克也君    菅  直人君       小林  守君    坂上 富男君       原口 一博君    横路 孝弘君       上田  勇君    旭道山和泰君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       西川 知雄君    鈴木 淑夫君       中井  洽君    西村 眞悟君       木島日出夫君    春名 直章君       矢島 恒夫君    秋葉 忠利君       北沢 清功君    中川 智子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣 川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     西田  司君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      井上 吉夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 額賀福志郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹山  裕君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁次長 浜中秀一郎君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  阿部 信泰君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         水産庁長官   中須 勇雄君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         郵政省通信政策         局長      金澤  薫君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省道路局長 井上 啓一君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 八月十三日  辞任         補欠選任   桜井  新君     加藤 卓二君 同月十七日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     深谷 隆司君   横内 正明君     奥山 茂彦君   生方 幸夫君     横路 孝弘君   小沢 鋭仁君     菅  直人君   草川 昭三君     旭道山和泰君   志位 和夫君     春名 直章君   不破 哲三君     矢島 恒夫君   秋葉 忠利君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     横内 正明君   深谷 隆司君     亀井 善之君   菅  直人君     小沢 鋭仁君   横路 孝弘君     生方 幸夫君   旭道山和泰君     草川 昭三君   春名 直章君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     不破 哲三君   中川 智子君     秋葉 忠利君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 中山正暉

    中山委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 中山正暉

    中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。深谷隆司君。
  7. 深谷隆司

    深谷委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、小渕総理並びに関係閣僚皆様に御質問いたしたいと思います。  小渕総理、あなたと私は同じころ早稲田大学に学び、政治を志し、そしてお互いにその道一筋に歩んでまいりました。今、あなたは第八十四代内閣総理大臣おつきになられました。  私は、この予算委員会、四年半という大変長い年月、お勤めをいたしてまいりました。細川政権時代、野党でありましたとき、野中広務さんともども一緒に闘ったのですが、今は官房長官としてそこにおつきでございます。私も、微力でございますが、党の三役、総務会長として本日は質問に立つ、感慨無量の思いがいたします。  しかし、考えてみますと、今我が国は未曾有の危機的状態に置かれておりまして、感慨にふけるようなゆとりは全くないというのが、正直私ども心境です。景気回復教育改革や、国民の求めるさまざまな問題を解決していかなければならない、この難局一身を投げ出して頑張っていかなければならないと決意を新たにいたしているところであります。  恐らく、この難局総理大臣をお受けになられた小渕総理のそのお気持ちも、並々ならぬものがあると思います。お受けになったときの心境、今日の御決意、まず予算委員会の冒頭にお聞かせいただきたいと思います。
  8. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 改めまして、このたび内閣総理大臣の重責を担うことになりました。現下深谷委員指摘のように、大変厳しい内外の状況ではございまするけれども一身をなげうって微力をささげ、国と国民のために全霊をもって努力をいたしていきたいというふうに考えております。  この機会に、私なりに現下の時局を見ましたときに、まさに言われますように、現在日本にとりまして、二十一世紀を前にして第三の改革の時期を迎えておるという認識をいたしております。さすれば前橋本内閣も六大改革を掲げて、この実行のために最善を尽くしてきたものと考えております。したがいまして、私自身も、その基本的な六つの改革を推進していかなければならないという立場は同様のものでございます。  しかし、第三の改革と言われるこの時期を考えましたときに、翻って第二の改革の時期はいずれかと考えれば、これはいわゆる日本が敗戦で打ちひしがれ、その焦土の中で立ち上がってきて日本再建をされたときが第二の改革であり、さらにさかのぼれば、第一の改革明治維新にまで到達するのではないかと思っております。  この三改革の時期を考えますと、いずれもそのきっかけになりましたのが、明治でいえばアメリカ・ペリー提督の来訪であり、また終戦時におきましては、マッカーサー最高司令官もとで種々の改革が行われてきた。  さて、第三の改革のこの時期を考えますと、実はなかなか困難な状況と認識しておりますのは、明治のときは、少なくとも、日本近代国家になるために坂の上の雲を見詰めながら、日本世界の中での地位を確立すべく努力し、国民国家も一致結束してこれを目指してきた感じがいたしておりますし、また終戦後は、全く焼け野原に立って、日本人が経済再建をしつつ、国家再生を祈念して、これまた国民一致して努力をしてきた。  さて、今日を考えましたときに、なかなか、この今日の危機的、困難な状況というものについての、私どもというより私自身政治家としてのアカウンタビリティーといいますか説明不足もこれあって、国民自体の中では必ずしもこの事態をすべて認識しておるという形にはなっておらない。もとより、中小企業も含めまして、みずから困難な経済状況の中で一日も早くこれから脱却しようと努力されている方々にとりましては、そのことを実感をいたしておりますが、しかし一方では、やはり各種の生産におきましても既に物が満ち足りておるような状況の中にあって、戦後一時期と異なりまして、すべての生産におきましてもかなり多くの在庫を抱えておる、お金があっても物が売れないというような状況の中での改革を目指さなければならぬ、極めて難しい時期であると私は考えております。  それでありますだけに、この困難な状況に対処して、私みずからも、これを乗り越えるために、本院におかれる議員各位、また当予算委員会の諸先生方お力も得ながら、力を尽くして努力をしていきたい、こう考えております。そのために、総理大臣に指名を受けた以降、この内閣組閣いたしますにつきましても、私自身といたしましては、まさに宮澤先生を初めといたしまして、それぞれ十分この難局に対して対処していただける方々お力を結集して、この事態に対応していきたい、こう考えておる次第でございます。  私は、そういった意味におきまして、大変、現下、特に経済再生内閣と申し上げましたゆえんのものは、やはり幾つかの経済政策が若干タイムリーにこれに対処できなかった諸点も含めまして、私、この任に当たりました以上は、力を結束して、この事態を打開するために全知全能を傾けて努力をいたしていきたい。改めてその決意を申し上げて、御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
  9. 深谷隆司

    深谷委員 時代が人を呼ぶといいます。時には強力なリーダーシップを持つ人が必要かもしれませんが、こういう時代は広く英知を集めて仕事をやっていくということがとても大事です。そういう意味で、私は、小渕総理はまさに時代が迎えたんだ、そう思っております。  随分、最初から小渕批判がございました。批判に耳を傾けることは大事ですけれども、それで周章ろうばいする必要はありません。ただいまの御決意でしっかりと実績を上げて、国民の前に答えを出していただきたいということを強く求めたいと思います。  さて、今日の喫緊の話題は、何と申しましても、ただいまお話がありましたように景気回復でございます。バブルがはじけてもう七年、なかなか景気回復しない。国民皆様は非常に御苦労なさっているのでございます。その国民の期待にこたえて、一日も早く景気回復をしていかなければなりません。  ただいまお話がありましたように、宮澤総理大臣大蔵大臣お迎えになったり、堺屋太一さんを経済企画庁長官お迎えになったり、総理景気回復への並々ならぬ思いというのがこの内閣で表現されているように私は思っております。要は、この人たちの力、その総合力でどうやって景気回復を進めるかということでございます。  このたびは、緊急な景気対策のために、民間の力をかりて会議を起こすということになりました。まだどういう人材がお集まりか定かでございません。私は、中小企業代表も含めて英知を結集するという意味で、この経済緊急会議の存在というのが非常に大事になってまいると思うのです。  あわせて、ここから出された政策をどう具体的に生かしていくのか、その手順も含めて、小渕総理のお考えを伺いたいと思います。
  10. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 所信表明でも申し上げましたが、私、今御指摘をいただきましたように、英知を集め、そして多くの方々お力を結集いたしまして、その総合力を十分発揮させていただく中で諸施策を遂行していきたい、こういう考え方を持って臨ませていただいております。  その中で、所信表明でも申し上げましたが、経済戦略会議というものを念頭に置きました。もとより、それぞれ施策を進めるのには、ボトムアップで、下の方から積み上げていきまして政策をつくり上げるということも従来の形としてはあり得るものと思っておりますけれども、今やその政策を果断に、かつ、スピードを持って起こさなければならないという時期でございますので、いささか僣越かと思いましたけれども内閣総理大臣もとに、民間方々英知も結集させていただく意味で、経済戦略会議なるものを構想いたした次第でございます。  ほぼその人選につきましてもまとまりましたので、でき得べくんば今週中にもそのことを発表させていただきまして、そうした方々お力、すなわち、民間で大変御苦労されながら生きた経済の中でお仕事をされた方々の貴重な御意見も承りながら、そのことを、ややトップダウンになりかねないかとは思いますけれども、いち早くその考え方をまとめて、それを一つ一つ実行に移していくということが重要でないか、こう考えております。ぜひ、その方々につきましては、余り多くのメンバーでかんかんがくがく、議論だけに終始してはいけませんので、十名以内でとどめてこの会議をスタートさせたい、こう考えております。  中小企業につきましては、まさに中小企業がそれこそ日本の全企業の九八・九%を占めておるというような実態にかんがみまして、そのお考えを主張できる方にもお入りいただきたいと思っておりますが、中小企業代表右代表という方を絞り込むということはなかなか難しゅうございますので、お入りいただく方はお入りいただきますが、機会を見まして、それぞれ中小企業関係の諸団体の皆さんのお考えをできる限り早い機会にお聞きする機会を得て、そうした方々の御意見中心施策を進められるように努力をしていきたい、このように考えております。
  11. 深谷隆司

    深谷委員 ぜひ中小企業意見が吸収できるような体制も考えていただきたいと思います。  総理は、既に財政改革法凍結を明らかにいたしました。事業規模十兆円の平成十年度第二次補正予算及び約七兆円の減税も決断されたのでございます。  国と地方合わせて今五百四十四兆円余りの財政的な赤字を出している、これを次の世代に残してはならないという考えから財政構造改革法というのは生まれました。それは正しいのですけれども、今日のようなデフレ的な経済状況の中では、それが景気回復手かせ足かせになっていくということがございましたから、あなたが凍結を決断されたということは大変正しいことであったというふうに思っています。  幸い、日本は外国からの借金というのがございません。それどころか、逆に大きな外貨準備金も保有しております。つまり、まだ潜在的な大きな力を持っているわけでございます。この力を存分に引き出していくということがとても重要なことであろう、そのように思っております。  そこで問題なのは、来年度の予算編成についてでございます。これをどう進めるかという点は非常に大事でございます。  過日も、党三役も加わりまして、いわゆる新年度予算要求概算要求の基礎的な考え方について申し合わせをいたしたところでございます。そのときに、宮澤大蔵大臣中心に、これからの経済再生ポイントをその概算要求の基本の中で述べられておりました。  今度の予算編成について、大蔵大臣は、そのポイント、簡単に申し上げればどういう点にあるかをお答えいただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般も閣議で決定をいたしましたように、幾つかの特別枠を設けまして、片方公共事業片方はそれ以外の現在特に必要でございます中小企業あるいは都市対策情報産業等々、それらを特別に扱います二つの特別枠、並びに昨年からございました別に総理大臣重点配分受けます二十一世紀向け特別枠等々で、将来に向かって我が国の二十一世紀への地歩を固める。  確かに、御指摘のように財政的には非常に難しい状況でございますけれども日本経済活性化すること自身我が国の将来の財政を助ける、また今危機状況にございます世界経済状況に対してプラスになる、このように考えまして、思い切りまして、片方減税、他方で歳出の活性化、いわゆる近未来を見通しましての近代化に努めてまいりたいと考えております。
  13. 深谷隆司

    深谷委員 ただいまの御報告のように、いわゆる緊縮型から景気回復型に転換された、このことは私は正しいと思います。総額四兆円に上る景気対策臨時緊急特別枠の設定に当たりまして、公共事業を十年度当初予算の三〇%増にするという思い切った対応がなされたことも大変結構であると思っております。  問題は、キャップが外れたということでばらまき予算になってはならないという点だろうと私は思います。キャップが外れたということから、一気に各省庁あるいは関係団体等から予算獲得運動が展開される可能性がある。現に、私のところにも幾つかの陳情や要望が参っております。  必要な要望にはこたえていかなければなりませんが、そのことがばらまき予算になっては大変でございます。何が一番大事でどこに重点を置こうとするのか、適正な配分をきちんと考えた上で予算編成に当たるということがとても大事だというふうに思います。  小渕総理大臣が、組閣のときに各大臣を一人一人お呼びになりまして、さまざまな御注文をつけられました。その中に、省益を優先しないでくれ、つまり、省庁代弁者にならないで国益考えてやってくれ、こういうことをおっしゃった。私は、その場に立ち会って、非常に感銘深く伺ったのであります。  各大臣にもお願いしたいのでありますが、そういう総理思いというものをしっかり受けとめて、省益庁益でなしに何が国益か、そこに思いを込めて、さまざまな予算編成の御協力をお願いしたいと思っている次第でございます。  そのような考え方について、小渕総理のお考えを伺います。
  14. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ばらまきという言葉につきましては、なかなか、見方によって違うのかもしれませんが、世に、予算配分、執行につきましてそうした批判がなしとしないことも、政治家の一人として十分承知をいたしておるつもりでございます。  例えば公共事業につきましても、将来において、結果的に国家国民のためになりましたという成果ができ得るものが、すなわち、なすべき予算配分だろうと思います。そういった意味では、ばらまきと言われるようなことがあってはならないわけでありますが、過去を振り返って、我々もその点につきましても国民的批判に耐え得るような、そうした形での予算編成をしていかなければならないというふうに考えております。  なお、私、組閣に当たりまして、各大臣就任に対して、先ほどの深谷委員のようなことを申し上げました。  率直に申し上げてやや僣越かとも思いましたけれども、各国務大臣におかれましては、国益を尊重して、みずから国のためお尽くしをいただける方に御就任をいただいておるわけでございますが、ともすれば、各省庁の中で、事務当局考え方の中で、必ずしも省益代表しないというようなものばかりでないということを考えますと、やはり国務大臣として大所高所から、現下のこの財政状況にかんがみ、かつ景気の問題について十分考慮しつつ、そして省益にとらわれず、おのおのその任に当たっていただきたいということをあえて申し上げたわけでありまして、このことは必ず実行されるものと期待をいたしております。
  15. 深谷隆司

    深谷委員 過日、自民党の総務会で山中貞則議員が、会計検査院で指摘されたような公共事業については次の年にはもうやめるべきだ、あるいは決算報告等をもっと重視して、何が効果があるのか、どこが必要かをきちっと見定める必要がある、こうおっしゃられた。私は、その思いを大事にして進めていただきたいと思います。  最近、自民党の中で都市問題に関する協議会というのを発足させました。時代が大きく変わり、社会構造が変わっておりましても、なお都市政策がおくれているという考え方に立って協議会がつくられたのでございます。  もちろん、地方のおくれだとか格差を是正するために地方を大事にすることは当然のことでございますが、私は、都市政策の中で、例えば経済効果という点からいったら、公共事業などかなり効果を上げるというふうに思っている次第で、ここに思いをいたすことはとても大事なことだと思います。  例えば道路行政を進めて都市の道路を改良していく。今大体十六キロぐらいで走る渋滞状態の自動車の流れを三十キロにしますと、例えば東京だけでも年間四兆九千億円の経済効果が上がると試算をされているのでございます。こういうところに重点を置くということは、私は非常に効果的だと思う。  公共事業で都市にお金を分配する場合に、よく用地買収費が非常に割高だからなかなか効果を上げないということをおっしゃる方もいらっしゃるのですが、それは私はいささか違うと思っています。例えば私どもの手がけた文京の春日通り、大通りを拡幅いたしました。用地は確かに買収費がかかったのでありますが、現在どうなっているかというと、ほとんどその両側の建物は二倍になっています。二階は四階、四階は八階。つまり、用地買収費は建築費になっておりまして、それなりの経済的な効果を上げているというふうに私は思います。  都市に対するそういう予算配分について、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題につきましては、先般来、私どもの党内においても議論があることを十分承知しておりますし、また、先ほど私が未来について都市と一言申しましたのもそのような意識でございます。  確かに、地方の格差を少なくするという意味で数十年努力を続けてまいりました。ある程度の成果が上がったわけでございますけれども、都市の問題についての国民の関心というものは実は非常に高い、数の上では一番多くの人々が関心を持っている問題になってまいったと思います。  したがいまして、先般来、例えば都市の交通整備、それは地下鉄でございますとか、あるいは都市公園におけるバリアフリーの施設でございますとか、多少お金はかかりましても、そういうことにやはり将来に向かって重点を置くべきであると考えました。また、このたびの予算編成に当たりまして、物流問題等々についていわゆる総理が裁定される枠の一つも設けましたのも、そのような考えでございます。
  17. 深谷隆司

    深谷委員 そのほかに、例えば市街地の電柱の地中化などをこの機会に進めるべきではないかというふうに思うのです。電柱と張りめぐらされたクモの巣のような電線は、都市の美観を損なうだけではなしに、阪神・淡路の大震災で、私は当時担当大臣でございましたので、現地に参りますと、倒れた電柱で緊急自動車が通れなかったり、そのためのけが人が続出している、そういう光景に愕然としたのであります。私は、このような点に重点を置く、いわば発想の転換がとても必要ではないかというふうに思います。  また、この予算委員会で私申し上げたこともあるのでありますが、光ファイバーなどの情報通信網をつくり上げていく、これは逆に都市でおくれている傾向がございます。そんなふうなさまざまな角度から都市の活性化ということにウエートを置いてまいりますと、それは大きな経済効果につながってくるわけでございます。  これらの点につきまして、ただいま宮澤大蔵大臣の御意見を伺いましたが、関谷建設大臣あるいは野田郵政大臣、あなたのお考えをお聞かせください。
  18. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私が建設大臣就任いたしまして初めて陳情を受けたのは、東京都でございました。これは今までになかったようでございまして、東京といいましょうか、大都市の先生方もそういうことで認識を新たに持たれていることだろうと思うわけでございます。  日本全体の道路整備を考えてみますと、ことしの五月から、新道路整備五カ年計画ができ上がったわけでございますが、まだ十分なものではございません。そういう中にあって都会の道路行政は、これはまたおのずから、先ほど先生御指摘がございましたように、地方の道路整備の行政とは内容が当然違ってくるわけでございまして、今後の都会の道路整備というのは自然環境と共生のできる状態の道路整備でなければならないと私は思っているわけでございます。  御指摘のございましたように、道路幅を拡幅するというようなことになりますと、これは物流の効率化にも直結はいたしますし、また排気ガスがそれだけ出ない。流れが速くなるわけでございますから、そういうようなことにもなりましょう。あるいはまた、道路の幅を大きくするということは建物の建ぺい率もよくなってまいるわけでございますから、その経済効果たるものは私は想像以上のものがあると思うわけでございます。  したがいまして、この機会に、経済の再活性化とともに、この都会の道路行政、そしてまた地方の道路行政というものも力強く進めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
  19. 野田聖子

    ○野田国務大臣 情報通信は、今現在日本経済が低迷していると言われている中、大変元気よく牽引力の役目を果たしていることは、深谷先生も御承知のことと思います。ですから、今お話がありました光ファイバーの整備というのは、これからの情報通信の分野において、技術開発とかまた新たな研究開発にとっては大変必要なものであるということを認識しています。  実際、情報通信を使った研究の中でITSというのがあります。先ほどもお話の中で渋滞の話がありましたが、この情報通信を道具として使った実験の成果にVICSというシステムがありまして、これは車についているカーナビゲーションシステムに情報通信を利用して渋滞情報とかを織りまぜて付加価値を上げているもので、これは既に実用化されていて売り上げを伸ばしているところであります。しかしながら、このVICSについても地域限定でありまして、ますます全国にわたっての基盤整備が必要だということが挙げられているところです。  ところで、光ファイバーについてですけれども、これは公共投資とは言われていますけれども公共事業ではありません。ですから、今現在は民間事業者の人が主体的に光ファイバーを整備してくれているわけでして、国としては低利融資という形で後方支援をしていることになっているわけです。しかし、これに関しては、ただこれからの情報通信というのがその一産業を伸ばすだけではなくて、情報通信を道具として、医療とか教育さらには福祉に、大きく国民生活にプラスになるのではないかと考えているので、いま一つ踏み込んだ議論をし、前向きに進めていかなければなりません。どうか御支援のほど、よろしくお願いします。  そして、都市に関しましては、今、全国の光ファイバーの普及率は一九%でございまして、深谷先生のお住まいの東京都は四二%を超えております。これからもますます牽引力になっていただきまして、東京都市部はもとより、全国に光ファイバー網が基盤整備事業として進めていかれますことの御支援をお願いいたします。
  20. 深谷隆司

    深谷委員 建設大臣も意欲的だし、野田郵政大臣もよく勉強しておられて結構でございます。どうぞただいまのお話のように、積極的に景気回復経済安定のためにそれぞれの大臣の御努力を強くお願い申し上げたいと思う次第です。  次に、税制について伺いたいと思います。  既に特別減税は四兆円実施されました。しかし、消費は残念ながら好転するという状況にございません。私は、今まで減税の打ち出し方が小出しであったということを反省していかなければならないと思います。その点、小渕総理は、この一両年中に不況を克服していくということで恒久的減税というものを打ち出されました。そういう意味では、私は必ず効果を上げていくものと考えております。  これからの経済回復、一体どういう形が想像されるのだろうか。あのバブルの前のような急激な右肩上がりの景気回復は望めないし、望んではならぬと思います。ことしよりも来年、来年よりも再来年と、穏やかな落ちついた景気回復が一番望ましいと思っておりますが、堺屋経済企画庁長官、あなたの御所見をお聞かせください。
  21. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今回、六兆円をはるかに超える恒久減税を来年から実施するということが決定されました。これによってどのような景気回復の足取りが進むか、どのような消費需要が進むか。  これは、経済というものはその時々のムードであるとか国際情勢であるとか技術変化がございますので、今直ちにこんな変化ができるということは申し上げかねるところでありますが、現在のところといたしまして申し上げれば、これは従来と違って恒久減税でございますので、中堅所得層を中心とした選択的な消費拡大、文化でありますとか教養でありますとか娯楽でありますとかそういうものがかなり拡大すると考えております。また、これが恒久的な減税として認識されますと、住宅需要にも好影響を与えるのではないかと思っております。  あわせて補正予算の面でも、こういった新しい産業を起こして、本当にうちの家もゆとりができたな、我が町も楽しくなったなというような都市的なサービス産業、これから発展いたしますような知的な産業を起こすように、この支出の面と減税の面と両方相まって経済の復興に尽くすように努めたいと考えております。
  22. 深谷隆司

    深谷委員 あなたのことだから、時間がたっぷりかかると思って心配したんですが、簡潔な御答弁でありがとうございました。  所得税と住民税の減税について、合計で最高税率六五%となるものを五〇%に抑え込むということは結構でございますが、これに定率減税を組み合わせる方式を採用する、このように伺っております。一方で、年間七百万から一千万くらいのいわゆる中間所得者層の減税について、この率を大きくしたいというお考え小渕総理はお持ちのようでございます。これは、働き盛りの人たちに勤労意欲を与え、一層頑張るという点では大変大事なことであると思うのでありますが、カット率に格差をつけるということが困難だというような指摘もあるようでございます。宮澤大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、小渕総理から減税率を異ならしめることはできないかということを私承っておりまして、いろいろ事務当局で検討を実はいたしております。  そういうことをするとすればどの階層にすべきかということを含めまして検討をいたしておりますが、今一つ困っておりますのは、現実に源泉徴収義務を行う、それの、大会社はよろしゅうございますが、家事労働者を除きますと一人でも雇っているところはすべて源泉徴収義務がございますから、義務者が四百万人ほどございます。その場合に、毎月毎月はよろしゅうございますが、年末調整をいたしますときに、もし異なる減税率を複数設けておりますと、階層別にその計算をしなければならないという大変に難しい問題を避けて通ることができませんで、大企業でございますとそれだけの徴収義務のエキスパートを持っておりますが、小さいところはそれができないということがございます。  何かいい方法がないかということをいろいろ検討しておりますけれども、ただいま、こうすればいいということはなお浮かんでおりませんで、もう少し検討させていただきたいと思います。
  24. 深谷隆司

    深谷委員 ぜひ、そういう中間所得者層が頑張れるような体制をつくるためにしっかり勉強なさっていただいて、早目にお答えを出していただきたいと思っております。  法人課税について、実効税率を四〇%に引き下げようとされておりますが、今日までの状態はまだ国際水準に達していないわけでありますから、これは当然のことだというふうに思います。法人税の減税は、企業人にとりましては大変朗報でございます。産業の空洞化を防ぎ、そして、例えば来年に向けて設備投資を促進させるなど、経済的効果もかなりなものだというふうに私は思います。  ただ、かねてから私どもが心配しておりましたのは、その減税分をどこで埋め合わせするかという問題についていろいろな議論があったという点です。  一部の人たちの間には、課税のすそ野を広げろという御意見がありました。いわゆる外形標準課税でございます。そんなことをやりますと、中小企業はほとんど赤字でございますから、中小企業からその分埋め合わすということになって、いわば大企業減税分を中小企業で埋め合わすなどといういびつな形が起こる可能性がある。私どもは大変心配したのでありますが、今回はそういう措置をなさらないということでほっといたしました。  私は、言いかえればこれは中小企業に対する配慮であり、小渕総理中小企業に対する並々ならぬ思いのあらわれではないかと思うのでありますが、その点についてあなたのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  25. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 外形標準課税につきましては、実は与党自由民主党におきましても、この一環として、法人事業税の外形標準課税の導入の検討を急ぐこととする、そういう党の改正大綱がございます。したがいまして、今後の課題としては、やはりこうした外形標準課税という税の導入ということも十分検討していかなければならない課題ではあると思っております。  しかしながら、現下の最大の課題である景気回復ということでありますし、同時に中小企業における現在の経営状態、実態を考えますと、今この問題を取り上げるということは、これはできかねることだろうと思っております。将来的課題としては検討しなければならぬと思っておりますけれども、今日の、少なくとも来年度予算編成に当たりましての税制改正等におきましてこの問題を取り上げるということはあり得ない、こう御承知をいただきたいと思います。
  26. 深谷隆司

    深谷委員 ただいまの小渕総理の御判断はまことに正しく、私は評価いたしたいと思っております。  我が国経済再生させるためにその足かせとなっておりますのが不良債権問題でございまして、これを一日も早く解決をさせていかなければならないのであります。不良債権問題について、我が党も、政府も、野党も含めて、真剣な議論が進められてまいりました。金融再生トータルプラン実現のために、今国会に政府から二つの法律案が出され、我が党からもこれに係る四つの法律案を提出いたしました。  不良債権処理を進める上で大切なことは、金融機関の抱えている不良債権の実態がどんな状態か、それをしっかりつかむことではないだろうかという思いであります。いわゆるディスクロージャーでございます。このディスクロージャーの状態が 一体今どの程度進んでいるのか、総理の御判断を伺いたいと思うんです。
  27. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 不良債権の実態につきましては、法に基づきまして、金融監督庁等におきまして今十九行の検査が入っておるところでございます。したがいまして、その検査結果があらわれてきませんとその実態は不明ではございますけれども、しかし、本会議でも申し上げましたように、各金融機関におけるディスクロージャーの問題につきましては、SECの基準その他を十分駆使しながら、その実態についてこれを解明していかなきゃならぬということで、現下最大の努力を傾注いたしておるところでございます。
  28. 深谷隆司

    深谷委員 不良債権、各銀行どの程度あるのか、きちっとやはり明らかにしていくことが大事でありますから、その作業を進めていただきたいというふうに思います。  不良債権処理を進めていく過程で、経営困難に陥る金融機関が出てまいります。それを支えるための、いわばセーフティーネットと申すべき既に整備された金融安定化二法によって三十兆円の公的資金の枠組みができております。その上に、今度はつなぎ銀行としてブリッジバンク構想というのが出されたわけでございます。  これらの諸施策は、預金者を守り、健全な借り手を守っていく、保護していく、そして究極的には日本景気回復に持っていくための大きな土台になっていく、こう考えるのでありますが、その点について国民の皆さんがどこまでおわかりいただいているのか、私は懸念があるのでございます。  国民皆様の側から見れば、いかに金融安定策といいながらも、なぜ銀行だけが国によって守られるのかという素朴な疑問が残ります。そして、この破綻を招いた人々の責任は一体どうなっていくんだ、責任もとらないで国がこれを守っていくというのはおかしいではないか、そういう国民的な怒りというものが存在していることは確かでございます。  これらの経営責任についてこれからどのように考えていくのか、大蔵大臣のお考えを伺いたい。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、この問題につきましては、国民皆様が、まだ法案提出早々でもございますので、十分に御理解していらっしゃらないかと思います。  深谷委員は御承知でございますが、重ねて、政府が意図しておりますところは、都会では、殊に勤労者は銀行と縁が薄うございます。預金をしておりますが、これは一〇〇%保護されますので、倒れても心配がない。金を借りるといえばハウジングローンぐらいでございますから、まず銀行というのはどうも余り親しめない存在だと多くの勤労者、給料生活者は暗々に感じているようでございますが、地方では、本当に小さな中小企業が銀行に文字どおり自分の事業の生死を預けているような、大変に気の毒とも言えるような状況でございますから、銀行がつぶれてしまいますと、それは即自分の問題になる、あるいは地方の問題になる。この問題についての認識が、どうも都会で勤労生活をしておりますとやや薄いようでございます。  政府が心配しておりますのは、銀行は、つぶれるべきものはつぶれなければならない、それはもうやむを得ないことである。しかし、そのときに、全く何十年善意で友好な取引をしていた中小企業が、今さらどこへ行っても貸してくれるところはございませんから、つぶれなければならないのかということは大変な大きな問題で、現実に、思わないことでございましたが、北海道ではそういうことが起こっております。  そこで、勇敢に不良債権の退治をいたしますためには、そのような人たちに累を及ぼさないようなことをなるべく考えなければならない、こう考えましたがために、アメリカの例を倣いましてブリッジバンクをつくって、もうだめな銀行はそこでつぶれるわけでございますから、これは当然いろいろな制裁を受ける。しかし、お客さんを保護するために、金融管理人を入れるとかあるいは新しい銀行に引き受けてもらうとかして、それによって善意の預金者の保護は万全を期したい。  もとより、そうやって倒産いたしました金融機関については、経営者は退任あるいは民事、刑事上の責任、あるいは金融管理人によってその責任を追及され、さらに告発の準備をしなければならない、あるいは金融監督庁長官は取締役等の解任を命ずることができる等々厳しい準備をいたしまして、責任追及には甘くなりませんように一生懸命いたすつもりでございます。
  30. 深谷隆司

    深谷委員 住専の問題で中坊さんが非常に頑張って、ついこの間も、旧住専の庭山元日住金の社長の経営責任を認めさせて、一億二千万円の賠償、御本人は賠償と言っていませんが、それを実際にとることができた。  やはり、これから政府も思い切った責任追及ということをしていかないと、国民の皆さんの御理解をなかなか得られることではないと思うんであります。刑事責任だけでなくて、道義的な責任も含めて国民が納得できるような姿勢をとり続けてまいりますことを強く要望いたしたいと思います。  また、なぜ民間金融機関を守るのかという点について、誤解のないように十分に国民に御説明申し上げることが大事でございます。その点につきましても、どうぞ積極的に国民皆様に語りかけるように努められることを要望いたしたいと思います。  さて、経済再生のための当面必要な政策というのは私はほぼ出そろったというふうに思うんであります。あとは、不良債権問題解決のため、いわゆるブリッジバンク法案を柱とする金融再生関連法案の早期成立を図るということが最も大事だというふうに思います。参議院では自由民主党の勢力が今度後退いたしまして過半数を割っておりますから、法案成立のためには相当な努力を必要といたしますし、野党の皆さんの御協力も仰いでいかなければなりません。何とか国会論議を通じて一致点を見出しながら、目的は国家国民のためなんだというその一点に絞って、野党の御協力をぜひいただけるような、そういう話し合いを繰り返して続けていかなければならぬと思うんであります。  野党の中には、参議院の選挙の結果だとか最近の世論調査の結果を見て、今解散をやったら勝てるからというので衆議院の解散・選挙を求める声もありますが、今はそんな時代ではございません。(発言する者あり)
  31. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  32. 深谷隆司

    深谷委員 この時代を乗り切るために国民の皆さんは本当に期待して国会を見詰めているわけでございますから、そういう意味で、しっかり与野党協力をして頑張っていきたいと思いますので、一方的なやじを飛ばさずに、お互いに、ひとつ検討し協力していこうじゃありませんか。そのことを強く申し上げたいと思います。(発言する者あり)
  33. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  34. 深谷隆司

    深谷委員 そして、そのために、例えば場合によっては党首会談を行うということなども必要ではないかと思うのであります。  小渕総理はどのようにお考えか、その所信を承りたいと思います。
  35. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現下の最大の課題の一つであります不良債権の処理に関しまして、今、政府といたしまして閣法として二法、そしてまた議員立法として四法、国会に提出をさせていただいております。  本問題につきましては、委員指摘のように現下日本経済の最大の大問題でございまして、この円滑な処理なくしては日本経済の将来は極めて危ういと考えております。この認識は恐らく国会議員ひとしく持っておられるものと認識をいたしております。  野党各党におきましても、十分な御検討をされて法案化につきましても御議論されておるやに聞いております。今後、金融特といいますか新しい委員会におきまして、それぞれの立場での御主張を十分出し合いながら一致点を見出すことができ得ればこの難局は乗り切れるものと認識をいたしております。  そうした観点につきまして、将来におきまして各党の党首との会談等のお話もございましたが、今日の時点におきましては、十分国会においての御議論を通じまして各党・会派の御主張を提起していただきまして、その議論の中でよりよきものが生まれ得るのかどうかということもございますので、そうした結果を十分見させていただいた上で、最終的には、何としても今国会早期にこの問題についての決着のできる法律が国会を通過する、このことは、ひとり我が国のみならず、世界各国とも注視いたしている問題でございますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思っております。
  36. 深谷隆司

    深谷委員 あなたの調整能力を生かされて、どうぞ具体的な答えが早急に出るように、一層御努力をお願いいたしたいと思います。  先ほどから申し上げていることでありますが、この厳しい経済状態の中で一番苦労しておられるのは中小企業の皆さんです。特に貸し渋りの状況は、解決されるどころか一層深刻になっているというふうに、私たちのところにも生の声が毎日のように伝わってまいります。  中小企業のいわゆる借入先というのは、ほとんどが民間金融機関です。中小企業の借入額は総額で三百四十八兆円、そこから、民間から借りる分が三百二十一兆円、実に九二%を占めています。  バブルが崩壊後、銀行側のBIS規制等による貸し渋りだとか担保価値の下落による貸し渋りとか、いろいろあったわけであります。しかし、政府は、例えばBIS規制の緩和などなど、あるいは公的資金も含めてかなり対応をしているのでございますが、依然として民間金融機関の貸し渋りはとまっていない、一層深刻になっている。  このことについて、大蔵大臣、どうお考えで、これからどう積極的に中小企業が借りられるような状況をつくっていくのか、お考えを承りたいと思う。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、昨年の秋ごろから顕著になりました貸し渋りの状況は、最近の統計によりましても改善をいたしておる兆候はございません。まことに残念でございますが、資金需要の沈滞もあるかもしれませんが、しかし、貸し渋りそのものはよくなっていない。  他方で政府は、昨年の秋以降、いわゆる政府関係機関におきまして一斉に貸し出しの増加、積極的な貸し出し体制をとりまして、前年度に比べますと総体では一〇・七%の貸し出しの伸びがございました。各行によって少しずつ違いますが、概して平均いたしますと一〇%余りでございます。また、このための予算措置もいたしました。  それはそれなりに非常に効果を上げておりますけれども、実際には、政府に行って借りるということは初めての方にはなかなかやりにくいものでございますので、むしろ金融機関が積極的に、断るときにはどういう理由で断るのかをはっきり支店長あたりが自分でチェックをしてもらいたいということまで申しております。  そういう意味では、政府としては一生懸命努力をしておりますし、また、いわゆるマル経資金なども貸し出しが伸びております。しかしながら、そのような政府の努力と相まって、やはりそこは銀行、金融機関に、金融機関の本来の使命というものを考えてもらって、そして将来を展望して貸し出し政策考える、そう考えてもらうことが私は大切なことだと思います。  ちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、やはり金融機関は、企業の将来というものを考えて、それを判断して貸す、貸さないを決めてもらうべきものであって、一定の土地があるから担保は大丈夫といったようなことは既に過去においていろいろな反省を呼んでおると思いますので、その点も私は呼びかけたいと考えております。
  38. 深谷隆司

    深谷委員 今、宮澤大蔵大臣も触れられましたけれども民間金融機関の貸し出しをもっと順調にやらせていくためのさまざまな手だてを政府はやっていますから、これはぜひ民間金融機関の反省と努力を促していかなければならないというふうに思います。  同時に、こういうときに、政府系金融機関が駆け込み寺としての役割を果たすべきだというふうに思います。ただいまもございましたように、政府は九年度で十二兆円、十年度で十三兆円、この枠を広げたのでありますけれども、しかし、そのうちどのくらい利用されているかというと、七割超えていますからいいじゃないかと言えるかもしれませんが、九年の例でいいますと、残りが三兆円あるのですね。私は、目いっぱい貸し出すべきだというふうに思います。また、平成十年度分でも四月から七月末までで約二兆二千億円の貸し出しで、これは例年のレベルだというふうに思うのであります。  私は、条件にかなうということはもちろん大事でございますが、駆け込み寺としての性格を考えた場合には、ある程度のリスクは計算の上で、思い切った貸し出しをしていくということがとても正しいことではないか、大事なことではないかというふうに思います。貸出枠をさらに拡大させ、貸し出し条件を緩和させ、さまざまな手だてで目いっぱい貸し出す方向がとられるべきだと思いますが、通産大臣の御意見を伺います。
  39. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 深谷委員御承知のとおり、資金量としては、九年度、十年度で二十五兆円の枠は確保してございます。しかし、この融資が全額実行されたかといいますと、そうではございません。まだ残っているわけでございます。  そういう中で、中小企業金融公庫、商工中金等は、窓口で積極的に中小企業に対して金融を行うべく担当者が努力をしております。一方では、中小企業民間から借りる場合、これに対して、各県にございます信用保証協会、こういうものが信用保証をするわけでございますが、これについての条件緩和等は年初より相当程度やってまいったわけでございますが、こういうものについてもさらにこの政策を深めていく必要があるという先生の御指摘はまさにそのとおりでございまして、今後は、第二次補正あるいは平成十一年度予算要求において、中小企業に対する金融の側面からの支援策を充実させていくということは、小渕内閣の最も重要な私は政策課題である、そのように思っております。
  40. 深谷隆司

    深谷委員 先ほどの小渕総理中小企業に対する思いというものを含めて、ただいまの通産大臣のお言葉を大変うれしく思います。どうぞ、無担保無保証の枠を広げるとか、あるいは信用保証協会の保証限度額の拡大を行うとか、さまざまな手だてを果敢に打っていただくように要望いたします。  かつてこの委員会で私ども指摘したのでありますけれども、政府系金融機関からの借り入れの金利減免措置というのがとられてまいりまして、これは中小企業の皆さんから大層喜ばれたのであります。その期限がこの十月十八日に訪れます。私は、引き続いて同じ対応をしていただきたいと思うのですが、通産大臣、いかがですか。
  41. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 深谷委員御承知のように、この制度は、大変高い金利水準のときに借り入れました中小企業等の融資残高に対する金利でございますが、余りにも市中金利とかけ離れたという認識がございまして、今までそれの補てんをして実際の金利を下げてきたわけでございます。  これは、今後引き続き続けていくのかどうかということを問われれば、これをやめる理由はないというふうに私は考えております。
  42. 深谷隆司

    深谷委員 中小企業が相続税で悩んでいることは、通産大臣、御存じと思います。三代交代すると中小企業はつぶれてしまう、そのくらい過酷なんですね。ですから、承継税制等についてはどうしてもこれから答えを出していかなければならない。その点についてどうお考えですか。
  43. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 相続税制は、最近の相次ぐ相続税制の改正によりまして、相当程度まで私は改善されてきたと思っております。しかしながら、相続税の最高税率が高い等々ございまして、やはり相続税によって町が破壊される、あるいは中小企業の伝統的な経営というものが存続できなくなる等々の御指摘もありますし、また、農地の相続との比較において中小企業が論ぜられることもございます。これはもう自民党にとっては長年の課題でございますが、なかなか急には結論が出ない。しかしながら、この課題は忘れずに議論をしていく必要がある。  これは、相続税が全国民に対して公平であるということと同時に、やはり町の文化とか、あるいは日本の伝統的な商業、文化というものを守るということも考えなければならない一側面である、私はそのように思っております。
  44. 深谷隆司

    深谷委員 承継税制の問題は本当に大事でございますから、どうぞひとつ早く結論を出していただくように、心からお願い申し上げる次第であります。  中小企業にあすはないなどということをおっしゃる方がいますが、そんなことは全くありません。あのシリコンバレーをごらんになるとわかるわけであります。ほとんどが中小企業であります。これをしっかり守り育てていくことは、私たちの責任でございます。どうぞ小渕総理大臣中心にしっかり頑張ってくださいますように、重ねて強く申し上げさせていただきたいと思います。  景気低迷のもう一つの問題は、失業率の問題です。六月の完全失業率は四・三%と、最悪の状況に相なりました。雇用不安が消費心理に影響する、その悪循環が私は大変心配でございます。  ただ、失業の原因をよく調べてまいりますと、景気低迷のための雇用不足というのは約一%と言われています。あとの大部分は産業構造の変化、産業構造の転換だとか、職業、年齢、地域などのいわばミスマッチから生まれている。  人が余っているのに人材が足りない、そういう声をよく聞きますけれども、まさに産業構造の大きな変化の中で人材の適正な配置が行われていないということが、極めて大きな原因になっているというふうに思います。リストラクチャリング、いわば事業の再構築の機会に、例えば大企業から人材を中小企業に移していくとか、そういうことができれば経済活性化にもつながっていくわけでございます。  これからの雇用の維持回復の問題を含めて、労働大臣のお考えを伺います。
  45. 甘利明

    ○甘利国務大臣 まず最初に、光栄なる初答弁の機会をいただきまして、まことに感謝を申し上げます。  今、深谷先生から、大企業のリストラによって排出をされる人材、中高年齢層を中心とする人材を中小企業に有効に活用できないか、それが中小企業の活力を助ける一助になるというお話であります。見識だと思います。  ただ私ども、今一番頭が痛いことは、中小企業のリストラが大企業以上に深刻であるということ、中小企業が新規に人材を雇用する余力がなかなかないというところが一番頭の痛いところであります。  さはさりながら、先生御指摘を今までもいただいてきておりますとおり、人材の確保に関しましては、中小企業というのは大企業に対してハンディキャップを負っているわけでありまして、いい人材はみんな大企業にとられてしまって、なかなか思うような人が手配できない。こういうチャンス、こういう機会は、先生御指摘のとおり、大企業からいい人材を取り返す機会にもなるはずであります。  そこで、労働省といたしましては、さきの総合経済対策の中に緊急雇用開発プログラムというのを仕組んでおりまして、その中で特定求職者雇用開発助成金というのがありますが、これは中高年齢者を採用した企業にはそれなりの助成措置をする。これは、中小企業の方が手厚くしてあるわけでありますが、この年齢層を五十五以上から四十五以上に下げまして、中小企業がより人材の手配をしやすいようにしたところでございます。  それと加えまして、私、大臣就任をいたしましてまず最初に指示をいたしましたことは、雇用のミスマッチをなくしていこう。  労働省は、職安、ハローワークの中に求人と求職のマッチングをする機構があるわけでありますけれども、それ以外に、経済団体には経済団体なりの、言ってみればデータベースがあるわけであります。しかし、このデータベースと行政のデータベース、ネットワークがつながっていないというところが今ネックでありまして、これをつなげていったらどうだろうかと。少なくとも有効求人倍率は上がるし、ホワイトカラーの移動にとっても有利に働くのではないか。そういうことを通じて優秀な人材をこの機会中小企業が確保する、あるいはその人材の能力開発を通じて中小企業に供給をしていく、そういうチャンスをとらえて中小企業がさらにたくましくなっていく、そういう機会としてとらえていいというふうに思っております。  先生の御意見を体して、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
  46. 深谷隆司

    深谷委員 今活況にあるアメリカも、かつて八〇年代の前半は失業率が一〇%だったのですね。ちょうど産業の構造の変革のとき、いわば産みの苦しみの時代であった。私は、今が日本はそういう時代ではないだろうかというふうに思います。ですから、経済回復させ、雇用の安定を図るためにさまざまな、例えば規制緩和による労働市場の機能の強化とか、あるいは職業転換に備えた職業能力の開発、訓練体制の充実、特に大事なのは、転職しにくい中高年齢層の方々の再雇用のためのさまざまな教育、そういう環境を整備することがとても大事だと思います。  労働大臣、もう一回お答えください。
  47. 甘利明

    ○甘利国務大臣 まさに先生が御指摘されている点がこれから非常に大事になってくる点でありまして、高齢者の雇用に関しまして、高齢者の方々にこれまで長年培ってきた知識や経験を生かしていただくために、労働省といたしましては、希望をすれば少なくとも六十五歳までは現役として働くことができる社会、すなわち六十五歳現役社会の構築を目指してさまざまな施策を行っているところであります。  具体的に申し上げますと、高年齢者雇用継続給付や継続雇用定着促進助成金などを活用いたします。つまり、高齢者はある一定の年齢を超えますと給与のカットを余儀なくされまして、それがある一定の数値を下回る場合には助成していこうという仕組みであります。そして、雇用を六十以降までずっと支えてもらおうという仕組みをとっているところでございます。  さらに、国民各層を代表する方々の六十五歳現役社会推進会議等の場におきましても、今後の高齢者雇用に関しまして、定年制のあり方も含めた議論を行っているところでありますし、六十五歳現役社会を実現するための政策ビジョンを策定してまいりたいというふうに考えております。  それから、私もこの間視察したのでありますけれども、生涯職業能力開発促進センター、労働省では通称アビリティガーデンと呼んでおりますけれども、これはホワイトカラーの職業訓練、これはいろいろな講座がございまして、時代のニーズを先取りしていろいろな能力開発が行われる講座が設定をされておりまして、そこでの職業訓練等を通じまして、雇用、新しい社会の要請にこたえる人材供給をしていきたいというふうに思っております。  また、企業とかかわらずに個人が自発的にオフタイムを利用して教育訓練を行うことができる、この教育訓練給付も創設をいたしまして、自発的な職業能力開発を支援する等の施策も講じているところでございます。
  48. 深谷隆司

    深谷委員 年金の支給年齢が六十五歳に段階的になっていく、まだ一般の企業の定年は六十歳、五年間どうするんだと。それが、四十代、五十代の働き盛りが消費にお金を回さない大きな理由にもなっているわけであります。定年制の延長の問題、再就職の問題、どうぞ労働大臣、しっかり頑張って努力の答えを出していただきたいと要望いたしたいと思います。  この際、社会保障問題についてお伺いいたしたいというふうに思います。  二十一世紀の高齢化社会を前にして、近年盛んに言われてきたことは、高齢者の増加と少子化の問題という点で、このテーマがどうも不安感をあおるというような、そんな形であり続けた、そこに非常に問題があると私は思うんですね。例えば、あと二十年もたったらお年寄りは四人に一人の割合になる、これでは若い人がお年寄りをお守りするには大変だ、世代間の対立が起こるとか、今のままでは将来の社会保障は当てにならないといったような、悲観論ばかりが横行しているという感じが私はあるんです。  私は、夢と希望のない厚生行政というのは基本的に間違っていると思っています。つまり、さまざまな工夫をしていけば、まだまだ社会保障についての展望というのは開けるものだ、私はそう考えているのであります。  例えば長野県は、お年寄りが病気にかからないように、その予防に非常に努力をなさっておられます。調べてみますと、長野県の一人の老人医療費は全国平均の三〇%も低いんです。つまり、病気をしないように予防に徹底的な努力をする、そうすると、かかる費用が三〇%要らなくなる。言いかえれば、長野県の方式を全国にしていけば、計算上は実に二兆五千億円もゆとりができるということになるわけでございます。  全国を健康で長生きできるような、そういう町づくりを行うことによって、随分様子が変わってくる。そして、例えば、先ほど申した労働年齢も六十五歳以上に延ばしていくということになれば、保険料を支払う側の数がふえてまいりまして、社会保障の財政も立ち直っていく可能性が出てくるわけでございます。介護保険が導入されて、きちんとした将来の見通しがついてまいりますれば、今そのためにお金を使わないようにしようという心配がなくなるわけでありますから、介護保険を徹底してこうなるということを明らかにしていくことなど、非常に大事なことであります。  そういう努力をするだけで、GDP、国内総生産を一・三%押し上げる、そういう学者の意見も出ておりますし、経済効果は公共事業と同じで、二・七倍ぐらいになる、こう指摘している方もいらっしゃるわけでございます。  これまでの高齢化対策は、マイナスばかりの面を見詰めて、そして明るい老後を語ろうとしなかった。私は、ここに大きな問題がある、そういう意味では、発想の転換を厚生省がしていかなきゃならぬと思うんですが、厚生大臣はいかがでしょうか。
  49. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答えします。  今委員の御指摘のように、これから非常にスピーディーな高齢化社会を迎えてまいります。同時に、少子化社会でもございます。そういう中で、国民生活と非常に密接な関係のある社会保障制度をどうしていくかということは、二十一世紀を展望した場合に極めて大きな、最大の政治課題ではないかと私は考えております。  そういう意味で、この社会保障に真剣に現内閣としても取り組んでいただきたいし、私も本当にその点に思いをいたしまして、誠心誠意努力させていただくつもりでございます。  さて、当面する諸問題は、今御案内のように、人口の少子・高齢化という客観的な事実あるいは推計に基づきますれば、いろいろ、年金制度は一体将来どうなるのか、上がり続ける保険料を払っても、果たして給付が受けられるのかどうかという若者の不安もございます。また、医療保険につきましても、今いろいろ医療保険を払っておるけれども、本当に安心、安定した医療給付が受けられるかどうかという不安感もございます。介護の問題も、二〇〇〇年からスタートいたしますけれども、果たして本当に充実した、安心の持てる介護ができるかどうかという問題もございます。  そうした問題を私どもとしてはこれからの政治課題として取り組まさせていただきますが、問題は、要するに、先生のおっしゃるように、希望の持てるということでございまして、私どもは、いたずらに悲観的な事実だけを御説明するのではなく、安心して、しかも安定した制度をつくり上げるということが何よりも重要だと私は考えております。そういうことがやはり夢のある社会保障を示すゆえんでもあろうかと思うわけでございまして、その点、個別には申し上げませんけれども、年金の改正もいたしますし、医療保険の改正もいたします、介護もスムーズにスタートできるようにいたしたい、こう思っております。  また、特に少子の問題につきましては、人口構成上大変問題がございますから、私どもとしては、産み育てることに喜びを感じるような社会を目指してその基盤造成をしたいということで考えておりまして、厚生白書もことしは相当それにページ数を割いておりますし、総理の諮問機関である有識者会議というのを設けまして今それに取り組んでおるところでございますが、そういった結論を見ながらも十分な少子化対策も考えていきたいというように、まさに先生のおっしゃるような希望の持てる二十一世紀の社会保障体系を目指して頑張ってまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
  50. 深谷隆司

    深谷委員 何年たったらお年寄りがこれだけふえて、若者が少なくて本当に生きづらくなる、そんなことを言われたら、長生きして悪かったのかと思うお年寄りも出て、情けない、そんな涙をこぼした人もいました。先ほど申した長野県の例のように、考え方を転換させて、病気を予防して医療費がかからないようにするとか、さまざまな発想の転換をやれば可能性は十分あるわけですから、それらを全部考慮に入れて、厚生大臣、しっかり、お年寄りが喜ぶ、長生きしてよかったなと言えるような、そんな仕組みをぜひつくっていただくように、強く要望いたしたいと思います。  御年配の方々の問題というのはほかにもたくさんあります。ここに衆議院に設けられている平成の目安箱に寄せられたお年寄りからのお手紙がございまして、長い間、貯金、預金して、老後を金利で暮らしていきたいと考えていた、超低金利の時代がずっと続いて夢も希望もない、一体いつになったら金利を上げてくれるのか、せめて自分があの世に行く前にこの苦労を救ってもらいたい、年寄りの切なる意見です、お笑いくださいと書いていた。私は、本当に涙が出ました。  第二次世界大戦を乗り越えて、戦後今日まで本当に額に汗して頑張って、いわば今日の時代、今日の日本をつくったのが先輩の方々でございます。この人たちにこんな思いをさせてはならない、早く笑顔を取り戻したい。そのためには、景気回復を一日も早く行って、金利がもとに戻るような体制をつくることが最も大事だと思います。小渕総理大臣の御意見をお聞かせください。
  51. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今日まで公定歩合が史上最低のまま長きにわたって継続しておりまして、そのために預貯金金利も大変低いところに抑えられている。そのために、今委員が御指摘のように、ささやかな預貯金を持たれる方々がその利子によってささやかな消費等を行うに当たりましても大変厳しい環境になっていることは、十分承知をいたしております。  結論的に申し上げれば、一日も早く景気回復して、適正な金利水準によって、その金利によって生活の糧になるという形を一日も早く取り戻さなければならぬ、こう認識をいたしております。  ただ、金利が低いということにつきましては、一方では、設備投資やまた住宅投資を助けるといった面もあることも考えられるわけでございますし、また一方、住宅ローンの負担が軽減されているという面もあるわけでございまして、そうしたことと、今御指摘のようにお年寄りや年金生活者が大変その影響を受けて深刻な状況になっておるというところと、いかに調整をしていくかということに尽きるのではないかというふうに考えております。  確かに、私どものところにも、ささやかな預貯金を持たれる方々、もしかりそめにも従前のような利子配当がございますれば直ちにそうしたお金で消費にこれを向けたいという念願もしておりますし、また、その利子によって生活の大きな要素にもなっておると考えますと、そうした今のお声というものは真摯に受けとめなければならぬということを痛感いたしておる次第でございます。が、冒頭申し上げましたように、一日も早く適正な金利水準になることのできるように一層の努力を図って景気回復に努めてまいりたい、このように考えております。
  52. 深谷隆司

    深谷委員 次に、教育問題に移らせていただきたいと思います。  今まで主として景気経済の問題のお話をしてまいったわけでありますが、これは現下の情勢として喫緊課題だからでございます。しかし、日本の将来を考えるときに最も重要な位置に置くべきが教育の問題であることは言うまでもないのでございます。次の時代を担う子供たちが立派な日本人に育っていく、世界的な視野を持った国際人として成長していく。そうなれば、たとえ今日の時代が苦しくても、次の時代は安心して迎えることができると思うのであります。  このたびの組閣に当たりまして小渕総理は、元東大学長の有馬さんを文部大臣お迎えになられたのでございます。普通、参議院の比例トップとはいいながら、直ちに大臣についていただくということは余りない例でございますが、そこに教育にかける小渕総理の並々ならぬ決意があるように思います。  有馬さんを文部大臣にした、そのお気持ちを語ってください。
  53. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 教育は国家百年の大計であることは、政治家たるもの認識をしておらなきゃならないと思っております。と同時に、戦後の教育のさまざまな歴史を振り返りながら、今日改めて、教育のあるべき姿、正しい方向性について認識をしなきゃならぬと考えております。さすればこそ、前内閣におきましても六大改革の中で教育改革ということを強くうたっておるわけでありまして、私の認識としては、これをまず最初に打ち出して、その他五つの改革という順序でもよかったかなという気がいたしておりますけれども、まあそれは前内閣のことでございますけれども。  私は、そういった意味教育改革につきましては、ぜひ少なくともこの内閣におきましては極めて重要な、より重要な役割としてその任を担っていただきたい、こういうことで有馬文部大臣を指名させていただいた次第でございます。  今、東大学長というお話がございましたが、別に私は東大がいいというふうに思っているわけじゃございませんで、むしろ、先生が長い間中央教育審議会会長を務められて、この問題につきまして極めて我が国有数の経験と識見を持っておる、こういう認識をいたしておりましたことと、あわせて、与党自由民主党の、過ぐる参議院選挙におきまして比例の第一にこの方を名簿として掲載をされたわけでございまして、私ども自由民主党は長きにわたって文教政策に取り組んでこられた、その自民党におきまして比例の第一に推薦をされたということをつらつら考えますと、私としては、申し上げましたような先生の御経験、識見、こういうものをぜひ教育改革に全力を振り絞っていただきたい、こういう気持ちを持ちまして就任していただきました。  私は、必ずやその期待にこたえていただけるものと確信をいたしておりますと同時に、極めて重要な教育の改革につきましてよりよい方向を定めていただけるもの、このように確信をいたしまして入閣をお願いした次第でございます。
  54. 深谷隆司

    深谷委員 有馬文部大臣にお伺いしたいと思います。  日本の教育は、これまでどちらかといいますと記憶中心の詰め込み主義でございました。受験競争体制が相変わらず続いている中で、いつまでも知識の量とスピードを競い合う、それでいいものだろうかと多くの疑問を抱きます。  あなたは、ある新聞に答えて、すべての子供たちに平等、公平に同じ教育を施し、同じレベルに持っていくことは難しい、こうおっしゃいました。私は、それはそれぞれの子供に合った教育を行うという意味であろうと理解をいたしております。  ところで、昨今、文部省の報告によりますと、学校に行かない、いわゆる不登校の生徒が小、中合わせて十万人を超えたとあります。生徒の数が減っているのに不登校の生徒数がふえるというのは、ゆゆしき問題だと思う。  不登校の理由については、これから文部省調査いたしますから明らかになっていくと思うのでありますが、私は、子供が学校に行って学ぶのを拒否しているとか友達が欲しくないんだということとは全く違うというふうに思うんです。つまり学校が行きたくない場所になりつつあるということだと思う。いじめが横行し、教師がそれを守ってくれない、あるいは、さきに申したような詰め込み主義で、自分の能力を開発してくれない、自分の居場所がない、そういう悲しい悲鳴に似た子供たちの声が不登校という形になってあらわれているのではないだろうか、こう思うわけでございます。  これらの点を含めて、文部大臣のお考えを伺います。
  55. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ただいまは教育について御質問賜りまして、ありがとうございました。  まず、私が中教審等々の会長でありますときに言っておりましたこと、そしてまた中教審の中で答申の中に取り入れられましたことは、子供たちの特徴に応じて、個性に応じて教育を行うべきだということであります。すなわち、非常にゆっくりと勉強していく子供、これは大器晩成型と私よく言っているんですが、その子供たちに対しては丁寧な教育を行うべし、それからまた、極めてある分野ですぐれた子供がいれば、それに合わせて少し進んだ教育を行う、こういう意味で個性に応じた教育を行うべきだということを申した次第でございます。  次に、不登校の問題でございますが、残念ながら、今深谷議員がおっしゃられましたように十万五千人を超えました。私は大変深刻にこれを受けとめているわけでございます。  いろいろ、今深谷委員が御指摘のような原因があるかと思いますが、文部省といたしまして、単に早く学校に子供たちを復帰させるというような指導だけではなく、もっと違った観点でも検討を行っているわけであります。  まず第一に、子供たちが学校へ行くことが楽しいんだというような学校にしなければならないと思っております。子供たちに夢を与えなければいけない。それから、子供たちや親たちが非常に悩みを持つ、不安を持っているという時代でございますので、相談できるような機会をなるべくふやしていきたいと思っています。例えば、電話による相談というふうなことを充実させていくべきだと思っています。それから、親があるいは地域社会が子供さんたちに対して、何で勉強しなければならないのかというふうな、学ぶことの大切さを十分教えていただきたいと思っております。こういうふうな観点からさまざまな取り組みを現在行っているところでございます。  そして、私どもといたしまして、不登校は極めて深刻な問題でございますので、学校や家庭そしてまた地域社会が協力して、一人一人の子供を大切にするという観点から一体となって努力をすべく、現在いろいろ考えているところでございます。
  56. 深谷隆司

    深谷委員 子供の自主性あるいは個性を生かす、とても大事ですけれども、逆に言うと、だから学校へ行かなくてもいいんだといった甘やかしムードも一方では生み出すおそれがあります。そこはきちっと教育の現場で考えていただくように努力願いたいと思う。  私は、そういう意味では、校長先生の権限の強化、前文部大臣も言われておりました、大事なことだろうというふうに思います。学校で道徳を教えるということについても勇敢に立ち向かってもらいたいと思う。人としてあるべき姿、当然持つべき感覚、それを教えていくのは教師ですから、そういう意味では、教師も自信をもっと取り戻して、果敢に教育の現場で闘う姿勢、全力を挙げて努力する姿勢を貫いていくことがとても大事だと思っておりますので、文部大臣におかれましては、そういう点でもどうぞ一層御努力を賜るようにお願い申し上げたいというふうに思います。  それから、あなたがおまとめになった心の教育、これはとても大事だと思います。学校の道徳、何よりも家庭のしつけ、これを心の教育ということで打ち出しております。今、どちらかというと欠けているのはこの点でございます。親を大事にする、目上の人を大事にする、後輩を慈しんでかばってあげる、そういうことを学校や家庭できちんと教えていくということがとても大事な問題だと私は思います。  中央教育審議会は子供たちの心の教育について、家庭のしつけを大事にする、これを改めて強調しています。  私たちの子供の時代というのは、家庭の中で、一家団らんの中で道徳をある程度身につけていったものであります。一家団らんで食事するときに、いただきますと言うのが当たり前でした。終わればごちそうさま、こう言って食事を終えます。そしてそのたびに、これは天の恵みなんだ、そういう恵みの中で生きられるんだというそんな思いを心に刻み、あるいは農家で額に汗して頑張っているお百姓さんたちのおかげなんだ、そして何よりも、親が一生懸命働いて、そしてこういうような暮らしをつくり出してくれているんだ、そういうことを言わず語らずに子供たちは覚えていったのであります。  残念ながら、今日の時代というのは少子化の時代で、また夫婦共働きの時代でございますから、この一家団らんが非常に薄くなってしまっている。しかし、どんなときでも、親子で一緒に食事するというような、そういう家庭の団らんをつくり上げるというのは、私は親の責任だろう、こう思うのであります。文部大臣、どうお考えでしょう。
  57. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今、深谷議員の御指摘のとおりでございまして、そのような状況を踏まえて、六月三十日に取りまとめました中央教育審議会の答申では、今日の家庭における教育問題は座視できない状況であるという認識のもとで、これまで国として取り上げることに極めて慎重でございました家庭でのしつけの基本的な事項について、例えば、悪いことは悪いということでしっかりしつけていただく、それから家庭で守るべきルールをつくろう、こういうふうなことを呼びかけている次第でございます。  特に、文部省といたしましては、この答申を踏まえまして、子供の教育に対する家庭の責任が極めて重いものであることを父親、母親に強く自覚していただくよう働きかけることを考えております。具体的には、家庭教育に関する学習機会の充実、お母さんたちだけに教育を任せるのではなく、お父さんの家庭教育への参加促進、それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、子育てに関する親の悩みや不安に答える家庭教育相談体制の整備、さらに、厚生省と連携いたしまして、母子保健の機会を活用して、家庭でのしつけのあり方等を盛り込んだ家庭教育手帳、親子手帳などを作成し、幅広く頒布することなどの施策を講じているところでございます。  今後とも、家庭の教育力の回復に向けて一層の努力をさせていただきたいと思っております。
  58. 深谷隆司

    深谷委員 平成十四年からスタートする完全学校五日制の時代、このときの教育の指針として、国旗だとか国歌の指導を明記することにしたということであります。私はこれはとても大事なことだというふうに思います。子供たちが立派な日本人として成長し、世界の中で評価されるようなそういう人材になっていくためには、教育の基本である国歌・国旗、道徳、そういうものをきちっと身につけていく必要があると思うからであります。  この点については小渕総理からお考えを伺いたいと思います。
  59. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘をまつまでもなく、国際社会で生きていくということ、そのための国民的な基本的マナーといたしまして、国旗・国歌はもとより、諸外国の国旗・国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることが重要なことだと考えております。  しばしば外国等におきましていろいろなセレモニーが行われ、国旗が掲揚され、国歌が吹奏される段階におきましても、やや我が国国民の青少年の中ではそのことに対して十分な認識をされないような事例も見えるわけでございまして、そういった意味で、我が国のみずからの国旗・国歌に対する考え方と同時に、国際社会におきましても常識的なそうしたマナーが通用するような教育を行っていかなきゃならぬと思っております。  ぜひ、こういった観点につきまして、文部大臣とともにこの点につきまして協力をいたしていきたいと思っております。
  60. 深谷隆司

    深谷委員 さっき、家庭の団らん、そういう中から子供のしつけ、人間としての道徳が生まれるということを申し上げました。そういう家庭の教育をつくり上げるためには、環境を国が挙げて整備していかなければならぬと思うのであります。  昨年の調査結果で、女性が生涯に産む子供の数というのは、平均すると一・三九人です。史上最低で、このままでは日本の将来が危ういと思います。しかし、政府があるいは国が結婚とか出産にまで立ち入ることは、とてもそれはできないことでございますが、結婚や出産を拒んでいる環境を直していく、それは十分可能なことでございます。例えば子育て減税、これを実施するということは非常に大事、あるいは保育サービスの充実、勤労時間の弾力化、さまざまな角度から環境を整えていかなければなりません。  各大臣から伺わなきゃならないのでありますけれども、大勢の力を結集するという意味において、こういう家庭の教育の環境づくり、小渕総理のお考えを伺います。
  61. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日本の人口が二〇一〇年にピークに達するという予想が、早くもその数年前になろうという数字が示されてきておりまして、今委員指摘のように、一・三九という、再生産率といいますか、そうした状況というものは極めて危機的な状況だろうと思っております。  子供を産まないということにつきましては、種々の条件があるんだろうと思います。それと同時にまた、特に女性に関しましては、社会的な活動が極めて活発でありまして、そういった点で、子供さんを産んで育てるということにつきまして、これが女性の役割であるかどうかということにつきましての反問もかなり多く出てきておるわけでございます。  しかしながら、状況は極めて厳しい少子化の方向でございますので、今委員指摘のような諸点につき、環境の整備につきましては一層配慮いたしていかなけりゃならないということにつきましてはまことに同感でありますので、最善の努力をいたしていきたいと思っております。
  62. 深谷隆司

    深谷委員 教育の問題は国の基本でございます。どうぞ文部大臣中心関係閣僚の一層の努力で、教育は大丈夫だと国民の皆さんが安心できるような状態をつくっていただくことを強く要望いたしたいと思います。  話は変わりますけれども、先月の末、和歌山市内で、地域住民が楽しみにしていた夏祭りの会場で、カレーライスに毒物が混入され、四人の方がお亡くなりになり、六十人の方が中毒症状になるという痛ましい事件が起こりました。また、新潟市内でも同様の事件が起きたのでございます。私は、和歌山県のこの事件を聞いたときに、とっさにあのオウム事件を思い出して、背筋の凍るような、背筋が寒くなるような、そんな思いがいたしたのでございます。犯人に対する強い憤りを感じました。  オウム事件のときに私は国家公安委員長でございまして、その対応にさまざま苦労したのでございます。その前が野中国家公安委員長でございました。凶悪犯罪に断固対決をして結論を出していくために、微力でありますが一生懸命頑張ったのでありますが、今回のこの事件の状況、どんなふうになっておりますか。一刻も早く犯人を検挙して、全容を明らかにして、国民の不安を解消させていただきたいと思うのでありますが、国家公安委員長の御報告をお願いします。
  63. 西田司

    ○西田国務大臣 ただいま、委員長当時、第一報を受けて本当に重大な気持ちになった、こういうことでございましたが、私も全く同様でございました。  ただいまお尋ねの事件については、御案内のとおり、七月二十五日夕刻、和歌山市園部の自治会が主催する夏祭り会場において、参加者に提供されたカレーライス内に毒物が混入され、これを飲食した参加者の数名が嘔吐、下痢等の中毒症状を訴え、市内の病院に搬送され、これまでに、御指摘がありましたように四名の方が亡くなられ、現在もなお数名の方が病院におられるわけでございます。  このようなことをじっと考えてみると、この事件は、国民に多大な不安を生じさせている極めて悪質かつ重大な事件である、このように考えております。  和歌山県警はもちろんでありますけれども、捜査本部を設置し、懸命な捜査を推進中であります。警察庁といたしましても近接の府県警においても、最大限の支援をするなど、組織の総力を挙げて徹底した捜査を推進し、一日も早い解決を今、期しておるところでございます。
  64. 深谷隆司

    深谷委員 捜査の内容については御報告できないと思いますが、どうぞ一日も早い全容解明に努力して、国民の不安を取り除いていただきたいと思います。  最後に、外交問題について伺いたいと思います。  我が国の外交問題で一番大事なことは、継続性ではないだろうかと私は思います。私はよく大臣のときも外国へ行ったのでありますけれども、行くたびに、初めましてとごあいさつする大臣ばかりですと皮肉を言われたことがございました。外交というのは継続でございますから、余りかわり過ぎるというのはよろしいことではありません。このたび、橋本前総理を外交最高顧問に迎えられて、また、小渕外務大臣時代の政務次官の高村さんを外務大臣に置かれたということは、私は外交の継続性ということを重視しているというふうに受けとめておりまして、その姿勢を評価いたすものでございます。  日本の外交の基軸は、何と申しましても日米関係であることは申し上げるまでもありません。しかし、昨今、経済問題を中心にいたしまして、ややもするときしみができつつあるような感じがいたしております。過度のアメリカによる日本に対する内政干渉と思われるような言動はいけませんけれども日本経済の諸対策についてアメリカにきちんと理解と協力を求めていくということは、とても大事なことだと思います。  過日、私は、フォーリー・アメリカ大使とお話をする機会がございました。そのときに、小渕内閣経済回復について必ず実現すると思うアメリカ人がふえつつあるというお話を聞きまして、私はほっといたしたのであります。  高村外務大臣、現地の模様について、簡単で結構でありますから御報告いただきます。
  65. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員おっしゃるように、日米関係は日本外交の基軸であります。私といたしましては、まず、これからカウンターパートになるべく、オルブライト国務長官と何でも率直に話し合える関係をつくりたい、そのことはそれなりにうまくいったのだと思います。  そして、まさに委員がおっしゃるように、この時期に行ったわけでありますから、経済関係の話について、小渕内閣としてのあるいは経済再生内閣としての強い決意と、そして私たちが何をしたいかということを具体的に政策として御説明をいたしました。それに対して先方の反応は、この点はこうしてほしいとか、ここはもっとこうやるべきだというような注文は一切ありませんでした。ただ、早くやってくださいね、こういう期待は寄せられた、こういうような状況でございます。
  66. 深谷隆司

    深谷委員 昨年の九月、新たな日米防衛協力のための指針が策定されました。その実効性確保のために法整備は急務でございます。しかし、さきの国会で、周辺事態安全確保法案など指針関連法案は継続審議となっております。政府の今後の取り組み方についてお尋ねをいたしたいと思います。小渕総理
  67. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 昨年九月に、私外務大臣就任いたしまして、まず最初にアメリカに参りまして、2プラス2、ここにおられる当時の久間防衛庁長官とアメリカ側と折衝いたしまして、結ばれましたわけでございます。  これを我が国の法整備の中できちんと整えていかなければならぬということで、御案内のように、周辺事態安全確保法、自衛隊法改正法案及び通称ACSA改正協定、これにつきまして四月末に閣議決定をいたして、今日国会に提出をいたしておる次第でございます。  政府といたしましては、我が国の平和と安全にとって極めて重要なこの法案が早期に国会で御審議をされ、成立または承認されることを期待いたしておるわけでございまして、せっかくの臨時国会でございますので、多くの重要な法律案が提起されてはおりますけれども、ぜひ本案につきましても、国会での成立並びに御承認に改めて御協力のほどをお願いいたす次第でございます。
  68. 深谷隆司

    深谷委員 橋本内閣では、特に沖縄問題について誠心誠意取り組んでこられたと思います。しかし、せっかくのSACOの結論でございますのに、普天間基地問題というのは、沖縄の事情もあるでしょう、知事の事情もありましょうが、それらで膠着状態に陥っているのでございます。これから一体どのような対応をしていくのか、これは一番かかわりの深い野中官房長官から御意見を承りたいと思います。
  69. 野中広務

    野中国務大臣 今議員御指摘のように、沖縄の海上ヘリポートを含む問題につきましては、橋本前総理が、当時の梶山官房長官、その後の村岡官房長官とともに真剣に沖縄の振興策を含めて取り組んで、何とかして普天間の飛行場の撤去をして、そして米軍のあの市街地にある飛行場の、沖縄県民、特に宜野湾の皆さん方の苦痛を和らげ、そういう中から環境さらには安全、そしてそういう中から騒音等を排除し、そして県内の海上ヘリポートをつくることによりましてこの海上ヘリポートがいわゆる代替措置として、規模を縮小はいたしますけれども、最良の選択肢として決められたわけでございます。そして、その機能がなくなったときには撤去が可能であるということを前提にして決められたものでございます。  SACOのそれぞれ中間報告、合意を含めまして、沖縄県からこのことについて何の返答もございませんし、あるいは拒否をされることもなかったわけでございますが、残念ながら、本年の二月六日、名護市長選挙の投票日の二日前に、選挙の手段の中でこの海上ヘリポートの拒否が知事から表明されたことは、まことに残念でありました。  その後、沖縄県からこの問題について知事と総理との話し合いの申し出もございましたけれども、この問題がより建設的に、計画的に進むとするならばお話し合いをしたいということで申し上げ、知事側もまた同様の意見を表明をされました。しかし、二月、三月、四月と、政府関係の担当者を含めて協議を進めましたけれども、今日に至るも沖縄県から建設的な提案がないわけで、膠着状態になっておるわけでございます。  沖縄の長い苦痛に満ちた歴史をかんがみますときに、そして普天間飛行場の置かれておる現状をかんがみますときに、私ども、前内閣のこの気持ちを大切にしながら、なお沖縄の皆さんとの真摯な話し合いを継続してまいりたい決意でおります。
  70. 深谷隆司

    深谷委員 御努力をお願いいたします。  日ロ関係は各分野において着実に進展しているというふうに伺います。本年十一月、小渕総理はロシアに公式訪問の予定でございます。川奈における橋本前総理との会談で、北方領土について我が国は提案をいたしておりますが、それについての回答も得られるのではないかと期待しております。  平和条約締結と北方領土の返還について、総理の御決意をあわせて伺いたいと思います。
  71. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 改めまして、世界、国連加盟国百八十五の中で、きちんとした平和条約を取り結んでおりませんのはロシア一カ国でありまして、ぜひ、今世紀中に起こったことでございますから、今世紀中に正式な平和条約を締結することによって真の両国の関係を正常化していかなければならぬというふうに考えております。  そのために、橋本前総理といたしまして、エリツィン大統領との二度にわたりましたいわゆる非公式会談ではございましたが、胸襟を開いての話し合いによりまして、また同時に橋本・エリツィン・プランの実行によりまして、両国の関係は極めて緊密化いたしておるわけでございまして、この時期を逃しては、なかなかもってこの両国の関係を解決する機会はあり得ない、こうした厳しい認識を改めて深くいたしまして、最後の努力を傾注していかなければならぬと思っております。  今御指摘のように、十一月には橋本総理がお伺いする予定でございましたが、私、かわりまして、ぜひ、モスクワにおきましてエリツィン大統領のよりよき御返事をいただくことのできるように、これからもなお努力をいたしていきたいと思っております。  橋本前総理が川奈で提案をいたしました日本側の立場というものはぎりぎりの線であるというふうに私は考えておりますので、ぜひこれがロシア側の理解を得て、この決着によりまして、これから長きにわたっての日ロ関係の、より友好な関係ができ上がりますように最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  72. 深谷隆司

    深谷委員 本年の九月には中国の江沢民国家主席が訪日される予定であります。日本にとって、アジア諸国と緊密な外交を続けていくということは大変大事なことであります。小渕総理の積極的な外交を期待いたします。  今般、インド、パキスタン両国は核実験を行いました。両国は核拡散防止条約に加盟しておりませんから、世界の平和と安全という点で大きな脅威になっているのであります。  日本は唯一の被爆国家でございます。あなたが対人地雷禁止条約について積極的に署名、協力をなさった、あのときと同じような強力なリーダーシップで、これ以上核を拡散させないと、断固たる対応を願いたいと思いますが、いかがでございましょう。
  73. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 核不拡散あるいは核実験禁止というものは、我が国国民のひとしく願うことでありまして、そのお気持ちを体しながら、全力で努力をしていきたいと思っております。  今まで、NPT、CTBTあるいはカットオフ条約の締結等を通じまして、現実的にこの問題を処理していかなければならぬということで日本としては努力をいたしてまいりましたが、最近のインド、パキスタンの新たなる核実験という新しい事態を迎えております。こうした点にかんがみまして、国際世論も喚起しながら、現在保有している国々の核保有の削減に努力をいたしていただくよう全力を尽くすとともに、インド、パキスタンにおきましても、これ以上のこの問題に対しての国際的な批判受けることのないように適切に対処していただくように、これまた積極的に努力をいたしたいと思っております。
  74. 深谷隆司

    深谷委員 あの第二次世界大戦のときに、長崎、広島に原爆を落とされてどれだけ多くの悲惨な結果になったかは、世界の人々も知っているはずであります。一番知っているのは日本でございます。しかし、そういう不幸な現実があったのを簡単に忘れてしまうような世界の動き、残念でなりません。  私は、ただいま申し上げたように、世界でたった一つの被爆国家として、小渕総理大臣が力強いリーダーシップで核の禁止、核の不拡散に向けてこれからも全力を挙げるように心からお願いし、かつまた御期待を申し上げたいと思いますので、どうぞ頑張っていただきたいと思います。  以上、私は、新政権、小渕内閣についてさまざまな角度から御質問をさせていただきました。誠実なお答えがあったと私は受けとめています。そして、一人一人の大臣が真摯な姿勢で諸問題に取り組もうとしていることが伝わってまいりまして、国民皆様の御理解と期待も高まっていくのではないだろうかと思います。  我が国を取り巻く内外の情勢というのはまことに厳しいものがございます。これを乗り越えていくということは本当に容易なことではないと思うのであります。総理がこの難局に当たって内閣総理大臣就任された、相当な決意であろうと思いますが、厳しい障害が次から次へと立ちふさがって、時には途方に暮れるような、逡巡するようなときもあるかもしれません。しかし、すべては国家国民のため、政治を志したときのその初心を思い起こしていただいて、どうぞしっかり頑張っていただきたいと心からお願い申し上げる次第であります。この日本難局を乗り越えた小渕恵三という総理大臣がいたと歴史の一ページに残るように、ぜひ頑張っていただきたいと思う次第でございます。私たちも一身国家国民のためにささげるつもりでしっかりお支えしてまいりますことをお誓い申し上げたいと存じます。  重ねて申し上げますけれども、とりわけ今日の金融、経済問題は一刻の猶予も許されないのであります。総理努力も当然でございますが、国会全体がその認識に立って与野党を含めて敏速果敢にそれぞれの法案を成立させるように努力をしていかなければならないと存じます。国会が与野党ともにその責任を存分に果たしていくように、私たちも心して頑張りますことを重ねて申し上げまして、本日の質問を閉じたいと思います。  ありがとうございました。
  75. 中山正暉

    中山委員長 これにて深谷隆司君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君から質疑の通告を受けております。これを許します。菅直人君。
  76. 菅直人

    ○菅(直)委員 本会議に続きまして、きょうからいよいよ予算委員会が始まりました。  さきの参議院選挙で、私ども民主党は、比例区で千二百二十一万人の皆さんから御支持をいただきました。この御支持の多くは、自民党政権に対するレッドカードの気持ちからだと思います。しかし、同時に、私たち民主党にもチャンスを与えてやろう、そういう激励の気持ちも含まれていた、こう受けとめて、この国会を含め、私たちは、もし民主党が政権を担うときにはどうするのか、そういったいわば政権担当能力が問われているという気持ちで真摯に取り組んでいきたいと思っております。一票を入れていただいた皆さんにその行方をしっかりと見きわめていただきたい、このように感じているところであります。  その中で、小渕総理、今はどなたが総理大臣をやっても大変厳しいときだと思います。その中で総理を引き受けられたことを、大変御苦労なことだとまずもって申し上げておきたいと思います。  しかし、残念ながら、小渕総理大臣という立場は、まだ国民が選んだ総理ではありません。さきの参議院選挙の結果は、もちろん自民党は大きく過半数を割りまして、参議院においては、首班指名で、決選投票で、野党の皆さんの一致した御支持をいただきまして私が百四十二票いただき、小渕総理は百三票、かなりの大差で私に指名をいただきました。  衆議院では確かに小渕総理の過半数が一回目の投票で確保されたわけでありますが、しかし、一年半前の選挙を思い出してみますと、単独で自民党は幾つの議席があったのか、二百三十九であります。そして、その選挙が終わってから一年半の間に何人の人が野党から自民党にいわばくらがえをしたのか、衆議院で二十三名でありました。  たしか、過半数になったとき、時の幹事長が、北村直人さんでしたか、花束を渡されたのをテレビで見て、一体何を考えているんだろうと。選挙で勝って花束を渡すのならわかります。選挙で勝っていない、つまりは党のくらがえをして過半数を確保したから花束を渡す、ここにまさに自民党のおごりが始まり、また、今残念ながら小渕総理国民の信任を得ていないということのいわば原点があると思います。  さらに言えば、橋本政権が退陣をされて総理大臣がかわったわけでありますから、内閣が新たにかわったときに、総理大臣が新たにかわったときには、私は、国民の皆さんに改めて政権選択の機会を提供するのが本来の国民主権の議会制民主主義のあり方である、このように考えます。  そういう考え方について、まず小渕総理の御見解を伺いたいと思います。
  77. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 参議院選挙後、私は総理大臣の任につき、今日また野党第一党民主党菅党首とこうして予算委員会の場で論戦を交えることができることを、大変幸いだというふうに思っております。  参議院選挙におきまする、私、当時総裁ではございませんでしたが、民主党が赫々たる議席を伸ばされたということに対しましては、改めて敬意も表しますと同時に、野党第一党のこうした姿に対して、我が党としても謙虚に反省をしつつ、いかなる諸点がこの選挙戦において戦われた原因になったかということについて、十分な分析と反省をしなければならないというふうに考えております。  しかし、参議院の選挙の結果は民主党は伸びられましたが、あくまでも参議院の結果につきましては自由民主党が第一党であったという事実は事実として残っておるわけでございまして、私どもは、そうした国民の声を十分反映しながら、第一党としての責任もまた果たしていくことが必要ではないかと考えております。  民主主義の憲法のもとにおきまして衆参別の首班指名選挙における当選者が出たことにつきましては、これは私自身も、願わくば両院に、こう思いますけれども、そうしたことでなかったこともこれまた現実の政治の中で起こってきたことではないかというふうに認識をいたしておりまして、こうした事実も十分理解をしながら、今後の国会運営等につきましても謙虚に対応していかなきゃならないということを痛感をいたしておる次第でございます。  あわせまして、先ほどいろいろ、議員の政党間の移動のお話もございました。これは、恐らくそれぞれの議員がみずからの思想、哲学、そして主張、こうしたものによってみずから判断して移動されたことではなかろうかと考えておりますので、私からその問題について申し上げる立場にはない、こう思っております。
  78. 菅直人

    ○菅(直)委員 私がお聞きしたのは、政党間の移動そのものについての見解を伺ったわけではなくて、さきの一年半前の衆議院選挙で国民が自民党議員として衆議院で選んだのは二百三十九名だった。ということは、今回衆議院で小渕総理に首班指名をされた自民党の議員の中で、実は当時国民の、自民党としての審判を受けていない方が二十三名は少なくともおられる。そのことを申し上げて、正当性がないのではないかと申し上げたわけであります。この問題を余り繰り返しても仕方ありません。  そこで、今回、こうした結果、参議院では野党が過半数を占めることになりました。その結果、私は、従来のように与党が過半数を衆参占めていれば、例えばこの予算委員会も、私たちがもっとしっかりした資料を出しなさいとか、もっとしっかりした答弁をもらえなければ国民の皆さんにわからないじゃないかと言ってみても、結果的には、時間さえ消化すれば後は数で採決なんだ。そういう形が往々にとられたわけであります。  ここで、総理と特に委員長にもあわせて申し上げておきたいと思います。  つまり、国民の皆さんから見て、私ども野党が言う、こういう資料はきちんとあったら出してほしい、この答弁じゃ幾ら何でもわからないじゃないか、こういう場合には、政府として責任を持って出すべき資料は出すし、委員長として責任を持って、あいまいな答弁に対してはそういうあいまいな答弁を許さない、そういう姿勢で臨んでいただいて、その中で私たちも、単に反対のための反対をするつもりはありません。必ず、反対をする場合には対案を出していきますので、そういう議論を深めながら、場合によっては衆議院、参議院を通してどういう方向が見出せるか、まさに国民の前での議論を深めていきたい、こう考えておりますが、どうでしょうか。総理委員長に見解を伺っておきたいと思います。
  79. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 国会に政府として提出すべき御要求のありました資料につきましては、政府としては最大限の努力をいたすことは当然のことと認識をいたしております。ただ、この問題につきましては、国会のことでございますので、委員会におきましてしかるべき手続を経ていただかなければならないことも、これまた当然のことと認識をいたしております。
  80. 中山正暉

    中山委員長 私から申し上げたいと思いますが、国家国民の御要望にこたえるこの国会の対応のために、当委員会として運営に万全を期したい、かようにお誓いを申し上げておきたいと思います。
  81. 菅直人

    ○菅(直)委員 その委員長の運営がまさに私が申し上げたような方向になることを含めての見解だと受けとめさせていただきたいと思います。  そこで、さきの参議院選挙の結果であります。私は、もしかしたら今回の結果は、確かに一時的に自民党が伸びたり野党が減ったり、あるいは逆であったり、いろいろなことがありましたが、単なるそういう一時的な一つの上下ということではあるいはないのではないだろうか。つまり、何か国民の皆さんがはたと気がつかれたのではないだろうか、こんな感じを、逆に言えば参議院選挙後のいろいろな動きの中で感じております。  それは何を気づいたのか。私は、自民党型の政治というものが日本改革を、あるいは日本の今の現状を救うことができないということに気がついたのではないか。  さらに言えば、自由民主党型の経済、つまりは、いろんな許認可や補助金などをばらまいて何とか景気を立て直そうとかいろんなことをやっている、どうもそういう経済運営のやり方が、かつての右肩上がりの時代ならよかったかもしれないけれども、このやり方を幾ら続けてもだめなんではなかろうか。  さらに言えば、自民党の代議士に、国会議員に頼めば、就職の世話もしてくれる、何とかの世話もしてくれる。一方で言えばそれは大変不透明な社会であります。そういう自民党型の社会のあり方、これが魅力あるものではなくて、若い皆さんにとっては不透明な社会に見えているのではないだろうか。  まさにそういう意味で、自民党型の政治経済、社会のあり方そのものが、国民の皆さんから見て、これではだめだということにはたと気がつかれた結果が、この参議院選挙、あるいはその後の民意としていろんな形であらわれているのではないか、このように私は受けとめているわけであります。  そこで、自民党型の政治ということについて、具体的なことを申し上げてみたいと思うのです。  小渕内閣が生まれました。生まれ方についてはいろんな表現がありますけれども、こう申し上げたら失礼かもしれませんが、首相輪番制の内閣、この人の次はこの人、この人の次はあの人、輪番制の首相、こんなふうに国民受けとめているのではないでしょうか。  大臣の皆さんもそれぞれ責任ある立場をとっておられますが、一般的に言えば、大臣というのは大変な名誉職として見られているけれども大臣が本当に官僚を指導して政治を動かしている、そういうふうに見ているか、必ずしも国民はそう見ていないんじゃないでしょうか。  私は、五年前、まさに宮澤政権から細川政権にかわったとき、与党の端っこの方でその一員を担っておりました。そのとき、宮澤政権ではもちろん閣僚はすべて自民党の方でした。細川政権では自民党以外の方が全員閣僚を務めました。これで日本政治は変わるんだ、こう思ったのは私だけじゃないと思うんです。しかし、結果的には、政治改革、選挙制度の改革が行われましたが、本質的な改革になかなか手が届かなかった。なぜなのかです。私は、閣僚を務めさせていただいた後、少し内閣ということについていろいろと検討してみました。  閣議というものが内閣の最高決定機関であることは、もちろん総理は御承知でしょう。その前の日に行われる事務次官会議、戦後五十二年間の中で、法案について事務次官会議を通さないで閣議に上がった案件はありますかと一昨年の予算委員会で聞きましたら、一件もありません、つまり事務次官会議で満場一致で通ったもの以外は戦後一件も閣議に上がっていない、これが時の総理あるいは関係者の答弁でありました。  つまり、宮澤内閣から細川内閣にかわったとき、大臣の顔ぶれは全部かわったけれども、前の日に法案を最終的にチェックする、ほとんどの案件を最終的にチェックする事務次官会議のメンバーは一人としてかわっていない、決めるやり方も一つとして変わっていない。ですから、政治家の関連する政治改革、選挙制度についてはいろんなことが変わりましたが、行政改革等については残念ながら手はつかなかった。私は、それがこの五年間の一番大きな考えなければいけない問題だと思います。  そこで、例えば具体的に、小渕政権で、もう何回か閣議をやられたと思います。前の日に事務次官会議をやられたと思います。せめて閣議の前の事務次官会議は政務次官会議に変えていこう、事務次官には政務次官会議に陪席をさせよう、それだけ行うだけで大臣と政務次官の責任は飛躍的に大きくなると思います。そういう改革をすべきだと思いますが、なさるつもりはありませんか。
  82. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日本国憲法におきまして議院内閣制を採用しておりまして、内閣は、行政権の行使につきまして、国会に対して連帯して責任を負うことにされております。事務次官会議は、内閣の意思形成を行う上で、統一的な行政の実施を図るという観点から、事務レベルでの最終確認を行っておるものでございます。  いずれにいたしましても、最終的な意思決定はあくまでも閣議で行うものでありまして、閣議の場で大いに議論していただくことはこれまで当然のことと考えております。  菅議員におかれましても、経験された大臣時代を振り返って「大臣」という御本を物されまして、私も改めて拝見をさせていただいたような次第でございますが、現下、申し上げましたように、最終的には閣議、すなわち閣僚が十分それぞれ担当する各省庁に対しまして意見を申し述べると同時に、最終的には閣議において決定をすることでございますので、事務次官会議等でまとめられた案が上がってくる場合もございますが、同時に、それぞれの所管の大臣国務大臣として閣議で堂々と御主張をされて、御議論をされるという方向に本内閣としてはぜひ持ってまいりたいというふうに思っております。  従来型からいいますれば、いわゆるボトムアップといいますか、下の方からずっと積み上げてきて、事務次官会議のところで整理整とんして閣議で出すということであることは承知をいたしておりますが、ぜひ、本内閣としてはできる限り、このトップダウンという形がよろしいのかどうかわかりませんけれども、閣議という場を最大限に活用して、これにおきましてそれぞれ省庁間の問題、あるいはそれぞれ国務大臣考え方を明らかにし、閣内の統一を図ってまいりたい、この努力をしてまいりたいと思っております。
  83. 菅直人

    ○菅(直)委員 私は、小渕内閣の閣議がどのくらいの時間をかけてどういう案件についてどういう議論をされているか、閣議というのは議事録もありませんので、残念ながら承知はしておりません。しかし、私が経験した閣議の席からいうと、自分の担当する省庁のことは事前によくわかっております。しかし、他省庁から出てくる案件は、膨大に上りますし、ほとんどは、率直に言ってそのとき初めて読み上げられたものにサインをする、そういうのが、これは私の反省を含めてですが、私にとっての閣議の大半でありました。  ですから、今小渕総理は、結局のところは、事務次官会議という、これは法律に規定もない、単に慣例で行われている。しかも、全事務次官が満場一致でなければ通さない。逆に言えば、これは一人の事務次官でも反対すれば、拒否権を持っていて通さない。行革案件などで、例えば自分の役所がちょっと減らされるからこれは絶対嫌だと言えば、この慣例がもしそのままだとすれば、事務次官一人が反対したら法案が閣議に上がらないというシステムに、戦後五十数年間、そのほとんどは自民党が担ってきた政権ですよ。  そういう意味で、自民党型の政治のいわば内閣の象徴が、私は、この閣議のあり方、事務次官会議のあり方にあると思います。  そこで、現民主党あるいは旧民主党と新進党が共同提案しました副大臣制の導入。今回、高村外務大臣のように、政務次官を務められ実力を、もちろんその前の閣僚もやられましたが、やられて大臣になられる方も順次ふえておりますから、かつてよりは政務次官の力量が評価をされ始めていると思いますが、イギリスの内閣では、いわゆる副大臣と言われる人たちが各役所に五、六名はいて、合わせると大臣、副大臣で百名を超える人間が与党から内閣に入っている。そして、国会では議員が答弁に立つだけで、官僚は一切答弁には立たない。野党が法案説明を要求したときに来るのも、ホワイトホールのお役人はやってこないのですね。  きのう私、大勢のお役人が質問に来ましたから、皆さんもう来ないでいいのじゃないですか、総理政治秘書なり補佐官なり、そういう政治的任命をされた人がきちんとやればいいんじゃないですか、このようにも申し上げたのです。  まさに官僚依存の今の自民党政治を変えるのに、自民党の方から提案されたって不思議はないんじゃないですか。副大臣、今でいえば政務次官の数をもうちょっとふやして、そして政府委員は、大臣を置いていない省庁は仕方ありません、まさに法制局長官のように。しかし、それ以外のところは政府委員はもう国会には結構です、そういうやり方をとるべきだと思いますが、総理、いかがお考えですか。
  84. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 副大臣制の問題につきまして、民主党もそうでございますが他党も、必ずしも内容は統一と理解しておりませんが、考え方としてそうした提案のあることは十分承知をいたしております。  また、今ほどイギリスの例をお取り上げいただきました。  たしかイギリスにおきましては、与党となりますと、与党に所属する国会議員のほとんどがいわゆる閣外相並びに副大臣その他の役割を仰せつかりまして、議会での答弁その他、活動しておるということは承知をいたしております。こうしたお仕事につかれることによりまして、議院内閣制の中で政府としての役割をおのおの勉強されるという機会もあるし、また、時に野党も同じことでございますが、政権の交代のありましたときには、引き続いて真の大臣就任するというようなこともあろうかと思いまして、一つの考え方であると思っております。  ただ、我が日本の国会におきまして、私、議会のことを申し上げることは僣越至極かと思いまするけれども、イギリスなどではほとんど、議会におきましても、それぞれの委員会等におきましても、そう出席定数の問題等を執拗に制約しないという形で、かなりフリーな討議が行われておる。本会議でも、御案内かと思いますけれども、与党、野党が相向かいまして、ベンチに座って議論を展開するというようなこともございます。  そういったことを考えますと、副大臣あるいは政務次官その他、人数にもよることではあろうかと思いますけれども、議会の問題等につきましても考慮しながら、どのように政府の中で与党の立場でそうした役割を、いわゆる官僚制度の中で政治家としての考え方を通していくかというシステムにつきましては、諸般の情勢も検討をしながら勉強させていただく課題だろう、こういうふうに考えております。
  85. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理が国会のことを言われると僣越ですがと言われました。よく橋本前総理もそれに近いことを言われています。ここに、まず議院内閣制の考え方の基本的な認識の間違いがあるんじゃないでしょうか。  いいですか。国民総理大臣を直接選んだんじゃありません。国会の中での衆議院の多数派に、結局は多数派が選んだ総理大臣が多数派を中心内閣をつくられているんですよ。今イギリスのことを総理も言われましたが、イギリスでは与党幹事長は閣僚ですよね。与党と内閣は一体なんですよ。  つまり、三権分立という言葉を霞が関の皆さんは、国会は立法府だ、私たちは行政府だから立法府は余り口を出さないでくれ、こういうふうに言われる。これが大間違いなんですよ。国会は立法府ですから立法もしますけれども、その前に、国民にかわって総理大臣を選ぶんじゃないですか。アメリカは大統領制で、国民、主権者が直接総理大臣を選ぶから行政府と立法府が一定の権限を分け与えられている。どちらが上とは言えないかもしれない。国会は、もし行政府が国会から独立していたら、国民はどうやって行政をコントロールできるんですか。  憲法何条かに、公務員の選任または罷免する権利は国民にあると書いてあるけれども、どうやって公務員の選任、罷免を国民はできるんですか。国会を通して、国会の中での多数派が総理を選んで、そして総理内閣を選んで、その閣僚が人事権を持つからじゃないですか。  ですから、僣越でも何でもない、ある意味では、総理はもちろん与党の党首であると同時に、与党が選んだまさに内閣なんですよ。ですから、内閣のあり方、国会のあり方について、今総理がいろいろ改革をしたいと言われれば、僣越でも何でもありません、大いにそのことを言われたらいいじゃないですか。  そのことを私たちは、副大臣制の問題を含めてこうやって具体的に提案しているんじゃないですか。何回も提案をいたしましたが、今まで自民党の皆さん、まともな対案を出したことは一度もないじゃないですか。若い人は少しこういうことを言われたりしましたけれどもね。  そこで、もう一つ踏み込んでみたいと思います。  実は、情報の公開ということが、この後議論される金融についてもいろいろ重要です。しかし、私が厚生大臣を経験したときに感じたのは、大臣であれば、少なくともその役所が知り得たことは大臣そのものは見ることができるわけですよね。  例えば、金融監督庁が今十九行を調査している。金融監督庁の責任者、長官ではありますけれども、法律上はどうなっていますか。総理の権限を委任しているんじゃなかったでしょうか。総理は、十九行の調査結果が出たら自分でそれを見るおつもりがありますか。見た上で、もうこれは公開すべきだと思ったら、そういう公開するかどうかをみずから判断されるおつもりがありますか。
  86. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今委員指摘のように、金融監督庁長官につきまして、総理大臣としてその権限の委任をして作業を進めていただいておるわけでございます。現下、特に十九行につきましては検査の途次にございますので、その結果を当然のことながら報告を受けることになろうかと思います。  ただ、そのことをすべて公表すべきかどうかにつきましては、あらゆる観点から検討しなければ、すべての検査結果を公表するということにつきましては、それぞれ金融機関の内部の問題はともかくとして、対外的な影響もこれまた大きいことでございますので、その判断はその後においてなすべきものと考えております。
  87. 菅直人

    ○菅(直)委員 この問題は、後にまた触れさせていただきます。  そこで、大変残念なことですけれども、私が厚生大臣のときに取り組みました薬害エイズの資料について、当時調査プロジェクトをつくりまして、すべて、あるものは公開したつもりでありました。しかし、その後、東京地検が家宅捜査をやった中に、当時のいわゆる安部研究班と言われたエイズ研究班のテープが入っていて、先日の法廷でそれが開示されました。大変重要な内容を含んでおります。  すぐに当時の官房長、現在の事務次官に電話を入れまして、一体どうなっているんだ、もう一回きちんと調査をするのか、このように言って、数日前に厚生省からの調査が出ました。当時の関係者に聞いたけれども、確かにテープに書いてある字は自分の字だけれども、それをとったかどうかは記憶にない、当時のことは記憶にない、記憶にないと言っているからわかりませんでした、こう言っていたでしょう、大臣。  そして、じゃ、そのテープを一般に公開してくださいと患者団体の皆さんが言われています。これは既に法廷で公開されているわけですから、仮還付請求というものを東京地検に出せば、多くの場合は認められると聞いております。しかし、厚生省はそういう請求はしていない。  あるいは、差し押さえリストというものを当然差し押さえた側は持っておりますが、差し押さえられた側も持っています。東京地検が発表するわけにはいきません。しかし、差し押さえられた側が発表するのは、これはとめることはできないと地検側も言っております。  つまりは、厚生大臣に三点お聞きしますが、まずは、これは私自身の責任も、当時の厚生大臣としての責任も含めてですが、調査をし、これで関係資料すべてを公開したと言っていたのにかかわらず、厚生省の中にそういう重要なものが残っていて、積極的か消極的かは別として、それを見出さないで今日まで隠していた、このことについての責任をどのようにとられるおつもりか。そして、還付請求と差し押さえのこのリストについて公表されるおつもりがないか、あるいは請求されるおつもりがないか、見解を伺いたいと思います。
  88. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 薬害エイズ問題につきましては、菅委員が厚生大臣のときにその調査プロジェクトチームをつくりまして、そして一応の精力的な調査の結果、これを公表されたことは私も承知いたしております。  しかし、今回、生物製剤課長であった松村氏の公判に当たりまして、前課長の証人喚問を契機といたしまして、録音テープの存在、それからまたエイズ研究班の五回にわたる検討会が持たれましたが、三回、四回目について、前課長は郡司さんと申しますが、郡司さんの供述によりましてその関係資料があるというようなことが報告をされております。  前厚生大臣の小泉純一郎議員がこれの再度調査を求めました。そして、一カ月有余にわたる調査、これは聞き取り調査等を中心にいたしておりますが、二百五十人にわたって調査をし、八十人については直接面接調査等をやったわけでございます。この点、今御指摘のテープ等は、当時の関係者がそのテープの表書きを見せつけられて、これは私の字ですということは確認をされておりますけれども、当時そのテープがどのような形で保存されておったのか、その後どうなっていったかという点の経過については必ずしも明らかでございませんが、公判におきましてこれが公開をされておりますから、私どもも承知しておるところでございます。  一方、三回、四回目の郡司さんの資料につきましては、これは郡司さんがどうも調査班の人から取得したらしいというようなことが言われております。  したがいまして、そういう点に焦点を合わせまして当時の関係者に調査いたしましたけれども、しかし、郡司さんの言われたとおりに、どの人がどういう過程で郡司さんにその資料をお渡ししたかということもはっきりいたしておりません。非常に短期間の間に精力的にこの処置をやったことは私は認めておりますが、しかし、把握し切れなかった点もこれは事実問題としてございます。  そういう点で、調査が不十分であった点はこれは申しわけなく思いますが、今の限度の中では、私としては、これはもう最大限やって調査をしたものではないかというように認識をいたしておりまして、特段隠しておったというような事実は認められないと存じます。  したがって、責任問題につきましては、菅大臣のときに当時のエイズ問題について処分等を行われました。徹底した調査も行われました。そのことは、私は、情報公開その他の面からいっても、また責任の所在を明確にする上からいっても高く評価されていいと存じますけれども、今回の問題は、そういったテープの問題と、追加的な資料がなお残されていたのではないかという点でございまして、私としては、これは十分な調査もやった上でのことでございますので、まあある程度の、言葉は悪いかもしれませんがやむを得ない事情もあり、そしてまた、聞き取り調査の限界からいっておのずから限界もあるのじゃないかなというように感じております。  したがって、この時点でさらに追加的にその問題についての処分をやるとかやらないというような問題につきましては、私は今考えておりません。こうした問題がないようにきちっとした対応をしていくことが求められておりまして、それこそ、その責任を果たすゆえんであると今考えておるところでございます。  なお、資料につきましては、裁判所の方で存在がはっきりしたわけでございますけれども、これは、仮還付請求等の今手続的なお話もございましたが、厚生省としては裁判所の方に、そのテープなり資料の内容をこちらに聞き取らせていただけないかという申し入れはしたようでございますが、何せ係争中のことでございますので、裁判所としてもこれを今直ちに明らかにするわけにはまいらぬということを申しております。  そういう事情から総合勘案いたしまして、私どもとしては、この訴訟の経緯を、まだ結審をしておるわけではございませんので、注意深く見守って、そして二度とこういうことの起きないようにこれからも積極的に努めていくということでなければならない、そうした意味で責任を果たしていきたい、このように考えておるところでございます。(菅(直)委員「押収物リスト」と呼ぶ)押収リストはですね……(菅(直)委員「持っておられるのですか」と呼ぶ)押収リストにつきましては、例えばテープが、一つは裁判所にあるわけでございますが、あと……(菅(直)委員「目録ですよ、目録。リスト」と呼ぶ)それ以外の資料ですね。  五回までの調査資料については、郡司さん……(菅(直)委員「押収物リストです」と呼ぶ)わかりました。検察庁の押収リストがどのようになっているかは、ちょっと私、今手元に持っておりませんので、これは事務的な話でございますので、ちょっと局長の方から答弁をさせていただきます。
  89. 菅直人

    ○菅(直)委員 これ以上は、あと別の委員会でもやりますが、いいですか、厚生大臣、私が厚生大臣のときにわざわざ調査プロジェクトを、どうしてもつくらないというのなら私一人でもやると言って、時の多田次官に命じてつくらせて、そして十数名で膨大な質問項目をつくりまして、そして徹底的な調査をやらせたつもりだったのです。しかし、結果において、その後の、調査が終わった後の東京地検の家宅捜査でまだあったんですよ。  私は、今回の調査が十分かどうか聞いているんじゃないですよ。私が厚生大臣のときの調査が、これで全部だと言われたのにまだあった。少なくとも、私に報告がないものがまだあった。積極的に隠していたか隠していないか知りません。しかし、当然、厚生省が自分の予算でやったそういう研究会、一般的に言えばテープをとるのが通例だそうです。そして実際にあった。書いた人もいた、その表面を。しかしやむを得なかったというのですか、これで。これから金融の議論をやるときに、何を言ったって、後になって出てきたら、いや、当時の人は忘れていたからやむを得なかったんですと。同じことですよ。これは、わざわざ一回そのための調査プロジェクトをつくった、さらに結果ですからね。  こんな政権で、まともに官僚コントロールができるのですか。官僚にコントロールされているんじゃないですか。総理、どう思います。
  90. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 菅厚生大臣時代のそうした調査プロジェクトの結果についての経過につきましては、今お伺いをいたしました。  ただ、今とっさのお尋ねでございまして、そうした資料が現存しておるのかどうか、あるいはまた、それに対してどう対応するかにつきましては厚生大臣をして、その対応につきましてもさらなる事実関係というものを承知をいたしませんと私として正確な答弁ができかねますが、厚生大臣をしてさらに検討していただきたいと思っております。
  91. 菅直人

    ○菅(直)委員 中身のことをお聞きしたわけじゃないんですよね。厚生大臣が言われたことについて、初めて聞かれた方もほとんどわかると思うのですよ。結局、お役人に聞いたら、確かに自分の筆記だけれども、当時のことは忘れていてよく覚えていないから、まあ一生懸命調べたのに当時わからなかったのはやむを得ないだろう、まあ情状酌量で処分はしないでおこう。  あのテープの中身、厚生大臣もおわかりでしょうけれども、当時、トラベノール社が加熱製剤を既にアメリカで販売していて、あるいは非加熱製剤の回収を世界で行っていたことをその研究会に郡司当時の課長が報告したかしないか。国会の幾つかの委員会でも、証人喚問で出ている問題です。それと明らかに矛盾した中身がテープの中に入っているわけです。そういった意味では、最も重要な内容が、ペーパーではかなり出ていましたけれども、テープで、肉声で出ている。最重要な中身です。それが今になって出てきて、やむを得なかった、仕方なかった、こんなことで何が公開ですか。  この話は、後の他の場面で同僚議員からまた取り上げていきたいと思います。  そこでもう一つ、自民党型政治というか経済。私は自民党の皆さんが選挙中言われたことが今でも耳に残っております。利益誘導こそ政治家の使命だ、たしか選挙中に亀井さんかどなたか言われていましたよね。私は、まさにこれは本音であると思います。また、現実そのものだと思います。  しかし、そのことが何を招いているのか。つまり、多くの権限を中央省庁にまず集める。許認可権、補助金等々を集めて、そうすると、国会議員は、特に与党の議員は何が仕事か。その許認可を何とか自分の応援団の利益のためにいいようにしよう、補助金をいいように使おう。私、それが全部悪いとは言いません。しかし、それがメーンの仕事になっていることがまさに日本型の政治なんですよ。まさに日本型の政治なんです。  今度の十五カ月予算でも、今から見ていてください。多分……(発言する者あり)委員長、黙らせてください。
  92. 中山正暉

    中山委員長 御静粛に願います。
  93. 菅直人

    ○菅(直)委員 具体的に言えというやじが余り飛ぶものですから、余り細かいことを言ったら申しわけないのでやめていますが、今私が申し上げているのはもっと大きな問題です。  つまり、地方にかかわる問題、あるいはいろいろな経済にかかわる問題、これは銀行もそうですが、そういう権限をいろいろな役所が持っていて、その役所に集めた権限をいかにして与党議員がそれを、何といいましょうか、自分たちの判断で、ある意味では利益を配分したり、ある意味ではいろいろな施策をやっていく。  そういう意味では、私は、もっとそういう権限は移すべきものは思い切って地方自治体に移すべきだ。財源も権限も思い切って移せば、例えば補助金をとるために、地元の利益のことだけを考えて、先ほどここで深谷さんが各省庁のことだけを考えないでやってくれ、国家国民のためにやってくれと言われましたが、自分の狭い地元のことだけではなくて、地元のことは県会や市長や県知事に任せる、国会議員は国民のことを考えてやる。そういう意味を含めて、私たちは、中央政府の権限は、外交、防衛やあるいは一部の福祉の基準づくりなどに限定して、思い切って財源、権限を地方に移すべきだ、こういうふうに思っておりますが、総理の見解を伺いたいと思います。
  94. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 地方分権の推進に当たりまして、地方の自主性と自立性を高めるため、国と地方の役割分担を踏まえまして、国庫負担金の整理合理化や事務、権限の移譲などに応じ、地方税財源の充実、確保を図ることが重要であると考えております。  今後、地方分権推進計画や中央省庁等改革基本法を踏まえまして、公共事業に関しまして、できる限り個別の補助金にかえて適切な目的を付した統合的な補助金を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させるなど、補助金の整理合理化を図り、地方分権を積極的に推進していくことといたしておるところでございまして、やはり地方に権限を移譲するということによりまして、それぞれの地域のことは地域の皆さんが積極的に図るということは極めて大事なことであり、そのことによりまして、中央と地方との関係を整理していくという中で、いろいろと言われているような問題については対処できるものと考えております。
  95. 菅直人

    ○菅(直)委員 これは、もう国民の皆さんに今の答弁をどう理解していただけるのか。  私は、自民党型政治、もっと言えば自民党に限らないところもあると思います、率直に申し上げて。私たちも反省しなければいけないけれども、その反省の構造が、中央に権限が集まっているという構造の中では、例えば野党でも、それは、頼まれたら何とか補助金を持ってこれないかという話になってしまうから、そういう中央に物事を集めるのをやめて、中央がやるべきことは限定したらどうか、そのことを申し上げたのですが、今のが答弁になっているかどうかは、それはお聞きになった方の判断に任せたいと思います。  そこでもう一つ、経済の問題です。  自民党は一般的には、経済の分野は自分たちこそ強いんだということを従来から自信を持たれてきたようであります。しかし、この五年あるいは十年、もっと長いかもしれません、いろいろなものが積み重なった結果が、今日の金融を含む経済の大変厳しい状況になってきております。  私は、どうも従来型の自民党的経済考え方が通用しなくなってきているということに気がつくのがおくれられたんじゃないかな。つまり、従来型といえば、景気がよくなったり悪くなったりする。悪いときには、有効需要を高めるために、一時的に財政出動を含めて内需拡大をやる。公共事業をやればまた戻ってくる。今度は引き締めて抑えていく。そういうやり方の中で、波を打ちながら右肩でずっと上がっていく。そういうやり方をとられてきて、そのやり方が今も通用すると思ってやってきたけれども、どうも通用しない。橋本内閣、その前の内閣、その前の内閣、そのさらに前の内閣もそういうやり方をとってきたけれども、なかなか通用しない。  私は、前の幹事長加藤紘一さんと、恒久減税をやるべきだと私が言ったら、前の幹事長はどう言われました、恒久減税よりは公共事業の方が景気浮揚効果があるんですと。これは、宮澤大蔵大臣の秘蔵っ子と言ったらもう加藤さんに失礼になるかもしれませんが、お弟子さんでありますけれども、やはり内需拡大なんですよ。  私たちが恒久減税と言ったのは、内需拡大のことだけを考えて言ったのではない。経済構造を、政府にお金を集めて政府が判断して投資をするという分野を縮小して、企業や個人がみずから判断をして投資や消費に充てる分野を広げていく。まさにレーガノミックスの考え方も一部はそうかもしれません。そういう経済構造の改革ということのために何をすべきかという意味で、参議院の選挙の前から恒久減税を民主党初め幾つかの野党が言ってきたんですよ。  どうですか、そういう経済考え方について、自民党型の経済政策がどうも通用しなくなっているんじゃないか。宮澤大蔵大臣はバブルについて一部反省の弁を述べられたようですが、こういった問題について総理はどうお考えですか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、御指摘の一つ一つに反論を申し上げるつもりではないのですが、戦後、きょうまでの日本経済の道を振り返ってみますと、やはり、瓦れきから立ち上がってこれだけの国をつくった、これは国民の一致の努力の結果であったと思うんです。それができました段階で、今度は日本経済が国際化をしなければならない。新しい命題をしょいましたが、たまたまそのときに日本は追いつき追い越しましたものですから、何をお手本にして新しい道を進むのかがはっきりせず、かつまた、先ほどお話もございましたが、従来、方向が決まっておれば、官僚諸君にかじをとってもらっておってもよかったわけですが、その方向が、もう追いつきましたので、政治が方向を設定して国際化の道を進む。そういう新しい課題に取り組まなければならない、その苦しみを今我々は味わっておるのだと思います。  私は、ですから、日本経済が沈没するなんというお話が一部にございますが、とても考えられないことで、これだけの仕事をしてきた我々ですから、新しい方向に向かって必ずかじを切ることができるだろう。ただ、その中間の苦しみの段階で、確かに模索をしておりますから、御指摘のように、いろいろ、必ずしも適切じゃないこともあろうし、また、やや悲観的な見方もあったりいたしますけれども、それは二十一世紀に向かっての我々の経済の転換、変形に伴う苦しみと努力であるというふうに考えております。
  97. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 なるほど、従来、景気回復ということになりますと、財政の出動あるいはまた減税による効果を期待してという形で参ったことは事実でございます。  ただ、この効き目が必ずしも従来的な形の中で大きな効果を発揮しないという点も生まれてきている。  一方、その他、財政だけの出動でなくて、どうしても景気につきましては、国民一般の消費動向というものもこれまたなければならないということによりまして、いろいろな形での組み合わせを効果的にしなければなりませんし、また財政の出動につきましても、その中身につきましても、十分これから検討していきまして、従来型がすべて誤っておると私は考えません、それなりの効果を発揮しておると思いますけれども、さらに工夫の余地があるのではないか、こう考えて、次年度の予算その他につきましては、十分これは対処していかなければならないと思っておりますし、今次、今年度の予算の中でも、補正予算のあり方につきましても、これまた十分検討していく必要があると認識しております。
  98. 菅直人

    ○菅(直)委員 十分検討されるのはもちろん結構ですが、まさに自民党型の、従来型の経済政策が根本的に時代状況の変化の中で合わなくなったのではないかということを一つの私の見解として申し上げてみたわけです。  宮澤大蔵大臣は、かつて、中曽根内閣、竹下内閣でも大蔵大臣をやられました。私は、土地問題に関して、当時、大蔵大臣と議論をしたことをよく覚えております。  一九八五年の日本の地価総額は、経企庁の発表で約一千兆円と言われました。わずか五年後の一九九〇年の我が国の地価総額は二千四百兆円と言われました。そしてまた、今千兆少しのところまで戻ってきております。  このわずか五年間の二・五倍になるバブルの発生の中で、宮澤大蔵大臣は半分の間を、二年半ぐらいを大蔵大臣として重責を担っておられました。  先日のどこかの質問の中で、プラザ合意後の過剰流動性がバブル発生の一つの原因だと。私も、一つの原因だと思います。しかし、三つの原因が重なったのがあのバブルの発生だと思っております。  一つは、今の過剰流動性。もう一つは、土地を持つことが株や証券や預金を持つよりも圧倒的に有利だという当時の税制の問題。これは、保有税もあり、相続税もあり、いろいろな問題があります。そして、もう一つの三つ目が、都市計画、土地利用計画。ドイツの場合は、思惑で土地を買っても、都市計画が市の、例えばフランクフルト市の条例で決定されない限り、どんな建物も、たとえ自分の土地でも建てられません。バブルの時代日本の不動産屋が買いに入ったけれども、すぐあきらめた。土地利用計画が非常にきちっとしているからです。  私は、当時の宮澤大蔵大臣と土地税制について何度か議論をいたしました。議事録もたくさん残っております。そのとき、宮澤さんはいつも一貫して、土地政策において税制は補完的な役割を果たす、それが先輩、水田大蔵大臣からも言われた原理ですと。補完的役割という言葉は歴代政府税調の中でもずっと使われました。大蔵大臣ばかりではなく、自治大臣もずっと使われました。そのために、少なくともバブル発生の多くの期間、税制は何も機能を発揮しませんでした。私は、これがもう一つの大きな失敗であったと思っております。  そういった意味で、今回、不良債権処理、これは多くが不動産であります。不動産の最後の処理をするときに、私は、三番目に申し上げた土地利用計画の問題が出てくると思います。  つまり、地上げというものが起きたのはなぜか。地上げというのは、民間で広い土地にすれば、まとまった土地にすれば高いビルが建つけれども、そうでなければ低いものしか建たないという、いわば民間に、所有者に任せた土地利用のあり方、これは計画がないのですね。  ですから、私は、不良債権の処理の問題でももっと公的な立場が出るべきだということをかなり前から提案をし、最近やっと住都公団が、一部、三千億の基金を積んで動き出しました。  話をあちらこちらにしても恐縮でありますが、少なくともバブルの発生した原因について私はそのように考えますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当時、この委員会におきまして、菅委員からただいまのような問題について御指摘があり、また台湾の制度などもお触れになりまして、私がそれにお答えいたしましたことはよく記憶をいたしております。  簡略にしか申し上げませんが、プラザ合意で円が急騰して日本が非常な不況になり、求人倍率が下がり、企業城下町なんというところは死んだようになりましたから、政府は財政措置を何度かとりましたし、また一日に一億ドル、千何百億円というような介入を何度もいたしましたから、これが過剰流動性の原因になった、そのことを早く察知すべきであったということをせんだっても申し上げたわけであります。  その間にあって、菅委員は確かに土地の問題について幾つか御提言がありました。例えば、土地保有税を非常に重くする。それによって土地による一種のスペキュレーションをある程度抑えることができるであろう。あるいは、土地の譲渡所得を、殊に短期の譲渡所得を自由化することによってこれを抑えることができるのではないか、あるいは土地利用計画についてもおっしゃいました。  私はそのこと自身、今になって、決してすぐに反論をしたい気持ちではございませんけれども、それならば土地保有税を重くしたらどれだけの効果があったであろうか。あるいは、譲渡所得をこれこれにした場合のほかに与える効果はどうであろうか。土地利用計画についてはなおさらでございますけれども、私どもは、なるべく市場経済の中でこういう事態が解決するのが本当だろう、税制等々あるいは国の計画を用いることには、実はかなりのちゅうちょをいたしたことは事実です。  ですから、今になって、あのときそうやっておけばよかったのではないかとおっしゃれば、あえて私は反論を申し上げる気はございませんけれども、やはり市場における勢いというものは、なかなか一つの税制や制度では抑え切れないところがあって、そのもとの過剰流動性をコントロールすることが一番よかったのではないかということをせんだっても申し上げたわけでございます。
  100. 菅直人

    ○菅(直)委員 私も当時のことを細かく、今言われたことは若干不正確なところがあるのですが、細かく反論するつもりはありません。  ただ、やはり今のお話の中でも、お金の流れのことは大蔵大臣いろいろ言われるのですが、ストックについて、資産についての見方が少なくとも私とはかなり違います。  シャウプ勧告、これは釈迦に説法ですが、資産再評価が入っていますね、シャウプ勧告には。しかし、実際には戦後二回しかやりませんでした。そのために、含み益をたくさん手にした企業が最も優良企業と言われました。その代表は不動産業であると同時に銀行ですよ。銀行がかつて買った土地が上がったことで含み益を得て、それで、場合によったらいろいろなことをやったわけです。当時のエクイティーファイナンスも土地ですよ。それがさらにエクイティーで得た金で過剰投資を招いたのです。  そういう基本になった資産について、どうすればそれを抑えられたか。いわゆるバブルを抑えられたか。流動性だけなら、今だって低金利です。それでは抑えられません。  つまりは、私が申し上げたのは、あえてここでは余りたくさんは申し上げませんが、固定資産税という税金は時価に対して一・四%かけると、もともとなっているのですね。そのとおりもしかけていたら、地価は上がらなかったでしょう、一億円の土地に坪百四十万もかかったら。当時の評価はわずか五百万ですよ、評価が。ですから、実効税率は実際に比べれば二十分の一だったわけです。  ですからこの議論は、今さら言いませんけれども、どうも大蔵大臣は、当時からそうですが、そういう資産の含み益がふえていって生じた直接のバブル、さらにはそのときにエクイティーで、いわゆる株の売り出しで得た金でさらに過剰な生産設備を投資して、それが今日なお生産過剰に一部なっている、これが現在の不況のもう一方の大きな原因であるというその認識は、私は必要ではないかと思っているところであります。  そこで、もう少し話を進めていきたいと思います。  今、こういうバブルの中で生まれた不良債権を中心にして金融が大変傷んできました。我が党は選挙の前、金融再生計画というものを発表いたしまして、現在その法案化を進めております。他の野党との協議などをいたしておりまして、できるだけまとまった形で提案できればと思っているところであります。  そのポイント幾つかありますが、一つは、最悪のケースに対しても対応できなければならない。最悪のケース、大手銀行が破綻という状態に対しても対応できなければいけない、あるいはばたばたと多くの銀行が破綻する場合にも対応できなければいけない、このことを一つは念頭に置いた内容になっております。  また、ディスクロージャー、先ほど総理は、十九行の発表があったら自分も報告を聞いてそれから判断したいと。隠すとは言われなかった、出すとも言われなかった、判断したいと言われましたね。どう判断されるか、もちろん見ておりますけれども、この報告義務を明確にして、我が党の案ですよ、虚偽報告に対しては当然ペナルティーを科す。政府案では明確になっておりません。  そして最悪の場合に対応するために政府による信用付与ということを考えて、いろいろ議論があるところですが、株の強制取得という考え方に立っております。  そして不良債権については、時価で日本版RTCに移して回収を図っていく。虫食いの土地などについては、先ほど申し上げた都市計画などで収益性の高い土地にこれを生み直していく。  我が党の案は、大筋こういった内容になっております。  そこで、きょうは日銀総裁にもおいでをいただいております。  日銀総裁が先日記者会見でいろいろ言われておりますが、大手銀行の破綻等については、ブリッジバンクというよりも何かそういうやり方でないやり方の方が望ましいのではないか、そういう趣旨の発言をされておりましたが、総裁に、政府案のブリッジバンクについて、大手銀行の破綻との関係でどのように見ておられるのか、御意見をお伺いしたいと思います。
  101. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  ブリッジバンクがこれからここで審議されて決まることを期待しておるわけでございますが、法制度の上から申しますと、大手銀行が破綻した場合であってもブリッジバンク制度が適用されるものと理解いたしております。ただ、この制度を適用することが適当かどうかは、あくまでも具体的な事例に即して判断さるべき事柄ではないかと考えております。  内外で大規模に経営しております金融機関が破綻した場合には、内外市場に非常に大きな混乱を来すであろうことは容易に想像することができます。実体経済にももちろんはかり知れない影響を及ぼすおそれがあります。したがいまして、大手銀行の経営危機に際しては、連鎖破綻とかシステミックリスクとか、こういったことを回避するために万全の措置を講じていく必要があると思います。まずはその果たしている金融機能を基本的に維持していくとの前提に立って対応を考えるべきものと思います。先般の記者会見においても、こうした考え方に沿って質問に答えさせていただいたところでございます。  特に、海外との関係が非常に深く広くなっておりますだけに、かつて大きな取引の破綻が起こりましたときにも、一九七四年、ヘルシュタット事件とか、あるいは一九八四年にコンチネンタル・イリノイが突如破綻したときとか、私どもにも非常に大きな影響があったことを今でも覚えております。  しかし、ここへ来ていわゆるデリバティブといったような取引が、十九行、一行平均とりましても百兆以上、百三十兆ぐらいの取引を海外といたしております。これが恐らく、一口百億円としましても五、六千の取引があるわけで、そういった取引先が、相対取引もしておりますからすべてが含み損になりあるいは含み益になるというものではございませんけれども、そういったものが海外の金融市場の、あるいは金融機関の混乱に及ぼす影響ということを考えますときに、大銀行の破綻についてはよほど慎重に、なるべく早目早目に手を打っていく必要があろうかというふうに考えております。  以上でございます。
  102. 菅直人

    ○菅(直)委員 大変難しい微妙な問題でして、今の総裁のお話は、法的には可能だけれども適当かどうか、これは大変考えなければいけない、海外取引などデリバティブの問題などがあって果たしてうまくいくのか。  ここに日経金融新聞というものがありまして、これは日経の本紙にも似たことがありますが、政府案で言う金融管理人、私は余り横文字は得意ではありませんが、アドミニストレーターまたはレシーバーというふうに横文字では言われるのだそうであります。  ただ、このアドミニストレーターとかレシーバーということになると、普通の企業でいえばいわゆる管財人と同じ意味だ。つまり、破産したというふうに見られるのではないか。国内では、大蔵省金融企画局の説明では、いや、破綻したわけではない、同じ法人に単にそれを入れただけだという説明を受けていますが、海外市場では、そういう金融管理人を入れたときに、既に破綻したというふうにみなしてそれに対する対応をとり出す。今総裁が言われたいろいろな心配が出てくる。  総裁、そういうおそれはありませんか、海外市場で。
  103. 速水優

    速水参考人 今御指摘のように、海外取引が非常に多うございますので、突如破綻というようなことが起こりますと、やはり海外への及ぼす影響は非常に大きい、それが日本の金融機関に対し、あるいは日本経済に対する不信認感をふやしていくのではないかということを心配いたします。  そういう意味では早く、極力早目早目に実態を把握した上で適切な手が打たれていくことが望ましいと思いますし、このブリッジバンクを必ずしも使わなくても、マーケットのベースで話し合いが行われ、合併が行われ、あるいは市場ベースでの経営の売買が行われていくといったようなことが行われていくことが望ましいというふうに私は考えております。
  104. 菅直人

    ○菅(直)委員 これ、総理あるいは大蔵大臣、聞かれたと思うのですよ。  私が今の総裁の言葉を私なりに一生懸命聞いた中でいえば、早目早目ということは、あの、政府が提案している、第一段階、破綻を何らかの形で認定して金融管理人を入れて、第二段階、それをどうしても受け取る民間銀行がない場合は公的ブリッジバンクに移していく、そういうやり方は大きな銀行については無理ではないか。私もそう思うのですよ。  ですから、皆さんは大きい銀行、小さい銀行、破綻のことをどう考えているのか。できれば総理にお聞きしたいところですが、このブリッジバンクが大手銀行の破綻に対して、法律的に可能であるとかと逃げないでくださいよ、法律的に可能であるというのだったらそれは法律的に可能なことはあるでしょう、行政運営上認定をするのは金融監督庁長官、その上には総理がいるわけですから、その長官が認定をするときにどういう場合に認定するか、大手についてもやるのかやらないのかということになるわけですから。  この政府提案の法案が大手の破綻に対応できるとお考えかどうか、総理の見解をお聞かせください。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この法案そのものにつきましては私が主管でございますのでお答えを申し上げます。  細かいことを申し上げるようですが、金融監督庁長官あるいは総理大臣が金融管理人を派遣される場合は、その金融機関が財産、業務等の状況に照らして預金等の払い戻しを停止するおそれがあると認める場合、または払い戻しを停止した場合でございます。必ずしも債務超過というわけではございません。  この規定は銀行の大小にかかわらず適用されるべきものでございまして、大きな銀行、小さな銀行という区別はございません。
  106. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、日銀総裁が言われたことと今の大蔵大臣が言われたこと、一つだけ共通していますね。法律解釈上は両方あり得ると言われた、それはそのとおりでしょう。  実際上できるのかということについて、日銀総裁は、私の理解したところでは、そのやり方では事実上海外市場の問題が起きる、先ほど申し上げた金融管理人を送った段階で、我が国では、いや、これは単に送っただけで別につぶれたのではありませんと言っても、海外はあるいはデフォルト、破綻という認定をしてそういう対応に出るかもしれない心配があるから、そういうやり方でないやり方で何とかすべきだ、日銀総裁はそういうふうに言われたわけです。  総理、どう思われます。これは大変な問題ですよ。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げましたのは、この法律で大小にかかわらず適用は可能だと申し上げましたし、総裁の言われましたのは、しかし何かのケースがあれば、それが一番適当な方法なのかあるいは別の方法があるのか、そこは考えなければならない、こう言われたように思います。私は具体的なケースを自分の立場上存じませんのでそれ以上申し上げられませんが、そういうお答えであったと思います。
  108. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、だんだんこういうよくわけのわからない答弁になってくるのですよ。大蔵大臣が法案の主管大臣だとみずから立たれた上で、そういうことについて想定はよくわからないと。  では、金融監督庁の上におられる総理、みずから判断を述べてください。
  109. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融監督庁といたしましては、与えられた任務を遂行し、現在、その任に当たって十九行につきまして検査を継続をして、その結果を見守っておる、こういうことでございます。
  110. 菅直人

    ○菅(直)委員 今私がお聞きしたのは、政府が出されている法案のブリッジバンクが大きい銀行の破綻に適用できるとお考えですかと聞いたのでありまして、今の金融監督庁がやっていることをお聞きしたのではありません。
  111. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣から御答弁申し上げたように、この法律案につきましては金融機関の大小を問わず適用するということでございます。
  112. 菅直人

    ○菅(直)委員 今、適用すると言われましたね。果たしてできるのでしょうかね。  少し話を進めます。  金融安定化法という法律を、さきに橋本政権下で与党の皆さんはつくられました。私たちは、この内容は銀行救済に当たる、こういうことで賛成いたしかねる、そういう立場をとりました。しかし、皆さん方は、銀行救済はしない、優良な銀行に資本注入することで貸し渋りを防ぐのだと言われました。  その後、わずか三カ月たった今日、どの銀行とは言いません、どの銀行とは言いませんが資本注入を受けた、大手がほとんど受けているわけですが、その中で大変苦しい状況に追われている例えばその銀行、いずれかの銀行が破綻したときに、少なくとも各銀行に一千億以上のお金をつぎ込んでいるわけですから、破綻した場合はその一千億のお金はどうなるのですか。佐々波委員会と言われる皆さんが責任を持って返還をしてくださるのですか、納税者に対して。  まず、もし最近資本注入した銀行が破綻した場合、その公費の注入したものについて、だれがどういう責任をとられるのか、お聞きします。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 再度申し上げますが、そういうケースがあるかどうかについて、精粗は存じておりません。  また、したがって、その責任というようなことは、仮定のお尋ねでございますからお答えができません。
  114. 菅直人

    ○菅(直)委員 こんな話がありますか。金融安定化という法律があって、予算総則に盛り込んだのはだれなのですか。それで、破綻した場合のことは答えられない。じゃ、法律がおかしいのですか。答えられないというのはおかしいでしょう。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、そういうケースがあたかも具体的にあるような印象を答弁として申し上げるのは適当でないと申し上げておるのであります。
  116. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか。予算総則でちゃんと盛り込んだものがあるのですよ。それについてどうするのか。じゃ、仮定をしちゃいけないのですか。じゃ、全部それはどうなるかもわからないけれどもお任せくださいと言うのですか。  まさに皆さんが説明されたのは、優良銀行だから、優良銀行にしか投入しないのだ、間違っても破綻しそうな銀行に注入はしないのだ、そういうふうに言われたのじゃないですか。じゃ、間違っても破綻しないと言われるのなら、それでも結構ですよ。  いいですか。今度のブリッジバンクの法案は、この金融安定化法の一部修正も入っているのですよ。私どもの提案では、そういういわゆる銀行救済のための資本注入はやるべきでないということで、この法案は廃止すべきだ、こういう立場をとっております。それについての見解を伺います。
  117. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が御質問されました資本注入に当たりましては、確かに、現在の安定化法に基づきまして、さらにその審査基準に従いまして金融危機管理審査委員会の厳正な審査を経て決定されるなど、現在の法律に規定されております手続に従い、適切にその決定が行われたというぐあいに認識しております。
  118. 菅直人

    ○菅(直)委員 これも、当然特別委員会でも議論になるでしょう。  厳正にやられたと。だから、本当に厳正なのですかと聞いているのですよ。マーケットは少なくともそういうふうには見ていないようですね。  ですから、いろいろなことを皆さん言われてきた、ここまでやれば大丈夫です、ここまでやれば大丈夫です、ここだけはやらせてください。今回もそう言われているじゃないですか。先ほど深谷さんが、私たちももちろん単に政争の具に使うなんということを思っていません。ただ、皆さんが言われるのはいつも、これさえやらせてもらえばあとは大丈夫ですから。金融安定化法もそれでやったのじゃないですか。  今回やるのが本当に、想定される、私たちの方が実は最初に言ったように、大規模な破綻もここまで来たらあるかもしれない。テレビできのうも、いろいろな専門家が十九行のうちだって半分近く危ないなんということを言う時代ですよ。そういう中においてどうするか。ぎりぎりのところでそれを食いとめるためには、政府による与信が必要ではないか。  そういう意味で、いざというときのために、強制的な銀行の株の買い取り、そしてリストラをさせて、清算するものは清算するけれども、場合によっては再生できるものは再生していく、こういうことを私たちの提案は言っているわけです。これについてどう思われますか。
  119. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御提案の、概要は実は存じておりますけれども最終的な形を存じ上げておりませんし、また総理がしばしば言われますように、この問題については余りイデオロギーというようなものはないはずでございますから、いい案であれば、国会において政府案を御修正等々の上、成立させていただくことに私ども一向にこだわりはございません。  さらに一言つけて申し上げますれば、私は今おっしゃったような事態を政府として想定してお答えすることは適当でないと申し上げておりますが、日銀総裁が言われました、そういう場合にはまたそういう対応を考えねばならないと言われた部分については、政府案でもそういうことは対応ができるように、政府の現行法律でも対応できるようになっております。
  120. 菅直人

    ○菅(直)委員 本来ならその中身を聞きたいところですが、私どもが見る限りはそう簡単にはなっていませんね、少なくとも先ほど日銀総裁が言われた意味では。金融管理人を指名した途端に起きるのじゃないかということの対応はできていませんね、政府案は。何か言われますか、どうしても。金融管理人を指名した段階で、外国はもしかしたら破綻とみなしたときにデリバティブの問題などがどうなるかという、私は日銀総裁の指摘はそうだったと思いますよ。それに対応できますか、今の政府案で。公的ブリッジバンクはその先の先ですからね。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでございますから、日銀総裁は、そのケースはこの法律を法律的に適用できる、しかし、またよい別の方法があるのではないかと思う、こう言われたわけです。
  122. 菅直人

    ○菅(直)委員 ということは、この法律を使わない別の方法を考えるという意味なんですね。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮定の問題を法律的に御議論でございますから、法的にはそうでございます。
  124. 菅直人

    ○菅(直)委員 今のお二人の話を聞けば、大手の破綻が起きた場合は、政府提案の内容を使わないで別なやり方をやると。そういうことだとすると、大分議論が違ってきますね、この国会は。これは今後の議論がありますから、同僚議員がさらに詳細なところは詰めていきたいと思っています。  そこで、少し話を進めたいと思います。  税制改革についてもいろいろ言われています。六兆円減税というのは我が党の選挙のときの公約であったことは、もちろん皆さん御承知のとおりであります。それが、小渕総裁候補の段階で六兆円超の恒久減税ということを公約をされまして、現在それが進んでいるわけです。  私は、まず第一点、私どもが恒久減税を提案したのは、先ほども申し上げましたが、景気対策の側面ももちろんありますが、それと同時に、あるいはそれ以上に、長期的に見れば経済構造の改革につながるんだ。一時的に景気を維持するための公共事業、これは景気回復するまではある程度維持せざるを得ないけれども、中身は中身でまだありますが、しかし減税というのは、まさに恒久減税という形でやることで経済構造の改革につなげていく。  そういう意味では、財源も、当面赤字国債であるということは私たちも既に申し上げているとおりでありますが、将来景気回復したときにはその段階で、むだの大変多い公共事業の見直しなどを含めて、そういう中でいわゆる財政支出をカットすることで財源に充てていく、こういう考え方をとっております。  しかし、小渕総理の発言を見ますと、そのあたりが、財源問題がはっきりしておりません。将来どうされるおつもりですか。
  125. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 たしか自由民主党総裁選挙の折にも申し上げたと思いますが、当面はその財源としては赤字国債で賄わざるを得ない、こう申し上げておりました。  今委員指摘のように、将来にわたって景気回復し、経済活性化するという段階におきましては、その段階として考えるべきものであろう、こう考えております。
  126. 菅直人

    ○菅(直)委員 その段階で考えるべきで、考えるべきだ。どう考えているのですかと聞いているわけですよ。相変わらず旧来型の巨大公共事業、諫早湾の埋立地も相変わらず工事が進んでいますよ。今さら海の上に農地をつくって、それで何が意味があるんだ。防災のことはいいですよ、まだ。改めてその内側に埋立地をつくろう、そんな事業がそこらじゅうじゃないですか。そういうことをまだ続けるつもりでもしかしたら考えておられるのか。そうでないのなら、考えることは考えるじゃなくて、もうちょっと踏み込んで。どこにあるんですか、六兆円超の大変大きな恒久減税
  127. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御質問の趣旨を取り違えていたかもしれませんが、今回行おうとする所得課税あるいは法人課税の減税につきましては、これは当面赤字国債をもって賄うということでございます。
  128. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、当面の後のことを聞いたんですが、ではちょっと話を進めます。  それから一つ気になるのは、総理大臣は、総理大臣になられた日は恒久減税と言われていたんですね、たしか記者会見で、翌日ですか。その後の国会答弁は全部、的が入ってきたのですね。恒久的減税。何かこれは的を入れられた理由があるんですか。総理の口からお答えいただきたいと思います。
  129. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 恒久減税あるいは恒久的な減税について種々議論されておりますが、やや言葉がひとり歩きしている面も否めませんので、お許しをいただきまして、この際、私として率直に整理をして考え方を述べたいと思っております。  すなわち、単年度単年度で行われる特別減税という用語に対しまして恒久減税という用語は、消費喚起の観点から一年限りの減税でなく将来に向かって継続される減税を行う方が効果があるという意味でこれまで新聞等で多く用いられてきておりまして、総裁選での私の公約におきましてもその意味で恒久減税という言葉を用いました。  つまり、私が公約で申し上げたかった趣旨は、将来どうなるかは不確定な一年限りの減税ではなく、期限を定めないで制度改正を行い、その後、特に法律改正を行わない限り継続していくというものでございまして、このような私の公約の具体化につきまして、大蔵大臣と党幹部との間で調整をしてもらった結果を踏まえまして、私としては、今回の減税が、御案内のとおり、所得・住民税の最高税率の引き下げ、定率減税及び法人課税の実効税率の引き下げを内容とする制度改正を行い、全体として期限を定めない六兆円を相当程度上回る減税とするということとしたものであり、私が公約で述べた趣旨を実現したものであると考えております。  一方、本来税制は、毎年税制改正が行われているように、社会経済情勢に適切に対応するよう不断に見直しを行っていくべきものであり、未来永劫に改正しないということはあり得ないと思っております。  そこで私としては、恒久減税という用語は、私の述べた趣旨を超えまして未来永劫にというようなこととして受けとめられかねない面もありまして、一年限りでなく期限を定めないで制度改正を行い、その後特に法律改正を行わない限り継続していくという趣旨で恒久的な減税と表現したものでございます。  そこで、今委員が御指摘のように、私の総理就任の最初の記者会見でも恒久減税ということを申し上げました。つらつら実はその後思いまして、恒久減税というのは、少なくとも制度的な大きな改革の中、すなわちある意味のグローバルスタンダードの中で、所得課税、法人課税を欧米並みに引き下げるという意味で私自身が観念的にそれを恒久減税という認識をいたしておりましたが、今申し上げたような趣旨で、このことは、恒久減税を少なくとも私の内閣だけで恒久と考えることはいかがかと。すなわち、常に税制につきましてはその時々の内閣あるいは国会の判断というものが行われますので、正確を期して、私といたしましては恒久的減税と申し上げることがこの際御理解をいただける、こう思った次第でございまして、先ほど実は堺屋長官の御答弁を聞いておりましたが、恒久減税ということを申し上げられておりましたので、この際、総理大臣として私の考え方にのっとりまして、今後内閣としては恒久的減税ということで御理解をいただきたいと思っております。
  130. 菅直人

    ○菅(直)委員 本当に、堺屋経企庁長官がせっかく国民にわかりやすい言葉を使おうとされているのに、今ので、私も一生懸命聞いていましたが、期限を定めないものについて恒久減税と言ったけれども、未来永劫と誤解されるかもしれないから的を入れたと。未来永劫などというのはあるのですか、一体。堺屋長官の感想をお聞きしたいのですが。
  131. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私が恒久減税と言ったとしたら、ちょっと言い間違いでございます。恒久的な減税という方が日本語としては正しいかと思いますが、この点を余り掘り下げて日本語の議論をする気は私にございません。新聞などがどういうぐあいに受け取るかという判断をお聞きになって総理大臣がより正確に言いかえられたものだと思いますので、これからは恒久的減税、恒久的な減税と申し上げます。
  132. 菅直人

    ○菅(直)委員 私は、堺屋さんの本のファンではありますけれども、今の答弁はちょっと失望の気持ちを禁じ得ないところであります。  この議論は、これからも議論の中で、いわゆる定率減税問題などに関連してまた議論になると思いますのでこの程度にしておきますが、実は、私たち民主党も六兆円減税の中で幾つかの制度減税をあわせて提案しております。また、今回十五カ月の予算概算要求ということになっておりますが、私たちも給付についても幾つかの提案をいたしております。  幾つか、せっかくの機会ですから民主党として考えていることを申し上げ、見解を聞かせていただきたいと思いますが、民主党は、基本的考え方といたしまして、自由であって安心できる社会を目指していこう、特に経済の分野においては規制緩和など自由な分野をもっと拡大していくべきだ、しかし、福祉の分野などでは安心できる福祉は確保しなければならない。自民党の場合は、経済の分野は、なるべく国のお金で公共事業をやったり規制緩和もまあまあにして、どちらかといえば政府依存の経済分野を残そうとされている。場合によったら、福祉の方はどうぞ自由に勝手に自分の負担でやってください。何か我が党とはクロスしているようにも受けとめられるわけであります。  そういう中で非常に難しい問題は、両方にまたがる問題として雇用の問題だと思っております。特に、今若い皆さんは、平均の四・三の失業率をさらに超えて、その倍近くは二十代の皆さんの失業率はあるのではないかと言われております。そういう意味で、私たちは、いろいろな財政支出を考えるときにも、新しい雇用をいかに創造していくのか、最近はエンプロイアビリティーというような言葉もあるようでありますけれども、そのことを考えて、例えば福祉の分野、例えば新しい事業がどんどん生まれていくような、そういう規制の緩和、そういったことで、今ある雇用を今のままで守るという、どちらかといえば生産性の低い雇用を国の補助金などで守るという考え方ではなくて、新しい雇用をつくることに対して支援をしていく、そしてそれを、移るところについても、いろいろな研修とかトレーニングというものについては、思い切って雇用保険の時間、長さを長引かせるとか、そういうことでやっていく。  しかし、今回の十五カ月予算と言われているものを見ますと、将来の雇用をふやそうとしているのか、それともそれには余り手をつけないで今のことだけを、まあ一年間はいろいろ公共事業をやっていればとりあえず仕事がありますからということで、相変わらずの手当てをやろうとしているのか、理念がはっきり見えてこない。私たちの考え方は今申し上げたようなところであります。  また、もう一つ、選挙のときに、育児休業、現在休業補償が雇用保険から所得の二五%出ておりますが、思い切ってこれを財政出動して六〇%にしたらどうか。あわせて介護の場合の休業も六〇%の給付を認めたらどうか。私どもの試算では二千三百億円毎年かかります。しかし、育児あるいは介護という不安な、子供を産んだときはどうなるんだ、自分の親が倒れたときどうするんだ、こういう不安を少しでも薄めていく、少なくしていく上では必要だと思います。特に、家庭と仕事の両立、女性が仕事につかれることが多くなった今日、家庭と仕事の両立を考えたときに、この育児、介護の休業の所得保障は、これはぜひ政府の方でもやっていただきたい。  また、同じ投資においても、例えば小中学生の教育のためのパソコンをもっと、一人一台ぐらい充実させてもそんな何兆円となるお金ではありません。あるいは将来のテレビのデジタル化の問題、あるいはデータベースなんかも、私もかつてさきがけの政調会長時代に、いろいろなものを考えたときに、補正予算というのはどうしても単年度で使ってしまわなきゃいけませんから、建物とかなんとかには使えるのですが、何年も人手とお金をかけてつくり上げなければいけないデータベースの構築にはなかなか補正予算は使えないのですね。しかし、今、日本が一番おくれているのは、場合によってはそういうソフトの分野、もちろんハードでスーパーハイウエーも必要ですが、データベースなどが大変不十分だと思います。  さらには、同じ公共事業でも環境再生型の事業、三面張りの川を人間が川のそばまで行けるように、あるいはテトラポッドしかない海辺を砂浜へもう一度戻す、そういった新しい事業、こういったことを考えているわけであります。  さらに減税について、私どもは、住宅を取得したときに法人の場合はいわば償却という概念がありますが、個人はありません。そこで、例えば三千万円のマンションを買ったら、一・五%ずつ六年間、合わせて九%ですから二百七十万円が税額で控除されてくる、この程度のことはやっていいんじゃないか。今非常に住宅の建設コストが下がっております。私は、この程度の減税は、特に住宅に注目した減税を行うことは、それを取得する人にプラスになるだけではなく、景気浮揚の一つの要素になってくる、このように考えております。  いろいろなことを申し上げましたが、こうした民主党の提案、政府が予算案をつくる中に取り込まれることがあれば私たちとしてはありがたいと思っておりますが、総理、いかがでしょうか。
  133. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 種々の具体的な御提案をちょうだいをいたしました。  一つの見識かと存じますので、今後、そうしたお考えにつきましても検討してまいりたい。そして、具体的な御提案の中で受け入れるものがあれば受け入れてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、一つの考えとして受けとめさせていただきました。
  134. 菅直人

    ○菅(直)委員 私の時間ももう少しになりましたので、最後に、小渕総理にとってはある意味では得意とも言えます外交問題について幾つかお尋ねをしてみたいと思います。  インド、パキスタンの核実験というものは、これまでの幾つかの核保有国が核実験をしたもの等の中で、ある意味では、新たな核保有国を生み出すあるいは生み出しかねないという意味で、より大きな衝撃を私たちに与えたわけであります。  そういう中で、もちろん、いち早くこれらの国に対していろいろな制裁措置を含む我が国の厳しい態度を表明してきたことは私どもも賛成であります。  ただ、そういった中で、現在の核保有国の核について、それはそのまま認めるから新たな国の核保有は認めないんだ、これはやはり論理的には非常に矛盾があるわけであります。そういう中で、被爆国でもあります我が国が、現在の核保有国を含めていかにして核を将来の廃絶に向かったプロセスに乗せていくことができるか、このことが重要だと思います。  ブレア政権は、いち早く自分たちの国が所有する核の上限を切り下げるという形で、非核保有国の我が国からすればまだ不十分とは言えますが、少なくとも一つの道筋を示しているわけであります。この点について、我が国がもっと積極的な対応をすべきではないかと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
  135. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 核不拡散そして核実験停止、この大きな国際的な流れの中でインド、パキスタンがこのような核実験を強行したことにつきましては、改めて強い非難をせざるを得ないと思っております。  国際政治の厳しい現状の中で、それぞれの国々が自国の安全保障につきましてこのことを実行したという考え方を両国いたしておりますけれども、申し上げたように大きな流れの中、すなわち核保有国、五つの国の中でも特に米ロが最大の核軍縮を始めておるわけでございまして、両国ともSTARTⅡが、まだ完全にロシア側の批准は得ておりませんけれどもⅢになり、かつⅣに進もうという段階でございますので、ぜひ五つの核保有国についても、いかなる手法をもってそうした考え方我が国としては強く訴えることができるかということについて苦慮しておるところでございます。  ただ、G8に参りました折、これは今御指摘のイギリスにおける会議でございましたが、そのときに、今までのG8に加えまして、核保有をその計画段階で中止した国あるいは核を持とうとすればできる力を持ちながらこのことを放棄しておる国、そうした国々と十分協力し合って国際世論を喚起し、そして保有国に対するプレッシャーというものをかけていくべきだ、こういうことでございまして、この作業につきましても外務大臣時代から継続をいたしておりますので、ぜひこのことを続けてまいりたいと思っております。
  136. 菅直人

    ○菅(直)委員 もう二点、あわせてお尋ねしますが、一つは、総理が大変熱心に取り組まれた対人地雷禁止条約、これの早期批准についてのお考え。  もう一つは、今日本は大変経済的に厳しい中にはありますけれども、しかし、アジアに占める我が国経済規模というのは大変大きなものがあります。そういう中で、アジア全体の現在の経済危機に対して、ただ我が国が金融が厳しいから、いわば債権の取り立てのような発想だけで物を見るというのではなくて、かつてのマーシャル・プランのように、我が国の外貨保有のうちのある割合をアジア経済安定の基金に振り向けていく、こういう考え方もあろうかと思いますが、その点についての見解を伺いたいと思います。
  137. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず、対人地雷に対しての国内法の整備でございますが、政府といたしましては、一日も早くこれを国会に提出をいたしまして、御賛同を得るべく最後の努力をいたしております。カナダにおきまして日本は署名をいたしましたけれども、その発効のためには四十カ国が批准をいたしますと直ちに発効になりますが、既にかなりの国々において批准をいたしております。我が国の立場といたしましても、ぜひこれが発効以前に国会において批准をいただきますように最後の努力をいたしてまいりたいと思っております。  第二の、アジア経済につきましてでございますけれども、これは我が国といたしましても、バンコクで始まった金融不安に対しましては、御案内のとおり、日本の厳しい財政状況、金融状況の中でありましたけれども、四百二十億ドルをそれぞれの国に提出をいたしまして、そしてこの危機を乗り越える努力を願っておるわけでございまして、国々それぞれの事情は相異なりますけれども、全体としてこうした国々が、再びアジアの活性した経済が発展できるように日本としては最大の努力をいたしていかねばならぬ、このように考えております。
  138. 菅直人

    ○菅(直)委員 私の質問はこれで終わりにしますが、冒頭申し上げましたように、私たちは、今の小渕内閣国民の審判を受けていないという意味では早期の解散・総選挙を要求しておりますが、しかし同時に、国会に出されてくるいろいろな政策課題については、私たちもきちんと、賛成できないものについては対案を出して、きょうの議論のように論議を深めていきたい、そう考えております。  そして、その中から本当に必要とされるものがあれば、これは皆さん方の方も、きょうのブリッジバンクの問題を含めて、我が党の法案はまだ提出はしておりませんが、三党で何とかまとめようとしておりますけれども、そういう中に皆さん方の法案の中ではできない問題が幾つか入っていることも、きょうの議論で御理解をいただけたと思います。そういう点で、その点についてもまさに皆さんの方も真摯に検討をしていただきたい、このことを申し上げて、あとは同僚議員に譲りたいと思います。
  139. 中山正暉

    中山委員長 この際、横路孝弘君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。横路孝弘君。
  140. 横路孝弘

    横路委員 私は、主として金融問題についてお尋ねをいたしたいというように思います。  金融システムを再構築するためには、まず不良債権問題を早く解決して、金融システム全体への信頼を取り戻すということが何より大事かと思います。経済にとって心臓でもあり、また血液でもある金融のその機能をしっかりと発揮しなければならない大変大事なときだと思っています。  政府は、金融機関の姿というものを公表することで、今まで国民の前に明らかにされていない、いわばその実態のすごさというものが白日のもとに明らかになって、そのことで信用不安が起きることを皆さん方、心配されていると思うのです。しかし、かえって実態が見えないということが、思惑や疑心暗鬼が先行して混乱に拍車をかけている、現在はそういう状況ではないかと思っております。  グリーンスパン・アメリカ連邦準備理事会議長が七月二十一日、アメリカの上院の証言で、日本は金融問題への対処で従来の文化や慣行にとらわれない劇的な措置が必要だということを述べられています。その意味するところは、問題を隠して先送りをするということではなくて、徹底した情報公開をした上で迅速に処理をしなさいということだろうと思うのですね。この問題は、徹底した情報開示がない限り不良債権問題の抜本的な解決は不可能であるということを、まあアメリカは十年早く経験されておりますので、経験に基づいて発言をされたことだ、このように受けとめております。  銀行の不良債権問題が残る限り、常に二つの問題が生ずるわけであります。一つは、やはり主要銀行の、あるいは大手銀行の破綻ということの可能性から、金融システムがいつまでも動揺しているということが一つ。もう一つは、自己資本が毀損している銀行は、銀行の信用を極力縮小したり融資の選別を行うということで、これはまあ信用収縮が進んでいくということになるわけですね。  何としても不良債権問題を、先送りではなくて、早く、速やかに処理をするということが大変大事であります。そして、やはり今、何より、信頼、信認の危機と言われるように、信頼がないわけですね。迅速に処理をすることで信頼を回復するということが大変大事だと思います。そのために、私ども民主党が主張しておりますように、まず情報開示をする、問題を先送りしないで処理をする、これがこの問題の基本的な視点であろうか、基本的な態度であろうかというように思いますが、総理の御見解をお伺いをいたしたいと思います。
  141. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一般的に、お説のとおり、この不良債権問題をきちんと処理をする、そのためには、情報開示もあるいは責任の追及も徹底的にいたしていかなきゃならぬというのは基本姿勢でございます。
  142. 横路孝弘

    横路委員 しっかり情報開示をやっていただきたい。これからの質問の中でそのことを明らかにしてまいりたいと思います。  そこで、まず今日の金融機関、この金融機関の現状についてどういう認識をされているのかということをお尋ねをいたしたいと思います。  銀行の方はどういうことを言っておられるかといいますと、例えば全銀協の会長発言などを聞きましても、九八年三月の決算を終えて、第二分類などは問題がない、自己査定に基づいて不良債権の処理というのは大体終了したんだ、今期は大幅な利益が回復するだろうというようなことを言っておられます。そして、政府の方は、大手銀行の財務内容は心配はない、そして三月には債務超過でないという判断をされて、この大手銀行に国民の金一兆八千億を投入したわけですね。  しかし、市場や国民の中には、また私どももそうですけれども、膨大な潜在不良債権が未処理であって、中にはやはり債務超過になっている銀行が幾つかあるのじゃないのだろうかという疑いを持っているのであります。  これは、何といっても事実を公表しないからそういう疑問が出てくるわけでございまして、一体この十九行の金融機関の現状というものはどういう状況なのか、国民に率直にこの場をかりて総理から御説明をいただきたい、このように思います。これは総理ですよ。
  143. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融監督庁が現在検査に入っておりますので、金融監督庁として今お話しのできる範囲のことをお話しいただけるものと思っております。
  144. 横路孝弘

    横路委員 それは、今検査に入っているのはわかっていますよ。しかし、検査だって、今まで何回もやってきているわけですから。  しかも、九八年三月に公的資金を入れたわけでしょう。国民の税金を投入したわけですよ。いわば国民は株主になったようなものですよ。ですから、我々は知る権利がある。  ですから、今、検査の結果じゃなくて、今日の状況がどういうことになっているんだというのを、厳しいのか、心配がないのか、御説明をいただきたい。
  145. 中山正暉

    中山委員長 横路委員にお伝え申しますが、金融監督庁から日野長官が来ておりますので。
  146. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融監督庁長官から御答弁をさせます。
  147. 日野正晴

    ○日野政府委員 御答弁申し上げます。  金融機関から金融監督庁が受けた報告によりますと、平成十年三月末の主要十九行の自己査定によるいわゆる第二分類と呼ばれる債権額は、四十五兆四千百八十億円ございます。  また、金融機関の引き当てにつきましては、公認会計士協会のいわゆる実務指針と呼ばれるガイドラインによりまして行うこととされておりまして、この要注意債権につきましては、貸し倒れ実績率に基づいて引き当てるものとされております。  そこで、現在私どもはこの大手十九行、一部は日銀の考査にお願いしておりますが、この第二分類債権の実態把握に特に力を注いでいるところでございます。
  148. 横路孝弘

    横路委員 問題は、第二分類債権なんですよ。それについてはまた後ほど詳しく議論をいたしたいというように思っていますが、今状況は心配ないよ、国民が信認、信頼して何の心配もないですよというのか、いや、問題のあるところはあって、それはちゃんとこういうぐあいに対応するんだというような説明が総理大臣の口から何もないというのは、これはますます疑心暗鬼にみんながなってしまうのじゃないのですか。  総理、これは非常に今一番大事なところですよ、大事なところ。ですから、そこはちゃんとやはり、御自身でも把握されていると思うのですけれども、説明できるところは説明して、理解、協力しなければ、いつまでも何か、国民はいつも連帯保証人で、何でも政府がやればその保証人としての機能を果たすんだというようなことではこれは困ります。  総理、どうですか。総理
  149. 日野正晴

    ○日野政府委員 いわゆる第二分類と呼ばれる債権につきましては、いろいろ御議論があるところでございまして、大変御心配なところがあろうかと思いますので、本来であれば、第二分類とされているのが実は第三分類ではないか、あるいは第四分類ではないかというような恐らく御疑念があるのではないかと思われますので、私どもといたしましては、その辺につきまして、特にこの実態把握を行うことによって、各金融機関が行っている自己査定の正確性について、より一層その中身を把握していきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  150. 横路孝弘

    横路委員 ソフトランディングかハードランディングかということが言われておりますが、問題は、無事に着地できるかどうかということが問題なわけです。事実を隠して、先送りして処理を延ばしていると、着地の前に燃料切れで墜落してしまう。ですから、今の政府案でいきますとこれはネバーランディングだと言う人もいるわけであります。  そして、もちろんのこと、二〇〇一年にはペイオフが始まるわけです。そこから国民の預金は、今は二〇〇一年までは全額保護されるわけでございますけれども、そこから先は保護されなくなるわけですね。  そうすると、二〇〇一年三月の少なくとも一年前ぐらいまでには、日本の金融機関は体質改善を終えて、まあどういう形になりますか、いずれにしても金融システムとして国民の信頼を取り戻しておかなければ、これはそのときになったら国民は選択を始めますよ、この銀行どうなのかと。騒ぎになりますよ、これは間違いなく。  一年前、二〇〇〇年三月ということになりますと、もう二年切っているんですね。一年半です。ですから、本当に時間がないわけですよ。まさかペイオフを延ばしてまた先送りなんということはないでしょうね。念を押しておきます。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますように、監督庁による検査が行われ、またそれが仮にそのまま公表されませんでも、市場ではやはりそれを評価する。それは、株価であるとか財務諸表であるとか、あるいは顧客が評価いたします。つまり、いい金融商品を出せる銀行、そうでない銀行、そういう形でもう明らかに優劣が出てくる。これは本当に護送船団でない、初めてのいいことと私は思います。したがって、銀行間の競争、優劣、それからまたその間のいろいろ、合従連衡等々があるかもしれません。それは大変いいことでございます。  二〇〇一年の期限を延長するか、延長する気持ちはありません。
  152. 横路孝弘

    横路委員 二〇〇一年三月目指して問題を解決するということで私ども努力をしていかなければいけない、このように思っております。  そこで、委員長、ちょっと資料を配付したいのですが、よろしゅうございますか。
  153. 中山正暉

    中山委員長 はい、どうぞ。
  154. 横路孝弘

    横路委員 一つお尋ねしたいと思いますのは、やはりその事実を隠して先送りしてきたということを少し指摘をしたいと思うのでありますが、今回も五月の二十六日に岸会長が記者会見で、まあ大体不良債権のめどは立ったという発言をされました。  これずっと過去、例えば一九九五年の八月には兵庫銀行の破綻について大蔵大臣が、一つの山を越えたという記者会見をされています。それから九六年の三月の決算の後にも、金融機関は山を越えたと言われました。九七年の十一月には橋本総理が、拓銀のあの破綻のときに、これで不安要因の一つがなくなったというお話をされた。いつも山を越えた、山を越えたと言いながら、結局、越えたらまた山があったということなんですね。  それで、私がこれからちょっと御質問したいと思うのは、拓銀が倒産をいたしまして北海道経済は大変な状況にございます。この拓銀を含めまして、政府は従来どういう発言をしてきたかといいますと、大手二十行というのはつぶさないんだということを言ってきた。今金融機関は、拓銀も含めてですけれども、最後は政府が何とかするだろうという甘い気持ちが、やはり指導者から一般の銀行員に至るまであるんですね、そこが。しかし、ともかく政府はそういう発言をしてきた。  それから同時に、大蔵検査、これは、ことしの予算委員会に出された資料を見ますと、九四年の八月の拓銀に対する大蔵検査査定額というのは、二分類が一兆四千二十五億、三分類が四千七百二十四億、四分類が千七百五十億の合計二兆四百九十九億なんですね、合計二兆四百九十九億。このときはもう、前の検査に比べて七倍以上に問題債権がふえた。九四年には、もう既に大蔵は拓銀の実態を掌握しておったわけです。  そして、何をやったか。しっかりした業務改善命令を出してやりましたですか、いろいろな改革を。ほとんどやらないで、やったのは、合併の話を勧めただけですね。その結果、これが壊れてつぶれてしまった。  今私が心配しているのは、この拓銀で繰り返したこと、あるいはみどり銀行も同じではございますけれども、そういう失敗をまたやるんじゃないか。これは九四年にほとんど知っておったわけでしょう、拓銀の経営実態というのは。三年間時間があったわけですよ。これはどうですか。
  155. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいま資料を拝見させていただいているところでございますが、金融検査、これは金融検査一般でございますが、業務、財産の状況について的確な実態把握に努めるということは、旧大蔵省銀行局あるいは大蔵大臣官房の金融検査部においても、また私ども金融監督庁においても同じではないかというふうに思っておりまして、私どもは、そういった意味では旧大蔵省の検査を引き継いだということになっておりますが、私どもが引き継いでいるところでは、北海道拓殖銀行の財務内容等については厳正な実態把握を行ったというふうに承知しているところでございます。
  156. 横路孝弘

    横路委員 問題は、その一九九四年の八月の段階でしっかり掌握されていた、しかし、それは事実は公表されなかったわけですね。業務改善命令みたいなものをばしっと出してやったわけでもない。結局、合併を勧めたんだと思うのですよ。北海道銀行との合併がだめになってつぶれてしまったということですね。つまり、事実を公表しないで、隠して、そして問題を先送りしていって、結局つぶれてしまった、つぶされてしまった。私は、これをまた繰り返すんじゃないかという心配がありますので。  今お手元にお渡しした資料は、これは幾つも前提がついております。そこを間違わないでいただきたいと思うのですけれども、その資料の中に日債銀の資料をちょっと入れてございますが、これは公表不良債権、これの都長信銀の合計と日債銀の数字が出ていますから、その構成比を出しまして、二分類、三分類、公表されています。これは自己査定、四十五兆四千百八十億、これに七・九%の割合を掛けて、そして二分類の金額を推定をしたものであります。それに、引当金を二〇、三〇、四〇と考えた場合にどうなるのかということを計算したものです。  なお、有価証券の含み益を入れてございます。これは、やはり実態を把握するには時価でちゃんと計算した方がいいだろうということで、入れて計算をしております。ただ、そういう前提を置いてやったものでありますから、そこは間違わないようにしていただきたいというように思うのです。  例えば、この日債銀のケースでいいますと、二〇%ということでこのようにもう既に自己資本が足りなくなるという結果を示しているものでございまして、この計算でいきますと、二〇%で三行、三〇%になりますと八行、四〇%になりますと九行が経営に非常に問題があるのではないかということは、そう言い切っていいかどうかは、まあいろいろな要素がありますから、これを前提として考えた場合には、やはり今日の日本の金融機関の状況というのは大変厳しいものであるということを示しているわけでございますけれども、これをごらんになっていかがでしょうか、総理大臣。あるいは大蔵大臣、いかがですか。
  157. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。(発言する者あり)  現在、日債銀につきましては、当庁において検査をやっている最中でございまして、個々の資産の内容について、これで今申し上げるということは適当でないと思いますので、差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、それぞれの資産の内容につきましては、それぞれの金融機関が自己査定をした後、公認会計士、監査法人の監査を経て、適切な償却、引き当てがなされているものというふうに承知しておりますが、これを私どもは検査でチェックしたいと思っております。
  158. 横路孝弘

    横路委員 監査法人といっても、今まで倒産した企業は、みんなちゃんと公認会計士のそれぞれの日本で有数なところが入りまして、その結果問題がないという監査報告を出しておって、そしてみんな倒産しているんですよね。それに対する信頼というのは今はもう失われています。これは大蔵大臣、いかがですか。
  159. 中山正暉

    中山委員長 私から申し上げますが、大蔵省から権限が全部金融監督庁に移行をしておりますので、私が先ほどから日野長官を指名しておりますのは、実態を把握しているということで日野長官を指名いたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  160. 横路孝弘

    横路委員 この数字、トータルで見ましても、大手銀行全体で見ますと第二分類四十五兆円ですね。例えば二〇%引き当てするとすると、九兆円になります。しかし、この三月期の業務利益というのは全体で三兆円ですから、それだけでも三年分かかるということになるわけですね。さらに、不良債権処理の原資であります含み益がもう枯渇してしまっています。きょう、もう一万五千円切りましたですね、日経平均株価。そうしますと、大体含み損が二兆円ぐらいになるだろう、含み益ではなくて、含み損がもう二兆円ぐらいになるだろうと言われております。  いずれにしても、この不況で不良債権がさらに増加していますし、担保価値が下がっていますから、第二分類中の要処理となる債権も増加しているのは間違いないわけで、これは三月決算の後でもう問題はなくなったという発言がありましたが、しかし、九月決算で相当これは引き当てなどを積み増ししなければいけないことになるのじゃないでしょうか。これは日銀総裁、いかがですか。
  161. 速水優

    速水参考人 第二分類につきましては、やはり私自身も、かなりいいものと悪いものとが一緒に入っていることは確かでございます。そういう意味で、第二分類資産につきましては、これは回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産というふうに規定されておりまして、赤字先や金利減免先といった幅広い債務者を含む要注意先への与信が中心になっておるわけでございます。各金融機関では、要注意先向けの債権に対して、過去の貸し倒れ実績率に基づく等の方法で引き当てを行った上で、その適切性について外部監査人による監査を受けているものと理解いたしております。  私自身も、これは自己査定という意味、言葉の本当の意味を実現するのであれば、自分たちが本当に判断して、これは必ず返ってくるあるいは返ってこないというもので第一分類に入れるか第三分類に落とすかといったようなことを自分たちの考え方で分類をした上で、それを公表すると同時に、セルフディスクローズと言っておりますが、公表することが一つの選択肢ではないか、それに対してそれぞれの引き当てをこれだけ積んでいるんだということを外部に対して、預金者はもとよりのこと、内外の取引先あるいは市場に対してはっきり言うことが望ましいのではないかということを申した次第でございます。  それで、三月期決算から一歩前進いたしましたのは、日本の銀行がアメリカのSEC方式によりまして、リスク管理債権と呼んでおりますが、これの開示を始めたわけでございます。これによりまして、それまでに比べれば情報開示が一歩進んだということは事実でございます。しかし、残念ながら、内外の市場では、開示対象となっていないものの中にも不良資産があるんじゃないかというふうに不信感が根強いことが実情でございます。  リスク管理債権というのは必ず開示しなくてはならないいわば最低基準でありまして、市場における不信感を払拭するためには、個々の金融機関が自主的判断に基づいて、創意や工夫を凝らしながら情報開示を一層充実していくことが有用であろうという考えを私は持っておりまして、そういうことを六月の記者会見のときに申した次第でございます。
  162. 横路孝弘

    横路委員 全銀協の会長がもう大体めどが立ったという発言をされていますが、そうすると、日銀総裁としては、やはりまだまだ問題がある、その問題をできるだけはっきりさせて、できれば外に対して公表してほしい、こういう今のお答えのように承りましたが、それでよろしゅうございますね。
  163. 速水優

    速水参考人 銀行によっていいところと悪いところがあることは確かだと思います。先ほどのSEC方式は各行が三月末、期末の数字を自己ディスクローズしたわけでございますけれども、その他の自己査定の数字につきましては、総額については発表されておりますけれども、おのおのの銀行のみずからの自己査定の結果というのは発表されておりません。  この辺については、やはりなるたけ自己査定を開示して、それによって自分たちの、量だけでなくて質の方までもはっきりさせた上で預金者や取引先の信頼をかち得ていく、あるいは足りないものについては、それに対して我々はこういう考えで今後引き当てを充実していく、あるいは償却をしていくんだということを示していくことが信頼をつないでいく道ではないかというふうに考えております。
  164. 横路孝弘

    横路委員 それで総理大臣、今、日銀総裁が、自己査定の個別銀行のものをみずから発表してもらいたいという話がありました。その資料は実は金融監督庁が持っているわけですね、自己査定の。ことしの例えば三月決算、四十五兆と発表しているわけですから、その中身は知っているわけですよ。ですから、金融機関に公表しろという要求ももちろん正しい要望だと思いますが、同時に、持っているものを発表するということでこれはすぐ解決するのですよ。金融監督庁、だから、それを公表してください。
  165. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  先ほど日銀総裁からもお話がありましたが、ことしの三月期からいわゆるSEC基準に基づいた不良債権額の開示がなされておりまして、また来年の三月期からは、懲役一年以下という、罰金ももちろん選択刑としてありますけれども、これを単体だけでなしに連結ベースで開示するということが、これは最低限とは言われますが、要するに大変厳しい開示が求められるわけでございます。  横路委員お話しになりますように、確かに、我が国の金融システムの信認を回復していくためには不良債権の開示というのは大変大事なことだということは、この新しい金融システム改革法によって盛られた罰則つきの開示規定によっても明らかだというふうに思います。  私どもは、確かにこの不良債権の総体について発表いたしまして、それぞれの単体の分についてはもちろん公表しておりません。ただ、これは問題点としてお考えいただきたいことは、これは各行がまず第一にそれぞれ査定の物差しが違うということでございます。それからもう一つは、仮に第二分類のようなものに属する債権を公表いたしますと、債務者が、善意で健全な債務者でありながら今大変厳しい経営状況に置かれているということですが、もしこれが公表されますとほかの銀行からも債権の回収が行われるし、それからさらに貸し渋りが増長するのではないだろうかということで、当局から、私どもの方からこれをやりなさいということはちょっと申し上げられないというところでございます。
  166. 横路孝弘

    横路委員 問題は、個別の、個々の債権債務関係を明らかにしろと言っているわけじゃなくて、報告しているわけです、各行の。金融監督庁はそれをまとめて報告したわけですね。これは公表しています。ところが、個別のやつがわかりませんから、先ほど私は推定した数字で計算したものを出したわけなんですけれども、それを持っていて、数字そのものというのはそんなに、それ自身で何か個別の企業に影響を与えるというものではありませんので、委員長、これは資料を委員会にぜひ提出するようにしていただきたいと思いますが。
  167. 中山正暉

    中山委員長 後刻、理事会にかけまして協議したいと思います。
  168. 横路孝弘

    横路委員 その二分類のところなんですが、確かに各金融機関に求めて出されているものでありますから、ばらばらになっている。これは何か統一していこうというような御努力をされておられるのですか。
  169. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいま十九行に対して検査を行っております中で、金融監督庁は一つの物差しで十九行を推しはかるわけでございますので、この一つの物差しによって将来は自己査定の内容をチェックしていくことになろうかと思いますが、さらにそれにつけ加えまして、現在、当庁、金融監督庁におきましては、内部に若い学者あるいは実務家などの方々に集まっていただきまして、この物差しをよりすぐれたものにしていくこととしております。
  170. 横路孝弘

    横路委員 不良債権問題の核心はその第二分類のところにあるわけで、そこで少し御質問をいたしたいと思うのですけれども、銀行が破綻した後に不良債権額というのは一気に増大しますね、それまで発表していた額に比べますと。倍になったり三倍になったりするわけです。それは、今まで不良債権にカウントしていなかった、特に系列会社に対する貸出金というのが、本体が破綻すると同時に表に出てくるからなんですね。  そこで、その二分類の中に一体系列会社を入れているのか入れていないのかという問題があるわけです。これは、私ども聞いているところでは、ほとんどは入れていない。入れているところもあるようでございますが、ほとんどは入れていないというように聞いております。  そこで、例えば長銀について、お手元に配った資料の中に若干の系列会社の数字が入っています。これは私ども、五十数社あるわけでございますけれども、その中で決算書の入った十四社について調べたものでございますが、五十数社のうちのわずか十四社でこのように、これらの企業というのはかなりの企業が債務超過になっています。そして、長銀からの借り入れが一兆一千億を超えているという数字になっているんですね。  これは、銀行の方も、いろいろ貸し出しするに当たりまして、金融機関相互間とかそのまた子会社とか系列会社とかその先とか、いわば債権債務関係を網の目のようにつくり上げてしまってきているわけですね。したがって、検査に当たっては、そこをしっかり把握するということがなければ、実態、本当の姿というものは出てこないというように思っております。  特に、例えば長銀でいいますと、長銀系ノンバンク、例えば五社、日本リース、エヌイーディー、日本ランディック、ファーストクレジット、日本リースオート、これ合わせて、長銀だけで大体六千百九十五億あります。  それから、日本リースへの貸し出しということになりますと、長銀そのものは二千五百五十七億ですが、日本リース向け債権というのは全部で一兆八千八百八十九億ありまして、農林中金含めて農業系の金融機関なども入っていますが、もしこれが例えば五〇%ロスで母体行責任でやるということになりますと、それだけで九千億を超えるような数字になるわけですね。そういう問題をたくさん含んでおります。  したがって、今検査されているということでございますので、検査に当たって、こういう系列会社、それから系列会社を軸にしながら網の目のようにつくり上げてきた姿というものをやはりはっきり調べて明らかにしていただくということがなければ、なかなか実態がわからない。この辺のところは金融監督庁の方で検査に当たって入れているのか入れていないのか。  それから、これは非分類ではなくて二分類に計上すべきだと思いますけれども、その辺のところについてはどのようにお考えですか。
  171. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  一般的に、銀行法あるいは長期信用銀行法によりますと、私どもの検査権限は当該の金融機関に対する検査ということになっておりまして、その金融機関の子会社は格別ですが、金融機関のいわゆる関連会社に対する直接の検査権限はございません。  そこで、私どもといたしましては、当該金融機関を通じて、その関連会社の財務内容をチェックしていきたいというふうに思っております。  もっとも、その関連会社が有価証券報告書等によってディスクローズされている場合には、先ほど委員からお話がありましたような日本リースの債権債務内容については、その有価証券報告書を通じて把握していきたいというふうに考えております。
  172. 横路孝弘

    横路委員 それは、把握する努力を今回は十九行全部についてされているわけですね。
  173. 日野正晴

    ○日野政府委員 第二分類につきましては、鋭意その資産の内容の自己査定の正確性についてチェックしていきたいと思っております。
  174. 横路孝弘

    横路委員 いや、もう一つは、第二分類に計上していない、分類されていないところをちゃんと調べていただかなければ明らかになりませんよということを申し上げているわけです。
  175. 日野正晴

    ○日野政府委員 私どもの現在の検査の重点は、それぞれの金融機関の資産の内容の正確性といいますか、それについて今検査をしておりますので、第二分類に属するか、あるいは三分類か四分類か、あるいは非分類かを問わず、その資産の内容について検査をしているということでございます。
  176. 横路孝弘

    横路委員 二分類について、例えばアジア向け融資も今の時点での引き当てというのは低いわけで、これもかなりこれから必要になってくるのではないかということが言われております。  また、不完全な担保や保証、いわば指導念書などで保証にかえているというような問題など、調べますと、やはり第二分類をめぐる問題、非分類と二分類との区別、それから二分類の内容といったような点についてしっかりやっていただきたい。  その上で、引き当て率をどのぐらいにしてやるのか、引き当てをどうしていくのかという問題が次の問題として出てくるわけで、これも大手の銀行はほとんどゼロ%から五%ぐらい、ほとんど一%前後ぐらいの引き当てしかしていないのではないでしょうか。これはいかがですか。
  177. 日野正晴

    ○日野政府委員 御指摘のありましたアジア向け債権については、私どもの現在の検査では重点事項の一つとしております。  また、それぞれの引き当て率がいかほどかにつきましては、公認会計士とそれぞれの当該金融機関との間で決められておりますことでございますので、一概には申し上げられません。いろいろございます。区々でございます。
  178. 横路孝弘

    横路委員 私は、先ほど日銀の総裁が二分類について発言をされたということは大変大事なことだと思っております。外国からも、もう七年もたっているのにまだわからないのか、何をやっているんだということを言われているわけでありますし、ここの処理が、いわば金融システムをしっかりと再構築して信頼を取り戻す上で大変大事な点だと思います。  そこで、日銀総裁にお尋ねいたしますけれども、八月十三日の記者会見で、大手銀行が突然破綻するというたぐいの破綻の仕方は回避すべきであるということをお話しされまして、大手銀行の破綻という問題を発言をされたわけですが、これは、今日の金融機関の現状についてのいわば日銀総裁としての危機感のあらわれであるというように受けとめてよろしゅうございましょうか。
  179. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  先ほど御質問ございましたように、第二分類の中にやはりかなり第三分類に近いものがある、あるいは先ほどおっしゃったように、関係会社についてもそれに含まれていない、あるいはアジアへの貸し出し等についても最近の動きをよく把握していない、知られていないといったようなことを御指摘でございまして、全く私も同感でございます。  日本銀行の考査では、一応、関連会社の貸し出し、それからアジア向けの貸し出しその他、これは契約に基づいて取引関係で考査いたしておりますので、与信内容等、詳細な説明を受けた上で査定を行っております。そういう意味では、資産内容の実態把握には努めているつもりでございます。  ただ、個別の考査の結果につきましては、日本銀行としては日本銀行法及び考査に関する契約において秘密保持義務を負っておりますので、私どもの方からこれを明らかにすることはできません。これはやはり、各行が自主的に自己査定、自己開示していくべきものではないか。確かに、基準をどこに置くかということについてはもう少し私どもも検討をしていく必要があろうかというふうに思っております。
  180. 横路孝弘

    横路委員 ただ、この発言は、もし検査の結果、債務超過の銀行があったとしても、検査結果を公表しないままに合併であるとか営業譲渡などで処理するというような意味にもちょっととれるのですが、それはそんなことはないんでしょうね。
  181. 速水優

    速水参考人 大手銀行の合併の問題は、やはり民間同士の話し合いで行われていくことが最も望ましい方法ではないかと私は思っております。そういう意味で私ども、はたからいろいろ相談に応じたり、あるいはできるだけの支援をするといったようなことはできるかと思いますけれども、現状においては、こうしなさいといったようなことは私どもとしては言う立場にはございません。
  182. 横路孝弘

    横路委員 これは総理にお伺いしますけれども、検査の結果、これは検査の結果というのは厳格にしっかりやらなければいけないわけですが、検査の結果、債務超過の銀行があったという場合に、しかし検査結果を公表しないままに合併や営業譲渡などで処理をするということになるのですか。いや、そうじゃなくて、今度の枠組み、仕組みの中でもって対応していくということになるんですか。
  183. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 個別金融機関の検査結果の公表につきましては、取引先等に不測の損害を与える等の問題があるほか、場合によって信用秩序維持に不測の影響を及ぼすおそれがありますので、公表することは適当でないと考えておりますが、なお、十九行全体の検査の集計結果を公表することにつきましては、これらの問題等に配慮しつつ、検討してまいりたいと思います。
  184. 横路孝弘

    横路委員 今言いましたのは、検査の結果、自己資本比率がどうなのかというのが出てきますよね。そうすると、一応早期是正措置ということで、検査をして明らかにして対応するという今までの仕組みがあるわけですよ。まずそれでやはりしっかりやらないといけないと思うのですね。違いますか。総理大臣、やはりこれはもう非常に大事なところで、技術的なところじゃありませんから、基本的に、そこをどうするかということは。
  185. 日野正晴

    ○日野政府委員 技術的なことでございますので、私からお答え申し上げたいと思います。  検査を通じて実態把握いたしました事項、問題点等につきましては、それを取りまとめた検査結果通知書の交付によって、当該の金融機関に交付いたします。  ただ、当該金融機関は、これは評価の問題でございますので、私どもが評価したその評価と、当該金融機関の公認会計士等監査法人との協議によってでき上がった自己査定とは必ずしも一致しませんし、あるいはまた金融監督庁のその検査結果に対しては、必ずしもそれを是としない可能性も十分にあるわけでございます。  したがいまして、通知書にいろいろな結果が出たからといって、それに基づいていきなり何か強権発動をするとかあるいは早期是正措置を発動するということにはならないかと思います。
  186. 横路孝弘

    横路委員 その検査の結果と言いますが、今だって必要ないろいろな業務改善措置というのはやればできるわけですよね、今の法律のもとで。例えば、日銀の総裁が、大手銀行、国際的なデリバティブ取引など内外の市場と深く結びついているのでこれはそう破綻させるわけにいかないというお話をされましたが、そういう危険性のあるのが今わかれば、今から、国際業務から撤退しなさいとか、経営陣を一新しなさいとか、そういう改善命令を出せるわけですよ。  ですから、私は、そんなにゆっくり結果を待ってやるという余裕はないんじゃないですかと言っているわけです。今わかるところはちゃんとわかるようにする。それから、まださらにこれから突き詰めてやらなければいけないのは、結果を待ってからでもいいでしょう。しかし、それは何も今監督庁の長官が言ったような手続、そうでなくたって今の段階で状況を見て判断して行動することはできるのです。処理できるところをできるだけ早く処理をしていくということを積み重ねることが信頼の回復だと思うのですよ。総理大臣、いかがですか。
  187. 日野正晴

    ○日野政府委員 また技術的な問題になりますので、お答えしたいと思います。(発言する者あり)
  188. 中山正暉

    中山委員長 静粛に願います。
  189. 日野正晴

    ○日野政府委員 改善状況を私どもとしてはフォローアップしたいと思いますので、場合によりましては銀行法の二十四条などに基づいて、私ども指摘した事項についての発生原因あるいは改善策等の報告を求めることになろうかと思います。その結果、金融機関がみずから既に行っている資産分類あるいは償却や引き当ての見直しを行うということもあろうかと思います。
  190. 横路孝弘

    横路委員 きょうの夕刊に、長銀と住友信託の合併に公的資金投入して政府は支援という記事が出ています。要するに問題は、国民の前に何も明らかにならないで、そして裏の方でもってごちょごちょやる。しかも、これは国民の税金、お金を使うわけですから、だから、一体どうなっているのか、こうなっているからこうですよという説明をする必要があるのじゃないですか。  ちょっと総理にお尋ねしますが、長銀の株がきょう三十九円から四十一円に戻しましたか、四十一円ですね。先日ムーディーズが投資不適格というようなことを格付しました。これはどんなぐあいに受けとめておられますか。
  191. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、私の承知をいたしておることは、報道のような事実はないと承知いたしております。  それから、いずれにいたしましても、住友信託と長銀の合併構想につきましては、現在両行において合併に向けた検討が鋭意進められておると承知をいたしております。  いずれにいたしましても、私の立場から申し上げれば、何といっても預金者保護をし、そして金融システムを安定させる、これに尽きることでございまして、その考え方に基づいて、決して我が国事態から世界に向けて恐慌を発するようなことのないように全力を挙げていくということだろうと思います。
  192. 横路孝弘

    横路委員 確かに、大手銀行が破綻したらどうなるかというと、それはいろいろな混乱が生ずるというのははっきりしているわけです。  しかし、今まで皆さん方はその事実というのを公表しないで、先ほどちょっと拓銀の例をお話ししましたが、検査で実態がわかっていながら、三年間放置をして、合併指導を行って、失敗をしてつぶれてしまったと。みどり銀行だってやはり大蔵の、政府の指導のもとにうまくいかなかったわけでしょう。今回のこの住友と長銀の話もいろいろとこうやって報道されているわけですね。  そこで、私ども何も個々の内容を明らかにすることだけを目的としているわけじゃないんですよ。そうじゃなくて、対応、対策が迅速になるように、例えば、今検査やった結果が出る、そしてこれはもう、すぐ処理をしなければいけないというのはすぐ処理をして、そしてそれが落ちついたところでこうでしたと公表すれば、それだっていいんですよ、一つの方法としては。ともかく、何にも公表しないで、そしてただ国民にお金出せでしょう。これで納得はだれもしませんよ。  ですから、小渕内閣の今一番大きな役割といいますか、果たさなければいけないのは、不良債権問題を処理して、金融機関をどうするのかですね。  私ども民主党としては、もう破綻しているのは破綻しているとして、そのかわり預金者の保護をしっかり行う、そして、借り手についても、保護すべき借り手についてはちゃんと保護するということを前提にしてやはり処理を進めていかないと、これは二〇〇一年三月、ペイオフ来ますよと言うと、もう混乱するのははっきりしているわけですね。  ですから問題は、先ほども言いましたが、ソフトランディングかハードランディングかじゃないんです。ランディングするかどうかが問題なんです。  今の政府・自民党の皆さんのお考えだと、どうもこれはランディングしないんじゃないかと。いきなりそこでもって何か大きな危機が訪れると。そのときに準備ありますか。だから、それよりはやはり、一つ、二つと処理を積み重ねていけば市場も国民も信頼するわけです。きょう申し上げたのはそのことなんですよ。  ところが、これについて総理から明確なお話がどうもない。今、総理の役割はそこじゃないですか、一番大事な仕事は。それから、大蔵大臣のお仕事もそこだと思いますよ。  これについて、総理大蔵大臣それぞれから御答弁いただきたい。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、先ほど委員長の御注意がございましたので、立ちませんでしたが、御指名でございますから申し上げます。  まず、今金融監督庁が調査をしていらっしゃる、また日銀の考査もございます。その結果を見なければ、横路委員はいろいろなことを想定で御質問でございますけれども、想定で我々は処理をいたすことができませんので、金融監督庁の調査が終わりまして、長官の言われるように、必要な部分には是正命令も出されるかもしれません。そういうことを踏まえましてでありませんと、ただいまのお尋ねは全部仮定の問題でございますから、総理大臣としての基本的なお立場は、さっきおっしゃいましたように、日本発の信用不信というものは自分は起こさない、これで私は十分だと思う。
  194. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現在金融監督庁で検査いたしておることでございますので、その報告なしに私が自由に発言する立場にはないと思っておりまして、重ねてでございますけれども日本発の金融恐慌というようなことは決して起こすことのないように、金融システムの安定化のために全力を挙げて努力をいたしてまいりたいと思っております。
  195. 横路孝弘

    横路委員 私のは想定しているところもありますが、想定じゃないんですよ。九八年の決算に基づいて議論しているんです、自己査定に基づいて。ですから、政府はみんな知っているんですよ。それは、今の状況がどうなのかというのは今検査しなければわからないでしょう。しかし、少なくとも九八年三月のときの数字は皆さん持っているじゃありませんか。それをやって公的資金を入れたわけでしょう。  大蔵だって検査をやっているし、日銀だって考査しているわけですよ。その数字を見たって問題がありますよ、その数字に基づいて今業務改善命令を出せるところもあるのじゃないですか、それをどうして延ばすのですかというのが私の質問なんです。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それならば申し上げますが、三月に資本導入いたしましたときに、危機管理委員会が全部チェックをいたしました。その結果、それらの銀行については債務超過はないということです。  それから、横路委員がその後いろいろ考課状をごらんになって、こうであろう、そうでなかろうとおっしゃいましても、監督庁長官が言われましたように、みんな一つの物差しで、一つのスタンダードでやっておりませんのですから、そもそもそういう想像が無理である。政府の知っていることは、あの段階でそういうことはなかったということです。
  197. 横路孝弘

    横路委員 きょう松田理事長来ておられますか。  公的資金を導入するに当たってどういう審議をしたのか。例えば大蔵の検査とか日銀の考査ということも十分参考にされてやられたのかどうか、そこをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  198. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  三月の資本注入のときは、三月末までに間に合わせなければいけないというややタイトな日程の中でございましたけれども、我々は我々なりに最善を尽くしたというふうに考えております。  特に、問題の、申請をしてきた各銀行の資産内容、今後の収益の状況等につきましては、重点的にそれを調べました。まず、事前に事務局からヒアリングを行いましたし、それから審査会の席上では、あらかじめ検査や考査の権限をお持ちの大蔵大臣及び日銀総裁から、各行別に、自己査定の結果どういう評価をされているかということをお聞きもいたしまして、その後、各頭取に直接ヒアリングも行いまして確かめた上で、いずれも、先ほど大蔵大臣が申されましたように、債務超過の銀行はないということで、審査基準をパスし、決定を見た、こういう段階にございます。
  199. 横路孝弘

    横路委員 ちょっともう一度確認しますが、大蔵の検査報告あるいは日銀の考査報告というのは、資料としてごらんになって調べられたのですか。
  200. 松田昇

    松田参考人 検査報告書の書類そのものは、審査会の席上持ち出してはおりません。それをごらんになって内容を確かめられた大蔵大臣と日銀総裁からの御意見を承ったということでございます。
  201. 横路孝弘

    横路委員 結局、今のお話ですと、一番実際の姿を掌握しているのは、やはり大蔵の検査並びに検査の報告書だと思うのですね。それは、大蔵大臣がメンバーですから、心配ないと言ったのだから、それを信用してやったという話でございまして、これはどうも極めて政治的に決められた。そこで国民の税金が一兆八千億も使われたということを本当に残念に思います。  きょうのこの短な議論でございましたけれども、問題はたくさんございます。  それは、その検査によって分類する、非分類と分類のところにまず問題があります。  それから、分類された、特に二分類について、その内容は確かに幅があるのですね。問題のない債権から、本来ならば三分類にしなければならないような債権もたくさんあります。つぶすわけにいかないから、三分類ですとまた金融支援ということができませんから、二分類にして金融支援をするとかいうような形をとっているようなものも含めて、たくさんあるわけですね。  私は、本当にこれは大変だと思いました。調べれば調べるほど、日本の金融の抱えている問題というのは本当に底が深い。私は、これは何も行政だけの責任じゃなくて、それぞれの金融機関、金融機関の指導者も含めて、本当に甘えがあるという気がいたします。何とか政府はしてくれるのじゃないか、こういう気がやはりそれぞれの銀行の中に大変色濃く存在をしている。  そんな意味では、金融監督庁の検査をできるだけ早く終えて、そして処理できるところから問題を処理する。もう一度、総理大臣、その決意をお伺いしたいと思います。
  202. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融監督庁としては真剣に検査に入っておることでありまして、与えられた人員をもって精力的に取り組んでおると思いますので、その結果を待ちたいと思っております。
  203. 横路孝弘

    横路委員 あと、同時にこの際、例えば早期是正措置なんかの場合にも、自己資本比率がゼロ%以下になっても何か救う措置が残っているとか、本当に、枠組みはつくられているのだけれども、あちこちに穴があって問題が処理される仕組みになってないですね。こういうところもこの際点検をされて、変えるべきだというように思いますが、金融監督庁の方でこれはお答えいただきたいと思います。
  204. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  先ほどの貸し渋りの問題とも関連いたしますが、自己資本比率につきましては、国内基準適用行につきましては一年間の猶予ということになっております。それから、いわゆる大手十九行につきましては、ことしの三月期の決算でございますが、これでは、一番低いもので八・二五%、高いものになりますと一三・五六%ということで、各行とも国際基準の八%を上回っているというところでございます。
  205. 横路孝弘

    横路委員 もう一つ、不動産関連の権利等調整委員会についてちょっとお尋ねをしたいというように思います。  これも大変大きな問題でございまして、本来、司法の体制で処理すべき、裁判所の体制を強化して解決すべき問題が、どうも金融機関と債務者などの関係者が合意すれば、金融機関が債権を放棄して、それが無税償却ができるということで、これもまたある意味でいうと国民の負担になるわけですね。  一体どんな業界を選定してやるのか。非常に不公平、しかも、よく言われるように、これは大企業保護、ゼネコン徳政令ではないかと言われております。このことについて、やはり形を変えた税金の投入だ、しかも内容が非常に不明確だという批判がございます。これについて、これは大蔵大臣でしょうか。
  206. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 今先生、先ほど来の御議論にありますように、現在、日本の最大の問題は不良債権の処理の問題。しかも、その処理は、今先生がいろいろ論じられたように、引当金というようないわば間接償却ではなくて、実際上その債権をその銀行、金融機関のバランスシートから消去してしまう、そういう意味の実質的処理というか直接償却というか、そういうことが強く望まれているわけでございます。  ところが、一方、こういう不良債権の実態を形づくっているものは、これまでのいきさつからいってほとんど不動産絡みのものが多いという現状でございまして、したがって、この不動産絡みの関連の権利というものを処理しなければいけない。この処理につきまして、今先生は司法的な手続で処理すべきであるというようなお話をなさったわけでありますけれども、この司法的処理ということになじむのは、いわゆる倒産の中でもいわば清算、解散、こういうところへ持っていってしまう処理であるならば、これは司法的処理に非常になじむわけでありますけれども、しかし、私ども、こういう債権の中には、債務者をむしろ再建に導いていく、そういう再建的な倒産処理ということが望まれるようなケースが多い、そういうものが少なからずある、こういうように考えているわけでございます。  その場合の処理として一体どういう手続が必要であるかということでございますが、これは、これまでむしろ私的再建という格好で、メーンバンクであるとか、あるいは地域の有力経済人であるとかという方が中に入って、そして調停をして、みんなが譲り合ってその処理をしていく、また再建を図っていく、こういうような手法が用いられてまいりました。  ところが、昨今の経済情勢から、その私的再建の手続というものが、リーダーシップをとってやれるような方がなかなか見つからない。こういうことの中で、それでは、それにかわって行政的にひとつこれを処理する手続を今回設けようではないか、こういうことで調停、仲裁の手続を設けたという次第でございます。  その効果として税法上の措置が伴っているわけでありますが、この税法上の措置も、別段創設的に、新たにそういうものに恩典を与えようということではなくて、経済的に合理的な調停に基づく損失の発生については税法上も損金処理をするということは、もう既定の定めなのでございます。それを確認的に明らかにしようというのが今回の法律でございまして、ぜひともその間の事情については正確な御理解を賜りたい、このようにお願い申し上げます。
  207. 横路孝弘

    横路委員 これは大変大きな問題でございますので、また明日以降の委員会の議論の中で明らかにしていきたいと思っております。  順序が最後になってしまいましたが、最後に、今の景気、貸し渋りの問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。  今回の七月の参議院選挙で、どこの町の商店街へ行きましても、大都市でも中都市でも地方都市でもそうですが、商店街で街頭演説をしていますと、シャッターの閉まっている店がどこにも目につく。演説が終わりますと、店の人が出てきて、こんな不況というのは経験したことがありません、店の売り上げというのは二割とか三割とか、場合によっては五割も落ちているというような状況でございますし、タクシーに乗っても、時間短縮という世の中の流れの中で、それではとても生活できないので休日労働していますというようなタクシーの運転手さん方、皆さん話をされているわけですね。もう今や失業もそれから倒産も、戦後最悪という状態になってきています。  こうした中で、貸し渋りはやはり最近急激にふえてきております。というのは、倒産を見ていますと、昨年の大きい企業から、最近はだんだん中堅、中小企業に倒産が移っていっておりまして、そちらのウエートが高くなっていっています。ですから、失業の方も、大きい企業から中堅以下の企業のところの失業がふえてきている、そういう状況になっております。  また、金融機関の方も、例えば融資している大きい企業がある。例えばある種のゼネコンだったりする。これは、融資をとめちゃうと、融資先もつぶれるけれども、こっちもやられてしまいますから、何とかお金を出して回しているわけですね。ところが、意外と、地場に定着して活動してきている中堅企業のようなところが、いわば急に資金繰りがつかなくなったというようなときに、もうばったりつぶされてしまっている。  やはり、このごろ、貸し渋りと言いますが、もう資金回収に走っていますから、回収しづらいところからはどうやったって取れないわけなので、回収のしやすいところから、つまり優良企業からお金を回収して、結果としてつぶしてしまっている、そういう実態が非常に明らかになってきています。これは、毎月、月を追うごとに、もちろん不況倒産が多いわけですけれども、月を追うごとに、貸し渋りなどによる倒産あるいはその影響の失業者がふえているというところでございますので、これはもちろん、政府系の金融機関をさらに充実していくと同時に、使いやすくしていくということも大変大事でございまして、資料を見ていましたら、保証協会の保証の伸びというのは必ずしも政府系金融機関の融資の伸びほどには伸びていませんで、やはり抑えられているという実態がはっきりしてきています。  私は、今の不況というのは複合的な要素がありますから、何をするのが一番大事なのかというのはいろいろな議論があると思いますが、やはり金融システム、お金を回すということをやらないと、今もうみんな氷づけになっているわけですから、お金が動いていないわけです。そこをやはり動かすということが非常に大事だと思うのですね。  総理に、この厳しい、戦後最悪と言われている失業、倒産並びにこの貸し渋りの状況についてどのように受けとめておられるのか、その辺をお答えをいただきたい。総理大臣の御答弁をお願いします。
  208. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生が御指摘のような状況は、実際、経済の実態の中にあるわけであります。中堅、大企業の資金調達状況を見ますと、やや改善の傾向は見られますが、中小企業について調べますと、やはり相変わらず貸し渋りの状況が続いているわけです。  通産省及び中小企業庁は、政府が持っておりますあらゆる手段を駆使してこの貸し渋りに対して対応しておりますが、先生後段で御指摘のように、資金量は確保しているけれども実際の貸し出しが進まないという状況はやはり打開をしなければならない。そのためには、やはり各県にございます信用保証協会の力、これを予算というもので裏づけていかなければなりませんし、また最終的に損失が出た場合、これを負う中小の保険公庫の財務体質というものも、これを強化していくということが最終的に中小企業に流れる資金量を増大させる方向に私は働くのだろうと思っております。  そういう意味では、現在既に予算化されておりますものを実行に移すということも急がなければなりませんし、またあり得べき二次補正、あるいは平成十一年当初予算においても、中小企業の金融対策に関する予算については、政府全体としてできるだけ優先順位を高めるべきだと私は考えております。
  209. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 企業の実態につきまして横路委員から御指摘がございました。通産大臣からそれに対する対応につきましてもただいま御答弁申し上げたところでございますが、私といたしましても、不況型倒産がこの一―六月、構成比で六三%と過去最悪になっておるということでありまして、極めて憂慮いたしております。  しかし、個別の倒産防止対策をそうした意味で講じるとともに、究極はやはり一日も早い景気回復ということであろうかと思っておりますので、その点を考え、機動的、積極的な経済運営に万全を期してまいりたいと考えております。
  210. 横路孝弘

    横路委員 質問通告していまして、一つ、労働大臣に、最後に失業対策なんですが、失業も増大していく中で、企業もなかなか大変厳しいわけでございますが、同時に、ハンディキャップを持っている人たちの解雇というのが、最近これまた月を追うごとに非常にふえてきているのですね。この障害者の雇用と今後の対策について御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  211. 甘利明

    ○甘利国務大臣 障害者の雇用、失業統計について正確な数字が把握できておらない点がございます。  それは、例えば失業率の調査をしますときに、これは総務庁がやるのでありますが、十万世帯ほど調査する際に、対象に対して健常者か失業者かの確認をしておりません。しかし、障害者の再雇用は健常者よりも大変であるということから、障害者を解雇する際には事前に所管の署長の方に申し出てもらうようにしておりまして、早急に対処できるように対応しているわけであります。  その申し出の障害者の解雇者数で見ますと、平成九年度計では二千人を超えまして、平成十年度第一・四半期は前年同期と比べて約二倍の増加でありますから、健常者より以上に厳しい状況があるというふうに承知をいたしております。  そこで、あらゆる対応を駆使してこれに対処したいというふうに考えておるわけでありますが、簡潔に申し上げますと、障害者の雇用支援といたしまして四点を対応させていただいております。  一点は、障害者求人開拓推進員のハローワークへの配置による積極的な求人開拓。二点目は、障害者向け就職面接会の積極的な開催であります。三点目が、事業所を活用した知的障害者等の就業体験支援事業の拡充。そして四点目が、障害者の再就職に必要な職業訓練の機動的な実施ということを盛り込んで対応しているわけであります。  今後とも、健常者より以上に厳しい障害者の雇用対策に万全を期していきたいというふうに思っております。
  212. 横路孝弘

    横路委員 終わります。
  213. 中山正暉

    中山委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会