○春名直章君 私は、
日本共産党を代表して、
自民党提出、
金融機能の
早期健全化のための
緊急措置に関する
法律案について
質問いたします。
今、
国民は、最悪の失業率、中小企業倒産の激増など深刻な不況に苦しんでおります。ところが、
経済再生を看板に掲げて誕生した小渕内閣は、この二カ月余り、不況打開、
国民生活を守る施策は何一つ手を打たず、ただただ
銀行支援に熱中してきたのであります。
国民の怒りと不信は、まさに頂点に達しております。
修正された
金融再生法案は、ほとんど
審議抜きで、議会制民主主義をじゅうりんし、
衆議院で強行されました。これだけでも数十兆円もの
銀行支援に道を開くものとなったのであります。それは、公的
資金投入の
対象が
破綻銀行だけだった元法を、
破綻認定をしないで、
破綻前の
銀行に対しても、一時国有化の名で国が丸抱えで
処理することを可能にしたものであります。
また、すべての
金融機関を
対象に、公的
資金で
不良債権を購入してやるという前代未聞の条文が潜り込まされるなど、
銀行と
銀行業界応援法に変質させられたのであります。
国民が、なぜ我々を助けず、
銀行だけを助けるのかと怒りの声を上げるのは至極当然であります。
ところが、まだこれでも足りないと言わんばかりに、今度は会期を延長してまで
早期健全化法案を一気に
成立させようとしているのであります。一体どこまで
銀行支援に熱中すれば済むのですか。
そこで、まずお聞きをしたいと思います。
金融再生法案、
早期健全化法案の中には、
国民には青天井で負担増を求める内容はふんだんに盛り込まれております。
銀行、金融業界にただの一円も負担増を求めるものになっておりません。あるというなら、その条文は一体どこにあるのか。
提案者の明確な
答弁を求めるものであります。
この
法案には、
資本注入ができる場合の一応要件らしいものを書いております。しかし、
破綻寸前の
銀行であろうと、著しく
過少資本の
銀行であろうと、八%を超えた優良
銀行であろうと、すべての
銀行に対して、一定の要件を満たせば
資本注入できる仕組みになっているのであります。つまり、
破綻していない
金融機関でさえあれば、どこでも
対象になり得るというものではありませんか。
提案者に具体的にお答え願いたいと思います。
廃止される十三兆円の枠組みは、それでも健全
銀行に限るという表看板がありました。今度はその枠組みを廃止し、健全であろうと、そうでなかろうと、
資本注入ができるという仕組みになるのであります。これでは、十三兆円の枠組みを使い勝手をよくして復活させただけではありませんか。
提案者の
答弁を求めたいと思います。
八%以上の優良
銀行への
資本注入の条件が三点挙げられ、あたかも厳しい条件が加わったかのような印象を与えています。
そこで、具体的に伺います。
急激、大幅な
信用収縮を避けるとか、合併などで金融再編成で
資本増強が必要との条件がついていますが、それは、
資本増強が必要と
金融機関が
考え、
申請すれば税金投入が可能となるということではありませんか。これでは何の歯どめにもならないではありませんか。
提案者の
答弁を求めたいと思います。
この
法案は、
対象となる
銀行が無限定という点だけではありません。投入する金額も無限定になるという危険性が高いことも問題であります。
予算
措置として、当面十兆円とされています。
国会の議決を経ればこの限りではないとなっているのであります。現に、
自民党の池田政調会長は、この
資金枠で十分だという気持ちはない、一番早い予算補正の機会に金額を上乗せすべきだと語ったと報道されているではありませんか。十兆円が二十兆に、三十兆に膨らむ危険性があることは明らかであります。
提案者の
答弁を求めるものであります。
なぜ八%を超えた優良
銀行にまで
資本注入が必要なのでしょうか。
法案第三条では
金融機関等の再編を
促進することを
原則として掲げていることをあわせて見れば、一目瞭然であります。要するに、大手都市
銀行が他の
金融機関と合併し、のみ込んでいく、そして一層巨大化をし、金融ビッグバンの
もとでも確実に競争に勝ち、もうけを獲得していく、こういう
金融機関の再編を後押しするために
資本注入を行うということであります。
なぜ巨大
銀行の国際競争力強化のために税金を投入しなければならないのでしょうか、なぜそのために
国民が犠牲にならなければならないのでしょうか、
国民が納得する
提案者の
答弁を求めたいと思います。
今必要なことは、
銀行の乱脈、無法な体質を本気で改めさせることであります。
銀行はこの間何をしてきたか。バブル期には、地上げ屋やゼネコンと一体となって投機的土地融資を行い、住民を町から追い出し、町を破壊してきました。バブルが崩壊し、不況が深刻化すると、
銀行は一転して、貸し渋り、
資金回収で多くの企業を倒産に追い込んでまいりました。
銀行は、企業を育てるのが仕事じゃありませんか。全く本末転倒であります。今や、
銀行への怨嗟の声は国じゅうに広がっています。
なぜこの
銀行に対して青天井で税金を投入して、支援しなければならないのですか。やるべきことは、乱脈、無法な体質そのものを改める厳しい指導ではありませんか。自己
資本が低下すれば、真っ先にやるべきは、まず、国際
業務からの撤退、リスクの高い
業務からの撤退等々、その
銀行経営のあり方を正すことではありませんか。
大蔵大臣の明確な
答弁を求めたいと思います。
ところが、この
法案は、こうした当たり前の指導をしないで、ただひたすら税金投入に突っ走るだけであります。これでは、
早期健全化ではなくて、
早期税金投入による救済ではありませんか。大体、国内で自己
責任、自己負担の
原則で預金者保護も借り手保護もできないような
銀行に、げたを履かせて国際金融の舞台に出す必要など全くありません。国内
銀行としての
責任を厳しく果たさせることこそ、
政府の
責任ではないでしょうか。
総理の明確な
答弁を求めたいと思います。(
拍手)
また、国が面倒を見なければならないような
銀行を、世界は決して
信認しないでしょう。税金丸抱えのこうしたやり方は、かえって
日本の
金融機関と金融行政への
信頼を失墜させるだけであることを厳しく指摘するものであります。
アメリカでは、最近、ヘッジファンドのLTCMが
破綻の
危機に見舞われたとき、ニューヨーク連銀が仲介に乗り出し、欧米十四の
銀行が
資金援助して
破綻を回避させたと言われています。それでも、アメリカ議会では、こんなことをやればアメリカの金融行政の道徳的権威が失墜する、連銀が介入したことによって公的
資金投入につながる危険がある、こういう声が上がっているのであります。
銀行にいかに税金を投入するか、その道ばかり
考えている
日本政府の態度とは、余りにも対照的、天地の開きがあると言わざるを得ません。こうしたアメリカの教訓にこそ学ぶべきではありませんか。
総理の明確な
答弁を求めるものであります。
日本共産党はこのような
法案には断固反対であることを申し上げ、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕