○畑英次郎君 私は、民主党を代表し、ただいま
議題となりました
金融六
法案のうち、特に、
金融機能の
安定化のための
緊急措置に関する
法律及び
預金保険法の一部を改正する
法律案について、質問をさせていただきます。
まず、
法案の質問に入ります前に、今月二十一日にアメリカがアフガニスタンとスーダンのテロ施設等に対しましてミサイル攻撃を行いました。戦争への懸念を世界じゅうに広げている件について、お尋ねをいたします。
米国は、ケニアとタンザニアの米国大使館連続爆破テロに対する報復であるといたしております。確かに、テロは断じて許されるものではありませんが、一方で、米国の攻撃も、国際法等々に照らしまして、果たして正当なものであったかどうかという疑問が残ります。既に米国側から支持表明に向けての期待が寄せられているとのことでありますが、本件に関する、
小渕総理にこの問題についての見解をお尋ねをしたいと思います。
さて、同じ二十一日、
日本長期信用
銀行が、公的
資金の投入を前提として
経営合理化計画を発表しました。
小渕総理は談話の中で、この話はあたかも
我が国にとって歓迎すべきものであるということを述べられております。その裏では、二十日に、長銀の
合併交渉先である住友信託
銀行の社長を
総理公邸に呼んで圧力をかけ、
合併合意を急ぐように促しております。とんでもないことであります。
しかも、長銀は、本年三月、
金融危機管理審査委員会により健全な
銀行であるとのお墨つきを得て、千七百六十六億円もの税金を投入されたばかりであります。その上、政府は、長銀が破綻したとは一言も言わず、
国民の皆さん、事情は言えないけれどもとにかく税金で長銀を救済しましょう、
国民一人当たり五千円程度ですが、それが皆さんにとってもよいことなんですよといったような調子で、すべて
国民に押しつけようとしているのであります。
年金生活者の方々などの毎日の生活に多大な打撃を与えながら、異常なまでに長く続いております超低金利政策も、もともと
金融機関を救済するためのものと言っても決して過言ではありません。直接間接を問わず、政府は、
金融機関救済のために
国民の税金を恐ろしいまでに流用してまいっております。
もちろん、このような形で救済を受けて平然としている
金融機関の
経営者は、どう考えているのでありましょうか。
不良債権問題については、なぜか
金融機関経営者の声が聞こえてまいりません。みずからは何も努力せず、政府の
銀行優遇政策を喜んで受けることしか考えていないのでありましょうか。まさにモラルハザードのきわみであります。隠ぺい、ごまかし、責任逃れ、先送り、そして
国民への負担の押しつけ。政府の対応は、まさに
国民に対する背任、背信
行為と言わなければなりません。(
拍手)
今回の政府の対応は、
我が国に対する
海外の見方をも決定的にするでありましょう。
日本という国は、政府がみずからの失敗をすべて
国民に押しつける国だ、責任逃れをするためには
国民に幾ら払わせてもよいと考えていると。
政府は、長銀を救済したことが
我が国の
金融システムにとって好ましいことだと思っているのでしょうが、
銀行救済に公的
資金を青天井でつぎ込むような国は、
海外マーケットの
評価が大きく下がり、それがジャパン・プレミアムの引き上げを招き、
銀行の
資金調達コストの増大となって間違いなくはね返ってくるところであります。つまり、
我が国の
銀行の
経営を一層困難にさせることは、火を見るよりも明らかと言わざるを得ません。
小渕総理にお尋ねしますが、長銀が破綻していないと断言されるのであるとすれば、長銀に公的
資金による救済が必要であると判断した根拠を、わかりやすく具体的にお示しをしなければなりません。一体、
国民を犠牲にしてまで長銀を救わねばならないのはなぜなのでしょうか。今まで自民党が
銀行業界から多額の政治献金を受けていたからでありましょうか。今後さらに別の大手
銀行が破綻しても、また
国民に負担を押しつけるのでしょうか。
総理の明確な答弁を求めます。(
拍手)
次に、本
法案を
提出した理由についてお尋ねをいたします。
本
法案の提案理由の冒頭に、「
金融機関の破綻に際して」という文言があります。政府は、これまでに何度も
不良債権処理は順調に進んでいると発言し続け、大手二十行は破綻させることはないと公約してまいりました。昨年十一月、拓銀が都市
銀行としては初めて
経営破綻をするに至り、その公約は物の見事に破られました。
今、この時点で本
法律案を
提出するということは、長銀以外にも破綻の危機にある
金融機関が存在するということなのでありましょうか。よもや、本年三月に健全な
銀行であると
判定され、総額一兆八千億円もの公的
資金による資本注入を受けた二十一行の中には、長銀以外にも破綻の危機にある
銀行があるとは考えたくありませんが、そのような
銀行は本当にないのでありましょうか。
小渕総理の認識を明確にお示しください。
不良債権の抜本的な
処理を行うためには、
不良債権の実態について徹底した情報開示を行い、責任を負うべき者を明確にし、問題を先送りにしないことが大前提であります。米国の連邦準備理事会のグリーンスパン
議長も、
日本は
金融問題への対処で、従来の文化や慣行にとらわれない劇的な
措置が必要だと述べております。
しかし、政府は、大手
銀行を破綻させる気は全くないと表明いたしております。つまり、実質的に
経営破綻状態にある大手
銀行に対しては、破綻が表面化しないように税金を投入して救済をするわけであります、今回の長銀のように。そうすれば、だれも責任をとらなくて済みます。しかし、それは抜本的な解決には到底なり得ません。既に何度も失敗して、わかっているはずではありませんか。
我々民主党は、税金による
銀行救済には一貫して反対してまいりました。そのため、それを可能とする
金融機能の
安定化のための
緊急措置に関する
法律は、直ちに廃止すべきだと考えております。
小渕総理の御見解をお伺いをしたいと思います。(
拍手)
次に、だれが
不良債権や破綻の認定をするのかということについてお聞きいたします。
既に
金融監督庁が大手
銀行に対する
検査を開始いたしておりますが、
金融監督庁が
検査を行うことについて、私は重大な問題があると考えております。それは、
金融監督庁、いわば
金融機関との癒着が次々と明らかになった大蔵省が、
不良債権の実態を隠ぺいし、問題の先送りを続けてきた
当事者であるからであります。
金融監督庁が
不良債権の分類基準を恣意的に操作すれば、
不良債権の金額は幾らでも変えることができます。同様に、破綻の認定基準を恣意的に操作することにより、実質的に破綻しているはずの
銀行も健全であるというお墨つきをもらえることになります。いや、
金融監督庁と大蔵省がそんなことをするはずがないと言い切れるのでありましょうか。現在の長銀に対する取り組みの姿勢が、この辺については極めて大きな疑問を生むわけであります。
今、最も重要なことは、
銀行に対する徹底した
検査と、その結果の公表であります。
検査結果の速やかな公表について言を左右にする
金融監督庁を、私どもは信頼できるのでありましょうか。
我々民主党は、
不良債権問題を今度こそ本当に解決するためには、もはや
金融監督庁や大蔵省に任せておけないと考えております。第三者が公正な立場から解決に当たることが必要です。そのような考え方から、民主党は、
金融再生委員会という新たな
機関の設置を提案いたしております。我々が示しております
金融再生委員会とは、
金融監督庁や大蔵省がそっくり移行するものではなくて、むしろ過去の大蔵
行政を断罪するものであるわけであります。
小渕総理にお尋ねしますが、
不良債権の分類も
銀行と御相談、早期是正
措置の発動も
銀行と御相談などという、監督官庁の役割を放棄するようなことを平気で言う
金融監督庁に、
銀行の
検査をさせることが適当と考えているのでありましょうか。
国民の信頼が寄せられていると受けとめていらっしゃるのでございましょうか。しかとした御答弁をお願いいたします。
次に、大手
銀行の破綻に際してブリッジバンクは使えるかという点についてお尋ねをいたします。もっとも、政府は大手
銀行は税金を投入して救済をするわけでありますから、あるいはナンセンスな質問ということに相なるかもしれませんが。
政府案では、
金融機関が破綻すると、第一段階として、
金融管理人が破綻
銀行を
管理することに相なっております。しかし、この時点では他の
金融機関への
営業譲渡がうまくいくかどうかわかりませんから、預金者や優良な
債務者は、みずから他の
金融機関へ取引を移したいと考えるのは当然のことではないかと思います。大手
銀行の場合、
営業地域は大都市周辺でありますから、周囲に他の
金融機関は幾らでもありましょう。
したがって、大手
銀行の場合、第一段階で多くの優良な顧客は逃げてしまいます。すると、残るのは
不良債権や要注意
債権ばかりということになりますから、
営業譲渡は困難になるわけであります。第二段階として公的ブリッジバンクを
設立いたしましても、優良な顧客がいない
銀行を、どこに
営業譲渡しようというのでありましょうか。
したがって、政府のブリッジバンクを大手
銀行に適用することは非常に困難です。大手
銀行の破綻に適用されないのであれば、本
法案そのものが
金融不安解消には役に立たない
法案であると言わざるを得ません。宮澤大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
このように、政府案は、実際には役に立たない代物であることは既に明々白々であります。しかも、
経営者等の責任追及があいまいなため、
国民の負担も際限なく膨らむ可能性を含んでおります。
それに対して、民主党案では、
不良債権問題の解決に正面から取り組むための新たな
機関、
金融再生委員会が中心となります。それに加えて、強力な権限を持つ公的
債権回収機構、いわゆる
日本版RTCを
設立し、かの中坊公平氏が率いる
住宅金融債権管理機構のように、
不良債権の
回収を全力で進めていかねばなりません。
宮澤大蔵大臣は、ハードランディングならだれでもできる、ソフトランディングをしなければならないんだとおっしゃいますが、政府・自民党のやり方では、そもそも着地ができない。つまり、ネバーランディングと申すべきではないかと思います。そのうち燃料が切れて墜落するに違いがありません。ここまで
不良債権問題が深刻になった以上、着地することが極めて重要であるわけであります。
政府・自民党は、
不良債権問題の迅速かつ抜本的な解決を可能にする民主党の
金融再生計画を正しく
評価し、
総理自身の決断をもって受け入れ、実行すべきであります。
総理の御見解を求めます。
最後に、本年二月に成立したばかりの
金融機能安定化法を、わずか半年足らずで改正しなければならなくなった責任について、自民党総裁としての
小渕総理にお尋ねをいたします。
あの財政構造改革法も、昨年十一月に成立したばかりでありながら、やはり半年で改正を余儀なくされました。重要な
法案が猫の目のようにくるくると変わる、これは、まさに自民党に政権担当能力が欠如していることを如実に証明いたしております。(
拍手)
小渕内閣は、ブリッジバンク
法案を成立させることができずに解散に追い込まれるか、我々民主党の、よく
小渕総理がおっしゃっております、いわば鬼手仏心とも言える
金融再生法案を全面的に受け入れて総辞職するか、選択肢は二つしかありません。そのどちらを選択するかをお尋ねして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕