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1998-11-06 第143回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十一月六日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大村 秀章君       熊谷 市雄君    熊代 昭彦君       鈴木 俊一君    丹羽 雄哉君       御法川英文君    宮腰 光寛君       矢上 雅義君    山本 幸三君       石橋 大吉君    今田 保典君       原口 一博君    堀込 征雄君       漆原 良夫君    旭道山和泰君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤田 スミ君       北沢 清功君    岩浅 嘉仁君  出席国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一委員外出席者        外務省経済局長  大島正太郎君        農林水産政務次        官        松下 忠洋君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        食糧庁次長    山口 勝朗君        水産庁長官    中須 勇雄君        農林水産委員会        専門員      外山 文雄君     ————————————— 委員の異動 十一月五日  辞任         補欠選任   二階 俊博君     西  博義君 同月六日  辞任         補欠選任   金田 英行君     大村 秀章君   岸本 光造君     大石 秀政君   園田 修光君     江渡 聡徳君   宮本 一三君     山本 幸三君   木村 太郎君     旭道山和泰君   前島 秀行君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     園田 修光君   大石 秀政君     岸本 光造君   大村 秀章君     金田 英行君   山本 幸三君     宮本 一三君   旭道山和泰君     木村 太郎君   北沢 清功君     前島 秀行君     ————————————— 十月十六日  一、農林水産業振興に関する件  二、農林水産物に関する件  三、農林水産業団体に関する件  四、農林水産金融に関する件  五、農林漁業災害補償制度に関する件     ————————————— の閉会中審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(平成十一年産米  穀の政府買価格等)      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、平成十一年産米穀政府買い入れ価格等米価審議会への諮問について政府から説明を聴取いたします。山口食糧庁次長
  3. 山口勝朗

    山口説明員 おはようございます。米穀政府買い入れ価格及び標準売り渡し価格米価審議会への諮問につきまして御説明申し上げます。  米穀政府買い入れ価格は、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律におきまして、自主流通米価格動向その他の米穀需要及び供給動向を反映させるほか、生産条件及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産を確保することを旨として決定することとされております。  具体的な算定方式につきましては、平成七年十二月に米価審議会意見を聞いて、自主流通米価格変動率及び生産コスト等変動率基礎として算定する現行算定方式設定されたところであります。  平成十一年産米穀政府買い入れ価格につきましては、需給動向市場評価を反映させつつ、安定的な価格形成が図られる現行算定方式に基づき算定することといたしまして、本日の米価審議会諮問を行い、御審議をいただいているところであります。  また、米穀標準売り渡し価格につきましては、「米穀需要及び供給動向家計費並びに物価その他の経済事情を参酌し、消費者家計を安定させることを旨として定める。」との食糧法規定に基づき、米穀需給動向財政事情等総合的に考慮して諮問案を取りまとめ、政府買い入れ価格とあわせ、本日の米価審議会において御審議をお願いしているところでございます。  以下、これらの諮問の概要につきまして御説明を申し上げます。  まず、「諮問」を朗読させていただきます。資料ナンバーの1でございます。      諮問  平成十一年産米穀政府買価格については、米穀需給動向市場評価を反映させつつ、安定的な価格運営を図るとの観点に立って算定を行い、この算定に基づき決定する必要があると考える。また、米穀標準売渡価格については、米穀需給動向財政事情等総合的に考慮し、これを決定する必要があると考える。これらについて米価審議会意見を求める。   平成十年十一月六日         農林水産大臣 中川 昭一  続きまして、「諮問説明」でございます。次のページでございますが、これも朗読させていただきます。      諮問説明  米穀につきましては、連年の豊作等背景として全体需給が大幅な緩和基調で推移する中、昨年十一月、生産調整対策稲作経営安定対策及び計画流通制度運営改善を基軸とする「新たな米政策大綱」を取りまとめ、これに基、つく各般施策総合的に推進してきているところであります。この結果、米穀需給バランス回復傾向に転じる等着実に成果が上がってきております。しかしながら、本年十月末の国内産米在庫量は三百四十四万トンと、適正備蓄水準を依然として大幅に超える状況となっております。  このため、米穀需給均衡を図るため、引き続き「新たな米政策」を着実に推進することとしております。  平成十一年産米穀政府買価格及び米穀標準売渡価格につきましては、計画流通制度運営の一環として、「主要食糧需給及び価格の安定に関する法律」の規定に基づき、適切に決定する必要があります。  具体的には、平成十一年産米穀政府買価格につきましては、「新たな米政策」を踏まえ、引き続き、自主流通米価格変動率及び生産コスト等変動率基礎として、需給動向市場評価を反映させつつ、安定的な価格運営が図られる現行方式により算定することとしてはどうかということであります。  また、米穀標準売渡価格につきましては、以上のような米穀需給動向財政事情等総合的に考慮して決定することとし、ミニマム・アクセス輸入米は、国内産米価格体系との整合性も踏まえながら決定することとしてはどうかということであります。なお、実際の売却に当たっては、備蓄の適切な運営を図る観点から、標準売渡価格基準としつつ、需給動向等に対応して弾力的に予定価格設定を行う必要があります。  次に、資料番号の2の横長の資料でございますが、「平成十一年産米穀政府買価格試算」でございます。これにつきまして簡単に御説明を申し上げます。  目次がございますが、目次を飛ばしまして一ページでございます。  まず、「平成十一年産米穀政府買価格試算」というところでございますが、1の「政府買米価算定考え方」でございます。  右側に算式が書いてございますが、まず、自主流通米価格形成センターにおいて形成されます自主流通米入札価格動向比較によりまして価格変動率Aを求めます。次に、生産費調査に基づく米販売農家の全算入生産費動向比較により生産コスト変動率、Bでございますが、Bを求めます。この二つの変動率を均等のウエートにより基準価格島に乗じ、「求める価格」を算出することといたしております。  この場合、基準価格は、前年産米穀政府買い入れ価格としております。自主流通米価格変動率算出に当たりましては、すべての上場銘柄加重平均価格を用いることといたしております。また、生産コスト等変動率算出に当たっては、直近までの物価、労賃の動向及び単収の動向を織り込むことといたしております。  次に二ページでございますが、政府買い入れ米価につきましては、需給事情市場評価を反映させつつ、安定的な価格運営を図る観点から、まず、自主流通米価格変動率を求めるに当たりましては、移動三カ年平均による比較を行いまして、その際には、需給変動による価格への影響を緩和するため、生産調整面積変更を決定した年の年産に係ります自主流通米入札価格平準化を行うということをいたしております。  また、生産コスト等変動率を求めるに当たりましては、移動三カ年平均による比較を行うこととしておりまして、その際、平準単収を用いることといたしております。  次に、2の「算定」でございますが、以上申し上げましたような考え方に基づきまして算定いたしました平成十一年産米穀政府買い入れ価格は、自主流通米価格変動率生産コスト変動率ともマイナスになりますので、六十キログラム当たり一万五千五百二十八円、前年産価格に対して二百七十七円の引き下げ、パーセントで申し上げますと一・七五%の引き下げとなるということでございます。右の方に具体的な数値の入った算式がございます。  なお、この価格は、(注)にも書いてありますが、ウルチ一−五類、一−二等平均包装込み生産者手取り予定価格といった性格のものであります。  次に三ページでございます。ここからは「算定要領」になっております。  まず、基準価格でございますが、先ほども申し上げましたように前年産米穀、つまり十年産米政府買い入れ価格を使っておりまして、一万五千八百五円ということでございます。  次に、2の「自主流通米価格変動率」でございます。  自主流通米価格変動率につきましては、自主流通米価格の中期的なトレンドを反映させるとの観点から、すべての上場銘柄加重平均価格直近三カ年平均とその前年の三カ年平均とを比較することにより求めております。  生産調整面積変更を決定した平成年産、九年産の各年産価格につきましては、各年産加重平均価格と、その年産入札取引における基準価格との平均を用いるということをいたしております。  このように求めました自主流通米価格変動率は、右にございますように、九七・〇八%でございまして、約二・九%の低下ということになっております。  次に、四ページでございます。生産コスト変動率について述べております。  生産コスト等変動率につきましては、生産費調査等に基づきまして、家族労働費物財雇用労働費等、それから単収、それぞれごとに変化率を求めます。さらに、家族労働費物財雇用労働費等について全算入生産費に占めるそれぞれの割合によりウエートづけを行いまして、最後に単収の変化率で割り戻すということを行いまして、生産コスト等の全体の変動率を求めております。  これを算定式に置いてみますと右のような式になるわけでございます。この算式に具体的な数値を当てはめて計算した結果は右の下の方に示してありますが、簡単に申し上げますと、家族労働時間の減少、農家購入価格低下等によりまして、生産コスト等変動率は九九・四一%となり、〇・六%の低下となっております。  以下、五ページから七ページにつきましては、ただいま御説明申し上げました生産コスト等変動率のそれぞれの算定要素の細かい説明でございますので、説明は省略させていただきまして、最後の八ページをお開きいただきたいと思います。  この八ページでは、類別等級別価格算出について触れてございます。  これまで御説明申し上げました算式により算出いたしました求める価格、すなわちウルチ一−五類、一−二等平均包装込み生産者手取り予定価格でございますが、これを基礎にいたしましてウルチ類一等裸価格を求めます。この価格を中心にいたしまして、右の表にありますように、各類別等級別価格算出いたしております。  以上が、十一年産米穀政府買い入れ価格試算説明でございます。  次に、資料番号3の「米穀標準売渡価格改定内容(案)」でございます。これにつきまして御説明を申し上げます。  一ページ目でございますが、1の国内産米についてですが、まず、1では基本的考え方を述べております。国内産米標準売り渡し価格については、食糧法のもとで政府米備蓄運営の機能を有することを踏まえながら、米穀需要及び供給動向家計費並びに物価その他の経済事情を参酌し、消費者家計を安定させることを旨として定めることとされております。  そこで、2におきましては、この標準売り渡し価格設定に際して参酌すべき事項についての動向を、「米穀をめぐる事情」として取りまとめてあります。  まず、最近の需給動向でありますが、御案内のとおり、米穀の全体需給は大幅な緩和基調で推移したところでありますが、新たな米政策大網に基づく各般施策総合的推進によりまして、米穀需給バランス回復傾向に転じております。  しかしながら、本年十月末の国内産米持ち越し在庫量は、政府米それと自主流通米、合計で三百四十四万トンと適正備蓄水準を依然として大幅に超える状況となっております。このため、米穀需給均衡を回復するため、引き続き新たな米政策を着実に推進することとしているところでございます。  次に、家計費及び物価動向ですが、最近における家計費及び物価動向は、標準売り渡し価格前回改定時の平成十年一月と現時点との比較で見ますと、消費者物価指数総合)は〇・三%の低下消費者物価指数のうちの米類についても〇・二%の低下となっております。  次に、政府管理コストにつきましては、適正備蓄水準を大幅に超える備蓄保有備蓄米保管期間長期化等により、管理経費増加傾向にあります。  次に、二ページでございますが、政府買い入れ価格につきましては、先ほど説明いたしましたように、平成十一年産米政府買い入れ価格につきまして、今回の米価審議会において、政府案として、額にして二百七十七円、率にして一・七五%の引き下げ諮問を行ったところであります。  3は標準売り渡し価格改定内容でございます。  ただいま申し上げましたような状況を踏まえながら、政府買い入れ価格引き下げ効果消費者に適切に還元することとし、国内産米標準売り渡し価格につきましては、消費者家計の安定が図られるよう改定するということでございます。  具体的には、まず、(1)にございますように、平成十年十二月一日以降の標準売り渡し価格を、額にして百七十六円、率にいたしまして一・〇四%の引き下げを行うことといたしております。  (2)の銘柄間格差等につきましては現行どおりでございます。  また、このような考え方に基づき算定いたしました類別等級別国内産米標準売り渡し価格は、四ページにございます別紙のとおりとなります。  最後に、(4)でございます。若干わかりにくい表現になっておりますが、要するに、実際の政府米売却に当たっては、今申し上げました標準売り渡し価格基準として売り渡し予定価格を定めます。この予定価格につきましては、最後の二行のところにございますが、需給市場価格変動に対応し得るよう適切かつ弾力的に設定することとしてはどうかということであります。  次のページ以降とその他配付資料につきましては説明を省略させていただきます。  以上でございます。
  4. 穂積良行

    穂積委員長 以上で説明は終了いたしました。     —————————————
  5. 穂積良行

    穂積委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木俊一君。
  6. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 自由民主党の鈴木俊一でございます。  きょうの委員会審議は、米審を控えての質疑ということでありますから、本来であれば米をめぐる情勢について質問すべきであると思うのでありますが、今、日本水産業にとりまして大変に大切な日韓漁業協定締結交渉というものが本当に最終段階を迎えております。恐らくこの交渉の過程において政府の姿勢をただすのはもうきょうが最後の機会ではないか、こういう時期に差しかかっておりますので、私の方からはこの日韓漁業協定の問題につきまして質問をさせていただきたい、そういうふうに思います。  私から改めて申し述べるまでもないのでありますが、現行日韓漁業協定のもとで、日本沿岸漁民といいますものは、韓国漁船協定違反操業でありますとか無謀操業でありますとかあるいは漁具被害等で大変な被害を長年にわたってこうむってきたわけでありまして、いわば関係漁業者の怒りといいますものは極に達している、そういうふうに思うのであります。政府も、長い間、この欠陥を持っております現行日韓漁業協定改定すべく韓国側に申し入れを続けてきたところでありますが、残念ながら一向に韓国側はこれにこたえようとしてこなかったわけであります。  しかし、その韓国がようやくここに来まして新たな漁業協定締結に応じたその背景といいますものは、やはり何といっても、日本の国も韓国も一昨年国連海洋法条約に加盟をし、これを批准して、そしてお互いに国際的にも資源管理の義務というものを負った、それが今回の新たな漁業協定締結に向けての背景である、そういうふうに思うのであります。  したがいまして、それだけに今回締結されようとしております新漁業協定は、そもそも国連海洋法条約の趣旨に沿った適切な資源管理を実施し得るそういう内容でなければならないのである、私はそう思うのでありまして、以上申し述べたことがこれは原則である、こう思うのであります。  しかしながら、九月二十五日に韓国との間で行われました基本合意はこの原則に反するものでありまして、私は極めて不満を持っております。韓国日本の間には竹島の領有権をめぐる問題が存在をいたしますから、お互い排他的経済水域の線を確定できない、したがって暫定水域を設けることはやむを得ないこと、こういうふうに思うのであります。  その暫定水域範囲といいますものは、資源管理上からもでき得る限り狭い範囲に限定的に設定されるべきものであるのでありますけれども、今回の基本合意では、昨年来の我が国の主張と比べ東側に拡大をされ、さらには、我が国漁民が開拓をしてまいりました伝統的な優良漁場であります大和堆の約四割がこの暫定水域の中に含まれるというものでありまして、私はこれは到底納得できるものではない、こう思うのであります。これでは何のためにあれだけ大騒ぎをしてことしの一月に韓国に対しまして現行協定終了通告をしたのか、そういう思いをしているわけであります。  しかし、不満を言っていてもしようがないのでありまして、基本合意がなされた以上は、暫定水域の中あるいは排他的経済水域内において適切な資源管理が確定できるような内容になるように、これから政府韓国に対して、今協定交渉も大詰めでありますから、その細部についてきちんとした対応をしていただきたい、そして資源管理の実効が上がる協定が最終的に結ばれる、こういう最後努力をしていただくことをまず最初に政府に強く要望いたします。  そして、そうした要望の上で質問をさせていただきたいと思うのであります。  まず、暫定水域内の資源管理でありますが、今度の協定におきましては日韓漁業共同委員会というものがつくられまして、そこで両国で協議をする、そして合意がなされたらそれを政府に勧告して、お互いそれを守るようにする、こういうことになっているわけであります。暫定水域内の取り締まり権は依然として旗国主義である、沿岸国にはその権利がないということでありますから、私としては、そもそもこの暫定水域内での資源管理というものがきちっと担保されるのかどうか、構造的に大変不信感を実は持っているわけであります。しかし、その中にあっても、きちんとした資源管理の方策というものをこれから見出していかなければならないと思うのであります。  そこで、この中において、例えば漁業種類別隻数制限を設けるとか、あるいは取り締まり船、これは旗国主義でありますけれども、お互いの国の取り締まり船にそれぞれ相手国取り締まり官乗船させる、相互乗船させる、こういうようなことはどうなのか。あるいは、大和堆が暫定水域に取り込まれたわけでございますけれども、大和堆といいますものは、ただ単に優良漁場ということだけではなしに、あそこにおきましてはカニなどが産卵をして稚仔が生まれる、魚類によってもやはりあそこは産卵、稚魚の発生の場所になっていると思うのでありまして、これは資源保護上も極めて大切な海域であるわけでございますから、同じ一つ暫定水域でありますけれども、その中におきましても大和堆の部分はまた別の一つ資源管理あり方があっていいと思うのであります。  今私が申し上げましたような点も含めまして、暫定水域内における資源管理あり方、厳格な資源管理を行っていく、そういうあり方についての政府考えをお聞きしたいと思います。
  7. 中須勇雄

    中須説明員 ただいま先生から御指摘ございましたとおり、今回の新しい漁業協定に関する基本合意につきましては、暫定水域範囲等の問題をめぐって関係する漁業者に大変強い不満あるいは不安があるというのは御指摘のとおりでございます。やはり私どもといたしましては、そういった不満や不安を取り除くという意味で、特に暫定水域につきましてはしっかりした資源管理ができる体制を今後韓国との間の話し合いを通じてつくり上げていく、それが何よりも大切であろう、こういうふうに思っているわけで、現在実務者間での交渉を鋭意進めているところでございます。  その中で、例えば今御指摘になりました暫定水域における取り締まりの問題で申しますと、御指摘のとおり暫定水域旗国主義ということでございますので、韓国漁船の臨検、拿捕ということは我が国は行い得ない、こういうことでございます。  しかし、実際には、例えば相手国の公務員が相手の国の監視船乗船をして、共同乗船というふうに言っておりますが、そういう方式取り締まりをするとか、あるいは日韓双方取り締まり船が連携して巡視をする、連携巡視と呼んでおりますが、こういった取り締まり活動を行うことによりましてかなりの程度実質的な意味で実効ある取り締まりができるという側面がございますので、こういう点については、韓国側と十分話し合って、ただいま申しましたような措置が実現するように努力をしていきたいと思っております。  また、特に暫定水域内の資源管理に関しましても、大和堆の扱いの問題がございます。大和周辺水域というのは、日本海に生息する資源にとって主な回遊経路ということでございまして、現実にもスルメイカあるいはベニズワイガニ等主要漁場でございます。このために、大和周辺水域については資源管理という観点からも暫定水域の中で特に十分な規制を講ずる、こういう観点で現在韓国側と具体的な規制内容について協議をしておる、こういう状況でございます。  いずれにしても、基本合意にございますように、暫定水域内においては漁業種類別最高操業隻数規制ということを含めた適切な資源管理を行うというふうに明記されておりますので、できる限り具体的な内容で、漁民にもわかりやすい資源管理が行われるよう引き続き努力をしてまいる考えでございます。
  8. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 新しい協定ができれば韓国漁船にも我が国経済水域内での漁獲を割り当てるということになると思うのでありますが、国連海洋法条約におきましては余剰原則というのがございまして、これは自国の漁民が利用する、その上でなおかつ資源的に余りがあるならば外国の漁船にもこれを割り当てる、そういう余剰原則というものがあるわけでありまして、それを考えると、果たして韓国に割り当てる漁獲量というものは実際のところあるのかないのか、こういうふうに思うのであります。  そういうことを考えますと、魚の種類によってはこれから先割り当てをもうフェーズアウトしていくべきものもあると思うのでありますが、その点について一つお尋ねいたします。  それからもう一点は、今度は日本排他的経済水域内での韓国に割り当てたものをこれは取り締まり上もしっかりと把握をしていかなければいけないのでありますが、例えば、この暫定水域我が国排他的経済水域を入ったり出たり、こういうような操業形態のものにつきましては、調べましても、我が国経済水域内でとったのか、それとも暫定水域内でとったのか、その辺が判然としないというようなことが起こって、実質的に漁獲割り当て量をしっかりと守らせるということができないのではないか、こういう危惧もあるのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  9. 中須勇雄

    中須説明員 第一点目の、我が国の水域内における韓国漁船に対する漁獲割り当ての問題につきましては、今回の基本合意におきましては、一つは、韓国周辺水域において長年我が国漁船が操業している、そういう実態があるということも踏まえまして、いわゆる相互主義という観点から韓国側に一定の漁獲割り当てを認める、こういう方針でございます。  ただ、御指摘のとおり、一般論としてはそういう形をとるにせよ、魚の中には資源状態がかなり違うものがございます。特に資源の状態が悪いと言われておりますスケトウダラとズワイガニにつきましては、今回の基本合意において、スケトウダラについては二年目に、ズワイガニについては三年目に漁獲割り当てをゼロにする、いわゆるフェーズアウトを実施するというふうに考えておりまして、今後とも、各魚種ごとの資源状況を十分見きわめながら、韓国との毎年の協議に臨んでまいりたいというふうに思っております。  それからもう一つ、確かに暫定水域我が国の二百海里水域、海の上での線は引いてあるわけでございますが、そこをまたがって操業をするということになりました場合に、我が国の二百海里水域において韓国に与えた漁獲割り当て量が守られているかどうかのチェックをどのようにすればいいかという大変難しい問題がございます。現在、具体的な手法として、どうやればその辺がしっかりとできるのかということを韓国側と話し合っております。  例として言えば、操業日誌において漁獲量を水域別に毎日記入させるわけでありますが、それをチェックしていくとか、そういう方法もございますけれども、より厳格な方法がさらにないかどうか鋭意協議を行っているところでございまして、いましばらくその具体的内容については時間をいただきたいということでございます。
  10. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 持ち時間が参りましたので、最後質問に入ります。  今回の協定のできぐあいによって、基本合意が主でありますけれども、関係漁業者は大変な影響を受けるわけでありまして、当該漁業者に対して政府としてきちっとした支援措置をとらなければならない、そういうふうに私は思うのでありますが、この点につきまして、最後政府のお考えをお伺いさせていただきたいと思います。
  11. 中須勇雄

    中須説明員 冒頭、先生からお話ございましたとおり、今回の基本合意については、漁業者に大変不満や不安が大きいということは十分私どもも承知をしております。そのためにも、先ほど来お話ございましたように、漁業者の理解を得るという観点から、具体的な資源管理措置の姿なり、実効ある取り締まりの実施ということについて努力するということがまず何よりも重要だろうというふうに思っております。  同時に、ただいま御指摘がございましたとおり、関係水域の漁業に現実に影響が出るということも当然予想されるわけでございまして、漁業者意見を今後とも十分伺いながら、監視取り締まり体制の強化であるとか資源の培養対策、漁場の回復あるいは漁業経営対策、こういうことについて現在検討を行っているところでございます。成案を得た段階で、所要の予算措置ということを含めて検討してまいりたいと思っております。
  12. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 最後に、これからいよいよ大詰めの協定交渉でございますから、資源管理がきちっとできるような体制ができるように、政府として挙げて最後の詰めをしっかりやっていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  13. 穂積良行

    穂積委員長 次に、熊谷市雄君。
  14. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 自由民主党の熊谷市雄でございます。私は、今農政問題の最大課題とされておりますAPECの問題について、二、三質問を試みてみたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  昨晩、中川農林大臣がアメリカ、ヨーロッパの方を回って帰ってまいられました。けさの新聞によりますと、日本は関税化の会議には絶対反対である、そういう基本的な姿勢を貫く、こういう新聞の記事を読んでほっとしたわけであります。  先月末から今月初めにかけて、どうもAPECの会議の模様というものが日本にとって極めて危うい、危ういということは日本がこの会議で孤立化をするのではないか、こういう推測なり、あるいは推測の段階からこれは本当かなというような、いろいろな情報というものを収集した結果、そういう考え方が出てまいりまして、これは当然農水省もそうであるし、外務、通産、あるいは官邸もこの問題に対してどう対応するかということで、にわかに動きが急になったわけであります。したがって、農水省としては、中川大臣を初め、松下、亀谷両政務次官、APECの主要各国に日本考え方というものを十分に伝えて理解を求めるというAPECの事前の外交というものを展開されたわけでございます。  もちろん、このAPECというところはそういう貿易なりあるいは関税の問題なりというものを審議する場ではないということははっきりしているわけであるし、されど昨年のバンクーバーの会議において、特に早期自主的分野別自由化という形の中で九品目、これをもう関税ゼロあるいは関税率を引き下げる、こういう方針が打ち出されたわけであります。そのときは日本は、水産あるいは林産、この分野については参加できませんということを申し上げ、そして自主性の原則というもので貫いてやりますということで、これは各国とも認めておったわけでありますから、よもやこういう形で今度のAPECの会議で扱われるということは予想もしなかったわけであります。  その後、アメリカのいろいろなサロン外交というかそういうものが功を奏して、どうも各国の様子がおかしくなってきた。特に六月の貿易大臣会議で、堀内前通産大臣が孤立化の状態になって憤然として席を立ってきた、そういうこともあって、異常な雲行きという形の中で対応をしたわけであります。  先ほど申し上げましたように、大臣あるいは政務次官、実際に関係国を回られて、それなりの手ごたえというのは感じてきたようでありますが、総掌して、果たして今度のAPEC会議日本が孤立化という状況にあるのかどうか、その点に絞ってひとつ政務次官の方からお尋ねをしたいというふうに思います。
  15. 松下忠洋

    ○松下説明員 熊谷委員の御質問にお答えを申し上げます。  APECというのは、これはアジア太平洋地域の持続可能な発展のためのフォーラムでありまして、各国が実施可能なことを自主的に持ち寄って相互の発展に寄与していくということを基本原則としておるわけでございまして、これは委員のおっしゃるとおりでございます。  そしてまた、アメリカとオーストラリア等の国々は、林産物、水産物を含む優先九分野、このすべてについて、自主性の原則を重んじるAPECの性格にかかわらず、我が国の参加を強く求めてきておりまして、このAPECの場を自由化交渉の場に変質させようとしております。  この早期自主的分野別自由化、EVSL、これは先生おっしゃいましたように、昨年十一月、バンクーバー閣僚会議の際に、参加したメンバーの間で自主性の原則に基づいて行われるのだという明確な了解の上で合意されたものであるわけでありますから、ここは我が国の立場もきちっと貫いていきたい、こう考えておるわけです。  我が国は現在、厳しい国内状況の中で、この農林水産物についても、ウルグアイ・ラウンド合意に基づく関税引き下げ、これを誠実に実施してきておりますので、これを超える自由化というのは今我々は考えていない。ですから、APECの場でそのことが議論されることについて我々は断固としてこれは応じないという形でやっていこう、こういうふうに考えておるわけであります。  この林産物、水産物については、そのほかに経済技術協力でありますとか貿易の円滑化、そういったことで協力できる分野がたくさんございますので、そういう問題について、それから残った六分野についてはこれはきちっと議論していこうということでございまして、本来WTOで議論すべきことを前倒ししてこの場で決めていくということについては、これは応じないということでいこうと思っております。  そういうことで、中川大臣、それから二人の政務次官、手分けをいたしまして、アメリカ、ヨーロッパ、EUですね、それからアジア諸国を回ってまいりました。  私が回ってまいりましたASEANのマレーシア、タイ、そしてインドネシアですけれども、我が国の置かれている現在の政治経済状況、これをきちっと説明し、その中で林業そして水産業がどのような立場で仕事をしているのか。極めて厳しい状況の中で、倒産も相次ぎ工場閉鎖も相次ぐ中で、森林が荒廃する、そしてまた水産物のIQの問題も含めて極めて追い込まれた状況にあるということをきっちりと説明をし切ったつもりでございます。そういう中にもかかわらず、宮澤構想も含めて三百億ドルの経済技術協力をさらにアジアのためにしようとしておるという日本の立場を説明して、我が国のAPECにおける考え方を支持してもらうようにしっかりと説明をしてまいりました。  アメリカやオーストラリア等は、アジアの国々を含めて日本を孤立化させようというふうにしていることは間違いないと思いますけれども、それをやはりぴっちりと、この場で議論すべきことは、そういう貿易品目のことではなくて、なぜこういうアジアの経済危機が起こったのか、そしてそれを克服する道は何かということを議論して答えを出す、それから、ヘッジファンドを初めとした国際金融マネーの問題を議論してその正しい運用の仕方を、道を探るということにすべきだということで一致しておりますので、さらに引き続きこういう努力をしていくべきだ、こう考えております。
  16. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 そうしますと、決して孤立化という状況ではないというふうに判断してよろしいわけですね。  きのうの新聞でしたが、これは農業新聞でありますが、中川大臣が三日にWTOのルジェロ事務局長と会談した際にも、事務局長は、決してAPECで日本は孤立しているというふうには理解しておりません、そういう表明をされているわけであります。  さらに、これも五日の農業新聞の中に、主要国の自由化協議についての立場という、いろいろな主要国の態度が出ておったわけでありますが、中国、韓国、台湾、ASEAN諸国、どの国を見ても、日本の主張というものに十分な理解をしているということなり、それから、林産物、水産物の関税というものはこれは撤廃すべきではない、場合によってはその時期というものも引き延ばしをすべきである、ほとんどの国がこういう態度というか考え方を示しているわけでありますから、日本だけが孤立しているという状況ではないというふうに解釈できると思います。  ただ、問題は、これらの国々というのは、言うならば二つの顔を持っているのではないか。アメリカ向けの顔と日本向けの顔と二つ持っておるので、どちらの主張というものが会議の場で堂々と優劣を決めるのか、そういうことも見ているのではないかというふうに私は思うのです。  したがって、日本の主張というのは、松下政務次官が今おっしゃったように、APECの性格、そういうものなり、あるいはWTOというものをさておいて前倒しをしてこういう問題というものを決めるべき筋合いのものではないということなり、日本は林産物にしても海産物にしても十分に市場の開放をやっているのだ、こういうことからして日本の主張というのは正論ではないかと私は思うのですね。この正論がまかり通らない、片隅の方に追いやられるなんというふうになりますと、無理が通って道理が引っ込むというような形がAPECの会議の場で出てしまう。これでは、主権国の日本の外交というものが笑い物になってしまう、あるいはAPECの各国からの信頼性というものを失ってしまう。  ここ一番やはりこの正しい主張を貫いていく、これが私は国益というものを守る日本の国家観からの外交姿勢ではないか、こういうふうに思うわけでありますが、一番心配なのは外務省の態度であるというふうに思います。これはもうアメリカを見たりそっちを見たりということで、何か我々にもいま一つぴんと答えが返ってこないというふうに思うのですが、今の松下政務次官の答弁それから私の話、これを総掌して、外務省も不退転の姿勢でAPECに臨むのだ、こういう決意をひとつここで御披瀝をいただきたいというふうに思います。外務省、ひとつ。
  17. 大島正太郎

    ○大島説明員 外務省としての考えを御照会いただきましたけれども、今回のAPEC、議題は、広く国際金融問題、経済技術、電子商取引、それから貿易・投資の自由化、円滑化の問題でございます。その中で、御照会のEVSL、早期自主的分野別自由化について我が国の立場はどうかということだと思いますが、私どもとしても、基本的な立場は先ほど来のとおりでございまして、政府としての立場はそのとおりでございまして、これは自主性の原則のもとに行うということでございます。  そして、そのような立場を外交的にもいろいろなレベルで説明に努めてきております。ちなみに、現在、高村外務大臣御自身、インドネシア、豪州、ニュージーランドと回っておられますが、各地で日本の立場を強く説明されてきております。基本的に我が国の立場に理解を求めるべく努力しておりますが、率直に申して、まだ完全には我が方の立場をすべての国が支持するというふうには至っていないということも事実でございます。  いずれにせよ、我が国としましては、自主性の原則のもとに実施すべきであるという考えに基づいて、この水産物、林産物については、EVSLにおいてウルグアイ・ラウンドの合意を超える関税・非関税措置はできないとの立場であるということを強く主張してまいる所存でございます。閣僚会議、非公式首脳会議においては、右の立場を維持しつつ、APECの成功に最大限努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  18. 松下忠洋

    ○松下説明員 中川農林水産大臣もゆうべ帰ってまいりました。農林水産省としての考え方をしっかり、先ほど申し上げましたとおりの考え方ですので、これを関係省庁ともしっかり、大臣等とも打ち合わせして、一体として臨むようなふうにして努力してまいります。  そういうことで、政府一体となってやってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  19. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 まだまだお尋ねしたいことはいっぱいございますが、時間が参りましたので次の機会に譲らせていただいて、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  20. 穂積良行

    穂積委員長 次に、小平忠正君。
  21. 小平忠正

    ○小平委員 民主党の小平です。  きょうは米審ということで大臣、食糧庁長官がそちらの会場の方に行っていますので、APEC、今大事な話題の中心にありますが、これらについては後刻大臣出席の時間帯で質問をいたします。したがいまして、まず前段に政府に対し、今ほど山口次長から報告がございましたが、この米に対しての問題を幾つか質問いたしますので、よろしくお願いします。  とはいえ、今いろいろとお話があったことは、既に先々週ぐらいに政府・与党サイドでのそういう作業過程が決まりまして、外に出ております。したがって、従来七月にあった米価のあの旧食管法時代、今新食糧法の中で、果たしてきょうこの時点で委員会、一般質疑を開くことはいつでも大事ですけれども、米審に合わせる形での委員会というものがもう形骸化しているのではないか、そんなふうに私は疑問を感じます。  また内容についても、今山口次長からの説明、これをきょうの米審会場でも政府が、多分長官がるる説明をして、それをいろいろと審議する形をとりながら、結果的にはこれを追認、そんな形で決まっていくのではないか。そう思うと、今のこのあり方が本当に生産者、消費者我が国の大事な基幹食糧、米を決める大事な審議の場がこんなのでいいのか、そんなことをまず冒頭私は大いに疑問を感じますが、それを申し上げながら、用意しました質問をいたしますので、よろしくお願いします。  まず、買い入れ数量、それと備蓄、これらについての問題であります。  今説明がありましたように、本年産の買い入れ数量の政府方針は三十万トンであります。これは政府米販売量五十二万トンを見込まれる中に備蓄運営ルールに基づいて決めてこられた数量でありますが、大いに予定が狂いまして、この五十二万という数字を政府としてどう評価されるのか。  特に、昨年十一月の計画では十米穀年度の政府米販売数量は百二十万トン、こう予想したわけですが、これは極めて甘い甘い見通しであった。しかし、そのことはもうあの時点でも我々も指摘しましたし、十二分に予想し得た数字であるにもかかわらず、役所の構築した形というか、百二十万トンという数字を予想されました。しかし、今申しましたように、もともと市場が過剰な中で政府米を主食用で売ろうという発想に大変な無理があったのではないか、これは言うならば現行の回転備蓄制度の宿命と言える欠陥ではないか、こう私は思うのであります。  備蓄制度は、本来食糧安全保障の視点が明確に位置づけられるべきものである。それは、過剰のときには買い上げて備蓄し、不足のときに放出する、まさしくそのことが備蓄でありますね。このことは新食糧法でも目的でうたっております。そして、主要食糧需給及び価格の安定を図るという趣旨にも合致している。  しかし、現実にはその逆の政策がとられてきた。政府は、この間、だぶつきぎみの米の市場に在庫米を放出し、米価の低落に拍車をかけ、さらに生産調整面積の拡大を農家に強いてきた。これが事実ですね。  であるならば、思い切って備蓄制度を根本的に見直しをしてみたらどうか。既に政府でも、九米穀年度の在庫ミニマムアクセス米については、国産米の需給に影響を与えないよう飼料用備蓄等として取り扱う、限定数量ながら実質的な棚上げ備蓄的な処理を行ってきたわけですね。この考えをさらに拡大をして、海外食糧支援などとリンクする、今インドネシアを初めこういうことが日本に求められていますね。ですから、海外食糧支援などとリンクした棚上げ備蓄制度の確立をすべきである。  今回の一連の米の状況を見て、新食糧法における政府米イコール備蓄というこの大きな柱の中で、回転備蓄から棚上げ備蓄、こういうことをこの際思い切って検討することが必要であり、それを確立すべきではないか、こう思うのでありますが、これについて食糧庁はいかがお考えでしょうか。
  22. 山口勝朗

    山口説明員 お答えいたします。  御質問は二点あったかと思いますが、まず一点目の政府買い入れ数量、販売数量の関係でございます。十RY、五十二万トンの政府販売数量でございましたけれども、それにつきましては、その前提といたしまして、昨年策定いたしました新たな米政策大綱におきまして、備蓄運営ルールを前提として、政府の販売方法については自主流通米の販売との連携を図るということとしたわけでございます。  また、十米穀年度の政府米販売数量については、こうした政府米の販売方法によりまして変動の可能性があるという前提で、先生、先ほどおっしゃられました百二十五万トンと計画したものでございます。これを受けまして、政府といたしましては、毎月自主流通法人と協議いたしまして、政府米の値引き販売の抑制あるいは販売対象銘柄の限定を行いまして、自主流通米の販売を優先させることにより市場の安定を図ってきたところでございます。  このため、政府としましては、一方で販売サービスの改善、具体的には販売の手続の簡素化であるとか配送の迅速化などをやりまして、販売実績を上げるべく全力を挙げて努力してきたわけでございますが、先ほど申しましたような自主流通米の販売を優先させるということもございまして、自主流通米の販売が前年を大幅に上回る一方で政府米の販売は前年を大きく下回る結果となったということでございます。  もう一つ備蓄制度あるいは備蓄の運用のことでございますが、備蓄の運用に当たって棚上げ備蓄をしたらどうか、あるいは海外食糧支援とリンクさせてはどうかというお話でございます。  既に先生御案内のとおりでございますが、現行備蓄の運用につきましては、回転備蓄におきましては順次在庫の年産が更新されるために、棚上げ備蓄に比べまして品質が一定に保持されることから、主食への円滑な供給が可能になります。他方で、棚上げ備蓄につきましては、一定期間の経過による品質の劣化等によりまして、主食への販売が困難になり、主食用以外へ振り向けざるを得なくなるというようなことで、多大な財政負担を伴うことになります。こういうような事情を考慮いたしまして、回転備蓄方式をとっているところでございまして、現時点でこの備蓄方式変更考えておりません。  また、政府米在庫を海外援助に仕向けることにつきましては、そもそも食糧支援といいますのは、被援助国等の要請を踏まえて人道的見地から行うものでございまして、政府国産米在庫の適正化を図るためにあらかじめ制度化といったような形をとるということは難しいのではないかというふうに考えているところでございます。
  23. 小平忠正

    ○小平委員 幾つか質問を用意しましたので、今次長の御答弁をいただいて私なりに反論もしたいのですけれども、時間もありません。ただ、一点だけ、いわゆる備蓄の基本的な考え方。  それは政府の今の姿勢はわかります。わかるということは、話はわかるけれども私は承知はしませんということですよ。反対ですけれども。その中で、後段に言われたいわゆる海外援助についての問題で、援助先からの、相手からの要請があって初めてそういうものが行える、今そういうお話でしたね、山口さん。確かにそうですが、そのことによって、今回のインドネシアでも、あの支援要請を受けて随分時間がかかってしまった。その間、インドネシアの国民は毎日の生活において非常に飢餓の状況に置かれていた。  したがって、大事なことは、援助するならば迅速に、速やかにその期待、要請にこたえることが、これが我が国がこの世界においてでき得る貢献であります。今世界の食糧事情は逼迫しています、人口の爆発的な増大に伴って。それは相手から要請があったからやるというのではなくて、この情報化時代です、その年の気象状況、またいろいろな各国の経済動向を含めて、我が国としてもう十二分に調査は行き渡っていると思います。その中で、大体こんなことがあり得ると予想するものを想定して準備していくことが、これが言うならば援助であって、既に前のケネディ・ラウンドでアメリカを中心に小麦を中心にした援助体制というものをつくってきたわけでしょう。  そうなると、我が国は米なら援助できる。アメリカやタイ、あるいは豪州にしても、米の輸出国でありましても、彼らは輸出できるけれども米は援助できない。小麦は援助できますね。しかし、彼らは、米はタイですら援助できないわけでしょう。日本でなければ援助できませんよ。そのことが、私は、これからの次世紀に向かって日本が世界に確たる地歩を築くための大きな一つの要因になると思うのですね。  そんなことを私は考えていますが、ぜひ、かたい頭を少しやわらかくして、本当に実のあることに持っていってもらいたい。話すと切りがないので、次に移ります。  その次に、生産調整の問題でありますが、今生産調整面積は、この両年、今回の九十六万三千ヘクタール、そういう大変な面積、この減反を続行するわけであります。今回もこの減反面積における転作の取り組み状況は、これは達成県、あるいは未達成というか達成しない県、いろいろありまして、それで生産調整に当たっては、この転作への支援が非常に重要な施策になるわけですね。  転作作物である麦、大豆、飼料作物などへの支援策を今後どう強化、構築していくのか。特に政府の新しい麦の政策では、今後政府買い入れを段階的に廃止をし全量を民間流通する仕組み、この六月の麦価の米審でもそういうような方向を出されましたが、今後麦価の暴落は私は必至だと思います。政府も麦作経営安定対策を打ち出してはおりますが、激変緩和措置としてはいかにも不十分であると思います。一方でこのように九十万ヘクタール超の減反を要請しておきながら、そしてあわせて転作を奨励しておきながら、他方で転作物の経営の環境を悪くするというのでは、これでは有効な政策誘導は図れない、私はこう思います。  特に麦、大豆といった作物は、我が国の食糧自給率を向上させる、そういう方向においては重要な戦略作物ですね。この位置づけをもっと明確にして、そして所得補償を柱とする経営安定対策を確立していくべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、いかがですか。これはどなたが答えていただけますか。
  24. 樋口久俊

    ○樋口説明員 お答えを申し上げます。  まず、生産調整の部分を中心にしまして私の方からお答え申し上げたいと思いますが、先ほど先生もおっしゃいましたように、十年度の生産調整につきましては、米の需給状況を踏まえて過去最大の生産調整規模で取り組んでいただきまして、対象水田面積九十六万ヘクタールに対しまして九十五万四千ヘクタールが実施見込みということで、全国的にはほぼ目標を達成したと考えております。  その内訳としまして、転作が全体の六割でございますが、特に麦、大豆、飼料作物等の一般作物が転作全体の七割強、約四十万七千ヘクタールでございまして、前年度に比べまして約三割、九万ヘクタールの伸びとなっております。特に、お話がございました大豆につきましては、約六割増、約三万ヘクタールの増となるなど、転作の推進の効果があらわれたものと考えております。  特に麦、大豆、飼料作物、これらにつきましては、緊急生産調整推進対策を行います上で大変重点を置いたものということで私ども考えておりまして、実需者ニーズに合いました高品質で生産性の高い作物生産に取り組めるようにということで、助成金の水準を高くしておりますほかに、特別の対策も実施をしておるということでございます。  残りはまた食糧庁の方から一部お答え申し上げます。
  25. 山口勝朗

    山口説明員 麦の関係について若干補足いたしますと、麦につきましては、言うまでもなく米に次ぐ主要食糧穀物でございますし、水田営農、畑作営農にとっても大変重要な作物であるという認識を私どももいたしております。  しかしながら、生産、流通、加工、各面でいろいろ分析してみますと、多くの問題が生じてきております。そのため、民間流通への移行を契機とし、生産者が創意工夫、努力すれば報われ、実需者もこれを希望して求める、その結果我が国の麦作が定着し、麦自給率の向上を一歩進めていくということを基本的な考え方といたします新たな麦政策大綱を本年五月に策定したところでございます。  この大綱は、民間流通への移行を基軸として麦政策を総合的に見直すものでございまして、この大綱に即して、生産者の経営安定を図る観点から麦作経営安定資金を創設するとともに、災害時の収入減に対応する観点から農業共済制度を拡充する方向で検討しているところでございます。  農林水産省といたしましては、麦作経営及び麦関連産業の将来展望を切り開いていくために、大綱で示された施策の具体化について現在精力的に取り組んでいるところでございまして、できるだけ早くその結果をまとめ、具体的な方向に進んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  26. 小平忠正

    ○小平委員 現下の状況はもう悪化の一途をたどる中で、政府の打ち出すいろいろな施策が本当に有効に機能しているかということに対して、我々も大いに疑問を持っていますし、政府当局もこのままじゃいかぬと思っていると思うのですが、役所的な御答弁をいただきました。  私は時間も少ない中で、特に負債対策、これが大きな問題として今横たわっています。新農業基本法、先般答申も出まして、いよいよ来年の通常国会に予定されますが、今我が民主党としてもその作業をやっております。それらについては基本的な考え等をこの後の時間で大臣に質問いたします。  しかし、多くの生産者、特に稲作農家の関心事は、次世紀に向かって新農業基本法をしっかりつくり上げる、本当に効果あらしむる法律をつくることも大事ですけれども、まずその前に今日の経営、生活を守るためにどうにかしてほしい、このことはまさしく負債対策、これに尽きると思います。  したがって、私が少し用意しました質問にのっとってお聞きいたします。  特に北海道のような大規模農業地帯では、土地改良の負担金対策が農業政策上の大きな問題になっております。この問題は、我が国の食糧政策を進める上での主力である専業農家の存続にかかわる問題であり、見過ごせるものではない。食管法体制下では、米価について言えば、政府米価が農家経営の下支えをある程度行ってまいりましたが、新食糧法への移行や最近の自主流通米価格の値幅制限撤廃等で米価は市場原理に基づくものとなってまいりました。米以外の農産物についても同様の状況と言えると思います。このように考えてみますと、土地改良によるコスト削減努力の恩恵を最も多く受けているのは生産者ではなくて消費者である、こう言えると思います。その反面、農家にとっては、農産物価格の低迷でコストの削減努力が報われず、経営安定に結びつかない状況となってきております。この問題の本質はこのあたりにあるのではないか、こう私は思います。  つまり、農産物価格政府主導から市場原理に移行し、価格形成構造が根本的に変わってきたにもかかわらず、土地改良にかかわる農家負担の考え方は一向に変わらない、負担額が硬直的に設定され続けてまいりました。その結果、土地改良の効果は確実に消費者には還元されたが農家には還元されず、逆に負債ばかりが大きくなった。構造的に欠陥があるとしか思えないが、いかがでしょうか。  次に、市場原理に基づく農産物価格決定については、時代の流れでもあり一概に否定するものではありません。民主党も、価格政策から所得政策への転換を考えてまいりました。しかしこれはあくまでも農家経営の安定が前提であります。この際、農家負担のあり方は根本的に改めると同時に、農家負債対策として直接補償的手法を用いていくべきではないでしょうか。これらの課題は、現在検討されております新たな基本法の中でどのように政策化する考えか。  いわゆるデカップリング制度については、我が国では専ら条件不利地域対策として理解をされておりますが、本来は専業農家にこそ用いる制度ではないでしょうか。特に、負債対策は構造政策上重要であるとともに、WTO農業協定の緑の政策に該当すると思いますが、いかがでありましょうか。  これらの問題等お聞きしますので、お答えをいただきたいと思います。
  27. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 初めに、土地改良の農家負担の問題についてお答えを申し上げます。  農家負担を極力圧縮して農業者にコスト低減メリットを還元すべきであるという御趣旨と承りましたけれども、この点につきましては私どももこれまで随分努力を重ねてまいりまして、対策として充実をさせてまいりました。  第一に、まず、適正な整備水準ということで必要な程度の整備をする、さらに、工法もできるだけ低コストの工法を用いるということをやっております。  それから二点目には、地方公共団体、それから農家の負担をできるだけ一定のものとするように、これは平成三年でございますけれども、自治省とお話し合いをいたしましてガイドラインを設けました。このガイドラインによりまして、農家の負担が一定の割合になるような指導を行っております。  それから、平成五年、平成九年と実施をいたしました対策でございますけれども、残余の農家負担分は当然資金借り入れということになりますので、この部分につきまして、一定の事業につきましては無利子の資金を使えるような手当てをしてきております。  私ども、多少PRが足らない点もございますので、そういう点につきましてはこれからもう少し啓発をしたいと思っておりますけれども、こういった対策を年々重ねてきておりますので、これによって農家負担の軽減が今後も図られるように続けていきたいと思っております。  なお、事業が完了いたしました地区の負担金問題につきましても、負担のピークを無利子で先にずらす平準化の事業であるとか、あるいは高い時代に借りた利子、一定部分以上利子助成をする、この点につきましては、特にこういう低金利の時代でございますので、今年度からは従来の三・五%以上を対象にするというところから二%以上を利子軽減の対象にするというふうな政策も打ってきておりまして、今後ともそうした努力を続けまして、負担金の年間の額の圧縮と土地改良コスト低減の効果が農家のメリットとなって残りますような努力を続けたいと考えております。
  28. 竹中美晴

    ○竹中説明員 お答え申し上げます。  経営の改善に必死に取り組んでこられた農家の方が経営困難に陥る、大変残念な事態でございます。  御指摘のありましたような負債に苦しむ農家に対しましては、これまでも各般施策をとっておるところでございます。借入金の借りかえを行う農家負担軽減支援特別資金の融資とか、あるいは制度資金の毎年の返済資金を融通するリリーフ資金といった負債整理資金を設けまして農家の負担軽減を図っているところでありますし、また、個々の農家の実情に応じて償還期限の延長とか、あるいは中間据置期間の設定などの償還条件の援和措置も講ずることにいたしておりまして、金融対策としては、農家負債対策としてぎりぎりの対応をしているところでございます。  こういった対策を超えて御提案にございましたような直接所得補償的な手法をとるということにつきましては、その直接所得補償的手法の内容にもよるかと思いますけれども、仮に農家の負債の直接的な穴埋めというような措置をとるということであれば、負債問題がいかに深刻であるとはいえ、他産業とのバランス等もございまして、なかなか国民的な理解は得にくいのではないかというふうな印象を持っております。  なお、そういう直接所得補償的手法による負債対策はWTO協定上どういう位置づけになるかという御質問もございました。  ただいま申し上げましたように、具体的にどういう内容に仕組むかということにも大いにかかわってくることでございまして、なかなか一義的には申し上げにくいわけでございますが、仮に負債の穴埋め的な直接支払いということになりますと、現在、WTO協定上いわゆる緑の政策として列挙されているものには、生産に関連しない直接支払いとか、あるいは収入保険なり収入保証に関する財政的支援とか、あるいはまた環境政策にかかわる直接支払い、そういったものが列挙されているわけでございます。負債の穴埋め的な直接支払いがこれらに該当するかどうかといいますと、これらの列挙されているものににわかには該当しにくいのではないかというような印象を持っているところでございます。
  29. 小平忠正

    ○小平委員 今、構造改善局長さらには経済局長から御答弁いただきましたが、それで農家経営が良好にいっているのならもう何も言うことはありません。我が国の大事な基幹産業である食糧を所管する農水省、その農政、特に、その方策どおり従ってやってきた農家が今のお話の中でどうなっているか。現実は逆の方向へ行っています。  それで、実はきょう、委員長のお許しを得て各委員の皆さんにもお手元にお配りしまして、政府席にも配ってありますね。ちょっとごらんいただきたいのでありますが、実は岩見沢市というのが私の地元であります。私もそこに住んでおりますが、そこで平均的な農家の経営状況調査の結果を私は要請して取り寄せまして、お配りしました。A、Bと二つあります。  大体私の地元、空知支庁といいますか、そこは日本で最大の米作地帯です。面積的に言って、量的に言って、最大の米の産出をするいわゆる石狩川水系、この最大の米作地帯であります。そして稲作農家はほとんどが専業であります。農業以外には収入は考えられない。あっても冬場出稼ぎをする、しかもこういう不況の時代においては出稼ぎもままならない。そういう状況にありまして、専業をしている地帯でありますね。  そこで、A農家というのは大体九ヘクタール、これは規模拡大をそうしていない農家です。それからB農家、これは約十六ヘクタール、これは政府の新政策に従って規模拡大をしてきた農家です。  その農家の大体平均をとりまして、ここ三、四年の決算を書いてあるのですが、そうしますと、農業の粗収入、これが平成十年に向かってはずっと下がってきています。それは言うならば米の価格が下がったこと、これが大きな要因であります。そして、経営費というのは逆に諸物価の高騰等により上がってきている。そうしますと、その他農外所得も一部ありますので、出稼ぎ等をしておりますので、それも合わせて農家所得。  それを平成十年で言いますと、農家所得がA農家では約百三十万、それで経営費が七百五十万。そういうところで、実質かかった経営費を引き、さらに言うならば、今お話があったいろいろな資金ですね、借入資金。この年次の償還。これを見ますと、もう平成十年では、この規模拡大等をしない小さな農家でも、赤で書いてありますように、それはマイナス百三十一万ということは持ち出しです。  これが一転、B農家、新政策に従って規模拡大した農家についてはもう既に平成八年から。平成八年というと、米価平成七年までは据え置きでしたが、平成年産からは低くなりましたね。それを大きな起点にして、こういう政府の方針どおり規模拡大に努めた農家は、平成八年から可処分所得でごらんのようにマイナスになっております。本年も三百二十二万という赤字です。  ではどうやって生活するか。これは簡単な話、預貯金の取り崩しです。これは農家のみならず、各国民が不測の事態に備えて、あるいは病気ですとか何かの出費、あるいは結婚の準備とか、いろいろなことについて蓄えをしますね、貯蓄を。それを今取り崩しているわけです。  それで、こういうコメントを私は受けております。急激な米価の下落等により、身を削り対応してきたがもう限界である。来年度から農業を続けるべきか悩んでいる。これ以上の規模拡大、その負担を償還する見通しは立たず、耕作を続ければ続けるほど生産費割れしている低米価では、負債の償還どころか毎年ふえ続ける現状であって、耕作地の放棄を思い悩んでいると。  さらには、現状の米流通の中での米価の下落は、いわゆる府県農業では影響は少ないと思います。わずか二%ぐらいの影響率と思いますが、UR合意後の新政策に沿う形になった北海道稲作経営においては、経営を悪化させる大きな要因となってきておる、こう受けとめているわけであります。  したがって、稲作経営安定のために緊急的に農林公庫の償還猶予が実施されました。昨年は特に償還猶予がされました。それは単に利息の翌年支払い、償還の年次延長は緊急避難的なものであって何の得策でもない、こう受けとめております。  今申し上げましたように、キャピタルロスが進んでいる、そういう中で、農林資金の、農地取得にかかわるものについての利息軽減措置、償還のピークを迎える平準化資金の創設、農業施策に沿った経営体質改善へ向け、一定期間、農林資金の一時払い停止による政策支援、これらもろもろの要求が出ております。こういう措置をしていかなければ、今表で示したように、これは平均的な専業農家のいわゆる窮状です。これではもう農業を続ける意欲はありませんし、実際的にもうこれは無理です。こういう状況が今の専業農家の実態です。  御答弁いただきたいのですが、時間が来ましたので、この後、大臣の時間帯の中でこれについての政府のお考えを聞きます。今この時間は私は質問だけにとどめますので、後刻お願いいたします。ありがとうございました。
  30. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  31. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは米価審議会が行われておるところでございますので、前半は米の問題を中心にして、骨太なお話を少しさせていただきたいと思います。特に、二〇〇〇年にWTOのいわゆる米の問題のミニマムアクセスの見直しが行われるわけでございます。そういう中におきまして、我が国の今後の食糧安全保障政策の中で米をどのように位置づけていくか。私は、その基軸に米戦略というものを考えていくべきであろう。  そういう米戦略の中で、本日行われている米価審議会我が国政府の買い入れ価格あるいは売り渡し価格の米の値段が諮問をされ、きょう答申が出てくるわけでございまして、そうした審議会が毎年こうして行われるわけでありますが、果たして、二〇〇〇年のWTOのミニマムアクセスの見直し、そうした戦略を考えた路線の中においてのこの米価審議会であるのか、政府としてはそうした米戦略というものを本当に持っているのであろうか、私はいささか疑問を持っている一人であります。  先ほど来お話がありましたように、APECにおかれましても、林産物や水産物の関税問題においても明らかにアメリカは戦略を持って、このAPECの関税交渉でもないそういう場を利用して、次の対応に向けて明らかに戦略を持って対応してきている。それと同じように、私は、米においても、二〇〇〇年以降をにらんで、我が国がどういう戦略を持って臨んでいくのか、そういう中での米価審議会あり方あるいは新しい米政策あり方、これがきちっとこの戦略の路線の中で位置づけされているのかどうか、この辺をきちっと見定めた中でやっているのかどうか、この点についてまず政府のお考えを伺っておきたいと思います。
  32. 山口勝朗

    山口説明員 お答えいたします。  食糧は国民生活にとって最も基礎的な物資であり、国民に対し安全な食糧を安定的に供給していくということは国の基本的な役割であるというふうに認識いたしております。特にその中で、米につきましては、言うまでもなく我が国国民の主食としての役割を果たしておりますので、国民に対して安定的な供給を図ることは特に必要であるというふうに考えております。  そういうような観点から、米の需給及び価格の安定を図っていくということが重要でございますが、そのために、具体的には、生産者の自主性を生かした稲作生産の体質強化、需給実勢に応じた適正な価格形成価格変動の稲作経営への影響の緩和による稲作経営の安定といったようなことに努めますとともに、不作等の場合にはその供給が不足する事態があり得るわけでございますので、そういう場合には、こういう事態に備えて今後とも政府が必要な数量の米を備蓄していくということが必要ではないかというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  33. 宮地正介

    ○宮地委員 まず、きちっと食糧安全保障政策の中で米というものを基軸にする、そういう中でどういう戦略を組んでいくか。今お話しの備蓄政策もその中の一つです。もう一つは、稲作農家に対するこれからの経営的な面、あるいはEU諸国等がとられているようなデカップリング方式という直接所得補償政策を導入するのかどうか。  今回、新しい食料、農業、農村政策の答申の中で、中山間地域に導入するという一つの方向性が一歩前進としてとられたことは評価しますが、今後稲作農家にもそうしたデカップリング方式というものを導入していく、そういう新たなる戦略的政策導入をするのかどうか、あるいは今の内外価格差の大変なこの問題をどういうように戦略的にクリアしていくのか。今あなたがおっしゃるような、我が国の主食である米を本当に戦略的なそういう基軸に置いてこれからの二十一世紀の食糧安全保障政策の中で明確にしていく、それが大変大事ではなかろうか。そういう点がどうも単なる画一的な政策に終わっているのではないか。  既にアメリカ初めEu諸国においても、農作物については、特に自国の中心的農作物についてはもう戦略的にやってきているわけです。我が国がそれに対応した戦略的な政策をつくり上げていかなかったら大変なことになるんじゃないか。まずこの点については、大臣が来られたらまた大臣にも伺いたいと思いますが、そこがまず大事ではなかろうか。  そういう中で、本日の米価審議会諮問した問題について、時間がきょうは限られておりますから端的に伺ってまいりますが、まず、三十万トンの買い入れ量、この積算の根拠を国民にわかりやすく説明してもらいたい。
  34. 山口勝朗

    山口説明員 お答えいたします。  このたび、十年産米の買い入れにつきましては、先生おっしゃられましたように最終的に三十万トンというふうに決めたところでございます。  この考え方基礎になっておりますのは、昨年の新たな米政策大網によりまして、政府買い入れ数量は、十米穀年度の政府米販売実績から二十五万トンを差し引いたものとされているところでございます。そこで、十米穀年度の販売実績でございますが、十月分の販売量の確定数値はまだ出ておりませんが、およそ五十二万トン程度と見込んでおります。最終集計を行いますとこれを上回る可能性もあるわけでございます。そうしたことも踏まえまして、買い入れ数量につきましては、最終的に五万トン単位で整理いたしまして三十万トンとしたものでございます。  以上でございます。
  35. 宮地正介

    ○宮地委員 当初、買い入れの量についても、二十五万トンとかという話もいろいろマスコミでも報じられておりました。食糧庁は、二十七万トン、それを丸めて五万トン単位だから三十万トン、こういうことで三万トン丸めたわけであります。三万トンといいましても、これは金額にかえまずと七十七億ぐらいで、大変な金額です。  それはそれとして、問題は、この三十万トンの各都道府県に対する配分、これがどういうふうに今後なっていくか、これは最大の注目であります。現段階でどういうふうに考えておるのか、基本的な方針を示していただきたい。
  36. 山口勝朗

    山口説明員 三十万トンの政府買い入れ数量の都道府県別記分につきましては、産地ごとの需給改善の状況を踏まえまして、各都道府県の自主流通米生産、販売体制の確立と都道府県ごとの生産調整目標の円滑な調整に資するよう、生産者団体の意向を踏まえて行っていきたいというふうに考えております。  具体的に申しますと、十年産政府買い入れ数量三十万トンのうち一十五万トンにつきましては、政府買い入れ実績、これはウエートとして八〇%でございます。さらに県産銘柄別政府米販売実績、これはウエートで一五%でございます。さらに生産調整面積、これのウエートは五%でございます。これらの三つの要素に応じて都道府県別に配分するということにしております。  また、残りの十五万トンにつきましては、十年産生産調整を一〇〇%以上達成したものの大網による需給改善効果の発現がおくれている都道府県等について、十一年産生産調整目標面積の自主的な拡大に応じて配分するといったようなことを考えまして、生産者団体の意向を踏まえて配分することといたしております。  以上でございます。
  37. 宮地正介

    ○宮地委員 生産者団体の意向を踏まえて、十五万トンについては各都道府県の配分は調整をする、こういうこと、私はそれは理解できます。  そこで、特に今回作柄が九八。しかし、そういう中で北海道が一〇四か一〇五だと思います。非常に豊作であった。北海道は拓銀の経営破綻を初めとして、今北海道経済は、我が国の経済全体も大変でありますが、より深刻な経済状況にあることは政府も御存じのとおりであります。そういう中において、今回の自主流通米の入札状況を見ましても、北海道産米の「きらら」などは、政府諮問した今回の政府買い入れ価格を割っているところも出ているような状況であります。  そういうようなことを考えたとき、当然生産者団体からも強い要請があるかと思いますが、政府みずからも、北海道については、そういうバッググラウンドを慎重に精査した上で、この十五万トンのうちの配分についてはそれ相応の配慮があってしかるべきだと私は考えております。  この点については、政務次官、答弁してもらいたい。
  38. 松下忠洋

    ○松下説明員 地域によっていろいろな事情もございますし、そういうところは十分勘案していかなければいかぬ、こう考えております。
  39. 宮地正介

    ○宮地委員 次長、同じく。
  40. 山口勝朗

    山口説明員 確かに、先生今おっしゃられましたように、地域によっては需給改善効果の十分でない地域がございます。いわゆる政府米地帯と旧来言われているような地域でございます。  そういうところにつきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、三十万トンを二つに割りまして、十五万トンは通常の配分、昨年の実績、従来の実績を勘案した配分、それから残りの十五万トンにつきましては、需給改善効果の発現のおくれている地域、都道府県を念頭に置きながら、生産者団体がいろいろまた御要望をされると思いますので、そういう御要望を踏まえて配分してまいりたいというふうに考えております。  繰り返しになりますけれども、今の残りの十五万トンの配分をそういう形で行いますと、結果として需給改善効果の発現がおくれている都道府県に配慮されたということになるのではないかというふうに考えております。
  41. 宮地正介

    ○宮地委員 その点については、十分に精査した上で、全国的な地域状況を見ながら、特に北海道の状況というのは大変に厳しい状況にあることは生産農家においてもしかりでありますし、また、失業率の状態、経済危機の状態、あらゆるバックグラウンドが非常に悪い状況にあるわけでございますので、ぜひそうした点で十分な配慮を生産者団体との話し合いの中でしていただきたいと強く私は申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、今回の買い入れ価格算定方式の問題でございますが、いわゆる自主流通米変動率あるいは生産費の変動率、これを足して二分の一、そういう中でマイナス一・七五%、こういう数字が出ているわけでございますが、この算定方式について今後さらに見直していく必要性があるのではないか。  今の算定方式でいった場合、これは自主流通米だから市場原理を導入しているとはいっても、現状では年々価格は下落をしていくであろう。むしろ逆に、国内で災害が起きたり、あるいは今回のような集中豪雨等によりまして東北地方を初め本州ではやや不良という結果が出た。結果的に、これが結果オーライというようなことで、今回の買い入れ数量が三十万トンと昨年に比べて非常に調整ができた。これはあまり芳しいことではない。  やはり日本の今までの作柄を見たときに、一〇〇あるいは一〇〇を超える、そういう状況の中でいったときに、果たして今の算定方式はこのままでベストと言えるのかどうか、この点について、政府としては毛頭まだ見直す考えはないかもしれないが、私は、精査をしつつ、やはり現状に合わせた算定方式に見直すだけのそうした考え方も十二分に持っていていいのではないか、こう考えておるわけでございますが、この点についてはどういう考え方であるか、政府考えを伺っておきたいと思います。
  42. 山口勝朗

    山口説明員 現在の算定方式につきましては、先生今申されましたとおり、自主流通米価格変動率生産コスト変動率を均等にウエートづけして前年産政府買い入れ米価に乗じることにより算出するという方式でございます。  私どもといたしましては、この算定方式は、需給事情市場評価を反映させながら安定的な価格運営を図り得るという点で適切な方式であるというふうに考えておりまして、現時点で見直しを行う必要はないのではないかというふうに考えております。  それと、先ほど、現在の算定方式によればずっと価格は下がっていくのではないかという御懸念のお話がございましたけれども、現在の算定方式によりますと、仮に自主流通米が上がっていけば、それはまた価格上昇の結果が算定方式に反映されていく、あるいは物価などが上がっていけば生産コストの点で上がることもあり得るという算式になっておりまして、今の算式であるからということをもって一方的に価格が下がっていくということにはならないというふうに考えております。
  43. 宮地正介

    ○宮地委員 言葉足らずで、次長もちょっと理解が足りなかったかもしれませんが、一つは、米離れが非常に進んでいる。米離れ対策をどうするか。やはり需要供給の関係で市場原理というのは動くわけですから、ここの変動率は、米離れが進めば進むほどやはり需給関係のバランスが崩れてくる。  もう一つは、生産費の方も、これからは時短をどんどん進めていくわけですから、当然農業生産者の時短もどんどん進んでいくわけです。こういう中で、やはりここもプラス要因というものは大変厳しい状況にある。  両方ともそうした大変な環境、バックグラウンドが厳しい状況であるから、一般常識的には非常にここは厳しい状況になりますよ、だから全くここは算定方式は変えないんだというかたくなな姿勢は、これは私は一考を要するのではないか。今の段階では、新しい米政策の中でつくり上げた一つの方程式ですから、これをすぐ変えるということはできないにしても、その中身の分析をしていくと、その要因は相当厳しい要因がありますよ。だからいつまでもかたくなにしているのでなくて、柔軟に現状分析に対して対応できるような算定方式というものをやはりつくり上げていくべきであろうということを申し上げたわけでございまして、時間がありませんので答弁は要りませんが、ぜひ今後そうした考え方を持ちながら柔軟なる対応、これが私は求められているのではないか、このことを強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  44. 穂積良行

    穂積委員長 次に、菅原喜重郎君。
  45. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一応私から三点質問いたしたいと思います。  また米価審議会の季節がやってきて、いろいろ陳情も受けているわけですが、かつてのような陳情合戦はなくなったとしても、米審にかけての陳情の労苦は毎年繰り返されていて、本当に私たちも、その労苦は大変なものだな、費用も大変なものだな、このように考えているわけでございます。  新食糧法では市場原理を取り入れたわけですから、政府米も市場原理に従った買い上げをするようにすれば米審だなんというのもなくしていけるのではないかというふうに考えているわけですが、いずれにいたしましても、新食糧法は、備蓄米を除いて政府管理から市場の価格、自由な取引に任せるといいましても、実際には、九五%まだ農協が集荷力を持っておりますから、農協管理に移ったと言っても過言ではないと思っております。  このような農協管理のもとでの米は、今までどおり農協がいわゆる護送船団方式でこれを守ろうとしておりますと、どうしても減反政策、転作させることが必要となっているわけでございます。この結果どうなったかといいますと、もう既に転作率、生産調整の比率は三五・五%ですから、これがまた豊作が続いてきたらもう四〇%にもなっていくんじゃないか、こう思っております。  大体、水田総面積の三五%も転作させなければ米農政ができないというのは、もう既に米政策の破綻じゃないかなというふうに考えております。それでも、こういう結果が、国際競争に対抗できる内容を持って生産農家を充実させているかといいますと、数字で明らかなように全然、兼業農家ばかりをふやして、もう既に九〇%以上が兼業農家ですね。  せんだって、調査室から生産価格消費者価格の表をとったんですが、消費者価格においては、平成九年は、精米キロ当たり三百八十七円四十銭、ドルに換算して三・二ドルですね。これがアメリカですと、精米キロ当たり一・二五ドル。ですから、米国との対比では、二・六倍日本の米が高いわけでございます。平成八年では二・九倍、平成七年では小売価格で三・四倍の価格差があります。  これで、食味関係でアメリカの米はおいしくないといいますが、決してそうじやありませんからね。日本のいわゆるジャポニカ系を持っていって、カリフォルニアなんかではもうつくらせるとなると一千万トンぐらい、日本がこんな価格で買うんだったら黙ってつくってくれる体制があるわけですから。米の食味だって、日本から持っていって、日本の農場の経営者がつくるんですからね。  それから、生産価格を見ますと、何とトン当たり二十万七千三百円、ドルに換算しまして千七百十三ドル、これは米国と比較しますと、二百十五ドルですから、ここではもう八倍も高い生産価格になっているわけですね。平成八年は八・八倍、平成七年には九・四倍、このようになっているわけです。  さらに、実態の報告も政府の方にしておかぬと思ってこの前もこのことに触れたんですが、私の隣町で、二百数十戸ある部落なんですが、そこには水田面積が二百ヘクタール以上あります。そこの私の支持者が委託を受けて賃耕を始めたんですね。そういうことで、本人は二町幾らかの水田なんですが、どんどんどんどん、自分の水田も賃耕してくれというので、この支持者のところにもう既に二十ヘクタール以上のいわゆる賃耕、耕作を頼んでくる。そのために、この支持者は自分で大型機械も入れてこれに対応しているわけですが、さらに苗代、いわゆる田植えまでも頼むということになって、もう既にこの農家は八ヘクタールぐらいの田植えまで引き受けてきた。さらに、今度もみすりから何から調製一切頼むというので、私の支持者は精米機まで入れてやっている。さて、そうなって、全部賃耕で引き受けると、今の米価が本当に安定してこのままいくのか。これが下がったのでは、せっかくこういう機械を入れても払えなくなる。本当に心配して相談に来ているわけです。  実質は、もう既に一農家二十ヘクタールなんか、ここは大体一反歩区画の基盤整備の完了した地域ですから、それでも分散錯圃みたいに、頼まれるところは一カ所じゃないのでそれが困ると言っていましたが、もう既にこの農家なんかでは、水田の経営能力というのは三十ヘクタールなんか自由にできるようになっているわけですね。  そこで、実は価格を下げても農家の手取りがよくなる、同時に、農家もいわゆる国際競争に対抗して守られていく、こういう大規模農家をそろそろ本当に真剣に日本の政策として育てないといかぬ時点だと思っております。これについて、どうも生産調整というのがこういう大規模農家の育成には今大きな障害になっているわけです。  そこで、この大規模農家への配慮、生産調整の中でどのようにやっていこうとしているのか、このことを、これは法律、制度の改定までつながっていくと思うんですが、まずその辺を政府からお聞きしたい、こう思っております。
  46. 樋口久俊

    ○樋口説明員 お答えを申し上げます。  米については、もう先生御承知のように、大変大きな需給ギャップがあるわけでございまして、この需給価格の安定を図るということが大変大事でございまして、そのための生産調整は、稲作農家の皆さん共通の避けて通れない課題であろうと私どもは思っておるわけでございます。  特に、平成十年度から二年間で実施をするということになっております緊急生産調整推進対策におきましては、最大の眼目が、早急にとにかく需給を回復しようということで、それに取り組むということでございますので、全体での生産調整の着実な推進ということが一つ。それから、高度な生産力を有しております水田を有効に活用するということで、稲作、転作一体となった望ましい水田営農の確立を図るということが重要であろうということでございまして、そういうことから、稲作農家全体で対応していただくということで考えているわけでございます。  なお、具体的な対策の中では、大規模農家の皆さんは当然、転作をなさいます場合に水田を集約化する、あるいは団地化を図るということが極めて可能性が高いわけでございまして、そういう場合に、転作をされます所得と助成金交付をあわせて、農家の皆さんに頑張っていただければ、米と遜色のない所得の確保が可能になるように、そういう対策の内容で措置をしているというふうに考えておるところでございます。
  47. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いろいろまた今の答弁にもこちらで再質問したいようなわけなのですが、時間がなくなってきましたから、また別な問題に移ります。  実は、米の販売認可をとっているある業者の方から表をいただいたのです。この方は一俵一万八千円ぐらいで売っているようなのですが、一応農協ということで、大体これは農協だそうで、これを余りはっきりすると大変だというのですが、生産者に対する農協手数料が大体千二百円ですね。そして、農協から俵数をもらって、自分のところでは農協に大体三百円の手数料で卸業者にやっているのだ。今これは計画外ですね。しかし、自主流通米の方では農協の手数料が千円ですね、こちらは千二百円ですが。しかし、経済連、全農を通していくと手数料が千五百円になっていっているので、一俵について我々のところは千五百円、片っ方は二千五百円、もう今こういうことがわかってきているので、農協自体も経済連離れが増加しているのだというのです。  それで、いわゆる農家を守るためにも、さらに今回、きょう発表されたのですが、自主流通米の中で四十七万トンも余っていますから、農家に対して清算するとなると二年越しになってしまいますね。我々は半年で、いわゆる農家決済、生産者への決済ができるのだというわけです。ですから、今こういう実態になっているので、もうちょっと農政も農家サイドとか、流通の決済形態なんかを、こんな昔のままの形態でいいのかというわけなのですよ。  それで、この計画外流通米の実態、それから現実のこういう乖離、中間からこういう手数料が入っていることに対して、政府はどのように把握し、新食糧法では市場原理を取り入れているのですから、今後どのように持っていこうとしているのか。急激な変化を要求するわけじゃございませんが、ひとつ政府の見解をお聞きしたい、こう思います。
  48. 山口勝朗

    山口説明員 お答えいたします。  まず最初に、計画外流通米の流通実態ということでございます。  この流通実態につきましては、平成年産を例にとりますと、生産量から計画流通米、これは自主流通米政府米を足し上げたものでございますが、この出荷量、それから農家の自家消費等を差し引きますと一般米相当の計画外流通米というのが出てまいります。数量にいたしまして約二百八十万トン程度と試算されております。  この流通実態でございますが、食糧事務所の調査結果によりますと、生産者の販売先といたしましては、消費者が約五割を占めておりまして、宅配便等による小口の取引の形が主体となっているものと考えられます。  また、出回り時期でございますが、これも食糧事務所の調査結果によりますと、九月から十一月に約七割が出回っているという状況でございまして、そういう点からいきますと、流通は一時期に集中しているというふうに言えるのではないかと思います。  二点目の、手数料の関係でございますが、農協系統に出荷した場合の系統手数料につきましては、今先生も数字を挙げられてお話がございましたように、それぞれの農協によってもまた違いますけれども、平均的に見ますと、全農、経済連、単協等を通じまして四・二%程度が系統手数料となっているというふうに聞いております。これを九年産自主流通米平均指標価格で一万七千六百二十五円、六十キログラム当たりで試算いたしますと、六十キログラム当たり七百四十円という数字になります。  さらに、流通経費につきましては、運賃、保管料等で六十キログラム当たり八百五十円という数字を聞いておりますので、先生のおっしゃられました千五百円程度という数字にもおおむね合致するのではないかと思います。  この系統手数料でございますが、計画流通米を広域的に流通させていく、あるいは年間を通じて安定的に供給するというためにはそれなりの経費がかかるのは当然でございます。しかしながら、先ほど申し上げました計画外流通米、量的にも大変まとまったものがございます。そういった計画外流通米との競争力という点から見て、極力この流通コストの削減に努めていく必要があるものというふうに考えております。  以上でございます。
  49. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たから質問を終わりますが、私は、業者にも急激に今の体制を変えることは難しいと思うけれども、しかし、政府としても、単協がある程度、いわゆる経済連あるいは全農離れの対応をとったとしても、単協の利益になるところはちょっと大目に見るような、そういう姿勢を望んで、質問を終わります。
  50. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  51. 中林よし子

    ○中林委員 私は、ミニマムアクセス米の問題について質問をさせていただきます。  昨年出されました新たな米政策の展開方向で、ミニマムアクセス米のうち、九米穀年度の販売未達成分二十九万トンについては、国産米の需給に影響を与えないよう、飼料用備蓄等として取り扱うものとするというふうにしているわけですけれども、そうしますと、この二十九万トンのミニマムアクセス米が飼料用備蓄等として取り扱われないとするならば、国産米の需給に影響を与える、こういうふうにお考えなのでしょうか。
  52. 山口勝朗

    山口説明員 先生おっしゃられましたように、昨年の生産と出荷の指針あるいは基本計画に基づきまして、二十九万トンにつきましては、飼料用備蓄等ということで、言ってみれば隔離といいますか、別枠として確保したわけでございます。具体的には、援助用というようなものにもこの二十九万トンは使う予定に当時もいたしておりますし、実際上も援助用にも使用するようにしております。そういう意味でいえば、二十九万トンがなくなれば、そのままそれが市場に出てくれば国産米に影響するのではないかということでは必ずしもないと。  いずれにしましても、MA米、ミニマムアクセス米については、国産米の需給に影響を与えないように加工用等を主体に供給していくという考え方で行っておりますので、いずれにしましても、今後とも国産米の需給には影響が出てこないようにしてまいりたいというふうに考えております。
  53. 中林よし子

    ○中林委員 いや、二十九万トン以外のものはもう既に加工用とか主食に回っているわけですからね。だから、二十九万トンを、ちゃんとここに政府の、農水省の文章として、国産米の需給に影響を与えないように飼料用備蓄等として取り扱う、与えないように取り扱うというふうに書いた趣旨、これは、それをそういうふうに取り扱わなければ影響を与えるということでしょう。
  54. 山口勝朗

    山口説明員 言葉が裏返しになるわけでございますが、国産米の需給にできるだけ影響を与えないようにミニマムアクセス米の取り扱いを行っていくということでございます。
  55. 中林よし子

    ○中林委員 与えないようにするというのはミニマムアクセス米を決めたときの当然の前提だったわけですけれども、しかし、今回新たに二十九万トンは別にする、この新たな扱いの中でちゃんとそのことが書いてある。これは初めてですよ。国産米の需給に影響を与えないように二十九万トンは飼料用備蓄等にというふうにしたわけですから、これまでの主食用だとか加工用に出していたものとは明らかに違う扱いをするということになったわけですから、影響があるわけでしょう。
  56. 山口勝朗

    山口説明員 そのほかのミニマムアクセス米につきましては、先ほど申しましたように、国産米で対応はしにくい加工用向けといったことで供給しているところでございます。
  57. 中林よし子

    ○中林委員 答弁していないのですよ。その他のものは加工用、主食用に出ているのは当たり前の話ですよ。  それで、この二十九万トンをこういうふうにやったということは、九米穀年度について初めてこれは出てきたわけですよ。だから、これがむしろ今までどおりミニマムアクセス米の加工用だ、主食用だ、こういうふうに回ってくれば、当然国内の需給に影響が出るということでこれは外した、こういうことでしょう。
  58. 山口勝朗

    山口説明員 先ほど申しましたように、国内産米に全く与えないという趣旨ではございません。加工用米というのはもちろん米を使うということでございます。それに向けてミニマムアクセス米を振り向けるというのを基本的に考えておりまして、ミニマムアクセス米の供給によって主食用の需給に影響を与えないようにするということを主体、中心にといいますか、そういう基本的な考え方で対応しているということでございます。  なお、二十九万トンにつきましては、そういう意味で、飼料用備蓄等という、援助も含むわけでございます。そういう意味では、主食用とは違う世界で、別の枠取りをしたということでございます。
  59. 中林よし子

    ○中林委員 あくまでも、もしそれが飼料用備蓄等にならなければ影響が出るとはおっしゃらない。しかし、それをやらざるを得なかったということは、影響が出るからでしょう。だからそういう言い方にしたということは、もうここの文章を見れば明らかですよ。  そこで、現実にミニマムアクセス米は、先ほど言われたように加工用米だとか一部主食にも振り向けられていて、国産米の他用途米ともう競合しているということは明らかです。現に日本のみその三分の一、これは既にミニマムアクセス米を原料にしている、こういうふうに言われているわけですね。国産米の需給に影響を与えていることは、実は「農業と経済」の三月号で全中の役員の方もこう言っておられます。ミニマムアクセス米は隔離しているとはいっても、常に圧迫につながっているところがあるわけですと、在庫圧力になっていることを認めているわけですよ。  結局、生産者には過去最高の減反を強制して、そしてさらにそれでもお米が過剰になってきたということになっているわけです。九八年を見ただけでも六十八万トンのミニマムアクセス米が入ってきております。ここにやはり最大の、減反を押しつけたり過剰になったと言っている原因があると思います。  政府米の買い入れ制限、これも結局はこのミニマムアクセス米があるからでしょう。例えば九八年の六十八万トン、これは面積になかなか換算しにくいのですけれども、やってみると、大体新潟県が生産するぐらいの面積比率に匹敵するようなものだと思うわけですね。  だから結局、今回政府が買い入れ制限をさらに強めてくるということ自体が、ミニマムアクセス米と競合していく国産米の生産そのものをやめさせる目的を持っているのじゃないか、こういうふうに思います。だからミニマムアクセス米の輸入のために国産米が犠牲になって、しかも減反が強要されていく、そういうことになっているのじゃないですか。
  60. 山口勝朗

    山口説明員 先ほども申し上げましたように、ミニマムアクセス米につきましては国産米で対応しがたい加工用等の需要に供しているわけでございますが、また、生産調整面積につきましてもミニマムアクセス米の輸入量とは無関係に国内産米需給ギャップを縮減することのみを旨として算定するなど、ミニマムアクセス米が国産米の需給に影響を与えないように措置しているところでございます。  また、政府買い入れ数量につきましてもお話がございましたけれども、ことしの三十万トン、先ほども御説明いたしましたけれども、これは政府備蓄水準を適正水準に縮減していくために備蓄運営ルールというものを導入したわけでございます。その備蓄運営ルールの適用の結果といたしまして、ことし、十年産の場合には三十万トンの買い入れ数量になったということでございます。
  61. 中林よし子

    ○中林委員 どんなにごまかし答弁をされようとも、これまでずっとミニマムアクセス米が入ってきて、それが加工用に使われたり主食にも一部回るという状況の中で、国産米が影響を受けないわけがないですよ。しかも、四年前の閣議了解では、ミニマムアクセス米導入に伴う転作の拡大はしないとか、それから、国産米の需給に影響を与えない、こういうことがありながらもうどんどんそれを崩してきていると言わざるを得ません。  来年にはこのアクセス米が七十七万トン、二〇〇〇年には八十五万トンに及びます。これが国内需給に深刻な影響を与えることはもう言うまでもありません。  そこで、私どもは、それを少なくとも今の制度の中で防ぐ、その方途として、この国産米の需給のルールから完全に隔離して、二十九万トンだけと言わずに、すべて海外援助用あるいは飼料用として処理すべきだ、こういうふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  62. 山口勝朗

    山口説明員 MA米を使った食糧援助につきましては、私ども、現在も被援助国からの要請に基づきまして、また財政事情、あるいはWTOなどの国際協定上の問題をクリアしながら実施しているところでございます。  ただ、今先生のおっしゃられましたように、MA米は全部海外援助に向けるということにつきましては、今申し上げましたような海外食糧援助をする場合の留意点からすると問題があるのではないかということでございまして、私どもは、やはり先ほど申し上げましたような留意点に配慮しながら食糧支援は行っていきたい、今後ともそういう考えでまいりたいというふうに考えております。
  63. 中林よし子

    ○中林委員 時間が来たので終わります。
  64. 穂積良行

    穂積委員長 次に、北沢清功君。
  65. 北沢清功

    北沢委員 社民党の北沢でございます。  先ほどの小平、菅原両委員の御発言とダブる面もあるわけですが、大体同じ意見でございます。  特に米の生産調整について、本年度の生産調整面積は昨年と同じく九十六・三万ヘクタールとなっておりますが、ことしでさえも十六の府県が未達成になっておるわけであります。したがって、ことしのこの実効確保にどのような措置をとられるか、その点についての自信等についてお尋ねをいたしたいと思います。
  66. 樋口久俊

    ○樋口説明員 お答えを申し上げます。  新たな米政策大綱の一環としまして実施されております緊急生産調整推進対策につきましては、農家の皆さんや産地の方々の御協力、御努力によりまして、今年度ほぼ目標どおりの達成が図られたわけでございます。これに伴いまして、自主流通米価格に回復の兆しが見られるなど、一定の効果が得られたものと評価をしております。  しかし、今お話がございましたように、いろいろ課題が残っているわけでございまして、本格的な需給均衡の回復のためには、さらにもう一年の生産調整の着実な実施が必要であると考えております。  したがいまして、十一年度におきましても、生産調整を実効あるものとするということで、一つは米需給安定対策、それから稲作経営安定対策、そして水田営農確立のための助成金、これらの各種の対策を一層浸透させて一体的な実施を確保したいというのが一点でございます。  それから、生産者団体が中心となって取り組んでいただいているわけでございまして、それに対しまして行政としても十分な支援を行っていくということが必要であろうと考えております。  さらに、先ほどお話がございましたように未達成の地域がございまして、そういう地域の解消を図るということで、全国規模での生産調整の着実な実施が図られるよう、生産調整を達成した市町村において超過達成した生産調整実施者を対象に、超過達成の面積に応じて一定のメリットを付与することを内容とする支援策を本年末の予算編成時までに詰めるということで検討を行うということにいたしているところでございます。
  67. 北沢清功

    北沢委員 特に、最近の集荷業者による、生産調整はしなくても現金で買い取りますという例が非常に多いわけであります。これではなかなか生産調整というのはうまくいかないわけでありまして、農水省が農業の将来を期待している中核的農家の担い手でさえも生産調整に協力をしておらないという現状もあるわけであります。  このような中でどのような対策を考えておられるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  68. 山口勝朗

    山口説明員 今御指摘の、集荷業者の生産調整へ向けての努力ということだと思います。  集荷業者と申し上げましたけれども、登録出荷取扱業者でございます。この方々は、生産調整の推進に当たりまして、生産者と密接な関係を持ちつつ計画流通制度の一端を担っておられるわけでございます。したがいまして、これまでも生産調整の推進活動等に積極的に取り組むように指導してきているところでございます。  特に、新たな米政策大網に基づきます緊急生産調整推進対策の推進に当たりましては、第一種登録出荷取扱業者によるこれまで以上の取り組みが重要であるとり判断から、関係者間の連絡調整体制の整備を図りまして、第一種登録出荷取扱業者の生産調整推進の取り組みに対し、関係者が一体となって機動的かつ効果的な指導などを行うことといたしているところでございます。  また、食糧事務所におきましても第一種登録出荷取扱業者の活動状況をきめ細かく把握いたしまして、生産調整の推進に関し、御指摘のような生産調整を阻害するような行いをする登録出荷業者に対しましては厳重注意を行う等の指導を実施してきているところでございます。  今後とも、第一種登録出荷取扱業者が生産調整関連業務に積種的に取り組むように指導してまいりたいというふうに考えております。
  69. 北沢清功

    北沢委員 終わります。
  70. 穂積良行

    穂積委員長 これより農林水産大臣に対する質疑に入ります。  小平忠正君。
  71. 小平忠正

    ○小平委員 中川大臣、まさしく地球を一回り、大変御苦労さまでありました。何かお話をお伺いしますと、強行日程でホテルよりは機中泊の方が多かったようで睡眠不足でしょうが、現場に行かれていろいろと重要な会議をこなしてこられた、その御報告をぜひいただきたいと思います。  質問を用意しましたので、読み上げながらお伺いいたします。  まさしく昨日までアメリカ、ヨーロッパと、バシェフスキー米国通商代表を初めといたします関係者との会談、本当に御苦労さまでありました。私、島村前農水大臣がOECDの農相会議に参加をされた際にも申し上げたのでありますが、大臣が国際会議等へ直接出かけていくのは、我が国の主張をその場で堂々と展開することはまさしく国益にかなう大変意義あることと考えております。その意味においては、国内の問題も重要でありますが、特に今、国際社会は情報が一瞬にして世界を駆けめぐる、こういう状況下では、タイミングを失することなく対処するということが非常に大事な時代、こう思いますので、そういう意味においても、WTOの次期交渉に向けての前哨戦の様相を示してきました今般のAPECの自由化協議は極めて重要なことであり、そのために、今回の外遊は本当に意義あるもの、こう期待をいたしておりました。  私は、今般のAPECにおいて、いわゆる外圧に抗する積極的な外交戦略をとれないで日本がずるずると林・水産物の自由化協議に加わっていくことになれば、これは大変なことである。このことは、関係団体のみならず、我が国の外交姿勢、これに対する国民の不信、また怒りが爆発する、こう思いますので、先ほど午前中の質疑の中でも、APECに対して松下次官からもそれについてのお話がございましたが、ぜひ大臣から、きのう帰ってすぐのきようで、その御報告を兼ねてお考えをまずいただきたいと思いますので、よろしくお順いします。
  72. 中川昭一

    中川国務大臣 今、小平先生からねぎらいの言葉、ありがとうございます。  一日に出発しまして、昨晩帰ってまいりました。ワシントンそれからジュネーブ、ブラッセルと行ってまいりました。特にAPEC関連では、バシェフスキー代表、そしてグリックマン農務長官等とお会いをしてまいりました。  結論的に言えば、向こうも簡単に引く相手ではございませんので、こっちも言うべきことを言い、向こうも言ってまいりました。日本の立場については、小渕総理等からも既にございますので詳しくは申し上げませんが、私は、率直に申し上げて、向こうの主張に対してはことごとく反論をいたしました。  例えば、林産に参加をしないと壊れるというけれども、そんな小さな問題で壊れるはずがない。今喫緊の課題は、アジア太平洋の経済をどうやってよくするかということが最大のポイントであって、そして日本は二十五、つまり九分野三項目、三、九、二十七で、二十七分野のうち二十五分野については最大限参加をするわけであります。残り困難な部分の林・水の関税化の部分だけはこういう事情で参加できないんだ。しかも、三百億ドルの資金援助も考えているんだ。アメリカは一体何を経済復興のために協力するのか具体的に示してもらいたい。それに対して、相手方からの答えはありませんでした。  また、孤立しているぞという話もありましたが、日本は決して孤立はしていない。具体的な国はあえて挙げませんでしたけれども、東南アジアの国々の中には、日本に対して極めて理解とまた協力をする国も数カ国私は確認をしておるということで、私としては、日本の主張を堂々と述べたつもりでありますし、また向こうの言っていることも一々反論をいたしました。  そういうことで、結果的に平行線と言われても仕方がない話し合いではございましたけれども、新聞報道あるいは日本の事務当局、さらには現地の日本大使館が説明するだけではなくて、現にその責任者である私が直接行って、私の口から、小渕総理の指示によって今回来たのだということで申し上げたことには私は意味があったというふうに考えております。  なお、その後、ジュネーブのルジェロWTO事務局長、さらにはフィシュラーEU農業担当委員にお話をしましたが、もともと別の目的で行く予定でございましたが、APECのアメリカとのやりとりを真っ先に報告をいたしました。  これは日本とアメリカのけんかではないんだと。今回、林・水を突破口として残り六分野で食品等に風穴をあけて、そしてAPEC、アメリカあるいはケアンズ・グループがEU包囲網をつくって、そして二〇〇〇年からの交渉でEUとの状況をアメリカに極めて有利にするんだという意図が私には感じられた。だから、EUにとってもこのAPEC会議というのはぜひ注目をしてもらいたいし、日本の立場も理解していただきたいということで、WTO事務局長は、立場上一々コメントはできないけれども、日本が孤立していない、それからAPECの場はNAFTAやWTOのような決議機関ではないという二点については理解をした。  それからフィシュラーさんは、日本の言っていることは、おまえの言っていることはよくわかる、アメリカというのはそういう戦略を持っている国だから、十分日本と連絡をとり、太いパイプをつくりながらこれからも頑張っていこうという発言をいただいたところでございます。  以上です。
  73. 小平忠正

    ○小平委員 大臣、そのようなお考え、姿勢でいかれるならば、我々はもう応援をしたいと思います。  問題は、アメリカという大変強固な交渉相手がありますが、同時に、国内において外務省、通産省等々の問題もありますので、ぜひ十二分に力を発揮されて、今お話があったような方向で頑張っていただきたい、こういうふうに思います。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕  次に、水産関係のことで少しく質問しますので、何点か用意をしましたが、時間の関係上続けて、まとめて質問しますので、よろしくお願いします。  まず、長年の懸案でありました日韓漁業問題、これが金大中韓国大統領の訪日直前に、総理決断という異例の形で、関係漁業者の意向を無視するような形で、極めて不十分な、極めて不当な政治決着がなされた、こう思います。  特に、我が国の大切な漁場である大和堆の約半分を、四割強ですか、暫定水域として明け渡すなど、漁業者の苦渋を全く理解しない決着であると言えると思います。関係漁業者を初めとした絶対反対の声は当然であり、日韓漁業協定改定は国会承認が必要であり、我々は関係漁業者と全く同じ考えに立っております。この点についてお考えをお聞きしたいと思います。  続いて、大臣もよく御承知のように、我が国は世界最大の水産物輸入国である、そして昨今の水産物輸入急増等の影響もあって、国内漁業についてもその環境が大きく変化をいたしております。漁業経営の現状を考えると、漁業に関する基本法である沿岸漁業等振興法の見直しも必要な時期に来ており、国民への決定的な食糧供給観点からも、今これから進んでいきます新農業基本法、これに続きまして、私は、漁業基本法、この制定に向かっても取り組む必要があるのではないか、こう考えますが、その点、いかがでしょうか。  もう時間がありませんので、続けてお聞きします。大臣、そして長官等にお答えいただきたいと思います。  次に、FAOは、世界の漁業資源の約七割近くが過剰に漁獲をされている、こう指摘をしております、水産物貿易の自由化はFAOが懸念する過剰漁獲を助長するものであり、私は、水産物は自由貿易にはある意味ではなじまない、そういうことを言ってもいいのではないか、こう思います。  我が国は世界最大の水産物輸入国である、こう申し上げました。これ以上の水産物輸入の増大は世界の資源を荒廃させることになり、将来的には国際社会の批判の的になると考えられます。既にそういうような動きが出てきております。FAOの漁獲量削減計画に即して、我が国の遠洋マグロはえ縄漁船が二割、約百三十隻を減船する、そういうような動きになっております。世界のマグロ資源は低水準にあり、世界の資源を回復させるためには、最大の漁船規模を有する我が国が率先してFAOの計画を推進することも、ある意味では必要である。  政府は、資源回復が国際的な要請であるとの観点に立って、またマグロ漁業経営の基盤を強化するために、今回の減船は、漁業者間の共補償のない、言うならば共補償はもうできない状況に追い込まれておりますので、共補償のない国際漁業再編対策事業として、政府交付金による万全の措置を講ずる必要がある、こう思いますが、これらの点について御答弁をいただきたいと思います。まず大臣からお願いします。
  74. 中川昭一

    中川国務大臣 三点御指摘がございました。  まず、日韓漁業協定基本合意については、先生御指摘いただくまでもなく、私自身、漁業者の皆さんの大変な不安や不満を肌で感じております。何としても漁業者の皆さんの御理解をいただき、また国会の御理解をいただくために、最大限の努力をしていかなければならないと思っております。  ポイントは、暫定水域の問題もございましたけれども、基本的な、きちっとした資源管理あるいは取り締まり、こういうものをきちっとやっていこうということがまず必要であろうというふうに考えております。  今回の協定内容の中には、日本で例えばこういうやり方で資源管理をきちっとやりますとか、こういうものについてはやらないとか、取り締まりをするとかいうことをお互いに通知し合って、そしてそれを相手国は尊重するという決まりも今回つくられたわけでございますので、日本としては、相手方に対してきちっとした対応ができるだけできるようにしていきたいというふうに考えて、今も、事務的でありますけれども、交渉をしておる最中でございます。  漁業者の皆さん方からの意見も十分お聞きしながら、監視体制の強化、資源培養対策、漁場の回復あるいは経営対策等について万全を期していきたい。そして、正直言って不信感が大変渦巻いておるというふうに私は感じておりますので、何としても万全の対策をとって、その漁業者の皆さんの不信感あるいは不安、不満をできるだけなくしていただく最大限の努力をしていきたいと思います。  それから二点目につきましては、漁業基本法的なものが、現在、沿岸漁業等振興法というものがございますけれども、状況が変わってまいりました。生産性の向上の必要性あるいは経営の近代化あるいは資源の維持、増大。あるいはまた海洋法条約に基づくいわゆるTAC等の問題が出てまいりましたし、特に最近は、漁業も、資源の悪化、高齢化あるいは担い手の減少等、厳しい状況にございますので、昨年九月から、水産基本政策検討会というものを設けて全般的な議論をしておるところでございますけれども、新たな基本法の制定についても、議論の中で十分に検討をしていただき、そしてしかるべき結果を出していただきたいというふうに考えております。  三点目につきましては、水産庁長官からお話しさせますけれども、マグロの減船に対しても、日韓の次はマグロかという感じでございますので、国際減船補償、国際減船対処の対策をとらなければいけないということで、できるだけの対策をとっていきたい。これもまた、関係者の皆さんあるいは関係業界、地域に影響を与えないように、一農林水産省だけではなくて、大蔵省にもきちっと要求し、自治省あるいは労働省あるいは運輸省等にも協力をしながら、この問題に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
  75. 中須勇雄

    中須説明員 三点目につきまして、補足して御説明申し上げたいと思います。  御承知のとおり、十月二十六日から三十日までローマでFAOの会合がございまして、ここで、特にマグロはえ縄漁船については直ちに二割から三割の減船が必要である、こういうような政府間の合意ができ上がったということでございます。  先生御指摘のとおり、やはり世界のマグロ漁業国、これは生産面でも消費面でも我が国が第一位でございますので、率先垂範するという観点から、我が国としての責任にかんがみ、はえ縄漁船の減船を受け入れざるを得ないというふうに考えております。  二割の減船を実施するということになるわけでございますが、関係漁業者にとっても、また地域にとっても大変大きな影響の出る問題でございます。万全の配慮を行う必要があるということで大臣からも御指示をいただき、国際漁業再編対策を適用していくという方向で考えております。  具体的な国際漁業再編対策の内容につきましては、共補償の問題も含めてこれから財政当局と協議をしていこう、こういうような状況でございます。
  76. 小平忠正

    ○小平委員 きょうは時間がありませんので、日韓漁業交渉は条約ですからいずれ国会の場で大きな議論になりますが、その場で改めてまた、もっと内容を詰めた形でいろいろとただしたいと思っています。我々としてはこの状況のままでは賛成しかねる、そんな思いがしていますので、今後の取り組み、推移を見ながら我々も対処しよう、そう思っています。  確かにマグロの問題、今後の大きな問題であります。ただ、私が懸念するのは、日本は、そういう資源の枯渇を避けるために、秩序ある漁獲といいますか、そういう意味において、自主的な減船をし、また関係者には補償をする、それも財政が絡むことでありますが、それは当然しっかりしなければなりません。しかし問題は、このマグロの刺身というのは我が国だけが唯一の消費国ですね。したがって、日本が自主的にそれを制限する、しかし一方では、APECでもあるように、自由化が進められる。そうすると、海外においては、日本をターゲットにして、逆に自由化が広がれば、マグロをもっと日本に輸出をする、そういう機運が当然ほかの諸国から出てくる。そうなれば、逆に乱獲の方向になっていくのでは、こんな心配があります。  したがって、水産庁としても、この関係諸国にはそのことをしっかり訴えて、協力を求めながら、将来的に秩序あるマグロの漁獲そして輸入ができる形が続くように、そこをしっかり対処していただきたいと思います。  次に、先ほど質問の中でお答えいただけませんでした負債対策の関係です。それについてお答えいただきたいのですが、先ほどのことでもう少し補足しますと、御案内のように米価は、平成米穀年度までは据え置きで来ました、平成七年にあった米価までは。それによって、この表でもおわかりのように、平成七年という年を境にして大きく影響が出てきたように思います。この政府米価の下落というのは、数字にすると約百七十五円という数字なのですね。しかしこれは非常に心理的にも大きな要因でありまして、言うならば米の価格の、自主流通米を含めて、非常に影響が出てきた。  そこで、この決算事例でもおわかりのように、経営面積を政府施策にのっとって進めた北海道専業農家にとっては、これが水田を大きくした。かつては、昔は大体四町ぐらいが、四ヘクタールぐらいが平均でした。それを、ああいう米の増産体制の中で大体八ヘクタール、九ヘクタールぐらいまでに広げてきまして、それをさらに加速させたのがこの新農政、新政策等々の方向にも合致する形で規模拡大、言うなれば、国際的な競争の中で面積を大きくして、そして経営コストを下げて競争にたえる、そういうことも相まって、十五、六町という面積がB農家の例ですね。  そういうところであるのですが、米の減反によって、このA農家の事例でいいましても、半分近くまで米の収入が大変下がってきている。かわりに畑作、転作等々に努めましたが、なかなか芳しい方向には行かない。B農家についても、転作等に力を注いで、その方の収入はふやしていますが、トータルに見ると、やはり農業粗収入はこういうふうに下落の一途である。そこに苦労して出稼ぎやアルバイト等々の農外所得も含めて、農家所得としてもこのような状況になっております。  そこで、農業収入から経営費、これは御案内のように、各資材やあるいは機械や農薬や、また土地改良、水利費等のいろいろな負担分等々、そういうものの経費を差し引ぎますと、もう全然、わずかなものしか残らない。そこに、さらに規模拡大やあるいは農地改良等々、これは避けて通れません、営農ある限り土地改良は必要です。  農業を知らない皆さんには、土地改良という問題はよく理解が得られないようです。また、農業土木なんという言葉を使って、ただ一般的に批判する方もいますけれども、農業ということがある限り、土地改良は未来永劫続くことだ。土地改良なくして農業は考えられませんから、これも大事な点ですよね。  したがって、土地改良等々にかけるための費用、それにいろいろと制度資金の借り入れ等が起きてきます。そしてさらに農地の取得等々、こういう借入金の長期借り入れ。この毎年の元金、利息の返済、これをやっていきますと、この赤で示したように、規模拡大農家ほど平成八年から赤字転落だ。  そうすると、何があるかというと、自分が蓄えた預貯金、子供たちの結婚資金だとか病気の準備のためだとかもろもろ、皆さん貯蓄というのはしますわね。農家だってそのとおりですよ。それを今食いつぶしている。結果的に、これじゃやっても意味がないと。それで、先ほどの切実な訴えの中に、来年から農業を続けるべきか悩んでいる、そしてこの毎年生産費割れしている状況では、耕作地の放棄、これに思い悩んでいる、こういうことであります。  先ほど大臣がおられなかったので、今重複してお話しいたしましたが、こういうことの中で、政府として、これは構造改善局長、どういうふうに働いていくか。その辺の基本的なことを、経済局長でも結構ですから、まずはお聞きしたいと思います、経済局長でもどちらでも。どうぞ、じゃお二人からそれぞれ。今、時間がないので詳しいことはいいですから、今後どう取り組むかということについての基本的な考えを言ってください。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 渡辺好明

    ○渡辺説明員 先生の資料もちょうだいいたしましたし、種めて厳しい実情につきまして、私どもも改めて認識を深めたところでございます。  午前中にも御説明いたしましたように、各種の対策の的確な実施も含めまして、今後なお一層土地改良負担の軽減に努めていきたいと思っておりますし、お話の中にございました水利関係の施設、施設の維持管理経費につきましても、その公益的機能に着目をいたしまして、今後、公的支援を深める方向で検討いたしたいと思います。
  78. 竹中美晴

    ○竹中説明員 農家の負債の問題につきまして、先ほど来種々御指摘をいただきました。  私どもとしましても、これを重大な問題と受けとめまして、農家負担軽減支援特別資金など有利な負債整理資金を準備いたしておりますほか、個別の実情に応じて償還期限の延長等の条件緩和を行うなど、ぎりぎりの対応をさせていただいているところでございます。  先生の御指摘もいただきまして、改めて厳しい実情も認識させていただいたところでございます。具体的な事例の資料もいただきましたので、道庁とも連携をとりながら、状況を十分に把握してさらに的確な対応を期していきたいと考えております。
  79. 小平忠正

    ○小平委員 ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。  新農業基本法、この最終答申が先般出ました。それについて実は用意してあったのですが、これはいよいよ来年の農水委員会で論戦に入りますので、そのときに改めて質問いたします。きょうは時間的にできません。  問題は、これからの我が国の農政を効果あらしめるために新農業基本法、この制定に向かっていくわけですから、その前に農家が、生産者がいなくなったのでは基本法をつくったって意味がないんですよね。新しい基本法をつくるということは、そのときにしっかりと生産者が存在して、そして安全な、そして良質な食糧を消費者に提供するという、このためには、まず今こういった負債問題、これをしっかり整理して、農家が安心して営農する体制をつくっていかなければ意味がないと思いますので、こういう問題提起をしましたので、ひとつ今の御答弁に沿ってしっかり取り組んでいってもらいたい、こう思います。  時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  80. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、海外における御活躍、大変に御苦労さまでございました。  最初に、きょうは米価審議会が行われておりますので、米について大臣に一言だけお伺いをしておきたいと思います。  きょう米価審議会が行われて、米の政府買い入れ価格あるいは売り渡し価格審議をされているわけでございます。こうした審議会が毎年行われているわけでございますが、私は、米問題について、二〇〇〇年のいわゆるミニマムアクセスの見直し問題、これを考えたときに、これからの我が国の食糧の安全保障、こういう立場の中から特に米の位置づけ、これが非常に大事であろう。そういう意味合いにおきまして、APECの対応等で大臣もワシントンなどへ行かれて、先ほどのお話でも痛感したようでありますが、大変にアメリカ、EU諸国は農産物のこれからの対策については戦略を持って臨んでくる、そういう嫌いが非常に強くなっているわけでございまして、農産物の我が国の安全保障を考えたときに、その基軸に米をきちっと位置づけして、今後戦略的にどう我が国が対応するか。いわゆる政策、さらにその上に戦略というものを持って臨んでいくべきであろう。備蓄政策にしてもあるいは稲作農家の対策にしても、価格政策にしても、そうした戦略というものをよく考えた上で今後政策づくりをしていく、そういう段階に入ってきたのではなかろうか。  そういう意味合いにおいて、例えば今回の新農業基本法に向けての、食料、農業、農村政策の中で中山間地域にデカップリング政策が導入されるという一つの方途が示されたことは、まことに私は評価ができる。今後、稲作農家においても、例えばデカップリング政策というのは導入できないのかどうか、あるいは備蓄政策の中で、特にミニマムアクセス米というものをODA政策の一環としてとらえて、このMA米に対しては援助米を中心として今後対策を打っていくとか、そうした一つの戦略的な視野に立った中での米政策というものが大変重要な時期に来ているのではなかろうか、私はこう考えておるわけですが、大臣のこの点についてのお考えを一言お伺いしておきたいと思います。
  82. 中川昭一

    中川国務大臣 基本的には、宮地先生のおっしゃることと私は全く同感でございます。  今回、先ほど申し上げましたように、アメリカはしっかりとした戦略をとって、APECの本来のスタートラインと全く違う会議の場にしょうとしておる、これはまさにアメリカの通商貿易政策、戦略にのっとったものだろうと私は感じざるを得ませんでした。ヨーロッパもヨーロッパで考えていますし、ほかの国も考えているのだろうと思います。  そういう中で日本は、あのWTOの現行の受け入れのときに大変な不安、不満があったわけでありますけれども、受け入れた以上はまじめにまじめに、生産者の皆さんに御苦労をかげながらやっていただいておるわけであります。今後ますます世界の食糧事情と人口のバランス、あるいはまた環境の問題等々、それから日本の中でも、日本型の食生活、特にお米というのは主食——主食という概念が外国人には何か余りぴんとこないような感じを私は時々持つのですけれども、日本人にとっては、主食は何だといえば百人が百人米と答える、文化そして食糧の基本であります。  そういう形できちっとやっていくためには、MA米を例えば援助米に回したらどうかというような御指摘がございましたが、現行協定では、内外の差別をしてはいけないということで、MA米を出すときには国産米も等量外に出さなければいけないという原則があるわけでございます。次期交渉の中でそういうことをやめるように主張するかどうかは今後の作業でございますけれども、五十年先、百年先を見越した日本の食糧戦略というものは、食糧安全保障という形で今回の答申の中にもはっきりと書かれているところでございますので、いずれにいたしましても、国民的理解を得ながらきちっとした戦略を位置づけていくことが極めて重要だろうというふうに考えております。
  83. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ、今後また機会があると思いますので、こうした食糧戦略については議論をさせていただきたいと思います。  きょうは限られた時間でございますので、日韓漁業新協定の問題に絡んで何点か御質問をさせていただきたいと思います。この問題は恐らく次の臨時国会で承認案件として政府としても提案をしてくるのではないか、こう思いますので、その提案の前、今実務者協議が行われ、大変に重要な段階に来ていると思います。  そこで、日本韓国のこれからの将来を考えたときに、まず一つは、この漁場、特に暫定水域を中心とした漁場は、日本韓国というお互いの国の資源というよりも、地球的規模における資源をいかに守り、また育てるか、これが一つは大変重要な視点ではなかろうか。  この資源管理というところで、お互いがモラルを持って本当に資源を将来のために子孫に残していくのだ、こういう立場からの合意ができることを私は期待しているわけでございますが、しかし、現状は、韓国状況は大変に厳しい。今政府交渉でいろいろと汗をかいていただいておりますが、ここにおいても、大臣、日本韓国の文化とか経済とか、そうした総合的な話し合いの中でこの問題というものを視野に入れて解決をしていく、やはりこの視点が大変大事ではなかろうか。農林水産省あるいは水産庁あるいは漁業団体の民間同士、こうしたところで、窓口で汗をかいていただいていることには大変敬意を表しております。しかし、もう少し大きな次元で日本韓国は、この間の小渕・金大中会談を皮切りに新しい時代に入ったのだ、日本韓国は本当に兄弟、家族のような、そういう隣国としての、一衣帯水の国として、二十一世紀以降、お互いに発展をしていかなくてはならない重要な、最も近い、最も友情のある国なのだ。  そういうことで、お互い政府が全体的な総合的な立場から、この暫定水域資源管理の問題あるいは二百海里内の中間地点からの、お互いの国の漁業のモラルの問題、相互乗り入れの問題、こうした問題についてはもう少し大乗的見地から議論をしていくべきではなかろうか。また、当然我々議員団も、日韓議連などを通じまして、お互いの国会議員の交流の中で、信頼を高めながらこの問題の解決にも汗をかいてまいりたい、こう決意をしているわけでございます。  まず、この基本的な哲学といいますか、基本的な考え方、理念、こうしたところに視点を持って対応されたらどうかと私は進言申し上げたいと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  84. 中川昭一

    中川国務大臣 先生の御示唆に対しては、謹んでその御意見を拝聴させていただくだけでございますけれども、先ほどの御質問にも関連しますが、戦略あるいは一つの哲学を持って、何か政治なり、あるいは外交交渉をやっていくということは極めて大事だろうと思います。特に、日韓の場合には、近くて遠い国と今まで言われてまいりましたけれども、先月の小渕・金トップ会談で、新しい時代に入ったなというふうに私も実感をしております。  例えば、農業分野についても、お互いに協力をしていこうなんという一項目も入っておりますし、韓国側の文化の開放みたいなものも我々にとってみれば非常にうれしいニュースであるわけでありまして、そういう日韓友好、二〇〇二年のワールドカップのような形のものがどんどんいろいろな分野で出てくるということは極めて大事なことだろうと思います。  漁業関係について申し上げますと、実は韓国の漁業大臣に申し上げたのは、我々が一番心配しているのは違反操業であり、また日本にない漁法でどんどんやっていくことで乱獲をする、資源管理を全く考えないようなことをやられるのが一番日本の不信の原因であると言ったら、韓国の漁業大臣も、一部と言っておりましたが、一部の人たちがそういうことをやっていることで韓国全体がそういう目で見られるということであれば大変恥ずかしいことだということを向こうの漁業大臣は言っておりました。  いずれにいたしましても、現実に新協定を御承認いただきましたならばその実態が現にわかるわけでございますので、それについては我々は極めて注意深く見守っていきたいと思いますが、基本的には、近くて近い国としての信頼と友好を前提にして、水産を初めあらゆる分野でいろいろな作業を進めていきたいというふうに考えております。
  85. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、大事なことは、今回の暫定水域資源管理を行うということは当然であります。本来的には、相手に余り不信感を持ってお互い取り締まり船をたくさんふやして取り締まりを強化するというのは、私は本来はナンセンスだと思うのですね。お互いの国が信頼を持って、モラルを持って、乱獲はしない、資源は守る、そういう一つの、あうんの呼吸といいますか、そういうモラルがきちっと相互の国あるいは相互の漁民にできれば、私は問題がない。しかし、そこは、今韓国においてはまさに日本のようなきちっとした自主規制というものが守られてこない。こうなりますと、やはり取り締まりを強化するとか、あるいは資源を復活するためにそれなりの堆をつくるとか、いろいろやらなくてはならない。  そういう点で、日本韓国のそうしたお互いの漁場を守り、漁民のモラルを守るという合意が果たしてできるのかな。もしそのことが大変難しいというのであれば、まず今回の暫定水域、あるいは基本合意に基づいて、お互い政府お互いの漁業団体なり漁民に対してきちっとした補償政策をとるべきである。実務者協議で今詰めておるので、その詰まりができないとなかなか補償もできない、予算もつけられないというのでなくて、できるところから、第三次補正で思い切って、例えば国内政策として、我が国の漁業団体に対しても、二百海里内の中間点から日本側の沿岸の漁場の資源が非常に荒らされております。特に海底の堆が平面化してなかなか魚が集まってこなくなっておる。そういうものを今後中長期的に、堆を政府の側からきちっと中長期的に補償をしてあげる。そういうようなことを、お互いの国が漁場、資源を守るための政府の措置をしていく、そういうことも大事ではなかろうか。  あるいは、資源を守るために、暫定水域においては、刺し網による、いわゆる一網打尽に魚をとってしまう、特にズワイガニなどをとってしまう、こういう漁法はもう日本では自主規制しているのです、あなたの方もどうだろうと。そういうものを総合的なところからやはりお互いが理解し、資源を守る、こういう立場で合意ができないのかな。  大変に難しい、汗をかいているようでございますが、そういう点についても、積極的に韓国側に対しても、言っていると思いますが、その点についての主張をしていくべきではなかろうか。  時間もありませんが、特に、私は大臣に、第三次補正の中で、いわゆる特別枠の外、ここで日韓漁業問題に関連する日本側のいわゆる漁民対策として積極的に予算化を進めるべきである。  例えば、実務者協議が行われている状況でありますが、今申し上げたような資源の復活問題などについては、これは協定問題を除いても我が国にとっては大変重要な問題であるわけですから、こういうところについてはしっかりとやっていく。  あるいは、今の現状から見ると、どうも乱獲がされそうだ。韓国日本との相互の監視船へのいわゆる共同乗船というような方法もありますが、例えば海上保安庁の船をやはりここで少し増給をしておくとか、水産庁の船も、今二十七隻あるようでございますが、持ち前のは十隻と聞いております。あと十七隻は借り上げた。来年度も二隻ばかり借り上げた。何かひ弱い対策が打たれているようでございますが、こうした水産庁の監視船についてももっと第三次補正の中で積極的に、現状大変厳しい韓国の情勢を見たときには、やはりここで予算化をしておく。水産庁のみならず、海上保安庁の機関銃のついた船というのは、撃ちませんが、やはり一番威厳のある、抑止力のある船でございますので、こうしたものもこの機会に政府全体の中で、日本海側の監視ということで、私は増船をしていく必要があるのではなかろうか。  こういうことで、国内対策として第三次補正から積極的に政府として、また農林水産省として取り組んでいく、その辺のお考えなりスタンスを確認をさせていただきたいと思います。
  86. 中川昭一

    中川国務大臣 交渉の過程でも、違反の取り締まり、それから資源管理等については、交渉としては完全に合意、向こうも了解をしておるわけであります。それから、先ほどもちょっと申し上げましたように、例えば日本のように、底刺し網はやっていないということを相手に通知すれば、相手はそれに対して配慮しなければいけないという決まりも今回入っておるわけであります。  問題は、実際どうなるかということで、今の段階では多分そうなりそうだというのが漁民の皆さんの大方の不安の主たる原因だろうと思いますが、そうなったときにどういう対策をとるべきかということと、先生が御指摘になったように、今から資源管理あるいはいろいろなことをやっておくべきではないかということと、時間的に言うと二段階に分かれるのではないかと思います。  いずれにしても、政府としては万全の対策を、予算措置も含めまして考えていかなければいけないであろうというふうに思いますが、いっ、どの段階でやるかについては、それについての必要性のもととなるものが確認されないとできないわけでございます。結論的に言えば、先生のおっしゃるように、万全の対策の中には予算措置も含めて対応していかなければいけないというふうに考えております。
  87. 宮地正介

    ○宮地委員 今回の暫定水域の線引きについては、当初より拡大をされて、日本の漁業団体の皆さんの中に、大臣おっしゃるように大変な不満もあります。また不安もあります。これは、政府交渉の中での基本合意ということでございますから、やはりそうした政府の決断をした責任において、今度は国内政策については、今おっしゃるように万全な救済対策も、あるいは将来に向けての資源管理対策も両方、二段階をぜひ私は強く要望して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  88. 穂積良行

    穂積委員長 次に、菅原喜重郎君。
  89. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 中川農林大臣には、去る一日からハードな日程での米国、欧州訪問、大変御苦労さまでございました。  今回の目的は、アジア・太平洋経済協力会議の自由化協議で、自主性の原則に基づき、林・水産物の自由化は受け入れられないとする日本の方針を説明、理解を求めることであり、その会談の内容については先ほど伺いましたので、私からWTO経済交渉での政府の米の取り扱い方針はどうなのか、まずお伺いいたします。
  90. 中川昭一

    中川国務大臣 WTOでの米の扱いをどうするかということにつきましては、率直に申し上げまして、これから議会あるいは各党のいろいろな御意見を踏まえてどういうふうに臨んでいくか、現段階としてはそういうお答えしかできないわけでございます。  ただ、私自身、行ってまいりましたルジェロあるいはフィシュラー両氏との会談の中で申し上げたことは、輸出国と輸入国とは対等な立場でなければならない。今でも不満が残っているわけでありますけれども、一生懸命生産者の皆さんが歯を食いしばって頑張っておられるわけでありますが、今協定はどうも輸出国サイドの意見の方が強過ぎたということについては、私自身強い疑問というか不満を持っているわけでございますので、今度の協定は公平公正に、特に輸出国と輸入国、特に輸入国の方が、米のように必要量は足りている、生産調整までやっている、それなのに無理に入れなきゃいけないなんということは、ひとつよく日本の立場について理解をしてもらいたいということは強く申し上げたところでございます。
  91. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今、大臣の答弁のとおりだと私は思うのですが、ただ、ウルグァイ・ラウンドでの合意の結果、関税化になった場合も、現行アクセス数量の扱いはどうなのか。私としては、ミニマムアクセスはこのまま続けていかなければならないのではないかと思うのですが、この点をまずお承りしてから、また質問に移りたいと思います。
  92. 山口勝朗

    山口説明員 現在、我が国の米に適用されております関税化の特例措置の扱いにつきましては、七年目以降、すなわち平成十三年以降の取り扱いにつきましては、六年目である平成十二年の交渉で決められることとなっておるわけでございます。  現在のWTO農業協定に明記されておりますとおり、実施期間終了時において、これは二〇〇〇年でございますが、特例措置が継続されないこととなる場合には、ミニマムアクセス数量は基準期間、一九八六年から八八年でございます、この基準期間における国内消費量の八%の水準を維持することとされておりまして、これを我が国の米に当てはめますと、精米ベースで七十五万八千トンということとなります。
  93. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 何か基準期間という返答があったのですが、結局ミニマムアクセスだけは継続的に受け入れざるを得ないということですか。その点を一はっきりお願いします。
  94. 中川昭一

    中川国務大臣 WTO次期交渉での米の扱いをどうするかということについては、先生を初め皆さん方のいろいろな御意見を聞いてやる話ですから、今後どうするかということについては、今の段階では正直言ってお答えをする材料がないというのが現状でございますので、御理解いただきたいと思います。
  95. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 何で私こういうことを聞くかというと、本来自主性の原則お互い守らぬといかぬのですが、関税率でも、この自主性の原則は自由貿易の国際的交渉の中でも守られるはずだと思うのですよ。それをもしミニマムアクセス、このアクセス問題を結局継続するとなると、国内で生産が過剰になったとき、豊作になったときも受け入れないといかぬ、こういう矛盾が出てくるわけですね。ですから私は、この関税自由化になるとこれはもう大蔵省の所管になるし、それからこういうミニマムアクセスでも、アクセス量を入れるとなるとこれは農林省の所管になるので、所管争いがこんな交渉を生んだのじゃないか、こう思っているのですよ。  ですから、これはやはり日本の外交の汚点、汚点と言っては変ですが、将来を見れば、何としてでもやはり将来は汚点的になるこういう交渉はなくしていく方向に農林省も努力してもらわぬといかぬ、こういう立場で今このアクセス問題を追及しているわけなので、このことについてひとつ政府考えを聞かせてください。
  96. 山口勝朗

    山口説明員 ただいま先生お話ございました現在の仕組みにおける国家貿易によるマークアップの収入につきましては、現在はおっしゃるとおり食管会計に入っているところでございます。
  97. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いや、何かさっぱり、私としては不満な答弁ですが、時間もなくなりますから、これは私の要望としておきまして、次に、午前でも質問したのですが、大規模農家の育成問題に移りたいと思います。  私が昭和五十八年に当選してきたとき、まだ水田が二百九十万ヘクタール近くあったわけですね。だから、今この自由化が叫ばれているとき、当時もそれの自由化反対闘争があったわけですが、いつまでもこういう自由化反対を叫んでいられぬ、しかし、急に自由化したのでは日本農業、米作農業は崩壊するから、まず十年間だけ期間を切って、この間に少なくとも二百万ヘクタールは、あとかんがい排水と大規模基盤造成は国家責任でやるべきじゃないか、都市計画法による減歩率だってあるのだから、こういうことを主張したのです。  そして十年後には、自由化を今のうちに宣言して早くいわゆる国土大改造を行うべきだ。そのためには、もう建設省、国土庁、三省庁一緒にならぬとだめだから、当時この都市計画地域内に大体十七、八万ヘクタールの水田があったのを何で農振法で守るのだ、こういうのは建設省へやって即座にいわゆる宅地並み課税をかけて住宅供給に付すべきじゃないかと言ったのですが、なかなか、私の論がかえって農業団体から反対を食っちゃったわけですね。  しかし、今までの経過を見ましても、十年たつかたたないうちにウルグアイ・ラウンドの合意で関税自由化に踏み切られた、こういう経過があるわけです。  そして今、さらに新食糧法になったのですが、これは結局九五%農協がまだ集荷権を持っていますから農協管理に移ったようなものです。この農協管理となると、農協は護送船団方式でやっていますから、どうしても減反政策をとらないと米の価格の安定はできないので、その護送船団方式が、減反でもう既に、このままいったら四〇%を超えるんじゃないかという農政の破綻を来そうとしているわけですね。しかし一方では、先ほど言いましたように、全然日本の大規模農家というのが育っていないわけです、現実はもうそういう実態になっていても。  さらに、価格の問題をやると時間もなくなるわけですが、生産費のアメリカ対比だと、日本は八倍、これは平成九年、それから平成七年には九一四倍にもなっている。さらに消費者価格においては、平成九年では米の価格が二・六倍、平成七年には一二・四倍にもなっている現状です。ですから、大型農家をやはり育てぬといかぬ。しかし、今のようなこういう一律な減反だと育たないし、それから、アメリカへ行くとそういう差は出ませんが、それでも倍ぐらいの差は出ているんですよ。東南アジアなんかに行くと、お米の値段が三分の一、四分の一、五分の一ぐらいの価格差でみんな店頭に並んでいるんですよ。日本だけはこんな差がありませんね、みんな一律、いわゆる押しなべて。  それに、これは中川大臣、あなたのところに一番関係するんですが、北海道は水田百町歩、二百町歩できる形態なんですよ、内地は難しいんだけれども。そうしたら、北海道にこういう二百町、百町単位の大型米作農家をつくって、よかったら、そういう農家の生産する米が二分の一、三分の一ぐらいでも、いわゆる低価格米を要求する庶民に供給するというような方策を考えてもらってもいいんじゃないかと思うんですよ。  そういう点で、こういう大型経営農家を育成するにしても、何といっても、これは基盤整備、かんがい排水、これは完全に国家が責任を持って行わないとどうにもならぬ問題ですから、こういう大型農家の育成問題と基盤整備、かんがい排水の完備に対する国の責任、大臣の所信をお伺いして、私の質問を終わりたいと思うんです。
  98. 中川昭一

    中川国務大臣 日本の農地は、中山間であろうがあるいは都市近郊であろうが、そして、北海道の例を出していただきましたが、大型化する農地であろうが、いずれも重要だろうというふうに思います。  特に、先生から今農地の集積といいましょうか、基盤整備も含めて大型化することは必要だという御指摘でございますが、先生御承知だと思いますけれども、土地改良長期計画で、平成十八年には全水田の七五%に当たる二百万ヘクタールをいわゆる優良農地にしていこうという計画を持っておるわけでございます。そういう意味で、優良農地の確保ということが日本の農業にとって極めて大事な施策一つであるということを御理解いただき、また今後御指導いただきたいと思います。
  99. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣、今までの基盤整備もそのように進められているんですが、今までの基盤整備ではとても北海道の米作農家なんか救済できないわけですから、思い切った、アメリカなんかああいうふうに現実に大型経営をやっている実態を見て、その基準で基盤整備を進めて、ひとつこの米も、新食糧法に基づく市場原理が本当に活用されていくような方向での米農家の救済、日本農業の救済を図っていっていただきたい。このことを要望して、私の質問を終わります。
  100. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  101. 中林よし子

    ○中林委員 まず、中川大臣にお伺いしたいと思います。  食糧法施行後三年しかまだたっていないわけですけれども、この間日本の米生産というのは混乱に混乱を重ねてきたというふうに思います。米生産農家は、今後本当にこのまま続けていけるだろうか、こういうところまで追い詰められてきていると思います。その原因がこの食糧法そのものにあると言っても決して過言ではないというふうに私は思うのです。それは、政府が米の供給責任をまず放棄したということ、それから米価を市場原理にゆだねてきたというところにあると思うのですね。それが端的に九七年産米の米の大暴落というところにあらわれて、大規模稲作農家を筆頭に全国の稲作農家に大変な痛みを与えてまいりました。  そこで、この米価の下落を何とか補おうというような目的で新たな米政策が出てまいりました。これだとて結局、九十六万三千ヘクタールの減反の強制を柱にしながら稲作経営安定対策あるいは全国共補償政策というようなことになったわけですけれども、これでも、例えば稲作安定対策というのは従来の主要食糧費を振りかえたりあるいは予算の先食いをやったりということですし、それから全国共補償などということになると農家自身の自腹も切っていくということで、新しい対策ということになっているけれども、農家にとってみれば利益になる新しいものは何もなくて、結果的には減反の拡大という大変な苦労を押しつけられたというふうに思います。豊作の報いが減反なのかと、本当に、その心情を思うと私たちも苦しい思いがいたします。  それに今度は追い打ちをかけるように、政府米の買い入れ制限の問題なんですけれども、今度は三十万トンにする、こういう方針が打ち出されました。  そこで、大臣の地元の北海道はもちろんのことですけれども、政府米の依存度が非常に高い地域、ここでは大変深刻な影響を与えかねないというふうに思います。政府米価格というのは今現在一万五千八百五円なんですけれども、北海道では自主流通米価格の方がそれよりも低いということになるわけです。それで、北海道では米全体の生産に対しての政府米の比率というのは二二・七%で、大変大きな比率を持っております。昨年は十八万二千トンの出荷を政府米でしているわけですけれども、これが大幅に減らされるということになると、稲作安定対策でもこれは補えません。さらに悪いことには、政府米として行き場を失った米が自主流通米へ流れ出していって、自主流通米価格がさらに下がっていくという結果になりかねません。北海道の稲作農家は大規模専業農家が非常に多いわけです。それは、これまで政府が育成しなければならない担い手と言われてきているものです。九七年の米価の大暴落で大変な打撃を受ける、今回の買い入れ制限の大幅削減でさらに打撃を受ける。本当に、これで米づくりを今後やっていく意欲が出るんでしょうか。  大臣はこういう事態を予測されていたのでしょうか。その点についてお答えいただきたいと思います。
  102. 中川昭一

    中川国務大臣 新しい米政策というのは、先生御指摘のとおり、消費者生産者とが五〇%、五〇%でメリットを分けるというような形で政府米の買い入れ価格が決まり、しかもその政府米はあくまでも備蓄あるいは援助用であるということで、残りは、売る人あるいは買う人そして消費者の間のマーケットメカニズムに任せましょう、しかし、いざというとき、例えば大豊作が今回のように三年も続いたとか、あるいは平成五年のときのように、持ち越し在庫が二十六万トンしかないのに作況七四であったというときには、政府は責任を持ってきちっと対応するという位置づけにしたところでございます。  そういう意味で、確かに政府の役割は変わったわけでありますけれども、政府米政策について全く無関心だとか、もう関係ない、任せきりだということでは決してないというふうに御理解をいただきたいと思います。  三年間の豊作によって、特にことし、来年、この二年間は緊急事態だ、このままほっておくと本当の過剰になって本当の大暴落が起こるかもしれないということは、農家の皆さん御自身がまさに将来展望に立って選択をされて、大変厳しい数字でありますけれども、御自身の御努力で九十六万三千ヘクタールの減反を二年間続けていくということをお決めいただき、ほぼそれを達成しておるわけでございます。  そういう意味で、私は、農家の皆さんがむしろ先生よりも将来展望をずっと考えて、その場その場でどうこうしようということではなくて、つらいけれども、ことし、来年と頑張ればきっと適正な在庫になり、そして価格も上がっていく、現に去年に比べれば現時点での市場価格というのは上昇しておるわけでございますので、そういう意味では、我々は将来展望に立って、そして生産者の皆さんも将来展望に立って今必死になって御努力をいただいているということに対して、高く評価をし、感謝を申し上げているというのが私の気持ちであります。
  103. 中林よし子

    ○中林委員 自主的に減反の幅を広げていったんだというようなお話でした。それは自主的という名前で強制されているのですよ。そうしないと、例えば共補償による補償がもらえないとか、あるいは安定対策の八割の補てんができないとか、いろいろな政策誘導をしながら、みんな強制的に減反に参加をさせていくというような状況です。  さらに、北海道では自主流通米価格の方が低いわけですよね。そうなると、今度、もう方向が出ておりますけれども、北海道のJA中央会などは、さらに自主的な減反を上げていかなければその三十万トンの枠でさえも広げていただけないのではないかというようなことで、豊作の見返りが減反の強化ということになって農家の手取りはうんと下がっていくということは、先ほどの同僚議員の資料でも明らかになっているではないですか。そういうことを見ないで、農家の方々の協力を得てというようなことで、政府の責任を生産者だとか農業団体だとかそういうところに転嫁をしてはならないというふうに思います。  そこで、この事態というのはもちろん北海道だけではありません。政府米生産量に占める比率が一四%を超えている都道府県、これを私どもは拾い出してみました。青森県が二〇・五%、岩手県が一四・八%、秋田県が一七・一%、栃木県が一四・二%、群馬県が二三・九%、山口県が一九・四%、香川県が一四・九%、愛媛県が一五・一%、福岡県が一四・四%、佐賀県が一四・六%、長崎県が一四・三%、大分県が一五・七%というふうに十二県にも及んでおります。この十二県で政府米の買い上げ量が四分の一以下になったら、本当に深刻な影響が出ます。  私はこの十二県すべてにわたって、聞き取りですけれども、調査をいたしました。  すべてを紹介するわけにはいきませんけれども、これは岩手県の対応ですが、県北に政府米しかつくったことのない地域がある、今回の買い入れ制限の削減にとても困っている、自主米は品質管理体制ができていてそれ用につくっているが、政府米は一等米になれば政府が買ってくれるということで、できてから自主米の銘柄米と競争すれば苦戦することは明らかであるというように、どのくらい売れるか本当に心配だと言っております。  群馬県は、経済連の集荷量は三万トンなんです。そのうち、二万五千トンが政府米だというのですね。自主米として売るしかないのだけれども、市場価格が非常に下がっていて、それについていけるかどうか心配でたまらないと言っております。  時間がないので、そのほか全部聞き取りをいたしましたけれども、県の担当官でさえも、本当に今回の買い入れ制限の削減というのは県内産に非常に大きな影響を与えると言っております。政府は、今回の三十万トンしか買わないということの影響をどのようにお考えでしょうか。
  104. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、先ほども申しましたように、昨年十一月の新たな米政策大綱を実施した結果、先ほど九六年の例を出されましたが、その後、価格は、自主流通米については上昇基調でずっと来ております。特にことしになってからは、それは顕著であるわけであります。  そういう中で、先生は国が放棄したとか減反は押しつけだとか言っておりますが、決してそうではないわけでございまして、米をつくりたいという気持ちは我々も十分承知をしているわけでありますが、つくって余れば価格が下がる、政府が買い入れする、あるいは民間が備蓄をする量というのもおのずから財政負担を伴う話でございますから、そこで生産者の皆さん方が本当に御苦労をされて、ことし、来年と九十六万三千ヘクタールの減反をいたしました。そして、それは国家的な意味でも非常に賢明な御判断だろうと私は思います。  したがって、そういう御判断をしていただいた方にはいろいろな助成措置をとらせていただく。そして、それによって、二年間かけて、平成十二年には本来の適正な在庫に戻していこうということで、今国がお手伝いをしながら、生産者や自治体の皆さんと一体となって、この過剰による問題を乗り越えていこうということをやっておる最中でございます。ぜひこれは、生産者の皆さんの御努力あるいは二年先、五年先を見通した今回の御苦労というものに対して敬意を払って、役所としても最大限の御支援をしていかなければならないというふうに私は考えております。
  105. 中林よし子

    ○中林委員 原因については、私は冒頭申しましたので繰り返しません。  そこで、では政府がおっしゃる備蓄運営ルールに基づいて政府の買い入れ量を三十万トンにしたというのですけれども、その前提として二〇〇〇年十月末の政府国産米在庫を二百万トンにする、こういう方針をお持ちなんですね。ところが、ことし出された「今後の「新たな米政策大綱」の推進について」というのを見ると、二百万トンではなくて百八十九万トン、こうなっているのですね。そうなると、従来どおり二百万トンにすれば、十一万トンはことし買えるじゃないですか。さらに、二百万トンがベターなのかどうかという一つ基準はあるけれども、ちょっと我慢して二百五十万トンぐらい、本当に農家のことを思えば、それだけ在庫を持ってもいいということになると、百万トン近く買えるじゃないですか。そういうことはおやりになろうとはしないんですか。
  106. 中川昭一

    中川国務大臣 去年決めた話は、十二年には二百万トンということでありますが、二百万トンには根拠があるわけでありまして、政府が持つべき備蓄というのは、大体百五十万トンを下限として、幾らでもというわけにはなかなかいかない。なぜならば、財政負担が大変かかるわけでありますから。それで、二百万トンという目標を置いたわけであります。  今回、百八十九万トンというふうに一応数字を出したのは、何も二百万トンにこだわっているわけでもなければ百八十九万トンに固執するわけでもない、多少のバッファーとしてそういう計算になっていくだろう。作況によっても変わるでしょうし、あるいは海外援助がまたどんどんふえるかふえないかによっても違ってくるわけでありますから、私は、二百万トンと百八十九万トンと違うじゃないかと言われれば、これは、百八十九万トンから二百万トン程度を平成十二年に置いておるという意味で、そうおこだわりにならなくても結構な数字だと御理解をしていただきたいと思います。
  107. 中林よし子

    ○中林委員 こだわらなくてもいいということになれば、当然、二百万トンで十一万トン差があるんですから、買えるわけですよ。だから、その二百万トンというのも、多少、政府の政治判断でどうにでもなる数字じゃないんですか。  私は本当に、二百万トンという一応目標だって、政府が立てた目標に十一万トン差があるのだから、それは買いなさい、それが農家のためになるんだということなんですよ。そこは申し上げておきます。  時間が参りましたので、実は、私ども日本共産党の国会議員団が、十一月二日に、米の需給価格の安定を図るため米政策を見直すべきだということで、農林水産省に申し入れました。そこで示したのは、日本農業と米生産を守るためには、政府が米の供給責任をきちっと果たし、生産者が再生産が可能となるような米価を保障する仕組みを確立する必要があるということです。そして、政府米については、政府買い入れ価格を二万円に引き上げ、米価安定の基礎をつくるとともに、買い上げ数量を百五十万トンとし、二年以上経過した備蓄米は、食用、加工用とは区別して、飼料用、工場用などに活用することを求めました。このことを、大臣、ぜひお考えいただきたいということを要望して、質問を終わります。
  108. 穂積良行

    穂積委員長 次に、北沢清功君。
  109. 北沢清功

    北沢委員 大臣、海外に御活躍で御苦労さまです。  先ほどの、APECにおける我が国の輸入国としてのいわゆる主張は私は非常に正しいと思いますし、また、今幾つかの問題を抱えているWTOのあり方についても、今後私どもは、やはり日本農業を守るという立場で、国会内においてもその動きを強めてまいりたいというように考えております。  今、各委員の皆様から御質問がございまして、たまたま私と同趣旨の質問要旨でございまして、やはり皆さんの懸念は同じなんだということを実は感ずるわけであります。  特に、買い入れについての昨年の百二十万トンからことしは三十万トンであるということと、やはりかつてない低水準である買い入れでありますから、北海道、青森県産は古米との競合によって新米だからといって売れるとは限らないわけでありまして、自主流通米全体に及ぼす影響はどうかということについてもお尋ねをしたいと思います。  もう一点、まとめて御質問いたしますが、先ほどお話がありました新たな米政策による在庫水準、現在、全量回転備蓄制度によるもので、これは新食糧法における政府の買い入れを通じての需給価格の安定には非常に問題があるんじゃないか、全量棚上げ方式にしたらどうかという主張がございます。  その中で、日本の過剰米については輸出といいますか、ミニマムアクセスも含めてアジアの食糧の安全確保にどういうふうに貢献できるかということについては、やはりアジアの米を、貸借等によって安全機構というものを確立する必要があるんじゃないか。そのときそのときに対応するのではなくて、不安定なこれからの食糧問題に対して、一定の我が国としての提案をアジアにすべきであろう、そういうことを強く私は要望いたしたいと思いますが、この点についてのお考えについて御答弁を煩わしたいと思います。
  110. 山口勝朗

    山口説明員 最初の御質問は、政府買い入れ数量が三十万トンになったことは自主流通米価格に影響を与えるんではないかということでございますが、十年産米政府買い入れ数量につきましては、先ほど来お話がございますように三十万トンということで、九年産より九十万トン程度減少するわけでございますが、ただ、十年産生産量は九年産に比べて百万トン程度減少している、また、自主流通米価格回復傾向にあるということもございまして、自主流通米需給価格に悪影響を与えるということはないものと考えております。  また、備蓄の問題でございますが、備蓄の運用の仕方といたしまして、現在回転備蓄制度をとっているわけでございます。この理由につきましては、順次在庫の年産が更新されるため、棚上げ備蓄に比べて、言ってみれば安上がりになるということでございます。これに比べまして、棚上げ備蓄財政負担を多大に伴うということでございます。こういうことで、回転備蓄制度をとっているわけでございます。  この備蓄米を使った食糧の支援の仕組みについていかんということもお触れになったと思いますが、私ども、ことしに入りまして緊急の食糧支援の仕組みを新たにつくったわけでございます。これは、日本がまず、ある一定の機構に備蓄して、それを緊急大量の支援要請があった場合に活用していくということでございますが、こういうものも活用しながら、今後食糧援助を適切に行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  111. 北沢清功

    北沢委員 私は、最後にもう一つお尋ねをいたしたいと思いますが、やはり農業は、これはもう我々人類にとってなくてはならないものでありますから、いかに継続可能な農業を確立するかということにあるわけです。したがって、最近の農家所得というものは、私も農村におりますから感覚でわかるのですが、非常に前よりも悪くなっている、縮小されているという判断を実は私はしております。  新しい基本法をつくるわけですが、これらの中心になるものは、答申にもありましたように、安全な、質の高い食糧をいかに国内で確保するかということと、農地問題についてはいかに地域農業というものを保持していくかということが考えられなければならないわけですね。  第三点としては、不利益地域における中山間地域の直接所得補償方式というふうに言われておりますが、これらは、今後、政府においても詰めるし、国会にもかかるわけでありますから、大いに私どもは論議を深めたり関心を持っていきたいと思います。中山間地域については新しい発想、いわゆる環境、農業の持っている環境について強く要求をしていかないと、この前の昭和三十六年の基本法というのは選択的拡大と他産業との所得格差をなくするということ、そのことは完全に破綻をしていると思います。  それと同時に、やはり経済効率と規模拡大ということにおいても、これは大変な問題点にぶつかっておる、だからできないでおるというふうに私は考えます。したがって、そういう意味で農業の持っている環境については、相当、国民合意を得るために今まで以上に、予算面でも公共事業のあり方等についても取り組まなければいけないし、また主張もしていかなければ、なかなか効率主義という形の中ではかき消されていくのではないか、私はそういう危惧を持っています。  私どもは多年においてデカップリングの問題を取り上げていますから、日本型デカップリングの創設を期待できるような施策をひとつ進めていただくよう、大臣にその決意のほどをお尋ねいたしたいと思います。
  112. 中川昭一

    中川国務大臣 農業の果たす役割は、単に食糧を生産するだけではなくて、いろいろな機能があるわけでありまして、中山間地域といういわゆる条件不利地域と言われている地域ではありますけれども、やはりそこにも極めて重要な機能があるわけでございます。  そういう中で、今回答申されました基本問題調査会の答申書の中にも、中山間地域の位置づけ、そしてまた直接所得補償にもかなり詳しく言及されておるわけでございます。  政府としては、あの答申を踏まえて、国会あるいはいろいろな場で御議論をいただくわけでありますけれども、あの答申には中山間地域の直接所得補償について前向きの、国民の理解が前提ではあるが、あるいは対象者、対象地域、対象行為とかいろいろ、若干の条件はついておりますけれども、前向きの答申が出ているというふうに理解をしておるところでございます。
  113. 北沢清功

    北沢委員 終わります。
  114. 穂積良行

    穂積委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十三分散会