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1998-09-30 第143回国会 衆議院 国会等の移転に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月三十日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 安倍 基雄君    理事 佐藤  勉君 理事 桜井 郁三君    理事 蓮実  進君 理事 平林 鴻三君    理事 桑原  豊君 理事 松崎 公昭君    理事 河合 正智君 理事 吉田 幸弘君       岩永 峯一君    大石 秀政君       下村 博文君    滝   実君       棚橋 泰文君    西川 公也君       古屋 圭司君    宮本 一三君       玄葉光一郎君    島   聡君       永井 英慈君    井上 義久君       田端 正広君    中島 武敏君       前島 秀行君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国土庁長官) 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 板倉 英則君         建設大臣官房長 小野 邦久君  委員外出席者         参  考  人         (慶應義塾大学         大学院政策・メ         ディア研究科教         授)      石井 威望君         衆議院調査局国         会等移転に関         する特別調査室         長       白兼 保彦君     ――――――――――――― 委員の異動 九月三十日  辞任         補欠選任   渡辺 喜美君     大石 秀政君   赤松 広隆君     島   聡君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     渡辺 喜美君   島   聡君     赤松 広隆君     ――――――――――――― 九月二十九日  首都機能移転早期実現に関する陳情書  (第一五二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国会等移転に関する件      ――――◇―――――
  2. 安倍基雄

    安倍委員長 これより会議を開きます。  国会等移転に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として慶應義塾大学大学院政策メディア研究科教授石井威望君に御出席をいただいております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序ですが、まず石井参考人から二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  御発言着席のままで結構でございます。  それでは、石井参考人にお願いいたします。
  3. 石井威望

    石井参考人 御紹介をいただきました石井でございます。  本日は、首都機能情報通信並びに新技術ということで意見を述べさせていただきたいと思います。  初めに、二十一世紀国民生活全般情報通信技術の飛躍的な進歩によりまして一変するという予想が最近ますます強くなっておりまして、これはいわゆる産業革命西ヨーロッパに起こりました、現在の工業化社会の起源でございますけれども、それに次ぐ、あるいはそれをしのぐ、情報革命とでもいうような大変革だろうというふうに予想されております。  ただ、これは第一波でございまして、第二波といいますか、続いて、二十一世紀にはバイオテクノロジーなどを中心にいたしましたいわゆるバイオ革命が起こるであろうというふうにも予想されております。もちろんこれは非常に密接な関係が両者にございまして、両方合わせてバイオ・インフォメーション・エージというのがアルビン・トフラーなどが言っている二十一世紀特色だというふうに考えられます。ちょっと大げさでございますけれども、多分、人類史上空前の大変動がこの二十一世紀に起こるだろう。  なぜかということを初めに少し触れておきます。  バイオ革命の方は、一九五三年にDNAという分子の構造が発見されました。これによりまして、人類を含めた生物の遺伝とか生命現象のもろもろの基本的な部分が初めて解明されたわけであります。最近でも、よくクローン動物とか、あるいは遺伝子治療とか、遺伝子という字を見ない日がないぐらい出ておりますが、二十一世紀でかなり重要な事件が起こりますのは二〇〇三年でございまして、これは初め二〇〇五年というふうに予測されておったのですが、最近繰り上がりまして二〇〇三年だと言われております。ヒトの全遺伝子の解読ができる年だということでございます。  遺伝子はみんな持っているわけで、それが全部わかったからといって別にどうってことはないではないかとお考えになるかもしれませんが、これはちょうど百年ぐらい前に、一八九五年でございますけれどもレントゲン線が発見されました。人間の骨格、骨なんというのは昔からあったわけでありますから、別にレントゲンが発見されたからといってどうってことでございませんが、しかし、やはり生きた人間の内部が見えるということが約百年前に大変大きな革命を起こしました。  この百年間で、いかにレントゲン医学のみならずあらゆるところで重要な役割を果たしているか、お気づきだと思いますが、それと同じようなことが、DNAを一人一人、ちょうど身長、体重、血圧なんかと同じようにDNA遺伝子が全部わかります。これは実用化には相当時間がかかると思います。ちょうどレントゲンが発見されてから実用化大分時間がかかりましたけれども。  理論的には人間の進化、つまり祖先のこととかそういうことが全部わかるとか、あるいはアルツハイマーの遺伝子を持っているかどうかというようなことで将来もわかるとか、いろいろ深刻でございます上に、モラル、倫理なんかにも関係するぐらいのもっと重要な影響がありますので、このバイオ革命が多分二十一世紀に非常に深刻な問題を起こすということは確実でございますが、今回は、将来の都市機能ということになりますと、特に新首都機能を検討しようという場合には、バイオまではちょっと除外いたしまして、当面の、少なくとも確実に影響があると思われる情報革命について初めに申し上げたいと思います。  情報通信分野というのは、もう既に現在の日本産業の中でも、売り上げでも設備投資でも一番大きな部分になっております。昔、鉄は国家なりと言ったときもございますが、今は文字どおり産業の米は半導体のICであり、あるいは産業の紙は液晶のディスプレーだと言われるように、非常に行き渡っております。あるいは携帯電話とかそういう移動体通信というようなことも完全に日常的な、特に若い世代まで含めまして、それで活性化が行われているわけでございます。この特色は、極めて技術革新の進展のスピードが速くて、多分二十一世紀の前の部分ではまだまだこれが続きそうでございます。  二十一世紀情報化された都市を具体的に考えようとしますと、この技術革新で非常に予測が難しいという点が難点になります。技術が成熟しておりますと、この技術でこういうことができるとわかるのですが、これが本当に目まぐるしい変化でございまして、よく言われておりますのは、大体三カ月で一年ぐらいという、ウエブイヤーという言葉がござい佳して、ウエブというのは網という意味でございますが、ネットワークの中のスピードは大体三カ月で一年というぐらいのスピードでございます。ですから、一年たちますと、随分新しいものが、しかも安く高性能になって出てくるわけでございます。したがって、急速な陳腐化とか継続的に電子機器などを更新していくということはもう避けられません。  こうなりますと、どうして将来のことを具体的にいろいろ対応していけばいいのかとなりますと、複数の、競争状態の活動する母体がありまして、これが試行錯誤を加速する。そうなりますと、結局優勝劣敗が市場で、マーケットで起こりますから、いわゆるデファクトスタンダードという、淘汰された後に残ったものが一つの回答だということになります。しかし、これは淘汰が行われた後でわかることでありまして、事前にはわかりません。したがって、いろいろな試行錯誤ができるような、自由なというか競争状態をつくってやらないと、じっと何もしないと、考えておるだけでは出てこないという点が一つ特色でございます。  いわゆるデファクトスタンダードというのは、現在情報革命の真っただ中でその旗手をもって任じておるアメリカの場合に、それが国際競争力一つベースになっております。  このような状況でございますから、それを背景にして将来の都市考えるというときには、論理的に非常に難しい点がございます。しかし、何もしないということはできませんので、少なくともこれが国民生活全般に非常に影響がある、つまり都市の住民にしろ、そこの行政にしろ、産業にしろ、全部影響いたしますので、できるだけ、可能な限りこれを取り込んだ形にする、あるいは技術革新が進んだときにそれに対応できるようにするということが一つ重要であります。  それからもう一つは、アメリカが非常に圧倒的に強くなりますと、世界じゅうがそれで影響を受けるというか、デファクトスタンダードが同時にワールドスタンダードになる。個々の例えば歴史的な文化遺産とか伝統というのはどうなるのだろうかというような文化的な危機意識が、一方で出てくるわけであります。  例えば、言語なんかが一番いい例でございまして、インターネットなんかになりますと英語が圧倒的でございます。しかし、日本語インターネットももちろん使われなければならない、あるいは中国語ももちろん使われる。その間にどういうような問題が起こるか。例えば、中国語でいいますと、中国語表意文字でございますから、たくさん種類がございます。日本語は、幸いにして仮名文字がございました。これは、平安時代に主として女性が発明しました大変な文化遺産でございまして、仮名文字があったおかげで、いわゆる仮名漢字変換という形で、私どもはいわゆるワープロコンピューターに入れたわけであります。中国の場合は仮名に当たるものがございませんので、つまり表音文字がないという国ではどうしてそのハードルを越えるのだということは大問題だったわけであります。したがって、文化と無関係にできるわけではございません。  我が国でも、このワープロのバリアが、ワープロ障壁が越えられるという自信ができたのは一九八〇年代中ごろでございまして、それまでは極めて悲観的でございました。亡くなられました大平総理のときに研究会がございまして、そこで大平総理が心配そうに、我が国の国語がコンピューターといかにうまくやっていけるのだろうか。当時は極めて悲観的な状況でございました。それが、技術革新によりまして、文字どおりワープロなんて当たり前になってしまいましたが。  しかし、まだキーボードで使うというのが普通でございます。ところが、キーボードはすべての人が自由に使えるかというと、そうではございませんで、さっき言いました中国なんかは、キーボードといったって、従来のタイプライター的なものでは非常にやりにくうございます。  この春ぐらいから、つまりことしに入りましてから音声入力、つまり言葉で、音でそのままタイプライターのかわりに文字が入れられるということが実用化してまいりました。この研究等は、もう何十年も前からあったわけであります。私自身も、大阪万博のころにはそういう研究をやって、万博でもやっておりましたけれども、しかし実用化は非常に難しいと思っておりましたが、ついに今では非常にポピュラーになりそうになっております。  一例を言いますと、この間もある有名な経済学者が、従来は二時間ぐらいかかって一つの雑誌に出すような論文を書いておった、これが音声入力で今は十分で入れておるということでございまして、これはキーボードになれていない人ほど有効であります。なれている人でも、この夏ぐらいになりますと、十年ぐらいワープロを使っているベテランのような人でも、音声でうまくやりますと大体二倍ぐらいのスピードで、つまり二分の一の時間で入れられるというようなことも起こっております。  ですから、先ほど技術革新が非常に速いということを申し上げましたが、そういう文化的な意味のいろいろな言語なんかの障壁も乗り越えるというようなことも技術革新で起こっている実例でございます。もちろん、そういうことによりまして、従来から持っている貴重な歴史的な条件を生かしていくということは我が国にとっても、つまり日本語がなくなるとか、そういうことではございません。  二十一世紀に初めて新首都なんかを考えるということになりますと、これが情報化都市を形成するときの非常に先進的な事例になるだろうということは、今の技術革新を一番早く取り入れますから当然考えられるわけでございまして、成功すれば、人類にとって非常に貴重な歴史的な役割を果たすことになるだろうと思います。  一方、首都だけで起こるとか特定都市だけで起こるのではなくて、インターネットのようなネットワークというのは、決定的になっております。現在、例えばニュースなんかも、若い世代は、特にアメリカはそうでございますが、テレビとか新聞はもちろん、新聞をとっていない人も随分ふえておりますし、テレビも余り見なくなった。結局インターネットが一番初めに出てくる発表メディアだということは、今後ますます強くなるだろうと思います。したがいまして、通信情報ネットワーク相互依存性を十分配慮するということは、二十一世紀首都なんかを考えるときには絶対必要でございます。  要するに、グローバルに分散する全体の相互影響というのがあるということは、ほかの都市とかほかに住んでいる人とか、それと通信が行われる。従来は、非常に遠くになりますとそれが非常に希薄になりますけれどもネットワークになりますと、全くこれは同じでございます。世界じゅう隅々、瞬時にして同じでございます。  例えば、アメリカ政府がある発表をする、そうすると、東京で同時刻にインターネットで全部受信できるわけでございまして、その点ではネットワークによる相互依存性、これを最も有効にどういうふうに都市機能に入れていくかというような点が極めて重要であります。インターネットのようなネットワークが余り普及しておりませんと、それを余り考慮しなくてもよかったかもしれませんが、今や日常的に家庭の中にまで、アメリカの場合大体四割入っておりますから、もうインターネットを抜きにしてのことは考えられないとなりますと、全国都市とある都市、例えば新首都がどういうふうな相互関係になるかということが問われるわけであります。  これは、対立的に考えるのではなくて、全体の中の部分ということで、ここにもホロニックという言葉が書いてございますが、情報革命によって全体と部分というようなことが、対立的ではなくて同時に、相互依存が協調的に働くということでございます。大体ホロニックという言葉自身も、一九八〇年に、これは日本政府の公文書というか、大平総理政策研究会の中で生まれた言葉でございまして、我が国の伝統的な思考方法にも合致するものだと思います。  次に、人口との関係を申し上げたいと思います。  情報革命が進行すると同時に、アメリカにおきましては、いわゆるネットジェネレーションと言われている一九七七年以後に生まれたような世代が、もう既に人口比率の中で最大となっております。それ以前がいわばテレビジェネレーションであり、つまりベビーブーマーのころですね。その子供が今、ネットジェネレーション、生まれながらにしてネットワークが存在する、デジタルな情報をふんだんに使うというジェネレーションが出ております。私なんかはプリントジェネレーションというテレビのもう一つ前でございまして、新聞が一番身近だという。三世代が今回居しておるわけでございますが、ネットジェネレーションを、将来新首都を含めた新しい世界で、これは中心になることは明らかでございますので、いかに考えていくか。これは、私どもにとっては非常に考えにくいジェネレーションでございます。例えば、テレビゲームにしろ、あるいは非常に新しい電子機器をそういう子供たちに与えてみますと、これはもう説明書なんか全然読まないで、あっという間にマスターしてしまいます。  私も、これは四年ばかり毎夏休みに、全国から十数人の子供を集めて、そのお母さん方一緒に、学生も数十人参加してキャンプをやっております。マルチメディアキャンプといってやっております。そのときに、一番新しい機材を与え、インターネットを与えております。別に講義なんか一切しません、ただ遊ばせているだけなんですが、ほとんど一日ぐらいで最新のそういうものをマスターしてしまいます。これは本当に驚くばかりであります。かえって一緒に協力している大学生だとかそちらの方が遅いわけでございまして、子供に教わるというようなことが起こるわけでございます。  ですから、今のいわゆる説明書を読んで座学からいろいろそういうインターネットのようなことをやるということは、ネットジェネレーションではほとんどそこをジャンプしていくのじゃないかというようなこともございます。  日米で比べますと、これは明らかに教育現場などでも、例えば小学校とか中高にもう日本とは比べ物にならぬくらい、たくさんインターネットが入っております。各教室に全部入っている。政府も、アメリカの少年が大体十二歳になれば、インターネット活用能力、彼らは最近テクノロジーリテラシーと言っておりますが、このテクノロジーリテラシーアメリカ国民義務教育で全員持つ、そういう社会にするのだということを言っております。  我が国ではちょっとおくれているのでございますが、しかし文部省等も今頑張って、大体二〇〇三年ぐらいまでには何とか全学校に、これはクラスではなくて学校でございます。アメリカの場合は二〇〇〇年までにすべての教室に朝から晩までいっている。大分差がございますが、それでも何とかアメリカを追っている二番手の国としては日本は非常に有力な国だと思います。  こういうところが、結局都市機能を本当に担う。だから、今の都市機能とは随分違う形の、インターネットベースにした都市機能になります。もちろん、世論形成なんかもそういうところでなされる。そういう都市考えざるを得ない。そういう日が必ず来ることは確実でございます。  この場合も、さっき言いましたように、世界ネットワークが広がっておりますから、世界が共通のベースでいろいろすることが多くなりますが、同時に、その中でアイデンティティーというか、みずからの存在を主張するとか、お互いに評価し合うということが起こると思います。そういう状況はいいこともたくさんございますが、例えば経済活性化とかそういうことがございます。雇用ももちろんこれでふえるわけでございます。  最後に、これによる弊害というか、そのネットワークを逆に使いまして外から中へ悪いことをするのに入ってくる。こういうのはサイバーテロリズムとも言われております。安全保障上の問題も起こっておりまして、アメリカの場合も、既に、例えば国防省が不正アクセスを随分、何十万アクセスとあるようでございますが、問題にしたり、議会なんかでも、この点の情報安全保障ということも問題になっているようでございます。もちろん、我が国も、こういう問題は、災害時の問題も含めまして、対策を今後速やかに改善していくということが必要だと思います。  以上でございます。
  4. 安倍基雄

    安倍委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  5. 安倍基雄

    安倍委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に一言申し上げます。  質疑につきましては、理事会の協議に基づき、一回の発言時間は三分程度となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。また、御発言は、挙手の上、委員長の許可を得た後にお願いいたします。発言は、着席のままで結構です。
  6. 河合正智

    河合委員 新党平和の河合正智でございます。  石井先生、本日は大変に御多忙のところをありがとうございます。先生のように、医学を修められて、機械工学を修められて、マルチメディアに取り組んでおられる、まさにマルチ学者ともいうべき先生にお伺いさせていただきます。  首都機能移転というのは、バブル時代国会決議をいたしました。したがいまして、私は、先生のお言葉をおかりすれば、時代的な発展段階に応じた首都機能移転の再定義、どうして首都機能移転が二十一世紀に必要なのかという再定義を絶えずすべきではないかと思いまして、先生のきょうの御示唆を非常に興味深く承らせていただきました。  その中で、現在の首都機能移転というのは、首都ともいうべきものを一括して移転するという考え方に立っておりますが、むしろこの部分も、私は今の先生お話を伺っておりまして、首都という特定の場という場所を私たち考えておりますが、情報社会というものを考えますと、その場というものは、むしろ一つ都市というふうに限定して考えることが適当なのかどうか。それとのかかわり合いで、先生が今おっしゃいました個と全体と同時に考えるということを考えました場合に、二十一世紀における新しい国家像、また、それを踏まえました新しい首都像というものを先生はどのようにお考えなのか、御教示いただきたいと思います。
  7. 石井威望

    石井参考人 先ほども申し上げましたが、首都という場合に、普通は物理的ないろいろな条件を、社会のインフラとしてどうするか、例えば、東京とどういう距離かということがすぐ問題になるのですが、もちろんそれは絶対必要条件としていろいろ調べる必要がございますが、今御指摘の、先ほどから強調しております情報革命後となりますと、従来の物理的な条件に匹敵する、あるいは場合によってはそれを上回るぐらいの情報的な問題が新しく出てまいります。特に首都機能、あるいは都市機能でもそうですが、これは主として情報が一番活躍する部分でございます。  したがって、さっきもネットワークのことを申し上げましたが、ネットワーク全体とその部分が果たす役割、将来首都だったら首都、そのファンクション自身ももちろん影響を受けると思いますが、今の御指摘の一括して物理的に何かをごっそりというのは一確かにちょっと工業化社会で、工業化時代首都という概念が非常に強く反映していると思います。  だから、その部分だけではなくて、将来はというか二十一世紀は確実に、先ほどからも申し上げておりますような情報機能を十分に、場合によっては主導的に考えるということになりますと、技術革新が余りに速くて、あるいは人材の育成もこれから本格的に行われますから、具体的に我々の世代で非常にはっきりと物理的な感じでやっていくようにはいかないのでございますけれども、しかし方向としては今先生がおっしゃったとおりだと思います。したがって、今後、計画自体あるいは調査自体あるいは国民合意形成自体をどういうふうにやっていくのだろうかなと、私自身もそんな感じを持っております。
  8. 河合正智

    河合委員 大変ありがとうございます。
  9. 下村博文

    下村委員 自由民主党の下村博文でございます。貴重な御意見をありがとうございます。  今先生お話をお聞きしておりまして、今の首都機能発想そのもの工業化社会のときの発想であるというふうに思いますし、またある意味では、バブル最盛期のとき、非常に資金的な余裕もあるときに、あるいは発想としてよく言われるわけですけれども、土木工事的な発想で新しい首都考えるという意味で、全くそのときの首都機能のあり方、移転のコンセプトと、それからこれからの首都機能移転のコンセプトは、今先生お話のように、全く違ってきているのではないかというふうに思っているわけです。  その中で、これからの情報産業社会、新しい未来社会の中で物理的に首都機能を移すことと、それから新しい時代に即したシステムを持つということが果たして整合性があるのかどうか。それよりは今の状況の中で、つまり首都機能と、それから新しい情報産業社会を連動させる必要はないのではないか、こんなふうに私自身考えておりますけれども、その辺について、もうちょっと詳しくお話をお聞かせ願えればと思います。
  10. 石井威望

    石井参考人 従来あったものをどういうふうに活用したり、そこへ情報システム、例えばインターネットを入れるとか、これが一つございます。それから、何もなかったところでつくるというのがもう一つございます。これはどっちがいいのかということになりますと、文字どおり長所短所、今両方あると思います。  逆の言い方をしますと、同じ情報化をやっておりましても、ちょっと古い時代情報化をやってしまったところ、例えば企業なんかにしましても、投資したものを回収しなくてはいけませんから、当面、しばらくの間は、新しいものが出てきても、そっちの方がいいことがわかっていても、変えられないわけでございます。そういうものは今かなり出ております。  したがって、都市におきましても、従来のものをうまく活用できるというメリットと同時に、それは過去のしがらみとしてちょっとまずいなという意味の、今非常に難しい局面に来ていると思います。  したがって、私は、そういう場合、さっきデファクトスタンダードお話でも申し上げましたが、実際、国としても、あるいは企業なんかもそうでございますが、昔は一番いいものをずっと絞っていって、これでいいから、全部一斉に画一的にそれでやろうという方法だったわけであります。これは一番効率もいいし、二重投資もないし、一番いいはずなのでございますが、今、一番いいものを、あるときにいいと思っても、場合によっては、延々と会議なんかしておりますと、会議している間自身にどんどんどんどんおくれていきまして、硬直した企業体なんかですと、じゃ全社これでやろうなんて決めたときには、一番おくれてしまった状況のものが全社に入る。これではもう自殺行為でございます。競争上非常に不利になるわけであります。  では、どうしたらいいのか。ちょっと語弊があるかもしれませんが、兵力の逐次投入というのは非常に悪いと言われておったのですが、もうとにかく新しいものを次々にやりながら、それの一番いいところを、新陳代謝をしていく。逆に言うと、悪いところも常に存在している、おくれたものも陳腐化したものも持っているという混在したような形にならざるを得ないのではないか。それを従来のような対応方式をとっておりますと事実上おくれてしまうというようなジレンマに、今、各企業が入っているのではないかと私は思います。  ですから、非常に難しいのですということしかお答えにならないのですが、しかしこれはやらざるを得ないわけで、まず首都機能定義の問題を先ほど先生がおっしゃいましたが、河合先生の御指摘のように、定義の問題ももちろんあります。その次に、具体的にやるときのやり方の問題も、今下村先生がおっしゃったように、そんなに教科書どおりに工業化社会にぱっというふうにいかないところが、またこれは非常に問題でございます。  私自身も、従来の条件を無視するということを申し上げているのではなくて、現に今、ちょうどきょうも行っておりますけれども、各候補地域を現地へ行って調べております。私も何回か行って、きのうも茨城県へ行っておりましたけれども、場所とかそういうのを見ております。見ないで情報システムだけをつくるとか、現地の人に会わないでつくるということは、これはまたある意味で非常に危険でございます。  そういう点では、現状とか歴史的ないろいろな蓄積とか、特に無形の蓄積も随分ございまして、最近デジタルアーカイブといって、例えば京都なんかですと物すごいたくさん文化遺産を持っております。こういうものは逆にネットワークの中では非常に貴重でございまして、そういうことも含めた過去からのものの活用ということもございます。  したがって、今の御質問、恐らく、ちょっと今時間がオーバーしておりますが、一つだけ参考になるのは、愛知万博が今度ございますね。これは大阪万博、筑波万博と随分変わるのだろうと思います。つまり、私たちの世代大阪万博日本として初めてチャレンジしたわけです。私も現場にあのころ行っておりまして、助教授クラスで、本当にあそこでやっておったのですが、筑波ぐらいになりますと、大分日本もよくなってきたのです。  今度は次の世代が、新しいタイプで、例えば環境問題とかそういうことを十分踏まえた形の万博に多分なると思うのですが、こういうのが一つの、今先生がおっしゃったようなことのひな形というのか、実験場でございますから、何らかのヒントがそこから出てくるかなと期待しているわけであります。
  11. 永井英慈

    ○永井委員 民主党の永井英慈と申します。ありがとうございます。  先ほど二人の議員から御発言がございましたが、私もその辺に大変興味を持っておりまして、今先生お話で、情報革命が、革命の段階というか革命の真っ最中ですね。日進月歩というよりはまさに時々刻々と変化をして、きょうの会合で決めたことが、いや遅かった、おくれた、そのくらいの変化ですね。  そこで、具体的に今先生お話しされて、茨城へ見に行ったり、奈良の方へ行って大変御苦労をいただいておるようです。そして、来年の秋には移転先候補地を選定、決定するというタイムスケジュールができております。  そこで、このネット社会をにらんで、情報社会をにらんで、この社会のある程度の成熟段階がどのくらいのところにあるのだろうかというのが関心なのです。それが食い違いますとえらいことになるんじゃないかと思っておりまして、今進めておるこの移転計画、先生の御感想で、これはちょっと無理じゃないか、こんな革命の真っ最中にというお考えなのか、いやいやこれはどんどん進めて二十一世紀の新しい日本都市を今つくるべきだとお考えなのか、その辺のところを具体的にお話しいただければと思います。
  12. 石井威望

    石井参考人 それでは、ちょっと二つに分けてお答えさせていただきます。審議会委員としての立場が一つございます。もう一つは専門家としての立場でございます。  初めに、委員としては、これは非常に単純明快でございまして、いかにやるべきかとか、どういう本質的な問題かは、今の審議会でほとんど前にやられた結果を、その枠内というかその処方せんに従って実際にやるというだけでございますから、逆に、行って、見て、それをチェックして、質問事項がありまして、だから、これはある意味では非常に簡単な作業でございます。  だから、第一の部分では、多分私の前のこういうところでお答えになった審議会委員の特に責任のある方なんかは、そういうふうな中で答弁をおしまいになさったのではないかなと僕は予想するのですが。  第二の部分委員ではないという仮定で、したがって、後で委員がそんなことを言っていたと言われるとちょっと困ってしまうのですが、ないという立場で言いますと、確かに、ある意味でこんなに早く情報化の大変革が来るというのは、私自身も非常にこれは驚いております。次の世代だろうと思っておりました。それがどんどん繰り上がって、私たちの最後の部分、例えば福祉問題なんかも、情報化と一緒にやらない限りだめじゃないかというようなことも起こってきております。  私自身もだんだん高齢化してまいりまして、そういう意味では、第二の立場で申し上げますと、確かに情報化が入ってきて、従来の枠組み、従来の問題設定でやるのは無理だなというのと同時に、チャンスだなという気もしますね。つまり、新しい、いい条件が入ってきておりますので、この際もっといい首都考えるというようなこともできるかもしれないし、あるいは首都自身もさっきの定義が変わるかもしれないし、あるいは従来の都づくりと違う方法論でやつでいくということ自身も入ってきますので、専門家としては非常に興味があるというか、いいなという気はするのです。  ただ、前に引かれたレールなり、そういう審議会の枠というのがございますから、現地視察はもちろん枠の中でやっておりますし、私なんか情報という立場ですと、直接今の物理的な問題とは余り関係がないことも多うございますが、しかし、さっきも申し上げましたように、それは全く無関係というぐあいにいきませんので、勉強させていただいております。
  13. 古屋圭司

    ○古屋委員 岐阜の古屋でございます。石井先生にはいつもお世話になっておりまして、ありがとうございます。  今、石井先生の方から中部万博、瀬戸の万博お話が出ましたけれども、私も東海地区の人間の一人として、環境と最先端の科学技術との調和、フュージョン、これがこの万博の根幹的なテーマだと思うのですけれども、やはりこういった二十一世紀型の切り口というのが非常に大切だと思います。  今、首都機能移転というのは、先ほどからもお話がありますように、一極集中の是正であるとか行財政改革のきわみだとか、いわば従来型の切り口なんですね。これですと、どうしてもやはり東京を仮に説得することはできないだろうし、また全国民を説得するということはなかなか難しいと思う。  そう考えますと、やはり二十一世紀というのは先生も御指摘のように情報戦争の時代。この情報戦争というのは、古代から、例えば人間というのは侵略を繰り返してきた。なぜ繰り返してきたかというと、それは有限資源の争いだったのですね。それは土地であり、エネルギーであり、化石エネルギー、資源、こういう有限資源の争いをしてきたわけであって、二十一世紀情報戦争というのはそれが一転する。  情報戦争の有限資源というのは何だ。今、国を挙げて戦争が始まったところだと思います。それは、例えば、先生が御指摘デファクトスタンダードとか標準とか仕様とか暗号とか著作権とか、いわば目に見えない財、今までのいわゆるGDP型経済から、目に見えない財の経済、こういうものに確実に移行している。現に、今はいわゆる物経済よりもマネー経済の方が何十倍も一日にお金が動いているということから見ても事実だと思います。したがって、今度の首都機能移転というのは、そういったコンセプトというのをいかに出していけるかというところだと思うのですね。  では、今度は、新しい行政機能が移るわけですから、行政機能の高度情報化ということをどういう形に持っていくのか。究極的にはデファクトスタンダードというものを得ることだと思うのですけれども、例えば審議会だとか専門家の間でのそういうものについての議論というのが余り聞こえてこないような気がするのですけれども、やはりそういう切り口からこれから議論をしていかないと、この二十一世紀型の新都市、未来というものは見えてこないと思う。  特に、これから生まれてくる方、あるいは今から教育を受ける方、いわゆるネットジェネレーション人間がもっともっとふえていくわけでありますから、そういう人たちを説得するためにはその辺の切り口が不可欠だと思いますけれども、この辺についてはどういうふうにお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  14. 石井威望

    石井参考人 今御指摘のことは、大筋でそのとおりだと思います。特に行政機能の問題がございましたが、ネットジェネレーションに対応した行政サービスなり、そういうことが当然ございますし、それから、高齢者とか過疎関係でも無関係ではないわけであります。  具体例を申し上げた方がいいかと思いますが、今ちょうど私が調査しておりますのが高知県の中芸地区でございまして、これは一万五千人ぐらいですか、高齢化率も非常に高い典型的な高齢先進地区でございます。ここにモバイル端末という移動体でできる通信機が実例として普及しておりまして、ああいう社会福祉的な面が日本でどんどん大きくなっていく、そうせざるを得ない、その中に今申し上げたような新しいメディアのツールが入っていく。しかも介護しているヘルパーの人の平均年齢は三十七歳、女性がほとんどでございますが、その人たちが確実に使いこなしている、毎日それをやっている。そこで、日本独特のボトムアップで新しいアイデアが出てきて現場で喜ばれておる。  ですから、我が国の場合に、アメリカ型のいわゆる情報化とかとはまた別に、高齢化という新しい、普通はマイナスの条件考えておりますが、これはネットジェネレーションとも大いに関係がございます、高齢者と協力するというような意味の。そういう仕組みなり行政側でのうまいインフラを、ソフトのインフラでございますが、そういうものをつくっていけば、逆に、福祉と情報化が融合したような形の新しいタイプが出てくる。あるいは、さっきの環境問題にしましても、工業化社会の中での環境に対するやり方がございますが、情報社会になりますと、初めから情報的な可能性をフルに使うということになります。  これはいい例かどうかわかりませんが、例えば病院で、現在、待合室で待つということは必要ないのではないかという方向に行っております。それは、みんなが携帯電話のような通信を持てば、呼び出してもらえばいいわけでありまして、それまでは自由に買い物をしたり休んだりしていればいい。  事実そういう方向へ、今度の愛知万博なんかも、ずらっと並んでじっと待っているというのはいかにも工業化社会の、並んでいる人も大変でございますし、場所を考える方も大変でございますが、通信でカバーすれば物理的にはそれがほとんどなくなってしまう。非常に快適であると同時に、一方で省資源であったり環境に対しても負荷が少ないというようなことが、現実に多分万博みたいなところで人々にわかる。それが国民的な合意なりネットジェネレーションの強化になり、あるいは高齢問題にも波及していくというふうに感じております。
  15. 中島武敏

    ○中島(武)委員 日本共産党の中島武敏でございます。  先ほどからお話を伺っていて、さて私はどういうジェネレーションに属するのかな、ネットジェネレーションではもちろんないわけだし、かといってテレビジェネレーションでもない、もっと前だな、プリントジェネレーションなのか、その前なのかというような感じを持ってお話を伺っていたものですから、大変勉強になりました。非常に斬新な御意見を伺わせていただいたという気持ちでございます。  それからまた、先生の御発言を、その後の質疑を伺っていても、やはりこの道の最先頭を行かれる方だけあって、新しい情報社会を本当に生かした、あるいはその先端を行くような新都市をつくりたいというお気持ちが大分にじんでいるように思いまして、それもわかるな、こういう感じでございます。  ところで、ちょっと申しますと、日本社会国民主権の、そしてまた議会制民主主義の国でありまして、これは私見ですけれども、どういうところに首都を置くのが一番いいのかという一番の基本というのは、やはり国民の声が一番反映しやすいところ、何もないところに新しい都市をつくるというのではなくて、やはり大都市で、そしていろいろな国民の声が政府にも国会にも大いに反映する、請願も陳情も政府要請も国会要請も、それらがデモであったりあるいは集会であったりというようなことをいろいろ含むと思うのですけれども、そういう角度からいうと、先生お話は非常にわかるのですけれども、そこら辺のかかわり、今私が申しましたこととのかかわりで、どんなふうに先生はお考えになっていらっしゃるか、そこをもう一つ伺いたいと思います。
  16. 石井威望

    石井参考人 ちょっと私も過分のお言葉で面映ゆかったのですが、私もプリントジェネレーションでございます。それから、今のいろいろな表現手段につきましても、私個人はやはり昔からある表現手段ということになれておりますし、一番アピールを感じるわけでございます。  ですから、そこを切り捨ててというのは、アメリカなんかはどちらかというと若い社会ですからばっと思い切って実験的なことをやりますけれども我が国の場合はむしろ、産業でも現場なんというところがじっくりと本当に自分たちのものにこなしていく。一番いい例が、例の品質管理のQCでございますね。QCサークルなんかができて、アメリカの本家よりもっとよくなってしまった。それは日本の、現場の本当に働いている人が納得し自分たちに一番いいものを逆に提案してい一つたというプロセスだと思うのですね。  ですから、今おっしゃいました民主的合意の形成のプロセスにしても、日本の場合はいい意味でも悪い意味でも、日本らしいプロセスを着実にとっていくのだろうと思います。それがないとどうしても、若い人なんかはちょっと急ぎ過ぎるところもありますし、アメリカの成功をそのまま考えるようでございますけれども、私たちのジェネレーションはそうではないのではないかと思います。  やはり実例で申し上げた方がいいのではないかと思います。例えば、今郵便のサービスがございます。郵便というのは工業化社会のスタートのときにできた、鉄道と郵便が象徴でございますが。現在でもたくさんの人が郵便を配達しているわけでございます。ところが、過疎地へ行きますとひまわりサービスなんというのがございまして、郵便屋さんが配達しながら過疎のひとり暮らしの老人なんかに声をかけたり健康状態を見たり、場合によっては買い物を手伝ってあげたり、いろいろなことをやっているわけであります。  これはフットワークを使った従来型のものでございますが、そこに人間関係とか安心感とか信頼関係とか、そういうものが長い間にその地域でできているわけでございます。それと関係なく都会から若い子が善意に燃えてボランティアで行っても、そんな急に家の中へ入ってこられたら怖くてしようがないということになるわけでございますから、むしろそういうところが逆に、さっきも申し上げましたモバイル端末というか一番新しい端末を持って無線で通信なんかしながらできるようになれば、これは一番着実でございます。  そのためには、今そういうことをやっている人が自分たちで納得し、自分たちでこういう時代になったのだからやろうというところのプロセスがないと、これはできないわけでございまして、幾ら講習会を開こう、何かよく若い人が考えるのは、村の公民館へ老人を集めて講習会をやってパソコンをやろうとか、これはほとんど不可能でございます。僕なんか自分の年齢でよくわかるわけです。  しかし、そうではなくて、毎日やってくるひまわりサービスなんかのような、郵便局の人が来て一緒に目の前で見ている、毎日見ておりますから。徐々に何かそういうふうに移っていくというのが一番自然であり、現に日本が持っている非常にしっかりした部分が活用できるのではないかというふうに考えまして、これも実地調査なんかしております。
  17. 中島武敏

    ○中島(武)委員 ありがとうございました。
  18. 井上義久

    ○井上(義)委員 新党平和の井上義久でございます。  先生お話、大変興味深く拝聴させていただいたわけですけれども首都機能移転というのは国家百年の大計だ、こういうふうに言って今日まで議論が進んできたわけです。  先生お話で、いわゆる情報社会というものを踏まえた上で都市機能というものを考えていかなければいけない、ただ、余りにも進歩のスピードが速くて、具体的な目標なり具体的な内容なりを詰める、明示するということは非常に困難だ、こういうお話なのですけれども、ただ、やはり国家百年の大計でございますから、ある程度のイメージを持ちながらこの首都機能移転ということを考えていかなければいけないのではないか。  そういうふうに考えますと、首都機能というのは、この情報社会において何が首都機能なのか。なおかつ、ではその首都機能というものをどの程度集積しなければいけないのかという問題があるのではないかと思うのです。  特に、先ほどから、例えば立法機能とか行政機能だとかというのが首都機能一つだと思うのですけれども、それを、ではどの程度集積しなければいけないのかということになると、先ほど先生からお話があったように、例えばアメリカの国務省が会見をすれば、そのままインターネットでリアルタイムで我々も聞くことができる。今度、埼玉県なども記者発表したものはリアルタイムでインターネットに載せるということになると、別にそこに行かなくても、新聞記者ではなくても必要な情報はいつでもその場所で確保することができる。  そういうことを考えると、新たに首都をつくって機能を集積しなければならないという意味は本当に何なのかということを、やはりこれはしっかり考えておかなければいけないと思うわけでございまして、その辺、先生は率直にどういうふうにお考えになるかということ。  それと、この首都機能の問題と直接関係ないのですけれども、いわゆるネットジェネレーション、我々の子供世代を見ていますと、先生おっしゃるとおり、我々の数分の一、数十分の一の努力で習得しているわけでございまして、非常にうらやましいなと思うのですけれども、ただ、日本の今の教育条件などを考えると、これは世界的なこういう情報化戦争の中で、どうもやはりアメリカなんかより非常に立ちおくれていくのではないか、この差は今きちっとやらないと決定的になるのではないかというふうに思っているわけでございます。  そういうネットジェネレーションがこれから登場してくる。これはほっておいただけではネットジェネレーションにならないわけでございまして、その辺の、これから日本が国際社会の中で生きていく上で、特に情報社会情報戦争という観点の中で何を具体的に整備していかなければいけないのかということについて、先生、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  19. 石井威望

    石井参考人 私も教育をずっとやっておることがありまして、結論は、やはり人づくりだと思います。  人づくりは、機械ももちろん必要ですが、人づくりができる人なのですね。ですから、明治維新も全部そうでございましたけれども、結局、あるとき非常にコアになるような人づくりをする私塾だとか何かができたわけであります。もちろん、これはある人数に増殖していかないと社会的になかなか機能しませんがいろいろ議論がございますけれども、やはり一番初めにやるべきことは人づくりではないかと思います。  具体例を言いますと、私、大学院の方をこの五年ばかり慶應で担当しております。湘南藤沢キャンパスという、一番情報インフラがいい藤沢の方にあるキャンパスでやっておりますが、この中で、この三月に修士を卒業した学生でございます。四年間徹底的に、情報インフラの中の一種の、さっき言いましたテクノロジーリテラシーを勉強し、それで大学院で二年同じようにやりまして出ていったのですが、私ども面接で採ったりしておりますので、面接のときに私聞いたのです。将来何をやるんだと聞いたら、小学校先生をやるんだ。僕も感動しまして、結構だ、では一生懸命やろう。それで、彼は四年間やりまして、今度修士へ入ってくるときももう一回念を押したわけです。君、やはり先生をやるのか。やります。  それで、この四月から慶應の幼稚舎に行きまして、自分で手づくりというか、とにかく予算も少ないなんてと言ってぼやいていましたが、自分で夜遅くまでかかってインターネットネットワークをつくったり、それから、自分が先生になって夜十時ぐらいまで先生を教育しているわけでございます。  だから、迂遠に見えても、そういう人づくりから始まってその輪を広げていくということが一方であって、それを援護するハードウエアというか、財源とか、そういうことになろうかと思います。よく本末転倒するのは、そこの種火をつくらない状況で、何か器だけつくってしまう場合があるのですね。これはなかなかうまく今後広がらないということがございまして、何とかして初めの、一人の吉田松陰をつくるというようなことではないかと思うのでございます。これはなかなか言うはやすく、やるのは大変なのでございますが、しかし、現実にそういうことがやがて我が国であちこちで起こり出すのではないか。ですから、大学教育でも、すぐに産業の第一線に立つ人もさることながら、今のような先生というか、そこが二番目のお答えでございます。  もう一つの方は、集中と分散の中で、どうしても集中しなくてはいかぬものがございます。  これは、アーカイブといいまして、一番大事な情報を、アーカイブという横文字が公文書保管という意味なのでございます。政府機能の一つはアーカイブ的なものだろうと思います。もちろんこれはデジタルでございますから、大変コンパクトにできたり、索引が非常に素早くできたり、あるいはすべての人がそれを活用できたり、もちろんプライバシーの問題もちゃんとやる、あるいは安全保障もちゃんとやるというようなことがございますから、この部分はやはりやらざるを得ない。  あるいは認証の部分でございますね。アーカイブでちゃんと記録してある。デジタル情報の悪い点は、幾らでも改ざんできるわけです。これは本当かなと思っても、わからない。それで、それはちゃんと届けてあって、そこでちゃんとギャランティーされて、何月何日この状況でちゃんと国家が保証しますというようなことが絶対必要でございます。  ですから、そういう点では、すべてが分散でしょっちゅう変わりながらいく。つまり不易と流行でございまして、不易の部分がどうしても要ります。流行の部分はそのかわりふんだんに、自由にいろいろ試行錯誤する。そういうあれになるとしますと、政府役割もおのずとそれに対して対応していくことになると思います。
  20. 宮本一三

    ○宮本委員 自由民主党の宮本でございます。  非常におもしろい、ちょっと目からうろこがはげるような、本当にすばらしいお話を聞かせていただいてうれしく存じますが、一つ、それが非常に斬新なお話であっただけに、私もちょっとショックを受けました。  一体これは、国会移転の話を長々とやってきてはいるのだけれども、こういった技術進歩など今聞かせていただいたことをよく考え合わせますと、例えばこの国会議事堂をどこか、どこに行くか知らぬけれども、今移す必要が本当にあるのかな、そんなことまで疑わざるを得なくなってきたし、それから、先生発言の中でも、委員としての発言と個人としての発言では若干ニュアンスが違う。これは当然でございます。  そういうことも聞いているうちに、一体首都移転とは何じゃと。今の集積の問題、アーカイブスの問題など非常に大事だし、こういう角度で見直さないかぬのだけれども、今まで何年かかけてきた議論からいうと、何か前の人が、国会が決めたからそのまま行かざるを得ないようなことで動いちゃいかぬというような、そんなことを、これは自民党が言うといかぬのかもしれぬけれども、正直言って、若干、今の話は非常にショッキングなお話だっただけに、私もその点にむしろ疑問が出てきたことをちょっと述べさせていただきたいし、先生の御感想などもちょっと伺いたい、こういうことです。
  21. 石井威望

    石井参考人 先ほど立場を二つに分けさせていただいたのはまさにその点でございまして、特に去年ぐらいから我が国は根本的に考えなきゃいかぬという時期にもう追い込まれてきたのじゃないかと。  ですから、金融一つにしましても、私の専門からいいますと、金融のソフトウエア技術通信技術、そういうものが海外と日本の間ですごいテクノロジーギャップが、技術格差が出ているぞということはわかっていたわけでございます。しかし、我が国は多分大丈夫じゃないかなんというようなことも私は漠然と、何か自己の不明をあれするわけでございますけれども、金融のことはわかりませんから、多分金融の専門家が勉強した上でなおかつ、当分は金融の情報技術なんというのはそんなに重要じゃないというようなことを随分言われました。  だから、そうかなと思っていたんですが、やはり最近になってみると、金融関係の専門家も、随分おくれてしまった、これは大変だというふうに変わっているようでございますから、そういう状況の変化を素直に見れば、やはり二、三年前とかそういうときの、これはそれが間違っていたと今から責めてもそのときの状況で、そのときの条件の中でやむを得なかったところもあろうかと思います。ですから、私自身も、例えば本を書きまして、その二、三年前のときに書いているのが非常に後で困ったというようなこともございます。それは、技術進歩も早いのですが、今のように状況全体が変わってしまった。  ですから、国際的に考えますとアジアの問題なんかも完全にそうでございまして、アジアというのは今は非常にいろいろ問題が起こっておりますが、これは技術文明史的に見ると非常に私どもと違うところがございます。私どもは、工業化をキャッチアップという形で徹底的にやったわけでございますが、アジアは工業化と同時に情報化をやっております。これは、同時にやっております。場合によっては情報化は飛び越してやっております。  例えば、私どもは有線の電話をちゃんと引いてやったのですけれども、有線の前に携帯電話で無線で入ってくるというようなことを各国やっているわけでございまして、そうなると、その変化を私どもはかなりもう一回織り込んで、前のを間違いというよりも、前のをより改善するというような方向へ行かざるを得ないのではないかということを、これは第二の立場で考えます。  第一の方は、従来の枠組みの中で、少なくともこういうことをやるのがこの審議会だと決められておりますから、そのとおりやっています。しかし、その間にデータはいろいろたくさん現地で拝見しておりますので、その点、ちょっときょうは非常に微妙な立場でお話ししておりますので御了承いただきたいと思います。
  22. 田端正広

    ○田端委員 新党平和の田端正広でございます。  きょうは、最新の情報といいますかお話、非常に関心強くお伺いしておりますが、私は、先生お話に一番縁の遠いのがこの永田町じゃないかな、こう感じております。つまり、国民にはプリントジェネレーションからネットジェネレーションに至るまでずっと各層あると思うのですが、永田町の場合は、どちらかというと本当にプリントジェネレーションに近い人たちがもう大半じゃないかなと。こういう意味では、まさに我々国会議員の中からそういう意識革命といいますか、そういうものが必要だなということを今お話を伺いながら痛切に感じました。  実は、先般、ある日本を代表する家電メーカーの社長と懇談したときに、この方がおっしゃるのに、今もう、例えば東京とか大阪に本社を置いておく必要はない、例えばシンガポールでも香港でもどこでもいいんだと。つまり、どこに本社を持っていっても、情報なんというのは、もう操作一つで一瞬にして世界情報を得られるんだから、日本に本社を置く必要はない、こういうところまで我々は今深刻に考えているというお話を聞いて、企業も首都機能移転じゃないですが、つまり、より生き延びるために世界のどこで商売をするかという、こういうことで本社機能を移転するまで考えている、こういう話を伺いまして、まさに情報革命というものがもうそこまで社会を変えてしまっているんだ、こういうふうに思いました。  その場合に、私、先生に直接きょうはお伺いしたいと思ったのは、首都機能そのものもあれなんですが、特に国会ですね、国会のあり方。例えば、新しい国会は今のような国会でいいんだろうか、もっと情報革命をふんだんに生かした国会の議論のあり方、審議のあり方、あるいは国民情報を開示できるあり方、こういうものを本質的に議論しなければならないんじゃないか、こう思っておりまして、こういう機会をいただきましたので、先生のその辺の御所見をお伺いしたい、こういうふうに思います。
  23. 石井威望

    石井参考人 国会の先生方を前にしてちょっと言いにくいことではございますけれども、相当その辺の問題は、こういう時期に、産業界はもうやむを得ずどんどん進んでおります。それをやらないところは自然淘汰で消されてしまいますから。本当に、ちょっと前まではもう考えられなかったような大企業が、今大変なピンチになっているところがたくさんございます。それは、一つは明らかに今の技術革新とか情報革命への対応が生ぬるかったというか、ちょっとまだ甘く見積もっていたという辺が裏目に出ているということが多々ございます。  我が国も、やはりその点は相当、明治維新を引き合いに出すとちょっといろいろな点で問題があるかもしれませんが、しかしあのぐらいの、情報革命というのは、要するに農業社会から工業社会に変わるときに日本は何をやったんだという点は、今回、情報社会というのは工業社会の何か延長で、同じようなやり方でそのままいけるということはちょっと考えられません。だから、これは思い切ってそこは大英断を国会みずからお考えになるのが一つございます。  それからもう一つは、そうはいっても、やはりコンティニュエーションということが非常に、特に私たちのジェネレーション、プリントジェネレーションが持っている使命だと私は思います。  私の周りに、非常に若くてもどんどん、彼らは何も歴史を知らないし、将来の日本のそういう大きな意味の不易の部分に、つまり何を変えない部分にするのかという点では、やはりプリントジェネレーションは大いに頑張らなければいかぬ。事実、ネットジェネレーションも必ず紙に帰ってきます。彼らは、紙が全然なくなるわけじゃなく、紙を我々と違った意味で、つまりニュープリントとして使っているわけでございまして、これは私も新しい発見というか。したがって、私どもと紙の上での交流もまた出てまいります。  それからもう一つは、ここで、長年永田町の中のいろいろな人間関係における一種の試行錯誤の上できたやり方とかいうのがございます。これはやはり、全部が一掃されるというのじゃなくて、例えばオフラインミーティングという言葉がございます。オンラインミーティングというのは、ネットワークの中でしょっちゅう交際しているということでございます。それで、オフラインミーティングというのは、そういうネットワークとかラインなしで、本当に会ってやるということであります。私なんかは、ずっとオフラインミーティングばかりやってきた世代でございますが。  だから、ネットジェネレーションというのは、オフラインミーティングをやるところがあるのですね、必ず。そこでの新しい意味の、人と人との、フェース・ツー・フェースの情報の交流というのが当然あるわけであります。  僕なんかはついつい、それについては僕は専門家だなんと学生に言うと、学生の方からは、先生時代はノーラインミーティングだよ、オンラインとかオフラインじゃなくて何もなかったのだというふうに一蹴されるのでございますが、ともかく、そういう点は、どういう具体的なあれがあるかもしれませんが、私の場合、教育の場で若い人とそういうことでオフラインミーティングのやり方。  ですから、さっき先生がおっしゃいました、個々の持っている貴重なそういう人間学というか、この部分をいかにうまく次のネットジェネレーションに伝えていくかという辺も一つの課題じゃないかと思います。
  24. 滝実

    ○滝委員 ありがとうございます。自由民主党の滝実でございます。  今までの先生お話をお聞きいたしておりまして、非常に飛躍したことを申し上げて御意見を承りたいと思うのでございますけれども、お許しをいただきたいと思います。  やはり国会の意味というのは、全議員が一堂に会する、そこに大きな意味があると思うのでございますけれども、そういうことをやっておりますと、そのままですと、なかなか議論が進展しないのじゃないだろうかなということも実はつくづく思っているのです。というのは、国会を移転する、どこへ移転するか、移転するところもそれでもって固定的になってしまうわけですから、なかなか決めにくい。そういう問題が常につきまとう。したがって、なかなか決めにくいという問題があるように思いますね。  ところが、やはり情報社会ですから、部分的に実験ができないものだろうか。例えば、今対象地域になっているどこかの地域に、一つ委員会あるいは二つの委員会、どこの委員会でもいいのですけれども、器だけは用意しておいて、そこでもって部分的に委員会をやってみる、そういう実験的な試みというのがあってもいいのじゃなかろうか。非常にいいかげんな話なんでございますけれども、そういうことをやりながら、国会そのものが情報化にどうやって対応した備えをしていくか。そういうことをやっていきませんと、なかなかこれは本物にならないのじゃなかろうかなという感じがございます。  結局は、一堂に会さなければなりませんから同じことになるのかもしれませんけれども、そういう部分的な実験を通すことによって、かなり情報化に対応した国会のあり方というものが認識されてくるのではなかろうかなという感じを持っているのですけれども、そういうことについては先生はどういうふうにお考えになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  25. 石井威望

    石井参考人 その点も全く同感でございます。  具体例で少し、それにお答えになるかどうかわかりませんが。  例えば、私が学生と連絡をとるというのは、最近は全部携帯電話でございます。下宿に電話がなくなりまして、全部携帯電話でございます。ですから、電話をかけますと、今どこにいるのなんということになるのですが、どこで会おうかということはそこで決めるわけでございます。何人かで会おうとすると、みんなが都合がいいところに何時ごろに会おうかと。それも大体どの辺ということにしておきまして、そこまで行くと、じゃ今あそこの街角にあれが見えるからあそこへ行こうと。ですから、数寄屋橋のところで起こった「君の名は」なんというようなすれ違いは絶対起こらないわけでありまして、あれは工業化社会で起こったわけでございますが。  そうなると、今おっしゃいました一堂に会するという意味が、ネットワークと不可分で、しかもそのとき一番いい場所というのがございますね。例えば、災害が起こった。災害の場所でどの辺が一番いいかは、通信をとりながら、動きながらやる。  もちろん、そうはいっても、やはり大学の中へみんな帰ってきて、大学の研究室でゼミをやるということも両方今やっておりますが、御指摘のような実験的といいますか、回遊的といいましょうか、これは何か情報の今の流れからいいますと、ネットジェネレーションの中で非常に向いているのじゃないか。事実、そういうライフスタイルになってきている。かなりの合意形成なりお互いの情報交換はそういう、モバイルといいますが、移動しながらお互いに、場合によっては現場から直接というようなことが極めてだんだん現実的になってきたのじゃないか。  企業なんかも完全に、先ほど本社のことをおっしゃいましたけれども、営業所なんかもどんどんなくしてしまって、どこにもなくて、バーチャルに、仮想的に営業所がどこかにあって、そこへみんな情報を集めるなんということも現にやり始めているようでございますから、今先生がおっしゃったことは大変結構だと思います。
  26. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田でございます。  きょうは大変勉強になりました。ところが、先生冒頭に、バイオを除外すると。このペーパーを拝見させていただいて、このお話が伺えるのじゃないかなということで楽しみにしておったのですけれども、このバイオについて少し意見をお伺いしたい。  というのは、これほどまで情報革命が起こった場合に、人間がついていけるのか。例えばニューロンの細胞膜電位、なれの部分でついていけるのか。あるいはバイオ革命が起こって、遺伝子を操作しなければ実際ついていくことができないのじゃないか。  簡単に一つの事例だと、私の地元は名古屋です。新幹線で「ひかり号」に乗ると二時間、「のぞみ」に乗ると一時間半なわけです。この三十分の差というのは非常に大きなものがあります。急いでいるときは「のぞみ」、だけれども「ひかり」に乗るとちょっとゆっくりできる。こういう部分がどんどん積み重なっていくと、対応できない人間が何人か出てきて、また精神的な苦痛も起こってきて、新たな病気も発生するのじゃないか。  ですから、医学的な改革、革命、これを含めて今後どんなことが予想されるのか。それに対しての対応に関して、少し詳しくお話をちょうだいしたいと思います。
  27. 石井威望

    石井参考人 詳しいということになりますと、三分という制限がございますので、ちょっとかいつまんだことになってしまって申しわけございませんけれども。  私、もともと医学部出身ということもございまして、情報というと全部、電気通信とか、いわばドライな機械的なものを考えがちでございますが、最終的には脳へ行くわけでございまして、人間同士の、例えばお母さんと生まれたての赤ちゃんのコミュニケーションなんという研究もずっと実は小児科の私の同級生の教授とやっておるのでございますけれども、そういうことを考えますと、あくまで人間同士のコミュニケーションが十分機能しているという前提が必要だと思います。  そこが抜きで、何かいわゆる今の機械といいましょうかテクノロジーだけでの話というのは、私、工学部におったのでございますけれども、もともと医学部でございますから、そういうお母さんと赤ちゃんというようなことをずっとやっておりまして、それは、情報の伝達とか、インターフェースとも言いますが、インターフェースの原点でございます。  ですから、今御指摘の点はもちろん、ちょうど自動車を運転していて事故が起こるように、うまく使わないとこの技術は非常に問題を起こします。ですから、よく大丈夫ですと一言で言うのですが、そうじゃなくて、それはやはり十分注意をした上で、うまく情報の関連の技術を使う必要があると思います。  それからもう一つは、時間がちょっとありませんで、申し上げますと、そういうタイプの教育をやはり教育現場でもいろいろなレベルでやる必要があると思います。  最近、よくハッカーとかハイテク犯罪みたいなことが問題になっています。この間出ました警察白書の第一章もハイテク犯罪でございますね。ですから、私なんかも、ハイテクだとかそういう新しいマルチメディアの教育をしながら、これは犯罪的な可能性も一方では高まっているということでございます。  したがって、よくネットワークエチケット、ネチケットだとか、そういう言葉もありますし、同時にそういう良識というか、市民としてどうするかということも一緒にやらないと、何かスピードばかり出す自動車を若い人が乗り回して大事故を起こすというようなことが起こりかねません。  現に、アメリカの場合もそうですし、あるいは国内のいろいろな産業社会でもそこが問われ出しておりますので、御指摘技術進歩を社会に具体化するときには、その部分を特に強調してやる必要があろうかと思います。
  28. 松崎公昭

    ○松崎委員 民主党の松崎公昭でございます。きょう、先生のショッキングなお話を伺って、ほとんど同じような感覚でいるのかなと、私もその一人なのですけれども。  この首都移転の出だしを見てみますと、どうも、地震の問題とか集中化でありますとか、今までの既成概念の、いわゆる従来型の発想で平成二年ぐらいから来ていまして、ところが、先生さっきおっしゃったように、この一、二年は、本当にもう今までの、政党でいいますと我々と自民党さんといろいろ意見の違いもあるのですけれども、それは、大きな争点の部分が、改革でありますとか日本の構造を変えるということでずっと来ているのですけれども、特にこの一、二年加速度的にいろいろな面に出てきた。そうなりますと、こういう発想のままで起こってきたこの首都移転という問題をこのまま続けていいかという、先ほど自民党さんからもお話がありましたけれども、大変私は疑問に思ってきたのですね。  それで、この試算でも四兆から十四兆などというお話もあるわけですから、そうなりますと、やはり先生のおっしゃった人づくりでありますとか情報そのもののもっと解明をし、予測をし、そしてそこから、果たして日本の構造、政治構造、行政構造も、首都そのものも本当に要るのか。そういう基本的なところにお金を、人間づくりも含めて、情報化のインフラも含めて、そちらへ使った方がいいような気が今してきたのですけれども、ちょっとこれは乱暴な御質問でございますけれども、個人の部分で率直に言っていただければ。
  29. 石井威望

    石井参考人 ますます答えにくい感じはありますけれども、では二つに分けまして、二重人格で。  第二の方の感じからいいますと、やはりこれだけ情報に関連する大きな変化があったことをかなり大幅に取り込まないといけないのじゃないかという気はいたします。もちろん、従来のものが要らなくなるということはありません。例えば、私も地質なんかのことは余り知りませんが、現地へ行って実際に地質を見たりということは、これは不可欠でございますけれども、工業社会がそのまま続いて、あとはそういう条件だけ調べればオーケーというには余りにも大きな新しい条件が今出てきているのだというふうに感じます。     〔委員長退席、平林委員長代理着席
  30. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 私は栃木の出身でございまして、ぜひともという感覚もあるのでありますけれども参考人にお伺いしたいのですけれども情報化が進んでいきます。特に、この東京情報化が進んでいくのだと思いますし、いろいろなものが集中していくのだと思います。  そんなときに、災害の面から考えますと、いろいろな勉強会の中で、いつ起きても不思議のない地震というものがあるわけでありますが、そのバックアップシステム等々をそろそろ考えておかないと、私は、特に情報化を目指した場合に大変なことになってしまうのではないかなと思うのです。  一つの例として、私の選挙区なのですけれども、KDDが小山市に、バックアップシステムということで、かなり災害に強い、どんな地震が、過去最高の地震があっても大丈夫だというすばらしい施設を、この間ちょっと私も視察に行って見せていただいたのですけれども、そういう施設をつくっているわけでありまして、ぜひともそういうものが必要なのではないかなと思います。  国会等移転考えていくときに、二年や三年で私は済むものではないと。したがって、先ほどお話がございましたように、私どもはドッグイヤー、犬の年ではかっているのですけれども、そんなことで、かなりの確信があるということになれば、時間をかけることによって、当然そういうものも自然に受け入れられてくるものがあるのではないかなというふうに私は考えておりまして、もちろん、人の行き来も含めて考えていけば、かなり時間を必要とした国会移転なり首都圏の移転というものが必要なのではないかなと思うのですが、先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。     〔平林委員長代理退席、委員長着席
  31. 石井威望

    石井参考人 今、栃木というお話が出まして、本当はきょうはこちらへ伺わないと栃木へ行っていたわけでございますが、先ほどもちょっと、具体的にフィジカルな条件、物理的な条件は、いろいろな意味で現場を知っていないとだめだというような意味で現地視察に行っているのだということを申し上げましたが、KDDさんのバックアップにしろ、やはり情報の最も現実とつながる部分というのを、今先生の御指摘のように、相当綿密にいろいろ考えていく必要があると思います。地震の場合はもちろんでございますし、それからもっといろいろの国際的な緊張等もありましたり、それからソフトウエアで結構侵入してまいります、一種のハッカーみたいなものでございますが。  この場合も、私どもは、暗号をつくればいいとか、暗号で解決するとか、あるいはファイアウオールといいまして、ある種の壁をソフトウエアでつくっておけば大丈夫だというような議論にすぐなってしまうのですが、現実に調べてみますと、そういうことを徹底的にやった国防省なんかで起こっている事例は、むしろ出入りしておったメンテナンスをする会社の人から入ってきているとか、そこのパスワードが盗まれたとかというようなことが結構多うございます。むしろ会社なんかでも、やめた社員から何から全部、かなりもっと泥臭いというか、そこをちゃんとやらないと、もちろん暗号とかファイアウォールは必要なのでございますが、それで一〇〇%できませんので、先生の御指摘の、いろいろなそういう地震のバックアップからじっくりとやる必要は当然あると思いますね。
  32. 平林鴻三

    ○平林委員 実は佐藤委員の御質問と似たようなことなのですが、私が気にしておるのは、いわば情報社会技術的な基盤というものが本当に確保されるかどうかという問題なのです。  これは、首都移転とは直接の関係がなくて、もっと広い問題だと思いますが、佐藤委員がおっしゃったように、システムの故障した場合の用意といいますか、そういうものは本当に完全に開発できるのだろうか。今でも、銀行のシステムが故障して、何時間も、一日もとまってしまうというようなことが時々新聞に出ますけれども、特にこういう政治、行政の情報などというものが、システム故障で国民に迷惑をかけるというのは、これはとんでもない話になるわけです。それで、それを予防しなければいかぬ、それから同時に、故障が起こったときにそれを直ちに修理しなければいかぬということがあろうと思うのです。  そうしますと、幾通りかのシステムをすぐに代替できるようにするとか、あるいは何カ所かに基地を分散するとか、いろいろなことがあろうと思うのですが、そういうことを、まあ人間のやることですから故障はあろうと思いますけれども、果たして、ほぼ完全にといいますか、九九%完全にそういう技術が確立てきるものだろうか。確立てきるとしても、それに猛烈なコストがかかりますと、これはやはりちょっと参ってしまうわけですね。そこら辺の計算というものは、果たして技術者、専門家の間ではできておるものかどうかということでございます。  それからもう一つは、今参考人の方からお話のありましたサイバーテロというような問題。これも予防が完全にできませんことには、起こってからでは、犯人を捕まえたって、起こった結果はどうしようもないわけであります。ですから、そういう予防技術というものが開発できるのかどうか。  昔、いかなる盾も打ち砕く矛がある、そうしたら片っ方で、いかなる矛にも打ち砕かれない盾がある、両方商売が成り立ったという話がありますけれども、そういう状態では我々はとてもやっていけないような気がするのです。そこら辺の技術を果たして開発する能力自身というものがあるのだろうか、そういう疑問を私は持っておりますので、そこら辺の見通しを聞かせていただきたいなと思います。
  33. 石井威望

    石井参考人 私は東大工学部で三十年近く教えていたのですが、これはシステム工学といって、今おっしゃった問題そのものでございまして、これも技術進歩と非常に関係があります。例えば半導体一つにいたしましても、それの品質とかコストとか、ダウンサイジング、小さくできるかとかいろいろございますが、結論的には、できると申し上げていいと思います。  ただ、それの内容をちょっと御説明いたしますと、私は今東京電力の顧問をやっております。これは、電力の供給に関するリライアビリティーで、世界で多分一番いい、ちょっと値段は高いかもしれませんけれども、クオリティーに関しては非常にリライアブルなシステムで、品質もいい電気を供給しております。これは非常にたくさんの、三千台近いコンピューターが常時、二十四時間絶え間なく動いております。もちろん時々、落雷があったり変な事故でとまりますけれども、回復が非常に早い。リカバリーは非常に早い。ですから、スタンバイの問題、さっき、待っていてすぐ動くとか、発電所から何から全部それで動いておりますが、我が国はそういう意味では、世界で一番そういうことをちゃんとやれるポテンシャルを持っているのではないかと客観的に感じます。  それで、一番目の問題の、そういうスタンバイにしろ、予防的にできるかということでございますが、これは、特に最近感じますのは、システム関連のセンサーだとか半導体の情報処理とかディスプレーとか、さらにそれを持って歩けるようにモバイルとか、ウエアラブルといいまして、本当に作業衣に着て持って歩ける、その辺がぐんぐん進んでおります。これは我が国が、トランジスタラジオとかウォークマンとか、そういう非常に小さくする技術がうまいというか、家電製品なんかでもいっぱいつくった。したがって、非常に安くできるようになった。この辺が私は第一のお答えに現実になると思います。  ですから、もちろん、おっしゃいましたように、人間のことでございますから時々トラブりますけれども、問題は、どれだけ早くリカバリーできるかということでございます。ロボット技術も、故障をしたときに、どれだけ早くリカバリーできるかということでございます。  それから、第二番目の問題とも関連いたしますが、サイバーテロにしろ何にしろ、起こってしまったら、後から言ったってだめではないか、だから予防的に、起こる前にというお話がございました。これもモニター、つまり、しょっちゅう監視している。監視しないで、起こってからしまったというのは、これはまさに手おくれでございますが、いかに監視をしやすくするか。  例えばソフトウエアなんかですと、目に見えませんから、サイバーテロなんか非常に困るのでございますが、これを目に見えるように、ソフトウェアの動き方をディスプレーいたします。そうすると、見ておりますと、あれ、ここおかしいな、そうするとすぐにブロックして、そこだけをそれ以上広がらないようにするとか、単に一〇〇%起こらないようにできるかというのではなくて、人間でもそうでございますが、ちょっと何か風邪ぎみのときに用心してできるかどうか。そのときにちゃんとよく検査して、できるように即座に対応できるか。そこが一日、二日おくれると命取りになるということが現実に多うございますので、この辺も第二番目の問題としては、技術的には相当やっております。  これは余りオープンにできない技術でございますので、余りオープンにしますと、こういう悪い手口でいろいろできるぞというのがわかってしまいますので、変なぐあいなのでございますけれども、内々というか、研究としては相当やっておりますし、一番初めに言いましたが、我が国がそれを実用化するときのポテンシャルは高いと申し上げていいと思います。
  34. 岩永峯一

    ○岩永委員 自由民主党の滋賀県出身の岩永でございます。  私のところは畿央高原で手を挙げておるのですが、ちょっと最近疑問に思うのは、これが提案されたときと、今、経済的背景、行政的背景、財政的背景、そして先ほど先生お話にありましたように、本当に、人類史上空前の大変動が予想される世紀が始まろうとしている、こういうようにお書きをいただいているのですが、いろいろな部分考えますと、そして来年、もう場所を決定する、こういうことなんですよね。  それで、私も国会へ来てまだ二年なんですが、この二年の間にぐぐぐっと場所決定まで急速に進んできた。しかし、その国会移転なるものの理念というものがこれでいいのだろうか。確かに、災害だとか水だとかのないところ、そしてこの東京に大震災が起こったときの代替地等々、いろいろな要素があるのですが、もっと大事なものがあるのではないか。  だから、そういう理念をもっと時間をかけて構築していって、そしてその中で国民のコンセンサスを十分とって、そして財政的にも経済的にも国民が認める時期にやってはどうなのか。そう慌てなければならぬ、場所を決定して、そして実際問題、建築できるかわからないのに、それをやってしまうことによる後の混乱の方が大きいのではないか。そして、東京自身の問題もあるわけですね。  だから、ちょっと最近になって、早急過ぎるのではないかというような疑念を抱くのですが、先生はどうお考えですか。
  35. 石井威望

    石井参考人 これはまた、やはりさっきの二つに分けてお答えします。  第一の、審議会の中では、それは既に終わったことでございますので、理念へ戻らないという点では、ここはもうしようがないわけでございます。具体的に処方せんが書かれて、この処方せんはちょっとおかしいのじゃないということは、あとは注射するだけでございますから、与えられたそういうプログラムに従ってチェックして、ここが一番合っているということが今の審議会でございますが、第一の立場では、ちょっと今おっしゃった理念までさかのぼってはできないと思います。  第二の立場は、したがって、ちょっとここがデリケートで、矛盾したり変なぐあいなのですが、あえて第二の立場をお聞きになっているというふうに感じて申し上げますと、これはやはり先ほど状況変化ということを、今の審議会の外側というか、もっと違うあれで加味するのが当然ではないかというふうに感じております。
  36. 桑原豊

    ○桑原委員 民主党の桑原豊です。  先生には、今ショッキングというお話も出ておりましたけれども情報革命といいますか、非常に大きな、人類史的な影響を及ぼすような流れが進行している中で、首都のあり方をどう考えていくのかということで、少し根本的にこの際いろいろな問題を見直してみなきゃならぬのじゃないかな、そういう示唆をいただいたということで、大変ありがたく思っております。  今先生がおっしゃられた情報化の進展、そういうことが一つ。それから、地方分権という形でそれぞれの地域が自立をして、ある意味では、国家という枠を地方みずからが超えて、いろいろなつながりを世界に求めていくというような、そういう世界とのつながり、あるいは地域の住民とのつながりのあり方が大きく変わっていく。  そういうことの中における首都というのはどうなのかというふうに考えていかなきゃいかぬということになりますと、従来我々が考えてきた首都の機能というのも大きく変化を余儀なくされてまいりますし、恐らく、国家観といいますか、国家の果たす役割というのも、言ってみれば外交であるとか、安全保障の問題であるとか、あるいは国際的な金融の問題であるとか、そういう本当に限定された機能に今国家が変わっていく。そういう中での首都ということになりますと、今まで考えてきた首都というものの機能のあり方、それが大分変化を余儀なくされるというふうに思います。  確かに、万が一災害が起きた場合はどうするかとか、一極集中をどうするかという、そういう物理的な話になりますと、今のままでいいのかということで、移転の必要性というのは出てくるわけですけれども、機能的に考えていくと、非常に大きな変化を余儀なくされてくる。  そうなりますと、私は、あるべき首都像、新首都像といいますか、国際的な交流の都市であるとか、あるいは、情報社会が進展しますから、なおなお一層、ある意味では人間的なつながりというか、地方の交流というか、そういうものが可能になるような首都のあり方とか、もちろん情報先進都市的な要素ですとか、そういうものをきちっと備えた首都像みたいなものがおのずから浮かび上がってくるのではないかというふうに思うのです。  先ほどからもいろいろ質問がございましたけれども先生の方で新しい首都像特色をどのようにお考えになっておられるのか、そこら辺を、情報の問題などと関連させてもう一回お伺いしたいと思うのです。
  37. 石井威望

    石井参考人 これは、第二の立場で申し上げていいとお許しを得たように思いますので。  まず、人間の生活とか考え方が変わるというところが一番大きいと思います。  先ほど理念とか合意形成というお話もございましたが、これからの都市の中の、従来情報化とか通信とか言っていたものが、今ちょうど同じ情報化の中でも、第二期、フェーズツーに入っておりまして、例えば無線関係なんかも、従来よりもスピードとか容量が、これは百倍ぐらい考えるというようなことをアメリカ通信委員会なんかでもやっております。そうすると、従来百分の一だった中で考えていた無線とか移動体でのものが全く変わってしまうわけですね。ですから、そういうようなライフスタイルに、物すごく人々の意識にまで変革を及ぼすようなことが次々に起こってくると思います。ですから、前のままでいたいと思ってもできない。  また、製造業というのは日本は強いと言われておりました。事実、強いところもあるのですが、その割に、今非常にピンチになっている製造業が多うございますね。なぜかというと、それは貸し渋りとかいろいろあるかもしれないけれども、それと関係ない大企業なんかだっておかしいところがある。やはり構造的に、情報化に対応しない、新しいタイプの情報化に対応できないと、あっけなく、少なくとも産業社会では淘汰されてしまうようなところが出てまいります。  だから、東京都ということを具体的に言うとまずいかもしれませんが、私も東京都の都民なのであれでございますが、今まで東京都は、従来の工業化社会情報化というような感じでしょうか、そういうもので言うと、非常に進んだ都市だというふうに言われていたのです。しかし、今申し上げたように、フェーズツーの新しいタイプの、次の情報化で考えると、必ずしも、場合によっては、今までのものが足かせになって、なかなかやりにくい都市でもあるということがございます。  こういうビルでも、みんなそうでございますね。例えば、配線をみんなしてしまったビルというのは、配線のコストだとか配線のメンテナンスがかかります。全部無線でやるという新しいビルが出てきますと、そちらの方が明らかにいいわけでございます。コストがかからないし、メンテナンスも楽だし、フレキシビリティーもあるしということになります。そうすると、無線関係技術なりコストなり、そういうものがどこまで行くかという、技術革新に対する見通しとか実用化の努力が左右することになります。  ですから、今先生がおっしゃいました新しい都市特色というのは、ちょっと前までの、なだらかなというのか、大体従来の延長で考えられているものから、今急速に次の新しいものを取り込まないと、企業はもちろんのこと、行政等におきましても、ただ比例縮小で人員削減をすればいいとか、そういうことではないのではないかと思います。  逆に、それに成功しますと、物すごくパフォーマンスというかサービスなりクオリティーが上がって、なおかつコストダウンができて、なおかつ、ということだと思います。そこが少なくなったら雇用が減るじゃないか。それは、ほかに新しい雇用がそれをベースにして出てまいります。アメリカの場合は、かなりそれを先行的にうまくやっている点がございまして、雇用の点では情報関連が随分牽引しているということがございます。  それから、同じものでも、一例を言いますと、パソコンなんかもそうでございますけれども、ある会社のパソコンは今物すごく品薄で、どんどん売れております。ところが、同じパソコンでも、全然売れなくて、それが重荷になって経営がおかしくなっている会社もあるわけであります。ですから、同じ商品でも、今申し上げましたフェーズツーへうまく行って、みんながなぜその新しいパソコンを欲しがるのだろうか。そこが、今先生がおっしゃった、新しい都市の持っている次の評価基準みたいなものが生まれつつある。そこを履き違えますと、パソコンだから何でもというのは、ちょうど洋服と同じでございますね、洋服だったら何でも売れる、そうじゃなくて、欲しい洋服でなきゃだれも買ってくれない。そういう欲しい洋服というのは、デザインなり、人々の好みなり、人々の感性なり、そこをうまくとらえられるかどうかという辺で決まります。  これからは、先ほどから幾つかお話が出ておりますが、国際交流なんかでも、国際交流の、もちろんハードウエア的ないろいろなこともございますが、ソフトウエアとして、交流の、例えば語学教育だとかなんとかかんとかというソフトの面も十分ないと、これはもう全然違うわけであります。  何か我田引水になりますが、実例としてちょっとつけ加えますと、私どもの方で、韓国語、朝鮮語をやっております学生が何百人もおりまして、一学年千人のキャンパスなんですが、恐らく日本でも一番たくさん、何百人もやっている学校だと思いますが、そこへ韓国の方が見えますと、母国語で話をするというようなことだけで全く違うわけであります、国際交流といいましても。幾らインターネットで韓国語でやっていても、直接やるのは随分違う。  それから、マレー・インドネシア語をやっております。これは多分断トツで、我が国で一番たくさん、何百人といるキャンパスでございます。こういうところですと、必ずマレーシアの方が来られるとお見えになりますし、それから、フィーリングというか感情的に全然、四割ぐらいが女子学生ですから、日本の女子学生が自分の母国語で、つまりマレー語で話しかけるということは大変大きな意味を持っていると思います。  そういう感性まで含めた、国際交流にしろ、あるいはネットワークを使って、もちろんしょっちゅうインドネシアともインターネットでやっているわけですが、この点がこれからの新しい都市のイメージではないかと思います。
  38. 蓮実進

    ○蓮実委員 自民党の蓮実でございます。  きょうは石井先生から情報通信の大変いいお話をお聞きいたしまして、大変ありがたく思っております。  実は、ここは国会移転の特別委員会でありまして、私、もともとこの国会移転というのは、人口の一極集中、それから災害への対応、そういう点からこの際首都移転すべきだろうと。どなたかもお話ありましたが、国家百年の計で、百年というより二百年、三百年の計であるということで国会で決議をされて、そして先生にもお願いをして、今最終段階に来ているわけですね。そこで、恐らく来年の秋、今ごろにはもう大体決まるのではないかと。私は、具体的に進めるべきだろうと思う。  そこで、先生に承りたいのは、先ほど先生委員でない立場から考えると情報化の大変革が来ると思っている、そこで福祉も情報化に一緒にやるべきだ、従来の設定ではいかがなものだろうというお話があったのですが、では、もっとよいものをつくるということになると、具体的にどこかに決まった場合に、よいものというのはどういうものを言うのでしょうか。承りたいと思います。
  39. 石井威望

    石井参考人 具体的には、先ほどもちょっと触れましたけれども情報というとすぐに光ファイバーを引くとかコンピューターとかという話になってしまうのですが、私はやはり人材育成だと思いますね。だから、あるいはそこの住民の、あるいはそこへ行く政府の行政自体、そこの情報の能力というかマインドというか、これは決して冷たい情報的なものではなくて、さっきもちらっと申し上げましたが、国際交流でいえば、相手の国の文化なりそういう言葉なりということに対する愛着を持っているという点から始まるわけでございますね。  ですから、例えば、さっきちらっと申し上げましたことで例をとりますと、マレー・インドネシア語なんというのは、マレーのことを余り知っている日本の学生はいるはずがありません。ですから、毎週ごとにそれぞれの国の食べ物からビデオからいろいろなものを見せまして、一週間、それぞれその国の文化の紹介を大体四月から九月までやっているわけでございます。それで、文化の中の一つとして言葉なりそれをベースにしたコミュニケーションが起こるというふうに考えて、これはある程度、もう一九九〇年からやっておりますから、成功してきたと思うのです。  ですから、都市づくりの場合も、もちろん結果的には最後にハードウェアを使いますけれども、その前に相当与えられた中でも、一種の人間の教育というか、これも座って講義を聞く教育という よりもオン・ザ・ジョブというか現場で、子供たちがお互いにゲームなんかを覚えていくなんというのは全く説明書も読まないでいくわけでございまして、現場でお互いの中でやっていくというようなのが理想的だと思います。  したがって、先ほどの、何かできた場合に改良できるか、そこへ住む人のその運営の方法とか、その中へ具体的にどういう、ミスター何とかがどうするかというところが問題でありまして、そこがだめだったら、もちろんこれは幾ら言っても絵にかいたもちになってしまうわけで、そこへ全力を挙げてやらざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  40. 安倍基雄

    安倍委員長 一度発言されている方でももう一度お聞きしたいという方がおられたら、まだ時間もちょっとございますから、どなたか挙手の方がおられたら指名いたしますが。
  41. 河合正智

    河合委員 先ほど先生ありがとうございました。発言の機会を得ましたので、再び御質問させていただきます。  私は、この夏に委員長のお供をいたしまして、ベルリンそれからアムステルダムそれからストックホルムを訪問いたしまして、現実に行われている首都機能移転、それからオランダではハーグとアムステルダムとの首都機能の分担関係、それからスウェーデンではいわゆるエージェンシーを移転することによって地方に雇用の創出を図るといった行政的な手法、これを視察させていただきましたけれども、そこで共通して言えますのは、きょうの議論ではなかった歴史的な側面でございます。  むしろ、それぞれの国がそれぞれの歴史的な必然性の中から首都機能移転したり、それから分散したり、それから分担したりしているというのを見てまいりまして、先生の著作の中にもございますが、サイクルとして歴史を考える、温新知故といった言葉をお使いでございますが、その点からきょうの御指南を総括していただきましたらどういうことになりますでしょうか。
  42. 石井威望

    石井参考人 私の本の言葉を触れていただきましてありがとうございます。  普通は温故知新でございますが、温新知故という言葉は、新しい、例えば最先端のハイテクなんかを進めるときに、結局どういうふうにするのか迷うわけであります。そのときに、多分、私たちの祖先は新しいこういう技術を入れたときにどういうふうなことをやったのだろうかとか、どういうふうに考えたのだろうかというのが非常に参考になるというか。だから、新しいことをやることが、実は今おっしゃった歴史的な、首都を含めていろいろ決めるときにみずから問い直されることになろうかと思います。また、逆に、それがないと、全国民のコンセンサスとか支持とか、みんなのやろうという意欲とか、なかなか出てこないのではないか、ついつい空回りしてしまうということがありますので。  先ほど指摘いただいた本の中でも、日本のある意味の強さというのは、現場にずっと連綿と続いているそういう鉱脈がございます。だから、そこを掘り当てないと、そこへつながらないと、いかに新しい情報何とかといっても、なかなか一時の流行みたいになってしまう、あるいは悪く言えば失敗してしまうということが起ころうと思いますので、特に首都の場合には、相当多くの努力の結果で合意が形成されたり、みんなの意欲がかき立てられるような目標みたいなものがないといけない。  これは情報革命なんかを一つの今度の新しい首都でできれば、恐らく二十一世紀で初めて、世界で初めて日本がそういうことをやるなんということにはなりますから、当然、今までは万博みたいないわばテーマパーク的な実験を繰り返していたのですが、今度は本番というか本当にやると。  それで、我々の祖先は、やはり平安京にしろ平城京にしろ、つくっているわけであります。だから、この国でも、ああいうときも新しい技術文明でどうするかを問われていたに違いないわけでありますが、そこで、私ども世代でも、あるいは二十一世紀の若いネットジェネレーションも含めてやるべきじゃないかと考えております。
  43. 河合正智

    河合委員 ありがとうございます。
  44. 安倍基雄

    安倍委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人に一言お礼を申し上げます。  石井参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  45. 安倍基雄

    安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより政府に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤勉君。
  46. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 自由民主党の佐藤勉でございます。  柳沢国土庁長官には、大変お忙しい中御出席をいただきまして、質問の機会をいただきましたことをまずもってお礼を申し上げたいと思います。また、先日は災害調査のため栃木の那須にお越しをいただき、感謝申し上げたいと思います。そのこともよろしくお願い申し上げたいと思います。被災地とはいえ、移転を予定している土地ではないということがよくおわかりをいただいたのだと思います。その辺のところも御考慮をいただきたいと思います。  国会移転は、我が国が国際社会の一員としてその力に見合った役割を担っていくため、また、国民が豊かにそして安心して生活をしていけるように、ぜひとも実現をさせなければいけないものだと私は思っております。  その中で、ちょうどきようでございますけれども、栃木県に国会移転議会の現地調査が予定をされております。今月から来月にかけて国会移転議会による現地調査、そして今後の審議会の審議スケジュールはどうなっているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  47. 板倉英則

    ○板倉政府委員 国会等移転審議会におきます調査審議につきましては、本年一月に三カ所の調査対象地域が設定されたところでございますが、先生お話しのように、九月十六日から各調査対象地域ごとに順次現地調査が行われているところでございます。これが終了した段階で、十一月を目途に審議会が開催されまして、その取りまとめを行う予定でございます。その後、地域ごとに詳細な調査が検討されまして、引き続き各地域の相互比較、総合評価が行われていくことになるわけでございます。また、これらと並行いたしまして、来年年明けからでございますが、全国各地で公聴会が開催される予定でございます。  なお、審議会における移転先候補地の選定の時期につきましては、これから審議会調査部会の審議状況を見ながら審議会でお決めいただくことになるわけでございますが、現在のところ、平成十一年秋ごろが作業上の一応の目安とされているところでございます。
  48. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、精力的に調査をしていただいているわけでございますし、また審議もされるということでございまして、来年の秋に向けて候補地選定ということになるわけでありますけれども、ぜひとも秋が延びるようなことのないように、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、きょうも午前中に石井威望先生意見を伺ったわけでありますが、その中でもいろいろ御議論がございました。そして、二十一世紀の高度情報社会に向けて、首都機能移転に当たっても情報通信に関する十分な検討が必要だということで私は考えております。  首都移転我が国情報通信の高度化にどのような影響を与えるのか。これは、いずれにいたしましても、すぐにどうのこうのという話にはならないかもしれませんけれども、やはり国会移転にはかなりの時間がかかると思いますし、その時間の中で情報化はかなりの部分で進んでいくのだと思います。そういう面で、情報通信影響をぜひともお伺いをしておきたいと思います。
  49. 板倉英則

    ○板倉政府委員 首都機能移転先新都市におきましては、国会等移転調査会報告書にもございますように、都市のインフラとしてあらかじめ組み込まれる形で最新の情報通信技術が導入されまして、新都市全国各地域及び海外が情報通信ネットワークで直接結ばれるわけでございまして、イメージとしましては、世界に開かれた、先導的な情報通信都市づくりということで行われることが見込まれているわけでございます。そのことが同時に、これが一つの先進的な事例となりまして、国内各都市情報化の促進あるいは高度化に大きく寄与することが期待されているところでございます。  国会等移転審議会におきましても、今後とも情報通信の高度化への影響について十分検討していただいた上で審議を行っていただくことが必要であると考えておりまして、第二タームにおきまして、調査部会に、先ほど御陳述いただきました石井威望先生中心に、首都機能移転先となる新都市における情報通信役割等につきまして幅広く検討を進めていただくことといたしております。
  50. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、本当にかなりの勢いで進展をしております。その情報に追いついていくのも大変だとは思いますけれども、その辺のところは十分にお気をつけいただいて、乗りおくれないように、そして開かれたときに最先端を行くような情報の取り入れ方をぜひともお願いしたいと思います。  また、先ほどお話にございましたように、いろいろなアクシデントがそこで起こるかとは思いますけれども、それに対応できるようなこともぜひともお考えをいただいていくことが必要なのではないかと思いますし、その辺のところも含めて、ぜひともこれからの情報化に対する対策も十分にお考えいただきたいというふうに御要望を申し上げておきたいと思います。  先ほど委員の中でお話がございましたが、首都圏の移転国会等移転国家百年の大計と言われるわけでありますし、百年、二百年というふうに言われても過言ではないと思います。ほかに類を見ない大規模なプロジェクトであるということは、もう御承知のとおりだと思います。国民の多くは、大規模開発による環境への影響を懸念する方もたくさんおると思いますし、国会移転議会においては環境への配慮についてどのような検討を行っているのか、伺っておきたいと思います。
  51. 板倉英則

    ○板倉政府委員 国会等移転調査会報告におきまして、環境が新都市づくりの基本理念の一つとされておりまして、新都市は、環境共生型の都市づくりの先導的プロジェクトとされているところでございます。第二タームにおきまして調査対象地域ごとに詳細な検討をしていくことにしておりますが、その中でも、特に自然的環境への影響を重視しつつ検討を行うということになっているわけでございます。  このため、調査部会の井手久登専門委員中心首都機能移転と環境に関する検討会を設置いたしまして、検討を行っているところでございます。検討会におきましては、調査対象地域の植生や動植物相、身近な自然の状況等の観点から、自然環境の概況を把握し、その特性を検討するとともに、自然環境等に関する留意点等について整理することといたしております。
  52. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 せっかくこういうものをつくるということになったときに、後でこんなものができてしまったなんということにならないように、ぜひとも環境面で、大変見直されている時期でもありますし、その地域にとって不利益にならないようなことも十分お考えをいただきながら、これから進めていっていただくことをお願い申し上げておきたいと思います。  次に、これはもう先ほど意見交換の中で私もお話し申し上げたわけでありますけれども、関東大震災が起きてから七十五年がたっているわけであります。先日もこの地震のことについて意見委員会で伺ったこともございましたが、そのときの御意見は、いつ東京に大地震が発生してもおかしくないというある先生お話もございました。  首都圏の移転先候補地の選定に当たっては、もう何回もこれは各先生方からお話をいただいているわけでありますけれども、地震災害に対する安全性を最優先的に重視すべきではないかというお話がいろいろなところから出ているわけでありますし、それに対する施設等々のことも十分検討をしていただきたいというお話も、もういろいろな方のお話の中から出ているわけでありますけれども、その辺について、どんなふうな考え方でこれからやっていかれるのか、方針をお伺いしたいと思います。
  53. 板倉英則

    ○板倉政府委員 首都機能移転先が、地震等の災害に対しまして安全性の高い地域、あるいは東京と同時に被災する可能性の少ない地域であるべきことは、先生指摘のとおり大変重要な要素であると考えております。こうした観点から、国会等移転審議会におきまして、第二タームにおける調査の中で、地震災害、火山災害、水害、土砂災害等に係る検討を行うことといたしております。  特に地震災害につきましては、地方公共団体等の調査結果を収集しつつ、被災履歴に基づき、被害を受ける可能性や発生した場合の安全性につきまして、溝上委員、井田専門委員中心に検討を進めることといたしております。また、新都市をつくるに当たりましても、都市の構造や建築物等について耐震性に十分配慮した安全なものとすることが必要であると考えております。
  54. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、地震の災害で機能が停止してしまうなんということになっては大変なわけでありますし、そのためにもこういう移転が論点になってきたのだと思いますし、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  そこで、我田引水で大変恐縮でございますけれども先ほどお話を申し上げたのですが、栃木県にはKDDの国際通信センターというのが、情報通信のバックアップ施設ということで、小山市にその通信センターが置かれております。先ほどお話を申し上げたのですけれども、なぜそこに選ばれたかというと、いろいろな統計上、一番大きな問題としては災害が少ないこと、特に地震等々、台風等々の災害がないからだというお話をその施設に行ってお伺いをしたわけであります。那須ともそう離れておりませんし、新幹線で行けば十五分から二十分の間にあるところでございますし、そういう面で、情報通信が寸断をされないような施設もあるわけでございまして、ぜひともこんなところも考慮に入れてお考えをいただきたいなというふうに思うわけでありますけれども、その辺についても若干お話しいただければと思います。
  55. 板倉英則

    ○板倉政府委員 新都市におきます防災性の強化につきましては、情報等のバックアップ体制の強化等を通じまして、災害時における司令塔としての危機管理機能の充実を図ることが重要な観点であると考えております。  また、新都市を地震、火山等の大規模な災害に対して安全性の高い地域、東京と同時被災する可能性の少ない地域に建設することは、国土の安全性を高めると同時に、万一東京が被災した場合の災害復旧の司令塔としての役割を果たすことが期待されておりますが、個々の地域についての言及は差し控えさせていただきたいと存じます。
  56. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 よくその辺のところはわかりますので、それ以上のことは申し上げませんけれども、熟慮していただきたいという御要望を申し上げておきたいと思います。  最後になりますけれども、長官にぜひともお伺いをしておきたいと思いますが、首都機能移転国会等移転は、国土の災害対応力の強化という観点からも早急に実施すべきと私は考えております。今後の取り組み方針はいかがかということを、ぜひとも大臣にお答えをいただきたいと思います。
  57. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生から一連の首都機能移転問題についての論点を一わたり御質疑をいただきまして、政府委員の方からこれまで答弁をさせていただきました。そのいわば取りまとめとしての御質疑として、災害対応力の強化という観点から、この首都機能移転が急がれるべきではないかという御指摘をいただきました。  これはもう全くそのとおりでございまして、そもそも首都機能移転が話題になった背景には地震の問題、災害の中の地震の問題についての、専門の公的な当局の方から、南関東の直下型地震というものがある程度の切迫性を持っているというそういう判断、判定が背景にあったことは申すまでもないわけでございます。  そういう意味合いから、特に東京の現状を見ますと、もう何もかも、経済も政治も行政も集中しておる、一億二千万強の人口のうち三千万ぐらいが首都圏に住んでしまっている、こういう状況考えますと、これを放置できないという観点から首都機能移転が問題として取り上げられた、こういう背景があるわけでございます。そういうことを考えますと、首都機能移転とこの災害対応力の問題というのは、これは切っても切れない、切り離せない密接な関係があるということは、これは申すまでもないということでございます。  ただ、あえて申しますと、地震の問題は、次の瞬間にあるかもしれないという問題でございます。つまりその切迫性というものは、五年、十年かけて早くやるべきだ、あるいは十年かかるところを五年早めるべきだというような問題でない性格の面も実はあるわけであります。私は、就任以来、では、この次の瞬間に起こったら一体行政府の対応というのはどうするのだということも、シミュレーションとまではいかないまでも考えて、至急にある程度のまとめをしておいてもらいたい、こういうことを申しておるわけでありまして、そういう意味の切迫性の次元と申しましょうか性格というものが非常に、一般に首都機能移転は災害対応力を強めるためにその切迫性が強いのですよということを論ずる場合に、二つの次元があるということをぜひ御理解賜っておきたい、このように思います。  それから、もう一つ申しますと、日本列島のようにどこにも地震がある、極論して言うと、もう日本列島はどこでも地震があるということですから、地震から完全に自由なそういう地点を選ぶということは、私もつまびらかにはしませんけれども、ほとんど可能性がないと言われるような状況だと思います。  そういたしますと、我々が考えなければならないのは、やはり災害対応力を強めるということは、先ほど言ったように各種の建物、構造物の耐震性を高めるということと同時に、起こったときにどのように被害を最小限にするか、つまり一極集中を極端に起こさないという、そういうような配慮のもとでの首都機能移転でなければこれは意味がない。東京をどこか地震の少ないところへ持っていっても、そこでもって地震が起きる可能性はあるわけでございますから、そういった観点でこの問題に取り組んでいく必要があるのではないか、このように考えております。
  58. 佐藤勉

    ○佐藤(勉)委員 時間が参りましたので、この辺で終わらせていただきますが、ぜひとも、長官のお考え方、全く私も同感でございますし、まずはそのバックアップシステム等々のことも考えながらこれからの御審議をいただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  59. 安倍基雄

    安倍委員長 桑原豊君。
  60. 桑原豊

    ○桑原委員 民主党の桑原豊でございます。  柳沢長官には、大変お忙しい中、質疑にお出ましをいただきまして、どうも本当にありがとうございます。  早速ですが、これからこの国会移転を進めていくに当たりまして、現時点で一、二気になることがございますので、まず最初にそのことをお伺いをしたいと思います。  一つは、来年度の予算の概算要求に、新しい首相官邸の建設着工費が盛り込まれているということでございます。いろいろお聞きいたしますと、相当前からこの問題についてはそういう必要性が言われてきたということでございますが、一方では、来年の秋にも移転候補地を選考して、そして移転の方向で話を進めていこう、こういうことで今鋭意審議会等調査審議をいたしておる、そういう段階でございますし、国民の皆さんにしてみますと、一方で移転だ、一方でまた新築だ、こういうことで、二重のむだな投資になりはしないのか、どういうことなのかということで、必ずしもきちっとした理解が得られていないのではないか、こういうふうに思います。  まず、概算要求に至った経緯について、これは総理府の方になるかと思いますが、お聞きしたいと思います。
  61. 尾見博武

    ○尾見政府委員 新官邸の建設の概算要求に至りました経緯についてのお尋ねでございます。  官邸の建てかえにつきましては、今先生指摘がございましたように、かなり前から、実は昭和五十年代からいろいろ議論がございました。昭和六十二年に新官邸の整備についての閣議了解がなされたわけでございます。自来、新官邸の敷地の基盤整備というようなことを進めてまいりまして、平成八年度から建設省の官庁営繕部におきまして設計に着手いたしました。この間、各界の有識者の先生方の英知を集めながら作業を進めてきたということでございます。平成十年度にその設計がほぼ完了することに伴いまして、今般、新官邸の本館について、平成十一年度に着工して平成十三年度に完成するというような計画で、平成十一年度の概算要求において所要の建設費を要求したところでございます。  現在の総理官邸は、建設されましてから七十年を経過しておりまして、老朽化、狭隘化の極致に至っておりまして、阪神・淡路の震災後に現在の官邸の耐震性についての診断もいたしましたが、その耐震性にも不安がございます。また、危機管理機能を初めとする内閣機能を充足するという観点から見ますと、もはや限界であるというふうに言わざるを得ないと思っておりまして、そういうことから、新官邸を一刻も早く整備する必要があるというふうに考えているわけでございます。  なお、付言させていただきますと、この間の行政改革会議の最終報告におきましても、新官邸の整備をできる限り早急に進めるというような御指摘をいただいているところでございます。  以上でございます。
  62. 桑原豊

    ○桑原委員 緊急性、危機管理の必要性、大変狭隘だという理由はよくわかるわけですけれども、どうも、話が始まってから、そういう必要性がつとに言われながら、着工にこぎつけるまでが大変だらだらと何か長く感じまして、本当にその緊急性があるのならそういう悠長なことでいいのかというような気もいたしますが、必要性として理解できるわけですけれども、ただ、実際に新しい首都になって新しい官邸ができるということになると、新しいのと在来のものという二つのことになるわけですけれども、そのことについて、例えば在来のものはこういうふうに活用するとか、そんなことは既にある程度考えておられるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  63. 尾見博武

    ○尾見政府委員 新官邸が建設された後、首都機能移転が行われるということになるわけでありますが、それまでの間に十数年というタイムラグが一つあるわけでございます。  その間は、私どもが建設を予定しております、整備を予定しております新しい官邸が一つ機能するわけでありますが、首都機能移転後におきましても、東京が依然として経済文化中心地であるということには変わりがないわけでございまして、そういう意味からいきまして、政府国民の各層各界の方々とさまざまな形で意見交換をする場でありますとか、あるいは東京においでになりました国公賓の方々とのいろいろな接遇する場でありますとか、あるいは東京首都圏を中心とした災害が発生したような場合に、政府一つの防災基地として活用するというようなことがあるのではないかと思っておりまして、東京における活動拠点として機能するということが基本的な考え方でございます。  また、先ほどお話がありましたように、首都機能移転先は震災、そういうものを受けにくいところが選定されると思いますが、大規模災害が起きたときに、万が一、首都移転先の新官邸、そういうものが機能不全に陥るというような場合のバックアップ施設としての役割、こういうことも期待できるのではないかと思います。リスクの分散という観点からも、そういう意味では必要ではないかと思っております。  以上でございます。
  64. 桑原豊

    ○桑原委員 そういうふうな将来を展望した役割どもそれなりにしっかりと設定して、国民の皆さんの誤解といいますか、理解の及ばないところをきちっと補う必要があるだろうというふうに思います。  それから、現在、首相官邸だけではなしに、実際に新しいところに移転をするということになる際に対象になると見られる中央の官公庁が、例えば、現在人事院ビル、自治省や警察庁なども入っていますね。このビルも建てかえ中であるわけです。今後、こういった形で移転に至るまでの間にこの種の建てかえとか増改築とかそういった計画があるのか、どのように把握されているのか、また、新しいところに移転するということとの関係でそこら辺のありようをどのように整理されておられるのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  65. 小野邦久

    ○小野(邦)政府委員 お答えを申し上げます。  私ども建設省では、霞が関地区の官庁施設の整備の担当ということでいろいろ整備を進めてきておりますが、基本的な考え方は、平成七年に長期計画をつくりまして、霞が関地区の官庁施設を今後どう計画的に整備していくのかということを決定しているわけでございますが、現在の霞が関地区の建物には、建設から大変長期間を経過しているということで、老朽化あるいは狭隘化が大変進んでいるものはたくさんございます。また、危機管理上、緊急事態への対応あるいは情報化という観点から、やはり建物自身が最近の情報化のいろいろな施設整備、そういうものを進めるのにちょっと適当でないというようなこともございまして、そういうような機能への対応を進める意味で所要の施設の整備を進めているのが現状でございます。  先生指摘のございました旧人事院ビルの建てかえも、現在そういった観点から新中央合同庁舎二号館ということで進めてきております。  一方、御指摘のございました国会等移転関係で、今後、今建てかえを進めているものがどうなるのかというお話でございますけれども、これにつきましては、国会等移転先の候補地の選定に向けて現在審議会でいろんな審議が進められているわけでございますけれども、ある程度時間もかかるということもございますでしょうし、官庁施設につきましては計画的に長期的に進めていくという観点から、国会等移転につきましては、審議の状況を見ながら逐次進めていくということにさせていただいているところでございます。  今やっておりますのは、いずれにいたしましても、非常に緊急性を要するということでございますので、そういった観点からとりあえず整備をするということでございまして、整備された庁舎につきましては長期的には有効利用が可能である。仮に、官庁施設につきまして、国会等移転ということとの絡み合いで相当の部分が新しいところに移るとしても、残されたものにつきましては長期的な観点からの有効利用をきちっと考えていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  66. 桑原豊

    ○桑原委員 二重の投資、むだな投資ということにならないように、緊急を要するもの、あるいは将来的に国会が移転になっても利活用が十分可能だというような展望に立って、計画的にやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、もう一つ気になることといいますのは、これは経済企画庁の方にお伺いしたいんですが、国会の移転考える際に、これは大変巨額の費用を要する大きなプロジェクトでございます。そういう意味では、財政的な問題ですとかあるいは経済の危機的な状況考えますと、これはやはり今、少し慎重にならざるを得ないなというふうに考え考え方と、それから、いや、むしろこういうときであるからこそ、経済的な刺激あるいはそういうことを通じて財政的な改善も図っていくというような意味で、むしろこの時期だからこそ積極的にこれを進めていくべきではないか、こういう意見が両論あると思います。  企画庁長官は、なられる前は国会等移転審議会委員のお一人として、この問題についてはむしろ、財政的な問題の改善にもつながっていく、経済的な非常にメリットもある、こういうような立場で推進を唱えておられたというふうに思うんですけれども経済企画庁として、日本の今後のいろんなものを見通しながら、今この問題についてはどういうふうに考えておられるのか、そのことをひとつお聞きしたいと思います。
  67. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答えを申し上げます。  首都機能移転経済的な効果ということにつきましては、経済企画庁の方でも、経済議会の中に首都機能移転委員会という委員会を設置いたしまして検討を行っております。その検討の結果につきまして、平成八年十二月に中間的な取りまとめというのを行っております。  この取りまとめの中では四点ほど指摘をいたしておりますけれども、第一点といたしましては、地域生産関数を使いまして計量的な移転先の県への経済効果というのを計算いたしておりまして、ある程度地域の経済にプラスの効果が出てくるという計算をいたしております。  それから第二点といたしましては、我が国経済構造改革というのを進めていく上で必須の条件でございます行政の改革それから規制緩和、地方分権というものを促進する契機になるということでございます。さらに続けて申し上げますれば、経済的な数値ではなかなかあらわしにくいわけでありますけれども、将来の国民生活に対する期待を実現するということでも重要な契機になるということでございます。  それから第三点といたしましては、東京の過密問題の解決、緩和に寄与する可能性があるということでございます。  それから第四点といたしましては、東京に大規模地震が発生した場合の経済的損失というのを考慮すると、防災上の観点からも真剣に検討する必要がある、この四点の御指摘をいただいております。  以上申し上げましたように、経済企画庁といたしましても、首都機能移転については、直接の経済効果は必ずしも大きくございませんけれども我が国経済構造改革を促進する大きな契機になり得るというふうに考えております。そういう意味では、首都機能移転については、具体化に向けて積極的な検討を進めていくべきであるというふうに考えております。
  68. 桑原豊

    ○桑原委員 企画庁としては、そういう意味で将来的にこれが経済的な効果としてはプラスの方向に働くというふうに、今も、現下の経済情勢を踏まえても、さらにそういうふうに考えておるというふうに理解してよろしいですか。
  69. 中名生隆

    ○中名生政府委員 はい。
  70. 桑原豊

    ○桑原委員 それでは、国土庁長官にお尋ねをいたします。  国会移転の問題は、国民生活の全般にわたって大変大きな影響を及ぼす問題でございます。国土庁としての全国総合開発計画、三全総でも四全総でもそのことは明確に打ち出されておられまして、両方とも、国民的な規模でこの問題は論議を深めていく必要があるんだ、検討していく必要がある、こういうふうに打ち出されておりますし、また、ことしの三月末の全国総合開発計画でも、開かれた公正な手続のもとで国民の合意を図っていくことが必要だということで、国民的な合意を広い規模で論議を深めながら図っていくということが強く打ち出されておりますし、また、この国会移転法の三条でも、その検討に当たっては、広く国民意見を聞き、その合意形成を図るということで打ち出されておるわけでして、私はそのとおりだろう、そういうふうな論議をどうつくっていくのかということが問題だろうというふうに思うわけです。  しかし、現実には、各種の議論の中ではその必要性が言われておるわけですけれども、本当に国民的な論議になっているのかというふうに考えてみますと、確かに我々国会議員の関係とか中央での議論はそれなりにあるわけです。そしてまた、調査対象地域と言われている、自分たちに非常に身近にその問題を感じられるところは、いろいろな階層の皆さん方が積極的にこの議論に参加をしているということでは議論はそれなりにあるわけです。  しかし、国民全体の首都ということでもございますし、世界に向けた、日本を代表する町だ、都市だ、こういうことになるわけですから、そういう意味では、もっともっと幅の広い、その地域に直接余り関係がなくても、国民全体の議論としてどう起こしていくのかというのが大変な大きな課題だろうというふうに思います。  私は、この問題は、どこへ行くかということだけではなしに、やはり二十一世紀国家というものをどう考えるのか、あるいは首都機能というか政府機能というものをどう考えていくのか、自分たち一人一人の国民にとって国家というのはある意味では何なのかというようなことも含めて、夢も含めた、そういうかかわりを持った非常に大きな問題だろうというふうに思います。政治を考えていく上でも大きな契機になる課題だろうというふうに思いますので、この問題を、ぜひ国民的な課題として本当にこれからつくっていく必要があるだろう。特に、来年の秋に候補地を選考するということになれば、この一年間というのが、それをつくっていく大変大事な一年になるのではないかというふうに思っております。  しかし、ただ国会移転の論議をやりましょうよといっても、そんな議論になるわけじゃないので、言ってみれば、私のところへぜひ国会を誘致しますよというような議論の方がまさってしまうわけですけれども、それではやはりこの議論というのは深まりと広がりを持つことはできないというふうに思います。  できれば、やはり移転の必要性、それから午前中の議論でもあったわけですけれども、これからつくられる首都の機能というのは一体どういうものなんだ、首都像というのは新しいどんなイメージを持ったものなのかというようなことも、時代とともに時々刻々にそういったものに対する考え方が非常に変わりつつあるわけですね。そんなことも含めて、首都機能、またはその新しい都市像、そういったふうに具体的な課題を提起して論議を起こす必要があるのではないか、こういうふうに思っております。  論議すべき課題は何なのかということと、それから、どんな手だてでこの国民的な論議を起こしていくのかということについて、やはり国土庁がその意味での主導的な役割を発揮されるべきだと思うのですが、その点についてどう考えておられるのか、そのことをお聞きしたい。
  71. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 桑原先生から、首都というものと国家機能あるいは中央政府の機能との密接な関連を踏まえて、どのように国民的な論議を盛り上げていくのだという御指摘をいただきました。  全くそのとおりでございまして、事務当局では、いろいろとシンポジウムをやろうとかあるいは公聴会をやろうとかというようなことを、あるいはいろいろなPRをしよう、インターネットを使ってやろうというようなことで、いろいろ工夫をしております。工夫をしておりますが、私は、実は今先生が御指摘したこと、つまり二十一世紀においてあるいはそれ以降において、我々国民が我々の政府としてどういう政府を持つのだということが最も大事じゃないか。つまりこの法律は、実は改革、特に中央政府の、中央省庁の再編との関係ではほぼ同着ぐらいか、あるいは若干首都機能移転の方が早いかといったようなタイムスケジュールを想定したのでしょうか、改革の契機として首都機能移転考えるというような法文がそこここに見られるわけであります。  ところが、現在私ども国会でも議論をしておる、あるいは政府でも議論しておるこの中央省庁の再編の問題というのは、少なくとも現在想定されているところでは、二〇〇一年の一月だとか四月だとかというところが目標になっているということでございます。そういたしますと、この法律が制定された当時とは若干その順番が入れかわっていまして、中央省庁の再編の方が先に来て、そして首都機能移転の方が後にタイミング的に来る、こういうようなことになっているというふうに私は解しておるわけです。  私は、仮に中央省庁の再編なり地方分権なりあるいは規制緩和なりが、今我々が考えているように徹底した形で行われるというようなことになって、一極集中がその必然的な結果として回避されるあるいは排除されるというようなことになったときには、恐らくそのいわば象徴として、契機じゃなくて象徴としての首都機能移転が望まれるというような、そういう基盤もできてくるのではないか、こういうように実は考えておるのです。  したがって、この首都機能移転に対する国民の世論というのは、実は行政改革あるいは国家の機能に対する国民のビジョン、こういうものの改革と表裏一体、あるいはもっと言えばそのいわば結果として出てくるようなものであって、首都機能移転の問題をそういったことと関係なく物理的に何かいろいろ論議をして、ここがいいだ、あそこがいいだというようなことを言うようなことは問題を、私は本質を逃しているような話ではないか、このように実は考えておるわけであります。  そういう意味合いで、ひとつ私が一番皆さんに申し上げたいことは、国家機能あるいは行政の組織、行政の機能というものを、どういうように日本はこれから改編していかなければ二十一世紀に一流の国として残れないのかという議論を徹底的にやっていただきたい。私は、閣僚になる前に、自民党で行革を三年ばかりやった人間ですけれども、そういう立場からいって、つくづく今、先生方に訴えたい点は実はそこにあるということをまず申し上げたいと思います。  それからもう一つ、ちょっと長くなって恐縮なんですが、もう一つあえて言いますと、今度のいろいろな審議会のこの候補地選定の結果、もし一カ所にこれを選定していただく、その後またいろいろ法律が予定している手続はありまして、最終的には国会が決めるということになっておりますけれども、もし仮に、審議会のその候補地が一つのところに決められたならば、これはもう世論は沸騰すると思います。私はそのことはそんな心配しておりません。それは、そこが我々の新しい首都になるんだというようなことになったら、これは国民はほっておかないわけであります。それが一つあります。  それともう一つは、私は、先ほど来の情報通信なんかの話にも出ておるように、我々の首都というのは、今度は全国情報ネットワークの中の一つでございますから、それでは、そこが首都になったとしたら、我々のところとはどういうふうに結びつくのだというような意味合いの関心も、おのずとそこから沸き上がってくるだろう、このように実は考えておりまして、首都機能移転ということの関心が今低いじゃないかということについては、それ自体として私は実は余り心配をしていないということを率直に申し上げておきたいと思います。
  72. 桑原豊

    ○桑原委員 これで終わりますが、長官の首都機能のあり方をめぐる考え方にはほぼ私も同調したいと思いますけれども、ただ、これからの一年間でどう議論を起こしていくのかというのが大変大事だということをもう一言言って、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  73. 安倍基雄

    安倍委員長 田端正広君。
  74. 田端正広

    ○田端委員 新党平和の田端正広でございます。  長官には大変お忙しいところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  最初に、国会等移転審議会のメンバーが入れかわったといいますか、これまで大きく推進役であった堺屋太一さんとか、あるいは有馬朗人さんとかという方々が閣僚に、参議院議員になられて閣僚に、こういうことでありますが、そんなことからいきますと、この審議会の有力な方が、看板メンバーといいますか、お二人抜けられたという意味では、私は、国土庁としては少し痛手ではないかな、こう思っております。  それとは逆に、小渕内閣が新内閣として発足して、総理の所信表明演説の中にこの問題は一言もお触れにならなかった。こういったことから考えて、非常に、国民的視点から見ますと、政府の方向性というものがいま一つはっきり見えてこない、こういうふうに思っている方が多いと思いますが、長官が御就任されて、所管の大臣としてまずどういうふうな御決意であるのか、その辺のところ、お伺いしたいと思います。
  75. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生指摘のとおり、堺屋太一先生それから有馬朗人先生、このお二人は首都機能移転審の看板メンバーでございましたが、たまたま、その多方面な能力というような観点からでしょう、小渕内閣に閣僚として入閣をされる。そうなりますと、移転審のメンバーを兼ねることができないということで、お二人とも現在は辞任をされ、有馬先生の場合には森先生が後任に当たられるというようなことで、メンバーの交代にもなっております。なお、余分なことかもしれませんが、堺屋先生の場合には、あえて我々まだ補充をいたしておりません。そういうようなことが一つありました。  それからまた御指摘の、小渕総理の今回臨時国会における所信表明の中で首都機能移転の問題が触れられなかったではないかという御指摘もありましたが、この点は、私は、閣議の中身を御披露するというのは、あるいはこれはちょっと差し控えるべきことかもしれませんが、せっかくの御質問ですので、あえて例外としてここで御披露申し上げますと、私その点は指摘をさせていただきました。  もちろん私は、すべての問題について中長期的あるいは明年度の施政の方針を述べる施政方針演説と臨時国会における所信表明演説とはその性格を異にするということも十分わかっておりましたけれども、率直に言って、今回臨時国会での小渕総理の所信表明というものにはかなり中長期的な問題も含まれておりましたので、であるならば、この問題もぜひ含んでお述べいただきたいということも申し上げたのですが、若干の論議の結果、堺屋大臣も発言をされましたけれども、今回の所信表明は、ややこれは中長期的な問題で、もうみんなわかって、一つの法律に基づいて粛々とその手続も進んでいることだから、あえて触れなくてもいいことにしよう、こういうことで触れることがなく終わった、こういういきさつでございます。  私のこの問題に対する考え方でございますけれども、これは法律に基づいて現在整々として手続が進んでおります。先ほど政府委員の方から答弁いたしましたように、審議会は、現在のところは、来年の十一月を一つ目安にして候補地の選定を何らかの形で取りまとめよう、こういう手続の途上にあるわけでございます。  そこで、それが出ますとどういうことになるかというと、これは法律の二十二条、二十三条といったところに書いてございますけれども、審議会の答申が行われたら、今度は国民の合意形成の状況であるとか、あるいは社会経済情勢の諸事情といったものに配慮し、また東京都、現在首都が行われている東京都との比較考量を通じて、移転についてさらに検討を進める、そして最終的には、二十三条で、移転先は別の法律で国会において定める、こういうふうになっておりますので、そういう手続に従って私どもとしては整々として検討を深めていくということが私の任務であろう、このように考えている次第であります。
  76. 田端正広

    ○田端委員 来年の秋に最終候補地が選考される、こういうことでございますから、今大臣おっしゃったように、ぜひ通常国会では総理の所信表明の中にも明確に、来年度のことですから、お述べいただいて、そして国民がやはり関心を持てるような、そしてまた合意が得られるような、そういう方向を政府としてもしっかりとお示し願いたい、この点、お願いしておきたいと思います。  それから、つまり来年の最終候補地の選考が決まったといいますか、どういう形になるか知りませんが、総理に審議会が答申をする、この段階から後のスケジュールといいますかプログラムというものが、もう一つ明快でないと思います。二〇〇三年までは投資はしないとか、そういうことにはなっているとしても、しかし、絞られた段階から後は、非常にいろいろな意味影響が大きいかと思いますが、その辺のところ、どう交通整理をされていくのか、大臣のお考えをお示し願いたいと思います。
  77. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 手続についてでございますので、政府委員の方から答弁をさせていただきます。
  78. 板倉英則

    ○板倉政府委員 答申から新都市の建設開始、あるいはその先どういうスケジュールであるかというお尋ねでございますけれども、実はこの点につきましては、まだ審議会の中におきましても余り具体的な検討は行われていないわけでございますが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、答申がなされますと、法律二十二条、二十三条に基づきまして、国民の合意形成の状況、それから社会経済情勢の諸事情、それから東京都との比較検討を踏まえまして、国会におきまして法律で移転先地を御決定いただく、こういうことになるわけでございます。  そして、その以降でございますけれども、これにつきましては、新都市の建設に向けまして、事業主体の決定、マスタープランの作成、あるいは土地対策に万全を期する、あるいは環境アセスメントをどうするかとか、地元関係機関の調整をどう進めていくかとか、広範多岐にわたる準備作業が必要とされておりまして、それには相当の期間を要するというふうに、私ども今、現時点では考えているところでございます。     〔委員長退席、平林委員長代理着席
  79. 田端正広

    ○田端委員 候補地になっている三地域十一府県、この地域ではそれなりに熱のこもった議論なり関心を持っていられる人も多いと思うのですけれども、全国民的にいけば、そういう意味ではまだまだ盛り上がりに欠けている。今お尋ねしても、何かまだ決まっていないから先送りでまだわかりませんというふうな、そういう答弁をされますと、これは国土庁がそういう方針でいきますと、盛り上がりといいますか、理解といいますか、そういうものがなかなか進まないのじゃないか、そういう心配をします。したがって、いろいろな問題はあるにしても、ある種交通整理をしながら方向というものをしっかりと示していただかないと世論というものはついてこれないのじゃないか、こういうふうに第一点として申し上げます。  それから、国会決議が平成二年十一月七日の衆参で行われた状況というのは、これはまさにバブルの絶頂期でございましたから、そういった意味では、一極集中の東京というものをどうするかという議論と相まって、こういう首都機能移転という方向が出てきたわけです。しかし、今はもう全く状況が違っているわけですから、正直言って、国民的には本当に首都機能移転が必要なのか、こういうところにまで今は私は冷めてしまっているのではないかな、こういうふうに思うわけであります。  だから、ぜひ、政府あるいは内閣として、その辺のことをしっかりと議論をしていただきたい。 その際、今までの考え考えとして、もう一度、再考慮するといいますか、再点検といいますか、例えばあくまでも一括移転をやろうというのか、あるいは三権セットではなくて分都的なそういう方式ということもあるじゃないかとか、あるいは時間差を設けて時差移転といいますか、そういうこともあるではないか、こういう議論もしっかりとしていくことも大事ではないかな。  また、逆に言えば、私は、例えば東京に残すものは国会とか総理官邸とか防衛、外交、法務、外務等の中枢部分東京に残して、その他の事業官庁を移転する、こういう逆の発想も今日においては考えられるのじゃないか、こういうことも私は考えるわけであります。  したがって、総理官邸が十一年度の着工ということで検討されているようでありますけれども、そういう首都機能移転をするといいながら総理官邸を改築するということとの整合性を含めて、ぜひその辺のところを明確な方向づけをしていただかないと、決して世論は私はついてこない、こういうふうに思いますが、長官のスタンスをお伺いしたいと思います。     〔平林委員長代理退席、委員長着席
  80. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生から今、首都機能移転国会決議が行われた当時の社会経済状況と随分最近の情勢が変わってきておるというようなことから、首都機能移転のありようというものについて、もう少し一工夫、二工夫した方がいいじゃないかという御提案を含めてのお尋ねをいただきました。  まず、状況が変わってきたということ等をどう考えるかということについては、先ほど私が御披露申し上げました国会等移転の法律の中で、もう一度答申が出た後で社会経済情勢を考えて検討をするということが、既にスケジュールの上でも規定されております。したがって、そのことはいわば法律で予定していることであるということをあえて指摘をさせていただきたい、このように思います。  それからなお、若干先生からありようということで御指摘になった点についてコメントをさせていただきますと、一括移転か分都かということについては、分都については前の調査会の段階で、首都機能移転というものを考えるとすれば、効率性の点からいってこれは排除されるアイデアではないかということに一応位置づけがなっておるということを、ここで確認をいたしておきたい、このように思います。  それからもう一つ、中枢を残して事業官庁を移転したらどうかということでございますが、現在、他方で、先ほど私が指摘させていただいた中央省庁の再編に関連して論じられているところは、政策の企画立案と政策の執行の機能を分けよう、そして政策の執行の機能というのはできる限り独立行政法人を含めての外部化を図っていこう、こういう考え方でございます。そして、政策の企画立案機能というのは、国会の立法を徹底的に補佐する、国会の立法機能を徹底的に補助する、そういう機能が期待されておるというのが、現在、先般成立させていただいた中央省庁等改編基本法の中身でございます。  それで、今回の首都機能移転というのが、当面国会の移転、それからそれに関連する行政機能の移転ということになっておりますので、先生せっかくの御提案ですが、ちょっと逆でございまして、国会と一緒移転するのは立法を補佐すべき政策の企画立案部門である、そして外部化される執行の部門はむしろ場合によっては現在の霞が関に残ることもあり得べし、こういう考え方になるのではないかということを私は考えているわけでございます。  最後に、首相官邸の建てかえの問題が取り上げられましたけれども、この問題は、何しろ今の官邸がもう七十年もたって非常におっかないというかそういう建物になっておるので、これはむしろ待ったなしでつくろうということになっておりまして、これは首都機能が現実に移転になった場合には、また別途の観点からこれを見直して最も有効に活用していく。現在のところは、少なくとも皇居の移転ということが視野に入っておらないことを考えてみますと、それとの関連で大いに使用、活用の余地は大きいのではないか、このように考えられるのではないかと思っているわけでございます。
  81. 田端正広

    ○田端委員 私は、阪神・淡路大震災、実際あの日に大阪にいて震度五を体験した人間として、非常にこの問題は大事だ、こう思っております。  そして、ついこの間の日曜日も淡路島に行きまして、今あそこの野島断層の記念館ができておりますが、これは大変な観光地になっておりまして、もうすごい人気といいますか、そして断層がそのまま保存されておるわけですが、目の当たりにしますと、やはりすごい地震であったなということも感じるわけであります。  そういった意味で、首都機能移転そのものを否定するわけでもないし、その流れそのものは私は大切にしたい、こう思っておりますが、しかし、方向性がもう少しはっきりしていかないと、哲学といいますか理念といいますか、ここのところがやはり大事だろう。そういう意味で、先ほど大臣もちょっとおっしゃいましたが、行革というもの、行政改革は、最大のチャンスはこのときしかないということで、ぜひやるのなら徹していただきたい、そして、二十一世紀日本の国のありようというものを国民に理解してもらうようにしなきゃならない、こう思うわけであります。  それで、実はそちらの方で、中間の取りまとめということで新都市イメージのあれが出ておりますけれども、例えば、「緑につつまれた国会都市」とか「国民世界に開かれた政治行政」あるいは「にぎわいと文化の香り」あるいは「優しさに満ちたコミュニティ」あるいは「自然環境との共生」、こういうタイトルで絵をいろいろ出されて国民にもわかるようにされているようですが、なかなかこれはアイデアとしてはおもしろいのですけれども、しかし、全然国民はここまでまだ気持ちがついていけないというのが実態であろうと思います。  だから、そういう意味では、もっともっとこの問題に対しての熱意を、ぜひ国土庁引っ張っていただいて、そしてそういう方向性を明確にしていかないと、これはもう中途半端で、いつまでたっても議論だけで終わってしまうのじゃないか、こういう心配をしておりますので、最後に大臣の御決意を聞いて終わりたいと思います。
  82. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 いろいろな問題点を御指摘いただいて、御注意もいただきまして、大変感謝を申し上げます。  私どもの使命と申しますのは、やはり基本的には法律にのっとって手続を進めるということでございますけれども、今先生の御指摘、また前の質疑者の先生方の御指摘にもありましたように、やはり論点と申しますか、そういうものを鋭く提起して、国民の論議を巻き起こしていく、関心を呼び起こしていくということだけは我々の使命だ、このように考えておりまして、今後ともその点については十分留意をして努めてまいりたい、このように考えております。
  83. 田端正広

    ○田端委員 以上で終わります。
  84. 安倍基雄

    安倍委員長 吉田幸弘君。
  85. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。長官におかれましては、お忙しい中どうもありがとうございます。  早速質問に入らせていただきますが、首都機能移転の必要性が問われて随分と久しくなります。古くは、昭和三十年代から学識経験者により各種の提言が行われてまいりました。また、第三次、第四次の全国総合開発計画においても、創造的、国民的な論議が国民的規模で行われるべきと指摘がされております。衆参両院が平成二年に国会決議を行ってからも既に八年が経過しようとしており、その間に、首都機能移転の目的や効果が極めて多岐にわたり、大変意義深いものであることが明らかにされてまいりました。  七年一月の阪神・淡路大震災以降は、危機管理機能をいかに確保するかが広く再認識されてきており、首都機能、とりわけ国会が率先して移転することによって我が国全体の危機管理能力を向上させる必要が高まってきているものと私自身考えております。  そこで、まず初めに、首都機能移転、とりわけ東京圏で大震災が発生しても国家の危機管理機能が十二分に確保され、我が国が速やかに復旧、復興を果たすことができるようにするために首都機能移転を積極的に進めるべきと考えますが、大臣のお考え、取り組む姿勢を改めてお伺いいたします。
  86. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先ほど来の御議論でもお答え申し上げておりますように、災害対応というのは、今回の首都機能移転の背景の大きな一つの要素になっておるということでございます。  そこで、そういった関連で危機管理の問題との関連がお尋ねあったわけでございますけれども、私ども、この危機管理の問題につきましては、確かに、何と申しましょうか経済機能が集積し過ぎている、これを一極集中と言っていいかと思いますけれども、そういうものと、行政も政治もそこに重畳的にまた集積して集中してしまっている、こういうことで、地震などがあった場合にはもう一挙にしてこれが両方やられてしまう、こういうことは危険きわまりないことで、できればこれはやはりどちらかが被害を免れられる、同時に被災をしてしまうというような事態というものは避けるべきだというようなことで首都機能移転というものが一つの有効な答えとして出てくるということも、先生指摘のとおりかと思っております。  ただ、もう一つ、あえて私先ほど来申し上げておりますけれども、その問題と、あしたあるかもしれない、これは公式の要路の方々が指摘されているのは、南関東の地震というものはある程度の切迫性を持っているという表現で、例えば東海地方の地震とは若干緩目の、何というか警告というか情報提供というレベルになっておりますが、いずれにしても切迫という言葉が使われておるわけでございまして、こういうようなものは本当に切迫しているんだろう、文字どおり切迫しているんだろう、こう思います。その場合の危機管理という問題については別途の対処を考えておかないといけないのじゃないか、このように私は事務当局にも指示をしておるというわけであります。  もちろん、だから首都機能移転を急ぐべきだ、いや、二〇〇四年まで待つというのは、待つべきではなくて一九九九年からもう始めるべきだ、そういった問題とはちょっと違う性質のものではないかというふうに考えておるということをちょっと申し添えさせていただきます。
  87. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 ありがとうございます。  続いて、私の地元は愛知県でございます。今回の移転の候補地に極めて近接している地域でありますが、この移転に関しての注目度、また住民の理解度というものはいま一歩と考えます。  この理由を、ある関係者なんかは、東海地域の場合だと、東濃から愛知、静岡までと極めて範囲が広過ぎてイメージが漠然とする、だから絞り込めないかとか、イメージがぼやっとしたものだからなかなか盛り上がらないんじゃないかというような意見を申しているのもおりますけれども、いずれにしても理解度はいま一歩と考えております。  今回の首都機能移転は、それこそ単なるニュータウンづくりとは全く異なるもので、皆様方いろんな意見もありますけれども、本当に国家百年の大計と言われる本当の大事業である、このことで私自身も話を進めたい。でも、何度も繰り返しますが、理解度はいま一歩だ。このような大事業をなし遂げるためには、まず第一に、多くの国民に関心を持ってもらい、そして、賛成も反対も含めて広く国民的な議論が行われることがやはり何よりも大事である、また成功のかぎである、このように考えます。  先ほど、その時期が来れば注目を浴びるんだというようなことを述べられておりましたが、私自身はそのことに対してやや疑問を覚えます。現時点からやはり盛り上げていかなければならない。このことに関して大臣のお考えをもう少し詳しくお伺いしたいと思います。
  88. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 注目度ということになりますと、あるいは言葉をかえて盛り上がりということになりますと、私は、一カ所に本当に候補地がピンポイントで選定されるというようなことになったら、これは一挙に関心は高まってくるだろうというように思いますし、そのように先ほど申しました。その問題と、この問題に正しい結論を得るために、もう国民各界各層のいろいろな議論をどうやって積み上げていくかという問題の二つの面があるのだろうと私は思っております。  盛り上がりがないじゃないかということに対しては、私はむしろ、一カ所に決めさえずれば盛り上がらざるを得ないですよということを申し上げるわけですが、論議の積み重ね、それで日本国民として間違いのない結論を得る、このことはまた別途の問題でありまして、いろいろ識者の議論も要るし、各界各層の方々の議論が要るだろうと思いますが、そういうことについては、私どもは努めて、それが多くの量が積み上がっていくように、またいろいろな多角的な角度から積み上がっていくように努めてまいりたい、このように考えております。  事務的なことについて、もし必要であれば政府委員の方から答弁させます。
  89. 板倉英則

    ○板倉政府委員 国民的な御議論をどうやって盛り上げるかということにつきまして、現在私ども考えていることをちょっと御説明させていただきますと、去る四月に新都市のイメージ図につきまして中間取りまとめを公表させていただきまして、今インターネット等で御意見をちょうだいしているところでございます。  やはり今後、できるだけ広く国民の方々に御関心を持っていただくという観点から、私どもといたしまして、まず一つは、行政改革とか地方分権と首都機能移転とがどう相互に関連するかというようなテーマの設定の仕方、あるいは首都機能移転先の新都市全国各地域がどうかかわってくるかというようなテーマ、さらには先ほど申しました新都市像について、御意見を踏まえてさらに一層具体化を図っていく、こういうような具体的なテーマとか論点をお示ししまして、首都機能移転全国各地域に広く関連し、また、国民一人一人に深くかかわる重要な課題であるということを強く訴えていきたいというふうに思っております。
  90. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 それでは、先へ進めさせていただきます。  最近、首相官邸の建築のニュースを聞いたばかりでありますが、そもそも、なぜこの時期に官邸の整備が必要なのか。現在具体的に進められようとしておられる新官邸の整備についての機能、工期、また、いつぐらいに二段階、三段階の計画がなされるのか、もう少し具体的にお示しいただきたい。これは総理府にお願いします。
  91. 尾見博武

    ○尾見政府委員 新官邸の建設の必要性及び新官邸の具体的な機能、内容についての御質問だというふうに受けとめております。  必要性につきましては、先ほど来御説明をさせていただいていますが、総理官邸、そもそも築後七十年ということで、昭和の初期の建物でございますので、大変に老朽化、狭隘化しているということでございますが、さらに、阪神・淡路の震災を契機としまして、やはり耐震性の問題がクローズアップされまして、現在の官邸についても耐震判断みたいなものをいたしました。かなり耐震性に不安があるということは率直に申し上げざるを得ないということだと思います。  先ほど国土庁長官の方からも御説明がございましたように、南関東の直下型の地震の問題というようなこともございますので、そういう点から危機管理機能というようなことがやはり大きな問題になってきております。  行政改革の議論の中でも、危機管理に対しての取り組みということで、行革の中間取りまとめということで、通常の最終報告に先立っていろいろ御意見をいただいております。危機管理監を中心とした体制整備というようなこともやってまいりました。それから、内閣機能の強化という点でも、この間、行政改革との絡みでいろいろ御指摘がございました。例えば、官房副長官を一名増員する、あるいはいろいろな形の補佐スタッフを充実する、そういうことが強く求められているようになっております。  そういう中で、政府といたしましても、例えば危機管理という点につきましては、官邸の別館に危機管理センター、二十四時間の情報集約センター、今そういうものを整備して対応しております。  今のところで最善の対応をしているつもりでございますけれども、例えば、危機という事態を考えてみました場合に、事態が複数生じたときにどうするのか、あるいは事態が非常に長期化したときにどうするのか。長期化しますと、例えば要員の宿泊だとか仮眠だとか、あるいは備蓄だとか、そういう問題も考えざるを得ないと思います。それから、いろいろなライフライン関係のバックアップシステム、そういうものをどうするかというような点で、まだまだ望ましい水準からするとやることがあるのではないかということでございます。  そういうようなことで、具体的に、新官邸は危機管理センターというようなものを中心に、それをかなり大きな要素として計画を進めているところでございます。  全体の計画といたしましては、本館を十一年度に着工して十三年度までに完成させるということでございまして、例えば、外構と呼んでおりますが、玄関でありますとか前庭でありますとかあるいは駐車場の問題だとか、そういう周辺部分も含めまして平成十五年までには全体を完成する、こういう内容で考えております。  以上でございます。
  92. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 今のお話ともう一つ前のお話、これは両方ともそれなりに正当性がある。確かに必要かと思う。ただ、これは両方をうまくつなげて説明をしないと、首都機能の問題と官邸の新築の問題、うまく説明をしないと国民にとってみればよくわからない。一体どうなんだろうかな、本当は、官邸をつくっておいて、やはり首都機能移転はやめたという話にもなるんじゃないかというような気が私はいたしております。  最後に大臣にお伺いをいたしますが、この二つをうまく連動させて御説明をいただいて、もっと明確にお答えをいただきたいと思います。
  93. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先ほど事務当局から、答申後の今後の首都機能移転の手続というか、この点についての御説明をいたしたかと思いますけれども、私ども、財政支出の関係で、今のところこれに対する支出を御遠慮申し上げるということにしてございます。二〇〇四年から、必要とあらば所要の財政支出もして取りかかっていくということでございますけれども、そうしたときに、国会移転というものが一番最初に実現されるべきものだというスケジュールに立った場合でも、国会の移転が完了するにはほぼ十年の歳月が必要だということに、これはまだ調査会段階の検討結果でございますけれども、一応そういうことになってございます。  そういうようなことを考えてみますと、ではその間、現在の官邸で頑張れるのかというと、先ほどの阪神・淡路の震災等の影響もあって、それをそのように決めてかかるということは責任ある態度と言えるだろうかという疑問がやはり残るだろうと思います。したがって、やはり官邸というものの建てかえはやむを得ない。それはもう先生方も恐らくお心の中にはあって、これがもうちょっとうまくつながっていけば何の問題もないのにというようなことがあろうと思いますし、私なども率直に言ってそうは思います。  しかし、なかなか、これだけの大事業ということになりますと、そううまく過去の、昭和二年に建った官邸が、ちょうど首都機能移転のときの新しい官邸に耐久性の面でも確実に間に合うようにというのは、これはもうほとんどやはり至難のわざということでございますので、ここはひとつ理解いただいて、しからばそれが、そうなった場合に、本当にむだな二重投資というようなことにならないのかという角度からの御検討、御審議をお願いしたいと私どもは思っております。  これについては、先ほど私、事務当局の意見に加えてちょっと申し上げたのですが、現在のところは首都機能移転では皇居の移転というものが考えられていない、そういたしますと、外国の元首を首相が迎えるというようなことも非常にたびたび考えられるわけでありまして、そうしたことをちょっと想定しただけでも、新しい官邸の活用というものは非常に今後とも考えられるということをぜひ国民の皆様にも理解いただくように我々努めていかなければいけない、このように考えております。
  94. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 これで終わります。ありがとうございました。
  95. 安倍基雄

    安倍委員長 中島武敏君。
  96. 中島武敏

    ○中島(武)委員 私は、きょうは首都機能移転のそもそも論について私の意見も述べ、また長官の御見解も聞きたい、そう思っております。  端的に申しますけれども国民主権それから議会制民主主義、こういう立場から、首都というのは一体何なのか、どういうところに置くのがよいのかということが正面から論じられたことというのはないんじゃないかと思うのですね。さっきから話の出ております一極集中の是正あるいは過密の解消、あるいはまた行政改革とか地方分権とか規制緩和とか、これらも、首都機能移転をきっかけとするというような言葉で随所に述べられておりまして、そういう点では、いわばこの首都機能移転という問題が、実はこれらの諸問題を解決するための手段という論じられ方をしてきているわけですね。  私は、そういう点では、首都機能移転とは何なのか。国民の代表たる国会が、国民のいないところに人工的な都市をつくって首都機能移転する、こういうふうに説明されてきたわけです。だけれども、そういうところに国会が移ったら、主権者である国民の声をどうやって国会や、あるいは政府にもそうですけれども、反映させたらいいんだろうか。きょうは午前中、情報通信の話もありましたけれどもインターネットにかじりついていればすべてよろしいというものじゃないわけですね。そういうことからいいますと、結局、現在考えられている首都機能移転というのは、国会を国民から遠ざけてしまう、こういうものになっているんじゃないかと思うわけです。  世界じゅう見ましても、首都はその国の最大の都市に置かれている。確かに、アメリカやカナダあるいはオーストラリアのような例外的な、特別の理由があるところはありますけれども、大多数はそうですね。人口が多くて、国会や政府に対して国民の生の声が、請願や陳情や、あるいはまた政府要請やら国会要請やら国会議員要請やらデモやら集会やら、いろいろな形をとってどんどん反映してくる、こういうことこそ本当に首都たる資格を持つのではないだろうか、こう思うのですね。  やはり今改めて、首都とは一体何なのか、首都はどういうところに置くべきなのかという問題を論じるべきではないかと思うのですけれども、長官の見解をお聞きしたいと思います。
  97. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生が、民主主義政治ということであれば、できるだけ国民と近いところに、首都機能というか国家の意思を決定する機能を果たすべきところを置くべきではないか、こういう観点からの御質問でございます。  確かに、パリもロンドンも大都市であるということも先生指摘のとおりでございますけれども、ただしかし、日本東京ほどの物すごい集中というところではないということも、これもまた事実なのでございます。そして、それぞれ地方の都市も、日本の地方都市以上の高い比率の人口を擁した都市がそれぞれに存在している。日本東京というのは一体どうしてこうなってしまったん だ、一極集中が過度に進んだのかといえば、やはり私どもは、中央集権というか中央官僚統制というか、そういうものの裏返しが今日のこの一極集中を呼んだものではないか、こういうように実は思っております。  そこで、行政改革でこの中央官僚統制をもっと弱めて、そして規制緩和をしたり地方分権を徹底したりするということが大事である。そういうもっと身近なところで、自分たちの生活というものを身近なところにある政治の機能でもうて果たさせていくということの方がより民主的で、しかも国全体として、トータルに言っても力のある国になるだろう。このあたりで、明治以来あるいはもうちょっと前からやってきた中央官僚主導の政治というか行政というものを転換しなければいけない。そのことを待ったなしで要請されているのが今日の東京の一極集中の姿である、こういう考え方を実はしているわけでございまして、いわばそういう価値観というか思想、国民の政治のありようというようなものの転換のいわば象徴として私ども首都機能移転考えたらどうか、こういうことを先ほど来申しているわけであります。  確かに先生指摘のように、契機として、あるいは手段として首都機能移転考えているというようなことが間々これまでの法律等にもうたわれておりますけれども、現在ここまで改革が進んできた、あるいは今後予定されている改革を視野に置きますと、これは逆であって、いわば改革の結果、それを象徴する姿としての首都機能移転考えるという段階に至っているというふうに考えているわけでありまして、決して、先生が言われるように、民主主義の政治と首都機能移転とが何か矛盾、背反するというようには我々は考えていないのでございます。
  98. 中島武敏

    ○中島(武)委員 今御答弁がありましたけれども、一極集中の打破、是正と申しましても、これはもう長官よく御存じのように、たかだか六十万人が移動するというだけにすぎないんですね。ですから、これは東京都なんかもいろいろなシミュレーションの結果を発表しておりますけれども、それで一極集中の打破ができるのかといえば、そうじゃないんですね。  それから、長官が非常に強調された、地方分権あるいは行政改革、それの象徴だ、こういうふうに言われるんですけれども、象徴というのは一体何なのだろう、率直に言いますけれども。やはり、行政改革あるいは今言われた地方分権、分権といいますか私どもは正確には地方自治の充実だと思うのですけれども、そういうことの中身が最初にはっきり論じられて明らかにならないと、事が前後してしまうのじゃないか、逆になるんじゃないかということを私なんかは御指摘申し上げたい。  余りこの問題だけ論じていますと時間がどんどん過ぎてしまいますので、もう一つ申し上げたいことがあるんですけれども、それは九六年の、国会等移転に関する法律が改定されたときに、衆参両院の国会等移転特別委員会でこの問題についての議論がありました。そのとき、当時の橋本総理大臣も出席をされて、私、橋本総理大臣に質問をして、この質疑の中で非常に明らかになったことがあります。  私は、詳細をここで繰り返し述べるという気持ちはありませんけれども、しかし中央官庁の相当部分東京に残るということを非常にはっきりと言われたわけですね。そしてまた、言葉の中でも、何というのですか東京に軸足を置くというような言葉さえ述べておられるわけですよ。私、これ端的に言いますと、二つの政府論の立場じゃないかな、こういう気がするわけです。  それで、そうなりますとどうなるかという問題なんですけれども政府の相当部分東京に残る、国会はどこへ行くのかといえば、発表されている基準に従って、広大な地域の、東京から一時間、二時間で行けるような、そういうところに移転してしまうというのです。人口密度はうんと少ない、低・未利用。さあこれはどこだ、一体こんなところは。そうすると、これは国民が住んでいないところなんですね、端的に言えば。そんなところへ行って国会つくって、それで政府の大部分は、相当部分東京へ残る。  さあ、こうなってくると、私は、国民から離れるという点においては、やはり議会制民主主義という民主政治の上からいって、これは正しくない、さっきも申し上げたのですけれども。同時に、今度は政府に対するチェック機能とかあるいは国政調査権の発動というようなことも、これなかなかままならないことになってしまうのじゃないか。これは非常に重大なことじゃないかと思うのですけれども、長官の見解を伺いたいと思います。
  99. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 まず第一に、一極集中と言っているけれども六十万人しか動かないじゃないか、あとのが残ったのでは一極集中はちっとも解消できないじゃないかという御指摘なんですが、我々が申し上げているのは、システムを変えよう、東京ばかり意思決定をするから、そこに来なければいけない、あるいはそこの近くにいなければいけないというシステムを変えよう、こういうことなんです、先生。そこのところは十分にひとつ御理解を賜っておきたい、こう思います。  それから、橋本総理の御発言でございますけれども、あの当時、橋本総理は政府にいらっしゃったのです。それの裏側を私ども党でやっておったのですが、これは中央省庁につきまして、先ほど来申し上げたように、政策の企画立案機能と執行の機能を分けようという議論が既にその当時進んでおりました。そこで、国会と一緒に移るのは政策の企画立案だけしている人たちでいいのじゃないか、それで、現実に霞が関を空き家にするわけにもいかないし、民間ですぐ使うというわけにもなかなかいかないというようなこともあるし、現実に執行する人たちはそこにいてちっとも差し支えないわけであるから、そこはそういったことも可能性として考えられる、こういうことを橋本総理はおっしゃったのではないか、このように考えるわけであります。  それから、先生先ほど言ったように、地方分権をまず実現することが先であって、政府の議論は少し本末転倒の気味があるというような御指摘でございますが、私ども先生と同じことを考えております。地方分権を徹底的にやる、それで中央に余り来なくてもよくなる、そういうようなシステムをつくることの結果、今言ったような首都機能移転が可能になる、こういうように順序立てて考えていこうということを今や我々は考えているんだということを申し上げておきたいと思います。
  100. 中島武敏

    ○中島(武)委員 今長官から、システムを変えなければいかぬのだ、つまりお話中心は、国会とか政府とかこういうのがあるからみんな寄ってくるんだ、それでこんなに一極集中の膨大な東京ができたんだ、こういうことです。  だけれども、いろいろな世論調査があるのです。何であなた方はここへ企業を立地しているのかとか、何で東京へ来ているのか、こういういろいろな世論調査をやりますと、政府があるからとか国会があるからという言葉が出てくるかと思ったら、出てこないのですよ。それはずっと後ろの方に出てくるのです。なぜかといったら、やはり経済的なことの理由が、本社があるからとか、いや本店があるからとかこういうことがあるために、これだと連絡をとりやすいとか情報を得やすいとか、だから東京へ行くんだ、こうなる。これが世論調査の結果なんですよ、長官。私は、そこは履き違えて何か理屈が立てられているのじゃないかという気がするわけです。  それで、現実問題としても、システムの転換なんだ、こういうふうにおっしゃるのだけれども、さあ、どこかよそへ行ったらシステムは変わるのかということになりますと、おっしゃるような論立てたったらそっちの方にまた集中していくということになるわけですよ。だから、私はこの論というのは余り正しくないのじゃないかということを申し上げたい。  それで、時間の点があるものですからちょっと急ぐのですけれども、もう一つ申し上げたい点あるいはお尋ねしたい点は何かというと、今度首都機能移転をやった場合の費用の問題なんです。  これは移転議会でも答申がありまして、機関が全部移転する場合十二・三兆円、それから半分移転する場合七・五兆円、それから国会を中心移転するという場合は四兆円、こういうような試算をされているのです。だけれども、今の日本経済情勢それから財政状況、これはどうかということをやはりここは本当に考えなければいかぬところじゃないかと私は思います。そういう点からいいますと、やはり何というか、非常に危機的な情勢に財政状況なんかはあるわけです。中央と地方を合わせての長期債務は、何と驚くべきことにGDPを追い抜いてしまったのですよ。これも長官御存じのとおりなんです。  さあ、こんな状態でどれだけ移転するかということが問題になってくるのですけれども、やはり国会は移転する、それから政府も企画立案部門は移転する、司法も中枢が移転するということになりましょう。しかし、金はこれだけやはり使わなければいかぬ。これは金のあるときならまだしも、財政が本当にピンチになってしまっているというときには、何年間かかけてやるのだからなんという悠長な理屈を言っている段階じゃないと私は思う、率直に言うけれども。  やはり、ここは移転議会なんかも一路、命じられていることだから、決まっていることだからというので、どこへ移転したらいいかと、とつととつと毎日御苦労いただいておるわけですよ。だけれども、私はこれは本当にやはり考えなければならぬところに今日本経済情勢あるいは財政状況というのはあるのじゃないだろうか、このことを申し上げたいのです。
  101. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 では、手短にお答え申し上げます。  一つ、一極集中が日本の中央官僚統制システムの結果であるということについての世論調査を基礎にした御反論がありましたけれども、やはり最初のきっかけというのは、例えば大阪の支店の人たちもみんな東京本社ビルを持ってしまったというあの一連の動きは、私は、私どもの立論を何ら変更する必要のない現象であったと、今もって思っております。  それからもう一つは、アメリカの例、例えばATTがニュージャージー州に行ってしまったというようなそういう例が実際あるわけでございますけれども、そういうことを考えますと、日本の行政あるいは政治の中央集権というものがやはり経済界も巻き込んでいるということは、これは否定すべきものではないだろう、このように思っています。  それから最後に、財政の問題の御指摘がありましたけれども、私はやや先生の御議論に、何というか賛意というわけじゃありませんけれども指摘はやはり我々として考えなければならない指摘である、このように考えます。
  102. 中島武敏

    ○中島(武)委員 意見の合わないところは合わないところでこれはやむを得まい、やむを得ないといいますか、きょうはお互いぶつけて、ここが違うんだなということを確認して、次をちょっとやりたいんですけれども、国会移転議会調査対象地域として選定した地域ですね。ここは、私はここの委員会の一員として、それからまたそうじゃなくて私単独で、いろいろな視察や調査に参りました。  端的に言いますけれども、そこで共通しているのは何かといったら、結局のところ、大型開発に対する期待なんですよ。これはもう率直に申し上げて。私はそんなことでいいのかなということを思っております。といいますのは、ちょっとあれなんですけれども、この結果は地方財政を破綻させてしまうんじゃないかということを真剣に私は恐れております。  なぜかというと、東京の臨海副都心開発の大失敗、これによって東京都はとうとう債務超過四千億円ですよ。それから、神奈川のみなとみらい、この問題でとうとう神奈川は財政再建団体の指定を受けるかもしれない。そういうところへ来ているんですね。大阪もいろいろそうです。もう時間もないようですから、私、今は簡略にしますけれども。私は、こういう東京とかあるいは神奈川とか大阪、今日のこの姿はあしたの移転先地の県の姿になるんじゃないかということを率直に思います。  だから、私は、とっとと事を進めるということについては、きちっとやはり今ここで足を踏みとどまって、見直しをするということが必要なんじゃないだろうかというふうに思うんです。  それからもう一つ、時間がもう来たようですので終わりにしたいんですけれども、これが最後ですけれども、右肩上がりの経済時代は終わったんですよ。右肩上がりの経済時代は終わったんです。だから、そういう点からいえば、既定方針どおりに事を進めるという段階じゃないんです。やはりここは思い切って見直しをするとか、本当に首都機能移転が必要なのか、この問題についても考えるべきところへ来ているんじゃないかということを申し上げて、見解を聞いて、私の質問を終わります。
  103. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 では、手短に申します。  指定候補地は開発期待だという御指摘でございます。そして、それは地方財政を破綻に導くような結果になる懸念が多いという御指摘でございますけれども、これはまだ審議会の方も最終的な開発方式等について結論を出しているわけではございませんけれども、実はその地域をその地方公共団体のままにしておくかということ自体が、先生、まだ論議の対象なんでございます。  つまり、今ここ東京は、首都でありながら東京都という地方公共団体の一領域なんでございますけれどもアメリカのワシントンDCのように、このワシントンDCというのはどこの州の領域でもないという建前をとっておる、そういう制度をとっておる地域もございまして、私どもとしては、そういう特定の地方公共団体に属する首都領域にするのか独立の首都領域にするのか、これもまたもう一つの問題であるというふうに考えていまして、今先生の御指摘はそれをもう片っ方を前提にした御議論だということをちょっと指摘させていただきたい、このように思います。
  104. 安倍基雄

    安倍委員長 前島秀行君。
  105. 前島秀行

    ○前島委員 時間もたっておりますので、簡単に二、三お聞きしたいと思います。  一つは、例の移転議会から過日、十万人の国会都市という移転先のイメージが出てきたわけでありますけれども、あのイメージ図等々とか、あるいは審議会等々の意見状況だとか、あるいは当委員会で候補地等々を見る中で、私も二、三参加させてもらったり、あるいは言われている関係のところの人たちと若干意見なんかを交換しますと、首都機能移転あるいは国会等移転という受けとめ方等々に相当のばらつきがあるわなということを率直に実は感ずるわけでして、一つまず最初に、この十万人の国会都市というイメージ図が審議会の方から出されたんですけれども、私が、当初中間まとめ等々から出されたイメージと、あれっというふうな感じを実は持ったわけでありまして、何か国会だけが疎開するのかなというふうな感じを受けました。  同時に、私たちは首都機能移転というのは、歴史的に見て基本的には必要なんだろうな、やはり議論しなければいかぬなと思うけれども、このイメージ図だけだと、十万人の国会都市をつくるんだ、何か国会だけがちょっとどっかへ疎開して移転するというふうなイメージで、本来の首都機能移転のあり方、歴史的な位置づけといいましょうか意味から見て、ちょっとかけ離れたようなイメージを私は受けたわけでありまして、そういう面で、あの審議会から出されてきた十万人の国会都市というイメージ図の中には、移転の範囲といいましょうか機能というものがどんなふうに具体的にイメージされているのか。将来六十万と言われればそれまでのものですけれども、何かあそこからは、本来の首都機能移転、あるいは遷都といいましょうか、という議論とはちょっと離れたようなイメージを私受けとめたんですが、その辺のところの状況を説明してもらいたいと思います。
  106. 板倉英則

    ○板倉政府委員 首都機能移転につきましては、御案内のとおり段階的に行われるという想定のもとに、第一段階として、国会を中心とする都市十万ということを調査会では想定しておりまして、これは国会を中心といたしまして、司法それから行政の中枢的な部分が国会と同時に移転する、それで総人口を十万人ということで想定いたしております。  具体的には、ある種の前提を置きまして、国会の活動と密接に関連する行政、中央省庁の機能はどんなものかというような観点から、例えば企画立案機能に相当する部分は全体が移転するというような仮定を置いて想定したものでございます。
  107. 前島秀行

    ○前島委員 いずれはという形に発展していく、こう言うのでありますけれども、その経過、過程というのには相当の時間差があるとすると、さまざまな問題というのを起こしてくるんじゃないかなという感じもしますし、そういう面で、今の議論ではないんですけれども、あの十万人国会都市のイメージを見たときに、もう少し基本的な、首都とはとか、あるいは首都の機能、首都というのはどういう条件を備えていなければいかぬのかというのが、今候補地の選定が話題になっていて、それを受けとめる自治体、地方も、温度差はありますけれども、必ずしも本来の首都機能移転のあるべきとに私は格差があるような気がするなというのを感じます。  そういう面で、やはり私は、首都とはあるいは首都機能というものはどういうものをちゃんと備えていかなければいかぬのだということを前提にしたものがもう少し前に出てこないといかぬではないだろうかな、さまざま重要な観点が置き去りにされた形で選定されると、ちょっと混乱を招くんじゃないのかなというのは一つ感じます。  特に、先ほどの議論の、地域差には温度差があることは事実ですね。そんなことを言ってはちょっと恐縮ですが、積極的な誘致のところはやはり都市開発といいましょうか、というイメージが非常に強いので、そこに陥ってしまうと、本来の首都機能移転のあり方から乖離してしまう心配を私は感じなくはない、そういう心配はないかということが一つ。  それから、本来の首都機能を実現するというために、やはり基本的に今日の日本が将来に向かって進む過程において今日どういうことを受けとめるべきなのかという、ここをぴしっと押さえていきませんと、我々中央での議論と地元の受けとめ方に乖離があって混乱してしまうという形が進んでいく。  そういう面で、私たちは、今この首都機能の議論をし、候補地を選定し、そしてそれを実現させるためには、今の我々日本を取り巻いている時代認識というものをぴしっととらえないと、本来の首都機能移転は実現しなくなってしまうのではないだろうかなと。正直、その首都機能移転の本来の任務の二次的なさまざまな派生効果だけを期待してしまうような気がするわけです。  そういう面で、私は、候補地選定のところまで来た今日に、やはりあるべき首都機能移転を実現していくためには、今日日本の置かれている状況時代認識をぴしっととらえて、それをどうしていくんだ、こういうものがないと変なところへ行ってしまうという気がします。  そういう面で、長官なりあるいは主管の官庁として、今日的日本状況というのは変革が求められているんだ、そこを何とかしないとこれからはだめなんだぞ、そういう意味で、改めて我々は首都機能移転、国会移転、そしてその候補地を探すんだというものをぴしっと据えないと、余計、最近の内外の状況を見ると変なところへ行ってしまうような気がします。  そういう面で、長官に、首都機能を具体的に考えていく中で今日の時代認識、これからの我々の日本の行くべきものの方向性をぴしっととらえる必要があるんじゃないか、今は、これからは変革を必要としているんだ、そういう認識でとらえる必要があると思うのですが、その辺の認識は長官はどうお持ちになっているのかということをぜひ伺っておきたい、こう思います。
  108. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この国会等移転に関する法律にも、今先生の御指摘になられたようなこと、時代認識と改革の必要性というものがわざわざ前文を設けてうたわれているということをまず御指摘申し上げておきたいと思います。  ただ、先ほど来私指摘させていただくように、この前文等においては、むしろ行政改革の方が後に来る、首都機能移転の方が先に来るということなものですから、行政改革等の改革のきっかけにしたい、契機にしたいというような前後関係になっておりますけれども、基本的な意味は、まさにそれらが表裏一体、両者が表裏一体になって進まれるべきものとして位置づけられている、こういうことは変わっていないというふうに思います。  先生今も御指摘のように、この首都機能移転の問題を論ずるときに、最初のころ非常にお力をいただいたと言われております司馬遼太郎さんの話でございますけれども、これは司馬遼太郎さんもいみじくも言っているように、例えば平城京が平安京になったのはやはり価値観の転換である。余りにも仏教勢力が大きくなって、物すごい大きな寺社というか、お寺が構えられるようになって、これでは日本の国はおかしくなるということで平安京に移られた。それから、平安京の律令国家というものが、今度は鎌倉の、関東の開拓地の所領を安堵してもらうというような、武士勢力によって取ってかわられるということの象徴として平安京から鎌倉への事実上の遷都が行われた、そういうようなこと。それからまた、明治維新が、近代国家というか領邦国家というか、分立国家ではとても安全保障がもたないというようなことで、統一国家の形をとらなければいけないという価値観の転換の象徴として遷都が行われた、こういうようなことがあったんだということを我々は承っているわけでございます。  しからば、今度の私どもの遷都というのは、どのような国民の間の価値観の転換を、象徴という言葉先ほど御注意もいただいたのですが、そういうものをあらわすことになるのかといえば、私は、やはり中央集権的な、あるいは中央官僚統制的なものではもう行き詰まってしまったということを転換しなければいけない、ここに私ども、今回の首都機能移転等の背景にある、国民が期待している価値観の転換というものの実態があるというふうに考えております。  したがって、行政改革の、いわば改革された後の受け皿としての首都機能移転というか、そういうふうにぜひ我々は理解をしたいし、そうでなければ、単に地震を怖がって、また地震が遠そうなところに行ったというようなことに終わってしまうのではないか、このように考えている次第でございます。
  109. 前島秀行

    ○前島委員 審議会の経過とかそこの中の議論ということは、今大臣が言われたような意味での議論は尽くされているということはよくわかるのですが、現実にこの候補地等々とかの選定とか、あるいはそれを受けとめようとする自治体だとか関係者というところは必ずしもそうなっていないというところを私は非常に心配しなくはないので、やはり進めていく窓口である役所としては、本来のあるべき首都機能の原点みたいなものはちゃんと守って、そこのところはこれからも大切にしていってもらいませんと、この重要な段階に来て心配しますので、その辺のところはぜひお願いをしたい、こういうことです。  それから、私は、もう一つ心配は、この国会移転等の議論が、現実のさまざまな政治課題との関係で、何かひとり歩きといいましょうか何というのでしょうか、勝手に浮いてしまっていないのかなというところを率直に心配する面があります。  例えば、地方分権と規制緩和との関係がどうのこうのという議論もあるし、あるいは省庁再編との関係だとか、あるいは財政構造改革路線の問題だとか、あるいは長い間言われているいわゆる国会改革の問題とか、いわゆる日本の政治が、あるいは行政が今当面緊急課題として抱えているさまざまな課題、これらの課題をどう処理していくかということと首都機能移転、国会移転というのは一致しないと、マッチしないと、これは本来の目的を達成しない、こういうふうに言わざるを得ないですね。ここのところはちゃんと守っていかないと、変なところに期待を持った首都機能移転、国会移転になってしまう。後で、これはとんでもないむだ遣いだという評価もあるだろうし、間違ったという形になるだろうと思うのです。  そういう意味で、例えば地方分権等々はよく言われているのですが、今省庁再編というのが具体的なスケジュールになっていますね。そして、具体的に橋本内閣時代に出されて、今や来年の通常国会に各省庁が設置法を出してくる、そこまで進んでいるときに、当然これは首都機能移転、国会機能移転と結びつかなければ省庁再編も意味もないだろうし、国会移転も何か宙に浮いてしまった、勝手にひとり歩きしているというふうに思わざるを得ない。  あるいは財政構造、財政の実情から見て、あれが凍結されたとはいえ、一定の経済状況の問題に一定の方向性が見えてくると、私は、改めて財政路線といいましょうか、財政構造の問題というのが税制を含めて問われてくるだろうなと。そういう財政構造、財政改革という問題と、この議論とこの政策と、国会移転首都機能移転というのは一体結びついているのか、マッチしているのかなというと、正直言って、なかなかそこを納得させるだけの、あるいは国民を説得するだけの状況にはなっていないと私は見ざるを得ないわけなので、そういう面で、首都機能、国会移転と、今抱えている日本のさまざまな政策課題との連係といいましょうか、あるいはそこの整合性というのをぴしっとしておかないと説得力がない、国会移転だけが浮いてしまっている、こういう感じがするのですが、その辺の理解といいましょうか、進め方といいましょうか、その点どういうふうにお考えなのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  110. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 もう先生、何もかも実はわかっていらっしゃって御質疑になっておられるというような感じがして聞いておりました。  これは、行革なども当初はやはり御党が我々と同じような連立与党であった当時からずっと進めてきた問題でございますので、そういう背景があろうかというふうに思うわけですが、ただ、行革について言いますと、私どもも当初は中央省庁の再編というものをこの首都機能移転とほぼ同着、同時実現というようなスケジュールで頭に描いていた時期も率直に言ってございます。そういう文書も、我が党の、我が党というか自由民主党の文書の中にはそういうものも残っているということも、これは否定するわけにはまいりません。  ただ、その後、当時の橋本総理が中央省庁の再編というものに非常に力を入れまして、これを前倒しされるというようなことの中で、先ほど来私が指摘するような順番の入り繰りというものが生じたということは事実でございます。  しかし、やはり行政改革が成った後、これの受け皿としての首都機能移転というものは十分理屈の上でも成り立つものでありますし、また、行政改革が成ったということをより形にあらわして国民に知らしめるためにも、首都機能移転というものがその実を上げていくことにも資するというような作用も期待できるわけでございますので、決して、これらが相矛盾して、どちらかがどちらかとの関係で浮き上がってしまっているということにはなっていないのではないか、このように考えております。  それから、財政改革との関係でございますが、この点は、先ほど中島委員との御質疑でも、私、お答え申し上げましたように、現今の財政状況というものを考えると、なかなか、この首都機能移転というものをその中でどう位置づけるかというのは、そう容易なことではないということは率直に認めざるを得ないと思います。  しかし、私どもは、現在のような財政状況をいつまでも続けていくというようなことは、これはもう考えられないことでございまして、我々が全力を挙げて経済の立て直しをする、その経済の立て直しの中で再び日本の財政を再建する、こういうことは、私ども首都機能移転の問題を考えるまでもなくやらなければならないことでありまして、そうしたことを実現する中で、首都機能移転もまた実現するように持っていかなければならない、このように考えているわけでございます。
  111. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひ、政治課題、政策課題と、ばらばらと言っては語弊がありますけれども、うまくかみ合っていきませんと意味もないし、説得力もないので、その辺はスピード的なものと中身的なもの等々を、十分そこに説得力ある方向で整理統一して、お願いをしたいということが一つ。  それから、もう一つ最後に聞きたいのは、国民的な理解、合意という点なんですね。先ほど言った政治改革といいましょうか行政の課題との連係と同時に、国民の理解、合意とこの移転というもの、これもまたばらばらといいましょうか、一致しませんと、いろいろな問題を起こす。  例えば、私は、国民全体の理解ということと、それから、もし首都機能移転、国会が移転するとなると、出ていく東京都の皆さんとの合意といいましょうか、理解というものも必要だろうし、また、新たに建設されるであろう地域の、移るであろう地域の皆さんの合意、理解という、そこにずれがありますと、私は非常に、結果的には、内容的にも問題を起こしてしまう。  率直に言って、本来の首都機能の目的、意義と地元の皆さんの期待とが合わないと、これはもう正直言って非常にまずい町づくりになるだろうし、問題も残してしまう。ましてや、これから地域的なものだけが先行してしまいますと、そこに問題というか弊害がかなり起こりやせぬかなということも十分配慮しなくてはいかぬわけなので、そういう面で、国民全体の理解、合意、それから移転した場合は、出ていくであろう東京の皆さんの合意、それから行き先の皆さんの合意、理解があって、この三つが調わないと、私は成功しないだろうなと。逆に、ここがちゃんとしていないと、移転させたことによって混乱だけが残ってしまって、問題だけが残るんではないだろうかなということを正直心配します。  いよいよ選定の段階に来ましたから、そういう面でそこを大事にしてほしいということと、この三つの合意を得るためにどういうふうなことをお考えなのか聞いて、質問を終わりたいと思います。
  112. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 まず、先生お話をいろいろお聞きしながら思いますのに、私どもは、首都機能移転ということの国民との論議というか、啓蒙という言葉はおこがましくて使ってならないと思いますけれども、そういうPRの面におきまして、行政改革との関係のPRというのにやや力が不足であったかなという思いが率直に言っていたします。特に私今まで行革をやってきましたので、その面において、これからもっと行革との関連といったようなものについても心をいたしていきたい、このように考えます。  それから第二に、東京の問題でございますけれども、これは東京に遷都と言っていいのかどうか、まあ事実上遷都してしまったのですが、京都の扱いというのは、これは明治政府が、あるいは明治天皇が大変気を使われた点でございます。先生もこれは御案内のとおりでございますけれども、明治天皇はやはりかなり長期にわたって京都をお訪ねになっていって御滞在もなさるし、それから、自分のお葬式というか大喪の礼がもしあるような場合にはぜひ京都でやれとか、大正天皇の即位の礼も京都でやれとかというようなことをわざわざお指図なさっているというようなことで、京都市民の理解を得るためにもう大変な御苦労になっているというのが、我々歴史として知らされているところでございます。  したがって、東京都民の理解ということについては、格別のいろいろな配慮が必要だということは同様な問題だろう、このように思っております。  それから、候補地との関係でございますが、これは初めから候補地については、トップダウンでここが適地だというようなことではなくて、その地域がむしろ首都として手を挙げてくれるというか、そういうようなところを、理解のあるところを候補地としていこうというような手続におきまして、まずその点の理解を確保しようという手続をとっておりまして、この点については十分な配慮がこれまでも行われてきたし、今後もそのように配慮していかなければならない。  特に、先ほども申したように、これを地方団体の領域として、最後までそういう立場を維持していくかどうかということも問題でございまして、それらについても今後、候補地の皆さんとは、もしどういうことになろうとも、理解を求めていかなければならない点だ、このように考えておることを申し上げさせていただきます。
  113. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  114. 安倍基雄

    安倍委員長 これにて質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十九分散会