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伊藤(雅)
政府委員 まず最初のお尋ねでございますが、社会防衛中心の
伝染病予防法は今から考えるといつの時点で転換すべきであったかということでございます。
明治三十年からずっと終戦までの間には、恐らく
伝染病学などにつきまして特段の
進歩もございませんでしたし、
人権に対する
考え方というものを考えれば、戦後に持ち越されたというのはそのとおりかなという感じがいたします。
そこで、終戦のときはどうかというお尋ねでございますが、ちょうど
伝染病予防法に
規定します
法定伝染病というのは、
昭和二十年から二十一年、二十二年、二十三年、コレラ、赤痢を初めといたしまして急性
伝染病の大
流行があった
状況でございまして、そういうことから考えれば、その時点でというのはなかなか難しかったのかなと思います。
そういう見直しの時期というのは、例えば抗生物質の
進歩でございますとか、または、一九六六年に国連で国際
人権規約というものを採択しているわけでございますが、そういうときに合わせて、例えば五十四年に
我が国も批准しておりますが、そういうことがどうなのかとか、それからいろいろ――
昭和三十四年からポリオの大
流行でございますとか、その後ラッサ熱など、当時国際
伝染病と呼んでおりましたが、そういうことも非常に問題になりました。
そういうことからいいますと、
感染症対策の見直しというのは単一の要因だけで判断すべきではなくて、いろいろ
国民の
人権に対する
意識の問題とか
医学医療の
進歩などを総合的に判断するということから考えますと、現時点におきましては、特定のどの時期に
改正すべきであったかというのはなかなか正確にお答えするのは非常に難しいのではないかということでお答えをさせていただきまして、何とぞ御容赦をいただきたいと思います。
その次の、エイズ
予防法
制定当時は、エイズは今新
感染症法で言う何類に該当するかというお尋ねでございます。
エイズにつきましては、エイズ
予防法
制定当時におきましても、病態なりいろいろなものから判断いたしまして一類、二類には該当いたしませんし、日常生活で感染することも考えにくいことから、結論からいいますと、強いて分類すれば四類に該当するもの、こういうことにつきまして、当時
厚生省の広報誌の「厚生」におきます
厚生大臣談話などにおきまして、その旨、
厚生省の
考え方をお示ししているところでございます。
それから、エイズ
予防法廃止の理由となった問題点は何かということでございます。
この点につきましては、今回エイズ
予防法全般の見直しの中で、エイズ
予防法に
規定されております感染者の遵守事項、六条でございますとか、
医師の通報、それから
都道府県知事の健康
診断の勧告等、これら
予防措置は要らなくなったというのが基本的な
考え方でございまして、そのような
考え方は、小
委員会におきます討論の中でも、多種多様な
感染症事例のすべてを想定いたしまして、具体的に発動、執行しがたいような強力な
措置を網羅的に
規定することは法
体系としては整っていても
機能的ではない、
国民の理解を求めて
対策を進めていくということ、それから
人権に対する配慮ということを
感染症対策と両立させるという、そのような
考え方に基づきまして今回エイズ
予防法を廃止するということになったと理解をしているところでございます。
それから、最後のお尋ねの、なぜエイズ
予防法が当時
法律の中に
医療が中心にならなかったかということでございます。
当時、エイズ
予防法を策定した時点におきましては、現在のように有効な
確立された
治療法がなかったというのが一番大きな
原因でございます。AZTが
我が国におきまして実際に使えるようになりましたのは、エイズ
予防法を
国会に提案した後でございまして、
検討の過程におきましては、一有効な
確立された
治療法がないということ、また、対症療法の効果も非常に限定的で、発症すれば急速に進行して悪くなる、そういうことから
医療の
規定を入れなかったものでございます。
また、なぜ通報の義務の
規定が入れられたかということでございますが、松本におきます外国人の女性の事例でございますとか、それから六十二年一月の初めての異性間感染の事例でございますとか、いろいろ当時
状況がございまして、当時といたしましては、意図的にといいますか、故意の感染行為をする者に対して具体的にどう
行政庁が
対応するのかということがいろいろ議論になったわけでございまして、エイズ
予防法におきましてはあくまでも例外的な
措置として
規定したわけでございますが、実際に発動された事例はないわけでございます。
したがいまして、このような
規定を今回廃止いたしまして、新しい
人権を尊重するということを基本にいたしましたエイズ
対策の
考え方を新しい
感染症新法の中で総合的に
対応していくということにさせていただいたわけでございます。