運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-09-16 第143回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十六日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 木村 義雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君    理事 田中眞紀子君 理事 長勢 甚遠君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 久保 哲司君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       大村 秀章君    桜井 郁三君       砂田 圭佑君    田村 憲久君       戸井田 徹君    能勢 和子君       桧田  仁君    船田  元君       堀之内久男君    松本  純君       宮路 和明君     山下 徳夫君       吉川 貴盛君    家西  悟君       石毛 鍈子君    島津 尚純君       城島 正光君    土肥 隆一君       中桐 伸五君    青山 二三君       旭道山和泰君    武山百合子君       藤井 裕久君    吉田 幸弘君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君    河村たかし君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 宮下 創平君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君  委員外出席者         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君     ――――――――――――― 委員の異動 九月十六日  辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     吉川 貴盛君   五島 正規君     中桐 伸五君   城島 正光君     島津 尚純君 同日  辞任         補欠選任   吉川 貴盛君     砂田 圭佑君   島津 尚純君     城島 正光君   中桐 伸五君     五島 正規君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  感染症予防及び感染症患者に対する医療に  関する法律案(第百四十二回国会内閣提出第八  四号、参議院送付)  検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律  案(第百四十二回国会内閣提出第八五号、参議  院送付)      ――――◇―――――
  2. 木村義雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出参議院送付感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案につきましては、前国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村義雄

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――  感染症予防及び感染症患者に対する医療に   関する法律案  検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律   案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  4. 木村義雄

    木村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子さん。
  5. 能勢和子

    能勢委員 皆さん、おはようございます。私は、自由民主党の能勢和子でございます。  さきの国会におきまして提出され、継続審議となっておりました感染症関連法案が、本日再び審議されることになりました。私も、一日も早い成立を願うものでございます。  私は、実は看護学生のときに、三年生のときでありました昭和三十五年、伝染病看護学の実習で法定伝染病に罹患した患者さんの看護体験をいたしました。当時は、隔離、そして治療が行われるという状況でありました。時は夏、日本脳炎、流行性脳脊髄膜炎、赤痢、疑似コレラ患者さんの苦しみに接し、胸の張り裂けそうな思いをした記憶が今よみがえってまいるわけであります。  また、結核全盛期でありました。私たち同級生も、高校卒業後、大学へと東京へ参った同級生たち結核に罹患し、地元に帰り療養ということもたくさんあったわけでありますが、その全盛期のときの治療は、一番が隔離、そして手術療法、ヒドラジド、パス、ストマイ等化学療法、本当に一般病院でも病棟の三分の一が結核で占めるというような状況でありました。もちろん、全国の結核療養所は満床という状況であったわけであります。同級生皆さんも、青春を病床で過ごした方もたくさんあったわけであります。そのような状況で、私もまさに結核とも闘ってきたという記憶が鮮明によみがえってまいります。  その後卒業いたしまして小児病棟の勤務になったわけでありますが、そこでは小児結核、特に骨結核といいますか、カリエスの子供たちがギブスをはめられて、ずっとベッドに寝ているというような状況があったわけであります。そして、卒業後勤務しました場所で、昭和三十四年にいわゆる指定伝染病となりました急性灰白髄炎、ポリオの子供たち入院をたくさん見たわけであります。  まさに感染症恐怖苦しみを私も体で経験し、心からその根絶を願ったものでありますが、今まさに人類ひとしくそのことを願うという状況であるわけであります。  その後三十年たった今日、医学医療の目覚ましい進歩国民保健に対する高い関心とその著しい向上によりまして、多くの感染症は克服されました。  しかし、一方、新たな感染症の出現、いわゆる新興感染症、撲滅したかと思われた結核等感染症再興、いわゆる再興感染症、また国際化の進展に伴います感染症は、新たな形で今なお人類脅威を与えているところであります。WHOが一九九六年に、我々は今や地球規模感染症による危機に瀕している、もはやどの国も安全ではないと警告を発したところであります。  このような状況の中にあって、このたび提出されている感染症予防及び医療法案は、総合的な感染症予防対策推進を図るために整備された法案だと認識しております。殊に、感染症拡大に備えた事前対応型行政構築、さらに類型によって人への配慮と危機管理対策とのバランスがおおむね納得のできる法案になっていると評価しているところであります。  百年目の改正となります新法案について、その改正背景、そしてこの法案趣旨について大臣はどうお考えになっていらっしゃるか、改めて御所見をお伺いしたいと思います。
  6. 宮下創平

    宮下国務大臣 お答え申し上げます。  長いこと施行されておりました伝染病予防法等の貴重な経験をもとに新法ができるわけでございまして、まさに、本当に能勢委員経験を通じて感慨深いものがあろうかと思います。  そこで、今申されたように、今回の新法改正背景とか趣旨についてでございますが、一九九六年にWHOが、我々は今や地球規模感染症による危機に瀕している^もはやどの国も安全ではないという基本的な認識のもとに警告を発しておることは、委員の御指摘のとおりでございまして、新興感染症あるいは再興感染症というのが人類に対して依然として脅威を与えておる状況にあります。  一方、医学とか医療進歩がございます。また、国民の健康、衛生意識向上等もあります。また、人権の尊重への要請もございます。また、国際交流活発化等感染症を取り巻く状況変化は、伝染病予防法制定されました百年前に比べて大きく変化をしていることも事実でございます。  こうした状況を踏まえまして、これまでの感染症対策を抜本的に見直すことにいたしました。そして、総合的な感染症予防対策推進しようという枠組みをつくり、これに伴う医療充実を図るための諸規定等も設けさせていただいておるわけで、国民が安心できる感染症対策構築するというのが本来のねらいでございまして、本法案を提出させていただいた次第でございます。  どうか、そんなことで深い御理解を賜りながら、ひとつ一刻も早い成立をお願い申し上げたいと思っております。
  7. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  本当に、百年たった今、これを少しでもおくらすことはそれ以上のおくれを出すわけでありますので、どうぞ早期の実現をお願いいたしたいと思います。  続きまして、結核でありますけれども、撲滅したかと思っていた結核が、集団感染などが最近大変伝えられております。結核集団感染では、従来では考えにくかった老人ホームや刑務所で相次いで発症されているわけでありますが、その再興感染症としての結核の問題が顕在化してきております。結核予防法と今回の新法制定ではどのようになるのでありましょうか。よろしくお願いいたします。
  8. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のように、結核は今や再び公衆衛生上の大きなテーマになってきております。新登録患者死亡者数を見ましても、まだ先進各国に比べまして非常に高い状態にある。  そういう状況を踏まえまして、今回新感染症二法の制定に当たりましては、結核につきましては従来の結核予防法体系を維持し、そしてこの結核予防法という独立の体系により今後とも結核対策推進していくという方針にしているわけでございます。  この点につきましては、昨年十二月の公衆衛生審議会からの意見具申におきましても、同趣旨意見をいただいているところでございます。
  9. 能勢和子

    能勢委員 どうもありがとうございました。  そのように、結核も本当に油断ならないということを私たちは念頭に置いておかなければいけないというふうに思っております。  続きまして、新法制定に伴いまして性病予防法は廃止されるわけでありますが、性病感染症対策がおろそかになるのではないかという心配が一方にあるわけであります。殊に、第八条の婚姻時の検査及び診断書交換、それから第九条の妊婦受診義務、これは多分母子保健事業等の中に包含されるかなと思うのですけれども、こういうところはこの新しい法案の中で対応できるのかどうか、気になるところでありますけれども、いかがでしょうか。
  10. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 性病予防法につきましては、性感染症に関する各規定必要性等につきまして、今回性感染症に対する意識向上ですとか、医学医療進歩等を勘案いたしまして、公衆衛生審議会におきまして審議された結果、感染症新法への統合が適当であるというふうにされたところでございます。  したがいまして、今回の性病予防法の廃止に伴いまして性病対策がおろそかになるのではないかという御懸念でございますが、その点につきましては、新法に基づきまして特定感染症予防指針というものを策定いたしまして、その方針に基づきまして、総合的に原因究明発生蔓延防止対策医療提供研究開発推進などを進めていきたいと考えております。  そこで、御指摘婚姻時の検査及び診断書交換でございますとか妊婦受診義務などにつきましては、特にこれを法律上義務づけるという考え方ではなくて、国民に対しまして正しい知識の普及啓蒙を促進いたしまして、そして自発的に受診をしていただくという考え方でございますとか、さらに妊婦さんの性病予防につきましては、母子保健事業との連携を図りまして、総合的な母子保健事業の中で対応していくという考え方でやっていきたいと思っております。
  11. 能勢和子

    能勢委員 そのとおりだと思います。  私どもも、法律婚姻時の検査とか診断書交換というのを、一時大変そういうことを条件に出したことがあったわけでありますけれども、それは、各自のこうしたレベルも上がってまいりまして、今日各自の責任においてされればいいと思いますし、そして妊婦受診義務母子保健事業の中でどうぞきちっとやっていただきたい。これは早期にきちっと予防すれば子供に感染しなくて済むわけでありますので、よろしくお願いしたいと思っております。  続きまして、新法感染症発生拡大に備えた事前対応型行政構築という方向が示されまして、感染症発生動向調査体制整備確立ということが強く打ち出されました。国、都道府県における総合的な取り組みの推進が言われているところであります。感染症発生動向について、新法におきましては現場医師あるいは保健所でどのような形で連携、把握するようになっているのであろうかと思うわけでありますが、よろしくお願いいたします。
  12. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法におきましては、事前対応型の行政をするという観点から、常時感染症発生動向を監視いたしまして、そして迅速な対応をするというのが基本的な考え方でございます。  具体的に申し上げますと、一類、二類感染症患者さん、それから疑似感染症の無症状病原体保有者などにつきまして、お医者さんが診断したときには都道府県知事に届けていただく。それから、四類感染症につきましても、全部ではございませんが、必要なものについては医療機関から御報告をいただくという形になりまして、それが全部厚生省の方に集まりまして、そして国立感染症研究所専門家を初め、これを総合的に解析をいたしまして、そしてその流行状況につきまして、定点と言いますが、各現場医療機関なり医療関係者、さらに都道府県など行政関係者にできるだけ迅速にその流行状況についての情報を還元していくという形をとりまして、行政上必要な施策、またその現場のお医者さんにつきましては流行状況を把握して適切な診断のお役に立たせていただくという考え方で、新法施行段階におきましては現行発生動向調査を点検いたしまして、新法趣旨に沿うような発生動向調査体系を再構築していきたいと考えているところでございます。
  13. 能勢和子

    能勢委員 今回の法案では、新法におきましては保健所が大変重要な役割を担うことになってまいります。今も出ました発生動向についても保健所は大変かかわりますし、すべての法案の中で保健所が大変重要な役割を果たすようになっていますね。保健所機能強化についてはどのように考えているのでありましょうか。
  14. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法にあわせまして保健所機能強化しなくてはいけないと考えているところでございます。  具体的に申し上げますと、新法におきましては、感染症対策広域性でございますとか専門性等観点から、従来、現行伝染病予防法では市町村長の事務とされておりました、現行法では伝染病と言っておりますが、感染症患者入院措置等対応につきまして都道府県知事に移管することにしております。  したがいまして、保健所がさらに従来にも増して感染症対策の中心になるわけでございますが、保健所には医師、薬剤師、保健婦看護婦さん等専門職種が配置されておりまして、この要請にこたえるよう機能強化に努めていきたいと考えているところでございます。  具体的には、そういう新しい技術に対応するための各職種の能力の向上でございますとか、施設設備等充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  15. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  少し話が変わりますけれども、今回の法案におきまして、海外から持ち込まれる可能性のあります危険な動物等も非常に感染源になるわけでありますけれども、どのような対応をなされるか。  例えば主要国ペット検疫と比較してみて思うわけですが、犬の場合は狂犬病予防接種あるいは健康証明書を持っておらなければ輸入できないということは大体どこも同じでありますが、鳥について、日本はフリーとか、中国は輸入禁止になっておりますけれども小鳥オウム病とか、また、小鳥ではありませんが、ミドリガメなんかはサルモネラで一時にぎわせたことがあったわけでありますが、ペット類動物輸入についてどのような対応になっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  16. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 動物由来感染症の中で、人への蔓延防止対策を講ずるに当たりまして、動物対策を講じることが極めて重要かつ有効であるというふうに考えられます感染症といたしましては、エボラ出血熱、マールブルク病狂犬病などの疾病が挙げられるわけでございます。これらの感染症海外から侵入することを防ぎますために、今回、感染症予防及び感染症医療に関する法律案によりまして、新たに輸入の際に猿の検疫というものを実施することとされたところでございます。  また、検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案によりまして、狂犬病我が国への侵入を防止する目的で従来輸入検疫は犬のみに実施をしていたわけでございますが、WHOに報告されております世界の狂犬病発生状況というものを踏まえまして、輸入検疫対象動物を犬のほかに猫、キツネ、アライグマ等に広げることといたしているところでございます。
  17. 能勢和子

    能勢委員 今、輸入されます動物によって思いがけないような感染症になるわけでありますが、これも十分な検疫体制を整えておかなければいけないと思っております。  そして、私は、参考人質問のときにも今回の法案について質問したわけでありますけれども新法において突発的な感染症発生についてどう対応できるか、これを心配するところであります。  今回の法案では人権ということも大変言われてきたわけですが、一方において、私は、突発的な感染症というのは予想のつかないところがあるわけですけれども、今の新しい法案では危機管理の視点でどのような対応ができるか、お伺いしたいと思います。
  18. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 突発的な感染症発生に対しまして危機管理観点から適切な対応を図っていくということは、国民の健康を守っていく上で極めて重要な問題だというふうに認識しているところでございます。  そのため、今回の法案におきましては、あらかじめ国が基本指針都道府県予防計画を策定するなど、日ごろから対策、準備を進めていく事前対応型の感染症対策確立を目指すということが基本的な考え方でございます。  そこで、具体的には、突発的な感染症発生ということでございますが、いろいろ審議会におきましてもそのことが議論されたわけでございます。  どういう状況かということを考えますと、まず、医師から今まで経験したことのない原因不明の病気について保健所、県に届け出が出されるということが想定されるわけでございます。その場合に、届け出を受理しました都道府県はいろいろ原因調査とか感染源調査などをやるわけでございますが、その段階で、都道府県知事はこの十五条でどういう調査をしたらいいかということにつきまして厚生大臣要請ができることになっております。  一番想定されるケースとしましては、国立感染症研究所ですとか国立国際医療センター専門家などがチームをつくって現場に行きまして、原因究明なり予防対策検討というものをやることになろうかと思います。  さらに、そういう調査が一応終わって必要なデータが積み重なりました段階で、厚生大臣公衆衛生審議会意見を聞いた上で都道府県知事に具体的な技術的、専門的なことを助言を行いまして、その助言を受けて都道府県知事保健所長に必要な措置を行わせる、このような手順で進めるということになろうかと思います。
  19. 能勢和子

    能勢委員 その手順はわかりますけれども、迅速な対応をしないと間に合わなくなってくると思いますね。特にこの間のO157のときもそうでありましたけれども、右往左往している間に大変手おくれになってしまうことがありますので、ぜひこの新法におきましてはスムーズな流れをつくっていただきたいというふうに思います。  最後になりますけれども新法では四類感染症に分類されていますインフルエンザに関してお尋ねいたしたいと思います。  四類感染症に関しますところの主な対応措置として、感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供というふうになっておりますが、これはもちろん大切なものだと思っておりますが、私は、インフルエンザについては国としても予防に力を入れていただきたいと思うわけであります。  いわゆる風邪、感冒であれば、外から帰ってうがいしましょう、手洗いしましょうというような生活指導をするわけですけれどもインフルエンザ風邪にもが生えたようなものではないわけでありまして、これはきちっと二つに区分する必要があると思います。まさにインフルエンザ予防ワクチン予防できる唯一のものだと思っています。  インフルエンザ恐怖は、昨年の我が国流行を見ても御案内のとおりでございます。殊に高齢者、お年寄りは肺炎を併発しますし、子供は脳炎、脳症を起こすなど危険であります。特に、高齢者及び慢性呼吸器疾患とか腎不全とか糖尿病患者さん、いわゆるハイリスクのグループは、インフルエンザにかかりますと大変生命関係する状況になってくるわけですから、特に予防接種が大切だと思います。同時に、そうした方のお世話をします方たちも前もって予防接種が必要だと思いますし、医療従事者も同じく予防接種が大事だと思っています。  厚生省においてもインフルエンザワクチンについて取り組んでいただいているということを聞いておりますけれども、果たしてインフルエンザワクチン確保見通しがきちっとついているのであろうかということが一点。  と申しますのは、現在は、接種率の低下といいますか、任意接種になっています関係で経費も自己負担であります。それからまた、副作用等についても一方的な情報が流れていく中で、接種が普及しておりません実情から見まして、メーカーも生産規模を縮小しているとも聞いています。それにあわせて、去年流行しましたからことしは流行しないあるいは形が変わってくるかもしれない。ワクチンも何年も保存できるわけじゃありません、一年ごとにだめになっていくわけでありますので、そのあたりもあわせて、国としてワクチン確保見通しをどのように持っていらっしゃるかが一点。  あわせて、インフルエンザに感染しまして肺炎を起こしますと、その方が濃厚治療を受けた場合、医療費は大変かかるわけであります。それに比べて接種の費用の方がはるかに安くいくと思うわけでありますけれども、これはぜひ健康保険適用にならないだろうか。健康保険適用になりますと、前もってそれを使うことによって、インフルエンザにかかった後の医療費よりも随分安くいくというふうな見通しを持つわけでありますけれども、これが二点目。この二つについてお尋ねしたいと思います。
  20. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 インフルエンザの問題につきましては、新しいタイプが香港で発見されたということによりまして、再び大きなテーマになってきております。  そこで、お尋ねのインフルエンザワクチン確保見通しでございますが、御案内のようにインフルエンザ予防接種につきましては、従来、学童に対して集団接種を行っていたわけでございますが、この集団接種のあり方につきまして、いろいろ学問的にも、またいろいろ市民団体からの御指摘もございまして、平成六年の予防接種法改正によりまして対象疾患から外したという経緯がございます。  したがいまして、ワクチンを製造するためには有精卵という卵が要るわけでございますが、その農家が全部生産をやめまして、インフルエンザワクチンを新しく確保する上でそういう問題をどうクリアするかということが実は大きなテーマになっております。  したがいまして、新型インフルエンザ香港で報告されましたときに、私どもといたしましても、必要なワクチンの量を確保するためにいろいろ今検討しておりまして、従来の有精卵による方法で従来約二百万人分以上用意されていたわけでございますが、平成九年では六十万人分という形になっておりますので、これを少なくとも百万人とか百五十万人に目標を上げるべく今検討をしているところでございます。  また、健康保険適用の問題でございますが、インフルエンザにつきましては、従来は学童が中心でございましたが、最近いろいろな研究成果によりまして、今御指摘のように、高齢者でございますとか糖尿病患者さんでございますとか、そういう人たち接種すれば集団としての効果がなくても個人にとって症状を軽減する効果があるという観点から、いろいろ予防的に給付をすることを検討したらどうかという御意見があるのも承知しております。  したがいまして、私どもといたしましては、平成六年の予防接種法改正の附則におきまして五年後にまた見直すという規定があるわけでございまして、その見直し規定を受けまして、現在、公衆衛生審議会伝染病予防部会の中で予防接種対策全般にわたって検討しているところでございます。その検討の中で、御指摘の点もいろいろな観点から検討させていただきまして、結論を得たいというふうに考えているところでございます。
  21. 能勢和子

    能勢委員 ありがとうございました。  昨年はやりましたインフルエンザは、特に老人ホーム、施設で随分流行いたしました。病院におきましても、もともとの病気プラスインフルエンザで病院自体が大変になったということは、昨年の報道のとおりであります。医療現場では、治療する側もマスクをし、マスクだけではどうにもなりませんで高熱になる、患者さんもなる、両方が、病気を持つ者同士が治療に携わるというような現状がたくさん報道されていたわけであります。ぜひとも、このインフルエンザは、こんな文明国におきましてはワクチンがあるわけでありますので、その普及に努めることによって苦しむ患者さんができるだけ少なくなるような対策にこれからも取り組んでまいってほしいというふうに願っております。  きょうの最終審議の結果、この新しい感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案がぜひ成立して、国民の皆様に役立つようになることを願いまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  22. 木村義雄

    木村委員長 家西悟君。  家西君におかれましては、着席のまま質疑をどうぞ。
  23. 家西悟

    ○家西委員 それでは、質問させていただきます。  私は、本当に今度の法案というものに対してはすごく、自分自身の問題でもありますので、この運用というものはどうしても慎重に慎重を期していただきたいし、そう思って自分も質問をしてまいりました。それでは質問に移らせていただきますけれども、ぜひともその辺をお酌み取りの上で答弁していただければ幸いですので、よろしくお願いいたします。  橋本総理大臣は、エイズ予防法の制定について、私の本会議質問に対し、「今振り返れば、私たちが後悔すること、反省すべきこと、その上でおわびを申し上げることはあったと思います。」と答弁されておられましたが、反省の具体的な内容、つまりどの時点でどのようにすべきであったというふうに考えておられたのかということについてお伺いしたい。そして、今の厚生大臣としてどのようにお考えなのかということもあわせてお伺いできればと思いますので、よろしくお願いします。
  24. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のように、去る五月二十一日の衆議院本会議で、議員の質問に答える形で橋本総理がこの問題についての真情を吐露された、その記録を私も拝見いたしましたが、私の気持ちも全く同感でございまして、患者・感染者の方々が大変今日まで御苦労されてきたなということを深く感じたところでございます。  そういう意味で、改めて申し上げるまでもございませんが、総理の答弁にありますように、今度の新法によりまして、国の責務や県の責務あるいは人権の保護というような視点でいろいろのメカニズム、制度が構築されておるというように理解をしております。  特に、患者・感染者の方々に対しては偏見、差別の問題等が指摘されておりまして、これは大変重要なことで、今回の新法におきましても、人権を擁護していくという点が非常に随所に要件として記入されております。  そして同時に一医療確保をきちっとやるということも極めて重要なことでありますから、偏見、差別につきましては、その解消に今後とも政府も国民もあとう限り努力する必要性がございますので、その第一歩としていろいろ正しい知識の普及啓発に努めてまいりたい、このように考えております。
  25. 家西悟

    ○家西委員 ありがとうございます。ぜひともそのような方針で運用されることを期待したいと思います。  私たちの置かれた状況というものは、本当に筆舌に尽くしがたいというか、言葉ではあらわせないぐらいの思いをされている人たち、そして私自身も親戚から言われたこともあります。親戚づき合いもなくなっています、正直言って。そういうような状況に置かれたということをぜひとも反映させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  では、次の質問に移ります。  参議院の修正において、第九条で感染症患者等の人権の配慮に関する事項を定めるべきことが法案化されましたが、この事項には感染症患者に対する差別、偏見を実効的に排除するための具体的措置が盛り込まれると考えてよろしいのでしょうか。よいとすれば、政府は具体的にどのような施策を検討しておられるのか、お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
  26. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のとおり、参議院の修正におきまして、法案第九条に基づいて国が定める基本指針の一つの柱としまして、感染症患者等の人権の配慮に関する事項を定めるとされたところでございます。  感染症患者等の人権に配慮する規定につきましては、法案におきまして、二条の「基本理念」、三条の「国及び地方公共団体の責務」及び四条の「国民の責務」に規定されているところでございますが、これらの規定をさらに具体化し、感染症患者に対する差別、偏見を実効的に排除するための内容を基本指針に定めるというふうに理解をしております。  具体的な施策といたしましては、あらゆる機会を通じての必要な情報提供、正しい知識の啓発普及等が考えられますが、今後さらに公衆衛生審議会の御意見を聞きながら、より具体的、実効的な施策となるよう検討してまいりたいと考えております。
  27. 家西悟

    ○家西委員 次の質問ですけれども、本法における「良質かつ適切な医療」とは、医療法第一条の四に言う医師の責務と同一の理念であると考えてよろしいのでしょうか。
  28. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 医療法の第一条の四に規定します「良質かつ適切な医療」は、医師医療の担い手の責務を規定したものと理解しております。一方、本法の「良質かつ適切な医療」は、国及び地方公共団体の責務として位置づけられております。  したがいまして、医療法の当該責務規定により医師が行うことが期待される行為と、本法の責務規定により国及び地方公共団体が行うべき行為はおのずから異なるものと考えられますが、最終的な目的が患者に対する良質かつ適切な医療提供にあるという点では、両法の規定は同一であるというふうに考えております。
  29. 家西悟

    ○家西委員 では、本法と医療法における良質かつ適切な医療に努めなければならないという表現は、訓示規定なのかあるいは国の義務なのか、お答えいただければと思います。
  30. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 医療法におきます「良質かつ適切な医療」は、医師医療の担い手の責務であり、医療の担い手は良質かつ適切な医療を行うよう努力をする義務があるということでございます。  本法におきます「良質かつ適切な医療」は、先ほども申し上げましたが、国及び地方公共団体の責務であり、国及び地方公共団体は感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努力をする義務があるということでございます。  いずれの場合も、規定に反しても罰則等の制裁措置を伴わないような規定であるという意味におきましては訓示規定であります。しかし、厚生省といたしましては、感染症患者等に対する医療の分野においてこれらの規定の実効が上がるよう、医師等に対しまして理解と協力を求めるとともに、感染症指定医療機関確保など、各般の施策を講じてまいりたいと考えているところでございます。
  31. 家西悟

    ○家西委員 医療法と感染症予防医療法は、一般法と特別法の関係にあると掌握されておられますか。
  32. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 医療法は、医療一般に共通する医療施設に関する事項、医療の担い手の責務などを定めており、感染症新法のうちこれらの医療一般に共通する部分に関しましては、医療法と一般法、特別法の関係にあるというふうに理解しております。  ただし、感染症新法は、必ずしも医療のみを内容とするものではなく、基本指針や各種の対物措置等といった医療法の範囲外の規定も数多くあり、感染症新法全体が医療法の特別法の関係にあるとは言いがたい部分もあるというのも事実でございます。
  33. 家西悟

    ○家西委員 今日までのHIV診療などにおいて多くの医療忌避等が行われてきたわけですけれども、良質かつ適切な医療提供を厳守されてこなかったことの危惧を考えますと、医療法にあるから本法に必要でないというのであれば、過去においての総括をし、今後の対応を講ずるべきと考えますが、いかがでしょうか。
  34. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今までエイズの患者さんの診療におきまして、偏見等から医療忌避の事実があったことは大変残念なことだと思います。  このような事態が起きないように平成四年に医療法を改正したところでございまして、新法案に改めて規定する必要はないと考えておりますが、今御指摘趣旨は大変重要なことと考えているところでございます。  したがいまして、感染症新法におきましては、その趣旨に沿いまして、感染症に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行いまして、正しい知識の普及に努めることとするほか、十分な診療体制のもとに良質かつ適切な医療提供できるよう基盤整備を進めていきたいと考えているところでございます。
  35. 家西悟

    ○家西委員 では、国及び地方公共団体における良質かつ適切な医療提供義務は、当然医師並びに医療機関も拘束するものと考えていますが、それで間違いありませんか。
  36. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 お答えさせていただきます。  ちょっと長くなりますが、まず、国及び地方公共団体におきます良質かつ適切な医療提供規定は、国及び地方公共団体につきまして、感染症患者さんが良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努力する義務を課しているものでございまして、直接に一般の医師医療機関を拘束するものではないという理解をしております。  しかしながら、医師につきましては、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力する責務を医師の責務としてこの法律規定しておりまして、また、医療法におきまして、医師その他の医療の担い手は広く一般に良質かつ適切な医療提供するよう努める旨の規定があることから、医師等は、これらの規定に基づき、良質かつ適切な医療提供するように努める旨の責務を負うことになるというふうに考えております。  厚生省といたしましても、今後、新法の施行に向けまして、医師等に対しまして感染症患者に対する良質かつ適切な医療提供につきまして理解と協力を求めてまいりたいと考えております。
  37. 家西悟

    ○家西委員 では、HIV診療についてですけれども、HIV感染者に対する医療や施策は、エイズ予防法の廃止によってもいささかも後退することなく、むしろ今まで以上に積極的に措置を講じるということは約束していただけますでしょうか、その辺について。
  38. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そのことはお約束をいたします。  エイズにつきましては、議員も御案内のように、平成六年度からエイズストップ作戦、七年作戦に基づきまして、医療体制の充実、相談・指導体制及び検査体制の充実などの施策を行うほか、平成八年のHIV訴訟和解に基づく恒久対策を進めているところでございます。  特に、最新の医療を全国的に展開するためには医療ネットワークの確立が急務でございまして、平成九年度より全国を八ブロックに分けまして、地方ブロック拠点病院を置き、国立国際医療センターエイズ治療研究開発センターの指導のもとに、診療の向上を図り、体制の整備を図っているところでございます。  新感染症法におきましては、国の責任におきましてエイズに関する特定感染症予防指針というものを策定いたしまして、エイズ対策の一層の推進を図るよう努めてまいりたいと考えております。
  39. 家西悟

    ○家西委員 これは質問通告に入っていないのですけれども、今約束していただけるということなので、もう一つ質問させていただければと思います。HIV治療の薬の問題です。  アメリカの方で認可されたものを日本に早急に輸入をしていただけるのでしょうか。抗HIV薬のプロテアゼインヒビターとか、そういった薬ですね。これはやはりチョイスを大きくしていただかないと、患者としては非常に大変な問題になりますので、アメリカで認可されれば即時日本も認可するというような方向。現在オーファンドラッグ制度をお使いいただいてやっておられますけれども、実際問題としてメーカー側は非常に嫌がるというか、お金がかかるので拒否するというような問題が起こっています。  これについて厚生省として何か対策なり、そういうものを早急に入れていく方向というものはお考えいただいているのかどうかについて御答弁いただければと思うのです。
  40. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今御指摘の、日本でまだ正式に認可されていないエイズの治療薬の問題でございますが、御指摘を踏まえまして関係機関とお話をし、早急に実現するよう努力してまいりたいと考えております。
  41. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともよろしくお願いします。それがやはり命にかかわる問題を大きく左右しますので、お願いいたします。  では、今後の施策について患者意見を最大限に反映させるよう、特定感染症予防指針の策定の際には当該疾病患者の代表を公衆衛生審議会委員として参加させていただきたいという思いと、また、基本指針を定める際の公衆衛生審議会においても、患者代表や弁護士、NPO、NGOなど市民の代表も参加させるべきと私は考えますけれども、この辺はそのようにしていただけるのか、またどうお考えなのかについてお伺いしたいと思います。
  42. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のように、基本指針特定感染症予防指針の策定に当たりましては、感染症患者さんなどの意見を反映することは重要だというふうに考えております。したがいまして、さまざまな機会を通じまして各方面の方々の御意見の聴取に努めてまいりたいと考えております。  特に、特定感染症予防指針につきましては、個別の疾患ごとに総合的な施策の展開の基本となるものでございまして、この作成に際しましては、公衆衛生審議会の場におきまして、当該感染症患者さんたちの置かれている立場、状況等を十分に御存じの患者代表の方々の御意見を伺うように、前向きに検討してまいりたいと考えております。
  43. 家西悟

    ○家西委員 ということは、参加させていただけるというふうにとらえていいわけですね。前向きにとおっしゃいますけれども、それは参加させる方向で検討もするし、参加させるということととらえてよろしいのでしょうね。
  44. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 審議会に御出席をいただいて、患者さんの立場から審議会に対して意見を述べていただくという機会をつくりたいということでございます。
  45. 家西悟

    ○家西委員 それは今までの参考人とかそういうのと変わらないのじゃないですか。委員として入れていただけるのかどうかについてお答えいただきたいということを今申し上げているので、その辺はどうなんですか。だめなんですか。
  46. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 申し上げたように、委員としてというよりは、審議会に御出席をいただいて、十分意見審議会委員の皆様方にお伝えをいただくという形で検討させていただきたいと思います。
  47. 家西悟

    ○家西委員 これは非常に重要な問題だと思います。  なぜならば、エイズ予防法やらい予防法というものは患者の声というものが反映されずに施行されたわけですね。そして、あれだけの問題を起こしたというのは事実で、反省されたわけですよね。  だとしたら、こういう場に、今後こういう指針を決めるとか策定するという場合においては、当該疾病患者を参考人ではなくて委員として入れるとか、そういうNGOの団体を初めとした市民の人たちの参加を求めていくのが筋ではないのですか。それが今回新法改正される大きな柱になってくると思うのですけれども、いかがなんですか。
  48. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御趣旨は十分わかりますので、ひとつこの席におきましては検討させていただくということで御容赦いただきたいと思います。
  49. 家西悟

    ○家西委員 では、趣旨は理解していただけるということで、ぜひとも入れていただきたい。そうしないと、同じ過ちを繰り返すのだというふうに私は思いますので、前向きとか意見をお聞きするとかそういうのじゃなくて、委員としてやるということをぜひともお考えいただきたいということをお願いしておきます。よろしくお願いします。  では、次の質問に移らせていただきます。  新感染症についての取り扱いが敏速かつ公平に的確に行われるよう地方自治体などとの連帯をどのようにとるのか。また、自治体が勝手に判断して動く場合には、厚生省はどのようにブレーキをかけられるのか。密接な連携と技術的な指導並びに助言という五十一条の文言について具体的に説明をお願いします。
  50. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 新感染症発生時における具体的な対応についてのお尋ねでございます。  新感染症発生時におきましては、健康診断の実施、食品等の物品の処分といった感染拡大防止措置の範囲を現地の事情に即してきめ細かく行う必要があるということから、法案におきましては、都道府県知事を第一義的な判断権者としているところでございます。  しかしながら、新感染症は、その病像の解明などに際しまして最新かつ高度な医学的知見が必要とされる一方、どこの都道府県においても迅速かつ公平に的確に行われるということが必要不可欠というふうに考えているわけでございます。  そのため、新感染症法におきましては、都道府県知事が新感染症に関しまして具体的な措置をとる場合には、あらかじめ厚生大臣に報告することを法案上義務づけておりまして、報告を受けた厚生大臣公衆衛生審議会意見を聞いた上で、必要な技術的指導助言を行うこととされているわけでございます。また、実施した措置の内容及びその後の経過を逐次報告することも法案上義務づけております。  すなわち、厚生大臣の技術的指導助言なしには都道府県知事措置を発動できない制度となっておりまして、都道府県、具体的には保健所等が勝手に動き回るというような、そういう御心配の事態はあり得ないというふうに想定しているわけでございます。  具体的な技術的な指導及び助言の内容につきましては、新感染症発生していない現段階で明確にお答えするということは難しいわけでございますが、患者診断方法でございますとか予防及び蔓延防止の方策等、そういうものが具体的な内容になるのではないかというふうに考えております。
  51. 家西悟

    ○家西委員 そのようなことはないというふうにお答えいただいたわけですけれども、これは都道府県知事が責任を持って行われるようになるわけですよ。そうなった場合、エイズの問題で考えたときに、神戸のエイズパニックのような問題が起こったときに、神戸なりそういう地方自治体が独自の判断で幾らでも対応できるわけですよね。そうなったときに、これは暴走であるというふうにブレーキをかけられるのですか、その辺をお伺いしたいと思うのです。
  52. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 仮に都道府県が勝手に動くというようなことがあった場合、感染症新法に基づいて厚生大臣が適切な指導を行うということは、法律に基づいて実施できるようになっております。
  53. 家西悟

    ○家西委員 厚生大臣はそのようになっているというふうにおっしゃいますけれども、最高責任者は都道府県の知事になるわけですよ。その上に確かに厚生大臣という立場で助言はできるというふうになるわけですけれども、強制力はないわけですよね。  例えば、どんどんどんどんそういう新感染症が起こっている、そして自分のところの地域で出た、その場合の対策をしなければならないというふうになってきたときに、行き過ぎであるという判断をしていて、助言で終わりなんですか。とめることはできないのですか。これはやり過ぎなんだ、これ以上のことはやってはだめだというふうなことは、大臣として助言で終わってしまうのですか。強制力というものはないのですか、ブレーキをかけるための。
  54. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 その点につきましては、五十一条につきましては、都道府県知事厚生大臣の指導助言なしには措置を発動できない制度になっておりますので、法律上も、都道府県が勝手に措置を発動するというようなことはあり得ないというふうに考えております。
  55. 家西悟

    ○家西委員 わかりました。  では、次の質問に移らせていただきます。  患者のプライバシーを保護するために、医師都道府県知事届け出を行った場合、当該患者または保護者への届け出の事実を通知するよう周知徹底すること、当該患者から請求があったときは、当該患者に対する措置に関する資料を閲覧または複写なりできる制度を整備する必要があると私は思いますけれども、この点についてはいかがでしょう。
  56. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず前段のお尋ねでございますが、法案の第十二条におきましては、感染症発生動向を把握するため、感染症患者等を診断した医師保健所長届け出ることを規定しておりますが、医師患者にその旨を連絡することは法案規定していないわけでございます。  これは、保健所長届け出る旨の本人への説明は、法律で一律に義務づけるというのではなくて、患者の心理状態等に配慮しながら主治医が適切に行っていただくことが適当と考えましてこのような整理を行ったものでございまして、実際には本人に説明を行っていただくことが望ましいというふうに考えております。  このような考え方に立ちまして、当該届け出を行ったことにつきまして患者または保護者に対しまして十分説明されるよう、厚生省としても医師に対して理解と協力を求めてまいりたいと考えているところでございます。  また、後段の御質問でございますが、資料を閲覧、謄写できる制度を整備することについての御提案に関連いたしまして、医療全般に係る診療情報提供等の問題につきましては、本年六月にカルテ等の診療情報の活用に関する検討会の報告書が出されたところでございますが、今後、この検討会報告を踏まえ、医療全般において検討が進められることになると考えておりまして、これらを参考としながら、御指摘の点についても検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  57. 家西悟

    ○家西委員 ぜひとも患者の知る権利というかそういったものは約束していただきたいなというふうに思います。  なぜなら、HIVでは、血友病患者の大半がそうだったのですけれども、自分も知らないうちに検査をされ、そして数字が上がっていた、しかし本人は知らない、家族も知らないというような状況が起こったわけですよね。そして、みんな一律に感染していると思って行動してくださいみたいなことを医師は平気で言ってきた。これは感染していない人にとっては不幸ですよね、感染している者も不幸ですけれども。こういうような状況を許していってはいけないと思います。  感染症という疾病というものは、自分も、自己管理、健康管理ということもある意味であるわけですから、当然、届け出はしているのに本人は知らない、家族も知らないということが許されてよいものかというふうに思うと、私は思えないのです。やはり知って、治療法がないにしてもあるにしても、とにかく命を守るための最大限の努力は、患者、家族に与えるべきだと思います。そのための情報提供、そして管理をするということも私は必要ではないかというふうに思います。ただ単に医師の努力でお願いしたいとかそういうものではなくて、きっちりとやる方がよりいいのではないかというふうに私自身は考えています。その辺をお酌み取りいただけますでしょうか。
  58. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法届け出の条項についての趣旨は今申し上げたとおりでございますが、そのことと、医師患者関係、それから患者さん自身が自分の病状を正確に理解して必要な対応をするということは、整理して考えたらどうかというふうに考えております。  したがいまして、今議員御指摘のように、患者さんの立場から、必要な情報をお医者さんからもらって、治療なり回復への努力を適切なものにしていくという観点から、患者さんが自分の健康状態について知る権利といいますか、そういうものは今後とも重要なものとして厚生省としても検討していくべき課題だというふうに理解をしております。
  59. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともそのように前向きに行動していただきたいし、そういう施策をとっていただければなと思います。  では、健康診断入院、移送等の措置がとられた場合において、患者人権を尊重し、厳粛かつ客観的に運用されるよう手続の明確化を図って、自治体に周知徹底を図るべきと思いますが、そのようなお考えはあるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  60. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 法案に基づきまして健康診断入院、移送などの措置がなされる場合におきまして、患者等の人権に配慮し、厳格かつ客観的に運用されるよう手続の明確化を図り、自治体に周知していくことは極めて重要と認識しているところでございます。  公衆衛生審議会が行った法案制定要綱に関する答申におきましても、都道府県が各般の措置を行う際に混乱が生じないよう「国において適切な指針や例示の提供を進められたい。」と明記されているところでもあり、法案に基づく施策について、政省令、基本指針、施行通知、マニュアルの策定等を通じまして明確化し、自治体への周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
  61. 家西悟

    ○家西委員 それでは、強制手続や退院請求、審査請求などの不服申し立て手続について、患者等に十分に趣旨が理解できるような説明が行われるよう徹底されることが非常に必要ではないかと私は思いますけれども、実際に運用された場合にどのように実現を図ってまいられるのか、そういうような場合に実現を図るためにどのようなことをお考えなのか、具体的に御説明いただければと思います。
  62. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 入院手続や退院請求、審査請求などの不服申し立て手続につきまして、患者等に十分この趣旨が理解されるということが極めて重要であるというふうに認識をしております。  したがいまして、入院勧告の際に、文面で通知することになっておりますが、その文面に退院請求や審査請求ができることを明確に記載いたしまして、この周知を図ることをまず徹底したいと考えているところでございます。  その上で、実際の対応を行います都道府県職員が患者等に対しまして必要な説明を行うことについて、これは基本指針に明記するとともに、実施通知や都道府県の担当者会議で伝達する等、あらゆる機会を通じましてその実現に努めてまいりたいと考えております。
  63. 家西悟

    ○家西委員 退院請求とかそういった不服申し立て、確かにそういうような文書でおやりになるのは結構だと思うのですけれども、えてして患者というのは非常に弱い立場です。こういうふうになっていますというふうに言われても、どうしてもうのみにしてしまうのですよね。そうじゃなくて、こういうのができるのですよということを明確に伝えていただきたいと思います。  ただ単に、こういうふうな措置ができますよとか、こういうふうになっていますという説明だけじゃなくて、やろうと思えばこういうふうに手続を踏んでいけば大丈夫なのですよということを明確に例えば口頭で教えてあげるとか、第三者の人たちがこういうふうにやれば大丈夫なのだよというようなことを。文書で通達とか職員がというのは、どうしても事務的な手続で終わってしまう。ばっぱっと見せられて終わりというふうな形じゃなくて、説明をしっかりやっていただきたい。  そういう手続をどういうふうにお考えなのかということで、例えばカウンセラーなりケースワーカーといった人たちを入れていく、そういうようなことはどうなのですか。
  64. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現行伝染病予防法では、市町村が隔離病舎を整備するという規定になっているわけでございます。一方、感染症新法におきましては、現行伝染病予防法と違いまして、感染症指定医療機関制度というものをつくりまして、感染症のそれぞれの類型にふさわしい医療機関で適切な医療提供するというのが基本的な考え方でございます。  したがいまして、感染症指定医療機関の職員、医師看護婦等の対応が特に重要になってくるというふうに考えられますので、この感染症指定医療機関の指定の要件といいますか基準でございますとか、そういうことを今後詰めていく場合に、御指摘の点につきましても、今申された趣旨を体して具体的に検討させていただきたいと思います。
  65. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともそのようにお願いしたいと思います。  どうしても、本当に患者は弱いです。ましてや感染症でそういうような施設に入らなければならないとなったときに、家族も含めて困惑している状況の中で、どうしていいのかわからない。そして、こうこうこうだというふうに説明を文書でもらっても、意味がはっきり理解できない間にどんどんどんどん事が進んでいくということもあり得るわけですよね。そういうようなときのために、そういった人たち、そしてケースワーカーなりカウンセラーも含めて、ぜひとも対応をとっていただければなというふうに思いますので、よろしくお願いします。  それでは、次の質問ですけれども感染症協議会の人権保障機能を担保するために、弁護士など人権チェック機能を発揮できる人材を登用するよう自治体を指導すべきと考えますが、厚生省としていかがでしょうか。
  66. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症の診査に関する協議会は、患者入院の必要性につきまして、症状、病原体等に関する医学的診査はもちろんのこと、患者等の人権尊重の視点への配慮が重要であることにかんがみまして、その構成員といたしまして、医療以外の学識経験を有する者を入れることを法案上義務づけております。  感染症の診査に関する協議会の委員は、都道府県知事が任命することになっておりますが、患者・感染者の人権尊重の観点から、ふさわしい人材が選ばれるよう都道府県等に対しまして趣旨の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  67. 家西悟

    ○家西委員 ぜひとも、そのふさわしい人物というものは、行政の方にとって都合のいい人ではなくて、患者さんにとって都合のいい人を人選していただくよう各都道府県に通知していただければなと思いますけれども、その辺どうなりますか、通知していただけますでしょうか。行政上部合のいい人といったらおかしいですけれども患者サイドに立っていただけるような弁護士さん、例えば人権問題を長く手がけておられる弁護士さんとか、そういった人たちを登用するようにというような趣旨を通達していただけますでしょうか。
  68. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘の点につきましては、制度の趣旨に照らして、ふさわしい人が選ばれるよう都道府県等に対しまして通知をしたいというふうに考えております。
  69. 家西悟

    ○家西委員 では、次の質問ですけれども入院時の通信、面会の自由が保障されるよう必要な措置を講じ、その処遇について明確化することが必要だと思いますけれども、いかがですか。
  70. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のように、感染症患者の身体的、精神的ストレスを和らげることができるよう、患者が家族等と連絡を行えるように配慮することが重要だと考えております。  このため、入院された患者さんが、電話等の設置を通じ通信の自由を保障するとともに、面会窓、インターホンにより面会の自由を適正に確保できるよう、感染症指定医療機関の指定要件を以上の点を踏まえて具体的に検討していきたいと考えているわけでございます。  また、通信、面会の自由を含めた感染症患者入院時の処遇につきましては、基本指針等に明記するとともに、実施通知、講習会等を通じまして都道府県の担当者に対しまして周知徹底を図っていきたいと考えているところでございます。
  71. 家西悟

    ○家西委員 私は実際に関西のある病院へ視察に行ったことがあるわけです。そこはまだ使ったことはない、関空の近くの病院ですけれども、もうここまで言えばわかると思うのですけれども、見せていただいたときに、そういう施設では面会できるようにしています、インターホンで話もできますと。確かにインターホンがついていました。しかし、ベランダなんですよね、ベランダから話ができる、廊下とかそういった中じゃなくて患者さんの部屋があったそのベランダ越しに話ができる。外ですよね。これはおかしいなとすごく思いました。そして、感染防御のために行われている二重の扉もあるわけですけれども、鉄の扉で、閉まる瞬間にドーンというような、何か違う場所に入っていくような、気になるような施設というものは今後考え直すべきではないか。  そして、面会の自由というものも、ただ単にインターホンで窓越しに話ができるとかそういったものじゃなくて、人として扱うためにも、ベランダ越しとかそういうことにならないように、面会は面会でちゃんとできるような、例えば廊下側でもいいです、そういうようなことになるように、厚生省として、これから指導要綱とかそういったものの見直しもお図りいただけますでしょうか。
  72. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この問題は、感染の防止という目的と通信の自由なり面会の自由というものをどのように両立させるかという問題だと思います。  したがいまして、今後、新法に基づきまして感染症指定医療機関の指定要件を考える場合に、今、例えば建物の構造上どこまでそれが技術的に可能かというような点も踏まえまして、具体的な要件の検討を行いたいと考えているところでございます。
  73. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともそういう建物とか設備の問題も含めて考えていただきたいなと思います。確かに基準は合格されていても、実際患者の家族になれば、そういうところに入ったというふうになれば、本当に言葉ではあらわせないぐらいの屈辱を受けるというか、たまらないものがあると思いますので、ぜひともそういうような施設面においてもこの新法に改められるのを契機に変えていただければなというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、次の質問ですけれども入院患者が退院請求を行った場合には、その判断は即時に行われるべきですが、二十二条においては時間の規制が全くありません。この点について指導を徹底されたいと思いますが、厚生省としてどのようにお考えなのかということについてお伺いしたいと思います。
  74. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のように、法案二十二条には時間の規定がないわけでございます。法案二十二条は、入院患者が漫然と長期入院するというようなことなく、明確な退院基準と患者等の退院請求を明記した、現行伝染病予防法には存在しない規定であるわけでございます。  そこで、入院患者が退院請求を行った場合、都道府県知事感染症の病原体に関する検査を行うことになるわけでございますが、その際、迅速であることはもちろんのことですが、正確であることがもう一つの要件でございます。感染症の病原体の有無を判断できるまでの期間につきましては、感染症の種類によって異なるわけでございます。したがって、それぞれの感染症に応じて可能な限り短時間で判断を行うことが必要だということで、感染症の種類によって病原体に関する検査の結果が出るまでの時間が違うということから、法律上、時間について何時間ということを区切って規定しなかったということでございます。  しかし、これはできるだけ早くというのが法の趣旨でございまして、厚生省といたしましても、以上申し上げたような趣旨に沿いまして、できるだけ速やかに行うという形で運用してまいりたいと考えております。  また、厚生省といたしましても、入院している患者にとって法案の第二十二条が有効に機能するよう実施通知や講習会を通じまして都道府県に周知徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  75. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともその辺はしっかりとやっていただきたいなと思います。  ハンセン病の人たちは、菌がなくなってもそのまま施設に収容されていたというか隔離の対象になっていたという前例があるわけですからね。今回も、ウイルス検査が云々とかいうふうに言われてずるずるといってしまう、そして最終的には何十年もたって、今振り返ってみたらとかいうようなことがあってはならないと私は思うわけですけれども、そういうことがあったことも反省して今回はこういうふうに変えていくということになるのだと思いますけれども、この二十二条はどうしてもひっかかります。この辺についてぜひとも検討していただきたいし、敏速に対応できる、するということをいま一度はっきりと言っていただければと思います。
  76. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 議員の御提言の趣旨を体しまして厳格に運用してまいりたいと考えておるところでございます。
  77. 家西悟

    ○家西委員 では、本当に厳格におやりいただくことをお願い申し上げます。  続いて、情報公開についてであります。  感染症についての情報は、ハンセン病、HIV、性病など、差別やパニックを伴う一方的なものになりやすい側面があるわけですけれども、十六条の規定において運用面はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  78. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 発生動向調査などの公表に際しまして差別やパニックなどが起きないようにするにはどうするかということでございます。  感染症発生拡大防止を適切に図っていくためには、国民に対しまして感染症に関する正しい情報を適時的確に提供することが基本になるというふうに考えております。したがって、御指摘のように、感染症に対する誤解に基づく不安感、差別感が生ずること自体、そうした感染症対策推進に支障を来す要素になり得るというふうに理解をしております。  そのため、法案の第十六条におきましては、国や地方公共団体が感染症対策推進に際しまして正しい情報を積極的に提供することを定めたものであり、その公表に当たりましては個人情報の保護に留意すべきものとしたものでございます。  なお、発生動向調査などの結果を公表する場合におきましても、先ほどもお答えさせていただきましたが、中央におきます専門家による解析、その分析といいますか、発表の仕方も含めて、どのような発表の仕方が適切かという観点から検討する、そういう仕組みも、現在の制度にも若干あるのですが、そういうことをもう少し強化をしていくというようなことも重要ではなかろうかと考えております。  以上、いろいろなことを積み重ねまして、国民の間に発表による不安や誤解に基づく不安感というものを生じないように細心の注意を払って運用していきたいと考えておるところでございます。
  79. 家西悟

    ○家西委員 ぜひとも、ただ単に情報を与えるのではなくて、正しい情報提供とかそういったものはやっていただきたいなと思います。  HIVは、本当に間違った情報が当初は流れました。そのたびに消していく作業というものは並大抵の努力じゃなかったということ、そして、いまだに消えていないわけですね。ですから、今後新たな感染症、しかも重篤な感染症ほどそういったパニックが起きやすい。それを防ぐためには、政府としても正しい情報提供をしていただきたい。  エイズ予防法のときは本当に、HIV・エイズという問題は予防法を通すためとかいろいろ言われましたけれども、あれほどのパニックをつくった。マスコミ報道もありました。そういったことが今後二度と起きないように、政府として情報のコントロールはしっかりやっていただきたいし、正確な情報国民に与えることこそが大事なのではないかというふうに私は思いますので、よろしくお願いします。  次に、患者の不服申し立てに際して情報のコントロール権を保障すべきと考えますが、どのようにお考えになっておられますでしょうか。
  80. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今、情報のコントロール権を保障すべきと考えるが、どう考えるかということでございます。  情報のコントロール権という意味でございますが、患者のプライバシーは保護されるべきで、不服申し立てを行う際にもプライバシーが保護されるべきもの、その点についてのお尋ねだというふうになれば、業務上必要な者にのみ当該患者情報提供されるということになっておりますので、これらの者につきまして、法律上秘密を守らない場合には罰則が科せられるということになっております。  また、患者が不服申し立ての際に、みずからの入院措置に関するすべての情報、例えば医師届け出の内容等を知り得ること、そういう点にかかわる御質問だとすれば、これは不服申し立てにかかわる一般法であります行政不服審査法における規定の範囲内で保障されているというふうに認識しております。
  81. 家西悟

    ○家西委員 次の質問ですけれども、結果的に誤った措置によって国が無用な権利制限を行った場合に、適切な補償を受けられるよう措置を講ずるべきと私は考えます。例えば、国家賠償法の規定とは性質が異なっていると考えますが、予防接種法第十一条の例に倣い、具体的に指針を示すべきと考えますが、その辺はいかがでしょう。
  82. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今回の法案では、入院につきまして勧告を行う制度を創設するとともに、入院に関しての感染症の診査に関する協議会への諮問でございますとか、入院患者からの退院請求、それから行政不服審査法の特例措置等、人権への配慮を行う観点から各般の措置を設けているところでございまして、都道府県知事等が判断を誤って入院させる可能性というのは極めて低いというふうに思われます。  こうした慎重な手続を設けた上で、なお、国及び地方公共団体の公権力の行使によりまして故意または過失によって損害が生じた場合には、当然国家賠償法の対象となり、必要な救済が受けられるものと考えているわけでございます。  そこで、今議員御指摘のように、予防接種法には国家賠償法と別の規定があるではないかということでございますが、予防接種につきましては、予防接種という本来の性格を考えてみますと、故意、過失がないことはもちろん、全く適正に行われたといたしましても、一定の確率で予防接種の副反応が生じてくるということが現在の技術水準では不可避的な状況といいますか、そういう予防接種の副反応についていかなる条件を整えても一定の確率で発生してくるということを防止することができない。こういう性格に着目をいたしまして、予防接種法国民接種を勧奨している予防接種については国家賠償法とは別に救済の制度を設けるといった趣旨でございます。したがいまして、今回の感染症新法の救済は、事故によって、誤った判断によって入院された場合の賠償の仕方とは根本的に性格が違うという判断をしているわけでございます。  以上申し上げたとおりでございますが、同様に強制的な入院規定を設けております結核予防法や精神保健福祉法にも入院に係る個別の救済規定を置いてないわけでございまして、その点につきましては、何とぞ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  83. 家西悟

    ○家西委員 でも、誤った場合がやはり起こるのですよ。非常に似たような病変というか病状を起こされている方を、誤ってそうじゃないかと。ましてや検査ができない段階となれば、起こり得る危険性は非常に高いと思うわけです。そのときに、やはり違ったというふうになったときの補償というものはしっかりやっていただかないと、国賠法でいいとかそういう問題ではないと私は思うわけです。その辺は今後検討をいま一度していただけますでしょうか。
  84. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現行伝染病予防法に比べまして格段に各種の規定を置いているところでございますが、御指摘の点につきましては、今申し上げたように国家賠償法の規定に基づいて対応していくということになりますが、法律施行後、その実施状況を見ながら検討させていただきたいと思います。
  85. 家西悟

    ○家西委員 私の質問は終わるわけですけれども、私は、本当に当事者として思います。これから新感染症の問題、未知の病気、ウイルス等によってそういったものが出たときに、HIVやハンセン病の人たちのような思いを絶対にさせないようにしていただきたい。そして、どれだけの苦しみを与えてきたかということについてもいま一度政府なり厚生省は反省していただきたいし、運用面に当たっては最大限の注意を払っていただきたい。  しかも、軽度な感染症以上に重度な感染症、重い病気ですね、感染力の強いとかいう問題についての答弁のときでも、一度ここで指摘させていただきましたけれども、怖い怖いエボラというような発言を政府委員はされていました。怖い怖いエボラというのはないんですね。感染力の強い疾病のエボラとか、そういうふうな言い方をされるのならわかりますけれども、ただ単に恐怖心をあおるような答弁の仕方、また政府の指針というものは、二度と避けていただきたい。そういったところから差別が生まれてくるし、社会防衛が生まれてくるということをしっかりと頭に入れていただいて、運用面に当たっては厳格に扱っていただきたいと思います。  その辺について、大臣、もし決意なりそういったものをお答えいただければありがたいと思います。
  86. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいま委員の方から、新法に基づきますいろいろ手続的な問題その他について経験を交えながら大変広範な御質問をいただきました。  今最後におっしゃられたように、本問題は大変重要な問題でございまして、今までの経緯その他は十分反省すべき点は反省して、やはり客観的な医学的な事実に基づいてきちっとした議論ができるようにしていかなければならないというように思っておりますので、御趣旨をよく体して今後ともいろいろの面で対応してまいりたいと思っております。
  87. 家西悟

    ○家西委員 ありがとうございました。私の質問を終わります。
  88. 木村義雄

    木村委員長 金田誠一君。
  89. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。大臣には初めて質問を申し上げるわけでございますけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  私の質問は大綱三点でございまして、一つは、本法案の基本的な立場とでも申しますか基本的なコンセプトとでも申しますか、問題意識は、本法案人権感染症予防を両立させるというものなのかどうなのか。旧来の伝染病予防法、エイズ予防法等は余りにも社会防衛一辺倒であったという問題意識があるものですから、それを大きく転換をして、少なくとも人権を尊重する、その人権感染症予防のさまざまな施策、これを相対立するものではなくて、両立をさせていくという形に大きく転換を少なくとも目指すものなのかどうなのか。そうであれば、具体的各論にわたってもそれにふさわしいものとして確認をしていただける点があるのかどうか、それが問題意識の一つ目でございます。  もう一つは、在日外国人の方で、特に感染症に罹患をされた方、健康保険があればいいのですけれども、オーバーステイとか不法就労とかさまざまな状況の方がいらっしゃいまして、保険の適用がない方、こうした方々にも良質かつ適切な医療提供ということは本感染症予防法の基本的な部分であるだろう、こういう認識から、この外国人の方の扱い、これを具体的に明らかにしていただきたいということが二つ目。  そして三つ目は、前国会で積み残しとなっておりました、私、五月二十二日に質問させていただいたわけでございますが、その中で四項目ないし五項目ほど答弁を持ち越すという形であったものがございます。それを今回改めてお尋ねしたいということでございます。  概要、そういう立場でございますけれども、まず、一点目の法案の基本的な立場から順次質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、本法案が、社会防衛中心、社会防衛一辺倒の旧法から転換をして、少なくとも人権感染症予防を両立させる、こういう意図に基づく立法であるのかどうなのか、その辺の基本的なところをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。  この立法のもとになったといいますか、スタート、出発点になったものが、この「新しい時代の感染症対策について(意見)」ということでございますが、公衆衛生審議会から去年の暮れに出されたものでございます。  この意見自体は、旧来の社会防衛中心の感染症対策から転換をして、個々の国民に対する感染症予防治療に重点を置いた対策、あるいは患者・感染者の人権の尊重、こういうものを基本的な方向、視点の一項目、二項目めに据えて、そういう基本に立ってこの意見が提出をされておるわけでございますけれども、これを基本的に受けた形で本法案は立法されている、こう思うわけでございます。  まず、その辺の基本的立場、旧来の社会防衛を中心とした感染症対策から大きく転換をして、人権の尊重を基本に置いた、あるいは良質かつ適切な医療提供ということを大きく据えた、人権感染症予防を両立させようという法律に転換をしたものであるということをひとつ明快に御確認をいただきたいなと思うわけでございます。
  90. 宮下創平

    宮下国務大臣 今回の法案の基本的な考え方に基づく御質問でございます。  今委員の御指摘のように、今回の新法背景には、昨年の暮れに出されました公衆衛生審議会意見具申がございますが、その要点的な点は、個々の国民に対します感染症予防治療に重点を置いた対策が必要であるということ、それから、患者・感染者の人権の尊重ということを極めて重視している、そういった観点が述べられております。  具体的に申しますと、現行伝染病予防法はややもすると集団の感染症予防に重点を置いてまいりましたが、この点を改めていくということ、それから、患者・感染者を社会から切り離すといった視点でとらえるのではなくて、患者人権を尊重して、差別や偏見もなく、一人一人が安心して良質な医療給付を受けることができるような権利等に配慮することが重要である、こういうことでございます。  すなわち、今回の見直しは、これまでの集団の感染症予防を中心とした政策を改めまして、感染症予防患者等の人権尊重を両立させる政策に転換しようと意図するものでございまして、委員の御指摘のように、まさにパラダイム転換であるというように考えております。  なお、今回の法案におきましては、以上の考え方に基づきまして、二条の基本理念とかあるいは三条の責務の規定等においてこれらの精神が明確に規定されているところでもございます。
  91. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 どうもありがとうございます。  大臣の口から直接パラダイム転換であるという御発言もあったわけで、そうであるならば、私どもの目指す方向と基本的には合致をするなと思うわけでございます。  しかし、そういう意図のもとにまず公衆衛生審議会から意見が出され、それを受けとめた形で、今大臣おっしゃられた意図で法律をつくられたのだろう、こう思うわけでございますけれども、これに対して、実際は各方面からさまざまな懸念が表明をされているということは御承知のとおりだと思うわけでございます。  その意図が、法律の条文上に必ずしもそのとおり読み取ることができない。例えば新感染症がどういう基準で指定をされるのか、あるいは指定感染症ということではどうなのか、あるいは適正手続が十分なのか、医療はどうなのか、プライバシーはどうなのか。前段、家西委員の方からも質問されたとおりでございまして、こういう懸念が各方面から寄せられているということは御存じだと思うわけでございます。  したがって、法律が、大臣おっしゃったようなそういう基本的な趣旨であるとすれば、この質問は余り意地のいい質問ではないのかもしれませんけれども法律自体をそういうふうなもっとわかりやすいものに本来あってしかるべきではなかったのかな、こう思われてなりません。その辺のところはいかがでしょうか。  今となって、当初意図したこと、公衆衛生審議会から意見を受けて、それに基づいてパラダイム転換を、人権とか医療にももっと重点を置いて感染症予防と両立をさせよう、過去にさまざまな法律のもとで差別や偏見が生じた、二度とそういうものがないようにしようという意図であるならば、各界各方面から本当に歓迎されて、多少の意見などはあったとしても、根本的に違うではないかなどという指摘がないようなものに本来あってしかるべきではなかったか。その辺、感想などいかがなものでしょうか。
  92. 宮下創平

    宮下国務大臣 新法でございますから、これからの国会論議あるいは関係団体等の御論議、御意見等も踏まえながら、この法律制定趣旨に従ってきちんと実行していくべきものだと考えておりますが、特にまた人権問題は参議院でも修正があったようでございまして、それらも重く受けとめさせていただいております。  今後、この法律を、また五年後までに検討も常時するということもございますので、そういった点を踏まえて、今委員の御指摘のような、法律の精神と実際の運用が乖離することのないように、常にこれはレビューしていかなければいけない、このように思っております。
  93. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そこで、本法案の審議の最初から議論されておりました過去に対する反省という点について、大臣から改めて伺いたいなと思うわけでございます。  人権予防を両立させるという方向に今大きく転換をしたその理由の一つとして、過去におけるハンセン病やHIV感染症を初めとする感染症患者に対する差別や偏見、これが存在をして、幾多の人権侵害が事実として行われた、この事実を重く受けとめて、その反省を含めて今回の法律改正が行われるんだ。その辺、法文上は現時点では余り明確ではございませんけれども、後ほどの修正なども検討させていただいているわけでございますが、その辺、ぜひ共通認識を持ちたいものという立場から質問させていただきたいと思います。
  94. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 私の方からお答えをさせていただきます。  我が国感染症対策につきましては、その時代におきます国民の健康問題や医学的知見を踏まえて進めてきたところでございますが、ハンセン病やHIV感染症を初めとする感染症患者に対する差別や偏見が存在したことは事実でございます。  ハンセン病につきましては、らい予防法の見直しがおくれたこと、また、旧来の疾病像を反映したらい予防法がつい今日まで存在し続けた結果としまして、患者及び家族の尊厳を傷つけ、多くの苦しみを与えてきたこと、また、過去におきまして、優生手術を受けたことによる身体的、精神的苦痛を与えたことにつきまして、平成八年に厚生大臣が謝罪し、また、らい予防法の廃止に関する法律案の提案理由説明におきましても、陳謝の念と深い反省を表明したところでございます。  エイズ予防法の制定につきましては、本年五月二十一日の衆議院本会議におきまして、橋本総理が、当時としてはやむを得なかったものの、それでもやはり結果的にいわれなき偏見、差別を受けたというような患者・感染者のお気持ちを伺うと、今から思えば、後悔や反省の念が起き、おわびを申し上げたい、そういうことを総理が御答弁されているわけでございます。  厚生省といたしましては、これらの経緯を踏まえまして、患者・感染者の人権に配慮した対策が講じられますようこの新法の運用に当たってまいりたいというふうに考えております。
  95. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 では、大臣、改めて確認をさせていただきます。  本来、感染症を理由とする差別や人権侵害、こうしたことは決してあってはならない、このことをまた改めて確認をさせていただきたい。本来あってはならない、ましてや新法のもとではなおさらあってはならない、当然のことでございますけれども、改めて確認をさせていただいて、その次の質問に入らせていただきたいと思います。
  96. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のように、理由のいかんを問わず、いわれなき差別や不当な人権侵害が行われることは絶対あってはならないことと考えております。  しかし、今局長からも言われましたように、感染症にまつわる過去のいわれなき差別や偏見あるいは不当な人権侵害が存在したのは事実でございまして、本法案では、こうしたことが今後できるだけ起こらないように、国、地方公共団体の責務として、感染症に関する正しい知識の普及を位置づけ、感染症情報の公表に当たって個人情報の保護に留意するなどの規定も設けておりますし、国民一般に対しましても、感染症患者等の人権を損なわないよう法案上の国民の責務を定めて求めているところでございます。  基本指針を定めることになっておりますが、この基本指針におきましても、感染症に関する啓発及び知識の普及とか、感染症患者等の人権への配慮に関する事項を重要なものとして位置づけておるところでございまして、感染症を理由とする差別が行われないよう国民に対する普及啓発等々、すべてこれをきちっとやっていきたい、こう考えております。
  97. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 総論としてお尋ねをしますと極めて明快にお答えが返ってくる、こう受けとめております。そういうお考えで臨もうとされておるというふうには理解をさせていただきたいと思いますが、先ほどの家西委員の質問に対しても、個々の各論に入ってきますと、総論との乖離のような感じがどうもしてならないわけでございます。  重なって大変恐縮でございますけれども、今の総論、冒頭来の総論を踏まえて、いま一度お尋ねをさせていただきたいと思うわけでございますが、差別を排除し、人権予防を両立させる、それを実効的にどう確保するかということだと思います。  総論としては決意のほども含めて伺わせていただきました。その決意なり認識をどうやって実効的に確保をするかということが問われると思うわけでございますけれども、一つの方策としては、感染症政策に患者の声、患者の立場を十分に反映させる必要がある、申し上げるまでもないことだろうと思うわけでございますけれども。  したがって、基本指針予防計画あるいは特定感染症予防指針、こういうものがこれから順次つくられていくわけでございますけれども、その策定に当たって、会議の構成員に感染症患者団体の代表等を加えるべきではないかという指摘を、これは、きょうの家西委員も含めて再三私どもさせていただいている。答弁は必ずしもきちんと受けとめていただけない状態に現在あると思うわけですが、なぜなのか。総論部分ではお互いに共通認識に立っていて、そうであるならば、私どもとしては当然だと思うことがなぜ受け入れていただけないのか。  さまざまな制度があると思うのですね、特別委員であるとか何らかの形で同席して直接意見を言っていただく。医師の立場、行政の立場、さまざまあるわけですけれども、何よりも御本人の立場、患者さんの立場というものが直接反映される場というものがなかったからこそ、今までのさまざまな状態が起きてきたのではないか。それを反省し、教訓とし、生かしていこうというときに、これがなぜ受け入れられないのか、本当に残念でございます。  しかし、これはいま一歩踏み込んだお答えをちょうだいしたいなと思うわけでございます。
  98. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 基本指針予防計画、それから特定感染症予防指針の策定に当たりましては、患者等の意見が反映するよう会議の構成員、具体的には例えば公衆衛生審議会の正式の委員に加えるべきではないか、そういう御趣旨かと思います。  この点につきましては、先ほど家西議員の質問に対してもお答えさせていただいたところでございますが、具体的な中身の策定に当たりましては、私どもといたしまして、十分患者団体の御意見というものを反映させていくということは当然のこととして、この審議会における検討の過程におきまして十分意見を聞いて、その内容に反映させていきたいと考えておりますが、具体的に正式のメンバーとしてというところにつきましては、きょうのところは、先ほども家西議員にお答えしたような方針で何とぞ御理解をいただきたいというふうに思う次第でございます。
  99. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大変これはこだわっておられるのだなという印象を受けます。  例えばハンセン病、HIVあるいは肝炎の皆さんとかの患者団体はそれなりにきちんとしておって、非常に慢性的な感染症で、日常的にもさまざまな活動などもされておられる。ほかの感染症のさまざまな団体もあるのかもしれません。それぞれおおむね類似する中からいずれかの症状の方をという形でもいいと思いますし、そういう方々が置かれている実態を日ごろから御意見を伺って反映させるというのは当然のこととして、こういう方々が直接意見を述べる機会、場の確保ということは、いろいろな検討ができるのではないか。別枠を設けるなり、さらに踏み込んだ形で今後生かしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  次に、もう一つ人権の要素でございますけれども、第十二条に「医師の届出」という項目がございます。この項目を実は修正していただきたいということで協議もしてきたのですが、受け入れられるところにはなりませんでした、大変残念でございますが。  個人情報がひとり歩きするわけでございます。御本人が知らない間に保健所から都道府県へと通知をされるということがなぜ放置されるのだろうということでございます。プライバシー、個人情報の自己管理ということは、人権の大きな要素ではないか。社会防衛から人権に転換をしていく、少なくとも両立をさせていくという過程の中では、私は特に不思議なことでは全然ないというふうに思うわけなんです。個人情報が自己管理できる状態をつくる、これは基本的な人権である、プライバシーは人権であるということをまずお認めいただきたいと思います。
  100. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 委員指摘のとおりでございまして、この十二条の考え方につきまして、先ほど家商議員にもお答えをさせていただいたところでございますが、これは患者さんに説明をしなくていいというふうに私どもは考えているのではなくて、感染症新法におきまして法律で一律に義務づけるというよりは、患者の心理状態などに配慮しながら主治医が適切に行っていただくということが適切だという判断のもとに法文上の整理を行ったわけでございまして、実際は、届け出た旨、それからそういう病気の場合はどういうふうにすればいいのか、そういう点も含めて医師から本人に説明を行っていただくということが望ましいというふうに考えているわけでございます。  私どもといたしましては、以上のような考え方に立ちまして、届け出を行ったことについて患者、保護者に対しまして十分説明されるよう、医師など関係者に対しまして理解と協力を求めていきたいと考えているところでございます。
  101. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 基本的な方向なり立場では一致をして、各論で一つ、二つ議論をさせていただいておるわけでございますけれども、前段申し上げた患者団体の代表の方の参加、あるいは個人情報がひとり歩きしないというあたりはかなり基本的な部分だと思っておりますので、ぜひ、基本的認識を同じくするのであれば、こうした各論にわたっても今後の運用の中で認識を同じくして対応していただきたい。今の答弁で本当は聞き取れるのかもしれませんが、どうも私の聞き取りようが悪いのかもしれません。まずまず実態としては、実効的に確保されるという理解をさせていただきたいと思います。  そういう理解で次に移らせていただきますが、基本認識の中の最後になります。  前段も申し上げましたけれども、パラダイム転換であるならばもっとわかりやすくという法律にしていただきたいなということが一つ。もう一つは、WHOなりが国際保健規則、IHRというのでしょうか、これの今改定作業を行っているところで、来年具体的に改正案がスタートをするということも伺っております。あるいは、アメリカCDC初め世界各国でもさまざまな角度から今公衆衛生法規の見直しなどが進行しているということも伺っております。前の国会で参考人として御意見を伺った静岡県立大学の松田先生がさまざま御指摘をし情報提供いただいているわけでございますけれども、国際的な流れとの整合性という観点が非常に弱いではないかという指摘があるわけなんですね。こういう指摘も受けながら、特に来年IHRが改正をされるということも含めて、五年ごとの見直しとはいうものの、国際的な流れを踏まえた、できるだけ早期な見直しというものが今求められているのではないか、こう思うのですが、その辺、どうでしょう。  どうも最初のスタートになった公衆衛生審議会意見の中でもそういう観点は余り十分ではなかったのかなという気もいたしてございますので、それらを踏まえて、国際基準との整合という観点から早期の見直しの必要性ということについて御見解を伺いたいと思います。
  102. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 WHOの国際保健規則の改正と国内法の整合性についてどのように考えるかという今お尋ねでございます。  御指摘のように、WHOは現在国際保健規則、IHRの改定の作業を進めておりまして、平成十一年五月のWHO総会におきまして採択をし、平成十二年に発効の予定というふうに伺っております。  結論から申し上げますと、平成十二年の発効の時点で、IHRを受けて国内法の改正の必要性があれば速やかに対応するというのが基本的な立場でございます。  ただ、この際一つだけぜひ御理解を賜りたいという観点から、なぜこのIHRを改正するのかということにつきまして、WHO等に照会をいたしましたその考え方を少し御説明をさせていただきたいと思います。  現在、IHRの考え方というのは、検疫伝染病、黄熱なりペストにつきまして、病名を加盟各国がWHOに報告する制度になっているわけでございます。新興・再興感染症が大きな問題になってきました段階で、今後、地球的規模、つまりグローバルな感染症対策というのをどのような考え方でやっていくかというときに、WHOは、できるだけ常時、サーベイランスと言っておりますが、発生動向調査とそれに対する迅速な対応ということを基本方針といたしまして、つまり、特にアフリカ等におきましては病原体の確定診断がつくまでというのはかなり時間を要するわけでございまして、何らかのそういう対応を要する疾患らしいという段階で症状に基づきましてWHOへの報告を求めるというのは、迅速な対応ということを念頭に置いて以上のような改正検討しているわけでございます。  これは、こういう報告を受けたときに、地球上どこでそういう感染症発生したとしても、二十四時間以内に専門家のチームを派遣して、その原因調査なり対策なりに乗り出す、そういう必要性から症候群に基づいて報告を求めるということを検討しているわけでございます。  したがいまして、この新しいIHRの症候群に基づく報告の方式といいますのは、先進国で速やかに病原体の確定診断などができる国につきましては、これは症候群による報告と並行して行っても構わないわけでございまして、特に患者入院とか隔離というようなことになりますと、症候群だけに基づくよりは病気の種類を確定することによってできるだけ人権への制約を限定的に行うという観点からは、病原体の確定診断まで行うということが望ましいわけでございます。  現在、IHRの改定と国内法の関係というのは以上のような関係にあるわけでございまして、先進国が病名をもって国内法を整備する、またWHOに報告するということと、途上国を念頭に置いて症候群で報告するということにつきまして、基本的に矛盾はないものというふうに考えております。  いずれにいたしましても、御指摘のように、平成十二年の発効の時点におきまして、国内法の見直しが必要であれば速やかに対応したいというのが現在の考え方でございます。
  103. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 時間が参りましたので、午前中はこれでとりあえず……。
  104. 木村義雄

    木村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  105. 木村義雄

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。金田誠一君。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  106. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 それでは大きな二点目でございますが、外国人の感染症患者さん等に対する医療提供ということでお伺いをしたいと思うわけでございます。  先般、港町診療所という、外国人のこういう患者さん方をかなり重点的に診ておられる、そういうところのお医者さんがわざわざ国会においでになりまして、今の外国人の方々はどういう実態かということで、私ども資料をいただいて説明を受けたところでございます。  この資料につきましてはそのままコピーをして差し上げてございますから、実態などについては十分認識をされているというふうに思いますので、そういう立場で順次お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、この新しい感染症予防医療法でございますが、この法律は在日外国人、特に不法滞在の方とか、あるいはオーバーステイになっている方とか、こういう在日外国人の方にも適用を当然のこととしてされるのだろうと思うわけでございますが、この確認が一点。  そして、ここには適正かつ良質な医療を受ける権利といいますか、そういう人権保障規定もある、あるいは国、地方公共団体の責務も定められているわけでございますけれども医療保険に加入していない外国人の方々の医療を受ける権利も含めてこの法律適用される、当然のことだと思うわけでございますが、その辺のところをまずお聞かせいただきたいと思います。
  107. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず最初のお尋ねでございますが、本法案では「患者」と記されている規定につきましては、日本人、外国人を問わず、感染症患者であれば適用されます。  すなわち、この法案に基づく一類感染症または二類感染症患者等に対する入院措置は、感染症の社会への蔓延防止の観点から行われるものであり、公的医療保険の加入者であればその残余の部分につきまして公費により、また、医療保険未加入者である場合については全額公費負担により入院措置に伴う医療費が賄われるものでございます。  なお、この取り扱いにつきましては、結果的にその外国人患者等が日本に不法に滞在している者であることが判明した場合にあっても同様でございます。健康保険に加入していない外国人についても、入院措置に伴う医療費は、本法の適用により全額公費負担によって賄われるということでございます。  そこでお尋ねは、法第三条の「国及び地方公共団体の責務」に「良質かつ適切な医療」とあるが、これは不法滞在者にも適用されるのかというお尋ねであったと思います。  この三条の規定は国及び地方公共団体の責務として「感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」そういう規定でございまして、この適用は対象者の国籍や滞在資格によって相違が生ずるものではないという理解でございます。
  108. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 まず、この法律自体は外国人の方を除外しているものではない、あまねく感染症患者さん等に適用されるということが確認されたろうと思うわけでございます。  そこで問題は、第三条国の責務として「感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」ということになっているわけでございますけれども、したがって、この法律が施行された暁には、在日外国人の不法滞在であろうがオーバーステイであろうが、そういう方々にはこの良質かつ適切な医療提供されるようになるのだということだろうと思うのです。  そこで具体的にお聞かせをいただきたいわけでございますが、健保や国保という医療保険に加入していない外国人に対しては、先ほどの答弁では公費によってという御答弁もありましたけれども、三十七条は、一類、二類の感染症患者さんには公費によって、健康保険に加入している分はその保険によってという、保険と公費の使い分けの規定があるわけですね。  しかし、一類、二類以外の感染症にかかった場合、例えばO157に罹患をしたとかあるいはHIVに感染をしたとかいう外国人の患者さんの場合で、国保にも入っていない、健保にも入っていないという場合で、なおかつ御自身でも支払い能力がないという場合は、医療はどのように提供されることになりますでしょうか。
  109. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 健保、国保に加入してない外国人が新感染症法の三類、四類の感染症患者になって医療を受けたときの医療費の支払いはどうなるか、こういうお尋ねだと思います。  先ほどもお答えいたしましたように、本法案におきましては、法律に基づいて入院いたしました一類感染症、二類感染症及び新感染症患者に対しましては、医療に要する費用を都道府県が負担することと規定されており、これは医療保険各法との調整の規定がございますのはさっき申し上げたとおりでございます。  そこで、三類感染症、四類感染症につきましては、この法律におきましては、感染力や罹患した場合の重篤性などの観点から法律に基づく入院は必要ない、そういう整理をしているところでございまして、医療費の支払いという観点からは一般の医療と同様の扱いで行われる。つまり、三類感染症、四類感染症の場合は他の病気の患者さんと全く同じに扱うということが基本的な考え方でございますので、そこは全く差別なくといいますか、この感染症新法による特別の扱いかないというのが、制度上そうなっているということでございます。
  110. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 しかし、一般の医療と同じであれば困るのではないでしょうか。承知でそういう御答弁をされているのだろうとは思うわけでございますけれども。  一般の患者さんと同様、一般の医療と同様な扱いになるのですよといった場合、日本国籍の人間であれば国民皆保険でございますから健保か国保かどっちかに必ず入っているということになるわけですね。無保険者というのは原則いないことになっているわけですが、在日外国人の方々も無保険者というのはいないことになっていますか。そうではないだろうと思うわけですね。この法律自体はそこに不備があるのではないか。したがって、早急に在日外国人の三類、四類感染症に対して医療提供できるような手だてを講じなければならないのではないかということが、申し上げたい結論でございます。  それが、第三条に書かれております「国及び地方公共団体の責務」ということで、国の責務としても当然のこととして、感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講じなければならない、講じるよう努めなければならないですか、いずれにしても義務があるわけですよ。それは、三類、四類は除くとか在日外国人は除くとかということは一切ないわけで、まさにすべて同一に、三類、四類であろうが外国人の方であろうが、国の責務として適切な医療を講じなければならないわけです。  そこでお尋ねをしたのが、それじゃ国保、健保に加入していない外国人の方はどうやって医療を受ければいいのですかとお尋ねをした。一般の医療と同じですというお答えでございますけれども、そのお答えであれば、お医者さんにはかかれない、ただでやってくれるという奇特なお医者さんがあれば別ですが、そうでない限りは医療を受けることができないという御答弁になるわけですが、そういう確認をさせていただいてよろしいのでしょうか。
  111. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法におきます三類感染症患者さん、四類感染症患者さんについては一般の医療患者さんと同様の扱いで行われるということは、制度上そのようになっていると今申し上げたとおりでございます。  ただ、この感染症新法観点から申し上げますと、例えばエイズでございますとか性感染症につきましては、先ほども申し上げましたように特定感染症予防指針というものをつくりまして、その中で、検査法や治療法等に対する研究の推進でございますとか医療提供体制の整備などを通じまして、医療現場において良質かつ適切な医療提供を行う、そういうことがございますけれども、直接患者さんなり医療機関にこの法律に基づいて一類なり二類と同趣旨の保険給付なり公費負担を行うということは、制度上想定していないところでございます。
  112. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 したがって、三類、四類感染症にかかった外国人の患者さんで、健保にも国保にも入っていない、個人的にも支払い能力がない方は、ただで診てくれる医療機関を除けば適切な医療は受けられない、こういうことでよろしいのですか。
  113. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 その点につきましては、三類、四類の感染症患者さんだけでなくて、我が国におきます健康保険未加入者の外国人医療全般の問題でございまして、この点につきましては厚生省として以前検討した経緯もございますが、現時点におきましては、明確な対処方針といいますか、まだ示し得ていない段階でございまして、何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  114. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 明確な対処方針を示していないという現状については理解をしているわけです。  そこで、再度それじゃ確認をさせていただきますが、外国人の方で、健保、国保に加入をしていなくて個人的にも支払う能力のない方が感染症にかかった場合、一類、二類とはっきりした場合は公費で見られるかもしれませんけれども、そうでない感染症の場合は、この法律に言う「良質かつ適切な医療」は受けられないということを先ほど来確認をさせていただいているわけでございますが、そのとおりですというふうにお答えいただければ結構でございます。
  115. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 法律の解釈上はそのとおりでございます。
  116. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういうふうになっているわけです、大臣。しかし、法律には、第三条国の責務、「感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうになっているわけです。これは法律に基づいて、今の何の制度もない状態は違法の状態――違法というか、お役人さんが言うのであれば、恐らく違法とはにわかには言い切れないとかいうことをおっしゃるかもしれませんが、少なくとも適法で問題のない状態ではない、非常に問題のある状態だということだけは確かだろうと思うわけでございます。  今、三類、四類の感染症患者さんで、健保に加入していなくて支払い能力のない方は良質かつ適切な医療が受けられない、これが現状であるということを確認をいただいたわけなんですけれども、それじゃどうするかということをこれから伺ってまいりたいと思います。  そういう状態であれば、健保、国保に入れればいいわけでございます。保険局長、いらっしゃるわけでございますけれども、そういう不法滞在あるいはオーバーステイという方が病気になった、こういう状態で、国保に入っておらない、健保にも入っておらないという場合、この方がもし日本人であれば、役所の窓口に行って保険証を下さいと言うといただけるわけです。それがいいか悪いかというと、私、かねがね問題点は指摘はしております。指摘はしておりますけれども、まずは現状としては、日本人であればそういう手だてがある。  ところが、外国人では、そういう手だてがあるのでしょうか、ないのでしょうか。三類、四類、健保にも入っていない、国保にも入っていない、支払い能力もない方は医療を受けられないというところまでは確認させていただいたわけですが、それじゃどうするかというとき、一つの方法として国保にすぐ入ればいいじゃないか。外国人登録も恐らくないといったような方が、外国人登録と国保の加入と同時にできるとか、そういう道筋がもしあるのであれば、それはそれで、いい悪いは別にして、とりあえず医療は受けられるということになると思いますが、その辺のところはどうなんでしょう。
  117. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  医療保険という形での医療提供ということで申し上げれば、結論的には、先生おっしゃるようないわゆる不法滞在だとかオーバーステイの方につきまして、国民健康保険適用されるということにはなっておらないというのが結論でございます。  何がゆえにそうなっておるかということにつきましては、国民健康保険は市町村が行っておるわけでありますけれども、その区域内に住所を有しておられます方を被保険者といたして強制的に保険に加入をしていただくということで、それらを地域社会のいわば一員とみなして、いわば相互扶助で成り立っているという社会保険制度でございます。  したがって、被保険者の方は市町村に生活の本拠を有しておられる方を対象にするということで、不法滞在等の外国人の方につきましては、国内にその生活の本拠を置くことができるという法的地位を有しないということで、法文上も、国民健康保険法の五条に「住所を有する者」というのを条件にいたしておりますものですから、それは先ほど結論で申し上げましたように、そういう場合には国民健康保険適用対象という形にはならないというのが、事実としてのお尋ねについてお答え申し上げられるところでございます。
  118. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 国保ににわかに入って、そちらの給付を期待をするということも事実上不可能だというお答えだと思います。  それではどうするかということでございます。そのどうするかという答えをきょうばいただけるのではないかなと思って、連休前に実は、質問取りというのでしょうか、いらした方にはくれぐれもということでお願いをしてあったのですが、その答えが現時点ではいただけなくて残念ですけれども、質問時間の終わる二時までには何とかその答えを示していただければありがたいと思うわけでございます。  この公衆衛生審議会意見書の四ページでございますけれども、ここに「患者・感染者の人権の尊重」という項目がございます。その人権の中には「一人一人が安心して医療を受けて早期に社会に復帰できる等の健康な生活を営むことができる権利」というのも、その権利の中に当然含まれておるわけでございまして、最後に、「なお、国内に居住一滞在する外国人についても、国民と同様の取扱いとすることが必要である。」という指摘があるわけでございます。  これはもっともな指摘だろう。外国人であるから、住所を有しているとか有していないとか、滞在期間が切れたとか切れないとか、いろいろあったにしても、人間として生きている以上は、病気になって、特に感染症になったら、安心して医療を受けて早期に社会復帰できる権利、この個人の権利という側面から見ても、あるいは先ほど来転換することになった社会防衛、感染防止という観点から見ても、感染症にかかっている方が医療も受けられない、放置されているという状況はどんな観点から見ても決して好ましいことではないですし、あり得べきことではない。したがって、審議会意見も、「国内に居住・滞在する外国人についても、国民と同様の取扱い」をということでわざわざ明記をしているわけでございます。  これらを受けて、さあどうするということでございます。現時点では国として何ら対応する手だてはないということでございますが、こういう指摘を受けて、新感染症予防医療法が近々成立するという状況を受けて、どう対応されますでしょうか。  今の制度では国保の適用はないのですよということもわかりましたけれども、国保の適用をさせるか、あるいは別途国として何らかの措置を講ずるか、いずれにしても、このままでいいということではないということだと思います。その辺のところはどうでしょう、この感染症公衆衛生審議会意見も踏まえて、さあどうするべきかというあたりをお聞かせいただきたいと思うのです。
  119. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今先生御指摘公衆衛生審議会意見書、「新しい時代の感染症対策について」の四ページに記載されております「国内に居住・滞在する外国人についても、国民と同様の取扱いとすることが必要である。」これは明確にこの報告書に記載されているわけでございまして、これは、具体的にこの法案におきましては、入院措置の際の手続の保障、医療費の負担並びにプライバシーの保護等につきまして、報告書の内容が反映された形になっているわけでございます。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、三類とか四類につきましては、感染症拡大を防ぐという観点から行政に基づく規制としての入院措置というのが必要ないことから、通常の医療と同じ扱いになっているわけでございますが、それを御理解いただいた上で、さらに何か新しい対応策はないのかという御指摘だと思います。  その点につきましては、私の方から具体的なことを現時点で申し上げることはなかなか難しいわけでございますが、今後、これは厚生省全体として受けとめまして、医療に係る諸制度の運用方法なり適用方法を検討していくという中で何らかの方策を検討、研究するということではなかろうかと思っております。
  120. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 にわかに、これこれこういうことでこうしますよという答弁にまではなかなか至らないだろうなということでは理解をいたします。  しかし、単なる検討ということではいかがなものか、少なくとももっと明確にその方向性を示した上で、いついつまでに、例えばこの法律が施行されるときにはその裏づけとして当然施行されるなどという具体的な回答を欲しいものだなと思うわけでございまして、そういう立場から少し確認をさせていただきたいと思います。  まず、今申し上げましたこの感染症対策についての意見の中で、国内に居住、滞在する外国人についても同様の取り扱いをすることが必要であるということの意味は、一類、二類が他に蔓延をするから、その防止のために強制的な措置を要するから一類、二類については必要なんだという意味ではない。これは、三類、四類であろうが、安心して医療を受け早期に社会に復帰できるなど健康な生活を営むことができる権利ということで書かれているわけでございまして、それについて外国人についても同様な扱いということが記載されているわけでありまして、一類、二類ということにどうも局長はこだわっておられるようでございますが、ここで指摘される意味は、一類、二類はそうしろとかではなくて、すべからく良質かつ適切な医療を受ける権利という観点に立って、それが外国人にも適用されるように必要な措置をとるという意味合いだというふうに厚生省としても受けとめているということをまず確認していただきたいと思います。
  121. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のこの三条の「国及び地方公共団体の責務」に「良質かつ適切な医療」とありますのは、この法律の基本的な理念をあらわして地方自治体の責務を規定しているというふうに理解しておるわけでございまして、この条文の適用は対象者の国籍や滞在資格によって相違が生ずるものではないという理解をしております。
  122. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 したがって、在日外国人、それが適法か違法か、あるいは感染症の種類が一類か四類かなどということではなくて、すべて良質かつ適切な医療を受けるということは権利として外国人にも保障されるべきであるという認識に立つということでよろしいですね。
  123. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 この法律の中では、不法滞在者も含めて、外国人も含めて、権利という形では規定をしておりませんが、国及び地方自治体の責務といたしまして、国籍や滞在資格を問わず、良質かつ適切な医療提供することは国及び地方公共団体の責務であるというふうに規定をしているわけでございます。
  124. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 したがって、これから検討をするに際しては、そうした方々に例えば保険適用という方法に道を開くということもあるかもしれません、あるいはそこまで至らずとも、別途何らかの公費負担等の措置をとれるかもしれませんけれども、現状ではただで診てくれる医療機関以外は医療を受けられないという状況なわけですから、そういう状況を解決をする、そのために検討をするということでもちろんよろしいですね。ぜひそのことを確認をさせていただきたいと思います。
  125. 宮下創平

    宮下国務大臣 ごもっともな質問でございまして、私も厚生大臣になりましてから、この種の問題、そう詳しくはございませんが、お聞きして、なるほど、いろいろ問題があるなということを感じています。  つまり、滞在の外国人でございましても、適法に滞在をしている外国人もいらっしゃいます。この方々は、今局長の言われましたように、保険システムを利用しまして、そして保険適用もございますし、自己負担分は本人負担ということで三類、四類についても仕分けされていると存じますが、不法滞在外国人ということになりますと国保にも加入できない。場合によると、健保の方であるいは事実上そういうことは可能かなという感じもしないではございません。非常に数が多いですから、実際中小企業等に就労している不法滞在外国人と言われる人たちも。これは否定できない事実だと存じます。そういう不法滞在の外国人の方々はどうかということですが、一類感染症と二類感染症は公費負担でやるということが原則でございますから、これは一応不法であろうとなかろうとそこは問わないという仕分けになっておりますが、三類と四類はやはり自己負担を原則にするというのが医療法の建前だと思うのですね、保険に入っていない場合は。  委員の方の御指摘は、資力が絶対的にない、ただでなければかかれないんだという前提に立っておられますけれども、そこは少しよく研究してみないと。不法滞在撤去を要求するとか、いろいろなケースがあると思いますけれども、事実上定着している場合もありますので、その場合はどうするかというのは依然問題が残ると存じますから。  これは今までも検討会をやっていろいろ検討して、救急医療等につきましてはある一定限度を超えるものは国が公費で見るということもございます、救急医療センター等に運び込まれた場合。したがって、それらとの均衡等もいろいろございますから、今後、これは不法滞在者をどう対応していくかという広い観点を含めて、その中で医療の給付をどうするかということを考えていくべきだと思います。  ただ、私は個人的に、今度の新感染症予防法は病気を蔓延させないという一つの大きな使命がありますから、そういう観点も加味しながら検討させていただく値打ちのある話だなというように感じます。
  126. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 せっかく大臣御答弁いただいたわけですが、ちょっとくどいようで申しわけなく思いますけれども、もう少し聞かせていただきたいと思うわけでございます。  無保険者の場合は自己負担が原則ということは、そのとおりなんだろうと思います。問題だと思いますのは、自己負担で払える方はいいわけですけれども、とても払える状況にない方が非常に多いということで問題指摘をさせていただいているということをまず御認識をいただければありがたいなと思うわけでございます。  どういう聞き方がよろしいんでしょうか、まず、これは法律に基づいて、どうこの法律を運用するかという観点から聞かせていただきます。  この法律が施行されたとします。第三条には、「感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という、国に義務が課せられることになるわけでございます。そして、今現実に想定をされているというか今現在でも起こっていることは、不法滞在の外国人の医療がよほど奇特な病院などでなければなされておらない、一般的にはたらい回しとかいろいろな状況になっているということでございます。これがまず解決すべき問題だということを明確にしていただきたい。解決すべき問題であって、本来であれば新法が施行されたと同時に国の責務としてそのことが果たされる、少なくとも新法施行に合わせてこのことが何らかの措置がとられる、そのための具体的な検討がなされる、先ほど来の御答弁というのはそう受けとめてよろしいものなんでしょうか。
  127. 宮下創平

    宮下国務大臣 私の申し上げたのは、新法に基づく医療給付が何人も問わず行われることが必要であるということは、三条の今御議論のとおりでございます。ただし、その費用負担をどうするかという問題だと思うのですね、わかりやすく分解してみますと。  そして、費用負担の場合には、適法な滞在外国人は保険等に入っておりまして、その部分は保険料も払いながら給付を受けておる、自己負担分は払うということになっておるわけでございまして、それらとの均衡と言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、不法滞在者の費用負担のあり方については、不法滞在者は資力がないからと決めつけて全部全額公費負担とかなんとかいうことはいかがかなという感じを率直に持ちます。負担できる人には負担していただくというのは、これは当然だと思います。  どうしても負担できない人たちについては、この感染症の重要性にかんがみて、公費ないしはそれに準ずる形で何らかの方法を検討する、こういうことではないかなというように思います。
  128. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 私も冒頭からそういう趣旨で申し上げているつもりでおりまして、払える方にまで全部公費でというつもりはございません。  問題になっておるのは、払えない方がどうなのかということでございまして、払えない方に対して何らかの措置をとらなければならない、それが公衆衛生審議会からも指摘をされていることであり、今、それを受けた形でできた法律の中でも国の責務として規定をされているということだろうと思うわけでございます。  「良質かつ適切な医療を受けられるように」ということは、医療機関などが医療忌避だとかそういうことがないように、あるいは治療薬の開発なども適正に行われるということはもとよりですけれども、当然医療費の支払い、負担区分といいますか、だれがどのように負担をするのか、それが可能な形で制度化されるということなども含んでいると思うのです。良質かつ適切な医療が受けられるようにするということは、そのとおりだと思うわけでございます。  そこで、そういう観点からしますと、大臣の御答弁と私の立場はそう変わってはいないだろうな、こう思って受けとめさせていただきました。そうした場合に、御自身で負担できる方は別として、そうでない方に医療費の支払いをどうしていくか。そのことは、この法律あるいは意見、これらに基づいて当然制度化されるべきものと思っておるわけでございます。先ほど来、検討いただけるということでございますけれども、その検討の中身は、そういう立場に立って、そしてこの法律の施行までに検討されるということで理解をしてよろしいものでしょうか。
  129. 宮下創平

    宮下国務大臣 不法滞在者ということでございますので、医療の分野を超えてどう対応するかという国として大きな課題があると思うのですね。そういう位置づけの中で、特に医療関係においてはこれは感染をするというような非常に重大な問題を含んでおりますから、そういう視点も踏まえながら検討すべき課題だなというように私は感じております。  ただ、委員の御指摘のように、この法律の施行、来年の四月一日だと思いますが、それまでに結論が得られるかどうかという点についてはちょっと明確にお答えできませんが、検討はさるべき話だというように理解しております。
  130. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 余りすっきりしたお答えにならなくてちょっと残念でございますけれども大臣、これは私は国の威信にかかわる問題だろうと思っているのです。  諸外国、これは資料も差し上げてございますけれども、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、それぞれ何らかの国としての手だてがされている。州によったり県によったりしてさまざまな違いがあるところもあるようでございますけれども、何らかの手だてが講じられているということだろうと思います。  特に、日本の場合、不法滞在になっている外国人、オーバーステイになっている外国人の方々、建設現場その他でそうした労働に従事をされて、滞在期間が切れて、被用者保険などにも入れないという状態の方が多いのではないか。要は日本社会の下支えといいますか、そういう労働力として日本社会にも貢献をされる、しかし、不法滞在とかオーバーステイとかいう法律に抵触するがために、社会保険、社会保障の適正な手続をとることができないという方々だろうと思うわけでございます。  本来、オーバーステイあるいは不法滞在等については、入国管理だとかそういう側面からさまざまな措置がとられるべきだということを私は否定しようとも何も思っておりません。それは、そういう観点から適切に措置がされるべきことだろうと思うわけでございます。  しかし、いずれにしても、現実に我が国に滞在をしていて病気にかかるといったときに、一人の人間として、人道的な立場から適正な医療提供というものをしてさしあげることが、これは日本という国家の威信にかけて私は当然必要なことだろうと思うわけでございまして、そのことがこの感染症予防法を、不法滞在であるとか外国人であるとかいう理由をもって特別な規定は一切置いておらないということにも通じてくることだろうと思うわけでございます。  不法滞在というものがあり、そうした観点から云々という御答弁もありましたけれども、そうした観点からしかるべく措置をとる、例えば先般もコンテナで入ってこられたとかいろいろなことがございます、そうした方々にはしかるべき措置をとる。あるいは滞在期間が切れた方、御本人を含めてあるいは事業主の方を含めて、法律法律としてきちんと運用するということは当然のこととして、その上で、人道的な観点から良質かつ適切な医療提供することが当然のこととしてこの法律では要求をされているということを再三申し上げておるつもりでございます。  その辺について御同意いただけるとすれば御同意いただいた上で、私はこの法律の施行と同時にということを申し上げましたけれども、それが多少前後したからどうこうと言うつもりはございません、そうした一定のめどをつけての、検討の基本的な考え方ということをいま一度整理をしてお示しいただきたいなと思うわけでございます。
  131. 宮下創平

    宮下国務大臣 不法滞在外国人に対する医療の諸外国の例等も、今資料をちょっと拝見をしておりましたが、国によりましては不法滞在者の外国人の医療費は自費である、ただし、支払い能力がない場合は医療機関等が負担を背負うとか、あるいは主に公的医療機関が負担するとかいうことがございます。また、ドイツなんかは別個の制度を設けておりまして、一般の社会扶助制度とは別体系の難民認定申請者給付法というようなものを定めておりまして、不法滞在外国人はその扱いをしているというような点もございます。  私の方も大変これは重要な点だと思います。私もそんな感じを持ちました。したがって、よく検討させていただきまずから、期限はちょっと御勘弁願いまして、何とかこの感染症が立派に役目を果たせるようにしなければならぬと思いますので、そういう視点から検討させていただきます。
  132. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 共通の理解に立つことができたなと思ってございますので、ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  その上でまたこれを申し上げると、何かまたかさにかかっているみたいな受けとめられ方をすると困るなと思いながら実は申し上げるわけなんですけれども感染症という切り口から今質問させていただきました。感染症予防法あるいはそのもとになった公衆衛生審議会意見、これらを根拠として私は質問させていただいたわけでございますけれども、実は、病気というものは、感染症であるのかないのかということは診断を受けてみなければわからない。熱が出た、下痢をした、さまざまな症状が出た、それが果たして感染症なのかどうなのかということは、お医者さんにかかってみて、感染症として診断されるというのも結構時間を恐らく要するのかもしれません。O157がただの下痢だとかいうことの症状から出発をするのかもしれません。したがって、ぜひこれはあわせて検討いただきたいということでございます。  まず第一義的には、感染症予防医療法に基づく制度をきちんと整えていただく、これが第一義でございますけれども、そもそも感染症感染症でないかというものは、そういうことでございます。お医者さんにがかった、診断の結果感染症でないから帰ってくれ、もう医療費が払えないんだったら置いておけないというようなことには現実問題としてはなりにくいだろう、こう思うわけでございます。  諸外国の状況も申し上げましたし、あるいは東京近辺の都県、東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬、あるいは兵庫にも制度があるということなんですが、特に外国人の方が多く居住されている地方自治体では独自の補助制度などを策定をしているわけでございます。この中でも感染症には限定をしておらない、この資料で見る限りは感染症限定というものはないわけでございます。  したがって、国として制度化する場合も、病気というものはそもそもかかってみなければということからして、感染症だから公費で見た、そうでなければ見ない、出ていけということになるものでもないということからして、恐らく病気そのものを対象とする制度にならざるを得ないのかな。というより、私から言わせると、私の立場からすれば、ぜひならせていただきたい。感染症に限定するのではなくて、病気一般というものに対して、国家の威信というものにかけて、人道的見地からしかるべく制度を検討していただきたい、感染症はもとよりでございますけれども、そういう思いでございます。この思いについて一言だけ御答弁いただければありがたいと思います。
  133. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のように、東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬等では、地方自治体が独自の補助対象等を定めまして、対象外国人に対する医療の補助制度をやっております。  私も拝見いたしまして、これは感染症だけに限ったものではないなということも理解できます。そういう意味で、先ほど検討すると申しましたが、国、地方との関係、そういうこともきちっと整理をして、どういう体系がいいかということをこれから検討してまいりたいと思います。
  134. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 どうもありがとうございます。ぜひひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  それでは、最後の質問になりますけれども、去る五月二十二日の厚生委員会で、答弁留保といいまずか、後ほど答弁ということになりました四項目について順次お尋ねをしたいと思います。  時間がわずかになりましたので、まとめて御回答いただけますでしょうか。  積み残しになっておりましたのは、一つは、伝染病予防法は戦後いつの時点で社会防衛中心の政策を転換すべきであったのか。私などは最低でも憲法の施行ということも一つの大きなメルクマールになるのかなというふうに思いますが、一つは、伝染病予防法はいつの時点で転換すべきであったか。  二つ目は、エイズ予防制定時は、今で言うところの一類から四類の何類に該当すると当時は考えていたかということ。  三点目は、エイズ予防法廃止の理由となった問題点は何なのか。  四点目として、エイズ予防法が医療中心にならなかった、社会防衛中心になった理由は何か。なぜこの時点でという疑問が尽きないわけでございます。また、この中に通報義務というものが盛り込まれたわけでございますけれども、なぜ他にないこのような通報義務などが盛り込まれたのか。  この点が積み残しということになっておりましたものですから、一括してお答えいただければと思います。
  135. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず最初のお尋ねでございますが、社会防衛中心の伝染病予防法は今から考えるといつの時点で転換すべきであったかということでございます。  明治三十年からずっと終戦までの間には、恐らく伝染病学などにつきまして特段の進歩もございませんでしたし、人権に対する考え方というものを考えれば、戦後に持ち越されたというのはそのとおりかなという感じがいたします。  そこで、終戦のときはどうかというお尋ねでございますが、ちょうど伝染病予防法規定します法定伝染病というのは、昭和二十年から二十一年、二十二年、二十三年、コレラ、赤痢を初めといたしまして急性伝染病の大流行があった状況でございまして、そういうことから考えれば、その時点でというのはなかなか難しかったのかなと思います。  そういう見直しの時期というのは、例えば抗生物質の進歩でございますとか、または、一九六六年に国連で国際人権規約というものを採択しているわけでございますが、そういうときに合わせて、例えば五十四年に我が国も批准しておりますが、そういうことがどうなのかとか、それからいろいろ――昭和三十四年からポリオの大流行でございますとか、その後ラッサ熱など、当時国際伝染病と呼んでおりましたが、そういうことも非常に問題になりました。  そういうことからいいますと、感染症対策の見直しというのは単一の要因だけで判断すべきではなくて、いろいろ国民人権に対する意識の問題とか医学医療進歩などを総合的に判断するということから考えますと、現時点におきましては、特定のどの時期に改正すべきであったかというのはなかなか正確にお答えするのは非常に難しいのではないかということでお答えをさせていただきまして、何とぞ御容赦をいただきたいと思います。  その次の、エイズ予防制定当時は、エイズは今新感染症法で言う何類に該当するかというお尋ねでございます。  エイズにつきましては、エイズ予防制定当時におきましても、病態なりいろいろなものから判断いたしまして一類、二類には該当いたしませんし、日常生活で感染することも考えにくいことから、結論からいいますと、強いて分類すれば四類に該当するもの、こういうことにつきまして、当時厚生省の広報誌の「厚生」におきます厚生大臣談話などにおきまして、その旨、厚生省考え方をお示ししているところでございます。  それから、エイズ予防法廃止の理由となった問題点は何かということでございます。  この点につきましては、今回エイズ予防法全般の見直しの中で、エイズ予防法に規定されております感染者の遵守事項、六条でございますとか、医師の通報、それから都道府県知事の健康診断の勧告等、これら予防措置は要らなくなったというのが基本的な考え方でございまして、そのような考え方は、小委員会におきます討論の中でも、多種多様な感染症事例のすべてを想定いたしまして、具体的に発動、執行しがたいような強力な措置を網羅的に規定することは法体系としては整っていても機能的ではない、国民の理解を求めて対策を進めていくということ、それから人権に対する配慮ということを感染症対策と両立させるという、そのような考え方に基づきまして今回エイズ予防法を廃止するということになったと理解をしているところでございます。  それから、最後のお尋ねの、なぜエイズ予防法が当時法律の中に医療が中心にならなかったかということでございます。  当時、エイズ予防法を策定した時点におきましては、現在のように有効な確立された治療法がなかったというのが一番大きな原因でございます。AZTが我が国におきまして実際に使えるようになりましたのは、エイズ予防法を国会に提案した後でございまして、検討の過程におきましては、一有効な確立された治療法がないということ、また、対症療法の効果も非常に限定的で、発症すれば急速に進行して悪くなる、そういうことから医療規定を入れなかったものでございます。  また、なぜ通報の義務の規定が入れられたかということでございますが、松本におきます外国人の女性の事例でございますとか、それから六十二年一月の初めての異性間感染の事例でございますとか、いろいろ当時状況がございまして、当時といたしましては、意図的にといいますか、故意の感染行為をする者に対して具体的にどう行政庁が対応するのかということがいろいろ議論になったわけでございまして、エイズ予防法におきましてはあくまでも例外的な措置として規定したわけでございますが、実際に発動された事例はないわけでございます。  したがいまして、このような規定を今回廃止いたしまして、新しい人権を尊重するということを基本にいたしましたエイズ対策考え方を新しい感染症新法の中で総合的に対応していくということにさせていただいたわけでございます。
  136. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 一通り御答弁をいただいたわけでございますが、例えば一項目ずつをとってもまだまだ議論の余地のあるところだろうなと思うわけでございまして、そういう意味では、今回の御答弁は御答弁としてお聞きをしておきたいな、時間もございませんので、それしかやむを得ないだろう、こう思うわけでございます。  ただ、一つ、こうした事例をどうやって検証していって、どうやってそれこそ教訓として今後に生かす、これから修正案の中で教訓として今後に生かすということを挿入させていただきたいと思っておるわけでございますけれども、その教訓として今後に生かすためにも、一つ一つなぜこうだったのか、本来はこうあるべきではなかったかということが明らかになってしかるべきだろう。そのことについて、政府部内のみならず国民的な合意形成というものが積み上げられていくことが、教訓として今後に生かすことになるのだろうと思うわけでございます。  例えば薬害でもサリドマイドがあり、スモンがありと、いろいろなことがあったにもかかわらず、積み上げられて教訓として今後に生かされているかというと、薬害が絶えないこともございます。あるいは立法の上でも伝染病予防法という明治の法律があり、あるいはらい予防法があり、なおかつエイズ予防法があったということなども、教訓としての生かし方で私は不備があったのではないかなと思うわけでございます。  例えばエイズ予防法の成立から廃止に至るまで何が問題で本来どうあるべきであったのかというものが、きちんとした報告書として本来政府みずからが策定して世に問う、それが検証されてさらに完成された報告になるという手だてが、エイズ予防法もしかり、あるいは非加熱製剤の採用から廃止に至るまでもしかり、あるいはスモンだってサリドマイドだってそうだったのではないかなという気がしてなりません。  前回積み残しになった項目のほかに、まだまだ例えばらい予防法についてもいろいろ議論をしたいところでございますけれども、時間がありませんので、これで終わらせていただきます。  ただ、感想としては、教訓として今後に生かすためには、みずからが検証する、それを第三者の目にさらしてさらに批判を受けて完成度の高いものに仕上げていく、そのことが私は必要だろう、ぜひ御検討いただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  137. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 青山二三さん。
  138. 青山二三

    ○青山(二)委員 平和・改革の青山二三でございます。  法案に入ります前に、危機管理観点からお伺いしておきたいことがございます。  去る七月、和歌山市内におきまして毒物カレー事件が起こり、その後新潟市ではアジ化ナトリウムがポットに入れられました事件、また東京都の中学生によるにせやせ薬事件、長野県の缶入りウーロン茶事件、奈良県では殺虫剤入り清涼飲料水が自動販売機の取り出し口に置かれるなど、連鎖的に毒物混入による事件が次々に起こっております。  こうした一連の毒物混入事件を受けまして、厚生省は、先日、全国の衛生担当課長らを集めた緊急会議を開いたということでございますけれども、その会議ではどのようなことが話し合われたのか、お伺いをいたします。
  139. 真野章

    ○真野政府委員 去る九月七日に、和歌山市等におきます毒物混入事件など地域住民の生命、健康に甚大な影響を与える事件に対しまして、地方公共団体におきまして部局横断的な総合的な取り組みをお願いをしたいということで、健康危機管理体制の整備をお願いをするということで、厚生省として初めて各都道府県の健康危機管理を担当する課長にお集まりをいただきました。  具体的には、厚生省におきます健康危機管理に関します部局横断的な組織でございます健康危機管理調整会議厚生省が設置をしておりますが、その趣旨、それから平時並びに緊急時の対策規定をいたしております健康危機管理実施要領の策定等、健康危機管理対策への取り組みについて厚生省の取り組みを御紹介をすると同時に、都道府県等におきます関係部局間の情報の共有化、医療機関検査機関等との連携確保など、健康危機管理体制の整備をお願いをしたところでございます。  あわせまして、食中毒対策、救急医療体制、毒物、劇物対策等について配慮すべき事項等の徹底を図ったところでございます。
  140. 青山二三

    ○青山(二)委員 一連のこの毒物混入事件を教訓にいたしまして、各自治体では対応マニュアルを作成したり、あるいは作成を検討しているということでございますが、これらの事件では行政側の対応のおくれというのが大変目立っております。  和歌山市の毒物カレー事件の場合は、最初は嘔吐や下痢症状から食中毒と診断されました。それが後になって初期治療のおくれの要因とされるということは、大変残念な結果だと思っております。このことから、原因早期特定が重要であることが実感をされるわけでございます。しかし、今回の場合、症状だけでは毒物との判断ができずに、仮にその疑いを持ったとしても、通常は水質検査を主としている市の衛生機関では判断が難しいということでございまして、保健所検査には限界があるということが明らかになっております。  そこで、対応マニュアルの作成も不可欠でありますが、それとともに重要なことは検査体制の充実であると考えます。各自治体では、検査体制の整備は重要課題であると認識はしておりますけれども、具体的な対策は進んでいない状況でございます。そこで、厚生省としてもこの検査体制の整備充実について早急に取り組む必要がある、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  141. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 本年の七月に、今先生御指摘のございました和歌山市におきましてカレーへの毒物混入事件があったわけでございますが、この事案を受けまして、七月二十九日に、各都道府県等に対しまして、食中毒の発生時の際には化学物質を含めましてあらゆる原因物質の可能性を考慮して調査を実施すること、あるいは、休日、深夜の食中毒発生に備えた連絡先の周知といった点を改めて徹底したところでございます。  また、先日の長野県におきます缶入りウーロン茶への青酸化合物混入事件を受けまして、九月三日に、各都道府県等に対しまして、食品販売店に対します監視の強化、あるいは異常を認めました食品の収去検査の実施、あるいは食品販売店の営業者に対します製品管理の徹底等の指導を指示したところでございます。  御指摘検査体制の点につきましても、都道府県の衛生研究所あるいは厚生大臣の指定した検査機関等々で対応しているわけでございますけれども、これも非常に物質が多岐にわたりますものでございますから、一つの機関で全部実施するということは必ずしも容易なことではございませんけれども、各機関との連携を十分強化いたしまして、こういった事案にできるだけ速やかに対処できるようにいたしたいと考えております。
  142. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変難しいということはよくわかるわけでございますけれども国民に安心していただけるように頑張っていただきたいと思います。  さらに、毒物や薬物による事件が発生いたしましたときに、その種別を的確に検査できる専門家とかあるいは人材の育成も課題であると思います。  我が国ではこうした専門家を置いていない自治体が、全国四十七都道府県のうち三十二府県に上ることが新聞社の調査で明らかになっております。そして、これらのスタッフの毒物に関する経験が不十分であるというようなことも指摘をされておりまして、これを補うための毒物対策を目的にした研修会の実施などが急がれるのではないでしょうか。毒物事件は社会不安に直結するものであり、このような事件を全国に波及させないためにも、食品管理を徹底させるとともに、検査体制や研修など厚生省としてすぐに取り組める対策からやっていただきたい、このように思うわけでございます。  そして、今後、未知の毒物混入事件や患者が大量に発生する中毒事件などに備えまして、高度救命救急センターの活用を中心とした体制の整備も急ぐべきである、このように思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  143. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、原因不明の中毒事故が発生した場合の対応等についてのお尋ねでございますが、申し上げるまでもなく、中毒患者に対し迅速かつ効果的な診断治療を行うことが第一でございます。  そのために、現在地方衛生研究所等における検査体制はおおむね整備されておりますけれども、さらに、今御指摘の救命救急センター等の医療機関もこの体制にリンクして利用可能な状況にございますから、充実していきたい。それから、高度救命救急センターを初め救命救急センターにおきましては、日常的な原因物質の特定を行うことがおおむね可能でございますが、さらに幅広くかつ迅速な特定を行うことができますように、高度救命救急センター等の分析機能強化をやってまいりたいと思います。  そしてまた、厚生省としては、日本中毒情報センターというのがございますが、これが化学物質ごとに治療法等に関する情報を二十四時間体制で医療機関提供してありますが、一層の機能強化に努めたい。  さらに、今お話しのように、専門家の育成を初め、保健所、地方衛生研究所等の細菌や化学物質等の検査・分析体制の充実を図って、例えばマニュアルを作成するとか機器の整備をやるとか研修会をさらに充実する等の方法を講じながら、その充実強化を図ってまいりたい、こう思っております。
  144. 青山二三

    ○青山(二)委員 アメリカでは、州と警察、民間医療機関が一体となって毒物検査に当たっておりまして、数時間で迅速な分析を行い治療に役立てている、こういうことが新聞報道されておりますので、ぜひ、厚生省大臣国民が今大変心配に思っている事件でございますので、積極的に取り組んでいただきたい、このようにお願いをいたしておきます。  それでは、今回の法案質疑に入らせていただきます。  まず初めに、宮下大臣は、この法案につきまして、百年ぶりの改正にふさわしい、人権を尊重した、国民が安心できる感染症対策であると考えておられますでしょうか。法案に対する基本的な御認識を伺いたいと思います。
  145. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは委員も御承知だと思いますけれども、一九九六年にWHOにおきまして、「我々は、今や地球規模感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない。」というような警告が発せられておりまして、新興感染症あるいは再興感染症人類脅威を与えていることは事実でございます。  また一方、医学医療進歩がございますし、国民の健康、衛生意識向上等もあります。また、人権の尊重への要請というのが強く出てまいっておりますし、国際交流活発化等も行われております。感染症を取り巻く状況変化は、今御指摘のように、百年前に伝染病予防法がつくられた当時と比べまして大きく変化をいたしております。  こうした状況を踏まえながら、これまでの感染症対策を抜本的に見直しまして、総合的な感染症予防対策を行おう、これによって、医療充実を図るための諸規定を設けまして、国民が安心できるような感染症対策を総合的に構築するという趣旨から本法案を提出したものでございます。
  146. 青山二三

    ○青山(二)委員 この法案の過程でやはり一番問題となったのは、新たな感染症の侵入に備えまして、より効果的な危機管理に重点を置くのか、あるいは患者人権を最優先に据えるのかというところではなかろうかと思います。私は、患者人権の尊重には最大限の配慮がなされなければならないと考えております。  この法案に対しましては、過去に対する反省が欠落している、また、適切な医療を受ける権利が明記されていないと、新たな人権侵害を懸念する声がございます。このような人権侵害懸念の声に対しましては、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  147. 宮下創平

    宮下国務大臣 今までの社会的に隔離をして対応しようということから転換をいたしまして、感染症患者等の人権に配慮するという精神が新法には隅々で記述されております。  法案全体の考え方を示す基本理念におきましても、また、国、地方公共団体、国民の責務におきましても、患者等への人権の配慮、それから同時に感染症予防医療に関する施策を推進するということでこれは明記をしておりまして、医療給付を行うと同時に人権について本当に配慮するということが極めて重要であるという基本的な認識に立ってこの法案がつくられておると存じます。  具体的には、入院手続の問題でありますとか、そのほかに行政不服審査でありますとか、いろいろな点について人権に配慮するそれぞれの規定が設けられておるということでございまして、私は、今回のこの新法は、まさに人権擁護、人権を保護するという点と、良質な医療給付によって感染症を防止する、この二つの柱を調和した法案であるというように考えております。
  148. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣の御答弁は大変調和しているというようにおっしゃっておられますけれども、参議院で修正案が提出されました。患者人権の尊重と適切な医療提供について、政府原案よりは少し前進したとは思いますけれども、やはりそれもわずかなものにとどまっているような思いがいたします。  この修正案の大きな点は、附則第二条におきまして、「この法律規定については、この法律の施行後五年を目途として、感染症流行状況医学医療進歩の推移、国際交流の進展、感染症に関する知識の普及の状況その他この法律の施行の状況等を勘案しつつ検討するものとし、必要があると認められるときは、所要の措置を講ずるものとする。」という見直し条項が加えられたことであると認識をいたしております。  そういたしますと、原案に法律全体の五年を目途とした見直し条項を入れなかったことはやはり手落ちであったと理解してよろしいのでしょうか。この修正案は、患者人権に最大限の努力をした結果出てきた修正案であったと言えるのかどうなのか、修正案に対する評価についてもお伺いしたいと思います。
  149. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の御指摘のように、参議院における法案修正で、国及び地方公共団体の責務として感染症の病原体等の検査能力の向上という点、それから、国の示す基本方針につきまして感染症患者等の人権の配慮に関する事項を追加するということ、それから、法案全体の検討規定についても施行後五年を目途として、今述べられたような諸事情によって、必要があれば所要の措置を講ずる旨の規定が設けられております。  私どもは、この修正は大変時宜にかなったといいますか、大変法の精神をより深く深めたものであるというように評価いたします。また、人権問題につきましても、記述がさらに追加されておりまして、なお一層この法律人権尊重の精神が盛り込まれてきたというように思っております。  なお、当初の案で五年後の見直し規定がなかったのは手落ちではないかという点は、これは、法律でございますから、その時々の医学医療状況あるいは社会情勢の変化等によって常に検討し、そして法律の目的が適切に執行できるようにすることは当然でございまして、そんな意味からして特に明記がなかったようなことではないかと私は思います。
  150. 青山二三

    ○青山(二)委員 このように、参議院の審議におきまして法全体を五年ごとに見直すという大きな修正がなされたわけでございますが、これは、らい予防法の見直しがおくれた反省も踏まえ、開かれた法規制のあり方を目指すものとして評価ができるものと私も思います。  そして、やはり忘れてならないのは、過去において、人権の侵害、大きな差別と偏見を生じてきた事実であります。今後の感染症対策につきましては、こうした差別や偏見を生じないよう最大限の努力を今から準備しておかなければならないと思います。そのためには、ハンセン病患者やHIV感染症患者などに対する差別や偏見が行われた事実など、過去への反省の意味を含めて、患者の良質かつ適切な医療を受ける権利など、患者・感染者の人権を最大限に保障し、尊重することを当然この法案の中に明記するよう修正すべきであると考えておりますけれども、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  151. 宮下創平

    宮下国務大臣 我が国感染症対策というのは、その時々の社会的状況とか医学的な知見を踏まえながら進めてまいってきたところであると存じます。  しかしながら、今御指摘のように、ハンセン病でありますとか後天性の免疫不全症候群等の感染症患者の方々に対するいわれなき差別や偏見が存在しておったことも事実であります。  本法案は、こうした認識の上に立ちまして、人権の尊重や行政の公正、透明化への社会的な要請に応じようとして立法したものでございます。  今回の法案におきましては、このような経過を踏まえまして、人権への配慮を基本理念に位置づけるとともに、特に入院等の措置については、慎重な手続に沿って人権を尊重するというような趣意から各般の規定を設けておるところでもございます。  なお、ハンセン病につきましては、制度の見直しがおくれたことにより、患者や家族が尊厳を傷つけられ、また多大の身体的、精神的苦痛を受けたことがございますので、平成八年に厚生大臣が謝罪し、らい予防法の廃止に関する法律案の提案理由説明でも深い陳謝の念を表明し、そして、廃止法律によって今後ハンセン病患者等の処遇の万全を期するということにいたしたところでございます。
  152. 青山二三

    ○青山(二)委員 そこで、一つの法律がどれだけ多くの被害を生んできたのか、その快然とさせられる実例が、一九五三年に制定され、一九九六年に廃止されましたらい予防法であります。  ハンセン病は、長い間不治の病とされていましたが、一九四三年ごろから有効な薬が次々に発見され、完治する病気となっていたことに加え、感染力も弱いために、欧米では早くから強制隔離を在宅隔離に切りかえておりました。しかし、日本各地では、このらい予防法を根拠として戦後も強制隔離が続けられてきたことは記憶に新しいことでございます。  強制入院は入所者の人生を大きく狂わせ、ハンセン病について誤ったイメージを社会に植えつける原因となりました。一九九六年四月、ようやくらい予防法が廃止となったわけでありますが、本委員会における審議の際、私も声を大にして、国のハンセン病対策の誤りの指摘とともに、その責任と反省、また法制化の歴史を検証するべきである、さらに、偏見を取り除くための啓蒙などを訴えてきたところでございます。  今回の法案を提出されるに当たって、こうした過ちを繰り返さないためにも、らい予防法を根拠とした隔離政策が人権侵害そのものであったという、ハンセン病の治療と法制化の歴史の検証が必要であると考えますが、これまでにそれが十分になされてきたとお考えでしょうか、大臣の御所見を伺います。
  153. 宮下創平

    宮下国務大臣 らい予防法の廃止につきましては、これは特に保健医療局長の私的検討会ということで平成七年に検討会を設置しました。これにはハンセン病の専門家や入所者の代表者等々に入っていただきまして、いろいろ検討したことでございます。  今委員の御指摘のように、五六年ごろはハンセン病についても、薬によって治る可能性があるということも指摘されておりながら、なぜ今日まで来たかということでございますけれども、これはいろいろハンセン病の患者の問題等々、継続的な医療療養の保障とか、それからまたいろいろ正しい理解をしなくてはいかぬとか、いろいろのことがございまして、検討会の報告に基づきまして、平成八年にらい予防法の廃止に関する法律を提出いたして、国会の審議をいただいて成立したところでございます。  特に、らい予防法の廃止に関する法律におきましては、らい予防法を完全に廃止するということと同時に、入所者の処遇の確保、継続的な療養確保が必要であるということで、現在もこれを続けてまいっておりますし、入所者の社会復帰のための知識等の付与とか、あるいはまたそれに必要な資金の交付等もいたしまして、私どもとしては、廃止法律ではございますけれども、今後もこうした方々が、七十一歳の平均年齢ということで非常に高齢化も進んでおりますし、この事態を受けとめまして、きちっとした対応をこれからもしていきたいというように思っております。特に、退所者について百五十万円ばかりの給付金を出しておりますが、平成十一年にはこれを増額するということで、二百五十万円くらいの要求もさせていただいております。  そんなことで、先生御指摘のように、検証が十分行われたかということになりますれば、そういうプロセスを経て、そして謝罪もしながら、そしてまた適切な対応はされてきたものということで、検証は十分に実施したものと言ってよろしいかと私は存じます。
  154. 青山二三

    ○青山(二)委員 今の大臣の御答弁は、これまでにそういう検証がなされたかということとこれからどうするということが一体になった御答弁だったと思うのでございますけれども、またこれからのことにつきましては、もう少し詳しく質問をさせていただきたいと思っております。  このハンセン病対策は、先ほど来いろいろと委員からも話が出ておりますように、社会防衛の色合いが大変強くて、その反面、患者個人への配慮が余りにもなかったということはだれもが認めるところでございます。そうした中で、七月三十一日、強制隔離政策で差別や偏見などさまざまな人権侵害に苦しんできた九州の元ハンセン病患者たちが国に損害賠償を求めて訴訟を起こしたことは、大臣も当然御存じのことと思います。  らい予防法による強制隔離人権侵害だったという主張は国も認めていると認識をいたしております。しかし、二年前のらい予防法廃止の際、当時の厚生大臣患者や家族に謝罪したことについて、厚生省の御認識は、謝罪は国家賠償責任を前提としないとのお考えであると伺っております。宮下大臣はこの厚生省と同じ御認識でございましょうか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 宮下創平

    宮下国務大臣 らい予防法廃止時に前々大臣大臣謝罪をいたしたことも私も承知しておりますが、これは、らい予防法の見直しがおくれたことによりまして入所者の方々に多大な苦しみを与えたということを大臣が率直におわびしたもの、こう受けとめさせていただいております。こうした大臣の謝罪や法廃止の合意に至る過程で、特に入所者の団体との協議を積み重ねた結果実現いたしました見直し内容でございまして、これは入所者団体からも一定の評価を得ておるものと認識をいたしております。  こうした経過を踏まえまして、療養所における処遇の確保を柱としたらい予防法の廃止に関する法律成立いたしたわけでございまして、私もその辺の事情はよく理解できるわけでございまして、この謝罪が必ず国家補償を前提として行われたものだというようには理解はいたしておりません。
  156. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣から明確に御答弁いただきましたけれども、らい予防法が廃止されたといっても、家族と引き離され、また断種や堕胎などをさせられました療養者の心身の傷はいまだにいえていないのが実情でございます。そして、療養者は平均年齢がもう七十二歳となっておりまして、高齢者が多く、裁判の長期化は人道的にも許されるものではございません。  私は、これをよい機会ととらえて、国の責任についても明言すべきであると思います。このような裁判の主張とは別にいたしまして、当然、社会復帰支援など国の施策を充実させるべきであります。  一九九六年にらい予防法の廃止に関する法律案趣旨説明におきまして、当時の厚生大臣から陳謝の念と深い反省の意が述べられました。そして、このことで衆参の附帯決議としていろいろと決議がされたわけでございますが、例えば入所者の療養生活の将来にわたる安定、患者の給付金の継続、医療・福祉の確保、社会復帰の円滑及び社会生活上の不安除去のための支援策の充実、通院・在宅治療のための医療体制の整備、普及啓発による差別や偏見の解消などについて、深い反省と陳謝の念に立って特段の配慮をもって適切な措置を講ずるべきである、このようにうたわれました。  そこで、厚生省は、らい予防法の廃止に関する法律の施行及びこれらの附帯決議を受けて、先ほど少し大臣の方から御答弁がございましたけれども、具体的にどのような対策を行っているのか、お伺いをしたいと思います。
  157. 宮下創平

    宮下国務大臣 らい予防法の廃止に関する法律の審議に当たりまして、衆議院の厚生委員会と、これは平成八年でございますが、また参議院の厚生委員会において、それぞれ附帯決議がなされたのは承知いたしております。菅大臣もこのらい予防法の廃止に当たりまして患者団体におわびを申し上げたということも、私も感銘深く拝見をさせていただいております。  附帯決議の概要としては、今お話しのように、ハンセン病療養所の入所者に支給されている患者給付金を将来にわたってずっと継続していこう、それから入所者に対する他の医療・福祉等処遇に万全を期するということが第一、それから、ハンセン病療養所からの退所を希望する者に社会復帰の支援策をやってほしいということ、それから、通院・在宅治療のための医療体制を整備して、ハンセン病治療に関する専門知識の普及を図ってほしい、それから、正しい知識の啓発普及と差別や偏見の解消に一層努力すべきであるというような概要であったかと存じます。  厚生省としましては、これらの附帯決議を踏まえまして各種対策を実施中でございまして、まず第一は、入所者の給付金でございますが、この支給を継続いたしております。今、障害者年金一級相当、八万円余の金額を一人頭限度に一律支給をしておりますし、それから、入所者の医療・福祉の予算の確保も、これは平成十年度で申しますと、四百十二億円という額を計上させていただいております。  また、社会復帰支援事業の創設でございますが、先ほど申しましたように、退所準備等の支援に百万円、社会生活の訓練支援に五十万円、合計百五十万円ということでございますが、今回これを二百五十万円の要求を概算要求でさせていただいております。  そのほか、ハンセン病の診断治療指針等を作成するとか、あるいはそれらを医療機関に配付する等の措置も講じておりますし、それから医療従事者を対象といたしました公開講座を開設いたしまして、医療の専門知識を普及するなどの経費も計上してございます。  また、社会交流事業やシンポジウム開催事業を創設するなど、特に啓発普及を充実させて、無用な誤解を与えないようにしていくという予算も計上してございます。  今後とも、ハンセン病療養所の入所者等の福祉の向上のためには、さらに一層効果的な事業を推進して続けてまいりたい、こう思っております。
  158. 青山二三

    ○青山(二)委員 ただいま御答弁いただきました中で、入所者に対しましては患者の給付金を継続するということでございますけれども、そうなりますと、退所者には患者給付金は支給されないと  いう前提なのでしょうか。
  159. 宮下創平

    宮下国務大臣 退所者につきましては、今申しましたように、社会復帰の支援事業の創設ということで百五十万円をお支払いして、そしてもう大体完治された方であると理解されますので、社会に復帰された方についてはこの入所者の給付金は支給しておりません。ただし、一たん退所された方でも再び入所したいという御希望がある方もあるようでございまして、そういう方がまた復帰された場合は入所者の給付金は、給与金は依然として支給するという建前になっております。
  160. 青山二三

    ○青山(二)委員 そういたしますと、大臣の御答弁でございますと、支援の限度を、退所準備ということで百万円、それから社会生活支援ということで五十万、合計百五十万が上限になっておりまして患者給付金は打ち切られる、こういうことでございます。最初のそういう規定では百五十万、今大臣の御答弁によりますと二百五十万にする、こういうようなことになるわけですね。  私、本当に、この支援事業を見ましたときに、百万円と五十万を差し上げて、さあ、社会復帰するんですよ、これでは余りにも金額も少ないし、四十年間も強制隔離をしたその代償としては余りにもひどかった、そういうことをお認めになってあと百万追加する、こういうことでございましょうか。
  161. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいまのところ、入所者につきましては、ハンセン病が大体治癒されたとしても、その施設から出ていってくださいというようなことは申し上げていないようでございまして、その点は入所者の意思を尊重しております。  そういう中で、社会に行きたいという方に百五十万円を社会復帰の支援事業としてお渡ししておるわけでございますが、これが今の状況では多少不十分かなということで増額要求をさせていただいたというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、入所者に対してはあとう限り御希望に沿うような形で対応している、こういうことでございます。
  162. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、療養所を出て自立をしたいという元患者にはできる限りの支援をしていただきたい、このことを再度要望させていただきます。  それから、社会復帰支援と同時に、ハンセン病に対する偏見を解消するための啓発も大切でございます。ところが、この啓発運動は遅々として進んでおりません。偏見や差別はもちろん、ハンセン病についての理解すらできていないように感じます。一部の療養所では小学生、中学生あるいは高校生が慰問に訪れたり、また元患者がその学校の卒業式に招待をされたり、また温泉ホテルによる車での送迎などが実施されているというようなことは伺っております。しかし、その他の療養所では、地域の公衆浴場で元患者が入浴を拒否されたり、ゲートボール協会への加盟ができなかったなどの事態が起こっていると聞いております。その上、ハンセン病は治らないのですかという、まだこんな質問が出る現状でございます。一度できましたイメージを変えるのは本当に容易ではないことがよくわかるわけでございます。  偏見や差別をなくすために、入所者と社会の交流を今まで以上に進めていくなど積極的な取り組みが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。
  163. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のように、ハンセン病に対する偏見の解消というのは、社会復帰を進めていく上でも非常に重要なことでございます。したがいまして、今それらの施策を進めるために、具体的に申し上げますと、一般の方に正しい理解をしていただくということを普及するために、毎年六月にハンセン病を正しく理解する週間というのを全国的に実施しておりますし、また都内に多磨全生園というのがございますが、そこに高松宮記念ハンセン病資料館というのがございまして、その運営費に藤楓協会を通じていろいろ支援をしているところでございます。  また、地域での理解を深めるということが非常に重要でございまして、先ほども、ゲートボールなど、園の外の人たちとの交流というのは、今言ったような残念なこともございましたが、そういうことを解消するために、入所者と住民の交流を図るということが非常に重要でございまして、盆踊りでございますとかゲートボールなどの地域住民との触れ合いに参加するための経費を支援する事業も藤楓協会を通じて実施しているわけでございます。  また、医療を通じて偏見などの解消を図るために、医学部の学生でございますとか看護学生などの医療関係者を対象に、入所者との触れ合いを含めた公開講座を夏休みに開催することなどをやっているわけでございますが、今後とも偏見を解消していくために、入所者団体の御意見も聞きながら、各般の普及啓発事業の推進に努力してまいりたいと考えております。
  164. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは次に、ハンセン病療養所の入所者の国民健康保険の加入について伺いたいと思います。  らい予防法の廃止に関する法律により、国民健康保険法において国民健康保険の被保険者としない方の例示から、国立らい療養所の入所患者とあったのを削除しております。これによりまして、入所者についても国保加入が認められることになったと理解しておりますけれども、これに間違いございませんか。
  165. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答えを申し上げます。  ハンセン病療養所に入所をされておられる方の療養に要する費用につきましては、らい予防法の廃止に関する法律に基づきまして全額公費によって負担が行われるということになってございます。したがいまして、このように、ハンセン病療養所入所者につきましては既に公的な医療保障が行われておるわけでございますので、国民健康保険適用対象からは従前どおり除外をするということになっております。  ただ、法律上の根拠は、具体的な除外につきましては、国民健康保険法の中で「その他特別の理由がある者で厚生省令で定めるもの」という形になってございまして、厚生省令で今申し上げましたように適用除外になっております。
  166. 青山二三

    ○青山(二)委員 ただいまの御答弁をわかりやすく解説いたしますと、適用除外になったので健康保険証はいただけるということになったけれども、それはやらないことになったのだ、こういうようなことでしょうか。そうなりますと、本来ならばいただけるべき健康保険証でございますけれども、いただいた人はだれ一人いない、こういうようなことでございます。  実は、ハンセン病と医療を考える会の方から、多分これは厚生委員の皆様もいただいたと思いますけれども、入所者の国保任意加入を認める趣旨のお手紙をいただいたわけでございますけれども、もう一度このあたりを明確に御答弁いただけますでしょうか。
  167. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 現在の取り扱いにつきましては、結論的に申し上げますならば、従来と同様に適用除外でございます。法律上の条文を法律のところで直接規定をするか、厚生省令で定めるということで規定をするかという差はございますけれども、もう一度申し上げますが、結論的には従来も適用除外、今回も適用除外でございます。  適用除外にしたゆえんは、従来どおり公的な負担で医療保障をするということに今回の法改正でもなりましたので、そのような扱いをいたしたということでございます。
  168. 青山二三

    ○青山(二)委員 すると、入所者には国民健康保険は差し上げられないということなんですね。もう一度お願いします。
  169. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 国民健康保険適用除外になってございます。  といいますのは、公的な負担によりまして、国民健康保険提供すべき医療保障に相当するものは公的保障として出ておりますので、国民健康保険にお入りになられる経済的な必要性というものはないという点は従来と変わりませんので、そのようなことで従来どおりやられている、また、そういうふうに公的保障でぜひやってほしいというのが関係団体の御希望であったように伺っております。
  170. 青山二三

    ○青山(二)委員 そのような御答弁ですけれどもやはり国民の権利として国民健康保険に加入したいという希望者も、少ないですけれどもいらっしゃるというようなことを聞いておりますので、その希望を聞いてあげることぐらいは、弾力的に法を解釈しまして対応することはできないのでしょうか、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  171. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 大臣にお答えいただく前に、私の方から、この件につきまして若干の経緯を御説明をさせていただきたいと思います。  平成八年のらい予防法の廃止に関する法律検討する段階で、保健医療局長の私的検討会といたしましてらい予防法見直し検討会というものを設置して、過去のいろいろな検証も含めて検討してきたということは先ほど大臣からも御答弁したわけでございますが、このらい予防法見直し検討会の中におきまして、入所者団体の方にも参加をいただきまして、らい予防法の廃止に関する法律施行後の医療費のあり方についていろいろ御審議をいただいたわけでございます。  その中で、入所者は住みなれた療養所の中で全額国庫負担による医療というものを非常に強く要望されたという経緯がございますので、入所者の要望を踏まえて、平成八年の法改正のような形で対応させていただいたということでございます。
  172. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長の経緯の説明のとおりでございまして、国保への加入を一律的に認めないのは差別ではないか、根底にそういうお考えが一部の方にあるというようにお伺いしますが、今局長の言いましたように、入所者団体が公的医療保障を希望しておるということ、それから、入所者の状態等を考慮した十分な療養の保障をしたいということで公費負担をやっておるわけでございまして、他にも原爆被爆者の問題とか遺家族援護、それぞれ目的は違いますけれども、全面的に公費でやるということは決して差別ではございませんで、かなり手厚い対応をしておるというように御理解をいただけるのではないかと思います。
  173. 青山二三

    ○青山(二)委員 では、次の質問に移らせていただきます。  本法案に戻りますけれども、今回の法改正は、伝染病予防法性病予防法、エイズ予防法を廃止いたしまして、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律に一本化しようとするものでございますが、今回の一元化によって不都合を生じるということはございませんでしょうか。  また、伝染病予防法におきましては、建物に対する処分によって被害を受けた所有者に対する手当金の交付とか、あるいは交通遮断や隔離や、また一時的に仕事を失ったという人に対しましては生活費の支給をする、こんな規定がありましたけれども、本法案には補償制度に関する規定は盛り込んでありません。検討委員会の報告でも、現在の伝染病予防法の取り扱いを考慮しつつ検討を進めることが必要であると指摘しておりますけれども、補償制度に関する規定についてはどのようにお考えなのか、伺っておきます。
  174. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず、前段の伝染病予防法性病予防法、エイズ予防法を廃止して新感染症法をつくる点に関して何か不都合なことはないかというお尋ねでございましたが、その点につきましては、再三申し上げておりますように、この現行三法を廃止いたしまして、新たに人権感染症予防医療というものを両立させる新しい法体系に持っていくということで、不都合な部分というのはないものと考えているわけでございます。  そこで、具体的なお尋ねの件でございます建物等の処分や入院等についての補償に関する規定考え方でございますが、まず、現行伝染病予防法におきましては、建物等の処分に関する手当金や入院などの場合の生活費の支給の規定があるわけでございまして、これは明治三十年でございますから帝国憲法下で、国家賠償法や生活保護法等の法制度がなかった時代に、コレラ等の伝染病対策が焦眉の課題となっている中で、伝染病対策を円滑に行うために、政策的な配慮により特に設けられたものと理解をしておるわけでございます。  しかしながら、建物などの処分に関する手当金につきましては、現在におきましては、国家賠償法が整備されている中で、この伝染病予防法制定当時におきましては、建物の財産としての重要性にかんがみ、特に建物について補償規定を置く意義がございましたが、現在におきましては、建物だけを特別扱いする理由がないということ、また新法におきましては、建物などに対する廃棄等の処分は、消毒できない場合において厳密な要件のもとで実施されるものでございまして、有価物としての価値が認められない場合にのみ行うことが想定されるものであるなどの理由から損失補償の規定は設けなかったものでございます。  また、入院などの場合の生活費の支給につきましては、入院等が直接の原因となっておおむね生活保護が必要な状態になった方に対しましては生活保護法に準ずる生活費が支給されるものでございまして、そもそも損失補償ではなくしかも、今回の新法におきましては、例えば一類、二類、三類、この三類の就業制限などを例にとりましても、就業制限の範囲を限定いたしまして、入院期間も可能な限り短期にすることとしておりますので、これらの規定の発動により患者さんなどが生活保護が必要な状態になるというのは非常に考えにくいというようなこと、さらに、現在におきましては、生活保護が必要な者につきましては、生活保護法により救済されるなどの理由から損失補償の規定を設けなかったものでございます。  なお、都道府県知事に故意または過失があり、建物等の処分や入院などの措置の対象者に損害を与えた場合は、当然国家賠償法の対象となるものということでございます。
  175. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは次に、感染症患者に対しまして具体的な差別や偏見を排除するための対策について伺いたいと思います。  この点につきましては、厚生大臣が定めることになっている感染症予防に関する基本指針の中で、感染症に関する啓発及び知識の普及及び感染症患者等の人権の配慮に関する項目を定めるということになっておりますけれども、これによって、例えばHIV患者・感染者に対して見られたような差別や偏見を実質的に排除できるのかどうかは大変疑わしいところでございます。これまでに行われてきたHIVなどの感染症に関する啓発や知識の普及によって本当に差別や偏見がなくなったと言えるのか。より実効的な、具体的な取り組みが望まれているわけでございます。  そこで、今後差別、偏見が行われないために、今までの教訓を生かすためにも、厚生省は文部省に対しまして、義務教育の中に差別、偏見をなくすための教育をさらに徹底することを進言するということで、感染症に関する理解を深めさせるような努力もするべきであると思います。そして、感染者の意見を十分に反映できるような体制の整備も必要であると思いますが、いかがでしょうか。
  176. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 差別、偏見の排除に関しまして、本法案におきましては、いろいろ国及び地方公共団体の責務でございますとか、それから国民に対しましても責務として求めているところでございますが、より具体的には厚生大臣の定めます基本指針においてそのことを明確に規定をしていくということになろうかと思います。  したがいまして、この普及啓発活動を行う現場でございます学校教育の場を考えたらどうかという御提言でございまして、今後、基本指針の策定等に際しまして、具体的にどのように盛り込んでいったらいいかという点につきましても、文部省への働きかけも含めて具体的に検討してまいりたいと考えております。
  177. 青山二三

    ○青山(二)委員 積極的によろしくお願いいたします。  かつてエイズパニックが起こり、またO157患者が続出いたしまして、国民の間に恐怖感が蔓延したことは周知の事実でございます。これはひとえに国民感染症に対する正確な知識の欠如あるいは知識の不足から起きたものでございまして、それが必要以上に恐怖心や偏見、差別等の心理状態、そしてパニック状態を招いたものと思います。  こうした状況を考えますと、種々の感染症について、国民への正しい知識の普及が何よりも必要であることは間違いございません。厚生省はどのような施策を考えているのでしょうか。エイズのときのように、必要以上にパニックをあおり立てたマスコミ報道のあり方についてはどのような対応をしていくのか、お伺いをしておきたいと思います。
  178. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今先生から御指摘の点は新感染症法の施行に際しましても非常に重要な点であるというふうに認識をしているわけでございます。  したがいまして、国民に対する正しい知識の普及という点からも、特にマスコミの世論に与える影響が大きいことにかんがみますと、最大限的確な情報提供するとともに、誤った情報や不適当な報道がなされることがないように、厚生省といたしましても、マスコミその他の関係者との日常的な連携を図って、そして報道関係者にも十分新法の理解を深めていただくという努力が必要だと思っておりますので、その点を十分踏まえて対応していきたいと考えております。
  179. 青山二三

    ○青山(二)委員 そのように対応をよろしくお願いいたします。  そこで、もう一点懸念されますことは、この法案における入院措置等考え方でございます。  この点は既に本委員会でも何度も指摘されておりますが、やはり強制的な健康診断入院、移送等が本当に患者人権に配慮されて行われるのかどうか、大変心配されるところでございます。患者の権利やプライバシーが守られ、適正な手続が保障されることで、初めて人々は健康診断入院に自発的、積極的に協力することになると思います。  そこで、こうした措置が客観的に運用されるよう手続を明確にして、退院の請求や審査請求についても十分な説明が行われるべきであると思いますが、こうした場合の患者人権の配慮についてはどのような対応が考えられておりますでしょうか。
  180. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 お尋ねの件に関しましては、まず第一点といたしまして、現行伝染病予防法におきましては、市町村長伝染病患者入院措置を行う際に十分な手続保障がなされていない、そういう法律でございますが、今回、この新法におきましては、感染症患者等の人権尊重に配慮した入院手続の整備が図られているというふうに認識しております。  具体的には、今回の法案では、強制的な手段を当初から講ずるのではなく、まず入院勧告を行いまして、その勧告に従わないときには措置できる、そういう段階を踏むということがまず一点でございます。  また、感染拡大防止のための応急的な入院期間を七十二時間というふうに限定していることでございますとか、それからまた、入院期間の延長に当たりましては、あらかじめ専門家から成る感染症の診査に関する協議会の意見を聴取して十日間ごとに行うというようなことなどでございます。  さらに、入院患者から感染症の病原体の有無の確認を都道府県知事に対して求めることができるとともに、入院が三十日を超える場合には厚生大臣への審査請求を行い、五日以内に裁決を得ることができるという行政不服審査の特例も設けているわけでございます。  これらのことをやはり患者さんが入院する際に十分知らされなければいけないという点につきましては、先ほど家西議員の質問にもお答えさせていただきましたが、感染症指定医療機関医師看護婦等が十分そういう点で説明をしていただくように、指定医療機関の基準を設定する際に、それらの点も踏まえて十分なことができるように対応していきたいと考えているところでございます。
  181. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは次に、国際法との整合性という観点からお伺いをいたします。  感染症の問題は全地球的規模で考えるべき問題であることは前回の質問の際も指摘したところでございまして、この点につきましては大臣のお考えも同じだと思います。  そして、今回の法案我が国感染症対策の骨格をなすものと理解しておりますので、国民の生命、健康を守るため、患者人権を尊重しつつ、現代に適合する感染症新法にするべきであると考えます。  そこで、さる五月二十九日に行われました参考人質疑におきまして、静岡県立大学者護学部教授の松田参考人より、現在WHOが世界的規模で進めようとしている新しい感染症戦略や国際保健規則という国際法の整合性にも欠けるのではないかという指摘があったわけでございますけれども、この指摘に対する御見解を伺いたいと思います。
  182. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 松田先生の御指摘の中で、法案の内容は、WHOが現在検討している症候群方式を内容とする国際保健規則の改正と一致していないのではないか、そういう御指摘だったというふうに理解をしております。  そこで、現在、WHOにおきましては国際保健規則の改正を行っているわけでございますが、この基本的な考え方は、現在国際保健規則の中ではいわゆる検疫伝染病、黄熱ですとかペストなどにつきまして、病名で加盟国がWHOに報告することになっているわけでございますが、新興・再興感染症が新たな問題となってきたということにかんがみまして、従来の検疫伝染病に加えて、地球的な規模で取り組みが必要な新たな感染症に対しまして常時監視をして迅速な対応をしていくという観点から、アフリカ等の発展途上国におきます検査能力なども勘案いたしまして、症候群方式というものを検討しているわけでございます。  したがいまして、症候群方式でまず早い段階で報告をいただき、そして現地に専門家を直ちに、WHOは二十四時間以内と言っていますが、派遣をして具体的な対応をとるというのがこの症候群方式の考え方でございまして、この考え方は、途上国などの診断体制の十分整っていない地域において、迅速性という点で有利なこの症候群方式というものの採用を検討しているわけでございます。  しかしながら、我が国を含めまして先進国におきましては疾患の診断が迅速につけられるということから、あえて症候群による感染症の把握をする必要性は薄いわけでございますが、いずれにいたしましても、基本的にはこの二つの方式はそごを来すものではございませんので、私どもといたしましては、国際保健規則が平成十二年、二〇〇〇年から発効される予定でございますので、我が国改正作業には参加しておりますが、発効の段階で必要があれば、国内法との整合性を図る観点から必要な対応をしてまいりたいと考えているところでございます。
  183. 青山二三

    ○青山(二)委員 これまでの審議の中におきましても、病名を特定した条項は差別を招くおそれがある、また人権上の問題を引き起こすと多くの委員指摘をいたしました。また、今回の法案にある疾病分類は科学的でなくて医学的にも公衆衛生的にも何ら意味はない、こういう指摘もあるわけですけれども、この点ではどういうお考えでございますか。
  184. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 病名を列記することが差別、人権侵害につながるということが、仮にそういうことがあるとすれば、現在の病名を列記をしグループ分けした新法の方式について、人権侵害につながることがないようにこの制度の趣旨を十分理解していただくようなことを進めてまいりたいと考えております。  また、この症候群方式の一つの欠点といたしまして、例えば急性出血熱症候群という中にラッサ熱でございますとかエボラ出血熱とかいろいろの病気が入っております。特に人権への配慮という点からいきますと、必要最小限の規制にとどめるという観点から考えますと、症候群で対応するよりは病名を確定し、そしてそれぞれの病気の特性に応じて必要最低限の規制にとどめるということが望ましいわけでございます。特に我が国のような先進国におきましては、患者発生動向等、さらに感染症新法におきましては診断とその後に続くいろいろの措置が連動した形になっておりますので、感染症新法感染症の類型を科学的に行って、その類型に応じてそれぞれ対応していくということが理にかなっている制度ではないかというふうに理解をしているわけでございます。
  185. 青山二三

    ○青山(二)委員 また、WHOは、二十一世紀の健康に関する新戦略を策定いたしまして、人権の尊重と公衆衛生の目標達成は相補い合うものであるとして、各国政府が公衆衛生上の問題に対応する際に人権を尊重することを強調いたしております。  このようなWHO対応を踏まえまして、先進諸国と開発途上国は感染症に関する政策と法的対応を点検しているように伺っておりますが、こうした各国の対応に比べて、今回の法案は果たして感染症対策予防に関してグローバルな視点を持った法律だと言えるのかどうか、これは大臣に御所見を伺いたいと思います。
  186. 宮下創平

    宮下国務大臣 感染症対策を進めていく上で、国際的な取り組みは極めて重要であると私も認識しております。  具体的に申しますと、世界において新興感染症あるいは再興感染症が出てきておることや、また、国際交流活発化等によりまして感染症問題の国際化対応できるようにするために、WHOでありますとか米国疾病管理センター、CDC等との協力を初めとして、国際的な連携を図りながら感染症対策に取り組むべきものと考えております。  そして、今回の法案におきましては、国の責務に「国際的な連携確保する」ということを規定いたしますと同時に、基本指針にも国際協力に関する事項を盛り込むことを規定するなど、国際的な連携を図りながら感染症対策を行うことの重要性を明記してございます。そういう意味で、グローバルな視点に立った法案だと私ども考えておる次第でございます。
  187. 青山二三

    ○青山(二)委員 今回の感染症の問題は、百年以上もかかってようやく改正されるわけでありますので、またこの法案に対する関係者の方々の期待も非常に大きいものがあると思います。また、らい予防法、エイズ予防法などで生じた社会的差別が患者を社会的に抹殺して人権侵害を生み出した、その反省に立った上での新法でなければならないと私は思います。  そして、新しい時代にふさわしく、人権の尊重を最重要に置いた感染症対策がスタートできるようにこれからも十分な財政措置がとられるべきであると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  188. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 十分な財政措置を講ずるべきではないかという御指摘でございますが、新しい時代の感染症対策の実施に向けまして体制整備を行うために、平成十一年度の予算におきましてそれぞれ必要な予算を要求しているところでございます。国民の安心できる感染症対策確立に向けまして、感染症対策予算の充実に鋭意努力してまいりたいと考えております。
  189. 青山二三

    ○青山(二)委員 時間もだんだんなくなりました。  最後に、同じ質問でございますが、大臣にその決意をお伺いして終わりたいと思います。十分な財政措置をしていただきたい、大臣の方からも御答弁いただきたいと思います。
  190. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長から申しましたように、この体制整備を行うためには何としても予算措置も必要でございますから、十一年度の予算におきましては重点的に所要の予算を要求して、その実現に邁進したい、こう思っております。
  191. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、これで質問を終わらせていただきます。大変にありがとうございました。
  192. 木村義雄

  193. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子です。  早速この法案について質問したいと思います。  百年ぶりにこの法案改正になるということですけれども、修正されるわけですけれども、修正前と大きな違いというのはどういうところなのでしょうか。大臣にお聞きしたいと思います。
  194. 宮下創平

    宮下国務大臣 参議院と衆議院で、参議院の方で修正を受けましたのは、病原体への的確な対応、そしてまた人権問題に対する配慮の一層の確保というような点が主要な点だったと存じますけれども、そういった点は、私どもとしても、提出しました新法趣旨に合致しているものでございまして、高くこれは評価したいと思っております。
  195. 武山百合子

    ○武山委員 百年ぶりに改正になるということですけれども、修正前と修正後を見ますと、大きな改正の点は、これは「基本理念」のところに言葉が入っているわけですね。それから、「国及び地方公共団体の責務」のところで言葉が入っておりまして、それから三点目に「医師等の責務」ということで、第五条ですね。それから四点目に「基本指針」ということで二項入っているわけですね。改正になるのはこれだけでございましょうか。
  196. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず、「国及び地方公共団体の責務」におきまして、参議院におきまして「感染症の病原体等の検査能力の向上」というものが国、地方公共団体の責務として追加されて修正されております。  また、三条の三項でございますが、「国は、感染症に関する情報の収集」に続けまして、「研究の推進感染症の病原体等の検査の実施等を図るための体制を整備し、」ということが修正されております。  さらに、六条の五項で、「この法律において「四類感染症」とは、」という定義がございますが、そこで病名を列記しているわけでございますが、そこに「既に知られている感染性の疾病であって、」と、「既に知られている」というものが追加されております。  そしてその次、六条の六項でございますが、「指定感染症」の定義におきまして、「既に知られている感染性」ということで、既知の感染症、そういう考え方を入れて修正されております。  さらに、第九条の「基本指針」の中で、基本指針に掲げる事項といたしまして、「感染症の病原体等の検査に関する事項」というのが追加されております。さらに、八といたしまして、「感染症に関する啓発及び知識の普及」につなぎまして、「並びに感染症患者等の人権の配慮に関する事項」というのが修正されております。  さらに、附則におきまして、附則の二条の検討条項でございますが、「この法律規定については、この法律の施行後五年を目途として、感染症流行状況医学医療進歩の推移、国際交流の進展、感染症に関する知識の普及の状況その他この法律の施行の状況等を勘案しつつ検討するものとし、必要があると認められるときは、所要の措置を講ずるものとする。」という修正が加えられております。  以上でございます。
  197. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  その中で、「医師等の責務」というところ、第五条ですね、「感染症患者等が置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な医療を行うよう」、私、ここを読んで本当に愕然ときたというかびっくりしたというか、今さら何でこんな言葉が入っているのだろうと思ったのです。当たり前のことではないかと思っているのですけれども、今さらここにどうして入ったのかな、この経緯を説明していただきたいと思います。
  198. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 国、地方自治体の責務といたしまして、良質かつ適切な医療提供義務というのは、現行伝染病予防法におきましてはそういう理念が欠落をしていたという認識のもとに、新感染症法におきましては、社会防衛的な考え方に基づいて隔離をするということではなくて、社会防衛に偏した現行伝染病予防法に対する反省から、措置が必要な感染症であっても良質な医療提供する、そういう必要性、そういう努力をする責務を国、地方公共団体の責務として規定したというふうに理解をしております。
  199. 武山百合子

    ○武山委員 何か法的拘束力を持たないと、医師等の責務も、責任を果たせないというかそういう印象にとれるのですね。  日本はやはり先進諸国の一国なわけですよね。良質かつ適切な医療なんて当たり前のことだと思うのです。なぜ今ごろこんなことが書かれているのかなと先ほども言いましたようにびっくりしているわけですけれども、今のお話ですと、欠落していたというわけですね。ですから、そうしますと、今までの法案にはこういうものはなかった、なかったからやらないという理由。  みんな、法文で書かれているからやります、法律に書かれていないからやりませんという発想をよく耳にするのですよね。それだけ法律というのは重要なわけですから、それだったらなぜ入れていないのか。では、法に全部人間は縛られなければいけないわけですよね。全部、法律に書いていなければやらなくていいんだ、法律に書いてあるからやるんだという、その辺がやはり成熟した社会だと思いつつもそういう社会になっていないのではないかと思うのですけれども、その辺は厚生省、どういうふうに考えていますでしょうか。
  200. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 医師及び医療関係者が良質かつ適切な医療提供するということは当然のことでございまして、これは医療法にも同様な規定があるわけでございます。  したがいまして、この医療法の規定、それから今回新たに感染症新法制定するに当たりましては、当たり前のことではありますけれども、そういう当たり前のことがきちっと行われるように国、地方自治体、さらに医療関係者等が努力すべきだ、そういう考え方に基づきまして新法の中にこのような規定を入れたものというふうに理解をしております。
  201. 武山百合子

    ○武山委員 書いてないよりは書いてあった方がいいですけれども、当たり前のことが当たり前として行われる社会でないと、やはり我々日本国民として生きていてよかったと思えないと思うのですね。そういうものを抜本的に、今回百年来に変えるということは、基本的な原点に立ち返って、人間としてそれは当然なことなわけですね。  国民一人一人が当然差別を受けてはいけませんし、差別をしてはいけませんし、人権に配慮しなければいけませんし、人権に配慮されなければいけない。両方なんですね、権利と義務というのは両方があって初めて両輪で運営されていくわけなんです。それをどういうふうにして国民に啓蒙、周知徹底させるのでしょうか。
  202. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 こういう当たり前のことというのは、法律に書いたから実効が担保できるとか書かないから担保できない、そういう性質のものではないというのは委員も私どもと同じ理解だというふうに思います。  しかし、この当たり前のことをそれぞれの当事者がきちっと実行していくということは非常に重要なことでございまして、私どもも、医療関係者医療機関、さらに一般の国民に向けまして感染症に対する正しい理解を深めていただくためのいろいろな活動というのは、これは法律に書いてあるかないかを問わずと言うと政府委員の答弁としては言い過ぎかもわかりませんけれども、そういうことにきちっと対応していくという努力をしなくてはいけないと思います。
  203. 武山百合子

    ○武山委員 これはやはり日本国民全体の責任だと思うのです。ですから、これは国を挙げてやらないといけないということだと思います。  では内容に入りますけれども人権に関するもので、今回の法案には、患者人権の保護や人権の配慮という言葉はありますけれども、先ほどある委員からも出ておりましたけれども、差別の防止、また解消、そういう政策が位置づけとしてほとんどといいますか余り見られないのですね。  このようなところはどういうふうにこれからの青写真を描いているのでしょうか。言葉では列挙できると思うのですね、でも、具体的に差別をどう解消していくかという政策的な位置づけはどう考えていますでしょうか。
  204. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 その点につきましては、差別、偏見の解消というのは、これは本法案におきましてもいろいろ基本理念なり責務規定にございますが、そういう考え方を受けまして、一つは国のつくります基本指針、この基本指針に沿って地方自治体が立てます計画、それらの中に国や地方自治体が行うべき具体的な方針を書くということになると思います。  そこで、具体的には、先ほど青山委員からの御指摘もございましたが、例えば国の場合は、基本指針の中で、学校教育における取り扱いでございますとかそのほか地域社会における取り扱い、そういうものを具体的に新しいこの法律に基づく感染症対策の中で重要な柱の一つとして位置づけまして、そしてその具体策を、関係者の意見、また公衆衛生審議会にお諮りをして中身をつくっていきたいというふうに考えているところでございます。
  205. 武山百合子

    ○武山委員 子供たちには、先ほどお話にも出ていましたように、文部省等検討するということですけれども子供たちももちろんですけれども、大人の社会も同じだけ責任があるわけですね。大人の社会もそういう差別を無意識ながら、意識ながらみんなしているわけです。そういうものを大人もどう考えていくかというのは、我々国民全体が、この法案を修正したりこれから実際に運用していく上で、一番考えなければいけないことだと思うのです。  それは、法律になったり、それから政令、省令になったりしていても、国民になかなか伝わらないのですね。実は、話しましたなんて、先ほどもいろいろ国民に伝えてますとか言っていますけれども、実際にはみんな何事かなんていう感じなんですよ。全然法律が身近じゃないんですよね。  それは言葉の問題もあります、わかりにくい言葉だと。それから、いつぞや金融再生法案委員会でも出ていましたけれども、公正で、すなわち正しく、わかりやすく伝えるということに欠けていると思うのですよね、日本の政治、行政のところでは。ですから、国民に知っていただく、情報公開する、わかりやすい言葉で正しく伝える、それを厚生省も持っていかなきゃいけないと思います。その辺はどう考えておりますでしょうか。
  206. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今回の新法に基づきまして、そういう差別なり偏見、特に特定の病気に対する差別、偏見を解消していく一つの大きな課題といたしましては、感染症発生動向調査の結果を地方自治体なり医療機関に還元していく、そしてその情報を公表していくときに具体的にどうするかというのは現実的な課題としては非常に大きな問題だと思っております。  例えば新しい原因不明の感染症発生したとか、一類、二類の感染症が特定の地域で集団発生なりしたというようなときに、そういう状況をどういう形で正しい理解をしていくかということにつきましては、もちろん専門家による科学的な医学的な観点からの検討も必要だと思いますけれども、報道関係者やいろいろの分野の専門家意見といいますか、それをお聞きするということも必要ですし、そのような観点から解析をしてどういう形で公表したらいいかというようなことも必要だと思っています。  さらに、感染症情報の公表ということは、特に今アメリカのCDCなどにおきましては、そういう情報の公表ということが一般国民といいますか住民のどのような行動、ビヘービアと結びついていくかという研究が最近かなり注目されているというか必要性を感じられるようになってきておりまして、私どもといたしましても、そういう情報の公表に当たっては、人間の行動というものを念頭に置いた研究というものを並行して、例えば厚生科学研究の中で一つの課題として取り組む必要があるのではないかというふうに考えております。
  207. 武山百合子

    ○武山委員 地域に保健所があるわけですから、ぜひ保健所も有効活用していただきたいと思います。草の根が一番よくわかってないのですよね。公のポイント、ポイントはわかっておりますけれども、草の根で、国民一人一人、一般の一人一人がわかっていないというところをぜひ視点に入れていただきたいと思います。  次に、医師の責任に関するもので、この法案の第四条には国民は「感染症患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」と書かれているわけですけれども、次の第五条医師の責務のところでこうしたことが書いていないわけですね。医師国民だからということで書いてないということのようですけれども医師はやはり患者人権に配慮するという言葉があった方がいいんじゃないかと思いますけれども、その辺はなぜ入れなかったんでしょうか。
  208. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず、四条の「国民の責務」というところでそのような規定を置きまして、「医師等の責務」というところで「医師その他の医療関係者は、感染症予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力し、」と、協力するように努めなければならないと規定を入れているわけでございます。  そこで、三条の方に返っていただきますと、三条におきまして、国、地方公共団体の責務といたしまして、国、地方公共団体は「感染症患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずる」と、こういう施策に医師等の医療関係者が協力する、そういう責務規定を置いているわけでございまして、全体といたしまして、医師その他の医療関係者が国、地方公共団体の行う施策に協力して、そうすると、当然のことながら患者さんの人権に配慮して協力をしていくということだというふうに理解をしております。
  209. 武山百合子

    ○武山委員 先ほど、修正前と修正後のお話を聞いたときに、修正前のときは、医師の適切な医療というものが今まで欠けていたということですよね。  そうしましたら、やはり国民の一人としては、本当に医師が――ここで言葉が入ってないで安心して任せられるのかなという、ここが穴だと思うのですよね。医師が抜けているじゃないかと思うのが国民一般の人だと思うのですよ。修正前に、お医者さんは適切なきちっとした医療を施すのは当たり前じゃないかと思っているにもかかわらず、今まで欠けていたわけですよね。それで、今度この五条で医師のというのが抜けているわけですよね。ですから、そこにやはり入れた方がいいんじゃないかということなんです、私の質問は。
  210. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 先ほどの御答弁が不適切であったかもわかりませんが、国民の責務の中に医師も含まれるというふうに理解をしておりまして、先ほどの答弁はそのようなことで修正といいますかお願いをいたしたいと思います。  したがいまして、国民の責務の中に医師も含まれるということで、医師ということを改めて規定していない、こういうふうに考えております。
  211. 武山百合子

    ○武山委員 これで押し問答したくないのですけれども、修正前に医師の責務というところで医師の責務が欠けていたということですので、私はぜひ医師とわざわざ言葉を入れてほしいという部分なんですけれども、それは国民の中に入れるということで、医師ということは国民という立場で担保できるという意味にとれるわけですか。
  212. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 医師であれば患者人権に配慮することが当然でございますが、この感染症新法におきましては、法文の構成といたしまして、国民の責務の中に医師も含めて規定をさせていただいたということでございます。
  213. 武山百合子

    ○武山委員 国民だからということで書いてないということですけれども医師がきちっと患者人権に配慮するという今答弁がありましたので、それを信じておりますので、国民の中に入っているということですけれども、もし医師患者人権に配慮をすることがなかったらきっと国民は訴えると思います。それで担保できるということですので、ぜひそれで担保していただきたいと思います。  それから、定義に関するもので、この法案感染症の定義が非常にわかりづらいのです。これまで議論でも再三にわたって指摘されてきましたけれども法案の第六条が定義ですけれども、そこには一類から四類の病名が書いてあるだけなんですね。それで、これだけじゃ国民にはよくわからぬ。国民にわかりやすいように、感染症の定義、また一類から四類の定義をきちっと示すべきじゃないかと思います。国民には、ただ病名が書いてあるだけじゃほとんどわかりません。差別だってよくわからないわけですから。人権だってみんな無意識のうちに無視しているわけですからね。それはきちっと書くべきだと思います。  成熟している国民だという前提のもとにでしたらわかりますけれども、成熟してないわけですよね。ですから、人権侵害したり、結局差別の防止ができないわけですから、それは素直に、全部が全部じゃないですけれども、成熟していない国民がいるということを前提にして、やはりきちっとわかりやすく書くべきだと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  214. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法におきましては、感染症を一類から四類感染症までに分類をいたしまして、それぞれ病名を列挙しているわけでございますが、この分類の根拠といたしましては、感染症の感染力、罹患した場合の症状の重篤性、それから治療方法や予防方法の有効性などを総合的に勘案して分類したものでございます。そこで、なぜそういう分類をしたのかという考え方を法文の中にきちんと入れたらどうか、そういう御趣旨意見でございますが、これは、小委員会の報告書にはそういう考え方が実は書いてあるわけでございますが、法律の中にそのことを書くというのは、法制技術的に非常に難しかった、そういう理由が一つございます。  そこで、今申し上げたような観点で分類をしているわけでございますが、幾つかの要素を、総合的な観点から見た危険性というようなことを法律に用いました場合に、総合的な観点といったあいまいさがこの類型の不明確さの原因になるおそれがあるというようなことでございますとか、現在の医学的知見から見まして、疾病の列挙によってそれぞれの疾病群の危険性がかなり明確にわかるというようなこと、それから明確に区分された類型とそれぞれに対応する措置関係について法案の中で具体的に規定をしているというような考え方から、それぞれ一類から四類につきましては病名を列挙させていただくという形で整理をさせていただいたわけでございます。  もしこの法律の施行の段階で、それぞれ一類から四類の感染症につきまして、感染症の感染力なり、罹患した場合の症状の重篤性なり、治療方法や予防方法の有効性など、そういういろいろの要素につきまして、国民の理解を得るために、法律の条文としてはなくても、私どもといたしましては、医療関係者はもちろん、国民に対しまして、この分類の趣旨なり考え方を広く理解をしていただくように努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  215. 武山百合子

    ○武山委員 法律というのは人間がつくりまして、それで人間が最低限守る法律なわけですよね。ですから、国民のためのものなわけですね。私たちが社会参加するための最低のルールなわけですね。それをきちっと知らせるというのは当たり前のことだと思うのですよ。ですから、当たり前のことが当たり前に行える社会をつくらないといけないと思うのですね。ですから、それはぜひつくっていただきたいと思います。  それで、公衆衛生審議会の小委員会の報告書によりますと、ジフテリア、コレラは第三類に分類されているわけですね。しかし、この法案では二類なんですね。この変更の理由は何なのでしょうか。そして、最新の医学的水準によれば、ジフテリア、コレラ等は、隔離措置よりも接触者対策の、接触するそういう対策充実の方でより対応すべきであると議論されているというわけなんですね。この辺がちょっと古いのではないかと思いますけれども、この変更の理由はどういうわけなんでしょうか。
  216. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 基本問題小委員会が定めた類型と、法律に基づく一類から四類までの感染症の分類の番号が逆になっているではないか、そういう御指摘だと思います。  この小委員会報告からいただいた考え方を踏襲してこの法律の構成を考えたわけでございますが、なぜそれが順番が逆になっているかということを申し上げますと、この法案作成を進める段階で、厚生省令で追加することが想定されている類型をまず先に規定するのではなくて、つまり四類感染症につきましては限定的な列挙ではなくて、実は例示的に列挙しているわけでございます。  法律の条文構成に当たりましては、限定列挙できる類型を先に明記するということが基本的な技術であるという法制局の意見もございまして、一類から三類につきましては限定列挙でございますからそれを先に持ってきたわけでございまして、四類のように、例示的に列挙をし、その他のものについてまた政令で追加するというものにつきましては一番最後の四類に持ってきたという、純粋に法律の条文構成に当たっての技術的な問題だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  217. 武山百合子

    ○武山委員 先ほどの質問もこの質問も、ではだれの法律なんでしょうか、技術的に法制局の法律なんでしょうか。国民のためですよね。ですから、わかりやすく、正しくというのが基本的原則だと思いますけれども、その辺どういうふうに国民の基本的原則を取り入れておりますでしょうか。
  218. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今申し上げたような経緯があったわけでございますが、この類型の考え方につきましては、十分国民にわかりやすく普及啓発を図ってまいりたいと考えております。  やはり国民の理解と協力を得るためには、新しい法律考え方を十分わかっていただくという努力をすることが必要でございまして、そのような観点から必要な措置をいろいろ講じてまいりたいと考えております。
  219. 武山百合子

    ○武山委員 正直言いまして、国民にはわかりにくいと思いますよ。  まず、今までジフテリアやコレラは三類に分類されていたわけですよね、現実的に。ところが、この法案では二類になってしまっているわけですよ。そこで国民は、まさになぜだろうと思うのが当たり前なんです。  ですから、そこをそちらの都合で、法制局の技術的な面でこう変えましたというわけですね。それは国民には説明にならないと思いますよ、国民はわからないわけですから。もっと単純で――それだったらむしろ国際基準の方がいいわけですよ、世界じゅう共通の方が。やはりそこが独自にしている独自性が何なのか、きちっと説明が要ると思います。そちらだけで、法制局の都合だけでやっているというと、国民には、まさに自分たちだけでつくって、自分たちの運用だけでやっているんじゃないかと。我々国民にとっては、それは非常にわかりにくいと思います。  それで、その一類から三類の感染症以外の今までの感染症については、公衆衛生審議会意見を聞き、一年間に限定して政令で定めるとしているわけですけれども、この公衆衛生審議会の構成の中身ですけれども、構成はどのようになっているのですか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。審議会のメンバーですね。
  220. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 公衆衛生審議会は、全体で百名という大変人数の多い審議会でございまして、この公衆衛生審議会の中に、伝染病予防部会でございますとか、いろいろの課題ごとに応じた部会が設けられているわけでございまして、感染症対策につきましては、公衆衛生審議会伝染病予防部会というところで御審議をお願いしているわけでございます。  どういう方がメンバーかということでございますが、大きく分けまして、一つは医療なり感染症の専門の方、それからもう一つのグループといたしまして、大学の法学部の教授でございますとか弁護士の方、言ってみれば法律専門家の方、またジャーナリストでございますとか、それ以外にいろいろいわゆる有識者の方というような方が入っておられまして、大きく分ければそのような構成で成っておりまして、現在、伝染病予防部会は十六人のメンバーで構成されております。
  221. 武山百合子

    ○武山委員 その中に感染症専門家は常駐しておりますか。
  222. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症専門家は何人か入っておられます。(武山委員「何人でしょうか」と呼ぶ)数え方にもよると思いますが、私が今ここで数えたのによりますと八名でございます。
  223. 武山百合子

    ○武山委員 十六人中八名という意味でよろしいですか。
  224. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そのとおりでございます。
  225. 武山百合子

    ○武山委員 次に、新感染症について、都道府県知事が判断することになっているわけですけれども、その際、厚生大臣が指導助言するとなっているわけですけれども、未知の感染症を判断するだけの情報、それから経験、体制が各都道府県で実際につくれるのかどうか。それから新感染症についても、指定感染症と同様、これはやはり国が前面に出て指定すべきじゃないかと思いますけれども、まず、未知の感染症を判断するだけのものを各都道府県でつくれるのかどうか、それをお答えいただきたいと思います。
  226. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 新感染症のいろいろ対応の責任は、法律上は都道府県知事になっておりますが、都道府県知事が具体的な措置を講ずる場合には厚生大臣に報告し、そして厚生大臣の具体的な助言指導を受けて対応するということになっております。  具体的に申し上げますと、まず、医師から新感染症を疑う症例の報告が保健所長を通じまして都道府県知事になされた場合に、当然、この都道府県におきましては調査をやるわけでございますが、その際、法律規定に基づきまして、厚生大臣に技術的な支援を求めることができるという規定も入れておりまして、私どもが具体的に想定しておりますのは、例えば国立感染症研究所専門家などを現地に派遣をいたしまして、都道府県知事に報告されました当該事例についての調査を、専門家のグループをつくって、いろいろ病原体の固定でございますとか予防方法についての観点から調査を行うということになろうかと思います。  一応の情報なり調査結果が集まった時点で、厚生大臣公衆衛生審議会にお諮りをいたしまして、そして、新感染症予防方法なり病気の性格なり、いろいろ措置に必要なことを審議会にお諮りし、その結果を受けて厚生大臣都道府県知事に技術的な助言を行うという体系になっているわけでございまして、以上のような法律の仕組みを考えますと、実施の法的な主体は都道府県知事でございますが、実態としては、国が相当前面に出まして技術的な面から調査研究を行う、このような体制になっているわけでございます。
  227. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、各都道府県でつくれるという意味ですね。それで、指定感染症と同様、国が全面的に出てやるというふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  228. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 新感染症につきましては、実態として国が技術的な面で相当お手伝いをするということを想定しております。
  229. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、次に移ります。  地球温暖化が言われているわけですけれども、それに関する議論で、二〇一〇年にはマラリアにかかる人が八千万人ふえるんじゃないかと言われているわけですよね。予測されているわけですね。地球が温暖化されていって八千万人ぐらいマラリアの患者がふえるんじゃないか、腸管感染症、すなわち腸に感染するわけですね、それでどんどんどんどんふえていくんじゃないかと。  地球温暖化に伴う感染症に対処することも重要な課題じゃないかと思います。これから感染症への対応は本当に多岐にわたるわけですね。それで、専門的に十分な知識を持った医師の養成が直ちに必要なわけですけれども、現状では臨床に医師の絶対数が足りないと言われているわけですけれども、政府として、今後この大変な課題に対して、教育機関、これからそういう専門家を養成する機関の確立についてどのように考えておりますでしょうか。
  230. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症対策を進めていくために、感染症のことに十分精通した医師を初めとするスタッフの養成というのは非常に重要な課題でございます。  我が国におきましては、戦後非常に伝染病流行いたしまして、保健所を初め、また大学の医学部におきましても、伝染病研究に多くの人たちが入ってきたわけでございますが、その後、伝染病の減少とともにそういう分野を志す医師等が非常に減ってまいりまして、現在では、我が国におきましては、感染症の専門医といいますか認定医は大体四百人ぐらいだと言われているわけでございます。  したがいまして、感染症新法の施行に当たりましては、そういう保健所、地方衛生研究所、国の研究所を含めまして人材の養成をどのようにしていくかということが大変大きな課題でございまして、厚生省におきましても、平成九年度からこの新興・再興感染症の研究を厚生省の重点研究の一つと据えまして、そして研究費を投入することによりまして、新しくそういう研究をやろうかという人たちが現にふえてきているわけでございまして、その研究費の全体の制度の中で、アメリカのCDC、疾病管理センターと言っておりますが、そこでございますとかWHOなどに日本人の医師を派遣をいたしまして訓練をする制度もつくったところでございます。  それらの外国への派遣を行うほか、保健所など地方自治体の医師につきましても、国立感染症研究所におきます研修でございますとか、公衆衛生員の訓練コースなども始めておりまして、そういう各般の施策を通じまして人材の養成に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
  231. 武山百合子

    ○武山委員 平成九年ということですけれども、ことし十年で一年足らずかと思いますけれども、短期で聞いても数はそんなにふえていないかと思いますけれども、実際にどのぐらいこういう感染症にかかわりたいという希望者が現に出ているのでしょうか。
  232. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 平成九年度、十年度はCDC、WHOにそれぞれ一人ずつ送っておりますが、今後、これは厚生省全体の正式な見解ではございませんが、少なくとも各都道府県に一人はそういう感染症の疫学の専門家を配置をするということは重要ではないかと思っております。  つまり、非常に重篤な感染症の集団発生などの場合に、そういう中心になる一人の専門家がいるかいないかということが現実の場におきまして対策の成否のかぎを握るということは、今までしばしば我が国のみならずアメリカ等におきましても経験しているところでございまして、理想を申せば切りがありませんけれども、全部の保健所とまでいかなくても、少なくとも各都道府県、その前段階として少なくともブロックに一人ぐらいはこういう感染症専門家を養成して配置をしていくということに真剣に取り組んでいくことが差し迫った課題ではないかというふうに今考えているところでございます。
  233. 武山百合子

    ○武山委員 いや、お言葉を返すようですけれども危機管理が全然なってないと思いますよ。一人ずつしか派遣できないなんて、新感染症が入ってきたらまさにパニックの状態になると思いますよ。カイワレのときもそうです、O157のときもそうですし、エイズのときもそうだったわけですから、実際には危機管理なんか全然なってないと思います。  私は、少なくとももう少し、百人はいかなくても、何十人かはかかわっているかと思いましたら、一人ずつなんというのは、厚生省、全く危機管理体制ができてないと思いますよ。まさに百年ぶりに法改正するというのに、国民の目にも、現実的に全然動いてないというのが印象ですよ。では、なぜ国民は税金を払って、何に使っているんだと怒り出しますよ、今お話を聞いたような危機管理状態でしたら。  新感染症というのは、いっ、いかなるとき、どんな状態で、どう起こるか全くわからないわけですから、それに対応するためにするわけですから、まさに起きてから対応するというのじゃだめなわけですね。それは十分反省の上に立っていると思います。しかし、今のお話を聞いていて、反省しているとはとても思えないというのが現状です。  それで、第三者によるチェック機関に関するものもちょっと聞きたいのですけれども、今回の法案では積極的な情報収集、原因究明など盛り込まれて、評価できる内容ではあると思いますけれども、ただし、積極的な疫学調査を有効にするためには、行政側の調査を第三者機関がチェックするシステムがないわけですね。そのチェックするシステムをつくることがやはり重要だと思うのですけれども、その辺はどう考えておりますか。まだそこまでとても行っていませんか。
  234. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず最初に、先ほどの答弁で一名ずつというふうに申し上げましたのは、予算上の制約によって一名ずつしか送れないのではなくて、実はもっとたくさん送れるように予算は措置してあるのですが、実際行っていただける先生が現在のところなかなか見つからないという現状でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、感染症危機管理を含めて本格的に勉強していただける先生をもっと発掘しまして、養成していくということが必要でございまして、そのように努力していきたい。厚生省が一名ずつしか出さないということではないので、その点はひとつ御理解を賜りたいと思います。  それから、感染症の疫学調査を進めていく上で、第三者によるチェックシステムが必要ではないかというお尋ねでございます。  これは、発生動向調査医師からの報告なり定点機関からの報告が厚生省といいますか中央に集まってくるわけでございまして、そこで解析なり、専門的な観点から先ほど申し上げましたように公表の仕方等について検討を行うわけでございますが、私どもといたしましては、そこにいろいろの分野の専門家にお入りをいただくということで、その委員会とは別に第三者機関によるチェックというものを行うことは特に考えてないわけでございまして、その点御理解を賜りたいと思います。
  235. 武山百合子

    ○武山委員 一人ずつぐらいしか行きたい人がいないという前のお話ですけれども、そのくらい豊かな貧困といいますか、まさに魅力を感じてないわけですね、そういう仕事、人命にかかわる仕事をやってみたいという。それはやはり、常に行政側の、実際に本当にこういう仕事をきちっとしているのかどうかというチェック機能が中立的に働いてないわけですね。すなわち、厚生省厚生省で独自に自分たちでやって、それを第三者からチェックを受けないということは、そこによい批判が育ってないわけですよ。自分たちのやりたい放題でやっているというふうに悪く言えばとられてしまうわけですよ。  それは、決して今までの厚生行政がすべて悪いという意味で言っているのじゃないですよ。それはそれなりに成果をおさめてきたと思います。それは私はちゃんと認めます。しかし、現実にこういう状態に、なり手もいない、第三者のチェック機能も働かない、では審議会は何をやっているんだということになってしまうのですね。審議会は自分たちに都合のいいこと、意見を述べてくれる人だけをメンバーにするのじゃないか、そういうふうに国民の側から見るととられてしまうわけですよ。  ですから、そういうよい批判、成長するための、進歩するためのよい意見というのは、やはり第三者がチェックしないと、そこに両方のチェック機能が働かないと育たないわけですね。ですから、それは、つくるということは考えておりませんということを御理解くださいというのはおかしいと思うのですよ。これからつくっていくのが国民のためなわけですね。つくらないのをどうぞ御選解くださいなんというのは、全く国が衰退する方向なわけですよ。それは検討してつくっていく、育てていくというのが進歩、発展につながるわけですね。そういうところはやはり欠けていると思いますよ。その辺はどう思いますでしょうか。
  236. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 これは感染症発生動向調査だけではございませんが、いろいろな政策決定過程を公表していく、公開していくというのは、行政に課せられた基本的な課題の一つだと認識しております。  その上で、感染症発生動向調査をどのようにして質の担保なり、それから外からそのことをきちっとチェックしていくかという御指摘につきましては、新法の施行を念頭に置きまして、私どもといたしましては、発生動向調査の全体の枠組みを再構築するということが当然必要でございますので、御指摘の点も踏まえて検討させていただきたいと考えております。
  237. 武山百合子

    ○武山委員 百年以来変えるわけですから、抜本的という意味はそういうところにも意味があるわけです。厚生省に都合のいいところを抜本的に変えるというのじゃだめなわけですね。ですから、そういうところもやはり考えていただきたいと思います。  それから、国際的な対応に関するもので、感染症予防は、日本の国内のみにとどまらず、新型インフルエンザのように国際的な対応が必要なわけですけれども、この感染症も本当に国際化してしまっているわけですね。それから、予防対策としても、国際機関と連携したり世界じゅうの専門家連携をとったり、それから専門家を派遣したり、また来ていただいたりということで、諸外国との協力というのはますます重要になっていくわけですね。ですから、先ほども一人ずつしか行ってないというのは、本当に貧困というか貧しいというか、今回の法案ではこの点はどのように盛り込まれているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  238. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症対策を進めていく上で国際協力というのは非常に重要な課題でございまして、感染症には、流行には国境がないわけでございまして、そういうことからいいますと、WHOなどの国際機関を通ずる協力、また地域におきます地域間の協力というのは必要だと思っております。  そういうことから、本法案の第三条におきまして、国の責務といたしまして、感染症に関する国際的な連携確保するように努めるべきとも規定されておりますが、先ほどから申し上げておりますように、具体的にはWHOを初めアメリカの疾病管理センターなどとの協力を行いながら、国際的な協力を行いながら、例えば新型インフルエンザの問題でございますとか地球的規模感染症対策我が国としても積極的な貢献をしていきたいと考えているところでございます。
  239. 武山百合子

    ○武山委員 そういう点で、例えばインターネット等で情報公開をぜひしていただきたいと思います。世界的な情報を日本の国民は知りたがっておりますので、ぜひ情報公開していただきたいと思いますけれども、それはしていただけますか。
  240. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現時点におきましても、例えば厚生省のホームページというのがインターネットにございまして、そこで審議会の記録でございますとか、国民に対していろいろ情報提供する必要がある特定の事案が発生した場合に、例えば一昨年のO157などにつきましては厚生省のホームページに子細な情報提供いたしまして、国民から御利用いただいているところでございます。  なお、今後につきましては、現在でも、WHOでございますとかCDC等、常にインターネットを使って情報収集が可能でございますし、またそういう外国から情報をとるということだけでなく、我が国の役所、厚生省としても、また厚生省附属の研究機関のホームページにおきましても、感染症対策のいろいろ新しい知見について積極的な情報提供をしていくよう努めてまいりたいと考えております。
  241. 武山百合子

    ○武山委員 もう十分国民が知りたい情報というのはどういうものかということはおわかりだと思うのですよね。ぜひ国民が知りたい情報をありのままに公開していただきたいと思います。  最後になりますが、就業制限に関するものでちょっとお聞きしたいと思います。  十八条で三類感染症患者に対して特定業務への就業制限の規定が設けられているわけですね。この感染症を公衆に蔓延させるおそれがなくなるまでの期間、就業を禁止するものであるとあるわけですけれども、問題は、そのおそれがなくなった場合に職場に復帰することが保障されるのかどうか、法案の条文ではその点をどういうふうに読み取ったらいいのか。すなわち、職場に復帰することをどう担保されるのか、その辺は政府としてどのような対応を考えているのか、お聞きしたいと思います。
  242. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 就業制限がかかった場合の扱いでございますが、これは、三類感染症でございます腸管出血性大腸菌感染症患者を例にとりますと、そういう患者さんは直接食品に接触する業務への就業が禁止されるわけでございますが、この場合におきましても、雇用先の事業所で厨房勤務から例えばレジの係に一時的に勤務がえをするというようなことが可能であるというふうに私たちは考えております。  したがいまして、こういう就業制限は一時的で、この就業制限の要件に該当しなくなった段階では直ちに解除されるものでございまして、こうしたことから、一般的に職場復帰が問題となる事例はそう多くないというふうには考えておりますが、私どもも、この法律の施行段階におきまして、保健所なりいろいろ地方自治体の方から、職場復帰に支障がないように雇用主等関係者に働きかけをしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  243. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、私の質問の、どう保障されるか、担保されるかということは、働きかけをするという意味ですか。
  244. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そういう支障がないように働きかけをしていくということでございます。  それから、どう担保されるかということでございますが、どれだけの期間、また、どういう業務についてということは、個別に政省令で具体的に定めて、必要最低限の規制にするという考え方で今後作業をすることになります。
  245. 武山百合子

    ○武山委員 中には本当に断る人がいるかもしれませんね、そういう場合はどうされますか。
  246. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そこのところは、職場復帰につきまして、地方自治体の方から強制力をもって復帰をさせるということは、この法律上、今そういう条文を想定しておりませんけれども、今申し上げましたように、雇用主等に対しまして理解を求めていく、そういうことは努力してやっていきたいと考えておるところでございます。
  247. 武山百合子

    ○武山委員 何の法的拘束力もないわけですね。法律でまた縛らなくても実際に雇用していただければ一番いいわけですけれども、まだまだそこまでいっていない例があるからこういうことを聞くわけなのです。  では、もしそこで断られたら泣き損みたいな感じですか。
  248. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 これは、先ほど来幾つか御質問が出ておりますが、国家賠償法という法律がございますが、これは公務員の公権力の行使に当たって故意または過失がない場合は適用になりませんので、そういうことから考えますと、今御指摘のような事例については、保健所などから事業主等に対して理解を求めていくということが一番現実的な対応ではないかというふうに考えているところでございます。
  249. 武山百合子

    ○武山委員 では、最終的には絶対理解を得られるという意味にとってよろしいのでしょうか。
  250. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そのような努力をするように国としても地方自治体等に対して指導してまいりたいと考えているところでございます。
  251. 武山百合子

    ○武山委員 そのくらい重い法律なわけですよね、百年ぶりに改正されるわけですから。ですから、絶対に言い切れるような答えをするような行政でないとやはりだめだと思いますよ。ありがとうございました。終わります。
  252. 木村義雄

    木村委員長 児玉健次君。
  253. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  けさから非常に重要な質問が続いていると思います。五月の質疑があって、私にとってきょうは二度目になりますけれども、この問題を論議するとき、やはり基本的な立場が非常に重要だと考えます。  すなわち、日本において国の責任で進められてきた過去の感染症の施策がどんな事態をもたらしているか。ハンセン病や後天性免疫不全症候群等の患者、家族の方たちの人間としての尊厳を深く傷つけてきた。そのことに対する真摯な反省に立って、そして感染症患者等の人権を十分に尊重していく、それにふさわしい法律案にしていかなければならない、そのことを私は改めて痛感いたします。そういう立場で質問を続けたいと思います。  端的にお聞きしますから、ぜひ簡潔にお答えいただきたいと思います。  この法案の第四十六条に「新感染症の所見がある者」、こういう規定があります。そして、その判断は都道府県知事が行うことになりますが、法律の六条によれば、「「新感染症」とは、」「既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもの」だと。いわゆる過去におけるその疾病に対する知見の蓄積がない、そういうものについてどうやってその新感染症の所見なるものを都道府県知事は判断できるのか、この点についてまずお答えいただきたい。
  254. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず、その患者さんを診察しました現場医師が、これは従来の感染症と全く違う、そういう疑いを持ったときに、保健所を通じまして都道府県知事に報告がなされるわけでございますが、それを受けまして、現実的な対応といたしましては、その患者さんにつきまして、病原体は何かとか、予防対策はどうしたらいいかというようなことについては、これは全く過去において経験のない病気の可能性が非常に高いわけでございますから、当然、その原因究明なり調査に当たりましては、高度な技術力が要求されるというふうに考えております。  したがいまして、都道府県知事要請に基づきまして、厚生大臣厚生省附属の試験研究機関でございますとか、そういう我が国でもトップレベルの専門家のチームをつくりまして、現地に派遣をいたしまして、いろいろな調査を進め、そして一応のデータが整った段階公衆衛生審議会にお諮りをして、具体的な都道府県知事対応措置の内容について厚生大臣から都道府県知事にお伝えをし、保健所長がそれを実施する、こういう手順を考えているわけでございます。
  255. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生省は、この法案の審議を始めるときに、今の新感染症を、公衆衛生審議会伝染病予防部会の基本問題検討委員会、以下小委員会報告と略称しますが、小委員会報告では新感染症とは言わずに原因不明の感染症という呼び名である。  いずれにしろ、新感染症なり原因不明の感染症とは何か、そういう御質問をしたら、厚生省の担当の方は、地球初発の感染症だとおっしゃった。あっちこっちあるんじゃなくて、初めて明らかになるような感染症だと。日本に地球初発の感染症がこれまでどのくらいあったかとお聞きしたら、成人丁細胞白血病、日本紅斑熱、ツツガムシ病等六つの例を挙げてくださった。  そこで、今の厚生省のお答えに関連してですが、お医者さんが診て、これは我々が知らなかった新しい何かかもしれない、保健所を通じて知事に来て、知事から厚生省にというんだけれども、九州で発見された成人丁細胞白血病は、高月氏らによってそれが日本初発の感染症であると確認されたのは一九七七年、病原体が分離固定されたのは一九八一年、四年かかっていますね。それから日本脳炎、これは人から人ではないから、いわゆる今度のカテゴリーの中には入らないけれども、しかし、重要な疾病であるという点は意見の違いはないと思うんです。日本脳炎に関して言えば、金子氏によって日本脳炎と命名されたのが一九二八年です。そして、日本脳炎ウイルスが分離固定されたのが一九三五年です。相違ありませんね。
  256. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そのとおりでございます。
  257. 児玉健次

    ○児玉委員 そうなりますと、一言で新感染症とかと言うけれども、ある地球初発の感染症が、そうかもしれないというので認識されて、症状からいろいろ判断をして、そして病原体が分離固定されるまで数年かかっている。それで終わりではない。むしろ物事はそこから始まる。感染経路、診断治療予防と、それらが明らかにされるには、さらにまたより多くの年月と努力を要することになりはしないかと思うんですが、いかがですか。
  258. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 一般的に申し上げまして、全く新しい病気が出てきた場合に、診断のための症状や検査所見につきましては、その疾患に関する知見が積み重なっていくとともに、特徴的なものが症候群として認識されていき、さらにこの病像が明らかになることによって診断基準という形で一般化されていくというのが通常の手順でございます。  そうしたことから考えますと、今委員の方から、成人丁細胞白血病なり、日本において最初に発見された病気についての過去の事例についてのお話がございましたが、そうした過程に要する時間的な経過というものにつきましては、個々の疾病の特性に応じて決まってくることでございまして、平均的にどれくらいの時間がかかるかということは、なかなか一般的にお答えするのは難しいと思いますが、今先生がおっしゃったような病気が問題になった時期と現在では、かなりウイルス学なり遺伝子レベルの診断技術も進んできておりますので、以前よりは短い時間でいろいろの必要な事項について見当がつけられるような状況になっているというふうに理解をしております。
  259. 児玉健次

    ○児玉委員 私も平均年数を聞いているわけじゃないんです。さらに多くの年月や努力が必要ではないか。  そのことについて、伝染病予防部会の委員の方々、ある方は国立感染症研究所感染症情報センター長であり、また別の方は国立国際医療センター研究所長である、もう一人の方は国立感染症研究所の部長である、こういった方たちがまとめたこの小委員会報告で、次のように述べていますね。  新感染症だと疑われた方に対する入院勧告その他の強制的な措置を発動しようとするとき、原因不明の感染症としての判断の適正を担保するため、具体的に入院勧告または命令を発動するに至った判断経過の公開を行う、こういうふうに述べていますね。どういうふうに公開しますか。
  260. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 公衆衛生審議会に当該事例について厚生大臣がお諮りするわけでございますが、その公衆衛生審議会の議論の公開、これは現在でも審議は公開しているわけでございますが、それが一つあると思います。  それから、なぜその病気を持った方に入院していただくか、それからその期間はどれくらいかというようなことにつきまして、当然、厚生大臣都道府県知事にお伝えした内容につきまして公開をして、感染者はもちろんのこと、関係者に御理解をいただくということが必要かと思っております。
  261. 児玉健次

    ○児玉委員 その点について、専門家の方たちを含む皆さん方は、感染症と疑われる原因不明の疾病が当該要件、新感染症の要件に該当するかどうかを判断することは容易ではない、容易ではないと言い切っていますよ。  先ほど、武山委員の御質問を非常に私興味深くお聞きをしておったんですけれども、そもそもこの小委員会なるものは、どこかで地震が起きたとき、すぐ地震学者の何人かが時間を置かず集まるというふうな体制にはなっておりませんね。そして、そういう中で、都道府県知事に対して指導助言を行うと言っているんだけれども、これほど困難な仕事であるのであれば、なぜ国が直接責任を負わないのか、どうしてそんな高度に難しいことを都道府県知事にゆだねるのか、その点についてなぜか、お答えいただきたいと思います。
  262. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そういう新感染症発生する場所というのは、これは日本国内どこでも想定されるわけでございますが、都道府県知事法律措置の責任をゆだねておりますのは、現地の医療機関状況なり当該地域の状況に精通して、実際的なことをよく知っている、そういうことから都道府県知事法律上の責任者にしているわけでございまして、先ほどから申し上げておりますように、非常に高度な技術的な判断力を要しますので、その点については国が、厚生大臣公衆衛生審議会意見を踏まえて前面に出て対応していく、このような制度に構成させていただいたということでございます。
  263. 児玉健次

    ○児玉委員 先ほど、武山委員の御質問に対しても、事実上国が前面に出るというふうにおっしゃった。また、そうでなければこういった事態に対処できないと思うんです。そうであれば、何も都道府県知事にゆだねるような迂遠なことはやらずに、この種の問題については国が責任を負う、その方が、今後迅速かつ確実な感染症対策を進めていく上では有効ではないか。  別に危険をどうこう宣伝するという立場で言っているんじゃなくて、今グローバルな規模での感染症対策の迅速性、確実性という点でいえば、むしろ日本が選ぼうとするこの道はグローバルな流れに沿ってはいない、こう考えますね。この点の是正を私は求めたいと思いますが、いかがですか。
  264. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現行伝染病予防法におきましては、伝染病患者隔離なり対物の措置につきましては、市町村長が実施をするということになっております。今回、この新感染症法におきましては、入院等の措置につきましては市町村長から都道府県知事に変えているわけでございますが、そういうこととあわせまして、新感染症におきましても、実際の患者さんの入院措置に係る手続でございますとか移送なり消毒等につきましては、これは実施の責任というものを都道府県知事という形に法律的に定め、それを実際に行うための技術的な面については実質的に厚生大臣が国の審議会なり国の研究所を総動員をして対応していく、こういう趣旨でございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  265. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣、今の点は、私はこの法案の持っている重要な問題点の一つだとして大臣にも指摘しておきたいと思うのです。後ほどお伺いしたいと思います。  次の問題は、指定感染症の問題です。  第六条の六項、前回も御質問をしました。そのとき、厚生省は私にこうお答えになった。指定感染症というのは小委員会の論議になかったのじゃないか、そして報告書のどこを読んでもそのようなものはないと私がお聞きをしたら、五月二十七日、厚生省はこういうふうにおっしゃった。「平成九年十月二十二日の同小委員会の審議において法的位置づけが具体的に審議されたところでございます。最終的な意見書においても、予想されない感染症に関して、その都度所要の措置を的確に講ずる必要性が指摘されており、指定感染症はこれを制度化したものでございます。」どだい予想されない感染症なんというような言葉は使われておりませんね。それが一つ。  それから、小委員会報告を何度読んでもそのように読み取れません、そのような議論があったということは読み取れない。現に五月二十九日に本委員会が行った参考人に対する私たちの質問、おいでになった弁護士の光石先生はこうおっしゃった。「指定感染症などと、小委員会では一度も検討されたことのない類型を唐突に持ち出して堂々と規定しております。」現にこの討議に参加された小委員の方がそういうふうに述べている。これはどういうことでしょう。
  266. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 指定感染症が基本問題検討委員会の審議の中で検討されなかったではないかという御指摘でございます。  これは結論から申し上げますと、平成九年十月二十二日の基本問題検討委員会におきまして、「原因不明の感染症考え方について」という資料に基づきまして、指定感染症のもとになる考え方について議論がされたところでございます。  新法におきまして指定感染症とされた制度的な考え方につきましては、小委員会における検討の中で、先ほど申し上げましたように、新感染症とともに昨年の十月二十二日に審議されたわけでございまして、厚生大臣の指定による二から四号感染症に準じた対応、一年間の限定適用といたしまして、法的位置づけが明示的かつ具体的に審議されたというふうに理解をしているところでございます。
  267. 児玉健次

    ○児玉委員 結論において、今局長がおっしゃったように、法律で明示されたということはよく承知しています。そこに至る経過で、小委員会の何人かの法律専門家は、その問題を論議したという意識を少なくともお持ちになっていない。そして、厚生省が言われたように、予想されない感染症なんという議論になったと私は一切伺っていない。  問題は何かというと、この指定感染症というのに関しては、国会は全く関知できませんね。政令で厚生省がお決めになる仕掛けになっている。しかも、この指定感染症は、法律の第三章から第六章までのすべての強制的措置がとられる仕組みになっている。このあたりに、疾病名だけを法律的に列挙して、それでもって感染症を分類化していく。そのときどうしても穴があきますから、その部分については指定感染症でカバーしょうとする。この法案の抱えている大きな問題点がこの指定感染症の部分に集中している。この点は私は一つ指摘しておきたい。後ほど、このことに関しては私たちは修正案を出しますから。  さらに、この問題に関連して、世界保健機構、WHOが今進めている症候群のアプローチについてです。  この点も五月二十七日に論議をいたしました。厚生省は、私の求めに対して、世界保健機構の準備されていた文書を届けてくださり、そしてその中で、五つの症候群別のアプローチについていえば、正確に言えば「その他の報告すべき症候群」というのがありますから六つですね、六分類についていろいろ資料は確かにいただきました。  そのとき私が、そのときというのは五月の質問のときです、WHOの国際保健規則に関するドラフトはいつ日本に届いたのかと聞いたら、ことしの二月に届きましたと。そして、小委員会報告は、これは言うまでもないけれども去年の暮れのことですし、公衆衛生審議会委員会も去年の十二月ですから、だから法案をつくる論議の過程や法案作成過程にそれを反映させることはできなかった、こういう趣旨のことをお答えになっている。  私は、これは事実と違うと思う。というのは、昨年の三月十六日から二十二日にかけて小委員会の四人の先生方、そして厚生省のエイズ結核感染症課のお二人の職員の方がジュネーブとロンドンにおいでになって、そのときの海外視察報告をお出しになっている。拝見すると、明確に国際保健規則の改正がどのような考え方でどこまで進んでいるかということを明示されていますね。その中で、「このような手法のメリットは、感度が高いということである。」「もう一つのメリットは、リアルタイム・リスポンスが可能となることである。」即時の対応が可能だ。「デメリットは、各国にとって報告の負担が大きくなることである。」こういつて具体的に報告をされている。そして、この資料は、拝見すると昨年四月十五日の小委員会に資料一として提出されているじゃありませんか。  そうなると、WHOの一番新しいグローバルな感染症対策の戦略部分について厚生省は十分にそれを承知し、この法案を作成することは可能だったはずだ、そうではありませんか。
  268. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今先生から御指摘の事実関係につきまして、その日付等につきまして事実であるということを前提にお答えをさせていただきたいと思いますが、WHOが現在検討を進めております国際保健規則の考え方につきましては、当委員会におきましてもきょうお答えを既にさせていただいておりますが、新興・再興感染症が……(児玉委員「その点の繰り返しは結構です」と呼ぶ)問題になりまして、したがって、IHRの基本的な目的は、いかに迅速に報告をもらうかということが主目的でございまして、そういう観点から症候群による方式をとっているわけでございます。  それと今回の新感染症法におきます疾病分類というものをどのように考えるかということからいきますと、新感染症法におきましては、発生動向調査と、それに続いて入院なり対物措置というものが連動しているわけでございますから、なおかつ、我が国におきましては、細菌、ウイルス等の病原体の検出が迅速にできるということを考えますと、WHOの作業は、そういう作業が行われているということは当然念頭に置きつつも、我が国におきます新感染症法の体系といたしまして具体的に病名を列記した方がいいという考え方に基づきまして、小委員会、それから委員会報告をいただいて、この法制化を行ったというふうな経過だと思います。
  269. 児玉健次

    ○児玉委員 今、厚生省は、昨年の三月の段階でこのIHRについて知り得る立場にあった、その点についての事実関係は率直にお認めになりましたから、そのことを確認しておきたいと思うのです。  そこで、今のお話の問題なんですが、このIHR自身がなぜ症候群アプローチをとるかということについて、前文の部分で明確に述べているんじゃありませんか。「地球規模感染症脅威と新興・再興感染症の増加を考慮し、国際的に感染症をコントロールするためには、各国が水際で侵入防止を行うよりサーベイランスや拡大防止策を講ずる方が効果的であり、症候群のアプローチが有効である。」先進国、後進国という言い方は、ここからは出てこないですね。そして、日本にとってもこの方が私は有効だと思うのです。  日本が先進国かどうかという点については議論があります。例えば結核についてどうかというのは、先日の省庁再編の特別委員会で私と厚生省で議論をして、厚生省は、結核に関して言えば、日本は著しい後進性を今示していると言わざるを得ない、こうも述べられた。それから、先進国ではどうかという点についても、先ほど伊藤局長が御答弁の中で言われたアメリカのCDC自身が、今はセンティネルサーベイランス、症状による疾病監視体制を実施していますね。  私が言いたいのは、あれかこれかどっちかにしろと言っているのではないのです。日本の医療の水準からして、疾病による報告を受ける方がはるかに迅速で、そして国民の健康を守る上で有効なところもあるだろうし、症候群別のアプローチが非常に全地球的な規模で今進み出しているんだから、そこにどうやって日本がフィットしていくか、適応していくか、その点で、来年IHRが採択されたとき必要であれば検討するというのでなく、この法案検討している今、その点について厚生省の責任のある考えをお示しになることが必要ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  270. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 IHRが症候群によりまして報告されることは、例えば、具体的な例を挙げますと、アフリカなり地球上のどこかの地点でWHOに報告すべき何らかの疾病が発生したという情報は、症候群における報告の時点で実は我が国にも入ってくるわけでございます。それが例えば急性出血熱症候群であれば、幾つかの病気が想定されて、何かそういうものが発生したと、それは我が国にとっても有益なことであることは御指摘のとおりだと思います。  そこで、これは純粋に、純粋にというのはちょっと言い過ぎかもわかりませんが、いかに迅速に報告をするか、そしてそれに対して迅速な対応をするかという制度でございますので、これは現在我が国におきます感染症新法考え方と、症候群によってとにかくできるだけ早い段階で報告していただくということは、二者択一の問題ではないというふうに理解しているわけでございます。  したがいまして、我が国の現状をかんがみますと、感染症新法の疾病分類の考え方は、いろいろ保健所なり衛生研究所の能力を考えましても十分対応できるという考え方のもとに、このような病名を列挙する形で体系を考えているわけでございまして、したがいまして、先ほど、国際保健規則が採択された段階で、その全体の状況を見まして、それに応じて国内法に何らかの変更点を加える必要があればその時点で再検討するというようなことを申し上げたわけでございまして、基本的にはIHRの考え方感染症新法の疾病分類の考え方が矛盾するものというふうには考えておりません。
  271. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生省がそのようにお考えになるのは立法者としてその立場にこだわられるからだ、私はそう思いますね。  この点で国際的な評価がどうかという、私はこの問題は非常に重要ですから宮下大臣に御答弁をお願いしたいのですが、私たちが五月にこの問題を議論した少し後、六月三日の朝日新聞に、アメリカのインディアナ大学大学院の国際感染症法学のデビッド・フィドラーさんの投稿が出されたことがありました。その中で、WHOの国際保健規則の改定について、この方自身が法律家として参加されている。非常に興味深く拝見したのですが、最近出版された岩波の「科学」の九月号、これでフィドラーさんが日本の感染症新法と今WHOが中心になって進めているグローバルな健康政策とを対比して短い文章を書いていらっしゃいます。  大臣、その中で私が非常にここは肝心だと思っているのは、輸入感染症対応する国家というモデルは時代おくれだ、そう指摘した上で、国際保健規則改定案の中で示されている症状報告への移行、それを日本の法案は反映していない、こう述べた上で、今局長がおっしゃったこととも関連するのですが、特定の疾病報告と症状報告をあわせて行うことが日本の状況で意味があるのだとしてもと、二者択一の立場をとっていませんよ。両方をあわせて行うことが意味あることだとしても、WHOの症状サーベイランスへの移行を無視することは疑問である、こう述べられた上で、改定国際保健規則が世界保健総会で採択されれば、その場で日本が反対しない限り、日本は国際法のもとでそれに拘束されることになる。まさにそうだと思いますね、そういう状態が今予測されるのですから。ここのところは柔軟に、そして積極的に対応をされる必要があるんじゃないか。大臣、いかがでしょうか。
  272. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 大臣の御答弁の前に少し御説明をさせていただきたいと思います。  WHOのこの問題の責任者でありますヘイマンという部長がいるわけですが、直接このことにつきましていろいろお話をしているところでございますが、WHOも、IHRの改定作業の中におきまして、症候群だけではなくて、病名を列挙するということについても現在検討しているというふうに聞いているわけでございます。  そこで、これは二者択一の問題でないというふうに申し上げましたが、具体的には、今国会で御審議いただいておりますこの法案の中で、新感染症の扱いにつきまして、新感染症というのは全く地球上で初めての病気が例えば我が国に起きるというようなことも想定しているわけでございますから、そういう感染症の把握につきましては、当然のことながら、はっきりした診断基準などがない段階では症候群による報告方式というものも私どもとしては採用していきたいというふうに考えておるわけでございます。  その点につきまして、繰り返しになりますが、二者択一でどちらかに決めるというよりは、矛盾するものではないという考え方で、WHOの改定作業を見ながら必要な対応をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  273. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長の言われましたようなことであろうかと思うんです。フィドラー助教授の、症候群方式が主体となっているのは世界の潮流だということを述べられているのはそのとおりでございますが、しばしば今局長が答弁なさっていらっしゃるように、先進国の場合と開発途上国等で把握する場合あるいは対処する場合で違うということも考えられますし、それから、今御説明のありましたように、国際保健規則の改正案においても、おのおのの症候群に合致する疾患名を列挙することも否定はしていない、検討されておるということでございますので、二者択一的なものではないというように思います。  したがって、日本と世界の保健機関、WHOとの関係につきましては、緊密な連絡をとりながら今進めておるところでございまして、必ずしも世界の流れに相反したものだというようには理解をしておりません。
  274. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣、別の聞き方をしたいんですが、WHOが中心になって今文字どおり感染症に関してグローバルなチャレンジ、余り横文字は使いたくないんだけれども、これは国際的でなくて全地球的な規模での挑戦をやっているわけですよ。その挑戦に当然日本は積極的に参加し、必要な努力をなさいますね。いかがでしょう。
  275. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のように、グローバルな、地球的な視点でいろいろな点を検討するというのは当然なことだと存じます。
  276. 児玉健次

    ○児玉委員 そのことを速やかに具体化していただきたいということを述べて、次の問題に入ります。  それは、この感染症法案の問題でもう一つの重要な柱である患者・感染者等の人権をどのように私たちが配慮ではなく尊重していくか、その問題ですね。  端的にお聞きしたいんですが、法案の第二条、ここでは「感染症患者等の人権に配慮しつつ、」とあります。私どもが後刻提出する修正案では、ここのところを尊重というふうに述べております。なぜ配慮という言葉にこだわるんでしょう。
  277. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 感染症新法におきましては、感染症予防するため、国等が必要な施策を実施するに当たりまして患者等の権利に一定の制限を加えることになるため、人権の尊重の要請との最大限の調和を図るということが必要でございます。  このような権利制限と人権尊重の調和を図る考え方をあらわす用語が法律規定としては必要であると考えておりまして、他の価値と比較してより人権を重んじることを意味し得る尊重ではなく、以上の考え方を的確に表現するための配慮という用語を用いたわけでございます。
  278. 児玉健次

    ○児玉委員 今のバランス云々というのはちょっと奇妙な議論でして、日本国憲法の十三条では「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、」「最大の尊重を必要とする。」、世界人権宣言では「人権及び基本的自由の普遍的な尊重」、ちゃんとそのように言っていますね。  それで、今あなたは、いわゆる予防的な見地と人権の尊重のバランスとおっしゃったけれども、ことしの五月にWHOが策定した「二十一世紀にすべての人々に健康を」、つい先ほどこの案を皆さんからいただきました、ありがたく拝見したんですが、この「二十一世紀に向けてすべての人々に健康を」という宣言の基本理念はどうなっているかというと、人権の尊重と公衆衛生の目標達成は相補うものである。バランスで考えるんじゃなくて相補うものだ、一体のものだ、この立場に立つべきじゃないですか。大臣、どうでしょう。
  279. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の御指摘のように、「二十一世紀のすべての人々に健康を」という中には、確かにヒューマン・ライトとパブリック・ヘルス・ゴールズとはコンプリメンタリーだということが書かれております。したがって、これを訳しますと補完し合うものという意味だと存じますが、基本的な人権を尊重していくということもこの法律趣旨でございますし、同時に、感染症予防目的をきちっと立てるということも一つの大きな目的でございますから、それが互いに補完し合っていくという意味であるように私は思います。
  280. 児玉健次

    ○児玉委員 その点ははっきりこの委員会で私は確認しておきたいんです。人権の尊重と公衆衛生の目標達成は相補い合うものであるという点をはっきりさせた上で、そうであれば、法案についてさらに私たちは踏み込まなきゃなりません。  例えば第二十五条で、入院期間が三十日を超えるとき、本人またはその保護者は厚生大臣に審査請求をすることができる。なぜ三十日なのか、なぜ代理人を認めないのか、端的にお答え下さい。
  281. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 現在、伝染病予防法に基づきます入院の平均的な期間が実は十四日間でございます。そういうことから、例えば七十二時間の三日間と合わせまして十日間というふうに規定したのが一つでございまして、また、それを三十日というのは、二回目、三回目と延長していくというようなことでございまして、そのようなことから、入院期間が三十日を超えるということを一応の目安にいたしまして行政不服審査の特例を設けたということでございます。
  282. 児玉健次

    ○児玉委員 なぜ代理人を認めないのか。
  283. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 その代理人についての直接的な規定はございませんが、通常、行政不服審査請求におきましては文書で行うということになっておりますが、できるだけ御負担をかけないということから、口頭によります審査請求も可能であるとしたこと、及び患者さんの保護者からの審査請求も認めるということを法律に明記しているわけでございまして、患者さんにかわって保護者からの審査請求も認められているというふうに理解をしております。
  284. 児玉健次

    ○児玉委員 法律における適正手続で、代理人を認めたら適正でないという、そんな判断にまさか厚生省は立っていないと思いますね。たとえ口頭で行うにしろいずれにしろ、本人、保護者、代理人、なぜ代理人が認められないのか、やはりこれは明らかに不十分じゃありませんか。
  285. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘の点は非常に重要な点だと考えておりますので、この場で断定的に申し上げられませんが、具体的な運用につきましては、施行の段階におきまして現実的な方法を検討させていただきたいと考えております。
  286. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣、最後の問題に入るわけなんですが、先ほどの感染症を疾病別に分類していくやり方、そして穴があく部分については指定感染症でカバーする、私はそういうふうに見ているわけだけれども、そのことについて小委員会報告自身が非常に具体的な提起をしています、感染症類型の再整理に当たっては、法律上の分類が新たな差別、偏見につながらないように法制度の構築、実施に向けて努力が必要だという趣旨のことを。この点は、先ほどのWHO保健規則とも深く関連しております。  これまでの日本の感染症に関する施策の重要な傷跡は、疾病名による刻印を患者、家族に付したことですね。そのことを繰り返すことになりはしないか。先ほどから、ある意味では厚生省のお答えと私との間でそんな大きな距離があるわけではない。日本の感染症を考えるときに、日本の置かれている医学の現状と地球的な流れとをどうやって一緒にさせていくか、この点で努力をする意思表示が私はあったと思うのです。この症候群別のアプローチというのは、その点でも非常なメリットがありますね。疾病で分類するのでなく、症候群別に分類していくと早い、そして広い。なぜこの疾病別の分類にあくまでこだわるのか。  そして、先ほども御質問がありましたけれども、小委員会報告では一類から四類まで一定のカテゴリーの説明があります。前回、厚生省はカテゴリーについて異論はないとおっしゃった。どうやって国民に理解してもらおうかと思うとき、やはり患者、家族の人権を考えるとき、症候群アプローチの持っているすぐれた点に私は注目していただきたいと思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  287. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 最初に私の方から若干御説明させていただきたいと思います。  今回の法案におきましては、疾病名を列挙する形でいろいろの枠組みを構築しているわけでございます。一つは、行動制限を要する感染症の場合に、疾病名を列挙する方が、行動制限を人権に配慮いたしまして必要最小限にとどめるという観点からはすぐれているのではないかというふうに考えているわけでございまして、そのような観点から、感染症新法におきましては、症候群ではなくて病名で特定をするという考え方をとらせていただいているわけでございます。
  288. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいま局長の言われたとおりでございますが、特に他の国の例を見ましても、多くは、入院が必要な感染症でありますとか就業制限が必要な感染症、報告が必要な感染症というようなことで、いろいろそれぞれの必要な措置に応じて感染症を類型化して規定しておるようにお伺いしております。  特にイギリスあるいはドイツ、アメリカ等では、それぞれ入院対象等について個別の病名でこれを措置対象疾患として規定しているという事実もございまして、必ずしも国際的な潮流に反しているというようには思いません。
  289. 児玉健次

    ○児玉委員 時間が来ましたから終わりますけれども、最後に、私、大臣に強調したい点は、感染症に対して全地球的な挑戦が今二十一世紀に向けて非常に大規模に開始されていますね。先ほど大臣も明言されましたけれども、日本はそれに積極的に参加する、大いに私たちもその努力をともにしたいと思うのです。そして、それをやるとき、過去に国が責任を持って進めてきた感染症施策がどのくらい多くの国民人権を傷つけてきたか、このことに対する真摯な反省を重ね合わせて、この法案をよりよいものにしていく必要がある。そのために、私は、この委員会でさらにみんなで努力をしたいということを述べて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  290. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 ちょっと先ほどの答弁を訂正させていただきたいと思います。  審査請求の特例の規定についての御答弁の中で、代理人のことにつきましては規定がないというふうに申し上げましたが、行政不服審査法の中に代理人の規定がございますので、感染症新法の中に特段その規定がなくても、代理人が請求をできるというふうに解されると思います。
  291. 児玉健次

    ○児玉委員 そういうふうに終わった後言われたのじゃ、私も一言言わなきゃいけないのだけれども。  この法律の本体にビルトインされている審査請求の問題を私は言っている。国家賠償法その他さまざまなものに代理人の規定があることはわかり切った話で、そのことをさっき私は指摘しているのだから。だから、あなたの先ほどの答弁について、私は今後の推移を見守っています。  終わります。
  292. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。
  293. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、まず、七月三十一日に国家賠償訴訟を起こしましたらい予防法のことにつきまして質問を始めさせていただきます。  まず最初に、この国賠訴訟の、「はじめに」と書かれている冒頭の部分を読ませていただきます。   ハンセン病患者とされた人達を収容した国立療養所には、かつて望郷台と呼ばれた高台があった。療養所に入った者は、二度と故郷に帰ることができない。せめて故郷の方角を眺めるために、幾人もの療養者がこの場所にたたずんだ。  今でも療養所には、引き取り手のいない遺骨が残されている。らい予防法によって、死んでも家に帰ることができなかったと言われる所以である。死んで荼毘に付され、煙が大空に解き放たれると、それを見送る療養たちは、「煙になってようやく社会復帰した」とささやきあった。  療養所の長い歴史の中で、強制的に収容され療養たちは、社会から隔離されただけではなく、強制労働を課され、断種や堕胎を強要され、数知れない人権侵害にさらされてきた。また、国の行なう隔離政策のために、ハンセン病に対する正しい国民の理解が得られず、患者だけではなくその家族も、長い間差別と偏見とに苦しめられてきた。これが訴状の冒頭に書かれております。これからずっと続くわけですが、このような思いを持って国賠訴訟に踏み切ったということをまずお伝えしたいと思います。  そしてまた、私、療養所に行ってまいりましたが、そのときに詠まれた歌を二首ここで読ませていただきます。   強いられて受けし断種を老いて思う吾を限りの命かなしも   退所なき予防法の廃止告げたくも吾が父母はこの世にいまさず  私は、この訴状を読みまして、国の法律によって人権侵害をむしろ積極的に進めてきた、この国家賠償訴訟そのものに対しては、立法府にいる私たち自身が、そして政府、厚生省が被告であるという認識に立ちたいと思っております。  大臣、この国家賠償訴訟に対しての大臣の受けとめ方を御答弁をお願いします。
  294. 宮下創平

    宮下国務大臣 去る七月三十一日に、熊本地裁に原告十三人の方々が国家賠償請求訴訟を提起したのは御指摘のとおりでございます。  今委員のおっしゃられたように、このハンセン病、いわゆるらい予防法以来、大変な苦しみと、そしてまた本当につらい思いをしながらやってこられたということは私もよく承知しておりますが、らい予防法を廃止するというようになりまして、特に入所者団体と折衝を重ねまして、入所者の基本的要求は、個人の金品要求ではなくて、将来にわたる処遇を維持、継続していただきたいということに主眼があるというように理解いたしておりまして、法廃止以降も、廃止法律等によって処遇の確保あるいは社会的復帰の支援等の措置を継続する、そしてさらに重視していくということが言われておるわけでございます。  そんなことを考えた場合に、今回の訴訟につきまして、これをどう受けとめるかということでございます。  ハンセン病対策の経緯やいろいろ考えますと、その気持ちはわからないではございません。しかし、また、私たち政府としては、今申しましたような、将来にわたって本当に手厚い手当てその他をやるということも大きな目的でございまして、今直ちに厚生省として補償を行う考え方はとっておりませんが、訴訟が提起されたものでございますから、関係機関とも十分協議の上、対処、対応していきたい、こう思っております。
  295. 中川智子

    ○中川(智)委員 今、大臣のお立場ではそのような御答弁しかやむを得ないのかなとは思います。  裁判の中でさまざまなことが明らかにされていくでしょうけれども、平均年齢七十二歳、原告の中には八十代の方もいらっしゃいます、現在は十三人ですけれども、今沖縄その他で賠償訴訟の準備が進んでいるやに聞いております。ぜひともこれに対しては厚生省が誠意を持って早期の解決を図っていかれることを心から希望しているということをこの場でお伝えいたします。  続きまして、また大臣にお伺いしたいのですが、この九月七日に、原告の方、そして原告の弁護団の方が上京されまして、さまざまな方になぜこの裁判を今起こしたのかということをお話しに来てくださいました。官房長官のところにもお話しに伺ったのですが、そのときに、原告の方たちの思いの中で、今まだ全国十五カ所にある療養所に二万数千の遺骨がそのまま、ある方たちは仮名のままでそこに眠っております。死んでもなおかつふるさとに帰れない、その遺骨をどうにかしてほしい、ふるさとに帰してもらいたい、それを国の事業として取り組んでくれないかということを本当に絞るような思いでおっしゃいました。私もそのとおりだと思いました。そして、官房長官にその旨訴えましたらば、前向きに考えていきたいというようなお話をいただいたのですが、この遺骨のふるさとへの返還ということに対して、大臣はどのようにお考えか、お願いいたします。
  296. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員のおっしゃられるように、過去におきまして療養所で亡くなられた方々の遺骨を家族のもとへ戻したいというお気持ちは十分理解できます。そして、これまでも御遺族から申し出があった場合には、遺骨の引き渡し等は行っております。  したがって、今後とも、遺族から申し出があれば誠実に対応して実行していきたい、こう思っております。
  297. 中川智子

    ○中川(智)委員 今なお偏見、差別というのはなくなっていないわけなのですね。  そのように、遺族の方がそちらの方からお話しに来るというようなことは本当にめったにないことです。国の事業として、いわゆる偏見、差別をなくす一つの活動としてやることによって、今までの誤ったと言われます隔離政策が収拾の方向に向かうのじゃないかというように思っております。もう少し踏み込んだ事業としてやっていただくおつもりはないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  298. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 そういう御遺族からのお申し出があればお引き渡しをするということにつきまして、各療養所での実態なり、また、入所者にというのはあれでございますが、関係者に十分今後の対応策をどうしたらいいかというようなことを御意見をお伺いしまして、具体的なことを検討させていただきたいと思います。
  299. 中川智子

    ○中川(智)委員 ちょっとしつこいようですが、その関係者というのはどのような方ですか。
  300. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御遺族ということであれば、もう既に当然のことながら療養所には入っておられないわけでございますが、現時点でそういう御遺族の方に連絡をとること自体がいいのかどうか、いろいろ配慮しなければいけない問題もあろうかと思いますので、各療養所の施設長さんなり現在入っておられる方の意見も当然聞かなければいけないと思いますし、また、それを御遺族の方にいつでもお申し出があればお引き渡しいたしますということをどういう方法でお伝えするかというようなことも含めまして意見をお伺いをいたしまして、具体的にどういう対応が可能であるかということも検討させていただきたいと思います。
  301. 中川智子

    ○中川(智)委員 今の答弁では、今までよりはより積極的な形でやりたいということですか。
  302. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 議員の御指摘を踏まえまして、どういう対応が可能かということを積極的に検討させていただきたいと思います。
  303. 中川智子

    ○中川(智)委員 よろしくお願いします。  大臣、私は療養所に二カ所参りました。そして、元患者の方たちとお話しして、やはり実際にその場所に立たなければわからない。今なお高い塀があります。そして、長島愛生園の場合はやっと橋が、橋本総理の本会議場での家西議員への答弁の中にもありましたが、声を詰まらせて総理もおっしゃいました、橋がなかった、そういう島に追いやられていった。  私が参りました熊本でも、市内から歩いたら何時間もかかる山の方なのですが、外出許可をとってバスに乗ったら、あそこから乗ったとわかったらば、運転手さんが首を振っておりろと合図されたらおりた、真っ暗い山の中を本当に泣きながら歩いて帰ったという話も聞きました。  実際に療養所に行っていただきたい、なぜこの国賠訴訟を起こしたのかということをその人たちの生の声で聞いていただきたい、行っていただけるでしょうか。
  304. 宮下創平

    宮下国務大臣 機会がございますれば当然お伺いしたいと思っています。
  305. 中川智子

    ○中川(智)委員 機会は今つくったつもりでございます。ぜひともよろしくお願いいたします。  伊藤局長に御答弁をお願いしたいんですが、今回のこの法律はさまざまな議論がありまして、私は審議すればするほど非常にいろんな複雑な思いに駆られたんですが、前文がついたということは、本当にこれは大きな努力だったと思うんですが、前文の不思議でたまらないことを一点質問させていただきたいんです。  今まで審議の中で、非常に反省しているとかいろいろな言葉が出てきました。本当に反省していらっしゃるんだなということはわかりましたし、私たち自身も、二度とこのような人権侵害が起きないような新しい感染症新法をつくっていくんだというふうな思いでやってまいりましたが、教訓としてとか、そういうふうには入るんですが、絶対に反省という言葉は入らないんです。そこまで反省していらっしゃるんだったら、どうしてすっきりと反省という言葉が入らないのか、不思議でたまらないことを一点御答弁をお願いします。
  306. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今御審議をお願いしております感染症新法の政府提案に当たりましては、現行伝染病予防法性病予防法、エイズ予防法の経緯を踏まえまして、そして新たに感染症対策医療人権が両立する、そういう観点からそれぞれの規定につきまして法案の作成作業をし、国会に御審議をお願いしたわけでございまして、過去の我が国感染症対策につきまして、私どもといたしましても、できる限りの検証をし、そして過去の経緯を踏まえまして、十分人権に配慮した感染症新法のもとで感染症対策をしていく、そういう決意のもとに提案させていただいたものでございます。
  307. 中川智子

    ○中川(智)委員 そうしたら、今まではそういうふうに車の両輪のようにしてこなかったということは認めていらっしゃるし、言ってみればそのようなエイズ予防法、らい予防法は人権侵害してきたということがあって新しい法律ですよね。それは反省というのはないのですか、気持ちの中に。もう一度お願いします。
  308. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 らい予防法なりにつきましては、個別に申し上げれば、当時の菅大臣からの謝罪、それから、らい予防法を廃止する法律におきます提案理由説明の中におきます反省、先国会におきましても、エイズ予防法につきましての本会議での家西議員に対する橋本総理からの御答弁など、そういうことで政府としては過去の感染症対策についての反省をしているわけでございます。  また、伝染病予防法につきましても、明治三十年につくられた法律でございまして、人権観点から非常に不備がある法律だということから、今回、性病予防法、エイズ予防法とあわせて三つの法律を廃止いたしまして、新しい感染症状況に合わせて人権の尊重という観点も十分柱の一つに据えまして新法の御審議をお願いをしているというふうに理解をしておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
  309. 中川智子

    ○中川(智)委員 やはり役所というのは窮屈なところだなということを実感いたしました。本当に大変だなと思いますが。  反省という言葉が入らなかったのはとても痛恨のきわみでございますけれども、教訓とするというところに反省という気持ちが入った、そのような思いがあったということは伝わってくるような御答弁だったように、非常に好意的にとらえてそのように思いましたので、前文が生きるように、しっかりと生きた感染症対策が今後行われるようにぜひとも厚生省にお願いしたいと思います。  先ほど児玉議員の御質問のところで、総論は非常に認識の一致を見たんですけれども、各論になると不安だという部分で、私も入退院手続に関する事前の抑制システムが今なお不安なのです。  先ほど児玉議員の質問で、国家賠償訴訟の中では代理人というのは当たり前で常識なんですけれども、いわゆる入院していて退院請求をする場合、また、全くそうじやなかった、いわゆる無症状の方も保菌者の方は入院させられるということもございまして、そこでO157も、私も近所でしたので非常にそのときの様子がよくわかっておりますし、被災地にいまして、そういうふうなときのパニック状態というのは想像を絶するわけなんですね。そういうときに、一人一人の人権をきっちりと尊重しながらということを言いながらも具体的にはできないことというのが、それを想定した法律でなければならないと思うんです。  先ほど代理人がないかわりに保護者とかいろいろな方がいらっしゃるというふうにおっしゃいましたけれども、保護者もパニックになっているわけなんです。O157のときなんて、実にそうでした。保護者の方が本人より大変でした。冷静に判断できるというのは、いろんな知識も持ち、今後の手続なんかも十分承知して、そういう人たちを代理人に置くということが基本だと思うんですが、それに対してこの法律は全然明記をしていない。施行の段階で現実的な方法を考えていきたいと局長は先ほどおっしゃいましたけれども、施行の段階で現実的な方法というのは、もう少し具体的にイメージされていることを教えていただけませんか。
  310. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、行政不服審査法につきましては代理人からの請求というのを認めているわけでございます。  したがいまして、本法の施行に当たりましては、不服審査の請求の特例をどのように実施しているかということにつきましては、当然関係自治体なり感染症指定医療機関などの関係者に、また患者さんにもそういうことを十分お伝えをするということが重要になってまいりますので、この施行の段階でそういうことを具体的に明示し、また、代理人もその請求をできるというようなことを明示的にこの施行通知の中で書くということなども含めまして、いろいろ現実的な対応をとっていきたいというふうに考えておるところでございます。
  311. 中川智子

    ○中川(智)委員 それならぜひとも協議会に、三人のうち二人が医師、過半数が医師の部分というのは問題だと思うんですね、あそこにしっかりと司法関係、弁護士さんを入れていただきたい。これはたくさんの質問の中でいっぱい出てまいりました。それでもなおかつ、それに対して前向きのお答えがないのですが、これだけの要望がありながら、そこに対してきっちりと人権を守る専門家ということで入れていただきたいという希望を伝えたいんですが、局長、いかがでしょう。
  312. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 協議会の人選を行うのは、法律都道府県知事が行うことになっておりますので、都道府県知事が人選を行う場合にはへ人権問題について十分精通をしている適切な委員を選ぶように、そういう趣旨のことを通知等の中ではっきり各自治体に通知をしたいというふうに考えております。
  313. 中川智子

    ○中川(智)委員 ぜひともそこの部分はよろしくお願いします。そこが一つのかなめにもなると思います。非常に市民は無防備で、そのような状況になりましたらまず自分の体も心配、そして全くこれから後のこと、インフォームド・コンセントとか、さまざまな部分でそれが周知徹底されていくこと自身が人権を守る第一歩だと思いますので、お願いしたいと思います。  入退院手続に関しましてもう少しお伺いしたいのですけれども、例えばその症状がありましたらば、意思に基づかない強制入院というのが中にございます。その場合は事前審査ということが不可欠だと思うのですが、そこの部分に対して簡単で結構ですので、ちょっとお答えをお願いします。
  314. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今回、この新法におきましては、まず原則的な考え方は、患者さんに十分説明をいたしまして、そして理解をしていただいて、一類感染症であっても二類感染症であっても、理解を得て入院していただくというのがまず大前提でございます。  そのために仮の入院を勧告する、そういうことをまず制度として置きまして、それを受け入れてもらえないときに行政権限による措置というものを発動する。その場合にも、各保健所に置かれました協議会にその措置を行うことの可否についてお諮りをする、そういう仕組みをつくっているわけでございまして、現在の伝染病予防法による市町村長入院の手続よりは、人権に対する格段の配慮というものを行った体系になっているというふうに理解をしているわけでございまして、十分その趣旨を生かして円滑に施行されていくよう努力したいと考えております。
  315. 中川智子

    ○中川(智)委員 精神保健福祉法のところで審議会が設置されていますね。あれと同等あるいはそれ以上のいわゆる担保ができているという理解でよろしいでしょうか。
  316. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 本法案の協議会と精神保健福祉法の規定によります同様な機関を比較してまいりますと、本法案は急性発症の場合が多く、精神疾患に比べまして極めて短期間で治療が終了するという感染症の特殊性を踏まえた手続規定が設けられているわけでございます。  そういうことから、委員の人数でございますとか精神保健福祉法における第三者的機関につきましては若干の違いがございますが、長期入院患者を主な対象とする精神保健福祉法と比べまして、本法が規定しております急性感染症と比較いたしましても、手続規定の面におきまして人権保護の観点から不十分であるとは考えていないところでございます。
  317. 中川智子

    ○中川(智)委員 わかりました。  大臣、先ほど読みましたらい予防法の国賠訴訟の訴状とかがここに入っておりますので、後で大臣にお渡ししたいと思いますので、ぜひともお目通しをお願いいたしまして、早期の解決をよろしくお願いいたします。  時間が終わりましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  318. 木村義雄

    木村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  319. 木村義雄

    木村委員長 この際、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案に対し、長勢甚遠君外四名より、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による修正案並びに児玉健次君外一名から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。  提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。金田誠一君。     ―――――――――――――  感染症予防及び感染症患者に対する医療に   関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  320. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ただいま議題となりました感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案に対する修正案につきまして、提出会派である自由民主党、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合、そして民主党を代表して、その趣旨を説明いたします。  本法律案は、旧来の伝染病予防法が強制的な予防措置が既に不要となっている感染症法定伝染病として位置づけしている一方で、世界的に問題視されている危険な感染症が法の対象とされていないこと、予防措置に関し事後の対応に偏っていること、患者に対する行動制限に際し、人権尊重の観点から体系的な手続保障規定が設けられていないこと等の点で、時代の要請にこたえることができないものとなっているとして提出されています。  しかし、感染症をめぐる歴史をたどれば、一方にはハンセン病やHIV感染症に対して特別の立法が行われた経緯がありました。また、これら感染症患者等に対し、不適切な隔離が行われ、適切な医療が受けられないなど、いわれのない差別や偏見が存在した事実がありました。  今ここに新しく本法律案を審議、議決するに当たり、こうした過去の事実を重く受けとめ、教訓として今後に生かす必要を認識することが不可欠と考えます。そのことは、さきに公衆衛生審議会から提出された「新しい時代の感染症対策について」と題する意見書とも整合するものであり、旧来の感染症政策の転換を意味するものにほかなりません。  すなわち、人権の尊重と感染症予防が対立するかのような社会防衛を中心とした政策から脱し、人権公衆衛生の両立は可能であるという国際的共通理念に立脚するということです。  本法律案は、そもそもこのような理念に基づくものであることから、解釈、運用に当たり、その趣旨がさらに明確になるよう前文を加えることを中心に必要な修正を行おうとするものです。  以下、各項目について修正の概要を説明します。  第一は、制定の理念を宣明するため、前文を加えるものです。  前文では、特に過去における感染症患者等に対する差別や偏見が存在したという事実を重く受けとめ、これを教訓として今後に生かすことが必要としています。また、感染症患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療提供確保するとしています。  第二は、基本理念に感染症患者が置かれている状況の認識について加えるとともに、医師等の責務に、患者等が置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な医療を行うよう努めることを加えています。  第三は、国の責務に感染症に係る医療のための医薬品の研究開発推進体制の整備を加えるとともに、それに関する事項を基本指針に定めることとし、国の責務を明確にすることとしています。  第四は、基本指針に定める事項のうち、感染症の病原体等の検査の実施に関する事項を感染症の病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項とし、その内容を明確化しています。  第五は、その他所要の規定の整理を行うこととしています。  以上が、本修正案の要旨ですが、委員各位の御賛同をお願い申し上げ、説明を終わります。
  321. 木村義雄

    木村委員長 次に、児玉健次君。     ―――――――――――――  感染症予防及び感染症患者に対する医療に   関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  322. 児玉健次

    ○児玉委員 私は、日本共産党を代表して、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案に対し、修正案を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されている案文のとおりですが、提案理由と修正の要旨を簡潔に御説明いたします。  まず、修正案の提案理由です。  さまざまな感染症から国民の命と健康を守り、患者・感染者に良質で適切な医療提供することのできる体制を確立することはもとより重要です。その際、らい予防法やエイズ予防制定など国が行ってきた過去の感染症施策によって、患者やその家族は人間としての尊厳を深く傷つけられたことへの真摯な反省の上に立ち、患者等の人権が尊重されなければならないことは言うまでもありません。この点で、国及び地方公共団体の責務、そして医師等の責務は重大です。  国は、感染症指定医療機関の運営や整備など、医療充実に対して財政面で責任を持つ必要があります。  また、感染症の分類について、例えば指定感染症公衆衛生審議会伝染病予防部会基本問題検討委員会の最終報告にもない概念であり、その適用のいかんでは人権を脅かす危険性があります。また、法の施行後に、法の施行の状況や運用のあり方などについて当然全体的な検討を加えるべきであります。  次に、修正の要旨を申し上げます。  修正の第一は、国が行ってきた過去の感染症施策に対する深い反省の上に立ち、感染症患者等の人権を尊重し、良質かつ適切な医療提供確保しつつ、感染症予防に関する施策を総合的に推進するとの制定の理念を宣明するため、前文を加えます。  第二は、基本理念のうちの人権に配慮する旨の規定人権を尊重する旨の規定に改めることです。  第三は、努力義務とされている国及び地方公共団体の責務並びに医師等の責務を義務規定にいたします。  第四は、指定感染症の定義に、「当該疾病の感染性が強く、かつ、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり」を加えます。  第五は、感染症の診査に関する協議会の委員の構成について、「法律に関し学識経験を有する者」を加え、「その過半数は、医師のうちから任命しなければならない。」とする規定を削除いたします。  第六は、感染症指定医療機関について、第一種及び第二種感染症指定医療機関に対する都道府県の補助を必要的補助とし、これに対する国の補助も必要的補助と改め、補助率を二分の一といたします。また、予算の範囲内での任意的補助となっている特定感染症指定医療機関に対する国の補助を必要的補助といたします。  第七は、法律の施行状況について、三年を目途に検討を加えます。その際、特に補償のあり方について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものといたします。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いします。(拍手)
  323. 木村義雄

    木村委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  324. 木村義雄

    木村委員長 これより両法律案及び両修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
  325. 衛藤晟一

    ○衛藤(晟)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案につきまして、賛成の意を表するものであります。  本案は、感染症発生と蔓延に備えた危機管理体制の構築感染症類型と医療体制の抜本的な見直し、患者等の人権尊重に配慮した入院手続の保障、国内対策連携のとれた検疫体制確立動物由来感染症対策の整備等を行うものであります。  また、本案は、過去におけるエイズ予防法やらい予防法に対する種々の御意見を踏まえたものでもあります。  思えばエイズ予防法は、エイズの蔓延を未然に防ぐため、種々の意見を経て成立した過渡期的な法律でありました。一方で、具体的な薬害エイズ問題としての血友病患者の方々の救済は火急の要でありました。我が党は、和解や救済措置充実に尽力するとともに、拠点病院の整備等の医療体制の充実等、患者・感染者の方々の強い要望の実現に努力いたしました。また、ハンセン病対策については、平成八年のらい予防法廃止に当たり、療養所入所者の皆様の希望を全面的に取り入れ、処遇を恒久的に保障する特別な法律成立いたしました。  このような努力をしてまいった我が党は、この際、改めて患者の方々が経験された労苦に思いをいたしつつ、新法によって新しい時代の感染症対策の扉が開かれんことを希望するものであります。  本案施行後、本案に基づいて感染症発生及び蔓延の防止に実際に取り組み、人権への配慮や良質かつ適切な医療提供に十分な注意を払うとともに、国際的な連携のとれた感染症対策を進めることにより、名実ともに充実した感染症対策にしていくことが可能になると考えます。  また、今回、与野党の精力的な協議の結果、前文を置くこと等の修正が行われることは、より幅広い合意のもとで新しい感染症対策が展開されるものと強く期待するものであります。  したがいまして、私どもといたしましては、この本案に賛意を表するものであります。  これをもちまして討論を終わります。(拍手)
  326. 木村義雄

    木村委員長 金田誠一君。
  327. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 私は、民主党を代表して、自由民主党外四会派共同提出の修正案及び修正部分を除く原案に賛成の立場で討論をいたします。  本法案の出発点となった公衆衛生審議会意見「新しい時代の感染症対策について」によれば、「基本的方向・視点」として、第一に「個々の国民に対する感染症予防治療に重点をおいた対策」、第二に「患者・感染者の人権の尊重」が掲げられています。また、その内容においても、良質かつ適切な医療提供することは、患者自身にとって不可欠であるとともに、周囲への感染防止につながり、患者と周囲の人々の人権が守られることにつながる等の表現に見られるように、公衆衛生審議会意見は、旧来の社会防衛中心の政策から決別し、人権尊重を基盤とする新しい感染症政策へと大きくその価値基準を転換するものであることは明白でありました。  ところが、この意見に基づいて成文されたはずの法案は、なぜか旧態依然の社会防衛的色彩を色濃く残し、人権の尊重や良質かつ適切な医療提供という視点は後退した内容となっていました。少なくともそう読み取られても仕方のない内容と言えるものでした。この法案を取りまとめた方々には、らい予防法やエイズ予防法が、患者・感染者はもとよりその家族までも不当な差別や偏見を助長し、言葉に尽くせない苦しみを与えてきたという事実を認識できないのか、疑問でなりませんでした。  法案を策定し、それを運用する立場の方々がそのような状態である限り、新法のもとにおいて再び過ちが繰り返されないという保証はありません。私は、そうした危機意識を持ちながら、この間の審議に参加してきたところでございます。結果は、当時の橋本総理を初めとして、本日は宮下厚生大臣にも心情的には御理解をいただいたと感じました。  本法案は、公衆衛生審議会意見と対立するものではなく、それを踏まえたものであること、患者・感染者に対する良質かつ適切な医療提供と、人権感染症予防の両立を目指すものであるという趣旨が答弁として表明されたと思います。しかし、そうであるならば、本来は法文そのものを書きかえるべきが至当と考えます。  改めて申し上げますが、世界保健規則が来年改正されることもあり、本法案は、近い将来、患者・感染者に対する良質かつ適切な医療提供を中心として人権と疾病予防を両立させるものであることがより明確に読み取れるよう改められることが望ましいと思います。そのことを強く申し上げておきたいと思います。  そうした立場から、本修正案の特に前文については、法律の解釈、運用に当たり、その立脚点を明確にする上で極めて重要であると考えます。  その核心となるのは、次の三点です。差別や偏見が存在した事実を重く受けとめ、教訓として今後に生かす、患者等の人権を尊重する、良質かつ適切な医療提供確保する、以上の観点から本法を解釈、運用し、足らざる点を補いながら国民の期待にこたえる新しい感染症対策構築されますよう強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
  328. 木村義雄

  329. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私は、日本共産党を代表し、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案について、反対の討論を行います。  我が国における感染症予防に関する施策は、これまで感染症患者隔離を初めとする感染症の蔓延防止を図る施策に重点が置かれ、感染症患者等の人権を尊重するという視点を欠くものでした。らい予防法やエイズ予防法の制定によって、患者、家族が社会的な差別、偏見にさらされ、人間としての尊厳を傷つけられ、言葉に尽くしがたい苦しみを受け続けてきました。  新しい感染症対策確立しようとする場合、まずこうした事実への深い反省を行い、また、犠牲となった患者、家族の痛恨の歴史から教訓を学び、生かすことは、政府の当然の義務と言わなければなりません。しかし、この間の審議で、政府及び厚生省には真摯な反省が見られませんでした。  今日では、世界保健機構は二十一世紀の新しい感染症戦略を各国に示しているところです。そこで明示されていることは、地球的規模で症候群別に感染ルートの解明を急ぐことの重要性、人権の尊重と良質かつ適切な医療を受ける権利を保障することが感染症対策の基本であること等です。本法案がこうしたグローバルな動向にこたえていないとして関係者から強い批判を受けているのは当然です。  また、法案自体にあいまいな部分が多く、指定感染症や新感染症適用や規制措置の運用によっては憂慮すべき事態が生まれかねません。さらに、自治体への国の財政負担は不十分で、患者に負担を求めるなどは対策に混乱を招きかねないものです。  感染症の診査に関する協議会の委員の構成について、過半数は医師のうちから任命しなければならないとすることも不適切です。公衆衛生審議会基本問題検討委員会が示した感染症対策構築の基本的方向と視点が法案に反映されず、関係委員からは報告書との内容的な断絶すら感じさせるとの上申書が提出されています。今日の感染症対策に求められるのは、人権の尊重と良質で適切な医療提供に国が責任を持つことです。  なお、自民、民主、平和・改革、自由党提出の同修正案は、積極的な部分もありますが、国による過去の感染症施策への反省、患者・感染者の人権の尊重が法文に盛り込まれておらず、同意いたしかねます。  以上、本法案に対する反対の理由を表明し、撤回を要求して、討論を終わります。(拍手)
  330. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。
  331. 中川智子

    ○中川(智)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案及び同案修正案に賛成の立場から討論を行います。  今国会が開かれてすぐの七月三十一日、熊本地方裁判所にらい予防法違憲国家賠償請求が起こされました。社会防衛一辺倒の同法は、九十年の長きにわたって断種等の人権侵害を伴う強制収容、終身隔離措置をとり、それは刑事拘禁としての終身刑を上回る人権侵害行為そのものでした。この訴訟はまさに人間回復のための訴えであり、文字どおり、今ここにいる私たち一人一人が被告なのだと思いました。被告席に座る私たちがしなければならないこと、それは、今法案の前文を単に言葉のみに終わらせないために、過去の償いとして直ちに元ハンセン病患者である原告の要求を受け入れるべきだと考えます。  無理やり収容され、本名を奪われ、断種、中絶等、病人なのに罪人のような仕打ちを受けるつらさは、受けた本人しかわかりません。瀬戸内海に浮かぶ小島にある長島愛生園、熊本の郊外に今なお高い塀が残る菊池恵楓園に参りました。そこでたくさんの涙を吸ったであろう住まいの畳の上に座して皆さんのお話を伺いました。それは、まさに筆舌に尽くしがたいほどの人権侵害の歴史でありました。らい予防法によって人間として生きることすら拒否された人々のうめきであり、叫びでした。その叫びが、十五の療養所すべてにある納骨堂の、死んで今なおふるさとに帰れない二万数千のみたまからも聞こえてくるようでした。話を伺いながら、せめて立法府にいる人間として、人権を踏みにじるような法律だけはっくるまい、残すまい、そう決意して帰ってまいりました。  本日可決成立する新法が、過去の反省の上にしっかりと立ち、二度と過ちを繰り返さぬよう、来年のWHOの国際保健規則の改定等、世界の動向に照らし、早い時期での見直しを求めます。  最後に、このたびのらい予防法の国家賠償に対しては、国会と政府、厚生省早期にその要求を受け入れられんことをいま一度強く主張し、討論を終わります。
  332. 木村義雄

    木村委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  333. 木村義雄

    木村委員長 これより採決に入ります。  感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。  まず、児玉健次君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  334. 木村義雄

    木村委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、長勢甚遠君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  335. 木村義雄

    木村委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  336. 木村義雄

    木村委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  337. 木村義雄

    木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  338. 木村義雄

    木村委員長 この際、両案に対し、佐藤静雄君外四名から、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。佐藤静雄君。
  339. 佐藤静雄

    ○佐藤(静)委員 私は、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     感染症予防及び感染症患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   本法の施行に当たり政府は、我が国感染症政策の基本思想において、本法律をもって過去における社会防衛中心の政策から感染症予防患者等の人権尊重との両立を基盤とする新しい感染症政策へと転換しようとするものであることを深く認識して、次の施策を実施すべきである。  1 ハンセン病患者やHIV感染症患者を始めとする感染症患者等に対する差別や偏見が行われた事実等を重く受け止め、また、個別の感染症に対する特別な立法や社会防衛を重点とした立法が患者等に対する差別や偏見につながったとの意見を真摯に受け止め、さらに、感染症を理由とする差別を実効的に排除するため、基本指針等において具体的施策を策定するとともに、国民に対する教育・啓発に最大限の努力をすること。  2 本法が目的とする感染症政策を実現するため、今後具体的な政策形成を行うに当たっては、感染症患者等の意見を十分に徴すること。特に、法の定める「基本指針」、「特定感染症予防指針」等の策定に当たっては、患者意見の十分な反映を図ること。  3 感染症患者及び感染者に対し、その人権に配慮した良質かつ適切な医療提供されるよう、医師看護婦等の医療従事者の教育・研修、感染症専門医の育成等に努めるとともに、感染症指定医療機関について、国立国際医療センターや大学病院の充実・活用を含め、人材・設備の両面から計画的な整備を進めること。  4 地方衛生研究所については、地域における感染症対策の中核機関である保健所及び国の試験研究機関と密接な連携を図るとともに、都道府県における感染症対策の技術的、専門的機関としての位置づけを明確にし、感染症対策に係る試験検査調査研究、研修指導及び情報関連の機能強化を図るために必要な方策を講ずるよう努めること。  5 HIV感染者等に対する医療・施策が更に充実するよう努めること。特に、現在、HIV感染症治療において先駆的役割を果たしているエイズ治療研究開発センターを今後とも中核的医療機関として整備すること。  6 感染力の強さを含めた、新感染症及び指定感染症の要件をより明確にし、地方公共団体や医療機関など、関係者に周知徹底を図ること。また、新感染症についての取扱いが、迅速、かつ公正・的確に行われるよう、国が積極的な施策を講じるとともに地方公共団体と密接な連携をとること。  7 患者に対する説明と理解を尊重した医療を実現するよう、趣旨の徹底に努めること。その際、患者等のプライバシーを確保するため、医師都道府県知事への届出を行った場合には、当該患者等または保護者へ当該届出の事実等を通知するように徹底を図ること。  8 健康診断入院、移送等の措置がなされる場合において、患者等の人権を尊重し、厳格かつ客観的に運用されるよう手続きの明確化を図ること。また、これらの措置に係る手続きや退院請求、審査請求などの不服申立手続きについて、患者等に十分に趣旨が理解できるような説明が行われるよう徹底させること。実際に、入院患者が退院請求を行った場合には、その判断は速やかに行われるようにすること。  9 感染症の診査に関する協議会は、患者入院必要性等を診査する機関であるとの趣旨をかんがみ、その構成員である「医療以外の学識経験を有する者」としては、患者・感染者等の人権尊重の観点からふさわしい人材が選ばれるよう、都道府県等に対し、趣旨の徹底を図ること。  10 入院時の通信・面会の自由が保障されるよう必要な措置を講じる等、入院患者の処遇について明確化すること。  11 感染症情報の収集・公表に当たっては、個人情報の保護に万全を期し、無用な不安や不当な差別・偏見を引き起こすことがないように努めること。    特にマスコミの影響が大きいことから、常時、的確な情報提供するとともに、誤った情報や不適当な報道がなされたときには、速やかにこれを訂正する報道がなされるようにしておくなど、マスコミその他関係諸機関との連携を図ること。  12 地球規模化する感染症問題に対応し、日本における感染症対策の水準の向上を図るため、海外感染症研究機関との知見の交換海外研修の充実を含め、感染症に関する国際協力を一層推進すること。  13 検疫については、国内の感染症予防対策連携のとれた一元的な運用に努めるとともに、感染症発生状況段階に応じて的確に対応できるよう、検疫所の機能強化を図ること。  14 世界保健機関その他国際機関等により新たな基準等が定められた場合は、必要に応じ、それとの整合を図るため速やかに適切な対応を行うこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  340. 木村義雄

    木村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  341. 木村義雄

    木村委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、宮下厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮下厚生大臣
  342. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたします。     ―――――――――――――
  343. 木村義雄

    木村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  344. 木村義雄

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  345. 木村義雄

    木村委員長 この際、血液製剤によりエイズに感染されお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈りいたしまして、謹んで黙祷をささげたいと存じます。  御起立をお願いいたします。――黙祷。     〔総員起立、黙祷〕
  346. 木村義雄

    木村委員長 黙祷を終わります。御着席ください。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会      ――――◇―――――