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1998-09-08 第143回国会 衆議院 厚生委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月八日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 木村 義雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君    理事 田中眞紀子君 理事 長勢 甚遠君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 久保 哲司君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       岩下 栄一君    江渡 聡徳君       衛藤 晟一君    大石 秀政君       大村 秀章君    桜井 郁三君       田村 憲久君    戸井田 徹君       能勢 和子君    桧田  仁君       船田  元君    堀之内久男君       宮路 和明君    山下 徳夫君      吉田左エ門君    家西  悟君       石毛 鍈子君    五島 正規君       城島 正光君    土肥 隆一君       青山 二三君    旭道山和泰君       武山百合子君    吉田 幸弘君       鰐淵 俊之君    児玉 健次君       瀬古由起子君    中川 智子君       河村たかし君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 宮下 創平君  出席政府委員         文部省体育局長 遠藤 昭雄君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         厚生省年金局長 矢野 朝水君  委員外出席者         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君     ――――――――――――― 委員の異動 九月八日  辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     大石 秀政君   桧田  仁君    吉田左エ門君   松本  純君     江渡 聡徳君   藤井 裕久君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     松本  純君   大石 秀政君     砂田 圭佑君  吉田左エ門君     桧田  仁君   鰐淵 俊之君     藤井 裕久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 木村義雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田徹君。
  3. 戸井田徹

    戸井田委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の戸井田徹です。  厚生関係基本問題に関する施策について御質問申し上げたいと思います。  私が二年前に選挙に通るときに、こういうふうに言ってきました。人の痛みのわかる政治、いろいろなことを言いましたけれども、これが一番反応がよかった。みんながやはり自分痛み政治にわかってもらえていない、そういう意識が大変強かったのじゃないかな。そしてまた同時に、私自身も先代から、人の痛みのわかるそういう政治をやってくれ、それをやらなきゃだめなのだということもよく言われてきました。困ったときに頭に浮かぶのは、やはりその言葉であります。人の痛みがわかるというのはどういうことかということを振り返って考えてみると、その人の立場に立っていかに深く考えていけるかどうか、そういうところに尽きるのじゃないかと思うわけであります。  そして、厚生省は、揺りかごから墓場までというまくら言葉があるように、非常に窓口の広い役所であります。しかし、そういう中にあって、国民一人一人の生活にかかわり合いが大変深い。そして、日本人は昔からそうなのだろうと思いますけれども、人に迷惑をかけずに自分自身が努力して自分生活をつくっていく、自分人生設計をしていく、そういうことを知らず知らずのうちにしてきた国民だというふうに思うわけであります。  しかし、戦後、いろいろな形でもって人生設計をするための柱ができ上がってきました。一つ年金制度であり、一つ医療保険制度だ。この二つは、国民一人一人が自分自身人生設計をする上において欠くことのできない柱であることは間違いない。これはだれもが認めることだろうと思うわけであります。  その医療保険制度年金制度、どれもが最近揺らぎ出している。私ども、地元で歩いておりますと、最近よく聞かれるのが、年金制度は大丈夫なのですか、そういうことを聞かれるわけですね。その中でも、特に若い世代人たちは、我々の時代になったら年金というものは本当にもらえるのだろうか、もうもらえないと断定してしまって、掛けたくないというような言い方をする人まで実際のところはいるわけであります。  そうすると、これは何でそういうふうになっていくのかなと、私、個人的に考えてみますと、年金というものは、掛け始めてからもらうまでの間、四十年ほどの時間の経過があるわけであります。そして、その間にほとんど自分の積み立てたお金の顔も見ることもできなければさわることもできない、そういうのが今までの実態だったのじゃないかな。若干は資金運用分野でもって、住宅ローンというもので使えたりすることはあるのですけれども、もっとそういうものが頻繁に、お金を見ることができ、またさわることができて、自分たちお金はこういうふうにして貯蓄されているのだというようなことが実感できるシステムができ上がってくれば、非常に安心して年金制度というものを支えていこうという気になれるのじゃないかな。この四十年間の間に自分たちお金を見ることができないことによって不信感というのはたまってくるのじゃないかな、そういう気がするわけであります。  大臣もこの間のごあいさつの中でもって、年金制度医療保険制度のこと、そしてまた年金積立金を安全かつ確実、効率的に自主運用するための仕組みづくりということを言われておられました。そしてさらに、少子化への対応を考える有識者会議というものが既に設置されて、また省内にも少子化対策企画推進本部というのが設置された。想像するに、そういう方向に向けての人生設計のための柱をもう一度再構築していこう、そういう方向性が見えているのかなというふうに勝手に想像するわけですけれども、その辺のことをもし詳しく御披歴いただけるのであれば、大臣の方からよろしくお願いします。
  4. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のとおりでございまして、私はやはり基本的な条件が随分違ってきていると思うのですね。それは、少子高齢化社会を迎えているということ、それからもう一つは、経済成長が鈍化をいたしまして、社会保障制度との関係が、非常に経済成長が高いときは保険料その他も集まりやすいし運用もしやすいわけですが、それらの諸条件が今のところなくなりつつある。こういう状況でございますので、私どもとしては、今委員の御指摘のように、社会保障制度に対する不安感というものは、特に年金が一体どうなるのかと若い人たちは非常に心配をしているということも承知をいたしております。  そういうことで、今まで積み上げてきた国民年金、それから医療保険における国民保険、そういうことを積み上げてまいりましたが、この際、少子高齢化に向けてさらに、例えば年金でいえば本当に二十一世紀に向けて年金の支給が受けられるかどうかという設計をきちっとして、若者に対しても自覚を与える、自信を持ってもらう。それから、医療保険につきましても、利用者負担を伴いつつも永続した医療保険制度を確立していくということが何よりもこれから求められるのじゃないかなというように思っております。  そして同時に、介護の問題、福祉分野は、従来補助金等行政で行われてまいりましたけれども、これからの高齢化社会を迎えまして、在宅介護という問題が非常に大きな課題になってきておりますので、従来の特別養護老人ホームその他も生かしつつ、なお在宅介護かなり力を入れて、しかも保険システムでこれを構築しようということで法案を既に通していただいておりますから、この実施も確実なものにしていきたい。  それから少子化問題も、大変これからの我が国の人口構成人口の絶対量が減っていく。特殊出生率は一・三九なんというのは異常でございまして、私どもは、このことが将来の経済成長にも影響しますし、人的資源の問題でも、あるいはこういった社会保障システムを維持する上でも大変大きな阻害要因になると存じますので、できる限り子供を産み育てることに楽しみの持てるような対策、これは厚生白書が副題としてつけておる言葉でございますが、そういった視点を踏まえて、精力的にこれはやっていかないと大変だなという感じを持っておりますので、どうかまた御指導いただきながら、これらの大きな課題に取り組んでいきたい、こう思っております。
  5. 戸井田徹

    戸井田委員 今、大臣の答弁の中に少子化という話が随分出てきたわけですけれども、まさにそれを解決していくかぎは少子化をどう解決するのかというところにあるのだろうというふうに思うわけであります。  この間、私の選挙区のすぐ近くのある山奥に入っていったのですけれども、そうしたらそこに小学校があるのですね。その小学校が、昔は一学年一クラスあったのですけれども、最近一、二年、複式というのですかね、そういうふうに変わってきて、全校生徒で四十人しかいない。そして同じ校区の老人会の会員は三百人ということなのですね。まさに少子化実態というか、これからの日本の縮図がそこにあるのじゃないかなという気がするわけでありますけれども、そういう少子化決定打というのは何かないだろうか。  同時にそれは、今なぜ子供を産まなくなってしまったのか、そういうことを考えていくと、私は、先ほど申し上げたように、人の痛みのわかる政治、相手の立場に立って考えるということを考えてみましたとき、ある一つの案が浮かんできまして、それを実際に試算をしてみました。  中堅所得層公租公課住宅費教育費についてということで自分なりにいろいろ調べてみたのですね。そうすると、これは国家公務員対象として、三十五歳の国家公務員、それから五十歳の国家公務員、それぞれがどういう生活金銭面でしなきゃならないかということを考えてみますと、三十五歳の方、今、年収七百七十八万円であります。税率所得税住民税と合わせて三〇%、九十九万円、そして健康保険六十五万円、厚生年金の掛金が百三十三万円、雇用保険が八万円、こういう負担率に換算される部分を引いて、トータルが三百五万ですから、手元に残るのは四百七十三万円であります。それから五十歳の方は、年収一千百四十五万円、税率が三五%で二百四十五万円ですね、そして健保が九十三万円、厚生年金百九十万円、雇用保険十二万円、これが五百四十万円になりますので、手元に残るのが六百五万円であります。  これが夫婦子供二人を想定した金額でありますけれども、それ以外に何でお金が出ていくかということを考えていくと、生活する立場夫婦二人の立場で考えてみますと、税金も何も、出ていくお金手元に残るお金二つしかないと思うんですね。出ていくお金がそれ以外に何があるのかというと、先ほど申し上げた子供教育費なんですね。それも、高校生ぐらいまではさほどかからない。しかし、大学ということになってくると、その金額は一気にふえていく。それも、私立の大学に下宿してということになると、年間学費生活費を合わせていくと、一千万は四年間で出ていく。ということになると、このわずかな四年間に一千万というお金は、たった一人子供大学にやるだけでそれくらいのお金が出ていくということになると、非常に負担が大きいんじゃないかな。同時に、その世代というのは、みんな住宅ローンを持っているわけであります。  そして、五十歳というと、場合によれば年寄りの介護もしなきゃならない、そこに一気に集中してくる。一生の所得の中で一番所得の高い年代でありながら、一番ある意味では惨めな生活をしなきゃならないんじゃないかな。それをカバーするのに奥さんが働く、そういうものでカバーしていく、あとは貯蓄を取り崩していく、そういう方法しかないわけであります。  そういうのが若い人たちがいずれ自分たちの姿だと思ったときに、本当に夢を持って生きていけるんだろうかということを考えると、この一番の原因はどこにあるのかというと、私は、厚生委員会質問じゃなしに何か文教委員会質問に勘違いされるかもわかりませんけれども子供大学に行くのに親が払わなきゃならない、そういう社会通念が今でき上がってしまっている部分がどこかあるんじゃないかな。  そのもとは何かというと、その親の世代明治大正生まれ人たちというのは、昔は、高等教育を受けるのに、明らかにお金がなかったら受けられなかったわけであります。その世代人たちは、自分たちがそういう苦しい目に遭ってきたからということでもって、生活余裕が出てきたときに、自分子供にはとにかく教育だけは受けさせてやろう、何があっても、何を犠牲にしてでも子供のために学費は出してやろう、生活費も出してやろう、そういう発想があったんじゃないかな。そして、それはだれからも非難されることじゃないし、美談として語られてきたかもわからない。それが今、生活レベルが上がってきて、世間様と同じような生活をしながら、なおかつ子供にそれだけの教育費を出していこうと思ったらどれだけの負担がかかってくるか、ましてや世間的な見えもあるということを考えてみると、非常に苦しいんじゃないかな。  それを何で解決できるのかなと思って、私は最初、文部省の方にいろいろかけ合いまして、奨学金というのはどれくらいあるんだということをいろいろ尋ねました。そうすると、大ざっぱに言うと、一般会計から二千億円ほどのお金が出ている、そして財投お金が六百億円ほど有利子でもって運用されている、それでトータルで二千六百億円だ。  じゃ、日本と並び称されるアメリカはどうなんだということになると、アメリカ日本円に換算して四兆円の奨学金が準備されている。そして、アメリカ社会の中では、少なくともハイスクールを出たら、その後は自分自身の力でもってお金を借りて高等教育を受けていく、そして自分自身の夢を見て、自分自身でその人生を切り開いていく、そういう自立心のある大人が生まれてくるわけであります。  日本社会の中ではそういう体制ができ上がっているかといったら、そうじゃない。明治大正人たちが苦労したのと同じように、今もはっきりお金がなければ高等教育を受けられない、そういう時代なのであります。本質的には何も変わらない。  阪神・淡路大震災のときに、両親が一度に亡くなった子供が八十四人いるわけであります。そして、その子供たちが、一月ですから受験間際子供たちもいただろう、その子供たちが安心して、自分の夢を見ながら、親を亡くした悲しみを胸に抱いて、自分の将来を夢見ながら進学ができたんだろうかということを考えたときに、非常に暗たんたる気持ちにならざるを得ない。そういうのが今の日本制度なんだということを考えたら、これを何としても改めなきゃならない。  文部省の方は、その奨学金有利子部分の六百億の財投からの運用を二千億にふやす、十万人を対象にしたのを二十万人に、そして金額もふやすということをしたわけです。だけれども、これも根本的には親に一切負担をかけずに子供自身の力だけでもって高等教育を受けるということにはならないということを考えていくと、あと何ができるのかというと、先ほど申し上げたように、年金お金がたくさんあるわけであります。そしてそれを運用しなきゃならない。運用も、できれば自分たちのためたお金自分たちのため、自分たちの次の世代のために運用していくということが非常に重要なことなんじゃないかな、それが年金制度に対する信頼感というのも増してくるんじゃないだろうか。年金を掛け始める前から年金の恩恵を受ける、その年金お金の顔を見てさわる、そういうことが年金制度に対する信頼感が一層わいてくるものにつながっていくんじゃないかなと実は私思うわけであります。  だから、一つの目標を――高等教育を受けることについては子供自身名義でもって子供が借りて、進学をしていく。そして、卒業して働くようになってから、長期の返済にして、二十五年、三十年、もっと長くてもいいんだろうと思いますね、そういう返済に置きかえることによって親の負担も減って、なおかつ子供もしっかり自立心を持って勉学に励むことができる、そういうパターンができ上がってくるんじゃないかな。  何も親が裕福になって悪いというわけじゃありませんし、子供大学に行かない、そういう意味では、その時代は割とそういう教育費を使わずにゆったりとした生活がしていけるということを考えると、次の教育をさせなきゃならないその親が、子供自身子供自身名義で借りていくということによってそこに余裕が生まれていくということは、さらに自分たち生活の質というものを豊かにできるんじゃないかな、そして、それがまた年金制度に対する信頼感というものにも変わっていくんじゃないかな、そういうふうに実は思うわけであります。  自分一人でしゃべってしまって申しわけないんですけれども、そういう実態というものを考えたときに、ぜひ年金制度というものをそういう方向に使っていく、そういう自主運用の世界というものをもっと研究していただいて、考えていただきたい。特に大臣はそういう方面には詳しい方でございますから、ぜひその辺のことを、もし御感想があればお聞かせいただきたいと思います。
  6. 矢野朝水

    矢野政府委員 次期制度改正は、年金の給付と負担をどうするか、これが非常に大きな問題ですけれども、これと並んで、積立金運用をどうするかということも非常に大きな検討課題になっておるわけでございます。  そこで、今先生のおっしゃられた問題というのは、年金積立金をこれからどう運用していくのか、ここの基本にかかわる非常に重要な問題じゃないかと思っております。  一般論で申し上げますと、年金積立金は現在は全額資金運用部に預託しておるわけでございますけれども、これでは加入員利益になっていないんじゃないか、こういう意見が強いわけでございまして、保険料拠出者利益のために最も有利になるように安全、確実に運用する、こういう新しい仕組み次期制度改正でぜひつくろう、こういうことで実は今審議会等でも検討をお願いしているところでございます。  そこで、審議会の中での議論でございますけれども、効率的に運用する、有利に運用する、それで将来の保険料負担を少しでも低くする、こういうことについては異論がないわけでございますけれども、いわゆる福祉運用につきましては実は賛否両論あるわけでございます。つまり、積立金融資事業に使う、あるいは広く少子高齢化社会基盤整備のために年金積立金を活用する、こういう議論があるわけでございます。  この議論につきましては、積極的にやるべきだ、先ほど先生がおっしゃられましたように、加入員が四十年保険料を納める一方で、その間何も年金制度からメリットがない。これでは年金に対する理解、信頼が得られないのではないか、したがって、現役の加入員にも何らかのメリットを与えるべきだ。そのためには、住宅融資あるいは教育資金、こういった面で年金積立金を活用すべきだ、こういう議論がございます。それからさらに、少子高齢化社会に備えまして、保育所ですとか老人ホームとか、こういった整備年金積立金を直接使ったらどうか、こういう議論があるわけでございます。  他方、これに対しましては、民間でできることはできるだけ民間に任せるべきだ、積立金があるからといって融資事業をやるというのはいかがなものか、年金の財政は非常に厳しいのだから有利運用を徹底してやるべきだ、あるいは行革の時代行政機構の拡大につながるようなことはやるべきではない、こういった反論もあるわけでございます。  そこで、年金審議会の方ですけれども、九月には何とか御意見をいただきたいということで、実は最終的な審議を今お願いいたしておりまして、こういった問題についても一定の考え方が示されると思いますので、それを受けて、私どもとしてどうするのかということで、今後真剣に検討してまいりたいと思います。
  7. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、年金局長からお話しのとおりでございますが、基本的には、私は、年金積立金というのは、保険数理に基づきまして有利に運用をして年金基金を充実し、将来の保険料負担もなるべく軽減しようということで、これは有利運用というのは原則だと思います。  一方、先生の御指摘のように、教育費の問題その他、かなりコストがかかります。これにどう対応するかという問題は、いろいろ各種の施策があると思われますね。今、育英資金のお話もございました。これも充実しなければなりません。また、税制上も、特に大学生を持たれるような家庭の方々の減税等も、今現に一部は行われておりますけれども、もっともっと考えなくてはいけないとか、いろいろの点がございますけれども、私ども年金有利運用だけ何が何でも考えればいいということでもなしに、それを年金加入者の向上のためにあわせて利用できれば一番いいことでございますが、奨学金ということになりますと、無利子奨学金ということにならざるを得ませんね。その負担をどうするかというような問題等もございますので、あとう限りそういうことの配慮は必要かと存じますが、年金数理上は育英資金を本格的に積立金運用するというのはなかなか困難ではないかなという感じは持っています。  したがって、これから二十一世紀に向けて、次代の世代を担う青少年の健全育成という見地から、育英制度の充実、税制上の問題あるいはいろいろコストの削減の問題等々、総合的に判断していくべき話かというように感じております。
  8. 戸井田徹

    戸井田委員 奨学金といったら無利子というふうな反応、それ自体もおかしいのではないか。有利子でもいいのではないか。  ただ、少なくとも、親もなくて自分自身が十八歳にいて、自分の将来を切り開いていくのに、金を借りようが、それが有利子であろうが何だろうがそういう制度がある、クモの糸みたいな一本のものであろうと、そういう道筋があるのとないのとでは大変な違いだと思うのですね。そういうことを考えていくのが僕は政治の役目ではないかというふうに実は思うわけであります。  そして、先ほどの一千百四十五万の五十歳の方が、これだけの所得がありながら、結果的に六百五万が自分たち所得として手元に残る。そして、住宅ローンが仮に二千五百万あるとして、それをずっと計算していくと、年間百四十万の支払いをしている。さらに、子供生活費大学の費用が百万から二百万としてとらえていったときには、もう手元に残っているのは四百万。いわゆる勤労世帯消費支出が四人家族で四百万と言われているときに、それを完全に切ってしまう状態ということを考えたら、これはやはりおかしいのじゃないかなというふうに思わざるを得ないわけであります。  そして、この一千百四十五万という所得がどれくらいのところにあるのかということを考えてみますと、これは国税庁に資料をもらったのですけれども平成八年度でもって、一千万以上の所得者が五・五%です。一千五百万以上になったら一・一%しかいない。二千万以上になると〇・三%しかいないというのが実態であります。そうすると、ほとんどのところは七百万から八百万というところ――これはもっと下ですね、いきますと、四百万、五百万、そこらが中心になってきている。  大学子供をやる年代ということになると、年齢ですべて所得が決まるわけじゃないでしょうけれども、それで含めたって一一%か一二%ぐらいが限度だということになると、大学に行く子供を持つ家庭というのは、結果的には全体の三割ぐらいかもわかりません。  しかし、子供が生まれたときに、親はみんな、子供大学まで行って、それこそ末は博士か大臣になるものだと思って子供を育てようとする、またそういうふうになってほしいと思いながら期待を持って育てていくということを考えたときに、もうその時点から子供教育に対する計画というのは決まっているわけでありますね。  そうすると、そういうものが将来に向けて最初から、だから、十八まで自分たちが育てたらいいのと、十八を過ぎてもなおかつ自分たち子供のためにお金を考えなければならないというものと、全然人生設計が変わってくると思うわけですね。そうすると、それがまさに少子化に影響が出てくるんじゃないかな、そういうものがいろいろなアンケートの数字にも出てきているんじゃないかなと思うのですね。  もしそういう意味の数字を厚生省の方でどこかつかんでいるところがありましたら、例えば、僕が以前記憶の中で、今回探せなかったのですけれども子供を産めない理由というものに、やはり教育費お金がかかるということで挙げていたのが全体の半分以上あったと思うのですね。だから、何かそういう数字があったら教えていただけませんでしょうか。
  9. 矢野朝水

    矢野政府委員 お答え申し上げます。  平成九年の国民生活白書に引用されている統計結果でございますけれども、「理想の数だけお子さんを持たないだろうと思われる理由はなんですか。」と、これはある生命保険会社の総合研究所が調査した結果でございますけれども、その理由を三つまでということで、実は一番多いのが「教育費が高い」ということでございまして、これが約五五%ぐらいでございます。二番目が「住宅の問題」、これが四五%ぐらい。それから「健康・年齢など」と、こういったのが後に続いております。
  10. 戸井田徹

    戸井田委員 わかりました。大体そういうものが少子化の流れをつくっているということは間違いないだろうと私は思うわけであります。  そんな中で、ぜひ年金お金運用というものをもうちょっと真剣に考えていただいて、そして、多分これを解決することによって少子化の傾向に歯どめをかけられるんじゃないかな。  そして同時に、こうしたことをやるかやらないかというのは、まさにそれに携わってその立場にいる人間が本気になってやるかどうか、そのことに尽きると思うのですね。  日本明治維新のときに、松下村塾から出た人間が日本を動かしていった。そして、その松下村塾でもって吉田松陰が講義をした時間というのはわずか一年ちょっとしかない。その一年ちょっとの間にそういう若い世代の人間に対してやる気を起こしていった。そういうことを考えていくと、今の世代でも一緒じゃないか、年がいっても一緒じゃないか。いかにやる気を起こしてやるかということによって、物事は解決するかしないかというその答えが出てくるのだろうというふうに思うわけであります。  私自身は、何としてもこのことは、どんな反対があろうと、何が前に出てこようと、これは絶対にやってやろうと心に誓っているわけであります。厚生省の皆さんとはけんかもしたくないし、別のところのけんか相手を求めて、それをぜひ突破してやっていきたいというふうに思っております。  今、与野党伯仲の時代であります。そして、今私が申し上げてきたことというのは野党の人は決して反対しないだろう、もろ手を挙げてとは言わないかもわからないけれども、多分片手ぐらいは挙げて賛成してくれるんじゃないかな。今、時代的にいっても、このことに関しては非常にやりやすい時代だと私は思っておりますので、ぜひ真剣に考えていただいて、少子化問題解決のためにお互い手を握って頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  11. 木村義雄

    木村委員長 岩下栄一君。
  12. 岩下栄一

    ○岩下委員 自由民主党の岩下栄一でございます。  補欠選挙で議席をちょうだいいたしまして、早速質問の機会をお与えいただいた委員各位に心から感謝を申し上げたいというふうに思います。  また、厚生大臣におかれましては、おくればせながら御就任をお祝い申し上げますとともに、多年の御経験と高い御見識の中で我が国厚生行政を引っ張っていただきますことを心から御期待申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。  まず、内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモンについてでございます。  文明の発展、科学の進歩の中で化学物質が数多く合成されてきて、それは一説には百万あるいは一千万種類と言われているわけでございますけれども、今日のそうした状況は人間のいわゆる文明生活の行き着くところでございまして、そうした化学物質のどれほどのものが毒性を持ちあるいは人間の内分泌に影響を与えるか、まだ不明の部分が多くあるわけでございますし、メカニズムも解明の途上にあるというふうに思うわけです。  しかし、不明であればこそ国民の大変な不安がみなぎっている。こうした不安を解消して、一日も早く実態を調査研究、解明し、そして新たな展望を見出すということは政府の大きな役割でございますし、そうした点から、大臣はどのような御所見、そしてまた決意をお持ちか、お尋ねをいたします。  そしてまた、私は熊本県議会で水俣病問題に携わってまいりました。大臣が環境庁長官時代に随分お世話になったというふうに感謝をいたしておりますけれども、水俣病の歴史をひもときますと、いきなり胎児性水俣病というものが発生したのではなくて、その前の段階で、猫が踊り出した、あるいはネズミが異常発生したという、水俣湾周辺の動物の異常現象がございました。有機水銀中毒による猫の神経異常がそうした形であらわれて、また、ネズミをとるべき猫がそういう状態でありますからネズミが多発した。  そうした異常というものはやはり家畜とかそうした小動物にすぐあらわれるということを考えますときに、水俣病の教訓といいますか、あるいは水俣病で我々が何を学んだかということがやはり問われねばならない、このように思うんですね。そうしたことを踏まえて、大臣の所見をお尋ねいたします。
  13. 宮下創平

    宮下国務大臣 まずもって岩下議員の御当選を心からお祝い、歓迎申し上げます。また、私に対する激励を賜りまして、感謝申し上げます。  さて、水俣問題について、私は環境庁長官時代に、戦後最大の公害事件として大変注目された事件の解決に道行きをつけさせていただきましたけれども、この道筋を考えるときに、今委員の御指摘のように、水銀による汚染だということがはっきりするまで非常に時間がかかっております。しかし、現象はいろいろ生じていたわけでございますから、本当に事前によく研究調査して、それをキャッチして対応するということは極めて重要だということは私も痛感をいたしております。  一方、環境ホルモンの問題でございますが、これは、正式には内分泌撹乱化学物質ということで私ども呼称した方がいいのではないかと思っておりますけれども、今、ダイオキシンの問題とかPCBでありますとか、いろいろの諸化学物質による内分泌の機能を阻害する問題が発生しております。これは私どもの健康にとって大変重要な課題でございますが、なお科学的に未解明な部分が非常に多いわけでございますので、厚生省としても、先ほどの水俣の例を引くまでもなく、こういった内分泌撹乱物質の健康影響に関する検討会を設置いたしまして、国際的な動向も注視しながら総合的な検討を開始しているところでございます。  私どもの健康に多大な影響のある問題でございますから、調査検討の結果を踏まえまして十分これに対応していかなければならぬという決意をし  ているところでございます。
  14. 岩下栄一

    ○岩下委員 ピューマとかあるいはラットとかいろいろな動物に停留精巣とかいわゆる生殖器の異常が指摘されておりますし、また、鳥がつがいをするのではなくて、雌同士のつがいとか、そういう現象が自然界で報告されています。トゥデー・バード・トゥモロー・マンという言葉がございます。動物の変調がいずれ人間の健康にそうした変調を来すということが今恐れられているわけでありますけれども、そうしたことを未然に解明してぜひ対応を考えていただきたい、このように思います。  昨今ベストセラーになりました「奪われし未来」という本がございます。これは、一昨年、ダイアン・ダマノスキら三人の人たちによって書かれたものでありますが、それをさかのぼること三十数年前、一九六二年にレイチェル・カーソンが「沈黙の春」という本を書いて、古典的な本になってしまいましたけれども、今日のこの状態をある意味では予見をしておるということで大変衝撃を受けたわけでございます。問題提起として、非常に早い時期にそういう問題提起があった。  そうしたことを背景にして、早い時期に官民とものいわゆる基礎研究が非常に活発だったアメリカ等の国々においてはあるいはヨーロッパでは、こうした内分泌撹乱化学物質に対しての対応が早かったように私は思うんです。  我が国においては、いつの時点である種の化学物質が人間の内分泌に影響を及ぼすかということの認識をされたのか。  それからまた、各省庁は、今、各省庁なりの立場でこの内分泌撹乱化学物質に対するいろいろな対策がとられております。ばらばらの印象を否めない、また、縦割り行政の弊害というものを感じないわけではない。したがって、ここはやはりどこかがリーダーシップをとるべきではないか、そのリーダーシップをとるのは厚生省であるのかどうかということをお尋ねをしたい。  そしてまた、この呼称、先ほど大臣は内分泌撹乱化学物質とおっしゃいました。厚生省あるいは文部省の統一的な用語だというふうに聞いております。しかし、新聞紙上あるいは他の省庁においてはこの呼び名がまたばらばらでございますし、こうしたことについては、ホルモンというものが生体内でつくられるものであることを考えますと、化学物質にホルモンというふうな呼び名がつくのは適当じゃないかもしれませんけれども、この統一的な呼び名を含めてお尋ねをしたいというふうに思います。
  15. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 本問題に関しましては、従前から先生今御指摘のようにさまざまな指摘があったわけでございますが、国際的な視点から見ますと、国際的にこの問題に対しまして科学的な解明をしようという動きが始まりましたのは、平成八年度、OECDがこの枠組みを提起し、加盟各国に対しましていろいろな要請をしてきたということが国際的な大きなうねりであろうというふうに認識をいたしております。  厚生省といたしましても、この動きに合わせまして、平成八年度から厚生科学研究事業によりまして調査研究に着手をしたところでございます。また、この問題は非常に幅の広い問題でございますので、関係各省庁がそれぞれの立場から進めていくということが必要でございます。厚生省の役割といたしましては、人の健康ということに着目をいたしまして、その健康影響がどのようなものか、あるいはどういうものかということの解明をしていかなければならないということで調査研究を推進しているところでございます。  今、ばらばらではないかという御指摘でございますが、例えばこういう物質の製造にかかわります主要官庁というのは通産省でございますし、それから今御指摘の野生生物その他に関しますと、これは主として環境庁の所管でございますし、各省庁がそれぞれいろいろ所管をしている範囲の中におきまして本問題に取り組む必要があるという認識をいたしているところでございます。そういった意味で、関係九省庁によりまして、内分泌撹乱化学物質問関係省庁課長会議というのを設置をいたしておりまして、お互いの取り組みの調整、その他研究計画の調整を図っているところでございます。  それから、呼称についてのお尋ねでございます。これは新聞紙上その他でもいろいろなことが報道されておりますが、私どもといたしましては、本年の七月に開催されました、先ほど大臣が申し上げました第三回の内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会におきまして、科学的な呼称といたしましては内分泌撹乱化学物質の名称を用いることが適当という御意見をいただいているところでございますので、この点につきましては、先日、関係各省庁の担当者連絡会議におきまして情報及び意見の交換を行ったところでございまして、この問題につきましては、私どもといたしましては、こういう呼称を用いるということが妥当であろうというふうに考えておりますし、また、関係する学会においてもいろいろ御議論があったというふうには聞いておりますが、やはり同様の呼称を用いることが適当というふうなことで結論が得られたというふうに聞いております。
  16. 岩下栄一

    ○岩下委員 平成十一年度の内分泌撹乱化学物質対策の概算要求の各省庁の一覧によりますと、調査研究というのがどこの省にも出てくるわけでございます。そういうようなことで、お互いの連携といいますか、やはり調査及び研究というものはそれぞれの情報交換というものが基本でございましょうから、そうした点を配慮して行っていただくようお願いいたします。  次に、十一年度の厚生省の概算要求で、いわゆる総合研究費として十億が計上されているわけでございまして、この中身についてはどのような内容なのか、あるいはどこに力点が置かれているのかをお尋ねをいたしたい。  また、研究の国際的な連携については現状はどうか。新聞報道によりますと、アメリカの環境保護局諮問委員会が、化学物質のうち六万種類を九九年夏までにホルモン的な作用等についての研究をして調べ尽くす、こういう報道がなされております。この結果が出るのはもちろん五年先の二〇〇三年ということになりますけれども、こうした情報収集といいますかあるいは日米間の協力というか、そうしたものの現状についてお尋ねをしたい。  また、厚生科学研究費補助金は本年度二百十七億という予算がとられてきましたけれども、この応募の研究の中に内分泌撹乱化学物質等の研究の課題はあるのかないのか、そのようなことをお尋ねをいたしたいと思います。
  17. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 平成十年度につきましては、厚生科学研究事業におきまして、内分泌撹乱作用を検出いたしますための試験法あるいは評価手法の開発、あるいは食品等からの暴露実態の把握、あるいはこれも新聞紙上いろいろ出ております精子数の実態調査など、人の健康影響に関します調査研究を総合的に実施することといたしているところでございます。平成十一年度におきましても、平成十年度に引き続きまして、これらの諸課題につきまして取り組んでまいる所存でございます。  なお、国際的な枠組みの中での取り組みでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、OECDがこの問題につきましては、全体の国際的な枠組みの中で各国の果たすべき役割といいますか、各国が担うべき役割というふうなことにつきましてもいろいろ議論をされておりますので、こういった枠組みの中で国際的な分担をし、かつ協力をしながら進めてまいりたいと考えております。  なお、平成十年度に採択をされました厚生科学研究費の中での内分泌撹乱物質関係でございますが、六課題ございます。もし必要があれば詳細な研究課題をお示し申し上げてもよろしゅうございますが、例えば健康影響へのメカニズムの研究でございますとか、それから健康リスクの評価のあり方、あるいは免疫機能に及ぼす影響等々、そういった諸課題につきまして採択をいたしまして研究を推進いたしているところでございます。
  18. 岩下栄一

    ○岩下委員 ありがとうございました。  また、産業界にとってこの問題はやがて死活問題となってくるわけでございます。そこで、産業界もいろいろな研究を行っていると思いますけれども、今後、産学官といいますか三位一体の研究体制というものも、より緊密さが必要となってくるのではないかと思います。そういうところで政府が指導的な役割をぜひ果たしていただきたい、このように念願いたします。  次に、カップめんのスチレン溶出について、去る六月に国立医薬品食品衛生研究所が、八品目の中で五品目からスチレントリマーが検出された、こういう報告がなされています。日本即席食品工業協会は、これは溶出はないと言ってまいりましたので、ここに差がございます。このスチレンダイマー、トリマーの人体への影響についてはどうお考えになっているか、また、何らかの規制あるいは指導があるのかどうか。  それから、ポリカーボネート樹脂、いわゆるPC樹脂から溶出するビスフェノールAについてはどうでしょうか。缶詰の缶の内側のコーティング、給食用食器などに利用されているというふうに聞いておりますが、児童生徒の健康への影響を心配をいたしております。  文部省の調査では、平成十年五月現在で、小学校二万三千六十五校の中で九千二百二校、中学校七千八百四十四校中三千二百七校でこのPC食器が使用されている。そして、こうした世論の動きの中で、他の材質へ切りかえ中のところもどんどん出てきているし、またPTAあたりが勉強会なんかをやっておりますけれども、次代を担う子供の健康という観点から、厚生省としてはどのような対応を考えていかれるのか、お尋ねいたします。
  19. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 ポリスチレン樹脂の安全性につきましては、国立医薬品食品衛生研究所で実施いたしました試験結果等のデータがございます。その他幾つかかなり多くのデータがございますが、こういったデータを含めまして、食品衛生調査会におきましていろいろ御議論をいただいたところでございますが、現在の時点におきましては使用禁止等の措置を講じる必要はないという御意見でございますし、私どももそのように認識をいたしております。  また、ポリカーボネート樹脂からのビスフェノールAの溶出についてでございますが、その溶出量に関しますデータなど直近までのデータを含めまして、これも食品衛生調査会の御意見を聞いたところでございますが、これも同様に、現時点におきましては使用禁止等の措置を講じる必要はないというふうに認識をいたしております。  しかしながら、これらの物質を含めました内分泌撹乱化学物質の問題につきましては、新しい問題でもございます、あるいはさまざまな御議論もございますので、先ほども御答弁申し上げましたように、OECD等におきまして国際的にもいろいろな検討が進められております。こういったことを踏まえまして、私どもといたしましても、種々の観点から調査研究を行いまして、国民の健康確保というものに適時適切に対処してまいる必要があるというふうに考えております。
  20. 岩下栄一

    ○岩下委員 ありがとうございました。  この問題は、いわゆる化学物質の毒性よりも、生命の根源といいますか、命というものに長期的にかかわってくる問題として非常に重要な問題だと思うのです。したがって、たかをくくることなく実態を一日も早く解明をして、対応策を政府としてとっていっていただきたい、このように念願をいたします。  環境ホルモン、内分泌撹乱化学物質についてはそのくらいにいたしますけれども、次に骨髄バンク、白血病の救済の問題についてお尋ねをいたします。  大変個人的なことでありますけれども、私は、昨年妻を白血病で亡くしました。非常に長い年月、命というものに向かい合って生きてまいったのであります。したがって、患者の家族とかあるいは白血病で肉親を亡くした遺族の人たちの気持ちを共有して今日まで生きてきております。  今全国に一万七千人の白血病の患者、そして毎年五千人が発病し、また毎年五千六百人が亡くなっているという現状であります。特に十五歳以下の子供がそのうちの三分の一を占めているということを考えますと、大変痛ましい限りです。  こうした中で、骨髄移植あるいは暖帯血移植というものが医療技術の中でどんどん進んできたことは大変な光明でありますし、骨髄バンクが発足してやがて七年近くなるわけでありますけれども、そうした中でいわゆるドナー登録が十万人を超えた、大変喜ばしいことであります。これは社会の連帯感がそのことによってさらに増し、あるいは精神的に豊かな土壌というものが私たちの社会に広がっていくことを考えますときに、大変望ましいことであります。  しかし、一方で、ドナー数を諸外国と比較しますと、アメリカでは二百二十万人、あるいはイギリスでは二十八万人と聞いているのですね。あるいは宗教上、あるいは文化の違い等々ありましょうけれども、この違いについて厚生省としてはどうお考えになっているか。  あるいは、バンクを通した移植は平成十年二月現在で千四百四十二件、そして希望者は六千百六十七件、まだ多くの患者が移植を待ち望んでいるわけであります。適合ドナーの見つからない患者が二二%おりますし、この救済のためにはあと三十万人の登録が必要と言われている。これまでドナーの獲得にどのような活動が行われてきて、あるいはまたどのような方策が今後あるのか。あるいは、今窓口は全国百十カ所の日赤血液センターと献血ルーム、百八十カ所の保健所でありますけれども、土曜、日曜は登録できないとか非常に受け入れの体制が十分でない。この点をどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
  21. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 我が国におきましては、平成三年以降骨髄バンクが活動を開始したわけでございますが、今先生指摘のように、当初十万人の目標を設定いたしまして登録の推進を図ってきたところでございますが、最近ようやくこの十万人の目標を達成したわけでございます。  一方、御指摘のように、アメリカにおきましては登録者数が二百三十万人と聞いておるわけでございますが、これは単純には比較できませんが、人種の多様性ということを考慮いたしますと、現在、適合性の確率が、我が国におきましては約八割、アメリカにおいても同じ程度というふうに承知しているわけでございます。  しかしながら、より的確な移植を推進していくためには、より精密な検査方法におきまして同様の移植の機会を確保するためには、新たに三十万人の目標を設定したわけでございますが、当面二十万人を目標といたしまして普及啓発活動を図り、提供登録者の数をふやしていきたいと考えているわけでございます。  そこで、どのようにドナー登録者をふやしていくかということでございますが、当初は日赤の血液センターのみで行っていたわけでございますが、平成六年からは保健所におきましてもこの窓口を拡大すると同時に、日赤の血液センターにおきましても、月曜から金曜までに加えまして、土曜、日曜、祝日の受付も開始をするというようなことをやりまして、現在、保健所におきましては全国四十七都道府県で百六十カ所、それから、土曜、日曜、祝日の受付をやっている日赤の血液センターが全国でこの七月現在五十一カ所という形になっておりまして、今後とも引き続きこの普及啓蒙活動に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  22. 岩下栄一

    ○岩下委員 どうぞよろしくお願いいたします。  この骨髄移植の国際的な連携とか幾つかまだお尋ねしたいことがございますけれども、時間がございませんので、最後に大臣にお尋ねをいたしたいというふうに思います。  骨髄移植にかわって、いわゆる暖帯血による暖帯血幹細胞移植という新しい医療技術が大変な注目と期待を集めていることは御案内のとおりでございます。病院で処理される年間百二十万人の胎盤の血液を有効に利用できる、あるいは凍結保存ができるというメリットから期待が集まっているわけであります。しかし、量としては十分な量のいわゆる造血幹細胞が得られません。一つの腰帯からは少量しかとれないということで、成人の移植はなかなか難しいのではないかな、こういうことも聞きます。したがって、この暖帯血移植の現状、そしてまた臍帯血バンクの見通しと問題点などについてお尋ねをしたい。  また、さらに新しい治療法として、抹消血幹細胞移植というものを聞いております。化学療法後の造血回復期あるいは造血を促進する生体物質投与後に著しく増加する造血幹細胞を患者から採取して、化学療法で白血球細胞が除去された時点で患者自身に移植するという治療法でありますけれども、こうした新しい医療技術の現状と見通し等についてお尋ねをいたしたい、このように思います。  「いのちを救えるのは あなたかも知れない」というサブタイトルの骨髄バンクのパンフレットがございます。「私に骨髄をありがとう」という患者の言葉に対して、それを提供したドナーの「私こそありがとう」という言葉がある。人の命を助けるということのとうとい人間の一つの行いといいますか、そうした点からこの問題がより展開していくことを期待しながら、御質問をいたしたいと思います。
  23. 宮下創平

    宮下国務大臣 多少専門的なことにわたりますが、私、素人でございますが、今御指摘の骨髄移植に加えて、白血病等の治療方法として臍帯血移植、あるいは新しい方法としての抹消血幹細胞移植ということが行われておるのはお伺いしております。  へその緒と胎盤に含まれている血液である臍帯血から造血幹細胞を採取、保存をいたしまして、白血病等の患者へ移植する方法が臍帯血移植でございますが、これは例もまだそんなに多くございませんが、二十七例くらいはあるようでございますね。さらに、抹消血幹細胞移植というのは、血液中の造血幹細胞数を薬剤投与することによって増加させて、血液から造血幹細胞を採取して移植に用いる方法のようでございます。  これらの方法につきましては、治療法としてはいまだまだ歴史が浅くありまして、今後なお条件整備が必要な段階であると思われますが、患者の治療方法の選択肢あるいは可能性を広げるものとして重要なものだと認識をいたしておるところでございます。  私どもとしては、臍帯血移植の基盤整備を図るとともに、抹消血幹細胞移植についても研究を推進する等、前向きに取り組んでまいる所存でございますが、ちなみに、平成十一年度の概算要求におきましても、保存臍帯血の緊急整備でありますとか安全性の確保、あるいは情報ネットワーク等をつくるために四億一千万円の新規要求もいたしてその充実を期そうとしているところでございます。
  24. 岩下栄一

    ○岩下委員 時間が超過をしてしまいました。これで私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  25. 木村義雄

    木村委員長 五島正規君。
  26. 五島正規

    ○五島委員 民主党の五島でございます。  厚生大臣、大変時間がおくれましたが、御就任おめでとうございます。  そこで、私は、従来から問題になっておりました当面する医療保険改革あるいは介護保険問題、年金問題等について質問をさせていただきたいと思います。  医療保険制度改革につきまして、厚生省及び当時の与党協でラフデザインが示されて、ほぼ一年が経過いたしました。しかし、その内容の具体的な肉づけというところでは、いまだにDRGだとかあるいは参照価格制度といったような言葉だけが飛び交い、どのように改革しようとしているのか全く明らかになっておりません。  今後の医療制度について、その全体像を国民に示し、理解を求めることが早急に求められているということについては、大臣も御異存がないことだというふうに思います。とりわけ介護保険制度の発足を平成十二年度に控え、この介護保険制度と整合性のある老人医療保険制度の確立が必要であるわけでございますが、まさか安定的な老人医療についての全体像を示すことなく老人医療保険制度の自己負担の変更のみを先行したり、あるいは介護保険制度の実施をおくらせたりすることはないと思うわけでございますが、大臣、この点については御明言いただけますか。
  27. 宮下創平

    宮下国務大臣 医療保険制度についての昨年の与党協の基本方針は私も存じ上げておりまして、これに基づきまして医療保険審議会等で診療報酬の見直しの問題、薬価の問題、あるいは老人保健制度の独立化その他の問題について今議論が進められております。そして、委員の御指摘のように、診療報酬から始めておりますので、老人保健制度の方はちょっと後回しといいますか、さらに継続してやっておるわけでございますが、問題は、全体的なデッサンの中でこれらを処理していかなければならないと思うのです。これは委員の御指摘のとおりでございます。  一方、介護保険が十二年の四月から実施されることが予定されておりますので、これとの整合性を図ってやっていかなければなりませんので、決してそこにそごがあってはならないと存じますから、この高齢者医療制度の見直しにつきましても、今いろいろな審議会検討中でございますが、並行をいたしまして、十二年中にはこれが実施できるように成案を得たいと思っておりますから、介護保険との整合性はよく検討してやってまいりたい、こう思っておるところでございます。  そんなことで、委員の御指摘の御心配は、それがそごがあったりちぐはぐになってはいけないのではないかという御指摘だと存じますが、そこは十分心得てやってまいりたいと思っております。
  28. 五島正規

    ○五島委員 今大臣のお話がございました。安心いたしますが、なおこの点について申し上げておきたいと思いますが、介護保険と老人保健が併存する状態になった場合に、お年寄りの負担という面をどう考えるか。これは、自己負担の問題について介護保険は一割ということになっております。そして、老人保健についてもそれをどういうふうにするかという問題があるかと思いますが、問題はそれだけではございません。  現在、老人医療費約十兆円の中で、お年寄り自身が自己負担として負担されておられる金額は約五千億、そしてなお、そのお年寄りそのものが世帯主として保険料をお払いになっておられる金額が約五千億。約一兆円でございます。すなわち、総老人医療費の中の一割を老人の方々、老人世帯の方々が御負担なさっています。  介護保険の場合は、制度といたしまして一割を御本人が負担する、そして保険給付の一七%、すなわちトータルに戻しますと一五・三%は老人世帯が負担する、合計二五・三%を老人世帯が負担するという内容になっております。すなわち、現状の老人医療においては一〇%であるものが、介護保険においては二五・三%が老人世帯が負担するという内容になっています。  ここのところの整合性を図っていくためには、その若干の手直しや、先日保険局長の方から拠出制度で云々というお話もありましたが、拠出制度という形で現行の制度を維持していくという枠の中でここの大きな問題は解決つかないだろうと思われるわけですが、この点についての厚生省内部での漏れ伺うところの御意見では、自己負担額の問題だけの議論であって、保険制度全体の中における整合性の議論にどうも今まだ十分入れていないんじゃないか。それが入れていないとすると、介護保険における給付の内容と医療保険の給付の内容において、本来介護保険が目的とした内容が崩されてくる危険性が非常にある。  その点について、平成十二年度までにその点も含めたきちっとした老人医療、あるいは介護保険と整合性を持った老人医療保険制度については御提示いただけるというふうに考えていいわけでございますね。再度お伺いいたします。
  29. 宮下創平

    宮下国務大臣 今御指摘のように、介護保険は一割の負担医療保険の方は定額負担というシステムになっております。  介護保険の中における医療行為等につきましては、依然として医療給付の問題でございますから、そこは非常に連結といいますか関係が深いわけでございますけれども介護保険が定率の一割負担であるから医療費の方も一割負担でどうかなというような考え方は、考え方としてあると存じます。  しかし、今ここで私が結論を申し上げる段階にはございませんで、十二年の抜本的な改革の一環として、今委員の御指摘のような点の整合性といいますか関連性もよく考慮しながら検討してまいる所存でございます。
  30. 五島正規

    ○五島委員 医療保険の改正の大きな問題は、決してテクニカルな、DRGをどう導入するかとか参照価格制度を導入するかといったような問題であるよりも、高齢化にふさわしい医療保険制度をどうつくっていくのか、あるいは現在の保険制度をどのように変えていくのかということが大事な問題であるという点から、この点について何としても、とりわけ介護保険と関連のある老人医療制度については、少なくとも次の通常国会においては御提示いただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、介護保険制度の発足、今も申しましたが、平成十二年度からということに既に決定されております。それを迎えまして、各自治体におきましても、一体保険料がどれぐらいになってくるのか、各自治体の中での推計が始まっております。高知県においてもそうしたことがなされたわけでございます。  この推計の根拠になる試算を見てみますと、当初、介護保険の発足の段階において、介護ニーズというのは、客観的に存在しているニーズがマインドとして、要求としてあらわれてくる割合を四〇%として想定してこの介護保険制度というのは議論されてきた経過があったと思います。  しかし、現実には、各都道府県や市町村の議論を見てみますと、どうも在宅のニーズについてはその程度で押さえておられるようでありますが、施設介護のニーズは当初より極めて高く、高率にこの要求が起こってくるというふうに試算している。例えば老人病院において長期療養しておられるお年寄り等については、そのまま介護保険の適用に、一部のそういう治療の必要な人は別として、いわゆる介護が必要であるという人はそのまま全部引き受けていくということになってきますと、例えば高知県の場合ですと、現在六カ月以上病院に入院しておられる方が約六千名いる、これを全部療養型病床なりそういうところへ移していく、そしてそれを介護保険で給付したときは幾らになるかという試算が始まり出している。  すなわち、言いたいことは、どうも介護保険に対するニーズは、当初予想の四〇%というよりも、費用水準で見ていく場合には非常に高率に当初から発生しそうだというふうに思われるわけでございます。これについて厚生省はどのようにお考えになっているのか。まさか介護度判定を操作して必要な介護を給付しないように制約していく、これは、それぞれの市町村の財政等の状況の中で、法的にそれができないということではないかと思うわけでございますが、そのようになってきますと、やはり高齢者の介護と医療とを分断するという原則が大変崩れてまいります。この点についてどのようにされようとしておられるのか、厚生省にお伺いしたいと思います。
  31. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 現在の介護費用の推計に当たりましては、先生指摘のように、在宅サービスにつきましては四〇%程度ということで利用率を考えているわけでございまして、ただ、施設サービスにつきましてはおおむね一〇〇%、こういう前提で計算をいたしております。  これは、全国的に見ますと、新ゴールドプランが着実に達成された、こういう前提で見込まれているわけでございますので、法施行時におきましてこれを全国ベースで大きく上回るということはないかと思います。  ただ、高知県の場合には、後期高齢者の七十五歳以上の人が非常に多いとか、それから先生指摘のように療養型病床群が非常に多い、こういうふうな事情が恐らく絡まっているのじゃないかと思っております。  なお、現在、各市町村で介護保険事業計画をつくっていただきますので、それの策定の基盤につきまして実態調査をいたしているわけでございまして、ことしの十月末ごろには、その結果に基づきまして、各市町村で保険料とか給付費、こういったものが見込まれるような計算表、ワークシートを示したい、こういうふうに考えております。
  32. 五島正規

    ○五島委員 施設ニーズについて一〇〇%という内容は、あくまで一定の水準で客観的に評価できる介護度判定を行って、そして施設介護が必要であるという水準に達した人たちについて、これは一〇〇%提供していこうという内容であって、現在老人病院に入所しておられる、社会的入院の方も含めて、すべてそれをしていこうということではないはずでございます。  一方で、在宅のニーズは四〇%という、施設入所が、医療機関への老人の入院が基本である状況の中において発生している。そういう在宅のニーズ、それを四〇%に置いたまま、結果において現在の老人病院からあなたは在宅でとなった場合に、それを受け入れられるか。結局、そうなってくると、市町村とすると施設入所を続けさせる。そうすると、非常に介護保険料というのは高いものになってこざるを得ない。そういう矛盾にようやく各市町村レベルにおいても突き当たってきたというふうに思っているわけです。その点についてどのように厚生省が指導しようとしておられるのかということを重ねてお伺いしたいと思うわけです。  それと関連いたしまして、今度は介護保険料、特に高齢者の介護保険料につきましては複数料金制度を導入するという話が流れてきています。一体幾らが標準値になるのかということがはっきりしないまま、〇・五、〇・七、一・〇、一・五なんというような数字だけが耳に入ってまいります。  介護の複数保険料制度を導入するにしても、高齢者そのものが、介護のニーズの発生というものが、多く見積もっても後期高齢期を含めて三〇%ぐらいであるだろうという状況の中からは、この介護保険料というものが格差が三倍にもなってしまった場合、比較的裕福なといいますか、どうにか余裕のある層ほど介護保険には加入しないというふうなことが起こってくるケースはないのかということを心配いたしております。  今厚生省がお考えになっておられる状況の中で、例えば厚生年金夫婦とも満額受給しておられる場合、これらの人の保険料金額はまだ決まっておりませんので別といたしまして、例えばそういう方々が標準数値になるようにお考えなのか、その方々は一番高い数値の保険料負担しなければいけないというふうにお考えなのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  33. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 第一点でございますけれども介護保険制度が円滑に進むように、現在、新ゴールドプランの達成に向けまして、必要な財源を確保する等、努力をいたしているわけでございますし、介護保険制度が発足した後におきましても、市町村が決めました介護保険事業計画、これの達成のために、私どもこれからも支援を申し上げなければいけないというふうに考えているわけでございます。  それから、第二点の保険料関係でございます。今私どもが考えておりますのは、所得段階別の五段階を考えているわけでございまして、低所得者への負担を軽減する一方で、高額の所得者におきましては所得に応じて負担していただこう、このような考え方をしているわけでございます。  具体的に申し上げますと、市町村民税が本人が非課税の場合、こういったものを基準一といたしまして、市町村民税が世帯単位で非課税の世帯に属する方につきましては基準額に〇・七五倍をする。それから、特にその中で老齢福祉年金の受給者あるいは生活保護の受給者、こういった方は〇・五。さらに高額な方、市町村民税の課税対象者につきましては、その所得に応じまして基準額に一・二五あるいは一・五を掛ける。こういうふうなことで〇・五から一・五倍、こういう形になっているわけでございます。  それで、満額の年金というのがどういう水準かわかりませんけれども、例えば夫が厚生年金に四十年加入した、それから妻が専業主婦であって、これも国民年金に四十年、これが年金の標準的なモデルになっておるわけでございまして、この方が月額で両方合わせまして約二十三万円になるわけでございます。それで、夫の分が約百九十九万円、それから妻の分が七十八万円、こんなような内訳になるわけでございまして、現在公的年金控除がございますので、二百六十六万余りの年金収入以下の方は市町村民税が非課税ということになりますので、この御夫婦とも〇・七五の層になる、こういうふうな形になっているわけでございます。
  34. 五島正規

    ○五島委員 今おっしゃったように、標準的年金受給者において基準値を何ぼにするか。当初二千五百円という説もありました。これは確定しているものではないわけですが、基準値に対して〇・五、〇・七五という世帯がふえてくればふえてくるほど基準値を上げていかなければいけないことははっきりしていますね。とりわけ高齢化が進行している僻地へ行けば行くほど、高齢者の所得というのは非常に低い方々が多いわけです。そうしますと、その地域で〇・五とか〇・七五といっても、同時に高齢化が高くて、ニーズの発生が高いわけですから、基準値を上げていかざるを得ない。基準値をどうするのかということを抜きにしたまま、五段階に分けて、三倍の枠の中で分けてしまいますよという話にどれだけの意味があるのか、そこのところをどう考えているのかということをお伺いしているわけでございます。  また、そのことに余り格差があって、例えば御夫婦二人世帯の中で月々八千円払わないといけないということになってきますと、そういうふうな世帯の高齢者というのは介護保険に入らないだろうと心配されるわけです。  そういう面からいうと、確かに所得に着目するということも大事でございますが、標準値を一体幾らぐらいにするのか、そしてその格差はどれぐらいにすることが介護保険にとっては大事なのかという、そのメジャーがないままに所得格差によって五段階ということだけが先行した議論をされているというのは非常に問題があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  35. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 先生指摘のように、後期高齢者が多い場合には需要も多いわけでございますし、それから低所得者が多いということになりますと全体の水準も上がってくる、これは御指摘のとおりでございます。  ただ、全体の中で二五%の国庫負担をいたしているわけでございますけれども、そのうちの五%を調整交付金という形にして、後期高齢者の数でございますとかあるいは所得分布、こういったものを調整する。その他いろいろな事情があろうと思いますけれども、こういったことで全国平均としてなるべくならしていこう。たくさん施設があって受益が多いところは、ある程度のそれに見合った御負担をしていただく必要があるわけでございますけれども、そうでなく、市町村の責めに帰せないような事情で負担が高くなる、こういったものにつきましては、この五%の国庫の交付金によりまして調整をいたしたい、こういうふうに考えております。
  36. 五島正規

    ○五島委員 この問題は、保険制度全体の枠組みの中の一七%の世界での議論である。しかも、それについては国庫負担の中の五%をそういうふうに調整金として使うということは当然了解した上で議論しているわけでございます。にもかかわらず、この制度の中において、地域的に非常に高齢率が高いあるいは所得が低いところにおいては、結果において平均値を上げていかざるを得ないということによって、五段階に分けてみるということが余り意味がないのじゃないか。  そこのところはもう一度、トータル保険料の中においてどれぐらいのあれにしていくのかということの議論が必要であって、もちろん各自治体の中において横出しやあるいは上出しやさまざまな介護サービスを実施して、あるいは自治体自身が在宅の整備を非常に進められて、そのことによって介護保険コストを安くして保険料を低くする、そういうふうなことが住民の方々、高齢者の方々に反映できるような、制度は必要でございますが、しかしベーシックな部分について余り格差が大きくなるということで、その地域の中における所得の格差だけを重視するということについてはいかがなものだろうかというふうに思うわけでございます。この点については、これからもまた議論をさせていただきたいと思っております。  次に、年金制度の問題についてもお伺いしておきたいと思います。  今年度は年金の再計算の年になっているわけでございます。しかし、前回の再計算の結果に基づく年金制度の改定は、平成十三年度から三年ごとに年金給付を一年ずつ引き上げて、平成二十五年以後六十五歳への給付を決定したということでございます。すなわち、前回の改定の決定というものは、いまだ実施にも入っていないという状況でございます。  こうした状況を踏まえた場合、この不況の中で、今回再計算に基づく制度の改革というのは部分的な手直しにとどめておく必要があるのではないか。むしろ問題は、高齢化少子化というふうなことに対応した総合的な政策をどうするのかということが今急がれるのではないかと思うわけでございます。とりわけ、高齢者就労の推進あるいは女性労働力率をどのように改善していくのかといったことが極めて大事であると思っております。また、少子化の問題についても後ほど申し上げたいと思いますが、まずこの点について、大臣、どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  37. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘の支給開始年齢の問題でございますが、御指摘のように、二〇〇一年から二〇一三年までかかって支給開始年齢を引き上げていくというのは、もう既に法律案が通って、予定されていることは御案内のとおりでございます。  私どもは、公的年金というのは、やはり高齢者の生活に極めて重大な問題でありますし、安心して年金を受給できるという見込みを立てる必要がございますので、長期化の視点が必要であろうかと思います。  一方、経済成長の低下とか、また少子高齢化の進展で、現役世代負担の一層の増大が予想されますから、中長期的な視点というのはどうしても欠かせませんので、この引き上げの問題、支給開始年齢の問題は、私ども制度の改正の延期は今のところ考えておりません。  しかし、今度の次期年金制度改正、五年ごとにやる十一年からの改正につきましては、給付ど負担の均衡をよく確保しながら、将来世代負担が過重にならないように、制度全体として安心、安定した制度を構築したいという角度から検討を進めさせておるところでございまして、今、年金審議会等で議論をしていただいているところでございます。  なお、委員の御指摘の高齢者や女性の就労環境の整備という問題につきましては、これからの少子高齢化社会では特に必要なことでございまして、私ども、これはそういう人口構成高齢化に伴う対策として今後政府全体で十分取り組んでまいりまして、例えば三号の被保険者の方を、女性の社会的進出等において二号被保険者の方に持っていくとか、そういういろいろな問題がございますから、これらも精力的に取り組み、保険料を納めていただく方々の就労問題、これも拡充するように、そしてその基盤をきちっとつくるようにしたい、こう考えておるところでございます。
  38. 五島正規

    ○五島委員 ぜひ高齢化の問題、少子化の問題というのは政権全体として取り組まなければいけない問題でございます。  私、この場においても何度も申し上げておりますが、現在六十代の方々の労働残存能力というのは非常に大きなものになっている。しかも、就労する者の労働形態そのものが、いわゆるかつての重労働という時代から大変変化してきています。すなわち、労働能力を十分残存しておられる世代がたくさんふえてきている。その中で、高齢化の中で、昭和三十五年ぐらいと比べてみても、年金受給開始時期におけるいわゆる平均残存余命というものを見てみても、とりわけ女性の場合は大きく延びてきているわけです。そういうふうな状態を見ますと、やはり高齢期の就労の場をどのように確保するのかということは早急な問題で、それができない限りは、この問題は、基本的に高齢化がいいと言えない、財政的に破綻する、はっきりしているわけでございます。  いま一つ深刻な問題は、やはり少子化の問題だろうと思います。  先ほど戸井田議員が大変いい御意見を出しておられました。国民金融公庫が今インターネットでも資料を出しておりますが、調査して発表しておりますが、家計における教育費負担実態調査表というものを出しています。昨年度で、平均的に高校生から大学を卒業するまでの一人当たりの一年間の在学費用が百七十三万二千円、そして一人当たりの進学費用が百十七万一千円、さらに、それに自宅外通学者に対しての仕送りというのは年額百五十一万二千円、月額十二万六千円という数字が出ておりまして、結果として、この世代子供を持っている世帯における教育費総額というのは、平均して年収の四一%になっているという数字が出されています。  この年収の四一%、平均で四一%を教育費に使っている世帯というのは、大体世帯主の平均年齢が五十歳前後という一番中堅のところ、そこのところがこれだけの費用が行っています。ここのところをどうするのかということをやらない限りは、私はやはり少子化の問題というのは避けられないと思うわけです。これは厚生行政を超えた問題、しかし年金制度を考えていった場合に、この厚生行政を超えたところの問題をきちっとやっていただかないと年金制度というのは安定しない。  私は、戸井田議員と残念ながら意見が若干違うのは、財源として厚生年金積立金を使えということに固定する必要はないのだろう。むしろ広く財源を、例えば利息ゼロの国債を発行するというのも一つ方法だろうし、あるいは郵貯に対して金利ゼロ郵貯というものを設けて、そして、そうしたものについては相続税の控除対象にするとかいうふうな方法の中で利息のかからない資金というものを調達しながら、せめて年間百万ぐらいの教育ローン制度を、受給する本人が将来払うということを前提とした教育ローン制度のようなものが必要なのではないかと思っております。  戸井田議員が私の常々言っていること、思っていることと非常に近い御意見を出していただきましたので、これは与野党を超えてこうした問題については議論を始めていく必要があるのかなと思っているわけでございますが、大臣の方も、この問題につきまして、厚生大臣立場を離れて、やはり閣議の一員として、この少子化の問題、高齢化の問題について、労働省あるいは文部省等に対してもぜひその対策を強く主張していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  39. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のとおりでございまして、これから少子化対策としても、子供を産み育てていただくほかに、本当にすぐれた人材を育成するというのは親の願いでもありますし、社会的要請でもございます。そしてそれは、今先生指摘のように、育英制度の問題であったり、それからまた、ただいま税制上は所得税の控除制度の中で、十八歳から二十三歳までの子弟を持つ方々の特別な控除を扶養控除のほかにプラスアルファをしたりしております。また、税率構造の面でも、そういった中堅所得階層の負担の重要性にかんがみて、やはりそこらも検討対象になるのではないかと思います。  したがって、大蔵省あるいは文部省育英資金の充実その他万般にわたって非常に重要な課題を含んでおりますから、委員の御指摘のとおり、これからも閣内でも主張をしてまいりまして、そういった面の充実を図ってまいる、そういうつもりでございます。
  40. 五島正規

    ○五島委員 よろしくお願いします。  時間が参りましたので、実は私は、医療、福祉分野の規制緩和についても質問したいと思っておりましたが、この点につきましては次回に回させていただくことにいたしまして、最後に、ごみ焼却場から排出されるダイオキシン類の問題についてお伺いしたいと思います。  昨年度、時間焼却四トン以上の炉については、新炉についてはダイオキシンの発生を〇・一ppm、既存の炉については一ppmというふうな規制が決められたわけでございます。  三点お伺いしたいと思いますが、この〇・一ppm、一ppmというのは、ある種の操作をしてその数値に抑えた数字を出されても意味がない。これまで多くの場合に、この調査をするときには、あらゆる塩ビ製品を排除して、しかもフィルターの前での温度をさまざまな操作をしてわざわざ温度を下げて何とか低い数値をつくってきたという、操作された数字が厚生省のインターネットでも並んでいます。本当に日常的な運転の中において一ppmあるいは〇・一ppmに抑えるということになれば、技術的な常識論からいって、その一けた低い数値で運転できることが可能でないとなかなか到達できないだろうと思うわけでございます。  そうした場合に、新規の炉については、さまざまな技術革新がとりわけこの一年、二年間進んでまいりました。したがって、そこのところはいいとして、既存の炉に対して、その炉の改修でこうした数値の達成は可能と思われるのかどうか。例えばバグフィルターを取りつける、あるいは電気集じん機を改造するといったようなことでもってこうした数値は達成できるとお考えなのかどうかということが一点。  第二点として、改修によってこの新しい基準値への到達が極めて困難と判明した場合、当然広域化を含めてこの炉の建てかえということが必要になってくるわけでございます。その場合に、既存の炉が、いわゆる耐用年数といいますか償却期間が到達していないといった場合でも、やはりこのダイオキシンの問題から考えれば新たな炉を建設せざるを得ないという場合が当然あり得ると思います。その場合に、この炉に対する厚生省からの補助金、あるいは地方自治体の場合はそれに加えて起債その他が起こっていると思います、そうしたものについてどのように処理されるのか。  法の建前からいえば、現状では、補助金を残存期間があれば返せというふうな御返事があるのじゃないかなと思うわけですが、もしそういうふうなことがあった場合には、結果において地方自治体が自前で焼却場を補助金なしでやらないといけないということで、より高度な技術を要する炉の再建というものが非常に困難になってくる。その場合は、その問題についてはどのようにお考えなのか、この三点についてお伺いしたいと思います。
  41. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 ごみ焼却施設の排ガス中のダイオキシン濃度の測定に関しましては、私ども、通常の運転操作時において測定をしていただくということでお願いをしているところでございますが、先生指摘のように、一部その操作に手を加えて測定をしたケースがあるやに聞いております。私ども、正確に事実を把握しているわけではございません。  したがいまして、これは本来正常に操作をしたときにどのぐらい出ているかということが極めて重要でございますので、測定した濃度の結果とともに、測定時におきます運転の状況、維持管理の状況、周辺データでございますが、そういったものもあわせて聴取をすることによりまして、測定時に操作が行われていたかどうかということを、行われていないと思いますけれども、測定時の状況とダイオキシン濃度との関係ということを的確に把握していく必要があるというふうに考えております。  それから、御指摘の第二点目でございますが、焼却能力にあわせまして、処理能力が一時間当たり四トン以上の既設の焼却炉に関しましては、平成十四年の十二月から一立方メートル当たり一ナノグラムという基準を適用するとしたところでございます。  この点に関しましては技術的に可能かという御質問でございますが、私ども、メーカー、関係者に広く技術的な可能性についてぎりぎりヒアリングを行いましたし、また専門家の御意見も十分伺いまして、現在の技術レベルでは一ナノグラムというのは技術的に達成可能であるという御意見をいただいておりますので、全く特殊な事例があるかどうか、そこはわかりませんが、通常のものであればこの基準は達成し得るものというふうに考えております。したがいまして、そういった観点から、改造に要します事業につきましては優先的な補助採択を考えているところでございます。  それから、第三点目の補助事業によりまして取得いたしました財産の処分についてでございますが、これは御存じのように、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律というのがございまして、その第二十二条の規定によりまして、補助金の交付を受けますと、財産を処分する場合には各省各庁の長の承認が必要とされているところでございます。  御指摘の点につきましては、こういった法の趣旨もございますので、個々の事例に照らしまして、補助目的の達成状況でありますとか評価額あるいは解体撤去費用というふうなものを個々の事例に即して十分判断をしてまいらなければならないと考えております。
  42. 五島正規

    ○五島委員 時間が参りましたので終わりますが、大臣の方も、この問題、大型炉だけでなくて十トン未満の炉、ハッチ法システムの炉等々の問題、改良していくためには、今言いましたように、自治体としてのお金の問題というのは非常に大きな問題でございます。そういう意味におきまして、大蔵省等々との問題もあるかと思いますが、環境ホルモンの重要な問題でございますので、ぜひ頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。
  43. 木村義雄

    木村委員長 家西悟君。  家西君におかれましては、着席のままでどうぞ。
  44. 家西悟

    ○家西委員 宮下厚生大臣、御就任おめでとうございます。座ったままで失礼します。  大臣は、マスコミのインタビューの中で、薬害エイズ事件の結果、公務員の綱紀粛正とモラルの意識は厳粛なものとなったとお述べになっていますけれども大臣にとっても薬害エイズ事件の真相究明をすることは重要な政治課題一つと認識されているようですので、そこで、当事者の一人である私からお伺いしたいことがあります。  先日、薬害事件厚生省ルート、松村明仁被告の刑事裁判の公判において、第一回エイズ研究班会議の録音テープ及び第三回、第四回の会議の議事メモの存在が明らかになりました。この間、薬害エイズの真相の究明に取り組んできた私たちにとって、録音テープの存在は、大変に驚かされたというよりも、やっぱりかという思いもあります。当時の菅厚生大臣が事務次官をトップとして徹底的な調査を行ったと確信しておりましたが、厚生大臣の指示に反し、実際の調査は大変ずさんなものであったと言わざるを得ません。  そこで、この問題に絞り、厚生省の姿勢についてお伺いしたいと思います。  それでは、まず最初に、一九九六年の血液製剤によるHIV感染に関するプロジェクトチームの調査は適正に行われたと認識されているのか、お伺いしたいと思います。
  45. 中西明典

    ○中西政府委員 平成八年のHIV感染に関するプロジェクトチームによる調査でございますが、当時の大臣の指示に基づきまして十一の調査項目を設定し、途中いろいろ不手際もございましたが、できる限りの調査を行い、これを公表してきたものというふうに理解をいたしております。  しかしながら、今家西先生指摘のとおり、録音テープを初めとして発見できなかったという非常に不十分な点があったことは、これは否めない事実でございます。また、結果的に厚生行政に対する信頼を損ねたということ、これはまことに遺憾でございまして、反省しなければならないというふうに考えております。
  46. 家西悟

    ○家西委員 なぜ録音テープが発見されなかったかについてどうお考えですか。
  47. 中西明典

    ○中西政府委員 一つは、これは従来から批判の対象になっているところでございますが、こういった血液製剤を介してのHIV感染という問題について、要するに、厚生科学研究費補助金による研究班による研究という姿形で取り進めたという点が一つあると思います。結局、そういった意味で、厚生省が責任を持って、厚生省が主体となってやる例えば審議会のようなものとは異なり、いわば議事録を作成する義務もございませんし、そもそもそういった答申について保存、保管する義務もない。一つは、そういった仕掛けの問題について反省しなければならない点があると思います。  それから、保存義務が課せられていないようなテープあるいは議事メモといったものにつきましては、保管方法あるいは保管期間、これは各担当の判断に任されておりまして、各人各様で、場合によっては全く未整理のまま放置されているというようなケース、これは役所一般反省せねばならぬ点であろうかと思いますが、文書管理が非常にずさんである。  そういった中で、平成八年の省内調査において、真相究明のために職員は相当努力したというふうに考えておりますが、結果として見落としがあったというふうに私どもは考えております。
  48. 家西悟

    ○家西委員 先ほど、否めない事実である、テープが発見されなかったことについても、局長、否めない事実であるというふうにおっしゃいましたよね。ということは、前回の平成八年の調査は不十分であったということはお認めになるということですね。
  49. 中西明典

    ○中西政府委員 後から録音テープ等が発見されるというような事態に立ち至ったわけでございますから、そういった意味で不十分であったということは認めざるを得ないというふうに考えます。
  50. 家西悟

    ○家西委員 不十分であったということをお認めいただいたということは、当時それを調査されたプロジェクトチームの職員等に対しての処分なり、そういったことはお考えいただけるんでしょうか。(「それは大臣の責任だよ」と呼ぶ者あり)いや、大臣でもいいんですよ、当然。厚生省を代表してやっているんですから、大臣でも結構ですよ。
  51. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長が御答弁申し上げましたように、平成八年の調査が結果として不十分であったということで録音テープないし郡司さんの記録等が出てきておるということでございまして、これは、今局長が遺憾であったというように述べられましたが、私もそう思います。  しかし、私も着任して早々でございますけれども、前厚生大臣の小泉純一郎さんが徹底的な究明を職員に指示いたしまして、そして相当数の職員、二百人でしたか三百人でしたかを聴取すると同時に、八十人については面接調査までやってきましたという報告も受けておりますが、私としては、本当に残念な結果ではありますが、あとう限り平成八年に努力されたものであり、そしてまた、今回の調査も責任を感じながら徹底的にやったものでございますが、処分ということになりますとまた新たな別の観点も必要でございますから、特段の処分はいたすつもりはございません。
  52. 家西悟

    ○家西委員 特段の処分はいたさないということですね。  先ほど局長は否めない事実とおっしゃっていて、今大臣は遺憾に思うと、私は意味が違うと思うんですね。これは否めない事実でよろしいですね、遺憾ではなくて。遺憾というのは意味合いが全然違うと思うんですよ。
  53. 宮下創平

    宮下国務大臣 局長が否めないとおっしゃったようでございますが、遺憾であるということで、私どもとしては、本当に残念な調査結果だと存じます。そういう意味で遺憾だと申し上げたわけでありまして、言葉の使い方はいろいろありましょうけれども、私どもは、局長の言った趣旨と私の言った趣旨とはそんなにそごしていない、そういう気持ちをあらわしたものだというふうに考えております。
  54. 家西悟

    ○家西委員 大臣についでにと言ったら申しわけないんですけれども大臣は、せんだってのインタビューの新聞報道の中に、公務員のモラルは向上した、厚生省の諸君は前向きに政策に取り組むことが大事だ、そして、がん細胞が増殖していくとは思わないとインタビューで述べておられるわけですけれども大臣自身、あの発見されたテープはお聞きになりましたでしょうか。押収されているものですから、聞くということは不可能かもしれませんけれども、録音されたテープの、テープ起こしをされた文書等をお読みいただいたでしょうか。その辺、お答えいただければと思います。
  55. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の御指摘のように、これ、は東京地方検察庁に押収されておりますので、現段階では刑事裁判に影響を及ぼすということで、厚生省としては入手できない状況にございます。  しかしながら、公判でこれが公開されまして、活字にもなっているのを私は拝見いたしました。その中では、特に、七月三十一日に法廷で再生されたわけでございますけれども、トラベノール社の自主回収問題について郡司元課長が研究班に報告しているという新たな事実も記載されているということも承知をいたしております。
  56. 家西悟

    ○家西委員 では、別の観点からお伺いしたいと思います。  二年前のプロジェクトの調査は事務次官を長として調査されたわけです。今回の調査は、医薬安全局長と保健医療局長がトップで陣頭指揮に当たって行われたと思うわけですけれども、省内の格付というか、事務次官から局長に格を落とされたというか、責任者をトップから局長におろされたということは何か理由があるんでしょうか。
  57. 中西明典

    ○中西政府委員 今般の調査につきましては、小泉前大臣の指示を受けながら、医薬安全局長と保健医療局長が責任者として実施したものでございます。  平成八年のプロジェクトチームによる省内調査につきましては、これは十一項目にわたる広範な事項につきまして、事実関係の把握にとどまらず、関係者の当時の状況認識、研究班での議論の内容でございますとか、緊急輸入についてどう考えていたか、あるいはクリオへの転換はどうであったか、帝京大症例の問題、回収の問題等々、それぞれの状況認識につきまして幅広く調査をするものであったことから、事務次官を責任者としたプロジェクトチームを編成したという経緯があろうかというふうに考えております。  今回の調査につきましては、先ほど来議論になっております録音テープや議事メモ等の認知状況、そういったものの有無について、だれが作成したのか、あるいは記憶にあるかないか、そういった状況を調査する趣旨でやったものでございますので、両局長が責任者として携わったということでございまして、とりわけ意図して格付を落としたとかいったぐいのものではございません。
  58. 家西悟

    ○家西委員 でも、通常でいえば、事務次官レベルで不備があったわけですね。否めない事実があったというふうにおっしゃるようなことがあったら、これは名実ともに大臣が陣頭指揮に当たってやるべき調査ではなかったのかということを私は思うわけですけれども、この辺について、もし大臣にお答えいただければ、大臣の方からでも結構ですので、お答えいただければと思います。
  59. 宮下創平

    宮下国務大臣 小泉前厚生大臣のときの調査開始でございまして、恐らく察するところ、今局長のお話のように、平成八年の調査というのは、全くあの問題が大きな問題として掲げられてきて、十一項目にわたり、しかも関係者の意向その他を包括的に調査するという当時の菅直人大臣の御指示に基づくものであったと存じますが、小泉大臣は、あれだけ徹底して調査をしたのにもかかわらず出てきたということについて大きな懸念を示して、この調査を命じられたものだと存じます。その際、大臣が当然これは関心を持つべき事項でございますから、当時の小泉大臣もそういった趣旨で徹底調査を命じたものと存じまして、私もこのことは理解できるような感じがいたします。  トップが次官であるか局長であるかということは、これは事柄の追加的な問題、重要性はありますけれども、本当に録音テープと資料の問題の一部でございますから、恐らく小泉大臣局長をもって、責任を持ってやれということで督励したものだと私は思っております。
  60. 家西悟

    ○家西委員 真相究明をするということは、東京、大阪のHIV訴訟の和解をするときの条件一つだというふうになっています。しかし、一部であるというふうな観点でおとらえになるということは、私は甚だ遺憾だと思います。これこそ遺憾です。中心になってやるべき問題だと思うのです、こういう問題を起こした以上。  しかも、一回目の調査が非常に問題があった。しかも、自分たちで発見してそれを報告されたというなら、またそれも一つでしょう。あのときに調査したけれども出なかった、だけれども今回出てきたという話になったら、それは納得ができます。しかし、検察庁の家宅捜索によって出てきて、しかもそれが裁判の公判で重要な証拠として提出されたテープです。  これを一つの問題みたいなとらえ方をされるのは甚だおかしいんじゃないかというふうに私は思いますけれども、その辺はどうなんですか。
  61. 宮下創平

    宮下国務大臣 和解の条件として、調査の徹底を期するということであったように私もお聞きしております。  しかし、私が申し上げたのは、それらと区別して、今回の調査はそう重視していないという意味ではございません、公判によって録音テープが出され、記録が出されるということによって、いわば他動的にこの調査を余儀なくされた点は残念なことでございますが、徹底的な調査をやって、そして一応の結論は得たということでございますので、その点はいささかもその重要性においては変わりございませんから、御理解をいただきたいと思います。
  62. 家西悟

    ○家西委員 では、次の質問に移らせていただきたいと思いますけれども、二年前のプロジェクト調査について細かくお尋ねしたいことがあります。  このときの調査で四十一冊のファイルの存在が確認されて公表されたわけですけれども、そのうち血液事業対策室から何冊かのファイルが発見されたと思いますけれども、それと同時に、今回のテープをどうして見つけることができなかったかということについて、私は甚だ疑問が残って仕方ないんですけれども、このときに血液事業対策室から何冊のファイルが出ていますか。
  63. 中西明典

    ○中西政府委員 業務局ファイルにつきましては当時三十一冊公表されておりますが、そのうち血液事業対策室から何冊出てきたか、ちょっと今の時点で私把握しておりませんので……(家西委員「掌握されていないということですか」と呼ぶ)はい。
  64. 家西悟

    ○家西委員 でも、血液事業対策室から何冊か出たというのは報道もされていましたよね。事実ですよね、これは。ということは、血液事業対策室にもあったし、業務局のほかのエイズ対策課にもあったということは事実ですよね。これがどっからか突然降ってわいたようなものでもないということですよね。  これはずっと裁判の中でも言ってきたわけですけれども、当時の資料等があれば出してほしいというふうに私たち原告として要求してきたわけですけれども、その当時の記録はないというふうにおっしゃっていました。  そして、これは平成七年の十月二十四日、同僚議員の枝野議員の方からの質問で、当時の保存されているものがあるんならというようなことを質問されて、当時の政府委員として荒賀局長の方から、当時の「資料につきましては、十年以上前の資料でございまして、保存はされておりません。」、また当時の保管場所は、「生物製剤課でございましたが、いつから保存されなくなったかについては把握できない」と。その後も、「残念ながら、資料が保存されていない」というようなことをるるおっしゃっています。  しかし、この翌年の二月の調査で、たった三日で資料は出てきたわけですね。この答弁自体もおかしいんじゃないですか。この件についてどうお考えなんですか、厚生省としては。
  65. 中西明典

    ○中西政府委員 まさしくこれが一連のエイズ事件の経緯の中で問題になってきた話だと思います。  平成八年の省内調査以前において、今の国会答弁もございますが、民事訴訟の求釈明においても、資料が確認できないという答弁といいますか、これを行ってきていたわけでありまして、したがって、当時として十分な調査を行わないまま対応してきたというのは事実でございます。  それが平成八年のプロジェクトチーム調査、先ほど先生がおっしゃいました何冊かのファイルの公表等を通じて新たに資料が発見されたのは御承知のとおりでございます。したがって、その答弁自体は、平成七年当時の認識としての答弁だと思いますけれども、今から振り返れば当然事実に反しておったということであろうと思います。
  66. 家西悟

    ○家西委員 では、事実に反していた以上は、これはやはり謝罪すべきではないんですか。それから、こういうふうな部分を修正するなりのことは私はやるべきだというふうに思います。この件に  ついてはどうですか。
  67. 中西明典

    ○中西政府委員 そういう点も含めて、平成八年五月でございますが、菅大臣の当時に、民事訴訟の段階で、研究班関係資料をよく探さず発見できなかった責任、あるいは平成八年当時の資料調査、ファイルが円滑に公表されなかった、先ほどちょっと触れましたが、そういった責任を問い、その他エイズ感染被害の拡大を防ぎ得なかった厚生省の責任も踏まえ、関係者に対して処分がなされたという経緯がございます。
  68. 家西悟

    ○家西委員 では、テープの件に戻りますけれども、先日私たちは、民主党としてですけれども、薬害エイズ真相究明特別本部というのをやっています。そこに第一回のエイズ研究班会議のテープのラベルを直筆で書かれたという方においでいただいて、お話をお伺いする機会がありました。  その方のお話と厚生省が今回出されたこの報告書との内容が食い違う部分があります。録音テープの存在は、何度かの血液事業対策室の引っ越しによってその所在は不明になった、どこに行ったかわからないというふうに報告されました。報告されていますよね、確認できないということを。八月十二日の報告書ですけれども。  そのときに、この方にせんだって来ていただいて私たち事情を聞いたときに、この録音テープを最初検察官の方から見せられた、そして、この文字はあなたの文字ですねというのを確認させられて、そうですということを言ったと。そして、自分自身、このテープを録音したかどうかも覚えていないし、ラベルを書いたことも覚えていないけれども、直筆であることは間違いないというふうにおっしゃいました。そして、どこにあったのかも自分も知らなかったと。どこから押収されたんですかということを検察官に尋ねたときに、検察官が答えたらしいです。血液事業対策室のキャビネットの中にあった、段ボール箱にきっちり整理されて保管されていたと。  報告書では、昭和六十年十月に血液事業対策室の、エイズ研究班のものと識別できる録音テープ十数本程度、それと血液事業検討委員会などの他の会議の議事を録音したと考えられるテープ合計数十本とあわせて血液事業対策室のキャビネットに保管したというふうに言われて、ここから引っ越しをしてどこへ行ったかわからないというふうにおっしゃっていましたけれども、押収されたのがそこだということをおっしゃっていました。これは厚生省の報告書と余りにも違うんじゃないですか。これはどう説明していただけるのかお尋ねしたいと思います。
  69. 中西明典

    ○中西政府委員 確かに、昭和六十年十月の時点で生物製剤課に血液事業対策室が発足した際、エイズ研究班のものと識別できる録音テープが十本弱程度あって、それらがほかの関係テープとあわせて整理してキャビネットに保管したという旨の回答をしている職員がいることは事実でございますが、それは昭和六十年当時の話でございまして、その後の職員、同時期あるいは前後した職員も含めての話でございますが、エイズ研究班に係る録音テープについての記憶を有している者はいない。それからまた、その直後でございますが、課内のテープをチェックした記憶はあるけれども、そういったものは発見できなかったという調査回答もあわせてございました。それも調査報告書に書いてございます。  当然、検察が押収に入った時点の職員についても調査いたしましたが、そういった認識は全く持っていない、事実関係というものを承知していないというのが私は事実であるというふうに考えております。  先生おっしゃるように、キャビネットの中に入っておって、このテープはエイズ研究班テープだということがはっきりとわかるような状態であったならば、私はそれは職員として見落とすようなことはなかったというふうに信じておるところでございます。
  70. 家西悟

    ○家西委員 でも、事実は違うと私は思います。  しかも、テープというものは、先ほどもお聞きしましたけれども、第一回目の調査のときに三十一冊業務局から出てきて、血液事業対策室からも何冊か出ていますねということを私が聞いたときに、そうです、ただ、何冊かは今言えないということでおっしゃいましたけれども、血液事業対策室のキャビネットというのは厚生省の部屋の壁側に据えつけられているあれじゃないんですか、昭和六十年のころに箱に入れてそこにしまったと。そして、何回かの引っ越しによってどこへ行ったかわからないと言っていたけれども。  結局は、厚生省が捜索を受けたのが二年前ですね、二年前に家宅捜索を受けているわけですよね。部屋はかわっても、同じキャビネットの中に段ボール箱に整理されて入っていた。しかも、そのラベルは、郡司ファイルと言われるあのエイズと書かれたファイル、あれは背表紙のところの文字が薄くなっていて読み取りができなかったというふうにおっしゃっていましたけれども、今回のものはそういうようなことはありませんかというふうにこの方にお聞きしました。はっきりと文字は読み取れましたとおっしゃっています。しかも、血液事業対策室の部屋から出てきたわけですよね、段ボールに入れて、キャビネットの中から何十本かのテープと一緒に。それを調査してなぜ発見できなかったのですか。ファイルは出てきたけれどもテープは出てこなかった、こんな矛盾した調査を認めるわけにいかないですよ。再度やるべき問題ではないのですかね。
  71. 中西明典

    ○中西政府委員 押収されましたのは、これは検察当局でございますから、どういう状況の中でどういう形で押収されたのかは私ども承知しておりませんが、先ほど家西先生がおっしゃった職員が、先生のところにお邪魔した後、そういう話をしたということを私どもの方に報告に来た際、今のような話は私どもは聞いておらないところでございます。  これは事実はどうか、押収した担当といいますか当局に聞かないとなかなかわからないわけでございますが。
  72. 家西悟

    ○家西委員 いや、どういう形で押収されたかわからないなんて、よく無責任なことをおっしゃいますね。押収されるときにはそこの責任者が同時にいてるはずですよ。確認しながらやっているのですよ。しかも、押収品リストを持っているわけでしょう。いいかげんなこと言っちゃだめですよ。どうお答えになるのか、もう一回言ってくださいよ、その辺について。
  73. 中西明典

    ○中西政府委員 その押収の状況というのは、非常に多量の資料を短時間で押収していくというのが実態のようでございまして、その際に、どの資料がどうのこうのというような具体的な実態というものは実際上把握できていないというのが、これまで関係職員から聞いたところの状況認識でございます。
  74. 家西悟

    ○家西委員 いや、実態掌握云々というのは、一気にやられたというふうにおっしゃいますけれども、現場の責任者が同伴してやっていくわけですよね、押収されるときには。しかも、押収品リストで、後で省内で仕事をする場合に資料がないと困るからということになった場合に、押収されている以上見られないということはないのですよね。あれは場合によっては閲覧もできるし、重要な証拠でない限りはコピーもできるんじゃないのですか。しかも、それがどういうふうな形で押収されたかもわからないとか、そんないいかげんなことはないんじゃないですか。  しかも、先ほど言いましたけれども、血液事業対策室から何冊かファイルが出ているのでしょう。そのファイルは一体血液事業対策室のどこから出たのですか。同じように段ボール箱に、別の場所にあっても、血液事業対策室、あの狭い部屋の中に屋根裏部屋があるわけでもないでしょう。その限られたスペースの中に保管されているわけでしょう。そこからなぜ見つけられなかったのか。いまだに自分たちの都合の悪いものは出さないという姿勢ですか。都合のいい部分は出すけれども、都合の悪い部分は全部消していくということなんですか。がん細胞は増殖しているんじゃないですか。
  75. 中西明典

    ○中西政府委員 先ほど来申し上げておりますが、役所の書類の保管の方法あるいは保管管理のシステム自体、これは問題があることは事実であると思います。  そうした中で発見漏れがあったということでありまして、意図的に隠したとかいうような事実は私どもとしては全くないものというふうに考えております。
  76. 家西悟

    ○家西委員 じゃ、なぜ出てこなかったのですか。そこが本当におかしいですよ。どんなに言われても、どんなに説明されても、きっちりと段ボール箱に整理されてラベルまで張ってあったものが、テープも確認したけれどもわかりませんでしたというふうに御答弁されるのも納得できないし、今回の調査が実際にどこまでやられたのかもはっきりしない。  こんなもので、しかもマスコミ報道に対しても、マスコミのレク、私たちのレクに対しても同じですけれども、今回のこの調査で終了にしたいとおっしゃっていますけれども、これだけの矛盾をつくっておきながら、これで終了できるのですか。これはどう説明するのですか。しかも、こういうふうに言われているわけですよ。大臣として再度調査する気はないですか。大臣、いかがですか。
  77. 宮下創平

    宮下国務大臣 過去の事実でございますので、委員が御聴取になりました本人がどのような口述をなすっていらっしゃるか、これは厚生省としても当然、有力な関係者でありますから調査をしたようにお伺いしております。  したがって、当時の模様について本人の陳述と調査の結果がまた著しく違うような場合はやはり説明を要するど存じますから、なお整合性について検討するのは当然だと思います。そんな点で対応させていただきます。
  78. 家西悟

    ○家西委員 ぜひとも再度調査を行っていただきたいと思います、この合わない点で結構ですけれども。  しかも、元厚生省生物製剤課の課長をされていました郡司さん、この方の第三回、第四回の議事メモというものも同時に提出されたわけですけれども、これは、郡司さんの方は厚生省の職員からもらったというようなことを言われています。しかし、後で、だれだったのか、いつごろもらったのかということもわからないというふうに言われています。こんなばかな話は通用しないと思います。しかも、具体的に平成八年の菅大臣のプロジェクトチームの人からもらったみたいなことも言われているわけですね。裁判所でも何かこういうことを証言されているみたいですね。だけれども、後で、だれにもらったか覚えていないとかそういうようなことを言われている。しかも、任意提出されているわけですね、検察庁に対して。おかしいのじゃないかとしか言わざるを得ないし、押収品リストにしても、私たちはぜひとも出していただきたいと思っていますけれども、いかがですか。
  79. 中西明典

    ○中西政府委員 押収品目録の公表につきましては、東京地検は、現段階では、今後の刑事裁判に影響するおそれがあることから公表しないという考え方であると承知しておりまして、厚生省といたしましても、こうした刑事裁判への影響がないようにという観点から、公表については差し控えるべきものというふうに認識しております。
  80. 家西悟

    ○家西委員 それがどういう刑事裁判で支障が起こるのですか。しかも、押収品リストですよ。内容について云々じゃなくて、何を押収したのかについてのリストを公表してくださいということを言っているのですよ。それがどういつだ意味で刑事訴訟に支障が起こるのか、私には理解できないですね。  いや、裁判上、松村被告に対して刑事訴訟で私たちは何としてでも有罪に持っていきたいという思いで協力は幾らでもしたい、同じ思いでやっておられるならそれは結構ですけれども、そうじゃないのじゃないですか。  厚生省のやってこられた血液事業というか、血 液製剤の問題、薬害エイズの問題というものを、あれはやはり間違いでした、私たちの過ちだったということをお認めになる作業をされているなら、それも一つだと思いますけれども、そうじゃないでしょう。自分たちのやったことは間違いじゃなかったということをずっと言われているわけでしょう。そういった協力云々というのは逆なんじゃないですか。自分たちのやってきたことに対して肯定するために、逆の意味での裁判協力をされているのですか、どうなんですか。
  81. 中西明典

    ○中西政府委員 刑事裁判に影響があるという判断は東京地検の判断でございまして、どのように影響するかということについては、これは東京地検の判断として私どもとしては受けとめざるを得ないというふうに考えております。
  82. 家西悟

    ○家西委員 時間が来ましたので私の質問を終わりますけれども、この問題はこれで終わるわけにいかないと思います。委員長、ぜひとも集中審議なり、そして、先ほど矛盾している問題を含めて参考人を招致していただくように御検討いただきますようよろしくお願い申し上げたいと思います。
  83. 木村義雄

    木村委員長 理事会で御協議いたします。
  84. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともよろしくお願いします。  本日は、ありがとうございました。
  85. 木村義雄

    木村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時十五分開議
  86. 木村義雄

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本孝史君。
  87. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 山本でございます。  大臣、御就任おめでとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  きょうは、まずは、毒物の混入事件が多発しております、この件についてお尋ねをいたしたいと思います。  毒物、劇物の製造、流通、保管という管理体制をしっかりとすることが市民の毒物に対する意識を高めていく、そしてこういう犯罪行為をなくしていくのではないかというふうに思うわけでありますが、厚生省の所管の法律の中で、毒物劇物監視員というのがございます。この監視員の活動をさらに活発化すべきではないか、こういうふうに思いますが、所管の局長の御答弁をいただきたいと思います。
  88. 中西明典

    ○中西政府委員 毒物、劇物の管理状況でございますが、現在全国で約三千人の毒物劇物監視員が毎年六万件から七万件程度の立入検査、これは製造業、輸入業、販売業、それから業務上の取扱者、すなわち学校、農家、あるいは特定の電気メッキ業等の業種でございますが、こういったところに立入検査を実施いたしまして、実態を把握するとともに、必要な指導等を行ってきているところでございます。  先生指摘のとおり、こうした監視員による立入検査を強化していくということは、毒劇物の管理上極めて重要な問題であるというふうに認識いたしておりまして、先般、今回の一連の事件の発生を踏まえまして、各都道府県等に対して改めて適正な保管、管理が図られるよう通知いたしたところでございます。また、昨日には、初めての健康危機管理対策に関する都道府県担当課長会議を開催いたし、毒物、劇物監視の重要性をさらに注意喚起いたしたところでございます。  今後とも、各都道府県の実情、意見を聞きつつ、引き続き毒劇物の監視の強化に努めてまいりたい、かように考えております。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  89. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 医薬安全局長御答弁どおりに、全国に三千人、県庁あるいは保健所におりますが、これが薬事監視員とほとんど兼務をしております。平成八年の立入検査等を見ましても、立入検査を実施した施設中一割近くの施設で違反が見つかるという状況がありまして、こういう状況はやはり改善していかなければいけないのではないかと思うわけですね。  それで、今答弁にもありましたように、各省庁、例えば農林省であれ厚生省であれ文部省であれ警察であれ、各省庁が縦割りの中でそれぞれこういうことをやりなさいということを県におろしているわけですが、そういうことをするのではなくて、これは、各省庁の連絡会議をきちっと設けて、その中で国として、政府としてきっちりとこの毒物に対する対応をしていくのだという姿勢をつくるべきだと思うのですね。その中心はやはり厚生大臣だというふうに思うわけです。  具体的に言えば、例えば毒物表示をもっと大きくするとか、あるいは家で要らなくなった毒物の回収のシステムをつくるとか、覚せい剤なんかもそうですけれども、きっちりとした学校教育をするとかということでいろいろあると思うのです。  いずれにしましても、各省庁横の連絡をしながらの話ですので、そういう意味合いで、各省庁の連絡会議をつくって政府としてきっちりとした対応をしていくというその姿勢が非常に重要だと思いますので、そういう姿勢をとっていこうというおつもりはないのか、厚生大臣にお伺いをしたいと思います。
  90. 宮下創平

    宮下国務大臣 毒物、劇物の保健衛生上の危険につきましては、さまざまな角度から検討しなくてはなりませんが、危険防止のために、使用する側の管理意識の向上も不可欠でございます。  それから、農家等へ農薬を販売する場合とか、あるいは一般の方々に毒物、劇物に該当するシロアリの駆除剤の販売等を行う場合などは、法に定められた文書の提出を求めるというようなことをすると同時に、使用目的を聴取して適正に販売するというようなことが必要ではないかと思います。また、販売業者が一般の方々へ販売する際には、毒物、劇物を区分して管理する方法を示すなど、積極的な啓発が行われるように指導を行う所存であります。  御提案の表示や回収の問題につきましては、さらに毒物、劇物の安全管理の観点からどのような工夫があり得るのか、業界団体とも相談をさせてみたいと思います。  それから、委員の御指摘関係省庁の連絡会議でございますが、これは御指摘のように各省庁にまたがっている問題が多い、しかし、厚生省が中心になってやらなきゃいかぬというのは御指摘のとおりでございますから、連絡会議等を発足させて万全を期していきたいと思っております。
  91. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 こういう体制づくり、非常に市民にとっては安心感をもたらしますのが体制づくりだと思いますので、各省庁連絡会議、非常に前向きの御答弁をいただきましたので、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  次に、保育所の問題についてお伺いをしたいと思います。  今、保育所の定員充足率が九割を割っておりまして、公立施設で八〇%、私立は九四%、全体で八六%というふうにあきが非常にあるわけですね。あきがある一方で多くの入所待機児童がおりまして、平成九年四月の待機児童数が四万人、これが平成九年十月では五万五千人、このぐらいの人たちが待っている。待っている人たちが非常に多い中で、片っ方で保育所は定員が余っているわけですね、まだ入れる余地がある。  ここのところのミスマッチをどういうふうに解消していくというお考えでおられるのか、児童家庭局長、御答弁お願いします。
  92. 横田吉男

    ○横田政府委員 先生指摘いただきましたように、保育所に入りたいという希望を出している方で入れない待機者の数でございますが、全国的には四万人ということで、そのうち約半分ぐらいが大都市圏にいるというような状況にございまして、私どもとしても、この待機児の解消をどうしていくかということは最大の課題でございます。  ただ、これも御指摘いただきましたように、入所率が八六%程度でございまして、全体としては二十六万人ぐらいのあきがあるわけであります。東京都二十三区をとってみましても、一万人ぐらいのあきがございまして、待機者が四千人というような状況でございまして、さらに区ごと等、細かく見ていく必要があるかと思っていますけれども、私ども、こうしたミスマッチをできるだけ解消するための対策といたしましては、ことしの四月から児童福祉法を改正したわけでありますけれども、そこにおきましても、各保育所ごとの情報を提供いたしまして希望者が選択できる方式にしたということでございます。  それから、従来、乳児等につきましては、一定の指定保育制度をつくりまして、そこでのみ受け入れるということにしていたわけでございますけれども、これも本年度からすべての保育所において乳児も受け入れられるようにしたということでございます。  それから、年度途中あるいは年度初め等におきまして定員オーバーをしてもよいということで、年度当初については一〇%、年度中央については二〇%まで入所ができるように今弾力化を図ったということもございます。それから、分園方式を導入いたしまして、三十人以下の保育所でありましても分園として設置ができるようにした等の措置を講じたところでございます。  この問題につきましては地域ごとに見ていく必要があるかと思いますけれども、定員にあきがあるにもかかわらず、なお入所できないような市町村もございますので、私ども、細かく見ながら指導をしてまいりたい、そういうことによりまして待機児の解消を図ってまいりたいというふうに考えております。
  93. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 何か今の御答弁を聞いていると、有効な手だてがあるような、ないような感じがしますけれども。  今申し上げた九年十月、五万五千人の待機児童というのは、これは調査上の問題で横浜市と大阪市が入っていませんのでもっと数は多いでしょうし、実際問題、待機児童になっているのは入る資格があって入れない人たちですから、保育に欠ける要件にあなたはありませんと言われてしまうと入れない、でも、入れてほしいんだけれどもと思っているいわば待機予備軍はもっといるわけですね。  そういったくさんいる中で、今後とも、とりわけ育児休業明けのお母さん方から、これは年度の途中で育児休業が明けできますので、入りづらいんだという声をよく聞きますし、この世の中ですから、御主人が失業をしてしまったりとか、収入が減るので奥さんも働きに行かなければいけないとかいう状況になって、保育を必要とする御家庭がどんどんふえてくる。少子化が進んでいく中で子供の数が減っていくにもかかわらず、しかも保育所があいているにもかかわらず入れないというお子さんがいっぱいいるという状況があって、ここは、今の横田局長の御答弁では、いろいろな施策はしておられるけれども、私は余り決定的な話じゃないのかなと思っています。  ただ、いずれにしても保育需要というのは減るとは思えませんので、国としては緊急保育対策五カ年事業をやっておられますけれども、もちろんその着実な前進は必要ですが、地域のお母さん方とのネットワークをもっと深めて、いろいろなことができるように、無認可の保育所ももっとこの対象に入れていくような形も含めて、いろいろ弾力性のある柔軟な保育所の運営ができるような体制にしていただきたいというふうに思います。  少子化対策の柱の一つでもあると思いますので、大臣のお取り組みの御姿勢をお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のような、育児休業を終えてからの方々とか、あるいは失業問題とか就職をしなければならぬということで、保育需要が大きいということは御指摘のとおりでございます。  私どもとしては、今、少子化が進んでおりますし、夫婦共働き家庭が一般化しておる、あるいは家庭や地域の子育て機能が低下するなど、さまざまな児童や家庭を取り巻く環境が大きく変化しておりますので、子育てをしやすい環境の整備をやるという基本的な考え方に立ちまして整備を図っていきたいと思っています。  エンゼルプランや緊急保育対策五カ年事業というのを現在やっておりますが、同時にその内容について、低年齢児の受け入れ枠を拡大するとか延長保育の促進を図るというようなことも進めてまいります。  また、今委員の御指摘のミスマッチの問題は、私も数字を見てちょっと驚くほどミスマッチが地域によってあります。総体としてもございますから、これは児童福祉法を改正して利用者が希望する保育所を選択することができるようになったわけでありますが、やはり情報開示等によってき-ちっと皆にわかるようにしていく。しかし、保育所条件等がございますから、必ずしも需要を満たすことができるかどうかわかりませんが、少なくとも情報開示してミスマッチを解消する、そういう努力が必要かと存じます。  さらに、一般的には、総理大臣のもとに設けられました少子化への対応を考える有識者会議というのが今進められておりまして、いろいろそういった点の利用者の観点も踏まえまして保育サービスに一層の努力をしなければならぬような指摘検討もなされておりますから、それらを体してきちっと対応してまいる所存でございます。
  95. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ぜひ現場の声を聞いていただきまして、自由に選択制になったといいますけれども、実際のところは契約制で、市町村が全部管理をしながら希望順に割り振っていますので、その中でもこういう状況が起きるというのはなかな.か、施設の改善もしてあげる、あるいは保育所の最低基準の見直しとかも含めて柔軟にやっていかないと無理だと思いますので、その辺も含めて御対応いただきたいと思います。  少子化対策のもう一つの柱は、乳幼児の医療費の問題なんですけれども、これの医療費の公費負担制度をもっと広げるということを考えていただけないだろうかというふうに思うわけですね。  その前提としてお伺いしますが、ゼロ歳から三歳児にかかわる医療費は幾らで、これの御家族の自己負担分は幾らというふうに厚生省は推計しておられますか。
  96. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 ゼロ歳から三歳までの乳幼児の医療費でございます。推計の要素は入っておりますけれどもお許しを願いたいと思いますが、平成七年度の予算ベースで四千五百億円程度が総額であろうというふうに思っております。したがいまして、このうちの患者負担でございますけれども、総額が約一千億ぐらいになるというふうに把握をいたしております。
  97. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大臣の地元の市町村も恐らく独自の乳幼児の医療費の公費負担をなさっておられると思います。私、大阪ですけれども、大阪は四十四の市町村がありますけれども、一町だけやっておりませんが、四十三市町村全部でやっております。一歳未満、二歳未満、三歳未満、それぞれに年齢制限が違います、所得制限のあるなしもあります。かなりのばらつきがありますけれども、自己負担分は全国で考えても一千億円なのですね。  それで、すべての市町村で行っておるということと、それから、高齢者の医療と違いまして、乳幼児の医療費は社会化することはないというふうに思います。お年寄りのように長期入院するわけはありませんから、しかも子供の数は減っていくわけですから、その意味ではこれが爆発的に、一千億が倍々にふえていくような話ではないというふうに思います。  そういった意味でも、このゼロ歳から三歳児の乳幼児の医療費の公費負担について、ここまで市町村がやっているのであれば国の制度として取り上げるということを考えてもいいのではないかというふうに思うわけですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  98. 宮下創平

    宮下国務大臣 申し上げるまでもなく、医療費につきましては、医療を受ける者と受けない者との均衡を図るという観点が必要でございまして、受診者に一定の御負担をいただくというのが原則でございます。  国の方といたしましては、この乳幼児等の問題につきましては、難病の子供、それから未熟児、障害児といった手厚い援護が必要な児童の疾病につきましては、既に医療費の公費負担を実施しております。  一般の健康な方々には、したがって、そういう原則のもとに考えておりますので、地方公共団体が自主的に負担をしていただくというのは、それは意味のあることだと存じますけれども、今直ちに国としてこれを一般的に制度の中に取り入れるというようなことは考えておりませんが、検討に値することかなというふうに拝聴しております。
  99. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ぜひ検討していただきたい、本当に検討していただきたいというふうに思います。  少子化対策、いろいろ言われますけれども、ばらまきの現金給付ではなくて、きっちりとした安心感をつくるのだという意味合いで、子供たちの医療費の部分は国が持っていますというのはかなり大きな意味合いがあると思います。オーダーも一千億ですので、ぜひお考えをいただきたいというふうに思います。  それから、今問題になっておりますヤコブ病の、輸入されました人工硬膜によるところのヤコブ病の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  世界的にこの硬膜移植によるヤコブ病の患者がどのぐらいいるのかというのは、なかなか数字的に難しいところでしょうけれども、WHOの報告によりますと、世界で五十例ぐらいあって、そのうちの二十八例は日本の国内、日本人であるということになっている。日本国内において、世界的に見れば硬膜移植によってヤコブ病を発症している患者さんが非常に多い。なぜそういうふうに多いのかという問題なわけですが、これは輸入硬膜がそういうふうに汚染をされていたからということになるわけですけれども。  そこでお尋ねをいたしますが、厚生省が硬膜によるヤコブ病感染の危険性を知ったのは九六年の七月以降になってからであるという御答弁がありますけれども、この点をもう一遍確認をいたしたい。  それから、八九年四月に病原微生物検国情報という、いわゆる予研が出している情報誌がありますけれども、ここに世界第二症例目としてニュージーランドの例が報告をされております。それとあわせて、アメリカのFDAがこの硬膜について使用禁止を勧告をしたということが載っている。  この八九年四月当時というのはやコブ病に関する認識が非常に高まってきている時期ですので、こういうふうに病原微生物検国情報、あるいはアメリカのCDCのウイークリーレポート等に載ったということは、大変にそれなりの意味のある記事であったというふうに思うわけですが、いろいろ見ていきましても、遅くともこの時点で厚生省としては回収をする、あるいは製品の安全性についてチェックをするということをしていい時期だったのではないかというふうに思うわけですが、この二点についてお伺いをします。
  100. 中西明典

    ○中西政府委員 我が国において、ヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との関連性が疫学的に相当程度明らかになったのは、一九九六年のクロイツフェルト・ヤコブ病に関する研究班の全国調査によってでございます。  それにあわせ、ヤコブ病の発症原因そのものにつきまして、例のプリオン仮説でございますが、これが定説化されたのは、平成五年、一九九三年にビューラーらの動物実験が報告され、その段階で定説化されたというふうに承知いたしております。  したがいまして、世界で、御指摘のございました第二症例、ニュージーランドの事例でございますが、この報告がなされた一九八九年の時点ではやコブ病の原因ははっきりしておりませんで、ヒト乾燥硬膜とヤコブ病との関係を予見することは困難であったと考えられ、必ずしも不活化未処理製品の回収等の措置を講じなければならないという状況にはなかったものというふうに認識いたしております。  なお、平成九年に実施いたしました本省の関係職員調査では、一九八九年四月の病原微生物検国情報の入手状況等につきまして、明示的には調査いたしておりませんが、当時の関係職員においてヤコブ病とヒト乾燥硬膜との関係について認識していた者はいなかったというのが実情でございます。
  101. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 医薬安全局長、その八九年四月の第二症例が載った病原微生物検国情報の書き方ですけれども、「業者は一九八七年五月以降処理法を改良したと報告しているので、」――この八七年五月に、アルカリ処理をされて一応安全になったのじゃないかという、処理の方法が変わるわけですけれども、「八七年五月以降処理法を改良したと報告しているので、FDAは病院に変更前ロットを使用しないこと、および使用ロット番号の記録を保存するよう勧告している。」というふうに書いてあるわけですね。  この記事を素直に読めば、八七年五月以前につくられたものについては使用しないようにというふうにFDAは勧告をしている。非常に製品は危険ですよというような情報がここに載っている。  こういうふうに、日本にも入ってきている製品を、アメリカではあるけれども危険がありますよというふうに勧告をされた、その時点で回収をするというのは難しいとしても、きちっとしたものをその業者に問い合わせをして、一体これはどうなんだという話。すなわち、皆さん方は九六年になるまで業者がどういう取り扱いをしていたかという情報は持たないのですよね。だから、こういうふうに出てきたのに、なぜそれに対して反応しなかったのですかというのが私の質問です。
  102. 中西明典

    ○中西政府委員 御指摘の病原微生物検国情報でございますが、これにつきまして、本省レベルできちっとした情報の把握がなかったというのがその当時の実情でございます。  確かに、先生おっしゃるとおり、仮にの議論として、一つはそうした輸入業者の関連情報を入手できておれば、あるいは国立予防衛生研究所が把握していた関連情報が厚生省に届いておればという話はあると思います。  把握した場合にどういう措置がとり得たかということは、これは仮定の議論でございますし、今係争中の問題でもございますので、ここではっきり申し上げることは差し控えさせていただきますが、一般論として言えば、何らかの行政上の判断に資するという可能性はあったというふうに認識しております。  そうした点において、予研と本省との間の連絡体制というのが不十分であった、あるいは薬事法上の取り扱いというのが今の目で見れば問題があったということは事実だと思います。  ただ、そうした問題も含め、HIV事件の反省にも立ち、現在、厚生科学課を中心として危機管理の調整会議を設け、その中に、予研あるいは感染症研究所、あるいは医薬品食品衛生研究所も含めて、いち早く対応する仕組みをつくっておるところでございますし、薬事法も改正し、同種の事案があればこれは直ちに厚生省に報告するというような仕掛けもつくっておりますので、現時点においては十分対応できるのじゃないかというふうに考えております。
  103. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 本省として情報をキャッチできなかったとか、あるいはこれを把握していた場合とかとおっしゃっていますけれども、この微生物検国情報という雑誌、月報は、当時、国立予防衛生研究所と厚生省の保健医療局のエイズ結核感染症課の両者が一体になってつくっているのですよ。だから、エイズのときもそうですけれども、なぜここに出てくる情報が厚生省の中で生かされないのですか。  というのは、今の御答弁では、私は、どこかの学会が出しているとか、どこかのだれか第三者がつくっておって、それが非常に流通している、サーキュレートしている部数が少ないからそんなところまで厚生省は見ていられませんわとおっしゃるならまだしも、ここにはっきり国立予防衛生研究所と厚生省保健医療局エイズ結核感染症課というふうに発行名が書いてあって、なぜそういう状況が起きるのですか。
  104. 中西明典

    ○中西政府委員 当時どういう認識のもとにこの病原微生物検国情報が編集されたかということについてはつぶさに承知しておりませんが、省内調査において、旧国立予防衛生研究所職員に対しても照会を行っておりますが、ヒト乾燥硬膜とCJDの関係について問題意識を持って厚生省に対して何らかの連絡を行ったとする者がいなかったのも事実でございます。  したがいまして、この問題につきましては、我が国においては、その時点において特段の問題意識というものが共有されていなかったというのが現実だろうと思います。
  105. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 全く答弁になっていないけれども、情報をつかんだけれどもそれを生かすだけの能力がなかったということを認めているわけですね。
  106. 中西明典

    ○中西政府委員 事実としてはそのとおりだと思います。
  107. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 薬害エイズ事件以来、薬害の再発防止をどうするかということでいろいろ議論してきました。その中で、過去なぜこういうことが起きたのかということをきっちり調べないと新しい体制はつくれないということで、いろいろとここで集中審議をしたり、参考人、証人喚問もしながらやってきました。  でも、今の医薬安全局長の御答弁だと、情報はあったけれども生かされなかった、だめだったのだというのは、すっかりそうやってお認めになるというのは、それは今もう直っているからいいんだというふうに後でおつけ足しになるのだろうけれども、やはりこれは重大な問題ですよ。なぜこんなことが起きたのかということをもっとちゃんと調べないと、私は何をやっていても意味がないと思う。  これは昔の話だからとおっしゃるならば、もう一点お聞きしたいのですけれども、実際にドイツでつくっていた業者は、九六年の六月になって製造を中止しますね。ドイツ国内のいろいろな問題があって、密売されていたというか、集め方、材料、これは死体から取ってくるので、その取り方に非常に問題があったということで、九六年六月にドイツの製造元は製造を中止します。それを受けて、日本の輸入業者は自主回収をするということになるのですね。  問題はこの後なんですよ。九六年の八月、二カ月後に、中央薬事審議会でこの輸入硬膜についての安全性の評価がなされました。そのときに、現在供給中の硬膜は安全との評価をこの薬事審は下すのですね。ドイツで回収をしていて、日本の業者もどういうわけか知らないけれども自主的に回収をしていて、その二カ月後に、どういう情報に基づいてやったのか知らないけれども、薬事審議会は、今現在流通している、供給されている硬膜は安全ですという評価をする。  きのう、私も質問取りに来られた方にいろいろお聞きしたのですが、この輸入業者さんが九六年六月の時点でなぜ自主回収をしたのかというふうにお聞きしたら、聞いていないのですね。輸入業者が記者会見して発表した資料は持っておりますがとおっしゃるのですが、直接、輸入業者になぜ輸入を中止することになったのかという事情は聞いていない。  そういう状況の中で、九六年八月の中央薬事審議会で現在安全ですという評価が下せるというのはなぜですか。
  108. 中西明典

    ○中西政府委員 ちょっと事実関係に誤認があると思いますので、御説明いたします。  九六年六月の時点におきまして、日本ビー・エス・エス株式会社、これはドイツの会社の子会社でございますが、この時点ではもう既にアルカリ処理がなされた硬膜が入ってきておるわけでございますが、九五年以前に製造した製品についてドナーが追跡できないケースがあることがわかったとして自主回収することとし、厚生省としてもその旨の報告を受けております。ドナーが追跡できないケースのロットについて回収する、そういう自主回収措置をとったところでございます。  その後、同年の六月十九日、中央薬事審議会がアルカリ処理硬膜についての審議を行った際に、アルカリ未処理のものについて医療機関にないことを改めて確認せよ、こういう結論を出した。この指摘を受けまして、厚生省日本ビー・エス・エスに対して、アルカリ未処理のものについて医療機関にないかどうか、これを確認するよう指示を行ったわけでございます。  その後、七月に日本ビー・エス・エスより国内にアルカリ未処理品なしとの報告を受け、八月には厚生省から都道府県に対し医療機関から回収漏れがないか念のため調査依頼をし、十月には都道府県からの報告に基づき回収の確認をした、こういう経緯でございます。  したがって、業者任せという御指摘は当たらないというふうに考えております。
  109. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ドイツでの製造が中止されたのはいつだったのですか。それはいつあなた方は知ったのですか。ドイツでアルカリ処理をされるようになったということをあなた方はいつ知ったのですか。
  110. 中西明典

    ○中西政府委員 九六年六月でございます。
  111. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 私は二つ質問したのですが、ドイツの製造元でアルカリ処理が導入された、これは八七年の五月ですね。このアルカリ処理が導入されたということは、九六年の六月になって知ったと。九六年の六月に製造中止をされたということは、九六年の六月になって知ったという答弁ですか。
  112. 中西明典

    ○中西政府委員 ちょっと事実関係が混乱しておりますので、もう一度整理したいと思います。  私どもとして承知しておるのは、九六年六月にビー・エス・エスが本社の指示を受けて自主回収を行うという措置を講じることにしたというふうに承知しておるわけでございます。
  113. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 これは大臣もさっき御答弁になりましたが、七月三十一日、私も地裁へ行ってあのテープを聞きました。テープの中で郡司さんははっきりとトラベノールの回収報告についておっしゃっておられますね。回収をするということが非常に重要であるということは、あの五十八年時点から厚生省の中では一つの認識になっていたというふうに私は思います。  日本の医薬品に対する安全性の確保というのは、非常に体制が弱いですから、どうしても外国の情報に頼らざるを得ない。そうすると、FDAだとかCDCだとかという世界的な権威のところが製品を回収するという情報は、非常に重い情報なのですね。その情報をなぜそんなに軽くしか受けとめられないのですかというのが私の根本的な疑問です。それは今後とも生かされていくのかどうか。  今、もう質問時間がなくなってしまうので、時間経過を追った、それぞれ製品の製造、承認から回収に至るまで、外国の企業がどういう動きをしていて、それを皆さんがどの時点でどういう情報をつかんでということをきっちりとした表にして出していただきたいと私は思います。  今答弁いただくと次の質問ができないのであれですけれども、そういう意味合いにおいて、非常に――私は、きのういただいた皆さん方の資料で、アルカリ処理されたヒト乾燥硬膜の輸入については九六年の時点までこれらの事実を知らなかったというふうにペーパーでいただきましたので、そこまであなた方は知らなかったのですかというふうに思っているわけです。  先ほどおっしゃったように、非常に調査はずさんだし、当時の体制としては非常にずさんな状況があったという意味合いで、その体制をつくるという意味合いでは、私は大臣にこれはぜひお願いしたいのですが、これはきっちりとした資料を出させていただきたい。  それで、こんなずさんな調査をする、私の質問を先取りして第二症例も対象にして調査をしたとおっしゃいましたけれども、エイズの調査もそうですよ、一回目は課長補佐以上をやって、二回目は係員までやったらいろいろな情報が出てきたのだ。だから、担当者、文官とか技官に限らず、これは技官だけしかやっていませんけれども、文官も全部含めて、全部の対象者に対してきっちりとした情報をとって、どういうふうに皆さんはこれを認識していたのかという調査を厚生省としてやるべきだ、大臣をトップにしてやるべきだというふうに思いますが、大臣、御答弁いただきます。――大臣に聞いているのです。大臣、答えてください。あなたの答弁を聞いていると時間がなくなるのだ。大臣、答えてください。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 中西明典

    ○中西政府委員 では一言だけ。  先ほど申し上げましたように、平成九年に、省内職員、それから予防衛生研究所職員について調査してきたところでございますが、足らざる部分についてはさらに調べたいと考えております。  それから、事実関係については、もう一度改めてきちっと整理した上、御報告させていただきたいと思います。
  115. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長の言われましたように、経過その他について整理をしてきちっとしたいということでございますから、私からもそのように要請をしておきます。
  116. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 これは普通に年表をつくってみたら、非常におかしいということはすぐわかりますよ。やっていただきたい。きっちりとした調査をして公表していただきたい。最高責任者に大臣が就任してやっていただきたい。やっていただけますね。
  117. 宮下創平

    宮下国務大臣 調査のやり方その他についてどうずればいいか、ちょっと検討させていただきますが、いずれにしても、今申し上げたとおり、経過その他重要な点があるように思われますから、きちっとしたプロセスの解明と説明ができるようにしたいと思っています。
  118. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 よろしくお願いします。  質問時間が二分しかないので、最後の一問の質問に行きたいのですが、臓器移植法ができまして、脳死は人の死というふうに法定されたのでしょうか。
  119. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 臓器移植法におきましては、臓器提供を前提として同法に基づき脳死と判定された場合に、その身体を死体に含めることとされているところでございます。  臓器提供に関係のない患者が医師により脳死状態と診断された場合については、臓器移植法の適用はなく、当該患者の死亡の判断については従来どおり行われるものと考えております。
  120. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 従来どおりとはどういうことなのかという見解を求めたいと思います。
  121. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 臓器移植法の適用がない場合につきまして、脳死を生とするか死とするかについては、医療の現状や、医師と患者、家族との関係や、社会の合意等を踏まえて決まるものと考えられ、政府として画一的にお答えすることは困難でございます。
  122. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 公衆衛生審議会の臓器移植専門委員会というのがあります。大変に情報公開の進んだ委員会でありまして、発言の全文がお名前とともに今インターネット上で公開をされております。小林局長、おられなくなりましたけれども、小林局長がその中でいろいろおっしゃっておられます。「今回の法律ができたので脳死は人の死であるという考え方がはっきりしたと思っています。」というふうに小林局長はお答えになっておられます。  個人的にというふうにおっしゃっておられますが、個人的にと厚生省としての見解は、局長のレベルでも違うのでしょうか。
  123. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 小林前保健医療局長の発言につきましては、あくまで前局長個人としての発言であるというふうに認識しておりまして、今御答弁させていただきましたように、臓器移植法のもとにおける脳死の考え方と違うというふうに理解をしております。
  124. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 念押しで確認をさせていただきますが、この中で、今申し上げたように、「今回の法律ができたので脳死は人の死であるという考え方がはっきりしたと思っています。」とか、「今回の法改正で脳死は人の死であるという考え方がはっきり出たというふうに解釈をいたしております」とかというような御発言が何回かありますが、厚生省としてはこの考えにはくみしていないというふうに理解していいわけですね。
  125. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  126. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 質問時間が終わりましたので終わりますけれども、腎臓提供のときのカテーテルの挿入についても、大阪地裁の判決と私の質問主意書に対するお答えとは正反対の答えをお出しになりました。無理やりに臓器移植をしようというふうにすると、私は、ますます臓器移植はできない環境になると思います。そういう意味で、個人的見解といえども局長の御答弁というのはしっかりとした答弁をしていただきたいということを申し上げます。  それで、先ほど申し上げましたヤコブ病の調査については、しっかりとした調査をやっていただきたい、委員会に御報告をいただくなりしていただきたいと思います。よろしくお願いします。  終わります。
  127. 木村義雄

    木村委員長 青山二三さん。
  128. 青山二三

    ○青山(二)委員 平和・改革の青山二三でございます。  宮下大臣におかれましては、厚生大臣御就任、本当におめでとうございます。国民の生命と健康を守る厚生省大臣として国民の期待にこたえていただきたいと心からお願いを申し上げます。  きょうは、社会保障制度少子化対策について質問をさせていただきますが、その前に、過日の集中豪雨で大変な災害が出ておりますので、その対策について、一、二点お伺いをしてまいりたいと思います。  先月の二十六日から東日本を襲った記録的な集中豪雨による水害から二週間余りがたちました。私の住んでおります栃木県でも、大変な被害を受けております。今、道路や電気など、寸断されたライフラインの復旧が進んでおりますが、なお那須町では二百人近くが避難所生活をしているわけでございます。長引く避難所暮らしで、住民のストレス、疲労がたまっておりまして、住宅とかいろいろな手当てももちろん必要ではございますけれども、被災者の精神的なケアも必要だと思います。阪神・淡路大震災でストレス障害が大変注目をされておりまして、今回は災害の規模は違いますけれども、目の前で家や知人が流されていった、そういう事実を見て心に大きな傷害を受けているということもございまして、大変心配がされております。  そうしたときに、政府は被災者の精神的なケアに十分配慮すべきであると考えておりますけれども、この点はいかがでしょうか。  そしてまた、被災者に対する食料等生活必需品の給付、また災害弔慰金の支給、それから救援活動にかかわる、災害対策にかかわる国庫負担など、財政支援等についても積極的な取り組みをしていただきたい、このように思っておりますが、まずその辺からお伺いさせていただきます。
  129. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 まず、私から精神面でのケアにつきましてお答えをさせていただきたいと思います。  被災直後からこれまで、地元自治体が健康管理の一環といたしまして、保健婦による避難所への訪問指導など、精神面のケアを行ってきたところでございます。  避難所等での生活を送っている方々は徐々に少なくなっていると聞いておりまして、九月七日現在で八十二名というふうに報告を受けております。  今後は、状況によりまして、被災による精神的ショックなどに伴う外傷後ストレス障害の対応など、心のケア対策の必要性が増大してくるものと認識しておりまして、厚生省といたしましては、今後、地元の関係自治体からの要請に応じまして、財政的、技術的支援を行いたいと考えております。
  130. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 御質問のありました、まず食料品等の供与でございますけれども先生の御地元の那須町につきましては、災害救助法は、通常、食料の給与は一週間という限度になっておるのですけれども、那須町の現状にかんがみまして、それを延長して適用いたしております。  また、災害弔慰金につきましても、該当する市町村において現在被災の状況を調査中でございます。支給要件に該当する場合は、速やかに手続をとるよう該当市町村にお願いしているところでございます。  また、災害救助に要する費用、またはいろいろな社会福祉施設を初め厚生省関係の施設も災害に遭っております。そういうものに対する財政援助措置は、それぞれの法律に基づいて適切に対応していきたいというふうに考えております。
  131. 青山二三

    ○青山(二)委員 ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  それからもう一点は、集中豪雨に襲われた那須町や黒磯では、連日、泥まみれになりました家具とか、それから濁流で死亡しました家畜、そして家屋の残骸、そしてまた汚水が流出する産業廃棄物処理場など、大量の災害ごみの処理に頭を痛めております。こうした災害ごみが、九月七日現在で何と六千トンにも達しているということでございます。  災害廃棄物の処理は、原則的には地元自治体の負担でありますけれども、今回のように、宇都宮の気象台始まって以来という記録的な集中豪雨で、降り出してから二十四時間で六百二十一ミリの降水量ということでありますので、すべての災害ごみ処理に国の補助制度をぜひ適用していただきたい、このようにお願いしたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  132. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 災害によりまして発生いたしました廃棄物の処理につきまして、これを市町村が行うために必要な処理の費用につきましては、廃棄物処理法の第二十二条に基づきまして、国がその一部を補助する仕組みとなっているところでございます。  現在、関係県といろいろ連絡をいたしておりますけれども、最終的な額の確定にはまだ至っておりませんが、栃木、福島、茨城でおよそ六億円程度はかかるのではないかというふうに言われております。  したがいまして、これらの費用につきましては、今申し上げました法の趣旨にのっとりまして、できるだけ迅速に対処したいというふうに考えているところでございます。
  133. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変な災害でございましたので、本当に迅速にお願いをしたいと思います。  それでは、年金医療保険改革等について大臣にお伺いをしてまいりたいと思います。  今の日本経済は大混迷を続けております。金融不安といい、社会不安といい、これはともに将来への不安が最大の原因であると言われております。  そこで、最も重要なことは、先ほど来質問も出ておりましたけれども、十分な年金が受給できるのか、老後の医療は確保されるのかなとといった将来不安を払拭することであります。すなわち、老後への不安を解消しまして消費意欲の回復を図ることが新政権に課せられた緊急課題一つである、このように思っております。大臣も異論のないことだと思います。  宮下大臣は、さまざまな場面で述べられておりますように、新政権にとって医療・年金改革は重要課題だ、こういう御認識を持たれておりますけれども、一部には、経済危機が深刻化をしたこの春以来、改革を先送りする、そんな声がふえているという報道もございます。また、改革先送りへの圧力が強まるのは必至で、改革は風前のともしびといったような、こんな悲痛な声も聞こえてまいりますけれども大臣のお考えは、こうした年金・医療改革の先送りはしない、こういう認識に立たれているということをまず確認させていただき、このように理解してもよろしいでしょうか。大臣の御所見をお伺いします。
  134. 宮下創平

    宮下国務大臣 冒頭、青山委員より大臣就任の御祝意をいただきまして恐縮でございました。一生懸命やらせていただきます。  さて、年金医療保険の改革の問題は、今御指摘のように少子高齢化が進んでいる中で、しかも経済成長が非常に鈍化して景気が悪いという状況の中で、国民不安感を持っているというのも事実でございます。所得税減税をやっても消費支出が起きない理由の一つにも、ワン・オブ・ゼムの理由として掲げられておるのも承知しております。  そんなことでありますが、私どもは、社会保障の給付と負担が今後増大しますから、どうしても、高齢者の介護、子育て支援といった国民のニーズに適切に的確に対応していくということと、社会経済と調和のとれた安定した制度を確立する、そして社会保障構造改革を進めていくことが必要であると存じております。  特に御指摘年金問題につきましては、五年ごとの年金財政再計算期に入っておりまして、今、年金審議会で大詰めの審議をいたしておりますので、九月の下旬ごろには意見書の提出が行われるだろうと予測しておりますから、これを待って本年中にも成案を得て、また各方面との調整を経ながら成案をまとめていきたいと思っています。  なお、医療制度の抜本改革につきましては、現在、医療保険福祉審議会議論をされておりますが、これは昨年の八月に当時の与党の協議会でも方向性が示されております。そういうことで、診療報酬の問題、あるいは薬価の問題、あるいは老人健康保険制度の創設の可否を含めての検討等、いろいろ抜本的な問題がございますので、これらは精力的に私どもも取り組ませていただき、十二年度からの抜本改革に向けて、次期通常国会に対しまして所要の法案提出を目指しましてきちっとした対応をするつもりでございますから、改革を先送りするというようなことはございません。
  135. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣の御決意に期待いたしております。  ところが、厚生省の進めているこの年金医療保険制度の見直しは、両方とも、国民に新たな負担を強いる保険料負担の引き上げ、給付の抑制だけが今前面に出ております。そして、この改革の前提とした少子高齢化人口減少社会、また低成長経済という二十一世紀日本社会を暗いイメージで描き過ぎている、そういう悲観論ばかりが今目立っております。社会保障の充実によりまして、自立した高齢者が長年の蓄積を生かして社会の各分野で貢献することによりまして一層豊かな社会が実現できる構想など、高齢社会でこそ実現できる社会をもっと考えるべきではないでしょうか。  高齢化少子化が同時に進行するこの日本の現状を考えますと、ある程度の痛みが伴うのは避けられないかもしれませんけれども、将来の福祉の姿がどうなるのか明確なビジョンを示していない現状では、老後の不安をあおるだけであります。これまでの高齢化対策は、老いることの負の面ばかりを強調して、明るい老後社会づくりをなおざりにしてきたように思います。  六月十七日に、中央社会福祉審議会より一社会福祉基礎構造改革について一の中間報告がまとめられ、報告されております。この中では、措置制度から個人の選択に基づく利用制度への大きな転換など、社会福祉の今後の方向性についてさまざまな指摘がございますが、私も先ほどから申し上げておりますように、高齢社会でこそ実現できる豊かで明るい将来の老後社会づくりという視点が大切であると考えております。宮下大臣日本福祉の将来像についてはどのような構想を持たれていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。
  136. 宮下創平

    宮下国務大臣 社会保障分野は非常に広範にわたっておりますが、今委員の御指摘のように、年金、医療、特に年金等につきましては、これからことしじゅうに解決するわけですが、保険料負担が上がるのではないか、給付水準が切り下げられるのではないかという、委員の御指摘のように不安感のみがクローズアップされておりますが、私どもは、少子高齢化社会を迎える二十一世紀において、本当にこの制度が安心して永続できることを目指すことが真の国民の中長期的な幸福な生活につながるという観点を持っておりますから、そういった点をより国民の皆さん方に理解を求めていく努力をしなければならないと存じております。  一方、今御指摘社会福祉事業のあり方等の問題でございますが、戦後、戦災者あるいはみなしごといいますか、そういう非常に気の毒な方々を中心にした社会事業の考え方から、相当年月がたっておりまして、これからはそういう措置的なことでなしに、個人の自由な発想を尊重しながらも国がサポートしていくという制度にしなければなりません。六月に出された中央社会福祉審議会の中間とりまとめもさような考え方に基づいておりますので、社会福祉事業法の基本法がございますけれども、そういった問題の検討あるいは改革を含めて、社会福祉の基礎構造全般にわたって抜本的な改革はしていきたいな、こう考えておるところでございます。
  137. 青山二三

    ○青山(二)委員 重ねてお尋ねをしたいのでございますけれども、超高齢化社会でも国民負担に耐えられかつ必要なサービスが受けられる、このようにするためには、社会保障制度の再構築が今求められていると思います。そこで、社会保障の給付と負担の新しい将来ビジョンを示す必要があるのではないかと思います。  厚生省が一九九四年にまとめました「二十一世紀福祉ビジョン」は、国民所得の伸び率を見ましても、二〇〇〇年までに五%、それ以降を三%と仮定をするなど、これは現実的ではございません。平成八年十一月に社会保障関係審議会会長会議より「社会保障構造改革の方向」の中間まとめが出されまして、「二十一世紀福祉ビジョン」の社会保障に関する将来推計をより悲観的に修正した試算を示しております。そして、政府サイドでは、昨年、平成九年度でございますけれども社会保障構造改革元年と位置づけて、その手始めに公的介護保険制度の創設がなされました。  しかし、この社会保障制度について見ると、給付の抑制と自己負担の増大だけが実施され、制度基本的なあり方や財政悪化をもたらす原因への対応策については遅々として進んでおりません。  そこで、財源問題を含め、国民が安心できる高齢社会の展望を描くことができるように、今の実態に即した新たな将来ビジョンを早急に提示する必要があると思いますけれども大臣の御所見をお伺いいたします。
  138. 宮下創平

    宮下国務大臣 基本的には委員のおっしゃるとおりでございますが、現実的には、今御指摘のように、平成八年の十一月、社会保障関係審議会会長会議というのが、八つの審議会の会長が集まりまして中間的な取りまとめをいただいております。  抽象的ではございますが、国民経済との調和を図っていく、そして社会保障に対する国民のニーズに的確にこたえる必要がある、それから、個人の自立を支援することを基本といたしまして、在宅サービスを重視した利用者本位の効率的なサービス提供の枠組みをつくっていくべきである、公私の適切な役割分担を明確にしながら規制緩和等を進めて民間活力も導入していきたいというような中間報告があります。  私どもは、マイナス面だけでなくて、全体として、トータルとして本当にこれからの社会をどう考えていくかという基本的な考え方を背景に持ちながら個々の施策をきちっと位置づけして、それぞれの改革を、一遍にはできませんけれども、まず年金、そして並行して医療改革もきちっとやる、それから介護保険も予定どおり円滑な実施ができるように、平成十二年の四月からできるように努力するというような地道な努力を一つ一つ重ねてまいりたい。背後には先生のおっしゃるような全体的な視点がやはり必要だ、私もそのように感じております。
  139. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣の御答弁では、一つずつ地道に検討していくということですけれども、先ほどから他の委員指摘いたしておりましたように、この医療、年金介護という各制度につきましては、別々に対策を考えるのではなくて、総合的に調整しなければならないのではないかと思うわけでございます。  介護保険制度の施行がいよいよ目前に迫っておりますけれども、その介護保険料を新たに課すならば、それによって老人医療費も減らせるはずでございます。また、健康保険料も抑制できるはずだと思います。政府はそうした見通しをきちんと示した上で介護保険料を徴収するという順序でなければ、国民は到底納得をしない、このように思います。具体的な見通しとか試算についてここで明らかにしていただきたいと思います。
  140. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 医療保険の今後における見通しでございます。  政府管掌健康保険について申し上げますならば、平成九年の法改正、そして平成十年度の医療費改定あるいは薬価の基準の改定、こういったことによりまして、平成十年度は、平成十年度予算編成時の見込みでございますけれども、本年度は三百九十億円ぐらいの黒字になるだろう。ただ、平成十一年度は、再度九百億円ぐらいの赤字に転ずるのではないか。さらに、平成十二年度につきましては、介護の様子等もあれしまして、百四十億円ぐらいの赤字になるであろうという見込みを平成十年度予算編成時に一応立てておりますけれども、目下決算の作業等も行っておりますので、多少ここらの数字は動いてくるかと思います。  そして、今先生お話のございました、平成十二年度は介護保険が創設をされます。そのことによる政府管掌健康保険の老人保健拠出金等の減少、そして、逆に介護納付金という形で、これは医療保険としては減るわけでありますけれども介護納付金というものが四十歳以上の被保険者についてかかってまいりますので、こういった姿につきましては、介護保険の御審議をいただきます際に見通し等もお示しをさせていただいた、ああいう形で考えております。  したがいまして、医療保険自体としては、介護保険ができることによりまして、おっしゃるようにその分だけ保険料率は低下をする、そして、介護に必要な費用として、介護保険の納付金が、そこに別途の負担が出てくる、こういう姿になろうかと思います。
  141. 青山二三

    ○青山(二)委員 そうすると、具体的にそれが出るのはいつごろなのでしょうか。
  142. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 政府管掌健康保険の決算という意味では、目下作業いたしておりますので、できるだけ早くにまた数字をお示しできるようにいたしたいと思っております。
  143. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは大臣に、大変政策通として知られているということでもございまして、また、党の税制調査会の取りまとめ役として大変御活躍をされたというようなことでございますので、常に総合判断を大切にされる大臣だと伺っておりますので、ぜひとも今までの御答弁も含めて社会保障制度の抜本改革についての御見解をお尋ねいたします。
  144. 宮下創平

    宮下国務大臣 繰り返しになりますけれども少子高齢化社会を迎えて社会保障制度のあり方についての検討が迫られておりますし、また、経済社会、特に経済成長の鈍化等もございます。そういった事情を踏まえながらも、我々国民年金、医療等、あるいは在宅福祉その他の問題で安心、安定できる制度を構築していくということ、そして、中長期的な視点でこれを国民の皆さんに示し、理解を求めていくということがぜひ必要でございますので、私どもとしては精いっぱい、マイナス面だけ強調されましても、それらに対して本当にこの制度を維持するためにはこういうことも必要になるのだというようなことも含めて訴えながら選択をきちっとしてまいりたい、こう考えております。
  145. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、少子化問題について質問をさせていただきたいと思います。  二十一世紀の本格的な高齢社会では、経済を支える働き手として女性の役割が大変に高まってまいりますが、その反面、女性が職場進出をするということで、少子化が加速されるということもございます。また、一層の労働力不足ということで、社会の活力の低下も心配されるところでございます。  昨年の十一月、働く女性をメーンテーマにしました国民生活白書が出されておりますけれども、働く女性を正面から取り上げたのは初めてだということを聞いて、私も驚いております。  このように、社会的に最大の関心事である少子化の進行も含めて、女性の行動が将来の経済を揺るがすかぎになる存在として注目されたことは大変に重要なことでございますけれども、ここまで来るのに長い年月がかかり過ぎたような気もいたしております。  女性が働き、同時に子供を産み育てる、こういう社会システムをいかに構築するか。言いかえれば、働く女性のための育児制度、そして出産・育児休業の充実は、将来のためには欠かせない重要課題でありまして、こうした社会システムの構築が、我が国にとりまして深刻かつ緊急性の高いテーマの一つであると考えております。  しかしながら、女性に出産を決意させるには、こうした政策以前の問題として、男女の意識のギャップを埋めることが必要でございます。すなわち、男性の意識改革が問題である、このように思うわけでございますけれども大臣はいかがお考えでしょうか。
  146. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のように、確かに、仕事と育児を両立できる社会を構築していくということは極めて重要でございます。  特に、女性の方々の社会進出が非常に多くなってまいりますと、やはり少子化問題を考える際には、そういう女性の方々が育児のほかにお仕事を持たれるわけでございますから、そういう条件、つまり働きながら子育てができる条件整備、これが非常に必要かと思います。  これは、いろいろ施設を、保育所その他の問題等々、物的な問題を含めて多くの課題があろうかと存じますが、これらはそうした点を踏まえて、男女共同参画社会ということでございますから、そういう視点で取り組まなければなりません。これは、社会保障制度ばかりではございませんで、税制面その他においてもやはり大変重要な視点であろうかと思っております。  そして、中でも、今制度以前の問題だという男の方々の意識の問題、これも非常に重要でございまして、男の人たちも育児に対してももちろん責任があるわけでありますが、従来専業主婦に任せっきりというようなことであっては、これからの男女共同参画社会を乗り切ることはできないと思っておりますから、御指摘のとおり、そういった点も含めてこれをPRしていかなければいかぬなというように思います。
  147. 青山二三

    ○青山(二)委員 厚生大臣には、男性の意識改革の先導役として頑張っていただきたいと思います。  それは具体的に言いますと、男は外、女は内とされてきたこの性別役割分担という固定的な慣行の見直しでありまして、これが進まないことには少子化に歯どめがかかるとは思いません。  厚生省は、少子化時代に対応した保育制度整備など子育て支援策を進めているものの、予算は厳しくて、緊急保育五カ年計画の達成はほぼ絶望的であります。出生率の低下傾向にも歯どめはかかっておりません。  現在、医療や公衆衛生の進歩によって日本の乳児死亡率は年々下がってはきておりますけれども、諸外国と比べても大変低いことはわかるのですけれども少子化傾向が続いていく今後は、さらなる乳児死亡率の低下が望まれるところでございます。  そこで、今まで全く注目されていなかった乳児の死因の上位を占めているSIDSについてお伺いをしたいと思います。  大臣は、このSIDS、この病名を御存じでしたでしょうか。乳幼児が眠っている間に突然死んでしまうという、原因不明のSIDSと呼ばれる乳幼児突然死症候群の問題が今注目をされているのでございます。それは、日本や欧米諸国のような医療先進国において、かつてのように感染症や栄養失調などで亡くなる赤ちゃんが激減いたしまして、乳児の死亡率は下がっており、その分、今まで関心が向けられなかったSIDSが社会問題として注目を浴びるようになってきたからであると思われます。  赤ちゃんがすやすやと気持ちよさそうに眠っている、その間十分から十五分ぐらい大人が目を離して、再び赤ちゃんの顔をのぞき込んだら、ぐったりして、顔色が悪く、呼吸がとまっている、慌てて病院に駆け込んだときには既に息を引き取っていた、これがSIDSの典型的な事例だと聞いております。  しかし、このSIDSについては、少しずつ知らされてはきておりますが、まだ国民にとってはなじみがございませんので、SIDSの定義とその特徴についてわかりやすく説明をしていただきたいと思います。
  148. 横田吉男

    ○横田政府委員 乳幼児突然死症候群についての定義でございますけれども、私ども、従来から厚生省の心身障害研究の中でこの疾病についても取り上げておりまして、その中によりますと、それまでの健康状態なり既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況なり剖検によりましてもその原因が不詳である、乳幼児に突然の死をもたらす症候群というふうにされております。  我が国の人口統計によりますと、本疾患による死亡数が、平成八年におきまして五百二十六人、千人当たり〇・四四ということでございまして、その九割が乳児期に死亡しております。乳児の死亡原因の第三位を占めている状況でございます。  この疾患の原因につきましては、窒息等の事故によるものと異なりまして、脳における呼吸循環調節機能の不全によるというような考え方もございますけれども、単一の原因で起こるかどうかの点も含めまして、いまだに完全に解明されていないものでございます。
  149. 宮下創平

    宮下国務大臣 私も新聞等でこれは拝見いたしまして、最初は私も余り知識がないものですから、親の不注意とか管理上の問題かなと思いましたが、今局長の説明のとおり、これはそういう問題ではなくて、何らの予兆もなく突然の死をもたらす疾患であるということで、大変重要な課題だと思っております。  そんなことで、予防についての知識を普及したり、啓発を行っていくことは必要でございますし、また、SIDSの対策の普及啓発については本当に努力していかなければいけない問題だな、乳幼児の生命は何よりもとうといということで、私も新聞等で拝見しております。
  150. 青山二三

    ○青山(二)委員 ただいま御答弁ありましたように、本当にこの病気は、既往症によるものでもない、窒息による事故でもない、だれにも予想がつかない死、これがこの病気の特徴だということで、本当に一見して珍しい病気であると思われてきましたけれども、今御説明がありましたように、平成八年度では五百二十六人もの赤ちゃんが亡くなっている、前年の平成七年では五百七十九人もの赤ちゃんが亡くなっておる、大体二千人に一人の割合で死亡していることになります。生後七日目から一歳未満の乳児では四分の一を占めて、死亡原因の、ただいま御説明がありましたけれども、三位を占めているというようなことを考えますと、もうこれは決して珍しい病気ということで対応をおろそかにすることはできないと思うわけでございます。  SIDSがなぜ起こるのか、原因は何なのか、予防策はあるのかなと、これまでも多くの研究者が取り組んでいるとは思いますけれども、本当に残念なことに、いまだに明確な因果関係がつかめていないということでございます。  六月一日に厚生省からSIDSに関する調査結果が発表されておりますけれども、その概要について御報告をいただきたいと思います。また、SIDSの原因の徹底解明とともに、早急な予防方法の確立が強く望まれるわけでございますけれども厚生省としてはこれまでどのような取り組みをやってこられたのか、予防等を含めて今後の対策についてお伺いしたいと思います。
  151. 横田吉男

    ○横田政府委員 SIDSの実態調査でございますが、私どもといたしましては、平成九年度の心身障害研究におきまして、全国的な統計調査がある程度整ってきたという状況を受けまして調査を行っております。  この対象といたしましては、SIDSで死亡した子供を持つ家族等に対しまして行ったものでございますが、その結果によりますと、うつ伏せ寝あるいは人工栄養保育、それから父母ともに習慣的な喫煙がありというような三項目につきまして、SIDS発生の原因ということではございませんけれども、危険性を高めるということが示唆されたわけであります。  うつ伏せ寝につきましては、そうでないあおむけ寝の約三倍ぐらいのリスクがあるというようなものでございますし、人工栄養保育の場合には母乳に対しまして四・八倍、喫煙の場合には、そういう習慣がない者に対して四・七倍というような結果が出たわけであります。  したがいまして、私ども、このSIDSを低下させるためには、こうした情報を普及させるということがまず重要であるというふうに考えまして、調査結果がまとまりました直後、家庭、医療機関あるいは児童福祉施設、行政機関等を構成員といたします連絡会議をいたしまして説明し、情報の共有化を図ったところでございます。また、その後、七月には都道府県等に対しまして、この普及啓発について努力していただくような通知を出したところでございます。  この原因につきましてさらに私ども調査研究を引き続き行いますとともに、来年度におきましても、予防につきまして一層の普及啓発に努めてまいりたいというふうに考えております。
  152. 青山二三

    ○青山(二)委員 全国規模の実態調査をしていただきましたということなんですけれども、これは諸外国から比べますと、取り組みは大変遅過ぎる、こんな思いがいたしております。  例えば欧米では、一九八〇年代後半から、SIDSを少なくするために育児環境における喫煙あるいはうつ伏せ寝との関連などについてのキャンペーンが始められておりまして、発生率が激減した、そういう報告がございます。また、八七年当時のニュージーランドでは、出生数の千人に対して七人がSIDSによって死亡しておりましたけれども、キャンペーンによって七人から一人に激減した、こういう顕著な例がございます。ですから、同様のキャンペーンを展開した多くの国では、ここ一、二年の間に発生率が半減する、そういう成果をおさめているようでございます。  こうして発生率を少なくしている諸外国の取り組みなどがございますけれども、こういう実態について大臣は御存じでございましたでしょうか。どのように評価されますでしょうか。
  153. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の御指摘の点は、私も不勉強でまだ数字等的確に把握しておりませんが、大変示唆に富む事例でございまして、我が国としてもこれらをよく検討して、取り入れていかなければならない、こう感じております。
  154. 横田吉男

    ○横田政府委員 先生指摘になりましたように、アメリカあるいはスウェーデン、ノルウェー、オーストラリア等におきまして、SIDSによるキャンペーンが一九八〇年前後に行われておりまして、その前と後におきまして、かなりのSIDSの発生頻度が下がったという結果が報告されております。  例えば米国では千人当たり二・三人の死亡率でございましたのが〇・七九人、スウェーデンでは一・一人であったものが〇・四人になっているというような結果が出ているわけであります。  我が国におきましても、先ほど申し述べましたように、九年度にこれを初めて、全国統計がSIDSということで統計の分類の改正によりましてできるようになった一番早い時期でありますが、行ったわけでありますけれども、これによりますと、先ほど申し上げましたように、五百二十六人、死亡率〇・四四人ということでございます。  この水準は、私どもまだキャンペーン等は行っていないわけでありますけれども、諸外国における改善後の水準にほぼ匹敵する、世界的には低い水準と考えておりますけれども、今度の調査結果を踏まえまして、なお一層のキャンペーンを行うことによって、よりこの死亡率を低下させるよう努力してまいりたいというふうに考えております。
  155. 青山二三

    ○青山(二)委員 諸外国の例に見習って我が国も頑張っていただくということでございますけれども、本当にやっと国を挙げてキャンペーンを実施するという方針が明らかにされまして安堵はしておりますけれども、SIDSに関する十分な認識が浸透しているとはまだまだ言い切れないわけでございます。  このように国の取り組みが進まない状況の中で、既にボランティアグループのSIDSの家族の会というのがございますね。これが昨年の四月からキャンペーンをもう既に始めております。一つはあおむけ寝で育てよう、二つ目はなるべく赤ちゃんをひとりにしない、三番目として温め過ぎに気をつけよう、四番目はたばこをやめよう、五番目としてはできるだけ母乳で育てよう、こういうSIDSの予防知識を広く普及させるための啓発キャンペーンを一足先に行っているわけでございます。  このSIDSに対する予算を見ますと、昭和五十六年度からこれまでに研究費の一部という形で若干予算がついてはおりましたが、それが今回初めてSIDSに関する普及啓発として五百万円が十一年度の概算要求に計上されました。しかし、これは余りにも少ないのではないでしょうか。これではとても十分な予防対策ができるとは思われません。  そこで、厚生省として、今回の調査結果を踏まえた上で、原因究明を含めた予防対策ができるだけの十分な予算措置を行うべきであると私は思いますけれども大臣のお考えはいかがでしょうか。
  156. 横田吉男

    ○横田政府委員 まず、私の方からお答えさせていただきたいと存じます。  この疾患の低下を図るためには何よりも予防対策が重要ということでございまして、そのためには、私ども、今年度調査結果がまとまったのを踏まえまして、先ほど先生がお述べになりましたSIDSに関する家族の会などとも十分な連携をとりながら普及啓発を図っていきたいということで、関係団体も含めた連絡会議を開催いたしますとともに、都道府県等に対しましても予防対策等についての普及啓蒙を図るような通知をしたところでございます。  さらに、今後、私どもといたしましては、母子健康手帳等にこのSIDSに関する情報の記載を行うことを検討いたしたいと考えております。また、本疾患の予防についての普及啓発を、関係団体、福祉団体、関係機関、家族の会等も含めまして、一層充実するために、来年度五百万円の予算要求をしたいと考えております。  このほか、原因究明につきましては、従来からやっておりますけれども、一層調査研究の中で進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  157. 宮下創平

    宮下国務大臣 五百万につきましては、今局長から申されたとおりでございまして、各機関の連絡あるいはPR等々の事務的経費の必要経費を計上したものだというように私は思いますが、今後さらにどういうことが必要であるのか、予算がどれだけ必要なのかというようなことがはっきりいたしますれば、こうした問題は重要でございますから対応しなければならないと思いますが、とりあえず平成十一年度の予算ではこのような概算要求をさせていただいておるということでございます。
  158. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、参考までに申し上げますけれども、東京都では国に先駆けて取り組んでおりまして、今年度予算に一千万を計上いたしております。その中身は、意識調査の実施とか相談体制の整備、そして保健医療関係者の研修ということで、国が五百万の概算要求に対しまして、東京都はその倍の一千万を計上しているというようなことでございます。  それから、家族の会の皆さんは大変な御苦労を続けまして頑張っておられまして、世界の資料を集めまして、昨年から、うつ伏せ寝などをやめよう、そんな呼びかけのパンフレットを十万部以上もつくって配り始めている。必死に頑張っているわけでございまして、国がやっと何か言いわけに五百万概算要求したというのは余りにも少ない、こんなふうに思うわけでございますので、今後十分に検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  159. 宮下創平

    宮下国務大臣 先ほど申しましたように、国としては五百万ということでございますが、予算の計上を認められればその他の経費等のやりくり等もできるかと存じますから、必要に応じて拡大して対応するということも十分考えられるものと思っております。
  160. 青山二三

    ○青山(二)委員 この対策につきましては、先ほど少し御答弁がございましたけれども厚生省といたしましては、いろいろな対応を実施するというようなことを明らかにしております。  まず、日本医師会や警察庁、消防庁、児童福祉施設から成るSIDS対策に関する連絡会議を開催し、情報の共有化を図る。二つ目としては、一般家庭に対しては、妊産婦、乳幼児健康診査の機会をとらえて啓発活動を推進するとともに、母子手帳への情報の掲載や、ポスター、パンフレットを活用する。三番目としては、家族の会と連携を図り、SIDSで子供を亡くした家族からの相談に対応する。四番目としては、マスメディアを通して情報提供が行えるよう関係者の理解と協力を求めるというようなことで方針を明らかにしておりますが、いつから具体的にこれを実行されるのか、お伺いをしたいと思います。
  161. 横田吉男

    ○横田政府委員 今年度調査結果がまとまった直後にそういった関係者から成る連絡会議を開催いたしまして、既に説明、普及等のお願いについてはしたところでございます。それから、都道府県等地方公共団体に対しましては、七月付でそういった普及啓発についての通知を出しているところでございます。既に私どもそういった努力を今年度始めております。  それに加えまして、先ほど申し上げましたように、来年度におきましては普及啓発のためのキャンペーンの予算を組みまして、さらに一層進めてまいりたいということでございます。
  162. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、ただいま御答弁ございましたように、十分な活動ができますように期待をいたしますとともに、十分な予算措置もお願いをしたいと思います。  それでは、先ほども山本委員から質問が出ておりましたけれども、乳幼児の医療費の無料化について私からも質問をさせていただきたいと思います。  先ほどもお話がございましたように、この乳幼児の医療費の無料化というのは全国の都道府県で実施されております。これは、少子化が進んでいる現状におきましては、国民のほとんどが大きな関心を持っていると言っても過言ではございません。地方では、大変な厳しい財政状況の中を、対象年齢を引き上げたり、また所得制限の廃止あるいは制度の拡充を行っております。我が栃木県におきましても、県民の強い要請によりまして、償還払いではございますけれども、その申請方法が郵送方法となりまして、大変使いやすい制度に改善をされておりまして、多くの皆さんから喜ばれております。  このように地方が涙ぐましい努力を続けているのでありますから、子育て支援の一環として国としても乳幼児医療費の助成について制度化していただきたい、そして乳幼児医療費の経費軽減の実現を図っていただきたい、そういう方向で進んでいただきたい、このように思う次第でございます。  私は、国会議員になりまして、ずっと厚生委員会に所属をいたしておりまして、大臣がおかわりになるたびにこの問題を取り上げて質問をさせていただいているのでございますけれども、先ほど大臣が御答弁されたように、前向きな御発言はいただいておりません。ぜひ宮下大臣には、先ほど検討に値するという答弁が少し出てまいりましたけれども検討に値するというのでは、検討を本当に前向きでやっていただけるのかどうか大変あいまいさが残りますので、しっかりと前向きに検討する、こんなふうにお考えを変えていただきたい、切にお願いをするわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  163. 宮下創平

    宮下国務大臣 先ほども前の方に御答弁申し上げましたが、医療費というのは医療を受ける人と受けない者との均衡という問題がございますので、受診者に一定の御負担をいただくのは原則だということも申し上げました。  しかしながら、この乳幼児等の問題につきましては、今、国では、難病の子供、それから未熟児、障害児といった手厚い養護が必要な児童の疾病につきましては、既に医療費の公費負担を完全に実施いたしております。詳細は省きますが。したがって、直ちに乳幼児の医療費一般についてこれを見るというわけにも今のところはまいりません。  先ほどは検討に値するということを申し上げたゆえんのものは、地方公共団体の実施状況を見ますと、年齢その他の違いもあります、所得制限を設けているところ、設けていないところもございますし、費用負担も、無料化のところもあるし軽減しているところもございます。これはそれぞれの地方自治体の判断でなされていることだと存じますが、国としても、こういう状況であれば検討してみる値打ちのあることかなということを申し上げたわけでありまして、今直ちに前向きにこれを実施を前提に検討するとまでは申し上げるわけにまいりませんけれども、真意はよく心得て、今後そういうふうに注目して対応していきたい、こう思っております。
  164. 青山二三

    ○青山(二)委員 地方では、こんなに地方で一生懸命やっているのにどうして国はやらないんだ、こんな声をいつもいつも聞くわけでございますので、どうか宮下大臣が厚生大臣のときにこれが実現できますようにお願いしたい、こんなふうにお願いをしておきます。  ただいまも厚生大臣から御答弁がございましたように、乳幼児の医療費一般を無料化するというよりも、難病、それから未熟児、障害児といった特別な疾病の治療に対して公費負担を行っており、この方向がより重要であるというようなお考えを今示されました。そうであるとするならば、小児慢性特定疾患患者の治療研究事業の公費負担は今後も堅持されることは間違いないと確信しておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
  165. 宮下創平

    宮下国務大臣 今先生指摘なのは小児慢性特定疾患治療研究事業ということでございまして、これは低身長症という問題だろうと存じます。  このことにつきましては、従来は身長に制限を設けませんで、医療給付等を難病の一つでやっておったわけですが、昨年これを身長に制限を設けまして、男性でいきますと終了基準は百五十六センチくらい、女性は百四十五センチくらいということで、それ以上にさらに身長を伸ばすための治療行為等については、これは公費による医療負担はしないということに改めさせていただきました。  一般的に、この程度であれば、そういう病状を持っていない方でも、小柄な方等も健全な方でいらっしゃいますし、均衡のとれたものかなというようには存じますので、さらにこれを縮減したりすることはいたしませんが、継続してその基準で対応していく、こういうことであろうと思います。
  166. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、財革法が凍結される方向検討が行われておりますけれども、今言われました難病患者に対しましてはそれを復活させるべきではなかろうか、財革法の中でそういうふうに制限を加えられたわけでありますから、凍結されるという方向で進むのならば、それはやはり今まで加えた制限を解くべきではないか、このように思うわけでございます。  また、八月から児童扶養手当の所得制限が強化されておりますが、これもやはり同じように復活させてもよいのではないか、こんなふうに思います。全国の母子家庭所得制限を加えられましたことに対しまして大変お困りになっているという全国からの声が上がっておりますので、財革法の凍結を考えるならば、あのとき制限を加えたものはきちっともとに戻す、復活させるべきであろう、私はこのように思いますけれども、いかがでございましょうか。
  167. 横田吉男

    ○横田政府委員 成長ホルモン分泌不全による低身長症の問題につきましては、従来からその終了の基準がなかったというようなことで、平均身長を超えてまでこの公費負担制度を利用される人もあったというようなことで、その是正というのが財革法が問題になる前から既に指摘されていたところでございまして、私ども、そういった状況を受けまして、専門家から成る検討会も設置いたしまして検討をお願いし、その結論に基づいて今回の措置をとったということでございます。  それからもう一つ、児童扶養手当についてでございますが、これにつきましても、現在の状況といたしまして、離婚が非常にふえている中で、親の扶養責任との問題等に関連いたしまして、これも審議会等で御議論いただいた結論を踏まえて行ったものでございます。財革法が今回どういう扱いになるか、これから御議論になるかと思いますけれども、それとはすべてリンクした話ではないということでございますので、御理解を賜りたいというふうに考えております。
  168. 青山二三

    ○青山(二)委員 御理解を賜りたいと言われましても、なかなか理解はできません。  これまで全額一律の公費負担制度の変更がこの財革法の中の核であった、私はこんなふうに見ておりましたので、財革法が凍結されるということになれば、やはり公費負担も全面復活するのが当然である、このように私は考えますけれども、その点について大臣はどんなお考えをお持ちでしょうか。
  169. 宮下創平

    宮下国務大臣 財革法のために、平成十年度の厚生省といいますか社会保障予算がかなり窮屈であったことは、私も否定いたしません。  しかし、今、低身長症の問題についての局長の答弁は、これは私が先ほど申しましたとおり、一定の基準、これは財革法以前から検討がなされていたものであるということでございますから、これはそのまま実行させていただきたいと思うし、それから母子家庭等における児童扶養手当の所得制限の問題は、確かに御指摘の点がございます。こういった点がありますが、これは財革法と全く関係ないわけではございませんけれども、いろいろ国からの給付がほかの施策とのバランスその他を考えてなされた改革であるというようにもお伺いしておりますので、なお引き続き検討はさせていただきますけれども基本的にはこの線を保持すべきものではないのかなという考えを今のところ持っております。
  170. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、この難病対策関係予算、そして児童扶養手当の所得制限を強化したということで、弱者に対する予算の削減というふうに私は考えておりますけれども、どれぐらい国費を減らすことができましたのでしょうか。
  171. 横田吉男

    ○横田政府委員 この小児慢性特定疾患事業の適正化によりまして、国費ベースで約十六億の減になっております。それから、児童扶養手当の所得制限の強化によりまして、十年度におきましては、八十億ほどの減になっているということでございます。
  172. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変困っている方、また難病の方を優しく対応してあげるというのが私は厚生行政だと思っておりますけれども、本当にこういう大変困っている難病の方の自己負担の導入ということは、やはり難病患者の生活実態を全く理解しないお役所仕事のような気がしてなりません。  難病の症状というのは複雑でございまして、いろいろな病院へ、またいろいろな科へ通院しなければなりません。そして、どの病院でも治療が受けられるというものでもございませんから、遠くまで通わなければならない患者さん、交通費も大変かかるわけでございます。そして、患者さんの仕事はどうかといいますと、この大不況の今、採用を拒否されたり、真っ先に解雇されたり、働くことができてもアルバイトという、こんな状況がほとんどでございます。  今いろいろ金融問題が議論されておりますけれども、銀行への公的資金の投入の一%にも満たない金額で難病患者さんたちがどれほど助かるでしょうか。マクロ的対策も当然必要でありますけれども、個人に対して血の通った政策も負けず劣らず必要であると思います。  最後に大臣の御所見を伺って、質問を終わらせていただきたいと思います。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  173. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、難病の問題についてと、それから所得制限の問題の御提起がございました。  難病問題につきましては、これは難病全体をカットしたわけではございませんで、低身長症というのを標準的な基準を設けてやったということでございますから、これは特に財革法のために切り込んだというよりも、あるべき基準をこの程度にしたらいかがかという判断だったと存じますから、それは私もよくわかります。  それから、所得制限の問題につきましては、確かに私もそんな感じを持ったこともあります。厚生大臣になりましたので、いかがかなという感じは今も私は個人的には持っておりますが、だんだん離婚の率も多くなったりいたしまして、金額の当然増――それは当然増ではございませんが、増加も相当ございますし、そういう中での判断が必要かと思われますので、なお検討させていただきます。
  174. 青山二三

    ○青山(二)委員 よろしくお願いいたします。  終わります。ありがとうございました。
  175. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 鰐淵俊之君。
  176. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 私、自由党の鰐淵でございます。  大臣を初め、長時間大変御苦労さんでございます。  まず私は、本題に入ります前に大臣の所見を伺いたいと思うわけでございます。  ただいまも財革法云々の話がございましたが、通常国会におきまして、政府が、どうしてもこの財政危機を突破するために財革法を通さなくてはいけないと、前総理以下不退転の気持ちで臨んでこられました。  今経済指標その他を見ても、非常に経済が悪くなっていく状態の中で、なぜ政府が手と足をみずから縛ってしまうような財革法を通さなければならないのか、万が一非常に経済が落ち込んだときに、特に財政出動が必要なときには、その財革法が足かせになっていわゆるタイムリーな手を打てなくなってくる、これは、やはり私どもとしてはやるべきことではないということで反対をしたわけであります。案の定、経済はどんどん御案内のとおりデフレ経済下に陥ってまいりましたし、いわば消費マインド、一般国民の消費がどんどん冷え込んでいってしまった。  それでは一般の国民お金が全くないのかといいますと、お金がないわけではない。いわゆる消費マインドが非常に落ち込んでしまった。なぜ消費マインドが落ち込んだかというぐあいに考えますと、国民は将来に漠然たる不安、例えば自分が年をとったら一体どうなるだろうか、介護保険も二〇〇〇年から始まるけれども、本当にこの介護保険で我々思うような介護がしてもらえるのだろうか。あるいは子供たちは、今二十から年金で徴収しておりますが、この若い方々も、今年金に払っても、自分たち年金をもらうときには実はもう相当年齢も高く、払ったものが生きてこないのではないか、それよりは、今の年金に払うお金があれば、今享受したい、こんな気持ちから、恐らく国民年金の未納というのが非常に各自治体でも大きな問題になっております。特に学生等はなかなか払い込んでもらえない、こういう実態。ですから、いわば将来に対する漠然たる国民の不安というものがあったわけであります。  これは御案内のとおり、今回の選挙を通じましても、明らかに国民の意思がそのように反映されておる。したがって、財革法が通りましても、この財革法によって予算を、手、足を縛り、そして必要な措置を講じ得られないことでは、やはり国民の期待にこたえることがなかなかできないのではないか、こう思うわけであります。  したがって、特に厚生省は、そういった国民の漠然たる将来の不安、例えば年金、医療、保健、福祉、こういった点についてやはり厚生省が思い切った手を打ちながら、将来心配ないんだという安心感をもたらせることが今一番必要ではないか、こう私は考えておるわけでございますが、この点につきまして大臣の所感をお願いしたいと思います。
  177. 宮下創平

    宮下国務大臣 財革法は昨年の臨時国会で成立いたしました。時あたかも、北海道拓殖銀行の倒産とか、大きな金融不安が端緒となって始まったときでございます。  そして、ことしになりましてから財革法を改正をいたしまして、厚生省についてはキャップ制を外す、あるいは赤字国債発行ゼロの年度を二〇〇三年から二年延長するというような改正をやりましたが、なおそれでも経済の悪化はとどめを知らないという状況でございまして、現在のところ、この内閣としては、財革法を凍結、廃止までいくかどうか、凍結ないし廃止と言っておりますが、その検討をして、枠組みとしてはとりあえずサイドに置くという形になっております。  ところで、今御指摘のように、社会保障分野において不安感があるというのは、私もそう思います。特別減税をやってもなかなか消費支出に回らないという一つの要因は、そういう将来に対する不安感があればこそ、減税をしても貯蓄に回ってしまうという可能性は否定できません。したがって、私どもとしては、安定した安心できる制度を構築して、そのデッサンを国民の前に、また若い人たちの前に示さなければならない、こう思っているところでございます。  しかしながら、なおつけ加えさせていただくならば、それだけが不安要因ではございませんで、経済の成長がマイナスというようなことになりますれば、雇用不安その他がありまして、自分のお父さんが勤めている会社がいつ倒産するかわからないんだという不安感、その他もろもろのそういう社会経済的な現象も多いわけでございますので、全体としてそういうものをとにかく直していかないとこの景気の回復はできないわけで、小渕内閣としては、経済再生に最重点を置いてやるという基本方針を掲げて取り組まさせていただいているのもそのゆえんでございます。  我々社会保障分野もその一つでございますから、そういった観点をも踏まえながら、制度をきちっとしたものにしていきたい、このように決意をしておるところでございます。
  178. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 大臣のお答えは十分私たちも理解はできます。  問題は、確かにいろいろなファクターがあるわけでございますが、経済再生ということを考えますと、ベースは、やはり国民個々が将来安心して生活できる所得があれば、可処分所得を、大いに消費マインドを刺激されて物を買っていく、物を買っていけば経済も活発になる、経済が活発になれば税金も入ってくる、こういう循環ですから、やはり私は手と足とを縛って縮まる必要はないと。しかも、厚生省がもろもろ出される予算は、まさにこの経済再生のベースになっているものではないか、私はそういう認識を持ったので、今のような御質問をさせていただいたところでございます。  さて、本題に入りますが、昨年の十二月、介護保険法が制定されました。したがいまして、この保険の導入が決まったわけでございますが、今の段階で私いろいろ研究をし、また現場の話等を伺いましても、まだよくわからない部分がたくさんございます。したがって、厚生省自体も暗中模索のところが非常にあるのではないか。  そういうことで、質問の第一番は、新ゴールドプランというのをつくったわけでございますが、もうあと二年でございますから、新ゴールドプランについて現在その達成率はいかほどになっておるか、この点について局長の方から御答弁いただきたい。
  179. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 新ゴールドプランでございますが、進捗状況を若干申し上げますと、全国ベースといたしましてはおおむね順調ではないかという判断をいたしておりますけれども、やはり地域の間で格差がございますし、それから介護サービスの項目、種類といいますか、これによって差がある、こういう状況でございまして、このために、進捗がおくれている地域につきましては、その理由とか対策、こういったものを求めている、私どももともに進捗させるために努力をしている、こういう最中でございます。  厚生省といたしましても、既存施策の拡充でございますとか、既存の資源を使わせていただくとか、あるいは多様な事業主体に参入していただくとか、農協なんかも含めまして参入していただくとか、いろいろな手法を行っているわけでございまして、平成十一年度予算要求をこの間したばかりでございますけれども介護利用型の軽費老人ホーム、いわゆるケアハウスでございますが、これを除くすべてのサービス項目につきましては、目標量を達成するために必要な予算を計上いたしたわけでございまして、特にホームヘルパーにつきましては、整備目標を上回る水準として、いずれにいたしましても、新ゴールドプランの目的が達成できるように引き続き努力をしたい。  まだ八年度までしか実績ができておりませんので、水準を個々について申し上げるのはなかなか難しいわけでございますけれども特別養護老人ホームなんかはもう悠々と超えるのではないか、こういうことで、来年度は目標を超えて要求するようなことを景気対策の臨時緊急特別枠の大枠で考えているわけでございます。
  180. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今のお話を伺いまして、私の持っている資料では、ほぼ新ゴールドプランに達する状況にあると私も考えます。  ただ問題は、新ゴールドプランを達成したら、これで目標を達成したと思ったら大間違いなんです。なぜならば、新ゴールドプラン、例えば平成十一年度のホームヘルパー十七万で、今の介護の状況からこれを達成し得ると考えられるでしょうか。  私はいろいろな町、村、市の状況を伺いますと、圧倒的にマンパワーが足りないのです。来年に至って、この新ゴールドプランでさえ足りない。特養に至ってはまるで足りないのです。こういった状態で、新ゴールドプランで達成できたとするならば、介護保険は完全に破綻します。これは私断言してもよろしいと思う。  ですから、これではだめでありまして、せっかく第一弾で新ゴールドプランをつくって、ここまで達成する努力は多としますが、これでは本当の介護保険を施行するときには足りないわけでありますから、あえて新々ゴールドプランというのでしょうか、またはスーパーゴールドプランというのでしょうか、さらに介護を十分でき得る状態のプランに置きかえていく。今、来年十一年ですから、もうこれで終わるわけですから、それ以降のことについて、五年をめどにしたプランを立てていかなければ、最終的には、保険料は取られるけれども介護サービスのメニューをやったら、あれもだめです、これもだめですといって、なかなかしていただけない様子が出てくるのではないか。こういったことについて、どうですか。新ゴールドプランの達成は十一年ですから、来年ですから、十二年度以降、オープンしたときに、やはり私は新しいプランをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。      〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  181. 宮下創平

    宮下国務大臣 おっしゃるとおり、今のゴールドプランの達成率は、かなり進捗度はいいと思いますけれども、一方、要介護者が増加してまいります。したがって、容量がそれだけ大きくなるわけですから、今の計画でずっといいというわけにはまいりません。したがって、十一年までの計画でございますから、十二年以降どうするか、あるいは新しい計画をつくるということを十分考えられなければならないと思います。  同時に、ことしの予算におきましても、目標が達成できたからそれでいいというわけにはまいりませんので、十月末に追加要求ができるものであり、それが妥当なものであれば、施設等について前倒しして整備も図っていきたい、このように考えております。
  182. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 大臣の御答弁で了といたしますが、これは実際はボトムアップ方式でやっていただきたいと思うのです。やはり市町村で、現実にいろいろなメニューがありますが、そのメニューの中でどういうものが足りないかということは、事業主体の市町村が一番よく実態をわかっております。ですから、その実態を積み上げて、都道府県、そして国として、最終的に積み上げたものを新しいプランに策定されればより現実的ないいプランになると私は思います。  さてそれでは、介護保険を施行するときに最も重要な役割を果たすのは、御案内のとおり、介護支援専門員だと思います。これは、二〇〇〇年の施行時には全国で一体何人必要かということは推計されているでしょうか。
  183. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 介護支援専門員でございますが、保健、医療、福祉の各分野で高齢者の介護にかかわっている人材に対しまして研修を実施いたしまして、その養成を図ることにいたしているわけでございます。  それで、どの程度数が必要かということでございますが、私ども、当初申し上げたときには非常に粗っぽい推計でございましたけれども、約四万人、こういうことを申し上げたのですが、居宅介護の支援事業者でございますとか、あるいは介護保険施設、こういったところに置くべき配置基準というのがまだ検討中でございまして、現段階では詳細な数というのは正確に見込むことはできないわけでございますが、当初では四万人、こういうことで申し上げてきたところでございます。
  184. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 私は、最も中核をなすこの介護支援専門員、この方々がいろいろサービスを組み立てながらいい介護をしていくためにプランを練っていく一番中核的に働く方ですから、恐らく、今推計された数が二〇〇〇年まで完全に確保されるのかどうか、と同時にもっと要員が必要ではないか、このように思っております。  何といいましても、私も長い間経験がございますが、介護保険を本当に成功させるもさせないも、圧倒的なマンパワーの力がなかったら私はなかなか成功することは難しいというぐあいに思うわけであります。いわんや三千三百の全国の自治体がありますが、その中で、特別養護老人も持てない、養護老人も持てない、いわんや看護婦さんもいない、こういうような自治体というのは、私は北海道ですが、北海道にはざらにあります。したがって、北海道では中空知を中心に広域連合でもって介護保険をやる、これは北という町長ですが、ぜひそうやった方がいい、そしてお互いに役割分担をして、広域連合でもってお互いに分担をした方がより効率がいいであろうと。しかし、また全国的に見たら広域連合はまだ少ないのですが、この点については厚生省はどのように推進をされようとしておりますか。
  185. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 先生指摘のとおり、この介護保険事業を進めるためには広域連合、広域化というのが非常に大切だと思っておりまして、私どもも、ぜひ推進していただきたい、こういうことで市町村にお願いしておるわけでございますし、県も一生懸命頑張っていただいている、こういうことで少しずつは進んできておりますが、どういう形でやるかということについてはまだまだ進んでいないわけでございます。  やり方といたしましては、要介護認定だけをやるとか、あるいは運営そのものを一緒にやるとか、それから財政調整事業を一緒にやるとか、いろいろあろうかと思うわけでございますけれどもへ私どもといたしましては、市町村間の連絡調整の場の設置に要する費用などにつきまして必要な財政支援を行う、こういうふうな形で現在対応しているわけでございます。  今後とも、これは私どもだけではなかなか難しいわけでございますので、関係省庁とも協議をいたしまして、必要な支援をぜひともやっていきたい、こういうふうに考えております。
  186. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 ぜひできるだけ自治体がお互いに協力してやっていくような体制をとっていくことがより成功に導いていくのではないか、このように思います。  さて次は、これもまたこの介護保険の中の最も大事な問題ですが、認定基準というのがあります。たしか介護保険法を通すときには、この認定基準につきましては八十五項目の項目を全部チェックをしまして、コンピューターに入れて、そしてその様子によって六段階に分ける、そういう話だったですね。国会ではそうだったと思います。たしか私の聞き間違いがなければそうだったはずなんです。  ところが、この介護保険は、私は前から危惧しておったのは、介護保険法を通しますと、もう国会の力が及ばないのですね。保険料の上げ下げも及ばない。それから、今の認定の仕方も及ばない。介護保険法によって約三百くらいの省令、政令の通達で全部これは決められるようになっている。ですから、厚生省でほとんど決められる。  何も厚生省を不審に思っているわけではないですよ。皆さん一生懸命やっていることはよくわかりますが、どうもこのことについて、例えばもう既に、今出てきたのが何かといいますと、この認定基準はそういった実態の調査で決めるのではなくて、いわゆる介護の時間によって、重度なら何時間何分とか、軽度だったら何分とかといって時間刻みをするというように伺っておるわけでございますが、この点につきましては、聞くところによりますと、医療保険福祉審議会あるいは老人保健福祉審議会等でも随分激論があったようでございます。こういった点についてどのように考えておられるのでしょうか。
  187. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 要介護認定基準というのは、この制度がうまくいくかどうかの一番大事な問題だというふうに考えているわけでございます。  この基準につきましては、公平公正で客観的な全国一律的な基準を定める、こういうことで努力をしているわけでございまして、平成八年度から全国で試行的な事業を行いまして、適宜必要な基準の見直しを行ってきたわけでございます。  それで、平成十年度の試行事業を今月末から始めていただくわけでございますけれども、それに先立ちまして、先般七月でございましたが、医療保険福祉審議会の老人保健福祉部会に案をおかけしたわけでございます。確かに、いろいろ御議論はございました。  ただ、今回の十年度の試行的作業におきます要介護認定基準であれば差し支えない、こういうことで御了承をいただいたわけでございまして、正式な基準の作成に当たりましては、ことしの試行事業の結果でございますとか専門家の先生方の御意見、こういったものも踏まえまして、審議会で改めて御議論を願いまして、適切な認定基準の作成に努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  188. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 私は、介護サービスは、もろもろの項目を見ても、やはりこれは時間の策定というのが一番合理的かもわかりませんね。例えばホームヘルパーは週何回来て何時間とか、訪問看護は何時間とか、こういう時間刻みによると非常に合理的かもわかりません。  ただ問題は、介護保険を一生懸命私ども議論したときに、この考え方は一つも出ていなかったということですね、国会に。国会に出ていなかったのです。そして通ったのです。その後にこういう問題が出てくる。ですから、これは合理的な方法であるけれども、こういうような問題が三百もこれからつくる政令、省令で国会を抜きにくるくるくるくる変わっていくということは、どうも介護保険法の安定感というものに欠けてくるのではないか。  例えばもう一つあります、介護保険における介護保険料。一人年間三万円ですから二千五百円、二〇〇〇年に二千五百円、果たしてこれをずっと三年くらい二千五百円で確実に継続できるのかどうか、これは私は非常に疑問だと思うのですね。  例えば高知県でもって実際に試算した例がございます。高知県で実際に試算しますと、もう二千五百円では到底やっていけないわけなんです。確かにその県による高齢化率の問題もあると思いますが、高齢化はどんどん進んでいきますから、すぐそのラインには届くわけなんですが、高知県の例をとると、一人大体三千四、五百円、そういう非常に高いあれが設定されております。  それからもう一つは、介護保険を適用されても、保険料を払っておれば給付されるサービスをいろいろ選択しますが、そのときに、今お年寄りみんなに聞くと、またお金を取られるということが余りわからないのですね。私は、いや、おばあちゃん、また一割取られるのですよと。例えば重度でもって、当時この介護保険が出発したときはたしか六万から二十五万ですが、今はもっと、三十数万までなっているようです。そうすると、一割負担になると三万何ぼになりますね、一人。そういう負担も実際はまだ国民はよくわかっていない。保険料を取られ、さらに一割負担もあるんですよということですね。それからサービスも、いろいろ今言った時間でやりますから、自分がこういうサービスを欲しい、ああいうサービスを欲しいと言ってもなかなか自分のメニューがうまく達せられない、こういう面もあるわけなんですね。  そういったもろもろの問題点を、これからどのように厚生省としてはそういうのを吸い上げながらもっと合理的に決めていこうとしているのか、この辺についてお答えいただきたいと思います。
  189. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 先生、先ほどの質問関係でございますけれども、時間で示さなくて金額で示したじゃないか、こういうふうなお話がございましたので、まずこれについてちょっと申し上げたいと存じます。  法案の審議の段階から介護の必要度に基づいて要介護度を区分する、こういう考え方でいたわけでございまして、これは平成八年度から実施しておりますモデル的な事業におきましても、介護の必要度をはかる客観的な尺度ということで介護に要する時間を推計する方式を用いてきたわけでございまして、今般、その定義や推計対象になる介護の種類などを具体的に審議会にお示ししたわけでございます。  それで、なぜ前は金額かということでございます。  前の金額でございますけれども、やはりそのときも介護に要する時間に基づいて区分は行ったわけでございます。その要介護度別の在宅サービスの費用は、それぞれの要介護度区分に該当する者の状態像から推計をいたしまして金額換算をいたしたわけでございます。その金額を用いまして、いろいろな前提は置いたわけでございますけれども金額という形でお示ししてきたわけでございまして、これは要介護認定に使うという形ではお示ししたわけではございませんで、大体どのくらいの費用がかかるだろう、こういうふうなことの基礎データとして使わせていただいた、こういうことでございます。  それから、高知県で非常に高い保険料があった、こういうことでございますが、高知県の場合、要介護となる可能性が高い後期の高齢者、七十五歳以上の方でございますけれども、こういう方の割合が非常に高いわけでございます。それから、ベッド数が非常に多いわけでございまして、したがいまして、一人頭の単価というのはどうしても高くならざるを得ないわけでございます。  しかし、市町村間の保険料のバランスをとるということで、所得でございますとかあるいは年齢構成、こういったものを二五%の国庫補助のうちの五%を使いまして調整交付金という形で調整する、こういうことになっておりますので、受益が高いという形で保険料が高くなる、これは避けられないにしても、市町村の責めに帰せないような事情で高くなるものは調整しよう、こういう考え方でいるわけでございます。  それから、定率の一部負担で非常に高くなるじゃないか、こういうことでございます。  確かに、現在は福祉の措置という形で非常に一部負担が低いものとして実施された経緯があるわけでございまして、今回の介護保険制度におきましては、サービスを利用する者と利用しない者との公平、それから費用を負担してもらうということでの費用の効率化、こういうことで費用の一割負担を原則にいたしているわけでございます。  この利用者負担につきましては、高額介護サービスという形で、いわば医療保険の高額療養費、こういうふうな制度で限度額を設けておりますし、低所得者につきましてはその上限額を低く設定したい、こういうふうなことで、現在医療保険福祉審議会の方で御議論をいただいているわけでございます。しかるべき措置をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  190. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 介護保険は切りがございませんので、この辺で大体まとめたいと思いますが、御案内のとおり、今言った定率自己負担制、これは一定以上の収入のある者に対して自己負担を引き上げる、こういう考え方ですね。それから、年金からの保険料徴収などを柱とする、あるいはまた高齢者の医療保険制度の導入を準備しているなどがありまして、そういったことによって、言ってみますと、厚生省の方で、実際はもう国会は届かないわけですから、十分国民に配慮した形で介護保険を進めていってもらいたい。  その中にはいろいろな難しい問題があろうと思います。例えば訪問看護等何種類もの介護サービスをどのように割り振るかという問題ですね。これなどは専門員の考え方が非常に左右してきます。あるいはまた、受ける人たちの希望というものがそういうところでカットされてしまう。あるいは、それをまたやろうとして、例えば施設介護の場合は果たして時間で差がつけられるのか。時間制でやっていますが、施設介護に入った場合、Aという人とBという人と同じベッドにいて時間で差がつけられるか。これは、年寄りというのはひがみますからね。あなたはこうですからこれだけのサービスのプランしかないですといったって、もう年寄り、七十五も八十もなったら理解できないですよ。実際その方がやっていることと自分のやっていないことだけ見て、おかしいじゃないか、こういうぐあいになるのです。ですから、そういった問題についてのことですね。それから、推計時間を超えますと自己負担となるのですね。この自己負担も、これは莫大なものだと思います。  そういうケアプランを含める非常に大きな疑問が多々ございますから、これは現場でも混乱する問題です。したがって、現場がなるべく混乱しないような形で、ぜひひとつ実施時期には合理的なものとして実施されるように要望いたしたい。ちょっと、もう時間がありませんので結構でございます。  それから、社会福祉法人のことにつきましては、私、質問しようと思いましたが、ちょっとこれは割愛します。  これは、一つは何を言いたいかといいますと、莫大に社会福祉法人が広がっていきます、何万という数になりますね。そうしますと、今言ったこの社会福祉法人にかかわる監督責任は、都道府県があります、厚生省はなかなか行き届かない。その都道府県が実際この法人をどの程度きちっと監督できるのかという問題です。  私は、これは現場にあって――一年に一回ぐらい来て監督しても、いろいろ審査しても、ほとんどそれをキャッチすることは不可能ですね。例えば理事者の世襲問題だとか、あるいは、理事者がほとんど病気で全く出てこられない、しかし経営の最高責任にいつまでもいるとか、こういう社会福祉法人の体裁をなさない法人が依然とたくさんあります、私が知っている例でもたくさんありますが、そういうことはきちっと都道府県が行き届いた指導をしていただかなくてはならないというのが趣旨でございますので、それはそれでよろしくお願いしたいと思います。  さて、最後に残る時間は、結核に関しましてのお話をさせていただきたい、若干質問したいと思います。  私自身は十七才のとき結核をしまして、二十でようやく治りまして、もう少し以前に発病していれば私は今ここに存在しない、このように思います。おかげさまで、国の結核予防法というのがたしか二十六年ごろ施行されて、私どもは、ストレプトマイシンというのはまだ採用されませんでした、一年たってから採用されて、ようやくそういう薬を受けられるようになりました。それも公費でやっていただくということで、どのくらい結核の患者が助かったかわかりません。  当時は、手術しに行きますと、ほとんど死んで帰ってくるというのが通常でございました。昔から、有名な文芸作品にも「不如帰」なんというのがありまして、これは不治の病ですね。それから「風立ちぬ」ですか、堀辰雄さんの小説。こういったことで、随分結核にかかわる文芸作品もたくさん残っておる。それだけ以前は非常に難しい病気であった。  しかし、皆さんの御努力で、現在は相当患者数も減ってきていることは事実であります。しかし、御案内のとおり、まだ発病する者は四万を超えるという、感染病ではまだ最大の病気なのであります。一般世間ではもう結核は病気でないというように認識されておりますが、実はそうではないと私は思うわけでございますが、この一般の結核に対する状況、また諸外国との比較につきまし  て御答弁いただきたいと思います。
  191. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 先生指摘のように、結核につきましては、長い間、我が国の最大の病気でございまして、戦後、抗結核薬の出現とともに改善されてきてはおりますが、平成八年におきまして、死亡者数で二千八百五十八人、年間の新規登録患者数が四万二千四百七十二人、全登録患者数におきましても十三万二千九百五十八人、現在におきましても我が国で最大の感染症の一つでございます。  WHO、世界保健機関が一九九三年に非常事態宣言を出しまして、開発途上国はもちろんでございますが、欧米諸国におきましても最近増加をしてきているということが指摘されているわけでございます。  我が国におきましても、例えば死亡率におきましてアメリカやオランダと比較してみますと、今約三十年近くおくれているという状況にございまして、近年、我が国におきましても、結核の新発生率の減少率の低下でございますとか、地域間格差が広がっている、さらに施設内の集団感染の多発、さらに多剤耐性菌の問題など、結核は再び大きな感染症の問題として取り組んでいかなきゃいけないというふうにも認識しているわけでございます。
  192. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今お話しのように、まだまだ結核は安心できない、あるいは世界の国、欧米あるいはまたヨーロッパ等と比べてもまだ日本の罹患率は高い。  そこで、一番問題なのは、今お話ございましたが、多剤耐性菌による結核です。従来、結核の治療を受けながら石灰沈着をし、かなり安定しておりますが、だんだん年とともにこれがまた再び病気として発生する率が高いわけであります。そうしますと、耐性菌ですから、なかなかこれは治りづらい。そしてまた、それがどの耐性菌であるかということを固定するのも非常に難しい。この耐性菌の固定につきましては、各保健所を含めて全国の実態はどの程度速やかにできるのでしょうか。
  193. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 現在の結核問題の中でも、あらゆる抗結核剤が効かない多剤耐性菌の問題というのが非常に大きな問題になってきております。  そこで、この多剤耐性結核の検査なり治療体制の問題でございますが、まず、抗結核薬にどの程度感受性があるかということを正確、迅速に検査をする体制の強化を図っていかなくてはいけないというふうに考えているわけでございます。  現状におきましては、保健所なり結核医療機関における体制は十分でないというふうに判断しておりますし、また、治療の成績にいたしましても、さらに集学的な治療体制を確立いたしまして、医療体制の整備が必要だというふうに考えております。  本年七月、公衆衛生審議会の結核予防部会から対策の充実強化の御提言をいただいたところでございまして、この提言を踏まえまして、私どもは、来年度以降、多剤耐性結核の拠点病院の整備を考えていきたいと考えております。これは、全国八ブロックに国立の医療機関が八カ所、国立以外の医療機関二カ所、ブロックごとに拠点の整備を考えまして、そこから各結核医療機関に対するネットワークをつくりまして、多剤耐性結核の治療の体制を強化していきたいと考えておるところでございます。
  194. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今いろいろお話しのように、結核は、いわゆるバージン結核ですと化学療法がてきめんに効いて本当に見る見るよくなるのですが、この耐性菌というのは厄介なものでございまして、何の薬が効くかなかなかわからない。そのためには、固定していろいろやるためには、保健所程度の施設ではできない、かなりな培養の技術と固定の技術を持っておらないと菌の固定はできな  い。  しかし、それが割合と蔓延する可能性のあるのは、新聞にもちょっと出ておりましたが、非常に生体の防御作用の弱い、免疫性の少なくなってしまった人方、例えば小さな子供たちですとか、あるいは年寄りが集まるところ、いわゆる特別養護老人ホームとか養護老人ホームですとか病院での院内感染、こういったところで、病院へ治しに行くのに、また面倒な菌をしょってくる。  こういったことに対してやはり早期に手を打つのは、一つは、健康診断をそういうところに徹底的にやるということですね。そして、早目に見つけたら徹底した防疫作業をやって、この耐性菌から早く健常体の人は隔離していくといいましょうか、そういうことが大事ではないかと思いますので、そういった点の対策についてはいかがお考えでしょうか。
  195. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 現在、多剤耐性結核のほかにもう一つ大きな問題は、病院なり特別養護老人ホームその他施設におきます集団感染の問題でございます。  先般、新潟県におきましても、特別養護老人ホームにおきまして二十数名の集団発生がございまして、こういう施設におきましては、結核予防法に基づきまして、施設長に健康診断の義務が課されておりますが、さらに、確実に実施しているかどうかというようなことにつきまして保健所がきちっと確認をするとか、さらに、施設の種類によりまして、指導の方針といいますか、施設の特徴に合わせて適切なガイドラインをつくっていきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、従来、高齢者につきましては、既に感染しております既感染者に対してさらに重ねて集団感染・発病というのはないというふうに考えられていたわけでございますが、最近こういう従来の常識を覆すような事例も出てまいっておりますので、特に高齢者の入所している施設の集団感染の予防につきましては、専門家とも相談をいたしまして、適切なガイドラインの作成を年度内に行いたいというふうに考えているところでございます。
  196. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今の局長のお話で大体わかりましたが、油断大敵、かつては、結核は猛威を振るい、結核になれば、不治の病ということで、未来を失って、本当に悲しい思いをした方がたくさんいるわけですね。そして、命をとられてしまうという方が過去に相当いたわけでありますが、科学と防疫と行政の皆さんの力によって今かなりそれはなくなってきた。結核の脅威というものは薄れてきたけれども、さて、薄れてきたことが一つは油断につながってきて、実際、今言った多剤耐性菌が蔓延するということになると、今度は、治療も大変、防疫も大変、非常に処置が大変になってまいります。  そんなことで、最後に大臣に、そういった結核等の問題について、明年度の予算等でどのように積極的にこれに取り組んでいかれようとされておるのか、ぜひその点について所感をお願いしたいと思います。
  197. 宮下創平

    宮下国務大臣 ただいま局長の方からいろいろ我が国の感染症であります結核についての御説明がありました。  集団感染の多発とかあるいは多剤耐性結核の問題等々、結核問題はもう解決したんじゃないかなと私は思っておったんですが、こうした事実を考えるとき、大変な問題だなという意識を持っております。  公衆衛生審議会でも提言があったという御説明がありましたが、私どもとしては、やはり国民の健康を脅かす結核ということでございますから、今後も積極的に取り組んで感染症の撲滅に努力したい、このように決意しております。
  198. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 それでは、いろいろ私も質問させていただきましたが、厚生省の各仕事というものは、非常に国民に直結した大変大事な仕事であると同時に経済再生のベースである、このベースをきちっとしておれば国民はまた安心して消費もできますでしょうし、そういったことで、福祉国家としてぜひひとつ堅実に頑張っていただきたい。  これをもちまして質問を終わります。ありがとうございました。
  199. 木村義雄

  200. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  私は、十月から改定されることになっております診療報酬の問題、特に高齢者の長期入院問題についてお聞きしたいと思います。  改定の主な内容は、一つは、一般病棟において六カ月を超える高齢者の看護料を半額にするという内容、二つ目には、平均在院日数を超えればランクの低い看護料しか認めないというものです。  私は、この間、幾つかの病院や関係団体を訪問させていただきまして、さまざまな意見を聞かせていただきました。昨年九月からの受診の抑制や銀行の貸し渋りなどで病院の倒産、経営環境が著しく悪化している、関係者の苦労は本当に並大抵のものではないという事態になってきております。  全国保険医団体連合会が、この問題で全国の病院長を対象にアンケートを実施いたしました。その結果の特徴といいますのは、一つは、十月実施にはほとんどの病院が反対だ、二つ目には、十月実施で一般病棟を持つ病院の五割以上が大幅な減収になってしまう、そして三つ目には、十月実施がされれば、老人を初めとした長期入院患者に転院や在宅療養をお願いせざるを得ない、こういう状態が生まれる、こういう結果が特徴的に出てきているわけです。  それで、看護料の大幅な引き下げになる対象者というのは一体どういう人たちをいうのかといいますと、これは埼玉県のある病院の例なんですけれども、八十二歳の女性で、脳梗塞で昨年六月に入院した、肺炎を繰り返しています。気管切開をしていて、たんの吸引を頻繁に行い、鼻から管で栄養をとっています。寝たきりで、全介助。自営業の長男と二人暮らしで、在宅での介護は困難です。こういうケースなんですね。  もう一つは、八十三歳の男性なんですけれども、昨年五月に右大腿骨を骨折した。手術後も骨がくっつかず、骨髄炎と心不全を併発して、どうしても退院させるには片足を切断するしかありません。こういう例なんです。  全国からさまざまな、この人たちは今回の看護料の大幅引き下げの対象になるほんの一例なんですけれども、この人たちの看護料を減らして一体どうせよというのかというのが、率直な医療機関などの声が上がっているわけです。  厚生省は、このような事態、今回の改定に当たって、全国の病院や医療機関、また患者さんの実態などはどのように調査をされたのでしょうか。
  201. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 今回の改定は一般病棟におきます老人の長期入院患者に関するものでございますけれども介護を主な理由といたします長期入院、いわゆる社会的入院と言われているものでございますけれども、この長期入院を是正する、こういう観点から実施したものでございまして、老人の長期入院患者の心身の特性を踏まえまして、医学上やむを得ない、こういった場合を除きまして、一般病棟に六カ月、非常に長期でございますが、六カ月を超える期間入院している患者さんに対しまして介護力の強化を図る、こういうことで包括点数の導入等を行ったわけでございます。  この導入に当たりましては、医学的な検討も当然行ったわけでございますし、社会保険医療協議会の議を経て決められたものでございます。  なお、この改定によりまして、包括点数を算定する病棟につきましては、介護力を充実させることにあわせまして、看護職員の人員配置基準の緩和も行っているわけでございます。このことによって医療機関が経営上の理由から退院を強要する、こういうものにはならない、こういうふうに考えているわけでございます。
  202. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 具体的には、この改定に当たってどういう――例えば、今言われたように、六カ月以上の方はイコール社会的入院じゃないわけですよ、いろいろなケースがある。こういう場合にはどういう実態かということは、厚生省としては調査されたのですか。一人一人の具体的な、一定の人数も含めた調査はされているのですか。
  203. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 従来から、長期入院、まさに一般病棟に長期に入院をされる方、これが非常に狭いところで、余り療養環境がよくないところで長い間療養される、こういう方がまさに社会的入院と言われている人たちでございまして、この社会的入院につきましては早く是正をする必要がある、こういうふうなことで私どもは考えてきたわけでございます。  入院治療を要する患者さんの病状につきましては、一般的に急性期を過ぎますと……(瀬古委員実態調査をやったのかどうかと聞いているんです」と呼ぶ)  実態調査は、これまでのまさに社会的入院というものについての私どもの調査、こういったものが当然前提になって、それをいかに是正するか、こういうことでやってきたわけでございまして、このために調査というものを特別に行ったわけではございません。
  204. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 これだけのいろいろな事態が起きているのに、厚生省は、六カ月たてば大幅に、半分ぐらいに看護料を減らしてしまう。こういうことをやる場合には、六カ月以上の入院の人たちは一体どういう状態に置かれているのかというのは、本来きちんと調査をすべきだと思うんですね。ところが、調査もしていないわけでしょう。それで何となく長期入院イコール社会的入院、こう言われているわけですけれども、もっと一つ一つの病院の実態、患者さんがどういう状態に置かれているかということはきちんと厚生省がやった上で、やはりこれは是正しなければいかぬのだというなら、それはそれなりの根拠がありますよ。しかし、はっきり言って、厚生省はこの調査もやっていないんですね。これは大変乱暴といえば乱暴なやり方だと私は思うんです。  それで、今病院の状態はどうなっているかというのをお聞きしましたよ。ある病院長さんは、この十月一日に間に合わせなければいかぬでしょう、だから、何とか患者さんに出ていってもらおうということで、夜遅くまで一人一人説得して、もうあなたはここにおれないんだと言ってやっているというんですよ。こういう実情があるわけですね。  では、お聞きしたいと思うんですけれども、今回この改定でとられる、看護料の大幅な減額を強いる、六カ月をめどにする、二十八日以内とか六十日、九十日以内の在院日数の制限によって、介護は一定充実するけれども看護力は引き下げてもいいなんというのは、医学的にといいますか、どのような根拠があるんでしょうか。六カ月以上たった人を、これだけの日にちがたった人はもう下げてもいいですよ、看護力は低下していいですよなんという根拠はどこにあるんですか。
  205. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 いろいろお考えがあろうかと思いますけれども、入院治療を要します患者の病状につきましては、一般的に急性期を過ぎて慢性期へ移行する、こういうことになるわけでございまして、その病状、病期にふさわしい診療報酬が必要であるというのは、これは既に言われているわけでございます。  これまで社会的入院に対しましては、私どもだけではなく、いろいろな方面から是正しろ、こういうふうな意見が寄せられてきているわけでございまして、これを漫然と放置することは厚生省の怠慢である、こういうことにもなるわけでございます。  しからば、なぜ六カ月かということでございます。これまでも社会的入院に関します中医協等におきます議論におきまして、六カ月を基準として当然のことのように議論がされてきたわけでございまして、社会的入院、これはまさに社会的な概念だと思いますけれども社会的入院という患者数を推計するときにも、六カ月を超える人たちをまさに定義づけて行われてきたわけでございます。おおよそ六カ月を過ぎますと急性期の治療はほぼ終息する、こういうふうに考えられているわけでございまして、事実、九八%の方が退院をされております。  したがいまして、これを前提にいたしまして六カ月、こういうことにいたしたわけでございまして、今回の一般病棟におきます老人の長期入院患者の包括点数を導入いたしまして、先ほど申し上げましたように、看護要件の緩和、こういうふうな条件はつけておりますが、医学上どうしても必要だ、こういうものについては例外を設けているということでございます。
  206. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今のお話を聞いてみましても、やはり医学的な根拠はないんですよ。あなたが言うように社会的な基準だ、一般的に六カ月を超えるとと言われている、これが当然視されると。根拠なんてないんですよ、医学的に言えば。  そして、あなたが今言われたように六カ月を超えると急性期はなくなって、一定のそういう治療はなくなるんだと言われるけれども、それだって実態はどうなっているかつかんでみえないわけでしょう。はっきりしたデータはないでしょう。そういう点では、私は、もっと正確に、六カ月を超えた人たちについてはどうなのかという問題についても本当によく調査をしていただきたいと思うんです、実態はどうなっているのか。  それで、先ほど言われたように、医学的な問題でいうと一定の除外項目を設けているというお話もありましたね。確かに今回のケースの場合に、医学上やむを得ないということでがん患者さんなんかを、七項目を示して対象から除外しております。これも、七項目と絞った根拠は一体何なんですか。この病期、この状態しかだめだという根拠は何かあるんでしょうか。
  207. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 確かに七項目、考えられるケースを少なくとも想定して中医協で御議論願ったというふうにお聞きしておりますけれども、八番目に、「その他上記に準ずる場合」、こういう項目があるわけでございまして、これで全部カバーしたということではないかと思います。したがいまして、今後、適宜時期を見て追加ということは当然あり得るというふうに考えております。
  208. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この問題についても、医療現場の実態をもっとよく調べていただきたいと思うのですね。  例えばこういうケースがあるんですよ。この除外規定になるために注射で抗がん剤を打つ、こういう条件が必要なんですね。それも二週間以上投与している患者、こういうようになっています。  ところが、現場で聞いてみますと、例えば末期がんの治療が必要な高齢者という場合は、注射で抗がん剤を打ち続けるなんという例はほとんどないというわけですよ。そうしますと、どうなるかというと、七項目に当てはめようと思うと、無理やりに注射をずっと続けなければいかぬ。こんな末期の高齢者について、普通はやらないようなことも七項目に当てはめるためにやらなければいかぬとか。これは二週間と限られているものですから、二週間以前で亡くなったという場合は適用除外になってしまうのですね。そうすると、なるべく二週間以上は生き長らえていただかないとお金が、必要なものがとれない、こういうことで、項目に病人を当てはめてしまうみたいなやり方になってくる。無理に期限で切るとか、この病期だけで切るみたいなやり方だと現状に合わないケースが幾らでも出てくるし、現実には現場にはそぐわないんじゃないかというふうに言われているわけですね。  この点は先ほどその他の項目というか、さらにもう少し幅広く一定の除外項目があると言うんですけれども、例えば先ほど言いました末期症状のがんの患者さんでも、高齢者の場合やいろいろなケースがあるけれども、例えば現場の医師がこれはどうしても医療上必要だと判断した場合は、この七項目に限らずに看護料をダウンさせない、六カ月といってもみんな六カ月が社会的な入院じゃないですから、それは現場の医師がやはり医療上必要だと判断する場合にはダウンしないという扱い方はできるんでしょうか。
  209. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 極めて大量な患者さんを相手にしたものでございますので、しかも日々生起するということでございますので、やはり制度を運営するからには、一定の要件というのは割合明確にわからないと制度運用ができない面があるわけでございます。したがいまして、機械的という言葉も出てくるわけでございますけれども、ある程度こういう制度を運営していくという点では、すべて柔軟にというのは難しいのではないか、こういうふうに考えております。
  210. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 これは厚生委員会で論議しているんですけれども、医療制度という場合に、もちろん制度があるんですけれども、その前に一人一人病気になっている患者さんがあるわけですよね。そういう一人一人の人たちの医療が本当に保障されていくのか。ちゃんと医療を受けられる、そういう条件をどうやって整えるかというのが厚生省の仕事だし、私たち厚生委員会のメンバーとしても考えなければいかぬと思うのですよね。  ですから、確かに制度は当然必要ですよね、制度をつくる場合にも、本当に一人一人の姿を思い浮かべながら、こういう運用の場合にはどうなるだろうか、やはりもっと現場現場の、それは特に医療の現場ですから生死にかかわる問題になるわけですね。制度上あなたはこれ以上病院にいていただくと病院の経営が赤字になってやっていけません、出ていってくださいという場合には、さっきの方、例えば足を切断しなければ退院させる道がないという場合は、足を切断して出ていっていただけませんかというふうに、病院の側でいえば、大幅に看護料がダウンするということを考えればそういうことを言わざるを得ないとか、実際には、脳梗塞で鼻から管を通し栄養をとっている、そしてたんの吸引をしょっちゅうやっているこの方でも看護料は半分になりますから、できたらたんの吸引は二回を一回にしてやりましょうかなんということは医療の現場では通用しないわけですよね。  そういう点では、制度制度としてあるけれども、その制度が、本当に生きている、また生死を争っている患者さんにとってちゃんと適用されるのかどうかというのは見届けて制度をつくるというのが厚生省の姿勢じゃないかと私は思うのですけれども、その点、考え方の上で、大臣、いかがでしょうか。こういう制度をつくるに当たって、現場にいる人たちが実際には生死をさまよっているときに、ちゃんとこの制度が生かされるといいますか、その患者さん一人一人を大事にする制度になっているのかどうかというのを見届けるということは大事じゃないでしょうか、いかがですか、大臣
  211. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘の気持ちはよくわかりますし、大事なことだと思います。  ただし、この十月一日からの改定についても私も説明をお伺いいたしましたけれども、これは選択肢を設けておりますので、七つ以外でも、八項目以降、必要に応じて追加することができますし、従来の看護点数にプラスアルファをしてやることも可能な状況の道は開かれておりますから、委員のおっしゃるような、どうしても一般病院で社会的入院だと思われないような、本当に必要な医療を必要とされる方はやはりそれなりの対応があってしかるべきだと私も思いますが、類型的にこういうことになっておりまして、一般病院でございますから、マクロ的に社会的な入院制度というようなものを排除していくということもまた一面医療制度の合理化に必要でございますから、そして、初めてそういうことによってどうしても必要な医療給付がそこらに重点的にできるという側面もございますので、私は、この制度は合理性が一〇〇%あるかどうかはともかくとして、類型的にこういうやり方については理解を示しておるものでございます。
  212. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 類型的にと言われますけれども、実際には、現場の医師の判断が治療上必要だと考えていても、この制度がある以上は、退院させて病院の経営を何とか持ちこたえるか、それとも病院が赤字でもその患者さんを引き受けるかということを迫られた場合に、その瞬間瞬間の現場の医師の判断というのがとても大事だと思うのです。  ところが、こうやって線を引きますと、その現場の医師の判断が、こういう改定によって、入院が必要だ、退院ができるとか、治療が必要だというものを、経済的な条件でといいますか、経済的な競争力で縛ってしまうという状況がこの制度で生まれてくるのじゃないかというふうに思うのですね。  そういう意味では、現場の医者、そして医療関係者、こういう人たちの判断というのをもっと信頼して、こういう大変微妙なケース、現場の医者が必要だという場合にはきちんとその判断が生かせるような、そういう制度にするべきだというふうに思うのです。  もう一つ、医療の問題とは別個に私はお話ししたいと思うのですけれども、例えば、今言われたように、医療行為がほとんど必要のない方で、実際には社会的入院という方も私はいらっしゃると思うのですね。そういう場合にはできるだけそれを解決するようにするというのは、それはだれもが思っていることだし、私もそのように思います。  しかし、例えば、今介護保険方向で準備されているのですけれども、新ゴールドプラン一つとってみましても、地域によってはその準備が十分進んでいないという状況があるわけですね。ホームヘルパーさんを一〇〇%達成しても、厚生省の基準でいいますと、必要な人の四割ぐらいしかホームヘルパーさんを確保できないという状態ですから、実際には介護が不十分な中で病院から出されてしまうと大変なことになるという問題も一つはあります。  それからもう一つは、実際には、病院から出た場合に、過疎地なんかでいいますと、ひとり暮らしで、帰ってもだれもいないとか、近くにそういう介護施設がほとんどない、先ほどいろいろ出てきましたけれども、こういう場合もあるわけですね。  そうすると、医療的な判断と同時に社会的な状況も含めて、そこに患者さんがとどまらざるを得ない実情といいますか、それはそれで好ましくないのだけれども実態としてはある。それを六カ月、三十日と期日で切っていくと、ここにもまた無理が生じてくるということはあるのじゃないでしょうか。その点、いかがですか。
  213. 宮下創平

    宮下国務大臣 ケース・バイ・ケースで、ケースとしては委員の御指摘のようなケースも容易に想像ができます。したがいまして、この十月一日からの診療報酬改定は、これでまずスタートさせていただいて、その上で、委員の御心配のようなケースがあれば、ケース・バイ・ケースで親身になってそこの相談はしながら、必要な方には十分な医療が給付できるようにすべきものだというように考えております。  社会的入院の問題は、これは共通の認識がおありだ。今の発言、私もそう思います。したがって、そういうものは排除しながら、医療の効率性を高めるという点はぜひともやらなければなりません。  しかし、その陰で今おっしゃられたようなケースがよもや発生するとすれば、社会的な問題はともかくとして、医学上の施療が必要な場合は十分検討しなければならぬかと思いますので、発足した後、よく実態を見きわめて、新しい試みでございますから、ケース・バイ・ケースで対応していかなければならぬ、このように思います。
  214. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 まずスタートをというお話なんですが、患者さんの側という立場と同時に、医療機関の立場から見ると、今これをスタートさせると大変なことになるという点をもう一点お話ししたいと思うのです。  先ほど紹介しました保団連の病院調査で、百五十四の病院を調査したのですね。そうしますと、一般というのが九十四、一般と療養型の併設施設が二十八、それから一般病棟でないというのが三十二、立場はいろいろな病院が入っております。今回の改定で影響を受けると答えた百十七病院の年間の影響額を聞いたのですね、そうしたら四億四千五百万円、こういうふうに答えておられます。加算が計算されていないものが多いので、実際には、この制度が実施されるとさらにその金額が増額するだろう、一病院当たりで大体四百万円弱の減収になる、こういうふうに答えてみえるわけです。実際に調査をしてみますと、六十床の病院でも年間一千万円以上の減収になるというケースも当然出てくるわけですね。  それでどうなるかというと、結局これだけの一千万単位という形の減収になりますと、とても病院の経営はやっていけない。そういう点でいえば、長期入院者はどういう状態であっても、頼み込むのも含めて強制的に退院をしていただくしかない。そうしなければ病院がつぶれてしまうんだ。  それで、ある地域なんですけれども、過疎地域で平均百日の在院日数を超えている病院があるわけですけれども、ここではどうなっているかというと、療養型病床群とか特例病床にしなければやっていけない。こういうところはどんどん療養型になったり――選択の幅があるので選べるというんですが、かなり大幅に管理料も下がるわけですけれども、それでもみんな次々と療養型に変わっていって、一般病床が過疎地域のところではなくなってしまう、こういう事態も地域で起きているわけですね。  そうしますと、地域医療そのものが崩壊していくといいますか、一般病院がなくなっていくというわけですから病床がなくなっていく、こういう事態があるわけです。  病院を経営されている、御苦労されている皆さんからいいますと、今まででもかなり高齢者については入院の医学管理料なんかが一般と比べてどんどん下がってきているわけですね。それで本当に辛うじて苦労してやってきているというのがあるけれども、これ以上やると、今でもぎりぎりぎりぎりと、ここまでここまでと頑張ってきたけれども、もう限界だという声が生まれているわけです。ですから、患者さんの側の医療上の重要な配慮というのは大事ですけれども、同時に、この制度が実施されると、医療機関が本当に存続できるかどうか、こういう事態になっている。  そういう点では、私は、大臣がまずともかく一歩スタートしてから問題点をいろいろ出していただいて検討するというようにお答えいただきましたが、まだ実施までに時間がございますので、その間ももう一度医療機関の実態どもぜひお調べいただいて、そして何としても十月実施については強引に進めるということがないように御検討いただきたいと思うんですけれども大臣、いかがでしょうか。
  215. 宮下創平

    宮下国務大臣 このこと自体についての実態調査というのは実施していないと言っていいかもしれませんが、一般的に、こうした一般病院あるいは療養型の病院等の実態については厚生省としても篤と把握しておるということでありますので、今委員の御指摘のように、病院経営というものが成り立たなければ医療も成り立たなくなるという側面は否定できません。  しかしながら、今回の診療報酬の問題は、全体として診療報酬を四月から二・五%引き上げる中で、この十月の問題だけは上がるところもあれば下がるところもあるという、一つの合理化の目標値として定められたものだと理解します。したがって、これだけで議論をなかなかできないわけでございまして、診療報酬全体のアップ、薬剤費も引き下げておられますけれども、そういう全体的な視点の中で経営的な問題は対処していかなければいけないのではないかというように感じます。
  216. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 先ほど、一番前提になるこういう患者さんの実態、こういうものについても今大臣は十分調査していないと言われたんですが、実際には厚生省は去年の十月から十一月にかけて六カ月以上の長期入院者に対する調査をやってみえるわけですよ、一万一千五百九十九人。ところが、まだ結果が出ていないんです。私もこの結果で実施されているのかなと思って聞いたら、まだ取りまとめ中だと言うんですね。そういう意味では、私は、取りまとめ中なのに、社会的な入院がある、類型的にはいろいろあるというので進めるというのは、やはりちょっと乱暴なやり方だというふうに思うんですね。  そういう点でも、実態調査が多分間もなく出るだろうと思うので、この実態調査の内容もよく吟味していただく。そして、各医療機関についても、一体これで医療機関としての役割が本当に果たしていけるのかという点でも、まだ時間がありますので、ぜひ調査もよくしていただいて、十月実施についてはぜひ検討、見直しをしていただきたいと思うのです。  確かに、大臣が診療報酬全体の中でというふうに言われるその意味もわかります。しかし、医療という現場の場合には、一人一人の生きた患者さん、人間というのがあるわけですから、それは、大臣がそれこそ就任のごあいさつの中でも厚生のあり方というものをお話しなさっていると思うんですけれども、そういう生きた患者さんの姿を見てきちんと政策化していくということが大変大事だと思うんですね。  そういう点では、期日で切っちゃうというやり方なんかはもっと見直しをする必要がありますし、特に高齢者の場合には病気が急変するということもあるわけですよね。そういう場合には、慢性的にずっと余り介護が必要でないかなと思っていても、突然病状が悪くなって命にもかかわるケースがあるというのは、かつてこの委員会でも日本医師会の代表の方が来てお話しになったケースもあります。そういう高齢者の状況なんかもよく病状、病態というのをつかみながら施策をやるべきだというふうに思うんです。  特に、これは言うまでもありませんけれども、老人福祉法の第二条の中では「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。」こういうふうに述べているわけですよね。  そういう点では、本当に苦労されたお年寄りの皆さんには、これでもかこれでもかみたいな、実際に印象はそういう印象が昨年の医療の改悪から含めてあるわけですよ。そういうものに対する厳しい批判が今度の参議院選挙の中にもきちんとあらわれている。その点もよく踏まえてこの問題に対処していただきたいということを最後に私要望して、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  217. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。
  218. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。  宮下大臣御就任おめでとうございます。今後ともおつき合いのほどをよろしくお願いいたします。  世の中で怖いものというのは、よく地震、雷、火事、おやじというふうに言われてきまして、私は依然として地震は被災地の出身ですから非常に怖いものだというのを体で実感しているのですけれども、今いろいろな方と話しますと、もう雷や火事やおやじというのは余り怖くなくなった、最近は地震、ダイオキシン、環境ホルモンが怖いねということをよく話します。  それはなぜかと申しますと、まず目に見えないですね。色がついているわけではなくて、ダイオキシンが降り注いできましても青や赤やそのような色が全然ついていないし、見えないということ。そして、その影響が直ちに出ないということですね。将来的に非常に不安を持った内分泌撹乱物質であるということ。そしてもう一つは、出たときにはもう遅い、取り返しがつかないというのがダイオキシンの恐ろしさであり、環境ホルモンの恐ろしさだと思います。  それで、表敬訪問みたいな感じですが、まず大臣に、環境ホルモンなんかの国民の不安という声が届いていらっしゃるかどうか。大臣自身、このダイオキシンや環境ホルモンに対しての危険性なり、厚生省としての今後の対策に対して、大ざっぱでいいですから、ごあいさつがわりに御答弁をお願いいたします。
  219. 宮下創平

    宮下国務大臣 お答えします。  まず、大臣就任に当たっての祝意を受けまして、ありがとうございます。  ダイオキシン問題、いわゆる環境ホルモン、内分泌障害の化学物質と言うようでございますけれども、こうした非常にいわば未知の世界の物質がかなり影響があるのではないか、また、現実にそういう可能性が指摘されているわけでございます。  私も環境庁長官をやりましたときにダイオキシンの問題も聞きましたが、まだ基準等も設定されていないという状況でございましたが、ようやくこのごろ廃棄物処理施設の基準等が定められるようになりました。ダイオキシンは微量であっても大変人体の生理に影響するところが大きい問題でありますから、これは看過できない問題でありますから、十分いろいろな面で研究をし、調査をし、また必要な対策を講じていくべきものだというように考えております。  ダイオキシンも環境ホルモンの一種だとも言われておりますけれども、これもまたいろいろの化学物質がございますので、これからやはり知見を深めていく、そして調査をきちっとやっていくこと、そして対応措置をその時々に応じて、万全でないにしてもあとう限り方策を講じていくことがぜひとも必要だ、こう考えております。
  220. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございます。  それに関連しまして、きょうばいわゆる環境ホルモン、まず最初にビスフェノールAのことで質問をいたします。  これは八月二十七日の新聞なんですけれども、大体各新聞一面で取り上げましたけれども、学校給食に使われているポリカーボネート、これからビスフェノールAが溶出するということで、私も昨年の十一月厚生委員会でも質問いたしましたけれども文部省の方が調査をしてくださいまして、各地の使用状況を調べてくださいました。小中で大体四割の学校給食でこのポリカーボネート、PC食器が使われていることがわかったわけなんですけれども、自主的にその一割に当たる市町村はこのポリカーボネートの食器を使うのをやめた。残りの九割に関しては、依然使用しているか、今後かえていく予定があるということなんですが。  例えば、私も学校給食の市民運動というのをやっていたのですけれども、これの表を見ますと、東京都では二%しか使っていないのですね、ポリカーボネート。青森では七五%使っている。でも、選べないのですね。お隣の町は本当に強化磁器でいい、環境ホルモンの心配のない給食の食器を使っているからといって、ここに住んでいる子供たちはそれを選びようがない、食べなければいけない、そのようなことがございます。  文部省さんにまず伺いたいのですが、今回のこの調査の経過と、規制をしなかったという経過について伺いたいのですけれども、お願いします。
  221. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  学校給食の食器の安全性につきましては、食品衛生法に基づきます基準が定められております。どういった食器を使用するかにつきましては、その基準を満たしているものについて、学校給食の実施者であります市町村が地域の実情などに応じてそれぞれ判断すべきものというふうに考えておりまして、現に、今お話が出ましたポリカーボネート製のほかにも、アルマイトとか陶磁器とか、いろいろな種類の食器を使っているわけでございます。  ポリカーボネート製食器につきましては、厚生省は、専門家の意見も聞いた上で、現段階における知見においては使用禁止等の措置を講ずる必要はないという見解をことしの三月に出されているというふうに承知をしております。他方、内分泌撹乱物質が人体に影響を与えるメカニズムについては、現在、厚生省関係省庁で調査研究が進められているというふうに承知をしております。  私どもとしては、こうした省庁と密接な連携をとりながら、都道府県関係教育委員会等、関係方面に対して必要な情報を提供していきたい、それが私ども当面の行うべきことではないかというふうに考えておりまして、十一年度の概算要求で、一つは、ポリカーボネートを使っている食器の溶出試験を、実際に使っている市町村の半分の市町村につきまして溶出試験をしてみたい、そして全国的な状況というものを把握をしたい。  それからもう一つは、内分泌撹乱物質に関する情報の収集、それから、それをインターネットで提供する、そういったことを私どもとしては実施をしたい、このように考えておりますが、いずれにしても、そういった情報なども参考にしながら各市町村等で適切に対処されるようお願いをしているところでございます。
  222. 中川智子

    ○中川(智)委員 文部省さんは、小型焼却炉のときには、いち早く国の規制に先駆けて小型焼却炉の廃止をされましたよね。やはり厚生省のいわゆる基準ということが、文部省が待たなければいけない一つの原因になっているというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  223. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  おっしゃるとおりでございまして、ダイオキシンにつきましては、小型のごみ焼却炉については具体的な基準がございませんでした、また人体への影響について科学的に認められておりますので、そういったことから焼却炉を使わないというふうな指導をしたところでございますが、今回の場合には、先ほど申し上げましたように、食品衛生法に基づく基準がございますので、私どもとしてはそれを尊重していきたいというふうに考えております。
  224. 中川智子

    ○中川(智)委員 では、次に厚生省の方に伺います。  これは私の知り合いのところの保護者に教育委員会から配られたペーパーなんですけれどもかなり現場は混乱しておりまして、新聞記事にも、どうしたらいいかわからない、やめたいけれども明らかに危険じゃないということだし、非常に混乱しているというのがこのペーパーからも見てとれるのです。いろいろダイオキシンに対する心配事が書いてありまして、今後とも食器の材質等の検査を継続するとともに衛生管理の徹底を図り、より安全な学校給食を実施したいとかと、ちょっとわけがわからないというのが親の印象なんですけれども。そんなふうに安全か安全じゃないかわからない、でも厚生省は直ちに心配はない、人体に影響はないと言っている、今後のいろいろな検討を待ってやはり厚生省もきっちりした基準を出すのではないかというふうに待っているわけですけれども。  厚生省がことしの三月十三日に食品衛生調査会の毒性・器具容器包装合同部会というのをされまして、その議事録を読ませていただいたのですけれども、これはたった一回だけで終わっているのですね。それだけ充実した議論で、きっちりした結論というのが出ているのかなと思って読みましたら、これ一回では決して結論が出ていない。今後も引き続き、この合同部会というのは、特にこのビスフェノールAの、学校給食の食器に限ってでもやるべきではないか。そのような要望を交えて、厚生省の方に、この検討会というのは今後も引き続いてやるおつもりがないかどうか、一回だけで終わってしまうのかどうか、それを教えていただきたいと思います。
  225. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 内分泌撹乱化学物質につきましては、たびたび申し上げておりますように、まだ科学的にはほとんど解明をされていないという中で、OECDを中心にした国際的な取り組みの一環として、我が国でもさまざまな検討を行っているところでございます。  ポリカーボネート製樹脂の食器等の安全性につきましては、今先生指摘ございましたように、三月十三日に、直近の科学的なデータをもとに食品衛生調査会の御意見をお聞きしたところでございますけれども、現段階における知見を全体としてまとめてみれば、使用禁止等の措置を講じる必要はないということでございますので、私どももそのように認識をしているところでございます。  しかしながら、冒頭申し上げましたように、内分泌撹乱化学物質に関します問題は新しい問題でもありますし、また、科学的にもまだ十分解明をされていないということもあります。将来的にこれは科学的に解明される必要があると考えておりまして、我が国におきましても、現在種々の調査研究を進めているところでございます。  こういった調査研究の結果、あるいは国際的な分野での知見の集積ということが図られる段階で、適宜食品衛生調査会を開催し、御検討をいただきたいと考えております。
  226. 中川智子

    ○中川(智)委員 厚生省というのは国民の生命と健康を守るところですね。それは、当然予防というのも入っています。今の小野局長のお話の中に、解明された時点でとおっしゃいますけれども、解明されたときはもう遅いというふうに思うのですね。そのあたりはどうなんでしょうか。まだまだすごく時間がかかる、概算要求で研究調査費もきっちりととれて、そのように研究調査してくださることはうれしいのですけれども、もう解明されたときは遅い、疑わしきは使用せずという発想は厚生省にないのでしょうか。お願いします。
  227. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 これらの問題、特に微量化学物質が長期的に人間の体にどういう影響を及ぼすかという分野につきましては、これは何も今始まった問題ではございませんで、従前から、例えば職場での職業がん問題等々、いろいろな問題があるわけでございます。別にこれが職業がんと同じだというふうに申し上げるつもりはございません。  先ほど御答弁申し上げましたように、解明されたというのは、これは必ずしもその全容が明らかになったらということは意味しないと思います。いろいろな実験結果、いろいろな調査結果から、このレベルではこういう問題が起きそうだということになれば、どういうアクションをとるかということも含めて継続的に検討をすべきものというふうに考えております。
  228. 中川智子

    ○中川(智)委員 そうしたら、局長にもう一度伺います。  発達段階で子供、成人、そして高齢者とか、いろいろありますね。環境サミットのときに――特に子供はいわゆる感受性が強い、小学校、中学校の学校給食の食器なんですね、一番感受性の強い子供たちに、そのようなさまざまなものがある程度解明されて、その時点で出すというのは、私は遅きに失すると思いますが、もう一度、そのあたりのことだけちょっと、短い答弁で結構ですが、お願いします。
  229. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 サミットでそのような御議論があったということは十分承知をいたしております。あるいは国際的にもそういうお話があるということは承知をいたしておりますが、ただ、問題は、子供に着目してどのようにして評価をしていけばいいかということについては、まだまだこれは議論の端緒でございまして、私どももいろいろな方にも御意見をお伺いするわけでございますけれども、確たるものがないというのが実情でございます。  さはさりながら、子供たちの健康を無視していいと申し上げているつもりでは全くございません。しかしながら、科学的にそれなりに一定の解明を見なければやはり適切な対応は打てないだろうというふうに考えております。
  230. 中川智子

    ○中川(智)委員 でも、いろいろお母さんたちやお父さんたちの話を聞きますと、やはり文部省の背中を押してくれるのは厚生省だと。厚生省がそれに対してきっちりとした姿勢を見せてくれることを自治体もみんなも待っているというのが声ですので、そこをしっかりと受けていただいて、疑わしきは使用せずというところで施策をちゃんとしていただきたいというのはあわせて要望としてお願いいたします。  最後にもう一つ、今母乳パニックと一般に言われているぐらい、母乳をやっているお母さんたちが不安に陥っています。これはやはりダイオキシンの濃度が――母乳をやっているお母さんたちが、自分の体はきれいになっていくけれども子供にある意味では毒を飲ませているんじゃないかというような不安を抱きながら母乳を飲ませておりまして、これもいろいろなマスコミで報道されていますけれども、母乳は本当に大丈夫かということで新聞記事になっているのですけれども。  これは兵庫県の尼崎で育児相談所を開く助産婦さんなんですけれども、この人は、個人的にいろいろな助産婦さんに呼びかけて、母乳と人工栄養で育てたそれぞれ百人の子供の健康状態を比較調査する計画を進めているけれども、もう個人のレベルでは非常にそれが難しい、限界がある、厚生省に本格的な調査をしてほしいということが書かれていました。厚生省は、母乳育児と人工栄養で育った子供たちの栄養調査というのをやるような御予定がおありかどうか。  私の子供がちょうど二十二歳なんですけれども、どんどんダイオキシン入りの母乳を、私いっぱい出ましたものですから飲ませたのですが、精子が半減しているというような、やはり十年後、二十年後にそのような形で出てくる。少子を憂えている厚生省にとってこれは非常に大きな問題だと思いますが、先ほどの質問に対してお答えをお願いします。
  231. 横田吉男

    ○横田政府委員 母乳中のダイオキシン類の濃度につきましては、平成六年から私ども調査研究をやってきておりますが、これによりますと、母乳の脂肪一グラム中の平均値が二十六・六ピコグラムということでございまして、この値について平成八年に厚生省検討会で検討を行っていただいたわけでありますけれども、これは心配される点もあろうかと思いますけれども、母乳については普通一年ぐらいということでございますので、一生涯にわたって摂取する場合の耐容一日摂取量の基準をそのまま用いて判断するのは必ずしも妥当ではない。また、母乳の役割といたしまして、乳児の発育でございますとか感染防止あるいは栄養補給という面で効果が非常に大きいということで、今後とも母乳を推進していくべきであるという報告をいただいております。  現在のところ、諸外国におきましても母乳の制限をしている国はないというふうに承知しておりますし、WHOの専門家の委員会でもかなり基準が強化されたわけでありますけれども、従来のWHOの母乳推進の勧告そのものを変更するというような議論は行われていないというふうに聞いております。  しかしながら、安全性の確保というのは極めて大事でございますので、私ども、現在も調査を進めておりますけれども、九年度からさらに調査地域を拡大するという一方におきまして、そういった母乳を飲んだ子供についての影響度をことしから調査研究に加えまして検討いたしたいというふうに考えております。
  232. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございます。なるべく早く前向きに取り組んでいただきたいと思います。WHOのTDIの見直しを踏まえて我が国の規制強化を望みまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  233. 木村義雄

    木村委員長 次回は、明九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会