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1998-09-14 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十四日(月曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       安倍 晋三君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    金田 英行君       岸本 光造君    小坂 憲次君       小林 多門君    佐田玄一郎君       桜井 郁三君    桜田 義孝君       津島 雄二君    中谷  元君       蓮実  進君    宮路 和明君       宮本 一三君    矢上 雅義君       山本 幸三君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    上田 清司君       生方 幸夫君    枝野 幸男君       海江田万里君    川内 博史君       北村 哲男君    古川 元久君       石井 啓一君    上田  勇君       大口 善徳君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    西川太一郎君       西田  猛君    佐々木憲昭君       春名 直章君    吉井 英勝君       濱田 健一君    笹木 竜三君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (内閣官房長) 野中 広務君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         通商産業大臣官         房審議官    岡本  巖君         建設省都市局長 山本 正堯君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         議     員 枝野 幸男君         議     員 古川 元久君         議     員 石井 啓一君         議     員 西川 知雄君         議     員 鈴木 淑夫君         議     員 谷口 隆義君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人         (金融危機管理         審査委員会委員         長)      佐々波楊子君         参  考  人         (日本銀行総裁)速水  優君         衆議院調査局金         融安定化に関す         る特別調査室長 藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 九月十四日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     渡辺 博道君   大野 松茂君     小林 多門君   大野 功統君     大石 秀政君   河村 建夫君     安倍 晋三君   倉成 正和君     岸本 光造君   砂田 圭佑君     桜田 義孝君   山本 公一君     小坂 憲次君  吉田左エ門君     宮路 和明君   岡田 克也君     生方 幸夫君   仙谷 由人君     川内 博史君   木島日出夫君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     河村 建夫君   大石 秀政君     大野 功統君   岸本 光造君     桜井 郁三君   小坂 憲次君     山本 公一君   小林 多門君     大野 松茂君   桜田 義孝君     砂田 圭佑君   宮路 和明君    吉田左エ門君   渡辺 博道君     矢上 雅義君   生方 幸夫君     岡田 克也君   川内 博史君     仙谷 由人君   吉井 英勝君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   桜井 郁三君     倉成 正和君   矢上 雅義君     愛知 和男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案内閣提出第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興治君外三名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案保岡興治君外四名提出衆法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等特例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提出衆法第四号)  金融機能再生のための緊急措置に関する法律案菅直人君外十二名提出衆法第五号)  金融再生委員会設置法案菅直人君外十二名提出衆法第六号)  預金保険法の一部を改正する法律案菅直人君外十二名提出衆法第七号)  金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案菅直人君外十二名提出衆法第八号)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等 が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等特例に関する臨時措置法案並びに菅直人君外十二名提出金融機能再生のためめ緊急措置に関する法律案金融再生委員会設置法案預金保険法の一部を改正する法律案及び金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、各案中、保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案に対し、北村哲男君外二名から、民主党、平和・改革及び自由党の三派共同提案による修正案提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。北村哲男君。     —————————————  債権管理回収業に関する特別措置法案に対する   修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 北村哲男

    北村(哲)委員 私は、提出者を代表して、民主党、平和・改革自由党共同提案に係る修正案について御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付したとおりでありますので、案文の朗読は省略いたします。  破綻金融機関不良債権処理は、私ども会派提案に係る整理回収機構日本版RTC)によって対処することを基本とすべきであり、中長期的には、サービサー必要性も認めるところでありますが、今回の立法は、現下の金融不良債権早期処理に限定した立法とすべきであると考えるものであります。  したがって、私どもは、原案の立法目的及び取扱債権の範囲を限定するとともに、悪質な取り立て行為を防止し、債務者の人権を擁護するための業務規制及び罰則の強化を行うなど、より限定的なサービサーの導入を提案するものであり、修正案の主な内容は次のとおりであります。  第一に、本法の立法目的が、金融機関等不良債権処理が喫緊の課題となっている状況に対応するためのものであることを明記することとしております。  第二に、サービサーが取り扱うことができる債権のうち、リース・クレジット債権貸金業者が有する貸付債権等は削除することとし、金融機関が有する貸付債権のみを取り扱うことができることとしております。  なお、金融機関と同列に扱われるべき、整理回収機構日本版RTC)、信用金庫連合会労働金庫連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫、信用事業を行う協同組合連合会農業協同組合連合会漁業協同組合連合会水産加工業協同組合連合会その他が有する貸付債権取扱債権に加えることとしております。  第三に、法務大臣の承認により所定の業務以外の業務を行うことができるとする規定を削除することとしております。  第四に、悪質な取り立て行為を防止するため、利息制限法が定める利息制限額を超える利息を伴う債務等については、その履行を要求することを禁止する、偽りその他不正の手段を用いることを禁止する等業務規制項目を追加するとともに、暴力団員等の使用、虚偽広告等について罰則を新設することとしております。  第五に、法律施行後五年を目途として、実施状況等を勘案して検討を加え、必要な措置を講ずることとしております。  以上が、修正案趣旨であります。  何とぞ、修正案に御賛同くださいますようお願いいたします。
  4. 相沢英之

    相沢委員長 これにて修正案についての趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 相沢英之

    相沢委員長 これより各案及び修正案を一括して質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤達也君。
  6. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 貴重なお時間をいただきまして質問をさせていただきます。伊藤達也でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。  今もサービサー法修正案が野党から提案をされたわけでありますが、今日までこの委員会でも、大変充実した、そして真剣な議論が続いているわけであります。そして、今回のこの金融の問題について政治がどのような形で答えを出していくのか、その山場を今迎えようとしております。  そういう意味では、私もこの国会に所属をする人間として、またこの委員会所属をさせていただいている人間として、何としてもこの委員会で、いろいろ充実した提案も出ておりますし、またいろいろな問題意識指摘をされているわけでありますから、そういうものを生かして成案をまとめなければいけない、そういう思いを持ちながら質問をさせていただきたいというふうに思っております。  私の質問は、基本的な問題そして総論的な部分についてぜひ両大臣中心質疑をさせていただければと思います。  まず初めに、連休の谷間と申しますか、大変お忙しいところ、御無理を申し上げまして御出席をいただきました堺屋長官にお伺いをさせていただきたいと思います。  堺屋経済企画庁長官は、就任以来、大変率直に、わかりやすく今の日本経済の問題について語っていただいているというふうに思います。しかし、今日本経済の実態、先週の金曜日にも国民所得統計速報値が発表されたわけでありますが、その内容を見ていても大変厳しいものがございます。  バブルが崩壊してから今日まで、幾つもの連立政権あるいは政権において、あらゆる経済対策についての政策出動というものを私はやってきたのではないかというふうに思います。財政出動についても、緊急経済対策ということで八十兆円以上にも上る財政措置をしてまいりました。また金利政策についても、これはもうこれ以上下げられるのかなというぐらい金利を下げてきたわけであります。  そういう意味では、財政政策金融政策、両方のあらん限りの力を使って今日までやってきたわけでありますが、なかなか今のこの厳しい経済状況から脱却することができない。これは、ある意味では何か構造的な問題にはまり込んでしまっているのではないか、そういう問題意識も持たざるを得ないわけであります。  そういう意味で、先週新しい統計が出たということも踏まえて、経済企画庁長官としての、今現在のこの経済状況がどうなっているのだ、そしてこの状況からどういう形で、力強い取り組みをしながら、日本経済というものを再生していかなければいけないのか、その問題意識についてお伺いができればというふうに思います。
  7. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず、現在の経済状況でございますけれども、我が国の経済状況は、残念ながら極めて厳しい状況にあります。  需要項目一つずつ見てみますと、個人消費は極めて低調であります。これは、個人の収入が減少している上にマインドが冷え込みまして、非常に財布のひもがかたいという状況が続いているからです。住宅建設は、マンションを中心にして一段と低下してしまいました。設備投資は、特に中小企業において減少が著しくございまして、二けたの減退が起こっているという状況です。いつもでございますと、日本不況はまず輸出から回復するということが多かったのですが、今は、欧米向けはまずまず好調でございますけれどもアジア向けが非常にアジア経済の停滞で悪いものですから、やっと横ばいという程度状況でございます。  特に憂慮すべきところは雇用問題だと私は考えております。雇用総数が減少しておりまして、しかも解雇される人、つまり、職場事情、仕事の事情で心ならずも職場を離れるという人の数がふ えております。最近、七月の統計でわずかばかり完全失業率が改善したわけでございますけれども、これは雇用数が減っておりますから、就職活動をあきらめた人がふえたのじゃないか。家事労働とか家事手伝いとか、あるいは大学院に再入学するとか、そういう形の人がふえたのじゃないかという気がしております。  こうした中で目下御審議いただいております金融市場の問題、これが経済の先行きを非常に不透明にしていると思います。  以上のような形で、現在の経済は極めて厳しい状況が続いていると認識しております。
  8. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 それに対してどういう処方せんを描いていくかということが今極めて重要であるわけでありますが、私自身、この委員会でもいろいろ議論になっておりますけれども、今やはり資産デフレのマイナスの強烈な影響というものを物すごく受けているように思います。  今長官からもお話がございましたように、逆資産効果とでもいうんでしょうか、個人消費が非常に低迷をしている、また中小企業中心に、設備投資についても非常に減退をしている、こういう状況があります。  もう一つは、貸し渋りの問題。これも資産デフレの大きな影響が貸し渋りにつながっているということを言わざるを得ないわけでありまして、これはバブルのときから比べて今日まで、株式そして土地を合わせると大体一千百兆円近い減価が起きている、その影響をもろに受けているわけでございますね。  その中で、この貸し渋りの問題についても、一体どうするんだという議論が今ここでも真剣に行われているわけでありますが、もう一度長官にお伺いをしたいのは、この貸し渋りがどうして起きてしまっているのか、そしてこれを解消するためには何をしなければいけないのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  9. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お尋ねのバブル後遺症、これによります資産デフレというのはかなり強烈なものがございます。  株式でいいますと、平均株価が一番高かった一九八九年の大納会には三万八千九百十五円しておりました。それが最近では一万四千円前後ということでございますから、略々三分の一になったというような下落でございまして、東京証券取引所時価総額で見ますと、六百六十兆円のものが二百数十兆円になっているというような状況でございますから、確かに大きな資産デフレがあります。  また、土地につきましては、全体としては割合比率が少ない数字が出ておりますが、取引の対象になっているような商業地域住宅地域につきましてはかなり大きな下落でございまして、仰せのように、千百兆円ぐらいの資産デフレが起こっております。  こういったことが経済不況幾つかの面で影響しています。  まず第一には、資産が減ったということで家計の非常な冷え込みが起こっている。これはどの程度かというのはいろいろ経済専門家の間でも議論があるわけですが、確かに資産が減ったことが消費マインドを引き締めて消費低迷に陥っている。これが第一にあります。  二番目には、資産が減ったことによって担保価値が下がったものですから、特に中小企業などはそれでお金が借りられなくなっているという問題があります。従来十億円した土地担保に入れて七億円借りていたのが、五億円に土地の価格がなると、銀行は返せと言ってまいりますから、担保割れという現象が起こっている。銀行の側に言わすと、これは貸し渋りじゃなしに担保割れだから貸せないんだ、こういうことになります。  そして三番目には、やはり銀行自体資産の縮小によって仰せのとおりの貸し渋り現象、これは確かに存在すると認識しております。  したがって、こういったことを解決するためには、家計マインドを将来に対して信頼を持たすということが第一でございます。同時に、あわせて保証制度その他で中小企業投資マインドを拡大していく。  そして中長期的には、やはり日本経済が発展するんだという確信を持たさないと、今直前のことだけでは解決できない。したがって、十六兆円の対策とか十兆円の追加予算とか七兆円の減税とかいうこととあわせて、またこの保証制度とあわせて、中長期的に日本経済が成長するという確信を持たすような政策をとりたい。これを小渕内閣では経済戦略会議で今練っておるところでございまして、近く次々と対策を出していきたいと考えております。
  10. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今、問題の分析、そして処方せんについてお話があったわけでありますが、そこで、大蔵大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。  今、問題分析の三番目の中に、銀行体力というものが相当落ちてきているという指摘がございました。この点について、予防的な措置も含めてお伺いをさせていただきたいのです。  実は私の手元に、ある試算がございます。これ、ちょっと銀行個別名が入っているものですから、そこは伏せて少しこの試算を御紹介させていただきたいのですが、今、大手十八行の銀行体力はどれぐらいあるかということについて、ある証券会社試算をいたしました。その前提が、為替レートが一ドルが百五十円だった場合、そして日経平均株価が一万五千円、そしてさらに、各行が住友銀行と同じ不良債権の七五・八%を債権償却特別勘定に積み、そして積み増した分はすべて赤字になって自己資本を減少させる、こういう仮定の中での試算であります。  これを見てみますと、自己資本比率が八%を超える銀行というのはたった八行しかございません。そして六%台が長銀も含めて四行、そして四%台が何と二行出るということになっております。これはあくまでも仮定でありますが、今厳しい株価状況でもありますし、これは相当に銀行体力が傷んでいるということは明らかになっているだろうというふうに思いますし、またもう一方で、銀行それぞれの間の体力格差も広がっているというふうにこれは言わざるを得ないのではないかというふうに思います。  これは、この委員会でも指摘をされているんですが、やはり日本銀行自己資本というものが、純粋な自己資本というものが欧米銀行に比べてやはり決定的に劣っている面がある。そして、日本銀行のこれは構造的な問題でありますけれども株式市場日本銀行システムというものがある意味では直結をしている部分がありますから、その問題が、景気が悪くなって株価が落ちると、自己資本に直撃をしてしまう、そのことによって銀行自己防衛をせざるを得なくなって資金回収に入らざるを得ない、こういう悪循環の中に陥りつつあるということが私は言えるのではないかというふうに思っております。  そうしますと、銀行体力を回復していくにはどうしたらいいかという問題と、それともう一つ、これだけ銀行体力格差が出てしまっているんだから、その格差を認めながらどういうふうに対処していかなければいけないかという問題を、二つ分けざるを得ないような厳しい状況に私は一方で直面をしているのではないかというふうに思います。  特に、この春、政府大手銀行に対して資本注入をいたしました。その後の様子を見ていると、やはり銀行経営者はもっと厳しい認識を持って対応をしていかないと、せっかく資本を充実させていくんだということでこの施策を打ったわけでありますが、残念ながら今現在はその効果が十分に出ていないわけであります。逆に体力格差というものが広がってしまっている。この部分を一体どういうふうに考えながら問題の解決をしていくのかということを、やはり真剣に議論をしていく。  今、与野党協議の中でもその部分についていろいろな議論がなされているわけでありますが、ここの点について、非常に難しい面があろうかと思 いますけれども大蔵大臣のその問題意識の一端をお披瀝いただければなというふうに思っております。  特に、本会議におきまして津島先生が、予防的見地からも、公的管理というものも含めて、この体力の弱っている銀行に対して何らかの措置をする必要があるのではないか、こういう提案幾つか、アメリカの例も引きながらされているというふうに思います。そういうことも踏まえて、少しお話をいただくことができればと思います。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変難しい、しかも根本的な問題でございますので、短い時間でお答えできないかもしれないと思いますけれども。  基本的には、長いこと大蔵省がやってまいりましたいわゆる護送船団方式というような行政、しかも金融は国際的な自由化もおくれましたので、比較的最近まで、殊に銀行でございますが、銀行間の競争というものは事実上存在しないばかりでなく、競争に勝とうというような意識経営者としては持たないで済む。持たないで済むということは、そこに極限的な責任感は余り高くないということでございます。  自分の銀行は大いにいい銀行だから、ひとつ隣の銀行を抜いてでも頑張ろうというようなことは、護送船団方式のもとにおいては余り友好的な行為でないというふうに見られますから、本当は強いところも余り強い顔もせずにつき合いをするというような、ぬるま湯と申しますか、そういうことが随分長いこと続いてまいりました。  たまたまプラザ合意という出来事がございまして、このころは日本銀行はみんな資本的には大きゅうございますから、世界の十指に、十本の指で全部なんということもございましたけれども、しかし、その後に御承知のようなことがありまして、全く今、今昔の感があるような現状でございます。  しかし、最近になりまして、そういうことは許されない、国際的にも自由化が行われましたし、国内的にも銀行行政が根本的に批判をされることになりましたので、ここに来て初めて、金融機関自己責任競争しなければならない、場合によっては落後するかもしれない、そういう精神がようやく生まれてまいりましたし、また外国からも、殊にインベストメントバンクはそうでございますけれども、たくさん入ってきまして、その人たちとも競争しなければならない、こういう状況に今ようやくなってきたというふうに私は思っております。  いわゆるビッグバンというものと不良債権の処理というものが同じ時点で起こったということは、実は、非常に不幸と申しますか、問題を難しくしておりまして、本来、政府銀行に金をつぎ込むなんということは自慢できることではございません。しかし、全体的な金融システムの不信が生まれたということで、やむを得ずああいうことをやっておるわけでございまして、突っ放した立場から見れば、こんなのは、どうも随分温情主義だと、外から見れば言われるかもしれません。しかし、日本銀行がすべてジャパン・プレミアムを払っているような今の時代には、これはどうしてもシステムの信用を回復するためにやむを得なかったというふうに思います。  ですから、これは本来の、銀行が自分でかち取って競争しなければならないという問題からいいますと、ちょっと逆のことをやっているに近いところがございまして、こういう体制を何とか早く脱却して、本当に銀行が自由競争でやる。そのかわり、それはやはりだんだん特化するかもしれません。リテールバンクもあり、ユニバーサルバンクもあり、あるいはインベストメントバンクもやがて生まれるかもしれない。そういうふうな自分の、あるいは地方銀行は地方の自分のお客様、そういうふうになっていく今過程にあるのだろう。  早くこの不良債権の処理を終わりまして、文字どおり、どこへ行っても競争できるような体質の強い金融機関が生まれなければならない。また行政は、それを妨げるようなことをしてはいけませんし、そのかわり、しかしその競争から生まれやすいいろいろな欠点についての検査、監査等は厳しくしなければならない、そういうことになっていかなければならないと思っております。
  12. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  続いて、もう一度経済企画庁長官にお尋ねをしたいことがあります。  これはもう一度戻って、貸し渋りの問題とも関係することなんですが、今非常に金利が低いですね。この低い金利の中で、いい企業と悪い企業を分けていくことは非常に難しい。悪意の債権は何なのか、不健全な債権は何なのかということを見つけるのは非常に難しい点があるのだと思うのです。  しかし、これを分けてやっていかないと、これは幾ら保証協会を拡充して保証を拡充しても、あるいは政府金融機関に多くのお金をつけても、そのことによってまた新たなモラルハザードを引き起こしてしまうところがある。したがって、ここの部分について新たなやはり知恵を出していかなければいけないという面はあろうかと思うのですね。実は、長官の所管外ではあるのですけれども、そのことについて長官なりの何かアイデアなりお考えがあればお聞かせをいただきたいというふうに思います。  それともう一点は、いい債権でもなく悪い債権でもなく、いい企業でなく悪い企業でなく、その灰色部分の処理が非常に難しい。例えば、拓銀が倒れて北洋銀行がこの受け皿銀行になった、そして第二分類の問題について、これは今いろいろ作業をしているわけですね。今のところはその中の三分の一についてはその債権を引き取ることはできませんよ、こういうことを今言っているわけであります。  これを分類していくに当たって、北洋銀行としては三つの条件というものを出した。一つは三年以内に再建ができること、二つ目は他行の協調融資というものができること、三番目には道内の営業基盤というものがしつかりあること。この中で二番目の問題に引っかかってしまってなかなかこの債権の引き取りができない。そしてこの部分については、極めて中堅規模、下請の多い企業が入っているという問題があります。  ここの部分を実際どうして対処していくのかという答えはまだ十分に見つけ出されていないような気がするのですね。その部分も含めて長官のお考えをお伺いできればと思います。
  13. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 大変難しい御質問でございます。といいますのは、各企業をいい企業か悪い企業か、善意にして健全な企業か悪意にして不健全な企業か、これを見分けることはまさに金融事業そのものなんですね。  日本でも外国でもそうなんですが、ある時期まで、例えば日本でいいますと一九六〇年代にはまさにそういうことを銀行がやっていた。そのおかげでソニーとか京セラとかいう新しい事業がどんどん成長したのだろうと思うのです。  ところが、ある段階から日本金融機関担保主義になりまして、担保評価能力はあるけれども事業審査能力はない。事業審査しなくても、土地担保さえしっかりしていたらこれは必ず上がるから、もう事業審査とか人物審査しないでいいという時代が起こったのですね。その担保であった土地があるいは株式下落したものですから、今やどれが信用できるのか、そういう能力を失ってしまった。これが日本金融機関の今直面している深刻な問題だと思います。  明らかにいい企業というのは、これはだれが見てもわかる。明らかに悪い企業もわかる。真ん中の企業について、担保はないけれども計画はしっかりしているとか、あるいは担保はあるけれども今は赤字だとか、こういう企業をどう見分けるかというのはケース・バイ・ケースでいろいろだと思います。  私どもも、北海道の方に職員を派遣いたしまして、今御指摘の旧北海道拓殖銀行取引先を北洋銀行がどのように受けとめているか、いろいろと 調査もいたしました。御指摘のとおり、三年以内に立ち直るというか確実に黒字になるという見込み、これもなかなか、どうずればその見込みが立つか、問題が非常に難しいところがあります。  それから、他行との協調というのは、北海道に限られていると非常に難しいものですから、北海道に限られているところはなるべく救いたい、北海道以外でも事業をしているところは他行との協調というようなことを言っておりますが、この他行の審査がまたどういう状態になっているか、これはそうそう簡単に教えてくれませんから非常に難しいところがあると思います。  こういう長い連鎖が、一つがつぶれるとそのまた先が、納入業者とか下請業者に影響する、それがあるものですから、危ないと思ったら買い渋りどころか売り渋りが起こってくる、これが金融の大変恐ろしいところなんです。  だから、ぜひとも、この金融政策については早い機会に社会的コストが最低になるような方法を国会の先生方に選んでいただきたい。経済企画庁といたしましても、それを切に期待しているところでございます。
  14. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今長官からお話がありましたように、この金融の問題や貸し渋りの問題を見てみますと、やはり日本の場合には、本当の意味での金融機能というものがあるのかということを思わざるを得ない。今長官がお触れになられましたように、安全第一と称して日本銀行担保主義に走ってきた。そのことによって、実はこれだけ膨大な不良債権というものを発生させてしまった。その過程の中で、本当は事業を審査する能力を持たなければいけないわけでありますが、その能力を磨くこともやめていったわけであります。  実はこの委員会で、長銀のノンバンクの経営者の方にも来ていただいて、参考人招致をさせていただきました。その中の一行は、自分のところはベンチャーキャピタルをやっているのだ、こういうお話をされたわけであります。私も実は、大変私ごとになりますが、今政治家の仕事をする前に、実はちょっとピザ屋の仕事をしていまして、その前に、アメリカのベンチャーキャピタリストと組んで、アメリカのベンチャーが持つ技術と、そして日本の持つ技術、そして経営資源というものを合わせてジョイントベンチャーをつくることができないか、そういう仕事をしたことがあります。  そのときに、アメリカのベンチャーを連れてきて、日本銀行、長銀さんのそのノンバンクも行きました。しかし、ここにはその事業をやはり審査する能力がもう決定的に欠けているわけですね。そういう能力をつけていくということを、これは非常に、中期的ということではなくて、相当な勢いで日本金融の世界の中にやはり打ち立てていかなければいけない。  それと、これに関連することでありますが、やはり日本の場合には金融のあり方が非常に単純過ぎる。もっとマルチのチャンネルをこれはつくっていかなければいけない。これは、大蔵大臣もその点については少しお話しになられているところでありますが、アメリカの場合には、保険原理に基づいて中小企業にお金を直接貸し出す仕組みもあるわけですね。やはりそういう市場をつくり上げていくということをしっかりやっていかないと、この問題についての根本的な解決にはならないのではないか、そういう課題に直面をしているというふうに思います。  引き続きまして、次の問題に移らせていただきたいと思います。  これは、当委員会の中でも一番議論になっているところではないかと思うのですが、検査監督機能の強化の問題であります。  監督庁長官、お見えであると思いますが、この委員会でも、長官に対していろいろな要望もあり、もっとしっかりとした検査をやって、そして情報開示をしてくれ、こういうことが繰り返し述べられているわけであります。金融監督庁という組織を預かる長官として、本当に国民の期待やあるいは国会の期待にこたえるために、私は、さらなる組織の充実、あるいは別の意味の、組織を機能させていくミクロ的な見地からの工夫というものが必要ではないかというふうに思いますが、その点について長官のお考えがあれば、お伺いをしたいと思います。
  15. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  金融監督庁が六月二十二日に発足をいたしましたときには、現下の大変厳しい公務員定員事情の中でお認めいただいた定員の中で発足させていただきました。しかし、到底その陣容では今検査の人員が不足だということで、この八月の末に機構、定員の要求の際にも五〇%の人員増をお願いしているところでございます。  ただ、ただいま委員指摘がありましたように、銀行にその審査能力が欠けているということと同じように、単に人をふやしただけで果たして本当の意味での検査監督ができるかということは、大変大きな問題ではなかろうかというふうに考えております。そういった意味で、私どもは、仮にお認めいただいた約五〇%の人員増につきましても、可能な限り検査監督のノウハウを有するそういった人材を広く、官のみならず民間にも求めていきたいというふうに考えております。  そういった意味で、現在、発足に当たりましては公認会計士の資格を有する方に五名来ていただいて検査官として採用しているところでありますけれども、やはりこういった視点で将来はこの検査監督の充実をこれから図っていかなければ、金融がこれからますます国際化していくのに対しましてもなかなか対応できないのではないかと考えているところでございます。
  16. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 持ち時間が参りましたので、最後に一問だけ大蔵大臣にお答えをいただければと思うのですが、やはり法律的な壁もあるような気がするのですね。例えばノンバンクの問題についても、今の銀行法上は監督庁がその中に検査に入れませんよね。そういう意味では、やはり銀行法等の改正も含めて、検査のあり方というものを強化していく、そのことにも踏み込んでいく必要があるように思うのですが、その点、一点最後にお伺いをさせていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律のことになりますと、私が申し上げていいかどうか、ちょっとわからない点もございますけれども、今、伊藤委員がおっしゃいましたように、ここで背景が大変に大きく変わってまいりますものですから、それに関連するもろもろの行政もやはり大きく見直しをしなければならないということは、おっしゃるようにもう明らかだと私は思っております。
  18. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  19. 相沢英之

    相沢委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、川内博史君。
  20. 川内博史

    川内委員 民主党川内博史と申します。  大蔵大臣、私はこの金融特のメンバーではないのですが、きょうは特にお許しをいただいて質問するお時間をいただきました。大臣は、私が生まれる前からずっと政治家をしていらっしゃって、知識、経験、大変に高いものをお持ちでいらっしゃると尊敬をいたしておりますので、きょうはよろしくお願いを申し上げたいと思います。  実は、私は学校を出まして、銀行に一時期勤めておりました。しかし、学生時代ば大変にふまじめな学生だったものですから、いい銀行には就職できずに、中くらいの銀行の、しかも地方の支店でどぶ板を踏んで預金集めをし融資をしていたのですが、自分で言うのもなんですけれども、大変優秀な営業マンで、預金を集めたり貸し金をしたりするのは私は物すごく得意だったのです。  実は、こういう私でも、大学を出たときに、いい銀行に入りたいなと思ったのですね。そのときに、やはり日本長期信用銀行にも一応は会社訪問に行きました。長銀に行ってびっくりしたのは、白いスーツを着たすごい格好いい長銀マンが、白いスーツですよ、銀行員が当時白いスーツを着ていたのです、もう十五、六年前ですけれども。白 いスーツを着た長銀マンが面接してくれて、君、成績がこんなのではうちは無理だよと言われて簡単に落とされたという経緯があるのですけれども、だからといって、きょう長銀のことを話題にするわけではないですが。  そのとき私を採用してくれた銀行で、新入行員の研修というのがあるのです。その新入行員の研修のときに、融資の五原則というのを勉強しました。公共性の原則、収益性の原則、それから安全性の原則、あと四と五とは、きのうの夜思い出そうとしたのですけれどもどうしても思い出せなかったのですが、この融資の五原則に従って融資をしていれば絶対に間違うことはないんだぞというふうにその研修のときに教えられたのですが、どうもバブルの時期というのは、融資の五原則というのを大きい銀行さんほど忘れて大変な融資に走って、今こういう状況になっているというところなんだろうというふうに思うのです。  もともと銀行というのは、一般の私たち庶民が考えると、お金を商品として扱うわけですからお金自体はうなるほどあると思っていたら、最近は銀行にもお金がないらしい。銀行がお金に困っていろいろなところに無心をしているという状況がある。  一般の、私たち個人であるとかあるいは法人であるとかは何とかしてお金をかき集めるわけですけれども銀行だけはなぜか公的資金という名の資金をいただけるらしいということで、何か庶民の感覚からすれば、自分たちはお金がなければどうしようもないのに、銀行だけどうしてなんだろうという単純な割り切れない思いと、それはもう金融システムの安定化のためにはしようがないのだとか、いろいろな理屈をどれだけ並べ立てても、庶民感情とすれば、自分たちがお金がないときにはもう本当にどうしようもない状態になるのに、金融機関だけは公的資金という名の公的な与信を受けることができる、これはどう考えても割り切れないのではないかというのが庶民の素直な思いなのではないかと思うのです。  具体的には、日本長期信用銀行の問題でありますけれども、この間の委員会議論をお聞きしておりますと、私たち野党の方は、既に長銀はその経営について破綻を来しているじゃないか、なかなかに開示されない情報を断片的につなぎ合わせて、どうも破綻をしている、これ以上資金をつぎ込んでもむだではないか、公的管理に置いてその清算の手続を進めていくべきだという議論を展開しているわけですが、政府並びに与党の皆さん方は、まだ破綻はしていない、しかし、ここで公的資金を入れなければ破綻をするかもしれないというふうな認識でいらっしゃると思うのです。  まず議論の出発点として、私の今までのこの長銀に対する認識に間違いがないかどうか。大蔵大臣の、ここで公的資金を長銀に入れなければ破綻してしまうのだという、議事録でそう読んだ記憶があるのですけれども、それは間違いがないかどうかだけ御答弁をいただければと思います。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど学校をお出になりましたときの就職のことをお話しになられまして、確かに長期信用銀行、戦後、講和会議の後でございましたか、日本が工業化が必要なときの資本の提供者として非常に隆々たる銀行を築き上げたわけでございましたが、その後、市中銀行も長期資金を貸すようになりましたし、また、やがて市中銀行も普通信を発行できるというようなことになってまいりまして、長銀としては、銀行をつくりました当初の目的から、さらに広く金融活動に入らなければならない、非常に苦労をされて最近に及んだということと思います。  しかし、非常にはっきりいたしましたきっかけは、今年に入りましてからのある月刊誌の記述であったと思いますが、いわば危機説というものが流れまして、その危機説に従って金融債の新規発行が少しずつ難しくなるとかロールオーバーをしないで引き取りたいとか、株式にも急激な低下があらわれたりいたしまして、金融的にかなり苦しくなってきておったと思います。  そういう状況の中で、住友信託銀行と合併をするというお話が一たびできまして、長銀はリストラの計画を立てた。もうその段階では長銀自身は、長銀として末永く生き残ることは難しいという判断をされ、それにあわせまして、役員の責任であるとか退職金の返還であるとか、あるいは人員の削減、海外活動の停止、本店の売却等々、いわばこのまま置いておいて野たれ死にをする結果は、社会、日本ばかりでなく国際的に及ぼす影響が非常に大きいと判断をされた結果と思いますが、それをいわば住友信託銀行と合併することによって、何と申しますか、そこは、一粒の種、死なずば生きずばということがございますけれども、そういうことであったのかもしれません。  そういうことで、リストラ計画を立てられて、預金保険機構に公的資金の導入を仰ぐ、こういうリストラ計画を立てられたわけでございます。  したがって、つづめて申しますならば、長銀のことしに入ってからの現状というものは、何か普通の銀行以上に経営等々にミスがあったと申しますよりは、そういう危機説、いかにして起こりましたかはともかくとして、危機説から自然に被害者になっていった、そういうふうに私は見ておりますけれども、しかしそれは実はもう過去のことでありまして、今となれば長銀は、そういう形で社会的なコストをできるだけ低くしながら自分の身の決着をつけたい、こう考えているように私は見ております。
  22. 川内博史

    川内委員 今の大蔵大臣の御答弁、長銀の経営陣が大変に外的な要因、突発的な要因によって非常な経営難に追い込まれた、追い込まれつつある、そこで、関連ノンバンク三社に対する債権を損切りして、その分、公的資金を導入することによって住友信託に身売りをしようという決断をなされたのだろう、政府はそれに対して支援をするということだろうというふうに思うのです。  そうすると、日野金融監督庁長官もおっしゃっているのですけれども、この公的資金注入というのは、合併のための過少資本を補う必要があって公的資金を注入するのだというふうに御答弁をだれかの質疑のところでされていらっしゃるのですが、合併のための過少資本を補うために公的資金を注入するのであれば、外的な要因によって経営難に追い込まれてはいるけれども、そしてまた損切りをすることによって過少資本になるかもしれないけれども、資金繰り等に問題がなければ、長銀は長銀としてそれなりの合理化をし経営努力をしていけば十分生き残っていけるのじゃないかというふうに私は思うのですが、監督庁長官の御見解はどうですか。
  23. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  住友信託銀行と長銀との合併というのは、あくまでも両行の契約によって成立するものでございますが、その契約の前提としては、先日、高橋住友信託銀行の社長から発表されました三つの条件によって極めて明白になっていると思います。つまり、正常先債権のみを引き取る、それからデューデリジェンスを行う、それから関連会社あるいは関連親密先は切り捨ててほしい、この三つの条件がございます。  したがいまして、長銀といたしましては、この三つの条件を履行しませんと、本来望んでおります合併が成立しなくなります。したがいまして、先ほどから出ておりますように、関連会社を整理するであるとか、あるいは不良債権を処理するといったことになります。  そういたしますとPL上かなりロスが発生いたしますので、それを資本勘定で埋めるということになりますと、資本が非常に過少になります。御案内のとおり、資本というのは企業をしょって立つ力ですから、その力がなくなりますとやはり企業としては体力が非常に弱ってくるということにならざるを得ないと思います。  また同時に、合併の前提として、いろいろな施策を講じなければ合併が成立いたしませんので、それはどうしてもやらなければいけない。しかし、それをやるとやはり資本が少なくなる。資本が少なくなりますとどうしても力が弱ってくるということで、公的資本の申請をされるというふう に私どもは承知しているわけでございます。
  24. 川内博史

    川内委員 いや、だから私が申し上げているのは、今までの長銀の検査結果を通じて、金融監督庁として、過少資本にはなるかもしれないけれども、そしてまた、経営的に非常に厳しい状況に置かれてはいるかもしれないが、それは、長銀が住信と合併したいと思うのは長銀が勝手に思うことであって、国がそれに対して、合併のための過少資本を補うための公的資金をどうたらこうたらと、まだこの時点で言う必要はないのではないか。経営の努力をしたらどうかと。過少資本ではあってもまだまだ十分、すぐ現金化できる有価証券なども四兆円ほどバランスシートを見れば持っているわけですから、資金繰りにはとりあえず困らないということであれば、まあとりあえず頑張れよ、行けるところまで行ってみたらどうかというふうなことを言ったらどうですか。
  25. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  私ども金融監督庁といたしましては、この合併は我が国の金融システムの安定に資するということが前提にございます。長銀の自己資本の充実が改善されませんと、我が国における金融の機能全体に対する内外の信頼が大きく低下するということを考えているわけでございます。したがいまして、信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に極めて重要な支障を来すことをあらかじめ防ぐということを考えているわけでございまして、そういった意味で、この合併構想に対して最大限の支援をしていきたい、こう考えているわけでございます。
  26. 川内博史

    川内委員 金融機関の経営が本当に破綻をするというのは、資金繰りが破綻をするということだろうと私は思うのです。  今いろいろな先生方から、いや、あなたの考えは甘いよとぼそぼそぼそぼそ言われたのですけれども、しかし、資金繰りがついているのであれば私はまだやれると思うし、では、現時点で政府として公的資金を注入しなければならないということであれば、またその支援をしようという決意をされるのであれば、日本長期信用銀行の資金繰りさえも非常にタイトになっているのであろうということを予測されていらっしゃるわけですか。
  27. 日野正晴

    ○日野政府委員 資金繰りの点につきましては、預金保険法の二条の四項には破綻の定義がございます。ここで言っている破綻といいますのは、「預金等の払戻しを停止するおそれのある金融機関又は預金等の払戻しを停止した金融機関」こういうふうにございますが、現状では、私どもはそれには当たっていないというふうに考えているところです。
  28. 川内博史

    川内委員 今、資金繰りには恐らく困っていないだろうという御答弁だったわけですけれども、資金繰りにも困っていないけれども、でも過少資本になってしまうから公的資金を入れますというのであれば、資金繰りに困っていないだろうというのであれば、もうちょっとやらせてみたらどうかなというふうに、それが民間の企業に対する政府の態度ではないかなというふうに思うのですが、余り時間がないので。本当に聞きたいことはまた別にあるので。  それで、なぜ長銀がこういう状況になったのかということを考えると、今大蔵大臣も、六月に何か記事が出てそれで株が売り込まれてというふうに御答弁があったわけですけれども、また今監督庁の長官も、とりあえず資金繰りには困っていませんよという御答弁もされたわけです。しかし、どれだけ言い繕ってもマーケットというのはやはりきちんとすべてのことを見抜いた上で売り浴びせていくわけでしょうから、長銀の不良債権に関する情報などが、まだ検査中だとか法律上の守秘義務だとかいうことでなかなか開示をされないわけですけれども、マーケット自体はもう長銀が既にぼろぼろの状態であるということを見抜いているわけでございまして、そういう意味では、政府がすべての情報を開示してもマーケットはちっとも驚かないと思います。  また、長銀が破綻をすることによってシステミックリスクが発生をする、大変にリスクの高いことになるというふうにおっしゃられるわけですけれども、もう長銀自体がそういうふうにマーケットに見放された存在、いわゆる金融システムから既にもう外された存在になっているのではないかと私は思うのですけれども大臣の御見解はいかがでございましょう。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に申し上げたことで大体おわかりいただいているかと私は思うのですが、原因はともあれ、とにかく長銀がそういう状態になって、そして、ここは住友信託銀行との合併を求めるしか社会的な大きなリスクを起こさずにこの事態を収拾する方法はない、こういう判断がありまして、それについて住友信託銀行は、合併の条件として先ほど監督庁長官の言われましたような幾つかのことを提示されて、それを長銀としては守らなければならない、そういう状況のもとに、やがて預金保険機構に公的資金の導入を申請される予定であろう、こういうことが問題のすべてと思います。
  30. 川内博史

    川内委員 それでは、大蔵大臣並びに政府の皆さん方が、長銀が公的資金の申請をしてきた場合にそれを積極的に支援していこうということであれば、その公的資金というのは、形の上では公的な与信であるかもしれないですけれども、実際には、最終的には国民の皆様方の税金で処理をされる部分というのも、これは相当な部分出てくるのではないかというふうに思うわけです。  既にすべての金融機関に対しては、国民は、この三年間の超低金利政策をとり続けられたことによって銀行に相当もうけさせているわけでございまして、銀行に相当もうけさせた上に、またここで公的資金を注入する。しかもそれは、金融システムの安定のためにとか、あるいは世界恐慌を起こさないためにとか、いろいろなことが言われておりますけれども、結局、長銀がお金を下さいと言ってきた、長銀にお金を上げました、結局、では銀行救済ではないかというふうに国民の皆さん方は思っていらっしゃると思うのです。大蔵大臣は、宮澤先生は、なぜ国民の皆さん方がこの問題に関して理解をなかなか示していただけないのだろう、どういうところが政府説明が不足しているのだろうというふうに思っていらっしゃるのかということに関してコメントをいただきたいと思いますが。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私どももいつも自問自答しなければならない大事な問題であると思っています。  一つは、我が国では、少なくとも戦後、銀行というものはつぶれないということを国民は広く信じておりましたし、したがって銀行に預金もしてまいりました。ですから、大きな銀行がつぶれるということが、今はまた国際関係もございますけれども日本だけを見ましても、社会的にどういうことかという経験をほとんど国民は持っておりません。昭和の初めにございましたけれども、そのとき大人として経験した人はもうほとんど世の中におられませんので、その記憶はもう失われておると思います。ですから、この銀行がつぶれたらどうなるということについての心配、恐怖感というものは経験がないというのが一つあると思います。  それからもう一つは、仮にそういうことがあってもあなたの預金は全部保護されますという保護がございますから、そういう意味では、もう一つ自分に差し迫った問題にはなり切っていない、ならない。むしろ、銀行から金を借りている中小企業の方々が、これは自分も路頭に迷うと、むしろそういう方々が一番心配しておられるんじゃないかと思いますので。したがいまして、銀行が破産をした、つぶれたということがどれほどのことなのかということは、国民のほとんどどなたもが自分の問題としては認識されていないという背景があると思うのです。  それは、ある意味で安定要因でございますから嘆いたりすることではないのでございますけれども、いざそういう問題になってみると、問題の理解といいますか、感覚的な心配というのはほとんどやはり国民は持っておられないものですから、 何となく、今先生は比喩的におっしゃったことは知っていますけれども、税金を長銀に差し上げちゃうなんて話ではないので、これはやがては返ってこなきゃならない金でございますが、それにしても大きな金がねえという、そこのところはやはりなかなか国民にわかっていただけない、政府の努力も足りないということは私は自問自答をしておりますけれども、と考えております。
  32. 川内博史

    川内委員 今大蔵大臣が、やがては返ってくる、返してもらわなきゃいけないお金だというふうに御答弁があったわけですけれども、まさしく金融機関に対して国が与信を与えるということだろうと思うんですけれどもね。信用を与えるわけですから、必ずそれは返してもらわなきゃいけないし、できれば利息もつけてほしい、本当はつくことはないかもしれないですけれども。  しかし、一般に、我々が銀行からお金を借りるときには、利息は前取りされるのですよね。今回、長銀さんが幾ら申請をしてくるかは知りませんけれども、その申請をしてくるに当たって、その利息相当分というか、前取りする利息相当分が長銀のリストラ策なのかなあと思うんですけれども、まあしかし、それでもまだまだ私は不十分だろうというふうに思うんですね。  国民の皆さん方が、じゃ、どうしたらそれを理解してくれるのかというと、私並びに野党は長銀に対する公的資金の投入には断固として反対ですけれども政府が本当に、長銀を救わなければ金融システムが崩壊してしまうんだ、大変なことになるんだと言うのであれば、まず与党の皆さん方、政府の皆さん方でワリチョーやリッチョーを一生懸命買っていただくということが一つ個人的にも一生懸命支援をしてさしあげればいいんじゃないかなと思うことが一つ。  それから、金融システム全体のために公的資金を注入するんだというのであれば、その金融システム全体にかかわる、特に大手十九行というのが、マネーセンターバンクと言われる銀行がその金融システムの中心にあるわけですから、そして今回のこの長銀の問題などを見ておりましても、長銀以外の他行は、長銀関連のノンバンクに対して長銀が損切りをすることによって自分たちに被害が及ぶのを最小限にとどめようという意図が見てとれるわけですけれども、であれば、長銀に公的資金を投入して長銀の人たちだけが責任をとるというのでは長銀救済なんです、だと国民は思う。  金融システム全体のためにお金を使うんであれば、金融システム全体として責任をとらせるべきだし、大手十九行の経営陣は、長銀をトカゲのしっぽにして自分たちだけ生き残ろうとはせずに、やはり大手十九行の経営陣が全員退陣をすべきであろう、またそのくらいの指導をされたらどうかというふうに思うのですけれども大臣の御答弁を求めます。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 預金保険機構が、二〇〇一年までいわゆる預金者の保護をすることになりましたときに、各行から特別な保険料を、従来の保険料のたしか七倍ぐらいと思いますが、徴収しております。これはある意味で、今言われましたような思想が一つあらわれている部分でありますが、しかし、また、やりますと、お互いが競争関係にあるわけでございますから・・(発言する者あり)はあ、そういうことになりやすい。  アメリカのように、信用の高い銀行は保険料が小さい、信用の悪い銀行は保険料が大きいというようなことにでもなれば何となくわけがわかるわけですが、危険のないような銀行が危険のある銀行に保険料を払うというようなこと自身にも多少抵抗はございますようなことで、その辺はやはりいろいろ難しい問題があるのだろうと思います。
  34. 川内博史

    川内委員 残念ながら時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございます。
  35. 相沢英之

    相沢委員長 これにて川内君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  36. 上田清司

    上田(清)委員 御苦労さまです。  この間、大蔵大臣の御答弁の中で、貸し渋りに対して一・八兆の資本注入は必ずしも効果が絶大であったとは思われないとか、あるいは住専のときの税金投入も、必ずしもそれは金融システムを守るものではなく農協の預金者を救済するものであったというような、ニュアンスにはいろいろちょっと語弊はありますけれども、大変率直な意見に、私もほうと思いながら感心しておりましたが、九月十一日金曜日の春名議員の質疑に対しては、大変驚きました。何かリクルート事件が出てきたのかなと思うような、記憶にございませんというようなことが出てまいりまして、私は、正直なところびっくりいたしました次第であります。  中身は、長銀の元会長でもあります杉浦氏との会食が、あるいはゴルフが十二回程度あったという、総現在任中にですね、そのこと自体を私はとやかく言うつもりはございませんが、その会食の代金について、春名議員が、どちらがお払いになったのですかとお聞きされたら、記憶にございませんというふうにお答えになっておられますが、きょうはどうでしょうか。記憶にありますか、ないですか。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あれは、そのときに詳しく申し上げる必要もないと思いましたので申し上げませんでしたのですが、実は総理大臣になられました池田さんを取り囲む会というのが三十何年、池田さんが亡くなられましてから後は前尾さんや私が、大平さんもそうでした、後を継ぐような形でございまして、それが大体二月に一回ぐらいずつ、たくさんのお方が会費を持ち寄って会をしておられました、もうなくなりましたけれども。そういうことと非常に関係がございましたものですから、会費は、金はと言われましても、そういうシステムでございましたので、ああいうふうに申し上げました。
  38. 上田清司

    上田(清)委員 やや誤解が生じると思います。お二人で会食されたことも御指摘されておられましたので、末広会のものだけの質疑でありませんでしたので。  それでは、お二人のときはどうだったのでしょうか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうもそれは、正直のところ、はっきり記憶しておりません。
  40. 上田清司

    上田(清)委員 はい、わかりました。  本当に細かいことで恐縮ですが、なぜ私がそのことを気にしたかと申し上げますと、大臣も御記憶にあると思いますけれども、四月二十七日に大蔵省は、五年間の金融関係者とのさまざまな会食やゴルフをした人たち中心に調査をして、千五十名の調査をして、そして百十二人の処分をした経緯がございます。もちろんこの中には、現大蔵大臣が総理として在任された平成五年の一月一日からの調査でございます。したがって、あなたが総理大臣として在任されていたときの七カ月近くもこの調査の期間に入っているのですね。これは一回一回、みんな記憶にございませんと言いたかったのです、本当は、職員の人たちも。しかし、その記憶を、細い糸をたどってたどって、何回会食したか、何回ゴルフをしたかを一つ一つ克明に調べて、そして百十二人処分したのではないのですか。  そういうことから考えると、余りにも先日の大蔵大臣としての、しかも、前大蔵大臣もきちっと談話を出されております。そういう克明に調べたことからすると、余りにも軽い。記憶にない、これは余りにもひどいじゃないかというのが私の率直な感想でありますが、人と会食すれば、少なくとも幾らか恩義が生じるわけでありまして、記憶にないなんと言っては、それは失礼です、ごちそうになった場合には。そうでしょう。しかも、五万とか十万の話ですよ。ラーメン一杯ごちそうになったのとわけが違うのですから。  そういう意味で、私は怒りを持ってきょうは臨んでおりました。大蔵大臣として、やはり倫理の問題をきちっとしていかなくちゃいけない。そういうことが一つ一つつながってまいりますので、私はあえて申し上げております。言葉をお返しするようで本当に恐縮ですが、大蔵大臣として、今 後こういうことがないように私は努めていただきたいと思います。  具体的にやはりお答えしていただきたい。一つの曇りもないようにお答えしていただきたい。あのころはそれでよかったのかもしれませんが、今はそういうことがなかなか許されない時代になっているということも踏まえて、正確に、大蔵大臣として、この会食問題に関していかがだったのかを再度お答えしていただきたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特別につけ加えることはございません。
  42. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、四月二十七日の処分について、大蔵大臣として、これは前任者のときでございましたが、あなた自身も実はこの五年の部分に入っておりますが、この調査の対象になったのでしょうか、それともなっていないのでしょうか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵省大蔵省に勤めております者を調査をしたということと思います。私は別段大蔵省に勤めておりません。
  44. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。結構でございます。  しかし、今申し上げましたように、四月二十七日にこうした百十二人の方々が処分された重みというものをしっかりやはり受けとめていただきたい。そのことだけは、私は大蔵大臣としてのきちっとした御見解を承りたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、おっしゃいますとおり、よく理解いたします。
  46. 上田清司

    上田(清)委員 しっかりした御答弁をいただきました。ぜひ、今後気をつけていただきたいというふうに私は思っております。ありがとうございました。
  47. 相沢英之

    相沢委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  48. 坂口力

    ○坂口委員 平和・改革の坂口でございます。三十分でございますけれども質問をさせていただきたいと思います。  この委員会質疑もかなり進んでまいりましたし、また与野党間の協議もかなり進んでいるところでございますし、先週の金曜日には、与党側から第二次の修正案と申しますか、話し合いの場に皆さん方の御意見が出されたところでございます。それで、今いろいろ話が進んでおりますけれども、その中で、対立する点もだんだんと明確になってきたというふうに思います。  それで、一つは、長銀の取り扱いでございまして、長銀を破綻状態であるというふうに認めて対応するのか、それとも破綻をしていない状態であるというふうに認識をして対応するのかという問題が一つ。それからもう一つは、御承知のとおり、金融と財政の分離の問題でございます。ほかにも、情報開示の問題でございますとかいろいろの点はございますが、大きく分けましてこの二点において与野党間の隔たりがあるというふうに思っております。  その中で、長銀の問題でございますが、私たち三会派が提出をいたしました案には、御承知のように、破綻前でありましても、金融機関から申し出があれば株を買い上げまして国有化することができるようになっております。このスキームにのっとってすべてのことができないのだろうか、我々の側はそう思うわけでございます。  国有化をして株を全額買い上げるということがなぜいけないのかということを与党の皆さん方にお聞きをいたしますと、国有化をして株を買い上げるということが世界の市場に対して影響を与えて、そしてその金融機関は破綻であるというふうに印象づける、そういう意味で、関連企業やあるいは下請企業、あるいはまた健全な借り手に重大な影響を与える、株式も大きく動く、だからそれはいけないのだ、こういう御意見でございます。  政府の案によります公的資金の導入を考えましたときに、それでは、公的資金を五千億あるいは一兆円という形で導入をするということが国際市場にどんな影響を与えるのか。そのことにつきましては、それは影響はないというふうに皆さんはおっしゃるわけですが、私から見ますと、五千億あるいは一兆円という額を導入するということは、例えば長銀の場合でありますと、長銀は破綻をしたというふうに印象づけることには変わりがないのではないか、こう私は思っておりますが、その点に対するまず大臣のお考えをひとつお聞きをしておきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの点は、ここしばらくの間の与野党間のこの法案等々の修正あるいは長銀問題の処理等をめぐりまして、中心になっておる課題というふうに承っております。いろいろ御議論を私も後ほどになって拝聴をいたしておりますと、御議論の中で問題の複雑さもいろいろはっきりしてまいりましたし、また、お互いの主張の中にどういうことがあるのかということも理解も深まっているというような状況のように伺っております。  ただいま坂口委員の言われましたこと、長銀に公的資金を導入するということの問題は、御承知のように、長銀がこの事態の中で徹底的なリストラをして、役員も退陣する、退職金も返還を求める、人は減らす、海外業務をやめる、支店は売るということでございますから、長銀自身は、現在の状況の中で、いかにして社会的、国内、国外のコストを小さくして、この事態の処理をいわば合併を求める形でしていこう、こういう意図というふうに感じておりますので、坂口委員の言われますように、それは、長銀自身はしょせんひとり立ちで将来やっていくということはないのではないか、それがリストラの意味だろうとおっしゃる点になりますと、社会が見ておりますこととあるいはそんなに違わないかもしれない。  ただ、従来のところ、金融監督庁の持っておられる印象にしても、日銀の考査の結果にしても、債務超過にはなっておりませんから、そういう意味での破綻あるいは債務超過とは考えていない。しかし、先ほどもお話がございましたように、金融等々では相当きつくなっておりますので、長銀はいわば今のような形での社会的なコストをできるだけ最小限にとどめる方法を考えられたのであろうというふうに考えています。  そのことと、坂口委員の言われました、そのような場合に長銀の株式を国が一遍買う、それはしかし、私は想像いたしますと、国が買った後そのままになるのではなくて、いろいろまたそれを受けたいという人がいるということをきっとお考えでございますから、そういう意味ではこれも一つの承継のやり方であろう、そこは私もそういう理解をしていいのではないかと思っております。  ただ、国が株式を買うというときに、銀行から申し出があって買うという、銀行がそういう申し出をすることは不可能ではないかもしれませんが、公的資金の導入でございますと株主総会とか株主との関係は比較的容易でございますが、株式を国に、その前には恐らく減資ということがきっとあるんだろうと思います。それは理解できますが、その上で国に株式を買ってくれというあたりの法律の問題はどうなるのかな。  しかし、これは債権者が非常に多いとかいう問題はございますけれども、それは将来訴訟が起こったときの対応を考えればいいとか、法律的な対応はできるのじゃないかとも思いますので、そういうことは対応としていろいろ考えることができるのではないかと自分としてはお話をいろいろ伺いながら思ってはおりますものの、これは御承知のように各党の間のいろいろ折衝の問題でございますから、しかとそう思うかとおっしゃいますと、なかなか私の立場としては申し上げにくいこともございますけれども、ただいまおっしゃいましたことは私には理解できることでございます。
  50. 坂口力

    ○坂口委員 言いにくいお話のところを比較的前向きに御発言をいただいたというふうに思いますが、さまざまな附属いたしますことは後から整理するといたしまして、破綻状態と申しますか、破綻になっていないというふうに言っておみえになるわけですからそれは信じるといたしまして、その前の状態であれ、その状態を国有化し、そして株の買い上げをしていくというコースを行けば、 非常に世界の市場が過剰反応を起こして、それはいけないという意見が一方で与党内にある。我々の方は、それならば、公的資金で大量のお金を導入をするということをした場合にも世界が過剰反応をするのではないか、そこに大きな違いはないではないかと。ですから、破綻をする以前にも適応できるシステムになっているんだから、それは特別なものをつくらなくても、ここをもう少し協議をしていけば一つの方法が生まれるのではないか、こう私は言っているわけでございます。  そのほかの、株を買いますときの、その前の段階で減資をしますとか、あるいはまた銀行がその申し入れをいたしますときに、どういうときに申し入れをするのだとか、あるいはまたその後の問題だとか、次に新しい銀行にそれをどういうふうに買い取らすのかとかいうさまざまな附属の問題はあると思うのですが、それはさておき、その中心のところでは、私は、政府といいますか、与党側がおっしゃることと我々が言っていますこととの間に起こりますリアクションにはそう差がないのではないか。政府の場合には、公的資金を導入するというふうにおっしゃる場合には、それは優先株あるいはまた劣後ローンとかそういったものを買い上げる。しかし、我々の場合には普通株を買い上げる。ここも、差はあるのですけれども、大きな目で見ればそれはそれほどではないのではないかということを申し上げたわけでありまして、もうちょっとつけ加えておくことがございましたらお願いしたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府が考えておりますような方式にいたしましても、先ほども申し上げましたが、長銀がそういうリストラをやりまして、そうしてある段階で公的資金の導入を求めるというようなこと、全体のスキームが、住友信託銀行と合併をする、吸収されるという、そういうことを前提にして成り立っておるわけでございまして、その前提が成り立ちませんと、公的資金を導入するところだけではその話は完結していないと思っております。  それに比べまして、坂口委員のおっしゃいますようなケースも、仮に長銀が減資をする、減資をしてどうするんですかと。それでおしまいのはずはないわけでございまして、その後は国にこういうことを願う。それで、国としてはそういうことを考えようとおっしゃったときには、必ずだれかがそれを国からいただく、買うということが恐らく前提になっておると思いますので、そういう意味ではやはりどこかとの承継ということが前提になっている。  したがいまして、両方の方式は、方式としては違いますけれども、この場合には承継があるということが前提になっているという意味では、実態は余り変わらないことになるのではないかというふうに私なりにお話を理解するわけでございます。      〔委員長退席、村田(吉)委員長代理着席〕
  52. 坂口力

    ○坂口委員 そうしますと、我々の主張しております案も、どこかの銀行が承継をしてくれるという前提の上に立っておれば同じようなことになる、こういうふうに御主張になったというふうに理解をさせていただきます。  それじゃ、この問題はこれぐらいにしておきまして、それで、もし仮に長期信用銀行なら銀行に多額の公的資金を導入するということになりますと、同じような経済状態になりましたときには、やはり他の大手銀行にも導入をしなきゃならないということになりますね。若干その背景はそれぞれ違うとは思いますけれども大手銀行の中で、長銀の場合にはやりますけれどもほかのときにはやりませんよという調子には私はいかないんだろうというふうに思うのです。やはり、同じようなことをやらなきゃならないんだろうというふうに思います。  それじゃ、中小の銀行のときには破綻をさせていいのかという問題があります。大きい銀行のときには皆公的資金を導入して救うけれども、中小銀行のときには知りませんよということになれば、国民の側は、中小銀行に今まで預金をしていたとか、あるいはそこからお金を借りていたという人たちは、皆、雪崩を打って大手銀行の方に行くことになってしまうのではないか。したがって、公的資金を導入するということを一たび始めるならば、それは中小の銀行であれ大きい銀行であれ、すべてにやはりこの公的資金の導入ということをせざるを得ないことになってしまうと私は思います。  そういたしましたら、もうこの破綻後処理なんというのは全然要らない話になってしまうわけでありまして、その点については大臣はどんなふうにお考えになりておりますか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは監督庁長官がお答えになられるのがよろしいかもしれませんが、お名指してございますので申し上げます。  公的資金の導入というのは、理屈っぽいことを申し上げて恐れ入りますけれども、やはり一つは、金融のシステミックな危機があって、それに対して我が国の金融秩序を対内的にも対外的にも維持しなければならない必要があります場合に、申請があって公的資金を導入する。それはことしの三月のような場合でございます。  あるいはまた、いわゆる受け皿銀行となりますときに、北海道はその例になるかと思いますが、北洋銀行が北拓の受け皿になるというときに、とにかくしょっております荷物の大きさが全く違いますので、北洋銀行に対しては相当の公的資金を導入せざるを得ないであろう。また、これは特に地域的に非常に大きな影響もある問題でございますから、そういう場合にはまた公的資金の導入という問題がある。それが原則であると思っております。  したがいまして、このたびの長銀の場合にも、やはり長銀が倒壊するということは、しばしば申し上げますが、非常なシステミックリスクになる、金融のリスクになるということは疑いないと考えておりますので、申請があれば、恐らくこれは金融危機管理委員会においても御考慮をされるということであろうかと思います。  ただ、その場合に一つつけ加えて申し上げたいと思いますのは、長銀はただ合併を予定しているばかりでなく、先ほども申し上げましたが、役員の総退陣あるいは海外業務の廃止、減員、本店を売るばかりでなく、現在の株主は合併比率において非常な不利に立つという形において株主が責任を負う、そういうリストラのためのいわばかなり厳しい条件を具して申請をされるであろう。のほほんとして、自分のところは金が足りませんからといったようなことではないというふうに考えております。  システミックリスクと申しますためには地方の小さい銀行にはそう問題はないかもしれませんけれども、しかし、地方において中心になる銀行に事がありましたときには、その地方全体の経済影響がある、このときに受け皿銀行に注入をするというようなことは、これは十分あることでございますので、必ずしも大であるから、マネーセンターバンクスにだけ限ったわけではないというふうに、これは私の理解でございますが、そう思っております。
  54. 坂口力

    ○坂口委員 私が申し上げたのとは若干お答えいただきました方向が違いますけれども、まあ結構でございます。  もう一つ、時間が少ないですが、大きい問題でございますが、一言だけお聞きしておきたい問題がございます。それは、先日、大臣がアメリカに行かれましたときにもそういうお話があったということで一部マスコミにも流れた問題でございますが、短期資金の問題でございます。  ことしの六月四日でございましたが、第四回の国際交流会議「アジアの未来」というのが日本の東京で開かれまして、そのときにアジア諸国の代表の皆さん方が多くお見えになって、それぞれ演説をされました。その中には、マレーシアのマハティールさん初め、多くの方が含まれておりますが、異口同音に、この大きな資金の流れ、この市場の暴力というものに触れられまして、そして、我々に大変な影響を与えた、これに対して世界で 何か枠組みをつくらないといけないという趣旨の発言が相次いでおります。  これはマハティールさんの発言でございますが、通貨商人、通貨トレーダーと言われましたが、通貨商人はどんな国の通貨でも意のままに下落させることができると言われる、ヘッジファンドや銀行の資金は合計で約三十兆ドルに上るという、こう述べられまして、さらに、アジアにとって未来は余りないというのが現状だ、経済は巨大な外国企業に支配され、東南アジアはその低価格製品を供給する拠点となろう、人々は再び支配者となる外国勢に憤激し、自分たちの経済を取り戻すことを解放と考える新たな闘争を試みることだろう、かなり強烈な言葉でございますけれども、そんな発言をされた。  洪水のごとく巨大な金が流れ込んで、今までせっかく育てた農作物が一瞬にしてなくなってしまうようなことが起こっている、これをこのまま捨てておいていいのかという皆さん方の御発言でございますし、先日大臣がアメリカに行かれまして取り上げられました内容が、あるいはそれとかかわりがあるのかどうか、もしもあるとするならば、どんなお話し合いがあったのか、これからどんなふうにそれが進んでいこうとしているのかということをお伺いをしたいというふうに思っております。今ここで問題になっております金融システムの問題にいたしましても、長銀の問題にいたしましても、そのことと深いかかわりを持った問題でありますだけに、一言お聞きをしておきたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第二次大戦後にいわゆる自由化ということが強く言われまして、物の自由化、渡航の自由化はもちろんでございますけれども、為替のたくさんのラウンドによる引き下げあるいは非関税障壁の撤廃等々ございます中で、資本自由化というものも、それが当然いいことであるとして推進されてまいりましたし、長期資本に関します限りは、現在でも肯定的に考えておられる人が多いかと存じます。  短期資本も、同じように全く自由化がいいんだというふうに進められてまいりましたけれども、先ほど御指摘がありましたように、昨年の七月にタイで事が起こりまして以来、インドネシア、韓国とそれが転々といたしました。マレーシアはIMFの介入は拒否いたしましたけれども、しかし、マレーシアもリンギット等が非常な影響を受けました。その中で、それが特定の人の手によるスペキュレーションであったかなかったかということはいろいろに言われておりますが、マハティール氏は、確かにそうだというふうに考えておるわけでございます。  そこで、マハティール氏の言っておりますことは、学者の中にも何人か賛同者がないわけではございません。つまり、一つの国づくりをしていたときに、スペキュレーターによって為替を攪乱される。その結果、長年つくり上げた国が混乱をして、結果としてはIMFが処方せんを書く。IMFというのは、そういう学者たちの説によれば、それは一応アメリカが大株主でございますから、一つの国、一つの文化がそういう違う国の文化によって全く厳しい処方せんを書かされる、そういう結果になるではないか。マハティール氏はもっと厳しいことを言うわけでございますが。  したがいまして、今短期資本も全く自由でいいのかということがいろいろ話題になっておりますというようなことは、私せんだって、これは正式な会議ではございませんで、夕食のときに、ルービン長官とグリーンスパン、私と三人でそういういわば議論と申しますか、結論も何もございませんが、いたしました。  ただ、しばしば問題になりますように、デリバティブスにいたしましても、すべて短期資本の移動は全く自由であるという建前で進められてまいっておりますわけですから、それを制約するということは果たしてどんなものだろうかと疑問を持つ人も多うございます。この間雑談をいたしましたのは、IMFは、事が起こりました後いわば善後策を講ずるわけですが、事が起こらないように、不完全ではあっても何かの方法はないものか。例えば、幾つかの国が相当外貨準備を持っておりましたら、それをみんな持ち寄りまして、そしてその外貨準備、そのファンドが短期資本のアタックに対してある国を守ってやるような、そういう仕組みになればアタックする方も簡単にはできない、そうだろう、こういう議論等々がその一つでございます。  しかし、そうだとすれば、そのファンドに対して国々はプレミアムを払うのであろうか、あるいは、そうなりますとモラルリスクというものが逆に発生するのではないかというようないろいろな議論があり、かたがた、そういう話になりますと、アメリカも一つの富んだ方の国になるわけですけれども、IMFに割り当ての金を出し渋っておるような今のアメリカの状況でございますから、そういう話は急に進むのかなというような、そういったような雑談をいたしましたことは事実でございます。  アメリカとしては、殊に、現在ラテンアメリカ、ブラジル等々からかなり急激な資本の流出がございますので、そのような問題にもやはり真剣にならざるを得ないことは間違いございませんけれども、特に結論がましいことがあったわけではございません。
  56. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  終わります。
  57. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  58. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君、金融危機管理審査委員会委員佐々波楊子君及び日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  60. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 次に、西田猛君。
  61. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  きょうは、参考人におかれましても、御出席いただきましてありがとうございます。  もうこの金融安定化のための特別委員会でも何度も質疑がなされておりますけれども、問題の本質は、いかにしたら今の日本が直面している経済危機、金融危機を克服して、また世界から信頼される市場として日本の産業界あるいは金融界が回復していくことができるのかということだと思います。したがって、そのためにこそこの金融安定化特別委員会というのは審議をなされるべきであると思うのですけれども、どうも最初からいろいろと議論を聞いておりますと、事の本質をそれてしまって、問題が一銀行あるいはそれにまつわるいろいろな問題に終始してしまっている点がございます。  私どもは粛々と、この日本経済危機、金融危機を回復するために、マクロ経済の問題それからそれらを推進していくために必要な不良債権の問題の処理などを市場の原理に従って進めるべきこと、このことを推し進めていきたいと思っているのでございます。  しかし、何やら政府・自民党におかれては、特定の、特に日本長期信用銀行の救済問題に大変な労力を注いでおられるようでございます。一部報道によると、今の金融安定化のための緊急措置法ではついぞ長銀に対する公的な資金注入は難しいのではないかという政府部内の見解も出てきたので、新たな法律をつくって、それで長銀を処理しようというふうな考え方も出てきているという報道もございます。  私は、このことについて最初に、新たな法律をつくって、そしてそれを今の長銀の問題に当てはめようということは、いわば事後法をもって事を処理する、これは問題の本質をすりかえるものにほかならないということをここで申し述べておき たいと思います。あくまでも今問題になっているのは、政府がこの現在ある金融安定化のための緊急措置法で長期信用銀行に、特定の銀行に資金を注入しょうとしているということでございます。  そこで、お聞きしたいのですけれども、今ある金融安定化のための緊急措置法の中で、先日の当委員会での答弁の中で、きょう参考人として来ておられる預金保険機構の松田理事長は、金融監督庁の検査結果は、金融機関等から公的資金投入を申請された場合、その申請を認めるか否かの重要な前提となるというお答えをしておられますけれども、今でもそのお考えに変わりはございませんですか。
  62. 松田昇

    ○松田参考人 お答えいたします。  先般の海江田委員の御質問にお答えしたとおりでございますが、前提といいますか、重要な審査資料でございますので、それを十分に吟味して承認するかどうかの議決が行われる、そういう私の認識を述べたものであります。
  63. 西田猛

    ○西田(猛)委員 その検査結果を吟味して決定する、今こういうお話でございました。  他方、きょうもまた来ていただいておりますが、いつも御苦労さまでございます。佐々波金融危機管理審査委員会委員長は、せんだっての当委員会での答弁で、金融監督庁の検査結果は重要な参考とするべきだが、一般論としながらも、申請の可否を決する際の前提とはされていないというふうにお答えをされておられますが、その考えにお変わりはございませんですか。
  64. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 お答えいたしたいと思います。  先日お答えしました折には、制度上は、金融監督庁の検査結果を踏まえることは、資本注入の審査、承認を行うための条件とはなされていませんが、極めて重要な情報であることは十分承知しているという旨のことを申し上げたところでございます。したがって、委員会といたしましては、今後とも、金融監督庁の検査結果などを踏まえて審査を行うよう配慮していきたいと存じております。  特に、今回の長銀のケースにつきましては、委員会が議決を行うまでに金融監督庁の検査が終了すべきものと考えるのが自然なような気がいたします。  以上でございます。
  65. 西田猛

    ○西田(猛)委員 佐々波委員長、大変お言葉を選んでお答えになられたようですけれども、いつぞや、期待するというふうなことを言われて英語でもお答えになられたそうでございます。しかし、きょうはそれが自然であるという答えに変わってまいりました。  そういうことであれば、松田理事長とのお話の整合性は一応とれてくるわけでございまして、ここで明らかになったのは、金融監督庁の検査結果が、預金保険機構における、あるいは預金保険機構内における金融危機管理審査委員会で当該金融機関からの公的資金注入の申請に対しての可否を決する際の言うなれば前提となるということを、これはもうはっきり申し上げてよろしいでしょうかね。松田理事長、いかがでしょうか。
  66. 松田昇

    ○松田参考人 お答えいたします。  前提と申しますと、一つだけが絶対の価値を持つものですから、もちろん検査結果は重要な資料ですけれども、そのほかにたくさんの資料を同時に審査をして決めるものですので、前提というよりは、非常に重要な資料として十分に吟味、審査させていただく、このように答えさせてください。
  67. 西田猛

    ○西田(猛)委員 何を言わないように注意しておられるのかよくわからないのですけれども、重要な資料だから吟味したいということは、検査結果がなければ吟味できないのでございまして、ということは、検査結果が出ていることが自然だという佐々波委員長のお答えにもありますとおり、要するに、審査をする際には検査結果が出ているものだと。だから、前提と私が申し上げたので、それはそうでございますとはおっしゃれないのかもしれませんが、当該金融機関からの申請を審査する際には金融監督庁の検査結果が出ているものだというふうに考えている、こういうことはよろしいのでしょうか。理事長、いかがでしょうか。
  68. 松田昇

    ○松田参考人 申請自体は、先生御案内のとおり、申請行の自由と申しますか、判断に任されているわけですから、申請行の申請が出た段階で監督庁の今回の検査結果が出ているかどうかは定かじゃないと思います。ただ、その申請を受け付けた後で審議をしていくときに非常に重要な資料でございますから、それは十分に審査をさせていただくということでございます。
  69. 西田猛

    ○西田(猛)委員 本当に何を言わないように注意しておられるのか、よくわからないのですけれども、しかし、審査する、吟味するということは対象としての検査結果が出ていないとどうしようもないわけですから、そこにあるということを松田理事長は言っておられるわけでして、首を振っておられます。  そこで、今の松田理事長のお答えでも、申請を審査するときに金融監督庁の検査結果が出ていることは前提としてないということなんですが、これは金融監督庁長官にお聞きしたいのです。金融監督庁長官も、いわゆる佐々波委員会金融危機管理審査委員会委員の一人でございますが、充て職としてなっておられて、もしもそのときに御庁の当該申請機関に係る検査結果が出ていないとしたらば、申請の可否の議決については監督庁長官はどのような態度で臨まれるのでしょうか。
  70. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  まず、公的資金の注入の申請と時期でございますが、御案内のとおり、公的資金は、仮に今委員会で議決されたところで受け皿がございません。つまり、定款の変更の手続が恐らく必要になるのではないかと思います。定款の変更の手続といいますのは株主総会の決議事項でございますので、株主総会を今から招集しようとしたらどのくらいの期間が必要かということは商法に書いてございますが、相当の期間が必要になると思います。恐らく、そういった受け皿ができて初めて日本長期信用銀行は、仮に公的資金を注入されるといったことになった場合には、そういった前提条件を備えた上でなさることになると思いますが、それは相当先のことじゃないかなというふうに、一般論ですが思います。  しかし、私どもは、それじゃそんな先まで検査結果が出ないのかというお尋ねになりますと、そんな先になってもまだ検査の結果が出ないといったようなことはちょっとあり得ないと思いますので、今委員がお尋ねになりましたように、検査結果なしに果たして審査委員会の議決に監督庁の長官が参加することがあり得るのかというお尋ねでございましたが、恐らく、時系列的に申しますと、そういったことはまずないのではないかなという感じがいたします。
  71. 西田猛

    ○西田(猛)委員 受け手の方の銀行の手続をおっしゃいましたけれども、それは今大きな問題ではございません。要するに、申請があったときにそれを審査する、その時点で議決をしなければいけないわけですが、その議決をする時点で監督庁の検査結果が出ているかどうかということについては、今長官は、出ているものだと考えるということですね。というのは、長銀の方が受け皿が整っていないと議決ができないということではありませんから、これは速やかに議決すると法律にも書いてあるわけですね。ですから、速やかにやらなければいけない時点で監督庁の検査結果は、今の長官お話ですと、出ていないとは思わない、こういう御答弁でしたか。それでよろしいですか。
  72. 日野正晴

    ○日野政府委員 審査委員会がいつ開かれるかということになろうかと思います。審査委員会が開かれるのは、あくまでも長銀が申請するという前提があってのことでございまして、それが現在のところではどういう状態になるのか、長銀がこれから住友信託との合併交渉において決められることだろうと思いますので、今委員がお尋ねになりましたように、いつ申請されるかということが決まりませんと、またストレートにお答えすることができませんけれども、仮に委員会が開かれます、開かれて、預金保険法の三十七条だったで しょうか、それによりまして預金保険機構から国に対して資料の提出を求めることができるような規定になっておりまして、国はそれに対して資料の提出をすることができるという規定になっておりますので、預金保険機構からそういった要求がございましたならば、その審査に必要な資料は三十七条に基づいて、提出することができるとは書いてありますけれども提出することになるのかというふうに考えております。
  73. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ということは、検査の結果だけじゃなくして、その他もろもろの資料を提出するという範疇でいろいろな資料を提出することはある、こういうことですか。
  74. 日野正晴

    ○日野政府委員 それは結局、審査委員会が、審査に当たって要件を一つ一つ吟味されていく際にどういつだ資料が必要かということをそれぞれ決められるものと思います。審査委員会が必要だと思われるものを結局私どもの方に恐らく求めてこられることになると思いますので、私どもの方から審査に必要な資料はこんなものじゃないだろうかと言うことは、ちょっと差し出がましいといった感じがいたします。
  75. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ちょっとポイントを外されるんですけれども、違うんですね。前問に対する答えでは、受け手の方の時間的な経過が必要だから、その間には検査結果が出ないものとは考えられない、こう言ったんです。これは明確に議事録に残ると思います。したがって、その後議決をするんだ、こういう意見ですね。いいですか。検査結果が出てから議決するということだと考えているということですね。長官、イエスかノーかだけで結構です。——長官はイエスとおっしゃいましたので、そういうことだと思います。  そこで、そういう金融危機管理審査委員会の議決を経て、そして預金保険機構から大蔵大臣及び内閣総理大臣に公的資金を注入することの承認を求めることとなっております。それで、その承認は、法の五条三項によって、閣議にかけて承認をするかどうかということを決定することになっているのです。  この閣議ですが、金融危機管理審査委員会及び預金保険機構が、申請を認めるものだ、イエスだと言っていたら、閣議は自動的に、実質的な審議をすることなくイエスと言ってしまうんでしょうか。これは、官房長官、いかがでしょうか。
  76. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員今御指摘のありましたように、審査委員会の議決が優先株式等の引き受け等を承認するものでありましたときは、金融危機管理のための公的資金を活用することになるわけでございます。この公的資金の活用ということにつきまして、預金保険機構が大蔵大臣及び内閣総理大臣の承認を求めてまいりましたときは、政府が一体として金融システムの安定のための危機管理として取り組むことになるわけでございます。  大蔵大臣及び総理大臣が閣議にかけてその承認を求められるわけでございますが、その以前に、先ほど御指摘ございましたように、金融危機審査委員会の議が得られるわけでございまして、それを厳正に審査され、そして大蔵大臣、また厳正な審査の上に立って出されるわけでございますので、閣議としても当然のこと、厳正に審査をすることになろうと存じております。
  77. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それはわかっております。閣議としても厳正に審議されることはわかっているんですが、閣議が金融危機管理審査委員会あるいは預金保険機構の決定と違った決定をされることもあり得るんでしょうか。
  78. 野中広務

    ○野中国務大臣 仮定のことについてお答えするわけにはいきません。
  79. 西田猛

    ○西田(猛)委員 これは仮定のことではございません。私は法律の解釈を粛々とお伺いしているんです。法律の五条の第三項にそう書いてあるから、ここにおける閣議決定というのは、実質に審議されるのですか、それとも、預金保険機構がイエスと言ったことはそのままパススルーでイエスなんですかと聞いているんです。お答えください。
  80. 野中広務

    ○野中国務大臣 厳正に議論をして、審査の内容を検討いたします。
  81. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この委員会で明らかになってきていることは、いかにも今、政府そして与党の方たちは、現在ある法律を長銀に適用することについて非常に及び腰なんですね。細かいことを法律の条文に従って、ではこの場合、閣議は実質に審議するんですかどうですかと聞いただけでも、仮定の問題だから答えられない、このことばかりです。これは全く仮定のことではありません。今、目の前にある現実の問題でございませんか。  ですから、この問題で長銀が申請して、預金保険機構がイエスと言ったら、閣議はどのように決されるのですか。実質に審議するんですか。イエスかノーかだけでもお答えになれないんですか。官房長官、いかがでしょう。
  82. 野中広務

    ○野中国務大臣 今おっしゃったような、金融機関が債務超過したということを現実に私どもは報告を受けておりませんので、そのような答弁をいたしかねるということを申し上げておるわけでございます。
  83. 西田猛

    ○西田(猛)委員 長銀が今債務超過に陥っているかどうかという情報に接していないということと、官房長官がお答えになったこととは論理的に関連づけられるものではありませんので、少し今の御答弁、よくわかりませんけれども。  そうしますと、では、閣議で厳正に判断をする、そして閣議決定をされました。閣議決定をした後に、閣議決定もイエスということだったとしますけれども、その後で、実は、長期信用銀行なり申請金融機関が債務超過あるいは破綻の蓋然性がないものではないということが判明したときの内閣の責任ということについては、官房長官、どのようにお考えになられますか。
  84. 野中広務

    ○野中国務大臣 西田委員質問がそこへ行くだろうと思いましたから、仮定のことについてはお答えできませんと申し上げた次第でございます。
  85. 西田猛

    ○西田(猛)委員 私の思いをそんたくしていただいて大変ありがたいのですけれども、そこへ行くとわかっているんだったら丁寧に答えてくださいよ。おかしいですよ。私は今法律に基づいて粛々と申請の手続について、担当大臣は総理大臣ですけれども、内閣の官房長官にお聞きを申し上げているわけです。仮定の問題には答えられない、そんなんじゃ、一体全体この先何が起こるのか全くわからないわけですね。どうもやはり、今の法律をこの長銀問題について適用することについて、今政府部内でも大変な揺らぎがあるということをここで露呈したというふうに我々は断ぜざるを得ないわけでございます。  そんな中で、私実はきょう、ある一つの興味深い報道に接しました。私どもは、今申し上げているように粛々と、この日本経済それから金融危機を回避するためにどうしたらいいのか、法律に基づいて実質的な審議をしている。ですから、我々は何もこのことを政局に絡めるとかそんなことを言っているわけでは全くございません。なぜ、これを政局に絡めているということを与党の幹部の方が御発言になれるのでしょうか。  これは皆さんにお配り申し上げておりますけれども、九月十四日の北陸中日新聞に書いてあることでございます。自民党の森幹事長は十二日、金沢市内で開かれた自民党の石川県連大会であいさつし、金融再生六法案の与野党修正協議について、自由党は——これはどこでもいいですよ。別に、我々の党が言われたからとかどこの党が言われたからという問題ではありません。今この金融安定委員会で公党が、しかも各党が法案を出して、野党案を出し、自由民主党も自由民主党案を出され、そうやって各党が真剣に協議をしているその場で、どこの党をということではありません。その公党を、「「われわれに一切耳を貸さず、話し合いをしない。政局絡みに考えている政党がいるのは残念だ」と述べ、」こういうことなんです。  まず、「われわれに一切耳を貸さず、話し合いをしない。」そうなんですか。官房長官、これはお答えにならなくて結構ですよ。というのは、これは、我々は与野党間でいろいろと協議をやって いるわけですね。耳をかさなくていいというんだったら耳をかしませんよ。だから、この間から言っているように、政府はみずからの責任で今の法律で適用されたらいいですよ、それをやるなら。でも、こういう御発言が出るということ自体が、このことそのものが政局に絡めているのですよ。  我々は、今私が質問したように、法律に基づいて粛々と、今何ができるのか、何をなすべきなのかをお聞きしているのに、仮定の問題だから答えられない、あげくにこういう新聞記事が出てしまう。これこそが政局に絡めていることであって、ましてや内閣の主要なメンバーであられる方たちが、長銀が倒れたらどんなことになるのか、デリバティブスがある、こんなことで日本発の世界恐慌になるというふうなことまでおっしゃっておられる。そんなことをおっしゃるから、ある意味で何にも不安のなかったある銀行が、海外デリバティブスが多いからといって売り込まれてすごく迷惑をしたような事情もありました。  そういう問題を、与党の皆さんが、そして内閣の方たちが明確に認識していただくことこそが、この問題を真っ当に解決していく一番重要なポイントだと私は思います。大蔵大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承りました。
  87. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今大蔵大臣から、そのように承ったというふうにいただきました。  したがいまして、我々は真剣にこの協議ないしいろいろな話し合いを行っているわけでございます。野党としても法案を提出しておるわけでございますし、そのことを真剣に受けとめていただきたい。我々は、結局、全然政局絡みで物事を言っているのではございません。  そこで、この今の法案なんですけれども、どうも一つだけ解せない点がございます。実は、大蔵省金融企画局長が、そもそもの状況が、破綻する蓋然性が高いと認められるかどうかということだけで判断することだというふうに重要な御答弁をしておられるのですけれども、これは今ある金融安定化法二十三条二項二号ロのことに絡めておっしゃったのでしょうか。
  88. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  一般的に申し上げますと、資本注入を行う際の判断基準として破綻という点に着目いたしますと、法文上は、今先生言われました第二十三条二項二号のロに、「当該発行金融機関等が破綻する蓋然性が高いと認められる場合でないこと。」と規定されているわけでございます。  この二十三条二項二号ロは、資本注入を仮にする場合にどうなるかとか、資本注入を仮にしない場合にどうなるかといった仮定に基づいた状況判断をこの条文は規定しているわけではなくて、申請を受けて、審査の時点における判断といたしまして、破綻の蓋然性の高さという点に着目いたしまして、破綻する蓋然性が高いと認められる場合でない場合、さらに詳しく条文を引用いたしますと、「協定銀行が優先株式等の引受け等を行った後でも当該発行金融機関等が破綻する蓋然性が高いと認められる場合でない」場合は資本注入の対象にできるという趣旨でございまして、また、審査基準にも同様の基準がございます。  したがって、これと金融機能安定化法及び他の審査基準に基づきまして審査、判断されることになるということでございます。
  89. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 お約束の時間が既に経過しております。簡潔にお願いします。
  90. 西田猛

    ○西田(猛)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、最後に申し上げたいのは、ちょっと答弁が長かったものですから、私が言いたかったことは、これは今局長も言われたように、協定銀行が優先株式等の引き受けを行った後でも破綻する蓋然性が高いと認められる場合でないことですから、今の時点で例えば破綻する蓋然性が高くても、資金注入をしたらその蓋然性がなくなる場合というのはこれで救えるんじゃないかな、僕はお役所風に読めばそういう答弁も可能だと思うのです。  しかし、大蔵省金融行政のある種の責任者の方が、やはりこの判断は注入する時点でやるんだということを言っておられるということは、政府部内で、今の法律を適用することにつき、非常に揺れが、疑義が生じているということを露呈した御答弁であったなという理解が非常にできるなと私は思いました。  時間が来ましたので、終わります。
  91. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 これにて西田君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  92. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  私は、長銀を吸収合併するに当たっての正常債権の扱いについて、最初に伺いたいと思います。  住友信託銀行の高橋社長は、六月二十六日の記者会見で、私どもは正常債権のみで合併を考えている、正常債権には第二分類の債権は含まれないと言っていました。  そこで、それでは正常債権の方は承継されるのかということをきょうは聞きたいと思うんですが、八月に野党の要求で当委員会理事会に提出された長銀の自己査定を見てみますと、総額で十八兆七千三百五十四億円、第一分類十五兆九千百十四億円、第二分類二兆三千七百九十六億円、第三分類四千四百四十四億円ということでありました。自己査定で明らかにしたこの十五兆円の正常債権は、住信に引き継がれていくということになりますか。
  93. 日野正晴

    ○日野政府委員 住友信託の高橋社長が一番最近、八月二十一日に発表しておられる内容では、「正常先債権のみの承継」とございます。  今お尋ねは、いわゆる第一分類、これは非分類と呼ばれていますが、正常先債権と非分類との関係いかんというお尋ねだろうかと思いますが、非分類債権といいますのは、正常先債権、これは住友信託銀行の方が言っております正常先債権に加えまして、さらに、要注意先債権以下の債務者に対する債権のうちでも、優良担保カバー部分とかあるいは引き当て済みの債権を含めた概念であると思います。それに対しまして、正常先債権といいますのは、業況が良好であって、かつ財務内容についても特段の問題がないと認められる債務者に対する債権をいうものと考えております。
  94. 吉井英勝

    吉井委員 今のお話は順番に聞いていこうと思ったんですけれどもね。  ですから、当初、正常債権のみでの合併を考えている、第二分類の債権は含まれないと言ってきたわけですから、当初のことですと十五兆円の正常債権は引き継がれるということであったと思うんですが、要するに、今のお話でいきますと、十五兆円ほどの正常債権は必ずしも引き継がれない、こういう見方をしていらっしゃるんですか。
  95. 日野正晴

    ○日野政府委員 今御説明いたしましたように、正常先債権というものを住友信託銀行の方が言っておりますが、これを長銀がどういうふうにこれから合併交渉において両行の間で詰めていくかという問題になろうかと思いますので、今それがすべてかどうかということについては、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  96. 吉井英勝

    吉井委員 では、改めて正常債権の方について確認しておきたいと思いますが、正常債権とは、正常な企業に貸し出している債権、これは全額正常債権に入ると思いますが、要注意企業、破綻懸念企業、それから預金や国債等担保が入っていて保証協会の保証がついている破綻企業であっても、それらの担保や代位弁済で回収できるものは正常債権に入る、まずこの点はこれでいいですか。
  97. 五味廣文

    ○五味政府委員 お答え申し上げます。  債務者の財務状況などによって、正常先、要注意先、破綻懸念先等の債務者分類をいたしますけれども、これをさらにその資金使途やその資金の内容で個別検討した上で、回収の危険度あるいは価値の毀損の危険度、こういうものをはかつていわゆる第一分類から第四分類に各債権を分類していく、こういうことになりますが、今お話のありました例えば要注意先ですとかあるいは破綻懸念先、こういったようなところに対する債権で国債 というような優良担保がついている、あるいは公的な保証協会の優良保証がある、こういうものにつきましては、回収の可能性という視点からは問題がありませんので、これは非分類ということになるわけでございます。
  98. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、今の答弁に言うように、正常債権ならば十五兆円は長銀から住信に引き継がれるはずなんですが、さっきもお話ありました八月二十一日に住信が記者発表した文書などによると、「正常先債権のみの承継」、こういうふうに、これまで言ってきた正常債権を引き継ぐというのと違って、正常先債権のみ承継すると、「先」が入ってきたわけです。  それで、長官からもお話ありましたが、そうすると、長銀の自己査定で言っている正常債権、これは十五兆円ということであったわけですが、これは住信は全部を承継するということにはならないということになりますね。
  99. 日野正晴

    ○日野政府委員 合併は、もう私が御答弁申し上げるまでもないと思いますが、要するに、本件の場合でいいますと、長銀の株主が長銀の資産及び負債すべてを住友信託に売却するというのが、これはいろいろな考え方がありまして、現物出資であるとかあるいは人格が合一するとか、いろいろ説はありますが、要するに売却するわけですね。売却するに当たってはすべてを売却するわけでありまして、つまり丸のみしていただくわけですね。一部たりとも何か残したまま合併するということはないわけです。  つまり、長銀の方は合併していただく、合併していただくという言葉をあえて使わせていただきますが、合併する以上は、すべての資産とすべての負債を住信に引き取ってもらうということが必要になっているわけでございまして、何をその際引き取っていただくか、引き取られるかということは、あくまでも両行の間のこれからの話し合いによって決まることでございますので、今お尋ねのように、長銀が非分類としたものをすべて引き取ることになるのかどうかということについては、そういった意味で直ちにそのお答えができないということを御理解いただきたいと思います。
  100. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、私は、正常債権と言われた十五兆は全部引き取るんだ、こういう感じでずっと説明されてきたわけですが、だんだん話が変わってきて、それで住信の方は、金融監督庁の検査が終わり次第、外国監査法人によるデューデリジェンスを実施するということを明らかにしております。デューデリジェンスの対象は、当然引き継がない第二分類、第三分類債権には当てはまらないわけですから、長銀が正常先債権としていても本当に正常先債権であるかどうか、ここに今度の調査の主眼があるのではありませんか。     〔村田(吉)委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 日野正晴

    ○日野政府委員 デューデリジェンスの手続をどういうふうにするかということは、例えば今名前が出ております外国の監査法人などが、住友信託の立場に立ちまして、果たしてそれを丸のみしていいものかどうか、とげがないかとか、あるいは変な針がついていないかということを検討される上で、何を対象にするかということをこれから決めていかれるものと思います。  したがいまして、それが果たして非分類の債権だけであるのか、あるいは三分類や四分類まで含むのかどうかということについては、やはりあくまでもデューデリジェンスをこれから担当されるその監査法人が合併を前提として考えてお決めになるものと思います。
  102. 吉井英勝

    吉井委員 実は、八月三十一日の本委員会で長銀の大野木頭取から、万一のことになりますと、お取引を願っている中堅の中小企業四千社を含む八千社を初め、社会経済の全般に多大な御迷惑をおかけすることになり、今般公的資金をお願いしようとしておりますのはこのような状況を何とか避けたいという一念からですという説明がありました。  また、九月十日の参議院の特別委員会大野木頭取は、中小企業の借り手について、第二分類は千社弱でございますと答弁していました。これまで住信は、この中小企業約千社は第二分類として、もう最初から相手にしていないわけです。これ自体許せないことですが、一方、正常債権は引き継ぐとしてきたのです。  しかし、今のお話で明らかになったように、住信が引き継ぐというのは、十五兆円の正常債権ではなくて正常先債権だけであるということ、それから正常先債権も長銀の自己査定どおりにはいかないということ、デューデリジェンスによって住信の利益になるところに精選してしか受け取らないと。ですから、長銀の方が、お取引を願っている中堅の中小企業などを含めて迷惑がかからないように公的資金を申請するんだと言ってきたこの申請理由というのは、全く破綻をしてしまっているということが明らかになってきたというふうに思うのです。  実際、先日、長銀の幹部の方から私どもお話を伺ったのですが、その方は、この合併に当たって住信が受け取る資産の範囲は、引き取れば自己資本比率が下がるから慎重だ、住信が引き継ぐのは十五兆円の正常債権のうちの五兆円程度にしかならないと述べておりますが、これもこのことを裏づけていると思うのです。  一方、八月二十四日、住友信託銀行の企画部長が各店の部長あてに出した「日本長期信用銀行との合併構想について」という文書を手に入れまして見ました。その第二というところで、本件合併の戦略的意義について、トップクラスのバンキング・アンド・投資マネージ機関として活躍するために必要なプレゼンス、顧客基盤、人材等を抜本的に強化することをねらいとしています、本件合併は、当社の生き残り戦略を遂行する上で大きな意義を持っており、ぜひとも成功させたいと記しています。  また、六月二十九日に住信の労使懇談会の席上で緒方常務らが語ったのが組合のニュースに出ておりますが、三月に社長より、三菱信託銀行を抜き信託業界トップの座を奪回する、株価大手十九行中ベストファイブに入る、未来志向の会社になるの三つの抱負を述べた、長銀との合併が実現すれば、当社は法人顧客数ほぼ倍増し、金融債の販売を通じて個人富裕層との取引も拡大して、国内第二位の総資金量を有する巨大金融機関になると言っているわけです。  そこで、大蔵大臣中小企業の方は引き継がれないということは切り捨てられていくわけですが、住信がトップバンクを目指すという生き残り戦略、このことに公的資金を投入して支援をする、これを当然のことというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、その点だけ伺っておきたいと思います。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公的資金の投入は、過少資本が生じましたときに金融秩序を維持するために行われるものでございます。それを、我が社がその結果非常にいい銀行になるとお考えになられるのは、それはそうであるかもしれませんが、別にそれが公的資本投入の目的ではございません。
  104. 吉井英勝

    吉井委員 現実の問題として、実際には長銀の方の多くの善良な借り手の方は、これは切り捨てられていくという問題が今出てきているわけです。税金投入というのは、借り手保護のためではなくて、結局、長銀を吸収合併して生き残りを図ろうとして、トップバンク戦略として臨んでいるその住信の言いなりのものとなるような、そういう公的資金投入というものはやめるべきであるということを私は申し上げたいと思います。  次に、日銀総裁、来ていただきましたので、大変お忙しいところ御苦労さまです。  伺ってみたいのですが、九四年の九月の六日、経済同友会代表幹事として速水日銀総裁は、企業献金というのは何らかの利益誘導につながりかねず、勧める立場にはないと記者会見で発言されました。  このお考えは今も変わらないかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  105. 速水優

    ○速水参考人 九四年、私、経済同友会の代表幹事をいたしておりまして、四団体の長と話し合いまして、当時政党助成金も始まることになってお りましたし、今後は献金は個人にすることにして、個人から個人というのが最も望ましい、会社が特定の政党に献金することは極力控えていくべきではないか、四団体でそれを申し合わせました。  ただし、今すぐやめるというわけにもいきませんので、五年間の猶予期間を置いて、それを五年たったときにもう一度考えることにしょうということになっておったはずでございます。
  106. 吉井英勝

    吉井委員 それで、私が今お伺いしておりますのは、同友会の代表幹事として、企業献金は何らかの利益誘導につながりかねず、進める立場にはないと記者会見で発言されたこのお考え、日銀総裁になられた今日もこのお考えに変わりはないかどうか、この点を伺っておきたいのです。
  107. 速水優

    ○速水参考人 私、個人的な考え方としては、そういうことがなるたけ、会社が特定の政党に寄附をするということでなくて、やはり個人ベースでやるべきことではないかというふうに思っております。  ただ、これは日本銀行の公の立場で、日本銀行としては、やはり金融政策あるいは考査といったようなことは、物価の安定と国民経済の健全な発展、それから信用秩序の維持といったようなことを、中央銀行の使命でございますので、これはみずからの判断と責任で行っていくつもりでございまして、銀行業界の政治献金が日本銀行政策や考査に影響を及ぼすことはいささかもないというふうに確信しております。
  108. 吉井英勝

    吉井委員 日本銀行の方は、総裁自身がそういう献金をもらったりしない限りゆがめられることはないとおっしゃった、そういう立場で進めていかれるものと思いますが、今、この長銀への税金投入に国民の七割、八割が反対しているわけですが、それでも自民党政府の方は税金投入をやろうとしているわけです。  その一方で、先日公表された政治資金を調べますと、自民党は長銀から千八百四十八万円をもらっています。これはこの間の話だけであって、例えば、長銀から一九九〇年から九六年までの七年間で見れば四億五千万円、銀行業界からは同じ九〇年から九六年までの七年間で八十四億八千万円もの政治献金をもらっておりました。  速水総裁は、企業献金は利益誘導につながりかねずということをこの前おっしゃったのですが、この企業献金は利益誘導につながり得る問題だとは思われませんか。
  109. 速水優

    ○速水参考人 私は、今現在そういう企業の献金、まだ残っておりますけれども、これが利益誘導につながるものではないというふうに考えております。
  110. 吉井英勝

    吉井委員 私は、企業献金によってこういう日本の政治がゆがめられる、あるいは企業献金を受けて銀行救済のための仕掛けがつくられていくということは国民は断じて許さない、このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  111. 相沢英之

    相沢委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  112. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今、金融安定化法の与野党案について修正協議が進んでいるようでございますが、若干そのことについても触れながら御見解をお伺いしたいというふうに思います。  マスコミ報道の方が先行しているようでございますけれども、破綻処理のスキームの中で、その中心的な役割を果たす部分を国家行政組織法の三条に基づく行政委員会にするという方向性が出てきているようでございます。この行政委員会には、金融行政の企画立案は担当させずに、任務を破綻処理だけに限定するという形で金融企画局を移すという話があるようでございます。  我が党は、金融庁の早期発足を目指すためにも、現在の時点から財政と金融の分離を大胆に進めるべきだと考えております。このままでは自民党案は、名を捨てるが実は何が何でもとるという大蔵省のかたくなな姿勢を代弁しているにすぎないように思うのですが、金融と財政の分離に対する政府と野党三党の御見解をまず伺いたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各党間の御折衝の途中の問題でございますので、意見を申し上げるのはむしろ差し控えるべきであるかと存じておりますけれども、この問題についてば、金融監督庁設置が決まりまして、既に監督庁は活動を開始しておられますし、また、行く行くは金融庁の設置ということも予定をされておるように存じております。余りしばしば制度が変わりますのも、仕事をいたします上ではいろいろ支障があることも事実でございますけれども、しかし、これは各党の御折衝の問題でございますので、それ以上申し上げることは差し控えさせていただきます。
  114. 古川元久

    古川議員 濱田委員の御質問にお答えいたします。  私自身も、一時は大蔵省に籍を置きました者として、このような事態を招いていることを大変に残念に思います。  まさに今の金融危機を招いている状況の大きな背景にあるのは、大蔵省がやってきた金融行政に対する信頼感が失われてしまった、一種のクレジビリティークライシスと申しますか、そういう信用が失われている、そういう信用の危機がこういう状況を招いている。そうした中で、そうした批判を受けてできました金融監督庁自身の信頼も、発足してまだわずかでありますが、この委員会での論議等を聞いておりますと、残念ながら、それもまた信用に足るものとは言えないのではないかという感じがいたしております。  私どもは、さきにこの金融監督庁法案を審議する際にも、もうそこではっきりと財政と金融の分離を明確にして、そして金融庁を発足させるべきだというふうに申し上げました。まさに今この危機を乗り越えていくためには、一日も早く新しく、信頼をされる、信用される行政機関、金融行政というもの、そうした組織をつくり上げることがやはり喫緊の課題ではないかというふうに思います。  今、大蔵大臣の方から、何度も組織をいじるのはいかがかというお話がありましたが、そうした問題を先送りしていて、今のような、信頼が得られていない、マーケットなどにおいても信用の得られていない状況を続けていれば、これはますます状況を悪化させることにもなってしまいます。  この金融監督庁ができることによって、いわば金融行政というまんじゅうのあんこの部分はもう既に移ってしまっているわけでありますから、なぜここであえてその皮の部分を残すことに躍起になろうとするのか。本来の、私自身大蔵省にいた者として考えますと、大蔵省の残った部分の信頼を取り戻すためにも、そして行政全体に対する信用を取り戻すためにも、むしろここははっきりと分けて、一日も早くそうした形で信用に足る新しい行政機関というものをつくるべきであって、今委員指摘のように、一日も早い形で金融庁の発足、それを金融再生委員会という形で前倒ししてでもやっていくべきだと私たちは考えております。
  115. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 連立三党のときに、私たちも金融庁への早い移管というものを求めてまいりましたけれども、現在のスキームで当時の与党が合意をいたしました。  金融再生委員会の中に金融企画局の機能の破綻処理部分だけを移す、自民党的に言うと現在よりも進歩しているような主張があるとは思うのですが、今論議している金融の新たな再生のためのスキームというのは、企画立案も含めてこれまでのありようを変えていくという意味合いが強い。まさにそこがポイントだと思うわけで、私の主張も今の委員の主張も合致する。やはり早くやって、今までいろいろな問題が起きた部分をきれいな方向に進めていこうという思いが一致していると思うのですが、そのように考えてよろしいでしょうか。
  116. 古川元久

    古川議員 全く委員おっしゃるとおりでございます。
  117. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 次の点に行きたいと思います。  破綻前処理策は社会民主党も重要視しておりま す。経済の現状を踏まえるならば、政治の場で本来この金融機関の破綻前処理策こそ集中して論議されなければならない課題だからです。そのことが今現実的に行われております。貸し渋り対策、健全な借り手保護、地場産業の育成、雇用対策など、すべての党が最も緊急を要する課題として掲げているものばかりでございます。  しかし、これまで何度も主張してきましたように、金融機能安定緊急措置法の運用が現在のような状況のまま放置されたり、今回の長銀のように公的資金が不良債権の償却原資に充てられるというのであれば、社会民主党は、長銀を含む金融機関への新たな公的資金の投入には反対であると断ぜざるを得ません。  マスコミ報道等によりまして、修正の方向でも、金融機能安定緊急措置法については、長銀問題を処理した後改正ないし廃止を検討するおつもりのようでございますが、きのうも地元に帰りまして、こういう言葉がございました。それでは真っ先につぶれるような銀行の方が得をするんですかと。国民の偽らざる声かもしれないな、聞こえたとは言いませんが、声かもしれないなというふうに承ってきたわけですが、そういう声にどう答えるおつもりでしょうか。  しかも、改正の内容は、銀行が自主的に自己査定し、引き当て率の実績を公表すると書いてあります。社会民主党は、情報開示、完全な全部の情報開示が必要だというふうに主張させていただいておりますけれども、当然のごとく、金融監督庁による指導監督、これらが触れられていなければならないわけでございますが、これらは一切触れていない。これでは情報の開示は不徹底にならざるを得ないというふうに思います。  情報の全面開示は破綻前処理について不可欠の前提であるというふうに思いますが、いま一度、政府の見解はいかがなのか、お聞きしたいと思います。  そして、破綻前の資本注入については、適用条件の厳格化、佐々波委員会が審査基準というものを明確にしているわけですけれども、今までの審議の中でも、それを適用していればほかに破綻、債務超過の蓋然性があるやなしやという論議を含めて問題となっております。政府としては、どのように条件として適用条件の厳格化というものが考えられるか、もし御見解があったらお聞かせいただきたいと思います。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今地元の声を御紹介されましたが、しばしば申し上げておりますけれども、長期信用銀行は今度のリストラによって事実上消滅をするわけでございます。それだけの社会的な制裁を受ける。それにしても、やはりそれは吸収合併によった方が社会的コストは少ないだろう。自分が楽をするとか助かるという部分はこれについてはございませんわけでございますので、その点はもう委員は御承知でいらっしゃると思いますけれども、なかなかそこが国民的にわかりにくい部分であって、私ども、もっと説明に努めなければならないと思っております。  それから、最後のお尋ねは……(濱田(健)委員「適用条件の厳格化」と呼ぶ)その点はこの委員会の御審議でも何度か御指摘がございまして、確かに、審査基準あるいはその基本になります部分等につきましても、はっきりそれがわかりますような責任のとり方、あるいはもし、もとより不正事件があればその追及でございますが、そういうことはさらに明確になることが極めて望ましいことだということは、この委員会の御討議の中で私ども十分その点は肝に銘じております。
  119. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がもう二分ぐらいしかありませんので、途中の質問を省きたいと思います。  今、委員会の中で、破綻前処理、そして破綻後のスキームをどのようにしていくかということを、本当のところ真摯に論議はしていると思います。しかし、どういうふうにスキームをつくり、どういう形で公的資金も、破綻前であろうと破綻後であろうと必要な場合には使っていかなければならないという論議はあるわけでございますが、国民から見ると、自分たちの税金を可能な限り投入するとしても、政府案、野党三党案、自分たちの部分が相手の案よりもこれだけ、数字は出せないと思うのですが、こういう仕組みによってより少なくて済むのですよということの主張といいますか、自分たちの税金、中身としては金融再生に使うわけですから建設的と言えるのかもしれませんが、国民の目から見て、やはり、より少ない方がいいという考えがあるわけでございまして、その辺の政府案、野党案の主張といいますかポイントといいますか、それらをお聞きしたいと思います。
  120. 枝野幸男

    枝野議員 では、野党案の方からお話をさせていただきます。  私どもの考え方は基本的には、どうやったら国民の皆さんの税金を使わせていただく部分を少なくできるかという発想でつくらせていただいております。  例えば、金融機関が破綻あるいは破綻直前の状況になったときに、今長銀に対して行っているようなやり方をすることがいかに税金のむだ遣いになるか。逆に、例えば私どもの特別公的管理、いわゆる国有化スキームを使いますと、株主の責任をきちんと問えるという大きなポイントがございます。その銀行が破綻に近い状態であった場合、その株主の本来の権利は限りなくゼロに近いものでございますが、そこに税金をつぎ込むなんという話があっただけでも株価がぐんと上がって、これは株主の利益になります。これは国民の税金が株主の利益に転化をされていることであります。私どもは、そうした株式を、きちんと整理清算をしていく過程の中では、時価で強制収用させていただくという形で、本来負っていただく損失をきちんと負わせるというようなスキームをつくっております。  あるいはまた、経営者責任ということで、例えば長銀についてもさまざまなリストラ策が出ておりますが、これが全く経営者責任を問うようなものになっていないというのはもう国民の皆さんが御指摘をされているとおりでありまして、退職金などというのを返還するというのはむしろ当たり前の話でありまして、そこから先、これまでの取締役としての、善良な管理者としての注意義務に違反をしてきたからこそこういった破綻に近いような状況になってきているのが、破綻をする場合の金融機関の一般でございます。  これは、むしろ、そういった従来の経営者に対してきちんと法的に損害賠償請求等をできるようなスキームをつくらなければならない。そのためには、従来の経営陣あるいは株主などときちんと断絶をさせなければ、それぞれしがらみを負った人間が自分で、天につばするような形で損害賠償請求を徹底することはできないというふうに思っております。  あるいはまた、破綻した金融機関の従業員の皆さんの立場というものを、個々に考えますと大変お気の毒な問題ではありますが、しかし、中小零細企業でこういった金融機関の不祥事の結果として倒産を余儀なくされているところ、既にたくさん出ているところの従業員の皆さんはまさに仕事を失ったりしているわけでありますが、例えば長銀のリストラ策を見ましても、ボーナスの半額カットだなどという、一般の国民の皆さんから見れば、ばかにしているのか、給料の間違いじゃないかというような話が出てきたりしています。  例えば国有化スキーム、特別公的管理をすれば、その段階で一たん従業員の皆さんを全員解雇させていただいて、その上で必要な人数を、公務員並みとまで一気にできるかどうかわかりませんが、賃金のベースを変えて再雇用した形で整理をしていく、そして清算をしていくということができます。こういったもろもろのコストを考えていきますと、圧倒的にまずはそういったスキームの方がいいということが言えます。  そして、関連する諸手当て、例えば預金者の保護あるいは健全な借り手の保護ということにお金がかかります。これもダイレクトに、ストレートにやっていく。つぶれかけている金融機関に無理やりお金をつぎ込んで、生かして、その結果とし て預金者や善良な借り手を助けるというやり方と、それよりも、善良な借り手や預金者の保護ということにダイレクトにお金を出すということ、間接費用の分、ダイレクトにお金を出す方がコストは安上がりであるのは当然のことであります。  こういったことから、私どもの方が圧倒的に国民の使う税金は少なくて済むというふうに考えております。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長銀のリストラ計画を見ておりましても、それは随分厳しいことになるわけでございますが、今のお話はいろいろ御議論中のことでございますから、あえて申し上げません。  ただ、私どもも減資という問題は、これはやはりもう一つ真剣に考える方がいいかなということは思っております。
  122. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 終わります。
  123. 相沢英之

    相沢委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次に、笹木竜三君。
  124. 笹木竜三

    ○笹木委員 無所属の会の笹木竜三です。質問を始めます。  金融再生のあり方をずっと議論をしているわけですけれども、野党案の場合はもちろんですけれども、与党案の場合であっても、金融界の流動化というか再編というか、あるいはつぶれていく銀行、これから非常に可能性が高くなっていくわけです。それで、そういったマイナスを補うようなプラスのメッセージというか、そういうのも同時期に発信していく、これがどうしても必要だ。市場等が反応する、刺激して株価も押し上げることができるような、そういった迅速な対応、政策が同時に出されることが望まれるんだ、そう思うわけです。  例えば、前回も質問した折にお話をしました。スイスで、わずかな手数料収入で収益を上げていた銀行が七、八年で五強の中の一角を占めた、これはノウハウとか人材を内外からたくさん獲得した、それが大きい、そんな話もさせていただきました。  そういう話で考えますと、例えば、日本金融界が変わっていくというときに、内外の人材をしっかりと集めていける体制になっているか。いろいろな阻害要因がある。  よく年金制度のことも話題になります。年俸制、これは上場企業の場合には今普及率が九・八%と言われます。ただ、現時点でもまだ、年俸制にした場合には月給制の方に比べてボーナスに対する掛金という面で不利益がある。こういったこともしっかり変える。しっかり変えて日本銀行金融界に内外から人が集まるようにする。そういったこともできれば同時期にやっていく必要があると思うわけですけれども、そういったことについてはお考えを持っておられるのか。  あるいは、よく言われる規制緩和についても、携帯電話については二兆三千億円の効果があったと言われる。地ビールについては、私の居住地区でも三軒、地ビールのレストランが新しくできている。百七十億円の効果があったと言われる。こういった規制緩和についても、よく言われるように、具体的な許認可件数はふえているのが現状ですから、情報通信の分野で、あるいは労働の分野で具体的にこれだけ減らす、しっかりとその同じ時期に発表していく、そういった政策がぜひ必要だと思うわけですけれども大臣の御意見をまず伺いたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に御説には賛成でございます。  携帯電話がよく引かれる例でございますけれども、統制を解除してみたら思わないところに新しい企業が起こる。殊にベンチャーキャピタルなどはそうだと思いますが、そういうことをしていきませんと、新しい雇用、新しい需要というのは起こってまいりません。非常に必要なことだと思いますし、給与のことについてもお話がございましたが、これから外国からいろいろな意味での技術者、銀行にもございます、それを導入する意味で、日本の給与体系とそれが必ずしも合わないかもしれない。そういうときには別の給与体系をつくりませんと外国から優秀なエキスパートが入ってこないという問題もございます。労働市場の開放もございまして、たくさんしなければならないことがあるように私も思います。
  126. 笹木竜三

    ○笹木委員 おっしゃるとおり、たくさんしないといけないわけですけれども、ぜひこの法案の審議を通じて、その時期にそういったプラスの決定も決断すべきだ、しっかりやっていただきたいと思います。  野党案についても、これはよくハードランディングと言われる。私は、つぶすべき銀行はつぶす、これはいいと思いますけれども、その場合には、全体のマイナスに対してしっかりと今言ったプラスのメッセージを出していく。どういうことをお考えか。信用保証はもうよく聞いております。わかっております。それ以外のどんなことをお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  127. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)議員 御指摘のとおり、金融機関が破綻したときは、特にハードランディングという形で早期処理をしようとか、破綻金融機関は市場から退出してもらおうというような場合は、さまざまのリスク、不安が発生する。私ども野党三会派の案は、それに対応した手が全部入っておると私は思っております。  どういう分野でリスクが発生するか。主な分野は、申すまでもなく、支払い不能によって決済システムあるいは金融市場に支払い不能の連鎖で混乱が起きないか、これがまず最も緊急で最大のリスク。それから、二番目が預金者、長銀の場合は金融債の保有者も入りますが、この人たちの不安。三番目は借り手企業だと思うのですね。  最初の点が一番大事なわけですが、御承知のように、銀行業というのは免許制でございますから、破綻が明らかになったときには、行政当局は、日本銀行と十分打ち合わせの上破綻処理のスキームを決めて、皆さんに不安が生じないようにすぐに公表することになると思うのですね。どういう取引は継続します、どういう取引は停止します、業務停止でこういうふうに畳んでいくんだと。そのときに一番大事なことは、日本銀行日本銀行法第三十八条の無担保の特融で入っていくから、とりあえず支払いは全部日本銀行がバックアップして保証するから支払い不能の連鎖は起こしません、皆さん安心してくださいということをばんと言う。  ここまでは政府も私どもも同じだと思うのですね、現行のスキームでやることは。我が野党案の場合、もう一つ入っておりまして、そのときに、もし内外の金融市場などに不安がある場合は、日銀の特融だけじゃなくて、さらにその破綻した金融機関株式を全額政府が買い上げるという形の公的管理に入るということもばんと発表する。これは二十四時間以内の処理でやる。そのことによって日銀の信用とあとは政府の信用と二つでバックアップするから大丈夫だということで、皆さんの不安を静めるという形になっております。  預金者や金融債の保有者、これはもう政府も私どもも同じ、今の預金保険制度でいける。  それから借り手については、笹木委員おっしゃいましたように、政府は、ブリッジバンクで公的資金をつぎ込んで借り手に融資すると言っているんですが、そんなことをしたら公的資金がかさんじゃうし、行政コストもかかる。ブリッジバンクなんかつくらなくたって、今あるインフラを使って、すなわち五十二の信用保証協会、そこに対して再保険をする中小企業信用保険公庫という既に存在しているインフラを使って、そこに公的資金を入れることによって、借り手企業が別の健全な銀行に借り入れをシフトすることを信用保証で支援する。  御承知かと思いますが、信用保証つきの貸し出しというのは、銀行の立場から見ると、自己資本比率を計算するときのリスクレシオが低いですから、普通の貸し出しよりも自己資本比率を気にしている金融機関にとっては、これはウエルカム、歓迎すべき貸し出しであります。そういう意味からいっても、これによって借り手の不安を静めることができるというふうに考えております。
  128. 笹木竜三

    ○笹木委員 関連してなんですけれども、いわゆる市場関係者と言われる方と話をしていますと、九七年から行われているエンゼル税制、ベンチャーに対して投資をする方に対する優遇税制、こういったことも、しっかりと理解されているかというと、かなり理解されていない面があります。やりとりして、いや、それは実際的にはまだかなり足りない部分はあるけれども、あるよと言っても、ああ、そうだったのかとか、そんなこともあったりします。  何がお話ししたいかというと、マイナスのイメージが強いこういう時期に、例えばインターネット等で市場関係者に、日本としてやっている、ここ数年で取り組んでいる経済をプラスにする政策について、セットでもっとアピールしていく、これはもっとやらないと、かなり誤解に基づく結果になっているんじゃないか、そういうことを感じます。  それに関連してですけれども、前回、緊急経済対策特別委員会でも言いましたが、アメリカでは、一九九三年に制定されたGPRA、要は、政策を打つときに、経済的な波及効果ではかるもの、あるいは達成度、パーセントで示すもの、あるいは顧客満足度的なアンケートで示すもの、例えば道路とか港湾だったら経済的な波及効果がどうなのかということを政策の決定時に、その計算式の根拠も含めて公開をする。あるいは寝たきり老人、福祉の問題といったら、寝たきり老人のパーセントを何%減らすことを目標にしてこの政策をやる。あるいは自然公園であったら、顧客満足によって、満足が図られているかどうかを検討して存廃も判断していく。こういった透明性のある政策評価によって例えば財政の出動も図るということであれば、今低金利なわけですから、そのことによって、むしろ国債を発行しても償還財源の確保につながることも十分あり得るわけで、この政策評価をしっかりと、その基準も計算式も含めて公開するんだ、金融再生案の議論のこの時期にこそ決断をすべきだと思っております。  もう時間が来ましたので、大臣と野党案の方に一言ずつコメントをいただきたい、そう思います。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ベンチャービジネスの問題は冒頭に御提起になりました問題と関連しているわけでございまして、税制などもいろいろやりますが、どうも、確かに国民が余り知っていらっしゃらない。今度の予算編成でも、もう少しベンチャービジネスというものをいろいろに考えて、重点を置きたいと思っております。  それから、後の問題はコストとベネフィットの分析の問題でございますが、しょっちゅう申しますけれども、なかなか思うようにまいりません。努めたいと思っております。
  130. 枝野幸男

    枝野議員 委員指摘のような政策評価のルールづくり、そして透明化というのは大変重要な問題であるというふうに考えておりますし、また、それにしっかりと踏み出していけるかどうかということが、目の前の問題を解決できるかどうか、つまりあいまいにして、ごまかして責任の所在がわからないようにしてやってきたことを変えていけるかどうかが、まさに今の金融の問題の喫緊の課題でありますし、そこを変えていくことが経済全体を活性化していくことになるんじゃないかというふうに考えております。
  131. 笹木竜三

    ○笹木委員 質問を終わります。この政策評価が、財政の投入をプラスに、直接的に、より影響が持てるようになると確信しております。お願いします。  終わります。
  132. 相沢英之

    相沢委員長 これにて笹木君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時散会      ————◇—————