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1998-09-02 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月二日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       愛知 和男君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 功統君    金田 英行君       河村 建夫君    熊谷 市雄君       倉成 正和君    佐田玄一郎君       佐藤  勉君    砂田 圭佑君       園田 修光君    滝   実君       津島 雄二君    中谷  元君       蓮実  進君    桧田  仁君       宮本 一三君    山本 公一君       山本 幸三君   吉田左エ門君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    枝野 幸男君       岡田 克也君    海江田万里君       北村 哲男君    仙谷 由人君       田中  甲君    古川 元久君       石井 啓一君    上田  勇君       大口 善徳君    前田  正君       鈴木 淑夫君    西川太一郎君       西田  猛君    木島日出夫君       佐々木憲昭君    春名 直章君       秋葉 忠利君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村正三郎君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         労 働 大 臣 甘利  明君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         法務大臣官房司         法法制調査部長 房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         国税庁次長   大武健一郎君         通商産業大臣官         房審議官    岡本  巖君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君  委員外出席者         議     員 保岡 興治君         公害等調査委員         会事務局長   下野 省三君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         中小企業信用保         険公庫総裁   神谷 和男君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人         (金融危機管理         審査委員会委員         長)      佐々波楊子君         衆議院調査局金         融安定化に関す         る特別調査室長 藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 九月二日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     佐藤  勉君   大野 松茂君     熊谷 市雄君   大野 功統君     大石 秀政君   河村 建夫君     渡辺 博道君  吉田左エ門君     園田 修光君   上田 清司君     田中  甲君   西川 知雄君     前田  正君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     大野 功統君   熊谷 市雄君     桧田  仁君   佐藤  勉君     江渡 聡徳君   園田 修光君    吉田左エ門君   渡辺 博道君     河村 建夫君   田中  甲君     上田 清司君   前田  正君     西川 知雄君 同日  辞任         補欠選任   桧田  仁君     大野 松茂君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等調整に関する臨時措  置法案内閣提出第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興  治君外一二名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案保岡興治君外四名提出、衆  法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提  出、衆法第四号)      ――――◇―――――
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図るための関係法律の整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。砂田圭佑君。
  3. 砂田圭佑

    砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。  大蔵大臣、連日大変御苦労をいただいて、お疲れでございます。我々の大先輩として、大変豊かな見識と、そして気迫のある御答弁をいただいております。これからも日本の国と日本国民のために御苦労をいただきますが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  さて、当委員会でもいろいろ議論が深まってまいりましたが、まだやはり、日本国民一般の中には、今回の金融問題に関してそんなに深い理解が行き届いているというところになかなか行き着いていないという気がいたします。  私ども地元に帰りましても、景気はどうなるのか、あるいは銀行破綻しても自分預金が安全ならいいじゃないかとか、どうしても身近な問題に気をとられがちでありまして、日本全体そして日本経済国民生活にもたらす影響、そこまではなかなか思いが至らないのが、国民一般的な理解の度合いではないかという気がいたします。  そういう意味で、私は、きょうは極めて基礎的な、そして国民にぜひ御理解をしていただいておかなければならないこの金融安定化の問題について、べーシックな疑問を大蔵大臣に、ぜひわかりやすく、国民皆さんにわかりやすく、そして正確にお答えをいただきたいという気がいたします。  まず最初に、言い尽くされましたことでもあるかもわかりませんが、この日本金融システムがもし破綻を来したら、世界経済日本経済そして国民生活にどのような悪影響を及ぼすのか、また、金融システムの安定に向けて大蔵大臣はどんな御決意を持って臨まれておられますか、お尋ねをいたします。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、国民一般の目から見ますと、長期信用銀行という銀行は、金融債を持っていらっしゃる方々は知っていらっしゃいますけれども、そんなに親しまれておる銀行ではございません。しかしながら、その銀行の規模から申しますと、国民の一人一人には直接にはお取引がありませんでも、大変大きなたくさんの融資先を持っておりまして、また融資先自身長銀の仮に破綻によって大きな影響を受ける、それから連鎖反応があるという、そのぐらい大きなカバレッジを持っておる銀行でございます。  それからまた、国際的にも、いろいろな大小の店を合わせますと二十ぐらいの店を持っておりまして、デリバティブを初め国際的な取引も長いこといたしておりますから、国際的に金融界では非常に知られた銀行でございます。  その銀行が突如として破綻をするというようなことになりますと、ちょっとその影響ははかり知れないものがあると私ども思っておりまして、シミュレーションをするということも実は余り現実的でございませんので、そういうことで申し上げることができませんけれども世界金融秩序が最近殊に非常に不安な状態にございますので、世界秩序が非常にがっちりしておりますればまたでございますが、これだけ世界金融秩序が不安になっておりますときに、これだけの銀行破綻したということになりますと、国際的な影響もはかり知れないものがある。  むしろ国内の、国民の皆様が、長期信用銀行というのはまず原則としては預金をとったりいたしませんから、国民にとっては、いわゆるワリチョーというような債券を持っていらっしゃる方は御存じでいらっしゃいますけれども、それほどたくさんの方が直接に、国民関係しておられることではないかもしれない。しかし、国内における金融一つメジャーバンクとしてのソースでございますから、企業関係中小企業関係、殊に非常に大きな関係を持っておりまして、その方々は大変に心配をしていらっしゃる。  また、国際的には、先ほど申し上げたようなことでございます。
  5. 砂田圭佑

    砂田委員 金融システム破綻の最大の原因であります不良債権不良債権処理と盛んに議論がされているところでありますけれども一般国民あるいは市場関係者は、非常にその処理のスピードが遅い、もっと早く処理をすることによって、銀行の蘇生あるいは金融円滑化というようなものを図ってもらいたいというような思いが非常に強くあるわけでありますけれども、この不良債権処理のスピードアップといいますか、それはどのように図るというふうに、大蔵大臣、お考えでございましょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの長銀危機というのは、ある意味では、いわゆる危機説といいますか、当初は道聴塗説から起こったような感じがございまして、せんだって来、ことしの三月の資本導入のときに預金保険機構はどうしてきょうの事態を予測しなかったかというお尋ねがしばしばございますが、実際あのときは、長銀の仮に株価にいたしましても非常に高いものでございましたし、また、長銀にそういう大きな問題があるということは一般考えられていなかった、銀行当事者考えていなかったと思いますが。  その後に、直接国民が何となく知りましたのはある月刊誌でございますけれども、そういうことがあって、何か危ないんじゃないかというようなことがだんだんに伝わりまして、株価が低落をする、債券新規発行が少しずつ影響を受ける、そして期限前償還といったようなことも考える人がいるといったようなことがあり、そのうちに金融が苦しくなってくる、そういうことでございますから、実態が当初悪くなったというよりは、そういう危機説によって実態そのものがつくられていったという感じが強うございますので、したがいまして、長いこと前から危機があってその処理がおくれていたということのようには考えておりません。  ただ、そういう状況の中で、ある段階になりまして、長銀経営者当局が、この状態は長く続けていかれない、そういうようなうわさというものがますます激しくなりましたので。そこで、提携先として住友信託銀行考えるに至った、それがたしか六月の中旬以降であったかと思います。それからでございますから、決してじんぜん日が過ぎておったわけではない。  しかも、その提携状況の中で、住友信託銀行が出しました条件がなかなかきちんとした条件でございますので、それを簡単に満たし切れないというようなことがあったりいたしまして、そして、最終的にはリストラ案をまとめまして金融監督庁長官にそれを届けてきたのは、ついせんだってのことでございます。
  7. 砂田圭佑

    砂田委員 私は神戸の出身でありますけれども、最近、兵庫県で兵庫銀行破綻をしてそれをみどり銀行が引き継ぎました。またまた、みどり銀行が行き詰まって阪神銀行合併をするということに相なっております。  実体経済の中では、阪神銀行みどり銀行合併するということで、今までのみどり銀行取引先に、ある食品の輸入会社でありますけれども、そこへ支店長が出向いて、今までのLO取引、それから、これから先の割引手形取引、もうこれで中断、中止してやめにするというような申し渡しがあって、特別、債務超過会社でも赤字だらけ会社でもなくて、多少の累積赤字は持っていましたけれども、十分にこれからも元利支払いができていく、二、三年すれば立ち直ること、黒字になるというような会社でありましたけれども、そういうことで資金繰りが行き詰まって倒産の憂き目を見た、社長はもう即自殺をしてしまった、そんな悲劇がありました。  不良債権処理することは、結果としては資本注入につながってくることだと思うのでありますけれども、この資本注入がこういう貸し渋りの役に立っていけないのかどうか。あるいは、他党の御意見の中には、資本注入銀行救済であるというような御意見もありますけれども資本注入スキームがなぜ必要なのか、その辺のことを一般中小企業皆さんにもわかりやすく少しお話をいただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは監督庁長官の御所管かと思いますけれども、今度の場合、そういうことで長銀がひとり立ちすることができなくなった。ここで理事者経営陣が当然考えますことは、こういう場合の銀行としての社会的責任の問題でございます。  もちろん経営陣自身は、いわば長銀というものは、恐らくもう将来に向かってそのままの形で生きていくことはできないということを決心いたしておりますから、それをしかし突然破綻状態に陥れますならば、先ほど申しましたように、内外影響ははかり知れないものがある。そのことは、経営陣としては、到底それだけの大きな出来事にするわけにはいかない、銀行はなくなってもそういうことは防がなければならないという考えのようでございますが、そういう考えのもとに住友信託に、いわば俗な言葉で言えば救いを求めて、それによって、自分銀行はなくなるが、国内、国外に対する迷惑を最小限にとどめなければならない、そういう考えで行動されたものと思います。  そういう行動の中で住友信託合併条件を探っていきますときに、住友信託としては、これも当然かとは思いますが、不良債権は持ち込まないでくれ。それから、非常に長銀が親しいつき合いにあった向きについての処理長銀がやってくれ、これは多分ノンバンクや何かのことを言っておると思いますが、長銀がやってもらいたい。それから、住友信託としても当然デューデリジェンスによって自分なりの調査はさせてもらいたい、こういう、当然といえば当然ですが、かなり厳しい条件でございます。  そこで、そういう条件に従いまして、長銀としては、まず不良債権というものは持ち込めないということでございますから、そのことを一方で考えなければならない。他方で、特にじっこんな向き処理長銀がやってくださいという意味は、長銀母体行でございますところの日本リースでございますとか二、三の大きなものがございまして、これは長銀母体行として自分負担をしない限りは他の銀行、非常にたくさんの取引がございますので、他の銀行がみんな救済策に加わらないということは、これは母体行に対してしばしば起こることでございます。その母体行としての責任をまず果たさなければ、住友信託との合併条件が満たせないということがございます。  それやこれやございまして、まず長銀としては、リストラの中で、それに該当する分が五千二百億円、それからその他の不良債権が二千三百億円、七千五百億円の処理はどうしてもこのリストラの第一歩としてしなければならない、こういうことになってまいりました。  そういたしますと、仮に当期利益とかあるいは本店の売却とかをいたしましても、その処理はかなり資本に食い込まざるを得ないということは明らかなことでございまして、そういたしますと過少資本になります。過少資本になります結果、資本装備が落ちますので、そこで国に公的資金導入を求めて、そのいわば過少資本になりましたものを補った形で、その上で合併の話を進めていく、こういうふうになら、ざるを得ない。  つまり、よく当委員会の御質問でも、何か長銀のために金を入れてやるんじゃないか、銀行の生き残りのためというように聞こえる御質問がございますけれども長銀は生き残ることはもうないわけでございます。そのことははっきりリストラの計画に載っておって、重役は退陣いたしますし、海外の業務はやめますし、古い退職金も取り戻しますし、行員も減らす、そういう形でございますから、長銀というものはもう実体はなくなる。しかし、それによって国の内外に対する御迷惑をせめてかけない形で合併へ進みたい、こういうことであるように考えております。
  9. 砂田圭佑

    砂田委員 そうしますと、長銀なりあるいはそういう銀行につき込まれた、注入されたいわゆる公的資金、その行方は、これから当然経営者責任として資本勘定でいろいろな不良債権を償却していく、その上で、今おっしゃった、資金的に不十分になる、それを公的資金で補っていくという形になりますが、その公的資金はその結果としてそのまま銀行に、もちろん国が株主になるわけでありますけれども、将来この公的資金がどんな形に、国民負担にならない形になるのかどうか、その辺のことをお聞かせいただきたい。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま七千五百億円のところまで申し上げましたのは、これはこの九月期における処理でございます。  それで、砂田委員の言われますように、その後の段階においてさらに不良債権処理が多少、まだまだ残っておるのは進むかもしれませんが、いずれにしても、国が投入しました資本分は、この話がシナリオどおりに完結いたしますと新しい銀行に引き継がれることになります。そして、新しい銀行は、長銀リストラを終わっておりますからかなり内容のいいものになると想像されますが、したがいまして、それは一番、ある適当なときにおいて新銀行から国の方へ、何と申しますか、国が売り払うと申しますか、回収される、それによって、納税者負担にはならないというふうに考えております。
  11. 砂田圭佑

    砂田委員 それでは、不良債権処理を進めるに当たって、なぜブリッジバンク法案が必要なのでありましょうか。その点について簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 厳格に申しますならば、ブリッジバンク法破綻が生じましたときの金融機関処理について考えておりますし、この長銀の場合は破綻ではない、債務超過でもございませんので、したがって、この法律が成立してそれが適用されるというケースではございません。  ただ、そういう危機に瀕した場合の金融機関処理の問題として、当委員会において当面の問題として長銀の問題をお取り上げになっておる、こういうふうに考えております。
  13. 砂田圭佑

    砂田委員 議論の中には、ブリッジバンクということよりも、むしろもっと国が積極的に介入して、そして金融再編を行っていくべきであるという考え方もありますけれども、その点については大蔵大臣、どんなふうに考えておるのでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各党の中に、このブリッジバンク法案に関しまして、各党でもっといい、すぐれた案とお考えのものを恐らく整理中、ほぼ完成していると思いますが、そのように伺っております。  その考え方一つは、今言われましたように、もう少し国が真っすぐ管理へ出てくるべきではないかというお考えが入っておりまして、私ども考えの中でも、ブリッジバンクは、場合によりまして平成金融再生機構が株を取得する、これは民間機関でございますが、実態預金保険機構が株を全部持っておるというようなことで、私どもは、そういう金融機関の仕事はなるべく民間がやることが望ましいであろう、国がやるということは無論不可能ではございませんけれども、いろいろな観点から民間機能を活用することの方がいいのではないか。  そのほかに、せんだって来御議論のあります株主総会というものを完全にないものにできるかというような問題もございまして、私どもはそう考えておるわけでございますが、各党のお考えの案の中には、場合によって国が直接にテークオーバーするということをお考えのようでございます。
  15. 砂田圭佑

    砂田委員 そのようにして、これからの日本経済再生、復活に一つのきっかけをつくっていこうという御努力を皆さんでもちろんされているわけであります。  長銀問題にもありますように、やはりそのためには銀行に対するしっかりした検査、そういうものが非常に重要な、国民から見ても透明でそして公正であるかどうかということは、非常に大事な要素になってくるという気がいたします。  そこで金融監督庁に伺います。  これらの金融機関に対する検査体制強化あるいは検査官専門性向上、そういうことがこのスキームを実行していく大変かなめになる、不可欠な条件かという気がいたします。監督庁の、これは少し専門的な分野で、どなたか部長さんで結構でありますが、その決意をひとつお聞かせをいただきたいと思います。監督庁
  16. 五味廣文

    五味政府委員 お答え申し上げます。  お説のとおり、しっかりした検査というのは大変重要なインフラストラクチャーでございまして、検査体制強化検査官専門性向上ということが何よりも大切でございます。先般の金融再生トータルプランにもその旨織り込まれてございまして、具体的に私ども幾つか現在考えて進めておるところでございます。  一つは、民間専門家の登用でございまして、既に公認会計士五名を検査官に中途採用いたしました。また、商法の学者にも参画をいただいている。コンピューターの二〇〇〇年問題の検査に関しまして、臨時専門家を採用するということも現在進めております。  もう一つは、研修の充実でございまして、これは人数がだんだんふえておりますので、経験の少ない検査官がふえておりますから、この方たちに対しまして長期研修実地研修を含みます長期研修ということで研修を充実していく。  それから、検査マニュアルでございます。検査の手順、基準というものを外部意見も取り入れまして、これを整備して公開をしていくというようなことで、検査を能率的に、かつ透明にするということを考えております。  さらに、海外監督当局との間の人材交流、あるいは検査における外部監査機能の活用、こういったことも進めております。  人員、体制強化につきましては、八月三十一日に提出いたしました概算要求におきまして、監督庁全体としまして二百五名の増員をお願いいたしましたが、うち検査部門につきまして百十五名、実地検査に当たります検査官をうち百十三名という増員要求をお順いいたしました。  また、組織の方の改編も要求しておりまして、検査官専門性向上ということから、特定の金融業態を個々の検査部門に責任を持って担当させる、こういう部門制を採用するということで組織の改編も要求をさせていただいている。こういう状況にございまして、今後とも、こういった点に十分意を用いてやってまいりたいと思います。
  17. 砂田圭佑

    砂田委員 このようにして、いろいろな形の中で日本経済再生、復活を図るわけでありますけれども、少しこの問題とは離れますけれども大蔵大臣に伺いたいと思います。  こういう実体経済の冷え込んだ状況の中では、やはり財政出動というような形で景気のきっかけをつける、あるいは、何といってもお金が流れないというのが一番問題であるわけでありますが、もう既にいろいろな形の中で三十兆、あるいはそういう形の中で補正予算というようなものも組まれています。それだけでも五十兆ぐらいのことになるんだと思いますけれども、少しずつ小出しにしてきたのを、国民から見てもマーケットから見ても、やはり大変不満であった、先行きが見えないという雰囲気はあったと思います。  そこで、もう少し積極的に、財政出動というような形の中で新しい経済政策というか、そういうものをお考えになる、そんなお気持ちはありませんか。お聞かせをいただきたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過去におきまして政府のやってまいりましたいろいろな施策の累積は、ただいま砂田委員がおっしゃいますように、必ずそれなりの時間がたちますと効果があるとは思いますが、小渕内閣が発足いたしまして、私がさしずめ考えましたことは、いわゆる減税問題について、永続的な、一年限りでない減税をすること、それから、来年度の予算編成におきまして特別枠を設けて、思い切った新しい即効的なものを各省庁にも考えてもらう、この二つのことでございます。  前者は、既に所得税、法人税の来年度における減税規模を具体的に提示してございますし、後者は、一部は概算要求がもう既に行われ、残りは十月に行われるということで、おのおのが、事の性質上すぐということではございませんけれども、未来に向かってかなり展望をつくることができたと思っておりまして一それが累積的な効果と相まちまして必ず何らかの景気の回復に役立ってあろう。  もう一つの問題は、ただいま御審議をいただいております不良債権の問題でございますから、これにつきまして国会の御審議によって法的な整備ができるということになりますと、これも、かといってすぐ問題が片づくわけではございませんけれども、問題解決の道が開けると考えております。
  19. 砂田圭佑

    砂田委員 ありがとうございました。  終わります。
  20. 相沢英之

    相沢委員長 これにて砂田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  21. 相沢英之

    相沢委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君及び金融危機管理審査委員会委員佐々波楊子君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  23. 相沢英之

    相沢委員長 次に、岡田克也君。
  24. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也です。  私は、まず一つ、昨日の審議の関係での確認を金融監督庁長官にお願いしたいと思います。  一部報道によりますと、きのうの審議の中で、これはたしか金融危機管理審査委員会委員長の答弁を引用しての記事だったと思いますが、現在金融監督庁が行っている長銀に対する検査が終了する前に資本注入を決断することがあり得るんだ、こういう趣旨の答弁をきのうこの委員会で行われたという報道がございますが、金融監督庁として、そういう可能性があるというふうに考えておられるのか、あるいはないということで否定されるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  25. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  現在私ども長銀に対して行っております検査は、大手十九行に対する検査の一環として行っているものでございまして、決して審査委員会のために行っているとかそういったものではございません。あくまでも通常の検査として行っているわけでございます。  ただ、問題は、ただいま委員の御指摘がありましたように、もし長銀から公的資本注入についての申請が審査委員会になされた場合には、恐らく審査委員会においては、さまざまな観点からその審査基準をクリアすることができるかどうかということを審査されるでありましょう。また、その際には恐らく、私どもが行っている検査の内容はどうなっているかということも示せということをあるいは言ってこられるかもしれません。私どもといたしましては、そういった時点までには何とかその検査は終わらせなければいけないかなというふうに思っていることでございます。
  26. 岡田克也

    ○岡田委員 必ずしもはっきりしなかったわけでありますが、もう一度確認いたしますけれども検査が終了する前に資本注入を認めるという、あるいは認めないということかもしれませんが、そういう決断をすることはあり得るのかあるいはないのか、これは非常に大事なところだと私は思いますので、明確に御答弁いただきたいと思います。
  27. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  公的資本の注入を認めるかどうかということは、あくまでも審査委員会がまずお決めになり、そしてさらに閣議でこれを御承認されるという手続になるかと思います。  審査委員会の、確かに私もその七人委員会のメンバーの一人ではございますが、あくまでもその委員会がお決めになることで、委員会がどういう審議をなさるかということはそこになって初めてわかることでございますので、今私の方から確たる、今委員から御質問にあったようなことを直接お答えすることができないということは御理解いただきたいと思います。
  28. 岡田克也

    ○岡田委員 形式論を言えば、今長官のお話というのもあるいはあるのかもしれませんが、この長銀の問題がこれだけ議論になって、そして国民世論の中から、税金を投入するあるいは公的資金を投入するのであればもっと情報公開しろ、こういう声が非常に強い。あるいは、情報公開ということはさておいても、やはり公的資金を投入する以上、実態がきちんと把握されて、そして例えば債務超過でないということが明確でなければ、これは法律公的資金を投入できないわけでありますから、ここまで来て、なお検査が完了しない段階資本注入を決定するということは政治的にはあり得ない、私はこういうふうに思うわけでございますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もちろん、破綻になりましたときには公的資金導入できないということは、これは当然のことと思いますが、具体的なお運びは、これは監督庁預金保険機構のお運びの問題だと思います。
  30. 岡田克也

    ○岡田委員 手続論からいえば、それは、たまたま十九行全体にやっている検査と今回の長銀問題というのは重なったという言い方も可能かもしれません。しかし、今回の検査というのは、やはりこの長銀の問題が一つの大きなきっかけになって、そしてその長銀実態を調べる、そういう意味があることは間違いありませんし、しかも、幾らになるかわかりませんが、例えば五千億の公的資金を投入するということであれば、それは政府として責任を持って、問題がないあるいは債務超過でないということを明確にした上でそういうものに投入をしない限り国民理解を得られない、私はこういうふうに思うわけでございます。  そういう意味で、政治的に、私は検査が終了する前の資本注入というのはあり得ないというふうに思うわけですが、もう一度大蔵大臣の御見解を聞きたいと思います。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 終局的には金融危機管理委員会の御決定、その際の管理委員会あるいは委員方々の御意見によるものと思いますが、委員の中に金融監督庁長官もおられますし、大蔵大臣もおりますので、恐らく長銀の内容について、その所見をその委員たちが求められるということはあるであろうと思います。
  32. 岡田克也

    ○岡田委員 大蔵大臣もその委員のお一人でございますね。ですから、例えば大蔵大臣が、検査結果が出ていない段階での審査というものは、つまり資本注入というものは認めないということをこの場でおっしゃれば、それで決まりなんです。いかがでしょうか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 検査結果が全くわかっておりませんときに、それを先取りするようなことは適当ではないと思います。
  34. 岡田克也

    ○岡田委員 全くとかいうことじゃなくて、検査が終了していない段階での資本注入は認めない、こういうふうに断言できますでしょうか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般論として申しますならば、そういうことは言えないことだろうと思います。
  36. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、一般論を言っているんじゃなくて、長銀のケースで言っているわけです。  ここは非常に大事なところで、資本注入検査なしで認めることがあり得るということになりますと、後からちょっと議論しようと思っておりますが、検査を故意におくらせる。なぜおくらせるかといえば、それは実態が相当悪いからだ、こういうような議論を次々と呼ぶわけでありまして、今大事なことは、きちんと検査する、そして、その結果に基づいて、ルールに基づいて処理をしていくということだと思うんですが、今の大蔵大臣のお話を聞いておりますと、いや、実態はかなり悪いから、検査もきちんとせずに、検査したら例えば債務超過とかいろいろまずい話が出てくるから、そういうものはふたをかぶせて、とにかくやみくもに資本注入していく、そういうふうに国民は受け取ると思うんですね。  だから、そういうことはないんだ、きちんと責任を持って検査して、その検査に基づいて、ルールに基づいてやっていく、私は、そういう宣言を今大蔵大臣にぜひしていただきたいと思って、先ほどからしつこく聞いているわけですが、いかがでしょうか。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、岡田委員の言われました、先の方の部分は岡田委員の御意見でございます。私はそういうことを申したことはありませんから、したがって、何かにふたをかぶせるというようなことを私は申しておりません。  一般論として、監督庁検査というものは当然いろいろな銀行について進んでおるわけで、行われるわけですが、他方で、公的資金導入の申請というのは、おのおのの銀行がその時々の事情によって申請をするのでありまして、二つのことが、こっちの検査が済んでいないからこっちはだめという、そういう相関関係一般論として申し上げるのは私は困難だ、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  38. 岡田克也

    ○岡田委員 私は一般論を今議論しているわけではありません。一般論については、大臣がおっしゃるようなことも言えるかもしれません。  しかし、この長銀のケースについて、もう既に検査が七月十三日に開始をされて、通常であれば二カ月ぐらいで検査できる、そういうお話もきのう長官の方から出ておりましたが、なかなか検査結果の出る見通しが立たない。そういう状況の中で、これは通常のルールを無視してやろうとしているのではないかという疑念が高まっている。  あるいは国民の間から、もう少し情報公開をして、五千億投入するなら投入するということで、もとは自分たちの税金でありますから、それをきちんと理解したい、納得したい、そういう気持ちが非常に強い。これは当然の御要望だと私は思いますが、そういうことに対して、少なくともきちんと検査して、その検査に基づいて、そしてルールに基づいてやっていきますと、長銀のケースについて。そういうこともおっしゃれない状況なんですか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵大臣にいたしましても、あるいは金融監督庁長官も同じお立場ではないかと思いますが、ある程度のことを、事実を知った上で、それで意見を申し上げなければならないことでございます。ただ、一般にそういうことが言われているといったようなことで申すわけにはまいりませんから、恐らく、聞かれれば、自分の知っている事実はこうだ、あるいは自分はそういう事実をまだ確認していない、このようなことにならざるを得ないと思います。
  40. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお話を聞いておりますと、本当に不透明感が高まるというふうに私は思うんですね。国がやっている、金融監督庁のやっているその検査結果も待たないでそういう重大決定をするということが、私は一般論で言っているんじゃありません、この長銀のケースについてそういう可能性があるということは、私は、極めて重大なことだ。もしそれがそういうことであれば、それは今の政府の姿勢を象徴的にあらわしているというふうに取り扱われて、いろいろな意味で波及があるというふうに大変心配するわけでございます。先ほどから何度お聞きしても同じ答えでございますが、本当にそれでいいのか、私は大変疑問に思うところでございます。何回聞いても同じお答えですから、そういうお答えしかないというふうに理解せざるを得ないわけですけれども、少し観点を変えてお聞きしたいと思います。  それでは金融監督庁長官、きのうも少し出ておりましたが、この長銀検査というものは大体いつごろ終わる予定ですか。きのう、通常であれば二カ月だけれどもというようなお話がありましたが、長官にお聞きします。
  41. 日野正晴

    ○日野政府委員 検査の終了、いつごろまでかかるか、たびたびお尋ねがございます。  検査官を七月に送り出しました。まだ帰ってきておりません。十九行に対する検査の一環として送り出しました。送り出すときには、私どもは、戦場に兵士を送り出すような気持ちで、水杯とは言いませんが、とにかくそういった気持ちで送り出して、一日も早く帰ってきてくれることを心から祈っている状態でございます。  従来は二カ月ぐらいで終了して帰ってまいりましたが、人によりましては、とにかく、妻子と摩れ、家族と別れ、宿に泊まりながら、自分で洗濯物などを洗いながら検査をやっているという状態でございまして、しかも、精密な検査を鋭意やっておりますので、従来は二カ月ぐらいかかっていたということは申し上げてまいりましたが、とにかくできるだけ早く御期待に沿うように済ませたいと思っております。(発言する者あり)
  42. 相沢英之

    相沢委員長 御静粛に願いいます。
  43. 日野正晴

    ○日野政府委員 ただ、これは現在、三月末の資産の状況について検査をしているわけでありますけれども、その後、さまざまな事態の変化というものがございました。こういったものについても、できるだけ最新の情報を得たいというふうに努力しております。  先ほどから委員が、審査委員会の審査までにできるのかどうかというお尋ねもございましたが、私どもといたしましては、もちろん審査委員会のためにこの検査をやっているわけじゃございませんけれども、できるだけ審査委員会の御要望にも備えられるようにしたいというふうに考えている次第でございます。
  44. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろお述べになったわけですが、まず基本的に、確かにこれは十九行の検査であるというのはわかりますが、しかし同時に、検査を開始する時点では、もう長銀の問題というのがかなりマスコミをにぎわせるところまで来ておったわけでありますから、同じように検査するにしても、やはり長銀にまず集中的に検査をする、重点を置いて検査をするというのは、これは当然のことだと思うわけであります。  実態的に、今長銀に対する検査というのは、全体の人員の中で何割ぐらいを長銀に割いておられて、そしてその上で、いつごろ検査の結果を出される予定なのか、もう一回お聞きしたいと思います。これは長官にお聞きします。私は政府委員の答弁は求めません。
  45. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  検査というものは、何か釈迦に説法で恐縮でございますが、ただ単に数が一度にどっと行けばいいというものでもないようでございまして、精鋭をとにかく張りつけるということで、現在、前にはたしか十二名で、その後何名か追加したと申し上げたかと思いますが、現在は十五名行っております。それは、全体で今百十一名いろいろなところへ出ておりますが、そのうち十五名が行っているということでございます。百十一名の中で十五名行っております。
  46. 岡田克也

    ○岡田委員 それにしても随分悠長な話ではないかなというふうに思うわけですね。この長銀の問題、これをどういうふうに処理していくのかというのは、日本経済の将来を占う上でも非常に重要である。私ども資本注入に賛成しているわけではございませんけれども、しかし、今現実に長銀リストラ、そして資本注入合併ということが議論されている中で、この検査が長引けば長引くほど常識的には資本注入合併もおくれていく、そういう構図にあると思うのですね。  今、国会の審議がいろいろ混乱しているから長銀の問題がというような議論がありますが、実態はそうではないはずです。実態は、この検査がなかなか進んでいかない、このことが一つ大きな、全体の長銀の問題が進展しない原因になっているはずですね。  先般、日経新聞で、八月二十九日だったと思いますが、住友信託銀行の専務さん、合併検討委員長代行はこういうふうに言っていますね。お盆のころに監督庁検査結果が出ることを期待したが、そのスケジュールがおくれている、したがって、合併の最終決断の時期は九月から十月めどにずらさざるを得ない、こういう報道もあるわけであります。  そういう意味で、私は、ここは検査をいつまでにきちんと終えるということを長官がお述べになることがこの長銀問題にとって非常に重要なポイントだというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  47. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  お言葉を返すようで大変恐縮でございますが、住友信託は、恐らく仮に私ども検査が終了したといたしましても、私ども住友信託にはもちろんそういうことは伝えませんが、長銀にはもちろん伝えます。そういたしますと、両行が合併交渉を行っておりますので、住友信託に対して、秘密協定をお互いに結んでおりますので、伝えることになるだろうというふうに推測されますが、私どもが行っている検査住友信託が、先ほど宮沢大蔵大臣も御答弁されましたように、デューデリジェンスをかけて、さらに住友信託が、合併という観点から改めて資産の内容を検査されることになるだろうと思います。恐らくそれは物差しが大分違ってくるのじゃないかと。  私どもは、いわゆるゴーイングコンサーンといいますか、そういった観点から検査をしておりますが、合併の当事者となりますと、さらにそれを一層厳しくと申しますか輪切りにすると申しますか、そういった観点からデューデリジェンスをかけてくるのではないだろうかと思いますので、必ずしも私ども検査が早いから遅いから合併が早くいくとか遅くいくとかいったようなものではなくて、それは合併交渉の中で住友信託とそれから長銀がお考えになることではないかというふうに考えております。
  48. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお話なんですが、確かに、住友信託銀行は、八月二十一日の高橋社長名でのコメントの中で三つの条件を挙げている。そのうちの一つに、重要事実把握のための事前調査というのをちゃんとやります、これは合併の前提です、こういうふうに述べておられますね。  しかし、この調査というのは、金融監督庁検査というものを踏まえて行われることになるのじゃないですか。金融監督庁検査が終了しないと、この事前調査というものはできないというふうに私は理解しておるのですが、いかがなんでしょうか。
  49. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  住友信託銀行がどういう観点からデューデリジェンスを実施されるか、検査が終了してからかどうかということは、私どもからは何ともお答えできないわけでございまして、恐らく合併の構想が打ち立てられましてその合併交渉が進んでいく段階で、当然のことながら、相手の資産内容について、これはもう当然知るべきでありましょうし、また知る義務がむしろ合併当事者にとってはあるかと思います。  ですから、当然私ども検査とはまた別に、何らかの形で住友信託長銀の資産の内容をいろいろな意味で検討されているのではないかと拝察いたしますけれども、その内容は、私ども金融監督庁にとっては知る由もないことで、まことに、それでお答えできないということでございます。
  50. 岡田克也

    ○岡田委員 新聞報道では、先ほどの専務さんは、金融監督庁は一日も早く検査結果を示してほしい、こういうふうに述べているのですね。現実に金融監督庁が直接に住友信託銀行検査結果を示すことができるのかどうか、多分私はできないと思うのですが、しかし長銀を通じてそれを知ることはできる、こういうことだと思います。合併の相手もそういうふうに言っておるわけですし、少なくとも金融監督庁検査というものが合併の前提となっている、そういうふうに私は受けとめるわけであります。金融監督庁が、検査はいっ終わるかわかりません、こういうことですと、合併交渉も進んでいかないという論理的な関係にあると思うわけであります。  だからこそ、いつまでに検査を終えるのかということぐらいは明示していただきたい、こういうふうに申し上げているわけですが、そうしますと、それに対する御答弁というのは、従来どおりわからないということになるわけですね。いかがですか、長官。
  51. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  検査は、もともと十九行に対する検査の一環として行っているわけでございまして、決して合併のために検査を行っているわけではございません。  合併は、あくまでも両行の自主的な経営戦略に基づいて判断されて交渉を打ち立てられたものでございますし、また、恐らく合併の両行はお互いの資産の内容をみずからの責任で評価して、さらには、例えば合併の比率を決めるとか、あるいは将来の新銀行の名前を決めるとかいったような点まで協議されることになるわけでございますので、決して私ども検査をまたなければ合併が進展しないといったようなものではないと存じます。
  52. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、ちょっと観点を変えますが、長銀への資本注入ということは、住友信託長銀合併をするということを前提条件にして行われるのでしょうか。それとも逆に、言葉をかえますと、合併がないということになった場合には資本注入は行われないというふうに考えていいのか。それとも、合併ということは全く別のこととして、合併があろうがなかろうが、資本注入の決定は行われるのでしょうか。
  53. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  これは、時系列から申しますと、まず六月二十六日に合併構想が打ち立てられました。合併の話がまず先にあったわけでございます。交渉が進むに従いまして長銀リストラが必要だということに相なりまして、リストラをするということになりますと過少資本になるといったようなことになりました。したがいまして、公的資金の申請を行うことになったというふうに承知しております。
  54. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御答弁は、合併がないときは資本注入しない、こういうことで理解していいですか。非常に御答弁が官僚的でよくわからないのですが。
  55. 日野正晴

    ○日野政府委員 申請はあくまでも長銀がなさることなわけですね。私どもがしなさいとか、するなとかいったような立場ではございませんで、長銀自分が置かれている立場を考えて、過少資本になる、こういったことで果たして合併ができるかどうかということを考えた上で恐らくなされるのではないかというふうにこれは推察させていただいております。
  56. 岡田克也

    ○岡田委員 申請のことは別にして、そういうときに資本注入を認めるかどうか。これは金融危機管理審査委員会委員長にお聞きした方がいいのかもしれませんが、そういう申請が出てきたときに、合併ということを条件づけて資本注入を認めるのか。つまり、合併が破談になったときは資本注入しません、こういうことなのか。それとも、合併がどうなろうと、とにかく長銀に対する資本注入というのは認めると。もちろん、いろいろな条件を満たさなければいけませんよ。しかし、基本的にはそういうことなのか。いずれなんでしょうか。佐々波委員長
  57. 松田昇

    ○松田参考人 ただいまのお尋ねの点でございますけれども、審査委員会の方としては、やはりこれは自己申告制度でございますので、申告が出た段階でその要件を審査することになります。したがいまして、合併を前提にしなければ申告しないとか、あるいは合併が認められなければ申請をしないとか、そういう条件は私ども決められませんので、出てきた条件の中で最大限厳正に審査をさせていた、だきたいと思っております。
  58. 岡田克也

    ○岡田委員 形式論はそういうことなんですが、ただ、これだけの大量の公的資金を投入するというときに、私は、国民に対して基本的な考え方の筋道は示すべきだと思うのですね。  先ほどいろいろお話が出ていましたが、基本的には長銀リストラする。そのリストラを前提として住友信託との合併ということがあって、長銀リストラ合併というのは、これは一つの対になっているわけですね。そういうものに対して資本注入をする、こういうふうに考えるわけですが、そういうふうに今理解をされていると思うのですが、もし合併がだめになれば長銀リストラもできない。そして大蔵大臣も、合併ができないのであれば長銀というのは立ち行かなくなるというような趣旨の答弁もしておられるわけですから、そういうところに資本注入するということはあり得ない話ではなかろうか。だから、資本注入をするという決定をするときには、少なくとも合併条件ですよということはつけざるを得ないと私は思うのですが、そのぐらいのことは、大蔵大臣、いかがですか、今この場で言えませんか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほどから政府委員や参考人の言っておられることが私はごもっともだと思いますのは、資本導入をするかどうかの金融危機管理委員会の決定は、申請に基づくものであります。申請にはその理由というものが必ず付されておりますから、したがって、そういうことがない事態で、申請というものを前提にしないで答えをしろと言われてもそれは無理なので、申請という意味は、ただ一本紙が来るというのではない、その理由というものがつけられておりますから、それを読まなければやはり判断はできないと申し上げるしかないのじゃないでしょうか。
  60. 岡田克也

    ○岡田委員 全くよくわからないわけでありますが。  最後、合併をするかしないかというのは、これは私企業の問題ですから、政府は最終的に強制できませんよね。ですから、住友信託が決める。しかし住友信託は、合併を決めるときには、それは、政府資金がどれぐらい長銀に対して注入されるか、あるいは長銀リストラがどのぐらい実行できるか、こういうことを踏まえて、最後ぎりぎりの、まさしく住友信託という会社の存亡をかけた決断をすると思うのですね。  しかし、その資本注入というものが、今おっしゃったように、申請が出てこないとわからない、こういう話ですと、スケールメリットというか、お互い自縄自縛になっていて物事が進んでいかないのじゃないか、そういう状態に今陥っているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 合併の交渉が今どういう状況にあるかを私は存じませんので、きちんとはお答えができませんけれども、少なくとも、今の交渉は、この間長銀提出いたしましたリストラの案をベースに行われているはずでございますから、そうだといたしますれば、ある段階長銀から公的資金導入の申請が行われる、そういう想定のもとに交渉は進んでおるのではないかと思います。
  62. 岡田克也

    ○岡田委員 聞いているとだんだんわけがわからなくなってくるわけでありますけれども、やはり、これだけの巨額の公的資金を投入するということであれば、私は、先ほどから議論になっておりますが、まず第一にきちんと国の検査を終える、これが大前提だと思うのですね。しかし、政府がおっしゃるには、それはわかりません、横並びでやっていることですから何とも申し上げられません、こういう話なんですね。そして、申請が出てきたときに、それは合併が前提ですよ、だから合併が破談になれば資本注入はしません、そういうことも今言えるはずなんですね、現実には。しかし、そういうことも、いや、申請書が出てこなければ何とも言えませんと。  これで、国会で審議して、この長銀処理の問題、五千億の公的資本投入の問題について与野党で何か方向性を出せと言ったって、私は無理だと思うのですよ。国民皆さんも全く納得できない話じゃないかと私は思うのです。  ある意味で、もう大分議論は尽きているわけですが、大蔵大臣、私が今申し上げたことについてもし何かコメントがあればおっしゃっていただきたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、現実の問題になりますと、金融危機管理委員会が判断を、委員が判断をせられるべきことですが、今岡田委員の言われましたその後段の点は、あのリストラ計画によりますれば、ある段階長銀公的資金導入を申請してくるであろう一その場合に、リストラ計画でございますから、それは合併というものを前提にして申請をしてくるであろう、あの計画に関する限りは、そこのところは私はそういうふうに推定していいのではないかと思います。
  64. 岡田克也

    ○岡田委員 そうすると、今の御答弁では、資本注入、しかし民間の方がそういうふうにしてくるであろうというお話であって、明確に政府として、合併資本注入の前提であるという御答弁ではなかったわけですけれども、ここが本当に私は大事なところで、いずれにしても、今の三十分ほどのやりとりを見ていて、国民皆さんとかあるいはマーケットがどういうふうに受けとめるかということを私は非常に心配をいたします。  結局、従来型の裁量行政、見えない行政で、検査もやると言っておきながら、故意にずるずる結論を延ばして、ちゃんとやればひょっとしたらまずい結果が出るかもしれない、だから結果を出さずにその前に行政的な決定をしてしまう、資本注入を決めてしまう、そういうふうに受けとめられ、従来と何ら変わっていない、金融監督庁をつくってそのトップに検事出身の日野さんに来ていただいたけれども、やっていることは従来の大蔵行政の延長で何も変わっていないじゃないか、こういうふうに受けとめられることを私は大変恐れるわけでございます。  いずれにいたしましても、もうこれ以上議論しても仕方がないと思いますが、私は、非常に不透明な、そういう感じを受けたところでございます。  それでは、もう一つ長銀に関して御質問したいと思います。  長銀破綻の場合の影響一つとして、ノンバンクの問題が何度か取り上げられまして、長銀系のノンバンクが破綻をすると、それが破綻の連鎖を呼んで大変影響が甚大だ、だから、ノンバンクの破綻を防ぐためにも長銀に対する資本注入というものは認めていかなければいけないのだ、こういう御趣旨の答弁が大蔵大臣からもあったというふうに思いますが、基本的にはそういう考え方理解してよろしいですか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 微妙なところですけれども、私の申し上げましたのは、長銀の、あるいは両行の合併計画というものは、住友信託の要求によりまして、長銀不良債権処理をすること、そして非常に親しい関係にある向きに対する問題の整理をすること、これが今岡田委員の言われました部分と思いますが、そういうことが条件になっておりますので、長銀としては、その条件を満たさなければ合併計画が推進できない、そういう立場にあるものというふうにリストラ計画を私は読んでおります。
  66. 岡田克也

    ○岡田委員 合併条件の話としてではなくて、国が資本注入をする、つまり長銀資本注入をしてでも救わなければいけない、もちろん、それには合併というのがくっついてはいるのですけれども。そのことの理由の一つとして、長銀破綻をするようなことが仮にあれば、長銀糸のノンバンクも破綻をする、そしてそのことの影響は非常に大きい、こういうお話があったように思いますが、そこのところは、大蔵大臣はそういう論理をお認めなんでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、ノンバンクの内容について存じませんので、そういうふうに厳密に申し上げたわけではありません。  私の申しましたことは、理由はともあれ、その処理がこの合併の推進の一つ条件であると両行が考えておりますと、こう申し上げているわけです。
  68. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、ノンバンクが連鎖的に長銀破綻に伴って破綻をするということは、大臣としては資本注入の理由にはならない、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申し上げておるのではなくて、長銀リストラ計画によれば、その部分を満たさなければ合併が推進できないということが一つございまして、したがってそういうことを長銀としてはしなければならない、そういう前提に立って、将来公的資金導入を申請いたしたいと思います、こう言っておるわけでございまして、その部分について、これは私は、私の所管でないので申すと出過ぎになりますけれども、その部分について預金保険機構なりどなたなりが何かを言われる立場にはないのではないかと思います。
  70. 岡田克也

    ○岡田委員 わかりました。  いずれにしましても、私は、長銀系ノンバンクの破綻ということが全体に波及をして大変なことになる、だから、その意味もあって、それですべてではありませんが、長銀破綻を避けなければいけない理由の一つとしてそういうことを言われる方がいらっしゃるわけですが、それは一見もっとものような話なんですが、しかし、それはそうではないのではないか。たまたま長銀系、つまり銀行系のノンバンクの場合はそういうことが言えて、独立系ノンバンクというのがあるわけですね、ここについては政府がそれに対して関与するという手段はないわけでありますから、たまたま銀行系だったから、そういうことで結果的には国の力で救われてしまうというのも何かよくわからない話だな、こういうふうに思って御質問したところでございます。  では、次に参ります。  金融機能安定化法の三条三項二号、これはきのうも議論されたところでありますけれども資本注入のところですね。ここで、昨日も西田議員、そして八月二十八日には鈴木議員の方から大臣に対して議論がありまして、私はちょっと大臣が勘違いしておられるのではないかなというふうに思うのですが、最近三年間連続して経常利益または当期利益について赤字決算ないし無配当となっている、あるいは自己資本比率について、国際的統一基準八から四の場合に、次年度以降は八から四を脱する、つまりその基準をクリアするということがこの法律三条三項二号の定義として大臣は御答弁になっているわけですけれども、今言ったような話は、これは法律の話じゃなくて基準の話だろうと思うのですが、きのうも大臣は、これは法律でそう決められておりますというふうに御答弁されていたように聞いておったのですが、いかがでしょうか。  鈴木議員の八月二十八日の質問に対しても、大臣はこう言われているんですね。申請金融機関等の経営の状況が著しく悪化していないこと、法律第三条三項第二号の定義は次のようになっております、こうおっしゃった上で、最近三年間連続して経常利益または当期利益について赤字決算ないし無配当となっていること等々ということで、あたかもそういうことが法律で決められているようにお話しになったと思うのですが、それは多分そうではないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは政府委員から要すれば申し上げますが、この審査基準は、  金融危機管理審査委員会は、預金保険機構金融機関等から優先株式等の引受け等の申請を受けたときは、金融機能安定化のための緊急措置に関する法律に基づき、次の一及び二の区分に応じ、当該申請が以下に掲げる審査基準に該当するか否かにつき、速やかに審査をするものとする。 審査委員会がこのような審査基準を設けられたのでありまして、それは法律に基づきでございますけれども。  今委員の言われましたその部分は、法第三条第三項第二号に基づいて決められたものと私は考えておりまして、そのものが法律に書いてないということは、恐らく委員のおっしゃるとおりと思いますので、そこは私の申し上げたことが正確を欠きました。
  72. 岡田克也

    ○岡田委員 それで私は、この三条三項二号の「経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関等」というときに、具体的な基準として、今申し上げましたように、まず、最近三年間連続して経常利益または当期利益について赤字決算ないしは無配当となっている場合というのはこれに当たりますよと。これに当たるという意味は、経営の状況が著しく悪化している金融機関等に当たりますよと。これはいいと思うのですが、もう一つ基準ですね。まず、自己資本比率〇未満の場合は当たります。これもいいと思うのですが、国際統一基準の〇から四の場合には、一年経過後においても〇から四にとどまっている場合はこれに当たりますよ、こういう規定なんですね。ということは、次の年に四を超える可能性があれば今〇でもいいですよ、〇未満はだめですけれども、〇でもいいですよ、あるいは〇・一でもいいですよ、こういうことに基準上はなるわけでありますけれども、果たしてこれが法律で言う、経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関と言えるのか。  私は、この基準というのは、これは佐々波委員長のところでおつくりになった基準ですね。これは法律違反の基準じゃないか、こういうふうに思うのですが、委員長いかがでしょうか。
  73. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 御説明申し上げたいと思います。  法第三条第三項二号につきましては、経営の状況が著しく悪化していないことということを要件としておりまして、現在の経済金融事情を踏まえますと、仮に、先生の御指摘のあるような、第二区分にある場合でも自助努力で一年後に第一区分に上がるという見通しというのは厳格な条件というふうに解釈しております。  ということは、資本注入が可能としていることで、もとより、その理由といたしましては他の基準を満たさなければ資本注入ができないということでありますので、他の基準と相まって適切な判断が可能であるというふうに思っております。  以上です。
  74. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、この基準がもし国際的に明らかになれば、もちろんこれは公表されておるわけですけれども、かなりの不信感を買うのじゃないか。極端な話をするわけではありませんが、しかし、自己資本比率が〇であっても、これは経営の状況が著しく悪化している金融機関ではないのです、翌年に四を超える可能性があるのならそれでいいんですというのは、いかにも常識の範囲を外れていると思いますし、それからこの法律の趣旨を逸脱している、こういうふうに思うわけですが、この基準はもう少しまともなものに変えるおつもりはありませんか。
  75. 松田昇

    ○松田参考人 審査基準を変えることは法令にも用意してございまして、審査委員全員一致であれば変えることは可能のような法令上の規定にはなっております。  この基準をつくりましたときは、三月の状況のもとで、著しく悪化していない状況というのは一体どういうことなんだろうかということで、メルクマールとして、先ほど言われました二つの、三年間連続の無配当や赤字決算と、それから、先ほど言われた第三区分の債務超過は絶対だめ、それから、第二区分であれば一年間自助努力をして第一区分に上がれる、本当に上がれるという厳格な審査にたえられるものだけは一応対象にしてみよう、こういうことでございますので、二つあわせてつくったものでございます。  以上でございます。
  76. 岡田克也

    ○岡田委員 経緯はわかりましたが、そうすると、この基準を変えるおつもりはないということですね。
  77. 松田昇

    ○松田参考人 お答えいたします。  審査基準は法令の趣旨の中でつくるものでございますので、例えば三年連続と書いてありますけれども、これが二年でだめなのか、あるいは五年ならいいのかという問題は多少あると思います。常に、我々はそういうことを考えながら、そこは、審査基準が法令の範囲であれば多少変更することもやむを得ないな、それは合理的なものであればそうせざるを得ないなと思っておりますが、当面、現在のところそういう変更を想定していないという状況にございます。
  78. 岡田克也

    ○岡田委員 法曹界出身の松田さんとも思えない御答弁のようにも思いますが。  この法律をつくるときに、とにかく審査基準にかなりの部分をゆだねたという経緯がありますね。ちゃんとしたものをつくりますから、全員一致ですから、こういう話だったのですが、実際出てきたものを見るとこういうものが公然と入っている。そして、こういうものがあるから、自己資本比率が〇ぎりぎりであってもこの資本注入の対象になるんだという逆手にとったお話をされる与党の議員もおられるわけで、私は、非常にこれは弊害があるな、やはりこういうことをもう少しきちんとしていくことも国際的な信頼性を増すためにも重要なことじゃないか、そういうふうに思って申し上げたわけでございます。  基準そのものがいいかげんですと、それに基づいて、じゃ長銀の場合の資本注入についてどうなのかというときに、またそれに対して信頼感がなくなる、こういうことになるのではないかというふうに思っております。  次に参りますが、これも一部きょうのマスコミに出ておりましたが、きのうの審議の中で佐々波委員長が、ことし三月の資本注入に当たって何を審査したかというときに、個別行の実態は把握しておりません、こういうふうに述べられました。そのことについて、これは余りにも無責任ではないか、そういう批判があるわけですが、個別行の実態を把握していないという意味はどういう意味なのか、もう少し敷衍してお話しをいただきたいと思います。
  79. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 まず、昨日の私の発言につきまして不十分な点があったことを先生方におわびしたいというふうに思います。  お尋ねの件につきましては、個別銀行のバランスシートを見ていなかったかのような発言があったようでございますけれども、真意といたしましては、個別企業のラインシートと申し上げるべきことでした。もう一度繰り返しましょうか。真意といたしましては、個別企業のラインシートというふうに申し上げるべきところを個別銀行のバランスシートと言い間違えましたことを、ここに訂正させていただきたいというふうに思います。  審査委員会といたしましては、三月の資本注入の際には、申請に係る二十一行につきまして、個別行の内容を審査いたした上で資本注入をいたしまして、その際、審査委員会は、金融監督当局の最高責任者でいらっしゃいます大蔵大臣及び日銀総裁が委員となっておられますので、両委員を通じて、上記のような、というのは、個別銀行のバランスシートについての的確な認識をいたしましたというふうに申し述べたいというふうに思います。
  80. 岡田克也

    ○岡田委員 そうすると、例えば長銀に関して言えば、長銀が貸し出している個々の貸出先についての情報は今把握していない、しかしバランスシートは見た。しかし、バランスシートというのは、これは公表されているんじゃないですか、最新のものがその時点で見られたかどうかは別にして。そうすると、公表されている資料を見て、これはいい悪い、こう判断したわけですか。
  81. 松田昇

    ○松田参考人 お答えいたします。  私も審査委員の一人としてその審査に立ち会いました。ちょっと委員長の御答弁で言葉足らずのところがあると思いますので、御補足させて説明させていただきます。  三月の資本注入の審査では事実関係について非常に重点を置きました。特に不良債権の整理の仕方がどうなっているか、見通しなど。  そこで、委員長名で、検査、考査の権限をお持ちになっている大蔵大臣と日銀総裁に、自己査定の資料を審査委員会で取り寄せておりますので、それを中心に、事実関係の数値等について事実を確認をお願いしたいということで、要請を委員長からいたしまして、それを受けて、大蔵省と日本銀行では各行のラインシートを相当量取り寄せて精査をしていただきました。  その結果について、審査会の席上で大蔵大臣及び日銀総裁から事実関係についての御意見をいただいた上で、審査委員全員でまた合議をして、それから頭取を直接ヒアリングをして、補充的にヒアリングをして、そしてその上で資本注入をするという決定を見た、こういう関係にございます。
  82. 岡田克也

    ○岡田委員 今のお話ですと、そうすると、大蔵大臣や日銀の方からは、皆さんはラインシートを見てないわけですから、今度の長銀に関しては、例えば日本リースについてどういう状況であるという説明、これは一つの例ですけれども、そういうことを大蔵省はされたわけですか。
  83. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  三月の時点の話でございますが、金融危機管理審査委員会のメンバーの一人である大蔵大臣、当時は大蔵大臣が今現在金融監督庁が持っています検査権限を持っていたものですから、その検査結果等を踏まえまして、審査委員会において、申請されました金融機関の財務内容について意見を述べたというぐあいに承知しております。
  84. 岡田克也

    ○岡田委員 ですから、ちょっとイメージがよくわからないのですが、意見を述べたはいいのですが、例えば、そういう長銀であってもほかの銀行でもいいのですが、重要な貸出先について、その実態まで踏み込んできちんとした御意見をお述べになったのですか。
  85. 松田昇

    ○松田参考人 大蔵大臣及び日銀総裁からの御意見の中には、自己査定の分類の仕方等についての御意見を伺いましたけれども、個別的な貸出先について、そこまでの御意見は具体的にはなかったように思います。
  86. 岡田克也

    ○岡田委員 今のようなお話ですと、もちろんタイミングが非常に切迫していたという事実上の問題はあるにしても、公的資金を大量に投入する、あのときは一兆八千億だったですか、投入するときに当たってほとんど形式審査に近い。そして、日銀総裁と大蔵大臣がこれで間違いございませんと言って、はい、わかりましたと、それに実態は近かったような印象を受けるんですが、もしそれで違うというのなら、具体的にこういうところが違うというのをわかりやすく言っていただけませんか。
  87. 松田昇

    ○松田参考人 先生御指摘のように、非常に限られた時間の中の審査でありました。その中で私ども最大限やつたつもりでおりますけれども、どこまでが形式的でどこまでが重点的にやったというと、まあ主観的な考えもあるかもしれませんが、非常に生意気な物の言い方で恐縮ですけれども、私ども、主観的には、許された範囲では最大限やった、事実関係についても最大限やった、このように思っております。
  88. 岡田克也

    ○岡田委員 十分な事務局もない中でいろいろな限界があることもわかりますが、しかし、もしそうだとすれば、こういうことが形式的にしかできないということであれば、法律の立て方、仕組みそのものがおかしいということに私はなると思うんですね。法律上はやはり佐々波委員長のところに、そしてこの委員会にすべてがゆだねられる、こういう仕組みになっているわけでありますから、それだけ責任が重いわけですね、そこに何兆円というお金が、その決定によって投入されるかどうか決まるわけですから。そういう意味では、私は、仕組みそのものに問題があるのじゃないか、そういう感じはぬぐえません。  そして、さっきのところに戻るんですが、今度長銀についての資本注入り話が出てきたときに、やはり少なくとも、金融監督庁の方からきちんと責任を持って検査して、そして問題ありません、債務超過ではありません、自己資本比率はこういう数字ですということがはっきり出ないと、私は、今のような実態から見ると、だれもきちんと判断しないまま資本注入が決められるんじゃないか、そういう気がするわけであります。そういう意味で、金融監督庁責任を持った検査の実施と、そしてその終了ということが私は絶対必要なことだと思うんです。  もう一回監督庁長官に聞きますが、検査を必ずやり遂げる、こういうふうにおっしゃっていただけませんでしょうか。
  89. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  しっかり検査をやっていきたいと思っています。
  90. 岡田克也

    ○岡田委員 これ以上聞いてもむだなようですね。  それでは次に、ちょっと観点を変えまして、長銀の場合にもデリバティブの問題というのが出てまいりましたし、大手の銀行、これは長銀という固有名詞ではございません、大手の銀行破綻した場合の国際的な影響というのは非常に大きい、こういうことが言われます。それはそのとおりだと思います。  実は、そういうものを防ぐためにBISの基準が存在しているんだと私は思うんですね。国際的な波及が大変大きいからこそ、国際的にプレーできるプレーヤーというものは少しハードルを高くして、そして限られた人にしよう、こういうことを想定してあの基準ができている。もちろん、日本銀行を少し抑えよう、そういう趣旨もあったとかいろいろな議論がありますけれども、客観的に見れば、私は、先ほど申し述べたようなことでこのBISの基準ができているというふうに思うわけであります。  確かに日本でも、三月の時点で、金融監督庁資本注入をするに当たって一定の条件が付されて、リストラ計画を出すことになっていますけれども、そのリストラ計画の中に、一律の人員削減とかそういうことではなくて、海外撤退をするということがもし長銀に関して条件になっておれば、それから半年ありますから今日のような議論にはあるいはなっていなかったのじゃないかという気もするわけであります。こういうことを述べたくありませんが、今後まだ大手行の破綻の話というのが出てき得るという状況の中で、私は、早目に海外撤退というものを一定の条件のもとで進めていくということが金融政策として非常に望まれているところじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  これは、実は前内閣のときにも予算委員会の場で私申し上げたことがあるんですけれども、大蔵省からは、重要な指摘ですけれども、検討、勉強させていただきますというようなお答えしか返ってきませんでしたが、今そういうことをきちんとやるべきじゃないか。多少強権的になっても、それは将来税金で面倒を見るという話なんですから、例えば、形式的には八%あったとしても、あるいは将来、三月末には無理すれば八までいくかもしれないけれども、今七とか六とかいうところまで含めて、もう海外から撤退しなさい、四の世界で生きていきなさい、こういうことが私はあってしかるべきじゃないかと。そして、そういうふうにすれば、何よりも今最大の国内経済の足を引っ張っている貸し渋りの問題というのはほとんど解消してしまうわけですね。そういうふうに思うわけですが、この点について、大蔵大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはまさに金融行政の問題でございますから、私がお答えすべき問題ではないと思いますけれども。  ただ、従来いろいろ見てきてどういう感想を持っておるかというお尋ねであれば、いわゆる国際化の名のもとに、地方銀行も含めまして随分八%の銀行になられましたけれども、やはりそれはそれなりに反省期というものに入っていて、マネーセンターバンクスのほかに地方銀行も随分というような状況は、銀行自身においていろいろ考えておられるように見えますし、また、そういう時期になっておるのではないか、私はこの問題についていわゆるオブザーバーの立場でしかございませんけれども、そう思っております。
  92. 岡田克也

    ○岡田委員 ある意味じゃ宮沢大臣らしい御答弁だったように思います。ただ、それは基本的には銀行が判断すべき問題だろうと思います。しかし、なかなかこれは決断できないわけですね。それから、今決断するとかえってマーケットから、これは危ない、だからこうしたんだというふうに攻撃をされる危険性も秘めている。  そういう意味では、やはり国が一定のガイドラインをつくって、これは法律でもいいんですけれども、そして、こういうものはもう撤退しなさいというふうに持っていくことが、これは国内の貸し渋りとも非常に関係のある話でありますし、あるいは大手行については、少なくとも国が資本注入しているわけでありますから、そのぐらいのことを言える権限が当然あるというふうに私は思うわけであります。  しかも、この金融の問題というのは、根幹が、国際的な全体の経済破綻につながりかねないということに根本があるわけですから、いろいろな政策を考えていく上で。ということであれば、そのリスクをなるべく事前に少なくしておくということは非常に重要な政策マターじゃないか、私はこういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。  ですから、任せっきりじゃなくて、もう少し政府が主導権をとってそういう方向に持っていくべきだ、それだけの責任があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行政としてどうすべきかというお話になりますと、これは私がお答えをしてはならない範囲のことと実は考えております。
  94. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  確かに、海外に進出している銀行が、例えばロンドンやニューヨークで突然破綻をしたりいたしますと、それは現地の皆様方に対して大変御迷惑をおかけするということは、これはもう間違いないことであろうかと思います。  そういうわけで、現在、自己資本比率の規制上は、国際基準行に対しましては八%以上という自己資本比率が求められているのに対して、国内で営業を行う銀行に対しては四%以上ということで足りることにしているわけでございまして、国際業務に従事している銀行というのは、やはりそういった意味で八%以上の基準をぜひ満たしてもらいたい。もしそれが満たされないようであれば、私どもといたしましては、本年四月に導入されました早期是正措置制度などを活用いたしましてしかるべき措置をとっていただくということになろうかと思います。  つまり、国内基準行になりますれば、当然その自己資本比率の規制上必要な自己資本の額というのが、これは分子でございますが、少なくて済みます。一方、分母となりますリスクアセットというものは、海外業務から撤退いたしますと、それだけ、つまり先ほど御指摘がありましたように、貸し渋りといった意味でも、そういった意味での解消にも大変役立つということにもなろうかと思います。  いずれにいたしましても、それぞれの金融機関国内銀行に徹するかあるいは国際業務にまで進出するかということは、これからの金融システム全体の中でそれぞれの経営戦略としてお考えいただくことになるのではなかろうかと思いますが、少なくとも、金融監督行政をお預かりしている私どもといたしましては、八%に満たないような銀行に対してはそれぞれしかるべき措置をとっていかなければならないものと考えております。
  95. 岡田克也

    ○岡田委員 早期是正措置を厳格に適用していくということは当然のことだと思います。  私が申し上げているのは、仮に八を超えるようなところがあったとしても、本当に日本にとってこれだけの国際的な展開をする銀行が必要なのかという判断に立って、もちろん最後は、これは私企業ですから個別行の判断でありますけれども、しかし、これが全体の国際的な金融システムの安定という観点から、あるいは日本のそういうリスクを小さくするという観点から重要である、そういう観点に立てば、私企業だから勝手にやりなさい、必ずしもそういう必要はないんじゃないか。もう少し強い権限で、どうしても残りたいというところはそれは別だと思いますけれども、少なくとも今の四分の一ぐらいに国際的展開をする銀行というのは、あるいはもっと減らしてもいいのかもしれません、圧縮していっていいんじゃないか。  それから、資本注入を受けている銀行に対しては、より強いことが言えると私は当然思うんですね。例えば、資本注入の部分を除いて八が将来的に確保できるということがなければだめだとか、もちろん今は緊急事態だから今すぐということではなくとも、将来的にそういう見通しが安定的になければそれは認めないとか、そういう政策をきちんと展開していくということが私は非常に重要なことだと思うんです。  大蔵大臣は、これは所掌じゃないとおっしゃいますけれども、閣僚ですから、閣僚はすべての案件について責任を負うわけですから、閣僚兼金融行政に非常に御見識をお持ちの識者としてお聞きをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、金融監督庁長官の言われましたことが行政指導の基本的なお考え思いますので、それでよろしいのではないかと思います。
  97. 岡田克也

    ○岡田委員 八を満たしていればそれに対してとやかく言えない、こういうふうなお考えというふうに理解をいたしましたが、突然それが六になり五になり、あるいは破綻に瀕して、そしてそのたびに国で大瞬ぎをしなければいけないというのは非常に私は割り切れないものを感じますし、それから、我が国の将来の金融産業というものがどうあるべきかというやはり基本的なビジョンを描いてやっていくという観点に立ったときに、本当にそんなものが必要なのか、こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。  最後に、大臣、大変恐縮なんですが、一つ質問したいと思うのです。  大臣は、金融安定化委員会の初日に、自民党の大島委員の御質問に対して、住専の問題ですけれども、住専について、六千八百五十億円の投入というのは農林系統の金融機関預金者保護のために行ったという趣旨の答弁を述べられたと思うのですが、このお考えは今でも変わっておられないというふうに考えてよろしいですね。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あの当時のことは岡田委員も御記憶でいらっしゃると思いますけれども、あの年の暮れの予算編成、予算閣議で、突如として六千八百五十億円という数字が出てきまして、国民にとっては、これは全くその間の経緯を知らされていなかった問題でございました。そのゆえに、これは無理もないのですが、受け取る側が、殊に一部の報道機関は、これは国民の税金を使って住専各社を救済するのである、そういう報道がなされまして、第一印象というのは恐ろしいものでございますが、かなりの国民がそれをそういうふうに受け取ってしまった。  実際問題としましては、そこに至りますまでの間に、住専救済ではなくて、住専数社はもう破産するということが決まっておったわけでございますから、その債権をだれがどのように負担するかという協議がいわば水面下で行われておりまして、その結果として、母体行がとにかく一番のものをしょったことは確かですが、全部合わせますと数兆円のもので、一番大きな債権者は、トータルしますと系統機関であったわけでございます。  系統機関は系統機関の事情がございますから、どれだけ負担できるかということはおのずからございまして、そして、各負担者のトータルをしましたときに六千八百五十億円足りなかった、それが年末ぎりぎりに出た結果でございましたから、これは公になりますと想像できない事態になりかねませんので、財政当局が六千八百五十億円を負担する決心をして、それが予算に計上された、こういうのが真実の経緯であったと思います。  したがいまして、政府が、これは全体の金融の安定、秩序を維持するための金であると説明をいたしましたのは、これはそのとおりでございます。私は、それを否定する意図があったのではございませんが、主たる受益者はだれであったかといえば、それはやはり系統に金を預けておった地方の人たち、農村の金融、農協に預金をしていた人たちが主たる受益者であったというふうに考える、こう申しましたので、政府の公の説明を否定するというものではなくて、安定ということの意味をもう一つ立ち入って申し上げようとしたわけでございます。
  99. 岡田克也

    ○岡田委員 この八月二十七日の答弁の議事録を見ますと、  プロラタでやれば農協はつぶれてしまう。そこまではいいのですが、そのときに、農協に金を預けていた人たちはどうなるのかということがエッセンスだったわけですね。しかし、それは言えない、実は、あれで救われたのは、全国の農協に預金をしていた人たち、その信用であったわけです。このことはもう疑いのない明々白々たる事実であるが、だれもそのことを余り今言いたがらないということ、だったと思います。 こう答弁されているのですね。随分今お話しになったことと開きがあるように私は思うわけですね。  確かに、法的処理をすれば系統金融機関が非常に大きな影響を受けたということは、これは事実ですね。その系統金融機関、私は、系統金融機関がおかしくなればそこに預けている預金者が影響を受けるというのはよくわからない議論だと思いますけれども、その系統金融機関がおかしくなるということと、それから今おっしゃった一般金融システムがおかしくなるということは、私はイコールじゃないと思うのですよ。それを当時の政府は、金融システムがおかしくなるということだけで説明していって、そして実際の、本来後ろに隠れた、大臣が前回正直におっしゃった系統金融機関の救済ということを隠してやったものですから、非常にわかりにくくなった、不透明になった、こういうふうに理解をするわけでございます。  私は、せっかく、大蔵大臣がやっと本音で言ってくれた、こういう姿勢こそが、やはり国会においてこういう率直に語ることこそが、何といいますか、国民の政治に対する信頼を増していくのだなと思って感心して聞いておりましたので、それを何か即座に撤回をされたということを聞いて、大変残念で悲しく思った次第でございます。ということは、もとへ戻って、住専のときにも、あれは金融システムを守るためにやったのだということを大蔵大臣はお認めになっているというようなことになるわけですが、そういう説明を繰り返してきたことが、先ほどの、長銀検査を終了しないということもこれは対の話であるのですけれども、そういうことが積もり積もって、私は、今政府がおやりになろうとしていることに対して国民が素直に聞けない、結局住専のときと同じように何か別の理由があってだまそうとしているのじゃないか、こういうふうに受けとめられてしまうということを非常に残念ながら申し上げざるを得ないわけでございます。  何かもし大臣に一言ありましたら、お聞きをしておきたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一言だけ言わせていただければ、起こらなかった危機がもし起こったらどのようなことになったであろうかということを申したい気持ちがございました。
  101. 岡田克也

    ○岡田委員 それは、その一言で通るのであれば、金融システムの安定のためということで何でもできるわけでありまして、私は、ちょっと大臣らしからぬ御答弁かなというふうに思います。  終わります。
  102. 相沢英之

    相沢委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  103. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  105. 相沢英之

    相沢委員長 質疑を続行いたします。北村哲男君。
  106. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  まず第一に、私は、ことし三月末に大手行に対して公的資金が一斉注入をされた、これが貸し渋りの解決にならなかったという原因について大蔵大臣お尋ねしたいと思います。  貸し渋りは、不良債権処理が不十分な状態であることに由来する債権回収圧力によって生ずると思います。したがって、公的資金を投入して自己資本を増強しても、不良債権処理が不十分なままであれば貸し渋りはとまらないのが道理であります。それにもかかわらず、三月末の公的資金の投入は、未処理不良債権を残したまま、BIS基準八%の自己資本比率要件を形式上満たすだけにとどまった。  私は、この大手行くの三月末の公的資金の一斉投入が貸し渋り対策としての効果をあらわさなかったのは金融危機管理審査委員会の判断ミスがあったのではないかと思うわけでありますが、どのような判断に基づいてこのような中途半端な公的資金導入を行ったのかという疑問が残ります。  この点について、午前中にも同僚の岡田議員が質問を行いま、た。その中で預金保険機構の松田参考人は、主観的かもしれないけれども自分たちに与えられた権限の中で最大限に努力をしたというふうに言われました。しかし、結果的に十分な効果を上げることができなかったのは、一生懸命やっても発見できない制度的欠陥、あるいは仕組みが悪いということにならざるを得ないのではないかというふうに岡田議員は言われております。大臣としてこの原因をどのようにお考えか。  私は、公的資金注入の前に、または公的資金の注入の条件として不良債権処理を十分に行うべきであった、その辺の仕組みあるいは順序が間違っていたのではないかと思うのですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月に行われました資本導入は、委員も御承知のとおり、その主たる目的は、我が国の金融システム内外ともに非常な不信を招くに至りまして、国内では不安がございましたし、国際的にはジャパン・プレミアムが上がったというようなことでございました。したがって、内外のシステムの信用を回復することを主たる目的として資本導入を行ったわけでございます。  ただそのときに、政府といたしましても、その結果として各銀行の貸出能力はふえるわけでございますから、これが貸し渋り解消に貢献することを期待いたしました。しかし、その期待は御指摘のように満たされなかったというのは事実であります。  そのことを考えますと、いろいろ理由はあろうと思います。全体の大きな流れとして、どの銀行も到底貸し出しを増大するような状況に基本的になかったということがあろうと思いますが、その後と申しますか、一月後に起こってまいりました東南アジア関連の新しい不良債権、あるいは国内におきましても当然のことながらそういうこともあったと思います。そういう不良債権の増大あるいは株価の動向によって含み利益が減少した。  いろいろな原因があったことだと私は思いますし、正直を申して、そういう状況の中で各行が貸し渋りの解消にどれだけ努力をしようとしたかということにも多少の疑問なきを得ませんが、そういう事情がございまして、結局、資本の増強は今日までのところ貸し渋りの改善に貢献していない、こういうことであったと思います。
  108. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私はもろもろの原因があると思うのですけれども、今言いましたように、不良債権処理が前提とならず、そのあたりがあいまいであったからだめだったということは、そういう評価はできないのですか。その一つの原因にならないのでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、おっしゃいますように、基本的に言えることだと思います。  我が国の銀行、マネーセンターバンクスがそうですが、銀行としての機能を十分に果たしていないではないかということの基本原因は、まさに不良債権を持っておりまして体質が強くなっていない、それはもうそこが基本と思います。
  110. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 多分この問題にも関連するのですけれども、ことし四月から早期是正措置が導入されながら、運用が緩和されて一年先送りをされております。  すなわち、企業のリストラ努力を阻害して、それが問題を先送りしてしまったのではないかと思うのですが、もしこの早期是正措置を厳正に運用していれば、不良債権処理の実施が徹底されて、過少になった自己資本公的資金で増強して、その結果貸し渋りもとまったのではないかと推定されるのですが、どのような判断に基づいて早期是正措置の運用を緩和されたのでしょうか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはいろいろございますけれども、基本的に昨年の夏ごろからこの早期是正措置ということが各銀行の意識に上ってまいりまして、そして各行、何とかこの試験をパスしたいというようなことから、かなり無理なと申しますか強力な資金回収を行いました。そのことを私どもが気がつくようになりましたのは十一月ごろからでございますけれども、これはどうしてもいわば先を争って資金回収をするわけでございますから、もうとめるのは仕方がない、四%銀行については一遍だけ早期是正を延ばそう、残念なことでありますが、延ばそう、そうでないとますます資金回収をする、せっぱ詰まってやむを得ずそういうことをいたしました。
  112. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、この早期是正措置の運用の緩和が結局命ずるずるとリストラ努力を引き延ばしているということになってしまったのではないかと思うのですけれども、そのあたりを簡単に御評価をお願いします。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは判断の分かれ目でございますけれども、早期是正措置が言われましたときには、少なくとも、落第しますと相当ひどい目に遭う、具体的にいろいろございましたけれども、相当ひどい目に遭いますので、これはとても世間に恥をさらすことになりますから、それでもうめちゃくちゃに資金回収をやった。  そういう段階でこの貸し渋りを少しでも緩和するとすれば、試験の方を一年延ばして、ゆっくりやりなさいと言うしか方法はなかろうということで、これはせっぱ詰まった措置でございまして、それで、さあどれだけ効果があったかということのお話もございましょうが、少なくとも、これをやっておれば相当めちゃくちゃな資金回収をしたであろうというふうに当時は判断いたしました。
  114. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 当時は判断されたと言いますけれども、結果的にはこういう事態になっているということになると思うのです。  ちょっと話をかえますが、これは個別具体的で大蔵大臣直接ではないかと思いますが、御感想という意味でお聞きするのですが、長銀リストラ案では、日本リースなど系列ノンバンク三社に対する貸付金を全額放棄することになっております。長銀の財務の健全化措置としてはこれは納得できないわけではないのですが、なぜ債権放棄でなくてはいけないのだろうか。債権放棄とそれに伴う公的資金の注入がバランスを欠いて不公平ではないかというふうな考えを持つのです。そうすると、債権放棄によって日本リースの経営努力がおざなりになるおそれもなしとしないわけです。そして一方、債権放棄するのであれば、債権放棄だけして無税償却するのではなくて、例えば整理回収銀行に受け皿的機能を持たせた場合に、整理回収銀行にその債権を無償譲渡したりして債権を保全しながら、一方でノンバンクの経営再建に当たるという考え方、これはできないのでしょうか。
  115. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  確かに、何の理由もなしに会社債権を一方的に放棄するということは、その会社の経営者にとって許されないことであると思います。ただ、今回の長銀の経営改善策と申しますのは、あくまでも住友信託銀行との合併を着実に進展させる、円滑に成功裏に終わらせるということのために行われるものでございまして、決して一方的に債権を放棄するものというふうには理解しておりません。この合併が実現いたしますと、我が国の金融システムの安定、国民経済の円滑な運営に資するものと考えているわけでございます。  それから第二点の、整理回収銀行譲渡したらどうかという御質問でございましたが、これはいわば制度論でございますので、本来であれば大蔵省からお答えになることとは思いますが、これはもう議員御案内のとおり、今の制度では破綻を前提としておりますので、今回のこのケースは破綻前の処理でございますので、整理回収銀行では引き取っていただけないものというふうに理解しております。
  116. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今はだめかもしれませんけれども、私は何も、今前半で言われた、長銀はそれによってある程度リストラができるかもしれませんが一それをただ捨ててしまうというのはやはりむだというか、しかも前々回の質疑の中で、長銀日本リースに対する債権というのは決して完全な不良債権ではない、いいものも含まれているし、メーンバンクが貸し付けた債権であれば第一抵当なんかをとっておくのは普通である。そういう債権をみすみすほうり出して無税償却をしてしまう、それは非常にむだである。本来税金を取れるのであれば、得べかりし利益というか、取れるべき税金も取れなくなってしまうのではないか。  だから、その債権はどこかで無償譲渡を受けるなりして債権回収をする。後に出てくるサービサーもそうなのかもしれませんけれども、そういうところでできるようなことでも考えれば、余り不公正はないし、またノンバンクをただこのシステムの中で救う必要もない。ある程度長期をかけて返してもらえばいいではないか、そういうシステムを考えるべきではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  117. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  先ほどから委員が言われておられます、例えば債権を整理回収銀行に無償譲渡してという御提案でございますが、整理回収銀行の場合は、金融機関債権が取得できる場合はあくまで破綻した場合でございます。したがって、破綻していないケースにおきまして、結局整理回収銀行にニューマネーの融資機能を付与することにつながっていくことになりまして、本来不良債権の回収だけを破綻したものについてやっているという業務からは、ちょっとなかなか整理をするのは大変だと思いますので、その点御理解くださいませ。
  118. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 現状では難しいかもしれませんけれども、これはどこかが債権譲渡を受ければそれで済むし、国が受けてもいいし、あるいは別の機関が受けてもいいと思いますので、このあたりは、そういうものをつくるのは簡単だと思いますので、ぜひそれをお互いに考えていきたいと思っております。  ところで、今回長銀リストラによって自己資本を減少して、その結果公的資金が注入されることになります。そして、当然のごとく合併が行われるということのように言われておりますけれども、それはまだ合併が決まったわけではないと私は考えております。今後、合併契約が成立するまでの間に事情の変更もあると思います。  ところで、先般の長銀の代表者の参考人質疑におきまして、確かに、自己資本比率は少なくなって公的資金の注入はお願いしなければいけないとは言われたのですけれども、一方、資金繰り、いわゆる資金ショートはない、だから日銀特融の必要はないというふうに言っておられたわけです。そうするならば、たとえ小さくなっても公的資金を注入すれば一つ銀行として自主再建できるというふうに言っておられるように聞こえるのです。何も合併しなくても自己資本公的資金で注入できる、しかも資金ショートがないから日銀特融は受ける必要はないのだというふうに聞こえるのですけれども、そうなれば、小さいながらも自主再建して、そして再建した暁に、自分の体力に見合った合併先を探すなり営業譲渡をするなり、あるいは資本の増強をするなりして、それなりの銀行として成り立っていくのではないかと思うのですけれども、余りにも合併が前提、合併が前提と言われるから何かおかしくなってくるというか、議論が混乱してしまうのです。  長銀の場合は、頭取が言われたように、公的資金さえ受ければ資金ショートがないんだ、そしてそれなりに合併条件が合うように健全な小さな銀行として存在するのだと言われているわけですけれども、そこが、ではなぜ小さな銀行として小さいなりに自主再建できないのかというのがわからないのですけれども、そのあたりについてどのようにお考えでしょうか。
  119. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今回のこのケースは、六月二十六日に合併構想がまず発表されたことから始まったわけでございますが、この合併構想はあくまでも両行の経営戦略に基づくものでございまして、合併いたしますと両行は、それぞれの得意分野を生かすことにより、また有数の資金量を基盤といたしまして、今後金融業界において発展していくだろう。これが市場の信認を得て金融システムの安定に大きく資することとなるというふうに考えられるわけでございますが、この合併構想を進めてまいりますと、相手方となりました住友信託の方から、ぜひ不良債権思い切って処理してほしい、こういう御要望があったようでございます。  そうしたことから長銀としては不良債権処理するということになりまして、過少資本となりますために公的資金を注入するというふうな、時系列で申し上げますとそういったことになるかと思いまして、やはりあくまでも今回のケースは合併が前提であるというふうに理解しております。
  120. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、自主再建できるではないかと聞いているのですけれども、あくまで前提だと言われるのならばちょっと議論が並行するかもしれませんけれども、私は、あの話を聞いている限りでは自主再建だって可能であろうというふうに思うし、そうなると、合併が前提と言われるならば、翻って住友信託を見ますと、健全な形あるいは完全な優良資産だけ持っている会社でなくては合併できないとしているわけです。しかも、その健全性とは、公的資金をつぎ込んだということによって、公的資金によって補完されたものである。となると、これは住信の方が公的持参金つきの合併を求めている、国はそれをやってください、やらなければおれは嫌だよというふうな言い方になってしまう。そうすると、世間の目から見ると、国民の目から見ると、住信という一つ銀行だけに甘い汁を吸わせるのではないか、そこだけよくなってくるのではないか、ほかの銀行については不公平だというふうな話になる。  それで、住友信託も、決してこれは完璧な銀行ではないと思うのですよ。例えば、日本リースに対しても長銀の次に大きな債権を持っているし、そのほかについても、資本比率とかそのほかのデータを見ると必ずしも威張れる銀行ではないと思うのですけれども、国家が住信という一行を優遇するという不公平な結果ということを招くと思うのです。そして、住信としても、いずれは何らかの形で公的資金を受けるということもあり得るわけですけれども、そうなると、公的資金を受けるならば、当然経営者としての責任もあると思うのです。その責任を負わなくてはならないわけです。その責任を免れるためによそにきれいにさせて、責任を負わせておいて、それだけをもらって自分は大きくなる、そういう構造になっておかしいのではないかという気持ちがあるのですけれども、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
  121. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  まず、結論の方から申し上げさせていただきますと、今回のこの公的資本が仮に注入されたといたしましても、決してそれは住信という一企業を優遇するといったことにはならないと思います。  理由を幾つか申し上げさせていただきたいと思いますが、長銀の方は、自分の方が過少資本になるから公的資金を注入していただきたい、こう言っているわけでございまして、企業の評価という面からいたしますと、当事者といたしましては、恐らく合併比率を通じまして将来の自行と相手方との間のいろいろな関係が生まれてくると思いますが、相手方が自分よりも数倍の大きさになる、あるいは、委員は持参金というお言葉をお使いになりましたが、仮に膨大な持参金を持ってくるような相手方であれば、かえって自分の方が圧倒されてしまうといったような関係にもなろうかと思います。  その相手方の企業の評価が、自分が仮に、よく北拓と北洋銀行の例が犬と馬に例えられますが、相手が馬のような大きさになり、自分が犬のような形であれば、自分が馬を背負うといったようなことは大変なことになろうかと思いますので、合併の相手方にとっては、一方の当事者が余りにも大きくなり過ぎるといったようなことは決して歓迎してはいないのではないかというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、これは長銀がいずれ資本の注入を申請される際に、金融危機管理審査委員会の方において御判断になられ、決定されるものというふうに承知しております。
  122. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 この関係についてはそれくらいにしまして、次は柳沢大臣にお伺いしたいと思います。不動産権利調整臨時措置法の関係でございます。  まず、これを略して権利調整委員会と申しましょう。この制度を設ける趣旨なんですけれども、現に司法に調停制度とか仲裁制度はあります。そして、それは立派に機能しているというふうに私は考えております。  ところで、この案の権利調整委員会で取り扱うであろう案件を見ますと、特殊な案件ではなくて、貸し金と担保不足、そして担保としての抵当権とか賃借権が入り乱れている、これを解きほぐして処分、すなわち売却とか競売に付して資金を回収する、そして不足分は償却するかあるいは他の弁済を考える、これは貸し金と担保という民事事件の典型的なものなんですね。それは、現在でも一般に裁判所でも民事調停や仲裁制度で現に行われているものであります。  それで、一方、八条機関とかあるいは三条機関と言われるこれに類したような機関があります。例えば、労働委員会とか公害調整委員会とか建設工事紛争審査会などがありますけれども、これは、普通の民事から離れて、裁判官の知識ではない科学的な知識、あるいは労働関係、あるいは建築の専門家とか、そういうものがなければできないから委員会をつくったというふうに考えます。そういうことから見て、この件については、何も新しいものをつくる必要はないのではないかという気がするわけです。  それからもう一つは、それでは、裁判所の調停事件が滞っていてこれでは役に立たないというのであれば、これは後にまた裁判所からこの制度についての内容を伺いたいと思いますけれども、私の聞いた範囲では全国の裁判所などで滞りなく進んでいるというふうに報告を受けておりますし、現状での処理も行き詰まっているという報告はないわけです。  そういうわけで、一体どうしてこの新設の機関をつくって、ここでこの案だけを、不動産担保つきの債権だけを取り扱わなくてはいけないのだろうか、その趣旨は一体どこにあるのだろうかという点について、まずお伺いしたいと存じます。
  123. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 法律専門家でもあられ、また法律問題の第一線に携わっていらっしゃる先生から、今、司法の方でそういう用意はあるのになぜ改めてこうしたものを行政の制度として導入するのか、こういう御趣旨の御質問がございました。  これは幾つかの面がありまして、それはそれで、これまでの答弁でも申し上げたことでございますけれども、今の先生のお話の中であえて私どもとして申させていただきたいと思うのは、やはりこれは、事業者の事業再建と申しますか、そういうことを非常に大きな眼目として調停を図りたいということにあるわけでございます。  調停制度があることも、我々法を仕組む上で十分これを念頭に置いているわけですけれども、現在の民事調停制度というのは、確かに先生がおっしゃるように、形の上では例えば私権というか、そういう経済的な権利にかかわるいろいろな調停をなさっているわけですが、事業者に対する事業の再建をというようなことではなくて、どちらかというと家事関連的と申しますか消費者というか、分野が、事業金融という分野と、あるいは家事関連の家計的な金融、あるいは最近の言葉で言えば消費者金融というふうに分けてみますと、どちらかというと後者の方をお取り扱い願っているという件数が多いように見られる。こういうことがありまして、今回の場合には、事業者の事業に関する金融、しかも、日本経済の再建の一環として事業の再建を目指してやっていくということが非常に大きな眼目としてあるということを指摘させていただきたいのでございます。  それから、さらに、そういう問題が今非常に大きく、多く持ち上がっておるというようなことで、しかもその処理には迅速性を要するというような、そういう社会経済情勢もございます。  さらに言えば、通常だったら私的な再建というようなものがそこで行われるということは我々よく知っておったわけですけれども、そういったことをやるような経済の勢力というもりがここへ来て急に減衰してきてしまっている。そういうものにかわるものとして、ひとつ行政で補完的に、別にそれは司法への道を閉ざそうというわけではありません。そうではなくて、補完的にこういう行政制度を設けてこの問題の処理に当たっていこう、こういう総合的な観点からこのような制度を仕組ませていただいたということでございます。
  124. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 補完的ということは、すなわち並列的に、どちらでもいいのだ、現に今やられているという趣旨だと思います。私は、事業者の再建を目的とすると言われましたけれども、現に行われているこの種の事案について、やはり同じような目的でやられているということは当然だと思っております。  それにつきましても、今回の権利調整委員会をつくるということについては、現在の司法で足りない、事業者の再建を目的とするのでもいいのですけれども、そのためには今の制度では足りないとおっしゃるわけですから、そうなれば、司法で果たしている機能を上回る機能あるいは効果というものが当然この制度の中に入っていなくてはいけないと思うのですけれども、その点についてはどのようにお考えなんでしょうか。
  125. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生、一つは執行力の問題あるいは強制力の問題、さらにはメリットの問題を念頭に置かれての御質疑かと思います。  強制力の問題につきましては、これは民事調停制度と同じように、最後の合意というものもいわば私的な契約ということでございまして、それ自体として強制力を持つというふうな位置づけにはなっておりません。  それはしかし、だからといって、それではそういうことは効力がないではないか、効果がないではないかということではなくて、これはもう本当に関係者が譲り合って、そして行政機関であるところの調整委員会がいわば証人になってそういう合意を取りまとめるということでございますので、一定の社会的な威信というものもあるわけでありまして、私どもとしては、十分な効果が、適切な効果が上がっていくというふうに期待をいたしております。  加えまして、私どもは、先ほど先生ちょっといろいろな面で具体の、長期信用銀行の問題等でも触れられましたけれども債権放棄が行われるというときには、これは幾ら先生が今ここで国税庁当局のお話を聞いて事前的に、あれは寄附金に算入されない、損金に算入されるということを確認しようとしても、彼らは恐らく絶対に事前に、あれは性質上そういうふうにいたしますとは言わないと思います。そういう建前で行政ができ上がっているわけでございまして、そういうふうなことは言い得ない立場にある。  ところが、今回のスキームではそれを、今回こうした調整委員会のもとでその合意がなされるならば、それはもう国税当局の判断なくして当然のこととして損金算入が認容され、そういうことが前提になって、そこに不安が全くない形で合意がなされるというところは非常に大きなメリットであるというふうに、先生もこれも御存じだろうと思いますけれども、実際そうです。やっていらっしゃる方は、税金を取られちゃったら、この合意、もっと分け前が少なくなっちゃうよなというような話がしょっちゅうあるわけでありまして、ここは非常に大きな、いわば確認的なものですが、事前的にそれが確認されるということは、大きなメリットとして制度を円滑に運用するに当たっての要素になるであろう、このように考えております。
  126. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今おっしゃったことは、最終的にまさに税金を免れるということを法制化するということがその権利調整委員会の一番大きな眼目であるということは、もうほとんど皆さん方はわかっておられると思うのですけれども、しかし、それを抜きにして考えると、大臣おっしゃったように、普通の司法の場合は、調停であっても判決と同じ効力があって執行力がそれから当然導かれるわけですし、それからそのほかについても調停にかわる決定を裁判所がすることができるという、かなり強力な権限もあるわけですね。そういうものがこの制度の中にはないから、補完するものといっても、やや制度の仕組みとしては今の裁判の制度よりも私は弱い制度になっているような気がするんです。  じゃ、どこが強力かと言われれば、今おっしゃったように、税金を免れるんだよ、こういうまさにあめでつるような形で皆さんを引きずるというふうな形になるんではないかというふうな気持ちもあるんですけれども、税金問題は、免税の問題はまた後に聞くにしまして、この金融特別委員会でこの法案を審議するということについて、一番大きなものがブリッジバンク法律でございまして、それから、それに続いて政府から権利調整法が出されて、そしてさらに衆法として四つの法律が出されておるのですけれども、それらの法律との関係です。  この法律が、ブリッジバンク法、すなわち破綻した金融機関のその後の処理を実効あらしめるための関連法案としての何かそういう位置づけになるのか、あるいは、それとは関係なしに不動産の価格低下等に伴う不良債権処理のために一般的につくられる、あるいは他の議員立法のサービサー法とはどういう関係があるんだろうか、どういう位置づけで考えればいいんだろうかという点について御説明を願いたいと思います。
  127. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私ども、今回、閣法で二本、それから議員立法で四本、金融安定化のためのトータルプランに基づく法案提出させていただいておりますが、前の国会で成立させていただいて資本投入の根拠法になりました、俗に申しますけれども金融機能安定化法、こうしたもの一体が今回の我々の国を襲っておる金融不安というものを克服する一連の法体系であるというふうに考えられると思います。  私は、若干自由民主党の中での論議にも加わったわけでございますけれども、その当時、私、特に強調させていただいたのは、金融再生のために必要なのはフレームワーク、つまり、あえて言ってしまえば金融の再編というようなものに結びつくところの、日本金融システム全体をどういうふうにやっていくのだ、弱い銀行をどういうふうに再編の中に組み入れていくのか、そして日本金融機関を全体として、あえて言えば少数精鋭というか、数のことを申し上げるのはいかがかと思いますが、そういう格好で立て直していくという一つの体系があるだろう。  それからもう一つ、しかし、バランスシートをよく見てみますと、そうしてでき上がった銀行も相変わらず不良債権を持っている。それから、不良債権の償却も、間接償却で引当金を片っ方で保有しながらのスタートであるというようなことであってはならない。完全な意味の直接償却と申しますか、最終的な不良債権処理を終えたところのそうしたものでなければならない。  この両方、つまり、フレームワークとしての金融の再編というものがきちっとあると同時に、個々の金融機関のバランスシートの上での不良債権処理というものが実質的、最終的にきちっと終わっていなければいけない、この二点だろうと思っております。  私どもの、私が担当させていただいている法律及びあとの議員立法というのは、すべからく後者、個々のバランスシートの上での不良債権処理を最終的に進めるというようなもので、それらが一体となって日本金融界再生に資するものだ、このように私として考えさせていただいております。
  128. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、この質問をしたのは、本来法律は、一括して出されたらそれなりの整合性というか、一つの枠、今フレームとおっしゃいましたが、あると思うのですよ。物すごい大きな意味では、それはわかりました。  しかし、片やブリッジバンクは、破綻した銀行処理の手続。この法律はそうじゃなくて、一般不動産の売却が滞っているから、それを処理するためのシステム。そして、サービサーについては、不動産だけではなくて、サラ金からクレジットから、そういうところまで含めて全部回収しましょうという組織です。それがどうも一つになかなかまとまらない。先生のお考えの大きなフレームならいいかもしれませんけれども法律というのは、やはり一つの、どこかのメーンの法律があって、それとどう関連があってどういうふうにおさまっていくかというぐらい一貫した法案であってほしいと思うのですけれども、それがどうもあっち向いたりこっち向いたりするような感じのそれぞれの法律のような気がするんです。そういう意味でお聞きしましたけれども、御答弁はそれで結構でございます。  次に移りますが、この調整委員会は、この法律によりますと、五名から十名の委員会を予定しているというふうにあります。そうすると、非常に多く予定されておるこれからの事件を処理するに果たしてこれで足りるんだろうかというふうな感じがしますが、大臣は、第一種特定債務者、すなわち不動産関連債権というのは一体どのくらいのものが処理の対象となるのか、どういう予測を立てられておるのか、どういうイメージで考えておられるのかについて御説明をお願いしたいと思います。
  129. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この委員会を設置して調停なり仲裁の対象として考えている、いわば業務量と申しますか、そういったことでございますが、これは、この法律の仕組みが、行政の側から積極的に出ていって強制的に何かこの手続の中に関係者を導入するというような仕組みになっておりません。関係者の側のイニシアチブに基づいてこの手続が始まる、こういうことでございますので、いわばここで、確かに大体このぐらいの業務量を予想しますということは答えかねるわけでございます。  ただ、あえて、先生のお尋ねでございますので、私どもがめどとして考えていることというか、直接的ではありませんけれども、いろいろな状況を見てみますと、貸付債権不動産が担保になっているものとか、あるいは都銀が一部発表した、不良債権の中で不動産が担保になっているものというものが大体二割ちょっとぐらい、金額ベースですけれども、存在しているというようなことがわかっております。そういうようなものの中で、果たして私どもの想定している手続の中に調停を求めてくるものがどのくらいであるかというのは、事務方はある程度想定しておると思いますけれども、今、私のこの立場からこのくらいというのはなかなか言いかねるなというのが現在の私の気持ちでございます。
  130. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 二〇%というふうに今言われても、ちょっとどれぐらいの二〇%かわかりませんけれども。  銀行の貸付債権あるいは不動産貸付債権というのは一個一個全部違いますね。ですから、一つ銀行一つの企業、一人の個人にお金を貸すにしても、何口にも分けて、例えば一億円貸すにしても恐らく十口、二十口に分けてそれぞれの債権があると思うものですから、そういうものを全部解きほぐしていかなければならない。それで、あるものには担保がついている、あるものには担保がついていない、あるものには連帯保証人しかついていないとさまざまあって、それがいろいろ不良債権かどうかは仕分けされていくと思うのです。その仕分けを今恐らく監督庁でおやりになっているのでしょうけれども、それから見ると、果たして五人、十人のことを考えて、あるいは幾ら当事者主導と言われても、今ある組織ならば受け入れることができるけれども、新たにつくるのであれば、それは相当の覚悟をしなければならないだろうというふうな気がしますし、なれたスタッフがいなければ即応できないように考えるわけです。  ちなみに、大臣ではなくて、私がさきに例として挙げた労働委員会、あるいは公害等調整委員会、あるいは建設工事紛争審査会、あるいは裁判所の組織、どういう組織で動いているかについて、簡単にスタッフ、メンバー、それからどのくらいの件数があるかをお伺いしたいと思います。  まず労働省に、労働委員会というのは中労委と地労委とありますけれども、どういうふうな形でどのぐらいのスタッフが動いているのか、どのぐらいの件数があるのか、ちょっと言ってください。
  131. 澤田陽太郎

    ○沢田政府委員 中央労働委員会及び地方労働委員会につきましては、関係の法令によりまして、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者構成とされておりまして、その数につきましては、中央労働委員会の場合各十三名、地方労働委員会につきましては、都道府県によって各五人から各十三人まで、五区分されております。  スタッフの数でございますが、中央労働委員会につきましては平成十年度百十八名、地方労働委員会につきましては、各都道府県の条例で決められておりまして、私どもは把握をしておりません。  それから取扱件数でございますが、中央労働委員会の場合、平成九年、労働争議の調整件数三十八件、不当労働行為審査件数三百二十六件でございます。それから、地方労賃委員会は、四十七都道府県合計いたしまして、争議の調整事件五百七十七件、不当労働行為審査事件千四百八件。  以上でございます。
  132. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 同じく公害等委員会、それから引き続いて……。
  133. 下野省三

    ○下野説明員 御説明いたします。  公害等調整委員会は、委員長及び六人の委員、そのうち三人は非常勤でございますが、それでもって構成されております。  そして、事務局の職員は四十名、うち事件処理を直接担当しております職員は十八名でございますが、このほか二名の併任職員がおりますので、実質は二十名で処理をしておるということになります。  次に、事件数でございますけれども、事件数は、公害紛争事件につきましては、平成九年度で調停事件八件、裁定事件十七件、それからその他の事件が一件ございまして、計二十六件。  それから、公害等調整委員会は、公害紛争だけでなくて、鉱業に係る土地利用調整等の事務もやっておりますので、それもあわせて申し上げますと、鉱区禁止地域指定制度というのがございますが、それの請求事件が九年度四件係属しております。  それからまた、鉱業等に係る行政処分に対する不服裁定も私どものところで取り扱っておりますが、その不服裁定事件が九年度で八件係属しております。  主要な事件は以上のとおりでございます。
  134. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 裁判所の方もお願いします。
  135. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 裁判所の調停には、御案内のとおり民事と家事とございますが、民事の調停事件の関係で申し上げますと、まず新受件数、新たに受ける事件数ですが、近年顕著な増加傾向を示しておりまして、平成五年には十一万二千八百四十六件でございましたが、平成九年におきましては十九万四千七百六十一件となっております。  また、民事の調停委員の数でございますが、年度途中で多少の増減がございますけれども、全国で約一万二千人前後、もう少し詳しく言いますと、平成十年八月一日現在で全国で一万一千七百五十四人ということになっております。
  136. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ただいま聞きましたことも当然わかっていることかもしれませんが、しかし、これを見ますと、公害等調整委員会は別にしまして、数が少ないですからいいのですけれども、そのほかに、特に一番近い調停委員会については非常に多くの人員を抱えてやっておるということになりますと、その一角を占めるこの委員会についても、規模の面あるいは予算の面で相当の大きなことが予想されるわけです。しかも、その体制がどうなっているかということなんです。  あえて裁判所に聞きませんけれども、特に裁判所の手続が遅いとか、それから、さすがその結果に対する批判は余り聞かないのですけれども、遅いために現実的な処理、解決にならないと言われておる。確かに世間でそう言われていますが、この委員会がその不信感から出ておるものだとすると、これは裁判所としても相当反省をしなければならないし、裁判所の組織の拡充ということ、あるいは司法の改革ということを考えなくてはいけないと思っておるのです。  私自身は、そういう面で裁判所がみずから努力をして、今でこの問題に対処できないならば、特別部を設けるなり、何も簡易裁判所でなくてもいいし、地方裁判所でもいいし、あるいは高等裁判所でもいい、調停機能強化して、そこに専門家を持ってきて、まさに、現下の問題解決をするための特別部を設ければ、今ある組織を十分に活用できるし、しかも専門家というか、この調停委員会でもその中の何割か、恐らく半分以上は法律家が必要であろうと思います。それは事前にも聞いておりましたけれども、当然法律家のOBその他を予定しているというふうに聞いておるわけです。そうなると私はこれは今の司法の機能に組み入れることができるのではないかと思うのですけれども、それは裁判所にお聞きしても恐らくお答えにならないと思いますので、私の意見として申し上げたいと思っております。  ところで、先ほど、この調整委員会は免税措置がいわば目玉というか、それによって解決が図られるだろうというお話になったのですけれども、まさに私もこの調停委員会が民事調停制度にまさるところは、債権放棄をした債権者が課税免除になり、また免除を受けた側がその利益を累積赤字と相殺できるという恩典を法律的に与えるということに尽きると思います。  これはまた、まさにあめによって当事者に自由に債権放棄と債務免除を与えることになるということになりますが、私は、これでは他の一般の人たちと比較して不公平となって、ゼネコンとか特定の、それに近い人たち、不動産業者を助けることになるのではないかと思います。すなわち、バブルに踊った人たちのみを救済する徳政令になるのではないかという批判はあながち当たっていないではない、そういうふうに一般に言われておるわけですけれども、そうではないかと私も考えます。  もしそういうことをされるのであれば、個人ローンに苦しみ、サラ金に苦しんでおる、あるいは大企業の圧力で苦しんでいる一投の債権者とか中小企業者の人たちとの公平を欠くのではないかと思います。  もし、サラ金とかローンで苦しんでいる人たちが同じような法律で半分にしてもらえれば、同じようにその人たちは、個人としては半分、三分の一にしてもらえれば、当然個人として再生できる。再生できないから、今個人としては自己破産とかそういうものが非常に大きな傾向になっている。  ちょっと調べてきたところ、自己破産の件数でも、平成五年から平成九年で倍増しておるわけですね。平成五年で四万五千件であったのが、年々ふえて、おととし、平成八年は五万九千何がし、昨年は七万五千件、ことしは十万件にも達しようとしておる。  そういうものについて放置しておいて、このバブル処理が景気のために必要だと、それだけに限定するということは、これは私は少し不公平ではないか、一般庶民の人たちが歓迎しない、おかしいではないかと言われるのではないかと思うのですけれども、そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか。
  137. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生、租税上の措置、税制上の措置についてメリットを与えている、こういうふうにおっしゃったわけでございますけれども、二つの側面があろうかと思います。  一つは、手続面において、事前的に調停人が入ったところでの合意についてこれを発動するという意味で、私は先ほどもメリットとして言及させていただいたのでございます。  もう一つ実態面がございます。実態面については、これは何らメリットを与えていない、新たな恩恵を与えているものではないということを申し上げたいのでございます。  それはどういうことかと申しますと、余りここでちょうちょう申し上げるのは差し控えるべきだと思うのですけれども、企業から資金なり資産なりが一方的に流出した場合、これをどういうふうに見るかということは、法人税法の実効上も非常に重要なところなんですが、一つは、例えば公益法人あるいは慈善団体等に堂々と寄附の気持ちを持って寄附するというのがあります。  それ以外に、一方的に何かそういう資金の流出を行った場合、これをどう見るかということなんでございますけれども一つは、利益調整というか、そういった意味で作為的にやる、所得を低く見せかけるためにそういう措置をするというようなことについては、税はなかなかそれを許容しないわけでありまして、これを逆に寄附金として認定して、そしてその寄附金全体にかかっている制約のもとに置く、こういう措置をとるわけでございます。  しかし、それじゃ、そういう理由がなくして資金の流出等があった場合、これをどう見るかということでございますけれども、これは基本的に流出したというのは事実なのでございます。その法人企業体から資産なり資金なりがもうなくなっているということは事実でございまして、その限りでは、利益を追求する団体としてはこれを損金として認めていいじゃないかという考え方があるわけでして、しかし、それはあくまでも利益調整的なものとの分界を厳しく見ていかなければいけないということで、ああしたいろいろな要件を書いた通達が発せられているというふうに考えるわけでございます。  この場合、一体どういうふうに見るべきかといえば、これはもう再建のために、企業を再建し、そして将来においてはむしろ自己が債権として残しているものの弁済可能性が上がるという意味で、いわば商売人としてそういう行動をとるには合理性がある、したがって損金性を認めていいんだ、こういうことから今度のこの通達ができ上がっているわけでありまして、それを事前的に適用しようということに尽きるというのが今回の制度でございまして、実態的に新たに何か恩恵を与えるものではないということについて御理解を賜りたいと思います。
  138. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 確かに現在も大蔵通達の九-四-一あるいは九-四-二で、本当に最近、ことしぐらいから恐らく実行されたのでしょうけれども、まさに債権放棄については損金算入を認めるという通達があることは存じ上げております。  しかし、それであっても、その場合、その債権放棄が合理的であるかどうかというのは国税庁が判断して、それがよければその通達を適用して損金算入するというふうな形になっておるわけです。それを無条件に、ここの委員会にかかったものはすべて当たるんだということがおかしいのじゃないか、そうすると個々の判断は抜きにされてしまうということになってしまうのじゃないかという気が私はするので……。それは違うのですか。(発言する者あり)
  139. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 これは先生、法文にもちゃんと何回も出てくるわけでございますが、その合意はあくまでも公正、妥当でなければならないということになっておりまして、法人税法というか、税法が全体としてよって立っているところの公正、妥当な経理の原則、こういうものと軌を一にした概念を導入させていただいて、そこのところはちゃんと調整委員会によっていわばチェックされるという仕組みになっているわけでございます。
  140. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、行政が国税庁の判断と同じことを――公正、妥当で結構ですよ、それは。調停委員会でも同じことを書いてあります、普通の民事の訴訟でも。条理に合ったように、あるいは公正、妥当という言葉は幾らでもあります。  しかし、本来国税庁の判断する、そしてその権限に基づいて税金を取るものを、その一委員会が、しかも当事者主導の合意に基づいてやるというのが、公正、妥当でなくちゃいけないという条件を付したにしても、同じ判断をこちらにもうぼんと先に与えてしまうということがおかしいのではないかということなんですよ。
  141. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 その点は、ちょっといきさつを申し上げて事態を御理解いただくと、より御理解していただけるのじゃないかと思って申し上げるのですが、あっせんというものが最初、党の、党だったと思いますけれども金融安定化トータルプランの中にはございました。あっせんをすることによって合意を得た場合にやはり同じような制度のもとに置くべきではないか、こういうことがありましたが、あえてあっせんというものをやめたのでございます。  なぜやめたかというと、あっせんというのは、先生が今おっしゃったように、民間人の両当事者のいわば合意の場を提供するにすぎないということでございまして、それはやはり合意の内容が公正、妥当であるということを最終的にチェックできない、そういうことからあえてあっせんというものをやめまして、調停と仲裁のみにしたということでございまして、この法制定のいきさつからいっても、そこはしっかりとチェックする体制で臨もうとしておるという法の趣旨を御理解賜りたいと思います。
  142. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 それでは、今確かに無条件でないということもありましたけれども、国税庁が本来ならば個別的判断をしてその合理性を認めるということでなくちゃいけないけれども、その合理性を担保されているシステムがこの法律のどこにどのように出ているのか、御説明を願えますか。
  143. 白須光美

    ○白須政府委員 お答え申し上げます。  この法律案の十八条の第一項でございますが、調停の打ち切りというような表題がついている条文がございます。ここには「委員会は、不動産関連権利等調整について、第一種特定債務者の事業の再建を通じてその債務の弁済可能性を高めるとの観点から、公正かつ妥当で遂行可能な合意が成立する見込みがないと詰めるときは、調停委員会の決定により、調停を打ち切るものとする。」ということになっておりまして、ここでは、打ち切りになりますものとしましては、まず基本的に合意が成立しないというのがございますが、また、その合意の中でも、仮にあったといたしましても、公正かつ妥当で遂行可能というふうに認められない場合には、同じくそのような合意が成立する見込みがないということで、調停としては成立をいたさないというものでございます。
  144. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、こういう言葉だけで果たしてそれが担保されるかどうかは非常に疑問でありますけれども、時間も来ましたので終えたいと思いますが、労働大臣それから法務大臣、保岡先生、大変申しわけありません。予定をしておりましたけれども、このように私の質問が下手で長引いてしまいまして、この次、またお匿いしたいと思います。どうもありがとうございました。どうも失礼いたしました。
  145. 相沢英之

    相沢委員長 これにて北村君の質疑は終了いたしました。  次に、上田勇君。
  146. 上田勇

    上田(勇)委員 平和・改革の上田勇でございます。  まず最初にお伺いしたいのですが、今日のこうした金融システム危機を招いた最大の原因は、やはりこれまでの金融行政のあり方が余りにも一貫性がなくて無責任な対応が多かった、そのことに対して市場も国民も完全に信頼を失ったために今日のこういうような状況が起きてしまったのではないかというふうに私は感じるわけであります。  振り返ってみますと、住専処理のときには、不良債権処理の山は越えた、今後は公的資金は投入しないというような政府の方針が言われましたし、昨年は、信本総理は、金融機関不良債権処理はかなり順調に進んでいるというような答弁をずっとされておりました。今日、見てみますと、これは正確ではなかったし、事実ではなかったということがはっきりしたわけであります。  また、昨年の初めには、当時の大蔵大臣が、二十行のメジャーバンクは支えていくということをたびたび国会の内外でお話をされておりました。ところが、年末までには北海道拓殖銀行、北拓銀行破綻したし、日債銀も経営危機に陥るというような事態に至りました。  また、その間、いろいろ中小金融機関でも経営危機に陥ったものが多かったのですが、あるものは救済されていたし、あるものは破綻させた。その基準がどうも、それなりのお考えがあったのかもしれませんが、我々から見ると必ずしも一貫性がない、基準が明確でなかったというような感がいたします。それで、その間に、この金融機関不良債権処理につきまして、政府として明確な方針も出てこないで、大変問題が先送りになって、後から追ってくるような対応が続いてきたのではないかというふうに思うわけであります。  こうした行政では、やはり市場も国民金融システムに対する信頼を失い、システムの危機が招かれるのも行政の責任が極めて大きかったというふうに私は思うわけでありますが、その辺、行政の責任について、大蔵大臣、いかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 住専処理につきまして御審議を願いましたときに、当時の政府は、もうこれでこういうことはございませんと申し上げたという御指摘でしたが、あれは、いわゆる不良債権のうちで、住宅金融専門会社という七つかそこらの会社に関する、当時母体行という言葉がございましたが、母体行を中心としての破産の結果の処理でございますから、これだけでその不良債権が終わるはずは実はもともとなかったと思います。  その後、しかし、今御指摘のように、たびたびこの処理は済んでおるというようなことを申し上げましたのは、考えますと、引き当てが済んでいるという金融機関の報告を聞いて、引き当てが済んでおれば問題は済んでおる、こう即断した嫌いがあるのではないか。申し上げるまでもなく、引き当てが済んでいるということは貸借対照表には載っておるということでございますから、債権者と債務者の関係は片づいているわけではない、いわんや、その間の担保等々は処理されているわけではない。その状況をもって不良債権の問題は済みましたというのは、これはちょっと考えればおかしなことであったと思います。そういうことがございました。  この間における行政の責任、しばしばお話がありますように、それはやはり、長い間続いた護送船団方式というもので、優劣の競争がなくしたがって、そういう意味では経営者に経営の危機感というものを与えずに、安楽なと申しますか、安易なと申しますか、そういうことを長年やってきたその行政の責任、そしてそれが、統制解除になり一ビッグバンになりまして、世界と競争しなければならないときに弱さを露呈をしたというようなこと。最近のことを考えましても、そういう行政のあり方というのは、これはまさにおっしゃいますように、この事態に責任があると申すべきであります。
  148. 上田勇

    上田(勇)委員 責任があるというお話でありますけれども、今の大臣のお話でも、いや、こういうふうに言ったかもしれないけれども、実は専門的に言うと、また詳しく言うと真意はこうなんだ、こうだったんだと今から言われても、それは、現に当時、責任ある立場にあられた総理にしろ大蔵大臣にしろ、不良債権処理は着実に進んでいるんだ、心配要りませんと。ところが、それに対しては、市場も、またマスコミにおいても、いや、政府の発表している不良債権というのは実は氷山の一角だということがいろいろなところで言われていた。国会の中でも、与野党とも、そうなんじゃないんですかという質問があったにもかかわらず、総理も大蔵大臣も、いや、着実に進んでいますということを、私もたびたび耳にしたわけであります。  いや、それは引き当てが進んでいるという意味でありましたというのでは、これはもちろん、証券アナリストがおっしゃる話だとかであれば、それはそうなのかもしれません。しかし、そういうことで総理、大蔵大臣がこれまでいろいろ発言をされてこられた。全く事実と違ったということは本当に責任が重大でありますし、そのことによって実は誤解が誤解を生んで、今、申しわけないけれども、総理、また大蔵大臣がおっしゃることに対して、本当にそうなんだろうかな、信頼性が失われてきているのではないかということを私は本当に感じるものであります。  ここの期間だけじゃなくて、今の不良債権問題を見てみますと、やはり八〇年代の後半というのは、金融機関がバブルの経済に乗りまして非常に物すごい拡張路線に走ったわけであります。今から見れば、常軌を逸していたとしか言いようがありません。都銀も中小の金融機関も、リスクの高い海外不動産であるとか、ニューヨークだ、ロサンゼルスだ、いろんな話題もありました。また、国内でも、もう既にたくさんあるゴルフ場だのリゾート開発だのに、非常にリスクの高い投資に資金をつぎ込んでいったわけであります。  これが今の不良債権の原因になっているわけでありますけれども、その間、各金融機関一つの安全性の基準とも言われる自己資本もぐっと低くなってきていまして、特に七〇年代の後半ぐらいから急速に減少していって、八〇年代には、普通銀行の平均として四%以下になっていたという統計もあります。  こうした事態が起きた。バブルで、みんなバブルの景気に踊っていたんだから国じゅうの連帯責任だという言い方を金融機関の方はされる方もいらっしゃいますけれども、ここは本来、行政が金融機関の経営内容をやはり適切になるようにチェックしていかなければいけない責任があったんだというふうに思うわけであります。  残念ながら、大蔵省はその機能を果たしてこなかった。つまり、バブルの時代においても、行政の責任、いわゆる行政が機能してこなかったことの責任があるわけでありますし、その後の崩壊後の処理についても、行政がもっとしっかりと金融機関の経営をチェックして健全化を指導していく立場であったにもかかわらず、かえって経営の実態を隠すかのような、また経営責任の追及を避けるかのような対応に終始してきたということが、今日こうした事態を招いたというふうに思うわけであります。  もちろん、こうした事態というのは、今、金融機関の経営者が第一義的に責任を負うわけでありますけれども、そうしたバブルの発生、そしてバブルの崩壊、一連の金融当局の責任はまさに重大であるというふうに思うわけであります。これはやはり、単に護送船団方式が国際化の中で対応できなかったという話だけじゃなくて、本来の職務を全うしていなかった、本来の職務についてまじめに仕事をされていなかったという責任があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、最近、当時のいきさつを年ごとに調べてみておりますのですが、プラザ合意が八五年でございますから、六年はちょっと非常にみんなが苦しみまして、その次ぐらいから少しずつということなんですが、実は、もうそのころに何度も銀行局長通達というのが出ておりまして、それは、金融機関に対して、不動産目当てに余り大きな貸し出しをするな、それから総量規制なんということもございました。意外に時点としては早い時点でそういう通達なり警告がなされている。  しかし、簡単に言えば、それは十分に守られなかった、聞かれなかったということになるわけでございますけれども、言ってみれば、それだけ一種の、あのときに、八六年の後ぐらいから経済が興隆いたしますので、そのエネルギーというものが大変に大きなもので、これは弁解のために申し上げるのではありません、行政は随分チェックしようとしている、現実にしょうとしている跡も残っておるのですが、とめ得ないような土石流みたいなエネルギーがあって、それがこういうことになった。  これは弁解として申すのではありませんけれども、反省としては、もっと申せば、やはりそういう通達を出したら、その結果が守られているかとかいないかとか、そういうことをどこかでしておればよろしいんですけれども、そこらあたりが恐らく十分でなかった、いわば国民を挙げてちょっと好況を謳歌したというようなことがやはり反省ではないかと思っております。
  150. 上田勇

    上田(勇)委員 宮沢大臣、最初に、護送船団方式の行政に反省があるとおっしゃっていたんですが、今のお話では、今度は逆に、大蔵省が幾ら言っても金融機関が聞かなかったんだというようなお話なんです。これは、大蔵省があるいは金融当局がそういう指導をしていた、それに対して金融機関経営陣が言うことを聞かなかったというんでしょうか指導に従わなかった、これに対して大蔵省、金融当局としてはどういう対応をとられてこられたんでしょうか。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 誤解があるといけませんので、そういう気持ちで申し上げたのではありませんで、通達を出して警告をしているんですが、なかなかそれが受け付けられない、それだったら、ちゃんと実績をとってきちんとやるべきであったということでございますから、そこで行政がちゃんとやっていたから責任はないというふうに私は申しているのではありません。本気になってとめるものをとめようとしていない、何もやっていないのではなくて、やっているんですが、それをきちっと守られるまでチェックしていないというところが行政の責任であったのだろうと。私は、当時そんな通達が出ているということを実は今度調べて知ったぐらいでございますから、そういう意味では、本当に与えられた職責をきちんと行政が果たしていたということは結果としてはやはり言えない、こういうふうに思っておるんです。
  152. 上田勇

    上田(勇)委員 私も、実は今度質問をするに当たりまして、どういう措置をとられてきたか、いろいろな書物を見てみますと、確かに、自己資本率が低下していますよ、確保しなさいという通達が、かなり以前からそういうような指導というのが行われていたり、経営の健全化についてもたびたびいろいろな形で、大蔵省から、金融当局の方から、日銀から出たものもありますが、そういうような注意が払われていたというのは事実であります。その最たるものが土地取引の総量規制になったんでしょう。これについては政策のいろいろな評価というようなものがありますけれども、そういう意味では、金融当局は事実認識については正しかったのかもしれませんが、それを実は行動できなかったということ、私もそれが現実じゃないかと思うんです。  しかし、その原因というのは、大蔵行政が、やはり通達であるとか口頭指導であるとかそういったことに頼っていて、もっと開かれた議論が行われない、金融村という業界の中の密室の中で行われていた。何となくみんな言うことを聞かない。そこで、あえて行政というのが、業界とはやはり違う立場にあるんだ、金融システムという公共性を守るという立場、使命感、そういう自覚がなく、結局は、その後明らかになったように、業界との接待にうつつを抜かして責任を放棄してきた。まさにその辺に重大な責任があるというふうに思います。  先般、長期信用銀行の頭取ほか皆さんが参考人として御出席をいただきました。それぞれ経営陣としての責任についても言及をなされました。私は、必ずしも十分な責任のとり方というふうには思いませんけれども、それでも退任、減給、退職金返還までの責任を示されました。  行政のトップについてそうした話は聞きませんけれども、大臣あるいは次官、行政のトップ、銭行局長あるいはそういった方々責任があるということをおっしゃいましたけれども、目に見える形での責任のとり方というのは何かお考えはないんでしょうか。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはどうも私がお答えするしかないわけですが、経緯を見ておりますと、もちろん、刑事事件がありましたようなことは、これは別でございます。そうでない場合に、やはり減給であるとか、いろいろな行政の中で決められました訓告であるとかいうことがおのおのになされておりまして、それに加えまして、やはりそのことが大事にも及んでいて、事実上、責任をとってもらってやめてもらうとか、あるいは、いわば期待されていた昇進が行われないとかいうようなことは、委員も御存じのとおり役人の世界においてはかなりきついことでございますから、そういうことは行われております。現に、大蔵省におかれましても、私の前任者が主なる者を呼んで一人一人に訓戒を与えられたというふうに承知をしております。
  154. 上田勇

    上田(勇)委員 我が国の行政というのは、これまでも政策立案の中で非常に強い力を持って、強い権限を持った行政機関でありますけれども、やはりその最大の欠点というのは、行政として責任をとらない、誤った政策、行政の責任において政策を施行したとしても、結局は責任をとらないということが本当に最大の問題だというふうに思います。  今回も、こうした金融問題が発生して、その間最大の力を持っていた人たちが結局は今、それなりに昇進がおくれたであるとか、自分が思っていたポストにつけなかったみたいなお話はありましたけれども、私は、その責任はそんな軽いものじゃないというふうに思います。結局は皆さん、公務員としての最高のポストについて、退職後もそれなりのポストが与えられて、高給を取って今も生活されているわけであります。しかも、こうした事態になって公的資金の投入といったものが本当に現実味になってきた、そうした中で全く行政が責任をとらないというのは、これは国民の納得が得られないことだというふうに思います。  もちろん、今の官僚システムの中の人事システムのあり方についてはよくわかりますけれども、やはりこれから本当に、行政がそうした失敗を犯したときにはちゃんと責任をとっていく、それも目に見える形での責任をとっていくという形ができなければ、囲えば今回のような、国民負担を強いるというようなことは納得が得られないことになってしまうというふうに思います。この辺は、そういう意味では、権限と責任のあり方を本当に明確にしていかなければいけないというふうに申し上げさせていただきたいというふうに思います。  次に、ちょっと話題が変わりますが、民事上、刑事上の責任という問題についてちょっと質問させていただきたいのです。  小渕総理大臣は、今国会の所信表明演説の中で、「破綻した金融機関の経営者に対しては、経営責任、さらには民事、刑事上の厳格な責任が問われるべきであります。」というふうにおっしゃっておられます。さらに、質疑に対する答弁の中でも、「破綻した金融機関の経営者の退任及び法律に基づく民事、刑事上の責任を肢格に追及する方針であります。」というふうにもお答えいただいております。  そうした総理の御決意について、では、これまで、破綻した金融機関は数多くあったけれども、本当にどのような刑事上、民事上の責任が追及されてきたのか。これを見てみますと、いわゆるバブル崩壊以降、破綻する金融機関がふえてきました一九九一年以降について見てみましても、破綻、清算あるいは経営不振による事業譲渡合併などといった金融機関の数が、これは、私の調べたところでは六十七件ありました。これは、農協、漁協などはこの数に入っておりませんし、証券会社ども入っていません。また、統計のとり方で若干の誤差はあると思いますが、大体そんな数字だというふうに思います。このうち、これは法務省の方から先日いただいたデータでありますけれども、刑事責任の追及は九件であります。  私は、これで刑事責任の追及がこれまでは十分に行われていたということはとても言いがたいというふうに思います。もちろん、法治国家でありますから、法と証拠に基づいて行われるのでしょうけれども、七十件近いそういう金融機関破綻がある中で、刑事責任の追及は九件だ。今後とも賞しくやっていくといっても、どうもこれまでの実績は必ずしも、私は法律専門家ではありませんので率直な感想として申し上げますが、十分ではなかったというふうにしか思えないのですけれども、その辺、法務大臣、お考えはいかがでしょうか。
  155. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  委員御指摘のとおり、総理の施政方針演説でも、今おっしゃられましたとおりのことを述べておられました。  検察当局においても、平成三年以来でとりますと、安全信用組合、東京協和信用組合のいわゆる二信組事件、コスモ信用組合初め破綻金融機関十一件の経営者三十八名について、商法の特別背任、刑法の背任などの罪により訴訟を提起して、平成十年八月十四日現在、そのうち十二名について有罪が確定しているという状況でございます。委員御指摘になりました九件と十一件の差は、その後調整して、こういう数が実態であると思います。  そして、委員の御指摘の、この数が多いか少ないかということでありますけれども、こうした事件を検察が捜査いたしますのに、やはり御存じのとおり、告発そして送検がなければできない。検察みずからやる部分もございますけれども、極めて検察は手が少ないということでございます。そうした告発をおやりになるようなところをざっと考えてみますと、金融監督庁とか都道府県とか預金保険機構とかいわゆる民間とか、いろいろあると思うのでございますが、やはり告発、送検がなければできないというのが実態であります。  そこで、今までどのようになっていたかという数字を見てみますと、整理回収銀行から告発されましたのが六件、そして中坊さんの住宅金融債管理機構から告発されましたのが四十一件。圧倒的に中坊さんのところが多いということでございます。  こういう中で、そうした事件が検察のもとに回りましたときには機動的な対応をしよう。歳動的な対応と申しますと、応援態勢をしくということでございます。目下の政府の最重要課題であるこの問題でありますから、あらゆる手を尽くしてやってまいろうと思っておりますが、何分にも検察の人数が足りないということがあります。透明なルールのもとに自己責任世界ということで、司法の改革が叫ばれている中でございますが、こうした経済事犯の増加についていけるだけの人員がなかなかないというのが現状でありまして、私どもといたしましては、これから司法制度の改革も議題になってまいると思いますが、人員の確保を今お願いしているところでございまして、ぜひ機動的な対応をいたしますので、その点も応援をしていただけたらと思うわけでございます。
  156. 上田勇

    上田(勇)委員 今回政府の方で発表されました一連のトータルプランの中で、あえて今度の国会の冒頭に総理がこういうことをおっしゃっているわけでありますけれども、何かその具体的な対策というのはとられているんでしょうか。
  157. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 ただいま法務大臣の方から、人的な点では非常に限りがあるという話を申し上げたところでございますが、住専の処理のときにも、それを契機といたしまして、従来、特捜部は東京地検とそれから大阪地検の二庁でございましたが、名古屋にさらに特捜部が新設されました。  そのほかに、全国の検察官の総力を挙げる必要があるということでございますので、機動的捜査体制といいますか、全国から事件に応じて必要な庁に検事を集める、検察官を集める、あるいは検察事務官を集めるということで対応してまいりました。さらに、東京、大阪、名古屋の特捜部には金融事犯についての専従班というものを設けまして、そうした捜査にたけている検察官あるいは検察事務官を集中させるということで対応してまいりました。  今後の金融事犯に対する対応についても、さらに量的、質的な問題を拡充する必要があろうかと思いますので、現在、最高検察庁とも協議しながら、これまでの体制を上回るような強い捜査体制を組んでいきたいと考えているところでございます。
  158. 上田勇

    上田(勇)委員 最初、法務大臣のお話の中で、やはりこうした事件というのは、実際に金融機関に、破綻したとき、あるいはその経営が悪化したときに入っていく整理回収銀行預金保険機構などの告発がなければ、それは当然検察としては動けないということでありましたし、これまでも多分そういった各機関の方々、また検察の方も一生懸命やられてきたのではないかというふうに思います。  先日のこの委員会議論の中でも、今回はブリッジバンク法案の中で金融管理人に告発の義務を設けたというような例が一つの改善点だというようなお話もあったのですが、私は、必ずしも今までそういう預金保険機構その他機関の方々が義務がないから告発を怠ってきた、事実を知りながら告発を怠ってきたということはないのじゃないかというふうに思いますし、告発があった場合には検察の方も必ず取り上げてきたのだ、今の刑事局長のお話にもあったように、必ず取り上げてきたということになるのですが、そうすると、大臣、総理大臣は刑事上、民事上の責任、非常に微妙な言い回しを使っておられますけれども、あのとき所信表明演説を受けて私の受けた印象というのは、今回厳しく刑事責任も民事責任も追及していくんだということだったのですが、現実にはこれまでと変わらないということではないのですか。
  159. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 事件がふえて、告発事件もふえてきておりますから、変わっていると思います。変わっていると思いますが、再度になりまして恐縮でありますけれども、告発とか情報がないと、それは検察みずからなかなか内容がわからない問題であります。そして、先ほど申し上げましたように、やはり特出して中坊さんのところは告発が多いということはひとつ銘記しておかなければいかぬことだと思うのですね。そして、公務員たるもの、不正を発見したら告発しなければいけないということになっているわけでありますから、告発するべき事案があれば告発するということだと思います。  そして、今度ブリッジバンク金融管理人の部分も、私が大蔵政務次官をやっていた当時でございますけれども、それはお役人は告発の義務があるのだけれども法律の中にも告発をしなければならないという文章を案に入れてあるわけでございまして、そうした面で、議員も御指摘になりましたように、経済事犯ですから、告発するにもなかなか難しい要件はあると思いますけれども、不正があったら告発をしていただき、検察としてはそれに厳正に対処していくということをやってまいる。その中で、先ほど刑事局長から御答弁申し上げましたように、非常に少ない人数の手の中でありますけれども、こういう経済事犯に優先的に人員を割り当てて、特別な人員応援をやって対応するという体制をとっているところでございます。
  160. 上田勇

    上田(勇)委員 ぜひ、リップサービスだけに終わらないように、しっかりとした厳正な対応をお願いしたいというふうに思います。  それで、今刑事の話があったのですが、民事についてちょっとお伺いしたいと思うのです。  この間、民事の責任追及も、これはいろいろなデータがあるようですが、十数件であるというふうに聞いております。これも私は必ずしも十分な数ではないというふうに思うのです。もちろん、この民事責任の追及というのはいわゆる私人間の訴訟でありますから、本来行政がどこまでかかわっていくのが適当なのかというのにいろいろ問題はあるかと思いますけれども、総理が厳格に追及する方針であるというふうにおっしゃっております。その意味で、追及する何らかの措置あるいは対策を考えられておることだというふうに思いますけれども、それについてお考えを伺いたいと思います。
  161. 松田昇

    ○松田参考人 お答えいたします。  民事と刑事、あわせて預金保険機構の取り組み、御報告したいと思います。  私ども、現在御審議中の資本注入の仕事のほかに、本業であります金融機関破綻処理の問題と、それから中坊さんの住管機構と整理回収銀行と一体となった不良債権の回収という仕事を受け持っております。これは、三つの団体が一体となって仕事をやっておりますので、預保グループと普通言っているのですけれども、その三つの機関は、その業務の過程で、経営者と悪質な借り手とそれから回収を妨害する者たちの告発、あるいは民事上の提訴という措置をこれまでとってまいりました。特に、ことしの二月に預金保険機構の中に責任解明委員会というのを設けまして、そこで四名の特別顧問の助言を得ながら、現在まで二つの機関と協力して、民事、刑事の追及をやってきたところでございます。  これまで、約二年間でございますけれども、悪質な借り手と暴力団関係者による回収業務の妨害等の事案に対しましては、合計で四十九件、これは先ほど法務大臣からお話ございましたように、住管機構が四十五件、整理回収銀行が四件でございますが、四十九件の告発をいたしておりますし、民事上の措置もとっております。  一方、それではなくて、破綻した金融機関あるいは住専への貸し手、経営者側の責任追及の場面でございますけれども、刑事責任の追及といたしましては、捜査当局の摘発と並びまして、当預金保険機構としても、大阪信用組合の元理事長ら六名、それから三福信用組合元理事長ら二名につきまして、その不正融資事犯を背任罪ということで告発をさせていただいております。現在、捜査中でございます。  それから、それに伴いまして、経営者の民事上の責任追及といたしまして、整理回収銀行関係では、破綻をいたしました東京の二信組を初め七つの金融機関につきまして、その経営者、理事長等でございますが、合計四十五名に対しまして、延べ十件、合計百九十八億円の損害賠償請求を現に提訴中でございます。  一方、住専関係の経営者追及といたしましては、中坊さんの住管機構と連携をいたしまして、旧日本ハウジングローン役員に対する三十六億円の損害賠償請求が一件ございますのと、先般、旧住専の背後にあります住友銀行に対します四十八億円にわたる融資紹介責任を問う損害賠償責任一件を提訴いたしました。これにつきまして、預金保険機構としましても法律上の補助参加をいたしておりまして、同時に法廷に立っている状況にございます。  そのほか、和解としては、旧住宅金融の元代表取締役の庭山慶一郎氏に対する経営者責任ということで、一億二千万円で和解をした、こういうことをいたしているところでございます。  引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  162. 上田勇

    上田(勇)委員 今いろいろとお話があったんですけれども、住管機構の告発が大半、非常に多いということ、これは実際には、いわゆる経営者というよりも、実際の回収業務に当たる妨害行為等に対する責任の追及なのでこの件数がふえているんだというふうに思いますけれども、私はやはり、今実際にこうして公的資金国民の税金が金融機関のシステムの救済のために投入されるといったときに、その経営者の刑事上、民事上の責任というのが本来問われるべき、また国民もそこに大いに関心を持っているのではないかというふうに思うわけでありまして、それを伺ったところ、非常に件数が少ない、なかなかそれは立件できないんだというのが現実だというふうに思います。しかも、数的には、いろいろと今数を言っていただきましたけれども、いずれも規模の小さい信用組合などが関係するもりがほとんどでありまして、その意味で私は、本当に刑事上、民事上の責任追及というのが十分にというか、全く納得のできるところまで進んでいるというふうには思えないわけであります。  そういう意味で、ぜひ、総理も所信表明の中でこのように述べられているわけでありますので、それが国民に対する単なるリップサービスだけに終わらないように、ちゃんとした実績を上げてもらわなければいけないし、厳しく対処していっていただかなければいけないというふうに思うわけであります。  とはいっても、これは、私が思うのは、実はその体制もそう変わらなければ、先ほど法務大臣の方から、検察について人的な制限もあるというふうなお話もありました。体制も変わらないし、では法律についても、民法や商法、刑法などが変わったわけでもない、まさか超法規的なことをするというわけにもいかないでしょうから、私は、残念ながら、総理がこのような御決意を述べられているにもかかわらず、多分結果というのはこれまでと余り変わらないのじゃないかなということを危惧しているわけであります。やる人間も変わらなければ物差しも変わらないわけでありまして、その中で厳格に追及するというかけ声だけで進むものではないということを申し上げたいというふうに思います。  では、大臣、お順いします。
  163. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  たびたびで申しわけございませんが、検察は、起訴独占の制度の中で、送検されたもの、それからみずから告発されたものを処理していくわけでございますね。ですから、検察に告発をいかにしてくださるかということで、それを起訴するかどうかということを検察がやって、裁判所が裁いていくわけでございます。そういう中において、再度申し上げますが、中坊さんのところで四十一件とか告発して、送検されてきておりますから、実態はふえております。  そして、人数がないからやらないということは申し上げていないわけでありまして、機動的にやるという意味は、よく言われます東京地検特捜部で体制をとったなどというのは、応援態勢をとって、全国から検察官を呼び寄せて、そこでもって問題の処理に当たっていく、そういう体制はとります。しかしながら、一義的には、不法行為があった場合には、法に違反する行為があったときは告発をしていただきたい、送検をしていただきたいということを申し上げているわけであります。
  164. 上田勇

    上田(勇)委員 この問題につきましては、私は、これまでの実績、そして金融機関が置かれている状況、また公的資金が投入される、税金が投入されるという現状の中で、必ずしも本当に社会的に国民が納得するような現状ではないというふうに認識しております。ぜひ、そういう意味で、今各機関からお話がありました、力を合わせていただいて、本当に徹底的にやはり責任は追及してもらう体制をとってもらわなきゃいけないというふうに思いますので、どうか検察も、また預金保険機帯、金融監督庁も、その他関係機関も、この点は留意していただきたいというふうに思うわけであります。  それで、ちょっと今回この委員会にかかっております法案につきまして質問させていただきたいのですが、先ほど北村委員からも質問がありましたが、まず初めに不動産関連権利等調整法案につきまして御質問したいと思います。  先ほど北村委員の方からかなり詳細な質問がございました。私の方は、まず最初に非常に素朴な疑問でありますけれども不動産関連権利等調整委員、十人以内ということになっております。特別委員を個別の調停事件に参画させるため任命することができる。これは特に何人というふうには書いておりませんけれども、先ほど柳沢大臣の方からも、まだその辺までは具体的に詰まっていないというような御答弁でありました。また、先ほど大臣から、対象となる事業者というのはたくさんある、山ほどあるんだという答弁だったというふうに思います。  そうすると、こうした山ほどある事業者、バブルでリスクの高い不動産投資に巨額の資金をつぎ込んだ会社、ゼネコンもあるでしょうし、不動産会社もある、ほかの事業会社もあるんですが、先ほど言われた陣容、委員は十人だ、特別委員はどんどん任命するというものの、これは調停の方は特別委員を任命していけるんでしょうが、仲裁は十人でやらなければなりません。調停の方についてもどれだけの人員になるのかというのはまだちょっと具体的にわからないということだったのですが、それに比べて、その対象となる不良債権というのは山ほどある。そうなると、またそうした対象となる事業者というのは全国におられるというふうに思うわけでありますが、その辺どうも今までの議論の中で政府の方から示されるスキームというのでしょうか、それでは結局、何か焼け石に水のような感じがするのです。  もう一度、どの程度の効果を今具体的に期待されているのか。本当にこの不良債権問題というのは喫緊の課題でありますので、これから考えますというのではほとんど役に立たないというふうに思いますけれども、その辺ちょっと、柳沢大臣の方からお考えを伺いたいというふうに思います。    〔委員長退席、村田(吉)委員長代理着席〕
  165. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 対象となるべき案件が多く予想される、そういうことがありながら、それを受けとめる調整委員会体制はどういうふうになるんだ、こういうお尋ねでございます。  私ども、こうした制度が必要だということは、いろいろなところで政策立案に当たった者が聞きながらこういうものが必要だということを認識し、それからまた、そういう声から推察するとかなりの者がそういったことを期待しているということを、これまた認識してこういう制度をつくったわけでございます。  しかし、それでは、数字、定量的に一体どのくらいになるかということを今ここで示せと言われても、なかなか率直に言ってこれを申し上げるのは難しいということを申してきたのでございますけれども、それでも事務当局としてはいろいろな傍証的なデータを積み重ねて大体のイメージを固めているということが率直なところでございます。これは、委員もいろいろな行政実務の御経験がありますので御理解賜れると思うのでございますけれども、そういうことでございます。  それから、我々の陣容としてどういうことを考えているかということでございますが、法律で定めているのは、今おっしゃられたように、委員長一人、委員が十名ということでございますけれども、調停については、委員長が特別委員を任命してこれに当たらせることができるということになっております。  具体的には、委員長が事件ごとに委員あるいは特別委員の中から三名の委員を指名してそこで調停委員会というものを組成していくという仕組みになっているわけですけれども、いわば、その要員としては、今申し上げた十名の委員と今後委員長によって任命される特別委員が用意をされなければなりません。  そういうようなことで、私どもとして、当初、スタートをしてしばらくのことは状況を見なければなりませんけれども、少なくとも数十名の特別委員を用意していかないと、やはりとても行政需要に応じていけないんではないか、このように考えているということでございます。
  166. 上田勇

    上田(勇)委員 先ほど、北村委員質問の中でも、裁判所の民事調停制度は使えないのかという御質問がありました。  今裁判所の機能がいろいろ、実際に使われている方の中からは問題点を言う話もありますし、先ほど大臣の方からもいろいろな御指摘がありました。であれば、今度つくる委員会というのは、そうした今ある制度の不備が解消されるものでなければならないと思います。  一つには、やはりスピードが大切だということであると思いますし、もう一つには、やはり裁判制度というのは、裁判を使うと、今はどうしても更生法とかり感覚が強いですから、何かそのまま倒産してしまうんじゃないかというような誤解を受けやすい。そうした不備があるんですけれども、特に重要なのはやはりスピードの問題だと思うのです。その辺、もうちょっと具体的な構想がないと、そうした不備が補えるんだというところが明確にならないんじゃないかというふうに思います。  それは、今はこういう景気の情勢ですし、不良債権実態を見れば対象になり得る事業者というのはたくさんおられる。もしそれが一斉に、一斉にとは言わないけれども、たくさんの方がこの制度を利用したときにあふれてしまうというようなことになったら、結局はその意図したことが実現できませんし、逆に、ではどこを優先していくのだというような議論も出てくる。大きいところからやるんですかとか、そういった話というのは出てくるわけであります。  きょうは実はまだ構想段階だというふうなお話でありましたけれども、この委員会の審議の過程の中でその辺はぜひ詰めていただいて、もっと具体的なスキームがわかるような、ピクチャーがわかるような形にしていただかないと、あえて今ある司法制度の外にこれを置くというその意図というのがわからないんですけれども、今後、そういったことというのはどのぐらいのタイミングでより具体的に詰まってくるんでしょうか。
  167. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 お答えする前に、先ほど私の答弁がごたごたしたように思いますので、もう一度ちょっと法律関係を明確にさせていただきます。  委員会の特別委員委員会の推薦に基づいて総理が任命するということになっております。ただし、具体の事案ごとに、だれを調停委員会を構成する調停委員にするかということは、これは委員長が指名する、こういうことでございますので、この点をお断りさせていただきます。  それから、ピクチャーはどうかということでございますけれども、これは先ほど申したように、特別委員については数十名をリストしておくというか用意をしておくということが必要であろう。それで、この法律をできるだけ早く我々通していただきたいわけでございますけれども、当面は併任で事務局は固めようということでございますけれども、それぞれの部署が既に定員削減の中で非常に厳しい仕事量をこなしているというようなこともありまして、余り一度に多くを望むということも無理かとも思いまして、当面は三十人くらいの併任の人員でもって事務局を構成してスタートしたいということでございます。  それから、地域の広がりについても、これは当然考慮しなければいけないと我々考えておりまして、東京だけでなく、こうした事案が予想される大阪等、そういうところには内部的な組織、別に新しい組織をつくるというようなことは、これは行政改革という別途の私どもに対する要請も考慮しなければいけませんので、そうしたことでできるだけ弾力的に需要に応じた体制をとっていこう、内部部局としてそうした地方の部署も必要に応じて設けていこう、このように考えているということでございます。御理解を賜りたいと思います。
  168. 上田勇

    上田(勇)委員 先ほどの北村委員質問の中にもありましたけれども、権利関係調整というのは、本来的にいえば、これは司法の役割なんだというふうに思います。  やはり三権分立ということを考えたときに、今ある裁判制度の中で――どうせ行政にも今度新しい組織をつくるわけですね。事務局が併任だということがありましたけれども委員あるいは特別委員というのを新たに任命する。それであれば、裁判所の組織の中に新たにそういうものをつくって、行政権と司法権、これをより明確にした方がいいんじゃないかというふうに思いますけれども、その辺は何か御検討された上でのお考えというのはあるんでしょうか。
  169. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 これは、この法案の審議が始まるかなり早い段階で申し上げたことを繰り返させていただくということになりますが、決して私の心の中に司法軽視だとかそんな気持ちはないのでございます。一般法律家の中でも言われていることなのでございますけれども、倒産法制の中で、解散整理型の法制は非常に司法になじむんだけれども、再建型の倒産法制ということになるとかなり柔軟な、また微妙な、そういう判断が必要なんで、かえって、例えば私的な再建等が行われることもそのあかしであるのだけれども、どうも司法の方はやや柔軟性に欠ける面もあるというようなことが言われているようであります。  今回の事案を考えてみますと、確かに司法は、いつでも国民の司法に対するニーズを受けとめるという体制はできていらっしゃるのでしょうけれども経済の中に起こった大変ないわばイレギュラーなこと、これが一時期に多量に発生しているということを考えますと、これをやはり行政が受けとめてうまく円滑に処理をするということも一つの行政目的ではないか、こういう考え方で今回の制度を検討し始めたといういきさつがあったということだろうと思っております。
  170. 上田勇

    上田(勇)委員 私は別に大臣が司法軽視であるというふうに言っているつもりはないのですけれども、要は、日本の制度というのは三権が分立しているわけでありまして、それは、立法は立法、国会の役割がある、行政は行政の役割がある、司法は司法の役割があるわけであります。  それで、今までの継続とかなんとかがあるのであれば話は別でありますが、権利関係調整というのは、私はこれはやはり司法が本来やるべきことではないかというふうに思うわけでありまして、新たに組織をつくる、特別委員を任命するというのであれば、結局それが裁判所の機関であろうが行政の機関であろうが、携わる方は同じなんじゃないかと思うのですね。であれば、より三権分立がはっきりする方がベターなのではないかという考えでありまして、この点につきましては、また今後議論をさせていただきたいというふうに思います。  次に、サービサー法案について提案者の方にお伺いをしたいのです。  このサービサーという制度は、私も今回いろいろと勉強させていただきまして、アメリカ等では広く一般化して金融制度の中で重要な役割を果たしているということでありますし、特に前国会でも債権の証券化というような話があった中で、今後これを進めていくという中において、このサービサーの役割というのが必要になってくるのではないか。そういう意味で、中長期的な観点からはこれは必ず必要になってくる制度だというふうに理解しております。  その上で、ただ、今現在問題になっているのは、やはり金融機関の抱えている不良債権問題であります。その上、このサービサーの問題については、各方面から債権回収に暴力団が関与しているということがいろいろ指摘されております。先ほど預金保険機構の方からのお話でもそれを示唆するようなお話もありましたけれども、回収あるいはそれを妨害するものの中に暴力団の介入がある。これは、もし暴力団がこうしたサービサーという仕事に関与してくることになるとすれば、私は、現時点においてメリットよりもデメリットの方が大きいのじゃないかというふうに思うわけであります。  どうも、いろいろアメリカなどの実態調査された弁護士の先生方とかのお話を聞きますと、アメリカではもう現実に、そういった債権回収に暴力団などが関与しているという、あるいはそれを暴力団の仕事というのかどうかわかりませんけれども、対象になっていない、もともと、だからそういう意味でこういうことを心配する必要はないんだと。  ところが、日本では現実にそういう実態がありますし、これは雑誌に載っていました、住管機構の弁護士をされていた方の言っていることなんですが、もしサービサーと暴力団関係者などが結託するようなことになればとんでもないことが起きるというふうに言っております。暴力団の有力な資金源になる可能性もあるというふうなことも言っておるのですけれども、その意味では、いかにこのところから暴力団、そういった影響を排除していくかというのが非常にこの法律のかなめになってくるのではないかというふうに思います。  そこで、先ほど申し上げたように、今一番重要なのは金融機関債権の回収、不良債権処理ということを考えれば、こうした暴力団の介入を排除していくということを重視して、今回この法案の中で特定金銭債権、サービサーとして取り扱うことのできる債権の範囲でありますが、これは金融機関などが有する貸付債権だけじゃなくて、リース・クレジット債権あるいは貸金業者であるものの貸付債権、あるいはそのほかこれに類するもので政令で定めるものというところまで広くなっているのですが、今の我々のニーズ、それからその懸念を考えたときに、これは金融機関債権、すなわち法律で言うところの第一号だけに限るという考え方はないのでしょうか。その辺、お考えを伺いたいと思います。
  171. 保岡興治

    保岡議員 上田議員がおっしゃったように、今非常に経済が厳しい。そして金融が極めて不安定だ。その最大の原因の一つが大量な不良債権である。これを実質処理する、銀行から切り出して土地の有効利用までつないでいくということが非常に重要だということで、おっしゃるように、そのためには債権の回収というものをきちっとできる制度を充実していかなければいかぬ。  中坊委員会が公的にいわばサービサーをやっているわけでございますが、そこで債権回収のいろいろなノウハウが生まれている。中坊さんも、ぜひこれを民間でできるように、専門的な技術的な債権回収のノウハウを受け継いでいくそういう事業というものが必要だということを言われておりました。  我々、これが今御指摘のように、非常に日本においては、この大量な不良債権処理関係して、暴力団等社会の不当な勢力がこれを利用してそこで巨利を得る、巨額な利益を上げている、こういう状況がある。したがって、これを排除し、今申し上げたように、賃権回収の実を上げるためのしっかりした、専門的な技術的な民間の事業をつくり出そうというのがこの法案の目的でございます。  同時に、先生が今言われましたとおり、債権を回収してあるいは処分していくためには、債権を流動化するための市場というものが非常に重要であります。その市場を流動化するためには、やはりその値段を決める正当な価格というものは、債権の回収がどれだけきちっとできる可能性のある債権であるかということ、これが非常に重要であって、サービサーの格付が不良資産の売買における格付につながると言われているほどでございます。  そういったことで、こういった債権の回収を暴力団から排除し、かつ流通を確保するという観点から、そういう基盤をつくるという意味で、単に金融機関債権のみならず、それに関係する債権あるいは流動化の期待される債権、そういった意味で、金融機関の与信機能と同じようなクレジットやリースあるいは一定の貸金業の貸付債権、また、場合によっては、売り掛け債権のように流動性や、あるいは金融機関不良債権処理とは直接関係ありませんが、SPCによって証券化されたものであればこれも含むというように、暴力団を債権回収業から排除して民間の専門業者にやらせる制度をつくると同時に、債権の流動化の促進になるようにその債権の範囲を定めたものでございます。
  172. 上田勇

    上田(勇)委員 今の御説明で、そのニーズというのはいろいろある、幅広いと。しかし、それは私は、今すぐに必要なニーズと、今後中長期的に必要なニーズといったものが両方あるというふうに思います。  一方で、やはり暴力団と債権回収の問題というのは、もうこれはむしろ国内よりも国外でいろいろと報道されておったりして、もちろん、先ほど実際に実務に近いところで仕事をされていた住管機構の顧問弁護士の方のお話も引用いたしましたけれども、非常に懸念がある。そういうことであればもう少しその辺は、当面は少し限定的に出発して、それの運用、うまくいくのかどうか、うまくいかない、暴力団との関係がどうしても出てきてしまうというのであればそこでやめればいいし、そうではなくて、それがうまく軌道に乗る、さらに業務を拡大してもいいといったことになれば、そうした懸念が払拭された段階で拡大するというようなことも考えられるんじゃないかというふうに思って、当面はちょっと限定的に導入してはどうかということを今御提案したわけでございます。  最後に、時間がなくなりまして、もう一度、今度は金融機関根抵当権法案について、一点だけちょっと技術的な話で恐縮でありますが、質問させていただきます。  法案の趣旨については、私どもも、かなり専門的な話でありますが、一生懸命勉強させていただきまして理解をするところでありますが、一つ、これはサービサー法案と比較してみると、その対象となる金融機関が微妙に食い違っておるのですね。根抵当権法案の方の第二条で想定している金融機関というのと、それからサービサー法案の方の二条一項一号、この金融機関といったものが若干異なっているのですけれども、その辺の考え方、とりわけサービサー法案ではその対象となっております保険会社がこの根抵当権法案では含まれていないといったことについて理由をお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  173. 保岡興治

    保岡議員 サービサー法において対象となる特定金銭債権、この中には、保険業法で認められている保険会社の有する債権も当然含むという規定になっております。そして、この根抵当権をサービサーや整理回収銀行、CCPC等に大量に移転する際に、債権と同時に根抵当権が移転しやすいようにするための今回の提案については、この間並木議員から、保険業の債権も加えたらどうかという御提案がありました。これは我々の提案の趣旨に沿うものだという感じがいたしておりまして、これについては前向きに修正に応じていこうというように考えておりますので、できるだけ早く、議員立法についてもこれと同じように、御提案の趣旨は賛成していただけると思いますので、いろいろ中身についてよりよい知恵がないか、与野党で最もいい案を得たいと思いますので、今後ともよろしくお額い申し上げる次第です。  なお、サービサーについても同様に考えております。
  174. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、西川太一郎君。
  175. 西川太一郎

    西川(太)委員 自由党の西川でございます。  私は、主として貸し渋り問題を中心に閣法との関係等々につきまして、大蔵大臣初め通産大臣、経企庁長官、また中小企業信用保険公庫総裁、そして佐々波先生に質問をさせていただきたいと思っております。  まず、まことに恐縮でございますが、三人の大臣に共通の質問をさせていただきます。時間の関係がございまして、余り長い御答弁ではなく、ひとつよろしくお願いしたいのであります。  まず第一に、今は貸し渋りではなくて、日本経済が金詰まりだという言い方ができるんじゃないかというふうに私は思います。  それは、すなわち間接金融を今まで主としてやってまいりましたし、それに依存をしている中小企業等から見ますと、不良債権問題があって、不良債権問題に伴って銀行の信用が低下をして、そのために資金調達能力が低下をした。そこに円安が加わりまして、為替が十円安くなりますと、大手銀行の含み資産は二兆三千億減る、こういう試算もあります。さあ、そこで、一ドルが百四十円であれば上位二十行の貸し渋りの総額は約十兆円であるということを日本銀行民間の筋がアメリカの政府当局に報告をして、相手がびっくりした。こういうことで、その円・ドルの安定化のために協調してほしいということを民間からも必死になって言っている、こういう話が聞こえてまいります。さらに、倒産はどんどんふえるし、アジアの経済危機は深刻化していくなど、不良債権はまだまだふえるんじゃないかと。  銀行は、自分の資金を調達するのが精いっぱいで、貸し出す余力なんかない、こういうところで貸し渋りどころか資金回収を進めざるを得ない。全国商工会連合会の調査によりますと、一番多いのは、追加融資を断られた、二番目は、担保保証人の追加を要求された、三番目は、融資の基準が従来より厳しくなった、こういう事実があるわけでございます。  ここでいろいろと議論を拝聴してまいりましたし、私も一昨日、長銀の頭取等に質問をさせていただきましたが、まず第一に、これから質問をさせていただく前提になるんですが、この経済の金詰まりという状況大蔵大臣初め御経験深い皆様はどうごらんになっているか、私が今申し上げたことについて御意見を聞かせていただきたいと存じます。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘のような理由で、民間金融機関はもう自己防衛に寧日なきありさまでありまして、将来有望なお客さんを一緒に育てようというような気概は全く感じられない。まことに残念な状態であります。
  177. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員のおっしゃる金詰まりというのがどういう状況か、考え方がいろいろあると思いますが、確かに貸し渋りという状況は存在することは間違いないようでございまして、特にお金の流通の速さ、流通テンポというのが遅くなっております。  ちょっと専門的なことを申させていただきますと、貨幣供給量、M2プラスCDというのですが、貨幣供給量の増加とGDP、国内総生産の増加との関係を見ますと、貨幣供給量はふえているのになかなか生産、GDPの方が上がらない、そういう状況があるというのは、お金の流れが遅くなつているということなんですね。  だから、全体のお金が減っているというわけではなしに、むしろ金融機関あるいは各企業、家庭の中でお金が滞っている、こういう現象がありまして、中小企業者の、経営しておられる人々の肌で感じるところとしては、確かに借りにくい、お金が流れにくい、こういう状況が生まれていると認識しております。
  178. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生おっしゃるように、大企業等は、社債あるいはコマーシャルペーパーの発行によって金融の面では中小企業に比べてはるかに有利な手段を持っているということは事実でございますし、中小企業は間接金融に頼っておりますから、それだけ現在の銀行状態から非常に強い影響を受けているというのは御指摘のとおりだと思うわけでございます。  金詰まりがどうかというのは、実際にお金があるかどうかという問題と、それからお金がうまく動いているかどうかという問題と二つあるんだろうと思います。  ただ、長期金利の動向なんかを見てみますと、今の長期金利は史上最低ともいうべきところですから、お金がなければ金利は上がるはずで、お金がたくさんあるから金利が下がっているというふうに考えざるを得ません。しかし、これは一般論でございまして、具体個別的な中小企業の運転資金あるいは設備資金に着目をいたしますと、そういう資金の調達が大変難しいという状況になっていることは確かでございまして、そういう中小企業金融あるいは資金確保という観点から見れば、先生のおっしゃっている金詰まりという現象は起きておると私は思います。  ただ、一般的に、社会全体というか、経済社会全体とか金融界全体を見れば、なぜ長期金利が下がっているのかといえば、それはむしろお金の行きどころがないという現象が起きているのではないかというふうにも考えられるわけでございます。
  179. 西川太一郎

    西川(太)委員 今、堺屋長官と通産大臣の与謝野先生の御見解で、いわゆる日銀の発行券の量が五十数兆円あるのに、実際に流通している額は六兆ほどですね。滞っていることは、そういうデータもあります。私も承知しております。  そうすると、それがいわゆるたんす貯金になっている。金庫が売れるそうですよ。だって、銀行に一千万円預けたって、もう利息は全部、手元に残るのは三万円ぐらいにしかならない。一億預げたって三十万ぐらいにしかならない。こういう状態の中で九次にわたる利下げをやってきた。その理由は、簡単に言えば、利下げをすれば景気はよくなる。この論理が残念ながら、今通産大臣がおっしゃったように列をつくっても欲しいようなものがない一つまり新規産業が、魅力的な牽引車がいない。こういう中で、先ほど長官がおっしゃったように、お金は滞るべくして滞っているんですよ。金は好きで個人の家にとまっているわけじゃないんです。本当なら銀行へ行って金利を稼ぎたい。  だから、私が言いたいのは、その九次にわたる利下げというのは何のためにやったのか。この不景気の中で中小企業が金を借りているのは大変だろうから、これを景気よくするために利下げなんだ、こういうふうにおっしゃっている方もいるけれども、どうも、これは前の前の前の大蔵大臣が、銀行を救済するために、日銀から安く借りてきて貸出金利は高くしてその差額で二年間で八兆円もうけたとかという話ですよ。  だから、私が申し上げたいのは、金詰まりになっているところを切開して、血液、金が流れるようにする仕組みがあるんじゃないかということを申し上げたかったわけで、これはまあ御理解いただいているからいいわけですけれども、一言申し上げさせていただきました。  ついでに言うと、私も西川太一郎というのですけれども、この「太一」というのは、広辞苑を引いていただければわかりますが、北巨星という意味で、人を導くという意味で、どうぞひとつ経済をしっかり正しい方向に導いていただきたい。  そこで、次にお尋ねをいたしますのは、実は資金回収が優良貸出先から始まっているのですね。これは、つまり最悪の、悪い貸し渋りが蔓延しているんですね。これは、不良債権化しているものからは取りにくい、または取れない、返済できるのは優良な貸出先だ。だから、これが黒字倒産、貸し渋り倒産に拍車をかけている。それで、銀行は、資金回収はできるけれども、結果的に第二分類を三、四に落としている。現実問題、上場企業がかなりの部分外国銀行との取引を始めた。社債、つまり直接金融の率も、通産大臣おっしゃるように大手はできるわけでございますから、そういうことも進んでいる。こういう状態に対していかがお考えでございましょうか。これは、代表して、恐れ入りますが、宮沢先生にお願いしたい。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに、優良貸出先の方が話がしやすいと申しますか、回収するのに楽でございますから、本当に話は逆になっておりまして、そういうことが見えております。  他方で、今外銀の話がございまして、外銀が来る、そしていろいろな金融商品を消費者のために、利用者のために提供するということは大変好ましいことでございます。最終的に利用者、消費者が利便を得るということが一番大事なことでございますから、邦銀であろうと外銀であろうとそれは問いません。しかし、我が国の銀行もそこはやはり大いに勉強して一生懸命やってもらわなければ、本当の、個人のお客さんを外銀にどんどんとられていくようでは、どこかやはり経営に問題があるのではないかと申さざるを得ません。
  181. 西川太一郎

    西川(太)委員 そこで、公的資金資本注入すれば貸し渋りはなくなるという趣旨の御発言が、前の橋本総理から、または御関係の閣僚の方々からたびたびありました。  端的に伺いますけれども、この資本注入というのは、銀行資本装備率を是正したりまたは引当金に充当させたりして、健全化のために使うものなのか。それが、本年三月ごろから急に、景気対策としての貸し渋り対策だというふうに政府側はおっしゃってきた。私は、この問題は非常に重大だと思っているのです。  本来、公的資金による資本注入というのは、BIS規制、または大きく言えばシステミックリスクを回避するための特効薬ということで出てきたんじゃないでしょうか。ところが、それが突然貸し渋り対策というふうに変わってきた。このことによる国民の信頼感というものは、ああ大丈夫だ、これで借りられるんだ、そう思ったところが、どっこい今のような状態になっているわけでございますが、景気対策なのか金融安定化策なのか、これを私はこれから伺っていきたいと思うのです。  まず、おとつい、大野木頭取に、私、お尋ねをさせていただきました。正確を期する意味で、未定稿ではありますけれども、ここに議事録がございますが、つまり、私はこういうことを聞いたわけでございます。金融債の償還の時期がもう長銀は来ているわけでございまして、これはずっと毎月来ているわけでありますけれども、特にここのところ、六千億とか大変なオーダーで償還をしなきゃならないのです。ところが、ちなみに申しますと、平成十年八月に五千四百四十二億円、九月は六千七百三十九億円、十月は六千二百五十六億円、以下、十一月が五千六百七十五億円、十二月が五千五十二億円、それで、来年になりますと二千億のオーダーでいくわけでございますが、こういう償還が迫ってきているときに、現在の長銀の発行能力は、リッチョーとかワイドの発行して売れる力は、大臣、およそ二千億ぐらいしかないんです。そのアンバランスをどうするんですかとお尋ねしたんですね。  そういたしましたら、いろいろなことをおっしゃいましたけれども、こういうふうに言っている。この上期中はやはり、特に六月以降急激なこういうマーケットの変化がございましたものですから、やむを得ず貸し出しをある程度抑制したということは、これはやむを得ぬ事実でございます、ただ、そういうことはもちろんやりたくてしたわけじゃないということでございます、こういうふうにお話しになった。  つまり、まずここで、きょうは急な話で恐縮でございましたが、佐々波先生にお尋ねをするわけでございますけれども、三月の時点で優先株、劣後債合わせて千七百六十六億円を注入する際に、たしか前の大蔵大臣の松永大臣は、銀行を呼んで、この審査をする場合には、貸し渋りはしませんね、貸し渋りしないようにしますねということを厳重に、その審査の項目かどうか知りませんけれども、審査とあわせてそういうことを言うんだと。ところが実際は、それは六月の浴びせ売り的ないろいろな株価の問題がありました。それはわかるんですけれども、そういうことも含めて、この貸し渋り対策として注入する際、千七百六十六億円を許可する場合、そういうことは経営健全化計画とは別に意識されたかされないか、委員長の御見解を承りたいと思います。
  182. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 お答えさせていただきます。  今春三月の資本注入を行うに当たりましては、資本注入を通じて我が国の金融機能安定化を図るということが第一と考えまして、厳正かつ公正な審査を行ったつもりでございます。  ただ、その結果として、資本注入により経営基盤を充実した各行というものが資金供給の円滑を図る、図られるであろうということを期待したことは事実でございます。
  183. 西川太一郎

    西川(太)委員 委員長、その期待どおりになりましたか。
  184. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 先ほど先生から御指摘のありました長銀のケースについて、私の知っているところを申し述べたいというふうに思います。  経営の健全化確保計画というのを本日提出させていただきましたのですけれども、その履行状況報告書によりますと、資本注入によって、貸出業務を通じて産業の資金調達ニーズにこたえるというふうにうたわれております。具体的な施策といたしまして、去る五月七日付で行内通達によって、営業窓口において貸し渋りと受け取られるような措置をとらないことということを周知徹底を図ったということでございます。  それから、九八年三月末のリスクアセットベースの資産残高というのは前年比一割強の減少となっておりますけれども、その内訳というのは、海外資産の圧縮、不良債権処理、株式持ち合いの解消ということが主要因となっておりますので、その間、住宅ローン、個人向け、国内中小企業向けの貸し出しというのは横ばいないし微減にとどまっております。このようなことから、それなりの金融仲介能力というのはあるのではないか。  それから、貸し渋りというようなことについては先ほど申したとおりでございます。
  185. 西川太一郎

    西川(太)委員 大蔵大臣に伺いますが、御所管ではないのは承知の上で伺いますけれども、今の佐々波委員長の御答弁、これでいいのでしょうか。  つまり、今、まず公的資金というのは、物知りの人に聞くと、タックスペイヤーマネーというふうに英語で言うといいますけれども、これは英語にお強い大蔵大臣、そういうことも言えるのだそうですから、これはまあ前提として承知をしていただきたいのですが。つまり、公的資金というのは特別な勘定にあるわけじゃなくて、我々の税金であることは間違いないわけですよ。それが返ってくるかどうか、優先株が償還できるかどうかということはもちろんあります。だから、そのことについては大臣もたびたびおっしゃっています。  しかし、今の、千七百六十六億円を投入して、二十一行で一兆八千億投入して、貸し渋りはなくなったかというと、なくならないのですよ。  ところが、今、佐々波委員長の、長銀からの健全化計画なるものの中には、これから貸し渋りをなくすとか、どうだこうだということが書いてあるわけでしょう。これは、そういうことが実際にできるのか。三月に千七百六十六億円も投入しておいて、それで、事実、頭取がここへ来て、やむを得ない措置で、緊急避難的なことで、やりたくはなかったけれども、回収したり貸し金を絞ったりしましたと言っているわけですよ。  そうすると、これは前の委員会で松永大蔵大臣が、貸し渋りに効き目がない、こう言うけれども、そういうことはないのだ、少なくとも、六兆円のリスクアセットが今増加しているけれども、その額以上の、それ以上の融資対応力が出てくるのだ、つまり、公的資金を投入すれば融資能力が生まれるのだ、こういうことを言い切っているわけです。  それを信じて、加えて、政府系金融機関には二年度で二十五兆円の金が用意してあるということを喧伝されて、実際に借りに行けばどこでも断られてしまう。一番ひどいのは、これは細かな話をして恐縮でございますけれども、政府系金融機関の窓口で、申請書というのは、五センチ四方の紙に理由を書けというのです。そんなこと、書けるわけないですよ、五センチ四方に。それで、便せんに事細かに書いて添付して出したら、こういうものは規則違反だから読まないといって返された。こういうことで首つりで亡くなった人たちが成仏できると思いますか。  私はこんな細かいことを大蔵大臣に申し上げたりするのは、国民はそういうことで政府の対策を見てきたわけですから、本当に貸し渋りにこれは効果がないと私は思いますけれども、恐れ入りますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、三月に公的資金を投入しましたときの主たる目的は、内外金融秩序危機を回避したいということで、佐々波委員長以下金融危機管理審査委員会の皆様には、そういうことで審査をお順いいたしたわけでございます。  そのときに、政府当局は確かに、これだけ資本率がふえれば、仮に四%銀行なら二十五倍、八%銀行ならその半分、貸出能力がふえるはずだということから、それを期待するということを申し上げたのだと思いますけれども、実際にはそれはそうなりませんでした。御指摘のとおりであります。  それは、一つは、やはり銀行全体が非常に防衛的な気持ちになっているということのほかに、やはりその後に生じた不良債権というものがございますし、東南アジアからの関係もあったと思います。それから、やはり株式の価格が低下いたしましたことからくる含みの減少というようなことも影響しておるだろうと思いますが、理由はともかく、期待された効果は今日までのところ見えません。これから出てくるかもしれませんが、今日までのところは見えない。  それで、通産大臣が、先般も総理大臣が指示をされまして、政府機関がそこを補いたい。これはしかし、補いでございますから、市場経済で政府機関ができることは、それは限りがございます。それでも、信用保証などを通じて何とか補おうとしておりまして、今承りましたような態度がもし政府金融機関にございますと、それは私どもとして関心を持たざるを得ないような出来事で、そういうことがあってはならないと考えます。
  187. 西川太一郎

    西川(太)委員 そういう細かな事例、しかし非常に深刻な事例は、これはもう枚挙にいとまがないほど承知をしておりますけれども、これを一々ここで御紹介をするいとまもありませんので、そんな状況であるということをまず申し上げておきます。  今、大蔵大臣は、意図とは別に効果があらわれないというふうなお言葉でございましたけれども、もう一度、しつこくて恐縮でございますけれども、いわゆる資本注入は、景気対策としておやりになるのか、金融安定のための政策なのか、どう現時点でお考えでございましょうか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的には、三月にいたしましたことは殊にそうでございますが、内外金融システムの信用を維持したい、回復したいということでございました。もとより、副次的にはそれが景気対策になろうとは考えておりましたが、本来の目的は前者でございます。
  189. 西川太一郎

    西川(太)委員 そうすると、景気対策と信じていた国民に対してこれは期待を裏切った、こういうことになりませんか。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 貸し渋り対策に効果があって事態が改善するというふうな御説明をしたといたしますれば、結果としてそれはそのようにならなかったことの結果は認めなければなりせん。
  191. 西川太一郎

    西川(太)委員 実は、意地悪な見方をすれば、単なる決算対策だったのじゃないかと。要するに、あの時点で三月に資本注入をすることによって、決算対策だったと。あの当時、株価の口先介入的なことが頻繁に行われたりいろいろした時期ですから、私はそんなふうに考えるわけであります。  ところで、大蔵大臣は、我が党の野田幹事長が八月の中旬の予算委員会で、信用保証制度を活用することによって貸し渋り対策を進めていこう、こういう提案に対して、まずもって我が党が十八兆円減税等々いろいろ申し上げたときに、無責任だとかいろいろお声がありましたけれども、しかし、結果的には我が党の政策というものをかなり、今度のこういうことも、これは誤解を恐れずに申し上げますけれども、政策に著作権があれば盗作じゃないかというふうに思うぐらい、今度のこの貸し渋り対策も似ているのですね、いろいろなことで。似ていて悪いと言っているのじゃないのですよ。似ているのです。  我が党の鈴木議員が宮沢先生とここで質疑を交わした際に、宮沢大蔵大臣は、前段はもう御聡明な大臣でありますから省略をして申し上げますが、その信用保証協会のところはさすがに感心しております、これは気がつきませんでした、何かそれをうまくこなせますといい案ができるかもしれない、そして中略で、信用保証協会をそこへ一役買ってもらうというのは確かに一つのお考えだと思います、こういうふうにおっしゃって、それから数日後に、閣議決定で与謝野通産大臣が今度の貸し渋り対策というのを出してこられた。  そこで、このことは、もう資本注入は貸し渋り対策にはならないということの一つの事実的証拠ですよね。貸し渋り対策になるのならそっちばかりやっていればいいのだから、新しいことに二十兆も金をつぎ込むなんということはむだなことになるわけですね。だから、そっちはもう看板をおろす。だから、政策の大きな転換ですよ、はっきり言えば。  信用保証協会を保険公庫法を変えてどうするのかということを我々提案しているわけですけれども、与謝野大臣、恐縮でございますが、政府案と野党三会派で合意いたしました案と、どこが共通し、どこが違うのか。これは大臣でなくても、どなたか、政府委員でも結構です。
  192. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 実は宮沢大蔵大臣が答弁をされている最中には、もう既に中小企業に対する貸し渋り対策は、中小企業庁あるいは財政当局との間で細かい詰めを行っておりました。しかしながら、まだ結論は出ておりませんでしたので、多分あのような宮沢大蔵大臣お答えになったのだろうと私は思っております。  自由党の中小企業に対する貸し渋り案を後で読ませていただきますと、大変よくできた案でございまして、政府が発表したものに非常に近いものであるということは事実でございます。ただ……(発言する者あり)いや、私どもがあの案を検討し始めましたのは八月十日前後からでございまして、そのときにはもう既に案の骨格ができておりましたから、私は、どちらが先に気がついてどちらが先に紙にしたかということは争うつもりはありませんけれども、自由党の案はよくできている、私は後で読んでそのように思いました。  ただ、若干違うのは、私どもの用意したものは、保証協会に対して二千億のお金を出して保証協会を強化する、自由党の方はその数字が三千億になっていた。また、結果として保険公庫に最後にお金を出さなければならないのは多分八千億程度になると思いますが、自由党では一兆円と書いてございましたから、これは考える方向としては同一、数字が若干違っている。しかし、自由党も大変よくお考えいただいたと心から敬意を表する次第でございます。
  193. 西川太一郎

    西川(太)委員 うちの幹事長は前の晩に原稿を書いて突然質問するわけじゃないんですね。これはもうずっと用意をして、実はきょうは総裁がお見えになっておりますけれども、総裁の下の方に直接我々は党に来ていただいて議論をして、首をかしげたりしているのですよ、向こうは。そういう感覚だった時代から我々はやってきたわけで、これはぜひここで、私は通産大臣とは個人的にいろいろありますけれども、通産大臣の考えを認めてしまうと私は生きて党に帰れませんから、我が党が先にやったということだけは、これははっきり申し上げておきたい。(発言する者あり)
  194. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 御静粛に願います。
  195. 西川太一郎

    西川(太)委員 だって、具体的にあなたたちは資本注入が貸し渋り対策になると言ってきたじゃないですか。では、もう一回そこをやるか。  そこで伺いますけれども、総裁、これは今のままで、つまり法律を変えて組織のいろいろなことを動かして対応できるのですか。わかりますか、私の聞いていること。つまり、保険公庫が一〇〇%、時限を限っても保証するわけでしょう、政府案は。違うのですか。では、そこが一番大きなところ、どうぞ。
  196. 神谷和男

    ○神谷説明員 お答え申し上げます。  私ども、信用補完制度の政策実施機関でございますので、先般閣議決定されました貸し渋り大綱に基づきまして万全の施策を実行してまいる所存でございますが、先生御指摘のように、その大綱に基づきましても、一〇〇%の信用保険でてん補するような政策はこの大綱の中には含まれておりませんで、むしろ保険の限度枠を拡大するとか、あるいは保証協会、これは私どもの所管ではございません、公庫の所管ではございませんが、保証協会の条件を緩和した保証制度を創設するというふうに理解をいたしております。
  197. 西川太一郎

    西川(太)委員 これはどなたがお答えいただいても、通産大臣でも結構ですけれども、そうすると、まだ大綱の段階法律の条文になっていませんけれども、基本的な考え方としては、例えば時限を切って一〇〇%保険公庫が面倒を見よう、その所要額は十兆円用意しよう、こういう自由党案と、金額が二倍である二十兆を用意して貸し渋り対策をやろう、こうおっしゃる政府案は、まずそこが違うということですね。
  198. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 あの大網案をざっと御説明いたしますと、一つは、各県にございます信用保証協会の基盤を強化する、そのことによって信用保証協会の活動が現在の状況に照らして機動的になるようなという期待を込めてそれをふやしたわけでございます。それから、これは各県の保証協会と御相談をしなければならないのですが、保証料率についても若干の配慮をしなければならないというふうに考えております。  ただ、保証協会だけを強化しても、これはなかなか物事は動きません。したがいまして、仮に代位弁済が生じた場合どっちがどう持つかという話は昔からきちんと法律に書いてございまして、現在では、保証料については保証協会が六、保険公庫が四取るという仕組みになっておりますが、むしろ代位弁済のときには保証協会が二、そして保険公庫が八負担するということになっております。  したがいまして、貸出枠がふえていく、あるいは保証をしている額がふえていくということになりますと、ある一定の比率で貸し倒れも発生するわけでございまして、その分保険公庫の方の財務基盤も強化をしなければならないわけでございまして、その額はおよそ八千億程度の財務基盤の強化をしなければならないというのが我々の考え方でございまして、保険公庫が一〇〇%代位弁済をするという考え方はややとりづらいということだけは御理解をいただきたいと思っております。    〔村田(吉)委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 西川太一郎

    西川(太)委員 そこが非常に大事でございまして、実は今およそ三十兆ぐらい保険公庫絡みの保証残高があるんですね、保証協会。事故は二千八百億なんです。これは〇・八%なんですよ。非常に小さいのです。だから、政府案も我が三党案も、これはモラルハザードの問題は共通するのですよ。国の方でそんなに持ってくれるなら返さなくていいやなんという考えが起こっては困るわけですけれども。  しかし、今やるべきことは、我々が何でこういうことをあえて主張しているかというと、景気対策としてこれをここでやって、活性化して、日本経済を強くして、そうすれば株価も上がってくる、株価が上がれば銀行の含み益もふえる、そして不良債権処理もたやすくなる、こういういわゆる循環論でやるべきだということの根拠になっているわけです。  そして、もう一つ言いたいことは、第二分類に属する担保を持っている企業が、今、貸し渋りの中で直撃を受けている。ところが、これは景気がよくなってくれば第二分類が第一分類に行く可能性はあるんです。今の銀行は、どことは言いませんけれども、あるところは総会屋グループの借金を第一分類に入れているなんてふざけた銀行もあるんですから、そういうことを全部是正すれば、私としてはこれは非常に有効だと思うんです。  そこで、大臣は、一〇〇%は難しい、こうおっしゃるわけでございますが、しからば、二割を事故のときに代位弁済する保証協会の体力はどうやっておつけになるのかが一点。  もう一点は、開発銀行を使って中堅以上はやる、こういうふうに大綱には書いてあります。しかし、この間いろいろ、民間の貸し渋り対策の足らざるところを政府系金融機関でやる、こう言うけれども、実際問題、私の知り合いが三億円のお金を申し込んだら、四カ月半待たされて、出てきた結論は半分だった。もうビジネスチャンスを逸しちゃって、そんなもの借りなくていいという話になつちゃっている例もあるんですね。  だから、そういうことをいろいろ考えますと、私は、この際、保証協会の体力をつける、それはもうそのバックにいる保険公庫の強力な、時限でいいですから、二年と、それで設備投資資金は除外して、運転資金に限って政府の金で保証するといいますか、保証の保証を政府がする、こういうことをやらなきゃ景気はよくならない、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  200. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生、モラルハザードという言葉を使われましたが、仮に保険公庫が一〇〇%持つということになりますと、保証協会はほとんど保証に関する審査を省いてしまうという極端なケースすら想定されるわけでございまして、やはりそこには、代位弁済が生じたときに保証協会も何らかの負担を負うという仕組みを入れておくということは、私は大事なことだと思っております。  それからもう一つは、リスク率の話で〇・八という数字がございましたが、今現在三十兆の保証残高があるとおっしゃいました。実際は、保証残高は約三十兆円と私は記憶をしております。  そこで、これから、まさに先生御指摘になられたように、各県にございます保証協会の基盤を強化するということは、それは当然保証をこれからふやしていくという方向に力が働くことは間違いないわけでございますが、実際には保証協会の窓口の人たちもやや萎縮をしておりますので、今後、各県とも御相談しながら、保証協会の窓口で親切、親身になってやはり御相談に乗るということも必要ですし、今後のその保証行為をするときの手引書というものも各県とも御相談しながらつくって、せっかく枠は用意したけれども今回は保証渋りがあったというようなことではこれは困るので、そういう運用の面でも万全を期すということが私は大事なことだと思っております。  それから、開発銀行は開発銀行の歴史がございまして、主として設備資金に対して融資をしてきたという歴史がございます。しかしながら、開発銀行のいろいろな規則の中にも、設備にかかわる運転資金というものは融資可能なものもあるはずでございまして、現在開発銀行の方で研究しておりますが、抜本的にその運転資金を開銀が融資できるようにするというためには相当大幅な日本開発銀行法の改正も必要なのではないかと私は思っておりまして、にわかにただいま先生の御要望のような方向に、開銀という金融機関のあり方を含め、また法律改正の可能性を含めて、なかなかすぐには難しい。  ただ、開銀は開銀で、自分が持ち合わせているいろいろな手段を全部駆使していろいろな運転資金の用意にも自分たちの力を発揮したいと言っておられますので、その範囲で御期待をしていただきたいと思っております。
  201. 西川太一郎

    西川(太)委員 今通産大臣の御答弁を伺っていると、やはり私ども三党案よりはスピードが若干劣る。今必死で、この法案が、貸し渋り対策が成立をすれば随分楽になるなと期待している人からすれば、今の御答弁は、中堅企業以上にとっては、開銀のそういう問題は速やかにできない、こういうことを今おっしゃったわけでございまして、これは私どもとしては早くやってあげなきゃいけないんじゃないかということを意見として申し上げます。  それから、これでもう最後になると存じますけれども、通産大臣に伺いたいのは、全国に五十幾つある保証協会はほとんどが、一、二の例外を除いて、神奈川県だけが民間人ですけれども、あとはみんな拠出金を出している都道府県の副知事クラスの天下り先になっているんです。  実は、このたび長銀の高額退職金問題が、前の偉い方のあれが出ていますけれども、かつて信用保証協会の、どことは申しませんけれども、あるところの信用保証協会の理事長を長く務めた方が、今からもう十年ぐらい前、もっと前ですか、当時の金で十何億という退職金を取るという話になって、これはとんでもないと言って、私は当時東京都議会議員でございましたから、語るに落ちるで、どこだかわかっちゃうけれども、一生懸命それを値引きしろと言って、最後一けた台に落とした記憶があります。  つまり、何を言いたいかというと、保証協会の体質強化の中には、財政的基盤を強化するだけではなくて、こういう時代の中小企業にどういう金融をしてあげたらいいかということがわかるぐらいの民間のすばらしい知恵をどんどん入れてくれるような、そういう改革があってしかるべきと思いますが、いかがでございましょうか。
  202. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先ほど先生に申し上げましたように、やはり、保証協会も窓口で親身、親切に物事に対応していく必要があるということは当然のことでございますし、役人的な発想ばかりではだめだという先生の御指摘は当然のことでございますが、保証協会の人事等々につきましては、これは地方分権の世界でございまして、地方議会がきちんと監視、監督をしているもの、そのように私は承知をしております。
  203. 西川太一郎

    西川(太)委員 そういう方向で一生懸命我々の案を十分に検討していただいて、ぜひひとつ丸のみをしていただくぐらいの覚悟でやっていただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  あと時間が九分ぐらいしかございません。せっかくの機会でございますから、堺屋長官に、これは通告してないんですが、もう大変な論客でいらっしゃるわけでございます。そこで、堺屋長官に伺うんですが、今の景気回復は、貸し渋り問題も包含して、経済企画庁としては、きょうも実は商工委員会で両大臣の御就任のごあいさつを伺いましたけれども堺屋長官のお言葉の中に、かなり従来の長官とは違う、踏み込んだ具体的なお話がありました。これはもう一回、恐縮でございますけれども、景気をよくするために長官としてはどういう企画を立案して、実行部隊にそれを参謀として、スタッフとして供給されるのか。  ついでに言うと、経営学の分野では、組織論では、スタッフにもファンクショナルライトといいますか、要するに権限があるんですから、景気が桜の花が咲くころにはよくなるとか、単にそんなことを言っているばかりじゃなくて、こうすればこうなるということを、今ここで、国民が聞いておりますから、ひとつ御開示を願いたい。
  204. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 突然の御質問でございますが、お答えさせていただきます。  現在の日本経済状況というのは、二重、三重に非常に悪い状態になっていると思います。一つは、日本が近代工業社会、規格大量生産を目指してきた、そして非常に成功して、縦割りの行政ができてうまくいったのでございますが、世界全体が多様な知恵の時代になって構造改革をしなければいけない、これに日本が十年ぐらいおくれたというのが第一の一番大きな波でございます。二番目には、バブルの対応。これは二十年周期ぐらいで来る中期波でございますが、これの下り坂になったときに、九三年あたりからずっと対応がおくれてきた、これが第二の問題です。そして、第三の問題は、やはり循環的な波動に対して、私は前に失政と申し上げたんですが、アンタイムリーだったということが重なりまして、今どん底の状態に来ています。  そういったことが重なって景気が国内的に悪いところに、ここへ来まして、アジア経済が去年から悪くなって、ロシア経済がついこの間から非常に悪くなって、それがヨーロッパへ飛び火するという非常にアンラッキーなことが重なっている。これがムードを非常に悪くしている。そういうこともありまして、消費者もマインドが冷めておりますし、企業もなかなか投資ができない。そして、そういう状態ですから銀行も慎重な姿勢になっておる。そういうことが重なっておると思うんです。  これに対しまして、政府といたしましては、御存じのように、十六兆円の総合経済対策を既に打ち出しておりますし、さらに、小渕内閣になりましてから、六兆円をはるかに上回る減税対策、そして十兆円の追加予算を十五カ月予算として組んでいくという現実的な対策を次々と打っておりますが、同時に、先ほど私が申しましたような構造的な問題がございますので、これを解決して日本に明るい夢を持たさなければいけない。これがどうもやはり、ここ数年、政府だけではございませんで、ジャーナリズムも含めて、日本の将来は少子・高齢化で暗いとか、あるいは財政も年金もなかなか難しいとか、さらには産業競争力もアジアに追いつかれるとか、非常に暗い話を続けてまいりました。いわば、短期楽観、長期悲観という状態をつくったんですね。だから、今度はやはり長期的な楽観論をつくらなければいけない。  これを小渕内閣では、この間発足いたしました経済戦略会議でいろいろと練りまして、日本に明るい夢をつくりたい、これは大変短い期間でございますが、少なくとも今年度中、できればことしじゅうにも対策を打ち出していきたいと考えております。  そういったことで、国民皆さん方に、日本の将来は必ず経済再生して成長するんだ、立派な新しい国に再生するんだという精神を持っていただければよくなるんじゃないかと考えている次第であります。
  205. 西川太一郎

    西川(太)委員 もうそろそろ時間でございますから、私の方のまとめを申し上げて、最後に大蔵大臣の御見解を伺って終わりたいと存じます。  今、この約一時間強ですか、やってまいりました質問は、政府が鳴り物入りで、銀行救済のためにいわゆる安定化基金または危機管理勘定、そういうことで用意してきた十兆のオーダーに及ぶ巨額の金が、結局は一兆八千億使われたわけでありますけれども、貸し渋り対策というのは効果がなかった。これは大蔵大臣も、もう三月時点でそういうふうにポイントが切りかえられて、元来銀行の体力をつけるために貸すべきものが、いつの間にか、それによって貸し渋りがなくなるぞ、景気がよくなるぞということだけが強調されて国民の信頼をいたずらにあおった、結果的にはそれが十分でなかったということをお認めいただいたわけでございます。  そして、その上で、自由党案を与謝野大臣は非常に高く御評価をいただいておりますし、それから、ただいまの宮沢大臣も、我が党の鈴木さんの、また野田さんの意見に一〇〇%肯定をしていただいたに近い御評価をいただいたというふうに私は思うわけです。これが三党間の合意事項としてこれから与野党協議になっていくわけでございますけれども、今堺屋長官がおっしゃったような状況は、今までとかく強気ですぐ持ち直すみたいなそういう言い方をされる中で、列島総不況だということを勇気を持って御発言いただいたし、また、今のような循環的な問題について、ひとつ日本人が元気になる、その元気な保証ができると通産大臣がいつかおっしゃったので、そういうことをぜひ担保できるように、これを財政当局としても深い御理解をいただかなければ、通産省が幾ら予算要求しても大蔵省が認めてくれなければ困るわけでございますから、このことをひとつ伺いたいというふうに思うわけでございます。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の御趣旨には同感でございます。既に来年度予算のシーリング等々につきましても発表いたしておりますが、財政としましては、その目的のために全力を尽くしたいと思っております。
  207. 西川太一郎

    西川(太)委員 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  208. 相沢英之

    相沢委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  209. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。私は、きょうは長銀に対する公的資金投入の法的根拠について、かなり立ち入ってお聞きをしたいと思います。  まず、宮澤大蔵大臣は、八月二十一日の談話で、長銀資本注入については、申請があれば適切に対処する所存である、こう述べて、当委員会におきましても、繰り返し、公的資金の投入を行う、こう答弁しております。  そこで、まず聞きたいのですが、大蔵大臣は、現在の長銀の財務や経営の実態、この現状で、現行の金融安定化法によって長銀に対する公的資金 の投入が可能であると考えておられるのか、金融安定化法の改正は必要ないんだというお考えなのか、まず御認識をお伺いしたいと思います。
  210. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申しましたことは、最初に御引用いただきましたように、申請があれば考慮するということでございます。  それから、今の長銀の内容等々につきましては、私は、ただいまその方を自分の守備範囲としておりませんので、私の口からは正確に申すことはできませんが、申請がありますと、金融危機管理委員会においてその申請を御審議になられるものと思います。
  211. 木島日出夫

    ○木島委員 今、この法律大蔵大臣の所管ではないとおっしゃるけれども、八月二十一日の大臣談話で、申請があれば適切に対処する所存だ、そうまでおっしゃって、ここでの質疑を通じて、今長銀公的資金の投入がなければ破綻する、それは何としても避けなければならぬとまでおっしゃって、大蔵大臣危機管理審査委員会の七人の委員のうちの一人なんですね。ですから、この法律の所管が大蔵省ではないなんということで、現行金融安定化法をそのままで、果たして長銀に公金投入ができるのかどうかという、しっかりした自分の立場を踏まえてなければ、そんな発言をすることは、私は無責任大蔵大臣として無責任だと思うんですね。  ですから、金融監督庁の所管だとか預金保険機構の所管だとか、そんな逃げないで、ひとつこれからの質問に答えていただきたいと思います。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 正確に申し上げておるつもりですが、私が申しましたのは、この法律は私の所管ではないと申したのではありません。銀行の現状がどうかということでございますから、それは私の所管でございませんと、こう申しております。
  213. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、この法律を変えなくても、現行法で仕組みとして公金投入は可能だと考えているということですね。金融安定化法、現行金融安定化法です。
  214. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現行法は、長銀が先般金融監督庁に提示いたしましたようなリストラ計画を遂行していきまして、その線上におきまして公的資金導入を申請するつもりである、こういうことが書かれておるわけでございますが、申請がございますれば、この法律のもとに危機管理審査委員会が審査をされるであろう、こう考えております。
  215. 木島日出夫

    ○木島委員 事実上、現行法を改正しなくても、そういうスキームにのっとって処理が進むという答弁でありますから、要件を満たせば認められるということになると思います。  ついでにもう一つお聞きしておきますが、では、現行法を変えずに、もちろん現行法の要件を満たした場合という当然の前提でありますけれども合併の相手方たる住友信託銀行の方への公的資金投入は、住友信託銀行から申請があった場合は可能なのか、どういう認識であるのか、お聞かせ順いたい。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは全く仮定の御質問でございますし、そのような申請をどうされるかは危機管理委員会において決定されるものと存じます。
  217. 木島日出夫

    ○木島委員 まともにお答えになりませんが、それでは、これは大蔵大臣金融監督庁長官質問いたしますが、お二人とも長銀から公的資金投入の申請があれば適切に対処するという立場ではありますが、もっと詰めてお聞きしたいのです。いろいろな公的資金投入の道筋があるのですよ、それでお聞きしたいのです。  現行の金融安定化法のどの条項によって長銀公的資金の申請をしようと考えているのか、また、どの条項を使ってくるであろうと大蔵大臣なり金融監督庁長官は推察をしているのか、具体的な論議をこれから私はしたいので、まずお聞きをしたい。
  218. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えをいたします。  この公的資金の注入は、今御指摘がありました法律に基づいて申請されるものと思料いたしますけれども、いわゆる金融危機管理勘定、十三兆円の世界を想定しているものと思われますが、条文のどれに当たるか、あるいは審査基準のどれを用いて申請してこられるかということは、申請されて初めてわかることでございますので、私どもの方からこれは何とも申し上げられないことをお許しいただきたいと思います。
  219. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなふらちな答弁をしないでくださいよ。  では、具体的に聞きますよ。  金融安定化法で公的資金投入の枠組みを決めているのは三条です。三条の三項で、公的資金投入ができる場合は二つのみだ、一号と二号のみであると書いてあるのです。一号の方は、いわゆる救済合併をしたその銀行に対する公的資金の投入です。二号の方は、一般銀行に対する公的資金の投入です。これは、合併を前提としない場合のその銀行に対するいわゆる自己資本増強のための公的資金投入です。ですから、私が聞いているのは、この一号を使うのか二号を使うのか、その質問であります。  ついでに言っておきます。その二号の中にイとロと二つあります。二つの場合しか公的資金投入ができないのです。体力増強のための一般銀行への公的資金投入は二つの場合しかない。イ、これは 当該金融機関等内外金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、我が国における金融機能に著しい障害が生ずることとなる事態 そういう場合か、もしくは ロ 当該金融機関等破綻し、それが他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることとなる等により、当該金融機関等及び当該他の金融機関等が業務を行っている地域又は分野において、企業の活動や雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済活動に著しい障害が生ずることとなる事態二つしかないのです。  これはどう違うかというと、条文、難しいのですが、簡単に言えば、イは巨大銀行の場合、そういう場合であります。ロは地域の銀行を想定していると思われます。  そこで、聞いているのですよ。今回の長銀住友信託銀行との合併によって、善処する、適切に対処すると皆さん方はおっしゃられている、そして今大問題になっているこの問題は、一号を使うのか二号を使うのか、二号の中でイかロなのか、このぐらいまじめに答えてください。
  220. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今御指摘のありました一号は、それは預金保険法でございますので、恐らくそれには当たらないだろうと思います。  二号のどれかという、あとはイとロとしかございませんが、それはイであるか、あるいはロであるか、あるいは両方であるか、恐らく両方に当たってもそれは構わないのだろうと思いますが、イであるかロであるか、それはやはり申請を待って初めてわかることでありますので、ちょっとお答えを、それ以上のことは失礼させていただきます。
  221. 木島日出夫

    ○木島委員 だんだんはっきりしてきました。二号を使うのだと。  今長官は、イかロか、どちらか申請されてみなければわからない、どちらも使ってくるかもしれない、こんな無責任な話はないですね。私、きのう大蔵省の官僚からレクを受けました。イかロか、どっちかはっきり決めなければいかぬのだと言っているのですよ。  では、聞きましょう。この三月の、二十一行ですか、一兆八千億円の公的資金を投入したのですが、それらの銀行が法三条三項二号のイを使ったのかロを使ったのか、ここでちゃんと答弁してください。
  222. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  個別の話じゃなくて、まさに三月の全体の話ということで。  先ほど先生が言われましたように、この金融安定化法の三条三項に当たることは間違いないわけでございまして、一号の場合は、これは破綻という状態が起きなければこの一号の方の適用はないわけで、したがって、二号の方でございます。二号の一般金融機関としての適用で審査されたということでございます。(木島委員「いや、だから、イかロかです」と呼ぶ)  それは基本的にはイの場合が多いと思いますが、そこはちょっと個別の話はわかりません。
  223. 木島日出夫

    ○木島委員 もっと具体的に聞きたいのです。たった一行だけじゃないのですか、ロが使われたのは。あと全部イじゃないのですか。  では、これは審査委員長
  224. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 三月時点につきましては、御指摘のとおりです。
  225. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間のむだになりますから、そんなところで私、論争したくないので、事実ですから答えてください。イなんですよ、これは。要するに、大手銀行なんかが使うのはイですよ。  そこで、次の質問に移りたいと思うんです。  金融安定化法三条三項二号イというのは、使う場合にはやはり二つの条件をクリアしなきゃいかぬと思うんです。法律上明らかです。よく聞いておいてください。  一つは、当該銀行が、経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関、非常に回りくどい法律でありますが、要するに、経営の状況が著しく悪化している金融機関には公的資金は投入できないということです。  もう一つのハードルはイですが、当該金融機関等内外金融市場において資金の調達等をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等によって、我が国金融機能に著しく障害が生ずることとなる事態、そういう事態を避けるためと。要するに、つぶれてはいない、破綻はしていないけれども、非常に経営が厳しくなって内外金融市場から資金が取れなくなった、それを防いでやろうというのがこのイなんですよ。この二つのハードルをクリアしたときに初めて法は公的資金の投入を認めているわけであります。  そこで、まずその最初のハードルですが、現在の長銀が、果たして経営の状況が著しく悪化している金融機関でない金融機関と認められるかどうかの問題についてお聞きします。これは大変重要な要件であります。  政府は、この金融安定化法案提出したさきの通常国会で、こう再三答弁をしてきました。これは、破綻した金融機関には公的資金は投入しないということなんだ、健全な金融機関にのみ投入することなんだ、投入した公的資金は利息や配当がついて戻ってくるんだと盛んに強調したのです。国民から預かっている公的資金を政府の責任で毀損することができないからであります。当然です。  そこで、この条文を率直に読めば、現在の長銀に対しては公的資金の投入はできないはずであります。大蔵大臣は、当委員会で盛んに、公的資金の投入を受けなければ長銀破綻するとまで言い切りました。また、昨日でしたか、長銀住友信託銀行合併することによりなくなるんですとまでおっしゃったわけです。長銀住友信託銀行との合併比率は到底一対一ではあり得ない。まあ九対一ではないかなどとも既にマスコミは指摘をしているわけであります。  要するに、今長銀公的資金を投入しても、投入した公的資金は戻ってこない。場合によっては九割ぐらい捨てることになる。そういう蓋然性が非常に高い、極めて高い、限りなく一〇〇%に近い、こう言わざるを得ないのではないんでしょうか。こんな状況長銀を、経営の状況が著しく悪化している金融機関でない金融機関と認めることは、私はどだい無理があると思うわけです。そこで再三聞いているんです。どうでしょうか、大蔵大臣
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからお話しの危機管理委員会の審査基準によりますと、「経営の状況が著しく悪化していないこと」、それはどういうことであるかと言えば、「以下のいずれにも該当しないこと。」と書いてありまして、  ①最近三年間連続して、経常利益又は当期利益について赤字決算ないしは無配当となっていること。②早期是正措置の発動区分としての第三区分(自己資本比率〇%未満)であること。 云々、この二つが基準によりますれば「経営の状況が著しく悪化していないこと」であります。
  227. 木島日出夫

    ○木島委員 大蔵大臣は審査基準を持ち出してまいりました。そのとおり書かれております。私、そこが根本問題だと思うんですよ。この法律の規定は先ほど私が述べたとおり。しかし審査基準の方は、基準の二の方でありますが、その中の基準一という部分でありますが、これが「申請金融機関等の経営の状況が著しく悪化していないこと」の具体的な解説といいますか、場合を指摘して今答弁された二つのことを入れているんですね。  要するに、これは緩めている、せっかく法律公的資金の投入ができる場合を、一定程度枠をつくったにもかかわらず、こういう二つの基準をつくることによって緩めてしまっているということを私はこれから指摘をしていきたいと思うんです。  よくあることなんですが、法律で一定の枠をつくったけれども、よく自民党政府、これまでおやりになったように、政令とか省令とか通達でそれを勝手に変えてしまって緩めてしまうということが行われたんじゃないか。税務行政ではそれは典型なんですね、通達税制、税務行政。それが、この大変な問題である公的資金の投入の問題でもやられたんじゃないか。非常にこの基準は甘過ぎる、緩過ぎる。法律の縛りをすり抜けるような基準になっていやしないかという点で、具体的に幾つか指摘をしていきたいと思います。  最初の問題でありますが、最初の要件ですね。「最近三年間連続して、経常利益又は当期利益について赤字決算ないしは無記当となっていること。」、これじゃだめだというんでしょう。これは当たり前ですよ。金融機関で三年間も赤字決算ないしは無配当、こんな金融機関はもう当然事実上の破綻状態。その場合だけ公的資金を投入できないんだ、それでなければ、以外は全部公的資金投入できるんだ、これじゃほとんど、私は、日本銀行はこのハードルをクリアすることができるんじゃないかと言わざるを得ない。  そこで、金融監督庁ですか、お聞きをいたします。  大体これまで日本金融機関で、三年以上にわたって経常利益、当期利益が欠損、赤字であり、無配当を続けること、これは極めて異常な事態だと思うんですが、めったにないんじゃないんでしょうか。これまで我が国でこれに該当する金融機関は何回、何件あったでしょうか。
  228. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  直近のこの三期の決算を調べたところ、何行か今御指摘になったような、例えば三期連続で赤字であるとか、あるいは無配であるとか、あるいは無配または赤字といったところがございますが、ここで個別銀行のお名前……(木島委員「件数でいい」と呼ぶ)はい。件数は、三期連続で赤字のところは全金融機関の中で二行、三期連続で無配のところもやはり二行、それから三期連続で無配または赤字のところは、今申し上げましたその四行とはまた別の銀行でございますが、一行でございます。
  229. 木島日出夫

    ○木島委員 お聞きのとおりであります。たった五行しかない。それ以外は全部いいということは、これはもう事実上、公的資金投入はできないという足切りにならぬ、足切りの基準としてはないに等しいということではないんでしょうか。どうしてこんなゆるゆるの基準を持ち出したのか、審査委員長、答弁願いたい。
  230. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 若干つけ足して審査基準のことを申し上げたいと思いますのは、同基準のほかに、資本注入についてはその他五つの基準すべてを満たすということになっておりますので、御指摘のようなすごく甘いということはないというふうに思います。
  231. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁してないんですよ。ほかのことは聞いていないんですよ。その基準、そのハードルについて高いか低いかを今論争しているんですよ。たった五回しか経験のない日本金融機関史上、そんなものをハードルにしたってハードルにならぬじゃないですか。  私はここで、どの銀行がこれに該当したか知っています。しかし、差し支えるから伏せますよ。本当に例外中の例外の場合だけでしょう。こんなものを基準にするという感覚がわからない。それで委員長に聞いているんです。何でこんな基準を引っ張り出してきたんですか。いや、委員長
  232. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほどちょっと舌足らずだったことをお許しいただきたいと思いますが、五行でございますけれども、それは第二地銀が除かれておりますので、そこをひとつ御配慮いただきたいと思います。
  233. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁になっていないから答弁してください。何でこんな基準を引っ張り出してきたのか。
  234. 日野正晴

    ○日野政府委員 先ほど申し上げました五行、これを仮に分子といたしますと、分母は主要十九行それから地方銀行でございます。
  235. 木島日出夫

    ○木島委員 それはいいですよ。  だから、もうほとんど足切りの基準にならぬということを言っているので、なぜこんな基準を後生大事に、基準一の著しく悪化していない金融機関の二つの要件のうちの第一に持ち出してきたのか、それを聞いているんですよ。何を参考にしてこんなことを持ち出してきたのか。原典といいますか、参考は何ですか。
  236. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 基準を定めた根拠という御質問でございますけれども、三年連続の赤字決算ないし無配当をその要件と定めておりますのは、健全な金融機関であっても不良債権の償却等の結果一時的に赤字決算となるようなこともあり得るということと、それから東京証券取引所の株券上場廃止基準というものを参考にいたしまして、総合的に三年連続という案件を入れたということでございます。
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 そうなんですね。こういう基準を持ち出してきた一つの大きな背景には、東証の上場基準というのが参考になっているんです。私は、ですからとんでもないんじゃないかと。  株式上場して国民から資本調達を受ける資格と、金融機関の体力増強、自己資本強化のために国民の税金、公的資金を投入するその基準を同じような発想から持ち出されてきたのではたまらない、もってのほかだと私は思うのです。そんな緩い基準国民の財産が食い物にされたのではたまったものじゃないと思うのですが、いかがでしょうか、大蔵大臣。東証の上場基準公的資金を投入する足切りのための基準が同じ発想でつくられている。どう思いますか、大蔵大臣。答えてください。  大蔵大臣の印象、御意見を聞いているんです。東証の上場基準とこの公的資金投入の足切りの基準が同じような背景のもとにつくられたのではちょっとおかしいじゃないですか。大蔵大臣、どう思いますか。これじゃ緩過ぎませんか。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はそれを批判する立場にございませんし、加えて、先ほど佐々波委員長が言われましたように、これだけで物が決まるのではない、審査委員会はいろいろなことを総合してお決めになるとおっしゃいました。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 話題をそらさないでほしいのです。  だから私は言ったのです。二つのハードルがある。そのうちの一つは、当該金融機関が著しく悪化しているかどうかなんだ。これが一番大きな問題なんだ。そうしたらそれを、審査基準で二つの要件をつくった。その二つのうちの一つがこれなんだ。そのぐらい重大な問題だから私は聞いているのです。  では、次の問題に移りましょう。  二番目のハードルになりますか、早期是正措置の発動区分としての第三区分、自己資本比率〇%未満であること、これはだめだというのです。当たり前ですね。自己資本比率〇%未満、欠損ですよ。こんなの当たり前。足切りの基準にならぬでしょう。  ないしは第二区分、自己資本比率が、国際統一基準の場合四ないし〇、国内基準の場合二ないし〇、そういうものを第二区分としているようです。そういう区分にある金融機関であって、優先株式等の引き受け等を前提としない自己資本比率が一年経過後においても同区分にとどまる見通しであること。これも一回聞いただけじゃのみ込めないと思うのです。  要するに、国際基準が適用になる大手銀行ですか、こういう大手銀行については、四%から〇%の状況である、しかもそれが一年間続くんじゃないかという場合はだめだというのですよ。国内銀行の場合は、自己資本比率が二%から〇までの間にあって、一年たっても変わらないんじゃないか、そういうものは公的資金投入できない、こういう意味なんですね。  それで、これ自体がもう全集足切りの基準になるハードルにはなっていないということだと思うので、私、改めて銀行法施行規則の一部を改正する省令、自己資本の充実の状況に係る区分及び当該区分に応じ定める命令を持ってきました。非対象区分と第一区分、第二区分、第三区分と分けているようであります。  非対象区分は、国際統一基準はもちろん八%、国内基準はもちろん四%、御案内のとおり。  第一区分は、国際統一基準銀行は四ないし八%未満、国内基準の適用される銀行は二%以上四%未満。この第一区分の銀行に対しては、自己資本充実のための早期是正措置として何をやるかというと、経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画の提出及びその実行。  要するに、その場合は行政命令を発動しないわけです。基準は切ったけれども、まだまあ頑張れる。ですから改善計画を提出させ、それの実行を見守るという早期是正措置なんです。この四月から発動されている、一部延期されましたが。  問題は、第二区分ですね。今基準に触れられた第二区分というのはどういう場合かというと、国際統一基準は〇から四まで、国内基準銀行は〇から二までなんですが、これは強烈なんです。早期是正措置というのは職権発動が入るのです。次の自己資本充実に資する措置に係る命令を発するというのです。すごいですよ。  十項目並んでいます。例えば二番目「配当又は役員賞与の禁止又はその額の抑制」、それから五番目「一部の営業所における業務の縮小」、六番目「本店を除く一部の営業所の廃止」、七番目「子会社又は海外現地法人の業務の縮小」、八番目「子会社又は海外現地法人の株式又は持分の処分」。すさまじい業務命令ですよ。半分、銀行の息の根をとめるようなそういう、これは大蔵大臣なんでしょうか、法律が変わったから金融監督庁長官なのか定かではありませんが、そういう職権発動ができるのが、すべきなのが第二区分なんです。  第三区分というのは、〇%未満ですね。これはどういうことを書かれているかというと、「業務の全部又は一部の停止」。要するに、もうその銀行はおしまい、引導を渡す、それが第三区分なんですよ。  ですから、そんな第三区分でないことを公的資金投入の足切り基準に持ち出すなんというのはナンセンス、本当にナンセンス。第二区分だって、こんな強権発動をされるような銀行公的資金を受け取って、果たして無事安泰でしょうか。  どうですか。何でこんな緩い二番目のハードルをつくったのでしょうか。委員長、答えてください。
  240. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 ただいまの御質問お答えしたいと思います。  ただいま御指摘のありました法第三条第三項二号というのは、経営の状態が著しく悪化していないことを要件としてあり、現在の経済金融事情を踏まえて、仮に第二区分である場合には、自助努力で一年後に第一区分に上がる見通しであるとの厳格な条件でございます。そのもとでの資本注入を可能にしたものであり、もとより、先ほどの御指摘にありましたような他の条件を満たさなければ資本注入ができないということでございますので、先ほど申し上げましたように、他の基準と相まって適切な判断が可能というふうに考えております。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 本当に、そらさないでほしいんです。  他の基準も問題ですよ。しかし私は、二つのハードルのうち決定的に重要なハードルがここだと。この法律を読んでいるから、読み込んでいるから質問しているんです。そうしたら、基準がつくられた、二つのハードルがつくられた。しかし、その一つのハードルは赤字か無配か、こんなの全然ハードルにならぬ。もう一つのハードルがこの早期是正措置と連動させてのハードルだというんでしょう。これも、私言ったように全然ハードルになっていない。  ハードルになっていない根拠に、もう一つ私言います。  今回、長銀がみずから自主的に経営改善策を出してきたでしょう。すごいですよね。会長、頭取、副頭取辞任、役員報酬の削減、旧経営陣からの退職金、退職慰労金の返還の要請、人員の削減、海外業務からの全面撤退。どうでしょうか。今長銀がまさにこれに着手しています。お聞きするところ、もう海外業務はかなり減っていると聞いています。長銀がやっているこのことは、さっきの早期是正措置の区分に比較したら、どうでしょう、第二区分、海外現地法人の業務の縮小です。緩いですよね。だから今長銀は、早期是正措置の第二区分より厳しいことをやっている。私は、これは第二区分と第三区分の真ん中だと思うんです。第二区分は海外業務の縮小、第三区分は業務全部停止でしょう。  ですから、今長銀がおやりになっていることは、第二区分と第三区分の間ですよ。逆に言うと、これは逆に読めるんです。長銀の自己資本比率はそんなところにある、要するに限りなく〇に近い状況にあると読み取れるんです。今首を縦に振っておられましたが。  そうしますと、私は、もう時間が本当に迫っておりますが、著しく経営が悪化しているかどうかの問題ですね。大問題に今まで論議されてきましたが、この問題一つ照らしても、今の長銀公的資金を投入する条件は全くない。考えられすらしないと思わざるを得ないんです。だから宮沢大蔵大臣は、長銀はもうなくなるんだと盛んにおっしゃっているんだと思うんです。どうでしょう、大蔵大臣。  とてもこんなところに公的資金は投入できない、法律を前提にしても。日本共産党は、これは悪法だ、撤廃するしかないと考えています。ほかの野党の皆さんも、十三兆円はだめだと言っております。この法律に照らしたって、こんなゆるゆるの基準に照らしたって、長銀に金を入れるなんというのは、到底まともな法律感覚なら出てこないんです。大蔵大臣、どうでしょう。
  242. 日野正晴

    ○日野政府委員 確かに、今御指摘がありましたように、長銀は、リストラ計画の中で海外からの全面撤退をしたいということをうたっているわけでございますが、委員銀行法の施行規則とリンクしてお話しになりましたが、それは、銀行法施行規則の方で言うところの第二区分に、だからといって当たるというふうには決して言えないのではないか。あくまでもそれは長銀の自発的な意思といいますか、でもってそこを実行するというだけでありまして、たまたま字句が非常に類似しているということではあっても、決して、銀行法に基づいてそういうことを行う、だから私ども銀行法に基づいてそういうことを、早期是正措置を発動しようということではございませんので、そこはひとつリンクせずにお考えいただければありがたいと思います。
  243. 木島日出夫

    ○木島委員 リンクしなくたってリンクさせるように基準がつくられているから聞いているのですよ。  私は、最初に二つの条件と言いました、ハードルと言いました。もう一つのハードルの問題、当該金融機関内外金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなるかどうかについてもいろいろ聞こうと思いましたが、もう時間がなくなってしまいましたので終わりますが、私は今、金融安定化法、審査基準に照らしても、長銀に対する公的資金の投入は許されないということを明らかにしてきたつもりであります。  それにもかかわらず、政府や大蔵大臣らが公的資金の投入をやるんだということは、逆に金融安定化法の悪法ぶりを証明するものにほかならぬと思います。この法律と審査基準が存続、存在する限り、政府は、このいいかげんな法律基準によって、国会にも諮らずに、自由自在に公的資金の投入ができるということを意味するわけであります。  長銀に対する公的資金の投入反対の世論は七七%になっていると昨日も指摘がありました。そのためには、何としてもこの法律を廃止させることが中心的課題だと考えます。日本共産党はそのために全力を挙げるし、今全野党が長銀への公的資金投入に反対しておりますから、ひとつ全野党一致して、金融安定化法廃止のためにも共同して頑張ることが大事だということを強調いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  244. 相沢英之

    相沢委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  245. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 長銀の問題、私たちもこの問題について非常に大きな疑問、たくさんございますので、引き続いてこの問題について伺いたいと思います。  先日、小渕総理大臣は、住友信託銀行の高橋社長を官邸に呼びつけてと言った方がいいと思いますけれども、あっせん行為を行った。非常に強権的に吸収合併、あるいは住信側で受け入れを行うような要請を行ったわけですけれども、こういった総理大臣の行動のもとになる法的根拠はどこにあるのか、伺いたいと思います。
  246. 日野正晴

    ○日野政府委員 総理は、総理府の主任の大臣として、金融監督庁の事務を分担管理するとともに、信用秩序の維持と国民経済の健全な発展等を目的とする銀行法等による権限を金融監督庁に委任しております。つまり、銀行合併は、法律では内閣総理大臣が認可すべきことということになっておりますが、これは法律上、金融監督庁の長官に委任されております。それがまず法律上の権限ということになろうかと思います。
  247. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 特定合併の場合には金融監督庁の長官がありせん行為をすることになっているというふうに記憶しておりますが、ちょっと記憶が確かじゃないので、法律的にどの法律の何条だったか、御確認いただけませんか。
  248. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  特定合併では、今回の場合は違いまして、銀行法上それから信用金庫……(秋葉委員「違うのはわかっているんですよ。だから、法律の条文を聞いているんです」と呼ぶ)銀行法の方でございますか、それとも特定合併。(秋葉委員「特定合併」と呼ぶ)特定合併の方は、ちょっと今にわかにお答えはできませんが……。
  249. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 法律の条文に限ってお答えいたしますと、預金保険法第六条の三に特定合併のあっせんということで、内閣総理大臣はあっせんを行うことができるというぐあいに書いてございます。
  250. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そのあっせん行為が行われた。行われたかどうかはちょっと議論になりましたけれども、最近の例で、実はあっせんをしていないんだというような議論がありましたけれども、福徳銀行の際には、この特定合併という形で事実上あっせんが行われたというふうに理解しておりますけれども、それでよろしいんでしょうか。
  251. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 その前にちょっと、預金保険法の附則の六条の三でございます。それだけ訂正させていただきます。
  252. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  特定合併のあっせんとして、今委員が御指摘になりました福徳となにわのケースにつきましては、まだ金融監督庁が発足する以前でございましたので、当時、大蔵大臣の権限とされておりまして、大蔵大臣があっせんされたものと承知しております。
  253. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 現在の時点で福徳となにわが合併するということになれば、当然金融監督庁の長官があっせんをするという解釈でよろしゅうございますね。よろしいといううなずきがありましたので、それで先に進めますが、その規模の場合の特定には法律上の明文の規定がございます。  しかるに、今回話題になっております長銀と住信の場合には、こういりたあっせん行為を行うべきであるという法律上の明文化された条文がないというふうに理解をしておりますが、それはそれで非常に重要な問題である、緊急事態であるということで、先ほど引用された銀行法のより大きな目的のためにこういった行動をとるということは、それは可能なことだというふうに理解をしておりますが、こういった明文規定がないにもかかわらずあっせん行為を行うというのは、事の重大性一緊急性によってのみこれは根拠を得る問題だというふうに考えます。  その緊急性、そして重大性というのは、実は長銀の現在の状況破綻間近になっているということではないかというふうに考えますが、この点について、先ほども御指摘がありましたように、宮沢大蔵大臣破綻の可能性について何度か言及をされております一  その中で特に伺いたいのは、海外銀行への影響が非常に大きいということをおっしゃっているわけですが、海外のどういう銀行あるいはどういう金融機関にどんな影響があるのかということを具体的に御説明いただけないでしょうか。
  254. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀は、平成十年の三月末現在で、海外に支店及び現地法人等を四十六拠点持っておりまして営業を展開しておりまして、国際的な活動を行っているところでございます。リストラ発表時では、大分減少いたしまして、三十四拠点になっております。  また、長銀海外の関連の取引量を見ますと、本年七月末現在では、海外向け貸し出しについては千二百八十社に対して総額約二兆四千六百億円を与信しております。  それから、デリバティブ取引につきましては、想定元本ベースで千四百四十四社、約四十兆円のうち半分強に当たる約二十二兆円が海外金融機関等百三十社との間の取引に当たっております。  このように、長銀は、多数の海外金融機関等を相手方として取引を幅広く行っているところでございます。
  255. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 答えになっていないのですが、我々が認識をしているところでは、長銀はそういった海外の業務からもう既にほとんどの部分撤退を始めているということですね。だから、それが今後起こる破綻の結果ではなくて、先ほどのお話では、長銀の自発的な行動によってそういった海外業務から既に撤退をしているという話ではありませんか。そのことを破綻の結果だというふうに持ってくるのは、ちょっとこれは詭弁じゃないかと思うのですが、そこのところはどうなんですか。
  256. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今申し上げましたように、大変数も多うございますし、それから与信の金額も高額に上ります。そういったことで、急にきょうぱっとやめてしまうということはやはりなかなか難しいのではなかろうかと思います。
  257. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 やめてしまうのは難しいんじゃないだろうかと言っていることを実際長銀はやっているわけでしょう、自分の判断で。それはいいのですか、それじゃ。
  258. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  取引から考えますと、やはり数カ月ぐらいの余裕が必要ではないかというふうに考えます。
  259. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 宮沢大蔵大臣に伺いたいのですが、先日大蔵大臣が発言をなさった、海外銀行に大きな影響があるということは、具体的にはどういう内容を指していらしたのでしょうか。今金融監督庁の長官がおっしゃったようなことを念頭に置いていらしたのでしょうか。
  260. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のお話のとおり、仮に任意で撤収をするということになりますと、一定の計画に基づいて一定の時間にそれを行うことができます。しかし、ある日突然破綻という場合には一切のことが突然起こるわけでございますから、その際に起こる混乱というものと、任意に時間をかけてやるケースとは私は一緒にならないと思います。  実際、破綻ということがある日突然起こりましたら、これはもう何らの対策もできない、一種のパニッキーな状況になることはしばしばございますから、そういうことがやはり基本的に、千以上の取引がございますと、また四十幾つの店があれば、ある日突然に窓を閉めるといったようなことは、これはやはり大変な影響を及ぼすと思います。
  261. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 だからこそ、例えば早期是正措置といったようなことで、銀行の経営状態を見ながらさまざまな段階における改善命令その他を出すということになっているというふうにシステムを理解しておりますが、今のお話ですと、現時点でもそういった改善命令を出していない。破綻、いっときにぱたっと営業がとまってしまうと大きな影響が出る。にもかかわらず、そのことがわかっていながら、それでは徐々に海外業務から撤退しなさいよというような命令は金融監督庁大蔵大臣としても長銀には出していないし、出してこなかったということになりますが、それはある意味で市場の健全性を守る金融監督庁の主たる任務、これの十分な機能を果たしていないという結果になるんじゃないですか。
  262. 日野正晴

    ○日野政府委員 早期是正措置は、ことしの四月から導入されたものでございますが、まだ金融監督庁としては発動した実績がございません。  しかし、私どもは、その発動の前提としては、やはり銀行の内容をよく調べるということがまず前提になろうかと思うということで、大手十九行に対する検査を一斉に今開始させていただいたところでございまして、この結果によりましては早期是正措置の発動もあり得べしということだろうかと思います。
  263. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 この問題とちょっと離れまして、今の問題についてはまた機会を改めて申し上げたいと思いますが、時間がほとんどありませんので、もう一点伺いたいと思います。それは、たびたびこの委員会でほとんどすべての委員が要求をしている情報の開示という点です。  昨日もこの点について質問をいたしました。長銀の個別の融資先についての詳細な情報をきちんと開示すべきであるということを申し上げておりますが、例えばこれを非常に限った形で、第一分類というところではほとんど支障がないでしょうから、例えば第一分類というのは、これは健全な、しかも善意の借り手できちんと利払いも行われているということですから世間的な影響はほとんどないわけです。それから借り手の側から考えれば、これは有価証券報告書等、さまざまな公的な農閑にどのくらいの融資があるかということは公表されていることですから全く問題はないわけですから、その分類に限っても公表することはできるはずだと思いますけれども、そんなこともお考えになりませんか。
  264. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  たびたび御答弁申し上げているところでございますが、現在の銀行法の体系からいきますと、来年三月期から施行されます連結ベースでのいわゆるリスク管理債権の開示というのが法律銀行に対して罰則つきで求められていることでございまして、それ以上のことを私ども金融機関に対して、つまり法律にないことを求めるということは、私どもとしてはちょっと強制することもできません。  ただ、かねてから申し上げておりますように、それは銀行によりましては、恐らく自信のあるところですと、地方銀行の幾つかはもう既に開示をしておられるところもあるようですけれども、自発的に開示をされるだろう。それに対して、私どもがそういうことをやめなさいと言ったりするようなことは毛頭考えておりません。
  265. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 情報の開示がなくて、この長銀に対する公的資金の投入についての国民的な世論ができるとは私は思っておりません。そのことについては、野党側各党、何度も指摘しているところですけれども、そういった点が非常に私は重要ではないかと思います。  しかも、第一分類といっても、その事情によっては、状況によっては簡単に第三、第四分類に入ってしまうような状況にあるというところが実は非常に問題なんで、第一分類も含めて情報の公開が一切できないということは、情報公開をすることによって、実は日本金融界の、非常に複雑だけれども、もろく、しかも最悪の状況にあることがわかってしまう、それに対する十分な準備が行われていないということを薄々本能的に皆さん感じていらっしゃるからではないかと思います。  そのことについて関連して伺いたいと思いますけれども、今回の金融再生トータルプラン、それからそれ以前も含めてですけれども、重要なコーナーストーンの一つが、債権の、これは担保にとった土地、この資産の流動化を図るということで証券化を行うということがSPC法の中にこれは盛り込まれているわけですけれども、このSPC法について、証券化しようという方向性、これはまあそれなりに健全ではあるわけですけれども、本当にこういった証券化した場合に市場が形成できるのかどうか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  266. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題は私も実は重大な関心を持っておりまして、おっしゃいますように法的な整備をいたしつつあるわけで、SPCはもう既に成立させていただきましたわけでございますが、我が国にそういう慣習がございませんでしたので、にわかに市場が育つだろうかどうだろうか。場合によりましては、あるいは外国系の人がそれを使うということあたりから始まるのかもしれませんが、何としてもこの証券化は将来に向かって伸ばしていかなければならないと思いますので、市場が進みますように政府としてもあらゆる側面的な努力をいたさなければならないと思っております。
  267. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 証券化できるように努力をされるということですけれども、実は、この証券化ができて市場ができるととんでもないことが起こってしまう。第一分類が第三、第四分類に簡単に落ちてしまうというような構造に実はなっているという指摘がございます。多くの識者が指摘をしていますけれども、中でも、大前研一氏の指摘が非常にわかりやすいと思うので、簡単に御紹介しながら御意見を伺いたいと思うんです。  例えば、現在の日本の市場では、地価二億円なら二億円のものに二十六億の権利が設定されている。簡単に言ってしまうと、それが証券化された場合には、事実二十六億が現在は二億円の価値になっているけれども、二十六億借りている借り手がきちんと利子を払っている、第一分類になっているという状況があっても、証券市場が実際に形成されると、そこで万一こういったものが売り出されるとそれは二億の価値になってしまう。時価評価によって結局その抵当に入っている担保は、二十六億というブックバリューではなくて時価の二億で再評価をしなくてはいけなくなる、途端に分類は三あるいは四に落ちるということになると、これはもうほとんど金融業界の大変動、株の大暴落等につながってもおかしくはないという議論ですけれども大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  268. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大前さんのそのお話は私も読んでおります。一種の経過期間にどうするとかいろいろな問題はあるように思いますし、それは検討いたさなければなりませんが、やはり物の価格というのは時価で決まる、そういう原則というのは、やはりだんだんそこへいきませんと本当の市場経済、自由競争というのはできないのではないか、基本的には私はそういう受け取り方をしております。
  269. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 いや、直接お答えいただけていないわけですけれども、その時価で評価をするということ、現在のような非常にゆがんだ日本金融界状況の中でSPC法の精神にのっとって証券市場をつくろう、証券化を行うということを同時にやると、先ほどからずっと私が申し上げております破綻の方向に実は同時に突き進んでしまう、そういう相矛盾することを一緒にできるのかというのが私の質問の趣旨なんですけれども、もう質問時間がございませんので、最後に一言で大蔵大臣、その方向性について御意見を伺いたいと思います。
  270. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しまして十分そこを考え詰めておりませんが、何か計画的な措置を考えなければならない。ただ、行く行くはやはり時価というものがプリベールするだろうというふうに思っております。
  271. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 質問を終わります。
  272. 相沢英之

    相沢委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日木曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会