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1998-08-27 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年八月二十七日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       愛知 和男君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    飯島 忠義君       江渡 聡徳君    小野寺五典君       大島 理森君    大野 松茂君       大野 功統君    金田 英行君       河井 克行君    河村 建夫君       倉成 正和君    佐田玄一郎君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田中 昭一君    滝   実君       津島 雄二君    中谷  元君       西川 公也君    能勢 和子君       蓮実  進君    宮本 一三君       山本 公一君    山本 幸三君      吉田六左エ門君    渡辺 喜美君       石井 紘基君    上田 清司君       枝野 幸男君    岡田 克也君       海江田万里君    北村 哲男君       北脇 保之君    仙谷 由人君       土肥 隆一君    中川 正春君       古川 元久君    山本 孝史君       石井 啓一君    上田  勇君       大口 善徳君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    西  博義君       西川太一郎君    西田  猛君       佐々木憲昭君    佐々木陸海君       中林よし子君    春名 直章君       吉井 英勝君    濱田 健一君       河村たかし君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣 野中 広務君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         国税庁次長   大武健一郎君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君  委員外出席者         議     員 保岡 興治君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人         (日本銀行総裁速水  優君         衆議院調査局金         融安定化に関す         る特別調査室長 藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十七日  辞任         補欠選任   大島 理森君     小野寺五典君   大野 功統君     田中 和徳君   金田 英行君     田中 昭一君   砂田 圭佑君     飯島 忠義君   滝   実君     河井 克行君   上田 清司君     北脇 保之君   枝野 幸男君     石井 紘基君   岡田 克也君     土肥 隆一君   海江田万里君     中川 正春君   西川太一郎君     西  博義君   佐々木憲昭君     中林よし子君   春名 直章君     吉井 英勝君   笹木 竜三君     河村たかし君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     砂田 圭佑君   小野寺五典君     能勢 和子君   河井 克行君     滝   実君   田中 和徳君     西川 公也君   田中 昭一君     金田 英行君   石井 紘基君     山本 孝史君   北脇 保之君     上田 清司君   土肥 隆一君     岡田 克也君   中川 正春君     海江田万里君   西  博義君     西川太一郎君   中林よし子君     佐々木憲昭君   吉井 英勝君     春名 直章君   河村たかし君     笹木 竜三君 同日  辞任         補欠選任   西川 公也君     大野 功統君   能勢 和子君     大島 理森君   山本 孝史君     枝野 幸男君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等調整に関する臨時措  置法案内閣提出第一号)  金融機能安全化のための緊急措置に関する法  律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興  治君外三名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案保岡興治君外四名提出、衆  法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提  出、衆法第四号)      ――――◇―――――
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図る ための関係法律の整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。本日は、各案審査に関し、金融安定化問題等について集中審議を行います。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君及び日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 相沢英之

    相沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島理森君。
  5. 大島理森

    大島委員 いよいよ金融の大事な法案審議入りがきょうからされました。特に、きょうは長銀問題を含めての集中審議ということでございますので、それに関連して質問させていただきます。  総理大蔵大臣、今国民は、率直な疑問、率直な気持ちというものを、まず第一に次のように持っておるのじゃないかと思うんです。それは、住専処理以来、各般の金融問題に関する対策を講じてきました。そして、それにもかかわらず不良債権処理が長期化したこと、このことについて、与野党を乗り越えて政治家がどういう気持ちを持っておるのだろうか、こういうふうな気持ち国民が持っているような気がします。  私は、人間というのは、過去から学んで、将来を見通して現実に対応していく。政治もやはり同じであろうと思います。そして、私自身国会運営に携わることが非常に多うございまして、そういう経験からここ数年を若干振り返ってみたいと思うのです。  バブルと言われたのがちょうど海部内閣も末期でございましたが、私は官邸におりました。総理は、幹事長でおられました。そして、総量規制を行い、宮澤内閣に移りました。宮澤内閣、その当時大変重要な発言をされておられます。平成四年であったと思いますが、八月に、担保不動産買い上げ会社構想について、必要なら公的資金を援助することについてやぶさかでない。私は、鋭い、バブルがはじけた後のなさなければならないイニシアチブであったと思うんです。  しかし当時、政治状況は、PKO法案処理政治改革処理ということで政治エネルギーが使われておりました。私は、その当時、また官邸から国会運営に携わって、あの当時のことをよく思い出しております。その後、宮澤内閣から細川内閣になりましたときに、細川内閣政治改革一本でありました。そして、金融問題に関する諸法案は、私の記憶では余りございません。そして、その後村山内閣になりまして、私は一時内閣の一員でございましたが、その後に住専処理という問題をやりました。ちょうどそのあたりから国民の間に、まさにバブルの後遺症の大きさ、重大さというものを認識し、そのことが大変なエネルギーとして政治の中に入ってまいりました。  あの住専処理のときに、三週間の野党の泊まり込み、そして初めて公的資金導入という問題が政治の話題になって、何とか法案予算案を通したときに、我々自民党議員は、このように国民に向かって説明したと思います。これを乗り切れば不良債権処理が山を越す、金融システム安定化のためにこれは必要なんだ、こう言って国民にも訴え、そして我々自身もその確信のもとであの難局を乗り切ったことを鮮明に覚えております。あの措置は私は正しかったと思います。そして、公的資金という問題をあれほどの政治エネルギーを使って処理した、そのことがその後の不良債権問題にいろんな形で影響したな、こんな思いを私自身は持っております。  その後、次々と各法案が出されてまいりました。特にことしの初めは、いわば安定化措置二法と称して、正月早々からこの金融問題を処理するための法律をつくりました。まあいろいろ申し上げません。そのような一連、ここ数年、そのときの政治状況政治状況というものがあったのでありますが、いろんな形でそれぞれの国会重要法案となって今日まで来て、今ここに長銀問題の処理と、そしてセーフティーネットを中心としたこの新規立法議員立法、こういうものが提出されて、国民には、日本政治は今まで何してきたんだろうかという率直な疑問というものがあるんだろうと思います。  私は、そういう意味で、一人の自民党の代議士として、時には内閣に、時には国会対策におって、今日まで結果として延びてきたこと、今日までここまでかかってきたこと、このことについて、確かにそのとおりですと、その疑問に対して反省も込めて申し上げなければならぬと私は思っておりますが、それと同時に、日本金融は、一方、後ろの不良債権処理しながら新しいビッグバンに対応するという、関係しながらも違った二つの側面を処理しなければならないという苦衷の中で諸施策をとってきたものだと思っております。  ですから、ある意味では、過去を振り返ったときの責任、例えば、宮澤総理の時代のあのイニシアチブを、与野党乗り越えて我々が政治の課題としてあそこに取り組めたらな、こんな反省が私の中にある。それはすべての政治家が、確かにPKOも重要であったし政治改革も必要であったけれども、その当時の総理のあの発言をもっともっと我々が政治の大きなイシューとしてエネルギーを注ぎ込む必要性があったのかな、そんな反省、あるいは住専のときの思い、そんなことを踏まえながら、今この時期に、基本的なスタンスとして、我々が出している法案も含めて、与野党真剣にこの問題に対処しなければならない。  私どもも、寛容な姿勢と勇気ある決断を持って乗り越えたい、野党にこれから問いかけたいと思いますし、また、野党皆さんもまさにそういう状況を踏まえて対応してほしい、こういう思いを持ちながら、今日までの金融にかかわるいろいろな経過を振り返って、総理並びに大蔵大臣のその御心境、また、国民に対する思いをぜひ冒頭におっしゃっていただきたいな、こう思います。
  6. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 本日をもちまして、金融特が始まることになりました。  政府といたしましても、この国会を開きましたゆえんのものは、現下金融問題に関連いたしまして、不良債権問題を処理しなければ現下経済状況を乗り越えることができないという必死の思いで実は今国会に臨んでおる次第でございます。  顧みまして、今大島委員からお尋ねがございましたが、私自身も、昭和から平成になります段階内閣官房長官としての責務を負っておりまして、あの当時、赤字公債を発行することをやめなければならないということで努力をいたしましたが、幸いにして自然増収が非常に大きくて、そのことが数年後達成することができました。いわばある意味での、バブルによりまして国の財政も非常に潤ったということがあったわけでございまして、その後の経過の中で、今日、いよいよぎりぎりの段階に来ておるということを感ぜざるを得ません。  したがいまして、その後の政治の中で、先ほど御指摘ございましたが、私も党の幹事長という立場大島官房長官とともどもにその政治の大きな役割を果たしてまいりましたが、バブルが崩壊いたしまして以降につきましても、自由民主党は一時期を除いては政治の大きな責任を持たされてきたわけですから、その責任の大きさというものは我が党に、自由民主党にあったことも、これまた事実であります。  先般、終戦記念日のときにNHKのテレビを夜見ておりましたら、中坊公平社長が出てまいりまして、五人の方がいろいろ終戦時のことをお話しされておりましたが、私が印象に残りましたのは、結局、バブルの、国民の大きな欲望の後処理自分も本当に真剣に取り組んでおるというお話でございました。恐らく、命を張ってといいますか、極端に言えばそういう思いで今日債権回収に全力を挙げておるということを考えますと、そうした御努力をいただきながら、今日、この大きくなった不良債権問題の処理がいよいよ政治的にも解決をしなければならないぎりぎりの段階に来っておると思っております。  その過程で、日本金融システムといいますか、そういう中で、戦後、いわゆる護送船団方式といいますかそういう形の中で、行政も、それからまたその行政に保護されてきた金融機関、こういうものも、みずから改革努力が果たして十分であったかどうかということについての反省もあるわけでございます。  私自身も、実は昭和五十一年に大蔵委員長をさせていただきまして、その折、いわゆる金融機関のディスクロージャー問題がかなり大きな問題でございまして、自分自身も、その当時その先進国たるアメリカにも視察に参りました。その後、銀行法改正等が出てまいりましたが、結局、あの当時、金融機関の反対もありまして、今言われているようなSEC基準できちんと金融機関のディスクロージャーをやるというところになりますと、金融機関も果たしてそのドラスチックな方針を受け入れられないような、そういう状況であったわけです。  したがって、顧みますれば、そういった時点におきましても自分自身政治責任の一端もあるのではないかという反省もいたしておりますが、もろもろそうしたものを集約いたしまして、今日こうした立場にございます。何としてもこの不良債権処理いたしまして国際的にも信頼をされる日本金融機関の姿をつくり上げていかなければならないということでございまして、金融機関に対する一般国民のいろいろな意味での御批判を受けてはおりますけれども、さりながら、その手法といたしましては、どうしても、ソフトランディングという言葉がよろしいのかどうかわかりませんけれども、いたずらに金融機関を倒産させるというようなことなく、そして何とかこのシステムを安定させていくという努力をさせなきゃならぬ。そのために、何としてもこの国会におきまして、政府としても、提出をされておる法律案に御理解をいただきたいと思いますが、先般来、野党各党におかれましても真剣にお取り組みいただきまして、法律案としてこれを提案されるやに聞いておりますので、今後、そうしたことを十分勉強させていただきながら、よりよい金融のあり方はいかなるものかということにつきましてこれから真剣に取り組んでいかなきゃならない、このことが国民に対する責任を果たすゆえんだ、どう考えております。よろしくお願いいたしたいと思います。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま大島委員の御指摘になりましたことは、大変大事な問題だと私は思います。  今御審議いただいておる案件もそうでございますけれども国民から見まして、いわば国民の金と申しますか、これは返ってくるにせよ、国民の金をあたかも一つ銀行のために使うのではないか、そういう疑問が非常に広うございます。そして、これが解消されませんとなかなか国民的な理解と支援を得にくいという問題をお互いが持っておるわけでございます。  それで、私が、平成四年に総理大臣のときに、この問題は政府関与を必要とする、政府はその用意があると申しましたときに、これが受け入れられませんでした一つの理由は、それは銀行を助けるのではないかという国民あるいは産業界のそういう一種の批判、それから銀行にとりましては、公的な関与があるとやがて責任問題に発展するのではないか、そういう心配等々がありまして、世間から受け付けられなかったわけでございます。  私としては、これをほうっておくとこういうことになると言うことは、仮に申しますならば、ただ国民に不安を与えるだけであって、対案はないのかということになりますので、結局実現をいたしませんでした。  先ほど住専の問題の御指摘があって、大島委員は、あの住専処理は正しかったとおっしゃいました。私もそう思っておりますけれども、いまだ世間で、あの処理は何かよくわからない、何かうさん臭い話だったと思っていらっしゃる方が多い。  しかし、実際にあのとき起こりましたことは、住専何社というものが、これは報道でもそうでございますけれども、非常に悪い経営をして、インチキをやっていた住専というものを国が六千八百五十億円の金を出して救うんだ、そういうふうに現実に報道された。ですから、国民の多くがそう思った。  これは政府側もある意味で、御記憶のように、結局、あの話というものは、母体行がみんな自分責任をしょいまして、最後に残ったのは系統金融機関であった、農協であった。しかもここの出し分が一番大きかったわけですから、プロラタでやれば農協はつぶれてしまう。そこまではいいのですが、そのときに、農協に金を預けていた人たちはどうなるのかということがエッセンスだったわけですね。しかし、それは言えない、恐怖を与えるだけですから。それで、突然六千八百五十億円というものが登場したので、ファーストインプレッションが非常に悪かった。それを政府も十分説明し切れずに六千八百五十億円を成立させましたから、何となく後味が悪いのは残っておりますが、実は、あれで救われたのは、全国の農協預金をしていた人たち、その信用であったわけです。このことはもう疑いのない明々白々たる事実であるが、だれもそのことを余り今言いたがらないということだったと思います。  そこで、今御審議をいただいております問題も、実際は、これをこういうふうにしなければ日本金融システムがどういうふうに壊れるのか、あるいは国際的にどういう問題が起こるのかということを逐一あからさまに御説明したいのはやまやまですけれども、しかしそれは、まず恐怖を先に国民に与えるという問題がございますから、疑いもなくございますから、そこは、できるだけのことを開示しながら、国民の御理解を得ながら御審議をいただかなければならない。  いつも、金融問題というのは、あからさまに言えないというつらさがございます。その点は私どももよく気をつけて、事情をできるだけ御説明申し上げなければならないと思います。
  8. 大島理森

    大島委員 今日までの中で、総理思い反省も含めての思い大蔵大臣の豊富な経験からのお話がございました。  学ぶことはたくさんあったと思います。それは、できる限りの開示であり、公正さであり、そして責任追及ということだと思いますが、そのことはまた後に説明させていただきます。  いずれにしても、いろいろな御批判があったとしても、いろいろなそのときの施策を講じながら、致命的かつ危機的な日本全体の金融システムの破壊というところまでは行かせなかった。このことは、私は、一面、きちっと自己評価といいましょうか、そういうための努力の成果というのはあったと改めて申し上げるとともに、確信をしたいと思うのであります。  さて、そこで、長銀問題に移らせていただきます。時間が余りありませんので、単刀直入に質問を申し上げたいと思います。  結論的質問をします。  長銀に対して公的資金を注入して対応するのであれば、今後も破綻しそうな金融機関に対して長銀と同じような処理をすればいいじゃないか、そうしたら、今閣法及び議法として提出されている法律案は必要ないではないか、非常に国民のサイドに立った単刀率直な疑問がございます。長銀問題はいろいろな問題を含んでおりますが、基本論として、そこに一つ答えなければならぬ問題があるだろうと思います。そのことについてまずお答えをいただきたい、このように思います。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのお尋ねは本会議でもございましたので重ねて申し上げますが、長銀の場合には合併をしたいという銀行が登場いたしました。 それに基づいて話が進んでおります。しかし、仮に、これは仮でございますが、大手銀行がある日突然破綻をした、そのときには政府としてやることは何もありません。破綻銀行には公的な資金を投入することができません。したがいまして、破綻した銀行は、結局は財産を売って解散するしかない。預金者は無論保護されます。しかし、お得意さんは保護されませんし、そのインパクトというのは社会的に非常に大きい。  そこで、これに公的管理人を入れますならば、公的管理人のもとにお得意さんも保護されます。そうして、やがてそれがブリッジバンクになれば、不良債権は全部回収銀行が買いますから、残ったものは、優良なものだけが残る。それが二年間ございますから、その間にだれかがこれを買ってくれるチャンスは非常に大きいわけです。  これがブリッジバンクの効用であって、大銀行には適用がないなんということは、それはなくていいんだというのなら、大銀行は破産したらそこで立ち腐れでつぶれるだけでございます。それをこの制度が救っている。どなたも大銀行なら合併先があるだろうと間違ってお考えになっているんで、今たまたまございます。しかしそれは、あったからこういう処理ができるんで、それがなければ立ち腐れするだけです。それをブリッジバンク法律は救っている、そういうふうに考えます。
  10. 大島理森

    大島委員 そういたしますと、国民皆さんに専門的な議論をいろいろ今お話をする。それを言葉をかえて言いますと、いわばある人間が非常に弱りつつある、弱りつつあるけれども、そこを何らかの手だてをして、そして元気をつけさせてやる。これはまあいわば破綻前の一つ処理、そのときに合併という手段もあるだろう。合併という手段が、当事者同士努力して、そういう場合に、ある程度健全な体にしてやるために、その全体を守るためにそこは今のような処理をするというのが一つあって、どうしても、人間の体でいいますと、もう入院をして、そして手術をしたりなんかしなければならない、それを破綻と言っていいかどうかわかりませんが、破綻した後の処理。それも、その銀行そのものを救うのではなくて、そこにまつわるシステムと言っていいんでしょうか、それを守ることだ。そのために二つの対応があるんだ。まあ破綻前と破綻後。だから、今政府が出している案、また私ども議員立法として出している案も破綻後の処理としてこれは必要なんだ、こういうふうな解釈だと思います。それでよろしいんでしょうか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。  仮に、宮沢銀行がもう預金が払えないというときには、これはもう銀行としての務めは果たせませんから、私は、実は政府に対してそうなりましたと申す義務があるわけですが、しかし、その場合に、その宮澤銀行を管理人が管理してくれますと、私はもとより退任しなければなりません、銀行は、そういう意味では経営者は全部責任を追及され、いろいろなことが起こりますが、預金者が保護されると同時に、いいお客さんはそのまま何とか残していこうという仕組みでございますから、世間に与えるインパクトが小そうございます。そして、悪い債権回収銀行が買ってくれますかち、そうしますと、もう宮澤銀行はなくなりますけれども、だれかがそれを買ってくれるチャンスがある。ブリッジバンクになりますと、身軽になってきれいになりますから、買ってくれるチャンスがあって、銀行は救済されません、宮澤銀行はもうなくなりますけれども、その社会的な機能はブリッジバンクのもとに残って、そして二年のうちに新しい私企業に持っていかれる、そういうことでございます。
  12. 大島理森

    大島委員 そういたしますと、例えば中堅銀行同士が合併したい、そしてその一方が非常に体力が弱っている、そういう場合にも、長銀に今対応しようとしているそういうスキームが当然当てはまると考えていいのだろうと思うのですが、その点はどうであるか。  逆に、大蔵大臣、よく今、大手銀行、つまりマネーセンターバンクの破綻にはとても今のスキームは役に立たないんだ、法的には解釈されても役に立たないんだ、だから長銀の問題をこのように処理したのではないかとか、あるいは、今新しく出ている法律が機能しないのじゃないか、こんな疑問があるわけです。そういうことについてひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 後段の、大きな銀行、マネーセンターバンクには役に立たないという疑問に対しましては、先ほども申しましたが、大手銀行が突然破綻をした、そういうことを現実に考えておるわけではございませんけれども、それはもうそれでおしまいでございます。何にもやりようがございません。世間的にはいろいろあっても、政府は何もできない。  しかし、このいわゆるブリッジバンクに移行できますならば、預金者、お客さんの保護、それから不良債権の買い取り等々で、二年間だれかが買ってくれるチャンスがございます。しかも、そのときには銀行がきれいになっておりますから、不良債権はなくなっておりますから、買ってくれるチャンスは多いのでございます。それは大小にかかわらず同じことと思います。  それから、前段に言われましたことは、二つの銀行があって、片方がどうもぐあいが悪い、それで合併をする、そのときに政府が助けをするかと。それは、ただいまのようなケースでございますが。  ただし、それは、そういう政府の支援を受ける銀行はそれだけの責任を負わなければなりません。それが長銀が出しておるリストラであって、のうのうとしておって政府の金だけもらえるなんという、そんなことは世の中にあっていいはずがない。ですから、合併ということになれば、弱い方の銀行はそれだけの責任を負わなければ、世間に対して政府の支援を仰ぐなんということはできるはずがない、こう思います。
  14. 大島理森

    大島委員 破綻前の必要な措置破綻後の必要な措置と両方相まって、もちろんそこにはいろいろな条件があります、法に照らしたいろいろな問題がありますが、それをもってして初めて、預金者、優良なる借り手、それから金融を取り囲むいろいろな経済的な信用の問題、そういうものを称してシステムと言うのでございましょうか、そのシステムを守るということのためには、今私どもが出している法律内閣として出している法律もあわせて必要であるというお答えであったと思います。  さてそこで、いよいよ長銀の問題についてさらにお伺いしますが、総理が両行の合併構想の進捗状況を聞くために住友信託銀行の社長を呼ばれました。  合併そのものは両行の自主的判断であります。それがスタートであり、それが基本にならなければならないと思いますが、しかし、現在の経済状況あるいはまた国の経済危機管理という側面でございましょうか、そういう側面から、金融システムに対する御心配あるいは経済への影響、そういうことを思ってお呼びになられ、そして進捗状況をお伺いしたのだろうと思います。  これは個人的に思っておることでございますので、先ほど過去のいろいろな事例を見ました。あの北拓銀行破綻したときに、もし今のようなセーフティーネット法律があったらよかったのになと、実は個人的に非常に今思っておりますが、しかしあのときに、昨年の秋でございましたが、三洋証券、北拓、山一証券が続々と破綻していったときに、私は、本当に日本発の金融不安というものが起こりはしないか、国際市場が鋭くそこをねらっていろいろな動きをしている、アジアの問題、大変不安になりました。大変深刻であったと思います。やはりそういうことを、例えばセーフティーネットの問題でも、住専のときからずっといろいろ踏まえて、あるいはタイミング的に遅かったかもしれない、しかし必要だという一つの結論だと思います。そういういろいろな問題があって、総理が多分お呼びになったのだろうと思います。  そこで、その総理の御所見を伺う前に、監督庁にちょっとお伺いします。  長銀が今一体どの程度の金融規模であるか、多くの国民皆さんが、長銀長銀という名前が出ますけれども、そのスケールというものがよくわからない。したがって、もし今の時点で貸出総額あるいは貸出件数、そういうもので国民皆さん長銀の大きさ、スケールをわかっていただくような、そういう御説明をちょっといただきたいものだ、こう思うのです。
  15. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀の、平成十年三月末現在について申し上げたいと思いますが、貸出金額は合計十五兆七千六百五十億円でございます。それから、貸出件数は三万九千三百四十五件となっております。
  16. 大島理森

    大島委員 十五兆、三万件というスケール、また後で数字は伺うとして、そういうセンターバンク、要するに大きな銀行、大き過ぎてつぶせないという言葉があるわけでありますが、それは妥当かどうかはちょっと別にいたしまして、大変大きな銀行であると国民皆さんはわかったと思います。三万件の貸し出しというのは、多分ほとんど事業者でありましょう。そこにお勤めされている従業員の皆さんを考えますと、膨大な影響のある銀行であるということを私どもは予想できるわけであります。  長銀の場合のことを私は具体的に言うのではございません。先ほど来大蔵大臣お話しされました、大規模銀行と称されるものが、これもまた具体的にある程度の数字を前提にして聞かなければならぬと思うのでありますけれども金融の問題でありますからなかなか難しいのでありますが、そういう大きな長銀程度の銀行が、これを大規模銀行、こう言うと思うのですが、もしそのシステムが破壊されたときに一体どういう事態が予想されるのだろうか、どういうことが日本の経済に本当に影響してくるのだろうか。危機だ、大変だと言っても、やはり国民皆さんに、あるいは私のような素人にも、そこはある程度きちっとした説明、予想されることというのは率直に言われた方がいい、こんな思いが私はあるのです。  したがいまして、大蔵大臣金融に及ぼす影響、経企庁長官に経済に及ぼす影響、側面から率直な訴え、率直なお答えをいただきたいもの、このように思います。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも、先ほど申し上げましたように、一種の仮定に基づいて申し上げるということを申し上げませんと、お聞きになっている方が事実と思われますので、そういう意味で申し上げますが、仮に長銀破綻をいたしましたとしますと、まず預金者それから金融債を持っていらっしゃる方々、これは一〇〇%保護されるから心配ございません。しかし、お客様方は、これは全く救済の方法がございません。それで、長銀と長い間取引をしていらした方は、恐らく借りた金を回収されることになります。それから、それならどこかの銀行に移りたいといいましても、今のような難しい世の中でございますから、おいそれとどこかの銀行が受け入れてくれる状況ではございません。したがって、多数のお客様方はその結果として倒産されざるを得ないだろう。それが連鎖をいたします。  次に、長銀が非常に大きな貸し出しをしておりますいわゆるノンバンクでございますが、このノンバンクの中には各行から非常に大きな借り入れをしておるものがございまして、いわば母体行ともいうべき長銀が何にもいたしませんと、各行はこのノンバンクの金を回収しようとかかりますから、ここで一つの大きな倒産が連鎖をいたしまして、そのスケールからいいますと、その及ぼすところは兆単位でございますので、それがはかり知れないということになろうと思います。  それから次に、長銀は海外にたくさんの支店を持っておりますから、この支店は当然閉鎖をしなければなりません。そこで海外の顧客とのトラブルが起こることは当然でございます。  それからさらに、長銀はデリバティブスを元本で五十兆余り持っております。デリバティブスにつきましては、シンガポールで支店長がデリバティブスの個人取引をしましたためにべアリングズ・ブラザースが倒産しましたことは、ごく最近のことでございますから御承知のとおりで、デリバティブスのデフォルトが起こりますと、恐らく日本銀行全体がデリバティブスのグループから排除されるのではないか、そういうふうに考えられます。内外において及ぼすところは、はかり知れない影響があるだろうと思います。(発言する者あり)
  18. 相沢英之

    相沢委員長 御静粛に願います。
  19. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず、現時点において特定の大規模金融機関破綻するというのは想定されておらないことであるとお断りして、一般論として経済の状況にどんな影響を与えるか想像してみたいと考えております。  まず第一には、今大蔵大臣がお答えになりましたような、金融システム全体に影響を与え、これが海外にも波及する、そして日本金融機関、さらには日本の国債にまで悪影響を及ぼす可能性は、十分考えられるところであります。  第二番目には、当該金融機関と取引のある企業、これが直ちに他の金融機関に乗りかえられるかといいますと、そういうところもあるでしょうけれども、極めて困難なところも出てまいります。そういたしますと、中小企業はもちろんのこと、かなりの大規模な企業まで貸し出しを受けられなくなり、営業が困難になります。そういたしますと、そのまた大企業、これがどんな業種、建設業種でも小売店でも、いろいろな業種があると思いますが、それの下請企業、さらには納品している企業、そういった企業が、現金が回ってこないということになりますから、営業が困難になります。金融機関の場合は、この連鎖が非常に大きく長く続いて次々と問題が起こってくる。当然、これは多数の従業員の解雇につながりまして、給与所得を引き下げます。そういたしますと、全体の需要というものが下がってまいりまして悪循環が回転するということが考えられます。  そして第三番目に、意外と大きいと予想されるのは心理的影響でございまして、大規模な金融機関破綻するとなりますと、日本経済全体に対する信頼が失われて、各個人あるいは各企業もそういった点でかなり動揺をする、それが日本金融システム全体の能力を引き下げていき、また、それにつながります消費のマインドあるいは投資のマインドを引き下げていく、そういった実体経済への面が非常に大きいと思います。  したがって、政府といたしましては、金融システム全体を危機的な状況に陥れるようなことは絶対に起こさないというかたい決意を持って臨まなければならないと考えております。
  20. 大島理森

    大島委員 まさに経済の血液であり心臓である金融システムという問題、そういうふうなところにきっちりとお互いに目を向けてこの問題に対する考え方を持たなきゃならぬ、私はそういう感じを改めて強くしました。多分、総理のあのときの御判断、金融システム全体の危機的状況は絶対に起こさない、絶対に起こさない、この強い決意のもと、ここが総理の大変な決断であったろうと思います。  そういう中で、先般、住友信託さんにおいでをいただいてお話しされたんではないか、こう思います。総理に改めて、この長銀問題について、今後のこの問題を見守る、そしてあのときお呼びになる、そういう中における決意をお伺いしたいな、もしお話しできるところがあればそのときのお話をしていただきながら、長銀問題に対する総理の御決意をしっかりと内外に今ここで改めてお話ししていただきたい、私はこう思います。
  21. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ただいま宮澤大蔵大臣堺屋経企庁長官が申されましたとおりに、この日本を代表するような金融機関がかりそめにも破綻というようなことになりますと、内外に及ぼす影響はまことに大きいという考え方に基づきまして、金融システムを何としても守らなければならないという決意のもとに、その一つとしてこのような対応をさせていただいた次第でございます。  率直に申し上げますと、両行はあくまでも民間企業でございまして、その合併につきましては、たしか六月二十六日だと思いますが、両者で発表されました。時あたかも六月二十五日は参議院選挙が開始をされまして、私自身も、それは全国に駆けめぐっておりましたが、正直申し上げますと、この問題について聴衆の前で多くお話ししたということは記憶に薄いわけでございますけれども、その後、総裁選挙に出馬をし、かつ、今日こうした大きな役割を仰せつかっておる立場からいいますと、ますますもって、その深い認識のもとに何としても今問題を解決しなきゃならぬ、こう考えておりました。  実は、そのいきさつの中で、私自身なりに合併問題についてメディアその他からの情報もいろいろ聞いておりましたが、最終的には金融監督庁から、長銀におきましては、そのリストラ案につきまして真剣に考慮して、かなり具体的な考え方がまとまりつつあるという御報告をいただきました。  そういう中で、衆参両院の予算委員会等も開かれておりましたので、その間を縫って、こういうことになりまして、長銀のそうした真剣な対応というのがあれば、当然、そのことは合併先であります住友信託におきましてもどのように受けとめられるかということを考えまして、実は、私から高橋社長をお招きをいたしまして、どのような段階になっておるか、そしてまた、一方では長銀としてはそのような対応をしつつあるけれども政府として、この合併については、今申し上げたような趣旨で何としてもそういう方向をとられることが望ましいのではないかという気持ちをお伝えをしたというのが、当日、公邸にまで招致をしてお話ししたという経緯でございます。  願わくば、ぜひ、この合併によりましてシステムが壊れることなく、安定した方向になることを今なお心から願っておる、こういうことでございます。
  22. 大島理森

    大島委員 総理の今の思いというものをぜひ成就していただきたいと思っております。  しかし、昨日からきょう、株価が大変また下落しておりまして、マーケットはいろいろな要因を見ておると思いますが、我々の審議、そういうふうなものを見守っている。そして、できるだけこの問題について与野党でこの難局を乗り切ってほしい、そういうふうな問いがその姿にあるような気がします。  そこで、私は、時間がありませんが、以下、具体的に質問を申し上げます。  この長銀問題について、三つのルールが国民から問われている、こう思います。一つは透明性。一つはルール、公正さということでございましょう。そして責任問題。この三点に対して私どももしっかりと見守り、またこたえていかなければならぬ。私は、こたえられるだろうと思います。  そこで、まず透明性の問題について数点伺いますから、お答えをいただきたい。  まず第一点は、経営状況は一体どうなっておるか、ここだろうと思うのです。そういうふうなことを今金融監督庁が検査をされている。残念ながら、金融機関の持っている意味合いからして、どこまで出せるかという議論は一つあるにしても、できるだけ国民の前に長銀の実態を開示することが必要であろう、こう思います。そういう意味で、特に不良債権のあり方、こういうものを私どもが知った上で議論していかなければならぬことも当然でありますが、判断をしていかなければなりますまい。  今日までの国会での経過を伺いますと、監督庁のその結果につきまして、もし議院証言法に基づいて検査の結果を明らかにしてくれ、こういうことになったならば、長銀不良債権の検査結果の中身を開示する、あるいは前向きに検討する、そういうふうな姿勢で臨みますか、臨みませんか。
  23. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  個別金融機関の検査結果の公表についてでございますが、これは実質的な理由として申し上げますと、取引先等に不測の損害を与えたり、個別私企業の経営内容が当事者の意に反して開示されることになるばかりか、信用秩序の維持にも不測の影響を与えるおそれがございます。したがいまして、当庁からこれを公表するということは適当ではないと考えております。  ただいま御質問にありました議院証言法による提出要求があった場合にはどうするかというお尋ねでございましたが、これは御要求の内容を踏まえまして具体的な対応について決定することになると考えておりますが、一般論として申し上げさせていただきますと、検査結果と申しますと、これは金融監督庁としての職務上の秘密に関連するものでございますので、その旨の申し立てを行うことになるものと思料いたします。
  24. 大島理森

    大島委員 検査結果が出た時点で、どの時点で国会がどのように対応するか、私どもも真剣にこの問題はこれから考えていきたいと思っております。  そこで監督庁、これは監督庁がお答えになれるかどうかわかりませんが、今言われている、もちろんあくまでも民間企業同士の合併でありますから、スタート、そしてイニシアチブはこの両行の問題であろうと基本的には思います。しかし、私どもとして、日本全体の金融システムということを考えた場合に、大変な大きな経済危機管理の問題でもあるという認識を持っておるわけですから、いろいろな議論をしている。おおよそ今の時点でその合併構想の実現というものがこんなスケジュールになっていくのではないだろうか、国民の皆様方に、あるいは我々に、例えば金融監督庁が検査を終わりました、終わった結果こうなって、そしてそこで申請が行われてこうなっていくだろう、こういうふうな具体的なスケジュール、今予想される、また言えるスケジュールというものを教えていただければありがたいと思います。
  25. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀におきましては、去る六月二十六日、合併に向けた検討を開始する旨の発表を行ったところでございますが、金融監督庁といたしましても、この構想は金融システム安定に資するものでございますので、合併が実現するよう最大限支援する旨を申し上げてきたところでございます。  その後、両行の間で具体的な検討が進んでまいりましたところですが、去る八月二十一日に、長銀からは合併を前提に抜本的な不良債権処理、リストラを含む経営合理化策が発表されますとともに、住友信託銀行からも、長銀と前向きに合併に向けた交渉を続けていく旨表明されたところでございます。  今後のスケジュールでございますが、合併構想実現のためには、長銀平成十年九月期におきまして抜本的な不良債権処理を行う必要がありますほか、両行において、合併についての株主総会の承認など必要な法令上の手続を経る必要があると存じますむ  いずれにしましても、合併の具体的なスケジュールにつきましては今後両行の間で協議されることになるものと考えておりますが、監督当局といたしましては、この合併構想が我が国の金融システムの安定と国民経済の円滑な運営に資するという観点から、この構想の実現のためには最大限の支援をしていきたいと考えております。
  26. 大島理森

    大島委員 時間がありませんので、項目的に数点、ぽんぽんぽんと質問をいたします。  三月末の時点で長銀の公表不良債権がございました。しかし、先般、自己査定の結果が出ました。第二分類債権では二兆三千七百九十六億という数字が新聞に出ました。公表不良債権と第二分類債権の関係など、この数字の関係というものをどのように解釈したらいいかというのが一点。  結論として、もちろん九月期の中間決算というものを見なきゃわかりませんが最大の問題は、債務超過に陥るのではないかという、そういうふうな見方あるいは批評をする方がおります。そのことに対しての現時点での監督庁の見通し。  したがって、いわゆる今度の措置の、法に照らしてということを私言いましたが、先般の二法の、いわば金融機能安定化のための緊急措置に関する法律における十三兆円、これを利用する場合のいろいろな要件がございます。そのときの要件の一つとして、長銀は同法に言われる健全な銀行と言えるのか、長銀からもし公的資金の注入申請があった場合に、法のどの条文に基づいて注入を行うことができるのか、そしてその場合に株主の責任を明確にするべきではないかこういう具体的な質問に対してお答えをいただきたい、こう思っております。
  27. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  まず、公表不良債権額と第二分類債権額との関係でございますが、公表の不良債権と申しますのはリスク管理債権とも呼ばれておりますが、これは、各金融機関が全銀協の統一開示基準に従いまして貸出先が破綻した債権の額などを開示しているものでございますが、これは客観的、形式的な基準でございますので、金融機関の間で比較可能な数字でございます。  これに対しまして自己査定は、まず債務者をその状況等によりまして破綻先、実質破綻先、破綻懸念先、要注意先、正常先に分類いたしまして、その上で債権を、実質的な回収可能性の観点から、第二分類、第三分類、第四分類等に分類したものでございます。これは、各金融機関が適正な償却、引き当てを行うために内部手続で行うものでありまして、金融機関の間で比較することを前提としたものではございません。  このように、公表不良債権と自己査定の結果とは、その目的、基準、範囲、用途等が異なるものでございまして、両者を関係づけるということは大変難しゅうございますが、あえてこれを関係づけて申し上げますと、例えば、破綻した債務者に対する債権につきましては、引き当て済みの分、債権償却特別勘定の繰り入れ分とそれから預金等の優良担保による保全分につきましては第一分類、通常の担保の場合、担保の処分可能額相当分については第二分類、担保の時価と処分可能見込み額の差額部分については第三分類、その他無価値の部分については第四分類となろうかと思います。  また、例えば、元本、利息の支払いは約定どおり行っておりますが、赤字が継続している債務者に対する債権につきましては、リスク管理債権には該当いたしませんが、第二分類に分類されることとなるものと思います。  第二の御質問でございますが、長銀の資産内容につきましては、本年三月期の長銀の自己査定結果、それに対する日銀の考査によれば、債務超過ではないと承知しております。  長銀に対しましては、七月十三日に立入検査を開始いたしまして、本年三月期の自己査定の結果を踏まえて現在鋭意実態把握をしているところでございまして、検査はまだ終了しておりません。九月中間決算につきまして、これは長銀からの報告でございますが、合併を前提とした不良債権の抜本的な処理を行うことにより一時的に過少資本となりますが、債務超過とはならないと聞いております。  また、第三につきましては、預金保険機構の方の御所管かと存じますので、そちらの方に譲りたいと存じます。
  28. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  緊急措置法の中に三条と二十三条がございまして、そこに、例えば今のような状態を仮定しますと、一般金融機関の資本注入というケースに当たりますので、五つ要件が書いてございます。  第一番目は、先ほどお触れになりました債務超過を含む、資本注入を受け得る主体としてどういうものを予測を立てるかという問題が一つございます。それには経営の状況が著しく悪化していないことという条件がございまして、具体的にそれをかみ砕いた審査基準では、三年間連続して無配当とか赤字決算とか、あるいは場合によっては債務超過であるとか、そういうものは受け付けない、こういうことになっております。  以下、第二の分類としては、自己資本の充実が改善されなければいろいろな意味で障害が起きるという必要性についての要件でございます。これも審査基準では細かく規定をいたしております。  第三番目の基準が、申請金融機関の経営の再建を目的にしたものではない。これは信用システムの安定のために行う資本注入であるということで、自助努力のない申請行については与えない、こういう原則でございます。  第四と第五が、いずれも、例えば優先株でありますれば、発行いたしております経営体、発行した銀行の経営状態の健全性に関するものと、それから発行いたした優先株等の商品の効果性と申しますか、それについての基準でございまして、この五つ全部をクリアしないと入らない、こういう仕組みになっております。
  29. 大島理森

    大島委員 時間がありませんので、あと一、二点で終わります。  要するに、法的ルールに基づいてこの問題をしっかりと処理をしていただきたい、これは当然のことでありますが、大変重要なことだ。そういうことで、あえてそういうことがあった場合のことをいろいろ伺いました。  もう一つ国民皆さんに、率直な疑問を持っている人がいるのです。それは、公的資金を導入するというのはくれてやることかという質問をよく受けるのです。先ほど宮澤大蔵大臣もお答えをされました。  そこで、国民皆さんに、公的資金を導入する、その公的資金の導入というのはこういうことですよということをしっかりと、技術的でありますが大事な点でございますので、御説明いただきたい。これはどこになるのでございましょうか。まるで国民は税金をくれてやるというふうに受け取っておられる方がある。ここのところをきっちりと御説明いただきたい、こう思います。
  30. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  今論議いただいておりますいわゆる資本注入は、公的資金を活用いたしまして金融機関の発行する優先株式等を引き受けまして、金融機関の自己資本を充実させることによって金融システム安定化を図るものというものでございます。この場合、優先株式等の引き受けのための資金の原資といたしましては、まさに十三兆円ということで、交付国債の償還による資金とか、政府保証つきの借入金があるわけでございます。  この資本注入によって取得されました優先株式等につきましては、法律上、できる限り早期に譲渡その他の処分を行うものとされております。この処分を通じて資金の回収がなされまして、最終的な国民の負担の軽減が図られるようになっているということから、公的資金といいましても、一時的な公的な与信を行うものでございまして、最終的に税金を投入することとなるとは必ずしも限らないということでございます。
  31. 大島理森

    大島委員 それじゃ国民がわからないのですよ。本当は時間があればもう少しわかりやすく、つまり、国民は、税金を全部投入するのかという、そういう疑問を持っているのです。そういう説明をするからまたわからなくなるというふうに言われるので、もう一回お答えをいただいて、これで終わりますが、最後に、提出保岡先生にお伺いします。  今いろいろなことをお話しされました。保岡提出者は、かつてまさに政治改革にもお取り組みになり、金融問題にも今一生懸命取り組んでおります。自民党のこの問題の政策責任者として、過去の経緯を踏まえながら、今度の長銀問題あるいは内閣が出された提出案件、これらについて所見を伺いたい、こう思います。  つまり、過去のことも振り返りながら、何としても自民党としては、これはもうある意味では最後の金融システムの安定のためにしっかりやらなきゃいかぬことだと私は思っておりますし、そういう意味で、野党とのこれからの話し合いというものも保岡提出者が大いにしなきゃならぬ。その辺の心構えを踏まえて最後にお答えをいただきたいのですが、大蔵省、さっきの答弁では国民はわかりませんので、もう一回ちゃんと答弁しなさい。
  32. 相沢英之

    相沢委員長 伏屋金融企画局長。わかりやすく答弁してください。
  33. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 ありがとうございます。  もう一度答弁させていただきますと、資本注入によりまして取得されました優先株式等は、この法律の第四条に基づきまして、「できる限り早期に譲渡その他の処分を行うよう努める」となっておりますので、その段階で回収されれば国民負担の軽減につながるということでございます。
  34. 保岡興治

    保岡議員 大島先生にお答え申し上げます。  私は、確かに政治改革のことを一生懸命やってまいりました。それは、非常に急激な大転換期に、我が国がしっかりした未来とそれに向かっての政策を実行する、そのためには政治主導が大事だ、官僚の制約を乗り越えなきゃいけない、そういうことで努力をしてきたつもりでございます。  そういった意味では、実はこの金融安定化に対するいろいろな施策も、先ほど総理大蔵大臣がいろいろ反省を含めて過去の政策についてお答えをされておられましたが、やはりそれも官僚だとなかなか各省間の調整が難しい。断片的になってなかなか一つの目標に向かって総合的な政策を立てることができない。そしてまた、過去の政策をすぐに改めるということがなかなか難しい、慎重な対応をしがちでございます。そういった中にあって、この激変期に、急激に変化するために必要な政策というものは、政治が果断に迅速に、しっかりした政策目標、そして政策手段を示して役所をリードしていく必要がある。  そういう点で、昨年の暮れ以来の我が国の金融が大型破綻で一気に先行き不透明になって、問題のない銀行、あるいは問題のない企業まで不安に陥れて不安定にしている。こういった危機的な状況をどうやって克服するかということで、宮澤部長のもとで、当時、システミックリスクの最大の政策手段として資本注入の金融二法というものを成立させていただきました。  そして、このたびは、その中で最も足を引っ張っている、バブル以来の解決が先送りになっていた不良債権処理を何が何でもやらないといけないということでありますが、しかし、これを実行していくためには、やはり経営の悪い銀行はいろいろ市場から退出をしなきゃならない。破綻する可能性もある。そこで、今度政府が出してあるブリッジバンクを初め諸法案、あるいは議員立法提出させていただきました法案など、こういった現下の厳しい日本金融や経済を本当に正しい方向に持っていく。今大島委員お話しになりましたとおり、こういう危機は与野党が知恵を出して工夫して乗り切っていくことがとても大事であります。  そういった意味で、この今日本が置かれている厳しい状況、あるいは世界から注目されて日本がしっかりしてくれということに対して、与野党が知恵を出すために、今国会提出してある政府提案の法律も、また議員提案の法律も、与野党の知恵でいいものができればという気持ちで、我々の主張は主張、野党の知恵もいただくということで、真摯に相談に当たってまいりたい、こう考えております。
  35. 大島理森

    大島委員 透明性、ルールの厳守、それに責任論、私どもは、長銀に対するあり方についての責任問題もきっちりと議論しなきゃならぬと思います。  この問題については、山本委員から質問をさせていただきます。  ありがとうございました。
  36. 相沢英之

    相沢委員長 この際、山本有二君から関連質疑の申し出があります。大島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山本有二君。
  37. 山本有二

    山本(有)委員 日野金融監督庁長官にまずお伺いをいたします。  この春まで監督庁は大蔵省の中にあったわけでございますが、その分離前、松永大蔵大臣が、公的資金投入は人件費の合理化を含めた経営改善が条件となる、こういう発言をされておられます。これについて、日野長官はどのようにこの発言をお受けとめになられるのか、お伺いいたします。
  38. 日野正晴

    ○日野政府委員 松永前大蔵大臣の御発言をどのように受けとめるかという御質問でございますが、一般に、金融機関金融機能安定化緊急措置法に基づきまして資本の注入の申請を行う場合には、人員及び経費の削減等の経営の合理化策を盛り込んだ経営の健全性の確保のための計画というものを審査委員会に提出することが義務づけられております。審査委員会におきましては、この計画が適当と認められることが資本注入の議決のための必要条件とされております。これは同法の二十四条にございます。  この規定の趣旨は、金融機関に対しまして公的資金により資本注入を行う以上、まずこの金融機関において十分な経営の合理化努力を行う必要があるとの基本的な考え方に基づくものと考えますが、御指摘の松永前大蔵大臣の御発言も、こうした考え方を踏まえたものと受けとめております。
  39. 山本有二

    山本(有)委員 長銀というのは、今回初めて公的資金が注入されるわけではありません。三月十一日にも、優先株で千三百億円、劣後債で四百六十六億円、合計して一千七百六十六億円。自己資本比率はこれによりまして、BIS基準で九・四二から一〇・三二、立派な自己資本比率の数字になっております。  いわば、このような会社が何でつぶれるのか。既に公的資金を投入しているんだ。これでもう一回投入しなけりゃならぬのか。優先株というのは、配当でお金が返って政府がもうかる場合もあります。劣後債といえども社債ですから、それは利回りがあります。ですから、政府が損するということはないかもしれませんけれども、しかし、金融機関だけにしかこんなことはやっていただけない。そしてまた、倒れるうわさがある、その土壇場になって公的資金を投入する。一体、リストラはどこでどう行われたのかなというのが私の疑問でございます。  八月二十一日夜、大野木頭取はリストラ策を発表いたしました。例えば、不良債権七千五百億円を処理する。関連ノンバンク三社向け債権約五千二百億円を放棄する。海外業務から撤退する。会長、頭取ら役員の総退陣と退職金の取りやめ。旧経営陣二十四人に退職金の自主返還請求。さらに九八年度中に行員七百人程度を削減し、本店ビルや社宅などを売却する。確かにドラスチックなリストラ策でございますけれども、もっと早くやっていただきたかった。  金融監督庁長官は、もっと早くこれぐらいのことをやったらどうかというお考えはなかったのか、お伺いいたします。
  40. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀は、本年三月の資本注入の申請に当たりまして、人員や経費の削減等のリストラ計画を含む経営の健全性の確保のための計画を提出しております。その結果、三月十日に審査委員会において資本注入の承認を受けたところでございます。  その後、長銀は住友信託どの合併構想を発表したところでございますが、この円滑な合併を実現するために、今般長銀は、先ほど御指摘がございましたような大変厳しい経営合理化策を公表したものでございます。  したがいまして、情勢が変化したと申しますか、三月十日のその計画を長銀としては変更したものというふうに私ども理解しております。
  41. 山本有二

    山本(有)委員 昔の言葉に、「寡なきを患えずして、均しからざるを患う」という言葉がございますが、ともかく、我々は公平感というものを失ってはならぬと思います。それが政治の要請だろうというように思います。  今、リストラ策の中で、九八年度中、すなわちあと半年ぐらいの間に、長銀の行員の皆さん、およそ何の罪もない、一生懸命働いておっただろうと思いますが、七百人の生首が切られます。これは本当にかわいそうだと思いますが、しかし、その前にやっておかなければならぬことがあったのではないか。  私は、労働省の資料によりまして賃金を調べてみました。日本全国の全産業の賃金の平均は、男で三十三万七千円。銀行、信託はこの全産業に比べますとちょっと高いんです。四十六万四千八百円。高いんです。それで、この間当委員会に提出されました資料の中に長銀の行員の給与が載っております。見ますと、男が六十一万一千四百二十七円。これは、全国の銀行や信託の四十六万四千八百円に比べても十五万近い高さでございます。例えば、私の地元の四国銀行でいきますと七百九十四万円、高知銀行でいきますと七百五万円。いわば長銀は、こういう年俸計算でいきますと九百六十三万円。一生懸命まじめにやっているところよりも、さあ大変だどいうところの方がみんな給与が高い。  例えば、一生懸命頑張っておる地銀の行員の隣に長銀の方がいて、その方の方が家も立派だ、車も立派だ。隣の地銀の人は、おれの方が一生懸命やっているのにと思っても、給料は長銀の方が高い。その長銀公的資金がどんどんどんどん投入される。何かやるせない気持ち国民がなるのは当たり前なんですよ。だから、そこで、このようなリストラを早く進めなければならなかったのではないか。  私は金融監督庁に、今後もこういうリストラ、特にまた、長銀のほかにもこういう大変な公的資金を投入するというような銀行がありとするならば、長官はしっかりやっていただかなければなりません。どうかひとつ長官、その御覚悟があるかどうか、お聞かせください。
  42. 日野正晴

    ○日野政府委員 公的資金の注入に当たりまして、金融危機管理審査委員会が各銀行からリストラ計画を含む健全性の確保計画を提出させ、また今回それを修正することになろうかと思いますが、御指摘の給与につきましては労使間で決定されていくもので、金融監督庁としての評価は差し控えたいと思いますが、確かに御指摘がありましたように、銀行、信託業の賃金は全産業の平均に比べて高い水準にあると存じますが、やや減ってきているものと承知しております。また、役員報酬等に関する銀行とほかの産業との比較については、ちょっとこれは把握しておりませんが、主要行につきましては、役員報酬は近年減ってきておりますし、役員賞与につきましては、平成七年度以降は十九行全体では支給されていないというふうに承知しております。  また、先ほど御指摘のございました、金融監督庁としてしっかりやるべきではないかという御指摘につきましては、今後、経営改善計画などを求めることによりまして、その御指摘の趣旨を図っていくようにしたいというふうに考えております。
  43. 山本有二

    山本(有)委員 次に、杉浦元頭取の退職金の問題につきまして少しお伺いさせていただきます。  八月二十四日、野中官房長官が談話を発表いたしました。杉浦敏介元頭取の退職金は、長銀から九億三千万円、関連会社から四千万円、合計して九億七千万円を受領しているということでございます。  杉浦氏は、明治四十四年生まれ、現在八十七歳、一九五二年に旧日本勧業銀行から長銀に移籍をされて、当時、不動産リースという比較的新しいビジネス、それの開拓に専念され、いわばこの長銀の融資戦略の中心人物として活躍されました。一九七一年から七年間頭取、一九七八年から十一年間会長、十八年トップの座におられたわけでございます。会長を一九八九年に退かれまして、取締役相談役・最高顧問という肩書でいらっしゃるということでございます。  私は、ただ単に退職金が高いからという、いわばげすの勘ぐり、貧乏人だから金持ちがうらやましいということを言っているわけではございません。私が申し上げたいのは、一番会社内部の事情に詳しかった人じゃないのかな。すなわち、十八年間、長銀が成長して今日を築く一番中枢にいだということなんです。それからまた、会社の浮沈の一等先に責任をとっていかなければならぬ人ではなかったのかな、こういうように思います。そして、取締役最高顧問をおやめになるのが平成四年です。平成四年ということは、バブルがはじけるそのときでございます。長銀が、一体この会社がどういう運命になるのかということをわからないはずがなかったのじゃないかな、私はそう想像するのです。  そうしたときに、どうしてこれだけの額を会長が受領されたのか。特に、平成四年の退職慰労金の総額を見てまいりますと、七名で合計して十四億九千六百万円払っています。すなわち、この杉浦さんと一緒におやめになった方があと六名おられて、全体に一人二億円近いものをもらっていらっしゃる。もし、長銀が今日このような状況になっているということを知りながらこのような多額の退職金をもらうということになりますと、私は銀行のモラル、日本の大企業のモラルは一体どこにあるのかな、そう考えざるを得ません。  私は、明治生まれというものにあこがれを持っていました。気骨があり、日本人の原型だと思っております。私は杉浦さんのお写真を見るにつけ、その面魂すごいな、明治生まれの人だな、きっとやがてしっかりした答えを出してくれるのではないかなという期待を持っておるわけでございますけれども、先ほど申しましたリストラ策の中に、大野木頭取が言いました、旧経営陣二十四人に退職金の自主返還の要請をする、こうありますよ。  金融監督庁長官、既に退職金の自主返還の事実があったかどうか、既に申し出があったかどうか、これをお伺いいたします。
  44. 日野正晴

    ○日野政府委員 ただいまの御質問につきましては、長銀の方からそれぞれの方々に返還の要請をした後、何がしかの返還があったかという御質問だったと思いますが、返還があったということは聞いておりません。  それから、ただいま、長銀に今でも杉浦前相談役がおられるわけではなくて、既に平成四年に最高顧問もやめているというふうに承知しております。
  45. 山本有二

    山本(有)委員 ぜひこうした多額の退職金、世間並みに勘定をもう一回やり直して、返していただければと思います。  次に、法務省にお伺いいたします。  イ・アイ・イという企業グループがございます。この企業グループ、東京協和、安全の二信組の事件と関係があるわけでございます。特に、その信組の元理事長高橋治則さんの会社でございますが、このイ・アイ・イというグループに関して御質問いたします。  法務省刑事局長、この高橋治則、この人が起こした事件は乱脈経営についての背任罪であります、その事件の処理状況についてお伺いいたします。
  46. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  いわゆる二信組事件における高橋治則については、東京地方検察庁において、平成七年七月十八日から同年十二月二十五日までの間に、背任罪計五件につきまして東京地方裁判所に公判請求いたしました。現在公判係属中であります。  なお、公訴事実でございますが、長いものですから概略を申し上げますと、被告人は、ほか五名と共謀するなどしまして、貸付先及び自己の利益を図る目的をもって、その任務に背き、貸付金の回収を確保するための万全の措置を講じることなく、合計三百八十一億六千四百万円の融資を行い、安全信用組合及び東京協和信用組合に対し同額の損害を与えたものというものでございます。
  47. 山本有二

    山本(有)委員 公判中でありますから云々はいたしたくありませんが、しかし、背任罪で捕らわれているということは間違いありません。一事が万事という言葉をかりれば、この方がほかの場面で同様の背任的行為を行ってなかったかなと私ども疑いたくなるわけでございます。  そこで、イ・アイ・イというグループに長銀は貸付残高、ピーク時で三千八百億円貸しております。そして、系列のノンバンクからの分を含めますと、ピーク時で六千億円でございます。私どもはこの額に唖然といたしました。そして、この額もやはり不良債権になっているのかな、きちんと回収してもらいたいな、そうしないと本当に一生懸命働いている人たちはどう思うのかな、我々はこう思うわけでございます。  特に私が問題にしたいのは、一九八五年から同グループに融資を始めております。そのやり方でございますが、海外リゾート開発計画というプロジェクトファイナンスという案件で貸し付けを行っております。そのときの担保はリゾート開発の完成物件ということで、実質的にはほとんど無担保で貸しているという事実でございます。我々、銀行にお金を借りに行きますと、担保を必ず要求されます。何でこのときにきちんとした担保をとっていなかったのか、不思議でなりません。それが私はどうしても言いたい。  それからもう一つ、この高橋治則さんという人が何で長銀から多額のお金を借りられたのかということをずっと研究している、そういう報道の方からお伺いいたしますと、杉浦さんという先ほどの元頭取、この方が大変世話になっている長銀の初代副頭取がいる。それは浜口巌根さんという人であって、その浜口巌根さんのおいになるのが高橋治則だ、こういう事実が明らかになってまいりました。  親戚だから貸すというようなことがもしあるとするならば、我々の金融システムというのはここでもう既に破綻しているのではないかなと私は思えてなりません。私ども庶民がもし金を借りに行ったときには、奥さんを保証人にしてくれ、それ以外にもっと立派な連帯保証人はないかといって、家を建てるときだって、住宅ローンだって言われるのですよ。そのときに、担保がない、そして縁だけで貸してくれる、しかもピーク時に六千億円。私は、これを調べただけで腹が立って腹が立ってしょうがないのです。  ですから、私もそういうことを考えたときに、今まで金融検査どうなっているんだ、それから日銀の考査どうなっているんだというようなことが、しっかりやってもらわなければ、この長銀に対して、果たしてモラルハザードという面で、我々は公的資金を本当に突っ込んでいいのかなということを考えるわけでございます。そのことを長官にくれぐれも御要請を、お願いをしておく次第でございます。  そしてまた、そこに座っていらっしゃいます預金保険機構松田理事長、さらに金融監督庁日野長官、二人とも検察官の出身でございます。何ゆえ我々与党が検事さんを、東京地検特捜におったり、あるいは高等検察庁におったりした方をそこに据えておるのかという意味合いは、まさにもう一回金融業界のモラルをもとに戻す、日本全体の大きなその使命をお二方は担っているというように思います。邪悪、不正は徹底的にやるということを、昔の勤め先の法務省、検察庁と一緒になって頑張ってやっていただきたいということを要請しておきます。  次に、私は、そんなことを考えながら小渕総理大臣に申し上げたい向きがございます。  小渕総理大臣、アメリカで昔、公的資金を投入するときに、アメリカでもビッグバンがありました、アメリカでも大変な時期がありました、そのときに、社会的影響があれば、大きければとにかく救わなければならぬという考え方があったわけでございます。それをツービッグ・ツーフェールと言うそうでございますが、失業者が多くある、あるいは大企業がつぶれる、だから助けるというようなことであったわけでございますが、だんだんだんだんアメリカではそういう考え方が廃れてきた、こういうわけでございます。  なぜ廃れたかというと、セーフティーネットがもう既にほかにもある。雇用保険だとかあるいは職業紹介だとか、別な部分でできてきた。さらに、経営者責任が不明確になってしまう。そしてさらに、いわば混乱の最中、火事場泥棒ではありませんが、借り得をするという変なやからも出てまいります。そしてさらには、大きな会社が倒れるときには、やはりそれに目をつけて集まる、いわばみつに群がるアリのような犯罪者集団が発生してきて、やがては全部の金融システムを壊してしまう。いわば大きいから、影響がでかいからといって公的資金を投入してはならぬという考え方になったそうです。  そしてまた、今現在では、一九八四年のコンチネンタル・イリノイ銀行の倒産以来、モラルハザード、すなわち倫理が欠如した倒産には金を出さないというルールをつくったそうです。しかも、もしお金を出すときには、公的資金を投入するときにはぴしっとアメリカの大統領が責任を持って判断する、こういうことになっているようでございます。  私は、そのとおりだと思います。金融システムというのは、単に株価が下がる、円安になる、それがひどい、だからシステムが回らないというだけでなくて、国民全体が勤労意欲を失う。すなわち、モラルが低いところが助けられて、モラルが高い、一生懸命やるところは助けてくれないというようなことになったときの精神的金融システム破綻の方がもっと怖いんだということだろうと思います。  その意味におきまして、総理、八月二十日夜、住友信託の高橋温社長を公邸にお招きになっておられますが、事実上の合併支援だと報道されておられます。そんなことを考えましたときに、どうかひとつ、このモラルハザードの上に立って御決断いただきたいと思うわけでございますが、総理のこのときの真意、そして今回の政治判断ということをお伺い申し上げたいと思います。
  48. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 山本委員のお考えも含めてお尋ねがありましたが、国民的な本当の意味での信頼なくしては、金融機関といえども経営ができないわけでございまして、そういった意味でアメリカの例を引かれました。やはり我々としても、そうした観点に立ちまして、ぜひこれからいろいろ法的なきちんとした措置も講じながら、この金融システムというものに対する国民全体の信頼をかち得られるように努力をしていかなければならぬ、こう考えておる次第でございます。  お尋ねのありました合併問題につきましては、先ほども御答弁させていただきましたが、今日の時点におきましては、やはりこの両行が合併をされるということが少なくとも金融システムというものを安定させていくためにどうしても必要なことだ、こういう認識に立ちまして、また、私が今置かれておる責任、すなわち、金融機関合併につきましても、銀行法ではございますけれども、その責任を、金融監督庁の上に立つ私といたしましての責任もございましたので、ぜひその方向につきまして支援ができればということで社長と懇談をいたして、その真意を御説明申し上げた、こういうことでございます。
  49. 山本有二

    山本(有)委員 終わります。
  50. 相沢英之

    相沢委員長 これにて大島君、山本君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  51. 仙谷由人

    仙谷委員 いわゆる長銀問題の集中審議ということでございますが、先ほど来、宮澤大蔵大臣の御答弁、お話を伺っておりますと、重要な点を二、三点おっしゃっておりますし、バブル崩壊後の金融システムの動揺が始まったのが一九九二年ころからだというふうに規定をすれば、つまり、株式の相場に聞けということで、相場のことを思い出してみますと、九二年の八月の十八日でございましたか、たしか一万四千三百六円だったと思いますが、そういう相場をつけた。先行指標だったのだなと改めて思うわけでございます。  そのときに、宮澤大蔵大臣、当時の総理でございますが、九二年の八月三十日、自民党軽井沢セミナーというところで、今から思うと大変先見的なことをおっしゃっておるわけですね。これは言うだけだったのかもわかりませんが、おっしゃっておる。つまり、「「担保不動産をどういうふうにして流動化させるかの仕組みを暮れまでに作らないといけない。金融機関が知恵とカネを出しあってやることが一番好ましいが、必要なら公的援助をすることにやぶさかではない」と強調した。」こういう報道が流れているわけであります。  先ほども、認識としてはそのころそういうことを考えたのだけれども、どうも周囲の反対が大さくてできなかったのだという意味のことをおっしゃいました。この点につきまして、今から振り返ると、蛮勇を振るって、世間の非難を浴びて、大蔵省の反対を受けてもこれをやるべきだったという悔悟の情はおありになりませんでしょうか。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八月十八日に、たしか一万四千三百九円でございましたか、何かそういう大変な株式の低落がございました。その背景となりますのは、私は、今仙谷委員の仰せられたようなことであると。  したがって、この不良債権というものをどうしても処理をしなければならないが、その線上にまた一種の不良債権のセキュリタイゼーションというようなものも、アメリカなんかを見ていると考えなければならないだろう。しかし、いずれにしても、税制の問題もございますし、私は、政府の公的援助という言葉を実は使いましたのは、それ以上具体的にいろいろなことがあると思いましたもので、援助と申しました。そして、それによってでもこれを解決しておかないと将来に禍根を残すということを思ったわけでございますけれども、なぜそれが一般に受け入れられなかったかということは、基本的には、問題の深さというか本質というものがまだまだ世間理解されておらなかったということと思います。  しかし、具体的には、一般の産業人は、銀行を救済するということには本能的に好意を持たない。これは当時、経団連の方々ともお話をしましたときに明らかにされておりますが。また、金融機関ではいいところと悪いところとございますので、いいところは、自分のところはそんな余計なお世話は要らないというような反応をされましたし、悪いところは、やがてそれは責任追及に及ぶであろうと考えられたに違いありません。一般的に役所の間では、恐らく不動産市況というのはやがて回復するのではないか、そうなれば問題は自然に解消するのではないかというような認識といいますかがあったように思います。  そのような事情でございまして、先ほども大島委員に申し上げたことですが、実は、こういう危機が潜んでいるんだというようなことを不用意に申しますと、かえって危機を招くというような問題がございますものですから、私としては、この問題をこれ以上建設的に運ぶことができなかった、そういう事情であったと思います。
  53. 仙谷由人

    仙谷委員 当時は総理大臣でいらっしゃったわけですから、だからオールマイティーだとは申しませんけれども、しかし、やる気になれば、不良債権処理問題を公的資金を投入してでも片づけるスキームをつくることができたはずだと思うのですね。できなかったのはなぜかというのが、まさに日本政治政治システムの問題だと僕は思っているのですよ。  例えば、ちょっと自己宣伝になりますけれども、これは、 一九九三年の六月に出た「シリウス」第二号という本です。ここに私と菅直人、今の民主党の代表が「「土地保有機構」の創設を!」と。不良債権処理のために土地保有機構をつくれと。当時大蔵省がつくった地価税が、年間六千億という税収があったわけですね。これを利子補給の原資にして、自治体にこの不良債権、不良資産となって塩漬けになる土地を買わせる融資をしたらどうか、こういう提案でございます。これは少なくとも政治家責任として、記載をして残してあります。  宮澤大蔵大臣は、総理大臣の時代にせっかく正しい先見的な見通しを持ちながら、何か具体的にこのときに始めたことはあるのですか、この不良債権処理で九二年に。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八月の十八日に株がそこまで行きましたときに、金融機関の業務の運営についての通達を出しまして、これによりまして、ともかく株式市場の危機は結果として救われたわけでありましたが、不良債権問題全体について政府を動員して具体的な策に入りますためには、金融界の協力、協力といいますか理解、あるいは産業界理解国民的な理解等々が得られていない状況であったと判断せざるを得ませんでした。
  55. 仙谷由人

    仙谷委員 株価維持策、つまりPKOを実質的にここからやり始めた。忘れもしませんが、九二年の夏から金融機関に、手持ちの株式を売らないようにという通達を大蔵省銀行局が出したわけです。こういう人為的な操作、マーケットに対する人為的な介入を続けることが、日本金融システムの問題、不良債権の問題をここまでうみを大きくした、そういう認識を私は持っております。ずっとこの間、何かちょっと小手先のことをすれば株式相場が上がるだろう、低落するのもその程度を低くできるだろうというふうなことをやってきた、これが大失敗だったという認識にまず立つべきだと思います。  そこで、今度は政治的な話にちょっと変わりますが、昨年の一月二十二日に朝日新聞に載った、小沢一郎さんとのこういう対談がございます。大蔵大臣が、むしろ褒めていただいたのか、けなしていただいたのかもわかりませんが、当時の民主党に対して、「むしろ私が警戒しているのは、民主党というポピュリストの政党ができたことだ。」「「市民」「消費者」などと格好のいいことをいって、万一、我々が滑ったときに「別の選択肢は私たち」と国民に訴えようとしている。」「市民とか消費者とかいうと、格好がいいので国民が惑わされてしまう。」こうおっしゃっておるわけです。ちゃんと残っておるわけです。  それじゃ、宮澤さん、大蔵大臣、あなたがせっかく正しい認識を九二年の夏に持ちながら、いいですか、世間がそんな雰囲気じゃなかったからといって正しい政策を総理大臣宮澤さんが引っ込めるんじゃ、それじゃポピュリズムじゃないですか、ポピュリストじゃないですか。いかがですか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その新聞の掲載はそのとおり申しました。まことに申しわけありません。  私が今申し上げようとしましたのは、一つのことを行いますときに、やはり国民的な理解と支持がありませんとなかなか急には行えないという現実を申し上げましたので、それでも構わず勇気を持ってやるべきであったとおっしゃられれば何も申し上げることはありませんけれども、やはりそれだけの受け入れる国民的な土壌というのがどうしてもこういう場合に必要であったということを今申し上げようとしたわけでございます。
  57. 仙谷由人

    仙谷委員 私は、私自身の中にポピュリズム的傾向がないなどということを言っているわけじゃないのですよ。だれにでもありますよ。選挙をする身であれば、なるべく受けがいいことを言いたいというのは当たり前じゃないですか。ところが、民主党だけをポピュリストだと断定するから僕はけしからぬと言っているわけです。そうでしょう。  宮澤さんだって、大蔵大臣だって、総理大臣の時代に権限を持ちながら、やるべきことを、国民理解が得られない、国民に知らせたら何が起こるかわからない、そういう愚民思想みたいな考え方で、やらなければいけないことを全然やらなかったという責任は、歴史的に物すごく大きいですよ。これは歴史に残りますよ。そのことだけは申し上げておきます。  それで、先ほどの中で、「「市民」「消費者」などと格好のいいことをいって、」という言葉がありますが、宮澤さんがまだ大蔵大臣になられる前に、これはことしの三月の五日ですか、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで、「日本金融システム安定化と東アジアでの経済秩序の再構築」、こういう講演をされておるわけでございます。覚えていらっしゃいますね。  その中で、何とある部分二十行のうち、消費者という言葉が八回出てきます。日本国民がだんだん消費者としての自覚を強めつつある、だから日本の消費者がそれによって、ビッグバン等々ですが、利益を得ればそれでいいんだ、ディレギュレートは消費者の利益のためであるというふうに、そういう国になって自己責任原則がだんだんできつつあるんだという、そういう意味のことをおっしゃっていますよね。そうすると、宮澤さんも消費者という言葉を使っておって、そのことが正しいんだと言わんばかりのことをおっしゃっておる。  それじゃ、民主党が市民とか消費者という単語 を使ったらポピュリストになって、自民党、あなたが消費者という言葉を使うのはいいのですか。どうですか、お答えください。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、この二十年ほど、そして二十一世紀に今向かいつつある我が国の一番大切な変化は、消費者というものが行政政治の中心でなければならないという国民の意識の変化だというふうに実は考えています。これはもう動かしがたい変化と思っておりますが、それをアメリカで申しましたのですが、そのことを民主党は非常にいち早くつかまえておられる。これもどうも残念ながら事実であります。  それで、私がそこでポピュリストと言おうとしましたのは、つまり、消費者が行政政治の中心でなければならないんだが、それに大変に都合のいいようなことを余り都合よく言うという立場をポピュリストと言おうとしていますので、心底消費者のためにしなければならないということはポピュリストという言葉では私は表現していないと思いますので、その点は消費者が中心にならなければならないという認識は私どもも持っております。これは動かしがたいことと思います。
  59. 仙谷由人

    仙谷委員 そこで、宮沢大蔵大臣の改めて認識をお伺いするわけですが、このジャパン・ソサエティーの中の発言でこうおつしゃつておるのですよ。  日本は、三月末を一応ターゲットとしていろんな必要な法律、予算を成立させました、しかし、これら施策の中には市場経済の原則からは、それに矛盾するものがあります、そういうふうに言っているのです。もっと正確に言うと、「市場経済の原則から申せば決してほめられない、これからリストラをやってビッグバンに臨もうというときに、それに矛盾をするものがあります。」とおっしゃっているのですね。  これはどこからいただいているかというと、宮沢喜一ホームページから、インターネットでちゃんとアクセスをしていただいておりますので、まさか間違ったことを言っていらっしゃらないと思うのですが、これは何を指しているのですか。市場経済の原則からは矛盾するものがある、あるいは決して褒められない、あるいはできる限り早くやめるべきである、こうおっしゃっているのは何のことを言っているのですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それもそのとおり申しました。  私がそのときにウォールストリートで話をいたしましたのは、実際、日本が資本注入をすることになった、私もその計画に参画したわけですが、私企業に、銀行政府が資本を注入するということは、これはいかにも異常なことであって、たまたまアメリカにはそういう経験が最近ございましたから理解は得られると思いましたけれども、今日本はそこまで問題が深刻になっておるので、どうしてもこの不良債権というものを処理をしなければならない、したがって、こういう異常なことをせざるを得ないんだというのが私が講演をいたしました主たる実は説明でございましたものですから、話のトーンとしては、全体余り自慢のできる話ではないんだ、しかし、日本はそうでもしないと、この危機というのは逃れられないんだということを申しましたので、そういうトーンで話をいたしましたことは確かでございます。
  61. 仙谷由人

    仙谷委員 決して褒められない、市場経済の原則に矛盾するものの中に、今おっしゃった公的資金投入というのはもう最たるものだと私も思いますが、後からお伺いしますが、その前段、いわゆる郵貯、簡保の資金で株を買ってPKOをやってもいいんだ、プライス・キーピング・オペレーション、株価を高くするために、三月の末を目指して一万八千円にしようなどということを大言壮語する大実力者の政治家がおったり、そして現に郵政省は、そんなことをされるのだったらこういう条件がありますと、慌てて走っていったりするというふうなことが一つは行われました。  さらには、決算対策のために低価法を原価法に変える。銀行があるいは銀行以外の会社も、手持ちの株式を買ったときの値段で評価していいんだ、それが幾ら安くなっておっても買ったときの値段でいいんだ。国際的な流れは低価法、つまり安い方を書かなければいけない、安い方を記帳しなければならないという時代になっているのに、日本だけが、従来は銀行は低価法をやらせておったのに原価法でもいいんだ、こういう逆さまなことをやった。土地の再評価、そしてあげくの果てに公的資金の投入と、こうなるわけですよ、三月の自民党対策は。  大蔵大臣が当時ごらんになっておって、この株価を底支えするために郵貯、簡保の資金を入れるとか、低価法を原価法に変えるとか、あるいは土地再評価を恣意的に行ってもいいとか、こんなことをごらんになっていて、どうですか、市場経済の原則にも反することなんじゃないですか。褒められないんじゃないですか。早くやめなきゃいけないことなんじゃないんですか。いかがですか。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当時、株式の評価を原価法でよろしいということを、これは行政の通達であったと思いますがいたしました。他方で、銀行の持っておる自己の、仮に本店のおります土地などは昭和の初めの評価でございますから、これは今の価格で評価アップをしてもいい、反対の方向のことでございますから。どうもあれこれそういうことは、我が国があのピンチを何とかして三月のときに逃れなきゃならないという命題がございましたものの、平時におきましてそれほど自慢できるような方策ではない、それは私はそう思っております。
  63. 仙谷由人

    仙谷委員 自慢できないばかりではなくて、最近は、マーケットに見透かされているわけですよね。全部見えているじゃないですか。頭隠してしり隠さずみたいな話ですよ。  例えば、後で聞きますけれども、長期信用銀行の株式評価損というのは、決算をして有価証券報告書を出すときには、原価法でうちはやりましたから、これだけの手持ちの有価証券があって評価はこうしてありますけれども、実際はこれより二千百億円マイナスであるということを書かなければ通用しないわけでしょう。そういう時代になっているのに、いわゆるげたを履かす。げたを履かして決算だけ乗り切ればいいというふうな、こんなことをやってはならないという信念が、私は、宮沢大蔵大臣であれば、当時は大蔵大臣でなかったかもわかりませんが、日本の戦後政治史上最高の経済学的知識と政策と哲学を持った方であるから、こんなことは直ちにやめさせるであろう、こう思っておるわけでございます。  重ねてもう一つ聞きます。  このホームページの文章の中に、もう護送船団はやらないんだ、「北海道拓殖銀行、山一証券などの破綻はやむを得なかったものと考え放置しました。」こう書いてあるんですね。すばらしいと思いますが。  護送船団をやらないという大見えをアメリカまで行って切りながら、三月末日の公的資金投入に当たっては、まさに横並びの、十九行一斉に申請させて、一斉に審査をして、一斉に公的資金を投入する、こういうばかげたことがなぜ起こったのでしょうか。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、護送船団という行政は非常に弊害を生みました、競争というものをなくしたわけでございますから、それはもうしないんだという例として拓銀の倒産を挙げたわけです。  また同時に、公的資本を三月の末に投入するということは、今仙谷議員が言われましたように、あたかも護送船団のごとくに見えるでございましょうから、それはシステムを守るためのやむを得ない措置なのであって、これは護送船団を意味するものではございません、その方向とは決別をいたしますということを申したわけでございます。  現実に、護送船団方式があったゆえに銀行間の競争が起こらず、消費者が一番ばかを見ている。それは、今回金融監督庁の検査が行われることによってそこから今我々は決別しつつある、そういうふうに考えております。
  65. 仙谷由人

    仙谷委員 全然まともなお答えになっていないと思いますが、具体的にいきましょう。  さっきも、銀行経営者はむしろ公的資金の投入というふうなことを九二年段階は嫌がったんだ、干渉を受ける、こういう御答弁をほかの質問者に対してなさいましたよね。私もそう思うんですよ。銀行経営者ともあろうものが、国からお金を資本金として入れていただかないと経営できない、銀行をやめた方がいいですよね。資本主義、市場経済の最も骨格で、最も最先端を行くべき金融業、バンカーが、国から金を入れてもらわなければ経営できない、やめた方がいい。マーケットから資金を取るというのが原則ですよね。そうお考えになりませんか。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでございますから、いい銀行ほど、投入しましたものは早くお返しをいただくというふうになってきております。それは当然のことだと思います。
  67. 仙谷由人

    仙谷委員 私、この十九行の資金投入を見ておりまして、不思議だなと思ったのですよ。そんな国のお金なんかうちは要りません、国民が株主になるような煩わしいことはやめてください、自由に経済活動をしたいからやめてください、こういうことを言う経営者が出てくるのかと思っていたのですよ。一つや二つやその辺は出てくるのじゃないかと。  率直に申し上げて、議決権なき優先株式であっても株主ですよね。銀行法上の一般的な規制以外は、国民が株主になった銀行というのはすべて国民に、それこそ今まで以上にいろいろなことをディスクローズしなければいかぬわけですよ。当然のことですよね。その観点が銀行経営者におありになるのか。全くないのじゃないか。  銀行経営者の中で、公的資金投入について、ありがとうと言った人はおりますか。お願いしますと言った人はおりますか。申しわけないと言った人はおりますか。皆さん方の税金をこんな格好で使わせてもらう、銀行経営者としてまことに恥ずかしいというふうに言った人はおりますか。こんなことが上の方から起こっているのが今の日本なんですよ。どう思われますか。銀行経営者は、それこそ長嶋監督みたいにみんな頭を丸めて、国民に土下座してありがとうと言うべきだと思いますが、どうですか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月の資本投入の時期に私は政府におりませんでしたので、正確に申し上げることはできませんが、横から見ておりますので。  私の感じは、非常に貸し渋りが強いという批判は各行とも浴びておりまして、したがって、資本を充実すれば、それだけ貸し出し能力はその十二倍とか二十何倍とかふえるわけでございますから、そういうような状況にかんがみると、世間のそういう批判に対して、やはり資金充実をすることは入り用であろう、こういうふうに判断をされた向きが多いようで、仙谷議員の言われますように、このことは大変名誉なことであるとか、本来好ましいことであるとかいうふうには思っておられなかったところが相当ございますでしょう。しかし、それによって国際的ないわゆるBISの基準は維持しながら、しかし貸し出し能力を大きくするということは、結果としてはそうならなかったところもございますけれども、まあいわば要請であろうというふうにお考えになったのではないかと思います。
  69. 仙谷由人

    仙谷委員 では、この点について、総理にも聞きましょう。  今のような、マーケットから取れない銀行が出てきたから、国が公的資金という名前をつくって国民の税金をぐるぐる回しにして銀行に投入したというのが三月の公的資金投入ですよ、僕に言わせれば。  銀行の方は、いや、我々は公共性があるんだ、金融システムというのは極めて高い公共性があるんだ、だから、マーケットから金が取れなくなっても、経営の基盤が揺るぎそうになっても、公的資金が入ってくるのは当然だ。そこには国民の視点がないんですよ、国民の視点が。国民の腹を痛めることになる可能性があるという視点がないんですよ、これは。公共性に開き直っているんですよ。だから最近、銀行経営者が公共性に開き直っている、このこと自体が大変なモラルハザードだ。日本国じゅう、そして金融のモラルハザードの最大のものはここにある、こういう議論が相当大きくなってまいりました。  私も我が意を得たりと思っておるわけでありますけれども、いかがですか、総理、どう思われます。銀行の、感謝もしない、謝りもしない、お願いもしない。どう思います、これ。
  70. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 三月期にそうした資本注入がされた時点で率直に感想を申し上げれば、若干、護送船団方式、これまだ終わらざる状況かなという素朴な印象は持ちました。  ただ、先ほど大蔵大臣が御答弁されましたように、この注入につきましては、それぞれの銀行状況の中で、貸し渋り対策等も含めましてBIS基準を上げていきたい、そのことが金融機関自体の安定につながるという趣旨で行われたことだと承知をいたしておりますが、しかし、今委員が御指摘のような観点で、こうした金融機関自身も真剣にそうした声のあることを承知して、これからそれぞれ経営に当たっていただきたいという強いそうした思いは私自身もいたしております。
  71. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  72. 相沢英之

    相沢委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  73. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。仙谷由人君。
  74. 仙谷由人

    仙谷委員 パネルを二枚と、それから用意をしてまいりました絵のような、つまりパネルをコピーしたものでございますが、各自に御配付いただくことを御許可いただきたいと存じます。
  75. 相沢英之

    相沢委員長 許可します。どうぞ。
  76. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど自民党大島委員からの質問に、資金投入、税金投入というのは一体どうなっておるんだという質問があって、大蔵省の方からお答えがあったわけでありますが、よくわからないということでございました。  これをひとつ現在の時点から振り返ってみるとよくわかるのではないかということを考えてみました。今お配りした「三月に投入した公的資金の現在価値」という一覧表をつくってみたわけでございます。これは、私どもの計算方法が誤りであるか間違いであるか、これを大蔵省あるいはどこでも結構でございますけれども、まずお答えをいただきたいのであります。  つまり長銀を例にとりますと、本年の十月一日からは普通株に転換できる。転換をする際の優先株に対する普通株の仕切り価格を三百二十六円にする。優先株は一株千三百円でありますから、一対四であります。つまり、優先株一株に対して普通株四株をお渡ししますよ、したがいまして、先般の三月三十一日投入分は千三百円の株、優先株一億株でございますから、普通株に直すと四億株になる、こういうことでございます。四億株を十月一日に普通株に転換をしてもらって、市場で、マーケットで売る、それで資金を回収する、こういう話に先ほどの大蔵省の金融企画局長の話ではなるはずでございます。  ここに、パネルに置いてありますのは、長銀の昨日の株価五十二円で計算をしたものでございます。五十二円で計算いたしますと、四億株ですからすぐ答えは出てまいります。現時点では三月三十一日の株価と比べましても一株当たり百八十円減少をしておるわけでありますけれども、この五十二円掛ける四億株ですから、答えは簡単に出てまいって二百九十一億円。優先株の分千三百億円、この分と差し引きをしてやればこれだけの評価損が現時点で生まれている。つまり、一千九億円も現時点で損しておるわけであります。五十円内外を推移していくとすれば、十月一日以降は、もう国民は、一千億円以上のものを損をして税金がそこに払われなければならない、こういうことになるわけであります。  劣後債は、比例で計算をいたしますと、劣後債というのは優先株よりもまだもっと価値がないといいますか、最後の分配に当たっては優先株よりも劣後するわけでありますから、これは三百六十一億円ぐらい評価損が発生しておるのではないか。合計千三百七十億円ぐらい評価損が既に出ている、こういう計算になるわけでありますが、この計算でよろしいんでしょうか。
  77. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる資本注入によって引き受けられました優先株式とか劣後債は、普通株式と異なりまして、先生御存じのように現在市場取引が行われていないわけで、その時価を把握することはなかなか難しいと思います。  今のお話のような、転換等も含めまして取得優先株式等の処分の時期は、これは市場の動向等を見ながら、国民の負担を最小限にするとの観点も踏まえて、いずれ決定されるものと考えております。
  78. 仙谷由人

    仙谷委員 質問に全く答えていないですね。長銀の有価証券報告書に記載してあるわけですよ。ごらんになったことないんですか。転換の方法が書いてあって、本年の十月一日からは転換できることになっているんですよ。いつまでも転換しないで持っているということならばあなたの答えでいいかもわかりませんけれども、そんなことはない。  先ほどは、できるだけ早く換金するとおっしゃったじゃないですか。だから私は丁寧に、十月一日以降どうなるのか、その前提で現在価格に引き直したら優先株はたった二百九十一億円にしかならないじゃないか、こういう話をしているのですよ。  だから、評価損が現時点でこのぐらい発生している、発生しているかどうかということはお答えできるはずですよ。もしそんなことを仮定の質問で答えられないなんというのであれば、マーケットの中では一切通用しませんよ。マーケットというのは、すべて予測のもとに、あるいは現在についても、評価損が発生しているのか、評価益があるのか、そういう観点からマーケットは動くのじゃないですか。どうですか。
  79. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  確かに、法律では「できる限り早期に」という規定がございます、先ほど御説明いたしましたが。したがって、整理回収銀行としてはその時期等をいずれ決定しなければならないわけでございますが、例えば将来、合併後の新銀行が収益が上がることによって、またそれはという可能性もございますし、また、経営改善努力によって将来回収可能性が出てくることも考えられますので、今の評価自体は先生のおっしゃるようなことだと思いますが、最終的にまだ確定しているわけではないということでございます。
  80. 仙谷由人

    仙谷委員 極めてひどい話だと思いますね。いっかよくなるかもわからないという話は、先ほど九二年の話をしたじゃないですか。いつか土地が高くなるかもわからない、土地が高くなったら不良債権がなくなるという話でここまで来ているのでしょう。ましてや、一度ならず二度までも、国民の税金を資本注入と称して入れてもらわなければみずからの不良債権処理もできないような銀行が、いっかよくなるなんという話がどこにありますか。  現に、三月三十一日から四、五、六、七ですよ。六月から始まっているじゃないですか。たった四カ月や五カ月でこんなに、五分の一以下になるなんということをどう考えているのですか。どこかに間違いがありますよ、これは。税金投入がこんなことでだらだらと十九行全部に行われてごらんなさいよ、幾ら金があってもたまらないじゃないですか。まず評価損をちゃんと認めなさいよ、現在はこうだと。  そして、先ほど合併の話が出ました。合併するときに、現在の株価格がこうで、国民の税金を投入する。その前には全部こんなものは消却してもらわなければいけない。消却するのが当たり前じゃないですか。旧来の株式を抱いたまま、それが価値を持って合併するなんという方法がどこの世の中にありますか。そんな経済合理性のないやり方が許されるはずないじゃないですか。もうちょっとマーケットの常識というものを考えてくださいよ。  この評価損について、どうですか、肯定できますか。それとも、この計算方法はうそだと、現在時点でもこんなに損をしていないということを言い張るつもりですか、どうですか。お答えなさい。
  81. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  先生がお示しになられました前提で計算すれば、現在そういうことだと思います。それはそういうことだと思いますが、先ほどから申し上げましたように、経営改善努力とかいろいろな努力の結果、これはまたいずれ評価も動く可能性があるということを申し上げておるところでございます。
  82. 仙谷由人

    仙谷委員 評価損を一応お認めになりましたので、もう一点だけ指摘をしておきます。  私は先ほども国民におわびもお願いもしないで公的資金の投入というものを、資本注入というものを十九行の経営者が受け入れたのはけしからぬ、モラルハザードのきわみだということを申し上げましたが、さらにつけ加えますと、この長銀の配当、国民の税金を資本注入ということで受けているにもかかわらず、一般株主にこの三月期決算で配当しておる。こんなふざけた話がどこにありますか。会社の体力を弱らせたのは経営者の責任だけれども、株主が相応の責任をとらないで国民の税金だけ入れてもらう、そんなことが許されるはずがないじゃありませんか。どうしてこんないいかげんな投入が行われたのですか。預金保険機構松田さん、お答えください。
  83. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  まず、三月期に長銀に、確かに一千三百億円の優先株の引き受け等をいたしました。  そのときに、審査基準の立場から見てみますと、ちょっと細かい話になって恐縮でございますが、基準の三におきまして、申請金融機関の自己資本比率が国際統一基準で申しますと四%から〇%のランクにあるという場合には、株式の配当の禁止、抑制等による社外流出防止策をきちんとつくること、すること、これが資本注入の前提になっております。  それで、このときの審査では、長銀はこの項に当たりませんでした。この自己資本比率ではございませんでした。したがって、この審査基準には当たらないということが第一でございます。  それから、一応株式でございますので、当該発行体の企業が適法な配当可能利益をやりくりして株主に配当したとしても、それはそれ、基本的には各行各行の経営判断ではないかなと思います。  同時に、さりとて、その配当利益を打破してむちゃくちゃな配当をするということであれば、とてもそれはたまったものじゃありませんので、それは基準の四とか五とかでいろいろ制限しなければいけないのですが、このときはそういう状況はございませんでしたし、中期的な収益計算を出しているのですが、そのときは配当可能原資は一応あるということでございましたので、そういう配当が行われたのであろう、このように思います。
  84. 仙谷由人

    仙谷委員 公刊されておる日本長期信用銀行の有価証券報告書、つたない会計学の知識で読んでみました。百四十四億円の配当をしているのですね。  ちょっと見ますと、長銀の有価証券報告書を見ますと、税引き前の当期純益がマイナス二千七百九十一億七千五百万円。税金を、これは法人税なんかはほとんど払ってないと思いますが、法人事業税とか地方税を若干払って、当期純益がマイナス二千八百億円といいましょうか、こういうマイナスの決算をしておるわけですね。ところが、任意積立金を二千九百九十五億一千六百万円取り崩して、そして配当をしておる、こういうことじゃないですか。  国民の税金を一千七百六十六億円ももらう銀行が任意積立金を取り崩してまで配当する。取り崩せる積立金があるのだったら、それは資本増強に充てればいいじゃないですか。どうしてこういうでたらめなことが起こるのか。松田さんが、当時はそうじやなかったとおっしゃるけれども、それは審査が甘いということにしかすぎない。  商法上の規定を調べてみましたら、辛うじてタコ配当にならない、違法配当にならない。積立金を取り崩して配当すること自体は違法ではない。確かに講学上の学説や判例ではそうなっていますよ。合法性があるから何をやってもいい、国民からは税金をもらうから何をやってもいい、こんなことが通用しますか、世の中に。どうお考えですか、大蔵大臣
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、先ほど預金保険機構理事長が言われましたように、資本装備率が、資本レートが非常に低いものについては、公的資金を導入するときに配当をしてはいけないとかいろいろな条件をつけることが第一ございます。  そうでない場合には、一般的に申しまして、配当をすることは企業の義務でございますから、中期的に配当の能力があった場合に、この公的資本の導入というのをフェーバーと考えるかどうかということについて、基本的にはその銀行そのものに対するフェーバーではない。金融秩序が保たれるということは、間接的にはフェーバーでございますけれども、直接のフェーバーではないというふうに考えますから、したがって、銀行に中期的に配当能力がある場合にそれを禁止するということは、先ほど申しましたように、非常に資本率の低いところはともかくとして、一般的には預金保険機構はそう考えていないわけであります。
  86. 仙谷由人

    仙谷委員 随分お優しいんだと思いますね。お優しいと思いますね。  それで、三月三十一日の審査のときの結論からいうと、この公的資金、一千三百億円の優先株、四百六十六億円の劣後ローン、この分については一株について一%の配当が出ることになっておって、それを約束したわけでしょう。ところが、今度の改善策でどうなっているのですか。もうこれからは払いません、優先株に対するお約束した配当は払いませんと。この間長期信用銀行が発表した改善策と称するものには、今回の修正による措置で書いてあるでしょう。もうくず同然じゃないですか。  配当は払わない、評価損は一千億を超えて発生する、長銀に対する投入はこんな事態になっているのですよ。これ、だれが責任をとるのですか、大蔵大臣
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に、仙谷委員お話を伺っておりますと、三月に預金保険機構が審査をしたときに既に長期信用銀行は非常に内容が悪かったんだ、それにもかかわらず公的な資本を投入した、そういう前提で考えておられますけれども、私どもは、事実に徴すると、どうもそうではなかったのではないか。その後に、長期信用銀行について、月刊誌等々が口火になりまして、いわゆる信用不安が起こって株価がどんどん低落をいたしました。  現実には、金融的に銀行が非常に苦しい状況になって、そして合併の話に入っていったわけでございますから、本来的に銀行の内容が非常に悪かったということではなかったのであろう。したがって、配当を禁止する基準にはもとより触れませんしいたしますから、配当を求めることになった、配当が行われることになった、こう考えているわけです。
  88. 仙谷由人

    仙谷委員 宮澤大蔵大臣ともあろう方が、長銀の実情について、三月はよかったけれども、三カ月間、四カ月間の間、雑誌がでたらめを書く、マーケットがおもしろがって売り浴びせる、だからおかしくなったんだ、そんな認識ですか。  長銀が、みずからの資産の内容、債権の内容をちゃんとディスクローズしないで不良債権の飛ばしをやっておるのではないか、みずからが担保をとっているノンバンクについても本当に回収できるのかどうなのかわからない、そういう懸念がマーケットにあるから、毎月毎月ずるずるずるずる、金融債の発行額も減少、償還額だけがふえる、こういう状態になっているんじゃないですか。すべて、挙げて長銀の経営体質に問題があるんじゃないですか。マーケットがでたらめなことをやって、マーケットの方が悪いからこうなるんだ、そんな論理は今の時代、通用しませんよ、申し上げておきますけれども。どうですか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、総括的に申しますならば、日銀の考査においても債務超過ではない。また、金融監督庁長官は、債務超過と考える理由は自分は今のところ聞いていないとおっしゃいますから、それでお答えとしては十分かと思います。
  90. 仙谷由人

    仙谷委員 現在のマーケットの厳しさに対して、大蔵大臣までがその程度の甘い感覚、金融監督庁長官も、この間からずるずるの大甘のことを言って、本当のディスクローズをしない。ディスクローズすると国民が不安がる、恐怖心をかき立てられる、そういうことを言い続けるから、きょうだってどんどんどんどん株価が落ちているんじゃないですか。ディスクローズができない、そういう検査なんというのは、あるいはそういう体質というのは、マーケットはお金が逃げていくんですよ。あるいは、売ってはならないということをやってみたり、PKOをやる、格好の標的になるだけじゃないですか、マーケットの。  ちなみに、午前の終わり値、長銀は四十九円です。日経平均は一万四千四百六十円、これで計算をいたしますと、二十一行に資本注入した一兆八千億ですか、その分の評価損は七千八百二十四億円、今評価で損しています。このことだけは銘記してください、長期信用銀行は、現在の四十九円で計算しますと、一千三百九十三億円の評価損です。いいですね。そのことだけは銘記してください。  次の質問に移ります。  長銀の実態について先ほどからの答弁を聞いておりますと、非常にのんきです。のんきです。今そこに絵をお配りをしてあると思います。これだけの正しい会社もあるけれども、正しい会社も体半分いかがわしくなっていたりするわけです。これだけの債権があるわけです。  先般の長銀の改善策で、放棄するとおっしゃった日本リース二千五百五十七億、日本ランディック千六十五億、千百億と書いてあると思いますが千百億、エヌイーディー千五百八億、その三つについては、長銀もさすがに名前を出して、大胆にも放棄するとおっしゃうた。私は放棄してはならないと思いますよ、相当部分は。そんな簡単に放棄されたら困るのです。ところが、この三つについては言った。ところが三つでおさまらない。おわかりでしょう、これだけあるのですよ。  この中に、桃源社というのがあります。有名な桃源社。これは、長銀からも直接、この図面には書き忘れておりますが、百八億円の融資が行っております。もちろんこんなものは取れません。その他、長銀関係のアメニック、翔栄企画その他弱小のペーパーカンパニーから融資が行われたり、あるいは未収利息ということで債権が立てられたりして、全部で、長銀関係、エヌイーディーの二百五億も合わせますと、六百二十五億というお金がここで、長銀で塩漬けになっています。  そこで、金融監督庁にちょっとお伺いしたいのだけれども、そこまで我々の能力では調べてませんと言うのだったらいいですよ。わかりませんと言ってくれればいいのだけれども、先般の、長銀が引き当てるとかなんとか言っている二千三百億、五千二百億円のほかの二千三百億、これは、私が今示しておる、日本リース、ランディック、エヌイーディーのほかの、日本ビルプロジェクト、長ビル、第一ファイナンス、ジャリック、長銀インターナショナルリース、ファーストクレジット、長栄、長友、ここに書かれておるようなところに対する融資が含まれているのですか、含まれていないのですか。
  91. 日野正晴

    ○日野政府委員 まず第一にお答え申し上げたいと思いますことは、銀行法、長期信用銀行法に基づく私どもの検査権限は金融機関本体に対するものだけでございまして、金融機関の子会社は格別ですが、関連会社に対して直接は検査権限がないということを御運解いただきたいと思います。  ただ、それは関連会社について何も調べないのかということではなしに、それはその金融機関本体からいろいろ資料を取り寄せたり、あるいは関連会社そのものが有価証券報告書を出しているような場合には、もちろんそれは調べさせていただいております。  なお、自己査定の内容あるいは個別の貸出先等につきまして私どもが言及することは、やはり個別行に対する関係でいろいろ問題があると思いますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
  92. 仙谷由人

    仙谷委員 まず、これだけお認めになりますか、なりませんか。関連会社として、少なくとも私が指摘しているこれだけの会社があるということをお認めになりますか、なりませんか。
  93. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  これもやはり個別のお話になりますので、お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  94. 仙谷由人

    仙谷委員 ここに対する債権を、長銀債権を放棄したり償却前引き当てとして引き当てたりするから自己資本が少なくなる、過少になる、だからその分を国民の税金を公的資金として注入するのだとさっきから言っているでしょう。過少資本になるから支援するんだと言っているんじゃないのですか。国民の税金が入っていく理由、直通でこういうノンバンクに入るとまではきょうは言わないけれども、そのうち言うかもわかりませんよ。きょうは言わないけれども、これだけ密接な関係があるのに、この存在まで認められないんですか、関連会社の存在まで。何を考えているんですか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 監督庁長官は、ああいうお立場上お答えをされざるを得ませんが、私伺っていて、この絵にあります一つ一つの会社のこと、私存じません。存じませんが、この間リストラにありました五千二百億と二千三百億、七千五百億、そのほかにいろいろあるだろうというお尋ねなんですから、それはあると思います。あれだけに限るとは言っておりませんし、あると思います。
  96. 仙谷由人

    仙谷委員 中身はもう少したってから聞きますが、まず一つ聞きましょう。  この日本リース、日本ランディック、エヌイーディー、この長銀債権、担保がついているんですか、ついていないんですか。担保設定されているんですか。この間本会議で聞いたけれども、けんもほろろに何もお答えいただけなかった。どうですか。
  97. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  御指摘のこれら関連ノンバンクヘの貸し出しの担保の設定状況等につきましては、個別取引先との取引の内容そのものでございまして、これに言及することは、取引先等に不測の損害を与えるという問題がございますし、信用秩序等に不測の影響を及ぼすおそれがあると思いますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
  98. 仙谷由人

    仙谷委員 いいですか。長銀が例えば日本リースに貸し付けた債権が優良債権であるとすれば、優良債権を放棄するなんてばかなことがこの世の中にあってはならないのですよ。優良債権を放棄して、国民の税金を資本注入で入れるなんということがあってはならないのですよ。優良債権ば回収してもらわなければいけないのですよ。常識ですよね、あなたも法律家だから。すべて取引先のどうのこうのとおっしゃるけれども。だから、公的資金なんか受け入れちゃだめなんですよ、そんなことを言うのであれば。国民の大事な税金を受け入れる以上は、事の次第を国民に説明しない限り、だれも納得しませんよ。  我々のところへ、皆さん方のところへ、親戚の方でも友達でもいいですよ、サラ金でこんなに大借金をして払わなければいけないから金貸してくれと言ってきたら、どうします。(発言する者あり)そうでしょう、もっとあるんじゃないかと。弁護士じゃなくたってだれだって、そのことぐらいは気がつくのですよ。本当は全部はどれだけあるんだ、それ以上ないなと、そう言うことが常識じゃないですか。どうしてそんな常識的なことができないんですか。  そしてまた、長官、あなたのような紋切り型のことを言っていても、例えば日本リースについて言えば、有価証券報告書にちゃんと載っているじゃないですか。どうして有価証券報告書に記載されているようなことを秘密だなんだと言うのですか。  私の方から言いましょうか。それとも長官の方から自主的に公開しますか。どうですか。
  99. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、金融機関の関連会社は、仮に有価証券報告書が出ているような場合には、その有価証券報告書においてすべて把握されております。  それから、有価証券報告書は、もう御案内のとおり、これはディスクローズされているものでございますので、私からあえてそれを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  100. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵省、どうですか。この種の金融業者、ノンバンク、この種の分については、財務局に有価証券報告書は届けられることになっているのじゃないですか。有価証券報告書をごらんになって、担保つきであるかどうなのか、債権の実態的な内容を、ここに記載したような、皆さん方にもお配りしたようなこのノンバンクの債権の実態的な内容を開示するつもりはありませんか。大蔵大臣、どうですか。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここも、お話を伺っていますと、五千二百億円が不良債権なのかどうかということを今きわめようとしていらっしゃるのでございますから、会社自身不良債権としてリストラの中で処理すると言っておるのでございますから、不良債権だと考えてよろしいのじゃないでしょうか。
  102. 仙谷由人

    仙谷委員 大臣、そんなことが許されるのだったら、これは不良債権、これは不良債権でないというのは極めて悪意的に本人が選別できるということですか、会社本人が。何でそんなことが許されるのですか。そのしりふきに、穴埋めに何で国民の税金をほうり込まなきゃいかぬのですか。冗談じゃないですよ。それは冗談じゃない。そんなことは許されない。まさに回収不能の不良債権を償却するかどうかという話でしょう。あるいは、劣化した不良債権にどう引き当てるかという話でしょう。  そんな優良な債権を、例えば日本リースという会社が、ああ、これは不良債権だから捨ててしまえ、長銀が、日本リースに対する債権は優良債権で、きのうまで優良債権だったけれども、今夜不良債権として認定したからもうこれは不良債権にするなんて、そんな悪意的なことができるのですか。どうですか。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはちょっと実態と離れたお話じゃないかと思いますのは、リストラの中でどうしても放棄せざるを得ない債権が五千二百億円ございますと銀行が言っているわけでございますね。それが本当かどうかは金融監督庁がお調べになればわかるのであって、我々の話としては、それが不良だという前提でこう考えて今言っているわけで、その実態というものはまさに金融監督庁が御存じにやがてなるはずで、それをしかし今言えとおっしゃいますから、監督庁長官はそれは申せませんと、こう言っておられるのじゃないですか。
  104. 仙谷由人

    仙谷委員 だから、すべて金融監督庁にお任せしなきゃいかぬという議論ですね、今。それで我々はただ税金を取られるだけ、こういう話ですね。そうなるじゃないですか。それで、いいですか。ちょっと待ってください、私、事実を指摘しますから。  この約二千五百億円の長銀日本リースに対する貸付金のうち、長期借入金六百九十八億三千二百万ですよ、期末で残っているのは。ちゃんと譲渡担保がついているじゃないですか。そして、現に期首にはこれは九百六億円あって、この期間中、つまり昨年の四月一日からことしの三月三十一日までに二百十一億元本返済まで受けているじゃないですか。何でこんなものが不良債権なんですか。短期借入金の一千八百五十八億四千八百万、これは確かに担保はついていません。担保はついていない。しかし、今まで金利が払われていたじゃないですか。ちゃんと金利払われていたんでしょう。何で不良債権なんですか。  大体この債権が何分類におったんですか、簡単に放棄するとおっしゃるけれども。そんなに簡単に放棄されたら困るんですよ、我々国民は。法的手続にのっとって回収できるものは回収する。してくれなければ困るんですよ。どういうことなんですか、これは。
  105. 日野正晴

    ○日野政府委員 この二千五百億について貸付金を放棄する理由についてでございますが、これは私ども長銀から聴取しているところでは、こうした方法によって抜本的な不良債権処理を行うことが住友信託銀行との合併を円滑に行うための必要な条件である、こういうふうに判断されたというふうに聞いております。  なお、これが何分類に属するかについては、先ほど申し上げたような理由で、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  106. 仙谷由人

    仙谷委員 もう宮澤大臣のお答えも長官のお答えも聞いて、依然として非常に温かい、銀行に温かく、国民には何も知らせない。知らしむべからず、よらしむべし、これ以外の何物でもないじゃないですか。こんなことを続けるんですか。こんなやり方を都銀、長信銀、十九行全部に続けて合併再編劇を行うんですか。ブリッジバンク法案はあんまり関係ないから全部この方式でやるんだみたいなことが新聞に書かれていますよね、金融監督庁筋の話とか。冗談じゃないですよ。国民が知らない間に幾らつぎ込まれるかわからぬじゃないですか、こんなことやったら。  俗に、日本リースは一兆八千億円ぐらいの債務があると言われていますよね、後で海江田委員質問をいたしますが。実際問題はどうなんですか、これ。日本リースといい、エヌイーディーといい、日本ランディックといい、これと長銀の関係は一体どういう関係なんですか。それを、ある時点で皆さん方の調査結果を公表できるんですか、できないんですか。そのことを答えてください。
  107. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘日本リース、ランディック、エヌイーディーは、いずれも長銀の関連会社と申しますか、主要な関連ノンバンクで、貸付先でございます。  ただ、その第二点の御質問につきましては、先ほど来お話し申し上げておりますようなことで、このお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  108. 仙谷由人

    仙谷委員 国会だからということではありませんが、今回は、三月時点でもう、一部国有化とでもいうか、国民の税金を投入しちゃったんですよ。国民がいわば株主になっているんですよ、一部。今度は堂々たるもので、長銀は、だれの断りをまつまでもなく、過少資本になるから資本投入を申請するんだと胸を張って言っているじゃないですか。そんなところで何のために国民の税金が使われるのかという理由が国会で、最低限国会では明らかにされないと、そんなことが承諾できるはずないじゃないですか。  ちょっと話題を変えます。先般、これはどこからか知りませんが、理事会の方に「退任した取締役と退職慰労金支払額」、合計額で出てまいりました。この表と、この関連会社のこれを比較対照しながらやりますと、平成四年の百田俊弘、これはファーストクレジットの社長ですよ。平成五年の亀田浩、日本ランディックの会長。同平成五年の中島省吾、エヌイーディーの社長。平成六年の萩野修、日本リースの常務。平成八年の木村栄二郎、日本ランディックの社長、長友の監査役、伸栄開発の社長。千葉務、日本リースの副社長。ほとんどそうじゃないですか。そして、平成三年のことは書いていないけれども平成三年に岡本弘昭さん、日本リースの代表取締役。石井利彦さん、日本リースの常務取締役。増沢高雄さん、長銀の現職の会長ですよ、そして日本リースの監査役ですよ。この集団が長銀グループじゃないですか。  巷間言われているだけじゃなくて、どこまで、ノンバンクを経由するか直接かはともかくとして、この種の債権がどういう理由で貸し付けられて現在どうなっているのか、そのことを解明して国会の前に明らかにしない限り、ただやみくもに、六千億か七千億か一兆円か知りませんが、資本投入するなんということはあり得てはならないと思いますよ。  どうですか、小渕総理。解明をしないで投入するということがあり得ますか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律の規定によりますと、公的資本を投入いたしますのは金融危機管理委員会でございます。  委員会は、これを決定するに当たりまして諸般の状況を基準に基づいて検討いたしますが、もとよりその中で、長銀のいわゆるリストラ計画、それから債務支払い計画が適正であるか真実であるかということを審査されますし、また、金融危機管理委員会の委員としては、金融監督庁長官も、あるいは松田理事長委員であられますから、当然そういう御自身の知識をもって審査に当たられるわけでございます。したがって、長銀の言っておる、今お話しのような話をそのままやみくもに前提にするということは、審査の場ではございません。
  110. 仙谷由人

    仙谷委員 もう質問に全く答えないではぐらかしたまま、国家権力を持っているというそれだけのことで堂々と国民の金を何の緊張感もなくお使いになろうとする。こんなことは長続きしませんですよ、これだけ情報化社会の中でマーケットの監視がきつくなってくれば。そういうことをおわかりになっているんじゃないですか、立場上お苦しいのかもわからないけれども。全くディスクローズなき資本注入なんということは許されませんよ。  きのうも、長銀のリッチョー、ワリチョー、この発行高を示せ、資料を出せと申し上げました。そうしたら、「金融債の毎月の発行額」、これだけ出された、平成八年の七月から平成十年の六月まで。どんどんどんどん減ってきていることがわかるのを出してこられた。じゃ平成十年の七月分を出してくれ。お出しにならない。さらに加えて、償還額の方をお出しになったらどうですか、出してくれと資料要求しました。出さない。何でこんなもの出さないんですか。
  111. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいま、償還額がディスクローズされていないというお言葉でございましたが、平成九年度の長銀金融債の、これは一年ちょうど、九年度でございますが、償還額は公表されておりまして、八兆七千八億円となっております。
  112. 仙谷由人

    仙谷委員 それも、長期信用銀行の有価証券報告書を見れば、発行額が四兆八千五百五十二億で償還額が八兆七千八億であるということはわかります。だから、発行についてはことしの六月まで出しているんだから、七月まで出しなさい、償還額についてもことしの四月からの分を月次で出されたらどうですか、出してくださいと言っているんですよ。それが出せないんですか。
  113. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えをいたします。  七月の金融債はまだデータを持ち合わせておりませんので、お答えできません。
  114. 仙谷由人

    仙谷委員 もう八月も暮れの方ですよ。マーケットというのはそんなに時間、待ってくれないですよ。  じゃ、償還額の方、どうですか。ことしの四月から六月まで、データを持っているんだったらお出しなさい。
  115. 日野正晴

    ○日野政府委員 一年分につきましては先ほど申し上げたように公表されておりますが、月次の分については、これはディスクローズされておりませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  116. 仙谷由人

    仙谷委員 発行額だけがディスクローズされ て、償還額がディスクローズされていない。そんなばかな話がありますか。  委員長、ちょっとこれ、理事会で協議してください。こんなのじゃ審議できないですよ。さっきから、資金の融通が問題になっているということを宮澤さんまで提示しているのだから。審議できません、こんなのじゃ。
  117. 相沢英之

    相沢委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  118. 相沢英之

    相沢委員長 速記を起こしてください。  日野金融監督庁長官。資料を出せますか。それを答弁してください。
  119. 日野正晴

    ○日野政府委員 これが公表されていない理由は、これについて言及いたしますと、市場に不測の混乱を招くおそれがあるということからだろうと思います。  それで、私の方といたしましては、そういった観点から、これはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  120. 相沢英之

    相沢委員長 ただいまの資料要求につきましては、後刻、理事会で協議いたします。
  121. 仙谷由人

    仙谷委員 すべて隠ぺいの中で事を進めようとする。資金が取れなくなって、だから公的な支援、公的な資金が必要であるならば、そういうふうにちゃんと言わなければ国民はわかりませんよ。やみくもに何でもかんでも国民だって反対しませんよ。お隣の国の金大中さんを見てごらんなさいよ。こんなにひどい、だから協力してくれとみんなに言っているんじゃないですか。  どうして小渕総理、端的、率直に、今の、皆さん方が金融危機とおっしゃっている問題が、どこまで根が深くて、どこまで深刻なのかということをちゃんと話ができないのですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、金融監督庁長官のおっしゃることはもっともと思います。資金繰りにいろいろ問題があると仮にいたしますと、月ごとの償還額を言えとおっしゃることは、それの一種の、資料の一部でございますから、それを銀行としては簡単には公表できないというのは、私は無理もないと思います。
  123. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、平時は公表しているものを、今は長銀は公表できていないということになるんですよ。いいですね、それで。いいですね。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは銀行がいろいろ難しい状況に今あるわけでございましょうから、平時やっていることを今やらなくても、別にそれは、銀行としての理由のあることだと思います。
  125. 仙谷由人

    仙谷委員 これは納得できないのですが、納得できないのですが、もう一問だけちょっときょうは聞いておかなければならないので、聞いておきます。  日野長官、参議院で、我が党、民主党の平田健二さんの質問に答えて、  現在の長銀の自己資本勘定は七千八百億円ございます。今回償却いたします損益  計算上の損の方は七千五百億ですが、益の方は合わせて千二百億ございます。こ  れは先ほど宮沢大蔵大臣も御答弁されたところでございますが、損益を差し引きい たしますと六千三百億円を落とさなければなりませんが、それは現在の資本勘定の 七千八百億円で処理されるものというふうに理解しております。 また続けて、「依然として千五百億円の資本勘定が残るわけでございます。」こうおっしゃっていますね。  このときに千五百億円の資本だったら、自己資本比率は何ぼになるんですか。教えてください。
  126. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えをいたします。  これは長銀から報告を受けていることでございますが、連結ベースでありますけれども、九月期で約六%、それから来年の三月期で約四%になるというふうに聞いております。
  127. 仙谷由人

    仙谷委員 どうしてそんな手品みたいな計算ができるんですか。自己資本が千五百億しかなければ、リスクアセットが二十兆円だとすれば、自己資本比率、二%ぐらいじゃないですか。あるいは〇・七%ぐらいですか。そうなるんじゃないですか。
  128. 日野正晴

    ○日野政府委員 詳細に申し上げたいと思いますが、長銀によりますと、長銀の本年九月末の連結の資本勘定、これはティア1、約五千五百億円と見込まれております。これは長銀単体の資本勘定の、先ほど御指摘になりました千五百億円と、それから税効果相当額約三千九百億円、それから連結子会社の資本勘定等が約百億円から成っておりまして、有価証券の含み損をカバーできる水準と聞いております。
  129. 仙谷由人

    仙谷委員 含み損がカバーできるかどうかじゃなくて、結局、自己資本は金額にして幾らなんですか、長銀は。いろいろ償却した後、どうなるんですか。
  130. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  五千五百億円と承知しております。
  131. 仙谷由人

    仙谷委員 もしそうだとしますと、先ほどから申し上げておりますように、株価が日経平均の一万六千円でマイナス二千百億円ですよ、評価損が。一万五千円になると三千百億円のマイナスですよ、ここの評価損は。きょうの株価だと約三千五百億円の評価損ですよ。  つまり、低価法をとるとそうなるんですよ。銀行として正しい、マーケットの見方として正しい評価をすると、この銀行の純資産額はその程度なんですよ。一%でもあれば債務超過じゃないなんて胸を張って言える話ではないんですよ、言っておきますけれども。何で早期是正措置をとらないんですか。ルールに基づいた行政を何でやらないんですか。  あなたがおっしゃったことは、参議院で大変重大なことをおっしゃったんですよ、一千五百億円しかないということは。それはそのとおりでしょう。正直におっしゃったのでしょう。それでいいと思います。むしろ、今のような公的資金を投入するようなスキームじゃなくて、早期是正措置をとることの方が先じゃないですか、この話は。どうですか、大蔵大臣
  132. 日野正晴

    ○日野政府委員 まず、私のさきの参議院での答弁について、千五百億円と申し上げたのは、それは単体ベースの話でございます。今申し上げているのは連結ベースでのお話だということを御理解いただきたいと思いますのと、それから早期是正措置お話がございましたが、現在検査中でございまして、この検査の結果を踏まえて、早期是正措置を打ち出すかどうかということを検討していきたいと思っております。
  133. 仙谷由人

    仙谷委員 まだまだテーマはあるんですが、時間が参りましたので海江田委員に譲りますが、その前に宮澤大蔵大臣に一言、重ねてお伺いをしておきたいんです。  実は、先般からの国会審議を見ておりますと、いわゆる長銀問題というか危機対応の問題について、割と、これは金融監督庁の事柄だから私が物を言ってはいけないみたいな雰囲気で、そうですね、抑制的というか逃げていらっしゃるというか、控え目に、答弁をされないことが多いですよね。いいか悪いかは別にして、ことしの一月二十日の、我々は関係ないけれども、自民、社民、さきがけの行政改革に関する、つまり財政と金融を分離するかどうかの協定というか約束は御存じですか。  もっと言えば、「金融破綻処理制度ないし金融危機管理への対応に限って大蔵省に担当させる」、つまり、金融監督庁には持っていかないという措置は「金融システム改革の進捗状況等を勘案し、当分の間とする。」という、むしろ金融危機管理対応は大蔵省に残すということで自民党が頑張られて、そういう約束ができて、今度の省庁再編とかなんとかおっしゃる行政改革でもそういうことになっておるのではないのですか。むしろあなたが責任主務大臣ではないですか。もっとちゃんと長銀問題を調べて、責任ある答弁をしてくださいよ、これから。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、なかなか私の立場は難しいのでございまして、調査をしろと言っても、私どもに調査権限はないわけでございますからね。これはなかなか難しいので、いろいろに苦労をいたしております。
  135. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  136. 相沢英之

    相沢委員長 この際、海江田万里君から関連質疑の申し出があります。仙谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。海江田万里君。
  137. 海江田万里

    ○海江田委員 民主党の海江田でございます。  冒頭、一言申し上げたいのでございますけれども、私も先ほど来、仙谷委員質疑を聞いておりましたけれども、正直申し上げまして、大蔵大臣あるいは金融監督庁長官、全く事実に基づいた答弁が出てきていないということ、実はこのことは、これから当委員会でまず長銀の問題を皮切りにブリッジバンクの問題を議論していくときに、やはり今のような答弁の内容では私は本当に議論ができないと思うのですね。  昨日一日とまりましたけれども、このままでしたら本当にこれは、きょう開いておって、テレビの中継がありますから私もあえて質問を続けますけれども、いろいろ準備をしてきておりますけれども、あのような答弁では、本当は、テレビの中継も意味がないですし、それから国会の議論も意味がないということ、私はそのことを第一にお伝えをしておきたいと思います。  そこで、小渕総理もさっきから非常に神妙な面持ちで黙っておられますけれども、私は、やはりこの問題は、小渕総理が真っ先に出て、きちっとしたお答えをする義務があると思います。ですから、小渕総理にお答えをいただきたいと思います。なるべく簡単にいたしますので、どうかお答えください。  総理は、この二十日の夕刻、夕刻というよりも夜でございますけれども総理公邸に住友信託銀行の高橋社長を招き入れまして、きょうお見えになっております大蔵大臣、それから官房長官も同席をした、それから金融監督庁長官も同席をして、そして長銀と住友信託銀行合併について種々お話をされたようでございます。  そして、このお話を終えて、小渕総理は、率直に、この合併は、自分もこうやって前に出て説得をしておることだからこれはうまくいくなという感触を得られたのか、それとも、いや、これはなかなか難しいぞという感触を得られたのか、どちらでしょうか。
  138. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 結論から申し上げますれば、その時点におきまして、私としていずれとも判断がつきかねておりました。  ただ、高橋社長とされましては、私自身がせっかくに、この合併問題につきましては、日本金融システムを安定させるために極めて重要な問題である。と同時に、内閣総理大臣として、政治家としてもそうでございますが、金融監督庁を指揮する立場にある者といたしまして、この合併につきましては、ぜひそうした方向について、その経過をだんだんに見ておりまして、極めて重要なことでございますので、ぜひそういった立場から合併につきましても十分長銀と話し合っていただきたい、こう申し上げたわけでございます。  長くなりました、結論を申し上げますと、その時点ではいずれとも判断つきかねたわけでございます。
  139. 海江田万里

    ○海江田委員 判断がつきかねておると。うまくいくか、あるいはこれは場合によっては失敗するかもしれないというような考えを今でもお持ちだということですか、どうですか。
  140. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私としては、誠心誠意お話を申し上げましたので、ぜひよき方向に向かって住友信託としても結論をつけていただけるものと、そう願っておるところでございます。
  141. 海江田万里

    ○海江田委員 私は、総理がこの合併に乗り出したということ、このことは大変大きなことだと思うのですね。もちろん、総理が乗り出すことにいい悪いという議論はあります。ただ、もうここで乗り出したわけですから、私は、この合併がうまくいかないときは、総理はそれこそ政治責任をおとりになるというような決意をお持ちいただいてもいいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  142. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政治責任というものがどういうものか、ちょっと御質問者の趣旨がわかりませんが、私としては、内閣総理大臣としての与えられた職責を全うするという意味で、精魂込めてお話を申し上げたつもりでございます。
  143. 海江田万里

    ○海江田委員 私が一言申し上げたいのは、やはりこの合併というのは決して簡単な話ではありません。しかも、この合併の話に総理が乗り出して、そしてこれが破綻をしたとき、この合併の話が壊れたときに、その与える影響というのは、北海道拓殖銀行と北海道銀行合併が壊れた以上に大変大きなものがある、そういうことをやはり私は認識を持っていただきたいわけでございますが、その点についてはいかがでしょうか。
  144. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 合併は、あくまでもこれは民間の企業体ではございますけれども、しかし、こうした問題につきまして私自身がせっかくに努力をしなければならぬということは、現下金融秩序、金融システム、こうしたものにかんがみまして、極めて重要なる合併の事態である、こういうふうに深い認識をいたしていることは言うまでもございません。
  145. 海江田万里

    ○海江田委員 今、私がこの合併の話はそう簡単なことではないというふうに申し上げましたけれども、その理由というのは、八月二十一日、ですから総理が二十日にお会いになったその翌日でございますが、これは総理も談話を出しました。大蔵大臣も談話を出しました。金融監督庁長官も談話を出した。長銀もリストラ案をまとめた。そして、住友信託銀行の取締役社長であります高橋さんもコメントを出しております。このコメントの中で、非常にはっきりと合併をするときの条件というものが書かれているわけですね。  その条件というのは、先刻、日本長期信用銀行より経営の合理化計画を発表する旨の御連絡を受けましたが、内容につきましてはこれから検討していきます、リストラ案につきましても、これはこれから検討していきますよということ。  それから、弊社は、六月二十六日に合併検討の開始を発表して以来、正常先債権のみ承継をいたしますよということ。分類でいきますと、これは第一分類に当たる債権であるということ、これは別の雑誌に高橋社長がそういうふうにお話しされております。正常先債権あるいは第一分類の債権のみを承継をしますよということ。  それから二番目に、関連会社、関連親密先の同行による責任を持った整理ということが言われておるわけでございます。この関連会社あるいは関連親密先の同行による責任を持った整理というのは、先ほど仙谷委員からもお話のありました、日本リースを初めとした各種の長銀の関連会社の整理でございます。  それから三番目として、デューデリジェンス、重要事実把握のための事前調査の実施を含む透明性の高い手続、これは要するに、金融監督庁は長銀に入って検査をしておるわけでございますが、それだけでは、その金融監督庁がやった検査をうのみにするのではなくて、自分たちのところで、民間の監査法人を利用しましてしっかりとその債権の内容について検査をさせてもらいますよということ。  この三つが原則になって、しかも、これらを前提条件として、着実に検討を進めてきたところであります、今後とも、マーケット、株主、顧客の前向きな評価、信認が得られる内容となるよう、引き続き前向きに、同行と合併に向けた交渉を続けてまいる所存でございます、こういうふうに結ばれておるわけですね。とりわけ注意しなければいけないのは、やはりマーケットですね。マーケットの評価、信認が得られる内容となるようということで、マーケットの動きというものを非常に気にしているわけです。  ですから、マーケットの内容がどういうふうになっているかということは、これはもう委員皆さん方もっとに御承知だろうと思いますが、この六月二十六日の合併の発表前は、住友信託銀行は六百四十八円していたわけでございますね。それが、きょうも大分落ちましたけれども、きのうの段階で三百六十三円でございますから、ほぼ半分に株価が減ってしまっているわけですね、これは。小渕総理、わかりますね、ここは。ですから、今現在の段階でマーケットからの評価、信認というものは得られていない。マーケットというのは、この間の動きを見ておって、これはとてもじゃないけれども住友信託銀行長銀合併することになったら、住友信託銀行自身、これはかなりの不良債権も抱えているわけでございます。一兆円からの不良債権を抱えておりますし、格付もトリプルBになっておりますから、あと二ランク落ちたら長銀と同じになってしまうわけですから、住友信託銀行自身も大変真剣なわけですね、これは。そういう状況にあるということ。  今お話をしましたように、じゃ、そこでは正常先債権のみの承継でありますから、不良債権を償却をしてくださいということで、まさにその不良債権の償却ということで今回、恐らくこれからこの長銀が、言われておりますのは七千五百億円の不良債権をこの九月の決算で処理をするということ、こういうことを言っておるわけですね。その不良債権を償却することによって、それで資本の比率が落ちてくるから、自己資本の比率が低くなるから、そこのところに資本注入をお願いするんじゃないかという、こういう仕組みになっておるわけでございますね。  ところが、先ほど来議論になっておりますこの長銀のノンバンク三社、日本リース二千五百億円、日本ランディック一千百億円、エヌイーディー一千六百億円、トータルで五千二百億円でございますが、これが果たして長銀が自己査定をしました不良債権の中に入っておるのかおらないのかということが今現在わからないわけですね、これは。そうですね、大蔵大臣。わかっておるんですか。わかっておりませんね。それから、金融監督庁長官、これはわかっていないわけですね。あるいは、わかっているけれども言えないわけですか。もう一度確認をします。
  146. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  本年三月期の自己査定の内容につきまして現在検査中でございますので、お答えをすることがまだできないというふうな状態でございます。
  147. 海江田万里

    ○海江田委員 今、長々と私が説明をしてきましたけれども、ここがわからないと実は議論が先に進まないわけですよ、これは。  いいですか。七千五百億の不良債権を償却する、処理をすると言っている。この七千五百億円というのは、三月に長銀が決算をしました公表不良債権は一兆三千七百八十五億円ですから、およそその半分なんですよ、これは。だけれども、その半分の償却をするというときに、今お話をした日本リース、日本ランディック、エヌイーディー、五千二百億円が、長銀がもともとそうやって自分のところの不良債権ですよと言って公表したものに入っているのか入っていないのか。これは違ってくるんですよ、議論が。  もし入っているなら、確かにそれは五千二百億円債権放棄をすることによってこの長銀が抱えております公表不良債権の一兆三千七百八十五億円が五千二百億円分減るわけですよ、これは。だけれども、もしそこに入ってないとすれば、これはちょっと結論を先に急ぎますけれども、果たして今度の資本注入だけで済む話なんですか。そこからもう少し先にまた資本注入の話が出てくるのではないだろうか。  あるいは、資本注入でなくて、最近こういう議論がある。これは大蔵大臣お尋ねをしたいのですが、資本注入ということだと、これは優先株か劣後債によってそれを長銀が引き受けをすることになりますから、配当を出すのか。もちろん配当を出せるときと出せないときがありますけれども、立ち直ってくれば配当を出さなければいけない。劣後債の場合も利払いをしなければいけないということ。  それは、その長銀合併をします住友信託銀行にとってみても、優先株や劣後債でもって資本を増強をしたのじゃなくて、むしろ長銀が持っている、あるいは長銀以外の銀行が持っている不良債権を、例えば整理回収銀行などに売ってしまおう。これは売ってしまうわけですから、現行法では、これは破綻をした金融機関でなければ売ることはできませんよね。現行法では破綻をした金融機関でなければ売ることができないけれども、超法規的な解釈、あるいは立法をして、そして不良債権を売ってしまおう。売ってしまえば、これは優先株だとか劣後債とか関係ない話になるんですから。  そういうことをしてはどうかというような議論も一部に出ておるというやに聞いておるのですが、大蔵大臣、そういう議論を聞いたことがあるか、あるいは、大蔵大臣はそういう意見に対してどういうふうにお考えになるか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうお話を私は寡聞にして聞いたことはございませんけれども、この間長銀当局が出されましたリストラの計画は、海江田委員が前に言われましたように、ある段階で公的資本の導入を申請する、こういうお考えのように承知しております。
  149. 海江田万里

    ○海江田委員 大蔵大臣が聞いていないというのは、それは少し勉強が足りないわけでございまして、日経金融新聞などにはこういう議論も出ておりますから、それは知らないはずがないわけでございますね。やはり知っていることは知っているというふうにおっしゃった方がいいと思いますよ。天下の大蔵大臣が知らないはずがないんですよ、これは。どうです、本当は知っているんでしょう。正直に答えてくださいよ。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本当に知りませんです。
  151. 海江田万里

    ○海江田委員 実は、私は、先ほど冒頭にもお話をしましたけれども、やはり住友信託銀行が大変かたい態度をとっているわけですね。とりわけ、第一分類のしか引き受けませんよと。第一分類というのは、要するに非分類債権ですよ、正確に言えば。問題のない債権しか引き受けをしませんよということを言っている話と、それから、そこでまたさっきの問題になるわけですけれども、これが不良債権に入っているのか入っていないかによって、今後のこの不良債権の償却の問題が大変大きな問題になってくるわけですよ。これは。  不良債権の中に入っておれば、五千二百億円をまずそれでもって償却をして、そして残りが二千三百億円になりますから、二千三百億円というのはあの長銀が自己査定をしました第三分類の四千四百四十四億円のちょうど半分ぐらいになりますよね、これは。  だから、半分引き当てをして、第三分類は大体半分の引き当てをするということでございますから、長銀の、日本リースを初め三つのノンバンクに対する貸し付けを、これが不良債権に入っておればそれを償却をして、そして、あと残りの第三分類を、半分、五〇%の引き当てになるわけですから、そうすると、まさにこれは、あと半期あれば、その半期の間に、まあこれは大変難しいわけですけれども、可能性としてはあと半期の間に第一分類だけをきれいに残してあとは全部償却をするというようなことも全く不可能ではないんですね、これは。  だけれども、それが本当にできるのかどうなのかということは、まさにそこのところがわかってこないと、この五千二百億円というものが不良債権の中に入ってこなかったら、その五千二百億円というのは、すっかり、不良債権の一兆三千七百八十五億円分の半分償却できたことにならぬわけですよ、これは。まだ三分の二ぐらい残っているわけですね。三分の二残っていたら、これはとてもじゃないけれども住友信託銀行だって合併に応じないわけですね。だから重要だということを言っているので、そこのところがわからないで、どうしてこれで合併の話がうまくいくというような、まあ小渕総理は半々だということを言いましたけれども、私は、そこのところがわからなければ、半々どころかこの合併の話が成功する可能性というのは一割にも満たないと思うのですね。大蔵大臣、いかがですか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、銀行の内容を立場上存じませんので、その点にお答えすることはできないのですが、先ほどおっしゃいましたようなことは、整理回収銀行が買うとおっしゃったのでしょうか。そういうことは、今の規定ではできないと私は思います。
  153. 海江田万里

    ○海江田委員 今のは全然お答えになっていませんね。整理回収銀行が買うなんて今の規定でできるはずがないわけですから。できるはずがないけれども、それしかないという議論が一部にあるんですよ、これは。自民党議員の中でもこの問題に詳しい方は御存じだろうと思いますけれども。それが金融機関にとってみれば一番いい話なんですよ。  ただ、私たちはもちろんそんなことを許すはずもないですけれどもね、これは破綻もしていないのに。そんな、買ってくれなんて虫のいいことを許すはずは、私たちは許す立場にありませんけれども。だけれども、そういうような声も出てきている。あるいは、別の言い方をすれば、まさにそういうやり方によってしかこの長銀が抱えている不良債権というのは解決できないところに来ている、私はそういうふうに見ておるわけです。  先ほどのお尋ねでございますけれども大蔵大臣は、この話、今私が言った超法規的なやり方なんかを採用しないで、従来どおりのやり方でもって資本の注入まではやるということをおっしゃっているんだから、もちろん私たちはこれに反対ですけれども。だけれども、それでもってきちっと、来年の四月までにこの合併にこぎつけられると思っていますか。どうですか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう整理回収銀行のようなことは、海江田議員も許す気はないとおっしゃいますし、私も許す気はございませんので、したがって、そういう議論はないということで御理解を願います。  それから、先のことを言われましたが、今のリストラ計画だけで、当面の七千五百億円の債権処理はわかりますが、それから先のことについて触れられておりませんので、したがいまして、将来をこれから卜することは難しい。ただ、長銀当局としては、これができるという想定のもとにリストラ計画を出しておられるということです。
  155. 海江田万里

    ○海江田委員 長銀のリストラ計画ということでいえば、ことしの三月のこの資本注入のためのリストラ計画がございまして、今私はここに、手元に持っておりますが、「経営の健全性の確保のための計画」、これを佐々波審査委員会でもって吟味をして、よし、これで問題がないだろうということで千七百億からのこれも優先株と劣後債の資本注入をやったわけでございます。ところが、このリストラ計画、「経営の健全性の確保のための計画」、改めて読んでみますと、随分甘いことを書いているのですよ。  これは総理でよろしゅうございますけれども、「経営の現状」ということで、「徹底した効率経営の追求」ということで、「当行は、すでに従業員一人当たりの収益性・効率性では日本金融機関の中でトップクラスの地位にありますが、」もう既にあるけれども、「より強靱な収益体質・財務体質を目指し、資産内容の一層の効率化を推進しています。」ですとか、それから「リスク管理の高度化」では、「当行は、従来からリスク管理の高度化を経営上の最重要課題の一つとして位置付け、他行に先駆けて経営直轄の組織として「リスク統轄部」を設置し、」云々かんかんと。「更に、今後国際的水準において「リスク管理に秀でた銀行」との評価を一層確固たるものにするべく努めています。」ですとか、これは、もう既にリスク管理に秀でているけれどもさらに一層秀でていくということで、さらに一層秀でていくということを考えるのはいいんですけれども、今が秀でていたかといったら、全然秀でていませんよ。  それから先ほどの、金融債が今どれほど売れているかということ、これも実は、本当にこれからこの長銀の経営体質を、経営を、収益を上げていくということでいえば、やはり長銀の重立った資金の調達手段というのは金融債でございますから、この金融債が売れないことには業務純益だって出ないわけですよ。  あるいは、業務純益というのは、粗利益から経費を引いたものが業務純益になりますから、まず粗利益のところで調べてみましても、ここで出ております業務粗利益が、九年度の見込みが二千四百億円ということになっていますけれども、実際にはこれが百億円ぐらい少なくなっている。しかも、どちらかというと、長銀は、国際業務のところで意外と頑張って稼いでいるんですね。国内業務はもっと低いんです、これは。今度国際をなくしてしまうわけですから、そうすると、国内業務のところで果たしてこの粗利益がどれだけ出るのか。実際にはもう九年度の見込みは下回っておりますけれども、十年度の計画が二千二百億円の業務粗利益が出るということになっている。  この粗利益から、一生懸命になってリストラをやって、給料を年収九百万円にするとか何とかにするとかいろいろなことを言っていますから、それでもってリストラをやる。だけれども、リストラをやった後の、いわゆる経費を引いた後の業務純益でいくと、一千三百億円も十年度の計画で立てているのですよ、これは。こんなのが達成できますかね、現在。  しかも、資金調達の重要な手段であります金融債の売れ行きというのが、さっき大蔵大臣は、いや、三月は長銀は健全だったけれどもどうもその三月の後がおかしくなったと言うけれども、重要な資金調達の手段であります金融債の売れ行きというのは、もうことしの三月から目立ってマイナスになっていましたよ。ことしの三月でもって三千二百十二億円。去年の三月だったら五千百九億円これは発行されていたわけですね。それがもうここでもって約二千億円マイナスになっている。しかも、六月では、そこからさらにおよそ一千億円マイナスになって、二千三百八十億円しか発行されていないということ、こういうことを見ますと、決してこの長銀のリストラ策というものがうまくいくとは思われない。  とりわけ、どうですか、これは預金保険機構が審査をされたわけでございますから、きょうは預金保険機構がお見えになっておりますので、このリストラ計画が、今現在たった五カ月たったところで、どれだけこれが実際に合わなくなっているかということ、そのことを踏まえて、このリストラ計画というものを受け取る段階で、自分たちの議論で少し反省がないかどうか、お聞かせいただきたいと思います。  総理には後でお尋ねをしますから。
  156. 松田昇

    松田参考人 委員御案内と思いますけれども、三月に健全性確保計画をとりました。それから次に履行状況をフォローしょうということで、それは、決算期であります九月を目途にしまして、九月の決算が終わったらば、そこの六カ月間どういうことができたかというフォローをするということで、今準備をいたしております。  それはそれとして、三月の末のときには、この健全性計画は、ごらんになればわかりますように三月末期のものが見込み値で入っております、三月十日に決めましたので。したがって、三月末の決算でどのくらい数字が動いたのだろうかということの、健全性確保計画の第一次履行状況といいますか、報告を今求めておりまして、それは近く公表いたしたいと思っております。大体数字は余り変わっておりません。  ただ、ここに至って急に合併話が持ち上がりまして、これは従来の計画に全くない話でございますので、今両行に対して、その合併話がどういうことになっているのか、いろいろ報告を求めているという段階でございます。
  157. 海江田万里

    ○海江田委員 私は、やはり三月の資本注入というものが、大蔵大臣は先ほど、三月の資本注入は全く問題がなかったのだ、あれによって日本金融システムというのは非常にあの時期安定を、回復をしたのだという趣旨のことをおっしゃいましたけれども、あの時点では、幾つかの金融機関にとってみれば、資本注入をされることによって、そして自己資本比率を回復して金融システムに対するそれなりの影響というもの、いい影響というものは確かにあったと思いますが、トータルで横並びでもって資本注入したことによるマイナスというもの、これは私は大変大きかったと思うのですね。  この公的資金による資本注入につきましては、同じ長期信用銀行であります日本興業銀行の西村頭取は、これは金融ビジネスという雑誌の二月号の中ですけれども公的資金で守るべきは、預金者預金というものはやはり公的資金で守らなければいけない、預金者預金は守らなければいけない、だけれども資本注入に公的資金を充てるべきではないということを言っているのですね。  ところが、本人はそういうことを言いながら、実際には興業銀行もこの三月の時点でまさに資本注入を受け入れてしまった。それは、横並びでやらなければ大変なことになるということを言って、そして無理やり資本注入をしたわけでございますね。  それによって、やはり日本金融機関というものが相変わちず横並びの体質から抜け出ていないのじゃないかということの大変大きなマイナスの評価というものを、とりわけマーケットから受けたという考え方を私は持っておるのですが、これは大蔵大臣、いかがでしょうか。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのお尋ねのときに、私がニューヨークで申しましたことを御披露いただいたのでしたが、そういう誤解があってはいけないということで、護送船団のようなことはもうやめると申しました。三月のときには、やはり日本経済の金融システム全体に対する危機であるということの認識は各行とも持っておられましたので、西村さんがどうおっしゃいましたか存じませんが、興業銀行としてもやはり全体の危機に対処しなければならないというお気持ちであったろうと思います。
  159. 海江田万里

    ○海江田委員 質問をひとつ変えますが、これは長銀が出しています割引金融債の宣伝でございます。長銀も一生懸命売らなければいけないわけでございますから新聞広告を出しているわけでございますが、この中に「金融債も預金と同様に全額保護される仕組みができています。」ということが書かれているのですね。金融債は確かに前の前の大蔵大臣、三塚大蔵大臣のときに、あらゆる預貯金について、あるいはあらゆる金融商品について保護をしますということをおっしゃったわけですけれども、この金融債も預金と同様に全額保護される仕組みがもう既にでき上がっているのですか、法的な整備ができているのですか、これはどうですか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、平成九年の十二月に、海江田委員お尋ねに対しまして、大蔵委員会において三塚大蔵大臣が「預金保険の本来の対象である預金等はもちろんのこと、それ以外の金融機関金融商品についても、その安全性の確保に万全を期すということであります。」これが答弁でございますが、したがってお答えは、そのとおりでございますというお答えになりますが、法的な根拠といたしましては、例のペイオフを特別に二〇〇一年までに延ばしますときに、預金保険法の改正をいたしました。  そして特別資金援助をするということに、そのためになったわけですが、この附則十六条に基づきまして、破綻した金融機関の営業の全部が他の健全な金融機関に引き継がれるような場合には、破綻金融機関に生じた損失の全額を補てんし得ることとするとなっておりますので、特別資金援助の対象となり、したがいまして、一〇〇%保護を受けるということでございます。
  161. 海江田万里

    ○海江田委員 今大蔵大臣おっしゃいましたけれども、これは具体例でいきますと、例えば長銀破綻をして、そしてそれを例えば住友信託銀行合併をしたときに、初めてそのときにまさに預金保険法の附則の第十六条がオペレートするよ、機能するよということでございますね、これは。そうでないと、一般の破綻前の場合は、これは保護されるという規定はないわけですね、そういう合併の形でいかない限りにおいては。そうですね、これは。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、前々任者でございます三塚大蔵大臣が、この法律の施行の責任者として有権的にこういうことを決定しておられますから、それによって確定しておると思います。
  163. 海江田万里

    ○海江田委員 今の言い方、非常に難しい。有権的にですか。権力を有する者が発言をしておるからそれは守られる、こういうことでございますか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 海江田委員の御質問に対して、この法律を主管しておられます大蔵大臣がそのとおりであると言っておられまして、こういうことは取引の信用に関係いたしますから、これによって確定しておると考えております。
  165. 海江田万里

    ○海江田委員 有権的にというのは、私が今解釈をしたことでいいわけですか。権力を有する者がそういう発言をしておるからと。あるいは権限を有する者ですか、さっき有権的にということをおっしゃったから。余り聞きなれない言葉ですから。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 有権的にということは、法律の施行をする義務を持ち、また権限を持つ者が、解釈に疑義が生じたときに、これはこのように自分として解釈する、そういう申し上げる立場で言われたものと思います。
  167. 海江田万里

    ○海江田委員 ただ、これは、今はまだ法律の改正ができてないわけですね。私は、この附則の第十六条でもってそこを敷衍をして、大蔵で、わかりやすく言えば、そういう権力のある、権限のある大蔵大臣が言ったのだからみんな心配することはないということをおっしゃりたいようでございますけれども、私は、やはりそこは一日も早く預金保険法を改正して、そんな難しい改正じゃないのですから、これは。もちろんいろいろな議論はありますよ。無記名のそういう割引債などを保護対象にできるのかどうなのかという議論はあるけれども、もし本気になって割引債あるいは利付の金融債を保護しようというふうに考えるのならば、それは言葉で言うだけじゃなくて、きちっとやはり法律の改正を出してこなきゃいけない。法律の改正を出してくれば、そのときに初めていろいろな議論ができるわけでございますから、私は、やはりそこの法律改正の改正案を出してこないということは、これはまさに大蔵省の職務の怠慢だと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はそう考えておりません。これは非常に信用の秩序に関することでございますから、はっきりしておかなければなりません。法律提出して御審議を仰ぎます間は、少なくともそういう関係は極めて不安定になると申し上げざるを得ませんから、そういうことは私は避けるべきだと思います。
  169. 海江田万里

    ○海江田委員 この種の金融の問題につきますと、すべてそういう意味では、まさに法律の拡大解釈でありますとか、あるいは超法規的な措置でありますとか、私はそういうのがやはり多過ぎると思うのですね。やはりここはきちっとガラス張りにするために根拠の法律をきちっと定めて、改正をして、そしてその中で守るということにしませんと、これは本当にこういう書き方で、じゃ本当に信用していいのかということが、大変一般の方は心配をしております。  大蔵大臣が言ったからだということを言うけれども、それだけで本当にいいのかどうなのかということは大変疑義のあるところでございますので、私は、やはり一日も早くこれは改正案を出すべきじゃないだろうか。改正案を出した上で、きちっと本当に金融債は守られるべきものなのかどうなのかということ。金融債は守られるべきものでないという意見もやはりあるわけですよ、これは。だけれども、それについては全く、大臣が守ると言ったのだから守るということだけで、そこから先に議論が進んでいかないわけですから、これは私は、やはり現実問題として、それから日本は法治国家でございますから、やはりきちっと法律でもって守る必要が、法律でもってはっきりと書き込む必要があるだろう、そういうふうに考えます。  それから、金融監督庁、これはむしろ金融監督庁の責任者の小渕総理お尋ねをしたいわけでございますが、先ほども冒頭にお尋ねをしましたけれども、やはり今回の合併に当たりましては金融監督庁が、まさに小渕総理が二十日の夜に住友信託銀行の高橋社長を公邸に招き入れる前に、金融監督庁の日野長官が高橋社長を呼んでリストラ案を出させているとか、あるいは新聞報道によりますと、二十日の夜からずっと金融監督庁はこの長銀のリストラ案についていろいろな交渉をやっておったということでございますけれども、夜中の午前三時ですか、二十一日の午前三時に、金融監督庁の幹部が長銀の副頭取を金融監督庁に呼びつけて、そして、実はあの長銀がまとめたリストラ案というのは、長銀が最初からあんな案を持ってきたんじゃないんだ、長銀は、それこそ頭取と数名の代表取締役だけの退任でもって、そしてあとは、海外の店舗などについても全部撤退をするんじゃなくて一部を残そうとか、そんなような考え方を持っていたんだというような新聞報道もあるわけですね。  これは、非常にやはり金融監督庁というものが前に出て、そして、長銀のリストラ案までを金融監督庁がつくったとか、それから総理がそうやって呼び出しをしておるとか、従来、金融監督庁ができたときに、これからの金融の監督というのはまさに事後のチェックに徹しようじゃないか、事前の密室の行政指導というものはやめようじゃないかということを言って、そういう決意をして、それで金融監督庁ができたという経緯があるわけですね。  それを今回全く覆して、それこそ、先ほどもお話をしましたけれども長銀のリストラ案から始まって、まさに公邸に片一方の合併の相手先であります住友信託銀行の社長を呼んで、そして、どうだ、どうなっている、どうなっているということをたびたび聞いておるということ。このことは、やはりこの金融監督庁ができた決意あるいはできた精神というものにもとるんじゃないですか。また前に戻ったことになるんじゃないですか。これは総理にぜひお尋ねをしたいと思います。
  170. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 海江田議員が長い聞こういった問題についてお取り組みいただいていることは承知をいたしておりますが、今お話しの、金融監督庁としてどのような対応を長銀にいたしたかという時系列的な問題について、私自身は承知をいたしておりません。  私としては、当日、二十日でございますけれども、かねて来この長銀と住友信託の合併問題につきましては、特に総理になりまして監督庁に権限を持つ責任者となりまして以降、その合併について深い関心を寄せておりました。  そのことにつきまして、いかなる状態になっておるかということをお聞きしましたところ、長銀としてのリストラ案につきましてかなりまとまってきたということをお話を聞きましたので、それなれば、相手行たる住友信託にもこのことをよく説明して、そして、もともと両行で合併しようという話し合いが進めてこられたことですから、そうした長銀努力といいますか、リストラ案をしっかりと受けとめていただければ、住友信託としても合併に向かって進められるのではないか、そう考えて、時間的にはいろいろ、予算委員会その他ございましたので、朝になり、昼になり、夜になりましたけれども、そうした形で私としては、この合併について高橋社長に私の意のあるところを申し上げたということでございますのでその事前でそうした対応が十分とられておったか、あるいはどうかということについては承知をいたしておりません。  金融監督庁ができた趣旨は、私は、今委員のお説のとおりだというふうに認識をいたしております。
  171. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  金融監督庁の運営に当たっての基本方針は、先ほど海江田委員が御指摘になりましたように、今後、明確なルールに基づく公正で透明な金融行政の遂行を行うというとおりでございます。したがって、できるだけ事後チェック型の行政に転換しなければならないということは十分に心得ているつもりでございます。  今回のこの住友信託と長銀合併構想は、あくまでも両行の経営戦略に基づいた通常の合併でございまして、また、金融監督庁の長官といたしまして、私は、資本注入の申請があった場合の審査委員会のメンバーの一人として法律の趣旨を踏まえまして前向きに対応するというものでございますので、何か裁量行政ではないかといった御指摘は当たらないかと思います。  むしろ私どもは、何か事が起こってからではやはりこのケースは遅い、つまり、金融システムが崩壊したりあるいは破壊されたり秩序が壊れたりした後に動くというのは、まさにこれは事後チェックそのものだろうと思いますけれども、事後チェック型でございますので、事後チェックだけやっていれば済むというものではないと思います。むしろ、やはり事が起こる前に、火がおこる前にその火を消しとめるということも、私どもに与えられた重要な任務ではないかと思っているところでございます。
  172. 海江田万里

    ○海江田委員 事後チェックと事後チェック型とは違うなんという話は、それはあなた方の世界では通ったって一般の人には通る話じゃないですよ。法律の世界でも通らないと今枝野委員が言っておりますけれども、これはひどい話でして、やはり何のための――私は、一つの決意だったと思う。それから、大蔵大臣だってわざわざ、御自分がわかっていることも、予算委員会で大蔵省ではないんだからといって金融監督庁の方に振って金融監督庁に答弁をさせたとか、ずっとそういうことをやって、金融監督庁は大蔵省から離れたんだということを演出しておった。私は、それは一つのやり方だろうと思う。  だけれども、そうやって、やはり金融監督庁が今度独立をしたのなら、しかも独立をするに当たってこれからは事後チェックでいくんだというふうに決意を固めたのなら、やはり私は、その決意を守っていただくのはまさに金融監督庁の役目じゃないだろうか。危機管理だとか何だとかというのは、これは大蔵省にまだ残っているんだから、大蔵省の企画の方に。全くなくなっている話じゃないんだから。いや、それは事後チェック型にしたので事後チェックとは言っていないということ、そういうような強弁をまだされるつもりですか、この場に及んで。もう一度御答弁を。  それから、あと、長銀の副総裁を呼んでこのリストラ案の中身を書きかえをさせたのかどうなのか、そのことについてもお答えをいただきたいと思います。
  173. 日野正晴

    ○日野政府委員 今後、金融監督行政の実施に当たりましては、設置法がつくられた趣旨を十分に踏まえた上でやっていきたいと思います。  それから、先ほどの御質問でございますが、長銀の副頭取を深夜呼んで何かお話をしたという事実は全くございません。
  174. 海江田万里

    ○海江田委員 じゃ、このリストラ案というのは、長銀が持ってきたものだ、長銀自分たちでまとめてつくり上げたものだ、こういうことでよろしゅうございますね。おじぎをされておるから、そういうふうに理解をいたしますが、後で、あれはおじぎをした、認めたのじゃないのだとか、たまたま頭が上から下へ動いただけだとか、何かそんなようなことを言われそうな気もしますが、お役人の世界というのはそういう世界ですから、これは確認をとっておきたいわけでございますが、まあよろしゅうございます。  それから、やはりこの日本リースの問題でございますね。私は実は、きょうはパネルもつくってきまして、本当は日本リースの問題についていろいろお話をしたがったのですが、ただ、先ほどもお話をしましたけれども長銀から日本リースに行っております資金不良債権に入っておるのかどうなのかということすらお答えができないということですと、これは本当に議論にならないのですね。  まさにそこから先の話でありまして、まさにここの日本リース、それから関連のノンバンクというところに全部、さっき仙谷委員からお示しがありましたけれども、まさにあらゆる問題がここに詰まっておる。魑魅魍魎が全部ここに詰まっておると言ってもいいわけでございまして、その意味では、私はぜひ当委員会で、これは委員長へのお願いでございますけれども長銀の関係者、それから日本リースの関係者、それから日本リース以外の日本ランディック、エヌイーディーの関係者、こういう人たちをやはりこの委員会に呼んできて、そしてそこで直接委員質問をして、そして実態を解明する、そういうことをぜひお諮りをいただきたいと思います。これはお願いを申し上げます。
  175. 相沢英之

    相沢委員長 理事会において協議いたします。
  176. 海江田万里

    ○海江田委員 それでは、私の持ち時間は終わりましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  177. 相沢英之

    相沢委員長 これにて仙谷君、海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、石井啓一君。
  178. 石井啓一

    石井(啓)委員 新党平和の石井啓一でございます。平和・改革を代表しまして質問をいたします。  まず、冒頭申し上げたいと存じますけれども、午前中からの審議、ずっと聞いておりますけれども金融行政のいわゆる隠ぺい体質といいますか、情報をなるべく小出しに小出しにしよう、これは全く変わらないな、これが私の感想でございまして、特に先ほど、午前中宮澤大蔵大臣は、何か情報公開をすると国民に無用な不安をあおりかねない、こういう答弁もされましたが、私はそれは違うのじゃないか。私は、国民はそんなに愚かではない、むしろ今十分な情報公開が行われないこと、国民に十分な説明が与えられないことが行政に対する大変な不信、金融行政に対する不信を招いているのではないか、こういうふうな思いがいたします。大蔵大臣、何か答弁がありましたらお答えください。
  179. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつて昭和の初めに、政府側の不用意な発言金融不安を招いたという教訓を常に覚えておりますものですから、そういう過ちをしたくないというだけの気持ちでございます。
  180. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは、この三月期の長銀の決算が本当に妥当であったのかどうか、このことをまずお聞きしたいと思います。  先ほど宮澤大臣は、長銀の三月期の内容はよかったと思う、その後悪くなったのだ、こういうふうな御答弁でございましたけれども、私は非常に疑問がございます。ちょっとパネルで御説明を申し上げたいと思います。  これが長銀の公表不良債権とそれから自己査定  の結果でございますけれども、公表不良債権、旧基準でいきましても八千七百九十三億円、新しい基準、これはリスク管理債権というふうに称しておりますが、これで一兆三千七百八十五億円。それに対する引き当て額が七千六十八億円でございまして、旧基準でまだ引き当ててない分が一千七百二十五億円、新しい基準で引き当ててない分が六千七百十七億円でございます。したがって、不良債権額に対する引き当て額、すなわち引き当て率が、旧基準ですと八〇・三%、新基準ですと五一・二%、こういうことになっております。  一方、自己査定結果でございますが、これは必ずしも公表不良債権と対照はなっておりませんけれども、別の切り口で債権状況を分類した、こういうことでございます。これは、先日報道になっておりますけれども、いわゆる正常債権、第一分類が十五兆九千百十四億円、第二分類、いわゆる灰色債権が二兆三千七百九十六億円、第三分類、破綻懸念先、破綻が懸念される、そういう債権が四千四百四十四億円、第四分類、これはもう破綻した債権でございますけれども、今回もう既にこれは引き当ててあるということでゼロ、こういうことなんです。  今回、九月の中間期で七千五百億の不良債権を償却する、こういうことでございますけれども、よく見ていただきたいのですが、新しい基準の公表不良債権一兆三千七百八十五億円、この中でまだ引き当ててない分は六千七百十七億円なんですね。ところが、今回償却しようというのは、この額をオーバーしているわけです。六千七百十七億円の額をオーバーする額を今回償却しよう、引き当てよう、こういうことでございますから、この時点の公表不良債権の基準というのがどうだったのか。あるいは、自己査定結果、下を見ていただきますと、第三分類でさえ四千四百四十四億円しかありません。今回七千五百億円引き当てるというのは、七千五百億円というのは、これは第四分類、ゼロになっているところですね、ここが七千五百億円新たにいきなり出てきているわけです。こんなことが、ことしの三月末の発表でございますから、現在まだ五カ月もたっておりません。それが、今まで問題なかったもの、正常であったものが、いきなりこういった償却を要するような債権になるということはとても通常では考えられないことです。  一体、今回の七千五百億円の中間期の引き当てというのはどういうことなのか。私は、本来これは三月期にやっておくべきものだったんじゃないかというふうに思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  181. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀の十年三月期の決算といいますのは、自己査定結果を踏まえまして、公認会計士、監査法人の監査を受けた上で償却や引き当てを実施しているものでございますが、自己査定や償却、引き当ての適切性につきましては、現在検査においてチェックを行っているところでございます。  長銀によりますと、本年九月期に不良債権の抜本的な処理を行うこととしましたのは、住友信託との円滑な合併を実現するためには、これら三社の処理策を早急に取りまとめて、これに対して必要な支援を行うことが必要であると判断したためであるというふうに聞いております。
  182. 石井啓一

    石井(啓)委員 ちょっと今の答弁、理解できなかったのですけれども。  そうすると、あれですか、七千五百億引き当てなきゃいけないというのは、住友信託との合併を進めるために引き当てなきゃいけないのですか。それでは、住友信託との合併がなかったら、その債権は引き当てなくてもいいんでしょうか。
  183. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  合併に当たりましていろいろな話し合いが行われていると承知しておりますが、その中で、住友信託が正常債権だけを引き取る、こういうふうにおっしゃっているわけです。つまり、相手方に対してできるだけ身ぎれいになって来るようにということを求めているわけでございますので、身ぎれいになる一つ手段としてその償却をすることを決定されたというふうに理解しております。
  184. 石井啓一

    石井(啓)委員 いや、今おっしゃったのは、住友信託は第一分類しか引き受けないと言っているというわけでしょう。第二分類、第三分類は引き受けない。この第二分類、第三分類の引き当てをしなければ合併しないと言っているわけでしょう、住友信託は。そのために七千五百億円必要になってきたということなんだけれども、これは本来、第二分類、第三分類の自己査定の結果が全く不十分だった、全く甘い査定だった、こういうことじゃありませんか。第二分類、第三分類合わせて二兆八千二百四十億円ありますけれども、そこかちいきなり七千五百億円引き当てなきゃいけない。わずか五カ月でそれだけ悪くなりますか、通常。
  185. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  繰り返しになって大変恐縮でございますが、ことし、十年の三月期の決算というのは、自己査定結果を踏まえた上で公認会計士の監査を受け、償却、引き当てを実施したものでございまして、現在、その自己査定や償却、引き当ての適切性について、検査においてチェックを行っているところでございます。
  186. 石井啓一

    石井(啓)委員 いや、ですから、その自己査定の結果が全く不十分じゃないかということは今の数字を見てもわかりますでしょう。検査中だからわからないということですか。まあいいです。  今私が説明したとおり、この三月期の公表不良債権あるいは自己査定結果は、半年もたたないうちに七千五百億もの償却が出るような決算内容には全くなっていないのですよ。ということは、この三月期の決算がある意味でいかに不十分なものだったのか、実態を反映していないものだったのか、その証左であるわけです、今回この七千五百億も引き当てなきゃいけないというのは。そういうことになるわけですね。  では、もうちょっと角度を変えて聞きますけれども、今回、長銀の引き当て率を見ますと、旧基準で八〇・三%、新基準では五一・二%です。これは、他の主要十九行の引き当て率の平均から比べますと、旧基準が平均が八四・四%、新基準でも五五・七%ですから、主要十九行の平均引き当て率よりちょっと低い程度なんです。そのちょっと低い程度の長銀でも、実際によく調べてみたら、七千五百億も新たに、新たにといいますか償却をしなきゃいけないとなる。そうなりますと、ほかの銀行でも同じように、この三月期の決算内容は決算内容だけれども、もっともっと巨額の不良債権償却が本来は必要なんじゃないか、こういうことになりませんか。
  187. 日野正晴

    ○日野政府委員 今回の長銀による関連ノンバンクの処理というのは、合併を実現するためのものでございます。  それから、長銀以外のお話でございますが、これは個別金融機関の判断にかかわる問題でございます上に、その債権一つ一つについてやはり個別の物差しが、あるいは引き当て率と申しますか、そういったものが必要となってこようかと思いますので、コメントを申し上げることは差し控えたいと思います。
  188. 石井啓一

    石井(啓)委員 先ほどから言っておりますように、住信と合併をしなければいけないから七千五百億償却しなきゃいけないというのは、これは全然納得できませんよ。そうでしょう。そうであるならば、この時点で何で自己査定の結果にそれが反映されてこないのですか。そうでしょう。だから、いかにこの三月期の自己査定、決算内容がおかしいかということじゃないですか。  もう一つ、これは法務大臣にお聞きしますが、この三月期の自己査定が不十分だとしますと、長銀はこの三月で配当を行っているわけですよ、一株年間六円の。この配当というのは、いわゆる商法違反になるんじゃないのでしょうか。
  189. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 お答えいたします。  長銀のこの不良債権の詳細についてはこちらでは承知しておりませんので、その三月期の利益配当が商法違反であったかどうかということについては申し上げられないわけでありますが、一般論として言えば、商法二百八十五条ノ四で金銭債権の評価が明記されております。それは、「金銭債権ニ付取立不能ノ虞アルトキハ取立ツルコト能ハザル見込額ヲ控除スルコトヲ要ス」。これを受けて商法二百九十条で配当のやり方が書いてあるわけですが、控除した後に配当可能利益がないのに、あるいは配当可能な利益を超えて配当するということが行われれば、商法二百九十条違反となります。
  190. 石井啓一

    石井(啓)委員 今、一般論でお答えになりましたが、先ほどから私申し上げておりますように、これは大変重大な問題を含んでいる、私は商法違反の疑いが濃いと指摘をしておきたいと思います。  先ほどから、監督庁長官、検査、検査とおっしゃっておりますけれども、これは今、七月十三日から長銀に対する検査に入っておりますね。この検査はいつ終了されるんでしょうか。
  191. 日野正晴

    ○日野政府委員 長銀に対する検査につきましては、今お話がございましたように、七月十三日から立入検査を実施しております。本年三月期の自己査定の結果に基づきまして、その資産内容等について現在鋭意実態把握をしているところでございまして、まだ終了しておりません。  検査がいつ終了するかについては申し上げられないことを御理解いただきたいと存じます。
  192. 石井啓一

    石井(啓)委員 もう一カ月も前から入っているんでしょう。それも、今回のケースは、いわゆる資産査定、いわばほかの、例えば銀行の通常業務が健全に運営されているかどうか、そういったことを除いて資産査定だけに特化してやっているはずですね。そうしたら、もうそろそろ検査結果が出てきていいんじゃないでしょうか。いつ検査結果が出るかわからないということでは、これは審議にならないんじゃないですか。
  193. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  繰り返しになって恐縮でございますが、いつ終了するかについては申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。
  194. 石井啓一

    石井(啓)委員 先ほどから申し上げておりますように、この三月期の決算の内容が正確なのかどうか、この検査の結果がきちんと出なければ、我々は今長銀の経営実態については何にも把握できないじゃないですか。審議できないじゃないですか。
  195. 相沢英之

    相沢委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  196. 相沢英之

    相沢委員長 速記を起こしてください。  大蔵大臣
  197. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の御質問の趣旨はよくわかるように承りましたが、その後の経済情勢の変化もございますし、必ずしも正確に私ども把握しておりませんので、いずれまた監督庁が調査を進めていきますともう少ししっかりしたことがわかるのではないかと思いますので、ただいまのところはそのようなことで御理解をいただきたいと思います。
  198. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  従来の大蔵省の金融検査部での今までの経験に徴しますと、約二カ月ぐらいを要していたようでございます。  ただ、今回長銀の場合はこのようなケースとなりましたために、三月期における決算の状況のみならず、進行中のもろもろの事象についてもできるだけ詳しく把握したい、こういうふうに思っているところでございます。
  199. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは、もう一度このパネルで確認をしますけれども、この三月期の決算ですと、公表不良債権が新しい基準でも一兆三千七百八十五億円です。そのうち、引き当てていない分は六千七百十七億円。これをオーバーする額を今回引き当てようとしている。なおかつ、この自己査定結果を見ますと、第三分類でさえ四千四百四十四億円。今回、七千五百億円というのは、これは全部第四分類ですよ。  こういうふうに、数字が三月期と現在で全く違ってきてしまっている。こういうことに対してどのようにお思いになりますか、大臣。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでございましたら、リストラ計画に出ておりますいろいろな数字は、これは監督庁で精査をしていただくことは当然でございますので、その際にはっきりしてまいると思います。
  201. 石井啓一

    石井(啓)委員 いや、そうじゃなくて、三月期の決算と、今七千五百億を償却しなければいけないというこの状況と、余りにも経営実態に差があるわけですから、かなり悪くなってしまったわけですから、これをどういうふうに理解をされているんですか、こういうことを聞いている。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げますのは、七千五百億円というのは五千二百と二千三百の合計としてリストラ計画に出ておるわけでございますけれども、その実態がどういうものであるかということは、いずれリストラ計画そのものを精査いたさなければなりませんので、それによってかなりのことがわかってくるのではないか。  いずれにしても、かなりの時間の差がございますからその間の異動というものもあり得ると思いますが、リストラそのものの数字、これも精査する必要がございます。
  203. 石井啓一

    石井(啓)委員 そうしますと、五カ月たつと突然長銀状況が悪くなって新たに七千五百億もロスが出てくる、こういうことになるんでしょうかね。そうするとまたぞろ、では七千五百億で済むのかという話が出てきますね。  といいますのは、先ほど言いましたように、この七千五百億は、監督庁長官によると、住友信託との合併を促進するためにやるんだというお話ですが、住友信託は第一分類しか引き受けないと言っているわけですね。だから、第二分類、第三分類の二兆八千二百四十億円、この引き当てが七千五百億で十分かどうか、これは全然わからないですよ。もっと大きくなる可能性もある。これは検査結果が出ないとわからぬということかもしれないけれども、そうだとすると、それをきちんと明らかにしてもらわないと、我々は国会審議ができないんじゃないかということを言っているんです。
  204. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  ただいまお話がございましたように、検査結果が出なければ適切な判断ができないのではないかというお話です。  ただ、一般的に、公的資本注入の決定に当たりましては、金融機関からの申請を受けた金融危機管理審査委員会において、法律や審査基準に基づいて適切に判断されることとなると承知しております。  委員会における審査に際しましては、検査結果を含めましてどのような資料に基づいて審査を行うかについては審査委員会で判断されることですが、一般論で申し上げますと、金融監督庁長官はメンバーの一人でございますので、検査で把握した情報を活用することによりまして審査委員会の的確な判断に寄与していきたいというふうに考えているところでございます。
  205. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは、少なくともその検査が終わったら、その検査の結果はきちんと公表されるのですね、長官
  206. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  個別金融機関の検査結果につきましては、私どもの方から公表をするという予定はございません。
  207. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは本当に公的資金を入れるのが適当なのかどうか判断できませんよ。それは、金融監督庁には守秘義務があるかもしれないけれども、一方で国民に説明する義務があるじゃないですか。そのどちらかを判断して、この公的資金導入については、私はやはり国民に説明する義務の方が勝つ、少なくとも公的資金導入をする限りはその検査の結果はやはり公表しなければいけない、こういうふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最終的には金融危機管理委員会がこの導入を許すか許さないかを決定されるわけですが、危機管理委員会は、時間がたちました後、その検討の経緯は公表されることになります。
  209. 石井啓一

    石井(啓)委員 その導入を決定した後、長い期間たってから公表されても、それはもう後の祭りじゃないですか。導入をするときに、我々も国民の側に立って、国民皆さんに納得できるように十分説明する、そういう私たちは義務があるからこういうふうに聞いているわけですよ。そうじゃないでしょうか。  総理大臣、ちょっとお聞きしますけれども、監督庁長官では、お役人だから、確かにそれはなかなかできないかもしれない。こういう問題はやはり総理がリーダーシップを発揮して、総理責任をとるから、自分責任をとるからやるんだ、こうじゃないとできないのじゃないでしょうかね。  総理大臣、リーダーシップをとって、この公的資金を導入する場合はこういう検査結果もちゃんと公表するとルール化すべきじゃないでしょうか。総理、どうですか。
  210. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 予算委員会並びに両院の本会議で申し上げておりますように、個別の金融機関に対する金融監督庁の調査につきましては、種々影響の大きいことでございますので、これを個別に公表することはいたしませんと申し上げておりまして、その考え方には変わりありません。
  211. 石井啓一

    石井(啓)委員 私は、国政調査権を発動する前に、やはり総理はこの問題についてきちんとリーダーシップをとってやる。そうなって初めて私は小渕内閣の信任も上がるのじゃないか。このままでは、残念ながら、下がる一方じゃないでしょうか。  それでは、ちょっと日銀総裁にも聞きますけれども、監督庁は今検査をやっているということですが、もう日銀は既に終わっていますね、日銀の考査。この日銀の考査をした結果、この三月期の自己査定結果に問題はなかったのでしょうか、日銀総裁。
  212. 速水優

    速水参考人 長銀のこの考査結果につきまして、私どもの方でも非常に関心を持って考査いたしましたけれども、結果につきましては、日本銀行法及びそれぞれの銀行との契約に基づきまして一切公にしないという立場、建前になっておりますので、まことに申しわけございませんが、ここで申し上げるわけにいきません。よろしくお願いします。
  213. 石井啓一

    石井(啓)委員 個別の細かいことは聞きませんけれども、それではこの長銀、日銀考査の結果、債務超過かどうか、あるいは、関連ノンバンクがありますね、今回借金を帳消しにする、この関連ノンバンクの債権の引き当てについてどう認識されていたのか、この点についてお答えください。
  214. 速水優

    速水参考人 私どもの考査結果、この三月末につきましてやったわけでございますが、六月の時点でわかったところでは、債務超過にはなっておりません。
  215. 石井啓一

    石井(啓)委員 ノンバンクの件はどうですか。
  216. 速水優

    速水参考人 ノンバンク三社向けの貸国債権、これらにつきましても個別の考査結果を聞きはいたしました。  しかし、これも考査結果にわたるものでございますので、先ほど申し上げました日本銀行法及び考査に関する契約において秘密保持義務を負っておりますので、この点につきましてもお答えすることはできませんので、あしからずよろしくお願いします。
  217. 石井啓一

    石井(啓)委員 金融監督庁の検査にしましても、日銀の考査にしましても、これはやはりきちんと出してもらわないとだめですよ。  改めて、もう我が党からも資料要求をしておると思いますが、本委員会に金融監督庁の長銀に対する検査結果及び日銀の考査結果を資料提供することを求めます。委員長、よろしくお願いします。
  218. 相沢英之

    相沢委員長 後刻、理事会において相談いたします。
  219. 石井啓一

    石井(啓)委員 それから、日銀総裁、最後に確認しますけれども、今回の長銀資金繰りを支援するために日銀特融を使う可能性が報道されておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  220. 速水優

    速水参考人 長期信用銀行につきましては、私ども中央銀行立場として、システミックリスクを回避するという立場からも、住友信託銀行との合併の円滑な実現に向けて資金繰りの面でも必要な支援を行っていぐ所存でございます。ただ、現時点では特融発動といった支援が必要であるとは思っておりません。
  221. 石井啓一

    石井(啓)委員 現時点では思っていないけれども必要になればそれはあり得る、そういうことでしょうか。
  222. 速水優

    速水参考人 必要な時期になりまして、大蔵大臣からの要請があり、私どもの政策委員会に諮った上で、必要である場合には出すことになると思います。
  223. 石井啓一

    石井(啓)委員 そうしますと、債務超過をしていない長銀に特融を出す、こういうことになりますね。  かつて債務超過をしていなくて特融を出したケースは、私、戦後は第一次の山一証券のときのみというふうに聞いておりますけれども、これは極めて異例じゃないでしょうか、破綻していない銀行に対して特融を出すということになりますと。この点はどうでしょう。
  224. 速水優

    速水参考人 個別の金融機関の取引内容についてちょっとコメントするわけにもいきませんので。いずれにいたしましても、日本長期信用銀行に対しては、現時点で特融発動といった支援が必要であるとは考えておりません。
  225. 石井啓一

    石井(啓)委員 ちょっとこのやりとりしていると時間がもったいないので、次の質問に移りますが、長銀が債務超過状態に陥っているのではないか、あるいはもうほとんどそれに近い状態じゃないかという疑いはやはり晴れないのです。  それで確認をしますけれども、まず、この中間期に、この九月に行う七千五百億の不良債権の償却の原資がどうなっておるのか、そして、新たに公的資金で資本注入を行う必要性はどうなのか、この点についてお答えください。
  226. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  長銀によりますと、本年九月期における関連ノンバンク等の不良債権処理の償却原資は、資本勘定のほか、業務純益、不動産売却益等であると聞いております。
  227. 石井啓一

    石井(啓)委員 その内訳を聞いているのです。資本勘定で幾ら償却し、あるいは本店売却益等で幾ら償却するのか、これをお答えください。
  228. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  これは単体ベースでございますが、業務純益と不動産売却益で約千二百億円ございますので、これをまず差し引きまして、その差額を、六千三百億円ということになりますので、これを資本勘定から落とすということになろうかと思います。
  229. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは、先ほどの後半の問いですけれども、新たに公的資金で資本注入を行う必要性、これについてお答えください。
  230. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今のような償却を行いますと、資本勘定がかなり少のうなります。過少資本になりますので、それを補うために公的資本の注入を長銀は求めたい、こう言っているわけでございます。
  231. 石井啓一

    石井(啓)委員 それでは、また次のパネルで説明をしたいと思いますが、今のやりとりを確認しますと、まず、長銀は現時点、三月時点で七千八百七十二億円の自己資本があるわけですね。そのうち公的資金、優先株の分が一千三百億円であり、長銀本来の自己資本、この下の赤い部分ですけれども、これが六千五百七十二億円、こういうことになるわけですが、この中間期で不良債権償却七千五百億をやる。そのうち一千二百億は、これは業務純益であり、あるいは本店売却益であるが、六千三百億は、これは資本から充当してやる。したがって、七千八百七十二億円あった自己資本から六千三百億円は不良債権償却に充当するので、償却後の自己資本は一千五百七十二億円ですよ、こういうことになるわけですね。  これは、公的資金一千三百億を使わないとすると、この償却後の自己資本一千五百七十二億円の内訳は、もともとの公的資金が一千三百億円で、長銀本来の自己資本は二百七十二億円、これは単体ベースでございますけれども、こういうことになると思いますが、これでよろしゅうございますか。
  232. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  資本勘定は極めて抽象的な概念でございますので、ラインを引くといいましても、お金に色がついているわけではございませんのであれなんですが、今お尋ねになったようなことになろうかと思います。
  233. 石井啓一

    石井(啓)委員 そうしますと、総理、ちょっとよく見ていただきたいのですけれども、お金に色がついているわけじゃないから償却後の自己資本が必ずしもこうなっていないかもしれないということだけれども公的資金をそのまま残すとすると、この償却後の自己資本、長銀本来の自己資本というのは二百七十二億円に減っちゃうのですよ。もともと六千五百七十二億円あったやつが二百七十二億円になってしまうのですね。わかりますか。  これはもうほとんど破綻しかかっている銀行というふうに言えるのじゃないでしょうか。総理、いかがですか。
  234. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 計算はお示しのとおりと思いますが、自分の、つまり導入したのでない資本がなお残っております。
  235. 石井啓一

    石井(啓)委員 いや、残っておるかもしれないけれども、それはごくわずかですよ。わずかなのですよ。  しかも、先ほどから申し上げておりますように、不良債権償却が七千五百億で果たして十分なのか。もっとこれが必要になってくると、本来の自己資本はゼロになってしまいますよ。いいですか、ゼロどころかマイナスになってしまう。公的資金、優先株分もそれに使わざるを得ないかもしれない。どういう銀行なのでしょうか、この長銀というのは。  こういうことからしますと、私は、債務超過じゃないというふうにおっしゃっているが、実際はもうほとんどつぶれかかっている銀行じゃないか。つぶれかかっている銀行公的資金で救うというのか、この枠組みは。非常に疑問に思わざるを得ません。この点、いかがですか。
  236. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは何度も御説明を申し上げているところですが、仮に二百幾つという数字を前提といたしますと、それは資本率としては非常に低いわけでございますから、銀行としては当然高い資本率を求めて政府に公的な資金の導入を要請してくるであろう、こういうことでございます。
  237. 石井啓一

    石井(啓)委員 そうしますと、償却後の自己資本が一千五百七十二億円です。非常に少なくなったから、新たにまた、報道によると五千億とか六千億、資本注入する、こういうことですけれども、そうしますと、長銀というのは本来の自己資本がごくわずかで、ほとんど公的資金で資本が賄われている、そういう銀行になるじゃないですか。こうなると、これはほとんど国営銀行になってしまいますよ。そういう仕組みですか。破綻前にそういうことをすることが許されるのでしょうか。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 したがいまして、今度の長銀のリストラクチャーというのは、実はもうリストラと合併にかけて再生を図る、延命と私はあえて申しません、というぐらい厳しいリストラクチャーをしなければならないということで、全役員の退任であるとか、あるいは海外業務の停止であるとか退職金の追求であるとか人員の整理であるとか、あらゆることをして、そして国の公的資金の導入を受けて、そして願わくは合併によって新しい銀行に、いわば従業員と申しますのでしょうか商権と申すのでしょうかスピリットと申しますか、そういういわゆる銀行の生き残りでない、いわば再生をかけておるということかと思います。
  239. 石井啓一

    石井(啓)委員 先ほどから申し上げておりますように、今回の長銀のこの救済というのは、救済じゃないというふうに言うかもしれませんが、まさに破綻処理ではなくて、もう破綻しかかっている、あるいはもう破綻しているかもしれない銀行の救済じゃないのでしょうか。  ですから、これは納得できない。先ほど言いましたように、本当にこの不良債権の償却、七千五百億で十分なのかどうか。これが積み上がれば、償却後の自己資本がマイナスになってしまうこともあり得るわけですね。  しかも、もう一つ申し上げますと、先ほど株式の含み損の話がございました。この三月期の含み損でも二千四百億あるわけですね。三月期の平均株価が一万六千五百二十七円の時点で、二千四百七十一億円も長銀は含み損があるわけです。きょうの株価は午前中の終わり値が一万四千四百六十円ですから、これは恐らく三千億を超えるような大きな含み損になっていると思いますよ。  そうしますと、会計法上は含み損を計上しなくてもよくなってはおりますけれども、実態ベースで、時価ベースで実態的に評価すると、この償却後の一千五百七十二億円でも株式の含み損はもう賄えない。本来もうこれは債務超過に実態上なっているのじゃないか、こういう疑いもあるのです。この点はどうですか。
  240. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ある程度仮定が入ってのお話ですから、それとしてお答えをいたしますけれども自分の本来の、従来持っておった自己資本が、そのチャートで示しますように非常に小さくなることは確かでございます。しかし、自己資本が残っております。全体としてはなおプラス千三百億が残っておるわけですから、それは債務超過ではございませんし、破綻ではございません。破綻であれば国の金を入れることはできないわけでございます。そこは大変明確に申し上げたいと思います。
  241. 石井啓一

    石井(啓)委員 ですから、先ほどから申し上げておりますように、不良債権償却七千五百億ということで今こういう計算になるわけですが、これがもっと上積みされれば、本来もっと引き当てなきゃいけないということになれば、これはもうできない、破綻しちゃうかもしれませんよ。だから、それはやはりきちんと検査結果を見ないと我々は判断できませんよということを、先ほどの問題に戻るわけだけれども、そういうことを言っているわけであります。  もう時間がなくなってきましたのであれにしますけれども、私の質問の冒頭から申し上げましたように、余りにも政府の情報開示の姿勢が旧態依然たるものである。こういう説明の状況国民にこの公的資金導入を納得しろと言っても、私は全く無理だと思うのですよ。そして、総理もそれに対するリーダーシップを発揮しようとする姿勢が全くない。これでは小渕内閣はブルッジバンクならぬブリッジ政権で、すぐさま次につなぎの政権で終わっちゃうのじゃないか、こういうことを私は強く忠告を申し上げまして、西川議員に譲りたいと思います。
  242. 相沢英之

    相沢委員長 この際、西川知雄君から関連質疑の申し出があります。石井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西川知雄君。
  243. 西川知雄

    西川(知)委員 西川知雄でございます。  今、長銀の財政内容、経営内容が一体どういうものかはっきりとわからないのに、また、長銀が場合によっては債務超過になっているかもしれないのに、そういう情報不足の中で、公的資金国民のお金を使うということが本当に許されるのか、また、今国民が、非常に景気が悪くていろいろな企業が倒産し、リストラに遭っている、そういうときに銀行だけこういうふうに救済していいものだろうか、これが国民の率直な疑問ではないかと思います。  それに対して、先ほど宮澤大蔵大臣は、公的資金を導入するということがどうして必要かということについていろいろな理由を挙げられました。抽象的には、我が国の金融機能全体に対する内外の信頼確保のため公的資金を導入することが必要だ。  それをもう少し具体的に言われまして、一つは債務者の保護。貸し渋りが起きるから、また、それによって倒産が起きるからだ、こういうことをおっしゃいました。二番目は、ノンバンクに大きな影響を与える。すなわち、これは兆単位である。三つ目に、海外等において支店の閉鎖がされるので、海外に対する影響が大きい。四番目は、デリバティブが大体五十兆円ぐらいある、そのマーケットからの撤退によって他の銀行にも大きな影響がある。こういうことを四つおっしゃいました。  私は、今から、それがすべて間違いだということを指摘したいというふうに思います。  一つは、債務者の保護、すなわち貸し渋りが起きる、それゆえに連鎖倒産が起きる、こういうふうにおっしゃいましたが、金融安定化法案の以前の審議においては、大蔵省の資本注入に対する答えとして、どうして公的資金を例えば長銀の優先株を購入するのに使うのかというと、それは貸し渋り対策に大いになります、そして、例えば一というお金を投入すれば十二・五倍の貸出枠がさらにふえます、したがいまして債務者の保護、すなわち貸し渋り対策に大いにこの公的資金を導入することが役に立ちます、こういうふうな説明でした。ところが、今、総理大蔵大臣も御存じのように、ますます貸し渋りというものが強くなってきています。  ということはどういうことかというと、まず第一に、政府が、政府金融機関等において貸し渋り対策は万全にしております、貸し渋りのないようにしておりますと言っても、それは全然効果がないということを一つあらわしているだけでなく、資本注入と貸し渋り対策、それが因果関係、全然関係がないということを明らかに示しているわけです。したがいまして、債務者の保護、貸し渋りが起きるから公的資金長銀に導入しないといけないというのは間違いなわけです。  二番目に、ノンバンクに大きな影響を与えるというふうに言いますが、ノンバンクは別に銀行ではありません。そして、システミックリスク、そういうものもありません。例えば、ほかの企業と同じです。ほかの企業の倒産によっていろいろなその下請とかが倒産するかもしれませんが、その影響も非常に大きいです。どうしてノンバンクに対する影響だけ考慮しないといけないのか、それは全然理屈に合っていないと思います。  三つ目に、海外支店の閉鎖、それからデリバティブのことをおっしゃいました。これは海外業務のことについて言及されているわけですが、大臣もよく御存じのように、デリバティブというのは、裁定取引とかスワップとかオプションとか、そういうものですけれども、勝負は非常に早い。したがいまして、もう長銀が危ないということになったら、ほとんどの者がもう手じまいをして違うところとやるということになっております。  ですから、一行当たり平均して百三十兆円ぐらいの元本がある、また長銀の場合は五十兆だというふうにおっしゃいますけれども、これは長銀が危ないということであれば、もう全部、ほかの銀行とデリバティブをやりましょうとか、また違うところで、早く手じまいをしてしまいましょうとかということになるので、そういうような危険性というのは、余りにも抽象的に、国民に、こういうことがあるから資金を投入しないといけないんだ、そういうことを誤解させるために私はそういう理由をつけているのじゃないかというふうに思わざるを得ません。  今申し上げましたように、一から四まで挙げられた理由というのは、私は公的資金を導入する理由には全然なっていないというふうに思いますが、もし御意見があればお聞かせください。
  244. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、一つ一つ、私の考えておることを申し上げます。  三月に公的資金を導入しましたときに、政府側は恐らく、私おりませんでしたけれども、これは基本的には金融のシステミックな安定を図るためである、しかし同時に貸し渋りの改善に役立つものと思います、きっとそう申し上げたと思います。実際には、貸し渋りの改善に今日までのところ役立っておりません。いろいろ事情はございましたでしょうが、そうはなっておりません。それは西川委員のおっしゃるとおりです。  私がさっき申し上げましたのは、ここで長銀から公的資金の導入の申請があって、それをしなければ恐らく長銀というのはそこで破綻をいたさざるを得ないと思います、それを申し上げようとしたわけです。仮定のことでございますけれども、そういたしますと、長銀と取引をしていた顧客は全部債権の回収をされますから、そうかといって新しい銀行に取引を急に開けるかというと、そういうわけにまいりませんので、そういう意味で顧客に被害が及ぶということを申し上げたわけでございます。  それから第二に、ノンバンク、確かにノンバンクは銀行ではございません。ここでも、ちょっと私は言葉を省略いたした嫌いがあるかもしれませんが、幾つかのノンバンクはいわば長銀が親元である、そういう性格を持っておりますので、長銀が手を引きますと、このノンバンクには、十九行の中で各行、非常に大きな金を貸しておりますので、長銀がこれを守らないということになりますと、各行がみんな、そこへ貸している金がだめになる、そこで恐らくパニックを起こすであろうということを申し上げたつもりであったんです。いわば、母体行という言葉が昔ございましたけれども、それに近い立場長銀はあると自他ともに認められておりましたものですから、長銀が放棄するんなら、よそももう全くこれは顧みる必要がないということになる、それは十九行、保険会社等々に非常に影響を及ぼすということを申し上げようといたしました。  それから、最後の問題は……(西川(知)委員「海外の」と呼ぶ)海外。  五十兆と申しましたのは三月末ごろの数字のようでございますから、その数字は変化をしておる可能性は確かにございます。しかし、それでも何十兆ということに恐らく変わりございませんし、かたがた、日本銀行がデリバティブスをデフォルトしたということは日本金融界全体についての世界の信用を落とすのではないか、こういうことを憂慮して申し上げました。
  245. 西川知雄

    西川(知)委員 今の御説明をテレビをごらんになっている国民の方が聞かれて、本当に、例えば長銀の子会社である日本リースがいろんなところで、投資に失敗をした会社に貸す、そういうことの穴埋めにどうして自分たちのお金が今おっしゃったような理由で使われないといけないんだろうかということに対して説得力がないんじゃないかというふうに私は思います。  また、先ほど来石井議員がここで疑問を投げかけましたように、長銀の経営実態、それが一体今どういう状態なのかということもわからない、そして、公的資金を幾ら入れたらどういうような効果が、具体的に国民にとって、自分にとってメリットになるのか、それもよくわからない、こういう状況では国民は十二分に納得しないと私は思うんです。  例えば、公共工事をする。そのときに、この公共工事に予算をつけたらこれだけの効果があります、減税をしたらこれだけの効果がありますということを政府は発表されております。そして、こういう委員会でも言っておられます。こういうような、幾ら国民の税金を使ったら、おおよその数字でもいいですけれども、具体的にどういうふうなメリットが国民にとってあるのかという費用対効果というものをぜひこれから明らかにしていただきたいというふうに私は思います。    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕  そこで、これに関連しまして、長銀の経営健全化計画ということについてちょっと触れたいと思います。  公的資金を導入するときには、現在、審査基準がありまして、その中で、先ほども申しました経営健全化計画というものを出さないといけない、そしてそれが承認されない限り公的資金は導入されないということになっております。  そこで長銀は、この三月に公的資金を申請したときに、二十八ページにもわたる立派な経営の健全性の確保のための計画というものを出しております。もしこのとおりにしておれば今回のようなことにはならなかったと私は思います。この中にも、長銀の各従業員一人単位の収益性というものは日本でもトップクラスである、そう書いてあります。そして、そのトップクラスの行員を擁する長銀がこの経営健全計画にのっとってちゃんとやっておれば、こんなことにはならないはずです。  また、新たに今リストラのための健全計画を出しておられます。しかしながら、そこの中では、大幅なリストラをするとか、もっと経営を健全化させるいろいろな具体策が書いてあります。ということは、私は、この三月に出された健全化計画、これが一体どういうふうに遵守、守られてきたのだろうか、また、一体現在どういう状況で進行しているのだろうかということを、公的資金を導入される前提として国民はみんな知りたいと思います。  そこで、金融安定化法の二十四条の四項に、審査委員会は、当該金融機関等に対して、この健全化計画の履行状況につき報告を求め、これを公表することができるというふうにされております。そこで、今こういうふうに長銀集中審議というのがこの委員会で行われております。また、テレビでも放映されて、そして国民全体が、これは一体どういうふうなリストラ状況になっているのかということをぜひ知りたいというふうに思っております。  ここで私は、審査委員会、預保がぜひ、この今の長銀の健全化計画に基づく履行状況がどういうふうになっているのか、これをここで報告を求め、そして公表をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  246. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  先ほど同じようなお答えを一度させていただいたのですけれども、あるいはダブる点があったらお許しをいただきたいと思います。  先生御指摘の本年三月期の資本注入に対して、経営健全性確保計画というものを出していただいて慎重に審査をいたしました。先ほど条文をおっしゃられましたように、審査委員会としては履行の状況をフォローし、場合によっては公表するということが、この健全性確保計画で示された各銀行の経営者のモラルを維持する唯一の方法と私は心得ているわけであります。  そこで、次に、資本注入をしたのは三月の末ですから、次半期の九月の末に、この半年間の、二十一行にわたってフォローをいたしまして、改めて健全性計画についてそれをとりたいと思います。それをとったら公表する、こういうことにしたいと思います。  その前に、とにかく三月十日に優先株の引き受けなどを決めましたから、三月の末の見込み値でこの処理をしておりますので、この間の見込み値と、その後、三月決算に出た実測値と、その間にそごのある点もありますので、改めて各銀行からとりました。それは近く公表させていただきます。  そういうことを踏まえてやっているのですが、このたび合併の話になりまして、新たに今までの計画とは食い違う、つまり、十二年度の見込みの数字を私ども三月にもらっておりますから、大分食い違う長銀の計画が出そうであります。  ただし、健全性確保計画というのは、私どもに、資本注入をしたときに初めて新たに出てくるものでございますから、今の段階としては、まだ数字も固まっておりませんので、とりあえず両行に、住信と長銀に、今どういう状況になっているかという報告を求めている段階でございます。そういうことで御理解いただきたいと思います。
  247. 西川知雄

    西川(知)委員 今の三月のリストラ計画の履行状況、これを長銀について今出していただけるのかいただけないのか、ちょっとはっきりしませんでしたので、もう一度、長銀については今こういうような危急の事態に陥っているから、私どもは、政府の方として公的資金を導入されるというようなことをおっしゃっていますから、現在の時点、この審議の時点において、その履行状況がどういうふうになっているのかということをぜひ説明して公表してほしいということを主張しているのですが、その点についてどちらなのか、お答え願いたいと思います。
  248. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  若干言葉足らずだったかもしれませんけれども、今私どもが公表を予定しておりますのは、ことしの三月期の実測値をまとめた経営健全化計画そのものなんです。それは、本当に近く公表する予定でおります。  それから、先生多分御指摘の、今現在いろいろうわさされている資本注入に絡むものを出したらどうかというお話ではないかと思うのですが、それは九月末まで待っていただきたいな、そういうことでございます。
  249. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、長銀公的資金を導入するということについて、一体何のために、またどれぐらい、情報がはっきりとしないのに公的資金を導入するのはいかがなものかということが国民の本当の気持ちだということを私は申し上げましたが、もう一つ、先ほどから出ておりますように、長銀の過去の経営者が、例えばある人は九億七千万円もの退職金をもらって退職している。そしてその人が、新聞報道等によりますと、その退職金を返還するつもりであるというようなことをおっしゃっております。  しかし、今度の、万が一公的資金を導入するという、そういう申請が長銀からあった場合、そのときは私は新たな経営の健全性の確保のための計画というのが出されると思うのですが、その中に必ず、そういう過去の、今長銀のこういう体質をつくった、また、そういう責任のあった役員、その人たちの退職金を必ず返還させるということが計画の一つであるということをぜひ書いてもらって、そして書かない限り公的資金は導入しない、審査をパスさせないというふうにしないと、とても今の経済状態において国民公的資金の導入に対して理解を示すということは私はないと思いますが、総理、いかがですか。    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  250. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごもっともと思います。  リストラ計画には既にそういうことが書かれておりますから、現実の事態になりましたときにこの点は極めて明確にしてもらうことが、仮に公的資金を導入いたします場合にはその条件でなければなりません。
  251. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、国税庁に一つお聞きしたいのですが、もし長銀日本リース等への債権、これを放棄した、約五千二百億円と聞いておりますが、万が一これが行われた場合には、これは無税償却の対象になるのでしょうか。
  252. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  御存じのとおり、個別の事柄について答弁することは差し控えたいわけでございますが、一般論で申し上げますと、今言われました無税償却という用語が、法人税法上の、所得の金額の計算上損金に算入されるということを意味するということだと思いますけれども、法人の債権放棄それから引き当てによる損失につきましては、合理的な再建計画に基づくものであるなど、寄附金に該当しないものである場合には、法人税法上、損金の額に算入されるべきものです。この扱いは、当該法人にとって事業遂行上必要な経費、すなわち合理的な経済目的に沿った支出については寄附金に該当せず、損金となるということだと思います。  いずれにしましても、債権放棄及び引き当てについては、個々の取引の具体的な事実関係に基づきまして、法令等に照らして損金となるか否か判断して、適正に処理していくということになるかと存じます。
  253. 西川知雄

    西川(知)委員 ということは、法人税の実効税率が四六・六%だ、まあ五〇%だと計算して、この五千二百億円の約半分の二千六百億円が本来税収として上がるところを、損金として五千二百億円が計上されるから、二千六百億円が取りはぐれる。これも新たな公的資金の導入だ。すなわち、公的資金がこの場合にも行われて、また今度の資本注入で行われるというふうにも考えられるんですが、総理、その考え方でよろしゅうございますか。
  254. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま国税庁がお答えいたしましたのは、大変慎重に申し上げていますし、また、今のケースについてではないとして、申し上げましたことは、要するに、片方でリストラ計画を立てて慎重にいろいろなことを進めていく一環として債務免除を行ったときに、その課税についての問題で、それを寄附金と見て課税するのはいかにも現実的でないだろうということから、それは課税をいたさないことがある、こう申し上げたと思うので、それは一般にそういうことが言われることでありまして、今度のこの長銀の場合だけに限って申すわけではありません。  つまり、そのような場合が寄附金に当たるとして課税をすることは、いかにも全体のリストラをやっている一環として見ますとそれはいかがなものか、そういう意味合いと思います。
  255. 西川知雄

    西川(知)委員 時間が来ましたので終わりますが、この経営健全化計画の策定に至る審査委員会の審議状況、また、公的資金を導入するときに審査基準というものがつくられているわけですが、どういう経緯でこれがつくられたのか、この議事の審議の概要について、預金保険機構がこれを早く前向きに出していくということを言っておりますが、私が聞くところによると、まだこの審議の概要の発表というものがなされておりません。その預保で、審査委員会で審査をしていたときのテープはどうもあるようでございますが、一体どういう基準で公的資金を導入するのか等々の審査基準をどうやってつくったか、その審査基準の審議の概要、これをもっと早く出していただきたいということを私が要請して、質問を終わりたいと思います。
  256. 相沢英之

    相沢委員長 これにて石井君、西川君の質疑は終了いたしました。  次に、谷口隆義君。
  257. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  まず初めにざつくりとしたお話からお聞きして、詳細ないろいろ御質問をさせていただきたいというように思っております。  この四月から金融ビッグバンが始まったわけでございます。御存じのとおり、我が国の金融業界は構造的不況業種とも言えるような状況でございます。後ほど堺屋太一経企庁長官にもこのあたりのことをお聞きいたしたいと思いますが、構造的不況業種とも言えるような金融業の改革をやらなければいけない、そこに問題になっておったのが大蔵省の従来からの護送船団行政と言われるようなものでございました。  そういう状況の中で護送船団行政からの決別、また国内において、護送船団行政の中、この護送船団行政というのは業界の中の一番低いところに照準を合わせてそこを何とかもっていけるようにするものですから、それ以上の金融機関はそれなりの収益を上げていくというような状況がずっと続いてきて、それが金融業界全体の競争力を失わせる、特に国際競争力を失わせたのではないか。  現実に、我が国の金融機関状況を見ておりますと、ほとんど従来、大手銀行と言われる銀行も預貸業務が中心でございまして、欧米の金融機関のように金融新商品、デリバティブズと言われるような金融派生商品を今までやっておるというような状況じゃなかったものですから、今大変厳しい状況に置かれておるというのが現状でございます。そういう状況の中で、今般このような金融機関の経営危機とも言われるようなことが起こってきたわけでございます。  私、議員になりまして五年になるわけでございますが、なったときからもうずっと申し上げていたことは、この金融機関不良債権の問題が根底にあって、どうも景気の問題もそこから引っ張られて景気の上昇の弾みがつかない、一刻も早くこの不良債権の問題を解決しなきゃいかぬというようにずっと言い続けてきたわけでございます。  そういうような状況の中で、先ほどから同僚議員の本日朝からの質問にもございましたが、大手金融機関日本長期信用銀行の経営危機と申しますか、こういう状況の中で本日集中審議が行われるようになったわけでございます。  それで、まず初めに総理にお聞きいたしたいわけでございます。  私、今ざっとしたお話をさせていただきましたが、基本的に、今我が国の金融機関の数、都銀、長信銀、信託、また地方銀行、第二地方銀行入れまして百四十三行、協同組織金融機関の信用金庫が三百九十五行、信用組合が三百五行、合計八百四十三、これは十年の六月二十二日現在でございますが、あるわけでございます。こういう状況の中で金融業界の大胆な構造改革をやっていかなきゃいかぬというような必要性に迫られておるというように私は感じておるところでございますが、まず初めに、私が申し上げましたことに対する総理の御見解をお願いいたしたいと思います。
  258. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 現下日本金融情勢については、谷口委員と基本的には認識を同じゅういたしておるつもりでございます。  従来、日本金融行政護送船団方式ということでございまして、そのことを大蔵省の行政としてしっかり指導してきた。そのために金融機関としては、自己改革といいますか、みずから努力することがいささか不十分でありまして、そのために現下状況に立ち至っておるということだろうと思います。しかも、こういう時期に当たりまして、国際的なグローバルスタンダードが常に求められるということでありますし、一方、日本の中でビッグバンが行われてこれに対処しなきゃならない、もろもろのことが今日集約的にまいってきておる、こう考えております。  そこで、金融機関の数の問題につきましてもお触れでございますが、都市銀行あるいは地銀、また信用金庫あるいはまだ信用組合と、それぞれの立場で十分な仕事をされて、地域の中でも密着しながらその経営に努力をされておられる方々もたくさんおるわけでございます。いわゆる護送船団の中で大変厳しい経営環境にありながらなお存続をされてきたというようなところが、これからそれぞれの企業体の競争の中でこれが図っていけるものかどうかということにつきましては、大変危惧せざるを得ない状況ではないかと思っております。それは、これからの厳しい経営環境の中、国際化の中で一体どの程度までが適正であるかということにつきまして、今私が申し上げることはできませんが、方向性としてはそうなっていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  259. 谷口隆義

    ○谷口委員 総理に申し上げますが、要領よく端的にお答えをいただきたいと思います。  要するに、私が申し上げましたように、今現在の状況はオーバーキャパシティーである、そういう意味において市場規模に合ったこの是正を図っていかなきゃいかぬ、このように思うわけでございます。  小渕総理総理に御就任されたときに、橋本前総理が、参議院選挙で大変厳しい判断といいますか、国民から審判を受けられてかわられたわけでございますが、私あの状況を見ておりますと、国民思い自民党の中における派閥の論理と申しますか、こういう違いをもう大変はっきり国民の皆様方の前に示されたのではないかと思うんです。  私は先ほど、冒頭お話ししましたように、金融機関のオーバーキャパシティーの是正を一刻も早く図っていかなければいけないというように言っておるわけでございます。具体的なことで申し上げますと、早く手術をやっていかなきゃいかぬ、こういうことが最大急務である、喫緊の課題である。まさに、先ほどから同僚議員質問にもございましたが、私、後で論じたいと思いますが、この日本長期信用銀行の問題におきましても、もう債務超過の蓋然性が極めて高い。一方、政府の方は、総理初め大蔵大臣、この大手十九行はつぶさないんだというようなことをおっしゃっておるわけでございます。  しかし、今の状況を勘案いたしますと、まるで穴のあいたバケツに水を注ぐようなことになりはしないか。この金融機関の大変厳しい状況を、我が国が安易に公的資金を導入することによって経済全体を落としてしまうようなことになりはしないか、こういう心配を私は大変持っておりまして、大変危惧しておるところでございます。ですから、先ほど申し上げたようなことをまず冒頭お話をさせていただいたところでございます。  それで、先ほどお聞きしたいというように言っておりました堺屋太一経済企画庁長官にお聞きいたしたいところでございますが、この金融崩壊を先送りする、今政府の方は、とにかく大手、マネーセンターバンクと言われるような大手の金融機関の経営破綻は避けたいというようなことでやられておるわけでございますが、それが結局、経済全体の足を引っ張りはしないか、大変なことになりはしないのか。今なら、今の我が国の体力と申しますか、まだ手術に耐えられるような体力は私はあると思うんですよ。これが刻々と時間がおくれてしまうと、それこそ立ち直りができないような事態になるのではないか、このように危惧を持っておるところでございますが、経企庁長官、御見解をお願いいたしたいと思います。
  260. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今の日本の経済の状況と、それから委員のおっしゃる金融機関破綻の規模、これは全く想定でございますので、よくわかりません。その時々によると思うんですが、現在の日本におきましても、非常に大きな事件が起こるということになりますと、これは今、私、日本列島総不況と表現しておるのでございますが、この状態でもし非常に大きな金融破綻が起こるとなりますと、大変大きな連鎖が起こってまいりまして極めて危険だと思います。だから、どの程度のことがどういうぐあいに起こるのか、その時々になりませんと必ずしも言えないと思います。  現在私は、決してそう楽観できるような状況ではなくなっているんじゃないかという思いを持っております。
  261. 谷口隆義

    ○谷口委員 もっと前向きなお話が僕は聞けるのではないかと思っておりましたが、若干残念でございます。  要するに、私が先ほど申し上げたのは、確かに金融システムに対する不安はあるでしょう、これはもう間違いのない話でございます。ただ一方、先ほどから申し上げておりますように、この先継続して、ゴーイングコンサーンとして成り立っていけるかどうかわからない金融機関が、今のところはこの長銀でございますが、この後も数行出てくるかもわからないというような状況の中で、これを、私が先ほど申し上げたように、穴のあいたバケツに水を入れるようなことになった場合には、それこそ取り返しがつかないというようなことを私が言っておるところでございます。  確かに問題を先送りするのは大変簡単なことなんです。ところが、今この問題に直面し、手術を行うと申しますか、改革を行うというのは、これは大変なことなんですね。しかし、我が国はそれを迫られておるのじゃないでしょうか。それを今やらないと、先ほど申し上げておりますように、だんだん我が国の体力が落ちてきたときにそれはできない、こういう大変な危機感を持っておるところでございます。  また、本日朝からの審議を聞いておりますと、大変危機感をあおるようなことを一方でおっしゃるようなことがあるわけですね。先ほど宮澤大蔵大臣もデリバティブズのことをおっしゃいました。国際社会の中でそういうようなデフォルトが起こると大変大きな迷惑がかかるようなことになる、それが我が国の金融業界全体に対する大きな信用失墜になる、このようなお話だったのだろうと思いますが、これは同じようなお話を本日来ていただいております日銀総裁も先日されました。  ところで、日銀総裁にまず初めにお聞きいたしたいと思いますが、先日、ちょっとお話を聞いておりますと、デリバティブズの想定元本が一行平均大体百二、三十兆円あるというようなことで、このような状況の中で大手金融機関が経営破綻をした場合に、市場の影響ははかり切れない、このようにおっしゃいました。これを聞きますと国民は、ああ大変だ、百二十兆もあるのか、こうなるのです。大変難しい話ですから、この話は。この話をちょっと今細かくお話をお聞きしたいのです。  この想定元本と申しますのは契約高でございますね。これは全部がこれでやられてしまうということではないわけですね。これは実務家の世界では大体信用リスクは一%程度ではないか、勝ち負けがございますし差額がございますから、その程度ではないか、このように言われております。  特に、長銀の場合に限りますと、こういうデリバティブズを行う場合に、相手があることでございますから、相手は、その相手の金融機関の経営状況はもう十分つぶさに見ながらやっておるわけでございます。ですから、日本長期信用銀行の有価証券報告書を見ますと、このデリバティブズの想定元本は急激に減っております。多分本年三月期の状況以降、今もうほとんどないのではないかと私は思っておるわけでございますが、これまたわかりませんが。  具体的に申し上げますと、店頭金利スワップ取引というのがございまして、これが九七年三月期は六十五兆三千五百億円、それが九八年三月期には十一兆七千八百億円、こういうように約五分の一になっているのですね。急激に減少している。また、万一支払い不能になっても、すべてが貸し倒れになるんじゃない、さっき申し上げましたが。例えばこの金利差ですね、スワップ取引の場合の。金利スワップの場合のこの金利差がリスクになるのだということなんです。また、仮に相手がアメリカの銀行の場合には、この勝ち負けの差額について、向こうの金融機関は担保を徴求しておるというような状況の中で、おっしゃっているようなグロスの金額ではないんだということをまずきちっと説明しないと、国民はこの金額を聞いただけでそれこそびびっちゃうわけですよ、大変だと。  日銀総裁、御見解をお願いいたします。
  262. 速水優

    速水参考人 私が、大手銀行破綻を起こした場合に内外市場に及ぼす影響が非常に大きい、それは、例えばデリバティブなどはその一つの例であるということを申し上げたつもりでございます。  やはり大手銀行という場合、マネーセンターバンクスなどという言葉が使われておりますけれども、内外市場に非常に大きな取引関係を持っておりますから、これが破綻するという場合には、やはりかなり大きな信用不安の連鎖が起こっていく。ドミノ現象とかあるいは将棋倒しになっていくとかいうような信用不安の連鎖、これと同時に、国際金融市場に混乱を生じていく。  混乱の仕方というのは、デリバティブは一つのケースでございますけれども、そのほかにもいろいろな形で外国為替取引、有価証券取引、キャッシュでの授受あるいは預貸し金、貿易金融と、非常に幅広く日本大手銀行は海外で取引関係を持っておるわけでございまして、そういうものがどれだけ海外に大きな影響を与えるかということは私どもでは想像のつかないほど、むしろ海外が恐れていることは私ども中央銀行同士で話を聞いておりまして、非常に心配をして私どもの方へ聞いてまいっております。  長期信用銀行の場合でも、海外支店が十一、出張所が四、事務所が五つ、現地法人が十と、これだけの店がフルにまだ動いておるわけでございますから、決してこれを全部、店は、海外店は引き揚げると言いますけれども合併になれば、今まで持ってきたいろいろな業績あるいは支店、取引先、そういうものは、恐らく引き継げるものは引き継いでいくことになるのではなかろうかと推測いたします。  デリバティブ取引というのは、貸し出しなどのオンバランス取引と違いまして、元本の移転を伴わない取引も多うございます。想定元本の規模そのものが市場参加者にとってのリスクの大きさを直ちにあらわしているわけでないことは、御指摘のとおりでございます。  ただ、邦銀大手は極めて多数の顧客を抱えて、海外も含めて広範かつ多岐にわたる取引を行っておりますので、万が一大手行が突然破綻した場合には、そうした取引の連鎖を通じて内外の金融システムに大きな影響を引き起こす可能性が高いことは十分認識しておく必要があろうかと思います。  これまでの、海外でこういう大手の銀行破綻したケース、事前の予告なしといいますか、想定なしに破綻したケースでも、例えば一九七四年のヘルシュタット銀行、これは二千百五十億円ぐらいの資産の銀行ですけれども、そのときでも大騒ぎでございました。それから、一九八四年のコンチネンタル・イリノイ、これは十兆ぐらいの銀行ですけれども、このときもアメリカの内外で非常に大きな騒ぎがありました。それから、一九九〇年になってドレクセルグループというのが破綻を起こしまして、これは私自身が商社におりまして、当時、非常に大きな被害を受けた痛い記憶がございますけれども、これもデリバティブ関係の取引でございます。この銀行は、まあ三兆円ぐらいのものでございまして、銀行ではございませんけれども。  今度、例えば長銀のような大きな、二十数兆ですか、といったような銀行が同じようなことを、急に破綻するというようなことが起こった場合に、国内の連鎖はもとよりのこと、海外に非常に大きなショックを与えるであろう、波を立てるであろうことは容易に想像されます。  中央銀行といたしましては、そういうことが起こらないように早目に手を打っていくということが私ども責任ではないかというふうに考えております。  ひとまず、この辺で。
  263. 谷口隆義

    ○谷口委員 このデリバティブズは、市場関係者によりますと、私が申し上げたようなことを言うわけですよ。危機感をあおるようなことをおっしゃっているのではないかと、日銀総裁は、大蔵大臣も含めて。  それは日銀が特融なりを、これはもうきちっと保証しますよと。一般的にやり方は、どんどん手じまいするんですよ、普通は。むしろ怖いのは不良債権、底知れぬ不良債権の深さですよ。わからないんだから。いまだにこの不良債権の金額は幾らあるかというのは、これは信じていませんよ、海外も。  先ほどから金融監督庁の自己査定の結果も出ておりましたが、今現在出ておる状況を見ますと、第二分類が八十兆円、第三分類が六兆円ぐらいですか。八十六兆円ぐらいだというのです、第二分類、第三分類が。この第二分類のうち、協同組織金融機関の方で十五兆円程度、あと六十五兆円程度が銀行。このうち四十五兆円がいわゆる大手金融機関十九行。  このようなことでございますが、どうもいろいろ調べてまいりますと、先ほども長銀の場合に出ておりましたが、関連ノンバンク三社、この関連ノンバンク三社は大変厳しいわけでしょう。厳しい状況の中だから債権放棄をしようというようなことになったのだろうと思いますが、しかし、この関連ノンバンクの貸付金が非分類になっておるとか、大変信じられないような状況でございますし、どうもゼネコンの中にも、追い貸しをして、金利を払い、正常に支払いを行っておることで正常債権になっておるところもあるようだというようなことを言われますと、それこそ先ほど私が申し上げました底知れぬ恐ろしさがあるわけなんです。  総理総理総理大臣になるときに、今般の総理は、私は、まず初めにやることがあったと思うのです。今のこの金融状況をかんがみるに、どんなことがあってもこの二年で処理するのなら処理すると言って、国民の皆様方の前に、きょうもテレビ来ておりますが、テレビの前で具体的に方法を述べ……(発言する者あり)述べてないよ、そんなの、きちっと。熱意が全然感じられないじゃない、そんなの。不良債権そのものの金額もわかってないじゃないの。今そのぐらいの強い決断力を持ってやっていかないとだめなんですよ、これ。それこそ今、世界の金融関係者も含めて、我が国の金融情勢に大変関心を持っていますよ。  先日、ルーブルが、通貨が大変下落しちゃって、ロシアの経済危機が起こった。このロシアの経済危機ももともとはアジアの通貨危機かちでしょう。アジアの通貨危機は我が国の経済の悪化からじゃないですか。ルーブルの下落がまたアメリカに飛び火しておるわけじゃないですか。  このまま放置しておりますと、また我が国の邦銀の与信が、特にアジア向けの与信が、私は聞いておりますが、OECDの状況を見ますと三十兆円ぐらいあるらしいと。これもどうもいろいろ聞きますと、プロパーの融資だけだと。あと例えば現地法人から融資しているものであるとかワンクッションを入れて融資しているものであるとかいうものは把握もされておらない。こういうことから私が申し上げたいのは、底知れぬ恐ろしさがあると。  現下のこの不良債権の金額というのは、これはかなり変動します。急激に悪化することもあるでしょう。今の状況は、これからよくなるというよりも、むしろ大変厳しい状況にあると考える方が正しいというように私は思っておるわけでございます。  そういうことを念頭に入れて、大胆な処理、私は、冒頭お話をさせていただきましたように、金融業界の構造改革、つぶすべきものはっぷすんだ、守るべき金融機関というか、存続すべき金融機関は存続させるようにするんだ、こういうようにはっきり処理をしないと、今、この長銀の問題においても議論がございましたように、今現在の状況においてもわからないと。金融監督庁、もうそろそろ何か結果を出すというような話でございましたが、何かいまだに債務超過の疑いが晴れないというような状況でございますし、それ以外の大手十九行の中に大変厳しいところも出てきておるというような状況でございます。  総理、こういう状況をもう体全体で感じて、それこそ国民に本当に訴えていただくようなことをやっていただかなければいかぬと思う。私は、おっしゃっていますが、本当に真剣に考えて国民の前でやられたら、それなりの反応がありますよ。  私は大阪の選出議員なんですが、大阪エリアは極めて不良債権が高いのですね、急激に土地が上昇し、急激に土地が下落したものですから。大阪の町を歩いてくださいよ。本当に、ビルは建っているんだが全然入っていないところであるとか、建築中でそのままとまってしまっているところとか、これは東京でもありますが、そのような大変な事態なんですよ。  そういう状況の中で金融機関がやられてしまったから、貸し渋りがどんどん行われている。三月にキャピタルインジェクションをやりましたが、そんなの全く何もさいていないですよ。それは、金融機関の方でもう既にディフェンスに入っているわけですよ。もう金融機関の公的な性格を金融機関それ自身が発揮しようとしない、みずから守りの姿勢に入ってしまっているから。そこで政府がいろいろやっても、これは何にも効果がない。  こういう大変な状況を踏まえて、総理、もう一度御答弁をお願いいたしたいと思います。
  264. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 谷口委員、大変貴重なお時間ですが、ちょっとお許しをいただいて、福島、栃木の大雨被害について御報告をさせていただくことをお許しいただけましょうか。ありがとうございます。  審議の途中でございますが、両県、大変大雨の被害がございまして、現在、死者九名、行方不明者五名、また建物被害等多数に及んでおる報告を今受けました。  私といたしましても、種々心配をいたしておるところでございますが、建設、国土両省庁に対し、早速現地に赴き被害状況をよく見てまいること、そしてその対策に万全を期してほしいとお願いをいたしたところでございます。  亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、行方不明者につきまして、一日も早く身元が確認され、この生命の安否につきまして心配をいたしますとともに、その状況につきまして、もしこれを救助しなければならないということであれば、徹底的にこれに対処していきたいと思っております。ありがとうございました。  それで、実は、今委員からお尋ねがございました現下のこの金融問題、特に不良債権問題について総理大臣としての覚悟のほどが見えておらないという御批判、ちょうだいをいたしました。  確かに、私自身、必ずしもそのことについて十分な説明ができておらないかもしれませんが、ただ、今国会、こうして夏に開かせていただいて、まず、金融のトータルプランにつきまして、法律をもってこれを世に問いたいということも、今国会に対してこの問題が極めて重要であるという意味のあらわれと御理解をいただきたいと思いますし、特に、資金は社会の血液であり、その循環をつかさどる金融機関が心臓の役割を担っておる、その部分の破綻金融システム全体に危機を招くおそれがある、このことを非常に留意しまして、所信表明の中でも申し述べさせていただいた次第でございます。  そこで、谷口委員は、この問題について極めて、ある意味でドラスチックと申し上げますか、厳しい対処によって本問題を解決せよという御指摘でございますが、金融の難しさというものは、なかなか、金融機関をそのままに倒産をさせるというようなことは、ほかの企業体に比べても極めて大きい事態にかんがみまして、その解決のためには、いわゆるソフトランディングと申しますか、こうした手法をもって行いませんと、万が一にも経済的クラッシュが起こってくるというようなことがあっては、これはまことに影響するところ大きいということでございますので、そこが最も苦心の要るところでございます。  その点が極めてある意味で生ぬるいと言われる諸点かと思いますが、私としては、さようなことは全く考えておりませんで、長い間集積したこめ問題の解決なくしては日本経済の再生はない、こういう形で取り組ませていただいておる次第でございまして、諸種の方策につきましては、今次法案の御審議をいただいておりますが、同時に、経済戦略会議をこの間立てました。この中でも、いたすべき数々の手法につきましては、これから民間の意見も聞きながら、徹底的に取り組んでまいりたい、こう思っておりますので、その覚悟のほどは極めて強いものであることを改めて御理解いただき、対処いたしてまいりたいと思っております。
  265. 谷口隆義

    ○谷口委員 長銀の具体的な問題をちょっとお聞きしたいんですが、先ほど同僚議員質問をいたしておりましたが、ノンバンク関連三社に債権放棄をする、五千二百億ですね。それで、政府の方は、五千億から一兆円の公的資金を導入する予定だというようなことでございますが、先日、本会議の場で宮澤大蔵大臣が、この公的資金不良債権処理の促進のためとおっしゃったのかな、不良債権処理のために入れるんだというようにおっしゃったと思いますが、大蔵大臣、どのようにお考えでしょうか。
  266. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げましたのは、長銀のリストラ計画によりますと、この九月期に相当の不良債権処理をする結果、非常に資本が小さくなる、したがって、資本率を上昇させなければならない、そのための政府資金の投入を申請したい、こういう御意向と承知しております。
  267. 谷口隆義

    ○谷口委員 質問の途中でございますが、国土庁長官、先ほどの総理お話のように、災害問題でもしなんでしたらもう結構でございますから、出てください。  今のこの処理を見ておりますと、この七千五百億は、五千二百億と二千三百億は、この中間期において引き当て処理をするということのようでございますね。引き当て処理。この引き当て処理というのは、要するに帳簿から切り離すわけではございません。この日本長期信用銀行のプレスリリースを見ますと、そのように明確に書いておるところでございます。  一方、まだ公的資金の申請は来ておらないと思いますが、公的資金の申請が仮にあった場合に、政府はそれに対して公的資金を投入する。一方、日本長期信用銀行は、先ほども申し上げましたように、これは前倒しの引き当て処理でございますので、資金は流出しないということでございますので、その間この資金が、当該行と申しますか、長銀の中に眠る。これは、運転資金のためにいっているんじゃないかというような解釈ができるわけでございますが、どうでございますか。
  268. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  会計学が御専門の委員に何か反駁するようで大変恐縮でございますが、引き当て処理をするということは、引当金を貸方勘定の方に上げるということだけでございまして、決して、貸方にそれを計上したからといって、それが運転資金に使われるものというふうには理解しておりません。
  269. 谷口隆義

    ○谷口委員 私の言っていることがどうも理解できていないようでございますが、要するに資金流出はしないのですね。資金流出しないところで公的資金の申請があったら政府がその公的資金を入れるということは、その間長銀資金が滞留するということでございます。これは私は申し上げたいと思うのです。  それで、先ほども出ておりましたが、どうも長銀金融債の発行状況が芳しくない。このところ二千億前後でとどまっておるようでございます。  一方、毎月の金融債の償還が大変大きな金額になっておるというように言われております。私の方で資料を手に入れておりますが、八月、九月、十月、この三カ月間の金融債の償還額が大体四千五百億前後になるのですね。ちょっと今資料が見当たりませんので、また後で出ましたら御報告をいたしたいと思いますが、九月がピークで六千七百億のようでございます。  ですから、前年対比で本年十年三月期を見ますと二兆二千億ほど金融債の残高も減っておりますし、預金も一兆五千億減っておるわけでございまして、ここへ来て急激に資金繰り状況が悪化いたしておるというような状況になっておるところでございます。  そういうことを考えますと、私が先ほど申し上げましたように大変厳しい資金繰り状況になっておるようで、そういう状況の中で債権放棄をするということですから、完全に、引き当て処理ではなくて、もう帳簿から外してしまうのかなというように私思っておりましたが、長銀のこのプレスリリースを見ますと、先ほど申し上げましたように、これを外さなくて引き当て処理するというようなことになっております。  ちょっと今見当たりませんので、大蔵省の方で今の月次の償還額がわかったら報告してくれますか。
  270. 日野正晴

    ○日野政府委員 金融債の月次の償還額に関してましては、これはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
  271. 谷口隆義

    ○谷口委員 それは公社債要覧で出ておるところでございまして、ちょっと今、資料がたくさんあるもので散逸してしまって見当たらないのですが、九月六千七百億というような状況で、大変厳しい状況になっているのは間違いのない話でございます。八月、九月、十月と償還のピークが来ておるところでございますので、そういう状況の中で資金繰りが大変厳しいというように言われておるところでございます。  そういうことで、私申し上げたかったことは、一つは、長銀の関連ノンバンク三社の債権放棄が引き当て処理をしておるというのは、これは大変問題であるということをまず申し上げたいというように思います。  それでは継続してお話をさせていただきたいと思いますが、先ほど私聞いておりましたら、住専処理に対する宮澤蔵相の御答弁がございました、六千八百五十億円、実は系統金融機関の救済であった、あのときには言えなかったのだけれどもと。しかし、今このようなことを言ってもらっても困るんですよ。  我々はあのときに、これは系統金融機関の救済だろう、一般事業会社の住専のところに公的資金をつぎ込んでも仕方がないんだということをずっと言い続けておったわけでございますが、今まさにそういうようにおっしゃったわけでございまして、大変これはそういう意味では問題だ。  なぜこのことが問題かといいますと、あのときに方向を間違ったがゆえに公的資金導入論が真正面に論じられるようなことがなかったわけであります。ですから、それも金融機関が大変経営状況が厳しいというような状況の中で、この議論が堂々と行われなかった、タブー視されておったということがより一層今回の不良債権処理を問題化したのではないかというように思うわけでございます。  それで、今回の長銀の関連ノンバンク処理におきましてお聞きいたしたいわけでございますが、これまた住専処理に似たような処理が行われておるんじゃないか、このように言われておりまして、日本リースに対して系統金融機関が融資をいたしておるところでございまして、これを見ますと、県信連、二十三県信連が千二百億、共済連、これは四十七共済連が一千億、農中が千二百億、合計三千四百億を融資いたしております。  これで巷間言われておるのは、今長銀債権放棄をする、この債権放棄の仕方は修正母体行主義で行われるのではないかと言われておるところでございますが、大蔵大臣、これについてどのように処理されようと考えておるところでございますか。
  272. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 住専のところは、系統金融機関というのは、実は農協に対する預金者の不安という意味だということを申し上げたのです。  それで、日本リースにつきまして長期信用銀行が貸付金を放棄するということは、恐らく長期信用銀行としてはいわば日本リースにとっては母体行である、修正かどうか存じませんが、自他ともに考えられているところでございますから、これをいわば立場を放てきするようなことになりますと、日本リースに貸し付けております大変にたくさんの金融機関、大変にそれも十九行が多いのでございますけれども、そういうところが全部撤収をしますならば非常な金融不安が起こるということは事実だというふうに私は理解をしておりますものですから、恐らく長銀としてはそういう挙に出たのであろうと存じております。  それが修正母体行方式によるかどうかというようなことを私は存じませんが、そういう事態にならないことを長銀としては企図したものと思われます。
  273. 谷口隆義

    ○谷口委員 いや、政府としてどのようにお考えなんですか。それについては全く政府関与しないということでございますか。  結論的に申し上げますと、修正母体行主義でやるということになりますと、長銀債権は全額債権放棄でしょう、あとは債権額に応じて債権放棄していくわけですね。そうしますと、先ほど私申し上げましたように、県信連千二百億、共済連が一千億で、個別的に見ると大体二百億前後になってしまって、債権放棄を全くやらなくてもいいというようなことになるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、住専処理段階で行われた修正母体行主義がまたここで行われるのではないか、このように私は危惧しておるところでございますが、これについての御見解をお聞きいたしたいと思います。
  274. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私、存じません。金融監督庁でもそれを御存じでありますかどうかは定かでございませんが、それは恐らく日本リースをめぐる関係者、関係金融機関の間でいろいろ御相談といいますか御協議があるのではなかろうか、これは想像でございます、正確なことは存じません。
  275. 谷口隆義

    ○谷口委員 では、金融監督庁。
  276. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今回の長銀の経営改善策におきまして、関連ノンバンク三社について、長銀日本リース向け債権を全額放棄することなどを柱とする抜本的な再建計画を策定するなどの対応が図られることとなっております。これは、同行から聞きましたところ、こういう必要な支援を行うことが住友信託銀行との合併を円滑に進める上にも必要だというふうに聞いております。  いずれにいたしましても、この関連ノンバンクの処理につきましては、当事者間、関係者間で決定さるべきものでありまして、現在その具体的な内容について関係者間で議論が進められているものと承知しております。
  277. 谷口隆義

    ○谷口委員 先ほど申し上げておりました資料が出てまいりましたので、ちょっとお話しさせていただきますと、長銀金融債の毎月の発行額が大体二千四、五百億前後で六月ぐらいまでは出てきておるわけですね。それに対しまして、長銀の償還見通し、公社債引受協会から出ております公社債要覧、これはもう既に公表されておるものなんです。だから、これはきちっと答弁のときに出さなきゃだめですよ。八月が五千四百億、九月六千七百億、十月六千三百億、十一月五千七百億、十二月が五千百億。八月から十二月までに二兆九千二百億、このような償還予定なんですよ。八月、九月は極めて大変なんですよ、資金調達が。  そういう状況の中で、今、公的資金の導入の申請があった場合に政府は出す。一方、その金は出ない、さっき申し上げました引き当て処理だから。そうすると、不良債権処理というより、資金調達と申しますか運転資金のために入るんじゃないですか。
  278. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  引き当て処理長銀は申しております。ただ、これはあくまでもリストラ計画でございまして、いつ、幾ら引き当てるかということはこれから検討されるものというふうに承知しております。
  279. 谷口隆義

    ○谷口委員 今のような答弁の仕方はだめですよ。莫大な公的資金を入れるわけでしょう。これでおさまるという保証がないわけでしょう。この三月に一千八百億近い公的資金を導入し、また今公的資金の導入申請があれば入れる。これもはっきり決まっていない、金額が。五千億から一兆円近い金を入れる。これでまだ終わらない可能性がありますよ、さっき冒頭、私が申し上げましたように。どんどんどんどん金ばかりが出ていく、つぶさないということでどんどん出ていっちゃう。穴のあいたバケツみたいなものですよ、本当に。  それで、時間がないものですからちょっと次の質問をしたいのですが、大手十九行の第二分類を先ほど申し上げました。八十兆円。この八十兆円の第二分類の中で、大手は四十五兆円あるのですが、自民党の元官房長官の梶山先生のあれでは二〇%引き当てをするというような案があるようでございますが、仮に二〇%を積んだらこの十九行の経営状態がどうなるのか。もう一つは、一五%を引き当てた場合にこの十九行の経営状態はどうなるのか。これについて御回答を求めます。
  280. 日野正晴

    ○日野政府委員 まず先ほどの御質問に対してお答えしたいと思いますのは、キャピタルインジェクションはまだ申請が行われておりませんし、バケツにじゃぶじゃぶ、何か穴のあいたバケツにつぎ込むためにキャピタルインジェクションを行うというふうには理解しておりません。あくまでも、不良債権を償却した後、自己資本がかなり低下いたしますので、キャピタルインジェクションを申請するというふうに聞いております。  それから、ただいまの御質問でございますが、金融機関の財務状況につきまして、金融監督庁といたしまして一定の仮定を置いた試算を行ってこれについてコメントを行うということは、市場に不測の混乱を招くおそれもございますので、差し控えさせていただきたいと存じます。  なお、御指摘の件につきましては、金融機関が償却、引き当てを行うに当たりまして、その貸出金についておよそ一律の引き当て率を適用することは、そもそも金融機関ごとにリスク管理のあり方が異なることを無視しているのではないか。それから、各金融機関が現在基準としております公認会計士協会の実務指針によりますと、要注意先債権の引き当て率は過去の貸し倒れ実績率に基づいて行うこととされていること、それから第二分類につきましては、一律に仮に二〇%とか一五%の引き当てを積ませることといたしますと、恐らく金融機関は債務者に対しまして資金回収を行ったり金利を大幅に引き上げる等の行動をとることも予想されますということで、そうなりますと経済的に見て大変大きなデフレ効果を有するのではないかということから、不適当であるというふうに考えております。
  281. 谷口隆義

    ○谷口委員 いずれにしても、引き当て率が極めて低いんですよ。第二分類であろうとも二割ぐらいの引き当てをやっておかないと、これは大変ですよ。仮に二割を引き当てると、これは大蔵省のだれとは言いませんが、この十九行の中で数行は債務超過になる、このように言われております。  それで、時間がありませんので次の質問に移りますが、またお話をしたいと思います。  仮に長銀と住友信託銀行合併した場合に、合併後の金融機関金融債の発行ができるようにさせますか、大蔵大臣
  282. 日野正晴

    ○日野政府委員 いわゆる合転法と呼ばれている法律がございます。異種の金融機関合併した場合には銀行法だけじゃなくて合転法に基づいて合併を認可することになりますが、合併した後、当分の間、金融債を発行できることとされております。
  283. 谷口隆義

    ○谷口委員 金融債というのは、御存じのとおり、まあ時代おくれと申しますか、現下金融業界の状況の中でもう役割を終えたと言われておるところでございまして、金融債を発行し長期資金を調達し、政策金融と申しますか、傾斜配分して産業金融を築いた時代がございましたが、今は、例えば先ほども申し上げました金利スワップなんかがありますから、長短金利のスワップができて、ほとんど金融債の意味がなくなっておる。  こういう意味において、私が申し上げたいのは、長銀だけではなくて長期信用銀行のあり方の問題がありますよと。基本的に、これはあと三行あるわけでございますが、長期信用銀行のあり方の抜本的な問題を考えていかないと、十九行すべて守っていくという言葉だけではこれはだめですよ、経済実態に合わないような金融機関が出てくるわけですから。そういうことを私は論じてもらいたいわけですよ。  総理、私が冒頭、先ほど申し上げたことは、こういう金融機関の中にもいろいろ多種多様の形態を持っているわけでしょう。長期信用銀行のあり方は、今後、それがもう必要がないと言われておる状況の中で、これを支えていくことの意味があるんですか、こういうことを聞いておるわけです。  最後に御答弁をお願い申し上げまして、私、時間が参りましたので終わりたいと思いますから、どうぞ。
  284. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 長銀のあり方につきまして、いろいろ御意見を拝聴しました。  この問題はこれからも十分検討しなければならない問題だろうと思いますが、合併につきましては、それこそ両行ともそうした問題も含めまして話し合っているかと思います。法的には先ほど申し上げたような、監督庁長官のような趣旨で、法的には認められるということだろうと思いますが、長銀その他、そうした債券を発行する金融機関のあり方等につきまして、ただいまの先生の御意見は承りました。
  285. 谷口隆義

    ○谷口委員 長期信用銀行の問題は、我が国の金融業界の中での位置づけという問題がございますから、これはもう大変重要な問題であると最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  286. 相沢英之

    相沢委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  287. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  長銀と住友信託銀行合併に税金を投入することに関して、どうして税金投入なんだという声が国民の中であふれております。今、中小企業は大銀行の貸し渋りや資金回収によって苦境に立たされ、貸し渋り倒産が急増しております。しかし、倒産していく中小企業を政府は救ってはくれません。ところが、大銀行が大変だということになると、総理みずからが前面に乗り出して税金投入を決める、こういうやり方に国民は到底納得しておりません。  第一に、今回の長銀への税金投入、公的資金投入の実態についてお聞きをしたいと思います。  長銀が二十一日に発表した文書によりますと、長銀は、今度の九月決算で関連ノンバンク三社向けの融資の債権放棄を中心に七千五百億円の不良債権処理をする、資本金や当期利益、財産の売却益などをこれに充てるために長銀の自己資本は一千五百億円ほどに低下をする、その自己資本の低下分を埋めるために税金で資本注入を行う、そういう計画であります。  要するに、長銀に対する資本注入、税金投入は、長銀不良債権処理の穴埋めになるものであります。そのことは、総理自身、二十五日の本会議答弁で、長銀は本年九月に合併を前提とした不良債権の抜本的な処理を行うことにより一時的に過少資本となることから、資本注入を申請する予定であると聞いていると答弁していることでも明らかであります。  そこで問題となるのは、処理される不良債権の中身であります。  計画を見ると、長銀が行う七千五百億円の不良債権処理の七割が関連ノンバンクヘの債権の放棄であります。日本リース、日本ランディック、エヌイーディーの三社への貸し付けのうち五千二百億円を長銀が放棄する。この三社に貸した金の五千二百億円を、言ってみればこれでチャラにしてやるということであります。  総理にお聞きしますが、つまり、投入される税金の大部分というのは、長銀が関連ノンバンクに貸して焦げついてもう返ってこない分をチャラにする、その穴埋めに使われる、そういうことになりますね。
  288. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  先ほどかちも御答弁申し上げておりますように、チャラにするとか穴埋めにするとかいうことではございませんで、まず不良債権処理するというのが合併の前提となっているものと承知しております。  したがいまして、不良債権を償却いたしますと、自己資本比率などが、資本勘定がかなり少のうなりますので、それをふやすために資本注入を申請するものというふうに理解しております。
  289. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 これも、金に色がついていないとさっきから話が出ていることでしょう。要するに、債権処理に資本を使って、資本が少なくなるからそこへ税金を投入する。結局、その債権処理に税金が使われる、そういうことではありませんか。  問題は、その不良債権の内容ですけれども総理は、長銀合併について最大限の支援をする、行っていきたいということをおっしゃいますが、それは、この関連ノンバンク三社の不良債権の実態を吟味した上でのお話ですか。
  290. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  不良債権処理をするということは合併の前提でございまして、合併の相手方である住友信託が長銀に対しまして、できるだけ身ぎれいにしてもらいたい、正常債権を引き取るから、こういうふうに言っておりますので、長銀の方としては、合併の前提として身ぎれいにする、そのために不良債権処理する方針を立てたものというふうに理解しております。
  291. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いや、要するに、総理合併を最大限に支援を行っていきたいと言っているわけですね。その合併ということの前提として、こういう関連ノンバンク三社の不良債権処理をしていくわけでしょう。その実態を御存じかということなんです。
  292. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 それぞれのノンバンクにつきまして、私自身詳細な報告は得ておりません。
  293. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 御存じないだろうと思います。  長銀が今回債権放棄する関連ノンバンク三社のうち最も債権額が大きいのは、これは御承知のとおり日本リース向けの二千五百億円であります。この日本リースのことしの有価証券報告書によりますと、代表取締役社長、副社長が長銀からの派遣であり、取締役二十一人中五人が長銀の出身者であります。日本リースは長銀出身者が歴代の役員を占めてきておりまして、長銀と極めて深い関係にある会社であります。  この日本リースの貸し付けの相手は、営業貸付金の七割が不動産業であります。ことし三月の時点で不動産業向けの貸し付けが四千四百七十八億円に上っております。大口貸出先は不動産関連が中心であります。  この大口貸出先の上位十社の登記簿を見ましたが、五位の都地所、七位のエー・エル・エー、それから人位の葛西不動産などは、いずれも会社の所在地が同一場所、東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目三十二の七であります。  現地へ行ってみますと、この番地には箱崎シティビルという六階建ての小さな古ぼけたビルが建っております。ビルの入り口には郵便ポストが二つありまして、そのうちの一つに、都地所、葛西不動産、エー・エル・エー、グリーンエステート、博多総合開発、ベラコーポレーションという名前が紙に書いて張ってあります。一つの小さなポストに六社の郵便物が入るようになっている。入っているのではない、入るようになっているのです。つまり、こういうのはみんなべーパーカンパニー、不良債権の受け皿会社の可能性が非常に強いものであります。  日本リースは、こういう都地所など三社に合わせて六百四十四億円を貸し出しております。極めて不明朗な中身であります。もちろん、ほかにもいろいろあるという声がありましたが、これら関連ソンバンクの貸出先の中には、旧住専の大口融資先の名前も挙がっております。  総理はこういう実態は御存じでしょうか。
  294. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 十分承知をいたしておりません。
  295. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、こういう不明朗な実態はそのままにして税金を投入するというのでは、乱脈経営の実態やその責任は全くやみの中に葬られてしまいます。悪質な借り手がいても、その貸し借りを全部チャラにして、その穴埋めに税金がつぎ込まれるということになりかねないわけであります。本当にこんなことが許されるか、国民が納得するかという問題であります。  ですから、総理、求めたいのですが、関連ノンバンクの不良債権の実態を国民の前に明らかにして、不良債権をつくった責任の所在を明確にするととこそまずやるべきことではないでしょうか。
  296. 日野正晴

    ○日野政府委員 ただいまいろいろ関連会社のことについてお話がございましたが、私どもは、長銀本体についての検査並びに監督を行わせていただいているわけでございます。そして、日本リースは、もちろん有価証券報告書がございますので、日本リースに対する債権の内容は長銀からも聴取いたしますし、日本リースの有価証券報告書を通じて把握させていただいております。  ただ、さらにその先ということになりますと、これは個別の問題になりますので、その内容等についてお答えをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  297. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 当然そういうものも完全に明らかにしていかなければ、この税金投入は絶対に許されないことだということになると思うのです。  長銀の関連ノンバンクの不良債権というのは、結局、本質を突き詰めていけば、バブルに踊って不動産投機に走った結果、それが焦げついているものであります。その実態を税金を投入してチャラにするということでは、結局やみの中に葬り去ってしまう、そういうことにならざるを得ない。そういう計画には到底私たちは同意できません。国民からすれば、バブルの乱脈の結果つくり出された不良債権をどうして自分たちの税金で始末してやらなきゃならないのか、こういう税金投入に国民は絶対に納得しないということを私は強く申し上げておきたいと思います。これが税金投入の一つの本質であります。  次の問題は、この税金投入の理由に金融システム危機の回避ということが挙げられていることであります。  総理は、繰り返し繰り返し、住友信託と長銀合併がうまく進まないと内外の金融システムに重大な影響が出る可能性がある、日本発の金融恐慌は絶対に起こしてはならない、だから税金を投入する、一銀行の救済ということは念頭にないというふうに繰り返しておられます。もう何十回となく聞かされました。  そこで、総理にお聞きしたいのですが、どうしてこの合併がうまくいかないと金融システムに重大な影響が出るのか。あなた方は、繰り返しておられるように、長銀は債務超過じゃないということを言っておられます。日銀の考査でもそうだったと言っているわけですね。合併しようがしまいが、そこに税金投入をしないとシステムの危機が起こるというのは、到底国民にはわけのわからない、納得できないことであります。  総理、繰り返しておられるんですから、なぜ、住友信託と長銀合併がうまくいかないと、そこへ税金投入をしないと、何か金融システムの重大危機になって金融恐慌になる、こんな事態になるのでしょうか。その関連をわかりやすく説明して いただきたいと思います。
  298. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 私は、去る八月二十一日の談話で申し上げましたとおり、金融システム全体の危機的状況は絶対起こさないというかたい決意のもと、我が国金融システムの安定と内外の信認の向上に全力を挙げて取り組んでいくという観点から、住友信託と長銀合併推進についての合意を高く評価いたします。また、本合併構想が我が国の金融システムの安定と国民経済の円滑な運営に資するとの観点から、最大限の支援を行ってまいりたいと今考えております。  より具体的に申し上げますと、一般論として、大規模で国際的に活動している銀行破綻した場合、全国的な規模で信用不安が連鎖することにより他の金融機関が市場の攻撃にさらされる、信用収縮が生じまして企業の資金調達が困難化するなどのおそれがあり、また、先ほど来いろいろ御議論がありましたが、デリバティブ取引等が一時に清算されるなど、より国際金融市場にも大きな混乱が生ずるおそれがあるなど、信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがある、こういうことでございます。  私が談話で申し上げました趣旨は、このような国民経済や国民生活にとって重大な事態が発生することを避けるため全力を尽くすということであり、国民皆さんの御理解をいただけるものと考えておる次第でございます。
  299. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今おっしゃったのは、長銀破綻したらそういうことになるということですか。
  300. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そうしたことにならないように、この大きな金融機関同士の合併が行われることによってそうした事態を招かないように、政府としては全力を挙げて支援申し上げていきたい、こう考えております。
  301. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 合併が行われなかったらそういう事態が起こるということですか。
  302. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 合併が行われませんで、もし破綻ということになれば、それは、ですから、ブリッジバンク法案が大事だと私は何度も申し上げるのですが、それはまだございませんから、そういう事態になるかと思います。
  303. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、長銀が大きな銀行だ、破綻をしたらいろんな方面に影響が大きく出るということですよね。しかし、影響が大きく出るということと、それが何か金融恐慌につながるとか金融システム不安につながるということとは全く同一のことではないわけでしょう。それをすぐに金融システム危機だとかあるいは世界金融恐慌だとか、そんなふうに総理が言うのは余りにもオーバーじゃありませんか。
  304. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そうしたことに向かうということになりますと、国際的な日本の経済に対する信認ばかりでなく、この金融の恐慌的状況が世界に駆けめぐるという、その引き金になってはいけない、こういう考え方から、今私どもは全力を挙げてそうならないために努力をいたしておるということでございます。
  305. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 引き金になってはならないということは、それはよくわかりますよ。しかし、本当にそんなものの引き金にこれがなるのか。余り簡単に言われては困ると思うのですよ。  やはり我々政治家として、いろんな影響が出てくるであろう、その影響について一つ一つ国民の暮らしを守る立場から対応すべき問題でありまして、何か破綻したらこういうふうになるだろう、ああいうふうになるだろう、大変なことになります、影響が大きいです、世界に広がっていきますと言うのじゃなくて、それにどう対応するのかということがまさに問われているわけであります。  例えば長銀の借り手が、善良な借り手が連鎖倒産するというような問題があるという言い方を、先ほど宮澤蔵相もおっしゃいましたけれども、しかし、そういうことを言い出したら、結局大銀行はどんな乱脈経営をやってもつぶさないということにならざるを得ません。もちろん、善意の中小企業の借り手が保護されなければならないというのは当然であります。  我々日本共産党も、きょうその問題についての提案を発表しております。必要な受け皿銀行どもつくっていこうという提案をもって対応しようという方向をはっきりさせております。当然のことですよ。そういう問題であなた方も今法案を提案しているし、準備をしているわけでしょう、それぞれの立場で各党が。だから、何かそういうことが自動的に起こってくるかのように言われるのはいささか納得できない。  それからまた、宮澤さんが先ほどノンバンク云々というようなことを言われましたけれども、これも先ほど私が言いましたように、ノンバンクというのはいろいろいかがわしいものがいっぱいある。これがどうかなるから、これを何としても守らなきゃならぬ、こんなことを言われても、それは通用しまいと思いますし、それからまた、デサバティブの問題についても、これも先ほどから論議がありましたが、金融問題の専門紙の日経金融新聞などによりますと、こういうことを書いていますね。大手銀行を軟着陸させることが先にありきで、デリバティブ連鎖の危険性は目くらましの道具として持ち出してきただけではないか、こんなことも言われているわけですよ、専門紙の中でも。  もちろん、長銀破綻というようなことを総理大蔵大臣もあり得るような問題として挙げているわけですけれども、その長銀の実態というものは、先ほどから問題になっておりますように、さっぱり明らかにされていない、そういう問題もあります。  ですから、本当に長銀が今どういう状況にあって、破綻直前なのか、破綻の危険にあるのか、そういうことも国民の中には明らかにされていないし、その不良債権の中身の本当の実態というところも明らかにされていない。そういうところはさっぱり明らかにしないままで、仮定の問題として、破綻したらこういうことも起こります、ああいうことも起こります、ですから大変ですと言って、結局税金投入ということだけに固執されるのは本当にフェアじゃないということを言わざるを得ないと思うのです。  そこで、総理に重ねてお聞きしますけれども、今までの議論でもありましたが、何といったって、日本発の金融不安というような問題になってくると、私は、日本金融行政が、日本金融の中身が本当に透明でなくて、わかりにくくて、外国から見ていてもどうなっているかようわからぬというところが一番の根源の一つだというふうにも考えているわけでありまして、そういう金融の実態というものを、長銀が今問題があるというのなら、それを本当に明らかにすることが重大だと思うのです。そういう意味からいきますと、日銀の考査結果や金融監督庁の調査報告、中間報告でも結構ですが、そういったものを直ちに国会国民に明らかにして、本当に今の長銀の実態をはっきりさせるべきだと思うのです。  仮に長銀破綻だとしたら、預金保険法その他に基づいて破綻処理を整然と進めていくことが影響を最小限に抑えていくために必要ですし、大丈夫だというのなら、そのことを内外の市場にわかるようにはっきりさせて混乱を静めていく必要があると思うわけです。  問題は、そういう実態をさっぱり明らかにしないで、仮定の上に立って、危ない危ないと騒ぎ立てて、ともかく公的資金だ、税金だというのでは筋が通らないということを私は強調したいと思うのです。  したがって、総理、先ほどから出ておりますように、長銀の自己査定内容の詳細、金融監督庁の現在行っている検査の中間報告並びに最終報告、そして五月ですか、日銀の考査報告、こういったものをきちんと当委員会に出して、我々がわかるようにしていただきたい、総理がそのための労をとっていただきたい。いかがでしょうか。
  306. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、金融監督庁につきましては、長官がしばしば言われますとおり、個々の銀行の調査の内容については公にしないと言っておられます。日銀総裁は、日銀の考査は契約に基づくものであって、その契約として公にしないという約束があると言っておられます。  しかし、何よりも、この間長銀が出しましたリストラ案を見ますと、これは容易ならぬ事態であるということはどなたでもおわかりになるはずであります。経営者が総退陣をする、本店は売る、海外の仕事もやめる、人員は減らす、古い退職金は取り戻す等々、これはある意味でいわば身を捨てて再生を図るしかないということでございますから、これが何よりも端的に長銀の苦しさというものを語っていると思います。  他方で、しかしそれは債務超過でないということは、日銀の考査でも、また監督庁長官も、そういうふうに考える理由はないと言っておられる。
  307. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大蔵大臣は今、長銀状況が深刻であることはだれでもわかるはずだと申されました。しかし、その政府が、この三月にはあの銀行が健全な銀行だとして一千七百六十六億円も投入することをやっているんですよ。その責任を、何か知らぬような顔をして、今深刻なんだ、だれでもわかるじゃないか、だから税金投入は当たり前だと言うのは筋が通らないですよ。その反省もはっきりさせてもらわなきゃ。  そして、先ほどデリバティブの話なんかも出ましたけれども、今度の長銀のリストラ計画では海外業務からの撤退なんということが出ていますけれども、三月の時点でつかめなかったのか、そういう状況が。三月の時点でつかんで、そういうデリバティブとかあるいは海外業務からの撤退ということを早く指導してちゃんとやっていれば、今のような事態にもならずに済んだわけでしょう。そういう政府責任を何かないがしろにして、棚上げにして、税金投入だ税金投入だ、今やるのは、おっしゃるのは筋が通らない、そう思うのですよ。  資料はきちんと提出していただきたいと思いますが、これは委員長によろしくお取り計らいをお願いしたいと思います。
  308. 相沢英之

    相沢委員長 後刻、理事会で相談いたします。
  309. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 一つ総理が直接乗り出して推進している住友信託と長銀合併そのものの問題点についても私は質問をしたいと思います。  一つは、住友信託が、長銀の危険のない債権、優良債権しか引き取らない、こう言っていることであります。危ないところは公的資金で片づけてこいと言わんばかりの態度まで、ここの社長は表明をしてきております。こういう住友信託の態度をそのまま容認したのでは、たとえ合併しても、長銀の善良な借り手、中小企業家は守られる保証がないのじゃありませんか。その点いかがですか、総理
  310. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 住友信託銀行も私企業でございますから、合併の話の中でいろいろな条件を出すということは、これは少しも差し支えないことだし、また、恐らく出すのが当然ではないかと思います。
  311. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 出すのは当然ですが、その出している彼らの条件というのが、優良債権しか引き取りまぜんということでしょう。これは一貫しているのですよ。  今、中小企業が銀行の貸し渋りや回収で苦しめられて、倒産も続き、自殺者も出ている。ここを守ることが、今、日本経済にとって特に重要になっている。ところが、住友信託はこれにまともに取り組もうとはしていないと言わざるを得ないと思います。そうじやありませんか。
  312. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、それは、合併の条件ですから、不良債権歓迎なんと言うはずはないので、きれいなものだけお願いしますと言うのは、私はそう言うだろうと思いますよ。
  313. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ところが、住友信託は、この合併について、当行は世界的なプレーヤーになるか国内での運用専門家にとどまるかの岐路に立っていた、この合併はグローバルな舞台に立つ契機になると考えた、長銀は証券業務に強いし、スイス銀行との提携もある、収益基盤を強化してスケールの拡大につなげることができるとも言って、長銀との合併に際して、中小企業の借り手、善良な借り手は切り捨てる方向にやるけれども、海外事業には積極的に進出して、そういうところはいただくと。総理、こういう方向が銀行の公共性に照らしてふさわしいものとお思いになりますか。
  314. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 住友信託の経営戦略としてそれぞれ挙げられておることだろうと思っておりますが、中小企業切り捨てなどというようなことは、少なくとも社会的な大きな責任を負っている金融機関としてはあり得ない、私はこういうように認識しております。
  315. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 しかし、一貫して言っているのですよ。金融監督庁長官も、住友信託の側では、かねてからずっと主張しておられるとおり、長銀からは正常債権のみを引き取る、それからもろもろの条件を提示しておられます、金融監督庁の調査が終わってから債権の再評価をさせていただくことも言っていると。  だから、本当においしいところだけをいただきますよということですよ。それが公的資金によって支えられているわけですよ。いいのですか、これで。
  316. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私企業の間の契約でございますし、恐らくは住友信託にも経営陣あるいは株主等々、たくさんの方がおられますから、経営陣としてはやはりベストの条件で合併を図るというのが株主総会に対しても必要なことであろうと思われますので、中小企業は切り捨てるなんてことはおっしゃっていると私聞いておりませんが、一番ベストの条件をやはり経営者としては選ばれるというのは株主に対する義務でもあろうと思います。
  317. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 長銀の貸し手の九割以上が資本金一億円以下の中小企業ですよ。そして、金額でいうと五割近くが中小企業なんですよ。優良債権しか引き取らないということになったら、赤字経営の中小企業者への貸し金などは、債権などは引き取らないということになるじゃないですか。優良債権しか引き取らないということは、第二分類に属しているような中小企業向けの債権は引き取らないということでしょう。中小企業を切り捨てるということじゃないですか。受け取らないということじゃないですか。
  318. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  第二分類と言われますが、第二分類は、その大宗は、管理をしっかりしていれば決してそれが将来貸し倒れになったりすることはないものが大半を占めているものでございまして、決してその第二分類について、それ全体が不良債権になるとかあるいは切り捨てられるというふうには認識しておりません。  また、住友信託といたしましては、合併というのは私的な契約でございますので、お互いの交渉の中で、自分が将来マーケットにおいてちゃんと、マーケットにさらされても新しい銀行が立派に生きていけるといったようなことを考えながらいろいろな条件を出しておられるものというふうに理解しております。
  319. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その住友信託の出している条件を満たすために税金が投入されることになるのですよ。つまり、税金を投入しなければ、住友信託の側がきれいなところだけ引き取りますなんということを言えないわけですよ、やれないわけですよ、悪い部分を整理するために税金が投入されていくわけですから。そうでしょう。公的資金が投入されるからこそ長銀不良債権処理も可能になるし、それからまた長銀のリストラも可能になって、それで海外業務はすぐ撤退するというのですが、その海外業務を撤退する分は全部住信がいただくということができるわけですね。  そういう意味では、今度の公的資金投入というのは、長銀から申請が出されるとはいえ、実質的には住友信託のために投入されるようなものだと言っても言い過ぎではありません。住友信託自体も、合併した後は資本強化に公的資金をまた申請するかもしれないという態度であります。だから、第二分類はもう受け取らない、そういうことをはっきり言っている住友信託の行動を、結局税金で後押しをしている。  そういう点では、まさに住友信託の言いなり、思いのままに政府が動いて税金を投入する。公的資金投入というのは、そういう意味では、総理が言うように長銀の救済ではないかもしれないけれども、住友信託の願望に沿ってこれを強化して、この要求を満たすため、そういうものになるじゃありませんか。総理、いかがですか。
  320. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 しからざれば、長銀破綻をして、先ほど申しましたような大変な出来事が起こる、こういうことです。
  321. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それがおどしたと言うのですよ。破綻するといったって、破綻した対応の仕方がいろいろあるわけでしょうが。その破綻した銀行の対応の問題を我々は法案で今議論をしようとしているわけでしょう。(小渕内閣総理大臣「できていないですよ」と呼ぶ)できていないといったって、そのためにみんなで知恵を出し合おうと言っているわけじゃありませんか。
  322. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 破綻した銀行の対応はございません。
  323. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 破綻した銀行の対応というのは、預金保険法とかいろいろな対応が全部、今までも準備されてきているし……(発言する者あり)
  324. 相沢英之

    相沢委員長 御静粛に願います。
  325. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 準備しているわけでしょう。(発言する者あり)
  326. 相沢英之

    相沢委員長 御静粛に願います。
  327. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 中小企業を、善良な借り手を……(発言する者あり)
  328. 相沢英之

    相沢委員長 御静粛に願います。
  329. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 どうしようかという問題が今論議されているわけじゃありませんか。  率直に言いますけれども、本当にひどい話だと思いますよ。大体、総理自身合併に最大限の支援を行っていきたいという談話を発表したのは、長銀のトップに会った後じゃなくて、住友信託のトップと会った後で出しているわけですね。政府として最大限の支援とは公的資金の投入、こういうことであります。ですから、私は率直に申しまして、税金の投入がこういう銀行の無法に拍車をかけているし、そしてまた、大蔵大臣がさっきおっしゃったように、税金を投入してこういう長銀などの無法なやり方を促進していく。  結局、私が最後に申し上げたいのは、公的資金の投入というのは、業界の自己責任、自己規律をだめにして業界のモラルハザードを一層促進する、銀行業界甘やかしそのものだと言わざるを得ないと思うのです。  政府もかつては、金融システムの安定はシステム内部の努力と負担で賄うことが原則だと言っていましたよ。しかし、もうこの原則は本当に完全に投げ捨てられて、税金をどんどん投入して、金融システムの内部にいるはずの住信などは、すべてを税金でやってくださいということで、それに頼っていく。だって、金融が本当に危なくなったのだったら、自分もその金融システムの一員として危なくなるはずなんですから、きれいごとを言っていられない。自分だって多少犠牲を払ってもこの合併をやっていこうということになってしかるべきなのに、税金を投入するという仕組みがあるからこそ、自分は一切犠牲を払いませんよ、全部税金で出してくださいということになっていくわけでありまして、私は、システム内部の努力と負担で賄う、この原則を本当に今こそ貫いていくことが重要だし、そういう点で税金投入は絶対反対だ、私たちのきょうの提案もそういう基本に貫かれているものだということを申し上げて、質問を終わります。
  330. 相沢英之

    相沢委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、浜田健一君。
  331. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 きょうのこの集中審議もそろそろまとめの時間に入りましたので、私は、何点か基本的な部分について、総理を中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。  日本長期信用銀行は、この三月に金融危機管理勘定から、BIS基準に適合する自己資本比率を確保するために一千七百六十六億円、お金を借りました。そのことによって、いわゆる優先株や劣後債などの発行によって体力を強めながら回復に向かっているということを、国民はみんなそのように認識をしていたはずであります。ところが、三カ月たった六月になって、いわゆる住友信託銀行との合併の話が出てきた。これは、体力を回復した銀行がなぜ今合併の方向に向かわなければならないのかという、私を含めて素人は首をかしげるわけでございます。  それで、私に言わせれば、日本長期信用銀行が住友信託銀行に吸収合併される方向に今の構想を進めていかれる、その原因は何だったのか。そして、それを積極的に支えていかれようとしている政府のお考えはどこにあるのか。国民皆さん方に総理から明確にお答えいただきたいというふうに思います。
  332. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日本金融機関そのものが大変厳しい不良債権を抱えて経営に苦しんでおります。そうした意味で、この問題を解決いたさなければ日本の経済全体の再生につながらない。ましてや、諸外国からも我が国のそうした事態に対して極めて厳しい目で見られておるわけでございまして、そういった点で、何としてもこの事態を乗り越えなきゃならぬ、こういうことだろうと思います。  委員指摘のように、三月期と今日と、こう言っておりますが、その過程で長銀がこのようなリストラ策を打ち出して、長銀の歴史始まって以来の新しい事態に対応しなきゃならぬということにつきましては、経済の大きな動き、そして日本経済全体も厳しい環境にさらされているようなことも影響があったのではないかと考えておるわけでございまして、そういった点で、本問題を直接的に解決することは当然でありますが、内閣としては、日本経済全体の活力をいかに持たせていくかという点も含めて現在努力をさせていただいておる、こういうことでございます。
  333. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今の総理の御答弁は、きょうはお聞きするだけにしておきたいというふうに思います。  先ほどからお話が出ていますとおりに、合併に当たって、住友信託銀行の高橋社長は、八月二十一日、報道各社に三項目、合併の前提条件を言われました。日本長期信用銀行債権は正常なものだけ承継するということ、それと、関連会社、関連親密先の同行による責任を持った整理というもの等、三項目の前提条件を発表されました、これは、先ほど宮澤大蔵大臣も言われたとおりに、受け皿となるというか一緒になる金融機関としては、まさに至極当然な要求ではあるというふうに私も思います。  その正常債権のみの継承という要求に対して、今出されているスキームといいますか、三つの主要関連ノンバンクの貸付金合計五千二百億、そしてその他の不良債権二千三百億、合計七千五百億のいわゆる放棄といいますか、引き当てを含めた放棄を計画しているわけです。その結果、一時期、自己資本比率が低下する、そのための手当てとして六千億から一兆円の公的資金の投入をお願いしたい、申請をしたいという意向が示されているという現状だというふうに、テレビを見ておられる方もわかりやすくきょうは理解ができたというふうに思うわけでございます。  この状況の中で、既に何回も話されておりますが、債権放棄という部分と公的資金の投入ということの整合性はどこにあるのかということを明確にしていただきたいと思います。総理、いかがでしょうか。
  334. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  資本の注入は、あくまでも、その資本勘定が過少になるということから長銀が申請されるものというふうに聞いております。資本勘定が過少になりますのは、もちろん債権放棄といいますか、不良債権を償却するわけでございますが、その不良債権を償却した場合にいきなりそれを資本勘定で落とすというのではなくて、一方では、先ほどから出ておりますように本店の売却その他営業利益などで、まずは損益で計算いたしまして、そのネットの損を資本勘定の方から落とすということでございまして、決して資本勘定といいますか、不良債権を償却するために資本を注入するものではないというふうに理解しております。
  335. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今のお答えが本当に国民皆さん方に、なるほどそうだねというふうに納得されるかどうか、これがきょう始まったこの委員会の、法案もございますけれども、全体の終局に向けてやはり大きな論点となるだろうということだけは申し上げておきたいというふうに思います。  それで、私たちも前回の国会まで与党でございました。十三兆円の金融危機管理勘定をどのように使っていくかということ、保岡先生からよく説明を私もいただくのですが、いわゆる雇用を守っていくというようなことなんかも私たちの要求を入れてつくられていたわけでございますが、正直言って、三月の一兆八千億のいわゆる横並びの資金投入がよかったのかなと。きょうもいろいろなお話があるように、本当に必要な銀行金融機関が必要なだけ借りようと思っていたのかどうかという分析も含めて、ある意味でじくじたるものも私たちは持っているところでございます。  そういう意味で、この金融危機管理勘定十三兆円の公的資金活用の趣旨というものをもう一回振り返ってみますと、自己資本充実による金融システム安定化という大前提が、表書きに出ている大前提がございますが、国民皆さん方に説明するときにわかりやすく説明したその中身というのは、この資本を高めることによる貸し渋り対策ですよ、貸し渋りを少なくしていく、緩和していく対策ですよということと、破綻金融機関の受け皿銀行等の自己資本比率向上というものも大きな目的、眼目だったというふうに私は思っております。  しかし、今回の日本長期信用銀行処理策では、今出てきている処理の中身ということでございますが、きょう日野長官等の御説明を聞いていますと、これは私の聞き方が悪いのかもしれませんけれども合併のための不良債権処理の手当てに特化されていくような気がしてならないわけでございます。  したがって、この公的資金不良債権処理のいわゆる償却原資というものに充てることは、金融安定化特別措置法の趣旨に合致していないのではないか、そういう疑義を挟まざるを得ない。どうしてもこの十三兆円の中から公的資金を今回のようなスキームの中に投入するのであれば、法律の改正も視野に入れなければできないのではないかという疑問点を持っているのですが、いかがでしょうか。
  336. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは法律にもございますし、また委員も御存じのように、公的な資金を投入することの一つの目的は、申請を受けて、その銀行が資本率を高くすることでございますので、その高くすることが必要になった原因は、場合によっていろいろであろうと思います。不良債務を処理したためもその一つ思いますが、したがいまして、原因はともかくとして、資本比率を高くする、そのための申請に対して対応するということはやはり必要なのではないかと考えます。
  337. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 仮にそれが許されるとしたときに、金融危機管理審査委員会の審査基準、この中に、例えば、優先株式等の引き受け後相当期間が経過しても優先株等を処分することは困難でない場合と規定した現行法がございます。  きょうの話をいろいろ聞いておりましても、破綻をしているのかしていないのかということも含めて、今出ているデータでは、これらの審査というか、審査基準で審査するその前段のものが、私たちが審査するわけではないのですけれども、私たちがこの国会論議の中でも、どうなのかなということを論議できるそういう材料がない中で、果たしてこの委員会がどう審査するのかということも含めて、現行法とそごを来す部分も出てくるような気がするのですが、いかがでしょうか。
  338. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  今議員が御指摘されましたように、この金融機能安定化法の第二十三条には、優先株式の引き受け等を行った後相当の期間が経過しても、その優先株式等の処分をすることが著しく困難であると認められる場合には公的資金の投入を行うことができないとされているわけでございます。  他方、いわゆる一般論的に言います資本注入は、市場の信認を回復しまして、例えば合併なんかが想定されるような場合には、円滑な合併を実現するために申請されるものだろうと承知するわけでございます。したがいまして、合併後に新たな段階で優先株式等の処分をすることは、その段階で十分可能であると考えられるわけです。  いずれにいたしましても、今後申請があれば、先ほど先生が言われました金融危機管理審査委員会の中の審査基準にまきにそういうのがございますので、それに基づいて判断されるということになると思います。
  339. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 現状と、これから表に出てくる中身というものがいかに合致するのか、そして、それが私たちにも審査する委員会にも、多くのところにしっかりと提示される必要があるということだけは申し上げておきたいと思います。  次に、長銀の今回の合併に向かうさまざまなリストラ化の中で、当然現行の法規の中で長銀責任のとり方というものが示されております。しかし、先ほども出ておりましたとおりに、私たちからは想像もできないような退職金等をもらって生活をしておられる。そのことだけを特化してどうこうというものではございませんけれども国民の生活の感覚と違ったところで、多くの退職金なり生活のためのさまざまな資金をもらっていらっしゃるというような現状の中で、責任をとるという意味でのこのリストラ策は、現行の経営陣だけのものであっていいのかという思いを私は持っているわけでございます。  給与や退職金の思い切ったリストラというものは現在示されているわけでございますけれども、過去の経営責任というものも含めて、日本長期信用銀行がもっと踏み込んだ国民皆さん方への責任のとり方、責任をこういうふうに、ある程度の時間が経過する中で、ここまで至った責任をとりますよということを示されなければならないのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  340. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融機関の経営者がこれまでどうやってきたか、その責任を十分果たしていたのか、他の企業が血のにじむような努力を行っておりますのに金融機関のリストラの徹底が不十分過ぎるのではないか等々の厳しい意見や声が国民にあることは、真摯に受けとめなければならないと考えております。  各金融機関は、その公共性に思いをいたし、特に、先般金融システム安定化策として公的資金活用のための制度が整備されたことにかんがみ、各金融機関におきましては、一層の合理化努力とともに、その実施状況について積極的に開示していくことにより、預金者国民理解が得られるよう最大限の努力を行う必要があると考えておりますし、ただいま委員の御指摘いただきました点につきましては、国民のそうした声もしっかり認識をされて、適切に私は対応されるものと期待いたしております。
  341. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今私が申し上げました部分も、来週予定されておりますいわゆる参考人質疑等々含めて活発な論議をしなければならないと思っておるところでございます。  最後に、日野長官お尋ねをして質問を終わりたいと思うのですが、きょうの質疑の中で、仙谷石井委員もここにパネルを出して説明をされておられましたけれども、いわゆる長銀の今抱えている株式を含めた評価損、含み損等々、これが明らかになってきた場合にも、債務超過に陥る可能性は、現時点でもこれからも金融監督庁としては、こういう変な、予測としての質問の仕方はおかしいのかもしれないけれども、債務超過に絶対に陥らないんだ、陥る可能性はないんだということが言い切れるのかどうか。私は、きょうの各委員発言質問を聞いて、御答弁を伺っている中で、やはりもう実態的には破綻しているのではないかなというふうに考えざるを得ない心境になってきたところでございますが、いかがでございましょうか。
  342. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  本年三月期の長銀の自己査定並びにそれに対する日銀の考査によれば、債務超過ではないと承知しております。また、これは長銀の方の説明ですが、本年九月期は関連ノンバンク等にかかわる抜本的な不良債権処理を実施するところでございますが、その結果、過少資本とはなりますが、債務超過にはならない見込みというふうに聞いております。  なお、長銀に対しましては、主要十九行に対する検査の一環として七月十三日から立入検査を開始いたしまして、本年三月期の自己査定結果の報告を踏まえた上で、有価証券の内容も含めまして、同行の資産内容等につきまして鋭意実態把握に努めているところでございます。
  343. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 いち早い調査の結果とその公表を求めて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  344. 相沢英之

    相沢委員長 これにて浜田君の質疑は終了いたしました。  次に、河村たかし君。
  345. 河村たかし

    河村(た)委員 まず、総理にお伺いしたいと思いますけれども、七分しかございませんので、国民の皆様の立場に立ってお伺いしたいと思います。  とにかく大変な不景気でございまして、それで、やはり国家というのは何かといった場合、税金ですから、税金をどう使うかということは、もう総理が一番これを責任を持ってやっていただかなきゃならぬということだと思います。  それで、こんな質問はよくあったと思いますけれども、本当に民間の会社の場合は、どんなに苦しくてもだれも助けてくれない、銀行が融資を打ち切れば終わってしまうということなんですけれども、何か銀行だけは、給料もたくさんもらっておるとか、本店を売ったところも余り聞いたこともありませんし、みんな悠長なことをして、何か非常にかわいがられておるのではないか、なぜ民間だけ、非金融ですね、これだけ苦しむのだろうか、そんな気持ちの方が本当にたくさんお見えになると思いますよ。それで、そこで出てくるのは、なぜ銀行だけこれだけ公的資金を入れてかわいがるんだという話になると、これが、金融システムを守る、システムリスクを回避する、こう言うのですが、これは一体中身は何ですか。  私も経済を勉強してまいりましたけれども、伝統的に言いますと、確かに金融というのはほかのものと、例えば鉄鋼とか車とかと若干違って、公共的なものであるというようなのは伝統的な経済学でした。  しかし、ちょっとここは総理国民に向けて、皆さんの血税を使うんですから、民間ではこんなことは、民間というか普通の事業では行われないけれども銀行はこういう理由だから、申しわけないけれども皆さんの税金を使わせてくださいと、それを金融システムというような英語じゃなくて、中身をちゃんと言って、皆さん国民を説得する義務があるから説明してくださいよ。何なんですか、金融システムとは。
  346. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 経済を運営するために、資金というものはそれこそ血液でございまして、その循環をつかさどる金融機関がある意味では心臓の役割を担っておる。したがいまして、その部分の破綻金融システム全体の危機を招くおそれがある、こういうことで、このシステム全体の危機的状況を絶対起こしてはならない、こういうことでございまして、そのために、このシステムの再生のために公的資金の活用をすることになりましたが、その必要性については国民皆さんの御理解をいただけるよう、内閣を挙げてその責任をとっていきたいと思っております。  すなわち、長くなりますが、戦後を考えますと、金融機関がやはり経済の発展のために大きな役割を果たしてきたという意味で、そういった意味でやはり日本経済の心臓部にあるということでございますので、これをおろそかにできないという形の中で、金融機関も長きにわたって護送船団の中で生きてきたというところに今日の問題の発端もあろうかと思っております。しかし、今日の時点で多く抱えた金融不良債権を解決しなければならない、こういうことで、何しろこれを円滑に進めていくことが努めだろうと考えております。
  347. 河村たかし

    河村(た)委員 七分でございますので、ちょっと配慮いただけるとありがたいんですが。  それは今までの決まり切った話でして、血液だからとか大事だからというんですけれども、しかし、例えば鉄鋼でもそれから食品でも非常に大事なわけで、それだけ特別だというのはどうも当たらないのではないかなと思うんですよ。ないし、仮にそうだとしても、最低でも、どういうところでどれだけ損害が発生するんだぐらいのことはある程度言わないと、どうも何か本当のことを言うと困るからというような話がある。それは、昭和恐慌のときに銀行が危ないと言ったらとんでもないことになっちゃった、そんな話もまだ、何十年もたって同じ心理なんですかね、これは。  だから、もうちょっと具体的に言いますと、例えば長銀の場合、こんな話もあったと思います。地域経済に及ぼす影響が大きい、銀行がだめになると。そういうことは余りないと思いますね、長銀なんというのは、銀行の性格上。  それからもう一つは、健全な取引先ということでございますけれども長銀というのは、国民皆さんもわかっていますように、ほとんど行ったことがない人が多いと思いますよ。重厚長大型のどえらけにゃあ大きい会社を面倒見てきたわけでございまして、それぞれ体力はあると思うんですね、これは。だから、どうもそういうことでもない。  じゃ、本当にシステムリスクというのは何なんでしょうか。デリバティブという英語を使えば何かわかるような気がしますけれども、そんなものでも信用取引というのは実はリスクヘッジという非常に大きな役割があって、それはそれでやっているじゃないかと。それから、コール市場で、うちが切ると向こうがだめになるのでというようなこともありますけれども、そういうのはやはりもたれ合いの方に問題があるのでして、金融だから金融だから全部、全部というか、ルールもなしに助けていくのはどうもおかしいんじゃないかというような気がしますね。  それと、突然じゃないですから、これは。民間というか普通の事業の倒産というのは割と突然来るんですよね。そこに関係していた人は全部アウトになるんですよ。債権者も全部だめですよ、これは。銀行債権者を全部守りますよね、そういうことですよ。  なぜそれほどまでにして守らにゃいかぬのですか。最低でも、いいですよ、もし伝統的な経済学で金融だけが特別だというなら、こういう分野でこのくらいの被害が起きるから、申しわけないけれども国民皆さん皆さんの取引先がだめになったときには救えませんけれども、頼むので許してくださいと、総理、このくらい言わにやどうするんですか。国民は説得されませんよ、それでは。どうですか、総理
  348. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 金融機関は特別だということは、銀行法という法律によってその設置が認められておることでございますことでもおわかりだろうと思います。  そこで、端的にということは、先般、北拓の破綻その他幾つかの金融機関がそうした事態になりまして、これはある地域のことをおっしゃられますが、非常に大きな影響を及ぼしておるわけでございまして、それに引き比べましても、長銀というものの事業から考えましても、まさるとも劣らない事態が発生する危険性があるということだろうと思います。そういう意味でいえば、こうした金融機関というものは大きな社会的な責任を感じつつ、その大きな影響に耐えていかなければならぬと私は存じております。
  349. 河村たかし

    河村(た)委員 抽象論ではやはりだめだと思いますね。何遍その話を聞いたのか。  それは昭和恐慌のときと同じかもしれませんよ。それからは預金保険機構もできたし、いろいろな制度が整っているわけですよ。総理、最低でも次までには、こういう分野でこういうようなことが起きるから、国民皆さん、許してくださいよ、皆さんの取引と違うかもわからぬけれども勘弁してくださいよ、少なくともそのくらい出してくださいよ。  これで終わります。
  350. 相沢英之

    相沢委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会