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1998-09-18 第143回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十八日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 森山 眞弓君    理事 玄葉光一郎君 理事 藤田 幸久君    理事 東  順治君 理事 東  祥三君       柿澤 弘治君    瓦   力君       河野 太郎君    阪上 善秀君       櫻内 義雄君    中谷  元君       深谷 隆司君    細田 博之君       吉川 貴盛君    上原 康助君       島   聡君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    古堅 実吉君       松本 善明君    伊藤  茂君  出席国務大臣         外 務 大 臣 高村 正彦君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 阿部 信泰君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君  委員外出席者         防衛庁防衛局計         画課長     近藤  洋君         防衛庁防衛局調         査課長     山内 千里君         防衛庁装備局艦         船武器課長   山内 正和君         外務委員会専門         員       宮本 吉範君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
  3. 阪上善秀

    阪上委員 おはようございます。自由民主党の阪上善秀でございます。  まず、日ロ関係についてお伺いいたします。  今月十一日、プリマコフ氏の新首相就任決定し、ロシア金融経済危機に火に油を注いだ内閣不在といった政治的混乱はとりあえず終止符が打たれました。しかし、この一連の動きの中で、政府側ロシア議会との間で大統領権限の制限などを盛り込んだ政治協定署名するなど、今後のエリツィン大統領リーダーシップ低下は必至でございます。一方、首相に就任したプリマコフ氏は、日本通として知られておりますが、十一日にロシア下院会議で行った演説では、日本との領土問題ではロシアの主権を損なわない形の解決方法を見出す努力をすると述べ、領土問題では国益重視姿勢を強調しております。また、新外相に就任したイワノフ氏は、対日関係や領土問題への姿勢の多くが今のところ不透明でございます。  そこで、最近のロシア政治状況を踏まえ、今後の日ロ平和条約交渉の見通しについて、政府見解をお伺いいたしたいと思います。
  4. 高村正彦

    高村国務大臣 日ロ間の平和条約交渉でありますが、日ロ双方における内閣の交代にもかかわらず、クラスノヤルスク合意実質的前進及びそのための作業の加速化を図ることで日ロ双方は一致しているわけであります。十月中にも行う方向で調整を進めている私自身訪ロや、十一月に予定されている小渕総理訪ロを通じて、あらゆる分野で日ロ関係を進展させつつ、東京宣言に基づき、二〇〇〇年までに平和条約を締結すべく全力を傾注してまいりたい、こういうふうに思っております。
  5. 阪上善秀

    阪上委員 川奈会談以降の環境変化対応するため、エリツィン大統領個人的政治決断に依存するだけでなく、ロシアの有力な政治家とのパイプづくりなど、多角的なアプローチの必要性について、政府見解をお伺いいたしたいと思います。
  6. 高村正彦

    高村国務大臣 おっしゃるように、日ロ関係のさらなる進展のためには、政府間交渉だけではなくて、両国民レベルの幅広い交流を通じた信頼関係の強化も必要だと思います。その観点から、議員交流だとかあるいは技術支援報道関係者招聘、対先進国招聘等枠組みを通じて、各界各層での交流活発化を引き続き図っていきたい、こういうふうに思います。  それから、九月十六日に丹波外務審議官イワノフ外相との間で会談が行われたわけでありますが、そのときにイワノフ外相の方から、ロシア外交政策には変更がない、対日政策も同様である、それから改革からの後退はない、市場経済への志向も変化はない、中央統制経済への回帰はない、このような発言があったことを申し添えておきます。
  7. 阪上善秀

    阪上委員 次に、北朝鮮ミサイル発射問題と我が国安全保障についてお伺いいたしたいと思います。  今回の弾道弾ミサイル発射について、もし北朝鮮から発射された弾道ミサイル等が誤って我が国国土に落下した場合、自衛隊対応を含め、現時点我が国政府がとり得る対応策をお伺いいたしたいと思います。
  8. 近藤洋

    近藤説明員 お答え申し上げます。  今日の国際社会におきましては、大量破壊兵器及びその運搬手段となり得る弾道ミサイル拡散が進んでおりまして、このような状況のもとで弾道ミサイル防衛の問題についてどう考えるかということにつきまして、これは今後我が国防衛政策上の大きな課題であると認識しておるところでございます。  その際、弾道ミサイル防衛必要性やあるいは効果について論じるために、弾道ミサイル脅威それから弾道ミサイル防衛システム具体的内容、その技術的実現可能性等、多岐にわたる問題について十分な検討を行うことが必要と考えておりまして、このため、現在、弾道ミサイル防衛に関する多くの知見を有する米国の技術的な協力を得つつ、日米間の技術協力可能性を含む所要の検討を行っているところでございまして、かかる検討を踏まえまして、今後適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  9. 阪上善秀

    阪上委員 今月四日、額賀防衛庁長官は、今回のミサイル発射に関連し、我が国攻撃した外国基地などに対し反撃することは法律的に可能であり、自衛権範囲内であるとの見解を示されました。これは、一九五六年の衆議院の内閣委員会における、他に手段が認められない限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛範囲内に含まれるとの政府見解を踏襲したものであると思います。  しかし、この発言は、我が国法律上許される一つの選択肢を示したに過ぎず、北朝鮮発射したミサイル我が国領内に落下し、次に予想される第二次攻撃を防御する手段が他に認められない場合に、我が国が実際に北朝鮮ミサイル発射基地攻撃する用意があるということを明確に表明したものではないと思います。  そこで、北朝鮮から発射されたミサイル我が国領土内に落下し、他にとり得る手段が認められない場合には、政府は実際に北朝鮮ミサイル基地攻撃する用意があるか否かをお伺いいたしたいと思います。
  10. 近藤洋

    近藤説明員 我が国に対しまして急迫不正の侵害が行われ、その手段として我が国土に対し、ミサイル等により攻撃が行われた場合に、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度措置をとること、例えば、ミサイル等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、敵のミサイル等基地をたたくことは、昭和三十一年の統一見解に示すように、法理上は自衛範囲に含まれ、可能でございます。  そこで、我が国が現に保有する防衛力という観点から考えてみますと、これにつきましては、現在の自衛隊敵基地攻撃目的とした装備体系になっておらず、これに適した装備品を有していないことから、現時点において自衛隊敵基地に対し軍事的に有効な攻撃を行うことは極めて難しいと考えております。
  11. 阪上善秀

    阪上委員 仮に、我が国国土北朝鮮によってミサイル被害を受け、北朝鮮ミサイル基地をたたくことが妥当と認められた場合に、現在の我が国防衛力によってそれが可能であるかどうかが問題となると思います。  我が国は、相手基地攻撃できる航続距離の長い爆撃機、ICBMなどの戦略ミサイル保有いたしておりません。具体的には、陸海空自衛隊には、北朝鮮に届く性能を持つミサイルは配備されておりません。航空機も、航続距離が約千九百キロと言われるF15なら、データ的には往復するだけは可能だと思いますが、対地攻撃能力は乏しい。また、海上自衛隊イージス艦なら北朝鮮に近づけることはできますが、対艦ミサイルしかなく、巡航ミサイルのように地形の起伏を縫って目標にたどり着くということはできないために、相手ミサイル基地に到達する前にどこかに着弾してしまう可能性が高いと言われております。  そこで、我が国北朝鮮軍事的脅威から国土を守るためには、北朝鮮ミサイル基地をたたく以外に手段がないという状況に置かれた場合でも、我が国防衛体制ではそれも不可能ではないかというのが実態であります。この点についてお伺いをいたします。
  12. 近藤洋

    近藤説明員 自衛隊の現在保有する防衛力という点につきましては、先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、仮に北朝鮮からミサイル攻撃がなされた場合という仮定の御質問にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、あえて申し上げますと、我が国に対する武力攻撃がなされた場合には、日米安保体制枠組みに基づきます日米共同対処ということが考慮されるべきであると考えておりまして、この点は日米防衛協力のための指針にも明記されているところでございます。
  13. 阪上善秀

    阪上委員 次に、現在政府米国戦略ミサイル防衛TMDについて技術研究を進めていると承知いたしております。TMD構想は、依然技術的には未熟であり、導入には莫大な費用と長い時間がかかり、また、宇宙開発利用平和目的に限定した一九六九年の国会決議との関係など、法的な問題についても依然慎重に検討すべき問題が多く残されておると思います。  しかし、我が国TMD構想導入するか否かを決定するに当たり最も重要なのは、我が国を取り巻く国際情勢をよく分析した上で、それによって明らかになった軍事的脅威から我が国をどう守るのか、我が国が隣国からの軍事的恫喝に毅然とした外交を展開するために何が必要かという問題があると思います。その線上で我が国防衛体制TMDが必要か否かを論じる必要があると思うのであります。  そこで、TMD構想費用効果という現実的な側面の検討も重要であると思いますが、こうした問題がまず十分に論じられるべきではないかと考えますが、政府見解をお伺いいたしたいと思います。
  14. 高村正彦

    高村国務大臣 弾道ミサイル防衛につきましては、我が国防衛政策にとっても、あるいは日米安保体制運用にとっても重要な検討課題と認識しております。技術研究可能性も含めて、我が国が今後いかにBMD対応していくか、今委員がおっしゃった費用効果とかその他もろもろの点を含めて、十分に検討していく所存でございます。
  15. 阪上善秀

    阪上委員 TMDが実戦配備された場合に、現在の我が国法律上、日本に向けて発射されたミサイルを迎撃することが可能であるのかという問題が残ってくると思います。  現在の我が国法律では、防衛出動に、あらかじめその可否について内閣総理大臣国防会議に諮問し、閣議にかけた上で国会の承認を得ることが必要である。発射後十数分で目的地に到達すると見られる弾道ミサイルの迎撃について、こうした手段を踏んでいたのでは間に合わないと思います。  現在、領空侵犯機に対するスクランブル発進時における武器使用対空ミサイル発射などは、内閣総理大臣の命令なくして制服レベルの判断で行えることになっておりますが、この場合でも、領空侵犯機我が国攻撃し、実際に被害が出たなどの事実がある場合でなければ行えないことになっておるのであります。  したがって、TMDに関しても、現在の法律によれば、たとえ我が国外国ミサイルが落下してくることが確実な場合でも、既にミサイルによって我が国国土被害を受けた後でなければ迎撃できないと解釈されるのではないのでしょうか。  そこで、この点に関する事実関係と、TMD導入検討に当たり、TMD実効性を確保するための法整備もあわせて検討する必要性について、政府の認識をお伺いいたしたいと思います。
  16. 高村正彦

    高村国務大臣 BMDを採用する場合には、当然のことながら法整備等を含めたソフトの面の検討も必要になってくるだろう、こういうふうに思っております。
  17. 阪上善秀

    阪上委員 今回の事態は、我が国ミサイル防衛の問題とあわせて我が国情報収集能力の脆弱さを露呈されたと思います。今回の事態契機に、我が国独自の情報収集手段としての偵察衛星導入必要性が強く認識されるようになってまいりました。現在も検討を進められておるところでございます。  しかし、最近の議論では、宇宙平和利用などをうたった一九六九年の国会決議との整合性や中国などの近隣諸国の反発などの配慮から、軍事用に限定した偵察衛星導入ではなく、天候や災害、農作物の収穫調査などにも利用できる多目的衛星導入にすりかわりつつございます。用途の広い、多数の省庁が利用する多目的衛星によって、我が国軍事的脅威となり得る周辺諸国動向をキャッチすると言われる偵察衛星導入の当初の目的を達することが果たして可能なのかと疑問を持たざるを得ないところであります。  一九六九年の国会決議が決議された約三十年前とは我が国を取り巻く国際情勢は大きく変化をいたしております。また、専守防衛を旨とする我が国防衛政策にかんがみれば、偵察衛星導入近隣諸国にとって脅威となるという主張は通らないのではないかと思います。にもかかわらず、国会決議との整合性近隣諸国への配慮のために軍事用偵察衛星ではなく多目的衛星とすることについて、外務大臣の所見をお伺いいたします。
  18. 高村正彦

    高村国務大臣 外務省としては、今回の衛星に関する議論は、そもそも北朝鮮によるミサイル発射契機となっていることを十分勘案した上で、種々の意見にも配慮しつつこの検討を続けてまいりたい、こういうふうに思っております。  ちなみに、国会決議との関係国会決議解釈問題等いろいろあるわけでありますが、最終的にはその有権的解釈国会に帰する、我々はそう思っております。
  19. 阪上善秀

    阪上委員 アメリカは十四日、先月三十一日の北朝鮮によるミサイル発射は小型の人工衛星を打ち上げたが失敗に終わったものであるとの見解を明らかにいたしました。一方、我が国は今月一日、北朝鮮ミサイル発射を受けて、食糧支援国交正常化交渉KEDO事業への拠出の当面見合わせなどの制裁措置を既に決定をいたしております。しかし私は、アメリカ人工衛星の打ち上げとの見解を示したことは、日米関係よりも米朝関係を重視した態度ではないかと不本意であります。  そこで、先月三十一日のミサイル発射人工衛星の打ち上げたったとのアメリカ見解発表を受けて、我が国がさきに打ち出した対北朝鮮制裁措置について毅然たる態度をとるべきだと思いますが、政府見解をお伺いいたします。
  20. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国が毅然たる措置をとり、例えば当面国交正常化交渉に応じないとか食糧支援を見合わせるとかKEDOの進行を見合わせるとか、こういうことを決めましたのは、ミサイルと言っていいのか、国連言葉をかりればロケット推進物体発射されたことによって我が国安全自身が害される、あるいは北東アジアの平和、安定、そういったことに悪い影響がある、あるいは大量破壊兵器拡散といった問題についても悪い影響がある、こういったことから決めたわけで、それが一番先に人工衛星を積んでいようと積んでいまいと、そのことに変わりがあるわけではありませんので、そのことを理由にして当面の措置が変わってくるということはありません。
  21. 阪上善秀

    阪上委員 これで、質問を終わります。
  22. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、藤田幸久君。
  23. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 高村外務大臣として初めて質問を申し上げます。  初めに、対人地雷禁止条約について質問させていただきたいと思います。  昨日、大変いいニュースでもあり、残念なニュースが入ったわけでございますが、それは、ブルキナファソという私も初めて聞いた国がこのオタワ条約批准書国連に寄託した、したがって、四十カ国が批准書を寄託したということで、来年の三月一日にオタワ条約発効するということになったわけでございます。  このオタワ条約に関しましては、当時、小渕外務大臣並びに高村外務政務次官大変尽力をいただきまして、昨年十二月三日までに署名をしていただきましたことは大変評価をする次第でございますけれども、日本が非常に大きな影響力を持って調印をしたということの流れで、ぜひ四十カ国以内に入ってほしいということを私も外務委員会で何回か質問してきたわけです。振り返ってみますと、この一、二カ月の間に、批准をする国が急にそのカーブが上がって、予想した以上に早く批准をしてしまったということもございますが、ただやはり、日本といたしましてもう少し早く批准のプロセスがとれなかったかというふうに、今になってみますと残念な気もするわけでございます。  それで、今までの日本政府動きを見てみますと、特に、NATO諸国におきまして米軍基地を有しております国の批准動向を見てきたわけですけれども、やはりその批准動向在日米軍基地との関係がございますから勘案することは必要でございますけれども、もう少しヨーロッパの国々動きを見つつ、独自に日本があと一カ月ぐらいも早く動いておれば四十カ国以内に入れたのではないかという残念な気もいたします。  高村外務次官でいらっしゃったときに、私ども対人地雷禁止議員連盟としてお願いに上がり、次官の方からその場で、できるだけスピードアップするようにというふうにおっしゃっていただいたのがたしか六月ごろだったと覚えておりますけれども、振り返って、こういう状況でちょっとおくれてしまった、それから今後の対応について、まず大臣からお伺いをしたいと思います。
  24. 高村正彦

    高村国務大臣 対人地雷禁止について委員がこれまで大変御尽力いただいておりますことを、心から感謝申し上げるものでございます。  冒頭委員おっしゃったように、喜ばしいニュースでもあり、ちょっと残念だな、まさに私たちもそう感じているところでございますけれども。四十カ国というのは、いつから発効するかということを決めるために四十カ国でありますが、発効する前に入った国はすべて原加盟国でありますから、法的に言えばそれほどの差はないと言えるかもしれませんが、私たち、四十カ国の中にできれば入りたいなと思っていたのも事実でありますから、一方で残念な気もするわけであります。  委員もちょっと御指摘あったように、日米安保条約運用とかそういったこととの関係で、また私たちの目から見れば、NATOの中のある国の解釈などはちょっと粗っぽいかな、私たちの方がより精密な考えを持ちたいな、こう思った点もありまして、ちょっとスピードの面でおくれをとったという面もあるわけでありますが、可及的速やかに、可及的速やかといっても余り信用なされないかもしれませんが、極めて近い将来に出すべく一生懸命努力をしているところだということで御理解いただきたいと思います。
  25. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今の可及的速やかにという言葉と、それから原加盟国ということをおっしゃったわけですが、例えば今月中に批准手続が済めば、来年の三月一日の発効に間に合うわけです。九月三十日の段階加盟国が四十から四十二にふえているのか四十三にふえているのかわかりませんが、少なくとも九月三十日までに批准が終われば、四十カ国未満で加盟をし、批准をし、つまりその批准に貢献をした国々とある意味では肩を並べて来年の三月一日から発効ができる。それも物理的に決して不可能でもないというふうに思うわけです。  そうしますと、閣議決定といいますか国会提出、その可及的速やかにということをもうちょっと、今法制局の審査も終わって政府内で検討中というふうに聞いておりますけれども、その辺、外務大臣あるいは総理大臣の方のお気持ちもおありのようですから、九月三十日までに批准を何とか終了したいというようなお気持ちはございませんでしょうか。
  26. 高村正彦

    高村国務大臣 今さまざまな手続を行っているところでありますので、何月何日ということは大変難しいわけでありますが、先ほど申し上げましたように、極めて近い将来国会提出できるように努力したい、努力をしている最中でございます。
  27. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 内容面についてお聞きしたいと思います。  先週も、昨年ノーベル平和賞をとったICBLという組織がございますが、その日本の支部といいますか、JCBLという、これも日本の何十かの団体から構成されるNGOが二十万人の署名を集めまして、十一日に総理のところにその署名を持っていったわけでございます。  幾つか、その署名をした内容項目がございますけれども、その一つが、在日米軍が貯蔵し、あるいは保有をする対人地雷国内輸送に関して、これは日本人がかかわることのないようにというのがその四項目一つでございます。もともと政府内では国内輸送日本側が、つまりは民間業者がほとんどでございますが、担うというふうな内容になっておったものを、これは日本側が担うのではなく米軍が直接担うというふうな内容にまとめておると聞いておりますが、その点いかがでございますでしょうか。
  28. 高村正彦

    高村国務大臣 そういう方向で基本的に米側理解を得た、こういうことでございます。
  29. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 それは大変、総理あるいは外務大臣の英断だろうと思いまして、こういう形で、NGOの方々があるいは世界の世論が求めておったことを速やかに実行する方向で進めていただいているということを評価したいと思います。  その場合に、昨年の日米防衛協力ガイドラインとの関係でございますけれども、ガイドライン協力項目武器弾薬を含む物資輸送ということがございますが、その点との整合性はどういうふうに考えておられますでしょうか。
  30. 高村正彦

    高村国務大臣 そういうことも含めて米側理解を得た、こういうふうに考えております。
  31. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 もう一つ、同じような関連で申しますけれども、対人地雷そのもの日本製造したりあるいは所有をしたりしなくなるということにこの条約の結果なるわけですけれども、その対人地雷製造の、例えば部品製造ということも日本業者がしないというようなこと、それから、米軍在日米軍基地に貯蔵あるいは保有をする地雷事前通告なしに日本を通過させないようにというのが、このNGOの皆さんの提案の一つに入っておるのですが、その辺の内容はいかがでしょうか。
  32. 東郷和彦

    東郷政府委員 ただいま大臣が申し上げましたように、現在、提出に向かっての最終段階にございます。  今先生御質問の具体的な諸点につきましては、まさにその最終段階の詰めのところにございますので、ごく近日中に結論が出たところで明確な御報告をいたしたいと思います。
  33. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 事前通告なしに日本を通過するということは、これはいろいろな意味で、政策的なこともあると思いますが、いわゆる部品製造に関しましては、これはある意味では条約そのもの関係することでございますので、今準備中かもしれませんけれども、もう大体お答えいただけるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 東郷和彦

    東郷政府委員 お答え申し上げます。  日本人が行う行為に関しましては条約の中に明確な規定がございまして、これは自衛隊それから民間人ともに適用される点でございますので、それを踏まえて、きちっとした解釈国会提出の後に申し上げられると思います。
  35. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ということは、日本人あるいは日本業者部品製造にかかわらないというふうに自然に考えてよろしいでしょうか。
  36. 高村正彦

    高村国務大臣 私、地雷というものをよく、申しわけないのですが、知らないのですが、地雷部品であっても汎用品みたいなものはどうかなとか、地雷特有の部品はどうかなとか、そういうことでも違ってくるのではないでしょうか。そういったことも含めて、国会へこの条約を提案した後で、細かい点については御説明を申し上げたいと思っております。
  37. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  それから、もう一つ、この対人地雷関係で重要なことは、オタワ条約に入っていない国々の存在でございまして、例えばアメリカロシア、中国、インド等がオタワ条約に入っていないわけですが、ただ、入っていないけれども、アメリカなどは極めて積極的に保有地雷の廃棄を進めていっておるし、そういう具体的な計画を立てておるわけです。それから、けさの新聞によりますと、中国は加入はしないけれども輸出をしないということをはっきりおっしゃっているということも出ております。  ロシア、インド等も含めまして、こういった中国、アメリカも含めて、批准だけがすべてではございませんので、やはり入っていただくような、ましてこれだけ、百三十カ国も既に入ったわけでございまして、しかも、昨年の十二月からしますと、今は九月でございますから、約九カ月で批准まで来て、発効が来年の三月というスピードでございますので、こういった国に対しても参加の働きかけをしていくことが、この核兵器廃絶等々の政策との整合性の面からいっても説得力があるのではないか。  私も前も委員会で申し上げましたが、被害者が一般の文民が非常に多いというようなこと、それから、使う側の人間も殺傷されるということ、それから、影響が次世代にもわたって及ぶというようなことに関しましては、この対人地雷被害と核兵器の被害というのは非常に共通している面もありますので、そういった意味からも、オタワ条約への参加の呼びかけというのはぜひ継続的にしていただきたいと思いますが、今までどういう呼びかけをされておられたのか、あるいはこれからどんな呼びかけをされていかれるのか、その辺についてもお聞きしたいと思うのです。
  38. 高村正彦

    高村国務大臣 対人地雷禁止に多くの国が取り組んで、それによって禁止効果を上げていく必要があるということは当然のことだと思っております。日本としては、より多くの国が対人地雷禁止条約署名するように、今までも働きかけてきましたし、これからも働きかけていく所存でございます。  ただ、当初から、まるっきりこれに署名するつもりはない、署名しない、こう言っている国もあるわけでありますが、そういう国に対しても、オール・オア・ナッシングということではなくて、まず輸出の禁止から取り組めるように、そういったことだけでも禁止する条約をまた別につくって、少なくともそれには入ってもらうような、そういったことも、ジュネーブ軍縮会議などの場でいろいろ協議を行っているというところでございます。
  39. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございます。  それから、今廃棄の問題を申し上げまして、オタワ条約に入っていないアメリカなどは既に大分進んでいるわけですが、日本自衛隊も百万個とか言われている保有地雷があるわけです。その保有地雷を大体いつごろまでに、今月批准をしないにしても最低十月には恐らく批准が成るわけですから、来年の四月一日からは日本発効するわけですけれども、そうするとその場合に、それも踏まえて保有地雷の廃棄をいつまでに進めるかということと、どんな方法でその廃棄を進めていくつもりなのか。来年度の概算要求にも地雷廃棄の予算が入っているようでございますけれども、その計画及びどういう方法で廃棄をしていくかについてもお聞きしたいと思うのです。
  40. 山内正和

    山内(正)説明員 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、昨年十二月の対人地雷禁止条約署名を受けまして、自衛隊保有する対人地雷の廃棄につきまして、廃棄方法の安全性、経済性などの観点を踏まえつつ、鋭意検討を進めてきたところでございます。  当庁といたしましては、同条約で定められた廃棄期限、すなわち発効後四年以内に対人地雷の廃棄を確実かつ効率的に完了させるため、これまで行ってきました検討結果を踏まえまして、平成十一年度以降、国内の企業に委託して廃棄することを考えておるところでございます。  なお、先ほど先生からも御質問の中で言及がございましたように、平成十一年度概算要求にはそのための経費の一部として約四億円を計上させていただいておるところでございます。
  41. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ほかの国、例えば米国、ドイツ、南アフリカ等は、相当の数を廃棄しているのですが、多分民間企業に委託をせずに、かなり軍自身が廃棄をしていると思うのです。先ほどの答弁の中で経済性ということをおっしゃったのですけれども、民間企業に任せるということは、経済性の面からいうとむしろ高いのではないか。自衛隊自身がなぜ廃棄できないのかについてお答えいただきたいと思います。
  42. 山内正和

    山内(正)説明員 民間企業への廃棄委託の件でございますけれども、まず先生お尋ねの自衛隊自身が、例えば自衛隊の演習場で爆破処分をすることも検討課題ではないかという御質問の趣旨だと思います。  従来、陸上自衛隊におきましては、訓練の一環として対人地雷の実爆訓練を実施してきているところではございますが、この訓練とは別に廃棄のために爆破処分を行うことにつきましては、まさにそれだけの量になりますので、処分の安全性でございますとか、あるいは演習場ではこういった訓練以外に一般の演習も行っておるという事情もございまして、そういった訓練への影響、あるいはそういった爆破処理を大規模に行うことによる周辺への影響、こういった観点等々の面を踏まえまして、適切ではないのではなかろうかということを判断いたしまして、民間企業へ委託するという方法を考えているところでございます。
  43. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 周辺への影響ということはわかりますが、これはわかりませんが、ほかの面積の大きな国は広い演習場があるので周辺への影響が違うのかもしれませんけれども、ただ、恐らくはかの国におきましても、それぞれの軍が持っておる演習場の中でやっているということは間違いないと思いますので、その安全性が、日本だけが基地の中で爆発をするということが安全性上問題があって、ほかの南アフリカ等々、アメリカ等々は問題がないのかというと、私もちょっと説得力がないような気がするのですが、その辺はいかがですか。
  44. 山内正和

    山内(正)説明員 お答えいたします。  自衛隊の手によって自衛隊の演習場で爆破処理をするということにつきましては、先ほど申しましたように、周辺への影響のほかにも、例えば自衛隊員は常に日ごろ一般的な自衛隊の訓練をやっておるという所要もございます。また、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、自衛隊の演習場では、そういった対人地雷の爆破のみならず、一般的な各種の訓練が恒常的に行われておる。したがいまして、自衛隊の演習場でそういった対人地雷の処理ということをやりますと、そういった自衛隊の訓練への支障というものも生じるということでございます。
  45. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 多分ほかの国も訓練をやっているのだろうと思いますが、時間がなくなりますし、ちょっと早目に終わりますので、次の質問にいきたいと思います。  自民党の方も御質問されましたが、北朝鮮ミサイルあるいは人工衛星打ち上げ問題について質問したいと思います。  十五日の北朝鮮の声明の中で、今日朝関係は危険千万な戦争の瀬戸際であるというような声明まで出ております。それから、今回の経緯を見ておりますと、少なくとも北朝鮮側は、初めに人工衛星というようなことは言っておらず、二、三日後に言いかえをしているわけですけれども、どうもその経緯を見ておりますと、初めから人工衛星ということを伝えるつもりがあれば、事前に通告をしないまでも、初めに日本側の方で情報をキャッチした段階人工衛星と言い得たものを言わずに、二、三日後に人工衛星という言い方をしてきているということは、何か計画的な犯行ではないかというふうに考えられないこともないという気もするのです。  この危険千万な戦争の瀬戸際というような言い方をしていることとか、あるいはその事情をよく調べないまま日本は批判をしているというような言い方をしておいて、その後人工衛星というような言い方をしているようなところを見ますと、何か初めから挑発的な意図があったのではないかなという気もいたしますけれども、その辺の見通しと戦争の瀬戸際に実際にあるのかどうかという認識についても、大臣の方からコメントをいただきたいと思います。
  46. 高村正彦

    高村国務大臣 意図については当初からいろいろ言われているわけでありまして、また、この後から人工衛星だと言ったということも含めて、確実にこういう意図であったということを日本政府として断定することはなかなか難しいのだろう、こういうふうに思っております。戦争の瀬戸際にあるかどうかということは、これは別といたしまして、日朝関係が客観的に悪くなっていることは間違いないと思います。
  47. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そもそもどういつだものが発射されたかということに関して最近もいろいろな情報が流れておりますけれども、一番最近のものは、昨日ですか、韓国の安全保障会議の発表として、三段式ロケットを発射し、小型人工衛星を軌道に乗せようと意図したが、失敗した。それから、アメリカのペンタゴンの方も同じように、人工衛星打ち上げ用三段式ミサイル、若干表現は違いますが、同じような分析をしておりますけれども、こういった分析。それからもう一つは、非常に射程が長くて、アラスカ等々までも入るとかいったことが、大分それぞれ権威ある筋から出てきておりますけれども、こういった事実関係に関して今大臣はどういうふうに把握をされておられますでしょうか。
  48. 高村正彦

    高村国務大臣 私が把握をしているというよりも、防衛庁の方で、アメリカ側からの情報も含めて独自の情報も合わせて、今までのところは衛星を打ち上げようとした可能性はそれほど高くないのではないか、こういう認識だというふうに承知しております。  ただ、防衛庁長官も言っておられたのですが、確かにこの点については、アメリカ側の情報というのが一番客観的に、いろいろな情報網を持っていることも事実でありますから、防衛庁の方でアメリカに、衛星を打ち上げようとして失敗したという根拠は何かとか、そういうようなこともよく聞いていきたい、そういうことを防衛庁長官が言っていた、こういうふうに承知しております。
  49. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 多分初めの、つまり人工衛星ではなくて弾道ミサイルだという前提で今まで流れておりますから、これを政策転換をするのは非常に難しいと思うのですが、逆に、災いを転じて福になすではありませんけれども、転換の一つのきっかけにできるという面もあるのではないかという気がするわけです。  と申しますのは、結局、日朝関係を見てみますと、六月に拉致疑惑に関する北朝鮮側からの拒否があったわけです。それで食糧援助が困難になって、それで今回のミサイル発射によって正常化交渉の再開とかKEDOの凍結ということになっているわけですけれども、逆に、ここまで来たがゆえに、転換ができるという面もあると思うのです。  一方、米朝協議の方は成立をして、十月には四者会談、それから十一月には軽水炉プロジェクトの開始。それから、韓国の方も相変わらず太陽政策を続けるということを言っておりますし、昨日も韓国の自民連の総裁の朴さんという方が、総理に対して、北風ばかりではマントを脱がせることができないというようなこともおっしゃったという報道もありますけれども、日本だけが何かちょっと今手詰まりの感があるわけです。  そのためには、小出しに変えるのではなくて、逆に、一発といいますか、思い切った一発転換のようなこともしやすい、小出しの状況が悪くなっている場合にはなかなか難しいと思うのですけれども、この際、米韓とも連携をして政策転換をするということも逆にしやすいという面もあるのではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  50. 高村正彦

    高村国務大臣 北朝鮮衛星の打ち上げを意図していたかどうかという事実認識については、これからさらに防衛庁長官もアメリカ等と情報交換をしていく、こういうことを言っているわけでありますが、それが直ちに政策転換に結びつくということではない、つくべきではない、こういうふうに思っております。  何度も言っていますように、たまたまそのロケットの一番先に衛星がついていてもいなくとも、我が国の安全あるいは北東アジアの安全、そして大量破壊兵器拡散の問題、そういった点から、私は、実質的に同じだ、こう考えていますし、特に我が国の場合は、まさに事前に全く警告もなく、連絡もなく日本列島を、国連言葉をかりれば、ロケット推進物体が飛び越えていった、こういうことでありますから、その先に仮に人工衛星がついていたとしても、そこで政策転換をするということはないのだ、その理由で政策転換をするということはないのだ、こういうふうに思っております。  ただ、この問題に対処するには、米韓と密接な連絡、緊密な連絡をとっていくことは当然必要でありますので、そのことはしていきたい、こう思います。  委員が、災い転じて福となす、こう言いましたが、日本にとって災い転じて福となればそれはそれで大変いいことでありますが、こういうことをして北朝鮮に福となったということであれば、それは決して将来に対していいことではありませんので、そういう面も考えていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  51. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 私は、人工衛星の先であったかどうかということが今日まで状況を悪くしたということを申し上げたのではなく、人工衛星であったかどうかは別にして、KEDOを凍結したということは政策として決めたわけでございますし、それから食糧援助の凍結も決めたわけですから、実際に政策としてそこまでした、そういう意味状況がかなり悪くなっている。北朝鮮側の方は、先ほど申しました、戦争の瀬戸際というようなことまで今なっているわけですから、そのことに関して言えば、人工衛星であったかどうかということは問題ではなく、KEDOの凍結等も含めて、ここまで冷え切ったということを申し上げたわけでございます。  ちょっと別の観点からですけれども、いずれにしましても、一つの問題の対応の仕方とすれば、北朝鮮側からロケット推進のようなものを撃たせないということが重要かと思うんですけれども、その一つの抑止力といいますか、考え方とすれば、日米安保条約の存在というものをもう少しはっきり訴えていく必要があるんではないか、あるいは北朝鮮側に発信をする必要があるんではないか。在日米軍基地というのは、これはアメリカが地球の半分をカバーする世界戦略の大変重要な拠点である。したがって、アメリカの世界戦略にとって、日本というのはある意味ではアメリカ本土に等しいぐらい戦略の重要性があるわけですからへその日本に撃ち込んでくるということは、アメリカをして当然日米安保条約に基づいて報復をするくらいのことであるということは言えるんではないかと思うんです。  それから、在日米軍あるいは在韓米軍もそうですけれども、国連軍という位置づけもあるわけですから、なおさら正当性がある。したがって、撃ってきた場合には、アメリカにとって撃ち返すことが正当であるような実は仕組みがあるということを、アメリカのプレゼンスというものを常々いろいろな形で発信をしておくということが、撃たせないという意味では重要ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  52. 高村正彦

    高村国務大臣 米国は、我が国及び韓国との二国間安全保障体制に対する強固なコミットメントについては疑いない、こういうことを十日の米朝合意の発表の際に明確に述べているわけでありまして、日米安保条約の趣旨は北朝鮮にもはっきり伝わっているものだと思います。  我が国自身といたしましても、いろいろなレベルで、北朝鮮と接触がある際には、日米安保、正当性、そういったことはきっちり伝えている。そして、ガイドラインの中のミサイルに関する日米の合意の中で、もし相手ミサイル攻撃したときには、米軍が打撃力を有する部隊を使用することもある、こういうことをきっちり書いてあるわけでありまして、そういったことは北朝鮮にもきっちり、今後とも、もう既に認識していると思いますが、さらに伝えていきたい、こう思っています。
  53. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 米朝協議でも伝えた、それから、今大臣がおっしゃっていただいたような形で伝えられたとは思うんですけれども、実際に私、去年、党の訪問団で二回ほどアメリカに参りまして、そのときに、在日米軍基地の役割を英語のチャートであらわした地図を持っていきました。かなり詳しくつくって持っていきました。例えば湾岸戦争のときに、ロジスティックスの面で在日米軍基地がどれだけ不可欠であったかとか、それからその兵力配備というようなものについて、実は英語のものを持っていったわけですが、アメリカでもそういったものについて、もちろん日本通の方は知っているわけですけれども、一般の知識人あるいは議員の方々も含めて非常に知っている人が少ないんです。  ですから、米朝間の、ニューヨークでやっている際に、いわゆる文書で、そういうコミットメントといっても、北朝鮮側が実際に在日米軍基地というものがどれだけその役割を持っておるのかというようなことについて認識がなければ、そのプレゼンスの意味の認識がなければ発信にならないと思いますので、その点、ぜひ何かの方法で、実際にはこういう機能を持っているんだということが伝わるような努力をしていただきたいと思うんです。  スカンクワークスという、これはアメリカのそういう偵察衛星をつくっておりましたロッキードの関係者が書いた本がありますけれども、その中にも、在日米軍、沖縄から出た航空機が北朝鮮の上空に行って迎撃されたけれども、はるかに米側の飛行機の方が速度が速いので逃げおおせたなんということがありますから、部分的には知っていると思いますけれども、やはり、そういった点をぜひ伝えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、今回のミサイル発射で、海上自衛隊イージス艦の「こんごう」の情報が首相官邸にも防衛庁長官にも伝わらなかったということがございますが、これは、九三年に北朝鮮ミサイル実験を行ったときにもそんなことがあったわけです。恐らくそんなことも踏まえて九七年の一月に情報本部というものをつくったわけですが、残念ながらその教訓が生かされずに、海上自衛隊の情報活動を統合し、そしてその下級部隊が重要と判断した情報が防衛庁長官あるいは首相官邸にも届かなかったということではないかと思いますけれども、こういったやはり、せっかく情報本部をつくった。三十一日というのは、例の水増し請求のことで大変な日だったということもあるかもしれませんけれども、この情報本部というものがやはり機能するような対応が必要ではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。     〔委員長退席、森山委員長代理着席〕
  54. 山内千里

    山内(千)説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘の、八月三十一日のいわゆる北鮮のミサイルの問題とそれから海上自衛隊のいわゆる「こんごう」の情報の問題でございますが、初めに、今回の北鮮によるミサイル発射につきまして、この情報伝達につきましては、防衛庁といたしましては、防衛庁内はもとより、官邸つまり総理大臣、官房長官、あるいは政府部内、外務大臣あるいは他省庁について、適時適切に実施できたと思っております。また、可能な限りあるいは必要な範囲でありますが、政府部外に対しましても、情報伝達はある程度できたのではないかと思っております。  ただ、その過程におきまして、特に国民の皆様に対して、つまり公表という意味ではやや手間取った面があるかな。これは、額賀防衛庁長官御みずからもおっしゃっておりますけれども、場合によっては防衛庁長官みずから国民の皆様に直接経過報告を行う必要があったのではないか、そのような認識を我々は持っております。  ただ、繰り返しますけれども、今回の問題につきましては、前回と比べましてそれなりに適時適切な情報提供はできたものと思っております。ただ、なおさまざまな教訓がございますので、今後、危機管理の重要性にかんがみ、教訓を生かしていきたいと思います。  それから、つけ加えますけれども、先生おっしゃいましたいわゆる「こんごう」の問題ですが、当日日本海におりましたのは「こんごう」ではございませんで「みょうこう」という船でございます。  情報本部との関係でございますけれども、情報本部は、昨年さまざまな教訓をもとにしましてできたものでありまして、先ほど申し上げましたように、防衛庁内あるいは政府部内において適時適切な情報提供が行われた点につきまして、多大な貢献をしていると思います。  先生御指摘の海上自衛隊の船の情報の問題ですが、情報というのは何分、種々の情報を総合的に分析して確認しないと、なかなか報告あるいは公表できないという性格がございますので、情報そのものを伝達する問題と、それから総合的に分析して確認する、そして上に上げるというのは、おのずと時間に差がございますので、その点は御理解いただきたいと思います。
  55. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 総合的に確認ということですけれども、そうすると、総合的に確認をして、要するに、弾道ミサイルだったのですか、人工衛星だったのですか。端的に答えてください。
  56. 山内千里

    山内(千)説明員 現時点の、我々が承知している限りでは、人工衛星を打ち上げたという可能性は極めて低いものではないかと考えております。
  57. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 何か答弁と論理矛盾があるような、随分時間をかけて総合的にやった、総合的に確認がとおっしゃっていて、それで現段階ではということは、そうすると、これまで確認をしてきたことはまだ中間段階だということではないかと思いますが、ちょっと時間がありませんから、少し論理矛盾ではないかということを申し上げておきたいと思います。今後の答弁との整合性を後で考えたいと思いますが、時間がありませんので、カンボジアについて質問をしたいと思います。  まず、七月の末にカンボジアの総選挙が五年ぶりに行われましたけれども、日本政府も今回の選挙については公平にほぼ行われたというような立場をとっておられますけれども、公平であったと日本政府が見ておる根拠、理由について、まず大臣の方からお伺いしたいと思います。
  58. 高村正彦

    高村国務大臣 合同国際選挙監視団も、カンボジア国民の意思が信頼できる形で反映する程度に自由かつ公正であった、こういう認識を示しているわけで、我が国政府としても見解を同じくしているわけであります。  自由で公正であった根拠といっても、これはなかなか難しいわけで、こうこうこういう事実があったから自由で公正でないとかという話はあるのですが、断片的にはいろいろな問題もあったかと思いますが、合同国際選挙監視団が言っているように、国民の意思が信頼できる形で反映する程度に、その反対の意味で、そういうことにならないように、不自由かつ不公正であったというような事実が出てきていない、ですから、この程度に自由で公正であったと私たちは思っているわけであります。
  59. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 実は私も、この投票、開票がありました時期に、日本から行った三十二名とは別の国際的な監視団に加わって行っておりまして、それにはアメリカの前の東アジアの小委員長をされたスティーブン・ソラーズ前議員とか、それから中国大使をされたリリー大使とか、それからほかのアジアの国の議員の方とかもまじっておりました。国際監視団の一部として加わっておりました日本の西元団長ほかの方ともお目にかかりました。そのときに強く感じたのは、いわゆる選挙監視団と言われている方々をより正確に表現しますと、投票開票監視団なんですね。つまり、投票日、開票日前後の数日間に監視をしただけなんです。  今回、今、選挙後もいろいろ問題になっております、特に野党側と言われている政党が問題にしておりますのは、事前運動の段階で政治テロが行われて、何十人かが殺された。それから、事前運動の段階で、人民党のみがテレビの国営放送で番組の画像に出てきたけれども、野党側はほとんど出てきていない。あるいは、地方組織なんかにおいて、人民党というのは三十四番で、これにマークをつける、文盲の方が多いわけですから、という形で、実は指紋押捺をしたとか、そういったたぐいのことは、ほとんどが事前運動あるいは公示期間中に起こっていることでございまして、投票日、開票日の投票箱のすりかえがあったかとか、誘導があったかというのは、投票開票監視団なんですね。私自身も、実は選挙監視団ということで行きましたけれども、自分は何をやったのかということを考えてみますと、投票日の前日、投票日、開票日なんですね。  したがって、今の合同国際監視団が、国民が信頼できる程度というのは、投票日と開票日に関してはほぼそうなんだろうと思いますが、ただ、実際にその後何万人と言われるような方がデモをして、しかも、聞いてみますと、老人とか農民の方とか、非常に一般的な方々がかなりデモに参加をされている。あるいはタクシードライバー、タクシーというのは二輪車のタクシーですけれども。  ということは、やはり投票、開票に関しては、確かに日本のすばらしいジュラルミンの投票箱を持っていって、いろいろ国連のノウハウできちっとやっていました、細かいチェックポイントがあって。ただ、やはりそれだけでは不十分ではないか。やはりこれからのカンボジア、日本が九三年、それからことしも随分お金その他を出してやったカンボジアを安定させていくためには、やはり選挙監視というのは、そういう恒常的な監視体制といいますか、の中で対応していく必要がある。これから、ボスニアにも監視団を出しておりますけれども、そういった発想が非常に重要ではないかということを体験として感じてまいったのですが、その辺いかがでしょうか。
  60. 高村正彦

    高村国務大臣 選挙の不正の一番大きなものは、やはり投票、開票なんですね。ともかく、開票で変えられたらもうすべてがひつくり返ってしまうわけでありますから。ですから、監視についても、投開票のときに一番多くの人数を派遣するのは当然だ、私はそう思っています。ただ、長期的にも、数が少ないといえば少ないのですが、五十名の監視団がいて、ずっと見ていたということは事実であります。
  61. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 時間がありませんから、私は、要するに、結果としていまだに政府が成立をしていない。二十四日に議会が開かれる可能性が出てきたということは喜ばしいことでございますけれども、やはり根本的な対応をするためにはそういった根の問題というものに対応していく。つまり、一番人数が集まるという意味で重要だということであれば、九三年もたくさんの人が行ったわけでございますし、今回もその時期に一番人が行っていたわけですが、むしろ恒常的な段階、日々にどういう対応をしているかということが重要ではないかということで申し上げているわけです。  それで、現在でも、今回の選挙で当選をした六十四名の、野党側の当選者が現在も国外に出ることを認めていない、フン・セン政権の方で。それから、例えばサム・レンシーというサム・レンシー党の党首ですけれども、つい二、三日前まではカンボジアのホテルの地下の国連代表のところに身をかくまっておいて、一たん出るとまた戻れないので、現在は自宅に国連の数名の方の保護でいるとか、やはりこういったことに対して、日本政府としても、今までも随分やっておられるようですけれども、そういう基本的な人権のプロテクションとかいうことに関して、より見える形でやっていただく必要があるのではないか。というのは、日本政府が今回の選挙は公正であるという発表をされた後に日本大使館に、今回のそういった状況を認めないような方々がデモをしたというような話も聞いておりますので。  今まで、一般的に申しますと、マルコスのとき、スハルトのとき、あるいはミャンマーの軍事政権も含めて、日本は、その都度権力にある側にどちらかというとより近い印象を与えてきたということがあるのではないか。もちろん、いろいろな選択肢を持っているというのは重要だろうと思いますけれども、やはりその辺も含めて、せっかく現在のフン・セン首相の方でも、日本に対して一番聞く耳を持っておると思いますので、より長期的な安定のために、より強い発信なり対応をする必要があるのではないかと思いますが、その辺、いかがでございますでしょうか。
  62. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 先生のこれまでの御質問で、選挙の公平性ということとの関連で、もっと事前の、恒常的な段階の人権の尊重とか民主的な状況というものも見なくちゃいかぬのじゃないかという御指摘がございましたが、カンボジアのようなアジアの発展途上国で民主主義が完全に行われるということはなかなか、希望はしても実現が難しい。そういう中で、選挙を自由かつ公正にやるということが焦点であったわけでございまして、これは国際監視団も、それは公平かつ自由だったと言う。また、先生のお話の中にもございましたソラーズ議員なんかも、これは自由かつ公正であったと。  その後の事態、今の御質問のその後の事態というのは、この選挙の結果を受けて、次にどう連立を組むか。また、新しいカンボジアの政治状況が生じているわけでございますので、その前段と選挙と今の状態というのは分けて考えなくちゃいけないと思いますが、今、御指摘のような混乱が引き続き起こっておりますので、この点については、一義的にはカンボジアの内政、カンボジア政府の責任で収拾すべきことだと思いますが、日本政府としても、これまで、何とかカンボジアの政治的な安定を回復したい、こういうことでお手伝いをしてきましたので、これまでもやってまいりましたが、引き続きできるだけのお手伝いをしたいと考えているところでございます。
  63. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございました。  一言、金大中大統領の訪日に関して、今までのいわゆる日本側からの発信とは違った形での発信を求めていらっしゃるということが、最近の駐日大使の記者クラブの講演なんかでも出ておりますけれども、非常に重要な、国会でも閉会中に演説をされることになっております。金大中大統領の訪日、及び、今までと違った日本との関係を求めていらっしゃるようですが、その点について、一言、大臣の方から展望あるいは抱負を聞かせていただければ幸いです。
  64. 高村正彦

    高村国務大臣 金大中大統領が、過去を清算して終止符を打ち、新たな日韓関係を構築したいとの強い決意を有しているということは、私たちも十分承知をしておりますし、我が国としてもこれを受けとめて、今般の訪日の機会に、過去をきちんと直視しつつ、二十一世紀に向けた新たなパートナーシップの構築を目指しているわけであります。韓国側とこれからも緊密に協力して取り組んでいきたいと思っております。
  65. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございました。
  66. 森山眞弓

    ○森山委員長代理 次に、丸谷佳織君。
  67. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 新党平和の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  北朝鮮の件もお伺いしたいのですが、まず、高村外務大臣になられて初めての質問ですので、大臣がことしの六月に、ちょうど政務次官でいらっしゃいましたときに、ニューヨークで開催されました国連の薬物特別総会に出席されましたので、その件に関連をして質問させていただきます。  大臣も御存じのように、現在我が国でも第三次覚せい剤乱用期というふうに呼ばれまして、特に青少年、主婦を中心に薬物の乱用汚染が広がっています。先月の二十日に警察庁が発表したところによりますと、本年度の上半期の覚せい剤事犯摘発者のうち、中学生が上半期だけで二十六人という過去最悪の事態になっているわけです。  もちろん、我が国のみならず、この薬物汚染というのは世界的な問題になっています。国連のアナン事務総長も、その発言の中で、薬物は私たちの社会を引き裂き、犯罪を増し、エイズ等の病気を蔓延させ、青少年と私たちの将来を殺している、こういった警告をされています。核兵器が人類を外側から破壊するものであれば、いわば薬物というのは人類を内側から破壊するものだというふうに言えると思いますし、世界規模の問題として、国際協力なしには解決できないものだというふうに認識をしております。  高村外務大臣も、この総会の中で、日本政府を代表しまして、薬物乱用防止五カ年戦略をもとに具体的な方針を述べられているのですけれども、一九九一年から始まりました国連の麻薬乱用撲滅の十年の計画に沿って、我が国が具体的にどのような方針をとり、またどのような成果を上げているのかは言及されませんでしたので、まずその点をお伺いします。
  68. 高村正彦

    高村国務大臣 国連麻薬乱用撲滅の十年は、国連における薬物対策強化の一環として、一九九〇年の国連麻薬特別総会において採択されたものであります。これまでの間に、一九八八年に採択されたいわゆる麻薬新条約への各国の加入や批准が促進される等、薬物の不正取引防止に対する国際的な枠組みが確立されつつあるところであります。また、国連麻薬乱用撲滅の十年とともに採択されました世界行動計画についても、各国においてその履行が推進されて、国際的な薬物防止対策が推進されているところであります。  我が国としては、このような成果の一つとして薬物乱用防止五カ年戦略が策定されたわけでありますが、この戦略では、国際的な不正薬物の供給阻止のための国際協力を一層推進していこう、こういうことであります。  もう少し具体的なことということであれば、ちょっと政府委員から答えさせたいと思いますが。
  69. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣から御答弁ございましたように、薬物乱用防止五カ年戦略におきましても、国際協力を一層推進していくということとされております。従来から、国連薬物統制計画、UNDCPを通じてマルチの協力を行ってきておりまして、今後とも、UNDCPへの支援を中心に推進してまいりたいというふうに考えております。  なお、御指摘ございました、先般開かれました国連麻薬特別総会の我が方代表、すなわち高村大臣の演説の中にもこの点言及してございまして、例えば東南アジア覚せい剤プロジェクトへの協力でありますとか、ミャンマーはプロジェクトへの拠出でありますとか、UNDCPとの協力について言及してございます。
  70. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 高村外務大臣の演説は私も読ませていただいたわけなんですけれども、今話にありましたとおりに、薬物乱用防止五カ年戦略に基づいて積極的に国際協力をされていく。その内容は、例えば覚せい剤対策に関する研究成果と取り締まり対策に関する情報の提供ですとか、薬物乱用防止教育用の資機材の途上国への提供などがあるわけなんですけれども、今、日本のUNDCPへの拠出金を見てみますと、実際には平成十年度では約三百八十万ドル、二年前の六百七十万ドルに比べますと約四五%減っているわけですね。  日本の財政事情の悪化が背景にあることは私も承知しておりますけれども、このような拠出金額で日本が果たしてイニシアチブをとって国際協力をUNDCPを核として進めていくことができるのかどうか不安に思います。  大臣は、この点いかがお考えでしょうか。また同時に、平成十一年度予算の中でどのように反映されていくおつもりか、お伺いします。
  71. 高村正彦

    高村国務大臣 委員と同じように私も不安に感じておりますので、財政当局に働きかけていきたい、こういうふうに思っております。
  72. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 実際に我が国の非常に厳しい経済状況の中で、ODAの方も削減せざるを得ないと考えますと、より効果的な国際貢献を戦略的に進めていく必要があるのではないかというふうに思われます。  例えば、ミャンマー、タイ、ラオスは黄金の三角地帯と言われているのですけれども、この黄金の三角地帯を初めとしまして、アジアの各地域が薬物の供給地帯となっているわけです。ただ、薬物の原料を不法栽培しないと生計が立てられない、そういった経済状況もあるわけです。とりわけて、貧困によるストリートチルドレンが麻薬の売買にかかわるケースも非常に多いというふうに言われているわけなんですけれども、例えば、彼らの職業習得に結びつくような教育ですとか、また薬物教育の推進、そして薬物の不法栽培をしている農民に対するヘルスケアですとか、食糧供給、インフラ整備などの支援を積極的に進めていく必要があるのではないかというふうに思います。  これが効果的な国際貢献につながっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  73. 高村正彦

    高村国務大臣 全く同感でありまして、薬物対策の有効な手段一つとして、麻薬に頼らないで済む生活の確保、これが重要なんだと思います。このために我が国は、薬物対策の一環として、食糧増産援助等による代替作物の栽培への支援、草の根無償資金協力等による麻薬中毒者のリハビリや職業訓練への支援、初等教育への支援等を行っているわけでありますが、引き続きこうした支援を積極的に行っていきたいと思います。
  74. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 実際にアジアの子供たちが麻薬を売買しなければ生きていけないというような状況は本当に痛ましい状況で、今大臣がおっしゃいましたように、彼らの職業習得に結びつくような効果的な援助をまた推進していっていただきたいと思います。  これは国内の話になりますけれども、薬物汚染というのは本当に日本でも深刻でありまして、最近調査したところによりますと、今の中学生というのが、以前は覚せい剤等を注射器で打っていたのですけれども、今は実際に、アルミホイルをお皿にしまして、その中に覚せい剤を入れるのですね。それで、火で熱して気化させる。ですから、注射器の跡が残らない。また、一人でやる必要はないわけですね。みんなで部屋に集まってそういった覚せい剤を気化したものをかぐというような、犯罪の悪化傾向にありまして、今例えば携帯電話が普及していますし、ポケベルも普及しているわけです。そういったネットワークを使って日本の子供たちも薬物汚染に染まっている、そういった現状があるということもぜひかんがみて、積極的に取り組んでいっていただきたいと思います。  このような我が国の現状、第三次覚せい剤乱用期に突入してしまったという原因の一つに、末端の密売組織に在日の外国人が参入したことがあると一つ言えると思うのですが、これには捜査の国際協力の方が重要になってくると思います。  ことし、テヘランで外務省がイランと領事当局間の協議を行った際に、覚せい剤対策担当者をイランへ派遣したいという警察庁の希望を伝えたところ、イランも理解を示したというふうに聞いていますが、その件について詳しく説明していただけますか。
  75. 上田秀明

    ○上田政府委員 国内におきます薬物の蔓延に日本に滞在している外国人がかかわっているという点が指摘されているところでございます。  実は、今委員御指摘のイランとの関係でございますが、高村大臣が当時ニューヨークの麻薬特別総会に出席されました際に、イラン側とも協議されまして、その際に、その後行われる領事当局間の協議でも話させようというようなことを指摘していただきまして、その後、担当の者が協議を行いました。  そのフォローアップとして警察当局、取り締まり当局が話し合いを進めるということまでを承知いたしておりますが、今後の具体的日程については、ちょっと今手元に資料がございませんが、フォローアップを続けていくということになっております。
  76. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 以上で麻薬に関しての質問は終わらせていただきたいと思うのですが、いずれにしましても、薬物を不法に栽培しない、そしてそれを使わないという大原則に基づいて、もうじき国連麻薬乱用撲滅の十年も終わりに近づくわけですから、日本としても、何としても効果を上げていくように努力していただきたいというふうに思います。  続きまして、北朝鮮の問題に関して質問させていただきたいのです。  八月三十一日に北朝鮮ミサイル発射したことに関して、現在我が国でも、専守防衛をするために独自の情報を持つ必要があり、偵察衛星を持つべきだとの議論がなされているわけなんですが、私は、この問題は時間をかけてじっくりと慎重に議論をしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。  外務大臣は、日本が独自の情報を得るということと偵察衛星について、いかがお考えになっているのか、まずお伺いします。
  77. 高村正彦

    高村国務大臣 情報衛星は有力な情報収集手段一つでありまして、情報収集機能強化が極めて重要である中、我が国政府としても、これに関心を有してきているわけであります。  外務省では、従来から情報衛星に関する調査を実施してきておりますが、先般の北朝鮮によるミサイル発射を踏まえて、今後いかなる方策をとることが可能か、内閣を中心に検討しているところであります。
  78. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 報道によりますと、北朝鮮動向を注視していた米軍は、八月に入りまして、偵察衛星で、北朝鮮東部沿岸の大浦洞に発射台が準備される模様をとらえています。そして、ミサイル本体の燃料を注入している作業の模様もつかみ、八月十日には、弾道ミサイル観測用の電子偵察機を二機、三沢基地に派遣したというふうに言われています。また韓国も、八月の初めには同様の情報を持っていたとされ、日本政府は在日そして在韓の米軍から八月の中旬には、発射可能との情報を得て警戒を強めていたことを明らかにしています。  ですから、いわば発射は寝耳に水ではなかったわけです。この情報を得てから北朝鮮に警告をしていたにもかかわらず、実際には三十一日に北朝鮮発射をしましたが、実際に情報を得るという点では、発射態勢に入ったことなどをアメリカの方からほぼリアルタイムで伝えられていたわけですよね。その上で、独自の情報を持たなければいけない、独自の情報を持つ必要性イコール米側の情報への不安があるのではないかというふうに言うこともできると思うのですが、その点についてはいかがですか。
  79. 高村正彦

    高村国務大臣 日本アメリカと同盟国でありますし、アメリカがきちっと情報を提供してくれることについては信頼をしております。信頼をしておりますが、それでもなおかつ、我が国独自の情報というのは、これから国際社会、いろいろな複雑になる中で必要なものだ、こういうふうに考えております。
  80. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 同盟国であるアメリカの情報を信頼されているとただいま外務大臣はおっしゃいましたけれども、それでは、例えば現在アメリカ但は、北朝鮮発射したものが人工衛星の失敗であったというような情報を実際に流しているわけです。それに対して、日本弾道ミサイルではないかというような見解があると思うのですが、その判断はどのようになりますか。
  81. 高村正彦

    高村国務大臣 私が答えるべきことなのかどうかよくわかりませんけれども、先日、参議院の外交・防衛委員会でたまたま防衛庁長官が答弁しておりました。その言葉をおかりすれば、防衛庁とすれば、米側の情報、そして独自の情報、そういったものを総合して、衛星という確率は低いと思うけれども、アメリカ側がそういうことを言っている以上、詳細な情報を知った上でさらに判断していきたい、こういう趣旨のことを、若干違うかもしれませんが、そういう趣旨のことを言っていた、私なりの記憶ではそういうことでございます。
  82. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 実際に情報を得て何をするのかというところが問題だと思いますし、そこが決まらないと、偵察衛星を持つ持たないという議論は始まらないのじゃないかというふうに私は思っております。  例えば、今のようにアメリカ側の情報とそして日本が独自で得た情報が違った場合、どのように判断をして対処をしていくのか、どういうふうに分析をしていくのか。あるいは、情報万能主義ではないわけですから、独自の情報があれば一安心ということにはなりませんし、独自に入手した情報を防衛のためにどう使っていくかということを考えますと、今度は、日本独自で反撃システムを持つのかあるいは持たないのか、それとも、日米安保に基づいてアメリカに反撃をするように強く訴えていくのかどうか、そこまで覚悟を決めて議論をしなければ、偵察衛星を持つ持たないという議論は始まらないのじゃないかというふうに私は思うのですが、外務大臣はどのようにお考えですか。
  83. 高村正彦

    高村国務大臣 当然、今委員が言ったようなことも含めて、幅広い観点から検討していくことになると考えております。
  84. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 また、先ほど藤田議員が御質問されていらっしゃいましたけれども、八月の中旬に日本側からあるチャンネルを通じましてミサイル発射を思いとどまるようにと警告した際に、例えば、本当に人工衛星であれば不必要な誤解を招く必要はないわけですから、ミサイルではないのだ、人工衛星を打ち上げるだけだという説明をしているのが普通なんですけれども、それをあえてせずに三十一日に発射をして、日本にこのような不安を与えてしまった、不信を与えてしまったという事実をどのように分析していくのかというところが非常に日本にとっては必要なのじゃないだろうか。先ほど大臣の御答弁の中では、見通すのは非常に難しいという趣旨の御答弁だったというふうに思うのですけれども、今非常に経済的にも追い詰められている北朝鮮外交というのは、融和ではなくて戦って勝つことが外交姿勢になっているのじゃないかというふうにも思うのですね。  そういった北朝鮮という国が、たとえどんな国であろうとも、日本のすぐ近くにあるという事実は曲げられないわけで、その北朝鮮北東アジアという枠組みの中でつき合っていく以上、戦いを外交戦術としている北朝鮮を上回る戦略的な外交をしていかなければいけない日本が、北朝鮮のこれまでの動きを分析する必要性は非常に高いというふうに思います。今の時点で分析が難しいのであれば、今後引き続きその分析をされていくおつもりかどうか、お伺いします。
  85. 高村正彦

    高村国務大臣 私が申し上げたのは、具体的意図を断定することはできない、相手が考えることだからと。ただし、北朝鮮ミサイル発射したことによって、その結果、国際社会対応を誤れば、北朝鮮がこういう点で利益を得てしまう可能性があるとか、ああいう点で利益を得てしまう可能性がある、そういう分析はできるわけでありますから、そういうことは当面の戦術的なこととしてすべて阻止していくように動かなければいけない。  それからもう一つ委員が御指摘のように、幾ら変わった国であってもそばにいることは間違いないわけでありますから、中長期的には、第二次大戦後の不正常な関係を正す、そしてそれが朝鮮半島の平和と安定に資する、そういった状況になるように、日本とすれば粘り強く対応していく、それは当然のことだと思っております。
  86. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 時間がありませんので、最後の質問になってしまうわけなんですけれども、対北朝鮮に関して、外交戦術の一つで、KEDOの問題をどうしていくのかというのが今後大きな問題になってくると思うわけなんです。私は、このKEDO北朝鮮の核開発を中止させるという大義の上に立っている以上、KEDOへの拠出金は日本は分担するべきだ、早く凍結を解除するべきではないかと思っているわけなんです。ただし、かといって、外交はギブ・アンド・テークなわけですから、北朝鮮から何か日本が得るものがなければいけないわけで、それには北東アジアの安心を得なければいけない。  以前にも委員会で北東アジアの非核構想ということは言わせていただいているのですが、毎回、現実的ではないというお答えはいただいているのですけれども、例えば、北朝鮮と韓国は実際にNPTで核兵器非保有国として加盟済みでありますし、九一年十二月には朝鮮半島非核化共同宣言をしているわけです。もちろん日本は核を所有していないわけですから、例えば、この状態で北東アジアの平和を考えて非核構想を構築していくのであれば、実際に北朝鮮と韓国の核の相互査察を、今なされていないわけですから、これをするようにという条件をつけてKEDOに拠出金を提出するという考え方が一つできると思うのですけれども、この提案についてはいかがでしょうか。
  87. 高村正彦

    高村国務大臣 そういう条件をつけてKEDO署名をするということ、そういう条件ができればいいかもしれませんけれども、そういう条件ができるまで待つということは、KEDO署名が何年も先になるということになりかねないという面もあるということは御理解いただきたい。  委員が御指摘になったように、KEDOの話は、単に北朝鮮を支援するというだけの話ではなくて、日本安全保障そのものの話でもあるわけでありますから、当面進行を見合わせるといっても、そのほかの当面ということと、その当面の意味が若干違ってくるということはあり得ることだと思っています。
  88. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 以上で質問を終わります。  ありがとうございました。
  89. 森山眞弓

    ○森山委員長代理 次に、東祥三君。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣、本日、防衛局長もお呼びいたしているのですけれども、できるだけ外務委員会に関連したといいますか、外交に関連した北朝鮮弾道ミサイル発射について、前回、前々回に引き続いて質問させていただきたいと思います。  九月十四日、アメリカ国務省は、北朝鮮による弾道ミサイル発射について、ミサイル発射とみなしていた米国見解を修正して、衛星打ち上げとする見解を公表いたしました。この点に関して質問させていただきますが、我が国政府は、これまで、北朝鮮の主張する衛星の打ち上げについて、その可能性は極めて低いとしてまいりました。今回の国務省の見解はある意味でそれに反するものであると思われるんですが、一方、米国はその根拠を明らかにしておりません。  そういう状況の中で、我が国政府としては、このような見解についてどのようなスタンスに立つのか。世間一般では、日本として明確にある意味で言えない、アメリカがAと言えばA、Bと言えばB、そういうふうになっているんではないのか、こういうふうにも言われているわけですが、その意味でも、今回の新たなる米国見解を踏まえた上で、日本政府としてこの問題についてどのようなスタンスに立つのかということについてお伺いしたいと思います。
  91. 高村正彦

    高村国務大臣 私は、政策を先に決めて、それに合うように事実認定するというのは基本的に間違っている、こう思いますので、単純に、まず事実を確定するということが必要だ、こう思います。  そして、今まで防衛庁が、米軍の情報も含めて独自の情報と合わせて、そして、衛星打ち上げを意図した可能性は低い、こう言ってきて、まだその見解が維持されていると思っております。  ただ、アメリカは相当の、我が国以上の情報を全体として持っている、こう思っておりますので、そういう中で、その結論部分だけこういうふうな発表があった。そういう中で、防衛庁とすれば、米軍にその詳細をただすべく、人を派遣したのかな、派遣するのか、時期的にちょっとわかりませんが、そういうことを防衛庁長官が言っていたことを承知しております。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、日本として独自の見解というか、それを今の時点でもってまだ打ち出すことができない、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
  93. 高村正彦

    高村国務大臣 現時点ではミサイル発射ということを変えていない、ただ、さらに検討する必要がある、こういうことだと思います。
  94. 東祥三

    ○東(祥)委員 では、それを踏まえた上で、こちらも、私も独自の情報システムを持っていませんので、政府の情報に基づいて議論を進めていかなくちゃいけませんので、あくまでも弾道ミサイル発射という点を前提にして質問を進めさせていただきたいと思います。  政府は、北朝鮮による弾道ミサイル発射は国際法に違反する可能性が強いとしてきた。北朝鮮による弾道ミサイル発射が仮に米国の修正された見解に基づく衛星打ち上げであった場合、北朝鮮による弾道ミサイル発射というのは国際法に違反するというこれまでの政府見解影響を与えることになるのかどうなのか、この点についてはいかがでしょうか。
  95. 高村正彦

    高村国務大臣 詳細は専門家である条約局長に言わせますが、日本政府の今までの見解は、国際法に違反する可能性が強いという言い方では必ずしもなかったのではないか。国際法上問題がある、こういうような言い方ではなかったか。私の記憶ではそうなんですが。
  96. 東郷和彦

    東郷政府委員 お答え申し上げます。  国連での言葉をかりますれば、ロケット推進物体が今回発射されたわけでございますが、まず一つの法的な視点としまして、その関連物体がどこに落ちたのかという問題がございます。これは物体の上に何が載っていたのかということとかかわりなく、公海の上に落ちたわけでございまして、この点につきましては、累次申し上げておりますように、公海の自由という観点から、他国の利益に妥当な考慮を払っていないという視点があるわけでございます。  それから、この物体が大気圏の中を飛行しているということに関連しましては、これまでも国会で御説明しておりますように、民間航空の安全という観点からシカゴ条約上問題があるということも申し上げてきているわけでございます。  以上の点につきましては、その物体の上に何が載っていたかとかかわりなく適用されることでございますので、これまで申し上げている法的な視点は変化がないというふうに考えております。
  97. 東祥三

    ○東(祥)委員 弾道ミサイルであろうが衛星であろうが、国際法上の観点からすれば、弾道ミサイル衛星に変わったとしても、スタンスが変わるわけではない、こういうことだと思うんですが、高村大臣が最初におっしゃいました、国際法上問題があるというのは、私が言っている国際法に違反するあるいは違反する可能性が強い、こういうふうに思っているから、国際法上問題がある、こういうふうになっているんじゃないですか。そうでない国際法上問題があるというのはどういう意味なんでしょうか。
  98. 高村正彦

    高村国務大臣 はっきり違反と断定できなくとも、法の趣旨からいって当然守るべきものがある、そういう場合に、法律上問題があるという言い方は一般的になされていると思います。
  99. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、先ほど同僚議員から質問されているKEDOに関してでございますが、アメリカ北朝鮮の高官間協議で北朝鮮の核開発凍結合意が再確認されれば、我が国の当面進行を見合わせているKEDO事業の再開について検討を迫られる事態が予期されるのではないのか。今回の米国務省による衛星打ち上げの結論も、ある意味でその前ぶれではないのかといううがった見方もできなくはない、このように思うわけでございます。  政府KEDO事業の再開についてどのような条件が満たされれば応じようと考えているのか。これはもう既に何度となく別の角度から質問させていただいてきたことと関連するわけでございますが、あくまでも、日米間における今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射についての温度差といいますか、これが存在する。そういう意味からしますと、日本にとって、また韓国にとっても同じような安全保障上の脅威をもたらしていることは間違いないわけでございますけれども、このKEDOにかかわる交渉、直接日本が入っていないわけですから、あくまでもアメリカ北朝鮮の交渉に依存せざるを得ない。  そのときに、アメリカにとってみれば、九四年のあの枠組み合意がなされたとき、その原点に戻って、北朝鮮が核開発を放棄する、または核疑惑を払拭するということが満たされれば、それはアメリカにとって問題ないだろう。しかし、日本は違うんではないのか。  その前提に、北朝鮮から弾道ミサイル発射されている、それに対して、何ら直接的あるいはまた間接的な形での釈明なり謝罪なり、そういうものは一切伝わってきていない。昨日あるいは一昨日、情報が正しければ、北朝鮮にとってみれば、日本はがたがたがたがたしている、戦争前夜のそういう感じだと。そういう政府ですね、そういう国ですね。  そういうことを踏まえたときに、米朝間、その高官間協議において、この核開発あるいはまた核疑惑、こういうものが払拭されれば、KEDOに対して、日本は当面見合わせているスタンスを変えるということになってしまうのか。その辺のこと、一番機微な問題で、高村大臣の頭を悩ませていることなんだろうと思うのですけれども、いかがですか。
  100. 高村正彦

    高村国務大臣 まさに機微な問題でございまして、これから米韓と協議をするわけでありますが、極めて抽象的な言い方で申しわけないのですが、まさに総合的に状況を判断して決めるということで、前もって、この条件がクリアできればという一点、あるいは一点じゃなくても数点でも、そのことをきっちり申し上げることは困難でもあるし適切でもない、私はそう考えております。
  101. 東祥三

    ○東(祥)委員 今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射は、日本の立場として、また私個人としても、明らかに国際法に反していると。そういう視点から考えると、我が国のみならず北東アジアの平和と安定に深刻な影響を及ぼすものである、そのように私は認識しています。  そうしますと、もし、我が国が米朝合意に引きずられて、北朝鮮からの明確な謝罪と今後このような行為を絶対に犯さないという確約を得ずに、ずるずると資金供与に応ずるならば、主権国家としての体面が問われることになるのではないのか。もう既に主権国家としての体面というのは侵され続けてきたのだから今さらという、そういう考え方もひょっとしてあるかもしれません。僕はその視点には立ちません。少なくとも、主権国家としての体面が問われるという視点に立つならば、北朝鮮からの明確な謝罪と今後このような行為を絶対に犯さないという確約なしには、資金供与に応ずるべきではない、こういうスタンスに僕は立ちます。  政府の明確な考え方、今非常に機微な問題であり、なかなか具体的には言えないということですけれども、その辺のニュアンス、那辺にあるのか、日本政府は。もうこのまま、体面傷つけられてきたんだし、日本の体面なんてない、状況に従っていこう、国民の世論の動きをずっと見ていこう、そういうことなのか。そうではなくて、今申し上げたようなスタンスに近いのか。いかがでしょうか。
  102. 高村正彦

    高村国務大臣 謝罪あるいは再発防止の確約、それが得られればいいなと私も思います。思いますが、それがなければKEDOの進行をすること絶対まかりならないと言って、そしてKEDO枠組みを壊した場合に、北朝鮮が核開発を続ける、それを阻止する手段日本にあるか、そういったことも総合的に考えていかなければいけない問題だと思っています。
  103. 東祥三

    ○東(祥)委員 それはまさにおっしゃるとおりで、そこが問題なんです。条約局長いますから、世界の外交史あるいはまた国際政治の歴史の中で宥和政策をとって成功した例というのは存在するのかどうなのか。これ、ぜひ条約局長、調べておいていただきたいのですけれども。僕の知る限り、宥和政策をとって、そして問題解決できたというのはないんじゃないのか。  一九九三年あるいは一九九四年から、米朝間における協議、ある意味で宥和政策をとろうとしたのですね。そして、核疑惑あるいはまた核開発、これを払拭させるという条件のもとにKEDOというものができ上がった。まあまあ、何とかしょうと、これでいいと。もし北朝鮮との間で戦争状況になってしまえば、何百万という人々の犠牲が強いられると。したがって、中東地域と比べるならば、多くの人々がまさに地上戦で大変な犠牲を強いられるかわからない。アメリカにとってみても、アメリカの国民である兵士を無残に犠牲にさせることはできない、想像ですけれども、こういうものがあり、また日本のよくわからない、国防意識が非常に欠如した国ですから、政府指導者も含めた上でですけれども、そういう視点から考えると、あの米朝枠組み合意というのは、それなりにやむを得ないこととして歴史的に僕は理解することができます。  しかし、今日、ただその延長線上だけで考えているならば、外務大臣の答弁で僕は納得するのかわかりませんけれども、事は、皆さん方もおっしゃっている日本安全保障上新たな脅威を惹起させている弾道ミサイル発射された、それに対して、北朝鮮が何も言っていない。前提として、国交も開かれていない、したがって直接聞きたくても聞けない、また、国交が断絶されていないがゆえに、北朝鮮側にとってみればアメリカと何とかやって、うまくいけば、必ず日本及び韓国はくっついてくる、こういう視点で、まさに彼らの戦術といいますか、それに乗っかった形で動いていってしまっているのではないのか。  そういうことを考えたときに、高村外務大臣がおっしゃられるとおり、KEDOの進行を凍結あるいはまた完全に見直して政策転換を図るということであるならば、対北朝鮮対策の政策そのものが抜本的に変わるわけですから、したがって、九四年の米朝枠組み合意とは違ったスタンスになる。そのときには北朝鮮に対してまさに核開発の根拠を与えることになる。  しかし、私が今申し上げているのは、その前の問題であって、新たな現象として飛び出してきた問題が弾道ミサイル発射だった。それに対して、何ら明確な、今後同じような行為を起こさないんだ、そういう確約なしに、あるいは国際法上極めて違反性が強い、そういう視点を持っている我々に対して何も謝罪もしてこない。そういう状況の中で、果たして、九四年のあの米朝枠組み条約の延長線上で、そのまま資金提供に応じていくことができるのかどうなのか。これがまさに本質的な問題なんだと思うのですが、いかがですか。
  104. 高村正彦

    高村国務大臣 北朝鮮ミサイルを開発、製造、配備するというのは、我が国に大変な脅威であります。一方、核を開発するというのも、我が国にとって大変な脅威であります。それが合わさればもっと大きな脅威になる、こういうことでありますが、こっちの、ミサイル開発の方が、それを阻止するうまい手段、あるいは相手に声明させる、ここがうまくいかないから、こっちの、核開発をせっかく凍結し、最終的にはなくすという手段がそれなりにできているのに、そっちの方を野放しにしちゃうという選択があるのかどうか。そういったことも含めて考えていかなければいけない問題なんだろうと思います。  そういった全体的なことを総合的に判断しながら、我が国我が国の政策を自主的に判断してまいります。
  105. 東祥三

    ○東(祥)委員 要するに、弾道ミサイルに対して反撃するシステムというのは、日本のみならず全世界にないと、防衛庁の方からの御説明もありましたし、またいろいろな情報を通してそういうことなんだろうというふうに思うのです。  そういうことからしますと、弾道ミサイルに対する有効な迎撃システムというのは、まだどこも開発されていない。しかし、今後、何らかの戦争が起こるとするならば、空中戦で飛行機同士が戦うだとかいうことではなくて、ミサイル同士なんでしょう。  問題は、安保委員会においても指摘させていただきましたけれども、日本がそういう状況になることすらある意味で予想されていない、予定されていない。そういう状況になったときに、そういう状況というのは、弾道ミサイルがもし日本に着弾する、それを迎撃するシステムがないわけですから、一発撃ち込まれるとそれを甘受しなければいけない。問題は、もし撃ってきたならばそれに対して日本としてどういう反撃システムをとられようとしているのかということが問われているわけですね。これがまさに抑止なんだろうというふうに僕は思うのです。  しかし、先日の安保委員会においても、それに対しては能力ない、能力ないのみならず、政治指導者の方々が、能力がないということであるならばそれに対してどのような対応をとったらいいのか、態勢をとったらいいのかというそういう議論もされていない。であるとするならば、基本的に日本政府がとるべき道というのは、高村外務大臣が呻吟されているように見えますけれども、基本的にはアメリカにすべてを任せる以外にない。日本の体面なりメンツなり、そういったものほかなぐり捨ててでも、将来の見通しというのははっきりしないけれども、北朝鮮が志向している方向に行かざるを得なくなるということなんじゃないですか。つまり、外交方針というのは全然国民に伝わってこない。言われるがまま、やられるがままになっていってしまうのではないですか。  僕はそうじゃないんじゃないかと言っているのですよ。それは、高村外務大臣の職責とする外交の分野と、それから防衛庁長官が主管されるところの国防というそこにちゃんとした立て分けができていなくて、何が何だかよくわからなくなってしまっている、そこに大きな本質的な日本政府の問題点がある。そういうものを明確にしていないがゆえに、こういう問題が出てきたときに明確なる方針すら打ち出すことができない。そうなんじゃないですか。いかがですか。
  106. 高村正彦

    高村国務大臣 日本防衛政策において専守防衛という形をずっととってきているわけです。それについてまだいろいろ議論があるとは余り聞いておりませんが、それは議論があるところかもしれませんが。そういうことを前提にして、抑止力という意味では、専守防衛でなくて相手基地もたたくよ、場合によっては相手基地以上に、都市をたたかれれば相手の都市もたたくよと言った方が、抑止力だけに着目すればその方があるわけであります。  ただ、そういった意味の抑止力というのは、日米安保条約米軍に頼る以外にない、頼る、そういう政策を今まで我が国としてとってきているわけです。ですから私は、この点の抑止力については、日米安全保障関係の信頼性を高めるということが一番大切なことである、こういうふうに思っております。
  107. 東祥三

    ○東(祥)委員 専守防衛に関して議論の余地といいますか、それを詰めた議論をしていかなければいけないのだと僕は思うのですよ。高村大臣、専守防衛というのは、僕が理解している限りにおいて、相手国から撃ち込まれて何も反撃しないということじゃありませんよ、あくまでも自衛権というのは認められているわけですから。こちらから急迫不正の侵略を受けない前に攻撃はしないというのが専守防衛ではないですか。  問題は、安保委員会においても議論させていただいたとおり、たとえ第一発目を攻撃されたとしても、それに対して反撃できるものがあるのかどうなのか、こういう質問をさせていただいているわけです。それに対しては、F2にしてもF15にしても、現在までのところそういうものを想定していなかったから、基本的に、第一発目の発射が行われた後、いわゆる日本としてやらなければいけないことというのは発射基地をたたくことではないのか。たたくという意思を明確にしていなければ、相手政府は、日本は何をやっても大丈夫だと。今高村大臣がいみじくも言ったとおり、そのときにはアメリカに依存しますと。しかし、アメリカが本当にやってくれるのかどうかということは試されたことがないのですから。日本がやられたときには必ずやるという姿勢、そしてまた体制、そういうものを整えていない国に、本当にアメリカは信頼に基づいて動いてくれると思いますか、高村大臣。僕は、そうは思っていないがゆえに言っているのですよ。  それはただ単に、アメリカ条約上やってくれるというふうに言っていたとしても、その攻撃されている、攻撃される国民それ自体が、あるいは指導者それ自体がそれだけの覚悟をしていないところに、何でアメリカ国民の犠牲を払って日本国を助けようと思いますか。それは、同盟関係でも何でもない、それ以前の問題になって、ただ依存以外の何物でもないですよ。そういうところをアメリカはまず助けてくれないだろう、こういうふうに思うことが、ある意味外交というものの常に持っておかなければいけない視点なんじゃないのか、そこを僕は申し上げたいのです。     〔森山委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 高村正彦

    高村国務大臣 委員が前回防衛庁長官に質問しているのを聞いておりまして、そういうことを言いたいのだろうなと私なりに思っていました。ただ、そこはまさに委員日本政府の政策の違うところでありまして、日本政府とすれば、日本がたたかれた場合に、間違いなくアメリカ日本のために戦ってくれると思っていますし、そしてそういう形を、信頼関係をこれからきっちりつくっていかなければいけない。そしてさらに大切なことは、第三国、日本攻撃する可能性がある国、そういった国が日本攻撃したら必ずアメリカがたたくであろうな、そう思うような日米信頼関係をつくっていかなければいけない、そういうふうに思っております。  そして、委員と私の考えとちょっと違うところは、みずから相手の国に行ってたたかないような、その程度の防衛力しか持たないような国をアメリカは血を流して守らないと言いますが、アメリカにしても、日本が重爆撃機を持ったり航空母艦を持ったり、そういうことを期待していないだろう、私はそういうふうに思っております。
  109. 東祥三

    ○東(祥)委員 僕は、きょうすごくいい話を聞いていると思うのですけれども、日本がもし何か侵略されたときに、米国に何かしてもらいたい、米国に守っていただきたい、それは高村外務大臣のみならず、僕だってそうですよ。だって、日本にないんだもの、能力が。しかし、本当に相手が動いてくれるためにはそれなりの準備をしておかなければだめでしょうということを申し上げているのですよ。高村外務大臣の言われているのは、僕は幻想に近いと。別に、考え方が違うという意味ではなくて、期待感は同じなんですけれども、その期待を具現化させるために主体的に日本政府が行っていかなければいけないことがたくさんある。それがほとんど欠如している。  したがって、今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射に関してもまず、外から見ていても、僕は政府内にいませんから、安全保障会議すら開かれていない。また、高村外務大臣あるいは防衛庁長官、総理という、まさに国民の生命と財産、これが危機的な状況に及ぶ局面に至るかもわからない可能性を秘めている弾道ミサイル発射されたとしても、それに対してどのような対応措置をとったらいいかという指令もなされていない。防衛庁長官は何もしていないじゃないですか。どのような態勢をとったらいいのかということすらないじゃありませんか。防衛出動という、まさに紙に書いたものだけですよ。どのような手続をやったらいいのかということすらまだわからない。  そういうことをアメリカは全部知っているわけですよ。でしょう。そういうことを何も、準備もしょうとしない、体制を整えようとしない、そういう国に対しては本当に、高村外務大臣がもし、アメリカは必ずやってくれる、そのために信頼構築させていかなければいけないということであるならば、どういう信頼構築をつくられていこうとしているのですか。
  110. 高村正彦

    高村国務大臣 そのために新ガイドラインもつくり、そして新ガイドライン実効性を高めるための二法案、一条約、一協定を国会に出して、そして一刻も早く審議をお願いしているところでございます。
  111. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ましたので、また、高村外務大臣が自分のお考えを言ってくださいましたので、とてもおもしろい議論外務委員会で展開できるようになるだろうというふうに思いますので、きょうはこれでやめます。どうもありがとうございました。
  112. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、松本善明君。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に、きょうは周辺事態と国際法の問題をお聞きしようと思うのですが、その前に、やはり今大問題になってきて、きょうも午後本会議で問題になります防衛庁の巨額背任、証拠隠滅容疑事件、これは外務大臣としても、安全保障にかかわる閣僚としてよそごとではないと思いますので、一言見解を聞いておこうと思います。  これは防衛庁長官の陳謝だとか事務次官の辞任で済む問題では決してない。我が党は、防衛庁長官の罷免、国会で特別委員会をつくって徹底的に解明すべきだという態度を表明いたしました。防衛庁の中でも、何を言っても信用されないという声があるとか、自衛隊の現場からも、腐敗のうみを出し切ってほしいというような声が既に報道されております。安全保障というのは、本来国民の生命にかかわる問題なのです。国民の信頼に一点の曇りがあっても成り立たない筋合いのものであります。  久間前防衛庁長官が適正な算定だったとか書類が残っていないなどと言い続けた裏で証拠隠滅が行われていた。額賀長官が就任してからも証拠隠滅がなされていたという容疑が濃厚であります。関係の深い閣僚として、外務大臣、この問題についてはどうお考えになっているか、一言伺いたいと思います。
  114. 高村正彦

    高村国務大臣 私は、この問題についての事実関係も詳細にわかりませんし、所管でもありません。この問題については、防衛庁長官が責任を持って答えるべき問題でありまして、私が事実関係を十分に知らないまま横から何かを言うというのは適当でない、こういうふうに思っています。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、そんな悠長なことを言っていられない、本当に内閣そのものに対する、政治そのものに対する信頼の問題だ、積極的に事実も知って、そして見解も表明をするというのが、外務大臣日本安全保障全体にかかわっているのですから、そういう態度をとるべきではないかというふうに思いますが、別の質問にいたします。それ以上言いましても変わらないと思います。  周辺事態と国際法の問題でお聞きをしますが、我が国外交とか安全保障も、先ほどの防衛庁のような事件がありますと、国際法の厳格な遵守ということが必要だ。そうでなければやはり国民の信頼を得られないと私は思います。  いわゆる周辺事態に際しまして、安保条約に基づいて行動するアメリカ軍に対しまして後方地域支援など各種の支援の対応措置が周辺事態法では決められております。この点について、我が党議員が、アメリカのベトナム侵略とか八三年のグレナダ侵略とか八九年のパナマ侵略など、国連総会で国際法あるいは各国の主権、領土保全等々を甚だしく侵害するという決議が出ているという事実も示しまして、アメリカ軍の行動が国際法に違反する場合、これに協力すべきではないのじゃないかという趣旨の質問をしたのに対して、政府は、米軍の行動が国連憲章に違反するということは想定されないという答弁を一貫して行っております。例えば、一九九七年十一月十八日の参議院予算委員会で、当時の小渕外務大臣、橋本総理大臣などの答弁です。  先ほども、アメリカがAと言えば日本もA、Bと言えばBということではいけないというお話が出ましたけれども、小渕内閣の考えは、米軍の行動が国連憲章に違反するということは想定されないという立場は同じですか。大臣、これは、私はやはり議運でも確認していますが、やはり大臣が主として答えるべきだ。総理大臣や前外務大臣が答えた見解です。外務大臣、いかがお考えですか。
  116. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国アメリカとは日米安全保障条約を結んで同盟国になっている。同盟国になっているということは、それは信頼関係を前提にしているわけで、アメリカ国連憲章五十一条に違反するようなことをやるということは基本的には想定されない、こういうふうに思っています。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 基本的にはというのが含みがあるのかどうかわかりませんが、アメリカは絶対誤りを犯さないのだ、いわばアメリカは悪をなさずという考えだとすれば、もうこれは明白に間違っている、そういうことを日本政府はとるべきでないというふうに思います。  具体的にお聞きしますが、現在の国際法では、国連憲章のもとで国連加盟国に許される武力の行使は、安保理事会の決定による場合か、憲章五十一条の武力攻撃を受けた場合の個別的、集団的自衛権の行使の場合だけであります。  ところが、橋本前首相は、九七年十二月三日、参議院本会議で、武力攻撃以外の形の侵害に対して自衛権の行使を排除する趣旨であるとは解していないと答弁している。さらに、この問題に続いて質問をいたしましたことしの二月二十日の参議院本会議では、武力攻撃に至らないような武力の行使に対して、必要最小限の範囲で武力を行使することは一般国際法上認められるというふうに述べました。これは、要するに、国連憲章五十一条ではっきり明示的に言われております武力攻撃を受けた場合以外に武力行使をすることができるという見解であります。  この見解を小渕内閣は踏襲するのかどうか。もし踏襲するとすれば、これはどういう場合を想定しているのか。後から条約局長その他答えてもいいですけれども、まず外務大臣が、これはどういう場合を想定して橋本総理が答弁をしたのだとお考えになっているか、伺いたいと思います。
  118. 高村正彦

    高村国務大臣 政府は従来より、国連憲章第五十一条は、自衛権の発動が認められるのは武力攻撃が発生した場合である旨規定しているが、武力攻撃に至らない武力の行使に対し、自衛権の行使として必要最小限度範囲内において武力を行使することは一般国際法上認められており、このことを国連憲章が排除しているものではない、こう解してきているわけであります。小渕内閣もこれを踏襲するものでございます。  どういう場合を想定したかどうかということは、余りそういう具体的なことを申し上げるのは必ずしも適切でない、こう思っています。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 答えてもらっていいのですけれども。  大臣が、こういう答弁を総理がやっていれば、やはりどういう場合のことなのだろうかということを大臣として理解して答えられるのは私は当然だと思います。しかし、これはそれ以上言いませんが、条約局長、どうぞ。
  120. 東郷和彦

    東郷政府委員 ただいま大臣の申しましたことに若干補足させていただきます。  先生御指摘のように、国連憲章第五十一条におきましては、確かに「武力攻撃が発生した場合」というふうに規定されております。私どもの解釈といたしましては、ここで「武力攻撃が発生した場合」という表現が用いられておりますのは、特に国連憲章の第五十一条というのが憲章第七章、すなわち「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」という章の中で規定されております関係上、特に武力行使の中でも最も重要な場合である武力攻撃ということについて規定したというふうに解釈しておりまして、これはこれまでも累次御説明申し上げているとおりであります。  したがいまして、この国連憲章の五十一条に基づきまして武力攻撃以外の形の侵害に対する自衛権の行使を排除するという趣旨ではないというふうに考えているわけでございます。  具体的に、それではどういうものがここで言うところの武力攻撃に至らないものかということでございますけれども、大臣申しましたように、これは、武力攻撃というのは最も重要かつ大きな攻撃でありまして、それに至らないものということでございますので、それに至らない、いわばマイナーな武力の行使というものを想定しているということでございます。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 マイナーな武力の行使ということですが、私ども、外務省から事前に説明を聞いた範囲では、一九六〇年四月二十日の日米安全保障条約等特別委員会で、政府委員の高橋さん、条約局長でしたかが、国境での歩哨の撃ち合いのような場合にこれを排除する、これも武力の行使で、自衛権の行使だ、こういう答弁をしていますが、そういうことが想定されているのですか、一言お願いします。
  122. 東郷和彦

    東郷政府委員 そのように理解しております。
  123. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところが、この見解というのは、一九八六年六月二十七日の国際司法裁判所のいわゆるニカラグア事件判決で否定されたのではないか。これは歴史の発展の中でそういう国際法上の立場が鮮明になったのではないかと思います。  この判決は、国連憲章五十一条の自衛権の要件にかかわって次のように言っています。違法行為に対する対応において、みずからがその犠牲者でない国家による武力行使の合法性は、この違法行為が武力攻撃でない場合には認められない。慣習国際法であると国連システムの法であるとを問わず、国家は武力攻撃を構成しない行為に対し集団的な武力対応をとる権利を持たない。こう述べて、個別自衛権であれ、集団自衛権であれ、武力攻撃を受けない限り自衛権を発動する権利はないことを明確にしたと思います。  政府は、この判決を国際的な規範として尊重する考えであるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  124. 東郷和彦

    東郷政府委員 お答え申し上げます。  一九八六年の国際司法裁判所のニカラグア事件に関する判決、これは国際社会における主要機関でありますところの国際司法裁判所、ICJの判決でございますので、これをもちろん厳粛に受けとめてはおります。  ただいま御質問の具体的な点に関してでございますけれども、先生御指摘のように、この判決におきましては、国連憲章第五十一条の文言等を根拠といたしまして、自衛権武力攻撃の場合にのみ行使し得るという指摘があるのは私ども重々承知しております。と同時に、この判決の中に、武力攻撃には該当しないものの、武力の不行使の原則に反する行為が外部からなされた場合には、均衡のとれた対抗措置をとり得るということを認めております。この点を勘案しますと、従来私どもが申し上げていることとこの判決とはあわせ両立し、解釈し得るというふうに考えております。  このICJの判決というのは、最後に念のために申しますが、ある国が他国内のゲリラ等の反政府勢力に対して行う支援等の論点につき法的評価を行ったものでありまして、この具体的内容につきましては、それぞれの論点につき個別の事件の文脈に照らして解釈すべきものであるというふうにも考えております。
  125. 松本善明

    ○松本(善)委員 この裁判は、国際司法裁判所は国連の主要な機関であるし、規程は憲章と一体であります。だから、これはそういう意味では、厳粛に受けとめるというよりは拘束力を持っている。これをそういうものとして扱うべきだと思います。  今条約局長の言った、いわゆる対抗措置の問題ですね。武力攻撃を構成しない行為に対して、いわばマイナーな問題、その問題を指摘していることは知っていますが、同時に、この判決のいわゆる、国家は武力攻撃を構成しない行為に対して集団的な武力対応をとる権利を持たないという根本趣旨を否定することはできないと思うのです。その点は確認できるのではないかと思いますが、どうですか。
  126. 東郷和彦

    東郷政府委員 まず、先生御指摘の拘束力を持って受けとめるべきかという点に関してでございますけれども、ICJの判決というものは、当事国間において、それからかつ当該事件に関してのみ拘束力を有するということで、いわゆる先例拘束の原則は採用されていないというふうに解しております。これは、国際司法裁判所規程第五十九条の規定するところでございます。  それから、第二点の均衡のとれた対抗措置内容ということにかかわる点でございますけれども、先生御案内のように、このICJ判決におきましては、この均衡のとれた対抗措置内容が何であるかということに関しては、非常に注意深い判示をしておりまして、具体的な言及には至っていないということでございまして、私どもとしましては、その均衡のとれた対抗措置の中にいわゆる武力行使というのは含み得る余地は十分あるというふうに考えております。  この点に関しましては、学説上も、ICJ判決は、被害国による均衡のとれた対抗措置に武力の行使が含まれ得る旨強く示唆したものであるというような見解もあるところでございます。
  127. 松本善明

    ○松本(善)委員 拘束力というのは、もちろん当事国の問題であることはもう言うまでもありません。  ただ、そういう判例が積み重なっていくわけですよね。そして、いわゆる対抗措置の問題に関して言っているけれども、その中身については言及していない。そういう点で言えば、やはり武力攻撃に対して初めて集団的な自衛権の行使ができるんだという根本趣旨は否定していないと思います。  これは、場合によっては見解の違いになるかもしれませんが、具体的に聞きたいのですが、この判決に反してアメリカ軍が行動した場合、周辺事態として後方支援などの対応措置日本政府はとるのかどうか。外務大臣、いかがでしょう。
  128. 高村正彦

    高村国務大臣 この判決に反して、こうおつしゃいましたが、この判決というのは、そのときの具体的な事案について判決が下ったので、これから起こることに何も判決が下っているわけではないので、この判決に反してということの意味が私には理解できないところであります。
  129. 松本善明

    ○松本(善)委員 この判決に対してアメリカ政府は、判決の履行を求める国連安保理事会の決議に対して拒否権を行使した。これは認めないという立場なのです。私どもは、国際司法裁判所がこういう判決を下したら、それはやはり、条約局長の言葉では厳粛に受けとめる、その立場から、日本政府は、アメリカ政府の行動その他について批判をするとか、我が国が周辺事態について対応措置をとる場合には、この判決に沿って考えるというようなことが表明されて当然ではないかと思う。外務大臣の答弁でいきますと、やはり最初に言った、アメリカは神のごとく悪をなさずという立場なのですよ。その立場で周辺事態に対処をするというのが日本政府態度なのかということを最後に聞きたいと思います。
  130. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態に当たるかどうか、日本政府が自主的に判断をしてまいります。
  131. 松本善明

    ○松本(善)委員 きょうはもう少し周辺事態について中身を聞こうと思いましたが、時間がありませんので終わりますけれども、こういうことになりますと、周辺事態は、紛争が起こらない場合でもそうだということの政府の答弁がありました。紛争が起こっていないのにアメリカ軍が行動した場合は常に周辺事態として後方支援などの対応措置をとる、国際法上違法であってもアメリカが違法としなければ違法なしということでやる。こういうことになりますと、私は、アジア各国を敵視して、あるいはほかの国も含めてかもしれません、アメリカと一緒になって違法な干渉侵略を行うということになるのです。もう極めて重大なことです。こういうことが国会の承認もなしにやられるというのはとんでもないことだと思います。このことを指摘いたしまして、質問を終わります。
  132. 高村正彦

    高村国務大臣 再三、日本政府が自主的に判断すると申し上げているところでありまして、アメリカが行動したら何も必ずそれに対して後方支援を行うというわけではありません。
  133. 松本善明

    ○松本(善)委員 実質的にはそうだということを申し上げて、終わります。
  134. 中馬弘毅

    中馬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十一分散会