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国務大臣(小渕恵三君) 去る十二日に、ロンドンにおきましてG8の外相が緊急に集まりまして、核不拡散の問題につきまして、またインド、パキスタンの核実験につきまして緊急な
会議を催すことができました。
二つの国が実験を強行いたしまして以来、既に核保有国五カ国いわゆるP5という国がジュネーブに集まりまして外相会談をいたしました。その後、
日本のイニシアチブによりまして、国連におきましてスウェーデンとともに安保理におきましての決議を実行することができました。そうした意味では、国際社会でもこのインド、パキスタンの核実験に対する強い批判、こういうものは行われてきたわけでございますが、引き続いて念を入れてということでロンドンで行い、
日本といたしましてもせっかくの
出席の機会がございましたので、強く
我が国の立場を主張いたしてきたところでございます。
そこで、この会合におきましては、まず、言うまでもありませんが、インド、パキスタンにつきまして、核実験、核兵器開発の中止を強く要求したところでございますが、従前、核の廃絶の問題につきましては、御案内のように五つの国を核保有国としてまずは認めて、それでその他の国は一切認めぬという、すなわちNPT体制というものでやってまいりました。と同時に、もう一つは、核実験はやってはいけないということでCTBTの条約を結んできておるところです。
それからもう一つは、核のいわゆる原料その他の製造あるいは移転等を行ってはいけないという意味でカットオフ条約の交渉を続けて、それを三つの形の中で何とか核を現状固定しつつ、将来においてはその核保有国も核の削減をしていく努力をしていく、そういう考え方で
日本としてやってきたわけでありますが、突如といいますか、あるいはインド、パキスタン、みずからの安全保障上だと、こう主張しておりますが、二十四年ぶりにインドが行い、またパキスタンもこれに呼応してやるというような事態に対して、こうしたいわゆるNPT体制について大きな挑戦ではないか、こういうことで、この機会にいま一度この問題に真剣に取り組むべきだ、こういうことでございましたので、まずは印パの強いこの態勢に対して条約の批准を求めていこうということにいたしたわけでございます。
またしかし、このインド、パキスタンにつきまして、なぜこういうことが起こったかと言われますと、いわゆる両国の緊張というものが存在をしておる、したがって、これに対してどう対処したらいいかという問題も当然議論さるべきところであります。
日本は、実はインドもパキスタンも友好国でございます。特にインドにつきましては、いわゆる東京裁判のときのパル判事の問題や
我が国に対しましてはいろんな意味でいい関係を持っておったわけでございますが、今般核実験を行うというような挙に出られたことに対して非常に残念に思っておるわけでございます。
したがって、この印パの問題について、もし必要があれば、東京に場所をおかししてでもこの二つの国が真剣な話をしていただきたいということを申し上げておったところでございます。
それから、さはさりながら、二つの国がそうした実験をした中には、旧来の五つの国が核を保有しておってなぜ自分たちはだめなんだと、こういう主張があることも事実でございます。そういう意味からいうと、この核保有国に対して核軍縮について積極的に取り組まなきゃならない。そういう意味で、
日本としてもぜひこうした国々に対して積極的な核に対する削減の努力を強く申し上げてまいったわけでございます。
そういった点で、この核軍縮の推進につきましても、特に米ロが多くの核を保有しておると言われておるわけでございますから、両国が積極的に、現在STARTⅡというもので削減計画をいたしておりますが、ロシアの方はまだ批准しておらないということであります。さらに加えれば、次の軍縮についてSTARTⅢもしっかりやってほしいというようなことを、実はプリマコフ
外務大臣とお話しした折にも私
ども申し上げてきたところでございます。
と同時に、CTBT、先ほど申し上げましたこの条約につきましても、G8の中で批准をしておりますのは
日本と英と仏、その他米、ロ、独、伊、加は実は未批准でございますので、そういった点もG8の中で早く批准をしてもらえるようなことをお願いしたわけでございます。
さらに、今度の
会議の非常に意味のありましたことは、G8のメンバーに加えましてアルゼンチン、ブラジル、ウクライナ、南ア、中国、フィリピンに参加を求めました。中国、フィリピンは現地の大使でございましたが、四カ国が参られました。この国々が言われておりますことは、実は戦後核開発につきましてかなり積極的な熱意を持っておった。しかしながら、世界の大きな流れの中でみずからの国の
政策として核開発は行わないという決意をした国でございます。
日本としてはこうした国々と相協力して核軍縮についても努力をすべきではないか、こう思っておったところでございますが、幸いこうした国も
出席をされましたので、こうした国々との話し合いもさせていただいた次第でございます。
さて、
我が国といたしましてはしからばどういうことをということでありますが、今申し上げたようなことをいたしますと同時に、やはりこの両国がNPT締結を目標とした具体的な手順、段取りを検討する必要がある、そのためにG8の中にタスクフォースというものを設けたらどうかと提案をいたしました。幾らか議論がございましたけれ
ども、
我が国の提案についてこれを了承することに相なりました。
加えまして、これは
橋本総理からも本院でもお考えを述べられておるところでございますけれ
ども、世界の有識者に集まっていただきまして核軍縮・不拡散に関する緊急行動
会議というものを我が
日本で行いたい。特に、広島の平和研究所に前の国連事務次長の明石さんもその籍を得ておられるわけでございますので、
我が国としてそうした
会議を実行することによりまして世界に対するアピールを行ってまいりたい。そして、十一月には長崎におきまして軍縮
会議でこの問題を取り上げるというようなことにつきまして主張をいたしてきたところでございます。
いずれにいたしましても、
我が国は世界唯一の被爆国であるという立場でありまして、究極的な核廃絶を目指してこうした
会議を通じまして
我が国の主張をぜひ取り入れていただくよう努力をしていきたいと思っておりますし、来るべき国連総会もございます。あるいは核軍縮国連総会と言われるかもしれませんので、こういった点につきまして
我が国として全力で努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。