○吉川春子君 私は、
日本共産党を代表して、
中央省庁等改革基本法案に対する
反対討論を行います。
本
法案は、
橋本総理が会長を務める
行政改革会議で、二十一
世紀における国家機能のあり方等について、
総理みずからが
議論をリードし、たった十五人のメンバーで、しかも、
国会は人事を含めて何ら関与しないまま
最終報告を出して、それを
法案化したものです。そこには、政財官の癒着構造を抜本的に打ち破り、
行政のゆがみを正す、そして
国民へのサービスを
充実させるという課題は一切盛り込まれておりません。むしろ、
行政改革に事寄せて、
政府、財界が長年望んできた国家への大改造プログラムであり、
国民の求める
行政改革とは相入れないものと言わなければなりません。
以下、
法案に即して、具体的に
反対の
理由を述べます。
反対の第一の
理由は、本
法案が
内閣機能の
強化、なかんずく
内閣総理大臣の
権限の
強化によって、トップダウン的な
政策の
推進を可能にしていることです。
最終報告は、憲法六十六条三項に抵触する閣議の多数決制の採用や、指揮監督に関する
内閣法の
規定の弾力化を打ち出しました。既に
橋本総理は、
国会の同意はおろか閣議決定すらしないで、自衛隊機を海外へ二度派遣しました。これは、
行政権は
内閣にあり、
総理の指揮監督権は閣議決定に基づいて行使するとの憲法、
内閣法を踏みにじったものです。
最終報告が言う
危機管理の対象には、周辺事態も含まれることが私の質問でも明らかになりました。
内閣機能の
強化は、
政府の言う災害などの緊急事態にとどまらず、新ガイドラインに沿った有事に即応できる国家
体制づくりであることは明らかであり、到底認めることはできません。
さらに、財界人をメンバーに加えた
経済財政諮問
会議で、
経済財政政策が一元的に決定されることになれば、財界の要求が今以上に
政府の施策に直接持ち込まれることは火を見るよりも明らかと言わねばなりません。
反対理由の第二は、官から民へとのかけ声で
規制緩和を推し進め、国の果たすべき責務を、一府十二
省庁への
再編を通じて民間にゆだねようとしていることであります。
その典型が、本
法案で
設置されることになっている労働
福祉省であります。現在の雇用失業情勢の深刻さからいっても、その対策は従来の施策の範囲を超えて、解雇規制法の制定、サービス残業の解消など大幅な時短による雇用の拡大、雇用保険の失業給付の弾力化など、思い切った手だてを講じなくてはなりません。
ところが、労働
福祉省の任務からも、その
編成方針からも、労働省
設置法でうたっている労働者の保護、失業対策の文言は消えうせ、これまで国の責務とされていた職業紹介も民間に任せることとされているのです。加えて、
社会保障制度の
構造改革を
推進するとしていることは、保険あって介護なしの介護保険、
医療保険制度、年金制度の全般的改悪など、
社会保障制度の連続切り捨てをねらったものであることは明瞭であります。
また、
経済産業省の
編成方針は、中小
企業の保護またはその団体の支援を行う
行政を縮小することを宣言しています。これは、現行通産省
設置法でうたう中小
企業の振興及び指導、中小
企業庁
設置法に言う中小
企業を育成し、及び
発展させ、かつ、その経営を
向上させるに足る諸条件を確立するとは、まさに百八十度の
転換と言わねばなりません。
さらに、農水省の
編成方針には、食糧自給率の
向上が一言も触れられていないばかりか、大規模農家に農業
政策を絞り込む、いわゆる新農政を
推進することとしています。農業に対する国の
財政支出を削減し、新
政策を進めることは、家族経営
中心の
日本農業を崩壊させ、ひいては食糧自給率を引き下げることになるのです。
反対理由の第三は、この
法案が、
行政を
企画立案機能と
実施機能に分離し、
実施部門を
独立行政法人として独立させ、ここに
企業会計原則と達成度チェックのシステムを導入して、
国民生活にかかわる公共の
分野を徹底的に切り捨てる仕組みづくりを目指していることです。
独立行政法人は、国立病院・療養所を初め、国立試験研究機関、国立
大学など、公務員全体の七五%にも及ぶ
実施部門を対象とするものであります。また、対象になっている基礎研究や公共的、長期的視野に立った研究などは、どれをとっても求められている評価を三年から五年で出せるような単純なものではありません。しかも、国立
大学まで
独立行政法人の対象にするなど、国の
責任を放棄し、公務員の身分と雇用に大きな不安を引き起こすものです。
さらに、
法案は、郵政
事業を七年後に公社化するなど、民営化にレールを敷くものであります。これは
国民サービスの大幅な切り下げにつながるものであり、認めることはできません。
反対理由の第四は、以上述べたように、国が
国民に対して当然果たさなければならない責務は縮小しながら、一方でゼネコン本位の浪費型
公共事業の構造を温存し、一層
推進する
体制として、建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁を合体させて
巨大官庁を出現させていることであります。本
法案提出の動機が、
最終報告で言う五百兆円とも言われる膨大な
財政赤字に象徴されるような負の遺産にあるというのであれば、その原因をつくり出した巨大プロジェクトをこそ見直すべきではありませんか。
ところが、
政府は、昨年暮れに供用を開始した東京湾横断道路に並行して東京湾口にもう一本橋をかけることを初め、六本もの海峡横断道路建設計画を五全総として閣議決定をしたのです。東京湾横断道路が巨大な赤字を今後生んでいくことは、予想を大幅に下回る交通量からも明らかですが、こうしたむだと一層の
財政破綻を招く巨大プロジェクトの
推進こそが
国民の厳しい批判にさらされているのです。その構造にメスを入れないで国土交通省とすることは、
公共事業の七割を占める巨大利権官庁の出現にほかなりません。
政府は、
行政改革会議の
最終報告が発表された昨年十二月四日、声明を発表し、「
行政改革の
分野だけでなく、それをいわば突破口として、戦後の
我が国の
社会・
経済システムの全面的
転換を図っていかねばなりません。」と述べています。しかし、これまで述べたとおり、本
法案を突破口として、
我が国の
社会・
経済システムを、議会制民主主義に逆行し、強権的かつ反
国民的方向に
転換させることは、大
企業のみ栄え、
国民には大失業と
福祉切り捨ての二十一
世紀をもたらすもので、断じて容認できません。
我が党は、憲法の理念にのっとり、民主的で公正かつ簡素、効率的な
行政の確立を目指して奮闘する決意を述べ、私の
反対討論を終わります。(
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