○吉田之久君 私は、
民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま
提案されました中央省庁等
改革基本法について
質問いたします。
今、
世界は大きな変動の時代を迎えています。我々は、歴史のうねりの中でともすればその姿を見失いがちになりますが、目を凝らせば
世界の大きな潮流が見えてまいります。すなわち、
世界は工業化から情報化
社会へ、ハードからソフト重視
社会へ、また、二十世紀型の大きな
政府から小さな
政府へ、官主導の
社会から民が復権し力を取り戻す真の民主
社会へと、時代は大きくさま変わりしようとしております。まさに変革の時代と言うべきであります。
このような
世界における歴史的変化の激流の真っただ中にあって、
日本は全く行き詰まりの
状況にあります。
経済は低迷し、失業率も最悪の水準にあります。これは、単に目先の
経済政策、財政政策の破綻としてのみとらえられるものではありません。
戦後、今日まで
日本を支えてきた政治、
経済、
社会のさまざまなシステム、すなわち、民を軽視した官主導、中央集権、そして大規模
公共事業優先の政治、行政の
あり方が完全に壁にぶち当たり、これらの矛盾がここに来て一気に噴き出し、現在の閉塞
状況をつくり出していると思われます。もちろん当面の
経済状況を
回復することが緊急の
課題でありますが、それとともに戦後の
日本の、さらに言えば明治以来の
日本を形づくってきたさまざまなシステムを、これからの新たな
世界、新たな時代に適合するものに大きくつくりかえていくことであります。
しかし、残念ながら、今回
提案のあった中央省庁等
改革基本法は、このような構造的変化に
対応するものとはなっておりません。この法案にある中央省庁の再編は、行政
改革のほんの一部にすぎませんが、今こそ二十一世紀に向けた歴史的な行政
改革が始められる時代に来ているはずです。これまでの
論議を見ても、橋本
内閣の
対応にその気迫が著しく欠如しているように思われます。
そこで、私は、この大
改革を行うために、まず基本戦略を描くべきであると
考えます。具体的には、第一に、行政手続法と情報公開法を制定させ、中央省庁の許認可権限を整理縮小することであります。次に、規制
緩和によって省庁と業界と企業との
関係を
改革し、そして地方分権によって省庁と地方自治体の
関係を
改革するのです。そのプロセスの中で、現在の行政のどこをどう
改革するかを明らかにしなくてはいけないと思います。
先日成立した
改正日銀法も、せっかく攻め込んだものの、基本戦略に欠けたがために、結局予算認可権を存続させ、廃止したのは業務命令権や解任権だけでありました。同様に、行政
改革の基本戦略並びに行政
改革全体の青写真を描くことなしに、単に省庁の看板のかけかえに終始している本
法律案を真の行政
改革と認めることはできないのであります。これこそ、
総理のお名前をかりて失礼でありますが、まさに龍頭蛇尾に終わるであろうと言わざるを得ません。
そこで、まず地方分権についてであります。
今回の行政
改革において最も優先されるべきは中央省庁のスリム化、すなわち、事務の縮小及び効率化です。例えば、行政
改革会議の
報告の中にはキーワードとして、総合性、機動性、透明性、効率性が挙げられております。
地方自治体は
地域住民に対する総合サービス機関であり、既に保健衛生部や環境土木部などは全国の市町村に存在しており、その総合性や機動性の面においては自治体の方がよほど進んでいると言えます。常に住民の身近に存在し、あるときは住民の
協力を得ながら行政サービスを提供している自治体は効率的にならざるを得ません。現在の自治体に非効率的な
部分があるとすれば、それは中央
政府の過剰な関与がもたらしているのであります。自治体に対して積極的に住民のニーズに密着した政策を形成するインセンティブや能力を与え、自治体みずから決定する権限と財源を持つならば、もっと効率的な行政を展開することができます。
中央
政府がすべてを背負い、規制し、
保護する
社会に活力は生まれません。
民主党の掲げる「自由であって、安心できる
社会」の主役は当然に
国民でありますが、それをつくる主役もまた
国民一人一人なのであります。
同様のことが規制
緩和にも言えます。
たとえ中央省庁の官僚がいかに
努力しようとも、複雑さ、変化の速さ、多様さが加速度を増して進展する現在の
我が国社会を行政がコントロールすることは不可能であり、また行政がコントロールできると錯覚していることが
社会の成長を阻むようになってきているのであります。
国民それぞれが縦横にその能力を発揮できる環境を整備するとともに、
社会に弊害をもたらす行為に対しては、事前に明確なルールを設定し、事後にこれをチェックする監督・監視型体制に転換すべきときに来ていると思います。
例えば、ニュージーランドにおける行政
改革によると、各省庁の機能を収益部門と非収益部門に分離し、収益部門はすべて法人化して独立採算の国有企業化し、次に可能な限り民営化しています。
我が国の許認可事項は、行政
改革会議のキーワードである効率性を
実現するには余りにも多過ぎます。全省庁の許認可を合計いたしますと、本
法律案施行前が一万一千三十二、施行後が一万一千六であります。これで許認可権の削減と言えるでありましょうか。
そこで、私は仕事の
内容の効率化、簡素化を図るためには、民間でできることは民間で、地方でできることは地方で行うべきではないかと
考えますが、いかがでありましょうか。
総理にお伺いいたします。
また、許認可権の削減と同時に、定員削減を行わなければ行政
改革は不発に終わってしまいます。
本法案では、国の行政機関の定員を十年間で一割削減するとしています。これは独立行政法人化や新たな公社に移行する人員を除いて、その上で一割を削減するということでありますが、十年間で一割の削減というのはまさに百年河清を待つのたぐいで、甚だ疑問であります。民間でもしこんなにのんびりしたリストラを行うとしたら、笑われ者になります。先般、大手二十一行に
公的資金を投入する際に銀行が
提出したリストラ案も、削減目標こそ一割前後でありますが、期限はすべて今後三年間であります。人員削減について、もっと大胆な決断が必要だと
考えますが、
総理、いかがでありますか。
次に、今回の省庁再編の進め方についてであります。
これまでも述べたように、今回の
改革を素直に
考えれば、地方分権、規制
緩和、
実施部門の分離等により中央省庁のスリム化を
実現した上で、残った事務について行政目的別に大ぐくりすることが自然な流れであると
考えます。しかし、
総理はすべてを同時に
実行した結果、現在の中央省庁の事務をそのまま前提とした中央
政府再編案ができ上がり、当然のことでありますが、新しい省庁の多くがいよいよ巨大な存在となっております。このような結果は、少なくとも議論の途中で
総理もお気づきになっていたとは思いますが、それでもなお一府十二省庁の再編にこだわられたのは何ゆえでありますか、お伺いいたしたいと思います。
次に、
改革の中身でありますが、先ほど申し上げましたように、本
法律案には
改革のメニューはなかなかに盛りだくさんであります。
例えば、政策
評価機能の充実でありますが、これについては、会計検査院の機能
強化や総務庁の行政監察機能の拡充などが
考えられます。さらには、
公共事業における中央省庁の
役割の限定が規定されるべきでありますが、当然にこれは関連法の
改正が必要であります。しかし、この法
改正はいつ用意されるのでありましょうか。
また、
総理は、各省の内部
組織の具体化について中央省庁等
改革推進本部にゆだねると言われておりますが、実質的にはその下に置かれる事務局が法案化作業に当たると思われ、事務局の人事に霞が関の関心が既に集中していることに間違いはありません。もし中央省庁等
改革推進本部を設置するならば、中立公正な
立場から判断のできる第三者機関を設置すべきであり、この点を基本法案に盛り込むべきであると
考えますが、いかがでありましょうか。
総理の御見解をお伺いいたします。
さて、今回の中央省庁再編の発端は一昨年の大蔵省
改革であり、与党三党で金融と財政の分離の
合意がなされて始まったはずであります。さらに、財政政策の破綻、大蔵省の不祥事の続出などから見て、財政と金融の分離の必要性は最重要
課題となっております。にもかかわらず、大蔵省と全く同形態の財務省が存続する
内容になったのは、一体何のための
改革なのか、首をかしげざるを得ません。早急にこの財務省の設置について再検討されるべきであると思いますが、
総理の御答弁をお願いいたします。
次に、総務省についてであります。
この総務省は、他に行き場のない役所を寄せ集めたため、定員三十一万人、年間予算十四兆円の全く奇妙な強大な怪物になってしまいました。
そこで、お伺いいたしますが、今回の省庁再編の原則は行政目的別に再編されたはずであります。しかし、この総務省の行政目的とは一体何なのか、全く
意味不明であります。およそ、地方分権という重要なテーマを扱う役所がこの総務省という巨大な省の一局であってよいとお
考えなのか、伺います。
さらに、この法案によると、総務省の中に
公正取引委員会が含まれております。
公正取引委員会は本来の第三者
監督機関であるべきであり、いわば行政の検察庁であります。この
公正取引委員会がなぜ総務省にあるのか、また、
日本の
公正取引委員会に当たる
アメリカの連邦
公正取引委員会、FTCでは見事なチェック機能を果たしておりますけれども、この
アメリカのFTCをどう
評価するのか、
総理にお伺いいたします。
次に、アウトソーシングの
あり方におけるエージェンシーの問題についてお伺いいたします。
既に、
世界の国々でエージェンシーの導入がかなり実績を上げているようでありますが、先日も在日
英国大使館のデビッド・フィットン氏のお話を聞きましたが、
英国では、例えばパスポートの交付などをエージェンシーに委託し、極めてスムーズに手続が行われ、利用者からも好評で、また手続収入も増大し、既に財政
支援も必要なくなったとのことであります。どこまで
政府が手伝うか、あるいは限りなく民営に近づけるか、初めに衆知を集めて検討し、それぞれのエージェンシーがそれぞれの
試みを行い、逐次
成果を上げているようであります。
エージェンシー化や民営化を積極的に行った
イギリスの事例は特に参考にすべきであると
考えますが、総務庁長官の御見解をお伺いいたします。
次に、
公共事業についてお伺いいたします。
政府・与党は、先般の
総合経済対策において新
社会資本整備に重点を置くといいながら、結局、従来型の
公共事業であるいわゆる箱物優先から脱却できないことを明らかにしました。この行政
改革においても、省庁という箱物が優先され、肝心の中身の
改革が明確ではありません。
国土交通省は定員五万人、年間予算十兆円、補助金三兆三千億円、許認可数二千五百三十二という巨大な省庁になりますが、この批判を回避するために、本
法律案第四十六条には、わざわざ
公共事業の見直しなどがうたわれています。その
考え方は
評価いたしますけれども、中身についてはまことに不明確であります。
公共事業の何を地方へ移譲するのか。例えば、二級河川の管理や指定区間外国道の管理は地方に移譲されるのか、すべてを今後の検討にゆだねるのではなく、具体的な
回答を総務庁長官にお願いいたしたいと思います。
最後に申し上げます。
国民は
総理の博識を知っています。また、答弁の都度、精緻なレトリックを組み立ててお答えになっておることを存じております。しかし、綸言汗のごとき重みや気迫を感ずることは久しくありません。財政
構造改革で各省庁の予算歳出に厳しくキャップをかけたと思ったら、すぐに外して、今度は十六兆円規模の財政出動をするというのでは、
国民は一体この国の財政は逼迫しているのか、あり余っているのか、さっぱりわからないありさまであります。
信なくば立たずと申します。行革についても財政再建についても、
総理みずからが
日本国民に告ぐの気概を持って語ることができないのであるならば、そろそろこの辺で潔く退陣されるべきではないかと申し添えて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣橋本龍太郎君
登壇、
拍手〕