○
菅野久光君 まず冒頭に、昨日、同僚の
岡崎トミ子議員からの質問がありましたけれども、衆議院の
新井将敬議員に対する
逮捕許諾請求が内閣から衆議院に出されたことについて伺います。
時あたかも
冬季長野オリンピックの終盤であります。各選手がそれぞれ
ルールに従ってスピードとわざを競い合っております。私は、
日本選手の活躍、とりわけ
北海道出身選手の活躍に涙の出る思いで応援し、感動しております。
世の中はすべて
ルールが大事であります。しかるに、今回の
新井議員の事件は、疑惑とはいえ、報道によると明らかな
ルール違反、いわゆる
法律違反であると報ぜられています。まことに残念なことであり、また
政治不信が一層高まるのではないかと憂慮をしておりますが、この時点における総理の御感想を伺いたいと存じます。
本論に入ります。
私は、
民友連を代表いたしまして、
総理大臣の
施政方針演説を初めとした政府四演説に対する質問をいたします。
冒頭に申し上げます。総理は、
施政方針演説において、「
我が国の将来像、進むべき方向を示し、それを実現するために政策を実行するのは政治の使命」と述べました。まさに今日の
我が国の最大の
問題点は、政府みずからがこれを全うしていない点、この使命を放棄していることにほかなりません。
二十一世紀を目の前にして
我が国経済は危機的な状況を迎えております。まるで日本全体が深い霧に覆われてしまったかのようであります。なぜ先の見えない不況が続くのか。国民は一時的な小手先の
景気対策では将来に希望が持てないのです。今本当に必要なのは、将来に希望が持てる確固たる信念に基づいた首尾一貫した政策であります。
橋本総理は、
財政構造改革を初めとするいわゆる六大改革を
火だるまになってもやり遂げると言われました。しかし、どれ一つとして首尾一貫しているものはありません。
橋本総理自身が招いた
政策不況が深刻化し、
金融機関の破綻が続出した結果、総理は慌てて
景気対策を言い始めました。総理は
臨機応変に景気の回復を図るとおっしゃいましたが、
臨機応変ではなく
場当たりという言葉の方がぴったりではないでしょうか。与党の中からは、平成十年度本予算案が審議されていないうちから、
補正予算が必要だとの発言が聞こえてきております。これは、まさに政府の
場当たり的対応がもたらした結果であります。
橋本総理にお尋ねしますが、審議前から補正が叫ばれるような前代未聞の事態をもたらした責任をどうお感じになりますか。
民友連は、国民の皆さんが将来にわたって希望が持てるような確固とした信念に基づいた政策を提言していきたいと思っております。
民友連の
景気対策は、目下の不況に対応するだけのものではありません。二十一世紀を迎える日本が年率三%程度の持続可能な
経済成長を達成するため、抜本的な
経済構造改革を行うことを目的としております。
民友連は、これから数年間を
景気対策集中期間と位置づけ、
景気対策と同時に
経済構造改革にも取り組んでまいります。もちろん、将来世代にツケを残さないよう、
景気対策のための減税等の財源は十年程度で償還する特別の国債によるべきであると考えております。
まず、即効性のある政策として三兆円の
所得税の
制度減税を提案します。これまでの
特別減税のように、
定率減税、
定額減税という
場当たり的なものではなく、
最高税率を含む各段階の税率の引き下げと、
現役世代の子育てや
高齢者介護等の
経済的負担緩和のための
扶養控除の大幅な引き上げを実施すべきと考えます。また、
地方分権を推進する観点から、地方自治体の
住民サービスに対する
応益的課税と考えられている住民税に国が勝手に手をつけるようなやり方には反対であり、あくまでも国税である
所得税だけで減税を実施することを提案しております。
国際的に見て明らかに高い
法人課税の
実効税率についても、
主要先進国の税率の水準に合わせ四〇%程度に引き下げるべきであります。同時に、業種や
企業規模等によって公平性を損なうものとなっている
各種引当金などや
租税特別措置等の
課税ベースの見直しを大胆に行っていくべきであると考えます。そのほか、
有価証券取引税の廃止や
ローン利子所得控除制度、
居住用財産の買いかえの際の
譲渡損失の
所得控除制度、
情報化投資減税などを提言します。
これらの政策により、合計六兆円の減税を行って景気を刺激すると同時に、
我が国産業の空洞化を阻止し、
経済構造の改革を行ってまいりたいと考えております。
橋本総理にお尋ねしますが、二兆円の
特別減税が果たして国民の不安感をぬぐうのに十分なものであったとお考えでしょうか。より抜本的、恒久的な税制が必要であるとお考えになりませんか。明確にお答えいただきたいと思います。
公共事業については、従来型の
土木工事のみに偏重することなく、二十一世紀をリードする新しい産業に重点配分すべきです。
民友連は、二十一世紀の
日本経済をリードするであろう
情報通信、
福祉関連、環境・
エネルギー、
住環境整備などの新
社会資本の整備を重視します。
そのためには、従来のような硬直的な
予算配分を徹底的に見直すことが必要です。
建設国債、
赤字国債の区別もなくして、国債の
発行量総額をコントロールすることにより、必要な分野に適切に資金を投入できるようにすべきであります。
ニュービジネスを創造するためには、起業家が
起業家精神を発揮できる
環境整備はもちろん、高
コスト経済構造の改善も重要であります。
民友連は、思い切った
規制緩和により、それらの実現に努力する所存であります。
橋本総理は、これからの
公共事業の
予算配分についてどのようにお考えでしょうか。御所見をお伺いいたします。
昨年は
金融機関の破綻が相次ぎました。
金融システムの安定化は目下の
日本経済の最大の課題の一つです。
アジア諸国への悪影響を防ぐためにも、速やかに有効な対策を講じる必要があります。しかしながら、そのためには
関係当事者の責任を厳正に明確化することが不可欠です。
我が国の
金融行政に欠けていたもの、それは透明な
ルールに基づいた公正な運用であります。三十兆円もの血税を投じるからには、
金融機関と癒着した大蔵省による密室での
裁量行政をきっぱりと断ち切り、すべての国民が納得できるような行政を行うべきであります。
今日の
金融システム不安の根本にあるのは、言うまでもなく
不良債権問題です。
不良債権問題は
バブル経済崩壊による
地価急落と密接に関係しており、したがって
不良債権問題の解決には不動産の
流動化が不可欠です。
民友連は、不動産の
流動化のため、
公的債権回収機関、いわゆる
日本版RTCを活用した
不良債権の
担保不動産の
証券化を提案します。RTCには
公的権限を持たせ、複雑な
権利関係などにより
流動化が困難な不動産をスムーズに
証券化できるようにします。これにより、
我が国金融市場に新たな
証券市場ができるほか、超低
金利政策により行き場を失っている千二百兆円もの
個人金融資産の運用の多様化も期待できるのではないでしょうか。
いわゆる貸し渋り対策も重要であります。政府・与党は、三月
期末決算対策として、
有価証券の
評価方法の変更を認める一方で、土地の再評価により含み益を実現し、
自己資本比率を引き上げることを認めるなど、まさに首尾一貫しないなりふり構わぬ対策をお考えのようですが、果たして効果があるのか疑問です。経済は
市場原理に基づいて動いており、その場限りの恣意的な
ルール変更は国際的な信用を失うばかりか、市場には通用しません。表面的には
自己資本比率が向上しても、市場では決して評価はされないでしょう。むしろ、
我が国金融機関を見る
海外市場の目は一層厳しくなり、
国際市場での競争力はますます低下するでしょう。
橋本総理にお尋ねしますが、こうした子供だまし的な方法で本当に貸し渋りが解決できると信じておられますか。
次に、
金融検査官が収賄で逮捕されるなど、現職の
大蔵省幹部による不祥事、公務員のモラルの崩壊について伺います。
橋本総理はこれに対して、徹底した
内部調査と関係者の厳正な処分を行い、綱紀を正すと述べていますが、私たちはそのような言葉を何度この本会議の場で聞いてきたことでありましょうか。九六年、
厚生省事務次官の
汚職事件では、真に実効の上がる
綱紀粛正の方策を策定すると明言し、本年の一月にも、政府を挙げて
綱紀粛正を徹底し、信頼を回復するように努めたいと述べています。
総理がこれほど意欲を示してきたにもかかわらず、
綱紀粛正の実効を上げ得なかったのはなぜでしょうか。今回逮捕された
大蔵省幹部の一人は昨年七月に
大蔵大臣から処分を受けていますが、
国家公務員法上最も軽い
戒告処分でありました。もう一人は七月以降も接待を受けていたと言われております。再三再四、
綱紀粛正を言わなければならない
橋本総理の率直なお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
松永大蔵大臣は、今回の不祥事への対応策として、
金融検査の予告制の導入などを打ち出されていますが、これでは本末転倒であり、まるでカンニングが多いから試験は
参考書持ち込みにするというようなものではありませんか。予告制によってどのように厳正で実効性のある
検査体制が確立できるのか、お聞かせいただきたいと思います。
また、九五年に
過剰接待で辞職した元
主計局次長の
脱税疑惑について、一たん再調査を明言しておきながら、日を置かず前言を翻したのは納得できません。
主計局次長まで務めた人が税金の基本について知らなかったということが
世間一般に通用するでしょうか。改めて再調査を求めます。この点については総理の御見解もお聞かせください。
総理は、
公務員倫理法の制定を期すと明言されていますが、もはや制定するかどうかではなく、早急にその内容を討論し、今国会の成立を図らなければなりません。
私
たち民友連は、既に衆議院の平和・改革や自由党とともに、
国家公務員の倫理の保持に関する法律案と
政治倫理の確立のための
国会議員の資産等の公開等に関する法律の一部を改正する法律案の大綱を用意しております。二千円以上の接待を含む贈与については
報告義務とし、報告を怠ったり、
虚偽報告をしたときには刑罰を科すこととしているのであります。
国会議員の
資産公開についても、より厳しい規定にして、公務員同様の
罰則規定を新設しているところであります。改めて
公務員倫理法制定に対する
橋本総理の決意をお伺いいたします。
そして、国民が直接行政を監視する方法として
情報公開法制定も急務であります。既に野党は国民の知る権利を保障し、
特殊法人までを
公開対象にした法案を提出しております。それに比べ、政府・与党が検討している法案は、その作成を官僚に任せたため、国民が使用しにくくなるよう工夫が凝らされているようであります。総理、
情報公開制度は
行政改革の重要な柱ではありませんか。官僚に任せるのではなく、政治の
リーダーシップで、与野党の協議による
議員立法でつくり上げるべきであると考えますが、いかがでしょうか。
また、
新井将敬議員の
不正蓄財疑惑、
泉井石油商の
不正献金疑惑など、
政治家の
腐敗疑惑も後を絶ちません。私は刑法に
政治家の
地位利用収賄罪を創設するなどの抜本的な
腐敗防止法整備が必要と考えますが、総理、いかがでしょうか。
その他、
時効期間が五年であるにもかかわらず、
政治資金収支報告書等の
保存期間が三年しかないという
法制度上の不備も大問題であります。謄写の解禁とともに早急に改正すべきと考えますが、いかがでしょうか。
加えて、
証人喚問の映像を解禁する
議院証言法の改正も、衆議院では可決したものの、参議院において与党の抵抗でたなざらしとなっております。このような実態も国民の
政治不信を募らせる大きな要因となっておりますが、総理、いかがお考えでしょうか。
そして、政治の
信頼回復のためには、国民の参政権を保障し、拡大する立場に立った改革を進めていくべきだと考えます。
継続審議となっている
在外邦人の
選挙制度、また、船員の
洋上投票制度、十八歳選挙権の実現は急務であると考えますが、いかがでしょうか。
次に、今
国会最大の課題の一つである行革、そして密接に関連する
地方分権について伺います。
総理は、昨年の
通常国会の
施政方針演説で、「現在の仕組みがかえって
我が国の活力ある発展を妨げていることは明らか」と発言されたことを御記憶でしょうか。この指摘は正鵠を得ていると思います。行政の仕組み、あり方を現在及び将来の
日本社会に適した構造へ転換することが今求められています。
大蔵不祥事で明らかになったような官民の関係は、恐らく近年始まったものではなく、戦後一貫して存在したものです。しかし、それがここに来て露見し、糾弾されるようになったのはなぜか。それは
日本社会が変わったからだと思います。
官民が同一の目標を目指した時代において、官民が協調し、情報交換することは国のためであり、また、
民間企業あるいはそこで働く従業員のためでもありました。だからこそ問題になることは少なかったと思います。しかし、社会は変わりました。
情報収集能力において企業は行政を追い抜きました。また、激しい競争を行っている企業にとって、国の動向よりも消費者あるいは
国際市場の動向の方がより重要となりました。既に国は民間を指導することも育成することも不可能なのです。
このように官と民の関係が変化する中、従来の関係の残滓が現在の汚職として露見しているのです。国と地方の関係においても同様であり、
官官接待という残滓が露見しています。
行政の権能は財源と情報を持つことによって発揮されました。しかし、現在の国に財源はなく、また情報においては
民間企業、個人あるいは自治体に凌駕されています。今後の行政は、財源と情報を持って民間、自治体を指導、育成するのではなく、正義や公平、人権という
基本的価値の守護者あるいは公正な
競争環境を整備する
グラウンドキーパーになることが必要だと思います。この行政の役割の転換に応じて行政の仕組みを改革することが
行政改革であり、また
我が国の活力ある発展を実現するための
必要条件であります。
そこで、総理にお尋ねします。今、私が触れたような行政の根本的なあり方についてはどうお考えでしょうか。現在の行政の役割を前提に、それを
簡素化などするのみで
行政改革がなし遂げられるとお考えでしょうか。
さらに、政府が今国会において提出される
中央省庁等改革基本法について伺います。
私たちはこの法案を行革とは評価していません。仮に行革の中心が政府の
簡素化、
効率化なら、この法案にある
公共事業関連の予算、
財政投融資三十兆円を有する
国土交通省のどこが
簡素化を体現するのでしょうか、自治省、総務庁、郵政省を統合する総務省のどこが
効率化なのでしょうか、お伺いいたします。
また、今回の行革は、政治の
リーダーシップの確立も目的としています。しかしながら、政府の
省庁再編案は
数合わせに終始したため、省庁はより巨大化、肥大化し、大臣は行政をコントロールすることがますます困難になります。三十一万人を擁する総務省、十万人を超える
労働福祉省を一人の大臣が監督して、政治の
リーダーシップを発揮することが可能でしょうか。
我々は、副
大臣制度を導入して、政治がグループで対応することを提唱していますが、総理はこの点についてどうお考えでしょうか。
次に、
中央省庁事務の
実質的削減の柱である
地方分権について伺います。
総理は、
施政方針演説の中で、
地方分権等により国の権限と仕事を絞り込むとしていますが、
地方分権推進委員会の勧告は、国の地方に対する関与の整理が中心であり、実質的な権限の移譲はわずかであります。したがって、この勧告が実施に移されても、
中央省庁の事務が大幅に削減されることはありません。総理は、今後さらなる事務の移管を進めていくつもりはあるのでしょうか。特に、
地方分権推進委員会に対し、
中央省庁事務を削減するという観点から、さらなる勧告を求めていくのでしょうか、お伺いいたします。
次に、外交・
安全保障問題について伺います。
イラクが
大量破壊兵器を保有していることは
国際社会への脅威であり、イラクが直ちに国連の査察を無条件に受け入れ、
大量破壊兵器を廃棄するよう強く求めるものであります。
民友連は、
外交交渉による事態の解決が望ましいと考え、
アナン国連事務総長による調停案の交渉の成果に期待いたします。
アメリカは、イラクに対して
武力行使も辞さないと表明していますが、
安保理決議六百八十七号の
湾岸戦争停戦決議の条件である
国連査察を拒否していることを根拠に、今回の
武力行使が正当化されるのか、疑問が残ります。
軍事行動を実施するには、イラクへの
武力行使を容認する新たな
安保理決議が必要であると考えますが、これについて総理及び
外務大臣のお考えを伺います。
また、
アメリカが新たな
安保理決議なしに
武力行使を決行したとき、
日本政府はどのように対応するのか、伺います。
武力行使を支持するのであれば、日本がどの
程度米軍に協力し、費用を負担するお考えか、あわせて伺います。
次に、
日米防衛協力のための指針についてお尋ねします。
ガイドラインのもとに行われる
周辺事態及び
日本有事における
日米協力の実施の是非につき、シビリアンコントロールを堅持する必要がありますが、
個別事項に関し、国会でどのように審議されるべきだとお考えか、総理及び
外務大臣にお尋ねいたします。
また、昨年の名護市
住民投票と
大田知事の
反対表明で、
海上ヘリポート建設案に関し、地元の十分な理解を得られなかったことが明白になりました。国の
安全保障の問題である普天間の
代替地決定を沖縄県に責任転嫁し、
普天間基地返還計画の進行に関する混乱を招いたのは総理の責任でもあります。
政府は、
海上ヘリポート案のみに固執するのか、総理は今後どのように地元との調整を図っていくのか、御説明願います。
またこの間、政府は沖縄の
経済振興策の実施を見送る考えをちらつかせるなど、沖縄県に不当な圧力をかけてきました。
沖縄振興策は基地の移転問題とは切り離して推進されるべきだと考えますが、その点につき総理のお考えを伺います。
次に、昨年私が
代表質問で取り上げた
アジア歴史資料センターについて再び伺います。
平成七年六月に
有識者会議が
センターの
設立構想について提言しておりますが、いまだに設立の予定が一向に立っておりません。総理御自身、
アジア太平洋地域の平和と安定がますます重要になると指摘されていますが、
センターは一体いつ設立されるのか、伺います。
次に、農業問題について伺います。
米過剰による米価の大暴落を受けて、昨年末、政府は新しい米政策を打ち出しました。しかし、今回の対策は、新食糧法の目的である
主要食糧の需給及び価格の安定を図るためには極めて不十分なものと言わざるを得ません。
政府は、米が大量に流通する市場に
備蓄米を放出し、
在庫処理に奔走しています。しかし、過剰の際には
備蓄米を棚上げし、不足の際には放出するのがあるべき
備蓄制度ではないでしょうか。問題は現在の
備蓄制度にあります。現行の
回転備蓄制度を
棚上げ備蓄に改め、
備蓄米を市場から切り離さない限り、今回の政策も有効に機能するとは思えません。
また、総理は
施政方針の中で、新しい農政の
基本法制定について述べられていますが、昨年末の政府「食料・農業・
農村基本問題調査会」
中間取りまとめでは、
重要部分について
両論併記が多く、その方向性はなお不明確なままであります。
国内農業の位置づけや
食糧自給率の
目標設定、さらには
条件不利地域への直接
所得補償制度の導入などについて、
総理自身はどのようにお考えか、先ほどの
備蓄制度のあり方とあわせてお伺いいたします。
次に、漁業問題について伺います。
一昨年、
日韓両国が
国連海洋法条約を批准したのを契機に、政府は新たな
漁業協定を締結するべく韓国との間で交渉を行ってきましたが、合意に至らず、一月二十三日に協定の
終了通告を行いました。その直後から
韓国漁船は
自主規制海域での操業を公然と開始し、
我が国漁業と
沿岸海域の
水産資源に多大な被害を与えております。
総理、政府は
韓国政府に対して、引き続き
自主規制措置を守ることを強く申し入れるとともに、
監視体制を強化すべきと考えますが、いかがでしょうか。また、
漁具被害、
水産資源の枯渇及び漁場の損壊に対する政府の措置についても伺いたい。
何はともあれ、隣国である韓国との
平和友好を促進するためにも、
国連海洋法条約に基づく新たな
漁業協定の
早期締結を願っているのでありますが、その見通しはどうか、政府の考え方をお伺いいたします。
次に、森林・林業及び
国有林野事業について伺います。
二十一世紀の
地球環境時代を迎え、森林・林業の機能、役割の十全な発揮を求める世論は国際的な高まりを示しています。とりわけ地球環境問題では、京都で開催されたCOP3において森林が
温室効果ガスの吸収源として位置づけられ、
新規植林による吸収量が評価されたこともあり、森林・
林業施策の推進がより強く求められています。このような世界的な流れを見たとき、衰退著しい
我が国の森林・林業の再生は今や
国際的責務であります。
特に、
長期累積債務の解消に向け、対策の
抜本的見直しが求められている
国有林野事業については、さきの
林政審答申において示された
公益的機能重視への転換や、
独立採算制性の
企業特別会計の廃止を確実に行うことが必要であります。そしてそのための
財政的裏づけとして、
一般会計からの
繰り入れ拡大が必要不可欠であります。
我が国の林政の
基本方向と
国有林野事業再建に向けての総理のお考えを伺います。
また、政府・与党は、
国鉄長期債務の処理に関して、JRに
追加負担を強制すべく画策しております。しかしながら、私は次に述べます重大な
問題点が明白であると考えます。
一つは、
民間企業への
追加負担強要は、「財産権は、これを侵してはならない。」とする憲法第二十九条第一項に反するものであると思います。二つ目には、
追加負担は、政府が責任を持って定めた
負担枠組みを根本から覆すものにほかならず、また民営化イコール自立した
経営基盤の確立という
国鉄改革の本来の趣旨に反するものであります。三つ目には、株主の存在、意向を全く無視したものにほかなりません。そして四つ目には、JR株については
海外投資家の所有株もあり、日本の証券・
金融システム全体の信用にかかわる問題となることが明らかであります。
よって、
国鉄長期債務に関するJRの
追加負担は、到底国民、利用者及び世界の投資家の理解を得ることができるものではありません。総理、これらの
問題点に明確な御認識をお示しいただきたいと思います。
また、
地球温暖化防止京都会議は、多くの市民の支援によって国際的な
温暖化物質削減の枠組みを決定しました。日本は、議長国として世界の模範となるような
温暖化物質削減対策を行うべきであります。
具体的には、新
エネルギーの積極的な導入のための
財政措置の
大幅拡大や
買い取り価格の上乗せ、ライフスタイルを見直すための
環境教育の強化などの
政策的措置を至急行うべきであります。あわせて、
温暖化物質の削減を国や各自治体、企業などが真剣に行っているかをチェックするために、
温暖化物質排出量や
削減計画の公開を義務づけ、国民全体で監視する
システムが必要であると考えますが、いかがでしょうか。
また、
オゾン層破壊物質であり、強力な
温暖化物質であるフロンについては、民主党が昨年末に
オゾン層保護法改正案としてその回収を義務づける法案を衆議院に提出いたしましたが、法律上フロンの回収を義務づけなければフロンの回収は進まないと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。
さきの
施政方針演説の中で総理は、子供たちが直面する問題に対して、家庭、学校、地域、さらにはマスメディアなども含めた幅広い観点から議論していかなければならないと述べられました。
最近のバタフライナイフによる殺傷事件を初め、陰湿ないじめ問題、薬物の乱用、援助交際に見られる性の乱れ等々、今子供たちが直面する深刻な問題の背景には、まず何にも増して家庭における教育力の低下が挙げられると考えます。
依然として改まらない家庭における父親不在に始まり、核家族化や女性の社会進出の拡大などにより、親子のつながりは希薄になるばかりであります。そんな中、親たちは善悪の判断力も未熟なうちから、子供たちにファミコンやホラービデオなどを買い与え、これでよしとし、子供たちは日々仮想の世界に浸り、いつしか現実世界と仮想世界の区別がつかなくなっていきます。
そんなふうに育った子供たちも、学校で受験ストレスにさらされ、教師の顔色をうかがいながら、よい子を演じ続けなければなりません。そして最後のよりどころとなるべき家族も、子供たちへ寄せる関心は偏差値のみといった息苦しいだけの状況の中、抑圧されていたものがあるとき一気に爆発します。そして命の大切さを理解していたなら決してできないような行為を平気で行い、世間を驚かせます。
そこで、総理にお伺いします。今回の教育改革の中で、家庭における教育力をどのように回復させようとお考えなのか、単なる精神論ではなく、具体的な政策をお聞かせください。また、地域教育、学校教育の充実にしても、少子・高齢化社会、教員数削減の現状の中でどう具体的に実行していかれるのか、明確にお示しください。
次に、労働基準法改正についてお尋ねいたします。
少子・高齢化、就労形態の多様化が進む中で、男女にかかわらず、家庭生活と仕事を両立し、安心して働くための新しい働き方の
ルールの確立が求められています。政府は、年間労働時間千八百時間という目標を掲げ、完全週休二日制の普及、年次有給休暇の完全消化、所定労働時間の削減に取り組んでいますが、週四十時間労働制を実施していない事業所がまだ二〇%以上もあることに象徴されているように、目標達成にはほど遠いのが実態であります。時間外労働、休日労働、深夜労働に関する男女共通の法的上限規制が必要であると考えます。政府は、使用者に労働時間の制限を遵守させるためにどのような方策を講じるのか、総理にお尋ねいたします。
また、政府改正案による裁量労働制の対象者拡大と変形労働時間制の要件緩和は、労働者の健康や家庭生活に深刻な影響を与えることが懸念されます。職場の実態を踏まえ、労働者の労働条件、権利をどのように擁護していくのか、総理にお尋ねいたします。
次に、男女共同参画についてお尋ねします。
昨年七月に発表された男女共同参画二〇〇〇年プランに関する報告書の中で、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大が重要であるとの指摘がありますが、国の審議会の女性委員の割合は目標の二〇%に達しておりません。政府は女性委員をふやす努力をしているのか、女性の専門家が少ない分野について、女性専門家の育成を奨励しているのかどうか、総理にお尋ねします。
また、法務省は組織犯罪対策として、盗聴を合法化する法律案を提出しようとしています。一歩間違えば憲法の基本原則を踏みにじる危険があるわけですから、国民の十分な理解と同意が不可欠です。総理は、盗聴を合法化することの是非について、国民が検討するのに十分な時間を設ける考えがあるのかどうか、それとも強引に今国会での成立を目指すおつもりなのか、明確な答弁を求めます。
阪神・淡路大震災が発生してから三年の月日が経過しております。しかし、その被災者を支援する施策は一向に講じられず、野党が再三提出した被災者支援法案も、政府・与党の無理解により審議がはかどっておりません。行政が全く警告しなかった大災害が発生し、多くの人々の自助努力を超えた被害が生じたのです。まさに政治の出番ではありませんか。
橋本総理、なぜあなたが率いる自民党や政府はこれらの人々を支援しようとしないのでしょうか。あなたはこの問題についても何もしないおつもりなのか、明確にお聞かせいただきたいと思います。
最後に申し上げたい。総理は
施政方針演説の結びにおいて、「この国と国民の力を信じます。」と声高にお述べになりました。当たり前のことだと思います。余りにも自明のことを殊さらに強調する総理の姿勢には、逆に問題解決の責任を国民に押しつけようとしているとの印象を強めるばかりであります。
問題は、国民が信じるに足る政府であるかという点であることを総理は御存じないのでしょうか。「明日への自信を持つ年」ともおっしゃいましたが、今日の渦巻く不信と不安を払拭できない現実を前に、まさに鼻白む思いであります。
改めて申しますが、
政治倫理、公務員倫理の問題もかけ声ばかりで、与党協議を数カ月続けても法案の方向性すら見えてきません。一体国民に何を信じろとおっしゃりたいのか。また、当初予算が審議入りすらしていない段階で、与党幹部が十年度の
補正予算を明言するありさま。総理は与党の協力体制を強調されておりますが、国民が目の当たりにしているのは、求心力を失った政府・与党の無責任状態、
リーダーシップを失った内閣の実像であります。総理にこのような失態に対する釈明を国民の前に明らかにすることを強く求めます。
総理、今日における経済危機、不況は、昨年四月からの消費税アップ、二兆円
特別減税の打ち切り、さらに九月からの医療費値上げによる九兆円にも上る国民の負担増にあることは明白であります。ちまたでは、経済界、中小企業者、長引く低利子で生活設計に大きな狂いを生じた年金生活者など、怨嗟の声が満ち満ちています。
総理は、
臨機応変に景気の回復を図るとおっしゃっていますが、何をどうしようというのか、その処方せんを具体的に示さないでだれが納得できるでしょうか。その青写真を示せないのであれば、我が日本丸は沈没してしまいます。総理にこれ以上かじ取りを任せるわけにはいきません。
今こそ総理が決断すべきときであることを申し上げて、私の
代表質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕