運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-05-27 第142回国会 参議院 文教・科学委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月二十七日(水曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      萱野  茂君     峰崎 直樹君      松 あきら君     魚住裕一郎君      山下 栄一君     山本  保君  五月二十七日     辞任         補欠選任      峰崎 直樹君     萱野  茂君      魚住裕一郎君     松 あきら君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大島 慶久君     理 事                 北岡 秀二君                 馳   浩君                 小林  元君                 松 あきら君     委 員                 井上  裕君                 世耕 政隆君                 田沢 智治君                 野沢 太三君                 長谷川道郎君                 江本 孟紀君                 萱野  茂君                 山本  保君                日下部禧代子君                 阿部 幸代君                 扇  千景君    国務大臣        文 部 大 臣  町村 信孝君    政府委員        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  工藤 智規君    事務局側        常任委員会専門        員        巻端 俊兒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 大島慶久

    委員長大島慶久君) ただいまから文教・科学委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、山下栄一君が委員辞任され、その補欠として山本保君が選任されました。     —————————————
  3. 大島慶久

    委員長大島慶久君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大島慶久

    委員長大島慶久君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事松あきらさんを指名いたします。     —————————————
  5. 大島慶久

    委員長大島慶久君) 学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小林元

    小林元君 民主党・新緑風会の小林でございます。  学校教育法を今回改正するということであります。戦後初めてではないと思います。何度か改正があるわけでございますが、多分、国立高専を設置するというようなことが一つの大きな改正であったのかなと。それに次ぐといいますか、それを超えるといいますか、大変画期的な改正というふうに思うわけでございます。  戦後、いわゆる六三三四制といいますか、そういう学校制度で来てもう五十年を過ぎたわけでございます。戦前はどちらかといいますと大変立派な教育がされたわけでございますが、結果としては、戦争といいますか、そういう問題を生じた。いわば富国強兵、殖産興国といいますか、世界に負けない国をつくろうという意気込みで世界に冠たる教育国になった。いろんな経緯はございますが、いずれにしましても戦後五十二年。しかし、戦後の日本の繁栄を支えてきたのは教育だということも間違いない評価ではないかというふうに思っております。ただ、ここへ来ていろんな問題が出てきているということを踏まえまして、戦後の学制制度についての評価、御所見等がありましたら大臣からお願いしたいと思います。
  7. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 今、小林委員戦前との対比で戦後の六三三四制の教育制度についてお話を承ったわけでございます。  確かに戦後の制度教育の普及という面では非常にすばらしい成果をおさめてまいりましたし、また、今委員指摘のとおり、日本の戦後の復興から、さらには高度成長、その後の日本の国力の伸展といいましょうか、国家社会の発展には間違いなく日本教育制度成果があった、こう言っても決して過言ではないだろう、こう思っております。  そうしたいい面はあったわけでありますが、他方、逆に幾つかの問題も出てきた。現象的にいえば、さまざまな学校現場をめぐる問題もありますし、あるいは子供たちを見ておりますと、ややもすると、例えば平等ということを余りにも強調し過ぎた結果、子供たちの多様な個性というもの、あるいは多様な能力というものを十分生かし切れる、そういう仕組みになってこなかったんではないのかなというようなことも挙げられると思います。  したがいまして、今教育改革全般の中で、例えば心の教育をもっと充実したものにできないだろうか、あるいは多様な選択肢が可能であるような学校制度にできないだろうかとか、あるいはもっと現場を重視した学校教育地方教育制度というものが確立てきないだろうか、そんなことを中心に今教育改革全体を進めているわけでございますが、特に今回の中高一貫につきましては、多様な選択肢を可能とする学校制度の一環として私どもはこの中高一貫制度を位置づけておるわけでございまして、そうした子供の多様な能力を伸ばすことを可能たらしめるような一つ対応が今回の中高一貫制度である、このように私どもは位置づけているわけでございます。
  8. 小林元

    小林元君 ありがとうございました。  そこで、いわゆる六三三といいますか、その三三のところを今回六六制といいますか、そういうものも導入をしよう、選択肢をふやそうということであります。  これまでは、いわゆる六三制といいますか義務教育義務教育といいますといろいろあるわけでございますけれども、憲法によれば、国民はひとしく教育を受ける権利を有するというところから始まっているんですけれども、どうも義務教育というところだけ強調されるといいますか、そういう言葉だけがイメージとして残ってしまう。ですから、本来、喜んでといいますか、教育を受ける権利があるんだということだと思います。  その教育を受けるいわゆる義務教育の九年間に、一人前の社会人として、日本国民として自立的な生活ができる、そういう教育をする。高校あるいは大学については、みずからの意思でさらなる勉強をしたい、学問をしたいというようなことで自由に選択をして進んでいくということになっていたわけでございます。  しかし、実際問題として、現在の高校進学率は九六%あるいは八%というように、もうほとんど一〇〇%に近い。そういう中で、いわゆる全入制度といいますか、もう試験などやらなくてもいいんじゃないか、自由な選択とは言いながら、ほとんど全員が進むということであれば、いわゆる入学選抜をしなくてもいいんではないかという議論があるわけですが、やはり義務教育とそれ以外といいますか、高校以降の進学につきましては自分意思で選ぶと。ですから、学校サイドも、どういう学生を受け入れてその学校特色に応じた教育をする、それに合っているかどうかというようなことで今まであったと思いますが、高校入試というものは、そういう数がほとんど一〇〇%に近くなったことで形骸化をしていると。  しかし、そうは言っても学校特色がそれぞれありますから、やらざるを得ない。そういう矛盾といいますか、高校入試のあり方というものもいろいろ考えるべきなのかなというふうな考えを持っているんですが、いかがでしょうか。
  9. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 確かに、小林委員指摘のように、九十数%という高い率になってくると、もうこれはほぼ全入じゃないかと。義務教育をいっそ六三三の十二年にしたらどうかとか、いろんな議論が確かにこういう数字になると出てくる実情というのは私もよく理解をしているつもりであります。  ただ、別に義務教育だからということでこじつけるわけでもありませんが、素直な気持ちで考えてみて、やはり十五歳になり、もちろん大部分学生はさらにより高度な教育を受けたいということで高校に進むのでございましょうが、わずかとはいえ、もう十五になったらば自分で働きたいという意思を持って社会に出ていく子供たちもいるわけであります。  そしてまた、特色あるそれぞれの高等学校に進みたいという希望があるというのは、本当はもっと特色があってもいいんだろうと思いますけれども、一応今おる高校にもそれなりに特色がある。そういうところに希望者一定程度集まれば、教育目標に照らしてその学校に合った子供たち選抜するということは必要なことなのではないんだろうかなと、私はこう思っているわけであります。  ただ問題点は、その本人希望とかあるいは学校特色を全く無視して偏差値で、こういう普通科学校があり、工業があったり商業があったり農業があったりしてまた普通科があってとか、しばしばよくいろいろな県で見られるような実情が、ただ単に本人希望とか学校特色を無視した形で偏差値輪切り的入学選抜になっているところが一番の問題点なんだろうと、私はこう思っております。そういう意味で、もっと選抜方法多様化とかあるいは評価の尺度の多元化、ただ単に記憶力のよしあしだけで高校選抜が決まるという今の姿はやっぱりもっともっと変えていっていただきたい、こう思っております。  各都道府県もそれぞれ工夫をしておりまして、例えば推薦入学はほとんどすべての県でやっておりますし、あるいは調査書もいろいろな形で、これも批判もいろいろあるわけですが、かなりその子のよさをできるだけ強調できるような調査書という方向で改善も図られておりますし、あるいは面接とか小論文、作文を課すとかあるいは実技をやるとかいろいろな工夫が行われ、それをやる都道府県の数は今着実にふえてきております。そういう形で、ただ単に一点の差を競い合うような高校入試ではなくして、やはり本当にその学校に合った、そして本人もそこで学びたいという、学校特色本人意思がうまくマッチしたような形で選抜というものが行われるのであれば、私はやはりそういう高校入試の意義はあるのではないかなと。  むしろ、十分ではないにしても、中学から高校に大部分の人が進むわけですが、ただ単にみんなが行くんだから自分もつられて行くという無目的な進学ではなくて、自分がなぜ高校に行くのかということを、十五歳なら十五歳なりの年齢にふさわしくやっぱり考えて、さらに進学するかどうかを決めるという態度をもう少し培ってもらいたいし、そういった意味進路指導ももう少しやってもらいたいなというふうに私は考えているところでございます。
  10. 小林元

    小林元君 結局、これは戦後の教育の悪い点といいますか、平等を必要以上に重んじるといいますか、公平あるいは公正さといいますか、ほかから批判をされないようにというようなことでどうも学力中心の、大臣からもいろいろお話がありまして、多様な選抜方法というのはあるんだろうと思いますが、現実は学校サイドとしては、点数で一点を争うというようなことで、これは合格である、不合格であるというような決め方をしていく。そうすればほかからも指をさされない。公平にやっている、客観的にやっている、独断偏見ではやってはいないと。有識者の方は、むしろ独断偏見をもってやってもいいんではないかと、これは言葉が別な言葉だと思いますが。  例えば論文試験というものをやります。戦前は随分そういう入学試験があったわけでございますが、今は答えがきちんと出るもの、一か二か三か、どれが正しいのかとか、いわゆるマル・バツ、できているかできていないか、イエスかノーかという答えしか選択できないといいますか、論文を書いてそれを先生が評価をするというような試験はほとんどやられなくなってしまった。最近また大学入試では復活はしておりますけれども。  いずれにしても、中等教育あるいは高校においてそういう問題を解決するために、そしてまた生徒の多様な進路希望にこたえるためにということで、答申にも書かれておりますけれども、横の多様化複線化、こういうことをやってきたと。そういう中で、最近でありますけれども単位制高校あるいは総合制高校あるいは専門学科高校というふうなことですが、これはやずれもなかなか数がふえていかないという現状がありますが、これらの現状といいますか、あるいは数がふえないということに何か問題があるのか。  とりあえず今回の問題は別として、文部省としては多様化の道というものについてどういう展望を持っているのか、お聞かせをいただければと思います。
  11. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中等教育段階子供たち能力・適性あるいは興味・関心というものは非常に多様になっている。そうした子供たちがほぼ高校進学している。つまり九七%の進学率になっている。こういう中で、それぞれの学校がそれぞれの一人一人を大事にした教育をどう展開するかということになりますと、個々の学校がそれぞれの子供たち個性、特性を踏まえた多様な対応が必要であるということであるわけでございます。  今回この法案中高一貫校という制度にまで及ぶ内容の改革を御提言させていただいているわけでございますけれども、これまでは現在の小学校中学校高等学校という制度の枠の中で、高等学校段階におきましてもこの多様化対応するという試みをしてきたわけでございます。その一つ総合学科ということで、普通科それから専門学科に並びます第三の学科として、これらを合わせました学科を設ける。これは現在、平成十年度時点で四十五都道府県で百七校ございます。数が多いか少ないかという評価はいろいろあろうかと思いますけれども平成六年度にこの制度がスタートをいたしました。スタートいたしました段階では七県七校という数でございましたので、この数年の間に四十五都道府県に百七校というふうになってまいりましたのは、かなり各都道府県におきましてもそうした趣旨を踏まえた対応に取り組んでいるのではないかと、私どもとしてはこんなふうに思います。  また、学年制というものを取り払った、単位を積み上げていって一定単位を修得した場合には高校卒業資格が得られるという単位制高校につきましては、平成十年度時点で二百三十二校ございます。これは昭和六十二年度に定時制通信制につきまして制度化いたしまして、平成五年度から全日制課程にも拡大されたわけでございますが、現在、そうした経緯を経まして二百三十三校。これもまた多いか少ないかということになるわけでございますけれども、私どもといたしましては、これについても各県それぞれに努力をしているのではないかと。  それ以外にも、学校がお互いに単位を認め合う学校間連携といったものも現在三十二都府県の百三十九校で行われております。  ということで、進捗状況をどう評価するかは別といたしまして、現行制度の枠の中でも、各県におきましてはこうした多様化個性に合った教育の展開、そのためのさまざまな努力をしてきてくれている、こんなふうに私どもは思っております。
  12. 小林元

    小林元君 これからの展望については余りお触れになりませんでしたけれども、今回の新しい一貫校導入のいかんを問わず、地方でもかなり力を入れているというような現況もありますし、やはり多様性というものは今後とも進めていくべきではないかというふうに考えております。  そこで、今回の一貫校、「縦の多様化複線化」、こういうように答申には書いてありますけれども中高一貫制度導入して中等教育多様化を推進してというような考え生徒個性の重視、あるいはそういう創造性を高めるような教育を実現するんだと。これは経緯としては、四六答申と言われる、もう二十七年前の話でしょうか、それ以来、昭和六十年あるいは平成三年と何回かあったわけですが、その都度、選抜制度の低年齢化といいますか、そういうことはなかなか問題ではないかというようなことで文部省は踏み切れなかったわけでございます。今回、そういう問題を乗り越えてやると。先ほど大臣のお言葉にも、選択肢をふやす、選択的な導入というお言葉もありましたが、これについてどのような期待を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  13. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 今回の中高一貫校、これは中学校三年間の子供たち高等学校三年間の子供たちつまり六年間の異年齢生徒たち一つ学校を形成してともに学び合うというところにポイントがあるわけでございます。これまでは、異年齢といいましても、三年、三年ということでありました。そこに倍の集団が加わるわけでございますので、そうした切磋琢磨の面等におきましてもこれが期待されるわけでございます。  それからもう一点は、六年間という長期的な見通しのもとで教育を行う。それから、子供たち一人一人のよさとかあるいは課題とかということも六年間という長いタームをもって見れるという点にメリットがあるわけでございます。  一方、いいことばかりではございませんで、六年間の長いターム、同じ生徒学校生活を送るということは、逆にひずみが出てくる。生徒間でぎくしゃくするというような状態がありました場合には、これがマイナスに働くわけでございますし、またよく言われる中だるみというような課題もあるわけでございます。  したがいまして、三三という道を歩む子供たちと、それから六年間の今言ったメリットを生かした形で学校生活を送ろうとする子供たちと、それぞれに選択的に設置者の方で学校制度を用意して、それぞれのニーズに合った形で学校生活を送る。そのことは、三三の課題を六にすることによって克服するということになるわけでございまして、その面、現在の三三の抱えております課題を解決さすと申しましょうか、克服する、その一歩として期待をしたいと思っております。  要は、都道府県等設置者が、それぞれの生徒保護者たちニーズを踏まえて適切な整備が行われるということが大事なわけでございますけれども、そうした整備が行われました場合には、この中高一貫選択的導入という趣旨は大いに期待できるのではないかと、こんなふうに考えているところでございます。
  14. 小林元

    小林元君 今の話を伺いますと、今回の一貫校導入については、中等教育全体としての改革展望した中で一貫校を選ぶ道もあるというところがなかなか聞こえてこないわけなんですけれども子供保護者、あるいは設置者といいますか地方といいますか、そういう選択肢をふやすというのか。文部省としては、地方分権の時代だから教育のこともできるだけ地方でいろいろ考えて、組み合わせも考えていったらいいんじゃないかと。そういう意味でこの選択肢法律的に決めて、それでバックアップをするというような建前なのか。先ほども横の幅を広げる、今度は縦の幅といいますか、多様化を進めるということについて、あるべき姿といいますか、そういうことはお持ちでないんでしょうか、いかがでしょうか。
  15. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) なかなか今、文部省の方で、あなたの県は人口このくらいなんだから幾つ幾つ一貫校をつくりなさい、あなたのところはこうですよということを、それは一定の前提を置いてやろうと思えばできなくはないかもしれませんが、やはりそれはいささか上意下達的従来型文部行政のまた悪弊という批判もきっと受けるでありましょう。基本的にはまさに設置者、それぞれの地域での教育関係者あるいは生徒あるいは保護者判断ニーズに沿って整備されるべきだろう、私はこう思います。  もちろん、もう全くどっちでもいいですよということではなくて、やっぱり今新しい制度を立ち上げようとするわけで、もちろん今局長が申し上げたような幾つかのメリット、すばらしい点があるわけですから、それを私どもとしてはできるだけバックアップしていくという姿勢で臨んでいることは間違いがございません。  そんなこともありまして、教職員の給与費とか施設整備については国庫負担をやっていきますよとか、あるいはこれは来年度以降の予算措置でありますが、高等学校段階施設整備費についても予算補助をしていきたいとかいう形で、スムーズに立ち上げられるように僕らは応援をしていきたいと思っております。ただ、あらかじめ幾つ幾つという数を申し上げるのはいささか乱暴に過ぎるのかな、こんな感じがしております。  ただ、今たまさか県が独自の判断でやった宮崎県にたった一校あるわけでありますけれども一つということになると余りにもそれは選択肢が限られているし少な過ぎるので、実質的にやっぱり選択可能な範囲に中高一貫校ができてくればいいな、そういうことは期待として持っているところであります。
  16. 小林元

    小林元君 まさにそういうことをお伺いしたいということでございましたので、ありがとうございました。  結局、少ない場合ですね、大臣からお話がありましたように、少数の選ばれた生徒宮崎県の場合ですと四十人でしょうか、しかも全県一校で四十人と。入れた方はまさにエリート教育を受ける、ある意味でですね、というような結果になってしまって、そこへ希望しながら入れなかった方は従来型の高校へ行くというようなことになるわけで、エリート校、いわゆる受験校ではありませんからエリート校という言葉は適当ではないと思いますが、少ないなりにやはり問題はありますし、それから、多くなれば多くなったで、また今度はそういう同種類の高校の中の序列といいますか、そういうものが場合によっては起きないこともない。これは杞憂でありましたらいいわけでございますが。そうなりますと、結局何らかの選抜方法序列といいますか、そういうことは私は望んでいるわけではありませんけれども、そういう問題があるのかなというふうに思っております。  そこで、一貫校、今回はその答申の中では六年制、それから同一設置者併設校というんでしょうか、いわゆる同一設置者中高一貴校、それから三番目の例があったわけでございますが、市町村立中学校と県立の高校といいますか、そういう形のいわば連携校。今回の法改正では、その三番目の類型のものは政省令でできるんだというような説明を聞いておりますけれども、今回この法律改正によって政省令がいろいろ改正されるんだろうと思いますが、それと全く同時にこの三番目の類型もおやりになるというお考えでしょうか。
  17. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私どもといたしましては、今回の法案で盛り込んでございます二つの形、六年間を一貫した中等教育学校という新しい学校種として中高一貫教育を実施するもの、これが一つ。それからもう一つ併設型と称しておりますが、同一設置者中学校高等学校を設ける。これは組織としては別でございますけれども、その間は選抜なしにつなぐという形で中高一貫を実施する。この二つ法律事項でございますので今回の法案に盛り込ませていただいているわけでございます。  ただ、もう一つ都道府県立高等学校市町村立中学校、今ほとんどそういう形で行われているわけでございますけれども、その設置者は変えないままでありましても連携を密にするという形で中高一貫教育を行う。その場合には、第一、第二の型とは違いますけれども、事実上それに倣った形の中高一貫教育、これも考えていいのではないかというふうに考えておりまして、この学校教育法改正等がもし行われた後にスタートいたす段階におきましては、必要な省令改正等を行いまして同時期にスタートできるような、そういう体制を考えたいというふうに考えております。
  18. 小林元

    小林元君 その第三類型の場合、一、二については明確に入試というものは免除といいますかやらないといいますか、そういうことをおっしゃいましたけれども、三についてはそこのところは一体どうなるのか。  これは一貫校ではないですが、提携校でありますけれども、それはまさに同一設置者一貫校に相当すると言ってもよろしいんだと思います。ということになれば、そういう一貫校で入試はしないということができるんではないかと思います。その辺の、いわゆる選抜試験をやるかやらないかというようなことが政省令あるいは法令上読めるような改正になるのかどうか、お伺いしたい。
  19. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 現在、この連携校のあり方については私どもも検討いたしておりますが、現在検討しております内容といたしましては、この連携校都道府県立高等学校市町村立中学校をつなぐわけでございますが、まずカリキュラムの点におきましては、両校が協議をして編成をするという形で継続性、一体性というものを、今回法律でお願いしております中高一貫校に準ずる程度のものとして高めることが必要かと思っております。  それから、事実上の教育のあり方といたしましては、教師の交流でありますとか、あるいは生徒たちの交流ということも望まれるところでございますし、また行事等も同様に一体となって実施するというようなことも望まれるところであるわけでございます。そうした要件等を省令に整理いたしまして、連携校というものを明確にしたいと考えております。  先生ただいまお尋ねの、ではその中と高の間の選抜はどうするかということであるわけでございますけれども、これは我々今検討いたしておりますが、やはり基本的にはこの中学校は現在のルールにのっとりまして設けられております中学校でございます。したがいまして、市町村教育委員会の就学の指定を受けまして通う子供たちであるわけでございます。そこに中高一貫校、今回法律でお願いしております中高一貫校のような、いわゆる中学校段階での入学者の決定、選抜ということが行われないままにその区域にいる子供たちがそこに通うという通常の中学校であるわけでございます。そこと高等学校が結ぶわけでございますので、一体感が大変強まるとはいえ、今回法律で規定いたします中高一貫校とはその点は異なるというところがございます。  そこで、選抜自体はやはり存置する必要があるのではないかと思っておりますが、ただ、一体的な先ほど言いましたような形での運営というものが行われるわけでございますので、何か簡便なそうした選抜の方法でもって中高の接続を考える、こういうことを考えてはどうかな、こんなふうに今考えております。
  20. 小林元

    小林元君 そこのところは制度的にわからないことはないのでありますけれども同一設置者中高連携といいますか、一貫校と一〇〇%差はないというふうに、再三申し上げますけれども思っておりますので、どうぞその点は、例外規定を設けるのかどうかは別としまして、例外じゃなくて、当然そうだというようなことができるように十分御検討いただきたい。  そうでなければ、提携というのは一体何なのかと。ただ形だけ提携提携、そういうものをやっているんだというんですが、実質は何もないと。そういうところが、選抜試験がない、あるいはほとんどやらないといいますか、少なくとも学力試験のような形のものは絶対ないという中でいろいろ提携というものが出てくるんではないか。そうすると、そういうものがありませんと形式的な提携だけに終わってしまうんではないかということを大変危惧しております。  それから、今の問題に関連しまして、選抜について学力試験は行わないというようなことが答申に書いてありまして、面接をする、あるいは抽せんをやる、推薦をやる、調査書で検討するとかいうようなことがあります。それからまた、一貫校から大学へ行くというような問題も、二つの受験というんですか選抜というんですか、そういう問題がいろいろ関係してくるんではないかと思います。  答申の中ではそういうことは言われておりますが、法律あるいは政省令でそういうことがなかなかったえない、保障されないということがあるんではないかと思うんですが、こういうものの歯どめというものは一体どういうふうにしたらできるのかということはいかがでしょうか。
  21. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中高一貫校趣旨を生かした形で運営されるということが大変大切でございまして、その際、受験年齢を低年齢化させない、あるいはこの中高一貫校がいわゆる受験エリート校化しないということは中教審でも再三指摘されているところでございまして、この中高一貫趣旨が生かされるかどうかというところを端的に言えば、そういうところがきちっと守られるかどうかだというふうに思います。  私どもといたしましては、各県の設置者におかれて、学校をつくる設置者が関係者との慎重な審議を経て、保護者生徒たちニーズを踏まえてこれをつくっていくわけでございますので、まずそこでどのような学校をつくるかというときに、中教審から指摘されておりますような、受験エリート校化しない、あるいは受験年齢の低年齢化をもたらさないという形で検討し、つくっていただけるものというふうに考えております。  ただ、さらに国としてそういったものを払拭する何か手だてはないかということで、何らかの省令と申しましょうか法令等の手続はどうかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては私ども、どういう形のものが省令等の段階であるかということは国会の御審議等も踏まえながら検討をしていきたい、こんなふうに思っております。
  22. 小林元

    小林元君 本来であれば、設置者がそういう趣旨を体して学校を設置していく、一貫校をつくっていく、これは理想論だと思います。  これはやはり理想論でありまして、どこの県とは申しませんけれども、例えば過疎のところで有名校をつくりたいというような形で、村おこしじゃありませんけれども、そういうものをつくりたいというような希望があった場合、そういうものは後になって出てきまして、つくるときにはそうじゃないと思うんですが、だんだん運営の中で変わっていくということもあり得るわけでございます。ですから、それは先の先のことで心配し過ぎだというならば大変結構でございますが、世の中そんなにうまくいかないわけでございます。  それで、例えば学校の設置の認可をする、これは文部省にあるんだろうと思いますけれども、いわゆる学校監督権についても当分は文部省になるのかなというふうに考えておりますが、それは間違いないと、あるいは県であってもあれですけれども。いずれにしても、その認可とか監督の中で条件をつけると。ところが法律には何にも書いていない。これは今の行政改革趣旨からいけば、裁量行政というものはこれ以上拡大してはいかぬ、縮小すべきである、なくすべきだと、極論を言えば。ところが、法律にないことを、答申にあったからということで指導する、そしてやめていただくというようなこともやらざるを得なくなるわけでございますけれども、そうであるならば、初めから法律なり政省令に許可の基準とか認可の基準という形ではっきりした方が受けとめる方もすっきりするといいますか、明快ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  23. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この中高一貫校についての基準でございますけれども教育内容、カリキュラムの点につきましては、前半の三年間は中学校の学習指導要領、後半の三年間は高等学校の学習指導要領を準用するということ、あるいはそれぞれの学校で指導に当たる先生につきましては教育職員免許法の免許状をきちっと所持するということが当然である等々、それぞれの基準と申しましょうかルールはあるわけでございます。原則、中学校高等学校に倣いました規制があるわけでございます。  ただ、先生が先ほどからお取り上げになっております中学校のところで、公立の中学校に入る段階でいわゆる入学者の決定、選抜ということが行われるわけでございまして、この点につきましては、現在は私立の学校等におきましては学校設置者の当然の権限という考え方でもって選抜が行われておるわけでございますけれども、公立の中高一貫校の入学者についてどのようにするかという点は何も法令上の明定されたものがございません。  そこで、今おっしゃられたように、例えば学力試験をしないという中教審の答申があるけれども、じゃその答申があるからといって文部省が云々とするのは不明瞭だしあいまいさがあるしというお尋ねだろうと思います。その点につきましては、この中高一貫校趣旨を生かした学校になるかどうかという点は大変大事な点でございますので、この国会の御議論等を踏まえながら、私どもどんな形のものでやり得るのかも含めまして十分に検討したいと、こんなふうに思っております。
  24. 小林元

    小林元君 どうぞその辺は十分に御検討いただきたいというふうに考えております。  それから、今回の一貫校六年間というのを、計画的、継続的にあるいは効果的に教育できる、そういうことでゆとりのある教育ができるというふうに考えているといいますか期待をしているんだろうと思いますけれども、ただ、今の教育課程なり学習指導要領というのは、このことと関係なくとも、もう知識詰め込み型でひどい状態にあると。  先日も指導要領の検討の記事が新聞に出ておりまして、数学とか理科の中で大分削除をするといいますか、あるいは学年を上の方にするというようなことで詰め込みをやめるということを検討されているわけでございますけれども、今回のこの一貫校の設置に関連して、一貫校にふさわしい教育課程なり指導要領というものは、いわゆる普通の一般の中学、一般の高校とは別につくるものなのか、あるいは弾力的なといいますか、弾力的なというのは大変いろいろ問題もあると思いますけれども、そういう運用をしていくのか、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  25. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私どもはこの中高一貫校につきましては、前半の三年間につきましては中学校の学習指導要領、後半の三年間につきましては高等学校の学習指導要領を準用する、これを基本としつつ、六年間を見通した継続的な教育がなされ、そしてこの中高一貫校特色のある教育が展開できる、これも大変大事なことでございますので、基本は中学校学習指導要領、高等学校学習指導要領を準用するということにしながら、例外的に弾力的な運用も一定の範囲で認めていく、そうした形でこの中高一貫校趣旨が生かされるようなカリキュラムが編成できるように、そういうことを今考えております。
  26. 小林元

    小林元君 これはスタートしてからも、いろいろ今のような考え方でとりあえずスタートさせて、そういう中でまた議論があれば、問題が出れば検討するということでも対応はできると思います。  いずれにしましても、この問題に限らず週五日制の問題ですとかいろんな問題の中で、そういう知識詰め込み型をやめるという方向は文部省もお持ちだろうと思いますし、要するにゆとりのある教育というものを推進するんだということは至上命令だと思いますので、どうぞ大胆な指導要領の改訂といいますか、そういう取り組みをいただきたいと思います、  最後の質問でございますけれども、この一貫校に関しては今回受験エリート校化はしないと。これもやはり、しないと言いながらなっていくかもしれないというおそれもあります。そういう担保が得られるかどうかというのは先ほどの問題と全く同じでございます。あす五ヶ瀬の校長先生からいろいろお話を参考人としてお伺いする予定になっておりますけれども受験校化しないという中で五ヶ瀬も頑張っていると思いますけれども、そうはいいましても、勉強もしっかりやっていただくということは中学校高校として、教育の場としては当然なことであります。そうなりますと、やはりこういう一貫校に在学する生徒大学受験で不利にならないといいますか、そういう入学試験といいますか選抜試験の中で不利にならないような方式と。  これは答申の中でも大分ボリュームを割きまして、アメリカでアドミッションオフィスというような形で、何か日本では慶応大学でこういうものが一部やられておるというふうに聞いておりますけれども、いわゆる学力試験オンリーではなくて面接ですとか多種多様な観点から学生選抜していくというようなことを聞いておりますけれども、ぜひこれからも大学入試改革という問題も、やはりこれは高校のひずみが出たのもそういうところにあるわけでございますので、簡潔で結構でございますがお願いします。
  27. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 大学入試改革も先ほどの高校入試改革同様大変重要なテーマだと思っております。それぞれの努力が現実に行われていると思いますが、さらに一層の努力が必要であろうと。その中で、今御指摘のあったアドミッションオフィス、まだまだ日本では例が少ないようでございますが、一つの有力な方法としてそれぞれの大学で大いに検討し実行してもらうと、それもまた多様化一つでいいのではないのかなと。ただ単に点数だけではない選び方というのは大変重要だと私ども考えております。
  28. 小林元

    小林元君 ありがとうございました。
  29. 山本保

    山本保君 公明の山本保です。  私は、短時間でもございますので、余りこれまでこの委員会等で議論されてこなかった観点を中心にしてお伺いしようかなと思っております。触れられたものについても質問をいたしますけれども。  最初に私ちょっと自分考えを述べさせていただきますと、今回の中高一貫学校導入に関しましてもさまざまな観点があると思いますけれども、受験体制、受験期の厳しさがなくなるということが一つメリットである、こういうふうによく言われるわけであります。しかし私は、この点については問題を取り違えているのではないかなと思うわけです。  つまり、学力テストであるとか調査書であるとか、こういういわゆる教育内容とか教育方法の分野で受験が妥当であるかどうかという議論のほかに、それに教育社会的な機能、日本においては非常に子供の数が多く若者が多い中で、これは明治以降同じかもしれませんが、社会の中における熾烈な競争というものを避けるような形で、人生の初期において学歴というようなものによって人生の中の競争というものを緩和する、こういう機能は日本教育制度の持ってきた実際の機能だと思うんです。これがある以上は、学力試験がなくなって調査書になり面接になろうが、教育多様化していく、また教育の機会が多様化していく、内容が多様化していくということがそのまま差別になっていくという体制は決して変わらないんではないかと思うわけですよ。  ですから、こういう観点に立ちますと、私はまず最初にやるべきことは、この中高一貫学校をつくるということの議論は後にしますが、のほかにといいますかその前に、高校以上の学校にもっと一般の方が、社会の中の方が、お年を召した方が入っていけるような体制をつくっていくということが重要ではないかと。これは、労働雇用問題またはこれからの社会構造を考えましても、お年を召した方が高校大学へ行く、大学院へ行く、こういう体制がもっとつくられなくちゃならないんじゃないかというふうに私は思っております。その観点から少しお聞きしたいわけでございます。  中教審の答申を見ますと、人生のいろいろな段階で、高等教育であるとか、高校についても同じだと思いますが、教育を受けられるようにということがたしか載っていると思うわけでございます。それについて最初に、文部省はどういう手を打たれたのかということについてお伺いいたしたい。  一つ具体的にお伺いしますけれども高等学校にいわば十五歳以上のといいますか、中学からそのまま入った子供さんでない方は今どれぐらい日本ではおられるのか、そしてそれは最近どういう傾向にあるのか、この辺についてまずお聞きしたいのでございます。
  30. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中学校を出てどこか他のところに行ってそして高等学校に入った人が何人いるかということにつきましては、大変恐縮なのでございますけれども、そうした資料を詳しいものは持ち合わせておりません。と申しますのは、いわゆる中学浪人と申しましょうか、そういう形での通学年入学等もございますものですから。  私どもといたしましては、職業を持っている者が何人高等学校に学んでいるかという数字はございます。その点で御紹介させていただきたいと思いますが、平成六年度の調査でございますが、抽出で三〇%の者が定職を持っているというデータがございます。そこから計算をいたしますと、これは全日制につきましてはほとんどいないというふうに我々は見ておるわけでございますが、定時制通信制につきまして、合わせまして八万四千名程度の職業を持った生徒高校に学んでいるということでございます。  ただ、これは余りにもトータルの数でございますので、少しイメージを持っていただく意味で具体的に申し上げさせていただきますと、ある高等学校定時制でございますが、全生徒が八百四十五人でございますが、その中で二十歳以上の年齢の人たちが二百六十人いるという例がございます。  それからもう一つの例でございますが、通信制でございますけれども、全生徒二千六百三十二人、このうち二十歳以上の人が千七百十八人いる、こういう形のデータは持ってございます。正確な数字が申し上げられませんが、今のような状況になっているということでございます。
  31. 山本保

    山本保君 高校生全体で大体三百万人ぐらいと言ってよろしいでしょうか。今のお話ですと、そのうちの十万人にもならないということでございます。また、文部省ははっきりそれについての細かい調査もまだしていない。  高等学校というのは本来、でき上がったときから単位制のハイスクールでありまして、社会の中における教育機能というものを行う学校だったはずなのに、そうではなくて、中学校の延長でそのまま学校へ行くのであるからと。だから、わけのわからない、子供に対するような校則があったり、時間になったら門を閉めたり、そんなことをやってきた。別に文部省がやったとは言いませんよ。しかし、そういう学校の全体の流れというものを文部省は容認どころか当然であるというふうにやってきたんじゃないかなという気がするわけです、ちょっと厳しい言い方になりますけれども、一私は、社会人が例えば高校へ入るためにはそれなりのやはり特別枠といいますか、こんなことも答申に出ておりますけれども大学などでは進められているというふうな前提としますが、高等学校ではこれはどの程度進んでおりますか。
  32. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 全国の悉皆で私ども持っておりませんが、そうした特別の制度を設けた県あるいは学校につきましてはさまざまに情報を得ております。社会人の場合には、学力検査で受けてもいい、しかし学力検査を望まない場合には作文と面接でこれを行うというような形での特別選抜、これは幾つかの県で行われているというように承知をいたしております。
  33. 山本保

    山本保君 これは幾つかの県ではやはりおかしいわけでございまして、すべての県の幾つかの高校で行われているというぐらいが当然で、まず教育の機会均等ということから考えましても、県立高校というのは基本的に県の所管になるわけですから、それがない県は全く行けないということではないか。これは機会均等原則に反するんじゃないかというような考えも出てまいりますよ、そういうことになりますと。私は、早急にこの辺は改善をしていただきたいというふうに、これからいろいろ検討をしていただく素材として申し上げたいと思います。  またそれに絡めて、その場合、大学でも同じですけれども、例えば実務経験を単位に認定するというようなことも必要だと思いますし、中途退学者についてもその単位を認定する、たしか平成五年ですか、そんな制度もできていたかなと思いましたけれども、これについては現状はいかがでございましょうか。
  34. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず第一点の、社会人に対しましてそこでの勤務を勤労体験として、これは実務代替制度というふうに呼んでおりますが、そうした形で単位として換算する、こういう制度は現在高等学校制度の中で行われておりまして、どんな形でこの制度を活用するかは個々の高等学校判断でございますけれども制度としては定着をいたしております。  それから、一たん高等学校を中途でやめた人がまた高等学校で学びたいというような場合につきましては、できるだけその編入の手続を簡素化した形で迎え入れるということにつきましても、制度としてこれはどの県も行っているところでございます。平成八年度の場合には、退学した学校と同じ学校にまた再び戻ってきた生徒、これが七百十二人、それから、それ以外の高等学校に再度編入学した生徒、これが七千八十二人。こんなような数字になってございます。
  35. 山本保

    山本保君 中途退学についてはきょうは話をしないでおこうかな思ったんですけれども、今局長の方からもお話がありましたので、それについてもお聞きいたします。  まず、先ほどの実務経験についても、これはもっともっと実際に使えるようにしていただきたいと思います。もう完備していると言われましても、それは制度的にできますよという意味であって、実際にやっているという答えではなかったと思います。これは文部省といいますか、中央のあれとしては各地方でということになるかもしれませんが、こういうものは今までになかった制度であり、しかも実はこれからの社会構造の変化では非常に重要な意味を持つものでございますから、私は文部省はぜひここで先頭に立っていただきたい。  ちょっときょうは演説めいたことになりますが、まさに明治以降、教育社会変革の一つの突破口になろうという教育学の夢が今まで実際にはほとんどできてこなかったわけですけれども、今の社会構造、子供の数が減りお年寄りがふえる、そして雇用体系も変わってくる、この中で学校教育が一果たす役割というのは非常に重要であります。ぜひここでもう一度新たな学校改革というものを考えていただきたいと思います。  そこで、ついでのようですが、今数千人おられると言われましたけれども、中退者というのは資料を見ますと約十一万人以上も今おられると。そのうちで二〇%にも行かない方しか学校には戻っていないではないかと思うんですよ。今言われた数字のパーセントはそういうことですね。  しかし、中退問題というのは重要な問題でありますが、文部省は基本的にはあれは学校選択のミスマッチもしくはその調整にすぎないんだというような私はスタンスじゃないかというふうに思っているんですけれども、この数字ではそうは言えないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  36. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中退につきましては、その中退した理由、それから中退した後どこに進路をとっているのかというような調査もあるわけでございますが、その場合、やはり高等学校になじめなかったという生徒であるわけでございます、その理由はいろいろあるわけでございますけれども。したがいまして、そうした生徒たちの行く光といいますのは、就職をする音あるいは専修学校に行く者等であるわけでございます。  したがいまして、高等学校に再び戻って勉強しようという者の数はこうした数であるわけでございますけれども、中途退学後の状況はそういうことであって、しかし、やはり一度高等学校に入って高等学校で学ぼうと思った生徒たちが十万人前後やめてしまう。そういう生徒たちがやはり高等学校は最後までやり遂げたいということであるという見方をすれば、確かに少ない数かもしれません。ただ、これは生徒個々人の考え方といいましょうか気持ちの問題もあるわけでございますので、国と申しましょうか、行政でこの数だけをふやすふやさないということはなかなか難しいことでございます。  ただ、生徒たちがやはりもう一度高等学校で、他の就職とか専修学校とかそういうことではなくやはり高等学校でもう一回学びたいという気持ちを持った場合には、円滑な形で迎え入れるようなシステムを整備していく、そのためにさらに努力をしていく、このことは大事なことだと、こんなふうに思っております。
  37. 山本保

    山本保君 この問題はきょう詳しく論じる時間がないのですけれども、たしかこの調査も中退後二年後ぐらいの調査だと思います。私の自分の持論で言いましても、一生の間に教育というものを絶えず自分がそれを求めていくという生き方が重要だと思いますので、二年と言わずぜひこういう調査は何年か置きに行われるような形で、それ以後教育の機会にどのようにアクセスされたかということについては、ただ調査するだけじゃだめですが、もちろんそのこと自体がそういう教育のあり方というものを国も積極的に進めているということを示すわけでございますので、ぜひ検討していただければと思います。  ちょっと話を戻しまして、先ほど社会人または一般の方の受け入れということを申し上げましたが、内容でありますとか選抜方法についてのお答えはありました。  しかし、私はそれよりももっと大事なことは、例えば土曜日や日曜日に高等学校やまた大学が開いていない。昼夜開議というのもなかなか国公立ては進んでいないと、こういう現状ですね。実はこのことが、勉強しようと思ってもできないんじゃないかと思うわけでございます。もっと一般の方が学校に出られるような、受けられるようなこういう土日開議でありますとか、一つの例を言えば、例えば女性が子供を産んでからも学校に行きたいとなってくれば保育の設備なども当然高等学校以上には必要になって、特に高等学校などでは必要ではないかと、若いお母さんということも思うわけです。これは一つの例ですけれども、こういう形でもっと一般の方が高校以上に入れるような施策というのが必要ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  38. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先生から御指摘されたとおり、確かに統計的に見ましても、我が国の高等学校の在学者というのは中学校を出まして直ちに高等学校に入学をした生徒が圧倒的な数であるわけでございます。そういうことから、もっと生涯学習の観点から高等学校教育を見直して、それに対応できるようなシステムなり体制を整えるべしという御指摘は御指摘のとおりだというふうに思います。  今御指摘の土日開議の点あるいは保育室を設ける点、これは個々の学校を見ますと、例えば保育室等を用意している高等学校がございます。ただ、詳しく聞きますと、それも通常の高校生ということよりも、高等学校が公開講座を開くときにお母さんたちが来られるということのために設けられた、しかしそれが一般的には使われているということもあると。そういう形で個々の学校対応に任されているのが現状であろうというのは率直に言わざるを得ないと思います。  それからまた、土日の問題につきましても、各高等学校の設置、運営のあり方はそれぞれの高等学校に決めていただくという形でまいっておりました。生涯学習の視点で高等学校を見直すという御指摘をいただきましたので、私どももそういう点ではさらにいろんな研究をしてみたいというふうに思います。
  39. 山本保

    山本保君 この前提となる問題についてまだあるかと思いますが、時間のこともありますので、次に今回の法改正についてお聞きいたします。  最初に、ちょっとこれは予定もしていなかったんですが、どうも頭にこびりついてといいますか、きょうも議論を聞きながら文部省の方も言葉が出にくそうだなと思ったことについてちょっと最初にお聞きしますが、どうしてこんな中等教育学校なんという名前にしたんですか。中等教育学校なんというのは、どの教育学の本を読みましても、まさに十二、三歳から上の子供についての学校教育をいう一般名称でありまして、一部でいわゆる選択肢一つだと言いながら、中等教育すべてを代表するような中等教育学校というような大層な名前をつけられて、しかし今まで見ていてもちっともそんな名前は出てこなくて、中高一貫学校とこう出てくる。この名称はどう考えてもおかしいと思うんですが、いかがですか。
  40. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私ども文部省設置法を初めとして、中学校教育高等学校教育を合わせた、総称した用語として中等教育という言葉がございます。そこで、その学校であるということで中等教育学校という名前にいたしました。  臨時教育審議会の答申等では六年制中等学校という名前が提示されているわけでございます。その際、その六年制中等学校という名称につきましても、いろいろとそのいい点、問題点等検討したわけでございますが、六年制を取りますと中等学校ということになるわけです。そういたしますと、学校教育法の一条の中に小学校があり、高等学校があり、その次に中等学校がある。中等学校が、しかしその中身は中学校高等学校が合わさったものである。高等学校、中等学校と並べて、しかしそれは両方を包摂したものだというようなことでデメリットの面もあると。そういうさまざまな検討をいたしまして中等教育学校というような名称にしたということでございます。
  41. 山本保

    山本保君 苦しい答弁で申しわけないと思いますが、この名称はもう少しお考えになった方がよかったかなと思います。  次に、この中等学校の場合の前期課程は無償にするというふうになっておりますが、これは私はちょっと不思議な気がするわけですよ。  というのは、憲法二十六条、「義務教育は、これを無償とする。」と、その義務教育の前段、この義務教育とは普通教育であると、こう書いてあるわけで、普通教育は無償とすると、こうあったわけです。  文部省は伝統的に、ここで言う義務教育というのは、つまり選択の余地のない地域の学区制が決められた小学校中学校。ですから、教員の選択権も親にもありませんし、教育内容についても個別な教育指導、学習計画を立ててくれという権限もありませんし、まさに強制教育という、コンパルソリー、こういう意味での義務教育だから、よって無償なんですと、こう説明しておったんじゃないかと私は思うんです。  そうした場合、今度の学校はそんな学校ではないんじゃないですか。どうしてこの学校が無償になるのか。私立の中学校は無償でないのに、同じように選択をして選ばれて行くこの中高一貫学校は無償だと。これは憲法解釈を変えられたんですか。
  42. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、現行の制度について御説明させていただきたいと思いますが、先生御案内のとおり、現在は憲法の二十六条によりまして、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と、こういう規定がございます。これを受けまして教育基本法で、「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」、こういうふうにございます。したがいまして、「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育」、これをとらまえまして「授業料は、これを徴収しない。」、これが義務教育無償をうたったものだという解釈であるわけでございます。  今回のいわゆる中高一貫校につきましても、まさに地方公共団体の設置する学校ということでありますから、その前期の部分につきましては義務教育であり、したがってこれを無償とするという形でこの前期課程につきましては無償とする、こういうような運用をするということになるわけでございます。
  43. 山本保

    山本保君 いや、今の説明は全くおかしいですね。そこで言っておる地方公共団体というのは、今までの法律では中学校については市町村が設置をする、こういう形であって、だから今度市町村でない学校を県立てもつくろうということで法改正をわざわざしよう、こう言っておるわけですから、つまり今までの法体系の中で地方公共団体の設置する学校が無償であった、今度つくる学校がだから無償であるということには私はならないと思いますよ。  もちろん私は無償にしてはならないと言っているというよりは、ここでもう一度翻って考えてみまして、私立の中学校、小学校に関しても、憲法は本来普通教育についての無償を言っているというふうに考えるのが私は正しいと思います。このように実際にもう既に人口割で大体の市町村が責任を持って設置しなければならない学校があるのにもかかわらず、それ以外の学校を県が設置する、この県の学校が無償である、こう言っているときに、ただ私立の学校だから無償ではない、これは私は論理が難しくなってくるんじゃないか。  このことについて、だめだというのではありませんが、ここでこういう解釈がされるのであれば、同じような理屈でもって私立の小中学校についてもできるのではないかと私は思います。これを議論しましても時間がかかりますので、その意見を申し上げておきます。  それから、今のこと等も絡むんですが、施設整備費については県へ補助するんだと、先ほどこういう話が出ましたけれども、細かい話で恐縮です。つまり、市町村に既に施設整備費を出しておりながら、その同じ対象の子供についてまた学校をつくるところにまたその補助をするというのは、これは二重に補助する、税金のむだ遣いじゃないかという議論はどうですか。
  44. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 今回の中等教育学校の前期課程につきましては、中学校と同じような制度を適用して、その部分についての整備費については中学校整備費補助と同じような考え方で整備をするというわけでございます。市町村中学校をつくる場合もありましょうし、中高一貫をつくる場合もあります。その場合の前期課程については同様に扱って、国としてはこれについて補助し、負担をするということであるわけでございます。
  45. 山本保

    山本保君 今のも答えではなくて説明ということであると思いますけれども、やはりこれについても、私立の学校などについても同じことが言えるのかなという気もしますので、これも一つ問題点指摘させていただきます。  それから、先ほど出た議論にもちょっと参加させていただきますが、特色ある教育を行うようなさまざまな学校ができるはずであるというふうにこの答申にもあるわけでございますが、先ほど小林先生もおっしゃったことなんです、本当にそうなるのか。この答申の中でも何度も、受験エリート校にならないように、この懸念がある、こういうふうに言っておられるわけですよ。文部省は先ほどの御返事では、いや、それは設置者の責任なんです、基本的には、しかしそうも言っておれないので国はこれから何か省令を検討したいと。いかにものんびりした答えではないかと思うわけですが、本当にこういうエリート校にならない、しない、こういう決意がおありなんでしょうか。
  46. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 今回の中高一貫校の設置の趣旨というのは、繰り返し申し上げておりますように、ゆとりある学校生活の中で六年間の計画的、継続的な教育を展開する、そして生徒個性や才能を伸ばす、そういう教育を行うということにあるわけでございます。したがいまして、今教育上の課題とされておりますいわゆる受験年齢の低年齢化ということをもたらすとするならば、これはその趣旨が全く生かされないということになるわけでございます。  それから、いわゆる受験に偏した準備をする、そういういわゆる受験エリート校ということもまたこれは教育上の大きな課題になっているわけでございます。ですから、そういうことが生ずるということは絶対にあってはならないというふうに私どもは思っております。  どういう形でそれを防ぐかということで、今さまざまな御議論を伺いながら、私どもとして何をどういう形でなすべきか、これを今研究しているということでございます。
  47. 山本保

    山本保君 積極的また素早い検討をお願いしたいと思います。  それに関連しまして、私は福祉の方を長くやってきましたのでその観点から。私も全面的に今回のこの中高一貫学校がいいとは思わないわけでございまして、大変なところに文部省はついに踏み込んだなと思っておりますが、確かに場合によっては、ある子供さんによっては、三年、三年と区切るよりも、もっと社会体験を重視するようなとか、またはその子供さんの個性に応じたものをもっと長期的な、一貫的な展望によって指導していこうということについては、私もそういう子供さんたちがいるということについては同感でございます。  そう考えますと、実は頭のいい方よりはという言い方をしちゃおかしいですが、実は福祉的な対応の必要な方の方がこう言えるのではないかと思うんですよ。例えば、養護学校には中等部、高等部がございます。もちろん障害の種類にもよりますけれども、それからただ単に中学校から差別をしろという、こういうことを言っておるわけではございません。個々の子供さんに応じた対応が必要だということを考えたとき、この中高一貫学校というのは養護学校などにも非常に重要な選択肢として考えられるのではないかと。ただ、今度の法律改正でいきますと、養護学校は除くのではないかという気もしますけれども、この辺についてはいかがでございましょうか。
  48. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 養護学校につきましても私どもいろいろ検討したわけでございますけれども、養護学校につきましては、養護学校という学校の中に小学部、中学部、高等部という形で置かれておりまして、その学部間の連携のもとに継続的な指導というものは実質的に行われていると我々は判断をいたしたわけでございます。  ただ、そうした形で中高を一貫した教育は進められているということでございますので、むしろ課題はその実態であり運用であろうと。そういう目で見ますと、中学部設置校のうち七割にのみ高等部が整備されております。これは従来からいたしますと相当に整備が進められてきたわけでございますけれども、まだなお三割の養護学校は中学部のみでとどまっておりまして、高等部が整備されていないという実情がございます。  ですから、そこのところの整備を積極的に行うという形で、中高の一貫した教育という点では現実に行われておりますので、そういった面に力を入れる、そういう形で施策を推進していこう、こういうような判断をしたわけでございます。
  49. 山本保

    山本保君 今の御返事では、中高一貫学校をつくることの意味すらなくなってくると思いますよ、つまり、そのように現実に進んでいるのであれば何も法整備することはないではないかということであれば、どうしてこちらへつくるのですかと。進んでいる、しかし七割しかないというのであれば、当然こちらも含めていいのではないかと思いますし、私はやはり今回文部省も、いわゆるエリート教育是か非かという立場は別としまして、同じような感覚でとらえられていたんじゃないかと思います。  もっと子供多様性ということを見ていただきますと、確かにもっとじっくり勉強しなければならない、もっとじっくりやっていった方がいい子供さんとかいろいろございます。局長はよく御存じのように、例えば児童自立支援施設に今度学校ができることになりますけれども、児童自立支援施設の子供たち高等学校入試で非常に苦労していることは御存じのとおりでございます。例えばこんなところの学校中高一貫と、もちろんこれだけで独自の学校をつくりますと逆に差別を生みますので、例えば中高一貫学校の分校としてつくっていただくというふうなことなども、これはこの学校の本来の意味からいって非常に重要なのではないかなということを、これも申し上げておきます。  次に、時間のこともございますので文部大臣にちょっとお聞きしたいのでございます。  といいますのは、この問題とは直接かかわらないかとは思いますが、大臣は雑誌で父親の教育参加ということをおっしゃられて、ここに読ませていただきました。私は実はきのう読みましたので、学校教育への参加のことを言っておられるのかなと思って読みましたら、そういうことよりは家庭においてということのようでございます。文部大臣という方が家庭教育に余り口を出されない方がいいと私は思いますけれども、家庭教育のことはさておきまして、大臣の権限でございます学校教育に親が参加できるのかどうか、この辺についてどのようにお考えでございますか。
  50. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 前段の家庭教育の話でございますが、三月末に中教審の中間報告、幼児期からの心の教育の充実という中で、実は家庭教育のことを相当大きく取り上げております。多分行政ベースでこういうものを取り上げたのは初めてかもしれません。  要するに、学校に入ってから以降のことを文部省が見ていればいいということだったのかもしれませんし、また、家庭教育というのは家庭のしつけとか家庭のあり方、これはある意味では大変プライベートな部分だから今まで余り物を言ってこなかったんだろうと思いますが、いろいろな方の御意見を聞いておりますと、やっぱり出だしが非常に大事だという声が大変大きゅうございます。要するに、六歳ぐらいまででかなり基本的な子供に関するいろいろな部分が相当大きな影響を受けている。  したがって、どこまでそれができるかわかりませんし、おのずと制約はあるとは思うのでありますが、その家庭教育あるいは幼児期の教育について、幼稚園とかいう限られた部分ではなくて、むしろ本当におぎゃあと産まれる前の段階からもやはり父親、母親が一緒になっていい子育てをやる、そのことにやっぱり政府としても取り組んでいかなきゃいけないんだろうと私は思っておりまして、この部分は私はむしろ積極的にこれからやっていきたい、こう思っております。  今、厚生省ともいろいろ相談をしておりまして、今回の補正予算の中でも、母子手帳を配付する際に親子手帳を一緒に配付して、そして一緒になって若いお父さん、お母さんへの教育というものも考えていこうと、こういうことで今いろいろ準備を取り進めているところでございます。  そういう中で、父親というのがどうも家庭の中で存在感が薄いし、子供と接する時間が父親は極めて少ないという現状があるものですから、もう少しお父さん、子育てをしっかりやりましょうよという趣旨で父親の教育参加ということを言っております。  なお、学校教育の中で父親というか保護者がどういう形で教育に参加をするのか。これはもとより学校の先生だけに任せていいというものではございません。PTAという形もあるでしょうし、あるいは私の知っている学校では、ある時間を設けてお父さんなりお母さんなりが入れかわり立ちかわり、それぞれ貴重な体験をしている親御さんもいらっしゃるので、そういうのを子供たちに話しに行く。そうすると、へえ、君のお父さんすごいんだねとか、また親に対する見方も変わってきたりとかいうことで、教員免許を持っていなくても最近は教壇に立てるように社会人教育参加ということを文部省も進めているわけで、その社会人の中に当然親が入っていてもいいんだろうと、私はこんなふうに考えております。
  51. 山本保

    山本保君 またこれはじっくり機会をつくってと思っておるんですけれども大臣、今のお答えは、ここにもある、代表的ないいお父さんとございますので、その面でそういうお考えは私もよくわかりますけれども、今ちょっとお聞きしたかったのは大臣としてということでございます。  つまり、今PTAということも言われましたけれども、PTAというのは法律に定められた制度ではございませんで、単なる社会教育団体、任意につくってもつくらなくてもいい団体でございます。学校教育に参加する権限はありません。日本学校教育法を見ましても、親が学校教育に参加することは全く前提とされていないところか、このつくられた経緯からしましても、親は口を出せない制度になっております。  それで、そのことは今度またじっくりやるとしまして、この今回の法律でちょっと私心配な点があるんですよ。というのは、今までですと、市立の小中学校であれば、つまり教員の人事でありますとか学校の管理に関しましては基本的に市町村教育委員会というものが、今おっしゃられるように、まさに地域の方の意見を集約した形で学校を管理する、こういう制度になっておるわけです。  ところが、今度の場合はそれがないわけですよ、当然県立中学になりますので。そうしますとこれは、例えば私立の学校であれば親の評議会というようなものが必ずありまして、まさにお金を出すわけでございますから、その子供についての意見を言うという制度がきちんと制度的にあるわけですよ。ところが、公立の今度の中等教育学校ではそこが抜けるわけなんです。私ここが非常に心配なんですけれども、これは局長さん、いかがでございましょうね。それは危惧にすぎないということでしょうか。
  52. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) その点は現在の中学校あるいは高等学校と基本的には同じであるわけでございます。県立の中高一貫校の場合は県の教育委員会の所管。市町村、まあ町村というのは財政規模からいってどのくらい進むかということはありますが、市は当然あり得るわけでございまして、市が中高一貫校をつくる場合、その場合は市の教育委員会がこれを所管するわけでございます。そういう点では今の小学校中学校と同じように管理の体制というのは整っているわけでございます。ですから、あとはどんな形でこれが運用され機能するかということだろうというふうに思います。
  53. 山本保

    山本保君 高等学校に関しましては、先ほど私何回も言いましたように、もともと子供だけが行く学校ではないという感覚でつくられたものであるにもかかわらず、法律上は全く小中と同じように学生といいますか生徒の参加権限などはございませんので、この辺は大問題だと思います。今後の課題だと思います。  それはおきまして、中学校段階に関しましては、今までの市立小中学校とは大分趣が変わってくる感じがします。それに対して具体的に、やはり私立学校が行っているように、この学校の場合は親にもっと積極的な参加の場を与えないと私はうまくいかないんじゃないかなということを懸念しますので、申し上げました。  まだいろいろございますが、時間のこともあるのでちょっと急ぎまして、これは直接関係ないんですが、大臣、この今回のを読ませていただきましてちょっと気になることがおるんですよ。ここに子供権利条約のことが出てきまして、まさか大臣が読まれてないとは思いませんので、読まれたという前提で申し上げますが、権利条約は私は翻訳のところからも役所でやっておりました。  権利条約で一番大事なことは、親がその子供の養育の第一義的な責任を持つ、そして、子供は親に育てられる権利を持つ、このことが初めて言われたものでありまして、今なぜこんなことを言ったかというと、今の流れからいきまして、もっと親がその子供について責任を持つということが重要なんだということなのでございます。この辺についてちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども、時間もありませんので、またゆっくりお聞きすることにしまして、御指摘だけさせていただきます。  もう一点、今回の法改正大学と専修学校単位互換といいますか認定についてございますが、この制度自体私は評価はいたしますけれども、心配な点がございます。  それは、大学というのは当然、大学教員、教官などにつきましても厳しい制限といいますか基準が設けられておりますし、また大学の運営についても同様だと思います。また、それを大学人が責任を持って行うための学問の自由というものもさらに憲法次元の権利として認められております。  こういう大学単位と専門学校単位を場合によっては一緒にしてよろしいんだと。私はそのこと自体を悪いと言っているんではないんですが、こうなったとき、大学と専修学校の、この場合ですと専攻科ですか、これとの関係というのはどういうふうに考えておられるのか。これについて最後にお聞きしたいんです。
  54. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) ちょっと先に事実関係を申し上げたいと存じます。  大学におきましては、教育内容の充実を図る、と同時に学習者の学習成果を適切に評価する、そういう観点に立ちまして従来から、大学以外の他の教育機関における学習成果について、大学教育上有益と認めるときには、一定の範囲内において大学単位として認めるというふうな扱いをしておるわけでございます。一定の専門学校につきましても平成三年から大学単位として認める、そういう扱いをしておるところでございます。  具体的な単位の認定におきましては、他の教育機関における学習の内容や成績などに基づいて、大学においてその大学における教育上有益と認められると判断した場合、そういう場合に単位を認定するというふうな扱いをとっておるわけでございます。  それで、今回の編入学につきましては、これまで行われてきたそのような専門学校における学習成果大学における評価について、これをより一層進めるという観点から行っておるものでございまして、したがいまして、この編入学によって大学と専門学校との違い、そういったものの垣根がなくなるというふうには考えておらないわけでございます。
  55. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 今局長が申し上げたとおり、確かに全く同じになるということではありません。ただ、専修学校制度もたしか昭和五十一年ごろできてからかなりの変遷を遂げながらかなり充実をしてきたというやっぱり実態の一つの反映だろうなと、こう思っておりますし、やはりそこでもう袋小路で行きどまりというのではなくて、そこからまたさらに希望する人は上に進めるという、そういう選択肢を拡大する、さっき中高一貫もそうだと申し上げましたが、これもそういう意味選択肢の拡大という位置づけで、私は政策的にもこれは望ましいことではないだろうかと。ただ、法律的に見てどうかとおっしゃると、委員がおっしゃるとおり全く同じになるということを意味するものでも必ずしもないのは、先ほど局長が答弁をしたとおりであります。
  56. 山本保

    山本保君 ありがとうございました。
  57. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今回の法改正によりまして、公立校におきましても初めて中高一貫教育導入されるわけでございますが、既に一九七一年の中教審、一九七五年の臨教審において答申されているわけでございます。では、当時これらの答申がありながらなぜ公立校において実現されなかったのか、その点がまず一点。  それから、初めて答申されてから二十七年ぶりに今実行に移されようとしているわけでございますが、その御決断の理由、そしてまたその背景について。これが第二点でございます。  そして、六三三制のバイパスというふうな言葉も私は聞き及んでおりますけれども、六三三制度の見直しにつながるのかどうかということもあわせまして大臣の御見解を伺いたいと存じます。
  58. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 昭和四十六年の答申以来ということでございます。やっぱり一番当時の議論で、今回もまたあるわけでございますが、要するに受験年齢が低年齢化するのではないかという懸念が非常に強くあったわけでございます。当時の提言の中では、今回のように入学者の決定に当たって学力試験を課さないということを明言していないわけであります。今回は明言をいたしました。そこのところで一つ多分ハードルが乗り越えられたのかなと、こう思っております。  それから、当時の社会状況としてはまだまだ十八歳人口がふえている時期でありましたから、むしろそういう新しいものをつくるよりは既存の中学校なり高等学校なりを量、質ともにいかに拡大をするかということに教育関係者の関心が集まっていたものですから、こういう新しい仕組みをつくるということはやっぱり二番目に置かれてきたんだろうなと、私はそう思っております。  ただ、平成に入りましてから、高校進学率も九五%を超えるとか、あるいは十五歳人口も平成元年度以降は今度は減少に転じてきたといったようなこと、さらには、もとより児童生徒の興味・関心が多様化したのでありますが、より一層そうした傾向がはっきりしてきた。こうした状況を踏まえて、先ほど前の方の御質問にもございましたけれども総合学科を入れたりとか単位制高校を入れたりという、そういう幾つかの選択肢導入してきたわけでありますが、今回さらにもう少しはっきりとした選択肢を提供してもいいのではないだろうか、こういうようなことで中高一貫制度導入ということを法律改正という形でお願いをしているわけでございます。  なお、今回のこの導入で六三三制を見直すということを意図するのかどうかというお尋ねでございましたが、一応私どもは今六三三制を前提にした上で三三を一緒にするということを考えております。したがって、例えば教育内容をとりましても、もちろんせっかく六年一貫して学べるんですからそれなりの工夫は必要でしょうが、基本は中学校段階の三年のカリキュラム、あるいは高校三年間のカリキュラム、指導要領なり何なりを前提としながらそこに少し工夫を加えていくということで、現行の制度を一応前提として踏まえていくということだろうと思います。  ではそれから先はどうかというと、まだ議論が行われておりませんから余り個人的なことを申し上げるのは何かもしれませんが、例えば小中一貫ということが検討されてもいい時代も来るかもしれませんし、六三三ではなくて、これは決め手がないので私ども本当に何がいいのかよくわかりませんが、諸外国を見ると五四という制度もありますし、いろんなことはあり得るんだろうと思いますが、現状では一応六三三を前提にした形での今回の御提案だと、このように受けとめていただければと思っております。
  59. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それは、単なる選択肢の拡大ということだけではなく、今の最後の大臣のお言葉を伺いますと、今回の中高一貫制の導入というのは今後予想されるであろうもろもろの中等教育改革のスタートの一つであるというふうに考えてもよろしいのでしょうか。
  60. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 次から次へといろんなプログラムが出てくるその第一段階というふうにとらえると、まだ後の方までの議論が十分正直言ってできておりませんから、そういう意味で第一段階かと言われると、一応ここはここでまず第一歩として完結させていただきたいと思っております。では、その後もう一切何もないかといえば私は十分あり得ると思うので、そういう意味ではどっちの方に第二歩目の足を踏み出すかわかりませんが、とにかく一応今これは第一歩であると、そういうふうに私自身は考えております。
  61. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今回公立校におきまして中高一貫制度導入されますと、子供たちは小学校卒業時に、いわゆる新しい中高一貫校に行くか、あるいは国立あるいは私立に受験をして行くのか、あるいはまた従来型の中学校へ行くのかという選択をしなければならないわけでございますね。中学段階でのいわゆる選択ということ、選択導入と言ってもよろしいと思いますが、これは義務教育あるいは公教育の根幹にかかわるということにはならないのでしょうか。つまり義務教育公立中学ということは、子供保護者学校選択できないし、また学校子供を入試において選抜できないということだと思うんですね。そういたしますと、義務教育公立中学校の理念が変わるとか、あるいは存在意義が変質していくというふうなことにはつながらないと思ってよろしいのでしょうか。
  62. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) とても重要なポイントだと思います。先ほど山本委員からも同じような問題点の御指摘があったかと思います。  私は、義務教育であるから一切の選択肢が許されないということではないんだろうと思っております。といいますのは、今まではとにかく一応量的拡大ということをかなり重点に置いてきましたから、私立は建学の精神ということで仮に別に置いても、特に公立の場合どこへ行ってもできるだけ同じである方がいいという感じがあったと思うんです。実際には個々の学校で相当特色を出してこられたと思うけれども。  しかし私は、今日ここまで教育が普及をしてきた段階になって、いつまでも戦後五十年間と同じ形で、特色のない学校、だからどこに行っても同じ、言うならば強制的割り当て、あなたはここに住んでいるからこの小学校ですよ、ここに住んでいるからこの中学校ですよという、ちょっと表現が悪うございますが共産主義的割り当てではなくて、私はもう少し選択というものがあっていいんだろうと、こう思っております。それで、選択の前提として、小学校中学校高等学校特色というものをもう少し出してもらう。  そして、その特色に沿った形で今度は親が学校選択できるようにする。今、通学区域の拡大ということを、弾力的運用ということを言っております。これは、あるケースにはそれはいいですよと言っておりますけれども、私はもう少しそこを拡大していって、一挙にまだそこまで関係者のコンセンサスができておりませんが、方向としては小学校中学校も、高等学校はもとより選択できるわけですが、小中とも通学区域の指定、はいあなたはこの学校ということではなくて、選択できるようにしていくということが特色ある学校づくりにも役立つし、そして一生懸命いい学校特色のあるいい学校をつくろうという学校の先生方の努力にもつながってくるんだろう。私は、義務教育なんだからということとは関係なくそれは可能なんだろうなと、こう思っているわけであります。
  63. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今大臣は、それではこの制度導入によりまして義務教育あるいは国立や公立の中学の理念というものは何ら変わることはないというふうにおっしゃったと受けとめてよろしゅうございますね。  それで、いい学校というのは大変に難しいので、何がいい学校かはちょっとわからないので、このことについては私は余り申し上げないでおこうと思います。  特色ある学校ということでございますが、往々にして特色あるあるいは多様な学校というのが学校間の格差の固定とか格差の拡大ということにつながっているという残念な現象が今ある、これが実感、現実ではないかというふうに思いますけれども特色ある学校、多様な学校がイコール学校間格差を生まないためにはどうすればいいのか、その点についてどのような対応策をお考えでいらっしゃいましょうか。
  64. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 昨年六月に中高一貫に関する中央教育審議会第二次答申が出されておりますが、まさにここでも「中高一貫校における特色ある教育の展開」ということで、どういう特色があり得るかということで、これはあくまでも例示でございますが、例えば体験学習を重視する学校とか、地域に関する学習を重視する学校、国際化対応、情報化対応、環境に関する学習、あるいは伝統文化等の継承のための教育、あるいはじっくり学びたい子供たち希望にこたえる学校というような、これはあくまでも七つほどの例示でございますが、決して受験に特色のある教育ということは書いておりませんし、そうしないための、先ほど来申し上げております学力による選抜はこの中高一貫校はやりませんよというようなことを言っているわけでございます。  私は、上の学校にとにかく進む、あるいは特定の大学に進む比率だけで今の学校評価をするという非常に偏った画一的な判断基準というのを、いかに多様化する努力を我々みんながしていくか、親御さんたちにもしてもらうかということが今後の教育上非常に重要な課題である。そういう意味から、これは何も高校ばかりでなくて、中学も小学校もいろんな意味特色を持ってもらうことが大切なんだという結論になってくるわけであります。
  65. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今大臣がおっしゃいましたような観点から今回も中高一貫校導入ということが考えられたというふうに私は承知しているわけでございますけれども、この制度導入によって一般の親たちが一番心配するのが、あるいはまた現場の先生方が心配するのが、エリート校化しないかとか、それからまた受験戦争がこれでかえって激化するんじゃないかとか、そういう御心配だろうというふうに思うわけでございますが、今度のこの制度導入がそうならないために具体的にどのような対策を考えていらっしゃいましょうか。
  66. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この点につきましては中央教育審議会の答申においても繰り返し指摘されておるところでございます。私どももぜひいわゆる受験エリート校にならないための方策を種々講じてまいりたいと思っておりますが、まず一つは、設置者である都道府県等がこの学校をどういう学校にするかというところの基本をきちっと押さえていただく必要があると思います。  昨年の中教審答申、そして今国会でこうした法律案が提出されたということで各県ともに検討をいたしておりますけれども、少なくともまず設置者段階においてこの受験エリート校はつくらないという趣旨はどの都道府県等におきましても共通にポイントだという認識が持たれておりまして、私どもの方にはこの受験エリート校をつくらないという前提での検討が行われているということが一つでございます。  それからもう一つ、具体的に中高一貫校をどうするかということで判断をするに当たりましては、必ず各都道府県教育委員会等には各界からのお立場の人たち、校長先生あるいは教諭、あるいは学識経験者、保護者、地域の人たち、幅広い人たちに加わっていただく検討の場をしっかりとつくっていただく。そこで、それぞれの地域の実情を十分踏まえながら、あるいは生徒保護者ニーズを踏まえながら、どういう中高一貫校整備していくのか、あるいは中と高の接続を改善していくのかということについてのコンセンサスを得てこの設置に取りかかっていただくというふうにお願いをしてございますが、そこでの議論にも私ども期待をしているところでございます。  それから、低年齢化を招かないということで、公立学校につきましては面接、実技あるいは小学校からの推薦、抽選等を組み合わせた形で選抜を行うということで、学力試験はこれを行わないということにつきましても、十分にそれを踏まえた形での検討がなされるものと思います。  ただ、これにつきましては、先ほどの委員の御指摘で、さらに法令等の対応につきましても、これを含めて検討をしていきたいというふうに思っております。  それからもう一点、学校が受験エリート校化するというときに、学校整備が非常に限られてしまう、数が非常に少ない、そうなると結果としておのずと特別の学校になっていくということが指摘されるわけでございます。しかし、どのように、どのくらいの数を整備していくかということはまさに設置者等において御判断いただければいいわけでございまして、それに対して私ども中学校と同じような形での財政支援等もしていくわけでございますので、大変に人気が高いということでありましたら、それを踏まえて整備を積極的に進めていただく、こういうこともいわゆる受験エリート化ということにならないための一つの方策なのではないかというふうに思っております。  こうしたさまざまな方策、そして私ども国としても繰り返し設置者等に対しましてその趣旨の徹底に努める、こうしたことをあわせまして御懸念の点につきましての問題を防ぐという努力をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  67. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今のお言葉でございますと、さまざまな立場の方々が参加なさるいわゆるこの制度の検討の場ということが非常に重要に思われるわけでございますが、この場の設定というのはもちろん都道府県の責任においてなされるというふうに思いますけれども、もう少し、どのような形でどのくらいの期間というふうなことなどがもし今の段階において見えるところがございましたら、お知らせいただきたいと存じます。
  68. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 各都道府県におきましては、既に昨年の中教審の答申が出まして以降、自主的にこの答申を踏まえた対応をどうするかということで研究が始まっているわけでございますけれども、大変私どもはこの研究は大事だということで、この平成十年度予算におきまして一億円余の予算を計上いたしまして、これを各県に配分して、これを活用してさらに充実した研究をしていただこうというふうにいたしております。  具体的には、各都道府県に先ほど申し上げましたようなさまざまな方々に加わっていただきました研究会議のようなものを設けていただく。そして、その場ではさまざまな、理論的なと申しましょうか、御議論をいただくと同時に、実践協力校というようなものも設けて、実践的に中高一貫の内容、そのあり方等についても研究をしていただく。そうした実践的な研究と相まって大所高所からの慎重な御議論をいただく場として私ども考えてございます。  この予算措置はもちろん単年度単年度の予算であるわけでございますけれども中高一貫校がスタートし、その後の評価、フォローということも大変大事だと思いますので、財政当局の御理解を得ながらできるだけ長い期間私どもの予算も計上し、各県にも努力をいただいてそうした場を有効に活用していただくような形で機能することを私ども期待しているわけでございます。私どもも、そういった財政的な面あるいは情報提供の面等、しっかりと検討の場を支えていきたい、こんなふうに思っております。
  69. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今おっしゃった後半の部分、非常に重要だと思うんですね。こういう検討の場ができた、そして学校ができましたで終わりでは困るわけでございまして、特に新しいこういう制度導入する場合には、後はどうなっていくのかというその経過ということが非常に重要でありまして、実施状況によってその評価とかそして問題点をいかに是正するか、そのことがあって初めてこの制度導入されたということの意味があるわけでございますので、その点のところは、後半でおっしゃいました部分、ぜひとも実行に移していただきたいというふうに思います。  それで、エリート校化しないかということなのでございますが、一つ事実がございます。  ことしの東大の合格者の全国上位二十校のすべてを国立あるいは私立の中高一貫校が今回占めたと。東大あるいは京都大学などに占める国立あるいは私立中高一貫校の割合というのがだんだん高まっているということは私も耳にしておりましたけれども、今回二十位までがすべて一貫校だったということでございます。この事実に関してどのように解釈なさいますでしょうか。
  70. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 私もどこかの週刊誌の集計なるものを見た記憶がございます。全部であったかどうかちょっと定かではありませんが、非常に多かったなという印象はあります。  かつては東京でも、普通の区立の中学校、都立高校から、そして例えば東京大学なら東京大学というのも随分あったわけですが、今は残念ながらそういう姿が少なくなってきているようであります。私は、東大入学者の数をもってとうとしとなすという時代はもう終わったんだろうと思います。  我が地元の例を挙げて恐縮なのでありますが、例えば北海道で言うとやっぱり北海道大学がいいんですね。そして、北海道大学から拓殖銀行に入ると、みんなこれが一番よかったよかったと言ってお赤飯を炊いて喜んだものでありますが、拓殖銀行がつぶれてしまったものですからみんなどうしていいかわからないといいましょうか、要するに北海道で一番順調にいったこの幸せなパターンが崩れちゃったわけです。山一証券にしてもどこにしても同じような、そういう幸せのパターンが崩れつつあるわけであります。  私は倒産したことがもちろんいいとは言いませんが、逆にそこから得るべき経験としては、いい小学校へ行って中学へ行って高校へ行って、そしていい大学へ行っていい会社に入るというのは、決してその人間にとって一生幸せを何も保証しない時代に日本は入ったんだということを考えれば、東大に何人入ったというようなことがいつまでも週刊誌の話題になるようなことは、週刊誌の人たちこそ頭の切りかえができていないなとさえ私は思うわけであります。  むしろ、自分はこの高等学校でこういう貴重な体験をした、こういうことを学んだ、私はこの大学でこういう大変重要なことを学んでそれが自分の将来の選択につながったとか、そういうことを語り合えるような、そういうことが議論されるような日本社会の環境、また教育関係者の意識というものをそういう方向に持っていく努力をしていくことこそが最も重要なのだろう、かように私は考えます。
  71. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私も全く同意見でございます。東大を頂点としたピラミッド型の、そういう日本教育に関するある種の神話、それが本当に神話になってほしいというふうに願っている者の一人でございますが、現実にはなかなかそうならない。そこの問題をご札から私たちがどうやって解決していくか。その中でこの中高一貫教育ということも導入されたというふうに思います。  したがいまして、もし文部省あるいは私たちが望まないようなエリート校化するとかあるいは受験戦争の低年齢化が招かれたというふうな結果が出たとき、文部省としては軌道修正というのはもう恐れずになさるというお覚悟でございますか。
  72. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどから申し上げておりますように、私ども中高一貫教育を何のために行うのかということで、そのためにはこういう新しい学校種を設けて学校教育法の中にも明確にした形でスタートさせる、その必要性から今回の法案の御審議をいただいているわけでございます。これは中等教育全体の改革の一環として行われているわけでございます。  その際、先ほども申し上げましたとおり、端的に言っていわゆる受験エリート校化し、特別の一部の人たちだけのメリットと申しましょうか、という形でこれが運営される、あるいは受験競争が低年齢化するという形でその影響が小学校の広くに及ぶということでありますれば、かえって教育課題を増幅させるということになるわけでございます。  したがって、設置者段階において、それから各学校の運営の段階において、また入学者の選抜において私どもが何か対応できるものかどうかということを検討させていただきたいということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、そうした国の対応等さまざまな取り組みを通しまして、今先生から御指摘の点はない、生じないという形で私どもまず着手したいというふうに思っております。  そういった形でそれぞれが中央教育審議会で示されましたような趣旨で取り組めば、決して今言いましたような問題は生じてこないわけでございますので、まずその点に全力を挙げたい、こんなふうに思います。
  73. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ぜひともそう願いたいと思います。  ところで、今回、中高一貫型の教育というのは三つのタイプが示されております。いわゆる併設型、そして六年制の一貫校、そして連携型ということでございますが、最後に申し上げました連携型というのは今回の法案に盛り込まれておりませんけれども、その理由は何かあるのでございましょうか。そして、この連携型、実際に過疎の地域などでは実質的に連携をしているというところがあると思うんですが、それは今何校ぐらいになっているのか、あわせて御質問いたします。
  74. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず第一点の法制化をいたしません理由は、中等教育学校といわゆる併設型、この二つ学校教育法に位置づけませんとそういう制度がスタートいたしませんので、そこで学校教育法に書かせていただいたわけでございますが、このいわゆる連携型と申しますのは、現行の中学校高等学校という学校制度を前提とした上で運用の面において連携を図る、そして中高一貫を実現するということでございましたので、法律事項にならないということで、今回、法律の対象には入れていないわけでございます。  私ども、この連携型をどういうふうに構想するかということでございますけれども、やはり中学校高等学校の両者が協議をして教育課程を一貫性のあるものにする、そういうことが一つポイントとしてあるだろうと思います。それから、教師が相互に交流し合う、生徒も交流し合う、あるいは一緒に学校行事等を持つといった形のものが連携型のいわばあるべきものとして我々は考えております。  そうした連携型の学校間におきましては、日常化した形で先生と生徒が、高校の先生が中学の生徒を見、あるいはまた逆に中学校の先生が高校生徒を見というようなことがあり得るわけでございますので、そういう形であれば、改めて他の一般的な中高の間のような選抜ではなく簡便な選抜でこの間をつなぐということがあってよろしいのではないか、こんなふうに考えているわけでございます。そんなものとして、現在あります制度を前提にして中高一貫教育を実施する形として我々は考えているわけでございます。  もう一点、では今実際その学校はどんなぐあいにあるんだろうかということであるわけでございますけれども、もちろん私立の学校や、よく言われます国立の学校等は、制度的には中学校高校であるわけでございますけれどもいわゆる中高一貫校と言われておるわけでございますが、公立学校の場合につきましては、数として量的には私ども承知しておりませんが、今先生から御指摘のとおり、中学校高等学校が特化するような環境にある学校におきましては、教師が相互に教育し合うというような形での交流が行われておるわけでございまして、それは連携型のあり方の一部を既に先取りしているというような学校がある。  ただ、大変申しわけございませんけれども、何枚かという点につきましては正確な数字はちょっと把握しておりませんが、幾つかの学校であるということは承知いたしております。
  75. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そういたしますと、この連携型というのはさまざまなバリエーションがあり得るというふうに思ってよろしんですね。そうした場合に、入学者の決定の方法、あるいはまた通学区、それから教科書の採択方法、この教科書の採択方法というのは、連携型の方は従来どおりの広域型であり、一貫型そしてまた併設の方は学校選択するというふうになっておりますけれども、このような区別をすることが果たしてどういうことになるのでしょうか。この点いかがでしょうか。  入学の問題、それから通学区の問題、教科書の問題、まずお聞きしたいと存じます。
  76. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 通学区につきましては、通常の今あります中学校を前提にしているわけでございます。通学区域を前提にして通常は就学指定が行われて、そこに中学生たちが中学校に通っているわけでございますけれども、そうした中学校であるわけでございます。そことある特定の学校等が近傍にある、あるいは連携がとりやすいというようなことで連携が行われるという形で行われてくるだろうと思います。それは、いわゆる僻地と申しましょうか過疎地域の場合もございましょうし、都市部におきましても、ある中学校とある高等学校連携しようという形で行われるという形も当然予想されるわけでございます。  教科書でございますけれども、この点につきましても我々種々検討したわけでございますが、今申し上げましたように、連携型が行われます中学校高等学校は通常の一般的に設置されております中学校であり高等学校であるわけでございます。高等学校は各高等学校ごとに採択が行われておりますが、中学校につきましては、今言いましたような一般の中学校という前提で採択が行われるということであるものですから、これにつきましては他の中学校と同じような広域採択によって教科書採択が行われるべきであろうということで、そういう措置にしてございます。
  77. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それは実際の場合に問題にならないかなということがちょっと心配でございます。  それから次に、これは現場の教職員の問題でございますが、人事交流そしてまた給料表でございます。これは、高校の場合には表(二)という給料表が使われますし、中学の場合には表(三)でございます。これは違うわけですね、実際には。だから、その辺のところが他のいわゆる併設校あるいは一貫校と扱いが違ってくるのではないかという、そういう点につきましてはいかがでしょうか。
  78. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中等教育学校の場合にはまさに一つ学校として、どこを担当するか、前期課程のみか、後期課程も合わせてか、それぞれの服務の中身はいろいろあろうかと思いますが、一つ学校の教師という形で一本ということが想定されるわけでございます。連携型は、既存のといいましょうか現にある中学校高等学校を前提として、先ほど申しましたような連携を深める形で行われるものであるわけでございます。したがいまして、中学校の教師につきましては教育職(三)、高等学校につきましては教育職(二)という違いがあるわけでございますが、これはそれぞれの身分によって俸給が決まるわけでございますので、それはそれでやむを得ないと申しましょうか、そういう扱いにならざるを得ないのではないかというふうに考えます。
  79. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その入学者の決定でございますけれども連携型の場合は、これは今までと同じでございますから、中学の場合には、何らかの選抜ということはもちろんのこと、学力試験というものも全く行われないということでよろしゅうございますか。
  80. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 連携型の趣旨等につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。一体として中高一貫教育が行われておるわけでございますので、そこで、それぞれの他の中学校高等学校間と同様に選抜は行われるわけでございますが、その中学校高等学校連携型としてまさに中高一貫を行っておるわけでございます。そういう特質を備えた両校であるわけでございますので、その接続につきましては他の中高の間の選抜と違った形でいいのではないか。  そのときに、ではどうあるべきなのか。学力試験を課さない、あるいは調査書を課さない、その他いろいろな簡易など申しましょうか、簡便な方法はあり得るわけでございますが、それをどんなふうにするのか。これはしばしば国会の御議論にも取り上げられているわけでございますけれども、どんな形で簡易な選抜を行うかということにつきましては早急に検討させていただきたい。  いずれにしろ、他の中高間の接続と同じような選抜は必要ないのではないかというふうには考えております。
  81. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 例えば高校教育の場合には、学校教育法施行規則第五十九条に、高等学校の入学というのは「第五十四条の三の規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が、これを許可する。」というのがありますけれども、これに抵触するということはございませんね。
  82. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 現在、一般的に入学者選抜についてはこの規定で行われているわけでございます。その場合に、「学力検査は、特別の事情のあるときは、これを行わないことができる。」、また、調査書につきましても、特別の事情のあるときはこれを使用しないことができるという形で選択的に書いてございます。これは一般的な中学校から高等学校の接続の際の選抜のあり方として書いてございます。  そこで、連携型の中学校高等学校の接続というのが今回改めて出てくるわけでございます。したがいまして、この五十九条をどんなふうにするのか、すべきなのかということ、これは連携型の趣旨を生かすような形で具体的な中身は検討を合している、そういうことでございます。
  83. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 全員入学ということはあり得ないのですか。
  84. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどから申し上げておりますように、中等教育学校、それから併設型の学校につきましては新しい学校種として選抜なしの学校として学校教育法に位置づけられるわけでございますけれども連携型につきましては、先ほどから申し上げておりますように、一般の中学校、一般の高等学校、現にある制度に乗っかった上での中学校高等学校の中に先ほどのような特質を付加することによって一貫教育を実現しようとするわけでございます。したがってその選抜は、一貫教育ということに着目すれば、他の一般の選抜に比べて簡易であっていいだろうとは思います。  しかし、学校教育法に今回位置づけられます中等教育学校、それから併設学校とはまたおのずと違う、一般の中学校高校間の接続であるという点もあるわけでございます。そこで、私どもとしてはどんなふうな形でこれを考えるか、国会の御審議等を踏まえながら検討したいと思っておるわけでございますが、いずれもその方向としては、一般の中高間の接続よりも簡便な簡易な形での選抜の方法というものがしかるべきなのではないかということで私どもは今検討いたしております。
  85. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 中高一貫制の導入ということは、義務教育、とりわけ小学校段階での進路指導ということが非常に大きな課題になってくるわけでございます。これはもう親、保護者の場合にも、それからまた小学校の教員にとりましてもこれは大きな問題でございますね。その新しい課題に対しての配慮とか対応の具体策というふうなものは考えられているのでございましょうか。
  86. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 私ども二つのポイントがあると思っております。  まず一つは、この中高一貫校、いろんな形があるわけでございますけれども、これをどういう形で整備していくかという際、先ほど申し上げましたように、それぞれの設置者において大所高所からの検討の場をしっかりと設けて、そこで慎重な検討をいただいてスタートしていただく。その際には保護者等にももちろん加わっていただく。そのときには当然に生徒たちの状況ということも踏まえるわけでございます。したがいまして、まずこの中高一貫教育をどうスタートさせるかという時点で十分な調査研究が行われて、その内容や数といったものが検討されるわけでございます。まずそこが一つでございます。  それからもう一つは、具体に中高一貫校がスタートした後でございますけれども、これにつきましては、学校のサイドから、あるいは設置者の側から、小学校を通しまして、中学校へ進む段階に当たってこういった形の既存の中学校とこういった形のいわゆる中高一貫校というものがあるということについての情報を豊富に提供する、そしてじっくりとこの内容等について研究、検討ができるような、そういうことがまず必要だろうと思います。もちろん、小学生段階からも一定レベルでの、何といいましょうか、職業観とかというような一般的な進路についての指導も大切だと思いますが、それにあわせて、具体の学校についての情報が十分に与えられる、そして正確な資料に基づいて正確な判断ができるような支援をする、このことが大変大事なのではないかというふうに思っております。  繰り返しになりますが、中高一貫校を設置する場合のそのされ方のところでの検討と、それからされた後の豊富な情報提供というこの二つが大変重要なことなのではないかというふうに思っております。
  87. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 やはりこれも親、本人にとって大変重要な課題になるだろうと思うんですけれども 一たん選んでしまった、しかしながらどうもこれは自分に合っていないぞというふうに思った場合に、その在学の途中で進路変更ということができるのかどうか。それはやっぱり柔軟な対応ができていないと大変心配なことだと思います。その点いかがでございましょうか。
  88. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 大きく二つ段階があろうかと思いますが、まず、前期課程でやはりこれに合わないといった場合には、中途でも中学校間の移動と同じような形で当然これは行い得る、義務教育段階でございますので当然にそれは中学校が受けるということになろうかと思います。  それから、前期課程を終えた段階で通常の高等学校進学をしたいというような場合、これも当然変更が可能なわけでございます。  それから、後期課程の途中で進路を変更したいという場合もあろうかと思います。これは高等学校間の場合と同じような形での移動ということになるわけでございます。制度的には当然あるわけでございます。  課題は、義務教育の場合と違いまして、ある特定の中学校がということではございませんで、今ありますような高等学校間の移動ということになりますので、そのあたりのところは義務教育段階と違った点はございますが、それは一般の高等学校におきましても、例えば保護者の転勤に伴って円滑な高等学校間の移動を行うべきということと同じ課題でございまして、そういう課題はございますけれども、当然に進路変更はできる、こんなふうな制度になっております。
  89. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳浩です。  大臣は参議院の行財政改革・税制特別委員会での御答弁もおありだということで、私は一問だけ質問させていただいて、その後席を外していただいて、その後は局長に答弁いただきたいと思います。  まず、今回の法律についてもいろんな指摘があるわけでありますが、子供たちの数が減っている、少子化ということが学校教育現場においてどういう弊害というか問題があるかということを考えたら、校舎が余る、空き教室もできる、複式学級や学校統廃合、これは過疎地域での問題でありますが、あるいは教員の需要の減少、教員養成系の大学・学部のリストラ、総じて教員のリストラと言ってもいいかと思います。あるいは高校大学の、言葉は悪いですけれども、お客さんを何とかして集める、あるいは教員の高齢化などなどの問題点指摘されておるわけであります。こういった少子化における学校教育現場において種々の問題がある中で、この中高一貫教育は何としても文部省は窮余の一策、対策として必要で、この議論が始まって二十八年、今回やっと提出できたのではないかという指摘もあるわけであります。  そういう指摘を私がするのは非常に申しわけないというか、そうではないというふうにもちろん答弁していただきたいんですけれども、そういう指摘も確かにあるわけでありまして、質問させていただく中で細かく質問いたしますが、まず、こういう指摘があるということを文部大臣、どのようにお考えですか。
  90. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 確かにかなり早い段階昭和四十六年の中教審の答申以降、臨教審等々の場で再三の提言があったのは事実でございます。  ただ、なかなかコンセンサスが当時得られなかった幾つかの背景があるんだろうと思います。先ほど日下部委員も言っておられましたような、あるいは他の委員も言っておられましたような、やはり受験戦争が低年齢化するとかいろんなことがネックとしてあったと思います。特に十五歳人口がまだまだふえている昭和の時代でございましたから、むしろそのために校舎もつくらなきゃいけない、先生もふやさなきゃいけない、新しい学校をつくらなきゃいけないという形での対応が一番であって、選択肢多様化というのはむしろ二番目あるいは三番目の重要度でしかなかったんだろう、こう私は思います。  しかし現実に、平成に入りましてから進学率も九十数%になり、あるいは平成元年以降は十五歳人口が減少になってきた、少子化がいよいよ高校にまで及んできたという段階に入りまして、そして、学校内での荒れと一言で言われますようなさまざまな問題が出てきた。子供たちの非常に多様化した中で、学校制度だけがいつまでもすとんとした単純な姿では子供のそうした多様な姿に対応できないだろうということで、総合学科とか単位制高校、あるいは高校の中でも選択の教科をふやしていくとか、いろいろな工夫はやってきたわけであります。  言うならば、そうした流れの一環の中で今回初めて学校制度という形に着目をして、六三三を六六という形で選択をしてもらおう、こういうことを法律化させていただきたいということで御提案申し上げているわけでございます。  特に今、委員、少子化ということをお話になりました。非常に大きな、さまざまなインパクトを教育界に与えている、委員が先ほど御指摘されたとおりだろうと思います。  特に、家庭の中でもっと兄弟がたくさんいれば切磋琢磨が行われたであろうに、一人っ子あるいは二人っ子ではなかなか年齢の違う子供たちとの競争といいましょうか、いい意味の触れ合いといいましょうか、そういうものも失われてきた。例えば中高一貫であれば、中学一年と高校三年ではやや大人と子供ぐらいの差ができできますが、そういう子供たち一つ学校の中で触れ合うことのよさなどというものもやはり少子化というものに対応した一つ対応策なんだろうな、こう思っているわけであります。  そういう意味で、すべてをというわけにはいきませんでしょうけれども選択肢を広げるという意味での中高一貫の意義というのは、今ようやくそれが可能な状態になってきたのかなという意味で、この時点での提案ということになったというふうに御理解をいただければと思います。
  91. 馳浩

    ○馳浩君 大臣、もう結構でございます。  私が非常に心配しているのは、これは大変うがった見方かもしれませんが、財政構造改革法等々で教育予算も聖域視されなくなった、そういうときに文部省としては、とりわけ施設整備予算、これを確保していく、あるいは教員定数の確保をしていくという中での窮余の一策なのではないかという指摘があるということで私はちょっと意地悪な質問をさせていただいたということで、今の大臣の答弁で結構でございます。  そこで改めて、これは中教審の四六答申から始まりました。もう既に二十八年経過いたしましたけれども、この中高一貫教育導入するに当たっての経緯、意義、そしてなぜ選択制なのかということをもう一度お聞きしたいと思います。なぜならば、この後私が質問を進めていく中で、それらの中高一貫教育導入する目的等々がこの法律に明文化されているかどうかということも、非常に細かい議論もしていきたいと思いますので、簡潔にでよろしいですから、この三点をお答えください。
  92. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、中高一貫教育導入に至る経緯でございますけれども、いろいろな御提言があったと思いますが、大きな提言としては、昭和四十六年の中教審の答申、それから昭和六十年の臨教審の第一次答申でございます。ここで中高一貫教育、六年制中等学校というような名前を使われた例もございますけれども、ございました。  提言がありましたが、その提言に対しましては、この答申の中に入学者の決定に当たって学力試験を課さないといったことは必ずしも明確になっていなかったということもございまして、受験競争の低年齢化のおそれがあるといったことをめぐりまして教育関係者のコンセンサスが得られなかったということがございます。  それからもう一つ、量的な状況として、各都道府県、いずれの県におきましても十五歳人口の増加ということがございました。また、進学率もまだ上昇を続けているという中で、高等学校の新増設を優先させてまず受け入れるという形に都道府県対応が追われたということもございます。そうしたことで見送られてきたわけでございます。  しかし、その後、進学率について申しますと、平成二年度に九五%を超えまして、進学率九五%はほぼ横ばいで推移いたしております。つまり、ある意味では天井に来ているというようなことを言ってもいいかと思います。それから、十五歳人口も平成元年以降減少が続いてきている、こういう状況がございます。  そうした中で、平成三年、改めて中教審が議論をいたしまして答申を出されました。そこで、生徒能力・適正、興味・関心等の多様化対応した中等教育改革の方向として多様化個性化というものが言われ、そこで言われましたのは、現行制度を前提とした総合学科あるいは単位制高校の設置あるいは学校間の連携というような、運用面でこれに対応するという形のものであったわけでございます。  こうした形で総合学科あるいは単位制高校、入学者選抜の改善等取り組んできたわけでございますけれども、なお中等教育現状を見るとき、さらに一人一人の生徒たち個性をより重視した教育を展開する必要があるということで、平成七年年度からの中教審の審議を経まして、平成九年度の第二次答申におきまして、教育内容・方法における多様化個性化の推進に加えまして、学校制度の面に及びます今回の法律改正につながりますような提言が行われたということであるわけでございます。これが経緯でございます。  それから、中高一貫をなぜ選択的なのかということでございます。  これにつきましては、今の制度の三三が持っておりますメリットは、三年間置いたところで改めて進路を決定して高等学校を選んでいく、そのことによって中学校高校を通してさまざまな幅広い友人関係の構築等ができるといった面があるということ。それから、三年間、三年間を短く見るか長く見るかというのがありますけれども一つの節目としてこれを前向きにとらえていける面もあるといったメリットもあるわけでございます。そして、六三三四という形で、これは全体としては高い評価を得ている、定着をしている、これがございます。  しかし一方で、三三ということが細切れになっている、むしろ六年間という長い期間を通して継続的な教育を行うことにメリットがあるのではないか、そのことによってゆとりのある学校生活が実現するのではないか、あるいは六年間の異なった異年齢集団で学校生活を送ることの方がよりメリットがあるのではないか、そういう子供たちもいるのではないかという点もあるわけでございます。ただ一方、六年間、生徒が固定化するというデメリットもある。  そういう種々のメリット、デメリット考えますと、生徒保護者等のニーズを踏まえながら各設置者においてこれをどういうふうに整備していくのかを判断していただく。そのためには二つの、三三の道と六の道がありますという形で選択をしていただくという選択的導入が適当であろうということで今回の法案を出させていただいているということでございます。  ポイントといたしましては以上でございます。
  93. 馳浩

    ○馳浩君 それで、中高一貫教育で後期課程というふうに想定される後半三年間、今現在の制度では、高等学校はいわゆる普通科専門学科総合学科の三つがあるわけです。  今お述べになりました中高一貫教育一つの意義ということを考える、ゆとりある学校生活を送るということを考えれば、普通科の科目も専門学科の科目も選択できる総合学科のタイプが一番この趣旨に合致しているのではないかということを考えれば、今現在ある普通科高校専門学科高校はこの中高一貫高校趣旨には余り合致しない、外れているのではないかという指摘がありますが、この点はどうですか。
  94. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 確かに、総合学科というのは後期の段階で幅広い選択の余地が与えられるということで、中高一貫校になじむ一つのタイプだというふうに思います。ただ、では専門学科はいけないか、あるいは普通科はいけないかというと、そうでもないだろうと思います。  先ほどの御質問にもお答えいたしましたが、過疎地域等において特定の高等学校と特定の中学校が事実上連携した形で学校が営まれている。それが中高一貫校となっていくというときに、そこの生徒たちが例えば普通科希望するということもあるだろうと思います。それから、専門学科普通科とがコースとして用意されるということもあるだろうと思います。総合学科はもちろんふさわしいタイプだと思いますが、普通科専門学科も、それぞれの設置者判断、地域の特性、あるいは保護者生徒ニーズ等によって当然にあり得る、こういうふうには思っております。
  95. 馳浩

    ○馳浩君 次に、文部省としてはこの中高一貫校を全国都道府県でどのくらいの数をつくる計画をお持ちですか。  といいますのも、実施しようとしている自治体にとりましては、中高一貫校をつくることによって国からの補助がどれだけ受けられるのかという期待もあるわけであります。逆のことを言えば、受けられない、選択肢としてそうではない、今現在の三三の中学校高等学校にすれば、文部省予算というのは限られておるわけでありますね、一つの目玉としてできた中高一貫校に予算ががばっと行く、教員定数あるいは施設整備予算ががばっと行って、もしかしておれたちのところは置き去りにされるのではないかという心配もこれありだと私は思うんです。  この点、どういう計画をお持ちですか。
  96. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 各都道府県ごと、自治体ごとにどれくらい整備すべきかということは各設置者の御判断にまつべきだろうと思います。  ただ、私どもとしては、できる限りの財政支援をするということで、都道府県、市町村等が中高一貫校整備する、その際に予算の面からやろうと思ってもやれないというようなことがないように、そういう面では最大限の努力をしていきたいと思っています。ただ、国がそれぞれの設置者ごとに、そちらは何校が中高一貫校、何校は既存の中高でいくべきだということを示す立場にはございませんので、それはあくまで地域のニーズ保護者生徒ニーズ等を踏まえて設置者の御判断にゆだねるわけでございます。  ただ、設置者がそういう判断をした場合にはそれを全面的にバックアップするような、そういう支援措置の面で国は努力していくべきであろう、こういうふうに思います。
  97. 馳浩

    ○馳浩君 ここで問題になるわけです。できる限り配慮をする、それから自治体の意向を尊重する、ということは国としての計画はない、これは当然ですね。ところが、そうなってくると、現実的に見て、先ほどの選択制ということから踏んまえて、全部が全部一貫校を望んでくるとはまず考えられない。じゃ、どうなるかというと、一般的な市町村は財政的に見て中等教育学校併設型の中高一貫校をつくることがなかなか難しいと、県主導の県立の六年制中等教育学校、県立の中学校をつくり、既存の県立高校併設する併設型、これが一応予想するところ、中高一貫校として設置されるのがほとんどとなるというふうに予想されますけれども、いかがでしょうか。
  98. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中高一貫としては、中等教育学校という型と、それから併設型、同一設置者中高をつくる、そしてその間を試験なしで結ぶという型と、それから既存の中高を前提に連携して連携型の中高一貫を行う、この三つの型があるわけでございます。  今、先生、県主導の併設型になってしまうだろうということ。確かに、併設型は既存の高等学校の校舎等を活用してそこに県立の中学校を付設する形でつくるということで、考えようによっては、中等教育学校を新規につくるということよりもある意味では現実的なメリットを持っていると思います。しかし、私は連携型の中高一貫校もどんどん進めていただきたいというふうに思っております。  そういう意味では、各都道府県がそれぞれ地域のニーズ実情等を踏まえて、どの形で中高一貫を進めることがより合理的なのか、よりその地域に合っているのかということの真剣な御議論を通して中高一貫校は進められていくだろうというふうに思っております。  それから、なお全く数の目途がないのかということでございますが、確かに量的に何枚というのを示すのは難しいことは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、実質的に中高一貫校に進もうと思えば進み得る選択の機会を与えるという趣旨でございますので、おのずと、一校であってはいけない、二校ではそういう趣旨は達せられないわけでございますので、そういった趣旨に立ってこの中高一貫校が積極的に整備されていくということを我々は期待しているわけでございます。
  99. 馳浩

    ○馳浩君 期待部分の方がちょっと多くて、私が心配するのは、何度も言いますけれども、財政構造改革の厳しい折から、教員定数の新たな第七次ですか、配置計画もままならない現在、それでは余りにもちょっと雲をつかむような計画ではないのかな。あらかじめやっぱり自治体に対してどのくらい望みますかと。今現在、各都道府県教育委員会においても実験校として指定を受けたりしてやっているところもあるわけです。私の出身の石川県におきましても、門前高校と富来校、それの近所にある中学校、全部で五校が実験校としてもう既に認められております。  これから検討に入るということでありますが、恐らく各都道府県は五ヶ瀬中・高のこの中高一貫教育一つ横に見ながら我が県でもと考えていると思うんです。そういう点、私は、文部省としてもこの法案提出に当たって要望を全都道府県にとってその目途を頭に入れておかなければ、この予算の厳しい時期に新たな予算措置はできないのではないかという心配を持つわけであります。そういう意味では、まさしく各都道府県に対して、数どのくらい望みますかと要望を出してもいいんじゃないんですか。
  100. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどから繰り返し申し上げておりますように、各県ごとに何枚ということを国で決めるのはなかなか難しいことだと思いますが、先ほど申し上げましたように今回の法案で、給与費でございますとかあるいは施設の整備費でございますとかというものは、これまで市町村立だけにありましたのが都道府県立のそうした学校も対象にするということでございまして、予算措置のめどというようなものも当然私どもの必要性からいってもあるわけでございます。そのほかにもちろん、この法律がどんな形で各県、自治体において活用されるかということも当然国は無関心であってはいけないと思います。  そういう意味で、各県の取り組み状況等につきましては、我々は関心を持ち、十分な情報をとって、各県においてそごのないようにしていくということは我々で努めていかなければいけないことだというふうに思います。
  101. 馳浩

    ○馳浩君 これもちょっと関連して質問していきますが、中高一貫校を創設する場合の国の助成について質問いたしますが、この導入に当たり一教職員の定数、給与費施設整備費については国としてはどういうふうに対処していかれるおつもりですか。
  102. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 公立の中等教育学校、それから併設型の中学校高等学校に関します教職員の給与費あるいは施設整備費に係る財源措置につきましては、原則として中等教育学校の前期課程、それから併設型の中学校につきましては現行の中学校に対します措置に準じた措置を講ずることを考えております。  それからまた、中等教育学校の後期課程それから併設型の高等学校につきましては、現行の高等学校に対して講じられております措置を講ずるということにしてございます。  それから、中高一貫校の設置を奨励するために、中等教育学校の後期課程それから併設型の高等学校に係ります施設整備費につきまして、来年度以降、予算編成過程におきましてこれを奨励するための適切な対応というものも検討していきたいと、こんなふうに考えております。
  103. 馳浩

    ○馳浩君 ちょっと質問がずれるんですけれども、私、いただいた資料を見ておってあれっと思ったのですが、学校教育法の第百三条に、当分の間、養護教諭を置かないことができるという項目があるわけなんですわ。まさか中等教育学校にこの条項が当てはまるとは思いませんが、この当分の間というのは、この項目というのはいつか外れるんでしょうか。
  104. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 当分の間というのがいつかというのは、時期で明示するというのは大変難しいわけでございます。これまで何度かの定数改善計画におきまして養護教諭の配置というのは進められてきたわけでございますけれども、なお小規模な学校におきまして必置が実現しないという余地も現実問題としてあるということがございます。そうしたこと等を考えあわせまして、なおこの当分の間というのは残っているわけでございます。  今先生お尋ねの、じゃいつそれを切るのかということでございますけれども、これはこの定数法あるいは財源措置等が整いまして、養護教諭がいかなる小規模な学校も問わず置かれるという、実現が可能になる時点でこれは削除される、こういうことになろうかと思います。
  105. 馳浩

    ○馳浩君 中高一貫校議論とちょっとずれてしまって申しわけないんですけれども、今回の資料の中でこの項目が入っておったものでちょっと改めて聞いたんですね。当分の間というのが一日も早く消えるように、私たちはこれまた予算の面で努力しなきゃいけない問題でありますから、改めてこれは問題点として認識をして、早く項目を削除できるように私たちも努力したいと思います。  それでまたもとに戻りますが、その施設整備費についてですが、各都道府県中高一貫校をつくりたいという要望が大変多い場合、助成の要件を満たしている限り国としてはすべての場合に助成していくのかと。これは私は、先ほど質問させていただきました、中高一貫校をどのぐらい要望しているのかという各都道府県の現実的な数字を踏んまえて文部省も検討していく問題だと思うんですよね。実際にそういう問題があるわけなので、本当につくりたいと言ってきたら、各都道府県に対して、要件を満たしていたらすべて助成するんですか。
  106. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 財源にはもちろん枠があるわけでございますので、今ここですべてというお約束をするのはなかなか難しいわけでございますけれども、しかし、中高一貫校というもののメリットを生かして積極的に整備していこう、そのための我々は法律改正もしているわけでございますので、それにこたえて各自治体においてやろうとするときに、それができない、財政の面から足を引っ張るというようなことは、それは国として避けなければならないことだろうというように思います。    〔委員長退席、理事北岡秀二君着席〕  そこで、私どものこれは気持ちでございますけれども、各地方公共団体におきます設置計画の動向というものを踏まえながら、地方公共団体から補助申請がありました場合には、公立学校施設整備費予算全体があるわけでございますけれども、その中では、この中高一貫につきましては優先的にこれを取り扱って支援をしていく、こういう心構えで対応していきたいと、こんなふうに考えております。
  107. 馳浩

    ○馳浩君 予算に限りがあるわけでありますから、本当に国民期待が多い、あるいは子供たちや親の期待も多いとなったときに、文部省としてもある程度の優先順位を持ってやっぱりやっていかなきゃいけないと。そうなった場合に、透明性のある優先基準が必要なのではないかと思いますが、こういう指摘に対してどう答えますか。
  108. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 今、施設整備費に対する国の考え方につきましてここで初めてお答えをしたわけでございますけれども、こうしたことはもちろん、設置者等の関係者、実務を行います関係者に国がどういう考え方で補助しようとしているかということにつきましては十分に趣旨が伝わらなければならないわけでございます。したがいまして、この中高一貫校施設整備について国は公立学校施設整備費予算全体の中で優先的に取り扱っていくといった趣旨につきましては十分に伝えて、各県において国がどうしてくれるのかというようなことがわからないということではいけませんので、そういうことのないように努力をしていきたい、的確な対応をしてまいりたいと、こんなふうに思っております。
  109. 馳浩

    ○馳浩君 これは大変重要な問題でありますから、各都道府県の要望にできる限りおこたえできるように配慮していただきたいと思います。  次に、先ほどからもずっと議論がありましたエリート校化の防止策、改めて伺います。どんな具体的な施策を考えておられますか。
  110. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この件につきましては、大変重要なポイントだという認識をいたしております。  私どもといたしましては、設置者において取り組んでいただかなければならないこと、それから学校の経営者として校長等が取り組んでいただかなければならないこと、それから国として取り組まなければならないこと、この三つがあろうかと思います。  まず、設置者の関係でございますけれども、現在、昨年の中教審答申を受けまして、どこの県もどんな形で中高一貫を実施していくかということの検討が始まっておりますが、少なくともいわゆる受験エリート校化させない、それから受験年齢の低年齢化をさせないという前提で検討が行われております。それがまず一つございます。  それからもう一つ、それはまだ構想の段階でございます。具体に個別の学校をつくっていくという段階におきましてもこのことは大変大事なわけでございますが、その際には、各都道府県等に必ず地元の幅広い人たちに加わっていただく検討会議の場を設けて、そこでの真剣な、慎重な御検討をいただくということにいたしておるわけでございます。その際にも、受験エリート校化を回避する、それから受験年齢の低年齢化を避けるという基本はきちっと踏まえた形での研究、検討をお願いしたいというふうに思っております。  それから、学校が設置されました後は、各学校の校長をリーダーとして、学校の教職員もこの中高一貫校趣旨を十分に踏まえた学校運営というものを強く望みたいと思うわけでございます。  それから、受験競争の低年齢化を招かないということで中教審は、公立については学力試験は行わないと。面接、実技、小学校からの推薦、あるいは抽せん等の方法を組み合わせてこれを行うということが指摘されておるわけでございますので、これをきちっと守っていくということも御懸念の点を払拭する大変有効な方策だと思っております。    〔理事北岡秀二君退席、委員長着席〕  それからさらに、特定の限られた学校ということになりますと、いわゆる特別の学校、受験エリート校ということになりがちでございますので、学校整備についても、地元のニーズを踏まえて積極的にこれを推進していくようなスタンスをぜひ設置者にはお願いをしたいと思っております。  こうした対応を総合的に行う中で、受験エリート校化させない、受験競争の低年齢化をもたらさないというポイントを守り抜いていきたい、こんなふうに思っております。
  111. 馳浩

    ○馳浩君 これは答申の中にも出ておるところでありまして、文部省も大変重く受けとめておられることと思います。入学試験工夫でありますとか、あるいは教育内容の多様化を図るとか、今局長の答弁をいただいたとおりであります。ならば、そういった懸念がある部分の防止策を学校教育法上に明記すべきではないかと思いますが、今回の改正ではこの点は実現しておりません。なぜなのでしょうか。
  112. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 学校教育法に書かれます事項は、中等教育学校につきましては目標、目的、教職員等であるわけでございます。そうした内容を書き込むべきところに、今申し上げましたようないわゆる受験エリート校化させない等のそうした学校趣旨のようなものを書くということは、大変法律的に難しいわけでございます。  したがいまして、法律段階では、新しい学校が前期の段階中学校、後期の段階高等学校に準ずるということを明確にするということで対応しているわけでございます。  御懸念の点については、法律事項といいますよりもむしろ運用の問題、どんな形でこれに対応していくかという実行の問題でございますので、そのレベルで遺漏のないようにしていく、こういうことで法律の中には盛り込まなかったわけでございます。
  113. 馳浩

    ○馳浩君 今局長は、法律というのは目標、目的を明記するというふうにおっしゃいました。細かく見ていきたいと思いますが、ならば、今言ったように、エリート校化しない、ゆとりある学校教育を実現するためという目的があるわけですから、そういったことをなぜこの法律に書き込まないのかというふうに出てくるわけです。というのは、第五十一条の二と三、この部分を読ませていただきますが、例えば第五十一条の二。  中等教育学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育並びに高等普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とする。 つまり中高一貫教育をつくりますよというだけしか書いていないわけでありまして、先ほど私が申し上げたように、いわゆるゆとりある学校生活を担保するとかエリート校化させないとか、そこまで具体的に言えないとしても、中高一貫教育をなぜつくるのかという意義をもっと明記すべきじゃないのかと私は思います。加えて、第五十一条の三にはこうあります。  中等教育学校における教育については、前条の目的を実現するために、次に掲げる目標の達成に努めなければならない。  一 国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。  二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な技能に習熟させること。  三 社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、個性の確立に努めること。 今申し上げましたこの一、二、三というのは、第四十二条の高等学校の目的と同じでありまして、中等教育学校を新たにつくる目的、目標というのは何なのだということが明記されていないわけなんです。  ですから私は、きょうの質問の冒頭に中高一貫校を設立する意義というのを聞きました。お答えいただきました。それがなぜ法律に明記されていないのかという点が私は疑問なわけでありまして、これでは、今の質問の趣旨であります受験エリート校化防止という意味ではこの法律の条文自体が十分に担保されていない。もっと明確に目的、目標というものを中高一貫教育というふうに限ってちゃんと書くべきだと私は思うんです。  第五十一条の三などは高等学校の目標、目的と同じでありまして、じゃ中等教育学校は何なんだというふうに指摘されてもいたし方ないと私は思うんですが、いかがですか。
  114. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、今回の中高一貫教育でございますけれども、これは現行の六三三四という学校制度を前提にして、そして三三と切れておりますところを六という形でつなぐ、そういう形で構想したわけでございます。  したがって、現在の中学校の目的、目標、それから現在の高等学校の目的、目標、これを三三と区切らないで六年間を通して実現する、これが中高一貫教育の目標であるわけでございます。  学校教育法のレベルでは、そうした基本的な学校の目的、性格というものを書くというのが学校教育法の体系でございます。  先生の御指摘は、中高一貫教育趣旨を生かして進めていく上で大変重要なポイントであるわけでございますけれども、それは法律の中にそう書くという形でこれに対応するということではなくて、先ほどから申し上げておりますようなさまざまな施策を通して実現していくわけでございます。  学校教育法は、それぞれの学校の種類、その目的、目標、基幹的な職員等について書くということでございますので、これがエリート校化してはいけないとかあるいは受験競争の低年齢化をもたらしてはいけないというような、ある意味では学校をつくることから派生してくる事実上の問題、これは別途の対応で行われるべきものでございまして、学校教育法の中にそういったものを書くというのは学校教育法の体系にはなじまないということで、我々はこういう整理をしたわけでございます。  ただ、御指摘の点は重要でございますので、それを何とかしようというところは共通だと思っております。
  115. 馳浩

    ○馳浩君 ここが私、納得できないです。現行の中学校高等学校がありますよね。それと、今お進めになろうとしておられる中等教育学校教育の目的、目標、意義が違うんだということをなぜはっきり書かないのか、私はそういう意味で質問させていただいておるわけであります。  例えば、ゆとりをつくり個性を伸長させるべく多様な教育内容を施し、もって生きる力をはぐくむ、あるいはこういうふうな一文を書いてもいいわけです、目的、目標のところに。あくまでも私が言いたいのは、学校教育法中学校でもない、現行の制度における高等学校でもない、中等教育学校をつくるんだと。それは何の目的、目標なのかということをなぜ明確に書かれないのかなと。  実際、文部省が各都道府県に御指導になって、運用の面であらゆる対応はできるでしょう、いろんな通知、通達、指導等で。ただ、そうじゃなくて基本的に中高一貫教育日本の現行の学校制度の中に位置づけるという強い決意があるならば、中等教育学校の目指すものということで条文の中に書いていいのではないかという、そういう指摘なわけでありまして、いかがでしょうか。
  116. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどちょっと質問を取り違えて失礼しました。その点につきましては、現在の六三三の義務教育制度を前提にしてこの中高一貫教育考えているというのがまずポイントでございます。つまり、小学校を卒業した後、中高という現行の学校へ歩む者と中高一貫校を歩む者という二つ選択が広がります、しかし、そこで学ばれる国なり地方公共団体なり私立の学校が提供する教育の内容というのは、三三と歩む子供も六と歩む子供も同じ内容のものを基本的には受けるんですということを明確にしているわけでございます。  今、馳先生がおっしゃる点は、そういう目的、目標は同じであっても、そこに六年間の修業年限というような形で学校教育法には出てくるわけでございますけれども、そうするとそれは三三と違った修業年限をとる、そこからゆとりのある学校生活とか、あるいは六年間の異なった異年齢生徒たち一つの学園を構築するんだと。そういった形で学校生活が送られる学校が新しくできるということはその後出てくるわけでございます。  ですから、目的、目標はそうあり、あるいは修業年限が六年ということとあわせて全体を読み取りますと、私どもが提案理由等で御説明しておりますような、そういう学校像というものが浮かび上がってくるわけでございます。  そういう意味で、この学校教育法に完全に書かれないとしても、それは十分に目的は達せられるものだと、こういうふうに考えております。
  117. 馳浩

    ○馳浩君 私は、第五十一条の三のこの一、二、三、この目標は今の高等学校の目標と変わらないじゃないかという点では、まだもうちょっと文部省としての中等教育学校の位置づけがあいまいであるという認識を私は持っております。これも最終的には運用の面でちゃんとしていただけるとは思っておりますが、法律というのはもうちょっと私は明確に書いてもいいのじゃないかなと思います。  次の質問に移ります。  先ほど私申し上げました、教育内容を非常に多様化させる、それをもってして子供たちに生きる力をはぐくむことに資する、この点を学校教育法の施行規則で明記して、設置者選択させるようにすべきではありませんか。あわせて、そもそもこの点について施行規則にどのように規定するつもりでいるのか、お伺いしたいと思います。
  118. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 教育内容につきましては、現在の制度では学校教育法を受けまして、学校教育法施行規則におきまして教科の種類あるいはその編成の基本的な事柄が書かれてございます。  したがいまして、基本的には先ほど申し上げましたように、中等教育学校につきましては前半が中学校、後半は高等学校を準用するとなってございますので、それと違えてどんな形の中高一貫校趣旨を生かした規定が必要か、これは我々検討したいというふうに思っております。  ただ、基本的には現行の中高を倣うということでございますので、大方は尽きているわけでございますけれども、さらに中高一貫校趣旨を生かすべくどんな規定が可能なのかどうなのか、それは検討させていただきたいというふうに思います。
  119. 馳浩

    ○馳浩君 検討ということは、施行規則に明記されていくという方向ですか。
  120. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 基本的には中学校の学習指導要領を前期課程に、高等学校の学習指導要領を後期課程にという形を考えているわけでございますけれども中等教育学校の場合には六年間の一貫した学校であるわけでございます。そうしますと、そこをただ二つを足しただけということではない六年間の継続した教育課程の編成ということが当然に求められるわけでございます。  ですから、そうしたことがどんな形の規定ぶりによってその趣旨を生かした教育課程の編成・実施ができるようになるのか、そういったことを検討したい、こういうことでございます。
  121. 馳浩

    ○馳浩君 余り決め決めの教育課程を文部省から自治体の方に提示しますと、自治体の方が確かに萎縮して、何だ、もっと私たちは弾力的にやりたいと思っているのにというふうな、これはまた地方分権の兼ね合いからしてもマイナス面がありますので、私もこうすべきだという気持ちはありますけれども、その辺はさじかげんといいますか、でやっていただければ結構でありますので、次の質問に移ります。  もうずっと質問があった内容なんですけれども入学試験工夫ですね。具体的にどのようにするか、これも先ほど伺いましたのでもうこれ以上聞きません。  そこで、小学生子供さんあるいは親が、うちの都道府県にも中高一貫教育ができた、行きたいと言ったときに、私ちょっと聞きたいんですが、今現在、小学生に対して進路指導というのはなされているんですか。選択肢がふえるわけでありますから、例えば小学校六年生の担任の先生が、就職はまずないんですけれども、私学の中学校に行ってもいいでしょうし、今までならば中学校にエスカレーター式に上がるだけです、でも、今回からは中高一貫の方式の学校もあるということで選ぶと。親御さんにしても子供さんにしても、そういう意味ではどこから情報を集めたらいいのか、だれの言うことを聞いたらいいのかと。そういう意味では、そもそも小学生六年生に対して進路指導というのは、これは学習指導要領上あるんですか。
  122. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 現在の小学校の学習指導要領には、その教育内容として進路指導という文言は入ってございません。  ただ、一般的に小学生たちも目的を持って勉強をするわけでございますので、具体の何か固有の職業にという意味ではなくて、将来どういうふうに進路をとっていくのか、どういうふうな人生を歩んでいくのかという広い意味のそういう指導というものはあるわけでございますけれども、特に進路指導という銘を打った形での時間はございません。
  123. 馳浩

    ○馳浩君 これから各都道府県中高一貫学校ができてくるとすれば、その選択ということを子供たち、とりわけ保護者の理解を深めなきゃいけないので、進路指導という時間というのを学習指導要領上明記した方がいいんじゃないんですか。
  124. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 学習指導要領は大変基幹的な内容が書いてございますので、中高につきましては特別活動というところの中に書いてあるわけでございますけれども、それとのバランス等を考えまして検討させていただきたいと思いますが、ただ実際の問題として、そういった中学校に行くか、中高一貫校に行くかという形でその小学生だちが判断をする、あるいはお父さんやお母さんと相談して決めるというようなことがある場合に、そういったことがじゃ指導できないかといえば、学校の中でそういう時間をとることは十分、学習指導要領に仮にあるなしにかかわらずあるわけでございますし、これからは学校の中でそういう取り組みをすることが必要になってくるというふうに思います。  そのためには、まず設置者なり中高一貫の側が豊富な情報を各小学校に提供するということが大変大切でありまして、それを受けて各小学校子供たちにわかりやすく、中学校高等学校へ行くということと中高一貫校へ行くということの意味趣旨、そういったものを子供たちに十分に伝わる、これは小学校において大切になってくることであろう、こういうふうに思います。
  125. 馳浩

    ○馳浩君 私は、ここはちょっと問題点があると思う。なぜならば、今現在都市部では私学の中学校を受験するということで、そういう意味での進路指導というのはだれの役割になっているか。塾なんです。私の住んでいるところのような地方ではそんなにありません、ほとんどない。ところが、大都市圏においては私学の受験ということで学校の役割よりも塾の役割の方が大変大きい。それに情報。あるいは今回この中高一貫教育の場合には、自治体の配慮によって面接等も採用して入学選抜制度をするとなった場合に、面接といったって我々だって就職試験のときとかいろんなときに、じゃどういう面接した方が面接官が喜ぶだろうかとか対策考えなきゃいけないわけなんです。  それを考えたときには、私が言いたいのは、指導要領に明記して、学校内にちゃんと進路担当の先生もいるんだよ、子供たち選択肢がふえる以上は、中学校以上の進路については常に相談できるんだよという体制を整える。もしそれができないのであるならば、やはりこれは文部省の側からも、進路についての相談を受けるようになるでありましょうから、各学校の校長先生、あるいは主任の先生ですか、あるいは望む子供がいる担任の先生がちゃんと指導できるようにしてくださいよというふうな相談ぐらいは、指導ぐらいは私はしてもいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  126. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) ちょっと言葉は適切でないかもしれませんが、もろ刃のやいばと申しましょうか、二つ考え方があるように思います。  一つは、小学生段階でございますので平生の学校生活を送ってもらいたい。そして、五年生、六年生ぐらいになったときに、近くにこうした異なった学校がいろいろある。そのときにどちらに行くという形が自然な形で選ばれていくような形が望まれるというふうに思います。  しかし一方で、何らかの入学者の決定が行われるというときに何の準備もなく、そのことがかえって生徒保護者たちに負担をもたらす、そういうためには十分な準備が必要だという面もあります。ですから、余り構えて平生から選択ということを意識下に置くということのもたらす問題と、それからそうでないことから来る、そのときになって負担をかけるということの問題と両方あろうかと思います。  今の先生の御指摘は大変重要な点でございますので、今のようなことを踏まえまして私たちも研究をしてみたい、こんなふうに思います。
  127. 馳浩

    ○馳浩君 次の質問に移ります。  教育内容の多様化ということが中教審の答申にも七項目出ております。多様化というと、先ほど私も申し上げましたが、総合学科ならば対応できますね。ところが、普通科ということを考えるとどの程度対応していいかわからないわけですが、中教審の答申に言う七項目の教育内容の多様化ということをどの程度実施させるおつもりですか。
  128. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中教審が示しておりますものはあくまで例示でございます。そこで示されておりますのは、体験学習を重視した学校、あるいは地域に関する学習を重視した学校、国際化、環境に関する学習等七つほどが挙げられてございますが、これは中高一貫校をつくる際の参考として挙げられているわけでございます。  これをどんな形で教育課程の中に実際に入れていくかということでございますが、それはそれぞれの設置者なり学校で御判断いただけばいいわけでございますけれども、そういった特徴を生かす余地としては、今回の導入と時期を合わせまして現在教育課程審議会で審議が行われておりますが、そこでは、中学校段階高等学校段階において各学校がカリキュラムをつくるときに、国の画一的な基準ということでなくて、幅広い裁量を持ってカリキュラムを編成できるような仕組みが今検討されてございます。  ですから、そういったものも生かせば相当に特色を持った形でカリキュラムが編成できるというふうに思っております。そのときにこの例示を参考にしながら、それとももちろん別のものもあり得るわけでございますけれども、この中の一つを参考にする、あるいは二つを参考にする、いろんなことはそれぞれの学校なり設置者がそれぞれの生徒や地域を生かした形で御検討いただければよろしいかというふうに思っております。
  129. 馳浩

    ○馳浩君 次に、中高一貫教育校として三つのタイプが考えられているということでありますが、連携型の中高一貫校は中学入試はそもそもないというわけでありますから、結局大学入試までは受験が回避されるということで理解してよろしいのでしょうか。  さらに、連携の中身でありますが、どの程度、どういうような連携があればいわゆる連携一貫校になるのでしょうか。
  130. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) まず、連携型の性格でございますけれども、私ども連携型をどんな形で規定するかということを今検討しておりますが、やはり中学校高等学校の両者が協議をして一貫性を持った教育課程を編成する、そういうことがまず不可欠だろうと思います。それを前提にして教師間の相互交流あるいは生徒の交流ということも望まれることでございますし、また、一定の行事等を両者が共同し合って行うという形の連携ということも望まれることだろうと思います。そういったことを連携型として整理していってはどうかと思っております。  そういう形で連携して両校が運営されるわけでございますので、入試をどうするかと。中等教育学校併設型の中学校のように選抜なしでつなぐという御提言もあるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、連携型は普通にある中学校と普通にある高等学校間が、両者が協議をして中高一貫をつくり出していくものです。したがいまして、他の中高とその点では同じでございます。したがって、私ども選抜自体は必要であろうと。  ただし、先ほど言いましたような中高一貫の実態があるわけでございますので、他の中高の接続と同じような選抜というのは必要ないのではないかということで、じゃ学力検査をどうしようか、あるいは調査書の扱いをどうするか、これらを含めて簡便なあり方でいいのではないかと思っておりますが、具体的にどうするかにつきましては、この国会での御審議等を踏まえまして検討していきたいというふうに考えております。
  131. 馳浩

    ○馳浩君 今答弁いただいたように、連携学校には選抜はあるわけです。具体的にどういう内容になるかはこれからもちょっと注目していかなきゃいけないことでありますが、連携校の場合の選抜のあり方というのは、今ある三三制の高校入試改革改善等も今回の議論と並行してありますけれども、この連携校選抜のあり方というものがもうちょっと具体的に見えてきませんので、これは恐らく自治体側からどうしたらいいんだろうかというふうに聞いてくると思いますので、これに対する議論はもうちょっと私は深めておいていただきたいと思います。  関連して、この連携校の場合に、中学校で教えている先生が高校で教える、あるいは高校で教えている先生が中学校で教える、このカリキュラムの連携ということも、考えたらそういうこともあり得るわけですね。その場合の待遇面、給与面であるとかいろんな意味で教員の待遇面ということをどのようにお考えですか。
  132. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 連携型につきましては、先ほど申し上げておりますように、基本的には現行の中学校、現行の高等学校、両者が協議してカリキュラムを設定する等によって中高一貫の実態をつくっていくわけでございます。それは形式的かもわかりませんが、あくまで既存の中学校であり高等学校であるわけでございます。  ですから、中学校の教師については現在の教育職(三)、高等学校の教師については教育職(二)ということになろうかと思います。その点は、今ある一般の中学校高等学校という押さえて処理をしていくことになるだろうというふうに思われます。
  133. 馳浩

    ○馳浩君 これは余り文部省の責任ではないんですが、現場で私も教員をしていたからわかりますが、意外と縄張り意識というのは強いものなんですよ。そういう意味で、これは本当に文部省の責任ではないんですけれども、組合がここにどういうふうに立ち入ってくるかわかりませんけれども、教員の立場が違う人間がいたときに上下関係とか、こういうふうに結構トラブルが起きやすい、微妙な心のひだに触れる問題でもありますので、この点もぜひ注目しておいていただきたいんです。はっきりと最初からそういうふうにばしっと言っておいた方がむしろ受け取る側は割り切ってやるものなんですけれども、この点はこれ以上追求しません。  それから、先の長い話かもしれませんが、中高一貫校の卒業生の問題であります。  私は実は、高等学校における総合学科を卒業した生徒の進路について、ぜひとも国公立大学あるいは私学でも推薦の枠をとるべきじゃないかと。それが本当の意味で親御さんたちが総合学科高校に預けた気持ちを酌むことになるのではないかという質問をさせていただいて、今現在でも各大学で少しずつ総合学科の卒業生を推薦で受け入れるというところがふえてきていると伺っております。大変よいことだと思いますが、同じようなことがこの中高一貫校の卒業生にも当てはまると思うんです。  そういう意味で、卒業生に関して将来的に国立大学等で推薦枠を設けるとか、こういう具体的な考えであるとか、やはり何がしかの配慮が必要なのではないかという議論というのは、これは中教審の中でもあったんですか、それとも文部省議論しておられるんですか。
  134. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 文部省では、御指摘総合学科卒業生あるいは専門高校卒業生について、能力・適性等を多面的に評価する、そういう観点から選抜方法工夫するなど受け入れに配慮するよう求めておるところでございます。そんなわけで、それぞれの大学におきましても専門高校総合学科卒業生選抜を実施したり、あるいは推薦入学を行ったりしておるところでございまして、推薦入学を行う大学平成七年度は八十八校でございましたけれども平成九年度には百二十校に増加をしております。  御指摘中高一貫校でございますが、この学校においてどのような学校を設置するのか、あるいはどのような内容を持った教育を行うのかということについては設置者にゆだねられておるところでございまして、生徒の履修内容は学校によりさまざまなものとなることが予想されるわけでございます。そういったことから、中高一貫校の卒業生一般について、その人たちのために特別に推薦枠を設けるなどの配慮が必要かどうかということについては、これはちょっと慎重な検討が必要だろうと思っておるわけでございます。  それとは別に、やはり能力・適性というものを多面的に評価するということは重要でございます。そういう観点に立ちまして、専門学科総合学科タイプなどについては現在の専門高校総合学科卒業生と同様の配慮が必要ではないかと文部省としては考えておるところでございまして、大学に対しましてもそのような配慮をすることを求めてまいりたいと考えておるところでございます。
  135. 馳浩

    ○馳浩君 この総合学科高校については、教育現場からも推薦校をできるだけふやしてほしいという要望が大変多いので、これが大変ふえているということはよいと思いますが、同じような議論が、この中高一貫校を卒業するころ、恐らく進路指導の先生方に対して親御さんから、保護者の方から多分出てくると思います。大変よいカリキュラムで六年間学びました、よかったですねでは済まないのが親心だと私は思います。  では、この進路をどうするのか。当初の小学校段階から中学校へやったときに、やっぱり親御さんは社会人になるまでの一つのスケールで考えていると思うんです。ところが、六年間学んだ子供を次の段階社会にどういうふうに送り出すのか、あるいは短大、大学等にどういうふうに送り出すのかということは大変切実な問題であると思いますので、高等学校における総合学科進路指導について私は大変成果が上がっていると思いますので、この中高一貫教育についても、恐らくこの法案は通ると思いますから、導入することが決まった以上はすぐその議論に入っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  関連して、これは大変気の早い話ですが、大学との連携も視野に置いた中高大一貫教育の展開も考える必要があるのではないか。既に都立大学では、もう報道されておりますけれどもその研究をなされておる方もあるそうであります。あるいは私も考えたら、今現在、ある国立大学の附属中高がありますよね。これがどうも中高一貫教育一つのモデルとして各都道府県のパイオニアになる存在ではないかなと、施設的な面からしても私は考えられるんです。そうすると、中高大という一貫教育についても視野に入れて議論をしていくべきではないかなと思いますが、そういう意味での大学との連携について今現在どういうお考えをお持ちですか。
  136. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 現在、いわゆる附属の中高、小学校も含めて持っている大学もかなり、私立の大学でございますけれどもあるわけでございます。そういうところでは、小中高大というような系統性についてこれを配慮した教育課程、教育の実践というようなことが現実に行われている学校もあるわけでございます。  ただ、一般的に今後どうあるべきかということでございますが、一般論としては、小学校中学校中学校高校高校大学というのは系統性を持った形で教育が展開されるということが望まれるわけでございますので、そういう研究は望ましいことだと思います。ただ、これは具体の学校でどうするかということになりますと、各大学あるいは各学校教育委員会といったそれぞれの学校を所管しております、あるいは設置しておりますところがどういうふうにこれに取り組むかということでございまして、国としては、その一貫性の必要性ということは踏まえつつも、そうしたさまざまな試みを見守っていく、そういう段階だろうと思います。
  137. 馳浩

    ○馳浩君 続きまして質問いたします。  中教審の答申によりますと、答申では、中高一貫教育選択導入にしたことを実質的に担保するのが現行の高校入試の改善であると考えております。つまり中高一貫教育と現行の高校入試の改善、これは学校間接続に関する中等教育の改善の車の両輪であるというふうな答申を出しておられます。  この答申を踏まえて、現行の高校入試の改善について文部省は現在どのようにお考えですか。
  138. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この中高一貫教育の提言にあわせまして、中央教育審議会におきましても、高校入試改善が大変重要な課題であるということで同じ答申に盛り込まれているわけでございます。私たちもそれを大変重く受けとめております。  現在の高校入試現状でございますけれども進学率という面から見ますと九七%の進学率になっておりまして、希望する場合ほぼ学校に、特定の学校ということでなければ進学するという状態にあるわけでございます。ただ、特定校を目指しての受験競争というのが大変激しいということと、その選抜一つの点数ということによって行われているというこの二つに大きな問題があるという認識を持っております。  そこで、中央教育審議会の答申でも、例えば、一定レベルの点数をとった場合には学力については合格として、他の要素で合否を決めるといった選抜のあり方を考えてはどうかというような具体の提言もあるわけでございます。そうすれば、九十三点よりも九十四点がいい、九十四点よりも九十五点がいいという一点刻みの競争ということからは避けられるわけでございます。ただ、では何の勉強もなくそれでも高校かということについては、高等学校が責任を持って預かって教育を施すという点で、入試自体は前提としつつ、そういう合否のあり方についてはまだまだ改革、改善の余地があるだろうというふうに思っております。  中高一貫教育の実施にはいろんな趣旨があるわけでございますけれども中学校高等学校選抜なしで結ぶという点はそのとおりであるわけでございますので、この中高一貫教育の円滑な実施のためにも、高等学校の入試の改革、改善というものについては今言いましたような基本的な考え方で、選抜方法多様化選抜尺度の多元化ということでよく言っているわけでございますけれども改革、改善に取り組んでいくべき課題だと、こういうふうに思っております。
  139. 馳浩

    ○馳浩君 現在、現行の学習指導要領は学校五日制に向けて改訂中だと私は伺っております。ただし、この中高一貫校ができるということになれば何らかの特例措置が必要なのではないかなと。つまり、今現在改訂というのは学校五日制に向けての改訂であって、ここに中高一貫校という議論は入っていません。ですから、今回この法律が通れば中高一貫校はできてくるわけでありますから、まさしく教育内容のいわゆる中学校段階高校段階連携というのは当然なされなきゃいけないと。そうすると、重複するものは省き、慎重にじっくりと時間をかけるものはそうし、体験学習等いろんな幅の広い教育内容を入れていってほしいわけです。  そういう意味から考えれば、現行の改訂の考えの中で何らかの特例措置を、これは法律がほぼでさると思いますからなされていいのではないかと思うんですが、最後にこの点の議論がどの程度進んでいるのかをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  140. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 基本的にこの中高一貫教育につきましては、先ほどから申し上げておりますように、前半は中学校学習指導要領、後半は高等学校学習指導要領、その学習指導要領について、教育課程審議会で完全学校週五日制ということを前提で議論が行われている、そのとおりであるわけでございます。  したがいまして、この中高一貫校につきましても基本的にはこうした中高の学習指導要領が準用されるわけでございますが、六年間を通した学校だという点は基本的に違うわけでございますので、それに加えて、この六年間の中高一貫校特色が生かせるような特例措置を講ずる必要があるだろうと思っております。そして、その内容につきまして今検討しておりますし、教育課程審議会にも語るというような段階になっております。
  141. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございます。
  142. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 法律案は、中等教育の内容、それから高校入試ともかかわる中学校高等学校の接続問題、そして小学生にとっての中学校選択の問題という三つの側面から考える必要があるのかなというふうに思っているんです。  初めに、中等教育の内容にかかわって、基本問題について質問したいと思うんですが、学校教育法では、中学校の目的は中等普通教育を施すことにあり、高等学校の目的は高等普通教育及び専門教育を施すことにあるとして、中学校教育の目標、高等学校教育の目標をそれぞれ三点ずつ挙げています。  法案の概要によりますと、中高一貫教育制度導入中等教育多様化を一層推進するということなんですけれども、そもそも中等教育多様化というのは学校教育法上のどういう理念に基づいて進められているのか、また、現に行われているどういう内容の教育をいうのか、基本問題なんですが、お聞きします。
  143. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中等教育につきましては、前期中等教育と後期中等教育があるわけでございます。前期の中等教育中学校でございまして、これは義務教育となっております。それから、後期の中等教育高等学校で行われるというふうになっているわけでございます。  そこで、現在の多様化ということでございますけれども、前期の中等教育であります中学校、これは義務教育ということを踏まえまして、基本的には共通の内容を教育するということでございます。ただ、中学校段階になりますと生徒たち個性、特性というものも分化してまいるわけでございます。したがいまして、そうしたものは伸ばしていく必要があるだろうということで、選択を行い得るようにする、生徒たち希望等を踏まえて、生徒によってある教科について多くしたり少なくしたりするような、そういう選択の幅を自由に扱い得るようにするという、学習指導要領の中の選択幅の拡大というような形で対応しております。  それから、高等学校につきましては、これは義務教育でもございませんし、その発達段階からいきましても、個性能力・適性、興味・関心、大変多様化してくるわけでございます。それは普通科総合学科専門学科という学科の区分けの違いもございますし、具体的に八十単位高等学校の卒業単位にしておりますが、その内容については、一定の教科科目の修得を国が課しつつ、八十単位の内容については相当に各学校なり生徒選択にゆだねる、そしてそれは、専門学科総合学科普通科、それぞれによってまた異なるという形でこの多様化対応しているということでございます。  今申し上げましたように、中等教育を大きく二つに分けまして、そのような形で今カリキュラムは対応しているということでございます。
  144. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 普通教育、専門教育、それから総合教育ということで、そのあり方が実践的にも理論的にも追求されてきたように思うんです。私はそういう議論は大いにするべきだというふうに思っているんですが、そのことと今の多様化というのが理論的に余り結びつかないんです。個性ということを言いますならば、同じように普通教育を受けてきた文部大臣と私と随分個性は違いますでしょう。そういうものだと思うんです。そのあたり、大変根本的な問題意識を持っています。これは引き続き深めていきたいと思います。  次の質問に入りますが、中等教育多様化を一層推進するというのは、一つには、今までになかった六年制の中等教育学校というのを多様化一つに加えることであり、二つには、現に進められているいわゆる高校多様化中学校を接続、法案では併設ですが、連携も含めて二つの方法で接続していくということですか。
  145. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) この多様化、今回は制度にまで及んだ提案になっておるわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、一つ中学校高等学校という学校制度を前提にして、中学校段階ではその中の教育課程の編成、高等学校段階では大きく三学科体制で、その中のカリキュラムの編成によって柔軟性を持たせていくというこれまでの対応に加えて、三三となっております制度のほかに六年間の一貫した形で中等教育を展開する、そういう学校制度を設けようと。もちろん連携型というようなものもあるわけでございますけれども、基本的にはそういう形で学校の仕組みにまで及んだ形でこの多様化というものを推進していく、これが今回の考え方でございます。  具体的に、ではどんな形でそれぞれの小学校を終えた子供たち中等教育に学ぶのかということにつきましては、生徒保護者たちニーズを十分に踏まえながら、設置者において最もふさわしい形での中高なり中等教育学校、あるいは併設型、連携型といった形の制度を活用していただいて、生徒たちに合った中等教育の場が確保されればいいのではないか、こんなふうに考えて今回の提案になっているわけでございます。
  146. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 何かよくわからないんですけれども、内容を抜きに接続の問題だけ考えると、何か物事が単純化され過ぎてしまうんだと思うんです。  私の地元埼玉県では、実は全日制の県公立高校が百六十二校あります。そのうち、普通科だけだという高校が六十五校で四〇%、専門学科や専門コースを持っているいわゆる多様化されている高校が六十三校で三九%です。残りが総合学科高校四校と職業高校三十校ということになるんです。  総合学科というのもいわゆる高校多様化の一環ですね。中等教育多様化を一層推進するというのは、やはりこういう多様化中学校を接続していくということが基本的に構想されているんだろうと思うんですが、そうじゃないんですか。
  147. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) ちょっと質問を取り違えているかもわかりませんが、枠の説明から申しますと、私が先ほど申し上げたように、中学校高等学校、三三のほかに学校制度として入れるということです。そのときに、中学校のところは、基本的には義務教育でございますからそんなに内容が異なるわけではないわけでございますけれども、では高等学校段階で、中等教育学校であれば後期の課程でどういう内容のカリキュラムにするのか、あるいは併設型の中高一貫であれば高等学校のところでどういう内容にするのか。そのときに、専門学科中学校併設するのか、あるいは総合学科のような形の併設型の高等学校を用意しておいて、そこと中学校を接続するのか。あるいは、中等教育学校の場合でありましても、後期課程のところで幾つかの学科を用意しておいて、総合学科型の後期課程で用意しておいて、そこに中学校を終える段階で、前期課程を終える段階選択をしていくという形もあるということなわけでございます。  ですから、今先生が御指摘の、現在こうなっている、それをどんな形で中等教育学校をつくっていくかというのはそれぞれの設置者判断であるわけでございます。  ですから、例えば、生徒高等学校段階で減ってきているときに幾つかの学校が統合するというときに、今の幾つかの型のどれかを活用しながら中高一貫をつくる。そのときの内容は、総合学科もあるでしょうし普通科もあるでしょうし専門学科もあるだろうということであるわけでございます。  ちょっと説明を具体化する意味で、今現在、来年の四月一日からスタートさせようとしております岡山市の例を申し上げますと、商業高校と工業高校を改編する、そしてそれを総合学科に変える、高等学校部分ですね、併設型でございますから、そういう高等学校を設けますと。四つほどの系統を用意した形の総合学科タイプの高校にしますと。それに中学校併設させて、そこの中学生たちは小学校を出た段階で入学者の決定を経ているわけでございますけれども、その子供たちはその高等学校に、いずれかの系列に進んでいくという形でこの中高一貫校考えております。いろいろな形が考えられるだろうというふうに思います。
  148. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 埼玉県は、全国の高校教育の先導的役割を果たしているとか、あるいは高校教育改革のモデルになっているとか言われているんです。これは自他ともにだと思います。  こうした現に進められているいわゆる高校多様化について深く検討した上で今度の法律案が出されてきたのかどうか、伺いたいんです。
  149. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 先ほどからもお答え申し上げていたわけでございますけれども、三三という制度の持つメリットと同時に、さまざまな教育課題というものが指摘され、それを克服するために、六年制中等学校でありますとか、あるいはそういう名前に至らないまでも中高を接続した学校というものを考えてはどうかということは、四十六年の中教審答申あるいは六十年の臨時教育審議会答申以降、長く検討されてきたわけでございます。  しかし、受験競争の低年齢化等々についてのコンセンサスを経ないままに今日に至ったわけでございますが、その当時はまだ、そうした制度改正よりも、中学卒業生が増加し、進学率も上昇している、こういうときでございましたので、まず現行の高等学校制度を前提にして、収容定員を広げて高校生として受け入れるという形で各都道府県、自治体は対応を優先してきたわけでございます。  進学率は現在九五%ということでほぼ横ばいになり、生徒の数は十五歳人口が減少傾向にあるという中で、高等学校に学んでおります生徒たちのいわゆる多様化、さまざまな面の多様化というのがある。そのときに、それにより適応した形での学校制度というものを考える必要があるだろうという形で今回、中教審で改めて提言され、そして法案という形で具体化をしたわけでございますが、こうした中等教育段階におきます多様化というものにどう対応するかという議論は長い議論を経ているわけでございますし、もちろん、今回答申を出されました中央教育審議会におきましても、さまざまな関係者からのヒアリング等を経ての慎重な審議の結果の提言というふうに理解をいたしております。
  150. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 いわゆる高校多様化というのは、単純に高等学校教育内容の問題としてそれだけを切り離して考えることができない、つまり高校入試問題と一体のものとして考えなければならないというところに複雑さがあります。  そこで伺いたいんですが、中高一貫教育制度というのは、一方で高校入試多様化の弊害が広範に存在しています。  これは埼玉県教育委員会が出している「なるほどTHE入試」という冊子なんですが、現場の先生たちも、余りにもいわゆる多様化が進んでしまって、どこの学校でどんな教育をやっているのかわからないし、入学試験のあり方もわからないということでこういうのをつくったんですね。  そういう中で、高校入試選抜もないゆとりのあみ中等教育を一部に導入するということですか。
  151. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 中高一貫教育趣旨は、六年間を一貫して教育をする、六年間の計画的、継続的な教育によって生徒たち個性の伸長や才能の発見をより可能にする、そして六年間という長い期間を通して生徒たちのよさを見、それを伸ばすということができるようになる。あるいは、六年間という異年齢生徒たち一つ学校生活を送るということによるメリットというものも生かしていこう、そういったことでございます。  教師も生徒生活をともにしているわけでございます。そこで学年の進級という形は厳格に行われているわけでございますので、改めてそこで入学者選抜を課すということは必要ないであろうというわけでございます。一つ学校としてこれを行うわけであります。  したがって、その中高一貫校併設型あるいは中等教育学校の要素として、入学者選抜が課されないまま後期課程に進む、つまり高等学校段階に進むということはあるわけでございますけれども、それだけを目的にした、そのためにということではないわけでございまして、今言いましたような生徒たち実情によりふさわしい教育制度を整えるという、その一つとしてあるということでございます。
  152. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 高校入試選抜もないゆとりのある中等教育を一部に導入するということだと思うんですよ。  文部省中等教育学校導入多様化を一層推進するというふうに言っていますけれども、そもそもその多様化がどうなっているのか、具体的に見る必要があるんだと思います。  埼玉では、個性を生かす教育社会の変化に対応する教育がいわばうたい文句となって高校多様化が進められていますが、現実は必ずしもその目的とするものと合致したものになっていないんです。いわゆる偏差値を追放したかに見えても、学校の外ではほとんどの受験生が業者テストを受けて、その成績で受験校のランクを決めますし、いわゆる推薦制度調査書、内申書の重視は受験競争を一層激しくしたと言われているんです。  とりわけ調査書は、十段階相対評価でいわば輪切りにした上、新学力観に基づいて、関心、意欲、態度まで評価され、ところによってはそれも点数化され、特別活動の記録まで評価されていくわけで、日常的なよい子競争を余儀なくさせているということは、私は本委員会でも既に指摘をさせていただいたと思うんです。  つまり多様化された高校は、子供たち個性で選ばれているんではなくて、相変わらず業者テストの点数、調査書、内申書の点数で選ばれているんです。こうした実情を御存じだと思うんですけれども、どうですか。
  153. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) 後で見せていただきたいと思いますが、その「なるほどTHE入試」ですか、この学校はどういう入試をやっているかというのを解説してあるわけですね。私は大変結構なことだと思いますね。  しかし、もっと必要なことは、入試の方法だけが多様化してそういう本が出るのではなくて、個々の学校がどういう特色があるのかというそういう多様化の情報発信もそれぞれの高校がやっぱりしなければ、本当の意味選択肢が提供されたということにはならない。  現実は確かに、委員おっしゃるような何らかの方法で点数で序列をつけて、ここなら入れるよという進路指導が行われているだろうということは私も想像するにかたくないのでありますが、それをどうやって変えていくのかということは、やっぱりまず中学校進路指導のサイドもそれぞれの高校特色、入試の特色というのをしっかり見きわめると同時に、高校側も自分たちはこういう教育をやっているということをもっと積極的にPRし、そうして中学生がそれを見て判断をするということでなければ、ただ入り口のやり方がちょっと変わったというだけに終わってしまえば、何のことはない、現状とそう変わらないじゃないかというような委員の御指摘にもなってくると思います。  ですから、これは確かに時間がかかるかもしれませんが、もっともっと学校特色で受験生が、中学生高校を選ぶということ、中学校のサイドも高校のサイドもいかにしてそういう努力をするかということが極めて重要なんだろうと、私は、今委員の御意見を聞きながらそういう印象を持ったところであります。また、そうしなければいけないと思います。
  154. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 多様化が、個性で選ばれているんじゃなくて、点数で選ばれているということが問題だというふうに思っているんですね。それは、今言ったように、十段階の相対評価で輪切りにするわけですから。  これは何も埼玉だけがやっているわけではなくて、文部省はいろいろと出しますでしょう。調査書の書き方なども事細かに指示していらっしゃる本を私持っていますけれども、その中で、評定の仕方、相対評価、学級や学年における相対的な位置をわかるようにすることが必要なんだと、こういうことを言っているわけです。だから、偏差値はなくなっても、やっぱり輪切りなんですよ。それでもって子供たち学校を選んでいるんです。  この多様化された高校子供個性ではなく点数で選ばれているということと同時に、そのことともかかわってもう一つ見過ごすことができないのが、多様化が必ずしも子供たち個性ニーズに合ってないということなんです。こたえていないということです。そのことを最もよく示しているのが普通科に置かれたコース、理数コースとか外国語コース、園芸デザインコース、情報処理コース、日本文化コース、国際文化コース、体育コース、国際観光ビジネスコース等々あるのですけれど一も、人気がないのです。  十月一日時点で中学三年生の進学希望調査をしますと、そこに一番中学生やあるいは保護者の正直な気持ちがあらわれると思うのですが、コースは一九八九年開設した二年目の〇・五倍をピークにして下がり続けて、九六年十月は〇・三七倍、ある高校の情報ビジネスコースは四十人定員でゼロ、国際文化コース一人、国際観光ビジネスコース一人、こういう例もあります。それから、九七年十月を見ますと〇・三七倍で、同じように国際文化コース一人、体育コース二人、国際観光ビジネスコース二人などとなっているのです。  こうしたさまざまな問題を持っている多様化の実態をやっぱり直視するべきだというふうに思うのです。多様化というのは何か選択肢が広げられていいことなんだということが無前提に進められていきますと、これはやっぱり問題を残すというふうに思うのですが、どうですか。
  155. 辻村哲夫

    政府委員辻村哲夫君) 二つの点について答弁させていただきたいと思います。  まず一つは、生徒たちニーズと実際に高等学校が用意している学科、コースが合致していないというお尋ねでございました。生徒ニーズ、これは大変大事なことでございます。それを踏まえつつ高等学校の側も、どういう高等学校の内容であるべきか、コース、学科等もどうあるべきか、これは真剣に考え、見直すところは見直し、直せるところは直していくという努力が必要だろうと思います。ですから、それは常に起こることでございますから、各都道府県において積極的な取り組みを期待したいというふうに思うところでございます。  それからもう一点、そういったところであっても生徒たちが行かざるを得ない状態になっている。そのときに、必ずしも個性ということではなくて点数でもってその高等学校に行かざるを得ないような状況になっているということであるわけでございますけれども、この点は私ども、入試のあり方の問題としてその点こそが大変大きな問題だということで、選抜尺度の多元化多様化ということでやっているわけでございます。  先般の中教審の答申におきましても、学力の点においては、例えば一定の点数を取得した生徒については、学力の点については一点刻みで上下をつけない形にして、他の面で評価をして合否を決めるということにも取り組んでほしい、そのことが点数競争を是正する方途だという形での答申もいただき、それを各県にも検討してほしいという形で我々も伝えているわけでございますけれども、そういった形での入試改革もこれから進めていかなければならないと思います。ですから、どういう形での学科やコース、どういう定員でこれを用意するかということと、それから入学者選抜のあり方ということ、これは先生御指摘のとおり大変重要なことでございますから、それぞれこれからも改善すべく努力をしていかなければならないことだろうと思います。  ただ、一点、ちょっと申しわけございませんが、調査書の問題について触れられましたけれども、これは各設置者においてどういう形で、学力検査とは別に、学力検査でははかれない要素を入手するかという形で各都道府県等において検討されていることでございまして、文部省が特にこうあるべき、あああるべきということを申し上げておるわけではないことは御理解いただきたいと思います。
  156. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 相対評価の指示はしていますよ。「新指導要録の解説と記入 中学校編 文部省内指導要録研究会監修」、こんなの出ています。  私は、個性というのは尊重するものであって、外から枠組みを与えるものではないんだと思います。受験競争と多様化のこの現状改革する方が先決なのに、それをそのままにして、中高一貫教育という名目で問題点を拡大推進するのはどうも納得ができません。  次の質問に入ります。  中高一貫教育制度が小学生に与える影響の大きさが大変心配になるわけです。受験競争の低年齢化を招かないように選抜のための学力検査はしないということなんですけれども選抜がある以上、競争は避けがたいですね。違いますか。
  157. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) それもまた一つ重要なポイントだろうと私も思います。たまたま二月の下旬だったでしょうか、私は五ケ瀬中学校高等学校に行きまして、お昼の時間に幾つかのテーブルで、何で君たちここの学校へ来たのと聞いてみたんです。そうすると、非常におもしろかったのは、例えば相当受験勉強したのなんて言ったら、もちろんそんなこと必要もないししてもいないと。じゃ何でこの学校に興味を持ったのと言ったら、パンフレットがたまたま置いてあったという子が非常に多かったんです。それを見て興味を持って実際現場に行って、非常に自然が豊かなところで、あそこはたまたま全寮制ということもあったんですが、親元を離れてそういうところで暮らしてみたいとかいうようなことで、ある意味では真っ当な選び方といいましょうか、真っ当な興味の持ち方でここに来ようとしているんだなというのがわかりました。  ですから、委員御承知のように、学力試験は行わないということで、それぞれのまさに学校個性多様化された個性に応じた形で面接とか実技とかあるいは小学校からの推薦とか、最終的には抽せんとかいうような形で、学力の一点差の点数で合格合格ということはやりませんということを言っているわけでございますから、競争がふえるんじゃないかとか、小学生の塾通いがまた一段とふえるんじゃないかと、この新しい中高一貫学校で。私は、そういうことにならない、今言ったようなやり方をすればそうならないんじゃないのかなと。現実に私が見聞きしてきた子供たちもそういう感覚では全くなかったということを御報告させていただきます。
  158. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 選抜に漏れた子供たちの心の傷、挫折感、そこに思いを及ぼしていないなというふうに思うんです。  今でも私立の中高一貫学校を目指して小学生たちは塾通いをするわけですけれども、もしかしたら行けない子がいるわけです、目標の私立の中高一貫校に。その子は地元の中学に行くわけです。そういうことが起こらざるを得ない環境に置かれて、どんな日常生活を送っているか想像してほしいと思うんです。  日本子供たちの学習塾通いの実態、大変深刻で、一九九三年度の文部省の調査、ちょっと古いですけれども、学習塾へ通ったことのある小学生は二三・六%、二百七万人と推定されています。とりわけ小学六年生は四一・七%に上っているんです。学習塾の帰宅時間も、小学校高学年では、十八時台が三四%、十九時台三三・五%、二十時台七・五%、二十一時台七%、二十二時台、二十二時台以降というのもあるんです。  学習塾の多くは、有名私学の中高一貫などを目指す親の、親の子供たちとあえて私は言いますが、子供たちに内申書の点数を上げるためにどうしたらよいかも含めて受験学力をつける教育をしているわけです。そこに拍車をかけるようなことはやっぱりいいことではないというふうに思うんですけれども、どうですか。
  159. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) だから、先ほど申し上げたようにこの学校は受験学力で選びませんと、そう申し上げているわけであります。  そして、どこかでみんな競争するんです、それは。例えば、かつて京都で十五の春は泣かせないということを言って、確かに高校全入のようなことを公立てやった経験があるんですが、しかしどうなったかというと、結局京都の子供たちは、十五の春はそれは泣かずにみんな高校に行ったでしょう。しかし十八の春にみんな泣いたわけです。どこかで結局そういうことが起きちゃうわけです。あるいは、それじゃということで遠い遠い大阪の高校に通うとか、私は何もそれがいいと言っているわけじゃなくて、要するにやたら何が何でも競争すればいいと言っているんじゃありません。だから、塾通いがどんどんふえた方がいいと言っているつもりももとよりありません。  しかし、恐縮ですが委員お話を聞いていると、ありとあらゆる段階で競争がなければその方がいいんだというようなちょっと印象すら、私の受けた印象が間違っているなら御無礼いたすかもしれませんが、私はやっぱりいろんな意味で、その子供たち個性でまさにいい意味の争いがある、その個性を伸ばしていくというような学校教育が、あるいは学校教育以外の面もそうですが、そういう姿に持っていけたらいいなと思っておるわけで、そういう意味中高一貫というのは、無前提で多様化がいいかどうかということはまた別にいたしまして、選択肢が少ないよりもあった方がいいということは、これはもう多分無前提に言えるんだろうと、私はそう思っております。
  160. 大島慶久

    委員長大島慶久君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時五十分散会