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国務大臣(
上杉光弘君) 私が
大臣に就任してすぐその日に指示しましたものがございますが、その一つは国土保全的な視点からの
地方振興の政策を詰めてみるというプロジェクトチームを直ちに設置することにいたしました。
これはなぜかといいますと、
国家社会の成り立ちの中で
地方が果たしている
役割というものはそれなりにあるわけでございます。また、私はかねてから都市の
住民生活と
地方の
住民生活は対立するものではなく、都市と
地方の関係は対立するものではなく相協力してこそ成り立つものだという私なりの考え方を持っておるわけでございます。ところが、
国家社会の成り立ちの中で
地方が果たしておる
役割はなかなか理解されておりませんし、評価もされておりません。理解されていないから評価されていないというのは当たり前のことであります。
その一つは何かといえば、水資源の涵養というものはこれは大都市でしておるわけではありません。また大企業がしておるわけでもありません。
地方において生活不利益
地域、生産不利益
地域に住みながら、山に木を植え、山に木を育て、あるいは大変労働力の上がらない中山間地の田畑を耕しておることがそこへつながっておるわけでございますから、言うなればそうした
役割というものがもっと正しく
国民に理解、評価される
時代を迎えることが
地方分権の
時代に沿ったものであり、新しい
地方自治の
時代を迎えるための私は土台の論理だと、こういう考え方を持っております。
そこで、一つ二つ申し上げますと、例えば長期計画が三つございます。それは治山
事業、治水
事業、急傾斜地土砂崩壊
対策事業、十六本長期計画がございますが、国土保全に関する長期計画は三つでございます。
それで、
平成九年度までで約五十兆円つぎ込んでおるのが、もう一つは三十七年から辺地
対策、四十五年から過疎
対策が始まりましたが、それでは五十兆円つぎ込んでいます。今なお過疎に歯どめはかかっておりません。都市部においては過密現象で極めて交通渋滞や住宅の不足が出ておる。
さらに、先ほど言いました国土保全では、
災害危険個所が二十二万カ所ある、それに対して三つの長期計画では二十兆円もつぎ込まなければどうにもならない、年間四兆円でございますから。そういうふうに考えますと、これは
地方の振興とか
地方の
時代と言ってみたってなかなか来ない。そこのところをきちっとすることが大切なことである。
特に、行財政改革のこのときでありますから、治山、治水、急傾斜地土砂崩壊
対策事業で年間四兆円も財政負担を求められ、五年で二十兆円も国土保全に金をかけておる。これだけコストがかかる国というのは
先進国にも後進国にもございません。そういうむだというものをなくして、そして
地方の振興に充てる、あるいは財政負担をなくすことで健全財政の方向に
財源に充てる、それは至極当然の、私は
行政の
対応すべきものであり、政治が
対応すべきものであると考えておりますが、それがなかなかできてこなかったという問題がございます。
そこで、国土保全とは何かと言えば、生活の場として集落が
全国に十四万集落ありますから、これに対するきちっとした統廃合も含めた適正配置というものは、集落を生活の場としてやるべきだと。
それから二つ目には、川上を川下が支えるという私は政策的な
システムを起こすべきだと思っているわけです。ヨーロッパにはデカップリングという生活不利益
地域に住む人たちに対する直接所得補償方式がございますが、私は我が国に直接所得補償というのはなじまぬと思っております。そうなりますと、それにかわるもの、その考え方を私は活用した政策が必要だと。それは川上を川下が支える政策的な
システムではないか。
そこで、第三セクターを打ち出しまして、ここである意味では、将来どうなるかわかりませんが、私の考え方では、
国民の負担、都市部に住む人たちの負担も求める。それは国土保全でありますとか、水資源の涵養でありますとか、土砂崩壊を抑制するということでありますとか、緑を育てることにおける空気の浄化でありますとか、直接並べていくとたくさんのものがあるわけで、御理解をいただくと思うんですが、そういうことをこの川下に住む人たちが理解、評価していただくならば、当然川上に住む人たちを支えるべきだ、それは第三セクターかなと。そして
市町村や県や国の公的資金も入れてこれに
対応すべきではないのか。
こういう考え方で、国土保全的な視点からの我が国の宿命的な自然
災害対策、そういう治山、治水、こういうものを、きちっとした国づくりの方向というものをさらに
地方が果たしていくべきだという考え方を方向づけしたつもりであります。