○猪熊重二君 時間がありませんので、私の
意見だけ申し上げて、もし今後
公務員倫理法制定とかそういうときにいろいろ参考にしていただければと思います。
私は明治憲法下における官吏が立派であったということを言っているわけじゃないんですが、しかし明治憲法のもとにおいては、明治憲法第十条において「天皇ハ文武官ヲ任免ス」ということになっておりまして、官吏は明治憲法下では天皇の
行政権行使のお手伝いである、補助者であるという誇りがあったから、悪いことがなかったわけじゃないけれ
ども、もう少し真っ当にやれたんじゃなかろうかと思っております。
だとすれば、現行憲法のもとにおいて公務員がどういう地位にあるかということは、公務員はもう少し憲法を読んでもらったらどうなんだろう。憲法十五条一項には「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、
国民固有の
権利である。」と書いてある。だから、
自分が今公務員として仕事をさせてもらっているのは
国民が選んでくれたからなんだということをもう少し考えたらどうなんだろうか。
十五条二項には、すべての公務員は全体の奉仕者であると書いてある。これについてもいろいろ
意見を伺おうと思ったんですけれ
ども、伺う時間がありませんから私の
意見だけ申し上げれば、この奉仕者という言葉を少し考えてもらいたい。
国民から頼まれて仕事をして、しかし何がゆえに公務員が世から信頼され尊敬されるかといえば、それはやっている仕事が公共にかかわる仕事だから尊敬されるのであって、公務員が偉いからじゃない。これは奉仕者なんです。奉仕者だったら奉仕者らしく、もう少し身を引き締めて
国民のために働いたらどうなんだというこの原点がどこか抜けている。この辺がおかしなことになっていると思うんです。
もし
公務員倫理法をつくるとすれば、私は二点だけ考えていただきたい。
第一点は、要するに接待供応に関してなんです。
私は、明治憲法は余り好きじゃないんです。反対なんですけれ
ども、明治憲法下の官吏服務紀律、明治二十年七月三十日勅令第三十九号の第八条には「官吏ハ本属
長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其職務ニ関シ慰労又ハ謝儀又ハ何等ノ名義ヲ以テスルモ直接ト間接トヲ問ハス総テ他人ノ贈遺ヲ受クルコトヲ得ス」と書いてある。要するに、上司の許可がない限りノーパンしゃぶしゃぶ屋には行くなと書いてある。謝礼をもらうなと書いてある。「何等ノ名義ヲ以テスルモ」、直接的であれ間接的であれすべて他人から物をもらうなと書いてある、そのとおりだったかどうか知りませんが。
あるいは、この官吏服務紀律の第十条には「凡ソ上官タル者ハ職務ノ内外ヲ問ハス所属官吏ヨリ贈遺ヲ受クルコトヲ得ス」と書いてあって、役人仲間でも、特に上役が下から物をもらっちゃならぬぞと書いてあるんです。
子供みたいなことだけれ
ども、それでもちゃんと明治憲法下の官吏はこれで服務をしていたんです。
だから、もし
公務員倫理法を
総務庁としてつくる意思があるんだったら、ともかく公務員は職務に関してだれからも一銭も金をもらう筋合いも物をもらう筋合いも何もないということを前提に考えていただきたい。なぜかというと、
社会的儀礼ということになるから、千円が
社会的儀礼なのか三千円が
社会的儀礼か、そんな問題が起きてくるんです。一切もらうなということにしておけば事はすっかり明らかになる。この点が一点です。
もう一点は、
公務員倫理法をつくるんだったら、非常に
日本人には向かないんですけれ
ども、内部告発なり自首なりについて規定してもらえたらと思うんです。
先ほど申し上げた
ように、公務員がかかわる
ようなことは、相手と本人が黙っていれば事はほとんど発覚しないのが原則なんです。そこで、内部告発という言葉と密告という言葉と非常に似通っているかどうか知りませんが、そういうことでもやるとか、あるいはもらっちゃったけれ
どもまことに悪かったといって自首してきたら勘弁してやるとか、その辺のことをやってでも予防しないと、この公務員の構造的汚職は今後もなくなることはないだろうと思うんです。
その二点、要するに一切の金品、物品、供応接待を受けてはならぬということと、内部告発ないし自首に対する刑の減免的なこと、この二つをぜひとも考えておいていただきたいと思うんです。
一生懸命やっている人は大勢いるけれ
ども、しかしこれだけいっぱい悪いのもいるんですから、その辺を申し上げて、ちょうど時間になりましたので、いろいろ御
意見を伺いたいんだけれ
ども、これで終わります。