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1998-02-10 第142回国会 参議院 財政・金融委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年二月十日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  一月三十日     辞任         補欠選任      角田 義一君     峰崎 直樹君  二月二日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     勝木 健司君  二月三日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     今泉  昭君  二月四日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     長谷川 清君  二月五日     辞任         補欠選任      長谷川 清君     伊藤 基隆君  二月九日     辞任         補欠選任      片山虎之助君     谷川 秀善君      峰崎 直樹君     齋藤  勁君  二月十日     辞任         補欠選任      谷川 秀善君     鈴木 政二君      松浦 孝治君     中原  爽君      今泉  昭君     菅野 久光君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石川  弘君     理 事                 岡  利定君                 河本 英典君                 楢崎 泰昌君                 久保  亘君                 益田 洋介君     委 員                大河原太一郎君                 金田 勝年君                 鈴木 政二君                 谷川 秀善君                 中原  爽君                 野村 五男君                 林  芳正君                 松浦 孝治君                 伊藤 基隆君                 今泉  昭君                 齋藤  勁君                 菅野 久光君                 牛嶋  正君                 志苫  裕君                 三重野栄子君                 笠井  亮君                 星野 朋市君                 菅川 健二君    国務大臣        大 蔵 大 臣  松永  光君    政府委員        大蔵政務次官   塩崎 恭久君        大蔵大臣官房長  武藤 敏郎君        大蔵大臣官房金        融検査部長    原口 恒和君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        証券取引等監視        委員会事務局長  堀田 隆夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        経済企画庁調整        局調整課長    谷内  満君        経済企画庁調査        局内国調査第一        課長       古川  彰君        通商産業省産業        政策局産業資金        課長       齋藤  浩君        建設省建設経済        局建設業課長   中山 啓一君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月三十日、角田義一君が委員辞任され、その補欠として峰崎直樹君が選任されました。  また、昨日、峰崎直樹君及び片山虎之助君が委員辞任され、その補欠として齋藤勁君及び谷川秀善君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石川弘

    委員長石川弘君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案審査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 石川弘

    委員長石川弘君) 預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案を一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。松永大蔵大臣
  6. 松永光

    国務大臣松永光君) 法律案についての趣旨を申し上げる前に、一言ごあいさつをさせていただきます。  今般、大蔵大臣を拝命いたしました松永でございます。  今回の大蔵省をめぐる不祥事は、行政に対する信頼を著しく傷つけるものであり、ざんきの念にたえません。職員一同、深く反省するとともに、綱紀の粛正を徹底し、国民信頼回復全力で取り組む決意であります。  また、現下の経済金融情勢への対応は緊急を要するものであり、金融システム安定化のための措置等を初めとする諸施策にも全力で取り組んでまいる所存でございます。  このような折、大蔵大臣の任に当たることになり、その責務の重大さを痛感しておるところでありますが、先生方の御指導と御協力をいただきつつその責務を果たしてまいる所存でありますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  続きまして、ただいま議題となりました預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  我が国では、昨年秋以降、金融機関破綻が相次いで発生いたしました。こうした中で、預金者に不安と動揺が広がるとともに、我が国における金融機能に対する内外信頼が大きく低下し、信用秩序維持国民経済の円滑な運営に重大な支障が生ずることとなることが懸念される事態が生じております。  こうした状況のもと、緊急の特例措置として、預金全額保護の徹底を図る体制を整備するための措置及び金融機関自己資本充実のための措置を講ずることにより、預金者保護信用秩序維持を図るため、これらの法律案を提出することといたした次第であります。  まず、預金保険法の一部を改正する法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、信用協同組合破綻した際の受け皿として設立された整理回収銀行について、信用協同組合のみならず一般金融機関受け皿銀行としての機能も果たせるよう、その機能を拡充することといたしております。  第二に、預金保険機構において、これまで旧住宅金融専門会社から承継された住宅金融債権管理機構貸付債権回収業務に限り認められていた罰則つき立入調査権を、破綻した金融機関から整理回収銀行に引き継がれた貸国債権回収業務にも拡大するなど、預金保険機構回収体制強化を図ることといたしております。  第三に、預金全額保護の仕組みとして平成十三年三月末までの時限措置として設けられた預金保険機構特別勘定について、一般金融機関信用協同組合の区分を廃止し、すべての金融機関対象とした一つ特例業務勘定に統合することとしております。  第四に、預金保険機構財政基盤強化を図るため、七兆円の国債特例業務勘定に交付し、破綻処理に伴い発生する損失等について、国債償還金を充てられることとしております。  第五に、一般勘定及び特例業務勘定における資金調達が円滑に行われるよう、日銀等からの借り入れに加え債券発行機能を付与するとともに、借り入れなどに対し政府保証を付与することができるよう措置することとしております。  次に、金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、金融危機的な状況に対処するための緊急措置として、預金保険機構金融危機管理勘定を設置し、平成十三年三月末までの間、整理回収銀行に委託して金融機関等が発行する優先株式等引き受け等を行うことを可能としております。  第二に、優先株式等引き受け等が厳正に行われるよう、預金保険機構に公正な審査を図るための金融危機管理審査委員会を設置することとし、その構成員は、両議院の同意を得て内閣が任命する審議委員三名及び大蔵大臣金融監督庁長官日本銀行総裁預金保険機構理事長の七名としております。  優先株式等引き受け等については、この審査委員会において厳正な審査基準を策定し、これに基づいて審査するとともに、引き受け等を申請する金融機関は、経営健全性確保のための計画を審査委員会に提出しなければならないこととしております。  また、審査委員会では、優先株式等引き受け等については、全員の一致をもって議決することとするとともに、議決された案件については閣議においてそれを承認するかどうか決定されることとしております。  第三に、以上の措置を講ずるための財政上の措置として、金融危機管理勘定に三兆円の国債を交付し、優先株式等引き受け等のための資金の貸し付けや優先株式等処分等に伴い損失が発生した場合の補てんなどについて、国債償還金を充てられることとしております。また、金融危機管理勘定において日銀等からの借り入れ及び債券発行が行えることとするとともに、これらの資金調達が円滑に行われるよう、借り入れなどに対し政府保証を付することができることとしております。  以上が預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 石川弘

    委員長石川弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 まずもって、新しい大臣、大変御苦労さまでございます。こういう金融情勢が厳しい折から、ぜひ御精進をいただきまして責務を全うしていただきたいというぐあいに念願するものでございます。  最初に、金融二法を審議する上で現在の金融情勢についての認識をどういうように考えているかということをお伺いしたいというぐあいに思います。  提案理由説明では、預金者に不安と動揺が広がるとともに、我が国における金融機能に対する内外信頼が大きく低下し、信用秩序維持国民経済の円滑な運営に重大な支障が生ずることとなることを懸念される事態が生じているというぐあいに言われておりますが、ちょっと抽象的でよくわかりません。具体的にどういうことを考えておるのか、お伺いをしたいと思います。
  9. 松永光

    国務大臣松永光君) お答え申し上げます。  まことに残念なことでしたが、昨年十一月には大手金融機関破綻が続き、金融市場に対する信頼が大きく揺らいだことから、金融システム安定化のための各種の対策が打ち出され、真剣な議論が行われました。その中で、一時の極めて不安定な状況からは次第に落ちつきを取り戻してきておるというふうに認識しております。しかし、年末を控えて金融市場安定性を不安視する向きも一部にあると承知しており、このような見方を払拭して金融システムの安定に万全を期するためには、できる限り早期にこの法案の成立をお願いして、そして安定を図る必要があるというふうに認識しているところでございます。
  10. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 きょうは松下日銀総裁に御出席も願っております。  同じく金融情勢についての認識日本銀行側から見てどういう問題点があったのか、それをどういうぐあいに解決しなきゃならないと考えているのか、御認識を承りたいと思います。
  11. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 幾つかの金融機関経営破綻が続きました昨年の十一月以降、短期金融市場におきましては資金取引に対します警戒感が強まっておりまして、それが金利全般に対して強い上昇圧力となって働いているということがあるわけでございます。  銀行間の資金取引金利であります翌日物のコールレートを見ますと、これが私どもの日ごろの政策的な誘導目標を大幅に上回る水準上昇する傾向があります。また、金融機関企業資金調達手段でございますCDCP金利につきましても、これは海外市場におけるジャパンプレミアムの拡大というものと互いに影響していると思われますけれども、そういう形での上昇が見られるわけでございます。  こういった事態に対しまして、私ども日本銀行としましては、長目金融調節手段ども使いながら金融市場に対しまして潤沢な資金供給を行っていく、これによって安定的な市場金利を形成するということに努めてきたところでございます。  そういった資金供給額は、具体的に申しますと、金融機関が日々必要としております平均的な市場における資金の額は大体三兆円強といったところでございますけれども、さらにそれを三兆円から四兆円上回る大規模な資金供給を続けてまいったところでございます。  こういった私ども調節効果といたしまして、短期金融市場におきましては翌日物のコールレートの方は大体落ちつきを取り戻してきております。ただ、まだ三月年度末越えの資金に対します金融機関調達意欲は依然根強いものがございますので、三カ月物のCDというようなやや長目金利はいまだに高とまりをしている状態でございます。  私どもといたしましては、これからもどり得る手段は最大限に活用しながら、市場に対しては豊富な資金供給を続けまして、これによって金融市場の安定の確保というものに努めてまいりたいと思っております。こういう措置によりましてCDのような長目金利の低下も促される、またジャパンプレミアムの縮小にもよい影響が出てくる、そういうふうに考えております。
  12. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、松下総裁から金利の問題、通貨量の問題等々についてのお話がありましたが、実は我々はここで金融二法の審議をやっている、これは極めて異例な法律案だと思います。  緊急事態に対して緊急的な措置をとろうというのがこの二法の趣旨だというぐあいに思っておりますが、このまま放置すれば一体いかなる金融情勢になるのか、要するに金融情勢危機というのは那辺にあるのかということについて、松下総裁、もう一遍お答え願います。
  13. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま申し上げました金融市場におきまして非常に慎重な態度が強く見られるようになっているというようなこと、あるいはまた一方で金融機関自体のお客様に対する貸し出し態度も非常に慎重になっている、こういった点が現在の金融情勢の中で問題になる点であると思うわけでございますけれども、そういった慎重感の背景というものはこのところの、先般の金融機関破綻等から出てまいりました金融システムの先行き、具体的に申せば最大の問題であります不良債権の処理問題の進捗の見通しいかんというような点につきまして確たる明確な見通しがなかなか持ちがたかったという点に大きな原因がやはりあるように考えられます。  この点につきまして、今回、金融関係の二法案の御審議をいただいているわけでございますけれども、この法案の中には先ほど大蔵大臣が申されましたような抜本的な不良債権処理緊急対策というものが含まれておりまして、私どもといたしましては、こういう非常に効果的な施策政府において実行されるということがひいて金融市場におきますコンフィデンスといいますか自信回復に役に立つ、それがまた私どもの行っております金融調節等政策運営に対しても大変よい効果を持つというふうに考えております。
  14. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 十一月から十二月にかけての金融不安、先ほど大臣が言われましたけれども、三洋証券であるとかあるいは山一であるとか北拓であるとか、いろいろな金融破綻が生じました。私は、そのときが恐らく最悪の時期であったろうと、株価も一万四千円近くなってきたということでどこまで泥沼の中に入るかわからぬねというような印象が強かったわけです。  それで、自民党としてはその際に新たな金融政策を立案しなければ、提案しなければこの金融不安は解消しないねと、すべての実体経済も含めて日本経済が悪化していく、その時点における一番の元凶は金融問題であるという認識を持ちまして、去年の十二月十六日に緊急金融システム安定化対策本部で立案をいたしまして、それを政府は受けこのような御提案になっているんだというぐあいに認識をしております。  現在においては株価が一万七千円を回復して若干小康状態を得ているというぐあいに思いますけれども、現時点においても実は金融不安は非常に累卵の危機にあるという、ぐあいに考えております。  それはどういうことかというと、やっぱり貸し渋りがなくならないということ、そのもう一つ奥にはBIS規格あるいは早期是正措置自己査定とか国内基準とかいうようなものが極めて不安定なところにあるということだと思いますけれども、貸し渋りについてどのような御認識松下総裁としてはお持ちでしょうか。
  15. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、最近の株価の反発とかあるいは円高、また政府によります一連の施策等によりまして金融機関自己資本面からの貸し出し制約というのはひところに比べますとやや和らいできているように思いますけれども、しかしながらなお大手金融機関中心として依然慎重な融資姿勢維持されているということも事実であると思います。企業の側におきましても、こういった金融機関の厳しい融資態度というものを眺めて、万一の場合に備えて手元資金をできるだけ厚目に手当てしようという動きをとっているわけでございます。  そこで、今後企業金融の展開でございますけれども、これはまず金融機関自身自己資本がどうやって強化されて貸し出しの余力がどれぐらい出てくるかといったこと以外に、なお社債とかCPとか金融機関貸し出し以外のルートを使いまして企業資本市場の方でどれぐらい資金調達ができるか、あるいは政府系金融機関がどれぐらい銀行貸し出しを補完できるか、また地銀とか生保とかのほかの業態が大手銀行貸し出し圧縮受け皿の働きをすることができるか、そういったいろんな点が絡んでいるように思われます。  最近の状況を見ますというと、今申し上げましたようないろいろの代替的な資金供給ルートを通じました企業資金調達の方もそれなりに増加をしてきているというふうに見受けられますけれども、他面で企業自体収益力の方もやや弱ってきておりますので、やはり金融機関融資姿勢が引き続いて慎重だということとあわせ考えますというと、年度末に向かっての金融機関の動向につきましては引き続き注意を払っていく必要があるというふうに思っております。  私どもも、三月末にかけましての企業資金繰りでございますとか、あるいは資金調達コスト上昇圧力が強まるようなことがないかどうか、なお引き続いて注意深く点検をしてまいらなければならないと思っております。
  16. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 貸し渋りというぐあいに先ほど申し上げましたけれども松下総裁の方から見て貸し渋りはあるというぐあいにお考えですか。  私の仄聞するところでは、大手銀行資本比率を上げるためにというんでしょうか、資本比率を損なわないために各支店に指令を流して債権回収に努めている、貸し渋りじゃないんですよ、債権回収を行っているというぐあいに訴える地方銀行関係者が多いんですけれども、どのようにごらんになっていますか。
  17. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 自己資本比率制約等要因から大手銀行中心といたしまして融資態度が非常に慎重になっている、それは新規の融資に対して慎重な姿勢をとるということ以外に、またリスクの判断等におきましても慎重な姿勢が強まっているという状況は、例えば借り手側の方々のアンケート等から私ども見ましても、そういう事実があるというふうに思われます。  ただ、ただいま申し上げましたように、このところ株価水準あるいはその他一般政府施策等影響がございまして、全体としての環境はひところに比べれば有利に働くようになりつつあるように思いますけれども、なおしかし、年度末が接近すること等も考えますというと、私どもとしましてはやはり金融機関資金調達姿勢が必要以上に厳しくなるということは好ましくないことであると思っております。  そこで、私どもといたしましては、第一に金融市場に対しましてこれまで同様に潤沢な資金供給を続けるという姿勢を示しまして、金融市場での自信回復を図ってまいりたい、そして実際上、また市場には金融機関が毎日必要としている金額を大幅に超えるような潤沢な資金、特に三月の期末越えの資金供給を前倒しで行うというような配慮をいたしまして、金融機関に対して資金繰り面からの制約が生じないような努力をしてまいりたい、そのことが円滑な貸し出しの疎通に役に立つというふうに考えております。  また、もう一つ申しますと、昨年の暮れから私どもコマーシャルペーパーの買いオペレーションという調節をいたしております。これは先ほど申しましたような資本市場におきます企業コマーシャルペーパー発行による資金調達に有利に寄与していくということも期待してこれを私どもの買いオペレーション対象にしているわけでございまして、現在では相当の残高となっております。  こういった措置企業側年度越し資金調達に対して有利に働くことを期待しているわけでございます。
  18. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今CPについて御言及になりましたが、あれは大体において大企業なんですね。中小企業余り関係ない話だというぐあいに思います。  それからもう一つ資金供給を潤沢にしてというお話ですが、今の貸し渋りの要因というものは実は資本比率のところにあって、現金があっても貸し出しはやらないぞという体制なんですね。  日銀通貨発行量は対前年比九%とか八%、そういうような勢いになっているように計表上ではうかがえますけれども、しかし市中の貸し渋り、中小企業資金繰りの悪さは一向に改まっていないじゃないですか。日本銀行が貸し渋り対策として資金量をふやすというのも結構ですけれども、新聞によっては、いや、たんす預金がふえたねというような話が出ているわけですね。たんす預金がどうなっているのか、私は存じません。また調べようもないでしょう。しかし、そこで銀行資本比率がどうなっているか、自己資本比率が十分な融資に耐えられる状況にあるのかどうかということが私は問題だというぐあいに思っているんです。  日本銀行の御報告を見ていますと、昨年十二月の短観で、貸し出し態度につきまして緩やかと見ている企業は減少し、緩やかと見ていたのは大体大企業なんですけれども、むしろ厳しくなったという方が非常に多くなっているように思います。そのときに日本銀行が年末融資についていろいろな手を打たれたことはわかっていますけれども、実は銀行体質そのものが弱まっているので幾ら資金量を流しても貸し渋りが直らないというような状態にあったというぐあいに思いますが、松下総裁としてはどのように見ておられますか。
  19. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 昨年十一月以降の金融機関破綻印象が大変生々しい局面におきましては、御指摘のように私どもが日々大量の資金市場に供給するわけでございますけれども、とかくその供給した資金金融機関の中に留保されておりまして、これが十分に金利の低下を促すように流れていかないという傾向があったのは事実でございます。  ただ、その後におきまして、ただいま申しましたように、株式市場における回復の傾向、あるいは政府の側における自己資本計算上のいろいろの配慮というようなものがだんだんと伝わってまいりまして、これらが金融機関自己資本比率の先行きに対します自信をやや強める方向で働きつつあるというふうに見られるわけでございます。  私どもとしましては、こういった動きが今後なお継続をいたしまして金融機関が、もちろん貸し出しそのもののきちっとした審査をやるというその節度は必要でありますけれども自己資本比率の点で必要以上に慎重な姿勢をとらなくても済むように政府側の施策効果を発揮するということも期待いたしますし、私どもの側においての資金供給という点もなお今後も引き続いて努力をしていきたい、そう考えております。
  20. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、総裁も言われたように、資金量の供給だけではなかなか直らないので、政府施策というんでしょうか、現在行われている法律案もその一つになるわけですけれども、こういう施策に対する期待感というのが、やっぱり現在の株式の評価もそうですし全世界の評価もそうであるというぐあいに思いますけれども、そういうことによって一つ一つ積み重ねていかないと今の貸し渋り状況はなかなか直らないんだろう、こういう御趣旨お話だと思います。松下総裁は若干楽観的に物をおっしゃいましたが、私はもう少し厳しく、こういう施策が現に実現をしないとなかなか難しいんじゃないかというぐあいに思っています。  現在の状況はどうなっているんだろうかということですけれども、やはり倒産リスクがある銀行については早目に回収を行うぞということで、さっき申し上げたように、債権回収強化しているのではないかということになってきます。そうなってくると、中小企業資金調達がいまだに容易でないというぐあいに私どもの耳には達しています。銀行の内部で先行きについての楽観論、期待感というものは少しはあるかもしれませんけれども、現実の姿としては中小企業資金調達は容易でない、現時点において。三月末はなおさら大変だと、これは新聞がそういうぐあいに伝えております。  こういう状態を放置しておきますと、企業の倒産がまたぞろ出てくる可能性もある。そうすると、銀行不良債権がまたふえる。後でまた不良債権の質問を政府側にしようと思っていますが、そういうような状態であると。そういうぐあいになってくると本当は株価はさらに下がってくるんですね、このまま放置しておけば。そうなってくると、金融機関の財務内容がまた悪くなってくる、また貸し渋りが出てくる。何というんですか、デフレのスパイラルと言う人もいますけれども、そのような状態になってくる可能性が非常に強いのではないかというぐあいに思っています。そういう状態であるので、量的には確認ができませんけれども、さっき申し上げたたんす預金というものが恐らくふえているよと。名前は申しませんけれども、さる金庫会社は売り上げが多くて笑いがとまらぬというような記事が出てくるわけです。  私は、結局この貸し渋りというのは実は銀行の問題ではなくて、要するに銀行の資産が悪化するという問題ではなくて、むしろ貸し渋りによって一般企業がそれに対して大変迷惑する、迷惑するというとおかしいですが、立ち行かなくなってくる。そういう意味では、一般企業金融機関というのがある意味ではちょっと違う立場にあるんですね。金融機関経済の動脈であるとか血液であると、そういうぐあいによく言われています。そこが壊れちゃうと経済そのものがストップするというような状態になっているので、非常にやっぱり金融問題というのは公共性が高いというぐあいに私には思われてなりません。  そういう意味では、日本銀行政府のやるいろんな経済金融問題についての施策を期待されているというお話でございますから、私どももそのようなことで一生懸命この法案審議を通じて日本国経済に寄与するように頑張りたいというぐあいに思っているところであります。  金融問題、今大きく分けると貸し渋りの問題とそれから金融機関破綻問題というんでしょうか、経済財政問題というんでしょうか、その二つがあるように思いますけれども、今、一万四千円から一万七千円あるいは一万八千円に向けて株価が動いていますが、それの影響はどのように考えておられますか。
  21. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 先ほどお答えを申し上げましたように、金融市場におきます反応は現在のところひところの最悪の状況の時期に比べますというとやや落ちつきを取り戻してまいりまして、私どもの潤沢な資金供給効果というのもようやくあらわれ始めたのではなかろうかというように受けとめているわけでございまして、その背景は御指摘になりましたような株式市況の改善傾向といったようなものもその基本にはあるわけでございます。  私は、やはり現状、この市場の気迷い状態あるいは慎重な状態が少し変わるかどうかという大変大事なところに来ているというふうに思うわけでございまして、この後なお引き続き私ども金融資金供給のサイドからは十分努力をしてまいりますけれども、やはりいろいろと提案をされておられます。その他の政策面での具体的な進展が行われるということが大変大事なところで、それがありまして初めて私ども措置効果を生むことができる、そういう状態にあるように考えております。
  22. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 問題を通貨量の問題に移したいというぐあいに思いますが、昨年の十二月には郵便貯金に五兆三千億の貯金量の増加があったと言われています。  各都市銀行、地銀その他の預金量等はどうなっているんでしょうか。
  23. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 月によって若干の変動がございますけれども、ごく達観して見ますというと、ほぼ横ばいの状況ということが言えると思います。
  24. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 そんなに変動はないと。  都市銀行は多分減っているだろうし、地方銀行は若干ふえている、そういう状態になっていますが、郵便貯金に五兆三千億の資金が集中したということは金融業界あるいは通貨量だとかの日銀の政策にどういう影響を与えているんですか。
  25. 松下康雄

    参考人松下康雄君) マネーサプライという見地から見ますというと郵便貯金が増加し、それがまた民間の一般預金量がふえないということをマネーサプライの点から申しますとそれは全体の伸びの圧縮の方向に働くわけでございます。ただ、実体で考えてみますと、その資金政府関係の金融機関に運用されて、それが今の金融機関の持っております非常に強い慎重な姿勢を補完するような姿勢で活用をされるということになりますというと、実体面での補完的な働きというものも期待されるものであろうと思います。  でございますので、要は民間の側も現状のリスク管理の姿勢姿勢として維持しながら、やはりよい得意先、お客に対しては、これを開拓していこうという前向きの営業の姿勢を持ってもらうことが大事でございまして、この点はやはり全体の金融システムの安定の問題に対してめどが持てるというような点からそれが期待されるようになってくる、そういうふうに思っております。
  26. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 私は、郵便貯金がふえた、それが直ちに財投機関を通じて外に出るということはないように思います。むしろ、そうじゃなくて、郵便貯金は国庫に入っていくわけです。国庫に入るということはすなわち日銀に入るということだと思います。  国庫の対民間収支を見ていますと、実は揚げ超になっているわけですね。要するに税金の揚げ超もその中にごっちゃになって入っているように思いますけれども、そういう意味で日銀が通貨量を増発している、増発と言うと語弊があるかもしれませんが、通貨供給量をふやしてそういうところを帳消しにしていくと、対民間国庫収支を見ながらおやりになっている面が多いというぐあいに思いますが、ただいかにされても、もう一遍くどいように申し上げますけれども、都市銀行貸し出しは実は十一カ月純減を続けているんですね。ですから、供給量をおふやしになったからといって直ちに効果が出てくるわけではない。それはあるいはたんす預金になっているかもしれないし、あるいはCDになっているかもしれぬ。その辺はよくわかりませんけれども、そういう意味では通貨供給量がふえたから金融が緩んでいると言うわけにはなかなかいかない。  こんなことを日銀総裁に申し上げると、いや、わかっておらぬなというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、そんな感じがしているんです。ちょっとくどかったかもしれませんけれども、貸し渋り問題というのは極めて深刻な問題があるということをここで強調をしておきたいと思っています。  日本銀行金融情勢についてのお考えは大体お伺いしましたので、松下総裁、御退席いただいて結構でございます。  今、金融情勢一般についての御質問をしたわけですが、法律案について若干の御質問を申し上げたいというぐあいに思います。  預金保険法の改正、これはこの前フリートークをしたとき、あるいは現在の金融情勢にかんがみまして、大体しようがないのかな、現実の問題としてしようがないのかなという印象が強いんです。  預金保険機構は各銀行から保険料を五年間で二兆何がし徴収しておるわけですが、現在野にどれぐらい使っているか、それからさらに北拓でどの程度の資金需要があるか等々わかっておられると思いますけれども財政バランスというんでしょうか、収支のバランスについての御認識を承りたいと思います。
  27. 山口公生

    政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。  今御指摘のありましたように、平成年度から特別保険料まで含めまして七倍という保険料を徴収しております。平成十二年度までの措置でございまして、それまでの積立金の残を加えますと、しばしば申し上げておりますように、二・七兆円の財源がこれまでの五年間であったということでございます。これまでの実行済みの金銭贈与額は、昨年の当委員会では一・四兆と申し上げておりましたが、今では一・五兆になってございます。単純に計算しますと残りが一・二兆の財源があるという計算になるわけでございます。  ところが、その後まだ処理を要する六機関におきまして破綻時においているいろいろな債務超過額が明らかになってきております。そうしたものの処理をする必要が出てまいっております。  例えば、朝飯大阪信組が債務超過額で申し上げても二千億円、田辺信用組合が七百億円、京都共栄銀行が三百十四億円、北海道拓殖銀行が八千四百億円、それから徳陽シティ銀行はまだ検査が終わっていませんのでこれはゼロに仮に置いておりますが、静岡商銀信用組合が五十億円、これをざっと足しますと一兆一千五百億円程度の債務超過額でございます。債務超過額はまた清算検査をしますと少し変わってまいりますのでこれがそのまま預金保険機構の支出というわけではございませんけれども、少なくともその程度の金銭贈与は必要になるというのが現時点における状況でございます。  その後における破綻の見込みということについては私の方からは申し上げられませんし、またないことを願っていると言うしかないわけでございます。  そういった状況が現状でございます。
  28. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今すれすれのところに来ているという感じでございますよね。だけれども、論点としては銀行が、相互扶助という格好で銀行が最後まで見るべきではないか、風が出動するのはどうかねというような議論があると思います。それに対してこの法律案は、公債を交付し、そして資金繰りについて政府保証をつけようと、そういう案になっていますが、そういうことについてどのように御判断になっておられますか。  これは肝心のところですから大蔵大臣に御答弁していただきたいと思います。
  29. 松永光

    国務大臣松永光君) 大事なことは預金者に対していささかでも不安を与えない、大丈夫ですということを明確にすることが極めて重要と思うのでありまして、この仕組みというのはその点で極めて有効であると、こう思ってお願いをしておるわけでございます。
  30. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 銀行局長に補足をしてもらいたいと思いますが、国の資金が出ていく前に銀行が、今七倍というぐあいに言われましたが、それをさらに続けるとか、あるいはそれをさらに強化するとか、そういうことについてどのようにお考えになっておられますか。
  31. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 先ほど申し上げましたように、特別保険料は法律によりまして平成十二年度まで徴収することができるようになっております。七倍のうち特別保険料の三倍部分は政令で決めておりますので、保険料につきましては十年度末までには見直しといいましょうか、検討をするというふうにしてございます。  したがって、七倍がこの五年間確定的な保険料というわけではございません。ただ、そうした検討をする際に当たりましては、確かにその銀行の規模によっていろいろ利益に対する負担等が現に違ってまいっております。中でも中小の金融機関にとってみますと相当な負担増になっておりまして、かなり厳しいという事情があります。それから、大手銀行にとってみますと、海外の一流の銀行が既に保険料をもう払っていないような状況になっておりますので、そことの競争関係や保険料を金融界がずっと持つという場合においての国際的な信認、それが例えばジャパンプレミアム等にはね返るおそれがないかどうかというようなことも総合勘案しながら、しかし先生がおっしゃったような観点も踏まえて十年度末までにはそうした検討をやりますということにいたしておる次第でございます。
  32. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 事のついでに伺って恐縮ですけれども、新聞に北海道拓殖銀行の劣後債についての記事が出ていました。  実は北海道拓殖銀行の劣後債のうち信用金庫に対する劣後債がございまして、それについてはこの前の大蔵委員会で私が御質問を申し上げたところですけれども、その劣後債あるいは劣後ローンについてどのように債務としてカウントしていくのかということについての御検討が進んでおられると思いますが、いかがでしょうか。
  33. 山口公生

    政府委員(山口公生君) せんだっても御答弁申し上げましたが、劣後事由が発生するかどうかというところが法的な意味でのポイントでございます。そうした法的な処置ではございませんので、恐らく劣後事由はないのではないかというような考え方が一般的だと思います。ああいった記事になっておるわけでございますが、まだ処理全体が進んでおりません。  したがって、今後検討されるわけでございますが、ただ一部は北洋銀行に引き継がれていくわけでございますのでいろいろな形で関係金融機関に御協力をいただく、自分でできる範囲内で御協力をいただくということはあり得ると思いますが、その問題どこの処理が法的に見てどうかという問題とは切り離して考えるべきことであろうというふうに考えておるわけでございます。
  34. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 理屈からいえばそういうことかもしれませんけれども金融システムの信用維持という点からいうと、実は劣後ローンに生保、損保の何千億というオーダーの資金が入っておりますし、特に信用金庫というものは地域経済に大変な影響力を持っておると思いますので、劣後債の発行条件あるいは劣後ローンの貸借条件等がどういうぐあいになっておるのか詳しいことは私存じませんけれども、よく御検討を願いたいというぐあいに思います。  そこで、こういうぐあいに破綻をしていくということの主たる要因不良債権があるということなんですね。そして、実は何遍も前の委員会で議論されていますけれども、その不良債権について大蔵省は幾つかの発表をなさっておられますね。一つは、全銀協基準に基づく不良債権がどうなっているんだと、不良債権をさらに細かく推計をして去年の九月期には四兆二千億の要処理額がまだあるというような御発表をなさっております。それからさらに、当委員会で触発されてか何かわかりませんけれども不良債権自己査定分、それについての御発表もなさっておられますが、それらの相互の関係はどういうぐあいになっておるんですか、計数が大変違うように思いますが。
  35. 山口公生

    政府委員(山口公生君) まず、これまで当委員会でも御報告を申し上げてまいりました公表不良債権というものにつきましては、破綻、延滞、金利減免というジャンルに分けまして、一つの形式的な基準、形式的という表現が悪ければ客観的な基準でもってその債権を全部ピックアップしまして、それで各行が同じ基準でもってディスクロージャーをいたします。それを集計したというものがしばしば全体で二十八兆でございますとか、そのうちこれだけは引き当てありません、残りあるいは担保がカバーされていないのが四兆三千億ぐらいありますというような御説明を申し上げておりました。諸外国でもそういった公表をしております。これは個別の金融機関が自分のところの不良債権というものを客観的な基準でもってピックアップしてそれを公表する、そうするとA銀行とB銀行あるいはC銀行が比較が可能になるわけでございます。一ただ、当委員会でも御指摘ありましたが、それで十分なのかという話がありまして、日本は税法基準にのっとっておりましたのでアメリカの基準に比べるとちょっとそれが緩やか過ぎるということで、今度の三月期からはSEC基準、つまりアメリカの基準、これは世界でも一番厳しい基準ですから、これ並みの基準でやりましょうと、前の数字ももちろん出していただくことにしたいと思いますが、それでまたやってみましょうということで強く要請して、全銀協の方もそれを取り組んでおるわけでございます。それが最初に先生の御指摘になった公表不良債権というものでございます。公表不良債権という名前が余りよくないのかもしれませんが、正確に言うと全銀協基準による統一的不良債権と言うべきかもしれません。  もう一つ、これも当委員会でいろいろ御示唆いただき、また御質問賜ったことから出したわけでございますが、自己査定の結果の集計値というものでございます。これは早期是正措置をことしの四月から導入しますが、早期是正措置はどういうことかといいますと、自己資本比率でもって行政処分を透明な形で行う、こういうものでございます。  そうすると、その前段階として自己資本比率をはじかなければいけません。自己資本比率をはじく段階として必ずやるべきことは、自分の銀行が持っている債権、つまり貸し出しとか保証とかそういったものを全部洗い出してその回収可能性を見まして、回収ができないと思われるものは償却をしなきゃいけません。償却をするには利益を取り崩します。だから、分子からも落としますし分母からも落とします。そういった形で分子分母をきっちりして自己資本比率というのをはじくわけです。  そうしますと、やっぱり自己資本比率を正確にはじくためには正確な自己査定というのが必要になってまいります。その自己査定というものを今回初めて試行的にやっていただいたわけです。それをある銀行は十分類でやったかもしれません。ある銀行は八分類でやったかもしれません。しかし、それをひとつ四つの分類でやってみてくださいとまとめ直してもらって報告を受けました。報告を受けまして、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳということで分けて公表させていただいたのが今回でございます。  なぜそんなことをやったかといいますと、これは当国会において公的資金の議論をしていただくときに単なる公表不良債権、先ほど申し上げたそうしたものだけではなくて、回収が本当にどれくらいできるのかできないのかという、つまり破綻処理の方に結びつく可能性のある数字をお示ししないと全体像がわかりにくいだろうということで出したわけでございます。  そこで、一番悪い方から言いますとⅣ分類、これはもう回収ができませんというものです。相手がもう破産しましたというようなものです。Ⅲ分類というのは重大な懸念があると。Ⅱ分類というのが一番問題になるんですが、これは別に不良債権と言うには私は当たらないと思いますが、個別にリスク管理が必要なものというものでございます。それからⅠ分類、これがもうほとんどなんですが、これは何も問題がない、我々サラリーマンの住宅ローンが天引きされているようなものはみんなそれに入っています。  それで、ⅢからⅣまで足すと七十七兆という数字になります。これを不良債権だというふうに一部報道されましたけれども、それはちょっと違うと思うんです。本当の意味の不良債権というものの概念が明確でありませんけれども、今の時点でこれは本当に不良だと思われるのはⅢとⅣを足したようなもの、そうすると十一兆ぐらいになるわけでございます。  ただ、そのうちⅣは今期で全部償却しますから大分それは減ってくると思いますけれども、そういった数字のものをお示しするために今回初めての数字でしたので初めて公表させていただいたということでございます。  ちょっとくどくなって恐縮でございますが、そういうことです。
  36. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 長々と御説明をいただきましたが、要するに全銀協基準の計算は、それはいろんな傾向だとかあるいは各銀行との比較とかに役立つかもしれないけれども、この前も申し上げましたように、実は破綻をするとあんな数字じゃないんですね。それの十倍だとこの間言っておられたけれども、十倍は特別でしょう、主要銀行だけでしょうと、こういうお話ですが、実は倍なりあるいは三倍になるというようなことが行われている。  そういう意味では、自己査定を基礎とすると。一つの客観的基準と言われるけれども、大変あいまいな基準なんですね。特に、ノンバンクに対する貸付金についてはほとんど表現はされないというような基準、そういう基準じゃなくて、それも含めた基準というもので自己査定をやっておられるというのは非常に管理の仕方としてはよくなっているというぐあいに思うんですね。  しかし、そのことの結果として、全銀協基準で推計をすると四兆だったという不良債権が実は十一兆になりましたと。十一兆になったというのは言い過ぎかもしれません。後でまたちょっと申し上げますけれども、そういう数字になっていると。それは各行別にバラエティーに富んだ数字で始めているということになるでしょう。まだ三月期は来ませんから仮定の計算で大蔵省もチェックしていないでしょう。チェックしていないでしょうけれども、私はこれがやっぱり今の金融危機のときに基準となって物を考えにゃならぬ。少なくとも自己査定に従って、この新法が適用されるに際して、あとの金融化安定のための新法も当然そうですけれども、保険機構もこれを重視して徹底的な早期是正をやらなきゃ次から次と生まれますよ、銀行破綻が。  私は大変結構な数字が発表されたと思うんですが、実は大蔵省は、いや、これは個別銀行までいかないんだ、トータルでしか発表しないんだということを盛んに言っているんですね。しかし、今ディスクロージャーがどんどん要求されているときに、各行は自己査定をやったらその自己査定の数字、それがどういう根拠に基づくものか、おれは自己査定をやって発表したんだから後は知らないよというわけにはいきませんよ。マーケットは必ず要求すると思います。  それは自己査定を基礎にして物を考える方向にやらないと株式相場等々を見ても大変な混乱が生じると思いますが、大蔵省のお考えはどうですか。
  37. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 私どもの方がトータルの数字をお示ししたわけでございますが、個別の銀行を例えばディスクロージャーしなさいということになりますと、こういう現象が起きることを心配するわけです。  例えば、Ⅱ分類に入っているところ、個別管理が必要とする債権なんですけれども、それがあたかも不良債権のようにとられて、それを減らさなきゃいけないとなると、例えば相手の企業が二期赤字が続いた、あるいは三期赤字が続いた、それだけでもうあそこは融資をストップしなければいけないというふうに働くのではないかと。つまり、今風に言いますと、あれは貸し渋りとか回収をむしろそれで当局の方から勧めるということになりはしないかと。  逆に言いますと、Ⅰ分類の方はローリスク・ローリターンといいましょうか、そういった概念のもとでⅡ分類のところがある意味ではハイリスク・ハイリターンのものも含まれているわけですね。一部はまた不良債権化するものも含まれておりましょうが、ただⅡ分類のものを不良債権のようにもし受け取られるとすれば、それは大変私どもの本意でない受け取られ方をするわけでございます。ⅢとⅣになってきますと、これはいずれ償却ということで若干性格は違ってくるとは思いますけれども、私どもが当局として個別に自己査定を出しなさいと言うのもいろいろ問題があると。  もう一つは、その銀行の査定の方針が、幾ら公認会計士に最終的にチェックしてもらうとはいえ、やはり基準がいろいろ少しずつ違ってしまいはしないか、ある意味では本当に横並びで比べるときに正確に比べられる基準があるのかということになってしまいます。したがって、アメリカにおきましても、外国におきましてもそれは公表しない、しからば先ほどのSEC基準のような一つの客観的基準でもって全部横並びで示しているということでございます。  マーケットがいろいろ要求するとそれはそういう動きになることはあるかもしれません。しかし、私どもの今の考え方はそういうことでございます。
  38. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今の銀行局長の御説明は全く私の理解と正反対の御説明のように思います。  まず第一に、Ⅱ分類が多いからなんとかというぐあいにおっしゃったんですが、Ⅱ分類は、おたくの発表にも書いてあるじゃないですか、各金融機関において債権管理上注意を怠らなければ損失が発生しない債権が多数含まれていると。だから、Ⅱ分類を不良債権だと言うのは大体おかしいし、そんなことはないんだよということを金融関係者が認識していればそれでいい、そういう話なんですね。  それから、Ⅲ分類とⅣ分類、足すと十一兆ぐらいになるわけですけれども、実はⅢ分類だって、これは日銀の研究者というんでしょうか、日銀の正式機関じゃないんですけれども、推計をしたところでは大体四分の一が一年間にⅣ分類に落ちていくという推計をしているんですね。それから、Ⅱ分類についても実は大変あるので、三年間のうちに一七%というから年率五%ぐらい、それぐらいはⅣ分類に落ちていくというような推計も発表されているんです。これは研究会みたいなもので公式のものじゃもちろんありませんけれども、そういうような数字がありまして、全銀協の基準は基準として御発表になるのはそれはそれで結構だと思いますが、やっぱり銀行破綻に陥らないためにしっかりとした自己査定を充実していくべきだと思います。  翻って申し上げますと、拓銀が債務超過が八千四百億というぐあいに言われていますが、どうしてそんなところまでほっておいたんですか。資本金がどれだけあるのかよく知りませんけれども、千億か二千億ぐらいの資本金でしょう。それが八千四百億も債務超過になる、それをほっておいた。それは全銀協基準では出てこないんですよ。やっぱり自己査定基準じゃないと出てこない。それは主としてノンバンクだとかいろんな、利子をちゃんと払っていたとか追い銭をやっていたとか、そういうこともあるんだと思います。  そういうことですから自己査定、試行であり、これから三月期にいよいよ行われる、議論されていくと思いますから私はこれを重視してやりたいというぐあいに考えていますけれども大蔵省の御見解はどうですか。
  39. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 特にⅡ分類等につきまして、先生がおっしゃるような冷静な受け取り方ということが世間に一般化していけばそういうことも可能になるかもしれません。しかし、私どもがⅡ分類について丁寧にいろいろ御説明を申し上げるにもかかわらず不良債権あるいは問題のある債権七十七兆という数字が踊っているわけです。そういう現状なんです。  つまり、Ⅱ分類というものをもう貸すべきでない、あるいは信用を供与すべきでないというような形でとられますと、これはリスクの高いところには銀行は貸さないということになってしまうわけです。私はそれを少なくとも現時点においては非常に心配いたします。  ただ、先生がおっしゃるような姿ということを私は否定するつもりはございません。しかし、現実の受け取り方がそういうことであるということを御認識いただければ大変幸いだということでございます。
  40. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 そういうぐあいに大蔵省としては言われるかもしれないけれども、実はⅡ分類というのはこうなんだということをもっと強調されて、大体七十何兆も不良債権があるなんて新聞に書かれるのは皆さん方の広報力の不足ですよ。そんなことを書かれて、いや、しようがないな、そういうぐあいに認識しているんだからしようがないじゃないだろうかというのは、そうじゃなくてⅡ分類ということはこうなんだということをもっと強く新聞に、国民大衆というのは新聞に全部リードされているわけで、それはちゃんとしたリードをしていただかなければならないというぐあいに思います。  そこで、実は自己査定と関係があるんですが、今回大蔵省問題で不祥事が発生していますよね。金融検査の室長さんが収賄、金銭には至らなかったけれども何十回に分けて何百万円というようなことをやられたと。新聞を読んで非常に奇異に感じたんですけれども、MOF祖の主たる使命は検査の日時、場所――支店ですね、それから検査の方針――項目ですね、そこらを知るために使うエネルギーが七割以上、八割あるんだ、政策の問題はMOF担には余り、あるんでしょうけれども、そんなには影響なかったというぐあいに書かれていたように思いますが、いかがですか。
  41. 山口公生

    政府委員(山口公生君) ちょっと担当官がおりませんので、私は正確には存じませんが……
  42. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 検査部長を至急呼んでください。この話は、MOF担がどうかという話はともかくとして、検査の方法をどうするかということは質問通告の中に入っています。どうして来ていないんですか。――といってもなかなか御答弁はできないでしょうから、間に合うように来てもらえば質問をいたします。  そこで、新法の方に移りますけれども、劣後債あるいは優先株、劣後ローンというようなものを保険機構で引き受けるということで資金手当てがなされていますが、それはどのような効果があり、現在の金融情勢に照らしてどのように重要なものであると考えているのか、御説明を願いたいと思います。
  43. 山口公生

    政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。  自己資本比率の向上ということがいろいろな問題を解決する一つ手段でございます。そうしますと、今おっしゃいました優先株、劣後債、劣後ローンは自己資本にカウントされるということで意味があるわけでございます。  優先株につきまして申し上げますと、非累積配当型永久優先株、これがいわゆるティア1と言われる本源的な資本にカウントされます。それから、累積配当型永久優先株あるいは期限つき優先株はティア2という補完的な自己資本になります。  それから、劣後債、劣後ローンにつきましてはティア2の方にカウントされます。  今申し上げた優先株、劣後債、劣後ローン、いずれも自己資本にカウントされますので、もし分母が一定であればその分自己資本比率が上がるということになるわけでございます。もし自己資本比率を一定にするのであれば、分子がふえた分それの十二・五倍といいましょうか、八のひっくり返した逆数だけ分母、つまり貸し出し等が増やすことができる、こういうふうに考えております。
  44. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 要するに、資本構成比率を是正するということですね。  先ほど松下さん、もう御退席になりましたけれども、いわゆるフローの話じゃない、資金量の話じゃなくて、資本金比率というんでしょうか、それの問題であるというぐあいに考えて、何か手ぬる過ぎるのかなという感じもしますけれども、現在BIS規格あるいは国内資本比率基準というようなものがございまして、それが現在の貸し渋りの根源をなしているわけですから、そういう意味では非常に重要なことであるというぐあいに考えています。  これに三兆円の公債を交付し、十兆円の保証をつけるということでありますが、一つはどの程度の金融機関がこれに手を挙げるだろうか、これは大変ありがたい政策であるといってどのような金融機関が手を挙げるだろうかということについて、どのようなお見通しを持っておられますか。
  45. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 今、法案をお認めいただきますように一生懸命努力をしている最中でございまして、まだ個別銀行状況も聞いてはおりませんので何とも申し上げられませんが、恐らく三月末の株価水準をどのように見るかによってその銀行が、もちろん他の手段での自己資本充実策はございますけれども、どれくらい自己資本強化策が要るだろうかということを考えると思うのでございます。非常に悲観的に見る銀行もありましょうし、楽観的に見る銀行もありましょう、それから財源を十分持っているという銀行もありましょう。それぞれの銀行が自分で判断をして、それでやはり三月末時点に、終わってしまってからああしまったというわけにいきませんので、かなりその辺の読みをしながら各金融機関は手を挙げてこられるのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、それが審査委員会のもとでまた御判断をされるということでございまして、今の時点でどういう銀行がというのをなかなか私の方としてはまだイメージを持っておらないということでございます。
  46. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 大蔵省としては慎重な言い回しをされているのはそういうことかなと思いますけれども、私も今、地方を相当ぐるぐる回っていまして、地方銀行からもあるいは都市銀行からもいろんな話を承っておりますが、片や個別銀行の救済になるんじゃないかというような話も出ているわけです。確かに個別銀行の救済という観点に立つのか、あるいは金融システム安定化のために広い範囲でやってもらえば日本の金融機関の信用力というものが世界において増していく。  ついでのことですが、今ジャパンプレミアムがどうなっているかということもあわせてお尋ねをいたしたいと思います。  私は、個別銀行のために一々議論しているわけじゃないので、日本全体の金融システムをどうやったら安定できるかという観点からこの議論をやっているわけですから、そういう意味からいえば個別銀行がいろんなことを考えるでしょうけれども、総体としては相当な規模においてなされるのかなということを心の中に描いておりますが、いかがですか。
  47. 山口公生

    政府委員(山口公生君) どれくらいの規模になるかはちょっと私もよくわからないというのが率直なところでございます。どの程度の危機感があるかということだと思うわけでございます。  ジャパンプレミアムでございますけれども、昨年の十二月上旬には何と一%にまでなりました。これは我が国金融機関がそういった余分なお金を出さないと全くお金が取れない、取れないだけじゃなくてまたその量を切られてしまったという状況がありました。今は手元にあるものですと〇・四ぐらいと言っております。本当はゼロであってほしいと思うわけでございますけれども、まだまだそういった不安定性というものがあると外国の金融機関から見られているということの証左かもしれません。また、日本の場合はいろいろアジアの問題等もございますし、そうしたことでジャパンプレミアムの存在というものがまだ続いているということだと思うわけでございます。  先生おっしゃいますように、この措置が個別の金融機関の救済ではなくて全体のシステムを守るということでございますので、こういった措置が有効に働けば、今おっしゃったジャパンプレミアムの幅の縮小あるいはそれを消滅というような方向に持っていければ本当にそれは効果が発揮されたということになろうかと思います。
  48. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 ジャパンプレミアム、確かに〇・四ぐらいであると。各行によって格付が違うんでしょうから平均で言われたんだと思いますけれども、そういうジャパンプレミアムが続いているということ自体日本の金融機関に対する信頼感がないということなので、ぜひそういう信頼感を回復せにゃいかぬというぐあいに思っているところであります。  先ほど言われましたけれども、ティア1、ティア2というと国民には非常にわかりにくいテクニカルタームで、私どもも舌をかんじゃうような感じではあるんですけれども、実はこの資本の金額、要するに分子、それを充実するためのいろんな手段がございます。この新法もそういう手段でありますけれども、そのほかにいろいろな検討がされているように思うんですね。  我が自民党では地価再評価をしようということを考えていますが、これは政府施策ではないので政府に聞いてもわかりませんということかもしれませんが、実は土地の再評価をし資本に組み入れる、これをフルにやれば大体三兆七千億ぐらいの地価の再評価ができる、それの四五%がティア2に加算されるということで、先ほど山口さんが言われたように、それの十二・五倍が融資余力ということになるわけですから、そうすると大体十五兆ないし二十兆の貸し出し余力が生まれるということになるんですね。計算上はそのとおりだと思いますが、政府がその施策をいいとか悪いとか言う段階じゃまだないんですけれども、計算上はそのような施策になると思いますが、いかがですか。
  49. 松永光

    国務大臣松永光君) 今、先生お話しの土地の再評価、これを通じて金融機関自己資本比率の向上をという御議論、私も大原先生を中心にして自民党の中で相当議論が煮詰まってきているということはよく承知いたしておりますが、大蔵省としてはこの議論を注意深く見守っていきたいというのが私どもの立場でございます。
  50. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 もしこの法律案を提出するとすれば議員立法になると思いますが、いろんな先生方の、いろんな各党各派の御了解も得てやらなきゃならぬ事柄でございますのでどのように推移するか問題はありますけれども大蔵省としてもこの問題を極めて注意深く見ていっていただきたいというぐあいに思っています。  それからもう一つ、資本充実というんでしょうか、これも充実じゃなくて少し紙の上の出来事のように思いますけれども、原価法の話があるんですね。大蔵省では原価法を選択採用するようにするんだというような発表も実はなされているようであります。  いまだにこれは通達で直せるものなんだろうというぐあいに思いますけれども、現在どういうような準備をされておりますか、またこれをすることによってどういう影響が出てくると考えておられますか。
  51. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 今おっしゃいました原価法、低価法の選択制にするという点につきましては、三月までに各銀行が、あるいは保険会社もそうでございますが、態度を決めなきゃいけませんので、今もうその準備を、私ども通達での準備は既にやりつつあるところでございます。  それで、この原価法をもし採用しますと、こういうことが可能になります。それは、低価法をとりますと、個々の銘柄ごとに帳面につけてある簿価より価格が下がりますと、それは全部損失として償却をしなきゃいけません。したがって、利益をどこかから持ってこなきゃいけません。利益がなかったら、もうかっている株を売って益出しして埋めなきゃいけません。そういうことをやれば低価法が採用できるわけです。ところが、原価法になりますと、帳面についている値段そのままでいいということですから、仮に下がった場合はそれは含みの損であるというふうにディスク・ロージャーできちっと書くということで足りると。つまり、株価というのは上がったり下がったりいたします。だから、下がったらもういつもそれは損した、売ったと同じことだということで損を立てて全部それを利益で消してしまうというのが低価法の考え方でございます。  そういうことをやっていますと、銀行や生命保険会社も損害保険会社もそうですけれども、三月末の株価がどうなるかで幾らお金を用意しなきゃいけないのか、幾ら益出しをしなきゃいけないのかという心配ばかりしなきゃいけないんです。場合によっては株をどんどん売って、ちょっとでも帳面の価格より時価が高い株のものはみんな売って益出しをしておくしかない、あるいは、クロスを打つといいますけれども、簿価だけ上げて売って買い戻す、利益だけ確保するという、そういう行動をとるわけです。それで、もし売り切りにしますと株価がどんどん下がるわけですね。高かった株価が下がる、そうすると今度は株式を持っている人たちが低価法をとろうとするともっともっと償却しなきゃいかぬという心配になってだんだん、先ほど先生も悪いスパイラル現象とおっしゃった、それが生じかねないということで、一応そこは切り離せるということでございます。  しかし、財務の健全性からいうと、含みの損はもうみんなその期で消してしまうというのが一番確実、堅実、健全である会計処理だということは疑いがないことでございますので、それは低価法をとってもよろしいと。しかし、低価法だけを義務づけているとそういうような悪いスパイラル現象が起きてきてますます株価経済が振り回されてしまうと、それは銀行あるいは保険会社の経理を通じて振り回されてしまうという現象が起きかねないということで、商法の原則に戻って選択制を認めましょうということにしたわけでございます。これも先生おっしゃるように一つの大きな効果を持ち得るのではないかと思います。  ただ、原価法をとったからといって帳面の価格だけでいいというものじゃなくて、公認会計士が見て余りにもその価格が下がっていたというものについてはそれはもう簿価をつけかえなさいということは企業会計上必要ですから、原価法をとったからといって一切そこはもう暴落している株価をそのままでいいというふうにはなっておらないこともちょっとつけ加えさせていただきます。
  52. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 おっしゃるように、現在の低価法は財務内容云々ということでそのような基本的方針をずっととられていたんだと思います。  ただ、現時点において、スパイラルというぐあいに私も先ほど申しましたけれども、株がどんどん下がっているときには悪く悪く倍々で働いていくんですね。ですから、さっき銀行局長が言われたように、株価が下がっていく、そこでクロスを張って自己資本の比率をどんどん落としていくということになるんですね。そのために、結局のところは貸し渋りも強くそこで作用してくるというような悪現象がどんどん生じてきますので、その点については選択制をとられるということは賢明な措置だと思いますが、同時に財務内容についての危惧もあるわけですね。それはどのようにしてその危惧を払っていくようにお考えでしょうか。
  53. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 確かに御指摘の点がございます。したがって、それは開示をする、ディスクロージャーで対応するということだろうと思います。含みの益が幾ら、含みの損が幾ら、ネットで幾らということを必ず明らかにしてもらうということで解決しようというふうに考えております。
  54. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 結局はBIS対策でともかくやっていこうやと、しかし実態がわからないと困るからディスクロージャーするよと、こういうように理解をいたしました。  そこで、検査部が来たようなので伺いますが、MOF担というのは、この間の不祥事等から見てみると、結局のところは検査の日時、予定の日時、そして場所、その方法、それを探るための努力というのでしょうか、そのためにいろんな接待というものが行われているんだというぐあいに私は理解していますけれども、大体七、八割はそのためだというぐあいに新聞には書いてあったように思いますが、いかがなんですか。
  55. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) お答えします。  今回、報道され、あるいは起訴事実に出ているような事態については極めて遺憾なことでございますし、それがまた検査のあり方から起因した部分があったとすれば、その点は十分に反省をしなきゃいかぬと思っております。  ただ、MOF担の仕事が大部分がそうであったかといいますと、例えば都銀の検査というのは三年か四年に一度でございますし、そういう意味ですべて検査日の把握にウエートがあったということより、やはり行政も含めた全般的なところの連絡を受けるとか情報の交換とかいろんなことをされていたのではないかと思います。  ただ、そういう存在がいろいろ疑念を招くということのないような行政あるいは検査のあり方ということは十分考えていかなければいけないというふうに思っております。
  56. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 私は、大蔵省がMOF担の親玉であるわけじゃないので、知っているか知っていないかということを聞くつもりではないんです。そうではなくて、今の銀行検査のあり方自体に問題があるんじゃないかということをここで議論をしておきたいんです。  要するに、三年ごとかどうかわかりませんけれども銀行に検査に行きますよと。日時はいつです、場所はどこです、どういう検査項目ですということは、検査項目まで予告する必要はないでしょうけれども、現実の姿としては抜き打ち検査というぐあいに承知しています。予告はしません、いつどこに行くかわかりませんよという建前にはなっているけれども、あの新聞記事を見る限りは全部筒抜けじゃないですか。抜き打ち検査でも何でもないですよ。そう思いませんか。  そうなってくると、何で予告しないんですか。予告するとぐあいが悪いんですか。お答えください。
  57. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 確かに今回検査日をめぐっていろんな疑惑を持たれているということは事実でございますし、そういう点についてはあってはならないことだと考えております。  また、今までの検査のあり方を反省といいますか、見ますと、やはり従来事前監視型といいますか、そういう中で、また非常に検査を大規模にする一方、非常に間隔を置いてやっておると、それからその検査間隔も特に大手の場合はある程度順番にやっていくというような傾向も見られたわけでございます。そういう中でぼつぼつ来るのではないか、かつ準備も大変だという中で金融機関の方が検査日程を非常に知りたいということを起こすような状況があったことは否めないと思っております。  現在いろんな角度から金融検査のあり方を見直しておりますが、一つは、原則論に戻りますと、まさに今後は自己責任の徹底、あるいは市場規律を基軸とする透明性の高い行政なり検査に変えていかなきゃいかぬと。  それからまた、いろいろ御議論いただきましたように、四月からは早期是正措置というものが入ります。その前提として、今までまさに金融機関の資産の査定というのを検査で行っていたわけですけれども、これからは自己査定を前提としてやっていく、検査はそれを事後的にチェックするという格好になりますから、そういう意味ではそういう事後的なチェックを行う、かつ事前にいろいろやっていただいているというもののチェックについては、まさに先生が御指摘になりますように、いろいろ銀行がやっていただいた作業をチェックするわけですから、これについては抜き打ちでやるよりきちっと予告をして、準備をしていただいた上で効率的にやるということがまず考えられるかなと思っております。  ただ、一方でいろんな、例えば海外ですとベアリングズですとか、国内ですと大和銀行の例とか、リスク管理がうまくいっていない例でございますとか、あるいは法令遵守の状況がうまくいっていない例、こういうものについても最近いろんな場で非常に検査の機能強化してきちっと把握すべきではないかという御議論もございますし、我々もそれを受けとめているわけでございます。  そういうものについて、今直ちにそれも準備をして待っていてくださいということであれば、やや金融機関の緊張感とか、あるいはそういうものがきちっと把握できるかということについてまだ我々必ずしも自信が持てません。そういう意味で、先般、自由民主党の金融問題調査会の御提言でも、当面、検査目的に応じて検査日の予告制度導入など検査効果を高める措置等を講ずるべきではないかというような御提言もいただいております。  確かに、その予告制の記述、それぞれメリット・デメリットがあると思います。また、我々は非常に限られた中でいろんな分野のことを見ていかなきゃいかぬ、効率性も考えなきゃいけないという中で、また今回のいろんな事件の反省にも立って、今申し上げたような方向で目的なり効果を十分に意識して、その上で予告の問題も考えていきたいというふうに考えております。
  58. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 まるっきり反省していないね。大事件を起こして大蔵省の根幹を揺るがしておいて、いや、まだ効率的に何とかですからよく考えてと、よくそんなことをぬけぬけと言えるなという感じがしますよ。  大臣、私はこの不祥事件に際して、金融検査が効率的だとかなんとか言っているけれども、そんな問題じゃない、ともかくもこの不信状態を払拭させなきゃいかぬ、そういう観点に立ってこの問題を考えるべきだというぐあいに思います。  それは理屈はありますよ。今まで予告調査なんてやっていないんだから、それなりの理屈はありますよ。あるけれども、これだけの不祥事を起こしておいて、いや、まだそういうものについての必要性もありますからなんというのは、甚だもって生ぬるいというのか、要するに事件の重要性を認識していない発言のように思います。  さらに敷衍をするならば、検査の方法はいろいろあると思います。しかし、これは自己査定があるわけですから、従来は検査に行けばⅠ分類はこうだよ、Ⅱ分類はこうだよ、Ⅲ分類はこうだよ、Ⅳ分類はこうだということを検査部で仕分けをしていたんですよ。それが今度はそうじゃない。自己査定があるわけですから、それが正しいかどうかということを事後的にチェックするんですよ。  田波新事務次官が記者会見で若干しゃべっていましたけれども、事前調整的な物事は考えないと。要するに、事後的な調整をするんだというような姿勢をしっかり確立しないと金融行政がゆがんできますよ。私も大蔵省の出身ですから余り強いことは言えないかもしれませんけれども、いずれにしてもかじ取りは大臣がなさるわけでございますから、そういう意味でこの検査方法について十分な検討をしていただきたいと思いますが、大臣の御感想を承ります。
  59. 松永光

    国務大臣松永光君) 委員指摘の点、まことにごもっともなんです。  私も、実はある新聞に載っておりました谷内被疑者、それからもう一人が宮川被疑者、この接待を受けた回数の多さに唖然としたんです。私は、これはもう公務員として絶対あるまじきことなんですから、大変な不祥事だなと。この点については、金融検査部だけじゃない、大蔵省全体として徹底した反省をし、こういったことを行うような職員がいないようにしていかなきゃならぬことはもちろん当然のことでありますが、同時に、今、先生御指摘のとおり、この四月からは新たな金融行政になるわけでおりますから、したがって事前調整型とかそういったものが案は事後チェック型になる、さすれば検査のあり方も大きく変わるわけですね、また変わらなきゃならぬわけですね。それを念頭に置いて速やかに検査の新しいあり方を定めるというのが私は当然のことであろう、こう思っておりますが、そういう方向で努力をしていきたいというふうに思っております。
  60. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、大臣が申されたように、ぜひ十分御検討願い、金融行政の行方をしっかり見守っていただきたいというぐあいに思います。  さて、ちょっと前に戻るんですが、新法関係でちょっと御質問が足らなかったところがありますが、優先株、劣後債を引き受けるというときに回収が一体可能なのかねという問題が一つあるわけですよ。何か世上では優先株あるいは劣後債を出しちゃったら何かなくなっちゃうような印象の、要するに国費を費消しちゃったというようなことが言われていますけれども、実は一九三〇年代にRFCがこれと同じような施策をしているわけですね。仄聞するところによりますと、実はそのころのお金で何億というような利益を上げたと、二十年ぐらいたってから締めてみると優先株あるいは劣後債を回収して三億数千万ドルぐらいの利益を得たというようなお話もあります。  劣後債あるいは劣後ローンあるいは優先株というものを出して、それがどのように回収されると想定をされているか、お伺いしたいと思います。
  61. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 先生御指摘いただきましたように、RFCは優先株等を引き受けましたが、大部分は対象金融機関によって償還されておりますし、それから民間企業による引き取りも行われております。結果としておつりが出たというふうに記述がございます。  今回の措置におきましては、優先株等、すなわち劣後債などについては整理回収銀行市場において売る、あるいは相対で売るというようなことで資金回収を行うことになろうかと思います。危機が去った時点でもし値上がりしていますればRFCのようにおつりが来ることになるわけでございますけれども、いずれにせよ、先生も御指摘いただいたように、この資金を費消してしまうものではないわけで、これはあくまでファイナンスとして使うという趣旨でございます。
  62. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 審査委員会で厳重な審査はなされるのだと思います。我が国金融機関が連続して破綻するというようなことも当然我が国金融機関の強さからいってあり得ないというぐあいに思っていますが、実はそれを回収するというのはなかなか難しいんですね。実は優先株については市場がないわけですよ。それから、劣後債についてもそれが売れるというわけのものでもないんですね。要するに、発行金融機関から買い取りをやってもらわなきゃいかぬというような例が多分多いんだというぐあいに思うんですね。そういうことについても、発行条件その他について十分な配慮をされる必要があるんじゃないか、そのように思っています。  最後に、大蔵大臣の本法律案にかける思いを述べていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  63. 松永光

    国務大臣松永光君) 我が国金融システム安定化、今の日本の経済状態、景気の状態、これからの日本を考えると極めて大事な金融システム安定のための法律案でありますので、これが速やかな成立のために各先生方の御協力を願いたいわけでありますが、私としても全力を挙げてそのことに努力をしていく覚悟でございます。どうぞよろしくひとつ御指導のほどをお願いいたします。
  64. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 終わります。
  65. 石川弘

    委員長石川弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  66. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、谷川秀善君及び松浦孝治君が委員辞任され、その補欠として鈴木政二君及び中原爽君が選任されました。     ―――――――――――――
  67. 石川弘

    委員長石川弘君) 休憩前に引き続き、預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  68. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は民友連の伊藤でございます。  松永大蔵大臣には、大変厳しい局面での大臣就任、大変御苦労さまでございます。どうかよろしくお願いいたします。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕  まず冒頭、大蔵大臣にお尋ねいたします。  最近一株価は一万七千円を基点にして若干の上下という、不十分ながらも安定的に推移しているというふうに見ております。一時的にかなり厳しい状況がありましたけれども、必ずしもそこから脱したとは言い切れませんけれども状況としては好転の兆しと見られるんじゃないかというふうに思っています。ただ、日本経済のファンダメンタルズが根本的な改善をされてそのようになっているかということはなかなか言い切れないんじゃないかと思います。  そうだとしますと、株価がこういう状況になっている要因は、政府が現在実施しようとしている景気対策、さらには大型の追加経済対策が出てくるのではないかという市場の期待感があって、そのあらわれではないかというふうに思うところでございます。このような期待感があるときに政府がそれにこたえなければ再び株価は大幅に値下がりするような事態ともなりかねないわけでありまして、三月の決算期を前に日本経済は非常に厳しい局面に立たされることになるかと思います。  ここで、何らかの追加の経済対策を考えておられるならば、大蔵大臣からその内容を明らかにしていただきたいというふうに思います。
  69. 松永光

    国務大臣松永光君) 委員にお答え申し上げます。  株価というのはいろんな要因で動くものだと聞いておりますけれども市場で、あるいはまた金融界で一番問題になっておったのは、日本の金融システムについての内外信頼が揺らいでいるという問題点があったのじゃなかろうかと思います。それが今御審議を願っておる金融安定二法等々について、日本の金融システム安定のために政府が強い決意を持って臨んでおるということも株式市場の好転につながっているんじゃなかろうかというふうに私は思っております。  新たな追加的な経済対策を考えておるかという御指摘でございますが、私どもは、先般、補正予算を成立させていただき、また二兆円の特別減税も成立させていただいて、この二月から特別減税の実施に入ることになりました。それに加えて、補正予算に組み込まれておる災害対策中心にした公共事業、そしていわゆるゼロ国債による公共事業の前倒し執行等々、こういったものを着実に推進しておるところでありますけれども、本予算の速やかな成立と今御審議を願っておる金融安定に関する二つの法律、これが成立させていただきましたならば、財政金融両面にわたる施策を鋭意進めていくことによって、それが相乗効果となって我が国経済はよい方向に力強く歩んでいくというふうに考えておるところでございまして、現在のところ追加的な経済対策というものは考えていないところでありまして、今申したもろもろの施策を、決めていただいた施策を着実に遂行して、そして成り行きを見守っていくというのが私の現在の姿勢でございます。
  70. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 その問題はまた後の課題にするかもしれませんが今はさておいて、私の認識では、今、日本経済はとめどもないデフレに向かってスパイラル的に落ち込んでいく瀬戸際に立たされているのではないかというふうに見ております。  その要因でありますが、第一は消費税の引き上げ、特別減税の打ち切り、医療費の個人負担の引き上げなどに加えて、緊縮財政を盛り込んだ九七年度予算に象徴される財政デフレ政策の性急な実施という経済政策上の失敗ではないだろうかというふうに思います。第二は、金融機関不良債権の実態をひた隠しに隠してその処理をおくらせ、あげくの果てに金融システムを麻痺状態にしてしまった大蔵金融行政の失敗。さらには、アジアの経済危機が日本に波及してきた、その波及が今日の状況をもたらしているというふうに見ております。  この私の見方に対して、大蔵大臣の見解をお伺いします。
  71. 松永光

    国務大臣松永光君) 今、委員指摘経済情勢についての分析でございますが、私も現在の状況が大変厳しいということは認識をいたしております。  ただ、消費税の五%への引き上げ、あるいはまた平成年度の予算、そういったものについての御批判があったわけでありますが、まず消費税の引き上げ問題といたしましては、我が国が速いスピードで少子・高齢化社会に向かっておるということ、一方、財政状況危機的な状況にあるということ等々を考えれば、その状況を打開するための一つ措置として消費税を引き上げざるを得なかったということはやむを得ざる措置としてお認め願いたい、こういうふうに私は思っております。  なお、金融機関不良債権問題については、大蔵省としてはこれまでもその早期処理を促してきたところでありますが、同時にまた金融機関経営合理化等を積極的に行い、不良債権の処理に努めておると認識しておるわけでありますけれども、これからもそうした処理が進むように大蔵省としては促してまいりたい、こう考えておるわけであります。  アジア地域の通貨金融市場の問題につきましては、我が国としてはIMFを中心とする国際的な支援の枠組みの中で積極的な支援を実施しておるところでありますが、今後とも関係各国並びにIMF等国際機関とも密接に連携しながら適切に対処していきたい、こう考えているところでございます。
  72. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 さて、私は昨日の本会議において大蔵省の責任を総理にお尋ねしました。それは、現在起こっている収賄の問題だけにとどまらないで、二月四日の衆議院大蔵委員会において参考人として出席した松野元証券局長が、山一証券の三木前社長から飛ばしのトラブルの相談を受けたことを認めて、飛ばし先は海外も可能だと助言したというふうに言ったようでございます。  私は、大蔵省の検査部門の責任者が民間金融機関から接待を受けるということに加えて飛ばしの助言をするというようなことが報道され、本人も認めていたとすれば、大蔵省が従来行っていた金融行政の原点というのはどうなってしまったんだろうかというふうに思います。  私たちは、護送船団方式が裁量行政でまずいんじゃないか、直すべきだということを常に言ってきました。そのときに、言いながらも大蔵省の根幹が揺るぎもしないものがあって、その金融行政が確固たる信念とシステムによって行われているんだと、政策判断上の間違いだけれども、実施しているシステムと決意というのは揺るぎもしないということは私たちのいわば大蔵批判をする背景にある大蔵省に対する信頼なんです。だから、今日まで日本の金融界というのは確固たる地位とは言えないまでも、完全に機能してきたんだろうと思います。  しかし、その根幹たる検査・監督の検査部門が民間金融機関の接待を受けて検査日を漏らしたり手かげんしたりというような状況では、船団を守る提督の意思がなかったのじゃないか、ましてや飛ばしの助言をするというようなことがあったとすれば、私たちが批判をしていた護送船団方式などというものは虚構にすぎなかったんじゃないかというふうに私は思います。このことについて本会議において総理大臣からは御答弁が直接はございませんでした。  ここであえて大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、そういう根幹の問題が今指摘されている、マスコミにおいては接待を受けたなどということの次元での報道が主力でありますけれども、その根幹の信頼が揺らいだということは大きな問題でありまして、その点について大蔵大臣から考え方をお聞きしたいと思います。
  73. 松永光

    国務大臣松永光君) 今回の二人の金融検査官逮捕を中心とした大蔵不祥事、これはまことに痛恨のきわみでありまして、これによって大蔵省の行政に対する国民信頼を著しく失墜させた、えらいことであるというふうに私は認識しております。  そこで、過去のことについてはあり得べからざることが起こってしまったわけでありますけれども、これから二度と起こらぬように、一つは行政の仕組みの面で、一つは行政を担う職員のモラルの面で、あるいは倫理観の面で徹底した改革をしていかなければならぬ、そう思っておるところでございます。組織の面では、今、委員指摘のように、今までの行政はややともすると裁量行政であり、事前調整型の行政であったと思うのでありますが、今後は明確なルールを定めて、そのルールに基づいて民間の事業活動がなされたかどうかということを事後的にチェックする、そういう明確なルールと事後チェックという形での行政に切りかえていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  そして、自己責任原則と市場規律、これにのっとった金融機関経営を前提として今後の金融行政は進められていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでありまして、行政の仕組みの問題と行政に携わる者の意識の改革と両面から思い切った改革を進めていきたい、こう考えているところであります。  なお、不祥事にかかわった人たちに対する処置というものもこれは厳正にやっていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  74. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 この問題については事前のレクチャーで詳しく言っていなかったためにちょっと申しわけないと思いますけれども、さらに言えば、金融行政は日本版ビッグバンというものを目指して大きく変わっていくだろうというふうに思います。私自身はそういう状況になったときにますます重要なのは金融危機管理だと思っています。  財政金融の分離問題で与党の中で盛んな議論が行われてきておりました。その行方についてここでとやかく言うわけではございませんけれども、ある一国の有力銀行がクラッシュを起こしたときに、それが瞬く間に世界じゅうを駆けめぐって、直接そこと取引していないまでも、波及効果の中で日本の銀行に大変な問題が発生するということがあり得るかと思います。そのときに、その危機をどのように察知してどのように対応するかということは大蔵大臣の意思、姿勢、また大蔵省の次官以下各局長、部局の考え方、姿勢というものがどれだけ抹消神経まで行き届いているかどうかによって対応できるというふうに思っています。  私はよくいろんなところで、一番大事なのは総務部庶務課庶務係だと、庶務係がだめなら社長がだめだということにもなりかねないというような例をお話しいたします。例えば、地下鉄サリン事件の後で新宿の駅構内において青酸毒物が仕掛けられて、直前にその火災を駅員が消しとめた、あれは当時の警戒態勢を末端の駅員までよく体の隅までしみ込ませたから対応できたのであって、多くの人命がそのために救われた大変立派な行為だと。本人の行為は立派だと思いますが、そのシステムが緊張感に貫かれておったということがもっと立派だというふうに思っているわけです。ですから、金融危機管理というのはビッグバンの状況になるとより重要視されなければならないし、そのことは日本の安全保障上の問題に匹敵するぐらいの重要問題というふうに思います。  だから、大蔵省に対する批判ということが盛んに行われ、批判に次ぐ批判を受けるようなことが次々に起こってきているわけですけれども大蔵省が必要でないということはだれも思っていないわけでして、その大蔵省機能が非常に重要なんだと。あるいは金融監督庁かもしれないけれども、そういう危機管理の重要性というのはますます増してくるわけでして、その意味でも大蔵省内、金融行政に携わる人たちの指導層から実務者まで貫いた緊張感というものをぜひ保っていただきたいというふうに思いまして御質問申し上げたわけです。冷やかしでやったわけじゃございません。  さて、日銀総裁においでになっていただいているわけですが、後で聞く主題とは違うことで、日銀の幹部に対する接待の問題が報道されておりますので、少しお聞きしたいと思います。事前にレクチャーしていないで申しわけないんですが、けさ新聞に出ていたことでございますし、御自身がやられていることですからお答えいただけるのかと思います。  日銀の幹部に対しても一部の大手銀行から飲食やゴルフなどの過剰接待をしていたというふうに新聞で報道されました。大変驚いておりますが、そのような事実があったのかどうか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  75. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの御指摘の点でございますけれども、私どもといたしましては、との一連の報道を受けまして、私どもが中央銀行としての使命を全うしていくためには早急に事実を把握いたしまして、そして誤解があればそれを解き、事実であれば厳正に対処するということが必要であると思いまして、直ちに行内におきまして広い範囲でそういう接待を受けた事実関係があるかないか、どういう内容のものであったかという点についての調査を行うことを昨日決定いたしまして調査を開始いたしたところでございます。内容につきましては、まだそういう段階でございますので、私どもも十分承知するには至っておりませんことは御理解いただきたいと存じます。
  76. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 日銀は従来、職員がさまざまな社会的な視野を広げるというか、自分たちの交友範囲を広げるという意味でもあるんでしょうか、民間から接待を受けることについてはあくまでも本人の責任、自覚ということを前提としながら認めているというふうに新聞で読みました。私はその姿勢は必要なことだろうというふうに思っています。そういうことが一切閉ざされていいはずがないというふうに思っています。  ただ、その接待、または交友することによってあるまじき行為があったというようなことが起こった場合にはその者を罰するという次元ではないのではないかと。民間との接触について接待を受けることを認めるというならば、その根底には間違ったときは罰するじゃなくて絶対にそういうことはしないという確固たる倫理が貫かれていなきゃならないというふうに思っておりますが、その点についてはいかがですか。
  77. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、私どもは、これまで基本の姿勢といたしまして、中央銀行がいわば狭い象牙の塔の中に立てこもるということでなくて、生きた金融経済の実態というものを承知いたしますためにある程度外部とのいろいろなお話し合いというものも受けてまいるということについては禁止をするという考えはなかったわけでございます。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕  ただ、その場合におきましても、もちろん中央銀行という公共性の強い機関のことでございますので、その内容につきましてはそれぞれが節度を持って社会通念の範囲を逸脱しないように気をつけるようにということを一般的に行内で徹底するように図ってまいりましたけれども、それ以上にこういうことは禁止というような具体的な縛り方というものはなかったのが実態でございます。  私どもといたしましては、今回こういう問題に際しまして、従来からも当然それは外部との交際におきまして、そのために例えば何らかの見返りを提供するとか、あるいは非常に不適切な形での接待を受けるというようなことはこれは当然禁止するべきものというふうに考えておりましたが、今回の報道を契機にいたしまして、調査の結果を踏まえまして、その点についてはっきりとした指針をできるだけ早くつくり上げまして、これを徹底してまいるようにいたしたいと考えております。
  78. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、日銀マンといえども神様ではないと言うかもしれませんけれども、ややそれに近いものでなきゃならないというふうに思います。  というのは、日本銀行券というものと国民とのかかわりというのはまさに日常のことでありまして、あれは別に兌換紙幣ではありませんし、国の信用というか日銀そのものの信用でもあって、それによって実体経済というか実生活が展開されているわけでありますから、ここの信用がいささかも崩れるということになると社会的な問題が大変大きくなります。  そういうことについては、日常ごく自然に日銀券を使っているけれども、背景にそういうものがあって使っていると。これは郵便をポストに入れれば必ず着くというのと同じ信用ですね。これは絶対間違いないというものでありますから、調査はきちんとされるんでしょうけれども、日銀からそのようなことは絶対に起こらないという体制はぜひ堅持をしていただきたいというふうに思います。  次に、現在の日本経済の混迷の最大の要因は、バブルを発生させ、そしてそれを鎮静化するときに猛スピードで疾走している自動車に急ブレーキを踏んだような、余りにも急激な引き締めを行った金融政策にあったということは私は自明のことだろうというふうに思います。その点、過去の政策の誤りのとばっちりをかぶっている現政権は気の毒な点もなくはないんですけれども、バブルの発生からバブルつぶしを行った当時の政策とその責任について、とりわけ金融政策について日銀総裁はどのように考えているか、見解をお伺いしたいと思います。
  79. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御質問のバブルの発生についてでございますが、これは当時の自由化、国際化というような経済環境の変化とか、首都圏への一極集中、あるいは土地取引に関します法制や税制などのいろいろな要件が互いに複雑に影響し合う中で、経済全体につきましていわゆる土地神話でありますとかいろいろな幻想が生まれてきたというところに原因があったと思いますけれども、ただ当時の長期にわたります金融の緩和にもその原因の一端があったということは否定できないところであると考えております。  当時の金融政策を振り返りますと、国内経済におきましては、昭和六十年のプラザ合意以後の急速な円高の進行に伴いましていわゆる円高不況、そのデフレ効果が非常に強く懸念されるような状況でございました。このため日銀は公定歩合を二・五%まで引き下げまして、その水準平成元年まで据え置いたわけであります。当時は景気の回復に伴ってある程度の資産価格の上昇はございましたが、物価そのものは安定基調を続けていた時期でございます。  また、国の経済政策面におきましても、経常黒字が大幅になっている、これを是正する、あるいは円高の回避を行うということが非常に優先的な政策課題でございまして、そういう中で低金利維持ということは当時の金融政策運営面ではぎりぎりの選択であったように理解をいたしますけれども、それが結果といたしまして長期にわたる金融緩和となり、バブル発生の一端となったものであると考えております。  その後におきまして、私ども金融の引き締めを行いまして、なお平成三年以後にはその効果も確認されましたので公定歩合の引き下げを実施し、その後は金融緩和の措置を講じてきたのでありますけれども、今日に至るまで景気の低迷が非常に長くなりましたことは、やはりバブル時代の経済の行き過ぎというものが大きかったためにその調整が深く長いものにならざるを得なかったということであったと考えます。  このように、バブルの発生と崩壊が経済に大きな振幅をもたらしました経験から、私ども金融政策のあり方につきましても、これは重い反省をもたらすものであると受けとめております。当時の経験を踏まえまして、第一には為替相場の安定や対外不均衡是正のために過度に金融政策に依存した対応をとることは適切ではない、あくまでインフレなき持続的成長を目指した運営を目標とすべきであるということ。それから第二に、その時々の資産価格やマネーサプライにつきましても十分留意して早目早目の対応をとること。それらの点を当時の教訓といたしまして、今後十分念頭に置いて適切な政策運営を行うように努めてまいる考えでございます。
  80. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 ただいまの答弁、その決意のほどといいましょうか、私も十分に理解するところでございます。ぜひきちんとしたかじ取りをやっていただきたいわけですが、もう少し詰めていかなきゃならない問題がございます。  当時、新デタントの時期でありまして、アメリカはソ連との緊張緩和が進む中で双子の赤字を解消したいという意思が極めて強かったろうというふうに思います。そのためにはアメリカに対する外国からの資金の流入といいましょうか受け入れ、これを日本に求めたのではないか、そのための日本の金利、公定歩合の引き下げの要請がかなり強く来たと。これは一面ではアメリカのそういった世界戦略といいましょうか、自国の経済状況を好転させるためにこのデタントの時期を活用して日本とドイツに圧力をかけていく、アメリカ経済立て直しのための圧力を公定歩合引き下げということで行ったというふうに見えなくはございません。同時に、ドイツにおいても公定歩合引き下げ、金融緩和が行われたけれども、短時日でそれをもとに戻したということがありまして、それは当時、ドイツの中央銀行政府からの独立性の強さというものが政策判断をそのように行わせたんじゃないかと。  日本は、私の聞くところでは、大蔵省からの圧力によって、日銀は公定歩合を引き下げたくなかったけれども、その圧力に抗し切れずその判断を行ったというふうに言われております。ドイツは貿易決済がドル偏在ではなくてマルクもかなり強いわけでありますけれども、日本の実情からすればドルが主力でありますから無理ないかもしれないけれども、そういった状況の国際情勢の中で大蔵省の政治的な判断によって日銀は金融政策を曲げざるを得なかったというふうに聞いておりますけれども、そのことについてはどうだったんでしょうか。
  81. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 当時の国際的な状況で申し上げますと、主要国の通貨がフロート制に移行いたしました後、主要国の為替相場の間の関係をどういうふうに構築をしてまいるかということが、いろいろな試みを経まして、また国際的にさまざまな協議を経ましてだんだんと安定した姿に移っていく、そういうふうな移行の時期であったように思うのでございます。したがいまして、やはり当時におきましては、ドルの為替レートに対します。その他の通貨の相対的な関係というものをどういうふうに組み立てていくかという点が国際的な関心の的でございまして、主要各国でいろいろと会合を繰り返してその点の政策判断の協議をしていたということであったと理解をいたしております。  その中で、ドイツも日本もほぼ共通の形の金融政策をとっておりましたけれども、その置かれました経済の環境からいって国内政策としては多少の早い遅いの振れがあったように思います。その間に御承知のニューヨークでの株式市場の暴落というような出来事もございまして、これらが各国の金融政策上の足並みが必ずしもそろわなかった一つの原因になったものだと考えております。  しかしながら、私どもとしましては、当時、国内といたしましては、そういう私どもの置かれました広い国際的な環境を関係の当局間でそれぞれ議論をし、判断をしながら、政策をいかにしてまとめていくかという決定を行っていたわけでございまして、その中では必ずしも御指摘のようないろいろの意見の食い違いというものが顕在化していたようには理解をいたしておりません。  ただ、これは私どもがやはりそういった経過の中から得ました一つの教訓が、先ほども申し上げましたような対外的な通貨の安定ということを国内の金融政策の目標に掲げて余りこれに重きを置きますというと国内の経済情勢から見て適切さを欠くような場合がなしといたしませんので、金融政策をとってまいります際にはまず国内の経済の持続的な安定成長を確保し、物価の安定を達成するということを主たる目的としてやってまいることが大事である、それが私どもの得ました教訓でございます。
  82. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 判断に当たって国内の経済の持続的な安定を図ることを主力に置くべきだというのが反省だと、私もその言葉をお聞きしましてまずは安心をいたします。  当時、日銀が八六年の一月以降、公定歩合を五次にわたって引き下げて、八七年二月には二・五%、今から思えば高いわけですが、当時は史上最低と言われました。  当時はどういうことが国の政策として行われたかというと、土地臨調というものが一九八七年にできております。土地臨調は、最終答申は竹下内閣のときに出されたわけですが、地価はなお高水準であり、今後の地価の引き下げを目指すと。さらに、八七年当時は国土利用計画法によって監視区域の適用というのが厳しく行われておりました。地価を引き下げなきゃならないという国の政策中心であったわけですが、では、そのときに公定歩合が引き下げられていくということは、当時の国の基本的な政策の土地問題、土地政策と整合性が図れなかったのではないかと。バブルが不動産を中心に起こってきたということからすれば、当時の金融政策の判断は、特に公定歩合引き下げの判断は、今、総裁の反省にあったわけですけれども、とても国内経済の持続的な安定を図るというようなものではなかったのではないかと。土地の高騰をあおる、それは取引の量が多くなるということと同時に、高騰をあおるということがバブルを発生させた原因とすれば金融政策上の判断は非常に大きかったと厳しくそれは言われなければならないというふうに思います。
  83. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 当時の国内の金融政策の判断におきまして、円高あるいは経常収支の黒字の増大ということを防止したいという動機が一つございました。それが先ほど申し上げた反省の一点でございます。  もう一つの反省点として最初に申し上げましたことは、当時におきまして確かに国内では資産価格が上昇ぎみでございました。ところが、一般の卸売物価、小売物価の方を見ますというと、消費者物価は数年間にわたって年率一%程度の上昇ということでまだ非常に安定していたわけでございます。  当時、金融政策は国内の物価に注目をして運用するということから、いわば資産価格の方の上昇を大きな判断材料に入れるということに若干欠ける面があったかと思います。この点につきまして、これがその当時の結果的にはバブルが行き過ぎに陥り、そしてその崩壊の効果が非常に長引いたということにつながりましたことから、私ども先ほど申し上げました反省の一つといたしまして、資産価格の動向あるいはマネーサプライの動向にも十分注意を払いながら早目早目に手を打っていく、金融政策はそういうことを重視しなければならないということを現在は考えているところでございます。
  84. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、当時、三重野日銀総裁が平成の鬼平と言われてバブル退治の旗手のように一時はやされたわけでありますが、本人がどう思っていたか知りませんけれども、急激な引き締めをやっていった場合の経済分析はどのように行われたのか、政策委員会等でしっかりとした経済分析のもとにあの急激な引き締めは行われたのか、その点について聞きたいと思います。
  85. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私も具体的な内容について必ずしもつまびらかでございませんけれども、当時の金融政策運営状況から判断をいたしますと、やはり当初におきましてやや資産価格の上昇というものに対する取り組み方が出おくれたことがあったかもしれませんけれども、その後におきましては十分この点について日銀としては認識を深めまして、そしてそのあらわれといたしまして全体的な金融の引き締めを行いました。  ただ、行いました後もやはりその後の経済の動向については当時よく注目をしておりまして、そしてこの引き締めの効果があらわれたということを判断したのはかなり早期であったと思います。ですから、その後割合に機を失せずに緩和に移ったわけでございますけれども、その点はその前のバブルの大きさが大変大きゅうございましたために後に経済の重荷が残った、そういうふうに理解をしております。
  86. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 ほとんどアドリブでお聞きして、またそのようにお答えいただいてありがとうございました。私も大変緊張して答弁をお聞きしたわけですが、なお議事録ができましたらよく読ませていただいて、私自身も勉強したいと思っております。  さて、超低金利政策への転換について日銀総裁にお伺いいたします。  消費を低迷させている原因は先ほど述べた性急な財政デフレ政策を実施したことと、もう一つは資産デフレによる逆資産効果があるというふうに考えております。逆資産効果は地価の下落、株価の下落、そして超低金利による受け取り財産所得の減少、とりわけ期待可能性を含めた減少にあるんじゃないかと思っております。株価に重要な影響を与える金融システムの問題は本委員会の任務であって、この点は後ほど幾つかの点を質問したいと思っております。また、土地問題についても先ほど申し上げましたが、いずれ取り上げなければならないというふうに思います。  超低金利政策への転換について一つの考え方を申し上げたいと思います。  昨年十二月十六日、経済企画庁が閣議に提出した一九九六年度国民経済計算によると、家計部門の利子配当などの財産所得の受取額から支払い額を差し引いた純受け取り財産所得は約十五兆六千億円であって、九五年より二兆一千億円少なくなっている。これは第一次石油危機後の七九年以来の低水準で、家計部門は負債よりも資産が多いため超低金利影響が大きいのではないかというふうに思っております。一方、金融機関の純受け取り財産所得は二十四兆三千億円で、前年度より三兆一千億円増加している。五五年に統計をとり始めて以来では最高額となっております。なお、金融機関の純受け取り財産所得は三年連続して増加しているようでございます。  家計の犠牲の上に金融機関が暴利をむさぼっている、それによって政府、日銀の政策の失敗と金融機関みずからの失態で増加させた不良債権の処理に充てているという構図が明らかになってきて、国民だれもが知っております。  バブルの発生は金融政策の失敗によって起こり、崩壊も起こり、その後の超低金利国民の生活が犠牲になっている。私は、特別委員会でも時の大蔵大臣に、これを踏んだりけったりと言うんだというふうに申し上げましたけれども、そのような状況が長く続いて、もはや二年五カ月以上も続けられているわけでございます。純愛け取り財産所得の減少、それ自体消費を低迷させている要因でありますが、最近日銀総裁が繰り返し言明している超低金利政策の継続が期待可能性まで否定することになって消費の低迷に一層の拍車をかけているのではないかというふうに思います。  以上申し上げたように、事実の問題として、超低金利政策金融機関やゼネコンの救済には一定の役割を果たしているけれども一般国民は大きな犠牲を払っているというふうに言わざるを得ません。国民政府政策の失敗と金融機関のでたらめな経営のツケを受け取り財産所得の減少と公的資金投入の双方で負担させられるということになっているわけであります。  このような一般国民いじめのやり方について大蔵大臣は責任を感じないのか、まずその点を大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  87. 松永光

    国務大臣松永光君) 低金利政策影響で貯蓄に対する利子が少なくなって、その影響を受けておられる方々が特に高齢者とか年金生活者等にいらっしゃるということは私も承知いたしております。  しかし、一方においては、低金利企業金利負担の低減等を通じて景気回復に寄与するものと考えられますし、また企業収益が改善してくればそれを通じて雇用者所得が改善される、こういう面も実はあるわけであります。その結果として、雇用者所得が伸びればそれは家計にプラスになるという面があるわけでありまして、私としては景気の回復が速やかに実現をすればいいこともあるんじゃないかというふうに思っておるわけであります。  金利の問題については日本銀行の専管事項でありますから私としては発言することは控えさせていただきますけれども、いずれにせよ低金利のために困っておられる方がいらっしゃるということは私もよく承知しております。  同時にまた、低金利によって企業金利負担が少なくなる、あるいはまた設備投資が進む、それによって景気回復にプラスになる、あるいはまた働いている人の雇用所得がふえるという面も実はあるわけでありまして、現在では景気回復という面、こういった面から今のような金利政策がとられているんだろうというふうに私は認識しておるわけでございます。
  88. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 日銀総裁にも同じ質問をしたいわけですが、今の大蔵大臣お話を聞いておりまして、今の金利政策、今の金利水準経済回復に非常に大きな効果をもたらすだろうというお話でございました。  しかし、この超低金利というふうに私どもが厳しく批判している状況国民みんながそう思っている状況は、じゃ企業にとって資金を調達するときに有利なのかどうか、状況はいいのかどうかというと、貸し渋りの状況が起こっておると。このような状況の中でも貸し渋りの状況が起こっているということは大問題になっているわけでありまして、その点は後でまた聞きますけれども、現在、超低金利政策を変更するつもりがあるのかどうか、日銀総裁にお聞かせいただきたいというふうに思います。
  89. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この超低金利の各部門ごとに及ぼします影響につきましては、御指摘がございましたように、家計の場合、金利を負担いたします住宅ローンのようなものの残高に比べまして金利の収入を得ます預貯金等の残高は倍に上っておりますから、差し引きいたしますと、金利は純受け取り項目でございまして、超低金利によりましてそれ以前に比べますと受け取りが減少していることは事実でございます。  ただ、この減少しました分がどちらの部門に移っているかということをまた検討いたしますと、金融機関につきましては、確かに金利が下がりました直後におきましては調達金利が低下をいたしますのに対して受け取りの方の金利が、時期的なずれがございますために利下げの直後につきましては収益は増加をいたしますけれども、一たん時期的に双方が同じレベルまで下がってしまいますと、その後は金融機関の受け取りがふえることはございませんで、むしろそれらの差額は挙げて企業金利負担の軽減ということに向いていくわけでございます。  その点から、企業のコスト負担の軽減が設備投資の増加や生産の増加ということにつながりまして、それがさらに雇用にいい影響を及ぼし、また勤労所得の増加の原因となるということから、そういう形で家計に全体の収益が還元をされてまいります。これまでの計数で見ますというと、そのような雇用所得の増加というものが家計におきます利息収入の減少よりも大きいというのが最近の年の実態であると思っております。  そのような点から、私どもとしましては、もちろん家計におきましてそれぞれのお立場がございますので、利子収入に依存されることの大きな家計におかれては大変苦しい状態になっているということはよく理解をいたしているのでございますけれども、全体としての経済の活性化が低金利一つのてことして進行をし、それが企業の収益を通じて家計の方に及んでいくというその効果の大きさというものを私ども期待をいたしまして、現状をいろいろと検討の上でこの低金利金融の緩和姿勢というものを続けている段階でございますので、この点御理解をいただきたいと思います。
  90. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、今の日銀総裁、また大蔵大臣の御答弁は理論的にはそうだと思うんですよね。しかし、何で二年五カ月も続けてまだ何の効果も出ないんですか。この間、何次にもわたって多額の公共投資が行われて効果が出ない。そうすると、私自身に答えを出せといってもかなり無理なんですけれども、多くの討論をしなきゃならないと思うんですが、どうするんだと。庶民の感覚からいうと、庶民の預貯金というのは汗の結晶なんですよ。掛け算では金は絶対入らないんです。全部足し算なんです。一つ一つ積み上げて少しずつためて、それで預貯金になっていくわけです。市場原理じゃないんですよね。  ところが、公定歩合とか預貯金金利政策によって決定される。あとは市場メカニズムの中で動いていきますから、高齢者の世帯だけ金利を上げるというようなことはなかなかやりにくい。やればできるんでしょうけれども市場メカニズムで実施されておる。すなわち、稼いで銀行、郵便局へ持っていくときはそのお金は絶対的な価値がある、絶対価値みたいなものがあるんですよ、各人にとっては。ところが、一たん金融機関に預けられる上相対化されちゃうわけです。何だおまえ、汗水流して働いたってそんなもの関係ないで、幾らは幾らやということになると。これはキャピタルゲインだって同じように扱われるわけですね。だから、庶民から今の政権の経済政策、日銀の金利決定の判断について批判が強いんです。ぜひそういうことをお酌み取りいただきたい、どこにもしりの持っていきようがないんですから。さっき言ったように、踏んだりけったりの今けったりの状況で、けられっ放しですわね。それでは余りにも気の毒じゃないか。経済状況がよくなれば収入もよくなるんだから早くやってみてくれということですわね。  そのことを臨時国会の中では盛んに私も言いました。公共投資の問題も言いました。金利の問題も言ったし減税も言ったし、みんなノーだと。だけれども、ある日突然減税をやって、それはおかしいけれども、よかったなと思っていますよ。ある日突然また金利を上げようなんということになるのかもしれないけれども、そのときは事前にぜひ国会に説明をいただきたいというふうに申し上げたいと思います。  通告した質問以外いろいろなことでやっていって、時間がまだ幾らかあります。初めて九十何分という時間をいただいてうれしくてやっているんです。  さて、経済の現状を見ますと、先ほども申し上げたとおり、深刻な不況に落ち込んでいくような危険な状況にあるのではないかという危機感を持っております。ですから、今回の法案が出てきたことについてもそういう経済分析のもとに行われているんじゃないかなというふうに私も薄々思っております。  さて、日本経済はこれまで比較的好況だった大企業、製造業、自動車、電機などと、低速状況が続く金融、建設、不動産、中小企業及び流通の二極状態にあったと、大企業、製造業と金融、建設、不動産業とか中小製造業の二極状況。しかし、最近になって長引く消費の低迷の影響が大企業、製造業にも及んで、自動車、電機など軒並み生産計画を下方修正してきております。昨年の春以降、証券、金融、生保の次々の倒産、廃業が起こって、さらには中堅ゼネコンの東海興業、大都工業、多価建設、流通のヤオハン、食品の京樽、東食、レジャーの日東興業、これほどの大型倒産が相次いでいるということはかつてないことではないんだろうかというふうに思っています。  さて、四月から実施予定だった早期是正措置ということが金融機関の信用収縮、貸し渋りに影響を及ぼしてきまして、このことが幾つかの大企業経営不安説が風説として流されるなどということが起こってきて大変な問題になってきている状況でございます。午前の質疑の中にも貸し渋りの状況が出てまいりました。私も、日銀からデータをいただきまして、貸し出し状況貸し出し態度について時系列的に見させていただきました。貸し渋りというのは決まった決まりはないんだそうでございまして、貸し出し案件本来の条件からすれば、従来、当然貸し出してしかるべきものに貸し出しをしないということが貸し渋りということなんだろうと思いますが、民間金融機関の詳しいデータがないとなかなか証明は難しいんだろうと。目録のデータを見ただけでは本当に貸し渋りがあるということになかなかデータ上は言い切れないような気がいたします。  民間金融機関の言い分としては、そもそも資金需要がないんだと、あるいは企業業績の悪化のため融資すべき案件が減っているのだという主張もあるようでございますけれども、かなり無理をしてというか、大まかに日銀のデータを見て民間銀行貸し出しが九六年末以降五業態ベースでほぼマイナスの伸びを続けている、加えて日銀短観の貸し出し態度、DIが同時期急速に悪化していることを考えますと、貸し渋りが相当程度あるというふうに見られるのではないかというふうに思います。  そこで、日銀として今の貸し渋りということがどの程度あるのか、どういう状況になっているのか、まずその辺の分析をお聞かせいただきたいと思います。
  91. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘になりました日銀短観におきます借り手側のいろいろの金融機関態度についての判断、厳しいと見るか融資態度が緩いと見るかというので、非常に厳しいと見る向きが増加をしているというような点ははっきり数字にもあらわれておりますので、そういう点につきましては金融機関態度は非常に慎重化していることは事実であると思います。  ただ、最近におきまして株価が反発をいたしましたり、また円高傾向あるいは政府による一連の対策等もございまして、金融機関自己資本の面からする貸し出し能力の制約というものはひところに比べますと和らいできているように思いますけれども、それでも大手金融機関中心に依然慎重な融資姿勢維持されていると思います。  そこで、今後の企業金融の展開はどうなるかという見通してございますけれども、これにはまず金融機関自身自己資本がどのように強化されて、それによって貸し出し余力がどのぐらいふえていくかという点、また企業の側で社債やCPの発行によりまして銀行に依存しないで資本市場でどの程度資金が調達されるかという点、また政府関係金融機関がどのくらい銀行貸し出しを補完できるか、地銀や生保などの他業態がどれだけ受け皿となるかといったようなことも大きく響いてくると思います。そういった代替的なルートも最近それなりに増加をしているように思われますけれども、ただ、やはり金融機関融資姿勢自体は慎重でございますから、年度末についての企業金融動向はなお注意が必要であると思っております。  私どもといたしましては、この金融緩和スタンスを維持しながら金融市場に対して量的に潤沢な資金供給を続けていくということによりまして、市場安定と金融機関資金繰り緩和に努力をしているところでございます。また、金融調節のやり方といたしまして、昨年の末から後、コマーシャルペーパーの買い入れのオペレーション、これを大幅に実行いたしまして、企業コマーシャルペーパーでの資金調達が拡大できるようにと努力をしているところでございます。  私どもとしましては、これらの措置政府施策などとも相まちまして企業金融の円滑化に寄与していくことを期待しつつ、このような政策を今後も続けてまいりたいと思っております。
  92. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、昨年末、日銀が企業コマーシャルペーパー市場から買い上げる方針を発表したというのは、貸し渋りの状況を深刻に受けとめているということが前提になっているのだというふうに思っております。  最近の新聞報道でしか私は見なかったのですが、中小企業金融公庫や日商ないしは通産省の調査等が行われているようでありまして、きょう通産省と建設省においでいただいているので、企業が受けている貸し渋りの実態というものについて両省の説明員から説明をいただきたいというふうに思います。
  93. 齋藤浩

    説明員齋藤浩君) 当省では産業界に対しましての現在の金融状況についての影響を逐次調査をいたしております。最近時点では、一月の末にいわゆる中小企業以外の大企業につきましても実態調査を実施いたしました。その結果を御報告申し上げます。  まず、貸し渋りという事態に遭ったという、あるいは今後あり得るという回答をいたしました企業の数でございますが、これにつきましては、実は中小企業以外はすべて通常は大企業というふうに呼んでおりますが、私どもとしましてはもう少しきめ細かな実態を調べたいということで、一番小さいクラスを中堅企業、そのちょっと上を大企業といたしまして、さらに例えば資本金百億円を超えるようなものにつきましては超大企業とまたその細分化をいたしまして、どういう状況かというのを調べたわけでございます。  それによりますと、中堅企業は貸し渋りがあったというものが二七・二%、それに対しまして大企業では四二・九%、さらに超大企業になりますと五六・六%ということでございました。別途、一月中旬に中小企業について調査いたしました数字は二四・九%ということでございますので、貸し渋りという事実に関しましては中小企業よりも中堅あるいは大企業により事実が生じているということがわかったわけでございます。  貸し渋りの内容につきましては、貸し出しの延長あるいは貸し出しをふやすというのを断られるとか、あるいは金利を上げてくれと言われるような内容でございますが、じゃそういう貸し渋りがあったという場合にどのような影響が実際の経営に出ているかということでございますが、それについても調査をいたしました。  その結果につきましては、今度は逆でございまして、中堅企業の方により資金調達の困難が出ているということでございまして、例えば資金調達が非常に困難になったというお答えをしてこられました企業の数は、中堅企業でいいますと八・四%でございますが、大企業では四・四%、超大企業ではゼロということでございまして、貸し渋りはあっても経営にどのような影響を与えるかというのは中堅あるいは中小企業の方に強く出ているのではないかと思います。  その結果につきましても、若干その調査結果からうかがい知れるところでございますが、一つは、大企業につきましては御説明が先ほどからございます社債あるいはコマーシャルペーパーによりまして銀行に頼らずに自分で調達できる、こういう時期でございますからなおさら自力で調達をしていこうという動きも出ているわけでございます。  それから、もう一つ大きい点といたしましてわかりましたのは、実は貸し渋りをしてきた金融機関でございますが、メーンバンクというお答えをした方はほとんどございませんで、準メーンとか、あるいは準メーンでもないその他大勢と言うと怒られるかもしれませんが、そういう金融機関から、うちはメーンでもないのでちょっと回収させていただきたいという声がかかったというところが圧倒的でございます。そういう意味でいいますと、メーンから今後融資できないよと言われたその深刻度が大企業については出ていなかったのではないかというふうにこの調査結果からは推察をいたしておるところでございます。  したがいまして、現在の対応策につきましては、資金調達力が弱い中小あるいは中堅企業に対しまして、それを中心政府系金融機関の特別融資ということで資金調達の円滑化に万全を期しております。  なお、今後の展開といたしまして、一つ我々としても懸念をしておりますのは、いつごろ貸し渋りを受けたかというのもあわせて調査をしたわけでございますが、圧倒的に十二月の時点で貸し決られましたというのが多かったわけでございますが、一月、二月についてはやや小康状態を保っておりまして、今後三月の年度末に向けまして予告を受けたという企業が大変多うございます。  そういう意味で、企業の側からはぜひ金融システム安定化早期に図ってほしいということで要望が上げられてきているところでございますので、私どもとしましても今後さらに資金調達に対しての円滑化に努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  94. 中山啓一

    説明員(中山啓一君) 建設業界に対する貸し渋りについて御説明いたします。  地方の中小・中堅業者を中心に全国建設業協会という団体がございますが、ここが昨年十二月に調査、公表した結果によりますと、金融機関の対応で貸し渋りを受けたことがあると認識しておる企業が三〇%程度ございます。ただ、政府系の中小企業金融公庫等の対応での貸し渋りの状況については、受けたことがあると回答した企業は四%程度、そういう回答が調査結果で出ております。  それから、昨年十二月の日銀短観の業種別の資金繰りの判断の状況を見ますと、産業別では建設業が資金繰りが楽であると答えた企業から苦しいと答えた企業を引いた値が本年三月までの予測で一番高いといいますか、非常に悪い見込みになっておりまして、現実に資金繰りの面で非常に厳しい状況に直面しているということが言えるわけでございます。  建設省といたしましては、去る一月三十日に八分野二十七項目から成る建設業の経営改善に関する対策というものを取りまとめまして、直ちに実施に移したところでございます、その中では、公共工事等を含めた工事代金支払いの迅速化、地方公共団体実施の前払い金の割合の引き上げ、それから保証事業会社による預託融資枠の拡大、それから公共工事代金債権を流動化することにより、一月くらいかかって現金化できるところを一週間くらいでできるようにしようというふうなことの検討、その他公的金融機関における貸付資金枠を建設業者向けに十分活用していただけるよう関係省庁にお願いするということなどを盛り込んだ対策を打ち出しまして、目下、円滑な実施に努めているところでございます。
  95. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 私は、大蔵大臣にここでお聞きしたいわけでございますが、現在の貸し渋りの状況はお聞きのとおりでございまして、先刻大蔵大臣も御承知の状況かと思います。特に中小ないしは中堅企業に厳しい。十二月が厳しく、一月、二月は小康状態であったが三月に予告されているのがかなり厳しい。三月にまた年末、十二月のような状況が起こり得るんじゃないかというふうに今見られているわけです。  私は、貸し渋りということについて全体的にやや批判的に見られているわけでありますけれども、民間金融機関の側から見ればまさに市場原理に基づく行動ではないだろうかというふうに思われるわけであります。早期是正措置との絡みで、自己資本比率の向上を目指してみずからの経営状態をきちんと分析した上で将来的に展開を安定化させるためには、まず当面貸し渋りと言われようと何しようとやるというのがまさにこれが市場原理、企業の正しい姿勢市場原理、市場主義から見れば正しいと言われるわけですね。  しかし、私は、一般的な印象から見れば、日本の銀行にはというか、銀行そのものはまさに国という概念とか国境などというものは最初から自分たちの経営視点の中にないのだろうと思います。国の今の経済現状を見て確固たる安全を保つのか、あるいはこの中小・中堅企業経営実態を見たときに黒字倒産が起こりかねないというようなところまで追い込んでいくような貸し渋りをやるということは、日本の民間金融機関の中に中小企業の育成支援をする、日本の経済の下支えをしているところにきちんと公的使命を持って役割を果たすというような、そういう概念がないのじゃないか、もうこれは最初からあきらめた方がいいんじゃないかというふうに思わざるを得ません。  ということからすれば、今、建設省のお話にもありましたが、公的金融システムによる支援をしていかなきゃならない。一時期、公的金融機関政府系金融機関財政融資に対する批判が厳しく行われました。不要論などというものが盛んにやられた。大蔵省の財投検討機関の中で財投債というようなものが出てきたと。すなわち、財投債を投入すれば市場原理が働いて、淘汰されるものは淘汰されるのではないかというようなことが言われた。しかし、財投債で経営が成り立つのだったら何も政府系金融機関である必要はないわけでして、そのような特殊法人である必要はないわけで、民営化されてしかるべきだし、みずから民営化になると思うんですね。  そういうことからすれば、財投債、財投機関債、財投債はまだしも財投機関債のようなものは結論として一つの選択肢として出てきたけれども、おかしいんじゃないか、議論の組み立てが本末転倒しているんじゃないかというふうな印象を持っていました。  ということになると、私は、大蔵省が年末に貸し渋り対策を出してきましたけれども、今後ますますというか、量的にどれほど拡大ということは別問題として、日本の金融システムの中に公的金融システムの確固たる位置というのが必要なんだということを今の状況が証明しているんじゃないかというふうに思います。  そのことについて、大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  96. 松永光

    国務大臣松永光君) 政府系中小企業金融機関――国民公庫、中小公庫、商工中金等でございますが、これは民間金融機関中小企業に対する融資活動を補完する機関だというふうに一応なっていると思うのでありますけれども、昨今のような民間金融機関の貸し渋りが見られれば、補完というよりももう少し積極的な意味を持って中小企業資金需要に応じていかにゃならぬと、こういう状況に現在なっているような感じがいたします。  そこで、先生御案内のとおり、政府系中小企業金融機関資金量を九年度、十年度で二十五兆円を用意して、そして中小企業資金需要に応ずると、こういった措置をしたところでありますが、昨年の十二月、ことしの一月等の実績を見るというと相当な効果を発揮しているというふうに報告を受けております。  民間の金融機関、これは公共性という観念を全く持っていないとは思いませんけれども、しかし株式会社でございますから自分の銀行の存立を危うくしてまで貸せということは言いにくうございます。したがって、そういう場合の用意として政府系金融機関があるんだ、中小企業金融機関があるんだと、こういうふうに思っておるわけでありますが、今回お願いしている法律を通していただければ、それは民間金融機関に対する資本注入を通じて全体として日本の金融システムの安定に貢献すると同時に、資本が注入されるわけでありますから貸し渋り対策にも効果を持つというふうに思っておるわけでございまして、その意味でぜひひとつ御理解を願いたいと、こう思うわけでございます。     ―――――――――――――
  97. 石川弘

    委員長石川弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君が委員辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。     ―――――――――――――
  98. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 日銀総裁への質問はこの後ありません。どうもありがとうございました。  さて、これから事務当局に少しお聞きしたいと思うわけですが、昨日の本会議の私の質問に対して大蔵大臣は、本年三月末において債務超過や自己資本比率が二%以下の銀行はない見込みであると認識しておりますと二%という基準でお答えになったわけでありますが、その状況からすると貸し渋りが起こる、貸し渋りを選択しなくちゃならないというような金融機関があるのかどうかということでございますね。貸し渋りなんかしなくてもしっかりクリアできるんじゃないかというふうに答弁をお聞きして思いました。その点についてひとつお聞きしたい。  さらに、大蔵省が貸し渋り対策として政府系金融機関の保証機能の活用とか財投を活用した二十五兆円の資金量準備とか出しまして、これが効果を上げているというふうに思いますけれども、末端に行って血の通ったというか機動的な対応がなされているかどうかということに対して心配もございます。追跡調査といいましょうか、徹底を期すための指導の徹底調査というか、そういうものが必要なんじゃないか。追跡してどうなっているかモデルを挙げて調べて、指導が滞っている場合にはきちんと追加指導をする必要があるんじゃないかと。  さらには、三月の貸し渋り状況が厳しい年末規模で予想されるということになればさらなる公的システムによる対策を講ずる必要があるんじゃないかというふうに考えまして、この点について御答弁いただきたいと思います。
  99. 山口公生

    政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。  きのうの本会議で大臣から御答弁を申し上げましたが、早期是正措置が四月からでございまして、自己査定をやった結果の数字が今度は出てまいるわけでございます。したがって、今の時点ではそういう御答弁を申し上げているわけですけれども、今度の三月期に自己査定を厳しくやってその結果どうなるかということについてはまだ判然としない部分があるわけでございます。  ただ、私はそれで危ないところがあるということを申し上げているわけではございませんで、むしろ三月期の例えば株価がどうか、あるいは二月、三月の経済情勢がどうかというようなことでかなり決算が変わるわけでございます。企業の決算も変わりますし銀行の決算も変わるわけです。そうすると、銀行、これは中小の金融機関もそうでございますが、三月期にやはり自分たちに課された例えば八%銀行あるいは四%銀行の数字は少なくともクリアしておきたい、おかなければならないという気持ちになっているわけでございます。  だから、貸し渋り現象というのは、三月期の直前に起きるわけじゃなくて、むしろ今ごろからまた起こり出すという現象なのでございます。だから、昨年の十二月ぐらいからいろいろと御批判があるということなんです。そこで、自己資本比率をやはり維持したい、株価が少し下がっても維持すべきであるという気持ちで行動しておりますので、どうしても分母に当たります貸付金を絞ったりするわけです。  それからもう一つ市場が非常にすくみ現象を起こした経験を十一月にしました。お金が取れれば貸し出しができますが、お金が取れない場合、一方で自分のところの基盤預金といいますか定期預金等が何百億と抜けてしまいますと、銀行は黒字倒産してしまいます。したがって、銀行も厚め厚めの資金手当てといいましょうか、そういうことをやるわけです。先ほど企業CPとか社債があるからというお話がありましたが、昨年の暮れCPが出せなくなった。それはある優良な企業がみんなCP市場をとってしまったからです。企業もそういうふうに資金を囲っちゃうんですね。つまり、自分のところがお家大事ですから、それはみんなで分け合えばいい話だと思いますけれども、そういう現象が起きる。それからさらに、家計にいきますと、家計ではたんす預金というのもある意味ではそうなんですね。金利が低いということもありますでしょうけれども、各人各人がそういった自分のところを大切に思うがゆえに、経済活動として非常に不安感を持って行動するわけでございます。そういうことがこうした現象を起こしていると。  となりますと、先生の御指摘のとおり、かなりもう自己資本比率としてはクリアしているような銀行が多いではないか、だからなぜそんなことが起きるのかという御疑問に対しましては、やはり人間先行きの、三月末の状況がわかりませんので、そこで非常に予防的な行動をとりやすい。そうすると、私ども対策として考えておりますのは、事後的に打っては何にもなりませんから、四月になって打っても何にもなりませんので、今何でも準備がしてありますという状況をつくり出しておく必要があるということ、備えをするということが一番そういった不安感を除去していくというのに重要だろうと思うんです。  それで、貸し渋り現象がひどい状態になりますと、これはある意味では危機状態経済全体が危機になりますから、これはかなり銀行を通じてどんとそういった現象をなくすための手だてをやらざるを得ないという事態も生じるわけでございます。そういうふうに考えたときにこのお願いしております法案の意味があるのではないかと私どもは思っているわけでございます。  それから、いろいろ政府系の保証機能を使ったり、政府系金融機関を使ったりしてそうした貸し渋り現象に対する対応を回らせていただいておりますけれども、数字的に言いましても十二月、一月と金額で二七・三%ふえておりまして、特に無担保無保証の国民公庫のいわゆるマル経資金は五〇%増しになってございます。窓口でも相当な方々がお見えになって御利用をいただいているということで、これで十分だと私は言い切るつもりはございませんけれども、非常に窓口の方も真剣に対応しておりますので効果を上げておるのではないかというふうに思います。  それから、三月ですべてが終わりではございません。それ以降もいろいろな点でよく見ておく必要があるわけですけれども、このお願いしておりますシステムは、一方で預金者保護、もう一方では先ほど先生もおっしゃいました金融危機管理という意味を持っておりますので、これは二〇〇一年の三月までの措置でございますが、そういったものの機動的な発動でもって対応させていただきたいというふうに思っております。  そのほかにいろいろな手段がありますれば、まだ金融についての安定感というものが完全に定着するまではいろいろな手段を私どもは考え、それを行動に移していく必要があるだろうというふうに考えておるわけでございます。
  100. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 本題の法律にかかわる質問に入る前に時間が来てしまいました。また後々質問の機会をいただきましてお聞きしたいと思っておりますけれども、ここでひとつ大蔵大臣一つだけお尋ねしておきたいと思います。  今回の優先株等の引き受けということを行うことが、早期是正措置の実施の延期というようなことも絡みまして、あるいは中長期的には日本の金融システムを不確かなもの、不安定なものにしはしないかと、そういう状況になるんじゃないかと。意気込んでやろうということで日本国内がほぼ統一した世論になっていた日本型ビッグバンについても、あるいは移行しないまま多くの外国の活力ある金融機関によって日本は占拠されるんじゃないかというおそれさえも出てきかねないと。しかし、そういう中長期的不安定要因を残すということは、世に言われているだけでなくて、金融行政をやっている大蔵省は一番御存じではないかというふうに思っておりますけれども、そういうことが懸念されてもあえてこの時期に行うことの意味といいましょうか、大蔵大臣の考え方といいましょうか、その判断をお聞きしたいわけでございます。  そのようなことが懸念されてもこの時期にやらなきゃならないんだということは、どういう判断によって、分析によって行おうとしているのか、もしお聞かせ願えたらこの段階でお聞かせいただきたいというふうに思います。
  101. 松永光

    国務大臣松永光君) 早期是正措置、それから今審議をお願いしておる二法との関係についての御質問だと思うのであります。  早期是正措置は、委員もよく御承知のとおり、国内四%、国際八%というその基準をクリアするという努力を各銀行にしていただいて、そして自己査定をしてそれを公表する、こういったことで市場の期待がきちっと集まるようにしていくということが一つ大事なことと思うのであります。それをやることによって、クリアできない、そういう銀行の場合には、みずから改善計画を立てて、そして一年内にそれが改善できるというものについては改善命令を発することを猶予する、こういったことで現状に対応していく、こういうふうにいたしておるわけであります。  同時にまた、今回の法律を成立させていただきましたならば、先ほど来申し上げておりますように、一方においては預金者預金を完全に保護しますということを国民の前に明らかにすると同時に、あるいはできると同時に、預金保険機構の中に設けられる審査機関によって厳正に審査をしていただいた上、希望する銀行に対して資本注入を行う、それを通じてその銀行資本比率が高まってくる、そういったことも実は期待できるわけでありまして、結果として危機管理が整うというふうに思っておるわけであります。  そういったことのためにお願いをしている、こういうふうにひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。
  102. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 ちょっと私の質問の趣旨が届かなかったようでございますが、改めてお聞きしますけれども、正直言いまして私のつたない知識でも今回の法案を見ていて批判するところはいっぱいあるんです。幾らでも批判できる。野党だからどんどんやっていいという代物でもないかもしれないけれども、できる。そういうことは大蔵大臣政府もよく御存じだと思います。  しかし、あえてやるということになったときに、なぜあえてやるのかということについて、言えないかもしれないけれども、言う必要があるんじゃないかと思うんですね。そういうことを言われても、批判があってもやるんだということになれば、何をか言わんやなんです。恐らくそれだけの分析の上に判断しているわけですから、そのことを聞きたい。そのことを国会という場で言うのが不適切であって言いたくないというのだったらそれでも結構です。それは責めているわけじゃなくて、そういうものかもしれないというぐらい私も思っているんですけれども、その辺について。
  103. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 伊藤先生、大変重要な部分をお聞きになったと思うんですね。私どもの感じでは昨年の十一月の金融不安の現象を見たときに、日本のマーケットあるいは世界のマーケットがいろいろなインパクトが強く出たときに最適値にすぐ収れんしてしまえば、それはマーケットの力で解決し得るんだと思うんです。しかし、当時どういう現象が起きたかというと、海外では日本の銀行は年末越えのドル資金取りにラッシュしました。取れなくなりました。ジャパンプレミアムが一%つけられました。一%つけても取れないと言われた銀行が出てこようとしたんです。国内でもそうです。インターバンクも含め全部守りますと国会で守る仕組みをつくっていただいております。  しかしながら、資金がうまく流れない。日銀が幾ら緩めても単に素通りするだけの金融緩和になってしまう。これはマーケットがそういう形で受けとめられないケースが起きたということなんです。これは金融システムにとってみると非常に好ましくない現象だと思います。だから、理論的にまた理屈だけで申し上げると、それは市場が決めて市場が判断して市場が結論を出せばいいじゃないかとおっしゃると思います。  しかし、それで済む話かと。それでやった場合には社会的なコストは最終的な雇用や我々の生活にまで及んできます。そういうときに金融を通じた危機管理をやらせてください、こういうのが私どもの考え方の一端でございます。
  104. 伊藤基隆

    伊藤基隆君 終わります。
  105. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は公明の牛嶋正でございます。松永大臣に対しましては初めて御質問させていただくわけでございますけれども、よろしくお願いいたします。  今の議論もありましたけれども、住専処理政策以降、金融システム安定化のためにいろいろな対策が今日まで打ち出されてまいりました。住専処理も含めまして、その後金融三法が制定されました。また、銀行特殊会社の創設などもその中に入れてもいいのではないかと思います。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕 昨年の秋の臨時国会では預金保険法の一部改正も行われてまいりました。そのたびに政府は、こういった対策を打つことによって金融不安は解消され金融システム安定化に向かうんだというふうなことを言ってこられたわけです。ところが、常にその後すぐ新たな事態が生じてまいりまして、その発言が否定されてしまうというふうなことの繰り返しであったのではないか、こういうふうに思います。  そして、とうとう今回の金融システム安定化のための緊急対策に至るわけでございます。この二法案につきましても、概要説明におきましては「十兆円の国債と二十兆円の政府保証、あわせて三十兆円の公的資金を活用できるよう措置し、預金者保護金融システムに万全を期すこととする。」、こういうふうに述べられているわけです。  しかし、先ほど申しました次々に打ち出されてきたこれまでの対策が新たな事態によって打ち消されてきたわけでございますけれども国民はこういうふうに説明されても果たしてそのまま信ずるだろうかというふうな懸念を私は持っております。なぜこれまで次々に打ち出されてきた安定化策がうまく実効を上げることができなかったのかと。  まず第一番目に考えられることは、これは予想もしなかった新たな事態金融市場やあるいは経済現象に起こってきた、したがって安定化策が十分にそれに対応できなかったということだろうと思いますね。これまでの政府の説明はこの理由を挙げてこられたのではないかと、こういうふうに思っております。  しかし、私はあえてここで二つ、それほど重要なメーンの理由ではないかもしれませんけれども、挙げたいわけであります。  その一つ理由は、これまでの金融システムの具体的な安定化策というのは新しく発生した事態にすぐに対応するためにつくられたものであるというふうな印象を私は持っております。ですから、政策手段に求められる一般性あるいは普遍性、こういったものに欠けていたのではないかというふうな気がするわけであります。いわば政策手段政策目標の対応関係があいまいなままに政策が打ち出されてきた、これが一つ大きな理由ではないか、こういうふうに思っております。  もう一つ理由は、金融システム安定化策、どのような形のものを打ち出されても、その実効が得られるためにはやっぱり個々の金融機関経営の健全化を目指して融資対応力の強化に努めていかなければ、これは実効は上がらないというふうに思います。これまでの金融行政を見ておりますと、少し金融機関に対して手を差し伸べ過ぎてきたのではないか、そのために今申しましたような自助努力の芽が抑えられてきたというふうな気がするわけでございます。  きょうは、入り口論になりますけれども、この二つの理由をちょっと取り上げて質問させていただきたいと思います。そして、もし時間が残りましたら二法案内容について質問したいと思っております。  金融システム安定化のために提案される具体的な対策がどの程度実効性を持つか明らかにするために、私は先ほど申しましたように政策手段とその目標との対応関係をきっちりと見ていかなければならないというふうに思っているわけであります。ところが、今まで安定化策が打ち出されるときに政府が掲げられる政策目標というのは、金融システム安定化とか信用秩序回復といったような極めて抽象的な表現が用いられてきたわけでありまして、そのために我々としては具体的な対策とその政策目標との対応というのをなかなかつかむことができなかった。そして、実際にまた実効が上がらなかったのもそのあたりに原因があるのではないか、こんなふうに思っているわけであります。ですから、私はまず安定化策のもっと具体的な目標について整理をしておく必要があると思うんですが、時間の要素を加味しながら三つの目標を一応掲げさせていただきます。  第一番目の目標は、差し迫った金融危機を回避し、経済全体が危機状態に陥ることを防ぐ、これが第一番目の安定化策の政策目標かと思います。私はこれを短期的な目標というふうに呼んでおきたいわけです。  二番目の目標は、金融機関融資対応力を高め、金融機関の本来の役割である資金の効率的配分の機能を強め、国民経済及び地域経済の健全な育成に寄与すること、これが二番目の安定化政策目標でありまして、これは中期の目標と言ってもいいのではないかというふうに思います。  そして三番目は、金融システムそのものを改革いたしまして、二十一世紀の経済財政運営に適合した金融システムの構築を目指す、これは長期の目標であります。  まず大蔵大臣に、こういった政策目標の区分に対してどのようにお考えなのか、そして今回の金融対策というのはどのような政策目標に重点を置いておられるのか、そのことからお尋ねしたいと思います。
  106. 松永光

    ○国強大臣松永光君) お答え申し上げます。  今、委員から今回の二法はすぐに対応するためのものという御発言がございましたが、全くそのとおりで、緊急な措置としてお願いするものなんです。  そしてまた、まず短期的な目標を明確にしろという話でございましたが、全くそのとおりなんです。預金者預金は一〇〇%保護しますということを明確にし、かつそのことを資金の面でもその措置をして国民に一〇〇%の安心感を与える、これが第一の目標だろうと思います。  それから、中期的な目標とおっしゃいましたけれども、それとして融資対応力を強めるという話がございました。それもこの二法の目指すところの一つでございます。すなわち、公正中立な審査機関を通じて審査をして決めることでありますけれども、資本注入を希望する銀行に対して優先株の引き受け等措置を通じてその銀行の資本が充実してくれば、それによってその銀行融資対応力は強まってくることになりますし、それらを通じて日本の金融システムそのものが強化されてくる、安心できるものになると、こういうことであろうと思います。  同時にまた、預金保険機構強化し、そのもとにある整理回収銀行、こういったものの不良債権の取り立て能力を強めるために預金保険機構に実は罰則つき立入調査権、こういったことを認めることによって整理回収銀行回収能力を強める、こういったことを通じて日本の全体としての金融システムを強固にし、そして内外信頼を高める、こういう目的のもとにお願いしておるわけでありまして、先生の言ったことと大体合っているような感じがするのでございまして、御理解と御協力を願いたいわけであります。
  107. 牛嶋正

    牛嶋正君 政策論の中にポリシーミックスという考え方がございます。これは、複数の政策目標を掲げる場合には、それを実現していくためには複数の政策手段が必要であるということをポリシーミックス、こんなふうに言っているわけですね。ですから、今おっしゃいましたように、今回の政策目標が二つあるというふうなことになりますと、少なくとも政策手段は二つ必要になってくるわけでございます。一つ政策手段で二つの政策目標を実現することは実はできないわけであります。  こういった考え方に立って今回の金融システム安定化のための緊急対策を示しておりますスキームを見せていただきますと、私は、政策手段として二つ用意されている、こういうふうに思っております。一つは、今おっしゃいましたように、預金全額保護のための体制整備をするということ、それからいま一つ金融危機時における金融システム安定化のための制度創設をする、この二つの政策手段を今回用意されたわけです。ですから、ポリシーミックスから申しますと二対二で、政策論的に申しますと一応実効が期待できるということになるかと思います。  ただ、ちょっと問題がそこにあるわけでございまして、先ほども大臣から御説明がありましたけれども、この金融危機的な状態に対応するための緊急措置ということで預金全額保護という政策手段がとられたわけですが、これはこれで対応するわけですが、問題は金融危機時における金融安定化のための体制を整えていくという二番目の方の政策手段ですね。これがもし仮に先ほど挙げられました二つの政策目標のいずれもそれを実現していこうとしますと、ここにポリシーミックスから申しましてちょっと問題が出てくるというふうに思うわけでございます。  この点について、二つ政策を打ち出しておられますね。一つ受け皿銀行に対する措置、それからもう一つ一般銀行に対する措置があるわけですが、受け皿銀行に対する措置の方は緊急時というふうな感じでとらえてもいいと思うんですけれども、むしろ一般金融機関に対する資金の援助ということになりますと、これはむしろ緊急時というよりも全体の金融機能を高めるためのものというふうなことになるわけですので、政策論からいうとこれは二つきっちり切り離した方がいいのではないかというふうに私は思っておりますけれども、この点について銀行局長、もしお考えがありましたら。
  108. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 確かに、緊急時の対応として破綻金融機関受け皿銀行に対する資本注入と、それから一般金融機関のシステミックリスタに対する資本注入というものに分かれてございますけれども、いずれも手法が資本注入という、キャピタルインジェクションという形をとるということが法律的には一つにしておかないと難しいという面があります。それからもう一つは、預金者保護に最終的には資するのでございますけれども、直接的にはやはり取引先を保護する、あるいは金融が持っている経済に対する機能、資金融機能と先生はおっしゃいましたか、そういった金融仲介機能、そういったものを壊さない形で金融機能維持するというようなものがあるのではないかという感じはするわけでございます。  いずれにせよ、預金者そのものの保護でありますればもう一方の預金保険法の改正の十七兆円の方、これはロスの穴埋めあるいは不良資産の買い取りという形での預金者保護全額保護そのものでございますけれども、もう一方は少し範囲を広げまして、そういう金融が持っている先生がさっきおっしゃった広い意味の機能危機的な状況の場合においても壊さないということでございます。  それで、受け皿の場合が危機かどうかというのも問題はあると思いますが、ある意味では危機なんですね。北海道拓殖銀行破綻したときに受け皿銀行がどこも出てこないというのはある意味では、例えば北海道について見ると経済としては危機といえば危機でございます。そういった意味では、グルーピングといいましょうか、法律的な形としてはこれでいいのではないかということでお示ししているわけでございます。
  109. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、私がなぜそんなことを申し上げたかと申しますと、やはり二つの目標の違いは、同じ公的資金の供給をするにいたしましても、おのずからその場合の判定基準みたいなものは異なってくるのではないか、こういうふうなことで申し上げたわけであります。ですから、この点につきましては二法案内容に入りましてからまた御議論させていただきたい、こんなふうに思います。  先ほど、もう一つこれまでうまくいかなかった理由といたしまして、個々の金融機関がやはり自助努力をしていかなければ幾ら適切な安定化策が金融行政の方から提案されてもその実効はなかなか上がらないだろうというふうなことを申し上げたわけでございます。  そういうことで、これまでも金融システム安定化を推進していくための条件といたしまして幾つかの前提が掲げられてまいりました。私はそれを三つに整理をさせていただいております。一つは自己責任原則の確立、それからいま一つは情報開示の徹底、そして三番目は市場原理の活用でございます。  この前提条件は、総理もしばしばおっしゃっておられますフリー、フェア、グローバル、これにちょうど当たるものでございますが、私はこの三つの前提条件というのは並列的に並ぶのではなくて、この中でやっぱり一番重要な前提というのは情報開示の徹底ではないかというふうに思います。  したがって、第一に整えていかなければならない前提こそこの情報開示の徹底でありまして、私はこれが整わなければ自己責任原則の確立も、それからまた市場原理の活用というものもあり得ない、こんなふうに思っておりますけれども大臣のお考えをお尋ねいたします。
  110. 松永光

    国務大臣松永光君) お答え申し上げます。  もう先生のおっしゃっていることもごもっともだと思うのでありまして、そういう考え方でこの法案の成立をお願いすると同時に、成立した後の実際の運用についても、情報開示それから市場原理、自己責任原則、それに基づいて法律は運用していかにゃならぬ、こういうふうに思っております。
  111. 牛嶋正

    牛嶋正君 この三つの前提条件というのは、結局個々の金融機関がみずから整えていかなければならない前提であるというふうに私は思っております。そこで初めて個々の金融機関の自助努力、あるいはリストラや合理化への努力というものが図られていくわけですね。  それじゃ、その場合、金融行政はこの前提条件について何をなすべきかということなんですけれども、私は、個々の金融機関の自助努力が何らかの形で実際に報われていくような環境とか状況をつくり出していく、これが金融行政の役割ではないかなというふうに思っております。  ところが、これまでの金融行政を見ますと、先ほどのお話にもありましたように、護送船団方式の名のもとで少し金融機関に対して手を差し伸べ過ぎてきたのではないか、そのためにこの三つの前提条件が完全な形では整っていない状況が今生み出されているのではないか、こんなふうに私は思っているわけであります。そうであって、そのことによって今回打ち出された緊急対策の実効がもし上がらないということになりますと、私は金融行政のこれまでの姿勢といいますか、そこにある程度問題があったのではないか、こんなふうに思うわけですけれども、これについてはいかがでございますか。
  112. 松永光

    国務大臣松永光君) 今までの大蔵省金融行政、ややともすれば、ややともすればじゃない、実際のところ事前指導型の裁量行政的な色彩が強かったというふうに私は思います。今後は、先生御指摘のように、自己責任原則を前提にして、透明なルールを定めてルールどおりやったかどうかを後でチェックするという形の行政に転換をしていかにゃならぬし、また実際転換をしていくことになることは間違いないと思っております。
  113. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、私が申しましたように、今回の金融システム安定化のための緊急対策がうまくいくのかどうかということになるわけですけれども、そのためには、先ほどから言ってまいりました個々の金融機関がこの三前提条件というものをどういうふうに考えて、そしてその条件に従って自助努力をしようとしているのかということでありますが、我々としては第三者として外から見てもなかなかそのあたりはよくわからないわけですね。どれぐらいその三つの前提条件が整備されているかどうかというのは、結局はいろいろな現象をとらえて評価をしていかざるを得ない。  例えば、昨年の秋の大型金融機関破綻というふうなものを見まして、やはりまだまだ個々の金融機関によってはそういった自覚というものが足りなかったんじゃないかというふうな判断をせざるを得ないわけであります。また、貸し渋りの実態を見まして、やはり先ほどから議論がありますように、本来金融機関が厳密な審査を行って資金の供給を行っていくということになりますと貸し渋り現象の実態も十分に議論していかなければなりませんけれども、表面的に見ますとやはりまだまだ貸し渋りが起こってくるということは先ほどの三原則、三前提条件というものに対する自覚に欠けているのではないかというふうな感じを受けるわけでございます。  大蔵省はこの点について、個々の金融機関がこの三つの条件というものをどういうふうにとらえているのかということについてどんな感じを持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
  114. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 牛嶋先生の御議論はかなり奥深いところの議論でございますので私の軽々なお答えでは不十分だとは思いますけれども、先生が今おっしゃいました自己責任の原則、情報開示、市場原理の活用、これは最も大切なものであり、これがやはりこれからの金融機関のあり方のベースになるべきだということは私もそう思います。  ただ、今度の金融二法との関係で先生御議論されましたが、今の三つの原則は二法があろうがなかろうが今後こういった考え方で金融機関は対応していくべき、また金融行政もそういう前提で対応すべきものではないかと思うわけです。今度の二法案は、ある意味では預金者全額保護、あるいはそういった経済のクライシスを招かない、日本発の金融恐慌を出さない、あるいは危機管理だということでの法案のお願いでございまして、そういった形でお願いしている以上は逆に先生がおっしゃったようなことがより求められるという意味では全く賛成でございます。  そういう観点から見たときに、こうした公的な資金まで使ってやるということになりますれば当然自助努力というものが最も求められるわけでございまして、我が国もよく外圧で動くという悪口をしばしば言われますけれども、国内におきましてもいろいろな人の御批判というのを受けながらどんどん自己改革をしていくという意味では金融機関も大きくこれから変わっていくと。行政としてはそのための自助努力が生かされるような状況をつくり出すべきだと、全くそうだと思います。昨年御審議をお願いしてお通しいただきました持ち株会社の制度にしましても、私どもは可能性を提供するんです。こうしなさい、ああしなさいという指導は、もうそういう時代じゃないと思います。そういった行政に変わっていくべきだというふうに思います。  したがって、先生のおっしゃっている趣旨は全く我々の行政の目指しているところに沿っているというふうに思っております。ただ、それが十分でないという御批判があることは重々承知しております。
  115. 牛嶋正

    牛嶋正君 この三前提条件を考える上で、私は、今回の大蔵検査官の汚職事件といいますか逮捕事件というのは、これは金融機関側にこれらの三条件がまだまだ整っていなかった証明ではないかなというふうに実はとらえておりまして、そういう意味でこれからさらに安定化を進めていかなければならない時期に非常に重大な事件になってしまった、こういうふうに考えております。  と申しますのは、先ほど三つの条件のうち情報開示の徹底ということが一番大事だというふうに申しました。その上に立って自己責任の確立もあり、そしてまた市場原理の活用もあるわけでございます。ところが、これは検査する行政側と検査される金融機関とが一緒になって情報隠しを行ったというふうにとられても仕方のない事件であったわけであります。  したがって、この情報開示の徹底という前提条件は完全に崩れてしまったというふうに私は思っておりますし、それに伴いまして自己責任原則の確立、そしてまた市場原理の活用につきましても十分な条件が整っていないのではないか、こういうふうに思わざるを得ないんですけれども大蔵大臣の見解をお尋ねいたします。
  116. 松永光

    国務大臣松永光君) まず私の考え方を申し上げて、後で金融検査部長から御答弁をさせていただくことにいたします。  今回の不祥事はまことに遺憾千万な話であります。こういうことの場合に、収賄容疑で逮捕された側の人が民間の人をいろいろ批判するということはちょっとどうかなという感じはしないでもありませんけれども、しかし民間の側にも、今、先生御指摘のように、自己責任原則とか自助努力とかあるいは情報開示、こういったものについての気持ちが非常に薄かった。何とか役所の方に頼って、そして何とかやっていこう、こういう気持ちがあったことは否めないと思うんですね。そこから接待攻勢、こうなってきたような感じがいたします。  したがいまして、まず大蔵省側が倫理観を確立して仕事に当たると同時に、システムの改革もして二度と起こらぬようにしていくということがまず大事なことなのでありますけれども、民間の側でも、今、先生御指摘のように、自助努力、情報開示あるいは市場原理、こういったものをしっかり踏まえての事業活動をされるように期待をしたいというのが私の気持ちでございます。
  117. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) あと、検査に関して若干補足させていただきます。  まさに先生の御指摘のように、今回の事態で検査に対する社会的信頼が損なわれたということは痛恨のきわみでございます。一刻も早く社会的な信頼回復したいという気持ちでおりますが、特に今後まさに金融行政の面で自己責任原則の徹底とか早期是正措置の導入に伴う自己査定という流れに対応しながら、金融検査についてもそれに即応して全く新しい体制といいますか、抜本的に改めた中でそういう体制に対応した検査体制というものを確立していきたいというふうに、これはもう早急にやりたいと思っております。  また同時に、情報開示というものが非常に大事でございますので、これはもちろん情報開示のルールというものが明確にできることが前提でございますが、そういうものが的確に守られているかどうかということも今後の検査に当たっての一つの大事な項目がなというふうに考えております。
  118. 牛嶋正

    牛嶋正君 こういうふうなことが起こってまいりますと、金融機関側からの情報、それだけじゃなくて金融行政側が検査を通じて得た情報、そういったものに対しても国民は果たして信頼を置くのかということですね。これは非常に大事な問題でございまして、そのために今回は五十五分という時間をいただきながら法案内容よりもむしろ入り口論をさせていただいているわけでございます。  そうなりますと、先ほどの三前提条件とは別だというふうに銀行局長はおっしゃいましたけれども、こういう状況のもとで果たして今度の二法案安定化に対して実際に実効ある政策になり得るのかという問題があります。ですから、そのために私は今の議論をずっと進めてきたわけでございますけれども、やはりまた難しいのではないかと。先ほど申しましたように、少し金融機関の方に金融行政が手を差し伸べ過きているという、そういう点も今度の二法案には見られるわけでございます。  私自身も、先ほど引用いたしました「十兆円の国債と二十兆円の政府保証、あわせて三十兆円の公的資金を活用できるよう措置し、預金者保護金融システム安定化に万全を期す」、ですからこれはかなり思い切った政策を打ち出されたなというふうに思いましたけれども、この事件によりましてこの説明が非常に色あせたものに私は今感じているわけであります。  ですから、非常に懸念する点は、このままこの法案を通して、そして実際に実施されていった場合に、やっぱり実効の面で我々が期待するものが得られないのではないか、そういう気持ちも私は今強く持っておりましてこういうお尋ねをさせていただいたわけでございます。
  119. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 私が先ほど御答弁したのは、ちょっと誤解があるといけませんので、私はこの法案と先生が今おっしゃった一番大事なところとが別だ、関係ないということを申し上げているわけではございませんで、もともとそういった先生がおっしゃったようなことはずっと必要になってきているわけでございまして、今回のこの二法案でますますそれは重要になってくる。それはある意味では国民の信任がない状態では行政は正しくできないという意味でございます。  私が申し上げておりますのは、仮にこの二法案があろうがなかろうが、今、先生がおっしゃったような情報開示とか、自己責任だとか、それから市場原理を活用するということは、もうこれは未来永劫、二〇〇一年の三月までの法律であっても未来永劫それをずっと続けていかなきゃいけない、まして今回公的な資金というものを入れて活用させていただくということであれば、ますます先生が今おっしゃったことが自覚され、重要視されなければならないということを申し上げたつもりでございますので、その点は全く同感でございます。
  120. 牛嶋正

    牛嶋正君 ですから、今やらなきゃいけないことは何かということですね。  私は、やっぱり国民金融行政、それからまた金融機関に対する失われた信頼回復する以外には方法はないのではないかというふうに思っております。むしろ、ああいう事件をきっかけにこの際ここのところをきちっとしていくのが今度の二法案を実効あるものにし、かつ非常に安定した金融システムを日本につくっていくためのある意味では今がチャンスではないかというふうに私は思うわけです。  ただ、その場合に今何をなすべきかということでありますけれども、この問題につきまして、大蔵大臣がおやめになったり、それから事務次官がおやめになったりいたしました。また、総理大臣は倫理法の制定ということをおっしゃっているわけです。それからまた、これからは綱紀粛正に努めてこういう事態は起こさないというふうな決意も述べられておりますけれども、振り返ってみると、こういうことはこれまでも何回もあったような気がいたしますので、私はこれだけでは国民が失った信頼回復することができないというふうに思っておりますけれども、この点について大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  121. 松永光

    国務大臣松永光君) 今回の大蔵省の職員を中心にした不祥事、これによって大蔵省金融行政に対する信頼感の喪失、これは大変なものだろうと思っております。  したがって、この喪失した信頼感を早く取り戻す、このためには我々としては、刑事事件によって逮捕された人の関係では捜査の結果を待って、大蔵省としてのその人に対する処分、これは厳正にやらにゃいかぬと思いますが、同時にまた逮捕などされなかった方々に関しても、もし公務員倫理に反する行いがあったとすれば、これもまた厳正な処置をしなきゃならぬと。そのために、省内に官房長を責任者として金融服務監査官という制度を設けて、監査官室長を中心にして内部調査を厳正に行って、そして調査の結果を待って、刑事事件にならなかった者についても厳正な処置をする、そういったことを通じて大蔵省の失われた信頼感を早く取り戻すように厳正な処置をとっていきたいと、こう考えているところでございます。  同時にまた、金融検査のあり方についても、四月一日から早期是正措置が導入されるということを前提にして、抜本的な金融検査のあり方も改革をしながら進めていかにゃならぬと、こう思っているわけでありますが、そのことについては必要があれば後で金融検査部長の方から答弁をいたさせます。  そういったことで、まず大蔵省信頼回復、非常に大事なことでありますので、今申したような方向でしっかり進めていきたいと、こう考えておるところでございます。
  122. 牛嶋正

    牛嶋正君 大蔵省の役人というのは私は優秀な人ばかり集まっていると思いますし、また大蔵省に入られたときには国のためにという崇高なお気持ちが強かったのじゃないかと思います。そういう気持ちがいつまで続くのかということですけれども、それに最も大きな影響を与えるのはやっぱりシステムではないかなと。そういうふうに考えますと、大蔵省金融機関の癒着構造を解消しなければこういう事件というのはいつまでも繰り返し起こってくるのではないかと、こんなふうに私は思います。  しかし、癒着構造というのは、よく言われるんですけれども、実態は非常に漠然としたものでありますので、とらえどころのないものと私は受けとめております。ただ、この癒着構造の背景に天下りの構図があるといたしますと、この場合には割合きちっとした対応ができるのではないかなというふうに思っているわけであります。  ですから、今何らかの形で手を打つということになりますと、この天下りの構図に対しましてある程度の規制を加えた力あるいはルールをつくったりというふうなことを目に見える形でやっぱり国民に示していく必要があるのではないかと。国民は何も罰則規定とかあるいは大蔵大臣の首をとれとか、そういうことを決して求めているのじゃないと思います。むしろ、こういった癒着構造というものをできるだけ解消する、こういうことを求めているわけでありますので、この点について再度大蔵大臣のお考えをお願いいたします。
  123. 松永光

    国務大臣松永光君) お答えいたします。  委員御存じのとおり、六月までには金融機関に対する検査・監督の権限は大蔵省からなくなりまして、総理府のもとに新たに設けられる金融監督庁に移ります。そういたしますと、大蔵省と個々の金融機関との間の監督とか検査という関係はなくなるわけでございます。大蔵省に現在ある証券局、銀行局、そして保険部、これはなくなりまして、やや小ぶりの百名足らずの金融企画局というのかな、金融企画局という小さな局が残るだけでありまして、金融機関に対する検査・監督の権限は、先ほど申したとおり、総理府のもとに設けられる金融監督庁に移ります。そういう意味で、大蔵省金融機関との癒着関係というのはシステムの上でなくなるわけであります。これは私は大きな改革だろうというふうに思います。  同時にまた、天下りの話が出ましたけれども、これはいろんな制限のもとに人事院の認可を得ての天下りが大部分であろうと思いますが、これは全体としてほかの省もあることなのでありますが、この問題について検討する組織ができたようでありますのでそこの検討の結果を待つのが本筋でありますけれども、私個人の考え方としては、国民の目から見ていかがかと思われるようなところへの天下り、これは自粛した方がいいのではないかというふうに思っております。
  124. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、大臣の方から、大蔵省に集中している権限の分散の問題を行政改革を通じて進めているというお話をされました。  私は、天下りの構図を解消するためにはやっぱりそこが問題だろうと思います。結局、癒着構造というのは、利益を受ける側と与える側、相互が歩み寄るわけでございますから、その利益を与える、あるいは受ける、これは権限を通じての場合ですので私は権限分散ということが大事ではないかなというふうなことを最後に申し上げるつもりでおりましたら大臣からお答えをいただいたわけです。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕  こういうことをやっぱりきちっとした上で、私としては二法案内容について御議論をしたかったわけでございます。十分ではございませんけれども、一応誠意のあるお答えをいただきましたので、次回の質問の時間、チャンスがありましたら今度は内容について御質問をさせていただきたいと思います。  きょうはこれで終わらせていただきます。
  125. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、初めまして。御苦労さまです。私は社民党の志苫裕と申します。実は、私は体調が十分でないため委員長から座ったままでの発言を許されておりますので、失礼ながらひとつこのまま質問させてもらいます。よろしく御了承ください。  さて、一月二十六日の金融不祥事以来、大蔵省はあたかも法務省か検察庁に変身したかの感があります。本来、大蔵省に期待されている役割は、役人の世界にはびこる悪玉を退治する町奉行がおかっぴきのまねごとをするんじゃなくて、国家の経済活動ともいうべき財政をどう運営するのか、現下の経済事情にかんがみて時宜を得た財政運営を行うこと、並びに金融システムの安定に万全を期すことでありまして、それがあくまでも本業であります。  ですが、信なくば立たずの言葉もあるように、いかなる施策を講ずるにしてもおよそ信頼がなければ説得力がありませんから、したがって、冒頭の大臣のあいさつにもあったように、今や行政の信頼回復は喫緊の課題であります。  したがって、この際、まずは不祥事徹底解明と厳正な処置並びに再発の防止に万全を期してもらいたい。不透明で閉塞感が漂っている金融事情ではありますが、せめて行政だけでも透明で先行きの明るいものにしてもらいたい。何事も包み隠さずに公表をして国民に謝罪すること。大臣初め当局の新しい陣容に期待してよろしいかな。  まずは所信を伺いましょうか。
  126. 松永光

    国務大臣松永光君) お答えを申し上げます。  今、委員が申されたことは一々ごもっともでありまして、行政の信頼回復、そのために過ちを犯した人に対しては内部調査もしっかりやって厳正に処置をする。そして、二度と起こらぬようにシステムも変え、あるいはまた職員の意識改革も進めて、まずは信頼回復を図る。同時にまた、それと並行的に進めておるのが、現在の厳しい金融情勢のもとで日本の金融システムについての内外信頼が非常に落ち込んでいるという状態、これを早く正常に戻す。特に、預金保険法の改正、そしてもう一つ緊急措置法の制定等を通じて日本の金融システムに万全の信頼が集まるような状況を一日も早く打ち立てることがこれからの財政経済政策の土台になると思っておるわけでありまして、そのために今御審議をお願いしている、こういうことでございます。
  127. 志苫裕

    志苫裕君 再発防止に関連しまして、いささかこの際私見を述べたいと思います。  思うに、この不祥事の根源は、長年にわたって官僚の世界を支配してきた伝統的な価値観、男社会の倫理と論理です。ですから、この価値観を変えるには、これはやっぱり男だけでは無理なのであって、女性の価値観に置きかえるということが何よりも大切で有効です。しかし、これはなかなか容易なことではない。ですが、女性は威張らない、地道な生活感覚がある、潔癖性が旺盛でおよそ賄賂やまいないという発想が入り込む余地はない、ましてやノーパンしゃぶしゃぶなんというのは無縁だ。  したがって、しかるべきポストに女性を登用するとか、職員の採用に当たってクオーター制を設けるとか、官庁の体質改善を図ることが有効でしょう。大蔵省の威信回復の近道だと思いますし、政府全体が取り組むように大蔵省が先鞭をつけてはどうでしょうか。
  128. 松永光

    国務大臣松永光君) 大変参考になる御意見を賜りまして、ありがとうございました。  実ば私、十三年前ですか、文部大臣をしておったことがございましたが、女性の課長が三人おりました。そのうちの一人は文化庁長官になり、今トルコの大使をしていらっしゃるのでありますが、大変すばらしい人だったと、こういうふうに思っておりますし、特に文化庁長官当時の活躍は立派だった。私自身も随分御指導をいただきました。  そういったことを考えますと、今の先生の御意見、非常にすばらしい御意見と思うわけでありまして、大いに参考にさせていただきたいというふうに思います。
  129. 志苫裕

    志苫裕君 いろいろ申し上げましたが、率直に言って国民大蔵省の威信回復なんかどうでもいいのであって、さきに触れた大蔵省の本業をしっかりやってもらいたいというのが本音であります。  そこでこの際、新任の大蔵大臣でもあるので、松永財政の哲学とでもいうか、財政運営の基本路線をただしたい。  目下、四面楚歌のような大蔵省ですけれども、私はそれでもひそかに評価していた点があります。それは、我が国のような政治風土のもとではとかく財政は拡張になりがちだが、そこに立ちはだかって歯どめをかけてきたというのは評価してよろしいと私はかねてから思っていました。ですが、それも近ごろ怪しいね。  財政の憲法とも言うべき財政法がないがしろにされてきているし、そして収支均衡主義ががたがた揺らいでいる。景気対策、こう言うと何か水戸黄門の印籠のような効力があって、原則禁止の国債が相次いで発行される。頑固なまでに財政再建の主張を貫いてきて制定をした財政改革推進法も早くも抜け穴を探して運営されるような始末ですね。抜け穴を探してというのは、補正予算ならいいだろう、建設国債ならいいだろうという抜け穴ですね。  大体、正道を歩かないで抜け穴を探すようになったらだめだね、世の中は。もともと財政改革と景気対策は矛盾せず両立するはずのものだったんですけれども、なぜか頑固に財政再建の一本道を歩いてきたのが三塚財政だったようにも思われる。市場経済に政治が関与することは、財政を拡張するばかりか、かえって経済の足を引っ張る、活力をそぐという小さな政府論や公共財やサービスを限定しようとする夜番国家論がそれらの潮流にあったことも否めない。  松永蔵相は、新保守主義とも言われるこれらの路線を肯定するか、あるいは財政による需要管理の有効性に期待をして積極財政を展開するか、いずれでしょうか。
  130. 松永光

    国務大臣松永光君) 私は、基本的な考え方として、法律に基づいて行政を進めるのが私の務めでございます。その守るべき法律は財政構造改革法なのでございまして、その法律によると、二〇〇三年度までに国及び地方の財政赤字をGDP比三%以下にするというのが一つ、二番目は二〇〇三年度までに赤字公債をゼロにする、これが財政構造改革法の大原則であります。その大原則を踏まえながら、そのときそのときの景気状況等に応じて可能な範囲内での対策は講じる、こういう基本的な考え方で財政運営に当たるのが法律に従った行政である、こう思っております。
  131. 志苫裕

    志苫裕君 いや、大臣、法律に基づいて財政運営をするというのは答弁にも何にもなっていないんです。当たり前のことなんです。法治国家で法律に基づかない財政運営をしますと言ったら答弁になりゃせぬよ、そんなものは。  私が申し上げているのは、いわゆる小さな政府を主張する新保守主義路線のようなものを選択するか、あるいは財政による需要管理の有効性に期待をして積極財政を展開するかということを聞いているんです。
  132. 松永光

    国務大臣松永光君) 需要喚起は、基本的には民間活動によっての需要喚起が中心になるべきだ、こう私は思っております。  生意気なことを言うようですが、福沢諭吉先生は、家庭のもとは女性にあり、国のもとは民間にありと、今から百何十年か前にこうおっしゃったそうでありますが、私はその考え方は今でも通用する正しい考え方ではないかな、こう思っております。
  133. 志苫裕

    志苫裕君 その御主張は、経済に政治や国家は余計な関与はするなという発想ですか。ほったらかしておけということですか。
  134. 松永光

    国務大臣松永光君) 基本的なルールは明確に国で定めなきゃならぬ、そのルールに基づいた民間の活動と、こうなるんだろうと思います。そのルールに基づいておるかどうかということは後で行政がチェックをしなきゃならぬ、私はそういう考え方でございます。
  135. 志苫裕

    志苫裕君 市場に任せておこうというのであれば、減税をするとか公共事業をして需要を喚起するとかという、いわば需要管理を財政が行う必要は何もないのであって、そういうかたくなな財政再建路線というものが今日経済を形骸化してしまっておるという一つの論調、論拠にもなっておるわけです。そこのところは余りよくわからない。  財政政府経済活動でありまして、伝統的に資源配分の調整であるとか所得の再分配であるとか経済安定化という三つの役割、機能が期待されておりましたが、財政構造改革路線はこの役割、機能を放棄もしくは変更を意味するものであったと解せられます。それが景気の足を引っ張り、分配の不公平を生むということで懸念があって論議を呼んでいるわけだが、松永財政はこのような伝統的な財政機能を承認しますか、承認しませんが。
  136. 松永光

    国務大臣松永光君) 先ほど申し上げましたとおり、財政構造改革法の定める範囲内でそれぞれの財政活動をするのは当然のことであります。したがって、その中で資源配分機能も果たさなきゃなりませんし、あるいは必要な公共事業もやらなきゃならぬし、そのときそのときの必要に応じて適切な財政対策を打っていくのが大蔵省の務めであろう、財政の務めであろう、こう思います。
  137. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、その財政構造改革路線というのが融通がきかない、弾力性がない、かたくな過ぎるというので財政構造改革法の修正論議さえも一部にもう現に登場しているじゃないですか。  今、財政構造改革推進法の修正が論じられるところはどこの点ですか。
  138. 松永光

    国務大臣松永光君) 私は、財政構造改革法はそんなにがちがちのものとは思っていないんです。先ほど申したとおり、二〇〇三年度までに国及び地方の財政赤字をGDP比三%以下にすべしという一つの原則と、もう一つは二〇〇三年度までに赤字公債をゼロにする、その道筋についてはそのときそのときの経済情勢、景気動向を見ながら財政対策は打てる、こういうふうに私は考えておりますので、がちがちのものではない、こう私は考えております。
  139. 志苫裕

    志苫裕君 いや、現実に財政構造改革法の改正の話がマスメディアに載るじゃないですか。きっとどこかで議論をしているんでしょう。  あなたはがちがちじゃないと言うが、では、やわやわでもいいが、何かちょっとは直そうとしているのですか、そうではないのですか。
  140. 松永光

    国務大臣松永光君) 私は直す必要はないと思っているんです、がちがちじゃないんですから。がちがちでどうにもならぬと思っている人は直せとおっしゃるのかもしれませんけれども、そんなに窮屈なものとは思っていないんです。
  141. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私は、財政構造改革法の審議に当たって、余りかたくなになるな、世の中は動いているんだからやるべきことはちゃんとやって、それと財政改革を両立させることをもう少し考えたらどうかということを熱心に三塚さんには主張しました。でも、あの人もなかなか頑固だったね。実は、私はこの質問をするに当たって、我々日本の国と国民が経験をしたあの不幸な歴史、出来事、それと重ね合わせて今日の事態を不安に思っています。歴史上の事実というのはほかでもない十九世紀初頭の世界恐慌の時代のことです。  この恐慌のあおりを受けて我が国は深刻な不況にあえいでおりまして、ちまたには積極財政を求める論調が渦を巻いて、今日の経済論壇と大変似ておりました。だが政府は緊縮財政をかたくなに進めました。これに反発して生じたのがいわゆる二・二六事件です。大蔵大臣高橋是清が凶刃に倒れた。それで堰を切ったように国家財政は膨らみ始めて、戦費調達の名のもとに国債が乱発される、ついには経済財政のみならず国家そのものが破滅に進んでしまいました。  こういう歴史を踏まえて、舞台は変わって今日は世界恐慌ではないが平成の大不況。積極財政への風圧は恐らく当時の情景を思わせるものでありましょう。緊縮財政に劣らぬ財政再建路線。二・二六事件は起きないが、一カ月早く一・二六事件が起きた。金融不祥事ですね。三塚さんは、殺されはしなかったけれども更迭された。不思議な歴史の一致です。そして、財政路線の転換が論壇に上り始めておる。もちろん、不況の態様も世界の情勢も国家の体制も全然違っておりますから歴史が同じ回り方をするとは思えません。しかし、十分注意しておくべき事態である、財政について。私は強くそう思っています。  そこで、改めて確認しますが、財政憲法と言うべき財政法の収支均衡主義は堅持されますか。
  142. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答えいたします。  今、先生がおっしゃいましたのは財政法の規定のことかと思います。財政法第四条におきましては、国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもって財源とするという規定がございます。あわせまして、ただし書きにおきまして、公共事業費、出資金あるいは貸付金の財源につきましては、国会の議決を経た範囲内で、公債を発行しまたは借入金をなすことができるという定めがございます。  これらの公共事業費等につきましては、いわばこれが国の資産を形成するものである、あるいはその資産からの受益も長期にわたるというようなことで、いわば例外的な規定になっているわけでございます。  こういうことからいいまして、今申し上げました財政法四条、財政の節度ということは私どもとしては守っていく必要があるというように考えております。
  143. 志苫裕

    志苫裕君 この財政憲法によりますと、国債を日銀に引き受けさせてはならない、もちろん借り入れもしてはならぬと五条に規定がございます。  ところで、このスキームは日銀特融を政府が肩がわりするということになるわけですが、政府借り入れと同じ行為になりませんか。最後のしりは、機構が銀行財政体質強化のために日銀からお金を借りていろんな施策を講じるわけですが、それは大蔵大臣が認可をして、日銀から借りてよろしい、貸してあげなさいというわけですから、そのかわり最後は政府が持ちますということになっていますね。肩がわりするということは政府が借りるということです。日銀から金を借りてはならないという五条との関係はどうなんですか。
  144. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  今、先生おっしゃいましたように、財政法第五条におきましては、公債の日銀引き受けを原則として禁止しております。これは、既に御承知のとおり、戦中あるいは戦前におきまして、この日銀引き受けによって行われた結果としてのマネーサプライの増加、さらにはそれに基づきます急激なインフレーションというものを防止しようという規定であろうかと思います。  今、先生おっしゃいました今回の預金保険機構の日銀からの借り入れに係ります政府保証でございますが、これは日銀が政府に信用供与をするものではございません。あくまでも預金保険機構に対して行うものであるというものが一つあろうかと思います。  さらにこれに加えまして、今回の預金保険機構によります日銀借り入れ資金といいますものは、いわば費消されるものではない、機構が業務を行うに当たりましての資金繰りのための資金であるということでございますので、この借り入れがただいま申し上げましたようなインフレーションを引き起こすというような野方図な公債発行につながるものでもない、したがいまして財政法の趣旨にも反するものではないというように理解をいたしております。
  145. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それはせっかくの答弁だけれども、なるほど日銀から借りるのは機構が借りるんですよ。借りるんですが、それには大蔵大臣の許可が要るんです。それで、政府は何かあったときには肩がわりすることになっているわけですから事実上は政府が借りるのと同じことじゃないですか。だから、そういう財政法のすり抜けを考えないで正論で対応した方がいいですね、これは。  日銀特融が回収されなければどうなるんですか。また、どんどん日銀特融がふえていきますと、これはどんな事態が起きるんでしょうね。ちょっとわかりやすく説明してください。
  146. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) ただいまの先生の御指摘でございますけれども、実は今回の預金保険機構にかかわらず、通常の事業団等の政府保証債あるいは政府保証借り入れにつきましても同様に、それぞれの事業の性格あるいは必要性から政府保証限度額が予算総則で決まっているわけでございます。  先生おっしゃいましたように、仮にこの政府保証に係ります日銀等借り入れにつきまして、資金がいわば二次ロス等でもって仮に万々が一返済ができないというような場合には、当然のことながら政府保証が履行されるということ、論理的にはあり得ると思いますが、御承知のとおり、十兆円の国債というものが交付されているわけでございますので、これのいわば現金償還という道も一方ではあるということでございます。
  147. 志苫裕

    志苫裕君 財政法によると、新型国債なるものが発行できる根拠は乏しいような気もしますが、これはどうなっていますか。さっき言った日銀から借りてはならないという規定も含めてですが、どうも法の抜け穴を探してすり抜けることばかり考えているようですね。  今言いましたが、日銀特融が回収されないとどうなるんですか。世の中にどんな影響が出るんですか。どんどん際限なく日銀が貸し出しをふやしていったら、どういうことになりますか。
  148. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) 御指摘は二つあろうかと思います。  まず、日銀からの借り入れでございますが、これは法律上もきちんと明記されていると思いますが、日銀等からの借り入れということでございますから、日銀あるいは民間金融機関あるいは政府保証債の債券発行と種々のいわば資金調達手段があるという状況でございます。  先ほどの答弁を繰り返して恐縮でございますけれども、仮にロス等が生じ返済ができないということであれば、政府がいわばこの債務の保証を履行するということもございますし、あるいは交付されました国債の現金償還でもって対応するというような状況があり得ると思っております。  それから、これを新型国債と申していいのかどうか別問題でございますが、いずれにいたしましても、今回この預金保険機構に交付される国債につきましては、御承知のとおり、憲法第八十五条におきまして、国が債務を負担するためには国会の議決に基づくことが必要とされております。今回の国債は国が債務を負担するものでございます。これは憲法八十五条に基づきまして、法律という形式によりまして国会の議決を得るということでございます。  御参考までに申し上げますと、財政法第十五条におきましてもこれを前提といたしまして「法律に基くもの」「の外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」と規定されておりまして、議決形式といたしましてはこの法律に基づくもの、さらには予算によるものという、いわば二つの道があるということでございます。
  149. 志苫裕

    志苫裕君 どうも後段の説明は余り的確じゃないですね。  金融システム安定化のために二つの勘定に政府国債を交付することになっていますね。この国債十兆円は一般に交付国債と言われているものであります。従来の交付国債、例えば戦没者遺族弔慰金支給法に基づく交付国債と概念を異にしているようですが、財政法上の根拠はなかなかわかりにくいですね。あるいは、アジア開銀への加盟に伴う措置法に基づく拠出国債、出資国債とも違うようですが、財政法上の位置づけと根拠をもう少し言ってくれますか。
  150. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) 先ほども申し上げましたように、今回の交付されます国債、これは今御審議をいただいております金融二法にいわば根拠規定が存在をいたしているわけでございます。  そこで、今御指摘の他の交付国債との違いは何かということでございますが、戦没者遺族等に対しますいわゆる交付国債、これは御承知のとおり、償還の年度あるいは償還金額というものがそれぞれ明記をされております。具体的にいつ、いかなる金額が償還されるのかということが決まっているわけでございます。  これに対しまして、今回の国債といいますものは、預金保険機構が現金償還の請求を行われた場合、政府としてはこれを速やかに償還するということでございます。先ほどの遺族等に対します国債と異なりまして、具体的にいつ、どのような金額が償還として出てくるのかということが決まっていない、そういう面で今おっしゃいました遺族等に対する国債とは大きく異なっているということが言えようかと思います。どちらかといいますと、今、先生おっしゃいましたけれども、いわば国際機関に対する拠出国債というようなものと性格を同じくしているのではないのかなというように考えております。
  151. 志苫裕

    志苫裕君 私は法案に関連をしては財政にかかわってのみ聞いているわけですから、余り横まで答弁をふやさなくても結構です。  ただ、これをよく見ますと、政府から特別の、特殊の法人に交付されるという意味では確かに交付国債です。要求払いという点では出資国債、拠出国債と同じ性格を持っています。具体的な発行条件はまだよくわからない。  そして次に、償還財源はNTTやJTなどの株の売却益を優先的に充てることになっていますが、NTT法では政府に株式の保有義務があるはずじゃないですか。法律に保有義務があるのに片っ端から売っ払っちゃったんじゃどうにもならぬという気がしますが、どうしますか。
  152. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  今、先生おっしゃいましたように、NTT株式については一方で一定の金額、割合につきまして政府の保有義務が課せられているわけでございます。現在までの売却状況等を勘案いたしますと、なお政府が売却し得る株式限度数、これが約五百万株、正確には五百十万株ございます。この五百十万株、今後の売却いかんによるわけでございますが、今回の両法案におきましてNTT株式の売却収入、これは今回の国債償還に優先的に充てるという規定が行われているということでございます。
  153. 志苫裕

    志苫裕君 それで、これに充てるとNTT株はなくなるんですか、あるんですか。
  154. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  若干正確に申し上げますと、国債整理基金特別会計の売却可能数、これが一千四十万株、全体の三分の二でございます。一方、残りの三分の一は産業投資特別会計、これが五百二十万株を保有いたして括ります。  前者の千四十万株の国債整理基金特会が持っております保有株、これにつきましては既に五百四十万株が売却をされております。したがいまして、残余の五百万株、その後株式の分割がございましたので、先ほど私五百十万株と申し上げましたけれども、この五百十万株がいわば売却可能の株式数ということでございますし、具体的には今後マーケットの動向等々を勘案しながら具体的に売却が行われていく。御参考までに申し上げますと、十年度予算におきましては五十万株につきまして約四千百億円程度、これを売却収入として試算を行っているということでございます。
  155. 志苫裕

    志苫裕君 私がこんなことを根掘り葉掘り言っておりますのは、NTTを民営にするときに株をどうするかという議論をここでもよくやりました。私らの主張は、NTTという財産は国民が長い時間かかってつくり上げた財産なんだからそれを粗末に使っちゃいかぬという意味で、NTT株の使い道には随分厳しい枠をかけたはずなんです。ところが、何か今ごろになって、おい、あそこに金があるなというので、何でも野方図に使うというふうな態度はよくないという意味で御注意申し上げているんです。  それはよろしいんですね。
  156. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) おっしゃるとおり、このNTT株式につきましては国民共有の資産、これは国民共有の負債の償還に充てるべきであるということで国債整理基金特別会計法上も国債の元利償還、元金償還に充てるべきであるという規定があるのはもちろん私どもも承知をいたしております。  これは、通常の定率繰り入れ等に加えまして、こういう規定を設けることにより、いわば償還財源をさらに一層強化していくという趣旨であろうかと考えております。今回交付されました国債につきましても、NTT株式を全体としての国債償還のいわば財源として優先的に充てよということでございますので、先生おっしゃいましたかつてのあの経緯というものは私どもも十分に承知をいたしております。
  157. 志苫裕

    志苫裕君 公的資金金融機関の優先株を購入すれば大手銀行のBIS基準は欧米の優良銀行並みになると、こういう説明をされていますね。銀行自己資本比率だけを高めることが目標であれば、何も金を出さなくたって、土地の再評価をしてそれを資本に組み込んだらどうですか。そういう議論もあるようですが、それなら金がなくても自己資本比率が上がるじゃないですか。金がない大蔵省はそれぐらいのことを考えなさいよ。どうですか。
  158. 山口公生

    政府委員(山口公生君) しばしば申し上げておりますように、自己資本比率というものがいろんな社会現象とまで言えるような状況を及ぼしております。あらゆる手段を駆使して解決を図りたいと思っておりますが、今この二法案をぜひ早期にお認めいただきましてそういった措置を講ずるとともに、また党の方でも今御指摘になったような土地の再評価の問題も出ております。注意深く見守っているところでございます。いろんなあらゆる手段を使ってこの不安を取り除くということをさせていただきたいというふうに思っております。
  159. 志苫裕

    志苫裕君 それは実現の方向に向いているんですか。
  160. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 今、党の方で御議論いただいておりますので、私の方はちょっとそこは存じません。
  161. 志苫裕

    志苫裕君 株式の扱いも含めて企業の会計原則、その辺も見直しをするような報道もありますが、そちらも着手しているんですか。
  162. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 株式の決算上の評価の問題も既にもう両方選択できるようにしておりますので、金融機関としてはいろいろな方策を与えられたという形になろうかと思います。適切な対応をしてくれるものと思っております。その中に今御検討いただいております土地の評価の問題も含まれてくるものというふうに考えております。
  163. 志苫裕

    志苫裕君 経済企画庁は二月の月例経済報告で、経済の現状は停滞していると総括をして、前月の足踏み状態よりも一段と厳しい認識を示しましたね。一方、財政当局は、さきに成立をした平成年度の補正予算において法人税三千二百六十億円の増収を見込んでおります。増収を見込むということは景気がよくなると見ているわけなんでして、経済企画庁は景気が悪いと言うし、大蔵省は景気がよさそうだから法人税をふやそうかと言うのは、これはどこにどう違いがあるんでしょうか。
  164. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 九年度一般会計の税収でございますが、全体といたしまして一兆五千七百六十億円の減額の補正をお願いしたところでございます。そのうち約一兆弱が十年分の特別減税に係るものでございまして、そういう意味でそれを差し引きますと一般会計六千億円の減収の補正をさせていただきました。  今、確かに、そのうちの税目を眺めますと、法人税につきましては三千二百六十億円の増額をしております。これは、実は八年度の決算をしましたところ、法人税収が約五千億円ふえたわけでございます。つまり、正常に考えますると、この五千億円がげたになって九年度の税収をさらに押し上げるという要因になるわけでございますが、私ども昨今の状況を眺めまして、この五千億弱のうち三千二百六十億円のみを増額補正させていただいたと、こういうことでございます。  したがいまして、補正後の法人税収の前年比でございますが、一・九%増ということになっておりまして、最近のいろんなところでの経常利益予測、これは税収と必ずしも一致いたしませんが、高いものではない、適正なものではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  165. 古川彰

    説明員(古川彰君) 二月の月例経済報告についてのお尋ねでございますので、その点についてお答え申し上げます。  最近の景気動向につきまして、個人消費は特に昨年の秋口から家計が経済の先行きに対する不透明感が高まったということで、低調な動きになっておりますし、それから住宅も、下げどまりの兆しはありますけれども、依然弱い動きということでございます。それから、民間金融機関での貸し出し態度の慎重さというのも見られております。最近、株価の動きなどには一都市場心理好転の兆しも見られるわけでございますけれども、一方で金融機関経営破綻であるとかアジア情勢の急速な変化といったことが去年起こりましたことを背景に家計、企業の景況感は厳しさが強まっている、実体経済にも影響を及ぼしている、そういうことで二月の月例経済報告で「景気はこのところ停滞している。」というふうに認識している次第でございます。
  166. 志苫裕

    志苫裕君 あなた方の話を聞くとそうかなという気もしますが、しかし、率直に言いまして、実感としてはそんなに景気が悪いのかなと思わぬでもありません。  こんなことを言うと乱暴かもしれませんが、我々の身の回り、生活から通して見ましても、特に飢えている者もいるわけでもないし、こじきがふえたわけでもない。新宿あたりには物好きがいますけれども、あれはちょっと違うんだと思うんですよ。それから、ほどほどの身なりを皆しておるし、結構忙しそうに仕事もしておる。若い者はもう群をなして海外旅行に行くし、国技館へ行っても劇場へ行っても人があふれ返っています。どこに不況があるのかなと思わぬわけでもない。  不況というものの構造が変わっておるのかなと思うと、最近の経済論壇を見ますと、もうやたらと構造危機だ、空洞化危機だ、円高危機だ、コスト高危機だというので危機があふれ返っていますね。私のようにちっともそう思わないやつがいるから危機なのかもしれませんがね。でも、何かどこかすとんと落ちないんですよ、危機についての論説が、我々の暮らしからいきますと。危機なのかもしらぬが、あるいは見立ては危機なのかもしらぬが使っている薬が間違っているかもしらぬですね。何か誤診をして打たぬでもいい注射を打っているのか、当てぬでもいいレントゲンでも当てているのか、そんなあれがないわけでもないんです。  経済企画庁、不況はわかりました。あなた方の指標を見ますとすべてが不況をあらわしていますが、この不況の原因は一体何だということがさっぱり検証されていないですね。何か説明できますか。
  167. 古川彰

    説明員(古川彰君) やはり、昨年の秋口から特に十月、十一月ぐらいにかけまして、特に個人消費、そして一度多少回復しかけました住宅建設といったものが一段とまた低調になってしまったわけでございますけれども、ここはやはり昨年の金融機関経営破綻であるとか、アジア経済の急速な変化であるとか、そういったことによりまして消費者、そして企業の景気に対する見方というものが一段と厳しくなったということがここへ来て大きく影響をしているというふうに認識しております。
  168. 志苫裕

    志苫裕君 私どもは専門家でないからなかなかわかりにくいのは、国会の論調では消費需要が冷え切っているからだと、皆さんのあれもそうなっています。よく議論されますように、消費税を上げて減税を打ち切って医療費負担を重くして九兆円もの消費が落ち込んでいるというところに原因があるというんですが、それなら消費需要がないので不況であれば処方せんもそんなに面倒な話じゃない、財政出動も当然有効だという論議になっていきますが、消費不況ではない、かつての右肩上がりのときのように物をつくれば売れる、どんなにつくっても売れるという時代と違いまして、今は物をつくっても売れないわけです。我々も町へ出ましても、昔はメード・イン・ジャパンも買ったんですが、最近はなぜかメード・イン・香港、メード・イン・チャイナじゃないですか。供給市場では日本の商品は負けているんじゃないですか。供給過剰というものが何か不況の原因になったりしていることはないんですか。これはどうなんですか。
  169. 古川彰

    説明員(古川彰君) かってに比べまして消費の伸びる勢いというものがゆっくりになっている、これは御指摘のとおりではございます。ただ、例えば昨年度から見ましても、昨年度の四月、これは消費税率の引き上げに伴ってそれまでに起こりました駆け込み需要の反動減ということで大分家計消費は落ちたわけですが、そこから夏ぐらいにかけましては徐々にではありますけれども回復に向かっていたわけでございます。それが十月ぐらいから目に見えてまた低調になってしまったというところは、やはりいろいろな悪いニュースが家計のマインドを悪くしたということが大きな原因と考えられるというふうに思っております。
  170. 志苫裕

    志苫裕君 私が無知で鈍感で楽観主義者なのかもしれないが、官庁エコノミストが言っておる危機説について何となく納得できない、すとんと落ちないところがあってしようがないんですよね。こんなばかを相手にしておったって世の中はよくならぬでしょうけれども、どうも私にはそう思えてならない。  経企庁の取りまとめた経済指標によると、確かに景気はよくないんです。さっき言った素直な生活を通して見ると周りは先ほど言ったような状況だということを申し上げたわけですが、経済が右肩上がりのときはそのうちによくなるさというので土地を買っておく、物をつくっておく、それで一定の時期になると物価も上がるし右肩が上がって大体調和する。  予定調和路線と言うんですが、予定調和路線でいつでも経済は右肩上がりするものだと思って財政をつぎ込んでいるとひどいことになるということはないんでしょうか。経済の専門家、ちょっと語ってくれますか。
  171. 谷内満

    説明員(谷内満君) 景気が悪いときは景気を刺激するということで公共投資を増額するという手段はよくこれまでもとられてきたわけですけれども一般的に言って、公共投資の増額自身は、一つは公共投資自身が需要を創出するという効果と、二つ目には民間需要を刺激するという波及効果、その二つで景気に対しては前向きの効果を与えるということは一般的には言えると思います。  最近の議論では、九〇年代に入って経済対策で公共投資増額をこれまで図ってきたわけですけれども、それが効果がなかったんじゃないかという御議論が。一方にあるわけです。我々の分析では、公共投資の民間需要に対する波及効果というのがバブル崩壊の影響で相殺されて顕在化しなかった、しかし一方で公共投資自身が持つ需要創出効果というのはあったわけで、それが景気の下支えの効果を持ったということは言えると思います。
  172. 志苫裕

    志苫裕君 私もわからぬので余りはっきりしたことは言えませんが、いずれにしても、バブルがはじけてから七回にわたって緊急経済対策、総合経済対策で六十兆円もお金を使いまして、その割には何か余り我々素人には目に見えたような経済の活況は展開しない。そのうち金がなくなれば今度は規制緩和というわけですが、規制緩和で逆にリストラで競争に負けて雇用が不安定になったりすることはよくありますが、今までやってきた財政を出動させて需要を管理するということや規制緩和という路線は一体有効であったのかどうなのか、財政をここまで苦しい目に遭わせてそれでもなお有効と言い切れるかどうか、その辺について我々は深刻な検証をしてもいい時期に来ていると思いますよ。何か海の向こうじゃ、アメリカあたりを見ましても、財政で需要管理を行うケインズは終わったと言っているわけですから。また、我が国のエコ/ミストがそれに縛りついているとしますとどこかにえらい間違いをしていることになるという意味での真剣な検証をしておいてもらいたい、こう思いますね。
  173. 藤井秀人

    政府委員(藤井秀人君) お答え申し上げます。  財政支出の拡大によりまして、一時的には確かに景気のいわば上昇効果というものが当然あると思います。ただ、結果といたしましてそれが全体としての経済構造改革をおくらせる、あるいはまた累次のそういう刺激策、それに伴います財政赤字というものが結果的には民間の資金を吸収し、そして必要な民間投資を減少させるという、総体として経済成長にとってマイナスの効果というものも当然にあり得ると思います。  今、先生おっしゃいましたように、ヨーロッパ、アメリカにおきましては、仮に景気の後退期といえどもそういういわばケインズ的な政策は今やとっていないというのが実情であろうかと思います。もちろん、そういう中で、一方では経済状況あるいは金融状況に応じまして必要な施策というものを講じていくこと、これも当然ではございますけれども、中長期的に考えますと、やはり財政の健全化をきちっと図っていく、民間を中心とするいわば自律的な経済成長を期待するということが基本的には必要ではないだろうかというように私どもも考えております。
  174. 志苫裕

    志苫裕君 委員長、もうちょっと時間がございますが、理事会でもお願いしましたようにちょっと質問を中断させてもらいますので、あとはよろしくお願いします。  どうもありがとうございました。
  175. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  北海道拓殖銀行と山一証券の破綻の問題は、政府の言っている金融システムの不安、この引き金になったものであります。これらの金融機関の乱脈経営によって不良債権が増大をして危機的な状況にあるときに、本来ならば検査で摘発して改善指導すべき大蔵省がこれらを見逃して傷を広げてきたんじゃないか。そんなことをして破綻に導いておきながら、今度は金融不安になったからこういうことで三十兆円の銀行支援策を認めよということなどは、大蔵省金融機関の癒着のツケを国民に押しつけるもので、私は断じて容認できない、これが国民の多くの声だと思うんです。大蔵省金融検査がどんなものだったか、粉飾検査の責任はどこにあるのか、事実関係をあまねく究明することが私は法案審議の前提だというふうに思うわけでございます。  そこで、まず山一証券の飛ばしの簿外処理のことについてここでも伺いたいと思うんです。  山一証券に対する大蔵省金融証券検査、もちろん証券取引等監視委員会の検査もあるわけですが、私、大蔵省金融証券検査について伺っていきたいと思うんですけれども、例の問題の九一年末、それ以降今日まで、いつ大蔵省の証券検査が行われたか、その年月とそのときの主任検査官はだれだったか、お答えをお願いしたいと思います。
  176. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 金融検査部といたしましては、山一証券に対して九一年の暮れ以降、九三年の二月、九五年の十一月、それから破綻後といいますか、自主廃業の申請後の現在行っております九七年十一月の特別検査ということを含めますと三回検査を実施してきているというところでございます。  九五年十一月に実施した検査の主任検査官は、先般逮捕されました宮川宏一でございます。他の検査については別の者が務めております。
  177. 笠井亮

    ○笠井亮君 東京地検による宮川検査室長の逮捕の際の被疑事実を見ますと、九五年の四月から九七年五月まで一連の金融機関から接待を受けていた容疑となっております。宮川室長はちょうどその間、今ありました九五年十一月の山一に対する検査の際に主任検査官として検査を行っていると。  そうしますと、宮川検査室長は山一からも接待を受けて山一に対する検査をもゆがめたのではないかと、こういう重大な疑惑を持たざるを得ないと思うんですけれども、この点は大蔵省としてきちっと調べたのか、その結果はどうだったんですか。
  178. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) お答えします。  山一証券の簿外債務が当局の検査によって発見できなかったことについてはまことに遺憾でございます。そういう意味で、当時の検査の状況をいろいろ我々としてもその後点検いたしておりますが、飛ばしというのが基本的には簿外の顧客間の取引の形態をとって、それが証券会社の帳簿にそれ自体痕跡が残らない取引であることからそれを把握するに至らなかったというふうに認識しております。  ただ、逮捕された宮川容疑者が平成七年の検査に参加していることは御指摘のとおりでございますし、そういう意味で先生御指摘のような議論をされるということについて我々は申しわけなく思っております。  ただ、同容疑者が平成七年の検査において何か意図的に見逃したというような事実は現在のところは全く把握をしておりません。ただ、同容疑者に係る具体的な金融機関に関する事実関係については今後捜査当局によって解明されるところでありますし、現在我々、同容疑者が逮捕されているということで調査にも限界がございますが、いずれにしろ同社に対する検査に問題がなかったかということについてはさらに念入りな調査を行いたいというふうに考えております。
  179. 笠井亮

    ○笠井亮君 私、大蔵省から大蔵省大臣官房金融検査部がつくった証券会社に関する「検査資料の様式と作成要領」という膨大なものをもらいました。これは検査マニュアルというものでありますが、実際に金融検査部が証券会社を検査する際にこれをマニュアルにしながら、チェックリストが膨大な項目で、ここにもございますが、これに基づいてやるということであります。  それで、私は大蔵省からも伺いまして、一度の検査でこれを全部やるわけじゃないんだと、その時々の重要性に即しながら検査項目を選んで行う、そしてその判断は主任検査官がかなりの権限を持っているということであります。そういう意味では、九五年の検査の際に宮川室長が山一から接待を受けて、そして問題の簿外処理の問題を意図的に検査しなかった可能性ももう十分にあるということであると思うんです。  これ自体、山一とそれから検査部の担当者あるいは大蔵省との共犯関係によって隠された可能性もあるという問題でありまして、この宮川室長は大蔵大臣の任命で山一の検査に入る、そして検査結果の報告や示達書という問題については証券局長と検査部長の名前で出されるということになると思うんです。これは大蔵省の責任で本当に真相を解明する、捜査中だから限界があるとかという問題、いろいろ今言っておりましたけれども、そういうことではなくて、本当にこれ真剣に大蔵省自身がみずからの問題として解明するということで、本当にどれだけのことをやるかということが問われていると思うんですよ。その点、もうちょっときちっとした答弁をしてください。
  180. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 検査の内容のみならず、検査の過程で疑惑を招くようなことがなかったかどうか、現在、金融部局、特に金融検査部におきましても内部調査ということで、今までの接待の有無あるいはそれが業務に影響を及ぼしていないか等を含めて徹底した調査を行っております。その中でも、まさに先生御指摘のこういった事案については徹底して調査を行いたいというふうに考えております。
  181. 笠井亮

    ○笠井亮君 それではちょっと具体的に聞いていきますけれども、いわゆるこの検査マニュアルの「様式と作成要領」の百三ページを見ますと純財産額を検査するということになっておりまして、その中に「簿外負債」、「簿外資産」という欄がございます。それを記入するようになっている。これは検査対象である山一側に書かせるのではなくて検査官が調べて書くということに最初のところを見ますとなっているわけですけれども、作成基準でも二重丸ということで重要視されているということでありますが、山一の九三年、九五年のさっき言った検査の報告書にはこの欄にどのように記載があるんですか。
  182. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 御指摘のものについては相手にも作成を求めるという扱いになっていると思います。証券会社の検査においては、御指摘のような簿外資産・負債等について種々の資料の作成、提出を求めて実態把握に努めているところでございます。  個別の検査結果でございますので詳細なお答えは控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしろ検査部の実施いたしました検査においてそういうものを発見できなかったということで、いわゆる提出された資料等からはそういうものを把握できなかったし、また先ほど御説明しましたように、その間に何か明らかに不自然なことがあったということではないということでお答えにかえさせていただきたいと思います。
  183. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに記載がなかった、だから発見できなかったというふうなことであると思うんです。ということは、検査官が山一の虚偽報告によって発見できなかったのか、あるいは検査官がそれを承知の上であえて書かなかったのか。これは検査官側も書くことになっているわけですから、どちらかだと思うんですけれども、その点はどう考えるんですか。
  184. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) これは事実関係でございますので今後とも調査をしたいというふうに先ほどお答えを申し上げましたが、一般的、常識的に考えれば、相手の提出したものになかった、したがって把握をできなかったという事務の流れではないかというふうに認識しております。
  185. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうしますと、早急にこれを究明する必要があると思うんです。  この九十二ページを見ますと「内部管理」という項目があって、事故状況を会社が作成するとあります。その内容として、「証券事故明細表」、それから「顧客紛争明細」、こういうものを作成するというふうにあります。  「証券事故明細」の「作成の趣旨」というのでここに説明がありますけれども、「被検査会社において、前回検査以降発覚した不祥事件の個別の概要を把握し、不祥事件の原因、事故処理の方法及び内部管理体制を検討するため」にこの項目があるんだというふうに書いてあります。  この欄に山一側は九一年当時の飛ばしの問題をきちんと書いていたんですか。本来なら私は書くべきものだと思うんです。九三年の検査報告書には記載されていたのか、あるいは九五年の検査報告書ではどうだったのか、その点はどうですか。
  186. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) この点についても先ほどの簿外と同じようなお答えになろうかと思いますが、個別の詳細は控えさせていただきますが、その資料等で把握をするには至らなかったということで御理解いただきたいと思います。
  187. 笠井亮

    ○笠井亮君 把握できなかったということは記載がなかったということですね。  衆議院の大蔵委員会参考人として答弁をされた松野元証券局長は、九一年当時に山一から飛ばし取引に関する相談があったということはお認めになりました。そして、証券事故という形でこれは処理するしかない、そうしなければ損失補てん、文字どおり禁止行為に該当する、法律違反だということになってしまう、実際にそのように処理するかどうかは経営者の判断だと申し上げたということを、そういう趣旨で衆議院でお答えになっております。  こういう指導に山一側が従ったというならば、当然その後の九五年の検査報告書のこの資料の該当欄には、山一と顧客、具体的には東急百貨店という飛ばしの取引によって生じた当時二百六十四億円の損失処理をめぐるトラブルについて、証券事故としてこれは記載されたはずなんじゃないですか。それはどういうふうに考えますか。
  188. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 時期的なずれも相当ございますし、証券事故として最終的に会社が処理をしたのか、その辺のことはちょっと我々の立場では今わかりかねますが、そういうことも含めて、現在、我々金融検査部、それから証券取引等監視委員会で特別検査をやっております。そういう中でそういう流れについて調査、解明を進めていくべきものというふうに考えております。
  189. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、そこは記載されていないんですね。
  190. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 個別の事柄でございますので、先ほどのお答えで答弁とさせていただきたいと思います。
  191. 笠井亮

    ○笠井亮君 先ほどの答えというのは、されていないということですか。  そうしますと、証券事故として処理されていないということだから、松野元局長に言わせれば、まさに違法行為をやったということになると思うわけであります。これははっきりしていると思うんです。  長野証券局長は、この前、三日の予算委員会で私がこの問題について伺いまして、トラブルがあるという話は聞いている、その詳細はどういうものかわかりませんということだったんです。今、記載されていないということを言われたわけですけれども、百歩譲りまして、証券局長、三日に私が伺った後で、この詳細は知らないということで、帰られてこの証券事故を調べられましたか、実際にどうなっているか、どういう記載になっていたか、どういう経過でトラブルになっているのか。
  192. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 御承知のとおり、平成四年の夏から私ども検査課を廃止いたしましてそのような事務を証券局から外すということで、今御答弁申し上げております官房の検査部と証券取引等監視委員会の方で検査を行っておりますので、そちらの方で対応していただいております。
  193. 笠井亮

    ○笠井亮君 トラブルがあったのは承知していながらどういうのか知らないとこの前答弁しておきながら、今のような形で私はそれ以上は関係ありませんということでは、これは私は本当に大蔵省に全体として真相を解明する気があるのかということを問われる問題だと思うんです。  今の流れからいけば、明らかに松野元局長への相談とそれ以後の指示の経過を見れば違法行為をやったということなんです。  そうしますと、そういうものに対して、二月三日の時点だって、それからでも調べられた。ところがやった形跡がない。それから、自主廃業の直前という話がありますが、その後、検察が入るまでだってこの問題についてはまだ検査報告書を見直す期間があったはずであります。そういうこともやっていないということでは、本当にこれ誠実に明らかにしないと証券局長も、それから当時の大蔵大臣も、そういう違法行為について隠し立てをすると一緒になってこの隠ぺいに参加したと言われても、これは本当にそうじゃないとは言えない問題になってくると思うんです。  大蔵大臣、こういう重大な問題でありますが、今のような答弁の状況でいいんですか。今のような対処の状況でいいんでしょうか。大臣にちょっとそういう御判断をいただきたいと思います。
  194. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 私が申し上げているのは、いかなる部局においても対応していないということでなくて、官房の検査部と証券取引等監視委員会が再々申しておりますように、それを所掌します部局におきまして今特別検査をやっておるということでございます。
  195. 笠井亮

    ○笠井亮君 長野局長は、後で私は伺いますが、引き継ぎの問題も含めて御自身がどうだったかということもこの前言われたわけでありますから、部外者じゃないんです。しかも、この証券の問題で証券局長を今されているわけでありますから、そういう点ではその問題は重大な問題だと私は思うんです。  いずれにしましても、後で大臣には伺いますが、当時の松野局長が山一から相談を受けてそういう指導をしたんだから、大蔵省としては当然その結果がどうなったか重大な関心があったはずであります。九一年当時、当初は局長の方から呼び出しがあったと、そういう関係者の指摘もあるわけでありまして、大蔵省が主体的に問題に関与していた節すらあるわけであります。  この問題を徹底的に関心を持ったのだったら、その後どうなったかを追及していれば検査報告書を点検できた、そして簿外処理されていて怪しいなということも発見できたはずであります。  金融検査部と証券局の間で検査の事前事後のさまざまな検討の会議や打ち合わせがある、これは当然のことだと思うんですけれども、そういう点では証券局の側から、相談もあって、こういうことにしたらいい、こうしないと危ないよということも言ったんだから、重大な注目点として提起しなかったんですか、これは。
  196. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) ただいまの点は、松野がそういった御相談があった記憶があると申しておりますけれども、しかしそのときにはその個別の処理を指導したということではなくて、一般的に当時の損失補てんと現先取引等との関係、訴訟上の処理といった一般的な話をしたわけであって、衆議院での参考人の答えでは簿外処理をするというような指導といったことをしたことは全くないと、こう申し上げておりますし、したがいまして個別の案件としてその後フォローするということはなかったことは事実でございますけれども、そういったものとして松野が扱っておったというのが衆議院での松野の御答弁だったかと思います。
  197. 笠井亮

    ○笠井亮君 これは一般的な話じゃないんですよ。参議院の予算委員会のときにもトラブルがあった、裁判になったかどうかということも含めて言ってきている問題であって、この問題は非常に具体的な問題だということははっきりしているわけであります。  当時、大和証券と東急百貨店との間でも山一同様に飛ばし問題がございました。大問題になった。大和の場合は表面化をして、最終的に東京の簡易裁判所の中で調停がありまして、大和が四百九十億円の支払いをやり、東急の側が百十億円の損をして決着した。  山一の場合は、松野元局長自身が九一年末から二年にかけて具体的にその飛ばし取引の処理をめぐる問題で相談し、そしてこうだということを言った関係があるということまで認めている。しかし、それがトラブルがあることがはっきりしていながら表面化しない、裁判にならなかった、こういうことまではっきりしているわけでございます。こういう重大な問題を証券局が、検査あるいは九三年の八月には飛ばし問題で総点検をするということで報告書を出させているという中で、あの問題はどうなったのかと問題提起をしなかったとしたら、私はそれ自体が極めて不自然だと思うんですよ。  私、ちょっと証券局の仕組みについて伺っておきたいんですけれども、こういう飛ばし取引の問題というのは、いろいろ問題になる、そしてその違法性をめぐっていろいろあった、前はこう、かつてこうだといろいろあります。そして、総点検までやると。証券局の中ではこの飛ばし取引の問題というのは具体的にはどういう部局が担当されているんですか。担当者はどこですか。
  198. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 当時は私どものところに検査課がございましたので、恐らく全体的な個別会社の問題は業務課と検査課とで所掌しておったと思います。
  199. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうしますと、検査課と業務課が、当然これは行政のルールですから、さまざまな案件について系統的にこういう飛ばし取引やその処理の問題については把握をしているんですね。
  200. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) したがいまして、当時の書類をひもときまして先般お答えしたかと思いますけれども、その飛ばし取引につながりかねない現先取引といったものを当時把握しておりまして、そのフォローアップをやっておったことは事実でございます。それは二十六先ございましたということも参議院でお答え申し上げましたけれども、その中に現在問題になっております会社は含まれていないということも事実でございますけれども、そういったフォローアップはしておりました。
  201. 笠井亮

    ○笠井亮君 松野元局長が山一から相談を受けたことについて、検査課と業務課にはこの問題というのは伝わっていたんですか。それは確かめましたか。
  202. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 松野も個別会社の記憶をしておるわけでないという御答弁のようでございますけれども、少なくとも東急百貨店という形でそのとき作業があったことはないという状況でございます。
  203. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうしますと、松野元局長は、そういう性格の問題について、当時、九一年から二年にかけてその飛ばし取引の処理をめぐる問題について相談を受けたけれども、それについてはその担当のところには言わなかったということなんですか。その辺をもうちょっと明確に言ってください。
  204. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) これはちょっと私たちは確認できませんけれども、担当部局の方で聞いたという者はおりません。
  205. 笠井亮

    ○笠井亮君 ということは、松野元局長は相談を受けたことをはっきり言われているわけですけれども、そういう飛ばし取引の処理をめぐる問題については担当部局の方は知らなかった。そうすると、松野元局長は御自分でそれは山一との関係ということで隠されていたと、こういうことになるんでしょうか。
  206. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) これは松野自身の参考人答弁でございますから私があれこれ解釈するわけにいかぬと思いますけれども、当時のこういった案件の処理についての考え方、もし顧客に生じたロスを自分で引き取るのであれば、それは証券事故、裁判、訴訟、あるいは和解という形でなければならない、現先取引として継続されるということであれば、それは違法にならない範囲があるという一般的な考え方を話したということを御答弁申し上げているように思いますけれども、それ以上私がコメントすべきことは控えたいと思います。
  207. 笠井亮

    ○笠井亮君 何回やっても一般的な話と言うんですけれども、この前の参議院の質疑の中でも一般的な話じゃないということは非常にはっきりした問題だと思うんですよ。  しかも、先日の長野局長の御答弁では、「松野から私までの間に二人証券局長がおりますけれども、」、小川元局長と日高前局長だと思うんですけれども、「そんな引き継ぎを聞かれたことはございませんかということは問い合わせました。」けれども、「二人の局長もそういうことは全く聞いたことがない、こう申して」いるということで言われました。  そうしますと、私は今のやりとりを伺いながらも、松野元局長はみずから山一証券から相談を受けた、あるいはこれはどうなっているんだということで御自分から言われたということも言われておりますが、そういう問題について、それを証券局の担当者にもそういう相談があったことも知らせずに、あるいは後任者にも引き継いでいなかったとしたら、これは松野元局長自身が、さっきも言いましたけれども、山一側のこの隠ぺい工作というか、これはもう検査報告書にないわけですから、これに加担したことになると。私は、これは本当に大事な問題、重大問題だと思うんですよ。衆議院の答弁で具体的なことは言っていないとかと言われてもそうじゃないわけだから、はっきりしている経過は。  そうしますと、こんな重大なことを放置したままでいいのかということは、これは極めて重大問題として大蔵省も考えるべきだし、受けとめるべきだというふうに私は思うんです。  二千六百億円もの簿外債務、それが破綻につながったと。そして、今、金融不安ということが言われているもとで、長野局長は十一月十七日になるまでこのことは知らなかったというふうに言われましたが、飛ばしという問題自身がずっとその間の経過の中で一般的に言えば問題になっていた。しかも、松野元局長がこういう問題で相談を受けた経過があり、検査がその間に何回かあり、その中で簿外債務ということでちゃんと書く項目があり、証券会社自身が書く、そして検査の側もそれをチェックする、それから証券事故についても項目があり、二重、三重、四重に不正なことや事故が、あるいは違法なことがあればチェックできるような仕組みがあったはずなのに、全くそれが働いていなかった、六年間もわからなかったわけですから。  大蔵大臣に伺いたいんですけれども、私は、さまざまな疑惑ということで、いよいよ明確だという断定はしない、疑惑ということで今は申し上げるわけで、先ほどから大臣も聞いていらっしゃったと思うんですけれども、大蔵行政としてこういうことがまともなんだろうかと。  先ほど、信頼感が失墜している、何とかそこを回復させるとおっしゃったわけですけれども、これは本当にこんなことでいいと思っていらっしゃるか。そして、今、捜査中だからということ、あるいはさまざまなことで制限があるけれども捜査の結果を待ちながらとかというような御答弁があったわけですけれども、そういう対処で大蔵省としていいのかどうかというあたりは、私、大臣は検察も音やっていらっしゃったということで、そういう点ではこの問題厳しいということでまさに大蔵行政に当たられようとなさっているんだと思うんですけれども、こんなことでいいのか、本当にこういう状態でまともと言えるのかということについてどういうお考えをお持ちか、そしてどう対処されようとしているか伺いたいと思うんです。
  208. 松永光

    国務大臣松永光君) しばしば委員のこの問題についての疑惑解明の努力、しっかりやっていらっしゃるというふうに思うんですけれども、私の方の側からすれば、山一証券の簿外債務に関連する疑惑については、どういういきさつで発生したのかということも含めて現在は証券取引等監視委員会が特別検査をしておるわけでありますから、特別検査の結果を待つしか真相はわからぬのじゃなかろうか、しっかりした証券取引等監視委員会の特別検査を進めて早く結論を出してもらいたいというのが私の気持ちでございます。
  209. 笠井亮

    ○笠井亮君 監視委員会自身もしっかりこれはやるべき問題だと思うんです。同時に、きのう本会議で総理の答弁を伺いながら、今後の捜査当局による解明に加えて、大蔵省においても、これらの金融機関に対する検査に問題がなかったかどうかを含めて事態の究明のための調査を行うと聞いておりますと、これらの捜査や内部調査の結果等を踏まえて厳正に対処したいと総理も言われております。まさに大蔵省自身が、みずから検査部の検査のあり方、証券局の行政指導のあり方という問題として総点検して、そしてどうするのか、徹底的にこれを解明する、そしてその結果を出すということが必要だと思うんですよ。  大臣、ちょっとこれ確認で伺いたいんですが、証券取引等監視委員会等の検査というのはいつごろその結果が出る予定なのか、そして大蔵省自身もいつをめどに大臣としてははっきりさせるおつもりなのか、これはもう一刻の猶予を許さない問題だと思うんですけれども、その点についてはいかがですか。
  210. 堀田隆夫

    政府委員(堀田隆夫君) 監視委員会の特別検査の今後の見通しについてのお尋ねでございます。  昨年十一月から金融検査部と合同で特別検査に入っておりますけれども、簿外債務の発生の過程で違法な取引がなかったのかどうかということで今調べておるところでございます。とにかくまず飛ばし取引の実態を解明しなければいけない。お話いろいろ出ておりますけれども、発生の経緯、背景も含めましてこの取引の実態をできるだけ明らかにする、その上で法令に違反する行為があるかどうかということを厳密に調査しなきゃいかぬということで、何せ簿外取引でございますのでなかなか手がかかるのでございますけれども、今一生懸命やっているということでございます。  今の段階でいつになればそこがはっきりするかということは申し上げられませんけれども、この特別検査の重要性はよくわかっておりますので、また急いでやらなきゃいかぬということもよくわかっておりますので担当者は力を合わせて一生懸命やっているところでございます。また、その過程で違法行為等が見つかれば、それについては厳正に対応したいと考えているところでございます。
  211. 笠井亮

    ○笠井亮君 これは大蔵、それから監視委員会自身がやるのは当然ですけれども、国会としても、この簿外債務の問題をめぐって今法案がそういうことを一つのきっかけにしながら出されているという中で、大蔵省が関知して事態の隠ぺいに手をかしていたという疑惑も深まっているわけでありますから、真相解明のために松野元局長と三木元社長の私は証人喚問が不可欠だというふうに思うのであります。  また、九三年、九五年、九七年検査がどうだったのか、報告書、示達書、回答書、この問題もこの間既に衆参で要求が出て、衆議院では拓銀など四銀行の検査報告書、示達書、示達回答書、これ衆議院の大蔵委員会では議院証言法で提出を求めるということで全会一致でそういう方向になっているというふうに聞いておりますけれども、これとあわせて山一に対する検査の一連の文書についても当委員会に提出するということが必要だと思いますので、委員長に取り計らいをお願いしたいと思います。
  212. 石川弘

    委員長石川弘君) 理事会で協議をいたします。
  213. 笠井亮

    ○笠井亮君 終わります。
  214. 星野朋市

    ○星野朋市君 先ほども通産省の方から貸し渋りの実態について報告がございましたけれども、その中で金利の引き上げたとか増加額には応じないとか新規の貸し出しには応じない、ここら辺は貸し渋りというぐあいで済ませられるんですけれども、何と繰り上げ弁済、これを要求されている会社が一九・三%もあるという報告が。あるわけです。  先ほどから銀行局長の御答弁の中に三月期が大変だというお話がございますけれども、よく二・八月と言って今月はよくない月なんですよね。ここへもってきて繰り上げ弁済というようなことをされたら企業としてはかなり参ってしまうと思うんですが、逆に貸し手側の方を見ておられる大蔵省としてはそういう実態について聞き取り調査、そういうようなことはなさっておりますか。
  215. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 貸し渋り問題につきましてはかなり社会的にも問題にされておりまして、私どももこれは重大な問題だという受けとめ方をいたして主要行、あるいはあとピックアップしていろいろ聞いております。  ただ、貸し渋りというものの概念がどうもはっきりしないといいますか、銀行側からいうとリスク管理の徹底ですよというような言い方をするし、企業側の方はどうも、これは別の部局で聞いてもらったんですが、銀行の方が大分ひどいという話もあるんですね。ただ、私の印象としては、三月期の例を申し上げましたが、三月期に限る話ではありませんが、銀行の方がかなり資産の圧縮を図ろうとしているという感じは受けております。  したがって、繰り上げ弁済等の動きがあるという話がありましたが、それは先ほど通産省の方の話でもちょっとあったんですが、メーンバンクは逃げられないという位置関係にあるのかもしれません。しかし、二番手、三番手の銀行になりますと、やはり資産圧縮の必要性がだんだん高まってきますと、もうメーンの方にお願いしてくださいということで手を引くことがあり得るわけですね。東食の倒産の例が全くそうだと私は言い切るつもりはありませんけれども、マスコミではそういうふうなことも言われました。  したがって、貸し渋り現象というものが社会的に見て産業界の危機になってくるとこれは大変なことなのでございまして、金融界が自分のリスク管理をきちんきちんとやり始めたという程度の問題であればそれはいいと思うんです。しかし、それが行き過ぎて社会的に不安を及ぼし、経済を麻痺させるということになれば、これは金融を通じたやはり経済の大きな問題だと思うんですね。  じゃ金融界だけを責めるべき話かというと、それは金融界も責められるところは多いと思いますが、しかし金融界に言わせるとこれはもうせっぱ詰まった事情なんですということを言う。したがって、私どもとしては、手段をいろいろと用意するということによってそういう貸し渋り現象をなくすように仕向けていくというのが政策ではないかというふうに考えております。
  216. 星野朋市

    ○星野朋市君 調査を受けなどの企業も一様に銀行から貸国債権を圧縮するためだと、こういうふうに言われているんですね。まさしく銀行局長がおっしゃっておったそのとおりだと思うんです。  さて、じゃメーンバンクは逃げないかというと、メーンバンクはその企業内容を一番よく知っているわけですから、逆にメーンバンクが一番先に逃げるというケースがこれからは起こり得ると思うんですね。そういうお考えはございませんか。
  217. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 私はそういう例が全くないと断言する自信はございません。しかし、いわゆる本当にメーンバンクとして他行の分まで持ちこたえられるかというものがより深刻な問題として出てくると思うんですね。したがって、貸し渋り現象を一銀行と一企業という一対一の関係で見る必要もある場合がありますが、複数の銀行一つ企業という関係で見るべきものもあると思うんですね。あるいは企業間信用でいきますと、専門家でいらっしゃいますが、今度は複数の企業とある企業というような企業間信用も存在するわけです。  したがって、メーンだけの問題じゃなくて、そういう相互関連といいましょうか、相互に絡み合っているという、表現は悪いですが、相互に依存している、インターディペンテンスの関係というのをよく考えませんと、単に一対一関係だけの問題ではないということで、その方がより問題として顕在化するおそれはあるなという気はいたしておるわけであります。
  218. 星野朋市

    ○星野朋市君 個別の企業の名前を出すとちょっと問題なんですけれども、ここのところ新聞をにぎわしておりますセゾングループのインターコンチネンタルホテルチェーンの売却であるとかファミリーマートの伊藤忠への譲渡であるとか、第一勧銀があそこはメーンバンクですから、そういう実例というのがこのケースでいえば一番象徴しているような事例だと思うんですね。これ個別の企業の問題ですからなかなか御感想は言いにくいと思うんですけれども、もし何かコメントすべきことがあったら一言おっしゃってください。
  219. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 個別の問題についてでございますので、御勘弁をお願いいたしたいと思います。
  220. 星野朋市

    ○星野朋市君 それでは、予算委員会でもずっとこのことについて触れてきたんですけれども、例の銀行自己査定の集計額について、どうしても私はこのことにこだわりたくなるんです。  昨日の本会議でも大臣は私の質問に対して、公的資金の活用を含む金融システム安定化策に関する議論の参考に資する観点から集計し、公表したものであり、決して国民危機意識を強制しようとするものではありません、こういうお答えがございました。そうすると、この自己査定の集計というのは作業として大蔵省がいつからおやりになっていつまでにおまとめになったのか、一月十二日発表というのはわかりますけれども、この作業はいつからやっていつまでにおまとめになったのか、それを答えていただきたい。
  221. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 私どもの作業は数字を集計したということ、いろいろばらばらなのをそろえたというのもあるでしょうけれども、基本的には集計作業でございます。  それで、各銀行が九年の四月から九月までの間にトライアルとして分類したものを報告していただいたわけです。したがって、去年の年末ごろだったと思いますが、集計作業をやりました。私どもとしては、単に集計をしてお出ししたというものであります。私ども銀行に行って、これはⅠだ、これはⅡだ、これはⅢだ、これはⅣだということをやったわけではございません。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕
  222. 星野朋市

    ○星野朋市君 いずれにしても、これは個別の銀行の集計ですよね、マクロで見られるものじゃないんですから。そうすると、個別の銀行の数字を大蔵省の指導か通達かによって、いつからこういうものをつくって大蔵省に提出しなさいと、こういう作業が始まったと思うんですね。ですからこの注釈に、これは九七年の三月から九月までの間のそれぞれ各行によって違うんですよという注書きがついているわけですよ。そうですね。  ですから、そういう通達なりなんなりがなければ各行は出そうとはしないですね。私は全銀協に聞いたんです。全銀協はこれにタッチしていませんと。別の観点からすれば、全銀協はこれほど金融機関不良債権問題というのが騒がれているんだから、みずからそのぐらいのことはやるべきだと思っているんですね。ですけれども、これは全銀協はタッチしていません、大蔵省がおまとめになったものですと、こういうお答えなんですよ。  そうすると、大蔵省は少なくとも今おっしゃったように、九七年の三月から九月までの各行いろいろの問題だからということですから、恐らく集計を始められたのは九月以降だと思うんですね。いかがですか。
  223. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 各銀行がことしの四月から適用になります早期是正措置のための自己査定の作業をトライアルとして、試行として昨年の四月から九月までの間のある時点で、それぞればらばらでございますけれどもやったという事実はございます。したがって、一番遅いのは九月の時点ですから、私どもで集計するから出していただきたいということでやったのは恐らく年末近かったというふうに思っております。
  224. 星野朋市

    ○星野朋市君 そうすると、大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、この後に私はなぜ銀行だけ集計したのか、信用金庫も信用組合もその他の金融機関も入っていないじゃないかと。もちろん、銀行という前提があるわけですから入っていないのは当たり前なんだけれども、これに対しまして、信用金庫等の協同組織金融機関については中間決算を行うこととなっておりません、また自己査定の試行も銀行のようにすべての金融機関で必ずしも行われているとは言えない状況にありますことから今回報告を求めなかったこととしたわけでありますというお答えでございました。  これは例えば木津信用組合みたいに、一つの信用組合が破綻したために一兆円もの預金保険機構からお金がぶっ飛んじゃったわけですよ。そんなものがあるんですから、これはむしろ大蔵省の管轄じゃないということで求めなかったのかどうなのか。私は、中間決算を行っていないからというようなことじゃないんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  225. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 中間決算がありますと各銀行自己査定というものをトライアルでやるということになりますが、中間決算がなくて一年決算となりますと、そういった数字をつくっていない、まだやっていないところの方が多いということが現実にあります。それから、自己査定の試行をやるかどうかというのは任意でございますから、いわゆる全銀ベースでの第二地銀までは全行やっておりましたから集計ができましたけれども、やっていないところもまだございます。ただ、四月からはそれは入りますからきちっとやるということになります。  ただ、信用組合については監督官庁が都道府県でございますので、その点についてはどう扱うかは協議をいたします。そういう建前になっております。
  226. 星野朋市

    ○星野朋市君 私の言いたいことはもうおわかりだと思うんですけれども、要するに情報公開の問題なんですよ。  それで、こういうような一部の数字が出るものだから、ちまたではとんでもない、こんなもんじゃ済まない、もっとずっと大きな金額が不良債権、問題債権としてあるんだよというふうになりがちなんです。後でちょっと申し上げますけれども、私の言いたいことはそういうことなんです。  それで、これも前に触れましたけれども、そういう形で個別の銀行の自己申告を集計してこういうくくりにしたのは大蔵省だと思うんです。いわゆる部長信銀といって、突如として都市銀行と長期信用銀行、恐らく信託銀行が入っていますね、ここを一緒にしちゃっている。それから地方銀行と第二地方銀行。  なぜ部長信銀を一くくりにしたのか、これは大蔵省がなさったと思うんですけれども、そのわけをお聞かせいただきたい。
  227. 山口公生

    政府委員(山口公生君) まずその点についてお答えする前に、情報公開という観点から信用金庫、信用組合が入っていないのではないかという御指摘がございました。  私どもがあえてこの数字を各機関からトライアルでもいいからやったものがあれば全部出してもらって集計をしてお出ししたのは、これから公的な資金の議論をしていただくときに、今までのような公表不良債権、二十八兆ベースの不良債権の数字だけでは御審議に必要な資料とは言えないのではないかということで、今度は切り口が違うけれども、それもばらばらだと判断できませんのでできるだけの情報を集計してお示ししたということでございます用意図があってそれを抜いたとかいうことは全くございません。そうすると、全体像はこれぐらいだということになりますと、公表不良債権ベースのときはいろんなことが言われました。それに比べますと、今は全体像は大体こんな感じかなという感覚はお持ちいただいたというふうに思っております。できるだけの情報公開をしよう、お示ししようと思ったのはこの国会の御論議に資するためでございます。  それから、くくりでございますが、これはきょうの午前中にもございましたが、くくりをだんだん小さくしていきますと、それこそ例えば第Ⅱ分類の扱いとかのイメージの問題がまだいろいろあります。昨年の十一月、十二月ごろの風説、私は風説と言いたいんですけれども、いろいろな話が飛び交いました。そうすると、例えば細分化していきますと非常にその辺の風説が出やすい。じゃ、全国銀行すべて一本でいいじゃないかというのも一つの考えだと思います。それはまた余り大き過ぎてちょっとイメージがわかないということで、それでたしか三つぐらいに分けて出させていただいたという感じでございます。  そうしますと、主要行と言われるもの、あるいは地方銀行と言われるもの、それから中小金融機関でないものもありますが第二地方銀行、こんな感じで大体イメージがおわかりいただけるということでグルーピングしたわけです。
  228. 星野朋市

    ○星野朋市君 局長、どうもその御説明には納得できないんですよ。どうしてかというと、都市銀行、長期信用銀行、信託銀行をなぜ一緒にしたのか。少なくとも、都市銀行、長期信用銀行、信託銀行、このぐらいには分けるべきなんですね。  というのは、どうしても勘ぐりたくなるのは一長期信用・信託銀行は総与信額に対して問題債権の割合が多いんじゃないか。それは具体的に名前を挙げれば幾つも出てくるんですよ。なぜかといったら、これはバブルのときにほとんどが不動産貸し付けをやったから問題債権をいっぱい抱えているわけです。信託銀行の幾つかなんというのはまさしくそれでしょう。いい例が、安田信託が今度芙蓉グループ五社で一千億の増資をして、それであれだけのリストラをやって、海外から撤退をして今度のBISのあれを四%で済ませたなんというのはまさしくそれです。  要するに旧財閥系の信託銀行、こういうのが与信額に対する問題債権が多過ぎるからここら辺をおもんぱかったのではないかとどうしても勘ぐりたくなるんですが、いかがですか。
  229. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 私どもはよく国会での御説明でも主要十九行での数字で申し上げますというようなことを申しております。  それで、各銀行の実態というものは各銀行のディスクロージャー、これを見ていただきたい。これが今度の三月期からは今申し上げた主要十九行はすべて、恐らくすべてSEC基準並みの厳しいディスクロージャーをやります。これはアメリカの銀行とほぼ同じ扱いになりますので、そこで御判断をいただきたいというふうに思うわけでございます。  別に先生の御疑問点に私が特別な意味を込めてこういうことをやっているということはございませんことを御理解賜りたいと思います。
  230. 星野朋市

    ○星野朋市君 こういうところの議論ですからもう少し突っ込んでお話をしたいんです。  一例を挙げますと、昨日発売になりました朝日新聞から出ているアエラ、ここに日債銀の隠れた債務、この特集が載っているんですよ。これはかなり詳しく調べてあります。ただ、全容はやっぱりわからないんですけれども、かなり詳しい調査があります。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕  そして、一例だけ申し上げますと、フェニスタ、プロビデンス、セーレムという三つの会社がダイア建設のマンションを三百七十六億円で買ったんです。今、時価は百三十七億で差し引き二百四十億円の損が出ていると。日債銀はこれに対して三百八十五億五千万円を貸し付けている。そうすると、ダイア建設グループのノンバンクのDIAファイナンスというのがプロビデンスに十億、セーレムに八億七千万円、フェニスタに八億三千万円、合計二十七億、ちょうど日債銀の貸し付けた三百八十五億五千万円の七%に当たる利息分をこのDIAが払っているんですね。そして、日債銀はこのDIAに対して二百三十六億円の融資をしている。こういうような形で、この会社はほとんどもう債務超過です。いわゆるペーパーカンパニーに対して日債銀というのは飛ばしをしているんじゃないか、不良債権をペーパー会社に飛ばしているんじゃないか、そしてペーパー会社は日債銀とは直接の資本のつながりがないから、この不良債権というのは表に全く出てこない、さらに、それらが実質的な不良債権であったとしても、フェニスタなど三社のように金利支払いを加工してしまえば不良債権としてカウントすることはない、こういうような問題が長期信用銀行の中にあるんですよ。これは恐らくこの問題債権の中には含まれていないと思いますが、こういうことが後になって出てくる。  例えばの話、北海道拓殖銀行は債務超過じゃないと言っていたんです。そして、大蔵省の肝いりで前から北拓と北海道銀行というのは合併するという話がありましたね。ところが、北海道銀行がみずから調べてみたら、北拓が東海興業に対する債権その他は問題債権としてなかったと。こんなことがあってあれは御破算になってしまった。じゃ、北拓がパンクしたときに、これを道銀に引き受けさせようと思ったら、あのときパンクしたんだからやめたといって北洋銀行に結局営業権を引き受けさせることになった。  今度のシステムの中に一つはそういう意味での処理のための資金が計上されているわけですね。我々もこれはもうしようがないと思っていますよ。だけれども、今言ったように、いろんな形でまだまだ隠されている債務というのをもっと表に出さなかったならば、今度の公的資金を使ったこのスキームというのは後で何だということになりかねないんじゃないですか。私はもうそれを本当に懸念しているんですよ。  だから、本当にビッグバンをやって、国際競争力を身につけて外国の銀行と同じように競争していくということならば、私はここですべてのそういう問題を明らかにすべきだと思うんですね。そして、つぶれるべきものはつぶすんだということを再三自民党の首脳は言っているわけですから、まだまだ債権の公開が不十分だということを申し上げて、私の質問を終わります。
  231. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 個別の例を申されましたが、個別については私は答弁を差し控えさせていただきます。  各銀行早期是正措置を控えまして、自己査定を厳しくやってきております。それを公認会計士、監査法人が十分にチェックするようになってきております。いろいろな問題もそういう形でしっかりとした内部の体制でやり、しかも引き当てすべきもの、償却すべきものについては企業会計に沿ってこれはきちんと処理されることになりますことをぜひ御理解賜りたいと思います。
  232. 菅川健二

    ○菅川健二君 改革クラブの菅川健二です。ラストバッターですから、よろしくお願いいたしたいと思います。  まず、大蔵大臣日本経済の現状認識についてお聞きいたしたいわけでございます。  先ほども話がございましたが、企画庁が二月の月例経済報告を発表いたしたわけでございます。従来、回復基調であると言っておったのが、年末になりまして足踏みという表現に変わりました。さらに今回は停滞という表現に変わってまいったわけでございます。景気は一段と厳しくなっておるわけでございます。ただ、経企庁はあくまでも景気が後退局面にあるということは一言も言わないわけでございまして、停滞ぎみに推移しておるという言い方にとどまっておるわけでございます。その点につきまして、マスコミでも大変見方が甘いんじゃないかという批判があるわけでございまして、いろいろ企業の関係者に聞きますと、私自身大変深刻であるというふうに思っておるわけでございます。  ちまたでは、昔陸軍令経済企画庁と言うようでございまして、大臣もかなり年配でございますが、大本営発表というのを御存じだと思うのでございますが、どうも経済企画庁の発表というのは大本営発表の域を出ていないんじゃないかと思うわけでございます。  先ほど志苫先生はやや楽観的なことを言われたわけでございますが、私が広島に帰りまして各企業を回っておりますと、十人のうち九人の方は今まで経験したことのない厳しい状況だと言われるわけでございます。  その中でも私が印象に残りましたのは、広島の代表的なお菓子としてもみじまんじゅうがあるわけでございますが、もみじまんじゅう屋さんが、大体お菓子というのは非常に景気変動に強いわけでございますが、このたびは前年よりも一割以上減っておる、大変なことだと言っておるわけでございます。それは、もみじまんじゅうでございますから、他人の家に行くときに手土産に持っていくわけでございます。手土産すらどうも控えておるのが現状ではないかということでございます。また、キヨスクの経営者に聞いてみましても、キヨスクというのは御案内のように駅の売店に出ておる小回り品の販売会社でございますが、ここも今期は赤字だということを言っておるわけでございます。  かれこれ実情としては大変厳しい状況にあろうかと思うわけでございますが、大蔵大臣日本経済の現状につきまして、この二月の月例経済報告をどのように受けとめ、これらの経済認識について率直な御感想をお聞きしたいと思います。
  233. 松永光

    国務大臣松永光君) お答え申し上げます。  お話がありましたように、この二月の月例経済報告、停滞しておると、それまでは足踏み状態であったわけでありますが、そういうふうに経企庁も発表したわけでして、私自身厳しさが増してきておるという認識をいたしております。しかし、最近の株価の動きを見ますというと、市場心理の一部には持ち直しの兆しも出てきているんじゃないかなという感じもいたしますが、いずれにせよ我々としては二兆円の特別減税を含む予算・税制面の措置、それから今回お願いしている金融システム安定化対策、これをきちっとやって、そして不透明感を払拭できるようにし、我が国経済の力強い回復がもたらされるように頑張るしかないなと、こういうふうに思っておるわけであります。  ただ、私はどうも地域地域によってある程度のばらつきがあるんじゃなかろうかなという感じを持っております。広島が大変厳しいという話でございました。先ほどの志苫先生のお話じゃございませんが、正月から大蔵大臣になるまでの間はほとんど毎土曜、日曜、それから夜、私は東京の隣の埼玉県の南の方ですから都市部でありまして、選挙は油断はできないものですから、そこで地域の商店街あるいは業種団体の新年会へは大体出ました。  そこで感じたことは、ばらつきがあるなということです。例えばガソリン販売店、石油販売業界の新年会、それから米屋さんの新年会等々ではやっぱり厳しいということがひしひしと私にもわかりましたが、その他はそれほど厳しいことを言わないんです、東京のすぐ隣だから恵まれておるのかもしれませんけれども。  したがって、業種別の厳しさのばらつき、地域間のばらつきがあるのだと思いますが、総体としてやはり厳しいというふうに私も認識いたしております。
  234. 菅川健二

    ○菅川健二君 厳しいという認識は一致しておるということではございますけれども、これまで大蔵省として打ってきた措置によって景気回復を期待しておるんだという発言もされたわけでございます。  一方、新聞等、巷間聞くところによりますと、例えば九八年度当初予算が通ったら直後に六兆円規模の補正予算を組むんだとか、あるいはきょうの日経にも載っておったわけでございますが、金融機関の抱える担保不動産の証券化商品を公的資金で買い取るんだ、これを二月二十日ごろまでに自民党が決めて公表するんだというような追加景気対策がどんどん新聞情報等に出てまいっておるわけでございます。  そういった面におきましてなお追加景気対策は必要ではないかというふうに考えるわけでございますが、その点につきまして大臣はどのようにお考えでございますか。
  235. 松永光

    国務大臣松永光君) 公的資金を使って担保に入っている不動産の買い上げという話は私は聞いておりません。私が聞いておる話は、抵当権つきの債権不良債権になっておるんでしょうが、それの証券化という話は私の耳には入っております。それからもう一つは土地の再評価の問題、この二つが私の耳には入っておるわけでありまして、そのほかの景気対策、少なくとも公的資金を使っての景気対策というのはまだ耳には入っておりません。
  236. 菅川健二

    ○菅川健二君 ちなみにきょうの日経でございますが、「公的資金、土地にも」という記事になっておるわけでございます。これも真偽のほどは私自身よくわかりませんけれども、いずれにしても自民党の方で検討をしておるような情報でございます。  私、昨年の当初予算のときから、予算委員会とかあるいは行財政特別委員会に出させていただきまして、総理とか前大蔵大臣にいろいろな点につきましてただしておるわけでございます。その中で、過去一年間、所得税の減税は一切財源がないからできないんだということを十二月の中旬、臨時国会の終わるまで主張しておられたわけでございます。それが十二月の中旬に東南アジアに行かれて急に二兆円減税というのを言い出されたわけでございます。これはどういうこっちゃという感じで私は大変驚いたわけでございます。  そういった意味で、今の景気状況に対してもうこれで十分だということはなかなか言いにくいんじゃないかと思うわけでございまして、大臣もその点につきましてひとつまだまだ含みのあることを言っていただかないと、またくるりとお考えをお変えになることもあるんじゃないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  237. 松永光

    国務大臣松永光君) 私は比較的頑固な方でございまして、従来からずっと申しておりますように、補正予算を通していただきました。それから、二兆円の特別減税も通していただきました。そして、それらの施策は実際に実行段階に入りました。今、御審議を願っておる金融安定化に関する二法案、これも通していただきましたならば、これまた金融システム安定ということで、日本の金融に対する内外の信用、信頼回復してくる、これも景気にプラスになると。そして、平成年度の予算、これを通していただきましたならば、これらをすべて速やかに実行に移して、それらのもろもろの政策の相乗効果が期待されまして、それによって景気の回復に力強さが出てくるものというふうに思っております。  今はただただ本法案と予算案の早期成立をお願いするのみでございまして、それ以上のことを申し上げる立場ではございません。くるりと変わることもないつもりでございます。
  238. 菅川健二

    ○菅川健二君 我々としては、昨年来、経済再建なくして財政再建なしということをずっと主張してまいったわけでございまして、そういった意味から財政改革法につきましても反対をしてまいったわけでございます。ところが、現在景気対策というのがより優先課題になってまいったわけでございます。  ただ、この点につきましても、総理の答弁を聞いてみますと、景気対策財政構造改革は二者択一ではないんだ、両立するんだということを強弁しておられるわけでございます。確かに、中長期的な課題として財政再建ということについてはだれしも必要性は認めるわけでございますけれども短期的に見ますとやはり財政再建が優先するのか、あるいは景気対策が優先するのかというのは、これは二律背反になるわけでございます。いろいろ景気対策が今の段階で打たれ始めておるわけでございますが、なお財政構造改革にこだわっておるということに対して、世間におきましては政府自身が腰が入っていないということの証左にとられておるんじゃないかと思うわけでございます。  その点で、本格的な景気回復に取り組むということでありましたら、私はやはり財政構造改革法を遵守するというよりも、むしろ必要に応じて見直すべきではないかと思うわけでございます。  先ほど大臣は、財政構造改革法というのは、平成十五年に赤字比率を三%以内とか、あるいは赤字国債を発行しないようにするんだという、そういう総論的な規定だよということを言われたわけでございますが、そのほか重要なのは、もちろん大臣御存じだと思うのでございますが、各歳出、主要な歳出につきましてキャップがかかっておるわけですね。例えば、現在問題になっております公共投資につきましては当初予算ではなるほど七%カットという形で出ておるわけでございますが、これもすぐ補正でもって六兆円も仮に追加補正しますと、まるでしり抜けになるわけでございます。また、さらに平成十一年度、十二年度につきましても、対前年度の当初を下回る額というふうにキャップが既にかかっているわけでございます。  こういった点で、私はやはり財政構造改革法と景気対策というのは相入れないのではないかと思うわけでございます。  この点につきまして、大臣の御見解をもう一度お聞きいたしたいと思います。
  239. 松永光

    国務大臣松永光君) 先刻も御答弁の中で申し上げましたように、財政構造改革はがっちがっちがんじがらめとは私は認識しておりません。先ほども申したとおり、最終年度である二〇〇三年度までに、国、地方の財政赤字をGDP比三%以内、そして赤字公債ゼロ、この最終的な目標達成に向けて頑張っていけばいいんだと、その過程ではそのときそのときに応じて必要な対策を打っていってよろしいというふうに私は理解いたしております。  そして、公共事業の話が今出ましたが、公共事業の中でも特別必要な分野はそれなりに措置平成年度の予算でもしてあるわけでありまして、全体としては七%減になっていますけれども、中身を精査すれば必要な分野にはそれなりの措置がしてあるということであります。それをきちっとやっていけば、私はがんじがらめでキャップのためにどうにもならぬということはあり得ないというふうに思っておるわけでございます。
  240. 菅川健二

    ○菅川健二君 この点につきましても、時の経過とともにまたくるっと変わらないようにひとつよろしくお願いしたいところでございます。  しかしながら、先ほど来の私どもの主張というのはむしろ経済再建といいますか、景気対策を優先せよということでございまして、そういった面では財政構造改革法に、例えばアメリカの包括財政調整法におきましては、実質経済成長率が一%未満の場合においては議会の承認を得て一律削減を停止するというような規定も置かれておるようでございまして、まさに今年度我が国は〇%成長といいますか、ゼロ%でございまして、アメリカのこの包括財政調整法のような規定があれば、むしろ歳出についてのキャップが外されるというような状況になるのではないかと思うわけでございます。  ちょうどリチャード・クーが週刊東洋経済のただいま出ておる号に非常にいいことを書いてあるわけでございます。  景気回復を優先させるのなら、財源の話はやめ、赤字国債を出さなければならない。財源が欲しいなら、景気対策はあきらめなければならない。景気回復も財源も同時に欲しいというのは、無責任な議論だ。その結果は、両方とも失敗してしまう。過去八年間、日本はその過ちを繰り返してきた。 そして最後に、   無理な財政再建をやろうとした結果、財政赤字は増えたのであって、減ったのではないのである。 という結論を出しておることを申し添えておきたいと思うわけでございます。  それから次に、金融二法に移りますけれども、この二法を審議するに当たりまして、三十兆円の公的資金を導入するという場合はその前提となる金融機関の情報開示ということが欠かせないことではないかと思うわけでございます。  この点につきましては先ほど来年嶋委員、星野委員からるる申されたことでございますので繰り返しはいたしませんけれども、いずれにしても不良債権の額はくるくる変わってくる、しかもどんどんふえてくる、したがって無限に不良債権があるのではないのかという疑念が国民にあるわけでございます。住専問題以来、金融情報については全く信用されていないというのが実情ではないかと思うわけでございます。その点で、特に金融関係の情報を完全に開示していただくということが公的資金導入の前提となるということを強調いたしたいと思うわけでございます。  さらに、それと関連してリストラの状況につきまして、御案内のように国際競争力を持っております製造業などにつきましてはここ数十年来血の出るようなリストラを行っておられるわけでございまして、正確なデータはないわけでございますが、資料で見てみますと、従業員の給与額について金融・保険業というのは製造業と比較しますと三、四割高くなっておる、それから役員報酬ももちろん高いわけでございます。それから、常用雇用者数の伸びを見ましても、一九八五年をベースにとりますと製造業がほぼ横ばいであるのに対して金融・保険業というのは八%ほど伸びておるわけでございます。  幾つかの資料を見てみましても、金融・保険業というのは大蔵省の過保護行政によって守られてきたために非常にリストラがおくれてまいっておるんじゃないかと思うわけでございます。公的資金を導入する以上、積極的に情報を開示させ、思い切って他業種並みにリストラの努力をさせるべきではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  241. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 金融機関のリストラの必要性につきましては、大変重要だというふうに私どもも思います。産業界から見ても金融界のリストラがまだ不十分だという声も聞こえます。私どもとしてもリストラの促進ということを重視しまして今後対処していきたいというふうに思っております。  給与等の御指摘もありました。統計では全部を一〇〇にすると一二七という数字になっておりますが、ただこれは生涯賃金にするとまた話が違うという反論もいろいろあるようです。あと役員の報酬の問題、それから人員等の問題、いろいろまだまだ努力すべきところはあると思いますし、私どももその辺にはよく留意をしていくべきことであったというふうに思って、さらに努力を重ねたいというふうに思っております。
  242. 菅川健二

    ○菅川健二君 法律の中身につきましては後ほどに譲りたいと思いますが、この件に関しまして経営健全化計画を資本注入する場合に出させるというような規定もあるようでございますけれども、その中に例えば役員の報酬とか従業員の給与、待遇、人員の削減等も当然主な内容として入ると見ていいんでしょうか。
  243. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 審査委員会の方でこの計画を審査なさいますが、そのケースケースで違うとは思います。ただ、そういう場合もあろうかと思います。いずれにせよ、健全な経営をするというような中身の計画を出すことになっております。その中で触れられることもあろうかと思いますし、それは審査委員会の方で御判断をいただけると思っております。
  244. 菅川健二

    ○菅川健二君 いずれにいたしましても、公的資金を導入する以上、情報の完全な開示、それから金融機関自身のリストラ、そういったものにつきまして特に重点を置いて進めるべきではないかということを申し上げたいと思います。  きょうはこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  245. 石川弘

    委員長石川弘君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  246. 石川弘

    委員長石川弘君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会      ―――――・―――――