○
宮崎秀樹君 確かにこれは難しいです。
レセプトの
審査にいたしましても、私は十数年間
支払基金と
国保連合会の
審査委員をやっておりましたからその
実情を御
説明しますが、例えば一枚の
レセプトをぱっと見て一秒かからないやつは幾らもあるんです。例えば
顔面座瘡、これは再診料が七十四点、処置が四十二点。病名というのはぴっと一瞬でわかるわけですね、こんなものはもうこれしかないわけですから。そうかと思うと、この
高額医療費になりますと、一枚の
レセプトに全部
勧進帳みたいに巻紙になって長さが一メーター以上のものが出てくるんですね。細かくびっしり書いてあるわけです。これは一時間以上かかりますよ、一枚で。
だから、
レセプトの
審査といってもピンからキリまであるわけでありまして、さらに驚くなかれ、ここに
解説があります。これは
解説です、みんな。これはもう克明に書いてある。これを
説明して、例えば
説明を一カ所聞きますね。
専門官でも答えられない、これは。そういう
仕組みなんです。
さらに、
疑義解釈というのは別にあるんですね。
一つの例を御紹介しますけれ
ども、
疑義解釈でもこのぐらいあるわけですね。例えば、
一つこういうのがあるんです。
クームス試験というのがあるんです、これは免疫学的な検査。これが今回の
改定において、これはこの間の
改定ですね、四月一日。これが直接検査というのは五十点、二番目の間接検査六十点に今度分割されたと。「二つを同時に行った場合、両方の算定が可能か」と、こういう
質問がある。そうすると、これに対してみんな鳩首協議して、「従前より、直接と間接を同時に行った場合、二回算定していたものであり、今回からは五十点プラス六十点により算定することとなる ただし、医学的に同時に行うことに
意味があるかは
医師の判断によるものである」と、これが回答なんです。では、
医師の判断によるところまで、我々は
患者さん診てないから、これは紙上
審査だから。こういう解釈が出ているんですね。
だから、こういうことを
一つとっても、これはなかなか減点減点と言うけれ
ども、減点がすべてこれは悪いとは言えないんですね。一方的にこの判断をある技官がいやこれはこうだと推測してばっと減点したら、これは大変問題があるわけです。だからそういうことがある。
また、これは老人保健ですけれ
ども、「他の
医療機関において老人デイ・ケアを算定している
患者又は老健において、適所者施設療養費を算定している
患者については、老人デイ・ケア料を算定できないとされているが、デイサービスとの併用の場合は算定可能か」と。答えは「算定できるが、
福祉サービスとの連携に留意が必要である」と。その「留意」というのは一体何だと、こういうことになりますね。これはまた
議論がある。
だから、このようなことが今
審査の中で、もうこの本を読んだだけじゃわからない。まだそのほかに青表紙というやつがあるわけですね。そういうのを見ながら
患者さんを診ていると、
患者さんを診るよりこっちを見ている時間が長いわけですよ。
こういうことが今行われているというのが
現実でありますから、もうちょっとこれは簡単にしてもらわないと困るわけであります。だから私は、不正請求の問題も確かに悪いことをやっているところはないとは私は言いません。そこは徹底的に取り締まれと、これはもう
日本医師会もはっきり言っております。だから、それはそうとしましても、こういう実態があるということはよく御存じの上で今この
保険診療がなされているわけであります。
そこで、減点
審査の問題ですけれ
ども、減点
審査による
患者負担分の過払いは民法の不当利得返還請求権に基づき
保険医療機関に対して返還を請求できる、これは
厚生省の見解なんですよ。こういう見解を出しているんです。これは、あたかも減点
審査というのはもうまさに正当であるというふうにもうそれを断定しているわけですね。それによって不当利得であるかごとく公権的に認定されたというような印象を今外に与えております。これをうのみにした
患者さんが減点されていることだけで
医療機関は返還請求に応じるべきだという
考えを持つ。これはまさに行き過ぎだと思うんですね。
二つ目には、不当利得の善意、悪意、現存利益の有無を全く無視している点であります。
患者が
厚生省見解に沿って裁判を起こした場合、これは現存利益なしと
患者さんが敗訴する場合も出てくるわけであります。要するに、
現実には、減点
審査が行われている場合には
患者が不当利得返還請求できる場合もあるということは事実でありますけれ
ども、その程度のことなんですね。減点についてはこれは大変大きな問題があるんですね。
私は
審査委員をやっておりまして、これは事務的なミスもあるんです。いろんなものがあります。例えば、
保険証の記号を写し間違えたということは、これは全額もうばっさり切られるわけですね。ところが、健保組合でも親切なところは、名前を見ればわかるわけですから、この人は番号を間違っていましたよ、これからこうしてくださいよと言ってくるところもあれば、悪い健保組合は知っていて一切知らぬ顔です。そうするともう
医療機関は、一年たって通知が来ることがありますから、ですからそういうことで一年後に引かれてきたり、何かわけのわからぬことが今非常に行われております。
ですから、この減点について、
患者さんがそれならば減点分の
お金を返してくれと、こういうことになりますけれ
ども、注射なら注射はもう打つで体へ入っちゃっているんですね。それで病気が治っちゃったと。しかし、それは医学的に先ほど言うような
状況で、判断によってやったことについては、これはまさに善意でやっていることですから、しかもその注射の代金は
医療機関が買っているわけですね。それを一方的にばっさりやられると、まさに変なところから泥棒が来て財産を持っていくというような
考え方にもなるわけであります。
だから、ここら辺はよくこれから、今の
保険診療をやっているとこういう問題が次から次へ出てまいりまして、私はこの
制度はやはりこういうことはついて回るものだと思っております。
また、
医療機関側にいたしましてもつけ落としがあるんですね、これは逆に言うと。つけ落としがあると、それは後から今度その
患者さんを探して、つけ落としだからその金を
負担した分あなたくれよと、これは一切できない。これも事実です。
それから、
患者さんの夜逃げというやつもあります。不渡り手形を書いて渡すやつもいる。これは大分私も調べたんですが、私のところも一回不渡りを食っちゃったことがあるんですが、
患者さんが窓から逃げていって、おまけに待合室のいすから机まで持ち出して、行ったら何もなくなっていたということも実際経験しております。それは
患者さんでもいろんな方がいます。それは社会ですから、いろんな人がいるんですね。ところが、一々それを目くじら立ててああだこうだと言っていてもこれは始まらないことであります。
よほど私はこの減点については慎重に、何で減点になったかということ、これを実態的によく調査する必要があると思うんですが、
厚生省ではそういうことを細かく突き詰めたデータというのはあるんですか。
そこら辺があったらばお教え願いたいと思います。