○水島裕君 本
会議でも質問いたしましたように、この
法律は、もう古くなりまして現代に
対応できなくなった
法律を
改正し、しかも
人権に
配慮し、また
危機管理ということを入れて、少なくともそう試みられた
法律でございますので、この
法律が正しい方向に、修正すべきところがあれば修正して成立するということは恐らく皆様方全員が願っていることじゃないかと思います。
この
法案は参議院に最初先議として参りましたので、やはり参議院で十分審査し、修正すべきところは修正し、
附帯決議はきちっとつけなければならないと思います。それだけに、なるべく早くどういうところが一番問題かということを浮き彫りにして、そのことを重点的に討論していくべきだと思っております。
私も代表質問で大体のことは申し上げましたので、きょうは、こういうところをどういうふうに考えたらいいか、あるいは修正すべきだったら修正した方がいいんじゃないかというようなことを頭に入れながら御質問をしていきたいと思います。
その前に、
感染症についていろいろ御
意見を聞いておりますと、もう
一つまだ理解がいってないんじゃないかというところもございます。私の医学の中の専門は免疫とか炎症でございますけれ
ども、
感染症も比較的近い分野でございますので、少し私なりの考えを述べさせていただいて、また私
個人が経験した、今度の
法律がぜひ必要であるというような話もさせていただいた後、御質問したいと思います。
医学の本を見ていきますと、大体分野というのは二十五、六ぐらいあるんです、例えば耳鼻科とか泌尿器科とか。どの分野を見ても十とか二十ぐらいの
感染症はあるのでございます。ですから、全体として、三百とか五百ぐらいは
感染症というのはあるわけでございます。
ですけれ
ども、そういう
感染症は、通常、菌はそれほど恐ろしくないわけで、体のぐあいが悪いとかあるいはどこか通過が悪いということで出てくる
感染症でございまして、今日取り上げられております
感染症というのは菌の方に問題がある、
病原体の方に問題があるというものでございます。それでも百ぐらいはあると思います。例えば、
一つ食中毒のサルモネラをとってみましても、その亜型、サブタイプというのは百ぐらいあるわけでございますので、
感染症というのはもう本当に数限りなくある。そのうち今回問題になっている
感染症はそのごく一部ということをまず御理解いただきたいと思います。
局長、私の申し上げていることがどこか間違えていたり、御
意見がありましたら、後でおっしゃっていただきたいと思います。
それで、本
会議でも申し上げましたけれ
ども、
日本では
専門家が少ないんじゃないか、恐らく百人ちょっとぐらいしかいないんじゃないかということを申し上げました。実は、こういうものを扱っているのは
日本感染症学会でございまして、そこで認定医というのをつくっております。昨日理事の人に聞いてみましたら、認定医というのは昨日現在で三百九十六人いるそうであります。でも私は、それは全体の
感染症でございますので、その中で今回取り上げるような
感染症について知っている人は恐らく百人ちょっとぐらいだろうと申しましたら、まあ半分ぐらいはできるんじゃないかという理事の答えでございました。それでも百数十人というのが、現在
日本にいる、この
法律に出てくる
感染症がわかる人がそのくらいの人数という御理解でよろしいんじゃないかと思います。
そういうことでございますから、本
会議でも申し上げましたように、
医師ばかりじゃなくて
医療関係者の教育、育成というのが非常に大切だということをわかっていただきたいと思います。このことについては後でまた申し上げたいと思います。
それで、私が議員になるちょっと前の経験ですけれ
ども、
一つ申し上げますと、私の大学の同僚、威勢のいい
女性の助教授だったわけでございますが、それが伊豆の方に研究会に行くと言って出ていきました。そうしたら、二、三日したらえらく情けない声で電話がかかってきまして、どうもそこで血便が出た、便に血がまじっておなかが痛くてちょっと熱っぽいということで伊豆の病院に行ったら、変な階段の下か何かの病室に押し込められてしまって、多分赤痢かサルモネラか、O157はそのとき余り有名じゃございませんでしたけれ
ども、そういうことも疑ってそういうところに入れられた。
入れたのは私は正しいと思います。ただ、それから大急ぎで
検査したんですけれ
ども、なかなかわからない。病院というのはやはり
医療スタッフというのがなかなか充実しておりませんので、そういうところに入れちゃうとお医者さんも
看護婦さんも余り回ってこないんです、いろいろ言っても
一つも来てくれない。ですから、そこで厳しく言えば、
人権が侵害されたと言えばそういうことになるわけでございます。
それで、電話がかかってきましたので、私がそちらの院長に電話しましたところ、院長は私のことをよく知っていてくださったので、
先生が完全に責任を持ってくれるんでしたらすぐにでもお帰ししましょうということで、こちらの病院から車を差し向けて連れて帰ってきました。それで大急ぎで便の
病原体の
検査をして、一両日して赤痢もないしサルモネラそういうものも大丈夫だということで、ただ念のために抗生物質を飲んで食事なんかの注意をしてうちに帰ったということです。そういうことをしなければ、いつになってもということもないかもしれませんけれ
ども、しばらくの間はそこの病院の妙な部屋に入れられていたと思うので、それが
日本の
感染症対策の現状、
問題点をよくあらわしているんじゃないかと思います。
ただ、私は、そのときに向こうの院長に、こういうふうにしてくれて正しい
措置だったと。つまり、これからも何かが起きたときは、先ほどからプロジェクトチームとかいろいろなものが出ておりますけれ
ども、はっきりした人が出向いていったり責任を持って処理すればいいのであって、私はそのときの病院の
対応は、もちろん設備が悪かったとか知識が十分じゃなかったとかいろいろそういうことはありますけれ
ども、
対応はそれなりによかったんじゃないかなというふうに思っておるわけでございます。
そういう二つばかりのことを念頭に置かれて、これからどういうところが問題かということを申し上げたいと思います。それで、修正とか
附帯決議、こういうところを今後考えていかなくちゃならないというのは決して私の
意見ではございませんで、先ほど午前中から
南野委員あるいは常田
委員からもお話がございました。また昨日、野党の方からも話がありました。ですから、与野党を通じてこういうところはよく確認した方がいいんじゃないか。これは質問で確認する手もありますし、必要でしたら修正するということだと思いますけれ
ども、そういう一般的な
意見をひとつお伺いしていきたいというふうに思います。
特に、四点について全体としてお伺いしたいわけでございます。
一つは
検査のための基盤整備。
法律を読んでいきますと、
情報の収集とか研究ということはすごく出てくるんですけれ
ども、最も大切なもの、あるいは
一つの
検査ということでは
日本は非常におくれているわけでございます。
例えば、
一類感染症がばあっとありますけれ
ども、あれは恐らく
日本でどれも今
検査上診断がつかないんじゃないかと思います。そういうことができるようにしなくちゃいけないし、何にも増して、一番恐れている新
感染症が起きたときは、
日本だけでそれを培養したり、分離したりあるいはその抗原をとったり遺伝子を決めたりとかしなくちゃならないんですけれ
ども、それは恐らくP4の施設、P4の施設といってもおわかりにくいかもしれませんけれ
ども、よくテレビなんかで見ますと宇宙服を着ておっかない細菌に手を突っ込んでこんなことをやっている、あれがP4の施設と思っていただきたいわけですけれ
ども、
日本では恐らくあれが全く稼働されていない。設備はどうもあるみたいなんですけれ
ども、稼働されていないということでございます。
だから、一番はそういう
検査、研究も入ると思いますけれ
ども、
検査、研究のためのインフラの整備ということが
一つ。
それから二番目は、特にウイルス性
疾患に関しては、きょうも午前中常田議員の方から強い
意見が出ておりましたけれ
ども、ワクチンが重要でありますので、ワクチンの製造のための設備をきちっと
対策を練ってそれに責任を持っていただくというようなことがどうもこの
法律からはもう
一つ読み取れないというのが二番目でございます。
それから三番目が、最も大切と思われる新
感染症、ずっと読んでいきますと、主として自治体が全部やることになっております。知事を含め自治体がやっております。最後の方で確かに厚生
大臣の
指導を得る、あるいは厚生
大臣は
公衆衛生審議会に諮問をするというのがございます。ずっと読んでいきますと、どうも地方自治体だけでいろんなことをしてしまえそうだし、厚生
大臣の
指導は得るけれ
ども、勝手にやっていいということではないと思いますが、そういうふうにも読み取れるところがあるというのが三番目。
それから最後が、やはりこれまでの反省に立って今度の
法律ができたといういきさつは当然あるわけでございますので、やはり何といっても
医師が、私も
医師でございますけれ
ども、
医師が
感染症も含め
医療の中心人物、責任も一番とれるといいますか、いろいろなことの権限があるのが
医師でございますから、
医師がやはり
患者の
人権に
配慮するという文言があった方がいいと、その四点でございます。
では、
一つずつお尋ねしていきたいと思います。
余りしゃべる方ばかり多くて恐縮でございますが、まず、新
感染症及び指定
感染症というのがこの
法律の大きな目玉であります。この新
感染症というのはこれから五年とか十年に、まあ全然出ないかもしれない、出ても
一つか二つというくらいの
認識をお持ちだと思いますけれ
ども、そうでしょうか。やはり何か出てくるとすぐ新
感染症とかというふうに危惧される方があるわけでございます。ただし、わけのわからないものが出てきたときは、これは本当の
危機管理として思い切った
対策をとるということが必要じゃないかと思いますが、同
意見でございましょうか。
もう一言言いましてから
局長の御
意見をお伺いしたいと思います。
法律には
新興感染症という言葉は出てこないんですけれ
ども、
新興感染症、未知の
感染症、それからここの
法律の中で新
感染症、指定
感染症という言葉が出てくるんです。もう
一つ整理されていないというか、この
法律だけ見てみますとよくわからないわけでございます。私はもちろんわかっているつもりでございます。
ですから、
新興感染症というのは最近起きてきたものですから、
エイズもO157もそういうのはみんな
新興感染症に入ると思いますが、ここで問題にしております新
感染症、指定
感染症ということに関しては、未知の
感染症というのが非常に大きなウエートを持つわけであります。ですけれ
ども、未知の
感染症のうち新
感染症の定義に入るもの、つまり非常に恐ろしいものというのが新
感染症。未知の
感染症のうち、新
感染症に入らないもので、ある
対策をとらなくてはいけないというのを指定
感染症の一部にするということが正解だと思いますが、その辺の整理も含めて一度
局長から御答弁をお願いいたします。