○水島裕君
平成十年度の
予算の大枠は決まりそうでございますが、まだ具体的なところはこれからだと思います。また、自民党も景気
対策としまして十六兆円の
経済対策、財政支出八兆円ということでございますので、これからまだまだ
予算で決めていくことがたくさんおありだと思いますので、ぜひ私が申し上げることも聞いていただいて、少しでも反映していただければと思います。
大蔵省の方から、この
予算の中での人件費とか事務費というのは極力抑えるということだそうでございますけれ
ども、医学とか
医療とかいうものの
事業、研究というのはどうしても人あるいは事務がかかるものでございますので、その辺も何とかうまく運用するようにしていただきたいと思いますし、そういうふうにできるんではないかと思います。
最初に申し上げたいのは、ランセットという雑誌がございまして、これは臨床医学の雑誌では世界で一番目か二番目に読まれている雑誌でございますけれ
ども、ことしの二月二十一日号がここにございまして、ぺらぺら見ていきますと、一番最初にエディトリアルがありまして、そこで、ユナイテッド ステイツ アメリカ マスト インベスト インクリニカル リサーチ、つまり臨床研究にアメリカはもっと投資しなければならないと。これはクリントン大統領の声明でございまして、ことしから二〇〇二年までの五年間に、医学研究の総元締めでありますNIHの
予算を五〇%ふやすということです。
その目的はいろいろあるんですけれ
ども、その
一つは臨床研究者を育てなければ、結論にもそう書いてございますけれ
ども、今後せっかく遺伝子の研究とか分子生物学とかマイクロテクノロジーとかそういうものが発達しても、肝心の福祉、つまり病気の診断や治療にそれを結びつけることができない。ですから、これを今しなかったらアメリカは大変なことになるというような結論を出しているのでございます。
私がこれから質問しようと思っていましたものは、アメリカほど臨床研究を中心に医学研究がうまくいっているところはないんじゃないかと、それに比べて日本はどの程度かということを申し上げたいと思っていたんですけれ
ども、アメリカはそれを超して、今のままではアメリカはもうこれはだめになってしまうというぐらいの、クリントンが声明を出して、それがこのランセットのエディトリアルに書いてあるわけでございます。ですから、クリントン大統領じゃなくて、小泉
厚生大臣の声明でも後でぜひ出していただきたいと思って、きょうお出しにならなくても、ぜひ御検討いただければということが主眼でございます。
それで、今話が出ました臨床研究ということからきょうは入らせていただきたいと思います。三間ばかり文部省及び
厚生省に
お尋ねして、もう一度
大臣の方に質問させていただきたいと思います。
今申しましたように、アメリカはこの臨床研究を非常によくやっているんです。これはちょっと前に私
どもが調べたデータで、今はきっとこの倍ぐらいになっているのかもしれませんけれ
ども、アメリカで三十二大学に大規模な臨床研究の援助をやっているのでございます。どういう形の援助かと申しますと、一般臨床研究センターというのをその三十二の大学でつくってもらって、そこで実際の臨床研究もするし、その管理もするということなんであります。
後で
予算の規模とかそういうことは申し上げますけれ
ども、日本でもこういうことをぜひやらなくちゃいけないんじゃないかと思いますのは、日本では結構自然科学の基礎研究はやられているんです。だけれ
ども、こういう臨床研究、臨床研究と言ってもすぐおわかりにならないと思いますので、一、二例を申し上げます。
例えば、アスピリンは痛みもとめるし熱もとるということでずっと使われているわけでございますけれ
ども、このアスピリンのごく少量を患者さんに飲ませますと脳梗塞が防げるわけです。まず間違いないんだけれ
ども、日本人の脳梗塞に本当にいいかどうかというのはまだわかっていないんですね。ところが、アスピリンのごく少量なものですから、製薬会社はひとつももうからないからやらない。それから、研究費もないから医者たちもやらない。ですから、何となくよさそうだということで我々はアスピリンの少量を、私の亡くなった母親も何だか怪しいんで、ずっと私は小児用のバファリンを飲ませていましたら、こんな
子供に飲ませるぐらいの量で本当に効くのかしらなんて言っていましたけれ
ども、そういうことをやっているわけなのでございます。だから、そういう試験を日本でちゃんとやらなくちゃいけない。
それから、胃がんというのは非常に恐れられておりますので、レントゲンで胃がんの検診をやるわけですね。でも、どうもあれは見つかったときはだめだし、レントゲンを当てるのもよくないということで、胃がんの検診で写真を撮るよりも、むしろ腫瘍マーカーを追いかけた方がいいんじゃないかとかあるいは遺伝子診断をやった方がいいんじゃないかということがあるんだけれ
ども、これもきちっとした臨床研究がなされていない。こういうことがすごくたくさんあるんですね。そういうことができていないんで、そういうのが臨床研究なわけでございます。
ですから、まずこれは文部省に
お尋ねしたいんですけれ
ども、日本にはそういうGCRC、一般臨床研究センターというのがないと思いますので、何とかこれのかわりになることをやっていかなくちゃいけないんですけれ
ども、その辺を文部省はどうお
考えでいらっしゃいますか。