○水島裕君 もう一回整理のために申し上げますと、お医者さんが気にしながらやっているのがどこかというと、結構五つぐらい挙げられるんですね。
一つが認可されていない薬を使っていて何となく後ろめたい、気にしている。それから次に、そういうときは患者さんに全部インフォームド・コンセントをきちっととらなくちゃいけないんですけれ
ども、余りにもそういう薬が多いために一々インフォームド・コンセントをとっていない、それも違反しているんじゃないか。それから、レセプトにいわゆる保険病名、うその病名みたいなのを書いているというところも気にしている。それを審査する人もそうすれば病院がお金を払わなくていいからといってパスさせて、そこでもまた後ろめたい気がしている。それから、そういうものですと今度は
メーカーが副作用の情報を伝えなくてもいい。伝えちゃいけないことになっているわけですね。ですから、そういう的確な情報が伝わらないで妙な副作用を起こしてしまう。今度は、副作用が起きたときにも保険に許可になっていないものを使ってというので、これ医者が悪いとかというのでそこも問題になってくるというので非常に問題が大きい。
何でも問題のあるままどんどんいろんなことをやっていますと、今の汚職とかなんかじゃないけれ
ども、みんなだんだん癖になって、結局は非常に大きな問題になってきてしまうということもあるので、やはり論理的ではないところをすかっとするということは我々の使命ではないかというふうに思っております。
それで、今の続きでございますけれ
ども、これは何度も申し上げて、
大臣からも医者が困らないように早くしたいということをお答えいただいているわけでございます。といって既存
医薬品の必須の適用拡大というのは物すごくたくさんあるわけで、これは中西
局長なんかも御存じだと思いますし、先ほど紹介していただいた私
どもの
調査でもすぐにでも認めた方がいいんじゃないかというのは約百ございます。それから、小児科学会、小児薬理学会からの
要望書が恐らく行っていると思いますけれ
ども、それでも百ぐらいあると思いますので、非常に多いわけです。
ですから、それをどうするかということで、厚生省もいろいろ頑張っていただいて、
一つが今
メーカーの協力も得て国の研究機関として、これは
健政局の方だと思いますけれ
ども、国の費用でもって今書類をつくってこれで適用拡大をしようという動きもあります。あるいはほとんど治験ができなくて、そういう点では何もしていない国立病院を使ってやろうという動きもありますので、そういうのがぜひうまくいくように期待しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それと、続けてですけれ
ども、そういうときにもう
一つ活用していただきたいのが医学会なのでございます。どうも医学会の
要望書を出しても余り国は聞いてくださることはないのでありますが、やはり医学会というのは相当専門家の人たちがなっておりますし、そこの役員は厚生省での
委員会と違いまして、まず今一〇〇%会員の選挙で、しかも期間を限ってなっておりますので、かなり公平に選ばれている人たちなのであります。厚生省の
委員は、どうしてもだれかの推薦とか、厚生省の方で厚生省の政策に何となく近そうな人を選ぶ嫌いがありまして、少し何か言うと首にされたりなんかするのであります。
私も幾つかやらせていただきまして、
一つは、別に首になったわけじゃないんですけれ
ども、八年間の任期が来たからやめていただいてもいいんですけれ
どもとかというようなことで来ましたので、いやそれはもうやめますと。それからもう
一つは、私がある研究班の班長だったときに、一人よく研究はするんですけれ
どもちょっと変わっている人がいて、すぐ厚生省に盾突くようなことを言ったり、それから地元で少し
厚生行政の違反みたいなのをしたりなんかする。そうしたら、課長からもあの人は首にしてくれと頼みますので、私はちょっと人間的に問題はあるけれ
ども研究は一生懸命やっているから何とかもう少し使わしてくれと言って二回ばかり頑張ったんですけれ
ども、その次は、いやもう
先生が頑張るんでしたら
局長室に一緒に行きましょうと言って、じゃもう結構ですからやめさせますということでやめたんです。
それは厚生省の言うことの方が正しかったとは思いますけれ
ども、どうしても厚生省の
委員というのは厚生省寄りになることが
一つ。それから、学者として見ると厚生省の
委員というのは物すごく格が高いんです。ですから、厚生省の
委員になることをすごく名誉と思っておりますし、ちょっと何かして首になることをすごく恐れているのであります。ですから、どうしても自分の本当の気持ちだけで、自分の判断だけで言うというのが、果たして全部がそうかと思うと私はちょっと怪しいんじゃないかと思います。
ちょっとそれてしまいますけれ
ども、私が申し上げたいことは、いろいろ諮問するときに、もちろん内部で研究班をおつくりになってやるのもいいんですけれ
ども、それと同時に、外部の権威あってきちっとしているものといったら私はやっぱり学会だと思いますので、学会にぜひ相談もしていただきたいと思います。
私は、例えばエイズのときに、加熱製剤を早くやった方がいい、あるいはやめた方がいい、それを学会に諮問すれば、恐らく血液学会と血栓止血学会だと思いますけれ
ども、たしか片一方は安部さんが
理事長だったかもしれませんけれ
ども、そういう学会に諮問すれば恐らく違う結果が出ていたんじゃないかと思います。ひとつ厚生省の中でいろいろこれからも、もちろん
委員会をつくったり検討会をつくってやられるのは
当たり前のことでございますけれ
ども、それと同時にぜひ学会も活用していただきたい。
それから、先ほど
大臣からお話がありましたように、これからはなるたけ厚生省の仕事も
地方に出せるものは出す、民間に出すものは出す。こういう研究レベルで民間といったらやはり学会だと思いますので、厚生省で何でも
決めないで、学会で
決められそうなところはひとつ学会で
決めて、もちろん最終的には厚生省が
決めなくちゃいけないところもございますけれ
ども、そういうふうに活用していただくと、とんでもないことが起こらなくて済むようになるんじゃないかというふうに思います。
それでは次は、治験のことに入らしていただきます。
宮崎先生からも
最初製薬会社の悪口が随分出ましたけれ
ども、私も本質的には同じでありまして、製薬会社の方といろいろ会うと、こんな能力の人ばかりでやっていて、しかもずるずるやっていて、それでこの会社が黒字ということはとても
考えられない会社がたくさんあるのでございます。製薬会社じゃなければもうとうにつぶれているか、吸収合併、統廃合しなくちゃうまくいかないものがありますので、そういうところは厳しくやっていかなくちゃいけないんですけれ
ども、もう一方では、先ほど申しましたように、
日本はライフサイエンスでまだまだレベルが低い。やっぱり製薬会社はその重要な担い手でありますので、きちっとやっている会社を今余りたたいちゃうと、ただですら今研究費にこれだけしか出せないとかいろいろなことを言っておりますので、それもまたぐあいが悪いんですけれ
ども。
いずれにしましても、おかしな薬が余り出ないために治験が進まないというのは、これは
一つは結構なことだと思いますけれ
ども、今、
日本で行われております治験のうち、やっぱり少なくともある
程度は早く世に出た方がいい薬があるわけでございますから、治験が全部ストップしている今のような状態は早急に是正しなくてはいけないわけであります。
治験を新GCPという法律に沿ってどういうふうにやればうまくいくかと申しますと、四つあるんですけれ
ども、まず二つ取り上げますと、
一つはその治験をするためのハードの面、つまり
最初お金とか経費、それから
要求が来るとちゃんと受けとめて患者とも連絡をとって全部いろいろ処理する治験管理室と、もう
一つは治験外来と申しますか、治験がちゃんとできるような設備、その二つがなくてはいけないのがハードの面。ソフトの面は何かと申しますと、こういう治験のことをよく知っていらっしゃるリサーチナースを中心とするCRC、クリニカルリサーチコーディネーターと言っておりますけれ
ども、それがきちっと備わっていれば治験はうまくいくわけでございます。
ところが、今治験をやっているうちのかなりの部分が大学病院でございますので、今度は文部省の方の管轄ということで文部省にお伺いしたいんですけれ
ども、今こういう治験室、治験外来あるいは治験協力者というのがちゃんと整備されていない大学病院、大病院がほとんどでございます。そうすると、今のままでは新GCPのもとでは治験が進まないわけでございますので、そういうものの設置あるいは整備それから確保ということについて文部省はどういうふうにお
考えでございましょうか。