○
永野茂門君 まず、
アジア太平洋地域の安定のための
基本的な
理念といいますか、それについて申し上げたいと思います。
それにつきましては、端的に言って、
軍事安全保障を
中心とする
安定化への
一つの
手段、
一つのやり方の比重が軽くなっていることはもう全く
皆さんがおっしゃっているとおりであります。
政治、
経済、
社会あるいは
教育など全面的な、要するに総合的な国の
状態をそれぞれの国がさらに前進させることができるように、
お互いに
協力し、
お互いに
協調し、そして援助し、切磋琢磨してこれらを
発展させていくということが平和、安定、
発展の基調であるということは、私は、これからの二十一
世紀に向かっての物の
考え方の
基本にしっかりと据えておく必要があると。
皆さんが同じようなことを言っていらっしゃるんですけれども、私はもうこの点を特に強調したいと思います。
ただ、しからば
軍事力を全く無視していいのか、ないがしろにしていいのかというと、そういうわけにはまだいかない、あるいはしばらくの間いかないんじゃないかと思いますが、いずれにしろバランス・オブ・パワーということも十分考えながら平和、安定を追求していく、
協調的平和・安定ということを追求すべきであると思います。これが第一点であります。
それから第二点は、
アジアを
安定化していくために、今いろいろな
システムがあってそれをフルに各
国とも使っておるわけでありますが、私は、今
上田先生が、
日米安保が最もけしからぬ
システムであって大変に侵略的なといいますか、世間を騒がせる、
アジアを騒がせるといいますか、
対立を激化させる
方向に作用する
悪者であると、こうおっしゃいましたけれども、
悪者であったとするならばもう即刻やめなきゃいけないわけでありまして、それは見方がちょっと間違っているんじゃないかと。
日米安保こそは、二
国間システムの中で、
アジアにおいてはやはり
アジアの安定のために、そして平和と
発展のために非常に力強く今まで作用して機能してきたし、今後もますますそういう力を発揮させなきゃいけない。
事実、第二次
大戦終了後の
アジアの歴史を顧みて、
戦いがたくさんありました。
朝鮮戦争に始まって、あるいは
ベトナムと
中国との
戦いであるとか、
中印紛争でありますとか、あるいは
南沙列島、
西沙列島に対する争いでありますとか、あるいは
台湾、これは
紛争みたいなものですが、
台湾の
危機あるいは最近の
朝鮮半島の
緊張等々ありました。いずれもこれは、
朝鮮戦争だとか北越に対する
攻撃は
冷戦時代の
遺物と言えば
遺物と言えますけれども、必ずしもそれだけではなくて、
基本的な
解決すべき問題があったわけでありまして、それを何とか
解決して平和を回復した。
例えば
朝鮮半島は
二つに割れておりますが、二
国ともに
国連に籍を持ち、どちらかというと北の方がかたくなに交渉を拒否することが多いわけでありますけれども、とにかく話し合いが進んだりとまったりしておる。
中国の問題でいいますと、
台湾をどういうように処理するかということにおいてなかなか難しい問題を持っておりますので、いろいろ
動きはありますけれども、こういうものもとにかく
解決していかなきゃいけない。
私は必ずしも国内問題に対してそれを放置しておくことがいいとは思わないのでありまして、やはり平和的に
解決するような力といいますか方法を含めて
相談に応ずるし、あるいはその
方向に誘導していくというようなことを、
アジアの安定、平和さらには
発展のためにどうしてもやっぱりいろいろな国がそれぞれ受け持たなきゃいけないのであります。そういうことにおいても、私は
日米安保というものはなお力を発揮していくものだと思います。
もちろん、今は二国間問題、特に
日米安保だけを取り上げたわけでありますが、現在残っておりますところの二
国間条約というのは、それぞれの国の安全を確実にするために、だんだんと
多国間システムに移っていく間、歳として
存在し機能していくことがそれぞれの国にとって、大体
アメリカを
中心に二
国間同盟というのはできておりますけれども、継続して
安保協力あるいは安定のための有力な
手段として使っていかなきゃいけないと思います。
さはさりながら、先ほどからいろんな人が触れられておりますように、
多国間システム、現在ありますところの
ARFでありますとか
APECも、部分的には
安保協力あるいは
経済等を考えるならば極めて重要な
安定化のための
システムであります。こういうものも重要視してやっていかなきゃいけないし、こういうものをさらに拡大していく必要があります。
先ほど来話が出ております
日米中ロは、この
アジアにおける四強といいますか四
大国といいますか、まだ完全に
大国の
状態にはなっていない国が
アメリカを除くと多いわけでありますけれども、しかし、
世界のそれぞれの極として
アジアに位置し、
アジアに大変に大きな
関心を持っておるものであり、
アジアの安定を追求していくための大きな力であります。
日米中ロのこの
システムは、もちろんその
中心はとりあえずは
紛争防止でありますとか
信頼醸成と思いますけれども、それだけではなくて、
政治、
経済、特に
経済の問題なんかはさらに今
中核的な問題でありますし、
社会教育などを含めまして、この
アジアの
諸国間の調整をし、そして
協調をなし遂げていくというために極めて重要な力を発揮することができると思います。
現在のところは御承知のように
民間の
システムとして動いておりますし、さらにまた申し上げれば、これは
日米中の
フォーラムに対する
態度でありますけれども、
中国はまだ準備が不十分であるからしばらく待ってくれというようなことを言っておるようであります。
基本的な
考え方としては、この四国による強力な
システムを、公の
システムをなるべく早くつくり上げて、そして今申し上げました全正面における
相談をし、そしていろんな手を打っていくという
中核の
多国間システムとしてつくり上げていくことが、
アジアのこれからの
安定化について極めて大事なことだと思います。
日本の
役割としては、とにかく一番大事なのは、
日米安保の一方の極であるし、今申し上げました四極の
一つとして、それぞれ米国あるいは他の三国と
協調しながら、知恵と力を出しながら、この
地域の平和と安定のための
推進役になるということは極めて大事なことであって、そのための
努力を惜しんではならないと思います。
さらに
あと二つ、
日本の
役割として申し上げたいんですが、
一つは、やっぱり
国際平和維持活動あるいは
平和造成活動といいますか、要するに
国連の平和に対する活動について
日本はもっと積極的に参加していく。今のところ、
国連軍への参加は非常に消極的であって、あるいは
憲法上の解釈がどうのこうのということでなかなか
日本は
行動を起こしておりませんけれども、そんなことを言っている時期じゃない。先ほど集団的自衛権の話が
板垣先生から出ましたけれども、集団的自衛権の行使に踏み切ることも、特に
日米安保の問題なんかを考えますと、
アジアの安定、平和ということを考えますと、最終的には必要なことではないかと思います。
さらにまた、
世界の安定を確保するためには、単なるPKOだけではなくて、さらに突っ込んだ
国連活動、
国連協力活動が
日本の
役割として当然なさねばならぬものでありまして、
憲法などもそういう意味からもう一度見直すということを始めるべき時期に来ているんではないか、こういうことをつけ加えておきたいと思います。
最後になりましたけれども、周辺
諸国の
状況についていろんな方がいろんなことをおっしゃいまして、大体賛成をする内容ばかりでありましたが、
一つ。
中国が全方位外交に転換していることは間違いありませんが、だから、非常にソフトな我々と友好を結べる国として、我々のコミュニティーに責任ある一員として入ってこれる
状況に既にあると、こうおっしゃったわけではありませんけれども、そういう
可能性についても御示唆があったのじゃないかと思います。私は、やっぱりもうちょっと深く入っていかないと、もう少し時間がたたないと、
中国が本当にそういうような国になって、我々とともに、先ほどから申し上げています
アジア太平洋、ひいては
世界のための
協調的な平和、安定、
発展の
推進力になっていくとは断定できない。
中国が歴史的に、そしてまた戦後においても、先ほどから若干触れましたように、やや覇権志向的な
行動がいろいろあったということ、そしてまだそのにおいが残っているということ。尖閣列島問題でありますとか
台湾問題でありますとか、あるいは南沙群島問題でありますとか、そういうところを見ますと、そしてまた、今後の工業の
発展といいますか
中国経済の
発展状況とにらみ合わせて、
地域的な格差、民族間の格差だとか、それからエネルギーをどうするかとか、そのためのシーレーン確保をどうするとか、いろいろな問題を考えますと、もう少し
中国を慎重に見積もって、
中国が
皆さんのおっしゃっているような
方向に動いていくことを期待するという
状況ではないか、こういうように思います。
北鮮につきましては、これは弁護する人はもちろん、私はまた弁護する人の
考え方もわからないんではないのでありますけれども、やっぱり依然として
行動が非常につかみにくい、決定が非常に不明確である。したがって、いろいろとちょこちょことあらわれる。今回も四
者会談が決裂
状態であります。もちろんこれは
一つの戦術で終わると思いますけれども、一般的に非常に激しい冒険主義的なことが出てきますので、この冒険主義的なところを
防止していく、そして節度ある国として動いていただく。そういうための人道援助も必要でありますし、
経済支援等、これは別な問題として、人道上の問題は取り扱いながら、北鮮の善良なる
国際社会の一員になっていくことをいろいろな面で支援していく必要があるんだ、こう思います。
東南アジアその他につきましては、特別に私は申し上げることはありません。
それから、
経済について一言申し上げておきたいのですが、数年前から始まった
日本あるいは
アジアの
経済の混乱といいますか悪化と申しますか、これにつきましては、
日本が大改革をやらなきゃいけないというようなことは
基本ではあります。それと同時に、正しい意味で米国、ヨーロッパ、EUとしっかりと
協力しないと、いろいろな
意見の相違、それから官と民の
動きの違い等があるようでありまして、その付近はしっかりと
日本の立場を踏まえて
日本が信ずるところを欧米にぶつけて
協調していく。あるいは、こちらももちろん大改革をやらなきゃいけないことは全くそのとおりでありますけれども、相手に対しても物はちゃんと申していくというようなことが本当の意味で大事なことではないか、こう感じております。
以上です。