○
上田耕一郎君
調査室がまとめてくださった資料によりますと、この三年間に三十一名の
参考人の方の
意見を聞いていてかなり勉強したなと思ったんですが、「
参考人の
意見及び
委員の発言の要旨」というのも読ませていただきました。
それで、三つの問題について感想的
意見を述べたいと思います。
一つは
アジアの
通貨危機について、もう
一つは
アジアの平和と
安全保障について、
三つ目はODAについてです。
多くの
参考人の方が
世界でも非常に注目される
アジアの
経済発展について述べておられるんですが、昨年夏以来、急激な
通貨危機が起こりました。これは大きな問題だと思うんです。小島明
参考人は、馳
委員も先ほど言われましたが、二十一
世紀型の新しい
危機だとして、それがわからないので
IMFは従来型対応をして失敗しているという評価がありました。それから寺島
参考人は、
世界の外国為替の取引高が実需の六十倍にも達している、こういうところに
問題点を求めておられました。
私も代表質問でその問題に触れたんですが、クリントン大統領の元選挙参謀のディック・モリス氏が産経新聞一月二十三日付でこの問題を論じていまして、一種の
世界政府ができたみたいなものだ、だれもコントロールできない、その判断基準というのは利益と保障だけだ、これでは公共の利益だとか
環境問題に対する
投資はどうなるんだろうかという問題を出しています。私は、この問題というのは非常に重大な今の
世界経済の最大の
構造変化で、これにしっかり対応しませんと
世界経済はどうにもならぬと思うので、これに対して
国際的には、単なる規制緩和じゃなくて、こういう無法なというか無
秩序な
国際的投機に対する共同の規制を本当につくり出さなきゃならない段階に来ておると思うんです。
それからもう
一つ、
アジアからの要望は、リム
参考人なども
日本は輸入拡大してほしいということを述べておられます。そのためには、
日本のこれまでの従来型の行き詰まった
経済運営でなくて、やっぱり抜本的に本格的な内需拡大、強い要求がありますけれども、GDPの六割を占める個人消費をもつと豊かにするような、減税とか中小企業に対する支援とかそういう本格的な
政策転換をやることが
アジアの
通貨危機に対しても
日本の大きな貢献になるんではないかと考えています。
その次に、
アジアの平和と
安全保障の問題についてです。多くの
参考人が触れられておりますけれども、中間的な御
意見もありますが、やっぱり両極の
意見がある。
一つは、朝鮮問題、台湾問題等々、
アジアの不安な諸問題に対抗するために
アメリカのプレゼンス、
日米軍事同盟が非常に必要だという御
意見。それに対して、いや、むしろ
日米軍事同盟の強化が危険な根源になっているので安保条約はなくす方向、
アジアに非核・非同盟の方向を強めるべきだという御
意見が対立しています。
私はもちろん後者の
意見です。つまり、ソ連とワルシャワ条約機構が解体した以上、仮想敵国を持った軍事同盟というのはすべて解消して、国連憲章が理想とする
国際的全体の集団
安全保障、また
地域的な集団
安全保障に真剣に取り組むべき時期が来ている。にもかかわらず
アメリカは、逆にNATOの拡大それから
安全保障条約の強化拡大をやって、
日本政府もそれに追随して新ガイドライン、こういうものをつくっているわけです。
私は、今度のイラク問題を見ていても、
アジアにとって最大の脅威は実は
アメリカの軍事介入、それに対する
日本の積極的
協力、軍事
協力となりつつあるというふうに思うんです。
その証明は、例えば九四年の北朝鮮の核疑惑問題。あのとき
アメリカは、本格的な戦争準備をして、
日本に対しても千数百項目の要望を出してきた。ところが一当時は羽田内閣のときで何もできないということもあって、カーター訪朝があり、それで平和的
解決の方向へ行き、十月に
基本合意ができたんですね。ですから、あの事態は、
アメリカ側が本当に軍事介入をやろうとする戦争の瀬戸際まで行きかけていたわけで、平和平和を言いながら実は
アメリカが一番危険な
存在だということを示したものです。同時に、
日本の動向が決定的な
役割、あのときは消極的な意味なんだけれども何もしないということで平和
解決の方向を促進したので、むしろ
日本の動向というのが非常に大事だというように思うんですね。
朝鮮問題についても多くの方が触れておられますけれども、やっぱり
中国の脅威ということが幾つか言われています。
それで最近、
中国の李鵬首相が
アメリカの雑誌とのインタビューをされまして、人民日報の二月二十日付に掲載されています。李鵬首相はこの脅威論に反論しています。
中国を訪れる多くの外国人は上海、北京、シンセンなどの発達した都市しか見ない、
中国中西部のかなり貧しい立ちおくれた
地域に行く人は比較的少なく、彼らは
中国で
貧困から脱していない人がまだ五千万人いるとは想像もつかない、
我が国は三段階で進む
発展戦略を定め、次の
世紀の半ばには中程度の
発展国の水準に到達する
計画だと、二十一
世紀の半ばにようやく中程度まで進む力だということを言っているんですね。それで
中国は覇権を唱えないとか脅威にならないと言っているんです。私は、
中国外交には大国主義がありますから一切そういう
中国の大国主義外交の危険がないとは申しませんけれども、
経済問題としては李鵬首相が言っているようなところが実際だと、そう思うんですね。
むしろ、この
中国問題で危険なのは、九六年三月の台湾海峡事件が示しましたように、
アメリカが台湾
関係法というのを持っていて、もし台湾が独立を目指し
中国が内政問題として
解決しようとした際、
アメリカが武力をもって台湾を守ると。
日本は今度の新ガイドラインで台湾は除くと絶対言いませんから、
日本がまた
アメリカに追随してそれに手を出すということが、実は
中国問題、
アジアの平和にとって将来大きな危険になり得る
要素が強いわけですね。
そういう点で私どもは、仮想敵国のない集団
安全保障をつくり出す上で、唯一の
被爆国でもあり、安保条約で苦しみ、沖縄問題を抱えている
日本として、やっぱり安保条約をなくして
日米の間に新しい友好平和条約を結ぶ、それで非同盟の国になる。国連憲章は非同盟を目指しているものですので、
アジアに二十カ国、非同盟諸国会議に参加している国がありますので、そういう国々とともに軍事同盟をなくし核兵器をなくし
アジアに集団
安全保障体制をつくる、その方向に努力すべきだと思うんですね。
参考人の中には、逆に集団的自衛権を持つべきだという御
意見を述べた方も何人かいらっしゃいますけれども、これは全く
日本の憲法の前文並びに第九条に反するものとして我々は反対です。
それから、
三つ目はODAについてです。
小
委員会でもずっと議論中なんですけれども、私は、今のODAの重要性からいってもやっぱりODA
基本法をつくる努力を強化すべきだというように思うんです。
先日も小
委員会で若干述べたのですが、
発展途上国にとってODAというのは非常に比重が大きいんですね。国連の資料を分析しますと、九十カ国について、
資金移転のうち、八〇年代は五割、それから九〇年代は三割、ODAが占めているという比重を持っているわけですね。今の
日本のODAは金額で
アメリカと並んで一位、二位を争っていて非常に大きいわけです。国の
多様性といいますと
日本が一番広いんですね。
日本のODAが一位を占める国、これは
アジアに十六カ国、中東に六カ国、アフリカに四カ国、ラテン
アメリカ三カ国、大洋州三カ国というように、
世界じゅうの
発展途上国に
日本はODAを非常に広く供与しているという点で特徴的なんですね。
前の衆議院議員で
日本共産党の
経済政策委員長だった工藤晃氏がODAの分析の論文を書いているんですが、彼が詳細な統計に基づいて分析したものによりますと、
タイプがあります。
アメリカは徹底した戦略的・
安全保障目的型で、
アメリカの
経済援助の半分は軍事
援助を補完するESFというものなんですね。しかも、
地域的にも非常に偏っておりまして、戦略目的、
政治目的に完全に徹底したやり方をとっています。
日本とドイツは
アメリカ戦略補完型、同時に
経済進出目的型、共通の
タイプだと。フランスはフランスの旧植民地
中心型、イギリスは英連邦
中心型。工藤さんはこういう
タイプ分けをしているんですけれども、大体これは正確だと思うんです。
そういう意味では、
日本が先進
資本主義国の中で最も多額のODAを出している国として
発展途上国の自立的な
経済発展を本当に
援助するようなODAにすることは、
世界でも新しい独自の先進的な
役割を果たすことになると思います。そういうふうにするためには、やっぱり国会で
国民の支持を得たODA
基本法を制定することが必要なんじゃないか。
三月十日の読売新聞で、
日本国際フォーラム
政策提言「途上国支援の新方向」座談会というのがある。外務省の大島局長は慎重な検討が必要だと言うんですけれども、伊藤憲一
日本国際フォーラム理事長も草野厚慶応
大学教授もやっぱり
基本法は必要だという御
意見を述べておられますので、我が意を得たりということで、ぜひその方向で努力したいと思います。
以上です。