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1998-03-11 第142回国会 参議院 行財政機構及び行政監察に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  二月二十五日     辞任         補欠選任      峰崎 直樹君     藁科 滿治君     —————————————   出席者は左のとおり。     会 長         井上  孝君     理 事                 岡  利定君                 佐々木 満君                 吉川 芳男君                 釘宮  磐君                 大森 礼子君                 渡辺 四郎君                 山下 芳生君                 木暮 山人君     委 員                 石渡 清元君                 加藤 紀文君                 上吉原一天君                 亀谷 博昭君                 小山 孝雄君                 武見 敬三君                 宮澤  弘君                 守住 有信君                 小川 勝也君                 萱野  茂君                 藁科 滿治君                 猪熊 重二君                 志苫  裕君                 高橋 令則君                 山田 俊昭君                 堂本 暁子君    事務局側        第三特別調査室        長        和田  征君    参考人        岡山大学経済学        部助教授     山本  清君        東京大学大学院        経済学研究科教        授        金本 良嗣君        社団法人経済団        体連合会常務理        事        中村 芳夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○行財政機構及び行政監察に関する調査  (時代変化対応した行政監査在り方の  うち政策等評価制度に関する件)     —————————————
  2. 井上孝

    会長井上孝君) ただいまから行財政機構及び行政監察に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十五日、峰崎直樹君が委員を辞任され、その補欠として藁科滿治君が選任されました。     —————————————
  3. 井上孝

    会長井上孝君) 行財政機構及び行政監察に関する調査を議題といたします。  「時代変化対応した行政監査在り方」のうち、政策等評価制度に関する件について、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、岡山大学経済学部助教授山本清君、東京大学大学院経済学研究科教授金本良嗣君及び社団法人経済団体連合会常務理事中村芳夫君に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところを本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  参考人皆様から、政策等評価制度に関して忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、御説明及び質疑、答弁は座ったままで結構でございます。  それでは、まず山本参考人からお願いいたします。山本参考人
  4. 山本清

    参考人山本清君) 参考人としての意見を申し上げます前に、まず、国会という国権の最高の場におきまして意見を述べさせていただきます機会を与えられましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。  私に与えられました課題と申しますのは、そもそも政策評価というのはどういうものであるのか、あるいはどういった機能なり目的を果たすべきであるか、あるいは今後我が国行政改革あるいは政治改革も含めた場におきます評価システムあり方というのはどういったことをイメージすればいいかということにつきましてこれから私見を申し上げたいと思います。  まず最初に、評価とは何かということでございますが、レジュメに書きましたように、評価と申しますのは基本的にはある事象であるとか事物の価値あるいは質を判定することでございます。したがいまして、評価要素といたしましてはどういった物差しで測定するのかというのが第一点ございます。そして、その測定されました値をどういうふうな価値基準でもって判定していくかという二つ要素から成り立つわけでございます。  簡単な例で申し上げますと、レジュメにも書いてございますとおり、まずあるAさんならAさんの身長が高いであるとか低いであるという評価をするということはどういうことかといいますと、例えば、身長ということをセンチメートルであるとかあるいはメートルで測定するという段階がまず第一段階にございます。そして、その測定した結果を、ここに書いてございますように、例えば身長百七十五センチ以上の人は背が高いという価値基準に照らし合わせまして初めてAさんが背が高いというふうに評価するわけでございます。  したがいまして、ここで述べましたように、評価という中には基本的には評価者主観的要素というのが常に介在せざるを得ないということをまず認識しておく必要があるだろうというふうに思います。平たく言えば、こういった国会等の場におきます代議制の意義というのも、こういった主観的な要素をなるべくたくさんの方の合意のもとにおいて評価するという一つ要素であろうというふうに考えられるわけでございます。  そういたしますと、この評価価値基準というのは基本的にどういうふうなタイプから成るかと申し上げますと、図で書きましたような四つの類型に区分されるわけでございます。  第一の類型といたしましては、例えば昨年に比べて景気がどうであったかとか、あるいは要介護の老人の方がどれぐらい変わったであるとか、そういった比較パターンでございます。これは時系列比較というふうに一般に言われております。  二番目の価値基準と申しますのは、ある規範的な状態、例えばこれは法令でありますとかあるいは社会通念等も入るわけでございます。先ほども申し上げました、例えば身長百七十五センチ以上の人は背が高いというのも一つの規範ということに考えていただければ、これは標準準拠パターンというふうになるわけでございます。  三番目のパターンといたしましては、似たようなところを比較するということでございます。これは例えばA自治体B自治体とを比較してどちらの作業が効率的でありますとか、あるいはどちらの市町村の方の住民が満足しているかどうかといったことを比較して判定するということで、これははやり経営学等の手法でいきますとベンチマーキングということに対応するかというふうに考えられます。  最後の四番目のパターンといたしましては、計画でありますとか目標の状態比較するということでございまして、これはよく言われますように計画に対して実績がどうであったかといったことでございまして、計画対比パターンというふうに分けられるわけでございます。  こういった四類型に基づきまして評価をするわけでございますが、さて、公的部門におきます評価目的でありますとか機能といったものはどういうものがあるかというふうに申し上げますと、ここに書いてございますとおり、五つの目的なり機能があるというふうに私は整理させていただきました。  第一点は、統制という目的でございます。これはまさしく、公的部門におきましては税金等におきましてある程度強制権限でもって徴収した財源をもって行財政執行するわけでございますから、当然その結果に対しまして評価をしてコントロールしていくといったことが必要になるからでございます。  二番目は、資源管理改善ということでございます。これは各委員の方御案内のとおり、公務員とかあるいは公務サービスにつきましては基本的にはマーケットの評価がないわけでございますので、どうしても改善しようとかあるいは安くしようというようなインセンティブが欠如するわけでございますので、これの評価を通じて資源管理改善を図っていくというのが二番目の目的でございます。  三番目は、フィードバックということでございまして、特にこれは今後新たな政策等をやる場合におきましては効果が出ること自身が要するに事前に予測できないということがございます。こういった場合については、とりあえず政策を行ってみてその結果を見てまだ対策を見直してみようとか、あるいは新たなフレームワーク行財政を行ってみようということにならざるを得ないということで、評価をすることによってフィードバックにつなげていこうということでございます。  四番目は、情報提供ということでございまして、これは特に国民でありますとかあるいは国会に対して行政府情報提供するというためには、これは評価結果が一番重要になってくるということで、最近のはやり言葉で申し上げますとアカウンタビリティーということが背景にあろうかというふうに思われます。  最後は、正当性の根拠ということでございます。例えば、議会におきまして予算をつけるでありますとか予算を承認する場合におきましては、これが執行に値する計画であるかどうかといったことにつきましては当然事前評価の結果ということを踏まえてやらないといけないということになるわけでございます。  それでは、なぜ最近我が国も含めまして国際的に評価が重視されるようになったのかということでございますが、これにつきましては、レジュメに書いてございますとおり、三点のポイントがあるかと思います。第一点はアカウンタビリティー連鎖修復ということでございまして、第二点はマネジメントサイクル完結、第三番目は不確実性への対応ということでございます。  まず、第一点から簡単に申し上げますと、私がなぜアカウンタビリティーという言葉日本語で話さないのかというおしかりを受けると思うんですが、最近マスコミ等行政庁あるいは国会内部においても一定説明責任という訳がかなり通用しているようでございますが、アカウンタビリティーというのは決して説明だけで済むものではなくて、当然その履行を果たさなかった場合におきましてはサンクションがある、いわゆる懲罰が伴う、そういった厳しい概念であるということで、説明責任ということだけでは言い尽くせないものがあるということで、あえてアカウンタビリティーという言葉を片仮名のままで使わせていただいているわけでございます。  それで、アカウンタビリティー連鎖修復というのは、ここに書きましたように、行政活動が非常に専門化あるいは複雑化になってまいりますと、結果的にだれがどこまで責任を負っているかというのが非常に不透明なままになってくるわけでございます。その不透明であることを明確にするためには、やはり一定基準でもって評価をしていく、そしてその結果をオープンにしていくという手続がどうしても必要になってくるわけでございます。昨年来、非常に話題になっております日本版エージェンシーというのは、まさしく行政庁執行部門政策立案部門に対して不透明であったところを契約という概念を用いまして明確にしていこうということで、ある意味ではアカウンタビリティー連鎖修復一つ政策ツールであるというふうにも理解できるわけでございます。そのためには当然エージェンシーがその契約の責務を果たしたかどうかということで、当然そこにおいても評価が重要になってくるというのが第一の問題でございます。  第二点はマネジメントサイクル完結ということでございまして、これは特に公的部門に特有の問題点でございます。と申しますのは、企業におきましては計画とか実施であるとか評価というのが基本的には完結しないとだめだ。例えば、商品が売れなければ当然企業自身財源が確保できないわけでございますから、当然倒産するなりあるいは消滅するということになるわけでございますが、いわゆる政府部門におきましては公権力の行使でもって財源を調達できるものですから、その評価マネジメントサイクル最後段階でありますプラン・ドゥー・シーで言えばシーに当たります評価部門が欠落しても、マネジメントサイクルはとりあえず回っていくという非常に不完全なところがございます。そこを補完するということが必要になってくるものでございますから、そのマネジメントサイクル最後部門をきちんとやることによって回していくということが必要になってくるということでございます。  その回すというためには、当然この評価ということをできないできないということで頑張っていてもどうしようもないものでございますから、公務サービス評価というのは難しくてもそれをやってみようということが国際的な流れとしてはあるということでございます。  三番目は不確実性への対応ということでございますが、これは、先ほど申し上げましたとおり、特に我が国におきましてキャッチアップが終わった後におきましては、要するに教科書がないということになりますと、今までは欧米等においてもう既に成功した政策をひたすら効率的にやるだけでよかったというところが、今度は我が国自身が独自に政策を考えてやっていかなきゃいけないということになりますと、当然これは途中の見直しどころか、成果段階におきまして評価をして不確実性への対応を進めていくほかないということになってまいるということが第三番目の対応ということでございます。  次には、では評価局面はどういう局面があるかということでございますが、これもレジュメに書きましたとおり、さまざまなレベルがございます。そして、この調査会におきます課題政策というのも、話す方によってはどのレベル政策と言うかということ自身行政学等において非常に大きな話題になるわけでございますが、大きく分ければ、一昨年でございましょうか、山谷参考人がこの場で陳述されましたように、政策価値目的から最終的な事務事業の単位までどういったレベルで切るかによって、政策とか施策レベルが出てくるということでございます。  ところが、現在、我が国におきます評価というのはほとんどの場合が事務事業レベルで起きまして、政策とか施策レベル評価というのがほとんどなされてないというのが現状でございます。したがって、まさしく政策レベルの問題というのは、こういった議会の場におきまして政治家の方々が国民を代表して議論されるという意味において非常に価値があるというふうに考えられるわけでございます。  それならば評価局面というのはどういった局面があるかと申しますと、簡単な対比の図面がレジュメの方に書いてございますが、政府モデルというのと企業モデルというのが対比して書いてございます。  よくマスコミとか、あるいは一部の学者等の方が、結局政府企業というのはいろいろ考えれば対応するんじゃないかということをおっしゃいますが、唯一違うところというのを強調いたしますと、いわゆる政府モデルにおきましては、我々国民顧客であると同時に消費者であるという点においては同じであるのでございますが、同時に国民はスポンサーである、出資者でもあるということが企業と大きく違うところであります。この点は以降の政策評価におきましてもよく認識していく必要があると思います。  それはさておきまして、政策評価ということを考える場合に、よくすぐ最終的な成果であるアウトカム評価するということが言われるわけでございますが、決して政策評価というのはアウトカムだけに限定されるわけではございませんもので、アウトプットであるとか、あるいは顧客にとってどういった満足度であったかといったレベルにおきましても当然これは評価の一局面になるということを認識しておく必要があるだろうというふうに考えます。  さて、そういたしますと、評価というのはどういった視点でやるべきであるかということが今度は大きな問題に出てまいります。公的部門評価視点として忘れてはならないことは、企業と同じような視点というのは効率性ということでございますが、それ以外に公正である、エクイティーでありますとか、あるいは信頼、安定というそういった公共価値について責任があるということを頭にとどめておく必要があるだろうと思います。  それはなぜかと申し上げますと、基本的には公的部門におきましては株主等と違いまして、株主というのはある意味で何株持っているかによって比例的に権利を行使できるわけでございますが、国民であるとか有権者というのは、どういう身分の方であろうとも人格的に平等である、一人は一票である。平等の権限を行使できるということが異なる。そういった公正なり公平の概念が非常に重要になってくるということでございます。  そういうことで、最近は特に3Eと申しまして、経済性であるとか効率性であるとか有効性というのが非常に最近またブームになっているわけでございますが、3Eの観点というのは、先般の会計検査院法の改正においても明確に条項が入ったわけでございます。公的部門評価におきましては3Eというだけでいいのかといいますと、決してそうではなくて、今申し上げましたような公正であるとか信頼であるとか安定という要素が重要であるということを申し上げたいと思います。  それと、先ほど来からたびたび申し上げておりますとおり、施策なり政策においては非反復的、あるいは非常にリスクがある、あるいは緊急的な対応を要するということにおきましてはむしろ適応的にやっていく、あるいは学習してプロジェクトなり政策を進行していく必要があるということがございます。そういった観点におきましては、むしろ3Eというよりも3Dという新たな観点も必要になってくるのではないかというふうに最近私は考えておるところでございます。  さて、次はどういった方法評価をやるかということでございますが、この点については多分後ほど金本先生が諸外国の事例を中心にお触れになると思いますが、私は簡単に評価する場合の留意点だけを申し上げたいと思います。特にアウトカム評価において注意しなきゃいけない点というのは、ここに書いていますような六個のポイントがございます。  それは、政策効果というのは行政庁政策をやるかやらないかといった以外に、環境要因、例えば職業訓練事業等を考えますと、景気状態によっては当然職業訓練によって再就職する方の状況等というのは変わるわけでございますから、そういった統制不能要素環境要因の影響を受けるということに留意しなきゃいけないというのが第一点でございます。第二点は、複数政策によって成果なり効果が生じる場合があるということでございます。三点目は、複数目的政策が持っている場合があるということでございます。四点目は、因果関係が非常に難しいということでございます。それと五番目は四番目と関係するわけでございますが、効果の発現には時間のおくれが生じるということで、いつ評価したらいいかという問題が出てまいります。これはまさしく予算の単年度主義との問題で、どれくらいのタイムラグがあるかということは財政の民主的な統制という問題と非常に大きなかかわりが出てくるわけでございます。六番目はまさしくテクニカルな問題でありますので省略させていただきます。  時間も余りないようでございますので、我が国におきます政策評価制度あり方につきまして最後に申し上げたいと思います。  私は、立法府におきます評価におきましては、まず行政府政策評価を必ずやるというふうに法律で義務づける必要があるだろうと思います。そして、これをするためには当然一定予算政策評価に利用するということが必要になってくるというふうに考えます。こういったことにおきまして、行政府政策評価の結果を踏まえまして、そこで足りない部分を、特に参議院におきましては六年間という長期の特質があるわけでございますから、ここにおいて再審議をして立法府行政府をチェックするということがポイントだろうと思います。  第二点は、行政府におきます評価でございますが、これにつきましては二つのアプローチが必要だろうと思います。  第一点は、長い期間で政策効果があったかということを長期的なトレンドで評価するということと同時に、毎年度モニタリングをやって政策効果監視していくという手続を並行してやるべきでおるということでございます。これは世界各国流れでございます。  こういったことをやるための前提条件といたしましては、第一点は、今申し上げましたとおり、制度化をする、財源を確保するということと同時に、評価マニュアルなり審査制度を確立する。三番目といたしましては、評価研究の推進のためにいろいろなプロジェクトをやる、そして評価スタッフを養成し評価専門職を確立する必要があると思います。それと最後には、国民意識変革ということでございます。特に住民参加というのがここ二十年よく言われておるわけでございますが、住民参加というのは、決して計画であるとか実施について参加するだけではなくて、評価にも積極的に参加するというふうな意識改革が伴いますとアカウンタビリティーの向上にもつながるというふうに考えております。  あとは時間の関係上省略させていただきまして、後の質疑対応させていただきたいと思います。
  5. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  次に、金本参考人にお願いいたします。金本参考人
  6. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 金本でございます。よろしくお願いいたします。  山本先生の方から一般的な御議論がございましたので、もう少し具体に近いお話をさせていただきたいと思います。ただ、具体に近いと申しましても、本当の具体例というのはまた後から御質問のプロセスでもし御質問があればお話しするということで、今の山本先生お話よりもう少し制度的に具体的になるというふうな形でお話しさせていただきたいと思います。  それで、私自身評価監視といったことについては特に専門家ではございませんで、政府活動評価監視についてかかわりを持たされたのは、基本的には行政改革委員会、昨年十二月に解散いたしましたが、その中の官民活動分担小委員会の中でこういう議論をいたしまして、その中で考えさせられたということでございます。これからお話しすることは、私自身言葉で私なりの整理をしてございますが、お配りしてあります行政改革委員会最終意見該当部分のものと基本的には平仄が合っているというふうに考えております。  それで、まず評価監視ということですがどういうものを評価監視するのかということについて必ずしも共通の理解がないような感じがありまして、評価対象というのは甚だ広いということをまず申し上げておきたいと思います。  今、日本で現実にかなりの程度進みかけているものは公共事業評価に関してでありますが、評価監視対象というのはそれにとどまるものではなくて、もっといろんなものがあり得るということであります。  それで、政府活動は必ず二つ側面を持っておりまして、一つ国民のために役立つことをする政策側面、もう一つは、何かの政策をすればそれを実行するための組織なり人間なり資金なりが必要で、その運営に関してどういうふうに効率的にするかという側面が必ずついて回るということになります。したがいまして、評価をする場合にはその両方について目配りをしなければいけないというふうなことになります。  その二つ側面については勘どころが大分違いますので、場合によっては組織が分かれたりということもあり得るわけですが、基本的な枠組みあるいは基本的な考え方はそれほど違わないということであろうかと思います。ただ、今回のテーマは政策評価ということのようでございますので、政策評価に重点を置いてこれからお話しさせていただきたいと思います。  あと、評価対象になるのは政府活動すべてだということでございますが、頭の整理のために、非常に話題になっている三つのものを取り上げておくといいのではないかということで整理させていただいております。  一つは、国あるいは地方自治体の公共部門の組織形態の問題でありまして、いろんな組織を民営化できないか、あるいは独立行政法人にできないか、こういったことも一つ重要な話でございます。二番目の問題は、国民の税金を使うものに関して税金に見合った便益を国民に対して与えているかということの評価が必要だというのがもう一つの問題であります。三番目の問題は、まだ日本では余り取り上げられておりませんが、欧米諸国ではかなりシステマチックな取り組みが行われている分野でありまして、それは政府が民間活動を規制する規制政策に関して政策評価をシステマチックに行うということであります。これはアメリカ、カナダではレギュレーション・インパクト・アナリシス、規制インパクト分析というふうなことで呼ばれておりまして、政府部内、行政機構内部でそういう取り組みが行われております。  こういう三つのものを取り上げさせていただくわけですが、それぞれについて少しずつやり方が違わざるを得ないということがございますが、全部満遍なく御説明しておりますと時間がなくなりますので、幾つか話題に応じて適当に取捨選択させていただいて御説明させていただきたいと思います。  まず、何をやるにも基本的な理念というのをきっちりしておかなければいけないということでありまして、それについて、評価の基本的な理念としては多分私自身は三つのことがあるんだろうというふうに思っております。  最初は、政策あるいは政府機関の運営というのが国民にとって本当に利益になっているかという便益と費用の総合評価ということが基本的な理念としてなければならないということであろうかと思います。  これは世界の潮流として、今まではどちらかというと政府の活動に関して国民出資者だ、オーナーだと、オーナーがコントロールするんだという側面の強調が多かったわけですが、最近それに関する若干の見直しが行われておりまして、国民政府活動消費者だ、顧客であるということで、顧客にとってどういうサービスを提供しているのかという側面に立って見直すべきではないか、こういうふうな議論がありますけれども、ここでの便益と費用の総合評価というのは、顧客である国民の立場に立って意味があるかどうかということをチェックするということであろうかと思います。これは組織形態の問題あるいは公共支出の問題あるいは規制政策の問題、それぞれについて、少しずつ違った形ではありますが、行うべきであるというものであろうかと思います。  二番目の問題としては、今さっき山本先生お話の中に、政府は民間と違って競争がないというお話がありましたが、必ずしも全く競争がないというわけではなくて、いろんな関係者がいろんな形で競合したり競争したりしている、こういうチェック・アンド・バランスをどううまく機能させていくかということを考える必要があるんだろうと思います。  特に、評価監視については、評価監視一つの機関がやる、例えば会計検査院が評価監視をしますということになりますと必ずしもうまい評価監視ができない。評価監視機能を独占する独占体としていろんなゆがみが出てきたり、あるいは効率的な活動ができないということになりかねない。したがいまして、評価監視についても複線的な評価監視が必要である。  日本の場合ですと、行政監察局、会計検査院、それから国会の衆議院、参議院というのがメーンなものでありますが、もっと広く一般の第三者機関、例えば大学でありますとかいろんな立場からいろんな評価監視があって、それが競うという必要があるんだろうというふうに思っております。  次の問題は、透明性の問題であります。  この透明性については二つの役割があるんだろうというふうに思います。一つは、今さっき申し上げたチェック・アンド・バランスを有効にするためには情報をみんなが共有しておる必要がある。だれかだけが情報を独占しているというときには有効なチェック・アンド・バランスが働かないということになります。  もう一つ側面としては、政策立案機能において競争原理がうまく働くようにするということであろうかと思います。日本ではえてして政策立案機能が官庁に独占されるという傾向があったわけですが、ほかの国では必ずしもそうではなくて、さまざまな情報が広く出ておりますので民間の財団等でもいろんな政策立案が行われている。そういう広い中で政策立案における競争があって、それに勝ち残った政策が生き残るというふうな仕組みに大ざっぱに言えばなっているんだろうと思います。  そういう競争の中で勝ち残った政策立案機能が存在することはその国にとって重要であるということと同時に、日本でいい政策を考えたものをほかの国で使っていただくというふうなことのためにも非常に重要なんだろうと。競争の中で勝ち残っていないものについては、たとえ本当にいいものであってもなかなか外に対しては説得力がないということになるんだろうと思っております。  それで、レジュメを少し飛ばさせていただきまして、「評価監視の仕組み」という三のところに入らせていただきたいと思います。  評価監視について非常に重要なのは政府活動のパフォーマンスを評価するということでありまして、政府活動が法律にのっとって、規則にのっとって行われているということはもちろん重要ですが、評価監視の重点というのはそこではなくて、成果、パフォーマンスがいいかどうかという評価をする必要がある。実は、政府機能というのはこういう評価が難しいものが多いわけなんですが、だからといってしないということではうまくいかない。難しいものではあるけれども、最大限の努力をして評価するようにしていく。それを明確にしておかなければ組織としていいパフォーマンスは生まれてこないというふうなことになるかと思います。  こういうことを申し上げるのは、実際にパフォーマンスの評価をしようと思いますと、どこの国でもそれほどかっちりしたものはできない。見てみると、やはり政府機能のすべてを満遍なくうまくつかまえるということはできないわけですけれども、ただ、物事に完全ということはあり得ないわけでありまして、重要なものをある程度つかまえることができれば、そういう成果でもって評価していくということは組織に働く人たちにとって非常に大きな刺激になるということであろうかと思います。  その際、非常に重要なのは、特に日本のような国ですと各省庁非常に独立性が強いわけですので、評価に関するかなり一般的なガイドラインを設定する必要があるんだろう、こういう機能を省庁横断的なものとして打ち立てる必要があるんだろうと思います。アメリカではナショナル・パフォーマンス・レビューという形でゴア副大統領が音頭をとって政府全体としてやっておりますが、こういう試みをしないとなかなか政府活動評価というのは定着していかないだろうというふうに思っております。あともう一つ重要なのは、評価というのは単に評価をするということではなくて物事が動いていくダイナミックなプロセスの中で使われていくということでありまして、最初の政策立案のところで評価があると同時に、途中でも評価がある、終わったところでも評価がある、各時点での評価国民全体に流れていっていろんな形での議論が起こるということが非常に重要なんだろうと思います。そのプロセス、どういうタイミングで評価が行われて、どういうタイミングでどういう情報が外に出ていくのかということをうまく制度設計するということが非常に重要なんだろうというふうに思っております。  そのことの一つの例として、参考資料でお配りしてあるものの四十ページに、これは政府機関の組織形態あるいは業務サービスの見直しのプロセスを書いてあるものですが、当初、最初の段階の見直しとしては、業務内容を洗い直して、廃止できるのか、あるいは民営化できるのかというふうなチェックを行うわけですが、このプロセスで当然いろんな評価結果は国民に出ていくということになります。その後、もし政府法人として残るというふうなことになりますと、長の任命等々いろんなことについてプロセスがあって、またそれらについて評価のプロセスがあるということであります。  この表では明示されておりませんが、私自身一番重要だと思っておりますのは、このプロセスのどの段階でどういう情報が外に出ていくのかということであります。そこまで含めたプロセスをうまく設定しておくという必要があるんであろうと思います。  もう時間が余りありませんので、最後のところに入らせていただきますが、三ページの四のところであります。  今まで申し上げたのは非常に一般的な話でございますが、これから日本で五年、十年というスパンを考えたときにどういうことが必要なのかということを考えてみますと、まだ評価監視の仕組みがほっておいて定着するようなタイミングではなさそうだと。何かもう少しある意味で短期的には大きな仕掛けを考える必要があるんだろうということであります。そのために、私あるいはこの行政改革委員会最終意見でも述べておりますのは、第三者機関を政府部内に設立する必要があるんではないかということであります。  こういう第三者機関は組織形態の問題でありますとかあるいは公共投資の評価でありますとかあるいは規制政策評価でありますとか、そういったものについてガイドラインを設定して監視を行うということを想定しております。  なぜこういうものが現在必要かということでありますが、日本において実質的に政策立案機能を担ってきたのは各省庁でありますが、各省庁の機能をうまく発揮させるという意味で現状の仕組みは限界があるのではないかということであります。  一つは、日本の官庁は非常に典型的な終身雇用組織でありまして、各省庁の省益というのがそこのメンバーの利益ということと一体化しているということであります。そういう場合には、当然省益と国益との利益相反というのが問題になるわけでありまして、それをどういうふうにカバーしていくか、どういうふうにうまい方向に持っていくかというためには省庁を横断的に見るものが必要だということになるかと思います。  もう一つポイントとしては、今の省庁組織は今までの仕組みを想定して職員の訓練が行われている、したがいまして評価監視を行うための専門的な能力が必ずしも培われていないということであります。  三番目のポイントとしては、こういう評価のプロセスでキーになるのは情報が外に出ていくということでありますが、どういう情報をどのタイミングでどれだけ出せばいいかということについてはっておいてはなかなか出てこない、各担当者としては出したいんだけれども、出して問題にされてしまうと後自分のキャリアにとってバッテンになるということもございまして、ほっておいてはなかなかうまくいかないということがあるかと思います。そういうプロセスをうまく制御していくためには外部からの圧力が必要で、こういうもののために第三者機関というのが必要であろうというふうに考えております。  以上でございます。
  7. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  次に、中村参考人にお願いいたします。中村参考人
  8. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 経団連の中村でございます。本日はこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  私からは、社会資本整備の効率的、重点的な整備という観点から評価の問題について触れさせていただきたいと思います。  お手元にお配りしてありますレジュメでございますが、その中の四「豊かさと活力を生むための社会資本整備を」というところを中心にお話をさせていただきます。その次にありますのは、経団連が今年の一月に出しましたレポートでございます。  せっかくいただきました機会でございますので、経団連が目指す二十一世紀の経済社会構造の全体像及びその実現のための必要な構造改革、とりわけ社会資本整備と密接に関連を持っております税財政構造改革のあり方についてまずお話をさせていただきたいと考えております。  経団連では、これまでの経済社会システムを大胆に変革して世界から信頼され尊敬される国づくりを進めるために、九六年に魅力ある日本の創造という長期ビジョン、いわゆる豊田ビジョンというものを取りまとめました。この長期ビジョンは、日本の高齢者人口がピークを迎えます二〇二〇年を展望したビジョンでございまして、二十一世紀に日本が目指すべき経済社会構造はどうあるべきか、またそれを実現するためにはどのような構造改革を進めていかねばならないかという問題について取りまとめたものでございます。  私どもが二十一世紀に目指す経済構造の基本は、企業や個人が自己責任のもとで活力を十分発揮でき、リスクへの挑戦や独創性の発揮が高く評価される経済社会でございます。これは海外から見れば、日本は自由で透明で公平で、内外に開かれた国に転換していくことでありまして、市場経済体制のもとで活力のあふれるグローバルな国家を目指すことでもございます。このもとで経団連では、規制の撤廃、緩和などの行政改革、法人税引き下げなどの税制改革、さらには財政構造改革、金融システムなどの構造改革に取り組んできております。これらはすべてこの豊田ビジョンを実現していくための政策提言でございます。  そこで、社会資本整備と密接に関連いたします税財政構造改革において最も重要な視点は、経済社会を活性化していくことだと考えております。国、地方を通じた規制の撤廃、緩和、行政改革、歳出の抜本的な見直しなどによりまして小さな政府を実現して、民間でできることは可能な限り民間に任せるべきであるというふうに考えております。そうすることによりまして、初めて歳入が安定して財政健全化への道筋をつけることができるというふうに考えております。別な言い方をしますれば、国民企業に安易な税負担を求めるような財政再建では民間の活力は阻害されまして、将来にわたって角を矯めて牛を殺すという結果になるのではないかというふうに考えております。  その際、財政ということを考えますと、国の一般会計に限られがちでございますが、政府の範囲は一般会計ばかりでなく特別会計、財政投融資、さらには地方財政も含めて全体として考える必要があります。この全体を見ながら歳出にめり張りをつけて財政をスリム化し、国民負担率が五〇%を上回ることがないようにしていかなければならないと考えております。  また、税制につきましては、高齢化社会における負担の平準化、経済社会の活力の維持などの観点から、所得、消費、資産の税制全般にわたる抜本的な見直しを行うことが不可欠だと考えております。二十一世紀のメガコンペディションの時代、高齢化社会の中で日本が活力を維持していくためには企業の国際競争力、起業家精神の高揚が不可欠であります。そのような環境をつくり上げるためにも法人の税負担を引き下げ、法人税の実効税率を国際水準並みの四〇%にしていく必要があります。また、個人のやる気や才能を十分に発揮させるためには所得税の累進構造をさらにフラット化の方向で見直していく必要があります。  このような意味から、先ほど申し上げましたこの長期ビジョンでは、所得税、法人税などの直接税による国民の負担を軽くする一方で、社会の高齢化に伴う負担増に対応しまして消費に対する課税の比重を高めていかざるを得ないというふうに考えております。  このような財政構造改革の必要性を主張しておりますけれども、本日の議題であります公共事業、社会資本の効率的な整備、重点的な整備という点につきましても、やはり経済の活性化の視点から重要だと考えております。経団連の長期ビジョンでは、人口がピークに達します二〇一〇年までに二十一世紀の発展基盤を重点的かつ効率的に整備すべきだと考えております。  特に、重点化という観点から申し上げれば、高コスト構造の解消に役立ちます国際拠点空港、高規格幹線道路、新たにイノベーションを生み出すような研究インフラの整備、高齢化対応施設などの生活関連のインフラの整備が必要と考えております。これに対しまして政府では、毎年度予算編成の過程でシェアを見直し、重点枠を設定する一方でコストの縮減の目標率を設定するなど、重点化、効率化の努力がされて取り組まれておりますが、さらなる重点化、効率化をお願いしたいというふうに考えております。  現在、五百二十兆円にも上る政府の債務がありますように、財政状況は非常に厳しい状況にありまして、九八年度の予算案におきましても文教、防衛などさまざまな経費が削減される中で、公共事業も七%の削減、経済協力に次いで大きな削減率となっております。こうした面から公共事業には従来以上に重点化と効率化といった構造改革が強く求められております。  そこで、経団連では、財政構造改革における社会資本整備のあり方や整備の進め方についてさらに具体的に検討を進めまして、きょうお手元にお配りしてありますような提言を取りまとめた次第であります。  前置きが長くなりましたが、その提言について説明させていただきます。  結論から申し上げますと、公共事業には、まず審査・優先順位づけを行うプロセス、次に執行のプロセス、最後評価・見直しのプロセスがあります。それぞれの段階にルールをつくって透明化していく必要があると考えております。  例えば、最初の審査・優先順位づけの段階では、費用便益分析などの手法を活用しまして情報公開を通じて透明度を高めていく必要があると思います。二番目の執行段階では、規制緩和を進めまして徹底した効率化を図っていく必要があります。三番目の段階で、先ほど金本先生からお話がありました第三者機関による客観的な評価を行っていけば、財政構造改革にふさわしい経済活動や国民生活に真に役立つ社会資本の整備が行われるというふうに考えております。  なお、あらかじめお断りしておきますが、この提言では、公共事業を減額すべきとか増額すべきといった量的な問題や、あるいはいわゆる箇所づけの適否については検討しておりません。あくまでも質的な構造改革を求めているものであります。  それでは、お手元の資料でございますが、分厚い方でちょっと恐縮でございますが、提言の目次を一枚めくっていただきますと、一ページの中ほどから二ページ目の中ほどにかけまして、社会資本整備の重点化、効率化と必要性を強調しております。  さらに三ページ目に行きます。ここでは公共事業の改革を具体的に進めていくには改革の基本原則を定めることが不可欠だと訴えております。イギリスではPFIという公共事業に関する新しい基本理念を用いまして公共事業改革に成功をおさめております。その背景には、メージャー前首相がシチズンズチャーターという行財政改革に関する基本理念を取りまとめまして、その中で租税に対して最も価値あるサービスを提供するという考え方、すなわちバリュー・フォー・マネーという考えを明確に打ち出したことがあります。この考え方を打ち出すことで官民の役割分担に関する基本原則を国民行政に浸透させるのに成功したと言われております。  そこで提言では、日本でも公共事業の改革に取り組む前に、まず政府行財政改革と公共事業改革の基本原則を示すことが不可欠だと考えております。その際、やはり国、地方の役割分担の適切な見直し、民間活動の優先、公共事業に関する透明性の確保の三つが必要だと考えております。  次に、公共事業改革の具体的な方策について申し上げさせていただきます。  本文の八ページ以降の参考資料というところがございますが、その二ページ目の図表の二をごらんいただきたいと思います。公共事業の重点化、効率化のためのプロセスを、先ほど申し上げました審査・優先順位づけ、執行評価・見直しの三段階に分けて、国が行う公共事業について政府が守るべきルールを具体的に示しております。  図表二の一番上にありますように、提言では、審査・優先順位づけなど公共事業具体的なプロセスを進める前に、まず二つの基本的な考え方を打ち出しておく必要があるとしています。  第一番目は、右側の上の四角いところにございますが、公共事業の中期方針を政府・与党が定めまして国会の承認を受けるということでございます。そして、この中期方針で公共事業の範囲や優先順位あるいは民間活動の優先や国、地方の役割分担などの原則を打ち出すように求めております。  第二は、一番上の中ほどにあります公共事業評価監視を行う第三者機関の設置であります。この第三者機関は、各省がばらばらに行っております費用便益分析を政府内で統一するためのガイドラインあるいは執行を効率的にするための業務運営の基本方針、さらにはプロジェクト評価についてのガイドラインを定めます。これらを大前提としまして、図表の中ほどにございます第一番目の審査・優先順位づけを行っていきます。  このプロセスのポイントは、政府国民のニーズを的確にとらえまして経済的な効果を科学的に検証して、国民が納得のいくような審査・優先順位をつけていくことであります。提言では、政府だけがプロジェクトを提案するのではなくて、広く政党、住民が参加するものとしております。政府はこのプロジェクト案の審査・優先順位づけを行うわけですが、その判断に当たりましては、費用便益分析などの科学的な手法を用いまして経済効果をできる限り数値化して、このプロジェクトがほかの代替案と比べて効率性や環境対策などの面で最善のプロジェクトであることを国民議会説明しなければならないとしております。  続きまして、その下の執行のプロセスでございますけれども、このプロセスの最大のねらいは規制緩和などを通じました効率化でございます。九五年三月に規制緩和推進計画が策定されて以来、規制緩和は、情報通信一土地住宅、運輸などの分野で大きく進んでまいりました。しかし、公共事業分野の規制緩和は、予定価格の事後公表が打ち出されただけで、それ以外は手がついていないという状況だと思います。行政改革委員会では、最低制限価格制度の廃止やランク制の見直しなどの入札・契約制度を中長期的に見直すことを求めておりますが、私どももこの考えを基本的に支持しております。  次に、図表二の一番下の三番目の「評価・見直しのプロセス」でございますけれども、ここでのポイントは、最近、三重県や北海道などの地方公共団体で採用されております事業の評価や見直しの仕組み、いわゆる時のアセスメントを国にも導入するよう求めている点でございます。  私どもの提言ではさらに踏み込んで、事業の評価監視を行う第三者機関の設置をしてはどうかという提案をしております。この第三者機関は、余り大きな組織になっても行政改革の精神に反しますので、すべてのプロジェクト評価するのではなく、基本的に大規模なプロジェクトを取り上げまして、総務庁の行政監察局や財政担当部局などの協力を得ながら評価を行っていけばいいというふうに考えております。  そして、この第三者機関は、プロジェクト評価結果を政府に提出すると同時に、国民にも公表してほしいというふうに考えております。政府は、この評価結果を参考にしながら、プロジェクトを中止するか見直しするかの判断をしていく必要があると考えております。  以上が公共事業の適正化のためのプロセスでございますが、さらに提言では、図表の二の右下にございますように、これらの公共事業手続を法制化して、法律が守られているかどうかも第三者機関に監視させてはどうかと考えております。  私からの説明は以上でございます。
  9. 井上孝

    会長井上孝君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 吉川芳男

    ○吉川芳男君 限られた時間でございますので早速質問をさせていただきますが、経団連常務理事の中村さんにお願いいたします。  貴重なレジュメをつくっていただきまして、その表題に「豊かさと活力を生むための社会資本整備を」ということで、また副題に「公共事業の審査・優先順位づけ、執行評価・見直しのルール化」と、こうなっておるわけでございますが、きのう出たある新聞に、これは英語で言うとPFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブと言うんだそうですけれども、我が自民党でも一次から四次にかけての経済対策の中の四次にこのことを打ち出しているわけでして、二〇〇五年に完成する中部国際空港はそのモデル事業としてやっていこうということになっておるわけでございます。  この新聞に、なかなか要領よくまとめていると思うのでございますが、ちょっと読ませてもらいますと、   PFIは国や自治体が道路や橋、下水道、鉄道などの公共事業を民間企業に委託するやり方です。これまでの外部委託方式と違い、建設だけでなく企画・立案から運営・管理まで手掛けます。従って、これまでのように政府・自治体主導ではなく、民間企業主導で公共事業をやれるのです。これによって国や自治体の歳出が削減できるし、民間会社の仕事が急増することで、景気の回復にもつながります。  そういうことで、このことに対して、批判じゃないですが、評価をこういうふうにしているところもありますね。PFIは事業形態によって三つのタイプに分かれるということでいろいろのことを言っていまして、中には道路や刑務所までやれるんだというようなこともうたってあります。  それはそれとしまして、せっかくのこの中村さんのレジュメの中で、公共事業評価というんですか、あり方が、非常に今後削減されていくと。社会保険では九八年度ではもう八千億からの当然増があるけれども、五千億を上回る削減を行うとか、あるいは公共投資も七%マイナスの額を上回らないようにする、七%カットするという意味でしょうね。それから文教予算も思い切って抑制する、防衛費も同じ、ODAも同じ。ただ一つ違うのは、科学技術振興費だけは伸び率をおおむね五%以内にするということで、このままいくとデフレといいますか財政の縮小再生産とでもいいますか、ということになると思うのでございまして、中村さんも公共事業の切り札としてこれは非常にいいことだというふうに言われていると私は思うのでございますが、ただこの資料の中に、でも一番問題は時間がかかることだと。  そういう段取りをつけて実際に仕事をしてもらうまでの間に時間がかかるという意味は、これは役所のいわゆる縄張り意識といいますか、なかなか自分の仕事を手放したくないということによるものなのか、あるいは法律がそう簡単にはつくれないだろうというんですか、これはどういうことからこういうふうな御表現があるのか、ひとつ聞かせていただきたいと思うんです。
  11. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 今のお話のPFIでございますけれども、PFIというのは手段ではないと思います、考え方だと思うんです。日本版PFIというのはどうも民間の資金を使うということだけに使われているような気がいたします。PFIを実施するためにはきちっとした費用効果分析が必要である、そういう点におきまして今先生のお話にありましたように時間がかかるということだと思います。  それで、どれだけ費用がかかってどれだけ効果が上がるのかということで、民間では当然できない部分も出てくると思います、費用がかかり過ぎると。効果に比べて多い費用分というのは当然政府のお金が入っていかなければならないと思います。ですから、単に民間の資金を活用するだけではなくて、公共事業の効率化を目指すための考え方だというふうに私は理解しております。
  12. 吉川芳男

    ○吉川芳男君 この民間資金導入による事業は、国際的にもこれは香港と九龍半島の間の海底地下鉄あるいはオーストラリアもあるんだそうです。しかも日本の業者もそういうところへ出かけていって成功をおさめているわけでございますが、これは国内でやれないはずはないと思うんですけれども、これは何を解決すれば中村さんの御所論のような、あるいは経団連がつくられた政策のようなことが直ちに実行に移されるんですか。
  13. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) やはり一番大事なことは、費用効果分析を各所ばらばらに行うのではなくて、国としてそのプロジェクトの費用効果分析をきちっと行うということが一番重要だと思いますし、また土地の収用という点につきましては、民間でそれを行うのではなくてきちっと土地が収用されるということ、さらに権利調整をきちっとやっていただくということが重要ではないかと思います。
  14. 吉川芳男

    ○吉川芳男君 それでは次に、金本参考人にお願いしたいんですけれども、政策評価の両面が非常に大事だと、こういう先生のお話でございますが、私は、政策評価、それが費用対効果の便益だというふうにお聞きしたんですけれども、そういうことを余り公共事業に濃く注入するというか受け入れますと、どうしても人口の多い車も多い都市部、しかも東京を中心とする大都市圏に公共事業をやった方が効率がいいという議論になると思うのでございます。やっぱり地方もあって日本の国は成り立っているわけでございますが、そうなると採算の合わないものは公共事業でやって、あと採算の合うものはPFIでやればいいじゃないかという議論になるんじゃないかと思うんです。  そうしますと、農道とか林道とか土地改良とかダムとか港湾というような、一口に言うと採算性をとるのに難しい事業は公共がやって、それ以外の道路その他がこういう事業でやるということになりませんか。  そうなると、私ら地方に住む者といたしましては、効率だけで事業がやれたりやれなかったりということになってはいかがなものかなと思っておりますので、その辺の御所見を承りたいと思います。
  15. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 一つ、最初のお話で、便益と費用で評価すると地方にできなくなるんではないかというお話ですが、これはまだ評価の結果が全部出ていないので必ずしも全体を見ているわけではないんですが、今まで少しずつ拝見をさせていただいた限りでは、必ずしもそういうわけではなさそうだということであります。  例えば、道路に関して申しますと、地方でも今まで非常に回り道をしなければならないところに一本トンネルを掘れば時間短縮ができるというふうなところについてはかなりの便益が発生しているというふうなことであります。もう一つは、東京といった大都市圏で本当に便益、費用の比率がいいのかということになりますと、これは急速に状態が悪くなりつつあるということであります。大都市圏では建設コスト、用地費が非常に高くなっておりますので、それを上回る社会的な便益があるかというと、なかなか難しい局面になりつつあります。  若干話はずれるんでありますが、例えば高速道路のシステムについて料金を値上げしなければいけなくなったと。それでしばらく前にいろんなお話がございましたけれども、この一番大きな理由は、第二東名あるいは首都圏の環状道路、こういうものが道路投資の中に組み込まれた途端にそのコストを反映して料金を設定しなきゃいけないということになった。という事情で大都市圏の投資コストが非常に高いということから、地方圏の道路を面倒見るということが難しくなってきたというのが背景にあるというわけでありまして、必ずしも地方が全面的にためて大都市圏にだけ固まるというふうなことではないのではないかと思っております。  もう一つ、PFIとの絡みでございますが、ここでは採算性というものと社会的な便益というものと二つ違うものであるということに御注意いただきたいと思います。  例をとらせていただきますと、例えば日本の道路投資のかなりの部分、もう半分近いんじゃないかと思いますが、それは有料道路でやっております。有料道路の仕組みは、なかなか持ちこたえ切れなくなってはいるんですが、基本的には道路料金で投資コストを賄うという仕組みでやっておりまして、そういう意味では採算性があるところをやっているということになっております。PFIはそれとはまた別の話でありまして、有料道路を民間主体で、企画立案から民間に任せておやりいただくというふうな話であろうかと思います。  それに関して、有料道路は採算性でやっておりますが、採算がとれないものをすべてやめるべきかというと、必ずしもそうではない。そこのところに私が言っております社会的便益と社会的費用の総合評価というのがかかわってくるわけでありまして、利用者あるいは周辺住民の受ける便益というもののすべてが料金に反映されているかというとそうではなくて、そうじゃない部分についてもちゃんと考慮に入れて公共投資を行わなければいけないということであります。  基本的にそこで問題なのは、もし便益が費用よりも低い、全部いろんなものを入れて便益が費用よりも低いというときの問題でありますが、こういうときにどういうふうに考えるかというと、私自身の考え方は、そういうものをつくるかということであります。実際にその地域の住民にとっては、それだけの一億のお金をかけて五千万の便益しかないようなものをつくってもらうよりは、一億丸々いただいた方がいい、減税でもしていただいた方がいいということであるわけです。  それから、公共投資の問題は、大都市圏から地方にお金を渡すという側面一つはありますが、もう一つは地方がお金を受け取るときにどの形で受け取るのか。役にも立たないものをつくっていただくのか、あるいはもうちょっと役に立つ形でいただくのかということでもあるということだと思います。  とりあえず以上でございます。
  16. 吉川芳男

    ○吉川芳男君 次に山本先生にお願いしたいんですが、先生は行政評価システムあり方といたしまして物差しと価値基準が大事だということ、それからアカウンタビリティー、これは挙証責任というんですか、証明できるということなんでしょう。そして最後は締めくくりが大事だということなんですが、私は、そうだとすれば、今、例えば郵貯のお金なんかは一方的に政府が吸い上げてとは言いませんけれども、政府責任において公共事業その他にも回しているわけでございますが、お金はあるところは同じわけなんです。  最近よく、民間資金に千二百兆円も資金があるんだと。こんなたくさんありながら不景気だ不景気だと言っている。全く知恵がないと思うのでございますが、先生のおっしゃるようにちゃんと説明ができる事業であれば、またちゃんと締めくくり評価、しかも経済的にも成り立つということであれば、私はこういうときこそ大いに公共事業に乗り出して、それを財投でなくて地方自治体がやるとか、そういうものに流用させるということは非常に今時宜にかなっていると思うのでございますが、先生の目から見て今のこの経済運営をどういうふうに評価いたしますか。
  17. 山本清

    参考人山本清君) 経済運営ということに関しましては専門ではございませんが、先ほど来からの議論流れの中で御説明申し上げますと、金本参考人に対して、費用便益分析をやって、地方部について低い場合には投資が行き届かないのではないか、それは場合によっては別の見方があるのじゃないかという御発言がございました。  それに関しまして、私、今の質問に対しまして少し意見を申し上げますと、少なくとも金本先生がおっしゃいましたように、費用便益比が一未満になるという場合については当然これは国民経済的にやらない方がいいわけでございますけれども、地方自治体、特にローカル部あるいは都市部において少なくとも費用便益比が一を超えた場合についてはやらないよりはやった方が国民経済的にはプラスになるわけでございますから、その費用便益比がどれくらいの水準であればローカル部分についても投資決定していいかどうかという評価基準、それが私のレジュメ等におきましては政策フレームワークでありますとかそういったことを指しておりまして、そういった一種の価値的な基準をおつくりになるのがまさしく国民の代表であります国会等において御議論していただきたいというふうに私は考えるわけでございます。  それで、今の御質問でございますが、公共事業について今でも当然財投資金というのは、まさしく今金本先生の御説明にありました道路公団等においても財投が利用されていますし、あるいは自治体についても関連融資等がなっているわけでございますものですから、それは当然その費用便益比が所定のランクになればこれはやっていいというふうに思います。  それと、PFIとの関連で申しますと、まさしく企業ベースで採算に乗る事業というのは確かに公共事業の中にはあるわけでございますから、その部分については積極的にPFIをつくって、場合によっては総事業量が余り大幅な減少にならない、そういった景気対策も当然あり得るのではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  18. 吉川芳男

    ○吉川芳男君 このぐらいにしておきます。
  19. 武見敬三

    ○武見敬三君 この調査会は、行政府に対する国会統制機能発揮のために国会議員みずからが関与できますオンブズマン的機能を備えた行政監視のための第二種常任委員会の設置というのを実は昨年六月に提言をいたしまして、それがこの一月の常会から行政監視委員会という形で設置され、その活動をするようになってきております。  この背景の問題意識について私なりに考えていることを先に申し上げておきたいわけでありますが、大きく時代流れを見ておりますと、非常に豊かな我が国をつくり上げた近代の歴史の中での我が国の近代化という作業を担っていく上でやはり官僚機構の果たした役割は極めて大きく、かつまた国民の間で官僚機構に対する信頼というものは極めて高かったという認識を持っておりました。しかし、それが近年、こうした国民の間でのいわゆる官僚神話というものが少なくともこれから述べる三つの要件によって崩壊をしてきたという時代状況の認識がございます。  そこで、引き続き二十一世紀に向けていかにこの官僚機構を立て直し、そして新しい国づくりの役割を十分担い得るものにしていくかということは極めて大きな課題であって、そのために立法府としていかなる役割が担えるかということがこうした委員会設置の背景の問題意識としてあったように思うわけであります。そこで、少なくとも私が考えます三つの官僚神話崩壊の原因を考えてみますと、一つ目は明らかに透明性の欠如であった。なぜ近年こんなに透明性について国民が厳しく言うようになったか。これは、一連の政治家のスキャンダルがあった、そしてこの政治家のスキャンダルに対する嫌悪感だけじゃございませんで、なぜこんなに多くこういうスキャンダルが起きるのかという点についての国民の疑問というものが継続してあって、そして我が国政策決定をめぐる政治文化の中に表の政策決定と裏の政策決定があって、裏の政策決定の中で責任ある立場にいなくても、実際にその要所を占めれば政策を左右することができるというようなことがどうもある。こういうことがいろいろな問題点を実際にスキャンダルのような形で生み出しているんだという認識が国民の中にできてきて、こうした透明性に関する認識が定着をしてきた。  したがって、これから特にこの政策を大きく組みかえる時代状況の中で、政策を決めるときに外から見てもだれから見ても納得のできる物事の決め方をしてほしいという国民の意識というものが確実に定着をして、それが具体的に透明性という言葉の中で今表現されているんだというふうに私は理解をしているわけであります。  特に、そういうことを感ずるようになったら、官僚機構の決め方というのが実は実際こういう透明性に関しては極めて欠如した決め方をしている組織、機構だったということに国民が気がついてその不信感を増すようになったというのが根底にある。  二つ目の原因は、官僚の倫理観に関する信頼の欠如であります。従来、こういう官僚というのは、いずれも戦前の内務官僚以来のある一定の、国に対する、あるいは社会に対するロイヤルティーをきちんと持っていて、そして倫理観も一定程度はきちんと確保しておられる集団であるという信頼があったわけでありますが、近年の官僚自身の、特に高級官僚を含む一連のスキャンダルの中で、国民のこういう高級官僚を含む官僚に対する倫理観の信頼感というのも完全にこれは失われてきている。  そして三つ目が、こうした時代の転換期における政策の転換を大きく期待している国民の間にあって、この縦割り行政というものの中では、どうも実際にそういう政策の転換はできないんではないかという不信感、これがまた大きく出てくるようになってきた。こうした三つのまさに要件が出てきて官僚神話が崩壊してきたんだろうと思うわけてあります。本日の三人の参考人の方々のお話を聞いて、いずれもその感をさらに深くしたものであります。  そこで、実は既に私どもが生みの親のような形になりました行政監視委員会、設置されて二カ月余り経過してきているわけでありますが、この委員会がさらにこうした時代状況のもとでより積極的に大きな役割を担っていかれることを実は切に我々は祈っているわけであります。  そこで、まず山本先生にお聞きしたいわけであります。先生御自身このレジュメの五ページの中で、「我が国における政策評価制度あり方」、その第一の「立法府における評価」の中でも御意見を開陳されておられるわけでありますけれども、実際に立法府における機関としての行政監視委員会を活用するということを考えたときに、それでは具体的にどういうふうにこの委員会を活用していけばこの行政統制としての立法府の役割が果たせるのか、そのお考えをまず伺いたいと思います。
  20. 山本清

    参考人山本清君) それではお答えいたします。  行政監視委員会の活用ということでございますが、私のレジュメにも申し上げましたとおり、要するにまず行政府におきまして事前評価も含めました評価結果の報告書を出していただくということがございます。これは特に、先ほど話題になっております公共事業について、私の記憶に間違いなければ、経団連の御説明はどちらかといいますと事後評価ということにポイントを置かれたような第三者機関であったと思うんですが、公共事業というのは、まさしく今環境問題が話題になっておりますとおり、一たんつくりますとなかなか自然はもとに戻らないという性格がございますから、むしろかなり厳重に事前評価結果を、さらに第三者機関あるいは国会、この行政監視委員会等において御審議なり御審査をされて、それからやはりゴーのサインを出される方がむしろ公共事業の特性であります、一たんつくったものはもとに戻らないんだということを考えますと、そういったことがまず公共事業では可能ではないかと思います。  ただ、そうは申しましても、すべての公共事業について、当然行政監視委員会のスタッフ等についても人数等の制約がございます。あるいは、もともと日程上の制約がございますものですから、これはやはり国民的な関心が高い政策について政策評価の義務づけのもとにおいてそれのレビューをやる、そのレビューをやるためには当然これは行政庁説明と同時に委員会スタッフの活用をして、そこで一種の事前調査をやっていただいて、それをこういったオープンな会合の場で議論するということがまず第一に行政監視委員会の活動でできると思います。  したがって、それはいわゆる事前評価、途中評価あるいは事後評価、そういった三段階について予算のサイクルに特にこだわらずやるということが私は活用になるのではないかというふうに思います。
  21. 武見敬三

    ○武見敬三君 今まさに御指摘になった実行部隊としてのスタッフの充実というのは不可欠であるということは、実はこの調査会でも議論されたんですね。  それで、この点を考えてみたときに、山本参考人、おおよそこうした国会の中の立法府委員会がどのくらいの規模のスタッフを充実させていけば参考人が期待されるようなそうした機能を満たし得るとお考えになりますか。
  22. 山本清

    参考人山本清君) これは、行政監視委員会のスタッフですべてをやるか、あるいは金本先生とか我々を含めた学術の分野の方を非常勤とかあるいは契約的な関係で使われる、あるいは民間のシンクタンク等をどれぐらい活用するかによって変わってまいりますが、私は今のいろいろな事情を考えますと、できますれば百名、それは財政的に非常に難しゅうございましょうから、五十人程度のスタッフは必要であろうというふうに思います。  この五十人というのはどういう根拠かというのは特にないんじゃないかと言われますが、ただ、今回の省庁再編成によって十何個かの省庁になりますから、少なくとも一省庁それでも最低二、三人ということになりますと、最低五十人前後は専属でその方が中心になる。そしてその方を中心にして委託をするなりあるいは民間の有識者を活用するということで、最低五十人はいないとすべての省庁についての立法府統制は不可能であるというふうに私は考えます。
  23. 武見敬三

    ○武見敬三君 五十人という数は現実にはなかなか大変かもしれないなというような気がするわけでありますが、できるだけ努力すべきことであるというのもわかります。  そこで、同じように金本参考人にもお伺いをしたいわけであります。金本参考人も、「有効なチェックアンドバランス」ということで、「複線的な評価監視の必要性」というその項目の中で、一つとして国会を挙げていただいているわけであります。  そこで、同じような意味でこの行政監視委員会、この参議院に第二種の常任委員会として設置したわけでありますけれども、どのようにこの委員会を活用することが考えられておられる複線的な評価の中の役割を担い得るものになるのか、その点について参考人のお考えをお聞かせいただければ幸いです。
  24. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 余りきちんと考えていないテーマできちんとしたことを申し上げられないかもしれませんですが、やはりそれぞれの機関はそれぞれの特色を生かす必要があるんだろうということでありまして、議会でどういう形でどういうふうに評価監視をやっていくかということは、今それぞれいろんなところで評価監視が行われておりますし、これからも行い得る。その中で議会がどういう相対的な長所を持っているのかということを考える必要があるんだろうと思います。  それで、多分一番重要なのは、議会は国権の最高機関であって、そういう意味で非常に大きな力を持っているということであります。それをいかに有効に機能させていくかということであろうかと思いますが、評価監視になりますと、弱点としてはこの評価監視をする実行部隊というのはある種専門家集団ということになりますが、そういう専門家集団をうまくマネージしていくことができるか、どういう形にすればうまくマネージできるかというふうなことであろうかと思います。  今、山本参考人の方が五十人とか百人とかというふうなお話をされましたけれども、日本の仕組みの中でその程度、五十人、百人の専門家スタッフをだれがどうやって管理していくのか、うまく働いていただくことができるのかということは若干危惧をするところであります。  アメリカの議会を見ておりますと、当然、議会のスタッフというのも、コングレショナル・バジェット・オフィスとかGAOとかという形でございますが、その使われ方というのはそれなりの使われ方をしているというわけでありまして、例えば、GAOというのは日本では非常にすごい機関だというふうに思われておりますが、私はある意味で過大評価をすべきでないというふうに思っております。いい仕事をしている機関ではあるのですが、それなりの癖を持った機関である。基本的にGAOがおやりになっているのは、かなりパーマネントなスタッフを抱えている、アメリカの政府機関としては珍しく流動性が余りない、一たん入りますと余り出ていかないというふうな組織でありまして、それだけいい職場であって優秀な人を抱えているということではあるのですが、そういう人たちをうまく使っていくために彼らは基本的にやる仕事をある程度限定しておるということであります。  どういう仕事に限定しておるかというと、基本的にプロフェッショナルなスタッフが一人から数人のチームを組んで一年以上、二年、三年ぐらいまでというふうな期間、きっちり調べてきっちりした報告書を書く。その報告書の中身は正しい、間違ったことを書かない、一文一文すべて裏づけがある、そういうことに特化しているという組織であります。それはそれで非常に重要な役割を果たしておるのですが、それを今から日本で新しくつくって運営していくというのはかなり難しいのかなという気がしております。  もう一つ、アメリカの議会で見ておりますと、当然GAOはそういった形の使われ方として有効な機能を果たしているのですが、もっと一番重要なのは議員自体の個人スタッフ、そこのところに非常に優秀な方々が集まっていて、これが実際の政策の企画立案のプロセスで実は一番大きな権限を持っているということであります。こういう議員の個人スタッフとそれから議会にくっついている組織というものをどういうバランスでどういうふうに持っていくかというところが非常に難しい、考えるべき課題であろうというふうに思っております。
  25. 武見敬三

    ○武見敬三君 実際に御意見によれば、現在の官僚機構では十分な評価監視ができないために第三者的機関が必要だということは特に結論の中でも強調されておられるのが金本参考人であります。  そこで、評価監視に当たっての立法府かかわり、そして今もお話しになりましたけれども、加えて行政改革委員会最終意見の中でも立法と司法の連携ということがうたわれているわけであります。  そこで、実際に参考人、どのような連携をイメージしながらこういう取りまとめが行われたのか、その辺についての御説明をしていただけますか。
  26. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 実は、この小委員会は個別具体のことはやっちゃいけないという縛りがかかってスタートしたものでありますので、本当の具体の話はできないという状態であったわけですが、基本的な方向としては、立法、司法の関係というのは、その立法府、司法府に本来付与されている機能立法府でありますと予算の承認でありますとか法律の制定、その機能をこれまで以上に果たすということに尽きるのではないかと思います。  その機能の果たし方に関しては、これは小委員会で議論があったわけではなくて私個人の意見ですけれども、今までは実態としてはほとんどの法律は役所の方々が書いておられるということで、役所の方々にとって使いやすい法律が書かれているというわけですが、本来そうではないはずで、法律というのは議会行政府をコントロールするために書くという側面が当然あるはずであります。それができるような体制をつくるということが多分重要なのではないかというふうに考えております。
  27. 武見敬三

    ○武見敬三君 山本参考人にまた改めてお聞きしたいのですけれども、御意見の中に、評価には評価者の主観的な要素が介在せざるを得ないということを示しておられます。しかし一方で、客観的で公平な評価方法の確立が求められているというのも事実でございます。  そこで、客観的で公正な評価方法の確立のためには主観的な要素の問題を一体どういうふうに処理をすればいいのか、その考え方をちょっと御説明いただけますでしょうか。
  28. 山本清

    参考人山本清君) 非常に難しい御質問でございますけれども、まず結論的に言いますと、もともと評価というのは、主観的な物事を客観的な手段で測定することを評価というふうに言って学者は逃げるわけでございますけれども、それは答えになりませんのでもう少し具体的な事例で申し上げたいと思います。  先ほど話題になっております公共事業につきましては、最も早くから政策効果につきましては貨幣で換算いたしまして、例えば道路にバイパスをつくれば、十億円の事業に対して将来的に現在価値に割り戻して二十億の貨幣価値に換算できる効果が出るというふうに計算は可能なわけでございますけれども、実は政策評価で一番難しくされておる問題は、例えば公共事業以外のソフトな事業でありますような社会福祉でありますとか、あるいは特に教育でございますとかそういった問題についての評価をどうするかというのが非常に問題になってまいります。  特に、こういった国会立法府行政に対するコントロールということにかんがみますと、ある意味におきましては公共事業と社会福祉についてどれぐらいの予算を配分するかという、そういったまさしく集合的な意思決定をこの議会の場でなさなければいけない。そのための一つの大きな判断資料というのはまさしく評価報告なり評価結果であるというふうに思われます。そうしますと、ある意味におきまして公共事業も社会福祉も何らかの格好で効果なり成果比較できるような評価方法でないと最終的な目的を達成できないということになります。  そこで、最近、私が研究なりあるいは諸外国で少し取り入れておりますのが、先ほど金本先生からも少し御紹介ありました、顧客ということに対して着目して評価するということでございます。これは一部には誤解もかなりあるようでございますが、顧客満足度調査するということは確かに正しいんですが、その顧客満足度という場合の調査方法にかなり問題があるということでございます。これは最近私がいろいろ調査してわかったのでございますが、特に重要な場合におきましては、税金等でなされている事業につきましては、どれくらいのコストがかかっているかということをほとんどの国民は存じ上げていないものでございますから、単純に例えば社会福祉について満足していますかというような尋ね方をしても、とてもこれは成果評価にはならないということでございます。したがって、正しいコスト情報でありますとかサービスの質に関する情報をきちんと提供して顧客満足度調査をやりますと、かなり客観的なデータと一致する。  例えば、こういうことでございます。上水道等の顧客満足度調査をやって水質の現実的な、物理化学的な水質の基準比較しますと、きちんとデータを提供すると、ある水源を水源地とするような流域の上水道の住民満足度というのは、悪い場合にはかなり満足度も低くなるということで、きちんとデータを与えますとかなりソフトな顧客満足度調査も客観的なデータとほとんど同じような整合性を持った結果を得られるということが最近わかってまいりましたものですから、その場合に特に国民の負担でありますコスト情報を同時に提供して、満足度調査をかなりうまくやれば、いわゆる貨幣で換算できないような分野についても評価ができるのではないかというようなことを最近考えて、試行的にやって、そういったことで諸外国でやっている例もございます。
  29. 武見敬三

    ○武見敬三君 山本参考人に引き続きお尋ねしたいんですけれども、御提案によると、政策評価への一%程度予算の充当を検討することになっておられるんですね。一方で、立法府政策評価機能を持たせるという立場から、立法府予算として相当程度の予算を確保すべきだという考え方もございます。政策評価への投入予算額の妥当性を示すようなそういう研究成果というのがあるんでしょうか。どのような考え方からこうした妥当な予算規模というものが推定できるのか、そのお考えを示していただけますか。
  30. 山本清

    参考人山本清君) まず、確かに今御質問の中で御発言ありましたとおり、行政府に対してどれぐらい財源を割くのか、あるいは立法府がどれぐらい財源を利用するかという、これはかなり大きな問題がありますが、やはり立法府ですべての政策のチェックはできませんものですから、基本的に行政府に第一義的な、要するに挙証責任と申しますか、この政策についてどういう効果があったかどうかということをみずからチェックして立法府に対して報告するということが必要になってくるということからいきますと、まず行政府が少なくとも重要な政策については、ある五年なら五年の期間を経過いたしますと、すべての政策について、重要な政策についてやるという必要性が出てまいります。  したがって、この場合どれくらいの財源が事業に対してあるかという研究ということでございますが、実はまさしく政策評価自身が非常に政治性の中で流れておりまして、例えばアメリカの連邦政府を例にとりますと、ある程度民主党と共和党の時の政権によってかなり政策評価についての財源が変わってくるというような傾向もございます。  もう一点は、いわゆる財政危機ということになりますと、むしろ政策評価よりも要らない予算を削るということにどうしても中心が移行してまいりますものですから、政策効果があったかというよりも単純な因果関係を問わない、モニタリングといいますか、そういった政策評価よりも粗い一種の評価手法というのが流行いたします。そうすると、政策評価ですと当然大規模のチームを組んでかなりの経費を要して長時間かかる。そうすると、長時間かかって政策評価の結果が出たときにおいてはもう景気も全然変わっているということになりますと、具体的な予算への反映ということができなくなるということで、財政危機の状況においては政策評価に対する予算が削減される傾向がどうしても出てまいります。そういったことで、政策評価自身が政治性の中にのまれておるというのがかなりの実情でございます。  したがって、そういうことがないように常に事業費のx%については政策評価に充当するような法律なり法案設定が望ましいのではないかということが私の趣旨でございまして、一%がいいのかということについての正当な根拠というのは持ち合わせておりません。
  31. 武見敬三

    ○武見敬三君 それでは金本参考人にお聞きしたいんですけれども、行政改革委員会最終意見で、警察庁とか環境庁、法務省などといったこうした公共事業関係以外の省庁において便益と費用の総合評価、特に数量的評価が困難であるということが指摘されております。こうした数値化しづらいと一般的に言われる政策評価する手法について、参考人自身のお考えを示していただけますでしょうか。
  32. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) ここの報告書で載せております警察庁等については、本当に政策評価が難しいからそれについてどうするかということでは必ずしもなくて、各省の方は評価が難しい、だからできないんだというふうな形のことをおっしゃいますが、よく見てみるとかなり評価ができることがあるんではないかというのが問題意識の一つであります。今さっき規制に関して、規制インパクト分析というのをアメリカ、カナダでやっているという話をいたしましたが、こういうもののかなりの部分というのは警察あるいは環境庁といったものの、例えば交通関係規制でありますとかあるいは環境規制というものであります。こういうものについては、公共事業ほどではないかもしれませんがかなりの程度の評価ができるということで、現実にアメリカ、カナダでは行政府内部でそういう評価が行われている。それに関する取り組みが日本ではないということなので、もう少し問題意識として取り上げることができるんではないかというふうなことであります。  もう一つは、たとえ通常の意味のお金換算の評価が難しいものについても、そういう政府活動国民にとっての便益は何であるのか、それをきちんとリストアップして、定性的にでもそれを国民に対して投げかけて、みんなリストアップした結果皆さんが費用を上回るだけの便益があると思うかという問いかけをシステマチックにすることが必要なんだろうというふうに思います。それをやると余りめちゃくちゃなことは多分しなくなるんだろうという意味で、通常の貨幣換算の評価ができないところについても取り組みをする意味はあるんだろうというふうに思っております。  これは今さっきの山本参考人に対する質問とも絡むんですが、そういう通常の手法では難しいものというのは客観的にどうだというものをきちんと出すというのは難しいわけですが、そういう客観性と主観性のはざまをある意味で処理するのは基本的には透明性だというふうに思います。客観的に正しいということが言えなくても、日々日々政策決定に携わる人たちは意思決定をせざるを得ないわけですね。それで、自分がベストと考えるものをベースに当然意思決定をするということは避けられないわけですが、そのプロセスが透明になっているか、もし間違っていたとすれば後から正せるような仕組みになっているかというふうなことが非常に重要なんではないかというふうに思っております。
  33. 武見敬三

    ○武見敬三君 そこで、中村参考人にお尋ねをしたいと思います。  御提案によりますと、国が整備すべきプロジェクトというのは、第三者機関が策定するガイドラインに基づいて選定、執行されなければならないというふうになっているわけですけれども、この場合の第三者機関というのは国家行政組織法第八条に基づく機関を想定しておられるんだろうと思うんですが、具体的にどのような組織を考えておられるのか。また、そういうふうに考える理由は一体どこにおありになるのか。それから一方で、国家行政組織法の第八条に基づく機関は、行政組織の一部であるとの観点から、真に第三者としての客観的な評価を行い得ないのではないかという議論も実はありました。これについては一体どういうふうにお考えになるのか、お尋ねしたいと思います。
  34. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) この点、提言では確かに第三者機関を中立的な機関として八条機関、審議会のようなものでもいいではないかというふうに考えております。これは行政府でも国会でもよろしいかと思います。ですから、この調査会がそのような機能を持っても構わないと思っております。やはり効率化、重点化のためのチェック機能監視機能を持つということが重要だと思っております。
  35. 武見敬三

    ○武見敬三君 そこで、続けて中村参考人にお尋ねしたいんですけれども、御提案によりますと、同じく政府公共事業の範囲、優先分野などに関する中期方針を定める、国会の承認を得ることになっている。ここで言う中期とは、具体的に一体どの程度の期間を考えて中期というふうにおっしゃっているのか。  それから一方で、期間の設定次第では、今みたいに景気の状況とか経済の変動が激しいときに柔軟な予算配分が今度は逆にできなくなっちゃうんじゃないかという危惧の念も持たれるわけであります。したがって、年次計画の策定の必要性というものを御認識になるときに、こういう問題点も含めてどういうふうに御説明なさるのでしょうか。
  36. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 中期と考えておりますのは、五年以上十年以内というふうに考えております。その計画をつくりまして、執行を柔軟に行えば景気の状況に合わせて、執行を早めたり遅くするということで景気対応していく必要があると思っております。
  37. 武見敬三

    ○武見敬三君 そこで、今度は金本参考人にお尋ねしたいんですけれども、御提案によりますと、政府関連法人を所管する部局を設置することになっているんですね。具体的に一体どこに設置するお考えをお持ちであるのか。それから、一方で第三者機関あるいは立法府側が監視すべきとのお考えも、これはさっきのチェック・アンド・バランスで出てきているんですけれども、それをどう関連づけながらお考えになっておられるのか、ここの点について御説明をいただけますでしょうか。
  38. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 政府法人に関しては、基本的に政府法人は行政機構の下にぶら下がるわけですので、行政機構の中のどこかがいろんな意味で所管をする必要があるだろうということで、その限りにおいてのお話であります。  その際に、今の各所管省庁は基本的にどういう役割なのかと申しますと、行政分野がありまして、その行政分野に必要なものとして政府法人をつくるという形であります。したがって、各省庁が所管しているのは政策目的を所管していて、その政策目的を果たしているかどうかという審査をして、政策目的を果たすために、必要ならば補助金を出したり、必要ならば規制をしたりということをするということになっています。  現状の制度としては、それと同時に、実質的にはこの政府法人のオーナーでもあるということでありまして、オーナーとして役職員の任命権を持つというふうな構造になっている。これは株式会社の場合を考えていただければわかるんです。株式会社は株主がいて、株主がオーナーとしてコントロールしているというわけですが、株式会社である種政策目的を果たしてもらいたいというふうに政府が思っている場合は、その政策目的対応した省庁がその株式会社に対して規制を加えたりあるいは補助金を与えたりというようなことをするわけですね。  この二つがパッケージで各省庁によって所管されているというふうなことをもう少し見直す必要があるんではないかというのが一つの基本に流れる発想であります。オーナーとして政府法人を所有しているという、所有者としてちゃんと効率的な経営をしてもらっているかということを横断的に見る省庁がどこか別にあっていいんじゃないか。その見方については、どういう権限を持つかに関してはいろんなバリエーションがあるでしょうが、それを横断的に見る必要があるんではないかという形であります。  具体的にどの省庁が所管するかということについては、我々自身はそこまでは考えていないということになります。
  39. 武見敬三

    ○武見敬三君 わかりました。  ありがとうございました。以上です。
  40. 藁科滿治

    藁科滿治君 それぞれ貴重な御意見を承りまして、ありがとうございます。  まず、山本先生にお尋ねをいたしますが、先生は、個々の政策評価はまず行政府実施するよう政策評価を法律で義務づける、それとあわせて政策評価予算一定割合を充当すると、こういう指摘をされておられます。この指摘は、私、大変重要な意味を持っていると思っておりますが、特にコストへの対応という問題の考え方については私たちも十分参考にしていかなければならない、このように受けとめております。  しかし、一方で現下の官僚機構や行政の深刻な事態を考えますと、私は第一に第三者の監視機関というものをどうしても設置する必要があるんではないか、そういう状況に来ているんではないかというふうに思います。  それから二つ目に、行政府それぞれの評価ということも理解できますけれども、その自主性も必要であります。現下の状況からいいますと、倫理の問題であるとか環境の問題であるとか、こういった基本的な共通項について、こういう内容を持った評価基準の設定というようなものがぜひ必要ではないかというふうに考えますが、その点をまずお尋ねいたします。
  41. 山本清

    参考人山本清君) 私が行政府がまず政策評価が必要であると申し上げましたのは、まさしくアカウンタビリティーという観点からでございます。まさしく行政庁と申しますのは政策執行について立法府から単純に委任をされているだけでございますから、みずからの行為が正当であったということを立証する、アカウンタブルであるためには、当然これは評価がなければアカウンタビリティーを果たせないわけでございますから、このためのコストというのは当然民主主義のコストであるというふうな割り切り方がまず第一点必要であろうと思います。  その上で、こういった評価というのはコストがかかるだけではないということを実は冒頭に申し上げたわけでございます。と申しますのは、政策評価をやることによって、例えばこういった新たな政策フレームワークでやればもっと安い経費で政策効果が上がったということも当然政策評価の過程でわかるわけです。  したがって、私が申し上げております政策評価と申しますのは、単純に政策が所期の効果を発揮したかどうかということではなくて、こういった政策効果因果関係と申しますか、メカニズムを明確にするといった作業まで含んだものが本来の政策評価であろうというふうに考えておるわけでございます。したがって、資源管理改善につながればそういった政策評価に要するコストも回収できる余地はあるというふうに考えます。  第二点は、評価基準については、当然これは国政の国会の場においてお決めいただくのがいいかという思いでございます。最初の第三者機関の設置につきましては、当然立法府として第三者機関を新たにつくる、あるいは立法府の中でおやりになることは、これはそれぞれ御判断されていいのではないかというふうに思われます。
  42. 藁科滿治

    藁科滿治君 次に金本先生にお尋ねいたしますが、先生はかねてから行政への監視機関については行政の外部に設置すべきであるということを主張されているように認識しております。また、そういう考え方、方向性については、私は国民的合意が現在形成されつつあるんではないかどいうふうに感じております。しかし、今国会での法案については、政策評価機能の充実強化というような内容が織り込まれてはおりますけれども、しょせんこれはあくまでも行政内部のチェック機能評価システムということの範囲でございます。  私が所属します民主党では、昨年来、公共事業のコントロール法案とか行政監視院法案などを国会に提出しまして論議をし、特に外部からの監視、チェック機能の設置、強化ということを強調してまいりましたけれども、力不足で実現に至っておりません。もちろんこれからも引き続きその実現に向かって努力をしていきたい、このように考えております。  きようはここでその限界を論究するつもりはございません。問題はこの法案の範囲のシステムの中で現下の状況の機能をいかに高めていくか。特にこれから景気対策で財政支出が大きく膨らんでいく、こういうような状況にもありますので、行政のチェックはもとより、財政再建の立場からも経費の効率化あるいは効率的な投資、こういった問題がますます重要になるだろうというふうに考えております。  そこで、このシステムの範囲で、どういう点に特に力を入れて、あるいはどういう点に配慮をして活用すれば監視機能が高まっていくのか、先生にお聞きするのも恐縮でございますが、金本先生のお考えがありましたらお尋ねをしたいと思っております。
  43. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 第三者機関というお話ですが、これが行政の内部なのか外部なのかということについて、厳密に外部だというのは、ある意味では外部ならばどこなのだということで、全く国会行政を離れて外部というのは民主主義の原理からいってあり得ないはずでありますので、行政の外部ならば国会の内部だろうというふうな形になるのであろうと思います。  私自身は、それをどこにどういうふうに置けばいいのかということについてそれほどきちんと考えたわけではございませんが、今の日本の状況はある意味ではダイナミックに移りつつあるトランジションのプロセスなんだろうと思っておりまして、国会に置くのがいいのか行政の中なのかというふうなことについてはそれほどきっちり考える必要は多分ないのだろう、ダイナミックに動いている中でいろんな対話が行われて、その対話の内容がインテレクチュアルな形で国民に出ていくというふうなことがあればいいのではないかというふうに考えております。  評価ということを実際に始めますと、マスコミがそれを聞いて騒ぎ立てるというふうなおもしろおかしいものではございませんで、甚だ地味でおもしろくないものであります。そういうものは、ある程度政府部内じゃない方々が入って各行政機関がいろいろやっていることをヒアリングして、聞いて、対話して、場合によっては激しい議論をする、そういうふうなことが想定されておるわけでありまして、その中に適切な方に入っていただいて、あとはそのプロセスがきちんと外に出ていく、情報が外に出ていくということが一番重要なのではないかというふうに思います。  私も、個人的な経験では、透明性なりディスクロージャーというのは直接的には大したことではないように見えますが、それがあることですごい縛りになっている、外に表立つできちんとした形で言えない話はできなくなってしまうということで、そのことが非常にいいインパクトを持つのではないかというふうに思っております。  したがいまして、第三者機関の具体的なありようというよりは、どういうふうにその情報が外に出ていくことを担保するかということが最も重要なのではないかというふうに思っております。
  44. 藁科滿治

    藁科滿治君 経団連の中村参考人にお尋ねいたしますが、今回まとめられた内容については、公共事業の受託事業者の一員という意味で、経団連の大胆な問題提起について私どもも敬意を表したいと思っております。  そこでお尋ねいたしますが、個々の公共事業については、事業者が計画、見積もりの段階から参画をしてくるというようなことを伺っておりますし、またODA関係でもこういった状況がもう常識になっているようでございます。  そこで、このようなケースにおいては当然のことだと思いますが、事業者サイドも費用効果に関する意識だけではなくて、いろんな角度から総合的に判断する必要がある。受注さえすればよいというようなことでは済まないと思いますし、公共福祉や環境保全の視点、さらには事業の効率的執行、こういう見識を持つのは当然だと考えておりました。特に、公共事業計画執行には政治的な利害が絡むケースが多いわけでございます。  そこで、事業者、関連産業とも独自の基準を持って、さらに倫理的な面も含めての対応が必要になるのではないかというように考えておりますが、既に若干の質疑がございましたけれども、改めてお考えを承りたいと思います。
  45. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) この提言では、今おっしゃいました倫理的な面という点については議論はしておりません。社会資本の整備を効率的かつ重点的に行うためにはどのようなプロセスが必要であるかという点を議論いたしました。  倫理的な側面というのは当然の前提になっていると思います。効率化、重点化のためには、第三者機関によるプロジェクト評価ということで、環境に配慮したようなプロジェクト、きちっとした公共事業を行うという点におきまして第三者機関をこの国会内に置かれるということも一つの案だと思いますが、きちっとした事後評価を行うということが肝要だと考えております。
  46. 藁科滿治

    藁科滿治君 加えて中村参考人にお尋ねいたしますが、事業者独自の取り組みで何か参考になるもの、特に紹介したいようなものがありましたら、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  47. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 公共事業を行うに当たりましては、会計原則と申しますか、民間の考え方をやはりその計画執行に当たってぜひ導入していただきたい、発生主義会計、企業会計をその中に導入していただきたいというふうに考えております。
  48. 藁科滿治

    藁科滿治君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  49. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明の大森礼子です。時間の関係がありますので、すぐ質問させていただきます。  この問題をめぐりまして第三者機関ということがずっといろいろ言われております。評価をする場合には、それを実際にやったところが評価するというのではお手盛り等のあれがあるから、評価というものは第三者が客観的に公正に公平に行うべきだということで第三者というのが出てくることはわかるんですけれども、ただ、想定している第三者機関というのがなかなか具体的にならないのかなという気がいたします。  二月二十五日に行われましたこの調査会で、猪熊委員の方から、政策等評価という役割を行政機関の一部局である行政監察局がやることが果たして適当なのか、できるのかと、こういうふうな意見が出ました。計数関係については会計検査院が担当、そしてこれに対応する形で、行政評価といったらいいんでしょうか、これについては独立した行政機関、例えば行政検査院みたいなものを設置することもあるんじゃないかと。これも一つの第三者機関なわけですね。こういう第三者機関についての考え方もあったということでお尋ねするわけですが、まず金本先生にお尋ねいたします。  先ほど来、武見先生とか藁科先生の御質問に答えられて、第三者機関についてどこに設置するか、行政府とか立法府とかにとらわれる必要がないというふうなお考えが述べられたわけなんですけれども、先生のレジュメを見ますと、項目四のところと言っていいんでしょうか、ここで「評価監視のための第三者機関が必要」として独立した項目で書かれてございます。それから、「基本原則」の二の項目のところで、「有効なチェックアンドバランス」の「複線的な評価監視の必要性」の中で、言ってみれば、ワン・オブ・セムという形で第三者機関ということが挙げられているわけです。  それで、先生のお考えになる第三者機関として、この「複線的な評価監視の必要性」の中に掲げられている第三者機関と、それから四の項目に掲げられている第三者機関というものは同じものなのか別のものなのか、これをお尋ねしたいと思うんです。
  50. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 基本的に同じものを想定しております。  ただ、最初の一ページの二のところで書かれておりますのは、このコンテクストから見ますと行政府内に置かれた第三者機関というふうに読めますが、最後のところの第三者機関についてそこまで限定しているかというと、必ずしも私自身はそこまでは限定はしておりません。ただ、あり方機能としては大体似たようなものを想定しているということであります。今まで臨調、行政改革委員会等の果たしていたような機能を想定しているということであります。  それに関してもう少しつけ加えますと、評価について各省庁がやるのでは客観的でないので第三者機関がやるべきだというふうな話がございますが、これの中身をもう少し見ていく必要がございます。ある意味でそれは正しいわけですが、ただ、例えば第三者機関が公共事業の費用便益分析を全部自分でやるかということになりますとそれは全く考えられないわけでございます。基本的に、各省庁の所管する事業をよくわかっていて、どういう形で評価をすればいいのかということを知っているのは各省庁の各所管部局でありまして、そこが動いてやらない限り実態上は評価はできないということかと思います。  したがって、その評価具体的な実務というのは、ほとんどの場合所管省庁あるいは所管部局がやる。こういう第三者機関が見ているのは、そのやった結果を出して、そのやった結果がおかしくないかをチェックする、あるいは、やり方に関して個別ばらばらでやっていますと何をやっているかよくわからないので整合的なガイドラインを設定する、そういった機能を想定しております。こういう第三者機関がそういうことをやって、そのプロセスで各省庁といろいろな議論をするというふうなことが多分全体の評価をうまく機能させていくのではないかというふうに思っております。
  51. 大森礼子

    ○大森礼子君 中村先生にお尋ねいたします。  中村先生もレジュメ八ページの方で、これは公共事業評価監視ということですが、第三者機関のことに触れておられます。先ほど国会内の設置でもよいという御意見をおっしゃったわけなんですけれども、中村参考人がおっしゃる第三者機関というのは、これはレジュメを見ますと、例えば財政担当部局とか総務庁行政監察局とか会計検査院等の協力を得るという形ですので、冒頭に挙げました猪熊委員の言う、例えば行政監察院みたいな独立した機関ということは想定しておられないということだと思うのですけれども、そうすると、中村参考人が想定されている第三者機関というのものは金本参考人が今おっしゃったような第三者機関と大体ほぼ対応する形になりますでしょうか。いかがでしょうか。
  52. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 今、金本先生がおっしゃったような形の第三者機関というのを想定しておりまして、その第三者機関だけでは評価というのはなかなかできないということで、ここで申し上げましたように、会計検査院とか総務庁の行政監察局、財政担当部局、あるいは各担当省庁と協力しながら事業の評価を行っていかなきゃならないというふうに考えております。
  53. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでは山本参考人にお尋ねいたします。  山本参考人レジュメの六ページに評価前提条件整備というものについて書かれてあります。その中で、「評価研究の推進・評価スタッフの養成」という項目があるわけですね。先ほど武見委員の方からスタッフの人数について質問がありまして、最低五十名ということだったんですけれども、これはそういう機関の、例えば行政監視委員会ですと委員のスタッフかなという気がするんです。ただ、評価スタッフの養成というふうになりますと、単に人数だけではなくて中身の問題、どういうふうな形で養成していくかというノウハウの部分が含まれているんだろうと思うんです。  それで、先ほど参考人もおっしゃったように、財政危機の状況の中では、結局こういう予算配分といってもそこら辺が削られるような関係にあると言ったんですけれども、しかし、この評価制度というのは要するに税金のむだ遣いをなくそう、こういう発想ですから、有効なお金をかけることでむだな税金がカットできればこれは非常に生産的な行為であろうと私は思うわけです。  今の財政危機とかそういうことをお考えにならずに、これを前提にお尋ねするんですが、山本参考人が考える評価スタッフの養成ということは、例えば具体的に言うとこういうことをするんだと、このノウハウの部分最後に教えていただければと思います。
  54. 山本清

    参考人山本清君) 評価スタッフの養成というのは二つ意味がございます。  まず第一点は、金本参考人お話しになりましたように、現在のところ各行政庁がされています政策評価というのは非常に限られてございます。基本的にある程度なされておりますのは公共事業を中心とした事前評価のみだと言っても過言ではございません。特にソフトな事業についての政策分析であるとか評価というのはかなり、今から三十年近く前にPPBSがブームになりかけたときに少しおやりになった程度で、現在そういう政策分析の特別なスタッフを置いている行政庁はほとんどないわけでございます。したがって、金本参考人お話しになりましたように、各行政庁が第一義的に政策評価をやるためのまずスタッフがいないということがございます。これは行政府も養成しなきゃいけませんし、立法府においても必要でございます。  ただ、コストの問題を言いますと、すべてまさしく直系でやる必要があるのかどうかというのが政策評価についても当然議論になってまいりまして、諸外国におきますと最近非常に、今首相がお見えになっておりますニュージーランド等におきましては政策評価自身の民間委託なり外注化というのが非常に進んでおりまして、人件費のある省庁においては二割であるとか三割程度が民間に依存しているというような、それは批判も当然あるわけでございます。  そういった状況になっておりますので、我が国におきましてももう少し明確な意味のシンクタンクというのが確立して、それがみずからの倫理憲章を持ったようないわゆるきちんとした専門職団体を構成するということで、どういったクライアントから外注されてもプロフェッショナルとしての責務を果たす、中立て、あるA省庁からいただいたら今度はB省庁と、同じ省庁からやらないとか事前評価したところは事後評価は担当しないとか、そういったきちんとしたプロフェッショナルとしての倫理規程を備えた、そういった団体の養成というのも政策的な課題になるというふうに考えております。
  55. 大森礼子

    ○大森礼子君 ありがとうございました。
  56. 志苫裕

    志苫裕君 社会民主党の志苫です。本日は貴重な御意見ありがとうございました。  それで、お三方に共通した御意見としては、公共財の提供やサービスはまず民間にゆだねるとの御主張があるように承りましたが、その主張は、突き詰めていきますとアダム・スミスにまで行き着くように思えて、全面的に同意はできません。アダム・スミスから今日までには長い人間の歴史があるわけでありまして、人権とか公平とかの観念もこの人間社会には培われております。  それはともかくとして、御主張の根底には、公共セクターは非効率で能率の悪いものだという認識があるようですが、確かに公共セクターは融通がきかない、効率がよくない場合が多い。だが、公共サービスは融通がきき過ぎても困るのでありまして、ここに不公正とか不公平がはびこる余地が生じます。公共サービスはすぐれて社会的公正が担保されなければならないものでして、その要件を備えているのは民主的チェックが可能な公共セクターということにもなるわけでありまして、効率と公平の双方向の評価基準に盛り込まれるべきではないか。この方向は時代の背景によっても変わるものでありまして、自由権万能の十八世紀ならば別ですが、社会権が登場している今日、特に二十一世紀にかけてはむしろ公正の方にウエートが置かれるべき時代ではないかとも思いますが、いかがなものでしょうか。
  57. 山本清

    参考人山本清君) お答えいたします。  委員御指摘のとおり、私も、レジュメの三ページに書いてございますとおり、政府活動公共価値と申しますのは、当然、効率だけではございませんでして、公正であるとか信頼、安定という三つの総合的な価値観から構成されるというふうに考えております。したがいまして、公共財のサービスをすべて民間でやれというようなことは私は考えておりません。当然、三つの公共価値を満たしてなおかつ民間においてもできるという場合については、対等な競争環境のもとにおいて場合によっては民間に委託するということもあり得るというふうに考えております。
  58. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 一つは、公共が果たすべき役割がなくなるかというとそれはあり得ない話でありまして、ありとあらゆるものを全部民間でできるかというと、いろんな意味でそれにふさわしくないものはたくさんあるということであります。  基本的には公共部門がどういうサービスをどういう形で提供すべきかということについて明確な仕切りがないというのが問題であって、それをきちんと考えるべきだということで、私の関与しました官民活動分担小委員会がおととし、正確な名前は忘れましたが、官民活動分担の基準、物差しというのを出させていただいております。そういうふうな明確な考え方のもとに公共部門と民間部門の仕切りを考えていく必要があるんだろうというのが第一点であります。  もう一つは、公平とか公正の問題が非常に重要だということも私は全く同感でございます。  ただ、何が真の公平であって何が真の公正なのかということを深く考えていく必要があるんだろうと思います。地域間で全く同じように道路ができるのが公正なんだろうかということでありまして、ある地域は条件が違うので、例えば山や谷が多いので道路は少な目にしてそのほかのものに重点を置くといった形のことも当然考えられるわけですし、公平の問題に関して、例えば地域間の公平ということで仕切っていっていいものだろうか。各地域の中には豊かな人も貧しい人もいらっしゃる。本当に困っている人に対してきちんとした政策ができているんだろうかというふうなことを考える必要があるんではないかというふうに思っております。  以上です。
  59. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 先生のおっしゃるとおりに、公共財というものは公が提供しなきゃならないというふうに考えております。やはり公共財を有料化したためにある人がそれから利使用を排除されるということがあってはならないと思っております。  ただ、現在の公共事業に当たっては幾つかの問題点があることも確かではないかと思います。やはりどちらかといえば中央主導によって公共事業が行われたという結果、いわゆるばらまき型の公共投資が行われてきたんではないか、あるいは公共事業のコストが非常に高いんではないか、あるいはやはり民間的な手法というものをもう少し導入すれば効率が上がるんではないかというような問題もありますし、最後に官としての説明責任、さっきアカウンタビリティーという言葉も使われておりましたが、やはり民に対して、私ども納税者に対する説明責任が官にはあるんではないか。  このような点で幾つかのやはり問題点があるんではないかということから私どもは重点化、効率化という点を指摘させていただきました。
  60. 志苫裕

    志苫裕君 中村参考人にお伺いしますが、公共事業のコストは公共セクターよりも民間の方が低いと言い切るのも神話に近いんじゃないですか。経験的に申し上げるならば、行政や政権に最も大きく依存をするのはむしろ経済界でありまして、したがって自己責任原則を貫いてほしいとこの機会に要望を申し上げておきます。
  61. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 必ずしも公セクターと民セクターを比べて民セクターがコストが安い、低いとか言っているわけではございませんで、やはりそういうチェックをしていただきたいということを申し上げているのでございます。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 理論的には利潤を追求しない公共セクターの方が低くなるはずです。ですが、民間のコストが安いとすればその根拠なり低コストの要因は何なんでしょうか、御教示願えますか。
  63. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) やはり民で考えれば競争原理が働くということだと思います。
  64. 志苫裕

    志苫裕君 ここで論争するんじゃありませんが、競争原理は勝つ人と負ける人がおるわけでありまして、行政は負ける人もフォローしなきゃなりません。ですから、単価だけでは政策評価は不可能、不十分ではないでしょうか。
  65. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 勝つ負けるというお話ありましたが、それは社会福祉政策の問題ではないか、社会資本整備の問題ではないんじゃないかと思います。
  66. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。  それで、政策評価に当たっては費用対効果を測定する手法が用いられますが、効果を定量化することが容易なものと困難なものがあります。特に精神的な発達や要求を満たす政策というか、外部不経済にかかわるものについては評価基準を定めることは大変難しい。こういう場合には、例えば世論調査のアンケート手法などを採用することが浮かんできますけれども、そのような手法についての留意点についてできれば金本参考人、御教示願えますか。
  67. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 世論調査というふうには我々は呼んではいないんですが、最近ではそれと同じ発想で国民住民の方々に直接お聞きする、ある物の価値はどれくらい認めておられますかということをお聞きするということが時々使われております。CVM法とか仮想市場法とかというふうに呼ばれておるものがございます。  これについて、本当に今どういうふうにすればきちんとした評価が出てくるのかということについて必ずしもすべて明確になったというわけではございませんし、やり方によっては非常に偏った結果が出てくるということも当然考えられるわけであります。ただ、通常のそれ以外のいろんな方法ではかれない便益というのがございまして、それについて何にもなしで意思決定するかというと、何か手助けになるものはないかという発想が出てくるのは当然でありまして、そのためにこういうCVM法と呼ばれているものが使われるということが最近では結構ございます。  日本の各省庁でも評価においてこういうものをどうやって使うかということをまだ御検討中であるように見ておりますけれども、これをどういうふうに使えばいいのかということについて明確なガイドラインができているわけではございません。私自身が第三者機関という話をしたときにも、そういった手法をどういった形で導入してどういうふうに使っていくかということについてガイドラインをつくる必要があるんではないかと、そういったことも一つの材料でございます。
  68. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。
  69. 井上孝

    会長井上孝君) ちょっと金本参考人に伺いますが、CVMというのは何の略ですか。
  70. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) コンティンジェント・バリュエーション・メソッドというものですが、なぜこういう名前を使うのかというのはよくわかりません。
  71. 井上孝

    会長井上孝君) わかりました。
  72. 山下芳生

    ○山下芳生君 山本参考人にお伺いいたします。  評価は基本的に評価者主観的要素が介在せざるを得ないことを認識しておく必要があるとお述べになりましたけれども、この評価者主観的要素が介在することによる弊害はどのようなものがあるのか、とりわけ行政府がみずからの政策評価する際の弊害についてわかりやすい形でお述べになっていただけますでしょうか。
  73. 山本清

    参考人山本清君) 二点ばかり事例を出してお話ししたいと思います。  最近、介護保険法案等の議論が非常に盛んでございますが、介護サービスについての政策評価ということを考えます場合に、金本参考人がおっしゃられたような、例えば費用便益分析ができない場合において、満足度でありますとかそういったニーズの調査をやる場合がございます。その場合には、当然介護サービスの受け手あるいは受益者というのがそもそもだれであるかということを特定化しないと評価はできないわけでございます。ところが、よくよく介護サービスの受益者なり顧客はだれかということを議論いたしますと、第一面に出てまいりますのは当然被介護者であります要介護人ということになるわけでございます。  実は、介護保険法案の御議論の中でも出てまいりましたように、介護の場合においては家族が非常に負担になるということでございますから、当然被介護人だけではなくて家族が受益者である。また、家族が受益者であるということは当然介護休暇等の問題がございますから、勤務先というのがひょっとすると顧客であるかもしれない。あるいは、地域のそれぞれのコミュニティーとしての助け合いということを考えると、結果的には受益者というのはコミュニティー、地域の住民であるということになるかもしれません。そうすると、評価者が受益者をどういうふうにみなすかによってまさしく評価の範囲が基本的に変わってまいります。こういったことが非常な一つのバイアスの例になります。  それともう一点は、政策評価で非常に間違われやすいのございますが、行政庁がやる、あるいは立法府がお決めになった政策は当然基本的な目的を持っているわけでございます。公共事業であれば、例えば時間を短縮するとかあるいは交通事故を減らすという当然のプラスの成果を意図しているわけでございますが、実はある政策をやるためには常に付随してマイナスの効果を伴うのだということになるわけです。ところが、往々にして、政策評価の場合に、プラス面の評価だけをして費用便益分析なり費用効果分析をやってしまう。そうすると結果に非常にバイアスがかかってしまうといったことがございます。  こういったことをチェックするために、まさしくどういった組織であっても、別の独立の人のチェックが必要であるということが政策評価のシステムとして重要になってくるというふうに私は考えております。
  74. 山下芳生

    ○山下芳生君 同じく山本参考人公共事業評価に関して少し聞きたいんですが、私は、最近は公共事業というのは、公共事業を行っても経済的に浪費になることが多い。これはもう具体的な例は枚挙にいとまがありません。苫小牧東部でありますとか、むつ小川原の大規模開発もそうでしょう。それを何とかさせないために、今先生おっしゃった費用効果分析なり費用便益分析があるんだと思うんですが、先ほどおっしゃったように、マイナスの面もあるし、物差しのとり方次第でこれは効果があるんだ、むだじゃないんだというふうに結果を変えることもできる。しかし、幾つかの事業は、特に大型プロジェクトというのは浪費に終わっているものが実際は多い。  それからもう一つ、そう言いながら、しかし景気対策として公共事業が今政府によって、特に不況期に追加されることが往々にしてあります。ただ、景気対策として見る場合、経済波及効果が実際公共事業はどの程度あるのか、あるいは公共事業以外の分野の経済効果というのはどの程度あるのかということを、これは厳密に比較するということがなかなかやられていないというふうに私は思います。  ある研究者の方の論文を読みますと、例えば同じ一兆円を公共事業と福祉に使った場合、公共事業の経済的波及効果は二兆八千二百五十五億円、福祉の場合は二兆七千百二十億円。これは産業連関表を使った計算だと思いますが、ほとんど差がない。同時に、雇用効果を見ますと、公共事業の場合は二十万七千三百九十九人、対して福祉は二十九万四千四百六十九人。雇用効果の方はむしろ福祉の方が大きい。大体同じような検討の結果を見ましても、経済波及効果に関してはほとんど差がないし、雇用効果については福祉の方が高いというのが一般的な研究の結果であるというふうに私は理解をしているんです。  そういう点から見ますと、結局企業活動とは違って行政の最終目標というのは国民の福祉や利便、利益の向上にあるわけですから、そういう視点から見てどのような尺度、物差しを国民が求めているのか、あるいはこれからつくらなければならないのかということを探求し提起していくことが、私はとりわけ立法府のやるべき仕事の大事な一つではないかなというふうに思うんですが、公共事業評価について、今私はそれなりの考えを述べさせていただいたんですが、特に行政府に対して立法府がこの公共事業評価をやる際の先生のお考え、留意点、これからこういうのが必要じゃないかという問題提起でも結構ですが、お聞かせいただきたいと思います。
  75. 山本清

    参考人山本清君) まず、立法府がコントロールする場合に一番重要なことは、先ほども申し上げましたとおり、各主要な公共事業について評価対象になる効果、プラスマイナスを明確にするということですね。これについては評価項目に挙げなさいということです。それと、評価基準といいますか、先ほど議論になりました費用便益比がどれぐらいであればゴーのサインを出していいかということですね。これを行政庁の裁量にゆだねないということです。  だから、評価項目と最終的なゴーのサインを出す採択基準、これはまさしく立法府の主要な機能であるというふうに私は考えております。
  76. 山下芳生

    ○山下芳生君 もう一点、同じく山本先生にお願いしたいんですが、情報の提供ということも大事だと。この点で、ごく最近でも大蔵金融汚職をめぐって、接待によって金融検査がどのようにゆがめられたのか、その結果拓銀、山一の破綻にどんな影響があったのかということ、これはやはり国民の前に明らかにしなければ金融破綻に対する適切な政策というのは出し得ないと思うんですが、その検査の資料がなかなか行政府から出されません。  私は、そういう事態が現実にある中で、やはり本当の意味での第三者機関、特に立法府行政をチェックする、政策評価するという点においては、情報の開示、情報公開というものが非常に大事になってくるんではないかと思いますが、その点での先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  77. 山本清

    参考人山本清君) 公共事業等の情報提供を考える場合に一番重要な問題は、いわゆる評価結果の解釈が素人にとっては非常に難しいということなんでございます。しかも今おっしゃっておられたようにかなり専門的な要素で、例えばコンピューターをかなり使って交通量の推計等をやるものでございますから、それのチェックが正しいという前提で、例えば費用便益比の結果だけを見て、これが三とか五になっているからこれは立派な公共事業であるというふうにストレートに安心できない場合があり得るということが問題なわけでございます。  したがって、情報提供する場合において情報の内容の事前チェックと、その内容を一般の方に解釈できる一種の翻訳家のような方を介在させるようなシステムがないと、かえって間違った解釈を与える、誤解を与えた情報効果が生じる恐れがあるというふうに私は考えます。
  78. 山下芳生

    ○山下芳生君 終わります。
  79. 高橋令則

    ○高橋令則君 今回は大変御苦労さまでございます。  まず、評価の中で事前段階、つまり政策形成、予算編成の過程における評価について山本先生金本先生にお伺いしたいと思います。  私は、この事前評価というのは非常に大事だと思うんですが、これはやはり過程そのものにシステム的な評価を組み込んでおかなければ実行はできないのではないかというふうに思って見ているんです。こういったことについてどういう仕組みが必要なのか、今までもお話がございましたけれども、ちょっと踏み込んだお話をそれぞれいただきたいと思います。
  80. 山本清

    参考人山本清君) 一つの情報として申し上げたいと思うんですが、ドイツの連邦政府におきましては、いわゆる予算編成段階において事後財政監督機関でありますドイツ会計検査院の職員が計画であるとか予算の編成作業に陪席して意見を申し上げるというような制度がございます。これは余り知られていないのでございますが、積極的に発言しなくても、その場にいるということでかなり牽制効果があるという点と、事後評価にそのデータが役に立つということがございます。  したがって、予算査定作業において何らかの第三者が関与するということをシステム的に考える余地があるのではないかというふうに私は考えます。
  81. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 事前評価を行うことが必要ということは私自身もそう思っております。これをどうやって具体化していくかということが多分一番の問題なんだろうと思います。  欧米諸国においてはかなりの場合法律をつくって義務づけているということがありますが、そういう手だてが一つございます。もう一つは、場合によっては法律ではなくて、アメリカの場合ですと大統領指令というもので義務づけている。規制インパクト分析というのは実は大統領指令で義務づけられているというふうなことがございます。何らかの格好で各省庁の外から義務づけないと、一部の省庁ではやらない、あるいは何だかんだ言って五年、十年たってしまうということが起こり得るんだろうというふうに思います。したがって、政府横断的にどこかある意味で外側から義務づけるという必要があるんだろうと思います。  もう一つは、義務づけるときにその中身については物によって随分違うということでありまして、ある一つの手法で全部のものが評価できるかというとそうではないわけです。そうしますと、例えば単に法律を書いたとしても、自分勝手な方法でやって余り意味がないということになりかねないということでありまして、それを担保するためには、私が先ほどから申し上げておりますように、第三者機関のようなものが横断的に見て、いろんな意見を言っていくという必要があるのではないかと思います。  こういう第三者機関にどういう権限を持たせるかということもいろいろ難しい問題でありますが、ある意味で余り強い権限を持たせる必要は必ずしもないのではないかということを思っております。勧告権ぐらいでも、そういう情報が外に出ていきますと、結局予算国会を通さなければいけないわけですし、いろんな形で外側からの縛りは当然きいてくるんだろうというふうに思っております。
  82. 高橋令則

    ○高橋令則君 評価のやり方の一つとして、これは山本先生にお伺いしたいんです。  たしか何かの論文で伺ったような気がしましたけれども、いわゆる官庁の会計システム、これは今の単式会計原則じゃやっぱりぐあいが悪いんじゃないかというふうな趣旨の御意見があったように思ったんですけれども、その場合の違う会計システムのメリットというんですか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  83. 山本清

    参考人山本清君) 私が会計システムの発生主義化というのを主張いたしましたのは、政府企業と同じであるから、企業が採用している企業会計原則を適用すればいいという意味合いで申し上げているのではございません。これは何回も言うのでございますが、誤解されているところがございます。まさしく今回お呼びいただきました、政策評価をやるためにはいわゆる会計システムを発生主義に変えないとできないということでございます。  これをわかりやすく申し上げますと、例えば交通事故を減らす対策といたしましては当然交差点の改良というハードな事業という方法もありますし、あるいは毎年経常的に交通指導員を補強するとか、あるいは交通安全対策の教室を開くといったことがございます。  ところが、現在の官庁の現金主義会計におきますと、いわゆる交差点改良をやった年度には予算額としてなりますが、それ以降は全くゼロ円ということになりまして、ある年度にだけ出る予算と毎年出る予算というのが、コストが算定できなくなるわけです。本来の意味のコストが算定できなくなります。これを合理的に算定するためには、交差点の改良というハードな事業の効果が及ぶ期間に事業費を期間配分するという一種の費用化、そういった発生主義会計を導入しないとコストと成果を同じ基準比較できない。このために発生主義会計のメリットがあるというのが政策評価のかなめであります。  当然、それ以外にマクロ会計としての貢献というのもあるわけでございますが、今回のお呼びいただいた政策評価ではまさしくそれが可能になるという点を強調しておきたいと思います。
  84. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございます。
  85. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 二院クラブの山田です。よろしくお願いいたします。  金本参考人にお尋ねをいたします。  調査会から与えられた資料によりますと先生の論文が紹介されているわけですが、その第二部の「会計検査院によるプログラム評価 アメリカGAOから何を学ぶか」というテーマで、非常に興味深く読ませていただいたわけですが、その中の一部を僣越ですが要約して述べさせていただくわけです。  先生は、GAOは一九六〇年代に入ってプログラム評価、いわゆみ業績評価を頻繁に行うようになり、さらに、一九七三年のオイルショックはGAOが政策分析に本格的に乗り出す契機になり、一九六七年から十数年の間にGAOはプログラム評価を中心とする機関になっていった。しかし、我が国の会計検査院の活動は、合規性検査から経済性効率性検査への重点の移行は起こったが、まだプログラム評価への移行は起きていないと言える、こういうふうにお述べになっているわけであります。  我が国の会計検査院というのは元来政策官庁ではないわけであって、したがって政策評価に長じた人材の少ない会計検査院がアメリカのGAO並みに機能するということは非常に難しいところがあると思うんです。あえてアメリカ並みのGAOの機能を果たすための会計検査院はどうあったらいいのか、どうしたらその機能を得ることができるのか、組織とか権限とかあるいはいろんな問題点はあるかと思いますけれども、人材確保その他の面を含めまして御教示をいただきたいと思います。
  86. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) いろんな問題がございまして、今全部をきちんと整理できるかどうかは甚だ自信がないのでありますが、とりあえずお答えできるものだけお答えしておきたいと思います。  プログラム評価に入りますと、ある意味で基本的な問題は、黒白がきちんとつかなくなってしまう、グレーゾーンが非常に多いわけです。そういうものを会計検査院といった機関がどういう形で出していって、だれが見てどういうふうに使うのかということを考えるのがまず一番の問題なんだろうというふうに思います。アメリカのGAOを見ておりましても、プログラム評価という形のことはやってはおるのでありますが、このプログラムはこういう理由でだめだ、やめろという結論まできちんと出しているのはほとんどありません。  ですから、いろんなプログラムがどういうふうに動いているかというのをきちんと調べて、こういうメリットがあるデメリットがあるということを出しておりますけれども、最終的な結論まで出していない。もともと、いい悪いがきちんと客観的にできるというのは政策分野としては余りないというのが現状でありまして、そうならざるを得ないということを考えておく必要があるんだろうと思います。にもかかわらずアメリカのGAOが有益な役割を果たしていてあれだけの資源を投入しているというのは、それを使う人がいる、議会が基本的にはクライアント、顧客であってGAOを使っているわけで、議会が使う価値があると思っているということだと思います。  日本の場合は、制度上アメリカと違って会計検査院は別に議会に属しているわけではなくて独立的な機関であるということが難しい問題になるということでありますが、黒白はっきりしているものを出せばみんな見てくれて当然有益だというわけですが、灰色だというのを出したときにだれが見てどういうふうに使うか、そんなものを出してだれが読んでくれるかというのが多分一番の問題なんだろうということであります。黒白がちゃんとつかないものを出すというのは、組織としてはそのプロセスで当然各省庁とぶつかるわけで、ぶつかっていろんな苦労をした結果、だれも読まない、だれも使わないということになりかねないというのが一番の問題なんだろうと思っております。  私自身は、かなり暴論ではありますが、クライアントをある程度つくる必要があるんではないか。そのためには、議会側が会計検査院にこういうことを調べてほしい、わかる範囲で客観的にどうなっているかを調べてほしい、そういう要望を出してそれにこたえるというふうなことが一つの突破口になるんではないかというふうに思っております。  アメリカのGAOに関してもそういうルールが、私もお書きしていると思いますが、ある程度はっきりしておりまして、何を調べるかというのはGAOのエグゼクティブたちが会議で決めるわけですが、その際に一番重要なのは議会側から要望があるかどうか。議会側からの要望についても、国会議員一人一人が個別に出してきたものを全部引き受けているとたまりませんので、一応委員会としてまとまって要望があるものについてはほぼ原則として受けますとか、そういったふうな形。で運営をしているようであります。  プログラム評価にいくとすると、そういうふうなものを考えるというのが一番重要なのかなというふうに思っております。
  87. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 もう少し会計検査院について突っ込んだ質問をしたかったんですが、山本先生にぜひ質問したいので。  先生のレジュメの五ページに、「我が国における政策評価制度あり方」というところで、個々の政策評価は基本的にはまず行政府実施すべきだ、行政府実施されがたい評価、すなわち複数政策によりある目的を達成する総合評価政策の枠組みの妥当性の議論及び政策の代替案、改定の議論国会がすべきだ、特に六年間という長期の在任期間のメリットを有する参議院が内閣提案資料以外に独自の評価分析を踏まえて行うべきである、こうお述べになっているわけであります。全くおこがましいんですが、私も同感であるんです。理想論的に思えてしようがないわけです。  参議院の現状を見ますと、党利党略に奔走して政策を忘れたと言うとしかられちゃうかもしれませんけれども、そういう中にあって、果たしてこの実現可能性はあるのかどうか。先生の御主張のとおりにいけば私は非常に立派な参議院ができると思うんですが、さらに先生の言われるような立法府における評価を可能にするためには我々国会議員は、特に先生が期待を寄せる参議院議員はどうあるべきなのか、率直な御意見を拝聴したいわけであります。
  88. 山本清

    参考人山本清君) 私は、まさしく良識の府である参議院は可能であるというふうに考えておりましたが、非常に難しいということもありました。  今、金本参考人に対する会計検査院の話にもあったものですからそのついでといったら失礼なんでございますが、まさしく会計検査院法の一部改正によりまして、院法第三十条の二によりまして今回お招きいただきました参議院の調査会からも検査要求ができるという規定が出てきたわけでございます。  したがって、これはすべての政策についてなかなかできるのは難しゅうございますが、参議院の伝統を生かしますとかなりの政策については、委員会なり調査会の全会一致ということが得られた政策についてはぜひともこの条項を生かして、会計検査院等の独立機関の評価機能を拡充するというのが一つのあり得る方法ではないかというふうに考えております。
  89. 山田俊昭

    ○山田俊昭君 終わります。
  90. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 きょうは、本当に貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。  まず、経団連の中村参考人に伺いとうございます。  いただきました参考人資料の、先ほど図で御説明いただいた「公共事業改革の具体的方策」というところを見ていたのですけれども、大変に丁寧な政策評価のやり方が提示してあります。  そのことに関連して、今同僚議員からも多々出た、果たして行政府なり立法府なり、それから会計検査院、行政府ですが、そこで十分に政策評価が可能かどうかという部分がございまして、大胆に伺いたいんですが、評価機能というのを民間でやることが可能かどうかということについてはどのようにお考えでしょうか。
  91. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) 民間でプロジェクト評価をするというよりも、やはり立法府において公共事業評価というのは行われるべきではないかというふうに考えておりまして、それもいろいろな行政機関との協力関係を得ながら立法府においてプロジェクト評価をすべきであるというふうに考えております。  さらに、私どもが特にお願いしたいのは、そのプロセスを法制化してほしい、ある程度バインディングすることが必要ではないのかなというふうに考えております。
  92. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございます。  この国会に、建設関係基準について、多分日本では初めてだと思いますが、評価を民営化した法案が出ました。私は、確かに立法府行政府がその役を果たすことも大変大事ではありますけれども、第三者機関の部分ですとか、そういったところでもっと大胆に民営化することがむしろ透明性を確保することになるんではないかというふうにも思うものですから、もう一度その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  93. 中村芳夫

    参考人中村芳夫君) その機関の中に、例えばここにおられる金本先生とか山本先生に入っていただいて民の方からのいろいろな考えを導入していくということが必要でありますし、さらには実際に事業を行う官庁からの情報公開というものが必要だと思います。
  94. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。  次に、山本参考人に伺いたいのですが、今、中村参考人から情報公開というお話がございまして、私どもたまたまこの国会に出すために情報公開法を今つくっている最中で、もう大変苦労をしております。  適切な政策評価を行うためには必要な情報が十分に公開されることが何よりも必要なんではないか。先ほどアカウンタビリティーは単に説明責任と訳したくない、したがってアカウンタビリティーと書いているのだと、もっと懲罰を伴う重い言葉だというふうに言われて、大変感動をしたところなんですけれども、まさにアカウンタビリティー機能しない限りはきちっと政策評価もできないということで、このアカウンタビリティーについての先生のお考えをもう少し御説明いただけたらと存じます。
  95. 山本清

    参考人山本清君) アカウンタビリティーについての話をさせていただく前に、情報提供アカウンタビリティー関係についてお話ししたいと思います。  サンクションを伴う懲罰的な重い意味があるということを申し上げましたのは、要するに、情報提供を考える場合においても各行政庁情報提供すれば済む問題ではない。少なくとも情報提供した内容については適正でなきゃいけないし、うそを言ってはいけない。したがって、まさしく中村参考人お話しになりましたようなイギリスの市民憲章、シチズンズチャーター等におきましてイギリスでなされている情報公開というのは、例えば地方自治体等におきますパフォーマンスインディケーター、業績指標の公開に当たっては事前にいわゆる監査人のチェックを受けて、その提供した情報内容が適正なものである、真実なものであるということをチェックして初めてオープンにするということがございます。したがって、この点が実は我が国における情報提供なり情報開示制度において少し抜けているのではないかというのがございます。  これは、間違いがあれば責任を伴うという意味でまさしくアカウンタビリティーということも関連するわけでございますものですから、あえて最初に申し上げました。  それで、アカウンタビリティー概念については、これは非常に時間が必要でございますので、レジュメに少し書かせていただきましたが、巷間言われますのは、どうも資源管理効率性であるとか有効性だけの意味合いでアカウンタビリティーが用いられておるのでございますが、実は司法的な意味アカウンタビリティーもありますし、あるいはこの調査会の各委員の先生方の政治的なアカウンタビリティーというのもあるわけでございます。  したがって、どうも最近は行政庁アカウンタビリティーだけが強調されるわけでございますが、当然国権の最高機関である国会国民に対してもアカウンタブルであるという意味合いを少し申し上げておきたいと思います。
  96. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。  今、情報公開法は行政情報の公開だけを求めているのですが、確かにおっしゃるように国会の情報公開、そして司法の情報公開も必要かなというふうに強くそこは思っております。  そして、山本参考人中村参考人から法制化の必要性ということも御指摘がございましたけれども、最後金本参考人に伺いたいのですが、その関連で統一的ガイドラインの必要性を指摘されました。例としてアメリカのナショナル・パフォーマンス・レビューをお挙げになったんですが、その政治活動におけるパフォーマンスが最もポイントになるということはどういうような根拠でおっしゃっていらっしゃるのか、そこを伺わせていただけますか。
  97. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) 非常に単純な話でありまして、今までいろんなものの情報が当然出ているわけですが、ある橋をつくったらコストが幾らであるというのは当然予算関係で出ているわけです。ただ、その橋をつくったことによってどういう成果があったか、あるいはどういう成果を見込んでつくっているかということについてはほとんどの場合余り外に出ていないということがあります。政府活動についてもどういう成果を見込んでいるか、どういう成果があったのかということを考える必要があるという一種の発想の転換をするということであります。その際に、今までなかったことですから、どういう形で成果を見ていくか、どういう形で成果を定義していくかというふうなことについてある程度統一的なガイドラインをつくっておかないと動いていかないというふうなことで、ここではアメリカの例を挙げておりますが、イギリスですとシチズンズチャーターといった格好で成果のはかり方等についてある種のガイドラインがあるというふうなことであります。  ただ、実際には非常に難しい。ことでありまして、どの国でもそれほど我々が見てすごいことをやっているわけではない。ただ、すごくないものでもそういうふうに発想を転換することによって行政内部の行動様式が随分変わるということがあるんだということだと思います。
  98. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 あと私三十秒ぐらいあるかなと思いながら手を挙げさせていただきましたが、イギリスとアメリカとではその成果、パフォーマンスについてはどちらの方が進んでいるんでしょうか。
  99. 金本良嗣

    参考人金本良嗣君) イギリスの方が全体としては進んでいるように見受けられます。  アメリカの場合はゴア副大統領を中心にかなりトップダウンで非常に大きな形で始まりましたが、具体的な成果という面ではまだこれからなのかなという感じがしております。イギリスの方はそれより大分前からやっておりまして、具体的な成果としてはいろんなものがあるという感じでおります。ただ、これについては多分山本参考人の方がもっと詳しいのではないかと思います。
  100. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  101. 井上孝

    会長井上孝君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人皆様には、長時間にわたり有益な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じております。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会