運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-04-23 第142回国会 参議院 交通・情報通信委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月二十三日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     上田耕一郎君  四月二十二日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     渕上 貞雄君  四月二十三日     辞任         補欠選任      渕上 貞雄君     瀬谷 英行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         川橋 幸子君     理 事                 景山俊太郎君                 亀谷 博昭君                 陣内 孝雄君                 寺崎 昭久君                 但馬 久美君     委 員                 加藤 紀文君                 高木 正明君                 保坂 三蔵君                 溝手 顕正君                 守住 有信君                 山本 一太君                 中尾 則幸君                 松前 達郎君                 及川 一夫君                 瀬谷 英行君                 上田耕一郎君                 筆坂 秀世君                 戸田 邦司君    国務大臣        運 輸 大 臣  藤井 孝男君        郵 政 大 臣  自見庄三郎君    政府委員        大蔵省主計局次        長        寺澤 辰麿君        運輸省運輸政策        局長       土井 勝二君        運輸省海上交通        局長       岩村  敬君        運輸省海上技術        安全局長     山本  孝君        運輸省港湾局長  木本 英明君        海上保安庁長官  相原  力君        郵政大臣官房総        務審議官     濱田 弘二君        郵政省通信政策        局長       木村  強君        郵政省電気通信        局長       谷  公士君        郵政省放送行政        局長       品川 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        舘野 忠男君    説明員        文部省教育助成        局財務課長    加茂川幸夫君    参考人        通信放送機構        理事長      森本 哲夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出) ○特定公共電気通信システム開発関連技術に関す  る研究開発推進に関する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) ただいまから交通情報通信委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、渕上貞雄さんが委員辞任され、その補欠として瀬谷英行さんが選任されました。     —————————————
  3. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案の審査のため、本日、参考人として通信放送機構理事長森本哲夫さんの出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 中尾則幸

    中尾則幸君 おはようございます。民主党・新緑風会の中尾でございます。  今回の海防法法律改正は、言うまでもなく昨年一月のロシアのタンカーナホトカ号事故、さらには七月のダイヤモンドグレース号事故等々、日本近海における油防除体制をいかに迅速にするかという目的で改正がなされたと思っております。  さて、昨年私は当委員会ナホトカ号に関して油防除体制あり方政府危機管理あり方等質問をさせていただきました。今回の海洋汚染防止法改正にも大変かかわる問題でございますので、昨年のナホトカ号政府対応策がいかにおくれていたか等々について若干振り返ってみたいと思います。  ナホトカ号事故は、御存じのように昨年の一月二日発生いたしました。それで一月五日になって、海防法業務等が明記されている海上災害防止センターが当法律第四十二条の三十六第一項第二号に基づいて船主からの委託業務を発動しております。これは原因者からの委託ということで、二号業務と言うそうでございます。さらには、事故発生から十二日たってようやく海上保安庁長官海上災害防止センターに対して当法律第四十二条の三十七に基づいて緊急的措置指示してございます。  この四十二条の三十七というのは一号業務に当たるそうでございますが、ちょっと読んでみます。「海上保安庁長官は、緊急に排出特定油防除のための措置を講ずる必要がある場合において、」この緊急措置を「指示することができる。」というふうになっております。  しかし、当時のことを振り返ってみますと、もう既に事故発生から五日目の一月七日、私も現場に行ってまいりましたが、福井県の三国町に油が漂着しております。その後、加賀海岸等々で油汚染が大変深刻な状態にございました。こんな状態の中で、なぜ事故後十二日もたった一月十四日にいわゆる一号業務が発動されたのか。私は、これは重大な事故を目の当たりにしながら海上災害防止センター役割である海上災害発生及び拡大の防止という認識に欠けていたのではないかというふうに思っております。  このほか、私は、二月二十日の委員会でございますが、なぜ災害対策本部の設置がおくれたのかということも指摘させていただきました。つまり、ナホトカ号事故関係省庁連絡会議、これは十八省庁から成っておりますが、開催したのが一月六日月曜日、それから一月十日金曜日になってようやく運輸大臣本部長とする災害対策本部を設けたということでございます。  さて、こうした指摘の中で、私なりに当時の海防法をじっくり読ませていただきました。これは法律欠陥があるのではないかという指摘をさせていただきました。こうした指摘に対して、当時の海上保安庁長官はこのように答えております。一月五日に船主センターとの間に正式契約ができた、これが委託業務である。つまり、原因者下ある船主防除するというのはこれはもう当たり前のことですが、ようやく一月五日になって船主との間に正式契約ができたということでございます。  じゃ、なぜ一月十四日になったのかということについて、当時の海上保安庁長官は私の質問に対して、法律の不備ということを明確にはお答えいただけませんでした。しかし、この海上災害防止センターというのは、言うまでもなく海防法に明記されている任務、役割を負っているわけでございますが、こういうふうに緊急出動ができないような法律欠陥がどこにあるか、海防法見直しも必要でないかと私は指摘いたしました。  この指摘に対して、当時の古賀運輸大臣はこう答弁してございます。「今御指摘いただいておりますこの海防法、確かに原因者による防除措置を基本といたしておりますが、今回のような事故を考えた場合に、」「相手国によってはなかなか我々が期待するどおりのことをやっていただけない。こういうことを踏まえますと、やはりこうした見直しという観点からも検討する必要はある」とお答えいただきました。恐らくこうした質疑を通してこの海防法改正に至ったということは、去年の委員会大臣が約束していただきました見直しに早速着手されたということについては私は大変敬意を表するものでございます。  それでは、今回の法改正でこうした問題点は具体的にどう改善されるのか、まず簡潔に運輸大臣からお答えいただきたいと思います。
  7. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 詳しくは政府委員の方、海上保安庁長官の方から申し上げたいと思います。  今回の改正によりまして、今御指摘ありました原因者側防除義務の有無にかかわらずセンターに対して必要な措置指示することができる、こういうことにいたしたものであります。これによりまして、ナホトカ号事故のような領海外において外国船舶から大規模油流出事故が起こった場合におきましても、より迅速、的確な防除体制整備が図られるものと認識をいたしているところでございます。
  8. 相原力

    政府委員相原力君) 補足して御説明をさせていただきます。  ただいま中尾先生から御指摘があったとおりでございまして、昨年の二月二十日に運輸委員会におきまして先生から御指摘をいただいた。私どもナホトカ号教訓、それから昨年七月二日のダイヤモンドグレース号教訓を生かして、即応体制をいかにするかということでいろいろ検討を行ってまいったわけでございます。  なお、先生の御質問の中で、一月二日に発生したのになぜ指示がおくれたかという観点でございます。  これは当時の長官もお答えしているので繰り返しになるかとも思いますが、当時の事情といたしましては、先生指摘ございましたように、一月五日、この時点ではまだ三国沖約六十キロメートルの外に船首部が浮流していたわけでございますが、この一月五日の時点では、先生指摘の二号業務が既にナホトカ号の方とセンターの方で契約ができていたということでございます。  それで、センター海上保安庁長官指示をしたのは十四日になったわけでございますが、これにつきましては、三国に船首部が漂着したのが一月七日の時点でございますが、非常に不安定な状態船首部が漂着したということで、場合によっては船首部から油が大量に流出するおそれもある。その撤去については技術上非常に難しい問題がございまして、そういう観点での、潜水調査によって抜き取り措置をどういうふうにしたらいいかというような検討が必要である、あるいは専門家により工法の検討も必要である、あるいは関係自治体との調整も必要である、こういうようなことを行った上でセンター指示する必要があるということで、結果的に十四日に指示をしたということでございます。  そういう状況でございますが、法律上の問題としては、先生指摘のとおり、あるいは大臣からも御説明したとおりでございまして、領海外にある外国船舶については現行法では海上保安庁長官センターに対する指示ができないようになっておりますので、今回、即応体制を十分にしようという観点から、領海外における外国船舶についても海上保安庁長官センターに対して措置をするように指示することができるというような改正を盛り込みたいということで御審議をお願いしているところでございます。
  9. 中尾則幸

    中尾則幸君 今の説明でもありましたが、領海外で起こったので現海防法では手出しができない、こういうことなんですね。よくよく読みましたら、現海防法の三十九条三項の縛りがあるということであります。ですから、当時の海上保安庁長官の答弁も、三国沖に着いた船首をいろいろ調査して、これでは船主に任せては大変なことになるということでようやく指示業務を出したというふうに答えでございます。長々と申し上げません。  それでは、もう一度確認したいんですが、この法改正が成りましたら、例えば十二日後ということは全くなく直ちにこれは油防除体制海上災害防止センター海上保安庁長官指示できる、こういうふうに理解してよろしいですか、今回の法律改正では。
  10. 相原力

    政府委員相原力君) 海上保安庁長官指示できる業務、いわゆる一号業務でございますが、これは法律要件がございまして、船舶所有者等油防除措置を講ずべきことを命じてもその措置を講じていない場合、または措置を講ずべきことを命ずるいとまがないと認められる場合に長官センターに対して指示できるということになっておりますので、そういう要件に合致する限り直ちに指示することは可能でございます。また、そういう状況においては適切な、速やかな指示を行うつもりでございます。
  11. 中尾則幸

    中尾則幸君 それでは、原因者からの委託により行う防除措置、先ほど言った二号業務海上保安庁長官指示により行う一号業務がございますが、状況によっては一号業務の方が先行するということもあり得るわけですか、長官
  12. 相原力

    政府委員相原力君) 先ほどお答え申し上げましたように、一定要件がございまして、緊急に防除措置を講ずる必要がある場合で防除措置を講じていないと認められるとき、あるいは講ずることを命ずるいとまがないと認められるときに適用されるものでございます。したがって、こういう要件に該当する場合には、いわゆる二号業務契約の前であっても適用される場合がございます。また、そういう場合には速やかに指示をするつもりでございます。
  13. 中尾則幸

    中尾則幸君 今回の法改正は、ああいうナホトカ号等々の事故があって、いろいろ海防法はそろえておったんですけれどもなかなか機能しない場合もあったということで、今回の法改正で一段と迅速な防除体制ができるかなと私は思っております。  次でございますが、領海外外国船舶ナホトカ号のように油流出事故を起こした場合に、費用請求の問題をお伺いしたいと思いますが、補償についてはどうなっているか、費用請求についてはどうなっているか、お答えください。
  14. 相原力

    政府委員相原力君) 一般的に費用請求につきましては、油タンカーの場合とそれ以外の船舶の場合と場合分けをして法律上も考えているところでございます。  油タンカー流出事故につきましては、発生した汚染による損害賠償を保障する国際的な制度が確立されておりまして、油濁の条約があるわけでございますが、我が国においては油濁損害賠償保障法が国内法化されております。これに基づきまして、防除措置が相当の措置に要する費用、要するに適切な措置に要する費用と認められれば、国際油濁補償基金という国際的な基金がございますが、そういうところから補償がなされることになっております。  一方、油タンカー以外の船舶貨物船等から油が流出した場合の防除措置費用請求についてでございますが、これは海洋汚染防止法につきましては現在、海上保安庁、そして海上災害防止センターについてはその補償請求についての明確な規定が設けられておりますが、それ以外についてははっきりと書かれておりません。今般、原因者負担の原則の観点から、関係行政機関に対して海上保安庁長官出動の要請をするという規定改正案でお願いしているわけでございますが、そういう場合、関係行政機関等防除のために要した費用等についても原因者側請求できることを法令上明記するということでお願いをしているところでございます。
  15. 中尾則幸

    中尾則幸君 ナホトカ号問題点を振り返ってみたんですが、補償問題についてちょっと一点伺いたいんです。  関係団体あるいは地方自治体などから出されている、今長官から御説明のありました国際油濁補償基金への補償請求額が報道によりますと三百億円を超えておると。御存じのように補償限度額が二百三十一億円となっておりまして、限度額を七十五億円以上上回っているということでございます。  基金査定については今なおいつ終了するかはわからないということでございますが、自治体あるいは旅館業者漁業者等々いろいろ大変な負担を強いられてきたわけでございますけれども、政府としてこういった補償あるいは支援措置についてどのように取り組んでこられたのか、今後どうするのか、一点お答え願いたいと思います。
  16. 岩村敬

    政府委員岩村敬君) 先生指摘のとおり、今回の油の流出事故、非常に油濁の損害額が大きいということで、国際油濁補償基金の方で最終的な補償をするという段取りになっております。  そこで、今御指摘のとおり、基金に対しては三百十四億円の補償請求が出ておるところでございます。ただ、この補償請求につきましては、国際油濁補償基金被害者との間で交渉をして最終的に民事的に額を決めていくということになります。そういうことで時間がかかっておるわけでございますが、被害者事情も考慮いたしまして既に補償金の一部として四十五億円をお支払いしたというふうに承知をいたしておるところでございます。  それから、これが最終的にどう、いつごろ決着するんだというお尋ねだと思いますが、この点については、今申し上げたように、油濁補償基金被害者の方といろいろ交渉を進めておるわけで、さらにそこに保険会社査定作業等が入っておるわけでございます。ただ、この査定作業自体については民事上の手続で進んでまいりますので、その終了めどについてははっきりとしたことを申し上げられないわけでございますが、我々の情報では、基金事務局情報として、ことしの夏ごろまでにはというようなことを福井県知事の方にお話をしたという情報承知をしておるところでございます。
  17. 中尾則幸

    中尾則幸君 政府としても昨年の委員会でもいろいろお約束いただきまして、でき得る限りの支援をとらせていただくということについて、今後ともぜひともお願い申し上げたいと思っております。  続いて、昨年の七月二日、東京湾で起きました大型タンカーダイヤモンドグレース号事故に関して何点か御質問申し上げます。  このダイヤモンドグレース号事故発生の直後に迅速に災害対策本部を設けたというのは、私はナホトカ号教訓が生かされていたなと。それで、油の流出量、いろいろ報道されていました。油の流出量を過大に見積もったんじゃないかと。私は、結果的に小さければ問題はない、少なくとも大災害を前提とした取り組みについてはそう問題はなかったんじゃないか。小さく見積もって大きな災害に対処するよりも、その点については、取り組みについてはそう間違ってはいなかったんじゃないかと私は思っております。  ただ一つ、いろいろ指摘されている中で、オイルフェンス等防除資機材がなかなか集まらなかったということが指摘されております。確かに民間の方々の応援も得たり、それから輸送ルートをどうするかということもこれありで、簡単にはいかないと思うんですが、これらの反省に立って今運輸省としてはどのような対策をとっておられるのか、簡単に御説明願います。
  18. 相原力

    政府委員相原力君) お答え申し上げます。  ただいま中尾先生から御指摘がありましたとおり、ダイヤモンドグレース号事故対応につきましても、私どもいろいろ反省点があろうかと思っております。それに対応して適切な措置を講じたいというふうに考えているところでございます。  東京湾につきましては、従来から防除体制強化を図ってきたわけでございまして、ダイヤモンドグレース号事故に際しましてもできる限りの対応を図ったつもりでございましたが、非常に関係者も多数であるということ等から、結果的に対応が我々が当初やらなければならないと考えている基準からしてもなかなか速やかにはできなかったという問題はあったかと思います。  こういうことを反省材料教訓にいたしまして、海上保安庁といたしましても、事故後直ちに、全国の管区海上保安本部に対しまして、防除資機材配備状況等について把握を徹底するように改めて指示を行いました。  また、各管区本部におきましては、特に資機材についての配備状況とか性能限界あるいは使用条件等を明確に把握すること、そして資機材輸送方法あるいは作業船等の必要な体制を確認して、これらをリストに整理して、事故発生した場合には迅速に対応が図られるように体制を整えたところでございます。  それから、特に東京湾のように多数の関係機関への情報伝達を必要とするような場合には、速やかな連絡ができるように連絡体制見直しまして、一斉に伝達できるような体制整備も図ったところでございます。  あるいは、関係機関、特に国の関係機関地方自治体関係民間団体等から成ります排出油防除のための協議会というのがございますが、これを東京湾で一本化するとか、あるいは対象海域を広域化するというようなこともやっているところでございます。  東京湾におきましては、特に油流出事故を想定したマニュアルに基づきまして、情報伝達あるいは資機材の動員を含む大規模な訓練を昨年の十二月にも実施したところでございまして、今後とも、関係者の連携を強めて迅速な対応が図られるように努めてまいりたいというふうに思っております。
  19. 中尾則幸

    中尾則幸君 全国的に防除資機材状況把握あるいは輸送ルート確保等、ぜひとも現実に即応した体制で取り組んでいただきたいと思っております。  ダイヤモンドグレース号についてもう一点お尋ね申し上げます。  ダイヤモンドグレース号原油流出事故、これは日本一のタンカー銀座と言われている東京湾周辺海域で起きたわけでございます。事故原因は、海難審判の裁決が十二月二十五日に出されて、水先案内人には業務停止一カ月、船長は罪は不問に付されたということでございます。  いずれにしても、船長水先案内人操船ミスではないかと言われておりますけれども、東京湾に入る難所と言われている中ノ瀬航路付近ではこれまでもたびたび事故が起きております。航路安全確保が大きな問題ではないかと思っております。  私は現場海上には実際行っていないんですが、中ノ瀬航路は、今回のような事故を避けるために、西の端にA、B、Cと三つのブイを浮かべておって、パイロットがこのブイを右に見ながら五百メートルの安全距離を保って航行するというふうになっておるようでございます。水深は所によって十二、三メートルという非常に浅いところがあるというふうにも指摘されております。  運輸省に伺いたいんですが、この中ノ瀬航路での事故を未然に防止するためにも、航路安全確保というのは大事じゃないかと思っておりますが、どんな対策を立てているのか。聞くところによるとしゅんせつ計画もあったやに聞いておりますけれども、航路安全対策についての取り組みを簡単に御説明願います。
  20. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) ただいまの中ノ瀬航路に関連する航路安全確保対策でございますが、運輸省では、このダイヤモンドグレース号事故の直後に、昨年の七月に、海上保安庁長官あるいは関係局長から成る東京湾等輻輳海域における大型タンカー輸送安全対策に関する検討委員会を直ちに省内に設けまして、ただいまの中ノ瀬の問題も含めまして事故再発防止策及び油防除体制強化について検討いたしまして、本年一月に報告書を取りまとめてございます。  その中で、当面の施策と今後の施策、大きく言うと短期、中長期と二つ含まれるかと思いますが、当面の施策といたしましては、東京湾航行経路指導海上保安庁におきまして徹底をする、先生も今お話しになりました灯浮標を結んだ線から一定距離を離して航行するといったような指導を徹底するということと、それから同じく海上保安庁東京湾海上交通センターにおける監視指導強化する、こういった航行安全対策を講じてございます。また、当然、日本パイロット協会に対しましても、事故再発防止について指導をするということでございます。また、十年度の予算におきまして、灯浮標大型化等によりまして東京湾における航路標識視認性を向上させるという措置も実施する予定でございます。  それから、中長期的には、先生も今お触れになりましたけれども、中ノ瀬航路のしゅんせつ工事、これを検討し実施してまいりたい。また、航海用電子海図の整備、普及なども推進していくということを検討しております。このしゅんせつ工事につきましては、漁業関係者関係者がたくさんおられますので、それらの関係者との調整も鋭意進めてまいりたいというふうに考えてございます。
  21. 中尾則幸

    中尾則幸君 しゅんせつといっても漁業者との関係がありまして、そこら辺は十分に配慮しながらいろいろな角度から検討していただきたいなと思っております。  油流出事故対策は、航路の問題だとか今の法整備の問題、いろいろありますけれども、一つには船体構造がほとんどの船がいわゆるシングルハル、一重底であるわけです。ダブルハルになれば問題はないんですが、なかなか進まないということでございます。  運輸省は、こうした老朽船、ナホトカ号もそうであったわけですけれども、老朽船排除に向けてPSC、ポートステートコントロールの強化をIMO、国際海事機関に呼びかけておりますけれども、具体的にどんなふうに取り組んでいらっしゃるのか、お聞かせ願います。
  22. 山本孝

    政府委員山本孝君) ポートステートコントロールの強化の件でございますが、先生お尋ねのとおり、我が国は昨年五月にPSCの強化につきまして提案を行っております。今後、この提案は具体的実施の方向に向けて鋭意検討が進められることになっております。  現在の国際的な枠組みでは、船舶の安全性そのものは一義的には旗国、その登録国が担保する責任を有しておりますので、この提案におきましては、ポートステートコントロールで船体構造に問題があるというふうにされました船舶について、通報を受けました旗国が一定期間内に是正措置を講じ、その旨をIMOに通報することとする制度を導入すべく提案をしているところでございます。  この提案は、さらに本年六月に、関係の旗国小委員会というのがございまして、そこで審議が深められることになっております。我が国といたしましては、その早期の実現に鋭意努力をしてまいりたいと思っております。  このほか、ポートステートコントロールは、一国のみ、我が国のみが一国のみでやってもなかなかその実効が上がりにくいところもございますので、既にこれにつきましてはアジア太平洋地域におきましてポートステートコントロールに関します連携、協力を図るという趣旨で関係国の一つの集まりをつくっておるところでございますが、ほかにも欧州とか米州とか、それぞれの地域にございますので、こういったところがまたさらにグループ同士でも連携を深める必要がございますので、本年三月に欧州大西洋地区とアジア太平洋地域の各国のポートステートコントロールの強化について関係閣僚会議が持たれまして、そこでこのポートステートコントロールを一層強化していく旨の共同宣言が行われておるところでございます。
  23. 中尾則幸

    中尾則幸君 海洋国日本の立場として運輸省が積極的にリーダーシップをとっていく、PSCの強化に向けてIMOを通じてやっていくということは、私は大変日本の果たす役割として大事じゃないかなと思ってございますので、ぜひとも国際会議の場においてしっかりとした対策を提言していただきたいと思っております。  時間も余りありませんが、今もお話ししましたタンカーのダブルハル化について若干御質問申し上げます。  IMOは、油流出事故防止策として、九三年七月六日以降に建造契約を結んだタンカー、船齢二十五年以上のタンカーなどにダブルハル化を義務づけておると思っております。  ところで、日本が事実上所有しているタンカー、これは二百二十隻あるそうでございますが、この状況、それから今後の取り組み、あるいは世界各国の一万トン以上のタンカーのダブルハル化はどうなっているのか、これについてお答え願います。
  24. 岩村敬

    政府委員岩村敬君) ちょっと順序が逆になるかもしれませんが、まず、世界でどれだけダブルハル化が進んでいるかということからお答えを申し上げたいと思います。  一九九七年七月現在、昨年七月現在でございますが、一万載貨重量トン、すなわち一万デッドウエートトン以上の外航油タンカーの合計の隻数は三千百十一隻ございます。そのうちダブルハルとなっておるものが五百二隻、率で申しますと全体の一六%がダブルハル化をしておるわけでございます。  一方、我が国の商船隊のやはり一万デッドウエートトン以上の外航油タンカーでございますが、先生今二百二十隻とおっしゃいましたけれども、正確には二百十九隻でございます。そして、そのうちダブルハルタンカーは四十二隻、全体の一九%を占めておるところでございます。  ただ、今御指摘いただいたように、なかなかこれが進まないじゃないかという点があるわけでございますが、一つには、日本の商船隊の船につきましては比較的船齢が若い船が多うございまして、なかなか代替建造の時期が来ないということもありまして、このまま放置しておればなかなか進みにくいという、日本についてはそういう状況にございます。  したがいまして、昨年の事故の経験も踏まえまして、本年度より財政投融資計画で開発銀行によります融資制度を拡充いたしまして、二重構造タンカーに対する融資比率を五〇%から六〇%に拡大する、また税制改正において特別償却制度を外航の二重構造タンカーにつきまして認めることとし、一九%の特別償却が認められたところでございます。
  25. 中尾則幸

    中尾則幸君 もう残り一分しかありません。  最後に、運輸大臣に伺いたいんですが、今の二重底の問題、これは船によって二十億から四十億ぐらい改造費がかかるという。あるいは税制の問題点からもいろいろ優遇措置等も講じていただきたいと思っています。この法律改正を契機に、油汚染防除に対する運輸大臣の決意を一言伺って、私の質問を終わります。
  26. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 今回のナホトカ号事故を通じまして、私どもはいろんな教訓を得たと思います。そして、昨年のこの委員会におきましても、また今般におきましても、それぞれの先生方、委員各位からいろんな御指摘があったわけであります。  言ってみますと、我が国というのは非常に資源の乏しい国でございますから、とりわけ油、石油、化石燃料油というものは九九・八%外国から輸入して成り立っておる。言いかえれば、日本という国はまさに油の上に浮かんでいる国と言っても過言ではないんではないか。  そういうことから考えますと、今般のナホトカ号あるいはダイヤモンドグレース号事故というものは、常にそうした危険と背中合わせに我々は生活している。そういうことを踏まえますと、今般のこの法改正において万全を期しておりますけれども、今後ともなお一層危機管理、これはこうした油等の流出による災害はもとよりでありますけれども、振り返ってみますと、日本の場合には雲仙・普賢岳の火山の噴火による大災害、あるいは台風による大災害、いわゆる地震等による阪神・淡路大震災等々、常にそういった危機とまさに隣り合わせで生活している中で、やはり海洋国家として宿命的な存在である我が国、そうした中で運輸行政の基本である安全で安心して暮らせる運輸行政を目指すためにも、今回の法改正で万全と私は言い切れるかどうか、そこまでの自信は持ち得ておりませんけれども、より一層的確な対応はとれる体制ができたのではないかなと、このように思っているところでございます。
  27. 但馬久美

    ○但馬久美君 公明の但馬久美でございます。  今の大臣の決意を伺っておりまして、本当にいよいよこの日本が海洋国として責任がある、またこれから担っていかなくてはならない時代が来ていると思います。そういう中で質問させていただきます。  私自身も、昨年の一月のナホトカ号流出事故現場に行かせていただきました。当時の率直な思いは、まず、冬の日本海でやっぱり荒れ狂っている、そしてまたいつもお天気がどんよりしたああいう中でのあの事故でありました。現場を見ておりますと、自衛隊の方々が本当に首まで水につかって油の防除の作業に携わっていらっしゃったわけなんです。そしてまた住民の方々、またボランティアの方々がひしゃくで油をすくって、バケツに入れて、そのバケツからまたドラム缶へと、あの作業を一日見ておりまして、本当に寒い中で、この文明が発達した中でああいう形でしか油の防除ができなかったのかと。当時まだまだ混乱していた状態のところで、私も一日だったんですけれども、行かせていただいて手伝わせていただいた部分もありましたけれども、そういう中で今回、このナホトカ号流出事故を契機にこの法律の一部を改正することになりました。再発防止のためにどのような対策を講じてこられたのか、その点からお伺いしたいと思います。  この油防除作業において、人員あるいはまた船舶の作業の効率面の悪かった部分、そしてまた作業機器の操作あるいはメンテナンスになれていなかった、そしてまた苦労された部分、さらにロシアやシンガポールからもいろいろ助けをいただいて、その方々、メンバーとの意思疎通や共回生活また共同作業、そういうものがうまくいかなかった部分、また各自治体の作業もばらばらで統一された作業の手順がなかった点などが指摘されております。これらはみんな緊急時の対応計画の不備が問われているのではないか、いわゆる統一された国家の危機管理対策が明らかに無視されていた悲劇であったような気がいたします。この点どう考えていらっしゃるのか、どう対応されてこられたのか、まずお伺いいたします。
  28. 相原力

    政府委員相原力君) ただいま但馬先生から御指摘があったとおり、昨年一月二日のナホトカ号事故への対応、これは私ども、日本海側の百キロ以上の外洋で、特に冬場大変気象条件が厳しいところで、事故が起こったときには六メートル以上も高い波があったというそういうような状況下での大規模な油流出災害、これへの対応が非常におくれていたというのは率直に言って非常に反省しているところでございます。それから、ソフト面におきましてもいろいろな反省材料がございました。  これらを教訓に適切な対策を講じていく必要があるということで、ナホトカ号事故直後、政府でも関係閣僚会議も設けられました。また、運輸省でも運輸技術審議会等々の場でいろいろな検討が行われたところでございます。  政府全体といたしましては、昨年六月に防災基本計画の見直しを行いました。また、十二月には油流出事故に対するいわゆる国家的緊急時計画を全面的に改定いたしまして、関係行政機関等の具体的な役割分担あるいは連携の強化等々、先ほど但馬先生から御指摘がありました点を含めまして、改めて明確にしたところでございます。  海上保安庁といたしましては、関係行政機関等とも十分連携を図って適切に対応を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。  具体的に少し申し上げますと、先ほど油回収の方法がひしゃくですくっている非常に原始的な方法というような御指摘もございましたが、平成九年度の補正予算と平成十年度予算におきまして、外洋においても対応可能な大型油回収装置の整備とか、あるいは大規模油流出事故対応すべく必要な防除資機材整備、特に高粘度の油に対応できるような資機材整備も図っております。また、これは運輸省の港湾局の予算でございますが、平成十年度予算において新たな大型のしゅんせつ兼油回収船の整備も図ることとしたところでございます。  また、現在御審議をいただいております海洋汚染防止法改正によりますと、領海外で外国の船舶から油の流出があった場合にも海上災害防止センターに対して防除措置の実施を指示することができるようになるなど、一層我が国の油防除体制強化されることになると考えております。  このような措置を講じまして、日本近海における油流出事故に対して、海上保安庁といたしましても的確な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
  29. 但馬久美

    ○但馬久美君 ナホトカ号油流出事故のときに各自治体の非効率な対応が浮かび上がったわけなんですけれども、現在の防災基本計画の中に海上災害対策編を追加する方向で再発防止を図ろうとするものでもありますけれども、このことによって各自治体対応においては具体的にどういう点が改善されたのでしょうか。
  30. 相原力

    政府委員相原力君) 先生指摘のとおり、昨年のナホトカ号事故が起こった時点におきましては、防災基本計画におきましても今回のような油流出災害については明確な規定がなかったわけでございます。したがいまして、自治体についてもどういう義務といいますか役割分担かという明確な規定がなかったわけでございますが、昨年六月に、先ほども申し上げましたように防災基本計画が改定されまして、そこで海上災害対策編ということで油流出災害についても規定整備したわけでございます。その中で関係機関のとるべき対応について明確化を図りました。当然、地方公共団体についても具体的な役割が明確に規定されたところでございます。  こういう防災基本計画の改定を受けまして、現在、各自治体が地域防災計画の見直しを行っております。一部は既に済んでいるところもございますが、そういう地域防災計画の中で海上災害防止に関する必要な体制整備が図られているものというふうに考えております。
  31. 但馬久美

    ○但馬久美君 地域との連携、そしてまた国と自治体あり方、今整備が整っているとおっしゃいましたけれども、その点しっかりまた見ていきたいと思っております。  次に、国家的緊急時計画の改定についてお伺いいたします。  OPRC条約、千九百九十年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約、これは平成元年三月の米国アラスカ沖での大規模流出事故を契機に採択された条約であると聞いております。    〔委員長退席、理事寺崎昭久君着席〕  この条約に基づいて平成七年の十二月十五日に策定されましたいわゆる国家的緊急時計画でありますけれども、これがナホトカ号事故では何の効果も発揮されないと一般世間から総括されておるんですけれども、先ほども話がありましたが、それを教訓に昨年の十二月に閣議決定された国家的緊急時計画の改訂版はどのように変化したのか。これは大臣にお尋ねいたします。
  32. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 今お話しありましたこれまでの平成七年十二月に閣議決定されたものは、まさにアラスカ沖における大規模油流出事故等々踏まえて国家的緊急時計画を閣議決定したものであります。しかしながら、昨年のナホトカ号事故教訓等、これは先ほど中尾委員の方にもお答え申し上げましたけれども、我々はこの事故等によりさまざまな教訓を得まして、今後のこうした緊急時における計画をもう一回総合的に見直さなきゃならないんじゃないだろうか。関係機関との緊密な連携はもとよりでありますけれども、個別的どこにどういう具体的問題があったのか、そういった点、それからさらにそのような場合の役割分担、こういったことをもっともっと明確化しなければならない、こういうことを踏まえて改定したわけであります。  今回の改定を踏まえまして、関係機関との連携のもとに的確な対応を図っていく決意でありますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、気象状況、どういう状況の中で事故発生するかによっても大きく変わります。深夜であったり、また穏やかなときであったり、あるいは日本海のあの荒海の中で起きたり、いろんなことが想定されますので、本当にその都度その都度の、事故がないことをまず我々は目指していかなきゃなりませんけれども、起きた際のその状況というものによって大きく左右されることもありますけれども、今回の閣議決定によりまして、あらゆる事態を想定した上で的確に役割分担、そして連携等々を図っていくことにより対応できる体制に改定をした、このように考えているところでございます。
  33. 但馬久美

    ○但馬久美君 細々とありがとうございました。  北西太平洋地域の海上及び沿岸環境の油濁防除や管理等に関する国連環境計画の公海行動計画会議が日本で昨年の夏に開催されたと伺っております。この加盟国は、中国、日本そして北朝鮮、韓国、ロシア及び台湾でありますけれども、この会議は、地域に発生した油流出事故に対する準備計画や対応策推進するのが使命とされております。それがどのように現在進捗しているのか、お聞かせください。
  34. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) ただいま先生お尋ねの北西太平洋地域海行動計画、NOWPAPという計画がございまして、これの根拠は、先ほど先生もお触れになりました一九九〇年のOPRC条約を踏まえてできているものでございます。それで、大きく申し上げれば日本海等の海洋環境の保全を目的といたしまして、我が国、ロシア、中国、韓国等が中心となって策定しているということでございます。  この中で、当然のことながらナホトカ号のような重油流出事故の際の対応に関して沿岸国間が協調して行動するべきだ、その行動のあり方について検討しているということでございます。  検討の一環といたしまして、先ほどのNOWPAPという行動計画に基づくフォーラム会議の第一回会合が昨年七月に我が国で開催され、また引き続き第二回会合がことしの四月十五日から十七日まで韓国で開催されております。  検討の中身といたしまして、一つは、汚染通報システムの確立、それからまた防除に関する資機材専門家等の情報の収集管理、それから環境リスク情報の収集管理、こういったことについて、鋭意これらの関係国の専門家の間で検討をしているということでございます。
  35. 但馬久美

    ○但馬久美君 日本海は本当に狭い中で、そういう各国との共通した部分と連携をとっていく部分、これは非常に大事なことだと思いますので、ぜひこの準備計画、そしてまたこの加盟国の会合は大事にしていただきたいと思います。  先ほど中尾委員からもありましたけれども、ダブルハルタンカーの改造促進についてお伺いいたします。  日本海域周辺ではダブルハルタンカーの油流出は皆無とさえ言われております。現在、IMOの規則では、シングルハルタンカーが二十五歳に達した場合はダブルハルタンカーに改造しなければならないという規定があると伺っております。日本とまた世界のダブルハルタンカーの現況はどうなっているのか、先ほど少しお話ありましたけれども、もう少しお聞かせください。  そして、その建造費用の点です。シングルハルタンカーとダブルハルタンカーの建造費用はどういう点が違うのか。新造船の場合と、またシングルハルタンカーからダブルハルタンカーにリフォームした場合、どれぐらい費用がかかるのか、お知らせください。
  36. 岩村敬

    政府委員岩村敬君) それでは最初に、ダブルハルタンカーの導入の状況について御説明させていただきたいと思います。  一九九七年七月現在、世界にございます大型の油タンカー、一万デッドウエートトン以上の外航大型タンカーにつきましては三千百十一隻ございます。そのうちダブルハルタンカーは五百二隻、全体の率で申しますと一六%ございます。  一方、我が国の商船隊で外航油タンカーは二百十九隻ございます。そのうちダブルハルタンカーは四十二隻、全体の一九%ということで、日本の場合、世界のものと比べますと現在のダブルハルタンカーの占める割合は若干高いわけでございます。  ただ、世界の外航油タンカーの平均船齢は大体十四・四歳というふうに言われております。他方、日本の方は非常に若うございまして七・五歳ということで、そういう意味で船齢が若いものですからなかなか代替をする時期に来ないといいますか、日本の場合比較的早く代替を進めているんですが、それでも今申し上げたように相当平均船齢に差がございまして、進みにくい状況にございます。  そういうことで、こういったことを踏まえた上でダブルハル化を促進させるということで、財政投融資計画でダブルハルタンカーについての融資比率を五〇%から六〇%に引き上げるとか、また税の面においても一九%の特別償却を認めることとするという改正を十年度に行ったわけでございます。  こういったこともございまして、実は今後どのくらい日本でダブルハルタンカーが建造されるかということでございますが、昨年の八月の時点で調べた段階ですと、二〇〇〇年までに全体で三十二隻つくられるという計画がございましたが、本年四月にもう一度調査をいたしましたら、四十四隻つくるということで、国がとっておりますこういう政策もダブルハルタンカーの建造を促進する意味でいささかなりともお役に立てるのではないかというふうに思っておるところでございます。  それから、船の改造の価格等々につきましては、山本局長の方からお答えします。
  37. 山本孝

    政府委員山本孝君) ただいま先生のお尋ねのダブルハルタンカーの建造コストがどうなるかという話についてお答えをいたしたいと思います。  この提案がなされました当初におきましては、それまでのシングルハルに比べると約二〇%ぐらい船価が高くなるのではないかというようなことが言われておりましたが、その後いろいろ設計の工夫とか建造方法の工夫というようなことで研究が進みまして、理論的に比較がいろいろ難しいところがございますが、現実にはそんな高いコストにならずに数%程度高いということになっているのかな、こんな感じでございますが、これもすべていわゆるタンカーの建造コストの標準的なものとして吸収されておりまして、現状ではコストの高いことが特に障害になったり問題視されたりということはございません。  なお、タンカーにおきましても市場の変動による船価の動きというのが結構ございますので、そういった変動幅の中に十分に入るような幅のコスト高でございますので、そういったこともあって、今コスト高ということが問題視されているような状況はございません。  なお、最後に加えさせていただきますと、現存船を改造する場合にはかなり高いコストになります。数十億といったようなコストがかかるということも言われておりますので、これは非常に難しいことではなかろうかと考えております。  以上です。
  38. 但馬久美

    ○但馬久美君 日本はダブルハルタンカーへの代替促進を海外に呼びかけているようですけれども、その実績はどうなんでしょうか。
  39. 山本孝

    政府委員山本孝君) 確かにダブルハルの促進につきましては、先ほど海上交通局長からの答弁にありましたように、国内的に促進措置を講じるとともに、国際的にも呼びかけを行っております。  一方、国際的にただ呼びかけるだけでいいのかという御指摘もございますが、実はこのダブルハル化ということが条約で取り決められましたのが一九九二年と割合まだ新しいことでございますし、発効しましたのが九三年の七月六日、さらに実際に適用になるのは一九九六年七月六日以降に引き渡される船ということでございますので、改正したばかりでさらに追い打ちをかけるようにまた規制を強化するというのは、なかなかこういうことは国際的には直ちには受け入れられる見通しというのは薄うございます。  したがいまして、私どもはまずダブルハルタンカーが世界のマジョリティーになる、多数派になるというふうな政策を進めることによりまして、それが達成された以後、また新たにそういう働きかけを行うというのが大変現実的であり、効果的であるのかなというふうに考えております。
  40. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。ぜひ、日本から出発していただきたい、そういうふうに思います。  運輸省ナホトカ号事故調査委員会の昨年七月三十一日の最終報告によれば、ナホトカ号の沈没原因は構造部材の老朽化によると、そしてまた船体の強度が大幅に低下していることから船体に作用した波力荷重が船体の強度を上回ったために発生した、そういうふうに判定しております。ロシアの方は沈没原因を漂流物の衝突かまたは爆発説に固執しているんですけれども。  こういう老朽化した船舶が冬の波浪の激しい海域を航行するのはあの事故を見ましても自殺行為に等しいように私は思います。この船長は遺体で福井の白浜海岸に漂着したといっております。また、この日本海沿岸の油流出で海岸の環境を一変させてしまったあの現状、その回復のために延べ七十七万人の人たちの手を必要としたわけなんです。  このように日本の近海には各国の老朽化したタンカーが行き来しております。またナホトカ号のような事故を引き起こすことが懸念されるんですけれども、国際海事機関などを通してロシアなどの老朽タンカーの取り締まりを各国に働きかけることが必要ではないか。また、先ほども話がありましたけれども、我が国でのポートステートコントロール、これをもっと強化すべきでないかと思うんですけれども、運輸省のお考えをお聞かせください。
  41. 山本孝

    政府委員山本孝君) まず、老朽化したタンカーの安全についてでございますが、確かに老朽化したタンカーはそれだけ危険に遭遇するリスクが大きいというのは事実でございますが、こういった老朽船でございましても、きちんとした手入れを的確に行いますと波の力によって折損するような状態まで至るのは極めて少ないということでございますので、まず検査を徹底して、きちっと修理を徹底するというのが一番の本筋ではございますが、こういったことをやる責任は第一番目には旗国、その登録国がやることになっております。ナホトカ号については、ロシアがこれを検査するということになっておりました。  私どもの国際的な働きかけ、安全規制の強化につきましては、したがいましてそれぞれの旗国がきちんとした検査を徹底すべきであるということをまず第一義に呼びかける必要があるということでございます。次に、こう言っておりましても、なかなか実際上それが守られない場合もありますので、そういった場合にこの船が入国した、その入国を受け入れた国の方でも検査を行う。  ただ、これは入ってきた船を検査するわけですから、検査を受けやすいような状態に準備されているわけでもございませんし、実は大変技術的には難しい面もございますが、なるたけそういった状況においても老朽船の維持管理がきちんと行われているかどうかがわかりやすくチェックがしやすくなるように、それぞれの国が検査をした場合にその船体の寸法をはかり、あるいは強度を計算したようなものをあらかじめきちんと船に政府の証明書として持たせておいて、入港国先でその持っているものと照らし合わせてその船の現状が違っているのか違っていないのか、そういうふうなチェックができるような体制に持ち込む。  そういう体制をつくればポートステートコントロールの強化も非常に徹底するのではないかというふうに考えまして、こういった提案を国際海事機関、IMOに私どもは昨年五月に行ったところでございまして、それにつきましては、本年六月に行われます関係の小委員会でそういった具体的な方法を鋭意詰めて検討することになっております。また、私どもはその早期の実現に向けて努力を続けてまいりたいと考えております。
  42. 但馬久美

    ○但馬久美君 ぜひよろしくお願いいたします。  次に、海上災害防止法によって設置されています防災組織である排出油防除協議会、排防協と言われておりますけれども、官民合同の調整防除機関として全国に設置されております。官には海上保安庁とか警察そして地方自治体など、また民には石油会社、漁業者、サルベージ会社などが加入しており、ことし九十八団体から百五団体に増加されたと伺っております。  この排防協がナホトカ号のときにどういう活動をしたのか、余りはっきりと実績がないようです。一般的に防災にかかわるマニュアルが不十分だったとも言われておりますけれども、事実はどうだったのかお聞かせください。
  43. 相原力

    政府委員相原力君) 先生指摘のように、排出油防除協議会、現在百五団体までになっているわけでございますが、構成員は国の関係機関関係自治体あるいは漁協それから関係民間企業も入っておりますが、こういう人たちの構成によりましてできている組織でございます。  ナホトカ号事故に際しましても、事故後速やかに海上保安庁からこの協議会に対して情報の伝達、そして防除活動の発動要請を行ったところでございます。この協議会の構成員も海上保安庁等と連携を図りながら、オイルフェンスを張ったりあるいは油回収作業の実施等の防除作業を実施したところでございます。  ただ、これは先ほども申し上げましたように、その時点での精いっぱいの活動をしたわけでございますが、情報の伝達にしてもあるいは実際の防除措置にいたしましてもやはりいろいろ不備な点がございました。当時においてもいわゆるマニュアル的なものはあったわけでございますが、それも見直しまして、関係機関連絡体制とか役割分担あるいは資機材配備状況等についてより一層の見直しを行って、今後とも防除体制強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  44. 但馬久美

    ○但馬久美君 協議会の防災マニュアル、本当にしっかりとしたものをつくっていただきたいと思います。  情報には伝達する情報と受ける情報がおると思うんですけれども、事故防止対策としてはこの両方の情報が不可欠だと考えます。  まず一つは、日本海近海及び太平洋の沿岸における海域状況の事前情報船舶にとってはもう欠かせません。そのためにさまざまな技術開発も必要だと思うんです。また、石油やガスなどの危険物の運搬は事前に航路などを沿岸地域に情報を提供すべきだと思いますけれども、このことは非常に大切なことだと思います。  船舶からの情報とそれから陸からの情報、そういう必要なものに対しての国際的な取り決めというか、そういうものをぜひ図っていただく。そういうことを考えているのかどうか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) 国際的な通報制度でございますが、一つは船舶交通がふくそうする海域、これは公海も含めまして、これを航行する一定の大きさまたは種類の船舶につきまして航行安全確保のための交通整理の必要から事前通報制度を実施している例はございます。これは公海上にも幾つかございます。  ただ、公海上にそういうものを設定するときは、そういう制度を行いますということについて先ほどのIMOでの採択が必要だということになっております。これはいわゆるSOLAS条約の規定に基づいてそういうことになっております。  我が国につきましては、公海については特にございませんで、現在沿岸の領海内におきましては、現実に東京湾に入出港する船舶について東京湾海上交通センターに事前に通報するという制度は行っています。  それでは、ふくそうするということが言えないような海域の問題でございますが、運輸省といたしましては、現在のところ、先ほどのOPRC条約による行動計画、これを沿岸国間で国際的に通報システムをつくっていこうということで、先ほど申し上げましたような検討を行っております。このふくそうしない海域における万一の汚染に関連する通報というのは、現時点ではそういう汚染が起こったときに直ちに通報し合うという方向で検討を進めているところでございまして、今のところ、私どもの認識では関係国もそういう認識、そういう考え方ではないかというふうに承知しております。
  46. 相原力

    政府委員相原力君) 先生の御質問の中での船舶に対する情報提供の部分について、私の方からお答えさせていただきます。  船舶、特に日本近海を航行する船舶に対しましては、海上保安庁情報を提供いたしております。これは手段といたしましては、国際VHF、超短波、それから中短波の無線電話、もう一つは文字情報で、テレックスで行く文字情報としての、ナブテックス放送と言っておりますが、こういう手段によりまして、海難情報とかあるいは地方海上警報、これは気象状況等も含めて地方海上警報、それから航行に危険なものがあるかどうかというような航行警報、こういうような海上安全情報海上保安庁が提供しているところでございます。
  47. 但馬久美

    ○但馬久美君 時間が参りました。  本当に日本は狭い航路がたくさんありますし、また、こういう事故が起こる前にまずそういう情報の充実が一番大切だと思いますので、その点もしっかりとお願いいたします。  ありがとうございました。
  48. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 社民党の瀬谷です。  今までの質疑の中で大分いろんなことがわかってまいりましたけれども、こういう事故の場合には、危険防止ということが何より必要だろうと思うんです。あらかじめこういう事故を想定してといったって、これはなかなか難しいです。例えば競馬馬だって、幾ら優勝回数が多くたって、ある程度年をとるというとそうは走れなくなる。ああいうものは外見上でわかるけれども、船体なんというのは水の中に沈んでいる部分が多いから、外見上すぐわかるというわけにはいかないと思うんですよ。  そこで、先ほどもお話がありましたけれども、東京湾の中にも危ないところがあって、それを知らせるためにはどうやって知らせるか。地面だったら交通どめにするとか標識を立てるとか、あるいは線を引くとかという方法があるけれども、海中だったらどんなものが海の底にあるんだか外から見たって我々にはわからないんです。  だから、東京湾の中に、これは東京湾だけに限らないと思いますけれども、一体どんなものがあって危険なのか、岩礁があってなかなか除去できないのか、浅瀬になっているのか、掘れば何とかなるのか、一体どうしたらいいのか、こういうものを解決するためにはどこが中心になって何をすればいいのかということをまずお聞きしたいと思うんです。
  49. 相原力

    政府委員相原力君) 瀬谷先生指摘のとおり、海はよほど透明なところは別といたしまして、海底がどうなっているかというのが海上からはわからないわけでございます。  そういう意味で、船を航行する者にとっては海図というのは本当に命と同じくらい大事なものということです。海図を見ればその海底の状況、水深がどういう状況か、あるいは浅瀬、岩礁があるのかどうか、そういうようなものがわかるために海図というものを用意しているわけでございます。  この海図につきましては、海上保安庁水路部というのがございまして、そちらでつくっているわけでございます。これは全国、日本近海をすべて測量をして海図ができておりますが、また日がたちますと、深いところであったのが川から砂が流れてきて浅瀬になるということもありますので、定期的に測量を繰り返しまして、その都度海図の方も改訂をして、船にその海図を提供して、船乗りの方はそれを見ながら安全に航行をしていただく、そういうような方策をとっているところでございます。
  50. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 こういう海上のいろいろなトラブル、事故というものは、その点では難しいと思うんです、普通だれの目にもわかるというわけにいかない点が多いと思うから。  そこで、いろいろの事故が起きた場合には、この前のナホトカ号のときは海上保安庁の巡視船というのが大変に活躍したというふうに我々は記憶しているんです。荒天の日本海で、小さな船が木の葉のように揺れるという中で作業をするというのは並々ならぬことだと思うんです。こんなときには、海上保安庁だけの方じゃなくて、例えば海上自衛隊の力もかりる。立っている者は親でも使えという言葉があるんですけれども、そういう言葉を考えるならば、受け持ちが違うとか縄張りが違うとか、そういうことを言っていないで、海上自衛隊でもそばにいる者はすぐ使ってみることも私は必要なんじゃないかなという気がするんです。だから、そういう協力関係というものを近くに求めて、そしてあらゆる手だてを尽くして災害防止するということが必要だろうと思うのであります。  船体構造の問題については、ロシアの船の場合は大分いいかげんだったと。それで後で一体原因は何かというときになって、ロシア側は一言で言うと責任回避の言い逃れのように聞こえる言い方をしているように私どもは感じるんですよ。そういうのは国が幾ら大きいからといって、やることが大ざっぱでいいというわけにいかないんですから、だからその点は厳しく注意をして、いいかげんなぼろ船をやたらと人の領海にのさばらせるということは迷惑をこうむることなんだから、そんな船はもううちの方には寄せないぞというぐらいの警告も必要だろうという気がいたします。  そういう危険予防のためのポートステートコントロール、片仮名で言われるとよくわからないんだけれども、要するにこれは船体構造強化のための安全度検査、こんな用語のように理解をするんですけれども、そう理解をしてよろしいのかどうかお伺いしたいと思います。
  51. 山本孝

    政府委員山本孝君) まず、最後のお尋ねの件から先にお答えいたします。  ポートステートコントロールというのは、確かに船体の強度が十分であるかないかということを見るということもその内容には入っておってしかるべきだと考えております。これまでは、ポートステートコントロールは目について見やすいところでもって全体を推しはかるというやり方でございますので、例えば持っております設備とか道具とか、あるいは乗っている船員の資格が本当にきちっと証書を持っているかとか、そういったようなことを見て、その見る限りにおいてうそがなければこの船は全体がいいだろうと、こういうことで、まじめにやっている船主に余り負担をかけないで実効が上がるような方法を考えておりました。  しかしながら、今回のロシアのような船にかんがみまして、実際に船体の構造自体がしっかりと管理され、維持され、修理されているのか、こういった点も見てわかるようにいろいろの工夫を国際的な約束でもって行って、それで関係の政府、つまり登録国である今回のロシアのような国がきちっと検査をしたというあかしと、この船の寸法をはかったところ、老朽しているけれどもこれだけ残っているからこれだけ丈夫であって、波でも折れない、大丈夫だと、こういうような書き物をあわせて船主に持たせてもらう。  例えばこの船が日本に入ったとしますと、それを見まして、日本の我々が行きましてポートステートコントロールをした場合に、どうも証書に書いてあるのと実際に目に見える部分の減り方が違うんではないか、書いてあるものよりずっと減っているんではないか、修理もした跡が見えない。こういう場合には、この船は疑いありということでロシアに通報をいたす、それとともに国際海事機関、IMOにも同じ通報をいたします。  それによって、一定の時間がたって、なおそれについてきちんと検査をし直したとか修理をさせたとか、そういった報告がない場合には、この船は要注意ということでブラックリストで世界じゅうに回して、どこの国にも入りにくくする。こういうような仕掛けを日本から提案いたしまして、現在この検討を進めておるところでございます。
  52. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そういう注意にもかかわらずいいかげんな検査でもってごまかしているというような場合には、立入禁止をするぐらいのことはやって、世界じゅうにそれをふれ回るということをやっておいた方がいいんじゃないかという気がいたします。その点厳しくやっていただきたいと思います。  それから、東京湾の危険物の問題でありますけれども、海図でもって注意を促したとしても、海底のことはよくわからないわけですよ。私らにはさっぱりわからないわけです。だから、これは危険物を排除する方法というのはあるのかどうか。岩盤がかたくてここにぶつかると危ないとか、あるいは浅瀬であるとか、いろいろあるだろうと思うのでありますけれども、東京湾の場合はどこが中心でどうしたらいいのかということをお伺いしたいと思うんです。
  53. 木本英明

    政府委員(木本英明君) 東京湾の大型船等の安全航行につきましては、先ほど一般的に海上保安庁長官の方からも海図等でお話がございましたが、やはり浅いところ等につきましては、大きい船が通れますようにしゅんせつをしましてしっかりした航路をつくっていくことも一つの大きな解決策であろうと、こういうふうに考えております。  東京湾につきましては、御案内のとおり中ノ瀬航路という浅いところがございまして、そういったところに大型タンカー等が通れるように水深二十三メートルにしゅんせつする計画がございまして、私どもその整備に向けて今努力をいたしておるところでございますが、しゅんせつ工事をやっていくということになれば、やはり関係の漁業者の方の御理解といいますか御同意を得た上で工事を進めていくということが前提になるものですから、そういった漁業者の御理解を得るべく、現在私どもの出先の第二港湾建設局で東京湾の関係漁業者、漁協の方と鋭意交渉といいますかお話し合いの場を設けるように十数年前から努力をいたしてきておるところでございます。  昨年のダイヤモンド・グレースの事故もあり、そういったことで、私どもから見ればかなり漁業者の御理解が前に進んできたかなというふうに受けとめていますけれども、まだそういった正式の土俵の場ができるその入り口ぐらいまで今来た状態でございまして、今後ともそういったことで鋭意努力を続けさせていただきましてきちっとした航路の計画を実現していきたい、こういうふうに努力をいたしておるところでございます。
  54. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 入り口まで行ったそうだけれども、中に入らなきゃしようがないね。これはやはり公益優先ということを第一義的に考えなきゃいかぬと思うんです。それは漁業関係者にしてみれば邪魔になるとか、いろいろ言い分はあるかもしれませんけれども、一時的な問題ですから。そして、東京湾なんというのは道路で言えばメーンストリートみたいなもので、それがどうもうっかり歩けないということでは大変に迷惑なことですから、そういう危険を除くためにはやはり一時的に漁業関係者には我慢してもらっても、東京湾を安全な海にする、航行の安全を保障されるということにしないといけないと思うんです。    〔理事寺崎昭久君退席、委員長着席〕  この問題は単に普通の船舶だけの問題じゃない。運輸省だけの問題でもない。海上自衛隊にしても同じことなんです。それから外国の船舶にしても同じことなんですね。だからそういうことを考えると、やはり国家的な立場でもって、公益優先でもってこういう仕事は全力を挙げてなるべく迅速に実行に移すということが必要じゃないかと思うのでありますが、その点、政府として考える必要があると思うんです。  これは運輸大臣だけの問題じゃないと思うんですけれども、一応大臣の方の見解をお聞きして、できればほかの関係各省とも連携をして取り組むべきではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  55. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 基本的に申し上げまして、瀬谷委員のおっしゃられるとおりだと私は思っております。  先ほど来御答弁をさせていただいておりますけれども、おっしゃられるとおり、運輸省の基本的な政策は安全の確保ということでありますから、それは海にしろ陸にしろ空にしろ、それをいかに確保していくか。しかし、それは単に運輸省だけが幾ら呼びかけあるいは体制を整えても、それぞれの関係省庁あるいは自治体、それから漁業関係者、海におきます。そういった方々の御理解をいただかなきゃなりませんし、また外国とのやはり連携というのも必要であります。先ほど但馬委員の御質問にもありましたように、情報の提供というのも大事だ。もうありとあらゆる中でのやはり役割というものを総合的にかつそれが有効的に、またこうした事故が起きたときに機動的に動けるような体制をつくっていかなきゃならない。  したがいまして、今後とも、そういった面で話し合いを初めといたしまする関係者の皆さん方と常にこれは反復訓練と申しましょうか、そういったことを繰り返すことによって強化をし、また事故防止にもつながっていくと、このように考えておりますので、まさに瀬谷委員のおっしゃられたことを十分踏まえて対応していかなきゃならないと考えておるところでございます。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このところあちこちで地震が発生しているんですね。今のところ大地震はないけれども、こればっかりはいつ何とき大地震が来ないという保証はないんで、そういう場合の対応策というのは、やはり海上保安庁だけじゃなくて、海上自衛隊あるいは陸上自衛隊、陸海空にわたってそういう災害になるべく速やかに対応できるような体制をとる必要があると思うんです。大地震が起きて現地に行ったけれども、自衛隊もなかなか交通が混雑して動けないとか、いろんなことを阪神大震災の際に経験をしております。こういう経験を踏まえて、このような災害に対して迅速に対応できる体制をとっておく必要があると思うんです。  これは政府全体の問題でもあると思うのでありますが、この場合の関係省庁との連携といったようなことは平時において十分に打ち合わせをしておく必要があると思うのでありますが、そのような御用意があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  57. 相原力

    政府委員相原力君) 私の方からお答えいたします。  特に地震につきましては、平成七年の阪神・淡路大震災という大災害があったわけでございまして、それを教訓といたしまして、政府全体でどういうような対応をするかということを検討して実行に移しているところでございます。  具体的には、政府全体では国土庁が中心になっているわけでございますが、その一環として海上保安庁も適切な平時での連絡体制、あるいは例えば震度が五以上の場合どうするかとか、そういうような危機管理体制がとられているところでございます。海上保安庁といたしましても、その中の一つの部局といたしまして適切な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 時間でございますので、大臣に今までのことをまとめまして政府としていかにすべきかという決意のほどをお伺いして、私の質問を終わります。
  59. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 今般の法律案改正するに当たりまして、個人的なことで恐縮なのでございますが、実は私、昭和四十年の四月にアラビア石油という会社に入社をいたしました。これはサウジアラビア、クウェートの中立地帯で日本の企業として初めて原油の利権を、昭和三十三年だったと思いますが協定を結びまして採掘し、日本等々に油を輸出している会社でございました。  入社して間もなく、その年の八月に日本のタンカー海蔵丸がカフジの基地のシーバースにおきまして原油を搬入している際に火災事故発生いたしました。これは当時といたしまして大変な事故でございました。海蔵丸の日本人の船員が十名死亡、アラブ人も二名。それからアラビア石油の社員も含めますと四十名の負傷者を出した。このタンカーは八月に火災を発生いたしましたけれども、必死の思いでシーバースから切り離しを行いまして、十二月ごろまで火災が続いて、ようやく年末になって鎮火したという、私が新入社員早々にそういった事故、私は現場にはおりませんでしたけれども、本社におりまして大変な事故発生したことを記憶いたしております。  そういう意味から、私自身もそういった企業に在籍をいたしておりましたし、またアラビアの方にも数年間勤務した経験がありますので、こうした大型タンカー時代を迎え、あるいは大型タンカーであれ小型タンカーであれ、大変な石油の時代あるいは天然ガスの時代を迎えまして、先ほども他の委員の御質疑に答弁を申し上げましたように、まさに日本は油の上に浮いている国であると言っても過言ではないし、また今御指摘のように、台風あるいは地震、火山の噴火等々、常に危険と隣り合わせながら生活している、そういう中での安全確保というのは本当に並大抵のことではございません。  私といたしましては、常に安全、安心した生活環境、社会環境を守るために、運輸省といたしましても今後とも一層の安全に対しまする体制強化を図り、そして皆様方の信頼にこたえていきたい。しかしながら、やはりこれは運輸省のみだけで解決するものではございません。常に国家的な見地から危機管理という意識を持ちながら体制整備していく、このように考えておるところでございます。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 終わります。
  61. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 海防法に基づいて排出油防除計画というのが立てられています。ところが、私が以前ナホトカ号の事件で取り上げた際に、油回収能力の整備目標に対してそれを達成していない、こういう管区があることを指摘しました。以降、どういうふうに改善されていますでしょうか。
  62. 相原力

    政府委員相原力君) 排出油防除計画につきましては、全国を十六に分けまして、それぞれの海域について、一定の仮定のもとに最大規模の想定事故が起こった場合に二日間でその油を回収するとした場合の資機材整備目標などを定めているものでございます。  先生、御指摘が前国会でもあったわけでございますが、その資機材整備目標の達成状況につきましては、昨年七月時点の調査におきまして、全部で十六海域のうち東京湾など十海域においては達成いたしております。しかしながら、沖縄、東北など六海域においては、その時点では目標に達していない状況でございました。  目標に達していない海域で仮に想定規模事故が起こった場合につきましては、まず当然当該海域内の資機材対応するわけでございますが、そういう海域内の資機材対応しながら隣接海域など他の海域から資機材を速やかに動員することにより対応することとしております。  また、最近におきましては、平成九年度の補正予算そして十年度の予算におきまして、海上保安庁関係でも、外洋で対応可能な大型油回収装置とか、あるいは高粘度の油に対応する油回収装置など、油防除資機材整備がなされ、あるいはこれからなされるところでございます。  また、先ほども触れましたけれども、運輸省港湾局の関係になりますが、大型しゅんせつ兼油回収船の整備、これは平成十二年度に完成予定でございますが、そういう整備も図る予定になっておりまして、これらの整備によりまして大幅な強化が図られることになっております。  これらの油回収資機材等を迅速に動員、運用することによりまして、的確な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
  63. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ところが、なかなか的確な対応ができないわけでしょう。まず整備目標自体が十分か不十分かということがナホトカ号では問われたわけです。ナホトカ号の流出があったのは山陰沿岸・若狭湾海域というふうに呼ばれておるところですね。ここは当時、油回収能力はほぼ満たしているというのがこの整備目標に照らしての評価だったわけです。ところが、ふたをあけてみると到底その能力はなかった。  今海域で答えられたけれども、管区で見てみますと、十一管区あるけれども、うち六管区が不十分な整備目標すらまだ未達成でしょう。見てみますと、第五管区、第六管区、第八管区は平成七年度よりも八年度の方が達成率が下がっているんですよ、ふえるどころか。ナホトカ号事故があったところは管区でいうと第八、第九管区ですよね、ここの達成状況はどうなっていますか。
  64. 相原力

    政府委員相原力君) 先ほども申し上げましたように、達成目標に達していない海域が現にあるわけでございます。しかしながら、これは海上保安庁を初めとする国の整備、それから民間による資機材等も含めた上でどの程度の整備があれば目標に達するかどうかということを判断するわけでございまして、先ほど申し上げましたように、昨年七月時点の調査結果はあるわけでございますが、現時点民間整備等も含めた最終的な資機材等の状況というものがつかめておりませんので、現時点での達成目標との関係というのは、大変申しわけございませんが、申し上げられる資料を持っていないわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、国といたしましては相当大幅な整備強化を図ったところでございます。  特に、先生お触れになりましたナホトカ号の関係では、当時は日本海の外洋における油の大規模な流出災害というのは正直言って予想をしていなかったというのが実態でございます。そういう意味で、計画自体にそういう問題点があるということも私どもも承知しているところでございまして、そういう観点での目標自体の見直しも含めて検討する必要があろうかと思っております。  ただ、資機材につきましては、先ほどの御指摘のように、ナホトカ号教訓から、従来防除能力が十分でなかった海域について今回十分配慮しながら配備することといたしております。そういう意味で、仮に想定事故レベルの大規模事故が起きた場合には、そういう新たな防除資機材配備、また場合によっては隣接海域等ほかの海域からの迅速な動員を図ることにより対応する。それから、場合によって時間がたちますと油がムース化しまして、ナホトカ号の場合もそうだったわけでございますが、非常に高い粘度の油になる、その場合は油回収が大変手間取ったわけでございますが、そういう高粘度対応の油回収装置、これも今般整備することといたしております。そういうものを有効に活用することによりまして適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  65. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 いろいろおっしゃったけれども、今達成率をつかんでないというところに私は本当に重大な問題があると。一番新しい数字で言えば、第八管区が達成率七九%、第九管区が三六%でしょう。これはまさにナホトカ号事故があったところです。その管区が達成率がこういうものですよ。  ナホトカ号事故があったときに古賀前運輸大臣は、整備体制欠陥があったことを反省している、あらゆる点で検証し、そして防除体制整備していく決意に燃えていると。燃えているとまでおっしゃったんですね。ところが達成率もつかんでいない。達成率を見てみると八割弱、第九管区は四割にも満たない。何でこんなに、整備目標がまず低い、その低い整備目標すらいまだ達成できないということになっているか。  私は、その一番大きな理由は、肝心かなめの海上保安庁自身の整備が全く進んでいないというところにその原因があると思うんです。提出された資料を見てみると、九六年度も、そして九七年度も油回収能力というのは全く向上していないでしょう。何でこんなことになっているのか。幾らほかのところから持ってきて、応援部隊も入れてと言ったって、回収能力そのものが全く上がっていないのが実態になっているわけですね。何でこんなことになっているんでしょうか。
  66. 相原力

    政府委員相原力君) お答えする前に、先ほど私がお答えいたしましたのは、整備目標の達成状況について、昨年の七月時点での結果について、これは全十六海域のうち十海域においては達成している、残念ながら六海域では目標に達成していない状況であるというふうにお答えしたわけでございます。これは民間整備状況等もありますので現時点状況については把握していないというふうに申し上げたところでございます。  それから、平成九年度の補正予算、それから平成十年度予算で相当程度運輸省及び海上保安庁防除資機材等を整備することにいたしております。これは、今先生から海上保安庁の油回収能力が非常に不備ではないかという御指摘をいただいたところでございます。私どももそういう反省を踏まえて、平成九年度補正予算、それから平成十年度予算において手当てをしていただいたところでございます。  先ほど申し上げましたが、大型油回収船、これは現在、港湾建設局の清龍丸一隻であったわけでございますが、港湾局の関係の予算でございますが、しゅんせつ兼油回収船約三千五百トンクラスの船を、三年間かかりますけれども、平成十二年度には竣工いたします。それから、海上保安庁関係では、大型の油回収装置を整備する、あるいは、特にナホトカ号のような高い粘度の油についての回収装置等が不備でございましたので、高粘度対応の油回収装置とかあるいは油回収ネット、そういうようなものを相当整備しております。  これについて、先ほども申し上げましたように、今まで不備であった海域に重点を置いて配備することにいたしております。十年度予算についてはまだこれからでございますので、今先生の御指摘がありましたナホトカ号事故があったような地域等々、現在不備であると思われている地点に重点を置いて配備して、適切に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  67. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私、何が問題かというと、排出油防除計画というのは、沿岸部に立地している企業からの油が流出した、排出しました、その場合にどうやるかということが中心でしょう。基本的な考え方でしょう。だから、民間の企業に対してもオイルフェンスを整備しなさいとかあるいは回収船を整備しなさいとかいうことを言う。そして、そういうものをこの排出油防除計画で立てているわけですね。ところが、油流出事故というのは、もちろん立地している企業から出る油流出事故もあるし、ナホトカ号のようにタンカーから流出するというケースもあるわけです。私はその想定が決定的に弱いと。  立地している企業からの排出油、流出油であれば、これは企業なりなんなりにもある責任を課すことができるけれども、しかし沖合でタンカーがナホトカのように真っ二つに割れてそして流出するという場合には、企業には関係ないわけですから、そうするともう海上保安庁が乗り出していくしかないわけですね。やっぱり中心にならざるを得ない。そのところが、今いろいろおっしゃったけれども、海上保安庁が努力されていることはそれは私も否定しませんけれども、やはりこの排出油防除計画の立て方自体がこういう大規模流出事故に備えたものになっていないというところに一つ大きな問題があると思うんです。  いま一つは、やはりさっき長官もおっしゃったけれども、整備目標自体をまず上げていく。今の整備目標でよしとしないで、やはりより高い整備目標をつくっていく、そしてそれに着実に近づいていく、達成していくという方向でこの防除対策というのを講じていく必要が私はあると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  68. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) 今、筆坂委員の御指摘はもっともな点があると思います。私は、今委員のおっしゃられたことは海上保安庁また運輸省に対する激励の言葉だと思っております。受けとめさせていただきます。今後とも、必要な油防除資機材等の整備には万全を期すべく推進してまいる所存でございます。
  69. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 いや、本当に激励したんです。  ナホトカのときには領域外の事故だからというのが防除対策やっていく上で一つ壁になったわけですけれども、今度の改正では、領域外での外国船舶からの油流出に対しても防除措置を講ずると。これは私はもちろん大賛成であります。  しかし、そうなりますと、さっきも言ったように従来の排出油防除計画、これをやはり根本から見直していく、そういうものに対応したものにしていくということが当然必要になってきていると思うんです。運輸省でも当然、計画の見直しというのは図っておられると思うんですけれども、大体どういうめどで今その作業を進められているのか、この点お伺いしたいと思います。
  70. 相原力

    政府委員相原力君) お答えいたします。  その前に、先ほどの先生の御質問の中で排出油防除計画の想定が陸上の企業から排出される油を前提としているのではないかという御指摘がございましたが、これは当然そういうものも想定はいたしますが、全般的には当該海域に入港するであろう最大の、具体的に言えばタンカーでございますが、最大のタンカー事故を起こしたときに想定される最大の被害、そういうものを想定して整備目標を定めているところでございます。  それで、ただいまの御質問でございますが、当然、先生の御指摘のように整備目標等も含めて不断の見直しをして適切な対応を図ってまいる必要があろうかと思っております。私どももそういう意味での見直しをしているところでございます。現時点でいつまでというお答えはちょっとできませんが、なるべく早い段階で適切な見直しを実現したいというふうに思っております。
  71. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 先ほど来長官もおっしゃっていたように、補正と九八年度予算で高粘土油対応回収装置三式、大型油回収装置、これは巡視船の改造二隻、大型真空式油回収装置一式、外洋型オイルフェンス一式、大型油回収装置一式、そして大型油回収船、これはしゅんせつ船ですね、これを二〇〇〇年を目途に完成すると。この取り組みは大変結構なことだと思うんです。  しかし、私はこれではまだまだ不十分だと。例えば外洋型のオイルフェンス、これは今の段階でいいますと整備目標は一式です。しかし、例えば日本海側にこの外洋型のオイルフェンスを一式どこかに置いたとしましょう。じゃ太平洋側はどうなるんだ。太平洋側だって相当広いですからね。ですから、私は、やっぱり必要なものは一式などと言わずに二式、三式、四式というふうに、何式までふやすかちょっとあれですが、日本海と太平洋でせめてまず一式ずつぐらいは最低置く、そのくらいのテンポで取り組んでいく必要があると思うんです。
  72. 相原力

    政府委員相原力君) 先生には大変御激励を賜りまして、先ほど大臣からもお話があったとおりでございますが、私どもといたしましても、一式で必ずしも万全とは思っていないわけでございます。ただ、この一式も陸送で運べることは運べるので有効に活用したいと思っておりますが、今後ともぜひ十分な体制整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  73. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 あと、ナホトカ号事件の補償問題について伺いたいと思うんです。  あの事故というのは、大変広い範囲に影響が及びました。たくさんの人員も投入されました。海上保安庁海上災害防止センター自治体、そして民間の方々、ボランティアの方々等々。この防除費用というのは、これは当然莫大な額に上っていると思うんです。漁業関係者あるいは観光業者の方々の被害というのも相当なものに及んでいる。  既に補償請求が出ていると思うんですけれども、その請求額は今どれぐらいになっているのか、どこが出すことになっているのか、お伺いしたいと思います。
  74. 岩村敬

    政府委員岩村敬君) この補償についてどこが出すかという第一点でございますが、船舶の保有者にまず責任があるわけでございまして、その分というのがございますが、ただ、責任の制限がかかっておりまして、それを超えた際には、国際条約、さらには国内法で決められておりますが、国際油濁補償基金という国際的な基金の方から損失の補てんがされるという状況になっておるわけでございます。  現在、この補償基金事務局が本年二月に基金の理事会に報告した数字でございますが、本年一月現在で基金に対しまして約三百十四億円の補償請求がされておるというふうに承知をいたしておるところでございます。
  75. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 請求総額が今の段階で三百十四億円。ところが、その国際油濁補償基金で仮に最大限補償されたとしても二百三十二億円ですよね。請求額からは八十二億円の乖離がある。  例えば、被害の大きかった石川県では、県と二十二市町の自治体請求をしているわけですけれども、この額が十三億七千万、このうち三億七千万円が仮払いされている。残り十億円については今査定中だということです。漁業関係では、防除費用が二十三億円かかったということで請求されている。仮払いが七〇%、十六億円。あとは値切られるんじゃないだろうかというふうに漁業関係者は言っているそうです。観光関連業者では、請求額は四十七件で八億五千万円。これはいまだ仮払いもされていない。  もちろん、あの油回収にはたくさんの方が参加してやられたわけですけれども、やはり中でも影響が大きかったのは漁業関係者あるいは観光業者の方々だと思うんです。仕事はできない、そして油の回収はやらなきゃいけない。中には過労死でなくなる方も出てきました。大変な被害が及んだわけです。  私は、今三百十四億円補償請求、油濁補償基金から出るのが最大二百三十二億円、今のままだと八十二億円請求額がち不足する。とすると、やはりこの穴埋めをどうやるのかというのが運輸省としても真剣に考える必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  76. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) ただいまの補償が先ほどの補償基金の額を超えるときにどうするのかという問題でございますが、船舶事故によりましてこういう被害が起こったわけでございまして、それで先生今いろいろお話しになりましたような関係者の皆さんがこれの防除措置等について多大な御協力をいただいた、あるいは現にお金も使われたということでございます。  ただ、この案件は、法律的に申しますと、一つの民事上の問題、今の関係者も含めた被害者からの請求に対して、国際油濁補償基金被害者がどういう決着をつけていくのかということで、現在民事的に請求に対する査定が行われているというのが現状でございます。  それで、かつ請求三百十四億円に対して限度額二百三十二億円、確かに現在がなり大幅な差があるわけでございますが、これが査定のプロセスを経て二百三十二億円を結果として超えるのかどうか、どのくらい超えるのか、これは現時点では率直に言って不明でございます。したがいまして、仮に補償限度額を超えることになった場合にどうするかというのは現時点ではお答えできないという状況でございます。  ただ、可能性としてはそういう可能性も排除できないわけでございまして、やはりそのことが明らかになった時点で、政府としてどのような対応が可能なのか、関係省庁おるわけでございますが、検討し、適切に判断していくということではないかと考えております。
  77. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 もし油濁補償基金の二百三十二億円をオーバーすると、その場合に私はロシア側とも政府交渉をやるということもぜひ検討していただきたいと思うんです。  最後に、一昨日、局長には伺ったが大臣に伺わなかったので、きょうはちょっと大臣に伺いたいんです。  ガイドライン関連法案対応について、この対応を見ますと、自治体が管理する港湾、空港の使用について協力を求めることができると。秋山防衛庁事務次官は義務規定認識している、江間内閣安全保障・危機管理室長は自治体が要請を断った場合違法状態になるとまで述べています。一昨日、局長は、協力は期待するが、それは自治体のいわば自主的判断であるというふうに答弁されました。  私、ちょっと調べてみますと、政府が、国が自治体に「協力を求めることができる。」と条文に規定している法律はたくさんあるんです。例えば、臨時石炭鉱害復旧法の五十六条の二、野菜生産出荷安定法の三条の二項、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律の十四条、海洋水産資源開発促進法五十二条、これはいずれも関係自治体に「協力を求めることができる。」と。所管の通産省、農水省に聞いてみました。明確にこれは自治体等に義務はないというのが解釈であると。  PKO法のときに、やはり国以外の者に協力を求めることができるとPKO法にあるものですから、この質問が出ました。当時の宮澤総理は、「協力を求めることができるとこの法律案規定をいたしておりますけれども、これはもとより同意がある場合でございまして、相手の同意がない場合にそのような協力を求める、あるいは強制する方法はもとよりございません。同意が前提でございます。」というふうに九一年十二月四日の参議院本会議で答弁されています。今度の大要は協力を求めることができるということになっているわけですから、私は、これは自治体に対して義務を課すべきものではないというふうに解するりが当然だと思うんですけれども、この点、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  78. 藤井孝男

    国務大臣藤井孝男君) ガイドライン、今現在検討中の法案、その要綱の中での地方公共団体の長に対する協力についてのお尋ねだと思いますが、地方公共団体に対する協力要請につき、検討が今現在なされていることは聞いております。国が地方公共団体に対して協力を求める場合において、例えば地方公共団体が協力を拒否した場合、そうした場合であってもこれを強制する手段は設けないものであると私どもは聞いておるところでございます。  また、今般のこのガイドライン、これは我が国の平和と安全を確保するためという目的にかんがみ、周辺事態におきまして地方公共団体がそれぞれの判断で国の協力に応じることを期待しているという趣旨であると承知をいたしておるところでございます。
  79. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 我々、今大臣がおっしゃったようにこの法律が日本の平和と安全のためではなくて、周辺事態ですから、もともと日本防衛とは一切関係ないわけですから、それが自治体が強制的にそこに動員されるというふうなことは絶対にあってはならないということを申し上げて、私の質問を終わります。
  80. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 自由党の戸田でございます。  手短に三点ほどお伺いしておきたいと思います。  まず最初の問題ですが、ナホトカ号あるいはダイヤモンドグレース号と、ああいった油濁事故があった後で、体制整備の問題が相当大きな課題として議論されてきたところであります。先ほど体制整備状況などについては既に議論があったところでありますが、この体制整備につきましては、国自身がやらなければならない部分、海上災害防止センターも含めての問題になると思いますが、そのほかに油会社、こういったところも相当の責任を持っている。そういったものを総体的に考えての体制ということになるかと思います。  機材の整備につきましては、外国の機材なども相当検討されたようでして、その点相当の進歩があったんじゃないかと私は思っておりますが、そのほかに実際の運用ということになりますと、これは全体を含めてオペレーションマニュアル、そういった機材を輸送する、どれくらいの人員を投入する、そういったことも含めて仕組み全体がどうなるかというようなことが問題になると思います。  そこで長官にお伺いしたいのですが、先ほどの機材の目標を設定してどうこうという問題だけではなくて、全体を含めて大量流出油事故があったときの対応について、どれくらいの進捗があってそれをどう評価しておられるかということをひとつお願いします。
  81. 相原力

    政府委員相原力君) 先生指摘のように、昨年のナホトカ号事故、ああいう大規模の油流出災害、それに対応する体制が不十分であったということを私ども率直に反省したわけでございまして、政府全体としていわゆる危機管理の一環として十分な即応体制を講ずる必要があるということで検討してまいりました。  政府全体といたしましても、昨年六月に防災基本計画の見直しを行いました。それまでは油流出災害のようないわゆる事故災害については防災基本計画で規定整備されていなかったわけでございますが、そういう事故災害についても今回の油流出災害等を含めて十分な規定整備いたしました。また、十二月には、油流出事故に対するいわゆる国家的緊急時計画というのが既にあったわけでございますが、これも全面的に改定いたしまして、関係行政機関等の具体的な役割分担、連携の強化について改めて明確にしたところでございます。地方自治体との関係等も含めまして役割分担等を明確にしたところでございます。  こういうような中で、海上保安庁といたしましても、関係行政機関等とも十分連携を図って適切に対応を図ってまいりたいというふうに考えております。  具体的な中身を申し上げますと、若干繰り返しになりますが、平成九年度補正予算及び平成十年度予算におきまして、特にそれまではほとんど整備がなされておりませんでした外洋においても対応可能な大型油回収装置の整備あるいは高粘度油に対応できるような資機材等々、大規模油流出事故対応すべく必要な防除資機材整備を図ってまいりました。  また一方、海上保安庁体制整備の一環といたしましては、従来から油防除専門家チームであります機動防除隊というのが横浜にございますが、この機動防除隊の増強を図りまして、組織も機動防除基地ということで組織の格上げを図りました。これは全国どこでもすぐに飛んでまいりますので、そういう意味での体制整備も十分図れたのではないかと思っております。  またもう一方で、大型しゅんせつ兼油回収船の整備も、十年度予算から三カ年計画でございますが、そういう整備を図るということでございます。  もう一方の制度面におきましては、現在、海洋汚染防止法改正案について御審議をいただいているところでございますが、現在の法体系では領海外における外国船舶から油の流出があった場合には、海上保安庁長官から海上災害防止センターに対して防除措置の実施を指示することができない体系になっておりまして、これはやはりそういう事態がまたいついかなるときに起こるとも限りませんので、そういうときに速やかに対応できるように、領海外外国船舶から油の流出があった場合においても海上保安庁長官から海上災害防止センターに対して指示することができるように規定整備すべく、法律案の御審議をいただいているところでございます。  こういうようなことで、より一層我が国の油防除体制強化されるというふうに考えているところでございます。これらの措置を講じまして、日本近海における油流出事故につきましては、海上保安庁としても今後とも的確な対応を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  82. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 相当大きく改善されていると考えてよろしいかと思います。予算の獲得については先ほど共産党からも大いにバックアップするというようなことですので、まことに心強い限りではないかと思いますが、海上保安庁の方で具体的にいろいろなことをチェックしていくと、どういうところがまだ足りないかとか、そういったことがおわかりだろうと思いますから、ひとつ今後引き続きそういう体制整備に努めていただきたいと思います。特に、オペレーションを実際にどういうふうに展開していくか、そういう点には一層力を入れていただいてよろしいんじゃないかと私は思っております。  前回の油濁問題が運輸委員会で問題になりましたときに、私は、当初体制の中で一番大事なのは油濁損害を想定するシミュレーション、どれくらいの被害が起こるかということをできるだけ早い時間にはっきりさせて、それに対する対応を迅速にとっていく、そういうことでシミュレーションの重要さを指摘しておきましたが、そのシミュレーションが最近相当高度に発展されていると聞きますが、現状はいかがですか。
  83. 相原力

    政府委員相原力君) 先生指摘のように、一たん大きな油流出災害が起こった場合に、どういうようにその油が拡散して被害が及ぶかというシミュレーションを行うことは大変重要なことだと思っております。ナホトカ号のときもまさにそういう問題があったわけでございます。  海上保安庁といたしましても、従来から、油のいわゆる漂流予測と言っておりますが、そういうものは行っておりまして、精度向上も図ってきたわけでございますが、特にナホトカ号の場合は何分百キロ以上の沖合であるということで、漂流予測をするためには例えば風向とか風の強さとか海流の状況をリアルタイムで把握して、それが近い将来どういうふうに変わっていくかという予測、それらが絡むということもありましてなかなか必ずしも十分な精度がなかったという反省点がございます。こういうことを反省材料にいたしまして、昨年のナホトカ号事故後直ちに緊急研究を実施いたしました。海流データの充実とかあるいは漂流予測の改良に取り組んでいるところでございます。  それから、被害の予測の観点では、油がどういうふうに流れるかというのと、もう一方では沿岸海域にどういう重要な、例えば自然環境上重要なものがあるかとかあるいは保護すべき施設等があるかという、そういう沿岸海域の、海洋情報と言っておりますが、そういうものの把握というのも非常に重要になっております。  こういう観点では、この四月に海上保安庁におきまして沿岸域海洋情報管理室という組織を新たに設けまして、油防除資機材の配置状況はもちろんでございますが、沿岸域における自然的条件、あるいは社会的条件などの情報のデータベース化を進めております。  こういうデータベースと、それから先ほどの漂流予測結果と組み合わせをいたしまして組み合わせ表示して、一たん特定の場所で大きな油流出災害が起こった場合にどういう形で損害が及ぶかというようなシステム、これを平成十一年度からは運用を開始したい、そういう予定で進めているところでございます。  このようなシミュレーションされました漂流予測などを十分に参考にいたしまして、油流出事故状況に応じた船艇、航空機の適切な投入など、必要な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
  84. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 最近天気予報が物すごいよく当たるようになりましたが、これは相当細かい地域まで含めて精度が高まっている。ああいった手法も同じようなソフトに基づいているんじゃないかと思いますが、そういったことも考えてひとつ今後も力を入れていただきたい、こう思います。  それから、船舶の安全性について先ほど来いろいろ議論されてきたわけです。ポートステートコントロールの問題もあるでしょうし、国際的にはIMOの場でいろいろ検討されてきている、こう理解しております。海上技術安全局長、せっかく御出席でありますから、一言お伺いしておきたいと思います。  船舶の安全というのは、もともと海上人命安全条約でも旗国が全責任を持つという建前になっていたわけですが、しっかりやらない旗国が出てきたのでポートステートコントロールの考え方が導入されたということだと思います。ただ、公海上を航行する第三国の船舶についての安全性ということになりますと、これはポートステートコントロールも大事かもしれませんが、フラッグステートコントロールがきちっと行われていないとならない。その点については最近の動向はどんなことになっているか、お話しいただきたいと思います。
  85. 山本孝

    政府委員山本孝君) 船舶の検査の徹底、強化につきましては、特にナホトカ号がロシアの船であり、日本に寄港せず中国を出港してロシアへ帰る途中で事故に遭った、こういったような状況にもかんがみまして、通常のこれまでの船舶安全確保の仕組みで言いますと、残念ながら我が国が手が届かないような状況だったわけでございます。これは先生の御案内のところだと思います。  しかしながら、このような状況において起こった事故について、我が国が大変大きな被害を受けたわけでございますから、この事故原因について我が国は直ちに事故調査の委員会をつくりまして徹底的に調査をいたし、その結果、ナホトカ号事故原因は衰耗による船体強度の低下にあったということははっきりいたしております。  したがいまして、この点に着目をいたしまして、まずIMOにおきまして、国際的にこういった老朽船で衰耗の著しい船舶についての検査の徹底を図るという提案をいたしております。内容は、先生指摘のとおり、第一義的には旗国検査、フラッグステートが検査を徹底、強化する、それを図れということを言っておりますが、それとともに、入港国で行うところのチェック、ポートステートコントロールの強化をも図る、こういう提案をしております。  具体的には、現在既にタンカー等に備えつけが義務づけられておるところでございますが、板厚の測定報告書というのがございます。そこに板厚の衰耗限度の記載を追加するということ、並びにポートステートコントロールでこういった記載された衰耗限度と実際の船を見比べまして、その記録されたものが本当ではないという疑いを十分に持てる場合には、フラッグステートに対してこれを早急に是正してくださいと、こういう通報制度をつくろう、こういう提案をして、IMOで我が国が主導して議論を行っているところでございます。  しかし、これでは実際にこれによって各国が検査をきちんと強化するかどうか、まだ十分完全な保証にはなりませんので、第二弾、第三弾の手といたしまして打っておるのが次に申し上げますようなところでございます。  すなわち、ポートステートコントロールを効果的に行うためには、まず最寄りの地域各国が申し合わせを行いまして、その地域に入る、これは月本であれば中国もロシアも入ります、こういったところがポートステートコントロールを効果的に行うための体制を協力してつくり上げる。そこでは、ポートステートコントロールを効果的に行う方法を先進的な国がまだ体制の十分でない国にいろいろと知恵を出す。それから各国が、例えば我が国が周りの国の検査官を招聘いたしまして研修を行う。こういったような方法で地域全体での実力を上げるような施策をとっております。  それから、さらに加えまして、こういった地域ごとの協定は、我が国を中心にするもののほか、実は先進的なところとして欧州がございます、こういった欧州と日本を中心とするアジア太平洋地域両団体が……
  86. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 ポートステートコントロールはもう結構です。
  87. 山本孝

    政府委員山本孝君) そういうところで、ロシアも含めたところで、ロシアにも十分声が届くように協力関係を強化し、啓蒙を図るというようなことで実を上げようと考えて頑張っているところでございます。
  88. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 非常に重要な部分ですから、今後も国際海事機関のような場で、そういったきちっとやらない国がないような仕組みをつくっておいていただきたいと思います。  余り時間もありませんので、これはお願いでありますが、最後に一言だけ。  東京湾でかつて雄洋丸という船が事故を起こしました。これは、御存じのようにLPGとナフサを積んだ船が衝突して火災事故になった。相当長期にわたって燃えていて、最後は東京湾から引き出して魚雷で沈めた。それから、私の記憶が正しいとすれば、英国のスコットランドの北の方にシェトランド諸島というのがあります。あそこでタンカーが座礁しまして、英国空軍が爆撃して油を燃やした、そういったことがあります。  これらはいずれも領海内の問題でありますので、外国船国対してということでもなかったので割合扱いが簡単だったと思いますが、公海上で起こされた油濁事故、ナホトカのような場合になりますが、私も条約の名前を正確に記憶しておりませんが、油濁損害についての公海上での措置に関する条約というような名前の条約だったと思いますが、これは公海上で油濁事故を起こした場合に油濁被害が沿岸国に及ばないようにその船にしかるべき措置がとれる。具体的に言いますと、爆撃しても燃やしてもいいかもしれない、沈めてもいいかもしれない、そういった条約でありますが、こういうような措置を具体的にとるとなると事前に相当な準備が要る。事故が起こってからではなくて、平時に危機管理の一環としてそういうことが発動できるようにしておかなければならないということではないかと思います。  そういった体制がとれるように、ひとつ準備万端怠りなくということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  89. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  90. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  92. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) ただいまから交通情報通信委員会を再開いたします。  特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  93. 山本一太

    山本一太君 大臣、私は政治家ですから、一応自分でこの目で見たものしか信じないようにしておりまして、基本的に情報というものはちゃんと現場に出かけていって視察して、見聞きして集めるものだというふうに思っております。残念ながら今回はその時間もありませんし、私ルーキーですので、大臣を困らせるような質問は幸か不幸かできません。御安心していただきたいと思います。  いずれにしろ、トップバッターですから、三十分間という時間なので、今度の法案、特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案、ちょっと長過ぎる名前だと思うんですが、この法案のコアについて基本的なポイントだけ幾つかお尋ねをしたいと思いますので、よろしくどうぞ御答弁の方をお願いしたいと思います。  情報通信システムの高度化というのは、御存じのとおり世界的な潮流だと思います。欧米とかあるいはアジアのいろんな国におきましても、やっぱり情報通信インフラに係るプロジェクトというのは国家的な最重要プロジェクトとして位置づけているところが多いということで、余りにも有名ですけれども、例えばアメリカのスーパーハイウエー構想、ゴア副大統領が随分熱心にやっておられるものですけれども、NII、ナショナル・インフォメーション・インフラストラクチャー、二〇〇〇年までに学校とか病院とか医療機関、医療施設ですか、そこを全部インターネットでつなごうという、たしかそんな計画だったように記憶をしております。  アジアを見てみますと、これも大変有名ですけれども、マレーシアのマハティール首相がスーパーコリドーという計画を今熱心にやっておられる。計画地に行くとまだ何もないんですけれども、いずれにせよ、情報通信の分野においては欧米初め各国が戦略的なプロジェクトとしてかなり一生懸命やっているという状況がまずあるということは御存じのとおりだと思います。  日本もこういう流れの中で、やはり情報通信インフラの整備というのは、当然日本の国益を考えた上でも、二十一世紀に向けて喫緊の非常に重要な政策課題だということもこれもまた言をまたないんではないかと思うわけでございます。  やはり情報通信の高度化、言いかえれば高度情報通信社会ということになると思うんですが、これはいろんな国民生活の変革を促す力がある、恩恵と言ってもいいかと思うんです。ちょうどこの資料に電気通信審議会の答申がありまして、これは平成九年六月なんですが、これを見ても、情報通信によって国民生活の変革が起こると。  その主な例として幾つか挙げられていまして、一つがITSによる渋滞の解消。ITSというのは、Iはインテリジェント、交通だからTはトランスポート、Sはシステムか何かだと思うんですが、高速道路料金所ノンストップ徴収システムとでも言うんでしょうか、電波で課金するというもの。その例が出ていまして、これによれば渋滞が三〇%緩和をするというようなことも書いてあります。  また、去年、我が党の税制調査会でもかなり議論になったんですが、例のテレワーク構想、マルチメディア化が進めばオフィスに行かなくても済むじゃないかという大変ありがたい考え方で、例えば大臣も自宅で国会答弁ができる時代が来るかもしれないということで、いつも地元にいられるというようなこともあるかなと思って私は昨年の税調の議論なんかを聞いていたんです。テレワーク構想が進めば、当然もう通勤苦痛とか通勤地獄という言葉もなくなるし、当然車が減るから環境負荷も減るというようなこともこの中に書いてあります。  あと、私が見てもっとトラスチックだなと思ったのは雇用です。この文書によれば、たしか九五年から二〇一〇年までの間に二百四十四万人新しい雇用ができる、こう書いてあるわけでございます。いずれにせよこれだけ大きな変化をもたらす可能性があるということであります。  ちょっと前置きが長くなったんですが、この法案もこうした背景の中で出てきたと思うんですけれども、最初の質問は、さっきちょっと申し上げましたけれども、この情報通信をめぐるさまざまな国家戦略プロジェクト、アジア、欧米各国、マレーシアとアメリカだけじゃないと思うんですけれども、その戦略プロジェクトの概要をまず最初にお聞きしたいと思います。
  94. 木村強

    政府委員(木村強君) 先生指摘のとおり、情報通信というものは二十一世紀に向けまして社会経済構造の改革を推進する原動力だという認識でございます。こういった認識で、米国、アジア諸国などにつきましても情報通信基盤整備のためのさまざまな国家プロジェクトとも言うべきものが推進をされております。  米国におきましては、先ほど既に先生指摘をいただきましたが、クリントン大統領のリーダーシップのもとに、全米をカバーいたします情報スーパーハイウエーを構築いたしますいわゆるNII構想を推進いたしております。具体的には、二〇〇〇年までにすべての教室、図書館、病院を接続する政策や、次世代インターネットの開発等の施策推進しておるという状況であります。  また、欧州につきましても、TEN構想ということで汎欧州ネットワークの実現に向けまして汎欧州ISDNを全ヨーロッパに普及させようといったような構想、あるいは各種アプリケーションの開発を推進しているということで、欧州におきます産業の科学技術基盤の強化あるいは国際競争力の向上を目的とした施策も展開されております。特に、フレームワークプログラムというようなことで、研究開発につきましても重点的に助成をしようというプログラムがございます。  また、アジアにつきましては、先生指摘いただきましたマレーシアにおきまして、クアラルンプール周辺地域におきますマルチメディア特区を設置し、企業誘致等を進めるというMSC、いわゆるマルチメディアスーパーコリドー計画というものがございます。今、経済が非常に難しい中でも、この情報通信のMSCというものは引き続きやろうというようなことで、現地の新聞などでは、政府が力を入れておるという報道も私ども仄聞をいたしております。  それから、シンガポールにつきましても、情報通信技術を活用いたしましてシンガポール全域をインテリジェントアイランドにするいわゆるIT二〇〇〇構想というもので情報通信基盤整備や関連企業の誘致を進めようといった計画もございます。  また、お隣の韓国につきましても、二〇一〇年までを目標といたします光ファイバー網等の情報通信基盤整備を進めようという超高速情報通信網構築計画といったような計画があるということで、こういった情報通信基盤を二十一世紀の戦略として位置づけたプロジェクトが推進されているという状況でございます。
  95. 山本一太

    山本一太君 世界各国の情報通信基盤整備計画の概要を伺ったんですけれども、ふと感じたんですが、アメリカは今未曾有の好景気に沸いているんで、そうじゃなくてもマルチメディアのフィールドでは圧倒的にトップランナーの地位を保ちながら走っているので、これはいいとしても、アジアは大丈夫かなという感じがしています。  私、二年前に若手議員三人ぐらいでふらっと東南アジアに行きまして、シンガポールに行ったときにリー・シェンロン副首相に会いました。リー・シェンロン副首相が主にシンガポールのマルチメディア政策の推進役ということで、一時間ぐらいいろいろ勝手な議論をふっかけたんです。緊張もあったんですけれども、頭がちょっと混乱していまして、リー・シェンロン副首相に私が最初の質問でスーパーコリドー計画はどうですかとお聞きしたら、真っ赤になって怒りまして、あれはマレーシアのプロジェクトだというふうに大変怒られたということで、かなりアジアもライバル意識を持ってやっているんだなと。後で謝ったので、許していただいたと思うんですけれども。  そういう状況でアジアもかなり活発にやっていまして、今言ったように韓国もかなり一生懸命光ファイバーをやっていたということなんですが、今の経済危機の状況の中で、例えばマレーシアも大型プロジェクトを少し差しとめたり、韓国に至ってはかなりいろんなプロジェクトを凍結しているんですが、ここら辺についてはどんな状況ですか。今簡単に、マレーシア政府もこういう経済状況の中だけれどもマルチメディアの分野は一生懸命やろうというようなお話がありましたけれども、そこら辺のところをちょっと聞かせていただけますか。
  96. 木村強

    政府委員(木村強君) アジアの経済は今大変な状況にございまして、それぞれ克服のための努力をしている最中でございます。  特に、今先生から御指摘がございましたマレーシアのスーパーコリドー計画、これにつきましては、情報通信をベースにしてあらゆる国の企業を誘致して、情報通信のハブみたいなものをつくっていこうという壮大な計画でございますけれども、相当な国家プロジェクトでございますし、これを実現するための経費面での政策あるいはスキームあるいは法的な仕組みといったようなものまで全体の議論が国会でも審議をされたというふうに承っております。そういったMSCでございますので、私ども非常に注目をしておるわけであります。  最近の経済の非常に難しい状況の中でこういった情報通信に関するプロジェクトの状況はどうなっておろうかということで、今先生指摘のありましたように、アメリカの現在の経済といいますものは戦後三番目に長い好景気が続いておる。このベースは情報化投資が非常に活発で、情報通信というものの活性化が今のアメリカの経済を牽引しておるということはNASDAQ等の状況を見てもわかるとおりであります。そういうことも注目しながらアジアのMSCというものについて私ども照会をかけたりしておりますが、現地の報道等の中ではしっかりとこれをやっていこうということで、私どもとしましては、このMSCは引き続いてマレーシアが力を入れてやっていく、むしろこういったところはきちっと押さえなければ二十一世紀さらに苦境に立つだろうというような意識があるというふうに承っております。  そんなことで、情報通信に関するプロジェクトがとんざをしたということ、MSCについて少なくとも後退をしたという情報は私どもとして現時点では把握していないところでございます。
  97. 山本一太

    山本一太君 韓国はどうですか、光ファイバー。
  98. 木村強

    政府委員(木村強君) 韓国につきまして、私ども具体的な進捗状況把握をしていないわけでありますけれども、これも大使館等からの情報ということでございますが、全体として政府予算の削減が行われてはおりますけれども、情報関連のプロジェクトの計画自体を見直す動きは出ていないというふうに私ども承知をしております。  それから、シンガポールにつきましては通貨危機の影響が比較的軽微であるということで、先ほど申し上げましたIT二〇〇〇構想といったようなものも変更なく進めると見られているという、これも現地大使館からの情報でございます。
  99. 山本一太

    山本一太君 わかりました。  こういうアジアの経済危機の中でも各国が依然としてマルチメディア関連の国家戦略プロジェクトにかなり力を注いでいるというのは、いかに情報化社会に対する認識が高いかということのあらわれではないかと思うんです。  世界のプロジェクトの大体の状況を今教えていただいたんですが、情報通信の高度化というこの施策の展開にはいろいろな側面があると思います。例えばネットワークインフラの整備とかアプリケーションの開発普及、あるいはこうしたものを支える基本的な技術とか、いろんな側面があると思うんですけれども、こういう情報政策を進めていく中で今回の法律というのは郵政省としてどういう位置づけをしているのかという点について言いただければと思います。
  100. 木村強

    政府委員(木村強君) 一昨年のリヨン・サミットの中でも共同文書にうたわれておりますけれども、情報技術の進展は経済成長の繁栄のもとであるというような認識であります。そういう面では、やはり情報通信に関する技術というものが二十一世紀を目指して経済の成長を牽引していくという認識が共通化しておるわけでありますけれども、この情報通信技術の発展、特に情報通信分野では技術オリエンテッドといいますか、非常に激しい技術革新の成果をどう国民の皆様方あるいは企業の皆様方に遅滞なく還元をしていくか、果実を受け入れられるようにしていくかということが非常に重要であります。  そういう意味では、私ども、高度情報社会を構築ということでございますけれども、一番身近なものは私どもの日常生活の中での公的分野、行政の分野であるとか医療の分野、教育の分野、こういったところから情報化を進めるということが社会経済全体の起爆剤にもなろうという問題意識を持っておりまして、そういう意味ではアプリケーションといいますか、そういうものをしっかりと支える研究開発が必要だ。  特に、これから電子の社会になってまいりますと、本人確認あるいは認証の問題、あるいは改ざん防止技術、こういったこれまでにない安全性、信頼性の技術、セキュリティー関係の技術を確保していくということが非常に重要だということで、公共分野の情報化を進めるに当たりましても、特に通信・放送の今申し上げましたセキュリティー技術というものを確固たるものにしておけば、各省もその上にそれぞれの行政のアプリケーションをつけ加えた具体的な公共分野の情報化が進むであろうということで、通信・放送技術を核といたしましてそれぞれの省庁が公共分野で情報化を進めていくに当たりまして、今回御提案を申し上げております法律の仕組みといいますのは各省がまさに連携をして政府一体となって公共分野の情報化を進めようという施策に非常に重要な意義を持つものだと、このように考えております。
  101. 山本一太

    山本一太君 今の御答弁の中で公共という言葉が七回か八回ぐらい出てきたわけなんですが、法律案を読みますと、第二条の「定義」というところで、「この法律において「特定公共電気通信システム」とは、国又は地方公共団体の業務その他公共性を有する業務の用に供する電気通信システム」と書いてあるんです。公共性を有する業務ということなんですけれども、これはつまり言うならば公共分野の情報化を今おっしゃったように関係省庁が連携してやるということなんです。  これは素朴な疑問なんですけれども、全体的な流れからいくと、民主導とか民間主導ということが言われている中で公共分野がまず先鞭をつけなきゃいけないという話は、何となくトーンとして時代に逆行しているような気がするんですけれども、そこら辺についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  102. 木村強

    政府委員(木村強君) 基本的には情報通信技術でありますから、民がそれぞれの情報通信技術を開発して、それをそれぞれの民間企業に導入していくということにつきましては大変活発に行われております。現にCALSの仕組みであるとかあるいはカーナビの技術といったようなことも、これは特に政府が何か新しい施策を講じたと、もちろんバックアップのそういった仕組みというものについては応援はいたしておりますけれども、それぞれやはり企業が目指すところを自由濶達に自分たちの競争能力を高めるという意味で情報技術を取り入れるという動きは非常に活発でございます。  ところが、公共分野につきましては、どうしてもそういった仕組み自体を開発していくといいますか、やはりそれぞれの公共分野の中身につきましては独特な手法がございまして、これを開発していくという研究開発につきましてもなかなか進み切っていないというのが現状であります。したがいまして、申請手続にいたしましても教育の支援システムといったようなことにつきましても、これまでに相当情報通信関係は発展をしてきておりますけれども、具体的に身近な公共分野につきましては民間企業が採用を積極的にしておるような状況にはなっていないという中で、基本的な通信・放送の汎用技術とそれぞれの公共分野のアプリケーションというものをドッキングしたそういう共同のシステムを開発していく必要がある、そういうニーズがまさにあるということで、これを立ち上げていくことが官民そろって日本の高度情報化社会をつくる手だてであるということで、私ども政府の一員としましては公共分野、まず我々がやれるところをしっかりとやるという立場で動いていくことが非常に効果があることであろうという認識でございます。
  103. 山本一太

    山本一太君 今の御答弁は、高度情報通信社会推進に向けた基本方針、平成七年二月二十一日の高度情報通信社会推進本部の決定とか、あるいは経済構造の変革と創造のための行動計画、平成九年五月に閣議決定されたものとか、あるいは平成九年七月三十日の総理指示でも言われている話で、とにかく関係省庁は知恵を出し合って一丸となって公共分野の情報化を推進する、一つで解決できない問題については幾つかの省庁と知恵を出し合って研究すれば何かいいことがあるんじゃないか、こんな思想だと思うんです。  今、民主導の話をしたんですが、私がいつもこの話になると考えますのはアメリカの場合でございまして、アメリカはとにかく民間活力でやれということをあちこちに言うわけですね。だからといって、アメリカ自体が常にマルチメディアの世界で民間主導でやってきたのかというと、実は結構疑問がありまして、よく言われることが、軍事技術の例のスピンオフ、いわゆる副産物で出てきた技術であると。例えばインターネットは、国防予算でもともとできたのがインターネットだというふうに言われていますし、あるいはさっきお話のあったカーナビも軍事衛星の位置確定システムか何かから来ている。どうもアメリカのアプローチというのは、まず国防という中でかなり国が支援して一つの技術を生み出して、それが民間に転用されて、ある程度のレベルまで来ると、グローバルスタンダードを発している国ですから、外に出してやっぱり民間でやらなきゃいけないよというようなアプローチがあるような感じがどうもするんですが、そこら辺のところはいかがでしょうか。  日本の国益という点から、アメリカのそういう戦略に対してどういう取り組みでいかれるのかということをちょっとお聞きしたいと思うんです。
  104. 木村強

    政府委員(木村強君) 先生指摘のとおりでございまして、米国につきましては、インターネット技術であるとかイリジウム等といいました低軌道周回衛星技術などは、国防分野におきます大規模技術開発の成果を民間分野に技術移転することによりまして国際競争力のある民生用技術を生み出しているというケースであります。  ある学者の言によりますと、核の傘から情報の傘へというアメリカの壮大な戦略があるようでありますが、そういった中で、民生転用した情報通信技術というものが全世界を席巻するグローバルスタンダードというような形にデファクトの標準としてなっていくというケースがございます。確かに、米国におきましては民間による技術開発が中心だと言われておりますけれども、今申し上げましたように、その基本は軍事予算で投入したものを民生に転用するという形で、今御指摘のございましたインターネットなどもアルパネットというもともとそういった軍事関係のネットワークをどう構築するかというところから出てきておるわけであります。  そういう面では、そういう基礎的な技術につきましては、アメリカは非常に国家予算も投入して力を入れておる、結果としてもそういう現実があるわけであります。  私どもといたしましても、情報通信というのは、基本的に先をにらめばやはり研究開発が一であります。これが世界に通用するものとなっていくということが、我が国の国際競争力を高めるとともに、国内の経済も活性化をしていくという面もございます。  そういう意味で、基礎的な先端的な技術による国によります研究開発ということは何にも増して非常に大切なことであるということで、私ども関係予算の獲得あるいはこういった情報関係技術の戦略的な取り組みというものが必要だろうということで、これも昨年でございますけれども、電気通信技術審議会に対しまして大臣から御諮問をいたしましたところ、情報通信研究開発基本計画といった、世界を視野に入れて研究開発の段階から標準化を意識したそういう戦略的な目的を持った研究開発の必要性を答申としていただきまして、これにのっとりまして予算その他私ども国としてやれる精いっぱいの努力をしておるというのが現状でございます。
  105. 山本一太

    山本一太君 アメリカはNII構想に総額で大体七千億円ぐらいつぎ込んでおりますので、ぜひ今おっしゃったような認識を持って進めていただきたいというふうに思います。  さて、本法案を見てみますと、関係している省庁が郵政、文部、農水、運輸と、いわば四省庁の共同事業を対象にしているということなんですけれども、郵政省は当然情報通信を担当する官庁ですし、たしか高度情報通信社会推進本部の副本部長にもなっていると思うんです。通産大臣と郵政大臣と官房長官の三人のうちのお一人だということもあって、当然しっかりリーダーシップを持って共同事業を推進していかなきゃいけない立場だと思うんですが、この法律ができる前にこれまで各省ともし協力をしてきたような実績があれば、ちょっとそのことについてお伺いしたいと思います。
  106. 木村強

    政府委員(木村強君) 本法案が最も典型的な例かと思います。予算がとれて法律にまでなったということで、御提案させていただいております本法案がそういう面では画期的だろうと思いますけれども、これまでにもお互いに各省庁が連携をとってやり出したという施策がございます。  例えば平成九年におきましては、多様なマルチメディアモデルシステムを自治体や大学等の協力を得て意欲的な地域において展開をしていただこうということでマルチメディア・パイロットタウン構想というものを構築いたしました。これにつきましては、例えばマルチメディアキャンパスということであれば文部省、それから農水省あるいは建設省といったようなところと連携をいたしておりまして、この三月末で全国で十四カ所という形でマルチメディアの各省庁との連係プレーというものがスタートいたしております。  さらに平成十年の三月末の段階でありますけれども、これは通産省との連係プレーでありますが、全国八カ所に、先進的な情報通信システムの整備に対する支援を行う先進的情報通信システムモデル都市構築事業ということで、国の補助率をアップしたりあるいはソフト的なものも加え、情報通信としては本当に使い勝手のいいお金を地域に落としていくという形でプロジェクトがスタートいたしております。  こういったことで、地域の面につきましては各省庁の持てる能力を発揮するという体制が既にでき上がっております。  そのほか技術的な面につきましては、例えば成層圏無線プラットホームに関する研究開発、これは科学技術庁との間で本年度の予算からスタートすることになっております。高齢者、障害者の関係で申し上げますと、情報バリアフリー環境の整備ということで厚生省、労働省とタイアップをして行う。あるいは中心市街地の利便、集客力の向上を目的とし、これに情報通信の力を活用しようということでマルチメディア中心市街地再活性化事業というものに農水省、通産省、建設省、自治省等と連携をして取り組んでいるということでございます。情報通信はすべての役所に横断的に対応する技術あるいはノウハウでございます。これを活用したこれからの時代というものに取り組んでおるというのが現状でございます。
  107. 山本一太

    山本一太君 今御答弁にあったのは、いわば実行でやってきた部分だと思うんですね。今お話があったように、この法律の意味というのは、その実行でやってきた部分を法律というきちっとしたシステムに格上げした、こういうことではないかというふうに思うわけなんです。  今、情報通信というのはあらゆる省庁に横断的に活用できるというお話がありましたが、私はもう一つちょっと不思議に思ったのは、公共性を持つ業務という範囲があるんですけれども、これも非常に広いわけです。ということは、この四省庁だけじゃなくて、ほかの省庁にもかかわる部分がいっぱいあると思うんですが、今回なぜこの四省庁のみになっているのかということなんです。これは話を出したところ乗ってきたのが四省庁で、ほかとはうまく調整がつかなかったのか、ほかは興味を示さなかったのかわからないのですが、ちょっと簡潔にそこら辺を教えていただけますか。
  108. 木村強

    政府委員(木村強君) 本法案の四省庁との共同のシステム開発ということにつきましては、六つのシステムを研究開発の対象ということで御審議をいただいておるわけであります。  まず当該省庁、例えば教育支援システムであれば文部省ということでございますが、こういった当該省庁と連携した研究開発におきまして、通信放送機構のいわゆる通信・放送という汎用的な技術というものがうまく活用できる蓄積が現在の通政機構にあるかどうかといったようなベースが一つ。それから、具体的には各省庁が公共分野の情報化を進めようということで、非常に切迫感を持って対応しようという意欲があるかどうか。それから、やはり財政が非常に厳しい状況でございますので、何といいましても相手省庁の予算事情というのがございます。それぞれの省庁におきます優先順位といったような事情の中から、今回研究開発の対象として一緒にやろうというのが六システム、文部、農水、運輸、郵政の四省共同という形に結果的になったというのが事実でございます。
  109. 山本一太

    山本一太君 この法律でつくったシステムで実績が上がればほかの省庁にも連携を広げていくということですね。
  110. 木村強

    政府委員(木村強君) まずはしっかりとした目的意識を持って確実にしていくということが、私ども通政機構を通じたこういった公共分野の情報化に非常に役に立つということで、まず信頼をかち得るということでございます。今回御審議をいただいております法案ができましたら、このシステムについてしっかりしたものをつくって信頼をかち得ていけば、この法律を適用して公共分野の情報化を進めようという機運が全省庁に及ぶものだというふうに確信をいたしております。
  111. 山本一太

    山本一太君 今の関連で、いわゆる省庁の連携という話なんですけれども、各省庁が持っている研究機関の連携というのも技術開発の面では非常に大事だと思うんです。  去年だったと思うんですが、たしか通産省と郵政省の電子総研と通信総研か何かが脳の研究を一緒にやっていた、脳はどこかシステムが一つ壊れても全体として機能するということがあって、それを何とか通信・放送技術のシステムに生かせないかというような研究をやっていたというような話があるんですが、そのいわゆる研究機関間の連携についてはいかがですか。これも非常に簡単で結構ですから。
  112. 木村強

    政府委員(木村強君) 今先生指摘のとおりであります。脳と情報通信というのは、神経系統とも言われておりますように人体の脳の構造と非常によく似ておるということで、そういう連携も進んでおります。  それ以外にも、先ほど申し上げました成層圏無線プラットホームにつきましては科学技術庁航空宇宙技術研究所等との連携、それから先ほどお話に出ておりましたが、ITS、高度道路交通システムにつきましては通産省電子技術総合研究所、あるいは建設省の土木研究所といったようなことで、それぞれの国の研究機関との連係プレーも行われております。
  113. 山本一太

    山本一太君 これは限られた四省庁の範囲ではあるんですけれども、いずれにせよ、関係省庁が共同で公共分野の情報化の基盤となる技術開発を推進していく、この法的枠組みができたということはやっぱり小さいブレークスルーだと思いますので、この法案は非常に私は意味があると思うんですけれども、大きな話で、心配があるとすると二点に絞られると思うんです。  一つは、さっきも御答弁の中にありましたけれども、非常に財政事情が厳しい。こういう中で一体どのくらいの予算が確保できるのかということだと思うんですけれども、これは初年度の予算は数億円ですか、幾らぐらいの予算になるわけですか。
  114. 木村強

    政府委員(木村強君) 御審議いただいております六つのシステムにつきましては、約六億から七億の間の予算ということでございます。
  115. 山本一太

    山本一太君 やっぱり六億か七億というのは大変少ない数字だと思うので、ここら辺については情報通信の重要性を認識した上で政治の方もしっかり応援していかなければいけないというふうに思っております。  もう一つの心配は、各省庁の縦割りというか、本当にその壁を乗り越えて協力していけるかという点だと思うんです。この点についても非常に郵政省の責任は重大だと思いますので、ぜひそういう認識を持ってこの共同プロジェクトを進めていただきたいというふうに思います。  あと時間が二分ありますので、お待たせしましたが、大臣に一言だけお話を伺いたいと思います。  本法案の目的というのは、「高度情報通信社会の構築」というふうにたしか法案の中ではなっていたと思うんですけれども、これに向けて大臣のリーダーシップのもとに郵政省に頑張ってもらうわけですが、あと一分ですから、決意を一言伺って、質問を終わりにしたいと思います。
  116. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 山本委員から、大変よく理解をされて、大変高い見識からの御質問に感激をいたしました。  郵政大臣の決意を伺いたいということでございますが、高度情報通信社会というのは、もう先生今さっきも何度も述べられましたように、やはり情報だとかあるいは知識の自由な創造、あるいは流通、共有化を可能とする新たな社会経済システムである、こういうふうに思うわけでございます。  そういった中で、私は、いわゆるマルチメディアというのは一粒で三度おいしいということをしばしば申しておるわけでございます。  一点は、これはもう御存じのように、今の景気の停滞を立ち直らせることに大変資するものだ。特に、今さっき局長から話がございました大変厳しい経済状況の中でもアジアがこういった高度情報通信社会をつくろうという決意は変わらないというのは、私はそういうところにあると思っております。  二点目は、要するに雇用の創出でございまして、これは言うまでもないわけでございますが、雇用の創出、大変大事なことでございますが、その点に資する。  三つ目は、御存じのように、一人一人の生活から、あるいは企業のあり方から文化から、あるいは社会の仕組み、政治の仕組みを変えていくような産業構造の転換を含む大きなエネルギーだと、私はこう思うわけでございます。  そういった中で、新しいそういった特徴を踏まえて、いろいろな施策はあるわけでございますが、新しい一種の文明の変革にも私は匹敵するものだと、こう思っておりますので、郵政省といたしましても、先生方の御指導をいただきまして、しっかりそういった新しい時代を切り開いていきたい、そういうふうに思っております。
  117. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  ぴったり、ジャスト三十五分で質問を終わらせていただきます。
  118. 松前達郎

    ○松前達郎君 松前です。  特定公共電気通信システム法、これに入ります前に、通信放送衛星「かけはし」のことについてお伺いしたいと思うんです。  「かけはし」は予定の軌道に乗せることができなかったわけですね。軌道には乗らなかったんですが、これは不幸中の幸いといいましょうか、すべてだめになったわけではない。これは通信実験の衛星だと思いますけれども、一部は実験が可能だというふうに聞いているわけでありますが、当初の予定と比べまして一体どの程度の実験が現在可能なのか、これについてまずお伺いします。
  119. 木村強

    政府委員(木村強君) 私ども期待をしておりました「かけはし」が宇宙開発事業団のロケット失敗のために当初の軌道に投入されずに、期待をいたしておりました通信・放送の実験について当初の予定どおりの実験ができない事態になりましたのは非常に残念でございます。  しかし、衛星本体は無事に地球の周りを回っておるという情報を得ましたので、早速私ども対策会議をつくりまして関係方面とも協議をいたしまして、できるだけ高い軌道に乗せながら地球からの実験の時間がたくさんとれるようにということで種々検討をいたしました。  その結果、私どもといたしましては、現状ででき得る限りの軌道を確保するということになりました場合に、八月から十二月までの間に二日に一回は約九十分間の実験が可能となるというようなことでございまして、その二日に一回九十分の実験が可能だという中でどういう実験ができるかということを私ども現在検討いたしております。  すべてパーフェクトに当初の予定どおりにはまいりませんけれども、例えば衛星搭載中継器、アンテナの特性測定及び性能評価といったようなもの、それから次に、衛星を介しました地球局の特性測定及び評価、それからマルチメディア移動体衛星通信あるいは統合デジタル衛星放送等につきましては可能な範囲でデータや画像伝送を実施しようということで、当初の第一番目に申し上げましたものにつきましては達成度約五〇%ぐらいのところを再目標にいたしまして、今申し上げました順序による優先順位をつけながら、二日に一回九十分という限られた時間の中でできる実験を行いたいということで関係方面と今努力中の状態にあるということでございます。
  120. 松前達郎

    ○松前達郎君 この衛星の本来の目的、これは間違っているかもしれませんが、いわゆる衛星からの情報を伝達するべき中継用の実験、放送ではなくて通信の実験だというふうに伺ったんですが、今非常に限られた時間というお話がありましたけれども、本来ですと、これは傾斜角ゼロのところに乗せる予定だったんですね。多分そうだと思うんですがどうでしょうか。いわゆる静止衛星として使いたい、現在そこまでいかない、トランスファーのところでだめになっていますから、そうすると軌道傾斜角というのはどのぐらいのところを今回っているんでしょうか。
  121. 木村強

    政府委員(木村強君) 三万六千キロの静止衛星軌道に投入をするというのが目標でございました。打ち上げ当初はこれがなかなかうまくいきませんで、遠地点では千九百キロ、近地点では二百五十キロ、周期百七分ということでありましたけれども、その後軌道の修正を行いまして、現在は、遠地点では二千五百キロ、近地点では四百キロ、周期百十五分の間隔で地球を一周しておるという状況でございます。  先ほど申し上げました九十分の実験の時間を確保するための目標軌道につきましては、遠地点が一万七千七百キロ、近地点が五百キロ、周期三百二十分ということを確保できれば二日間で九十分の実験可能時間が確保できるということでございます。
  122. 松前達郎

    ○松前達郎君 私は衛星のことは余り詳しくないんですけれども、余り低いところだとこれは空気抵抗がありますから、寿命がひどい場合だったら二、三日で終わっちゃう場合もあるし、一番近いところで五百キロ以上に上げておけば数年もつということなんですね。ですから、今おっしゃったのはそれ以上の高さに持っていくわけですから、当分の間使えるような状況だというふうに判断してよろしゅうございますか。
  123. 木村強

    政府委員(木村強君) 私どもそれを期待いたしております。
  124. 松前達郎

    ○松前達郎君 じゃ、衛星のことはそのぐらいにいたしまして、法案について質問をさせていただきます。  我が国の研究費の政府負担の割合なんですが、これは欧米諸国に比べますと比較的低いんですね。民間研究開発機能の方が機能している、大きくそれに依存せざるを得ない、そういう状況だというふうに判断をしているわけですが、民間の研究の場合ですと、基礎研究とかそういうものはなかなか取り上げない場合が非常に多くて、実用化ですとかあるいは製品化を目的とするいわば応用開発研究といいますか、こういった研究が多くなるのはこれはやむを得ないことだろうと思います。  そこで、この法案の目的が高度情報通信社会の構築だろうと思いますから、個別のシステムを構築しようとすることではなくて、基礎的あるいは汎用的成果を得るということもその目的の中心として据えられているんだろう、こう思うんです。先ほどお話がありましたように、各省庁との連携のもとに研究開発を行っていく、こういった場合の汎用的な技術成果、これについては一体どういうものを期待しておられるのか、あるいはどういうものが得られるであろうか、これについて御説明ください。
  125. 木村強

    政府委員(木村強君) 文部省と連携をいたしております教育支援システムにつきましては、例えば、ネットワークの込みぐあいに応じまして動画像の圧縮率を変更する技術、これは主として通信・放送に関する汎用的な技術でございます。それから、文部省側の技術でありますけれども、音や動画の情報を生徒の学習の動機づけとなるように構成する技術、こういったものがドッキングをすれば、パソコンを通じてインターネットに接続をして児童が学習しようとする際に非常に意欲のある形で学習効果が上がる、こういったものができる、こういう考え方でございます。  それから農業水利システム、これは農水省との共同の連係プレーでございますけれども、これにつきましては、衛星通信におきます降雨等による信頼性低下に対応するための技術ということであります。広域でやろうということで衛星通信を活用することになりますが、どうしても雨が降りますと非常に電波の関係で乱れるというケースが通常でございますが、この信頼性を確保しようといった技術、これは特に通信・放送関係の技術でございます。これに対して、農水省のこの問題に対します技術は、水路の水量等に関します情報を収集して解析することによりまして各施設の制御のあり方を正確に算出する技術、こういったものがドッキングをすれば広域農業水利システムが非常に機動的に行われる、こういうことでございます。  それから、運輸省との関係につきましては、私ども、改ざん防止技術、認証技術というものをてこにいたしまして申請手続を電子化しようということであります。特に、運輸省側につきましては、データの漏れをチェックしたりあるいは関係部局に配信する作業をソフトウエア化する技術といったようなことが合わされば、申請手続が非常にこの仕組みにうまく乗る、こういうことでございます。  それからもう一つ、運輸省とは移動制約者支援システムというものも考えております。これは、郵政省の場合には通信・放送の技術ということで、PHS端末の位置捕捉技術というものをベースにいたしまして、運輸省側のホームに進入してくる列車の型、速度、位置を正確に把握する技術というものが組み合わされば、実際の列車の進行に際しまして、駅構内におられる身体障害者の方々等移動制約者の方々が非常に的確な情報を得て動ける、どういう体制になるというものでございます。  それから、郵便関係につきましても、郵便事業の高度化に資するシステムにつきまして連係プレーを考えておりますけれども、例えば、お客様がオンラインで電子データを送信する際に不正にデータが書きかえられることを防止する技術というものは、通信・放送関係のいわゆるセキュリティーチェック、本人確認といった形の中で行いたい。それから、印刷された内容文書と受信した電子データの内容の同一性を確認する技術といったようなもので内容証明が電子的に行われる体制ができる、このように考えております。
  126. 松前達郎

    ○松前達郎君 各省庁それぞれ対象となるべきテーマをおっしゃったわけなんですが、法律のつくり方として、郵政省が核になるわけですが、ほかに三省、それぞれ一省ずつと連携するという形で進めていくというふうに合うかがえたんですけれども、今度は、例えば四省あるいは三省が横の線でつながったような横断的な共同研究というのがないのかどうか、これについてお考えになっているのかどうか、その点を教えてください。
  127. 木村強

    政府委員(木村強君) 今の先生の御質問に対しましては、この法律自体の考え方といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、通信放送機構に各分野の情報化の共通の基盤となる通信・放送技術に関する開発技術というものが一つの側にございまして、これとペアをなす形で、各省の分野固有の技術に関する研究開発とをそれぞれ一体的に行わせるということで、フィードバックをしながらワンペアという形で一体的にこの公共電気通信システムの開発を促進するということでございますので、本法案につきましてもそのような組み方で考え方を整理したということでございます。  具体的には、電気通信システム法の第四条第一号に、「特定公共電気通信システムの開発に必要なイに掲げる技術」、いわゆる通信・放送関係の技術でありますが、これと、「ロからトまで」というのは、例えばロにつきましては学校教育及び云々ということで文部省関係でありますが、ハは農水省関係という形で、イという通信・放送技術とそれぞれの省とのものがワンペアとして一体的に行うということを前提にした法律のスキームにいたしております。  今先生質問のございましたように、一対一の形ではなくて、ベースとなる通信・放送技術は、上に各省のそれぞれが共同で乗っかって一対nというような形でのスキームは考えられないかということでございますけれども、私どもの現時点で各省の開発システムを検討した段階では、基本になる通信・放送技術にそれぞれの省が自己の最もふさわしいアプリを乗っけていく、そういうシステムをつくろうということでございましたので、予想はいたしておりません。  確かに、先生指摘のようなシステムがこれから、技術のことでございますし、各省のアプリも効率化をしていくということになりますと、共通的なところは共通にやっていこうというようなことができてまいるようになりますれば、先生の御指摘のようなシステムということを念頭に置いた研究開発も可能になるというふうに考えております。
  128. 松前達郎

    ○松前達郎君 科学技術基本法ができて以来、基本計画が組まれて、その前後だと思うんですけれども、やはり情報通信に関する重要な施策推進というものが各省でそれぞれ考えられていたんですね。その当時は、どうも各省てんでんばらばらにそれぞれそういった面に取り組んでいきたいということだったんだろうと思います。そのままいくとどうなることかなと思ったんですが、今回のこれである程度の、一歩までいかない、まだ半歩ぐらいかもしれませんが、前進の方向にあるというふうに私は見ているわけなんです。  さてそこで、研究の対象となるべきテーマ、このテーマの選定について具体的にはどういう手続でテーマの選定をされるのか、また来年度以降恐らくまたこのテーマはふえていくだろうと思いますが、この研究テーマの構想というものがおありでしたら教えていただきたいと思います。
  129. 木村強

    政府委員(木村強君) 研究テーマとなる技術の選定手続でございますけれども、まずは各省が担当分野の技術につきまして、今回平成十年度に開発対象とする技術の候補をピックアップいたしました。これは法律に盛られておるところであります。  その後、当該年度の予算事情を勘案いたしまして、各省で調整可能だということで、それぞれの大きな仕組みというのは、例えば文部省との関係では教育支援システムといったようなもので、そういうシステムとしてのテーマは選定をいただきました。あとは、その次の教育支援システムの中の具体的な技術の研究テーマにつきましては、主務大臣が選定をいたしました技術を記載した基本方針をつくるように法律の中でうたわれておりますが、そういう基本方針の中で具体的なテーマを各省が協議をしてさらに細目を決める、これに基づきまして機構にこのテーマで研究開発をお願いしたいということで指示をするということに法律の構成はなっております。  これを受けまして、機構の研究開発プロジェクトチームが技術内容のブレークダウンをいたしまして、より詳細な要素技術の研究テーマを決めていくというようなことを想定いたしております。現時点では問題でございますが、そういうことを想定いたしております。  それから、先生、来年度以降の研究テーマについてどうかというお話でございますけれども、私ども今回は確かに今申し上げました六つのシステムでございますけれども、これから大切になりますのはやはり環境監視システムといったようなこと、それから遠隔医療、遠隔福祉といったような問題は非常に切実な問題に行政としてもなっていこうということで、こういったもののノウハウをしっかりと研究開発の段階で確立しておくことが非常に重要だろうということで、そういう問題意識を持って来年度以降取り組んでみたい、このような気持ちで現時点ではおります。
  130. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうことでテーマが設定をされていよいよ協力体制のもとに研究が着手されていくということになろうと思うんですが、このそれぞれのテーマといいますかプロジェクトといいますか、これに大体どのくらいの期間を予定されているのでしょうか。研究がある程度進行し、それが実を結ぶまでの期間として予測されている期間があればおっしゃっていただきたいと思うんです。
  131. 木村強

    政府委員(木村強君) 画一的にということはなかなか現時点では申し上げられませんが、やはりそのニーズというものから可及的速やかにということが要請されていようというふうに考えております。まず、システムの全体設計あるいはシステムの構築あるいは実証実験という現実に応用する一歩手前の段階までのシステム開発ということを念頭に置いておりますので、そういう意味では三年というようなことを一定の目標に置いてやっていこうというのが現時点での各省庁との協議の結果でございます。
  132. 松前達郎

    ○松前達郎君 大学あたりですと大体五年ぐらい見るんですね。最終段階まで行かない入り口のところでとめるんだったらもうちょっと短くてもできるかもしれない。あとは民間の方に移行させて製品化していくという段階に入るとすればそのぐらいかもしれませんけれども、ちょっと短いような気もするんです。しかし、いろいろ予算等もあると思いますので、通信放送機構が手がける研究としては大きなテーマの場合、やはり長いものもあっていいんじゃないか、そういうふうに思いますので、それぞれ研究内容に応じた期間を設定されて、叱咤激励していただければと、こういうふうに思います。  そうしますと、当然評価の問題が出てきますね。終了後の評価の問題あるいは終了させるかどうかの評価の問題、それと同時にそこまで行く前の進行をしている段階での評価、こういったいろんな評価があるんだと思うんですが、この評価は一体どういうふうにして行うんだろうかということなんです。  親官庁による査定とか監査ですとか、あるいは内部委員会による審査とか調査とかそういったようなもので、これは従来どおりやっているやり方だと思いますが、それで済ませてしまうのか。あるいは、せっかくですからこれを外部評価というものにゆだねる、これは新しいことだと思いますが、そういうことも考えられるわけですが、評価についてどういう方法をおとりになるつもりでございましょうか。
  133. 木村強

    政府委員(木村強君) 研究開発を活性化、促進するというのが一つでありますけれども、やはり研究開発につきましては、国のお金を投入するわけでございますので、途中経過も含めまして広く国民の皆様の理解を得なきゃいかぬということが非常に重要だと、これからますますそういう面ではこういう考え方が重要であろうということで、適正な評価を実施していくことは必須不可欠であるというふうに考えております。  この方法につきましては、先生指摘のありました従来型の自己点検というものももちろんございます。しかし、評価の公正さあるいは客観性を確保するために、機構に属さない第三者がこれを評価するという外部評価の導入がぜひとも必要であるということを考えております。  具体的には、通信放送機構の中に評価対象であります研究開発分野に関連する分野の専門家から構成されます評価委員会を新たに設置いたしまして、本法案に基づきます研究開発期間の中間時点及び終了時点に評価を実施していくという考え方で、中間段階も含めまして適切な評価体制をしきたい、しかも第三者による評価ということを念頭に置いたスキームをつくりたい、このように考えております。
  134. 松前達郎

    ○松前達郎君 法案の中に、主務大臣は、通信放送機構に行わせる業務の実施のため基本方針を定めると、こういうふうにございます。この基本方針というのは一体どういう内容のものなのか、これは大臣からお答えいただければありがたいんですが、主務大臣が定めるということになっています。
  135. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) お答えをさせていただきます。  基本方針においては次の事項を定めること等を想定いたしております。  一番目が、特定公共電気通信システムにおいて実現すべき機能、それから二番目といたしましては、それらの機能を実現するために必要な技術の内容、三番目が、研究開発上の留意点。  具体的には、特定公共電気通信システムにおいて実現すべき機能については、例えば学校教育及び社会教育においては、視聴覚教育を行うための機能の内容として画面の揺らぎ等のない高品質の動画像を送受信するための機能等。  このような機能を実現するために必要な技術の内容として、例えば学校教育及び社会教育において視聴覚教育を行うための機能に必要な具体的技術、例えばネットワークの負荷状況に応じて動画像の圧縮率を変更する技術等。  また、三番目の研究開発上の留意点につきましては、通信・放送技術については通信放送機構のこれまでの研究開発成果等を最大限に活用すること。また通信・放送以外の分野の技術については各分野の所管省庁の試験研究機関に助言を仰ぐ等他機関との連携を図ること等。そういったことを定めることを予定いたしております。
  136. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほどから、教育の面における活用といいますか研究開発の結果の導入といいますか、これが盛んに言われているんです、教育機関のインターネットへの接続問題ですね。文部省は高速インターネットを活用した教育支援システムの開発、これを予算要求しているというふうに伺っているんですが、インターネットを通じて、今ちょっとお話にありました動きがスムーズで高品質の映像教材を各学校に配信する、そのための技術を開発するということだろうと思います。  この前提として、インターネットに接続をしていないと話になりません。しかし、現時点では、これはちょっと古いデータかもしれませんが、公立の学校へのパソコンの導入というのはある程度進んでいるわけでありますけれども、インターネットへの接続というのは非常におくれているんじゃないか、こういうふうに思います。高校では一七・三、中学校で一二・五、小学校では七・三%。  アメリカの場合ですと、先ほどもちょっとアメリカのスーパーハイウエー構想の話がありましたけれども、二〇〇〇年までに全米の学校をインターネットで結ぶ、アメリカ国民は十二歳でみんながインターネットでアクセスできる教育を保障する、こういうことをクリントンが言っているんですね。ドイツでも、ドイツ政府通信会社、ドイツ・テレコムと学校をインターネットで結ぶシューレン・アンス・ネッツというプロジェクトを推進していて、これも二〇〇〇年までにすべての学校をインターネット接続をする。インターネットにつなぐこと、決してそれだけが重要なことではないと思うんですが、時間や距離の制約がこれで取り払われることもありますし、外国との交流も可能になるし、もちろん国内の交流も可能になってくる。その道具としてはインターネット接続というのは非常に大きな意味を持つんだろう、こういうふうに思います。経費もそんなに大きな経費はかからない。  我が国でも、二〇〇三年までにインターネットを使えるようにする、そういう整備計画が立てられていると伺っているんですが、これらに関して、整備を具体的に今後どのように進めていかれるのか、光ファイバーが接続の回線になると思うんですが、これらについてどういうふうにお考えなのか。そしてまた同時に、郵政大臣として、このインターネットを使う教育、これを活用することの意義についてどうお考えなのか、これをお聞かせいただきたい。
  137. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 松前先生も今御指摘のとおり、アメリカ、ドイツなどでは、目標を定めまして、きちっとインターネットに接続することを大変熱心にやっておられるわけでございます。我が国におきましても、今先生指摘のとおり、教育分野におけるインターネットの活用が大変重要な課題となってきていますので、実は昨年の十二月に、文部大臣と私と共同で、教育分野におけるインターネットの活用促進に関する懇談会を開催いたしまして、検討を進めているところでございます。  郵政省と文部省、両大臣の私的な懇談会ということでございますが、聞くところによりますと、こういったことは初めてだということでございます。やはり新しい時代でございますから、教育の分野においても情報通信の活用が大変大事なことでございますから、実はこれは、二人の大臣で話してこういったものをつくろうということで合意をしてつくらせていただいたわけでございます。  先生指摘のとおり、インターネットは、これからの高度情報化社会において社会経済全般にわたって不可欠な存在となりまして、特に学校においては、次の世代を担う生徒でございますので、情報リテラシーの涵養を図る上でも早期に実現されることが必要だというふうに思っております。先生御存じのように、これはもう情報機器、機械を使うというのは子供のころからなれ親しむことがやっぱり一番いいわけでございますから、そういった意味で、まさに情報機器のリテラシーを涵養する上で、私は、小学校、中学校のころからきちっとインターネットを活用した教育が必要であるというふうに思っているわけでございます。  そういった中で、文部省も平成十一年度までに全国の小中学校にパソコンの配置を完備する予定であるということも考えておりまして、インターネットをそれにいかに接続するかということをいろいろ今実は知恵を絞って考えさせていただいておるわけでございますが、率直に言いまして財政状況が厳しいということもございまして、インターネット接続料金をどうするのかという大きな問題もございますし、そういったところをやはり力を合わせて、知恵を絞って何とか実現をしたいと、こういうふうに今考えているところでございます。
  138. 松前達郎

    ○松前達郎君 昭和五十四年だったと思うんですが、ちょうどここに及川委員もおられますけれども、一緒の委員会におりましたときに、通信・放送衛星機構というこの機構の法案が最初に出てきたわけですね。そのときにもいろいろと論議があったわけなんであります。  その後、平成四年に法改正を行って、通信・放送技術の向上を図るという目的、これを加えて現在の名称に変わっていると思うんですけれども、この内容が規定等も含めてたくさん網羅されているんですが、これを一つ一つ読んでみると非常にわかりにくい。これについて、今後の課題かもしれませんが、規定の一元化というのがどうしても必要なんじゃないだろうか。普通、これを見ただけじゃ余りにもたくさんあり過ぎてわからないです。  あるいは、これが肥大化していく。例えば、光ファイバーをこの機構がやれるとなりますと、それが一つの通信の回線を持つことになりますね。そうなると、当然、これは第二NTTに変わる可能性もあるという心配もされている。いろんなことが言われているわけなんですけれども、この通信放送機構に関する諸規定といいますか、臨時措置法とかいろいろありますけれども、こういうものを一元化するということをお考えになっておりますかどうか、これを最後にお伺いしたいと思うんです。
  139. 木村強

    政府委員(木村強君) 先生指摘ございましたように、昭和五十四年に通信・放送衛星機構として設立がされまして以来、現在ではこの通信放送機構法のほか、機構の特例業務を定める八つの法律で、通信・放送事業の高度化であるとかあるいは研究開発業務等が行われております。  情報通信の高度化あるいは技術の革新に沿いまして、官民の役割分担の中で、認可法人としてふさわしい業務を果たしていく非常に重要な位置づけを持つ法人にしていただいておるということだと思います。  しかし、外から見ますと、先生指摘ございましたように、非常に複雑な状況になっておりまして、私どもといたしましても、機会があれば、確かに一括した一本の法律にきれいに整理をするということが理想であろうかと思いますけれども、現時点まで特例法等の構成をとってまいりましたのも、それぞれやはり理由がございます。  仮に、通信放送機構に関連する規定を一元化するということになりますと、認可法人の業務につきまして、今まであるものを全部入れる、あるいは個別にきちっと決めておりましたものをある程度包括的な形で含むということになりますので、包括的な規定がやはり出てこようかと。  それから、情報通信という変化の激しい分野で、一元化できましても、やはりまた次から次と新しい仕事というものが考えられる。一元化をしてもまた新しいものが出てくるというような事態も想定される。  あるいは民間企業との役割分担というものが、今はきちっとある一定の哲学のもとにつくられておりますので、明快に法律で制定をするということで、一つ一つ国会の御審議を経て法律をつくって通政機構の業務が行われておるわけでありますけれども、そういった包括的な、一元的な法律となりますとどこまでやっていいのかどうか、一回ずつのチェックがなかなかききにくくなるんではないかといったような問題等。  それから、特例法はいわば作用法でございます。これを機構法のような中の組織法を中心とした法律に入れてしまうかというような立法技術的な議論等もございます。  いずれにいたしましても、確かに一つの法律で簡明にすかっとしていくというのが一つの理想でございますので、そういう問題意識は持っておりますけれども、今申し上げました点をどうクリアしていくかということにつきまして、省の内部でもこれから真剣に検討してまいりたい、このように考えております。
  140. 但馬久美

    ○但馬久美君 公明の但馬久美でございます。  まず、郵政大臣にお伺いいたします。  本法案は、情報通信に関する研究開発推進するためのものであるということでありますけれども、我が国の情報通信分野の研究開発の現状と今後の展望についてまず御説明ください。
  141. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 但馬委員にお答えをさせていただきます。  これまでの情報通信というのは、御存じのように音声や文字を伝える手段であります。そういった意味で情報通信技術研究開発も、これらを速く確実に忠実に伝えるための研究開発を中心に従来は実施してきたのが現状でございます。  しかしながら、高度情報通信社会を構築し、情報通信を現実に国民の役に立つようにするためには、」社会的ニーズを踏まえつつマルチメディア技術などの国内外の急速な技術革新に適切に対応することが必要となってまいりました。  そういったことを踏まえまして、郵政省では、昨年、平成九年四月でございますが、電気通信技術審議会から御答申をいただきました情報通信研究開発基本計画に基づきまして、情報通信技術研究開発に戦略的に取り組んでいるところでございます。  具体的には、郵政省といたしましては、まず一番目といたしまして、アプリケーションの高度化技術、二つ目は、ネットワークインフラの高度化技術、三番目といたしましては、新技術のシーズと申しますか、弁とか種子でございますが、そういったものを創出する基礎的、先端的技術、この三つの分野について重点的に研究開発推進することとし、二十一世紀に向けて世界の情報通信の発展に貢献しつつ、そして豊かでゆとりのある高度情報社会を実現するため、今後とも、今申し上げましたようなことを踏まえて研究開発に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  142. 但馬久美

    ○但馬久美君 どうもありがとうございました。  これから本当にいよいよ発展していくわけなんですけれども、それにはまず研究の開発費、予算の部分が必要になってくるわけなんです。我が国の国の研究開発費は本当に非常に少ない、とりわけ情報通信分野における研究開発費は少ないと聞いております。  平成十年度における郵政省関連の情報通信分野に関連する研究開発費は全体でどれくらいなのか、お知らせください。
  143. 木村強

    政府委員(木村強君) 平成十年度におきます郵政省の情報通信分野に関します研究開発費でございますが、一般会計で三百四十五億円であります。産業投資特別会計で二百六十億円ということで、合わせまして約六百五億円というのが先生の御質問に対する数字でございます。
  144. 但馬久美

    ○但馬久美君 その額は、二十一世紀の花形産業と言われている情報通信産業を所管する郵政省の研究開発費としてふさわしいと考えておられるのかどうか、その点いかがなんでしょうか。
  145. 木村強

    政府委員(木村強君) 二十一世紀の発展基盤を形成する情報通信技術研究開発ということで、私どもそういった仕事を預かる立場からいたしますと、国のお金につきましてはこれを効率的に使うという気持ちを持ちましても、これだけの数字でいけるかどうかという問題意識は持ちまして毎年予算要求等の中で情報通信の重要性を訴えてきておりますが、最終的には政府部内の調整の中で、全体の財政状況を踏まえた形ということでこのような数字になってきておるということであります。  与えられた数字の中で、本当に役に立つむだのない研究開発にこれからも努めてまいりたい、このように考えております。
  146. 但馬久美

    ○但馬久美君 本当に頑張っていただきたいと思います。  さて、通信放送機構は、先ほど松前委員からお話もありましたけれども、通信・放送衛星機構として昭和五十四年八月に発足し、その後一部業務を追加しつつ、通信衛星、放送衛星の管制業務を行っています。そして、平成四年十月には通信・放送衛星機構法が改正されまして、通信・放送技術の向上を図ることなどを目的として追加されたわけです。研究開発に関する業務を追加するとともに、名称を通信放送機構と改めました。  通信放送機構業務のうち、衛星管理業務は、過去、臨調答申とかまた行革大綱の中で民間法人化することが指摘されております。平成四年度の行革大綱では、平成七年度をめどとして経営の自立化の実現、またさらに平成八年度の行政改革プログラムでは、管制業務については平成十一年度をめどに経営の自立化を実施するとなっていますけれども、今現在、そのスケジュール、自立化する意思があるのかどうか、またそもそも民間法人化がおくれている理由は何なのか、お聞かせください。
  147. 木村強

    政府委員(木村強君) 管制業務の自立化につきましては、ただいま先生指摘ございました平成八年十二月二十五日の閣議決定の行政改革プログラムの中におきまして、「管制業務について、平成十一年度に国からの出資金を返還し、経営の自立化を実施する。」とされておるところでございます。  そういうことでございますので、私どもといたしましては、平成十一年度に国からの出資金を返還して経営の自立化を図るということで、十一年度の自立化を目指して現在準備中であるということでございます。  それから、これまでいろいろとおくれてきたというようなことも先生から御指摘がございました。当初、五十四年に通信・放送衛星機構として発足をいたしましたときには、管制業務を行う唯一の認可法人でございました。当初はこの法人しかなかったということでありますけれども、最近ではやはり民間が自分で自己所有の星を管制するというようなことも出てきております。  私どもといたしましては、この自立化の方針にのっとって動くわけでありますけれども、やはり自立化を行いますには財政基盤を強化していく、あるいは中で働く職員の効率化もきちっと行っていく、しかる後に、国から預かっております出資金を返還して自立化していくということでありますから、一定のやはり準備期間というものも必要だということで、これまで時間を要したわけでありますけれども、ことしの十月に、国の開発資金が投じられました最後の放送衛星BS3bが終了をして、本当に通信放送機構が純粋に民間資金だけで開発された衛星のみを管制することにもなるということでございますので、これを契機として平成十一年度にしっかりとした形で管制業務の自立化を図りたいという思いで準備をしておるという状況でございます。
  148. 但馬久美

    ○但馬久美君 国が取り組む研究開発というのは、一般的には、一つには非常にリスクの高い分野の研究開発があります。それから、公共性の高い分野の研究開発、それから多様な分野に共通性があるあるいは普遍性がある研究開発、またあるいは波及性が高くかつ緊急性のある研究開発などが民間の実施が期待できないものと認識しております。  今回提出された法案で想定されている研究開発プロジェクトは、公共性の高い研究開発民間の実施が期待できないものに相当すると思いますけれども、研究開発民間の実施が期待できないものというのは、先ほどからるる述べられておりますけれども、この法案に関する各省庁にはまたそれぞれ研究機関があり、例えば郵政省には通信総合研究所という立派な研究所があります。本法案に想定されている研究開発は、郵政省が主体となって各省、先ほどの文部省や運輸省研究開発に共同して当たれば事足りるのではないか。本法案は民間に対する支援措置でもないし、またその意味では通信放送機構に行わせるべき積極的な理由がないと思うんですけれども、その点はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
  149. 木村強

    政府委員(木村強君) 公共分野の情報化を促進するため、特定の公共電気通信システムにつきまして、その開発に必要な技術研究開発を行うということにこの法案ではさせていただいております。実用的なシステムの開発が目的であるため、いわば基礎から応用への橋渡しといったようなステージにある研究開発だと位置づけておりまして、より実用化に近い研究開発を行うという意味で、国自体が通信総合研究所として基本的に基礎研究を行っておるものとはステージの違う話であるということと、それからやはり民間ではリスクが高い、あるいは汎用性のあるものでなかなか積極的にこれをやろうという雰囲気にもないものであったといったようなことで、私どもこういった研究開発通信放送機構を通じて行おうということにしたわけであります。  私どもとしましては、官民あるいは国自体とこういった通信放送機構研究開発のステージにつきまして、きちっとわきまえながらふさわしいシステムで行っていきたいというふうに考えております。
  150. 但馬久美

    ○但馬久美君 通信放送機構の特例業務というわけなんですけれども、郵政省は通信放送機構の特例業務を定めた法律を毎年のようにこうして出しております。どのようなビジョンに基づいているのか御説明いただきたいと思います。
  151. 木村強

    政府委員(木村強君) 先ほど来から御質問がございますように、この法律本体以外に特例法が八つあるというような非常に多様化をしたといいましょうか、あるいは重層的と申しましょうか、そういう構成になってきておりますのは、情報通信技術が非常に変更が激しい、次から次へと新しい考え方が出てくる、しかも情報化について国全体が立ち上がっていくスピードが非常に加速化されてきたといったようなことで、多様な支援業務あるいは研究開発業務等を国自体ができないものについてこういった認可法人のスキームで対応するのがふさわしいという形で今のような形ができておりますので、先生のお立場から見ますと、その都度その都度個別的に全体的なビジョンのない中でこういった業務の追加が行われているのではないかというような御印象を持たれての御質問だと思います。  私ども、基本的にはこの研究開発業務といいますものにつきましては、高度情報通信社会を立ち上げる情報の高度化というものに対する支援措置というのが一つの柱であります。それから、研究開発業務支援というのがこれまた一つの柱であります。  大きなこの二つの柱の上に立って、例えば高度化支援業務であれば金融措置というのがやはり一つ必要であろう、あるいは人材の育成というものが必要であろう、さらにはニュービジネスの立ち上げというものが必要であろうといったようなこと。それから研究開発につきましては、先ほど大臣から松前先生のときに御答弁ございましたように、戦略的な計画の中で認可法人たる通信放送機構を使ってやるのが一番ふさわしいというようなステージの研究開発につきまして行おうということで、バックボーンといたしましては、私ども、情報通信に関する電気通信審議会からいただきました答申あるいは技術審議会からいただきました答申の中で、大きなそういう方向性というものをいただいておりますので、それぞれのステージで通信放送機構にふさわしい中身を予算要求し、認められたものを法律として直す必要のある場合には御提案申し上げるという形で、大きな流れにつきましては一定のビジョンのもとに動いておるということでございます。
  152. 但馬久美

    ○但馬久美君 高度情報社会の実現のために必要な部分であるとも思われますけれども、今まで縦割り行政で各省庁がはちばらに行ってきた研究開発を、今回一体的に実施して効率化を図ることは一歩前進であると評価いたします。研究開発費を郵政省以外の省庁からも集める以上は、今まで以上に研究開発事業の厳密な評価とか、そしてまた検証が必要であると思います。本法案の各事業の期限の終了に際しては、費用対効果分析、サンセット方式を導入し、効果の検証をきちっと行うべきであると思いますけれども、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  153. 木村強

    政府委員(木村強君) 先生指摘のとおり、評価につきましては外部評価ということも導入いたしまして、中間あるいは最終段階できちっとした評価を行うという体制を構築したい、このように考えております。  先生今御質問ございました費用対効果という点につきましては、これは研究開発といいましょうか、一定のシステムにつきましての研究開発でございますので、これが具体的に実用化をされてどの程度のコストパフォーマンスができるかという面では、最終部門、実用化をしてこれを実行に移すというものにつきましては、そこまでのスパンでなかなか考えづらい非常に難しい面がございます。そういう面ではあくまで研究開発の一環であるという認識を持っております。ただし、これが実用化されましたときには各省庁がそれぞれのシステムを導入するわけでありますから、そのために要した費用あるいは国民の利便性に寄与した度合い等々、客観的なコストパフォーマンスが行われるというふうに考えております。
  154. 但馬久美

    ○但馬久美君 むだのないようにしっかり頑張っていただきたいと思います。  法案に入りたいと思うんですけれども、条文に則して幾つかお伺いいたします。  まず、この法案の第二条の定義に、「「特定公共電気通信システム」とは、国又は地方公共団体の業務その他公共性を有する業務」とありますけれども、「公共性を有する業務」とはどのようなものを想定していらっしゃるのか。
  155. 木村強

    政府委員(木村強君) 「公共性を有する業務」でございますが、国民との接点が多く、国民の日常生活に重要な役割を果たしており、国民が広くその便益を享受できるような業務を指すというふうに理解いたしております。  もう少し具体的に申し上げますと、行政、教育研究、学術文化、スポーツ、保健医療、道路交通、公共輸送部門、防災などの分野における業務が想定されるということであります。  こうした業務の主体としては、国、地方公共団体のほか、国民の日常生活に重要な役割を果たす業務を行う公益法人や株式会社、例えば私立学校を経営する学校法人や鉄道を経営する鉄道事業者等も含めて考えているということでございます。
  156. 但馬久美

    ○但馬久美君 ぜひ立体的にきちっと行動を起こしていただきたい、そういうふうに思います。  次に、もう一度この法案の第二条関係で、「特定公共電気通信システム」とは具体的にはどのような機能を持った電気通信システムなのか御説明ください。
  157. 木村強

    政府委員(木村強君) 特定公共電気通信システムの機能といたしまして六つのものを本法案の第二条が規定をいたしております。  各機能の具体的な内容につきましては、一つは、インターネットを利用した事業におきまして、生徒等の学習意欲を高めるような高品質の動画等を配信、利用できる機能が一つでございます。  それから、農水関係では、広域で農業の水管理を一元的に行うことができるようにするため、遠隔地から用水路の水門などの農業用施設の制御を行ったり、センサー等を利用して各施設の自動制御を行う機能でございます。  それから、運輸関係では、運送関係の申請、届け出等の手続を官庁に出向くことなく事業所等の端末にデータを打ち込むことにより済ますことができるようにするため、運送関係のさまざまな申請手続等を同一のシステムによりまとめて処理できるようにする機能でございます。  それから、もう一つ運輸省の関係でございますが、高齢者や身体障害者等の移動制約者が駅等を利用する際の安全を確保するため、そのPHS等に対してホーム等への誘導情報や危険情報等を伝達する機能でございます。  それから、郵便の関係につきましては、内容証明郵便の申し込みを郵便局に出向くことなく事業所等の端末にデータを打ち込むことにより行えるようにするため、ネットワークを通じて受け付け、自動的に郵便物として作成し郵送する機能であります。  それから、無線局関係につきましては、申請、届け出等の手続を官庁に出向くことなく事業所等の端末で打ち込むことにより済ますことができるとともに、その受け付け処理を自動化し、迅速に滞りなく事務処理を行えるようにするための機能ということを想定いたしております。
  158. 但馬久美

    ○但馬久美君 説明を伺いましたけれども、民間でもできる部分も非常にあるんじゃないかな、そういうふうにも感じるわけです。  この法案の中で、研究開発の対象としているのを今の一号から六号に掲げる六つのシステムに限定されております。今、その理由というか内容を伺ったんですけれども、こうやっていろいろ列挙されますと、何か幅を持たせて役所の裁量で後から追加できるようなやり方のような気もしないでもないわけなんです。こういうやり方というのはもう時代にそぐわないというか、行革に反しているんではないかな、そういうふうに感じる部分もあると私は思います。  成果の普及についてですけれども、本法案に基づく研究開発の成果は可能な限り広範囲に活用できることが望ましい。本法案四条の二号に「成果を普及すること。」とありますけれども、その「成果を普及する」というのは具体的にはどのようなことなんでしょうか。
  159. 木村強

    政府委員(木村強君) この目的につきましては、通信放送機構研究開発を行い、その成果を民間企業などの電気通信システムの開発主体に広く知っていただくということによりまして開発上のネックの解消を進め、我が国全体としても特定公共電気通信システムの開発を促進するということであります。  こういった目的からいたしますと、この法案に規定いたします措置としては、単に機構に研究開発を行っていただくということだけでは十分ではなくて、研究開発の成果を広く一般にわかっていただく、そういう行為も規定しておくことが必要だということで、成果の普及という業務規定したということであります。そういうことで、こういう形で開発した成果を単に公共分野にのみ活用するだけではなくて、国が率先して一般の方々に開放していこう、こういう立場のため、成果の普及業務というものが盛り込まれたということでございます。  具体的には、新業務の成果を活用して実用化システムの開発を行います民間事業者であるとか、あるいは地方公共団体に対しますこのような結果につきます成果に関する積極的な情報開示、情報提供、あるいはセミナーの開催とかレポートの配布等、幅広くこの成果につきましては普及を行うことが考えられるわけてあります。
  160. 但馬久美

    ○但馬久美君 やはり民間にも広く普及できるように研究開発の一端を普及していただきたい、そういうふうに思います。  助言及び協力についてお伺いいたします。  本法案の七条関係、通信放送機構は、共同研究に関して四省庁の「試験研究機関に対して、必要な助言及び協力を求めることができる。」とあります。具体的にどのような方法を行うのか、人的交流、協議会の設置等も考えているのか、どういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
  161. 木村強

    政府委員(木村強君) この研究開発推進は、先ほど来お話が出ておりますように、高度情報通信社会の構築を進める上で重要な政策課題の一つであるということで認識をいたしておりまして、国の研究機関におきましてこれまで蓄積されたノウハウを結集してこれを行っていくということが必要だと考えております。いわゆる役割分担ということで、国自身が行った基礎研究の上に基礎から応用へのかけ橋というものが今回の通政機構によります研究開発でございます。そういう意味ではベースになる国の研究機関の蓄積されたノウハウというものを結集したいというのがその気持ちでございます。  そういう意味で、本法第七条におきまして、通信放送機構は国の試験研究機関に対して助言、協力を求めることができるということとして、当該研究機関のノウハウを活用しつつ本来の機構としての研究開発を進める体制整備するという趣旨であります。  具体的な方法でありますけれども、現時点では、例えば行います研究開発につきまして論文、データあるいは研究者の紹介、研究実施方法に関するアドバイス等を求めるということを考えております。  ただいま先生指摘のありましたような人的交流あるいは協議会の設置といったようなことにつきましては、今後研究開発を展開していく中で、研究内容によりましては試験研究機関とのより密接な人事交流を行ってやった方がいいといったようなより密接な連携が必要になることも想定をされます。あるいは協議会というものをつくって緻密にきちっとやるというような中身もございます。そういった場合には、先生の御指摘の方法等につきましてもこれを視野に置いて検討してまいりたい、このように考えております。
  162. 但馬久美

    ○但馬久美君 いろいろ伺わせていただきましたけれども、こうやって新しい法案ができようとしております。ぜひ私は、やはり人間的にもこのことによって幅広くこれがプラスになっていけるように頑張っていただきたいと思います。  以上です。ありがとうございました。
  163. 及川一夫

    ○及川一夫君 及川でございます。  まず、衛星等を扱ってきた今の通信放送機構の問題そのものについてお伺いをしておきたいと思います。  皆さんもおっしゃられているように、一九七九年に通信・放送衛星機構として発足しまして、それからこれまでの間業務がどんどん追加されてきたんだけれども、いわば換骨奪胎をしたなというふうにしか私から見ると見えない。それでいいんだろうか。今の現実の通信放送機構の持っている体質と当初から見るとえらい違いがある。それで一体管理運営というものが実際にできるのかどうかという疑問があるものですから申し上げたいし、それから木村局長が言ったように、十一年には管制業務を要するに民営化する、外すということになるわけです。では残ったのは何かということになれば、それ以外の今の業務全体ということになりますね。  そうすると、当初の発足が通信衛星や放送衛星の管制業務で出発をさせたというイメージで言うと、これからの時代は衛星の時代だ、したがってそういう前提に立って管制業務というものも間違いを起こさないようにやっていかなきゃならぬという意気込みで私は当時受けとめたわけです。それはそれでいいと。ところが、後からいろいろ追加されたでしょう。したがって、今後どうするのか。これは松前先生もちょっと触れられましたように、やっぱり考えてみる必要があるんじゃないか。  一口に言えば、どこへ行ったって情報通信産業という言葉が話として出てくるわけですから、そういうものに政府として、内閣として対応するためには、実際にその面で中心的にやっている郵政省として一体こういう事態に対してどう対応していくべきなのかというところを本気になって見直しをしないといかぬのじゃないかという気持ちがあるものですから、嫌みったらしい言い方をしたかもしれませんけれども、私としてはまずそういう感想を持っているんです。  そこで、森本理事長、どうも御苦労さまです。ありがとうございました。  それで、実際に理事長として今やっておられまして、不都合があっても不都合があるとはあなたは絶対おっしゃらないはずだが、正直にこういった点を補強してもらいたいとか、こうしてもらわないと本来の目的に向かって成果を上げることができないならできないということがあるんじゃないか。それならそれに対応してこうしようじゃないかという答えを私は出したいという気持ちがあるものですから、森本理事長に現状を頭に描きながら問題点があれば出してもらいたいし、なければ、今の体制、機構でいいのかどうかということについて、実際の責任者として率直に述べてもらいたい、こう思います。
  164. 森本哲夫

    参考人森本哲夫君) まずもって、今回当機構に新しい任務を加えていただくことについての法案の御審議をいただいていること、大変厚く御礼を申し上げる次第であります。  今お話しございましたように、当機構は昭和五十四年に通信衛星、放送衛星の管制等を目的として設立されたのは御指摘のとおりであります。その後、昭和六十年の競争原理の導入、通信の自由化ということで、この情報通信分野にニュービジネスと申しますか新しい産業がどんどん育ってきたわけでございますが、こうした事業を支援する業務が平成二年に新しくつけ加わったわけであります。その後、たくさんの法律によって、身障者に対する支援でありますとかあるいは番組の充実に関する支援でありますとか、いろんなことが追加をされてきた次第でございます。  特に、平成四年には、我が国の将来の情報通信分野の研究開発について、民間では直ちに実施しがたいリスクの大きい分野についての研究開発、基礎研究からいわば応用研究への橋渡しを任務とする仕事が機構法本体の改正によってつけ加えられた、こういうことでございまして、そのときに名称も御指摘のとおり今日の通信放送機構ということに改まりました。  確かに、先生かねがね御指摘のとおり、機構法だけ見ては全体の業務がわかりにくい構造に相なっていることは御指摘のとおりではございますが、ただこれだけ激しい動きをいたします情勢の中で、しかも日本の将来に非常に重要な情報通信の分野であるだけに、なかなか固定的な形で仕事ができないということは事実でございまして、逆に言えばそれだけこれから先の期待を担わなきゃならない私どもの仕事だということの証左でもあるというふうに考えます。また、法律技術的に見ても、こういう形で累加していただくという形で時代に即応して将来の情報通信分野の開発研究を行っていくことは大変重要な任務だと受けとめておる次第でございます。
  165. 及川一夫

    ○及川一夫君 そういうお話は結構な話なんだけれども、実際問題として、管制業務というイメージからすれば全く違った仕事をされているということに、またせざるを得ないという状況なんですよ。  じゃそれでいいのかどうかということになると、一生懸命やっておられることは認めた上で私は申し上げるんですよ。むしろこれは大臣局長も聞いてもらいたいんだけれども、情報通信産業ということを本気になってお互い考えるからには、もうこの時点では情報通信産業総合対策機構というぐらいにしなきゃいかぬのじゃないか。しかも、今回の法律では、文部省と農水省と郵政省、三つの省が重なった格好でやられるわけでしょう。主務大臣ということが出てくるんですよね。主務大臣と言われるからには、それぞれの省の大臣はそれなりのやっぱり自覚と見識を持って物を考えると思うんだよ。  そういったものを通信放送機構の方に問題を投げて、そこでもっていろいろ検討してもらうというふうな形になるんでしょうけれども、十一年というのはあるんですが、その時期でもいいんですが、思い切ってもう情報通信産業という名前をずばり使って、それに対する総合対策を立てるんだという意味の機構なら機構にして、それで役割と任務と責任を与える、こういう形のものにしていくべきではないか。それで、内閣的には情報通信産業全体をそこに持ち込んで、そしてそこから各省に対して、こういうこと、こういうことというようなことを逆の形で投げ与えるような形にしませんと、まとまった形の情報通信産業のあり方というのは出てこないような気が私はするんですが、ひとつこれは大臣どうですか、そんな感想を持たないですか。
  166. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 及川先生の御意見は、大変私は一つの見識ある御意見だというふうに思います。  今いろいろ理事長から説明があったわけでございますが、基本的に、昭和五十四年に最初は通信衛星、放送衛星の一元的な管制管理を行うというようなことでこの通信放送機構はできたわけでございまして、その後名前も変わる。そしてその間、やはりこの五十四年からここ十五年あるいは十年、短くて五年ぐらいですね、実は高度情報化社会というのは大変だれも実は予想しなかったような進展をしたのじゃないかというふうに私自身は思っております。  例えば携帯電話一つとりましても、先生御存じのように今三千七百万台ぐらいあるんですが、あの時代、五年ぐらい前はもうほんのわずかでございまして、今はマーケットとしては四兆円のマーケットでございますし、一年間で一千万台ふえている。情報通信業界の古い方、あるいは郵政省のOBの方に聞きましても、まさか一年間で一千万台もあんなものがふえると言ったら悪いですけれども、だれも予想しなかった、ほとんどそう言われます。率直に言ってそれくらい高度情報通信社会というのは、日本のみならず世界でだあっと今も大きく広がりつつあると思っております。  多分、昭和五十四年ごろそんなことを余り予測した人はおられなかったんじゃないか、そういうふうに望んだ人はおられると思いますけれども。そういった中で、やはり情報通信産業の支援あるいはそれに対する研究開発という二つ大きな機能が加わってきたということが私は歴史的経緯じゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、情報通信政策あるいは高度情報通信社会の実現に向けた政策というのは大変大事でございますから、先生の御意見もこれあり、一つの見識ある意見だ、こう思うわけでございますから、長期的な展望のもとに不断に業務の効率化を図ることはまた同時に私は大事だと、こう思うわけでございます。また同時に、機能のあり方、あるいはこういった時代にマッチしたように機能を充実していくことも私は大事じゃないかな、そういうふうに思っております。
  167. 及川一夫

    ○及川一夫君 お互い気持ちの上では合致するものがあるということの前提の答弁ですから、それはそういうふうに答えを受けとめておきたいと思います。  それで、森本理事長、今の体制でもって十分か不十分かということにはいろいろあるんでしょうけれども、本当にこうしてほしいというようなことは一つもありませんか。
  168. 森本哲夫

    参考人森本哲夫君) 先ほども申しましたように、現在機構の仕事を大ざっぱに分類いたしますと、一つは管制でございます。そしてもう一つはいろんなビジネスの支援でございます。もう一つが研究開発でございますが、この研究開発の主要な部分の直轄研究と申しますのは、実はこれは私ども直接職員ではなくて、産官学の連携というプロジェクト方式をとっている次第でございます。  一つの研究テーマに関していろんな民間から産業技術者が結集をしていただく、そしてそれを大学の先生が引っ張っていただく、こういう構造で、私どもはいわばその研究管理、マネジメントをさせていただくという立場でやっております次第でありまして、しかもそのテーマが、こういう時代でございますので常設機関として十年も二十年もやっているわけじゃございませんで、すぐ応用研究に行けるようなという視点から、一つのテーマについて三年とか五年とか、比較的短期でプロジェクトを立ち上げて進行しておる、こういう次第でございます。  今回また新たにつけ加わるような業務についても恐らく同じような方式でやっていくものと考えておりますので、むしろ今のような形で、常設の研究機関ではなくてそのときそのときのタスクフォース方式というのが、ある意味で民間にも、業際という形でライバルとも手を組む、あるいは大学の先生も産業界から直に刺激を受ける、私の印象では大変全体として非常に成果の上がる方式ではないかと考えておりますので、ぜひこの体制を充実していかなきゃならないし、またそうお願いしたいものだと考えておる次第であります。
  169. 及川一夫

    ○及川一夫君 森本理事長、どうもありがとうございました。  それで、今のお答えを受けながら、これからの機構の問題を情報通信産業とどんなふうに総合的なものにしていくか。森本理事長があのようにおっしゃられても、いかにプロジェクトを組んで、民間の研究者を集めて云々というようなことがあっても、やはり課題についてそれなりの一定の専門的な基礎知識というものを持たないと、なかなかもって機構としての役割を果たすということにはならないんじゃないかなという気が私はいたします。  しかし、これはこれからの問題として、十一年に向けて、いずれにしても管制業務が外れた後の残された機構というものはこれでいいのかということが議題になると思いますから、そういう面から私も一定のものをまとめたいなという気がいたしますので、郵政省としても十分ひとつ御検討願いたいということをお願いしておきます。  それで、大蔵省はおいでですか。  ちょっとずばりお聞きしたいんだけれども、景気対策という表題になるんでしょうが、今十六兆円ということを内閣としても検討を始めたというふうになっています。  内容はいろんなことがあることは私も存じ上げているんですが、その中で、とりわけ与党内でもそれから内閣的にもさらには社会全体の問題でも、情報通信産業という言葉が至るところで出ているわけなんです。これに対して、大蔵省は確かに税金、集まったお金をどういうふうに、言葉は余り適当でないかもしれないけれども配分するかというような話なんだから、要求ががばっと来たやつをどこでぶった切るかという作業になるんでしょうけれども、しかしぶった切るにしたって、情報通信産業というのが大きな課題になっているときに、それ自体に対して全く見識なしにだめだめというわけにはいかないでしょう。  ということになると、大蔵自体は一体この問題をどういう議論されて、どういう見識を持っているのかということをちょっと聞きたいんですよ。これはどうですか。
  170. 寺澤辰麿

    政府委員(寺澤辰麿君) お答え申し上げます  景気対策につきましては、現在その策定に向けて政府部内の調整を鋭意進めているところでございます。  今回の総合経済対策におきましては、三月二十六日の与党三党の総合経済対策の基本方針、それから四月九日の総理大臣の記者会見における御発言、これにおいて示されております。一つは、二十一世紀を見据えて豊かで活力ある経済社会の構築に向け、真に必要となる社会資本を整備するという考え方。さらに、その際、将来の世代が整備してくれてよかったと感謝してもらえるような分野を重点とするという考え方の趣旨を踏まえて検討を行っているところでございます。  お尋ねの情報通信産業につきましては、与党三党の基本方針におきましても総理の御発言におきましても、情報通信の高度化ということで重点分野として例示されているところでございまして、具体的な重点分野には含まれるというふうに考えておりますが、現在、官と民の役割分担の観点、それから民間活力の活用等の観点等から内容についてきちっと精査をし、検討を進めているというところでございます。
  171. 及川一夫

    ○及川一夫君 それを検討しているのはいいんだけれども、重点施策としてこれは取り上げなければならないといっても、例えば数字で言うと、新聞にも出ていましたけれども、郵政省は一兆六千億ないしは一兆八千億ぐらいの幅であるらしいが要求していますよね。そして、具体的な内容も出ています。  ところが、それ自体がどうなるのかというのは、丸々いくかどうかはそれはわかりませんけれども、これはもう郵政大臣の決意、押しのいかんだと私は思うんだが、どちらにしても、それが一千億以下になってくるような話なんというのは僕は絶対あり得ないと思うんだ。その程度のものであるとすれば、一体大蔵省の情報通信産業に対する認識というのはどういうものなんだということを聞かざるを得ないわけですよ。  なぜかというと、これは即効性のあるものもあれば、あるいは中長期という意味で考えなければいけないものもありますし、国際的に見たら、アメリカにしたってヨーロッパにしたってこういうテンポで進んでいるというのもあるわけですよ。  ここに株式市場新聞というのがある。これは毎日出ているそうですけれども、この中に郵政省が発表したやつがあるんですよ。例えば、情報産業関係ということで、送信側、受信側のインフラとして、投資としては十七兆五千四百六十五億円、こう言っているわけです。だから、それは財投でやるのか国債でやるのか、どっちにしたって、いずれにしても出すお金です。ところが、これに対する経済効果というのを考えると、三十九兆六千億というふうに出ているんですよ。もちろんそれは来年ぱっと出てくるわけではありませんよ、数年というものを前提にしてです。それほど未来性というか、いわばこれからの産業としては雇用の創出を含めてある。ヨーロッパやアメリカでもそういうような内容で議論され、また具体的にとらえていますよということになっているわけですよ。  我が国はどちらかというとかなりおくれているということが前提なんですよ。これはおくれているのは、私から言ったら、郵政省の指導もあるでしょう、方針を掲げるやり方にもいろいろと問題はあるでしょう、それから日本の財界、産業界というのがそれに対してどういう気持ちで対応しているのかということ、いろんな問題点があることは百も承知なんだけれども、とにかく十六兆というのを掲げて日本の経済を立て直さなきゃいかぬ、景気を何とか浮揚させなきゃいかぬ。  そういう中で、大蔵省からもいつまでに出せというような話があるんだろうけれども、実際問題として、郵政省から考えたら、そのおくれの問題、それから即効性の問題、それから中長期の問題ということを含めて一兆六千億というものが仮に要求されているとすれば、かなりの部分を取り上げるというようなことでないと私は今の内閣はもたないという気がしてしようがないんですよ。  ですから、そういう認識を持っておられるかおられないかということになると、大蔵省、そういう認識に立てませんか。
  172. 寺澤辰麿

    政府委員(寺澤辰麿君) お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、現在、政府部内で鋭意調整をしているところでございますが、認識はあくまでも先ほどお答えいたしましたような基本方針なり政府の御発言にあります趣旨を生かして全体の総合経済対策の中で生かしていきたいと考えております。
  173. 及川一夫

    ○及川一夫君 これは当事者だから、それは言質を与えるようなことはなかなか言わないでしょう。しかし、それがむしろ今の景気を浮揚させない原因の一つでもあるんですよ。もっと夢が持てるようなことを何で財政当局が言わないのかという気持ちがしますよ、僕から言うと。  それから、木村局長に言っておきたいんだけれども、この前から情報通信産業とは何ぞやと。そうすると、学校のパソコンの話とかそんなものから出てきて、国民生活とのかかわりというものを見ると、必ずしも理解できぬという状況じゃないか。もう少し理解的なものを出せませんか。クーラーの問題だってそうでしょう、暖房機の問題だってそうでしょう、電気がまでもそうでしょう、電話回線一本使って火をとめたりつけたりというようなことができたらいいですねというようなことを、これは木村局長自身が私のところに説明に来たときに、そんなこともできるような時代ですということを言われているわけだ。非常に結構な話だ。  それで、私はこの前、郵政省の担当の方を呼んで実はテレビ電話というやつを、私は言ったわけじゃないけれども、持ってきてくれたんですよ。そこで見せてもらったわけです。  私がテレビ電話を言われたのは十五年前なんですよ。今のテレビの小さいやつの大きさ、あの大きさでテレビ電話があって、NTTですから総裁室から各局長室につないで、それから地方の北海道や九州までの局長室をつないでテレビ電話というのをやったんです。そのときは白黒だから余りよくなかった。そのときの局長さんたちの反応というのは、電話というのは相手が見えないのが電話なんだ、相手が見えると、総裁から電話がかかってくると机の上に足を上げて電話ができない、こんなのはだめだ、あかんということを言ったというおもしろい話もあるんです。  ところが、持ってきてもらったテレビ電話は非常にコンパクトで、しかも画面が非常にきれいです。それですぐに幾らだと聞いたら、十五万円だと。それにアダプターをつける、それが四、五万するでしょう。つまり二十万円で一台買えるわけです。相手にテレビ電話があれば、今のネットワークで、今の電話料金で電話ができるというわけです。だから、行ったり来たりという格好で考えれば四十万ですよ。四十万でできるわけです。十五年前に僕が聞いたときのテレビ電話は二百五十万だった。こんなものはということになるんですが、四十万、しかも生産されていけば、利用者が多くなればもっと下がりますよね。  そういうものをテレビ電話として、ここにあなたの方で書いた情報通信分野の重点投資という中にあるわけだ。ところが、先ほど来議論になっているように、何か過疎地帯の自治体に配置して利用してもらうんだ程度の内容で三千億、こうなっているわけです、要求が。  僕はあれを見たときに、かつて白黒からカラーに変わるときに、ふだん白黒だけしか見ていない人間がカラーを見たときにこれは買わないかぬという気持ちになったことがあるんですよ。まさにテレビ電話を見たら、買ってやろうじゃないかと。ここで上田さんの名前を出しちゃ悪いけれども、上田先生に、あなた今どきのテレビ電話見たことがありますかと言ったら、ないと言うわけです。あれを見たらやってみようじゃないかという気になる。私は厚木に孫がいるが、厚木にちょっと買って与えて、こっちも持っていてやったらこれはおもしろいなという気を起こすほどのテレビ電話になっているんですよ。  だから、いいですよ、高いものだからということで過疎地帯に、自治体に配置をしてさせるというのは、それは悪いことじゃないけれども、もう少し大胆に、国民にはこれはわかるんだから、どんと打ち出していくような発想がないと、大蔵省だって説得できないなという感じがするんですよ。こんなこそこそ出すようなやり方じゃという思いがしてならないんです。  ということを考えますが、郵政大臣、いかがですか。今の景気対策の問題を含めてきちっとした対応をしないと、これは本当に内閣物になっちゃうよという気がしてなりませんが、ひとつどうですか。
  174. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 及川委員から大変高い視野に立った、また今の景気をどうするのか、この日本国をどういうふうな姿に持っていくのか、高い立場に立った御意見を私は感銘を持って聞かせていただきました。  多くは申しませんけれども、今大蔵当局からもこの情報通信の分野は重点項目であると。それは総理も言っておられる、なおかつ与党三党の景気対策の中でも重点項目としてきちっと位置づけられているという発表があったわけでございます。  今、具体案につきましては政府部内で最終的な調整を行っておりますが、私は今さっきから申しておりますように、情報通信というのは、まず景気の回復に資する、それから二点目は雇用の回復、雇用の拡大にもなる、三点目はまさに産業構造の転換にも、あるいはさっきからここで論議がございましたが、個人の生活、それから企業の経営のあり方あるいは社会、経済のあり方、場合によれば行政、政治のあり方まで変わるものだという話も先ほどあったわけでございます。まさに私自身は、高度情報化社会、マルチメディア社会というのは一つの文明が変わることだと、こう思うわけでございます。  実は昨日、首相官邸で科学技術会議が久しぶりにございました。内閣総理大臣が議長で、私もメンバーということで呼んでいただいたわけでございますが、NECの関本会長がメンバーでございまして、関本さんから大変感銘を受けた説明がございました。日本の企業の情報化投資はアメリカに比べて大体半分以下だという話で、全部グラフがあって、総理、大蔵大臣おられましたが、そういう科学技術に関して実は意見の開陳がございました。  一方、財政も厳しいのはよく我々わかりますけれども、将来の国のあり方、どういった国であるべきか、あるいは夢とロマンをかけてしっかり高い立場に立って、もうあと何日かで最終成案が出るかと思うわけでございますけれども、私の立場としては、郵政大臣としてはこういった施策が実現するように強く努力をしていきたいというふうに思っております。
  175. 及川一夫

    ○及川一夫君 これは別に答弁要りませんけれども、どちらにしても情報通信産業にかかわる投資というのは私は絶対むだにならないと思っていますよ。だから、必ず税収としてもいろんな形で返ってくるものだと思っていますので、別に大蔵省はそろばん勘定だけやっているとは言わないが、我々こうやって議論しているところの意のあるところを財政当局の責任者の立場でもう少し多角的に考えてもらわぬと、本当に生きた議論にならない。最後は、何か知らぬけれども、締まりつぼみたいにぼんとけられるというようなことじゃかなわぬな、それでは政治ができぬぞという思いが私はいたします。  これは別にあなたにわあわあ言うことじゃないんですが、ひとつそういう立場から大蔵省としても各省庁のやつを考えていただきたい。とりわけ郵政省のやつはということになりますが、情報通信産業と直してもらってお考えいただくようにお願いして、終わりたいと思います。
  176. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 上田でございます。  まず木村局長に、特定公共電気通信システムとして、郵政省、文部省、農林省、運輸省の四省六種類になったのは一体なぜなのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  177. 木村強

    政府委員(木村強君) 簡潔に申し上げます。  平成十年度予算の概算要求を行うまでに、共同連携して研究の成果を省庁間で相互利用するといった総理指示の趣旨を踏まえまして、関係省庁と連携した研究開発につきまして通信放送機構のノウハウの活用が可能かどうか、それから相手省庁の予算事情等、それからそういったシステムが本当にニーズの強いものであるかどうかといったような状況の中で、最終的に結果的に文部、農林、運輸、郵政を含めまして四省共同で六つのシステムが研究開発の対象となったというのが事実の経緯でございます。
  178. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 公共分野というので、各省庁状況とか予算関係もあるでしょうけれども、国民のニーズとの関係が一つ大きな問題だと思うんですね。  私、この六つのシステムを見まして、一番これは緊急でニーズが強いなと思ったのは運輸省の移動制約者支援システムです。と申しますのは、私は障害者対策もやっておりますので、障害者と懇談会をやっているんですけれども、視力障害者から毎年落ちないホームをつくってくれという要望が出るんです。例えば九五年は滋賀、大阪、神奈川で三人がホームから転落死している。昨年は三月に池袋でホームから転落して肋骨を折ったと。鉄道事業法も安全と書いてあるんだから、とにかく落ちないホームをつくってくれと言うんですよ。  落ちないホームをどうやってつくるんだろうと思って、僕もわからなかったんですけれども、先日、障害者プランの議員連盟ができていまして、そこで運輸省がこういう通信を使って障害者を誘導する研究をしているという話があって、僕は非常に喜んで質問をしたことがある。今度いよいよ予算がついたんだなというふうに思ったんですけれども、この図を見ますと、現在は視覚障害者は危険、将来は経路案内、危険通知等のサービスが可能というんです。  運輸省に少しお伺いしたいんですが、これから研究しようというんだけれども、例えば視覚障害者の方はホームを歩くのに黄色いマークの上を歩いたりしているんだけれども、しばしば転落が起きるんです。視覚障害者がPHSの端末を持って駅の装置の電波の誘導で落ちないように安全に行けるということになるんでしょうか。これをまずお伺いしたいと思います。
  179. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) お答え申し上げます。  ただいま先生のお話にございましたように、視覚障害者の方を含めましていわゆる移動制約者の方が駅などでスムーズに歩いていただく、移動していただくということは大変重要なことでございまして、運輸省といたしまして前から例えばエレベーター、エスカレーターの設置でありますとか、あるいは視覚障害者のためのいわゆる黄色い足元の表示板とか、そういったことの整備を進めてきておるわけでございます。  それで、私ども、郵政省の方とも御相談をいたしまして、今回のこの法案について、PHS等の携帯端末による移動制約者支援システムの開発ということをやってまいりたいというふうに考えてございます。  具体的に、視覚障害者につきまして、先生も今御指摘にあったようなホームから落ちるというのは大変危険でございますので、例えばこのシステムを利用してプラットホームの縁までの間隔を自動的に知らせるとか、あるいは階段の場所をお知らせするとか、あるいは立入禁止区域への進入について情報を提供するとか、こういった危険を回避するサービスをこのシステムを使ってぜひ開発をいたしたいということで、今運輸省として考え、また郵政省の方とも御相談をさせていただいているという状況でございます。
  180. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これはなるべく早くやっていただきたいんですけれども、機構の研究開発というのは三年から五年というんですが、運輸省としては大体いつごろまでに実現化、実行できるというような見通しをお持ちなのか。  それと、どのくらい金がかかるかですね。一つの駅にこれを設置するのには、実際に実用化の段階に入ったときにほぼどのぐらいの費用がかかるのか。もし試算その他があったらお聞かせ願いたいと思います。
  181. 土井勝二

    政府委員土井勝二君) これから研究開発をスタートするわけでございまして、確たる目標年次というのをまだ考え得る状況でございませんが、運輸省自身のもくろみといたしましては、おおむね三年程度で開発ができないかなと。こうした研究開発ができると、これは鉄道を念頭に置きますと、具体的には民間ベースでそういうシステム自体が実用化されていくというふうに考えております。  費用でございますが、率直に申しまして、まだ幾らぐらいかかるかというのはわかっておりません。
  182. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なるべく早く実現して、全国の視力障害者が安心して列車を利用できるようになるようにお願いしたいと思います。  運輸省、どうもありがとうございました。  次に、法案のことですけれども、ずっとこれを読ませていただいて、ちょっと立法技術というか立法の手法というか、きょうもいろいろ出ていましたけれども、幾つか疑問が出てくるんです。  一つは、何で機構法の改正にしなかったんだろうかと思うんです。この法案を見ますと、第六条で「機構法の適用」といって、どういうふうに読みかえるかずらっと書いてあります。結局、機構に六つのシステムの研究をしてもらうわけだから、機構法の改正で可能だったんじゃないだろうかという疑問が一つあります。  もう一つは、この六つをやるんだけれども、先ほどもお話があったように、一つの研究を三年から五年でやるというんでしょう。三年から五年で大体研究が済むと、今度は普及、実用化ということになるんだけれども、これはまた機構の研究とは別のところになるわけです。そうすると、これは恒久立法なんだけれども、六つだけなら時限立法でもいいんじゃないだろうか、そういう疑問が二番目に出るんです。何で恒久立法なんだろう。  その問題と関連するんですけれども、当面六つだと。先ほどの御説明でいろいろな優先順位があって、四省庁で六つ。そのほかにもたくさんあるんです。私、調査室の資料なども見せていただきましたけれども、昨年の五月、経済構造の変革と創造のための行動計画が策定された。この行動計画にいっぱい書いてあります。昨年の十二月、三年前の閣議決定の行政情報推進基本計画の改定が行われた。行政の情報化のための改定、これも資料を拝見すると、いや、物すごいものです。これはもうずらっとありますよ。これを全部機構で研究開発が要るかどうかは別としまして、どうもこの六つ以外に政府が決めた行政情報推進基本計画の具体化のためにもまだまだかなり研究すべきものが出てくると思うんです。  そうすると、この六つ以外に、また一つずつ全部ここに法律を改定して入れ込まなきゃいかぬと。もっと包括的な規定でできないんだろうかと思うが、先ほど大蔵省が見えていたけれども、どうも大蔵省が法律で決まらないで予算を出せないというので、一つ一つ法律化して予算化しなきゃならぬようになっている傾向があるんだそうです。どうもそうなると非常に融通のきかない法律のような感じがするんですけれども、そういう疑問について木村局長からお答えいただきたいと思います。
  183. 木村強

    政府委員(木村強君) まず、先生第一の御指摘につきまして、御指摘といいますか疑問ということでございましたが、機構法の改正ではできないのかということでございます。  通信放送機構は、その目的でございますが、「宇宙における無線通信の普及発達と電波の有効な利用」がその一つ、それから二つ目が「通信・放送技術の向上」、この二つを目的とする法人でございます。今回追加しようといたします業務は、公共電気通信システムの開発を促進するため、通信・放送技術を基礎として教育等他分野の技術に関する研究開発を行うものであるということで、通信・放送技術の向上を目的とする機構の性格は維持をするということで、その上に立って追加業務を実施させることが適当だということでございます。  機構の目的とする機構の性格を維持しつつ追加業務を実施するということの手法として、機構が特例的に実施する業務と位置づけて、通信放送機構法とは別法として措置するということで、目的によれば単に機構法の改正でも結構ですが、目的を超えるものでありますけれども目的を改正することによって通信放送機構そのものの組織としての性格を変えるに至らないものであるということで業務の追加をした、こういう考え方でございます。  それから、第二点目の恒久立法云々という御質問でございます。  今回の法律を御可決いただきました後は、六分野のうちまず十年度から着手するものはもう既に決まっておりますが、来年度以降につきましてもこの六つの条文に書いてございます条項の中で、例えば「学校教育及び社会教育において視聴覚教育を行うための機能」といいますのは、今回考えておりますインターネット等の教育支援システムだけでなくて、ビデオ・オン・ディマンドを用いた在宅学習システム等につきましては法律の条文を変えなくてもこれは読めるということでございまして、平成十年度のテーマ以外の研究課題も六分野として本法案に書いてございます項目の中で読んでいけるということがございます。  それから、例えば環境問題とか、あるいは先生たくさんあるよと先ほどおっしゃいましたけれども、遠隔医療であるとか福祉の問題等、この法律の条文で読めないものにつきましては、確かに実施する場合には法律改正が必要でございます。しかし、これはあくまで機構の業務、認可法人の業務をはっきりと明定させてあいまいな形にならないようにという趣旨もありまして、先生方の審議を経て一つ一つやるべきものをはっきりさせるというのが現在の私どもの考え方でございます。  こういった法律改正してやらなきゃいけないというものがこれからもふえてまいる見込みが非常に多うございますので、こういった段階では私ども例えば政令委任といったような形で、システムの内容が専門的かつ多岐にわたっていくという状況になれば、政令に委任をしていただくということにつきましても法案審議等の中で先生方の御理解が得られるものではないか、このように考えております。
  184. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これからやっぱりかなり数多くなりそうだと。その場合、政令委任も考えるというお話ですが、縦割りの省庁が、いろいろ出てきてその中で共同してやらなきゃならぬ、イニシアチブはやっぱり郵政省が情報通信関係はとらなきゃならぬ。各省庁いろいろうらやましがるのも出るでしょうしね。そういう縦割り関係の中で本当に総合的に効率的に仕事を進める上で郵政大臣の責任は非常に大きいと思うんです。  四年前にできた総理大臣本部長とする高度情報通信社会推進本部、これは副本部長は郵政大臣でしょう。一々総理大臣にイニシアチブをとってもらうわけにいかないし、だから、こういう各省庁縦割りの体制の中で、公共電気通信システムを今後効率的、総合的に進めていく上で特に郵政省のイニシアチブが大いに発揮されると思うんですけれども、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  185. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 上田委員にお答えをさせていただきます。  高度情報通信社会推進本部という話が出たわけでございますが、橋本総理が本部長で私が副本部長、あと通産大臣と官房長官が副本部長ということでございますが、実はきのう首相官邸でこの会議が開かれました。きょう載っている新聞もございましたけれども、基本方針を考え直すという結論になりました。  これはたしか基本方針ができて三年たつわけでございますが、今さっき私が申しましたように、高度情報通信社会というのは非常にテンポの速いものでございますから、基本方針をつくり直すということを実はきのう決定させていただきました。  そういった中で、今先生から御指摘ございました研究開発、縦割りの壁を乗り越えてやれというような話もあったわけでございます。大変大事な課題でございますから、こういった基本方針をまたつくるということでございまして、私は筆頭副本部長ということでございますから、やはり郵政省として責任もございまして、日本国、国家、政府一丸となってやる必要が大いにあるわけでございますから、そういったこともまた同時に検討させていただきたいというふうに思っております。
  186. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私どもは、今度の法案は特定の民間の大企業に対する補助金を出すようなものではなくて機構が直轄で研究するという建前になっているので、賛成の態度をとることになっているんですけれども、きょうもいろいろ機構の問題が出ました。私は、機構の一番大きな問題は、実際、特定大企業の肩がわりをするような役割を果たしかねない、これが大きな問題の一つだと思うんです。  経済総合対策、どうやらあす発表になるらしいんですけれども、その中で郵政省関係は、情報通信行政関係に一兆八千億円ということになっているんです。  大蔵省の方は今はいらっしゃらないようですが、先ほど主計局次長は何も言わなかったけれども、新聞によりますと、読売新聞十六日付、「光ファイバー巡り対立激化」、大蔵省は、「「民間事業者の投資を国が肩代わりするのは問題だ」などと酷評する文書を十二日に作り、対策に盛り込まないよう自民党幹部らに説得工作を展開した。」、十五日に郵政省が今度は反論文書を出したということになっています。日経十五日付によると、「大蔵省の反論文書は光ファイバー網整備について、「学校のニーズに応じたものでなく、NTTなど民間事業者の収入を保証するため学校を利用するもので本末転倒」と断じている。」と、なかなかすごいあれですよね。毎日新聞四月十六日付によると、大蔵省は、「インターネットに光ファイバーは過大」だと。相当な論文を大蔵省が出したようですね。毎日には全部表になっています、郵政省がどう反論したか。いやいや、これはなかなかです。  だけれども、大蔵省もどうも我が日本共産党と同じ疑惑を今度の一兆八千億については持ったようで、いかに我々の疑惑が根拠があるかということが一つ証明されたと思うんですけれども、大体、郵政省の情報通信関係の九八年度予算は、電波監理関係を除けば、ここにありますけれども六百一億円なんですよ。その三十倍もの予算が今度出ていくんですから。これは三十倍ですよ。なかなかそれはすごい話です。  文部省、お見えになっていますね。  いろいろ問題になっておりますけれども、学校等の情報通信システムの高度化。これは光ファイバーで学校のインターネットをつなごうというのですけれども、八千三百億円。新聞記事によると、大蔵省が批判する根拠は、一つは、郵政省はこういう積算根拠について詳細は詰めていないと言うというんです。このあいまいさが大蔵省の批判を出しているというんですが、郵政省はどうですか、これ、八千三百億なんてなっているんだけれども、積算根拠はしていないんですか。
  187. 谷公士

    政府委員(谷公士君) 今、この問題については私どもも政府の内部でいろいろ検討し調整をしている段階でございまして、確定的なことを申し上げられるわけではございませんけれども、小・中・高等学校へのパソコンの配備につきましては文部省におかれまして着々とこれを進めておられまして、近々全校への一クラス分の配備が終わるというふうに承知をしております。  一方、アメリカあるいはヨーロッパにおきましては、二〇〇〇年程度をめどにしてすべての教育機関にインターネットを接続するという計画を着々と進めております。  私どもも、せっかくこのようにパソコンが配備されるわけでございますから、そのパソコンがオンラインといいますか、インターネットに接続して使えるようなものになるということが極めて望ましいし、そういった形での情報化の教育というのは次代を担う児童にとっては非常に重要なものであると考えておりますので、この機会にせっかく配備されますパソコンがいずれもインターネットに接続して使えるようにすることが望ましいと思うわけでございます。  そういたしますと、小学校の場合には一クラス分二十二台、あるいは中二局等学校におきましては四十二台分の配備計画と伺っておりますので、これを一台ずつ順番につないで使うというわけにもまいりませんから、つないで使うということになりますとそれなりの容量が要るわけでございまして、電話を二十二本引くかわりに光を一本引けば済むということでございます。  また、同時に、次代の情報通信基盤としましては、光ファイバーの加入者網への敷設整備政府としても計画的に進めておるところでございます。もちろん実行しておりますのは通信事業者でございますけれども、そういう意味で、先ほど申し上げましたような配備されましたパソコンにインターネット接続をするとすればこれぐらいの費用がかかる。  ただし、これは一挙にやるわけでございますから相当節約できる部分もあるわけでございまして、現在の約款の料金よりはかなり低廉なもので契約することができるのではないかというふうな計算をしておるところでございます。
  188. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは読売新聞の二十二日付です。今度の計画について文部省は「快速電車から新幹線に乗り換えるような感じ」と言っていると。にわかにいきなり新幹線に乗れと言われたというんです。現場の声もいろいろ出ていて、いきなりこういうことで一体できるだろうかと。専門家の教師は、五年から十年ぐらいかけて整備する覚悟でないとうまくいかないだろうと。やっぱり人材の問題もある、設備の問題があるし、それに先生方が習熟できる知識も要るし、下手をすると過労にもなると。その人材をどう養成していくか等々ね。  文部省はこの計画、いきなり新幹線に乗れと言われたというんだけれども、これまでのインターネットの接続状況、それにかけた費用、それから今度の全国四万校の小中高校へのインターネットの接続で、これを本当に運用できる自信と見通しがあるのかどうか、率直などころをお伺いしたいと思います。
  189. 加茂川幸夫

    説明員加茂川幸夫君) 学校におきますインターネットの接続についてのお尋ねでございます。  現在の最新の情報、私どもの調査によりますと、平成九年五月現在でございますが、公立学校におきましてのインターネットの接続状況、学校によって差がございますが、高等学校で一七%程度、中学校で一二%、小学校では七%などとなっておりまして、全体の平均で約一〇%の現状にございます。  文部省としましては、インターネットを活用した各学校における情報教育を進めていくことは大変重要であるという認識のもとに、インターネット接続を、中学校、高等学校につきましては平成十三年度までにすべての学校について、また小学校につきましては平成十五年度までの間にすべて接続できるように所要の財政措置を講じて計画的に整備を図ろうとしております。  この通信費でございますが、自治省と協力をいたしまして必要な経費を地方交付税により措置をいたしてございます。平成十年度に始まりまして、今申しましたそれぞれ平成十三年度、十五年度を目途に整備を図ろうとするものでございますが、経費は完成年度でおよそ八十億円程度の費用でございます。  また、先生これとは別途光ファイバーを各学校に配置、整備したときの利用の可能性についてのお尋ねでございます。  にわかにここでお答えをすることは大変難しいわけでございますが、光ファイバーを十分に活用するためには、何よりそれを使う教育内容、指導方法の確立、あるいはこれを用いて授業を展開する教員の指導力等一定の条件整備が整わなければ、これをすぐ使うということはにわかに申し上げにくいという状況にございます。ございますが、学校の指導展開の可能性というものはいろいろな機器が整備されることによって可能性が高まることもございますので、そういった観点も考慮しながら対応すべき事柄かなと思っておるわけでございます。
  190. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私たちも、これは学校に光ファイバーがつながって、インターネットが本当に生きた形で進むことは賛成です。ただ、政府が、今の橋本内閣が、本当にもう総スカンの状況の中で、何とかしなきゃならぬ、十六兆円、今までの公共事業ではもともとこれは効果がないと批判が出る、情報通信の投資ならこれならいいというので、子供たちのためじゃなくて自分の内閣の延命のために一兆八千億持ち出して、それで文部省も困っちゃうというようなことはこれはもう漫画にもならぬと思うんですよ。これは、そんな内閣の延命のためでなく、子供たちのために、日本の学校の教育のために、本当の意味での情報通信社会化のためにやる必要があるので、私はどうも今度の八千三百億というのはそういう非常に大きな問題点を含んでいると思います。  あと、一つ一つやろうと思うと大変なんですよね。光ファイバー基幹網、約三千億円でしょう。それから地上放送デジタル化、二千億円、これは民放連の氏家会長がこの間地上放送デジタル化をやるんだったら公的支援をと言ったのにぱっとこたえたようなものになりますけれども。それから先ほども出ましたテレビ電話、これ三千億円ですよ。一兆八千億でしょう。全体として非常にそういう大変な、いわゆる泥棒を見て縄をなうと言うんだが、泥縄的欠陥が全体として色を染めていると思うんですけれども、実際にこれだけの仕事はどうなります、局長、やっぱりこの通信放送機構を経由してやるのが多いんですか、光ファイバー等々。
  191. 木村強

    政府委員(木村強君) 私ども、かねてから二十一世紀を展望して原動力あるいは経済の活性化と情報通信というのが非常にキーワーズであろうということで、世界が取り組んでおる中でその重要性を訴えてまいりました。  今政府部内におきます最終調整が行われている段階でありますので、詳細を御答弁申し上げますのは控えさせていただきたいとは存じますけれども、通信放送機構というのはこういった諸施策を展開する上で最もふさわしいスキームであると。例えば、研究開発のスキーム等は、先ほど来御質問等の中で出ておりますけれども、一つの仕事として通信放送機構の重要な役割の一つになっております。そういう意味で、例えばギガビット級のラインを日本列島に引くといったようなこと、それから先ほどお話がありましたデジタル関係の研究開発といったようなものをこの通政機構の仕組みを通じてやることが非常にふさわしいんではないかといったようなこと等々、内容によりまして通信放送機構を適切に使わせていただくというようなことはございます。  すべてが通信放送機構ということではなくて、それぞれの目的を達成するためのスキームをどういう形で考えるかということは私どもの内部の課題ということで検討を進めておるという状況でございます。
  192. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やはりすべてでなくてもかなりの部分かかわることになるだろうと思うんですね。  私は前から指摘していたんですけれども、経団連の会長が会長をやっております基盤技術研究促進センターというのがあるんです。これは投融資合わせて毎年二百六十億円のお金を使っているんだけれども、公的資金を大企業の技術開発につぎ込むトンネル機関みたいになっているんですよ。この通信放送機構も大企業の技術開発を肩がわりする第二のそういうトンネル機関になりかねないと思うんです。基盤技術研究促進センターというのはNTT株の売却益で設立して、財界による財界のための研究開発支援機関だと、こう批判されているんですね。  きょうも、最初、昭和五十四年ですか、衛星管理等の機構として生まれた機構が、それがずっと実際上換骨奪胎されていった経過についてもいろいろ問題が出されましたけれども、そういう換骨奪胎の中で、情報通信産業が二十一世紀のリーダー産業だと言われるほど産業における地位が非常に高まっている状況の中で、この機構もまただんだん肥大化してさまざまな仕事を抱え込んで、この一兆八千億も、機構の肥大化、肥大化と同時に変質の危険もやっぱりあると思うんですね。先ほど森本理事長はなかなか立派なお答えをされていたけれども、理事長個人の意思にかかわらない、今の政治全体の流れの中で機構がそういう役割を果たしかねない、そういう問題が生まれていると思います。  大臣、機構について今どういう認識と今後についてお考えか、お答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
  193. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 情報通信というのは我が国の経済の活性化や、また二十一世紀に向けた社会経済システムの変革を推進する原動力として重要な役割を果たしていると思っております。  このために、通信放送機構の問題でございますが、今さっき先生の話にもございました政府の総合経済対策検討に際しまして、社会全体の情報化を先導する公共分野の情報化の推進あるいは情報通信の高度化を牽引し、我が国の知的資産の蓄積をもたらす研究開発のための基盤施設の整備などを通じて我が国経済の活性化に貢献し、また国民全体が高度情報社会の恩恵を早期に享受できることを目的として施策を進めているものでありまして、いずれにいたしましても通信放送機構の目的はそういった目的でございまして、いずれも個別企業の事業活動の支援を目的としたものではないというふうに思っております。  しかし、そういった中で、必要に応じて通信放送機構の活用を検討することがあっても、今さっきの質問にも答えましたように時代が大きく変わっていっているわけでございまして、そのたびにやはり国民の要求するニーズあるいは政府の果たすべき役割というのは、特に情報通信の場合は発展が非常に急なものですから変わっていくところもございます。その際、やはり有効にこの通信放送機構を活用することが必要であって、今さっき話が出ました研究開発あるいはいろんな施策支援をするということは格別私は問題がないというふうに思っております。やはり長期的な視野に立って常に機構の有効性、有用性についてはきちっと検討するところは検討する必要があると、こういうふうに思っております。
  194. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  195. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 自由党の戸田でございます。  今回のこの法律改正ですが、基本的に非常に大事な部門ではないかと思っております。私自身、技術開発関係に相当深いかかわりを持ったことがありますが、技術開発というのは非常に難しい問題でして、今まで国の研究開発にかかわることでいろんなケースが見られるわけです。  ちょっと古い話をしますと、民間は完全に開発を終わってじっとしている、国はそれについて規制をかけようと思っているんだけれども民間からの情報は一切とれない、国が後追いで実証的に研究開発をして規制のための確認をしなければならない。これは非常に非効率的なんです。実例を申し上げますと、自動車の排気ガスの規制、これは民間会社は各会社がすべてある程度めどを立てていた、しかし国の方は規制するに当たって確認がとれない、それでいたし方なくどの程度までの規制が可能かという研究を後追いでやった。これは各会社のパテント、ノウハウにもかかわることですので出てこないんですね。そういった研究なんというのがあります。これはむだと言えばむだだけれども、仕方ないと言えば仕方ない。  それから、国が一生懸命やっているうちに民間が飛び越えていってしまう。国が研究開発を終わったときには既に民間は実用化しているとか、そういうケースは幾つかあります。  それから、海外でもう既に実用化されている、しかしぜひ日本で開発をしたい、システムが合わないとかそれから若干状況が違う。実例を申し上げますと、先ほど山本委員からお話のありました高速道路の料金徴収。これは外国では実用化されている。これを実際に取り入れようとして、その中身をかなり詳細に聞いた上で開発が始まったと私は見ております。それで日本における導入はかなりおくれてきている。これはいずれ実用化される、間もなく実用化されるんでしょう。そういった問題とか、よく見ていると本当にこれでいいのかなと思うような開発もあります。  それから、これは切り口が違うんですが、大体もうこんなことをやればできるんだろうな、しかしやったことがないから実証的にやってみないとならないなというようなものもあります。  秋は今回の、特に公共的な部門での研究開発というのは、いろいろなニーズを合わせて共通のシステムをつくっていくというところに一番大きな眼目があると思いますが、そういう意味では先ほど申し上げましたような一種のむだと言っていいようなものではないと確信しておりますが、その辺いかがでしょうか。
  196. 木村強

    政府委員(木村強君) 研究開発ですから、官であれ民であれ、それぞれの研究目的に沿って競争していくというバックがあることは非常に重要なことだと考えております。  しかし、今回の法案で提案をいたしておりますシステムは、国民の皆様からもそういった期待が強まり、かつ政府としてもこれをしなければいけない、しかしやはり通信・放送技術というものがベースになるものですから、政府間でよく連絡をとってむだのないように効率的にやっていこうという趣旨で生まれたものでありますので、先生の御指摘のようなおくれたものあるいはニーズのないものあるいは重複するもりといったようなものではなくて、むしろ前向きにこれから取り組んでいけるそういう研究開発であるというふうに考えております。
  197. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 そういうことだろうと私も思っておりましたが、今回の研究開発のコアになる部分というのは、現時点でのいろんな要素技術、それから道具立て、それにソフトを含めてのシステム、そういったものが総動員されていろいろなニーズにこたえていく、そういうようなことになるだろうと思います。  今回、研究開発項目が六種類に限定しておりますね。六種類に限定したというのは、ある程度絞っておかないと研究が進まないというところがあると思いますが、これは同様の問題が起これば応用問題としてすぐに対応できるというようなものが出てくるんだろうと思いますが、その点が第一点。  それからもう一つは、各省からいろんなニーズを持ち寄ってきているんですが、そこで各省自己主張がいろいろあるかと思いますが、その辺はうまく調和して進められるのかどうかという点についてお伺いしたいと思います。
  198. 木村強

    政府委員(木村強君) 政府部内での大蔵原案が確定しました以降、予算関連法案ということでこの法律を内閣法制局に持ち込みまして審議をし、政府として国会に提案をさせていただく過程の中で、各省庁合議ということで法案の協議の段階がございます。四省庁協議ということですから、当然それまでに関係する省庁間ではある程度の合意ができておりますけれども、やはり法律の段階になりますと、それぞれの立場でこうだああだという議論がございました。それから、郵政省とは直接関係ないんですが、例えばでありますけれども、農業の水利システムをやる場合に、建設省としてはどうかという農水省と建設省との関係の問題といったようなことも含めまして、この法案ができるまでの過程では先生指摘ございましたように各省庁のやはり立場、主張というものがございました。  しかし、無事に予算関連法案ということで一定の期日までに提出をさせていただきましたということで、関係者は、非常に私どもの職員も徹夜徹夜で苦労したわけでありますけれども、とんざすることなくここまでこぎつけたということで、各省連携の一つの成功例だということで、これからもこういった気持ちを持って内容の充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  199. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 実際、この研究開発を発足させるということになれは、各省相争ってなんてことはもうやっている暇はないんだろうと思いますが、関係者の皆さんでよく協力して進めていただきたい、こう思います。  今回の法改正の中で、高齢者、障害者に運輸関係の情報を伝達する、そういうような事項が含まれております。高齢者・障害者対策というのは、これからやはり我が国の政策の中で一つの大きな柱である部分、ノーマライゼーションという言葉がありますが、ああいう言葉で重要性が強調されておりますように、これから特に重要になってくるんじゃないかと思います。  私、海外に住んでいたときに、車いすの人が平気で町に出てくるんです。なぜ彼らは安心して出てこられるかというと、何か困ったことがあると見ず知らずの人が必ず助ける、そういう社会的な約束というか仕組みというか、そういうものができていまして、日本の場合なかなかそこまでいかない。大体の人は知らぬふりして通り過ぎてしまうというようなことがあるんだろうと思いますが、いずれにしましても、これから高齢者、障害者についての対応が非常に大事になってくる中で、郵政省としてはどういうような対応がこれから考えられるでしょうか。大臣よろしかったら一言お願いしたいと思います。
  200. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 戸田委員にお答えをさせていただきます。  政策はもう戸田委員の方がずっと御専門でございまして、今さっきから研究開発に対する大変貴重な経験を踏まえた御意見を聞かせていただいたわけでございますが、同時に、政策一般、やっぱり光と影があると私は思っております。  高度情報通信社会あるいはマルチメディア社会というのを実現せねばなりませんし、そのために一生懸命努力をさせていただいておるわけでございますが、同時に、今御指摘の高齢者、障害者の方々がいわゆる情報弱者ということになったら、これはそういうことになれば健常者との間に情報格差が発生し、それが社会的、経済的格差につながるおそれがあるわけでございますから、高齢者あるいは障害者の方々のための情報通信システムの中における対策、政策というのは大変大事なことだというふうに私は基本的に認識をいたしております。  そういった中で、今郵政省といたしましては、具体的には通信総合研究所において手話・音声変換システム等の基礎的、汎用的技術研究開発をいたしております。  実は先般、私は通総研に行かせていただいて、実際このデモンストレーションを見せていただきました。手話の方が来られまして、速達にしていただきたい、こういった手話をテレビの前でやりますと、それが完全な音声に変換になりまして、今度はこちらの健常者の人が三百五十円ですと言いますと、テレビで手話で三百五十円ですと出るんです。ユニバーサル端末の研究開発と言うそうでございますが、実際デモンストレーションを見せていただいて、本当に進歩したなど。これはデモンストレーションでしたけれども、これだと本当に手話で話される人が郵便局へ行って助かるな、そういった気がしたわけでございます。  また、インターネットのホームページに、パソコンのかわりに電話機、音声の変換でございますが、やファクスを用いて簡単にアクセスできるシステムの実証実験を実は金沢市でやっております。インターネットでやると、キーボードがございますから私もなかなか苦労するんでございますが、ましてや高齢者、障害者の方々がインターネットでキーボードをたたくというのはなかなか困難なこともございますから、音声であるいはファクスでも書いてやればそれがインプットできる、そういった実験をやっております。  それから高齢者、障害者のための情報通信システムを開発する民間企業等に助成をさせていただく、こういったことをさせていただいております。  また、本年度には、特に情報バリアフリーと申しまして、高齢者、障害者のための、なおかつさまざまなハンディキャップに対応できるような調整機能を有する情報システムの研究開発通信放送機構において実施をする、こういったことをやらせていただいておるわけでございます。これも万能端末と申しますか、いろいろな情報をキャッチしてその意思をきちっとインプットして機械が作動する、こういうことでございます。  そういったことを含めて、繰り返しになりますけれども、高齢者、障害者のための、特に高度情報通信社会を迎えるに当たって、こういった方々に対する政策というのは極めて重要な施策だというふうに私は認識をいたしております。
  201. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 大変懇切なるお話をいただきましたが、この分野というのは我々が想像する以上のスピードでどんどん進んでいる分野でありまして、技術的にシステムとして進んでいっているという面があるんですが、それを具体的にアプライしていく、応用していく、利用していく、そういう面でなかなか一般の民間に任せておいては進まないようなところもあるかと思います。ぜひそういう面で郵政所管の分野でそういったことをイニシアチブをとって進めていただければということをお願いしておきたいと思います。  全体をひっくるめて考えますと、やはりそれ相当の予算をつぎ込んで大々的にやるということでもありますから、ひとつ効率的によい結果が生まれますように関係者の皆さんに御努力をいただけるようにお願いしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  202. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  203. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、但馬委員から発言を求められておりますので、これを許します。但馬久美さん。
  204. 但馬久美

    ○但馬久美君 私は、ただいま可決されました特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明、社会民主党・護憲連合及び自由党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり次の事項について万全の措置を講ずべきである。  一、通信放送機構については、平成八年十二月二十五日閣議決定された行革プログラムに従い、管制業務について経営の自立化を着実に実施すること。  二、通信放送機構が行う研究開発推進に当たっては、我が国の情報関連産業の円滑な発展に資するよう配意するとともに、民間研究開発能力を十分に活用するよう努めること。  三、本法における各事業については、その期限の終了に際し、その成果について外部の有識者による客観的な評価を行うこと。  四、通信放送機構における研究開発に従事する者のモラールの維持及び開発のインセンティブの高揚等に配意すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  205. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) ただいま但馬委員から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  206. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 多数と認めます。よって、但馬委員提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、自見郵政大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。自見郵政大臣
  207. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) ただいま特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発推進に関する法律案を御可決いただき、厚く御礼を申し上げます。  本委員会の御審議を通じて賜りました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の郵政行政を進めるに当たり御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。  まことにありがとうございました。
  208. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 川橋幸子

    委員長川橋幸子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会