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上田耕一郎君 二番目の問題としては、
日本のアニメが、アニメ王国と言われるように手塚治虫のものや宮崎駿さんのものなど非常にレベルが高く、しかも興行成績も非常に大きいいいものもあると同時に、さまざまな問題があるものもある。特に、
ポケモン市場は四千億円と言われるような商業主義の問題等々あるんですけれども、それから劣悪な
制作環境、アメリカと比べて
制作費は五分の一で賃金は四分の一だというようなデータもあるんですが、私、前回この問題を取り上げましたので、
田畑さんが言われた問題と絡んで、基本的視点の三番目にある
子供たちの健全な
発達と
テレビアニメ番組の問題、それを少し質問したいと思います。
先ほど但馬さんも取り上げられましたが、Vチップ、もう
一つはSチップ、バイオレンスとセックス、これの社会的規制というのが各国でも非常に大きな問題になった。カナダ、アメリカなどはVチップを決めているんですけれども、これは
テレビの暴力
番組が特に青少年の犯罪に
影響を与えるということについての科学的な
研究の結果、そういう結論が出てやっているんです。
カナダの場合は、八九年、モントリオール工科大学で女子学生十四人が無差別で銃撃された。その
事件が起きて、カナダのCRTC、カナダラジオテレコミュニケーション
委員会が
二つの
研究を
テレビ暴力に関して委嘱した。その
研究結果が二年後に出て、CRTCは、
テレビ暴力と社会における暴力には直接的因果
関係があるとは限らないが関連がある、こういう結論が出た。
九二年に、自分の妹がレイプされて殺害されたのは暴力
番組が
要因であったとして、十二歳の少女が百五十万人の署名を集めて
政府に
テレビでの暴力
番組の禁止を求める請願書を出したということが非常に大きな問題になった。それでカナダではこういうことで数年間議論をして、九六年にVチップの導入を決めたというんです。かなり
研究をして出しているわけです。
アメリカもそうです。アメリカについては、この
NHKの「
放送研究と
調査」、これにかなり詳細な論文がありまして、少し勉強させていただきました。
六八年、ジョンソン政権が暴力
調査委員会をつくって、詳細な
調査をやった。ペンシルベニア大学コミュニケーション
研究所のジョージ・ガーブナー
教授の
分析が取り上げられたというんです。犯罪者を罰するのは裁判所ではなくて犯罪者の敵とか警察官だ、暴力行為は処罰されないというんです、ほとんどの
番組はそういうのが多い。暴力
調査委員会・メディア専門部会は、ガーブナー論文などを
分析した結果、一、
テレビ番組の暴力シーンが個人の
目的達成、問題解決の有効な手段として使われている。二、
テレビ番組の暴力シーンが現在のアメリカ社会にはびこる暴力行為を生み出す主要な
要因の
一つになっている、こういう結論を出したんです。
その後、七一年には、連邦議会で
委員会ができて、
テレビと社会行動の詳細な
調査をやった。一々紹介しませんけれども、一番最近のものでは、アメリカの
心理学協会が九二年に「アメリカ社会における
テレビの役割」を発表している。これまで蓄積されてきた
調査研究から、
テレビで暴力
番組を
視聴したことが原因で攻撃的な行動をとるようになるということが明確になっている。また、攻撃的
番組を多数
視聴する
子供は暴力の行使を好むような態度や価値観を持つ傾向が強い。このことは大人にも当てはまるというのがアメリカの
心理学協会の結論なんです。それからセックス描写についても、
子供が
テレビで低俗なセックス描写を
視聴する結果、親が
子供に
責任ある態度や行動を身につけさせようとしてもそれができなくなってしまっている、こういう認識だというんです。
ヨーロッパでも、EUでこの問題を取り上げていることがやっぱり
NHKの「
放送研究と
調査」去年の六月号に
報告があります。
EUの意思決定機関である閣僚
理事会は、八九年、「国境のない
テレビ放送に関する命令」を採択した。これは、
テレビ放送が青少年の肉体的、
精神的、あるいは道徳的
発達を著しく阻害するおそれのある
番組、特にポルノグラフィー、無意味な暴力を含む
番組を含まないことを
確保するため適切な施策を講じるものとすると。これは命令なんです。
イギリス政府は、ポルノグラフィーを
放送する衛星チャンネルの
イギリス国内での受信の禁止命令を九三年から九六年までに三回出したと、そういうことがずっとあるんです。
もう
一つ、これはおもしろかったのは、Vチップにも関連するんですけれども、ヨーロッパ
放送連合、EBU、これがこの問題をずっと取り上げて、最後にVチップの問題について大事な結論を出しているんですね。国境を越えたヨーロッパ各国だから、それぞれVチップをやろうとしても分類が大変だというんです。そういう技術的問題の難しさも指摘すると同時に、Vチップは完全な解決策ではなく、補助的手段にとどまる。Vチップが装着されていることを前提により暴力的、性的な
番組を
放送する者があらわれれば、この種の
番組を禁止したヨーロッパの
原則の
目的に反する事態が生じ得ると。だから、Vチップをつけると、これがついているからというのでその後がえってもっと過激になり得ると。
これはきょうの朝日です。「「Vチップ」論議再燃」、これは
日本でも
郵政省でも決めましたし、中教審小
委員会中間報告が出ましたので問題になっているんですけれども、メディア問題で有名な服部孝章立教大
教授は、「「これまで以上に過激なシーンが堂々と
放送される可能性もある」と指摘する。「見るのは
視聴者側の
責任」で片づけられるからだ。」というんです。私はこれはやっぱり聞くべき
意見だと思うんです。
私がきょう言いたいのは、
テレビの無差別なひどい暴力
番組やセックス
番組は、明らかに犯罪だとか
子供たちの
発達をゆがめるんです。これはアメリカ、カナダの
研究でも、
日本も
発達した資本主義社会で同じですからほぼ同じだと思うんです。こういう
研究を
郵政省も
日本でもひとつやっていただきたいということが
一つ。
明らかにそういう
影響があるので、バタフライナイフ問題でも
影響が生まれているんですけれども、規制しなきゃいかぬが、規制をVチップというようなやり方でやるとかえって過激なことに走り得る危険もあるので、
法律その他の強制的な、それから表現の自由を規制することにもかかわるような規制じゃなくて、社会的な世論による規制、それから
放送事業者の自主的な規制、こういうものがやっぱり必要なんじゃないか。
そういう点で言いますと、もう
一つ郵政省に要望したいのは、いろんな懇談会に
視聴者代表が入っていない。これはぜひ
視聴者代表を入れて、そういう社会的な自主的規制を本当に
日本の社会全体として、上から
法律でやるようなやり方でなしに、またVチップなどの
方法によるのじゃなくて、明らかに有害なんだから。これを自主的に規制できるように
視聴者代表も入れた懇談会あるいは
委員会、こういうものをつくることを
検討していただきたい。
以上二点、
局長にお伺いしたいと思います。