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1998-06-04 第142回国会 参議院 外交・防衛委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年六月四日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月三日     辞任         補欠選任      服部三男雄君     大野つや子君  六月四日     辞任         補欠選任      竹村 泰子君     前川 忠夫君      田村 秀昭君     泉  信也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 須藤良太郎君                 武見 敬三君                 吉田 之久君                 高野 博師君     委 員                 岩崎 純三君                 大野つや子君                 塩崎 恭久君                 鈴木 正孝君                 野間  赳君                 二木 秀夫君                 宮澤  弘君                 齋藤  勁君                 竹村 泰子君                 広中和歌子君                 前川 忠夫君                 田  英夫君                 立木  洋君                 泉  信也君                 田村 秀昭君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外 務 大 臣  小渕 恵三君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    政府委員        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        登 誠一郎君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣法制局第二        部長       宮崎 礼壹君        国際平和協力本        部事務局長    茂田  宏君        防衛庁参事官   山崎隆一郎君        防衛庁長官官房        長        大越 康弘君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        防衛庁人事教育        局長       坂野  興君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        外務大臣官房長  浦部 和好君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  阿部 信泰君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  竹内 行夫君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、服部三男雄君が委員辞任され、その補欠として大野つや子さんが選任されました。     —————————————
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 竹村泰子

    竹村泰子君 民主党の竹村でございます。おはようございます。  政府は、今回の法案提出に当たって、これまでのカンボジアなどのPKO活動を通じて武器使用あり方を含め、要員などの安全確保及び具体的な安全対策の一層の充実必要性や、人道的な国際救援活動における迅速かつ柔軟な派遣体制確立などの必要性反省を踏まえての法改正と、こういうふうにおっしゃっておりますが、具体的にカンボジア、アンゴラ、モザンビーク、ザイールなどを含めましてPKO活動反省点というのは何なんでしょうか。
  5. 村岡兼造

    国務大臣村岡兼造君) 今般の法改正は、カンボジアザイール等での活動を通じて得られました、武器使用あり方を含めた要員等安全確保及び具体的な安全対策の一層の充実必要性や、人道的な国際救援活動における迅速かつ柔軟な協力体制確立必要性等教訓反省を踏まえ、法の実施のあり方について見直しを行った結果、所要の改正を行うものでございます。  例えば物資の協力とか、これは国連難民高等弁務官とか、例をいいますと、ルワンダのときには停戦合意がなくて難民救援ではザイールの方にやったとか、そういうことの教訓を踏まえてこの改正を行っている、こういうことであります。
  6. 竹村泰子

    竹村泰子君 それでは、そういった反省点を踏まえての法改正ということで少し御質問をしていきます。  まず、先日来この委員会でも問題になっております武器使用の問題についてお伺いをいたします。  現行法では、武器使用自衛隊部隊としてその国際協力業務に従事する自衛官個人判断にゆだねられております。その使用に当たっては、正当防衛及び緊急避難の場合を除いては人に危害を与えてはならないとされています。これは基本的には自然権的な自己保存という言葉でありまして、自衛官個人判断でなされるべきもの、こういうふうに九一年の衆議院PKO特別委その他で野村政府委員も答えておられます。  しかし、久間防衛庁長官もおいでになりますけれども自衛隊というのは常に組織として訓練されているわけで、その行動も組織的なことを訓練されていると私どもは思います。常識的に考えても個人判断にゆだねたということは、PKO国会の制定当時の私ども国会審議の中でも、なぜなのか、本当にそれはおかしいというふうに言ってきたわけですけれども組織として行動する自衛隊海外PKO活動する場合には一層その統制がとれたものにならなければいけないと思いますけれども、どうしてあのときは個人判断によることとしたのか、これを改めて確認したいと思います。
  7. 久間章生

    国務大臣久間章生君) その当時の議論をすべてつまびらかに私把握していないかもしれませんけれども、やはり考えますに、PKO参加しております部隊隊員の場合、通常の職務遂行に関して武器使用するようなケースにぶつかるというよりも、むしろ空間的にもまた地域的にもそれぞれの、例えば寝ているときとかあるいはまたその職務関係ないときにもどこで襲われるかわからない、そういうときにやはり武器使用することが考えられると。そして、その場合はやはり個々人判断によるんだというような考え方から武器使用を認められて、そしてそれについては自衛官判断だというふうになったんじゃないかと思うんです。  ところが、帰ってきましたいろんな隊員等の話を聞いてみますと、先ほど委員もおっしゃられますように、日ごろからやはり組織立って訓練を受けておる者として、カンボジアなんかでもそうでございましょうが、寝ているときに絶えず銃声が聞こえたとか、あるいは土のうを積んで休憩をとったとか、そういうときに自分一人の判断でそれぞれが行動するというのは非常に不安だという心理的な圧迫を感じておったというようなこともございまして、日ごろから部隊として訓練を受けている彼らとしては、そういう身の危険を感じたときでもやはり上官の命によって行動するという方がかえって統制がとれていいのではないか、武器の適切な使用につながっていくんじゃないか、そういう意見等が強かったので今回の法の改正につながっていったわけでございます。  そういう意味では、その当時の個々人判断に任せることが適切であるというふうに言っていたのが必ずしもそうではなかったというふうな理解の仕方をしているわけであります。
  8. 竹村泰子

    竹村泰子君 久間防衛庁長官、今何か非常に人ごとのようにおっしゃいましたけれども、あなたは防衛庁長官ではなかったですけれども、あの当時はもちろん国会議員でいらっしゃったわけで、私たちが自衛隊海外派遣してもいいのかと、憲法との絡みで大変な抵抗というか野党側がそういった活動を繰り広げたわけです。  今度、防衛庁長官におなりになるときに当然PKO見直しということが出てきたわけで、にもかかわらずつまびらかではないけれどもそのように聞いておりますとか、そういう御答弁は私は非常に不本意なお答えである、無責任なお答えであるというふうに思います。お忙しいとは思いますが、せめてあのときの議事録ぐらいはすべて読んでおいていただきたいと思います。
  9. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 議事録は読んでおります。議事録は読んでおりますけれども、そのときのあれをすべて、当時の長官発言なりなんなりも読んでおりますけれども、全部熟知しているわけじゃございませんで、その言葉の端々に出てきている中からいろいろと推測はしておるわけでございます。しかし、その当時から自衛隊PKO部隊として派遣する、あるいはそのときに武器を持っていくそのこと自体にこれが憲法上問題があるということは言っていないわけでございまして、その点は従来とも変わっていないわけでございます。  ただ、武器使用個々人判断に任せた方が適切であるとその当時は言っておられたけれども、必ずしもそうじゃないんじゃないか、むしろ統制がとれた方がいいんじゃないかというふうに私ども判断したということでございまして、そういう点ではその当時の考え方と現在とでは違うじゃないかと言われれば違うというふうに言わざるを得ません。
  10. 竹村泰子

    竹村泰子君 それでは、こういうことで時間を使っても仕方がないので、少し従来の経緯を振り返ってみようと思います。  PKOなど自衛隊海外での武器使用憲法とり関係、これは九〇年八月の湾岸危機以来、政府内で再三議論されて、大別して正当防衛のための武器使用aタイフ、それから任務妨害排除のための武器使用bタイプというのが議論の焦点であったというふうに思います。  国連PKOマニュアルでは両方とも武器使用が認められているわけですけれども我が国の場合、湾岸危機の際の結果的に廃案になった国連平和協力法案づくり過程では、内閣法制局が、生命身体防衛自己保存のための自然権的権利であり憲法が禁じる武力行使にはならないが、任務妨害に対する武器使用軍事的組織に対する自衛隊組織的な武器使用につながり。武力行使に当たる可能性が強いので容認できない、こういう理論構成をしておられました。  これは八〇年十月、政府自衛隊国連軍への派遣に関連する答弁書で示した「目的任務武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない」という憲法解釈を踏襲したからでありまして、指揮官命令による武器使用は、相手国家組織の場合などは憲法九条第一項が禁止する国際紛争解決のための武力行使に抵触するという可能性が非常に懸念されておりました。この懸念はなくなったんですか。
  11. 久間章生

    国務大臣久間章生君) PKOは、御承知のとおり五原則に基づいてやっておるわけでございます。そういうことで、国家的組織相手に戦うというようなことはまず考えられない。そういうようなことから、そういう問題は起こってこないというふうに思っております。  確かに、今おっしゃられましたようにaタイプbタイプとございまして、bタイプの場合は部隊の言うなれば目的遂行のために武器使用するということになりまして、これは武力行使との関係でやや問題がある可能性が強いというようなことからこれについてはとらないということで、aタイプに限るということにしているわけでございます。
  12. 竹村泰子

    竹村泰子君 九一年九月に国会に提出されて成立した現行PKO法武力行使を伴う可能性のあるいわゆるPKF本隊業務にも自衛隊部隊参加を認めることとしましたが、その調整過程では、武力行使を伴う任務には自衛隊参加できないとの従来からの政府見解との整合性を図るため、内閣法制局は、我が国平和維持隊参加活動する場合、武器使用我が国要員生命身体防衛のために必要最小限度のものに限り、停戦合意前提が崩れて短期間に回復しない場合には参加部隊派遣を終了させる、このような前提を設けることにより、他国武力行使しても我が国武力行使をせず、他国武力行使と一体化しないことが確保できる、その意味憲法九条に反するものではない、解釈を変えるわけではないというふうに工藤内閣法制局長官衆議院PKO特別委員会、九一年九月、そのように言っていらっしゃいます。  このような経過から見て、政府見解は微妙に変わってきた、法制局見解も微妙に変わってきた。これはマスコミなども、容認してきた、緩やかになってきたというふうに伝えておりますけれども、万一武力行使という状況になっても自衛隊は撤収する、そういうことを前提とするのでそうしたPKOへの自衛隊参加は可能であるということなんですね。  その一方で、任務妨害排除のための武器使用については、それが全部武力行使になって憲法違反がということには必ずしもならないと、これも工藤さんが言っておられます。とされておりまして、その場合もケース・バイ・ケースによるというふうになっているんです。  武器使用武力行使憲法九条との関係、今私が言ったように従来整理をされてきたと言ってよいのかと思いますけれども、改めて政府から従来の答弁を踏まえて整理された基本的な見解をお聞きしたいと思います。  国民は、こういう何かどこと高くちぐはぐでごまかしがあるような、何となく変だな、しかし武力行使をやってしまったら、これは海外での武力行使憲法違反じゃないか、そういう声が非常に大きい。私のところにもPKO法改正を通さないでくださいという大変なファクスが入っております。こうした基本的な枠組みは今回の改正によってもいささかも変わることなく維持されるのか、国民が十分納得するようわかりやすく明快に説明を願いたいと思います。
  13. 秋山收

    政府委員秋山收君) 国連平和維持活動におきます武器使用憲法との関係についてのお尋ねでございますが、ただいま先生が御指摘されましたような我が国国際平和協力法に基づきまして平和維持活動参加いたします場合、まず第一に武器使用我が国要員生命身体防衛のために必要な最小限のものに限られること、それから紛争当事者間の停戦合意が破られるなどいたしまして、我が国平和維持隊組織参加して活動する前提が崩れまして、短期間にこのような前提が回復しない場合には我が国部隊派遣を終了させるなどの前提を設けて参加することということから、我が国平和維持隊への参加が基本的に憲法九条との関係で問題が生ずることはないという点は委員御指摘のとおりでございます。  このことは国際平和協力法の条文の中に、武器使用につきましては第二十四条、それから派遣の終了につきましては第六条第十三項というように法文の中に組み込んで制度化されているところでございまして、今回の改正におきましてもその点はいささかも変わるものではございません。  それから、武器使用武力行使に関します基本的な考え方でございますが、これは平成三年九月二十七日に政府がいわゆるPKO特別委員会政府統一見解を示しているところでございます。   憲法第九条第一項の「武力行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争一環としての戦闘行為をいい、法案第二四条の「武器使用」とは、火器、火薬類刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をその物の本来の用法に従って用いることをいうと解される。その上で、憲法第九条第一項の「武力行使」は、「武器使用」を含む実力の行使に係る概念であるが、「武器使用」が、すべて同項の禁止する「武力行使」に当たるとはいえない。例えば、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力行使」には当たらない。 というふうに述べているところでございます。  さらに、今回の改正関係がございます命令に基づく武器使用に関しましては、これは平成三年十二月五日の当参議院の国際平和協力等に関する特別委員会における当時の法制局長官答弁でございますが、例えば生命身体防護のためにやむを得ない必要があるとき集団的に打つたからといって憲法上問題があるということにはならない旨を答弁しているところでございます。  以上のようなことでございまして、このような基本的な憲法解釈につきましては、今回の法改正におきましてもいささかも変更されるものではございません。
  14. 竹村泰子

    竹村泰子君 少し詳しく先んじてお答えいただいたようで、私は次の質問で、どうして今回の改正武器使用自衛隊員個人判断から上官命令による使用へと変わることになったのか、見解を改めるにはそれなりの理由が必要だが、従来否定的だった指揮官命令によ公武器使用が今度は上官命令による武器使用とすることについて、なぜそれが可能なのかとお聞きしようと思いましたが、今のような答弁をなさいますか、同じような。
  15. 秋山收

    政府委員秋山收君) 私どもの立場で憲法論観点から御説明を申し上げるとすれば、先ほどちょっと先走って失礼いたしましたけれどもお答えしたとおりでございます。
  16. 竹村泰子

    竹村泰子君 上官命令による武器使用、それは命令の結果それが複数の隊員によって行われることになれば、外形的には組織としての武器使用にほかならなくなるのではないですか。しかもその相手国家組織であれば、まさにそれは憲法が禁ずる武力行使そのものに限りなく近づくことになる。このような場合、憲法違反の問題は生じないんですか。国家組織とは言えないようなゲリラ、匪賊などというような、前のPKO国会議論のときにはそういうことも出ておりましたけれども相手国家組織であれば、あるいはきちんと組織をされた組織体であればどうなんですか。
  17. 秋山收

    政府委員秋山收君) 平成三年の国会議論されましたのは、いわゆるbタイプ武器使用につきまして、それが態様によっては先ほど申し上げました憲法第九条の武力行使の定義に該当するような状況が生じて、場合によっては憲法九条との関係で問題が生じ得るということを申し述べているのでございまして、武器使用が例えば自己または自己とともに現場に所在する我が国要員生命身体防衛するためといういわゆるaタイプ武器使用のような場合には、仮にそれが命令による、したがいましていわば集団的な形態の武器使用となったといたしましてもそもそも憲法上の問題が生じないということでございまして、このことは平成三年のときから申し述べているとおりでございます。
  18. 竹村泰子

    竹村泰子君 ちょっとよくわからないんですけれども相手組織的なものであっても、そして明らかに外から見ていると軍隊軍隊が戦っていると見えますね。こちらも外国に行くと、自衛隊幾ら軍隊ではないとおっしゃったって軍隊ですから。それが戦っていると見える、そのときに憲法九条に違反しない、そういうことですか、今のお答えは。そういうこともあり得ると。
  19. 秋山收

    政府委員秋山收君) お尋ねのような状況が仮にあったといたしましても、それは、我が国憲法観点から見ました我が国自衛隊員行為の法的な性格は、あくまでも自己または自己とともに現場に所在する我が国要員生命身体防衛、そのための行為であるということでございます。したがいまして、お尋ねのような状況が仮に生じたとしましても私ども憲法上の問題は生じないものであるというふうに考えているところでございます。
  20. 竹村泰子

    竹村泰子君 村岡官房長官武器使用武力行使関係について、  一般に、憲法第九条第一項の武力行使とは、我が国の物的、人的、組織体による国際的な武力紛争一環としての戦闘行為をいいますが、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員生命または身体防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限武器使用憲法第九条第一項で禁止された武力行使には当たらないとしており、また、命令に基づく武器使用に関して、例えば生命身体防護するためにやむを得ない必要があるとき、集団的に行ったから憲法上問題があるということにはならないと先日の四月三十日衆議院の本会議答弁していらっしゃいます。  橋本総理も、武器使用現場にある上官命令に係らしめることによって、こうした武器使用統制のとれたものになり、いわば集団的に行われるものとなる場合があるとしても、その場合はあくまで自己保存であって武力行使にはならないというふうに、これも衆議院の本会議で答えておられます。  このように、個人判断から上官命令に変わっても、また集団的な武器使用であっても、相手組織的な軍隊であっても、自己保存のための自然権的権利であるとする見解には変わりがないとしておられるわけですが、なぜそうなるのか私にはわかりません。明確に説明されていないと思います。ここまでしか言っていらっしゃらないんです。お答えください。
  21. 村岡兼造

    国務大臣村岡兼造君) 今、法制局からもいろいろ説明がございました。前からもお答えしておりますように、カンボジアザイール等への派遣経験等から、武器使用が個々の隊員判断にゆだねられている現状では、集団で行動している場合において、状況によっては統制を欠いた武器使用によりかえって生命身体に対する危険や事態の混乱を招くことがあり得るとの問題点が感得され、また、当時は未経験でございましたが、国連平和維持活動への参加各国の実情からも確認されているところであります。  そこで、いわば自己保存のための必要最小限武器使用という点を何ら変更せず維持した上で、その一層の適正を確保するため、原則として現場にある上官命令によることとするものであり、またこれまでも命令に基づく武器使用に関して、例えば生命身体防護のためやむを得ない必要があるとき、集団的に行ったから憲法上問題があるということにはならない旨の答弁をいたしているところであります。  したがって、今般の改正法案は何ら憲法に抵触するものではないと考えております。
  22. 竹村泰子

    竹村泰子君 官房長官は私もお人柄、そしていろいろなところでの御発言、注目しておりますし、すぐれた方であるというふうに思いますけれども、今の御答弁は全然国民には理解できない御答弁ではないかと思います。そもそもPKO自衛隊海外に行くということについて国民的な大反対があったわけですから、やはりもう少しよくわかるような明確な説明が必要なのではないかと思います。  ちょっと視点を変えましょう。  上官命令武器使用しますね。その結果、武器を持って戦うわけですから当然相手危害を加えます。人も殺します、傷つけます。そのとき、正当防衛及び緊急避難であったかどうかが問われるのは従来どおり武器を実際に使用した自衛官個人でしょうか。それとも命令を下した上官のみがあるいは責任を問われるのか、そこのところはどうなんでしょうか。
  23. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  今般の法改正は、集団で行動している場合はおいて統制を欠いた武器使用によりかえって生命身体に対する危険または事態の混乱を招くことがあり得るとの問題点を踏まえ、法第二十四条の武器使用について、原則として個々の具体的状況に応じて最も適切な判断をすることが期待できる現場にある上官命令によるものとすることにより、その一層の適正を確保しようとするものであり、法二十四条の要件に適合しない武器使用がなされることは想定しがたいと考えております。  しかし、あえて仮定の議論として申し上げれば、法律に基づかない武器使用が許されないことは当然であるので、万が一にも法二十四条の要件を欠く武器使用命令があれば、それは違法な命令であり、そのような命令を発して武器使用させた上官については懲戒処分、さらには刑事罰の対象となり得ることがあり得ると考えます。  他方……
  24. 竹村泰子

    竹村泰子君 私が聞いているのはそういうことじゃないですよ。茂田さんが答えているのはあくまでもそういうことは起こり得ないと。起こり得ない問題なんだけれども……
  25. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 万一起こった場合にはどうなるかという説明を申し上げているわけであります。
  26. 竹村泰子

    竹村泰子君 しかも、上官が不当な命令を出した場合にはというふうなお答えでしたけれども、そうじゃなくて今戦いが起きた場合に、それはもう当然起こり得るでしょう、紛争しているところへ行くわけですから。停戦合意が成立をしているとしても、やっぱりいろんな人たちがいるわけですから当然起こり得ることもあるでしょう。そのときにどっちが責任をとるのかと言っているんですよ。だれが責任をとるんですか。
  27. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 先生のおっしゃるその責任という意味ですけれども上官判断によって上官武器使用については命令をするというのが今回改正したいということでございます。そういう意味では、武器使用判断の責任は上官にあるということでございます。  ただ、この上官命令が間違ったような場合、そのときに上官の責任なのか、その命令を受けた隊員の責任なのかということについての責任の所在のあり方を先ほど答弁しようとしていたわけでございます。
  28. 竹村泰子

    竹村泰子君 ちゃんと茂田さん聞いていてください。上官が間違った命令を出すことも、人間だからそれは間違うこともあるかもしれないけれども、間違った命令だったかどうだったか、その判断をだれがするのかわかりませんが、間違った命令を出したときにはそういう命令を出した上官が罰せられるんでしょう。個人が罰せられるんですか。
  29. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 先ほど答弁の途中で中断いたしましたけれども、もう一度繰り返します。  万が一にも法二十四条の要件を欠く武器使用命令があった場合、それは違法な命令であって、そのような命令を発して武器使用させた上官については懲戒処分、さらには刑事罰の対象となり得ることがあり得ると考えます。他方、上官命令に従ったにすぎない隊員については、原則としてその責任を問われることはないと考えております。  ただ、上官命令に重大かつ明白な違法があり無効である場合にはそれに従う義務はなく、そのような無効な命令であることを知りながらあえて武器使用した隊員については懲戒処分、さらには刑事罰の対象となり得ることがあり得るということでございます。
  30. 竹村泰子

    竹村泰子君 ややこしくて、そういう理屈は全然国民には通じませんですね。  では、上官命令についてちょっと伺います。  今回の改正によって、武器使用原則として現場にある上官命令によると。いかなる者がここにいる上官に当たるかということで先日も御質問があったと思いますが、現場にある上官に関しては、五月七日の衆議院安全保障委員会で、茂田さん、国際平和協力本部事務局長でいらっしゃるわけですが、「上官というのは、その現場にいる自衛隊員の集団がございますけれども、その中で、指揮命令系統の中で上位に位する者という人でございます。もしその現場に指揮命令関係には入っていないけれども位の高い人がいたとしても、その人は上官には当たらない。その現場にいる自衛官の中の指揮命令系統に入っている人の上位の人という意味でございます。」と言っていらっしゃる。  これに対して、太田防衛庁運用局長は、「例えば二人でトラックに乗って運転していたという場合に、その人は形式的に部隊指揮官ではないかももれません、ただ、その場合に上下関係があって、上官ということであれば、その人が武器使用についての命令を下すというふうに考えております。」というふうに違う答えをしていらっしゃるんですね。  両者のお答えを比較しますと、茂田さんは、指揮命令系統に入っている上位の人が、もっと大将とかいろいろ偉い人がいても、指揮命令系統の上官であり、入っていなければ上官には当たらないと。太田局長は、指揮命令系統に入っていなくても位の高い人の方が上官に当たると。両者の御答弁が食い違っていますけれども、どうなんですか。
  31. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  改正法案第二十四条に規定する上官とは、一般の公務員であれば上司に相当するものでありまして、個々の自衛官等に対して正当な指揮権限を有する者を指し、部隊の長たる指揮官とは異なる概念でございます。  改正後の国際平和協力業務の実施に当たっては、部隊構成員として派遣される自衛官については、集団で行動する場合においては、現場にある上官が明確になるような措置をとることとしておりまして、御指摘の運用局長答弁は、かかる場合の上官について述べたものであります。  したがって、先般の私の答弁と運用局長答弁との間には何ら食い違いはないというふうに考えております。
  32. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) お答えします。  今、事務局長の方からお答えしたとおりでございますけれども、若干敷衍させていただきますと、私が実際にわかりやすい例として、トラックを運転した場合のお話を申し上げました。これは要するに、実際に上官といい、部隊指揮官といい、その意味で共通している概念である点は、そこは指揮系統にあるということでございます。  それから、実際にトラックの例で申し上げますと、二人いたと。その場合の指揮系統が、一人が上位にあればその人が上官になるということでございまして、先般の事務局長と私の答弁は理屈の面とそれから実際の例を申し上げたわけでございまして、その点で何ら食い違うというふうには考えておりません。  この場合、もう一つ事務局長お答えしました、実際には例えば階級の上位の者がたまたまその場に居合わせると、しかし、業務としてそこで指揮関係にはないという場合に、そのたまたま居合わせた一番上位の者が、上位であるからといってその面で上官というふうにならない場合がある、こういうことを申し上げたわけでございます。
  33. 竹村泰子

    竹村泰子君 全然わからないんですけれども、その指揮命令系統の上位の人を上官と言うと。では、二人でトラックに乗って運転して、あるいは二人ないし三人で運転していた場合に何事かが起きて、ゲリラに襲われるとかいろいろなことがあって紛争があった場合、だれが責任をとるのかということは、その中の身分の高い人であって、位の上の人であって、それは上官ではないけれども、そのときには上官になるということなんですか。
  34. 久間章生

    国務大臣久間章生君) ちょっとかみ砕いでわかりやすく言えば、こういうことでございます。  例えば、今ゴラン高原に行っておる。そのゴラン高原に行っているときに、司令部要員というのがおります。それと輸送業務をやっているのがおります。輸送業務をやっておるのが二人乗っておって、それに司令部要員の人を乗せて向こうまで送り返すというときに襲われたとします。司令部要員が一佐で、あとはいわゆる一尉、二尉だったとします。そうしたときに、輸送業務につく場合にはどちらが上官か下かということはきちっとしていますから、その場合はトラックを運転している二人のうちの輸送業務の上位の方が上官になるわけです。そこでは一佐がおるけれども、一佐は指揮命令系統が違うから、それはいわゆるここに言う上官にはならないと、二人の先ほどの話はそういうことでございます。  したがいまして、襲われたときにはその下位の者に対して上位であるそういう輸送業務を担当しているそこが命令を下す、そういう形になるわけであります。
  35. 竹村泰子

    竹村泰子君 その場合、私がさっき言ったようなことがトラックの中で起きてしまった場合、そうすると位の高い人の方が責任をとってくれるんですね。それは個人判断ですとは言わないですね。
  36. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 今回、この法改正をお認めいただきますと、実際にこういう場合に武器使用するときの具体的な仕方につきまして内部で規則をつくりまして、具体的な事態に対応してこの法律に従って適切に武器使用が行われるように、そのような規則をつくる予定でございます。  その際、今の例で言いますと、その場合には上官に当たる者はだれかと、武器使用についてはこの人がやるんですよということについてもあらかじめ規則の中で定めて、混乱が起きないようにしたいというふうに考えております。
  37. 竹村泰子

    竹村泰子君 この問題で時間をとっていても私の質問時間が終わってしまいますので、次に移りたいと思いますが、また後で引き続き同僚議員が質疑をしてくださるというふうに思います。  九二年六月、衆議院の本会議PKO関連二法案が成立して、九月十七日にこの法律に基づいてカンボジアでのPKO参加する陸上自衛隊派遣施設大隊の隊員を乗せた海上輸送補給隊の輸送船が呉の基地から出発をいたしました。私はこの日を戦後の政治史、憲法史の大転換の日と位置づけています。  PKO法自衛隊海外派遣を可能にするためにつくられた法律であり、私はここで神学論争をする気はありませんが、日本国憲法そのものが問われている法律であることは、たとえPKO派遣の事実が積み上げられた現在においても変わっていないというふうに考えています。その意味では、一九五四年六月二日、参議院本会議の「自衛隊海外出動を為さざることに関する決議」を、国際社会の変化を理由に無視して海外派遣を続けているということにこそ問題があると思っています。  今改正で実施されることになります上官命令による武器使用停戦合意なしの人道的物資協力は、日米ガイドラインのもとで実施される対米協力やそれ以外の対米協力にも適用していこうという意図が見えると言わざるを得ないというふうに思います。  時間の関係で少し質問をパスしなければならないんですけれども自衛隊海外で行う救援援助活動には、現行法体系ではPKO法に基づく人道的な国際救援活動、それから国際緊急援助隊派遣法に基づく国際緊急援助活動の二通りがあります。  PKO法成立以前には、例えば人為災害のほかに湾岸危機の際のクルド難民の支援というふうな紛争によって起こる二次的な災害、これについても国際緊急援助隊派遣法の対象とされておりました。しかし、PKO法が成立をしてからは、四年間の援助隊活動状況にかんがみて、災害の規模によってはさらに大規模な援助隊を派遣できるようにする必要がある、被災地で自己完結的に活動し得る体制を充実すべきことというふうなことで、海部総理も百二十一国会でそのように答えておられます。  紛争に起因するものについてはすべてPKO法  の人道的な国際救援活動として実施し、自然災害、人為災害に起因するもののみを援助隊派遣法に基づく国際緊急援助活動として実施する、こういう政策上の仕分けがされたというふうに思いますけれども、両者が行う任務の内容と自衛隊参加する場合の武器の携行についてはどのような違いがあるのでしょうか。簡潔にお答えいただけますか。
  38. 加藤良三

    政府委員(加藤良三君) 国際緊急援助隊法の方につきましては、その被災国内において武器使用が必要と認められる場合には国際緊急援助隊そのものが派遣されないということになりますので、被災国内においてこの場合には武器を携行するということはないということだと思います。
  39. 竹村泰子

    竹村泰子君 そもそも、自衛隊による救援援助活動を紛争対処のためのPKO法と自然災害、人為災害対処の国際緊急援助隊派遣法という別建ての法律によるとしたことに問題があるのではないかと私は思うんです。  我々は、かつてPKO法案審議の際、自衛隊以外の常設組織を設けて、そして国の内外を問わずこの組織に人道救援活動及び災害援助活動を行わせる方が適切ではないかとの提案をしたことがあります。しかし、政府はこの提案を受け入れられず、別の組織をつくることは第二自衛隊をつくることになる、同じであるというふうにして、自衛隊救援活動や治安維持のために出ていく方が国の財政上からいってもいいと、渡辺外務大臣も百二十三国会、参議院のPKO特別委員会でそういうふうに答えていらっしゃいます、私たちがそう主張したわけですけれども。これはまさに自衛隊活用の利点を説いた、自衛隊海外派遣したかったというふうに言ったら言い過ぎなんでしょうか。  しかし、実態は既に指摘したとおりでありまして、自衛隊が有効に活用されているとは言いがたい状況があるわけです。だから今度の改正もなさるんでしょうけれども、やはり自衛隊を主体としつつも、その他の専門家も加えて非武装常設の国際協力隊を創設して、活動対象を紛争対処、災害対処の別に分けることなく、この協力隊をもってあらゆる人道的な国際救援活動及び国際緊急援助活動両方に当たっていただくことができれば、我が国としては国際的な責めも受けず、より効率的、効果的な国際貢献ができるのではないかと思いますが、これはぜひ前向きな検討を含めた御答弁をいただきたいと思います。
  40. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) このPKO法案が成立されるとき、当時の社会党から民間人の非武装常設協力隊をつくって貢献できないかという御提案があったことは承知いたしております。  当時政府に対して同様の御提案があったと聞いておりますが、渡辺外務大臣から、結局国連平和維持活動や人道的な国際救援活動に適切かつ迅速に協力するためには自衛隊が長年にわたって蓄積してきた技能、経験、組織的な機能を活用することが不可欠であると考えており、そういう意味で今回のPKO法案自衛隊をして協力せしむると、こういうことでございましたが、その考え方は私自身も依然として維持しているつもりでございます。  その結果、カンボジア、ゴラン高原等におきまして自衛隊活動国連や各国政府関係者からも高く評価されていることからも実証済みであると、このように認識いたしておるところでございます。
  41. 竹村泰子

    竹村泰子君 時間ですのでやめなければなりませんが、これはぜひ今後の見直しも含めて御検討いただきたい問題であるというふうに思います。  それから、七月にカンボジアで選挙が行われますが、これに対して例えば国会議員団、この前パレスチナへいらっしゃいましたね、小渕さんが隊長でいらっしゃったと思いますけれども、そういった監視活動への国会議員派遣をぜひ検討していただきたいというふうに思いまして、私の質問を終わります。
  42. 高野博師

    ○高野博師君 それでは最初に、防衛庁の過大請求疑惑問題についてお伺いいたします。きのうも衆議院の方でこの問題が取り上げられたんですが、若干私が感じていることも含めてお伺いいたします。  きのうの衆議院議論の中で虚偽の答弁をしたんではないか、そういう疑いが強くなったというような報道がありますが、一連のこの問題の中で、東洋通信機とかあるいはニコー電子、その他の一連の関連企業と防衛庁の調達本部との間に防衛生産管理協会というのは介入しなかったんでしょうか。
  43. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 防衛庁の所管をいたしております防衛生産管理協会、平成三年に設立されておりますが、四社事案との絡みで私が情報を得ている限りでは、協会そのものが関係しているというようには受けとめておりません。
  44. 高野博師

    ○高野博師君 これはなぜ入ってないんでしょうか。
  45. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 御質問の趣旨をちょっと判断しかねるわけでありますが、……
  46. 高野博師

    ○高野博師君 要するに、この協会は財団法人なんですが、いろんな防衛庁の秘密文書等も含めて民間に発注するときに間に入って、その秘密文書等の管理もきちんとやらせるという意味を持ってつくられた財団法人なのでありますが、そうすると、この財団法人が業務を委託される場合の基準というのは何なんでしょうか。  それから、今回のこの問題でこの協会が間に入っていなかったとすれば、なぜ入っていなかったのか、その基準に合わなかったのかどうか、あるいは発注する物、部品、装備品等によって分けているのか、何によって介入するかしないかを決めているんでしょうか。
  47. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 防衛生産管理協会につきましては、平成三年に設立されたときに私ども所管の公益法人として設立されました。この大きな目的といたしましては、防衛技術情報、この秘密の保持ということの重要性につきまして世間一般に十分に御理解いただく、情報提供をしたりセミナーを提供してそういった認識を高めていただく、そういった点に公益性を求めて公益法人として設立をされております。  今、委員質問の点にございますのは、生産管理協会の事業の一つとしてやってございます事業委託業務、受託業務についてのお話だと思います。  具体的には、防衛装備品の生産等に関する技術情報の管理について業務委託をしておりますし、また官給品、これは製造メーカーが航空機とか船とかをつくる場合庭官側、防衛庁の方から支給するパーツとか搭載品があるわけですが、これを企業に保管してもらって、必要な場合にそれを据えつけてもらう……
  48. 高野博師

    ○高野博師君 それはもうわかっているんです。
  49. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) それについての受託をしております。
  50. 高野博師

    ○高野博師君 ただ、民間の企業に仕事を発注する際にこの協会が間に入るか入らないかという問題があると思うんですが、その基準は何かということを聞いているんです。  先ほど言ったセミナー云々とか公益性云々と言うんですが、セミナーなんか本当にやっているかどうか、後で一覧表見せてください、最近どのぐらいやっているのか。  要するに、公益じゃなくて、マル秘情報を含めてこの防衛の秘密情報を管理しているということなので、これは一般の人がアクセスできないということはこの前も答弁しているわけです、防衛庁は。  そういう中で、この協会がどういう場合にこういう業務委託を受けるか受けないか、その基準というのは何かあるのかと聞いているんです。簡単に答えてください。
  51. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 簡単に申し上げますと、防衛庁から調達を任された、オーダーを受けた企業側におきまして、防衛庁との甲乙契約の中では、こういった防衛技術情報、秘密の保持について契約上乙が遵守する義務を負っているわけでございます。ただ、この乙が具体的に技術情報管理をする場合にそれなりの専門の要員なりノウハウなりを必要といたしますので、乙の側からいたしますと、これらについての技術情報の保持管理について、公益法人である生産管理協会に委託した方がよりよい、コスト面も考えてお願いしやすいという場合には、この乙と協会の間でこういった秘密保持義務についても契約をした上で私どもが認めてそういった委託をしていただいているわけでございます。  今、先生がおっしゃった、具体的に委託が可か否かとかいう基準があるかどうかという点につきましては、これは防衛産業のかなり主要な企業をほとんど網羅して設立に賛同をいただいた協会でございますので、そういった受注企業が協会に委託する場合に特にネガティブにこういう場合は受託をしない、そういった基準はないかと存じております。
  52. 高野博師

    ○高野博師君 この協会は年間十億円を超える収益事業をやっているんですが、そうすると、今回の過大請求疑惑に関する書類等は一切持っていないということですね。そこは確認できますか。
  53. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 私の知り得るというか現時点で、この場で知り得る限界の中で申し上げますと、防衛技術情報の管理について任された、つまりある非常に限定された部分についての業務を受託しておりますので、本件四社事案絡みの情報には接していないんではないかと承知をしております。
  54. 高野博師

    ○高野博師君 ないかどうか、あったかどうかは確認できますか。
  55. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) それは時間をいただければ確認ができると思います。
  56. 高野博師

    ○高野博師君 それではそれは確認をしてください。  それでは防衛庁長官に、きのうの衆議院での答弁の中で長官の責任問題を問われているんですが、長官答弁を聞いていますとほとんど責任については触れていないんですが、念のためにもう一度私はお伺いいたします。
  57. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 責任問題というのがどういう意味で言われているのか私自身もよくわからないわけでございますが、実を言いますと、この問題が発生しまして、私が就任して一応新しい人事が終わりましてから新しいスタッフで、この問題が話題になってまいりましたので原価差異事案対策特別委員会というのを内部でつくりまして、そしてどういう経緯の中でこれが発生してきたのか、そしてまた原価差異を過払いだったということで返還させたときにどういう措置をとったのか、そしてこれから先こういう事案が発生しないためにどういう形で再発防止策をとるかというこの三つに絞りましてずっと調査を続けてまいりました。そしてその後の調査も続けております。  しかしながら、過去の問題でございますために、関係者も一生懸命やってはおるんですけれども、十分といいますか、きちんと把握できていないという事実はございます。何分、多数にわたる過去の事案であって、また防衛庁の行う調査といいますのも強制調査権もなく、おのずから限界があるわけでございまして、そういう意味で現在まで至っているわけでございます。  そういう中で、きのうの場合、とにかく過去に過払いをしたということは責任があるじゃないかという話でございまして、それは防衛庁としては責任がございます、しかし、それはだれのときの責任がどうなのかと言われますと、過去五年以前の話まできのう言われましたので、五年以前にまでさかのぼってとることはできなかったという、そのときの判断自体はそれはやむを得なかったという点もあるんじゃないかというようなことを申し上げまして、私自身の責任というのがどういうことでの責任かというのは私も答えをしなかったような次第でございます。
  58. 高野博師

    ○高野博師君 僕は大変無責任な発言だと思います。  防衛庁は、人事がどう変わろうが仕事の継続性というのが当然あるはずです。その中には責任というのも当然継続されるのでありまして、僕が言っているのは、刑事責任はこれは当局が今調べているわけですからそれについて云々ということではありません。しかし、一つの行政機関の内部で起きた事件について、これがもし国家背任に当たるというようなことが証明されれば、これはその機関の長としての防衛庁長官の道義的なあるいは政治的な責任というのは当然あるのと違いますか。
  59. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今、御承知のとおりいろんな報道等がされております。そして、そういう問題につきましては私どもも真剣に取り組んでおりますけれども、そういうことについてもはっきりした事実関係といいますか、そこまでのことについてまだ突きとめることもできていないわけでございます。  そういうようなときに、それを前提としていろんな結論を下すのはいかがなものかということで、この問題については非常に委員から見れば何か奥歯に物の挟まったような言い方だと言われるかもしれませんけれども、要するに、報道等でされていること自体がこれが事実でありますと私どもも言うだけの材料を持っていませんし、また違うということもはっきり言うだけのまた確認もとれていないわけでございます。そういうような意味で、非常にあいまいな態度になっているというようなおしかりを受けるとすれば、それは本当に甘んじて受けなければならないと思います。
  60. 高野博師

    ○高野博師君 国の防衛について責任を持たれる立場の長官があいまいな発言をされていては国民は不安になるのであります。  そこで、先ほど過去の問題等でいろんな資料がないとか事実関係がよくわからないとかと言っておりますが、これだけ何百億という問題になっている、あるいは具体的には何十億か知りませんが、相当膨大な金がどうなったかという問題の中で、今のような書類がない云々ということはちょっとあり得ない話で、きちんとこれは調べれば当然出てくるのではないかと私は思うんですが、その出てきたときに長官としての政治的な責任というのは当然問われるんではないですかということを確認したいんです。これは簡単に答えてください。
  61. 久間章生

    国務大臣久間章生君) そういうような事実関係はなかなかつかめていないわけでございます。そういうことについてぜひ御理解賜りたいと思います。
  62. 高野博師

    ○高野博師君 それではテーマを変えます。  インド、パキスタンの問題についてお伺いいたします。  この両国の核実験に対して、我が国政府としてはいろんな経済的な制裁を加えているわけでありますが、インドにしても経済制裁というのはもう見込んでいたということで、実験をやったらすぐ経済の自由化政策等を矢継ぎ早に打ち出したというようなこと、また国防費も一四%今年度は増大をさせているというようなことがあり、またパキスタンも経済制裁に備えて財政支出を五〇%削減するというような措置をとっておりまして、具体的には余りこの両国に対する経済制裁というのは効果がないのではないかということも言われております。  そこで、もう一つは、経済制裁が効果を持ち過ぎるとこれは食糧難とかいろんな財政危機が来て、むしろ核開発技術とかあるいはミサイル等を近隣諸国に輸出するのではないか、そういう意味ではこの問題は非常に難しいと思うんですが、この経済制裁について政府はどういうふうにお考えでしょうか。
  63. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) まさに今、高野委員御指摘の問題といいますか、難しい点をお話しいただいたんだろうと思いますが、我々はインドにもパキスタンにも警告を発して、我が国としてとるべき措置としては、経済的な従前の協力についてきちっとした対応をとるということを申し上げたにもかかわらず両国とも核実験を強行したということでございます。  そこで、中止せしめることができなかったという意味では効果がなかったということかもしれませんが、しかし御指摘のように両国とも我が国の経済協力というものはかなりのシェアを占めておりまして、そういった意味では、正直じわりといいますか、相当の大きな実質的な打撃はこれから出てくるのではないかという意味での反省といいますか、これからの対応についての効果というものは出てくるのではないかと思います。  ただ、今委員御指摘のように、さすれば両国とも他に生きていく道を模索するというようなことで、かりそめにもまた核の拡散ということを起こすようなことがあってはならぬ、そこが今の一番の難しい問題でございまして、そういった意味で、私もG8にも出席をさせていただきまして、どう対応いたすべきかということについて真剣に考慮してその方策を今練っておる、こういうことが正直なところでございます。
  64. 高野博師

    ○高野博師君 それではちょっと確認をしておきたいんですが、日本政府の核に対する立場というか態度、考え方についてお伺いいたします。  核兵器の使用というのは実定国際法上違法性があるという立場をとっているんでしょうか、とっていないんでしょうか。
  65. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) 核兵器の国際法上の問題につきましては、数年前に出ました国際司法裁判所の見解がございまして、その大変な威力また破壊力からして国際法上の人道法の観点から非常に問題があるということが言われておりますけれども、同時に、裁判所の見解においても、国家の存亡の究極の事態においてはこれはやむを得ないものであるという見解が出されていると承知しております。
  66. 高野博師

    ○高野博師君 国際司法裁判所の勧告的意見、これが一昨年の七月に出されたときは、核の使用は一般的に国際人道法に反すると、問題があるという言い方ではないと思います、反すると言っているはずですが。それで、究極的には使用もやむを得ないということも言っているんですか、僕はそこは知りませんが、そこを確認させてください。
  67. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ただいま高野委員おっしゃいましたとおり、一般的に人道法に反するという点が一つあったと思います。それから、ただし国家の存亡とか究極的な問題がある場合に、その自衛の権利として核兵器を使えるか否かということについて明確に現在の国際法としてそれを禁止しているというところまでは言えない、それはまさに究極的な状況においてという条件つきでございます。この勧告的意見の中ではさらに続けまして、しかし、人類、世界といたしましては、核軍縮のために努力をしなきゃいかぬということも言っておるところでございます。  日本政府としては、御承知のとおりこの勧告的意見を厳粛に受けとめているというのが当時からの考えでございます。
  68. 高野博師

    ○高野博師君 日本政府は、それではこの国際人道法に反するという立場ですね。
  69. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 繰り返し申し上げておりますけれども、国際法の基本原則でございます人道主義と人道の法原則ということには合致するものではないということは、これは従来から申し上げているところでございます。
  70. 高野博師

    ○高野博師君 かつて政府が実定国際法上違法とは言えないというような見解を示したことがあるんですが、これはどうでしょうか。
  71. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) このICJの勧告的意見に対します日本政府の陳述ということを国会の御意見も伺いながら行ったわけでございますけれども、そのときにはそういうことは陳述としては申し上げなかったということでございました。  いずれにせよ、我が国としましては現在ICJの勧告的意見というものを厳粛に受けとめているということでございます。
  72. 高野博師

    ○高野博師君 若干あいまいな点があります。この核兵器の使用というのは人類の生存権、これをまさに否定する根元的なものでありますので、人道法上反するということも含めて、唯一の被爆国である日本がこの点について厳粛に受けとめるのではなくて、もっと前向きに世界に向かって発信する必要があるのではないかなと思っております。若干あいまいな日本の態度というのが核保有国側の軍縮努力を鈍らせているのではないか、あるいは核軍縮に関する日本の発言の説得力がないというのもその辺にないだろうか。  もう一つは、日本がアメリカの核の傘の下にずっとあった、依然としてあるということも日本の軍縮に関するいろんな動き、運動、これが余り力を発揮してこなかったということが言えるのではないかと思うんですが、そこについては政府のコメントというか、意見がありますか。
  73. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) 核兵器につきましては、先ほど申し上げましたとおり、人道法上問題があるということでこれを最大限削減するという努力について日本政府としても核保有国に繰り返し強く申し入れているところでありまして、今回のインド、パキスタンの核実験の後の状況におきましてそういう核保有についてまた非常に強い意見が出ておりますので、それを踏まえて核保有国に対して改めてこれを申し入れております。
  74. 高野博師

    ○高野博師君 繰り返しになりますが、国際人道法上問題があるのではなくて国際人道法に反するという明確な態度をとっていただきたいと私は思うんですが、そこはいかがでしょうか。
  75. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) そのとおりでございます。
  76. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、この核の問題について若干お伺いいたしますが、今回のインドとパキスタンの核実験、これによって日本の安全保障政策あるいは核軍縮政策を根本的に見直す必要性に迫られているのではないかと私は思います。  今回の実験によってインドとパキスタンの偶発的な戦争、この可能性も出てきた。中東への核の波及、あるいは中国の核政策も変化するのではないか。北朝鮮の核開発の可能性等々さまざまな懸念が出てきたわけですが、国際的な軍事情勢の激変というのが予想されはしないか。あるいは安全保障問題に対する認識を根本から変えなくてはいけないのではないか、そういう中で軍事的な多極化は急速に進むのではないか。これをコントロールできる国もあるいは国際機関もそこのところは非常に難しくなるのではないかと私は思います。  米中ロ日の四極構造などという視点がある意味意味を持たなくなってくるかもしれない。そういう中でインドとパキスタンの軍事的な脅威がふえたということは、それぞれある意味では一つの極を形成しつつあるということも言えるんではないか、そう思うんです。核兵器を保有するということが最大の防衛政策だというような考え方が支配的になってくると非常に危険だなと、そう思っております。  それで、今回の核の問題、核拡散を食いとめるために人類の英知を結集する必要があると思うんですが、十二日、ロンドンで外相会議がある、あるいは橋本総理が国際フォーラムを提唱したということも言われておりますが、日本政府の危機感というのが全く伝わってまいりません。随分のんきなことを言っているなと、このフォーラム等。  僕は、今緊急のサミットを開くべきではないかと、この問題について。それも広島とか長崎とか、そういう場所を選んで、この問題で日本のイニシアチブでこういう緊急のサミットを開いてはどうか。先般のバーミンガムのサミットでは、時間をもてあましてサッカーを観戦していたというようなことも言われておりますが、サミットのあり方そのものが今問われているんではないかと思うんですが、その点について政府見解を求めます。
  77. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今般のインド、パキスタンの核実験の及ぼす影響というものは、これははかり知れないものでありまして、これが将来にわたっての国際的な安全保障の大きな変化につながっていくということがかりそめにもありますれば、再度の核の脅威というようなことを通じて世界の安全保障に大変な危機をもたらすということの観点で注目をしなきゃならぬと思っております。  そこで、御指摘がございましたように、この二つの国が行いました以降、国際社会でもいろんな形でどう対応するかと、みんなで抑えようとしてきたんですが、そうはいかなかったと。いわゆるNPT体制とかCTBT体制、カットオフ条約、こういう形で、これが不平等であるか否かについてはインドのような主張もございますけれども、いずれにしても現実の中で光明を見出していこうという中で努力をしてまいりました。これが二つの国の行為によってどのようになっていくかということは本当に関心を深くしているところであります。  そこで、G8のお話がございました。これは現実には十二日に行われるわけでございますが、実は核保有国の中のP5のうちで中国はどうも出席されないようであります。そのためかどうかわかりませんが、ジュネーブできようですか、P5で会合を開かれると。これには実は我が国参加をいたしたいと思いましたけれども、正直言うとお呼びでなかったということであります。その前に国連安保理で、日本、スウェーデンその他を中心にいたしまして決議案を今つくっておるところでございますが、この決議案もP5の動向というのと関連しておりまして、なかなか今話が急速にという形になっておらないわけであります。そういう意味で、本当にそれぞれの利害を持つ国がそれぞれに対応いたしておるために幾つかの会合が重なって行われているようなことになっております。  そこで、我が国としては、依然として我が国が出席をできるところは出席して、またイニシアチブを国連等でとって努力をしていくということと同時に、今、高野委員も御指摘がありました、それはいろいろと日本でイニシアチブをとって、ことしじゅうに日本の中でぜひ有識者による会合等も、それは生ぬるいとおっしゃられるかもしれませんけれども、一つ一つできるものはいたしていきたいと思っております。  政治的にどういうアピールをこれからやっていくべきかということについては本当に真剣に今考えておるわけでございまして、衆議院でも、きょうまた参議院でも、こうしていろいろと御意見を拝聴いたしておりますので、いろいろ御提案等も実は議会の中からちょうだいもしながら対応していきたいというふうに考えております。  いずれにしても、日本が唯一の被爆国として大きな声を上げていかなければ、究極の目的は達成しないという意味で、今般のこの印パの核実験が行われた機会に改めて原点に立ち戻って、どのような対応をすべきかということを真剣に考えていきたい、このように考えております。
  78. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、防衛庁長官にお伺いいたしますが、アメリカの東アジア戦略というのは核兵器というものを念頭に置いてつくられているんでしょうか。
  79. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) お答え申し上げます。  まず、アメリカの、今度のインド、パキスタンがどういう核開発をやっていたか等についての認識について一言御説明しますと……
  80. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと、そんなことを聞いていないんです、時間がないんですから、念頭に置いていたのか、いなかったかというその認識はどうでしょうか。
  81. 山崎隆一郎

    政府委員山崎隆一郎君) インド、パキスタンが核兵器を製造したりするような能力を持っているということでマークしていたということは事実でございます。  だからこそ、昨年五月に発表されました国家安全保障戦略におきまして、インド、パキスタンを対象にして不拡散努力等を働きかけていく必要があるということを強くうたっている次第でございます。
  82. 高野博師

    ○高野博師君 冷戦後のアジア太平洋の平和と安定ということをにらんで、それでこの東アジア戦略はできていると思うんです。しかし、この中でパキスタン、インドも含めて、核兵器を持つ国を相当深刻に受けとめてつくられた戦略かどうかというのは私は疑問があると思っております。  日米安保条約については、当時の冷戦時代ですから、ソ連が仮想敵国だということで当然核戦争というのを想定していたということは言えると思うんです。しかし、核抑止論というか、核抑止力に依存していたという点があって、ある意味で核戦争というのはあり得ないというような前提条件をつくってしまってはいなかったかということを私は感じております。  特に日本の場合は、アメリカの核の傘のもとでの安全保障という考えを持っていたこともあって、そういう意味では、冷戦時代というのはある意味で思考停止時代だと私は思っております。  そういう中で、このアメリカの東アジア戦略に組み込まれる形での新しいガイドラインあるいはその関連法案というものは、この核兵器使用可能性が増大しつつあるという現実に対応できるものなのかどうか、その辺、長官の御見解を伺います。
  83. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今度のガイドラインは、御承知のとおり、防衛計画の大綱あるいはまた日米安保共同宣言を踏まえての指針でございますけれども、この防衛大綱あるいはまた日米安保共同宣言におきましても、いわゆる冷戦後でありますけれども、核の拡散あるいはまた大量破壊兵器とか、それからそれを運搬するミサイルの拡散等が進んでおるというようなことを意識しながら、それをどうやって抑えていくか、そういうような視点に立ちまして書いております。  そういうようなことを受けまして、ガイドラインにおきましても、平素からの協力あり方として、核軍縮を初めとする軍備管理・軍縮分野における諸活動については記述しているわけでございまして、そういうような方向で日米協力をしながら軍縮の方向に向かってやろうという努力をしているところでございます。  その基本につきましては、今、委員が述べられましたようなそういう懸念もあるということを想定しながら、軍縮の方向でこれをやっていこうというふうなことでやっているわけです。
  84. 高野博師

    ○高野博師君 新たな核の脅威に対して、誤認とか事故によって弾道ミサイルが発射されはしないかという懸念に対して、戦略ミサイル防衛、いわゆるTMD、これを検討する必要があるんではないかというような意見が防衛庁内にあるという情報もありますが、これについてはいかがでしょうか。
  85. 久間章生

    国務大臣久間章生君) これは、従来からこの弾道ミサイル防衛をどうするかということは非常に大事な問題でございます。  確かに、我が国みたいな専守防衛の国にとりまして、弾道ミサイルに対してそれを防止するすべがないということになりますと、本当に打つ手がないわけでございます。  しかしながら、いまだに世界各国、この弾道ミサイルを防衛するという技術が本当に確立しているわけじゃございませんので、やはりこれについては、アメリカ等知見を有する国と協力しながら研究しているわけでございます。  ただ、これについては、その実現の可能性あるいはまた費用対効果、こういうことについてやはり真剣に検討しなければならないので、今その研究を続けているところでございますが、やはりこれだけミサイルの拡散等が進んでまいりましたときに、この問題についてはより真剣に対処していかなければならないという気持ちで引き続き検討していきたいと思っております。
  86. 高野博師

    ○高野博師君 研究を続けているとか検討をしているということでありますが、日本も軍拡路線に走りはしないか、エスカレートしないかという懸念を私は持っておりまして、憲法の精神である国際協調主義とかあるいは平和主義、これを堅持することが重要ではないか、そう思っております。この点についてはまだ別の機会に触れたいと思います。  時間がないので、PKOについて一、二お伺いしたいと思いますが、今回の改正がPKF凍結解除につながるおそれがあるのではないかという懸念が一般にあります。この懸念について明確に否定する答弁を求めます。
  87. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  今般の法改正は、PKO法附則第三条に基づく見直しの結果を踏まえまして法改正案を提案させていただいております。PKF凍結解除の問題は、PKO法の附則第二条に書いてありますけれども法律で別途定めるまではこれを凍結するということで、別個の問題として規定されております。この別個の問題のPKFの凍結解除につきましては、繰り返し答弁いたしましたが、国会における諸議論等に耳を傾けつつ、今後検討してまいりたいという考えでございます。
  88. 高野博師

    ○高野博師君 冷戦直後のPKOの役割あるいは貢献度は徐々に薄まりつつある。これは費用の問題等あるいはPKO機能の限界等もあって各国の意欲というか、この期待感というのは薄れつつあると。そういう中で何か日本が一生懸命これからPKO派遣、積極的に派遣していく、あるいは貢献していくという考えがあるのは何か特別理由があるんでしょうか。簡単に答えてください。
  89. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 簡単にお答えします。  PKOの件数が減ってきていることは高野先生御指摘のとおりでございます。ただ、今般の法改正というのは、今少ないPKOの中でも日本はゴランに出ておりますけれども、ここでの要員の安全にかかわる点についての手当てをしたいということで、こういう改正案というのは必要であるというふうに考えております。PKO活動につきましては、地域紛争の抑止という点ではこれからも役割を果たしていくというふうに考えております。
  90. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと待ってください。地域紛争の抑止ですか、抑止のために派遣するんですか。
  91. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) PKOは、紛争が起こったと、起こった後で武力紛争の停止という合意ができますけれども、その停戦状況の監視等のためにつくられるわけでございます。したがって武力紛争の再発を防止するためにつくられているということでございます。
  92. 高野博師

    ○高野博師君 時間がないので最後に一問だけ。  今回の改正が日本の将来の安全保障とか、あるいは平和という点に関して誤った方向に行かない、誤った方向に行く端緒にはならない、決してそういうものではないということを明快に否定する答弁を求めます。
  93. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) この国連PKO活動というのは、まさに平和を維持するための活動でございます。これは、一九八八年ノーベル賞ももらった活動でございまして、こういうことに貢献をしていくということがまさに日本のこれからのあり方として正しいあり方であろうと考えております。
  94. 高野博師

    ○高野博師君 終わります。
  95. 田英夫

    ○田英夫君 同僚委員からの御質問を、あるいは御答弁を聞いていて改めて感ずるんですけれども、何か政府PKO促進というような、自衛隊海外派遣するということを促進するというようなそういう空気を持っておられるんじゃないかということを懸念します。この際、やはり初心に返ってといいますか、あれだけ激論をしたPKO問題ですから、改めてもう一回初心に返ってPKO、国際平和協力事業というものを考え直す、考えてみるということが必要じゃないかと改めて思っているんですよ。  そういう意味で、今回の改正で一番問題なのは、もう先ほどからも出ているように、個々の判断でと言っていた武器使用上官命令でということに変えるということにある、これはもう明瞭でありますけれども、そのことをもちろん念頭に置きながら、この際、自衛隊武力行使をする、あるいは武器使用する、それから武器の保有を認められているというその法的根拠を、前回もそうでしたけれども、もう一回洗い直してみる、整理してみるということが非常に重要じゃないかなと私は思うんです。  自衛隊が本来の任務としているのは、自衛隊法三条に任務が書いてあるわけですが、それに基づいて、つまり結論から言ってしまえば防衛出動と治安出動ということになるんじゃないかなと思います。そして、PKOというのは自衛隊法の百条の七に国連平和維持活動ということが規定をされている。つまり百条というのは雑則のところに入っているわけでありまして、本来任務ではない。自衛隊の本来任務はあくまでも防衛出動と治安出動だと。その他、運動会に対する協力というものまで百条には入っていますし、南極観測も入っていますが、そういうものと並ぶものとしてPKOというものが法律的には位置づけられている。この点をまず確認しておきたいと思います。  つまり、本来任務の場合には、まず一つは武器を持ち、さらに防衛出動の場合にのみ武力行使が認められている、こういうことでいいでしょうか、こういう解釈で。
  96. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 先生御存じのとおり、自衛隊武力行使あるいは武器使用ということで自衛隊法の中に規定がございます。一番典型的な例は、先生がおっしゃいますように自衛隊武力行使ができるのは、外部からの武力攻撃がございました場合に自衛隊法七十六条一項によりまして防衛出動を命ぜられた場合でございます。この場合に、同じ自衛隊法八十八条に基づきまして我が国防衛するために必要な武力行使することができるという規定となっております。  当然のことでございますけれども自衛隊防衛出動を命ぜられて武力行使ができるのは、従来から御説明しておりますように、自衛権発動の三要件、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するにほかに適当な手段がないこと、その行使する場合に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことという場合に限られるということは当然のことと考えております。  それからもう一つあえて付言させていただきますれば、自衛隊の主たる任務は、本来任務ということで、先生が御指摘の我が国に対する侵略の防止ということが一つございますけれども、そのほか必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるというような任務もございまして、これはいわゆる本来任務でございますけれども、先生がおっしゃいますように、自衛隊が外部からの武力攻撃に対応する、これが本来任務の中の主たる任務とすれば、その他公共の秩序の維持に当たるということで、これは治安出動もございますれば、そのほか災害派遣というようなこともございます。こういうことで、自衛隊任務はそういうふうに分けられております。  それから、あと先生がおっしゃった百条の系列の任務は、自衛隊の持っております能力、経験等を利用しまして、国民生活等あるいはその他の活動に寄与するということでございまして、雑則と通常呼ばれておりますけれども、中身は必ずしもそういう言葉意味するようなことではございません。それぞれ自衛隊任務に支障のない限りそれに積極的に参加するという意味でございまして、場面は違いますけれども自衛隊が全力を挙げて取り組むということについては違いはございません。
  97. 田英夫

    ○田英夫君 私が次に聞こうと思った答えも言っていただいたんですが、つまり防衛出動で武力行使が認められているということの理由は、武力行使というのは、文字どおりこれはまさに憲法に書いてあるその例外を法律で認めたという、これは改めてこの問題だけでも法制局長官その他、憲法の専門家と議論をしなくちゃいけないような問題だと思います。これは大問題ですけれども、これは今回横に置いて、この百条の七で決められているPKOその他を含めて、百条の自衛隊のいわば余技のようなそういう行動に対して武器の保有を認めている場合がほかにありますか。
  98. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 武器使用ということで規定がございますのは、防衛出動時における武力行使を別としますれば、治安出動のとき、それから海上警備行動のとき、それから領空侵犯に対する措置を講ずる場合、そのほか自衛隊の持っております武器等の防護のために武器使用する場合でございます。  それから、今御指摘になりましたように国際平和協力においては、国際平和協力業務を実施するに際して武器使用が認められているというところでございます。現行法で申しますれば、そういうところでございます。
  99. 田英夫

    ○田英夫君 このPKOにそもそも武器を携行させるということを認めたことに問題があるんじゃないか、原点に戻って考えてみると、そういうことを私は思いますよ。PKO、つまり国連平和維持活動というものは一体どういう精神で行われているのかということから考え始めてみないといけないんじゃないか。  キプロスのPKOは現在も続いているわけですけれども、私は実はたまたま一九九〇年にIPUの会議があってキプロスへ行きました。そのときはまだ日本がPKO参加するというような問題が具体化していない時代でした。しかし、実はせっかく現地へ行きましたからPKO現場を見てきました。スウェーデン軍が引き揚げてしまっていろいろ問題があった。しかも、私のいるわずか一週間の間に、五人だったですか、キプロス側の住民がトルコ側に拉致されるというような事態が起こっておりました。まさに両軍が対峙する中で、平和維持活動PKO部隊がブルーベレーをかぶって存在をするというのを初めてつぶさに見てきたわけであります。  そのキプロスの平和維持活動を決定したときの国連の決議がここにありますけれども、その附則として書いてありますのを見てみますと、キプロスに派遣される平和維持軍の兵員は武力行使のイニシアチブをとってはならないとはっきり書いてあります。武力行使は自衛の場合にのみ限られる。自衛とは次の場合を言う、国連軍駐屯地、その構内、車両などが攻撃を受け、その防衛のため、それから国連平和維持軍構成員が攻撃を受け、その救援をする場合、この二つだけに限られております。  ここににじみ出ているのは、平和憲法を持つ日本以外の軍隊派遣されているPKOの場合でもこういう厳しい規定をしているわけですね。武力行使しちゃいかぬ、こっちからやっちゃいかぬ、こういうことをまず決めて、そして自衛の場合に限られると。しかも自衛というのはこういう場合だ、向こうが攻めてきてどうしても自分たちを守るということだと、こういうふうに規定をしている。  国連PKOという考え方は、言うまでもなくいわゆる国連軍というものが実際に発動できない状態、その中で国際紛争をどうおさめていくかということの中で、いわば苦肉の策として出てきた方策であったということも振り返ってみる必要があるんじゃないか。  そこへ平和憲法と言われるものを持って、軍隊は持たない、戦争はしない、武力行使はしないという憲法を持った日本の自衛隊参加をするとなれば、一体どういう配慮が必要かということをもう一遍考え直す必要があるんじゃないか。  今度の場合は、もちろん個人判断武器を使うということは大変矛盾があることは皆さん御指摘のとおりです。それをそれじゃ上官命令ということにすればそれでいいのかということ、そこで立ちどまってもう一回PKOというもののそもそものあり方を考え、そしてこの憲法を持つ日本の場合はどうあるべきかということを考える必要があるんじゃないか。  結論を言えば、私は防衛出動、治安出動で武器使用ということが認められるとしても、あるいは武器を携行することを認められるとしても、PKO派遣される自衛隊武器の携行を認めないというのが原則じゃないか、そこから出発するべきじゃないかというふうに思うんですが、これはいかがですか。
  100. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  PKOの評価に関してですけれども、先生は冷戦時代の苦肉の策としてこのPKOができたんじゃないかということを御指摘なさいましたが、私は、冷戦時代にいろんな地域紛争に対処する方策としてこれが出てきたということはそのとおりでありますが、これは苦肉の策というよりも大変有用な発明であったというふうに考えております。  このPKO活動についてはそういうことで、中東戦争のときのPKO設立を提案しましたカナダの外務大臣はそのことでノーベル賞を受けておりますし、PKO自体が一九八八年には国際平和への貢献ということでノーベル賞を受けていることは先生御承知のとおりでございます。そういう意味で、大変有用な役割を果たしてきたということが一つでございます。  それから二つ目は、このPKO活動の中で、軍事力といいますか軍事的な側面がどういう役割を果たすかということですけれども、ハマーショルドさんが言ったように、これは軍隊の仕事ではないけれども軍人がやる仕事だということで、国連の権威を背景にして非常に軽武装の部隊紛争当事者の間に割って入ってその紛争の再発を防止するということをやってきたのが伝統的なPKOだと思います。  そういう意味で、こういうものに日本が参加していく、ノーベル平和賞をもらったようなPKO参加していくという際に、私は武器を全く持っていかないということが正しい考え方であるとは思いません。ただ、日本国にはもちろん憲法がございますから、その関係での整理が必要だということで、参加に当たっての五原則ということで整理をしたということだと思います。その中で、隊員生命身体防護ということをより適正にしようというのが今回の法改正だというふうに考えております。
  101. 田英夫

    ○田英夫君 私の言っているのとちょっと違うんですが、ハマーショルドさんの言っていること、書いていることも勉強してみました。  そして、PKOというのは私は苦肉の策とあえて言ったんですけれども国連を牛耳っているのは、残念ながら核兵器を持つ五つの国が安保理事会の常任理事国になっている。そういう状況の中でやはり大国の声が大きい。ところが、PKOはまさに大国を入れないで小さな国々が、スウェーデンとかカナダとかそういう国々が、平和について非常に熱心な国々が中心になって進めてきた、そこに意味があったんじゃないかと思うんです。それが最近、PKO活動の中に大国が入り込んできた。そういう中から実はPKOが変質しつつあるんじゃないか、こういうことも私は言わざるを得ない。  そこへ日本が自衛隊という、世界に例がないと言っていいかもしれませんけれども、そしてまさに世界に例のない憲法を持った国がそのPKO活動に入っていく。となれば、まさに本当にまた原点に戻って、もっとあるべきPKOの姿を日本が示すというような気概を持って、武器を持たない、非軍事、そしてその派遣地域の住民の平和的な生活が回復されるようにということを一番優先する。何か軍隊が乗り込んでいって、茂田さんはさっきはしなくも言われたけれども、両側を静まれ静まれとやる、軍事力によって静めようという意味言葉の端々に出ているんですけれども、それはPKOの本来の精神と違うんじゃないですか。  そういうところをもう一回考え直して、日本のPKO部隊武器を持たないで、そしてまた持たなくて活動できる、そういうことで平和を維持していくんだと。そういうところにしかまた行くべきではないと思いますし、PKOの本質というものをもう一回考え直す必要があるんじゃないですか。どうですか。
  102. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  国連平和維持活動というのは、紛争当事者の間に停戦合意が成立して紛争当事者平和維持活動に同意していることを前提に、中立、非強制の立場で国連の権威と説得により停戦確保等の任務遂行するものであって、強制的手段によって平和を回復する機能を持つものではありません。したがって、PKO活動の性格の反映として、PKO活動における武器使用は自衛の範囲においてのみ認められているところでありますし、かかる武器使用を最後の手段として位置づけられているところであります。  したがって、このPKO活動においては、そういう自衛という範囲内での武器の保有、その目的のための武器の保有、武器使用というのは、これはこういう枠内において認められているということだと思います。そのことは、全く非軍事に徹して行い、実施できるという状況にはないから、今も各国は軍隊を出しているということだと思います。
  103. 田英夫

    ○田英夫君 ちょうど一九九一年八月、PKO法の大論争のあった当時に実は私が提案をした文章がここにたまたまあるんですけれども、非軍事・民生・文民、こういう形で日本はPKO参加をすべきであるということを、一言で言えばそういう提案を当時したわけであります。  私は、今もこのことは変わらず一つの考えとして持っているつもりですけれども、なぜこういうことを提案したかという意味は先ほどから申し上げていることでおわかりだと思うんです。茂田さんの言っておられること、政府の考えでいらっしゃるPKO像というものと私どもが考えているPKO法というものは違うんですね。これは明瞭に違うと思う。そこが非常に問題で、にもかかわらず今度の改正でどんどん軍事の方に入り込んでいく、そっちを強化していくという気がしてならないので、私は改めて警告をしているわけです。  もう一つ、例えば停戦監視団という活動がありますね。停戦監視活動というのもPKOの一つの活動の重要な部分かもしれません。カンボジアの場合にそれを要請される。国連停戦監視団を要請する場合には、現役軍人の将校という要請をすると思うんです。これはそう思っていいですか。
  104. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  停戦監視団の要員につきましては、国連から将校クラスの軍人であることを要するということで要請があるのが通常でございます。それが国連の方針でございます。
  105. 田英夫

    ○田英夫君 そのとおり、まさに国連としては、停戦監視という任務は非常に軍事的な知識、それに伴う対応の仕方というものが必要だから将校クラスの軍人を送ってくれということになるわけですが、日本はこれを今後とも送るつもりですか。
  106. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) これは、適切な場合には将校クラスの自衛官を送るということでございます。ただ、要請があればどこにでも送るということではありませんで、我々の方でいろんな状況を考えて、選択的に送っていきたいというふうに考えております。
  107. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどから申し上げていることで私の結論はもうおわかりいただけると思うんですけれども、そういう役割を日本があえて担う必要はない、こう思います。これはまさに軍人がいる国が必要であれば参加をすればいいのであって、日本はそういうところに出かけていく必要はない。  本当に日本のPKO、日本が対応するPKO像というものをもう一回政府もお考えになった方がいいんじゃないですか。どんどん改正を、三年ごとといいますか三年後にということで、期限が来たから検討して前へ進む。前へというのは、軍事の方向へ進んでいくという考え方でいいのかどうか。私は非常にそこを疑問に思いますということを申し上げて、終わります。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 久間長官、先般の質問に続いてお尋ねしたいと思うんです。  この間、武器使用の問題に関連して、こういう一定の改正がなされた、上官命令によって武器使用することができるというふうに改定されたわけですね。その点については自衛隊法の八条、十四条、五十七条を引用して私はお尋ねしました。それに対して、これは憲法に違反しないのかという私のお尋ねに対して、長官は、確かに今委員が言いましたように隊法五十七条も今回の上官の命によって行動するということになるわけですから適用されることになります、そういう意味では組織立った行動になるわけでありますと、明確に答えられた。そしてその後は、自然権を守るという目的でやるんだから武力行使には当たりませんと、こういう答弁だったんですね。この組織立った行動になる、つまり組織としての行動になるという問題について発言されたのは、あなたが初めてなんです。  これは一九九一年九月二十五日、前の防衛庁長官の池田さんが述べられたのは、組織としてはございませんと、武器使用は。そして、この法律上与えられております武器使用の権限はあくまで個々の隊員に与えられておるわけでございますと。ですから、個々の隊員の権限において、そしてまた個々の隊員判断において行うわけです、場合によってはそれが束ねられるということがあるにしても、その場合でもやはり個々の隊員に権限があり、その判断が基本でありますと。あくまで個人を基本において武器使用というものが判断され、それが基本だと。組織としては一切ないんだというのがこれまでの答弁だった。  今度の場合には、つまり上官の命によって行動するということになるわけですから、そういう意味では組織立った行動になるわけでありますというふうに述べられた。いわゆる自衛隊武器使用上において組織立った行動を行うということは、これは武器使用武力行使というふうにみなされることになり得るんじゃないでしょうか。もう一度お尋ねしたい。
  109. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今回の改正によりましても今度の武器使用目的自体は変わっていないわけでございまして、前に何回も言っておりますとおり、個人生命身体、これを防護するための自然権的権利を守るために行う。ただ、それを統率された上官の命によって行うことが混乱を回避し、ないしより効果的であるという判断から行うことにしておるわけでございまして、組織体を守るために、その組織のためにやるということではないわけでございますから、基本的には変わっていないということについては御理解賜りたいと思います。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 組織立った行動という場合、個々の人々がデモ行進をやる場合に整列して組織立った行動を行うのとは違うんですよ。武装しているんです、武器を持っているんです、自衛隊というのは。そして、国の命令PKO活動参加するという任務を持って派遣されているんです。武器を持っているんです。そして、その武器を使うんです。  この問題に関して言うならば、はっきりとこの問題に関しては、上官命令によって武器使用する場合、組織的な武器使用ということを認めるならば、これは明らかに当時の工藤法制局長官が、集団的な使用武力行使になるのではないか、だから部隊として組織として指揮命令による武器使用は、紛争となる国に対する集団的な使用として武力行使になるということを明確に述べているんですよ。  私が言っているのは、組織立った行動ということは、武装された自衛隊組織として武器を使うということが武力行使になるんです。それは、目的というのは考えなんですよ。どういうために使うかというのは、目的というのは考え方なんです。実際に行われている戦闘行動の中で集団として、そして組織として武器を使うということは武力行使に当たるんですよ。それをどうしてあなたが先ほど言われたようなことで否定することができるんですか。
  111. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 何度も申しておりますように自衛官が、あるいはこの場合は自衛官じゃございませんが、自衛隊でございますけれども、一応国際平和協力隊として派遣されているその隊員が、自己または一緒におる隊員を守るためにどうするかというようなときに、とにかく守る武器使用させないというのは、これは一つの考えだと思います、それは。しかしながら、やはりこれは武器使用させるべきだと、自己保存的なそういう自然権はやはり持たせるべきだということで武器使用させるべきだというふうな、そういう判断が一つありまして、そういうような法律があるときに、よりそれを効果的に統率のとれたものにするには、ばらばらに使用させるのがいいのか、あるいは上官の命によって使用させた方がいいのか、それはやはりその次の選択だと思うんです。  だから、私が言っておりますのは、そういうような目的は従来の法律と何ら変わっていなくて、よりそれが混乱を回避するために効果的であるという形からの今度の改正であると、そういうふうにひとつ思っておるわけでございますから、ぜひ御理解賜りたいと思います。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 個々人が権限を持って身の危険を生じた場合に武器を使うということと、いわゆる組織としていわゆる武器使用するということとはまるっきり違うんです。  私は、aタイプbタイプの問題をこの間も申し上げました。そうしたら、あなたはそれについて、非常に難しい局面だけを選んで言われますと確かに答弁には窮するわけでございますけれども、そういうようなケースが絶対ないかと言われますとそれはもうわかりませんと、こう言っているんですよ、あなたは。だから、そういう場合だってあり得ると。すると、これはもう明確に組織立った行動として武装した自衛隊武力行使に当たるんじゃないですか。
  113. 久間章生

    国務大臣久間章生君) それはその前提とする議論がいろいろあって、ゲリラが襲ってきた、あるいは山賊、匪賊が襲ってきた、そういう場合と、同じゲリラでもその地域を統括するようなゲリラが襲ってきた、そういうのと交戦する場合にどうかこうかというような議論がたしかあったと思います。そういう議論になって話をしておられましたから、そういうふうなもうあり得ないようなことを前提として議論すると非常に難しいということを私は言ったわけでございます。  そもそもこのPKOの場合は五原則に基づいて出かけていくわけでございまして、国家的なそういう組織とぶつかるというような、そういうことをそもそも前提としていないわけでございますから、そういう中でそういうような状態を想定しながら議論をされますと、それに対する答弁というのは非常に窮すると。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 あなたは今、委員はあり得ないようなことをおっしゃって、そういうことを前提としていろいろ述べられたので答弁に窮すると言ったけれども、そのようなケースが絶対ないかと言われますと、それはもうわかりませんとあなたは言っているじゃないですか、この間。それをきょうになったら、あり得ないようなことを持ち出してなんてあなたは言葉を覆して、そんな答弁でごまかすなんというようなことは答弁になりませんよ。だめですよ、そういうのは。
  115. 久間章生

    国務大臣久間章生君) さっきから何回も言っておりますように、五原則に基づいて出かけておる、そういう議論の上に立っていろんな議論をしておるわけでございます。  しかしながら、委員がおっしゃるのは、とにかくそういう場合でも理論的にそういうケースはないのかというふうに言われますと、その理論上の話としては、急に変わってしまって、停戦が崩れてわっと押し寄せてきた、そういうようなときにどうするのかというような、そういう議論をされましても、停戦前提として出かけていっておるわけでございますから、そのときに停戦が崩れてわっと押しかけられて自分の身が危なくなったときには、それは対戦することになるんじゃないかというようなことになるわけでございまして、そういう場合には一応もうやめて帰るということになっております。  しかしながら、やめて帰る間もなく攻撃されたときには黙って死ねということかとなりますと、それはできないわけでございますから、そういうような究極の場面を想定して議論をされますと答弁に困るということをそのときにも言っておるわけでございます。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 あなたはこの間、理論上の問題という言葉は一つも使っていません。そういう場合に遭遇したらどうするかと、それは少なくとも憲法に触れないように何とかして努力をすると、そういうことを言っているんですよ、あなたは。何も私はあなたをいじめるつもりで言っているんじゃなくて、問題をきっちりとしないといかぬからですよ。これは重大な憲法にかかわる問題だから私は言っているんです。  問題は、現行法で、PKO協力法でいいますと、これは御承知のように、武器使用というのは個々の隊員で個々ばらばらに行われると、それは正当防衛だと、あるいは緊急避難だと。これは、御承知のように刑法の三十六条、三十七条に定められておりますから、その場合には罪に問われないというふうな場合ですね、人々に危害を与えるというふうな場合についても、そういう問題については罪に問われないということになるわけです。  今回の場合には改正されたわけですね、上官命令によって行うと。先ほど同僚議員に対する茂田さんの答弁もありましたけれども、これはもっと明確に言えば、刑法の三十五条なんですね。三十五条では、これは正当行為、つまり法令による行為、正当業務行為、法令または正当の業務によりなしたる行為はこれを罰せずという規定による、こういうものになるんじゃないかと思うんですけれども、それはいいでしょうか。一言でいいから、なるかならないかだけで結構です。
  117. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 現行PKO法の第二十四条における武器使用……
  118. 立木洋

    ○立木洋君 もういいから、なるかならないかだけ言ってよ。
  119. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 刑法三十五条の正当行為に該当いたします。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 いいですね。  つまり、そういうふうなことになりますと、刑法の三十五条の規定によるということになるならば、上官命令によって武器を使うということでは、武器使用する条件は急迫な場合でなくてもよいということになります。いいですか、三十五条には急迫の場合は入っていないんですから。そして、その武器使用の仕方が隊員生命等の防護のための必要最小限という限定さえ外されることになります、上官命令ということになれば。個々の隊員が危険の防衛を感じなくても、横におる隊員が感じる場合だってあるわけですから、そうしたらより広い武器使用が可能になる。つまり、組織としての使用ということは、そういう意味個人判断した武器使用とはまるっきり違って武力行使になり得るということを私は強調したいんですが、その点はどうですか。
  121. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 一般に武力行使という言葉を使っております場合、私ども武力行使という言葉を使う場合は憲法九条を意識しながら使っておりまして、自衛隊法上も武力行使というのはそういう場合に限定しておりますから、武力行使と言わずに、それを武器使用というふうに変えて使わせてもらおうと思います。確かにおっしゃるとおり、上官の命により武器使用することになるわけでございますから、それは正当な行為として刑法上は三十五条、隊法上は五十七条が適用されるわけであります。
  122. 立木洋

    ○立木洋君 結局、隊員命令に従うというのは自衛隊法の五十七条で、そしてこれを忠実に実行しなければならない、従わなければならないということになっています。だから、今度の改正についても、武器使用現場上官があるときにはその命令に従わなければならないというふうにされています。そうすると、PKO協力法のこの法令による自衛隊行為になるということです、命令によって武器使用するということは。そして、そういうふうなことになるならば、これはあなたがおっしゃったように組織立った行動、行為になる。組織立った行動になるということは、自衛隊としての、組織としての行為になるんです。  そうすると、この憲法第九条第一項の「武力行使」について政府の統一見解が先般出されました。そのときには何て書いてあるか。この統一見解によりますと、「「武力行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争一環としての戦闘行為をいい、」と、これが武力行使に当たると、こういうふうに言っているわけです。  そうすると、「我が国の物的・人的組織体」というのは、武器を持って武装されたいわゆる自衛隊としての組織です。それが身辺の防衛とか、いろいろなさまざまな行為があり、aタイプbタイプが仮にあるとしてもこれは戦闘行動に入るわけです。武力紛争になった場合に戦闘行動に入るわけです。そうすると、これはどのような行為をとろうとも、武器使用しているという限りにおいては、これは政府が統一見解を出された武力行使になるということは、先般の統一見解と明確に一致しているじゃありませんか。もう答弁の方法はないんじゃないですか。
  123. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 先ほども言いましたように、こういう場合にどうするかという究極の場合を言われたからあれですけれども、今言われましたような五原則が守られているような状況の場合、そういう場合に国際的な武力紛争一環としての戦闘行為であると言えるかどうか、そこのところで一つ区分けがつくと思うんです、憲法九条に反するかどうかは。  もう一つは、例えば前の統一見解のときにも言っておりますけれども、   憲法第九条第一項の「武力行使」は、「武器使用」を含む実力の行使に係る概念であるが、「武器使用」が、すべて同項の禁止する「武力行使」に当たるとはいえない。例えば、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員生命又は身体防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力行使」には当たらない。 と言っているわけでございますから、こういう目的必要最小限にやるものについてはこれは憲法九条で言う「武力行使」には当たらない。  だから、一から見ても二から見ても、今回の命令によるけれども自己保存的なそういう自然権を守るためにやる行為武力行使にはならないというふうに信じて出しておるわけでございます。
  124. 立木洋

    ○立木洋君 この問題は、先ほど来あなたが自分の言葉で述べた答弁は文章を読み上げたのと同じことですよ。同じことを言っているだけです。何ら変わったことを言っていない。私が述べた質問についてあなたは明確な根拠を与えた回答にはなっていない。  私がなぜ先ほど刑法の三十五条を持ち出したかへ命令による武器使用は、武器使用する条件を急迫の場合でなくてもよいとなっている。しかも、その武器使用の仕方が、隊員生命等の防護のための必要最小限という限度が外されているんです。だから、私はその問題を言ったら、そのことについてあなたは一言も反論しなかった。三十五条が適用されるということを認めた上で、私は武力行使になり得るじゃないかという政府の統一見解でただしたんです。  それで、あなたはそういう場合についてもいわゆる武力行使にならないと言うので、五原則が実行されているならば問題にならないということを言われたので、この問題については先に話を進めます。これ以上、あなたの答弁を聞いても同じ答弁を繰り返すだけでしょうから、また別の本を持ち出してきて読み上げるだけでしょうから。だから、私は話をちょっと進めます。  その問題については、いわゆる五原則憲法に反しないPKOへの参加の要件という問題としてこれまでも議論されてきました。しかし、この問題に関して言うならば、この五原則の第一に「紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。」ということが掲げられております。ところが、この問題については、カンボジアに最初に自衛隊派遣した一九九三年三月二十九日に、私は参議院の外務委員会でこの問題について質問をいたしました。  御承知のように、パリ協定の附属書二の第一条に「停戦」という項目があります。「停戦」という項目の中には六つの項目が書かれてあります。そして、それらの項目についてはそのときに全部私は取り上げて、その問題についてのお尋ねをしたわけです。遠くから見えるでしょう。もう赤筋を全部引っ張って一つ一つ全部聞いたんです。  そして、一つ目は、当時、ガリ事務総長の第三次報告で、ポル・ポト派が和平プロセスに全面的に参加していない、パリ協定の義務を果たすことを拒否している、だから停戦の第二段階を実施することは不可能になっていると報告にあるがいかがでしょうかと言ったら、澁谷国連局長は「報告は正しいと思います。」と答えました。  これを全部言うと時間が大分かかります。いわゆる軍隊の配備だとか弾薬がどういう位置になっているかとか、それから地雷原の詳細な地図だとか、それから部隊の編成、装備の貯蔵のためのUNTACの計画等々が実行されているのかどうか、全部すっと聞いていって、敵対行動が起こっていないのかどうか、それについてはもう六項目全部それはできていないという答弁なんです。そして、敵対行動についてそれが守られているのかということについては、それは「完全には守られておりません」と。だから、停戦の六項目について全部否定されたわけです。それが守られていないと。  だけれども、これは澁谷さんの当時の答弁をより正確に言いますと、すべて守られていませんという意味では「完全には守られておりません」という言葉を使いました。だから、守られている部分もあるかもしれないけれども、「完全に」という言葉を使って形容したんです。だけれども、私はそのときに、これはこれらの六項目の内容すべてが守られるかどうかということが問題なんだと、というふうに規定されているといって反論をしておきました。  しかし、この問題について私がその当時言ったのは、これによってパリ協定の枠組みが崩れだということを言っているわけではありませんと。パリ協定の枠組みは、難民の問題だとか、選挙の問題だとか、その他の取り決めがありますから、それらの問題が全部もうだめになってしまったということを言っているつもりではありませんと。しかし、附属書二の第一条にある停戦の六つの項目については、これが守られていないということだけは認められたということを私は述べたんです。  このパリ協定が決められたのが一九九一年の十月ですから、私が質問したのはそれから一年五カ月たったときの質問なんです。一年五カ月たっても、附属書二の停戦ということがどれ一つも守られていないということになるならば、これは重大な問題ではないかと。これは五原則から見て反する内容になる、政府としては真剣なる検討が必要ではないかというふうにして私は質問したけれども、パリ協定の枠組みは崩れたわけではございませんと言って、それに対して停戦必要性政府としては認められませんでした。  ところが、それから一カ月余りたった後、文民警察官、高田さんを初め五名の方々が死傷されました。このときに中断をするなり何らかの慎重な態度をとっておるならば、高田さんを初めとする五名の人々の死傷事態は起こらなかったかもしれない。そのときに何をやったか。やってはならない警備のことまでやったんですよ、文民警官が。この問題が守られていないというのを現実にやった。  この問題についてはさらに九三年、高田さんが亡くなったのはこれはたしか五月四日ですよ。それから一カ月足らずのその年の五月三十一日に、日本共産党の聴濤議員が総理に質問をした。一年前からポル・ポト派が武装解除を拒否していることが明らかになっているではないですか、この問題に対して、停戦の問題が十分に実施されていないということについて宮澤総理はどういうふうにお考えなのかと。それで宮澤総理はその当時、見通しが甘かったというのも甘んじて受け入れなければならないと述べられました。  そしてさらに、カンボジア調査団の超党派の合意を無視しての自衛隊派遣についてもどう考えるのか、問題ではないかという追及に対しても、総理は、間違いだと申されたらそういうことになると述べておられるんです。  ところが、そういう場合に中断だとか撤退だとかというふうな問題にはなりませんでした。こうした事態は、いわゆる憲法上の歯どめとしての五原則が事実上踏みにじられているということではありませんか。  あなたは先ほど、いろいろ複雑な事情があっても五原則さえ忠実にやっておれば問題はないんだと。だけれども、五原則が守られていない状態でも中断も撤退もしていないじゃないですか。五原則さえ踏みにじったじゃないですか。カンボジアの事態に対してとった態度は一体何なんですか。  茂田さんはいいよ、さっきあなたが言ったから、僕は久間さんにきょうは聞いておきたい。
  125. 久間章生

    国務大臣久間章生君) あくまで政府としてはこのPKO原則に基づいてPKO派遣して実施しておるわけでございまして、PKO法二十四条三項の要件が必要であることは言うまでもございません。したがいまして、二十四条三項の要件がちゃんと守られておるというふうに私どもは理解しております。だから、停戦停戦合意とでは若干違うんじゃないかなという感じを持ちますけれども、その辺については事務局長の方から答弁します。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 いいです、もうあなたの答える内容はわかっている。その停戦合意だとかなんとかという問題と停戦とは違うんじゃないかということについては聞いていますから、知っていますからいいです。  例えばゴラン高原の問題についてもきょうは述べたかった。この場合にも和平協定はなされていない。今の中東の状態を言うならば、和平協定がなされているのはイスラエルとエジプト、もう一つはイスラエルとヨルダンだけ。二カ国との間だけしか和平協定は結ばれていないんです。  和平協定というのは、御承知のように、停戦をやってどのように部隊を切り離して、それを解体して、そしてさらには完全な平和の状態にまでたどり着くかという過程を示してある内容が和平協定なんですね。ところが、ゴラン高原の場合、シリアとイスラエルの間にはございません。そういう状況の中であるにもかかわらずゴラン高原に自衛隊派遣したんです。ここは国連の兵力引き離しの監視軍として送ったわけです。これはいわゆる凍結された内容のものなんです。  こういう問題として事実上送られて、この問題について当時私が河野外務大臣に質問したときに、さまざまな報告書や現地を訪問した人のことをよく聞くなど、我々は十分な判断をしなければならないと思いますと、こういう答弁をいただきました。だけれども、その後十分に判断して検討された経過は見られません。依然としてゴラン高原に自衛隊派遣されたままであります。  そのときの理由は何か。あそこは平穏で武力の衝突が起こるような可能性がないからというお話でした。可能性がないとしても、しかしいわゆる凍結された内容に基づいてゴラン高原に自衛隊派遣するというのは、国会での約束のじゅうりんじゃありませんか。結局、カンボジアに対する自衛隊派遣もゴラン高原に対する派遣も、五原則から見ても国会での答弁から見ても、明確なこれに対する違反であるということだけは私は述べておきたいと思うんです。  そういうふうなことというのは、先ほど同僚議員も述べられたように、すべて軍事を優先する、そういうふうなやり方で、日本が憲法を守って本当に平和のために貢献するということになり得るのかどうなのか。軍事優先ではなくて、平和的な手段で話し合いによって問題を解決するという態度をとるべきではないかということだけは明確にしておきたいと思うんです。  最後に、この問題については、また久間さんに聞いても同じ答弁が返ってくるだけでしょう、しかし村岡官房長官、今言った話もよく耳に入れておいていただいて、検討願いたいと思うんです。本当に日本が平和のために貢献するというあり方は一体何なのか。いわゆる軍事力によるということなのか。それは憲法で禁止されているにもかかわらず、それを踏みにじってまでやるということをなぜしなければならないのか。  PKOの問題は、アメリカを中心とする大国が参加し出してから変わってきましたよ。私は全部調べています。ガリ事務総長が出された報告書も見ました。そして、地方のいろいろな組織にその権限をゆだねるというふうな問題にまでなりかねないとしている。そういう方向に、アメリカの言い分に従って軍事的な方向に日本が走っていくということが本当に日本の平和と安全、アジアの平和に貢献する道なのかどうなのか。このことを私は真剣に考えていただきたい。御答弁は要りません。検討だけを要望しておきたいと思うんです。  最後に、外務大臣にお尋ねしたいんですが、この問題のときにいわゆる五原則というのを出しました。この五原則ということについてはもうここで読み上げません。停戦合意の問題から始まって、最後にそれに圧された場合には中断だとか撤退だとか等々も含めた問題があります。これらの問題について一々申し上げませんけれども、この五原則があることを前提として行動すれば武力行使を伴わない、武力行使と一体化することもないということもこれまでの答弁としてあったわけです。そして、この五原則は、一九九一年八月、ニューヨークで日本の外務省の国連局幹部が当時のグールデング国連事務次長に日本の基本方針を説明し、その英文を相手側に手交しております。  さて、この文書の内容は、五原則が守られていないという問題については今述べました。その点についての答弁は要りません。この五原則については今後とも国連との間での確認事項として生かされていくのかどうなのか。この確認が今度のPKO法改正によって一部変更するということがあり得るのか。あるいは国連と約束されたこの五原則の内容については破棄されるのかどうなのか。その問題についてお答えをいただきたい。
  127. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今般の法改正は、いわゆる参加原則の枠内で行われるものであり、これを何ら変更するものではございません。いずれにいたしましても、国連を初めとする関係国際機関に対しましては今回の法改正の内容につきしかるべく説明を行い、その理解を得たいと考えております。
  128. 立木洋

    ○立木洋君 一つだけ。  私は、この問題に関しては、先ほど申し上げましたように、憲法にも反しており、国会で約束した五原則もじゅうりんされる内容が現実に存在しておる。同時に、それのみならず、国会で約束した、凍結した行為さえ行おうとしておるという状態、このような軍事優先に進めるというあり方に私は断然同意できないし、こういうふうな法案は直ちに撤回するということを改めて強く要望して質問を終わります。
  129. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 先ほど私が答弁した中で引用した条項が間違っておりましたので、その点については条項を撤回させていただきます。
  130. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  131. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、竹村泰子さん及び田村秀昭君が委員辞任され、その補欠として前川忠夫君及び泉信也君が選任されました。     —————————————
  132. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 休憩前に引き続き、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  133. 泉信也

    ○泉信也君 今回のPKO法の一部改正案につきましては、遅過ぎたということと十分ではない、こういう思いを持つものであります。遅過ぎたということにつきましては、既に各委員から御発言があったやに伺っておりますが、十分でないという事柄についてお尋ねを申し上げます。  従来の個人判断が、上官判断ということによって組織的な対応ができるということになったことは、これは一つの大きな進歩だと思います。これに加えて、仮に周辺に日本人のボランティアというような方々がいらっしゃった場合、そういう方々の生命を守るために派遣された防衛庁の職員、自衛隊員がどうやって機能できるかということが今回の改正の中には盛り込まれていないと思うわけですが、この点についてはどのようなお考えでしょうか。
  134. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) お答えいたします。  法の見直し過程におきまして我々いろんな問題点を検討いたしましたが、そのうちの一つに警護業務の追加の問題というのがございました。ただ、警護任務を付与するという点につきましては、これは武器使用あり方との密接な関連を有するということで、憲法上の問題も含めて種々の観点から慎重に検討する必要があるということでございまして、今回の改正法案では三点だけに絞らせていただいたということでございます。警護任務の問題につきましては、今後の検討課題にしていきたいというふうに考えております。
  135. 泉信也

    ○泉信也君 海外でそういう日本の方が自衛隊隊員の方々と一緒に活動する、同じ組織の中という意味ではありませんけれども、同じ目的活動するということは起こり得るわけですね。その場合には、今おっしゃったようにまだ憲法問題との関係もあってできないというお答えですけれども、日本人の生命、財産を守るということは日本政府の大変重要な役割であるわけですが、どうしてそれができない、どうして憲法に抵触する、どの部分で抵触するというふうにお考えでしょうか。
  136. 茂田宏

    政府委員(茂田宏君) 憲法上の問題を含め、種々の観点から慎重に検討する必要があるという観点から今後検討していきたいということでございます。したがいまして、ただいま現在、こういう場合には憲法に違反するということで除外しているというようなことではございません。
  137. 泉信也

    ○泉信也君 憲法問題の議論をする前に、そういう事態が発生しないことを期待いたしまして、この件についてはできるだけ早くもう一歩突っ込んだ対応ができるようにしていただきたいというふうに思います。  もう一つ、PKO法の三条三号のいわゆるPKF本体業務の凍結解除の問題でございますが、防衛庁長官に我が党の永野議員がお尋ねをし、また衆議院でもいろいろな議論がございました。凍結の問題の経緯からしまして立法府が発議した、したがって凍結解除は立法府の立場で発議されるべきではないかという御答弁を今日までいただいておることを承知いたしております。これは、その考え方は是といたしまして、防衛庁長官のお立場ではそういう機が熟しておる、PKF本体業務の凍結解除をする時期に至っておるというふうにお考えでございましょうか。
  138. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 政府としては、御承知のとおりこの法律をPKFを含めて提案したわけでございますが、参議院の方で修正がなされまして凍結になったわけでございます。その後、国会の御論議等も政府の立場で眺めておりますけれども、まだこの問題についてはいろいろ議論があって幅広く検討すべきものじゃないかなと、そういう感じで受けとめております。
  139. 泉信也

    ○泉信也君 これも先ほどの事態とやや似たところがありまして、日本のPKO活動をさらに充実する、世界に貢献するという意味においては、PKF本体部分の業務の凍結解除というのは私は急いで対応する時期に来ておると。既に見直しの時期をはるか前に過ぎておるわけでありますので、立法府ももちろん考えていかなきゃなりませんが、防衛庁長官の方におきましても何らかのアクションをとっていただけるようにお願いを申し上げたいと思います。  何かコメントがございましたらお願いします。
  140. 久間章生

    国務大臣久間章生君) この凍結をされております附則と今度の見直しの規定とは一応別建てになっておるわけでございまして、期間が過ぎておるからと言われるのはこの見直しの方の規定でございまして、それに基づく今度の改正を出しておりますけれども、それ自体はちょっと時間がかかったんじゃないかという気もいたします。  しかしながら、この凍結解除の問題につきましては、そのような期間ともまた切り離して規定されているわけでございますので、これについてまた違った角度から、もう少しいろんな国会の御議論等もやはりしんしゃくしながら、私どもとしてもこれに対する態度といいますか考え方、そういうのについてはやはりこれから先も慎重に、また真剣に検討していかなきゃならないと思っております。
  141. 泉信也

    ○泉信也君 この法案に関しますお尋ねは以上で終わらせていただきます。  四月二十八日、当委員会で私は中国の遺棄化学兵器問題に対する質問をさせていただきました。その際、質疑の中で明らかになった部分もございますが、なお不明なところ、もう少し確かめさせていただきたい点がございますので、これから取り上げさせていただきたいと思います。  先日のアジア局長の御答弁の中で、化学兵器が発見されている状況等から日本の武器が、あるいは化学砲弾が整然と引き渡されたものではない、こういう御答弁をいただきました。私がそのときに問題にいたしましたのは、この化学兵器禁止条約に言われておりますような相手国の同意がなされた上で武器が渡されたのか、なされないまま遺棄された化学砲弾なのかということをお尋ねした中での御答弁でございます。発見されている状況などから整然と引き渡されたものではないという御答弁は、どういう具体的な事実に基づいてのお答えでございましょうか。
  142. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先般の御質問に対して私の方からお答えしたその中国側の同意、こういうことは明らかな根拠がございませんと、そういうことをまず申し上げて、それに加えまして、日本の化学兵器が中国で発見され現在も発見されておりますが、それから見ても軍隊が武装解除のときにきちんと先方に引き渡した、そういう状況で現在存在している、そういうことではございませんということを申し上げた次第でございます。
  143. 泉信也

    ○泉信也君 よくわかりません。今の御答弁よくわかりませんが、武装解除時に同意していないということも局長答弁の中にございました。同意をしていないというそのあかしが何かございますか。
  144. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) これは、累次中国側との本件についての協議を通じまして、中国側は、中国側が同意をして日本側が化学兵器を残置した、そういうことはないと言っております。したがいまして、日本側にそういう証拠があるかどうかということになると思いますが、今までのところ記録を調べましても、中国に残っております化学兵器が日本側からきちっと武装解除の際に先方に引き渡された、そういう記録は見当たらない、こういうことを申し上げた次第でございます。
  145. 泉信也

    ○泉信也君 前回の御答弁の中で、「通常の武器等については武装解除のときの引き渡しの記録もある程度あるそうでございます」という御答弁をいただきましたが、このことと今の御答弁とはどういうふうになるんでしょうか。
  146. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 私どもが外務省として防衛庁の方から伺っているところでは、武器等の引き渡しに関する記録はある程度残っている、そういうことは伺っています。  ただ、その中で化学兵器が武装解除の際に引き渡されたかどうかという明確な記録はないということも伺っております。詳細な記録について外務省としてはつまびらかにはしておりませんが、概略そういうふうに防衛庁の方からは伺っているわけでございます。
  147. 泉信也

    ○泉信也君 防衛庁、御出席でしょうか。  今の件について防衛庁側はどういう書類をお持ちで、特にほかの武器については引き渡しを受けたと言っておるのか、化学兵器については受けて。いないという証拠立てができるような資料が残っておるかどうか、お答えください。
  148. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 事柄の性質上、断片的な資料しかないわけでございますが、私ども防衛研究所の戦史部において保管されております資料におきます終戦時の武器引き渡しに関する記録といたしましては、降伏後の第六方面軍司令部及び第一一軍司令部の状況報告といった資料が確認されているところでございます。  その状況報告の概要について簡単に申しますと、この第六方面軍司令部の状況報告におきましては、昭和二十年九月から十月にかけまして、同軍司令部が第六戦區司令長官司令部に対しまして武装解除及び軍需品譲渡を終了した旨の記載が行われております。  それからもう一つ、第二軍司令部の状況報告におきましては、昭和二十年九月から十一月にかけまして同司令部が武装譲渡を完了した旨の記載が行われている、こういうところでございます。
  149. 泉信也

    ○泉信也君 それでは、これはアジア局長、あるいは竹内局長お尋ねした方がいいのかもしれませんが、前回の質疑の中で明示的な同意を与えていないというお話がございました。  これは、他の武器あるいは薬品あるいはその他衣服等、武装解除されたときの同意書があるという意味でしょうか。そして、化学兵器に対しては、中国が明快な同意を与えてい塗いというあかしを証明するような資料が中国側から出されているんでしょうか。同意書があるというお話がありましたので。
  150. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 同意書があるということは申し上げたことはないと思いますが、中国側はそういう同意をしたことはないということを一貫して言っております。  したがいまして、挙証責任と申しますか、先方が同意したんだということをこちらが証明する必要がございまして、そういう記録は現在ない、見当たらないと今防衛庁から御答弁があったようなことでございます。
  151. 泉信也

    ○泉信也君 「中国側が明示的な同意を与えていたかどうかということを検証する必要があろうかと思います。」という御答弁がございまして、これは「化学兵器の遺棄につきまして」ということですが、中国側が何らかの書類を提示しておるわけですか、日本側に。  この答弁は、中国側が一般武器その他を含めて何らかのこういうものを受け取りましたという書類があって、その書類の中に化学兵器は含まれていないから明示的な同意を与えていないというふうに答弁をしておられると私は受けとめるんですが、どうですか。
  152. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 中国側が、そういうふうに化学兵器についてはというふうな言い方をしておるわけではございません。ただ、近年中国側とこの化学兵器の処理について話し合いをもう累次という以上に緊密にやっておりますが、その冒頭から中国側は、化学兵器の残置と申しますか中国に残すことについて中国側が同意したことはないということを一貫して主張している、こういうことを申し上げているわけでございます。
  153. 泉信也

    ○泉信也君 それに対して外務省はどう反論しておられますか。私は、ポツダム宣言の武装解除の話もしました。所有権、処分権の話もいたしました。中国側は、日本は遺棄したのではない、武装解除されて全く丸裸にされたんではないか、しかも大砲、野砲、そういうものと一体的に接収されたんではないか、私はそういうふうに申し上げたわけですが、どういう反論を日本政府としてなさっておられるんでしょうか、遺棄したのか、遺棄していないのかということについては。
  154. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) これは話し合いの中で、今、先生が言及されましたポツダム宣言の規定の話もそういう中で出たことは事実でございます。  何遍も申し上げておりますように、先方はそういうものを同意の上で残していっていいと言ったことはないというわけでございますから、そこに今ある化学兵器が日本製のものであり旧日本軍のものであったということになりますと、先方の同意が明示的にない以上は、これは日本が残していったものだと、それはいろいろ議論がございましたが、しかし結論はそういうことでございます。
  155. 泉信也

    ○泉信也君 そこが私は理解できないんです。  ほかの武器は全部とっているわけでしょう。化学砲弾だけは別だと、どうしてそんなことが外務省として納得できるんですか。そんなことはあり得ないでしょう。  もう一つ申し上げます。  先日来もお話を申し上げましたけれども、日中共同声明とかあるいは友好条約という言葉が外務省の方からもたびたび出てまいります。私は、一九五一年以来、ハルバ嶺を中心に砲弾等を移したときに何らかの意思表示が中国側からありましたかという質問に対して、そういうのは国交もなかったのでありませんでしたと、それはそれで理解します。しかし、それほどの大問題であれば、日中共同声明あるいは一九七八年の友好条約のときに何らかの意思表示があってしかるべきだと私は思いますが、何かあったんでしょうか。
  156. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 後の御質問の方からお答え申し上げますが、御案内のように、経緯的にはこの問題について中国側から提起されたのは一九九〇年ぐらいだったと思います。それでございますので、一九七二年とか七八年の日中国交正常化、平和友好条約締結のときには、中国の中でこの化学兵器が引き起こす事故というようなものが当時はまだ起こっていなかったんだと思いますが、向こうから問題として提起されておりませんでした。  先生御指摘になりました第一点と申しますか、武装解除で日本側が武器を引き渡した、普通の機関銃とか山砲とか、そういうものと化学兵器を分けて引き渡したというのはちょっと常識で考えられないんじゃないかという御指摘でございます。  これは私どももある程度常識で考えざるを得ないのでございますけれども、当時からこういう化学兵器の使用というものは国際法上禁止されていたものでございますから、終戦時に日本軍がそういうものを、国際法上使用を禁止されていたような武器をそのまま向こうに引き渡さなかったということがあっても不思議ではないんではないかなと。  ですから、とてもそういうことは常識で考えられないということではないのではないかというふうに考えております。先ほど防衛庁の方からも、普通の武器の引き渡しについての記録はある程度あるけれども、化学兵器も含めて引き渡したという記録はないという御答弁がございましたけれども、そういうふうに考えるのは非常におかしいんじゃないかという御指摘については、私どもはある程度当時の状況を考えますと、そういうこともあったのかなというふうに考えております。
  157. 泉信也

    ○泉信也君 化学兵器については、禁止されておったから引き渡さなかった。じゃ、どうしたというんですか、日本軍の兵隊は。おっしゃるようなそれだけ多量のものが仮にあったとすれば、それを遺棄して全部逃げたとおっしゃるんですか。日本軍は、こういう野砲何門あるいは食料品をどれだけ、そういうものをきちんと明細を渡して引き渡しを完了したものが恐らく大部分だと思うんですね。それはもちろん中には、捨ててあるいは隠してという部分もなかったとは僕は思いません。しかし、今おっしゃるように、化学兵器だけは別な扱いをするほど日本に余裕があったとおっしゃるんですか、その時点で。
  158. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) その現場現場状況はもちろんつまびらかにいたしませんが、先生がおっしゃいましたように、通常の兵器は引き渡したけれども化学兵器の方は引き渡さなかった、それは常識で考えられないだろうという御指摘だと受けとめておりますが、先ほど申し上げましたような理由で、ある程度そういうことはあったんではないかな、そう非常識な判断ではないんではないかなと私どもは思っております。
  159. 泉信也

    ○泉信也君 局長と話しておるとどこの国の代表かと私は思いますね。そんなことはあり得ないでしょう。弾は別だ、日本軍が勝手に遺棄したんだ、そんなこと考えられますか。  しかも、この前の御答弁では、所有権あるいは処分権については、「渡ったというふうに考えるのはいささか無理がある」、こういう御答弁をいただきました。それでは、日本に所有権があるということで、今から中国側に引き渡した武器を返せということが言えるわけですか、国際法上。
  160. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 化学兵器禁止条約の詳細につきましてはまた別途もし必要ならば御説明申し上げますが、先ほども申し上げましたように、現在化学兵器がある、それは日本のものである、旧日本軍の持っていたものである。中国側がそれを残置していいという同意をしていないという状況でございますから、これはいわゆる条約上の遺棄化学兵器だ、こういう認識なわけでございます。
  161. 泉信也

    ○泉信也君 中国側が合意したかしていないかというのは、ほかの兵器についてそれでは合意した書類がありますかと言っても出さないじゃないですか。ほかの兵器については確かに受け取りましたと中国側が言うならば、そしてその中に化学兵器がないならばさらに議論をする必要はあるけれども、中国側の明示的な受け取ったという書類がない以上、化学兵器についてないからないんだ、遺棄したんだというような論理は成り立たないでしょう。  時間が余りありませんので、外政審議室長お見えだと思いますが、今のようなやりとりで、次々に調査団を出して、しかも対応を進めておられるようでありますが、外政審議室としては、この禁止条約に基づく遺棄された化学兵器というものは、日本が明示的に本当に現中国領土内に意識的に捨ててきたものだという認識で対応しておられるわけですか。
  162. 登誠一郎

    政府委員(登誠一郎君) 日本軍が意識的に捨てたかどうかという判断は私どもの方ではいたしかねますけれども、現実の問題として、そこに旧日本軍が使っていた、あるいは保有していた化学兵器が残置されておるということと、それを遺棄国と申しますか保有していた国の責任で撤去するというのがこの化学兵器禁止条約上の義務であるということから、この条約に日本が署名しまして加盟国となったわけでございますので、それによって生じる義務を果たしていくという観点から、政府としてはその責任を果たすという観点で、またこの問題は多岐にわたる技術的、専門的な知識等が必要でございますので、政府全体として取り組んでいるということでございます。
  163. 泉信也

    ○泉信也君 保有していた国、日本が保有していたということはこれは明確にわかるわけですね、出できたわけですから。しかし、それが、ポツダム宣言を受諾したところで所有権、処分権を含めてどうなったかということが化学兵器禁止条約の遺棄に当たるかどうかという議論を私はさせていただいておるわけで、その部分の議論を抜きにして日本軍が保有してあったんだからというようなことで対処されるというのは、少しおかしいんじゃないでしょうか。条約に基づいて処理をすると言うならば、その部分を明快にしなければ一歩前進できないんじゃないでしょうか。
  164. 登誠一郎

    政府委員(登誠一郎君) 外務省の方からの御答弁にもございましたとおり、政府としては、これは遺棄されたもの、そういう認識でございます。したがいまして、それに基づいて準備を進めているということで御理解いただきたいと思います。
  165. 泉信也

    ○泉信也君 二度にわたってお尋ねをいたしましたけれども、遺棄されたものという事柄については全く明らかになりません。  私は、この問題は、前回も申し上げましたように、一兆円もかかるかもしれない、あるいは十年ではおさまらないかもしれない大きなプロジェクトであり、しかも中国大陸だけではない、ほかの国からも要求されてくるかもしれない。そういう非常に大きな問題の処理に取り組んでおられるわけですから、根っこの部分を明らかにして進む必要があると思うんです。  私は、この七十万発が多いとか少ないかというようなことは専門家ではないからわかりませんが、柿谷勲夫という軍事評論家の方の話によりますと、硫黄島でも十万発しか撃っていない、あるいは沖縄戦でも二十万発しか撃っていない。そういう通常砲弾に比べて化学砲弾というのは千発とか百発に一発ぐらいだ。だから、仮に化学砲弾が七十万発あるとするならば、通常砲弾は七億から七千万発、それぐらいあったということになるではないか、こういう指摘をしておられます。  ですから、私は今、一発でも七十万発でも同じでありますけれども、本当に日本が遺棄したのかどうかというのはもっと詰めてほしい。その上で日本がやらなきゃならぬことであれば、二兆円かかろうが三兆円かかろうが私はやるべきだと思います。もう一度、いずれの機会がにお尋ねをさせていただきたいと思います。  終わります。
  166. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 委員長からお願いがございます。  これは、非常に今の質疑者の質問は重要な問題でございますので、村岡官房長官の所見があれば、この際、発言を求めます。
  167. 村岡兼造

    国務大臣村岡兼造君) 今のやりとりを聞いておりましたけれども、よく私の方も調べさせていただきます。
  168. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最初に、法案関係お尋ねいたします。  形式的な法解釈の問題を最初にお尋ねいたしますが、まず、現行法前提にいたしまして、現地で隊員正当防衛の要件を完全に具備していないのに具備していると考えまして相手方を射殺した場合に、刑法上の犯罪が成立することは間違いないと思いますけれども、殺人罪が成立すると考えてよろしゅうございますか。余り詳しいことは要りません、結論ぐらいで結構です。
  169. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) まず、一般論として申し上げますが、今回の改正法が認められました場合、この法律……
  170. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 ちょっと待ってください。改正法のことを聞いているんじゃないんです。現行法前提にしてということを私は最初に断っていますよ。それから、結論だけでもいいということも言っております。
  171. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 現行法のもとにおきまして、この法の要件に該当しないことがございました場合、その態様に基づきまして何らかの処分等があり得るということだけは申し上げられます。
  172. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私、刑法上の殺人罪に該当するかというふうにはっきり聞いてもよろしいと思います。その態様によりまして云々というのも結構なことですけれども、どうですか、殺人罪の成立はお認めになりますか。
  173. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 委員御案内のとおり、現行法では、自衛官は、自己または自己とともに現場に所在する他の隊員生命身体防衛するためやむを得ない必要があると認められる相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要とされる限度で武器使用することができるという趣旨の規定でございます。四項には、相手に対して危害を加える場合の要件について書いてございます。この場合、正当防衛もしくは緊急避難に該当する場合以外は人に危害を加えてはならないという規定でございます。  したがいまして、実際の対応は、仮定の議論でございますけれども相手を殺傷するというようなことがこの要件に該当しない場合は、形式的に刑事罰の対象になり得る場合があるということは申し上げられます。
  174. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 それでは、改正法が実現したといたしまして、現場において指揮官とそれから隊員判断に食い違いがあった、指揮官はまだ危険は切迫していないと考えるんですけれども隊員は、いや、危ないうちの隊長はのんびり屋だから困ったものだと、とっさの判断相手方を射殺した場合、隊長の命令、指揮官の命令がない段階で、これはどうでしょうか。なるべく簡単にお願いします。
  175. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 端的にお答えせよということでございますけれども、実際にはここにございますように厳密に法律の要件がございます。したがいまして、実際のその場面においてどういう場合にどういう武器使用し、どういう形でやるかということにつきましては、今回の改正案におきましては、上官がある場合には上官が各種状況判断して、その上官命令によることを原則とするというのが今回の法の趣旨でございます。  そこで、先生お尋ねの、個人でそれを判断してそうでないと思った、それで上官判断と違っていたという非常に希有な例でございます。そういう場合にどうなるかということでございます。  まず一般的に申し上げれば、この場合、上官判断命令が明らかに間違っているという場合は別としまして、この場合は上官命令に従うということでございます。言葉を変えれば、それに従わない隊員は場合によりましては態様に応じて処分の対象になり得るということが申し上げられます。
  176. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私が聞いているのは殺人罪が、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、一般論とすれば成立するのかということですから、もう少し簡単に何か要領よくまとめられないのでしょうか。ちょっと遺憾ですけれども、結論だけでもはっきり言ってください。
  177. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) それが形式的に殺人罪に、外形的にはそれが当たるというふうに見えました場合にも、この条項に従った要件のもとでの武器使用の結果そういうことがあっても、それは要件に該当して加罰の対象にならないというようなことがここで書かれているわけでございます。
  178. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 こういう設例を挙げましょう。  現地で隊員が現地住民の酔っぱらいに絡まれまして殴りかかられる、つい腹立ち紛れにその場で射殺した、これはもうもちろんPKO法案の了解していることではございませんから明らかな殺人犯だと思います。こういう場合に、自衛隊としてはほっておけませんから、その隊員の身柄を確保して内地に送還して一般裁判のルートに乗せて処罰をする、こういうことになると思いますが、それはそういう考えでよろしいですか。
  179. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 先ほど申し上げましたように、自己生命身体を守るための武器使用をここで定めているわけでございまして、違法な武器使用ということが仮にありました場合には先生のおっしゃった理屈になっていくと思います。
  180. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 実は私が言いたいのは、こういう全く典型的な個人犯罪と、組織そのものを防衛する、自分の生命身体の安全もありますけれども、同僚の身体生命の安全、組織である部隊そのものの安全を防衛するためにやむを得ず立ち上がる、しかしその判断に誤りがあった、こういうケースを一般の殺人事件と同じような扱いをしていいんだろうかという基本的な疑問が私には実はあるわけであります。公務員というのは犯罪を発見したら告発せねばならぬ、そういう義務が課せられておりますから、現地の指揮官が、何だこれは、おれの命令に従わないで事件を起こした、これは殺人犯だといって一一〇番をする、そうすると受けた警察官ははるばると飛行機で現地まで飛んでいきまして、その身柄を確保して内地に連れ戻して完全な個人犯罪ということでルートに乗せて裁判をする、こういうことでいいんだろうかと私は率直に思うわけです。個人的な犯罪ではないんでしょうと。  外国の場合には大体軍刑法があって、軍法会議があって、その段階で処理されることになっておりますけれども、日本はそうではないものですから、しようがない、一般犯罪のルートでやるしかない、こういうことになります。こういう時代、PKOが外国にまで行って活躍をする、そしてある程度の範囲で武器使用が認められている、その使用をいささか誤ったというだけで一般犯罪のルートに乗せる、こういう扱いでいいんだろうかという基本的な疑問が私にはあるわけであります。  こういうケースについて、もちろん防衛庁も重大な問題としてとらえて議論をしていると思いますけれども議論をされているかどうか、まずちょっとお尋ねしたいと思います。
  181. 坂野興

    政府委員(坂野興君) 現在、自衛隊員の犯した犯罪につきましては、他の公務員あるいは国民と同様に個人として刑法の適用を受けることになっております。そして、刑法の適用あるいは執行につきましては、この点につきましては私どもとして言及する立場にはないかもしれませんが、あえて申しますと、自衛隊部隊組織あるいは業務の特殊性、性格、そういった事情が考慮されることになるのではないかというふうに考えております。したがいまして、現在の法的枠組みは一応合理的なものというふうに考えておりまして、この現行の法的枠組みを見直すことは現在のところ考えてはおりません。
  182. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 どうも私の質問に答えていないような気がしてしようがないんです。  内地にいて、たまたま交通事故を起こしたとか酔っぱらって人を殴ったとか、そういう個人犯罪のことを私は言っているわけではない。外地にあって、やはり同じように酔っぱらいに絡まれて腹立ち紛れに殺してしまったとか、そういうケースも私は言っているわけじゃないのであって、部隊の一員として行動する、組織を守るために行動する、それを一般刑法犯を適用して一般犯罪者と同じように扱うことの是非ということは防衛庁にとっては大変重要な問題だと思うんです。  まあしようがない、日本はとにかく軍刑法はない、軍法会議はない、一般の犯罪者と同じように扱ってもらえ、一一〇番をしろ、お巡りを呼んですぐ逮捕させろ、こういう非常に冷たい考えなんでございましょうか。そのことを私は聞いておるんです。もう少し真剣に考えて、それは大変問題なので、今どういう法体系になじむのかどうか検討中でございますということぐらいの答えがあろうかと思ったら、どうもそうではないようでありまして、それでお尋ねしているわけであります。
  183. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今、委員御指摘の問題は確かに、組織が特に国から外に行っている場合にそこに起きた犯罪についてどうするかについては、立法論としては議論しなければならない問題かと思います。  しかしながら、従来の行っております実績というのはPKOでございますし、PKOにおいてはまあ心理的ないろんな圧迫があったかもしれませんけれども、現在のところそういう武器使用したという例もございませんので、内部においては従来同様一般の刑法の適用の枠内で処理しているということでございます。
  184. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 ある意味では自衛隊の存立そのもの、自衛隊員の名誉そのものがかかっている問題だというふうに実は重大に受けとめて、お忙しいでしょうけれども暇を見てこういうことも検討してみる、有識者の意見も聞くということで積極的な姿勢で臨んでいただきたいと思います。  次に、PKOの問題について取り上げたいと思いますけれども、これは御承知のとおり大変な大議論があって、紆余曲折を経て今の法案ができたということであります。いろんな考え方がある。先ほども同僚議員からいろんなPKOに対する考え方が出ておりました。それはそれで結構だと思います。しかし、でき上がった以上は素直にこの法律に従っていくのがまた民主主義のあり方でもあろうか、こういう感じがしておるわけであります。  今のPKOを見てみますると、外地に行って、実は危険な地域には踏み入らないようになっている、危険な任務は担わないことになっている。ではそれはだれがやっているんだと。いや、外国のPKOがやっている、彼らは軍隊だからいいのだろう、我々日本人は後方で安全な任務についている、日本人の血は流れない。ではだれが血を流すのか、それは外国人だろう、彼らはしようがないんだよというふうな極めて冷ややかな対応でこの話は済むのだろうか。ある意味ではひきょう者の論理じゃないのかな、こういう気がしてしようがないわけであります。  先頭に立って頑張れというわけではありませんけれども、平和を維持する、紛争地域に入って紛争を解決する、そういう任務法律でもって定める以上は、率先垂範するまではないんですけれども、外国の部隊と歩調をそろえて危険な任務を担うということが私は必要なんじゃないかと。それが公平であるし、また正義にも合致する感覚ではないのかという気がして仕方がないのであります。  今の日本の青年がそんなにひきょう者ぞろいと私は思いたくないのでありまして、やっぱり君たちはどうだと問いかければ、アメリカの青年、イギリスの青年と同じように、危険な任務を我々に負担させてください、頑張りますというふうに答える人が大部分だろうと思います。別に強制しようというわけじゃないのですから、嫌な人は参加しなきゃよろしいというだけのことですから。  もう少しPKO本体のあり方について真剣な議論をしていただきたいと思いますし、防衛庁ももうそろそろ、PKOはこういうことで海外派兵につながるとかつながらないとか、そういう問題ではございませんと。つながるかどうかを最終的に判断するのは国民ですから、防衛庁が幾ら威張ってみたって国民が嫌だと言えばどうにもならないことですから。しかし、問いかけをする、呼びかけをする、そういう責務は防衛庁にあるんだろう、こう思いまして、今の問題、私の考えにつきまして防衛庁長官のお考えもまた承らばと思います。
  185. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 私としましても、国連の一員であります日本が国連活動としてのPKO、本体業務を含めましてPKOにはやはり積極的に活動すべきだと思っております。  しかしながら、御承知のとおり我が国憲法九条で武力行使をしないということで禁止しておりますので、それとの絡み等もございましてやはり慎重に対応しなければならないということで、そう慎重に対応する中でもこのPKO法案でやることについては憲法上問題ないということで法案を出させていただいて、そのつもりでおったわけでございますけれども、PKFの本体業務については凍結ということに国会の御意思として修正されておりますので、その辺も踏まえながら、やはり国民の世論の推移等も十分見きわめ、国会の御論議等も見きわめながらこれから先対処していこうと思っているところでございます。
  186. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 いずれにしろ、積極的な姿勢でこの問題を取り上げて取り組んでいただきたいという感じがいたします。別に私タカ派的な意見を述べているつもりは全くないのでありまして、公平の観念、正義の観念からすればこれは当然のことではないかという気がして仕方がないわけであります。ただ、これからの検討をお願いしたい、こういうわけであります。  次に、外交会談における通訳のあり方を、全く話は変わりますが取り上げてみたいと思います。  政府の要職にある人が外国のやはり同じような立場にある者と会談をする場合、私もそういう会談に加わったことがありますけれども、日本側は日本側で日本の通訳、大体外務省の係官とかそういう人が同行していく、向こうは向こうで同じように向こうの政府の要人、それに向こうの政府の通訳がついてくるということで会談をします。日本語を我々話しますと通訳である外務省の係官が相手方の言葉に翻訳する、相手方がまた自国語でしゃべりますと相手方の通訳が日本語に直すということで、お互い通訳同士、誤訳がないかどうかということを慎重に確かめ合いながら会談が進行していくというのはこれは当たり前のことでありまして、どこの国でもこういうことをやっておるんだろうと思います。  これは与党の要人の場合も私同じだろうと思います。例えば、自民党の三役あるいは幹事長代理の方が外国の要人と会談をする、あるいは向こうが政府の立場にある場合には政策の協議も行われるわけで、それがかなり大きなウエートを持って日本政府にはね返ってくる。当たり前のことでありますから、やはり先ほどの会談と同じように日本側も通訳を用意して向こう側の通訳と、こういうふうな形で会談が行われているんだろうな、こう思っておりました。  ただ唯一の例外は、十年ほど前に金丸さんが北朝鮮を訪問いたしまして、夜中にいきなり金日成主席から呼び出されまして、一人で飛んでいってそこで日朝の何か妥結案をまとめてきた。戦後賠償もやるんだというふうなことも言っておりましたが、あれなどは全く希有な例で、どうして金丸さんともあろう方が日本側の外務省の同席していた者を連れていかなかったのか。当たり前のことだろうと思うんですけれども、通訳は向こう側から来たということですから本当の通訳をされたのかどうかすら実は保証しがたいわけなんですね、こういう場合には。不思議でしょうがないんですけれども。  今回の橋本総理の問題を、私、新聞雑誌は見ておりませんけれども国会議論を聞いている限りやっぱりちょっと不思議だなということは、橋本氏、当時幹事長代理であったようですけれども、中国に行きまして向こう側の衛生部の要職にある方々と会談をした。そして無償援助の約束も、約束かどうかそこまでいったのかどうか知らないけれども話し合いもした。その通訳をしたのが向こう側の衛生部の職員であったということなので、あれどうしたのかな、こういう場合には必ず在外公館からしかるべき通訳をあっせんしてもらうとか、大体幹事長代理ともなれば在外公館のかなり地位の高い人が通訳の労を買って出るんだろうと私は思います。  それから、今度は向こうから衛生部の要職にある人たちが訪日した、その場合、橋本幹事長代理が会った際も、また何か向こうの訪日団に加わってきた問題の女性が通訳を買って出たと。こんなことあるのかなと、私の常識ではとても信じられないことなんです。  外務省としてもこういう場合に、ちょっと困ります、うちの通訳を使ってくださいと普通な隻言うのでありましょうけれども外交会談の秩序が一体どういうことになっておるのか。この橋本ケースあるいは金丸ケースなんというのはごくごくありふれたことで、外務省の耳に入らない限りは何もこんなことは干渉しておりませんというのかどうなのか、ちょっと教えてください。
  187. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) まず、一般論といたしまして、与党の幹部の方が外国の要人と会談をされる、そういう場合には、その会談自身が、例えば我が国外交政策であるとかあるいは対外関係上大変重要だと考えられ、なおかつ我が力関係者の方から具体的な要請等があれば、そういうものを踏まえて必要に応じまして適切な外務省省員を通訳に充てているということは言えるかと思います。  また、先生は具体的に二つ事例を御指摘になりました。  一九九〇年のいわゆる自民党代表団及び当時の社会党代表団訪中のケースでございますが、これはまさに外務省省員が通訳としてもきちんと同行をしておりました。ただ、先生が今まさに御指摘になりましたような事情で、金日成主席と極めて少人数の我が方の代表団の方との会談には残念ながら我が方の通訳を確保できなかった、出席を確保できなかったということは事実でございます。  また、当時の橋本自民党幹事長代理、これは八八年の例えば訪中でございますが、このタイミングにつきましては、実はやや官僚的なことを申し上げて恐縮でございますが、我が方のその種の文書の保存規定というのがございまして、そういうものが規定に従いましてもう廃棄されておりますものですから、具体的に我が方の文書の中でだれがその際通訳に当たったかということはつまびらかではございません。  以上でございます。
  188. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 外務大臣にお願いいたしたいと思いますが、これからもこういうことがあって問題になると、ある意味じゃばかばかしいことでみんなが大騒ぎをしている。ちょっとした会談のルールを守ってくれればそれでいいわけでありまして、当方も通訳をつける、あなた方もあなた方の通訳をつけなさいというだけのことでありますから、外務大臣から自民党の方にこういうことの二度とないようにひとつ注意をしてくださいと。もちろん会談の中身にもよりますけれども、国の政策について向こうと協議をするようなそういう重大な会談の場合には、できるだけ在外公館と相談をしてあるいは外務省と相談をして通訳を出させるということで処理してもらいたいということを申し入れていただきたいと思うんです。
  189. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 佐藤委員は与党ということで御指定ございました。もとより与党という立場で政府とともにその責任を負っておることですから非常に重要なことだと思いますが、私は、与野党にかかわらず、国会議員というものの、ある意味で特別職の公務員として大きな責任を負っているということだと思うので、従前は便宜供与の求めがあればそれに対して協力を申し上げるという立場でいたしてきたんだろうと思います。しかし今、政府・与党、また議員の重み、こういうことを考えますと、このことが将来にわたっていろいろな問題を提起するということがあってはよろしくないことだろうと思います。  そういった意味で、政府としては御協力申し上げる立場だろうと思いますけれども、そういうことで遺憾なきを期すように与党とも十分連絡をとってみたいと思っております。
  190. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 ちょうど官房長官も来ておられるものですから、これは実は民主党の党首の場合にも何か向こうに行って向こうの政府要人の奥さんに通訳をしてもらったという話も伝わっておりますけれども、やっぱり野党第一党の党首ともなれば、おのずと発言の重みが増すわけですから、普通の重要な政策会談、政治会談と考えでいいのではないか。向こう側の人に通訳をしてもらう、これもちょっと私軽率過ぎるという気もしております。  ただ、これは週刊誌で読んだだけですから、事の真偽はわかりません。官房長官の方からも改めて各党に対しまして、我が二院クラブはミニ政党ですから結構ですけれども、しかるべき政党に対して、特に自民党を中心といたしまして、こういうことのないように留意の上にも留意をしてほしいということを、政府として申し入れていただければありがたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  191. 村岡兼造

    国務大臣村岡兼造君) 今、佐藤委員から、通訳の場合に政府の方から申し入れろと、こういうお話でございますけれども、これは私の方で言えるかどうか、与党には言えるかもしれませんけれども、各政党の方に言えるのかどうか、私は言えないんじゃないかと、こう思っております。
  192. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 全然趣旨を理解していないんですよ、失礼ですけれども。私が言ったのは、重要な政策に関係するような会談をする場合には、会談のルールに従ってお互いそれぞれ信用のおける通訳をつけて話し合うということで後日、いや、誤訳だとか、そんな話はしていないとか余計な紛議を招くことも防げるのではないかと。念のため一応最近の例にかんがみまして、御注意申し上げますよというようなことぐらいなら言ってもよろしいじゃないかと、それだけのことなんですよ。まあ、でも嫌なら結構ですよ。
  193. 村岡兼造

    国務大臣村岡兼造君) 重要な会談だか何か、ほかの政党の人が行くのに、私らはわからないわけですね。嫌ならやめてもいいというから、これは言えないだろうと私は思っております。
  194. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最後に、最近の外圧の問題をちょっと取り上げさせてください。  これは実は行財政改革委員会でも取り上げて、橋本総理質問したことでございます。外務大臣もおられたので聞いておられるだろうと思います。  最近、もう日本の経済が大変な国際問題になって、あらゆる国際会議でこれが話題になっていろんな注文が日本についてくる。これが一般的、抽象的な問題であるならば、ああ御忠告ありがとうございますで済むわけですけれども、減税をしろ、あるいは不良債権問題を速やかに断固たる措置をとって解決しろというようなことになりますと、これは率直に申し上げまして明らかな内政干渉だろうと。  例えば、景気対策として減税をやるか大幅な公共投資をするか、そういうことはもうその国の選択の問題ですから。それから、不良債権というのは極端に言えばこれは債権者と債務者の問題であって、国といえども介入できないことなんです、本来は裁判所以外は。そういうことにつきまして外国から何とか断固たる措置をとれと言われて乗り出すというふうなことは、私に言わせるともう明らかな内政干渉だろうと。  この前のサミットでも取り上げておりましたが、何かあれを見ておりますと、明治初年に欧米諸国が、先進国、文明国と称する国が、東洋の一未開発国をつかまえまして、おまえのところはなっていないからこうやれと言わんばかりの印象も私は受けたものでありまして、やっぱりこういう問題については毅然として、やるべきことはやっておる、余計なことは言わぬでくれと言うのが私は政府の筋だろうと思います。  そして、四月九日だったでしょうか、柳井外務事務次官がはっきりと、具体的な政策にわたることについては余計な口出しをしないでくれということをアメリカの国務次官に対して申し入れをしたということが新聞報道されておりました。あれはもちろん外務大臣の指示を受けての申し入れだと思いますけれども、本来ならばやっぱりあれぐらいのことになりましたら外務大臣の問題として、向こうの国務長官に内政干渉まがいのことはやめてくれということを申し入れてほしかったという気もするわけであります。  それから、サミットの問題につきましても、不良債権解決のために早期に速やかに断固たる措置をとれと、サミットの共同声明の中に入っておるというのは恥ずかしくてしようがないような気が私はするのでありますけれども、こういうことにつきまして外務大臣、どういうふうにお考えになるか、ちょっと御所見を承れればと思います。
  195. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 同盟国のそれぞれ重要な役割を持っておられる方々が、相手国の政策にわたってのいろいろ御発言があるということについて、これが今委員御指摘のように好意あるアドバイスなのか内政干渉にわたるものかということは、一つ一つなかなか判断のしにくい問題だろうというふうに率直に思います。思いますが、時に経済政策につきましては、昨年来、特にアメリカの責任者から我が国の政策についていろいろ御発言をいただきました。かく申し上げる私に対しましても、ワシントンに参りましたときに財務長官からお話がありましたけれども、私は外務大臣でございまして直接の大蔵大臣としての責務を負っていませんが、ありがたいアドバイスとしてはお聞きしますけれども、しかしそれが日本の政策に直接及ぼし得る立場にないということを申し上げたわけでございます。  いずれにしてもその辺の分かれ目がなかなか難しいわけで、いいアドバイスは聞かにゃならぬと思いますし、そういう意味我が国の政策を何か強圧的に変えさせようということであるとすれば、これは我々政治家のみならず、国民においてもやはりそのことが相乗作用を起こしてはいけないんじゃないかと思います。  ただ、柳井次官の発言もありましたが、こういう問題についてのお互いの発言ぶりについて慎重を期さなきゃならない、お互いに政治家の発言を、またそれを拡大していくというような方向へどんどんなってまいりますと、売り言葉に買い言葉みたいな話になってしまうと双方にとって好ましいことでないということで、本当に紳士的に必要な寝言は忠言として承りますが、その辺をわきまえてお互いやろうじゃないかというのが次官の反論といいますか、米側に対しての注文だったというふうに記憶しております。
  196. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 最後になりますけれども、これからもまた再三再四こういう問題が取り上げられるのではないかと思います。外国もまた、言葉は悪いですけれども、図に乗っていろんなことを言ってくることも考えられるので、どうかひとつ筋道だけは曲げないように今後も対応していただきたいことを要望いたしまして、質問を終わります。
  197. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表してPKO協力法の改正案について反対の討論を行います。  PKO協力法とは、もともと戦後初めて武装した自衛隊海外派遣するもので、我が国憲法の平和的条項を真っ向から踏みにじったものであります。憲法第九条は、戦争、武力による威嚇と武力行使を永久に放棄し、国際社会にいかなる名目でも軍事的に関与しないことを高らかに宣言しているからであります。  しかるに、今回の改正案による武器使用原則等の変更は、憲法第九条に対する政府解釈、さらにはPKO参加原則の一層重大な変更であり、断じて容認できません。  本改定は、これまでの国会答弁を公然と投げ捨て、上官の指揮命令によって部隊として組織的に武器使用をするということで、これはまさに憲法第九条が永久に放棄した武力による威嚇と武力行使そのものであり、憲法の根本にかかわる重大な国会答弁の変更であります。  ところが、政府は、武力行使に当たらないとする結論を主張するだけで法的な根拠を示すことさえもできず、だれをも納得させる道理ある説明さえできなかったことにも合憲だとする根拠のなさを示していると言えます。  現行法自衛隊員武器使用は、刑法の正当防衛緊急避難の場合以外に人に危害を加えてはならないとしてきましたが、武装された自衛隊組織として上官命令によるとなるならば、刑法三十五条の規定による正当行為として、武器使用による条件は急迫な場合でなくともよくなるし、その武器使用隊員生命等の防護のために必要最小限という限定さえ外され、より拡大された武器の使い方さえできることになります。この点でも武力行使に該当するのであります。  その上、国連は平和維持軍に対して、任務遂行を実力で阻止する企てに対しても武力行使を認めています。しかも、国連PKOマニュアルによれば、装甲車や重機関銃や迫撃砲をも携帯することができるようになります。  本改定では、上官命令武器使用がなされ、その使用統制されるなら、他の外国の部隊任務遂行の妨害を排除するために行う武力行使と一体にならないという保証もまた全くないのであります。  自衛隊を初めて海外に派兵するPKO協力法は、アメリカが血であかなってでも日本は協力をすべきだという湾岸戦争での圧力に追随した、アメリカの世界戦略への積極的な軍事貢献の第一歩であったことは新しいガイドラインの動きを見ても今や明らかであります。  しかも、本法改正によって、新ガイドラインを含めた海外での自衛隊活動、特に武力行使に対する制約の取り払いを公に認知させる契機となり、アメリカの軍事活動自衛隊が公然と参加できる道を切り開くものであります。  最後に、憲法を幾重にもじゅうりんする本法案は廃止し、国際紛争の解決を武力によるのではなく、平和的手段による真の国際貢献の道を確立すべきことを強く求めて、反対の討論を終わります。
  200. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  202. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十三分散会