運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-05-14 第142回国会 参議院 外交・防衛委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十四日(木曜日)    正午開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      野間  赳君     上杉 光弘君      戸田 邦司君     田村 秀昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 須藤良太郎君                 武見 敬三君                 吉田 之久君                 高野 博師君     委 員                 岩崎 純三君                 塩崎 恭久君                 鈴木 正孝君                 宮澤  弘君                 齋藤  勁君                 竹村 泰子君                 田  英夫君                 立木  洋君                 田村 秀昭君                 佐藤 道夫君    国務大臣        外 務 大 臣  小渕 恵三君    政府委員        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  阿部 信泰君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省条約局長  竹内 行夫君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外交防衛等に関する調査  (インド地下核実験に関する件)     —————————————
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、野間赳君及び戸田邦司君が委員を辞任され、その補欠として上杉光弘君及び田村秀昭君が選任されました。     —————————————
  3. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 外交防衛等に関する調査を議題といたします。  インド地下核実験について、政府から報告を聴取いたします。小渕外務大臣
  4. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昨日、インドが再度地下核実験を実施いたしました。インドが、去る十一日の核実験に対する我が国国際社会の強い非難と申し入れにもかかわらず、再び実験を繰り返したことはまことに遺憾であります。これを受けまして、昨夜、私は直ちにシン在京インド大使を招致し、強く抗議いたしました。  昨日、政府は、インド核実験に対する我が国措置を明らかにいたしました。これは、一、新規の無償資金協力原則停止、二、六月三十日、七月一日に予定していた対インド支援国会合東京開催招致の見合わせ、三、大量破壊兵器関連品目等の輸出の厳格な審査の堅持のほか、対インド円借款については、今後のインド側対応を見て我が国具体的方針を決定するとするものであります。しかし、新たな事態にかんがみ、さらなる措置をとらざるを得ないとの状況に立ち至っていると考えます。  また、我が国は、インド核実験地域緊張を高めるものであることを憂慮しており、十二日、外務省阿部軍備管理科学審議官在京パキスタン臨時代理大使を招致し、軍事政策における慎重な対応を求めました。  政府としては、昨日採択された参議院の「インド地下核実験に抗議する決議」の趣旨を体し、インド核実験及び核兵器開発停止のため全力を尽くし、さらには核兵器のない世界を目指し、積極的役割を果たしていく考えでございます。
  5. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 武見敬三

    武見敬三君 今回のインドの再度にわたる地下核実験というものは、言うなればNPTCTBT体制という核の拡散を阻止しようとするこうした国際社会体制というものが厳しく挑戦を受けたということを意味しているように思います。  特に、核兵器を保有していた国が実験をするということではなくて、全く新しく核を保有する意思と、そのための行動インドによってとられたということは極めて深刻であります。  そこで、我が国としてさらなる制裁措置等検討するということでございますが、外務大臣、この中には例えばインドにおります日本大使召還をも含むのでありましょうか。そしてさらには、円借款本体内容にまで、一体どこまで踏み込んだそうした制裁措置検討されるのでありましょうか。その考え方をお聞かせいただければと思います。  また、この根源には、地域パキスタンインド対立がございます。したがって、この地域対立というものを解消し、そしてその緊張を緩和し信頼を醸成するための地域のスキームを国際社会が協力してつくり上げる必要性があると思います。バーミンガムサミットなどでもそうした議論がされるものと思われますが、こうした点についてのお考えもお聞かせいただければと思います。
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大使召還ということは、二国間関係において、時に過去それぞれの諸国でとられたという一つの手法であろうかと思います。でありますが、現時点におきましては、我が国平林大使が先般赴任しておりまして、むしろインド側の諸般の情勢というものを十分掌握し、かつ我が国立場インド政府に直接的にお伝えし、活動いたしておるというところでございますので、現時点においては外交的手段としてそのような形をとることは考えておりません。  それから、こうした核実験インドによって行われたというその背景は、今御指摘のように、近隣諸国との関係において、インド側論理からいえば、みずからの国の安全保障という立場においてこれを実行したということのようであります。  いずれにいたしましても、近隣諸国との関係において、こうしたことによってますます他国の対抗手段を誘発するというようなことがあってはいけませんので、こうした意味両国に対しましても十分自制を求め、そしてその地域が安定し平和になるべく、我が国としていかなる方法がとれるかということを十分検討努力をいたしていきたいと思っております。  サミットでございますけれども、今夕、総理英国バーミンガムに出発をいたします。政府部内の検討を今最終的にいたしておるところでございますけれども、これは首脳会談において我が国総理がどのようにお運びになるかでございますけれども、議長国に対しましても、今回の問題は特に我が国にとりましては極めて重要な課題であるということで、高い立場で十分御論議をいただいてしかるべき措置をしていただきたい、外務大臣としてはそう考えております。
  8. 武見敬三

    武見敬三君 ありがとうございました。  終わります。
  9. 竹村泰子

    竹村泰子君 ジュネーブで開かれていたNPT検討会議準備会議の終了直後にインドは第一回目の核実験を二十四年ぶりに行い、世界が驚いてショックを受けている間にまたまた二回目の核実験をやったということで、これはひとりインドのことではなくて、もちろんアジアのことでもあり、世界じゅう新聞核軍縮暗殺行為であるというふうに書いておりまして、外務大臣総理が素早く今回の制裁措置に至る表明をなさったことは大変評価したいというふうに思います。  しかし、昨年の国連総会へ再び提出されていたいわゆるマレーシア決議案、つまり核兵器違法性各国政府による核兵器廃絶のための条約交渉の義務を述べた国際司法裁判所の勧告意見を踏まえて核兵器禁止条約NWCと訳されておりますが、この九八年度中の交渉開始を求める決議案が昨年の十月三十一日、国連に提出されております。十一月の国連総会第一委員会投票我が国は相変わらず棄権投票を行っているんですね。そして、十二月九日の国連総会でも棄権に回っております。  時間がありませんので、いろいろなことを申し上げたいと思うんですが、一度にまとめて質問させていただきます。  日本態度というのは、事あるごとに政府関係者はいつも唯一被爆国というふうにおっしゃるわけですけれども、被爆者は今や世界じゅうにもう労働者、兵士も含めてたくさんおります。ですから、世界で初めての被爆国と私どもは言っておりますけれども、事あるごとにそうおっしゃる割には国連の中での決議、これはアメリカ姿勢を見てされるせいかもしれませんけれども、九〇年の第四十五回総会においてオーストラリアとニュージーランドが賛成し、かつ日本反対または棄権した軍縮関係決議というものがございます。すべての核実験の中止、二国間核軍縮交渉放射性廃棄物投棄禁止、これは棄権棄権棄権。まだたくさんあるんですけれども棄権棄権核軍備凍結反対インド洋平和地帯反対ということです。  それから、OECD諸国、イスラエル、中国、ロシアの核軍備凍結決議に対する投票、これも日本は、八二年から九二年までのデータがここにあるんですが、ちょっと古くて申しわけありませんけれども、全部ペケであります。  こういう世界核軍縮あるいは核廃絶流れというか、NPTCTBTにはさまざまな核保有国のみの、あと核兵器を持たせないというふうなことで問題があるにせよ、このNWC交渉開始を求める決議案、あるいはこういったこれまでの経過でずっと棄権反対をしてきていて、私は今度のインド核実験に強く抗議するという態度姿勢は大変結構だと思いますけれども、改めて我が国核政策、とりわけNWCなどの決議に対する姿勢についてお伺いしたいと思います。
  10. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、まず唯一被爆国ということについてお教えをちょうだいいたしました。  私自身は、広島、長崎の核兵器武器として使われたという意味唯一被爆国という認識でございましたが、あるいは直接武器ではありませんけれども、核実験を行うことによって被爆された多くの被害者がいるという意味でいえばカザフスタンやその他にたくさんおられまして、そういうことの意味があるのかなということで、改めて教えていただいたようなわけでございます。  いずれにいたしましても、核の惨禍が繰り返されてはならないと考えておることは事実でありまして、核兵器のない世界を目指し、現実的な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であることは申すまでもないことだと思っております。  そこで、今御指摘のように、国連総会で採択されました核兵器使用等違法性に関するICJ勧告意見等決議、あるいは先ほどNWCお話もございましたが、我が国のこうしたものに対する対応について、棄権という対応がとられてきたという御指摘をいただいております。  この勧告等につきましては、期限つき核兵器全面禁止条約の最終的に目指すものであることは承知をいたしておりますが、我が国は、本決議案にある核兵器全面禁止条約に向けての交渉より、まずCTBTに続く現実的、具体的かつ着実な軍縮措置であるカットオフ条約交渉を早期に開始することが軍縮の促進に資すると考え、同決議に実は従来棄権してきたところでございます。  ただ従来、こうした政府あるいは外務省基本的考え方でございますけれども、もとに戻れば唯一被爆国ということでございますので、こうした点につきましては、日本政府としては常に現実的にそして実行可能というところに焦点を合わせてまいりました。  そういった点で究極のというところに関しては、現実問題としてはなかなか困難性があるという意味で、非常にまじめな意味でそういう評価の中で今までこうしたものに対する対応をとってきたのだろうとは思います。思いますが、しばしばこの点についての御指摘も実はちょうだいをいたしておるわけでございますので、いま一度とういうところにそもそもの原因があるか、あるいは諸外国との関係というのを全く無視することもできないだろうと思います。  そういった意味で、私自身その対応についてはさらにひとつ勉強させていただきたい、こういうことで御答弁にかえさせていただければありがたいと思います。
  11. 竹村泰子

    竹村泰子君 ありがとうございました。  一言だけ、時間が参りましたので。  アメリカ核強大国でありますから、アメリカ姿勢を見習うことは何もないのでありまして、日米関係がそういうことでそごを来すというふうなことは私はないと思います。今の外務大臣のお言葉を率直に受けとめまして、日本世界で初めての被爆国であるにもかかわらず、何だ、この姿勢はと世界は見ているわけですから、ぜひお考えいただきたいと強く要望しておきます。  終わります。
  12. 高野博師

    高野博師君 私、前回の委員会でもこの問題を取り上げましたので繰り返しませんが、二回目のインド実験核廃絶に向けての国際社会努力に対する挑戦だと、大変残念、遺憾だと思います。特にインド日本とは非常な友好関係にある、親日国であるということを考えますとなおさらであります。  そこで、制裁措置は当然私は必要だと思います。ただ、この制裁措置インド国民を苦しめない、政府政策変更を求めるという視点が重要ではないか。そこで、条件つきの、例えばCTBTあるいはNPTに加盟するまで円借款あるいは無償援助凍結をするというようなことはできないものかどうか、そこも検討していただきたい。  それから、この問題については本質的な問題があるので、今の国際社会は、大国核保有は容認している、しかし後発国核開発は許さないという基本的な体制になっているところに問題があるので、そういう意味からコンピューターシミュレーションとか未臨界核実験、これが許されているために駆け込み的な実験をしていると。これはフランスの前例もありますし、これからパキスタンがどういうようなことをやるかしれませんが、この点については今いかなる国のいかなる形でも核開発につながる行為は許さない、禁止するという方向に持っていかないと、まだまだ同じような例が起こるのではないかと私は思うのでありますが、この辺についての大臣の御意見を伺います。
  13. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今回のインド地下核実験に対して我が国政府としての効果ある対抗措置ということでございますが、それは最終的なものを今検討いたしておりますけれども、昨日の段階でも再度シン大使に対して我が国のとってまいります対応につきまして申し上げたところでございます。つきましては、インドに対しましての核開発即時停止NPT及びCTBTの加入を従来からも強く求めてきておるところでございますが、これはこれとして強くインド政府申し入れをいたしておるところでございます。  しかし、我が国としてはとるべき効果的な手段ということで考えておりますこと、このことを申し上げておるところでございます。この段階条件つきということにはならないかとは思いますけれども、しかしインドがそうした形で国際条約を十分受けとめるということでありますれば、我が方としての対抗手段がその段階でまたどうあるべきかということは今後の問題であろうというふうに考えております。
  14. 高野博師

    高野博師君 もう一点だけ。  ODAに関して、インドに対するこういう制裁措置をとるということはありますが、パキスタンあるいはパキスタン大量破壊兵器等を輸出している中国動向も含めて、このアジア地域での大量破壊兵器動向ODA原則に照らして注視していくということが必要だと思うのであります。特にパキスタンの今後の動向は非常に注目すべきであるので、その点については日本政府は毅然とした態度を示しておく必要があるのではないかと思います。この点について一言お伺いします。
  15. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど申し上げましたように、インド側論理でいえば、近隣諸国の種々の安全保障に対する危惧に対しての対抗手段だ、こう言っておられますが、その事実関係すべてを掌握しているわけではありませんけれども、近隣諸国がいろいろな形で核の問題も含めまして開発等に進んでいるのではないかということが考えられるわけでございます。  そういった意味で、今回のインド核実験が即また隣国対抗的手段を誘発するというようなことがあってはならぬ、こういうことは事実でございます。そういった意味両国に対して改めて自制を求めると同時に、隣国たるパキスタン行動に対しましても我が国として十分注目をしておるということを申し上げて、冷静な対応をしていただく努力はいたしてまいりたいと思っております。
  16. 高野博師

    高野博師君 終わります。
  17. 田英夫

    田英夫君 今回のインド核実験というのは、核保有国が六つになりそうだというような問題ではなくて、人類の生存、平和の問題に直接かかわるという極めて重大な問題だと私は思っています。こういう状態の中で、核をなくしていく、核廃絶ということの戦略日本政府考え直されるべきではないかという気がしております。  といいますのは、今世界核軍縮あるいは核廃絶流れ二つの大きな流れがあると思うんです。一つは、これはまさにインドCTBT交渉のときに提案をした、期限を切って現在持っている五つの国も含めて核をなくすという提案。もう一つ流れは、段階的に、つまりNPTからCTBT、次はカットオフ条約というような形で国際的な条約を積み上げていく形で核をなくす。一方で、主として核保有国は全くなしに、中南米から始まった非核地帯という考え方を広げていく、これは南半球は全部非核地帯になったわけですから、そういう形で段階的に詰めていこうという考え方、この二つがあると思うんですけれども、日本政府は従来その段階的という世界の大勢の中で、この方が多いわけですが、それに加わっていたと思います。  しかし、今回のこのCTBTを無視するような、インドは入っていなかったわけですから、ということからすると、この段階的という考え方は崩壊しつつあるのじゃないかなと言わざるを得ないと思います。  それから、カットオフ条約というのは次の予定になっているわけですが、これは実はお答えを求めていましたけれども私の方から申し上げてしまいます。日本核燃料サイクル政策もこれに直接かかわってくる、日本核燃料サイクル政策は引っかかるおそれがありますから、それを何とか切り抜けようとしますと、CTBTしり抜けになっていると同じように、日本みずからの手でカットオフ条約しり抜けにしてしまうおそれがあるのじゃないかということを心配します。  ですから、そういうことを全部を考えますと、ちょうど小渕外務大臣が外相になられてすぐに大変いいことをされた一つと言われている地雷禁止条約のときに、カナダが中心になってオタワ・プロセスという提案があって、これに最終的には日本は加わって禁止条約ができた。しかし、なおかつ中国など入っていないところがあるという形ですけれども、期限を切ってやっちゃったと。そういう意味では、実は期限を切って核廃絶を求めるというのは一つ方法ではないかと。  主として学者あるいは研究家市民運動、そういう中から出てきている考え方ですが、ひとつこの核廃絶戦略考え直すという提案についてどうお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 極めて重大かつ大きな問題でございまして、正直申し上げて、今私ここで、我が国の核に対する対応、すなわち核戦略といいますかそういうものについての確たるお答えができないことをお許し願いたいと思いますが、田先生のおっしゃっておられるようなお話そのものは理解できるつもりであります。  ただ従来、日本としては、世界の中の国家としては唯一被爆国であることと、また国是に近い考え方として非核原則を持っているという中で、国際社会の中で独自な態度をとってきた。それを評価していただく国際世論をつくり上げていかなければならないという意味では当然のことだろうと思いますが、現実には既に核クラブと称する核保有国があり、かつまた今日インドがこうした形になってきておるという中で、その理想といいますか、究極的な廃絶に向かっての考え方を実行していくということには大変困難な道があろうかと思います。  しかし、こうした新しく核実験を行う国が出てくるというような事態の中で、いま一度世界における核のあり方について真剣に問いただす機会だという点では、そういう認識をいたしておりますので、これまたさらに勉強を深めさせていただければありがたいと思います。
  19. 田英夫

    田英夫君 終わります。
  20. 立木洋

    立木洋君 大臣、私も共通した問題なんですけれども、インド核実験を行ったということについては、どういう理由であろうとこれは断じて許すことができない重大な問題だと思うんです。  これは核兵器の導入の選択肢、この実現の目的を持ってやったということですね。だから、今問題にされたように、核保有国一つふえるかどうかの問題ではなくて、これは世界の平和と安全にとっての極めて重大な挑戦であって、これからの核軍縮がどうあるべきかという根本問題が問われなければならない状態にあるだろうと思うんです。  振り返ってみますと、フランス核実験をしたときには、我々はCTBTに署名できるような条件を獲得するために今実験をやっているんだ、だから実験が終われば署名できるんだから理解してほしいといってやりました。今度インドが、実験が終わったといってCTBTに署名して、それで問題の解決になるんだろうか、私は甚だ疑問だと思うんです。  そういうふうな問題もありますし、結局考えてみるならば、先般これを長々と議論したときに申し上げたわけですが、NPTにいたしましてもCTBTにしても差別条約的な内容というのがあるわけですから、こういうふうな状況では本当の意味での核軍縮、平和の道を切り開いていくということにはなり得ない問題点があるんだということは厳しく見る必要があるのではないかというふうに思うんです。  パキスタン自身も、核実験を行う用意が既にできている、あとはただ命令を待つだけだということさえ新聞で報道されているというふうな状況になりますと、結局は非核保有国核保有国になって、特権的な地位を持つということによって問題の解決を図ろうとするようなインド態度というのはまさに容認することのできない、逆流なんですね。そういうふうな形で問題が一時的に静まったからといって問題の本質的な解決にはならないのだと。だから、そういう意味では新しい核軍拡危険性可能性さえはらんでいるという重大な問題だと思うんです。  そういう意味で、先ほど来同僚議員等も何回か指摘されておりますけれども、やっぱり速やかに核兵器の全面的な禁止国際条約が締結されていくためにどうすることが今最も重要かという問題を改めて真剣にお考えいただきたい。そういう方向努力する道を切り開いていく、そういうことを考えることが今最も重要ではないだろうかというふうに考えるわけです。  その点について、同僚議員と同じような質問になりますけれども、質問一つしかできませんから、たくさんできるといろいろお聞きしたいんですが、その基本的な問題だけ大臣のお考えを重ねてお聞かせいただければ幸いだと思います。
  21. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 前に御答弁申し上げましたが、究極は核の全面廃絶を目指して努力をいたしていくことは至極当然であります。また、先ほども御答弁申し上げましたように、こうした新しい核実験を行う国が出てきたというような時点に際して、改めて我が国の核に対する対応について真剣に対処することは当然だろうと思っております。  ただ、現実の問題といたしましては、今日このNPTとかあるいはCTBT問題等がございまして、こうした条約にすべて参加していただくことによりまして新たなる核保有国が生まれないように、そしてそのために我が国としては、そうした危惧をされる国々に対しましても積極的な働きかけをして将来に向かっての道を開いていく、これが必要なことではないかというふうに認識をいたしております。
  22. 田村秀昭

    田村秀昭君 核兵器廃絶が人類の悲願であって、今日インド地下核実験を強行したことは極めて遺憾であり、小渕外務大臣が駐日インド大使に抗議文を手交したことは当然と考えておりますが、この前は中国フランス核実験を行い、いつも抗議をしているにもかかわらず核実験が行われているというのに非常に私はむなしさを感ずるわけであります。  今回、日本政府インド核実験に関する情報収集能力が非常に低いんじゃないかと私は思うわけです。十一日の核実験に対する我が国の非難と措置申し入れられたにもかかわらず、また二回目をやっている。それで、そういうことを知っている人というのはもうほんのわずかしかいない。そういう状況の中で質問をさせていただきます。  まず、今回のインド地下核実験に対する情報収集能力というのは、外務省は高かったのか低かったのかというのが一点。それからもう一つは、なぜこれだけの国際社会の非難を受けても、インドが断固として地下核実験を強行したのはどうしてなのかというふうにお考えなのか。これは外務大臣の私見で結構でございますので、なぜそういうことをやるのか、その状況なりをどういうふうに認識しておられるか、お伺いいたします。
  23. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 最初のお尋ねのこの実験の有無についての情報ですが、正直申し上げて掌握しておったわけではありませんで、第一回目の実験もそうでありますが、第二回目のときもインドからの通報はありませんし、また米国を含めた各国とも事前に本件を察知していなかったと承知をいたしております。  報道の伝えるところによれば、もっとも米国の情報機関も把握していなかったのではないかというような報道もございました。また、インド政府部内におきましても、これを承知しておったのはほんの一握りの閣僚であったというような報道もされておることにかんがみまして、正直申し上げて、核実験が行われる事前の具体的な情報というのは掌握していなかったことは事実でございます。  ただ、申し上げましたように、インド並びに近隣諸国との関係において、特にパキスタンにおいて核弾頭積載可能のロケット実験が行われたというような事実関係を既に承知いたしておりまして、その近隣の状況というのが極めて厳しいし、かつ核開発について両国とも進めておったのではないかという予兆といいますか、そういうものは感ぜられておったわけでございます。そういった意味で、橋本総理も三月三十一日にあえて親書をインド政府に送って、自制を求める努力をしておったという意味ではそうした動きは承知しておりましたが、いつ、どういう形で行われるということについては正直承知しておらなかったというのが事実だろうと思います。  インドがこの実験を行った趣旨ということでございますが、これは第一回目が行われた後、私が火曜日の早朝、インド大使を招致してお話をお聞きした折、我が国総理に対してレターをちょうだいいたしております。その会談の折、インド政府考え方としては、北並びに西における隣国に対してインド自身安全保障上の問題として危惧しており、そういった意味で国の安全保障立場からこれを実行せざるを得なかったことを理解していただきたいというお話がございましたので、そうした考え方においてインドとしては実験を挙行したということである、そういうふうに考えております。
  24. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 今の田村議員の質問とも関連いたすわけでありますけれども、今回の実験につきまして、インド政府安全保障必要であるということを言っておりますし、インド駐日大使の、インドを取り巻く安全保障状況が著しく悪化しているというふうな何か新聞談話が出ておりました。  インド大使を招致いたしましていろんなことを聞いたというわけでありますけれども、安全保障必要だと抽象的に言われましても、これはなかなか我々合理的に納得するわけにはいかぬわけです。そういう非公式な会談で、一体パキスタンのどこをそんなに恐れているのか、中国のどういう態度インド安全保障に重要な影響を及ぼしているのか、そういう突っ込んだ議論がなされておるはずです。  インド側としてもただ抽象的に危険だ危険だと、こう言ったのでは子供の説明にもならないわけですから、日本国の外務大臣に対してきちっとわかりやすい説明をしているはずだと思うので、一体パキスタンのどこが危険なのか、中国のどこが危険なのか、外務大臣としてどういうふうに理解されたのか、そこを説明していただければと思います。  それからもう一つ、これは私の考えなんですけれども、こういうふうな国際的な非難を覚悟の上で実験に踏み切った、これは対外的なデモンストレーションではなくて、むしろ国内向けのデモンストレーションではないかと。現政権はこれだけ威信を持ってやっているんだと。何かインド国内では大変歓迎されておるというふうな報道もなされておりますから、国内向けの一種の世論操作ではないかという気もしてくるわけであります。  最後に、犯罪を防止するには犯罪がもうからない商売だということを強く思い知らせる、これが何よりの犯罪抑止策だと、こう言われておるものですから、インドが犯罪を犯したかどうか知りませんけれども、あえてこういうことをやった以上は、これは絶対にもうからないぞということを、強い規制措置を示して、制裁措置を示して思い知らせるしかないんだろうと思うんです。その辺も含めまして、外務大臣の御所見を承ればと、こう思います。
  25. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 第一点につきましては、先ほどちょっと御答弁申し上げましたが、インド側はそういう説明をしておった、しかし、それについて日本側がそれを全面的に理解したということではないということは申し上げておるところでございます。  それから、こうした実験を通じて国際世論の反撃を受けて、それこそ国によりましては経済制裁も強く行われるということは、基本的にはインドにとってこれはまことに不利な状況が現出するわけでございます。そういった意味では、俗に言えば割の合わないことをこうして行うことは、インドにとりましても好ましいことでないということを十分日本として御説明もし、理解をしていただくよう努力していく、こういうことだろうと思います。
  26. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十二分散会