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オーストラリア国外務大臣(
アレクサンダー・
ダウナー君) (
通訳) まず
冒頭に、
委員長及び
委員会の
皆様方にこのような
機会を与えてくださったことに対し深く御礼申し上げたいというふうに思っております。また、
参議院の
皆様方、このような
外交・
防衛委員会をお
つくりになったということをとてもうれしく思っております。
オーストラリアにおいてももちろん
上院というのがございまして、
日本の
参議院に当たると思うんですけれども、我々のところにも同じような
外交・
防衛委員会ができております。このような
委員会をお
つくりになったことをお祝い申し上げたいと思いますし、行
政府の
仕事ぶりについて
上院議員としても注視しているところであります。
さて、
日豪関係というのは最も重要な二
国間関係の一つであるというふうに思っておりまして、何が一番大事かと言いますと対
日関係だというふうに思っているわけであります。もちろん
豪米関係というのも重要であり、中国、インドネシアとの
関係も同じように
重要視はしております。
また、
日豪はそれぞれたくさんの
共通点を持っていると思います。歴史ですとか伝統の面では変わっている点もあると思いますけれども、
民主主義的な国家であって
議会制度を標榜しているところであります。こちらの
国会にお邪魔しても国にいるようなイメージがあります。非常に似ております。
議会を
ベースにした
民主主義ということでやっているからであります。私は
外務大臣でありまして
議員でありますけれども、
小渕外務大臣ももちろん
国会議員であられるということで、非常に深いきずながあるというふうに思っております。
そして、非常に二国間の理解が樹立できているというふうに思います。
制度について、またそれぞれ
市場ベースの
経済であったということで経験も豊かであるわけです、
日豪両方とも。ですから、近代的な自由化されたマーケットがどのように機能するのか、そして民主的な
政治機構についても、十分その機能の仕方についてはよくわかっているわけであります。しかし、
アジア太平洋地域のその他の国はそこまでは行っていないということも言えるかもしれません。我々
同士は、似た
経済及び
政治の体制を持っているということであり、
開発の度合いということにおいても
共通点が多いというふうに思っております。
これ以外にもたくさん共
摘要因があります。違いを重視するよりは、
日豪間でいかに
類似性が多いかということに注目すべきであるというふうに思います。
外交問題についてもそうであるというふうに思います。
アジア太平洋地域において
日豪がそれぞれ非常に似通った
立場を
かなりの点についてとっているわけでありまして、こちら側の
太平洋諸国のことを見ますと、どうしても
日豪間の見解の似通った性格というのが強いというふうに思っております。だからこそ、私は対
日関係を大切にしているわけであります。
また、現実的な観点からもいろいろな側面を二
国間関係は持っております。例えば、
日本は
オーストラリアにとって最大の
輸出市場である、
オーストラリアは
日本にとって第四番目、第五番目からの
輸入国ということになっているわけであります。もちろん大きな
貿易黒字を
日本は持っておりますが、
貿易赤字が多いから
日本に対して文句を言うといったような
立場には全然ないわけです。
また、
かなりの
日本の
投資が
オーストラリアに来ておりまして、こういった直接
投資というのはバランス上非常にいいというふうに思っております。
日本から
投資なさっておられる
企業は大いに裨益しておられるところだというふうに思います。というのは、
日本からの
投資で大いに助かっておりまして、雇用が創出され、そのおかげで
生活水準を維持し改善することもできているからです。
最初に申し上げましたように、
オーストラリアと
日本というのは非常に似通った点が多い
国同士であります。
さて、これを申し上げた上で、本日は特に集中的に
二つの話題に絞って
アジア太平洋地域の問題を考えてみたいというふうに思っております。
第一番目は
安全保障環境、第二番目は
経済環境ということであります。そして、この
二つのことについてお話し申し上げるということで、
日豪がいかに
意見が似通っているかということがまたわかってくるというふうに思います。
まず、
安全保障環境についてでありますけれども、
アジア太平洋地域においては、御存じのように、この
地域というのは必ずしも簡単な
関係を持ってきたところではございませんでした。ぎくしゃくしていたんですけれども、冷戦が終わったということで大きなチャンスが開けてきたということで、平和と安定を力強いものにするチャンスを与えられたわけであります。このチャンスを使わない手はありません。このチャンスを逸してしまえば、最終的にはそのチャンスをものにすることなく時代が通り過ぎてしまうということになるからです。
この
安全保障については引火点ということで結構きな臭いところがあります。北朝鮮との
関係ですとか中国、また台湾の扱いといったようなことについては紛争点になるかもしれないということ、南シナ海をめぐっても問題があるということで、三つの領域はすぐ紛争が起こるかもしれない
地域ということで
アジア太平洋で挙げることができるぐらいであります。何か事が起こってしまえばエスカレートしてしまうという危険をはらんでいるわけです。
日豪関係の現状なんですけれども、アメリカの関与が当該
地域において
安全保障では欠かせないというふうに思っております。基本だというふうに思っております。例えば、アメリカをこの
地域から排除してしまえば全く違った形での
安全保障のダイナミズムが働いてしまう、ダイナミックな力学が働いてしまうということで危険になってしまうというふうに思います。
日本はアメリカの同盟国であられる。同様に
オーストラリアもアメリカの同盟国であるということで、こういった取り決めを通しまして
日本は北に
オーストラリアは南に控えているということであります。この
地域にはもちろん韓国もあるわけで、韓国もアメリカと同盟を結んでいるという
関係になっているわけです。このような同盟
関係があるからこそ、アメリカの
安全保障における役割が確固たるものに当該
地域でなっているということであります。
同盟
関係につきましては、もちろん
日本でも問題視されるときもある。また、
オーストラリアの中でも何でアメリカと同盟
関係を結ぶのかと批判めいたことを言う人はいるんですけれども、それでも国民の大半は単純な点をちゃんと理解してくれています。アメリカをこの
地域から排除することはできない、なぜならそんなことをしてしまえば
安全保障環境はもっと危険な状態になってしまうということは国民の大半がわかっていることであります。
また、
日豪それぞれが意を尽くしまして当該
地域の
安全保障を構築しようとしております。そして、目指すは
協力的な
安全保障体制ということであります。それぞれASEANリージョナル・フォーラム、ARFのメンバーになっているわけで、毎年一回外相
会議も開かれております。それからまた、セッション間の会合ということで年次会合の途中にも会合を開くということになっておりまして、非常に歯にきぬ着せぬ形で
安全保障問題について
意見交換が忌憚のない形で行われております。
まだ四回しか
会議は開かれておりません。ことしの
会議は七月に開かれる。これが第五回目のARFの会合ということになるんですけれども、これは非常に重要なイベントであるというふうに思っております。こういったところを通して
アジア太平洋地域の
安全保障を構築することができるからです。
また、
オーストラリア、
日本両方について言えることなんですけれども、対話のネットワークということでいろんな
安全保障についての討議のネットワークをつくろうというふうにしております。例えば、防衛庁の人たちも含めて
日本と
オーストラリアとの間で会合を持ちまして、域内
安全保障について話すという機構を持っておりますし、同様に中国ともそのような
機会を持っております。また、インドネシアは近隣諸国なんですけれども、こういったところと話すということになっております。
以上が
安全保障
関係ということなんですけれども、非常に緊密な形で
日豪間では
協力が
安全保障の面で進んでおります。
それでは、
経済関係についてなんでありますけれども、既に申し上げましたように、
日豪両方とも市場を
ベースとした
経済国である、工業先進国であるということ、そして域内
経済の発展はこうあるべきだということについては似通った見解を持っているというふうに思います。だからこそ今まで緊密に
協力し合ってまいりました。そして、全体的な
アジア経済の危機が今回もたらした影響についても対処しようとしてきたわけであります。もちろん深刻な問題でありまして、現在我々も検討しているところであります。というのは、すべての
オーストラリアの輸出の六一%は東
アジアに出ているということであり、また七五%はAPEC諸国向けといったような形になっておりますので、当然のことながら我々は
アジアの危機については頭を痛めているわけであり、国益も絡んでいるということで心配しているところであります。
特に、韓国の問題ということでありますけれども、これは我々にとって第二に大きい
輸出市場であり、またタイもインドネシアも
我が国にとって同様に重要であります。
日豪はそれぞれいろんな点について合意をしています。例えば、第一にIMFのパッケージとリストラの方策ということが不可欠要因になっておりますけれども、これを実行するということがこの三カ国がこれから立ち直っていく上で前提条件になるということであります。
構造的な問題を抱えているわけですから、それを解決するためには
かなりの程度
経済のリストラをやっていかなくてはいけないということ、そのためにはIMFのプログラムを実行しなくてはいけないということです。
日本と
オーストラリアというのは、唯一世界で東
アジアの三つのIMFのプログラムをサポートしている国であります。これは非常にいいことだというふうに思っており、
日豪関係の緊密さを示すものであるというふうに思っております。
さて、インドネシアとIMFの
関係なんですけれども、我々が予想したようには展開しなかったということは言えます。この数週間に橋本総理もインドネシアにいらっしゃった、ジャカルタにいらしてスハルト大統領とお話をなさったところであります。私自身はワシントンに参りましてカムドシュIMF専務
理事ともお話をしてまいりました。また、ウォルフェンソン世銀総裁とも話をしてきたわけであります。もちろんアメリカの方たちともいろいろお会いしてまいりました。
ですから、
日豪はそれぞれ勤勉に働いてきたわけでありまして、IMFとインドネシアがうまくいくようにということで心を砕いてきたわけであります。もしインドネシアとIMFとの結婚ということがうまくいかなければ、もちろん非常に深刻な打撃がインドネシア
経済に及んでしまうということになり、これが伝染効果を必ずやその他の国にももたらしてしまうということでありますので、だからこそ
日本と
オーストラリアは非常に心配をしているわけです。
日本の場合ですけれども、邦銀は
かなりの貸し付けをインドネシアになさっておられるということであります。また、
オーストラリアの銀行はそれほどインドネシアに対してのエクスポージャーは多くないんですけれども、一番の近隣諸国はインドネシアでありますので、我々としてもぜひインドネシアが繁栄を維持し安定してほしいというふうに思っております。そして、不安定が広がってしまうといったようなことがインドネシアで起これば、結局我々にとってもマイナスの影響が出てしまうということは否めません。
ということで、以上ざっと御説明申し上げましたけれども、
日本と
オーストラリアというのは、非常に同じような考え方を持った共
摘要因の多い二国であるということを御説明したつもりであります。これからも緊密に
協力をし合いまして、さらにより繁栄をきわめるような
地域にしていきたい、そのために貿易をもっと自由化していきたいというふうに思っております。
日本と
オーストラリアはAPECの創設国でもあるわけでおります。このAPECの
関係を通しても緊密に
協力し合いましてボゴール宣言がちゃんと実現できるように、先進国にとっては二〇一〇年までには自由化する、そして二〇二〇年までには途上国を対象にしても自由化するということを目指して今鋭意努力しているわけであります。APECを通して貿易をさらに円滑化、自由化したいと思っております。
もちろん、今は
アジアにとっては困難な時期に当たっておりますけれども、貿易の自由化というのは手を緩めてはいけないというふうに思っております。もし自由化が進まないということになると域内
経済、グローバル
経済は大いに打撃を受けてしまうということでありますので、
アジアの
経済危機に対応するためには保護主義ではいけないということです。みずからを孤立させて閉鎖してしまってはマイナスの影響がグローバル
経済に出るだけであります。
日本と
オーストラリアはこの点を十分踏まえております。だからこそ緊密に
協力し合って、APECのようなところを
促進しているところであります。
かなり一方的にしゃべってしまいましたので、もう一度戻りますけれども、
参議院の
皆様方、この
委員会の方々に申し上げたいんですけれども、こういった
外交的な問題、
経済的な問題についてこれから
意見交換することを楽しみにしております。
また、考えてみますと、どちらかというと昔は
オーストラリアというのはヨーロッパの出先のような形態を持っていたわけでありますけれども、もうこの数十年歴史的な転換を誇ってきたわけであります。本当の意味で多文化、多元社会をつくっておりまして、百三十カ国からの出身の人たちが
オーストラリア国民になっておられる。宗教も違う、人種も違う、文化も違う。しかし、出身は違うけれども非常に調和して、みんな幸せに
オーストラリアで暮らしております。非常に誇りに思っております。
それから、もう一つ大きく変わったことは、
アジア太平洋地域全体が変わったということで、
オーストラリアは今やこの域内に対して、国際
経済政策、
外交政策の中で
アジア太平洋を一番
重要視するようになってきているわけです。
オーストラリアも確固たる統合を
アジア地域にしているということで、とてもうれしく思っております。そして、
アジア太平洋地域に菊いて、いいときも悪いときもずっと統合した形でいきたいというふうに思っています。今は悪いときと言えましょう、景気も悪いですけれども、それでも
アジア太平洋の一員としてこれからもやっていきたいというふうに思っております。
お時間をいただいてどうもありがとうございました。このように現役の外国の
議員がこの席にお邪魔して
意見を申し上げさせていただくのは初めてと伺っております。もちろんジミー・カーター氏も先日お邪魔したようでありますけれども、もう現職の
政治家ではあられませんので、現職ということでは私が初めてかもしれませんので光栄に思っております。これからもぜひこれを契機にいたしまして
日豪関係を
促進していきたいと思っております。
以上です。どうもありがとうございました。(拍手)