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板垣正君 そういうことで、今後のこうした大きな
計画、展望ができつつある、具体的な作業も進められつつある。これを文字どおりなし遂げていく。こういう場合に一番大事な問題は、第一には県と国との信頼
関係である、第二番目は
沖縄を含めたこの国の、そしてまたアジア太平洋の平和と安定が守り抜かれる、この二つが極めて重大であると思う。
信頼
関係は、あえて申し上げるまでもないくらい大事なことでございます。橋本総理が復帰二十五周年記念式典で、昨年の十一月二十一日に
沖縄に行かれまして、
沖縄の未来構想を含めた画期的な式辞を述べられたわけでございますが、この中にも、「ここに芽生えた信頼のきずなを、二十一世紀に向けて益々強固なものとしていかなければなりません。」と。さらに、さっき申し上げましたNIRAの
沖縄振興中長期展望についての最終報告の中にも、「政府と県の信頼、協力
関係は
施策を着実に
推進する基盤となる。そうした
関係の維持、確保に向けた努力を強く期待したい」、こう述べておるわけであります。
ただ、率直に言って、本年二月普天間基地問題についてあの大田知事が海上移転についての反対を表明された等々をめぐって、その後急激に
沖縄と政府との、国との信頼
関係が崩れつつあるのではないのか、冷却しつつあるのではないのか、この点を大変憂慮するわけであります。
さらに第二点の平和と安定の問題。これまた申し上げるまでもありませんけれども、まさに廃墟の中からこの国がこれだけの繁栄を遂げ、
沖縄県もいろんな問題は抱えておりまするけれどもさっきも言われたような画期的な繁栄を遂げてきた。復帰後特に目覚ましい生活基盤、社会基盤も確立をしてこられた。この根底にありますものは、平和と安定が図られてきた、日米安保体制のもとに
日本も努力をして平和が守り抜かれてきたということを我々は一番の根本として認めなければならない。平和なくして安定なくして国民の福祉もなければ経済の建設もあり得ないわけであります。
そういう
観点から言いますと、この信頼
関係を確実につくり上げていく、こういう面におきましてはどうしても平和の問題、基地の問題、
沖縄の最大の県民の痛みであるところの基地の重圧、これは橋本総理も、あの方は本当に
沖縄問題は当初から熱心な方でしたけれども、それでも自分はあの
沖縄における基地の痛みということについて、
沖縄の心についてまだ十分
理解が足りなかった、これは国民としても反省することだと、こう言われたと
思います。私自身、
沖縄とのおつき合いは随分長いんです。それで私も、この
沖縄の基地のもとにおける戦前、戦中、戦後の歴史を顧みると、
沖縄の皆さん方の御苦悩、御苦難というものに対する
思いはまだまだ足りなかった、こういう
思いを改めてみずからも反省をする一人であります。
であるがゆえに、まさに平和、安定のもとに信頼
関係を築き上げて、この
沖縄の建設、
本土の建設と相まって進めていかなければならない。こういう点で、基地の問題につきましても、
沖縄のいわゆる国際都市構想ですか、この裏側にいわゆるアクションプログラムというのがありますね。二〇一五年までに
沖縄の基地は全部なくすんだと。これは
沖縄では正式に決定されたとも聞いております。また、私どもも何回か
沖縄の視察に参りますと、そのアクションプログラムの資料をいただいて
説明も承るわけでございます。
ただ、現在の国際情勢、東アジア情勢、朝鮮半島の情勢、あるいは中国、台湾の
関係なり東シナ海の情勢等々、日米安保体制は当面朝鮮半島の平和的な統一あるいは中国の政治的な民主化の
方向づけが少なくとも軌道に乗るような姿にならなければ、やはり安んずるわけにはまいらない。そうなりますと、好むと否にかかわらず、戦略的要衝における
沖縄基地の
役割というものはこの国の平和のためにもアジア太平洋地区の平和のためにも欠くべからざるものである。このことをやっぱり私どもは認識をし、かつ、政府の立場においても痛みに耐えつつある
沖縄の皆さん方に対してもあえてそのことについては明確にしなければならないのではないのか。
そういう中から、しかし政府としては誠心誠意
沖縄の基地の整理、縮小には取り組みますということで普天間基地の返還という、これは本当に日米間におけるトップのまさに想像を絶した政治決断のもとに実現された、約束されたことであります。
しかし、これを一挙にまた別のところに持っていくということは許されない。我々は、国際情勢の認識におきましても、この国の平和を守り抜く上においても、ただ基地は反対だ、なくなればいい、そういう姿勢で情勢に甘えているわけにはいかない。むしろ自分
たちが積極的に平和をつくり上げていく。そういう面における積極的な取り組みという立場からも整理、縮小、あるいは遠い将来における国際情勢の
展開によったら現在の基地体制そのものもいろいろ見直す時期は来るかもしれませんけれども、しかしそれは二〇一五年には来るんです、やるんですと。普天間の構想もその他もそうした前提に立ってやられますと、これはかえって
沖縄県民の皆さんにも非常な不安感をもたらすんじゃないでしょうか。
返還はいいことでありますが、返還となったら、やはりあの土地代で生活を支えておられる地主の方々にとっては極めて深刻な問題であります。だから、軍転法の改正問題も出てくる。あるいは駐留軍に勤めている人々、
沖縄県の調査によりますと、駐留軍に勤めている人々のアンケート調査によりますと八八%の人がこの勤めが一番安定している、これが急に変わって投げ出されたらどうなるかと。これが厳しい雇用情勢のもとにおける現実ですよ。
そうなりますとますます、国際情勢も踏まえながら、なおかつ、あそこで生活を託しているそうした方々が安心して将来の展望というようなものについても着実に進んでいく、そういう生活設計も相伴わないと、ただ希望的な見方によってとにかく基地の問題というものを考えていくと、これは日米
関係におきましても決して好ましいことではない。
こういうこともきっちり踏まえながら、なおかつ誠心誠意、少なくとも今回のSACOの決定につきましては、特に普天間の問題というもの、あの移転を成し遂げ、普天間のあの危険な基地の解放というものを成し遂げてこそ、この
振興開発
計画も都市構想もあるいは
沖縄のもろもろの
計画というものも描かれるわけであります。
これはだから、今は極めて厳しい
状況にありますけれども、何としてもこれを取り上げていかなければならない。
理解です。まさに
相互信頼ですよ、信頼と安定とを守り抜くために。これは
本土も
沖縄もないです、
日本国民として一緒にこの問題について取り組む。同時に、
沖縄の方々の御負担については、これは何もその代償にどうするこうするというよりも、この問題はある
意味では表裏一体ですよ。
こういう立場で近く大田知事も上京されて総理と話をされるということも聞いております。これ以上この信頼
関係が崩れていく、プロジェクトももう半分凍結
状態で動かない、こういうようなことではマイナスばかりであります。そこで、やはり
沖縄の方々の御
理解をいただき、大田知事と総理との話し合いにおきまして何とかこの困難を乗り切る、こういうことにおいて、これはもう内閣を挙げて重大な決意を持って取り組んでいただきたいと
思います。
この問題については、
開発庁長官また
総務庁長官にも閣僚としての御見解を承りたい。