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1998-04-24 第142回国会 衆議院 労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月二十四日(金曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 田中 慶秋君    理事 荒井 広幸君 理事 小林 興起君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 鍵田 節哉君 理事 中桐 伸五君    理事 河上 覃雄君 理事 青山  丘君       甘利  明君    井奥 貞雄君       飯島 忠義君    大村 秀章君       栗原 博久君    白川 勝彦君       棚橋 泰文君    能勢 和子君       藤波 孝生君    山本 幸三君       近藤 昭一君    玉置 一弥君       松本 惟子君    桝屋 敬悟君       岡島 正之君    大森  猛君       金子 満広君    濱田 健一君       坂本 剛二君    土屋 品子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 伊吹 文明君  出席政府委員         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省女性局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業能力         開発局長    山中 秀樹君  委員外出席者         法務省入国管理         局入国在留課長 片山 義隆君         労働委員会専門         員       中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十四日  辞任        補欠選任   保利 耕輔君     栗原 博久君 同日  辞任        補欠選任   栗原 博久君     保利 耕輔君     ――――――――――――― 四月二十四日  労働法制全面改悪反対労働行政充実に関  する請願石井郁子紹介)(第一八三〇号  )  同(大森猛紹介)(第一八三一号)  同(金子満広紹介)(第一八三二号)  同(木島日出夫紹介)(第一八三三号)  同(穀田恵二紹介)(第一八三四号)  同(児玉健次紹介)(第一八三五号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一八三六号)  同(佐々木陸海紹介)(第一八三七号)  同(志位和夫紹介)(第一八三八号)  同(瀬古由起子紹介)(第一八三九号)  同(辻第一君紹介)(第一八四〇号)  同(寺前巖紹介)(第一八四一号)  同(中路雅弘紹介)(第一八四二号)  同(中島武敏紹介)(第一八四三号)  同(中林よし子紹介)(第一八四四号)  同(春名直章紹介)(第一八四五号)  同(東中光雄紹介)(第一八四六号)  同(平賀高成紹介)(第一八四七号)  同(藤木洋子紹介)(第一八四八号)  同(藤田スミ紹介)(第一八四九号)  同(古堅実吉紹介)(第一八五〇号)  同(不破哲三紹介)(第一八五一号)  同(松本善明紹介)(第一八五二号)  同(矢島恒夫紹介)(第一八五三号)  同(山原健二郎紹介)(第一八五四号)  同(吉井英勝紹介)(第一八五五号)  中小企業退職金共済法改悪反対退職金共済  制度の充実に関する請願金子満広紹介)(  第一八五六号)  同(大森猛紹介)(第一九八二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第三三号)      ――――◇―――――
  2. 田中慶秋

    田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中桐伸五君。
  3. 中桐伸五

    中桐委員 民主党中桐です。  労働基準法改正は、五十年目にして大幅な検討が行われるということでありますが、この労働基準法は、いわば職場憲法ともいうべき位置づけになる法律でありますから、極めて重要な法案として私どもも十分これから審議を尽くしたいというふうに思います。  その審議に入る前に、一つ、この間中央労働基準審議会では、残念なことに政労使意見一致が見られない点があって、その点についての労働者側意見を附帯した形で大臣の方に建議として出されているという経過をたどっていると思います。  これは、必ずしも三者が一致をするという形をとれなかったことについては、審議問題点についても経過上やや拙速に過ぎた点もあるのではないかというふうに思うのですが、それはさておきまして、いずれにいたしましても、これは日本の今までの法律制定過程というものの中に、当事者が参加をした会議検討してそれを国会へというシステムに一応なっているということでありますが、そういう意味におきましては、政府側と、労働問題であれば使用者側労働側の十分な検討が今後とも必要であろうというふうに思うわけであります。そういう中で、冒頭まことにあれですが、これは労働大臣にお伺いしたいのですが、去る四月十三日の政労会見の際、労働大臣連合との会合で、ナショナルセンターとしてふさわしい連合ならば連合のいろいろな要請等もお受けするというふうな発言をしているということがあるわけでありますが、このふさわしい基準というのはどういう基準なのか、そしてだれがふさわしいか否かを決めるのかという点について、今後の政労使の将来もかかってくることでありますので、その点についてまず労働大臣見解をお伺いしたいというふうに思います。
  4. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今先生が御質問になりました場には実は先生はおいでになりませんでしたので、多分報道によって御質問になっているのではないかと思います。そこで、政労会見といいますか、総理大臣が参りまして政労会見を行う前に、少し、あのときは、民主党菅党首の御質問国会が予定より延びました、そのために、実は連合幹部の方を、失礼なことですがお待たせをしてしまったわけであります。その間に、お互い雑談をしておりました。その際に、私が申し上げたのではなくて、先方から、バーミンガム・サミット等もあるので、今後も政労会見といいますか、総理官房長官あるいは労働大臣政府との対話の窓口をあけておいてくださいよというお話がございました。そこで、総理に私は、民主党ができた際に、これを積極的に支援をしていくということを連合がおっしゃり、それに対して自由民主党という政党が反発している中ですけれども政府政府としての立場がありますから政党とはおのずから違いますよということを私は政党幹部にずっと申し上げてきましたと、さて総理どうですかと申し上げたところが、総理は、ナショナルセンターにふさわしい連合であれば、いつでも政府門戸はあいているねということを私におっしゃったよということを雑談の中で申し上げたということです。  そこで、だれが判断をし、それからどういう条件ならということでございますが、まあこれは、答弁者の方から質問をするということは国会では許されておりませんのですが、先生は、当然ナショナルセンターだと認識をされて御質問だと理解してよろしゅうございますか。
  5. 中桐伸五

    中桐委員 私の見解は、ナショナルセンターというのは幾つかありますね、その中の最大のものだというふうに理解をしております。
  6. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 したがって、先生がそう御理解なすっているのと同じように、総理がそう御理解なすったときは、常に門戸はあいているという意味だと私は思います。  それから、今先生が御指摘になりましたように、労働基準法は、まさに働く人たち憲法だと私も思っております。この法律はすべて労働者という言葉で、法律の目的から書かれております。したがって、日本には五千五百万人の労働者がいらっしゃいます。その人たちの、いわゆる法律に書かれている労働者というお一人お一人の利益を正確に代弁してくださる組合、またその組合連合体である任意団体であれば、これは常に私はナショナルセンターであると思っております。
  7. 中桐伸五

    中桐委員 先ほどのお答えですと、総理がそういうふうにおっしゃったというふうに理解してよろしいですか。
  8. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 これは、率直に申しまして、私は、連合幹部方々とも個人的には何のわだかまりもありませんし、かねてから個人的には親しいおつき合いをしてきております。そういう中で、正式の会議が始まる前に先方からそういうお話がありました。したがって、政労会見を実現するまでに、私としても、政党政治という側面もございますから政党内の調整もいろいろして、そしてそれを総理に御報告を申し上げて、今日の政労会見にこぎつけた。  その際に、自由民主党連合との政策協議は打ち切るということを宣言しておられるけれども政党政府はやはり政党政治とはいえ性格が若干違いますから、政労会見をお願いしたいということを、実は私が総理に申し上げたわけです。そのときに総理ナショナルセンターとしてふさわしい連合であればいつでも門戸はあいているねということを御発言になっていますよということを、門戸をあけておくようにというお話がありましたから、そういうことを総理はおっしゃっておりますよということをお伝えしたということです。
  9. 中桐伸五

    中桐委員 私も、大臣が今お答えになりました政党政府というのは、確かに政党政治ですから政府というのが政党というものによって与党として構成されるということと政府という機能というのは、やはり違うところがあるというふうに思いますし、また連合という、これは、政党労働組合関係をどういうふうに位置づけるのかという議論はここではやりませんが、一応いわゆる組合員が自主的に参加をしてつくった団体連合会でありますから、この機能というのは、当然これは大衆的な団体機能というのがあるわけですから、政府労働組合全国組織最大組織である連合というものの関係というのは、やはりこれは公的ないわゆる団体間の関係として、政党支持問題等いろいろあろうかと思いますけれども、しかし、やはりそれはきちんとした関係として維持をしていかなければいけないのではないかと思います。  この問題で余り時間をとりたくありませんので、今度は大臣の最終的な、将来的なことも含めた御見解をいただいて、次に入りたいと思います。
  10. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生から率直なお尋ねでございますので、私も率直に申し上げたいと思いますので、誤解のないように、何かもし腑に落ちないという点がありましたら、この問題ばかりという御指摘ではございますが、もう一度再質問をしてくだされば結構かと思います。  その前提で申し上げたいと思いますが、参議院審議がございましたときに、先生と同じ政党に所属しておられる参議院議員の方だと思いますが、多分連合内の政党支持を調べれば自由民主党支持が一番多いのではないだろうか、余り自民党もかりかりせずにやらせるようにしてもらいたいね労働大臣、という趣旨の実は御質問がありました。  労働基準法労働者という書き方をしておりますので、労働者一人一人の長期的な利益雇用維持、そしてそれを最優先にしてその中で勤務条件の向上、これに尽くすということは、労働大臣労働省の職員も連合皆さんも同じ気持ちだと私は思います。  したがって、連合任意団体であっても、それに参加をしておられる単産あるいは単組には、一人一人のまさに労働基準法に書かれている労働者という方がおられるわけでございますから、その労働者方々の御意思あるいはお気持ち最大最大公約したものが、やはり私は連合という組織であろうと思いますので、連合というものがそういう組織である限りは、私どもはぜひ御協議をさせていただきたいし、また、率直なことを申し上げれば、働く労働者一人一人の代表である組織がなければ労働省も困るわけでございます。  ですから、私は、連合の鷲尾さんも、組織内の単組単産を持っておられますから、その方々に配慮をされた御発言をなさらねばならない事情もよくわかります。私も自由民主党という政党を背中に抱えておるわけでございますから、こちらの事情も御理解をいただきたいと思いますが、連合の会長とは先般お話をいたしまして、一人一人の労働者の幸せのためにお互い努力をしていくという前提で協力をしていきましようということで握手をしているというか、合意をしているというのが現状でございます。
  11. 中桐伸五

    中桐委員 将来的にも、そういうふうに政労使関係というものは……(伊吹国務大臣「いいですか」と呼ぶ)どうぞ。
  12. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生おっしゃっていただいたように、将来とも政労使関係はそうありたいと思いますし、それは政治分野というか政府分野政労使の政は、私は政府だと思いますが、それから労働組合、この場合は代表をしたという形で今連合についてのお尋ねがありましたが、お互い労働者一人一人の気持ちを一〇〇%代弁していくという努力を重ねるという自制の上に政労使関係はかくあるべきだということについては、私は何ら異存はございません。
  13. 中桐伸五

    中桐委員 ちょっと時間を二十分ばかり労働基準関係審議から外れましたが、しかし、これは将来的に、今、中央基準審議会意見の違いを残しながら今日法案の上程まで来たということもありますので、全然関係ないということもないとは思います。  さて、これから労働基準法改正の問題について議論を進めたいと思いますが、各論に入る前に、幾つかの基本的な点について議論をしてから各論質疑に入りたいというふうに思います。労働基準行政が五十年を迎えて、その五十年目にしてかなり大幅な改正が今審議をされるわけでありますが、さて、この労働基準行政というものが五十年間に一体どのような意義があったのか、その評価について少し議論をしてみたい。特に、評価観点として行政改革という観点からこの労働基準行政五十年というものを、大臣中心に少し質疑をしてみたいというふうに思います。  まず、日本の今日までの行政の中で、一つ改革ポイントといいますか重点の一つが、いわゆる裁量行政からルール型の行政、つまり許認可型から出口行政といいますか、そういう形にそろそろ日本は大幅な改革、転換をしなければいけないのではないかということが一つ重要な点だろうというふうに私は思っているわけです。この点について、大臣労働行政もやはり、さまざまな基本法のもとにさまざまな規則や告示や通達や、さまざまなものが非常に複雑に体系の中に含まれたものとしてあるだろう、その点について、もう少し基本的な、先ほど大臣労働基準法というのは職場憲法だという形でおっしゃいましたが、労働基準を決める基本法である労働基準法というものがやはりルール型の基本法になっていくには、どういうふうにこれを位置づければいいんだろうか。  具体的に申しますと、例えば、これまでの労働基準行政五十年の成果を全部、どのような効果があったのか数量的にするというのは、私もやりたいとは思うのですがなかなかできていないのですが、例えば最近手にした、今回、基準法改正の中で非常に重点的な一つポイントであります労働時間制、その労働時間、休日に関する違反件数というのを見てみますと、労働時間について、平成六年が、監督指導実施事業場が十六万二千三百六十六、違反率が一二・〇%というふうな統計が出ておりますが、平成七年はこれが一七・四%に上がり、平成八年は一三・五%と、六年ほどではないがやや下がっている。しかも一方で、監督官数平成八年まで徐々にふえている。  実は、ここで労働基準行政として労働時間の問題ということを取り上げましても、監督実施をしたところこのぐらい違反があったといういわゆる行政サービス評価の仕方、これは、特にアメリカなんかの行政改革では、非常によくないと。つまり、幾つ監督実施してこれだけの違反率がありましたというのでは、いわゆる行政サービスを受ける顧客に対するサービスの何をするんだということが非常にはっきりしない、自分の業務の中でこれだけやってこれだけ出ましたというのでは不十分だ。つまり労働時間の違反率を何年間で何%に下げますよ、つまり働く皆さん方が長時間労働をできるだけ少なくするために労働行政はこういうふうにやりますよというのがこれからの行政改革一つポイントではないかと思うのです。  そういう点で、例えば日常の労働行政業務評価、分析なりそういったものもやはりやや変えなければいけないのではないかと思うのですが、大臣、その点、いわゆる裁量行政というものにイコールということではありませんが、そういうことも含めて、何といいますか、ルールに対して、そのルールが、どういう目標を設定して、労働行政というものが労働者皆さんのためにサービスを改善していくんだというふうな形での労働基準行政というものであったのかどうか、そごをどういうふうにされようとするか、そこから議論をしたいと思うのです。
  14. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 基本的な数字、あるいは戦後の通達等のあり方については後ほど政府委員から御説明をさせますが、まず基本的なことについて申し上げれば、経済、金融のように物を扱っている行政ではございません、働く人という、まさに人間基本にした、その方々立場権利に関する法律でございますから、労働基準監督という業務民間委託をなどという議論が一時あって、私は、そんなことは利益対象として取り扱うべき性格のものではなくて、これは国家の存続の原点としてやはり国家がやらなければならないと私は実は思って反対をし、行革会議ではそういうことはなくなったわけです。  つまり、裁判あるいは検察の立件、税務の脱税かどうかというような微妙な問題を、先生が今御指摘の、特に人間が絡まっていることであるだけに、それを一つ一つ基準という形で法律政令に書き込むということは、対象が百あれば百ともほとんど違うという現状から考えると、かえって膨大なものになってしまって、私は現実には非常に動きにくいのではないかと。  もちろん、現場監督官がどういう観点から労働基準法の施行を現場で見ていくかということについては、労使双方にその考えをあらかじめお伝えして、できるだけ、一件一件摘発ではなくて、その方向によって労使が自主的に解決していただくということを今までやってきたわけでありますけれども、だからといって、それをすべて政令法律に書き込みながら事後チェックをしていくということについては、人を相手にしている、人の権利相手にしている仕事だけに、私は、事後チェック的にすべてのルールを事前に明示するというのにはやや無理があるんじゃないかという気がいたしております。  違反件数その他については、政府委員から説明をさせたいと思います。
  15. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生から御指摘ございました、毎年の定期監督、それの結果出てまいります違反件数等、いわば目標等をどう管理して効果を上げようとしていくか、その辺のいわば目標管理考え方についての御指摘があったかと思います。  私ども平成八年、十六万を超える定期監督実施いたしておりますが、こういった事業場定期監督するに当たりましては、毎年度、各都道府県の労働基準局が前年に実施しました監督の結果等を分析いたしまして、今年度、労働基準法の中で必ず守っていただかなくてはいかぬ事項、また、どういう分野でそれがおくれているか、守られていないケースが多いか等を分析いたしまして、そういった上に立って、定期監督対象事業場等を選定いたしまして、計画的に実施する、こういう手法をとっております。  また、四十時間労働制のように、導入してその定着を急がなければならないような目標につきましては、例えば、昨年の四月から実施いたしまして初年度は守られていない事業場をいわばリストアップする、こういう方式で集団的に説明あるいは状況の把握等を行いまして、二年度目に入りましたことしは、その中から、実施がされていないような事業場中心に、重点的に監督あるいは指導実施していくというような形で対象を選定いたしております。いわば結果として、労働基準法という法的な性格上、守られていないおそれのある分野に対しては、私ども気持ちとしては一〇〇%に近づけていく、こういう思いで監督等対象事業場の選定、数の決定等に当たっておりまして、そういう気持ちで計画的に実施をいたしているところでございます。
  16. 中桐伸五

    中桐委員 大臣質問の意図が十分伝わってなくて、ちょっとすれ違いがあるのですが。  といいますのは、まず、すべてを数量化しろと私は言っているわけじゃありません。一つ基本は、労働基準法というのはミニマムスタンダードだ、憲法の精神を受けての話ですが。一応まず最低基準という形でミニマムスタンダードを決める。そのミニマムスタンダードの中に、労働時間のようなものは、数値というものをやはりきちんと基本法の中に最大限の検討をして入れていかないと、私はやはり透明性の高いルールにならないと思うのです。  もちろん、そのミニマムスタンダードを実現するために基準行政というものが今後も必要であるということは私も認めますが、問題は、ルール型と言っているのは、つまり、基準監督官をもっともっと数をふやして、膨大な数の基準監督官を擁してチェックをするという形の労働行政でいいのかということを考えた場合、これは私はやはり成熟社会型じゃないと思うのですね。労働基準監督官指導して、ルールをちゃんと守っていくように、それはケース・バイ・ケースですから、いわばネゴシエーションしていくということは、これは必要だと私は思うわけです。しかし、では、先ほど基準局長が、労働時間四十時間制と数値が入っているわけですね。しかも、それを経過措置をもって何年後から始めますよ。これがいわゆる目標設定をした、いわばルール型の行政一つ考え方だと思うのですね。  ですから、そういう方向へ、つまり、監督官がこれだけ回ったらこれだけ違反があったというのではなくて、もちろんそれはそれで出さなければいけませんが、それだけにとどまらないで、今度の労働基準法改正をやるに当たっては、例えば時間外なら時間外の労働については、こういう目標を立ててこの法律改正してやるんですという、つまり、これが一つ行政改革ではないかというふうに私は思うわけです。  さらにそこにつけ加えるならば、いわゆる今までの基準行政が、これは私の直感といいますか、私自身の評価ですが、労働時間のコントロールという問題は、日本の場合、やや労使ともに苦手とするところなんですね。そういう点があると思います。世界を見ると、ヨーロッパの中のアングロサクソン系労働時間がやや長いですよね。それに対して、ドイツだとかフランスだとか北欧だとか、そういうところはかなり労働時間が短い、それに比べれば。日本はややアングロサクソンに近い労働時間になっている。  労働時間というのは、日本の場合、政労使がいろいろ努力をしてもなかなか難しいところがあるという認識がある。その中で、労働時間というものをこれから相当本腰を入れて、どういうふうに位置づけて、ルールとして目標を設定して、それを実現していくか。しかも、それは安定経済成長ということを確保しながら、つまり雇用が崩壊しては困るわけですから、そういうことを考えながらやっていく必要があるのですね。  そこで私が思うのは、やはり労働時間という問題をコントロールしようと思うと、今の日本のいわゆるルールを守れるシステムとしては、それをサポートするシステムとしては、やや不十分なところがある。それは、各事業所の中において、労使労働時間をコントロールするという一つコントロールシステムがどのように機能しているかということが一つ。それからもう一つは、職場の外、つまり地域ですね、地域においてどういう労働基準としての労働時間をコントロールできる仕組みがあるかということと、二つの点から考え、かつ、そこに支援のアクセレレーターとして労働基準行政がもう一つ入ってくる。こういうふうに私は問題を立てておるわけです。  そうすると、事業所の中にどういうコントロール労使間における機能できる仕組みがあるかということを考えたときに、例えば三六協定という時間外の協定については、労使で話をしなさい、あるいは、幾つかのところで、就業規則では労働者代表と使用者が話をしなさいとかいうふうなところが部分的にはあるけれども基本的に、労働時間というのは賃金との関係で非常に重要なトレードオフの関係にあるし、ほかのいろいろな条件と総合的なものとして労働時間というのが位置づけられるものだから、なかなかコントロールしにくいわけです。  だから、そういうふうに考えると、ただ条文の幾つかのところで労使が話し合うという仕組みじゃなくて、もっと基本的に労働者参加できる、そして労使が話し合いを定期的にやれるような場、それはもちろん必要に応じて論議をすればいいのですが、そういう場を確保することと、それからもう一つは、地域に既に労働委員会という仕組みがありますから、労働委員会というのは、これは今、労働組合の受け皿になっているわけですね。これを今回の労働基準法改正では、個別紛争処理をする仕組みを新しく導入しようとしている。これは、ルールを守らなかった場合の是正機関として新しい試みだと思いますが、結論から申しますと、私はやはり非常に弱いと思うのですね、今の労働基準法の中で導入されている個別紛争処理システムというのは。  ですから、公正取引委員会と同じような形でつくられている行政委員会一つである労働委員会というものを、すべての労働者門戸を開いて、労働者ルール違反があると言ったときに、速やかに、迅速に、低コストでそれを処理していける、そういう仕組みを二つつくって、それを労働基準行政といういわゆる内閣の機能というものがサポートシステムとして一方である。そういう仕組みをつくらないと、労働基準行政五十年のいいところもあったでしょうが、まだまだ解決できていない、特に労働時間の問題は非常に解決するのに難しい問題を抱えているから、そういうふうな仕組みをつくるべきだというふうに私は思うのですが、その点についていかがですか。
  17. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生の御質問を伺って、御真意がかなりわかりましたが、つまり、裁量的なものじゃなくてある程度数量的な目標値を定めとおっしゃるのは、総労働時間的なものを考えての御質問ですね。(中桐委員「いや、それはまた後で各論はやりますけれども」と呼ぶ)それから、すべてを政令行政行為に落とさずに、ある程度労使の自主的なという部分も、御主張よくわかります。  今回、そういう考えを実はかなり改正の中で取り入れていると私は思うのです。勤務時間の管理をすべて画一的に決めておいて、労働基準監督官労使でそれを守れているかどうかということを調べるというだけではなくて、これは多分御異論があると思いますが、例えば裁量労働制などについても、労使で実は話し合いながら労働時間の管理をしてください、その管理のルールはお示ししますが、ルール違反になった場合には公権力を介入してきちっといたします、しかし、そのルールの範囲内で労使お話し合いで決めてください、労働者の側が嫌だとおっしゃればそれは入れられないという方向性になっているわけですから。  ただ、例えば超勤を含めた総労働時間のようなものについて、罰則つきで基準を決める、数量的に明示をするということが、先ほどお話ししましたように、労働者一人一人のプラスに現実的になるだろうかということを、実は私たちは本当に苦慮して考えているわけです。大企業はともかく中小企業では、私たちは最低賃金というものは法律できちっと決めております、しかしながら、それだけで働く人一人一人が暮らせているわけではありません。中小企業の実態はどうなっているかというと、十五万円なら十五万円の基本給と十万円なり十五万円なりの超勤で賃金体系は成り立っているところが多いです。そして繁忙期には三十万円の手取りがあります。しかし繁忙期じゃないときは二十数万円の賃金になっているというのが現実なんですね。  そういうときに、今いみじくも先生がおっしゃったように、賃金と雇用というのはトレードオフの関係になつでいます。そこで、厳しい罰則でこれを管理した場台に、結果的に、繁忙期は下請企業が仕事を受けられない、親請からその仕事を見放される、そして逆に、上限を厳しくした結果、働く人一人一人が生活給の確保が難しくなる。  もちろん、実際の超過勤務が一日十五時間とか二十時間だとかそういうことになっているというのは、これは社会常識から見て当然おかしいわけで、ナショナルセンターというものはだれが判断するかといえば、やはり社会の目が判断するのと同じように、私は、そこのところは、本当に働く人一人一人の立場のことを考えると、目標値を数量で書き入れて罰則をつけて守らせるという方向は、本当に働く人一人一人の長い目で見た雇用維持し、生活を守っていく上でいいのかなというのが、実は率直に言って私の苦悩です。  であるがゆえに、政府委員がよく使います官僚的な答弁からしますと、今申し上げたことが、超過勤務というものが景気の波に対する雇用の一種の激変緩和措置になっているという、わけのわからない答弁になっているのだと思いますが、実態は、私どもも中小企業のうちに生まれ、その苦労を知っておりますだけに、本当に未組織の働く人一人一人のことまで考えると、そこのところは果たしていいのかなというのが私の正直な感想でございます。
  18. 中桐伸五

    中桐委員 大臣の御意見も一応わかりますけれども、ただ、これまで労働時間についてのコントロールが十分でなかった。その労働時間というものが、いわゆる少子・高齢化社会というものの中で、そしてまた今子供、学校が救済されなきゃいけないような状況になっているというふうな状況を考えてみると、しかも特に東京のようなところで仕事をする、大都市で働く人の生活時間というのは大変な状況になっていると私は思うのですね、通勤時間も極めて長いし。これは単に労働基準だけの問題として単純にその要因を云々できないものがありますけれども、しかしやはり、成熟社会であり少子・高齢化社会の中で、労働時間というものが生活時間の構造の極めて重要なファクターとしてあるわけです。ここから決まってくると言っても過言ではないと思うのです。  つまり、人間は、一番プリミティブな状態であれば、二十四時間の三分の一は働いて、三分の一は社会的、文化的時間を過ごして、残りの三分の一で生理的に休息をして次の日を迎えるというのが非常に原始的な、基本的な構造だったと思うのですが、そういうものを大幅に逸脱した生活時間の構造がやはり我が国にはあると思うのですね。これは労働基準というだけの問題で解決はできないんだけれども、しかし、労働基準というものも基本的に非常に重要な位置を占めると思うのです、生活時間の構造というものの中で。  そうすると、労働時間というものをどうコントロールし、しかも、かつ賃金というか、いわゆる中小零細企業まで経営努力を、労働時間のミニマムスタンダードが決まったんだから、そのミニマムスタンダードの中で経営合理化をしていける努力をするというふうな形で底上げをして、一方で、グローバルスタンダードという形で言われている国際社会の中での企業のあり方というようなものからいっても、いわば日本の今の時間外労働というのは極めて多くの問題を含んでいるのではないのかという問題があると思う。  そういう問題をやはりどういうふうに政策として重要視してやるのかというところが、つまり、経営者には経営者の努力をしてもらう、労働者には労働者の生活時間の構造改革というものが、どういう自分の家庭や地域地域生活や人間らしい生活にとって重要なことなのかということをみんなで議論してそのことを解決していかなきゃいけないのではないかと思うのです。そのときに、私は、労働時間というのは非常に重要だと思っているわけです。  だから、労働時間の基準というのは、いろいろな通達や告示で補完するのではなくて、ミニマムスタンダード、つまり、数字はリアルなレベルから出発しなきゃいけませんよね、現実的な規制のミニマムスタンダードの数字はどうするかという議論は詰めなきゃいけないが、その数字は幾つにするかは別として、私は、基本法の中に労働時間というものは数値で書けるはずなんだから、それを書かなきゃいけないんじゃないですか、そういうことが行政改革じゃないですかと言っておるわけです。どうですか。     〔委員長退席、鍵田委員長代理着席〕
  19. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 ミニマムスタンダードということ、例えば四十時間というものは書かれておりますね。そうすると、総労働時間を幾らにするかということは、日本の現実から考えると、先生がおっしゃったように、ミニマムというか、超勤ですからマキシマムといいますかね、マキシマムというものを書いて、その中で経営合理化をしてと今おっしゃいました、そのまさに経営合理化という言葉が大変な意味を持っていると私は思うのですよ。それができる大企業は結構でございます。しかし、できない職場で、実は労働組合組織できないような状態で頑張っておられる人たちが、そうした場合に、今まさにおっしゃった経営合理化ということは具体的に何でしょうか。  これはやはりコストの削減、私は、会社を存続させていくためにはコストの削減だと思いますよ。その余波を働く人一人一人が受けないようにしてさしあげるというのが我々の最大の責務です。たくさん働くことはつらいことでございます、しかし、働けなくなるということはもっとつらいことです。そして、私たちはやはり市場経済の中にいるわけでございますから、人間としてどういう暮らしをしていくのかという判断からのアプローチが一つと、そして、この社会システムの中で合理的にその人たちを雇う企業、会社が存続をしていけるという双方のやはりバランスの上にあると私は思います。  だから、経営者が無理に働かせたり、あるいは賃金を出せるところを出さずに、どんどん勤務時間を長くとるというようなことは、その会社の実情に応じてやはり監督官チェックをしていかねばならないのであって、それを全国一律に書くということがプラスかマイナスかという議論は、やはり相当慎重にやっていかねばならない。  だから、先生のお気持ちを受けまして、今回の法律では、勤務時間の上限を労働大臣がお示しをし、労使双方、それを遵守するべく努めていただくというところから始めて、そしてお互いに、経済が順調に発展をしていけば、かつては時間短縮よりも、年金や老人医療や国民皆保険という、世界に類を見ない、制度の行き届いた、社会保障システムにその経済のパイを切り分けてきた、ある程度これができ上がっておるわけですから、今後の切り分けは時間短縮の方へやはり向かっていく。これは、私は先生の御指摘に何ら異存はございませんが、そこはやはり、我々が生きていくシステムの中で合理的にやっていくということではないでしょうか。
  20. 中桐伸五

    中桐委員 細かい話を大臣がいろいろおっしゃって、いや、それはそう簡単にいかないんだと。  では、ミニマムスタンダードというのは一体何なんだという話になってまいります。つまり、経営力とかそういう格差というのは当然あるでしょう。だから、経営のいいところはよりミニマムスタンダードより時短を進めていくとか、そういうふうなことは現実にそうなっているわけですから、そういうことを言っているのではなくて、ミニマムスタンダードは示す必要があるのではないですかと。  つまり、それはケース・バイ・ケースですよといったら、生活時間の構造改革は全然レベルが上がらないわけですから、そこの話をしているのです。大臣、個別の経営者がどういうふうに経営改善するかという各論にまでいくと、これは大変な議論になりますからそれはやめますけれども、つまり、経営改善、経営をもうちょっと効率よくしたら失業がふえる、そういうことを私が主張しているわけではありません。  そういうことではなくて、日本の二十一世紀の成熟型社会、少子・高齢社会というもの、また今社会問題になっておる家庭の機能の問題、そういったことを考えたときに、やはりワークルールが、ベースのミニマムがきちんとコントロールできなければいけないのではないですかということを言っているのです。そこは労働行政の最重点課題の一つではないですかということを言っているわけですが、そこは御理解いただけるということですね。  そうなると、例えば今度の裁量労働の問題をちょっと質疑したいのですが、裁量労働の問題をとっても、労使委員会というのが裁量労働のところへ入ってくる。  私は、今や産業がサービス経済化していく、それから、経済大国になって、それに応じて賃金レベルも上がってきた、そういう中で、いろいろな要因があると思いますが、労働組合組織率というのがなかなか、労働力の流動化も激しくなっておりますし、多様な雇用形態が導入されてきておりますから、労働組合組織率というのがどうしても低下してくる背景というのが客観的にもたくさんあるわけですね。  そういう中で、裁量労働だけ労使委員会ではなくて、ここに何か、今までの労働行政法体系の基本的なところが、ベースをきちんと決めるというところがないというか、つまり、労働時間全般の問題を取り上げてみただけでも、労働組合組織率がこのように低下して、労働者がどうやって参加して意見を言って労使の合意を図っていくのか。経営改善も労使の話し合いの中には当然出てくるわけだから、労働時間の問題だけやるわけにいかないわけだから、経営改善の問題も労使で話をしなければ、時間だけ基準を決めて、そこだけ守らなければいけない、守らなければいけないというわけでは進まないわけだから、そうすると、それは裁量労働だけの話ではないでしょう。何でそういうことがオーソドックスに議論できないのですかということを言っているわけです。企業内の話し合う仕組みをどうしてつくれないのですかということなんです。三六協定のところにちょろっとあり、今度裁量労働労使委員会が出てきて、就業規則でまたちょろっとある。そんなことではもうだめなんじゃないですかということをまず言いたいわけです。  つまり、裁量労働というのは当然そういう労使委員会がなければ話にならないということは、非常に新しい労働形態ですから、私も、その点については労使委員会というシステム機能しなければいけないということは、その文面だけでいえばわかりますけれども、それだけじゃないでしょよう、時間外とかそういうことが全部関係するじゃないですか。何でそういうふうになってしまうのですかということ。  それから、きちんと数字がミニマムスタンダードで示されれば、ルール型で労働委員会とかいうふうなものを拡張機能すれば簡単に処理できるわけですよ、ルールを守らせる仕組みとして。それを、いろいろな通達や何やらでネゴシエーションばかりやる仕組みをたくさんつくり過ぎているから、労働者には透明性がよくわからない。つまり、自分たちの働く基準は一体どういうふうになっているんだ、細かい通達まで読まなければわからないという話になるし、そういう形で労働者基準がよくわからない、かつ、ルールはきちんとミニマムスタンダードが書かれていないから、迅速、速やかに労使の紛争を解決できない、そういうことになっているのではないですか。そうすると、労働基準監督官を山ほどふやさないとそういう問題は解決できないではないかという話になる。だから、そこを基本的に考えていく必要があるのではないかと私は言っているわけですね。  その関連で裁量労働の問題にちょっと触れますが、今、日本サービス業はどんどんふえてきた。ホワイトカラーの労働条件というのはブルーカラーと違って、いわゆるラインで働いている人は、ここからここまでが仕事の時間ですよといえば、ぴいっとラインが動いていて、そのラインがとまってしまえばこれでオフだ、こうなるわけだけれども、ホワイトカラーというのはなかなか労働時間をコントロールするのが難しいところがある。しかも、顧客を相手にする仕事であるという性格も加わって、相手のニーズに合わせて働かなければいけないということになるから、労働時間の最もコントロールしにくい分野の産業ですね。その産業の中に、今のような、賃金とのトレードオフやあるいは景気の調節弁みたいな形で、非常に安易に労働時間が調節弁として導入されるという仕組みがあるわけです、日本の中に。  そういう中で裁量労働を導入したらどうなるかという話で、今までは非常に専門的な業務に限っているからやや業務の範囲が特定しやすいわけだけれども、今回の法律改正の中に入ってくる裁量労働の企画とか調査とかそういう分野になってくると、非常に仕事の範囲が特定しにくくなってくるという特徴をより持ってくるだろう。しかも、カバーしなければいけない事業所の範囲がぐっと広がるわけですよね。  そういう中で、実際に裁量労働の問題で実態調査をした結果を見てみると、相当長時間労働になるのではないかという危惧を働いている人も持っているわけです。  例えば、これはある労働組合の産別の調査ですが、「長時間労働につながるので良くないと思うか」という質問に、「そう思う」が二八%、それから「どちらかといえばそう思う」二九・五%、合わせると五七・五%。つまり、過半数の人が裁量労働が入ってくると長時間労働につながるのでよくないというふうに直観的に思っている。  そういうことが一つあって、そのほかにもいろいろな調査がありますけれども、裁量労働一つ持っている問題は、本来自由な労働時間を設定できる裁量労働が、実は、サービス残業を含めて、かえって長時間労働になってしまうというふうなおそれを持っているということを現場の調査が幾つか知らせているわけですね。  そういうことに対して、例えば連合の総合生活開発研究所が調査したものによっても、裁量労働でもう一つの問題は、仕事の評価基準目標の明確化をしなければいけないというのが六〇%。つまり、仕事の評価というか、どういう仕事をするのかというのが一つですね。いわゆる自分が本来やるべき仕事からいろいろな別の仕事もどんどんやらなければいけないことになってしまう、その結果、時間も伸びてくるというふうなことを危惧しているのと、もう一つは、自分が働いた仕事の評価、業績評価といいますか、そのことがどうもまだ不十分だというふうな意見が非常に強い。  二つの点から、裁量労働というのがまだ問題をたくさん抱えているということがいろいろな調査から出てきているわけですが、その点について、規制緩和の方針の中で裁量労働を拡大しなさいというのが来たから、それはもう天の声だからやらなければいけませんというふうな形でやるにはやや時期尚早なのじゃないかというふうに思うのですが、その点についてどうですか。
  21. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 販売と人を対象にしているという今先生のお言葉がございましたので、もう少し正確を期すために、ホワイトカラーの中のどの部分を対象にするかということは後ほど政府委員から説明をさせたいと思いますが、基本的には、規制緩和のためにやるということではないと私は思います。  働き方にはいろいろな希望を持つ方がおられるわけで、自分の能力の範囲内でできれば早く仕事を終わって、そして先生がさっきおっしゃっていたように、ライフスタイルとしてゆっくりした時間を持ちたいという方がおられるのなら、やはりそのような方に道を閉ざすべきでは私はないのではないかと思います。しかし、そのことが結果的に今おっしゃっているような長時間のサービス残業に結びつくかどうか、結びつくのであれば、そこのチェックをするためにはどうすればいいかという御議論をこの委員会でしていただいて、建設的な御意見があれば行政に私たちは当然反映させたいと思っております。  ちなみに、今連合の調査のことをおっしゃいましたが、電機関係幾つかの労組の調査も私たち持っておりますが、そこでは、ぜひ裁量制をやってもらいたい、そして、今不十分な、法律上許されないような形で実態的に裁量労働制がとられているような形よりも、きちっと法律の縛りをし、嫌なときは労使委員会で嫌だということが言えるような形をつくってもらいたいという御意見もまたあるということは、当然先生御存じのことだと思います。
  22. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 裁量労働制につきまして、その業務範囲あるいは長時間労働にならないか、あるいはそれに伴う前提となるべき評価の制度、そういったものが十分機能するかどうか、こういった幾つかの点についてお話がございましたので、そういった点についてお答えを申し上げたいと存じます。  まず、我が国の人事あるいは雇用管理制度の変化、そういった中でやはり、裁量労働制のあるなしにかかわらず、成果を重視した賃金体系あるいは能力を重視した賃金体系への、徐々にではございますが確実な流れというのは正直あるわけでございまして、そういった中で、裁量労働制のあるなしにかかわらず、評価制度、こういったものはきちんと対応していかなければならないという課題があるわけでございます。  私ども、そういった流れが着実に進んでいく中で、やはりそこに労働側代表の方、職場代表の方というものがそういった流れの変化に対して参加していかなくてはいかぬだろう、こういう思いがこの裁量労働制の仕組みを考える際の一つの大きなポイントであったわけでございます。  したがいまして、法律上、賃金あるいは労働時間、労働条件全般について恒常的に調査審議する場としての労使委員会を設置しておくことが裁量労働制導入に当たってのまず前提の要件、こういう仕組みを私どもつくりまして、そういった中で、労働側代表者の方が参加する中で、こういった人事体系あるいは賃金体系の変化というものに参加していってほしい、こういう気持ちを込めておりますので、先生指摘ありました評価制度等も、そういった労使委員会の中でまず話し合われるシステム前提にしているということを御理解をいただきたいというふうに思っております。  また、この裁量労働制、規制緩和の問題とも関連いたしますが、規制緩和の方で要望があった裁量労働制と申しますのは単にホワイトカラーへの拡大、こういうことがあったわけでございますが、私ども、そういった意味の裁量労働制ではなくて、今申し上げたような中での位置づけ、さらに業務範囲あるいは長時間労働をなくしていく、そういったシステムとしてこの裁量労働制というものを構築していかなければならない。むしろ、規制緩和ということよりも、さらに我が国の本社等の中枢で働く方々の働き方、あるいはその方の健康管理、そういったもろもろを新しいルールできちっとそういった方を保護していく、こういうためのルールとして考えたわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げました労使委員会では、全く仕事を任されているこういう本社等の企画、調査等の非定型的な業務を担当する方々に限って、具体的に対象者を経験年数等も含めて限る、こういうことをまず第一の要件にいたしまして、さらにそういった方々の勤務状況を把握して、代償休日等を含めた健康管理のルール労使間で全員一致でまず決める、こういったことを必ず届け出てきて、その内容が適切だというふうに認められて受理される、そういったことがこの裁量労働制実施前提条件です。こういう仕組みになっておりますので、先生指摘のように、今、確実に人事、賃金体系の変化が進んでいる中でこれを放置することは、かえって長時間労働あるいは評価制度等が労働側参加がないまま進むことよりも、こういった労働側参加前提にして、しかも歯どめ措置が十分設定されたルールのもとでこの裁量労働制というものを受けとめ、さらには、広くは我が国の雇用システムの変化自体を受けとめて、終身雇用の枠の中でもいわば活力を注ぎ込んで、長期雇用というものを大事にしていける仕組みにつながるのではないかというふうに思っておりますので、御理解をいただきたいと思っております。
  23. 中桐伸五

    中桐委員 裁量労働という、非常に労働契約上新しい分野が導入されるということについては、私は、なぜ労働条件の明示、つまり賃金以外の労働条件の明示が今ごろになって法律に入ってくるようになったのか。逆に言うと、何でそんなにおくれて、契約というものがきちんと文書で明示されるというふうなことが今ごろになって労基法の改正として行われるのかということを考えても、どうも日本労使関係の中で、賃金というのは非常にウエートを高く位置づけられてきたけれども、ほかの労働条件、特に労働時間というものについては、まだまだ契約という点において非常に問題があったのではないかと思うのですね。  そういうときに、しかも少子・高齢化の中で、いわば賃金の体系を大きく今試行錯誤して変えようとしているときでしょう、各事業所が。労働省でも、賃金の問題の、正式な名称はちょっと忘れましたが神代さんが研究会の中心で報告を出しておりますよね。そういう中でも、賃金体系を大きく変える取り組みが今始まっているわけでしょう。いわゆる終身雇用型というふうに言っていいのかどうかわかりませんが、大企業を中心とする体系というものが、多かれ少なかれ中小企業にも影響をした賃金体系になっているわけでしょう。そういう賃金体系を変えるということが今行われているわけですよね。つまり、業績の評価の仕組みをどうするかということが今一方で検討されているわけです。  労働契約の歴史からいっても、今言ったように、労働条件の明示が今ごろ法律に入ってくるわけだから、そういう中で、しかも裁量労働のための労使委員会なんという、つまみ食い的に、つまりベースとしての労使委員会というのが基本的にどこにでもあって、そしてその裁量労働というものについても検討するという仕組みではなくて、というふうなことになっているわけです。  何で労使委員会というふうなものをベースとしてつくって、そういう全体の労働条件検討ができるような仕組みをつくらないのかということも含めて、どうも日本職場のリーダーである経営者に、そういう労使がフェアに話をする仕組みをつくるという習慣や、あるいは労働条件をきちんと事前に明示をして、そういうものをきちんと示した上で雇用を契約するというふうなことがおくれていたんじゃないですか、非常に。  そういうときに、極めて新しい雇用形態である裁量労働を、今までかなり限定的に導入している、その試行をさらにやって、業績の評価もまだ十分ではないところがある、あるいは労働時間がやや長くなるところがあるというふうなことが一部言われているわけだから、そういうものをもうちょっときちんとチェックをして、検討しながら環境を整備してやっていく方がいいんじゃないですか。大体、無理があるんじゃないですか、今。
  24. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今、裁量労働制をめぐりまして、何点が御指摘ございました。  一つは、労働条件の明示に関連してでございますが、今回の御提案申し上げておる改正法案では、労働条件基本的なものについての書面明示を義務づけることといたしております。  これも、一つは、やはり最近の採用のパターンを見ておりましても、通年採用あるいは勤務地を限定した採用、あるいは一括採用というよりは個々人の能力に着目したような採用の仕方、いろいろなものが出てきておるわけでございまして、そういった意味で、行政の中で、基本的な労働条件というものは労使認識し合い守っていくべきである、こういう形を労働基準として明らかにしていくべきだという考えで、今般、基本的な労働条件の書面明示を義務づけたわけでございます。  この点は、今までパート労働者についてのみそういった議論がございまして、四年前に制定されましたパート労働法では、雇い入れ通知書の交付に努めなければならないという形で努力義務が導入されたわけでございますが、今回の労働基準法改正案では、そういった努力義務ではなくて、パート労働者を含め広く労働者全般について、いわば罰則を伴う努力義務として労働条件の書面明示を義務づけることにいたしておるわけでございまして、非常にこの四年の間に、いわば次元の違うところへ発展させた、こういう意味合いをひとつ評価、御理解をいただきたいというふうに思っております。  それから、賃金についての変化と裁量労働制についての関連でございますが、御指摘ございましたように、私ども、賃金制度の変化等を見ながら、今後の賃金制度のあるべき方向を探るために研究会等も設け、種々検討、勉強を重ねてきているところでございますが、先ほど御指摘あった研究会でも御指摘がありますのは、今後我が国の長期雇用システム維持していくためにも、やはり能力を重視した体系へ、あるいは成果を重視した体系へと変化していくことはこれは確実だ、こういう御指摘を受けておるわけでございます。  これは裁量労働制のあるなしにかかわらずそういう流れが進むわけでございますが、それ自体は、いわば最低労働基準を決める労働基準法のいわば直接規制するところではございませんが、私どもできることは、そういった形へ変化していく中で、やはり基本的なルール労使、特に労働側参加して決めていく、こういったシステムが必要であろうということでございまして、先生、先ほど労使委員会について、裁量労働制のための、それだけのための労使委員会というふうに御指摘ございましたが、法律上は、この労使委員会は、賃金、労働時間、その他労働条件全般について調査審議する労使委員会でなければならないというふうに規定をいたしておりまして、そういった労使委員会がこの裁量労働制実施する場合の前提条件である。  したがって、そこでは、先生御心配になられておりました評価制度等も当然調査審議対象になって、これからの人事体系、賃金体系が変化する中で、大企業等が単にコンサルティング会社へ頼んで新しい体系をつくり出すということだけでなしに、労働側参加前提としたそういった新しい賃金体系等がつくられていく、そういう中で、裁量労働制というものも適切な枠組みが労使委員会でつくられたもとで機能する、こういうことになりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  25. 中桐伸五

    中桐委員 時間がなくなりました。深夜と時間外の規制のあり方について質疑をしたいのですが、時間がありませんので次の質疑にやりたいと思いますが、問題点だけ、先ほどから大臣とやりとりをしてきた結論的な、わたしのきょうのまとめ的な話として、私は、やはり深夜も時間外も、数値目標ミニマムスタンダード数値を、基本法である労働基準法の中に入れるべきであるという考えです。  夜勤についても、これはちょっと十分議論をきょうはできておりませんが、時間外については、年間千八百時間という達成年度をどういうふうな形で目標を設定するのか、二〇〇〇年とかいう今までの目標をある程度修正しなければいけないようなところが出ているようですから、それをどういうふうに達成年次を一応設定していくのかということとの関係で時間外労働の規制というのが目標的な設定ができると思いますから、その点についての質疑はまた次回にやりたい。  それから深夜については、オランダに深夜回数の規制についての数値の入った例がございますので、この点についても次回に質疑をしたいということで、きょうはここで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  26. 鍵田節哉

    ○鍵田委員長代理 午前十一時より再開することにいたしまして、この際、休憩いたします。     午前十時二十一分休憩      ――――◇―――――     午前十一時開議
  27. 田中慶秋

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍵田節哉君
  28. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 民主党の鍵田でございます。  先日、本会議で橋本総理伊吹労働大臣質問をいたしまして、いろいろ御答弁いただいたのですが、どうも言いっ放し聞きっ放しみたいな感じでございますし、若干消化不良とか何か胃にもたれているところもございますので、おさらいのつもりと、それから、きょうはまだ初日ということでございますから、いろいろ事実関係についてお聞きをしまして、これからの議論の参考にしたいというふうに思っておるわけでございます。  まず最初に雇用対策でございますけれども、橋本総理は、機動的かつ抜本的な雇用対策として、総合経済対策を早期に実施し景気の回復を図ること、このことが雇用の安定につながる重要な対策であるというふうにお答えになりました。予算の審議のときにも、この予算を通していただくことが最大の景気対策だということを、これは大臣もおっしゃったように思います。  確かに景気がよくなることは雇用が拡大するということで、これはもう当然のことでございますから、余りにも当然過ぎるお答えでそっけなかったものですから、雇用対策の充実についてもいろいろ検討しているというふうにお答えになりましたので、そのことについてどういう検討をされておるのか、またどういう施策をどういうスパンでされておるのか、それがまた、どのように実施をしていけば、例えば産業連関表みたいなもので予測をするとこのぐらいの雇用が増大するというふうなことについての具体的なお答えをいただければなということで、まず第一番目の質問といたします。
  29. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 鍵田先生には、本会議、行革委員会、そしてきょうと三日連続いろいろ御質疑をいただきましてありがとうございます。  現下の雇用失業状況はまことに厳しい状況でございまして、特に失業率、有効求人倍率を全体として見ますと、戦後統計資料が整いまして以来、終身雇用制を前提とする日本では一番厳しい状況だと私は思っております。  先般もお答えを申し上げましたように、憲法にも、日本国民は勤労の義務とそして権利を有すると書いてございます。したがって、働く気持ちを持っておられる方々、国としてはその方々に働く場を御用意申し上げるというのが、これは最大の責任であり、労働大臣としてはそこが一番大きなポイントだと私は思います。これは、先般先生から御質疑があったとおりだと私は思っております。  そこで、決してそっけない御返事をしたわけではございませんのですが、時間が非常に限られておりましたので。きょうは余り御質疑の時間を長くとらない範囲でお答えを申し上げたいと思いますが、まず、やや中長期的に見ますと、国民のニーズに合った政策を実現していく、例えば介護の保険制度を確立するというようなことによって介護のマンパワーという雇用の場ができてまいります。規制緩和をするということによって、短期的には非常にデフレ的な私は要素があると思います。それは、規制によって守られながらお仕事をしている方々にとっては非常に厳しいことでございますが、しかし、長期的には政府が細かな規制をしないために伸び伸びとお仕事ができる分野ができてまいります。さらに、技術開発等を推進することによって新しい技術、生産システムというものが確立してまいります。  それらのニーズに対して資本というものがあり、そしてこれに的確にこたえていただけるような能力開発を伴った労働力というものが一体となって経済を動かしていくわけで、したがって、経済全体としての有効需要の管理と申しますか、マクロ経済のよろしきを得なければ、その時々の雇用というものはやはり厳しい状態になります。それが私は現時点だと思っております。  本会議でもうお答えをいたしましたとおり、本日夕刻から経済対策閣僚会議が開会されます。したがって、その詳細を閣議決定をいたしております前にすべてを申し上げるわけにはいきませんが、まず有効需要の補足をするということを柱として、過去にもそういう事例はあったと思いますが、今回の不況に関しては初めて雇用対策という一項目をこの閣議決定の中へ起こしております。  労働省といたしましては、雇用調整助成金の範囲を拡大し、同時に^新たな求人の開拓をするためのいろいろな措置をこの中に盛り込んでおります。この措置は、しかしあくまでも失業が発生をした場合に、その周辺の方々をお守りするとか、職を失われた方に新しい職をこちらで探して御提示するとかいう仕事でございますので一まず失業が起こらないようにするためには有効需要がきちっと充足されてなければなりません。そのために、減税、公共事業の追加、いろいろなことをしております。  しかし私は、今一番大切だと思うのは、これはやはり金融システム効果的に機能させることだと思います。特に、バブルの時代に金融機関として必ずしも適正に行動されなかったために不良債権をたくさん抱えて、そのために、国民からの貯蓄をもう一度国民に還流させるというお仕事が潤沢にいかない。そこに不安を持っておられるから、実は可処分所得が落ちているにもかかわらず消費性向が落ちるという現象が今生じております。生活水準を維持しようとするなら消費性向は上がるはずであります。しかし消費性向が落ちている。景気が悪くて実質可処分所得が横ばいであるにもかかわらず、消費性向が七二から六八、七まで落ちているということは、全くこれは将来に対する雇用あるいは将来の生活の不安が国民にあるからですね。  だから、金融を潤沢に回すことによって、自分たちの勤めている企業、自分のお店が受け取った手形、こういうものは心配ないんだというお気持ちになられない限り、私は消費性向は上がらないと思います。  したがって、追加有効需要は政府で今回準備いたしましたけれども、消費性向を戻すためには何としても、この前から準備しております三十兆円と申しますか十三兆円と申しますか、あるいはその中の十兆円でございましょうか、これを金融機関がきちっとお受け取りになって、金融機関としての公的責任を果たしていただくということは、私は今喫緊の課題だと考えております。
  30. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今いろいろお話をいただいたわけでございますが、確かに金融システムが非常に不安定であるというようなことにつきましては、今の景気を悪化させておる最大の原因だというふうにも思いますし、また、規制緩和でありますとか介護保険なども、マンパワーなどを拡大をしていくということで、一つの施策ではあると思いますけれども、どちらかというと、全般に雇用をどう守るかということを中心にした施策であって、雇用を創出をするということについての施策がもう一つ見えてこない。そういうものについて積極的な対応策を本来もっと早く立てておかなくてはならなかったのではないか。そういう点について、これからもっと精力的に労働省としてはほかの省庁にも働きかけて、とっていただきたいというふうに思います。  それから、二番目には、労働行政基本理念についてお伺いをいたしましたときに、総理の方は、働く人々が安心して能力を十分発揮できる社会をつくっていくというお答えをされまして、大臣も、基本理念につきましては橋本総理と同じ考え方であるというふうなお答えであったというふうに思うのですけれども、私は、安心して働けるということ、何かそういうことでいろいろな施策をとっていくというふうにお答えいただけるのかなというふうに思っておったのですが、ちょっと違うのですね、ニュアンスが。  安心して能力を十分発揮していけるということなのですが、安心して働けるということと安心して能力を発揮するということと、どういう違いがあるのでしょうか。能力を発揮して働いても、それに対してちゃんとした成果が得られるのかどうかというふうなことが入っていなかったら、幾ら能力を発揮して働いてもこれは何の意味もないわけでありまして、安心して働けるということと能力を発揮して働くということでは全然違うと思うのですけれども、その辺について、いかがでしょうか。
  31. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 結論的には、安心して働くことによって十分能力を発揮していただくということだと思います。
  32. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 何か言葉の遊びをしているような気がするのですけれども、本来、やはり安心して働けるいろいろな施策があってこそ能力が発揮できるわけでありまして、安心して働けるいろいろな条件が何か最近どうも違うのじゃないか、本来の労働行政のあり方とどんどん変わってきているのじゃないかというふうな環境の中で、本当は安心できない、その中で能力を発揮しろといってもなかなか本当に能力が発揮できないのじゃないかという気もいたします。  大臣は恐らく同調はされないと思いますけれども、しかし、やはり安心して働けるという環境をつくるための法律をつくったり、施策をつくったりということがまず第一義であって、これが基本理念であって、そういう環境づくりの中から、能力を発揮して存分に働いてもらえる、そういうことにしていただかないといかぬのじゃないか。ちょっと言葉の使い方を変えていただかないと、私たちも安心してこれからこの労働委員会、やっていけないなというふうに思います。よろしく。
  33. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 いえ、もう鍵田先生は、安心して十分国会議員としての能力を発揮して御質問をいただいていると私は考えておりますが、結局、生きがいとか働くということはどういうことになるかということだと私は思います。  先ほど先生がおっしゃった意味は、決して雇用を確保するというのではなくて雇用を積極的に創造するというお言葉の中にも、例えばケインズが、有効需要が足りないときに、こちらの砂をあちらへ持っていき、あちらの砂をこちらへ持ってきても、それは有効需要としてはカウントされる、しかし、そういうことで何かクリエーティブなことができているかというと、できていないわけですね。やはりそういう働き方とかそういうもので、賃金が保障されているから安心であるということではないと私は思うのです。  お一人お一人は、人間として生きている限り、人間としての自尊心もあれば存在価値もございます。したがって、その能力を十分に発揮したいというお気持ちはどのような方にもあるわけでございまして、労働基準法というのは、働く方一人一人の働く者としての権利の最低限をきちっと国が守っていくということであります。その上に立って、自分たちが能力を発揮する道を持ちたいとか、午前中も中桐先生から御質問がございましたように、単に賃金だけではなくて時間というものの余裕もとりたいという御希望が、これは戦後は、そんな希望を持ってもそれを実現できるだけの経済日本にはございませんでした。しかし、今や世界に類を見ない年金と老人医療と国民皆保険制度まで確立ができた中では、いろいろな働き方を期待する方もおられるわけでございますから、そういう方にはそういう方の道筋もつけながら、やはり働いていただけるような準備はしておきたい。総理が申し上げたのはそういう意味だろうと私は思っております。
  34. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 これを議論し出したらこれだけで時間が終わってしまいますので、一応、私の考えでおります、安心して働ける、そういう環境づくりをまず考える、そして、能力を発揮して働くという働き方の問題はまたちょっと違う次元の問題として考えるべきであって、この二つ別に、別々ということではなしに同時進行でも構いませんが、やはり別々でなかったらいかぬと思うのです。だから、いわゆる労働基準法最低基準を守るということをやはりしっかりしながら、また働く環境をつくっていく、そういうこととやはり同時進行でやってもらいたいと思います。  そこで、中基審の議論の中で、私も申し上げましたように、労働側からいろいろな面で異論があったと思うのです。そういうことについての審議の過程を、文書もいただいていますが、実際にその論議に参加された局長の方から事実関係をちょっとお答えいただきたいと思います。
  35. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回御提案を申し上げております労働基準法改正案の作成に当たりましては、一昨年来、相当長期間にわたりまして中央労働基準審議会検討をお願いしてまいったものでございます。とりわけ、昨年の中間報告が出されました七月以降は、法案提出まで、関係部会合同会議を合計二十六回開催いたしまして議論を重ねてまいりまして、この一月に建議を出していただいて、それに基づいて法案を作成した、こういう経緯でございます。  その中で、労働条件というもののあり方をめぐる論議でございますので、労使見解の違う項目につきまして、やはり相当議論が交わされた経緯がございます。ただ、共通していましたことは、我が国の経済社会の変化や働く人たちの意識の変化、あるいは働き方への希望、そういうものが多様化していること、そういうことに対応して、新しい時代に即応した見直しをしていかなければならない、そういったことにつきましては、基本的に公労使一致した認識を持っていただきまして、大多数の項目につきましては意見一致を見た形をつくれたわけでございます。  ただ、この法案作成の前の段階で出されました建議等でも、やはり労使意見に相当隔たりのあった部分がございます。  例えば時間外労働につきまして、新たに上限基準というものをつくる、それに労使が留意していかなければいけない、こういう建議でございましたが、その点につきましては、その後、もう少し強い法律上の内容というようなことで、労使がそれに「適合したものとなるようにしなければならない」、こういうふうに書いたり、あるいは深夜業をめぐる論議では、やはり労働側から深夜業の規制ということについて要望がございました。この点については、過度の深夜業についてどういった対応が可能であるか引き続き議論審議会でしていきましょう、こういう合意が成立をした経緯もございます。また、裁量労働制等についても、労働側から、この実際の運用をめぐってどういう姿が想定されるかについていろいろ御議論がございました。そういったことにつきましても、私ども、実際、業務範囲等を法律で相当規定しているわけでございますが、さらに指針で具体例を明示する、こういうことを申し上げ、さらに、その指針を法律に基づく指針として法律上規定しましょう、こういうような論議。いろいろな御論議をいただいて最終的な今御提案申し上げている法案に至った次第でございます。
  36. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 今の質問に関連して、経営側がどのような意見を述べられたのか、お答えいただきたいと思います。
  37. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 経営側につきましては、例えば今回御提案申し上げておる中で、契約期間の上限につきまして、高度の専門的な技術、知識を持った人たちが新製品の開発等の業務に従事する場合、あるいは高年齢者の方について契約期間を三年というふうにいたしておりますが、これについて、例えば高年齢者については五年の方がいいのではないかというような御指摘。あるいは今回労働条件の明示の義務づけをいたしております。こういう点について、中小企業の事務的な負担になるので問題ではないか、こういうことが当初出ておりましたが、この点につきましては、そういう事務負担を軽減する措置を講ずること等で了解に達しまして今回法案の中に義務づけを盛り込んだ、こういう経緯がございます。  それから、例えば時間外労働等につきまして、画一的な規制になるのではないか、こういうことを懸念する意見も出されましたが、やはりこれは、今後の女性の方の保護規定等が解消される中でこういった上限基準というものをきっちりと労働基準法上位置づけていくことが必要だということについては御理解を得て現在の姿になっております。  また、裁量労働等をめぐりましても、当初の段階では、労使委員会全員合意、いろいろな前提条件、要件を設定しておりますので、こういった点について規制色が強過ぎないかという懸念表明がございましたが、これらの点につきましても、やはり裁量労働制というものを人事、労務管理が大きく変わっていく中で労働側参加を得た形で的確に進めるにはこういった仕組みが必要だということで、その辺は了解に達しまして現在の姿になっている、こういった経緯がございます。
  38. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 事実関係だけきょうはお聞きして、余り議論に入りますと時間がちょっとございませんので。  それで、大臣に、また先日の質問に関連しまして、時間外労働につきまして、終身雇用制が主流の我が国においては時間外労働の持つ雇用調整機能によって失業を防止できる面がある、したがって画一的に罰則をもって規制することは適当ではないというお考えが表明されました。上限時間を定めることや遵守義務を労使に負わせるということで実効が上がるのだというふうにお答えになっておるのですけれども基準法の中でその他のいろいろな罰則とか何か設けられておるにもかかわらず、かなりの違反件数が現実の問題としてある。こういう中で実効が上がるのだというふうにお答えになっておる根拠はどこにあるのでしょうか。
  39. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 午前中の中桐先生の御質問にお答えをしたのと全く同じことだと思うのですが、労働大臣が定める上限について労使がこれを遵守しなければならない、遵守しない場合には労働基準監督署の指導、こういうものを積み重ねていくことによって、そして同時に経済が拡大をしていく中で、従来その拡大をしてきたパイを、どちらかといえば年金、医療そして介護、老人医療、義務教育、こういうところへ日本国家としては配分をしてきたわけです、あるいは賃金を上げるということに使ってきたわけですが、それを徐々に、中桐先生の御質問にもありましたけれども、将来の方向としては時間の方へ配分していく。  つまり、単位時間当たりの実質賃金を上げていくことによって、時間を短縮しても手取りが減らない、あるいは手取りがふえていくという経済をつくらなければ、これを罰則をかげながらやっていくということになると、結果的に特に中小企業に働く人一人一人、労働基準法労働者一人一人の権利を定めておるわけですから、その一人一人が長期的に、憲法に言う働く権利と義務を行使されなくなるということがあってはまずいので、先生と私と考えておる方向、最終的な目標は決して違わないと思いますが、そういうものへ行くまでのプロセスに現実的なシステムの中で機能しないような状況でやっていくのがいいか、そして機能しないような状況でやっていくと結局労働者一人一人が不利になる、働けなくなるというようなことがあってはならないので、そのあたりのことを考えながら、今おっしゃったような御答弁を申し上げたわけでございます。
  40. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 こういうことを強化していくことは雇用の喪失の方につながる可能性もある、だからトレードオフの関係にあるのだという大臣のお考えなんですけれども、これはまた違った議論の仕方をしますと、もし時間外労働をやらなくて新しい人を雇用した場合には、一・六倍から七倍ぐらいの人件費が必要になる、賃金よりも以上のものが要るわけですから、そういう面から見ますと、今の二割五分とか三割五分とかというふうな割り増し賃金では非常に安く企業側が雇っておるということになるわけでありまして、このことを今議論しようとは私は思っておりません、そういうことからしますと、決して大臣の言われるような、そういうトレードオフの関係になって労働者も不利になるのだということではないというふうに私は思います。  そこで、もしこれで実効が上がらなかったらどういうふうにされるおつもりなのか。やはり千八百時間労働というものを達成していこう、前岡野労働大臣も河上議員の御質問に答えて決意表明をされていらっしゃいます。そういうことからいたしますと、十二年度末を目標にして千八百時間労働を実現するのだとおっしゃっておるのですが、そういうことを実効を上げていこうとすれば、やはり時間外労働基準を実際にどんどん下げていって、そしてそれが実効が上がるようなことをやらなくてはならぬわけでありますから、それらについてどのように大臣としてお考えになっていらっしゃいますか。
  41. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 まず、今の御質問にお答えする前に、トレードオフの関係があると先生はおっしゃいましたが、先生はゼンキンの組合で御経歴をお持ちなので、いわゆる大企業というか恵まれた労働者方々だけではない中小企業の労働者の実態を御存じだと思います。  最低賃金制度というもので我々最低賃金を決めておりますが、私の地元を含めて多くのところの中小企業の賃金というのはどういうことになっているかというと、十五万の基本給とそれから十万なり十五万の超勤とで賃金が構成されております。そして、景気のいいときはしたがって三十万の賃金が入ってくるわけです。しかし、そのかわり今おっしゃっている上限で抑えたら、その賃金をその人たちはもらえません。そして、景気が悪くなると、その超過勤務の賃金が減ってくるわけですね。これは、しかし最低賃金の枠の中にはきちっとおさまっているわけです。そう考えますと、必ずしも私はトレードオフの関係だけじゃなくて、働く人一人一人の手取りの賃金というものもやはり考えてさしあげなければいけないのではないかという気もいたします。  そこで、先生お尋ねである千八百時間、これがもしできなかったらどうするんだと。これは、まずそれが可能になるように、我々は、先ほど来お話しのように、有効需要をつくり出して、経済をやはり発展させていかねばならないと思います。それが可能である状態があるにもかかわらず、しかも、我々は、できるだけ有給休暇や何かの取り残しのないようなまた御指導も申し上げて、何となくとりづらいという職場環境はやはりやめてもらうということをお願いして、そして有給休暇も完全に消化されながら、なおかつ超勤が多いという状況になれば、そこで何らかの強制措置をとるということもあってもいいと思いますし、強制措置をとったときに、先ほどのトレードオフの関係とか、あるいは働く人一人一人の手取り賃金の低下とか、そういうことにならないということはやはり見きわめてやっていかねばならないと思うのですね。  労働時間短縮ということだけの答えを出せと言われるのなら、罰則をもって千八百時間で一発でやればよろしゅうございます。しかし、国を預かるというのはそういうことではなくて、yという雇用維持しなければならない、zという賃金も落ちないようにしてさしあげねばならない。xyzの共通の解を出すということがやはり私は国を預かっている者の責任であると思いますし、それが働く人一人一人の労働者に対する労働大臣としての義務だと私は考えております。
  42. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 大臣の答弁中に時間がどうも超過をしたようでございまして、これ以上の議論ができないわけでございますが、これは働く側にもどうしても、いわゆる超過時間をこなして所得を得たい、そういう欲望もありますから、これは働く側の問題もある。賃金水準の問題もございます。だから確かに、法律で時間を決めたらそれだけでいいというわけではないわけでありまして、我々自身も考えなくてはならない面もその中に含まれておるということで、今後の議論に譲りたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  43. 田中慶秋

    田中委員長 次に、桝屋敬悟君。
  44. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 平和・改革の桝屋敬悟でございます。私も、先般の本会議代表質問をさせていただきましたので、それにかかわる問題も何点か確認をさせていただきながら質疑をさせていただきたいと思います。  初めに、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、労基法に入る前に、政府の総合経済対策、きょう夕方ですか、与党さんの整理が終わって夕方からということでございまして、この内容等については来週にもまた当委員会で具体的な質疑があるようでありますが、その前に確認をしておきたいのです。  先ほど大臣もちょっと言われましたけれども、今回の総合経済対策で雇用対策を出していくんだというお話をいただきました。この段階では、おおむねの規模であるとか、あるいは雇用創出はどの程度を目指していかれるのか、大枠ぐらいはお示しがいただけるかどうか、ちょっとお尋ねをいたします。
  45. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 これは、私一人の一存でもちろん決められるものではなくて、閣議の全員の了解を得なければならないわけですが、雇用対策という項目のもとで、労働省が各省と折衝いたしておりますのは、雇用保険特会とそれから一般会計、双方から資金を補正に計上をいたしまして、例えば高齢者の方を雇っていただく場合の助成を出す年齢を引き下げるとか、あるいは補助率のかさ上げをするとか、それから同時に、新たな求人の開拓を、現在現場の所管の者たちに、待ちの姿勢から積極的に各企業へお伺いして求人を出してくださいということをやっていただいているわけですが、現場の者が苦労しておるわけですから、これを予算的にはっきりと認めてもらいたい、そういうことを申し上げて、そういうものすべて含めて五、六百億の規模になるのではないかと思っております。  ただ、私は何度も申し上げておりますが、私に大蔵大臣と通産大臣を兼務させてくれれば、これは有効需要の管理について私の発言権はあるわけですが、残念ながら国務大臣として申し上げている程度にとどまっておりますので、ここのところが私としては靴の上から足をかくような気持ちであることは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  46. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  現下の厳しい雇用情勢の中で、労働大臣としての取り組みの困難さといいますか、その辺はうかがい知ることもできるわけでありますが、何にしましても大変な厳しい状況でありますので、でき得る限りの対応をお願いしたいと思うのです。  ただ、私がちょっと気になりますのが、これも詳しく議論するつもりはありませんが、前回の雇用保険の改正のときに、雇用勘定の積立金残高の問題もちょっと議論させていただきました。それで、ことしは、財政構造改革法の影響を受けて国庫負担を引き下げる、こういうことがこの前あったわけでありまして、当然ながら、今回は新しい経済対策の雇用対策の中でも雇用保険特会の出動ということになろうかと思うのですが、今五百から六百という、これはもちろん今からの検討だと思いますが、その程度の規模だという話を伺いました。  そうしますと、本当に雇用保険の雇用勘定は大丈夫なのかなと。この前の議論では、国庫の引き下げで三千億とか四千億とかというオーダーで積立金が減るだろうというお話もいただいたわけでありますが、さらに今回こうしたこと、新たな経済対策をされる。当然ながら、景気がいいときに、経済が調子がいいときにしっかり積み立てて、厳しいときに放出するということなんでしょうが、国庫の負担も下がるということもあり、大丈夫なのかなという素朴な疑問があるわけでありますが、その辺の見通しをお示しいただきたいと思います。
  47. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま雇用保険制度についての御心配でございますが、今回、雇用保険法の改正をお願いいたしまして、厳しい財政事情に基づく財政構造改革ということで、当分の間、国庫負担金の引き下げをお願いしたわけでございますが、そのときに申し上げましたように、失業等給付については一切その切り下げ等はやらない、こういうことで制度の運用をしていく、こういうことでございます。  それで、当面大丈夫かという点につきましては二つありまして、失業等給付につきましては、積立金がどのくらいあって、今後どうなるか。それから、雇用対策を行う方はいわゆる雇用安定資金でございまして、これについての資金残高がどのくらいあって、これがどうなるか、こういうことでございます。  先生指摘の方は、積立金、失業等給付の関係でございまして、これにつきましては、国庫負担を当分の間引き下げはお願いをいたしたわけでございますが、積立金の残高が約四兆円程度、現状ございます。それの取りましによって当面対処をしていくということでございますが、いずれにいたしましても、総合経済対策を打つこと等によって一日も早く景気が回復していく、そういうことがあればこれは心配がない、仮にそういうことがなくても当分の間は大丈夫だというふうに考えております。  それから、雇用対策等の財源であります雇用安定資金でございますが、これにつきましては、バブル後の不況対策等に大分使ってまいりまして残高も少ないわけでございますが、それでもなお当面二千億円を超える資金残高でございます。  これから、ただいま大臣お話ありましたようなことであれば、五百億程度はこれを取ります、こういうことになるわけでありますが、こちらにつきましても、現状からいけば当分の間心配はないというふうに私ども考えております。
  48. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この勘定の中で今回の対策を講じても、当分の間、当面は大丈夫だというお話を伺いました。  一つ寝国庫を下げているということがちょっと気になっている。財政構造改革のキャップがかかっている。どうせ来年もキャップを外すとかつけるとかという話があって、どうなるのかちょっとわからないのでありますが、そういう意味では大変心配をするわけでありまして、やはりセーフティーネットとして安定的な運営をこれは目指さなければならぬわけであります。それは大丈夫だ、ましてや今回の経済対策が効果を生めば大丈夫だということなのでありましょうが、引き続きこの部分については今後の財政構造改革の、あるいはキャップ制の動向も私自身はしっかり見守っていきたい、見きわめていきたい、こんなふうに思っているところでございます。  さて、労基法でありますが、先ほどからの議論を聞いておりましていろいろ感じるところがあるわけでありますが、私自身も長い間地方公務員をやっておりましたから労働基準法の適用はなかったわけでありまして、しかし精神は同じでありましょうが。実は勉強しますと大変、質問に入る前にこんなことを言って申しわけないのですが、まことに労働基準法というのは複雑だな、きょうはたくさんの方が傍聴に来ておられますけれども、もちろん今回の改正に深い関心をお持ちであるがゆえにおいでになっているのだろうと思うのですが、私自身、そんな中でこんなことを言うのは不遜かもしれませんが、本当にこの法案は面倒だな、読めば読むほど複雑多岐だなという気がいたしております。  そんな気持ちの中で、きょうから始まるわけでありますから、委員会審議の中で問題点一つ一つ整理をしていきたい、こんなふうに思っているところであります。  最初に、時間外・休日・深夜労働、先ほどから話が出ている点であります。  今回は、今までの三六協定に基づきます上限、現行の適正化のためのガイドライン、これに、労働大臣が時間外労働の上限に関する基準をつくる、そして法的根拠を与えるということなのでありますが、この労働大臣の定める基準、これは本会議でもお尋ねいたしましたけれども、現行の適正化指針を参考として定めるという御答弁をいただきました。基本的には現在の労働省告示の指針の内容というものが基準の中では整理されていくのかな、こんなふうに思っているのですが、大体そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  49. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御提案申し上げております改正法案の中で新たに作成することとなります時間外労働の上限基準でございますが、現在、こういった時間外労働の抑制のためのガイドラインとして目安を出しておりますが、その上限が、年間でいえば三百六十時間となっております。これは、以前四百五十時間であったものが三百六十時間に短縮されたものでございまして、こうした時間短縮の流れを大事にするという意味では、先生指摘のように、現在のガイドライン、これを参考として新たな上限基準を定めていくことになろうかと思いますが、詳細についてはまた中央労働基準審議会の方で御議論を願って定める、こういうことになろうかと思います。
  50. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この資料の中で整理していただいたのですが、現在の労働省告示で出されている三六協定に率いて定められる一日を超える一定の期間についての延長することができる時間に関する指針、これの内容がいわゆる基準にいくのだろうというふうに私は理解しておるのですが、そんなことでよろしいのですか。  例えば、一番気になるのは、別表で一定期間ごとに目安時間等がずっと具体的に出ているわけで、これが基準になる、大体こういう形だろう、多分新しいファクターが入るわけではないのだろうなと思っているのですが、どうですか。
  51. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 この法案作成に当たりましての中央労働基準審議会での審議の経緯等を見まして、労使とも基本的には現在のガイドラインの枠組みを念頭に置いてこの御議論が進んできたという経緯がございます。そういう意味では、年間単位だけでなくて、一定の期間ごとに区切った数値を示すなど、基本的な枠組みは現在の目安制度が引き継がれるのかなと思いますが、中央労働基準審議会で改めて議論がなされることになります。
  52. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 わかりました。いずれにしても、今回は大臣が法的根拠を持った基準をつくる、それは今から審議会でその内容については議論をしていくということであります。  そうしますと、今回の法律では、第三項で、「基準に適合したものとなるようにしなければならない。」という規定を置いて、当然ながら、これを遵守していきましようということであるわけでありますが、ここも、私は労基法については素人でありますから基本的なことをお伺いするわけでありますが、「基準に適合したものとなるようにしなければならない。」こういう規定は、法の仕組みといいますか制度の仕組みとして、あるいはルールとしてどういう位置づけなのか。今までは、目安指針というものを大臣が出していた。今回は、それに法的な根拠を与えた。書きっぷりは「基準に適合したものとなるようにしなければならない。」この「しなければならない。」というのは、当然ながら、これは遵守しなければいかぬ。規定もあるわけですから、そういう意味ではさらに強くなったのかな。  ただ、では逆に言うと、さっきから出ている罰則とかという議論からしますと、法的拘束力があるのかないのかといえば、恐らくないのだろうな。そうすると単なる努力義務かなというと、ルールのレベルとして、きのうも教えていただいたのですが、努力義務あるいはもっと進んだ義務、さらには法的拘束力を持たせたり、あるいは罰則をつけたりという、こういうレベルがあると思うのですけれども、今までの形から、今回、大臣基準をつくる、そしてそれに「適合したものとなるようにしなければならない。」というのは、どういうレベルの差が出てきたのか、具体的にお教えいただきたいと思うのです。
  53. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず、現在実施しておりますがイドライン、目安制度と呼んでいるものでございますが、これはあくまで事実上の時間外労働を抑制するための指導の目安でございまして、法的な意味ではまだ努力義務にも至っていない、こういう段階だろうと思います。  今回、改正法案の中で提案申し上げております時間外労働の上限基準について、適合するようにしなければならないというのは、法律上、明確な遵守義務を三六協定を結ぶ当事者の方に課しておるわけでございますので、もしこれに違反するケースがあれば、労働基準監督署としては是正を求める指導を繰り返しでもしていかなければならない。したがって、あくまでその遵守を求めて指導を繰り返す。こういう意味で、いわば努力義務を超えて、罰則はございませんけれども、改善が厳しく求められる義務である、守るべきことが強く求められる労働基準法上の遵守義務である、こういうふうに理解をいたしております。
  54. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今の局長お話からしますと、今までの大臣の定めていた目安指針、これは努力義務にもいかなかった、こういうお話がありました。それを、今回は遵守義務を法の中で整理をした、こういうことだろうと思うのです。  大分理解ができたような気がするのですが、そういたしますと、例えば、今まででもありました、私もいろいろそういう事例を聞いたことがあります。三六協定の中で、やはり大臣の指針以上の、指針を守らないような三六協定が実際に結ばれているというような事例もあったやに聞いているのですが、上限を超えた三六協定を今後もしやった場合、今までと今回との違い、それはさっき言われた、今までももちろん行政指導はされていたわけですね、努力義務はないまでも。今度は、では具体的に現場では労働基準監督署から大変厳しい御指導を受ける、こういうことになるわけですか。
  55. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のとおりでございまして、今回の上限基準法律に基づく基準でございまして、これを法律に基づく指導として厳しく遵守を促していく、こういう形になろうかと思います。
  56. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 具体的に、今まではどうだったのでしょうか。三六協定、これは届けなければいけないのですね。協定をしたら届ける。その場合、指針の上限を超えるようなものについては、当然ながら届けるときには今までも指導があったわけですね。今度は、法にあるのですよ、こういう厳しい指導になるのでしょうか。
  57. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のとおりです。  今、行政手続法等に基づきまして、いわゆる行政指導というものは、例えば文書によって行うとか、やはり根拠を持って行う姿が求められておるわけでございますが、今回の上限基準は、まさにそういった流れの中で、法律上遵守義務を課し、その履行を促すための指導の権限を労働基準監督署に与えているものでございますので、労働基準監督署といたしましては、逆に言えば、もし守っていないケースがあれば、これを是正させる義務をむしろ負っている、事実上そういう関係になるわけでございますので、今まで以上に、法律に根拠を置いた形で厳しく是正を求めていく、こういうことになるわけでございます。
  58. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 さてそこで、三六協定の実態というのは私も余り詳しくないのですが、中基審の議論の中で昨年のデータあたりがあるやに聞いておりまして、実際に三六協定として届けられたものの中で、上限を超えているような好ましくないものがどのぐらいあるのか。その辺の現場の実態も、データがあれば、お示しをいただきたいと思います。
  59. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 昨年実施した実態調査結果でございますが、時間外労働協定、いわゆる三六協定で、一年の限度時間を決めている三六協定について見ますと、限度時間を定めている平均では約三百四十五時間でございまして、約九一%はこの三百六十時間という範囲内におさめて提出をしてきている。逆に言えば九%近いところがこの三百六十を超えているという状況にございます。  今後、この改正法案を成立させていただければ、こういったところについて万全を期した指導を展開していかなければならない、こういうことになろうかと思います。
  60. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 この実態調査というのは毎年やっているわけじゃなくて、去年やられたわけですね。  それで、届けられているもの、行政サイドが把握しておられる数字の中では九%ぐらいだという御説明であります。さっきから声もありましたけれども、恐らく届けられていないケースも結構あるのだろうというふうに思いますので、把握されている中でも一〇%近くはそういうケースが見当たるということでありまして、このケースは、先ほどから大臣が御説明をされているように、本当に、ある意味では確信犯といいますか、そうせざるを得ない背景もあっておやりになっているのじゃないかと私は思うのです。  もっと視野を広げて、我が国の時間外労働の実態、この辺は労働省サイドのデータもいただいておるのでありますが、六年、七年、八年の動向はあらかた見せていただきました。もし九年のデータもあれば、労働時間の推移、特に所定内、所定外労働はどんな動向になっているのか、お示しをいただきたいと思います。
  61. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘ございました労働時間の推移でございますが、まず、所定外の労働時間について御説明申し上げます。  所定外の労働時間につきましては、毎月勤労統計調査で見ます、いわゆる平均の残業時間でございますが、平成元年には百八十八時間、これがピークとなりました。その後、着実に減少いたしまして、平成六年には百三十二時間、こうなっております。その後、景気の緩やかな回復過程にあったこと等から、平成七年以降増加をいたしまして、平成九年は百五十時間となっております。ここに参りまして、昨年の十月以降について見ますと、経済の状況を反映してかと思いますが、所定外の労働時間は減少傾向にある、こういう状況でございます。  それから、所定内の労働時間でございますが、所定内の労働時間につきましては、例えば四十時間を目指して実施していこうということの大枠が決められました昭和六十三年、この当時が約千九百二十時間でございました。現在は、平成九年の段階で所定内労働時間は千七百五十時間というところまで減少をいたしております。
  62. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今、局長さんの御説明では、所定外労働時間は減少しておるというお答えがありましたか。  ちょっとデータが古いのかもしれませんが、平成九年度の労働省さんの実態の冊子が出ておりますが、これを見ますと、平成八年度の労働時間等がずっと書いてありまして、「最近の景気の動向を反映し、所定外労働時間は近時増加傾向を示している。」というように、今の局長さんの御説明と違いますか。
  63. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 舌足らずで恐縮でございました。  平成六年以降、景気が緩やかな回復過程をたどったこともございまして、減少しておりました所定外労働時間、平成六年百三十二時間でございましたが、平成九年は百五十時間とふえております。ただ、昨年の十月以降、非常に短期的に見ますと、このところ百五十時間から次第に減少傾向にあるというふうに先ほど申し上げた次第でございます。
  64. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 広い視点で見ると、確かに、実労働時間といいますか実際の労働時間は、いろいろなお取り組みによりまして漸次減少の傾向にはあるわけでありますが、しかし、所定外労働時間、時間外労働等を見ますと、これは必ずしもそうはいってないわけであります。  それは、先ほどから議論がされていますように、やはりいろいろな調整機能がこの部分にあるのだろうと思うのでありますが、もちろん経済の動向等の影響も受けるだろうと思いますが、しかし、全体の傾向の中で、やはり時間外労働というのはなかなか簡単に減らないということだろうと思うのですね。それだけやはり悩ましい、難しい問題があるというふうに私は思うわけであります。  本会議でも議論しましたが、我が国の長時間労働の実態というのは、私たちも何とか改善をしたい、そのために実の上がる今回の労基法の改正にしたいと思っているわけであります。そういう意味では、確かに、前の目安指針よりも、今回、大臣基準を示し法的根拠を与えたということで、しかも、それを労使双方で遵守していこうという行き方というのは一歩前進しているというふうに思うわけでありますが、先ほどから議論が出ていますように、果たして本当にそれでいいのかなと。あるいは、実際に三百六十時間という時間数については、聞いてみればそんなに達成が難しい数字でもないのではないか。  そういうふうに考えますと、さらに、今回の法改正を将来へ向かって実を上げるためには、先ほどから議論が出ています、罰則については、私自身もまだこの委員会の中で研究をしなければいかぬと思うのですが、しかし、例えば基準に示すわけですから、それだったら法の中にうたえばいいじゃないかということはだれでも考えることでありまして、それはもう一工夫議論されるのではないかという気もするわけであります。  そんなことで、特に労働団体さんが言っておられる、今回の整理をさらに実効性を上げるために、今の、具体的な時間を法の中に明記するとか、罰則はまた議論がありますけれども、そういう方法も考えられたのではないかというふうにも思うわけであります。  大臣、どうでしょうか。確かに、さっきからの議論を聞いていますと、まことに難しい、またこういう不景気の中でこういう議論をしなければいかぬというのはつらい話なのでありますが、私は組合皆さんが言っていることも、先ほどいろいろなデータを出しましたが、そういう数字からしますとあながち無理でもないような、こういう気もするわけでありますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  65. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生おっしゃるように、今一番雇用が難しいときにこの議論をするということは非常に悩ましいと思うのです。  それから、業種によって、これは好況的な日本社会を成り立たせていくためにかなり違ってくると思うのですね、今の時間は。それらのところの実態も踏まえながら考えなければいけないことでございますので、少し実態的なことを政府委員から答弁をさせたいと思います。
  66. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 時間外労働の上限基準を具体的な数値で示したらどうかという御指摘でございますが、現在の三六協定制度のもとで実施いたしましても、例えば一つは業種で、やはり非常に長い業種というものがございます。例えば運輸交通業、貨物運送業等につきましては、やはりこの時間外の上限基準では抑えることができない一したがいまして、拘束時間等の基準を定めた自動車運転者の労働時間等の改善のための基準というようなものを別につくって指導を展開している、そういった業種ごとの違いというものもございまして、法律上もし一律にやりますと、そういった業種の扱いというものが法的に非常に難しくなる。あるいは今御議論の過程で出ておりますように、年間単位でいえば三百六十時間でございますが、これを例えば月あるいは四週あるいは半年の期間等々での抑えも同時にしていく場合に、例えば一カ月単位で抑える場合には単純に三百六十を十二で割っていいのかどうかとかいろいろな議論が出てまいります。  そういったこともクリアして全体としての基準をつくっていくわけでございますので、一律にただ三百六十という数字だけで上限基準を律していくことはなかなか難しい面がございますので、そこを御理解をいただければと思っております。
  67. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 先ほどからの大臣議論を聞いておりまして、ちょっともう一つ大臣に伺ってみたいのですが、大臣は先ほど、今までは我が国社会は全体として、例えば社会保険でありますとか皆年金でありますとかいろいろな体制を整備してきた、これから将来の労働時間短縮に向かって、ある程度社会保障の分野がそろったから実はそこへこれから行けるのではないか、そこを志向できるのではないか、労働時間を短縮するあるいは時間当たりの単価を上げていくというような作業もこれから考えられるのではないか、こういうお話をされましたけれども、確かにそのとおりなんです。  しかし、小泉さんが大変悩んでおられるように、向こうの分野もまた大変悩ましい分野がありまして、大臣お話はなるほどそうかなと思うのですけれども、聞けば聞くほど今度は、しばらくは、やはり我が国は二十一世紀の初頭ぐらいまではまだ社会保障の分野も大変悩ましい状況が続く、その中で、先ほど大臣が言われた時間短縮に向かって進むのはまだ大分先になるのじゃないかという気もするわけで、大臣がおっしゃったことはかなり先の話ではないかな、こう思うのでありますが、どうでございましょう。
  68. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今、少子・高齢社会、こう言われますが、この問題はやはり、少子・高齢であるならば少子・高齢の人口構成が定着すれば、それはそれで一つの問題は解決するわけですね。今は実はそこのところが定着していないわけなんで、確かにここを乗り切るまでは、先生がおっしゃったような難しい問題を私は否定しません。  しかし何よりも大切なことは、私たち一人一人も、従来のような右肩上がりだけの経済成長、その中で実質賃金も非常に高くなりました。戦争が終わったころ、私は小学校の一年生でございましたが、何を食べていたのか、今の子供は何を食べているのか、何をむしろ食べ残しているのか、それを食べられないために世界の人間でどれだけの人が死んでいるのかということを考えれば、日本というのは、私はやはりこの五十年の間物すごい進歩を遂げたと思います。そのパイの切り分けが社会保障の分野であり、生活水準であり、賃金であり、やはり総労働時間の短縮であったと思うのですね。今後どこへ重点を置きながら、昔ほどは高度成長はないでしょうけれども、何とか穏やかにパイを拡大していく、そのパイをどこへ切り分けていくのかというのは、私はこれはやはり国民の落ちついた選択の問題だと思っております。  したがって、経済は成長しないけれども従来どおりの感覚ですべてのパイを切り分けろということはもうできないわけでございますから、そこのところの意識改革ができるかどうかということが、国家がこれからも落ちついて繁栄し、平和に穏やかに暮らしていけるかどうかのかぎを握っていると思うので、これは党派を超えてやはり国民に政治家が語りかけるべき歴史的な事実だ、そんなふうに私は考えております。
  69. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣おっしゃるとおりでありまして、恐らく二〇五〇年ぐらいまでは我が国の社会保障全体が悩ましい難しい時代を経るわけでありまして、そんな中で、本会議でも申し上げましたけれども、私どもは二十一世紀をやはり豊かさを享受できる社会にしなければならぬ、そういう意味ではやはり今回の労基法の改正というのは極めて大事な一つの選択肢を模索するものだろうと思うのですね。その中で、労働時間短縮まで我が国経済が向かっていくということは、私は今言った二〇五〇年ぐらいまでは難しい、こんなふうにも思っているわけでして、そういう意味では、やはり労働行政施策の中で状況も見ながら取り組んでいかなければいかぬこともあるだろうと思うのですね。  これも議論でありますけれども、やはり時間外・休日労働の時間が長いということは、一つは割り増し率の問題もあるだろう。これも本会議で申し上げました。大臣の方からは、実態調査の結果を見て検討を開始をする、大体建議の内容を踏まえての御答弁をいただきました。私はこれも議論があると思うのですけれども、あえて今後というふうに申し上げましたけれども、本当に長時間労働を解消するというのであれば、この問題も避けて通れない課題ではないかな。  大臣、建議の立場で御回答があったのですけれども大臣御自身が、この賃金割り増し率、もともと今でも大分幅がある設定がしてあるわけでありまして、これからどのようにお取り組みになるのか、大臣のお考えをお聞きしてみたいと思います。
  70. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 一応社会的なおのおのの立場の方を代表された審議会からいただいている建議でございますので、やはり文字どおりこれを尊重しながらやっていくということだと思いますが、割り増し率を諸外国に比べると、日本は確かに先生おっしゃったようなことがあると私は思います。したがって、諸外国に近づけていくことが可能になるような経済的な実態をやはりまずしっかりつくらなければ、先ほど申し上げた、雇用と時間短縮と実質賃金と、この三つを満たすかぎをやはり労働省がお預かりしている。もっと全日本的にいえば、abcからxyzまでの無数の未知数を同時に解かねばならないわけでございますので、その辺のバランスを考えながら考えさせていただくべき課題だと思います。
  71. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 もう一点、これも本会議で伺いましたが、今回の暫定措置の中で激変緩和措置が入っております。これは当然ながら、昨年の国会からずっと議論してきたことでありまして、女子保護規定撤廃に伴う経緯からしますと、私はこれも大事な措置だろうというふうに理解をしております。  やはりもともと出発は、女子保護規定の週六時間あるいは年間百五十時間というレベルから議論は出発をするんだろう、こういうふうに理解をしておるわけであります。特に、本会議の中で、この特定労働者について大臣は、建議を踏まえて、育児・介護休業法の深夜業の制限を請求できる労働者の範囲と同様とすることを基本としたい、こういう御答弁がありまして、育児・介護休業法の深夜業の制限を請求できる労働者、これと同じにするのかどうかという点では、それを基本としてという、これも今から時間をかけて検討されるんだろうと思うんですが、ここのところも、私、ぎちぎちでやっていただきたくないな、こんなふうに思っているわけであります。  先ほど言いましたように、今までの女子保護規定の出発点を踏まえて激変緩和ということであれば、その対象となる特定労働者については、私は、例えば本会議でも出しました妊婦さんの件とかあるいは健康を害しておられるような方々についても細やかな配慮ができるような、そういう検討もしていただきたいなと思っているわけでありますが、この点についての今後の検討の動向をお教えいただきたいと思います。
  72. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘ございました、今回の改正法案の中で新しく設けられます時間外労働の上限基準、これを用いまして、より短い上限基準を定めるという形で、保護規定が解消される際の女性の方々の急激な生活上の変化を防ぐための措置を実施することといたしておりますが、この法案を成立さしていただければ、その段階でこの円滑な実施を目指して内容を固めていくことになりますが、今まで百五十時間という時間で保護されていた方々が現におられるわけでございまして、その方々が、急激な生活上の変化が職業生活あるいは職業と両立させていく上でやはり非常に大きな重荷になるケースがあろうかと思います。  そういったことを防ぐという制度の趣旨でございますので、そういったことを頭に置いて、また深夜業については既に具体的な範囲が定められておる、こういうことも頭に置いて、どういう範囲が適切か、私ども、広くいろいろな方の御意見もお聞きした上で審議会の方にもお諮りして、この具体的内容を決めていきたいと。あくまでその趣旨に即した形で決めてまいりたいとは思っております。
  73. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それでは続きまして、裁量労働制についてお伺いをしたいと思います。  今回の法改正案の中で、現在も対象業務十一業種あるわけでありますが、この項目に一つ加えて、法的には三十八条の四でございますか、重要な決定の場において、企画、立案等そうした対象業務については新たな裁量労働制をという改正の趣旨でありますが、先ほども議論が出ておりましたけれども、この最大ポイントは、労使委員会という新たな要素が法の中に入ってきております。  この労使委員会でございますが、労働者の過半数を代表する者等に指名される、これは具体的にどういうイメージなのかちょっと私も悩んでおりまして、大変に労働組合組織率も低下しておる、あるいは組合のない事務所も大変多い、この過半数代表というのが本当にうまく機能するかどうかということを大変心配をしております。  労働者の過半数を代表する者等に指名されるというのは、具体的には現場でどういうふうになるのか、お示しをいただきたいと思います。
  74. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 労働基準法の中で、この従業員の過半数を代表する者との協定等によっていろいろな取り決めを行うべき部分が出てまいります。代表的なのが三六協定でございます。この際の選び方でございますが、今までは基本的には通達等で示しておりましたが、民主的な手続で選ばれるようにということを指導してまいりました。  ただ、今回の改正法案中央労働基準審議会でのいろいろな論議の過程で、こういった選出手続についてある程度明確な、透明性の高いものにすべきだという御意見がございまして、私ども、この改正法案を成立さしていただければ、その施行と合わせまして、労働基準法の施行規則の中で、一つは、民主的な選挙、挙手、そういった手続によって選ばれた者でなければならないこと、また、その選ばれた方が、例えばよく問題点として私ども指摘を受けて改善指導等するケースの中に、会社の例えば総務課長とか総務部長とか、そういうふうにかなり経営者に近い人が入っていたりするケースがございます、そういう者ではあってはならないこと等々をこの法令上のルールとして規定していこうというふうに思っております。  従業員の過半数を代表する者というのは今後そういった形で選出をされる、こういうふうに考えていただければと思っております。
  75. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 労使委員会の決定というのは、当然ながら労使協定と同様の効果を有するというふうに理解していいですね、この点は。
  76. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 労使委員会の決定は、労働基準法上の扱いといたしましては労使協定と同様の効果を持つ。もし労使協定の内容に違反するような運用が現に行われていれば、その運用はいわば労働基準法違反状態をつくる。こういう意味では全く同じ意味でございます。  ただ、相違点は、労使協定の場合には従業員の過半数を代表する者と単独での協定が結べるわけでございますが、労使委員会の場合はもちろん複数でございまして、その基本的な事項につきまして全員合意で、一致で決議をして届け出をしなければならない。こういう形が相違する点でございます。
  77. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 それで、これは本会議でもお尋ねをいたしましたけれども大臣が御答弁になったんですけれども労使委員会において、法律及び指針に照らして適当でない、こういう業務対象業務とする旨の決議が仮になされたとしても、そのようなことは法律上許されない、ありませんよ、こういうお話をいただきました。  それで、指針に反したような場合、具体的にはどういう対応になるのか。法律上許されないということは、じゃ具体的にどういうことなのか、お教えいただきたいと思います。
  78. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 この新たな裁量労働制につきましては、本社等の部門で企画や調査、分析等の業務を行う人で、なおかつ、事業主がその裁量性が非常に高いために業務上の指示をしないこととして労使間で決議がなされた人、こういうふうに法律上の要件を定めております。これを指針におきまして具体例等を示していく、こういうことになるわけでございます。  そういった意味で、もし指針に違反していれば、私ども法律の定めを超えて対象者を選んでいるという疑念を持ちますので、そこは厳しくチェックされる。チェックした結果、もし、法律の定めを超えて、裁量性のない人あるいは事業主が一つ一つ業務上の指示をしている人が含まれていれば、その人の部分については裁量労働制ということはもちろん運用できないわけでございますので、もし残業等をさせていれば、当然原点に戻って割り増し賃金の支払い等が義務づけられるわけでございますし、もし払ってなければ、その時点で労働基準法違反、こういうことになるわけでございます。
  79. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今のお話の中でもありましたけれども、今回の裁量労働制業務の性質上その遂行の方法を労働者の裁量にゆだねる必要がある、こういうことで、使用者が具体的に指示をすることが困難であるものについて、今までの裁量労働制十一業種については、今までの法律の整理では、当然ながら、「具体的な指示をすることが困難なものとして命令で定める業務のうちから」という規定であったわけでありますけれども、今回新しい業種が入ってきて、事業運営上の重要な決定が行われる事業現場、そして対象業務も、企画、立案、調査、分析、こういう業務について裁量労働制を入れるわけであります。  いろいろな方から話を聞きますと、今まで「具体的な指示をすることが困難なもの」ということで、その困難なものという判断が一つあった。ただ、今度は規定の中で一気に「具体的な指示をしないこととする業務」だという書き方があって、これは一歩踏み込みじゃないか。結局、労使委員会で決定したものは全部この裁量労働制対象になるというようなことではないのかという危惧も聞かされているわけでありますが、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  80. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 従来、専門職種について設けられております現在の裁量労働制については、先生指摘のように、「具体的な指示をすることが困難なもの」というふうに、いわば定性的な要件を課しておるところでございます。今回新たな裁量労働制につきましては、裁量性が高いこと、したがって事業主が業務上の「指示をしないこととする業務」、こういうふうに表現をいたしておるわけでございますが、これは、労使委員会を設けて具体的な業務範囲を確定するに際して、こういう人たちについては業務上の指示をしないんだということを労使委員会で事業主がいわば約束として決議することになるわけでございます。  したがいまして、今までの客観的、定性的な要件としていた部分では単に困難であるものということでございますから、困難でない側面で場合によっては事業主が業務上の指示をいろいろとするケースがありましても、これは、制度そのものを裁量労働制ではないというところまではいかないわけでございますが、今回は、業務上の指示をしないこととする業務として労使委員会で決議いたしますから、これについて事業主が一つ一つ業務上の指示をして、労働者みずからが自主的に労働時間管理をするという制度の趣旨を損なうような業務上の指示をしていれば、その部分については裁量労働制ではない、したがって、原点に戻って、もし残業をさせていれば先ほど御説明しましたように割り増し賃金等の支払いが必要になってくる、そういうところへ戻ってしまうわけでございます。  いわば今回の裁量労働制での表現は、そういった意味では、労使委員会というものを軸にして、事業主に対して労働者が自由を確保するためにそういった表現がとられているというふうに御理解を願いたいと思っております。
  81. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 したがって、この労使委員会の役割というのが極めて大事でありますし、そういう意味で新たにこの労使委員会というものが規定をされたわけでありますが、もう一つ大事なのは、やはり大臣がどれだけ具体的に指針で書き込むかということだと思うのですね。  私も初めてこの法律案を見たときに、例えば対象業務についても「企画、立案、調査及び分析」、「及び」というのは、全部やらなきゃいかぬということですね。企画、立案、調査、分析、これを一人の人が全部やるというケースなのかどうなのかもよくわからぬ、まあ多分そうだろう、「及び」で結んでありますから。こういう規定も、私が読んでも、企画、立案、調査及び分析、多分本社業務でこれをやっている人はいっぱいいるわけでありまして、下手をするとホワイトカラー全部これで巻き込まれるんじゃないか、こういう不安がやはり国民全体にあるだろうと思うのですね。  そういう意味で、私は、指針で事細かに、より国民にわかりやすく具体的に書いていくということが多分必要なんだろうと思うのですが、この指針の内容、相当整理をしていただけるのだろうと思うのですが、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  82. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のとおりでございまして、この法律上、本社等事業の重要な事項を決定する部門での企画、調査、分析等の業務、私ども、こういったイメージにつきましては、みずからが実情を把握して問題を発見し、解決方法をみずからが考えて答えを出していく、こういうことが本人の裁量に任されている形で仕事をしている人たち、これでなければならないという基本的な考え方を持っております。したがいまして、そういった方だから事業主は業務上の指示をしないこととする、こういうことを要件にいたしておるわけでございますので、そういった趣旨に即しまして、私ども、指針の作成に当たりましては具体的に種々の企業の本社等での実情を把握いたしまして、具体的に、できるだけ網羅できるような形で例を明示していきたいというふうに思っております。
  83. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これは、企画、立案、調査及び分析を一人の労働者が全部やっているということが対象業務条件ですか。そこの点もう少し。
  84. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 そこは必ずしも、企画、分析すべてを一人でやっていなければならないという意味ではございません。  ただ、一つの企画業務をするために、どういった企画をするか、何を企画するかというような問題を発見してその企画という業務を遂行する、その遂行方法もみずから考えて、例えば企画書をまとめて答えを出す、こういう一連の業務をみずからの才覚と裁量で実施できるということでございまして、例えば分析の業務でも、それ自体が非常に膨大な、一つの非常にハイレベルの分析業務というのもあり得るわけでございまして、そういった場合には、企画ということが必ずしも入っていないけれども、分析自体の中に相当裁量に任されたハイレベルの分析業務というのはあり得るかと思います。その辺につきましては指針において具体的に明示をしていきたいというふうに思っております。
  85. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 私が頭が悪いのか、すぐ理解ができないわけでありますが、いずれにしても、今御説明があったような業種というのは、本社業務で恐らくスタッフ的なそういう人材だろうと思うのですけれども、そういう方々というのは本当に、今まさに我が国の長時間労働を支えておられる人たちだろうと思うんですね。昼も夜もなく働いておられる、そういう方々でありますし、先ほど御説明があった裁量性の高いということが果たして簡単に言えるのか、むしろ裁量性がない人もいるのだろう、こういうふうに思いますし、この部分はやはりホワイトカラー全般に安易に広げられてはならないという危惧を持ちますので、特に、指針の内容についてしっかり私は今回議論をしていきたいというふうに思っているわけであります。  一つ、指針の骨格はどうなのかというように大臣にお聞きしましたら、大臣の方から、指針の骨格については、対象業務それから対象労働者の範囲、働き過ぎ防止あるいは健康確保のための措置、それから苦情処理体制のあり方、労働者の合意、業務の成果の評価などなど御説明いただきました。  それで、この中であえて言われなかったかもしれませんが、例えば申し出による適用除外とか、あるいは不利益な取り扱いの禁止というようなことも建議の中には入っておりまして、これも当然入るのだろうなというふうに理解しておるのですが、これは確認をさせていただきます。
  86. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘のとおりでございまして、指針の中ではこの裁量労働制の、本人が同意して入る、そういった同意の問題、それから同意をとる場合の手続の問題、あるいは同意しなかったことによる不利益取り扱いの、いわばしてはならないこと等を私ども扱ってまいりたいというふうに思っております。
  87. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 最後に一点だけ、大臣の御答弁の中で、労働契約期間の問題で、新たに三年の部分でありますが、新たにつく者に限るとの表現は、従来の従業員は対象とはしない、新しく入れた人だけだ、こういうふうに私ども理解しておりますが、大臣からもそういう御答弁があったと思うのですが、これは間違いなくそうなのか、再度確認をさせていただきたいと思います。
  88. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回、労働契約期間を定める場合の期限を三年というふうにいたす対象者は、専門的な高度の知識や技術経験等を持って新しい製品の開発等に従事する方と高齢者でございますが、その前半の方の、専門的な高度の技術等を持つ方につきましては、新たにその事業場に雇い入れる場合、しかもその事業場でそういった人材が得がたい場合、こういう要件をつけておりますので、これはまさしく新しく雇い入れられる場合に限るわけで、限定されるわけでございます。  ただ、高年齢者の方につきましては、定年退職後引き続き雇われるというケースを想定いたしまして、そういったケースは三年という期間で雇われることを認めております。
  89. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今始まったばかりの議論でありまして、これからしっかりとこの委員会でさまざまな問題を議論させていただきたいと思います。  きょうはありがとうございました。
  90. 田中慶秋

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時七分開議
  91. 田中慶秋

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。青山丘君。
  92. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私からは裁量労働制が一点、第二点は変形労働制について、第三点は残業時間、休日労働、深夜労働の時間の制限についての問題、三点について、なおしかし、もし前の質問者と重複するようなところがあったらまたその続きを質問させていただくこととして、やえないようにしたいと思いますが、きょうは、あるいは本当の入り口だけということになるかもしれませんが、問題は、運用がきちっとできるに違いないという確信が我々に持てるかどうかということに焦点を絞って、少し議論を進めたいと思います。  なるほど、裁量労働制、これは対象労働者の範囲が適切に決められていく、またその運用は極めて適切であるというような場合は、これは恐らく仕事と家庭生活の調和というのはうまくいくでしょうし、労働時間も短縮することができる、あるいはまた生活の中にゆとりの確立をすることができる、そういう見通しは私も持っているつもりでおります。  問題は、対象労働者の範囲について、これから少し質問を重ねていきますが、運用が適切になされていくのかどうかということが極めて重要なことでして、今回、法改正に当たって、裁量労働制の見直しを進めていこうという労働省基本的な考え方をまず伺っておきたいと思います。
  93. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回の改正法案の中で提案申し上げております裁量労働制でございますが、我が国の経済社会の構造的な変化、またそうした中で労働者方々の働くことへの期待や希望も非常に多様化している。むしろみずからが労働時間あるいは仕事の進め方等について主人公となってやっていく、そういった希望もかなり出てきておるわけでございまして、企業の中枢でそういった気持ちで働く方々について、創造的な自律した能力を引き出すためには、むしろそういった働き方を選択肢の一つとして私ども労働基準法の中で受けとめて、ただしそういった方々の保護の観点からのルールをしっかり基準法の中へ織り込んでいこう、こういった観点に立ちまして、健康確保の面も含めました働くルールを設定いたしましてそういった方々の働くための環境を整えよう、こういった趣旨、ねらいを持って提案を申し上げている次第でございます。  したがいまして、こういった裁量労働制が、先生指摘のように、法案成立させていただいて正しく運用されれば、我が国の長期雇用システムの中で、企業のみならず経済社会全体へ新しい活力を注ぎ込むことになるのではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  94. 青山丘

    ○青山(丘)委員 今お話がありましたように、労働者の自由な発想が仕事の中でどんどん生かされていく、創造的な仕事になっていく。こういうことは非常にいいことですから、正しく運用さえされていけば、これはもっと広がっていくものになっていくでしょう。  そういう非常によい面を持ちつつも、しかし同時に、もしその運用や対象労働者の範囲が異常に膨らんできて、例えば対象労働者とすべきでない職種の人たちまで裁量労働制に組み入れられて、そのことによって時間外割り増し賃金の支払いを免れることができるなどともし事業者が考えるようなことが出てきては、これは本来の趣旨が全然誤った方向へ来て、過重な長時間労働に結びついて、そのことによって労働者の健康が損なわれるというようなことが十分考えられるわけでございます。つまり、積極思考で非常にプラス要素の強い面と、運用を誤れば大変なことになるというマイナス面を持ってきたときに、確実にこの運用が適切になされるのだという保証が取りつけられるかどうかということがキーポイントになってきます。  したがって、この法案を成立させたらその問題に適切に対処していきたいというような立場ですと、これは必ず間違いなく適切に運用されるのだということにはならない。日本の社会というのはそういう点がありまして、大変なプラスがある、けれども大変なマイナスがあるかもしれないというそのままで議論しておったのでは、結果は、こちらのことを担保できないから御破算にしていこう、あるいはこの裁量労働制の部分だけは今回削除していこうというようなことになる可能性があります。結果としてなる可能性がありますので、その辺をよくお互いにわきまえて、いや間違いなく適切に運用されますよ、それから対象労働者の範囲というものは心配がありません、こうこうこういう考え方できちっとやりますということが我々に納得できるかどうかということを、これから、きょうから議論をして結論を出していかなければならない段階だと思います。そういうことで、まず冒頭申し上げました。  事業場の実情に沿って労使の話し合いで対象労働者の範囲を決定する、このことは、私は考え方としてよいことと思います。問題は、対象労働者とすることができる範囲、これは法令上明らかにしておかなければならないことだと私は思います。今回の改正法案におけるその点での措置状況、どんな状況でしょうか。
  95. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 実は、先ほど桝屋先生からお尋ねがございましたところも、先生と同じようなポイントだと思います。調査、研究、企画というそれは、すべてにかかっているのか別々なのかとか、そういうお尋ね、先ほどございました。  具体的にどの範囲にするかというのは、今先生がおっしゃったように御審議の中でかなり具体的に明らかにしていかなければ、やはり先生が室っしゃつているような御懸念を持たれるということは私は否定できないと思います。どのような薬にも効果と副作用がございますし、用いようによっては創業になる場合も御指摘のとおりあります。だからといって、日本経済日本社会が今後活力を持って健康体として過ごしていくために、うまく処方すれば通用する薬を避けて通るということがあってはならないと私は思うのです。  そこで、先ほど来青山先生の御指摘のございましたようなことについては、法律成立後どのような手順、手続で行うことを想定しているかということは事務的に申し上げたいと思いますが、そこのところを示さずに労働基準監督署のチェックだけにゆだねるということは、我々もちろん考えておりません。法律をまずつくって、そしてその法律で大枠をお示しして、それについてのやり方をお諮りしながら、今度は、それに実際の労使の間の話し合いが合っているのかどうなのかというところは、これは基準監督署できっちりとやはり監督官が調べて、法律違反している場合はそこをチェックしていくという作業は必要なんですね。  だから、どこが違反してどこがそのままうまくいくのかということを今示せ、こういう御質問だと思いますので、評価すべきは評価しながら、大変建設的な御意見でございますので、しっかりと受けとめて我々も質疑に臨ませていただきます。  少し具体的に政府委員から手続をお話ししたいと思います。
  96. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今労働大臣から答弁申し上げましたように、この裁量労働制、提案申し上げている中では、法律上限定しております範囲、これを明確にいたしておりますが、事業の重要事項を決定する部門、そこでそういった事項につきまして企画、立案、調査、分析といった業務を行う人たち、そういう人たちであって、さらに業務の遂行手段や時間配分をみずからの裁量で決定するために業務上の具体的な指示を受けないこととなる人たち、こういう人たち法律上範囲を明確にいたしております。  ただ、個々の企業の中で具体的なセクション、業務、これをどうあらわすかということになりますと、個々の企業によって異なってくる面もございますので、そこは労使委員会で全会一致で決めていただく。その際には、業務のみならず、あわせて労働者の範囲も限定していただく。これは、そういった業務でほとんど仕事を任されるということになりますので新規採用者等は当然除かれるわけでございますので、経験年数等に基づいてそこの範囲を決めていただく。  そういうことを労使委員会において全会一致で決めていただくということにしておりますが、やはり決めていただく際のよりどころといいますか、具体的な例示につきましては労働大臣が指針を示すことにいたしております。私ども今後、いろいろな企業の組織等を見ながら、私ども法律上のねらいとしています範囲をそういった実際の組織等に即して明らかにするための指針を作成して公表していきたい。  それに沿いまして労使委員会で決定していただくわけですが、これは、届け出ることを発効要件にいたしておりますので、届け出の段階で、もし指針に沿っていない、あるいはもとに返って法律上の範囲に即していないということであれば、直ちに是正を命じ直させていく、あるいはそのまま実施に入るというようなことがないように、もし実施に入った場合には通常の労働時間管理、いわゆる割り増し賃金等を支払いながらの管理をしていく、こういうことを強く求めていく体制をつくっておきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  97. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私は、法令上の範囲を明らかにしていくべきだと考えています。それは労働大臣からの指針で示します、それは法的な意味合いがあります、こういうことかもしれませんが、そこのところはまだもう少し議論があるところだと思います。  問題は、労働組合があるところならいいのですけれども、そうでないところで労使委員会が経営側の意向に沿うというような形が強く出てくるようであれば、それは労使委員会が適正に運用されているということにはならないわけで、労使委員会が適正に運用されていきますよという、そうした裏づけが決定的、致命的に必要なことだと思うのです。そのあたりはいかがでしょうか。
  98. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 この新しい裁量労働制が的確に機能していくためには、労使委員会が十二分に機能するということが先生指摘のとおり大変大事なことかと思っております。そういった意味で、労働組合が存在しないような事業場におきましても労使委員会が的確に機能するために、一つはやはり労使委員会に入る代表者が的確に選任されることが重要でございます。  そういう意味で、この労使委員会労働者代表の選任につきましては、まず労働者の過半数を代表する人を選挙、挙手等の民主的な手続で選んでいただいて、しかもそれは企業の総務課長とか総務部長とかそういった立場でなくて、真に従業員の立場代表できる人でなければならないといったようなルールを私ども法令上設定していきたいと思っております。そういう過半数を代表する方が労使委員会代表者を指名して、やはりこれも従業員の過半数を超える信任を得た上で労使委員会に臨む、こういう体制をつくってまいりたい。そういうことを通じて、労働組合がないケースでも真に従業員の立場代表できる労使委員会をつくるように万全の配慮をしてまいりたいと思っております。
  99. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 ただいま政府委員が御答弁を申し上げ、先生からも御指摘がございましたように、労使委員会が適切に機能するということは非常に大切でございます。しかし、やはりそれだけではいけないので、実はお願いをしています法律の第三十八条の四は、まず裁量労働制というものがとれる前提として、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」、この業務について、今おっしゃっておる労使委員会において、その他時間であるとか労働者の範囲であるとかというものを決議、合意をして、そして「当該決議を行政官庁に届け出た場合において、」こうなっておるわけですね。  ですから、届け出られた労働基準監督署においては、イの要件を満たしていないようなことを労使委員会、特に労働組合がないようなところが議決をした場合には、これは当然労働基準法の規定によって公権力がそこへ出ていって、それはだめだよということを言わねばならないという仕組みにもなっておるわけです。言うならば労使委員会の歯どめと、それからラストリゾートとしての公権力の介入と、二重の仕組みになっております。  したがって、先生の先ほど来の御質問は、今申し上げた業務の範囲というものがもう少し明確になった方がいいんじゃないか、こういう御趣旨だと思いますので、御審議の途中で具体的な事例を挙げてお尋ねいただければ、また我々のイメージしておることをお話をさせていただきたいと思っております。
  100. 青山丘

    ○青山(丘)委員 労働大臣お話しになったところまで話をきちっと詰めていきたいと思います。  その前の段階で、労使委員会に出席する労働側委員、これが本当に労働者代表した委員になっていくのかという裏づけといいますか措置がきちっとなされなければ、まず労働者側代表と言い得ないのではないかという、最もスタートの段階で非常に重要なことがあります。  私も、実は労使関係というものを長い間見て知っておりますが、労働組合側は極めて経営側の意向というものをできるだけ酌んでいこうという気持ちも実はあります。それから経営側も労働組合の意向を酌んでいこうという心を開いた気持ちが強くあります。そういう関係だったら非常にうまくいくのですけれども労働組合のないところで労働者側代表として一体どういうふうにきちっと、経営側も納得をし、労働者側も納得をしていく代表委員を選んでいくか。  例えば、委員を選ぶべき人をまず労働者の中から選んでいく、その人が今度は労使委員会に出席をする委員労働者の中で選任をする、選任をされた人が労働組合の中で信任を受けて、あるいは選挙なり信任投票なりの形できちっと労働者側から信任を受けた形で労使委員会に出ていくというような、労働側代表であるということが客観的にもきちっと認められるような、そういう具体的な措置がなされていかないと、その次へ来る運用がどうかというところまではなかなか踏み込めないという意味で申し上げておるのです。そのあたりはいかがでしょうか。
  101. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生指摘のとおり、労使委員会代表者は労働者を真に代表する者でなくてはいけませんので、私ども労使委員会代表者の選任につきましては、まず従業員の過半数を代表する方を選挙等で選んでいただく、それで、その方が代表を指名いたしまして、その指名された方につきましても従業員の過半数を超える信任をやはり選挙、挙手等の民主的な手続で得ていただく、こういった形を法令上、労働基準法の施行規則等をきちっと整備いたしまして、届け出の際にもその点は十分チェックする、こういうふうにいたしたいと思っております。  あわせて、そういった方が労使委員会でいろいろと話し合う、その議事録等も常に周知を義務づけていく、こういうこともルールとして整備したいというふうに考えております。
  102. 青山丘

    ○青山(丘)委員 一つお願いをしておきますが、労使委員会が適正に運用されます、心配ありません、そのためにこういう措置を講じたいということをぜひ私の方にわかるように、理解できるように、文書なり説明なりを改めてぜひいただきたい。この議論はきょうだけじゃありませんから、またもう少し掘り下げて、先のところへ議論を進めていきたいと考えております。  例えば、労使委員会が決議すべき事項の中に、労働者労働時間の状況に応じた労働者の健康及び福祉を確保するための措置を講ずるとなっておりますが、具体的にはどのような決議をするということが考えられますか。
  103. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生指摘ございましたように、法律上、この労使委員会は、業務の範囲、労働者の範囲を決めるほかに、勤務状況に応じて健康管理のためのルールを全員合意で決めることを必要要件にいたしておるところでございます。  例えば、把握した対象労働者の勤務状況、これは勤務時間が中心になるかと思いますが、状況に応じまして、例えば代償休日あるいは特別の休日を付与して休ませてあげる、そのためにそういうことをルール化する。あるいは年次有給休暇を法定日数以上に付与することとか、あるいはその年次有給休暇の取得促進をきちっと事業主の方が配慮してとらせてあげる、そういうこともきちっとルール化しておく。  それから、健康管理面では、そのほかに健康診断、これらについても、通常こういった方々については労働安全衛生法上年一回の健康診断が義務づけられておるわけでございますが、こういった方につきまして、例えば法定回数以上の健康診断を実施してあげる、いろいろなそういったことを労使間できちっと合意して、ルール化しておく。こういうことを法律上想定をいたしておるわけでございます。
  104. 青山丘

    ○青山(丘)委員 裁量労働制の場合は、今おっしゃられたように、重要な考慮すべき問題として、長時間労働にならないように、例えば休暇はどれぐらいとるのか、休日はどれぐらいきちっと確保できるのか、健康診断はどういう形できちっと実施していくのかということが具体的に措置されていくという裏づけがやはり必要だと私は思います。  実は、冒頭私は、一つは裁量労働制について、一つは変形労働制について、最後の三点目は例の残業、休日、深夜とここで質問したいと言っておりましたが、裁量労働制だけでもう三十分質問してしまいました。他の質問がきょうはできなくなりますから、改めて、与えられた時間、今は裁量労働制についてもう少し触れさせていただきたいと思います。  実は、一カ月ぐらい前の新聞に、ある大学の先生が調査された内容が新聞報道されておりまして、その内容を読んでおって、なるほどなと感じたことがありましたが、これはある民間のシンクタンクの研究員の方で、こういう発言をしております。自分が決めた時間内で仕事をやりくりさせるよう割り切って働いた、そして、過重な課題を与えられないよい面があって、そういう上司のもとにいたから労働時間を減らすことができた、こういう発言をしている人がやはりあります。  この先生が、七十一名の研究開発部門に働いている人たちにアンケートをとりましたら、実は残念ながら、調査結果によれば、制度導入前の在社時間、会社にいた時間を一〇〇とすると、裁量労働制導入後の在社時間は一〇五・七にふえてしまっている。結局、労働時間は長くなってしまったという方が相当数ありまして、労働時間をふやした人が四割強いた。それで、減ったと答えた人が二割にも満たない。たしか十五人だったと思います。  結果が、これは自分の働く時間を自分で判断できますから、会社にいる自由もあるわけです。そこでもっと研究や企画やいろいろなことで取り組んでいきたいという自由もあるわけですから、私はそれをよくないことという意味で言っているのではありません。  ただ、基本的に働く時間をどうしたら短くできるのかということを我々が考えていきますと、これは結果として裏目に出ているのかな。何らかもう少し成果が上げられる方法が他に講じられなければ、裁量労働制は、一見よい制度だと言われつつも、結果としては働く人たちの健康を害してしまった、健康というのは、肉体的な、精神的な、いろいろな健康を害するケースがありますが、結果としてマイナスを残してしまったというようなことになっていくといけないということを考えるものですから、今の状況で果たして本当に働く時間を短縮することができるのかどうか、そのあたりをどう思っておられるのか。  つまり、このケースは、上司に恵まれていた、過重な課題が与えられなかった、だから自分はやりくりをして働く時間を短くすることができたという一人の発言がありますが、もし上司からいろいろな課題が与えられてくれば、恐らくそれにこたえようという気持ちの強い人たちですから、逃げようという人たちじゃないと思うのですよ。裁量労働対象労働者というのは、むしろ積極思考の人で、もっと頑張りたいという発想の人が多いのですよ。ですから、上司からそういう課題が与えられたら、どんなに自分がやりくりしたって、自分の意識変革をやってみても、結果として長時間労働になるのでないかということも重要な問題としてあります。  仕組みの全体の中でそういうことを防ぐことができるのかどうかという考え方、措置する方針、これをひとつぜひ聞かせていただきたいと思います。
  105. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 御指摘の事例、私ども大変興味深く拝聴させていただきましたが、今先生指摘になりました研究開発職の裁量労働制、これは現行の労働基準法に織り込まれている裁量労働制でございます。  私ども、今般新たな裁量労働制をそういった企業の本社等の中枢部門で働く方々へ適用するに当たりまして、やはり一番気を使いました点の一つが、先生指摘ありましたように、全体として労働時間の短縮なり、あるいはその方が家庭や地域活動へ割く時間というものを自分の判断で生み出せるかどうか、そういう仕組みというものをつくっていかなければいけない。特にそういったホワイトカラーの方々、非定型的な業務を行うということと、あるいは、ともすれば仕事にのめり込み過ぎる、こういう嫌いもあるわけでございますので、そういった部分について私どもどう制度上手当てしていくかというのも、法案作成に当たりましての私どもの重要な関心事項でございました。  先ほども説明しました、勤務状況に応じまして健康管理あるいは福祉のための措置を労使委員会が全会一致ルール化すること、これを法律上要件にいたしたわけでございます。そこには、先生指摘のような問題につきまして、いい結果が出るようにというねらいを私ども込めておりますので、それを受けて労働大臣が定めます指針の中では、先ほど、勤務状況に応じた健康管理面の、休日等をふやすルール化という点を申し上げましたが、あわせまして、そういった福祉関連の措置といたしまして、どうしたら家庭との両立あるいは地域活動へ参加する時間等を生み出せるか、そういった措置について労使がどう話し合っているか、そういったことのよりどころになる指針をぜひ作成して、そういった点についても、我々が届け出を受けた際に十分対応がなされているかどうかチェックする体制をつくっていきたい、こういうふうに思っております。
  106. 青山丘

    ○青山(丘)委員 余りこれだけを本当はやりたくなかったのです、入り口だけ少しずつやりたいのですが、もう一点だけ、これは事実かどうかがなかなかわかりませんが、こういう報道があるということでまず受けとめていただきたいのですけれども、今の調査の結果、人事制度としての裁量労働制に着目しますと、先ほどの七十一名の調査の中で、四十一人という過半数の人々が、私ちょっと計算してみましたら五八%くらいなんですけれども、六割近くの人が現在の制度に不満を持っている、裁量労働制に不満を持っている。研究開発部門の人にしてこうなのかなというのが、私の実感です。それから、満足しているという方が十五人、計算をしましたら二一%ということですね。  このあたりは、一片の情報だけで判断はできないかもしれませんが、もう少し詰めていく必要がある。五八%の方が裁量労働制の現在の制度に不満を持っている、そして二一%の方が満足をしている。ここは、もう少し運用を考えるべきなのか、制度そのものに問題があるのか、そして、どうしたら働く時間を短くすることができるのか、結果として長時間労働にならない措置として仕組みができていくのかということを、これからもう少し詰めていきたいと思います。  それから、昨日、労働大臣に私は、昨年男女雇用機会均等法を成立させましたと申し上げましたね。それから週四十時間労働制を成立させてきました。そのとき私はあそこに座っておりまして、そして、労働委員長として皆さんと一緒に成立をさせてきたのです。  きのうと同じような内容なんですが、日本はまだ先進国の中では長時間労働の国です、これは男の社会の話ですが。男女が平等になってまいりますと、そういう長時間社会の男の役割と同じ役割を今度女性が担っていくということになりますと、それだけでも、これはなかなか大変な負担になってくるのであろうと心配しています。  ところが、家庭に帰りますと、なかなか亭主が、子供の面倒だとか食事の用意であるとか、残っている洗濯をするとか掃除をするとか、あるいは寝たきりのお母さんやおじいちゃんの面倒を父親が、父親というか一家のあるじが見るということをしない国なんですね、この国は、悲しいかな。悲しいかなというか、我々もそういう責任を感じます。  結果はどういう形になるかといえば、女性が仕事から帰ってきて、それこそ必死で急いで買い物をしてうちへ帰って、食事をまずつくって、子供たちの話を聞きながら、また掃除をしながら、洗濯をしながら、おじいちゃんやおばあちゃんの面倒を見ながら、また、だんなは恐らく、おふろから上がってくるとすぐ、ビールを飲みたいの、テレビをつけろの、テレビぐらい自分でつけろ、いやこれは脱線ですが、というような社会なんですよ、日本は、悲しいかな。  だから、そういう我々の社会の意識変革がなくて、社会の仕組みは今のままで女性が長時間労働にそのまま男と同じような形になってくるということが、実は多くの問題、これは健康的な問題でこれから出てくるのではないかということを心配していますと申し上げましたね。  特に、残業時間の上限規制、現行の百五十時間、現行のというか、これからは三百六十時間になりますよという形を、女性の場合、そのままどんと上限はこれぐらいのイメージですというようなわけにはいかないであろう。例えば激変緩和措置とか、何らか具体的な考え方をこれから示していかないと、これも私は最初に申し上げておきたいのですが、この法律を制定してから順次検討していきたいということで、果たして我々がそれで納得ができるかという問題が実はあるものですから、これは休日でも同じです、深夜労働もまさに同じでございます、このあたりを、こうやっていこうと考えておりますから、これならひとつぜひ進めますよ、私はできると思いますよというような大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 男女雇用機会均等法の際の労働委員長として御指揮をとられた青山先生の御指摘でございますが、私の率直な気持ちを申し上げれば、雇用機会均等法の際になぜ女性についての今の激変緩和措置がつかなかったのかということが、私は、実は労働大臣を拝命してから非常に疑問に思いました、正直なところ。そして、日本の社会の現状は、先生がおっしゃっているとおりでございます。  しかし、一番大切なのは、日本の家庭における意識の改革、特に、今先生がおっしゃったテレビのチャンネルからビールからですか、こういうことをまずやはり根本的に変えるという意識を持たないと、それを前提として、女性のための特例というのは法律にはつけておりませんが、介護、育児にかかわる男女労働者とわざわざ書いておりますけれども、実質的には先生がおっしゃったように女性ということになりますでしょう、そういう特例措置だけをつけていれば女性はいつまでも現在の形からは抜け出られないというのを私は非常にやはり危惧をいたします。  私ごとになって恐縮ですが、私の家内も自分で職業を持っております。したがって、私は、政治家の妻であるからという理由で政治家の妻たる義務を果たせということは、いたしておりません。私が早く帰った場合は私がふろも沸かしておきますし、食事もつくってあります。そういう意識をまず前提にしてこのことは始めないと、男の役割はこうで女の役割は伝統的にこうだということを前提に激変緩和措置ということだけを論じるべきでは――女性に対して、私は、それはやや男性のわがままじゃないかという気が、正直なところいたします。  率直なところを言えば、男女が全く均等な状態で能力を発揮して、女性も同じように昇進をし、同じように給与も上がっていくというのであれば、これは競争社会の原理からいって、女性の肉体的、生理的な条件を別にすれば、全く同じ権利を主張する際同じ義務を果たすという前提でなければ、ルールは動きません。  しかし、さはさりながら先生がおっしゃっているような現実があるわけですから、激変緩和措置というものは講じます。それは講じなければならないと思います、現実には。しかし、激変緩和措置があるから女性はまた別だよと言えば、なぜ男女雇用均等法を通したのかというそもそも論にまた戻っていきますので、お互いに国民から選ばれている者でございますから、男女ともにやはり少しずつ意識を変えるという努力政治家として私はやっていかねばならないと思っております。
  108. 青山丘

    ○青山(丘)委員 一つは、あのときの議論も、男女雇用機会均等法のときに上限措置設けるべしという議論は実はありました。そうであるべきではなかったかと大臣が言ってくださったように、ありがたいことで、これはやはり今からでもやらなければならない。しかし、私が申し上げておるのは、女性の労働時間の上限を言っているのではなくて、社会の意識変革も必要でありますから、男女を問わずといいますか男女共通の労働時間の上限規制が必要だと私は思いまして、これからそのあたりの数値についてやはり議論を私はしていかなければならないと思っております。したがって、一点は、大臣もなぜあのときにやらなかったのかと言ってくださったように、これはやはりやっていかなければならないことがまず第一。  それから、女性だけ上限規制を設けるのであれば、これはいつまでたっても男女平等社会とは言い得ないもの、やはり同等の権利を持つわけでまた同等の義務を負うわけですから、男も女もといいますか男女の共通の労働時間の上限規制を設けていかなければいけない。そこまでお互いに大体共通の認識が持てると思います。問題は、どれぐらいの数字にするかということがこれから非常に重要になってきますので、何度かの議論の中で詰めていきたいと思っております。  今考えがおありであれば、述べていただきたいと思います。
  109. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 総労働時間あるいは規定外の時間の上限をどうするかということについては、午前中、桝屋先生の御議論などでもそのことがございましたけれども、やはりこれは、雇用維持し、そして働く人一人一人の実質賃金を少しずつでも上げていくという中でやらねばならないことだと思います。  したがって、労働時間だけを短縮しろということであれば、何か自由に考えて、法令で罰則をつければできます。しかし、計画経済や社会主義で動いているわけではございませんから、市場経済、自由社会で動いているわけですから、その中で働く人一人一人のやはり賃金と雇用というものを守っていかねばなりませんので、その三つの例えば連立方程式の中で解いていく。青山先生も私と一緒で、中小企業の経営者の苦労をなめ尽くされたお宅で大きくなられたのであると伺っておりますので、私の申し上げている意味がきっとよくおわかりいただけると思います。
  110. 青山丘

    ○青山(丘)委員 そうです。実は何でも働く時間が短ければいいと私は決して思っておりません。やはり適正な働く時間は必要ですし、成果も上げなければなりません。  ただ、問題は、その働く時間の特に残業の時間で実効効果を上げているかどうかという場合に、これは恐らく、また改めて僕は資料を求めたいと思いますが、実効効果を上げている国は大体上限規制を設けている国です。なかなか成果が上がらない国もあります、先進国の中には。それは具体的な上限規制を設けていない国のように思います。そういう事例をまた私の方でお示しをするなり、あるいは示していただくことをお願いするかもしれませんが、そういう意味でどこが適正かと、いう問題になってきますので、そのときは、それが適正であるかないかというのは抽象論じゃだめですから、具体的な数値が出てこなければいけない段階が必ず来ますので、その辺をまず私から申し上げておきたいと思います。  最後に一点だけ。家事、育児、介護は主に女性が負っているのが現状でありますが、激変緩和はあくまでも暫定措置、これを講じている間に男女間の固定的な役割分担意識を払拭していくようにしていかなければならないと思います。これは女性局長さんの方から答弁いただけますかね。行政立場でどのように取り組んでいかれようとしているのか。
  111. 太田芳枝

    ○太田(芳)政府委員 お答えさせていただきます。  先生指摘の激変緩和措置でございますけれども、これは女性の時間外労働の上限規制の解消を行ったことから、育児、介護などの家庭責任を有する女性労働者がこうむることとなる職業生活とか労働条件の急激な変化を緩和いたすために、一定期間に限り経過的に設けられる措置でございます。  そして、先生指摘の男女の能力とか役割に関して、先ほど来の御議論にございますように根強く日本に残っております固定的な考え方を払拭していくということは、これは雇用分野における男女平等を実現するために不可欠のことであるというふうに考えておりまして、このためには男女がともに仕事、職場や家庭において、本当に夫と妻が、男と女が対等なパートナーであるという認識を深めてもらうことが重要であるというふうに考えるわけでございます。  このため労働省といたしましては、働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することを目的といたしました先回の男女雇用機会均等の法改正の趣旨が広く浸透するようにその周知に努めるとともに、男女を問わず個々人が家族の一員としてその役割を果たしながら充実した職業生活を営むことができますように、職業生活と家庭生活の両立の支援というものに対しても積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  112. 青山丘

    ○青山(丘)委員 ありがとうございます。  残った分はまた引き続き質問いたします。ありがとうございました。
  113. 田中慶秋

    田中委員長 次に、小林興起君。
  114. 小林興起

    ○小林(興)委員 労働委員会に籍を置く者といたしまして、この委員会におきまして、労働法の根本といいますか基本法であります労働基準法の大改正、このテーマにつきまして質問をさせていただくことは大変名誉でございます。  御承知かと思いますが、私はこの間まで労働省の政務次官をしておりまして、いわば労働省皆さんと一緒にこの改正法案の原案を作成するために多少汗を流してきた者といたしまして、むしろ個人としては、よくこの改正案がまとまったということに非常な喜びを覚えるわけでありまして、余り質問をするのもどうかなということもあるわけでございます。  しかし、それはそれといたしまして、結局、この大改正に従事され、これを通されることになります伊吹労働大臣こそ日本労働法制史上においてその名誉ある地位を占める大臣になるわけでございます。しかし、大臣としては、この間は法律案の趣旨について簡単に説明をされただけでございますから、もっともっと国民の皆さんにこの大改正の趣旨をぜひ知ってもらいたい、野党の皆さんからそういう質問が余りないと、結局その仕事は、与党の我々が質問をして大臣のすばらしい答弁を引き出すのも仕事かな、そんなふうに思って、きょうは質問に立たせていただいたわけでございます。  そこで、早速お伺いさせていただくわけでありますが、戦後五十年、あらゆることが大きく変わろうとしております。もちろん経済情勢も大きく変わる、あるいは世界の政治情勢も変わる、そういう中にありまして、新しい時代に日本がこれに即応し乗り切っていくために、行政においては、御承知のとおり、中央省庁の再編等を含みます行政の大改革が今もう原案として出てこようとしているわけでありまして、そういう行政が変わっていくのも、経済の仕組み、社会の仕組みが大きく変わるからだと我々は思っているわけでありますが、それと軌を一にするかのようにこの労働基準法改正案が出てくるということも、私はある意味で歴史の必然ではないか、そんなふうに思っております。  五十年前といいますと、申し上げるまでもなく日本はまだ復興期でございまして、非常に労働条件も劣悪でございましたでしょうし、また、労働者にとっても生活の保障がないというような、そういうこともあったでしょう。私の子供のころもいろいろな大争議、大ストライキということが頻繁に行われていたことを思い出しますし、間もなくやってまいります五月一日のメーデーも、当時は本当にまさに闘いというような、そういうメーデーであったような気がいたします。  そういうころに、労働者の保護を内容とした、特に工場で働くブルーカラーを中心としたような、そういう方々の生活をしっかり守るという意味を持って制定された労働基準法が、それはそれとして今日まで大きな意義を持っているでしょうけれども労働形態が変わり、あるいは働く方々の意欲、そしてまた一般の国民の意識が大きく変わる中にあって、当然法律もまた改正をしなければならない宿命があろうかと私は思うわけでございます。  そんないろいろな意味を込めまして、ひとつ労働大臣の方から、繰り返しになろうかと思いますが、今度の労働基準法の大改正につきまして、その大きなポイント、特に国民の皆さんにここを御理解いただきたいということをお話をしていただけたらと思っております。
  115. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 小林先生の御質問ではございますが、実は、労働基準法の実質的な審議会への対応、立法への御努力は前政務次官と前大臣がおやりになって、私はまあお食事をされた後の皿洗いと片づけをさせられているというのが率直なところだと思います。そして、きっちりと後片づけをしていただく役割は、私ではなくて、実は国権の最高機関である現国会にゆだねられているわけでございますので、私としては誠実にその趣旨や目的を説明させていただく、かようなことかと思います。  例示を挙げて悪うございますが、適当かどうかわかりませんが、現在、ILOという国際機関でコア・レーバー・スタンダードという基本的な労働基本権の議論が行われていて、それを実は提案しているのはアメリカを初めとする先進国であります。そして、アジアの人たちが小さな子供を働かせているとか、長時間働かせているということは働く者の立場からしていかがなものかということを、真のねらいはともかくとして、表向きは言っておられます。しかし、今から数百年前、アメリカが立国をし、南部の綿花産業を中心にアメリカが発展をしてきた過程でアメリカはどういう労働力を使っていたのかということを考えれば、今昔の感があると私は思います。  それと同じように、先生が御指摘になりましたように、戦後、五十年前この労働基準法が制定されたとき以降、諸先輩が営々と働いてくだすって今日の生活水準と労働条件をやはりつくり上げていただきました。そのありがたい御努力の中で、我が国の経済社会というのは大変な構造変化を遂げてまいりましたし、また、働く人たちの働き方への期待だとかあるいは希望というものも多様化できるという余裕ができてきたと思います。  しかし、どんなに世の中が発展をし、どんなに価値観が多様化しても、働く者の基本的な権利と申しますか人権というものは、やはり労働基準法の定めるところにより、国家が最終的な責任は負わねばなりません。しかし、その範囲の中で、多様な希望、多様な期待にこたえていくという道を閉ざしてはならないと私は思うのであります。  当然、今回の労働基準法はそういう考え方にのっとって改正作業が始まったと思います。したがって、新しい方法、新しい道へ踏み出すということは、だれしも少し後ずさりをいたしますし、怖いものであります。だからといって、新しい道に踏み出さなければ、進歩はありません。しかし、間違った道へ踏み出せば大変な奈落に落ちるということをわきまえつつ、あらゆる薬には効果と副作用がある、その副作用を最小限に抑えて効果最大限に引き出す、そういう気持ちで実は法案を私はつくらせていただきました。  したがって、欠点だけを過大に評価して新しい航海へ踏み出すことを恐れるのではなく、私は、ここはやはり戦後の先輩が努力をしてこられて、新しいものにチャレンジをしてこられた気概を私たちが持って、多分二十一世紀には、日本で働く人、そしてその果実を享受する一般国民が、活力のある生き生きとした国であるための働く者の基本的な憲法を、少し時代に合うように変えさせていただきたい、これが今回の、言うならば歴史の流れだろうと思います。
  116. 小林興起

    ○小林(興)委員 今大臣の方から大きな流れについて御説明がございました。  普通、労働関係法律改正といいますと、ぜひ頼む、しっかり頑張ってくれ、そういう陳情といいますかお話が多いのでありますが、今回は、結構いろいろなところから、心配だとか、改正は待ってくれという声も、実は私のところまで陳情に来られる方がいらっしゃいます。きょうも労働委員会としては珍しく大変大勢の方の傍聴人もいらっしゃいますけれども、ひょっとしたらそういうお気持ちで来られているかもしれないわけであります。  というのは、今大臣言われましたとおり、非常に新しい概念が入っているために、心配がある、どういうことなのか、あるいはその原則は正しくても運用によって思わぬことが起こるのではないか、未知なものに対する不安、また、運用ですから、はっきり言えば悪用みたいなことをされてしまったらどんな制度も大変なことになるわけですが、そういうことになったときのおそれ、歯どめがかかっているかどうか。恐らくそういうことで、こんなことを委員会でしっかりと質問をして、改正するならするでも、歯どめをかけてくれという要望ではないかなと、私はそういう陳情の方の御意見を受けとめさせていただいているわけでございます。  しかし、逆に言いますと、そういう今回の改正をしなければならない経済情勢の変化、あるいはそういうことを望む国民の方々、あるいは働く方々というもの、多くのそういう声があって改正に踏み切っていっている。今大臣言われました、効果最大限にする、そして、どんな制度も問題もありましょう、副作用は最小限にするのだということで、その辺のところをしっかりとこれからも、いろいろな方がまた質問に立とうと思いますけれども大臣、当局のお答えを聞きながら、そういうことを確認していくのが今回の委員会の大事な仕事かな、そんなふうにも思っているわけでございます。  そこでまず、この問題にすぐ入る前に、労働省は、昨年やっとずっと内外に公約してまいりましたいわゆる週四十時間労働制にするのだと。なかなか例外、例外、例外という形で日本の場合は難しゅうございましたけれども、やっと先進国並みに週四十時間労働制の完全実施ということに踏み切ることができたわけでございますが、それを実施されまして、担当局長の方にお伺いしたいのですが、これがきちっとその約束、実行が行われているのかどうかということをちょっとお伺いしたいと思うのです。
  117. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 週四十時間労働制につきましては、いろいろ御配慮いただきまして、昨年の四月から、中小企業を含めまして、全面実施に入ることができました。  私ども、きめ細かい指導や援助を重ねることによってこれの完全定着を図っていく、こういう任務を負っているわけでございますが、昨年の四月に実施いたしまして、その後、五月、六月までに調査した結果によりますと、この週四十時間労働制の普及状況、この四月一日の一年前はまだ三十数%の達成率でございましたものが、八割弱のところまで達成率が上がりました。おかげさまでかなりの勢いでこの週四十時間制の定着が進んだというふうに考えております。  ただ、逆に言えば、二割強の未達成事業場がなお残っているという状況もございます。私ども、この二年間は、きめ細かい指導、援助で完全定着を図るというための二年間として設定いたしましたので、この二年度目に当たることしが残りの二割、これはかえって零細企業が多くてかなり難しいわけでございますが、全力を挙げてこの週四十時間制の定着、週休二日制が我が国の一般的な働き方として定着するように、引き続き努力をいたしたいと思っているところでございます。
  118. 小林興起

    ○小林(興)委員 週四十時間労働制が定着しつつあるということは大変私は結構なことだと思っております。そういう先進国並みの労働条件がきちっと確保されるという安心感といいますか、そういうものがあって、また新しい時代に対応する人たちに対する考え方というのが出てきてこそ、安心して今度の新しい法改正にも取り組めるのかなというふうにも思っているからでございます。  そしてまた、労働省は、これは平成十一年四月実施ということにはなっておりますが、男女雇用機会均等法、こういうことによって、もちろん女性の重要な母性保護というようなことには気をつけながらも、意思、意欲があれば男女完全に一緒にしていこうという、いわゆる女子の保護規定は廃止するわけですけれども、しかし、女性に非常に働く機会を与えていく、昇進のチャンスも与えていく、そういう先進国並みの法体制も整備したわけでございまして、そういうことをし終えた後、いよいよ今回の労働基準法改正に踏み切ってきたのかな、そんなふうに思うわけでございます。  この法改正を実行する前の、特に現時点において、我が国の労働法というのは世界の先進国と比べてどんな感じなのか、ある意味では最も進んでいるのか、またこういう水準にあるとか、そういう主要国との比較みたいなことについて、ちょっと大臣の御感想を伺いたいと思うのです。
  119. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 我が国の労働法の体系、労働基準法、そういった労働者の保護法規から労働保険関連法規、そのほか労使関係を律する法制、幅広くあるわけでございますが、例えば労働基準法制について見ますれば、先進国と比較する際に、いわばアメリカ、イギリスタイプの労働法制と、それからヨーロッパの大陸系の労働法制と大分内容を異にいたしておりまして、一概の比較はできませんが、我が国の目下の労働基準のレベルというもの、大体におきまして諸外国に比べて遜色のないところまで来ている。  ただ、先ほど来、午前中も質問ございましたが、例えば割り増し率についてきちっと合っているか、まだ諸外国に比べて差があるのではないか、こういう御指摘がございまして、目下懸案事項として審議会においても今後議論していこう、こういう課題も残っていることも事実でございますが、そういった状況にございます。  そのほか、労働保険その他の法規につきましては、これはもう諸外国に比べてかなり遜色のないところにある、こういうふうに申し上げることができるかと思っております。
  120. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 ただいま政府委員がお答えをしたことで大体の概要を、先生よく御承知のことですから御理解いただいていると思いますが、特に社会全体として見た場合の社会保険料と税の負担、これに対応する雇用保険のあり方、医療、年金、老人医療のあり方を単純比較しますと、税負担率が極めて日本の場合はまだ低うございます。そして、特に所得税における課税最低限は非常に高いです、日本は。そういう状況の中でこれだけのソーシャルウエルフェアというものを準備できているという国は、私は世界には類がないと思っています。それは、やはり高齢・少子時代に入って、さて、それがどうなるのか、やはり先人のつくってくだすったものを守っていくということで、今大きな改革が私は行われている一つの理由だと思うのですね。  私は、何もグローバルスタンダードという美名のもとでアメリカ型の形を入れてくるということが決していいことだとは思っておりません。日本には日本の伝統と文化がございますし、私は、終身雇用制という日本のよき伝統文化はできるだけやはり守っていくべきだと思います。ただ、それを守りながら、この国際的な競争、特に労働力のコストパフォーマンスの上で、アメリカのような派遣労働者中心型の経済に勝っていくためには、日本人のレベルがよほど立派であるかどうかということに一つかかっているわけですね。戦後今までは、それが立派であったから勝ち抜いてまいりました。ここに一つのかぎがあると私は思います。  もう一つは、今度は、働く方々の場合も、おかげでここまで豊かな社会になって、女性が社会に進出できる余裕も社会に実はできてきたから女性は社会に出ておられるわけですね。そして、必ずしもフルタイムで働かなくて、パートでやりたいという方もいらっしゃいますし、終身雇用ではなくて自分の能力を買ってもらいたいのだという方も出てこられる余裕のある社会になった。そういう方々に選択の自由を政治行政が閉ざしておくということだけはやってはいけない、これが私が今回の法律の中でぜひ考えていただきたい部分でございます。
  121. 小林興起

    ○小林(興)委員 経済大国日本ということが言われますけれども大臣指摘のとおり、非常にいろいろな意味でレベルの高い国になったということは、もちろん生活水準も非常に高い、生産性が上がっている。そして、これを維持し、さらに発展をさせていくためには、もちろん企業にあって経営者が努力しなきゃいかぬ、これは当然でありますが、しかし、これまでの経済発展も、大臣指摘のとおり、働く人が、いわゆる労働者と言われる人たちが非常に頑張って、勤勉で、そして一生懸命やってきたから今日の企業があり、日本がある、経済大国日本を支えているのはまさに国民全体だということが言えるわけであります。  しかし、どんどんいわゆる経済サービス経済化が進んで、これまで工場で働く人、第二次産業に従事する人が多かった経済から、サービス業と言われるような、オフィスで、言ってみればホワイトカラー、ブルーカラーがホワイトカラーへ移っていく、そういう経済の大きな変化があり、そこでまたうんと生産性を上げなければ経済大国日本を保たせることもできないということになってまいりますと、恐らく、工場できちっきちっと何時間働けばどのくらい生産ができてというような仕事の形態から、とにかくアイデアを出せ、企画をよくしろ、それがうまくできればいい、短い時間でいいアイデアを出すこともあれば、うんと時間をかけてもなかなか出てこない、また、時間が、別に朝何時から何時までと規則正しい時間でやった方が必ずしもいいとは限らないというような、新しい労働形態も出てくるということかと思うのです。  そういう人たちに一二〇%自分の能力を、持てるものを十分に発揮させて、そしてすばらしいアイデア、企画を出していく、そういう人たちには、前から言われております裁量労働制、今までのような、工場で朝何時から何時まで働く、そういう労働形態ではない、自分で自分を律し、そしていい成果をしっかり出してもらって、働いた時間も自分たちで決めていく、そういうことが必要ではないか、そんなことが言われておりましたけれども、とうとうこの裁量労働制を本格的に今度の労働基準法改正案の中にうたいとげてきたのは、私はこれからの時代に非常に重要な改革だと思っております。  しかし、もちろん、何が何でも全部裁量労働制などということになりますと、法案もそんなことになっておりませんけれども、今までのきちっとした労働者権利の保護という観点から問題にもなりましょうし、またそういうことでは不安だという人も出てくるでしょう。したがって、何でもそうですけれども改正というのは、新しい分野については、まずはそろそろと入っていく、そしてこれまできちっとやってきたところについてはそれで大丈夫だという安心感等をないまぜにして出ていくことが必要だと思うのです。  そんなふうに多分なっていると思うわけでありますが、今度取り上げております労働基準法での裁量労働制の骨格について、担当局長から詳しく御説明いただければと思います。
  122. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今御指摘ございました裁量労働制、私どもこれから、グローバル化した経済活動の中で新しいものを生み出し、あるいは新しい知識や技術を駆使して世界に出て経済活動を展開していく、そういうために、非常に創造的あるいは新しい発想というものが求められている時代の中で、この裁量労働制というものを何らかの形で働き方の選択肢の一つとして基準法の体系の中に位置づけていくことが必要であるという基本的な認識をいたしております。  ただ、先生から御指摘ありましたように、その枠組みがすべて裁量でいいのか、あるいはそれが乱用されないか、こういうことを防ぐための手だてが同時に施されていなければならないという考えで枠組みを作成いたしました。  その結果、提案申し上げています法案の骨組みは、まず、企業の重要部門を決定する部門に限られる、いわゆる本社等に限られるということが一つでございます。そこで重要事項についての調査、企画、分析、そういった業務を行い、また、裁量性が高くて、業務の遂行方法や時間の配分が、事業主から指示を受けて行うのではなくて本人の判断に任されている人たち、こういう人たちに限るということがもう一つでございます。  それをさらに具体的には、企業の中に賃金や労働条件全般について調査審議する労使委員会をあらかじめつくっておいていただいて、そこで全会一致でそういう方の範囲を具体的に特定して、健康管理や苦情処理等についてもあわせてルール化を図っておく、こういうことを裁量労働制を取り入れる場合の要件といたしたわけでございます。  こういうことがうまく機能するように、もちろん労使委員会の活動にも期待し、また私ども労働基準監督署の窓口においても十分チェックと、そういうものが十分正しく機能するようにいろいろ指導や援助を申し上げながら、この新しい裁量労働制というものが企業活動、さらには経済全体へ新しい活力を注ぎ込む役割を果たすように育てていきたいというふうに思っておるところでございます。
  123. 小林興起

    ○小林(興)委員 確認でございますが、法改正が行われる前の裁量労働制について、現行法はどのように対応しているわけですか。
  124. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 現在の裁量労働制は、対象者を、やはり事業主が業務上の指示をすることが困難な業務、こういうことにいたしておりますが、その範囲は、研究開発職その他専門的な職種として、専門的な職種を限定いたしておるところでございます。そういった分野につきまして、これは労使委員会という形ではなくて、今までの裁量労働制は、労使協定によってそういった範囲を決めて実施しますという形でこの裁量労働制実施できる仕組みになっておりますが、今回はホワイトカラー、それの中枢部門で働く人たち、したがって、専門職種と違って、非常に非定型的な業務を行うケースが多いということで、非常に慎重な枠組みを私ども設定いたしたところでございます。
  125. 小林興起

    ○小林(興)委員 そういたしますと、ある企業があって、その頭脳、中枢の作戦を考える部門がある、そういうところに配置される人は大体は裁量労働制、そういうふうにしてもらって、自分の自発性とか自律性、想像力をうんと発揮させてもらいたいと思うタイプの人を持ってくるのでしょうけれども、不幸にして、そうでない人がここへ入れられてしまったというときに、その全体の部門、課とか部ぐるみ、そういうことになるのか、その中のまたAさん、Bさん、Cさんと選んであげて、私はとてもという人は外すような仕組みになっているのか、その辺はどうなっているのでしょうか。
  126. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今御指摘ありました点につきましては二つの道がございまして、一つは、企画や調査、分析等の業務を行う部門というふうに限っておりますが、そういった部門の中でも、全くの事務補助者から、本当に任されて企画等の業務を行う方まで含まれておりますので、そういった事務補助者、いわゆる定型的な業務を行って全体の業務をいわばサポートしていくような人たちについては、これは新しい裁量労働制はなじまないということを法律上明確に表現をいたしておるわけでございます。それからもう一つは、そういった部門の中に組み込まれているけれども、何らかのいろいろな個人的な状況等があって裁量労働制ではなくて通常の労働時間管理で働きたいという方、あるいは逆に裁量労働制でやっていきたい、いろいろな希望があるかもしれません。  この点につきましては、中央労働基準審議会でのこの制度設計の議論の中でも、そういった方については本人の同意をとる、あるいは途中でやめるというようなことについて、労働大臣法律に基づいて策定する指針の中でそういった手順をうたい込む、こういうことにすべきである、こういう御意見もいただいておりますので、そういった形でそういった方たちの対応にも配慮していきたいというふうに思っております。
  127. 小林興起

    ○小林(興)委員 新しい制度でございますので、大臣の先ほどのお話ではございませんが、効果最大限にし、そして副作用は最小限にするように、運用に当たっても、非常にしっかりと、やはりこれを法律改正に入れてよかったと言われるような、そういう裁量労働制を実現して、我が国の経済あるいは企業の発展に資していただきたいと思います。  質問時間が大分なくなってきたわけでございますが、今度の法改正の中で、時間外労働につきまして上限基準労働大臣が定めることにしたというのがございました。先ほど青山先生ですか、これを定めてある国は発展する国だというようなことを言っておられましたけれども、特にここについて、今までは何となく指針というような形で、行政当局があいまいにといいますか、そういう感じでやってきたような気がするのですけれども、ぴしっと大臣が定めることができるとしたことについて、特に御説明があれば伺いたいと思います。
  128. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御提案申し上げております法案の中では、時間外労働の抑制を図っていくために、今まで法律に基づかないガイドラインであったものを、法律上、労働基準法の中で労働大臣が時間外労働の上限に関する基準を定める、それに基づいて労使はそれを遵守するように、適合するようにしなければならない、また、行政におきましても、それについて指導を加えていく、こういう一連の体系が盛り込まれたところでございます。これに基づきまして、今までと異なりまして、法律に基づく基準法律に基づく指導、こういう形でその遵守を徹底させていく形にいたしたい、こういうふうに思っております。  さらに、この時間外労働基準は、来年の四月一日から女性の方の保護規定が解消されることになっておりますが、それに当たりまして、この時間外の上限基準を使いまして、家庭責任を有する女性の方につきまして、希望すればこの上限基準を短く設定したものを適用する、こういういわゆる激変緩和措置をこの法律の中で盛り込んで予定をいたしておるところでございます。この時間外上限基準を用いて激変緩和措置を経過的に実施して、家庭責任を持つ女性の方々が保護規定が解消された後の職業生活の設計等を時間的余裕を持って準備できるように配慮しつつ、この経過措置が終わるまでの間に、今度は家庭責任を持つ男女労働者の方について時間外労働の抑制策について効果的な方法を検討し、措置する、こういうことも今回の改正法案に盛り込ませていただいているところでございます。
  129. 小林興起

    ○小林(興)委員 まだまだ質問をさせていただきたい点は多数ございますが、時間となりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。  今度の法改正を一日も早くスムーズに、また国会を通ることによりまして、労働省が、新しい時代にあっても、引き続き我が国で一番重要な働き手であります労働者権利の保護、あるいは生活の向上のためにお役に立っていただきながら、また、日本の発展のために本当に労働行政が大きな役割を果たしているという認識を国民の皆さんにしていただくように、労働大臣の陣頭指揮のもとに今後とも頑張っていただきますことを御期待申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  130. 田中慶秋

    田中委員長 次に、栗原博久君。
  131. 栗原博久

    栗原(博)委員 自民党の栗原博久でございます。  ただいま我が党の小林委員から、今回の労働基準法改正の重要性について極めてわかりやすくまとめた質問がございましたので、その重複を避けながら質問を進めさせていただきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いします。  我が国の今日のこの繁栄の礎はやはり、戦争に負けまして、大きな苦しみの中から国民が戦後の復興を誓い合い、その復興中の努力、あるいはまた昭和二十五年の朝鮮動乱などによる需要の拡大などが相まって、経済が急テンポに実は高まってきたと思うのでありますが、その中におきまして、この法律の制定がされ、また改正がなされてまいりました。  その法の対象は、御承知のとおり、脆弱な経済、あるいはまた劣悪な労働条件の中で汗を流して働く工場労働者方々、その方々のやはり労働権利を守ろうということを主たる目的としてこの法律が制定されたものと私は実は理解しております。この間、国民のたゆまぬ努力によっての経済の拡大、あるいはまた労使関係の協調などが相かかわって、幾度かの改正を見て今日に至っていると思うのであります。  今回のこの改正は、昭和二十二年の制定以来五十年目であり、極めて大きな改正であると私は思っておりまして、その内容を見ますと、まさしく労働の質の転換の時期である、あるいはまた、国際競争力に対応して、要するに国家規制を脱却するというような観点もあると思います。  また、あわせて私は思うのでありますが、少子化、高齢化社会を迎えておりますから、そういう中において、いかにして労使が今後協調し合って日本労働力を確保するか、そういう観点からこの法律改正があるのではなかろうかと自分なりに思っておるわけであります。来年の四月一日からこの法律と同時に、これが制定されれば施行されるわけでありますし、男女機会均等法が施行され、あるいはまた育児・介護法も同時に施行されることになっておるわけであります。  この法律を見ておりますと、労働契約期間の上限を一年から三年に延長する、あるいはまた、労働時間管理でホワイトカラーなどに自主性をゆだねて新しい制度をつくるというようなことで、要するに現下の経済社会情勢にふさわしい働き方のルールをつくるのだ、そういうものが見えておると私は思っております。  あるいはまた、労使の三六協定、時間外労働協定で時間外労働の抑制や、あるいはまた育児、介護を行う女性の方々のための女子保護規定の解消とその措置なども見られるようでありますし、あるいはまた有給休暇の充実ども図られているやに思っております。あるいはまた、週四十時間労働を守りながら、弾力的な運用の中で労働時間制度の裁量制など、職業生活とそれから家庭生活、大変調和をとりながらこの制度を進めていくような環境が、この法律の中に私は見えるのであります。  ただ、この法律をつくるに当たりまして、今までの中央労働審議会の中間取りまとめの建議の中を見てみますと、労働者側と経営者側の意見が大分食い違っている。例えば後ろには多くの方々が、恐らく労働者側方々のお立場で傍聴されているかと思うのでありますが、そういう中での極めて関心がある方がたくさんいる。道路を歩いていますと、いろいろなビラを我々はちょうだいするわけですが、確かにそういう食い違いもあったと思うのです。これを踏まえて今回の法律をおつくりになったと思うのですが、その接点といいましょうか、そういうものをひとつお聞きしたい、第一点。  もう一つは、裁量労働制についてでありますが、今回、この改正の中で私は大きなポイントだと思っておるのです。ちょっと先ほど私の考えも述べましたけれども、当然これには社会的な情勢の変化があると思うのでありますが、その変化をどのように見詰めながらこの改正を行ったか。この二点を御質問をさせていただきたいと思うのであります。
  132. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回御提案申し上げております労働基準法改正案の策定に至りましては、既に一昨年来、中央労働基準審議会議論が始まりまして、一たん八月の段階で中間的な報告を取りまとめ、それを軸にしてさらに検討を重ねて最終的な建議、そして法案の作成と、非常に長期間の議論をしていただいたわけでございます。  御指摘ございました、その間で労使意見が対立したり、労働側意見と現在の法案とにやや差がある点等についての接点は、この法案の中で、一つは、契約期間の上限の問題、先生も御指摘ございました。従来、契約期間を決める場合は一年、ということが原則になっております。  私ども、今回の改正では、この原則はそのままでございますが、新しい製品を開発したり新しい技術を開発したり、そういったことのために、社内にいない人材を、国の内外からエンジニア、研究者等を採用してくる場合に、その契約期間を複数年、三年というふうに上限を延ばしていく。また、定年退職後の高齢者につきましても、ある程度まとめた期間その能力を活用できるような仕組みとして、これも三年にする、こういった改正をいたしました。この点につきまして、こういったことが不安定雇用労働者をふやすことにつながらないかという御指摘が、労働側の方から御懸念、御意見が途中でも非常にあったわけでございます。  私ども、この点につきましては、対象者を今御説明しましたような範囲に限るということにいたしているのと同時に、こういった高度の知識や技術を持つ方につきまして、単に高度というのではなくて、労働大臣が告示でその高度の基準を一般の方へ公表できるような仕組みにしようというようなことで、現在の法案の内容に至っておるわけでございます。  それからもう一点、時間外労働の上限に関する基準を、今回の法律では、労働大臣が定め、労使の方に遵守義務があり、それを指導していく、こういう体系がつくられたわけでございますが、この時間外の上限基準、三六協定を定める際の上限の基準になるわけでございますが、これにつきまして、ある程度もう少し法律上の規制力を強める。例えば罰則等をもって具体的に規制できないかという御指摘労働側委員からございました。  私ども法案作成過程で、この点につきましても、審議会でのいわば最大の論点の一つでもございました。罰則をもって画一的に規制することにつきましては、我が国の経済活動、いろいろな局面に各企業が対応していく中で、一律に罰則をもって規制することはなかなか難しい。また、罰則をもって規制した場合に、残業、時間外労働がある局面でできない、そうすればそこは人をふやして対応する、そのかわりそういう局面が過ぎればその人を減らす。こういう形でのいわばレイオフ的なものが出てくることが懸念される。そういったことから、罰則ではなくて、こういった時間外労働の上限基準というものを決めて、労使に遵守義務を課し、行政が的確に指導していく、こういう形で現在の法案に至っているものでございます。  それから、項目が多くて恐縮でございますが、一年の変形労働時間制という制度が、これは以前から労働基準法の中にございます。この点につきましても論議があったものでございますが、一年の変形労働時間制は、年間の業務の繁閑を活用いたしまして、忙しいときにはある程度所定労働時間は伸びるけれども業務があくときにはまとめて休む、あるいは勤務時間を少なくしていく、こういうふうに業務の繁閑を活用してめり張りのきいた効率的な働き方をすることによって年間の総労働時間を短くしよう、こういう観点からの改正を織り込ませていただいておるわけでございます。  そのために、こういう制度を使う場合の年間の休日日数をふやす、こういうことを新たに要件にする一方、忙しいときの山を少々高くできる、こういう改正もあわせて行っておるわけでございますが、この点につきまして、やはりピーク時の山を高くするというような部分については、それが長期間に及んだりすると、健康あるいは家庭との兼ね合いというようなことでいろいろ問題が出やしないか、こういう御指摘労働側委員から強くいただいているところでございます。  それから、御指摘ございました裁量労働につきまして、その運用の仕組み等について万全かどうか、こういう御懸念が労働側からもございまして、法律上もそういった点を配慮しながら、いろいろ慎重な枠組みを用意して提案を申し上げて、御議論を今お願いしている。大体そんな点が主要なポイントになろうかと思っております。
  133. 栗原博久

    栗原(博)委員 ありがとうございました。  せっかく伊吹労働大臣がおられますので、各先輩の先生方がこの法律の細部について御質問されると思いますので、ちょっと角度を変えて御質問をさせていただきたいと思います。  と申しますのは、外国人もいろいろの名目で日本に在留されておりますが、労働力を提供してくれることには間違いない方もたくさんおられるわけでありまして、我が国に約百四十万人の外国人が居住されておる。この四半世紀に約二倍に外国人の方がふえておるわけであります。  そのうち、ことしの一月一日付という資料でございますが、不法就労が二十七万六千八百十人おられる。最近、この三、四年減少をしている。それは、法務省の対応あるいは労働省の対応が、大変的確な対応をしているということもありましょう。あるいはまた、我が国の経済の問題あるいはまた雇用条件がちょっとマイナスの方に向いておりますから、そういうことで外国人も減っているということで不法就労も減っているかもしれません。  そこで、この二十七万人有余の不法滞在者の中に、短期の滞在が二十万六千六百二十人、これが筆頭であります。そうして、順番に就学、興行、留学、研修とおるのでありますが、その中で、研修が約三千九十九人の不法滞在になっておるわけであります。就学とか留学は年々不法滞在は減っておりますが、興行と研修がやはり若干ふえておる。過去、平成四年から平成十年までの短期滞在あるいは就学、興行、留学、研修を見ておりますと、研修が確実にふえているわけですね。  実はきょう質問したいことは、一番新しい数字ですが、研修生は現在約二万一千人おられる。研修というのは、JITCOという受け入れ機関がありまして、各国から研修生と称して国内、日本に入ってきているわけですね。それを見ますと、単純労働の研修ではないこと、あるいはまた、十八歳以上であり、研修修了後はその国で同じ職、復職が約束されているとか、いろいろ条件がありますが、行き着くところは、やはり各地区でもって、国内の労働力が、三K、汚いとかいろいろそういう面で、研修生が大変大きな労働的な担い手となっていることは間違いない事実であります。  この方が、一年研修をしました後に、さらに技能職として国内にとどまることができるわけでありますが、なぜ研修生の不法就労、不法滞在が多くなっているか。それを見ますと、研修から技能に行くその過程において、どうも制度的に未熟なところがあるのじゃなかろうかというふうに実は私は思っておるのであります。  と申しますのは、我が国には技能検定職というのは百三十三種類あるそうでありますが、では、こういう外国から来る方々に対しての検定はどうかといいますと、五十五種類あるそうです、五十五種類。国内に全体で百三十三あるけれども、要するに出す国の要請、事情もある、受け入れ側の私ども日本の国の考えもあるという中で、五十五種類あるという。ところが実際問題、四十九種類の技能については技能検定職がありますが、あと六種類がないというようなことになっているんですね。きょう実は労働省そしてまた入管の方がおられると思うんですが、こういうちぐはぐな、実際受け入れるけれども、一年したら技能の枠がないからおまえたち帰れと。それは帰らないで、当然不法就労、不法に残ると思うんですね。  ですから、私はこの点質問したいのでありますが、なぜ技能実習について研修を三年間として認めていながら拡大をしないのか、新しい職種については。もう一つ、時間がございませんからお聞きしますが、この技能検定がちゃんと設けられれば、入管の方、法務省の方は、三年間こういう方々を国内に置くような制度的なものがちゃんとできるのか。この二点を、労働省そして法務省の担当官で結構でございますが、お聞きしたいと思います。
  134. 山中秀樹

    ○山中政府委員 先生指摘の技能実習制度、これは平成五年から、人づくりを通じた国際貢献を行うという趣旨で設けられた制度でございます。具体的に、より実践的な技術移転を行うということで、一定期間先生指摘の研修を受けた上、この研修成果の評価を行って、その後一定水準に達したということなどの要件を満たした場合に、具体的に雇用関係のもとで技能等をさらに修得できる、こういう制度でございます。  それで、この対象職種について、先生今御指摘がありましたように、開発途上国の技術、技能の移転のニーズや、あるいは我が国の国家検定であります技能検定制度等々の対象職種を現在五十五種指定しております。制度創設平成五年では十七職種であったのが、その後順次拡大してきておりまして、現在のところ五十五職種ということになっております。  本制度がより一層途上国の人づくりに貢献できるように、今後とも開発途上国のニーズ等、それと私どもの検定制度の整備等を見ながら逐次拡大整備を図って、この制度が適正かつ円滑に運営できるよう取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  135. 片山義隆

    ○片山説明員 御説明いたします。  技能検定につきましては、三級の検定といいますか、それが整備されている職種につきましては、昨年四月から三年の在留を認めてきております。今後、先ほどお話ございましたけれども、その三級の技能検定といいますかそういう制度が整備されました場合には、委員指摘ございましたように三年の在留を認めていく所存でございます。
  136. 栗原博久

    栗原(博)委員 今の回答では私は理解しかねるんですが。要するに、外国人がすべて悪いとは言いません。しかし、国内において、やはり外国人の労働者方々が、日本の劣悪な労働条件の中におきまして不満を持っておる。あるいは、国際化のグローバルな中に、日本はちゃんとした環境を整えてやらねばならぬと思うんですよ。片っ方では入れて、例えば農林水産関係の食品製造とか、ある特定のものになりますと、技能職はないものだから一年で終わりだ。終わりであれば、本国に帰らないでやはり不法就労に走るのですよ。一年間研修生として在留している者のうち毎年二百名以上が不法滞在に走っている。  こういうものは、日本の受け入れ側の制度をちょっとやればすぐできるわけですから、だから迅速にしていただきたい。特に、不法就労助長罪という罪もあるわけです、入管法の中に。要するにブローカーが暗躍しまして、そういう方々が国内の秩序を乱しているわけですから、日本に受け入れたらちゃんとそれをカバーしてやる、そういう制度をやはり労働省、そして法務省はきちっとしていただくことを要望して、私の質問を終わらせていただきます。
  137. 田中慶秋

    田中委員長 次に、大森猛君。
  138. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  本委員会でも、来週雇用失業問題の集中質疑を異例な形ですが行うというところにも、今の日本経済の深刻な状況の一面が反映されているわけでありますが、政府の方も、けさ、あれほど四カ月前私ども反対を押し切って強行した財革法の枠組みを見直しをする、こういうことも決定されたようであります。今の経済の本当に深刻な状況というのは、きょうここに参集されている皆さんがそれぞれ体験、直面されていると思うのですが、外国の新聞でも、日本経済は崩壊寸前というような報道がされたり、あるいはタイタニックのように日本丸は氷山に激突しようとしているのにかじ取り不能の状況じゃないか、こういうような指摘もされているわけであります。  こういうことに至った事態、これはもう私ども日本共産党だけではなくて、やはり共通して指摘されているのが、消費税五%への増税を初めとする九兆円の負担増と、それに追い打ちをかける国民生活あるいは社会保障等々の連続改悪につながる財政構造改革法の強行であったと思います。  こういう点で、まずそういうところに大きなメスを入れなくてはならないと私は思うわけなのですが、私ども日本共産党も単に批判しているだけではなくて、先般十六日には消費税を三%に戻す、あるいは恒久的な所得税減税等々を内容にした「深刻な不況から国民生活をまもる緊急要求」こういうものも提案して、これは政府にも申し入れを行ったところであります。ぜひそういう面も政府としても大いに取り入れていただきたいと思います。  そういう中で、今回、労働法制の大改定案が提出をされたわけでありますけれども、先般の当委員会の中でも紹介をしましたように、ある経済研究機関によれば、今後十年間の消費の落ち込み、その最大の構造的な要因として二つ挙げている。一つが社会保障等の連続改悪、もう一つが賃金制度の変更、つまり労働条件等の変更、こういうことも挙げているわけでありますけれども、今回の労働法制の改定というのは、そういうこととのかかわりはもちろんですが、労基法のこれまでの理念とかあるいは原則、こういうものも根底から崩していくことにつながっていく。そういう意味で、五千四百万人の労働者だけではなくて、それにつながる家族の皆さん、これを含めるとそれこそ日本の人口の七割、八割に相当する人たちに、暮らしの面でも生活のリズムの面でも極めて深刻な影響を与える。  そういう意味で、私は、この問題は単に労働者の問題だけではなくて、日本の社会のあり方、国民的なかかわりのある極めて重要な問題である、そういう意味では国会の中でも徹底的な審議をしていきたいと思っているわけなのですが、きょうは限られた時間でありますので、その中でも、特に重要な原則としての八時間労働制の問題が崩される、この問題について関連してお聞きをしたいと思います。  八時間労働制、これは改めてここで申し上げるまでもなく、労働時間そのものは、もともと最も重要な労働条件、賃金と並んで。加えて、労働者保護法の歴史の中でも最も古い沿革を持っているのがこの労働時間の問題であると思います。  特にその中で、八時間労働制というのは、間もなくメーデーでありますけれども、一八八六年の五月一日、シカゴで労働者がゼネストでこの制度確立を求めて闘う、そういうことと前後して非常に長い歴史の中でこれは確立をされてきたわけであります。そして、一九一九年にはILOの第一回総会で第一号条約として採択され、一九三〇年には第十四回総会で第三十号条約によって商業にも広げられる、全労働者対象となる。さらにそれから五年後、一九三五年には既に週四十時間の条約も採択されて、それは戦後世界にずっと急速に広がり、今日ヨーロッパにおいてはさらに一日七時間という流れも、それこそ新しい流れとして今日来ているわけであります。  我が国においても、労働基準法労働時間の原則、これは三十二条によって週四十時間そして一日八時間となっているわけでありますが、それとのかかわりで、ちなみに、これを超えて働かせるとどういう罰則があるか、まずお聞きをしたいと思います。     〔委員長退席、河上委員長代理着席〕
  139. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 労働基準法では、一日八時間、一週四十時間という定めをいたしまして、それを超える場合について労働させるときは、三六協定、いわゆる労使間の協定なしにはできない。それを前提としてそれを超える労働を認めておるわけでございまして……(大森委員「どういう罰則があるか言ってもらえますか」と呼ぶ)もしこの三六協定なしに八時間あるいは四十時間を超えた場合については、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金、こういうことになっております。
  140. 大森猛

    大森委員 週四十時間以上あるいは一日八時間以上働かせることは、労働基準法では犯罪ということになっているわけなのですが、それが……(発言する者あり)では後で一緒に答えていただきましょう。  それが犯罪として罰せられないのは、今もおっしゃった三十六条、三六協定、しかしこの場合もむやみやたらにやるというわけではなくて、これは言うまでもないことですが、必要最小限、臨時的。無制限に認められたものじゃないんだというこの三十六条、さらにそれに加えて、三十三条の公務上やむを得ない場合かつ災害等で緊急やむを得ない場合、これに限定されているわけですね。公益性そして緊急臨時的措置ということで限定をされていると思うのですが。
  141. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 先生から今お話ありましたように、二つの場合の限定は非常に例外的な限定かと思いますが、労使間の労働基準法三十六条に基づく協定、これに基づいて八時間あるいは週四十時間を超えて労働させることができるわけでございます。
  142. 大森猛

    大森委員 だから、今私が申し上げたように、三十六条の趣旨というのは、だからといって無制限にできるものじゃないんだ、それについても、これはもうコンメンタール等でもありますように、本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものだ、これは労働省労働基準局長としてはきちんとそういう理解していただかないと、やはり困りますよ、それは。  だとするならば、つまり本来なら犯罪であるものを犯罪でなくするということの意味は、こういうぐあいに公益性、緊急性、臨時的理由になっているわけなのですが、今回の労働基準法の改定というのは、ホワイトカラーをこの労働時間規制の外に出すというわけですね。そうすると、この場合の理由というのは、こういう公益性、緊急性あるいは臨時的にやむを得ないそういう理由になっているのでしょうか。     〔河上委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま御指摘ございました八時間労働との関係でございますが、無制限に、というコンメンタールの表現があるという御指摘でございますが、これはもちろん三六協定を結んで八時間なり四十時間を超えて労働させる、そういうことが必要ですよという意味で、無制限ではない、こういう記述があることは承知いたしております。  したがいまして、そういった手続を踏んで業務上の必要によって仕事をしていく場合、これ自体を犯罪というわけにはまいらないのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ、裁量労働制について、そういった枠外に置くのではないか、こういう御指摘がございました。  これにつきましては、先生御案内のように、週四十時間労働制を昨年の四月に実施いたしまして、これがある程度の普及状況に達している、そういった基盤の上に、この一定の厳格な、また慎重な枠組みの上にこの裁量労働制という選択肢が加えられるわけでございます。  それで、今御提案申し上げておるわけでございますが、加えられた裁量労働制の枠組みにおきましても、労使間で全員一致でこの勤務状況に応じた健康管理あるいは苦情処理等を行うわけでございますし、また、これは一定のみなし労働時間制でございますから、先生指摘のように例えば休日労働、深夜労働等は適用除外するわけではございませんで、その辺はきちっと事業主は把握して対応すべきことがこの裁量労働制のもとでも求められる。全体として、今までの基準法の体系の中で、本人が一定のルールのもとで、保護されたルールのもとで、労働時間というものをみずからが主体的に管理できる選択肢をふやしたわけでございまして、労働基準法の体系の枠の外に置くというような御指摘は当たらないのではないかというふうに思っております。
  144. 大森猛

    大森委員 私が伺ったのは、ホワイトカラーを労働時間の規制の外に置くのはどういう理由かということで、これは実はもう何度も、それこそ大臣からも耳がたこになるぐらい聞いてまいりました。いろいろな道をつくろう、いろいろなバィパスをつくろうということでありますけれども、しかし、これは本当の理由にならないのじゃないかと。つまり、これまで犯罪を犯罪でないとするものとして公益性、緊急性そして加えて臨時措置というものとの関係では、これは全く理由にならないわけですね。  そこで、大臣も労基局長も、これまでたびたびいろいろなことを言ってきましたけれども、本当の理由というのは、これは、労働省の裁量労働制に関する研究会、ここできちんと書いておられるわけですね。裁量制導入の理由として、「企業の側からは、専門的又は創造的な業務においては、裁量労働制をとることによって、労働者の能力をより有効に発揮させることが可能となり、生産性の向上、ひいては、企業活力の維持発展、経済活動の一層の活性化につながるという期待」、これを挙げておられるわけで、これこそが本当の理由ではないでしょうか。
  145. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 私どもが設置いたしまして研究いたしました裁量労働研究会の報告書を引用されてのお話かと存じます。  そういった中で、企業で働く方々の創造的な能力あるいは新しい発想を引き出していくための働き方、そういったものとしてこの裁量労働制というものが実情に合うのではないかという趣旨の指摘をしている、その部分について、これが裁量労働制導入の理由か、こういう意味合いに私ども受けとめさせていただきたいと存じますが、まさにその点は、目下、日本経済あるいは産業が置かれた状況といたしまして、今までのキャッチアップ時代が終わり、そういった産業あるいは経済活動の先端部分で働いている方々が、むしろ新しい付加価値を生み出すような製品を開発し、あるいは新しいソフトを開発し、あるいは金融等を含めても、新しい知識、技術を開発して世界との競争の中に出ていく、そういったことのための新しい発想や創造的な能力を引き出すことが我が国の富や豊かさをいわば膨らませていく、そういったことの働き方に通ずるのではないか、こういう意味合いで研究会の方もそういった研究をしているわけでございますが、そういった意味合いで私ども受けとめますので、そういった意味では、この裁量労働研究会の指摘は、今回の法案に盛り込んだ裁量労働制の導入のいわばねらいの一つでもございます。
  146. 大森猛

    大森委員 自律的で創造的な労働、働き方、これは大いに結構なわけですけれども、二百年に及ぶ労働時間の原則を崩さないとこれはできないことなのかということなのですね。つまり、労働者の要求は、自由時間を確保し、私生活面での充実を図ることを求めている、こういうことにあると思うのですよ。時間短縮あるいは自由な時間を本当に確保させるような、従来から言われてきたように、八時間働き、八時間生理的な欲望、そして八時間は自己の発展のために使う、こういう原則、それこそ自律的な、創造的な働き方ではないでしょうか。  そこで、先ほども申し上げたように、二百年にわたって培われてきた八時間労働の原則を崩さないとこれはできないのか。現行法規の中でできないのか。例えば、自由な働き方としてはフレックス制がありますね、これであなた方の言うことはできないですか。
  147. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず第一点、裁量労働で想定しています働き方といいますのは、法律にもあらわれておりますように、業務の遂行方法、時間配分等について事業主が業務上の指示をしないこととする業務に限られるわけでございまして、したがいまして労働時間管理が本人の主体的なところにゆだねられる。したがいまして、八時間よりも短いケースで終わる日もあろうかと思いますし、また本人が取り組んだ業務の内容によりましては八時間を超える日もあろうかと思います。そういった状況を踏まえて、労使がそういった方の全体の労働時間を何時間働くものとみなして決議するか、これは労使間のいわば自主性にゆだねられる問題でございます。  ただ、いずれにせよ、八時間内で済んだり八時間を超えたり、そういったことが当然想定されるわけでございまして、もし、八時間を著しく超えるようなケースで、決議されているみなし労働時間との乖離、そういったものが出た場合には、当然労働側から見直しの要求もございましょうし、また、労使委員会で必ず決議しなければならない事項としている労働時間の把握、それの状況に応じて健康管理等を行うためのルール、このルールとの兼ね合いも当然出てきます。そういう点については監督署において十分チェックされて必要な指導を加えていくということになるわけでございまして、決して八時間労働の体系の外でこの裁量労働制が存在するわけではございません。
  148. 大森猛

    大森委員 今おっしゃったようなことは、私はフレックスタイムでもできるのではないかと思うのですが、どうですか。
  149. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 フレックスタイム制の場合、先生御案内のように、出退勤のある程度の幅を持たせてコアのタイムをつくって、その清算期間を設けて、その清算期間内の合計と法定労働時間との関係で清算をしていく、こういうシステムでございます。  これは、通常利用されている実態ケースを見ましても、フレックスの幅というのはそう大きくはない、いわば通勤の混雑を緩和する等の形である程度のものが使われているケースが多いわけでございまして、業務上の指示を事業主ができない、そういった性格業務を実際上担当し、処理している方々について、こういった、ある程度制約の多い、ある程度業務上の指示があることを前提としたフレックスタイムという選択肢、それだけで足りるかどうか。そういった点について我々いろいろ議論を重ねた結果、もう一つの選択肢として、厳格な手続、ルールのもとに裁量労働制というものを提案申し上げているわけでございます。
  150. 大森猛

    大森委員 私は、あえてフレックスタイムを持ち出したのは、やはり裁量制の場合とフレックス、まあいろいろ今おっしゃいましたけれども、本質的な違いがあると思うのですね。それは何かというと、つまり労働時間と賃金がリンクしていないということだと思うのですよ。  これは私が言っていることではなくて、日経連の裁量労働制研究会、この中で、フレックスタイム制の代替性について、「裁量労働制の見直しをフレックスタイム制で代替できないかとの意見があるが、フレックスタイム制は、いわば労働時間の一部を労働者に委ねるものであり、一カ月以内の清算期間とその総労働時間が設けられている点など、基本的には労働時間の長さと賃金がリンクした制度である。」、だからこれはだめだと排除をされているわけですね。つまり、労働時間と賃金をリンクさせない、これが裁量労働制最大の特徴だ、このように私は思うわけですね。これが本質ではないかと思います。  ですから、企業の側からいえば、幾ら働いても残業代を払う必要がない。労働時間の長さと賃金をリンクさせない制度だからこそ、そこから長時間労働、こういうものが生まれてくるのだと私は思うのです。これは私どもが言っているだけではないのです。  これは、各党の弁護士さんもそれぞれ所属されておる日弁連においても意見書を出されました。裁量労働制について、「労働時間の上限規制をはずすことになるので、労働者が長時間・無定量な労働を強いられる危険は、何らかわらない。」こういう形で述べておられるわけですね。しかも、「労働者の実労働時間を把握し、実労働時間に応じた賃金を支払う義務から解放されるものであって、一日の労働時間の規制が外される。そのため、この制度は、長時間・無定量の労働労働者に強い、サービス残業を合法化する危険を内包している。」こういうふうに指摘をされているわけであります。この点、いかがですか。
  151. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず、今の先生指摘の中での、フレックスタイムとの比較で賃金が労働時間と結びつくかどうか、こういう差を御指摘になりました。  裁量労働制、提案申し上げている非常に非定型的な業務をみずからの判断で業務遂行を進めている人たちにとって、いわば労働時間が長いからそれが賃金とすぐ結びつくこと、むしろそれについて疑問を感じて働いておられる方々も非常にふえていることも事実だろうと思います。むしろ、労働時間は短くとも自分の上げた成果を見てくれ、こういう意識も非常に多くあるわけでございますし、私ども想定している裁量労働は、業務性格がむしろそういった形になじむ場合、これを前提として労使間でそういった業務を決めてもらうわけでございますので、長く会社にいればそれだけで賃金を決めるという考え方には必ずしもとらわれていないことは事実でございます。  これは、そういった裁量労働制が予定しているような業務分野では、そういったいわば賃金体系というものも、ある意味では、裁量労働制のあるなしにかかわらず、この賃金体系の変化等の中で、労使ともある意味では望みながら変化が進んでいる分野ではなかろうかという側面があることは御指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
  152. 大森猛

    大森委員 何かわかったようなわからないような御答弁ですが、裁量労働制が長時間になりやすい、そういう危険性がある、おそれがあるということは皆さん自身がおっしゃっているのじゃないですか。  ちなみに申し上げます。先ほどの裁量労働制に関する研究会報告、そこでも「業務命令の内容と仕事の成果に対する評価方法如何によっては、これらの労働者が一定期日までに仕事を完成するためにオーバーワークを強いられるおそれがあり、業務の質・量を適正なものとできるかという問題がある。」こういうふうに指摘をしているわけですね。ですから、そのことは、あれこれ言わないでこのことをきちんと労基局長としては明確に言うべきじゃないでしょうか。  時間がありませんから関連してお聞きしますけれども基本的な質問ですが、裁量労働制で一体何を裁量するのですか。
  153. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 まず、裁量労働制が長時間労働をもたらすかどうかという問題でございますが、先生は、裁量労働制は必ず長時間労働をもたらすという御判断かと存じますが、私ども伺っておる範囲では、例えば先般ある新聞でも報道されておりましたように、第一子日のときは男の方、育児休業をとった、第二子日のときは育児休業をとらなかった。それは、自分が裁量労働制、これは今までの裁量労働制だと存じますが、の対象になり、むしろ時間のやりくりを自分の才覚でやれたために、家庭の都合や子供の都合に合わせながらやりくりできて育児休業をとらなくて済んだ。そういった方の話が載っておりましたが、この裁量労働制は、むしろそういった、労働時間をいわば本人が自主的に管理することによって、家庭やいろいろなものと調和させつつ仕事の面での成果を出していく、そういうことをねらったものでございまして、そういう形に運用になるように、いろいろな意味労使委員会が全会一致で決めてルールを設定する、そういうことに向けて労使委員会で話し合いが行われる、そういうことを前提とした制度であることを申し上げておきたいと思います。
  154. 大森猛

    大森委員 裁量労働制のもとで、あるいは疑似的な裁量労働制のもとでいかに深刻な事態が起こっているかは、今あなたがおっしゃったことの一千倍ぐらい用意できますよ。今ずっと各地でそういう報告等をやられていますよ。  大体、皆さんそれほど裁量はすばらしい働き方だということをおっしゃるのだったら、なぜ労働団体がそろって今これは削除せいと言っているのですか。  さっきお答えがなかったのですが、裁量労働制は一体何を裁量するのか。これはもう結構です、時間がありませんから。私から申し上げますと、現行法では働き方と時間の配分、これがみずからの裁量ということですね。となると、仕事の量、これは労働者の裁量で決められないのですよ。それが賃金との関係サービス残業との関係でもう一つの長時間労働になる必然的な理由になっているわけであります。  労使委員会あるいは業務対象等々の問題はまた別途、私は後日これはやりたいと思うのです。  そこで、もう時間がかなり厳しくなってきたので、先ほど申し上げた実態の面を申し上げたいと思います。  これは国会での答弁の中じゃないのですが、大臣は、能力のある人は週二十時間で終わって、後PTAでも子どもの参観でも行っておればいいというようなことを話しておられました。私どもも、今回、裁量労働に実際に当たっている人たち、かなりの多くの人に聞きました。通常なら勤務時間と言われるようなときに自分で裁量で子どもたちのPTAへ行かれた人はありますか、このことを聞いたら何と言われたか。そういう話は裁量労働職場の実態を知らない人が言うことだ、PTAどころか、自分の病気の病院にも行けない、こういうことをおっしゃっているわけですよ。これが現在行われている裁量労働職場の実態であります。さらに言えば、これは出版関係のところですが、病人、育児中の人などが非常に肩身の狭い思いをしている。  裁量労働は、これまでの私たちの闘いでかち取ってきたさまざまな権利を放棄せざるを得ない。というのは、妊娠時短、育児時短、半日休暇制度など、時間に関するものは裁量制で働く場合は全く関係がなくなる。これが裁量労働職場の実態ですよ。だからこそ、連合反対し、全労連も反対し、全労協、大方の団体も強く反対をしているわけですよ。  時間についての裁量を与えているとしても、そういうぐあいに労働量についての規制がない。当然競争原理もこれは評価によって決まってくるわけですよ。たびたびこの間引用されてきたある電機メーカーの裁量のところでも同じことが言える。もうとにかく目標についても評価についても本人の裁量はきかないわけですよ。全部上司、つまり会社の方から決定されてくる。そういう中で、さっきおっしゃった自律的で創造的な活動なんかとても保障されないのが今の現状だと思うわけであります。  そういう状況を本当はもっともっと、現行の裁量制度が行われている職場、あるいは疑似的にそれが行われているような職場、そういうところの実態をもっと労働者の生の声を聞いてこの問題は対処する必要があるのではないかと私は思います。その点、いかがでしょうか。
  155. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 ただいま実態についての、私どもが今まで御説明してきたような結果ではなくて、そういったことを期待するのは実情を知らないという御指摘でございますが、先生御案内のように、私ども裁量労働制を今提案申し上げておりますが、現時点ではホワイトカラーの職場につきましてこういう厳格なルール前提とした裁量労働制というものは存在していないわけでございます。今、本社等の部分で実際上何が起こっているかといいますのは、いろいろな形で、あるいは自己申告あるいは事実上の裁量労働制、そういった形で労働時間管理というものがともすれば緩みがちになる、そういった側面があることは事実だろうと思います。そういった状況の中で出てきている実情について、先生いろいろお聞きになっておられるのかもしれません。  私ども提案している裁量労働制は、むしろそういう事態が放置されたまま進行していくことを憂慮して、厳格にそういった職場労使委員会をつくり、お互いチェックと監視機構とルールの設定の役割を果たしていただいて、そういった先生が受けとめられておられるような事例が出ないような、ホワイトカラーの職場にも、労働組合あるいは従業員の労働者代表の方がそういった形でチェックし、ルールの設定に関与していく。  そういった、職場で適切な労働時間の管理というものが行われることを望んでの裁量労働制でございますので、そこは、これからこの裁量労働制というものが法律に則したルールでどう機能していくか。私どもはそれがきちんと機能するというふうに考えておりますし、また、そうさせるように私ども全国の労働基準監督官挙げてこういった問題に対応していくわけでございますので、それを、今むしろ放置されて、私どもが憂慮するような事態が進行している、そういう中での事例でもってこれから新しいルールで始まろうとする裁量労働制評価することについては、私どもも、いかがかというふうに受けとめざるを得ないというふうに思っております。
  156. 大森猛

    大森委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今、職場の事態を憂慮してというふうにおっしゃったのですが、先般、本委員会で、三月十三日の私の質問で、サービス残業の実態について、これを統計的に把握する方法は正直ございませんと伊藤局長は答えられたわけですがこういう三六協定が現に結ばれている。労使委員会は違うかもわかりませんが、しかし、基本的にこれは共通の面があるんだ。三六協定の職場現場で数おびただしいサービス残業が広がっている、横行している。そういう実態を調べないまま、それを憂慮してだなんて、本当にこれは言葉だけであると思うのです。  加えて、今度の改正法が仮に施行されると、来年一九九九年、ちょうどILO第一号条約第一回総会から八十年たつわけなのですが、上限規定に反対するのに当時の日本政府は、とにかく残業をやったら賃金がもらえないという理屈で、そういう理屈はきょうの大臣の答弁でもそれこそ八十年変わっていないということを私は実感で感じたわけですが、これらの問題も含めて、次回以降の委員会で改めて追及をしてまいりたいと思います。
  157. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私は発言の機会がございませんでしたので、まとめてお答えを申し上げますが、最初、先生が、三六協定で八時間以上のものは法律上許されていずに犯罪だとおっしゃいましたので、私は、一体どういう議論になるのかとおののいておりました。  これは、御承知のように、次のようなことだと思います。  つまり、使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては云々云々、労働時間に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。ただし、坑内労働者はと。そして、この趣旨は、時間外・休日労働を無制限に認めるというものではないけれども、この協定があれば、別に八時間ということは何ら拘束されるものではないわけですね。先ほどの議事録を後で調べていただきたいと思います。  それから、先生が熱意を持って先般もお話しになった某広告代理店のお話がございます。  この某広告代理店がやっている行為を、決して正しい、いいことだとは私は思いません。しかし、このことと裁量労働制は全く無関係であります。それはよく御存じだろうと思います。しかも、今回の法律に御提案しております裁量労働制の範囲の業務にはこの業務は含まれてはおりません。  それから、今まで裁量労働制に云々した方々にいろいろ御意見を伺ってみたがとおっしゃる今までの裁量労働制は、ホワイトカラーの人は今回初めて御提案をしているわけですから、伺われたというのがどういう範囲の者であるのか。やはりキャンペーンではなくて法律や実態に沿った議論を建設的に重ねたいと私は思いますので、どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
  158. 田中慶秋

    田中委員長 次に、濱田健一君。
  159. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。大臣、長時間御苦労さまでございます。  まず初めに、けさからの論議を聞いておりまして、二、三点疑問に思ったことや、この点は大臣はどういうふうにお考えなのかなというのがございますので、質問の通告にはございませんけれども、理念というようなものでございますから、お答え願いたいと思うのです。  けさの中桐委員の、労基法五十年の評価行政改革立場から、監視型の監督業務からルール確立型の監督業務への移行に関してどのようにお考えかというようなお話がございました。大臣は、監督業務民間委託の話があったが、国家的責務としてやる立場を主張し民間委託には反対してこられた、行革会議ではその話はなくなりました、労使自治の中で事後チェックルールを事前に明示するには無理がございますというふうに述べておられました。  私は、これをお聞きしながら、労働組合組織率が二四%前後、二三%か、そのときで少しずつ違ってきますが、そういう状況や、三六協定の実施率が二六、七%と言われております。そして、現下の不況の中で労働力は買い手市場になっているという状況、こういう中で労使自治を述べられるのは、労働者、特にきょうもいろいろ出てまいりました組織されていない労働者にとっては、労使自治というものが絵にかいたもちじゃないのかなというふうに受けとめられているところもございます。  労使自治を展開されるのであれば、やはり労使対等原則を確保するということが大事でございます。その担保として、労働組合法の強化なりそれを施行していくための団結権の指導や啓蒙、つまり、労働組合組織してそれを強化していく、そういう担保のできる体制づくりというものがこれからますます大事になってくると私は思うのです。労働大臣も、せんだっての私の質問に対して、組織力をもっと高めた方がいいんですよというようなお話もしていただきました。  こういう状況の中で今回の行革基本法の中身を見てみましたときに、労働福祉省の編成方針、この中に、労働関係調整行政の見直しや縮小というものが盛り込まれております。  この労働関係調整行政の見直し、縮小というものがどのように進むのかというのは、まだまだ今ようやく論議に入ったばかりで行く先不明なんですけれども、こういう部分が整理縮小されていくということは、いわゆる労働者の働きぶりを高めていくための、労働省として事実上こういう関係調整の機能を撤退していく方向で、今かけられている行革法の中身というものはあるのではないかなというふうに私はちょっと感じたのですが、大臣、いかがでしょうか。
  160. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 午前中の質疑に対して、質疑者の御質問の趣旨を私がよく理解していなかったのかもわかりませんが、数量的目的を示してとおっしゃいましたので、私は、複雑多岐にわたる労使関係を数量的目的だけであらかじめお示ししてやるということはなかなか難しかろう。そこで、法律には基本的なことをやはり書いて、そして、それに通達が付随している。その通達が非常に多過ぎるというお話の中で出てきたことなのです。  だから、金融行政やその他の行政とは違って人を相手にしている行政なので、そのときそのときの状況によるので、ある程度やはり通達的なものも必要であるし、その通達が守られるかどうかは基準監督行政というものが必要なのだ。だから、その監督行政という国家権力の発揮によって労働者基本的な権利を守っていくというようなものを利益原則の民間にゆだねるということは適当ではないということを実はまず最初に申し上げたわけです。  そこで、行革のただいま出ております法案は、先生御承知のとおり、十何条でしたか、ちょっと今手元にございませんのでまことに申しわけないのですが、別表第二というのがついております。そこにまず労働福祉省の所掌と所管業務というのがあるのです。そこには最初が雇用の確保、その次が労働基準と明記されております。そして、今先生が御指摘になった労働福祉省の新たな設置法ですか、あるいは所掌を今後検討していく際には次の各項目に留意すべきであるという項目があって、そして、そこに今おっしゃったようなことが書いてあります。  ですから、基本は、あくまで別表の中に所管の業務とそしてその業務の細目が定めてあります。これが基本です。そして時代の流れを見据えて留意をしてくれという項目が書いてある中に今のがあるわけです。  ここのところの例えば具体例は、一日八時間労働で、そして変形労働時間制などは一番最初はだめだったと思います、最初の労働基準法ができた場合。それから、例えば裁量労働制というものも、例えばデザイナーだとかどうだとかという方々に今限定をされております。それを今度はホワイトカラーへ拡大していく。拡大していく場合のいろいろな協定は労使双方委員会にゆだねて、その委員会の決定事項やその運用が労働基準法に規定しているものにかなっているかどうかということは、これは労働基準でございますからやらなければなりません。  しかし、労使双方の協定にゆだねる部分であるとか、あるいは労働組合と、労働組合がない場合にはただいま大森先生の御質問にあったような三六協定をどういうふうに結んでいくのかとかいうところは、ある程度労使にゆだねていくという部分が少しずつやはり出てきているのではないか。  こういうことを行革の法案は留意をしながら省庁の所管事務を決めなさいよという記述の仕方だと私は思います。
  161. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 私の聞き方といいますか、午前中の大臣の答弁に対する把握の仕方が少し間違っていたかもしれませんけれども、では純粋にお聞きしましょう。  いわゆる労使自治というものは、労使という形で対等、平等な関係にある中でその自治というのは当然生まれてくると思います。先ほど申し上げた労働組合組織率と例えば三六協定の実施率、労働力の買い手市場という現下の、あぐまでも現下のこういう状況の中でこの法律ができていく。そして、いわゆる労使合意に基づくいろいろなことが行われていくためには、やはり未組織という部分を限りなく少なくしていくための労働行政努力というのが必要ではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  162. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 結局、先ほど行革の法案に書かれていたことと今、濱田先生が御質問になっていることはやや似ていると私思うのです。  行革の法案に書かれている意味は、組織率は非常に現実には低いね、そのことについて労働組合はどういう努力をしてくださるのか、それにあわせて、それを考えながら、国の方の所掌業務を例えば決めなさいよ、こういう書き方だと思うのです、例えて言えば。  そこのところはどこかへ行ってしまって、労働行政労働法規上、組織率を上げろというのは、これは私は終戦直後の発想だと思います。やはりこれだけ経済が大きくなって選択の自由が広くなっているのでございますから、労働組合も魅力ある労働組合になってくだすって、そして政府もまたそれをお手伝いしていく、率直なことを言えば、経営者自身が、今のような組織率の労働組合では経営上困ると私は思いますよ。  そしてこれからも、例えば今申し上げている労使委員会というものをつくるということがむしろ前向きにとらえていただければ、今までホワイトカラー、特にホワイトカラーの方々組織率は、先生御存じのように非常に低うございます、その中に労使委員会をつくるということによって、これをチャンスととらえて組合努力をしてくださる。そういう相互のやはり力の出し合いの中に将来の労使関係をつくっていきたい、こういうことではないでしょうか。
  163. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 くしくも大臣が言われたとおりでございますので、やはりけさの中桐委員の話にもありましたとおりに、いろいろな労働組合との関係というのは、いわゆる連合というナショナルセンターもございますし、その他の労働組合協議会等々もございます、今大臣が言われたような部分も含めて、さらに協議や前向きな方向性というものをお互い検討していかなければならないということを私自身確認をしたいというふうに思います。  もう一点ですが、きょうの論議の中に、労働行政として新しい働きぶりの中身を導入するに当たって、なぜ罰則がないのかというのが随所に出てきたように私は思います。  ルール確立型の労働行政方向性を経営者側がよく理解をして納得しつつ、例えば裁量労働制で出てくる指針等々遵守していけばもちろんそれでよい、よいというか遵守しなければならないというふうに思っているわけですが、先ほど申し上げましたような実態の中で、乱用や悪用をされた場合に、いわゆる労働基準行政が最低労働条件の担保として使用者に迫っていくときには、だれだれさん、社長、こういう状況だけれども罰則を科さなければいけない、だから早く是正してくださいというふうに、そういう手法で指導をしていかなくてはならないというふうに思うわけでございますが、そういう指導理念、指導形態というものを変えないとするならば、いわゆる刑罰法規としての厳格性とか明確性というものを、すべてにということは私は申し上げませんけれども、働きざまが変わるこれからのいわゆる労働界であり、さまざまな業種の中にあって、やはりきちんとしたある程度のものを入れていかなければ、労働行政に携わる側の皆さん方も非常に、今でさえもいろいろなトラブルが、表面的には、数値としては低いというか、今数字を持ち合わせておりませんけれども数値的にはある一定程度出てきていて、潜在的に起こっているトラブルというのはもっともっとたくさんあると私たちは労働相談等で聞いているところでございます。  そういう部分についての、役所の側の仕事ぶりにも、きちっとした刑罰法規としての取り扱いをもっと盛り込む必要があるのじゃないかなと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  164. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今回の改正法案の中で、例えば裁量労働制等について罰則規定がないということが行政あるいは労働基準監督署における指導のあり方へ影響を及ぼすのではないか、こういう御指摘かと存じます。  裁量労働制につきましては、法律上、業務の遂行方法や時間配分について裁量を本人に任されているために事業主が業務上の指示をしない、その他一定の要件をつけた業務でなければならないというふうに規定しております。  もし、労使委員会の決議に違反して、決議のされた人以外の対象者を裁量労働として扱っているケースが出てまいりますと、そのこと自体は、法律を読んでいただくと、そこの条項に違反するから罰則というのではなくて、それは裁量労働制とは認められないという形になるわけでございます。したがって、通常の労働時間管理、いわば八時間、週四十時間制で、それを超える場合には三六協定が必要だ、こういう状況に戻るわけでございます。  したがいまして、もし三六協定がない、多分、裁量労働制だと言ってきている場合には三六協定がないことがあるかと思いますが、そういった場合には、そこの時点で労働基準法違反、割り増し賃金を払うように私ども勧告をし、その部分が履行されない場合で悪質なケースについては、もちろん司法処理を前提とした対応も出てくる、こういうことになるわけでございます。  結果的に、裁量労働制は、新しい法律ルールを守ってない限り結局は処罰の対象になり得るという体系になっておりますので、そこは、立法技術上、私ども十分配慮してつくった条文でございますので、御理解をいただきたいと思っております。
  165. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 結局、裁量労働制というのは、いわゆる職場の過半数の代表である労使委員会委員というのが、きちっと委員会を開いて、その中で、労働のさまざまな条件としましょう、それを労使でしっかりと合い議し、決議し、そのことを、委員会の設置と決められたことを、行政当局に出した範囲内でしか仕事はさせることができない。だから、これは、まずさまざまなガード措置が講じられていて、それ以外のところで出てくる不規則な雇用の状況が出てきたときには、基準局に訴え手が出ていけば、即、例えば監督官が入って、いわゆる行政処罰としての部分が適用できるから、心配をする必要はないのだということなんでしょうか。
  166. 伊藤庄平

    伊藤(庄)政府委員 今先生お話しになったとおりでございまして、労使委員会で決めた決議、これに違反した形での運用が裁量労働について行われていれば、それはまず裁量労働制ではないという状況が生まれますので、これは必ず労働基準法の、例えば三六協定を締結しなければならないという規定に違反していたり、割り増し賃金を払わなければならないという規定に違反していたり、そういう状況が生まれる。これは典型的な労働基準法違反の状態になりますので、監督官として、必要な是正をさせ、あるいは改善を命じて、もし悪質であれば、先ほども申し上げましたように司法処理の対象となり得ることがある、こういうことになります。  また、もう一つつけ加えさせていただければ、労使委員会で決めたからといっても、決議の内容を、私ども、届け出があった時点で審査して、決議の内容の中に裁量労働制がありそうもない人が含まれていれば改善をさせる、それで、実際にそういう方が改善されなければ、私ども、割り増し賃金の支払い等を事業主に指示していく、こういうことに相なるわけでございます。
  167. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 きょうは、さわりの部分というか、朝からずっと、ほとんど自分の席を抜けないで話を聞いておりまして、その部分からの、質問の中身にないものを聞いているわけでございます。さわりだけでございますので、その辺の心配する部分はこれからもこの委員会の中でしっかりと論議をし、現実的な、起きていることと対比しながらやっていこうと思いますので、これはここでとめておきたいというふうに思います。  もう一点ですが、これも中桐委員が具体的に言われました。いわゆるホワイトカラーについては、仕事上、相手のニーズに合わせて対応しなければならず、裁量労働制が長時間労働につながっていくと考えられる、この導入については時期尚早ではないかというふうに言われました。大臣は、今のお話と関連するのですが、政府チェック労使委員会機能の発揮、これによってそれは対応できるというような御答弁をされました。伊藤局長が、具体的な適用範囲、ホワイトカラーのどういうところなのかということに関連して、いわゆる法案にうたわれております本社の業務であり、企画を担当したり、調査を担当したり、分析を担当したりする枠内でありますということを、法案に書いてあることを言われました。  そして、その後、賃金形態についても、成果給という言葉を使われたと思うのですが、成果給や能力給の流れが、裁量だけでなくて、その他の働きの中にもあると。その後の質問の中でも、その流れが明らかになっているというふうに言われました。そして、労働側代表がその流れの中に入っていかなければならないであろうと。いわゆる労使委員会等の中で、対等な位置づけの中でしっかりそのことの交渉をしながら、対価の部分についても、お互い評価をぶつけ合いながらやっていかなければならないということだろうというふうに思います。  これは、うがった聞き方といいますか、見方かもしれません。私は、この話を聞きながら、一九九五年、日経連が出した「新時代の日本的経営」に盛られております、いわゆる長期蓄積能力活用グループに求められようとしている、これはいわゆる期限の定めのない雇用でございますが、裁量労働制と、賃金、ボーナスかれこれがなくて、いわゆる年俸制とかそういうものを含めた、前年度の能力、結果主義に応じた賃金制度というようなものと、ダブって、私は感じたところであります。  当然、この「新時代の日本的経営」にうたわれている高度専門能力活用型グループとか雇用柔軟型グループの対応というのも、今回の法改正案の中にあります有期雇用や変形労働制等々の枠内に位置づけられるというふうに思います。  変な言い方かもしれませんけれども大臣がかねてから持論としておっしゃっております、メーンロードは日本のいわゆる終身雇用型の働きざまですよ。そして、働く側が希望し使う側がそれを提供するという環境があれば、さまざまな形で働く働きざまがあります。その典型的なものが今度出されている法案の中身ですよということになるかと思うのですが、まさにきょうの答弁をお聞きしながら、読売新聞の、これはいつだったでしょうか、ことしの一月約二千百七十七社を対象に行った経企庁の調査で「「終身雇用」にサヨナラ!?」、五年後には約四三・八%が終身雇用型は廃止をしたいという気持ちを持っているというようなアンケートがここにあるわけでございます。  大臣がおっしゃっているような日本型の終身雇用、望めばそういう働き方もできる。しかし多様な形で働こうという人たちもいらっしゃる、それも事実でしょう。しかし現実に、こういうふうに企業、上場企業というふうに書かれておりますけれども、五年後には約半数近くが終身雇用型の雇用状況を変えようという意識を持っているということと大臣の思いとはどのようにつながっていくのだろうかというところを、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  168. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私の思いというか、私は政治家として、やはり日本の伝統文化のあらわれである終身雇用制をできるだけ守るということを、私の労働行政をお預かりしている間の基本としたい。経営者は経営者の立場から、コストパフォーマンスを考えて今先生のおっしゃったような方向をとる人が多くなってくるということは、私はこれは必然のことだと思います。特に、日本最大の競争相手であるアメリカが派遣型の労働力供給体制をとっている限り、コスト面で同じ商品の国際競争をしていくという方々からはそういう声が出てくるのは当然だと思います。しかし、教育を充実して、教育というのは単なる知識ではなくて知恵を日本国民につけて、私は政治家としてやはり何とか終身雇用制を維持していく方向努力をしていきたい。  働く人たち一人一人、あるいはその一人一人のお気持ちを正確に反映しておられる労働組合がどちらの方に手をお挙げになるか、これは私は確信はありません。場合によっては、能力給、年俸制、あるいは契約制をおとりになるかもわかりません。これは私は自信はありませんが、今日まで日本が発展してきたのは、どうもやはり働く人も安心してその職場に一生をゆだね、経営者もこの人たち職場で働いてくれるという確信のもとに能力開発を会社の経費として投入してきたということも私は大切だと思うのですね。  そこで、今例えば裁量労働制は、これは先生もう御承知のとおりのことですが、原則としてはこれは終身雇用制の範囲内のことです。もし裁量労働制というものがとりにくいということになれば、能力的にそういうものを持っていらっしゃる方を時限的に契約をして経営をすると思いますね、私が経営者であれば。だけれども、私はそういうことをさせたくないという思いがあります。それも今回の裁量労働制を提案した一つです。
  169. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今大臣がこの裁量労働制も終身雇用制の一つだと言われました。現時点ではそういう形でスタートをするだろう、するだろうじゃなくて、何といったらいいのか、しますといいましょうか。しかしながら自分の労働時間を自分で管理しなさいということでございます。そしてその中で、企業にとってより最大限のいい仕事をしてくださいということでございます。例えば極端な例でいくと、一日一時間の中で最大限の能力を発揮しながらいろいろなものを会社のために生み出す人もいるでしょう。しかしながら逆に、先ほど大森委員から出ましたように、時間が長くなっているというふうな方もいらっしゃるかもわかりません。企業にとって、そのときにただ終身型の雇用という形で賃金の支払いなども置いておくかといったときには、年俸制等々の中で、私たちが年俸制といったときによく頭に浮かべるのはやはりプロのスポーツ選手でございます。短い働く期間の中である程度たくさんのお金を得る職業なのかもわかりませんけれども、その後の多くの時間をスポーツの選手の皆さん方はいろいろな形で過ごしていかれるというふうに思うわけでございますが、やはりそうなると、終身ではなくて、その企業の中ではある程度限定された働く期間になっていく方向性が強くなるのではないかというふうに私は思います。  その辺も、今後この委員会の中でほかの委員皆さん方と一緒に、あらゆる角度から論議をしたいというふうに思いますが、大臣、最後ですが、どうぞ。
  170. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先ほど来政府委員がお答えしたことについて先生いろいろ御引用になりましたけれども、裁量労働制云々の問題ではなくて、大きな時代の流れの中で、例えば年俸制であるとかあるいは年俸制に移行することによって徐々に契約、三年契約というような話が出てくるということは、私は否定いたしません。それがいいということか、あるいはそれはまずいということか、それはその人のやはり人生観とか価値観とか、物事を判断する尺度とか、いろいろなことによって違ってくると思います。  ただ、同じことにも先と影があり効果と副作用がありますので、先ほど来申し上げているように、副作用だけをあげつらって新しいことにチャレンジをしなければ、我々は新しい時代には確実に行けません。したがって、副作用を最小限に抑えながらいい点を引き伸ばしてやっていきたいし、私は政治家として、私の信念はできるだけやはり終身雇用制というものを日本に残したい。しかし、残したいと私が思っても、完全に残るというわけでは、これは時代の大きな流れですからございませんけれども政治家として私はそういう努力をしたいということを申し上げているわけです。
  171. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 終わります。ありがとうございました。
  172. 田中慶秋

    田中委員長 以上で本日は終了いたします。  次回は、来る二十八日火曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十八分散会