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小野公述人 舛添さんは最初に、一人で二十分間話せるのは非常にいいとおっしゃっていましたが、私は普通発表するときには、いわゆるセミナーの形式で、話している間に、聞いていらっしゃる方に私の真意がうまく伝わっているかということをいつも確認しながら、リアクションを見ながらやっているんで、本当はその方がいいんですが、きょうは、二十分間、何とか
皆さんに私の真意が伝わるようにうまく話せたらいいと思っております。
さて、今回の
予算案の概要をさっと見てみますと、一番大きい点、前面に出ている点は、
予算の縮減だと思うんですね。それは、昨年の
財政構造改革路線の堅持だ。実はそのときの
委員会で、私も参考人の一人として
意見を述べさせていただいたんですが、そのときに、私のセッションで、四人のうち三人の方は、これは堅持すべきだ。どういうことが起こってもこれは堅持すべきとおっしゃっていて、私一人で、こんなことをやったら
不況がもっとひどくなるぞということを申し上げたんですが、そのときは、
皆さん、もっとこれをやるべきだということで一色でした。
今回の
予算も、まだその流れを十分に引き継いでいる。しかし、余りにひどいという判断は当然あるわけですから、目玉として、多分ちょっと違う方向が出たのは、
減税をもう少し長くするか。これは
意見としては、恒久
減税化するかどうかという
意見はありますが、とりあえず短期的でもいいから、何しろ
減税をするかどうかということが一つの目玉なんじゃないかと思います。
このような
予算案の背景にある社会的な風潮というのを簡単に申し上げますと、現在
不況だ、ひどい状態にある、
皆さん、一般の
国民は何をやっているかといいますと、悪者探しをやっている。
要するに、
公共事業が悪いとか、実際に悪いところがいっぱいあるわけですが、特に最近悪い悪いと。それから大蔵省が悪い、それから
金融機関が悪い、さらにこの数日は
日本銀行が悪いという話になってきています。要するに、悪い悪いと。だから、全部うみを出してしまおう、しかもたくさん見つけて、たたけばたたくほどよくなる、こういう発想で動いているんじゃないかと思われます。
同じことが、
バブル期どうであったかというと、みんな英雄探しをやったわけです。
日本的
経営はよかった、それから、今
金融機関はひどいと言うけれ
ども、
日本のメーンバンク制度は非常によかった、それから、今悪者になっている大蔵省含めて
日本の官僚機構は非常に優秀なんだ、だからこんなにうまくいっている、
日本は、かつてないような、もうアメリカも超してしまった、そのような
意見を言っていた。
同じことが、今は悪者探しをやっている。私は、ちょっと悪い例かもしれませんが、一種のマッカーシー旋風的なイメージすら受けるということであります。
私は、基本的な経済に対する理解、経済というよりも、学問的な経済学とあえて言いますが、理解が全く違っているんじゃないかということをこれから申し述べさせていただこうと思います。
それは、キーワードからいうと、現在
不況であるか。つまり、失業であるか。もっと言えば、余剰の労働力がいっぱいあるか、余剰資源がいっぱいあるか。あるいは、そういうことではなくて、今度は逆の見方をしたら、今は完全雇用なんだと。つまり、実は
日本経済は精いっぱいやっているんだけれ
ども、このように悪くなった、こういう発想か。この
二つの発想ですね。どちらかという理解で全く違っている。実は、今の
政府の
政策及びこの
予算案等で見ている
状況ですと、理解は完全雇用側、つまり後者で言った方の
政策でしかあり得ないということになるわけです。
そのことを順番に申し上げていこうと思いますが、もし
不況があれば、つまりもっと言えば、失業がある、余剰人員がある、こういう
状況で、
皆さん、今の状態はそうだろうというふうに申し上げるのに賛成されると思いますが、そういう
状況のときは余っているわけです、人が余っている。あるいは、実際失業がなくても、余剰人員があって、
企業内でもっと本当は働ける人がいる、そういう状態になっている。おまけに、うみを出そう、うみを出そう、あるいはリストラのあらしですから、人はさらに外へほうり出されている、こういう
状況になっているわけです。
しかし、今みたいな
状況で一番
考えるべきは、そういうふうに余った人材をいかに有効に使うかということのはずなわけです。ところが、そうじゃなくて、うみを出そうの一点張りだということです。
それから、逆に、好況期どうであったかというと、好況期は実はむだの排除をすべきなんです。つまり、リストラすべきだったわけです。
というのは、現在
日本にあるすべての資源を十分にもう精いっぱい使って、さらに足りない、だから外国人労働者まで入れようというような話すら出たわけです。つまり、資源は足りなくなっている。にもかかわらず、あのときには、簡単に新しい
事業でも何でもできるので、余りそういうリストラとかいうことを
考えない。もう派手に使って、証拠は全くないのでわかりませんが、いろんな料亭なんかの需要は多分今よりは、今問題になっていますが、あのときの方が多かったんじゃないかという気は私はします。
ですから、足りないときに一生懸命さらに拡大しようとして、少ないときにはもっと縮めようとする、これが基本的な
政策の今までの流れだったんじゃないかということです。
そういう
景気の循環をもたらすものは何であるかということを少し
考えてみますと、それは完全雇用が前提になっているような
議論であれば、これは要するに、みんなが働かないからであり、
日本の効率が悪いからであり、
政治システムの効率も悪いし、生産システムの効率も悪いし、金融も悪い、何かそういうことになる。それがよければよくなるし、悪ければ悪くなる、これが普通の理解だと思います。
しかし、見方を変えまして、要するに需要がないからだと。みんな働きたい、しかも効率もいい、十分に生産能力もある、にもかかわらず、買ってくれる人がいない、あるいは、みんなが欲しいと思わないということであれば、効率は表面的に下がってくるわけですね。そうすると、これは、
日本経済の体質が悪いとかなんとかいう問題ではなく、みんなが買わないからだ。
さて、では、買うものはどうやって決まるかというと、いわゆる有効需要というのは消費と投資から成るわけですが、投資というのは、もちろん消費がなければ投資しても
意味がないわけですから、基本的には消費が引っ張っている。消費というのは、要するに自分が今どのぐらいお金を持っているか、資産を幾ら持っているか、それに依存する。
つまり、金持ちになればなるほ
どもちろん使うでしょうし、貧乏になれば使わなくなりますね。それからもう一つは、同じような金持ちのレベルであっても、より欲しいものが世の中にあるかということによって使うわけです。前者の方は、これから申し上げる、いわゆる流動性不足とか
資産デフレとかそういうことに関連して、後者の方は、実は新たな
産業育成とか、そういうことが重要だということを示唆していると思います。
さて、先ほど申し上げた、流動性が縮んでいるという話をもう少し具体的に申し上げますと、流動性というのは資産価格ということですが、どこかの新聞で、どなたかちょっと忘れましたけれ
ども、読ませていただいたので、九〇年代に入って一千兆円の資産が消えたんだというようなことが出ていた。この数字自身は、私は、どのぐらい信頼があるかよくわかりませんが、何しろ莫大な、実は名目的なですが、しかし莫大な資産が消えたと思っている。
これは各個人にとっては、本当に消えたわけです。つまり、例えば私が株を持っていたら、その株の価格が十分の一になってしまったら、私の資産は実際十分の一になってしまう。そのような
状況では、消費は減っても当然なわけです。そのようなときに、わかりませんが、例えば
所得税減税で五兆ふやしたとしても、一千兆円減った人に五兆ふえて、消費がふえるかというと、ほとんど関係ないんじゃないかというように私は思います。
それで、そのことは後でもう一度詳しく申し上げますが、さて、
景気の変動と、それから、では我々の対応というのはどういうふうになっているかということをもう少し述べさせていただきます。
要するに、
不況期に一般の
民間の
企業なり
金融機関なりが何をやるかというと、これは危ない、もう
先行き見通しがないというので、一生懸命リストラするわけですね。それでうみを出す。ただでさえ人が余っているのに、どんどんうみを出して、はっきり言えば、リストラして首にしてしまう、そういうことが起こっている。
しかし、社会的に望まれるのは何かというと、そういう人たちを使って、もっと有効なものに使えばいいわけです。先ほど
舛添さんが高齢化社会で人は必要なんだということをおっしゃいましたが、例えばそういうことがあるわけですね。にもかかわらず、ただうみを出すだけだということをやっている。それで、リストラされた人はうみじゃないわけですね。非常に貴重な労働力なわけです。にもかかわらず、出せばいいということになっている。一方好況期には、足りないのに、一生懸命ふやそうとするということを先ほど申し上げました。
そういうふうに、実際、
景気の動きと、それから、みんな
民間がやらなければいけないこととは反対になっている。これは
民間は責められないわけです。つまり、今のような
状況で、例えば
企業に対してもっと積極的にやれと言ったって、見通しがつかないし、
資金の調達も大変だという
状況になっているわけですから、個々の
企業の力ではどうしようもないので一生懸命効率化を図る。効率化自身は、それ自身は悪いことじゃありませんから、それを追求することになる。
問題は、同じことを
政府がやっている。つまり、
民間は全部うみを出して、同時に
政府もうみを出して小さくなって、
公共事業は縮めてということをやると、どんどんたまってきて、先ほど申し上げたうみがただたまる。たまって社会によどむだけで、非常に貴重な労働資源、あるいはこれから先高齢化社会で人が足りなくなるとかなんとか言っていながら、それをただむだに使っている。そういう方向に動こうというのが、実は例の
財政構造改革法案だったのじゃないかというふうに私は思います。
それで、今のような
景気の分析を、非常に簡単ですが申し上げましたが、それに対して、では
景気が今後
回復するにはどうしたらいいかということを少し申し述べたいと思います。
これは、一言で言って、非常に難しいと思います。それは、まず第一が資産価格、つまり
皆さんの持っている土地の価格とか株価とか流動性とか、そういうものが本当は拡大していかなければいけない。一千兆消えた分を、一千兆全部とは言わないまでも、かなりの部分
回復してこなければ、同じようにみんなは安心して物を買おうという気は起こらないはずです。それをやろうとしているときに、実際、例えば
金融機関でいいますと、日銀が何をやっているかというと、公定歩合をずっと引き下げていて、かつてないような低い
水準が続いている。
それから、実際、
資金供給もしているわけですね。今回、三月期のちょっと危ないのじゃないかという話に関連して、新聞でちょっと見ましたが、二十兆円ぐらい出しているということをやっている。現金を一生懸命出している。これで、では流動性はふえているか。全然ふえていないわけです。なぜか。出している相手はもちろん
民間銀行経由で出すわけで、日銀が直接
民間のいわば生産部門とか消費部門へ出すわけじゃないですから、銀行経由だ。銀行は何をやっているかというと貸し渋りをやっているわけです。
その中間でどういうことが行われているかというと、銀行は、こう言うとなんですが、多分優良銀行は非常にうれしいのじゃないかと思います。つまり、低い公定歩合でどんどん金を貸してくれて、一方貸し渋りをいろいろなところでやっているわけですから、はっきり言えば、独占力を持っている。そうすると、貸す相手にはいろいろ条件をつけて、安全なところしか貸さずに、しかも高い金利で貸し付けることができる。一方、貸してくれるところは安い金利だ。結果として、社会的に見れば何ら流動性がふえない、こういう
状況が起こっているわけです。
一方、普通の
民間銀行は、今申し上げたとおりでありまして、信用創造を全然やらない。全然やらないというのはちょっと言い過ぎですが、ちゃんとできない。これは社会的な風潮もあるわけで、要するに
金融機関は悪い悪い、ちゃんと堅実
経営やらなかったからこんなことになったという、私から見ればピント外れなことを言っていると思うのですが、そういうことを追及しているだけですから、それは一生懸命、私はこのようにうみを出しました、このように健全にしました、このように資本比率を上げましたということを言わなければいけない。そうすると、幾ら流動性が入ってきたって、ただぼんぼん貸すわけにいかないということになるわけです。ですから、
民間銀行をただ責めるわけにはいかない。
結局、何が起こったかというと、預金がどんどん減ってきて、郵便貯金がふえて、それからたんす預金がふえて、ついこの間、何かデパートで金庫の売り上げが十倍になった。これはもうたんす預金がふえているというまさに証拠なわけですね。この辺がふえたら銀行の信用創造なんかできるわけがない。つまりハイパワードマネーを死蔵してしまうわけですね。
それから、もう一つの流動性の、特に
バブル期に流動性の重要な要因であった株式ですが、あるいは土地ですが、これについて見れば、御存じのとおり、非常に
先行き暗い
状況になっているわけですから、積極
経営なんて決してできない。しかも、もしいいものがあって積極
経営をしようとしても貸し渋りが行われている。いいところには集まっているらしいですが、確実にいいところでないとだめだということになっている。そうすれば株も上がりようがない。しようがないので、リストラだということになってしまう。このように、何をやってもだめな
状況に今陥っちゃっているというわけです。
それで、もう一つ、消費の方はどうか。消費願望はどうだ。先ほど、もう一つの要因である、ある一定の資産を持っている人がよりいっぱい買えばいいんだということを申し上げました。
これは例えば、小さな例でいえばたまごっちとかあるいはゲームソフトとか、そういうのは貧しくたって買うわけですね。おもしろいと思えば買う。子供が買うわけですけれ
ども、自分の少ない小遣いからどんどん買おうとするということが起こっている。いいものがあれば買うわけです。あるいは携帯なんかもそうですね。そういうことだ。ところが、今みたいな
状況で、堅実
経営がいいんだ、いいんだと言われれば、そのようなものには手を出さないで、なるべく少なくしようということになる。
私は、昔、オイルショックのころにある
企業で勤めていたことがあるのですが、そのときにやはり少し似たような
状況が起こっていた。そのときに、その
企業で社員全員に通達を出したのは、鉛筆が短くなって捨てるのだけれ
ども、その長さは半分にしろといって、鉛筆の、何かくっつけるものを回してきた。私はそれを見て、ああ、この会社はだめだなと思ったのです。要するに、それをやると今度は鉛筆の会社がもちろん売れなくなりますし、人は余っている
状況なのに、さらにさらにそうやって縮む、そういうことが起こるというわけです。そういうふうに非常に難しい。
このとき
政府の対応は何かといえば、今みたいに一緒になって小さくやっているということなわけです。これは、しかし、そういう
状況であるということを積極的にとらえますと、実は
政府にとっては非常にいい時期なんですね、今。何がいいかというと、人が余っていて、実はイニシアチブをとって積極的に、例えば将来の情報通信網のインフラとか、そういうものに積極的に打って出ても、
民間の邪魔を余りしないで済む時期なんですね。
ところが、好況期に一生懸命そういうことをやろうとすると、なぜかといえば、インフラが足りないとかなんとかいうことで、要するに
日本の生産能力いっぱいいっぱい使っているときには、何かそれをやろうとして、かえって
民間が有効に使っている資源を
政府が取り上げて、というのは
税収が自然に高まりますからね、今のアメリカの
状況もそうですし、
バブル期のときもすごい
税収があった。それを、こんなにお金が入ったのだから何か使わなければ損だといって何かやってしまう。やってしまうということは、貴重な労働資源を
民間から取り上げるということになってしまうわけです。
現在はどうかというと、余っているわけですから、
民間の邪魔をしないようにというのは当然でありますが、つまり、
民間でも非常に
活力のあるようなところから人を取り上げるような
事業をやるのはおかしいと思いますが、余っているところをいかに有効に活用するかということに知恵を絞るチャンスを
政府が与えられたというふうに、積極的にとらえることができると思います。実際、
バブル期に、
日本の好況期にインフラで足りないことはいっぱいあったわけですから、そのリストなんかあるのじゃないかと思うのですね。それを今やるというのが一番安上がりで、人の邪魔をしないということになる。だから、私は積極
財政派なわけです。
さて、どうしてそういう発想を
政府は持っているかというと、要するに、
民間企業は自分の
企業を効率化すればいいんだという発想だ。銀行もそうである。
政府は何を
考えているかというと、
政府の公共部門が自分の身内だから、公共部門を効率化すればいいんだ、こういう発想になっている。実際にそういうことをおっしゃっている方は何人も私はお会いしたことがありますが。
政府が責任を持って
考える範囲は何かといったら、
国民全体なわけです。つまり、公共部門のことだけを
考えて、そこのリストラだけをやっているのは全く
民間企業と同じでありまして、一番効率よくマネージするべき
対象は国全体なんでありますから、みんながうみを出して、
政府もうみを出して、残ったところは知らないというのでは、その人たちは
日本国民じゃないのかということになってしまうということであります。
さて、次に、では具体的な
政策について
考えていこうと思うのですが、このようなとき、さすがに
景況感悪くなっているので、一番よく言われるのは
減税であります。
皆さん、
減税だとおっしゃっている。私はこの発想は、
政府はろくなことに使わないのだ、つまらないことにしか使わない、だから、
財政出動なんかをしてつまらないことに使うくらいならば、
民間にお金を回して、
民間に買ってもらおう、こういう発想だと思うのですね。これで説得力を持っているように見える。
ところが、これは全く一面的であります。どういうことかといいますと、まず第一に、よく言われることですが、例えば、今回私が
減税で、六万円か七万円か、あるいは五万円かちょっと知りませんが、もらったとしても、そんなのは幾らもらったかも忘れてしまって、その分で使おうとは別に思っていません。それは全部ポケットに入ると思います。つまり、貯金ということですね。
それから、
財政出動はむだであって、
公共事業はむだであって、
減税は有効だというのですが、そうでしょうか。
つまり、
財政出動というのはやはり金を
民間にばらまくわけですね。だから、こういうふうに
考えましょう。例えば、一人当たり十万円ずつ
減税を行ったというふうに
考える。しかも、その一人一人にすべて、例えば今問題になっているごみの山があったら、そのごみの山をきれいにするという仕事を一時間ずつやっていただいたとします。そうすると、ただで一人十万円ずつ
減税したのと、ごみの山がきれいになって、十万円ずつ
減税したのと同じことになるわけです。
つまり、
財政出動というのは、
政府が何もそのお金を吸収して、食べてしまってなくなっちゃってパアになったということではなくて、それを
民間にお金を回して、かつ何か有効に人を使う、それが
財政出動なわけです。
それを悪くまずく使うからいろいろ文句を言われるわけですが、それはもう
皆さんの責任でありまして、それはちゃんとやっていただきたいのです。今そういうのを、少しぐらい効率が悪い、こう言うと
皆さんに怒られると思いますが、
政府の方での全然使ってない労働者よりはよほど有効に使えるというふうに思われます。
それで、これは例で言えば、ごみの例を言いましたけれ
ども、要するに国ということで、例えばここの中は全部国だとします。例えば、ごみの山があって、海は油で汚れている。それは、前に例のタンカーが何かという問題がありましたね。そういうときに、例えば私は
皆さんに、ただ
減税をするか、あるいは何もしないでお金をため込んでおく。しばらくすると何が起こるかというと、私は
政府であって、私の中の
財政状態は非常にいい。しかし、ごみの山はあるし、海は汚れている。ところが、
皆さんにお金を回して、それでそういうものをきれいにしようといったら、それはきれいになるわけですね、ということです。
それで、時間が大分来てしまったので、実はこれだけでやめてしまうと、では、おまえの
意見は
財政出動を大いにやれということかという結論になると困るので、もう一言だけ加えておきますと、
減税よりは今のようなことの方がずっといい、だから知恵を絞ってくださいということなのですが、さらにいいのは、そういう
事業をやったからといって有効需要がふえるわけじゃないということで、つまり、
景気対策でやるのじゃなくて、有効な資源を使えということでそういうことをやった方がいいということを申し上げたわけで、実は、それが
景気を高揚させるようなものにつながればもっといいわけです。
それは次世代の、例えば
産業のインフラ、太陽エネルギーとか省エネ技術とかそれから情報通信網の整備とか、そういうものですね。あるいは、ごみ
処理の技術の開発とかあるいはそれの設備とか、それから高齢化
対策のための設備の充実とか、それからその人材の訓練とか、やることは幾らでもあるわけです。
それを全部放棄して、一生懸命国の
財政をよくして、数年後には、国の中はお金がいっぱいたまっているけれ
ども、周りじゅうは国は荒れているという状態か、それとも、その辺はきれいに全部整備されて、しかも将来の新
産業も生まれて、しかし国の中は赤字になっていますが、それは国の借金であって、
国民の借金じゃないのですね。
国の借金というのは
政府の借金という
意味ですが、
日本国の借金というのは対外収支の赤字なのですね。ところが、
日本はすごい黒字を持っている。
政府の借金というのは税金で取って戻せばいいだけの話で、これは右から左にお金を
国民の間に回すだけですから、ということです。
最後に一つだけ申し上げたいのは、こういう
政策を好況のときにやったらとんでもないわけです。好況のときにそういうことをやるというのは、好況のときはみんなが使っているわけですから、
政府が邪魔をしてはいけない。しかし、今みたいなときには有効に使わなければいけない。そういう責務が
政府にある。だから、使うときには、
政策をもし決めようとしたら、好況のときには絶対その赤字を
解消するのだということをはっきり明言した上で、今積極的にやってほしい。要するに、小さな額じゃ困るということであります。
以上です。(拍手)