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1998-03-12 第142回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十二日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 中山 利生君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 五島 正規君    理事 高木 義明君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       相沢 英之君    甘利  明君       石崎  岳君    岩永 峯一君       江藤 隆美君    遠藤 利明君       小澤  潔君    大石 秀政君       河村 建夫君    岸田 文雄君       栗原 博久君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    津島 雄二君       中川 昭一君    中山 正暉君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       増田 敏男君    松本 和那君       村田 吉隆君    村山 達雄君      吉田左エ門君    渡辺 博道君       綿貫 民輔君    上田 清司君       生方 幸夫君    海江田万里君       鍵田 節哉君    小林  守君       中川 正春君    原口 一博君       松沢 成文君    山花 貞夫君       上田  勇君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    中井  洽君       西村 眞悟君    木島日出夫君       春名 直章君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君  出席公述人         日本商工会議所         会頭      稲葉 興作君         株式会社舛添政         治経済研究所所         長       舛添 要一君         東京工業大学大         学院社会理工学         研究科教授         大阪大学社会経         済研究所教授  小野 善康君         日本労働組合総         連合会副会長  高木  剛君         株式会社野村総         合研究所研究理         事       富田 俊基君         全国労働組合総         連合会事務局長 熊谷 金道君  出席政府委員         内閣官房副長官 額賀福志郎君         総務政務次官  熊代 昭彦君         北海道開発政務         次官      吉川 貴盛君         防衛政務次官  栗原 裕康君         沖縄開発政務次         官       嘉数 知賢君         法務政務次官  横内 正明君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       寺澤 辰麿君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         農林水産政務次         官       岸本 光造君         郵政政務次官  中谷  元君         建設政務次官  蓮実  進君  委員外出席者         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   甘利  明君     大石 秀政君   遠藤 利明君     岩永 峯一君   大原 一三君     松本 和那君   桜井  新君    吉田左エ門君   野中 広務君     石崎  岳君   岩國 哲人君     上田 清司君   岡田 克也君     中川 正春君   松沢 成文君     鍵田 節哉君   志位 和夫君     春名 直章君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   石崎  岳君     野中 広務君   岩永 峯一君     岸田 文雄君   大石 秀政君     甘利  明君   松本 和那君     渡辺 博道君  吉田左エ門君     桜井  新君   上田 清司君     岩國 哲人君   鍵田 節哉君     松沢 成文君   中川 正春君     岡田 克也君   春名 直章君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 博道君     大原 一三君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず稲葉公述人、次に舛添公述人、続いて小野公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、稲葉公述人にお願いいたします。
  3. 稲葉興作

    稲葉公述人 日本商工会議所会頭稲葉興作でございます。先生方におかれましては、常日ごろから商工業の発展に多大なる御支援を賜っておりまして、厚く御礼を申し上げます。  本日は、このような意見陳述の機会を設けていただき、まことにありがとうございます。総勢百六十万会員を擁する全国商工会議所を代表いたしまして、平成十年度予算を初め、景気認識景気対策等について意見を申し上げたいと存じます。  まず、景気認識について申し上げます。  昨年の企業倒産は、負債総額が十四兆円強と過去最悪値を記録する一方、昨年の自己破産件数も七万件超と過去最高となり、さらに失業率が過去最悪水準の三・五%、男性は三・七%で、これも過去最悪で高どまりするなど、現下景気は極めて深刻な状況にあります。  私どもは、毎月、全国商工会議所を通じまして、約二千六百の業種組合に対し、景気マインド調査実施しておりますが、全産業合計業況DI値、すなわち前年同月より業況が好転したとの回答割合と前年同月より悪化したとの回答割合、このDI値は、平成三年四月以来八十三カ月連続でマイナス水準で推移しております。  さらに、昨年三月には消費税率の引き上げを前にした駆け込み需要により若干持ち直したものの、四月以降は産業全体の業況感が悪化の一途をたどっており、ついに昨年の十二月以降連続して業況DI値平成元年調査開始以来の最悪値を更新するに至り、二月にはマイナス六二・一となっております。  また、今後の景気先行き見通しについても、さらに悲観論が強まっております。まさに中小企業景況感最悪の状態にあると言え、現下景気の厳しさに対する悲鳴が各方面から聞こえてまいります。  こうした中小企業の苦しい現状の一端を示すものとして、例えば、東京商工会議所において本年一月に、MアンドA、要するに企業の合併、買収のセミナーを開催いたしましたところ、定員の倍近い応募が殺到するなど、中小企業経営者事業を継続できるかどうかで大変苦慮しておりまして、できれば事業を譲渡したい、売りたいと希望する経営者がかなり多いことなどが判明をいたしました。  さらに、全国各地からは、長引く不況影響で地場の企業倒産、廃業がふえている、公共工事等の減少により建設需要がひどく落ち込んでいる、アジア経済危機のあおりを受け輸出が大幅に減少しているなどといった切実な声が寄せられており、地方景況感も一段と冷え込んできております。  景気がこのような危機的な状況に至っては、引き続き貸し渋り対策など中小企業対策に万全を期すことはもちろん、景気早期回復を図るためにあらゆる対策を総動員すべきであるというのが、私どもの基本的な考えであります。  政府・与党におかれても、既に数次にわたる景気対策が打ち出されておりますが、いまだに具体化していないものは早急に具体化し、法的裏づけが必要なものは早く法律を成立させて、速やかに完全実施に移していただきたいと存じます。  景気早期回復を最優先すべきであるとの立場からいえば、現在審議中の平成十年度予算については、可及的速やかに成立させ、来年度当初から切れ目のない予算執行を行うことが、景気対策観点からも極めて重要だと考えます。予算編成には手順とか手続が必要であることは十分理解しておりますが、現下景気危機的状況のもとでは、一日たりとも予算執行空白期間をつくってはなりません。  十年度予算早期成立は、すなわち次の景気対策を早く打てるということでもあることから、とにかく十年度予算原案どおり一刻も早く成立させ、その上で、予算に盛り込まれた公共事業の上期における大幅な前倒し執行など、景気刺激のための予算執行について最大限の工夫をしていただきたいと存じます。  さらに、自民党では、新たな景気対策及び大型補正予算編成の検討に取りかかっているとのことであります。現下景気危機的状況考えれば、常日ごろからあらゆる対策の選択肢を議論し、その実施可能性を追求することは当然のことであり、予算審議の間はそれに影響を与える議論は一切してはならないというような慣習には、この際縛られることはないと考えます。私どもとしては、現下景気危機的状況に対処するためには、早急に、財政出動を含めて即効性のある大型景気対策が発動されることを強く望んでおります。  財政出動を伴う景気対策財政再建路線との整合性議論の焦点になっております。言うまでもなく、財政再建は重要であり、中長期的に進めていかねばならない課題であります。しかし、まず景気回復があってこそ初めて財政再建は可能となるものであり、現下景気危機的状況のもとでは、財政再建優先の硬直的な考え方はとるべきでなく、経済情勢変化に応じて、臨機応変の柔軟な考えをとるべき時期に来ていると考えます。  こうした観点からは、財政構造改革法についても、ある程度弾力的な運用が行えるように必要な見直しを図ってもよいのではないかと考えております。  財政出動規模に関しては、少なくとも十兆円程度資金投入が必要ではないかと考えております。この一年間における国民負担増加は、消費税増税特別減税の廃止、社会保障負担増加健康保険本人負担増加合計約九兆円に上っており、さらに、これらのほかにも、家計金利収入目減り残業代目減り失業者増加による給与の逸失や、ストックとしては株式及び地価の目減り等が、直接、間接に家計にダメージを与えております。  具体的には、税体系見直しによる恒久的な所得税住民税減税実現法人課税実効税率の四〇%に向けての一層の引き下げ、及び情報通信関連などの新社会資本整備を含め、具体的効果が見込める公共事業実施を組み合わせた即効性のある景気対策について、早急にその実現を図っていただきたいと存じます。  いずれにせよ、現在日本国じゅうに蔓延している不況風を一掃すべく、国民企業に対し、景気先行きに明るい展望を与えるような大型景気対策を、政治の強い意思を持って、早急にはっきりと打ち出していただくことを強く希望いたしたいと思います。重ねて触れますが、次の大型景気対策を早急に用意するという趣旨からも、平成十年度予算の可及的速やかな成立が望まれるところであります。  ところで、我が国経済基盤を支えているのは中小企業であります。事業所数で九九%、従業員数で七八%を占める中小企業活力がよみがえらない限り、真の景気回復はあり得ません。昨年後半から顕在化してきた民間金融機関による貸し渋りが、中小企業資金繰りを困難にし、景気に大変な悪影響を及ぼしております。  私どもが、本年二月の時点で、各地商工会議所対象に調査した結果では、昨年十一月の緊急経済対策実施前と比較いたしまして、貸し渋り状況が変わらず悪いと貸し渋りがさらに悪くなったことを指摘する商工会議所は九〇%に及び、貸し渋りが改善されたとしているのはわずか一〇%にとどまっております。  貸し渋りの具体的な事例としては、業績不振等を理由に追加融資を断られた、追加の担保、保証人を要求された、融資を断られ、公的資金の利用の方を勧められた、また極端なケースでは、三月末までの返済を条件とされた、融資を引き揚げられたなどの報告が寄せられておりまして、中小企業がしわ寄せを受けて、資金繰りに大変苦慮している実態が明らかになっております。  商工会議所への、政府系金融機関からの融資についての相談は、いわゆるマル経資金、小企業等経営改善融資制度でありますが、これを含めまして大幅な増加傾向にありまして、例えば東京商工会議所における金融相談件数は、昨年末から本年二月にかけて、前年同月比で倍増となる一千三百件余に及んでおります。またマル経資金推薦実績についても同様に、金額で倍以上に上っております。やはり中小企業の多くが政府系金融機関を頼りにしているという実態があらわれております。  しかしながら、民間金融機関からの融資姿勢が一日も早く正常な姿に戻らなければ、貸し渋り問題の根本的解決にはなりません。先ごろ、公的資金投入による民間金融機関自己資本増強等を目的とした金融システム安定化関連二法が施行されました。公的資金投入により、預金者保護が担保され、金融システム信頼性回復されることはもちろん、自己資本増強で生まれる民間金融機関貸し出し余力が確実に企業向け融資へとつながり、特に中小企業への貸し渋りが是正されなくては意味がありません。  しかし、現在のところ、残念ではありますが、この点が明確になっておりませんので、今回の公的資金の注入が、量的に十分かつ速やかに貸し渋りの解消に確実につながるよう、引き続き政府の強力な御指導をお願いいたしたいと存じます。  また、国の制度融資債務保証制度などの金融支援中小企業向けに拡充していく中で、中堅企業対象にした債務保証制度など金融対策の充実にも十分意を用いていただく必要がありますことをつけ加えさせていただきます。  最後に、企業倒産がふえ、全体の事業所数が減少している中にあって、我が国経済を根底から支えている中小企業経営革新支援し、その活力最大限に引き出すとともに、新規企業の創出を促すことが日本経済活性化にとって不可欠であり、中小企業支援こそ、我が国にとって継続的かつ重点的に取り組まねばならない課題であることは申し上げるまでもありません。  このため、恒久的にはベンチャー企業の振興や中小企業情報化推進など、中小企業対策の一層の拡充強化全力を挙げていただきたいと存じますが、まず、緊急の課題として、中小企業が大いに力を発揮できる経済環境をつくっていただくことが大事であり、政府国会におかれましては、当面、予算早期成立景気回復そして貸し渋りの是正に全力を挙げていただきたいことを重ねて強調させていただきまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、舛添公述人にお願いいたします。
  5. 舛添要一

    舛添公述人 どうも皆さん、おはようございます。  テレビというメディアは、御承知のように、余り緻密な議論に向いていない、それから途中で発言を途切られるというようなことがありますので、きょう、二十分間もしゃべってよろしいということなので、日ごろ申し上げられないことも含めてお話し申し上げたいと思います。  バブルというものが起こって、それからそれも崩壊した。これは皆さん承知のように、我が日本だけのことではないんですけれども我が国がどこで間違えたか。これは、バブルを脱却するということにおいて最もおくれをとったということだろうと思います。スウェーデンというのは、バブル規模においてもその崩壊の規模においても我が国以上だったんですけれども、はるか前にいろいろな政策をとりましてバブルから脱却したということがあるわけです。  最近私も日本全国をいろいろ歩いていまして、非常に不況感というのが強まっている、これは否めないと思います。昨年の経済状況を振り返ってみますと、大体夏ぐらいから非常に悪くなってきた。それから、アジア通貨危機がそのころに起こる、それから金融不安ということで、昨年末はそれがピークに達したんだと思います。  そういう中で国民政府に期待したものというのは、やはり景気回復ということであったんだろうと思います。ただ残念ながら、現実に実行されましたのは、教科書的に申し上げれば、景気を悪化させるような政策であった。具体的に言いますと、消費税率が上がる、特別減税をやめる、それから社会保険料の値上げということで、九兆円ばかり国民負担がふえたということであります。  それから、最も深刻なのはバブル後遺症。先ほど申し上げましたように、スウェーデンというのはかなり早くこれを解消したんですけれども我が国不良債権処理が非常におくれた。これは住専処理なんかの後遺症があったと思いますけれども資産デフレの進行ということが今の不況の最大の原因であろうかというように思っています。  そういう中で我が政府は大変厳しい政策をおとりになったんですけれども、それは財政赤字解消のために財政構造改革推進する必要があったからでありまして、これは非常に正しいことであると思います。  昨年来の動きを見ていますと、財政再建という目標が一つありました。それからもう一つは、景気回復。実は、この二つを両方実現することができれば最高なんですけれども、それは非常に難しい。例えば税制ということから見ますと、財政再建というのはやはり増税ということになるだろうし、景気回復ということになれば、先ほど申しましたように、教科書的には減税ということになるわけですから。  ただ、じゃ、何をもってすれば、景気回復財政再建という二つの、一見相矛盾する政策実現できるか。これは、橋本総理おっしゃっている行政改革だと思います。火だるまになって行政改革推進するとおっしゃっているのは、決してこれは的外れじゃないと思います。いろいろな改革をおやりになる。六つ改革。これも二十一世紀の日本のためには必要だと思います。  ただ問題は、行政改革位置づけを、私が申し上げましたように、財政再建景気回復というこの二つを同時に実現する、いわばマジックのようなものであるわけですけれども、そういう位置づけを十分なされなかったんじゃないか。  かつて鈴木善幸内閣のときには、増税なき財政再建、そのための行政改革ということを積極的におっしゃった。だから、できれば橋本首相も、そういう意味での、まさに景気回復するための行革なんだということをもっとおっしゃるべきだったんじゃないか。つまり、私どもが例えばジャーナリズムの中から見ていますと、政治言葉というのは国民を動かしていないんじゃないか。だから、鈴木内閣のときの言葉の方が国民をより説得する力があったような気がしてならないわけです。  しかも、行政改革にしましても、景気回復ということが念頭にあるのなら、私は優先順位を間違えたと思っています。まずやるべきことは、規制緩和、それから地方分権、それから民間に任せられれば民間に任せるという意味での小さな政府実現、これを前面的に持ってくれば、中央省庁再編というのは自動的に行われる。  例えば、私は道州制ということを常に申し上げていますけれども、道州制、日本六つから九つの連邦制的な国家に再編してしまえば、今の中央省庁の半分以上は地方に落とすことができる。例えば、文部省というのは中央にある必要はないだろう。通産省も地方でいい。そうしますと四省か五省に自動的になるわけですから、そういう意味での規制緩和、それから地方分権推進ということが先にあるべきであって、中央省庁再編、一府十二省を相当鳴り物入りでおやりになったのですけれども、それを発表したときに株価は上がったか。何の変化もないし、それから、恐らく今国会で法案化されるかどうか、これは今でもわからないという状況であるわけです。  残念ながら、政治のエネルギーというのが中央省庁再編論議に注がれている間に、御承知のように、経済危機というのはどんどん深刻化していった。しかも、非常に残念なことですけれどもアジア通貨危機、これが日本の金融不安をさらに悪化させまして、さらにそれが世界全体に波及するということになって、結局は諸外国から日本政府政策転換を要請されるようになっていったということだと思います。  しかし、財政再建ということが非常に重要でありますけれども、ある意味でにしきの御旗というのをおろすことができなかったものですから、引き続き、アジア通貨危機にもかかわらず、従来の路線を継承していったわけです。その過程で、御承知のように、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、こういう金融機関経営に行き詰まって破綻していった。この大きな金融機関が破綻したということが国民に与えたショックは物すごく大きくて、これが景況感に非常な悪影響を与えたというふうに思います。  そこで、ではどうするかということですけれども、私は、今日の経済危機を打開するためには、やはり思い切った政策転換というのは必要だろうというふうに思います。何度も申し上げますけれども長期的課題としては、財政再建に取り組むということは不可欠であります。しかし、短期的には、その課題を一時棚上げしても、景気回復させるための手を打つべきだと思います。特に不良債権対策については、やはり、残念ながら、政府政策というのはツーレート、ツーリトル、遅きに失したし、小出しに過ぎたのではないか。  二兆円、実を言いますと、二月の給料分から所得税が安くなっているのですけれども、やはりこれは歳末の商戦に合わせてやっていただかないと困るわけです。確定申告する人は、来年にならないとだめだ。ですから、同じ二兆円使うなら、半年早ければもっといい効果が出たのではないか、そういうふうな思いがあるものですから、今言ったことを申し上げたわけです。  財政再建のためにも実は景気回復されねばならないわけでありますし、不況が続きましたら、先ほどの稲葉公述人のお話にもありましたように、中小企業を含めて企業業績も伸びませんし、税収も減る。景気がよくなれば、税収もふえますし、財政再建にも資するわけです。  アメリカでクリントン政権のもとで三十年ぶりに財政が黒字に転換しましたけれども、それはやはり景気がよかったからであります。二十年前にレーガノミックス、先ほど私が申し上げましたように、規制緩和をやる、小さな政府をやる、こういうことを徹底してやっていった、そのレーガノミックス効果が今こういう形であらわれている。あのときは思い切った減税をやったわけです。  そこで、さらに具体的な方策について申し述べますと、私は、五兆円規模追加減税はよろしいのではないか。それから、情報通信基盤整備というようなことへの五兆円規模追加的公共支出も結構だろう。  ただ、ここで繰り返し注意して、強調しておきたいのは、構造改革ということがない形での、ただ単なる需要拡大のための減税はやめていただきたい。  具体的に言いますと、法人税減税日本で一番法人税実効税率が低かったのは、三五%ぐらいのときがありました。今は五〇%です。例えば香港というのは一六%ぐらいですから、やはり海外に会社が逃げていくということはあるわけで、できれば三五%ぐらいまで思い切って下げるという法人税の構造的な改革。  それから、所得税にしましても、累進税率、これはレーガノミックスでやりましたように、思い切ってこれも改正する。それから、課税最低限度は私はやはり引き下げた方がいいのではないか。そういうことを加えた上での減税であるということです。  それから、公共支出ですけれども、公共支出が全部悪い、そういうまさに荒っぽい議論はやめたいと思いますが、やはりむだなものが随分ある。  私はしょっちゅう北海道に参りますけれども、北海道で農道空港が最近二つできました。北海道新聞が冷やかして、他目的空港と書いている。他目的のタというのは、多いという意味ではなくて、他という字が書いてある。他目的空港。お金持ちがセスナ機で遊びに来るだろう。  こんな景気の悪いときにそういうことをするはずはないので、こういう農道空港を例えばウルグアイ・ラウンドなんかの予算でつくることができるのならば、千歳空港をもっとよくする。あんなみすぼらしい成田空港をもっとよくする。幾らでもこの日本国が二十一世紀にもっともっと活力あるようになるために必要な情報通信インフラの整備、それから交通インフラの整備も必要だと思います。  なぜ東日本が沈滞しているか。私は今、母親の介護で福岡にしょっちゅう行っている。北海道にも行っている。もう別の国のようであります。西日本に下る分には、飛行機もあれば、新幹線もあれば、交通機関もしっかりしている。橋もある。中国と四国の間は、加藤六月先生おられますけれども、三つも橋がある。北海道と東北は何もないわけです。  ですから、例えば、同じ日本人でありながら、情報通信、交通基盤というものの恩恵にあずかるところ、あずからないところがある。沖縄なんというのはもっとひどいわけです。ですから、そういう意味での無用な公共支出は削減する必要がある。そういう構造改革をやった上で、しかし必要なところにはつける。  私がテレビの議論で緻密なことはできないと先ほど申し上げたのは、公共支出は全部だめだとか、そういう議論で終わってしまうからでありまして、ここはぜひ皆さん方のお力で、構造的に改革しながら、何をやれば二十一世紀に日本が生き残れて、そして日本国民がひとしく公共支出の恩恵にあずかることができるかということを考えていただきたいというふうに思います。  私は、国債ということは、赤字国債つまり特例国債と建設国債、これを分ける必要はない、そういう発想は必要ないのではないか。今これは財政構造改革の問題がありますから、便宜上そうなっていますけれども、基本的には分ける必要はないだろう。インフラ整備のために国債を活用するということは、外国にお金を吸い取られるよりはるかにいいというふうに思っています。今非常に低金利ですから、必要な、不可欠な基盤整備を低コストで完成させるという意味でも活用してよろしい。  あえて誤解を恐れず申し上げますと、GNP五百兆の国です。個人資産千二百兆の国です。国債五百兆、そんなにオオカミ少年のように恐れて言う必要があるのかなという気がします。  問題は資産デフレでありますので、あらゆる手段を使って、土地の流動化、不動産市場の活性化、さらには証券市場の活性化ということをやるべきであります。これが大体二、三年おくれたわけです。長期譲渡益の課税でも、要するに一気に下げればいいのを、どうしても連立政権の制約なのか、足して二で割るという方策をとってきた。地価税だって、〇・三を一気に下げればいいのに〇・一五と、必ず途中経過をとっている。それがおくれた。有取税にしてもそうであります。でも、幸いながら今回は、今申しましたように、遅きに失したとはいいましても、この方向での改革が進められているということは大変喜ばしいというふうに思います。  ただ、根本的な問題を政治の現場とかジャーナリズムの現場という形で見ていますと、私は政府国民の間に相互の不信感があるということがすべての政策を失敗にさせているという認識を持っています。  政府国民を信じていないのではないか。つまり、五百兆円の借金というのは一人当たり五百万円です。五百万円の収入のあるサラリーマンは五百万円の住宅ローンぐらいは持っている。千二百万円の個人資産もあるわけですから。だから、まじめにこつこつ働いてちゃんと返済計画を立てれば、そんなに恐れる必要はないのですけれども日本国民が非常に無能で、それから浪費が好きで、わずか一人当たり五百万円の借金も絶対に戻せないだめな国民である、そういう認識を前提にして、政策を例えば大蔵省はお立てになっているのではないか。  国民はまた、全然政府を信じていません。それは、御承知のように、昨日も日本銀行の課長さんが捕まりました。最近の大蔵省を初めとする官僚の不祥事、それから相次ぐ金融機関の破綻、それから一向に景気回復しない。そういう状態で政府を信じてくれといったって、これは無理であります。  したがって、この相互不信感という中に日本じゅうの閉塞感がみなぎっている。これを何とかしない限りは、あらゆる政策は失敗するというふうに思います。  現在の不況を克服するためには、私は、財政政策も必要ですけれども、実は、皆さんお忘れになっているのですが、金融政策も絶対必要なので、財政政策と金融政策というのは車の両輪でありますから、これが有効に働かないとだめだ。  つまり、ずっと、マネーサプライ、通貨供給量が足りないということを申し上げてきていた。しかし、それに対する適切な対応がなかった。マネーサプライを増加させる必要がありますし、それは、日銀がやろうと思えばできることです。しかし、やった結果、何が起こっているか。御承知のとおり、たんす預金がふえている。  なぜ、たんす預金がふえるのか。それは国民政府を信じられないから、金融機関を信じられないから。ですから、たんす預金を減らすためという目的だけでも、私は公的資金の導入は結構だというふうに思いますけれども、しかし、銀行の貸し渋り、これはまあ金融恐慌と極端に言えば言ってもいいぐらいな状況を生んでいるわけであります。  三十兆円の出費というのは、公的資金の導入は、そういう意味で、個々の銀行救済ではなくて、システム全体。どうも政府が信じられない、もうたんす預金以外は信じられないという方々に、預金しても大丈夫です、何億入れても結構です、もちろん少額は永遠に守ります、そういうようなことをおっしゃれば、少しはお金が動くかなというふうに思います。  ただし、今、いろいろな方に私はお伺いしますけれども、私は、そういう観点から、公的資金の導入は遅過ぎた。  スウェーデンは、日本よりひどいバブルを、なぜ日本より早く解消したか。一人当たり五千円の住専の問題で騒いだ日本と違いまして、一人当たり二十万の出費を要求した。ただ、その前提は、私が申し上げる三つのことをやったからであります。  一つは、責任者の厳正な処罰。国営の金融機関を民営にして、頭取の首をとった。それから、情報の公開です。どれだけ不良債権があるか、一切銀行は言ってくれない。そういう銀行にお金を預ける気になるか。それから三番目、これは皆さんおっしゃらないので、きょう強調しておきたいのですけれども政治の責任として、タイムスケジュールを明示してください。  三十兆円でも五十兆でも結構です。お使いになって結構なんですけれども、この不況から、いつ出口が見えるのか。つまり、もっと言いますと、不良債権の完全な処理が、例えば二〇〇〇年の十二月三十一日でもって終わります、そこに政治生命を総理大臣にかけていただきたい。もしそれができなければおやめになればいいわけだし、与党は野党にかわってもらえばいいわけです。  そういうことがないと、例えば国民の気持ちからいうと、出口がわからないトンネルに入っているようなもので、我々は高速道路でトンネルに入るのは、その道路が二百五十メーターとか三百メーターと書いてあって、出口がわかっているから入るので、入って永遠に真っ暗だというのは、これはどうしようもない。  今の閉塞感というのは、皆さん方が立案してくださる政策のおかげで、いつこの不良債権処理ができるんだ、私は、政治というのはそういうところに政治生命をかけるべきであって、それは官僚にできないことです。官僚は、数字の積み立てをやって、とてもこれは無理だと。しかし、政治の決断でできれば、二〇〇一年一月一日、正月みんなでうまい酒を飲もうということが言えるように、三十兆円で足りなければ四十兆円でも、極端に言えば、私はいい。そこに、タイムスケジュールの明示ということに政治生命をかけていただきたいというふうに思います。  そういう意味で、国民の信頼感を回復するということが最大の問題だと思います。  そこでもう一つ。なぜ、じゃ、たんす預金をしてまで消費を抑制するのか。私は、五兆円の所得減税と申し上げましたけれども、それをやっても、ひょっとして何にも内需の拡大にも影響を与えないんじゃないかという不安があるのは、今言ったたんす預金傾向があるわけでありまして、これは、将来に対して非常に不安だからです。先ほど申しましたように、私は今、日々介護の現場にいるのですけれども、高齢化社会に対する不安というのは物すごい。したがって、どれだけ減税されても、それは全部貯金ということになっちゃうわけです。  そこで、問題は、ぜひ皆さん方に、高齢化社会の明るいビジョンを打ち出していただきたい。つまり、大蔵省から出していただく資料というのはすべて、高齢化社会がいかに暗いか。今から五年後に、痴呆老人二百万ふえますよ。それから、いかに金がかかるか。だから、財政再建。すべての政策の前提に高齢化社会の到来ということを言う。高齢化社会が、暗くて、金がかかって、みんなぼけ老人になるような話をする。だからお金がかかるのですよ、そういうような暗いイメージしか言わない。それだと、国民はやる気がなくなる。結局は負担を要求する。  例えば、昨年の九月、窓口の負担を医療費についてふやしている。しかし、ふやしたけれども、これは、例えば、十兆円に及ぶ老人医療費、二十七兆に及ぶ国民医療費を削減するためですよ、そういうことをおっしゃれるのかどうなのか。とにかく暗い世の中のイメージしかつくらないということは、将来への希望を国民に失わせるわけでありますし、日本国全体がやる気を失っていくと思います。  それで、最後に申し上げたいのは、そういう意味で、根本的な発想を転換することでありまして、長生きしてよかったな、高齢化社会明るいよ、夢と希望にあふれているよというイメージを私は出そうと思っていますので、今、日々一生懸命本を書いたり、いろいろなことをやっているのです。  私の母親が今倒れちゃった、老健に入れる、特養に入れる、こういうことをやりますと、単純に計算して、一人の痴呆老人が生まれれば、五百万円の借金が飛んでいくわけです。そういう老人が生まれないような社会づくりをやれば、一人当たり五百万、税金を減らすことができるわけでありまして、単純に二百万、二百万人で五百万円というのは十兆円ですから、消費税四兆円分要らないということです、政策のよろしきを得れば。  そこで、私は、そろそろ、外国のまねもいいんだけれども、我が江戸時代の文化を見直すということを強調したい。江戸の文化というのは老いの文化である。老いるということを非常にたっとぶ文化である。年寄りに役割を与える。ですから、子供がナイフを持って先生を刺すような社会は生まれない。その地域社会で、ちゃんと年寄りがそういうことを孫の世代の人たちにやってくれた。  老いに高い価値を見出す。ですから、隠居の後が本当の人生の楽しみである。歌川広重、東海道五十三次、この方は消防署の役員だった。やめて、それであの絵をかいて、世界中に影響を与えた。伊能忠敬、この方も引退してから四万キロ以上歩いて、ペリーがびっくりしたような日本地図をつくり上げた。  だから、そういう老後に高い価値を見出す。皆様方が政治家をおやめになったら、その後、どういう楽しみを持って生きていかれるか。いや、おれは死ぬまで政治家をやるという方でも結構なんですけれども、仕事で永遠にやってもいい、楽しみでやってもいい。ところが、戦後の会社人間というのは、やめたらどうしようもない。そうすると、うちへ帰ってぼけちゃうわけです。  貝原益軒が養生訓というのを書いたのは、老後の人生のために書いたのです。ですから、若いときに養生をする、深酒をやらない、それは老後にぼけないためなんです。ですから、そういう江戸のいい文化があったのは、大体これが昭和三十五年、一九六〇年以後、全部日本の指標がマイナスになってきた。少子化もそうだ。世帯人員の減少もそうだ。子供の凶悪犯罪もそうだ。だから、戦後の高度成長が失ったものを取り戻すというふうに事を考えればいいと思います。  私は、そういう意味で、高齢化社会の到来ということを全部のエクスキューズにして、だから増税だ、だからどうだというのは、思考の停止だと思います。役人はそれで済みますけれども政治はそれでは済まないというふうに思います。  私は、これは寝たきり老人じゃなくて、実は寝かせきりをつくっていると。私の母親は歩いて老健施設に入ったのです。リハビリしてちゃんと在宅に入れるためにやったのが、帰ってくるときは車いすです。おむつなんて要らない体だったのが、出てくるときはおむつで帰ってきた。要するに、そのために五百万毎年税金が飛んでいっているのです。  だから、そういう政策よろしきを得なければ問題がありますし、厚生省のトップの次官から、わいろをもらってやるような官僚では、国民は信じていけないわけですから、そういう意味で、寝かせきり福祉をやめる、うば捨て行政をやめるということをやるだけでも、財政再建の近道になる。  ですから、ぜひ、皆さん方の力で、国民に夢と希望を与えるような、明るい高齢化社会のビジョンを抱いていただく。迂遠な道のようでありますが、十兆円浮きます。確実に浮きます。そういうことを強調いたしまして、これは政治のリーダーシップにしか求めることができませんので、ぜひ、皆さんにお願いしたいと思います。  甚だ勝手なことを申し上げましたけれども、終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、小野公述人にお願いいたします。
  7. 小野善康

    小野公述人 舛添さんは最初に、一人で二十分間話せるのは非常にいいとおっしゃっていましたが、私は普通発表するときには、いわゆるセミナーの形式で、話している間に、聞いていらっしゃる方に私の真意がうまく伝わっているかということをいつも確認しながら、リアクションを見ながらやっているんで、本当はその方がいいんですが、きょうは、二十分間、何とか皆さんに私の真意が伝わるようにうまく話せたらいいと思っております。  さて、今回の予算案の概要をさっと見てみますと、一番大きい点、前面に出ている点は、予算の縮減だと思うんですね。それは、昨年の財政構造改革路線の堅持だ。実はそのときの委員会で、私も参考人の一人として意見を述べさせていただいたんですが、そのときに、私のセッションで、四人のうち三人の方は、これは堅持すべきだ。どういうことが起こってもこれは堅持すべきとおっしゃっていて、私一人で、こんなことをやったら不況がもっとひどくなるぞということを申し上げたんですが、そのときは、皆さん、もっとこれをやるべきだということで一色でした。  今回の予算も、まだその流れを十分に引き継いでいる。しかし、余りにひどいという判断は当然あるわけですから、目玉として、多分ちょっと違う方向が出たのは、減税をもう少し長くするか。これは意見としては、恒久減税化するかどうかという意見はありますが、とりあえず短期的でもいいから、何しろ減税をするかどうかということが一つの目玉なんじゃないかと思います。  このような予算案の背景にある社会的な風潮というのを簡単に申し上げますと、現在不況だ、ひどい状態にある、皆さん、一般の国民は何をやっているかといいますと、悪者探しをやっている。  要するに、公共事業が悪いとか、実際に悪いところがいっぱいあるわけですが、特に最近悪い悪いと。それから大蔵省が悪い、それから金融機関が悪い、さらにこの数日は日本銀行が悪いという話になってきています。要するに、悪い悪いと。だから、全部うみを出してしまおう、しかもたくさん見つけて、たたけばたたくほどよくなる、こういう発想で動いているんじゃないかと思われます。  同じことが、バブル期どうであったかというと、みんな英雄探しをやったわけです。  日本経営はよかった、それから、今金融機関はひどいと言うけれども日本のメーンバンク制度は非常によかった、それから、今悪者になっている大蔵省含めて日本の官僚機構は非常に優秀なんだ、だからこんなにうまくいっている、日本は、かつてないような、もうアメリカも超してしまった、そのような意見を言っていた。  同じことが、今は悪者探しをやっている。私は、ちょっと悪い例かもしれませんが、一種のマッカーシー旋風的なイメージすら受けるということであります。  私は、基本的な経済に対する理解、経済というよりも、学問的な経済学とあえて言いますが、理解が全く違っているんじゃないかということをこれから申し述べさせていただこうと思います。  それは、キーワードからいうと、現在不況であるか。つまり、失業であるか。もっと言えば、余剰の労働力がいっぱいあるか、余剰資源がいっぱいあるか。あるいは、そういうことではなくて、今度は逆の見方をしたら、今は完全雇用なんだと。つまり、実は日本経済は精いっぱいやっているんだけれども、このように悪くなった、こういう発想か。この二つの発想ですね。どちらかという理解で全く違っている。実は、今の政府政策及びこの予算案等で見ている状況ですと、理解は完全雇用側、つまり後者で言った方の政策でしかあり得ないということになるわけです。  そのことを順番に申し上げていこうと思いますが、もし不況があれば、つまりもっと言えば、失業がある、余剰人員がある、こういう状況で、皆さん、今の状態はそうだろうというふうに申し上げるのに賛成されると思いますが、そういう状況のときは余っているわけです、人が余っている。あるいは、実際失業がなくても、余剰人員があって、企業内でもっと本当は働ける人がいる、そういう状態になっている。おまけに、うみを出そう、うみを出そう、あるいはリストラのあらしですから、人はさらに外へほうり出されている、こういう状況になっているわけです。  しかし、今みたいな状況で一番考えるべきは、そういうふうに余った人材をいかに有効に使うかということのはずなわけです。ところが、そうじゃなくて、うみを出そうの一点張りだということです。  それから、逆に、好況期どうであったかというと、好況期は実はむだの排除をすべきなんです。つまり、リストラすべきだったわけです。  というのは、現在日本にあるすべての資源を十分にもう精いっぱい使って、さらに足りない、だから外国人労働者まで入れようというような話すら出たわけです。つまり、資源は足りなくなっている。にもかかわらず、あのときには、簡単に新しい事業でも何でもできるので、余りそういうリストラとかいうことを考えない。もう派手に使って、証拠は全くないのでわかりませんが、いろんな料亭なんかの需要は多分今よりは、今問題になっていますが、あのときの方が多かったんじゃないかという気は私はします。  ですから、足りないときに一生懸命さらに拡大しようとして、少ないときにはもっと縮めようとする、これが基本的な政策の今までの流れだったんじゃないかということです。  そういう景気の循環をもたらすものは何であるかということを少し考えてみますと、それは完全雇用が前提になっているような議論であれば、これは要するに、みんなが働かないからであり、日本の効率が悪いからであり、政治システムの効率も悪いし、生産システムの効率も悪いし、金融も悪い、何かそういうことになる。それがよければよくなるし、悪ければ悪くなる、これが普通の理解だと思います。  しかし、見方を変えまして、要するに需要がないからだと。みんな働きたい、しかも効率もいい、十分に生産能力もある、にもかかわらず、買ってくれる人がいない、あるいは、みんなが欲しいと思わないということであれば、効率は表面的に下がってくるわけですね。そうすると、これは、日本経済の体質が悪いとかなんとかいう問題ではなく、みんなが買わないからだ。  さて、では、買うものはどうやって決まるかというと、いわゆる有効需要というのは消費と投資から成るわけですが、投資というのは、もちろん消費がなければ投資しても意味がないわけですから、基本的には消費が引っ張っている。消費というのは、要するに自分が今どのぐらいお金を持っているか、資産を幾ら持っているか、それに依存する。  つまり、金持ちになればなるほどもちろん使うでしょうし、貧乏になれば使わなくなりますね。それからもう一つは、同じような金持ちのレベルであっても、より欲しいものが世の中にあるかということによって使うわけです。前者の方は、これから申し上げる、いわゆる流動性不足とか資産デフレとかそういうことに関連して、後者の方は、実は新たな産業育成とか、そういうことが重要だということを示唆していると思います。  さて、先ほど申し上げた、流動性が縮んでいるという話をもう少し具体的に申し上げますと、流動性というのは資産価格ということですが、どこかの新聞で、どなたかちょっと忘れましたけれども、読ませていただいたので、九〇年代に入って一千兆円の資産が消えたんだというようなことが出ていた。この数字自身は、私は、どのぐらい信頼があるかよくわかりませんが、何しろ莫大な、実は名目的なですが、しかし莫大な資産が消えたと思っている。  これは各個人にとっては、本当に消えたわけです。つまり、例えば私が株を持っていたら、その株の価格が十分の一になってしまったら、私の資産は実際十分の一になってしまう。そのような状況では、消費は減っても当然なわけです。そのようなときに、わかりませんが、例えば所得税減税で五兆ふやしたとしても、一千兆円減った人に五兆ふえて、消費がふえるかというと、ほとんど関係ないんじゃないかというように私は思います。  それで、そのことは後でもう一度詳しく申し上げますが、さて、景気の変動と、それから、では我々の対応というのはどういうふうになっているかということをもう少し述べさせていただきます。  要するに、不況期に一般の民間企業なり金融機関なりが何をやるかというと、これは危ない、もう先行き見通しがないというので、一生懸命リストラするわけですね。それでうみを出す。ただでさえ人が余っているのに、どんどんうみを出して、はっきり言えば、リストラして首にしてしまう、そういうことが起こっている。  しかし、社会的に望まれるのは何かというと、そういう人たちを使って、もっと有効なものに使えばいいわけです。先ほど舛添さんが高齢化社会で人は必要なんだということをおっしゃいましたが、例えばそういうことがあるわけですね。にもかかわらず、ただうみを出すだけだということをやっている。それで、リストラされた人はうみじゃないわけですね。非常に貴重な労働力なわけです。にもかかわらず、出せばいいということになっている。一方好況期には、足りないのに、一生懸命ふやそうとするということを先ほど申し上げました。  そういうふうに、実際、景気の動きと、それから、みんな民間がやらなければいけないこととは反対になっている。これは民間は責められないわけです。つまり、今のような状況で、例えば企業に対してもっと積極的にやれと言ったって、見通しがつかないし、資金の調達も大変だという状況になっているわけですから、個々の企業の力ではどうしようもないので一生懸命効率化を図る。効率化自身は、それ自身は悪いことじゃありませんから、それを追求することになる。  問題は、同じことを政府がやっている。つまり、民間は全部うみを出して、同時に政府もうみを出して小さくなって、公共事業は縮めてということをやると、どんどんたまってきて、先ほど申し上げたうみがただたまる。たまって社会によどむだけで、非常に貴重な労働資源、あるいはこれから先高齢化社会で人が足りなくなるとかなんとか言っていながら、それをただむだに使っている。そういう方向に動こうというのが、実は例の財政構造改革法案だったのじゃないかというふうに私は思います。  それで、今のような景気の分析を、非常に簡単ですが申し上げましたが、それに対して、では景気が今後回復するにはどうしたらいいかということを少し申し述べたいと思います。  これは、一言で言って、非常に難しいと思います。それは、まず第一が資産価格、つまり皆さんの持っている土地の価格とか株価とか流動性とか、そういうものが本当は拡大していかなければいけない。一千兆消えた分を、一千兆全部とは言わないまでも、かなりの部分回復してこなければ、同じようにみんなは安心して物を買おうという気は起こらないはずです。それをやろうとしているときに、実際、例えば金融機関でいいますと、日銀が何をやっているかというと、公定歩合をずっと引き下げていて、かつてないような低い水準が続いている。  それから、実際、資金供給もしているわけですね。今回、三月期のちょっと危ないのじゃないかという話に関連して、新聞でちょっと見ましたが、二十兆円ぐらい出しているということをやっている。現金を一生懸命出している。これで、では流動性はふえているか。全然ふえていないわけです。なぜか。出している相手はもちろん民間銀行経由で出すわけで、日銀が直接民間のいわば生産部門とか消費部門へ出すわけじゃないですから、銀行経由だ。銀行は何をやっているかというと貸し渋りをやっているわけです。  その中間でどういうことが行われているかというと、銀行は、こう言うとなんですが、多分優良銀行は非常にうれしいのじゃないかと思います。つまり、低い公定歩合でどんどん金を貸してくれて、一方貸し渋りをいろいろなところでやっているわけですから、はっきり言えば、独占力を持っている。そうすると、貸す相手にはいろいろ条件をつけて、安全なところしか貸さずに、しかも高い金利で貸し付けることができる。一方、貸してくれるところは安い金利だ。結果として、社会的に見れば何ら流動性がふえない、こういう状況が起こっているわけです。  一方、普通の民間銀行は、今申し上げたとおりでありまして、信用創造を全然やらない。全然やらないというのはちょっと言い過ぎですが、ちゃんとできない。これは社会的な風潮もあるわけで、要するに金融機関は悪い悪い、ちゃんと堅実経営やらなかったからこんなことになったという、私から見ればピント外れなことを言っていると思うのですが、そういうことを追及しているだけですから、それは一生懸命、私はこのようにうみを出しました、このように健全にしました、このように資本比率を上げましたということを言わなければいけない。そうすると、幾ら流動性が入ってきたって、ただぼんぼん貸すわけにいかないということになるわけです。ですから、民間銀行をただ責めるわけにはいかない。  結局、何が起こったかというと、預金がどんどん減ってきて、郵便貯金がふえて、それからたんす預金がふえて、ついこの間、何かデパートで金庫の売り上げが十倍になった。これはもうたんす預金がふえているというまさに証拠なわけですね。この辺がふえたら銀行の信用創造なんかできるわけがない。つまりハイパワードマネーを死蔵してしまうわけですね。  それから、もう一つの流動性の、特にバブル期に流動性の重要な要因であった株式ですが、あるいは土地ですが、これについて見れば、御存じのとおり、非常に先行き暗い状況になっているわけですから、積極経営なんて決してできない。しかも、もしいいものがあって積極経営をしようとしても貸し渋りが行われている。いいところには集まっているらしいですが、確実にいいところでないとだめだということになっている。そうすれば株も上がりようがない。しようがないので、リストラだということになってしまう。このように、何をやってもだめな状況に今陥っちゃっているというわけです。  それで、もう一つ、消費の方はどうか。消費願望はどうだ。先ほど、もう一つの要因である、ある一定の資産を持っている人がよりいっぱい買えばいいんだということを申し上げました。  これは例えば、小さな例でいえばたまごっちとかあるいはゲームソフトとか、そういうのは貧しくたって買うわけですね。おもしろいと思えば買う。子供が買うわけですけれども、自分の少ない小遣いからどんどん買おうとするということが起こっている。いいものがあれば買うわけです。あるいは携帯なんかもそうですね。そういうことだ。ところが、今みたいな状況で、堅実経営がいいんだ、いいんだと言われれば、そのようなものには手を出さないで、なるべく少なくしようということになる。  私は、昔、オイルショックのころにある企業で勤めていたことがあるのですが、そのときにやはり少し似たような状況が起こっていた。そのときに、その企業で社員全員に通達を出したのは、鉛筆が短くなって捨てるのだけれども、その長さは半分にしろといって、鉛筆の、何かくっつけるものを回してきた。私はそれを見て、ああ、この会社はだめだなと思ったのです。要するに、それをやると今度は鉛筆の会社がもちろん売れなくなりますし、人は余っている状況なのに、さらにさらにそうやって縮む、そういうことが起こるというわけです。そういうふうに非常に難しい。  このとき政府の対応は何かといえば、今みたいに一緒になって小さくやっているということなわけです。これは、しかし、そういう状況であるということを積極的にとらえますと、実は政府にとっては非常にいい時期なんですね、今。何がいいかというと、人が余っていて、実はイニシアチブをとって積極的に、例えば将来の情報通信網のインフラとか、そういうものに積極的に打って出ても、民間の邪魔を余りしないで済む時期なんですね。  ところが、好況期に一生懸命そういうことをやろうとすると、なぜかといえば、インフラが足りないとかなんとかいうことで、要するに日本の生産能力いっぱいいっぱい使っているときには、何かそれをやろうとして、かえって民間が有効に使っている資源を政府が取り上げて、というのは税収が自然に高まりますからね、今のアメリカの状況もそうですし、バブル期のときもすごい税収があった。それを、こんなにお金が入ったのだから何か使わなければ損だといって何かやってしまう。やってしまうということは、貴重な労働資源を民間から取り上げるということになってしまうわけです。  現在はどうかというと、余っているわけですから、民間の邪魔をしないようにというのは当然でありますが、つまり、民間でも非常に活力のあるようなところから人を取り上げるような事業をやるのはおかしいと思いますが、余っているところをいかに有効に活用するかということに知恵を絞るチャンスを政府が与えられたというふうに、積極的にとらえることができると思います。実際、バブル期に、日本の好況期にインフラで足りないことはいっぱいあったわけですから、そのリストなんかあるのじゃないかと思うのですね。それを今やるというのが一番安上がりで、人の邪魔をしないということになる。だから、私は積極財政派なわけです。  さて、どうしてそういう発想を政府は持っているかというと、要するに、民間企業は自分の企業を効率化すればいいんだという発想だ。銀行もそうである。政府は何を考えているかというと、政府の公共部門が自分の身内だから、公共部門を効率化すればいいんだ、こういう発想になっている。実際にそういうことをおっしゃっている方は何人も私はお会いしたことがありますが。  政府が責任を持って考える範囲は何かといったら、国民全体なわけです。つまり、公共部門のことだけを考えて、そこのリストラだけをやっているのは全く民間企業と同じでありまして、一番効率よくマネージするべき対象は国全体なんでありますから、みんながうみを出して、政府もうみを出して、残ったところは知らないというのでは、その人たちは日本国民じゃないのかということになってしまうということであります。  さて、次に、では具体的な政策について考えていこうと思うのですが、このようなとき、さすがに景況感悪くなっているので、一番よく言われるのは減税であります。皆さん減税だとおっしゃっている。私はこの発想は、政府はろくなことに使わないのだ、つまらないことにしか使わない、だから、財政出動なんかをしてつまらないことに使うくらいならば、民間にお金を回して、民間に買ってもらおう、こういう発想だと思うのですね。これで説得力を持っているように見える。  ところが、これは全く一面的であります。どういうことかといいますと、まず第一に、よく言われることですが、例えば、今回私が減税で、六万円か七万円か、あるいは五万円かちょっと知りませんが、もらったとしても、そんなのは幾らもらったかも忘れてしまって、その分で使おうとは別に思っていません。それは全部ポケットに入ると思います。つまり、貯金ということですね。  それから、財政出動はむだであって、公共事業はむだであって、減税は有効だというのですが、そうでしょうか。  つまり、財政出動というのはやはり金を民間にばらまくわけですね。だから、こういうふうに考えましょう。例えば、一人当たり十万円ずつ減税を行ったというふうに考える。しかも、その一人一人にすべて、例えば今問題になっているごみの山があったら、そのごみの山をきれいにするという仕事を一時間ずつやっていただいたとします。そうすると、ただで一人十万円ずつ減税したのと、ごみの山がきれいになって、十万円ずつ減税したのと同じことになるわけです。  つまり、財政出動というのは、政府が何もそのお金を吸収して、食べてしまってなくなっちゃってパアになったということではなくて、それを民間にお金を回して、かつ何か有効に人を使う、それが財政出動なわけです。  それを悪くまずく使うからいろいろ文句を言われるわけですが、それはもう皆さんの責任でありまして、それはちゃんとやっていただきたいのです。今そういうのを、少しぐらい効率が悪い、こう言うと皆さんに怒られると思いますが、政府の方での全然使ってない労働者よりはよほど有効に使えるというふうに思われます。  それで、これは例で言えば、ごみの例を言いましたけれども、要するに国ということで、例えばここの中は全部国だとします。例えば、ごみの山があって、海は油で汚れている。それは、前に例のタンカーが何かという問題がありましたね。そういうときに、例えば私は皆さんに、ただ減税をするか、あるいは何もしないでお金をため込んでおく。しばらくすると何が起こるかというと、私は政府であって、私の中の財政状態は非常にいい。しかし、ごみの山はあるし、海は汚れている。ところが、皆さんにお金を回して、それでそういうものをきれいにしようといったら、それはきれいになるわけですね、ということです。  それで、時間が大分来てしまったので、実はこれだけでやめてしまうと、では、おまえの意見財政出動を大いにやれということかという結論になると困るので、もう一言だけ加えておきますと、減税よりは今のようなことの方がずっといい、だから知恵を絞ってくださいということなのですが、さらにいいのは、そういう事業をやったからといって有効需要がふえるわけじゃないということで、つまり、景気対策でやるのじゃなくて、有効な資源を使えということでそういうことをやった方がいいということを申し上げたわけで、実は、それが景気を高揚させるようなものにつながればもっといいわけです。  それは次世代の、例えば産業のインフラ、太陽エネルギーとか省エネ技術とかそれから情報通信網の整備とか、そういうものですね。あるいは、ごみ処理の技術の開発とかあるいはそれの設備とか、それから高齢化対策のための設備の充実とか、それからその人材の訓練とか、やることは幾らでもあるわけです。  それを全部放棄して、一生懸命国の財政をよくして、数年後には、国の中はお金がいっぱいたまっているけれども、周りじゅうは国は荒れているという状態か、それとも、その辺はきれいに全部整備されて、しかも将来の新産業も生まれて、しかし国の中は赤字になっていますが、それは国の借金であって、国民の借金じゃないのですね。  国の借金というのは政府の借金という意味ですが、日本国の借金というのは対外収支の赤字なのですね。ところが、日本はすごい黒字を持っている。政府の借金というのは税金で取って戻せばいいだけの話で、これは右から左にお金を国民の間に回すだけですから、ということです。  最後に一つだけ申し上げたいのは、こういう政策を好況のときにやったらとんでもないわけです。好況のときにそういうことをやるというのは、好況のときはみんなが使っているわけですから、政府が邪魔をしてはいけない。しかし、今みたいなときには有効に使わなければいけない。そういう責務が政府にある。だから、使うときには、政策をもし決めようとしたら、好況のときには絶対その赤字を解消するのだということをはっきり明言した上で、今積極的にやってほしい。要するに、小さな額じゃ困るということであります。  以上です。(拍手)
  8. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 越智通雄

    越智委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。
  10. 岩永峯一

    岩永委員 自由民主党の岩永峯一でございます。  先ほどから三人の公述人の先生方には、大変すばらしい意見陳述をいただきまして、これからのあるべき日本の方途を御示唆いただき、感謝を申し上げている次第でございます。  実は、きょう私どもの時間が二十分でございます。しかし、大変どん欲でございますが、多くの御意見をお聞きしたいということでございますので、ひとつ簡単明瞭にお答えをいただき、お教えいただきたい、このように思います。  稲葉先生のことについては、毎月と言っていいほど月刊誌「財界」でいろいろと御意見をお述べになっておられるわけでございまして、私もずっとそれを読んでまいりました。その中で、特に今回の金融二法案に対する貸し渋りの問題については本当にすばらしい論調を持っておられまして、特に三月末の決算時点で株価が今以上に下落したら、含み益がゼロかマイナスになる銀行がどんどんふえてきている、そうすると大変なことになるので、銀行だけを責められるわけではないというようなことから、今回の金融二法案の決定に対して大いなる御賛同をいただいているわけでございます。  しかし、残念ながら、昨日、日銀の職員が民間銀行との不正の癒着によって逮捕されました。そして、大蔵省や金融界の混乱というのは本当に頂点に達しているのではないか、国民の批判も大変すさまじいものがあろう、このように思います。  ここで稲葉先生にお聞かせをいただきたいと思うのは、官と民との関係というものを考えてみますと、確かに不正の癒着といったものはもう論外であって、きちっとうみを出し切らなきゃならぬ、私はこのように思っておりますけれども、相互が全く無関係であるのがよいのかどうかということも言い切れないのだ、このように思っております。  自由競争の理想郷のようにしばしば言われるアメリカにおきましても、ロビー活動というのをきっちりと認めておりまして、そういう職業、そういう部分が大変大きく政治を動かしている、このように言われているわけでございます。  マーケットに対し行政が一定の影響を及ぼしていると私は考えるわけでございますが、財界のトップである稲葉先生、ここらの官と民との関係というものを一体どのようにしていったらいいとお考えになっておられるのか、最初にお伺いしたい、このように思います。
  11. 稲葉興作

    稲葉公述人 重要な御質問でございまして、私の御説明が御納得いただけるかどうか非常にじくじたるものがございますが、日ごろ考えている点を申し述べたいと思います。  私も、長い間製造業に身を置いて、既にもう五十年以上働いてきております。民の中にほとんど暮らしてきたわけでございますが、官との接点も非常に多くて、官と民の役割について考える点も多々ございます。  時間も限られておりますので、非常に簡単に申し上げますと、私は、官というのはやはり相撲でいえば行司みたいなもので、やはり法律があり、それを忠実に実行する。実際相撲をやっている力士は民間である、非常に俗な説明でございますが、そういう感じがいたします。  したがって、官というのは、法律を守り、そして国の産業活動に対する、あるいは国の文化的ないろいろな考え方に対する一つの環境を整備する責務がある。民間は、その中で、許された範囲で存分に力を出すということが大事だろうと思います。  ただ、私もよく、最初お役所に入った方の教育等に四、五回呼ばれて講義をするわけでありますが、どうも官の方の仕事ぶりと民の方の仕事ぶりが相当違うという点に気がつくわけであります。  官の場合は、大体最初からやることが決まっている。どこの省、どこの局、どこの課ということで、農林水産省はこれをやる、通産省はこれをやるというふうに、既にお役所に入ったときからもうやることが決まっている。  民の場合もややそれに近い点はございますが、やはり非常に自由度がある。民の場合は、言葉は悪いのですけれども、何がもうかるか、何が売れるかというような観点から、経済的な視点からいろいろなものを選んでいくのですけれども、官の場合は、最初からもうやることが決まっておりますから、考えるのは優先順序だけ、これを先にするか、これを後にするかということだけを考えていくという点が一つ違います。  それからもう一つは、けさもテレビでどなたかおっしゃっていましたが、やはり官の仕事をされている方は、先ほど倒産のお話をいたしましたが、国に勤めているとまず日本国が倒産することはない。倒産するということは官の場合はない。そういう安心感と、倒産はしないということだけで甘んじるための、怠け者といいますか、非常によく働いている方ももちろんいらっしゃいますけれども、会社がつぶれなければ幾ら怠けていても大丈夫だというのは、民間では怠けていたらつぶれてしまうわけですから、倒産をするのと倒産をしないという違いもある。  それからもう一つ、官の場合は縦割りでありまして、もちろん民も縦割りの会社はいっぱいございますが、自分のやることが決まっていますから、縦割りの中で暮らしていく。民の場合はそういうこともあるけれども、やや広がりを持って暮らしているということで、そういう長い間で、人生観がだんだん変わってきている。  でありますから、会社にもたくさん官の方が来ておられますし、会社の中にも、例えば技術者とか、人事勤労をやっているとか、経理をやっているとかいうような人を見ますと、この人は経理出身だなとか、人勤だとすぐ大体わかる。においがするわけでありますが、官から来た方は、やはり我々、もう話さないうちから、存じ上げないのに、大体これはお役人だなということがすぐわかるわけでありまして、そういう官と民との人生観の違いとか育ちの違いが、非常な大きな違いだろうと思います。  その中で、例えば公団とか政府系のいろいろな機関がございます。これは、いろいろ調べますと、官の一番いいところと民の一番いいところをとってやるべきだというのがそもそもの発端だとお聞きしております。  例えば、私も商工会議所会頭をしておりますが、大体、商工会議所は朝が非常に遅いのです。我々は、民間は非常に早い。私も七時半ごろ会社へ行って働いている。しかし、官はそのかわり非常に夜遅くまで働く。民が早く帰ってしまう。だんだん民と官の悪いところだけをまねするような傾向が若干出てまいりまして、そういう点で、お互いにいいところをよく見てやる。民は非常に短期的ですが、官は長期的に物を見ている。  そういうようなことの違いでありまして、官民協力してやらなきゃいかぬというのはそのとおりでありますが、その協力というのが、癒着じゃなくてお互いの欠点を補うような、そして、お互いの姿を認めてお互いに協力をするということが、私は官民の仕分けであり、またあるべき姿ではないか、こういうふうに思います。
  12. 岩永峯一

    岩永委員 ありがとうございます。  私自身は、今の官と民との接点、接触というのをどういうように持ったらいいのかというようなことをお聞かせいただきたい、このように思って御質問申し上げたわけです。  舛添先生、実は、先生の名刺には国際政治学者と書かれておりますので、日本政治のあるべき姿についてお聞きをしたい。特に、政治家の現在の処遇についてお聞かせをいただきたい。政治家自身、今、日本政治家がこういう処遇でいいのかどうか、こういう処遇の中で国のために精いっぱいの仕事がやれる立場なのかどうか。  御承知のとおり、五十年来の制度疲労の中で日本は新たな改革が迫られてきた、このことは事実でございますし、橋本総理もそういうことで六つ改革を進めている、だからこれは国民全体の私は集約された意見であろう、このように思っておるわけです。  しかし、では、今まではどうであったかということを考えますと、確かに官が国家主導を果たしてきた部分というのは大変大きかった。しかしながら、そうした状況の中で、本当に政治家というものが官をリードしてきたのか、官に埋没してきたのではないかという私は反省があろう、このように思うわけですね。  しかし、国民実態を一番よく知っているのは政治家でございます。そして日々の地元での活動、いろいろな要望等々を通じてそういうものを知り得るわけでございますので、やはり国家の意思を形成する、そういう責任を持って新しい日本をデザインするのは絶対政治家の責任である、私はこのように考えております。しかし、現実に一年三カ月、私はまだ一年生なんですよ、国会へ参りまして、官をリードすることは大変だ、本当にリードできるんだろうかどうだろうかというような疑問があるわけですね。  しかし、自分自身を振り返ってみますと、やはり地元で選挙活動をしなければならない、そして後援会をやはりお守りしなければならない、そして金も集めてこなきゃならぬというようなことで、自分自身の身というのはもうそのほとんどがそういう部分に費やされておって、本来の政策樹立のために費やされる時間というのは大変少ない、このことも事実なんですよ。  そして、そういう状況の中で外国を見てみますと、アメリカあたりでは億単位の金が政治家の活動費として提供されておる。そして上院なんかでも、これは四十人くらいの秘書で、政策決定をもって確実に官をリードできるような体制が樹立されておるというようないろいろな話をするわけでございまして、民主主義のコストについての国民の意識が、アメリカだとかイギリスは大変高いのではないかというような私は気がするわけでございます。  だから、結局、これから日本における政治家の処遇というのはどうあるべきだと、国際政治家としてずっと世界を見ておられまして、本当にこのままで官をリードする政治ができていくのかどうかというようなことをどのようにお考えいただいているか、お聞かせをいただきたい、このように思います。
  13. 舛添要一

    舛添公述人 議員おっしゃるとおりでありまして、一番の問題は、これはマスコミの責任かもしれませんけれども政治家の威信というかプレステージというか、これが極めて低くなっているということが問題です。要するに国のかじ取りをおやりになる方々ですから、船でいえば船長さんなので、船長さんにまともな御飯も食べさせなきゃ船は沈没するわけですから、そういう意味での処遇が非常によろしくない。  それから、第三秘書までできましたけれども、では、本当に政策がやれるか。スタッフの充実のためにこういうところに公費を使っていい。  アメリカの議会なんかに行きますと、スタッフが非常に充実していて、自分たちで法律をつくることができる。国会議員というのは、英語で言うとローメーカー、法律をつくる人たちであるわけですけれども国民にその意識がない。議員の先生方は、彼らは法律をつくる人です、ローメーカーですというその認識があれば、ローメーキングに必要なスタッフやいろいろな資金は当然公費から出ていいというふうに思います。  それから、いろいろな人材を活用できるシステムができていない。  私はフランスに長かったのですけれども、例えば閣僚になった場合に、大臣官房というか、これはフランス語で言うとキャビネミニステリエル、ミニステリアルキャビネット、英語で言えばそうなんですけれども、優秀な官僚であれジャーナリストであれ、だれでもそこにぶち込んで、たとえ官僚機構が、例えば大蔵省なら大蔵省の官僚機構がこういう政策を上げても、大臣は大臣で自分の子飼いのスタッフが違う政策を立てて、いや、実は大蔵省の政策よりも自分の方が上だというようなことができるので、そういうことをやっていただきたいというように思います。  それからもう一つは、新しい選挙制度になりましたけれども、やはり政党自身の足腰が弱いということだろうと思います。  自由民主党が世界に冠たるシンクタンクを持っておられるか。アメリカだとそれぞれの政党が、ヘリテージ財団であるとか、AEIとか、ブルッキングスとか、それぞれ持っていて、そこに優秀な人材を集めていますので、自民党はどうだ、民友連はどうだ、共産党はどうだと、それぞれ各党が立派なシンクタンクを持つ。そのシンクタンクの発言を皆さんが聞くということがあっていいと思う。これはもうほとんどシンクタンクの役割をマスコミが果たしちゃっていて、マスコミが一色に塗りつぶされたらほかの意見が聞けないというようなことになると思います。  それから最後に、もう一つは、皆様方に大変申し上げにくいのですけれども国会活性化ということだと思います。  フランスの国会に行っていて、非常にこれはいいなと思ったのは、たしかあの当時は水曜日の午後、何でも質問していい時間というのがありまして、これはケスチオン・ダクチュアリテという、日々の問題の質問という意味ですけれども、どういう質問が出てくるかわからない。議員は自由に質問する。政府委員ないし閣僚の方も自由に答弁する。  やはり、官僚がかわって答弁するというのは、これは朗読してはならないと書いてあるわけですから、国会の規則に。細かい数字を出せというときはこれは使っていいと思います。だけれども政策の本旨についてはやはり皆さん方の口で語っていただきたい。  しかし、先ほども先生おっしゃったように、そのためのスタッフもなければしようがないので、悪循環に陥っていると思います。私は、こういうことに皆さん方が予算をおつけになって、山一証券をおやめになった優秀な人材も金融のスタッフではたくさんおられるわけですから、こういう方を再雇用なさることにお金をつけることには大賛成したいと思います。
  14. 岩永峯一

    岩永委員 基本はやはり国会議員の財政的な部分の確立なんですよ。だから、本当に、どんどん、企業献金はだめだ、やれ何はだめだというような形でそっちは責められるわ、そして国民のための政治活動をしていかなきゃならない、政策提言をしていかなきゃならない、本当に両立するのかどうかというようなこともこれから真剣に考えていかなきゃならぬと思っておるわけでございます。  時間がないわけでございますので、ちょっと簡単に、景気対策財政再建路線との兼ね合いが本当にできるのかどうか。先ほどいろいろと意見陳述をいただきましたけれども、特に今緊急な課題景気浮揚だ、このように言われております。これはもう与野党を問わず、じゃ減税か、やれ財政投資かというような形での議論が今の焦点になっているわけですね。  しかし、今までの財政再建路線というのはきっちりしていかなきゃ、五百兆円の借金が我々の子供や孫に及ぶ、こんなことは絶対にあってはならぬし、我々はそのことをしたいと思ったために実は上がってきたわけですね。だから、今私どもはどちらかというと財政再建をと言いたいんですが、やはり景気浮揚をしていかなきゃならない。  稲葉先生よく言っておられるわけですが、今の経済への財政投資というものは、この間経企庁も出されたわけでございますが、かつてのときほど大きな効果を博さない。そうかといって、先ほどのように、減税はもっと悪いということを言っておられるわけでございますが、もっと実効の上がる景気対策というものが何かないか。これは規制緩和だとかいろいろな部分があろうと思うわけでございますが、財政再建もやり、そして景気が浮揚する、そういうような妙案というのはお持ちでないかどうか、最後にこの一点だけ、稲葉先生、お願いします。
  15. 稲葉興作

    稲葉公述人 これもまた非常に難しい問題でございますが、今の財政再建というのが、二つの面があると思います。一つは、国の出す費用というのを節約して限りなくゼロに近づけてくれば、税金もわずかですが入ってきているわけですから、財政再建ができる。それからもう一つは、国の経済活動を非常に活発にして税収をふやして、そして財政再建をなし遂げるという二つの場合が考えられると思います。  節約それから支出の削減ということも一つの大きな流れとして今の状況では認めざるを得ませんが、そうやっているうちに国民の経済が停滞してみんな死んでしまうということになったら元も子もないわけでありますから、私どもは、今は若干目をつぶっても、また時期をおくらしても、やはり国の財政の出動をして、それが景気の上昇に役立つような施策の中でもしも税収がふえるようになれば、この問題は解決する。  ですから、ではどういう策をとって、いつ何をやるんだということにつきましてはいろいろ案があるわけでございますが、少なくも財政を絞る絞るというだけでは、私は絶対に前途はない、こういうふうに確信をしております。  以上でございます。
  16. 岩永峯一

    岩永委員 どうもありがとうございました。  終わらせていただきます。  また、稲葉先生、ひとつどうぞ活躍を御期待申し上げます。
  17. 越智通雄

    越智委員長 次に、松沢成文君。
  18. 松沢成文

    松沢委員 民友連の松沢成文と申します。  きょうは、公述人の皆さん、本当にお忙しい中ありがとうございます。御指導よろしくお願いします。  今先生方から、経済状況認識、大変厳しい状況にある、こういうことをやってほしいというような御意見があったわけですけれども、今の日本景気後退、その原因、大きな原因はどこにあるのかというのをまずお聞きしたいと思うのです。  私たちは、もちろん経済ですから外部の要因もさまざまありますが、今の景気後退の最も大きな原因は、政府の経済政策の相次ぐ失敗にあるという認識なんです。  もう御承知のとおり、バブルの後の不況からようやく抜け出そうとするときに、消費税増税、あるいは特別減税の廃止、あるいは医療費の値上げ、こういうことによって消費をぐんと冷やしてしまった。その上、今度は財政再建も必要だということで財革法というのを、去年の十二月つくりました。  これは、歳出も項目別にキャップをかけてしまう、あるいは歳入の方も赤字国債を毎年減らして二〇〇三年にはゼロにする、あるいはGDP比も国と地方の借金を合わせて三%以下にする、それをまた三年間の集中期間でやろうという、かなり厳しい法律なんですね。こういう法律を通してしまって、完全に予算に足かせをはめてしまった、これも政策の大きなミスであると思うのです。  また、金融の面では、もう何度も指摘がありましたけれども不良債権処理、住専の問題であれだけ国民にもわかったわけですけれども、その処理をほとんどやってこなかった。私たちは、日本版のRTCみたいなものを、債権処理公社みたいなものをつくって、経営の失敗の責任をしっかり問う、あるいは情報公開をさせる、あるいは強制的に不良債権処理するような手法をとるというようなことをやるべきだと言ったんですが、そういうこともやってこなかったので、今不良債権金融機関、ビッグバンを前にして、にっちもさっちもいかない、こういう状況だと思うのです。  まず、三人の公述人の皆さんにお聞きしたいことは、今回の不況の原因はどこにあるのか。私たちは、政府政策の失敗が最大の不況の原因である、政策不況であるというふうに認識しているんですが、その点についていかがかということです。もう一点は、こういう経済状況の中で、ことしの予算案をどう評価するか。そして財政構造改革法は見直すべきかどうか。この三点について、お一人ずつ端的にお伺いしたいと思います。
  19. 稲葉興作

    稲葉公述人 景気後退の原因については、私は、やっぱり国の政策も非常に大きくかかわっているという点を指摘できると思います。それからもう一つは、日本そのものの実力が今日を招いたという点もやはり認めざるを得ないと思います。  例えば、日本は海外に大きな投資をしております。今投資の残高では五千億ドル以上あるというふうに言われておりまして、特に、日本の輸出は四〇%以上のものが東アジアに向けて行われております。投資も非常に大きな数字であります。それが、今のアジア通貨危機によって非常なダメージを受けている。これを全部国の政策のせいに帰するというのは、私は非常に無理があるというふうに思います。でありますから、日本の経済活動そのもののビヘービアに大きな原因がある。  それから、これは政府政策失敗によって今日に来たのではないかという御指摘を、よく私も記者会見等で追及をされるわけですが、これはうっかり言ってはいけないなといつも考えるのでございまして、私はいつもこういうふうにお答えしているのです。  こういう問題は五年あるいは十年後に、冷静にひとつ点数をつけるべきではないか。ようやく今アジアに新興独立国がたくさんでき、これは日本が戦争に負けて、そしていろんな政治的、民族的な争い、論争の中でこういう姿になっているわけでありまして、こういう状態を国際裁判が行われているときに言うというのも、やや正鵠を欠くおそれもあるんじゃないか。  でありますから、私は、非常に政策がめちゃくちゃ、でたらめで今日になっているんだということを、今即断して申し上げることはちょっとできないというふうな気持ちでございます。しかし、せっかくの御質問でございますから、今まで非常に立派な経済政策をとってこられたかなということに対しては、やや疑問かな、その点だけは申し上げておきます。  予算案は、私の先ほどの陳述の中でも申し上げましたとおり、予算審議中は本予算以外のことを一言でもしゃべってはいけない、それに追加するようなことを考えているんだったら予算そのものを直さなきゃいかぬとか、そういうふうな習慣が委員の中にあるようでございますが、私は、経済というのは生き物でございますから、実態としてはやはり一緒に論じて、もう既に補正予算もできるようでございますから、それも含めて広い気持ちでひとつ考えていただければいいのではないか。  以上でございます。
  20. 舛添要一

    舛添公述人 今の不況の問題は、先ほど申し上げましたように、政策不況の側面が非常に大きい、特に資産デフレ不良債権処理についてのおくれというのは非常に大きいと思っています。  それから、予算案の評価ですけれども構造改革的な側面が非常に少ない。ですから、先ほど私が申し上げましたように、追加的な措置を、財政出動をやるにしても、構造的な側面が出ているのかな、この点を問題にしたいというふうに思います。  それから、財政改革法をどうするかということなんですけれども、アメリカでグラム・ラドマン法をやったときのことを思い浮かべてみますと、やはり規制緩和をする、あの国を改革しないといけないということについての非常なコンセンサスがあったんだろうと思います。我が国について、その基本があればこれは変えることも可能だと思いますし、そこはフレキシブルに考えていいと思います。つまり、財政再建至上主義ですべての手を縛ってしまうという愚は避けた方がよかろうかな、そういうふうに思っています。
  21. 小野善康

    小野公述人 私は、今回の不況の原因ですが、先ほど少し申し上げましたけれども、基本的には、今起こっているのは、三十数年ぐらいの周期の一番悪いところに来ているんじゃないかというふうに思っています。ちなみにアメリカは、その逆に、三十数年ぐらいの一番いいところに来ているんじゃないかというふうに思っています。  これは、資産価額がどんどん上がってくる。つまり、信用があって、今アメリカの株を見ればわかりますけれども、どんどんよくなっていくというふうに思っているときにはどんどん買っていくわけですね。それでどんどん上がっていく。これは、いつもその国の実力を反映していると言われるわけです。だから、今、日本の実力が低いと先ほど稲葉会頭もおっしゃいましたが、私はちっとも低くないというふうに実は思っています。  それで、上がっていくときは、実力が上がっているんだ、上がっているんだと思うんですが、しかし、とんでもなく上がるわけですね、バブルのときをごらんになればわかるように。そうすると、何か変だというふうに思い出したら、それは全然信用できないわけですから、これは危ない、株が危ないと。つまり、一枚例えばかつて百円だったのが五千円になっちゃった、これはおかしいと思うから売り出すというところにバブルの崩壊が起こるわけですね。  ですから、基本的に、そういう景気の循環は避けられない。いわば貨幣経済あるいは資本主義経済では避けられないとは思うんですが、バブル経済の末期に何をやったかというと、最初は、日本はいいんだ、日本全国でいいんだいいんだとさんざん騒いで、さんざん上げたときに、突然、これはバブルだと国で公認して、徹底的につぶしたわけです。  これは、もう我々は、忘れられないような、頭の中に、もう潜在意識にしみついて、株はもうからないと思ったわけですから、これが、幾ら少々、今から株価を対策するの何のといったって上がるものじゃないというふうに思うわけです。  これは、徐々に徐々に信頼回復して、はっきり言えば、構造改革したからとか、いろんな言いわけが欲しいわけです。それでうみを出したという言いわけが欲しい。実はほとんど変わっていないと思うのですが、そういう言いわけが欲しい。そのうちだんだん、何となくそんなにもう下がらなくなってきたぞと思い出したころから、また再び次の景気の上昇が起こるだろう。  そういう面で見ると、まず、政策的に言えば、一番まずかったのは、バブルのときにさんざん上げた上に徹底的にたたきつぶした、これが最大の失策だと思います。その後、ようやく十数年かけて、つまり、過去の傷をだんだん忘れたころに、少し上がってきた。これを実は、もっといいんだ、もっといいんだ、我々は実力があるんだと、いわばムードを盛り上げていけばよかった。  先ほど来、ほかの公述人の方も、政府の信頼とか日本経済の実力とかムードとかおっしゃっていましたが、まさにそれがようやく少しよくなってきたころに消費税を上げて、その他いろいろな、財政構造改革法案を通したとか、そういうことをやって、また全部つぶした。これをずっとやっていれば永久に上がらないんじゃないかという大変な危惧があります。ですから、不況の原因はそういうことだ。  それで、予算案の評価というのにしても、今のことでほとんどお答えしていると思います。  最後に、構造改革法との関連ですが、先ほども、最初に質問された方がおっしゃっていましたけれども、将来世代への負担というのは物すごい誤解なんですね。これはもう、私の大学院生にもいつも、一種の試験で、これをすぐに将来世代への負担だと言うんですが、その意味はどういうことかというと、将来の大蔵官僚への負担なんですね。  これはどういう意味かというと、国債がふえるというのは、ネットで言えば、ふえもしないし減りもしていないんですね。つまり、借金はふえているけれども資産もふえているわけです。同じ額ふえているというだけですね。ですから、国債を持っている人に持っていない人から回すという意味では、右から左へ回しているわけですね。しかし、ほかの税制で、例えば資産税なりなんなりでその調整はいつでもやっているわけですね。そういうことをやれるわけだから、ネットでは何にも負担になっていないわけです。  ですから、結論から言いますと、先ほどおっしゃられたように、政府の国庫の中に小金はたまっているけれども、ごみの山と油で汚れている状態をつくるか。それとも、政府のは空だ、あるいは借用証書が残っている、しかしその辺は全部きれいになった。そのとき、借用証書を返すために皆さんに一度返したお金をもう一回取ってもう一回返す。これをやるのがいわば負担なわけですね。  それを取るときには、取られた人は怒りますね。私でも税金取られればけしからぬと言いますね。しかし、返してもらった場合には黙っていますね。それは別に言うことはないわけですから。減税が支持されるのもそういうわけです。つまり、黙っていればお金が来るわけですから、別に文句は言わないということだと思います。
  22. 松沢成文

    松沢委員 景気対策議論になりますと、先ほど小野先生も触れましたけれども減税かあるいは公共事業か、こういうことになります。小野先生は、公共事業というか、仕事に回せば仕事もできて所得もふえる、減税だったら所得だけふえて仕事がふえていかないからよくない、こういう議論だったんですね。それで、先ほど、舛添先生は、大きな財政出動が必要だ、公共事業五兆円、減税五兆円ぐらいの規模でどうかというのがありました。  そこで、ちょっと時間がないんで、稲葉先生、先生は中小企業団体のトップリーダーでありますけれども、十兆円規模財政出動を、大きな景気対策をやってほしいと先ほどおっしゃいました。そこで、減税公共事業、どちらに重きを置くべきか、それで、重きを置くとしたらこういう具体論が欲しいというところを、中小企業者の代表として、先生のお考えをお聞きしたいんです。
  23. 稲葉興作

    稲葉公述人 私が十兆円と申し上げましたのは、精密な根拠があるわけではございません。  ただ、過去一年間の家計のデフレという要因を大ざっぱに整理いたしますと、御承知のように、フローで九兆円ぐらいの支出増があるというようなことが言われておりますが、これはやはり消費税の値上げとか特別減税の廃止とか社会保険料の引き上げ、健康保険料の本人負担だけが九兆円でございます。  しかし、そのほかに、金利が下がってきておりますので、金利による目減りを、これは政府の資料で試算いたしますと三・一兆円ぐらいある。あるいは、残業代が減ってきておりまして、残業代はサラリーマンにとってはやはり可処分所得の最大のものでございますから、これも〇・二兆ぐらい減ってきている。それから、完全失業率が非常に増加しておりますと、この逸失料という、逸失額という、逃れてしまうような、消費のダウンというのがやはり〇・六兆ぐらい、控え目に数えても〇・六兆ぐらいある。それから、公共料金がさらに、先ほど申し上げた以外に、JRの運賃、地下鉄、国内電話料金などの負担増が、控え目に計算しても〇・二兆ぐらいでございます。ざっと私が申し上げたのを足して約十四兆、九兆足して十四兆ぐらいになるわけであります。  そのほかに、ストックに関しても、御承知のように、株の値下がり、これは雑誌にたくさん出ておりますが、控え目に見ても十二兆から十三兆ぐらいある。それから、土地の目減りは、昨年一月から十二月までの間に三十五兆と書いたのもありますし二十五兆というのもあります、大体二十八兆ぐらい。こういうのを足しますと非常な大きな額になる。  それから、負債総額で十四兆というのが倒産によってなくなって、本当はもらうべき金が入ってこないというのが十四兆ある。それは企業にもあるし個人にも分けなきゃいけないんですけれども、そういうのを、家計を全部入れますと相当、二十兆、三十兆というものが昨年一年で失われている。そうすれば、少なくも二兆円の減税なんというのはこれに比べたら非常にわずかなものだから、昨年の暮れに本当は十兆ぐらいやっていただければいいんじゃないか。  それで、割合ですけれども、割合については計画によって積算をしなきゃいけないんですが、そこまでのことはございません。ただ、公共事業にすると、やはり土建業界は非常に喜ぶんですけれども、また雇用の人間の数も非常に多いんですけれども、やはり全部に恩恵が行かない。やはり所得税減税であればみんなに恩恵が行くということで、まあ半分か四分六かなと言ったのを新聞は五〇、五〇とこう書いただけでございまして、その程度の分析でございます。ひとつ御勘弁願います。
  24. 松沢成文

    松沢委員 最後に、舛添先生にお伺いしたいのですが、大蔵省の不祥事、金融検査官が二人一月に逮捕されて、またつい先日にも、今度はキャリアの方も含めてまた二人逮捕された。きのうは中央銀行である日銀の営業局の課長さんが、日銀の貸し出しに便宜を図ったとか、あるいは短観とかオペとか、こういうものの情報を接待の見返りに漏らしていた。本当にゆゆしき事態にあるわけですね。こういう状況が続きますと、国内外からの日本の金融政策に対する不信感というのが高まって、日本の国の国益そのものが失われてしまう、こういう状況だと思うのです。  そこで、先生は東京大学出身でありまして、恐らく官界にもお友達もたくさんいらっしゃると思うのですね。恐らく第一線で働いている方も多いと思います。そこで、日本の官僚機構の問題点、またこれを抜本的に改革していくにはどういう視点が必要かという点について、先生の御指導をいただきたいと思うのです。
  25. 舛添要一

    舛添公述人 私も東大法学部出身なので、同輩、後輩、先輩含めて、不祥事を起こす連中が出てくると非常に残念なのですけれども、圧倒的多数の役人諸君はまじめに仕事をしていると思います。ですから、最終的には、一私企業のために奉仕するというのではなくて、国民、国家全体のために奉仕するという気持ちで役人になったわけですから、その原点に立ち戻っていただくということしか言いようがないのだと思います。  実は、そういう倫理観を持った官僚ということを前提にしておりますので、例えば官舎を与える、そこで、自分の住居について心配しないでいいような形で職務に専念できるということであったはずなのですけれども、ただ、先ほど私申しました、資産デフレに対する対応がおくれたのは、土地税制含めて全くやってはいけないことをやってきた。それは、官舎に入っているということは、民間の不動産取引の実態なんて何にもわからないのです。  ですから、細かいことですけれども、例えば官舎とかフリンジベネフィットというのは全部やめてしまう。その分給料を多くするから、自分で普通の国民と同じように不動産屋さんを歩いてみなさいと。ですから、あんな豪邸を建てたのはどうだなんて言って、そういうところのせんさくをするレベルでマスコミが官僚の追及をするわけです。だから、みんなが才覚を働かせて家を建てればいいわけであって、建てるに建てられないような悪い税制が残っていたのです、ここのところは。  ですから、そういうこととともに、それから官僚の登用制度について一言申し上げますと、私は一括登用ということをもっとやっていただきたい。外交官試験も廃止する。今からみんな国際化の時代ですから、全部登用して、キャリアについてですけれども、二十代で警察署長をやったり二十代で税務署長をやるというのは帝王学を学ばせるためだったのですけれどもバブルのとき以来、これはむしろマイナスの方が多いというふうに思います。むしろ、それをやるぐらいでしたら、三つか四つの省庁を三十代ぐらいまでの間に転々と回って、国家全体、一つの省庁のためだけじゃなくて、国家全体のために見るということが必要だと思います。  極端なのは、土地税制について言うと、銀行局と主税局、同じ省内にあって、片一方はアクセルを踏む、片一方はブレーキを踏む。そういうことで動くはずはないので、省あって国なし、局あって省なし、そういう縦割り行政の弊害も含めて、そういう意味での官僚諸君の間の省庁間の交流、こういうものがあっていいし、民間との交流もあっていいと思います。そういう風通しのいいところでやっていく。  つまり、官が官であるための非常に厳しい厳格な倫理が壊れていったということを立て直すとともに、もう一方では、やはり国民全体の認識を共有するような部分が官僚にもないといけないので、そういう意味で一切のフリンジベネフィットを廃止していただきたい。  そして、できれば処遇をよくしていただく、政治家だけではなくて官僚についても。ですから天下りして、生涯でお金を取り返そうとする。だから、六十歳で定年退職したら市民で生きていけるようにすればいいわけですけれども、天下りしていろいろな特殊公団を渡り歩いて、渡り鳥をやりながら、最後死ぬときになったら民間とバランスがとれるというのではだめなので、若いときから優秀な人にはちゃんと処遇を与えるということでいいと思います。
  26. 松沢成文

    松沢委員 どうもありがとうございました。
  27. 越智通雄

    越智委員長 次に、西川知雄君。
  28. 西川知雄

    ○西川(知)委員 平和・改革の西川知雄でございます。  きのうに引き続き、きょうも質問をさせていただくわけでございますが、きょうはお三方とも、特に現況の経済不況ということに関しまして、景気回復を最重点的に行わなければならない、こういうふうに申されました。先ほどの委員からも質問がありましたように、では財政構造改革と今度の、今問題となっております景気回復との兼ね合いをどうしようかということになります。  ところで、それに関しては財革法という規制がございまして、その一つの大きな現実的な足かせというものが、平成十年から、特例公債いわゆる赤字公債の額を、平成十四年度まで毎年毎年縮減していかなければならないということになっております。  ところで、大蔵省の公的な見解からも明らかなように、平成十年度において使える特例公債、赤字公債の枠は、もう一兆三千八百八十億円でございます。先ほど稲葉会頭が、補正予算はぜひつくってほしい、もうつくられるのでしょうというようなことをおっしゃいました。そしてその規模も、まあ十兆円というのは大ざっぱだけれども、大幅な補正予算景気対策として組まなければならないというふうにおっしゃいました。そうすると、論理的に、こういうことは現在の財革法の枠組みではできないということになるわけです。  そこで、舛添先生もよく御存じだと思いますが、アメリカの法律、OBRAという法律がございます。それによりますと、例えば前の二四半期の実績、これは速報値でも本当の最終値でも暫定値でも結構なんですが、前期に比べてその経済成長率が一%未満、こういう場合であれば、いわゆる財源のカットというものが、いわゆる日本型の財革法というものが一時凍結をされる、一時停止をされるということになります。そういうような法律がございます。  これを今の日本に当てはめてみますと、例えば二四半期の実績と申しますのは、去年の七月から九月、そして十月から十二月、もうすぐ一月からの例も出ると思いますが、最新の数字というのは去年の七月から十二月までの数字でございます。例えばその数字において、経済成長率というものが前期比一%未満であれば、または一%以下であれば、そういうときには赤字公債の発行の制限、縮減、毎年毎年縮減しないといけないということを凍結してもいいのじゃないか。そして、それを凍結した上で例えば補正予算を組んで、景気対策をしようじゃないか。こういうことが、どうも今のお三人の方々の御意見からすると結論になるのじゃないかというふうに考えざるを得ないと思うのです。  そこで、お三人の方に、こういう発想が今あるわけです。そして私は、これは現実的には採用し得る、また採用しなければならない、そういうような改正ではないかと思うのですが、それについての御意見を簡単に述べていただければ幸いです。
  29. 稲葉興作

    稲葉公述人 ただいま非常に丁寧に御説明をいただきまして、よくわかりました。  アメリカの財政構造改革についての法律も、いろいろ調べましたところ、今御指摘のとおり、日本のものよりある程度弾力的な姿になっております。今の仕組みの中では、補正予算大型の特例公債を出すとか、そういうようなことは技術的にできないということも十分承知しております。  したがって、やはり運用停止条項をつくるとか、あるいは目標年数の先延ばしをやるというようなことをぜひひとつやっていただきたい。むしろそういうことで力を出し、知恵を出すのは皆さん方だということをお願いいたして、答弁にかえさせていただきます。
  30. 舛添要一

    舛添公述人 財革法案をフレキシブルに運用するというのは大変結構だと思いますので、アメリカの例なんかを参考にしていただきたいと思います。  ただ、基本的には、それをやると同時に、構造改革ということを忘れてはならないと思いますし、先ほど申し上げましたような高齢化社会に対する明るいビジョンというのがなければ、何をやっても国民は動かないと思いますから、ぜひこれは、特に先生の御所属いたしております会派はそこは得意の分野でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
  31. 小野善康

    小野公述人 今おっしゃっていただいたことは、精神としては私も大賛成であります。  もう少し修正をさせていただこうと思うのですが、一つは、過去の実質成長率に対応して緩めるというよりは、実は潜在的な成長率、言いかえれば本当の日本の実力、生産性での実力、これからどのぐらい乖離するかに応じてやるべきだと思うのですね。  というのは、すごく悪い不況があって、その後もとにようやく振り返ってきたときに、もう既に財政構造改革法だから抑えるというと、昨年来の消費税引き上げのようなことになりかねない。つまり、物すごく悪いときは急速に上がっていかないともとのところに戻っていきませんから、そういうことがある。それが一つです。  それから、もう一つ重要なのは、国民に示すべきは、ちゃんと回復したら絶対に財政構造改革は進めるのだ、つまり返すのだということを強調すべきだ、これが重要なことです。それでさらに、緩めなければいけないということで今使うわけですが、その使い道もちゃんとしているのだということを示せと、これが重要です。
  32. 西川知雄

    ○西川(知)委員 どうもありがとうございました。  三人の公述人の先生方も、一時財革法を凍結または停止して、そして景気対策ということを最重点項目として行わなければならない、こういう御意見である。私も全く同感でございまして、そういうための法律をこれから我々の方としても作成して、提出しようというふうに思っております。  そこで、先ほど舛添先生の方から、情報公開の大切さというものを指摘していただきました。日銀の課長が捕まり、また大蔵省の証券局の補佐も逮捕された。なぜかというと、二人ともそれぞれの情報を、詳しい情報を彼らが握っている、それを他人よりも早く企業がキャッチしたい、そういうことで接待合戦を繰り広げたところでございます。  したがいまして、ほとんどの情報を国民の前に、特に不良債権の情報を公開するということが、私は非常に大切なことじゃないかと思います。今、大蔵省は不良債権の額を公表したというふうに言っておりますが、それは、全銀行で総額が幾らであるかということでありまして、個々の問題行、例えば大蔵省の検査で何か問題があったというふうに指摘された事項とか、日銀の考査結果で何かおかしいというふうに言われた事項については何の公開もありません。  また、金融不祥事で、非常に検査で問題のあった例えば四つの銀行に対する大蔵省の検査結果を見せてくれ、また示達書というのがあるのですが、それを見せてくれ、またそれに対する金融機関の回答書を見せてくれということを委員会として申しましたら、例えば大蔵委員会に出てきた書類というのは、理事だけが秘密裏に見られる、しかも重要なところは黒いマークで塗り消してある。  こういうような状況では、一体我々、十三兆円の公的資金の話を先ほど稲葉会頭もされましたが、そういうお金を入れても、本当に何のために入れているのか、本当に有効に使われるのか、こういうことが全然わからないわけです。  したがって、やはりこれからの日本のビッグバンということでも、情報公開がないと同じ基盤で競争ができないわけです。官だけがそれを握っている、一定の人だけがそれを握っているということであれば、これはどれだけ努力しても、イコールフッティングで競争できないわけですから、これは官に負けるのに決まっています。ですから、ますます官僚主義、官僚の支配ということはさらに大きくなるのじゃないかというふうに私は懸念しております。  そこで、具体的に、例えば問題行とか、公的資金を導入する、また導入した銀行、この銀行について何か大蔵省の検査で問題があったのか、問題を指摘されたら、その問題に対してどういう対処をしてきたのか、そういうことを私は国民の前に明らかにすべきだというふうに考えておりますが、その点について、本当はお三方に聞きたいのですが、時間がございませんので、舛添先生にお答え願えれば幸いでございます。
  33. 舛添要一

    舛添公述人 先ほど申し上げましたように、政府に対する国民の信頼、それから金融機関に対する信頼というのは完全に失墜してしまっている。それを取り戻す手段というのは、私は情報を自信を持って開示することであろうと思います。それは非常にマイナスな情報も含めてでありますので、官だけではなくて、例えば金融機関については明確な情報の提示がなければ、これは信用の回復にならないと思います。  今マスコミなんかが、いや、格付機関がある意味で情報開示の役割を果たしていると。これは非常に不健全なんで、逆に、そういう格付機関の情報によって、つぶれなくていいところまでつぶれてしまうということですから、私はビッグバンを進めるべきだと思っています。進めることによって、こういう情報公開というのは民の部分ではやらざるを得ない、やらなければ生き残れないという状況であります。  あとは官についての情報公開は、これはまさに国会議員の先生方のお仕事でありますので、こういう予算委員会などを通じまして、ぜひ厳しく指導していただきたい。  基本的には、情報公開がなければ国民の信頼は回復できないということについては、私も賛同いたします。
  34. 西川知雄

    ○西川(知)委員 時間でございますので、公述人の方々の貴重な御意見、本当に参考になりました。結論的に、お三方とも、今の経済状況で一番重要なのは景気回復させることである、そのためには一時的にも財革法の規制を外して凍結する、そして景気がよくなったらまた財革法を発動して、国の赤字体質を変えていこう、こういうことであると思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  35. 越智通雄

    越智委員長 次に、西村眞悟君。
  36. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村です。よろしくお願いいたします。  三人の先生方のお話を聞いておりまして、ああ日本の社会の病状がほぼ明らかになってきたな、このように思いました。現在という時代のよさは、何がいいのか、チャンスなのかといえば、右肩上がりのときには見えなかった病気が見えてきている。これは、病気が見えるということは対策が明らかになるということですから、非常に歴史的な意義が今現在はある、このように思うわけです。  対策も具体的に収れんされてきておるのではないか。単に景気の問題、経済の問題一つ限っても、具体的に収れんされてきている。ただ、プロセスにおける時差、時間差で国会では議論があるし、また与野党に分かれておりますから、当然、この状況をつくったのはだれだというふうな議論もある。しかし、この場では先生方にそれをお聞きすることなく、私が長期的に見て、非常にこの問題には触れたいという私の持論をちょっと先生方にお聞きしたいなと思います。  それは、なぜお聞きするかといえば、舛添さんが先ほど、高齢化社会に対する漠然とした不安がこの時代の背景にあるんだ、元気が出ない、こういうふうに言われた。高齢化社会は、本来、長生き、長寿というのはめでたいことですけれども我が国では暗い材料ばかりが提供される。その中で、私は時間の関係で、一点だけ取り上げます。  所得税それから法人税には触れられました。短期的なもので触れられました。しかし、長期的な高齢化社会を考えるとき、私は、相続税というものをどうしても憂えざるを得ない。私は、何ぼ考えても、人間が死ぬことが課税の原因になるということがわからぬのです。もし人間が死んで課税の原因になるなら、人間が生まれることが課税の原因にもなる。生まれるための男女の行為を原因にして、一回につき何ぼということも言えるだろうとか、こういうことになって、なぜ死んだら税金が取られるのかわからぬ。  それで、江戸の文化と言われましたけれども、江戸時代には相続税はなかった。そして何が起こったか。我々が日本文化と言うているものが大体江戸時代に出そろいました。相続税を取るようになってからは出ないわけですね。明治以降の日本文化でパリへ行って誇れるようなものはない、すべて浄瑠璃であれ相撲であれ。相続税のない時代には何が起こるかといえば、タニマチというものが起こる。  ねたみがありまして、金持ちの子が金持ちになるのはだめだということが原因としましても、このねたみは間違っている。なぜなら、庄屋三代続かずといいまして、お金があれば消費に回して、むだに回すのではなくて、例えば文化に回る、そしてまた橋をかけるのに回る、こういうふうに金が回っていく。大阪でくい倒れという言葉がありまして、これは、食べて倒れるのじゃなくて、商人が自分たちの町に必要な橋をかける、この橋のくいでくい倒れだという言葉があって、八百八橋ができていくわけですね。  それで、どうなんですかね。中小企業企業が相続税を払うのです。すべての大企業中小企業から起こってくるけれども、親方、社長の土地の上に工場を建てる。大企業はサラリーマンの固まりですから、相続税は払いません。しかし、中小企業というものの企業体も相続税の負担下にある。私は、将来の高齢化社会を考えるときに、相続税の問題はなくすべきだと思っている。現実にも、中小企業は相続税を払う。会社の建物が個人の、親方のものであれば払う。  こういうふうな私の意見に対して、どうお考えか、三人の先生方にお伺いしたいと思います。
  37. 稲葉興作

    稲葉公述人 相続税に関しましては、ここ数年来、相続税の軽減を強く主張しております。  商工会議所に属しておる中小企業、特に小企業は、相続税によって家業が続けられないというふうな非常に難しい状況に立ち至っております。特に、このように不動産が急激に低下する中で、相続税を申告し、課税が決まった時点で、土地を売って払おうと思ったら土地はもう安くなってしまっている、借金をして相続税を払わなきゃいかぬ、こういうふうな悲惨な声が至るところで出ております。こういう点で、今の先生のおっしゃったのは、私の申し上げたい点を非常に強力に、また易しくおっしゃっていただけて、非常にありがとうございました。  それからもう一つ、相続税のもたらす悪い点は、日本の家族制度というものがこれによって完全に崩壊している。大きな家とか大きな財産を相続するのは、これはある程度の制限とか課税が必要だと思いますが、一家が住んでいるような家で、息子とか娘夫婦とか、そういうものに対して細々と生きていけるような相続税というものが確保できれば、日本の家族制度のいい点というのは残って、今の暴力ざたのような問題も相当和らげられるのじゃないかというふうに思っております。  この問題もずっと我々主張をしておりますが、今後ともひとつ御支援をお願いいたしたいと思います。
  38. 舛添要一

    舛添公述人 相続税の問題は、資産課税というものを所得課税それから消費課税との兼ね合いでどうするかというようなことの前提の中で必要だと思いますが、バブルが生じてバブルが崩壊するという過程で非常な弊害が多かった。これは見直すべきだと思います。  それから、先ほどの江戸との関連でいいますと、相続税をなくしてもいいんですけれども、その前提は、今先生がおっしゃったように、まさにくい倒れじゃないですけれども、そういうお金を使う、つまりみんながボランティアで使うという観点があったからなので、その意識を復興しないといけない。こういうものも実は、先ほど申し上げましたように、昭和三十五年、一九六〇年ぐらいからなくなっていっている。  具体的に、ちょっと税の話からは離れますけれども、私は、義務教育をそろそろ廃止すべきだというように考えているんです。義務教育をやるから、ああいう形で少年非行が起こる。寺子屋の時代は義務教育じゃないんだけれども、みんなが喜んで学校に行って、しかも先生はボランティアでやっていたんですね。それで、はるかにいい学業成績を子供たちも上げていた。  ですから、そういうところも含めて、一遍国民の意識の改革ということがなくて、単なる相続税だけやめちゃうということになると、これまた弊害があるのかな、そういうように思っています。
  39. 小野善康

    小野公述人 私は、今の件に関しては非常に強い反対でありまして、ほかのお二方と大分トーンが違うと思うのです。  その理由は、高齢化社会に向けて相続税なんかがあると老人は非常に困るとおっしゃいましたが、それは金持ちの老人が困るわけで、貧しい老人はちっとも困らないわけですね。要するに、その分で政府の収入は減るわけですから、そこに回すことができないというわけですから、いろんな対策になるとおっしゃいましたが、対策になるのではなくて、それは金を持っている人の対策になるということであります。  よく税制一般で言われることですが、相続税について言いますと、もし相続税が高ければ、しかも年とったときに、自分が有能で、いっぱい働いて財産をためても、全部取られちゃう、だから働くインセンティブがなくなるとかいうようなことを言うわけですが、確かにそういう点はあるのですが、子供にそういう資産を全部あげたら、子供はさらに働くインセンティブがなくなると思いますね。  そういう意味でいっても全然反対のことであって、その人が働いたときにそれに見合うベネフィットをもらうというのは当然で、そのインセンティブと全く一致するわけですからそれは当然で、その人にただ税金を上げればいいということは決してないのですが、子供は全く関係なく、ただひたすらお金をもらうということです。それで、相続税が高いと、例えば子供に教育をつけようとかいう形で遺産相続しようとするようなインセンティブが出てきて、それは人的資本の蓄積にもつながるという点がある。  それから、もう一点だけ申し上げますと、大金持ちというのは使わないんですね。もちろん人によりますよ。でも、一般的には使わないわけです。貧しい人は使うんです、これは絶対量じゃなくて、比率でいっているわけですが。  そうすると、例えば東南アジアで、国の例を出していいかどうかわかりませんが、フィリピンのような国で、ある人は物すごく持っていて、大半は非常に貧しいという状況が生まれていると、ある人は余り使わない、貧しい人は使えない、こういうことから、経済成長で有効需要を引っ張るような力がなくなる。  日本は戦後、占領軍自身が、いいことをやったかどうかはいろいろありますが、非常な平等化をしたから先進国の中でも非常にいいと長い間言われてきたわけで、なぜ相続税とつながるのか、私はよくわからないということであります。
  40. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 予想したとおり御意見をいただきましたけれども、私は、この背景に漠然とした不安が確かにある。短期的な対策については、この場で議論していて、時差はありますけれども、ほぼ出そろってくると思う。しかし、漠然とした不安に対して政治が取り組むのでなければ、この国が明るくならないと思いますので、限られた時間ですから、相続税の問題一つ取り上げてお伺いしたわけです。  私は、このほかに、長期的に取り組まねばならない介護の問題一つとっても、現憲法ではできないという意識を持っています。つまり、弁護士としての経験は、五人の子供たちがおって、介護した長男がおる、お父さんが亡くなる、そうすれば、すべてその家を五つに分割しなければならない。親が子を保育して、子が親の面倒を見るということを憲法体系はカウントしようとしていないわけですね。これはお聞きいたしません。私も、長期的に見れば、先生方の御意見をいずれかの場でまたお聞かせいただきたいと思います。  十四分ですから、あと四分ぐらいですけれども、せっかくの機会ですから、この予算に関係するのですから、舛添先生、ミャンマーにたびたび行かれて、キン・ニュン第一書記にもお会いになっている。それで、アウン・サン・スー・チーさんのこともよく知っている。  日本政府は、ミャンマー・ミンガラドン空港の援助の再開を決断いたしました。アウン・サン・スー・チーさんが言っていることはペルーのトゥパク・アマルと同じことを言っているわけですね、日本の援助は特権階級を利するだけだと。ペルーのゲリラと同じことを言っておる。それを実感で感じたのは、一年半前にチャイトーというところで、日本の援助で行われたポリオ生ワクチンの援助の現場へ行きました。本当に感謝されて、和気あいあいと、若いお母さんが、子供を援助する。その援助に対してアウン・サン・スー・チーさんは、特権階級を利するから援助をやめろと言ったわけです。あのときに私は、この方はミャンマーの現状を知らぬなと思いましたね。  援助再開、私は政府の決断に非常に敬意を表するものでありますけれども、ミャンマーをよく知られる舛添先生においては、この問題についていかなる認識を持たれておりますか、この際ですから、お聞かせください。
  41. 舛添要一

    舛添公述人 ミャンマーに対する援助の再開は、大変結構だと思います。遅きに失した。  私も何度も足を運んでいますけれども、要するに、独裁政権であれ何であれ、国民が潤うということはやらないといけない。アメリカ追随の悪い点でもありますけれども、アメリカだって二枚舌、我が国だってダブルスタンダードです。  皆様が御承知のとおり、インドネシア、スハルト大統領、七選です。国民評議会、これは大統領の独裁を支援するための組織にしかすぎない。絶対多数を大統領はとるわけですから。千人中五百七十五人が大統領の任命です。だから、最初から大統領がスハルトさんになることはわかっている。  しかも、メガワティさんという、これはメガワティ・スカルノプトリ、スカルノのお嬢さんが野党の指導者でおります。アウン・サン・スー・チーさんというのはアウン・サン将軍、つまり建国の父の娘さんです。全くインドネシアとミャンマーとは状況は同じです。  では、日本の援助、インドネシアは中国と並んでたくさん与えています。それは、天然ガスを含めて大変な資源をそこに依存しているからでありまして、アメリカにしても、結局はビジネスの面ではミャンマーに堂々と入ってきている。だから、こういう二枚舌、ダブルスタンダード、我が国もアメリカもやっている。でも、国際システムにはそういう面もあるわけですけれども。しかも、歴史を見てみますと、イギリスが、ディバイド・アンド・ルール、分割して統治せよと言ったように、もう何十もの部族をけんかさせる形でミャンマーを統治してきたわけですから。  ですから、私は、一人当たりのGNPで見ると、インドネシアがもう八百ドルを超えている。ミャンマーはまだ三百ドルです。だから、開発独裁というのはなるべく早くやめた方がいいのですけれども、豊かになればなるほど、それをやめないといけない。  ですから、ミャンマーにあれほど厳しい態度をとるなら、なぜインドネシアにとらないのですか。その説明ができない限りにおいては、アウン・サン・スー・チーさんのおっしゃることが正しいからこれで援助しないというような、そういう表面的なことはやめていただきたい。  アウン・サン・スー・チーさんとメガワティ・スカルノプトリさんを比べますと、要するに、テレビ映りがアウン・サン・スー・チーさんの方がいいのですね、残念ながら。そうすると、そっちばかり、同じことを言っても、世界のマスコミも注目するということですから。  私は、特に皆さん方が、私たちの先輩たちが戦争中において、インパール作戦、ミャンマーの人たちにどれだけ助けてもらったか。最近の日本人というのは恩を忘れていると思います。ミャンマーの人たちのおかげでどれだけの人が命を救われたかを考えれば、やはりミャンマーに対してもう少し温かい心で接してあげていいのではないか。  空港の問題について言いますと、私はずっと警告をしていたのは、今、全日空の直行便が飛んでいます。要するに、ああいう危険な空港をそのまま放置して、全日空の飛行機が、そういうことはあってはいけないのですけれども、墜落するような事故があってからじゃないとこの国は動かないのか。日本の乗客にもかかわることを、現場をよく知らない方々がおっしゃるというのは非常に残念だと思いますので、この援助の再開は私は高く評価したいと思います。
  42. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。時間が参りました。  メガワティさんとスー・チーさんの評価が大分違うのは、一にかかってスー・チーさんがべっぴんだからです。それだけの話です。  終わります。
  43. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  44. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  お三人の公述人の皆さん、本当に大変貴重な御意見を承りました。大変参考になりました。お礼を申し上げたいと思います。  私の持ち時間は極めて短いものですから、申しわけございませんが、まとめながら質問させていただきます。  最初に、稲葉さんなんですが、二つほどお聞かせいただきたいと思うのです。  御意見の中にありましたように、中小企業経営というのはまことに今最悪の事態になっているということ。私も新聞で見させていただいたのですが、九兆円どころじゃない、負担はもっとすごいんだというので稲葉さん書かれておりましたけれども、その新聞記事などを読ませていただいたわけですけれども、そこで、これは何とかしなければならない。  では、どこから手をつけるのか。恒久的所得減税というのも、これも必要なことだ。同時に、やはり消費者の懐を温めるためには、とりわけ高齢者の方々が利息でいろいろ生活をやりくりしていたところが、超低金利のためにそんなこともできなくなっているという事態が起こっているわけです。  そこで、消費をいかに拡大するかという問題で、恒久的な所得減税を私たちもやれということを言っておりますが、もう一つ、消費税というのは、やはり逆進性は非常に重要な問題で、所得の低い人ほどこれは負担が大きいです。ですから、これを五%にしたこと自身に間違いがあったのですから、間違いは正すことということですから、消費税を三%に戻したらどうか。  中小業者の皆さん方も、今、消費税がなかなか転嫁できないんだ、それで苦労しているということもあちらこちらから聞いております。この消費税の問題についてお考えをひとつ聞きたい。  もう一つの点は、貸し渋りの点なんです。  私も調査してまいりましたが、これはなかなかひどいものです、自殺者が出るというような状況なんですから。これは政府が、政府系金融機関へ二十五兆やりましたなんだというので、私たちはこれでもう十分だと思いますなんて言っていたのでは、これはもう到底解決できない問題だ。  そこで、優先株だとか劣後債だとかいろいろ公金投入をして、自己資本比率を高めようということをやりました。果たして、それで本当に貸し渋りは解消するのかという問題で、銀行によりますと比率が八%になった、いや、今度は九%、一〇%を目指さなければならないなんということを言っているわけですから、貸し渋りどころか、回収という状況の中で大変困っていらっしゃる。  今の現状を、いろいろ全国の会員さんの状況などを調べていらっしゃると思います。こういう政府が一応の対策を今とっているわけですが、現状、幾らか好転したのか、やはり貸し渋りは引き続き続いている、あるいはもっと悪くなった、どういう状況か、お聞かせいただきたい。
  45. 稲葉興作

    稲葉公述人 まず、消費税の問題でございますが、消費税が三%から五%になるときには、基本的には私ども反対をいたしました。しかし、現実に現在決めておられます消費税をもとへ戻すというのは、私は非常に混乱を伴うのではないか。  そもそも、日本の直接税が非常に高い、間接税が欧米に比べて低いという中で今の税制の問題が論議されているわけでありまして、三%になれば結構だという意見もあるかと思いますが、私は、消費税を上げた分だけその効果が出てくるか出ないかという点に問題を絞るべきであって、消費税自身をすぐ今もとへ戻すというのはいかがなものかなという感じを持っております。  それから、貸し渋りの点でございますが、先ほども陳述の中で申し上げましたが、昨年の暮れとことしの二月で状況はよくなったか。さらに悪くなったというような人が全体の九〇%を占めておりまして、この貸し渋りの状況は、よくなるどころか、悪くなっているというのが実態でございます。  現在、三十兆の対策のうちの十三兆が、そのうち二兆余が資本注入に回っておりますが、当初大蔵省その他の御説明を承りますと、自己資本率BISの八%というのは〇・〇八ですから、一をそれで割ると十二・五。それから早期是正措置でいくと四%、一を〇・〇四で割ると二十五。十二・五倍あるいは二十五倍の効果が、百の資本注入をすればそれの十二・五倍、二十五倍の効果があるので貸し渋りが解消の方向に向かうという御説明でございましたが、現在そういう方向には進んでいると思いますが、いつどのぐらいのものが貸し渋りの解決の方に向かっていくかという点が我々にはよく見えていない、もう少しはっきりしていただきたいという点を先ほど申し上げたわけでございます。
  46. 矢島恒夫

    矢島委員 舛添さんにお聞きしたいと思います。  一つは、私、いろいろ書かれた本や、マスコミにもたくさん登場していらっしゃるので、なかなか読み切れないのですけれども、幾つかきょうの御意見との関係でお聞かせいただきたいと思うのです。  景気回復のための行政改革、こういうお話を聞きました。たしかことしの一月五日発行の「先見経済」の中で行革特集というのがありまして、その中で「甦るのか 日本のパワー」というのをお書きになって、大変興味深く読ませていただいたのですが、その中で、むだや浪費にはメスを入れろと、きょうの御意見と同じようないろいろな例が挙げられておりました。全く同感なのですが、ではどこへ使えば景気対策になるのか。使い方を間違っているのだという点は私も同感ですが、その点でお聞かせいただければというのが一つです。  それからもう一つは、昨年、財政構造改革法成立させました。そういう中で、来年度予算というのが今つくられて審議されているわけなのですけれども、特に社会保障関連予算というのが当然増八千億円が必要なのに、五千億円も削っていくということになると、それだけ社会保障問題に対するしわ寄せが国民に加わっていくわけです。  とりわけ、私、大阪大の本間先生と対談していらっしゃるのを「税経通信」で読ませていただいたのですが、その中にも、またきょうのお話にもありましたけれども、お母さんが介護を必要とする状況にあるという中で触れられていました。この介護保険法なのですけれども、私、保険あって介護なしというものではないか、修正しろということをずっと要求しているわけなのですけれども、この介護保険法の問題で何か御意見ございましたら、お聞かせください。
  47. 舛添要一

    舛添公述人 公共支出、先ほども申しましたように、例えば無用な農道空港をつくるならば、福祉に使うべきだというふうに思います。  福祉、これは北九州市でもシミュレーションをやりましたけれども、むだと言われているような公共投資よりも福祉に使うことの方がはるかにGNPを上げる効果がある。車いすで動かれる方々がバリアフリーになれば、そういう方々がデパートで買い物できるわけです。  それともう一つ、ぜひ皆さん方にお願いしておきたいのは、今バリアフリーということを申し上げましたが、これはハードウエアで段差をなくすということ、これはどなたもお考えになるのですが、ソフトウエア、例えば行政の窓口に行ったら、何回も書類を突き返される。一回で済めば、残りの時間で仕事ができるわけですから、そういう意味のソフトウエアの面での徹底した改革をやることは、実は一円もお金をかけないでよくなるわけです。  私は、東京都公安委員会の免許証を持って福岡県で身体障害者用の特別な措置を要求したら、警察に突き返されました。これは福岡県の免許証じゃないと。同じ日本国民でそういうことが許されていいのか、こういうことを変えないといけない。  それから、禁治産という問題。これは高齢者介護で必要なので、私は、家庭裁判所にそういう決定を八カ月後にやっていただきました。ところが、窓口に来いといったときに、出頭せよということだけ。行きましたら、戸籍を持ってこいと言う。一言書いてくれれば、そういうことがあるのです。  こういう問題が、時間があれば何十時間でも話せるぐらいのことがありますので、これは一円もかけなくて、皆様方が、厚生省の局長の通達一片でそういうことがやれているわけですから、ぜひお変えいただきたい。そのことによって何百万人が助かると思います。  それから、介護保険法につきましては、民間参入をして、いろいろな自由な競争ができるということは、私は評価をいたします。しかし、拙速主義でやり過ぎまして、私は実は自分の母親を人体実験に使って試算をしたのですけれども、今よりも負担が多くなります。今より負担の少なくなる方々もおられますけれども、多くなりますので、制度と人材の面で抜本的に大急ぎで充実しない限り、先生おっしゃったように、保険あってサービスなしという状況になると思いますので、そういうことから、先ほど高齢化社会が到来ということを弁解に使って何もやらないという発想はやめてくださいということを申し上げた次第であります。
  48. 矢島恒夫

    矢島委員 小野先生、申しわけございません。時間がなくなりました。私は、福祉に使えば雇用も拡大するという面で、昨年の財政構造改革法のときに質問をさせていただきましたので、その続きをやろうかと思いましたが、申しわけございません。  三人の先生方、ありがとうございました。終わります。
  49. 越智通雄

    越智委員長 次に、上原康助君。
  50. 上原康助

    ○上原委員 社民党の上原です。  持ち時間がたったの十分ですので、御三名の公述人の方々に、それぞれ御発言順に一問ずつお尋ねできればと思いますので、よろしくお願いをしたい。  まず、稲葉公述人ですが、景況感が非常に深刻である、企業倒産も九七年度七万件余、そして負債総額も十四兆円だと。商工会議所のトップの立場にある方がそういう深刻な事態を言っておられるわけですから、地方の中小零細業を含めると、より深刻だと思うのですね。そういう面で、十年度予算早期成立ということには社民党も賛成ですし、努力をいたしております。  そこで、財革法の弾力的運用をも考慮に入れて、さらに十兆円規模の新たな景気対策、いわゆる財政出動による景気浮揚策というか、対策をぜひやっていただきたいという公述をなさったと思うのです。  言わずもがなですが、そうなりますと、財政出動ですから、赤字国債の発行か、財源をどうするかという問題が、大変本委員会を通しても議論になっております。その点についてもう少し、お考えがあれば、御参考にしたいと思うので、聞かせていただきたいと思います。
  51. 稲葉興作

    稲葉公述人 率直に申し上げまして、今、日本の経済は非常なデフレの中にありますし、そのデフレが深刻化しているというのは間違いのない状況だと思います。こういうデフレの中に、さらに緊縮的な政策をとれば、これがきりもみ状になっていくという心配は当然考えられるわけでありまして、財政再建法等、確かに全体の枠の問題そしてその条文の問題から非常に難しい点はあるのでございますが、やはりこれを乗り越えてやるだけの価値が現在ある、またそれが絶対必要だというふうに確信をしております。非常に簡単でございますが。
  52. 上原康助

    ○上原委員 次に、舛添公述人にお尋ねします。  全体的に大変参考になりました。いわゆる政策転換、発想の大転換といいますか、それが必要だということは、私も、日ごろから先生の御発言等あるいはお書きになっている点を参考にしている一人ですが、同感でございます。  そこで、バブルからの脱却対策我が国は非常におくれて、それが高じてというか、深化して、金融機関不良債権、自主公開では、金融機関不良債権は約七十六兆円あるいは七十七兆円程度だと言っておる。しかし、一般的には、もっとあるのではないかと指摘されておりますね。そういう点について、先生はどういうふうに見ておられるかというのが一点です。  さらに、資産デフレからの脱却を図る、あるいは公的資金投入も、私もやむを得ない面もあると思います。しかし、同時に、舛添公述人が御指摘なさったように、責任者の厳正な処罰ということと、もっと情報をディスクローズするということ、情報の開示ということ。さらに、トンネルの中に入り込んだだけで、いつ明るい兆しが見えるのかというタイムスケジュールというのが政治、金融行政の中で明示されていない。これは最も国民がいらいらして不安を感じている点だと思うのですね、高齢化社会に向かう過程においても。  そういうことを打開していくための、もちろんこれは、それこそ国会議員、あなた方がやるべき仕事だと言われてしまうとそれまでのことなんですが、もう少し先生のお考えを開示していただければ大変ありがたいと思いますので、お聞かせ願いたいと存じます。
  53. 舛添要一

    舛添公述人 不良資産の額が、最初二十兆と言って、それから六十兆に上がってくる、こういう状況であれば、国民は信用しないと思います。ですから、私は、恐らく百兆円を超えているのではないかなと。だれにもわからない。しかし、調査する能力は大蔵省にあるわけですから、ぜひそれは開示していただきたいと思います。  最初にそれだけの額があるのですから、したがって、かくかくしかじかの政策をとらないといけないと言えば、我々も何もかも反対しているわけではないので、私が先ほど申し上げましたように、公的資金というのは非常に結構だと私は思います。  スウェーデンの場合、これはスウェーデンの大蔵大臣がおっしゃっていましたけれども、ちょうど細川内閣のときにその方が来られまして、こんなことをやっていたら、うちのように大変になるぞと。おたくはどうでしたかと。先ほど申しましたように、一人当たり二十万円の出費を、税金を要求した。ただ、その前提は、ちゃんと説得をして、ディスクロージャーをやったということでありますし、責任ある頭取の首をとったということをやっているわけであります。  私は、とにかく国民に自信を与えてもらうことが必要だと思いますので、マイナスの遺産はしようがない、しかし、一日も早くそのマイナスをなくして、新たなる飛躍をしたいわけですから、私がお願いしたいのは、政治生命を最高指導者がそこにかけていただきたい。ですから、ほかの公約は要りません。何年何月何日までに不良債権をゼロにする、できなければ退陣する、それを総理大臣に言っていただくということが非常に重要だと思います。  またこれは、テレビを含めてマスコミも大変責任が、その場に私も置いてますので、あると思いますので、私は、先ほど共産党の議員の先生がおっしゃっていただきましたように、私を含めて、マスコミで発言される評論家であるとかキャスターであるとか、こういう方々が何月何日に何という発言をしたかというのは、情報を開示する必要があるだろうというようなことを思っています。  責任を政治家の皆さんはおとりになる、官僚もおとりになる、しかし、言論界にいる人たちだけはとらないということは、自分自身の反省も含めまして、やらないと、今のような垂れ流し的なマスコミのあり方であったら、この国はよくならない、自戒の念を込めて申し上げたいと思います。
  54. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。  小野公述人、大変御苦労さまでございます。  そこで、いろいろお聞きしたいのですが、時間がもうあと二、三分ぐらいですか。  九〇年代に入って、九〇年から九五年、約千兆円の資産が消えた、それはそのとおりだと思うのですね。資産減価があったということ、これはもう各専門家が指摘をしておられます。しかし、一説には、九八年に入っていますから、千二百兆円くらいになったのじゃないか。その資産減価のうち、土地が約六百兆円あるいは株式が四百兆円くらいだと。このような、国民貯蓄に比較するくらいの資産の目減りがあるわけですから、景気が悪くなるのは当然なんですね。そういう意味で、不良債権がどんどんたまってきた。一方においては、景気回復しなければいかないのに、不良債権とかそういった目減りをどう金融界を含めて公的資金投入しながらやっていくかという面で、公定歩合の超低金利あるいは預貯金の金利を含めて、国民生活には大変なインパクトを与えている。  さっき先生の公述の中で私が大変関心を持ったのは、こういう非常に矛盾したジレンマがあるわけですが、一方において、健全で優良な金融機関というのは非常にもうかりつつあるのじゃないかという指摘がある。私もそう思うのですね。そうしますと、新たなひずみが生じてきて、ますます矛盾の再生産、拡大、再拡大になっていくのじゃないかと思うのですが、この点についての打開策というものを少し補強していただければと思います。
  55. 小野善康

    小野公述人 おっしゃるとおりの側面が非常に大きいと思いまして、一般的には、流動性を上げる、これは広い意味で資産価額を上げるとかそういう方式にしなければいけない。一番基本的な流動性の源泉であるハイパワードマネーとか預金通貨が収れんしているからまずいということなんですが、実は私が申し上げたかったことを質問してくださったので、ちょっと違うかもしれませんが、ついでに申し上げますと、優良銀行にも資金投入している、これはどういうことか、私は全く理解できないのですね。  これは、先ほど来言われている情報開示ということと多分深く結びついていまして、情報を開示しないという何かムードがあるものですから、どこでもいいから何しろ入れておく。そうすると、何かわからない、うやむやなうちに、危ないところもいいところも全部一緒だからどこもわからない、いずれにしても入れておく。そうすると、いいところはもちろんいいんだけれども、悪いところも困らないからいいんだ、こういうことになっている。しかし、それは本質的に、情報開示も何もしないで、いわばその場を乗り切ってしまおうという態度ではないかと思うのです。  ですから、一番重要なのは、どこが本当にどのぐらい危ないということを示す。本当に回復できないようなところをやっても実はしようがないわけですから、危ないところにちゃんと投入するから、ここは責任を持つと政府がちゃんと示す。そうすれば、そこは危なくないということを保証してあげるということですね。  いいところに投入するというのは全くわからないので、そこを投入する分であれば、政府系金融機関の割当額をふやして、民間から通すとどう通るかわからないものですから、そこから直接、緊急措置でもいいから、中小企業なり何なりにどんどん資金を回すというふうにすべきであって、全く理解できないということです。
  56. 上原康助

    ○上原委員 時間ですから終わります。ありがとうございました。
  57. 越智通雄

    越智委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  58. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず高木公述人、次に富田公述人、続いて熊谷公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、高木公述人にお願いいたします。
  59. 高木剛

    高木公述人 御紹介をいただきました連合副会長をしております高木でございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  本日は、連合副会長という立場で出席をさせていただいておりますが、私自身は連合傘下のゼンセン同盟の会長をいたしております。ゼンセン同盟は、繊維、衣料、化学、流通、食品産業等に働く組合員で構成いたしておりまして、これらの産業の大方は消費に直結する産業でございまして、私どもの加盟組合、千六百組合ぐらいでございますが、そのうちの八割ぐらいがまた中小企業という企業規模でございます。こうした組織構成から、現下の消費不況影響をまさにもろに受けておる職場が多いわけでございます。  このような労働組合の責任者として、日常いろいろ携わっております立場から、予算案やそれに伴って施行されますいろいろな政策につきまして、二、三点意見を述べさせていただきたいと存じます。  まず、現在の経済情勢にかかわります認識についてでございますが、御高承のとおり、乗用車、家電、住宅着工件数、百貨店、スーパーマーケット等の売り上げ等々消費関連のデータは、いずれも前年に比較して大幅なマイナスが続いております。勤労者所得も、残業時間の減少などにより低迷が続いておりまして、まさに深刻な消費不況の真っただ中にあると言っても過言ではない状況かと認識をいたしております。  昨年、政府は、消費税率の引き上げ、特別減税の廃止、医療負担の増大などによりまして、国民に九兆円余の負担を押しつけてまいりました。こうした巨額な負担増が国民生活を直撃して、個人消費を萎縮させ、回復しかけた景気に水を差したことは明らかだと思います。  加えて、昨年の秋以降の金融機関の相次ぐ経営破綻は、地域経済に大きな影響を与え、金融システムに対する国民の不安を高めております。また最近では、三月期決算を控え、銀行の貸し渋りと言われております行動によりまして、企業資金繰りの悪化などの現象も顕著になってきておるところでございます。もし貸し渋りがこのまま続きますようですと、健全な中小企業などが運転資金のショートから黒字倒産になりかねない、そういった事態も懸念されておる状況かと思います。  こうした中で雇用情勢は一層悪化し、完全失業率は三・五%と統計史上最悪水準に張りついたままでございますし、直近の発表では、特に男子の失業率が三・七%に至るというゆゆしき事態に逢着しておるわけでございます。  資金の運用環境の悪化から、勤労者の老後生活を支えます企業年金も制度的危機に陥っております。私どものことで恐縮ですが、私どもゼンセン同盟の組合員がかかわっております厚生年金基金のうち十基金がもう既に解散を余儀なくされておりまして、また、解散に至らないまでも、大幅な積み立て不足が生じ、掛金の引き上げか、給付水準の引き下げかという選択を迫られる、そういった状況も出てきておるところでございます。  今、労働組合は一斉に賃上げの交渉をいたしておりますが、ことしのこの交渉の中で、企業年金の積み立て不足問題が労使間の大きなテーマになってきておるところでございます。  生活不安が消費を萎縮させ、消費の冷え込みが企業活動を低迷させているという悪循環にまさに陥っているわけでございます。  こうした実態があるにもかかわらず、政府の経済に関します認識は、月例経済報告等を拝見いたしますと、昨年十月までは、回復過程にあるという表現でございましたし、その後も、足踏み状態などといった言葉をお使いでございます。これは、経済情勢に対する誤認でなければ、認識間違いでなければ、政策の失敗を認めたくないための詭弁の強弁としか言いようがないのではないかと思います。その結果、政府政策転換のタイミングを失い、今日まで迷走を続けておると言われてもいたし方ない、まさに政策不況という状況にあるのではないかと思っております。  ぜひ政府は、この経済の深刻な状況を直視していただき、適切な対応策をとっていただきたいと強く求めたいと思います。以下、本予算に関します意見の前に、三点につきまして触れさせていただきたいと思います。  まず一つは、金融機関の貸し渋り問題についてでございます。  さきに国会にて成立しました金融システム安定化法により、金融機関への公的資金の導入が決まりました。その法案の通過を受けて、都銀、長信銀、地銀二十一行で総額二兆円の公的資金注入の申請がなされました。  公的資金の注入につきましては、私ども連合の中でもいろいろ論議をしてまいりました。結論といたしましては、こういった方法が本筋かどうかということにつきましていろいろな疑問も呈されたわけでございますが、貸し渋りによる企業倒産、その結果としての失業があってはならないという観点に立ち、金融機関に対する公的資金注入も場合によってはやむを得ないということにいたしたわけでございます。  しかし、二兆円の公的資金の注入によりましても、融資増加がなされないということになるのではないかという御意見を最近いろいろ耳にするわけでございます。せっかくこうしたスキームを決めていただいたわけでございますから、これが実際に貸し出しの増加になるように対応していただきたい。健全な中小企業を貸し渋りによって倒産させることがないように、ぜひそのように回していただきたいと思うわけでございます。  第二は、年金制度について触れさせていただきます。  今月の中央公論に、ロンドン大学教授のロナルド・ドーア先生が「年金制度をマネーゲームに巻き込むな」というタイトルで論文を出されております。これは、ビッグバンをさきに経験したイギリスの年金制度の変化を観察しながら、日本が英米をモデルにした年金制度へ移行することへの問題を提起したものでございまして、傾聴に値する論議がなされておると思っております。  日本でも年金制度の見直しの論議が本格化してきておりますが、財政負担国民負担といった負担サイドの観点からの議論にこの論議は過ぎておるような印象を強く持っておりまして、そういう意味では、年金改正の論議は、国民の老後生活の不安を駆り立てるということにならないように、老人が大きな不安を持つことなく生活していくための経済メカニズムあるいは社会的なメカニズムはいかにあるべきか、そういう視点でぜひ御検討、御論議をいただきたいものだと思っておるところでございます。  三つ目には、アジア経済危機について触れたいと思います。  私自身、二月の下旬にタイ、マレーシア、インドネシア、韓国を訪れてまいりました。労働組合やそれぞれの国の政府の方々から話を聞く機会を持っていただきました。国によってそれぞれ事情は違いますが、日本への一層の支援を求める声が非常に強く出ておりました。アジア経済の安定のために日本が果たすべき役割には大変大きなものがあり、これにこたえる必要があると思います。  昨日の朝日新聞の「論壇」という欄に、中央大学の中條誠一教授が寄稿されておりました。その原稿によりますと、IMFを中心とした金融支援パッケージではこれらの国々に対します支援あるいは共同行動として不十分であり、円建て外債市場などで調達した民間資金を含めた円を、ドルではなくて円を、アジア支援のために円滑に供給するシステムがぜひ構築されるべきだ、いわば円を活用したアジア支援策が必要であるといった提案でございました。  円の活用も含めまして、日本支援がふえる形をつくることが必要であると思います。日本にとって身近なアジア諸国の危機を克服するため、ここで日本が協調していくことは、日本アジア諸国の一層の一体感を高めるとともに、日本経済の成長を促す効果も持ち、同時に世界経済にもよい影響を与えるものだと思っております。  次に、九八年度予算案につきまして、意見を申し上げます。  九八年度予算は、財政構造改革法のもとで初めて編成された予算であり、極めて緊縮かつ抑制型の予算となっていることが特徴であろうかと思います。  一般歳出の各費目は、財政構造改革法の量的削減目標に基づいて、厳しく抑制されております。もう既に御承知のとおりでございますが、社会保障関係費は、従来どおりでありますならば八千億円余の当然増となるところでございますが、三千億円未満の増に抑えるというキャップがかぶせられ、五千億円余が削減されました。また公共事業費は前年比マイナス七・八%の削減、ODA予算マイナス一〇・九等々でございます。文教、防衛、エネルギー、中小対策費など、いずれも対前年比でマイナスでございます。  一方、義務的経費は、国債費、地方交付税交付金合計約八千五百億円がふやされており、予算全体で見ますと、義務的経費の増加政策的経費である一般歳出で削り出した分で埋め、結果として伸び率を〇・二六%に抑えた格好になっております。  問題の第一は、こうした歳出削減によって、国民生活にも大きな問題を持ち込んでいることでございます。  社会保障費につきましては、老人保健拠出金の被用者保険への転嫁や、これまで一般会計予算処理してまいりました年金保険事務費のカットなどを行っておりますが、これらは、負担を健保や年金の加入者に転嫁してつじつまを合わせようとするもので、将来追加的な負担増につながるおそれが多いと国民の多くは心配をしておるのではないかと思います。  我が国が世界に例のない少子・高齢社会に移行しようとする中で、福祉、社会保障についての将来ビジョンを明確に示さないまま、国の負担だけを切り詰めようとする財政構造改革法のありようは、本末転倒と申し上げざるを得ないと思います。財政のつじつま合わせのためのびほう策になっていることが、社会保障システムへの国民の信頼感を揺るがせている最大の原因ではないでしょうか。  公共事業につきましても、七・八%と大幅に削減をされておりますが、削減の手法は、公共事業にかかわる各種長期計画の年限を二年間先延ばしするという機械的方法によっており、事業自体の内容の見直しという意味では、甚だ不十分ではないかと思われます。  公共事業については、その量的な削減だけではなく、これまでの事業内容が本当に国民のニーズに合ったものであるかどうか、その内容にメスを入れることが求められております。今回から一部、いわゆる時のアセスメントと言われます再評価システムの導入も行われてはおりますが、省庁、事業ごとのシェアに大きな変化はなく、既得権型の公共事業はいまだ健在というふうに申し上げざるを得ないと思います。  景気が危機的な状況にあるときに、このような緊縮抑制型の予算を強行すれば、景気を一層悪化させ、結果として財政再建そのものまで不可能とするおそれがあります。財政デフレ、政策デフレによる日本経済の失速は何としても避けていただきたいものでございます。  次に、減税の必要性について申し上げさせていただきます。  GDPの約六割を占めます個人消費が回復することなくして、この消費不況から脱却する道はないと思います。九七年度補正予算で二兆円の特別減税が盛り込まれ、実施に移されましたが、深刻な景気後退の現状に照らし合わせてみますと、これだけでは全く不十分だと思います。  まず、規模の点で、二兆円では、デフレギャップ、正確にはどれぐらいの大きさなのか推測はいろいろあるようでございますが、ともかく二兆円ではデフレギャップを埋めるには余りにも少な過ぎると思います。また、一年限りの特別減税では、国民は次の増税考えて、消費するより貯金しておこうという心理が当然働くのだろうと思います。したがって、消費刺激力は弱く、景気対策効果としては限界があるのだろうと思います。  国民生活の負担軽減と景気対策の両方の観点から、個人に対します所得税減税を中心に、教育、保育、住宅などにかかわります政策減税法人税減税などを合わせて、合計六兆円規模減税をぜひ実施していただきたいと思っております。所得減税につきましては、三兆円を制度減税化し、一兆円の特別減税を加えて、四兆円規模実施することをお願いいたしたいと思います。  九八年度予算は、国民生活の不安を取り除くという政府の強いメッセージが込められたものになるべきであります。このままの予算では、景気も生活も先行き不安が増すばかりではないかと思います。  本予算案が不十分なものであることは政府・与党の幹部の皆さん方もわかっておられますようで、まだ予算審議に入ります前から、政府高官がアメリカにお行きになり、四月には公共事業追加の補正予算編成を約束したと報じられたり、これは一月十七日の朝日新聞でございますが、自民党の党役員がマスコミに対して補正予算編成を公言なさり、その規模も六兆円、さらには最近では十兆円以上ということも言われております。  しかし、予算成立する前に、当の予算編成した政府・与党の幹部の皆さんからこうした発言が引き続くことの異常さを、どうお考えなのでございましょうか。これはだれが考えても、この予算に欠陥があることを認めた発言であろうかと思います。だとすれば、本予算をこそ修正すべきではありませんでしょうか。  すなわち、所得税減税を中心とする六兆円規模減税実施すること、社会保障費について、総合的な福祉ビジョンづくりを行いつつ、制度の効率化を図りつつ当然増に対応した予算をとりあえず確保すること、公共事業費については、事業配分の見直しや一層のコスト削減を行うこと等々でございます。何とぞ、本委員会で御高配のほど、心よりお願いを申し上げたいと思います。  限られた時間で、十分意を尽くせないところもありましたが、以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  60. 石川要三

    ○石川委員長代理 ありがとうございました。  次に、富田公述人にお願いいたします。
  61. 富田俊基

    ○富田公述人 御指名をいただきました野村総合研究所の富田俊基でございます。  平成十年度の総予算についてという表題のもとに、日本経済財政運営のあり方について、意見を申し述べさせていただきます。お手元の資料も御参照ください。  景気を展望するに際しましては、現在の我が国が冷戦後の世界経済の大きな構造変化の中に置かれていることを、まずもって認識することが必要であります。  冷戦終えん後、新たに市場経済に参加した中国や東欧などの国々を含めて、新しい国際分業が模索されております。本邦製造業の海外現地生産も、我が国の輸出総額に匹敵するほどふえております。  同時に、国内では、業種によって成長力に大きな差が出てまいりました。景気の底であった九三年末から、機械などの資本財の生産は三四%もふえました。これに対しまして、家電、自動車、衣類などの消費財の生産は逆に減少しております。昨年来のアジアの各国の大幅な通貨安というのは、こうした産業構造の変化を一層加速するものと考えられます。  こうした産業構造の変化によります企業設備の陳腐化、さらには生産年齢人口のピークアウトと労働時間の短縮などの結果、我が国の潜在成長率は、八〇年代の四%程度から二%弱に低下したものと推定されます。この潜在成長率の下方シフトを背景にいたしまして、企業の設備投資は調整を余儀なくされ、ピークから二〇%も減少いたしました。  この調整が終了した平成五年末をボトムに、景気は四年半の回復過程をたどりました。その最終局面でありました平成七年度、八年度には、民需を中心に、それぞれ二・八%、三・二%という、潜在成長率を大きく上回る成長を遂げました。その後、昨年春から景気後退に入りました。つまり、昨年の消費税率の引き上げというのは、景気後退の要因ではなく、むしろそのきっかけになったにすぎない、景気循環が生きているというふうに考えております。  世界レベルでの産業構造変化影響とともに、金融機関不良債権が九〇年代の日本経済に大きくのしかかってきました。特に、昨年十一月に金融不安が顕在化して以来、銀行の融資姿勢は慎重になり、景気後退に貸し渋りが加わり、倒産が増大するなどの実体経済への影響が生じております。  こうした状況下で、十年度予算編成されてきました。それは次のように評価できます。  まず、十年度予算案は、財政構造改革法に示されました主要経費ごとのキャップを守っております。また、赤字国債の発行を削減しつつ、法人税や有価証券取引税の引き下げ、地価税の課税停止などで、国、地方合わせて八千四百億円もの減税を盛り込んでおります。この結果、この四月より法人税率は、地方税を除きますと、アメリカよりも低くなります。また、旧国鉄と国有林野事業特別会計の債務問題という長年の懸案も何とか処理しています。そして、国債発行額対GDP比を、九年度の五・九%から十年度四・七%に削減しております。  さらに、金融システム安定化のために十兆円の国債と二十兆円の政府保証、合わせて三十兆円の資金が活用できるようになりました。  護送船団行政におもね、自己革新を怠り、不良債権を累増させてきた銀行というのは、親方日の丸で巨額の累積債務を抱えるに至った旧国鉄の末期に似ているというふうに思われます。旧国鉄は、累積債務を国民負担することによって、民営化が可能となり、サービス効率が著しく向上したわけでございます。  これと同様に、今回の公的資金投入によりまして、銀行は、行政依存体質から決別し、自己責任で利用者のために効率的な経営を行うように生まれ変わる、そういうための国民負担であってほしいと考えます。  また、新年度の財政融資計画では、貸し渋り対策として十三兆円の融資量が確保されました。銀行がリスクの大きい融資先に貸し渋ることは、個々の銀行にとっては、合理的な行動であります。だが、銀行にかわりますチャネルがまだ細い現状におきましては、それが合成の誤謬となってあらわれます。したがいまして、十年度の財投計画で示されておりますように、政府系金融機関が果たすべき役割は大きいと考えます。これらの理由より、平成十年度総予算成立を期待いたします。  次に、景気対策についての考え方でございます。  大規模景気対策を発動すべきであるとの考え方が散見されます。こうした声に押されて、平成四年八月から七年九月までの間に、合計六回、規模にして六十六兆円もの景気対策実施されてきました。また、平成六年度から三年間実施されてきた先行減税も、十六・五兆円という巨額に達したわけでございます。  だが、景気の現状が示しますように、持続的な景気拡大が可能になったわけではありません。結果として、国と地方の借金残高が累増し、その対GDP比は、平成四年度末には欧米主要国並みの六四%であったわけですけれども、それが、景気対策の繰り返しで、何と十年度の当初予算ベースで既に一〇〇%を突破してしまいました。  こうした過去の検証を踏まえることなく、今回も、二兆円の特別減税では不十分なのでそれを恒久化せよ、そして、レーガンの二五%所得税減税に倣って減税規模を拡大し、小さな政府実現すべきだとの主張も見られます。  しかし、そもそも小さな政府というのは、減税によってではなしに、歳出削減によってできるものであります。レーガン大統領のもとでは、国防費だけではなく社会保障費も拡大いたしました。小さな政府実現できず、かわって、大きな財政赤字が発生いたしました。この結果、金利とドルが異常に上昇し、八〇年代のアメリカの産業界は極めて大きな打撃をこうむりました。  このレーガンの大幅減税で明らかになったことは、減税は自分自身をファイナンスできないということであります。減税で、たとえ一時的に景気がよくなったとしても、それがもたらします税収増は、減税規模にははるかに及びません。このため、九〇年にブッシュ大統領が、さらに九三年にはクリントン大統領が増税を行わざるを得なくなったわけであります。また、九六年の大統領選挙では、一五%の所得税減税を掲げたドール候補がクリントンに敗れたことも想起すべきであります。  日本には巨額の貯蓄があるから、もっと国債を発行しても大丈夫だという主張もあります。国債を発行した後で簡単に増税できるのであれば、その意味はまだあるかもしれません。しかし、こうした対称性は現実の社会には存在していないようであります。国債を増発いたしますと、国債は資産として保有されます。しかし、国債は同時に国民の負債でもあります。資産になるので国債の増発は歓迎だが、負債であるがゆえに必要な増税には反対というのでは、国という共同体を忘れた身勝手で無責任な主張と言うほかありません。  これまでの景気対策は、一方で大規模財政出動を行い、規制緩和推進するという内容でありました。前者は、景気が悪くなれば政府景気回復支援してくれるという、行政依存を内容としております。これでは、企業経営の甘えを助長し、古い産業構造を温存しかねません。後者、規制緩和は、企業国民の自己責任と創意工夫という市場メカニズムを基本としております。  これまでのように両者がないまじっておりますと、国民は新しい時代の枠組みを予感することはできません。我が国が向かうべき方向は、これまでの行政依存ではなく、市場経済の方向であります。ならば、一貫した政策体系としてそれを示す必要があります。  現在のアメリカの好況の要因は、レーガン減税ではなく、企業事業再構築と情報通信技術の積極活用、それらを容易にした息の長い規制緩和にあります。企業は大胆なリストラクチャリングを実施し、労働インセンティブを高めながら雇用コストを抑制しております。そして、柔軟な労働市場が産業構造の転換を円滑にいたしました。物価上昇を差し引いたアメリカの実質の平均賃金は過去二十五年間も上昇しておりませんが、雇用量は六六%も増大いたしました。  アメリカの世帯を平均してみますと、親の代と同じか、それ以下の生活水準でしかありませんが、能力と努力次第では豊かになれるというアメリカンドリームが生きているように思われます。  アメリカでは、政府規制のもとにある産業のシェアは一九七七年にGDPの一七%でありました。その後、運輸、通信、エネルギー、金融分野を中心に規制緩和が継続して行われ、八八年にはそのシェアは六・六%に低下いたしました。規制が緩和された産業の生産性と雇用の伸びは、規制業種をはるかに上回りました。  我が国も、世界レベルで進行しております産業構造の歴史的大変化に対応を進めていかねばなりません。冷戦終えんを契機に、製造業のGDPに占めるシェアは、七〇年代半ば以降の三三%から二五%へと低下いたしました。非製造業のウエートが増大しておるのであります。非製造業は製造業のように国際競争にさらされることなく、しかも規制に守られ、競争の機会が乏しかったわけであります。この分野で民間経済のダイナミズムを引き出すには、経済構造改革を推し進め、規制緩和の促進によって経済効率を上げる政策が基本となるべきであります。  アメリカでは、九八年度に黒字が発生するかもしれないほどに財政が健全化いたしました。これには、包括財政調整法、OBRAが果たした役割が極めて大きいわけであります。  この法律は、歳出を裁量的経費と義務的経費とに分け、前者にはキャップを設け、義務的経費については、制度を変更して歳出をふやす場合や減税を行う場合には、その財源に見合うだけの他の義務的経費の削減や増税を行わねばならないという法律であります。日本財政構造改革法が歳出のみを対象としているのに対して、アメリカでは税制をも包含しておるわけであります。  アメリカでは、このOBRAを景気後退のさなかの九〇年十一月に成立させました。ヨーロッパの主要国でも、九〇年代に入ってからの景気後退に対しましては、それ以前とは異なる対策をとるようになりました。ドイツは、九四年一月に、成長と雇用創出のための行動計画として、財政緊縮とともに中小企業支援、労働時間の柔軟化に向けた規制緩和を行いました。フランスは、九三年五月に、経済社会再建プログラムを策定し、増税して、雇用対策を行いました。  我が国では、現在の財政政策景気の足を引っ張っているという声もありますが、国と地方を合わせた財政赤字はG7諸国中突出しており、GDPの四・七%にも達しております。これがデフレ政策と言えようはずがないと私は思います。  我々は、行政依存という過去の時代から決別し、市場の時代を切り開く、そのために財政構造改革を決断したはずであります。景気後退だ、危機だと言って、市場の時代が要請する自己責任原則を忘れ去り、何を求めてもよいということでは決してないと思います。大規模減税を繰り返していても、明るい未来は開けてまいりません。将来に必ず増税が必要となるからであります。  九二年から九五年と同じように、安易なカンフル的景気刺激策を繰り返し、将来世代の負担をふやすことはもうできません。将来世代の国民負担率を五〇%以下に抑えるという方針のもとに、財政構造改革法を遵守し、粛々と財政健全化を進めるべきであります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  62. 石川要三

    ○石川委員長代理 ありがとうございました。  次に、熊谷公述人にお願いいたします。
  63. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 御紹介いただきました熊谷です。  私は、全国労働組合総連合、略称全労連の役員として、労働者の立場から、現在国会審議されている新年度政府予算案について意見を申し上げたいと思います。  私がまず申し上げたい第一の点は、高木さんと重なる点もありますが、今日の労働者、国民の状態についてです。  私たち労働組合は現在春闘の真っ最中ですが、労働者の生活の悪化は極めて深刻であり、私たち全労連の組織の内外を問わず集約をした、五十万人を超える九八春闘に向けての要求アンケートにおいても、昨年を上回る六六・三%の労働者が生活の苦しさを訴え、大幅賃上げを極めて切実なものとして、その実現を要求しています。  労働者、国民の状態悪化を示す各種指標は、政府統計などによっても相次いで発表されています。総務庁の家計調査によれば、九七年の年間平均の実質消費支出は前年比でマイナス〇・三%と、五年連続でマイナスを記録し、昨年十二月は前年同月比マイナス五・〇%の二十三年ぶりの大幅な落ち込み、ことしの一月についても前年同月比でマイナス五・九%を記録しています。同時に、可処分所得の中からどれだけ消費に回したかを示す平均消費性向は今や六八・六%と、七〇年の統計開始以来の最低記録を二カ月連続して更新しています。  こうした消費支出の落ち込みの背景にあるものが、連年の賃金抑制に加えての、昨年の消費税率の引き上げや特別減税の打ち切り、医療保険の本人負担引き上げと保険料の引き上げなど、いわゆる九兆円の国民負担増にあることは、経済企画庁が昨年十二月に発表した経済の回顧と展望においても明らかにされているところです。  消費支出の落ち込みにさらに輪をかけているのが、今日の雇用不安の拡大です。完全失業者数は七年連続して増大し、九七年の完全失業率も依然として三・五%の史上最悪を記録しており、昨年後半以降はリストラなどによる解雇が増大していることが、総務庁の労働力調査によっても明らかにされています。また、民間調査機関によっても、東証上場企業従業員数が九七年度上半期で十二万人が減少、企業の七割、業種でも三十業種中二十八業種で従業員が減少していることが明らかにされています。  一方で、パートや派遣労働者など、低賃金、無権利の不安定雇用労働者が一層増大し、このこと自身がまた雇用不安をさらに拡大しています。また、大がかりな人減らし合理化は、能力主義、成果主義の賃金制度などとも相まって、労働者にサービス残業や過密労働を強要し、年間一万人を超えていると言われている、国際的にも破廉恥な過労死を生み出し、最近では働き盛りの労働者の過労自殺ということまでが社会問題となってきています。  政府が進めている医療や年金制度など社会保障の切り捨ても、労働者、国民の将来不安を一層深刻なものとし、個人消費を落ち込ませる大きな要因となっています。  さきに紹介した私たちの春闘アンケートにおいても、労働者、労働組合が力を合わせて取り組むべき課題の第一には社会保障の充実が挙げられ、第二には消費税廃止と減税が、第三には長時間過密労働の解消が挙げられています。  本日の午前中にこの委員会で公述された日本商工会議所稲葉会頭が、つい最近の記者会見で、国民負担増はこの一年間で四十兆円を超えていると指摘をしています。稲葉さんの指摘によれば、私たちも主張している九兆円に加えて、低金利政策による家計金利収入目減りが三兆一千億円、残業代目減りが二千億円、完全失業率増加による給与の逸失額が六千億円、公共料金の引き上げが二千億円など、労働者、国民に直接的にかかわる分野の負担増だけでも十数兆円に及んでいることになります。これでは個人消費が拡大されないのも当然です。  言うなら、さんさんたる太陽の光を遮られ、冷たい北風ばかりが吹きつけられ、財布の口をかたく閉ざしている、これが今日の圧倒的多数の労働者、国民の置かれている状態です。このような労働者、国民の全面的な状態悪化は、当然のこととはいえ、企業の業績を悪化させ、設備投資の縮小を含め、景気の落ち込みをも深刻にさせています。  企業倒産件数も増大し、毎月一万人以上もの労働者が職場を失っていますが、民間調査機関の調査によっても、その約七〇%は販売不振などの不況倒産が占めていることが明らかにされています。また、最近では、不況に加えて、金融ビッグバンに関連した、銀行の自己資本比率引き上げなどに伴う貸し渋りによる中小企業などの経営悪化と、企業倒産が増大しているのも特徴となっています。  市場経済の名のもとに、弱肉強食をさらに拡大する規制緩和や、大企業による発注単価の引き下げ、買いたたきなども中小経営を一層悪化させています。こうしたもとで、経営危機を苦にした小零細企業者の自殺も増大しており、全国商工団体連合会の会員が、一昨年は五日に一人、昨年は四日に一人の割合で自殺をしているような悲惨な状況さえ生まれています。  今こそ、労働者、国民の生活改善と将来不安の解消、さらには日本経済の土台を支えている中小企業商工業者の経営基盤の下支えなどを基本とした緊急景気対策が求められています。  第二に、私が申し上げたいのは、既に触れてきた、労働者、国民の状態悪化の現状から見た新年度政府予算案についての意見です。  その第一は、現在審議されている予算案は、国会審議が開始される以前から、これでは景気対策は不十分、直ちに大型補正をの意見が与党内部からも出されていたように、今日の深刻な労働者、国民の状態悪化の改善や、個人消費の拡大を基本とした国民本位の不況対策とはほど遠いものであり、国民生活の危機を打開する緊急対策としても、予算案の抜本的な組み替えを必要としているということです。  組み替えすべき第一の柱は、国民の所得や消費拡大へのてこ入れのために、消費税率をせめて三%に戻すことや、二兆円の特別減税への上積みと、これを来年度以降も継続、恒久化する、さらには物価上昇率をも下回る異常な超低金利政策を見直すことなどです。  第二の柱は、社会保障や雇用の不安を解消するために、難病患者への自己負担や、高齢者を病院から追い出すような医療の連続的な改悪や、児童扶養手当の打ち切りの中止、介護保険制度を保険あって介護なしとしないためにも、新ゴールドプラン関係など、介護の基盤整備費をせめて前年並みの伸びで増額すること、さらには、雇用保険の国庫負担削減や九九年度からの高年齢求職者給付金の切り下げを中止することなどであります。  第三の柱は、銀行支援の三十兆円の公的資金投入をやめ、銀行による貸し渋りのために経営困難を余儀なくされている中小企業向け金融対策を強化することです。  銀行支援公的資金投入は、九六年の住専国会での政府公約に反しているばかりか、基礎体力があることを認めている銀行への税金投入には道理がないこと、そして何よりも、今日の大蔵官僚と金融機関、日銀幹部と金融機関などの汚職腐敗問題に対する国民の怒り、さらには、世論調査によっても圧倒的多数の国民がこれを容認していないことなどからも、これを直ちに中止すべきです。金融システムの安定をいうのであれば、こうした一層大きな広がりを見せている金融機関関連の汚職腐敗の原因や責任を、国会の場で徹底的に究明することこそが、国内外から求められているのではないでしょうか。  また、今最も公的資金を必要としているのは、今なお仮設住宅での生活などを余儀なくされている、阪神・淡路大震災の多くの被災者であるというのが私たちの意見です。  第四の柱は、銀行支援の三十兆円投入大型景気刺激対策などによって、もはや政府財政構造改革路線は、与党内部からもその行き詰まりが指摘をされているように、その破綻が明確になっており、社会保障や教育、中小企業対策など国民生活関連分野だけが集中的に削減をされ、国民生活の危機打開の障害となっている財政構造改革法は廃止する必要があるというぐあいに思います。  政府予算案に関連して第二に申し上げたいことは、国民負担を転嫁することなく財政再建を図るためにも、従来型の財政構造を抜本的に転換する必要があるということです。私は、その主要な柱は三つあると思います。  その第一は、日米構造協議により、まず初めに六百三十兆円ありきとなっている公共投資基本計画の廃止と、総額二十兆円と言われている首都機能移転計画や、地元自治体に膨大な負担を押しつける大型プロジェクトの中止、内容的にも生活基盤整備型へ転換するなど、社会保障費をはるかに上回り、欧米各国に比べても突出したウエートを占めている公共事業のあり方に思い切ったメスを入れることだと思います。  第二には、冷戦構造の崩壊以降、軍備縮小、軍事費の削減が国際的にも大きな流れであることは、防衛白書によっても明らかにされています。我が国においても、五年間に二十四兆円にも達する中期防衛力整備計画の撤廃や、新規正面整備費の削減、我が国中小企業対策費をはるかに超える米軍への思いやり予算、あるいは沖縄の基地固定化につながるSACO関係費の廃止など、軍事費を大幅に削減することだと思います。  第三は、今日の不況下でも膨大な内部留保をため込んでいる大企業に対する、多くの引当金や準備金などの整理縮小や企業減税など、不公正な優遇税制を是正すべきです。私どもに加盟をしている日本国家公務員労働組合連合会が、税の専門家の協力で発表した試算によれば、こうした不公平税制の是正によって十二兆円を超える財源が確保できるとされています。  私は、国権の最高機関たる国会が、その審議を通じて、主権者たる国民の期待にこたえて、政府予算案の抜本的な組み替えを実現していただくことを重ねて要請するものです。  また、政府は、この国会予算関連法案として、労働基準法などの見直し改悪法案を上程しています。この法案が成立するならば、今でさえ賃金未払いのサービス残業や過酷な労働実態を強いられ、不安定雇用労働者が拡大をしている労働現場が、八時間労働制も突き崩され、裁量労働の名のもとに、際限ない長時間過密労働や有期雇用、派遣労働の拡大によって、企業都合による労働力のジャスト・イン・タイムが合法化されることになります。労働者の働き方や社会生活にかかわる重大な問題として、当事者である労働組合、労働団体が一致して反対している政府提出のこの法案を、国会がその権威にかけても、だめなものはだめとして、ぜひとも廃案にしていただくよう、各党各会派の皆さんに心から要請するものです。  以上をもって私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  64. 石川要三

    ○石川委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  65. 石川要三

    ○石川委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。
  66. 石崎岳

    石崎委員 自由民主党の石崎岳であります。  公述人の皆さん、本当に御苦労さまです。貴重な御意見を拝聴させていただきましたが、質問時間が二十分ですので、簡潔に質問をさせていただきます。  今の政治に問われている、我々に問われているのは、やはりこういう経済、金融情勢の中でどういう政策選択をするかということであろうというふうに思います。  そこで、その政策選択は、やはり短期的な課題と中長期的な課題というものを、ある程度両方を満たす方向性というものが必要になってくるというふうに思います。私は、昨年は行政改革というものと財政構造改革というものは分かれて議論されていましたけれども、やはりこの行革と財政構造改革議論というものをリンクさせて議論すべきではないかというふうに思います。  そして、財政構造改革をさらに進めて、スクラップ・アンド・ビルド、必要なものと、もう時代的に必要でないものを分けてスクラップしていく、ビルドをしていくというものをつくって、歳出を削減する。そして、その結果として、新たな歳出に向ける財源、そして減税の財源を生み出していく努力というものを継続してやっていくという方向性が必要であるというふうに思っております。  そこで、富田公述人にお伺いをします。  富田さんは、御意見の中で、減税もだめ、だめというか効果がないのだろう、それから伝統的な景気対策も必要がない、それから財政構造改革法を遵守しながら規制緩和などで経済構造を地道に変えていくべきであるといったような御意見であるというふうにお聞きしましたけれども現下経済情勢から考えて、緊急の経済対策が必要ではないという議論というのは、なかなか難しいであろうというふうに私は思います。  緊急の景気対策は必要だというふうに私は認識しますけれども、どういう景気対策効果的であるというふうに富田さんは御認識されるのか。  それからもう一つ、消費の冷え込みが景気後退の一因であるというふうに思いますが、消費喚起策としての減税効果を富田さんは全否定されますでしょうか。二点、お伺いします。
  67. 富田俊基

    ○富田公述人 先生が御指摘になられました、歳出を削減してスクラップ・アンド・ビルドでやっていくという御意見、私、全くそのとおりだと存じます。  御質問の、現下経済情勢で緊急対策が必要かということでございます。これは、同じようなことを九二年から九四年にもいろいろと知恵を出し合ってやったわけですけれども、どれもさほど効果を持ったわけではなくて、結局、国債と地方債が累増してしまったということをやはりもっと深く検証して考える必要があるかと思うのです。そういう意味で、私は、緊急対策という名前で何でもかんでもやっていいとは決して思いません。  どういうものが効果的かということなんですけれども、これはどれが効果的かというのは、やはりそれぞれの企業が創意工夫をしてやっている中ですので、これに対して、とにかく困ったときにはみんな助けるんだというようなことを繰り返していては、なかなか創意工夫も生まれてこないだろうというふうに思います。したがいまして、粛々と規制緩和を進めまして、市場のダイナミズムを期待するということかと思います。  ただ、効果ということで考えますと、現在、情報通信は、非常に大きな成長余力を持っている産業といたしまして、アメリカにおいても大きな成長を遂げているわけでして、この領域におきまして規制緩和を進めて、企業の資源をそちらに向かうような形にしていくことは、やはり効果があるというふうに存じます。  二番目の消費減税効果ということなんですが、これは、効果があるということの意味考えますと、実は、国民の錯覚を利用して、効果を期待しているのではないかと思うのです。  国債を発行して減税を行うということの意味なんですけれども、国債というのは、将来の税負担の現在価値でございます。それは、理屈の上ではイコールなわけであります。ところが、効果があるというのは、それを、イコールじゃないという錯覚、国民のいわゆる財政錯覚、フィスカルイリュージョンを利用したものにすぎないというふうに考えていいかと思います。  とりわけ、我が国は、これからの急速な高齢化の中で、これから来るべき市場の時代に必要なセーフティーネットとしての社会保障制度の存続可能性ということがこれから問題になってくる中でありまして、そういう中で減税をやりますと、これから先の社会保障制度はどうなるんだろうというふうに、とりわけ若い年代層も考えてしまうんではないかなということで、そういう意味で、減税というのは、統計上は確かに、GNPの数字として効果は単年度であるかもしれませんが、長期的に考えますと、極めて深刻な悪影響をもたらす可能性が大きいというふうに私は思います。
  68. 石崎岳

    石崎委員 困ったときにみんな助けるというのが自民党政治の長い歴史だったわけでありますけれども、長期的にはだめだけれども短期的にはいいという政策も、もちろんあると思います。  高木公述人にお聞きしたいんですけれども、今、減税のお話がありましたが、その減税効果をどの程度考えておられるのか。それから、六兆円の減税の財源をどこから持ってくるのかということまで考えていらっしゃいますか。
  69. 高木剛

    高木公述人 先ほど、九七年度の補正予算で決めていただいた二兆円減税は不十分だということを申し上げました。今、焦眉の急という意味では、日本の経済というか景気をよくする、そのことに減税だけで効果があるということでは私はないと思います。  例えば、なぜ消費がこんなに冷え込んでいるのか。例えば雇用問題、これは単に失業率の数字にあらわれてくるだけじゃなくて、特に民間企業のそれぞれで行われておりますいろんなリストラが、将来に自分たちの雇用がつながるかつながらぬかというものをいろんな意味で予見させる、そんな雰囲気のリストラなんかもいっぱいありまして、それからもう一つには、社会保障等の将来に対する不安、そういったものが複合的に消費者心理を冷ましているんだろう。  そういう意味では、減税だけ取り出して、それに効果があるなし論というのは、私は余り現実的な議論だと思いません。いろんな施策のトータルの効果として、例えば消費拡大に向かうような心理といいますか、雰囲気が出てくるんだろうとは思いますが、そういう中で減税もやはり大きな対策の一つだ。今の富田さんのような御議論がもちろんございますけれども減税景気回復のための大きな一つの柱だという認識をいたしております。  財源のお話がございましたが、とりあえずで言えば、やはり国債を出していただくということにならざるを得ないんだろうと思いますが、中期的、長期的には、景気回復すればそれなりの税収という面もございますでしょうし、また、行政改革といいますか、いろんなものも、当然、財政再建に資するという立場で今後も御検討が進むものと期待をいたしておりますので、そんな視点で財源等は考えていかざるを得ないんじゃないか、そんなふうに思っております。
  70. 石崎岳

    石崎委員 財源の問題というのはなかなか難しい問題であると思います。  富田さんにもう一度お聞きしますが、富田さんは、財政構造改革法を遵守して、粛々と財政健全化を進めるべきであるというふうに、最後、お述べになりました。  今いろいろ議論されている新たな景気対策、経済対策議論の中で、財政構造改革法の精神は守りながらも、つまり、本予算ではなくて補正予算を活用するスタイル、あるいは特例公債ではなくて建設国債を使うというようなスタイル、こういう方向性というのがいろいろ議論されています。  財政構造改革法が持つ、少々ルーズといいますか抜け道といいますか、そういう性質について、富田さんは財政構造改革法を非常に評価されておりますが、そういう性格というものを許容されるのか。それとも、もっと厳格に、補正予算を使うということも拘束する、禁止する、あるいは建設国債を使うといったような手段も拘束するといったようなストリクトな、厳格な法というものをイメージするのか。どっちがベターだというふうに考えますか。
  71. 富田俊基

    ○富田公述人 まず、財政構造改革法の精神、基本の考え方でありますけれども、私の理解は次のようなものでございます。  国債残高の対GDP比を一定水準に保つ、そのために毎年の国と地方財政赤字を三%以下にするということが基本であります。したがって、二〇〇三年ぎりぎりになって三%を実現するというのも、そういうこともあるんでしょうけれども、それでは国債残高の対GDP比は二〇〇三年までふえ続けてしまう。  国債そして地方債の残高対GDP比を一定にすることの意味でありますけれども、これは、これに利払い費を掛けますと、経済規模に対します利払い費、言葉をかえますと、税負担の中でどれだけをその利払いに充てるかということになるわけでありまして、その部分が膨らんでしまいますと、将来世代の人は、自分が政治に参加して決めてもいない国債と借金残高のために利払いしなきゃいかぬということになるわけです。  したがって、二〇〇三年までに国債残高の対GDP比を一定に保つ、そのために財政赤字のGDP比を三%以下にするというのが基本精神だろうと思うんです。したがいまして、考え方としては、政府債務残高、借金残高の対GDP比をできるだけふえないようにしていくということが基本精神だと思うんです。  石崎先生は、財政構造改革法はいろいろ抜け道があって柔軟な制度だ、そういうふうにも見れるとおっしゃいましたが、確かに、アメリカにおきます財政構造改革法、OBRAに比べまして、税制面を縛っていないという意味においては柔軟であります。ただ、アメリカは、戦争が起こった場合とか、景気が二四半期連続でマイナスになりそうだといったときには、一律削減の条項をストップさせることができるという弾力性を持っておるわけでして、我が国の場合は、それに相当するのが補正予算ということが言えようかと思います。  ただし、補正予算であっても、基本精神に照らして、政府債務残高の対GDP比がふえないようにということが重要だと思います。既に、国債及び地方債の政府債務残高は一〇〇%を突破したわけでございます。前回の景気後退期の前には六四%というふうに主要国とほぼ同じであったのが、一〇〇%を超えてしまった。  日本より多いのはイタリアだけなのですけれども、そのイタリアもだんだんGDP比は九四年以降低下してきている。恐らく、近いうちにイタリアを抜いてしまうということになっては、これはもう非常に大変な事態だというふうに思います。ということで、政府債務残高のGDP比を一定にするということが大原則であるということでございます。
  72. 石崎岳

    石崎委員 そういうベーシックな認識議論でありますけれども、今、財政構造改革の集中期間ということでありますけれども、あるいは建設国債という手法、あるいは補正予算というステージで景気対策考えるということになりますと、景気対策として財政出動が行われれば、建設国債というものを使った景気対策ということでありますから、その範囲は、富田さんが嫌がる従来型の公共投資といったものに限定されるのじゃないかというふうに思います、そういう論理でいきますと。現在の法のスキームの枠組みの中でやりますと、そういうことになってしまう。富田さんが否定されている従来型の公共投資の景気対策になってしまう。  ところが、財政構造改革法は尊重するということでありますから、どうもそれが両立しないのじゃないか、富田さんが最も嫌う方向になってしまうのじゃないかという懸念を持ちますが、いかがですか。
  73. 富田俊基

    ○富田公述人 そうなってはならないというふうに私は考えております。  それで、確かに毎年の赤字公債の発行額を縮減するというふうにはありますが、建設国債と合わせてGDPの三%以下にするというのは二〇〇三年という意味では弾力性は持っておりますが、基本精神というのは、二〇〇三年に向けての国債残高のふえ方が問題である。二〇〇三年にGDP比三%を守っても、その段階でイタリアよりもはるかに大きい借金残高のGDP比が出ており、非常に巨額の利払い費を税負担の中から払わなきゃならないという事態は、やはり、極端な表現をいたしますと、民主主義の根幹にかかわる問題であろうと思います。  つまり、例えば今回景気対策公共事業を行う、そういう決定に関与できない今の選挙権のない人たちがそういう負担をしょわねばならないということもぜひぜひ、私なりの財政構造改革法の解釈ではありますけれども、それがやはり一番基本の理念であろうということでありまして、その点を踏まえた対策ということが重要だというふうに存じます。
  74. 石崎岳

    石崎委員 そういう将来の財政負担というものと現下経済情勢に対応した速やかな景気対策というものを今我々が求められているわけでありまして、その辺の兼ね合いというのを政治が調整する、決断をしなければならない非常に難しい立場に今我々は立たされているわけであります。  もう一点だけ、アメリカのOBRAのように、一時凍結条項というものを日本財政構造改革法に盛り込んだ方がいいというふうに富田さんはお考えでしょうか。
  75. 富田俊基

    ○富田公述人 はい。OBRAの場合には、税制をも包含して財政健全化を行うという形になっておりまして、非常に我が国よりもきつい形になっておるので停止条項がついているというふうに私は思います。  日本の場合は、現在の財政構造改革法というのは、石崎先生御指摘ございましたように、補正予算での柔軟性というのも持っている。ですから、もし停止条項ということを明確につけるのであれば、本則の方をもっと厳格に、減税を行うのであれば、ほかの項目を増税するか歳出削減を行うというふうな規定が必要になってくるというふうに私は解釈しております。
  76. 石崎岳

    石崎委員 貴重な御意見を伺いましたけれども、冒頭に申し上げましたように、私は、やはり財政構造改革というのは行革とセットで議論すべきものであって、それを分けて議論したところにやや問題があるかなというふうに思っておりますので、また党内で議論をしていきたいというふうに思っております。  終わります。
  77. 石川要三

    ○石川委員長代理 次に、鍵田節哉君
  78. 鍵田節哉

    鍵田委員 民友連の鍵田でございます。  本日は、お三人の公述人の皆さん、大変お忙しいところを貴重な御意見を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。お二人は大体基調的によく似ておられるのですが、一人だけ際立ってまた違った御意見をお持ちのようでございます。  本来はここで、予算委員会というのは議論をする場でございますから、私もいろいろな議論もしてみたいなというふうにも思うのですが、何せ時間もございませんから、効率的に質問をさせていただいて、そして公述人の方から貴重な御意見をいただきたいというふうに思っております。  高木公述人に限りまして、四問ないし五問程度の質問をしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。  先ほどから、銀行の貸し渋りということについてお話がございました。マスコミでも、最近、中小企業経営者の集団自殺でありますとか、また、自動車でそのまま海にダイビングするというようなことで自殺をされるというふうな大変悲惨な報道もされております。  私の知っている企業でも、適格年金があるから、何かがあっても年金ぐらいはもらえるだろうなというふうに思っておりましたら、数度にわたるリストラのためにその原資がなくなっておって、最終的に倒産したときには年金がもらえなかったというふうな事例もございます。事ほどさように、大変中小企業では悲惨な事例がたくさん出ておるわけでございます。  特に、連合の傘下には、流通でありますとか繊維、機械、金属産業など中小企業をたくさん抱えておられるわけでございまして、それらのところにおきます貸し渋りの実態について、ひとつ生の声をお聞かせいただければありがたいと思っております。
  79. 高木剛

    高木公述人 生といいますか、一般的にもいろいろなところでもう指摘がされていることだと思いますが、貸し渋りというのも、担保がちゃんとある人、また、事業もきちんとしていて担保もそろっていてそれでもなおかつ貸し渋りがあるのかないのかとか、その辺はケース・バイ・ケースのようでございます。  いずれにいたしましても、例えば商業というか、流通だとか建設等は、お金を貸してくださいといったときに、もともと産業的に、業態的に余りたくさん担保がない。例えば店は借りている。まあ一部には、営業権等も担保になるのだという議論もございますけれども、それはそれといたしまして、担保を用意したときに、さらにもっと担保を積み増ししなさいとか、あるいは融資条件、金利をもっと上げますよとか、そういうような条件にとても対応できないということでありますれば、なかなかそういうお金を借りるというわけにまいらない、そんな面も含めて、今いろいろなことが起こっているのじゃないかと思います。  ぜひ予算委員会の先生方に御理解をいただきたいのですが、中小企業ということで、中小企業にかかわります融資制度というのをいろいろつくっていただいたり、いろいろな御配慮をいただくわけですが、この中小企業の定義につきまして、これはいろいろなところで御論議があるのだろうと思いますが、ぜひ御検討いただいて、今日的な意味での中小企業といいますか中堅企業といいますか、そういったものを網羅できるような定義にしていただけないか。  中小企業金融ということになりますと、中小企業基本法に定められております中小企業の定義に当てはまるところが対象だということで、例えば鉱工業、運輸業では資本金一億円以下、三百人以下というような要件がついております。では三百五十人のところはどうするんだみたいなことで、この定義にはまらないところで融資が受けられない。  これは、単に中小企業基本法だけじゃなくて、例えば信用保証協会等にかかわりますいろんな規則、法律等々も全部この中小企業基本法のルールで律されるものですから、ある地方では、ある県では、県の単独でいろいろ融資制度をおつくりになろうとするけれども中堅企業のところがなかなかフォローができない、そんな実態もございますことを、生意気に、釈迦に説法かもしれませんが、ぜひ何とかしていただきたいと思っております。
  80. 鍵田節哉

    鍵田委員 特に産業別といいますか業種別のそういう規模の見方、いわゆる労働集約的な産業と資本集約的な産業では規模の見方も全然違ってくるんじゃないかと思いますから、その辺は今後の課題として解決していかなくてはならないと思います。  先ほどから減税の問題がいろいろ出てございます。高木公述人の方からも三兆円の所得減税それから一兆円の特別減税というお話が出ておりますが、また、これに対して、いやいや、もう減税は心理的な錯覚ということで、余り効果がないんだというふうなお話もございます。また政府の方からは、所得減税については余り効果がないので公共投資を中心にというふうなお話も、補正予算を組む場合に考えておられるというふうな声が聞こえてまいります。  ところが、海外などからは、日本は所得減税をもっとやれ、そして国内の需要を喚起しろというふうな声も聞こえてくるわけでございます。各国の経済対策の中でも、所得減税というのは非常に重要な要素を持った政策として、今までも採用されておるわけでございます。  それらの議論を受けまして、特に高木公述人の方から、所得減税につきまして、もう一度御意見を聞かせていただきたいと思います。
  81. 高木剛

    高木公述人 私ども、六兆円ぐらいの減税をということでお願いをしておりますが、所得減税という意味では、六兆円のうち四兆円ぐらいをつぎ込んでいただけたらと。そのうち、特別減税型じゃなくて、やはり制度に組み込んでいただく減税として三兆円ぐらいを御要望しておるわけでございます。やはり単年度限りの特別減税というのは、将来の所得機会の確保といった観点からいえばそれは約束されていないわけですから、消費に回る回らないという意味での担保力としては、当然弱いわけだろうと思います。  あと、全部四兆円そうしたらいいんじゃないかということでございますが、税の直間比率の問題だとか、税の根本的な議論もいろいろございます中で、現在のデフレの中でのギャップみたいな観点から、さらに一兆円ほど所得税にも上積んでいただけたらと。  それに加えまして、政策減税といたしまして、教育減税あるいは保育減税、住宅減税。住宅につきましては、住宅取得控除といいますか、それからもう一つには家賃控除みたいなことも御検討いただいたらと思っております。政策減税につきましては、いずれも税額控除方式で御対応いただけたらと思います。  あと、低所得者の関係だとか、法人税につきましても、現在いろんな論議が行われております。額についてはいろいろ議論がありますし、減税の率につきましてもいろいろ議論がありますが、あるレベルでの法人税減税、ルーツは、国際的に競争条件をならすという意味日本法人税減税があろう。もし課題であるとするならば、その辺の吟味をよくされた上でやっていただけたらと思うものでございます。  買うものがないから消費に回らないという説もありますが、いろいろなところを安定させていただきましたら、みんな買うんだろうと思います。
  82. 鍵田節哉

    鍵田委員 次に、若干視点を変えまして、高木公述人はタイ国の大使館に外交官として勤務をされた経歴をお持ちでございますが、そのタイが今大変なバーツ危機に陥っておりますし、それに連動するような形で、マレーシアでありますとかインドネシア、さらには近くでは韓国なども、大きな経済危機に直面をしておるわけでございます。これらの国々に対しまして、日本の経済というものは大変大きな影響力を持っておるわけでございます。  ただし、日本がこんなに経済が停滞をしておったのでは、なかなかそれらの国々に大きな貢献をするということはできないのではないか。それなりにやっておるわけでございますけれども、しかし、やはり一日も早く日本の経済が健全化され、そしてこれらの国々に対して大きく貢献をしていくということは、ひいては日本の国の経済にも大きな影響を与えるのではなかろうかというふうにも考えております。  それらの経験から、ひとつ公述人の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  83. 高木剛

    高木公述人 日本の国内でもこれだけ大変なのに、それも労働組合の代表として外国のことばかり言って何だというおしかりがあるのかもしれませんが、これだけ相互依存関係がグローバル化の中で高まっておる中で、今回のタイ発の通貨危機経済危機日本にもいろんなインプリケーションといいますか、かかわり合いが出てきておるわけです。  そういう中で、日本は世界一の債権国だと言われております。それから、有数のといいますか、中国と日本ぐらいでしょうか、貿易の黒字国でもありますし、それから、世界の総貯蓄の半分ぐらいは日本によってなされているというようなことをお聞きするにつけ、その日本が、国内景気がだめだからといって全部抱え込んでしまっている。けれども、不思議なことにというか、そういう日本に今ドルが余り道具として使えないという実態がございます。  そういう中で、日本にいろんな期待がされておる中で、二月二十日でしたか、政府もまたいろんな追加のことをなされました。そういう中で日本が今一番やれることは何かということで、私も、素人の浅知恵みたいなことかもしれませんが、昨日の朝日新聞の「論壇」の記事を見まして、円貨でスキームをうまくつくれるなら、円でいろんな支援をもっとやれるんではないか。  円なら、日本はある程度提供ができる。提供というか、お貸ししたりいろいろな形態があるわけですが、できるのではないかというようなことを思っておりまして、スキームは、民間だけでいかぬ部分については政府、GGベースでいろいろお話ししてもらいながらルールをつくっていただいたらと。  それから、もっと大きく申し上げれば、IMFの今の二千億ドルぐらいを割りつけたトータルクオータの中で、世界経済の大きさとの関係でいえば、IMFの救急車としての機能もさらに拡大されないと、大きな国の大きな危機については非常に対応力が弱いんじゃないか、そんなことも思っております。
  84. 鍵田節哉

    鍵田委員 次に、先ほど熊谷公述人の方からもお話ございましたけれども、少子・高齢化社会やグローバル経済、そういう環境のもとで働き方も大きく変えていかなくてはならない、こういう考え方で、特に自律した働き方でありますとか、雇用の流動化に備えたいろいろな働き方を模索していかなくてはならないということで、労働基準法の改正案が、五十数年ぶりに大幅に変えるというふうなことで今提案をされておるわけでございます。この法案のもとになります中央基準審議会におきましても、まだ十分な議論もなされないまま、労働者側の委員の反対もある中で、この法案を提出しておる。  労働基準法というのは、戦後一貫して雇用契約上で大変不利な立場にあります労働者を守るために、最低の基準としての大きな役割を果たしてきたわけでございますけれども、これが大きく変わろうとしておる。もちろん中基審などでもっともっと議論を掘り下げて、そしてお互いに合意の上で安心して導入ができるというふうな、裁量労働制の問題、一年間の変形時間の緩和の問題、こういうふうなことにつきまして考えられると思うのですが、まだまだ議論のやり方が不十分ではないかというふうに思っておるわけでございます。  さらには、均等法の一部改正の中で、女性の働き方につきましての規制が取っ払われたわけでございまして、これらも含めて、今労働者は大変不安な状態に置かれておるし、さらにもっと不安な状態にこの法律によってされるのではないかという危機感にさいなまれておるわけでございます。  これらにつきまして、ひとつ連合の主要な役員としてどのようにお考えなのか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  85. 高木剛

    高木公述人 基準法は、労働にかかわります最低基準を定める法律として、法の強制執行力も持った法律として、日本の労働秩序の安定化のために貢献してきているんだろうと思います。私どもも、例えば戦後五十数年、産業構造も変わりましたし、働くルール、環境もいろいろ変わっておりますから、十年一日のごとく同じものを守っていけということでいろいろ申し上げているつもりはございませんが、今回国会に提案されております基準法の改正案につきましては、三点につきまして、いかがかな、あるいはもう絶対困るといった部分を持っております。  一つには、時間外労働、休日労働の上限時間あるいは深夜労働につきましても、特に深夜労働等につきましては、男女雇用機会均等法との関係で、女性にも原則的に深夜労働は解禁といいますかフリーになる。そういう中で、フリーにするのなら、節度ある秩序が当然求められるわけです。フリーにしなさい、あとは野放し、無原則、上限なしですというのはいかがかなという観点から、上限を設けていただきたい。  それからもう一つは、裁量労働制といいまして、それぞれ勝手に働きなさいというか、余りもうやかましいことを言わぬでそれぞれの裁量で働いたらという概念につきまして、もう既に概念そのものはあるわけですが、それを大幅に拡大されようということについては、もう少し慎重に扱っていただきたいという意味ではいろいろな論議がまだ残っておるわけでございますから、今回の法の改正の対象からはとりあえずデリートしていただいて、さらに検討をしかるべき機関等でやっていただいたらというふうに思っているわけでございます。  あとは、変形労働時間制、特に一年単位の要件緩和が出ておりますので、これにつきましては、やはりこういったことをおやりになるとしたら、さらに労働時間を短くするなどの配慮をした上でやっていただけたらと思うわけでございます。どうぞ御理解の上、よろしく御審議を賜りたいと思います。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 鍵田節哉

    鍵田委員 あと一分ぐらいあるようでございますので、できるだけこれを使わせていただきたい。  最後に、年金制度の問題で、最近、四〇一Kのことが、特にアメリカで採用されておりまして、非常にこれが証券市場をにぎわしておる。今、民間の証券界がにぎわっておるのは、この資金がそちらへ回っておるからだというふうな観点でどうも議論がなされておる。一方で、厚生省の方は、年金の計算の見直しが来年あるわけですが、それで五つの選択肢などというふうなことを言っておる。そういう一方で、四〇一Kという話が出てきておる。  先ほど、「年金制度をマネーゲームに巻き込むな」というロンドン大学のロナルド・ドーア教授のお話もいただいたわけでございますけれども、今、年金制度をどうするかということよりも、何か証券市場に資金を提供する、そういうことを目的としたような議論が横行しておるような気がいたします。  こういうことにつきまして、御意見がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 高木剛

    高木公述人 御指摘のとおり、アメリカで四〇一Kというのでしょうか、確定拠出型の個人年金が証券なり金融商品の中である一定の大きな地位を占めつつある。日本でもという御議論があり、先般、自民党の方で四〇一Kに触れられた緊急国民経済対策第四次指針ですか、そういったものの中に項目があることも拝見いたしました。  大変危惧いたしておりますのは、証券の市場活性化策みたいな立場での論議が余りにも強くなり、本来これは老後に備えた、あるいは不時に備えた貯蓄であり、そういう視点からまず議論して、結果的にそういう商品の保全のされ方あるいは運用のされ方論が出てくるというのですが、先に何かお金を回す方の議論からされているような感じがいたしております。  私自身も、突然の御質問なんで、余り詳しいことはよくわからないわけですが、印象論だけ申し上げれば、本来、そもそも何のためにやるんですかということが先行した議論であるべきではないかと思っております。
  88. 鍵田節哉

    鍵田委員 貴重な御意見をありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。ありがとうございます。
  89. 越智通雄

    越智委員長 次に、上田勇君。
  90. 上田勇

    上田(勇)委員 きょうは、公述人の皆様には、大変お忙しい中当委員会にお越しいただきまして、謹んで御礼を申し上げます。また、皆様には、先ほど大変貴重な御意見をそれぞれのお立場から拝聴いたしまして、大変にありがとうございました。いただきました御意見につきまして、何点かそれぞれの先生方に御質問をしたいというふうに思います。  最初に、高木公述人が述べられました、現在の経済情勢についての認識平成十年度の予算に対する評価につきましては、私自身としては、おおむね同感しているところであります。私たちも、所得税減税を中心とします六兆円減税などの景気対策を盛り込んだ予算案の修正が必要である、そういう立場で考えているわけでございます。  そこで、昨年成立いたしました財政構造改革法でありますけれども、これによりまして、平成十年度の当初予算における追加的な財政出動財政支出が一定の制約を受けているわけでございます。そこで、この財政構造改革法についてどのような御意見がおありか、まず高木公述人から御意見を伺いたいというように思います。
  91. 高木剛

    高木公述人 先ほど来の富田さんのああいう論議もございますが、私自身は、国会で通りました財政構造改革法は、余りにも歳出の量的削減というところに目がいき過ぎ、その削減の手法も、従来からいろいろ批判のあります一律削減方式型の発想に立ったものではないかなと。  そういう意味では、今、日本の社会が、経済も、あるいは社会のいろんな仕組み、システムも大きく大転換をしていこうという中で、とりわけこれから我々が迎えます二十一世紀は、少子・高齢化等の課題をいっぱい抱えております社会でございまして、そういう財政構造改革というのは、広い意味で社会全体の大きな仕組みの変化みたいなものも当然財政というのはフォローされていくわけでしょうから、いろいろ御論議があったんでしょうが、私どもに映る印象は、そういうようなものと余り連動感のない、単なるキャップをかぶせることに非常に主眼がいった法律になっているんではないか。  それからもう一つは、何年までというふうに年限が区切られる。時あたかも非常に経済の状況が悪いこともありまして、先ほど来の、特例公債と建設公債みたいな使い分けだとか、本予算補正予算との使い分けだとか、非常に終始一貫しない論議を生みやすい中身になっておる。そんな意味で、もう少し発想を変えた格好でこの財政構造改革というのも考えていくべきじゃないか、そんなふうに思っております。
  92. 上田勇

    上田(勇)委員 ありがとうございました。  次に、富田公述人にお伺いいたしますが、富田さんの御意見というのは、今重要なのは、要約すると、景気対策よりも財政再建の方が優先されるんだ、したがって平成十年度の予算というのは財革法に基づいた緊縮型の予算で、したがって評価できるという御意見かというふうに承りました。  そこで、先ほど与党の委員からの御質問の中にもありましたが、ここに来て、与党の幹部の中にも、今の経済の情勢について非常に厳しい認識を持たれて、追加景気対策というような話が連日出ておるわけであります。もちろん、先ほど富田公述人がおっしゃったように、財革法では補正予算は直接対象になっておりませんし、そこが弾力性なんだというお話も先ほどありました。  今、そういう意味で、与党の中にも、今のこの経済の情勢を回復するために追加的な経済対策が必要であって、それはこの本予算成立後、直ちに補正予算編成に取り組むんだというようなことが報道も含めてされておりますけれども、そのことについてどのようにお考えなのか、御意見を伺えればというふうに思います。
  93. 富田俊基

    ○富田公述人 まず、私は、十年度の予算案が緊縮型だから評価したというふうに申し上げたわけではございませんで、非常に景気状況に配慮して、八千四百億円もの減税がなされ、そうしつつ、赤字国債の縮減ができた点、それから、財革法のキャップのもとに、決して一律削減ということではなしに、まだ本格化はできていないわけですけれども、かなり歳出のリストラといったことも着手され始めたのではないかという点で、十年度の予算案を評価したいというふうに思います。  それから、追加的な景気対策はどうかということなんですけれども、確かに、財政構造改革法補正予算については明言されていない。しかしながら、その基本精神というのは、やはり国債発行額を縮減していくことにあるわけでして、それを基本的に優先すべきだというふうに考えます。  アメリカにおきましても、OBRAという財政構造改革法があるわけですけれども、それに停止条項がついているわけですけれども、これまで景気が悪かった時期もそれは発動されていないわけでして、やはり財政の健全化をアメリカも優先してきた、それを守る中で九八年度に黒字が出るかもしれないほど改善してきたということですので、やはり、確かに法律では弾力的な形にはなっていても、基本的には国債、地方債の発行をふやすべきではないというふうに私は考えます。
  94. 上田勇

    上田(勇)委員 富田公述人にもう一問ちょっとお伺いしたいのですが、先ほど、御意見の中で、アメリカの例なども引きながら、アメリカの成功の要因というのは規制緩和を進めてきたことだ、それは私も同じ考えではありますけれども、もう一点、やはり今必要なのは、小さな政府をつくっていくということ、これは行政改革ということなのだと思うのですけれども、そのためには歳出削減をしていくのだという御意見だったと思います。  そこで、規制緩和という意味では、これまで我が国においても政府が累次の規制緩和計画というようなものを打ち出してきましたけれども、それについて十分満足のいく進捗なのか、もっと進めなければいけないのか、その辺のお考えを一つお伺いしたい。  もう一点、行政改革の方では、今一府十二省庁ということで中央省庁再編のお話が出ておりますけれども、これは、富田さんの考えられております小さな政府という意味で、その中でどのような評価をされているのか、その辺について御意見を伺いたいというふうに思います。
  95. 富田俊基

    ○富田公述人 まずは規制緩和の進展状況についての評価ということなんですが、アメリカとの比較ばかりでなんなのですけれども、先ほど申し上げましたように、アメリカは、規制産業のウエートというのはGDPの六・六%。日本は、定義は少し異なるわけですけれども、一九八八年の調査では四〇・八%というふうに非常に高いわけです。  その後、規制産業のGDPに占めるシェアが顕著に低下するほどの規制緩和が進んだかどうかということについては、まだ余り進んでいないのではないかというふうに存じます。ということで、これは粛々と進める。これは、景気対策というよりも、我が国が進むべき方向に向けて着実に進めるべきものだというふうに理解しております。  それから、行政改革と小さな政府ということでございます。昨年、中央省庁再編成ということでなされたわけですけれども、やはり小さな政府というからには、財政構造改革法で、新しい社会の情勢に合ったものが歳出として引き続き行われるように、歳出のリストラクチャリングが重要であろう。単に組織をいじっているだけでは、国民の長期的な負担が低下するかどうかということは懸念なしといたしません。  という意味におきましても、財政構造改革法を遵守することが必要だ。それで、国民負担率を中期的にも五〇%以下にするということを何とか実現する、それがやはり我が国の現状を考えた場合の小さな政府としての目標であろうというふうに私は存じます。
  96. 上田勇

    上田(勇)委員 最後に、熊谷公述人が、いろいろ御提言をしていただく中で、消費税の引き下げというお話に言及されました。昨年、導入時には、我々も、今の経済情勢考えたときに、引き上げは景気に対して悪い影響が余りにも大き過ぎる、凍結すべきだという意見であったわけであります。  しかし、今、一たん上がってしまって、一方で、特に流通業界などでは、税率の引き下げということになると、一たん上がってしまったものを下げるということになると、これはまたいろいろな流通業界に大変な負担がかかってくるというような御意見も耳にいたします。  ここで、ぜひ、熊谷公述人と、それから高木公述人もそういう流通業界を代表する組合の代表でございますので、消費税を引き下げるということについて御意見があれば、両先生からお伺いしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
  97. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 結論から言いますと、つい最近朝日新聞が出しました世論調査を見ましても、消費税率の五%への引き上げが今なお負担として大きいという声が、依然として非常に大きな比率で示されている。当初、政府の見通しでは、恐らく三カ月もたてば大体なじんで、消費拡大につながるのではないか、消費に影響を与えないのではないかというぐあいに言われていたわけですが、そうではない。  多くの国民が今なお、やはり消費税率の引き上げ、これはもちろん今の消費の落ち込みというのはそれだけではないと思いますが、先ほど高木さんも言われましたように、雇用の問題、将来不安の問題、さまざまな問題があるというように思いますが、少なくとも、政府が今改めてもう一度国民の側に目を向けて、そして、国民負担が大きいと思っている消費税率の引き下げに踏み切るということになれば、それは心理的にも大変大きなものがあるのではないか、また、実際にも消費に結びついていくのではないか。実務的な問題ももちろんあるというようには思いますが、今求められているのはそういった政治的な判断ではないかというように思っています。  以上です。
  98. 高木剛

    高木公述人 消費税税率アップの影響がいろいろなところに出ているわけですが、私どもといたしましては、きちっと機関で論議しているというわけじゃないのですが、税率を上げたのをまた下げるということは余り現実的な話ではないと。今御指摘のあったように、徴収のいろいろな段取り、事務、いろいろなことを含めましても、また下げられたりしますと結構大変ですねということで、そういう意味で、消費税で大分家計から取られます分を、先ほど来お願いしておりますように、減税でいろいろ返してくださいというのが我々の組み立ての基本だと思います。
  99. 上田勇

    上田(勇)委員 時間ですので、これで終わります。大変にありがとうございました。
  100. 越智通雄

    越智委員長 次に、加藤六月君。
  101. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 公述人の三人の皆さん、貴重な御意見、まことにありがとうございました。時間が余りございませんから、端的にお伺いいたしたいと思うわけでございます。  まず、高木公述人にお聞かせいただきたいと思うのは、あなたは大変な御苦労をされておる、消費税不況の真っただ中で関係組合員の生活と職場を守るために必死の努力をされておるということを冒頭いろいろお話しになりました。こういう消費不況が起こった原因というもの、これは政策不況である、政府政策転換を早くすべきであるという御意見もお述べになりましたが、この不況の原因は一体何であるかということをお聞かせいただきたいと思います。  その次に富田公述人、この紙をいただいて、いろいろ今お話を承ったのでありますが、Iの「景気についての認識」の2の「潜在成長率の低下」というこのお考えは、私は全く同調、賛成します。ただし、しからば、なぜ潜在成長率が二%あるのに、平成九年度の経済見通しが一・九からマイナスになるまでに落ち込んでおるか。政府が何もしなければ、逆に潜在成長率が二%弱ある、それならなるはずだ、それがなぜならなくなったかという原因をどうお考えであろうか、こういう点をお聞かせいただきたいと思います。  それから、熊谷公述人には、今日不況ではありますが、景気をよくするための最大の薬は何であるか、ここら辺をまずお教えいただきたい、こう思うわけであります。
  102. 高木剛

    高木公述人 不況の原因というお尋ねでございますが、これは、もう先生御承知のように、いろいろなことがございます。  私は、昨年の予算に至る過程の論議で、本来なら景気刺激型で対応しなきゃいけなかったときに、やはり需要抑制型といいますか、そういう対応をなさったことが一番大きな原因ではないかなと。  個別の経済要素別の話はともかくといたしまして、そういう意味では、あのときの政策の失敗がずっと景気を冷まし、冷めるがゆえに需要がない、いろいろなところがまたおかしくなるという負の連鎖になっていっている、それに対して、これを上に上げる連鎖に戻すのになかなか有効な手だてが講じられてきていないということではないかと思います。
  103. 富田俊基

    ○富田公述人 潜在成長率の低下ということを御同意いただけたわけですけれども、経済は生き物でして、非常に強くなればどこかでピークが来て、後退に向かう、そういうものであります。それで、九五年、九六年度には潜在成長率を超えて景気は非常によくなった。消費税の税率引き上げの駆け込みということもあって、去年の春には一—三月非常に景気がよくなった。そこから、循環として後退局面に現在位置している。  それを政策で何とか二%にまで、持てる力が二%弱なので、そこまで引き上げたらどうかというのが加藤先生の御質問かと存じたのですけれども、まず、経済は生き物であって、政府がそれをすべてコントロールできるというふうに考えることは大いなる錯覚ではないかと思うのですね。それは、悪いよりはよくした方がいいわけですけれども、やはり自由な市場経済の中で調整がなされる。そして、より新しい方向に産業構造が変わっていくというダイナミズムがなくてはならない。  これは、学校の通知表のように、五、四、三みたいに、成長率がまるで点数のような議論があるわけですけれども、成長率が低いからといって必ずしも悪いことではない。むしろ、そこで来るべき時代に向けて産業構造の調整が進むということであれば、それは明るい未来を予兆させるものとして、むしろ受け入れるべきものだろうというふうに思います。
  104. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 私は、景気対策の最良の薬は、本来労働者の賃上げだというように思っています。五千数百万の労働者の賃金がどこまで引き上げられるのか、このことが最良の薬ではないかというように思っています。  私どものこの春闘の中でも、経営側もそのことは理解はできる、しかし、今私たち企業の努力だけではいかんともしがたい状況に中小が追い込まれている、それは貸し渋りの問題であり、買いたたきの問題だ。そういう意味で言いますと、そういう中小企業経営基盤をもっと強化するということが二つ目に重要ではないか。  三つ目は、やはり将来不安の問題というものが労働者の中に大変重くのしかかっている。今消費が落ち込んで家計が圧縮しているときに、厚生省が例えば年金制度についてああいうような試算を出す、こういった政策について、やはり抜本的な再検討が要るのではないかというように思っています。  以上です。
  105. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 平成十年度の予算編成におきまして当委員会でいろいろな議論があります。また、私も政治家生活三十一年でかつて例がないのは、予算審議を始めておる最中に大蔵官僚が逮捕せられる、日本銀行の首脳部が逮捕せられる、こういう中で、国民生活、国民経済のことを考えながら、国会が熱心に平成十年度の予算編成議論をやっておるわけであります。  そういう中で、一つは、当予算委員会でやっておるように、経済見通しの過ちは一体どうするんだという議論が激しく行われております。それから、先ほど来公述人の皆さんもおっしゃっていただいておるのでありますが、財政構造改革路線というものと景気対策の関係、これは改正しなくてもいいのか、キャップ制でやっておる十年度予算は九年度予算よりかさらに悪いデフレ予算ではないかという議論。それから、政府は言わないのでありますが、与党の多くの皆さん方が、予算成立前の大型補正予算論をぼんぼんやっておる、おかしいじゃないか。こういった議論がいろいろ起こっておるわけでございます。  そういう中で、私たちはいろいろ心しなくちゃならぬ問題があるのですが、先ほど富田公述人に申し上げたのは、私の言葉足らずであったかどうかわからぬが、潜在成長率が二%弱あるのに、それがならなくなったというのは、政府があるから邪魔をしたんじゃないのか。潜在成長力があるのを、政府というのはそういう潜在成長の能力を十二分に発揮さす。  平成九年度予算をつくるときに経済見通しはちゃんと出しておるわけですから、経済見通しの上に各年度の予算は立っておる。平成十年度のことしの予算も、ことしの経済見通し一・九%、いろいろな要素を入れたものの中に平成十年度の予算を組んだ。それが私たちは達成できないんではないかということがあるのでございます。きょうは、そういうことも含めて、貴重な意見をお教えいただいた。  私たちも政治家の一人として、アメリカに初めて、グラム・ラドマン法の成立の経緯と経過、歴代大統領は政府と議会との間にすさまじい闘いをやってきた経過というものは知っております。  それから、この間の集中審議で私自身が総理に迫ったのは、第一次、第二次石油ショックの赤字国債を克服して、平成三年度から赤字国債をゼロにした。そのときに湾岸戦争が起こったということで、政策の転換といういろいろな問題を迫ったのでありますが、政府の立場があっていろいろ言えなかったんです。  そういう中で、もう時間が余りございませんから、これは高木公述人にお伺いしたいと思うんです。  きょうの午前中も随分公述人から御議論をいただいたのですが、民間企業政府の違い、官と民の違い。国は赤字を膨大なものをつくっても、五百兆を超すものを、まだほかにもあるかもわからない、つくっても、最後の手段がある。何か。税金、増税という手段がある。地方公共団体もそうです。  高木公述人のゼンセン関係の皆さん方は、もう数十年、リストラリストラで血の出るような努力をされておる。借金が続けば会社はつぶれる。当たり前のことです。しかし、国や地方公共団体は、増税という手段を持っておるからつぶれない。これについて、高木公述人が組合員の皆さん方を叱咤激励していく場合のリストラの苦労と、親方日の丸の国とは違うというものについての何か御見解があれば承っておきたい、こう思うわけであります。
  106. 高木剛

    高木公述人 ダイレクトに余りお答えできない面もあるかもしれませんが、国のお仕事あるいは自治体も含めた広い意味で言う公務員の世界のお仕事は、当然法律なりなんなりにちゃんと担保されて仕事があるということになっております。それは、国なり地方自治体がいろいろな格好で債券を出してお金を集めてやっている。そういったお金も含めて予算できちっと担保されている仕事でありまして、そういう仕事が必要だというのは、当国会あるいはそれぞれのしかるべきところでお決めになって、必要だからということでやっておられる。  一方民間は、やっていけなくなれば人を減らすなり効率化するなり、それでもやっていけなくなればつぶれるしかないわけでして、それが公務員と民間と比較してどっちがどうだというのは、多分論議としては、同列では論議できない面があるのではないか。  ただ、合理化の歴史と言われております私どものような組合からしますと、ともかく、経済情勢が悪くなるたびに合理化問題の処理をやっておりますので、できるだけそういうことにロードがとられないような経済状態が早く来てほしい、そんな思いでいっぱいでございます。
  107. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 富田公述人に、余り時間がございませんが、一つお伺いします。  私たちの考え方は、権力のあるところに腐敗が発生する、したがって、裁量行政とか許認可行政の周辺をすっきりはっきりしていかなくちゃいけない、こう思うわけでございます。  きょうの公述では、そういった問題は、規制緩和ということでいろいろおっしゃっておられますし、あるいは財政構造改革法でおっしゃっておるのでありますが、日本規制緩和というものとアメリカの規制緩和といいますか、今私が申し上げました裁量行政、許認可事項についての何か気づいた相違がありましたらお教えいただきたい、こう思うわけであります。
  108. 富田俊基

    ○富田公述人 一言で申しますと、やはり業者行政的な我が国のこれまでの姿というものと市場行政を前提とするものとの違い、それから、いろいろ問題が発生した場合に、事後的にそれを厳しく取り締まる体制、検査の体制といったもの、そこに随分彼我の差があるのではないか。  我が国は事前的な予防行政的なものにこれまで力点があったわけですけれども、やはり事後検査型のものということも重要でありますし、やはり民間企業、個人が自己責任ということを前提に行動するということがこれからの日本でさらに重要になってくるのではないか。この点がまだ彼我の差がある部分であろうかと存じます。
  109. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 貴重な御意見どうもありがとうございました。  我々は、自己責任、自己規制ということを何よりも何よりも重んじていかないと、これからの二十一世紀の日本はうまくいかぬ。そういう中で、今回の景気対策の今後の中心も、そこら辺をどう具現していくかということに努力しておるということを申させていただいて、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  110. 越智通雄

    越智委員長 次に、木島日出夫君。
  111. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三人の公述人の皆さん、本当に御苦労さまでした。公聴会も最後でありますが、きょうは、高木さんと熊谷さんという、連合と全労連という我が国の労働組合運動を代表する二つのナショナルセンターのその代表がおそろいになった。大変画期的なことだと思います。  先ほどお二人の公述をお聞きいたしまして、経済情勢認識、九八年度予算に対する認識、基本的なところで一致しておると大変感銘深く拝聴いたしました。  一つは、今日の深刻な不況国民の消費の落ち込み、言えば消費不況であること。二つ、その基本的な要因としては、昨年度の政府予算国民に九兆円の負担増を押しつける政策不況であること。そして三つ、その背景に最悪の雇用情勢の悪化があること。そして四つ、九八年度予算がこれを打開する内容ではないこと。根本的な組み替えを求める。この二つのナショナルセンターが力を合わせれば、大きな力になって、政府政策を変えることは可能だと思います。  私ども日本共産党も、基本的な認識は一致しております。皆さんの期待にこたえて、九八年度予算の根本的な組み替えのために奮闘したいということをまず申し上げ、私に与えられた時間は十分と短いわけでありますので、端的にお聞きします。  最初に、熊谷公述人から、日本の労働者、勤労者の所得の落ち込みの状況景気影響しますから、それをもうちょっと詳しく述べていただきたい。日経連の報告などでは、日本の労働者の賃金水準は世界一だなどと書かれておりますので、それについてもうちょっと詳しくお述べいただきたいということと、今、国会に出されております労働基準法改定、私は改悪だと思いますが、労働法制の改悪について反対だとお述べになりましたが、その労働法制の改悪が労働者の所得、ひいては消費性向あるいは景気回復にどう影響すると考えるのか、もうちょっと詳しくお述べいただきたい。  高木公述人に対しても、先ほど労働法制の問題についての基本的な三つのスタンスについてお聞きいたしましたが、この法案が通っていったら日本の労働者、勤労者の所得にどう影響するのか、景気回復にどう影響すると連合の皆さん方は考えているのかをお聞かせ願いたい。  そして、高木さんにはもう一つ、財政構造改革法に対する基本的なスタンスをどう考えているのか。私ども日本共産党は、これは、医療とか福祉とか年金とかあるいは文教、教育、中小企業、農業など、国民に対する負担だけはかける、しかし公共事業や軍事費など基本的なところにはメスが入らない、財政構造を基本的に変えるものではないのではないか、赤字解消にもつながらないと考えているわけですが、これに対する基本的なスタンスを手短にまずお述べいただきたいと思います。  時間が余りましたら、一点、富田さんにもお聞きしたいことがありますから。
  112. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 それではお答えしたいと思います。  最初に労働者の所得の状況ですが、先ほど家計調査の状況についてはお話をしたとおりでありまして、今や実質消費支出がマイナスというだけではなくて、可処分所得が六〇%台、七〇%を切っている。三十万の給料をもらっても、実際に使えるのは二十一万円、そういうような公租公課負担が大変消費を落ち込ませている。  労働者の実質賃金、名目賃金の推移を見ても、例えば労働省の毎月勤労統計調査などで、一九九〇年を一〇〇として見た場合に、名目賃金は九六年で一一一・六という数字になっていますが、実質賃金、物価上昇などを考慮して見ますと、それはわずか一〇四・八%。しかも九七年は、労働省が出した速報によっても前年プラス・マイナス・ゼロということでありますから、この七、八年間、実質賃金はほとんど上昇していないという状況にあるというのが現状ではないか。  また同時に、日本の賃金が世界最高水準だというぐあいに日経連が毎年のように強調していますけれども、これは、三年ほど前の労働省の労働白書においても、購買力平価で比較をした場合に決して日本の賃金は高くはないということが、政府が発表している白書によっても明らかにされています。きょう、資料を持ってきていませんが、昨年の秋ごろに、ドイツの民間研究機関が先進国における製造業の時間当たり賃金を実質的に計算したところ、決して日本は高くはないということなども新聞報道で出されている。これが今の日本の労働者の実態ではないのかと思います。  それから、労働法制と労働者の所得の関係については、まず、現在でも変形労働制が導入をされているところでは、残業代がなくなって五万円から十万円近い収入が減っている、そういう労働者の切実な要求が出されてきていますし、あるいは、裁量労働が導入されているところでは、裁量手当みたいな形で一定額打ち切りで、あとは何時間残業していても残業代が払われないということが現在行われています。  既にそれは現在導入されているところでやられていますが、労働省が今度の国会に出した法案がそれとの関係でどうなるのかということについては、最近ある研究者が雑誌に、政府案で進むとどうなるのかということについて書いています。  日経連が出した新時代の日本経営、あるいはこれに対するフォローアップ調査をもとにして、企業側の将来予測と、現在の不安定雇用労働者の実態、実数あるいは単価、あるいは裁量労働が導入をされているホワイトカラーの労働者の比率やそこにおける実際の政府統計による年間の残業時間、あるいは変形労働による残業代の切り捨て、そういうものを、政府統計などをもとにして、この労働省が進めようとしている労働基準法の見直し改悪が進められると、大変アバウトでありますけれども、雇用の不安定化に伴うだけで十一兆円、あるいは裁量労働による分で十兆円、それから変形労働による分で二兆七千億円、全体として、退職金など賃金制度に対するはね返りを含めると三十兆円の労働者が受け取るべきものが企業の側に、言うなら搾取というか、そういうぐあいに奪われてしまうという試算も出ていますから、大変な事態だというふうに思っています。
  113. 高木剛

    高木公述人 基準法の所得への影響ということですが、今熊谷さんが言われたように、ああいうデータを私は存じませんのであれですが、端的に言えますことは、裁量労働制というのは時間外扱いをしない働かせ方にしろということですから、その部分は所得減に直接的にかかるのだろうと思います。  あと、財政構造改革法のことにつきましては、先ほどもお尋ねがございましたが、要は財政構造改革というのはそもそも何なのかという意味では、財政赤字の削減問題だけを視点にするものじゃない、もっと社会の仕組みやら構造の変化等を踏まえた構造の議論をしなきゃいかぬということと、それからもう一つは、経済との整合性みたいなところもありまして、入る話と出る話のバランスみたいな世界は経済との関係で必ずある話ではないかな、そんなふうに思っています。
  114. 木島日出夫

    ○木島委員 一分ほどありますので、ちょっと富田公述人からお聞きしたいと思うのです。  御意見拝聴いたしました。私、先生のことし一月六日の「財経詳報」の「市場の時代に挑戦する年—九八年の日本経済の展望」を読んでまいったのですが、要するに、ケインズ的な政策効果を持たない、新古典派的発想こそ重要である、規制緩和が基本なんだとるる論述されております。  ただ、そこの最後のところで、市場の時代はやってくるのかということで、ジョージ・ソロス氏の意見を引き合いに出しまして、要するに、「規制さえ撤廃すれば市場は完全な機能を取り戻すという、市場への過信に対して、市場はそもそも不安定なので、安定を保つために意識的に計画された努力が必要であると、ソロス氏は反論している」と書いた後、先生の立場として、「市場にすべてを委ねるいうのではなく、市場原理が守られると同時に、社会の紐帯となる価値意識が共有される必要がある。そして、市場では供給できない公共財が、民主主義による決定を経て政府によって供給される社会でなければ、社会の存立が危機に瀕し市場も崩壊する」こう述べておられます。  全面的に規制緩和すればいいというものじゃないんだというお立場だと思うのです。そういうお立場で、今、国会に出されている労働法制の改悪といいますか、規制緩和だと思うのですが、これに対して基本的な先生のスタンスを簡潔にお述べ願いたい。
  115. 富田俊基

    ○富田公述人 まず、労働の場合は、賃金と雇用、あちら立てればこちら立たずという鉄則が市場経済では働いているということを認識する必要があろうかと思います。ヨーロッパでは、働いておられる方の賃金が二十年前に比べて五割ふえた。しかし、そのかわり雇用量がふえない状態が続いている。それで失業率が二けたになっている。アメリカでは、働いておられる方の実質賃金はほぼ一定、しかし雇用が大体やはり五割ほどふえた。このいずれかをとる問題であります。  大事なことは、労働市場も賃金も、社会情勢、世界の経済情勢に合わせてより柔軟になりませんと経済は成り立たない。生き物でありますけれども化石化してしまうということでありまして、そういう弾力性を増すという観点から、私は賛成でございます。
  116. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。ありがとうございました。
  117. 越智通雄

    越智委員長 次に、北沢清功君。
  118. 北沢清功

    ○北沢委員 きょうは御三方の公述人に御出席をいただきまして、なおかつ貴重な御意見等をいただいて、私ども大変参考になりました。私も時間がないものですから、三公述人の方に初めに御質問を申し上げたいと思います。  まず高木さんには、今アジアの経済の問題を実際に担当されまして、特に繊維の分野では、私は長野県なのですが、日本の近代産業をつくり出したのは生糸産業なのですね。それが全く今では見る影もない。それからもう一つは、綿産業から化繊産業に入りまして、その化繊の質も非常によくなって新たな需要の伸びがされたわけですが、今日の日本のいわゆる金融なり海外投資というものが非常にアジアと一体であるということで、むしろ日本のこの経済危機というものが、アジアはもちろんのこと、アメリカまで影響するのではないかという危機を迎えていると私は思っております。  それで、日本が非常に輸出黒字国であるという最近の情勢なのですけれども、そういう中で内需の拡大ということになると、今後衣料も含めまして、アジアの、いわゆる今までのような安い海外の労働市場からのものを買わなければならないのではないかということと、国内の産業に働く皆さんの雇用、そういうものが問題になると思います。そこら辺について、ひとつお考えをお願いしたいと思います。  それから富田さんには、先生の持論である市場経済と規制緩和という問題、その辺に重点を置いて日本の再建を図ろうとしているのですが、私は、規制緩和、効率主義という形は当然とっていかなければいけないと思うのですが、その一番おくれたところが今回大蔵と銀行の問題等の中にあって、ビッグバンを控えて、大変な日本の情勢だろうと私は思います。それオンリーの政策を進めると、これも大変なことになると私は思うのですね。それは、私は大店法の問題を挙げます。それから、第二には労働の問題が挙げられますね。  だから、そういうものの中で、アメリカの状況など非常に模範になると言っているけれども、また、イギリスのサッチャーが非常に皆さんの模範だろうと思いますが、サッチャーも労働党に破れたのですね。それから、フランスも社会党に大敗した。また、ドイツもそうですね。そういうことになると、アメリカの情勢というのは、社会として見れば大変なことなのですよ。貧富の差が拡大をしたり、依然として古い人種問題を含めて、大変な犯罪国にもなっております。  そういう意味で、一部の握る人たちがよくなって、いわゆる中産階級がなくなってきているのです。だから、日本もそういう政策を遂行すると、やはり中産階級というのがなくなるのですね。日本では一番大事なのは、中産階級があったればこそ日本国民のゆとりがあったわけですね。少なくともそういう政策は、今後の政策としてとるべきではないと思います。  ただ、問題は、我々がこれから考えなければいけない点は、税の問題と、もう一つは公共投資というか内需拡大といいますか、そういう問題を、どういうバランスでどういうものをとるかということですね。そこに一番の論議を深めていかないと、私は、例えばこの本予算が通った後における追加予算にしても、そこら辺をしっかり論議しないと、大変な日本の失敗になるのじゃないか。そういう意味で、私ども政治家、特に国会の責任が重大だということを申し上げたいと思いますし、そして決意を申し上げたいと思います。  それから熊谷さんには、今男性の失業者がふえて、どんどんと派遣労働者だとかパートだとか、女性の皆さんが取ってかわっていますね。この現象というのは、これから家庭の中にそういう失業の問題が入ってきます。それだから、私は、一番基本になる景気が将来的な不安として出ていると思うのです。例えば、家を建てようとか、またはみんなで努力して子供を教育しようといったって、それは、そういう不安の中ではできないのです。物も買うこともできない、そういう状態だと思います。  やはり今の危機というものを、早く言えば、働く皆さんのそういう犠牲の上になし得るかということが私は心配なわけで、そこら辺についてのお考えを開陳していただきたいと思っています。  以上です。
  119. 高木剛

    高木公述人 繊維のことについてお尋ねをいただきましたが、率直に言いまして、繊維産業の歴史は、今先生御質問の中で触れられましたジレンマの歴史でございます。  それぞれ途上国にいろいろな産業がある中で、最初に始まる産業の一つが繊維産業でございまして、そういったところで生産がふえますと、当然、日本に輸入をしようという圧力が高まりまして、輸入がふえてまいります。そうすると、国内需要には限りがありますから、国内の生産縮小だ、海外に一方でシフトしていく、その間の雇用が総量として減ってまいりますというサイクルを繰り返しながら、例えば、綿製品でいいますと、今、もう九割が輸入品でございます。大変苦労をいたしております。  それから、生糸の方のお話は、こういう言い方をしたら差しさわりがあるところもあるかもしれませんが、農業政策が工業政策をつぶしたという一つの例ではないかと思っております。
  120. 富田俊基

    ○富田公述人 規制緩和を進めることの重要性を申させていただいたわけですけれども、これの意味は、これまでの生産者中心の論理から消費者を中心に物を考えるということであります。規制が緩和されて企業の競争が促進される、それによってよりいい物がより安く提供できる、それが国民生活を豊かにするものであるわけでございまして、それで中産階級が没落するという因果関係はないものだというふうに私は思います。  ただ、より重要なことは、人々が働くインセンティブが高まる、努力をすれば報われる、そういう社会により明確にもう少し進んでいくのがいいのではないか。そうしませんと、総中産階級がすべて沈んでしまうという危険もあるのではないかというふうに存じます。  なお、アメリカがすべていいというふうには私は思っておりませんが、余りにも日本は、とりわけ労働の分野において非効率な部分がありはしないだろうかというふうに私は存じます。
  121. 熊谷金道

    ○熊谷公述人 今の雇用不安の問題、特に不安定雇用労働者の拡大の問題についてでありますが、先生御質問のとおり、大変な問題だと思っています。  私たちは、今政府が進めようとしている労働基準法の見直しに反対する運動で、さまざまな諸団体と集まったりして相談をすることがありますが、その中で、特に女性団体の方からこの問題について非常に意見が出されてきています。  特にその中で出てくるのは、自分の亭主、主人はもう前から大体状態がわかっている、ところが、自分の子供が就職がなかなかできなくて、やっと就職したら派遣会社だ、社会保険もない、そして帰ってくるのは毎日毎日真夜中だ、一体どうなっちゃうんだろうか、こういうような声が女性団体の中から出てきていて、労働者の中だけではなくて、むしろ市民的に、団地などでこういった問題をもっと大きくアピールする必要があるのではないか。  大変な社会問題だろうと思いますし、特に、失業者そのものの増大が最悪の事態ですから、もっと政府としても積極的な雇用対策、とりわけ不安定雇用労働者の労働条件の改善のためにも、むしろ最低労働基準の引き上げなどについて、積極的な行政指導の方向に向かって御努力をお願いしたいと思っているところです。
  122. 北沢清功

    ○北沢委員 ありがとうございました。終わります。
  123. 越智通雄

    越智委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。なお、お待たせいたしまして、申しわけございませんでした。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  なお、休憩中の本日の委員会は、開かないことになりました。  次回は、明十三日午前九時より委員会を開会し、一般質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会