○西川(知)
委員 平和・
改革を代表して、政府提出の
平成十年度補正予算案に対し、反対の立場から討論を行います。
反対する最大の理由は、このたびの補正予算案の編成自体が、十年度当初予算は最善のものである、景気対策としての補正は組まないとしていた橋本内閣自身の自己否定そのものであるという点であります。
我々は、当初予算案の審議の際、今日の景気
状況からいって、財革法に縛られた緊縮路線をとるのではなく、景気回復のための施策を講じるための予算に組み替えを行うべきであることを強く主張してきました。ところが、橋本
総理は、当初予算を最善と言い切っていたにもかかわらず、当初予算が成立するや否や、国外からの政治的圧力にも屈し、補正予算を前提とした十六兆円規模の総合経済対策を発表し、いとも簡単に前言を翻し、政策転換をしました。まさに国会の予算審議権を軽視したやり方であると言わざるを得ません。
さらに、政治的にだけではなく、法律的にもこのたびの補正予算編成には重大な問題があります。
橋本内閣は、補正予算の編成事由は、当初予算作成後にアジア危機、金融破綻などの
影響があらわれてきたこととする旨の答弁をしておりますが、これは全くの詭弁であります。アジア危機などの
影響が予算編成前から既に存在していたことは、さまざまな統計等からも明白なのであり、これは補正編成事由には該当しません。このように、財政法第二十九条の強引ともいえる拡大解釈を時の内閣の判断でいとも簡単に行ってしまう裁量行政が、
国民の政治不信、白け、あきらめへとつながっていることを、橋本内閣は深く反省すべきであります。
第二に、補正予算が景気回復としては極めて不十分であり、また
国民の生活不安を一掃するに足る内容とはなっていないということであります。
政府は、
平成九年度補正予算に続いて、追加的な二兆円規模の特別減税を盛り込んでおりますが、小出しで、しかも増税予告つき減税では、
国民の将来不安の解消、消費マインドの改善にはほど遠いと言わざるを得ません。今こそ、経済界も含め、
国民の総意でもある恒久的な所得税、法人税減税の実施を決断すべきであります。
また、景気対策の上からも、
国民生活向上の上からも、生活の基盤である住宅対策に力を入れるべきであると考えます。具体的には、我々は、新たな個人の住宅ローンにおける利子分に対する所得控除制度を創設すべきであると考えますが、政府案にはこうした
国民の側に立ったきめの細かい対策が全く盛り込まれておりません。
第三には、情報通信、福祉・医療・教育などの新たな分野への公共投資をふやしたとは言いながら、実際の予算配分や事業内容を見れば、建設国債を中心とした
一般公共事業がそのほとんどを占めており、依然として従来型のばらまき型の公共事業中心であるということであります。
例えば、補正予算において、情報通信の高度化に資するために電線共同溝の整備等を推進するとして、千八百億円を超える予算がついております。しかし、この施策は既に
平成七年度からスタートしており、特段目新しいものではありません。橋本内閣が新社会資本整備に六割を充てたといっても、箱物中心で、実際の事業の性格はまさに従来型であります。
第四には、極めて深刻な
状況にある雇用情勢に対して、総合経済対策、補正予算程度の対応では効果的な改善策にはならないということであります。
特に、中高年齢層のミスマッチは深刻であります。雇用条件、なかんずく給与におけるミスマッチは、
地域、業種等でばらつきがあると思いますが、求人側と求職側の給与のミスマッチが四割程度の開きがあるところもあります。政府は、雇用対策の目玉として、特定求職者雇用開発助成金の支給対象者を四十五歳から五十五歳にも拡大するとしておりますが、残念ながら、その助成率はこれらのミスマッチを埋めるには不十分であると言わざるを得ません。本格的な雇用対策を実施する決意が内閣にあるのならば、さらに助成率など一層の要件緩和と同時に、追加的な予算措置を当然盛り込むべきであると考えるのであります。
また、雇用情勢の悪化、景気低迷の根底に産業の空洞化問題が横たわっており、早急な対策が求められているにもかかわらず、補正予算においてはその手当ては極めて不十分であります。
最後に、私は、不良債権処理の問題に関して、一言意見を申し上げたいと思います。
橋本
総理は、最近になって急に、不良債権の処理を急ぐべし、金融機関のバランスシートから落としていかなければならない旨の発言を繰り返しております。しかしながら、不良債権の実態を十分に情報公開もせず、また金融機関の経営者の責任追及もあいまいなまま、公的資金の導入、不良債権の無税償却を明確に是認する措置をとることは、
国民全員が現下の不況にあえいでいる中、金融機関のみを不当に優遇するもので、到底
国民の支持を得られるものではありません。
以上、反対の理由を申し述べましたが、そもそも、このたびの補正予算案は、橋本内閣の経済失政、政治責任を
国民の前に明らかにしたものであることを確認して、私の反対討論を終わります。(拍手)