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1998-06-11 第142回国会 衆議院 予算委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年六月十一日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 中山 利生君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 五島 正規君    理事 高木 義明君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       相沢 英之君    甘利  明君       小澤  潔君    大原 一三君       金田 英行君    河村 建夫君       岸田 文雄君    熊谷 市雄君       栗原 博久君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    津島 雄二君       中川 昭一君    中山 正暉君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       増田 敏男君    松本  純君       村田 吉隆君    村山 達雄君       望月 義夫君    渡辺 喜美君       綿貫 民輔君    岩國 哲人君       上田 清司君    生方 幸夫君       岡田 克也君    海江田万里君       菅  直人君    小林  守君       原口 一博君    松沢 成文君       山花 貞夫君    上田  勇君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       坂口  力君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    中井  洽君       西村 眞悟君    野田  毅君       石井 郁子君    木島日出夫君       平賀 高成君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 松永  光君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣審議官   松田 隆利君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         警察庁警備局長 伊達 興治君         総務庁人事局長 中川 良一君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         国土庁計画・調         整局長     河出 英治君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 林  桂一君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務大臣官房長 浦部 和好君         外務省総合外交         政策局軍備管理・         科学審議官   阿部 信泰君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長         心得      山本  晃君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         国税庁次長   舩橋 晴雄君         文部大臣官房長 小野 元之君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         食糧庁長官   高木 勇樹君         通商産業大臣官         房審議官    杉山 秀二君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省生活         産業局長    水谷 四郎君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         資源エネルギー         庁石油部長   林  良造君         中小企業庁長官 林  康夫君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治大臣官房長 嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    藤田 公郎君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     望月 義夫君   桜井  新君     熊谷 市雄君   中川 昭一君     金田 英行君   野中 広務君     渡辺 喜美君   松沢 成文君     菅  直人君   草川 昭三君     坂口  力君   鈴木 淑夫君     野田  毅君   志位 和夫君     平賀 高成君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   金田 英行君     中川 昭一君   熊谷 市雄君     桜井  新君   望月 義夫君     松本  純君   渡辺 喜美君     野中 広務君   菅  直人君     上田 清司君   坂口  力君     草川 昭三君   野田  毅君     鈴木 淑夫君   平賀 高成君     石井 郁子君   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   松本  純君     相沢 英之君   上田 清司君     松沢 成文君   石井 郁子君     志位 和夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成十年度一般会計補正予算(第1号)  平成十年度特別会計補正予算(特第1号)  平成十年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ――――◇―――――
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計補正予算(第1号)、平成十年度特別会計補正予算(特第1号)、平成十年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、審査に入ります。  まず、三案の趣旨について政府説明を聴取いたします。松永大蔵大臣
  3. 松永光

    松永国務大臣 平成十年度補正予算の大要につきましては、既に本会議において申し述べたところでありますが、予算委員会での御審議をお願いするに当たり、その内容を申し上げます。  最初に、一般会計予算補正について申し上げます。  まず、歳出補正について申し上げます。  政府は、我が国経済を力強い回復軌道に乗せるとともに、二十一世紀における活力ある我が国経済社会を実現するため、去る四月二十四日、総事業規模十六兆円を上回る過去最大の総合経済対策を決定いたしました。  今回の補正予算におきましては、この総合経済対策における各般の施策実施するため、歳出面において、二十一世紀を見据えた社会資本整備一環として、環境・新エネルギー特別対策費七千八百四十九億円、情報通信高度化科学技術振興特別対策費八千二百六十五億円、福祉医療教育特別対策費五千二百三十八億円に加え、物流効率化特別対策費四千三百三十億円、緊急防災特別対策費四千三百十七億円、中心市街地活性化等民間投資誘発特別対策費四千三億円を計上するほか、災害復旧等事業費千七百二億円を計上することとしております。また、最近の経済金融情勢等にかんがみ、土地流動化対策費四千百三十五億円、中小企業等特別対策費等二千九百七十二億円等を計上するとともに、経済的困難に直面しているアジア諸国経済安定化等に必要な経費三百億円を計上することとしております。  なお、今般の平成十年分所得税等特別減税追加実施等に関連して、臨時福祉特別給付金等二千七百二十九億円を計上しているほか、その税収の減少に伴う地方交付税交付金の減額四千七百十四億円に対し、同額の地方交付税交付金追加を計上しております。  他方、歳入面においては、租税及び印紙収入について今回の対策に盛り込まれた税制上の措置実施することに伴う減収見込み額一兆四千七百三十億円を減額するとともに、その他収入増加を見込んでもなお不足する歳入について、やむを得ざる措置として六兆千百八十億円の公債追加発行を行うこととしております。なお、追加発行する公債のうち、四兆千八十億円が建設公債、二兆百億円が特例公債となっております。  以上によりまして、平成十年度一般会計補正予算総額は、歳入歳出とも当初予算に対し四兆六千四百五十五億円増加し、八十二兆三千百四十六億円となります。  特別会計予算につきましては、一般会計予算補正等に関連して、国立学校特別会計道路整備特別会計等十七特別会計において、所要補正を行うこととしております。  政府関係機関予算につきましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫等政府関係機関について、所要補正を行うこととしております。  財政投融資計画につきましては、総合経済対策実施するため、日本輸出入銀行、中小企業金融公庫等に対し一兆千五百六十九億円、郵便貯金特別会計に対し四兆円、合計十五機関に対し総額五兆千五百六十九億円を追加することとしております。  以上、平成十年度の補正予算(第1号)につきまして、その内容を御説明いたしましたが、なお詳細にわたる点につきましては、政府委員をして補足説明いたさせます。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
  4. 越智通雄

    越智委員長 これにて大蔵大臣説明は終わりました。  引き続き、補足説明を聴取いたします。涌井主計局長
  5. 涌井洋治

    涌井政府委員 平成十年度補正予算につきましては、ただいま大蔵大臣から説明いたしましたとおりでありますが、なお、一般会計歳入歳出補正に係る若干の点につきまして、補足して御説明いたします。  まず、一般会計予算歳出補正につきまして、補足して御説明いたします。  環境・新エネルギー特別対策費は、特に緊急性の高いダイオキシン・環境ホルモン対策水質保全対策とともに、地球温暖化を初めとする地球環境問題についての研究対策等のほか、新エネルギー施設リサイクル施設等整備等であります。  情報通信高度化科学技術振興特別対策費は、研究開発用高速光ファイバーネットワーク地上放送デジタル化推進のための研究開発施設電線共同溝整備等のほか、電子商取引推進情報通信高度化のための技術研究開発促進等とともに、先端的、独創的、基礎的研究開発推進新規産業創出を目指した産学官連携促進並びに次世代を担う若手研究者育成等であります。  福祉医療教育特別対策費は、新ゴールドプランの前倒し等社会福祉施設整備等とともに、現下の教育問題への対応としての「心の教室」(カウンセリングルーム)の整備等「心の教育」の充実のほか、学校教育における情報化推進大学改革等に伴う施設高度化重点的整備等であります。  物流効率化特別対策費は、国際ハブ空港ハブ港湾、高規格幹線道路整備空港港湾等へのアクセス強化等とともに、物流拠点施設整備等であります。  緊急防災特別対策費は、災害等危険箇所緊急解消対策等実施であります。  中心市街地活性化等民間投資誘発特別対策費は、公共投資経済効果を最大限高める観点から、中心市街地活性化などの民間投資を誘発する事業推進するための経費であります。  災害復旧等事業費千七百二億円の内訳は、災害復旧事業費千四百八十九億円及び災害関連事業費二百十三億円であります。  土地流動化対策費四千百三十五億円の内訳は、住宅都市整備公団を活用した新たな土地有効利用事業二千億円や民間都市開発推進機構土地取得等百八十四億円に加えて、政府系金融機関等による都市開発事業等への支援百七十億円や国の公共用地先行取得等千七百八十一億円であります。  中小企業等特別対策費等二千九百七十二億円の内訳は、中小企業等特別対策費二千八百十八億円及び産業投資特別会計への繰り入れ百五十四億円であります。  このうち、中小企業等特別対策費のうち主なものは、中小企業信用保険公庫出資金四百十二億円、中小企業事業団出資金三百十五億円、中小企業金融公庫出資金二百三十九億円であります。  また、産業投資特別会計への繰り入れ百五十四億円は、日本開発銀行等への出資を行うために必要な経費であります。  雇用対策費につきましては、今回の総合経済対策一環として、緊急雇用開発プログラム実施して雇用安定等を図るために必要な経費として、十億円を計上しております。  平成十年分所得税等特別減税追加実施等に関連した臨時福祉特別給付金等二千七百二十九億円の内訳は、臨時福祉特別給付金千五百二十九億円及び子育て支援基金障害者スポーツ支援基金千二百億円であります。  アジア対策費三百億円の内訳のうち主なものは、インドネシア向け政府米支援関連経費百七十五億円、留学生緊急支援対策経費三十二億円及びASEAN基金拠出金二十四億円であります。  地方交付税交付金追加四千七百十四億円は、今回の総合経済対策に盛り込まれた税制上の措置実施することに伴い、地方交付税の算定の基礎となる所得税及び法人税収入見込み額減少することによる地方交付税交付金修正減少額四千七百十四億円に対し、平成十年度における特例加算として追加するものであります。  その他の経費六百五億円の内訳は、一般会計の負担に属する国債追加発行に伴う国債利子等及び事務取扱費の財源に充てるための国債整理基金特別会計への繰り入れ五百六十六億円及び今般の平成十年分所得税特別減税追加実施の執行に必要な経費三十九億円であります。  次に、一般会計予算歳入補正につきまして、補足して御説明いたします。  租税及び印紙収入につきましては、今回の総合経済対策に盛り込まれた税制上の措置実施することに伴い、源泉所得税一兆二千七百億円、申告所得税千三百六十億円、法人税六百七十億円の減少を見込んでおり、全体として一兆四千七百三十億円の減収となっております。  公債金につきましては、六兆一千百八十億円を追加発行することとしております。この結果、十年度の公債発行額は二十一兆六千七百五十億円となり、公債依存度についても十年度当初予算に対し六・三ポイント増加し、二六・三%となります。  以上、平成十年度補正予算(第1号)についての補足説明をいたしました。
  6. 越智通雄

    越智委員長 以上をもちまして補足説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま説明を聴取いたしました平成十年度補正予算三案の審査中、日本銀行並びに公団事業団等いわゆる特殊法人役職員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  9. 越智通雄

    越智委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  10. 津島雄二

    津島委員 津島雄二でございます。自由民主党を代表して、質問させていただきます。  ただいま日本経済は大変な不況状態でございまして、国民の皆様方にも大きな不安があると受けとめております。この問題について、正しい理解と、そして国政選挙を控えまして適切な判断をしていただきたいということで、私は、国民的な議論に資したいという観点から、まず基本的な問題について御質問させていただきたいと思います。  まず最初に、景気の現況でございますけれども、最近の月例経済報告によりまして、前回よりもさらに厳しい認識が示されておりますけれども、尾身企画庁長官、この点について、一言現状をお話しいただきたいと思います。
  11. 尾身幸次

    尾身国務大臣 経済現状でございますが、昨年の秋のアジア経済困難あるいは幾つかの金融機関破綻等もございまして、昨年の秋から急速に企業及び消費者マインドが低下をいたしまして、ことしの一月から金融システム安定化対策等施策を講じたところでございます。  その結果、マインドの面では多少の改善、正常化が見られているわけでございますが、三月、四月ごろにかけまして生産、雇用等実体経済面に非常に厳しい状況が出てきておりまして、そのことに対して、総合経済対策を取りまとめ、現在、補正予算をこれから御審議いただく、こういう段階でございまして、私ども、これに全力で取り組んで、景気をできるだけ早く、早急に順調な回復軌道に乗せていきたいと考えているところでございます。
  12. 津島雄二

    津島委員 このたびの月例報告では、景気は停滞し、一層厳しさを増している。一層と言っておるわけであります。  翻ってみますと、これまで政府が何回も経済対策というのをやってまいりました。十年間に全体で六十兆というような金額も指摘されておるわけでありますが、再び日本が一層の不況の底に沈んでおるという状況であります。  その一方で、同僚議員の中にも、これは政府政策がどうであったか、適切を欠いたんではないかという角度から議論する方がございますけれども、私はまず申し上げたいのでありますが、この十年間の数次にわたる経済対策というのは、私どもが野党であった時代にも行われた、その時期を含んでいるわけでありまして、そういう意味で、私は、いわゆる党利党略を超えたやはり基本認識を持たなければ正しい対策はできないであろうということを、これから申し上げてまいりたいと思うのであります。  まず、総理一言でお伺いしたいわけでありますが、この不況の底に沈んでいるその原因を何とお考えなのか、総理から一言考えを述べていただきたいと思います。
  13. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 九〇年代から今日まで、累次にわたる経済対策、そして、それによります公共投資増加あるいは減税、私はそれなりに景気の下支えには貢献してきたと思います。  しかしながら、今我が国経済は、アジアの通貨・金融市場の混乱、昨年の秋連続をいたしました我が国金融機関経営破綻、そして、それに伴いまして、家計や企業景況感の厳しさが個人消費あるいは設備投資などにも厳しく影響を及ぼしておりまして、景気停滞状態と言わざるを得ない状況が続いております。  その状況の背景として考えますと、やはり金融機関あるいは企業の不良債権問題というものに、どうしても我々は触れざるを得ないと思います。その上で、日本的な経済システムの制度的な疲労あるいは産業空洞化といった問題が、当然ながら挙げられてまいります。こうしたものが景気回復の妨げになっている。殊に、その不良債権問題というのが深刻に影響しているということだけは、だれも否定のできない問題点ではないだろうか、そのように考えております。
  14. 津島雄二

    津島委員 ここ数年間の日本経済の歩みを振り返ってみますと、全体としては、かつての高度成長の姿は全く見られない姿になっておりますけれども、ただその中で、平成八年、一九九六年は、暦年で日本のGDPが三・九%上昇した。これは、アメリカの同じ時期の二・八%よりも高いわけでございます。  これを指摘いたしまして、この傾向を持続させればよかったんだという説は確かに一部にあり得るのでありますけれども、問題は、それがそのとおりであるかどうかということを、これから私は検証させていただきたいと思うわけであります。  まず、日本対外関係、これは注目しなければならぬのですが、きょうの円レートは恐らく百四十一円台で推移をしておると思いますが、これが、今の平成八年と比べてみますと、実は、円高経済から円安経済に大きく転換をしておる。つまり、国内の指標だけとると、いやあ、あのときはうまくいったんだけれども、それをそのまま続けさせればよかったんだ、こういうお考えになる方が当然あると思うのですけれども、しかし、日本を取り巻く状況円高から円安に見事に転換している。これが一九九六年、平成八年から今日まででございます。  ちょうど九六年から九七年、つまり平成八年から九年に向けて、円レートは百円から百十円の水準から百二十円の水準に変わっていった。そこからずっと今日の百四十円台まで円安という状況が続いております中で、昨年の七月にアジア情勢の大きな転換があったわけでございます。こういう日本を取り巻く状況、わけても日本経済が貿易の上でもあるいは資本収支の上でもどのように外とかかわるのか、かかわることによって日本の国内経済も影響を受けるかということを今真剣に考えてみなければならないわけであります。  そういう中で、大蔵大臣、一番関心を持っておられるところであろうかと思いますけれども、この四月一日からいわゆる内外資本取引が完全に自由化された。いわゆるビッグバンの世界に入っていったわけであります。完全に自由化されますと、日本の一般の投資家の方あるいは年金生活者の方も含めて、外国の金融資産を買いたいということであれば幾らでも自由に買えるようになったのですが、一体、この四月のビッグバンのときにどのくらいの大きさの変化があったか、大蔵大臣はどういう認識をお持ちなのでしょうか。一言お願いしたいと思います。
  15. 松永光

    松永国務大臣 具体的な数字は局長から必要に応じて答弁させますが、四月一日以降自由化されたことによって我が国から資金が大幅に移ったか、こういえば、ほとんどと言っていいかしれませんけれども、余り移動は見られていないというのが現状であります。必要ならば数字は局長から答弁させますが。
  16. 津島雄二

    津島委員 そのような御認識であれば、ちょいと私は、異論を申し上げなきゃいけないと思うのですよ。  外国の権威のある経済紙にこういうことが書かれている。四月一日から十日間で、日本人は、何と二百十億ドルの外国債や株式を買った。二百十億ドルというのは三兆円でございますから、ほぼ三兆円近い金額でありますから、このことについて、もし異論がおありならば。  まあ、この数字は報道機関の数字でありますから、それでは、ここの段階ではそういうことを申し述べるにとどめさせていただきたいのでありますけれども、しかし、この傾向はビッグバンが始まった十日間ばかりでなくて、当然のことながらその後も存在をしているということが強く指摘をされております。  例えば、外国のフィデリティファンドは、半年で日本から外国債の投資が四〇%もふえた、総額で三十億ドルふえている、四月だけとってみると一二%もふえている、こういうことも指摘をしておりますし、それから、アメリカのミューチュアルファンドへの日本の投資家の投資は、一週間に五十億ドルに上っておるという指摘もあります。五十億ドルといえば当然ながら七千億近い金額でございます。  この傾向というものが日本の貿易が黒字になればなるほどさらに加速するよというわけで、それは貿易が黒字になると当然日本の生産者のところに資金が入ってくるわけでありますから、普通ならばドル安の原因になるんだけれども、貿易の黒字がふえていけばいくほど、それを使って日本から海外への投資が始まる傾向が極めて顕著になっておる。だから、貿易の黒字は実はドルを買う一つのインセンティブになっているということをこの経済紙は指摘しておるわけでございまして、このことが実は今の円安の背景にあるということを、まず私どもは頭に置かなければならないわけであります。  長い間、通貨当局を中心として、国際収支というものは、いわゆるファンダメンタルズ、貿易収支と、場合によっては経常収支、場合によっては基礎収支、そういう基礎的な取引の構造によって決まるべきである、こういうふうに言われておるのでありますけれども、実は、今のようなことが事実であるとすると、資本収支の動き、しかも短期資金の動きが円・ドル関係を決める、つまり円レートを決める、つまり日本経済の重みを決めていくということにもしなっていくとすれば、これは、かつての経済政策考え方では日本経済はもうなかなか容易に運営できないということを示しておるのではないかと思うわけであります。  そこで、こういう円安に変わってきたということの中で、一体、日本のいわゆる経済政策、つまり国内の需要と供給のバランスを見て、需要が供給力に不足をしているから、だから日本景気が悪いんだ、その部分をあるいは公共事業追加あるいは減税で継ぎ足してやることがいいという考え方がそういう意味では自然なのでありますけれども、しかし、例えば減税で二兆円なり何兆円かの資金余裕が手元に残った、日本の投資家の手元、日本経済の中にあったとした場合に、一週間で三兆円もの金が海外に出ていってしまうという状態であれば、幾らやってみても、これは追いつかないということになるわけであります。  今私が御指摘申し上げたようなことについて、大蔵大臣はどういう配慮をお持ちなのか、そして、一連の通貨当局なり大蔵大臣会議でそのような議論が行われたかどうか、まずお伺いをしたいわけであります。
  17. 松永光

    松永国務大臣 私どもとしては、今この補正予算審議をお願いしておるわけでありますが、事業費規模で七兆七千億の公共事業追加、これはそれ自身需要となってくるわけでありまして、それが波及効果を持って我が国経済を持ち上げていくものだ、こう思っておりますし、また、特別減税追加実施四兆円、それに政策減税もありますから、それも合わせれば四兆六千億になるわけでありますが、それは可処分所得の増加となって消費の拡大につながるもの、こう思っておりまして、それを通じてこの冷え込んでおる景気を一日も早く立ち直らせたい、こう考えておるわけであります。  今の、資金の移動の自由化によって日本から資金が一気にどんと外に出ていきつつあるのではないかという御指摘でございますが、一時期に資金が流出しておるという状況は私どもは数字の上から認められていない、こう先ほど申し上げたわけであります。大量にどんと出ていっているという状況は認められない、こういうことでございます。
  18. 津島雄二

    津島委員 大臣の前段の御答弁には、私は素直に賛成したいと思います。それは、やはりそれなりに予算措置補正予算、また減税もそうでありますけれども、対策をとること、そのことは私は効果があるということは素直に認めてもいいわけでありますが、その効果が回り回ってどういうふうに評価できるかということについて、先ほど総理がお答えになりましたように、例えば金融システムの問題とか、あるいは日本を取り巻く状況とかいうものがあって、非常に難しい問題が出ておるんだということを私は今だんだんと御指摘したいと思っておるわけであります。  それで、基本認識を共有しなければ議論ができないという野党側のお考えがありますけれども、私はまず基本認識を申し上げておるのであって、円レートについても、資本の流出についても、基本的な事実を申し上げていますから、静かに聞いていただければ幸いであります。  そこで、今の資本流出の問題がどういう影響を与えるのかということについて、先ほど申し上げましたように、円レートを決めるのは物とサービスの流通ではない、いわゆる経常収支ではないんだということはもう既に大概の方はわかっておると思うんでありますが、一日に一兆ドルという取引が行われているような外為市場の資本の流れを含むところの全体としての金の動きというものが円の対ドルレートを決めている。  ですから、大蔵大臣言われるように、大量の資金が出ているとは認めない、それはそのとおりなんです。それは、大量の資金が出れば、こんなような非常に緩慢な円安という傾向では到底とまらないと思うのでありまして、だんだんと百四十円に移ってきたという状況はどういうふうに評価したらいいのか、そしてなぜそういう状態になるかというところが実は問題の核心でありますし、それから、総理が指摘をされた、システムの問題が絡んでいるんだというところに私は注目をしておるわけであります。  そこで、まず第一に資金の収益力という角度から問題を取り上げてみますと、日本の資金の収益力、これはある意味ではそういう側面から見た日本経済の効率ということなんでありましょうが、これが、外国、例えばアメリカに比べて大変低位にある、劣っているということになれば、おのずから自然にその収益力が高いところへ資金が流れていく。いわゆるビッグバンの世界というのはそういう世界。そして、私どもはそれを選択しなきゃならないくらい日本経済はグローバルに大きくなっている。  それで、野党の皆さん方にももうあらかじめ申し上げておきますけれども、ビッグバンが悪かったとは言わせませんよ。ビッグバンのための為替管理法の改正等に皆さん、共産党は別でありますが、賛成をされたわけでありますから。ですから、日本がそういう資本の自由な移動ができる時代に入ってきたということを私どもは全体として選択をしたわけでありますが、そのときに、一体日本の資本収益率というものが今のような状態でいいかということが実は真剣に問われている。  具体的に言うと、株価と株式収益率の関係からいって、これは、もう長い間日本の株式市場というのは価格が高上がりであって、それで利回りは低いと言われておる。だから、為替リスクの心配はあるけれども外国の証券を持った方が利回りはいいですよ、こう言って金融機関の方が投資家にお勧めになるのも、これはやむを得ない話だ、もしそのことが事実であるとすれば。  つまり、日本の資本収益力というものが相対的に低いということであればこれはやむを得ないわけなのでありますが、問題になるのは、そのような資本の効率というものを上げていく上でやはりかぎになるのは金融機関である。金融機関というのは、国民の貯蓄、金融貯蓄を集めてそれを最も有効に活用するためのチャンネルになるわけでありますから、金融機関がその役割を十分に果たせないということになりますと、当然効率のある資金の配分はできなくなるという意味で、私は、先ほど総理の言われた金融システムの問題というのは非常に重要だということであろうと思います。私が特にここで御指摘したいのは、ビッグバンになって自由化すればするほど、そこのところが日本の対外的な関係にじかに響いてきて、大きな意味を持ってくるということを御指摘したいわけであります。  その金融機関の問題でありますけれども、なぜ今のような状況になったのか。それは、もう多くの方が指摘しているとおり、バブルの後遺症が大きかった。そして、今まで、日本産業全体がそうでありますけれども、護送船団方式で、そして、内輪では競争をしているけれども、どちらかというとシェア争いをしていた、商品開発の争いの方はどうもちょっとその努力が足らなかったと言われているところであります。  この金融システムの改革について、今度の国会までに政府も大変努力をされた。私どもも努力をし、また同僚の議員の大変な努力もあって、議員立法でも何本かの法律改正を実現していただいたわけでありますけれども、それでもなお、どうも日本の金融システムというのは安心がならない、非常に効率性に問題があるし、過去のバブル時代から完全に脱却していないのじゃないかという御指摘がずっとあるわけでありますね。  先般、十七行が新しい基準に基づいて不良債権の公表をしてくれたわけでありますけれども、一体この十七行だけでいいのであろうか、また、そのことによって日本金融機関現状はかなり正確に一般国民の前に明らかになったかどうか、そのことを問いたいわけでありますが、大蔵大臣は、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。
  19. 松永光

    松永国務大臣 たくさんのことをおっしゃいましたが、みんなに答えなきゃならぬかどうか。最後のことだけでよろしゅうございますか。  ちょっとその前のことも申し上げますが、日本企業の資本利益率が諸外国に比べて相当低い水準にあるということは、委員御指摘のとおりだと思います。そこでどうすべきかということでありますが、先般成立させていただきました金融改革法案、これが実施されることによって、我が国における金融取引は極めて自由化が進んで、それで活発になることになってまいります。  そういたしますと、国民の側からすれば、今までは、個人金融資産が千二百兆あるというけれども、それが必ずしも有利に運用されていなかったという点があるわけでありまして、それが有利に運用できるという相当のチャンスの拡大になる。一方、我が国企業にとっては、必要な資金の取得が、金融市場を通じて、いわゆる間接金融じゃなくして、社債等の発行をすることによって直接的に必要な資金が入手できる。こういったことが活発になっていくことによって我が国産業経済の活性化が期待できる。  こういったことで金融改革法の成立をさせていただいたわけでありますが、これが進むことによって、先ほど委員もおっしゃいましたけれども、今まではどちらかというとシェア競争であった金融、証券の部門についての競争というものが、新しい商品を開発して、それを消費者に提供する、そういう競争を通じて、我が国の国内におけるその分野の競争も活発になってくる、こういうふうに見ておるわけであります。  そして最後の問題でありますが、私は、後で委員も御議論なさると思うのでありますけれども、やはり安定した経済を実現するためには将来に向けての安心感が大事なのでありまして、また、その意味では、経済のもとをなす、あるいは血液の役割を果たしているのが金融でありますから、我が国の金融システムについての安心感というものが、逆に言えば信頼感というものが高まっていくことが大事だ、こういうふうに思っております。  それを実現していく上では、やはりそれぞれの金融機関が自己査定をして、そしてそれを公認会計士等の十分な監査を受けた上で必要に応じ公表するという形を通じて、それぞれが努力をして自分の銀行の体質を強めていく、そういう努力をしていくことが、ひいては日本の金融システムの安定化につながる、こう思っておるわけであります。  一方、特に銀行等、不良債権を多額に抱えておりますから、この不良債権の処理を積極的に進めていく。今までのように、不良債権について適当とする引当金を積んでいるだけでよろしいというのじゃなくして、総理の言葉からいえば、バランスシートから銀行の不良債権は落としていく、本格的な不良債権の処理をしていく。これによって銀行の体力を強化し、融資対応力を強め、それを通じて我が国の金融システムについての信頼感を高めていく、こういう政策を進めていくことが大事であろう、こう思っておるところでございます。
  20. 津島雄二

    津島委員 お考えには素直に賛成したいと思うのでありますけれども、ただ、その出発点の、自己査定で今おやりになっているその姿が、これがどこまで実態を反映しているかどうかについて、まだ議論がある。  まず第一に、それじゃお伺いしますが、既に発表した十七行でしたか、これについては、第三分類、第四分類についてはまあまあ実態はきちっと出ているであろうというふうに大臣は見ておられますか。
  21. 松永光

    松永国務大臣 表現の仕方がいろいろあるわけでありますが、要するに、破綻先債権、それから延滞債権、そしてリスク管理債権、こういうふうな種類になっておるわけでありますが、最後のリスク管理債権というものについては、そのすべてが不良になるというわけじゃないわけでありまして、管理を十分やっていけば十分回収もできるし、あるいはまた貸し続けていくことも可能、こういったことでありますので、内容説明をすれば多くの国民もわかっていただくと思うのでありますが、実態に応じた自己査定になっているというふうに私は見ておるわけであります。
  22. 津島雄二

    津島委員 それでは、それ以外の銀行、主要銀行でまだ公表していない銀行もありますし、それから地方銀行でもかなり大きな影響力のある銀行もあるけれども、その分野については、逐次同じような自己査定が着実に進められているというふうに大臣は考えておられますか。
  23. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今十九行について先生お述べになりましたが、同様なことは全国すべての銀行で行うわけでございます。それで、決算の内容がだんだんそろってきておりますので、いずれ同一の基準で公表もなされる、SECの基準での不良債権の公表もなされるということでございます。
  24. 津島雄二

    津島委員 主要銀行についてはそうだということでありますけれども、地方銀行を含めてこれは本当に真剣にやっていただかないと、私から今さら言うまでもなく、二〇〇一年からいわゆるペイオフの世界に入ってくるわけでございまして、預金者の皆様方の預金が一定の限度まで預金保険機構の保証を受けるということであって、その時期が近づいてくればくるほど、最近も週刊誌等に、中にはちょっと首をかしげるような報道もございまして、あそこの金融機関はこういうことがある、ああいうことがある、そういうことの中から、やはり善意の投資家が安心できないような、動揺を来すような事態が来ることを非常に心配しておるわけであります。  そのためには、さっき総理も言われたと言っておる、早くその不良債権の部分は消してしまう、処理をしてしまうということまでやって、全体として日本の金融制度に対する信頼を確固たるものにしておかなければならない。その時期は非常に短いということを私は感じておるわけでありますが、このバランスシートから消してしまうということについて、今の仕組みで逐次進められるとお考えでしょうか、大蔵大臣は。
  25. 松永光

    松永国務大臣 その問題につきましては委員も中心になって知恵を出していただいて、そしてトータルプランというものが党を中心にして作成され、それを政府も受けて、数回にわたる議論を進めてきておるわけであります。幾つかの施策を取りまとめて、できるものから先に実行していくわけでありますが、また一部は実行したところでありますが、法律改正等を必要とするものは参議院選挙後の国会でその法律の整備をして、そして速やかに銀行の不良債権の本格的な処理に全力を挙げて取り組んでいく、こういうことになっております。  私の見たところ、随分各方面から知恵を出していただいたものですから、大体これでいけるのじゃなかろうか、こう思っております。一番肝心なことは、バランスシートに載せたままでは本格的な処理になりませんので、バランスシートから落とす、その落とし方に幾つかあるわけでありまして、その落とし方の手法について、法整備を含めて今具体的な検討に入っておるということでございます。
  26. 津島雄二

    津島委員 バランスシートから落とすことについていろいろ工夫をしておられるということは大変結構なことで、私どもも私どもの立場から党内の議論を積み上げて、適切な御提言があればさせていただきたいと思っておるわけであります。  しかし、どうしても心配するのは、この問題にさわってきますと、経営陣の責任問題が出てくる。その責任問題を避けて通ったら、しかし逆に公的な支援というのは出すわけにはいかないわけでありまして、ここのところは腹を据えて政府もかかっていただきたいし、私どももこの問題に当たっていきたいと思っておるわけであります。  どうでしょうか。必要ならば、私どももある種のもう一歩の措置、つまり、ある程度公的に入っていって自己査定の内容について検証させていただくということが必要なのかどうか、これを今真剣に議論しておるわけでありますが、大蔵大臣、まあ総理がやっていただければ一番いいわけでありますけれども、改めて金融機関に向けて、この問題についてある一定の期限までにきちっと国民の納得を得られるような仕切りをしてもらいたいという訴えをされる、そういうお考えはございますか。
  27. 松永光

    松永国務大臣 金融機関の自己査定に基づく公表というものは、これは真実に基づいているものだというふうに理解をした上で行政は進めていかなければ、はなから不信感を持って行政を進めていくわけにはまいらぬ。しかし、委員御指摘のとおり、チェックしていくことは、六月二十二日以降は金融監督庁の所管になりますけれども、それまでは大蔵省の責任でありますけれども、それはしっかりやっていかねばならぬというふうに思っておるところであります。  なお、銀行等の実は経営者の責任という話がございました。第一義的には、株主総会を活発にして、責任をとるべき必要のある経営者については、株主がまずしっかり責任の追及をしていくというのが第一義だろうと思う。しかしながら、法令に違反するやり方での経営があって、その結果起こっておる巨大な不良債権等々であるならば、当然のことながら、法律に基づく責任追及というのがなされてしかるべきだ、こう思っております。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来の御論議の中で、私は、我が国の資本収益率の低さから一つの柱を立てられた御論議を興味深く聞いておりました。  その上で、今の御指摘は、大手銀行三月期決算、既に公表されましたSEC基準によるその決算結果は、従来我々が承知をいたしておりました数字を大幅に超えた不良資産を抱えている実態が明らかになったわけであります。  当然ながら、その上で、バランスシートから不良債権を消していこうとする場合には、さまざまな問題があるでありましょう。大蔵大臣から今述べられましたように、法的に追及すべきものは、これは法の世界において当然行われるべきものでありますけれども、それとは別に、経営の責任の問われる場面というものは起こり得るわけでありますし、また、それを覚悟していただかなければ、いつまでもこの問題を後に引きずるということになるのではないでしょうか。その意味において、私は、議員の御指摘を真剣に受けとめさせていただきたいと思います。
  29. 津島雄二

    津島委員 総理がそういう認識を持っておられるのはいいことであると思いますが、今度、金融監督庁が発足をされるときに、新たなる観点から、私は、できれば担当大臣ばかりでなくて総理からも今の点に触れて、ひとつしっかり当面の問題に当たってもらいたいという意思を表明されることを望みたいと思うわけです。  例えば、今までなかった手法として、金融監督庁と日本銀行と共同で検査するというような手法、あるいは、外部監査が日本では大変に、何というか、生ぬるいという指摘が率直に言うとあるわけでありますけれども、そういう観点からのやはり新しい展開をしていただいて、ちなみに、名前は言いませんけれども、あるアジアの国では、外国の監査法人に幾つかの銀行を割り当てて外国基準で監査をしてみるというようなことをやった例があるようでありますけれども、日本の場合には、まずもって日本の公認会計士の本来の力をここで発揮していただくとか、今までと違った一つの手法をお訴えいただくことが必要ではないだろうか。  そして、その次の話になりますけれども、バランスシートの中から不良債権を消していくというのは、実は金融機関自身の資本効率を上げることになっておるわけですね。今まで、何というか、有名無実な資産が積み上がっておるわけですから、したがってその分だけ資本収益率が下げられておるわけでありますから、それを改善することに直ちにつながるばかりでなくて、実は銀行と取引のある企業、一般の企業のリストラの第一歩になるということは、もうこれは当然総理大蔵大臣は御存じだと思います。  そういう点からいって、私は、税務通達をもう一遍これは検討していただかなければならない。先般発表されました、言ってみれば不良債権の処理に当たって必要なものはきちっと無税償却をさせるとおっしゃったわけですが、その実態は、これまであった通達でやるということになっておりますよ。それは、やや専門的に眺めてみますと、今までだってできることをこれからもちゃんとやりますという世界でございまして、この点も私は検討課題である。  時間がございませんので細かい話に入りませんけれども、税務通達のあり方についてもひとつこの際御検討をいただいて、一般企業の側においてもそのような改善が逐次進められるような努力をお願いしたいと思います。このことについて、大蔵大臣、御所見がありましたら、ひとつ伺いたい。
  30. 松永光

    松永国務大臣 先般の基本通達の改正といいますか、それについて国民の間に誤解があってはいけませんので、この際基本的なことを申し上げておきますが、委員よく御承知のとおり、債権というものは、従来、一般的に言えば、相手が破産した場合、あるいは和議に入った場合、あるいは強制執行したけれども結局はとれなかったという場合、こういった場合等についてその債権を放棄した場合に損金として認めるというのは、常識的にだれでもわかるところであります。  それに加えて、その債務者の方が極めて合理的な、利害の相反する者も含めて協議をした上で、再建計画を立てた、その再建計画が極めて合理的であるという場合には、あえて破産その他の場合ではなくとも、その債権を一部放棄した場合あるいは全部放棄した場合に、合理的な再建計画に基づく、それによる、例えば利息の免除も含めて、あるいは大きいのは元本の放棄も含めて、合理的な場合には損金として認める。実質上損金になっておるわけでありますから、そういうことに今までもなっておりました。  ただ、従来の基本通達が必ずしも明確でなかった、現場の判断が入るような感じもありましたので、この際そういった事柄は明確にした方がよかろうということで、基本通達の改正をしたということであります。実質は変わっておらないわけです。すなわち、この基本通達で、銀行その他債権者に特に有利にしたとか、あるいは税金で取れるものを取れなくしたという、そういったものではないということを、委員はよく御承知でありますが、誤解のないように申し上げておきたいと思うのでございます。
  31. 津島雄二

    津島委員 今いみじくも言われましたように、実質は変わりない。これから、よりちゃんとやる話だ。それはそうでありましょうけれども、私は段取りに問題があると思いまして、つまり、どの債権がやはりこの際償却をした方がいい債権かという判定にかかわるわけで、その判定を、これから我々議論してまいりますけれども、ある種の第三者機関にさせることによって迅速に進んでいくようにされることが一つのあれではないだろうかということを、この際申し上げておきたいと思います。  いずれにいたしましても、時間がだんだん少なくなりましたから次に移りたいと思うのでありますけれども、これだけの議論でも私は御理解いただけると思うのは、日本経済不況である、需給ギャップがある、だからそれを埋めるために例えば六兆円の減税をしろとか、あるいは公共事業をもうちょっとやれとか、そのこと自体は私はそれぞれ意味はないとは申しませんけれども、それだけでは今までのケースがそのまま繰り返されるだけである。やはり基本的には構造改善をまずやらなければ、何をやっても思ったようにいかないということをここで強調して、実は次に参りたいと思います。  日本経済の構造改革が必要だという問題は、やはり人の話になりますね。日本の終身雇用制と、それからよき労使慣行というようなものは長い間評価はされてきているのでありますけれども、しかし、これだけ大きな構造改善が起こってまいりますと、当然一人一人の勤労者、一戸一戸の家計に響くような厳しい話が出てくる。その点を私どもは、政治の立場でやはり真剣に見詰めていかなければならないと思うわけであります。  そのさなかに失業率が四%を超えるという事態になってきたわけでありますが、この点で、今の経済対策の範疇で本当にいいのであろうかという懸念の声を多く耳にいたします。労働大臣から、その点についての御見解と、できれば、さらなる検討課題についても触れてお話しいただければ大変幸いであります。
  32. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 失業と申しますか雇用情勢についてはもう皆さん御承知のとおりでございますので、国民の皆さんから見て将来に不安を持っていらっしゃる状況であるということは、我々十分認識をいたしております。  今、委員が御指摘になりましたように、将来を見据えてかなり長い目でいきますと、やはり構造改革を実現して新しい働き方、働き場所というものをつくっていかねばなりません。そのためには、一つは規制緩和というものがございます。それからもう一つは、介護のように、国民のニーズにこたえて政府として積極的に仕事をつくり出していくという分野がございます。それから、科学技術の振興等をやってニュービジネスを起こしていくという市場メカニズムの中で政府がどういうお手伝いをできるかという分野がございます。  それから、委員が御指摘になりましたように、終身雇用制というのは日本の伝統の中で大変いい制度だと私は思いますし、また雇う側も、これはもう一生一緒にやるのだという思いがあれば、いろいろな能力開発の経費も会社持ちでやることもできます。  しかし、先人のおかげで経済が大きくなってしまって、いろいろな働き方を希望するという余裕もできる経済になりました。したがって、例えば能力給でやりたいとか、あるいはパートでやりたいとか、いろいろな方々が出てまいられますので、その人たちの選択の自由にこたえていくために、労働基準法だとか労働者派遣法というものの法的な整備をする必要もございます。こういうことは、橋本内閣としては、かなり長期的な視野で、方向に間違いなく進んでいると私は評価していただきたいと思います。  ただ、長期的な体力を増強するために一生懸命やり過ぎますと、やはり筋肉が痛いとか体が大変だとかということが起こってまいります。そこでまた、アジアの問題のように、気候条件が悪くなってくると肺炎になっているというのが私は今の状況だと思います。それに加えて、委員が御指摘になりましたように、金融不安というか、金融システムの信認が揺らいでいるという、一種のがん的なものが体内にある。これのがんの治療法は今、委員がずっと御議論をなすってきました。  したがって、あとはそういう基礎体力を増強し、がんを治療していく中で、やはり元気をつけ、そして体力を維持するためのカンフルを打っておかねばならない、これが私は減税とか補正予算だろうと思います。それでもなお、痛みがございます。それは、失業でございます。したがって、雇用調整助成金や失業対策、職業紹介、こういうものを総合的にやりながら、ひとつ新しい時代へ向かっていくということでございます。  今、労働分野の規制緩和というものも当然進めていかねばなりませんが、これは私は、経済的な規制緩和というのは結果論であって、できればやはり、多様な働き方を求めている人たちにその道を閉ざさないような方向をつくり出して、そしてそれが結果的に市場メカニズムの中でいい方向に動けば一番いいのかな、こんなふうに考えながら、長期、短期、それから中期の政策を組み合わせて、今橋本内閣としてはやっております。おのおの効果と副作用がございますが、副作用だけをあげつらっていては次の時代に移ることはできませんので、委員が御指摘のことを拳々服膺してやりたいと思っております。
  33. 津島雄二

    津島委員 大いに努力をしていただかなければいけないと思います。  よく言われる、アメリカの経済の再生の一つの柱が、労働力の移動を非常に上手にやり遂げたということでございまして、当然、ベンチャー事業の育成が必要であると同時に、私ども、今まで中小企業対策として、どちらかというと弱者対策に重点を置いてやってきた、そのことはこれからも大事なのでありますけれども、しかし、中小企業というものが大変な活力の源泉になり得るということを踏まえて、さらに前向きの政策を打ち出していただく必要があろうかと思います。  今国会の予算委員会の冒頭の深谷議員の御質問でも、私は、東京中心の中小企業の実態についてお話を聞いて、感銘したものでありますけれども、政府対策がそういう中小企業のバイタリティーを本当に引き出していくのに十分かどうか、私はまだ疑念を持っておるところであります。  同じ角度からもう一つ申し上げますと、アメリカの労働力の移動というのは、実は地域間の物すごい移動を伴っているわけです。よく言われるのは、日本は小さい国で、カリフォルニア州と同じぐらいだから、まあその中であっちこっち動かすのはどうか、やはり今のままでやっていくのがいいんじゃないかという説がありますけれども、私はそうは思わない。カリフォルニア州でも、新しい電子産業ができたときに、今まで全く砂漠であったところに一つの大きな工業地帯が生まれていくわけでありまして、私はそういう意味で、この際、地域への人の移しかえということもやはり忘れてもらっては困る。  これは同時に、月並みな言い方では、国土の均衡ある発展ということでありますけれども、それが新しい角度から見直されなければならないということを申し上げたいわけでありますけれども、通産大臣、どうでしょうか、中小企業対策産業対策、地域対策の立場から、御所見をひとつ承りたいと思います。
  34. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  委員の御指摘のとおり、ベンチャー企業が、我が国経済力を活力を持たせる、それから同時に、良質な雇用を創出する、あるいは確保するという意味で、非常に重要な役割を果たしてまいっておると思っております。また、これからも果たしてまいると思っております。  通産省といたしましても、ベンチャー企業の育成のために、資金だとか、あるいは人材の育成だとか、あるいは技術の面からそういう総合的な支援を講じていますし、また取り組みをいたしているところでございまして、今般の総合経済対策におきましても、ベンチャー企業の資金調達の環境の改善というもの、あるいは人材育成の問題、技術開発の促進、こういうような問題について抜本的な支援策を盛り込んでまいったと思っております。  また、委員の御指摘のように、地域の問題につきましては、産業振興に対する主体的な取り組みというものを促進するために、今までもテクノポリス法だとか頭脳立地法だとか地域産業集積法に基づくいろいろの支援を行ってまいりましたけれども、さらに本年五月には、産業構造審議会に地域経済部会を設置させていただきまして、そして、地域経済の自立的発展というような面に特に力を入れまして、幅広い検討を進めていこうということになってまいっております。  特に、地域における新産業の創出だとか、あるいは従来から存在する企業高度化だとか、そういうような課題の解決を図るために、今までのいろいろな支援策というようなものを総合的に、支援の対象を効果的に活用できるように取りまとめをしながら、総合的支援策を検討いたしております。  そういうようなぐあいで、ここ数年、中小、ベンチャー企業に対する支援策の充実が図られてまいってきておりますが、さらにこの支援対策の中での資金的な問題も十分確保しながら、今後、中小企業あるいはベンチャー企業においてこういうすべてのいろいろの対策の活用が図られるように、施策の普及をさらに、知らない方が多い面がございます、その普及だとか周知徹底というものも含めて努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  35. 津島雄二

    津島委員 大臣も御存じだと思いますが、中小企業の実態というのは大変に厳しいものがある。これはもう言葉では言い尽くせないような苦労をしておられる方がたくさんいると思います。銀行の貸し渋りに遭い、あるいは不況の波を受け、また人の確保に苦しむという話は、政治家として本当に襟を正して聞いて、対応を考えていかなければならないわけでありまして、決してこれまでしていただいた努力がだめだということではなしに、さらに一層真剣な努力をしていただきたい。  その努力の中で、私は、日本で一番欠けているものの一つが、金を貸す側のリスク管理というものが非常に不足をしている。裏から言えば、土地さえとっておけば、担保をとっておけばいいという、その金融の慣行というものに問題があったのでありまして、やはり本当にその事業の将来性というものにかけることができるという、日本経済全体としてそういう努力に対してかけることができるという体制の第一歩が、いわゆるリスク管理というものであります。  当然、中小企業にお貸しをする場合にはかなりのリスクを伴う部分がありますが、それを含めて、こういう条件であれば全体として資金が活用できるような金の流れが確保できるという、そのリスク管理の面で、金融側の一層の努力が必要だ。ジャンクボンドと一口に言うのでなくて、中には本当に実のある投資、実のある経済活動というものの担い手があるということを大事にして、新しい商品を金融機関が開発していっていただきたいというふうに思うわけであります。  同じ立場から、もう一つ問題は、土地市場の問題であろうと思います。  これについては、みんなあつものに懲りてなますを吹くような状態になっておるわけでありまして、下値感がなかなか出ないということで、最近の市況を見ましても、相変わらずじりじりと弱含みになっております。海外の投資家の見方から申しますと、日本経済力から申しまして土地に対する需要がもっと早く出てきてもいい、出てくる兆しがあれば我々もそれに乗っていくという声は結構あるわけでありますけれども、土地取引の活性化のために税制上もう一段の努力が私は要るのではないだろうかと。  これまでもいろいろ努力をして、過去のバブルの後遺症の処理のために行われた少しやり過ぎた面は大分解消されましたけれども、まだ問題が残っている。次の税制改正に向けて、ここは思い切った税制改正をしていただきたい。  譲渡所得課税については、これはいろいろ議論がありますから、時間の関係があって私は申し上げませんけれども、例えば別の相続税の面におきましても、かねがね私は申し上げておるのだけれども、親から子に向けての家の贈与というもの、生前贈与というものが一千万の限度まで認められているという制度について、例えば時限法でもいいのです、今のこの状態において、特別措置を拡充するというようなことも含めて議論をしてみたらどうだろうか。もちろん、自民党の税制調査会においても真剣な議論をやってまいりたいと思うわけであります。  そして、何をおいても、法人企業の負担は国際水準に早くしていただかなければならない。これは総理も前向きの御答弁を既にしておられますけれども、財政再建の中でいろいろ苦労されるところはあると思いますけれども、私は、思い切っておやりになることによって日本経済に対する好ましい影響、それによる財政再建の促進ということを考えますと、今考えられているスケジュールよりも早く法人企業の税負担の軽減というものはやっていただいた方がいいと思うのでありますが、総理からこの点を一言お願いしたいと思います。
  36. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 法人課税について、国際水準並みに三年以内ということを申し上げました、その三年以内の三年という言葉が多少ひとり歩きしている部分があるように思います。これは、その間にできるだけ早くということを申し上げ、三年間をかけると申し上げたわけではございません。  ただ、法人課税全体を考えますときに、地方税としての法人課税の部分には、幾つかの国際的な水準という視点とは違った次元、すなわち地方の税財源としての性格を持つ部分に対し、これをどう考えるかという独特の問題があることも事実であります。そうした点を考えますと、できるだけ私も急ぎたい、その点は同じでありますが、少なくともそれを超えることはない、それよりできるだけ早くこの問題には結論を出したい、そのように考えておりまして、ぜひ御協力を賜りたい、そのような思いであります。
  37. 津島雄二

    津島委員 今の、地方の事業税をどうするかという、いわゆる外形標準課税の問題については、これは評価できる面がございまして、政府はもとより、自民党の税制調査会でも大変熱心に議論しておるところでありますが、一つだけ御指摘申し上げておきたいのは、これの組み立ていかんによっては、実はいわゆる加算法の付加価値税と同じ経済効果をもたらす、これはもう定説になっておりますから、そこはよほど気をつけませんと、何というか、企業負担で思わぬ問題が起こってくるということを御指摘しておきたいと思います。  そこで、残る時間で個人所得税減税問題についてちょっと触れたいと思うのでありますが、外国のいわゆる識者や政府高官を初めとして、特別減税では大変不足である、恒久減税をやれ、しかもそれはこれこれの規模でやれという声が強いのはもう皆さん御承知のとおりであり、また、そのこと自体はそれぞれ議論の余地のあるところであろうと思うのです。  ただ、ここで考えなければならないのは、実は私は先般米国で、こういう発言をした人と論争をしたのでありますけれども、意外にその人が知らなかったのは、日本所得税の課税最低限がこんなに高い、アメリカより高いということ、と同時に、社会保障負担の面でこれから大変厳しい話が待ち構えているということ、その両方のバランスの中に我々の一番の苦しみがあるということは必ずしも理解をされていなくて、まあ、その方はなるほどという認識を持ってくれたようでありますけれども。  これだけ高い課税最低限まで上がってしまった。その一方で、もし減税をするとすれば、それ以上の方の税負担の軽減に結果としてなる。それはやはり、累進税率が高過ぎる分は私は減税をすべきだと思いますよ。しかし、それをやるときに、それでは、所得税の増減税と全く関係のない層の方々の医療保険の負担の問題をどうするのですか。いや、もっと大切なのは、年金の将来をどう考えるのですか。  年金については、御案内のとおり、厚生省から五つの案が出されておりますけれども、いずれも、ややもすると、給付を少し、多少とも抑制をする、あるいは保険料負担をもう少しお願いする、そういう議論が多いわけでありますけれども、ここのところに決着をつけずして、単に減税はいいから何兆円の減税をやれというのは、私は甚だ乱暴な議論であると思うわけでありますが、大蔵大臣あるいは厚生大臣から、この点について御所見をちょっと賜りたいと思います。
  38. 松永光

    松永国務大臣 減税論議の話でございますが、委員も今申されたとおり、アメリカの関係者その他から盛んに恒久減税の話がかつて出ておったことは事実であります。私も、G7の蔵相会議最初のうちは随分言われたわけでありますが、二度目、三度目になりますというと、日本所得税課税がそうなっているのかということをわかってくれたと思われまして、二回目以後は、その点についてアメリカの担当者は私に対して発言することはございませんでした。私は、向こうが一問発言すれば三問ぐらい言い返しておりましたから、そういったこともあってでしょう、この課税最低限の問題、税率の問題等々よく説明しましたら、なるほどということで理解をしていただいたと思います。  いずれにせよ、減税を論議する場合には、財源をどうするかということを常に財政を担当する者としては考えなければなりません。減税の財源を全部赤字公債に頼るということであれば、これは将来世代の大きな負担として残ってくるわけでありますので、その点も考えながらこの議論は進めていくことが適切であるというふうに思います。  いずれにせよ、政府税制調査会に、公正、透明、そして意欲が引き出せるような、そういう個人所得課税のあり方というものを諮問しておるわけでありまして、その諮問に基づいて基本問題小委員会で鋭意議論をしていただけるもの、その議論の結果によって私どもは適切に対処していかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  39. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 赤字公債による減税、これはきょうの減税、あすの増税であります。若い人がさらに現在の減税の分をかぶらなければならない。年金においても、年金を受け取る方は、受取額が多ければ多いほどいい。その保険料を負担しているのは若い世代であります。ということは、給付をもっと多くしろということは、保険料を上げなければならない。いずれにしても、若い人の負担によって成り立つような議論をしていると大変なことになる。  政治というのは、現在をよくするのも大事だけれども、もっと大事なことは、あすの時代は今よりもっとよくしようとする姿勢だと思います。そういう点で、余りにも現在だけをよくしてあすのことを考えないというのはいかがなものかと憂慮しております。
  40. 津島雄二

    津島委員 厚生大臣のあすの日本の社会を考えるという発言にはまことに同感するものがございます。新たに発表されましたように、少子化の傾向はますます進んでおりまして、一・四を割ってしまった。私が担当大臣をやっているときに一・五七でございまして、その一・五七ショックというのを国民の皆様方に申し上げて、大変に話題になった。ところが、十年もたっていないのに、これが戻ってくるどころか、一・三九まで下がった。しかもこれは、場合によっては、年金計算のいわゆる低位推計に近い、あるいはそれを下回るかもしれないというおそれに来ているところを考えますと、やはりあすの日本の社会のことを考えなければならない。  そのためには、私は基本的には、財政再建ということはもう念頭から離してはいけないと思うわけであります。ただ、その場合にお願いをいたしたいのは、これは経済学の定理でありますけれども、利子率を上回るような成長率を確保しなければ絶対に財政再建はできないというのは、これは一つの基本的な考え方でございますから、その基本的な成長率にまず戻すということで財革法の改正が行われたのは当然であろうと私は思います。  同時に、社会保障負担の問題を考えますときに、来年度の予算編成の社会保障費のいわゆるキャップ、上限というものをとりあえず当面緩和をしたということは、これは当然のことではなかったかと思うのであります。  そういう日本の社会のすべての層の方への配慮という点から、私は、最後に、二つばかり御指摘をさせていただきたいのであります。  一つは、家計に対する配慮であります。多くの金融機関あるいは企業がバブル時代の高値づかみということで大変に苦労しておられるという話が伝えられるのですけれども、しかし同時に、一般の勤労者の家計が、地価の高かったときにうちを建てられてローンを組まれたというような問題は、やはり我々は真剣に取り組まなければならないと思うのであります。そういう意味で、ひとつこれは検討課題として、いわゆる所得税法上の必要経費控除、これは税の専門家が一番嫌がる話なのでありますけれども、私はこれは一遍議論をしていただきたい。  アメリカは、自分のうちのために払っているローンというのは、当然必要経費だということで控除をさせている。日本では伝統的に基礎控除にすべて含まれていて、それでやるのが一番公平だという世界になっておる。私は、この哲学には今時代おくれのところがあるのじゃないかと思うのでありまして、必要経費の控除という側面からも家計負担というものを幾らかでも軽減してあげる方法について、政治の場で真剣に検討をしていただきたいとアピールをする次第であります。  もう一つは、農業者の問題でございますけれども、農業者が高齢化して、後に譲りたいというときになかなか後継者がない問題の一つに、やはり過去債務の問題がある。これもやはり今言われている問題の一環でございますので、この点についても真剣にお考えをいただく必要があるのではないかというふうに感ずる次第であります。  時間がございませんので、ここで、同僚議員渡辺喜美議員に。それでは、今の点に御答弁をお願いしたいと思います。
  41. 松永光

    松永国務大臣 今の税に関する議論を拝聴させていただきました。いずれにせよ、党税調、政府税調でそういった問題も含めて議論がなされるものと思いますが、私自身もしっかり勉強していきたい、こう思っております。
  42. 津島雄二

    津島委員 やや時間がいただけるので、それでは、残された一つの大事な問題、円の国際化についてちょっとお伺いをしたいと思います。  アジアの各国が大変な状況に陥ったきっかけの一つが、これらの国の対外取引、それから対外資産というものを主としてドルリンクでやっていたということにあるわけでありまして、その一方で、日本とこれらの国の取引は非常に多いわけでございまして、こういう各国が、円・ドル関係が動くたびに赤くなったり白くなったりしなければならない。  例えば円高の場合には大変貿易上はよかったというけれども、これはいいばかりではないのでありまして、円借款をたくさんしておるわけでありますから、円で借りている立場からいうと、大変に円高は迷惑だ。だから、よく言われたことは、アジアの国の貿易大臣は円高は非常に喜ぶ、ところが大蔵大臣円高は困る、こういうような話もございまして、円・ドル関係をもう少しインパクトを緩和するためには、円をもう少し保有していただくということが必要だと思うのであります。  その点について、大蔵大臣はこの間の国際会議の後で御発言いただきましたので、もう一遍確かめさせていただきたいと思います。
  43. 松永光

    松永国務大臣 委員仰せのとおり、先般のAPECの蔵相会議の席で、我が国としては円の国際化に向けて着実に進んでいく方針だという私どもの姿勢を表明したわけであります。  その背景にあるものは、委員今御指摘になりましたように、去年の夏以降のアジアの通貨危機等々が、余りにもドルに依存し過ぎておった、そのドルが急速に引き上げられたなどということもあってのアジアの通貨危機ということもこれありましたし、また、来年になりますというと、EUの方でユーロがいよいよ出てくるわけであります。  そういったことを考えると、このままにしておれば円というものが地方通貨みたいな形になってくることもありますので、この際、円というものをもっともっと、日本を中心にした取引の間ではもちろんでありますが、一般的に外国人にも保有、あるいは利用の面で活用してもらえる、そういう状態にすることが、長い目で見れば日本の発展にもつながる、そういう考え方で円の国際化ということをAPEC蔵相会議で申し上げてきたわけであります。  しかし、それを具体的に実行していくためには、いろいろな準備が必要でありますし、各方面での意見交換その他も必要でありますので、大蔵省の中に、問題点の洗い出しその他を含めてプロジェクトチームをつくりまして、そして検討に入ったというのが現在のところでございます。
  44. 津島雄二

    津島委員 一般論としてはそのお考えは理解をいたしますけれども、これを具体的にやるとなるとかなり思い切ったことをやらなきゃいかぬ。  第一に、やはり日本の、例えば大蔵省証券を買おうとする場合にその利子について源泉徴収を受けるという問題が、これはよその国と比べて、ニューヨークやロンドンと比べて、大変に不便であるという声は聞いておられると思います。それから、そもそも短期証券は、極めて限られた目的、それから大蔵省というか、国庫の資金繰りのためになされているという見地から、市場にこれを滞留させないという哲学で今まで運営されてきた。  したがって、市場機能というものはできるだけその邪魔にならないようにしようということから、もう大臣よく御承知のとおり、金繰りのための短期の証券を大蔵省が出すときに、これを日本銀行に一括して決められた金利で引き受けさせて、これを日本銀行が市中に出すか出さないかというのは、これはそのときそのときの状況によるというような形をとっているわけでありまして、外国が円を資産に保有しようという場合にそういう証券を適時適切に入手できるかどうか、それから入手したものを予測可能な利子で売れるかどうかというところに非常に問題があるわけであります。  この点について大臣は、さっきおっしゃった、関係方面と話をされるということでありますけれども、こういう制約をはねのけるという方向で検討をさせる姿勢かどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  45. 松永光

    松永国務大臣 円の国際化を推進していく上で非常に大きな問題の一つが今委員御指摘の問題であると思います。これもしっかりひとつプロジェクトチームで検討してもらって、そして国際化に向けて前進できるようにやっていかにゃならぬ、こう思っておるところでございます。
  46. 津島雄二

    津島委員 それでは、ずっと質疑をさせていただきましたけれども、ここで同僚議員にお譲りをし、渡辺委員からは金融システムの問題等についてさらなる突っ込んだ議論をしていただきたいと思うのでありますが、私は、この質疑を通じて強調したいと思いましたのは、やはり日本を立て直らせるためには、いわゆる追加総需要措置、不足部分を補うというだけではこれは絶対だめだ、もう過去の経験でこれは十分立証されておる、構造改善に思い切って入っていく勇気と政治決断が要るということを強く強調いたしまして、私の質議を終えさせていただきます。
  47. 越智通雄

    越智委員長 この際、渡辺喜美君から関連質疑の申し出があります。津島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡辺喜美君。
  48. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 日本のあすを切り開く我が自由民主党一期生を代表いたしまして、質問をさせていただきます。  我が自民党は昔の自民党とはかなり違います。大体、テレビで全国中継をやっているこの予算委員会で一期生が質問するなんということは、昔は余りなかった。しかし今は、別に私が初めてじゃないですよ、これは。それくらいに自民党は変わっております。  なおかつ……(発言する者あり)いや、そんなことじゃないです、人材は豊富なんですよ。ですから、政策決定の仕方も昔とはかなり違います。まあ昔は、どっちかといえば、霞が関が大体原案をつくって持ってきたことに多少いちゃもんつけて、ほぼ原案どおり通すというのが普通であった。しかし、今は全く違います。  どういうふうに違うか。それは、例えば、この半年間、この八カ月間を考えてみてもわかるように、緊急経済対策なんというのは、これはもう、まさに我々政治家が主導で決めてきた話ですよ。それから、金融システムの安定対策、これもまさに政治主導で決めた話であります。それから、この十六兆の補正予算の中でも、土地・債権流動化トータルプラン、これも我々政治家が主導で決めた話であります。  要するに、大事なことは、政治は結果責任ですから、我々は選挙で責任を問われるんです。ですから、企画立案から政治家がやっていこう、そういうかたい決意で我々自民党はやっているのであります。  とにかく、今我々が、自分で経験をしたことのないような事態に直面をしているんですよ。例えば、長期金利が人類史上最低を記録しちゃった、あるいはデフレになっちゃった、金融システム不安が起こっている。これは、自分の経験で、何をやったらいいか判断してもだめなんです。他人の経験に学ぶことができるかどうかなんですよ。  それはつまり、歴史の教訓に学ぶことができるかどうかということであって、他人の経験に学ぶことができなければ歴史は繰り返す、こういうことですよ。こういう危機のときには、ピンチのときにはむしろ大チャンスがあるんだ。ですから、どこをどう変えれば我が日本の未来が切り開かれていくか、そういうふうに考えればいいだけの話です。要は、政治家が先が見えるかどうか、それが大事なポイントなんです。  さっきから日本経済の例え話が出ておりますけれども、まあ我々も、日本経済が二十年ぐらい前から糖尿病にかかっちゃった、飲み過ぎ、食い過ぎ、太り過ぎだ、この糖尿病の治療をやらなきゃいけない、そういうことがあるわけですよ。ところが、ダイエットを始めた途端にアジアの悪性のインフルエンザが上陸してきちゃった。そこで、平成時代の大不況、土地、株暴落から始まったものが、心臓のパイプに不良債権という形で詰まり始めたんですね。それで、去年の十一月に心筋梗塞が起こっちゃったというわけでありまして、それが、先ほど労働大臣がおっしゃられたように、今肺炎を起こしている。まあ、それは現実の話です。  ですから、今何をやったらいいのかということ。ですから、糖尿病の治療は、これは一時停止、まあダイエットはちょっとやめましょうということで、優先順位を考えればいいんですよ。まず心筋梗塞の治療をやる、そして肺炎の治療を徹底してやる、元気が出たら、またダイエットにかかる。大体全治三年の計画ですよ、これは。ですから、半年間で肺炎の治療、これを完璧に治す。それで、二年間かけて心臓のパイプに詰まった不良債権を取り除くということ。それで、残りの一年で完璧な体力に復帰するためのリハビリをやる。大体そういう計画でやらなければいかぬということでしょう。  アジアの話は先ほども津島先生のお話にも出てまいりましたが、きのうあたりも香港の株が三年ぶりの安値を記録したということなんですね。香港の金利も上昇した。そうすると、これは人民元の方にかなり重いプレッシャーがかかっていくということになるわけです。下手をすると、もう一回新たな緊急融資みたいなことで一千億ドルぐらい使わざるを得ないような状況になっては困りますので、ですから、そうならないように、もう既に約束事で決めてあることはどんどんやるということが大事だと思っております。  そして、瞬く間に、タイでもインドネシアでも韓国でも、あっという間に国民の財産が半分になっちゃったとか、インドネシアあたりは今でも六分の一ぐらいになっちゃっているわけです。ですから、そういうところは単なる通貨危機ではなくて、これはもう政治危機、社会不安が起こっているわけですよ。ですから、そういうところのダメージコントロールをきちんとやってあげるということが大事なことなんです。  とりわけインドネシアに対しては、人道援助という形で、例えばペニシリンとか食糧とか大豆とか肥料とか、そういうものを送りましょうということを決めているわけでございまして、そういうことの中で、お米の支援はどうなっちゃっているのですか。八月になるとインドネシアでも米がとれるわけですね。ですから、その前にきちっと、日本がインドネシア国民の社会不安を静めるためにお米を送ってあげますよということを決めているわけですから、そのあたりは今どうなっているのでしょうか。
  49. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 ただいま渡辺委員からインドネシアの問題、特に米についてのお尋ねをいただきましたが、お聞きをいたしておりまして、実は、父君の渡辺美智雄先生が長らく日本・インドネシア議員連盟の会長として両国の友好親善に御尽瘁されたことを思い起こしておると同時に、インドネシアの問題につきましても委員自身が大変熱心にお取り組みいただいていることに敬意を表したいと思います。  そこで、インドネシアにつきましては、実は、スハルト政権の功罪がいろいろ言われますが、最も功の部分として米の自給自足を達成したということがよく言われておるわけでありまして、二億の民を支えるために、恒常的な米不足であったのが近年充足された。ところが、またこの一、二年、御案内のようなエルニーニョ現象によりまして火災等が起きまして、そしてヘイズその他の影響で米がえらい不足してきた。  WFP及びFAOの合同調査によりますと、来年三月までに三百五十万トン不足する、こういうことでございまして、これに対して我が国としても、長い間のインドネシアとの関係、特に一般国民が一番食糧不足ということは大きな影響を及ぼすことでございますので、我が政府としては緊急にこれは援助していこうということになりました。  御指摘のように、政府といたしましては、政府米五十万トンを貸し付ける、及び無償資金協力として十万トン程度を国際市場から調達して供与するということを、四月二十四日の経済対策閣僚会議で決定いたしております。ただ、御案内のように、お米につきましては、彼我の間の価格差等も非常に大きいわけでございまして、こういうことを、一日も早くいかなるシステムでこれを供与できるかということを今検討しておりまして、最後の段階に来ております。  それから、無償援助につきましても、これまたほかの国々から、国際市場からどういう調達方法があるかということでございますが、いずれにいたしましても、現下の悪化するインドネシアの食糧事情にかんがみまして、一日も早く我が国としては我が国の援助が行えるように準備を整えておるところでございまして、一日も早くこれを達成したい、こう思っております。
  50. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 ぜひ今の大臣のお話のようにやっていただきたいと思います。  とにかく日本は今お米が余っちゃって、四百万トンも在庫があるというのですからね。一方、インドネシアの方は、御指摘のように、三百五十万トン足りない。大体百五十万トンぐらいは手当てがついておるようなのですが、それでも二百万トン足りない、こういうことになっているわけです。ですから、これは大臣が今おっしゃったように、お米を、現物をお貸しをするというやり方は非常にグッドアイデアだと思いますよ。  これは実はかつてやったことがあるのですね。韓国に対して、昭和四十四年と昭和四十五年、大体六十三万トンぐらい現物でお貸しをした。それから、パキスタンにも似たようなことはやったことがあるのです。いずれも現物で返してもらったり、あるいは延べ払いみたいな形で返してもらったり、すべてこれは完済されているわけですから、こういう仕方で日本のお米の在庫を人道援助に回してあげるということは、両国の利益にかなう話でありまして、ぜひ一刻も早くお願いをしたいと思います。  そういった社会不安を静めるということは、政治の非常に大事な要諦なんですよ。先ほどのお話にもありましたように、日本でも失業率が四%を超えちゃった。社会不安、あるいは尾身長官がよく言われるコンフィデンスクライシスということがこのごろ非常に強くなってきておるんです。  そういう中で、私が非常に今心配なのは、住宅ローンを抱えている人たちの中で、平成四年とか五年から始まったゆうゆうローンというやつですね、ゆうゆうローンかふうふうローンかよくわかりませんけれども、五年間は大体月々十万円ぐらいの返済だ、しかし六年目からは十七万円ぐらいの返済になりますよというようなローンの仕組みなんです。  こういうローンを借りている人たちが、平成四年に借りた人たち、繰り上げ償還なんかもやった人たちがいるんですが、それでも十八万人ぐらいまだ残っているんですね。平成五年度に借りた方は三十七万人いるんですよ。平成六年、二十五万人いるんですね。平成七年、二十七万人、平成八年、十九万人。こういう人たちは、大体、特に平成四年、五年なんというのは、政府景気対策にこたえてくれて、それで、地価が下がり始めていたわけですから、それでも借金してマイホームをつくってくれたという、例えてみれば、これは神様みたいな人たちなんですよ。  ですから、そういう人たちが、ちょっと自分の予期せざる経済状況に入っちゃった、それで、上がる給料も上がらなくなっちゃった、それから上がるべきボーナスも上がらなくなっちゃった、しかしローン返済額はどんとふえてくるということになると、これはちょっと大変なことが起こりはしないか。  もし万が一、職を失ってしまったということになったら、これは日本経済を支えてきたその中産階級がプロレタリアートになっちゃうかもしれない、それ以上にホームレスになっちゃうかもしれないという、これは笑い事じゃないですよ、本当に。ですから、これは大変なことなんであって、やはりこういう人たちに対する何らかの対策を私は打っていかなきゃいかぬというふうに思うんですよ。  このゆとりローンというのは、去年あたりから十年返済を延長しますというようなことを始めておるんですが、この程度のやり方では、とてもじゃないが、これはうまくいかない。ですから、例えば、このリスケをやるとか、あるいはモラトリアムをやるとか、もう返済を五十年ぐらいにしてやるとか、それくらいのことをやらないとちょっと無理なんじゃないかなという気がするんでございます。  それから、税制の問題もありまして、買いかえをする人には損失の繰り延べというものをことしから三年間認めているわけですよ。ですから、買いかえをせずに売り切りにした人についても、私は損失の繰り延べというのは認めてあげるべきだというふうに思います。それと同時に、繰り延べを認めてあげるのなら、その払った税金を繰り戻し還付してあげるという選択肢もあっていいと思うのですね。ですから、そういうことをやれば、この中産階級、日本経済を支えてきた人たちがホームレスにならずに済むということなんですよ。  それから、思い切って今の破産手続、これをもっと使いやすい、破産者のレッテルを張られずに済むような制度がつくれないものか。住宅ローン版徳政令と言ってもいいかもしれませんが、要するに、破産者のレッテルを張られてしまうと、これはいろいろな法律上の資格制限を受けるわけでございます。ですから、破産宣告を受けたときには財産すべて売却して弁済に充てなければいけない、そういうことになるわけですから、これをもうちょっと緩やかにしてあげる。  例えば、このレッテルを張られずに、資格制限を受けずに、ただ、将来の収入からある一定限度までは弁済をする、しかしそれ以上はチャラにしてあげますよというような制度ですよ。ですから、住んでいるマイホームは、これはそのまま処分しないでも結構だ。アメリカは破産手続の中にそういう制度があって、うちのおやじが、あっけらかんのかあだと言って怒られたことがあるのでございますが、余りあっけらかんのかあでも困るのですけれども、やはりこれは新規まき直しのチャンスを与えてあげるということが大事なことなんですよ。  ですから、マイホームを取得した人たちがその夢破れてしまった、しかしもう一回新しいチャンスを切り開く道、その道については我々いろいろ用意してあるわけですよ。例えば、定期借家権という制度をつくろうとか、あるいは定期借地権、土地代なしで家が持てる、そういう制度をもっと使い勝手をよくしようということは今やっているわけでございますから、こうした個人債務者の更生手続の創設、こういったことについて、我々は真剣に考えておりますが、どうですか、法務大臣、お考えがあれば。
  51. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  議員御指摘のように、住宅ローンを抱えた債務者が、他に資産がなく、経済的に破綻した場合、破産手続を利用しているのが現状でございます。  そこで、政府・与党といたしましても、金融再生トータルプラン推進協議会の中で議論いたしているわけでございますが、法務省といたしましても、その中でいわゆる倒産法制の全面的な改正作業を今行っているところでございます。  倒産法制といいましてもたくさんございまして、破産法あるいは和議法あるいは会社更生法あるいは商法の会社整理手続及び特別清算手続等々ございます。今おっしゃるように、人格をなくして財産を没収して、いろいろな規制をせざるを得ない手続ではなくて、更生手続みたいな形で何とかできないだろうかというふうなことでございます。  住宅ローンそれからカード破産というのも実はたくさんあるわけでございまして、こういうふうな場合に、経済的に破綻した個人の債務者につきまして、破産を回避して経済の再建を図るための新たな手続、例えて言いますと個人債務者更生手続というふうなものができるのじゃなかろうかというふうなことで、私どもといたしましては現在真剣に検討を進めているところでございます。
  52. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今大臣は、真剣に検討をしております、こういうお答えでございました。我々はもっと真剣にこれは考えておりますので、要はタイミングが大事なんですね。政治はタイミングがずれると効果がありませんから、ですから、もうことしの六月、今月ですよ、今月からこのゆとりローンの返済の額がどんと上がる人たちが十何万人も出てくる、こういうことでありますから、ぜひこれは早急に、我々はこの検討をもう既に開始をしておりますので、法務大臣におかれましても御研究をいただきたいというふうに考えます。(発言する者あり)やっています、自民党がやっています。  それから、自民党がつくりました土地・債権流動化トータルプラン、これは、私はかなりの経済効果が出てくるというふうに考えております。ただ、残念ながら、こういうものを計測するモデルというのは霞が関にはないのですね。ですから、どれくらいの経済効果が出てくるかよくわからぬ、そういうことなんです。しかし、これは確実に景気に対してはプラスの効果をもたらすというふうに私は思っております。  先ほど来お話がありますように、不良債権の問題というのは、これは非常に厄介な話でございます。去年、貸し渋り問題ということに直面をいたしました。目先、短期的には、不良債権の処理ということと貸し渋り解消ということが実は矛盾するんですね。中長期的にはまさに一致する話なんですが、目先は相対立する話だということになるわけでございます。ですから、こういう問題はどういうふうに考えていったらいいのだと。  一つの考え方は、とにかくむちとむちでやれ。今までこの問題を放置しておいた、とにかくもうこれ以上放置できない、だからつぶれる銀行はどんどんつぶせ、不良債権の処理をどんどんやらせろ、そういうお考えの人もいないわけじゃない。一方において、とにかく異常な信用収縮をもたらしてはかなわぬ、貸し渋り問題というのは全国的な問題なんだから、こっちの解消の方が優先するんだ、そういう、言ってみればあめあめ路線があるわけですよ。私は、この目先相反する問題を同時に解決していくには、あめあめでもだめだし、むちむちでもだめだろう、あめとむちが大事なんだろうというふうに思うのでございます。  総理、七月二十二日にアメリカへ行かれるそうでございますが、私は、まことに僣越ながら、去年の十一月、日本の金融が心筋梗塞を起こしたときに、いろいろな提案をいたしました。去年の十一月、三洋証券がデフォルトを起こした直後に、私は、もうこれは平成の金融恐慌が始まりましたよ、ですから、今やるべきことは、預金者保護と同時に金融機関の自己資本対策が大事ですよ、そういう提案をしたのでございます。そのとき、日本のマスコミの皆さんは、だれも私の言っていることに注目しませんでした。取り上げたのはこういう「国会だより」という新聞で、でかでかと取り上げたのですが、これは私が出している新聞なんです。  今回、私は、僣越ながら、不良債権処理と金融機関の統合についての私の案というものを出しました。これは非常に反響が大きくて、日本国内でよりもむしろフィナンシャル・タイムズに紹介されたとか、私、読んでおりませんけれども、そういうことのようでございます。  私は金融安定対策のときも言ったのでありますが、とにかく日本の銀行がちょっと数が多過ぎるわけですから、これはもうリストラと合併をやってもらうということが大事なことなんですね。  イメージ的に言いますと、これはジョークでありますけれども、例えばさくら銀行とか富士銀行というのがありますね。こういうものは、富士ざくら銀行というものをつくってもらう、あるいはあさひ富士銀行でもいいんですよ。これは冗談ですから本気にしないでくださいね。でも、富士ざくらとかあさひ富士というとお相撲さんの名前みたいで、何か百五十キロぐらいありそうですから、これはリストラをやって、ダイエットをやって、舞の海銀行ぐらいになってもらわなければ困るわけですよ。五年後には、例えば専門分野に特化して、投資銀行になるとか、世界バンタム級チャンピオンの辰吉銀行になるとか、そういう努力が必要なのでございます。  ですから、そういうことを促すために一つのストーリーを考えてみたのでございます。  一つは、やはり金融監督庁というのができるわけですから、これはきちんと検査監督を強化していくということが大事なんです。ですから、例えば、この間の決算発表を見てもわかるように、引き当て率に随分格差が出ているわけですね、四〇%から八五%ぐらいに分かれました。ですから、引き当て率が本当に十分なんですかということを、ちょっと引き当て率が低いなと思われるようなところから重点的に検査に入る。  例えば、第二分類債権が、これはちょっとおかしいんじゃないか、これはリスク管理よりも、もうちょっと第三分類の方じゃないですかというものが出てきたとすれば、そういうものはことしの九月の中間決算からきちんと引き当てを積んでもらう、そういうようなことを段階的に始めていく。二〇〇〇年の三月、二年後ですね、このときには、きちんと自己査定結果を全部公表する、引き当て率も、第二分類なんかは実績率も含めて全部公表するというようなことが必要であろうというふうに思います。  その次は、先ほど来お話があるように、バランスシートから不良債権を切り離すということが大事なことですね。ですから、トータルプランでも言っているように、共同債権買取機構、これは今非常にピンぼけなんですよ。ですから、これをもっと徹底したバランスシートからの切り離し機関にしようということで、私の提案は、政府出資をやろう。これは、生きている銀行の死んでいる債権を引き取るわけでございます。  それと同時に、厄介なのは第二分類、リスク管理の必要がある債権ですからね、こういうものも適正価格で、ディスカウントして共同債権買取機構で引き取れるようにしよう。ですから、これは生きている債権ですから、与信機能、ニューマネーを出せる機能を共同債権買取機構に与えておかないといけないわけでございます。  いずれにしても、これは、適正価格の判定というのが大事なことでございますので、そういう判定委員会をきちっとつくる。財源は、九月一日から施行されるSPC法を使ってABSを発行してもらって、資金調達をやるということでございます。  それから第三番目は、金融危機管理勘定十三兆の方を使って、金融機関の再編統合を促進するための枠組みを、もっと使い勝手のいいものにしましょうという提案でございます。これは、例えてみれば、嫁さん探し、婿さん探しをやっているんだが、嫁ぎ先が見つからないというところがないわけじゃないのですね。ですから、そういうところは、きちんと三分類、四分類、こういうものをバランスシートから切り離した上で、第二分類についても一定比率の引き当てを積むことを条件として、いわば結婚のための支度金をくっつけてあげる、そういう提案なんでございます。  第四番目は、不幸にして債務超過になっちゃったというところについては、平成復興銀行、こういうものをつくって優良債権を引き取るということが大事なことだと思います。ですから、これは別に、でかいの一つじゃなくて、例えば、幾つかつくればいいのですね。関西方面に一つ、東京方面に一つとか、幾つかつくって、これは健全債権を引き取るわけですから、これはいつまでも国営銀行にしておく必要はないのであって、二年か三年たったら競りにかけて売っ払うということなんですね。ですから、そういうことをきちんと、網、セーフティーネットを張っておけば、覚悟をして飛びおりれば、だれもけがしないで済みますよということになるわけでございます。  もし大臣の御感想でもありましたら。
  53. 松永光

    松永国務大臣 幅広いたくさんの質問がございました。  その前に、私は渡辺美智雄先生からいろいろ生前御指導をいただいた者なのでありますが、恐らく泉下に眠る渡辺先生も、おお、喜美はこれほど立派な政治家になりつつあるかというわけで喜んでいらっしゃるだろうというふうに思います。  そこで、委員が示されました不良債権処理の推進というものでありますが、実はきのう渡されたものですからさっとしか読んでいないわけでありますけれども、まず中身は、御存じのとおり、金融システム再生の、そして債権流動化トータルプラン、これで我々が進めようとしておることと一致しているものも幾つかございます。  例えば、共同債権買取機構の拡充などはまさにそうでありますが、基本的にさらに議論をしていきたい点は、政府が、あるいは現在自民党の委員の人たちが中心になって、この不良債権問題解決に向けての取り組みの基本は、相手は民間の銀行、民間会社である、民間会社がみずからの判断でみずからの意欲で不良債権処理を進めてもらいたい、そして立ち直ってもらいたい、それに対して支援策は政府がやる、こういう考え方に立っておるわけですね。  自己資本注入策もそうなんです。民間銀行からの申請に基づいて審査をした上で資本注入をする、公的資金でありますから。権力を使って強引にやるというやり方は実はとっていないわけであります。そこは問題でありますので、そういう点はさらに議論を進めることにして、とにかく積極的にこの問題に取り組もうとしておる委員の姿勢には深く敬意を表します。
  54. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 こういうときには、もうとにかくあっと驚くような施策が大事なことです。ですから、そういうことの一つに私はデノミをやったらいいのじゃないかというふうに思っておるのでございます。  時間が来ましたので、また後日に譲らせていただきます。どうもありがとうございました。
  55. 越智通雄

    越智委員長 これにて津島君、渡辺君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  56. 上原康助

    ○上原委員 社会民主党を代表して、若干の質問をさせていただきたいと思います。  社民党は、御承知のように、去る六月一日に閣外協力を解消いたしました。そこで、少しく閣僚の皆さんや自民党さんには耳の痛い発言もあるかもしれませんが、御理解を願いたいと存じます。  今回、社民党が閣外協力を解消した理由は、既に三党首の政治改革協議で認識した、いわゆるあっせん利得罪創設のための政治腐敗防止法を今国会で成立させるという合意がほごにされたことが一つであります。大変遺憾に思っております。  また、新ガイドライン関連法案、私も与党協議でいろいろ努力をする一人でしたが、まだ問題点が整理をされない間に、我が党の意向を無視というか、反対にもかかわらず国会に法案を提出いたしております。  平成六年六月に村山内閣が発足した当時、自民党に見られた謙虚さやあるいは協調性、互譲の精神といいますか、さらには一時政権を手放したことへの反省の御認識などがだんだん薄れてきて、ややもすれば以前の自民党の単独政権時代のような、失礼な言い方かもしれませんが、おごりと傲慢さが見られるようになってきているのではないのか。そういうことなどがいろいろ影響いたしまして、閣外協力を続けても社民党の政策や意見をこれ以上反映することは困難ではないかという判断を党首脳がやったことでございます。  しかし、私たちは、村山内閣成立以来今日までの間、例えば原爆被爆者援護法、私も戦後処理問題プロジェクトの当時の社会党の代表としていろいろ苦労いたしましたが、あるいは人権擁護施策推進法、アイヌ文化振興伝統普及法など、いわゆる社会的弱者の方々に対してできるだけきめ細かい配慮をしながら、村山首相が打ち出した人に優しい政治を目指して、その実現のために一生懸命努力をしてきたつもりでございます。  さらには、我が国の過去の侵略行為の深い反省の念を表明すべきであるという与党間の意見調整のもとで、歴史を教訓に平和への決意を新たにする国会決議にもこぎつけて実現をさせました。これなどは、自民党単独政権下ではなかなかなし得なかった、多くの国民の期待に沿う政治課題を実現したのではないかと評価をいたしているところであります。  そのほか、政治改革あるいは政治倫理問題等で、入閣問題についてもいろいろ党の立場を表明して、橋本総理の御決断をいただいた経過もございます。こういうことを踏まえて、これから総理にお尋ねをさせていただきたいと存じます。  一つは、政治改革法案でございますが、六月の九日、社民、自民、さきがけの三党が公務員倫理法案と政治改革六法案を共同提出いたしたことは御承知のとおりであります。  ただ、先ほども申し上げましたが、今回、あっせん利得行為の処罰について、自民党との合意に至らずに、我が党は残念ながら単独で参議院に提出せざるを得ませんでした。政治家が口ききの見返りに金銭をもらうなどということが繰り返されているから、公共事業の配分が不透明であるとか、あるいは国民の政治に対する不信感、不満が解消されないのではないでしょうか。自民党の今回の対応はまことに遺憾と言わざるを得ません。  そこで、政治不信払拭の第一歩とするため我が党が参議院に提出した、国会議員等のあっせん利得行為等の処罰に関する法案を私たちはぜひ成立させたいと思っております。  橋本総理も、いろいろ党内調整その他で御苦労いただいておるやに受けておりますが、自民党総裁でもあられますので、当該法案についての御理解をいただきたいと思うと同時に、ぜひこの法案が成立するように御努力を願いたいと存じますが、総理の御決意をお聞かせいただきたいと存じます。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、閣外協力体制のもとにおいて三党が合意をいたしましたものを議員立法として取りまとめ、これが公務員倫理法とともに提案をされたということは、議員御質問の中で御確認をいただきました。私ども、そうしたお互いの間の合意というもの、それに基づいてまとめ上げました政策を具体化するための法案、これは誠意を持ってこれからも対応していきたいと考えております。  また、社民党が六月九日、参議院に国会議員等のあっせん利得行為等の処罰に関する法律案を提案されたということは承知をいたしております。政府としては、その推移を見守りながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  58. 上原康助

    ○上原委員 これは、国会も延長して、あとわずかしかありませんので、どういう取り扱いになるかわかりませんが、ぜひ、その理念というか、法案の趣旨が十分生かされるように、自民党さんにも、国民の厳しい見方もあるということを御念頭に置いて御配慮を願いたいと強く要望を申し上げておきたいと存じます。  次に、経済問題についても、時間が少のうございますのでお尋ねさせていただきたいと思います。  きょう提案をされ、審議をするこの補正予算もその一環ですが、十六兆六千五百億円の総合経済対策景気浮揚効果は、どうも十分出てきていないのじゃないかという懸念を持ちます。それは、用地費の割合を低く見積もったり、あるいは地方単独事業追加がすべて実現ができるとか、過大に評価しているのではないかという感じがしてなりません。経済見通しの平成十年度の実質経済成長率一・九%、果たしてこの総合経済対策で達成可能なのかどうか。私は、大変難しいんじゃないかという気がしてなりません。これが一つ。  二点目は、総合経済対策で、当面、景気が大きく落ち込むことはあるいは避けられるかもしれませんが、民間需要中心の景気回復がなかなか実現していないのではないか、難しいのではないかという疑問が、専門家や国民の一般的な受けとめ方じゃないでしょうか。過去累次にわたって実施された経済対策同様、一時的な下支えになっても、やがて息切れがして、自律的な回復軌道に乗せるのは困難ではないのか、こういうことから脱却していくには、やはり公共事業の部門にしても、情報通信分野とか、あるいは福祉とか環境分野に重点を移すべきではないのか、こういう指摘が強いですね。  同時に、当面の危機を回復するためのカンフル剤的な経済対策だけではなく、日本の将来像が明確になるような中長期的な新しいビジョンを的確に示すべきではないか、こういう御指摘が強いわけですが、これについての政府の御見解をひとつ簡潔にお願いします。
  59. 尾身幸次

    尾身国務大臣 経済現状、消費性向等につきましては、三月、四月とやや上がってきておりまして、先行き不透明感についてはやや改善の兆しが見られると考えておりますが、なお、生産、雇用等の実体経済、非常に厳しい状況にございます。  そこで、この景気対策総合経済対策の効果でございますが、土地代についてはどうかというようなことも含めましてでございますが、私ども、真水で今年度十兆円、全体として十六兆円を超える規模の対策をしておりますが、土地代等を除きまして乗数効果等を計算した結果、実質二%程度の経済のプラスになるというふうに考えております。したがいまして、その結果として、十年度一・九%程度の政府見通しは実現できるものと考えている次第でございます。  なお、公共事業社会資本整備等が行われた後、民間が自律的に立ち上がるような状況になるのかどうか、息切れをしてしまうのではないかという御心配の御質問がございますが、これにつきましては、全体の対策の柱、一つは社会資本整備減税でございますが、あと二つ目が経済構造改革ということで、ベンチャーを育てたり、あるいは情報通信、科学技術等について特に力を入れて予算もつけております、中小企業対策等も含めまして。  そういうことによりまして、規制緩和を進めること等によりまして、民間の活力を十分に発揮させて、その力で中長期にわたって経済を立ち上げていくという構造改革の対策も、今回の総合経済対策の大きな柱の一つにしているところでございまして、二十一世紀に向かって、中長期にわたって経済が順調な回復を遂げていくような対策も十分とっていると考えている次第でございます。  さらにまた、土地対策等につきましても、トータルプランで不良債権の処理を抜本的に進めるということをしておりまして、むしろそういう意味では、お金が切れたら終わりということではなしに、その後も引き続いて構造的な対策をとりつつ、民間活力を中心として経済の体質を強化改善するというところにも特に意を注いでいるところでございまして、その線に沿って経済が順調な回復軌道に乗ると期待しているところでございます。
  60. 上原康助

    ○上原委員 経企庁長官、御熱心にやっていらっしゃることはわかるが、なかなかあなたの言っていることは当たらない面が多いので、ひとつ十分経済の動向なりいろいろな角度から御検討いただいて、この総合経済対策の効果が出るように、もちろん経企庁だけでなくして内閣全体として御努力を願いたいと存じます。  経済問題で、あと一、二点。  四月の家計消費支出は、御承知のように、前年同月比で二・一%減となっていますね。これは、しばしば指摘されてまいりましたように、消費税率の引き上げで消費が大きく落ち込んだ昨年四月以降の傾向がそうしたものだと思うのですね。また、二回にわたる特別減税の効果が、先ほどからありますように、余りあらわれていない。これは、減税の恩恵が目に見える形で国民に実感として伝わっていないのじゃないでしょうか。  私は本予算審議のときでしたかも提案というか意見を申し上げたのですが、要するに、給与の銀行振り込みが主流でありまして、減税が目に見える形でサラリーマンや給与受給者に出てこないものだから、なかなか消費に回らないという実態じゃないかと思うのですね。ですから、特別減税分を現金支給で国民に戻すことを検討してみてはどうかという提案をいたしました。国民全体に対して実施するのが難しいのならば、公務員だけでも実施することは、方法によっては可能性があるのじゃないでしょうか。改めて大蔵大臣の御見解を聞かせていただきたいと存じます。  もう一点。橋本総理所得税の課税最低限の引き下げを検討させる向きの御発言をなさっておられるようであります。これは、国際比較その他税制全般の検討等の中でのことかと思うのですが、消費をさらに冷え込ませるおそれはないでしょうか。課税最低限の引き下げを景気回復軌道に乗らないうちにもし実施したとすると、消費税引き上げの二の舞を見ないとも限らないと思うのです。このことについては、総理の方から確たる御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
  61. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず冒頭、私の発言から、発言と申しますより、発言というものが報道されました結果起きておる混乱について、この機会にきちんと説明をさせていただきたいと思います。  この日曜日であったと記憶をいたしますが、静岡県に遊説に参りましたとき、私は税制に触れ、一つは法人税率、そしてこれは三年以内できるだけ早い期間に国際水準並みに引き下げていきたいということを申しました。  そして、所得課税については、働いた方が報いられるような税制にしたいということを申し上げ、その上で、我が国の標準世帯における課税最低限、これはむしろ課税最低限という言葉を一生懸命に使わないで、所得税を負担していらっしゃる方々という言い方をしたと思いますけれども、その最低が三百六十一万円、それ以下の方々は所得税を負担しておられない。アメリカは二百四十五万円以上の方は所得税を負担しておられる。イギリスは百五万円だったと覚えています、それ以上の方々が負担をしておられる。考えてみると、むしろ所得の低い方に対して日本所得税制は配慮しているのですという言い方をいたしました。それが事実でありまして、それ以上も以下も申しておりませんものが、翌日、報道されたメディアによりまして随分内容がばらついておりましたけれども、いろいろな……(発言する者あり)記事を書いた人間まで私は知りません、いろいろな記事が出ておりました。  事実関係として、私は、将来、やはり所得課税を含めて、日本の税体系というものは常に見直されるべきだと思っていることは事実であります。その上で、課税最低限をそのように御説明をいたしました。
  62. 松永光

    松永国務大臣 今回の特別減税の効果を、より効果あらしめるためにどういうことをしたらいいのかという点についての御質問であったと思います。  まず第一は、減税の効果を速やかに納税者に届くようにという考え方で、税額控除制度というので一遍にその効果を届けさせようとしたわけでありますが、委員御指摘のとおり、サラリーマン、給与所得者のほとんどが銀行振り込み方式のもとでは、実は減税の効果について多少の心配もあるわけですけれども、その点につきましては、振り込みをした場合に、この分が減税分というふうに明示してその振り込み票を渡すようにということ等々、実はPRをしっかりやっていきたい、こういうふうに思うわけであります。  国家公務員についてでも、別にお金を封筒に入れて云々という話でございますが、源泉徴収義務者の大変な事業量からいって非常に難しいという実務の方の話でございます。したがって、PRをしっかりやるということで効果あらしめるように努力をしていきたい、こう考えているところでございます。
  63. 上原康助

    ○上原委員 それはまあ、一度システム化したものをもとに戻すとか返るというのは、なかなか困難が伴うことは私もわかる。しかし、昔はやっておったんだから、それはできないことじゃない、検討をやれば。  それと、総理の課税最低限御発言についてというか、御見解はわかりました。しかし、これは慎重を期すべきであるということを強く申し上げておきます。  日本の課税最低限がこれだけ高くなったのは、私もまあ予算委員会に長いこといるわけですが、やはりパートの課税問題を含めて、私たちが社会保障問題等、課税最低限引き上げということに相当注文をつけてまいりました。その結果が今日になっているわけで、その点も申し上げておきます。  あと時間がありませんが、雇用問題について簡単にお答え願いたいと思うのです。  とうとう日本も四%台に突入というか、なりまして、大変これは憂慮すべき事態だと言わざるを得ません。沖縄の場合ですと倍々でいっています、七%を超えている。この雇用情勢悪化問題について、政府の今の実態の御認識と今後の対策について、ぜひお答えをいただきたいと存じます。いろいろ述べたいのですが、時間がもう少ししかありませんので。
  64. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 時間も限られておりますので、簡単にお答えを申し上げたいと思います。  雇用情勢は大変厳しゅうございますので、政府としては、御存じのように、先般、雇用対策本部を開催いたしまして、長期的にやるべきこと、中期的になさねばならないこと、そして、当面すぐに実行しなければならないこと、三つに分けて対策をつくりました。  そして、今先生御指摘のように、北海道と沖縄と東京と大阪と、おのおの状況が違いますので、全国八ブロックに分けまして、都道府県知事あるいは労働省、建設省、通産省等の出先、こういうものが集まりまして、おのおのの地域ごとの状況を的確に把握して、それに合う対策を講じていきたいということを今進めております。  それから、私から、中小企業団体中央会、日経連、そして商工会議所へ出向きまして、一都一道二府四十三県のこれら組織の出先の方々に職安の職員が直接お伺いいたしまして、人を雇っていただければこういう雇用の助成措置がございますということを説明して、一人でも多くの求人を出していただくように、今お願いをしながら、労働省を初め各組織一体となって、国民の不安を少しでも和らげるよう頑張っているところでございます。
  65. 上原康助

    ○上原委員 今月から来月にかけて五%台になるのではないかという御指摘等もありますので、特段の御配慮を強く要望しておきます。  あと、インド、パキスタンの核実験問題についてもお尋ねしたかったのですが、時間がありませんので、最後になるかと思うのですが、普天間の海上基地問題との関連で、ぜひこれは総理にお尋ねをしておきたいことがございます。  私も、沖縄のSACOの関連事項あるいは基地の整理縮小問題等について、もう少し何かいい案がないのかなといろいろ努力はしているわけですが、そのやさきに、どうも日本政府が昨年十一月にお示しになった海上ヘリポート基本案と、私たちがいろいろ努力をして入手をした米国防総省の内部資料と言われるのがいろいろありますが、相当の食い違いがある。  規模の面においても、あるいはその海上基地がもしできた場合にそこに張りつける飛行機の数とか装備の面において、例えば、政府の案は、飛行場の長さは、滑走路の長さは、千五百メーター、幅は六百となっている。だが、アメリカの案は八百から一千メーターとなっている。現在普天間基地にある機数、大体六十機相当とあるのだが、アメリカの方は七十九機となっている。しかも、新しい兵器も張りつけると。  こういうことでは、それが日米間の合意であって、我々に示した基本案は沖縄の反基地感情を和らげるためにもし言っておられるとすると、なかなか余計にこれは問題が難しくなっていく。そのことについては、真実をここで明らかにしておいていただかなければ、この問題は余計に、今後のこともありますので、だから海上基地にこだわっておられるのかなと私も懸念を持ちますので、どうなんですか、これは本当に。
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員が御指摘になりましたのは、五月二十七日の安保委員会で議員がお取り上げになりましたことに関連してのものだと思います。  そのときも御答弁を申し上げたと思いますけれども、政府として、米国政府から、議員の御指摘のような報告書というものの提出を受けたことが実はございません。あるいは、報告書でなくて、日本政府に手渡す場合でありましたなら要望書というか設計書というようなことになるのかもしれませんけれども、実はそういう資料というものに接しておりません。内容につきましても、実は我々としては存じておらないわけでございます。  そして、昨年十一月、もうこれも御承知のことでありますが、地元に提示をいたしました海上ヘリポートの基本案、これは、その規模につきまして、長さとして約千五百メートル、幅約六百メートル程度という御説明を申し上げました。この説明自身が米軍の運用所要の概要につきましての日米両国政府の調整結果を踏まえて作成されたものでありまして、内容は米国政府も了解をしたものでございます。  これに基づいて御説明をしましたその場合の航空機の機種あるいは機数、これは普天間飛行場の場合とほぼ同様という御説明を申し上げたと存じておりますが、先日議員がお取り上げになりましたような報告、要請、資料提供というものを含めて、正式に我々はそういうものを実は見たことがないものですから、事実をお答えする以上にいい方法がございません。
  67. 上原康助

    ○上原委員 もう時間が参りますので、もう少しお尋ねしたいのですが、ただ、この報告書というのは、私はそう簡単なものではないと思いますよ。普天間飛行場移設先の施設の条件は、代替施設としての条件ではなく、その運用上の必要条件に基づくものである、これが米国の基本認識なんですね。  そこで、時間が参りましたから、私は、この政府がお示しになった基本案というものが日米間の合意の内容であるというふうに理解したい、期待したい。しかし、今私が指摘したような問題が、もし日米間で、何か暗黙というか、それが議論になって、大体そのような規模のものであるとするならば、これはなかなか容認できないし、納得いかない、その点を申し上げておきます。  そこで、最後に総理、今なかなか膠着状態になっているわけですが、これから基地問題を含め沖縄問題についてどのようなお立場でやっていかれるお気持ちなのか、もし御決意があれば伺わせていただきたいと存じます。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今まで私どもが、沖縄県また県出身の議員の方々を初め、この問題について関心を持たれる多くの方々の御協力を得ながら、SACOの最終報告を取りまとめ、それとは別に沖縄県の振興のためにさまざまな努力を重ねてまいりました。  そして、議員御指摘になりましたように、今極めて雇用情勢の厳しい我が国において、沖縄県は突出してその状況の悪い地域でもあります。それだけに、我々としても、県と協力をしながら基本的にできる限りのお手伝いをしていかなければという思いは全く変わっておりません。  その上で、これは議員、率直に申し上げまして、実は、私は前から、お目にかかる気持ちはいつでもありますということは議員を通じても申し上げてまいりました。残念ながら、生産的な話し合いを求めてという面会の御依頼は依然としてありません。でも、我々は振興策もできる限りのことをしたいと思います。  しかし、その振興策が基地の移転後の跡地利用を土台に組み立てられている部分があることも御承知のとおりでありまして、その根幹が動かない場合にどうしたらいいのか、これは国だけで勝手に決めることもできず、苦慮いたしておるというのが率直な状況であります。しかし、私たちは振興策を必要とする状況を熟知しておるつもりでありますし、誠意を持ってこれを進めていきたい、その気持ちには全く変わりはありません。
  69. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。
  70. 越智通雄

    越智委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  71. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅直人君。
  72. 菅直人

    ○菅(直)委員 この国会におきまして橋本総理と直接にこういう形で議論させていただくのは、これで四度目になろうと思います。これまでも比較的、議論としては、あるいはかみ合ったのかなと思うこともありましたが、時折答弁をかわされることがありますので、どうか、きょうは真正面から御答弁をいただけるよう、冒頭お願いを申し上げておきたいと思います。  まず、この間の大変大きな懸念すべき課題といたしまして、インド、パキスタンの核実験という問題があります。この実験が直接の両国の緊張関係を高め、核戦争の危険性を高めることはもちろんでありますし、また、このことが他の国への核の拡散の引き金になることも大変懸念をされます。そういった意味で、いろいろな制裁措置などをとることは当然の行動だと思います。しかし、それだけでいいのかといえば、根本的な問題がこの問題には横たわっていると思います。  つまりは、アメリカやロシアあるいはフランス、イギリス、中国という、すべて常任理事国でもありますが、こういうこれまで既に核を持っている核保有国の核をそのまま保有を認めていく、そして新たな拡散だけは抑えていくという、そういう核拡散の考え方が、いわば問い直されなければいけない状況に来ているのではないか。つまりは、米ロを含む核をいかにして廃絶していくか、この道筋をまさに真剣に考えなければいけないときが来ていると思います。  我が国は、ややもすれば、アメリカの核の傘の中にあるから、余りアメリカの核について、それを削減につながるようなことは言いたくない、歴代政権のそうした姿勢があったように思います。しかし、私は、核の傘の中にあるということと、核のボタンを、つまり核の引き金を直接握っているということは全く立場が違う。まさに、私たちは他国からの防衛のためには核の傘というものに依存をしている、これはあるわけですが、我が国が核のボタンを引くということはあり得ないわけであります。  そういった点からしまして、米ロを含む核保有国の核を含めて、例えば、ある段階では国連などで国際的な管理のもとに監視する、移す。そして将来は、それらの核を含め、すべての核兵器を廃絶していく。これは、唯一の被爆国である我が国、さらには、潜在的には核保有の技術的、経済的能力を有しながらそれを絶対にとらないという姿勢を示している我が国の、まさにそういった立場からして、特にこういうことを世界に向かって提案するいわば資格が最もある、このようにも考えるわけですが、総理はこの問題について、これまでの政府の姿勢をもっと踏み込んで、米ロの核を含む核廃絶についてのプログラムなどを提案される用意があるかどうか、御意見をお聞きしたいと思います。
  73. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、本院、本予算委員会の休憩の時間、参議院の外交・防衛委員会にこの問題でお呼び出しを受け、その席上、今議員が指摘をされました問題について、このように申しました。  その上でと申しますのは、そこまでにインド、パキスタンの問題についてずっと論じてきたからでありますが、その上で、次に、核兵器国による核軍縮の推進の必要性に言及したいと思います。核軍縮の着実な進展は、より安全な世界の実現にとり、不可欠であります。我が国は、究極的に核兵器のない世界の実現を目指し、国際社会が具体的かつ現実的な措置を通じ、核軍縮を一歩一歩着実に進める必要があることを訴え続けてまいりました。今後とも目に見える形での核軍縮の進展が求められており、具体的には、我が国として、米ロ両国に対してはSTARTⅡの早期締結及びSTARTⅢの早期交渉開始、米国、ロシア、中国に対してはCTBTの早期批准を、また米ロ以外の核兵器国に対しましても、現在の核兵器をふやさず、さらにこれを削減するための努力を一層強化するよう求めているところであり、政府としては、かかる働きかけを今後とも粘り強く続けてまいる考えです。  これが、今、参議院の外交・防衛委員会にこの問題でお呼びを受け、私が述べました部分であります。  まさに、議員の提起された問題に正面からお答えをする答えであろうと思いますが、これまでも実は我が国は、例えばカットオフ条約の早期開始など、その交渉に向けての専門家会合を主催したり、さまざまな努力を積み重ねてまいりました。また、これはもう議員も御承知でありますけれども、旧ソ連邦諸国に対しまして一億ドルの非核化支援を行っており、例えばロシアに対しましては液体放射性廃棄物の処理施設の建設等具体的な支援を行っております。  我々は、今後もこうした努力を積み重ねながら、拡散を防ぐだけではなく、究極的な核廃絶に向けての努力を積み重ねてまいりたいと考えており、院におかれてもその方向への御協力を心から願う次第であります。
  74. 菅直人

    ○菅(直)委員 方向として共通だということはわかりました。  ただ、これまでの姿勢がやはり、抽象的なレベルでのすべての国の核廃絶ということは言われてきた、あるいはこれからも言われるかもしれませんが、STARTⅡというのは米ロの交渉であります。例えばこれを国連という場で、多国間の席で議論をする、米ロの当事者だけではない中での議論とか、あるいはそういうところに核の管理を将来移していく、こういった踏み込んだ提案は残念ながらまだお聞きできておりません。ですから、そういった一般的な核廃絶ということから一歩踏み込んだ問題に取り組まれることを要望しておきます。  さて、もう一点。  実は、先月私がアメリカに行ったときに、アメリカで何人かお願いした通訳の一人が日本大使館におられた国務省の職員の奥さんであった、そういうことで、週刊誌等から不用意だと。この方は実は自民党の議員団の訪米のときにも通訳をされている方なので、そこまで厳密に考える必要があるのかな、そんな感じもいたしました。  同じような意味で、総理の中国の訪問の中でいろいろなことが言われております。これはただ、私の場合とはやや立場を異にしていると思います。つまりは、当時は橋本総理大蔵大臣という、ODAに関してのいわゆる……(発言する者あり)ちょっと委員長、どうかしてください。
  75. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。  どうぞお続けください。
  76. 菅直人

    ○菅(直)委員 つまりは、そういう意味ではある種職務権限を持った方であります。そして問題となっている女性は、質問主意書の答弁によりましても、通訳というよりはその案件に関するODAのいわば担当者、あるいはそのプロジェクトの責任者であった、こう伝えられているわけであります。そして、総理の別の機会の答弁によれば、他家の奥さんということでありますけれども、当時も他家の奥さんだったわけですが、個人的に食事などをされたおつき合いがあったと聞いております。  こういう姿勢について、私の場合にもいろいろと指摘を受けましたけれども、総理の場合は私の場合とはやや違って、それによって実際にODAが実行されて、ある意味では大変感謝をされているというふうにも聞いております。  こうしたODAに絡む問題において、個人的なそうした関係について、少しこれは行き過ぎたかなとかまずかったかなとか、いやそんなことはない、全くそんなことは構わないのだ、どう思われているか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  77. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、一言で申し上げるなら、大変残念ですという一言を申し上げたいと思います。  今いろいろ議員はおっしゃいました。しかし、私は、中国を含め、発展途上国に対する医療協力というものは極めて大切なことだと考えてまいりましたし、さまざまな機会をとらえて、そうした気持ちを訴えてまいりました。昨年のサミットにおいても、私は寄生虫の問題を提起いたしました。日本は、一年がかりで、世界じゅうの寄生虫の実態をリポートいたしました。そうした努力というものは、これからも日本がやっていかなければならない大きな問題の一つだと私は思っております。  そうした思いを持っておりますだけに、今の議員の御意見あるいは御批判は、率直に情けないという思いがいたします。議員は長い政治活動の中で同じ思いをされたことがおありかどうかわかりませんが、私にとりましては、残念という一言であります。
  78. 菅直人

    ○菅(直)委員 最初に申し上げたように、総理の答弁は時々かわされるのですよ。私は別に、医療協力が悪いとか、寄生虫の問題を取り上げるのが悪いとは一度も申し上げておりません。私の例をあえて引きまして、外交関係において、相手の国の関係者とのつき合い方において問題があると指摘をされているけれども、どうなのかということをお聞きしたわけでありまして、内容について、その内容がどうであったかということについて申し上げたわけではありません。大変私にとっても残念な答弁ですね、今の答弁は。  この問題は、後ほど同僚議員が、十分な調査を踏まえて質問をすることになっておりますので、私からはこの程度にとどめさせていただきます。  そこで、次の問題として、先日、政治倫理審査会で、山崎政調会長がいろいろと弁明をされました。その内容は、この予算委員会でせんだって証言をされた泉井氏の証言とは、例えば金額の問題、趣旨の問題等で、明らかに食い違っているわけであります。  当然ながら、自民党の重要な要職にある方でありますから、自民党としては、そうした食い違いを国民の前に明らかにきちんと説明するために、予算委員会の証言を党としても当然求めるべきだと思いますし、自民党の総裁である総理としても、当然そのことを指示されるべきだと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
  79. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 山崎政調会長は、事実無根の記事を掲載した週刊誌に対しては法的な対抗措置をとっておられると聞いておりますし、また、みずから、自分自身これまで株取引を行ったことはないと公に説明しておると聞いております。  六月五日に本院の政倫審において、御指摘の点については審査がなされたと承知をしております。議員は証人云々というお話を出されました。それは国会でお決めをいただくことでありますから、総裁としては、これ以上の対応は考えておりません。
  80. 菅直人

    ○菅(直)委員 総裁としてこれ以上の対応を考えていないというところに、今の自民党の姿勢がよくあらわれていますね。これでもう終わったんだ、これでもう済んだんだと。民間人を証人で呼んでおいて、そして、国会議員という公的な立場にある人は証人では呼ばない、こういうことで国民が納得するのでしょうか。  委員長、この問題については、必ずこの委員会で証人喚問されるよう要請しますが、いかがですか。
  81. 越智通雄

    越智委員長 理事会において協議いたします。
  82. 菅直人

    ○菅(直)委員 そこで、いよいよ橋本総理のこの間の、特に経済を中心とした政策の、ある意味での失敗について少し申し上げていきたいと思います。  総理、内閣発足のときと、昨日末で結構ですが、大体日経平均株価、どのぐらいこの二年半で下がったか、御存じですか。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 正確な記憶を持ってはおりませんが、大体この程度であり、現在がこの程度であるということは存じております。しかし、その数字を申し上げるつもりはございません。
  84. 菅直人

    ○菅(直)委員 為替がどのぐらい当時と下がっているか、御存じですか。いわゆる一ドル何円かですね。
  85. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 当時の為替の水準は、私は記憶をいたしておりません。現在の水準は存じております。
  86. 菅直人

    ○菅(直)委員 失業者が何%から何%にふえたか、失業者の数がどのくらいふえたか、御存じですか。
  87. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 現在の失業率は記憶をいたしております、当然のことながら。そして、過去の大体の状況は存じておりますが、就任時幾らであったかとか、その当時、その前後の状況の中でそこまできちんと記憶をいたしてはおりません。
  88. 菅直人

    ○菅(直)委員 こういうパネルをつくってみました。今申し上げたのが、橋本内閣発足時に比べて日経平均で約五千円下がっております。為替は百四円から百四十一円、三十七円下がっております。失業率は三・四から四・一。これは人数でいいますと、二百三十五万人から二百九十万人、五十五万人が失業者としてふえているわけであります。  つまり、この最初の二つは、マーケットがこの橋本内閣の二年半をいかに見ているかというデータでありますし、また、失業率やあるいは成長率といったものは、これは、マーケットというよりも、まさに生の数字であります。  さらにもう一つ申し上げます。  財政再建を非常に総理は気にされて、せんだっての私の質疑でも、基本は変えないんだということを、法案についてもいろいろ言われておりました。  それでは、平成七年度末と今度の補正が終わった平成十年度末で、国債等、いわゆる交付国債等を含めた、内国債と表現するんだそうですが、それが二百二十八兆円から三百四兆円、七十六兆円この三年間でふえたと私の手元には数字が出ていますが、大蔵大臣、これでよろしいですか。
  89. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  数字は、今おっしゃったとおりであります。
  90. 菅直人

    ○菅(直)委員 つまり、三年間で何と七十六兆円の財政赤字の増額を招きながら、結果において、景気は浮揚したのか、経済構造が立て直ったのか。だれの目から見ても、そうではない、もっとひどい状況に来ている。つまり、財政再建と景気浮揚とを二つ追われたのかもしれないけれども、わずか三年間で七十六兆といえば、一年当たり幾らになりますか。二十兆を超えるわけですよね。これにはまだ、日銀からの特融の政府保証は入っていないんです、交付国債は入っていますけれども。それがもし二十兆乗ったら、九十六兆。  すさまじい額の財政出動を約束し、あるいは実行しながら、こういった状況というのに対して、総理は、自分の二年半の経済政策、失敗したとは思われませんか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 いろいろな御批判はありましょう。議員が閣僚の一人としてともに仕事をしていただいた時代にも、私どもは、それぞれの持ち場で全力を尽くし、内閣として努力をしてきたと考えております。(発言する者あり)そして……
  92. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  93. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そして、その局面局面におきまして努力をしてまいりましたけれども、今、財政再建という我々が持たなければならない目標はきちんと掲げながら、この経済情勢の中で景気を上昇軌道に乗せることに全力を挙げております。
  94. 菅直人

    ○菅(直)委員 私は、確かに一次内閣で厚生大臣を務めさせていただいたことはそのとおりであります。いつまでが、いつからということまで私は申し上げるつもりはありませんでしたが、総理がそういう切り返しをされるかもしれないと思って、一応用意をしてまいりました。  つまり、平成八年十一月七日、第二次内閣が発足したとき、私はもちろん内閣から出ておりますが、株価は二万七百七十一円。つまりは、第一次発足時よりもちょっぴりですが上がっていたのですね。ですから、自民党単独政権になってから五千円の株価が下がった。為替とか細かいことを言えばいろいろありますが、つまりは、そういうふうな切り返しをされるから、どうも議論がはっきりしない。  私は、二年半の橋本政権の中で、もちろん一端の責任は私にもあるでしょう。しかし、経済政策を中心とした中で、こんなに大きな財政赤字を拡大しながら、結果が全く出ていないどころか、ますます悪くなっていることについてお聞きしたのであります。ですから、そういう真正面からお答えをいただきたいと思います。  そこで、少し具体的な問題に入っていきたいと思います。  前回の質疑の中で、いわゆる財革法の今回通った改正によっては恒久減税ができる余地がほとんどない、私がそういうふうに申し上げましたら、総理は、いろいろ言われましたが、非常に極端なことを言われるというようなことを私に答弁されました。しかしその後、財革会議のメンバーでもあり元総理の宮澤先生が、私と同じことを言われている。再度の改正をしなければ恒久減税はできないし、またそれはやるべきじゃないか、この意見について、総理はどうお考えですか。
  95. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、宮澤総理を引用されましたが、質疑の中で質問に答えて、想定されたケースであればという前提でお答えになったものだと私は承知をいたしておりますが、その上で、今回、私どもは経済対策の中で、所得税、個人住民税につきまして四兆円の特別減税を行うこととしてまいりました。  同時に、議員がどのような税制をお考えか、私にはわかりませんけれども、法人課税と並んで所得課税について、今までも私は同じように申し上げてきております。その目指すものは何かというならば、額に汗して働く方々が報いられたと感じられるようなものにしたい、そういう体系を求めたいということであります。  その上で、今までにも申し上げてきたことでありますけれども、現在の特別減税を加えたものではなく、本来の税率として、標準世帯で考えたとき、我が国の課税最低限三百六十一万円、言いかえればそれ以下の方々に所得税を負担していただいていない。アメリカでは二百四十五万円、イギリスでは百六万円から上の所得のおありの方々は所得税を負担しておられるという実例を申し上げながら、既に所得の低い方々に対して配慮した税制になっている。  所得課税を考えるときには、資産性所得課税あるいは年金課税、あるいは税率の構造、各種の控除、そうしたもののあり方など幅広くきちんとした検討を行っていきたいということを申し上げております。
  96. 菅直人

    ○菅(直)委員 我が党の税制については後ほど申し上げようと思いましたが、今総理からお触れになりましたので、所得、住民税を、これは納税番号とかそういう整備をすることも前提としながら、やはり上限を合わせて五〇%程度に目指していくべきだ、法人税は四〇%程度に目指していくべきだと。後ほどそれを含む提案をさせていただきますが、そのように考えております。  今総理は、しきりに課税最低限の外国との比較を言われておりますが、法人税を例えば大きく下げるとすれば、先ほど申し上げたように、せんだって通された財革法では頭打ちになって難しい、だから再度必要じゃないか、宮澤さんがどこで言われたかということを聞いているのじゃありません、中身がそういうことではないですかと申し上げたことについて聞いているのですが、総理の答弁はちょっと違っているのですよね。  そこで、恒久減税、つまりそういったことを含めた恒久減税が、私たちは、景気対策ばかりではなく経済構造の改革にとって重要だ、つまりは、国民の皆さんからたくさんの税金を受け取って、それを政府の方針でいろいろなところに投資をする、そういう形は、ある意味では、経済の発展した国ではその率は非常に小さいわけですから、もっと景気がよくなればその部分は小さくしていいのじゃないか、このように考えております。当面は、この景気の悪さですから、ある程度の公共事業も必要だと思っています。  しかし、これに対して、ちょうど私と同じころアメリカにおられた加藤幹事長が、恒久減税は効果が薄いというようなことを発言されて、翌日の日本の株が一挙に下がったのを御記憶になっていると思います。総理は、恒久減税が効果が薄いとお考えですか、それとも効果があるとお考えですか。短期的、長期的、あわせて。
  97. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、まず第一に、先ほど所得課税の部分だけお答えいたしましたが、法人課税につきましては、私は三年以内のできるだけ早い時期に国際水準並みにこれを下げていきますということを申し上げております。  その上で、この中に地方税としての法人事業課税があることは御承知のとおりでありまして、これは住民税も同じことでありますけれども、地方税財源としての議論が並行して行われること、また、議員は恒久減税という言葉を所得税について用いられながら、所得の高い方々の分の率の引き下げにはお触れになりましたが、それ以外の御説明がいただけませんでしたので、全体の構図は依然として明確ではないと思います。  その上で、私は、税の負担が少ない、それはどの税でありましても、国民にとってそれだけ負担が少ないということであることは間違いがありませんし、その意味でのよい知らせであることは間違いないと思います。しかし、それが経済にどう生きるかは、そのほかの部分、例えば社会保障の各種の負担の状況はどうあるのか、あるいは税体系全体の中における公平、そうしたものはどうなっているのか、そういったものによっても影響を受けると思います。  そして、短期的に、どちらかというと公共事業の方が即効性があるということを言われてはおりますけれども、長い目で見れば、減税減税なりの効果を生むでありましょう。定量的に図ることはなかなか難しいと思いますが、これは、逆に国民負担率全体の中で、十分なバランスを、その時点における国民の合意とともに形成していく必要のあることだと思います。
  98. 菅直人

    ○菅(直)委員 再度我が党の考え方を、お尋ねがありましたので、大筋、所得税、住民税を八割程度に下げたいという線で検討していることを申し上げておきます、我が党がですね。  そこで、今総理が言われた中で、短期的には公共事業があると言われているけれども、まあこれも伝聞上と言われましたが、長期的には減税効果もあり得るということを言われました。しかし、自民党の政策といいましょうか、今回のこの予算案が出ている中身も、特別減税を三度繰り返す、これ自体、総理はかつて愚の骨頂だと言われたわけですが、みずからその愚の骨頂のことをやろうとされております。多くは公共事業になっております。  私は、加藤幹事長や最近の山崎政調会長の発言を聞いていると、よくわかってきたのですよ。恒久減税が効果がなくて、公共事業の方が効果がある。つまり、減税だと一定のルールですから、特定の人だけに減税をするわけにいかない。国民に一律の、つまりは一定のルールで減税をする。公共事業の場合は、いろいろな選挙区へ行って聞いてみてください、この選挙区で我が党の候補者が通らないと公共事業、国の予算は持っていきませんよ、片っ端から言って歩いているじゃないですか。  ああ、なるほど、つまりは選挙に効果があるかないかを言っているのだなということが非常にはっきりしますね。つまり、公共事業であれば、自民党を応援してくれる人を集めて、あなた方に仕事を持ってくる、場合によったら、それによって、献金なのかあっせんなのかわかりませんが、あっせん利得を受けて、それによって選挙をやる。メリルリンチの報告書を私も読みましたが、この十六兆六千億の公共事業を中心とした対策で自民党の次の参議院選挙は安泰だ、そう書いてありました。  つまり、公共事業に偏重するのは、自分たちの党のことを考えて、長期的には総理自身が場合によっては減税の方が効果があるのだということを言われながら、短期短期に繰り返し繰り返しそれをやった結果が、この七十六兆であったり、今日の三百四兆のこういう累積債務を生んだのじゃないですか。  総理はこの点についてどうお考えになりますか。
  99. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、これも大変残念な御質問だと思います。  私は、減税についても、それは効果はあるでしょうということは確かに申し上げている。その上で、その税目によって、受ける影響、恩恵を受ける方々、皆違うのは、私が申し上げるまでもなく、議員はよく御承知のはずであります。言いかえれば、所得税減税というものを行った場合に、現在所得税を納めておられない方々には恩典は及ばない、これは事実であります。  また、これは、特別減税を確かに私どもは景気のために採用いたしておりますけれども、この特別減税考えましたときの本院の御議論でも、各党の皆さんから、これが消費に回る保証はあるのか、貯金になってしまうのじゃないかという御指摘、随分ありましたね。もし貯金になってしまえば、これは消費の拡大にはならない。公共事業というものは、事業実施する限りにおいて確実に一定の消費をつくり出すものであることは事実であります。  そうした点を選挙というものに絡めて考えておるかのような御発言のありましたことを、私は大変残念に思います。
  100. 菅直人

    ○菅(直)委員 選挙に絡めての発言がまずいのであれば、みずからの党の、自民党の幹事長の発言、自民党の政調会長の発言、持ってきましょうか、こんなにありますよ。だれが一体選挙に絡めて発言しているのですか。(橋本内閣総理大臣「おれ発言していないよ」と呼ぶ)総理が発言していないと言ったって、内閣のメンバーだって発言しているのじゃないですか。国民が、有権者がそんなことでごまかされるわけないでしょう。(発言する者あり)
  101. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  102. 菅直人

    ○菅(直)委員 熊本一区でも、長崎四区でも、長崎一区でも、すべてのところで自民党の幹事長や政調会長やあるいは幹事長代理が話をされているじゃないですか。  それでは、我が党は今、地位利用罪というものを含む政治腐敗防止法を提案いたしております。与党三党は、あっせん利得罪でまとまらないで与党が崩壊したようでありますが、つまり、公共事業を持ってきて、それであっせんして利得を受けるということをやらないと言うのだったら、せめて率先してその法律に賛成すればいいじゃないですか。なぜ総理は、あっせん利得罪に賛成されないのですか、党として。
  103. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何で僕がそんなにかんかん言われなきゃいけないのだかわからないのです。今まで、幹事長とかいろいろ名前挙げられました、ほかの方がどういう演説しているか、実は私いつも一緒ではありませんからわかりませんけれども、私、そういう話をしていないということは、事実申し上げたことです。  その上で、先般の、一昨年の衆議院選の後に、当時、社民、さきがけ、自民三党が協議をし、閣外協力を決めましたときに、幾つか議論の合わないテーマ、確認をいたしておったものがございました。それは、特措法を含む沖縄に絡む問題であり、またガイドラインに絡む問題であり、政治倫理、資金の関係の問題でありました。  そして、与党三党という体制の中で真剣に論議をした上で、意見の合いましたものは今回法律の形で国会に提案をいたしております。そして、あっせん利得という考え方、法律的に我々はなかなか納得し得ないものを持った、結果として議論が集約できなかったということは事実の問題です。
  104. 菅直人

    ○菅(直)委員 私がかんかん言ったとか言われましたけれども、選挙にかかわることを言われないと総理が言われるから。  よく総理は、自分は総理大臣なのであって自民党が言うことは知らないなんということを平気で言われますよね。自民党の総裁じゃないのですかね。国の内閣というのは、国会の多数派が指名して内閣総理大臣になり、自民党の場合というか、多くの場合は自分の党の総裁、いわゆる党首を総理大臣にするんじゃないのですかね。党首をやめたという話はまだ聞いておりませんよ。  それで、幹事長というのは、まさにそれに次ぐポジションの方じゃないですか。そういう人が話をしたことについて私が言ったら、何でそんなに怒って言うのですかと。当たり前じゃないですか。つまりは、今回の予算案を含めて、さっきも若い議員が言われていたじゃないですか、党主導で出したんだ、内閣提案だけれども党主導で出したんだ。まさに党と内閣が一体で出されたのは、別に結構ですよ。それなのに、責任は自民党で、何か、自分の方にはない、そういうことを言われるから、真正面から答えてないというふうに申し上げざるを得ないわけです。  そこで、もう一度だけ申し上げますが、このあっせん利得罪、私はなかなか難しい問題だと思いますが、少なくとも、公共事業のように国のお金を直接箇所づけをするような場合に、今、他党でいわゆる入札干渉罪ということも検討されておられるようですけれども、そういうことは、まさに李下に冠を正さずで、きちんとする必要があると思うのです。  これは、総理は御存じのように、福祉の分野というのは、そんなに個別に、何かここだけにということはないですが、公共事業の分野というのは、この橋とか、箇所づけがあるわけですから、そういうことはきちんとすべきなんですよ。それをやらないところに、まさに何のための公共事業が、偏重があるのか。そこには自民党の選挙に有利なような配慮が働いているのではないかと、私は正しいことを申し上げていると思いますが、違いますか。
  105. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の目から見ると国の行政がそんなふうに見えるのかな、大変残念に思います。  そして、議員御自身、御出身の都あるいは区、どういう関係をお持ちかわかりませんけれども、普通、地方自治体それぞれ、党派を超えて、次年度予算に向けて自分たちはこういう事業をやりたいという説明もありますし、国会議員団の協力も求められますし、その中で協力していく。各党、各議員、そうして活躍をされたのじゃないでしょうか。  例えば、私どもは岡山県であります。私どもは、岡山県、香川県挙げて本四架橋をつくりたい、私どもが国会議員になったころから、まさに瀬戸大橋をつくりたいという夢を持ち、全国会議員が協力をし、これが実現したことを大変喜んでまいりました。公共事業というものをすべてそのようにごらんになっているのだとすれば、大変情けない思いがいたします。
  106. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、橋本総理はそういうふうに物をすりかえられるのですよ。当然、下水道が必要ですし、道路も必要なものはたくさんありますし、あるいはバリアフリーの住宅なんかもつくらなきゃいけないし、いろいろ私たちも提案していますよ。  それから、今申し上げたあっせん利得罪は行政じゃないのですよ。すっとすりかえるのですよね、行政をそう見られているのは情けないと。あっせん利得罪というのは私たち議員があっせん利得をしちゃいけないという法律なんですよ。そんなことを百も承知の総理が、すりかえた答弁をされないでいただきたい。  少し話を進めます。  そこで、いよいよ不良債権の処理について、いろいろと総理も発言されています。バランスシートから外すとかいろいろ言われています。あるとき、大手の新聞が、ゼネコンに徳政令、ゼネコンの借金棒引き、こういう表現をいたしました。今回の臨時不動産関係権利調整委員会、その中身をいろいろ聞いてみますと、まさにゼネコンの中でどうもこれはうまくいかないというようなときに、いろいろな条件はあるのでしょう、場合によったら棒引きをして銀行の方の償却を無税にするとか、いろいろな議論がされているようです。そういう趣旨なんですか。この新聞に書いてあったゼネコンへの徳政令、こういう中身を含んでいるのですか、総理
  107. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 細部にわたりまして大蔵大臣から補足をお許しいただきたいと思いますが、その上で、私はあっせん利得収賄罪というより、先ほど議員が挙げられましたようなケースであれば刑法犯そのものではないかと思います。(発言する者あり)
  108. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  109. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 刑法犯であれば、当然ながら刑法犯としての処分があるでありましょう。  その上で、今、議員はゼネコン徳政令という言葉をお使いになりました。その意味がもうひとつよくわかりませんけれども、あるいは党がまとめました土地・債権流動化トータルプラン、あるいは政府総合経済対策でお示しをした企業の再建計画の実行と連動した金融機関の債権放棄の促進のことかもしれません。  だとするなら、これは金融機関の不良債権問題の抜本的な解決を図って、金融機関が本来の機能を取り戻すことを目指しているものでありますし、その手法は、従来から認められておりました金融機関の経営判断に基づく債権放棄について税務上の取り扱いを明確にするものであり、債権放棄を強制するものではございません。  金融機関の債務者は幅広い産業にわたっております。ゼネコンもその一部にあるでありましょう。この構想は、金融機関の不良債権問題の抜本的な解決を図り、金融機関がその本来の機能を取り戻すことを目指しているものであります。
  110. 松永光

    松永国務大臣 今我が党であるいは政府で検討している問題については、今総理からお答えがありましたが、もし委員の指摘が、先般発出いたしました法人税に関する基本通達の改正についての話でありますならば、これも業種を指定しての通達じゃございません。  債権者が債務者に対してどれだけ請求しても取れない、通常ならばそれは強制執行あるいは破産まで行くわけでありますが、それに行かなくとも、債務者の方が関係者と協議をして再建計画が立てられ、債権の一部または全額を放棄した場合に、これは従来から、合理的なものであれば損金に認めるということでありましたが、先般の基本通達の改正の通達は、それを通達上明確にしたということであります。  そしてまた、それは銀行業者とかあるいは土木建設業者とか、そういう業種に限ったことではございませんで、全部の債権債務の処理の関係についての基本的な通達の意味を明瞭にしたわけでありますから、ゼネコンに対する徳政などというのは、全くいわれなき反対論としか言いようがございません。
  111. 菅直人

    ○菅(直)委員 大蔵大臣が、私が聞く前に、みずから言っていただきました。つまりは、ゼネコンには限らないけれども、債権放棄ということについての手続を明確にしたんだと。  債権放棄というのは何ですか。借金棒引きということじゃないのですか。ですから、最後に言われたことと、手続がどうであるかは別として、債権の放棄ということにつながる問題なので……(発言する者あり)もうちょっと先をお聞きしますから、そう慌てないでください。  この法案は、内政審議室が準備室か何かをつくってやっていますね。不動産関係権利調整委員会、国家行政組織法の八条に基づく委員会としてつくりたいということを言われています。簡単に言えば、関係者に集まってもらって、いろいろ調整をして、そして合理的な理由があったら国税の判断でそういうやり方をとる。そうやった場合、いろいろ問題があるのですね。  もしそれで合意したとして、では、銀行が債権棒引きだ、無税償却だと。無税償却そのものも問題があります。しかし、無税償却したって、債権を放棄するということは、場合によったら、つまりは銀行の資産がなくなるわけですから、そうすると銀行が成り立たなくなる可能性がある。こういう場合はどうされるのですか。
  112. 松永光

    松永国務大臣 銀行が不良債権を放棄した場合には、実は貸出債権が減るわけですね、不良債権がバランスシートから消えます。その意味では、銀行の貸し出し分が、いわゆる自己資本比率からいけば分母が減ることになりますね。同時にまた、引当金と……(菅(直)委員「わかっているの、こんなこと答えて」と呼ぶ)いや、今それを言っているんじゃないのですか。  貸出債権が実質上取り立て不能、こうなった場合にどう処理するかという問題なんです。一番明瞭なのが、破産まで持っていくか、あるいは和議まで持っていくか、抵当権を実行してみるか。そこまで行って初めて債権放棄というのは、だれの目から見てもこれは取り立て不能ということが明らかになるわけです。  それを待っておっては、実は不良債権の処理が進まない。したがって、合理的な再建計画が立てられて、何人が見ても合理的、こう思われる場合には、利息の免除とか債権の一部放棄とか全部放棄とか、そういった場合に合理的であれば損金として認める、こういう趣旨でありまして、それはゼネコン徳政などというものではございません。
  113. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、そんなことは、今、既に従来からやっていることを説明されただけですよ。  私が申し上げたいのは、そうやったときに銀行が債務超過に陥る場合があるのじゃないか。わかっているんですか。例えば百億円貸して、百億円の担保があるけれども、もうどうせとれないから、百億円をもう借金棒引きをする。そうすれば、本来なら返るべき百億円が返らないことを確保するのですから、わかっているんですか、大丈夫なの、この答弁で。  債務超過になったときは、だから銀行が、本来返るべき債権がなくなったときに、また足らなくなるから……(発言する者あり)ちょっと委員長、黙らせてください。
  114. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  115. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、こういうことなんですよ。もう少しわかりやすく言えば、今、ある銀行がたくさんのお金を、ゼネコンでも何でもいいですが、お金を貸している。従来なら当然返ってくると思っていたけれども、一分類、二分類とありますが、まだ大丈夫だと思ったけれども、どうもだめだ。だめだから、では債権放棄しようとなったら、そうすると、その部分は債務が、つまりは債権が少なくなるわけですから、本来返るべきお金が足らなくなる。そうすると、債務超過になることがあるわけですね。そのときに銀行に対してまた支援をするということなんですかということを聞いているのです。つまりは、ゼネコンに直接支援しないかわりに、借金棒引きをするかわりに銀行を支援する、そういうスキームになっているのですか、そうお聞きしているのです。
  116. 山口公生

    ○山口政府委員 お答えいたします。  銀行が持っている債権、つまりその債権がとれないというときは、確かに、不良債権として直接償却するか、あるいは引き当てをするという間接法償却をするかということが必要なわけでございます。これは企業会計上、当然そういうことであります。  そのときに、財源の手当てが既に済んでいるもの、これが引き当てが済んでいるということであります。今私どもが見ておりますと、大体三分の二ぐらいは引き当てが済んでおりまして、不良債権とそれに見合った引当金というのがあります。それをバランスシートから両方落とすときには、これは銀行としては既に手当て済みでございますので、損益上も影響なしで、それで債務超過にすぐなるということではありません。  しかし、引き当てが済んでいないものを、相手がつぶれた、あるいはつぶれそうだということでやる場合には、もちろんそれは、その部分に限って言いますと、それは自分の利益を食う、あるいは場合によっては資本を食うかもしれぬ、こういう計算であります。  概してみますと、大体三分の二強は両建てでの引き当てということで銀行はそういう処理を既に済ませております。しかし、バランスシートに載せたままで済ませたというのは銀行側が済ませただけでありまして、その不良債権がもう少し流動化されたり、あるいは担保の不動産が市場で利用されるということが最終的な不良債権の処理だとしますと、総理がおっしゃいますように、バランスシートから落とすということのためのいろいろな手だてをしなければいけない。  そのときの一番ネックになるのが、権利義務関係が非常に複雑である。だから、銀行はそれをどこかに売却しようとしても、もうそれがネックで動かない。そうすると、裁判所に持ち込めばそれは解決する。しかし、時間がかかるかもしれないということでなかなか動きにくい。そこで、合理的な解決がもし当事者間でできるような仕組みが認められれば、それは不良債権処理の促進になる、こういうことでございます。
  117. 菅直人

    ○菅(直)委員 今の銀行局長の答弁は、実務的なところはそのとおりでしょう。しかし、さっき言われたように、まさに三分の二は手当てが済んでいる、三分の一は手当てが済んでいない。じゃ、利益があるのか。資本があるのか。資本を食いつぶしたときに資本が小さくなって大丈夫なのか。そのときに、例の三十兆円から公的資金としてその銀行支援ということにならないのですか。そういうときに、公的支援を公的資金から、ゼネコンのやつをまけてやったんだから、よしよし、今度は国が銀行を助けてやろう。  総理、これはならないのかなるのかだけ、はっきりしておいてください。でないと、国民が迷いますからね。
  118. 松永光

    松永国務大臣 委員は相当誤解していらっしゃると思うのです。  先ほど銀行局長、引き当てしてあるのが六〇%、七〇%と言いましたけれども、どういうことかというと、破綻してしまった相手に対する債権については、これは大体一〇〇%引き当てですよ。問題は、相手、貸し出し先の会社について相当注意していかないと問題ありという、いわゆるリスク管理債権といいますか、そういったものについての引き当て率が必ずしも一〇〇%ではない、こういうことなんです。それが四〇とか五〇とかという率だということなんですよ。  したがって、放棄した場合に、引き当てしてあるものは、これは別に損は立たないのです。引き当てが足りない分について損が立つということなのであります。したがって、債務がふえるというのじゃないんですよ。貸し出し量が減るということなんです、数字上の。そういったことであります。  そして、そういったことで、資本にまで食い込むというようなことがあって、自己資本比率について低下するおそれがあるとか、あるいはこれ以上の貸し出しを拡大していくことが難しいとか、そういう状況に立ち至った銀行があって、かつ、その銀行の経営は決して悪化していないというふうな条件の場合に、例の十三兆の資金の中から資本注入を得たいという申し込みがあった場合には、厳正な審査の上で資本注入に応ずることはある。  その場合に、ただで注入するのではございませんから、きちっと優先株なりあるいは劣後債などについて時価相場による利子は取るという形で注入することになっておるわけでありまして、現在、実行したものについては、預金保険機構が手当てをした利息よりも一%以上利息を上乗せした形で注入してありますので、公的資金に迷惑をかけるというようなことはないということでございます。
  119. 菅直人

    ○菅(直)委員 この法律は次の国会に出されるそうですが、最後、割と大蔵大臣、素直に言われましたよね。場合によっては、いろいろな銀行の状態によっては劣後債や優先株を、公的資金をそこに注入することはあり得る、そういうことは認められました。それがいいのかどうかですね。  私どもはもともと、こういうやり方ではなくて、債権それ自体を買い取るなり、あるいは場合によったらそれにかわって、日本版RTCのように、もっと強力に債権回収を直接やれる機関を、中坊機関のようなものを大きくしてつくるべきだ。今回の場合は、調整機関であって強制力はありません。ですからそういうことを提案しているわけですが、これはまだこの国会に法案が出ているわけではありませんので、十分議論をこれからさせていただきます。  そこで、少し我々の考え方を含めて、質疑を行いたいと思います。  きょうの新聞、やはり一番気になる問題の一つは、出生率がまた一・三九というところまで下がっておりました。東京はその中で特に低い一・〇五であります。  ここに平成九年度国民生活白書というのがあるのですが、仕事についている結婚している女性の出生率は、東京は〇・五一、神奈川が〇・四九。いろいろな数字がありますが、やはり保育所なんかは、そういう世帯に対して比較的都市部の方が少ない、こういうことも影響しているのかもしれません。  あるいは、私たちは、今回の問題で幾つかの政策課題を提案いたしております。育児休業の所得保障が、現在、雇用保険を中心に二五%になっているわけですが、やはり出産、育児と仕事を両立できるかどうかというのが非常に大きな課題だ。そう考えますと、この育児休業、さらに言えば介護休業、そういう場合の所得保障を六〇%に引き上げるべきではないか。試算をしてみましたら、利用率が二倍程度に上がったとして、二千三百億円、年間プラスでかかるというふうに私どもの試算では出ました。  総理は、こういう考え方についてどうお考えですか。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 むしろ、今議員の御質問を伺いながら、随分やはり世の中の考え方が変わったなとしみじみ思っております。  と申しますのは、教職員、福祉施設職員、医療施設職員対象の育児休業法を超党派でつくりましたときの私は一人でありまして、その提案者でもございました。そして、そのときに、せめて前年度所得にかかる税金あるいはその間をつながなければならない保険料、その分の所得を保障できないだろうか、随分議論をいたしましたが、その当時は全く、その間の収入を補てんするという考えすら受け入れられませんでした。そして、各党、その点は断念をしながら、制度をつくることが大事だということで、この三業種の育児休業法を書きました。  その後、少しずつ少しずつ世の中が変わってまいりました。そして同時に、育児に加えて介護が追加されるようになりました。そして、介護休業というものが現実のものになり、今、その間の何らかの保障をというものが現実の論議として誕生するようになっております。  私は、これは社会保障あるいは福祉政策全体の中でバランスよく位置づけられるものだと思いますし、少なくとも従来から、私どもがこの制度をつくりますときから、その間の税あるいは各種保険料、身分の継続といったものが非常に関心のあった部分でありますだけに、興味深く拝聴いたしました。
  121. 菅直人

    ○菅(直)委員 ある意味では趣旨には賛同いただけたと思います。  さらにいろいろなデータを見ますと、子供にかかる費用の中でも、例えば大学に行くあるいは専門学校に行く、特に地方から大都市に子供が出て仕送りをする、ここにあるデータがあるのですが、大体一人について仕送りが年間百五十一万円、月平均十三万円ぐらいかかるというデータが出ております。私どもは、こういうものについても、所得控除などを含めた教育減税考えるべきだと。  さらに住宅住宅には私どもも二つの提案をしております。  一つは、先ほど来不動産、ゼネコン等のいろいろな、銀行の方がありましたが、マンションを買ったのだけれども転勤になって売りたい、損が出る、せめてこの損を一部税でまけてくれないか、所得控除ができないか。こういうキャピタルロス、これは本当になかなか深刻なんですよ、サラリーマンにとっては。そういうキャピタルロスについての若干の繰り延べやそういったもの。  さらには、新規に買う場合に、住宅建設費の一・五%を六年間、合わせると約九%になりますが、これを控除する。こうすれば建設促進にもなっていく。今地価が安いし、工事費も安いですから、そういう促進税制をやったらどうか。  こういったことを実は民主党の、大変恐縮ですが、ここに、民主党政権になれば何が変わるかとあえて申し上げさせていただきましたが、そういう中に今申し上げた育児休業の問題、住宅減税の問題、そして教育減税の問題、これらをきちんと議論をして提案をしてまいりました。  さらに申し上げたいことがありますが、総理に、こういった教育住宅に対する減税について、いかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それぞれの項目を独立して、それがどう思う、大事か大事でないか。今挙げられたもので、大事でないとお答えする方はだれもいないと思うのです。  その上で、税というのは全体のバランスの中で組み合わせられ、さらに社会保障にかかる負担、言いかえれば、保険料等と組み合わせられながらきちんと形づくられるものではないでしょうか。そして、例えば教育という問題一つをとらえましても、少子社会ということから見れば、低学年児童の時期に達するまでの時期をカバーする方が大事だという考え方、高学歴の部分に対しての負担を中心に考えるべきという考え方、さらには、例えば第二子以降、第三子以降といった問題のとらえ方、いろいろな角度からの議論があろうと存じます。  テーマだけを掲げられて賛否を聞かれて、それでお答えができるほど単純な問題だとは私は思いません。
  123. 菅直人

    ○菅(直)委員 そのとおりですね。ですから、私たちは六兆円の恒久減税という枠の中で申し上げているのです。六兆円恒久減税というのは、この年初来、民友連の時代から申し上げているわけです。しかし、自民党や政府は、特別減税でいいんだ、あとは公共事業でいいんだと。だから、私たちの提案は当然ながら一つも政府の提案には入っていないわけで、個別ではないです、個別のことを含んだ全体の枠組みを提案しているわけです。  そして、所得税、住民税や法人税についても、先ほど申し上げましたが、基本的な考え方を申し上げたところです。(発言する者あり)ですから、あえてやじに答えるわけじゃありませんが、先ほど来申し上げているように、皆さん方も、十六兆六千億、その多くは、全部が真水ではありませんが、赤字国債だと。我々も、この間はまさに財革法を凍結してでもやれと言ったのは私たちですよ。皆さん方は凍結しないから、これはやりたくてもできないんですからね。そういうことをちゃんと答えているじゃないですか。やじで質問されるのも自由ですけれども、ちゃんと答えていますから。  そういう中で、私の持ち時間はもう少ないので、最終的に、もう一度だけ基本的なことを、立ち戻って申し上げてみたいと思います。  つまり、橋本政権というものをどういうふうに評価をするかということなんですよ。まさに先ほども申し上げたように、もちろん、株と為替だけですべてが決まるわけではないことは百も承知です。しかし、これが大きな指標であることも事実です。  そして、実質経済成長率も二・九%当時から下がりました。失業率は〇・七%上がって、五十五万人ぐらいふえています、失業者が。財政赤字は何と七十六兆円もふえました。許認可件数、行革の火だるまになってもと言われましたが、許認可件数も件数という表現でいえば、これは政府から発表された数字ですからね、二百七十二件、何と内閣発足時から比べてふえているんですよ。  そうすると、成績表はどうなるか。私が成績をつけなくたって、どれも不可、不可、不可、不可、不可、不可。つまりは、もう国民としては、橋本内閣は、どの科目でもとても合格点は上げられない。そういう意味では、一日も早く退陣していただきたい。そのことを、我が党もそのことで不信任案を出すことを用意していることを申し上げて、同僚議員に質問を譲りたいと思います。
  124. 越智通雄

    越智委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也です。菅代表の時間の枠の中で、若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず、経済景気対策であります。  先ほど来話に出ておりますように、四月の失業率が四・一%という史上最高になりました。完全失業者の数は二百九十万人であります。二百九十万という数がどれほどのものであるのかということを想像していただくために申し上げますと、例えば広島県の人口が二百八十八万人、茨城県の人口が二百九十八万人でありますから、広島県や茨城県の、そこに在住する県民のまさしく赤ん坊からお年寄りまですべての人が、働きたいけれども職がない、それが今の現状であります。  この一年間で五十九万人の失業者がふえました。その中でも特に目立つのは、中高年齢者の失業者であります。統計によりますと、四十五歳以上の有効求人倍率は〇・二一、五十五歳以上になりますとわずか〇・一一でありますから、一つのポストに対して、職業に対して十人の人がそれを求めている。そのうちの一人しか職業につけないという大変悲惨な現実であります。  四十五歳とか五十五歳ということになりますと、家庭においては一家の大黒柱であります。お子さんは例えば中学校や高校あるいは大学に行っておられて、突然職を失う、途方に暮れる、そういう大変残念な、人生においても非常につらい状況に陥っている方がたくさんいらっしゃるというのが現実であります。  先ほど労働大臣の方からいろいろ雇用対策について述べられましたが、私は、今ここでその雇用対策の中身の是非について論じようとするものではございません。むしろ、こういうことが起こった、その政府景気現状に対する認識について、ぜひ総理のお考えを聞きたいと思っております。  この予算委員会審議において、わずか二カ月前、あるいは三カ月前、つまり三月におきまして、何度も何度も、桜の咲くころには景気回復基調に乗るとか、一―三月は大変厳しいけれども、それを通り越して四月になれば順調な回復基調に乗るという答弁が繰り返されたわけでありますけれども、その四月が現実の数字となって出てくれば、先ほどの四・一という史上最悪の失業率だ。このことについて、まず総理の責任といいますか、これだけの認識の違いがあったことについて、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  126. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 経済判断等につきましては、補足をまたお許しいただかなければなりませんが、今まさに、景気のためにこの補正予算の御審議を願っております。そして、議員は雇用情勢について非常に厳しくとらえられましたが、私も同様にとらえておりますし、それ以上に、特に四十五歳以上あるいはそれ以上の部分におきまして非自発的退職者の数がふえていること、これは非常に私は気になっております。  そして、特にこの一両月非常に気になっておりますのは、同時に、一方はあるいはリストラその他で発生したもの、これを吸収し切れないという理屈がつくかもしれません。そしてその場合に、職業訓練等の対応をもってこれにこたえることができるかもしれません。  しかし、もう一つ、私がこの雇用の指数の中で非常に気になっておりますのは新卒及び若年者であります。しばらく前までは求職者数が求人を下回っておりました。言いかえれば、自分が好きな職につけないかもしれないけれども、働く意思があれば若い方の場合には職がありました。この一両月、有効求人倍率が若年層において一を切っております。これは私にとりまして非常に重たい数字でありますし、新たな業が起こる、それが実は残念ながら転廃業の数を下回っている状況とともに、今の状況を非常に厳しいものと私に受けとめさせている、そうした大きな数字でもございます。  それだけに、雇用対策というものにつきましても、ただ単に例えば南関東とかいったブロックでとらえるのではなく、地域というもの、その地域における業種構成というもの、そしてその地域における職を求める方々の年齢構成等、雇用失業情勢により即した対策をつくろうと今努力をしておるところであります。
  127. 岡田克也

    ○岡田委員 確かに若年者も、二十四歳以下の失業率は八・五%ということですから、大変高い水準であります。  ただ、私が今総理にお聞きしたかったのは、失業ということについての総理の御見解ではなくて、そもそもこういうことが起きたのは、春になれば景気回復基調に乗るというふうに何度もそういう認識を述べられた、そういう認識の甘さあるいは誤りをどういうふうに考えておられますか。四月になって現実に数字が出てきたら、大変厳しい数字だった。  つまり、桜の咲くころに景気回復基調に乗るのじゃなくて、桜が咲くころにまさしく景気が一段と落ち込むというのが現実だったわけですから、そのことについて、どのように責任をお感じになりますかということをお聞きしたわけであります。
  128. 尾身幸次

    尾身国務大臣 昨年来の景気の動向でございますが、秋口以降、企業の倒産やあるいはアジア経済状況等を反映いたしまして、家計や企業経済の先行きに対する不安感が非常に強くなりました。そのことに対しまして、金融システム安定化対策あるいは二月の特別減税等の措置をとったところでございます。  そういうことによりまして、景気に対するマインドあるいは消費者の態度というものはやや正常化しているような兆しが見られると考えております。しかし、そのことの影響がことしに入りましてから、生産あるいは雇用等の実体経済全般にまで及んできておりまして、そういう意味で、先ほど来のお話のとおり、景気が非常に厳しい現状にあるというふうに認識している次第でございます。これに対しまして、私ども現在提案をしております総合経済対策によりまして、補正予算も組み、景気を順調な回復軌道に乗せたいということで今提案をしているわけでございます。  ただ、そういう状況でございますが、現在の状況は、例えば平均消費性向で見ますと、九月の消費性向七一・九%から急速に消費者マインドが悪化をいたしまして、二月までに六八・四%という低水準にまで消費性向が低下をいたしました。三・五ポイント、金額ベースで十兆円を超える消費性向の低下があったわけでございますが、二月の特別減税等の効果もあり、マインドもやや改善をしたと私は思っておりますが、三月、四月には、三月には消費性向が七一・七%に戻り、四月にはさらに七二・九%ということで、固定資産税の払い込みの時期等の影響もありますけれども、やや消費性向そのものは正常化しているというふうに考えております。  ただしかし、可処分所得が生産、雇用等の影響を受けまして低下していることがありまして、消費の絶対水準は低いわけでございますが、消費者マインドを示す消費性向には回復の兆しがかなりはっきりと見られるというふうに理解をしております。
  129. 岡田克也

    ○岡田委員 大変長い御答弁だったと思うのですが、一言、消費性向について、企画庁長官、何度もいろいろな場でおっしゃいますから。  私の認識はちょっと違うのですね。消費性向というのは、可処分所得を分母にして、分子は幾ら使ったかということですね。だから、消費性向がよくなるということは、たくさん使う場合もそうなりますけれども、分母の所得が減れば消費性向が上がるのですね。今回の場合、確かに四月は時間外手当が非常に減って所得が減っていますよ、それが消費性向が上がった理由であって、全く原因と結果を取り間違えている、私はそういうふうに考えております。  いずれにしましても、私の質問は、責任はどう感じているのですかということに対して、今の総理経済企画庁の御答弁ですから、テレビを見ておられた方はそれを見てどういうふうにお感じになるのか、私には、私の質問に答えていただいていない、そういうふうにしか思えないわけであります。  時間がございますから、次に参ります。  今までの政府経済対策を見ておりまして、いろんな意味で機動的な対応が打てないでいるということを非常に感じるわけであります。そして、その妨げになっているのが、言うまでもなく財政構造改革法であります。  例えば、昨年の十二月に、総理は二兆円の減税ということを突然打ち出されたわけでありますが、私は、あの減税が、もちろん一時的減税でありますから効果に限りはありますけれども、もし一カ月早く行われていれば、十二月のボーナスの時期に間に合った。そうすれば減税は一挙にできたはずなのですね。  ところが、一カ月おくれたために、ことしに入って何カ月かに分けて減税をする、あるいは事業者所得の場合にはまだ減税が終わっていない、住民税も終わっていない。そういうことで、細切れの減税になってしまった。大変もったいないことだと思うのです、同じ二兆円を使うのなら。しかし、なぜ十二月まで二兆円の減税を決断できなかったかといえば、国会において財政構造改革法の審議が進んでおりまして、とてもそんなことが言えない状況にあったということだと思うのです。  それから、今景気対策補正予算審議しているわけでありますが、これだって、もし四月に当初予算を改正して景気対策を盛り込めば、二カ月早く手を打てたはずであります。しかし、財政構造改革法があって、減税ができない、公共事業の積み増しもできない、そういう中で本予算をまず通して、これは立派な予算です、こう言って通して、その後で法改正をして補正予算をするということで二カ月おくれた。つまり、財政構造改革法が足かせになって後手後手に回っているという現実があります。  私は、もう済んだことは済んだことでこれ以上言うつもりはございませんが、これからもそういうことが起こり得るから私は申し上げたいわけであります。つまり、以前に総理にも御指摘申し上げたと思いますけれども、来年度予算において公共事業予算をどうされるのですか。財政構造改革法で、公共事業予算のキャップを外しませんでした。  ということは、今年度当初の、財政構造改革法十四条に言う公共投資関係費というのは十兆四百六十九億円であります。補正後で十三兆五千三百九十六億円。来年度当初は十年度当初よりも減らさなければいけませんから、十兆しかできない。そうしますと、今の十三兆五千三百九十六億円から十兆まで三・五兆円以上、割合にして二五%公共事業予算を減らさなければいけないのですね。  私は、公共事業予算景気対策としていいとは思いませんけれども、もし自民党や政府の皆さんが公共事業予算景気対策として重要だ、減税よりも効果があるとおっしゃるのであれば、どうしてみずからの手足を縛って、そして来年度またデフレ予算を組もう、こういうことにされるんでしょうか。  大蔵大臣は、私の質問に対して、いや来年のことは考えていないというふうに口を滑らせておっしゃいましたけれども、もしそうだとすれば、改めてお聞きしたいと思うんですけれども、来年度の当初予算、公共事業予算がわずか十兆円ということで、二五%ことしに比べて減になる。それで本当に景気対策をやっていけるというふうに、公共事業は一番景気対策として効果がある、そういうふうに主張しておられる政府として思われるんでしょうか。  私は、そこのところについて、公共事業についても何らかの手が打てる形にしなかった、そういうことを見ておりまして、国民の皆さんは、ああやはりこれは支離滅裂だ、行き当たりばったりだ、こういうふうに思っておられるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  130. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  前々回でしたか、ちょっと私は言い直したつもりですが。具体的な数字については考えていないと言ったのであって、何にも考えていないとは申し上げなかったつもりなんです。それは岡田さん、ひとつ、そういうふうに発言したわけでありますから、それはそうしてください。  委員御指摘のように、財政構造改革法の規定がありますから、したがって、今回積み増しした分、これは細かく言えば、平成十年度補正予算(第1号)フレームという資料の中で書いてある三兆五千億ということの中には科学技術振興特別対策費とかあるいは情報通信高度化とかというのがあるものですから、いわゆる主要な経費ごとにキャップをかけておるわけでありまして、そのキャップがかかる公共事業関係費としては、積み増し分は二兆八千四百万ですが、いずれにせよ、その場合には二四%当初予算よりもふえることになります。ふえた形に現在なっております。したがって、十一年度の公共事業関係費を考える場合にはふえない前の状態にしなきゃならぬわけでありまして、その意味では、補正後に比べて二四%減った形に実はなるわけであります。  さて、そういう形で、来年度の公共事業関係費の予算が組めるのかということが御指摘の主たる点だと思うのでありますけれども、これは毎年のようにそういう苦労をしながら予算を編成してきたわけでありますが、今回の……(発言する者あり)いやいや、それは実はあるんですよ。もっと減らした例があるんです。平成七年度から八年度にかけては何と三二%減らした形で予算を組んだ、公共事業関係費を組んだ例もありますが、しかし二四%というのは相当な数字であることはよく覚悟しております。  しかし、今回の十六兆円を超すこの景気対策を着実に実行した後の我が国経済状態あるいはまた金融情勢、そうしたもろもろの状況を見きわめながら、適切な予算を組んだと言われるような立派な予算を組むように、これから暮れにかけて努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。  なお、今御審議を願っておるこの補正予算に基づく対策が着実に実行されれば、景気回復軌道に、暮れまでの間の状態を見ながら我々やっていくわけでありますけれども、相当の効果は出てくる、こう見ておるわけであります。それに、十一年度につきましては既に二兆円の特別減税は継続してやるということも決めておるわけでありまして、それらのこと等総合的に判断しながら、十一年度の予算は、十一年度については考えていきたい、こう思っているところでございます。
  131. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、公共事業予算をふやさなきゃいけないとか、そういう視点で議論しているんじゃなくて、景気の問題との関係で、二五%も減らして、減少させて、それで大丈夫なんですかと。二四%ですか。  今の大蔵大臣の御答弁は、これから経済対策景気対策の効果が上がって、来年度予算案は二五%、二四%公共事業予算が減っても、景気は順調に回復するような状態までなっている、そういう答弁だと御理解していいですね。
  132. 松永光

    松永国務大臣 景気が順調に回復軌道に乗っていくという願いを込めての今度の景気対策でありますから、したがって、それを前提にして十一年度の公共事業関係予算は組まざるを得ない、こういうことなんです。
  133. 岡田克也

    ○岡田委員 組まざるを得ないといっても、それは、みずから財政構造改革法の改正を中途半端にやっていってそうなっているだけであります。私はとても、政府からも自民党からも話がありますけれども、不良債権処理の問題一つとったって、景気はそんなに順調に回復するとは思えない。そういう中にあって、二四%も公共事業を減らすしか予算の組みようがないという、そういう非現実的な法律を通すという、そこに本当にこの国をきちんと支えていくという政治家としての責任感があるのか、そういうふうに私は申し上げておきたいと思います。  次に、社会保障制度改革に参りたいと思います。  今、国民がいろいろなことを心配していると思います。先ほどの雇用の話もそうでありますけれども、その心配の一つに、将来の社会保障制度がどうなるかということがあると思います。特に年金や医療について、このままでは大変なことになる、制度がもたないというキャンペーン、財政改革キャンペーンというのが行われました。私は、そのこと自身は決して悪いことじゃないと思うんです。社会保障制度の厳しい現状を国民に知っていただくことは大切なことであります。国民的議論の前提であります。  しかし同時に、そういう現実を知っていただいた上で、じゃどうするんだというのが次にあるわけですね。その、どうするんだ、医療制度改革どうするんだ、年金どうするんだということについて、なかなか政府の方向性が見えてこない。だから国民は、年金もらえないんじゃないか、あるいは十分な医療が受けられないんじゃないか、そういう心配を非常にしている。そのことが、そういう先行きに対する不安が現在の景気の低迷の一つの大きな原因になっている、そういうふうに思うわけであります。  そこで、まず医療制度改革についてお尋ねをしたいと思います。  私は、医療制度改革についての政府の議論というのが袋小路に入っているというふうに思います。昨年、厚生委員会、私も厚生委員としてずっとおつき合いをさせていただきましたけれども、厚生委員会の場で議論になったのは、政府は、二兆円の医療費の負担増をする、その二兆円の医療費の負担増とそして構造改革というものは、これはセットになっているものだ。  私どもは同時期にやれと言ったんですけれども、構造改革をしないで二兆円の負担増を先行させることは認められないというふうに私は申し上げましたけれども、しかし政府の方も、そのことについては、負担増の前提として構造改革はやらなきゃいけないんだというふうにおっしゃったはずなんですね。  そして、平成十一年度から薬価制度の改革とか診療報酬制度の改革はやるんだ、そのためには、次の国会、つまりこの十年度通常国会に法案を出さなきゃいけないということを厚生省お認めになったはずなんです。それが、この国会に法案が出てこない。そういうことがあるから国民はますます不安になるわけであります。このことについて、どう考えておられますか。
  134. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 政府の基本方針を提示していないということは誤解です。はっきりと方向は示しております。抜本改革であるだけに、多くの方の意見を聞こう、診療報酬改定にしても薬価基準の根本的な改革にしても、専門家の意見を聞かなきゃならないということで、国会提出は確かにおくれています。しかし、十二年度を目途に実施するという基本方針は変えておりません。御理解いただきたいと思います。
  135. 岡田克也

    ○岡田委員 今大臣がおっしゃったのは、恐らくこの「二十一世紀医療保険制度(厚生省案)」というこれを言っておられると思います。去年の夏、出ました。私もこれについては一定の評価をいたしました。しかし、この中に出てくるんですね。例えば、いろいろな検討の結果を踏まえ、今後厚生省としては、次期通常国会、つまりこの国会ですよ、次期通常国会に向けて、抜本改革法案の取りまとめに努めると。それが出ていないから言っているわけであります。  政府の方針が一たんは出された。与党の方針も出されました。しかしそれが、例えば薬価制度について言えば、それに対する反対が例えば製薬工業会から出ている、医師会からも出ている。それに対して、やはり足を引っ張られて議論が混迷して、結局結論が出ないという現状じゃないですか。政府としてきちっと方向が出されたのであれば、そういういろいろな御意見に対してきちんと説得をして、そして案をまとめ上げるというのが私は政府の仕事じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  136. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 御指摘のとおり、製薬業界でも抵抗が出ております。医師会からも抵抗が出ております。アメリカの一部からも反対が出ております。いかに大きな改革か。しかし、十二年度実施の方針は変えておりません。早く出してまとめるのか、十分じっくり意見を聞いて、十年度に国会に出すか、それは選択の問題だと思います。十二年度実施の方針は変えておりません。
  137. 岡田克也

    ○岡田委員 十二年度、十二年度とおっしゃいますが、十一年度と約束をしているわけです。全体は十二年度ですよ、高齢者医療とか、ほかにもいろいろありますから。しかし、全部一遍にできないから、十一年度にまず薬価と診療報酬についてはやるというお約束だから私は申し上げているわけであります。そういういろいろな関係者の調整ができない。参議院選挙に関係ありませんか。私はそういうふうにも思えるわけであります。  それでは次に、年金制度であります。  年金制度については厚生省の方で、五つの選択肢ということで、五つの、AからEまでの案を出されました。私は、出されたことは評価をいたします。国民的議論が可能になりました。しかし、その五つの選択肢を出してもう半年であります。そろそろきちんとした方向性、AからEのうちの大体どの方向でいくのかということは政府が示さないと、白地で議論していってもなかなか集約されないじゃないですか。  しかも、年金制度は五年置きですから、来年の通常国会に法案を出さなきゃいけない。今度の参議院選挙が最後の選挙であります。それまでに政府としてのお考えをきちんと出していただいて、我々も考え方を出して、そして選挙を戦うというのが本来のあり方じゃありませんか。そういったお考えはございませんでしょうか。
  138. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これは、今、五つの選択肢を出しております。これは多くの方に評価いただいていると思います。むしろこの中で、選択肢を出さないですぐ厚生省案を出したら、逆の批判が起こったと思います。むしろ、大事な問題だから国民的な議論を喚起しようということで、一年かかって識者とか国民の意見を聞いて、ことしの暮れにまとめる。私は、生煮えの議論よりも、この方が多くの国民の理解を得ているのではないか。  逆に、出さない出さないと言っていますけれども、五つの選択肢を出して今議論をしているところなんです。厚生省は、暮れまでに一つの案にまとめるよう努力しております。その間には、独断ではなくて、各界各層の識者の意見を聞いてまとめる。むしろ、丁寧で親切なやり方だと思います。
  139. 岡田克也

    ○岡田委員 意見を聞くのも限度がありまして、もう私は半年たっているというふうに申し上げているわけであります。  例えばこのA案からE案の中で、A案というのがありますね。現行給付水準を維持する、そのかわり保険料は現在の二〇%を三四・三%まで高める。私は、こういう案は現実的じゃないと思う。厚生大臣はどういうふうにこれをお思いか、後でお聞きしたいと思いますが。A案からE案まで全部選択肢で示すのではなくて、一たん示されたのは結構なんですが、半年たった以上、このうちのこれとこれぐらいでどうかという方向性ぐらい、私は政府として出すべき時期に来ていると思うんですね。でないと、全然議論が集約されないじゃありませんか。いかがですか。
  140. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 まさに御指摘のとおり、これから一つにまとめるのです。いかに厚生省は親切か、丁寧か。現実、非現実と判断していただくのは国民であります。この五つの中でどれが現実的か、今厚生省は識者の方に、つい最近調査を出しました。そうしたら、大体、大方のところ、二案、三案ぐらいで、保険料もこれ以上負担させるのはだめだ、給付も今のままでいいわけはないというような方向に識者の考え方は一番多かった。しかし、五つの案の中から、最終的にはことしの暮れまでには一つの案にまとめて、来年の通常国会に出す予定であります。
  141. 岡田克也

    ○岡田委員 厚生大臣の自画自賛も結構なのですけれども、これだけ選択肢が広過ぎて、政府がたくさんのものを出していて、そして半年たっても方向性が出てこないということが国民の将来不安につながっているという、そういう現実を私は申し上げているのであります。政府が親切なのは結構ですけれども、不安をあおってしまってはだめなんです。  そういう意味で、一挙に一本に絞るのじゃなくて、もうそろそろきちんとした方向性を、一つに絞れとは言いませんけれども、あるいは二つ、これとこれぐらいだ、そういう方向を示していく時期が、政治の責任で示す時期が来ている、そういうふうに私は申し上げておきたいと思います。  次に、時間も限られておりますので、公共事業に参ります。  公共事業の中で、先般通りました中央省庁改革基本法の中で、公共事業予算の統合補助金化という話が出てまいります。四十六条であります。そこにはっきりと、国が直接行う公共事業は全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業実施に限定し、その他の事業については地方公共団体にゆだねる、個別の補助金にかえて統合的な補助金を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させる、明文でそういうふうに書いてありますね。  私がお聞きしたいのは、以前もお聞きしたのですけれども明確な答えがありませんでしたから、きょうは総理にお聞きしたいと思いますが、これをいつ実行されるのかということであります。  御案内のように、この中央省庁再編法案の成立を受けて、これから各省庁の設置法が出てまいりますね。設置法が出てきて新しい大きな役所ができてから、こういった地方移管を議論してもだめなのです。まず地方移管をどこまでやるのかということをきちんと決めて、そしてその上で統合していく、新しい設置法をつくっていくというのが私は物事の順番だと思います。とすれば、来年の通常国会に新しい設置法が出てくるとすれば、もうこの夏しかチャンスはないのですね。それを、総理はおやりになるおつもりがあるかどうか。  私は今、総務庁長官にお聞きしようと思いません。総務庁長官には前お聞きして、いろいろ親切な御答弁をいただいたと思ったのですけれども、後で答弁を見たら余り何も中身がなかった。さすがに経験というのはすごいものだなと思いましたが、総理のこれについての、いつまでにやるのかというはっきりとした御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  142. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これからこの本部をつくり、その本部の事務局機構を整備し、発足させますまでにまだちょっと、一週間や十日は必要だろうと思いますけれども、できるだけ早くこの本部を、私は基本法の成立を受けてスタートさせたいと今考えております。  その上で、その作業の手順としては、私はこの各省の設置法を整備する段階までに、これは法律案作成作業のことです、法律案作成作業としては、地方分権推進計画、既に国会に御報告をいたしておりますけれども、この地方分権推進計画の中にあります関係する法律案、特にその中心的なものは私は恐らく地方自治法になろうかと思いますけれども、この改正作業の方が法律的には先行すると思います。  作業上はそれが先行してくれませんと、それぞれの省庁の現在持っております権限のうち、どれだけを地方にお渡しするというものをきちんと法的に担保する法律上の仕組みができません。分権推進計画の中での中核をなす地方自治法が、そういう意味では、私は一番、法律案としての作業の順としては急ぐと思っております。  そしてその上で、これはもう私が申し上げるまでもなく議員も御承知でありますけれども、公共事業について、地方への権限移譲ということがまずあり、同時に、国が直接関与する分野を限定した上で、できるだけ統合的な補助金等として地方公共団体にこれを渡すということを書いているわけですから、これは具体的な設置法並びに公共事業関連の法律の改正というものの両方になると思います。  これは恐らく、やはり地方自治法改正案等、分権推進計画関係の法律案の作業を横目で見ながら進めるということになるのではないでしょうか。ちょっとその具体的な作業まで私も考えておりませんでしたので、手順は、今とっさに議員の御質問から考えたことですけれども。  ただ、いずれにしても、これは来年には御審議をいただきたいと考えておる関連の一つの柱でありますから、整合性を持った作業を進めてまいりたい、特に地方分権推進計画の中にある法改正を要する部分と整合性を持ちながら作業を進めていきたい、そう思っております。
  143. 岡田克也

    ○岡田委員 今、私の質問に対するお答えはなかったと思うのですね。私は、設置法という新しい省庁の設置法をつくる、そのときに、もう既にそういった地方への分権ができていればそういう設置法になるし、そうでなければ、今の設置法を足し合わせたようなものになって、その上でまた分権をしていくという手順になるから、それはやはり新しい設置法をつくる前に地方への分権をすべきだということを申し上げたわけで、その設置法との関係についての御答弁はなかったように思います。
  144. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、実は、地方分権推進計画の中で、地方自治法関係の改正法律案づくりが先行すると冒頭申し上げました。地方分権は当然進めなければなりませんし、それを受けて中央省庁の統廃合というものも行われるわけですから、私、議員の質問を少しまじめにとり過ぎたんでしょうか。  だから、分権推進計画の中で、しかもその中心になる地方自治法というものの改正作業が、法律改正の順序としては一番先行するだろう。これがきちんと決まることによりまして、ほかの地方分権推進計画に盛り込まれております制度全体が動いていくわけですから、そして、それを当然ベースにしながら各省の設置法の作業に入るんだ、当然そういう方向に進めていくと、むしろきちんと私はお答え申し上げたつもりなんですけれども。
  145. 岡田克也

    ○岡田委員 最後になりますけれども、この予算委員会の場で、公務員倫理法の問題でありますが、大蔵官僚の不祥事があって、公務員倫理法をぜひつくらなければいけない、こういうことで、総理は私の質問に対しまして、政府みずからが公務員倫理法をつくる責任があるということまでおっしゃった、これは三月十日のことであります。それから三カ月たって、結局会期末ぎりぎりになってこの法案が提出をされた、この国会ではもう審議はできないという状況であります。  私は、あれほどはっきりと国民の前で公務員倫理法をつくると言われた総理の発言と、そして現実に最近になってようやく提案されたということの乖離に非常に驚いております。これは公約違反ではないか、そういうふうにも思うわけであります。  この点について、総理が公務員倫理法についてどのようにお考えか、最後に御見解を簡単に聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、公務員倫理法を提出するということを確かに申し上げました。その上で、公務員の倫理を縛る法律を行政府自身が書いていいものだろうかという迷いを持っておりますということ、これはむしろ議員立法でお願いすべきではないだろうかと悩んでおりますということも率直に申し上げました。そして、その上で、与党とも御相談をしながら、緊密な連携をとって検討を進めてきましたものが、先日、議員立法として提案をされた次第であります。  私どもは、これは政府・与党を挙げての検討の結果だと考えておりますが、法律を成立させていただいた段階においては、当然のことながらこれをきちんと運用に万全を期す、当然でありますけれども、提出をされたという事実自体で、私は、倫理というものへの方向性はきちんと政府・与党の意思として行政に対して示している、成立をすれば当然これを受けて、しかし成立以前の段階でも、倫理の確立に努める責任がある、そのように思っております。
  147. 岡田克也

    ○岡田委員 あれほどはっきりお約束をされながら、こういうことになったことは非常に残念だということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  148. 越智通雄

    越智委員長 この際、上田清司君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田清司君。
  149. 上田清司

    上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。  質問通告にはありませんでしたが、けさの朝日新聞の読者の欄で、興味あることがございました。それは、交通遺児育英会に総務庁の幹部が入ってきている、そういうのは去れという国民の声でございます。  財団法人交通遺児育英会に総務庁の役人が天下りし高い給与を取っていたことなどが、去る五月十三日の決算行政監視委員会で取り上げられまして、この天下り人事には大蔵大臣時代の橋本総理がかかわっていたことが総務庁の担当者からの証言から判明したことがあります。  交通遺児育英会は、総理も御承知のとおり、交通遺児そのものがボランティアで街頭募金などを通じて基金をつくり、そして、この善意に支えられた基金によって社会に巣立った方も少なくありませんし、我が民主党の中にも、山本孝史議員、藤村修議員もその中の一人であります。  民間の善意でつくられたところに総務庁の役人が入ってくる、そうしたことは絶対許されないという、いわば、御意見は結構でございます、そういう関係のことがありましたので、改めて決算委員会の議事録も見ていただければいいかと思います。  それでは、早速でございますが、かねてからいろいろ問題になっておりました、日銀法五十八条に基づいて大蔵大臣への報告がございました。大蔵大臣として、この中身について精査された結果についてどのような御見解をお持ちか、お答えをお願いいたします。
  150. 松永光

    松永国務大臣 委員最初総理に向けて質問されたものですから、総理の答弁は要らないのですね。  それじゃ、今の委員の質問に対して答弁いたします。  御指摘のありましたように、先般、日銀法第五十八条に基づいて日銀から報告書が提出をされたわけですが、その報告書によりますと、日銀は、大蔵省に対して実態よりも意図的に水増しして職員数を報告していたものではなく、また不適正かつ恣意的な給与の支給を行ってきたという事実もなく、その実績が正確に決算額に反映されている、こういうことになっております。  一方、報告書では、給与等の支給基準など給与に関する情報開示に積極的でなかったことなどを虚心に反省する、そして、今後、新日銀法の趣旨にのっとって、役職員給与等の支給基準は社会一般の情勢に適合したものにするようにこれを定め、これを公表して、国民の理解が得られるよう最大限の努力をしていく所存であるというふうになっておりました。  私としては、この報告書に書いてあるように、その努力を見守っていきたい、こう考えておるわけであります。
  151. 上田清司

    上田(清)委員 報告については、いろいろ問題はあったけれども、是とするというような見解だというふうに受けとめました。  日銀総裁、御苦労さまでございます。申しわけありません。  それでは、報告について、間違いのない数字等をきちっと報告されたということの確認をしたいと思いますが、間違いありませんか。
  152. 速水優

    ○速水参考人 私ども、先般、日銀法五十八条に基づきまして報告書を大蔵大臣に提出しました。  その中で、人件費予算の策定、運営等に関しましては、内部ルールにのっとって厳格かつ適正に処理を行ってきておりまして、原理原則にもとることはなかったということを明らかにいたしました。計数につきましても、これまで、目的に応じて適切な計数を作成して御説明してきたつもりでございます。  ただ、その過程におきまして、委員の御疑問に対して正確に答えようとして、いろいろとベースの異なった、例えば末残あるいは平残といったような異なる計数を用いた結果、全体をわかりやすく説明する配慮に欠けた、あらぬ誤解をお与えすることになってしまった点は、申しわけないと思っております。  日銀法五十八条に基づく報告につきましては、当然のことながら、すべて正当な計数に基づいて作成しております。この点、ひとつ御信頼いただきたいとお願いいたします。
  153. 上田清司

    上田(清)委員 せっかく総裁お越しでございますので、円が百四十円を突破するという、いろいろな評価はありますが、必ずしも好ましい状態ではないという私は判断をしておりますが、総裁として、新たなる金融政策についての政策的対応をお考えになっているかどうか、お伺いしたいと思います。
  154. 速水優

    ○速水参考人 為替相場の動きにつきましては、私の立場から具体的にコメントすることは適当でないと思いますので差し控えさせていただきますが、私どもといたしましては、為替相場というものは経済の実態を反映して安定的に推移することが望ましいと考えております。そうした観点から、今後とも市場の動向を引き続き注意深く見ていきたいと思っております。  そこで、金融政策についてのお尋ねでございますけれども、金融政策はあくまでも国内物価の安定と、これを通じた国内経済の持続的成長をねらいとするものでございます。したがいまして、為替相場の動きを単独に取り出して政策対応を図るといったようなものではございませんが、為替相場は景気や物価に対してさまざまな影響を及ぼすものでございますので、そうした影響を含めた国内経済全般の動向を十分に分析した上で、的確な政策運営を行っていく考えでございます。  また、円相場のアジア経済に及ぼす影響につきましても、十分に今後ウオッチしてまいりたいと考えております。  前月五月の政策委員会金融政策決定会合では、国内景気は停滞を続け、下押し圧力が強い状況にあることを踏まえまして、金融面から引き続き経済活動をしっかり下支えていくという観点で、これまでの思い切った金融緩和基調を維持することを決定いたしております。  私どもでは、明十二日に今月の第一回目の金融政策決定会合を開催いたすことになっており、最近の経済情勢や御指摘の金融・為替市場の動向を踏まえてさらに十分に討議を尽くし、引き続き的確な政策運営に努めてまいりたいと考えております。
  155. 上田清司

    上田(清)委員 必ずしもしゃきっとしない御答弁だと思いますが、総裁、お疲れさまでした。お時間がございましたら、どうぞお帰りください。  それでは、ODAの問題について。  私も、昨年、中国の合弁養鰻事業についてどうも釈然としない政府答弁でございましたので、正確に言えばOECFの答弁でございますが、現地中国に行って、十億五千万が一円も現地に入っていないことや、養鰻池が九〇%完成しているというような御答弁がしばしばあったのですが、その池はよその池でございまして、そういうことが、最近のブータンでのODA不正支出の件もございましたし、大変気になるところであります。  インドネシアも、累積で四兆円、そして毎年一位のODAの支出をしております。総理も三月十五日にインドネシアに行かれまして、非常にスハルト大統領と仲よく、満面の笑みをたたえて外交なさったわけですが、大変仲よくやっておられましたけれども、しかし諸外国から見れば、やや外交的な失点ではないか。あるいは、私もそう思いますし、そういう意味で、スハルト体制を支えながらも現実的には民衆から見放される、こういう事態で、ODAの支出に関して国民は非常に敏感になっております。  そこで、最近話題になっております中国のベチューン医科大学の援助の問題についても、私も、仮にも日本国の総理の名誉にかかわる問題でございますから、「諸君!」の加藤昭論文、この方は大宅賞作家の方でございますが、この方のものをそのままうのみにして申し上げるのもいかがなものかと思って、休日を利用して中国・北京、長春に行ってまいりました。そのことを踏まえながら、まず外務大臣にお尋ねをしてみたいと思います。  この問題になっております李維平さんという方でございますが、外務大臣、このパスポートの中で、生年月日が私どもが調べたところでは一九五五年六月二十日。これは、五月二十日、外務省アジア局中国課首席事務官の山上信吾氏からお伺いした中身でございますが、これに間違いはございませんか。
  156. 浦部和好

    ○浦部政府委員 お答えをいたします。  外務省では、もちろん、在京大使館から提出があったパスポートに基づいて本人を特定いたしまして、身分証明書を発行しているところでございます。  しかしながら、このような場で具体的な方の生年月日について云々しますことは個人のプライバシーにもかかわることかと存じますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  157. 上田清司

    上田(清)委員 山上信吾さんからこちらは確認済みだということで進めさせていただきます。  法務大臣。実は、この方は、日本に帰化を申請されて許可をされております。その申請書の中、あるいは官報で出された生年月日が一九五三年六月二十日ということになっておりまして、二カ年違っております。外務省に提出されているパスポートと法務省に提出されている生年月日が二カ年違うということで、こういう方がなぜ帰化が許可されるのか、大変おかしな感じがいたしますので、このことは許されるのかということをお伺いしたいと思います。
  158. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  お答えの前に、現在、毎年大体一万五千名前後の人たちが日本に帰化いたしております。委員御承知のとおりに、憲法十三条には幸福追求権の一つとして、みだりに私生活に関する事柄等を公開しないというプライバシーの権利がまず保障されておるわけでございます。  私どもは、帰化を希望される方々から、国籍法の規定に基づきまして、資料の提出をいただいております。それを基礎にいたしまして、ただいま委員御指摘のようなことも含めまして、国籍法五条等々の規定に基づいて詳細な十分な調査をいたします。そして、その結果に基づきまして、帰化すべきもの、これは帰化すべきものでないというふうなことを決めるわけでございます。  今具体的にお話しになりました方の問題につきましては、これは国籍法十条に基づきまして官報で日本の国籍を得たということを公示してあるわけでございまして、それによりますと、平成八年十二月十六日付の官報におきましてこの日に帰化が認められたわけでございますが、昭和二十八年六月二十日と生年月日を記載しているわけでございます。
  159. 上田清司

    上田(清)委員 法務大臣は、この李維平氏という方が二カ年違う生年月日を持ち、そしてこの審査の途中には元夫との裁判がございまして、週刊誌四、五冊ぐらいの中で合計二十回にわたりましてさまざまな報道がなされております。そして、西村議員も質疑をされたこともございますが、さまざまな、例えばアエラなどで彼女の経歴は公安筋であるというような御報道もあります。あるいはまた、私も独自にいただいた資料の中で、さる新聞社の筋でございますけれども、やはり公安局第二処第四課に所属されていたことや、さまざまな意味で話題になっていながらもなぜ許可されるのか大変疑問に思っておりますが、そういうことについての御考慮はあったのでしょうか。
  160. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 先ほど前提として申し上げましたように、いろいろな資料を求めますけれども、その方は、帰化の許可をいただくために、そういうふうな目的のために書類の提出をいただいているわけでございまして、目的外にそのような資料を公表したり云々ということは私どもはできませんし、むしろ国家公務員法の違反等々の問題も出てまいります。  そこで、一般論としてお答えいたしますが、私どもは、帰化を希望する方が、生年月日がいつであるか、あるいはどこに今までお住まいになっていたか等々につきましては、単に一本の資料だけではなくて、できる限りの調査をいたします。  例えばパスポートにおけるものでございますとか、あるいは、帰化を許可されますと相手国の国籍を失うというのが原則でございます。それにつきまして相手国からの書類をいただきます。それと同時に、あるいはその人がどこに住んでいたか。言うならば、日本でいう戸籍の証明ですね。そういうふうなものをいただいて、そして個々の人たちについて検討いたします。  それで、今申し上げました本件につきましても、そういうふうな点については、生年月日は一致いたしておるわけでございまして、私どもの資料を総合いたしますと、そういうふうなことでございます。  一般論として申し上げましたけれども、そういうような形で疑問がございますれば、どっちが本当であるかということを私どもはあらゆる角度で調査し、そういうようなことで、慎重に帰化の問題を個々に検討して結論を出しているというのが現状でございます。
  161. 上田清司

    上田(清)委員 今、法務大臣は、生年月日が一致してなきゃまずいということですが、出入国管理カードにはちゃんと五五年と出ておりますよ、パスポートでは五五年ですよ。おかしいじゃないですか。どちらが間違っているのですか。外務省が間違っているのですか、法務省が間違っているのですか。
  162. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 一般論としてお答えいたしますが、私どもは、今申し上げましたように、全部調査を遂げまして、一致いたしております。
  163. 上田清司

    上田(清)委員 これは、明らかに、法務大臣が言う生年月日と、外務省のパスポートに言うところの生年月日が違っております。これが違っている以上、この問題については議論ができません。一致しているはずだと言われていますが、一致しておりません。  資料も理事会でも委員長にも提出いたしますので、この件について諮っていただきたいと思います。(発言する者あり)わかりませんか。  生年月日が一致しなければいけないのです、外務省のパスポートと、そして法務省のものと。一致しておりません。生年月日が違うものを、なぜ法務省で帰化申請が許可されるのか。先ほど、そういうのは一致していると言っておられますが、一致しておりません。これは裁判でも提供されております。証拠書類として提供されております、この書類は。調査していないのじゃないですか。
  164. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 繰り返して申し上げますが、今申し上げましたような点は、全く一致いたしております。
  165. 上田清司

    上田(清)委員 違っておりますので、この点についてはぜひ委員長において取り扱いをしていただきたい。資料として提出したいと思いますが、いかがでしょうか。
  166. 越智通雄

    越智委員長 今の質問者の御意向はよくわかりませんが、私が調べるというわけにはまいりませんので、御党の理事からどのような御意見か、お話があればまたそれに従って理事会で考えます。
  167. 上田清司

    上田(清)委員 要するに、生年月日が外務省と法務省の書類で違うのですよ。それで、一致していると言われますけれども、一致してませんよ。見てください。(発言する者あり)いやいや、だから言っているのですよ。言っているじゃないですか。違うじゃないですか。  では外務省、外務大臣。
  168. 浦部和好

    ○浦部政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、外交官が本邦に参りますと、当国、その相手国といいますか、本国発行のパスポートを添付して、我々に、外交官としての身分証明書の発給を要求してくるわけでございます。  ただ、その際はまさに身分証明の発給を目的に来るわけでございまして、その中に書かれております諸種のことについて、例えば生年月日等について、これはまさに本人のプライバシーそのものに関することでございますから、そういうものをこういうような場で公にするということは差し控えさせてくださいということを先ほど申し上げたわけでございます。
  169. 上田清司

    上田(清)委員 資料要求を申し上げます。そのパスポートの生年月日を教えていただきたいと思います。私どもが調べている限り、この李維平さんという方は、明らかにパスポートでは一九五五年、そして法務省の帰化申請の中では五三年と、二カ年違っておりますので、取り扱いをお願いしたいと思います。資料要求です。
  170. 越智通雄

    越智委員長 本件に関しましては、御党の理事から理事会においてのお申し出を受けまして、検討させていただきます。資料要求に関しては、理事会に諮って検討いたします。
  171. 上田清司

    上田(清)委員 この方はパスポートも三種類持っておられることも確認ができておりますので、そういう単なる外交官、通訳としては非常に不思議な方でございますので、そういう方からの、さまざまな形で、橋本総理との通訳、あるいはごちそうもしてあげたというところが大変疑問のあるところでありますが。  それでは、総理もベチューン医科大学には行かれたと思います。こちらで総理がどのような、御承知のとおり、外務省では三十五億の無償援助の要請を受けましたが、結果的に、二十一億の査定をした後に、五億上積みされまして二十六億になった経緯がございます。  この点について、総理は、特別な関与がなかったかということに関して藤田幸久議員からの質問主意書が出ておりまして、特別に関与がなかったというふうに言っておられますが、事実でしょうか。
  172. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そのとおりであります。関与しておらぬと思います。間違いなしに、そうでしょう。むしろ、将来そういうお尋ねがあると知っていれば、そのころの、全部メモでもとっていたのかもしれません。しかし、私はその金額云々の話は存じません。
  173. 上田清司

    上田(清)委員 実は、そのときの責任者であります、こちらにも写真を出しておりますが、趙洪序先生にお伺いしまして、大変橋本総理にお世話になって、大蔵大臣のときに何度もお願いをしてうまくいきましたということで、当初から橋本さんにターゲットをしたことは成功であり、中国にとってお金を引っ張ることはいいことだ、こういうお話をされ、見積もりは病院側がやるけれども、交渉は衛生部がやったというようなことを私は承ってまいりました。  同時に、写真がありますが、これは、橋本総理がベチューン医科大学に行かれて大歓迎をされている風景でありまして、まさに橋本総理が私財を投じて頑張ったみたいなニュアンスで褒めたたえてあります、訳文も資料の中に入れさせていただいておりますが。  しかし、関与をしておられなかったということでございますが、中国側の関係者はそうは言っておられませんが、このことについて全く関与がなかったというふうに思われますか。
  174. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 多少時間が長くなることをお許しいただきたいと思います。  私は、厚生大臣として、北京の中日友好病院の計画を合意するまでに大きくかかわりを持ちました。そして、その時点から、東洋医学と言ってはいけません、中国の場合伝統医学であります、伝統医学と日本の西洋医学を組み合わせることによって新たなものが生まれるのではないか、関係者が皆その希望をかけておりました。そして、そのためにも、中日友好病院が日本の手によって建設をされ、そこに指導スタッフとして送られた人々が去っていった後、その状況が維持できるかどうかというのは、当時から一つの論点でありました。  そして、そうした中で、ベチューン大学の医学部、日本語で教育をしておるということもありまして、議論の中に出てきたのは昭和五十六年の末ぐらいじゃなかったかと思っております。そして私は、そういう構想が出たときから、これは本当にいい話だ、中国医学水準を維持する上でも、大きく伸ばしていく上でも、そして中日友好病院の日本的な医療というものを続けていく上でも大事なことだと考えておりました。ですから、私は、間違いなしにこれは大事なことだということを申してまいりました。そして、現地も見に行きました。衛生部にお誘いを受けましたから、参りました。  その上で、具体的な交渉というもの、これは私どもが到底できるものではございません。わかりません。専門家の方々が話し合われたものだと思います。
  175. 越智通雄

    越智委員長 質問時間が終わっておりますが。
  176. 上田清司

    上田(清)委員 はい。時間になりましたので終わりますが、ただ、ずっと総理が、通訳であった、通訳であったと言う李維平さんが、パスポートを二つ、三つ持ち、なおかつ法務省で言っている生年月日と外務省で言っている生年月日が違い、そしてこのベチューン医科大学の無償援助を導くための最大の功労者であったことをあえて申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  177. 越智通雄

    越智委員長 これにて菅君、岡田君、上田君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  178. 坂口力

    坂口委員 新党平和並びに改革クラブを代表いたしまして、平成十年度補正予算に対する質疑をさせていただきたいと思います。  さて、けさから過去の経済状態についていろいろのお話がございましたが、私は、これからのことにつきまして幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思います。  各地域を回ってみますと、景気の停滞、後退は大変なものでございまして、各大臣も各地域で同じような思いを抱いておみえになるものと思います。医学の世界の中に燃え尽き症候群というのがございますが、私は、日本状態がいささかこの燃え尽き症候群に陥ってきたのではないかと考えております一人でございます。  燃え尽き症候群は、決して、働いて働いて働き尽きたという意味ではありませんで、これは、自分が最善と確信をして取り組んできたことが思うように運ばなかった、期待外れに終わった、そのときの欲求不満でありまして、それは、自立性に欠く仕事でありますとか、あるいはまたそれ相応に評価をされない仕事でありますとか、あるいはまた上司のリーダーシップが間違っているとき等に起こってくるわけでございまして、そうした意味で、上司のリーダーシップを欠くことによって、日本じゅうのこの燃え尽き症候群がさらに前進してはならないと思っております一人であります。  そうした意味から、早速でございますけれども、現在の財政問題等について話を進めていきたいというふうに思います。  財政構造改革法のことにつきましては先ほどからも話がございましたが、この財政改革法のもとで初めて編成されました十年度の予算というのは、戦後の財政史上かつてない超緊縮、そしてデフレ予算でありました。その予算が成立して一カ月たつかたたないうちに、今度は、史上最大規模の経済対策を含みました本日のこの補正予算審議でございます。  この中に含まれております十六兆円の補正予算で、一・九%の経済成長率は大丈夫だ、こういう政府のお話でございますが、それでは、いつごろこの景気回復するのであろうか。日本の国民の皆さんが一番聞きたいのは実はそこでありまして、これでいつごろになったら景気回復するのでしょうか。まず、総理大臣からお答えをいただきたいと思います。
  179. 尾身幸次

    尾身国務大臣 私ども、現在、総合経済対策を決定し、それについての補正予算を提案しているところでございます。現在の景気状況は、先ほど来申し上げておりますとおり、消費者あるいは企業マインドの低下がだんだんと生産、雇用等実体経済面にまで及んできておりまして、経済が停滞し厳しさが増しているというふうに認識しているわけでございますが、マインドそのものはやや改善をしているかなというふうに考えております。  そういう中におきまして総合経済対策を提案しているわけでございますが、この十六兆を超える社会資本整備あるいは減税等を含めます対策は、この補正予算が通りました後、二、三カ月ぐらいのタイムラグをもってお金が経済全体に回り始めるのではないかというふうに考えているわけでございまして、そのくらいのタイムラグをもって実体経済に影響を及ぼしてくる、プラスの効果を持ってくるというふうに考えております。  ただしかし、この総合経済対策によります効果というものが、消費者企業に対します心理的な面においてプラスの効果を既に持ってくる、早くから持ってくるということも考えられるわけでございまして、そういう点を考えれば、もうちょっと早い効果も期待できるというふうに考えております。
  180. 坂口力

    坂口委員 いつも同じようなお話を伺うわけでございますが、なかなか景気回復してまいりません。  この日本の財政政策を見て、諸外国からは非常にわかりにくいという声が上がっております。それも当然でありまして、デフレ予算が組まれたかと思いますと、今度は大型の景気予算が組まれる。ストップ・アンド・ゴーが繰り返されている。  このストップ・アンド・ゴーが繰り返されますと、この次、間もなくまた来年度の予算編成にかからなければならないときを迎えましたが、来年度予算はそれでは、順番からいきますとストップ・アンド・ゴーで今度はストップの番に当たるわけでありまして、先ほどから岡田議員からも話がございましたように、そうすると来年は非常にまたデフレ的な予算を組むのですか、こういう話になるわけでございます。  来年度予算に対する基本的な考え方というものを総理からお聞きしたいと思います。
  181. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来、同様の御質問に対し大蔵大臣からお答えを申し上げておりますけれども、今回、国会にお許しをいただきまして、財革法の中に弾力条項を設けさせていただきました。しかし、その弾力条項を活用しないで予算編成ができるような経済情勢にするよう努力を今いたしております。そのためにも、この補正予算を早くぜひ実行に移させていただきたい、そう願っております。
  182. 坂口力

    坂口委員 私の手元に大蔵省からいただきました二枚の資料がございますが、この二枚の資料とも、これはこの予算委員会に配付をされた資料でございます。  一つは、平成九年度平成十年四月末租税及び印紙収入収入額調べというのがございます。ここでお配りになったものでございます。私どもの方にもいただきました。これを見ますと、補正後の予算額で五十六兆二千二百六十億円でございますが、四月に入ってまいりました税収を入れまして、四月末の累計で四十五兆七千百七十四億三千六百万円、こういう数字でございます。  これを見ますと、五十六兆二千億から四十五兆七千億、端数はのけにいたしまして引きますと、大体十兆五千億今足りないわけでございます。まだ五月一カ月ございますから、五月にどれだけ入ってくるかということでございますが、五月に大体どれぐらい入ってくる御予定でございますか。もう五月は済みましたし、六月半ばでございますが、いかがでございますか。
  183. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生からお話ございましたように、四月末の税収の計数、そのとおりでございます。  それで、この九年度の税収につきましては、三月末の決算法人を中心といたします法人税、消費税が五月末税収として入ってくるものでございますので、それを現在待っているところでございます。七月の初には数字は判明するもの、こういうふうに考えているところでございます。
  184. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、今、おおよその額もわからないということでございますか。五月の分のおおよそ大体これぐらいというのもまだわからない、こういうことでございますか。もう大体わかっているのじゃないですか。
  185. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 御承知のように、三月決算法人のウエートは毎年多うございます。そういうことで、私どもも、この九年度の税収、全体としてどうなるか、非常に注意しているところでございまして、七月の初めに判明するということでございます。
  186. 坂口力

    坂口委員 それじゃ、私の方からもう少し申しましょう。  これを見せていただきますと、前年度、昨年度の場合には、決算額が五十二兆六百億でございます。そして、昨年の四月までが四十四兆四千七百億でございましたから、昨年の場合を見ますと、五月に七兆六千億入ったことになります。去年と比較をいたしまして、ことしが多いのか少ないのか、あらあらのこれは見当がつくのではないかと思います。  昨年は、一月―三月は大変景気が上昇したときでありまして、名目成長で二・七、実質で二・〇ぐらいでございましたか、そのぐらいの成長率がございました。ということになって、去年はかなりよかったわけです。しかし、ことしは非常に冷え込んでいるということもございます。昨年のこの五月に入ってまいりました七・六兆円にプラスすることができるのか、それともそうはいかないというふうにお考えになっているのか、あるいはこんなものだというふうにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  187. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生からお話がございましたのが、八年度の五月分の実績の数字であったというふうに思っております。  今年について申し上げますと、実は、消費税の引き上げ分の影響が、まさにこの五月末の、五月分の税収として出てくるということでございますので、それを含めまして私ども注意深く見守っていかなければならないな、こういうふうに思っているところでございます。
  188. 坂口力

    坂口委員 ですから、消費税の引き上げ分というのはわかっているわけでありますから、大体それは見当のつく話でございますので、前年度と比較をしてどうかということは、もう少しこれはおっしゃることができるのではないかというふうに思いますが、どうですか。
  189. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今、直近の税収のデータは、先生からお話がございました四月末でございます。それで見てみますと、確定申告の結果、残念ながら補正予算額の達成が難しいということで、九年度税収全体については、補正予算額の達成はなかなか難しい状況に至ったというふうに私どもは認識しているわけでございます。  ただ、この九年度の年度全体を通じてどうなるかといいますと、五月分の税収のウエートは非常に大きいものがあるものでございますから、まさに三月決算法人に係る法人税、消費税の動向に大きく影響されるということで、この税収を注視してまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、具体的な数字を現段階で申し上げるということは難しいというふうに考えております。
  190. 坂口力

    坂口委員 額はわからないけれども、とにかく五十六兆二千億というこの額を達成することは甚だ難しいということはわかりました。  さて、もう一枚紙がございますが、これは財政事情の試算でございまして、二〇〇五年度に至ります財政事情の試算でございます。これは、先ほど申しました財政構造改革法との絡みの中の試算ではないかというふうに思っております。  これを拝見いたしますと、平成九年度のスタートの数字、補正後の数字は五十六兆二千億になっているわけであります。ことしのそのままの数字が当てられている。先ほどはっきりおっしゃいませんでしたけれども、それが一兆円になるのか二兆円になるのか、前年度の七・六兆円ぐらいしか五月にもし入らないというふうに仮定をいたしましたら、これは二・九兆円足らないということになりますし、そこは消費税の関係で若干の違いはあるかもしれませんが、しかし、大体その前後の数字になるのではないかと私は予測をいたしております。  そういたしますと、この五十六・二兆円という、財政事情の試算の一番基本になります、中心になりますところの数字が狂ってくるわけでございます。そういたしますと、最終の二〇〇五年度の額も違うわけでございますし、それからこれに対する一般歳出の数字も、これに合わせているわけでございますから、これも違ってくるというふうに思わざるを得ません。それこれを考えあわせますと、そういたしますと、この財政事情の試算のペーパーはもはや真実を伝えていない、ほごになりつつある、こう思わざるを得ません。  そこで、これがほごになってまいりますと、財政構造改革法そのものが意味を持たなくなってくるというふうに私は思わざるを得ませんが、これは大蔵大臣で結構でございますが、いかがでございますか。
  191. 涌井洋治

    涌井政府委員 お答え申し上げます。  先ほど主税局長の方から御答弁申し上げましたように、今年度の税収がどうなるかというのは、現段階では数字としてはないわけでございます。仮に先生の言われるように税収が下振れしたときには、この試算の税収の二〇〇五年の数字も、これは機械的に計算していますから、下振れするのではないか、したがって、財政構造改革法の目的達成はできないのではないかという御質問かと思いますが、その場合は、仮に下振れをしたときには、この数字の上では要調整額がふえてくることになろうかと思います。  例えば、十一年度では三兆から二兆九千、それから平成十七年度では、一般歳出の伸び率をゼロに抑えた場合には四・七から〇・四ということになっているわけでございますが、一般歳出の伸び率をゼロとした場合でも、そのときには最終的には要調整額がふえることになる。それにつきましては、いずれにしてもこれは毎年度毎年度の予算編成で要調整額の解消を図っていくということで、二〇〇五年度に向けて、毎年度毎年度の歳入歳出全般を見直して予算編成を進めていくということでございます。
  192. 坂口力

    坂口委員 余り答えになっておりませんが、余りどころじゃなくて全然答えになっておりませんが、財政事情の試算の中には、平成十一年度に多分行われるであろう二兆円の減税分もここには書かれていないわけであります。それはこの下の注意書きのところに書いてございますから、これはお認めになるというふうに思いますが、もはやこの試算ではいかないということだけははっきりしているわけでございます。  先ほど申しましたように、とにかくことしは非常に緊縮財政の当初予算を組んで、そして次にこの大型の補正予算ということになりました。今のままでいくという、この財政構造改革法をこのままで置いておいてそして来年もいくということになれば、来年の当初予算もまたデフレ予算を組んで、そしてすぐにまた補正予算を組んでという、ことしと同じパターンをまた繰り返さなきゃならないということになるのではないかというふうに思います。それは非常にわかりにくい。外国から、一体日本は何をしようとしているんだという批判になるわけでありまして、そういうことをまた来年もそれじゃ繰り返すのですかということを申し上げている。  一番最初に私が、景気がいつ回復をするのでしょうかということをお聞きしましたのが、実は非常に大事になってくるわけであります。  というのは、この補正予算で本当に一・九%いくかどうか、私もちょっとそれは難しいのじゃないかというふうに思いますけれども、仮にです、仮に一・九%の成長がいったと仮定をいたしましても、それは第一段ロケットでありまして、このロケットにさらにもう一段、次の二段目のロケットが発射されて初めて軌道に乗ることができるんだろうと思うのです。  この一段ロケットだけでいくということはなかなか難しいということは、昨年も証明されたと思うのですね。八年の後半から九年の初めにかけてかなり景気がよくなって、ある程度上向いてきまして、上昇気流に乗りかけてまいりました。そのときに二%の消費税のアップであり、そしてまた特別減税の廃止でありということがあって、九月にまた医療保険の問題が起こってきたわけで、それらによって上昇気流が吹っ飛んでしまった、なくなってしまったわけで、そのことを思いますと、政府がおっしゃるように、今回のこの補正予算で一・九%もしも仮に伸びたといたしましても、その次、それじゃまたデフレ予算を組みましたら、これは吹っ飛んでしまうことになるわけであります。  だから、この予算はもし認めるといたしましても、その次の第二段は一体どうされるのですかということを私はお聞きしているわけで、まことに順当なことをお聞きしていると思いますが、いかがでございますか。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、議員と議論をさせていただくというようなつもりではありません。ただ、今議員の御論議を伺っておりますと、要するに、我が国経済はいつまでたっても国の財政とはかかわりなく相当程度の財政出動によってしか成長が続けられないという議論に、延ばしていけばなってしまうのじゃないかと思うのです。  私ども、ですから、財政構造改革も経済構造改革も、あるいは規制緩和、地方分権といったものについてもさまざまな努力をいたしておりますのは、どうすれば内需中心の経済回復の軌道に乗せていけるかということでありまして、先ほど議員が、多分五月十二日に提出をいたしました財政事情の試算を挙げられて御論議をいただいたんだと思うのですが、これをごらんいただきましても、目標年次を二年延ばさせていただきましたことによりまして、要調整額は縮小いたしました。  そして、それは、今回の経済対策によりまして国債費が増加をいたしましたもの、当然ながらこれは要調整額の増加要因になるわけですけれども、二年延長したことによりまして縮小幅がそれだけバランスされた。トータルとして各年度の要調整額は、本年一月に中期財政試算をお示しいたしましたものに比べて縮小することになるわけですが、それでも相当の要調整額が残るわけであります。  そして、それだけの努力をしようとするなら、歳出の構造の中身にまで入っていかなければその体質を変えることはできません。一方で、その努力をしないで、いつまでも財政出動がなければ我が国景気回復しないというのでは、私は、本当に困ると思うんです。一方で、本当に要調整額は圧縮する努力を我々は払わなきゃなりません。  同時に、他の施策、それは規制緩和の問題もありましょう、税の世界における手法もありましょう、いろいろなものを組み合わせながら、どうやったら新しい業を起こさせることができるか、新しい雇用を創出することができるか、そして公共事業追加によらずして我が国経済が成長の軌道をたどるかに向けて、今努力をしようとしているところであります。
  194. 坂口力

    坂口委員 私も、現在の景気が、今回のこの補正予算、あるいは先日でき上がりました当初予算、これでもう軌道に乗るというのならば、それは喜ばしいことだというふうに思いますし、それ以上のことをしなきゃならないということを言っているわけではありません。  しかし、現在の景気状況というのはそう単純なものではないのではないですか。過去の例を見ましても、去年の状況を見ましても、そういうふうに簡単には回復するということは望むべくもないではないですかということを実は申し上げているわけでありまして、財政構造改革法も、私は、これは必要なことではあるというふうに思いますが、しかし、現在のこの景気をこのままに置いておいて、そして財政構造改革法で縛りをかけるというのは、これはそうすると大変なことになるではないですかということを申し上げているわけでございます。  ですから、景気のよくなりますのが、先ほど尾身長官にお聞きをしましたのは、まあ、二、三カ月をしたらじわじわとしみ渡ってくるというお話でございまして、しみ渡ってきてから本当にその景気が上向くまでどれだけかかるかというお話はなかったわけで、しみ渡っていくことだけおっしゃったわけでありますから、これはもう、いつ景気が上向いてくるかわからないわけであります。これがもしも秋なら秋、よく言われますように、もみじの色づくころにもうちゃんとなる、こういうふうにおっしゃるのなら、これは話はわかるわけですね。  だけれども、もし仮にそうであったとしても、それは第一段の話であって、そこへ下支えが必要ではないですかと。だから、下支えはもう予算でいかない、総理がおっしゃるように、もう予算ではいかないというふうにおっしゃるのであれば、それじゃ、その下支えは何でいくんでしょうか、こういう話になるわけであります。  私たちは、そこのところは、単なる二兆円の減税だけではなくて、六兆円規模の恒久減税が必要ですよ、あるいはまた四兆円規模の戻し金が必要ですよということを申し上げつつ、これは、今回のそうしたことで第一段のロケットを飛ばしながら、下支えするものが必要である。これはさらに、午前中から議論がありましたように、財政上の問題だけではなくて、不良債権の整備等の問題が多分あるのだと思います。そうしたことで、下支えをしなきゃいけない。  そうすると、その不良債権の下支え等につきましても、長くこれを待っているわけにはいかないじゃないですか、上向いたときにそこにすかさず下支えをしなきゃならないということになりますと、それは来年の春までそうしたことを待つというのではなくて、少なくともこの秋には不良債権等についても目星をつけないといけないのではないですか、こういう主張は主張として我々はしながらも、しかし、そうはいいますものの、この予算というのは大変大きな力を発揮するわけでありますから、全体のこの予算というものを見ました場合に、非常に日本が厳しい環境に置かれていることも事実だけれども、現在のこの状況を脱皮しなければ、経済がよくならなければ財政もくそもないではないですか、こう申し上げているわけです。  そういう意味で、この後、それじゃいよいよ来年度の予算編成にかからなきゃならないわけであります。もういよいよかからなきゃならない、大蔵省は特にかからなきゃならないときを迎えていると思うのですね。だけれども、景気がよくなるかどうかという目星をつけてからやれるのだったらいいですけれども、それは今つかないわけであります。まだ二、三カ月先、そしてそれがじわじわきいて、その先どうなるのかということがはっきりしないというような長官のそのお言葉のような状態の中で来年度の予算を組まなきゃならないわけであります。  はっきりしてから組むのだったらいいのですよ。だけれども、はっきりしないうちから組まなきゃならないわけですから、そこはどうするのですかと。もしわからなければ、大事をとって、その予算をきちっとするという以外にないじゃないですか。だから、ストップ・アンド・ゴー、それでまたストップ・アンド・ゴーというふうな調子にはいかないのではないですか。先ほどのこの二枚のペーパーから見ても、それははっきりしておるではないかということを私は申し上げているわけで、そこをもう一度ひとつ答弁していただいて、次の問題に移ります。
  195. 尾身幸次

    尾身国務大臣 私は、坂口委員の、補正予算によるいわゆる景気刺激策が終わったときにどうなるのかということにつきましての問題点は、大変大事だと実は思っております。  つまり、過去数年間に何回にもわたりますいわゆる公共事業を中心とする景気刺激対策をとってきたにもかかわらず、思ったように日本経済が順調な回復軌道に乗らなかったことには、幾つかの構造的な要因があるというふうにかねがね私ども申してまいりました。例えば日本的な経済システムの制度疲労の問題とか、あるいは産業空洞化の問題とか、あるいは不良債権の処理がおくれているというような種類の問題がございました。  したがいまして、このたびの総合経済対策におきましては、十六兆円を超える財政的な手当てをするのと同時に、経済構造改革を進める。例えば、技術開発とかあるいは情報通信の分野に刺激的なお金を入れる、あるいは中小企業を中心とするベンチャーを育ててそこで雇用吸収を図る、あるいは金融ビッグバンを進める、そういう構造的な対策をかなり力を入れてやっているところでございます。さらに規制緩和も進めるというようなことでございます。それからまた、先ほど来問題になっております不良債権処理のトータルプランを抜本的に強化していくということも考えております。  そういう対策を総合的に進めることによりまして、民間活力を生かした形で経済を順調な回復軌道に乗せていきたい、そのためには日本経済の構造改革、体質改善を早急に進めなければならない、そういうふうに考えて各般の施策をとっているところでございまして、基本的には民間の力を中心に経済が順調な発展を実現できるような体制をとっていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  196. 坂口力

    坂口委員 言葉多く説明をしていただきましたけれども、努力をしておみえになることは私もそれはそのとおりだろうというふうに思うのですが、その努力の結果がどういうふうになるのですかと。その努力の結果がどうなるかという目標もなしに努力をしておみえになるわけではないのだと思うのですね。  だから、大体この秋ごろにはどうなるとか、年末にはどうなるとか、そういう目標を立てながら努力をしておみえになるのだろうと思うのですが、どうも経企庁のお話を聞いておりますと、そのときそのときのお話でございまして、この前のこの予算委員会でお聞きをしましたときにもいろいろのことをお聞きしましたけれども、全然そのとおりになってきていないわけですね、今。だから、今、経済企画庁のこの数字を本当に信頼して、それをもとにしていろいろの仕事をしておる人というのは全然いないわけでありまして、だれもそれは信頼をしてないわけであります。  だから、そういう言葉を何遍聞いてもいけないわけでございますから、私が先ほどから何度か申し上げておりますように、この状況からいうならば、この補正予算において第一段ロケットは打ち上げられた、その次のを何で打ち上げるのですか、それは来年度予算ですか、それとも違うものですかと。だけれども、それの説明もないし、そして来年の予算も、これはデフレにするのか、あるいは活発なものにするのか、それもはっきりしたお答えもないし、それですと、この状況を聞いている国民の皆さんはまた不安が募ってくる。  一体、政府はどうしようとしてくれるのか、やはり貯蓄をしながらじっと耐え忍ぶしかないのか、こういうことになってしまうではありませんか、こう申し上げているわけでございまして、甚だ時間がなくなってまいりましたので、もうこれ以上聞くのは差し控えさせていただきますが、私の言っておりますことは理解をしていただけたと思いますし、それに沿いまして一刻も早く次の手を打っていただきたいということを要望しておきたいと思います。  さて、金融の問題をやろうと思っておりましたけれども、時間がもうなくなってまいりまして、大事なところを飛ばさなければなりませんが、今度は労働大臣にちょっとお聞きをしたいと思います。けさからも、いろいろ雇用の問題につきましてはお話がございました。これもいろいろと御努力をしていただいていることはよく存じております。  有効求人倍率が、労働省の調べで〇・五五倍というふうに今までになく下がってまいりまして、八カ月連続の低下である。五十三年六月以来の低水準になっている。また、有効求人が六カ月連続で減少して、すべての産業減少をするようになってきた。これは労働省からいただきましたペーパーでございます。  それで、有効求人倍率の少ない県はどこか。これを見ますと、沖縄が〇・一八倍で、これが一番低い。〇・一八というのは本当にもうないがごとき数字でございまして、二番目に低いのが青森で〇・三一、三番目に低いのが高知で〇・三七、四番目が兵庫で〇・四一、五番目が、大阪と福岡が同等でございまして〇・四二、こうなっております。これは、ワーストファイブと言うとこの地域の皆さん方に大変おしかりを受けると思いますけれども、数字はそういうことに実はなっているわけでございます。  この数字を見まして、失業率でまた見れば、北海道が高い、あるいは九州が高い、近畿が高い、南関東が高いということがございまして、有効求人倍率と失業率と若干の違いはございますが、しかし、大体低いところは高いということになっております。これらの地域には、特別なやはり配慮が必要なんだろうと思うんですね。  沖縄の〇・一八というのは、これは何とかしてあげないことにはいけないと思うんです。米軍基地だけ七五%を押しつけておいて、そして雇用の問題は、この〇・一八、知らない顔をしているというのは、これはとんでもないことだと私は思うわけでございまして、ぜひこれは何かやらなきゃならない。これは沖縄だけではなくて、青森、高知、それから兵庫、大阪、福岡。やはり、北海道でありますとかあるいは兵庫でありますとか、銀行が倒産をしているようなところは有効求人倍率も悪い、あるいはまた、沖縄のように離れたところは悪い、青森のように離れたところは悪い、高知のように離れたところは悪い、こういう状況にあるのではないか。  この地域的な問題について、一部、公共事業を優先して配分するというニュースが流れたりいたしましたが、それも私は大事だというふうに思っておりますが、それだけではなくて、地域によりますと、土木やあるいは建築に従事をしておみえになる方の雇用だけではなくて、ほかの分野の雇用の足りないところもやはりあるのではないかと思います。その辺をどうされるのかということをお聞きしたいと思います。
  197. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 委員は労働大臣もお務めになりました我々の先輩でございまして、この分野については大変御造詣が深いと思いますが、今御指摘がございましたように、有効求人倍率、つまり百人の働きたい人がおればそれに対してどれだけ職があるかという数字を調べますと、おっしゃったとおり、地域によってまちまちでございます。  そこで、全体として言えば、先般、雇用対策本部を総理が招集されまして、長期的にやるべきこと、中期的にやるべきこと、短期的にやるべきことをパッケージで決定したわけでございます。その中で、今御指摘のように、例えば公共事業がきく地域もございます。それから、総じて言えば、都市部はやはり多様な産業の集積がございますので、政府金融機関の貸し出しに対する姿勢を一層緩和していく、あるいは民間金融機関につなぎ資金の供与をお願いしていくというような、きめ細かな対策が当面短期的には必要だろうと思います。  そこで、全国八ブロックに分けまして、おのおのの関係省庁の出先機関とそれから都道府県が一堂に会しまして、年齢別、男女別、地域別の失業の状況を今さらにきめ細かく調査をいたして、話し合いをいたしております。その中で、その結果に従って、先ほど委員からも御示唆がございましたように、比較的公共事業のききやすいところは公共事業の優先配分をやっていく、そして民間中心のところにはやはり金融的なものの手を打っていくというような、きめ細かなことをやりたいと思いますし、全体としてともかく職を出していただくということを、職安として今みずから足を運んで全力を挙げてやっている、そういう状況でございます。
  198. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつさらなる御努力をお願い申し上げたいというふうに思います。  これは総理にやはりお願いをしておかなければならないというふうに思いますが、沖縄の問題でございます。沖縄は、確かに普天間の問題もございまして、さまざまな問題がございますが、普天間の問題は問題、経済的な支援支援、私は、ここはきちっと立て分けて、そしてやはり沖縄にすべきことは早く手を打たないといけないと思うのです。  〇・一八という数字を見て、このままに置いておくということは、沖縄の皆さんに対して大変失礼なことではないかというふうに私は思っております。そういう意味で、ぜひ特別な配慮を沖縄にはすべきであるというふうに思っておりますが、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ただいま議員、支援という言葉を使われましたが、私は、その言葉は振興と置きかえさせていただきたいと思うのです。そして、沖縄振興策ということで従来からもお話を申し上げてきました。  これは間違いなしに、議員がおっしゃるとおり、我々は沖縄の振興というものを考えていかなければなりませんし、その中で雇用情勢の問題点、これは知事さんとも随分何遍も話し合ってきた問題点でありました。そして、特別自由貿易地域の創設など抜本的な税制措置内容とする沖縄振興開発特別措置法の改正を行うなど、今までも一生懸命に努力をしてまいりましたし、これからも努力をしていきたいと思います。  その上で、これからの沖縄振興策を検討いたします上で、県が国際都市形成構想というものをつくられました。これとその地域振興をどう重ね合わせたらいいのか。これは基地の移転を前提にした、言いかえれば、基地のありようが変わるということを前提にした県の御計画ですから、そこが動かないままでというのには一つの限界がございます。  しかし、私どもは、だからといって沖縄の振興策を手を抜くつもりもありませんし、雇用情勢につきましては、今までも地元と御相談をしながら進めてきた努力を、これから先も続けていこうという気持ちに全く変わりはありません。
  200. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつ、さらなる努力をお願いしたいと思います。  これは雇用全体でございますが、労働省の方も、雇用調整助成金の拡充でありますとか、あるいはまた能力開発給付金の助成率の引き上げでありますとか、あるいはまた労働移動雇用安定助成金の拡充でありますとか、さまざまなことを手がけておみえになりますが、これらのことにも、やはりこの際には二階から飛びおりるつもりでひとつ御配慮をお願い申し上げたい。そうでないと乗り切れませんので、お願いをしたいというふうに思います。  雇用の問題はこれから一番大きな問題になるというふうに思いますし、現在のことだけではなくて、中長期的に見ましても非常に大きな問題でございます。通産大臣に中長期のことをお聞きしようと思っておりましたが、時間がなくなりましたのできょうは割愛をさせていただきますが、いずれにいたしましても、雇用がこれからどう伸びるか、雇用をどうするか、とりわけその中でも女性の雇用、女性が、育児その他にも十分配慮をすることをやりながら、女性の雇用がどう伸びるかということが、将来にとりまして、年金や医療やあるいは介護にも大きな影響を与えてくると私たちは考えておる次第でございます。  そうした意味で、雇用とか育児というのは大変重要な問題であるというようなことで、平素からこのことに対しましても積極的に発言をいたしておりまして、この補正予算におきましても、育児の問題あるいは子育て減税の問題等で、一部はその中に入れてもらったところでございます。これらのことをひとつこれからもさらに私たちは叫び続けていきたいというふうに思いますし、そして、雇用問題に中長期的な立場で取り組まれることを期待いたしまして、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  201. 越智通雄

    越智委員長 この際、西川知雄君から関連質疑の申し出があります。坂口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西川知雄君。
  202. 西川知雄

    ○西川(知)委員 平和・改革の西川でございます。  総理とは、今国会、予算委員会で多分五回ぐらい質疑をさせていただくということで、きょうは五回目だと思いますけれども、きょうは時間もたくさんあるわけでございませんので、主に二つの点に絞って質問をしたいと思います。  今度の補正予算は、四月二十四日の経済対策閣僚会議というところで決められました総合経済対策ということに基づいて策定をされておりますが、その中で、我が国経済の直面する課題というのが記載されております。これは、この委員会でも午前中からの委員の質問で総理も答えられているように、景気停滞が長引いている背景には、金融機関企業の不良債権の問題、日本的な経済システムの制度疲労の問題、産業空洞化の問題があり、これらが景気回復の妨げとなっているため、早急にこれらの問題の解決を図る必要があるというふうにされております。そこで、きょうは不良債権問題と産業空洞化の問題を取り上げたいと思います。  まず、不良債権の問題につきましては、これをバランスシートから消し去る、これがとても重要なことであるということは、総理はいろいろな場面でおっしゃっております。そしてまた、このディスクロージャー、いわゆる情報公開の必要性から、今までの基準をさらにアメリカのSEC並みの基準に広げて情報公開をやっていこうというふうに、政府の方としてもその方針をつくって、それが進められております。その結果、従前の不良債権の金額よりも約四〇%ぐらいその実態がふえているんじゃないかというような話もございます。  形式的には、何か情報公開、ディスクロージャーができてきたというふうに、誤解というか、思われる方もいると思いますが、私は、実際はそうではないのじゃないかというような気がいたします。  と申しますのも、不良債権を各行が自己査定いたします。また、それと同時に大蔵省の検査部で検査をいたします。ところで、大蔵省の検査部で検査をいたしましたその結果、いろいろな問題があったと。そうすると、示達書という形で各行に、こういう点が問題だから、こういうふうに直しなさいというような書面が出ます。またそれに対して、ではこういうふうにいたしました、こういうふうにしましょうという回答書が各行から出ます。これは、こういう問題があるんだということを大蔵省が見て、そしてそれを指摘して、それに対して何かの改善をするということでございますが、この内容が一体各行においてどうなっているかということにつきましては、全然国民の前には不明である。  この予算委員会理事会のところでも、この内容について、何行かの示達書、回答書が提出をされました。私もそれを見させていただきましたが、主要なところは全部黒く塗りつぶしてあるということで、一体何が問題なのか、どういう点がおかしいのかということは、さっぱりわかりません。こういうような不良債権の実態、そして、厳しくなったとはいうものの実際は内容がよくわからないというようなところに公的資金を導入したり、金融機関だけ特別な扱いをするということは、やはり国民感情としては非常に許せない、理解できないところがあるんじゃないかというふうに思います。  そこで私は、こういう場合においては、少なくともこれからの競争社会において、国際的なビッグバンの時代において、世界の中で日本金融機関が信頼をかち得るために、もっともっとそういう内容について、どういう具体的問題があったかということを政府が指摘したらそれを国民の前に、守秘義務の問題もあるでしょうから、相手先の名前を伏せる、それは構わないかもしれません。しかしながら、そういう具体的な問題についてもっともっとオープンにして情報公開をしない限り、日本の金融業界、金融は世界の中で生きてはいけないんじゃないかというふうに思うのですが、総理の御見解をお願いします。
  203. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員は私より、海外のこうした実務にははるかに知識を持っておられます。その上で、アメリカやイギリス、フランス、ドイツ等の海外当局におきましても、議員が述べられたような個々の金融機関の検査結果というもの、それは公表しておらないということをよく御承知のはずであります。そしてそれがなぜ、私は法律で決められているかどうかわかりませんが、不文律のように皆公表を控えるのは、その結果、信用秩序維持に大きな影響を及ぼすのではないか、あるいはその金融機関の取引先や預金者に不測の損害を与えるおそれがある、そうしたことから、私は、各国ともに今議員の述べられましたような個別の公表というものは控えているものだと思います。  別途、金融機関の経営情報開示ということにつきまして、本年三月期から、SEC基準と同等の基準による不良債権のディスクロージャーが既に動き始めました。そして、今般成立させていただきました金融システム改革法におきまして、これを罰則づきで義務づけております。  こうしたディスクロージャーの徹底によって、金融機関の経営の透明性は当然高まるわけでありますし、新しい状況を踏まえた、金融監督庁がスタートをいたします前の今の段階としては大蔵省でありますし、金融監督庁が発足をいたしますならば今度はその業務は監督庁に移るわけですが、検査とあわせまして、より今よりも透明性が高くなる、これは事実でありますけれども、議員の仰せられたような形で個別行の検査結果の情報開示をしている国はないということは率直に申し上げたいと思います。
  204. 西川知雄

    ○西川(知)委員 確かに、アメリカのSEC基準というのは世界の中でも最も厳しい。日本もそれに今回倣ったということで、他国との比較では、今総理のおっしゃったようなことではないかというふうに思います。  日本の、先ほどから国税庁の通達の話が出ておりました。これは、いわゆる直接償却、ある債務者が倒れた、その結果債権放棄をしなければならなかったということだけではなくて、いわゆる間接償却、例えば利息の利率を割り引いたとか、また支援のためのプランをつくって債権カットをしたとか、そういうような場合にも無税償却を認めるということでございますが、無税償却を認めるということはどういうことかというと、その免除した金額または債権額、それが損金として算入をすることができる。例えば、その金額が二十兆円であれば、大体法人税が半分であるというふうに仮定しますと、十兆円、本来国に入ってくるべきものが入ってこないというような形になるわけです。  さらに、金融機関は、問題があった場合には公的な支援を受けられるということになっております。これは、先ほど出ましたゼネコンにはそんなことは一切ありません。こういうふうに、金融機関だけ今特別扱いをされております。  ところが、先ほどのある議員からも出ましたように、国民は銀行から住宅ローンなら住宅ローンを借りて、その利子の支払いに非常に苦労している。やはりこういうことが非常にアンバランスではないか。特に、景気がこんなに低迷しているとき、そして消費者が苦しんでいるとき、これは少しおかしいというふうに皆さんも思われるのじゃないかと思います。  そこで、我々としても、やはり時限的に住宅ローンの利子の部分についてはある一定限度で必要経費として認めるとか、また、その無税償却を、各金融機関の申告によって認めるわけではなくて、もっと厳しくするとか、そういうふうなことを今の時代には考えるべきではないかというふうに思いますが、総理または大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  205. 松永光

    松永国務大臣 先般、大蔵省で出した、国税庁ですけれども、法人税法に関する基本通達の改正通達をしたわけでありますが、これは条文を読んでみればわかることでありますけれども、要するに、従来から一定の合理性がある場合に損金として認めておった事柄を、通達の解釈上明確でなかった点がありましたので、あるいは現場の判断に任せておる点もありましたので、この際、その点を明確にするための通達を発したということであります。  私は見たことはありませんけれども、ある新聞にゼネコンのための措置とかなんとかということが出ておったそうでありますが、そんなことはありません。  もともと、これは委員も御承知と思いますけれども、個人であろうと企業であろうと、相手に対して債権を持っている、その債権がどうしてもとれないという場合に、相手が破産したという場合には、自分の持っている債権は無価値になりますね。あるいは和議になった場合にも、とれない分はもう無価値になります。無価値になったものを債権放棄、こうした場合には、無価値になった、すなわち損になっているわけでありますから、それは損として認めるのが当たり前のことだというふうに思います。  ただし、銀行の不良債権処理を進めていく関係からいえば、破産がなされた、和議がなされた、あるいは強制執行してとれなかった、そこまでいかなければ損金として認めないというわけにはいかぬでしょう。したがって、合理的と判断できる、そういう計画が立てられて、そして、そのために一部の放棄あるいは全部の放棄があるかもしれませんが、その放棄がまことにもっともと認められるような場合には損金として認めることができる、こういうふうな通達を出したということでございます。
  206. 西川知雄

    ○西川(知)委員 先ほど申しました、住宅ローンの利子の部分の必要経費化ということを時限的にも今の消費を喚起する意味でやるというような方法は、これは我々の主張だけでなく、どうも与党の何人かの方も御賛同いただけるというふうに思いますので、その点についてはぜひ御考慮をしていただきたいというふうに思います。  ところで、先ほど申しましたように、この総合経済対策には、景気停滞の背景には産業空洞化の問題があるというふうに書かれております。  私、横浜の京浜臨海部、これは鶴見区とか神奈川区が中心でございますが、そこの昭和五十五年の事業所数と最新のデータを比較いたしました。昭和五十五年は約千三百五十の事業所数がありました。現在は四百減って九百五十でございます。従業員数は、昔は、五十五年当時は約六万人。ところが、現在は約半分の三万五千人でございます。  ところで、この問題は今非常に大きな問題となってきています。特に、国際間の競争が激しくなっていく、そして日本の国から産業がどんどん海外に出ていく、こういうことで、昭和三十四年ごろからあった産業、人口の過度の集中化を防止するという意味での工業等制限法を一部緩和してはどうか、または、このような京浜臨海部には、工業集積地域には適用除外をすることを考えてはどうかというようなことを私は主張をしてまいりました。  そこで、今回の総合経済対策では、産業空洞化の問題が景気停滞が長引いている背景であるというふうに書かれておりました。ところで、これを詳しく読んでみたところ、不良債権問題とかそのほかの景気刺激策のことについては詳しく書いております。ところが、この経済対策のあり方としては、産業空洞化の問題についてはほとんどと言っていいほど一言も触れられていません。  松永大蔵大臣、これは、補正予算審議を今やっているところでございます。きょうは予算書をお持ちであるというふうに思いますが、この予算書の中で、今度の産業空洞化対策について、補正予算にどういうことがその対象として書かれているのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  207. 尾身幸次

    尾身国務大臣 経済のグローバル化に伴いまして産業空洞化という問題が非常に大きな問題になってきております。それは、こういう時代になりますと、企業が国を選ぶ時代になって、企業がその生産拠点を一番いい場所に選ぶような、そういう時代になったということでございまして、日本という国を企業活動の拠点として魅力ある国にしなければならないという政策的な要請があるわけでございます。  私ども、そのために、総理も何回か答弁しておられますが、法人課税の問題を国際水準並みにするということで、ことしから実効税率五〇%を四六・四%まで下げたところでございますが、さらに三年以内のできるだけ早いタイミングで国際水準にするということを方針として出しているわけでございます。  それから、補正予算の中におきましては、実は、技術開発あるいは情報通信の発達、そういうものを通じまして、企業がこの日本という国の技術を使っていろいろな意味で経済活動ができるようなことを考えて、そこに特に重点を置いているというふうに私ども考えている次第でございます。  さらに、企業活動が活発化するためには、実は、事業活動に対する規制を撤廃、緩和することも大変大事でございまして、これは予算と直接関係ございませんが、いろいろな意味での参入規制等を撤廃し、自由な経済活動ができやすいようにしていく、そういうことにも力を注いでいるところでございます。  それからもう一つはベンチャー企業の育成ということでございまして、雇用を、そういう点で、新しい産業を起こすという意味でベンチャー対策、この予算の中で約一千億円ぐらいのお金を使って資金を投入する、あるいは技術をさらに高めるというようなことの手段を講じまして、そういう対策を講じ、空洞化に対応していくというふうに考えているところでございます。
  208. 西川知雄

    ○西川(知)委員 今の質問と答えを聞いておられた皆さんは、まず、何で経企庁長官が出てくるのかということに驚かれたと同時に、答えが質問に全然合っていないということでもびっくりされると同時に、さらに、こんなことで空洞化対策になっているのかということで、三つの意味でびっくりされていると思うのです。  そこで、何が今問題かというと、こういうような答弁が出るということが、そもそも、政治に対して非常に不信感を持ってくるということになるんじゃないかと私は思っているんです。  これは、例えば総理が財革法について、私が五カ月前に、財革法を改正するのはどういう場合ですか、経済状況が変わっても財革法というのは改正しないんですねというふうに申し上げたら、それはそうだ、湾岸戦争とかそういう突発的な場合にしか改正をしないというふうに明言されたのに、五カ月後には改正をした。  また、補正予算についても、補正予算は財政法二十九条で、一月十九日に本予算が提出されたわけですから、その後に新たに生じた事由に基づいて緊要に必要となったもの、これについてしか補正予算はつけられないとなっているのです。三塚大蔵大臣は、景気対策のためには補正予算は組まないと去年の十月にはおっしゃっているんです。大蔵大臣としておっしゃっているんです。ところが、松永大蔵大臣はこのごろは、現在の不況、いわゆる通貨危機とか破産とかいうのは確かに去年の話である、しかしながら、実際にその影響が大きくあらわれたのはことしになってから、一月十九日以降だから補正予算は組んでいい、こんなふうにおっしゃっているんです。(松永国務大臣「そうです」と呼ぶ)  これは、そうですとおっしゃいましたが、財政法二十九条を見ると、予算提出後に新たに発生した事由なんですよ。新たに発見された、または効果がそのときにあらわれたとは何にも書いていないのです。それを大蔵省としては、これは財政法二十九条はきちんと守ってそして提出されました、そういうような詭弁を使っている。  私は、これが政治不信を生んでいる大きな原因じゃないかと思うのですが、最後に総理のその点についての御見解をお尋ねします。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員は詭弁という言葉を使われました。しかし、産業空洞化というものが確かに深刻な問題であり、それに対して積極的に立ち向かっていこうとすれば、新たな業を起こせるように、新たな職場が生まれるように当然ながら目指していくというその方向は、私は何ら間違っていないと思います。  ですから、企画庁長官が、ベンチャー企業の育成、あるいは国際的な企業が国を選ぶ時代における税制としての考え方、そして新分野を開拓することにより新たな業が生まれるように、ベンチャー育成という方針でさまざまな施策をとろう、今回の補正予算の中には空洞化対策というのはそういう形であらわしておりますと申し上げた答えが、私は間違った答えだとは思いません。
  210. 西川知雄

    ○西川(知)委員 その点はちょっと横に置きまして、私が先ほど申し上げました財政法二十九条の問題、この点についてどういうふうにお考えになるのか、その点についての答弁をお願いします。
  211. 松永光

    松永国務大臣 先ほども委員の方から先に申されたのだけれども、少なくとも具体的な事実としていろいろな資料にあらわれてきたのは、平成十年度の予算を編成し提出した後に明確な資料としてあらわれてまいりました。このことは二十九条によって補正予算を編成できる理由になる、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  212. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それは私は全然納得できないのです。  なぜかと申しますと、今度の予算では、新しい総合経済対策に基づいて、二十一世紀を見据えた社会資本整備等ということで、あたかも非常に新しい、斬新的な、本当にいいものが入っているんだというようなことでいろいろと言っておられます。ところが、例えば電線共同溝、これは情報通信高度化の一端としてこの事業が行われているのですが、これは平成七年から毎年少しずつやってきているのですね。それで今度もやるということで、特に何にも目新しいことはない。  そして、私が聞きたいのは、前はどうしてこれが情報通信高度化のための二十一世紀を見据えた社会資本というふうに言われなくて、今回改めてそういうネーミングをしたのか、私は全然その辺が理解できない。前からの公共事業の中で予算が足りなかったものを今回ポイントを置いてさらにふやしたんじゃないか、単にそれだけじゃないかというふうに私は思えてなりません。  いずれにしても、二十九条にしても財革法にしても、その改正をしたりいろいろな裁量的な意見が入って、そしていろいろな、国民の目に見えないところで補正予算が組まれたり、先ほど坂口委員がおっしゃったように、当初予算を組んで補正予算をやって、また補正予算をやって、一体どういうふうに経済がなっていくのかわからない、政府の方針がどういうふうになるのかわからない。
  213. 越智通雄

    越智委員長 持ち時間が終了しております。
  214. 西川知雄

    ○西川(知)委員 こういうようなことは私は一切やめて、これから政治に対しての信頼感を取り戻していっていただきたいというふうに思います。  これで私の質問を終わります。
  215. 越智通雄

    越智委員長 これにて坂口君、西川君の質疑は終了いたしました。  次に、野田毅君。
  216. 野田毅

    野田(毅)委員 限られた時間ですので、経済問題を重点に御質問を申し上げたいと思います。  質問に入ります前に、この補正予算が国会に提出されたのは五月十一日なんですね。ちょうど一カ月前。どうしてこれ、こんなに、総理もさっき一刻も早く補正予算景気対策のために通してくださいというお話があったのですが、この一カ月間何を、どうしてこれは一カ月間審議もさせないで放置したのか。国民から見ると甚だ理解しにくいことなのです。  ここはむしろ与党の方がそういう国会の審議日程、他の法案を優先するという審議日程を組んだわけであって、そういうことを見ると、この経済対策を本当にやる気があるのか、あるいは現在の経済状況認識についてどこまで理解をしているのか、大変疑わしいという声が実はあるのですよ。ですから私は、まずその感覚、そのあたり、反省を求めておきたいと思うのですね。  実は昨年の十月以来ですか、これで五回ほど、相次いで景気対策をお出しになった、あるいは三十兆だとか、今回十六兆だとかいうことなんですけれども、いずれにしても、それだけやってもなかなか一向にらちが明かないという、何でここまで経済が落ち込んできたのか。総理自身、自分の思いとは違った形になっているはず。  そういう意味で、振り返ってみて、どの点が自分は読みを誤ったとかいうようなことを、素直に実はおっしゃった方が非常にいいのではないか。さっき坂口さんが、何ですか、燃え尽き症候群という医学用語があるらしくて、うまいこと言うな、さすがだなと思ったのですけれども、本当に国民が一生懸命これだけ苦労しながらやっていても、なかなかこの経済の先行き不安というものがうまく払拭されない。非常に閉塞感というか、むなしいというか、そういったことを広げてしまったわけですけれども、なぜここまで落ち込んだのだろう。素直に、率直に総理の気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  217. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 一昨年の衆議院選、私は、行政改革とともに財政赤字を減らすことに努力をしたい、財政を立て直したいということを訴えておりました。そして、あえて消費税率の引き上げまで国民の前に申し上げて選挙戦を戦いました。そして選挙の結果、内閣を続けて率いましたときに、そのお約束を一つずつ進めていく。行政改革については、ようやく中央省庁等改革基本法を衆参両院でお認めをいただきましたので、これから本格的な作業に、まさに各省設置法から始まる作業に入ろうとしております。同時に、財政構造改革というものに目を向けながら、その当時の状況等を十分に見た上でありましたが、消費税率の引き上げの決断をいたしました。特別減税は廃止の決断をいたしました。  私の予測に反しましたのは、その消費税の税率の引き上げ、それが、先行している所得減税を担うものだということも申し上げてまいりましたけれども、私どもが予測した以上の駆け込み需要という格好で一―三の景気を押し上げる結果になりました。同時にそれは、四―六における反動減という形を消費においてあらわしたわけであります。これは、確かに私ども、予測を誤ったと思っております。その上で、七―九に消費が回復に向かいましたものを、私どもは確かにほっとした感じで、プラスになりましたことを受けとめておりました。  ただ、ここで私どもが、やはりその時点では予測をしておりませんでしたものとして、アジアの通貨不安、金融危機というものがタイから次々に伝播をいたしました。そうした中におきまして、これは同列に置くことではございませんが、現象的に日本に起きましたものが大型の金融機関の破綻でありました。こうしたものが企業消費者、それぞれの立場における心理を冷やし、実需にまで影響を出してきた。そういう中で、今私どもは補正予算の御審議をいただいている。  要約して申し上げますなら、やはり駆け込み需要があれほど大きく発生すると思わなかった、同時に、反動減があれほど大きく出ると思わなかった、同時に、アジアの金融危機、こうしたものに対して目配りが足りなかったということではないか。大きく申し上げるなら、そういうことだと思います。
  218. 野田毅

    野田(毅)委員 今までと大分違ったトーンで素直にお話をいただいたのですが、ただ、多少申し上げれば、消費税について、消費税引き上げを決定したのは選挙前の六月の政府税調でしたね。  私たちは既にこの前の総選挙において、特に金利のレベルが史上最低の超低金利を二年間も続けているということに目をつぶって、その上に培われている回復軌道であったと。だから我々は、そのときにはむしろ、せっかく治りかけようとするところに水をかけたら必ず肺炎を起こしますよということは、既に何度も指摘をしてきた。指摘をしただけではなくて、だからこそ消費税の据え置き法案を出したんだ。だけれども、そのときは、残念ながら何も自民党だけではなかったと思います、やはりあえて強気の読みで否決をされたのです。  だけれども、そのときにはまだ駆け込み需要がここまであるなどという実績データは何もなかったときなんです。この駆け込み需要が多かったというのは、結果論として、秋ごろになってわかった話ですよね、この点は。ところが、その反動減、今お話がありましたが、反動減でもないのですね。つまり、消費税が上がって、その後、低レベルのままでずっと推移してきている。  この低レベルの推移は、特に私が非常にショックを受けたのは、つい先日発表されました四月の消費統計です。昨年の四月は、消費税を導入した直後ですから、当然のことながら三月までの駆け込みがストップをして、四月になれば買い控えに入るだろうと。だから、少なくとも一年後のことしになれば、多少は去年のどん底よりはましな消費のレベルになるのではないかという期待感があった。  だから、ついこの前ですが、尾身さん、よくおしゃべりになるんだが、大体みんな当たったことはないんだが、テレビで、いや、五月になったら絶対大丈夫ですとたんかを切っていたね。それは恐らく、この四月の消費統計が、去年の四月よりもことしの四月は必ず上がるという前提で、その期待を表明されたと思う。しかし、今日は、残念ながらマイナスの二・一だった。これは非常に深刻な話だと思います。  その点、消費について、あるいは消費税についての問題をまず指摘しておきたいと思うのです。  それから今、アジア通貨、あるいは大型の金融倒産とかいうようなことがありましたが、これもあえて言えば、必ずしもかつてのオイルショックのときのような外生的、外から発生した、あるいは天災型の話なのではなくて、ある意味では、もう既に今日またアジア通貨が再び不安定さを増してきているというのは、一にかかって日本の今日の円安ということが影響しているということは常識だ。それは、やはり日本が内需抑制策を続けてきた結果、日本が超低金利政策を改めることができない、そのことから生ずる、運用先を国内で運用するのではなくて、海外に円がシフトしていく、そのことが結果として円安を招いているんだ。このことは当時から、もう一年以上前から言われていたわけですからね。  そういう意味で、日本の内需抑制策がアジアの通貨不安の、それがすべてじゃないんだけれども、一つの原因でもあったということは、これはそのとおりだと僕は思いますね。  それからいま一つ、金融機関の倒産、いわゆる山拓破綻、こういう話。山一と拓銀と合わせたら山拓破綻、こうなるのだけれども、この大型の金融機関の倒産がその後の金融システム不安そのものにも非常に影響を与えたということで、今総理から御指摘がありました。しかし、これも実は、自分で言うわけではないのですが、既に昨年の国会で、私は予算委員会で質問をした。その中でいろいろ指摘をしてきた。  結局、ここで消費税を引き上げて内需抑制型をやってしまうと、そのことが景気悪化を招いて、その景気悪化が結果として株安につながり、株価の下落が実は金融機関の自己資本比率なり、言うなら含み益を減少させて、非常に金融不安を出すのですよ。それが早期是正措置などを前にして、あるいは金融ビッグバンを前にして、必ず、そうなれば貸し渋りというか、むしろ回収ということにいそしむことになって、いわば金融デフレ的要素になるのじゃないですかということを指摘してきた。私は、ある日突然倒産したのではない、もちろんそれぞれの企業自身の、それぞれ固有のいろいろな不祥事とかいうことが背景としてあったことは当然でありますけれども、しかし同時に、この急激な株価の下落、大幅な株価の下落ということが影響してきたということ、このこともぜひ素直にお認めになった方がいいのではないかなというふうに実は思っております。  だから、総理にとっては大変不本意、また失礼な話に聞こえるかもしれないが、あえて、橋本不況という言葉がある。本当に総理にとっては残念なことだろうと思います。さっきの坂口さんのお話でいくと、燃え尽き症候群を呈する可能性はあるかとは思っております。  私どもは今まで、特に経済問題というのは、国会における与野党の争いとかいう次元を超えて、本当に我々としては建設的な提案をしてきたつもりだし、かくすべきであるということを次々と言ってきたつもりです。だから、ただ単に結果がうまくいっていないから、おまえ責任をとれとかいうような、そういう言い方はしていません。  ただ、今まで、あるいは減税論議にせよ、この深刻な状況、特にバブル崩壊後の我が国経済の直面しているいろいろな課題、あるいは日本のシステムがそろそろ今までのままでは限界なんだ、制度疲労に陥って構造的に変えなきゃならぬ、あるいは超高齢社会、少子社会を目前にして我々はシステムから変えていかなきゃならぬ、そういう中で、かなり構造的な低迷の要素を抱え込んでいるわけですから、そういうことを頭に置いて提言をしてきた、こう思っています。  だけれども、残念ながら、今までそういう我々が提言したことが素直に受け入れられるということがなくて、あるいは拒否をされたままだったり、あるいは受け入れられたとしても一年後、二年後、物によっては三年後、後になって、今ごろになってようやく我々が言ってきたような政策を取り入れていただいている。いわばツーリトルというよりもツーレートということがあるのですよ。(発言する者あり)若い人、あなた方は国会バッジをつけていなかったのですから、今こういう大事なときに、そういうやじを言っちゃいけません。いいですか、まじめにしゃべっているときはちゃんと聞きなさい。委員長、ちょっと黙らせなさい。
  219. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  220. 野田毅

    野田(毅)委員 具体的に、私は、たくさんありますが、幾つかの我々が言ってきたことで、それが受け入れられなかった、あるいはツーレート、遅過ぎた形での受け入れであったということを幾つか申し上げておきたいと思います。  第一は消費税、この問題は今申し上げたとおり。総理自身もお認めになった。  それから第二は、減税問題であります。  私たちは、これは後ほど触れますけれども、この減税措置というのは、いわば今の日本を構造的に立て直していくには、どうしても民間の力をエンカレッジする、古い言葉でありますが、昔は民力の涵養という言い方もありましたが、その民力の涵養をしていくという、これによって日本経済を再建していくのだ。それには、言うならサプライサイド、担い手側のやる気をどうやって引き出すか、このことがこの減税論の中でも、さっきからちょっと議論がありましたが、法人税減税でやったり、これはさっきの話があった日本産業空洞化と関係しているわけだけれども。  あるいは所得減税についても、ただ単に今回やったような課税最低限引き上げ方式ということではなくて、税率構造そのものをちゃんと、やはり最高税率を半分以上取っちゃいけませんよ、泥棒でも山分けというのですからね。山分けというのはフィフティー・フィフティーだ。懲罰的な高い税率を持っていて公平だ公平だと言っていても世の中うまくいかない。  余談になりますが、サッチャーさんが総理になられたときに、イギリスの最高税率、所得税は九〇%だった。サッチャー税制改正は三回ぐらいに分けて行われているけれども、最初にやったのはその九〇%を六〇か六五に落とした。だけれども、そのときには税収は逆にふえたのですよね。だから、税率が高いということは、結果として、租税回避行為とか、言うなら脱税インセンティブを働かせることになる。租税というのは、やはりフェアな形でみんなが納める形というのは考えておかなければいけない。  そんなこともあって、十八兆円減税、当面十兆円だということで、我々は所得税の半減をしますよということを言った。しかし、これは規模が大きくて世の中もびっくりして、何か選挙のために言ったのじゃないかというような反応もあった。残念ながら我々は勝利できませんでした。しかし、当時、恒久減税論を真っ向から否定した方々も、今になると似たように大幅減税を言い出していて、やはり小沢一郎率いた政党は正しいことを言っていたじゃないかという評価に今なってきた。今、総理の方も、恒久減税措置を今度の参議院選挙に向けて政府税調で勉強してもらおうというところまで話は来ている。  実は昨年、三月であったと思います。二月から三月にかけて、恒久減税ができないなら、せめて特別減税の打ち切りはしないで継続だけでもしたらどうだといって、私たちは実際に法案を提出したのですよね。それは今総理がお話しになったように、その法案も握りつぶされた、そして廃案になった。だけれども、結果的には、ことしの一月に特別減税をやらざるを得ない状況になってしまっている。このことも私は指摘をしておきたいと思います。これは今総理が、お話があった。  そしてもう一つ大事なことは、お触れがなかったのですが、不良債権処理問題なんです。  この不良債権処理問題について、これは私たちは二年前、いわゆる住専処理国会、その後、金融三法の審議があった。そのときに、住専処理にだけかまけていてはだめだ、住専だけじゃない、それよりも大事なのは、金融機関が破綻をするということは十分考えられるのですから、その金融機関が破綻したときにどうやって預金者に迷惑をかけないか。そのためには、公的資金を住専処理に使うのじゃなくて、金融機関の破綻に公的資金を入れるべきであり、そしてそれを入れるときには、ただお金を入れるだけじゃなくて、経営責任等々の追及もしなければならない。そして同時に、債権回収を厳しく徹底してやらなければならぬのですから、ただ単に普通の行政機構ではこれはだめなんで、言うなら司法上の公権力というか、言うなら管財人的な、強制的なそういう回収の権能を持つような特別の不良債権処理機関をつくるべきであるということを、二年前、住専国会で私たちは提案をした。  提案をしたのだけれども、とうとうそのときにはお聞き入れがいただけなくて、むしろ、いや、もう不良債権処理は、大体、信用組合は別として、銀行クラスは自分で処理能力があるんです、つぶしませんというような話で、とうとうその部分は伏せたままになってしまった。そしてずるずる日がたってきて、昨年今ごろ、当時松永さんでなくて三塚さん、大蔵大臣でおられて、不良債権の処理は順調に進んでおります、こういうことで胸を張られて、そして引き続いて、銀行はつぶしません、こういう話があった。  私たちは、そんな簡単な話じゃないよ、むしろ不良債権処理を早くやらないと早期是正措置なり金融ビッグバンを控えていくと大変なことになりますよ、だからまず順序そのものを間違えているんじゃないですかということを、この二年間口をきわめて私は言ってきたつもりです。この国会でも何回もそのことを言ってきた。  だけれども、ようやくこれも、ことしのこの前の経済対策で何か初めてそういう、この不良債権処理についての権能を、整理回収銀行かなんかをさらに強化してやっていこうという形になった。しかしこれも、私は、本当に政策不況と言われるにふさわしい判断誤りであった、政策選択を間違えた。我々の言うことにもう少し耳を傾けてくれて、言うなら政党間の与野党の対立的な枠組みだけで受けとめるんじゃなくて、まじめに我々が提案したことをしっかり受けとめておいてもらえばよかったのになという思いがあります。  それからいま一つ。財政構造改革法、これは午後から野党各党、それぞれ問題提起をしてきたとおりであります。  私はこの点で、昨年の臨時国会で実際に答弁をいろいろ聞かせてもらいました。私も質問をした。  例えば、公共事業について、初年度に七%程度を対前年で削減して、その後は対前年でマイナス、マイナスにしていくんですよという、いわゆるキャップという考え方というものは合わないんじゃないか、こういったことは法律で決めるべきことじゃないじゃないですかということを私は問題提起いたしました。  つまり、一つは、当初予算を厳しくしたとしても、後から補正追加して結果としてふやすのなら何ら意味はないじゃないですか、だから結局、この法律の精神ということからいえば、補正でも追加はしないということでなければこの法律をつくる意味がないじゃないですか、こういうことを聞いてみたんですが、当時三塚さん、そのとおりだ、こうおっしゃった。そして、景気対策としての補正もやらないでいいんですか、こう聞いたら、集中三カ年ということはそういうことなんです、経済政策が直ちに補正要因と考えるべきではありません、財政法二十九条は厳格に考えるんです、こういう話だった。  私は、これは大変大事な問題ですよ、だから、こんなことをやっていたら景気対策の両手両足を縛ってしまうことになりませんか、金利はもうこれだけの超低金利ですから動かせない、その中で、財政が動かなきゃならぬときのその両手両足まで本当に縛っていいんですか、大事なところだから、総理は一体どうなんですかという確認までしたんだ。覚えておられるかどうか。そうしたら、三塚さんがおっしゃったことを私もそのとおりに考えますという話だったんですよね。  ですから私は、そういうことをやっていれば、そういう財政再建、かたくなな、言うなら目先の財政収支、帳じり合わせを優先するやり方をやっていれば大変なことになりますよ、こんなことをやっていれば、我々は地獄行きの特急列車に乗っているのと同じじゃないですかという話までしたのですが、しかし、それが財革法の原理だということまでお話があった。  結局、消費税の引き上げ等々あったのだけれども、昨年の秋が政策転換、路線転換をすべき一番大事な時期であった。この一番大事な時期に財革法をつくってしまった。そして、それに基づいて当初予算を組んでしまった。それが、今日まで身動きがとれないことになってしまった。このことをまず総理はお認めになりますか。
  221. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それぞれの場面における御主張、恐らく、今私自身、議事録を持っておるわけではありませんけれども、私自身も、議員と交わしました論議は、その大筋は記憶をいたしております。  そして、そうしたやりとりをする中で、私どもなりの政策選択をし、議員の言葉をそのままに拝借するならば、遅く実行した、聞かなかった、いろいろな御批判をいただきました。これを一々、なぜこう判断をしたかとか、どうこうというやりとりを過去にさかのぼってみても、私は不毛だと思います。そして、議員の御指摘、それぞれのときの細かいやりとりまでは記憶をしておりませんが、大体において今まで議員と交わしてきた論議の中身を追ってこられた、そのように拝聴をいたしました。
  222. 野田毅

    野田(毅)委員 本当はもう少しいろいろこの問題、突っ込んでいきたいのですが、時間の関係上。  さらにもう少しつけ加えておきたいのですが、公共事業の問題なんです。  公共事業、これも去年の国会で我々が言ってきた一つは、単価の問題。いわゆる民間工事に比べて、国なり地方が発注する工事単価が、建設省の統計で見ても、一割から三割高いという統計がある。これは建設大臣、しっかり見ておいてください、建設統計年報にあります。  これは、この国会で、予算委員会で私、指摘をしたのですよ。私たちは、その単価を下げるべきだ、また、単価を下げる仕組みを考えろと。ただ、今の時期は、下げっ放しというといろいろ大変だろう、雇用の問題等々もあります。経済がこれだけ落ち込んでいるときですから、仮に単価を二割削減するのなら、むしろ事業量を逆に二割ふやす。予算の総規模は動かさなくて結構です、むしろ単価を下げて、その部分は事業量の拡大に回せ。その方が、計画された事業が前倒しで早くでき上がるんだ、その方が経済効果も早く出るんだ。そのことを言ったんだけれども、結局おやりになったことは、逆のことを実は去年おやりになった。  だから、五年計画のものを七年計画に延ばしてしまって、そして見せかけの単年度の予算の規模だけは落として、そして改革だ改革だみたいな話が行われた。そのための法律まで改正がありましたよね、五年から七年に延ばすような。私は、これは逆じゃないですかということを言ってきた。これまた逆のことをおやりになったし、今もおやりになっているのでしょう。  そしていま一つ、公共事業について、私たちは、今言ったような目先の予算規模を圧縮するということではなくて、むしろ、個別の補助金、箇所づけ的なことをもうやめて、事業ごとの補助金はやめて、包括的な交付金として地方に丸ごと渡しなさいと。地方の自己責任で、どの事業を優先するかということを自分で決めてもらう。一々地方から上京して国に陳情するようなこともする必要はない。そういう仕組みに変えなければならないし、それをやれば事業量を落とさなくてもコストをむしろ削減できるんだよということも言った。まさに構造改革というのは、そういうことをやるのが構造改革なんですよね。  そういうこともお話をしましたが、残念ながらそうはならなくて、結果的に予算規模を圧縮するという道をとられて、今回逆に、二兆幾らかまた追加をする。恐らく、この調子でいけば第二次補正は不可避だと僕は思います。だって、八〇%ぐらい前倒し執行するのでしょう。あとは埋まりませんよ。後半になったら息切れします、穴があきますよ。だから多分、公共事業は、第二次補正を前提とした今度の十六兆円規模対策だろうと私は思っております。  地価税の問題もそうです。三年前に私たちは地価税の凍結法案を出した。しかし、これは廃案に追い込まれましたね。ようやくことしになって、自民党は是正をされた。だから、これもちゃんとやっていればよかったのに、こうやって遅過ぎたということであります。私は、過去のことをとやかく言ってみても始まらぬというのは、そうだと思う。だけれども、実はここが大事なところであって、我々が問題提起をしたことの中でまだ実行されていないことがある。このことが、今これからどうやって日本経済を立て直していこうかというときに、そこのところが大事なんですよ。ここが大事だから、あえて言っているのですよ。  我々が言ってきていること、不良債権処理の問題であったり、あるいは恒久減税の問題であったり、幾つかまだ積み残して、やっていないことがある。ここのところをぜひひとつ総理考えておいてもらいたい。このことを申し上げておくのです。いやいや、聞かない。建設大臣はいいです。頑張ってください、あなたは。  そこで、私は総理に、これからの日本経済の立て直しのための日本経済再建戦略をどう考えておられるのか。財政再建戦略はあるかもしれないが、今後日本経済をどう立て直していくのか、その戦略を、ぜひ総理の自分の言葉でお聞かせ願いたい。経済の再建戦略があって、その上で財政再建というのは成り立っていくわけです。だけれども、今まで出てきたことは、そういう経済再建戦略みたいな話がなくて、何かいうとすぐ、財源をどうするとかその種の話ばかりになる。だから、これが今の日本経済の上で一番の問題なのです。ぜひひとつ、総理の生の日本経済の再建戦略、ちょっと教えてください。
  223. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員から、自分の言葉で日本経済再建の戦略をというお問いかけがありました。(発言する者あり)
  224. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。
  225. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 よろしゅうございますか、応援団の方々がいろいろ御発言になりますので。(野田(毅)委員「どうぞ余り気にしないで。時間がありますから、よろしく答弁を願います」と呼ぶ)  まず、私は、今必要なこと、一つは、いかにして日本の金融を安定させ、経済の動脈としての役割を確保するか。これは、先ほど議員からもお触れになりました不良債権の処理というポイントにかかってくると思います。そして、預金者の保護のための施策等は既に準備ができ、その意味での安心はしていただける状態になりました。  これから必要なことは、金融機関のバランスシートからいかに不良債権というもの自体を、片方に引当金を用意するのではなく、消していくか、本当に消してしまうか。そのためには、担保つき債権、証券といった姿での流通市場も用意しなければなりませんし、先ほど議員が持論を今までに述べたという要約の中で、司法にかわるような機関をという表現をされましたが、そうしたものに対応するようなものを今私どもは準備をしつつあります。これは細かく言い出せばいろいろ出てきますけれども、一つはこの不良債権の処理という問題であります。  もう一つは、先ほど他の委員から産業空洞化というものに対応する手法という形でお尋ねが出たテーマでありますが、いかにして新たな業を起こすか。ベンチャー企業とかいろいろな言い方がありますけれども、要は新たな業をいかに起こすかということであり、これに必要な技術をいかにして確保するかであります。  一方は、教育、科学技術の分野から芽吹いてくるものをいかにして企業化するかというところでありますが、従来、我が国の場合に、新しい業を起こそうとするときの立ち上がりの資金を初め、困難というものが他国に比べて大きくハンディをつけているという批判をさんざん受けてまいりました。  今、ベンチャー企業の育成という言葉でよく言いならわしておりますけれども、私どもは企業の芽となります技術を一方で育てること、開発すること、それをどう助けていくかということとともに、業の立ち上げを、いかにして立ち上げやすい、これはある意味ではハイリスク・ハイリターンの資金ということになる要素が高いわけですから、アメリカの場合は例えばNASDAQのようなものが一つそうした対応する市場として存在をしておりました。そして、そこから育った巨大企業が今世界を濶歩していることも御承知のとおりであります。店頭市場等が日本では昔はそうだった、そういうつもりだったのかもしれませんが、今、その意味では私どもは市場を育てなければなりません。  そういった意味でのハイリスク・ハイリターンの投資というものが新たな業を起こそうとする場合にきちんと用意される、こうした仕組みを我々は求めなければなりません。  同時に、構造改革。今、一つは官による事前規制という中で息がとまっている部分を、いかにしてルールをオープンにした上での事後チェック型の行政に変え、その空間に新たなものが芽吹くような構造が用意できるか、これが大きなもう一つのかぎであります。ただ、構造改革という場合にはもう一つ考えなければならないのが少子・高齢社会の中における労働人口構造の変化、これを反映するものをつくり上げていかないと長続きがいたしません。  こうした点に目配りをしながら組み立てていくのが役割であろう、そのような戦略を描いております。当然ながら、医療とか福祉とかいった分野が新たな業として育っていくであろうことは申し上げるにかたくありません。
  226. 野田毅

    野田(毅)委員 ありがとうございました。大体、今総理がおっしゃった方向性は、ある種の国民的合意にかなり近い部分だろうと思うのですね。  私たちも、日本再興へのシナリオという自由党としての基本政策を取りまとめ、その中で経済再建について二段階で再建していくという戦略を発表しております。時間の関係上なかなか朗読もできませんが、ぜひ一遍お目通しも願いたいし、感想も聞いてみたいという思いがあります。これはつまり、具体的な政策の中身、柱ということが一つと、いま一つ大事なのは手順、時間という戦略。つまり、政策手段とそれを実施する時間、手順、この両方が大事なんだというふうに考えています。  そういう点で、今、総理は時間的な話は横へ置いて、まあ私の聞き方が漠然としていたからそういう答えだったと思うのですけれども、テーマとしての不良債権問題、これはおっしゃったとおり。  ただ、口で言うのは簡単だけれども、実際に不良債権問題、処理してこれを乗り越えていこうというと、しかも二年でやろうというようなことでいこうとすると、率直に言って、かなり金融面からのデフレ圧力は強まるということだけは頭に置いて臨んでおかなければならぬということなんですよ。そんなに、ことしやって来年すぐよくなるという世界のものではない。言うなら、言葉は広いかもしれませんが、金融デフレ的要素があるわけです。ここは、ぜひひとつ頭に置く必要がある。しかし、これは避けて通れない、くぐらなければならぬトンネルなんですよ。  それからいま一つは、規制緩和。さっきニュービジネスのお話、いろいろな構造改革のお話、そのとおりなんです。そのとおりなんですが、これまた言うはやすいのですが、実際には政治家だけでもできない要素がある。これは、一番大事なのは、実は国民一人一人の意識改革を伴わなければできないのだということを総理はおっしゃるべきだと私は思う。  それは、例えば規制をやめようということになる。そうなると、おのずから何が大事かというと、独立心というか、言うなら、行政や人に依存をしないでやはり自分のことは自分でやっていくんだという自立心が強くなければならないだろうし、もちろん、何をやってもいい、ノンルールというわけではないが、自己規律というのは当然だが、フェアルールの中でフェアな競争を堂々とやっていく。そういう意味で、フリー、フェア、オープンというか、日本語で言えば正々堂々、公明正大、そういう経済、そういう社会に切りかえていく。  だけれども、長年いろいろな規制の中で、あるいは守られ指導されというような中であれば、結果的にはその方が安直なんですね。だから、ついつい依存心がある。そのことが結果として、役所側から言わせれば、それを一つの口実にして規制をどんどんまた強化するし、役所の手のひらで活動するようなことになる。  そういう意味で、今総理がおっしゃったことを大体我々が考えている。これはやはり、民間の力、さっき言いましたが民力をいかに引っ張り出すか、こういうことが経済再建の一番の眼目でなければならぬが、その中の一つが、さっき産業空洞化の話もありましたが、総理のお話の中でぜひもう一つ欲しかったねと我々が言っているのは、恒久減税というのはそういう意味なんだ。  だから、我々は恒久減税だけで世の中がよくなるとは言っていません。つまり、恒久減税の位置づけというものが、目先の消費をふやすとかいうような議論ではなくて、むしろ日本経済を構造的に民間の力を中心にして立て直していくんだ、そういう社会に切りかえていくためにはやらなければならぬ大事なテーマなんだ。そして、堂々とやっていく。役所を頼らない、そういう形をつくっていく。それには、国民の意識改革と同時に、一方で規制緩和を中心とする行政改革がそこで必要になってくるのだ。  行政改革というのは、まさにそこに一番大きな意味があるのであって、役所の数を、どことどことくっつけるとか看板の枚数を減らすとかどうのということも大事かもしれないが、それよりもむしろ、民間の自由な経済活動領域に対して、役所や政治も含めて、行政が介入をしないということ、ここが一番大事なポイントなんだ、これが実は行政改革なんだ。そこをぜひやってもらいたい。私ばかりしゃべっていて恐縮なんだけれども、質問したいことは山ほどあって、限られた時間だからしようがないんだ。  そこで、さっき菅さんからもちょっとお話がありました。本当にそれをやろうとするのなら、業界に対して締めつけとか利益誘導とかそんなことは本当に、規制を撤廃する、民間の自由な活動領域には介入しないんだ、それを行革でやるんだよというのなら、ぜひ、政治の世界で今後業界への締めつけなどというような話は余り耳に入らぬ方がいいですね。そういったことが、権力を握っているから何をやってもいいんだということをやっている限り、私は、こういう規制緩和を本気でやる腹がないということのあかしになってしまうのではないかという懸念をいたします。  この点、総理、今まで申しましたことについて御感想があればどうぞ。
  227. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 規制の問題と同時に地方分権というものが行政改革の基礎だということを、私は先日来、繰り返し繰り返し国会で御答弁を申し上げてまいりました。そして、既に規制緩和推進三カ年計画は現に動いているわけでありますし、地方分権推進計画も国会に御報告を申し上げ、所要の法律案を、できるだけ早く作業にかかれという指示を近々出さなければなるまいと内々相談をしている状況であります。その方向も既に地方分権推進委員会から示されております。  また、これはもう議員が大変昔から専門にしておられた分野でありますから、税制についての御意見も拝聴をいたしました。その上で、私どもは法人課税について、三年以内に国際的な水準並みにということを既に申し上げております。そして、それは三年かけるという意味ではございませんが、地方の税財源としての法人事業税の問題がございますから、こうした点も慎重に判断をしながら、しかし国際水準並みにということは申し上げてまいりました。  また、所得課税に対しては、これは、議員は高い方々の部分の率についてお触れになりまして、イギリスにおけるかつての姿から、サッチャーさんの税制第一回の改正に至るプロセスの数字を挙げられました。そして今、日本の最高税率が大体当時のそのイギリス、第一段階目の改革の当時の水準にまだあるということを私は暗に言われたんだと思います。  そしてその上で、私はよくこの特別減税に踏み切ります前の課税最低限、これを欧米の数字と対比しながら、それだけ日本は所得の低い方に対して負担をかけていないという説明をしてまいりました。その上で、所得課税については、資産性所得に対する課税あるいは年金課税、あるいはさまざまな控除、いろいろな点を考え、同時に、他の税制と組み合わせられ、でき得るならば社会保障負担、社会保障における保険料の設定等々も含め、全体のバランスのとれた税制をつくっていきたいと前から申し上げてまいりました。所得課税については、私は、額に汗した方が報いられるようなという言い方を申し上げております。  今後なお努力をしていくべき問題が多々あるという点は、私は委員の御議論を全く否定をいたしません。ただ、行政改革の土台、それは規制の見直し、緩和、撤廃であり地方分権であるという御指摘は、むしろ地方分権を私はつけ加えさせていただきましたけれども、私ども自身鋭意今その努力を既に始めていると、御答弁を繰り返し申し上げてまいりました。
  228. 野田毅

    野田(毅)委員 今総理は、所得課税について、かなり税率をも含めた見直しについて前向きのお話もありましたが、我々がこの話をするときは常に、自民党も含めてそうなんだけれども、すぐ財源がどうだとかこうだとかということで終始しているわけですね。  結論から聞きたいんですが、総理は、恒久減税への意欲を今私は感じ取ったんですけれども、赤字国債を財源とする恒久減税はやらないということですか。赤字国債はあえてやむを得ない、いっときの赤字の拡大はやむを得ない、その点は、ぜひイエス、ノーを聞かせておいてもらいたいのです。
  229. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これから私どもは真剣に検討をしようといたしております。今、軽々にイエス、ノーの申し上げられるような問題ではありません。
  230. 野田毅

    野田(毅)委員 それでは、総理は、イエス、ノーを言えるようなことではない、これから検討だということは、赤字国債を財源とする所得税等の恒久減税措置について容認をする、これは否定はしなかったということですね。これから検討だからノーという結論ではない、こういうことでしょう。イエス、ノー、両方が視野に入っておる、こういうことですね。
  231. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 と申しますよりも、では改めて御答弁を申し上げます。  税制は一つだけの税の姿で論議すべきではないことは、私は議員からかつて教えられたことでありまして、税はそれぞれの特性を持ち、その特性を十分に組み合わせて初めて公平な税制、公正な税制ができる、まさに私はそう教わりました。そして同時に、私は、今頭の中に置いたもう一つの問題として、社会保険の保険料というものも組み合わせて考えなければなるまいということを申し上げました。  その上で、全体を考えて議論をしていくときに、特定の税に関するプラスマイナスのみを今イエス、ノーという聞き方でお求めになるというのは、私は少し無理があると思います。全体の税構造、その中における所得課税のあり方、しかも、その所得課税を議論しようとするならば、論議をすべき点は幾つもポイントがあることは議員御承知のとおりであります。  政府税制調査会は論議を開始しておりますが、党も、この後、そうした問題点を十分に論議をしてまいります。
  232. 野田毅

    野田(毅)委員 恐らく、いわゆる直間比率の是正等々何らかの、片方で減税、片方で増税というか、そういったことも頭をよぎりつつという感じだろうと私は受けとめたのです。  私は、これはみずからの反省も含めてなんですが、やはり消費税というものについての国民の理解というのはまだまだ十分ではないのですね。それは何に使われるかわからないということなのです。  だから、私たちは、少なくとも消費税というのは、その存在の最大の大義名分は、高齢社会、その社会保障をファイナンスするという、この大義名分で消費税をつくってきた。だけれども、実際につくったときには、増減収ゼロという形の中で直接税減税の財源になっていった。今度の消費税の引き上げも、先行して所得税特別減税をやったのだからその穴埋めですよというイメージになってしまって、肝心の社会保障の方は、介護は介護で保険料は引き上げるわ、医療の方は医療の方で保険料の引き上げと自己負担の増加だわと。じゃ、一体消費税はどこに使われているのですかと。  しかも、これから先を考えたら、少なくとも若い人たちから見て、現役世代が先輩を支えていくという世代間負担、いわゆる社会保険というこの仕組みは一体何だ。人口構成が同じレベルでいくのならいいのだが、少なくなっている現役世代が数多くなっている人を養っていこうとしたら、これは容易なことじゃない。だから、恐らくこれはもうすぐ来るでしょう、来年、多分小泉さんが何と言おうとこれはやらざるを得ないはずだ。それは、年金保険料の引き上げと給付水準の引き下げを同時提案せざるを得ないはずだ。  しかも、これだけ超低金利ですから、年金基金の運用の益の計算が、今たしか五・五のはずですよね。その五・五のままで今度の改定時期に使えるのか使えないのか。もちろんこれは目先の金利だけで動くわけじゃありませんにしても、そういう問題もはらんでいる。  だから、結局、この昨年来の消費不況という中で、一つ落ちていたのは、消費税の引き上げ等々だけじゃなくて、社会保険あるいは介護保険等の老後の年金あるいは医療、介護、これに対する不安があって、それがいわば雇用不安と相まって生活防衛意識を非常に高めてきたという、これが消費をたたいているもう一つの要素であるということを指摘しておかなきゃならぬ。  だから私たちは、少なくともこの消費税は、当初の国民への説明と同じように、社会保障以外には消費税は充てない、直接税の減税財源にも使わない、一般行政経費には充てない、そのかわり、高齢化がどんどん進んでいくということになれば、当然、社会保障の給付の中でむだを省くことは当たり前ではあるが、それにしても、ある程度消費税がそれに伴って上がっていくのは、これはやむを得ない。そういう意味で、消費税を福祉目的税に限定してしまえ、こういう考えを我々は持っておるわけです。総理は、そのことを多分視野に入れながらのお話ではなかったかと思うのだが、ぜひ御検討を願いたいと思います。  あと数分ということになってきました。最後にちょっと申し上げておきます。  先ほどもちょっと話があったのですが、先般の政治倫理審査会において山崎代議士の疑惑が取り上げられました。しかし、政治倫理審査会に出席した我が党の中村、中井、西川代議士の報告によると、政治倫理審査会における山崎代議士の答弁は、昨年行われた泉井氏の証人喚問で泉井氏が証言したことと真っ向から対立している。我が党としても、泉井問題解明小委員会を設置し、疑惑解明に当たっているが、調査すれば調査するほど山崎代議士と泉井氏の話の食い違いが際立ってくる。  しかし、話の内容が相対立する二人について、民間人である泉井氏に対しては、議院証言法に基づく、発言については罰則規定のある証人喚問を行ったが、片やもう一方の当事者である国会議員の山崎代議士については、秘密会でマスコミ等の目にも触れず、発言については何ら罰則規定のない政治倫理審査会で済ませようとしている。これは極めて不公平な話であり、国民の納得を全く得られない話である。  山崎代議士が潔白であることを証明したいのであれば、堂々と証人喚問に応じ、泉井氏とともに公の場で事実を明白にするべきである。よって、我が党としては、山崎代議士の証人喚問を早急に行うよう要求いたします。  委員長、よろしく取り計らいを願いたいと思います。
  233. 越智通雄

    越智委員長 理事会にて協議いたします。
  234. 野田毅

    野田(毅)委員 最後に、ベチューン医科大学ODA問題でありますが、これは冒頭、民主党等からも話がございました。我々としても、この問題、答弁を本当は欲しいところでありますが、この委員会でぜひ、予算採決されるまでに、別途理事を通じて必要資料を要求いたしますので、よろしくお取り計らいを願いたいと思います。  よろしくお願いをいたします。
  235. 越智通雄

    越智委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  236. 木島日出夫

    ○木島委員 木島日出夫でございます。  私は、日本共産党を代表いたしまして、大変深刻な状況にある不況をどのように打開するか、この問題を中心にいたしまして、総理と関係の大臣に質問をいたします。  バーミンガム・サミットで、総理は、不況打開のために不良債権処理を早急に実施することを対外公約してきたわけであります。さきの緊急経済対策特別委員会におきましても、総理は再三、不良債権をバランスシートから落とさなければならない、こう強調したわけであります。  自民党の加藤幹事長はこう言ったということがマスコミで報じられました。大きなゼネコンとか不動産業の人たちの不良債権処理に国が介入することはぜひ必要なことだ、こういう発言であります。この加藤発言を報道で知った国民から、今大変激しい怒りの声が上がっております。一つだけ、ある全国新聞の投書欄に一昨日、九日に載った投書を披露いたします。今多くの国民の率直な気持ちだと思われますので、総理に、この声に対してどう受けとめるのかお聞きしたいので、ちょっと引用しますのでお聞きいただきたい。  こういう投書。一部でありますが、この問題に触れた後、「「国民をばかにするのもいいかげんにしろ」と言いたい。預貯金利子はゼロに等しいコンマ以下。消費税率を上げ、金融機関救済に税金を使い、そして今度はゼネコン救済だという。これほど彼らに肩入れするのは、自分たちも金がほしいからだろう。献金という名の金が。だからこそ、政治腐敗防止法案で政治献金をあっせん利得罪の適用対象とすることに頑強に抵抗し、葬り去ったのであろう。」こういう指摘であります。札幌の七十歳の男性のものであります。  私は、なかなか本質をついた投書だと思いますし、何よりも、今多くの国民の率直な気持ちがここに込められていると考えましたので、こういう国民の声に総理は、どのように受けとめ、対応しようとするのか、まずお伺いしたいと思います。
  237. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、私がお答えをすべきことなのか、その投書を受けた報道機関が報道機関としてお考えになることなのか、前の方を省略されまして、お読みになった部分が特定の場所からでしたから、その辺は判然としません。  しかし、もし、その今の投書の方が、ひいては議員がお尋ねになりたいとお考えになっておりますものが、自由民主党が構想として公表しております土地・債権流動化トータルプラン、あるいは政府総合経済対策で示しております企業の再建計画の実行と連動した金融機関の債権放棄の促進、これを意味するものであるとするならば、この構想は、金融機関の不良債権問題を根本的に解決する、そのための手法を示しているものでありますし、目指すものは金融機関が本来の機能を取り戻すということであります。  そして、その手法として考えておりますもの、これは、従来から認められていた金融機関の経営判断に基づく債権放棄について税務上の取り扱いを明確にするものでありまして、債権放棄を強制するものでもありません。金融機関の債務者、これは幅広い産業にわたっておりますから、それはゼネコンも当然その債務者の中にはあるでありましょう。しかし、この構想は、金融機関の不良債権問題の抜本的な解決を図る、そういうものであることを繰り返し御説明をし、同時に、ぜひその投書の方にも御理解をいただくよう御協力を願いたいと存じます。
  238. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、金融機関の不良債権の処理の問題について、直接にいろいろお伺いしたいと思うのです。  大手の金融機関は、公的資金の投入を受けただけではなくて、さまざまなやり方で私は大変な恩恵を受けてきたと見ております。バブル崩壊後、金融機関は、みずからの乱脈経営の結果つくり出したこの不良債権の処理を行ってきました。私は、その処理のやり方の中にも金融機関は利益を受けているということを指摘したいと思うのです。  不良債権償却のやり方は二つありました。一つは、いわゆる間接償却というやり方でありました。御案内のように、債権償却特別勘定への繰り入れをすること、引当金への計上をすることであります。帳簿上だけの償却であります。もう一つは、いわゆる直接償却。担保不動産を売却等して、あるいは不良債権そのものを売却等して、不良債権そのものをバランスシートから、貸借対照表から完全に消し去るという本格的な償却が直接償却。この二つであります。  大蔵省にお尋ねをいたしますが、九三年三月期から九八年三月期までの六年間で、大手主要二十銀行の行った間接償却と直接償却の総額はそれぞれ幾らであったのか。額だけ簡潔にお答えいただきたい。
  239. 松永光

    松永国務大臣 都市銀行、長期信用銀行、信託銀行の九三年三月期から九八年三月期までの六年間の貸出金償却額の累計は、これはいわゆる直接償却のことですよ、これは四兆三千九百億円。また、先ほど委員の言われた間接償却の累計は十八兆五千七百億となっております。
  240. 木島日出夫

    ○木島委員 これまでの税務運営では、直接償却、間接償却、今大臣からこの六年間の金額の累計が報告されました、実質どの程度まで、何割ぐらいまで、あるいは十割全部か、税務署によっていわゆる損金として認められてきたのか。専門的な言葉で言いますと、いわゆる無税償却として幾らぐらい認められてきたのか。大蔵省はこのぐらいの数字はとっていると私は思いますのでお聞きをいたしますが、直接償却、間接償却、この六年間、今大臣が述べられた総額、どのぐらい無税償却として扱ってきたのでしょうか。
  241. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今大臣からは累計で申し上げましたが、この数字は、残高でとりますと、間接償却の場合が、約四割程度が無税分かと思います。直接償却の場合は、フローで見ますと大体七割程度かという感じを持っております。
  242. 木島日出夫

    ○木島委員 間接償却十八兆五千七百億円、四割というんですから大体七兆四千億円ぐらい無税償却が認められた。直接償却四兆三千九百億円、これは七割ですか、無税償却を認めてきた、そうすると二千八百億ぐらいでしょうか。  それでは、次の質問。そう損金として認められてきた金額について、これは仮定の質問でありますが計算はできますからお答えいただきたいのですが、これがもし税務当局によって、無税償却は認められない、こんな程度じゃだめだと。特に、銀行の不良債権というのは本来あってはならぬ、みずからつくり出した放漫経営による結果じゃないか、こういうものは無税償却は認められぬ、有税償却をやるべきだという、仮に、実際はそうじゃなかったわけでありますが税務署の厳しい認定を受けたとして計算した場合に、ほかの細かいことを全部捨象いたしました場合に、この二十の主要銀行が国に納めるべき法人税額というのはどのくらいであるのか。  これは仮定の話ですが、ひとつ仮定の話として答弁を、簡潔に願いたい。
  243. 舩橋晴雄

    ○舩橋政府委員 国税庁から御答弁させていただきたいと思いますけれども、私ども、先ほど先生がおっしゃられたような形で損金算入を認めることがあるわけでございますけれども、実は申告書には、やや技術的になりますけれども、添付書類から今の直接償却、間接償却の損金算入額を具体的に把握することは困難でございます。  そこで、一般論として申し上げたいと思いますけれども、法人税額は、基本的にことしの三月期までは三七・五%でございますけれども、損金と想定される額にこの三七・五%を乗じて計算した額、この法人税額が減少しているというお答えになると思います。(木島委員「幾らですか」と呼ぶ)それは私ども把握しておりません。
  244. 木島日出夫

    ○木島委員 わかりました。そもそもが仮定の話ですが、大事な数字なんですね。その数字、間接償却、直接償却合わせますと、大体七兆七千億円ぐらいになるのでしょうか。その三七・五%、大体こういう税率でいきますと、五兆円ですか、それだけ利益を受けていると計算されるということになると思うのですね。これは一応、そういう状況にこの六年間大手の銀行が置かれていたということで私は指摘したいと思うのです。  問題は、では次にこれからどういう直接償却の仕方をされるのかの問題でありますので、その問題に移りたいと思うのです。  四月二十四日に政府経済対策閣僚会議が打ち出してきた総合経済対策、三つの柱で組み立てられているわけでありますが、その第三の柱は、景気回復の阻害要因となっている不良債権の処理を促進するとあります。私、最初総理から、この第三の柱のねらい、目的、それがどこにあるのかを簡潔にお聞きしたいのですが、別紙に「土地・債権の流動化と土地の有効利用」、これが償却の具体化として論述されております。その最初の文章に、「我が国経済に対する不良債権問題の悪影響を真に払拭するためには、不良債権等を実質的に処理し、問題を解消させることが不可欠であり、そのためには、不良債権等の背後にある担保不動産に関わる諸問題を解決することが必要である。」とあります。  そこで、さっき直接償却と間接償却のことを聞きましたが、結局このねらいは不良債権等を実質的に償却するということ。先ほどの大蔵大臣の答弁によっても直接償却の額が非常に小さい、なかなか進まない、間接償却の方は帳簿だけだ、これはそういう状況じゃだめだということで、言葉をかえれば、間接償却から直接償却を徹底してやらなきゃだめだ、そのための方策なのだ、こうこのねらい、目的を聞いてよろしいでしょうか。総理、大蔵。
  245. 松永光

    松永国務大臣 これは、委員御承知のように、銀行であろうと普通の会社であろうと、債権者が債務者に対して請求できる債権について、相手が破産した場合にはこれは損金になるわな、何としてもとれないのだから。あるいは、強制執行してみた、しかし全くとれなかった、これが損金であることは委員もお認めになるでしょう。  そして、今話がありましたように、間接償却というのは帳簿上だけの処理でございますから、したがって、銀行には貸出債権、これは腐った債権ですね、全く無意味になった債権、それが資産として残っている形になりますね。これでは実は銀行に対する内外の信認も高まってきませんし、実際問題として貸し出し能力も拡大してきません。そこで、本当の意味の実質償却、本格的な償却をこの機会に実行することによって、すっきりした銀行の姿を取り戻すことが大事だろうと思う。  ただし、その場合に、言うなれば、引当金を一〇〇%してあれば実質上の損は来ませんけれども、引当金の足らないものは実際上の損金となって銀行に来ますので、その点について、銀行はその分は力が弱まってくる、あるいは資本にすら傷がついてくるかもしれないという問題は起こる可能性がありますけれども、あっても、速やかに実質償却、その中には売り払うものもあります、売却もあります、そういったものも含めて、本格的な、実質的な償却をすることが大事だ。  それによって日本の金融システムを強化し、内外の信認を高める、これが日本経済を活性化させるために極めて重要なことだ、こういう考え方で進めるわけであります。
  246. 木島日出夫

    ○木島委員 大蔵大臣も大体お認めになられたと思うのです。  要するに、バブルのときに日本金融機関がゼネコンや不動産業界にどんどんと融資を拡大した。バブルが崩壊して、それがみんな不良債権になった。土地は担保をとっている。しかし、権利関係は複雑で、なかなか土地の処分もできぬ。現実に、それから八年間たったけれども、直接償却、大蔵大臣は実質的な償却という言葉も使いましたが、要するに直接償却だと思うのですね、それが進んでいない。だから、それを進めてこれを一掃しよう、そしてそのことを通じて日本経済を立て直そうということだと思うのです。  そこで次に、この「土地・債権の流動化と土地の有効利用」のその問題を記述した中に、こういう言葉もあるのです。先ほど同僚委員からもいろいろ質問されておりました、その体制をつくる、臨時不動産関係権利調整委員会等をつくるということの後に、「なお、債務者の企業等の再建計画の実行と連動した金融機関等の債権放棄を促進するため、臨時不動産関係権利調整委員会のあっせん、調停等によって債権者及び債務者の合意が図られ、債務者の合理的な再建計画が策定される場合に、債権放棄による損失の損金算入及び債務免除益の累積欠損金との相殺を認める措置を検討する。」これは中心的な点だと思います。要するに、債権放棄を促進するんだと。  これはどういう意味でしょうか。銀行がバブルのときに不動産業界やゼネコンにどんどんと湯水のように金をつぎ込んでしまった。しかし、それが焦げついた。それを、金融機関の債権放棄を促進するというのですから、その債権放棄をどんどんとさせる。ゼネコンの方から見たら債務を免除してもらうことですね。徳政令、そういうことを意味する。それから、そういう場合にゼネコンは棒引きしてもらう、そして放棄する方は債権放棄による損失の損金算入、先ほど再三私が指摘しました無税償却、これができる措置を検討しよう、こういう仕組みだと思うのですね。これはそう読み取らざるを得ない。  こうしますと、これは、言葉をかえれば、ゼネコンに対しては明らかに借金棒引き法、銀行に対しては税金棒引き法ではないのでしょうか。これは、借りたものは返すという資本主義社会の当たり前のルールを壊すものだと言わざるを得ないと思うのです。こんなことは、バブル時代の高い金利の住宅ローンで苦しめられている庶民から見れば到底納得できるものではない。それで最初の投書になるのじゃないでしょうか。  総理は、私が引用した最初の部分がないと言うから、一言だけ述べます。そんなに長くないのです。さっきの投書の最初の部分は、「自民、社民、さきがけの三与党体制解消を待っていたように、自民党の加藤紘一幹事長は「ゼネコン救済に公的資金が必要」と言い出した。」こういう前文があって、さっき私が読み上げたものになるのですね。  こういうことは国民は納得せぬということだと思うのです。総理、そう思いませんか。
  247. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員が全部読んでいただくのを待っておりましたので、事実誤認がある投書であるということだけを申し上げ、具体的な御質問に対しては大蔵大臣が答弁を申し上げます。
  248. 松永光

    松永国務大臣 木島さんはわかっておって質問していらっしゃるのではないかと思うのですが、すなわち、ゼネコン、支払い能力がある者に対して債権放棄したとして、それが何で、法的にいって、民法の原則からいって、損金として認定してもらえるんですか。  強制執行してみても取れそうもない、あるいは破産してもこれはもう余り配当はないというふうな状況の場合に、それまでしなくとも、合理的な再建計画、それに協力する場合にのみ、審査の上、損金として認める、こうなるわけでありまして、ゼネコンであろうとほかの事業会社であろうと、支払い能力のある者に対して債権を放棄したからといって、それが損金扱いになるぞということはおよそ考えられませんよ。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、法的仕組みのどうのこうのを聞いているんじゃないのです。今政治的になぜこういう仕組みをつくり出してまで債権放棄を促進し、一方の銀行には無税償却を促進しつつ、そんな便宜を図ってやらなきゃいかぬのか、そういう政治的なことを聞いているんですよ。  今問題になっている不良債権というのは、もう御案内のように、バブル時代に銀行が乱脈経営で自分の責任でつくり出してきたものです。その後始末を国の実質的負担で、これは国民の負担になるわけですから、処理するなどということは道理がないということを、私はこの場をおかりして強く言っておきたいと思います。  そして、次の質問に移ります。(発言する者あり)いや、もう時間がありませんから、次の質問に移ります。次に超低金利政策の問題……(松永国務大臣一言だけ」と呼ぶ)いや、時間がありません。答弁は要らないです、もう。私は意見を言ったんです。  超低金利政策の問題についてお聞きをいたします。  パネルをつくってきましたので、ごらんいただきたいんです。  バブル崩壊の後、銀行業界が受けてきた便宜は無税償却だけではなかった。直接にはこれは日銀の所管事項でありますが、超低金利政策によって日本の金融業界は大変な利益を受けてきました。そして一方、国民は大変な預貯金の目減りという損失をこうむってきたわけであります。  公定歩合の推移を見ますと、九〇年八月三十日に六%、九一年、九二年に五回にわたって引き下げられ、九三年二月四日には二・五%、同年九月二十一日には一・七五%、そして九五年四月十四日には一%、そして九五年九月八日から今日まで〇・五%。歴史的にも、他国との比較でも、非常に異常としか言いようのないような超低金利政策がとられ続けてきたわけであります。  そこで問題は、この超低金利政策のために、バブルがはじけた九〇年以降今日までの個人企業を含む家計部門、国民です、家計部門の純利子所得。受取利息じゃないです。家計部門もローンや何か借りていますから、住宅ローンも借りていますから、その金利、下がっているでしょう、それも計算の上、純粋に利子所得がどうなったか。  調べてみましたら、九〇年度の六%の時代は、純利子所得、全部の家計、国民全体から十二・六兆円。そして、この表にありますように、九一年十二・四兆円、九二年度十・八兆円、九三年度十一・五兆円、九四年度八・二兆円、九五年八・一兆円、九六年七・三兆円であります。これは経済企画庁が作成している国民経済計算年報から計算してつくり出したもので、間違いないことだと思います。  これを見ますと、九四年度以降の家計部門での純利子所得の落ち込み額はすさまじいものであります。バブルのはじけた九〇年度の純利子所得と比較しますと、大変です、四二%の減少。特に、直近の統計がある九六年度だけで、何と九〇年と比較すると、純利子所得、すべての国民から五・三兆円削り込まれている。これは消費税二%に相当する金額であります。九四年度以降の三年間だけで十四・二兆円の純利子所得が家計部門から奪われている。これは国民一人当たり十一万円を超える金額、四人家族で四十四万円であります。  ことし四月九日開催の日銀政策委員会の会合においても、こう記されております。ある委員から、現在の金利水準は家計の立場から見れば非常に低く、年金生活者等が不安定な状況に置かれていることについてどう考えればよいかと指摘があった。日銀の中でもこの問題が、論議が始まった。そのことを指摘しておきます。  経企庁あるいは大蔵大臣総理に聞きます。一言でいいです。この超低金利政策による家計部門の純利子所得の目減りも、国民消費の減退、落ち込みに大きな影響を与えていると私は考えますが、私の考えは間違いないですね。
  250. 松永光

    松永国務大臣 答弁の前にちょっと申し上げますが、先ほど言ったように、ゼネコンのための云々というのは、全くこれはいわれなき非難ですから。実際上、損金と認めるべき場合にのみ合理的に判断をして損金に認める、こういうことなんです。だから、ゼネコンのように堂々とやっているところに損金の計算をするなどということはありませんので、国民が誤解しますから、はっきり申し上げておきます。  なお、金利の話でございますが、これは、いわゆる公定歩合とのかかわりも出てくるわけでありますが、これは日銀の専管事項でありますので、そのことについては発言はしませんけれども、要するに、金利が低いことによって、先ほどお話のありました住宅ローンを賦払いしている方とか、あるいはまた設備投資をする方にとってはプラスに働きますけれども、そうでない一般の家庭にとっては利子収入減少するなどという影響を受けていることは、私どももそのことは承知しておりまして、その点は気の毒だと思っておりますが、いずれにせよ、景気がよくなってくればこの問題も解決の方向に向かう。  したがって、一日も早く、景気対策のためのこの補正予算審議して、そして通過させて、成立させていただきますことをお願いする次第でございます。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 何か、不良債権対策のための新たな仕組みづくりがゼネコンのためでないということを盛んに大蔵大臣強調しますが、私は、手元にことしの六月三日の日経新聞の「金融再生への模索 進むか不良債権処理 自民・トータルプラン推進特別調査会会長保岡興治氏に聞く」という新聞の切り抜きを持ってきております。  そこで最後に保岡氏は、「トータルプランはゼネコンなど多額の負債を抱える債務者の安易な救済につながるとの批判も出ているが。」こういう質問を受けて、反論していないのです。「モラルハザードが起きないように最大限配慮する。」と。そういうことを前提にしてモラルハザードが起きてはいかぬ、倫理の欠如が起きてはいかぬ、こんなに公的資金で債務を棒引きしてもらって倫理欠如が起きてはいかぬ、そういう答弁ですから、もう明らかだということを私は指摘して、次の質問に進みます。  三十兆円の公金投入の問題についてお聞きします。  銀行支援の三十兆円公金投入の仕組みが、九七年度補正予算と関連法案でつくられました。貸し渋りをなくすためというのが政府の強調したところでありますが、貸し渋りは減るどころかますます増大しているということは、数字の上でも明らかであります。もう一枚パネルをつくりました。これは、帝国データバンクからの資料であります。昨年の一月から今年の直近、四月までの貸し渋り倒産の件数と負債総額であります。一目瞭然であります。件数は、本当に、昨年の十一月ごろから月間五十、六十、七十九とふえました。  問題は、貸し渋り対策といろいろ主張したり強調したりしておりましたが、三月末に一兆八千億円余の公金投入がされたわけなんですが、四月にも貸し渋り倒産が七十件、負債総額は、昨年十二月というのは異常な数字でありますが、これは特別事情として捨象しましても、貸し渋り倒産による負債総額も、月間七百億円台から九百億円台。そして、ことしの四月には何と一千七百二十億円、こういう状況であります。  これは事実でありますが、貸し渋りの是正のもっともっと厳しい指導を金融機関に対して行うべきだとこの数字は物語っていると思いますが、大蔵大臣総理の御所見を。
  252. 松永光

    松永国務大臣 倒産件数がふえておるということはまことに残念なことでありますが、そのすべてが貸し渋りによる倒産と見るのは、これは事実と違うんじゃないでしょうか。貸し渋りというのはあってはならぬことでありますので、私自身も銀行の代表を呼んで、貸すことのできる企業に対して貸し出しをしないいわゆる貸し渋りは、これは批判は受けないように、健全な企業等に対してはしっかり融資するようにということを強く要請しているところでありますし、総理も、官邸に銀行関係者を呼んで要請をしたところであります。  いずれにせよ、銀行等は、中小企業その他健全な経営をしている企業に対して、その必要とする資金を融資するというのが本来的な任務でありますから、その本来的な任務をしっかり果たしてくれるように、しばしば要請を続けているところであります。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 誤解されては困りますが、月間倒産件数はこんな数字じゃないです。数千件です。これは、その中でも貸し渋りによる倒産として、最も権威のある帝国データバンクが絞って取り出した数字でありますから、貸し渋りを原因とする倒産の数が伸びているということです。  六時という時間が迫っておりますから、次の質問に移ります。  私は、金融機関の不良債権は、その全容が明らかにされていないということも問題であります。新しくアメリカのBIS基準によって公表されたものを見ても、経過を見ますと、多額の償却によって本来減らなければいかぬのですが、逆にふえている。これは、消費不況が深刻になる中で、中小企業の倒産、失業の増大、株価下落、地価下落などが新しい不良債権を生み出しているという面もあるのじゃないかと思うんです。  そこで、今の深刻な不況を打開する、そして実体経済をよくすることが、私は何といっても最大の不良債権対策じゃないかなと思うんですね。そのためにも消費を拡大する。今の不況は消費不況ですから、消費拡大に最も即効性のある、直接的効果のある消費税を三%に戻す、恒久減税実施する、そして国民の実質的な可処分所得をふやす。まず消費を拡大する、そして在庫を減らす、生産を拡大する、そして雇用を拡大する。こういう景気の、今は悪循環です、いい循環に逆転させる。それを早急につくり出すことこそ、今政府がやらなければならぬ最大、緊急の不況対策ではないかと思います。  時間が参りました。消費税減税を柱とする不況対策に、総理政府はこれまで背を向け続けております。そして、大銀行、ゼネコン救済のために新たな公金投入の仕組みさえつくり出そうとする自民党橋本政権では、現在の未曾有の不況を打開することはできない。橋本内閣の退陣を強く求めて、質問を終えます。
  254. 越智通雄

    越智委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十二日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会