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1998-03-18 第142回国会 衆議院 予算委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十八日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 中山 利生君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 五島 正規君    理事 高木 義明君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       相沢 英之君    甘利  明君       江藤 隆美君    小川  元君       小澤  潔君    小野寺五典君       大野 松茂君    大原 一三君       河村 建夫君    岸田 文雄君       栗原 博久君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    津島 雄二君       中川 昭一君    中山 正暉君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       桧田  仁君    平沢 勝栄君       増田 敏男君    村田 吉隆君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       岩國 哲人君    生方 幸夫君       岡田 克也君    海江田万里君       鍵田 節哉君    小林  守君       中川 正春君    原口 一博君       松沢 成文君    山花 貞夫君       上田  勇君    木村 太郎君       草川 昭三君    斉藤 鉄夫君       白保 台一君    西川 知雄君       桝屋 敬悟君    山中 燁子君       鈴木 淑夫君    達増 拓也君       谷口 隆義君    中井  洽君       西川太一郎君    西村 眞悟君       石井 郁子君    木島日出夫君       春名 直章君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君       保坂 展人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 松永  光君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       竹島 一彦君         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣審議官   坂野 泰治君         内閣法制局長官 大森 政輔君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         防衛庁長官官房         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         経済企画庁調整         局審議官    小林 勇造君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         沖縄開発庁総務         局長      玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長      若林 勝三君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         文部省生涯学習         局長      長谷川正明君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生大臣官房障         害保健福祉部長 篠崎 英夫君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         林野庁長官   高橋  勲君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         運輸省航空局長 楠木 行雄君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         建設大臣官房長 小野 邦久君  委員外出席者         証     人         (元大蔵省証券         局長)     松野 允彦君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         松野証人補佐人 千葉 容一君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     小野寺五典君   大原 一三君     平沢 勝栄君   河村 建夫君     桧田  仁君   中川 昭一君     大野 松茂君   野中 広務君     小川  元君   原口 一博君     鍵田 節哉君   松沢 成文君     中川 正春君   上田  勇君     白保 台一君   草川 昭三君     木村 太郎君   斉藤 鉄夫君     桝屋 敬悟君   西川 知雄君     山中 燁子君   鈴木 淑夫君     西川太一郎君   西村 眞悟君     達増 拓也君   矢島 恒夫君     石井 郁子君   北沢 清功君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     久野統一郎君   小野寺五典君     小澤  潔君   大野 松茂君     中川 昭一君   桧田  仁君     河村 建夫君   平沢 勝栄君     大原 一三君   鍵田 節哉君     原口 一博君   中川 正春君     松沢 成文君   木村 太郎君     草川 昭三君   白保 台一君     上田  勇君   桝屋 敬悟君     斉藤 鉄夫君   山中 燁子君     西川 知雄君   達増 拓也君     西村 眞悟君   西川太一郎君     谷口 隆義君   石井 郁子君     矢島 恒夫君   保坂 展人君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   谷口 隆義君     鈴木 淑夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算  証人書類提出についての報告      ――――◇―――――
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
  3. 岡田克也

    岡田委員 きょうは、私も四時間目になりますので、幾つか積み残した問題を議論しておきたいと思いますが、そのまず第一は、武力行使の問題について少し議論したいと思います。  武力行使の問題は、例えば既にこの委員会でも何度も議論されております日米防衛協力のガイドラインの関係立法をするに当たっても、武力行使に当たらない範囲ということは当然前提になるわけでありますが、その線引きの問題というのは立法上当然出てくるわけでございます。  あるいは、今提案をされる予定、もう閣議決定を経ておりますけれども、PKOの見直しにつきましても、これは武力行使そのものではございません、武器使用ということでありますが、武器使用方法について、従来の国会での政府側答弁とは違う考え方法改正が出てくる、こういうふうに理解をしております。  したがって、その背景にある武力行使というものについてきちんとした考え方の整理をしておく必要があるのではないか、そういうふうに思って、きょうは、外務大臣防衛庁長官、そして法制局長官と少し議論させていただきたいと思っております。  言うまでもなく、憲法九条は第一項で、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こういうふうに書いておりまして、これをもって、基本的に日本というのは武力行使が禁じられている、こういうふうになっていると思います。ただ、個別的自衛権範囲での武力行使というものは、これは国家基本権生存権からくるものとしてこれを認める、こういう考え方だと思います。  まず、私の今申し上げた武力行使についての九条の考え方は以上でよろしいかどうか、法制局長官、お願いしたいと思います。
  4. 大森政輔

    大森政府委員 ただいま委員が要約してお答えになったところ、そのとおりであろうと私も考えております。
  5. 岡田克也

    岡田委員 それでは、これは外務大臣防衛庁長官にそれぞれお聞きしたいと思いますが、なぜ憲法九条は、我が国武力行使個別的自衛権範囲を除きますと、簡単に言うと海外での武力行使ということになると思いますが、海外における我が国武力行使憲法九条は禁じているのか。そこの基本的考え方は何なのか。そこに立ち戻らないといろいろな議論が混乱するわけでありますので、そこについて、外務大臣防衛庁長官、それぞれのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  6. 小渕恵三

    小渕国務大臣 憲法九条のもとにおいて認められる自衛権発動としては、武力行使については、政府は、従来から、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するための他の適当な手段がないこと及び必要最小限度実力行使にとどまるべきことという三要件に該当する場合に限られておると解しておりまして、こうした要件に該当しない場合には、憲法上、許されないと考えております。  そこで、海外における武力行使についてでございますが、この自衛権発動の今申し上げた三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としてはそのような行動が許されないわけではない、このように考えております。
  7. 久間章生

    久間国務大臣 なぜ武力行使憲法九条が禁じたかと言われましても、私は立法に携わっておりませんからわかりませんが、恐らく戦前のあのような戦争反省し、我が国海外に、あるいはまた他国に対して武力行使して、二度と戦争は起きないという、そういう趣旨から設けられたんだと思っております。  まあ、だからといって、我が国が急迫不正の侵害があったときにどうするかというのは別問題でございますから、それについては、先ほど法制局長官から述べられましたような、そういう解釈でこれは許されておるんだ。しかし、その場合にも必要最小限ということでの枠がはまっておりますから、必要最小限ということになると、まあ海外へ行って武力行使をするということは、特殊な場合を除く限りは非常に考えられないというようなことから、従来から海外への武力行使は非常に厳格に解釈上もとってきたんじゃないか、そういうふうに思っております。
  8. 岡田克也

    岡田委員 実態論でいえば、恐らく、戦争が終わって、日本が二度と強力な軍事国家として立ち上がれないようにという米軍を初め戦勝国側意図があって、日本武力行使あるいは武装そのものも禁じたというのが実態かとは思います。  しかし、この憲法も五十年たって、日本国民としてそれを受け入れてきたわけでありますから、そういう立法者一つ意図意図として、日本国として、なぜ日本海外武力行使をしないことに憲法上しているのかということについて、やはりきちっとした考え方が私は要るんだろう、そういうふうに思います。また、そういう考え方がおかしいというのであれば、これは憲法改正という話になってくるわけでありますが。  今、防衛庁長官は、さき戦争における一つ反省という観点に立ってこういう九条、海外における武力行使というものを封じている、こういう御説明があったかと思いますが、外務大臣は、今の防衛庁長官答弁も踏まえまして、いかがお考えでしょうか。
  9. 小渕恵三

    小渕国務大臣 戦後、憲法が新憲法として発布されてまいりまして、憲法制定過程におきまして本院におきましても種々議論があったところでございますが、そうした過程の中で、今防衛庁長官お話しのように、過去の反省にのっとって新憲法もつくられたということは当然のことだろうというふうに思っております。
  10. 岡田克也

    岡田委員 国際的に見れば、こういう形で海外における武力行使を禁じているという例は余りないだろうというふうに思います。いわば、みずからみずからの手を縛っているわけでございます。その背景にあるのは、私も、やはりさき戦争における反省ということが九条の根幹にある、そこはやはり踏まえて考えていかなければいけないんじゃないか、そういうふうに思っているところでございます。  以上の議論について、法制局長官、何か御意見ございますか。
  11. 大森政輔

    大森政府委員 九条の趣旨は、その前提として、日本国憲法の前段で述べられている決意にやはり立ち戻らなければならないのではなかろうかと考えているわけでございます。  前文におきましては、御承知のとおり、日本国民は、政府行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、そして、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した、このようにその決意を宣明しておりまして、これを受けまして、この決意を実現するために、第九条におきまして、国権発動たる戦争武力による威嚇または武力行使を放棄するとともに、いかなる戦力も保持せず、交戦権も認めない、このように規定していると理解されるわけであります。  しかしながら、冒頭で委員も御指摘になりましたように、これによって我が国主権国として持つ固有の自衛権までも否定するものではない。したがって、我が国に対し武力攻撃が発生した場合に、これを排除するため必要最小限度実力行使すること、及びそのための必要最小限度実力を保持することまでも禁止しているものではないというふうに解されているところであります。  そこで、先ほど海外における武力行使の御指摘があったわけでございますが、先ほど両大臣から、場合によっては海外における武力行使も認められる余地があるのではないかと聞き取れるような答弁がちょっとございましたが、その点について誤解を避けるために申し上げておきますと、いわゆる海外派兵まで認められるという趣旨じゃなかったはずでございます。  多分、我が国に対し外部からの武力攻撃がある場合に、自衛権行使として認められる限度内においては、その自衛行動自体は、我が国の領土、領海、領空においてばかりでなく、公海、公空においてこれに対処することがあっても、直ちに憲法の禁止するところではない。その限度内において、我が国領域外に及ぶことがあり得べしということを言及されたのであろうと思います。  しかしながら、他国領域内まで武力行使の目的で実力部隊を派遣するということは、憲法の厳に禁止されているところであるというふうに考えている次第でございます。
  12. 岡田克也

    岡田委員 従来の国会答弁では、我が国武力による攻撃を受けたときに、相手側の基地をミサイルでたたくことは、場合によっては可能である、こういう答弁もあったというふうに記憶をしておりますが、今の長官お話は、しかし部隊を派遣することはだめだ、そういう御答弁だったと思います。  そこで、この武力行使に絡んで、私は、三つぐらい今大きな問題が出てきているのじゃないかというふうに思っております。  それは、一つは、国連軍、あるいはもう少し幅広く国連決議を受けた多国籍軍への参加問題というのが一つだと思います。もう一つ集団的自衛権の問題。三番目が武力行使一体性議論。この三つぐらいをきちんと整理していく必要があるのではないか、そういうふうに思っております。  国連軍への参加、あるいは国連決議を受けた多国籍軍への参加につきましては、いろいろな議論国会の場でも行われておりますが、私は、昭和三十六年二月二十二日の予算委員会における当時の林法制局長官の御答弁を読んでおりまして、ちょっと私が従来理解していた大森長官あるいは工藤長官答弁とややニュアンスが違うのではないか、そういうふうに感じたわけでございます。  ここで林長官が述べておられる中で、こういうくだりがあるのですね。国連というものに統合しまして、各国の兵隊とか、あるいは各国組織というものをそこで解消して、各国は人員だけ供出して一定の統合したものをつくってしまう、こういうことになりますと、実は憲法九条の文言から見ますと、日本主権国家として行動するわけでも何でもないわけです。こういう答弁があります。  この答弁は、最近の法制局答弁とは少しニュアンスが異なるのではないか。御存じのように、小沢一郎さんが「日本改造計画」の中で、国連軍に対しての参加というものは、これは国権発動でないから九条の問題でないんだ、こういう論理を展開しておられるわけですが、それにやや相通ずるものがある御答弁ではないかというふうに思うわけですが、長官、いかがでしょうか。
  13. 大森政輔

    大森政府委員 ただいま委員が一部を御朗読なさいました一九六一年二月二十二日の当時の林法制局長官答弁、これは同趣旨答弁は相前後して何回にもわたって述べられているわけでございますが、そこで述べられております趣旨考え方と、私どもが現在とっている考え方との間には、何らそごがないというふうに考えているわけでございます。  この当時の林法制局長官の述べられました趣旨と申しますのは、将来、いわゆる理想的国際社会が実現して、国連国内社会における警察のような役割を果たすようになった場合における、我が国のそのような国連警察活動への参加の問題についての答弁であるというふうに理解されるものでございまして、その場合には、国連憲章も現在のものとは大きく異なった姿となっているということが前提でありまして、現行の国連憲章上の国連軍への参加の可否についての答弁ではなかったはずでございます。  そして、ちなみに現在の国連憲章第四十二条、四十三条に規定されております国連軍につきましては、従前から私どもが申し上げておりますように、憲法九条の解釈運用の積み重ねから推論いたしますと、我が国がこれに参加することには憲法上の疑義があるというふうに考えているわけでございます。  憲法問題でございますから、疑義がある限りは我が国としてこれをやってはいけないわけでございますが、ただ、断定的に結論を述べておらないゆえんのところは、要するにまだ国連軍というのは、このような憲章上の正規国連軍の話でございますが、いまだ設けられたことがなく、そのための前提となる特別協定もいかなる内容になるか不明であります。  したがって、将来、その編成が現実の問題となり、兵力の提供に関する特別協定具体的内容が確定したときに初めて確定的な意見が申し上げられるということ、これも従前から申し上げているところであります。これは、何も結論を逃げているわけじゃございませんで、具体的な特別協定がどうなるかが決まらなければ、確定的な憲法判断ができないということでございます。  それを若干申し上げますと、要するに、国連軍への参加というのは、我が国主権行為が基点になることは間違いございません。ただ、その上で、その参加をした我が国組織国連軍の中でどう位置づけられ、それに対する指揮の形態がどうなるのか、あるいは撤収の要件あるいは手続がどう定められるのかということが、その参加した我が国組織行動がなお我が国武力行使に当たるかどうかという評価にやはり決定的な影響を及ぼす。したがいまして、特別協定が決まらなければ、そのあたりの確定的な評価ができない、こういうことでございます。
  14. 岡田克也

    岡田委員 今のようなお話だと、実際上は参加は不可能だ。具体的な話、特別協定までできないと決められないということでは、予測不可能といいますか、あらかじめ決められないということでは、実際には参加できないだろうと思うのですね。本来であれば、きちんと、こういう場合にはいいということを政府として決めておくべきだ。それが国際的な責任を果たしていくことになるのじゃないかというふうに思うわけであります。  しかし、実は私も、今の憲法九条で国連軍への参加とか、あるいは国連軍というのは相当長期にわたってできないと思いますから、余り議論する実益はないと思うのですが、例えば国連決議に基づく多国籍軍への参加、そういうものについて、これは国権発動ではないということで憲法九条の問題でないというのは、私はかなり無理があるのかなという感じがしております。  しかし、したがって、これは憲法解釈論ではなくなるのかもしれませんが、それでは、先ほどの、日本海外における武力行使をなぜ禁じているかという、そこの本論に戻ったときに、本当に日本というのはそういった国連活動に対して背を向けていていいのかという議論は、私は、憲法解釈論を横に置いたときにやはりあるのじゃないか、こういうふうに思うのですね。  基本的に国連の枠組みというのは、国際的に平和、安定を乱すものが出てきたときには国連加盟国が協力してそれを封じていく、そのためには武力行使もいとわない、そういう基本的なフレームワークだと思います。そのことを認めており、あるいは受益しているのは日本であります。日本も、日本が侵略を受けた場合には国連による助けというものは当然想定をしている。日米安保条約も、とりあえずは日米日本を守るということでありますが、その先には国連によって守られるということも念頭に置いた条文になっております。  そういう中で、では、同じような立場に置かれたある国があるときに、国際的に不法な方法によってみずからの存在あるいは平和というものが危機に陥っている、そういう国家があるときに、日本は、みずからはそれに守られることを期待しながら、日本としてはそれには参加をしませんというのが果たして常識にかなったことなのかどうか。  それが、日本は小さな国であればともかくとして、今や常任理事国を目指そうという、そういう存在でありますし、あるいは経済的にも大変大きな存在であります。そういうことを考えると、憲法解釈論は別として、私は、やはり日本として、武力行使ということも含めて、例えば国連軍参加する、あるいは国連決議があるときに多国籍軍参加をするということも視野に置くべきじゃないか、こういうふうに思うわけですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  15. 小渕恵三

    小渕国務大臣 国連がその決議によりまして、武力行使によりまして紛争を解決するということを行ってきたことは事実でございますが、我が国としては、我が国憲法にのっとりまして、そうした多国籍軍等に参加をするということはあり得ないわけでございましたので、そういう意味からいえば、我が国としては我が国の立場で対処してきたということだろうと思います。  一般的に、ある意味の世界の常識的なことと我が国のとってまいりました対応について、世界の中でいろいろの批判があることも承知をいたしております。例を申し上げれば、湾岸戦争におきましては、我が国としては多大な資金を提供することによってその平和の維持のために努力をしてきたということが、我が国の法制上の立場からいえば精いっぱいの努力であった、こういうふうに理解しております。
  16. 岡田克也

    岡田委員 最初の話に戻るのですが、なぜ我々は憲法において海外における武力行使を禁じているのか。やはりさき戦争における反省というものがあって、みずから手を縛っているということだと思うのですね。  そうだとすると、確かに憲法の条文上はかなり無理があると先ほど私は申し上げましたが、しかし、基本的な考え方として、そういう形でみずからの手を縛っている、その背景にあるのは過去の戦争に対する反省だということでありますと、国連軍への参加とか国連決議に基づく多国籍軍への参加というものは、そういった武力行使をすることそのものについて、日本が決めるわけではなくて、国連の場で決まることであります。  そういうものについて、つまり日本がみずから判断して武力行使をするのではなくて、公の場で、オーソライズされた場で決まった武力行使参加をするという決断をするだけであります。そういうものについては、私は、憲法趣旨からいっても、武力行使をすることがおかしなことではない、そういうふうに思うわけですが、法制局長官、いかがでしょうか。
  17. 大森政輔

    大森政府委員 ただいま委員の述べられました御意見が、現行憲法前提としてなのか、憲法改正前提としてなのか、若干聞き取りにくい点があったわけでございますけれども、現行憲法のもとにおきましては、湾岸戦争の際の多国籍軍我が国参加することは、これはできないというふうに考えているわけでございます。  ただ、憲法を改正してそのような組織参加することができるようにすべきかどうかという点につきましては、これは高度の政治的な判断の問題でございますし、ひいては日本国民の総意が那辺にあるかということを十分見定めて決定すべきことでございまして、現在、私の立場から、どうあるべきであるということを述べることは差し控えるべきではなかろうかというふうに考えております。
  18. 岡田克也

    岡田委員 この問題はこの辺にしたいと思いますが、私は、かつて西ドイツ軍が、NATOの中の一員として、みずからの判断をせずにNATOに参加をするという形でのみ武力行使というものを認めてきた、そういう中でヨーロッパの信頼関係を回復してきた、そういう歴史があると思います。みずからの判断では武力行使をしない。  それに対して、日本というのは、海外における武力行使は一切しませんということでアジアの国の信頼をかち得ようとしてきた。しかし、結果的には、日本の場合にはそのことにうまく成功していない、そういうふうに思うわけでございます。  したがって、先ほど言ったような、将来的には憲法の改正があるいは必要になるかもしれませんが、国連決議に基づく多国籍軍への参加、あるいはその前のステップとしてPKFへの参加、そういうものをきちんと進めていく、そういう中で信頼関係をかち得ていくということが重要ではないか、そういうふうに思っているところでございます。  次に、時間の関係もございますので、集団的自衛権についてお聞きをしたいと思うのです。  集団的自衛権について国会でもいろいろ議論になるのですが、私がお聞きしておりまして、非常に議論が混乱しているというふうに思うわけでございます。集団的自衛権の定義をまずきちんと頭に置いて議論をしていかないと、議論は混乱するばかりだというふうに思います。  従来の集団的自衛権の定義、もう時間もありませんので法制局の今までの定義を申し上げますと、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利だ、そういうふうに述べられていると思います。ここで言う実力をもって阻止する権利というときの実力というものは一体何なのか。武力行使というふうに考えていいのか。あるいは、武力行使武力威嚇よりももっと広い概念なのか。そこのところ、長官、いかがでしょうか。
  19. 大森政輔

    大森政府委員 この集団的自衛権の定義の中で触れられていますように、攻撃に対してこれを実力でもって阻止するという関連で実力という言葉が用いられているわけでございますから、武力攻撃を阻止するという観点から見ますと、武力をもってというのとほぼ同意義で使われている用語であろうというふうには理解しております。  ただ、問題は、武力による威嚇とか、あるいはそれ以外の支援行為はこれとは関係ないじゃないかというところまでおっしゃるかどうかの問題があるわけですけれども、それは、また次の問題にいたしたいと思います。
  20. 岡田克也

    岡田委員 今長官が少しお述べになったことに関係するわけですが、この予算委員会の場でも、例えば資金提供をするのは集団的自衛権の問題であるとか、あるいは後方支援、後方支援も定義によると思いますが、それも集団的自衛権の問題であるかのように論じられたこともあります。  しかし、私は、それは間違いだというふうに思うわけですね。集団的自衛権というのは基本的には自衛権行使ということでありますから、武力をもって相手方の武力攻撃を阻止するというのが集団的自衛権の本質である、こういうふうに思うわけでございます。  したがって、資金提供などは、もちろんこれは集団的自衛権の問題ではないし、それから後方支援というのは非常に微妙な問題がありますが、例えば離れたところで水や食糧を供給するなどというのも集団的自衛権の問題ではない、こういうふうに考えるわけですが、ここはいかがでしょうか。
  21. 大森政輔

    大森政府委員 確かに、過去におきまして、資金提供も集団的自衛権行使として認められないのじゃないかという国会における御質問があり、結論として、それは実力行使に当たらないのだからということで、集団的自衛権行使に当たらないというふうに議論された経過はあるわけでございます。  もう一つは、後方支援の問題でございますが、後方支援自体は武力行使とほぼ同意義における実力行使に当たらない、それ自体は当たらないことは御指摘のとおりでございますけれども、ただ、その行為自体は武力行使に当たらないといたしましても、他国による武力行使とある一定の密接な関係を持つことによって、自国も武力行使をしているという評価を受けるに至る場合があるのではなかろうかというのが一体化の議論でございまして、他国による武力行使または武力による威嚇と一体化しないという条件つきで、そのようなものは我が憲法上禁止されておらないということが言えようかと思います。
  22. 岡田克也

    岡田委員 時間の関係もありますので、二つあわせて長官に質問したいと思います。  一つは、集団的自衛権というものを憲法九条が許容しているということになったときに、憲法九条の存在意義というのはどこにあるのだろうか、私には、侵略戦争を禁じているという意味しかなくなるのではないか。したがって、それは、日本憲法他国憲法に比べて特に武力行使というものについて慎重であるという、そういうことではなくなって、ごく当たり前のことを書いているにすぎないということになるのではなかろうか、こう思っているわけですが、この点が一点です。  それからもう一つは、集団的自衛権というのは、自然権として持っている、持っているけれども行使できないというのは非常におかしなことだ、こういう議論があります。私は、一般論として言えば、自然権として権利は持っているけれども、それがいろいろな意味で行使が制限されるというのは、これは法律の世界では何らおかしなことではないし、自衛権ということですから、おかしいという議論もありますが、それをあえて書いたのが憲法九条だ、その背景にあるのは、先ほど長官のおっしゃったような前文の趣旨でありますとか、あるいは過去の戦争に対する反省だ、こういうふうに考えるわけですが、この点について、法制局のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  23. 大森政輔

    大森政府委員 集団的自衛権に当たるから認められないとか、集団的自衛権に当たらないのだから認められるという、集団的自衛権を核にした議論がよくなされるわけでございますけれども我が国の問題に関する限りは、やはり集団的自衛権の概念を解するのではなくて、我が国を防衛するために必要最小限度行動に当たるかどうかということが基準になるはずでございます。  したがいまして、冒頭にも申し上げましたとおり、憲法九条は、国際紛争を解決する手段としては武力による威嚇または武力行使等を禁止しているけれども我が国を防衛するために必要最小限度実力行動は禁止していない。したがって、問題となる行為我が国を防衛するために必要最小限度行為であるかどうかということによって事が決せられるべきであるというふうに考える次第でございます。(岡田委員「持っているけれども行使できないというのは」と呼ぶ)国際法上は集団的自衛権主権国家であるから保有しているのである、これは国際法上そのように解せられておりますから、従前政府答弁としてもそのように答弁してきているわけでございますが、やはりそれに対しまして、我が国は最高法規としての憲法によりまして、我が国行動を縛っているわけでございます、言葉は悪いかもしれませんが。  したがいまして、憲法九条によって、武力による威嚇または武力行使に当たることはいたしません、やってはいけませんと。したがって、行動の面で縛っているわけでございますから、集団的自衛権行使というのはその観点から認められない。国際法上は保有していると言えても、その行使憲法で禁止されているんだということは、何らおかしいことでないということは従前から反論しているわけでございます。
  24. 岡田克也

    岡田委員 そこで次に、武力行使一体性議論に簡単に触れたいと思います。  武力行使一体性につきましては、従来から、地理的な関係でありますとか、我が方の具体的な行為内容、あるいは武力行使を行っているものとの密接性、相手方の活動の現状、状況、そういうものを総合勘案して一体かどうかを判断する、こういう御答弁が何度もされていると思います。  これは、こういう一体性のある行動をとったときに、相手方から見て、それが我が国武力行使というふうに見られるということで武力行使一体性議論というのは出てきているのでしょうか。私には非常にこの一体性議論というのはわかりにくい。  武力行使かどうかというのはある程度判断できますが、一体性で、今言った四条件を初め、いろいろなことを総合勘案して決めろと言われても、例えば現場はどうなりますか。現場で、例えば何かの行動を現場の自衛隊の方がしようとするときに、これが一体性があって武力行使に連なってしまう、あるいは連ならない、そういう判断を現場にさせることになりませんか。  そのことは、僕は、非常に酷な話だし、それから実際には、論理の世界ではそういう精緻な議論を展開されるのはいいのですけれども、現実にはほとんど意味のないことではないか、そういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  25. 大森政輔

    大森政府委員 一体化しているかどうかというのは他人から見た他人の判断であるかという趣旨のお尋ねがございましたけれども、要するに、この一体化の議論と申しますのは、くどく申して恐縮ですが、仮にみずからは直接武力行使または武力による威嚇をしていないとしても、他のものが行う武力行使等への関与の密接性から我が国武力行使または武力による威嚇をしたとの評価を受ける場合があるということを前提としておりまして、これはいわば法的判断に、法的評価に伴う当然の事理を述べたものである、法的評価の問題である。  したがいまして、他人がそういうふうに言われるからやめておくのだという問題ではございませんで、やはり行う主体の側において、自分の行動が客観的にそのように評価されるということになる限りは主体的にやってはいけない問題である、その主体的判断の基準であるということでございます。  それからもう一点は、そういってもその基準が非常に不明確であるから、現場で判断を強いることになるのは不都合ではないかという御指摘でございますが、確かに個々具体的な判断ということの宿命といたしましてそのような御懸念が生ずることはごもっともでございますが、だからこそ、そういう現場で時々刻々の判断にかからせることのないように、あらかじめ類型的に一体化が生じないような行為を限定して、例えばガイドライン等で後方支援をする場合には、あらかじめ類型的に閣議等で決定をいたしまして、その範囲内で、一体化が生じないような範囲内において行うということが確保されるべきであるということを常々私どもも述べてきているところでございます。
  26. 岡田克也

    岡田委員 一体化という概念を一つつくられたわけですけれども、これは、憲法上禁じているのは武力行使そのものだ、だから、立法政策として法律の世界で、憲法上禁じられた武力行使というものをより万全に、武力行使をしないということを万全にするために、法律上そういう一体化というものを入れるというのならまだわかるのですけれども憲法上一体化したものもだめだということになると、それは、私は、憲法解釈を変えている、そういうふうに思うわけでございます。それで何かいいことがあればいいのですけれども、私は、かえって現場の混乱も招くし、話をわかりにくくしているのじゃないか、そういうふうに思っているところでございます。  私は、そういう意味で、武力行使一体性議論というのはやめて、武力行使に当たるかどうかということで議論していった方が議論としてはずっとわかりやすい、こういうふうに思っております。長官、何かございましたら。
  27. 大森政輔

    大森政府委員 憲法上は武力による威嚇または武力行使を禁止しているのであって、それと一体化する行為まで禁止してはいないじゃないかと。確かに、明文上はそのとおりでございますけれども、ただ、武力による行使等を禁止しているということは、憲法上の法的評価としてそれと同様の評価を受ける行為まで禁止しておるというふうに理解せざるを得ないわけでございまして、これは、法的評価に伴う当然の事理を述べたものであるというのはそのような趣旨でございます。
  28. 岡田克也

    岡田委員 この議論は、引き続き安全保障委員会その他で行いたいと思います。  私は、要約になりますけれども国連軍への参加あるいは国連決議に基づく多国籍軍参加は、憲法解釈としてはやや疑義があると思いますが、憲法というものをわきに置いたときに、憲法趣旨ということからいえば、日本もそれに参加をしていくというのが将来の方向であろうというふうに思います。それから、集団的自衛権というのは、私は、憲法趣旨からいって認めるべきでない、こういうふうに思います。武力行使一体性については、非常にわかりにくい概念で、やめた方がすっきりする、そういうふうに思っているところでございます。  またこの議論は引き続きさせていただきたいと思いますので、外務大臣防衛庁長官法制局長官、結構ですので、お帰りください。  次に、時間も限られておりますので駆け足でやりたいと思いますが、景気対策について一言触れたいと思います。  まず、日銀の金融経済月報が昨日発表されまして、この中で、従来よりもさらに厳しい景気についての見方をしているわけであります。基本的見解の最初の始まりが、我が国の景気は停滞を続けており、下押し圧力が強まりつつあるというのが日銀の判断であります。  それからもう一つは、QE、四半期別国民所得統計速報が三月に出まして、これも非常に厳しい見通しになっております。このQEの見通しでは、昨年の十―十二の成長率がマイナス〇・二%ということであったわけですが、その中で、内需の寄与度がマイナスの〇・八、それから外需の寄与度がプラスの〇・六、結果としてマイナス〇・二。つまり、十―十二は内需は大きく落ち込んだ、しかしそれを輸出で稼いで、しかし稼ぎ足らずに、結局、結果的にマイナスの〇・二という伸び率になった。これは、年率に直すとマイナスの〇・七だということでございます。  きのうも企画庁長官、少し御答弁ありましたけれども、こういう日銀の見方、あるいは国民所得統計速報が出たということを踏まえて、従来の景気判断について、何か考え方は変えられたのでしょうか。
  29. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 昨年の十月―十二月のQEでありますが、今岡田委員おっしゃるとおり、マイナス〇・二%という数字になりました。十一月前後からアジアの問題あるいは金融システムの不安感というものが非常に強くなってまいりまして、その結果として、消費者及び企業のコンフィデンスが非常に低くなってきているという状況を踏まえて、昨年の最後の四半期、十月―十二月についてはかなり厳しい数字が出るというふうに予想をしていたところでございますが、現実にマイナス〇・二%という数字を見まして、それ自体大変重く受けとめているところでございます。  ただ、十二月以降一月ごろまで、心理的な状況は大変厳しい状況でございましたが、金融システム安定化対策が実施されるなど、金融システムについての不安感がほとんど解消されてきたというふうに理解をしておりまして、そういう点が株価等に反映していると思っております。  そういうわけで、少しずれ込んで実体経済にマイナスの影響が来ているわけでございますが、例えば、全体として景気指標は厳しくなっているわけでありますけれども、一月の小売販売とかあるいは鉱工業生産のように前期比で下げどまってきているものもございまして、私どもとしては、景気の現状、なお停滞が続き厳しい状況であるというふうに認識しておりますが、そういう点で、従来よりもさらに悪化してきているというふうには必ずしも考えておりませんで、なお停滞が続いている局面であると理解をしております。
  30. 岡田克也

    岡田委員 この十―十二の水準が、一―三も横ばいであった、つまり成長率がゼロだったという想定をいたしますと、今年度の経済成長はマイナス〇・三ぐらいになるかと思うのですが、ちょっと確認したいと思います。  いずれにしても、一―三は、確かに十一月、十二月と比べれば金融に対するクレジットクランチというかそういうものも多少手が緩んだかもしれないなと。それからもう一つは、減税の効果が二月から出てくる、こういうことはあるかと思いますが、どうも実感としては、一―三というのは十―十二よりきついのじゃないか、こういう感じもいたします。  仮に横ばいだとすると、今年度の経済成長率はマイナス〇・三%だ。これは、オイルショックの後の昭和四十九年度のマイナス〇・五%と並び、戦後二回目のマイナス成長だ、こういうことになるわけでございます。私は、これは極めて深刻な状況じゃないか。オイルショックの後のマイナス成長というのは、これはその前が高度成長だったということもあるかもしれませんが、当時は大変な騒ぎでありました。あれと匹敵するような状況に今なっている、そういう認識は長官にございますか。
  31. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 一―三がどうなるかということは、ただいま私ども必ずしも確定的なことを申し上げる段階ではございませんが、機械的に計算をいたしますと、一―三月で一・六%の伸びを示しすということになれば、年度ベースで実績見通しの〇・一%の伸びが達成できる、こういうことになるわけでございますが、この点につきましてはかなり厳しい状況にあるというふうに認識をしております。  それで、確かに、機械的に計算をいたしますると、一―三月の伸びが十月―十二月の水準と同じであればマイナス〇・三%になるということでございますが、結果的にどうなりますか。十一月、十二月にコンフィデンスが非常に下がっているという状況があり、一月からはその点についてはやや好転をしているわけでございますし、九月から一月までの消費性向等を見ましても非常に急激に下がっている状況でございまして、そういう状況を反映して、十月―十二月がかなり低い、〇・二%マイナスという数字でございまして、なお注意深く状況を見守ってまいりたいと考えている次第でございます。
  32. 岡田克也

    岡田委員 一―三がどうなるかわかりませんが、仮に今年度がマイナス〇・三%ということになりますと、政府経済見通しでは〇・一%だったと思うのですね、それをベースにして、来年度は一・九だと。しかし、大分発射台が下がっていますから、私は、それだけでも一・九というのは非常に難しくなっている、そういうふうに思うわけですね。私は、来年度の政府経済見通しというのはもう達成不可能になりつつあるというふうに思うわけでございます。時間がございませんのでこれ以上申し上げませんが。  最後に、長官、ずっとこの場で議論をしてきて、財政措置を伴った景気対策、補正ですね、これについては何もおっしゃらないという状況が続いております。この予算委員会も、もう余り日程がございません。我々は頑張ってもう少し議論したいと思いますが、しかしどこかで採決ということになるんだと思います。  もし、そういう状況で、とにかく今の当初予算を通すのが最大の景気対策だとおっしゃり続けて、採決をして、そしてその後で仮に補正予算を伴うような景気対策を打ち出されたときに、参議院の存在というものについて政府がどう考えておられるか、これは非常に深刻な問題を投げかけることになる。  我々も、予算が通った瞬間に補正の話がぼんと正式に出てくれば、これは、この審議は何だったのかということで極めておかしなことになると思います。それに加えて、今の予算を通すことが最大の景気対策といいながら、参議院の審議の前に、あるいは途中に補正を打ち出す、こういうことで、そちらの面からも非常に大きな問題を投げかけることになる、そういうふうに私は申し上げておきたいと思います。そういうことにならないことを私としては願っているところでございます。  言葉をかえれば、この予算を通す前にきちんと追加的な景気対策の必要性について政府がお述べになることを、私としては期待しているわけでございます。もし何かございましたら、簡単にお願いします。
  33. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 十年度予算及び関係法案を一日も早く通していただくことが最大の景気対策であるとお願いを申し上げているわけでございますが、私ども、総理の御指示もございまして、自民党の第四次緊急国民経済対策等を受けまして、規制緩和を中心とする経済活性化のためのプログラム等につきまして現在検討中でございます。  現在、経済が停滞をしておりまして非常に厳しい状況にございますが、我が国経済の再構築を大胆に進める好機というふうに現在の状況をとらえることもできるわけでございまして、短期的な経済対策をいろいろやる場合におきましても、民間活力中心の経済構造を構築して、我が国経済を中長期的に体質強化、改善をするという方向性をしっかりと踏まえてまいりたいと考えている次第でございます。  もとより、経済は生き物でございますから、時々刻々変わる状況に対応して適時適切な運営に努めてまいりたい、そして、そういうことも全部ひっくるめまして、十年度の一・九%は実現をしていきたいと思っておりますし、必ず実現できると考えている次第でございます。
  34. 岡田克也

    岡田委員 最後に大蔵大臣にお聞きしますが、景気対策の最後という意味ですが、先般、銀行に対する資本注入、二十一行に対して約一・八兆円の注入が終わったということであります。  質問の第一は、三月末までにこれ以上の追加的な資本注入があるかどうかというのが第一点であります。  第二点は、三月末を越えた時点でここで一段落するわけでありますが、その後資本注入を希望する金融機関が出てきた場合に、どういう考え方でそれに対処していくのか。  具体的にいいますと、三月末日の緊急避難的な時期は越えたわけでありますから、私は、資本注入をする前に、八%の基準について四苦八苦している金融機関は、資本注入を受けるよりは、むしろ海外から撤退をして、四%の世界に移行するということが基本的に望まれることじゃないか。無理に八%の世界で生き残ろうとして国から資本注入まで受けて、そして、毎年度毎年度、三月末に大騒ぎになる。  そういうことじゃなくて、国際的に見れば、海外展開をしている金融機関というのは、例えばアメリカでも私の理解では十行ぐらいしかないというふうに思うのですが、日本はそれが非常に多い。そういうものについて、海外からの撤退を図り四%の世界になれば、そこで非常に余裕が出てくるわけですから、貸し渋りの問題もなくなるわけですね。そういう総合判断をすれば、私は、資本注入よりは海外撤退を進めるべきだ、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  35. 松永光

    ○松永国務大臣 委員の御指摘は、私は傾聴に値する御指摘だと思いますけれども、ただ、大蔵省の立場からすれば、資本注入を希望して、そして金融危機管理審査委員会の方に申し出てきた場合には、その審査委員会の場でいろいろ意見を述べることはできますけれども、そうでない状況の中で、大蔵省が個々の金融機関に、おまえさんのところはこうした方がいいのじゃないか、ああした方がいいのじゃないかということを指示するというか指導するというようなことは、これは行き過ぎじゃないかな、こう私は思うわけでありまして、基本的には、個々の民間金融機関のことでございますから、そこの株主さん、こういう人たちが議論をして、そしてみずからの判断でなさるべきことだというふうに私は考えます。
  36. 岡田克也

    岡田委員 ただ、資本注入をするわけでありますから、一般的な議論として、そういう場合にはまず海外からの撤退を求める、そういう基準を述べておくことは私は何の問題もないと思うのですが、いかがでしょうか。
  37. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  現在、海外営業拠点を持っているところはみんな八%がある意味では義務づけられておりますが、海外営業拠点を持たない銀行の自己資本比率につきましては、これまでは八%と四%、いずれか選択制にしておりました。ところが、早期是正措置の導入に伴いまして、この選択制による申請を排除する観点から、一律にそうした海外拠点を持たないところは国内基準を適用するというふうに変えました。したがいまして、八%適用行は現在八十行ありますが、それが四十六行に減ります。逆に、国内基準適用行が六十七から百一に増加します。  したがいまして、先生がおっしゃるような趣旨がそういう意味でも反映されますが、さらにもう一つ先生の重要な御指摘は、海外展開を現にやっているところも少し撤退したらどうかという大変重要な指摘だと思いますし、私どももそういった呼びかけもいたしております。  ただ、地元企業が出ているので出なければいけないとかいういろいろな事情がある等を聞いておりますが、例えば地銀等の中におきましては、海外からの撤退の動きも現に出てきております。既に今度の三月期でも地銀の三行が全面撤退を表明しておりますし、また、今後、一行が全面撤退を表明しております。そういった先生の御指摘になったような動きは、今後はかなり広まるのではないかというふうに思っております。
  38. 岡田克也

    岡田委員 私は、これが貸し渋りの最大の対策だ、四十六行も海外展開する金融機関は要らない、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  最後に、総務庁長官と官房長官、申しわけございません、せっかくおいでいただきましたので、質問したいと思います。  新聞報道で、内閣官房の機能強化について総務庁長官がかなり前向きのことをおっしゃった、こういうふうに聞いております。私も一週間ほど前にこの場で質問させていただきましたが、内閣官房の機能の中で、総理大臣の発議権、第六条でありますとか、それから国政に関する基本方針の企画立案を内閣官房の任務として加えることとか、あるいは組織の中で、基本的に内閣総理大臣により直接選任された者によって運営されるべきだ、こういうことについては、省庁再編成基本法とは別に急いでやるべきだ、こういうふうに私は思いますが、お二人の見解を最後に一言ずつお聞きしたいと思います。
  39. 小里貞利

    ○小里国務大臣 お話がございましたように、内閣機能の強化につきましては、今次の行政改革の中心課題であり、なおまた、今提案申し上げておりまする法案の中におきましても、国政の基本に関する内閣総理大臣の発議権、あるいはまた、いわゆる内閣官房の強化や、あるいは内閣府の設置によりまして内閣あるいは内閣総理大臣を補佐、支援していこう、そのことはきちんと、お話しのとおりでございます。  実は私も、ただいま議員の方からお話がございましたように、内閣府の強化こそまさに今次改革の中心だ、そういう意気込み、あるいはその趣旨はきちんと整理しておるつもりでございますが、御承知のとおり、今次の改革は、内閣及びその統括のもとにある新たな省を通じまして、総合性あるいは戦略性を持った政府を形づくっていこうというところに大きな一つの改革のねらいもあるわけでございまして、そういう実態から申し上げますと、内閣及び各省の改革が両者相まって進まなければならぬ、作業を進めなければならないなという側面もございました。  さらにまた、内閣府を新たに設置して、そして内閣及び内閣総理大臣の補佐、支援体制を強化するという大きな要素から見てまいりますと、新たにつくります内閣府については、従来の各省庁のいわば権限、役割をその内閣府の権限、役割として規定するものがたくさんあるものですから、例えば経企庁がそのとおりであり、あるいは科学技術庁がそのとおりであり、あるいはまた総務庁の一部もそういう形になっておりまして、実態として、ただいま議員から要旨として述べられましたこと、全く同感でございますけれども、なかなか思うように進められないなという側面も感じておるところでございます。
  40. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 総務長官がお答えしましたが、機能強化をすぐに行うべきでないかと。それで、今の中央省庁と切り離して、危機管理につきましては内閣危機管理監ということを今お願いいたしております。  ただ、いろいろ内閣府という問題がございまして、これらが各省庁の今までの権限との関係もありますので、設置法の時点でやっていかないとうまくいかないのではないか。ただ、委員のおっしゃることは十分私も意味もわかりますし、現状でそういうような強化あるいは指導性というものを発揮していきたい、こういうふうに思っているところであります。
  41. 岡田克也

    岡田委員 私は内閣官房に絞って御質問申し上げたわけでございますが、御答弁がちょっと食い違っていたように思います。  終わります。
  42. 越智通雄

    越智委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、白保台一君。
  43. 白保台一

    白保委員 平和・改革の白保台一でございます。  私は、沖縄の抱えるさまざまな問題、とりわけ基地の問題、そしてまた島嶼県ですから空の安全というのが極めて重要でございますので、基地の問題そして空の安全の問題、このことにほぼ絞ってお伺いをしたい、こういうふうに思います。  一連のいわゆるSACOで、普天間飛行場の移設の問題で、ヘリポートの問題の賛否が問われる市民投票があったり、あるいはその後、市長がおやめになって、そして市長選挙が行われたり、そういう状況の中でさまざまなことがあったわけであります。大田知事がヘリポート移設について、今言われているところの海上ヘリは反対だといったような状況の中から、沖縄の基地問題が暗礁に乗り上げたのではないか、こういうようなことが一部言われたり、さまざまなことが言われました。  しかし、沖縄の基地問題について言えば、過重な負担であるということは、外務大臣も、また内閣の皆さんも御存じでございますから、そういった面で、これは決して暗礁に乗り上げていい問題ではありませんし、この問題については努力をして解決していかなければならない、こういう問題だと思います。  そこでまた、現地、地元に言わせれば、結局これだけの過重負担をしているわけでありますから、そういう面で、昨年も総理に伺いましたが、私の事務所にいろいろな方が来られて、政府の皆さん方のお話を聞くと、安保条約は日本を守るために非常に重要な大切なものだと、だけれども、沖縄はどうしてこんなになっているのかなと、平和を守るために大事だと言うけれども、沖縄では日常茶飯事いろいろなことがあって困っているが、これはどうなんでしょうかということを、よくおばさん方が来られて、言うわけです。  要するに、この人たちの立場から見れば、その場で生活をしている、生活しているその立場のレベルから見ると、こんな大きな話はすばらしい話だと思うけれども、しかし私たちの生活はどうなんだというようなことがあります。そういう面で、この問題を一つ一つ丁寧に解決していかなければならないわけでありますので、この問題は暗礁に乗せてはいけない。  そこで、官房長官、せんだってから沖縄問題実務者協議会が行われているわけでございますが、先日の大田知事との協議がどのような状況であったのか、教えていただきたいと思います。
  44. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 お答えをいたします。  この実務者レベルの協議でございますが、先月二十七日、岡本前総理補佐官が大田知事と会談した際に、知事から要望があったものでございます。したがいまして、去る十一日でございますが、沖縄県におきまして、政府側から内閣内政審議室、外務省及び防衛庁の審議官等が、沖縄県からは知事、副知事及び出納長等が出席し、普天間飛行場返還をめぐる諸問題の解決に向けまして、約六時間にわたり忌憚のない意見交換を行いました。  その際、県側からは海上ヘリポート受け入れ拒否表明の細部の説明があり、政府側からは受け入れ拒否表明に対する疑問点等について率直に意見を述べた。そのほか、沖縄にある海兵隊の問題、振興策の取り扱いの問題について、沖縄県側の意見を伺うとともに、政府の見解を説明したところでございます。  政府としては、大田知事が提起された問題に対し、現時点においては最良の選択肢として提示した海上ヘリポートの実現に向けまして、今後とも、大田知事を初めとする地元の御理解、御協力が得られるよう粘り強く取り組んでいく考えでありますが、現状のところは、隔たりも大きいし、平行線をたどっているというところが本当のところでございます。  同時にまた、この協議、沖縄県からまたありますれば、継続をしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  45. 白保台一

    白保委員 政府としては、現状においては県と政府考え方に大きな隔たりがある、そして、今官房長官お話の最後の部分ですが、県の方から具体的な提案があれば考えるというようなお話だと思うのです。  確認しておきたいと思いますけれども、これは、政府側考え方に一切変更はなし、沖縄にボールを投げてあるんだ、こういうことですか。
  46. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 もともと、整理、縮小、統合で、普天間の問題、大田知事さんの御意見もありまして、橋本総理がアメリカへ行きまして、こういうことをしたわけでございます。  したがって、もう委員御承知のとおり、SACO計画ということになって、沖縄の方々が全国の施設の七五%、これをあと十年かそこらぐらいで二一%減らして五千ヘクタールぐらい減らす、こういうことでまとまったものでございまして、今の状況は、いろいろお互いに平行線みたいな状況でございますけれども、そういうようないきさつもあり、今後また沖縄県からでもあれば、また同時に私どもでもあれば、いつでも協議をしたい、こういうふうには思っているところであります。
  47. 白保台一

    白保委員 今官房長官おっしゃられましたように、大田知事からそもそもこの話が橋本総理に提起された。提起されたその基本にあるものは何かといいますと、先ほども申し上げましたように、結局、あの地域をごらんになっていただいて、よくおわかりだと思いますが、宜野湾市のど真ん中に位置しているわけですね。そして、そのフェンスにくっつくようにして小学校、中学校があったり、あるいは役所があったり、民家があったりということで、まさしくその中で生活をしておる。  そういう生活者のレベルという立場から考えたら、これはもうとてもじゃないけれども、いつも大変な騒音やら危険やら、いろいろなことに遭遇しながら生活しておる、この生活者のレベルの問題としてこの問題は解決しなければならないというのが大田知事からの提起だったと思うのです。  同時にまた、都市開発の計画上の問題からいっても、今コンベンションホールがその近くにありますが、役所からそこまで直線でやれば近いものを、ずっと遠回りをして行かなければならない。そういう面では、経済的なロス、こういった問題もある。  健全な経済発展が期せない、都市計画も立てられないという問題ですから、言ってみれば、まさに市民レベルの、生活者レベルの、そういう立場からの問題でございますので、決してこの問題は暗礁に乗り上げてはいけない問題であって、新しい世紀を迎えるに当たって、今世紀の問題をいつまでも、新しい世紀までも引きずっていくような状況であってはいけませんので、私が申し上げたいのは、かたくなな形ではなくして、しっかりと協議した上で、この普天間についてはぜひ動かしていただきたいと思うわけです。  そして、そういう生活者の、住民レベルの視点という問題が、政府の方は、この問題は、軍事的な面や戦略的な面でアメリカがここに駐留しなければならないからどうにもならないのだというような、基本的な部分でかたくなになっておるとするならば、生活者の立場というのは極めて厳しいものになるわけですね。  そういった面で、生活者の立場という視点というものもぜひ入れていただきたい、このこともぜひお願いしたいと思います。
  48. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 今先生のおっしゃることも十分に私ども承知をいたしておりまして、そして知事さんが、普天間のあの危険な、あるいは騒音の状況、これを一番先に取り上げてくれ、いろいろな問題はいっぱいありますけれどもと。そういうことで、それならば、五百ヘクタールもあるような普天間の実情を考えて、五分の一ぐらいの海上へリポート、騒音もない、安全性もあるところ、こういうことを御提案申し上げたけれども、県内移設はだめだと。その当時は、一年ぐらい、私はそんな話は聞いていなかったのですよ。ただ、それから住民投票があったり、いろいろな問題があって、だんだん変わってきたかなと。  したがって、私ども、決してかたくななことを思っておりません。ただ、よく理解を得て、実質的な、あの普天間の跡地をどうしていくのかということもちゃんと考慮に入れているのですが、やはり現実的な問題として海上ヘリポート問題、そこが決まらないと、普天間をただ今返せと言われましても、もちろん沖縄の問題で、嘉手納なども今相当多額のお金をかけまして、遮音壁というものも始める。いろいろな細々した点でも、沖縄県民のことを考えまして、一生懸命対策をとっていく。  この問題は少し時間がかかると思いますが、何も問答無用とかなんとかいうのではなくて、相談があればいつでも相談するし、また私ども考えていきたい、こういうように考えております。
  49. 白保台一

    白保委員 結局、私どもは県民投票を受けて整理縮小というふうに明確に申し上げておるわけですが、政府は整理、統合、縮小、このように言われるわけです。そういった中で、代替地を必要とする返還合意というものは、結局時間がかかるのですね。言ってみれば、普天間も那覇軍港と同じようになるのではないか、こういうふうに言われているわけです。  それはなぜかというと、那覇軍港も、この那覇軍港というのが返還されれば、まさに那覇空港が近くにあって、しかも沖縄県は島嶼県ですから、海の往来、そして物資の流入といった面で非常に大事な地点であるにもかかわらず、県内に移設するということを条件で返還合意をされますと、もう既に合意されてから四半世紀を経ようとしています。県内のどこの地域でも、これをオーケーとは言わないのです。  狭隘な県土で、これを移設条件つきでやったら、結局はどこも受け入れない。そういうことで四半世紀も、長い間ずっとそのままにしてある。実際にこれがきちっと返還されれば、どれほど経済発展に寄与するかということは容易に想像がつくわけです。そういう面では、代替つき移設条件というのは、これはもうかなり厳しいものがあるということです。  そういうことで、私自身は、無理があるということであるならば、その際には、今は政府は県内移設を基本にして考えておられますが、県外移設等も含めて考えていくことはできないのか。そのことについて、長官、もう一度御答弁をお願いいたします。
  50. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 今までの経緯は先生御承知のとおりでございますので、率直にお答えいたしたいと思っております。  県外移設も考えたらどうか、こういうことでございますが、代替ヘリポートの建設でございますが、普天間飛行場が現に果たしている極めて重要な機能と能力を維持する上で不可欠のものであり、相互に有機的に関連する海兵隊のヘリ部隊、歩兵部隊等を、距離を置いて駐留させることができないというやむを得ぬ事情もございます。県内移設とせざるを得ないことは御理解を得たい。そのために、面積は五分の一にしたり、安全で騒音のないということを御提案申し上げている。  もとより沖縄県内において県内移設に批判があることは承知しておりますけれども政府としては、海上施設案は、沖縄県の御負担をできる限り軽減しつつ、普天間飛行場の返還を実現するために日米間で最大限の努力を行った結果であり、何とか地元の御理解を、御協力を得たい、こういうふうに考えておるところであります。
  51. 白保台一

    白保委員 もっとこの件についてはお話をしたいと思っておりましたが、官房長官、冒頭で、私は、軍事的な、戦略的な側面から、この部分から議論をされると結局はそれしかないんだ、そういうことであったら、そこで生活している人の、生活者のレベルの視点からいったならばどうなのですかという話をしたのが、結局今の結論なのです。官房長官のその答弁が、まさにそこに落ちついたわけです。結局その議論で、この基地の過重負担は今日に至っているわけです。したがって、その辺の視点というものをしっかりと見据えていただいて、それはそうですが、生活者はどうするのだという視点をぜひ取り入れていただきたいということを申し上げたい。  時間も余りありませんので、次に移ります。防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  昨年、この場で議論いたしましたが、地元からも強い要望がございますので、ちょうど時間がなくて話が詰められなかったものですから、南西方面の、台湾のそばのあの防空網の問題、ADIZの問題について再度お伺いしたいと思います。  ここは、今与那国島の真上に、あれは二十四度ですかね、三度ですか、その真上の方に防空網が来ているということで、昨年議論をした際には、事務方の方は運用上問題ないというようなことであったわけであります。  ところが、運用上問題ないといっても、地元に住む者にとってみれば防空網が、まさに与那国島というのは我が国の領土ですから、その領土の上に来ているというのは、台湾の防空網がこっちに来ているというのは、なぜ運用上問題がないのか。主権国家として当然これは、与那国島よりちょっとでも外れて出ていればいいですよ、それがまさに島のど真ん中に台湾の防空網が来る、こういうのはいかがなものかということで、地元の方はずっとこのことを言っているのですよ。その件について。
  52. 久間章生

    久間国務大臣 今委員が御指摘になっておられますように、防空識別圏は、確かに与那国島の場合は島の上空にございます。  これは歴史的に言いますと、要するに、米軍がそういう防空識別圏を全部やっておりますときに、全部一緒に台湾も含めてやっておったわけでございますね、韓国の上空も含めて。そのときに便宜的に線を引っ張っておって、いわゆる沖縄の米軍が、その当時は占領しておったわけでございますけれども、その沖縄の米軍が防空識別圏を台湾と区別するために、すっと線を引いたのが今言われました二十三度の線。ただ、韓国につきましては、竹島のところからこちらに入ったところが我が国の防空識別圏になっているわけですけれども。  ただ、これは領空とは違う、我が国の領海とは。そういう識別圏、要するにそこに飛来する、周辺を飛行する航空機の識別を容易にして、もって領空侵犯に対する措置を有効に実施するためにそう引いているわけでございますから、それをもって領空あるいは領海、領域というわけじゃございませんから。現に自衛隊の方は、我が国領域は要するに十二海里でございますから、十二海里のところまでは領域としてその上空までは行っておるわけでございますね。だから、そういうようなことを考えますと、実質的には弊害は出ていないわけでございます。  ただ、今おっしゃられるように、防空識別圏を、単なるそういう便宜上のものだとしても、変えたらどうだという話でございますけれども、そうなりますと台湾と交渉をしなければならないわけでございます。台湾は、要するにそこまでが向こうの防空識別圏として来ているわけでございますけれども、与那国まで来るわけじゃございませんで、そういうような、領空は、領海は領海であるわけですから。  ただ、防空識別圏はそうなっている。それを交渉しようとすると、台湾と交渉しなければならない、現実的には。ところが、台湾は中国の領土の一部ということで、その中国の言う主張を我が国としては尊重するという立場をとっております。  そういうこともございまして、かつてそういうことを内々やってみましょうというような答弁国会でされた方もおったようでございますけれども、現実問題としてはなかなか難しいわけでございます。だから、この問題については慎重に対応していくという答弁を従来から政府はやっておるということでございますし、現実問題としては、それほどの影響は出ていないということでございます。
  53. 白保台一

    白保委員 運用上の問題でそういうことであるということをお伺いしました。  問題は、運輸大臣もいらっしゃいますが、台湾の飛行情報区が石垣島の方まで来ています。防空識別圏が与那国島の上空に来ている。それで、中国との関係、台湾との関係で非常に難しいということでございますが、外務大臣、これは何らかのチャンネルでこの問題について、地元の人たちの不安が残るわけでありまして、皆さんの、運用する分にはそれでいいのです。ところが、台湾と中国との関係一つあって、特にあのあたりは台湾と中国の間で何かありますと、今度は漁業者が漁に出られないとか、そういうことも起こり得るのです、向こうは。非常に微妙なところなのです。  そういういろいろなことがあって、町民は非常な不安を持っておりますので、この辺の問題については何らかの形でもって解決の方向、糸口をつかんでいただきたい、このことを申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  54. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今防衛庁長官から御答弁申し上げましたような経過で線が引かれておるわけでございまして、しかし、二十三度という真下に与那国があるという状況も承知をいたしております。  いかなることをもってすれば不安が取り除けるかにつきまして、さらに勉強させていただきたいと思います。
  55. 白保台一

    白保委員 では、時間がございませんので先へ進めたいと思いますが、運輸大臣、せっかくおいででございますので、昨年の分科会でもお伺いして、ぜひこの問題は解決をしていただきたいということで言っているのが、航空管制業務の問題でございます。  先ほどから何度も申し上げているように、島々によって成り立っている県ですから、かつては船で交流をした、しかし今はほとんど飛行機、こういったことで、いろいろな島々に飛行機が飛び、空路を往来していく、こういう状況になっておるわけであります。  そういう状況の中で、航空管制業務、三つの業務があるようでございますが、その業務のうちの一つの進入管制の問題で、米軍の方が、いまだに向こうが掌握しておって、こちらの方に返還をしてもらえないという状況にあります。このことについて昨年も議論いたしましたが、国の方は、もう復帰して二十五年もたったことですし、この際、日本にはそれだけの能力があるので返還するようにということをたびたび協議しておるようでございますが、うまく前に進まないということです。  私は、そういう状況を考えた場合に、この三つの業務は、航空路の管制は那覇の方がやっている、そしてまた飛行場管制業務というのも五マイルからは那覇の方でやる、しかし、その途中の進入管制業務のことが一番問題でございまして、そのことについてもいろいろと言われております。  この件について、運輸省の今の姿勢をお聞きしたいと思います。
  56. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  今、白保委員のおっしゃられたとおり、那覇空港に係る離着陸機が那覇空港の管制圏と航空路部分との間で通過する進入管制空域に関する管制につきましては、米軍嘉手納、普天間両飛行場に係る進入出発機の管制とあわせて、嘉手納飛行場の米軍沖縄進入管制所が実施しているのが現状でございます。  これにつきましては、もうたびたびとおっしゃいましたが、私ども運輸省といたしましては、この沖縄の進入管制業務につきましては、私どももたびたび、日米合同委員会民間航空分科委員会を通じまして、その返還を要請しておるところでございます。まだ返還するということになっておりませんが、運輸省といたしましては、引き続き米側に返還を要請していく方針でございます。
  57. 白保台一

    白保委員 運輸大臣、このように日本側がたびたび返還を要求しているにもかかわらずアメリカ側が同意をしてくれないというのは、どういう理由があってのことでしょうか。
  58. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 これは昭和五十年五月の日米合同委員会において合意され、米国政府は、先ほど申し上げた管制業務が必要でなくなった場合には、日本政府に対して事前通報を行った上でこれを廃止するということになっておるわけでございます。  この進入管制業務につきましては、私ども運輸省の方でも、十分これはやれるということでお願いしておりますが、米国側の方の御納得がいただけない、こういう現況でございます。
  59. 白保台一

    白保委員 外務大臣、今お聞きのように、復帰の時点で、アメリカ側が単一の施設で行った方がいいということでもって、航空管制三つあるうちの真ん中の一番大事な部分を今でも押さえておる。その際に日本がまだ十分な能力がないだろうというお話でございましたが、十分に日本の航空管制業務は機能できるわけでありますから、そういう面で、日米合同委員会にたびたび持ち出したにもかかわらず今日まで返還をしない。この問題についても、外務大臣としてもぜひ強力に取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、御答弁をいただきたいと思います。
  60. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま運輸大臣からも御答弁申し上げましたが、本件につきましては、しばしば日米合同委員会の民間航空分科委員会におきまして取り上げております。しかし、委員指摘のように、現時点では決着を見ておりません。さらに、本件の移管が実現する見通しは残念ながら現時点で立っておりませんが、さらにこの目的を達成するために、日米安保条約が存在をいたしておりますので、諸般の状況を十分勘案いたしまして、努力をいたしていきたいと思っております。
  61. 白保台一

    白保委員 時間が来ましたから終わりますが、外務大臣、先ほどから申し上げておりますように、今の御答弁はそれはそれでわかりますけれども、やはり多くの人々が空の安全の中で生活をしておるという、一番御存じだと思いますので、そのことを踏まえてぜひ強力に取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。
  62. 越智通雄

    越智委員長 これにて白保君の質疑は終了いたしました。  次に、桝屋敬悟君。
  63. 桝屋敬悟

    桝屋委員 平和・改革の桝屋敬悟でございます。引き続きまして質疑をさせていただきます。  十年度の予算案の審議もそろそろ後半といいますか最終局面にあろうかと思うのですが、もう一度私はここで、厚生大臣にきょうおいでいただきまして、大蔵大臣もいらっしゃいますが、厚生省の予算の総括的なお話をお伺いしたい、厚生大臣の姿勢をお聞きしたい、こういうことで三十分ほどおつき合いをいただきます。  最初に厚生大臣にお尋ねしたいのでありますが、私は厚生大臣の顔を見ると本当に懐かしく、厚生委員会を外れましてこんなところへお呼びしまして大変申しわけないと思っておるのですが、こんなところと言ってはいけませんね、こういう大事なところへ、恐縮です、済みません。  さて、それで、ずっと私も厚生委員会を離れて予算編成を見ておりまして、大変に今回の予算は苦労されたなという気がしております。昨年の八月の概算要求の時点でも、これは十年度は大変なことになるなというふうに私は思っておりましたし、加えて、財政構造改革、財革法が重なってきた。  きょうの新聞には、大臣は財革法の原理主義者というのですか、何かそんな記事が出ておりまして、財革法を一生懸命進めておられるという記事が出ておりましたけれども、本当にそういう観点では大変に苦労されただろうというふうに思います。  特に最終局面で、医療費、診療報酬一・五%のアップで一千億、これはもう本当に私もびっくりしましたし、結果を見れば、当然、医療の現場のアップということも、これはまた必要な部分も理解できなくはない。しかしあの時点でというのは、大変に予算編成の過程で苦労されたと思うのです。  大臣、今回のこの厳しい局面の中で、厚生省の予算編成、予算の姿、これはABC段階、Aが一番いいわけでありますが、三段階に分けるとどの辺なのか、あるいは、大臣自身がどういうふうに予算編成を終えられて認識を持っておられるのか、最初にお伺いしたいと思うのです。
  64. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今回の予算編成の段階で、最終段階には、ほかの閣僚を長時間お待たせして、深夜に及ぶ異例の難航状況のもとで決められた。一番もめたところはこの厚生省関係予算だったわけです。ほかの大臣にもお待ちいただきまして、大変御迷惑をかけただろう。それは、いかに厚生省予算を削るのが難しいかということを端的にあらわしていると思うのです。  そういう中で、財政構造を改革しなければいけない、もうこれ以上増税できない、国債増発もできないという中で、全省庁マイナス予算を組む、だから厚生省も五千五百億円程度削減してくれと。それでも厚生省予算は三千億円プラスなんですよ、ほかの省庁は全部マイナスなんだ、それほどの決意ならやりましょうということでやったのです。  しかし、そういう中でやらなければならないところはたくさんある。充実しなければならないところもあるし、削減すべきは削減すべきだという中で、めり張りをつけて、全体をほっておくと、今のいろいろ国会議論におきましても、削減するのはけしからぬ、ここをふやせふやせという意見の方が多いわけですけれども、それをやっていると八千億円を超えてしまうのですよ。という中で、何とか三千億円弱の増にとどめたということは、ほかの省庁も厳しくやる、マイナスにするということでやってきたわけであります。  今後、財政構造改革を進めるという場合において、今の既存の枠の上に乗って予算を増減させていたら、私は財政構造改革にならないと思います。まさに必要なところには予算を充実させていかなければならない。今までは必要だったけれども、これからはもっと削減してもいいのではないかという予算も出てくる。  結局、優先度をどこに置くかという政治判断が求められる中において、ぎりぎり、ほかの省庁がマイナスという中で、厚生省もあらゆる制度を見直すということでやってきたわけでありますので、ようやく皆さんに、いかに社会保障関係、厚生省関係予算を削減するのが難しいかということを御理解いただけているのではないか。これから政治の判断として、構造改革として、それでは厚生省関係予算、社会保障関係予算を伸ばすのだったらば、どこの予算を削減するかということを考えていただかないと、これ以上削れといったって限界があります。  今回の予算では、その辺のところをよく御認識いただいたのではないかというふうに私は考えております。
  65. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣の苦労された様子は今かいま見ることができたわけであります。しかし、さすが小泉厚生大臣でありまして、めり張りをつけた、こうおっしゃいましたけれども、あるいは他の省庁に比べてさらに厳しい、こういう話もされました。  まさにそのとおりでありまして、最後の局面の話もありましたが、ほかの省庁よりも厳しくおやりになっているところも確かにあるわけですね。変な話、小泉さんだからこんなに切れたのじゃないかと思うぐらい見事におやりになっているところもある。きょうはその辺の部分をちょっとただしていきたい、こう思っておるわけであります。  めり張りもわかるし、それから今後の厚生省予算の厳しい方向ということも私は理解できるのでありますが、何も厚生大臣がホットになって、先頭に立って厚生省の予算を切ることに全力を挙げることはないじゃないか、福祉を守るのは一体だれなのだ、こういう観点も国民は持っているということも最初に申し上げておきたい、こう思うわけであります。  それで、具体的にお伺いしたいと思うのですが、私、一番気になりましたのは、確かに大臣がおっしゃるようにめり張りも理解できます。したがって、私が大事だと思っている部分は、まさに前国会でやった介護保険、介護保険の基盤整備あたりは相当議論もしました。まだまだ足らない、法案が通ってからもしっかりやりますよ、やりましょうね、こういうことをしっかり議論させていただいたという記憶があるわけでありますが、十年度の社会福祉施設整備費、この確保状況がどうなのか。  特に、財政構造改革との絡みでどうなっているかといいますと、私は今、地方行政の委員会におりますが、地行あたりでも盛んに言っているのは、一般公共事業の予算が七・八%の減だ、こういうふうに言われているのに対しまして、社会福祉施設整備費は九・七%の減。九・七%といえば一〇%ですから、一般公共事業が七・八であるのに対しまして福祉の施設というのは大方一〇%切られている。  さっきまさに大臣がおっしゃったように、ほかの省庁よりも厳しくやったというのは、まさにこの部分じゃないかと思うのですが、聖域なしという言葉でもってお取り組みになったということも聞いているのだけれども、この名前のとおり、結局福祉を先に多く切り捨てているのじゃないか、こういう気がしてしようがありません。この点はいかがでありましょうか。
  66. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 一昨年の厚生省関係者の不祥事等の事件もありまして、厚生省の社会福祉の整備とか補助金というのに対しては、聖域だったのではないかという厳しい御批判、御指摘をいただきました。厚生省関係の予算においても厳しく見直さなきゃいかぬという中で、社会保障関係の施設整備費につきましても見直しを進めてまいりました。  しかし、今のお話で、結論を申し上げますと、これは、公共事業といいましても、社会保障関係の福祉施設の整備費も全体の三千億円増の中で含まれているわけです。だから、社会保障関係の施設整備費につきましては公共事業予算とは別だ。厚生省全体のほかの予算の中での三千億円増の上限がありますから、その中で全部を見なきゃいけない。  どこを削らなきゃならないのか、どこをふやさなきゃならないのかということで、結果的に、公共事業関係のマイナス七%からいくと、マイナスは九・八%でありますので、今後、では、その社会保障関係の施設整備費に公共事業を含むのか、別にするのか、厚生省関係からの予算としてこれをどう扱うのかという問題も私は出てくると思うのであります。そこら辺は、やはり構造改革の問題ではないかというふうに考えております。
  67. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣の今の御説明でありますが、しかし、きょうは予算委員会でありますから、政府全体、橋本政権がおやりになっている財政構造改革というのは、結局、一般の公共事業よりも、国民生活に密着した大事な社会福祉施設の整備費というのはそれ以上の率で切ったのだ、削減をしたのだという事実でしかないわけであります。  これは、構造改革をしていかなきゃいかぬと大臣はおっしゃったけれども、それはぜひやってもらいたいが、例えば平成十年度の予算といったって、大変に緊急性のあるものも多いわけでありますから、今の大臣の説明で、では地方が本当にやれるのかという話であります。  昨年の八月あたりの概算要求のときにはどういう話があったかということでありますが、地方は、都道府県なり市町村は、施設整備費については、全体では公共事業は多分七%減だろうから、この目標がかかったわけですから、七%減だけれども、いわゆる厚生、福祉の関係、厚生三プランについては七%も削りませんよ、六%にとどめおいて頑張ります、厚生三プランは大事だということを盛んに八月ぐらいには各地方に言っておられた。  結果的に、何かというと、私は、さっき言った一・五%の一千億、診療報酬のアップだろうと思うのです。私はそのことは今言うつもりはありませんけれども、その結果、大事な三プランの施設整備なんかも圧縮せざるを得なかったのではないか。大臣は先ほど構造改革とおっしゃったけれども、私は、この十年度の予算をつくるに当たって、何か間違ってやしないか、大変に心配をしているわけであります。  厚生三プランの関係、どんな予算になっているのか、さらに詳しくお尋ねしたいと思います。
  68. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 ただいまお尋ねの三プランの関係でございますけれども、社会福祉施設整備全体といたしましては、先生が御指摘のように、九・七%の減にいたしておりますけれども、三プランにつきましては、七・五%の減にとどめているというところでございます。  そして、先生が先ほど引用されました夏の関係では、私ども六%の減という形で要求をいたしました。その後、政府全体の公共工事のコストの削減分、また、社会福祉施設をめぐる不祥事の結果、単価について実態調査をしろということで、三省での実態調査も行いました。そういうものを含めまして、一・六%程度のコストの削減があるというようなことを加味いたしまして、七・五%の減になっておりますので、私ども、当初三プランの整備の目標であるというものは確保されているというふうに考えております。
  69. 桝屋敬悟

    桝屋委員 昨年の概算要求で六%、単価減が一・六%、合わせて七・六、そう聞けばそうかなという気もするのでありますが、したがって、厚生三プランについては、全体は九・七だけれども、厚生三プランの施設整備は七・五で、数量は確保していますよ、断固やります、こういうふうに理解していいですか。
  70. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 先生のおっしゃるとおり、自信を持って言えると思います。
  71. 桝屋敬悟

    桝屋委員 自信があるならもっと大きい声で、しっかり。何か全然自信がないような、何か陰にまだあるような気がしてしようがないわけであります。  この三月四日に、厚生省が各県の課長あたりを集められて会議をされております。その中で、確かに今おっしゃるように、三プランについては、必要な整備量を確保した上で、国庫補助基準単価の見直しだけにとどめ、対前年度比七・五%減としたところである、このように言われているから、これを聞けば、これを見れば、では三プランの施設整備は、ゴールドプランにしても、障害者プランにしても、エンゼルプランにしても、何とか数値目標は行くのだろう、こういうふうに私は理解をぜひさせてもらいたいし、そうあってもらいたいと思っているわけであります。  ただ、地方を回りまして、現場の話をずっと伺っておりますと、平成十年度の施設整備はどういうふうな実態になっているかというと、三角七・五%を確保するために、平成九年度、前年度の一〇%、一割減でなければ協議は受け付けませんよ、いいですかと。当然そうなるでしょう、私が担当でもそうしますよ。全体を下げておいて、その中でどうしても緊急なものもあるから調整財源を持ちたい、こういうことになるわけで、実質一割減ですよ。こういう実態が私はあるのじゃないかと思う。  さらにはまた、同じくいろいろな課長会議の資料等を見ておりますと、実は、施設整備につきましては、基準の補助以外にいろいろな加算をされております。例えば昇降機の設備とか、介護用リフトの特殊附帯工事とか、いろいろな用途に応じて加算措置を講じて補助金を増額され、十分な施設ができるように努力をされておられると思うのですが、これなんかも、十年度からは原則として国庫補助協議から除外するというようなこともあるわけですね。  私は、確かに数字は確保された、国庫補助基準単価の見直しだけにとどめた、こうおっしゃるけれども実態としては、さまざまな形で、一〇%の減というような形で難しさが出てきているんではないか、このように思っているわけであります。  この辺はいかがでありましょうか。
  72. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 地方公共団体からの協議を受け付ける際、来年度の予算は非常に厳しゅうございますので、全体九・七%の減になっておりますので、一〇%の減ということをめどにして出してほしい、検討してほしいということをお願いしていることは事実でございます。しかし、三プランにつきましては、当然めり張りをつけて、その必要性がより高いわけでございますので、その状況に応じて適切に対応してほしいというふうにお願いしておりますし、私どももそういう方向で調整させていただきたいと思っております。  また、先生が指摘されました各種の加算制度、これは職員宿舎とか地域交流のスペースとか昇降機の設備というものを指すわけでございますけれども、このようなものについては、やはり限られた予算でございますし、これまでの経験上、必ずしも緊急性、必要性が高くないというものにつきましては、このような限られた予算の効果的な活用という面で補助対象から外すというふうにしているわけでございますけれども、しかし、昇降機や介護用リフトのように入所されている利用者の方々の処遇に非常に影響があるというものにつきましては、個別の判断をさせていただきまして、対象に加えるというふうにしたいと思っております。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  73. 桝屋敬悟

    桝屋委員 全体が、実際に厚生三プランというのは定量的に数値目標を立てて毎年ふやしていきましょうということでありますから、単価が下がったといえ、やはり施設整備費が三角が立っているということは私は事務方からすると大変なことだろうと思いますし、あるいは計画をお立てになっている現場、市町村、県、あるいはいろんな障害者の団体とか、皆さん方からすると、大きな影響があるんだろう。  したがいまして、今お話がありましたような、例えば各種加算措置あたりも十分現場の声を聞いていただいて、予算の範囲、予算があれば何とでもできるわけでありますから、限られた予算ということでありましょうが、ただ、せっかく箱物をつくっても、予算をけちったがために利用者が喜べないような、そういう処遇に困難を来すような施設をつくっても意味がないわけでありますから、ぜひお願いをしたい。  それこそ一般公共事業七・八%減ぐらいであれば何とかなるんじゃないかと私は思っているわけでありまして、そういう意味では、今回の財政構造改革という法律というのは、本当に現場は苦しんでいる。  現に、幾つかの事例で、厚生三プランは大丈夫です、数量はいけます、こうおっしゃっているけれども、ぎりぎり予算をつけてもらえるかつけてもらえないか。現場でしっかり計画を立てて、市町村から県に上げ、県も、よしいいだろう、介護保険も始まるんだからぜひやろうということで用意をして上げたものでも、これから国庫協議、予算が通れば内示に向かって進みますけれども、通るだろうかどうだろうか、恐らくだめだとか言われているところはいっぱいあるわけです。私もたくさん聞いております。  したがって、要望には全部こたえられるという状況でも必ずしもない、まことに厳しい実態があるだろう。特に障害者プランあたりも、介護保険の陰に隠れて、どうしても厳しい実態になりがちでありまして、私は、現場のニーズに応じ切れていないところもあるのではないかと大変に心配をしております。小泉大臣が介護保険の議論の中で随分言われた、介護保険の基盤整備は全力でやります、このことからすると、今の状況は本当にちょっと離れているんじゃないか、食い違っているんじゃないか、私は、実態からするとそういう危惧をするわけであります。  大臣、その辺はどうでしょうか。
  74. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 十年度予算については、昨年介護保険法案が成立いたしまして、これから本格的に体制が整っていくと思います。また、準備をしているところも多いですから、要求も今まで以上に出てくるということが予想されますし、十年度予算においては厳しく、しっかりしたところに予算をつけようということになっておりますので、いいかげんといいますか、余り準備の整っていないところには予算が行かない。  しかし、今後本格的に市町村が体制を整えて、介護基盤整備に向けて動いていきますと、その体制もしっかりしてきますから、当然予算要求も今よりはふえてくると思います。その際には、十二年度の導入に向けて、来年度予算編成におきまして、その点は十分配慮して予算をつけなきゃいけないなというふうに考えております。
  75. 桝屋敬悟

    桝屋委員 大臣の今のお話でありますが、なかなか現場も介護保険で大混乱でありますし、道は険しい道がなお続くな、こう思っておるわけであります。  大臣、しょせんやはり医療費です。医療費の問題に決着をつけない限り、こういう問題というのはずっとついてくる。私は医師会の要望もある意味ではよく理解はできますし、しかし、今回まさに唐突と出てきた感も否めないわけでありまして、結局は、そこを目標どおりにやれなかったからこういう部分にしわ寄せが来ているという事実はあると思うわけでありまして、やはり医療費の問題は本当に手をつけなければならぬ、このように申し上げたいと思うのです。  もう一つ。今ずっと私申し上げたのはハード面でありますが、ソフト面も、ソフト面は幸いに三角は立っていません。さすがに三角は立っていないのでありますが、厚生三プランのソフト面を見ますと、伸び率は、八年から九年への伸び率に比べて九年から十年の伸び率は半分になっている。これもある意味では三角なんです。  と申しますのは、さっき言ったように、すべての計画は右肩上がりで数量をふやそうとしているわけでありますから、そういう実態からしますと、実質三角ではないか。ちなみにゴールドプランが、私の理解では、九年度は一四%ぐらいの伸びであったものが五%ぐらいになっている。エンゼルプランも一一%ぐらいの伸びであったものが七%ぐらい。障害者プランも一〇%ぐらいの伸びであったものが五%になっている、五から六ぐらいではないかなという理解をしているわけであります。  これが、私の理解が正しいかどうかということと、さっきの施設整備の方は、単価を見直した、こうおっしゃったけれども、ソフトの方は、何を見直して伸び率をこのように半減されたのか。単価を下げたのか数量を下げたのか。数量を下げるということは、目標が下がっているということでありますから、大変なことになるわけでございますが、その辺の実態はどうなっていますでしょうか。
  76. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これは、各省庁今までどおりの伸びを認めていったら予算が組めないのです。だからこそ、全省庁マイナス予算を組んでくれ、財政構造改革法案を通してくれという中で予算編成したわけでありまして、厚生省の予算は全体として一・九%しか伸びていないのです。その中で三プランについては五%、六%、九%伸ばしたということは、ぜひとも評価していただきたいと思います。
  77. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 三プランについてのお尋ねでございますが、代表してということでお許しをいただきましたので、新ゴールドプラン関係につきまして、お尋ねの部分をもう少し申し上げたいと思います。  まず数字につきましては、先生お話のございました新ゴールドプラン関係関係経費につきましては、前年度に比べまして四百四十四億円の増ということで、五・五%の増でございます。これは昨年の、平成九年度の対平成八年度の伸びが一四・九%でございましたから、そういう意味では伸びは小さくなっております。ただ総額は、今お話し申し上げましたとおり、四百四十四億円の増の八千四百八十一億円を確保いたしておりますし、伸び率としても、五・五%というのは今次の予算の中におきましては大変大きい伸びではございます。  ただ、そうしたゴールドプランの関係で、その予算でやっていけるのかというお尋ねがございました。  そもそものところで申し上げますと、新ゴールドプラン自体、これは先生御案内のとおり、計画自体が予定をしておりますところが、実は、訪問介護員、いわゆるホームヘルパーでございますとか、あるいは特別養護老人ホームにつきましては、計画の前半の年度でかなり前倒して整備をするという計画にいたしておりましたから、そういう意味からいきますと、訪問介護員あるいは特別養護老人ホーム等につきましては、整備自体につきましては、前倒し整備の結果、平成十年度、十一年度の整備分というのが前年度に比べれば小さくなっているという要素はございます。  しかし、そうした中で、そういった整備量の減少と同時に、施設整備の補助単価の見直し等も、先ほどお話があったとおり、ございましたけれども、それに加えまして、やはり効率的な運営という意味で、いろいろな工夫をいたしておることは事実でございます。ホームヘルパーさんの関係につきましても、できるだけ効率的な運営を図っていく。それからさらに、デイサービス等につきましても、弾力的な運用、既存施設の活用というような形で、公民館でございますとか、あるいは学校の空き教室等を利用したような形もやっていく。  そういった工夫はいたしておりますけれども、整備量といたしましては、あるいは基盤のサービス量といたしましては、新ゴールドプランの目標が達成できるような事業量を確保するようにやっております。他のプランについても、それぞれ同様の工夫をしながらやっておることと思います。
  78. 桝屋敬悟

    桝屋委員 先ほど大臣がおっしゃった、大変に厳しい予算の中でプラスがあるだけでも喜べ、評価しろ、こうおっしゃったら、なるほどなと普通の人は思うかもしれません。しかし、それで評価しろと厚生大臣がおっしゃるのも、本当に難しい時代だな、大変な時代だな、こう思うわけであります。  今、羽毛田局長が、数量は前倒しでやったからそんなことはないとおっしゃったけれども、私は、ヘルパーにしても何にしても、前倒しして全部できているんだから、今数も減っています、数量は減っていますなどということはまずないだろう。これからいよいよふやしていかなければいかぬときだろう。少なくとも介護保険を考えるならば、そんな姿勢でやれるはずはないわけでありまして、本当に苦しさはよくわかりますが、私は大臣の御答弁も聞きまして、これからの厳しさをますます感じるわけであります。  いずれにしても、介護保険は通したわけであります。大臣はお約束をなさった。本当に国民に安心をしていただけるように、保険あって介護なしということがないように全力を挙げる、こうおっしゃったけれども、その努力はまだまだ不十分である。もっと本気でやらなければいかぬ。予算は確保しなければいかぬ。それは、財政構造改革をするしかないわけでありますから、政府の責任でありますから、どうかそういう取り組みをこれからもやっていただきたい。  これから大型補正とかなんとかという話になっていますが、大臣、どうなんですか、もしあるのであれば、こういう問題から、社会福祉施設等の国民生活に密着したものからやるべきではないか、私はこう思っておりますが、最後に、その見解をお伺いします。
  79. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 既存の省庁の枠の上に必要な予算をつける。毎年ふえていたから次の年度もそのとおりふやせという時代ではなくなった。そして、十年度予算におきましても、全省庁マイナスにする、公共事業をマイナス七%にするんだ。だから厚生省関係も、例外として三千億円増を認めるということだったんです。ところが、ほっておいたら八千五百億円伸びるところを、三千億円増を認められても、実際は五千五百億円程度を削らなければならないのですよ。その辺は非常にきつい。この予算を出して反対するのはむしろ与党じゃないかと私は編成過程で言ったぐらい、厳しさを認識しておりました。  そういう中で、今後、仮に補正予算を組む。私はまだそんな話は全く聞いていません。今、本予算を通すのが精いっぱいだ。そこで、ほかの予算は別だ、公共事業をふやすんだ、社会保障関係、厚生予算はそのとおりだ、このまま連ねるといったって、それは話が違うじゃないか。そこは私は、もしそういう話が出てきたら、しかるべき時期に、きちんと私なりの主張を展開して、構造改革はどこへ行ったのかという点を問い直さなきゃいかぬと思っております。
  80. 桝屋敬悟

    桝屋委員 やはり福祉の予算を確保するためにこそ構造改革はすべきだ、このように私自身も思っておりますので、今後、なおこの問題については、厚生委員会等で議論を進めたいと思います。  ありがとうございました。
  81. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて桝屋君の質疑は終了いたしました。  次に、木村太郎君。
  82. 木村太郎

    木村(太)委員 厚生大臣におかれては、引き続きということで、ぜひよろしくお願いしたいと思います。三十分間の時間でありますので、私、一つのテーマに絞ってお尋ねしてまいりたいと思います。  それは、昨年、五十年ぶりに抜本的に改正されたという児童福祉法、これが来月いよいよ施行されるということでありますので、子育て支援対策という思いも持っての児童福祉法改正そして施行ということでありますので、この施行を前にして、幾つか意見を述べながら、また具体的な質問をさせていただき、大臣から御答弁をいただきたい、こう思います。  まず、国は、平成六年にエンゼルプランというものを策定しております。その趣旨には、社会全体の子育てに対する財運を要請するとともに、子育て支援施策を総合的、計画的に推進する、こういうふうに趣旨を述べております。その考え方に基づいて国として取り組むべき一つが児童福祉法にかかわることだと思いますが、まずそのことを大臣から確認させてください。
  83. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これからの予算編成は大変厳しいものがありますが、少子対策あるいは子育て支援についての重要さは私も十分認識しているつもりであります。  今回の予算編成におきましても、全体が厳しい中で、子育て等少子化対策に対しましては、ほかの予算に比べて伸び率もふやしましたし、児童福祉法も昨年改正されました。児童の健全な育成に対しましてきちんとした措置をとっていきたいというふうに考えております。
  84. 木村太郎

    木村(太)委員 我が国一つの大きな問題として、少子化問題もあるでしょうし、また最近の、少年による犯罪の多発化あるいはまた低年齢化、こういったものも大きな社会問題になってまいりました。こういうことを考えても、私は、児童福祉法の果たすべき役割も大変大きい、こう思っております。  こういう点での児童福祉法の位置づけというものを、大臣はどのように考えておられますか。
  85. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 児童福祉法が昨年五十年ぶりに改正されまして、今後とも児童に対する福祉について、より適切な対応を考えなきゃいかぬ。特に、戦後間もなく制定された児童福祉法の基本理念というのは、子供は心身ともに健やかに生まれ、育成されなければならないとされておりまして、この理念は、私は現在においても変わっていないと思っております。  このため、新しい児童福祉制度の基盤を整備するために、今まで、保育所制度については行政が措置するという対応をしておりましたけれども、今後は、利用者の視点に立って、保育所の情報に基づき、むしろ利用者が保育所を選べるというような制度に見直した。  さらに、虐待や非行などを早期に発見し、対応を図るために、児童家庭支援センターというものを新たに創設する。最近では、核家族とか、あるいは周りに親戚とか知り合いとか相談する方がいない、お母さんのお母さんも、いわゆるおばあちゃんとかおじいちゃんもいないということでありますので、そのような相談する方がない親御さんに対しましても支援体制の充実強化を図っていくというような措置をとっております。  さらに、教護院というものを児童自立支援施設と名前を改めましたけれども、その児童自立支援施設において、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行って、自立を支援するような体制をとっていきたい。具体的に言えば、今後は学校教育も実施するということ等、今まで不十分だった点が今回の法改正によってかなりの部分改正されてきたのではないか。  もちろん、法律だけでできるものじゃありません。児童福祉法というのは、子育てしやすい環境の整備や児童の健全育成を支援することを目的としておりますので、今後、児童のためなんですけれども、本来はむしろ大人がしっかりしなければならない、大人の責任というものを十分考えていかなければならない。  その中で、社会の役割、施設の役割、そして家庭の役割、親自身の役割というものを、社会全体が自覚を持って、親ではできない、家族ではできない分野を社会的に支えていく基盤をどうやって整えていくかということが私は大事だと思いますけれども、基本的に、大人が、親が責任の大半を持っているんだという自覚を持たないと、この制度が生きてこないのではないかというふうに思っております。
  86. 木村太郎

    木村(太)委員 具体的なことも今大臣から御答弁ありました。そして先ほどは、厳しい予算の中での子育て支援ということに対しては、むしろ予算的にもふやしているということで、大臣から大変ありがたい決意というものを私は今感じたわけであります。  今、具体的に幾つかありましたけれども、私は、その具体的なことについて少し触れていきたいと思います。  まず、子供たちの自立支援という観点からお伺いしますけれども、児童自立支援施設における通所機能ということをお伺いしたいと思います。  児童福祉法第四十四条におきましては、この児童自立支援施設というものを「不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的とする施設」というふうに規定しております。  児童自立支援施設にいわゆる通所機能の付与を明文化しているわけですけれども、具体的な実施時期については、都道府県の、いわゆる地域の実情に応じて判断されるべきというふうに聞いております。このことについて、通所機能の設置義務というものをこの施設に義務として課しているのか、あるいはまた任意的なものとしているのか、私ちょっとまだわかっておりませんので、教えていただきたいと思います。
  87. 横田吉男

    ○横田政府委員 今回の児童福祉法の改正によりまして、児童自立支援施設、これまで教護院ということで、この施設は入所機能だけでございましたけれども、地域に開かれた施設にしていく必要がある、児童の自立支援を図っていく必要があるということで、このたび、入所機能に加えまして通所機能も行えるようにしたところでございます。  この通所機能について、この児童自立支援施設は全国五十七施設でございますので、私どもといたしましては、すべての施設においてこうした機能も取り入れていただきたいという考えを持っておりますけれども、そのための施設整備、人員等もございます。今後、こういった機能が各施設において行われるよう、私どもとしては指導をしてまいりたいと思っております。  ただ、法制上におきましては、この教護院そのものの必置規制の有無についても議論がある中におきまして、通所機能をどのように設けるかという点については各地方公共団体の判断にゆだねられているということでございます。
  88. 木村太郎

    木村(太)委員 ということは、任意的と解釈してよろしいですか。
  89. 横田吉男

    ○横田政府委員 各地方公共団体がそれぞれの施設についてどうするか、判断に従いまして今後整備されていくものと考えております。
  90. 木村太郎

    木村(太)委員 そこで、通所部門の居室面積あるいはまた職員配置等について、いわゆる児童福祉施設最低基準というところで、この基準上において明確にされるべきだと思うのですが、義務的なものなのか任意的なものかによってこの位置づけというものが、あるいはまた、基準そのものが示されているのかどうかというものも何かあやふやになっていくような感じがするのですが、その点はどのようになっているのでしょうか。
  91. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童自立支援施設の居室面積なり職員配置についての基準でございますが、現在の最低基準におきましては、居室面積一人当たり二・四七平米以上とされておりますけれども、この四月一日より三・三平米以上に改善することにいたしております。また、職員配置につきましても、児童自立支援専門員あるいは生活支援員の総数がおおむね児童五人当たり一人ということを最低基準において定めております。  また、通所部門におきましては、平成十年度予算におきまして、新たに通所部門を整備する場合におきましては、一人当たりの補助基準面積といたしまして十四・六平米を加算することにいたしております。
  92. 木村太郎

    木村(太)委員 せっかくはっきりした基準が示されているわけですので、私は言葉にこだわっておりますが、義務なのか任意的なものか、この辺、やはりきちっとした厚生省の姿勢というものを持って対応していただきたい、こう思います。  いま一つ確認したいのは、この児童自立支援施設というものは、実際、全国の都道府県、県内一カ所の設置というのがほとんどというふうに聞いております。ただ、県内全域をカバーする施設として、通所という視点から考えた場合には、限界というか、機能しない面もあるのではないか、自然にそういう疑問を思うわけですが、この点について、具体的な取り組みということはどのようになっているのでしょうか。
  93. 横田吉男

    ○横田政府委員 先生御指摘のとおり、児童自立支援施設、全国で五十七カ所ということでございますので、大体一県一カ所ということでございますが、現在は入所率が四〇%ぐらいということでございまして、そういった点ではまだまだ利用されていないという点があるかと思います。  ただ、通所する場合におきましては、県によりまして、一カ所の施設では通いにくいというところが確かにあろうかと思います。こういった点につきましては、通所そのものについては、児童相談所、あるいは十年度から児童家庭支援センターというものをより身近な施設として設置することにいたしておりますので、そういったところを活用して通所指導あるいは家庭環境との調整等が行われないかというようなことで、県内の児童相談体制、処遇体制全体の中で考えていく必要があるかと思っております。
  94. 木村太郎

    木村(太)委員 四〇%ぐらいという数字ですが、この数字をどう受けとめるか。考え方を変えれば、ある面では、利用率が高くなること自体が、そのときの子供をめぐる社会情勢というものを反映することにもなるかもわかりませんので、四〇%という現在のこの数字というものを厚生省がどのように判断して、また今後、そういった通所というようなことも考えれば、どういった取り組みができるのかということを随時検討しながら対応をお願いしたいと思っております。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕  次に、もう一つ、この児童自立支援施設ということで、そこにおける児童に対する学校教育の実施ということをお尋ねしたいと思います。  児童福祉法の第四十八条では、これまで教護院で実施してきた学校教育に準ずる教育を廃止し、児童自立支援施設の長に、保護者に準じて入所児童を就学させる義務を負わせたというふうにあります。  学校教育の実施者である地元教育委員会からは、一つの例ですけれども、群馬県前橋での例ですが、拒否されている例があるということを聞きました。これはことしの一月二十六日の朝日新聞にも記事が載ったのです。  厚生省としては、児童福祉法の改正で、この自立支援施設入所児童の教育権というものがこれによって保障されているという認識を持っていると思うのですけれども、しかし、この具体的な実施に向けて、各都道府県においては苦慮している面もあるのではないかなと私は思うのです。  この辺、厚生省のみならず文部省関係してまいると思います。この両省が一丸となって、今回の法改正そして来月からの実施、この趣旨を各都道府県あるいはまた地域に徹底することが大事じゃないかと思いますけれども、学校教育実施について、厚生省の取り組み方をお尋ねしたいと思います。
  95. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童自立支援施設における学校教育の問題でございますけれども、今回の改正によりまして、児童自立支援施設における正規の学校教育が行われることが義務づけられたということでございます。ただ、経過期間がございますが、今後は、この各施設におきまして正規の教育ができるだけ早く行われるように、私どもも努力してまいりたいと考えております。  ただ、実施に当たりまして、各地域ごとに教育委員会との関係等が必要になりますので、そういった点で、現在、文部省とも連携をとりまして、各都道府県ごとに、教育委員会等の関係の方との検討会の設置、あるいは、この児童自立支援関係それから学校の職員関係の合同研修の実施というようなことを行っております。  今後とも、文部省と連携をとりながら、できるだけ早く正規の教育が行われるように、努力してまいりたいと考えております。
  96. 木村太郎

    木村(太)委員 ぜひお願いしたいと思います。  次に、私、保育施設の見直しについてお尋ねしてまいりたいと思います。  まずその一つに、情報提供という面でありますけれども、今回のこの改正、冒頭言ったように、五十年ぶりの抜本的な改正というふうになっております。私は、今回のこの改正、そして来月からの施行ということに対して、一般国民、住民は、その内容を把握しているというのがまだまだ少ないような気がいたしております。その点、国としての取り組みはどうなっておりますか。
  97. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童福祉法の改正が昨年六月に行われまして、その後、関係政省令、規則、通知等順次出しておるところでございますが、私ども、この点について、できるだけ多くの国民にも知ってもらう必要があるということで、その都度、都道府県等に対する説明、あるいはパンフレット、それからマスコミ等に対する発表等も行いまして、広報に努めてきております。  まだ予算も通っていないということで、保育料等、これから正規に通知しなければいけない点もございますが、都道府県における広報、市町村における広報、あるいは関係団体における広報等も含めまして、多くの国民にできるだけ知っていただくような努力をしてまいりたいと考えております。
  98. 木村太郎

    木村(太)委員 せっかくの抜本的な改正をしての施行ですから、ぜひ努力をお願いしたいと思います。  次に、保育所の中でも公立保育所のあり方についてお尋ねしたいと思います。  公立保育所を考えてみますと、高齢化、定数、あるいはまた人事異動等の面で職員の問題、あるいはまた、延長保育等の特別保育をやるためのことがどういうふうになっているのか、時間外手当の予算の制約などもあるでしょうし、利用者のニーズに柔軟に対応できているのかどうか、私はこういうことも気にしております。  いわゆる公立と民間の保育サービスにこれからも格差が生じることはないのかどうか、どう認識しているのか、またその対応があれば、お伺いしたいと思います。
  99. 横田吉男

    ○横田政府委員 国の負担金の積算の考え方におきましては、公立保育所、私立保育所、全く同一の基準のもとに行われているということでございますが、公私の特別保育の実施状況等を見ますと、延長保育あるいは乳児保育等におきまして、公立よりも民間の実施率が高いというような結果が出ております。  現在、保育所が二万二千四百一ございまして、毎年四十ぐらい減っております。このうち、中身を見ますと、公立保育所が五十五減っているのに対しまして、民間の方は逆に十五ぐらいふえているという微増の関係にございます。  今後ともこうした傾向が続くのではないかと思いますが、私どもといたしましては、行政改革の中で民間主導ということが言われておりますので、各市町村等におきまして公設民営化というような政策がとられているところもございますが、こういった方向について、政策的にも支援していくようなあり方を検討してまいりたいと考えております。
  100. 木村太郎

    木村(太)委員 次に、私、特に保護者の立場あるいはまた運営する立場からも、大変重要なのが保育料だと思うのですが、この保育料の負担方式というものを、厚生省サイドは今後均一化を図っていくというふうに考えているようであります。その辺、どのように考えているのか。  特に、昨年の改正によって、国が示す国庫精算基準というのを、これまでの十段階から七段階に区分して示した。要は、幅を縮めたということでありますけれども、実際、この案を参考にして市町村が保育料を設定する。  しかし、その設定は、実際には今でも大きな格差があると思います。実際の問題として、その差というのは、千円、二千円の差ではなくして、二倍、三倍、四倍というふうにも、私は、私なりに調べてみて感じております。私の友人の話なんかを聞いても、うちの町はなぜ隣の町に比べてこんなに保育料が高いのかとか、こういう声を保護者の素朴な声として、私自身感じております。これは実際の声なわけですね。  大臣、それこそプライベートな話ですが、私も実は四歳と一歳半の子供二人を持つ親なのですが、保育料が大変だ。子供は何人でも欲しいけれども、三人入れると保育料だけでも大変だというような声を聞くわけです。保育料の実際のこの姿に対して、厚生省の認識というもの、また今後の取り組みというものをどう考えているのか、お尋ねしたいと思います。
  101. 横田吉男

    ○横田政府委員 保育料につきましては、従来、応能負担ということで十段階でございましたものを、このたびの改正によりまして、保育コストを基礎といたしまして、家計に与える影響も考慮して、均一的な保育料にしていくという方向に変えたところでございます。私どもが示しておりますこの基準というのは、あくまでも国と地方の関係の国庫負担に関する精算基準でございまして、具体的な保育料については、各市町村がみずからの条例等で設定するということになっております。  御指摘の保育料の格差につきましては、各市町村長さんの熱意、あるいはその市町村の財政力の差等もありまして、そうした違いが出てきているというふうに私ども考えております。
  102. 木村太郎

    木村(太)委員 時間がなくなってまいりました。今の答弁では、市町村間の熱意の違いというような御答弁でしたけれども、しかし、保護者の立場から見ると、現実に、何で二倍も三倍もというような声があります。厚生省としては均一化をということを考えているようでありますから、その均一化というのが二倍、三倍という差でいいのかどうかということを、やはり私は十分これからも検討していただきたい。  私ごとですけれども、子供三人目をもうけたらいいのかどうか、保育料の姿によって判断するという、私と同じ世代の、現実にこう考えて、子供をもうけたらいいかどうかという、まあこれは保育料だけではありませんけれども、子供一人を育てるための教育費というふうになっていきますけれども、こういう点も十分配慮していただきたい、こう思います。  そこで、保育所の施設ということから考えますと、改築なんかも大変大きなことでありまして、間もなくピークを迎えていくというふうにも聞いております。さらに、法人、いわゆる民間の保育所と、先ほど言った公立の保育所との、改築とかいろいろな面での余り大きな格差が広がってはならないと思いますけれども、この辺、厚生省としての考え方をお尋ねしたいと思います。
  103. 横田吉男

    ○横田政府委員 保育所につきましては、四十年代から五十年代にかけて多数整備されておりますので、非鉄筋の施設につきましてはそろそろ耐用年数を経過することになっているということで、改築の要望が多数出てきております。私どもといたしましては、通常の整備枠では対応し切れない分につきましては、別枠を設けまして、緊急保育対策等五カ年事業の中で、多機能保育所の整備というようなことで整備を図ってきております。  また、今回の改正によりまして、公民の格差をどうするかということについてでございますが、負担金の単価につきましては基本的には公私同一でございますけれども、現実に給与等において公私の差があるという点につきましては、民間保育所につきましては、民間給与等改善ということで特別な上乗せを行っているところでございますが、今後とも、こうした点については配慮してまいりたいと考えております。
  104. 木村太郎

    木村(太)委員 今、民間法人による保育所と公立の保育所との考え答弁いただきましたけれども、もう一つ、保育所と幼稚園との整合性というものをどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。  もちろん、幼稚園はあくまでも教育ということでありますけれども、ただ、やはり現実に保育所と幼稚園との、それこそいろいろな面での大きな差があってはならない。しかも、報道によって知ったのですけれども文部省、厚生省両省が、幼稚園と保育所、保育園とのいろいろな面で協力していこうということで、具体的に作業に入っているというふうにも聞いております。  この辺の整合性をどのように考えているのかお尋ねして、最後に大臣から、先ほど私、質問の中でも言いましたけれども、この施行を前にして、子供を生み育てる環境づくり、そして子育て支援という環境をつくることは本当に大事なことであって、今、大蔵大臣や官房長官外務大臣、皆さんいらっしゃいますけれども、国の大きな問題として、今後も厚生省がリーダーシップを発揮していただきたい。その点の決意もお伺いして、質問を閉じたいと思います。御答弁だけお願いします。
  105. 横田吉男

    ○横田政府委員 保育所と幼稚園の関係でございますが、先生御承知のとおり、保育所の方はゼロ歳児から入れておりますが、幼稚園の方は三歳児からと年齢、それから預かる時間、片一方が半日であるのに対し、保育所の方は十一時間程度というようなことで、保育コスト、それから対象年齢、時間、すべて異なっておりますので、そうした違いはあろうかと思います。  ただ、文部省とこの点につきましては双方で協議を続けまして、保育所と幼稚園を、その施設をできるだけ共用化を認めようということで、このたび、この点につきましての通知を両省の局長通知として出したところでございます。
  106. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 幼稚園と保育園との問題ですが、これは今文部省と協議をしまして、できるだけ連携協力していこう。違いを強調すれば、違いは確かに多いのです。教育と保育では違うじゃないかと。しかし、共通点を探せば、親御さんから見れば、あるいは幼稚園の先生、保父、保母、いわゆる保育士から見れば、お子さんを預かる点においては共通点があるわけです。その点うまく共用を図っていこうじゃないか、連携を図っていこうじゃないかということで今進めております。  それと、今後の幼児教育におきましても、保育園の問題につきましても、費用の点においても大変だと思いますけれども、基本はやはり家庭が、親が育児に大きな責任を持っているんだということを自覚してもらわないことには、健全な児童の発展、社会の発展というのは、私は望めないと思います。ただ施設に任せればいいんだ、社会に任せておけばいいんだという問題ではない。  基本的に、保育園に預けている方もおられますけれども、保育園に預けないで家庭で育てている親御さんもたくさんいるわけです。そういう点も考えまして、これは均衡のとれた育児支援策が必要ではないか。  私は毎々言っているのですけれども、育児なり幼児教育の基本は、しっかり抱いて、そっとおろして、歩かせる。そのしっかり抱く面とそっとおろす面は、大半は親の責任なんです。家庭の責任なんです。親が子供を十分抱き締める。子供は、自分は身内の者からしっかり抱かれているんだな、愛情を受けているんだなという感じを持たないと、青春期、思春期を迎えて精神的に情緒不安定になると言う心理学者もいるぐらいで、私はその説に大きく共鳴する者であります。  まず基本は、乳児、幼児の間に、施設に預ける前に、家庭が、身内が、親がしっかり抱き締めて、本当にお子さんが、自分は身内から愛されているんだな、しっかりと認められているんだな、受けとめられているんだなという感じを持ってもらうということは、一番身近な親とか身内しかないわけでありますから、そういう中にあって、保育園の役割、幼稚園の役割というのは重要ですから、社会的にどうして国が支援していくかということを考えるべきではないかと思います。
  107. 木村太郎

    木村(太)委員 決意、ありがとうございました。終わります。
  108. 越智通雄

    越智委員長 これにて木村君の質疑は終了いたしました。  次に、山中燁子さん。
  109. 山中あき子

    山中(燁)委員 山中燁子でございます。よろしくお願いいたします。  詳細は委員会などでお聞きするといたしまして、本日は、政策の方向性または方針ということについて、それぞれ政治的な姿勢を大臣からお伺いしたいというふうに思います。  私が申し上げるまでもなく、冷戦終了後の日本を取り巻く環境、世界を取り巻く環境は変わってきているわけですけれども日本は、平和社会の主要なメンバーの一員としてその役割を果たしていくという意味で、新たな外交政策の確立を急がなければいけないというところにいると思います。  私は、やはり両手が必要であって、軍備的なものというのは抑止力として準備をしておくけれども、できればそれを使わないで非軍事的な手段での外交というものを打ち立てていく、それを敷衍していくということが非常に大事だと思いますが、その意味において、予防外交というコンセプトが非常に大事になると思っております。  この予防外交もいろいろな考え方がありますけれども、第一の段階というのは、やはり国や地域間の信頼の醸成、信頼感がなければ予防外交というその次の段階へ行けないという意味で、それがまず第一段階だと思います。  外務大臣も、予防外交ということをいろいろな場面でおっしゃっていますけれども、この第一段階ということに対しての、私の今申し上げましたコンセプトとお考えになっていらっしゃる部分と相違がございますでしょうか。
  110. 小渕恵三

    小渕国務大臣 全くお説のとおりだろうと思います。国と国との関係も、信頼なくしてはすべて成り立たないわけでございまして、そういった意味で、予防外交、そういう言葉は言葉といたしましても、各国との関係をより緊密にしていくためには、信頼感をより醸成していかなきゃならぬ、このように思っております。
  111. 山中あき子

    山中(燁)委員 本題の質問に入る前に、少しインドネシアへの総理大臣の訪問について触れさせていただきたいと思います。  総理大臣がスハルト大統領といろいろお話をなさって、IMFの基準に沿うように努力をなさるというお話になりましたことは、大変努力をなさったと思って、評価させていただいています。  しかし、ひょっとしたら、インドネシアの国民から見て、もしかしたら、日本の首相は、インドネシアの大統領を支援しているのであって、国民を支援しているのではないかもしれないという疑念を抱かせなかったとは限らない。  つまり、あのように、最終的な、IMFに本当に準拠する努力を最大限するということに関しての明確な大統領の答弁がないときには、日本はインドネシアのために、アジアの通貨安定のために三十億円用意しております、しかし、これは、政府が改革をする進捗状況を見ながら皆さんのために使っていきますというような最後の一手を本当は一つ確保しておく。  それが、これからの日本がこのアジアの通貨安定に関しても外交に関してももう一つ最後の手段を持つということが、リーダーシップを握るということになったのではないか、私はその点だけが少し残念でございますが、それに関して、外務大臣はどのように思われますか。
  112. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先般、橋本総理がスハルト大統領と会談をされました。国際的ルールに基づき、国際社会と協調、協力し、インドネシアの国内改革などを行うことの重要性を確認し、スハルト大統領も、どういう約束であれ、約束したことは必ず守るという御発言があったと聞いております。また、総理より、インドネシア国民のために医薬品や食糧支援等の支援を表明いたしましたのに対し、大統領はこれを高く評価されました。  この会談が、日本、インドネシア二国間関係の一層の強化につながり、また、インドネシアが国際社会の信認を回復する契機となることを強く期待いたしておるところでございます。
  113. 山中あき子

    山中(燁)委員 外交では、やはり、長期的な展望と、それからその背景の哲学そして政策、戦略、アカウンタビリティーが非常に大事だと思います。支援の六〇%がスハルト一族に行っているのではないか、あとの三〇%が企業で、国民に行っているのは一〇%と一説に言われているようなところと交渉するときには、こちらもタフな発想でいくことが必要だと思います。  本題に入らせていただきますが、一九九六年の六月のリヨン・サミットで、橋本総理大臣は、世界福祉イニシアチブということを提唱なさいました。福祉の問題は先進国だけでなく途上国を含めてさまざまな課題を抱えている、福祉の向上のため互いに知恵や経験を出し合いしっかりした社会保障制度を確立していくことが大事だと思う。私は、これを、まさに同感、このとおりだというふうに思っております。  そして、三月六日の報道によりますと、昨二月に首相は、閣議後、イラクへの武力行使に関して、もし武力行使になったら何ができるか、米軍の輸送の肩がわりか、医療の支援かということをおっしゃいました。  私は、やはり、こういう中で、予防外交の第一段階としての、医療ですとか文化ですとか教育というのは、経済的な支援と同じように、信頼醸成のために非常に大切なものだと思いまして、医療が、今、緊急医療チームを派遣するということのほかに一体日本は何ができるかということを考えましたときに、多目的な病院船ということに思い至りまして、それからいろいろ調べましたところ、随分今までにもいろいろな委員会その他で、この多目的病院船について御議論があったというふうに伺っておりますし、資料も拝見いたしました。  この多目的病院船という発想は、随分古くなりますけれども、一八九九年のハーグ条約でいわゆる病院船というふうに位置づけた。そういった発想で、つまり、真っ白い船体に赤い十字を置いて、そして、どこにでも飛んでいける。特に、今、私はアジアの各地ということと日本全体を考えているわけですが、そういう形の病院船であって、そして、実際には、救急の医療の支援というのが目的として挙げられますし、それから緊急の救助活動、そのほかに在留邦人の輸送ということもあると思います。  そのほか、平常の任務といたしましては、実際に約四百五十の離島が日本にあるわけでございます。それから、北海道を見ますと、札幌に医師が集中しておりまして、そして、僻地と言われているところの医療過疎地がたくさんあるわけですから、二隻なり三隻なりが常に日常的に、定期的に巡航しながら、医療の過疎地に対する診療であるとか、あるいは、特に高齢化社会になってまいりますから、そういう人たちの疾病の予防であるとかをする。  そういうことをもしアジアにも敷衍できたら、今はアメリカの船しかそういう活動をしていないわけで、アジアにはこの病院船がないわけですから、アジア船籍の、特に日本船籍の病院船を、アジアにおけるそういう日常的な医療活動、それから医療研修の場というような形で使っていきながら、東南アジアを含めて三十六時間で行けるということですから、飛行機での救援とまた別の重層した救援のシステムとして、この病院船というものの発想をもう一度見直していただけないかというふうに思い始めました。  アジア、オセアニアの過去十年間の大災害と言われているものは、実際に三十四回ございます。そして、日本が救援隊を出動したのは、十回ございます。日本国内でも、やはり、十年間に四回大きな災害がございました。ですから、それに適応することと、日常的に、今申し上げたような医療活動、啓蒙活動、教育活動というものに使えれば、この多目的船の建造に関して、費用対効果というものは十分ペイするのではないか。特に、信頼という国益を得ることができるのであれば、それは大きなメリットではないかと思います。  九六年七月に、多目的病院船建造プロジェクトチームというのが要望を出されたそうです。ODAの予算の中でも、例えば、OECDなどとネゴシエートしながらそういう可能性を探る努力というのも必要になるでしょうが、ヘリコプターやあるいはホバークラフトを搭載しておけば、いろいろな場所に対応できます。  私が調べた範囲では、来年度の予算の中に、多目的救助船の方の調査費というのは盛り込まれているというふうに聞いておりますが、多目的な病院船という形では、まだ何も、調査費も盛り込まれていないということでございます。  それで、私は、そういったアジアの信頼の醸成のためという一つの観点で外務大臣に、それから、多目的救助船を調査活動なさるとしたら、それに病院船という、もう一度発想を改めて取り入れていただけないかという点を官房長官にお伺いしたいと思います。
  114. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今、委員からお説を拝聴いたしました。なるほど、病院船が建造されれば、アジアも含めまして大きな役割を果たせるというふうに思いますが、率直に申し上げて、機動性その他の面から申し上げて、今、航空機を中心としてのこういう範囲の中で、そうした発想がすぐ浮かびませんでしたが、救急、緊急のための船ですかについて検討しておるということでございますから、そうしたものをこうした病院船というふうな発想にまで進められるのかどうか、勉強させていただきたいと思います。
  115. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 山中先生から、多目的船、そして、特に特化した病院船というか、どうかと。  もう先生御承知だと思いますが、多目的船にかかわる予算は平成三年度から委託研究費とか検討費とかいうことで予算がついておりまして、初めて平成九年度から基本構想の検討経費ということで九年、十年度もついておるわけでございますが、御承知のとおり、多目的船舶については湾岸戦争を契機に、平成三年六月に政府において局長レベルの多目的船舶調査検討委員会を設置、検討を行っております。  この検討には技術的な課題を多く含むことから、平成三年度から民間調査機関に調査を委託し課題の整理を行ってきたが、これを踏まえて、関係省庁の実務家を含めたより詳細かつ実効的な検討が必要となったため、平成九年七月に多目的船舶基本構想調査委員会を設置し、多目的船舶の明確なコンセプト、船舶の概略等の基本構想の検討を行っておるところであります。  この委員会では、緊急医療を含めた海外における大規模災害や、阪神・淡路等も含めまして、国内災害における救援活動等に船舶をどのように活用できるかを中心に検討中でございます。政府としても、この基本構想調査の結論を見つつ、さらに検討を深めてまいるつもりでありますけれども、実は、御質問のあった医療を特化した医療協力船については、これまでもいろいろ議論があったようでございますが、そういうふうな災害とか何かが起きた場合に、現地の仮設診療所の方が質的にも効率的にもすぐれている等の理由から、今までの検討では、余り適当ではないんじゃないかと。  同時に、もう先生御承知だと思いますが、病院船等の事例でございますが、米国、英国、フランス、これはいずれも軍で持っているわけでありますね、私の調べてきたところによりますと。これは相当な、六万九千トンとか二万八千トンとか一万六千トンとか。唯一、どこかのほかの国にもあると思いますが、私どもの調べたところでは、ドイツの赤十字が民間として持ちまして、これは千五百トンであります。ただ、数年で、コストがかさむという理由で売却をした、こういう状況もお聞きしております。  現在、この調査委員会で検討しているのは、海外における大規模災害に対する救援、国際連合平和維持活動への対応、国内災害への対応、邦人等の輸送、この中に医療施設という考えはありますけれども、単独の病院船については現在そのものだけというのでは検討はされていない。専門でございませんので、これぐらいの御答弁しかできないのをお許し願いたいと思います。
  116. 山中あき子

    山中(燁)委員 ありがとうございます。  しかし、今経緯をお聞きしていることは全部承知の上で、もとに戻って、基本的なところで、日本の国内の過疎の医療、それからアジア太平洋地域における、オセアニアにおける医療の貧困さ、そういうことに対する日本の貢献として改めて、俎上にないから改めて病院船というものをお考えいただき直す、そういうことの提案をさせていただいたのでございます。  もちろん、例えば医師の免許証の問題とか、さまざまな問題があるにしても、そういう発想でアジアの一員としてやってみようということ、あるいは各省庁との、もちろん厚生省との調整も必要でしょうけれども、その辺の官房長官としてのお気持ちをもう一度お伺いさせていただきます。
  117. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 先ほど外務大臣もお答えしましたけれども、船でいいかどうかと。今いろいろなこういう災害とか起きますと航空機で行く時代にも相当なったわけでございます。その辺のところの話もこの検討委員会でやっていると思いますが、先生の意見も十分に伝えておいて、これも検討してみたらと、こういうことは進言したい、こう思っております。
  118. 山中あき子

    山中(燁)委員 また機会がありましたら詳しくお伺いしますが、オーストラリアにおけるフライングドクターというのは、地理的なものを見てああいう制度ができています。日本のような島国は、やはり船でのきめ細かい対応というのはこれは国民に対しても必要なことでございますから、その辺のところもよく考慮していただいて、また、御検討の結果、私の意見がどういうふうに反映されるかされないか、お答えをいずれいただければと思います。  時間が迫ってまいりましたので、大変急いで質問させていただくことをお許しいただきたいと思いますが、沖縄の問題を一つだけ触れさせていただきます。  今大変残念なことに、十七回の総理大臣と大田知事との会談の結果が、信頼感が損なわれた形のままになっております。このまま置くのでしょうかということを一つ気にしております。  実は、御存じのように、三月四日、ジョゼフ・プルアー、この方は米国の太平洋軍司令官でございますが、米国の下院安全保障委員会の証言の中で、海兵隊、空軍基地、普天間基地の返還は難しく、例外的に複雑な挑戦作業である。代替施設のタイプについては、重要な軍事機能と普天間の能力があればフレキシブルに考えるということを証言しております。  それから、私も個人的に、アメリカの相当な高官に、海上へリポートでなければいけないのかどうかということを聞きました。その結果は、これと同じように、アメリカが幾つもの案を出したけれども日本側からの案によってこれが出てきたのであるから、日本側から申し出があれば検討の余地はあるのだというふうな、そういう感触を得ております。  安全性の問題、騒音の問題、機能、役割の問題それから財政上の問題も、やはりこういう日本の財政上ですから大変大きな問題と思いますし、あるいは返還後のそれを有効利用ができるかどうか、そういうようなところから見ますと、今の海上へリポートは、普天間は海上へリポート、一部岩国、一部嘉手納、そしてそのほかに、何かの場合があったときのためにどこかを確保する、それがSACOの最終報告の中に書かれてありますから、非常に複雑な挑戦という意味はわかります。  そういう意味で、このまましばらく知事選までほうっておくのではなくて、沖縄というところに日本が七五%の基地をそこに集積しているということは、国として大変な負荷をかけてきたというわけですから、そこに対して日本が国として何ができるか、そういう発想に立ってみたときに、最終的にまた海上へリポートが結局はいいということになるにしても、やはり日本政府、沖縄そしてアメリカ、そういうもので、六カ月なら六カ月のプロジェクトチームをつくって、もう一度考え直してみてはいかがかと思います。  なぜかと申しますと、実は私は、最終三つに絞った経緯、最終の三つの中から海上へリポートになった経緯、これを防衛庁にも外務省にも何度もお聞きしました。そしてついにわからない。答えが納得いかない。つまり、客観的などういうデータで判断したかがわからない。それで、記録を要求しましたところ、出せる記録はありませんということです。つまり、私が国会議員として、なぜ最終的に海上へリポートが選ばれたかというのが理解できない状況で、沖縄の方の半分が理解できないとしても、これは当然かなというふうに思いました。  そういう意味で、そのデシジョンメーキングのプロセスの透明性を図り、そして、日本政府として努力をしているところをきちんと表明しながら、理解を得ていくという意味でも、もう一度これを見直しをするというお気持ち、おありになりませんでしょうか、久間防衛庁長官
  119. 久間章生

    久間国務大臣 別に見直しをするというわけじゃございませんが、このままでいいとは思っていないわけでございまして、私どももこれから先も一生懸命努力していかなければならないと思っております。  ただ、そのときに一番問題になりますのは、いろいろな今挙げられましたそういう発言もそうですけれども、SACOの最終報告を取りまとめるまでの間でいろいろ詰めましたのが、現在普天間飛行場が持っているいわゆる海兵隊の機能をやはり維持するということが前提に実はなるわけでございます。  そうしますと、よく、普天間飛行場のかわりに今度海上へリポートをつくるようだけれども、あれはうちの島に持ってきてもいいですよというようなことを、例えばうちの県なんかでも言われる方がいらっしゃるわけですけれども、やはり、今まで答弁しておりますように、砲兵、歩兵、それからそれを後援する施設、そういういろんなものが全部そろって機能しなければならないわけでございます。  そうなってきますと、とにかく県内移設はだめだと言われますと、非常にそこが方法が見つからない、そういうようなこともございまして、そういうことも踏まえて、これからやはり忌憚ない意見の交換をしながら、何かそのいい方法があるのかどうかというふうな、そういうことについて県も努力してもらわないと、とにかく、新しく、縮小してでも、場所を移してつくるのはだめだというふうにもうまるきり言われますと、なかなか先へ進まないという形になります。
  120. 山中あき子

    山中(燁)委員 私は何も申し上げておりません。県内の移設であろうと、最終的に海上へリポートにもう一度戻るにしろ、いずれにしても、わかるような、どういう基準でなぜここが一番いいのか、そういうことをきちんと、説明が足りなかったのではないか。ですから、これからの六か月の間に国としてもっと努力をすべきではないかというふうな、そういう視点で申し上げておりますが、いかがですか。
  121. 久間章生

    久間国務大臣 私たちも、またこれから先も努力してまいります。  しかし、今までも、なぜ海上ヘリポートになったか、海上ヘリポートの場合は、なぜ普天間と比べて、騒音とかあるいは環境に対する影響あるいは危険性、そういういろいろな点からいっていいのか、あるいはまた、それが撤去可能だということが、基地がなくなったときにどうかということについては、やはり逐一説明をしてきたつもりでございまして、そういう意味では、そういう点で、論理的には理解はしていただいているものというふうに思っておったわけでございますが、なかなか論理だけではいかなかったんじゃないかという気もいたしております。
  122. 山中あき子

    山中(燁)委員 外務大臣が十二時から外務委員会だそうですので、お時間だそうですので、私も、文部大臣に来ていただいて申しわけないのですが、時間が参りましたので、最後に、今の子供を取り巻く環境について一言だけ申し上げて、終わりにさせていただきます。
  123. 越智通雄

    越智委員長 質問時間が来ておりますので。
  124. 山中あき子

    山中(燁)委員 そうですね。それではまた改めまして、文部大臣にはお越しいただいて大変申しわけございませんでしたが、よろしく、改めてお願いいたします。  ありがとうございました。
  125. 越智通雄

    越智委員長 これにて山中さんの質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  126. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十年度総予算について、松野允彦君より証言を求めることといたします。  この際、証言を求める前に証人に一言申し上げておきます。  昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によって、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことになっております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、まず、証人、証人の配偶者、三親等内の血族もしくは二親等内の姻族または証人とこれらの親族関係があった者及び証人の後見人、後見監督人または保佐人並びに証人を後見人、後見監督人または保佐人とする者が、刑事訴追を受け、または有罪判決を受けるおそれのあるときであります。また、医師、歯科医師、助産婦、看護婦、弁護士、弁理士、公証人、宗教の職にある者またはこれらの職にあった者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについても、本人が承諾した場合を除き、宣誓または証言を拒むことができることになっております。  証人が宣誓または証言を拒むときは、その事由を示さなければならないことになっております。  証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または十万円以下の罰金に処せられ、また、宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることになっております。  以上のことを御承知おきください。  次に、証人が補佐人に助言を求めることが許される場合について申し上げます。  すなわち、証人は、宣誓及び証言の拒絶に関する事項に関し、補佐人に助言を求めることができることになっております。  助言は、その都度証人が委員長にその旨を申し立て、その許可が得られた後に認められるものであります。  なお、補佐人は、みずから発言すること及びみずから証人に助言することはできないこととなっております。  次に、今回の証人喚問に関する理事会の申し合わせについて申し上げます。  その第一は、資料についてであります。  証人は、証言を行うに際し、資料を用いることは差し支えありませんが、委員長の許可が必要であります。また、これらの資料は、いずれも当委員会に提出していただくことになっております。  その第二は、証人がメモをとることについてでありますが、尋問の項目程度は結構でございます。  なお、補佐人がメモをとることは構いません。  以上の点を御承知おきください。  それでは、法律の定めるところによりまして、証人に宣誓を求めることにいたします。全員御起立願います。     〔総員起立〕
  127. 越智通雄

    越智委員長 議院証言法第五条の三の規定によりまして尋問中の撮影は許可しないことになっておりますので、これより松野允彦君の証言が終了するまで、撮影は中止してください。  それでは、松野允彦君、宣誓書を朗読してください。
  128. 松野允彦

    松野証人      宣 誓 書  良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、  又、何事もつけ加えないことを誓います   平成十年三月十八日                 松野 允彦
  129. 越智通雄

    越智委員長 では、宣誓書に署名捺印してください。     〔証人、宣誓書に署名捺印〕
  130. 越智通雄

    越智委員長 御着席を願います。  これより証言を求めることといたしますが、証人の御発言は、証言を求められた範囲を超えないこと、また、御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。  なお、こちらから質問しているときは着席のままで結構でございますが、御発言の際には起立してください。  委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で重要な問題について証言を求めるのでありますから、不規則発言等、議事の進行を妨げるような言動のないように特に御協力をお願いいたします。     ―――――――――――――
  131. 越智通雄

    越智委員長 これより証人に対して証言を求めます。  まず、私からお尋ねいたします。  あなたは松野允彦君ですか。
  132. 松野允彦

    松野証人 はい。さようでございます。
  133. 越智通雄

    越智委員長 生年月日、住所、職業をお述べください。
  134. 松野允彦

    松野証人 昭和十三年三月二十七日生まれ。住民登録は、世田谷区弦巻三丁目二十二の二十五の二〇五でございます。職業は、現在、社団法人地方銀行協会の副会長兼専務理事をしております。
  135. 越智通雄

    越智委員長 以上をもって私からお尋ねすることは終わりました。  次に、発言の申し出がありますので、順次これを許します。小川元君。
  136. 小川元

    小川委員 自由民主党の小川元でございます。これから松野証人に質問をさせていただきます。  今般の一連の大蔵省、日銀、道路公団等の収賄事件あるいは接待事件等は、行政の信頼を本当に根本から覆すまことにゆゆしい事態でありまして、情けないだけで済めばいいのですが、まさに国家の将来に暗雲を投げかけるような重大事件だというふうに思っております。そしてさらに、特に大蔵省の三十代の課長補佐が大変多額の接待を受けている。収賄はもちろんでございますが、そんな若い人が多額の接待を受けて当たり前だというような風潮が行政、役所にあるということについては、本当に慄然とせざるを得ないわけであります。  私は、現在、与党公務員倫理に関する協議会のワーキングチームの座長をいたしておりまして、その中で公務員倫理法をつくろうという作業を今いたしているところでありますけれども国民の皆様から、非常に厳しいものをつくれという強いお声をたくさんちょうだいしているわけでございますし、ほかの役所からは、総務庁がもとになってつくった規則で、岡光事件の後は我々、ちゃんとやっておるんだ、やってないのは大蔵省だから、大蔵省倫理法という名前にしてくれなんという話も出ているくらいでありまして、本当に遺憾なことだと思っております。  こうした中で、松野証人は、山一の簿外債務処理をサジェストしたんではないかという疑惑といいますか、ことが言われておるという中で、その解明のために、きょう証人としてこちらへ来ていただいているということは御本人も御承知のことと思うわけであります。  まず、ちょっと事実関係を確認させていただきたいのでありますが、松野さんは、二月四日の大蔵委員会に参考人として御出席をされまして、平成三年の十一月か十二月ごろ、山一証券の当時の三木副社長と、多分一対一で会った、そして、いわゆる飛ばしに絡む相談があったという記憶がある、それに対して証券事故として処理しないと違法行為になるということをお答えした、少なくとも処理をやめろというようなニュアンスの話はしていないし、検査を免れるために海外でやった方がいいと受け取られるような説明をした記憶は全くない、そういう違法行為を示唆するようなことは全く考えられないというふうに言っておられるわけであります。  それから大分時間もたっておりますし、またきょうは証人として来ていただいている。さらに、新聞報道によりますと、地検にも参考人として呼ばれておられるということでありますから、もちろん、地検で言われたことと本席との答えが違えば偽証ということにもなるわけでありますので、その間、昔の話でありますから、何か記憶違いがあってこの間の答弁と違うところがあるかどうか、あのとおりというふうに考えておられるか、そのことを伺わせていただきます。
  137. 松野允彦

    松野証人 先月、参考人として呼ばれまして、いろいろ御質問をいただいたわけでございますが、その後、いろいろな報道が本件についてなされました。  私も当時の記憶をできるだけ手繰り寄せてみたわけでございますが、一つ、三木さんとお会いした時期につきまして、その後いろいろと記憶を探ってみました結果、どうもお会いしたのは平成四年の一月の下旬であったというふうに思うように至りました。その点は、先日の参考人質疑のときのお答えと若干違ってまいっておりますので、おわびをして訂正をさせていただきたいというふうに思います。  たしか平成四年の一月下旬に、しかも一度だけ飛ばしの関係について三木さんとお会いをした。あと、いろいろとそのときにお答えをしておりますが、すべてについて私もまだ全部記憶をしておりません。きょうの御質問の中で明らかにしていきたいと思いますが、まず時期についてそういうふうに考える。その後の記憶あるいはいろいろな報道からして、そういう、一月下旬であったというふうに現在では考えております。
  138. 小川元

    小川委員 私は引き続いてほかのことも質問したつもりだったのですが、要するに、山一の側はそのときに、海外での簿外処理といいますか、そこまではあれかもしれぬけれども、大体いいのではないかという感触を得たというふうに言っておるわけですね。それで、参考人としての答えは、そういうことは一切していない、証券事故として処理しろというふうに答えた、ましてや違法行為をサジェストするようなことは全く言っていないというお答えであったわけですが、その点については間違いないのでしょうか。
  139. 松野允彦

    松野証人 その点につきましては、たしかその後の参議院におきます参考人質疑の際にお答えしたと記憶しておりますが、飛ばしの処理については、証券会社が引き取るのであればこれは証券事故として処理をしなければ違法になる、つまり損失補てんに該当する。ただ、飛ばしというものは、それ自体の行為が直ちに証取法に触れる行為であるということではない。したがって、その仲介行為を証券会社が行う場合に、法律に触れない形でできるのであれば、それは、我々としては、行政としてそういう証券会社の判断を否定するというつもりはないというような趣旨のことを申し上げ、したがいまして、その場合にさらに相手方として、飛ばしの、飛ばしというのはもともとは企業間取引でございまして、証券会社が当事者になる行為ではございませんが、飛ばしの相手方として海外の企業あるいは投資家を考えるということも考えられるというような趣旨お話をしたというのは、たしか申し上げた記憶があると思います。
  140. 小川元

    小川委員 山一は呼ばれたと言っていますが、その点はどうだったのでしょうか。
  141. 松野允彦

    松野証人 この点につきましては、前回の参考人質疑の際にはその問題が出ておりませんでしたので、その後のいろいろな報道について私も当時の記憶をできるだけよみがえらせようと努力したわけでございますが、私個人が三木さんを呼んだという記憶はございません。  しかし、実はその当時、別の証券会社におきまして、ほぼ同じような飛ばしに絡むトラブルの問題があったという記憶がございまして、その問題、これは私が直接ではなくて、当然その担当の部署とその証券会社とが処理の話し合いをしていたというふうに私は記憶しておりますが、その過程で、今申し上げた海外の投資家への飛ばしの継続というようなアイデアが出てきて、それが私の頭に入っていたものですから、三木さんにお会いしたときにそういうものも考えられるということを申し上げたのですが、その過程で、山一証券についても同じようなトラブルがあるというような情報が私に入ってまいりまして、それに対して私は、山一証券を呼んで事情を聞いてみたらどうかということをたしか言った記憶がございます。  したがいまして、私としては、担当部署が山一証券を呼んで事情を聞いて、その後私のところに三木さんが来られたというふうに認識を、当時たしかそういうふうな認識をしたわけでございます。
  142. 小川元

    小川委員 そうすると結局、御本人直接でなくても、大蔵省が呼んだというふうに解されるわけでありまして、その点、大蔵省が呼んで、しかも局長が一人で相手の一人とお会いになった、そしてその中で、ただ単に合法的に処理しなさいというお話だけされたということは、常識的に考えるといささかおかしいのではないか。  また、さらにその後、その証券会社というのは多分大和証券のことだと思うのですが、訴訟とかなんとかの事件になっている。しかし、そのことに対して、山一とお話をされた後、山一から何の報告もなかったわけでしょう。それに対して全くフォローもしておられない。それはどういうことなんでしょうか。
  143. 松野允彦

    松野証人 もう一つ、今御指摘がございました、三木さんと私が会ったときに、一対一で会ったかどうかという点については、率直に申し上げまして私はよく覚えておりません。同席者がいたかもしれないという気がいたしますが、だれが同席者だったのかというのについては全く覚えがないわけでございまして、一対一で会ったというふうには、多分同席者がいたのではないかというふうに思うわけでございますけれども、その点についてはどうしても思い出せないというのが正直なところでございます。  それから、今御指摘の点につきましては、先ほども申し上げましたように、私が山一証券にも同じような問題があるというのを聞いて、その事情を聞いてみろということを担当にたしか言った記憶がございますので、そちらの方でフォローしていたというふうに私は考えていたわけでございます。
  144. 小川元

    小川委員 これは本当に、一対一で会った、山一はそうだと言い、松野さんはそうじゃないと言う。これは密室の中のことですから、全く外部からはうかがい知れない問題ではあるのですけれども、どうもやはり、そこで合法的な話だけしたということで、後、フォローもしていないということは、私はどうも納得ができない、こう思うわけでありますが、ちょっと視点を変えまして、別のことを伺わせていただきます。  きょうの毎日新聞に、松野さんが年百万円を超える接待を受けられていたというような新聞記事が出ておりました。  現在、大蔵省と業界との過剰接待ぶりというのが問題になっているわけでありまして、松野さんは特に、銀行局、証券局、両方の御経験がある。さらに、現在は地銀協会の副会長兼専務理事として、接待する方とされる方と両方の経験をされておられるわけでありますが、先般の大蔵委員会で、そのときに、公正さを疑われることはやってはまずい、そういうことをやらないようにしてきたというお答えがありました。  しかし、私は、それは本当にそうかなと。なぜ山一証券の副社長と一対一で会ったか。では、私の地元にもいっぱい小さな証券会社がありますが、そういう人たちとみんな会うのですか。それは多分、非常に親密であった。その時点はともかくとして、過去にいろいろな、どういう接待があったか知りませんが、接触を通じて非常に親密であった。だから山一証券と会ったのじゃないでしょうか。  そういうことを考えると、大蔵行政が公正であるということは、一部そういう人たちに対して公正であって、そして結局、それはある意味では省と業界ぐるみの、国民の利益じゃなくてその業界の利益に対する便宜供与だというふうにも考えられないことはないと思うわけですが、こういう問題について証人はどういうふうにお考えでしょうか。
  145. 松野允彦

    松野証人 私が証券局長をしておりましたのは平成二年の六月から平成四年の六月でございますが、平成三年の六月にいわゆる証券不祥事が表面化いたしまして、それ以降は、私は、証券界とは一切そういう会食等のおつき合いをするような雰囲気でもございませんし、当時、それまで行っておりました昼食会などもやめてしまったという経緯がございます。そういうようなこと。  それから、今お尋ねの、それじゃ中小証券の人と会わないのかという御指摘でございますけれども、これは証券会社のうち比較的大規模な証券会社は大蔵省が本省で監督をしておりまして、それ以下の証券会社は各地の財務局長に監督権をゆだねております。  そういうことで、本省で監督している証券会社、これはちょっと記憶が余り定かでございませんが、二十数社だったと思いますが、それについては、私は、もちろん社長が会いたいと言えばお会いをするというのが当然の姿勢、行政官としての姿勢でございますし、ただ、財務局に監督権を委任している部分につきましては、特段の事情がない限り財務局長が各地で対応をするというような形で監督行政が行われていたということでございますので、もちろん、それでもどうしても会いたいと言ってこられれば、私は会わないというつもりではございませんでしたけれども、やはり、今申し上げたような監督の、いわば権限の分担というようなルールの中でいろいろ行っているわけでございますので、本省監督会社であります二十数社については、これは山一証券はもちろん含まれてはおりますけれども、それにかかわらず、どなたでも、もし会いたいということであればお会いするというのが私の当時の姿勢でございました。
  146. 小川元

    小川委員 きょうの新聞報道の数百万円の接待、それは事実でしょうか。そして、それに対してどう思っておられるか。  それを受けていたときに、それは、銀行であれば本当に一生懸命稼いだ金を預けておられる預金者、証券会社で株を買っておられるそういう人たちも、みんな稼いだ金でやっている。それをそういう形で使うということに対して何も考えなかったのでしょうか。そういう態度が役所のこういうものにつながっている。これは今の人たちではなくて、松野さんのようなOBの方々から連綿的にその考え方が間違えているのではないか、こう思うわけですけれども、そのことをお聞きして、時間が参りますので私の質問を終わらせていただきます。
  147. 松野允彦

    松野証人 私も大蔵省のOBの一員といたしまして、確かに御指摘のように、大変、世間の常識から考えますとやや外れたような会食等が行われており、かつ、私も先ほど申し上げました証券不祥事が発生する以前を考えますと、そういうようなことがあったということを否定するつもりはございません。こういった問題、確かに御指摘のようにそういった問題が、行政と業界との癒着問題、あるいは行政の公正さをゆがめるというような問題になるということにつきまして、あるいはさっき申された、その財源はどうだというような問題も含めまして、非常に反省する点が多いわけでございます。  確かにバブルの時期に徐々にそういうものが非常に大きな規模になっていったということもあろうかと思いますが、やはり基本的に行政の姿勢としてもう少しやはりきちっとしていなければならなかったのではないかという御指摘につきましては、私もOBの一員として深く反省をしているところでございます。
  148. 小川元

    小川委員 終わります。ありがとうございました。
  149. 越智通雄

    越智委員長 これにて小川君の発言は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  150. 海江田万里

    ○海江田委員 民友連の海江田万里です。松野証人にお尋ねをします。  証人は、先ほど、山一証券の首脳と会ったのが平成四年の、一九九二年の一月下旬であるというお話をしましたが、先月の大蔵委員会では平成三年、九一年の十一月か十二月ごろだというお話がありました。この十一月か十二月かというのは、どうして十一月か十二月だということを断定できるかというと、まさに、損失補てんを禁止をした証券取引法が国会の参議院を通過しましたのが十月三日でございます。そして、これが施行されますのが九二年、平成四年の一月一日でございます。この間の出来事だったということで、そういうことをおっしゃったわけですね。それをきょう、訂正をしたわけでございますが、平成四年の一月一日以降は、これはもう新しい証券取引法が施行になって損失補てんの道が閉ざされているということ、このことはまず一つ、改めて確認をしておきたいと思います。これは御返事はよろしゅうございます。  それで、今のお話で、実は、山一のほかにもう一つ、証券会社でやはり同じような問題を抱えていたということがありましたが、これは大和証券で間違いがないと思います。これも、もし違っていたら後で言っていただきたいと思います。  それをある担当の部署で話をしていたということでございますが、その担当の部署は一体大蔵省のどこなのか。それから、この大和の首脳とは、山一の首脳とそうやって会ったように、松野局長が直接大和の首脳と会ったのか、この二点でございます。  大和の首脳と会ったのか、それと、証券局の中の担当はどこの部署か、教えてください。
  151. 松野允彦

    松野証人 もう一つの証券会社とあえて私は申し上げさせていただきたいと思いますが、それは通常、こういうトラブル問題を処理いたしますのは、証券会社を監督しております当時の業務課、現在では証券業務課という名前になっておりますが、業務課であるというふうに、通常はそうでございます。特段の事情がない限りそうだったと思います。  それから、もう一つの証券会社のトラブルの件につきましては、私は、その証券会社の社長と恐らく複数回お会いをしているというふうに思います。
  152. 海江田万里

    ○海江田委員 まず、その大和の首脳と複数回会ったということ、それからその担当部署は業務課ということでございますが、当時の業務課長は堀田隆夫さんです。堀田隆夫さんという方は、この委員の皆さん方もよく御存じだろうと思いますが、現在、証券取引等監視委員会の事務局長をやっている方であります。  それから、直接の担当は堀田隆夫さんで、業務課長でございますが、あと補助的に、若林勝三総務課長、この方もこの堀田さんの前に証券監視委員会の事務局長をやっておった方でございます。それから高木祥吉流通市場課長、これらの方がかんでいたというふうに思うわけでございますが、松野証人が山一の三木副社長とお目にかかったとき、恐らく堀田隆夫さんもいらっしゃったんじゃないですか、同席したんじゃないですか。よく記憶を思い出してください。
  153. 松野允彦

    松野証人 それは、先ほどの委員の方の御答弁でも申し上げましたように、どうしてもそこは思い出すことができないのでございまして、これはまことに申しわけないのでございますが、どうも、といいますのは、三木さんとお会いしたときには専ら私が話をしていたものですから、だれが同席していたかということについては、どうしても私は記憶が定かでないということでございますので、その点は御了承をいただきたいと思います。
  154. 海江田万里

    ○海江田委員 ただ、いずれにしましても、堀田隆夫さん、現在の証券取引等監視委員会の事務局長でございますが、この人がやはりこの問題に、少なくとも証券会社の飛ばしの問題に、まさに証券局の現場の人間として非常に深くかかわっていたということは、これは大変重要な問題だろうと思いますので、指摘をしておきます。  それから、大和証券との、ある、これは名前ももう新聞などに出ておりますので、ここで私もはっきり言うことにしますが、これは東急百貨店でございますが、飛ばしをめぐりまして、東急百貨店が大変含み損をたくさん抱えてしまったということ。実は、東急百貨店の抱えております含み損というのは、大和証券の方が多いわけでございますね。およそ六百億円ぐらいの含み損を抱えているということ。それから山一はおよそその半分の三百億円ぐらいの含み損を抱えておる、こういうことだろうと思うわけでございますけれども。  そこで、大和に対しては、局長は何度もお会いしたそうですけれども、どういうアドバイスをなさったわけでございますか。
  155. 松野允彦

    松野証人 これは先ほども少し申し上げましたように、大和証券、もう大和証券と申し上げますが、要するに、担当課といろいろ飛ばしの処理について議論をしている過程で、海外の投資家に、まあ飛ばしというのは株式の現先取引でございますけれども、現先の相手方を海外の投資家に求めるというアイデアが出たという報告を私が受けたことは事実でございます。  当時の社長、同前さんでございますけれども、との数回にわたる話し合いの中でもそういう話が出ておりまして、私としては、法律に触れない形でそういうことができるのであれば、それは選択肢の一つではある。しかし、もし証券会社が引き取るのであれば、それは損失補てんに、もう既に施行されております損失補てんに該当する。損失補てんに該当しない唯一の道は、証券事故として裁判になり、裁判上の和解をするなりあるいは民事調停の手続を踏むなり、そういう形であれば、これは法律で認められている処理であるから適法である。いずれを選択するかはそれは経営者の判断の問題ですというような趣旨のことを、これは私の記憶では、三木さんとの会合でもほぼ同じようなことを申し上げたのではないかと思います。
  156. 海江田万里

    ○海江田委員 その山一の三木さんとの会談でございますが、一月下旬ということでございますが、二十日以降、二十三日以降ですか、大体。そのあたりじゃありませんか。二十三日近辺じゃありませんか。
  157. 松野允彦

    松野証人 正確な日付は覚えていないのでございますけれども、二十日以降だということはそうだろうと思いますが。
  158. 海江田万里

    ○海江田委員 その際、山一の方から、東急百貨店が山一に対してかなり強硬に言ってきておると。法的な措置もとる可能性がありますよということ、これは具体的には催告書というものを出しておるわけでございますが、そのようなお話はありましたですか。あるいは、その催告書の現物を見ておりますか。
  159. 松野允彦

    松野証人 記憶がはっきりしないのでございますけれども、三木さんが持っておられたかどうかは別として、催告書のようなものを見た記憶はございます。
  160. 海江田万里

    ○海江田委員 それで日付がはっきりしました。大体これは二十三日です。二十一日にこの催告書を、麹町郵便局から東急百貨店の代理人の方が、弁護士の方が出しているのです。それがもう二十三日に届いておるはずですから。恐らくこれ、私は今持っておりますけれども、これとおぼしきものを持ってきた。  先ほど来局長は、飛ばしというのは現先取引で、一種の商取引だからこれは全然問題ないんだというようなことを言っておりますけれども、ここに書かれています、山一が東急百貨店を相手にしまして行いました飛ばしというのは、局長がおっしゃっておるような現先取引とは大分違うものですよ、これは。  いいですか、およその筋を言いますと、東急百貨店と山一の取引は、まず山一側が年一割の利息をつけることで五百二十三億円の融資を行うことを東急百貨店に持ち込んだ。融資の実行は、これは確かに現先取引という形で、株式と証券を東急百貨店が買う形にして、融資金の返済は、東急百貨店が買った株式と証券を山一が指定する会社に買い戻しをさせるが、それができないときは山一がみずから買い戻して融資金を返済することを約束している。これが実は東急百貨店と山一の間でありました飛ばしの中身なんですよ。  これは全然問題ありませんか。これをそのまま続けていいことですか、どうですか。いいというお立場ですか。
  161. 松野允彦

    松野証人 私は、先ほど申し上げましたように、山一との間で飛ばしに絡むトラブルがあるという報告を受けて、その内容については事情を聞いてみろということを言ったわけでございまして、中身について私はほとんど把握をしておりません。  というのは、個別の案件について局長が一々事実関係を確認するというような時間的な余裕もございませんし、担当課があるわけでございますから、担当課がそれをよく、両者の言い分をよく聞いて、一体どうなるのか、両者で話し合いが可能なのかどうかというのを判断するのが担当課の仕事でございまして、私は、そういうものを当然担当課で話をしながら、その間に三木さんがおいでになったというふうに認識をしたわけでございまして、今御指摘のような、それはある意味では東急の主張かもしれません。しかし、山一側にはどういう主張があるのかも私もわかりません。  その辺について、一々局長が全部やるということは事実上できませんし、そういうことは普通はないわけでございまして、そういう点で、今御指摘のようなところまで私が考えて個別の案件について判断を下したということではない。むしろ、そういうものは一般的に担当者に、担当官がやってくれているものという前提でやってきたのです。
  162. 海江田万里

    ○海江田委員 この山一と会った時期が、九一年の、前年の十一月か十二月だったらば、これは別に東急の問題だけじゃないのですよ。そのほかにも山一は幾つか問題を抱えておりましたから。ほかにあと六社ですけれども。  実は額はこっちの方が多いのですよ。これを山一は年内に処理をしたのですよ。その処理のやり方というのは、決していいやり方じゃありませんけれども、ペーパーカンパニーがあります。このペーパーカンパニーに一回また飛ばしたわけですよ。日本ファクターというペーパーカンパニーへ飛ばしたわけですよ。それが済んでいて、一月になったら、もう残っているのは東急百貨店の問題しかないんですよ。  ですから、山一が証券局の業務課にまず相談に行った。これは何で相談に行ったか。この時期はまさに東急の問題で相談に行ったわけですよ。で、この業務課の堀田さんのところに行ったら、その堀田さんのところで判断に困ったから局長に相談に行ったんじゃないですか。その問題を抜きにして、堀田業務課長、今のSECの事務局長ですけれども。この人が事務局長をやっていて、私なんかが質問しても何にも答えないのもふざけた話なんですけれども。こういう体質が実はあるということ、これは国民みんなに知ってもらわなきゃいけないと思いますけれども。  いいですか。まさにこの東急の問題しかないのですよ。それで、その問題について、一体どうしたものだろう。しかも、もう損失補てんの方法は禁止されていますから、もうだめになっちゃっていますから。そうなると、これを真っ当に処理をしようと思ったら、これはやはり裁判をやりなさい、表に出して処理をしなさいということを言うべきなんですよ。  あなたは、大蔵委員会での、あるいは参議院の委員会でも、処理をしなさい、表に出して処理をしなさいということは一言も言っていないんですよ。裏で処理をするなんというようなことは絶対に言ってないということを言っている。  それから、そういう、現先の取引があるからその現先の取引でやるのも一つ方法ですよということを言ったということ、これも確かですけれども、一番真っ当な行政官なら、しかも、もう一月一日を過ぎて改正証取法が施行されているわけですから、それだったら、表に出して、そしてきちっと裁判で争って、事実、大和はそうやっているわけですよ。大和がそうやって、それでもってかぶっているわけですよ。社長もかわりましたよ。それと同じように、何で、山一に対して、これはきちっと表に出して処理をしなさいということを言わなかったんですか。大和のときはそういうふうに言ったんですか。それとも、大和のときも言わずに、大和がそうやって判断をしたんですか。二つあります、質問は。
  163. 松野允彦

    松野証人 先ほど申し上げましたように、私は、大和証券に対しても山一証券に対しても、ほとんど同じ時期でございますから、全く同じことを申し上げたというふうに思います。  したがいまして、受け取り方の問題は私はわかりませんけれども、少なくとも、その具体的な今の御指摘の案件について、全くもう適法に飛ばし行為を継続することができないのかどうか、その辺についての認識は私はなかったということを申し上げたいと思います。
  164. 海江田万里

    ○海江田委員 もう一度確認をしますけれども、表に出して処理をしろとは、大和についてもそれから山一についても、あなたはおっしゃらなかったというふうにこれまで国会答弁をしておりますが、それは、今現在そのとおりですか。
  165. 松野允彦

    松野証人 表に出して、つまり証券事故として処理をするということを言わなかったというのはややあれでございまして、処理をするのなら証券事故として処理をしなければいけないということは、たしか言ったと思います。処理をするのであれば、証券事故として処理をしなければ違法になると。
  166. 海江田万里

    ○海江田委員 大蔵委員会での御答弁を聞きますと、するなとは言わなかったということ、やっちゃだめですよ、表に出して処理をしなさんなとは言わなかったということについては触れているんですよ。だけれども、処理をしなさいということは言っていないんですよ、これは。  やるんだとしたら二つの方法がありますよ、一つは現先を続けることですよ、いわゆる飛ばしを。ただ、私、はっきり言いまして、さっきもお話をしましたけれども、事この東急百貨店絡みの現先取引については、非常に違法性の高いものですから、これは私は、そうやって現先の方法を今後も、とりわけ海外に飛ばしてなんというようなことが続けられるとは思わない。だけれども、まあ、そう思ったのかもしれません。  そういう、一つは現先をこのまま続けるという方法、それからもう一つは表に出して処理をする方法、この二つがありますよということを言ったんでしょう。そのどちらをとるかは、これはその経営者の経営判断だ、そういうことじゃないですか、おっしゃったのは。
  167. 松野允彦

    松野証人 今おっしゃられたとおりでございます。
  168. 海江田万里

    ○海江田委員 大変これは無責任ですね、はっきり言いまして。  これは、証券会社の方とすれば、それはやっぱりせっぱ詰まっているわけですよ、そういう催告書も来ましたし。催告書で告訴されるとすれば、詐欺罪ですよ、これは。詐欺まがいのことをやっているわけですから。ですから、これはどうしたらいいだろうか、何とかずっと、しかも証券会社というのは大蔵省の顔色を全部見てやってきているわけですから、やっぱりここのところで、そういう裁量行政でもって何とか大蔵省に判断を仰ぎたいということで言ってきたわけですよ。そうしたら、そのとき、責任ある局長が、二つの方法があるよと。こんなの、だれだって言えるわけですよ、まさにその二つの方法で。  だけれども、二つの方法と言うけれども、先ほど来お話をしておるように、現先の取引というのは、この場合は大変違法性が強いわけですから、だからそれを続けるわけにはいかない。だけれども、こうやって表に出せば、これもまた問題であるしということで、さあどっちにしたらいいのかな。できたら、やはり、それは確かに山一の三木さんの側だって、このまま飛ばしを続けてくださいと言われた方が楽なんですよ、彼は。まだ行平さんという社長もいて、行平さん、三木さんというのはまだまだ何とか居座りたいと思っていたわけですから。そこのところに、そういうような気持ちがあるところに、どちらかでもいいですよということを言えば、それはやっぱり安易な方につくのが当たり前ですよ。  しかももう一つ、大和の場合は、ところがそうやって同じような答えを、同じようなアドバイスをしたにもかかわらず、大和の方はきちっと、これは裁判にしたわけですよ。裁判にしまして、そして、大和の方が四百九十億かぶって、約六百億と言いましたけれども、東急百貨店の方が百十億かぶって、これによって大和証券は、同前社長が辞任をしたんですよ。同前社長が辞任をするときには、局長のところへ報告に来たんじゃないですか。相談があったんじゃないですか。どうですか、それは。
  169. 松野允彦

    松野証人 まず、無責任だという御指摘でございますけれども、少なくとも四大証券の経営者でございます。それに対して私が、こういう方法とこういう方法がある、それを経営者が責任を持って判断しろと言うことが、果たして無責任なのかどうか。私はそうは思いません。それは、四社の経営者ともあろう人が、自分で最終的に経営判断を下す問題ではないか。  したがいまして、大和証券の件につきましても私は同じことを言いましたけれども、大和証券が責任を持って経営判断をして、裁判として処理をするというのであれば、それは行政としては、ああそうですかという話であって、いやしくも四大証券の経営者に対して選択肢を示すということが無責任な行政であるとは、私は残念ながら思わない。そこの問題は、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  170. 海江田万里

    ○海江田委員 いずれにしましても、先ほど来の松野局長お話で、実は、この問題が単に山一の三木さんという当時の副社長と、それから松野、当時の局長とお二人の間の話ではなくて、実は証券局ぐるみの話であるということは、もうはっきりしたと思うんですね。  じゃあ、その証券局ぐるみの話を、これは大和の方は、そういう意味では表に出しまして、そういう形で償却をしましたから、これははっきりしているわけですけれども、肝心のこの山一の方は、その後どうなったかということについて、気にはかからなかったんですか。気にかかって当然ですよ。  それから、毎年毎年の決算書を見れば、決算書には出てきていないわけですよ。全然出ていないんですよ。全然出ていませんで、そして、異常に特定金銭信託のところが膨らんでいるんですよ。これを見れば、だれだって、ああ、ここでもって簿外をやっているなということがわかるはずですよ。  その後始末はどういう形でおやりになったんですか。どういう形で申し送りをしたんですか。何にも言わずにただ黙っておやめになったんですか。それから、堀田さんだとかなんだとか、どうしているんですか。
  171. 松野允彦

    松野証人 今申し上げましたように、いやしくも四大証券の経営者でありまして、しかも……(海江田委員「いやいや、後始末の話ですよ。そんなことを聞いていませんよ」と呼ぶ)私としては……
  172. 越智通雄

    越智委員長 お静かに願います。証言中はお静かに願います。
  173. 松野允彦

    松野証人 後始末といいましても、適法に後始末をする場合には、当然、証券事故として処理をするということになるわけですから、証券事故として処理をすれば、証券事故で大蔵省に報告が来るということは、これは明らかなわけです。したがいまして、証券事故として処理をする時点では、当然大蔵省が把握するということを、つまり、違法行為をしないという前提であればです。  それは、飛ばしを円満に、円滑に続けるか、あるいはそれができなくなれば証券事故として処理をするわけで、証券事故の処理が行われれば、そこで大蔵省は察知できるというようなことは当然考えられるわけでございます。
  174. 海江田万里

    ○海江田委員 もう同じことを聞いてもしようがありませんが、とにかく、何にもしなかった。証券事故であれば、これは当然大蔵省に届け出をしなきゃいけませんから、その届け出が来るのをただ漫然と待っていたということですね。それだけははっきりしていますね。みずから何らかのアクションを起こす、どうなっているんだということを聞きもしなかったし、引き継ぎがあるとき、この後証券局長になったのが小川さんですよ。小川さんに対する引き継ぎも全然やらなかったわけです。  じゃ、本当にもう個人的に考えて、少なくともあの時点でそういう相談を受けたわけですから、やっぱりそれについてずっと気になっていたという、個人的にでもいいですけれども、そういう気持ちは全くないですか。もう全部忘れてしまっていらっしゃったわけですか、どうですか。お聞かせください、人間として。
  175. 松野允彦

    松野証人 個別のトラブルの問題についての局長の立場というのは、先ほど御説明申し上げました。  私は、率直に申し上げまして、その時点以降、いわゆる金融制度改革法の国会審議に没頭をしておりまして、大蔵省をやめる寸前まで、その国会審議で時間を費やしておりました。  今御指摘の山一証券の件につきましても、当然、もし処理をするのであれば証券事故として処理がされるというふうに思っておりましたし、国会審議に没頭していたというようなこともありまして、その後、私自身が、その問題について特に関心を持ってフォローをするというような状況ではなかったということは御理解をいただきたいと思います。
  176. 海江田万里

    ○海江田委員 持ち時間が終わりましたので、山花委員にかわります。どうもありがとうございました。
  177. 越智通雄

    越智委員長 この際、山花貞夫君から関連発言の申し出があります。海江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山花貞夫君。
  178. 山花貞夫

    ○山花委員 きょう、あなたは、参考人質問の際の答弁の大変大事な部分について訂正をされました。三木さんと会ったのは、十二月中ではなく一月だったということです。そう考え方を変えた、証言を訂正した根拠というのはありますか。手帳とかメモとか、記録に基づいた訂正でしょうか。
  179. 松野允彦

    松野証人 これは、先ほどもちょっと申し上げましたが、その後いろいろな報道がなされ、あるいは事情聴取を受けた過程などで、特に先ほど海江田委員から御指摘のありました催告書なるもの、これがどうも私は、三木さんとお会いする前後に、ちらっとではございますけれども見た記憶があるというようなこと等から、どうも一月の下旬ではなかったかというふうに思いをいたしたわけでございます。
  180. 山花貞夫

    ○山花委員 実は、参考人質問の際には、一月については、私は全く、これは法律が施行された後でございますけれども、山一に会った記憶は全くございませんと、あの一月の法律施行、大事な問題ですから、その後に会っていない、こうおっしゃっておったわけです。  今、新聞見て、報道見てということからすると、あいまいだなと私は思うのですが、おっしゃっている一月の二十三日前後に会ったことは、私は間違いないと思っています。私の調べでも、海江田さんと同じで、もし返してくれなければ東京の特捜に告発するぞという催告状が届いた直後だから、それは三回目だったと思いますよ。  あなたは、これまた国会答弁でもマスコミのインタビューに対しても、当時の記録というのは自分は持ってないんだということをおっしゃっている。あるいは手帳、手帳というのは終わったら捨てちゃう。でも、局長であった人が、除夜の鐘が鳴ったら去年のはぽいと捨てるということは、私は考えられないのですけれども。記録は残っていると思うのですよ。大蔵省の局長室とか業務課長室の出入りの記録を見れば、私はわかるんだと思うけれども、そういうことを抜きにして記憶だけでおっしゃっている。  三回目じゃなかったですか。その前に会ったのは一月の六日、一月六日に行平前会長と三木副社長、藤橋企画室長が新年のあいさつに局長室に行ったと思いますけれども、そのことは覚えていませんか。
  181. 松野允彦

    松野証人 それは、全く記憶にございません。
  182. 山花貞夫

    ○山花委員 新年のあいさつでお三方が行ったときにも、東急の処理の問題が話題となっていたと私どもの調査では聞いておるところです。  さて十二月、十二月は東急の問題が非常にせっぱ詰まりつつある、催告状が来るちょっと前の時期でした。ほかの会社とは違って、大きな会社ですけれども東急は決算期がちょっと違っていたんじゃないかと思いますけれども松野さん御記憶ですか。
  183. 松野允彦

    松野証人 この東急百貨店ということにつきましては、私は、率直に申し上げまして、全く忘れ去っておりまして、今度の一連の報道で初めて東急百貨店だったのかなと思い出したぐらいでございます。  したがいまして、その決算期がいつか、これは調べればわかるわけでございますけれども、特に私としては今、決算期がいつかというのは存じ上げません。
  184. 山花貞夫

    ○山花委員 決算期が一月だったものですから飛ばしの対象となったところもあったのだと私は考えておりますけれども、そうした一月が迫ったものですから、さっきお話しになった飛ばし、国外の問題も含めて、お会いになったのは十二月の末である。これまた当然あり得ることだと思いますけれども、あなたの記憶の中で、十二月に会ったという記憶はありませんか、もう一遍改めて伺っておきます。
  185. 松野允彦

    松野証人 私は、三木さんとこの件でお会いしたのは一回限りでございまして、一月下旬だけでございます。十二月に会った記憶はございません。
  186. 山花貞夫

    ○山花委員 私は、三回会った、十二月の暮れに一回、一月の六日、そして一月の二十三日前後、こう調査の結果考えておるわけですけれども、例えば、十二月下旬の問題、飛ばし、国外でもいいんじゃないかという問題と絡んで、あなたは三木さんに対して、外為の問題については専門家を紹介しよう、こういうふうにおっしゃったことは記憶していませんか。それが十二月にしろ一月にしろ、あなたの記憶にある三木副社長との会談の中で、外為の専門家を紹介しよう、こう言った記憶はありませんか。
  187. 松野允彦

    松野証人 一月の下旬にたしかお会いしたときに、先ほど申し上げましたように、別の証券会社の問題に絡んでそういうアイデアがありまして、それが頭にあったものですから、そういう問題を三木さんとの間で話をした際に、あるいはそういうことを話をしたかもしれません。正確な言葉遣いは覚えておりません。
  188. 山花貞夫

    ○山花委員 今お話しになった、ちょっと思い出していただいた松野・三木会談を受けまして、十二月下旬、山一証券の木下さんが金子審議官、外為の専門家ですけれども、訪問いたしまして、飛ばし関連の外為の取り扱いについて相談をしているということが伝わっております。あなたはそうした、金子審議官が山一の皆さんと、木下さんと相談をしたという報告は聞いていますか。
  189. 松野允彦

    松野証人 私の記憶する限り、そういう報告は受けておりません。
  190. 山花貞夫

    ○山花委員 十二月という問題と関連しますけれども、ちょっとさかのぼって伺いますが、例えば九一年の八月二十八日、あなたが衆議院の証券金融特別委員会で、営業特金問題について答弁されている。まだ証券会社には大量に残っているということをお話しされているのですけれども、当時そういうやりとりが国会であったことについては記憶されていますか。
  191. 松野允彦

    松野証人 申しわけありませんが、ちょっと記憶しておりません。
  192. 山花貞夫

    ○山花委員 そのちょっと前なんですけれども、ある新聞が、日経新聞ですけれども、損失補てんの顧客のリストを公表しました。その日の夜、七月二十九日夜ですけれども、あなたが山一を訪問して、リストを公表すべきではないか、こういうサジェスチョンをしたということについては覚えていませんか。
  193. 松野允彦

    松野証人 リストの公表につきましては、いろいろなことでともかく自発的に公表してほしいということを要請したことはございますが、山一を訪問したという記憶はございません。
  194. 山花貞夫

    ○山花委員 当時のことについて、長野現証券局長が二月二日の参議院の予算委員会お話しになっています。当時、現先の問題について、こうおっしゃっていますね。我々の目から見るとグレーゾーンみたいな問題の取引があった、山一に関して言えば、その当時の受け渡し金額ベースで二十六企業、約二千五百八十億円ほどのそういったものがございました、これらにつきまして、私ども当時の担当者は、損失補てんに当たらないよう処理するよう、そういう指導をしておったと。  要するに、当時、たくさんの山一絡みの損失補てん問題があって、担当の者は恐らく営業の課長以下、課長補佐たちだと思いますけれども、処理に当たっておった、こういう証言をしておるんですけれども、そういうような事実があったことについて、全体を管轄をしておった局長としては、御記憶していますか。
  195. 松野允彦

    松野証人 その件は、私も新聞報道などで最近見ましたけれども、私が証券局長をしていたときに、その報告を受けたという記憶はございません。
  196. 山花貞夫

    ○山花委員 当時は、今と組織が違っていましたね。検査の関係も一緒になって、証券局の中で局長のもとに全体が仕事をしておった。こういう証券業界のトラブルにつきましては、担当の課長が担当して処理に当たっておった。当時の大蔵省令なんかを見てみると、こうしたトラブルについて、指導監督、そして解決などの仲介も役割としては書かれております。  そういう現場の人の仕事というのは、局長の耳には入ってこないものですか。そんなことはないと思いますけれどもね。恐らく、堀田さんから報告があって、そのことについて局長が指導するというのが当たり前の大蔵省の証券局内の運用だと思いますけれども、全くそうではなかったのですか。我々が考えておるのとは違っておったわけですか。もう一遍答えていただきたいと思います。
  197. 松野允彦

    松野証人 証券局の中の仕事をすべて局長が知っているわけではございません。これは、各課が分担をして仕事をしておりますし、局長に上げなければならないという判断をした問題は、当然上がってまいります。  ただ、当時の状況を少し申し上げますと、お話の時点は多分平成三年の暮れごろから平成四年にかけてだろうと思いますが、先ほどちょっと申し上げました金融制度改革法の提出準備で非常に多忙を極めておりまして、私の仕事のほとんどはその新しい法律づくりに割かれておりました。別に、そういった関係があったからかどうかは知りませんが、いずれにいたしましても、先ほど御指摘のような点については、私は報告を受けた記憶はございません。
  198. 山花貞夫

    ○山花委員 きょうは大事な問題点として、どういう話を証人が三木さんに話したのか。この点については、現先取引なら、それは違法じゃないんだから、その相手先が国内企業であろうが海外企業であろうが別に問題になるわけではない、恐らくそういう趣旨の話をしたんだと思います。こういった従来の国会における答弁については、そのままきょうお認めになっている、こういうことだと思っています。  ただ、もう一歩突っ込んで聞きたいのですけれども、そうあなたがお話しになったことに対して、四大証券なんだから後は立派な会社が自分で判断するんだといってボールを全部渡しちゃった、こういう感じですね。その結果、受けとめた方が、三木さんの方が、山一証券が、あの当時表に出して裁判で解決していれば、大和証券のようにやっておれば助かったんですね、そうではなくて、局長の話を聞いて飛ばしに走った。系列的に見れば、省略しますけれども、全部その後は飛ばしですよ、一千億近くのものについて。  証人、その局長の話を、飛ばしを海外で継続してもいいというように山一側が受けとめた。そして受けとめての後の行動があったわけです。それをずっと知らぬ顔しておってよかったんでしょうかね。その点について、証人の考えを伺いたいと思います。
  199. 松野允彦

    松野証人 今飛ばしというお言葉を使われましたけれども、飛ばしというのは、私の認識では、企業間の取引です。今、山一証券が問題になっておりますのは、飛ばしではなくて、山一証券が引き受けてしまったというところに問題があるわけでございまして、山一証券が引き受ければ、これは、まあ値段にもよりますけれども、損失補てんの問題が当然生じてくるわけでございます。そうすれば、それは法律違反だ。禁止されたばかりの、法律に違反する行為でございます。一月から施行になりました損失補てん禁止の、証券取引法の新たな改正法に違反するというような行為を行うというようなことは、私としては到底考えていなかったというのが正直なところでございます。
  200. 山花貞夫

    ○山花委員 今おっしゃったとおり、飛ばし自体は違法にならなければいいんだということを前提としても、実は、その後の経過を見ると、やったなということはわかる。  東急の飛ばしの損失問題、内容証明で聞いているんですから、知っているんですから、簿外にいっているんですよ。結局、東急の損失処理は、山一が簿外で処理をしたために、東急百貨店の九二年一月の決算においても、山一の九二年三月の決算でも、一切損失が表面化していません。すなわち、両社の決算を見てみれば、プロが見ているんですから、担当の皆さんが見れば簿外で処理したことは客観的にわかるんです。実際に、山一と東急のトラブルを知っておった関係者は、これを見れば、あっ、簿外に移したな、悪いことやったなとわかっているはずなんです。そのことをずっと、見て見ぬふり、見て知らないふりをしておったというのが、今日までの大蔵省証券局の経過ではなかったでしょうか。  私は、この二、三日、まだ発表されていませんけれども、日曜日の晩ニュースで流れました。山一の簿外債務は二千七百億円程度で、超過債務になっていないというんです。おかしいですね、だれが聞いたって。  なぜ、会社更生その他の手続をとらなかったんだろうか。なぜ、わずか一週間ぐらいで自主廃業しちゃったんだろうか。まさに四大証券、九千人以上の人がいる、預り金二十四兆、こんな会社が再建の道というのもとることができなかった。これはいろいろ原因があるでしょう。これから発表になると思いますけれども、仮に、恐らく監視委員会や大蔵省の金融検査で出てくるシステミックリスクということを考えるにしたって、自主廃業の最大の原因というものは簿外の債務にあったことは明らかですよ。  そして、その簿外債務というものは、九一年暮れか、あなたは九二年一月と言うけれども、山一証券が当時のあなたとその処理について相談した後につくられたことも、この経過上明らかです。山一側は、飛ばしに関して松野局長から簿外債務処理を指示されたとも、こう言っているんです。  あなたの責任についてどうお考えになるか、最後に伺います。
  201. 松野允彦

    松野証人 私は、飛ばしという問題と、簿外で処理をするという問題とは全く別の問題であると認識しております。  簿外で処理をするということは、それは証券会社が引き受けて、自分の資産、負債にした上で、かつ有価証券報告書に記載しないという問題でありまして、飛ばしというのは、これは企業間の取引のまあ仲介行為でございますから、これは、もともとが証券会社の帳簿に載る行為ではございません。  したがいまして、簿外で処理をする、違法な簿外で処理をするということを私が指導したということについては、これは私は全くそういう意図もございませんし、できたばかりの法律に明らかに違反する損失補てんを行っていいというようなことを言うはずもないわけでございまして、そこは全く、私としても今の事実を、事実か、まだ検査が終わっておりませんからよくわかりませんけれども、報道されている事実が本当であるとすれば、全く非常に驚いているというのが本当のところでございます。
  202. 山花貞夫

    ○山花委員 あなたは解説者じゃなくて大蔵省の責任者だったんだから、きょうの答弁は通用しませんよ。  以上で私の質問を終わります。
  203. 越智通雄

    越智委員長 これにて海江田君、山花君の発言は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  204. 北側一雄

    ○北側委員 平和・改革の北側一雄でございます。  限られた時間でございますので、端的にお答えください。  まず、今の質問の続きを先にさせていただきたいと思うのですが、これまでの証人の御答弁、衆参の大蔵委員会等でもそう、きょうもそうなんですけれども、飛ばしとか現先取引というのは短期の金融取引の一つで、証券取引法に必ずしも違反するとは言えないんだ、こういう御答弁をずっとされておられます。  それはちょっと違うんじゃないか。何の前提条件もない、一般の普通の現先取引が問題となっているんじゃないんです、これは、ここで問題になっているのは。当時は、証券会社の損失補てんがもう大問題になっておりました。山一証券は損失補てんが最大です。そういう証券会社です。  当時は、もう株価はどんどん低迷している、一任勘定取引による損失がいまだ全部処理されていない状況である。こうした中で、株式の時価よりも相当高い、二倍も三倍も高い、そういう価格で、証券会社を仲介者とする現先取引、買い戻しつきの売買がされるわけでしょう。これは将来損失補てんに至る可能性があるわけでしょう。  また、証券会社の健全性の準則等に関する省令、よく御存じだと思いますが、これに違反する疑いのある取引ではないですか。そのように考えるのが、私は、証券行政をやっている最高責任者のあなたとして当然じゃないかと思いますが、どうですか。
  205. 松野允彦

    松野証人 確かに、御指摘のように、もし損失保証をしていればこれは省令違反になりますし、あるいは引き取ってしまえば損失補てんになるというような形では、飛ばし、いわゆる株式を使った現先取引というのは、決してそれ自身好ましい行為であるというふうに私も思っていたわけではございません。ただし、そうはいっても、その行為自身を、法律に触れる、直ちに触れる行為だというふうに決めつけるということもできないという行為であることも事実でございます。  したがいまして、具体的なトラブルの処理に当たって、証券会社が、これは今御指摘のように、一任勘定から生じた損失の処理の問題でございますが、その法律の枠内で証券会社が処理をするということについては、私としては、行政としては、その法律を破らない限りはやむを得ないというふうに考えたわけでございます。
  206. 北側一雄

    ○北側委員 できるだけ端的にお答えをしていただきたいと思います。  特別な約束をしないで、時価を大きく上回る価格でだれがその株を受けますか。そう考えるのが普通じゃないですか。当時の時価よりも相当高い価格で飛ばすわけでしょう。そういう時価よりも高い価格でだれが取引をするか。これは特別な約束があるんじゃないかと疑うのは、これは当然の話です。  また、あなたがそうおっしゃるならば、これは将来損失補てんに至る可能性があるわけですから、その後この飛ばしがどう処理されていくかに関心を持つのは当然ですし、あなたの退任後、この問題について後任に、山一のこの飛ばし問題についてしっかり関心を持つようにというふうに言うのは当然じゃないですか。
  207. 松野允彦

    松野証人 この株式を使った現先取引、これは、企業間ではいわば株式担保の短期の金融取引であるというふうに認識をされていたというのが当時の実情でございます。したがいまして、その担保の価値の問題というのが一つあろうかと思います。  それから、もう一つお尋ねの、この飛ばしがどうなるかということでございますけれども、これは、先ほど来申し上げておりますように、それを損失補てんとして処理をする場合には、証券事故として処理すればいいという法律の規定があるわけでございますから、その法律を使えばそれで解決がつくというような措置を、証取法を改正して用意をしたわけでございます。
  208. 北側一雄

    ○北側委員 証人は裁判官でも何でもないのですね。当時は証券行政の最高責任者、SECのできる前ですから、証券会社を監督する、証券取引を監視する、公正な取引を担保していく、これがあなたの役目じゃないですか。そういうあなたが今のような御答弁というのは、とても私は信じがたいわけでございます。  ちょっとさかのぼって、まず、大和証券と東急百貨店との飛ばし問題について、もう一遍お聞きをいたしますが、当時は、東急百貨店をめぐる飛ばしの問題で、一つは大和証券の側の問題があった、もう一つ山一証券の問題があった、こう二つが並行してあったわけですね。巨額の飛ばしでございます。  これは、大蔵省が、先にこの東急百貨店をめぐる飛ばしについて情報を得たのは大和証券の方でしょう。大和証券と東急百貨店との飛ばしをめぐるトラブル、飛ばし取引による含み損をどう処理するかというトラブル、このトラブルを初めて知ったのは大和証券、山一じゃなくて大和証券の方の問題が先であったと思うのです。  先ほど、当時の同前社長と数回お会いされたとおっしゃいましたが、この件で数回お会いされたというのは、平成三年の十一月の下旬か、もしくは十二月の初めごろじゃないですか。
  209. 松野允彦

    松野証人 私の記憶では、今御指摘のように、確かに大和証券の方が先に担当課に話があったというふうに記憶しております。  同前社長と私が複数回お会いしたのは当然その後でございますから、十一月、十二月、あるいは一月にずれ込んでいたかもしれませんけれども、その間に数回お会いしたというふうに記憶しております。
  210. 北側一雄

    ○北側委員 御承知のように、この大和証券の方は、先ほどの質疑でもありましたように、翌年の平成四年三月九日に調停が成立しているのですね。平成四年三月九日に調停が成立して、大和証券が東急百貨店に対して七百二十五億円の支払いをして、調停が成立をしております。その後、同前社長以下役員三名が退任、六月には行政処分も行うという経過は、もうよくよく御承知のことであると思います。  この大和証券の方の飛ばしをめぐるトラブル、このトラブルも、内容はやはり、飛ばしを東急百貨店にする際に、仲介をしている大和証券が取得価格に一定の利回り、当時でしたらもう十数%の利回りをつけてほかの顧客へ転売するか、これができない場合には大和証券側がこれを買い取るよという約束を大和の担当者が東急の担当者にしていたわけです。このような内容の飛ばしだったわけです。そのこともよく御承知でしょう。
  211. 松野允彦

    松野証人 大和証券のトラブルの具体的な事実関係については、私は十分は把握しておりませんし、記憶がないわけでございますが、ただ、大和証券をたしか六月に行政処分いたしましたときに、その大和証券の担当者がそういうことをしたということで処分をしていると思います。
  212. 北側一雄

    ○北側委員 知らないことはないのですよ。だって、これ、三月九日に調停が成立しているのです、平成四年の。調停を申し立てたのは二月十日です。これをあえて証券事故として扱うために調停を持ち出しているのです。実際上の合意はもうその前にできています。そういう合意をすること自体も当然大蔵省に報告に行っているはずなんですよ。  ですから、これは、大和側が一方的に譲歩して七百二十五億円というお金を東急の方に払っているわけですので、当然、こういう一定の利回りをつけて転売するよという約束や、それから、それがだめな場合には大和が買い取るよというふうな約束があるということは、当然証人は知ってなかったらおかしいじゃないですか。
  213. 松野允彦

    松野証人 今申し上げましたように、それは行政処分をするときの中に、担当者がそういう約束をしていたということで担当者を処分したという記憶はございます。
  214. 北側一雄

    ○北側委員 私の質問に答えてませんよ。もう一度答えてください、私の質問に。  その当時知っておったのではないかと言っているのです。平成四年の六月ではなくて、同前社長が証人のところに、証人と何度か会ったときにそういう話が当然あったでしょうということを言っているのです。
  215. 松野允彦

    松野証人 それは、私は記憶ございません。
  216. 北側一雄

    ○北側委員 結局、この大和証券の問題についても、先ほどの山一証券の問題についても、ともに通常の現先取引なんかじゃないのです、通常の飛ばしなんかじゃないのです。飛ばす時点でちゃんと利回りを約束してやる飛ばしなんです。それを東急百貨店は、念書まで持って、当時やっているわけじゃないですか。全く同じなんですよ。  そのことを、今、証人は記憶にないというふうにおっしゃったけれども、記憶にないということは、あれですか、担当の業務課はよく知っていたということですか。
  217. 松野允彦

    松野証人 業務課がどういう事実を把握していたかということについて、私は存じません。
  218. 北側一雄

    ○北側委員 そんなばかな話ないですよ。山一と大和という二大証券が東急百貨店をめぐる飛ばしで、巨額の飛ばしの問題で、何百万とかそんな話じゃないのですよ、これは。片一方は七百億、片一方は三百億、こういう大変な巨額の飛ばしの問題じゃないですか。証券会社のその後の経営にも大きな影響を与える問題でしょう。そのことをあなたが知らない、業務課が知らない、そんなことなんかあり得ないと思いますが、どうですか。
  219. 松野允彦

    松野証人 それは、業務課はその内容について事実関係をいろいろと調べていたというふうには思います。ただ、その内容を詰めるまで、六月に行政処分をするまでの時間がかかったということでございまして、そこは、私自身がその細かい内容を一々全部報告を受けていたわけではございません。
  220. 北側一雄

    ○北側委員 どこが細かいんでしょうか。どこが細かいんですか。  これは単なる飛ばしではなくて、事前に、飛ばしをそもそもする際に、証券会社の側が東急百貨店に対して一定の利回りを保証する、時価がどうあれですよ、こういう約定を当初からしている話かどうかというのは、証取法に違反するかどうか、省令に違反するかどうかという問題じゃないんですか。先ほどおっしゃったでしょう、そういうふうに。
  221. 松野允彦

    松野証人 それは確かにそうなんですが、それが会社として行ったものなのか、外務員が個人的に行ったものなのかという問題があるわけでございまして、その辺の事実関係を業務課が詰めるまでに、六月の行政処分まで時間がかかったということではないかと思います。  私自身、直接その事実関係を聴取していたわけではございませんから、どの時点で業務課がどういう事実を把握していたかということについては、私は、今ここで記憶を幾ら手繰ってみても、当時はむしろ国会で法案審議に没頭していたという時期でございますし、どういう段階でどういう事実を把握したかということは申し上げられません。
  222. 北側一雄

    ○北側委員 これは省令に違反するかもしれない、飛ばし行為であったかもしれない、今そのようにあなたはおっしゃったんですよ。そうであるんだったら、関心を持つのが当然じゃないですか。私は、当然のこととして、当時の部下の方々が、証人に対して逐一御報告があったことはまず間違いないんだろうというふうに思います。  別の質問をさせていただきますが、この山一の三木氏と会われたのは、先ほどのお話ですと、山一にも同様のトラブルがあるという情報を得たんだというふうにおっしゃいましたが、これは要するに、同じトラブルがある大和証券側からそのような情報があったということでしょう。
  223. 松野允彦

    松野証人 その情報源については私は存じません。
  224. 北側一雄

    ○北側委員 証人はこれまで、この現先取引の相手方が国内企業に限る必要はないんだ、海外企業でもいいんだ、こういうようなお話をされておられるんですけれども、これも非常に理解しがたい話なんですね。  これは、普通に聞きますと、海外にペーパーカンパニーをつくってそこに移せというふうにおっしゃっているのとほとんど同義なんですよ。要するに簿外処理を黙認しているということになるんですよ。だって、この現先取引は、前提が先ほど申したようにありまして、時価よりも相当高い価格で、それが二倍、三倍、そういう高い価格で飛ばしをするわけでしょう。だれが、そんな時価よりも数倍も高い株を、有価証券を買いますか。ましてや海外企業だったらなおさらそうなわけです。  海外企業でもいいんですよ、仲介先としてはいいんですよとおっしゃっているのは、これ自体は、海外にペーパーカンパニーをつくっていいんだと、そこに移せと暗におっしゃっているのと全く同じ意味であって、これは要するに簿外処理を黙認したんだなというふうに受け取られると私は思いますが、いかがですか。
  225. 松野允彦

    松野証人 先ほど御答弁申し上げましたように、海外の投資家に飛ばすといいますか仲介するというアイデアは私から出たのではなくて、大和証券と担当課の間の議論の中で出たというふうに認識をしておりまして、私は、そのときの感じでは、いわばこの飛ばしというのは、株を使った現先取引、つまり短期の金融取引でございますから、そういう金融取引の相手が海外投資家にいるのかと。つまり、ハイリスク・ハイリターンの取引であることには間違いがございませんけれども、そういったものがあるのかというような感じを持ったわけでございます。
  226. 北側一雄

    ○北側委員 当時、この山一証券、また大和証券は、東急百貨店のこの飛ばしの処理に絡むことで両方トラブルになっておった。当時証券局長であった証人は、東急百貨店側もしくは東急グループから、飛ばしによる含み益の処理問題で相談とか陳情は受けてませんか。
  227. 松野允彦

    松野証人 受けておりません。
  228. 北側一雄

    ○北側委員 最後に一問お聞きをいたしますが、飛ばしを、この山一の問題、飛ばしをとめさせて、あなたがですよ、とめさせて、東急百貨店に対する大和証券のように、損失を表面化させるべきではなかったかと思うんです。そのようにあなたは指導すべきであったというふうに私は思うわけですが、私は、そうしていれば、今日のような山一破綻の事態にはなっていなかったというふうに思うんですよ。  あなたが飛ばしを容認することによって、結果として山一は粉飾決算を犯し、簿外債務が年々雪だるま式に膨らんで、とうとう約二千六百億円まで達して、これが山一破綻の引き金になったわけでございます。  日本の証券市場に対する信頼をいかに失墜させたか。また、山一の従業員七千五百人、そしてその家族を路頭に迷わした。私は、山一の役員の責任が当然重いのは当たり前でございますけれども、当時の証券行政の最高責任者であったあなたの責任は極めて重いというふうに思いますが、どうですかね。
  229. 松野允彦

    松野証人 先ほども申し上げましたように、私は、法律に違反するような行為をするというようなことは全く考えておりませんでした。したがって、もちろん、いろいろな経営判断があるということは申し上げましたけれども、法律に違反してまで簿外の処理をするというようなことをするということは全く意外なことでございまして、これは経営者としての問題であろうと。  私自身、そういうようなことと受け取られるというようなことは全く考えていなかったというのが当時の心境といいますか、認識でございます。
  230. 北側一雄

    ○北側委員 以上、終わります。
  231. 越智通雄

    越智委員長 これにて北側君の発言は終了いたしました。  次に、西川太一郎君。
  232. 西川太一郎

    西川(太)委員 自由党の西川太一郎でございます。  証人にいろいろと、短い時間でございますが、お尋ねをいたしますので、端的に御答弁をいただきたいと思います。  まず、先ほど来からお話が出ておりますが、大和証券の同前社長や、また土井さん、そういう方々が平成三年の十一月から平成四年の一月の間に証人を訪ね、先ほど来お会いになったという事実は認められたのですが、ただ単にお会いになったんではなくて、先ほど来から出ております東急百貨店の損失問題について相談を持ちかけられたことがありましたでしょうか。相談をです。
  233. 松野允彦

    松野証人 この大和証券につきましては、たしか私の記憶では、まず、担当課である業務課に大和証券からそういうトラブルの話があるという話があって、それと前後する、どちらが先かというのは記憶にございませんが、同前社長が私に直接そういう問題があるというようなお話をしに来られたと記憶しております。
  234. 西川太一郎

    西川(太)委員 お話をしに来られたというんでなくて、先ほど来から、いろいろと一般論としてお話をされていると。さきの参議院の参考人の際の御答弁でも、一般論としてそういう処理の仕方があるということを飛ばしに関しておっしゃってはいますけれども、具体的に指示をしたと、そういうことをやりなさいということをおっしゃったということはありませんか。
  235. 松野允彦

    松野証人 指示をしたことはございません。
  236. 西川太一郎

    西川(太)委員 私が調査をして、得ております心証では、ただいまの証人の御答弁は、場合によっては偽証になるんじゃないでしょうか。  と申しますのは、私の得た情報では、大和証券側の相当の立場の人が、検察当局に既にいろいろと協力をして、証言をしておられる。その中で、松野証人は飛ばしについて具体的におっしゃっている、こういう話を聞いておりますが、思い当たりませんか。
  237. 松野允彦

    松野証人 大和証券の場合には、担当課と大和証券側とでこのトラブルの問題について話し合いが進んでいる過程で、先ほど申し上げましたように、海外の投資家というものも考えるというアイデアが出てきたという報告を私が受けまして、同前氏と話をしたときにも、そういう可能性について考えるというような趣旨お話をしたことはございます。しかし、それはあくまでも一つのサジェスチョンでございますし、もともとが私は大和証券から出てきたアイデアであるというふうに考えておりました。  したがいまして、具体的なトラブルをどう処理しろというような指示をしたつもりはございません。
  238. 西川太一郎

    西川(太)委員 私の得ている情報では、証人が大和証券側に対して、海外に持っていったらどうかという助言があった、しかし、その助言を受けた数名の役員は、これは違法になるので処理方法については適法に処理をしようということで断った、こういうふうに聞いておりますけれども、こういう事実はありませんでしたでしょうか。
  239. 松野允彦

    松野証人 今申し上げましたように、同前さんと、私はこの問題についてはたしか同前社長としか話をしておりませんが、同前さんと話をした過程で、むしろ、そういうアイデアがあると聞いているというような話で、それについて、そういうことができるんですかというようなことは申し上げましたし、そういうことができるということがどうなのかというのは、私自身、よくわからなかった問題でございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、どうしろという指示をしたということはございません。
  240. 西川太一郎

    西川(太)委員 土井さんという役員はお会いになったことありませんか、この問題で。
  241. 松野允彦

    松野証人 土井さんともお会いをしたことがないとは思いませんが、ただ、この問題でお会いした記憶はございません。
  242. 西川太一郎

    西川(太)委員 お会いになっていると思いますけれども、記憶がないということでおっしゃっているわけでありますが、次にお尋ねをしたいのは、証人は、大和証券に飛ばしについて直接行政指導というような形で事を進めたということはないと再三おっしゃっている。大和証券側のアイデアだ、こういうふうにおっしゃるんですけれども、そうすると、山一証券に同じようなことを指導された。それは、山一証券が大和証券からそういうことを学んだということになるんですか。  私は、そうじゃなくて、証人の側から、大和証券にも山一証券にも、こういう方法があるよと、ペーパーカンパニーの処理の仕方があるぞと、そういうことをおっしゃったんじゃないでしょうか。その結果、山一はそれを採用し、大和はそれを採用しなかったということじゃないんですか。
  243. 松野允彦

    松野証人 海外の投資家を対象に飛ばし行為を行うかどうかという点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、まず、大和証券と担当課との間の話の中で、それはどちらが出したのかは私にはわかりません、しかし、いずれにしましても、事務的な検討の中でそういうアイデアが出たということを、私はその担当課から聞いた記憶がございます。それを、同前さんと話をした際に、そういう問題が検討されているんですかということを申し上げたこともございます。  山一証券の場合には、三木さんにお会いしたのは、多分、時点的にはその後だったと思います。したがいまして、これも申し上げましたと思いますが、私の念頭には、三木さんとお会いしたときには、そういう考え方があるというのが念頭にございましたから、山一証券に対しては、私の方からそういう考え方もあるということは申し上げたと思います。
  244. 西川太一郎

    西川(太)委員 きょうは証人は議院証言法で宣誓をして、ここでおっしゃることが事実に反していれば、それが偽証になるということは十分承知の上でおっしゃっていると思います。  私は、先ほど来から、さきの質問者の事実関係も踏まえてお尋ねをしたわけでありますけれども、証人の側から大和証券側に対して飛ばしをしろということを言った覚えはないと、むしろ大和証券側のそれはアイデアであったと、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、その後のただいまの御答弁では、担当のセクションでそういうものを、話を聞いて、それが御自身のところに上がってきたというような主張でございます。  大和証券側のトップとお会いになったときに、そのことについては十分、当時の局長として監督権限、強大なものを持っておられるわけですから、局長はそのことを十分承知の上でお会いになっているわけでございます。しかも、相談をかけられているわけであります。それに対して、証人は、そういうアイデアもあるよということだけで済まされたとは私は思わないんです。むしろ、いろいろ大和証券側の方々のお話を聞きますと、そうしなさいというサジェスチョンを間違いなく証人から得ている、こういうことです。  でなければ、巨大な証券会社が巨額のトラブルをお客さんと起こしている、監督権限を持って強力な指導をされる局長がそういうことに対して何もおっしゃらないということは、無作為の作為といいますか、極めて無責任な、監督権限を持ちながら証券業界の健全化のために何の汗も流さなかった、こういうことになるんじゃございませんか。いかがでしょうか。
  245. 松野允彦

    松野証人 同前さんとのお話し合い、何回かございました。その中で、いろいろな物の言い方があったわけでございまして、それは、その受け取り方によっては、どういうふうに受け取られたかというのは私にはよくわかりません。ただ、私として、そんなに強く海外への飛ばしを示唆した、指導したというつもりはございません。というのは、結局、大和証券はそれをやらなかったわけでございますし、私自身、どうしても海外に持っていけというように申し上げたつもりもございません。  いずれにいたしましても、こういう飛ばしの問題について、新しい法律のもとで処理をするのであればこういうやり方ができるし、法律に触れない形で飛ばしを継続できるものであれば、これはもうトラブルの問題でございますから、基本的には、行政の問題ではなくて、証券会社と顧客である企業との話し合いの中でどう解決していくかという問題でございます。そういうトラブルの解決について、行政が一つの強制をして指導するというようなことはできないということは、私どもとしては十分当時認識していたつもりでございます。
  246. 西川太一郎

    西川(太)委員 私は、今の御発言は微妙にずれてきているんじゃないかと思います。先ほど来、飛ばしについては大和証券側のアイデアだと、自分はそれについて示唆した覚えはないと、こういうふうにおっしゃったんじゃないですか。それが、今、強くは言わなかったけれども、強くは言わないけれども弱くはおっしゃったんですか。  そこのところ、おっしゃったという事実は、当時の証人の、巨大な権限を背景にした証券局長というお立場で、一証券会社の方に対しておっしゃったということは、これはすごい重い行政指導になるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  247. 松野允彦

    松野証人 先ほど来申し上げておりますように、そのアイデア自身が、私は、どこから出てきたものかということについてはわからなかったわけです。担当課と大和証券の事務レベルが議論をした中で出てきたというように受けとめて、そのアイデアについて同前さんと話をしたときに、そういうアイデアがありますね、そういうアイデアについて可能なのかどうかという点の検討はしているんですかというようなお話をしておりました。絶対にそのアイデアでやってほしいというようなことを申し上げたつもりはございません。  したがいまして、話題になったことは確かでございますけれども、それを強力な形で指導したとかいうような意識はございません。
  248. 西川太一郎

    西川(太)委員 言ったことは確かなわけですね。お認めになった。それは非常に重要なことですよ。つまり、大和証券に対してそうしたことは示唆していないと、あなたは国会の参議院の委員会でおっしゃっているわけですから、海外に持っていけばいいということはおっしゃったということが、きょうの私の質問また同僚議員の質問で、明確になったということは大変重大だと思います。  と申しますのは、あなたが単に一個人としておっしゃったのならば、それはいざ知らず、当時のお立場は大蔵省の証券局長であられた。この立場というのは、私は、言ってみれば、位置のエネルギーといいますか地位のエネルギーというか、そういうものをお持ちの立場であると。  大和証券としては、それに従わないで法的処理をすることについては、いろいろな苦悩といいますか抵抗といいますか、いろんなものを感じたりしたようでございます、関係者のお話を聞きますと。しかし、山一と違ってあなたの示唆を拒否した。その結果、自主廃業には追い込まれないで済んだ。  山一は、あなたの示唆を受けたために、先ほど来のお話のように、自主廃業に追い込まれたということも言えなくはない、こう思いますが、いかがですか。
  249. 松野允彦

    松野証人 先ほど来申し上げておりますように、飛ばしを続けるということと、違法な簿外処理をするという問題は、全く別のことであるというふうに私は認識をいたします。  したがいまして、私が法律で可能な範囲で飛ばしを継続できるというのも一つの選択肢であるというふうに申し上げたことと、簿外で引き取って、それを虚偽に、有価証券報告書に載せないで粉飾をするということとは全く質の違う話で、しかも、でき上がったばかりの損失補てん禁止の法律を破って、損失補てんを行うという行為がその中に含まれるわけでございますから、そういったようなことをするということは到底考えていなかったというのが私の当時の認識でもございますし、現在もそういうふうに考えております。
  250. 西川太一郎

    西川(太)委員 あなたが示唆された飛ばしというのは、先ほど海江田議員初め皆さんから指摘があったように、通常の飛ばしではないんですよ。これはもう大変な、損失補てんにつながる重大な疑義のあることを行政指導したというふうに受けとめられるんです。  そこで、日本の証券市場の健全化と海外の投資家の我が国に対する信頼の回復は、現下の経済回復や日本の経済の強化のために、これはもう欠かせないことでございます。したがって、きょうは証人にいろいろお尋ねしたわけであります。今、こういう問題で国会に証人として喚問されたということについて、あなたはどういう心境ですか。それを最後に伺いたいと思います。
  251. 松野允彦

    松野証人 お尋ねですので、少し感想を申し上げますが、簡単に申し上げたいと思いますが、いずれにいたしましても、証券会社は証券取引法に基づいて免許を与えられている会社でございます。その会社が、禁止行為になったばかりの損失補てんを法律に違反して行い、かつ、証取法上非常に重要な罪であります粉飾決算、有価証券に対する虚偽報告というものも行う。これは、いずれも罰則がつく違反行為でございます。  そういう違反行為を証券会社が行ったということについては、これは、私ども、免許会社として監督している立場からいたしましても、やはり問題があったと。そこまで証券会社を疑わなきゃならないのかという点では、やや情けない感じがするわけでございますけれども、そういうような、証取法に違反するような行為を行ったということが明らかになりますと、それはやはり非常に監督行政としても反省する点があるというふうに思います。
  252. 西川太一郎

    西川(太)委員 終わります。
  253. 越智通雄

    越智委員長 これにて西川君の発言は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  254. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  あなたは、さきの証言で、個別の案件について、証券局長が個々の証券会社から相談に乗ることは普通ないんだ、そういうことは担当課がやるんだとおっしゃられました。  それでは、お聞きします。  山一の三木副社長がわざわざ証券局長たるあなたのところに相談に来たのは、何のためだったんですか。
  255. 松野允彦

    松野証人 これは、先ほども答弁申し上げましたように、大和証券との関係でいろいろトラブルが起こり、その中で、山一証券にも同様のトラブルがあるという情報が入って、それに対して私は、私の記憶では、山一証券の人を呼んで事情を聞いてみろという指示をしたと思います。その指示の結果、三木さんが来られて、その事情を聞かれた後、私のところにやってこられたというふうに、私は当時認識をしたわけでございます。
  256. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、さかのぼって、大和証券の同前社長が、何回かあなたとわざわざ会いに来て相談された。じゃ、そっちの方は何のためだったんでしょうか。
  257. 松野允彦

    松野証人 これは、大和証券から、まず担当課、これは業務課でございますが、その担当課の方にトラブルについての報告があり、恐らく、私も、記憶は定かではございませんが、その情報が私のところに上がってきた。それとほぼ、どちらが先かわかりません、前後いたしまして、同前社長みずから、私にそのトラブルについての説明に来られたということでございます。
  258. 木島日出夫

    ○木島委員 単に説明に来たんじゃなくて、相談に来たんでしょう。  要するに、法律も新しくできると。例えば山一については、三木副社長が来たのは、山一証券は東急百貨店との間で損失保証を強く要求されていた、あるいは、この二つの会社の間で損失保証の何らかの約束があった。そして困って、あなたのところに相談に来たのではないんでしょうか。  そういう場で、法の解釈の、またその運用の最高権限を持つ証券局長たるあなたから、飛ばしは違法ではないんだ、そういう示唆あるいは教示を受ければ、教示を受けた証券会社は、当然のこととして、損失補てんの実行は将来に先送りして、当座は飛ばしで問題を隠ぺいしようと考えるのは当然ではないんでしょうか。あなたから見て、山一証券がそういう行動をとることは予想されましたね。
  259. 松野允彦

    松野証人 飛ばしを継続するということについては、それはある程度考えられますが、今問題になっております、それを引き取って、証券会社の債務にして、しかもそれを簿外にする、そういうようなことまでは予想は当然しておりませんでした。
  260. 木島日出夫

    ○木島委員 そこまで私は今聞きませんでしたよ。よく聞いてください。  あなたは、合法的に処理する方法としては、損失を出す段階で証券事故として表に出す、そうすべきなんだと教えたとおっしゃいました。しかし、山一証券と東急百貨店との間のトラブルは、このトラブルは裁判や調停に持ち出されておりません。表にはとうとう出てきませんでした。  あなたは、この紛争がどう処理されたのか、その後フォローしなかったんですか。
  261. 松野允彦

    松野証人 この紛争がもし証券事故として処理をされれば、報告されるというふうに考えていたわけでございます。
  262. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、全然そういうことがされなかった、潜ったままだった、一体あの山一の相談はどうなっちゃったのかと気にならなかったんですか。私は、無責任きわまりない態度だと思います。  証券局長として、四大証券の一つである山一証券の最高幹部からの相談だったわけでしょう。法的にきちんと処理させる、それを見届ける、それが証券局長たるあなたの責任だったんじゃないんでしょうか。表に出ないということはどういう意味かといえば、違法な損失補てんが裏でなされたか、あるいは飛ばしがどんどん続いて、結局固定され、簿外処理されて隠ぺいされたか、そのどちらかしかないんですよ。それは結局有価証券虚偽報告となって、いずれにしろ違法となる道なんです。  九二年六月、証券局長たるあなたは、あなたから小川さんに交代しましたが、この山一、東急間の問題をどう引き継いだんですか。
  263. 松野允彦

    松野証人 この問題は、今申し上げましたように個別のトラブル問題でございまして、それがどういうふうに処理されても、もし証券会社が引き取るのであれば証券事故として報告をされるということでございますから、私が局長として引き継ぎをするということはしておりません。
  264. 木島日出夫

    ○木島委員 あなた、個別の相談だったからと言って逃げますけれども、片や六百億の相談ですよ、片や三百億の相談ですよ。下手すると会社が傾くおそれのある、そういう相談でしょう。だからこそ、同前社長であり三木副社長であり、この四大証券の最高幹部が行政の最高幹部であるあなたのところに相談に来たんじゃないんですか。全然信じられないですね、あなたの証言。  大和証券は、山一と違って、九二年二月十日、東京簡易裁判所に調停申し立てを行いました。そして同年三月九日、六百億円の損失のうち四百九十億円を大和証券が負担するという大変な調停が成立しております。マスコミにも出ましたし、当然あなたのところにも報告があったはずであります。当然あなた当時知っていたはずですね、知っていましたね。
  265. 松野允彦

    松野証人 それは大和証券から報告を受けております。
  266. 木島日出夫

    ○木島委員 いつ報告を受けたんですか。
  267. 松野允彦

    松野証人 これはちょっと記憶がはっきりしませんが、同前社長から直接受けたか、あるいは事務方から受けたか、その時期もちょっと記憶にございません。
  268. 木島日出夫

    ○木島委員 ばか言っちゃ困りますよ。同前雅弘大和証券社長は、三月九日、調停が成立したその翌々日、三月十一日、責任をとって社長を辞任しているんですよ。何で社長が辞任するんだ、大問題じゃないですか、あなた。いつその報告を受けたんですか。そんなの忘れることのできる日じゃないじゃないですか。
  269. 松野允彦

    松野証人 申しわけございませんけれども、その報告を受けた日にちは、私は覚えておりません。
  270. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたは、大和証券の東急、こっちは不動産の方です、東急不動産とのトラブルが大問題になって世上を騒がせたのが九二年二月二十六日ごろ、参議院大蔵委員会で質問を受けています。そして質問者も名前を伏せたんです。三社以外にも飛ばしの事実があるのか、こういうことを質問を受けたんです。当然、質問者は、三社というのはコスモ証券、大和証券、山種証券だったんです。あなたもそれは承知の上で、議事録からは名前は伏せられておりますが、三社以外にないということを申し上げる自信はないとおっしゃいました。  しかし、この時期は、既にあなたは、山一証券と東急百貨店との間のトラブルについてもう既に相談を受けて、そういう問題があるということを知っていたはずです。なぜあの時点ではっきりとそういうことを国会答弁しなかったんですか。
  271. 松野允彦

    松野証人 その当時の記憶が余り定かではございませんが、当時の私どもの認識では、飛ばしに絡んで証券会社が責任を負わなければならないような飛ばしというようなものが一体どういうものかというのを重点的に調べていたというふうに考えて、たしかそのときはそういうふうな感じでいたのではないかと思います。
  272. 木島日出夫

    ○木島委員 ちょっとさかのぼりますが、前年九一年十二月二十六日、大蔵省は、証券大手四社に係る特別検査結果についてを公表しております。今ここに持ってきています。あなたが証券局長として責任を持って行った最終報告ですが、覚えていますね。
  273. 松野允彦

    松野証人 たしか中間報告を提出させていただいております。
  274. 木島日出夫

    ○木島委員 最終報告です。この報告書の第三項には、「損失保証、利回保証の疑いのある取引について証券会社に対する検査に加え、多数の取引先から報告を求めたが、損失保証等の確証は得られなかった。」とあります。しかし、実際、山一証券については、昨年、御存じのように、二千六百四十八億円の簿外債務の存在が明らかになった。九一年の特別検査が、この報告書が不十分であったということを示しております。あなたはそれを率直に認めますね。
  275. 松野允彦

    松野証人 確かに、特別検査でそういうふうな結果になったということは記憶をしております。  ただ、御理解をいただきたいのは、特別検査はたしかあのとき四社同時に検査に入っておりまして、検査官が非常に手薄であったということ、それから、主としてまだ報告漏れになっている損失補てんがないかどうか、それからもう一つは、東急電鉄の株式の大量推奨販売の問題というような問題を中心にして特別検査を行っていた関係もございまして、特別検査が通常の定例検査のような密度では行われていなかったという点は御理解をいただきたいというふうに思います。
  276. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  277. 越智通雄

    越智委員長 これにて木島君の発言は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  278. 保坂展人

    保坂委員 証人にお尋ねをいたします。  証券局長のポストにつかれるときに、前任者から、例えばこの件は要注意だよというような申し送りは受けなかったのでしょうか。簡潔にお願いします。
  279. 松野允彦

    松野証人 そういうふうな引き継ぎは、受けた記憶はございません。
  280. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、先ほどの答弁にもありましたけれども、大蔵検査によって、山一のこういった問題の体質、これは全然チェックできなかったのか、あるいは知っていたけれども見過ごしたのか、その点はどうですか。
  281. 松野允彦

    松野証人 特に山一証券についてどうこうというふうな認識をしていたことはないと思います。
  282. 保坂展人

    保坂委員 そんな大蔵検査、無意味ではないでしょうか。無意味というよりは、事態を放置させ、悪化させてそのままにしたという意味で有害ではなかったかと思いますが、いかがですか。
  283. 松野允彦

    松野証人 検査は一定の周期で定例的に行われるわけでございまして、検査が行われた時期というものと私が証券局長になった、就任した時期というのがどういう関係になっているか、ちょっと今記憶ございませんけれども、いずれにいたしましても、検査の内容についてはもちろん局長にも報告は参りますが、特に山一証券についてどうこうというような記憶はございません。
  284. 保坂展人

    保坂委員 個別具体的なことについては詳細に報告を受けないのだというふうにおっしゃっていますけれども、九一年の、これは参議院、九月六日の議事録なんですけれども、これは局長答弁ですね、平成元年十一月の、大和証券の事業法人部において顧客との損失、証券取引によって生じた損失というのが発生したわけでございます、これを三協エンジニアリングという会社に肩がわりさせるという形でその損失を簿外に置いていたという格好になっていたと聞いておりますというふうに、はっきり議事録に残っているのですね。記憶にございますか。議事録にあります。
  285. 松野允彦

    松野証人 申しわけございませんけれども、ちょっとその記憶は今ございませんが。
  286. 保坂展人

    保坂委員 山一に関してもこの議事録の中で、山一総合ファイナンスは山一証券が五%出資、関係会社ということになります、どうしてこんなに大量の損失補てんがこういう時期に必要になったのか、御指摘のようなことも十分に念頭に置いて今検査で内容を精査しているところでございますというのが証券局長答弁なんです。議事録に残っているんです。これはお認めになりますか。
  287. 松野允彦

    松野証人 そういうふうに答弁をしていたとすれば、その検査でたしか調べていたんだろうと思います。
  288. 保坂展人

    保坂委員 こうなると、何回も何回も証券業界の体質再生のチャンスがあった。このときに、先ほどおっしゃいました、東急の催告書、ちらっと見たと。ちらっと見たというのは、その内容を短時間でつかんで把握したということなのか、ちょっとだけ見て読まなかったということなのか、それだけ答えてください。
  289. 松野允彦

    松野証人 私の記憶する限りでは、そんなに内容を読んだという記憶はございません。
  290. 保坂展人

    保坂委員 そんな無責任な局長っていますか。このときに本当に決断をすれば、山一証券の自主廃業なんということもなかった。はっきり選択肢はそこにあったのじゃないですか。  そういう意味で一つ出しますけれども、証人は「論際」という雑誌を御存じですか。知っていれば、いつぐらいから知ったか、あるいはその関係はどのようであったか。
  291. 松野允彦

    松野証人 これは、たしか私が局長をやっていたときだと思いますが、大蔵省のある人から紹介を受けまして、多分一回か二回その「論際」の、あれはなんという名前、名前はちょっと忘れましたけれども、お会いした記憶はございます。
  292. 保坂展人

    保坂委員 ここに雑誌の現物を持ってまいりましたけれども、これを見ると、松野さん自身が座談会に出られているのですね。ちょっと資料を示していただきたいのですが。
  293. 越智通雄

    越智委員長 資料を渡してあげてください。
  294. 保坂展人

    保坂委員 この写真は一体どこなんでしょう。写真は。お願いします。
  295. 松野允彦

    松野証人 これは証券局長室だと思います。
  296. 保坂展人

    保坂委員 当時の羽田大蔵大臣が、閣議後の記者会見で、これは極めて綱紀粛正を図らなければいけないと。  今おっしゃいました証券局長室で座談会をやられたわけですね。宴会の接待、あるいは各省庁との高級料亭の会合、そういうところに出席されたり、あるいはそこの場で謝礼を受け取ったりされましたか。そして、その大蔵大臣の綱紀粛正の発言をどう当時受けとめられたんですか。
  297. 松野允彦

    松野証人 これは先ほども申し上げましたように省内の人から紹介を受けて、これ、証券業協会長とあと司会の方との三人の会談になっておりますが、このときに謝礼を受けたかどうかというのは、ちょっと私、記憶にございません。また、内容につきましても、業界のことについて議論をしているというふうに思いますが、ちょっと中身は、もう古いことですので、ちょっと忘れてしまった面がございます。
  298. 保坂展人

    保坂委員 こちらに、恐らく一九八八年当時だと思いますが、まだ松野氏が官房審議官当時ですね、花生という料亭で大蔵通産懇談会、大蔵省から十人、篠沢さんや小村さんも顔が見えます、そして通産から十三人、こういう会合に出席していたんじゃないですか。そして、その経費は払いましたか。はっきり答えてください。
  299. 松野允彦

    松野証人 ちょっと古いことで余り記憶がはっきりいたしません。十年前のことでございますが、一九八八年でございますか。そういう会合に出たことがあるかもしれませんし、恐らくその会合には、私は自分では経費は払っていないと思います。
  300. 保坂展人

    保坂委員 つまりそういう体質を、そしてここはまた綱紀粛正が言われたのです、このときに。もうこういうことは絶対やらないんだということを言っているわけです。にもかかわらず、あなたの後輩たち、もうOBですけれども、今大蔵省で起きていることと、あなた自身がそこで、証人自身が選択をできなかった。東急の催告書をちらっと見ただけで中身は読まない。こんなことが現在の大蔵省の腐敗、不祥事を起こしているという責任感はありませんか。
  301. 松野允彦

    松野証人 催告書をどの程度読んだかということが問題になってございますが、私の意識としては、個別問題は先ほど申し上げましたように担当課があるわけでございまして、担当課が両者の事実関係をよく究明して、両者の言い分を聞くなりして、担当課がまあ主としてそれに当たるというふうになっておりますから、局長みずからが事実関係をみずから究明するというような役割でもございませんし、そういう時間もございません。そういうことで、そんなに詳しく読まなかったということでございまして、決して担当課がやらないということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  302. 保坂展人

    保坂委員 今日、その山一の自主廃業ということでどれだけ重大な結果が今出ているかということを十分御存じだと思います。その大きな境目が、そのあなたがちらっと見たかどうか、そして中身も読んでないんだというところに尽きていると思いますが、責任を感じませんか。一言だけきちっと言ってください。
  303. 松野允彦

    松野証人 再三同じことを申し上げて恐縮でございますが、証券取引法に触れる違法な行為をするというようなことは、私は全く予想もしなかったわけでございますから、結果としてどうかという問題とは別に、そういう明らかに違法な行為をするというようなことまで行政当局として考えなきゃいけないのかという問題に尽きるのではないかというふうに思います。
  304. 保坂展人

    保坂委員 先ほどの国会答弁でも詳細にわたってお答えになっているので、これは具体的、個別的に知らないということは、当然信用できません。そして、ちらっと見ただけという証券局長が今日の事態を招いたということを指摘して、私の質問を終わります。
  305. 越智通雄

    越智委員長 これにて保坂君の発言は終了いたしました。  以上をもちまして松野証人に対する尋問は終了いたしました。  証人及び補佐人は御苦労さまでございました。御退席くださって結構でございます。  速記をとめてください。     〔速記中止〕
  306. 越智通雄

    越智委員長 速記を起こしてください。      ――――◇―――――
  307. 越智通雄

    越智委員長 この際、御報告いたします。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算の審査に関し、株式会社北海道拓殖銀行、株式会社第一勧業銀行、株式会社三和銀行、株式会社あさひ銀行問題について、証人として、大蔵大臣松永光君に対し、書類の提出を求めたのでありますが、同証人から職務上の秘密に関するものとの申し立てがありましたので、去る十二日、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律第五条により、内閣総理大臣に対し、書類の提出に関し、監督庁である内閣の承認を求めました。  その結果、去る十六日、内閣総理大臣橋本龍太郎君から、松永大蔵大臣に対し一部分につき承認を与えた旨の通知があり、証人大蔵大臣松永光君からは書類の提出がありました。  提出されました書類は、株式会社あさひ銀行に対する大蔵省の検査報告書、検査示達書及び同行からの示達回答書、過去二回分、株式会社第一勧業銀行、株式会社三和銀行及び株式会社北海道拓殖銀行に対する大蔵省の検査報告書、検査示達書、過去三回分、株式会社第一勧業銀行及び株式会社三和銀行からの示達回答書、過去一回分、株式会社北海道拓殖銀行からの示達回答書、過去二回分、北海道拓殖銀行における融資状況に関する資料、以上であります。  また、昨十七日、大蔵大臣松永光君から、別途、追加資料が提出されました。  なお、本日までに提出されました書類の取り扱いにつきましては、内閣及び大蔵大臣より、四銀行の営業秘密等にかかわるものであることから、国会においては秘密の保持が十分に確保されるよう、特段の配慮が要望されており、理事会において慎重に検討いたしました結果、明十九日及び二十日の両日、予算委員に限り、予算委員長室において閲覧することになりました。お手元に配付しております閲覧要領に基づき行うことといたします。      ――――◇―――――
  308. 越智通雄

    越智委員長 それでは、一般質疑を続行いたします。谷口隆義君。
  309. 谷口隆義

    谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  本日は、大蔵省を取り巻く問題について何点かお聞きいたしたいというように考えます。  まず初めに、マスコミの報道によりますと、大蔵省審議官杉井孝氏の疑惑についてお伺いいたしたい。御本人にきょう来ていただくように強く要望しておったわけでございますが、御本人はきょう出てこられておらない。そのことも含めて、後でまた御答弁をお願いいたしたいというように思います。  九二年六月から九五年六月まで、この杉井氏は、大臣官房秘書課長として、金融機関トップの叙勲に関し便宜を図ったのではないかという疑惑がある。三和銀行元会長が勲一等を受章した。この方は業界団体の長は経験されておらない。また日興証券元会長は、九一年に、証券スキャンダル時に経営責任者であったにもかかわらず、勲一等を受章いたしておる。通常このようなことは考えられないというようなことでございます。  総理府賞勲局に叙勲候補者を推挙する権限を持つ秘書課長であったのは、当時秘書課長であった杉井審議官であったわけであります。これまで、全銀協会長を経験することなく勲一等を受章した銀行トップは、当時の三和銀行元会長のみであります。また、証券スキャンダル以降、勲一等を受章した証券トップも日興証券の元会長のみであります。  検察関係者の話を聞いておりますと、職務権限を持つ杉井氏が三和銀行や日興証券から接待を受けておれば、金銭授受はなくても収賄罪は成立するというように言っておられるようであります。  この杉井氏は、今申し上げました叙勲疑惑のほかにも、また住専処理の枠組みに関して、金融機関から多額の接待を受けたのではないかというように言われておるところでございます。  週刊誌の報道によりますと、平成七年から八年にかけて住専問題がございました。これは我々も大変大きなやりとりをやったわけでございます。六千八百五十億円という公的資金の投入の問題で、大きな事件と申しますか、話題に上ったわけでありますが、このときの当時の責任者が杉井氏であったのではないか、深くかかわっておったのではないか、このように言われておるところでございます。  当初、住専処理案では、一次損失処理を個別の母体行がすべて面倒を見る、このような案であったようであります。ところが、このようなことになりますと、日本興業銀行、興銀の系列のノンバンク、日本ハウジングローンがこの処理をめぐって大変負担が大きくなる。こういうような状況の中で、住専七社横並びの処理をし、母体行は系列住専を全面的に面倒を見る必要はない、自分の債権を放棄するだけでいいというように銀行業界を説得して回ったようであります。また、その折の金融安定化基金の設立、このようなことも考案し、このようなことで日本興業銀行は大変助かったと言われております。  有利な処理づくりを行って、これをまた推し進めた当時の責任者杉井氏、このようなことに関して、一体どのようにお考えでございましょうか。大蔵大臣がまず初めにちょっと今の疑惑に関して御見解をお述べいただきたいと思います。
  310. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  叙勲の関係お話がございましたが、委員も御承知と思いますが、私も承知しておるわけでありますけれども、それは総理府の賞勲局で、極めて厳正な審査をした上なされることだというふうに承知いたしております。したがいまして、そのことについてのコメントは差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、大蔵省の職員たる者が、世間から見ておかしいと言われるような行動があってはならぬわけであります。  また、住専処理の問題については、母体行主義あるいは修正母体行主義、いろいろな議論が我が党の中でもありました。そして、結果としては、国会で御審議を願ったようなことになったわけでありますが、それはそれとして、やはり大蔵省の職員たる者、関連する業界の方とはもちろんのこと、そうでない者との間であっても、いわゆる過剰接待と言われるような接待を受けるなどということはよろしくないことであります。  そういったことも念頭に置きながら、毎回お答えしておるわけでありますけれども、今委員の仰せられた報道については、私もそういう報道があるということは承知しておるわけでありますが、杉井氏は、当然のことながら、今大蔵省で進めておる内部調査の対象人物でありますから、委員の申された報道も念頭に置いて、さらに調査を進めて、問題があるということがはっきりしてくれば、国家公務員法の規定に基づいて厳正な処分をしていく、こういったことで対応していく所存でございます。
  311. 谷口隆義

    谷口委員 本日は、先ほど冒頭私がお話ししたように、本人に出てきてくれというように申し上げたのですが、本人が出てこられないということでございますので、どうも官房長が答弁するというようなお話でございますので、本人が本日出てきて、ここで弁明をされたらいいと私は思ったわけでありますが、そのことも含めて、大臣の方から、今調査中であるというようなお話もございました。  聞くところによりますと、大変高額な接待、もう一千万近い接待があるというようなことも聞いておるわけでございますので、実務の、行政側の上司である官房長、そうしたら、今までの状況を、大臣とは違う観点で答弁していただきたい。
  312. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 御指摘の杉井につきましては、現在、大臣から申し上げましたとおり、今回の報道も念頭に置きまして、調査をしている最中でございます。  そういうことで、調査中でございますので、まだ結果について申し上げられる段階にはございません。大臣の御指示を得つつ調査を進め、その結果に基づいて、大臣に厳正な処分を御判断いただきたい、そういうふうに考えております。
  313. 谷口隆義

    谷口委員 ちょっと踏み込んだ発言をきょうはしてくださいよ。  実は、先ほど申し上げました住専処理の枠組みの責任者であったのではないかと言われていますね。また、前国会で大変大きなやりとりを与野党でやりました、あの預金保険法の改正案。悪い金融機関と悪い金融機関を合併させてこれを存続させるという、到底我々は許容できないようなこの法案をつくった責任者。また、今回の三十兆円の資金投入。  これもどうも、まあ後で質問したいと思いますが、十七兆円は、今までの、倒産した、経営破綻をした金融機関に使うんだ、預金者保護のために使うんだ、あとの十三兆円は公的資金を資本注入するんだ、こういうようなわけのわからない、後で申し上げますが、結局、横並びの、何ら今までの護送船団行政を脱皮していないやり方で今行われておるわけであります。  このような実質的な責任者が彼ではないのですか。
  314. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問、一点目は、住専の枠組みの責任者ではなかったのかという御質問でございますが、住専の具体的な枠組みが決まりましたのは、平成七年の十二月十九日の閣議決定でございます。それから、住専処理方策の具体化ということで、基金をつくるとか、あるいは住専機構をつくるとかいう具体的な姿が決められましたのが、翌平成八年の一月三十日の閣議了解でございます。杉井審議官が主計局から銀行局との併任になりましたのは、二月の十四日だったと思いますが、それ以降でございます。したがって、枠組みそれ自体の責任者ではないのではないかと思います。  それから、もう一つの御疑問点、預保の特定合併の件でございますが、これは、実は、私は、銀行局長としていろいろ国会でも御答弁申し上げましたように、当時の情勢から見て、これをやらないといろいろ金融不安がとどまらなくなるということで審議をお願いしたものでございます。もちろん、彼も私の部下としていろいろやっておりましたけれども、これは組織として行動させていただいたということでございます。  それから、今回の、三十兆円とおっしゃいました金融安定の二法につきましては、これは、与党内でのいろいろな御議論を踏まえつつ、また、十一月以降のいろいろな金融不安を何とかしてとどめ、金融の安定化のためということで、政府を挙げての、大蔵省を挙げての意思決定でございます。そういうことをぜひごしんしゃくいただきたいと思います。
  315. 谷口隆義

    谷口委員 相対的に、冷静に、客観的に見て、どうも今申し上げた住専処理から以降の銀行の処理案というのは、極めて金融機関に甘い。一般国民に大変つらい。この公的資金の投入、今回の三十兆円の公的資金の投入に関しても、もう全部そういうように負担させたらいいんだというようなことなんですよ。  金融機関も本当に、今回また二兆余りのキャピタルインジェクションをやるわけでありますが、リストラ策を見ても、抜本的なリストラ策なんかないじゃないですか。あれだけ金融機関が責められておって、何にもやっていないんだよ。これは、この法案のプロセスにおいて、私は、大変大きな問題があったのではないか、このように申し上げたいわけであります。  今、公務員倫理法の策定が行われておる、検討されておるということでございますが、省内ではもう既に倫理規程があるわけですね。この倫理規程に基づいて、今私が申し上げました杉井氏の調査は、大臣もおっしゃいました、今現在やっておると。調査状況について報告をお願いいたしたい。
  316. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたとおり、御指摘平成八年十二月の倫理規程以後におきます遵守状況、さらにはそれ以前の平成七年五月の通達の遵守状況、さらにその前におきましてもどうであったかということで調査をしております。  杉井個人の調査状況につきましては、今、全体の中で調査をしている最中でございますので、具体的なことを申し上げる段階にないということを御理解いただきたいと思います。
  317. 谷口隆義

    谷口委員 今、地検の事情聴取は受けておるのでしょうか、杉井氏が。
  318. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 私どもの方から今の御質問にコメントするのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  319. 谷口隆義

    谷口委員 全くそれ以上聞けないんですね、本人が来ていただかないと。  私は、彼個人を責めておるわけじゃないのです。今も申し上げましたように、昨今の金融機関をめぐる法案、大変重要な法案が出ておるわけであります。この法案の実質的な責任者ではなかったのかということを申し上げておるわけでございまして、仮に彼が実質的な責任者としますと、今回の接待疑惑において、金融機関サイドに立った法案づくりがなされておったということであれば、これは大変重要な問題である、これは許すことができない大きな問題である、このように申し上げておるところでございます。  この省内の倫理規程は、省内における行動指針といいますか、そういうようなことであるんだろうと思います。だから、基本的には、省内の調査は、金融機関との間の癒着があったのかどうかというような観点ではないんだろうと思うのですね。しかし、そういう観点でやっておかないと、大蔵省にこういうことをやれといってもなかなかこれはやらないと思いますが、検察の今の状況を見ないと、これはもうなかなか我々の、そこまで及ばないわけでありますが、しかし、極めてそういう蓋然性が高い事態になっておるのではないかと私は言いたい。ぜひこのあたりを明確にやっていかなければいけない。  今おっしゃったように、いずれにしても、ある時期が来たら、ある時期と申しますか、もうそう長くない時期にそれなりの報告を出していただいて、彼自身の、もし何もなければきちっとした弁明をしていただいたらいいわけでありますので、その状況をぜひ報告していただきたいというように強く申し上げたいと思います。  それで、大蔵省が今、大変責められているでしょう。この金融と財政の問題、また国税庁の問題です。こういう問題でなぜ責められておるかと申しますと、例えば国税庁の問題は、大変厳しい国会議員の質問があったりすると、どうも調査に入ったりするんではないかというようなことが言われておるわけでして、そういうことを断ち切っていかなければいけないということで言っているわけです。  それで、これは国税庁ではありませんが、本年二月の初旬に、私の家に電話がかかってまいりました。これは私が以前勤めておった監査法人の上司でございまして、この方は近畿の公認会計士協会の幹部ではありますが、トップではありません。この人のところへ来て、近畿財務局の理財部長が、一刻も早く今の金融二法の成立をお願いするように僕に言ってくれというのですよ。その晩、私のところに電話がありまして、そういうことで一刻も早く金融二法を成立するようにお願いしたいというようなことがあったので、それは一体だれから聞いたのかと言ったら、さっき言った近財の理財部長。  私は、理財部長に私の事務所に来ていただいて、お聞きしました。そうしますと、先日も大蔵省にお聞きしたら、法案の説明でいろいろなところに行くことはあるようでございますが、この理財部長に聞いたら、行ったのは私の上司のところに行っただけなんです。そこしか行っていないのです。  今、この監査法人と近畿財務局の理財部というのは、監督する方と監督される方なんですね。監査法人は理財部に対して大変弱い立場にあるわけでございます。そういう状況を十分認識しておっしゃったとしか思えないのです。これは、私に今回の、私は今現在大蔵委員会理事をさせていただいておりますが、金融二法の早期成立を間接的に圧力をかけたと同じじゃないですか。  大蔵大臣、どう思いますか。
  320. 松永光

    ○松永国務大臣 具体的なことにつきましては官房長から答弁をしてもらいますが、前にお話しになりました国税のことでございますね。これは、あくまでも厳正、公平、中立でなければならぬわけでありまして、今委員が申されたようなことは絶対あってはならぬことだというふうに思います。現に、そういうことでやっておるものと私は思っておるわけであります。  それから、後段の方でございますが、国会議員であられて大蔵委員会理事をしていらっしゃる方に大蔵省の職員が圧力をかけるなどということは絶対あってはならぬことだと思うのでありますが、何かの誤解があったのかもしれませんけれども、具体的なことは官房長に答えさせることにいたします。
  321. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先般御承認いただきました金融二法につきましては、もう言うまでもなく、これは非常に重要な法案であるということで、政府といたしましては、いろいろな方法によりまして有識者などに幅広く広報活動をさせていただきました。  例えば、全体で二千件を上回る、人数にいたしましても二万人を上回るような地方の有識者、これは商工会議所とかその他団体の関係者が中心でございますけれども、金融を担当する財務局が、地方の地方支分部局として局長、部長が、何かの機会にいろいろ御説明をさせていただいたわけであります。もちろんこれは、法案が成立したらこういうことになりますということを申し上げるわけでございまして、その点、国会の審議権を先取りするようなことにならないよう十分注意しながら行わせていただきました。  先ほど部長は一人しか行っていないという御指摘がございましたけれども、部長自身も何人か担当していただいたはずでございますが、近畿財務局でも二百件を上回る千人以上の方々に、今申し上げましたような広報活動をさせていただいたわけでございます。  そういうことでございますので、たまたま今御指摘の、委員の大変親しい公認会計士の方のところに部長が行ったわけでございますけれども、私どもは、近畿財務局として、今御指摘の方は大阪の公認会計士協会の事務局長をやられるなど、近畿財務局と非常におつき合いのある方で、担当としては話がしやすかったということで、大変有力な方であるということで御理解を得るために御説明に参上したということでございます。  そういうことでございますので、もし大変不快感を先生に与えたといたしますれば、それは大変申しわけないことだと思いますけれども、近畿財務局といたしましては、今申し上げましたような、私どもの施策について御理解を深めていただければありがたいという趣旨の上で御説明をさせていただいたということでございます。そういうことでございますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  322. 谷口隆義

    谷口委員 今私が申し上げているのは、親しい人だけじゃないのです。私の後援会の幹部なんです。それで、さっき申し上げたように、近畿の公認会計士協会の会長なら別ですよ、会長じゃないのです。会長のところに行っていないのです。そういうのは極めてアンバランスでしょう。これは何か作為的であるとしか考えられないわけです。だから、どうしてこんなことするのかと私は言ったのですよ。  これがいわゆる法案作成のために大蔵省のやっておる戦略的なシフトだとしたら、こんなことをしておったら僕たちどんどんやられますよ、こういうことをやっておれば。今まさに大蔵省解体論であるとか国税庁分離論などというのが出てきておるときに、そういう出てきておる最中にどうしてこんなことをするのですか。  親しい友人じゃないのですよ。だから私は、今回ここで出てきて申し上げているわけで、そういう意図的なことがあったとしか考えられないのであります。もう一度、大蔵大臣、御答弁をお願いしたいと思います。
  323. 松永光

    ○松永国務大臣 政府が重要と思う法律案あるいは施策について、国民の方々、特に指導的な方々に御説明をするという広報活動といいましょうか、そのことは御理解を願いたいと思うのであります。しかし、その場合でも、今委員の申されるような、そういう不愉快な感情を与えるようなことがないように、十分注意しながら広報活動はしなければならないというふうに思います。委員に不愉快な気持ちを持たせる結果になったということは、これは大変申しわけないことであった、そういうふうに思います。
  324. 谷口隆義

    谷口委員 これは、私が不愉快であるとかそういう問題ではないのですね。今申し上げているようなことをなくさないと、大蔵省に対する国民の批判が大変今厳しいわけでしょう。大蔵大臣が省内のことを全部把握して、今私が言っておるようなことも多分報告はないと思うのです、そういうことも。もしそういうようなことで、大蔵省が大臣のわからないところでそういうことをやっておるというのは、極めてこれは大きな問題であります。  大蔵大臣国会議員でありますので、私が言っておることは十分認識をされるのではないかというように思いますよ。一方で、大蔵大臣でないときにはそういうことも十分考えられるわけでありますので。こういうことをぜひやめていただきたい、もっと透明な形で、こういうようなことが行われないようにやっていただきたいということを強く申し上げたいと思います。  実は私、この後で、土地再評価、公的資金の投入、冒頭申しましたが、また金融機関のリストラの問題をやりたいと思っておりましたが、極めて限られた時間でございますので、これで私終わりますが、最後にもう一度申し上げたいと思うのです。ぜひ、もうこういうことのないようにしてください。大蔵大臣も自分の責任のもとでこういうことをきちっと管理していただきたい、このように強く申し上げまして、私、質問を終わりたいと思います。
  325. 越智通雄

    越智委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、達増拓也君。
  326. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  今我々がここでやっている予算審議でございますけれども政府・与党によりまして非常に混乱させられている、そういう状態になっているわけであります。  政府は、今の平成十年度予算案が最善のものだと言っているわけですけれども、同じ政府・与党の与党幹部が、早期の大型補正予算が必要だということを一方で述べているわけです。また、政策転換があったないかという、これも混乱した議論がございまして、与党幹部の中に政策転換はあったと言い切る人がいる一方で、政府は政策転換はしていないと。  この政府・与党、本来日本国憲法が想定しております議会制民主主義の原則に立てば、政府・与党というものは一体になって、特にこういう重要問題については取り組まなければならないはずなわけですけれども政府・与党内では一体どういうふうに物事が決められているのか。今回、政策転換があったないかの議論の対象になっております二兆円の特別減税について、政府・与党としては一体どういうプロセスで決めたのかを、官房長官にまず伺いたいと思います。
  327. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 お答えをいたします。  総理は、昨年十二月のASEAN首脳との会合で、アジアの通貨・金融不安の影響の大きさ等、日本の役割を改めて実感し、日本発の経済恐慌は決して起こさない決意のもとで二兆円規模の特別減税を決断したものと承知をいたしておりますが、この方針については、十二月十七日に、総理が党税調幹部、与党幹部及び関係閣僚を官邸に集め、指示したものであります。これを受けて、自民党税調及び与党政策調整会議で審議を行いまして、翌十八日に、今回の特別減税の実施が正式に決定されたと思っております。政府におきましては、一月九日に、今回の特別減税を盛り込んだ平成十年度税制改正の要綱を閣議決定いたしました。  政府といたしましては、今回の二兆円の特別減税を含む財政、金融両面にわたるさまざまな措置は相乗効果をもちまして回復に寄与するものと考えており、今回の特別減税も、いろいろな意見もございましたが、与党と緊密な連絡をとりつつ、政府として責任ある対応をしたものと考えております。
  328. 達増拓也

    達増委員 突然降ってわいたように二兆円減税ということが総理から出て、それを機械的に追認したような形であったのだと思います。  また、政府・与党というのを連立政権のあり方にまで広げてみますと、一月十三日の本会議で、社民党を代表し、伊藤茂幹事長は、経企庁は経済見通しについて誤っていた、急激な国民負担増は避けるべきだった、こういう内容の代表質問をしております。本当であれば、一体社民党は何を考えているんだということで、こういう場で質問をしたいわけですけれども、閣僚を出していないので、そういう責任を追及することができないわけですね。  やはり、議院内閣制におきまして、国会に対して政府が、内閣が責任を負う格好に今の連立与党はなってないのじゃないかと思うのですけれども、この点も、そういう政権、そういう与党に支えられた政府の首班を補佐していらっしゃる官房長官の意見を伺いたいと思います。
  329. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 委員おっしゃるとおり、現在の連立与党でございますが、確かに、社民党、さきがけ両党が閣僚が出ておりません。しかし、村山政権以来、連立与党を組んできた経験と実績を踏まえ、諸種の課題に協力、協調して対応してきております。官房長官として、特段の支障は感じておりません。  異なる政党でございます。いろいろな意見もあろうと思います。一緒であれば三党一緒になればいいのですが、三党間で意見が異なることも時々あります。これまでの協力、協調関係の維持に努めていきたい。と同時に、当然のことながら、他の党との間でも、見解の一致する問題については協調していくべきだと考えております。
  330. 達増拓也

    達増委員 官房長官の日程について伺っておりましたので、官房長官に対する私からの質問は、これで終わりにさせていただきたいと思います。  党が違うのだから意見も違うということでございましたけれども、いろいろな政策を決めていく場合で、アイデアの段階であれば、いろいろな違った意見があって、それを議論、討論を通じてすり合わせていくというのはいいことなわけですけれども、事予算について国会で審議している、国会に提出されている大詰めを迎えた段階で与党としてばらばらであるというのは、これは連立与党の体をなしてないのではないかと思うわけであります。  そういう、国会に責任をとる体制にないような形で今、社、さは与党に入っているということになっているわけでありますけれども、実質的には内閣として国会に責任をとる立場にないわけで、本当に与党なのかと疑うわけであります。特に最近は、与党内、三党内で合意ができないまま内閣から法案を提出する。これは、日本の議院内閣制のあり方として果たしてどうなのか、与党のあり方としてどうなのか。  いわば、今、特に社民党については特権野党ともいうべき、政権にきちっと参画していない野党でありながら、政策調整、政策協議には入れてもらっている、そういう特権野党であって、日本国憲法が想定した議院内閣制のやり方を踏みにじっている、いわば違憲状態をつくっている違憲政党じゃないか。護憲護憲と言っていた政党が、今やそういう違憲政党になっている。そういう政府・与党の実態ではないかと思うわけであります。そういう政府・与党が、今我々の国会での予算審議を混乱させている。  もう一度ここで議論を、政策転換があったのかなかったのかというところに戻させていただきたいと思います。  アナウンスなき政策転換ということが世間で言われているわけでありますけれども、これは、特に財政政策の中で政府が財革法を通して、そういう財政構造改革を進めている、そういう政策の流れの中で今予算審議をしているわけですけれども、果たして、マスコミ等で取り上げられている、そういうアナウンスなき政策転換というのはあったのかどうか、改めて大蔵大臣に質問したいと思います。
  331. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  政府としては、財政構造改革の必要性は何ら変わらないものだ、こういうふうに思っておるわけであります。しかし、同時に、経済金融情勢の変化に応じて臨機応変の措置を講じ、景気の回復を図ることも当然であり、両者は二者択一のものではない、こういうふうに考えるところであります。  二兆円の特別減税あるいは金融システムの安定化のための措置、これらはいずれも臨機応変の措置としてやったわけでありまして、しかもそれは財政構造改革法の中でやったものだ、こう思うのでありまして、その意味で、政策転換をしたものだとは私ども考えていないわけであります。
  332. 達増拓也

    達増委員 私も政策転換はまだしていないと思います。アナウンスなき政策転換があったというのはデマでありまして、国民の真剣な議論国会における真剣な議論を妨害するデマだと考えております。そういう意味で、二兆円の特別減税と金融システム安定化対策、それは政策転換をしたわけではなく、臨機応変の措置の一環としてなされたことだ。  これも改めて聞くのですけれども、大蔵省榊原財務官がテレビで、昨年十二月十五日ごろに政策転換をしていると発言して問題になったわけでありますけれども、あれはやはり誤った見解であったということでありましょうか。
  333. 松永光

    ○松永国務大臣 今申し上げましたように、財政構造改革路線の中で許される範囲内での二兆円特別減税であり、そして金融システム安定化のための措置であったわけでありますから、政策転換があったという榊原財務官の発言は、これは適切な発言ではなかったわけです。  したがって、私が榊原財務官に、これは外国に行っているときに電話でその点厳しく注意をし、そして済まなかったという返事をもらい、G7で行ったときでしたか、さらに私が直接会いまして、そして申しわけなかったという一札をとってきて、そして、あれは議運でありましたか、その一札を提出した、こういう経過でございました。
  334. 達増拓也

    達増委員 アナウンスなき政策転換は行われていないということがだんだん明らかになってきていると思います。そういう前提に立てば、議論は非常にすっきりしてまいります。  もし政策転換でなかったとしたら、その二兆円減税と金融システム安定化対策というのはどういう政策目的を持っていたのか、ここをもう一回確認したいと思います。  その二つの政策が行われる理由として、たび重なる政府答弁、本会議予算委員会等の答弁の中で言われてきたことは、夏以降のアジアの通貨・金融不安、秋以降の我が国の金融機関の経営問題等による景況感の悪化、この二つが言われているわけです。  その理由のうちの一つ、金融機関の経営問題等、金融不安、金融破綻という言葉も使われておりますが、その金融不安の深刻化の原因について、大蔵省の認識、一体どういう理由でそうなったのかというのを確認したいと思います。
  335. 長野厖士

    ○長野政府委員 御指摘がございましたように、昨年の夏以降のアジアの通貨・金融不安、それから十月、十一月にかけて、日本におきましては現実に、大変残念なことでございましたけれども、複数の金融機関、証券会社が経営破綻ということに立ち至りました。  経営破綻という現象それ自体につきましては、他にも健全に経営を行っておる会社はたくさんあるわけでございますから、個別の事情、経営戦略の失敗でございますとか、簿外債務の問題でございますとか、市場の評価に対する不十分な見通しといった個別の事情が取り上げられるとは存じますけれども、基本的に、こういった破綻につながるものとして、やはりバブル崩壊以降長期にわたります不良資産の処理という問題、あるいは証券市場でいえば株式市場の低迷という問題がございます。  それに加えまして、やはり連鎖的な現象と考えるべきかと思いますけれども、御指摘のありましたアジアの通貨・金融不安というものが金融システム全体に対する不安を著しく増幅したという面がございますし、またそれが、景況感が、今結果として景況感が悪くなったという御指摘でございましたけれども、逆に、景況感、マインドが弱いことが金融市場に対する不安というものを増幅したという側面もあろうかと思いまして、そういったものが時期的に重なりましたのが十月から十一月ということではなかったかと考えております。
  336. 達増拓也

    達増委員 個別的事情はあったかもしれないけれども、まずバブル崩壊の影響が残っていた、そして景況感の悪さというものが影響していた。そこまで原因を明らかにすれば、なぜバブル崩壊の後いろいろあってまだ景況感が悪かったかということになると、そのバブルの後遺症である不良債権等の問題をきちっと解決しないまま、九兆円の大規模な国民負担増をしてしまった、それで景況感が悪くなった。  であれば、やはり金融システム安定化というのを根本から考えれば、そこに至った政策を見直すということが必要だったはずなわけでありまして、そういうところからすると、二兆円減税というのは、まさに臨機応変な、これはもう場当たり的な施策であったと思われるわけであります。  何でそういう二兆円減税策が突然出てきたかということにつきましては、クリントン大統領が橋本総理に電話をして、それでそうなったのだというような説がございます。そういうことから考えて、かなり外国に対するポーズという、そういう事情があったのではないかと思うわけですが、この点いかがでしょうか。
  337. 松永光

    ○松永国務大臣 二兆円の特別減税、どういう経過で実施が決まったかということにつきましては、先ほど官房長官から、その経緯については答弁がございました。  そこに行く前の橋本総理の、そういう判断をした経過でございますが、これはまあ橋本総理でなければ的確なお答えはできぬかもしれませんけれども、私の承知している限りでは、去年の十二月のASEAN首脳との会合で、アジアの通貨・金融不安の影響の大きさ、そして日本の役割、こういったものを改めて実感されて、そうして日本発の経済恐慌は決して起こしてはならぬという決意をされまして、そこで二兆円規模の特別減税を決断されたのだというふうに私は理解をいたしております。
  338. 達増拓也

    達増委員 橋本総理がそういう決断をされたきっかけになったのがアジアの現状だったというのは、ちょっと寂しい気がするわけであります。  日本国内では、もう中小企業、商工業者、商店街その他、銀行とか大きい金融会社等々も、今の景気を何とかしてくれ、そういう声が国内的にたくさんあったにもかかわらず、最後の決め手になったのがアジアの経済情勢だったというのは、いま一つ国内の経済情勢をきちっと押さえた上での政策決定ではなかったのではないかという疑問がわいてくるわけでございます。  外国との関係といえば、二月二十四日の予算委員会でも紛糾した問題でございますけれども、G7での共同声明の問題、これまた大蔵大臣に伺いたいと思います。  G7の共同声明で、IMFの見方では日本は財政刺激をしなければならない強い理由がある、こういう文言が共同声明の中に入った。これについて、政府答弁は、日本はIMFの言い分を認めたわけではないのであって、IMFがそう言っているという事実だけを認めているのだというふうに説明しているわけですけれども、この文章、本当に相異なる、相反対の二つの意味にとれる、まさに文字どおり玉虫色、交渉術の教科書に載せたくなるようなそういう文章でございまして、ほかのG7メンバーから見れば、日本はIMFの言い分を否定していないからそのIMFの主張を共同声明に載せることには最終的に反対しなかったんだ、だからG7共同宣言の中にそのIMFの指摘が載っているんだと説明できる文書になっているわけですね。  この点について、いかがでしょうか。
  339. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  これは、G7のステートメントの中での日本経済関連部分があるわけでありますが、その中で、G7で合意した事項についてまず先に書いてあって、そして、その後で少しIMFの見解が述べられたという事実が記述されている、こういうことになっているわけであります。  それはどうしてかと申し上げますと、我が国の主張としては、二兆円の特別減税、それから金融システム安定化のための三十兆の公的資金を使っての政策など、財政、金融両面にわたる幅広い措置を講じたということを主張した上、これから十年度予算をできるだけ早く成立させていただき、関連法案を成立させていただく、そうしたことがスムーズにいけば日本の経済は回復軌道に乗りますということを、これは私が強く主張したわけであります。  それに対して、このステートメントにありますように、日本の経済活動は低迷し、見通しは弱い。その回復のためには、金融システムを強化するための引き続いての行動及び経済の開放度を高めるため金融その他のセクターの規制緩和が必要であり、我々は金融システムのビッグバン改革に関するこれまでの進展を歓迎したと。私どもの主張について一定の理解を示したという形のステートメントに実はなっているわけであります。  その会議にIMFの代表がおいでになって、そしてIMFとしての意見が述べられたのは事実でございますから、その事実は、G7の合意事項の下にその事実だけ記述しようということになったわけでありまして、経過は以上のとおり、結果も今申し上げたとおりなんでありまして、そのようにひとつ御理解願いたい、こう思うわけであります。
  340. 達増拓也

    達増委員 IMFがそう言っているということを共同声明に盛り込むことについて、日本政府は認めたわけでありますね。いろいろな人がいろいろな見方を言っている中で、あえて、日本に対して厳しいIMFの見方をG7共同声明に載せることについて日本政府としても合意した。  これについては、世間で言われているように、内需拡大等を国際公約したとまでは言えないのでしょうけれども、内需拡大をしなければならないような状態だと国際機関や諸外国が言っていること、そのことについては日本政府として認めているということだと思うのですね。そういう意味では、日本が去年から一貫して行ってきた九兆円の国民負担増、そういう国民負担増先行型の財政構造改革路線というものがどうもほころんできている、破綻してきている、そういうことには今政府も気づいてきている、そういうことだと思います。  これは、物事をわかりやすく整理すれば、政策転換があったのかないかという議論が行われているわけですけれども、政策転換はまだやっていないけれども、政策破綻はもう既にあった、政策破綻があったから、慌てての二兆円特別減税とか、もう三十兆円まで出すというびっくりするような金融システム安定化対策が出てきている、そういうことだと思うのですね。そう判断しているからこそ、我々自由党も、平成十年度予算案は組み替えなければだめだと。もう政策は破綻しているのだから、これをこのまま通してしまったのでは日本はますます悪くなってしまう。  それで、もう政策は破綻してしまっているのだから変えましょうという願望は、我々野党側にあるだけではなく、与党幹部の中にもあるから、アナウンスなき政策転換なんという言葉が出てきて、それは願望なわけですよ。事実を指摘しているわけじゃない、願望としてそういうものが出てきている。これはまさに政策の破綻、そして政府・与党の政策が混乱に陥っている。そういう状態の中で十年度予算案を通してしまっていいんですかという問題だと思うのですね。  政策転換を今しなければならないという議論の中で、公共事業の問題とか、我々は大型減税がいいと言っているわけですけれども、公共事業をやりましょうとかいう議論が出ているわけですけれども、公共事業について一つ大事な問題を指摘させていただきますと、公共事業にはそれにまつわる悪い話もあるわけでございます。  私が身近なところで聞いた話なんですけれども、公共事業に関係する省庁の幹部職員がみずから直接電話をかけて、公共事業関連業者に、官僚が業者に自民党を応援しろと圧力をかけている、そういうことが行われていると。これは建設省と農水省に聞こうと思っているわけですが、こういう事実を把握しておりますでしょうか。また、もし事実だとしたらどう対応いたしますでしょうか。
  341. 瓦力

    ○瓦国務大臣 達増委員にお答えをいたします。  今具体的な事実をお話しになりませんので、よく私もお答えはできません。事実関係がどうだということを把握しておるか、こう問われますと、把握いたしておりません。  一般論でございますが、いわゆる国家公務員の政治活動につきましては、厳しく抑制されておるわけでありまして、法令の遵守につきましては、これは従来より周知をいたしておるわけでございますから、疑惑を招くようなことはない、私はかように考えております。
  342. 山本徹

    山本(徹)政府委員 公共事業につきまして、ただいま先生御指摘のような事実は私ども把握いたしておりません。  国家公務員としての政治活動につきましては、公職選挙法、国家公務員法等によって厳しく制限されているところでございまして、これらの法令の遵守につきましては、従来よりこの周知徹底を図ってきており、今後ともこの遵守について厳正に対処してまいりたいと考えております。
  343. 達増拓也

    達増委員 官僚がその関連する職務に基づいて業者にそういうふうに圧力をかけたりいたしますと、これはもう国家公務員法違反であり、また公職選挙法違反である。だから、そういう事実を把握していれば今のような平穏な状態にはなってないわけでありまして、当然、起訴だの逮捕だのという話になると思います。  具体的じゃなかったというのは、それは業者の側で、表ざたにすると一層いじめられたりとかつぶされたりするということで、今泣き寝入りしているわけでありますけれども、ただ、腹をくくった業者が今後出てくることはあり得るわけでありまして、その業者が当該電話を録音テープとかにとっていたりすれば、もうこれは、今大蔵省で官僚不祥事ということで、ネクタイを外して逮捕というようなのが演じられているわけですけれども、それと同じようなことになってしまう。  証拠がないからなかなか逮捕できないとかいうことで、今大蔵省の中でまさにそういうことが話題になっているわけでありますけれども、その証拠がないにせよ、やはり役所として、法と正義の原則に基づいてきちっとした対応はしなければならないと思うのですね。それは、たとえ逮捕とかいうことに至らないにせよ、省内でのいろいろな解決の仕方はあるんでしょうし、その際、政治的なリーダーシップが求められることになることもあると思うんですけれども、その点については、大臣の政治的リーダーシップに大いに期待したいと思うわけでございます。  そろそろ時間でございますので、ちょっとまとめに入ってしまいますけれども、最初から言ってきた問題の中で、今、国会の中で本当に議論が混乱させられている。これには自民党さんが持っている体質というのもかなり影響しているんじゃないかと思うわけです。  前回の衆議院議員選挙のとき、消費税率を三%に据え置くか五%に引き上げるかという国民的な政策の選択の問題があったわけです。そのとき新進党は三%とはっきり言ったのに対し、自民党さんは、人によっては三%据え置きと言い、人によってはやはり五%と決めたんだと言い、党としての政策が全然見えてこなかったわけですね。あまつさえ、党として何%と国民に打ち出さなきゃならないときに、新進党さん、あなたは七%なんですか、十何%なんですかと、もう本当に、選挙という民主主義の決定的な重要な局面において、あえて国民に適切な選択をさせないような戦略に打って出た。  今の国会審議がまさにそうだと思うんですね。この平成十年度予算案や関連法案、さらに……
  344. 越智通雄

    越智委員長 質問時間が経過しておりますから、まとめてください。
  345. 達増拓也

    達増委員 今の経済、どう持っていくかというのに当たって、政府・与党がどうも国民を混乱させる戦略に出ている、そういう危惧を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  346. 越智通雄

    越智委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。  次に、春名直章君。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  347. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。  くしくも先ほどの谷口議員と同じテーマで、杉井孝大臣官房審議官をお呼びして、今大問題になっております不祥事、お聞きすることになっておりました。私がこれを要望したのは昨日でしたけれども、きょう私の質問の一時間前になって、出られないという連絡がありました。私は、来られないこと自身が後ろめたさの証明だと思います。  そして、官房長が全部責任をとられるということをおっしゃいましたが、改めてお聞きをしておきますが、杉井さんの問題について全部責任をとっていただけますね。その発言に二言はないといいますか、そういう構えでいいんですか。
  348. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 官房長は今向かっているそうですから、次の質問を。
  349. 春名直章

    ○春名委員 とんでもない話ですね。官房長が答えますと言われているのに、これじゃ話にならないじゃないですか。  委員長、とめて、検討していただけませんか。
  350. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 今こっちに向かっていますから、次の質問を続けてください。
  351. 春名直章

    ○春名委員 じゃ、続けます。  それで、私は、このような態度で本当に腐敗が根絶できるんだろうかということを指摘せざるを得ません。こういう事態になっていること自身、まず松永大蔵大臣、どうでしょうか、これはおかしいと思いませんか。  昨日、説明員として来ていただいて疑惑も晴らしていただくということでお呼びをしているのに、その方がいらっしゃらなくて、私は質問する権利そのものが奪われていると思っているんですけれども、そういう態度で本当に腐敗が根絶できるんだろうかということを非常に危惧するものでありまして、その点、いかがお考えでしょう。
  352. 松永光

    ○松永国務大臣 杉井審議官ですか、これは説明員であって政府委員じゃないんだそうです。したがって、政府委員である官房長がお答えしたいということになったそうでございます。
  353. 春名直章

    ○春名委員 それで官房長もいない、こういうことでは全然話にならないでしょう。  だから、ちょっと時間をとめていただけますか。
  354. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 質問の順序がかわっているようですから、今本人はここに間もなく着きますから、ですから先の質問を続けてくれませんか。
  355. 春名直章

    ○春名委員 いや、もう官房長に聞かないと話になりませんから。
  356. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 ほかの質問をしておくわけにはいきませんか。
  357. 春名直章

    ○春名委員 順番があるんですから。
  358. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 では、来るまでちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  359. 越智通雄

    越智委員長 速記を起こしてください。  大変失礼いたしました。それでは、もう一度御質問をお願いいたします。春名君。
  360. 春名直章

    ○春名委員 あと何分あるのかよくわかりませんけれども、先ほど言いましたように、私は、杉井さん自身がこの場所に来てきちっと弁明、解明もしていただくということをお願いしましたが、それができないということが一時間前に伝わって、そして官房長にお話を聞こうと思ったら、その責任を全部持つと言われている官房長もいらっしゃらないということでこんな事態になったのでありまして、以後絶対にこういうことがないようにしていただきたい、厳しく要求しておきます。  それで、官房長にお願いします。  杉井さんの問題について私は詳しく聞きますけれども、全部その問題は責任持って答えていただけるのですね。責任とれますね。
  361. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 大変おくれて恐縮でございました。おわび申し上げます。  今の杉井問題に関してのお尋ねでございますけれども、現在私ども調査しておりますので、私どもが知る限りのことについてはお答えをさせていただきたいというふうに思います。
  362. 春名直章

    ○春名委員 先ほど大臣は、報道は見ていますというふうにおっしゃいましたよね。見て、直ちに、これは重大だということで調べたり、あるいは指示をするということはされたのでしょうか。
  363. 松永光

    ○松永国務大臣 報道は見ましたから、そういう報道があることは私も承知したわけですが、その報道が直ちに真実であるかどうかという問題もありますので、したがって、その報道も十分念頭に置いてそして調査を進めますということを前に申し上げたわけでありますが、実はそうするつもりでございます。
  364. 春名直章

    ○春名委員 事実かどうか私はうのみにするつもりではないけれども、あなたの部下がこういうことで書かれているときに、これを御本人に確かめることぐらいはすぐできると思うのです。それは五百五十人の調査をやるということの中でやっていらっしゃると言いましたけれども、こんなことが言われているじゃないか、これがうそか本当かすぐ調べる、これぐらいのことは直ちにやれるじゃありませんか。そう思いませんか。  それで、書いてあることも重大なんですよね、谷口議員が今言われましたけれども。  叙勲の格上げをめぐって接待攻勢を受けていた大臣官房の有力幹部、杉井氏のことです、接待総額は一千万円前後に上る、三月十一日付毎日新聞。田谷氏が失脚した後の接待キングは杉井審議官で間違いない、週刊朝日三月二十七日付等々であります。しかも、三月十日の東京新聞ではこう書いております。捜査当局が既に杉井氏への接待問題で銀行業界に対して詳細な関係資料の提出を求めたほか、接待の趣旨や目的などについて説明を求められた。  もうここまで行っているのですよ、新聞に書いてあると大臣が言われるのは。そうでしょう。そうであるのに、直接本人にすぐ確かめることができるじゃありませんか。なぜそれをすぐにおやりにならないのですか。そこのところの感覚が私には理解ができないわけですけれども、改めて御答弁お願いします。
  365. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、いろいろな情報は参考にいたしますが、言葉は適当でないかもしれませんけれども、真実を解明するためには、手順を立てて調査していかないと、いい、内容のある調査結果は出ない。ある人のことが新聞に書いてあったから、はい、ある人のことが新聞に書いてあったから、はい、こういう形での調査は、調査の仕方としてはいい調査の仕方ではない、こう私は思っております。
  366. 春名直章

    ○春名委員 そんなにあちこちたくさんおって調査もできないということではないでしょう。名前が具体的に出ているのはそんなにたくさんじゃないじゃないですか。その一人一人に事実を確かめることぐらいすぐできるじゃないですか、そう私は思いますよ。  私は、このことを言っているのは、長野証券局長の問題もありましたけれども、昨日来追及させていただきましたが、この杉井さんの問題が、谷口議員もおっしゃいましたけれども、本当に、大蔵行政の根幹にかかわるような疑惑になりかねないということを非常に危惧しているからであります。  この杉井さんの疑惑は二つであります。  その一つは、先ほど出ましたけれども、叙勲の候補を総理府に推薦するということで、その問題をめぐっての重大な疑惑でありました。  そこで、改めて確認願います。大蔵関係の叙勲候補者の推薦を総理府に対して行う部署あるいは課はどこでしょうか。
  367. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 大臣官房の秘書課でございます。
  368. 春名直章

    ○春名委員 秘書課であります。それで、杉井氏は、平成四年から七年にかけて大臣官房秘書課長になっていらっしゃいまして、課長を通さなければ推薦をするということには当然ならないと思います。  叙勲申請書というのを例で持ってきましたけれども、これは一人の人を推薦するときに、一人の人がこれだけの文書をこれだけ上げて、それでやっていただくということになっているわけであります。  そして、マスコミの報道では、接待を受けて、三和の川勝堅二氏、日興証券の梅村正司氏、両元会長への叙勲を強引に総理府に働きかけたのじゃないかという疑惑が持たれているということが述べられているわけであります。  調べてみますと、川勝氏は平成六年春に勲一等瑞宝章、日興証券の梅村正司元会長も平成七年秋に勲一等瑞宝章をお受けになっていらっしゃいます。受けられていること自身は、私は別にそれに疑義を挟むものではありませんけれども、さまざまな新聞を見れば、叙勲の陰に企業担当者の汗があるとか、あるいは監督官庁がオーケーを出さなければ絶対に無理なんだ、いかにその評価を得るために苦労するかというような記事も、私はいろいろ探して見てまいりました。  それで、これだけ具体的に提起されている問題ですので官房長にお伺いしますけれども、この問題について、今全体として調査中だと言っておられますけれども、三和あるいは日興証券、このときこの二つから接待が実際あったのかどうか、ヒアリングもされていると思いますので、どういう状態だったのか、その事実を具体的にお述べいただきたいと思います。
  369. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま調査をしているところでございます。ヒアリングも行っている最中でございます。一つ一つきちっと、事実であるかどうかということを確認する必要がございますが、まだその確認が終わっていない段階でございますので、具体的なことをこの場で申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  370. 春名直章

    ○春名委員 それでは、その問題については、いつ事実を明らかにしていただけますか。今やっていらっしゃるということで、二カ月も三カ月も後にはなりませんでしょう。いつやっていただけますか。
  371. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 現在、いろいろな形で調査をしておりますけれども一つは、単独で会食をする場合ももちろんあるわけでございますけれども、複数、何人かでやる場合もございます。そういう場合には、関係者相互のチェックを行うことによって、事実というものがかなり明らかになってまいります。  それからもう一つは、相手方にもヒアリングをするということが考えられるわけでございますけれども、これは何度も申し上げておりますとおり、一般的にそういう資料が検察のもとに今あることが通常な状態でございますので、それがなかなかできないという事情もございます。  そういうことで、現在やっておりますが、具体的に何日ごろということを申し上げられるような状況には至っておりません。  大臣からは、できるだけ早くやるようにという御指示をいただいております。同時に、調査がずさんなものでないようにしっかりやらなければいけないということも御指示をいただいておりますので、今、一生懸命、鋭意調査中であります。春のうちには少なくとも何らかの結論を出すようにということで、大臣からはそういうことを言われておるわけでございます。
  372. 春名直章

    ○春名委員 その答弁は、杉井さんの問題だけではなくて、もう繰り返しお聞きをしていまして、全く同じことを繰り返している答弁で、これだけ世間が重大な疑惑を持っているものに対しても同じ答弁しかされないということ自身に、私は非常に怒りを感じます。  これだけではないのです。私も調べてみました。九六年二月から銀行局に出向して、主計局の次長をおやりになりながら、銀行局別室の室長になっていらっしゃいます。この銀行局別室というのは、どういう役割、任務を持って設定されたのか、そして、その中で杉井さんはどのような役割、仕事をされていたのか。具体的にお答えください。
  373. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  当時、銀行局におきましては、住専問題の重要性や、その事務量が大変に膨大なものになるという事情にございましたので、住専処理の体制に関し整備を図るために別室というものを設けたわけでございます。この別室では、住専スキームなどに基づき、住専債権の強力かつ効率的な回収体制を整備するために、預金保険機構の組織の拡充整備や、住宅金融債権管理機構の設立に向けた準備作業などをやっていたわけであります。  杉井審議官につきましては、兼務で、審議官級ということで、そのチームのヘッドにいた。別室の……(春名委員「責任者ですか」と呼ぶ)責任者といいましょうか、そこの一番上にいる者ということでございます。
  374. 春名直章

    ○春名委員 今お話あったように、文字どおり住専処理の立ち上がりを指揮する立場で行かれて、やっていたわけであります。  谷口議員もお話ありましたけれども、この住専処理問題というのは大問題でありました。今も尾を引いております。国民のごうごうたる批判がこれに集中したのです。なぜ母体行主義を崩すのか、なぜ乱脈経営によって勝手につぶれた住専に国民の税金を六千八百五十億円も投入するのか、大問題になりました。この怒りが日本列島を揺るがしたのであります。  杉井さんがいらっしゃったら、あなたはというふうにレジュメにも書いてあったのですが、このスキームを実行する上で決定的な役割、実際に現場で、銀行に幾ら出資をさせるのかとか、どのように支払わせるのかとか、こういった最前線の問題を指揮していた、つかさどっていたのがこの室長たる杉井さんだったという事実。そうですよね。任務としてはそういうことになるでしょう、最前線で銀行といろいろ折衝もされていた方。そういう仕事になるでしょう、具体的には。局長、そうですか。
  375. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先ほど谷口先生にもお答え申し上げましたが、スキーム自体が固まったのは、彼が兼務になる前の年の十二月、七年十二月の閣議決定でございます。それから、一月三十日にもう少し具体化の閣議決定がございます。彼は二月になっております。  それで、今、幾ら出資とかいうお話をされましたが、これは、そのとき決まった基金の総額について、閣議決定が決まっておりますので、各金融機関が調整をみずからやられたわけでございまして、彼が幾ら幾らと割り当てたということでは、そういう意味ではないと思いますが。いろいろな事務をやり、主に住専の、あの中坊さんがいらっしゃる管理機構の立ち上げに従事していたというのが主だと思います。
  376. 春名直章

    ○春名委員 スキームは十二月、そして一月には具体的な枠組みを決めてやっていたということは先ほども聞きました。ただ、この問題は、二次損失の分まで含めてこれを全部解決するというのには、六月、七月とかかっているわけですよね。それで、すったもんだしたじゃないですか。その中で別室の室長として采配を振るっていたのがこの方だったわけですよね。これはもう動かすことができない事実なわけであります。  この住専の一次損失の処理でいいますと、これも報道ですけれども、興銀にとって、系列の日本ハウジングローンの処理での負担が大きかった、だから、これを緩くしてもらいたいということがあって、そういうことにもなっていったということが報道されているわけでしょう。事実、私、調べてみたら、住専七社の不良資産の一覧で、日本ハウジングローンというのは、残高は二兆二千億円、不良資産が一兆六千億円、損失見込み額は一兆一千億円、いずれも七社中断然トップでありました。  こういう形に対して個別の母体行が全部面倒を見るという案が浮上したけれども、住専七社の横並びの処理、これを実際は実行することになるということが起こったということで、そういう問題での疑惑が第一にあると言われているわけであります。  二次損失の処理についてはどうでしょうか。金融安定化基金の設立はもう考えられて、そして、銀行が基金へ融資をして、その運用益で損失を賄う。融資であって資金を捨てるわけじゃないということで、この点でも、負債をたくさん抱えている興銀が随分助けられたということも報道されているわけであります。  そして、実際の処理策の実行については、先ほどお話があったように、杉井さんが陣頭指揮をとってこれをやってきた。  こういう事態があって、そういう中で、マスコミの報道でいけば、接待王だ、一千万円の接待を各銀行から受けていたということが報道されているわけなんですから、私は、この情況証拠といいますか、これだけを見ても本当に重大な問題だなと思うのですよ。  それにもかかわらず、五百五十人の方と一並びにして、同じような位置づけで、同じようにお調べになるということでいいのでしょうか。大蔵行政が大もとからゆがめられているかもしれないのですよ。少なくとも、火のないところに煙は立たないわけだから、そういう問題として、やはり国民にしかるべき対応を見せていただきたい。それが私の願いであるし、国民みんなの願いじゃないでしょうか。  こういう問題が今提起されていると私は思うのですけれども、大蔵大臣、いかがお考えですか。
  377. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども答弁申し上げましたけれども、今の新聞の記事、私も承知しております。非常に重大なことがそこには書いてあります。  しかし、それが真実かどうか、これは私にはわかりません。その新聞の記事も十分念頭に置いて、そして調査を進めてまいりますということを申し上げたわけであります。  なお、住専処理の関係では、あれは平成七年でしたか、七年の夏ごろから、母体行主義あるいは修正母体行主義、いろいろ議論がなされておりました。しかし、結果においては、あれは修正母体行主義ということになったのですかな、そういったことになったわけでありますけれども、その経過も私は私なりに承知しておるわけであります。  今の記事、非常に重大な記事だ、こう思っておりますが、それが真実かどうか、これはまだわかりません。それを念頭に置いて、そして調査はきちっと進めてまいります。先ほども申し上げたとおりでございます。
  378. 春名直章

    ○春名委員 直ちにヒアリングをやるとか調査をやって、これだけの疑惑をただすということを、一言言ってほしかったと思います。  私は、そういう姿勢だから、内部調査ということを繰り返しおっしゃっておりますけれども、それ自身も非常にいいかげんなものになってしまうのではないかという危惧をしております。その問題を別の角度から大臣にお伺いしたいと思います。  三月十二日に、参議院の財政・金融委員会で、私どもの党の笠井亮議員が質疑をいたしました。その中で、逮捕された宮野容疑者が、金融機関から接待を受けていたことを二月初旬に自主申告をしていたが、その後も山一証券の飛ばし疑惑の実態調査の職務に引き続きつけておられた。この事実を取り上げて、笠井議員は、癒着の疑惑が出たときに直ちにその部署から外すべきではなかったのかと質問をいたしました。  そのとき、松永大蔵大臣はこうおっしゃいました。宮野の被疑事実は野村の過剰接待が被疑事実の中心であって、山一の接待は私の方ではわからないというふうに御答弁をされていらっしゃいます。  私は、この答弁を後で知りまして愕然となったわけですが、二つ問いたいと思います。  まず、大蔵省、あなた方がやっている調査が調査の体をなしているのかということであります。宮野容疑者の自主申告、事情聴取の中で、山一からの接待については明らかにされていたのですか、明らかにされていなかったのですか。このことをお答えください。
  379. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 あの段階におきましては、それぞれの部署におきます服務管理官が調査を担当している段階でございました。そういう段階でございますので、その中身につきましてまだ未確認でございますので、先ほどもお断り申し上げましたけれども、大変恐縮でございますけれども、具体的な中身についてここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  380. 春名直章

    ○春名委員 一九九三年から九五年にかけて、野村だけではなくて、新商品の認可、さまざまな便宜を図ってもらうということで、大和や山一からも大きな接待を受けているということがもう言われているわけですね。今はもう何も言わないということで決め込んでいらっしゃるけれども、このことがもし知られていない、つかんでいないとしたら、一体どういう調査をやっているのかということに一つはなります。つかんでいたけれども大臣には伝わっていなくて、どうにもなっていなかったというのであったら、一体何をしているのかという、この一点でも大問題になります。こんなことで本当に許されるのでしょうか。  宮野容疑者が自主申告していたのは二月の初旬でした。今おっしゃったけれども、それぞれの上司が事情聴取をした上で、二月半ばに、金融服務監査官室に対して、調査と処分が必要だと思われるという報告を上げた、こう言われています。監査官室は、もう少し詳しく事情を聞くようにと差し戻して、驚くことに、この事実が判明した後も一カ月近くにわたって、山一の飛ばしの実態を把握する特別検査チームのナンバーツーの位置でその職務をやってきた。そして、その間に逮捕されるという最悪の事態となったのですよ。えらいことじゃないですか。大蔵省の醜態じゃないですか、これは。  どういう調査なんですか。私たちは、中間報告をしなさいということも大臣に繰り返しお話をしています。それから、局長審議官などの上の方をまず調査して、直ちに具体的にやらないとできない、だめなんだということも言いました。この事実を見たって、そのことの重要さがあるじゃないですか。  五百五十人の人を待って、それで春過ぎたら、春ごろというのですか、やりますというふうに言われるけれども、また新しい逮捕者が出たらどうするのですか。信じられないですよ。悔しいと思いませんか。自分たちできちっと処分をするということをやらないで、放置されている間にこんな事態が起こってしまって、大蔵省は一体何をしているのかと言われてもしようがないじゃないですか。  本当に、こういう点でいえば、調査なるものが極めていいかげんなものだ。大事な疑惑がかけられている問題については、直ちにこの場で明らかにしてもらいたい。中間報告もしていただいて、少なくとも疑惑がかかっている問題については、白でも黒でも構いません、きちっと調査をしていただく、そして報告をしていただくのが責務じゃありませんか。そのことを私は改めて大蔵大臣に御要望申し上げたいと思います。  私の時間がもう来ましたので終わりますけれども、改めてこういう調査の問題、決意、この宮野さんの問題も含めて、大臣に見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  381. 松永光

    ○松永国務大臣 私どものしている調査は、国家公務員法あるいは人事院規則、そういう法令に基づく処分をする、その前提としての事実調査でございます。そして、その事実をできる限り詳細につかんで、その事実の軽重に比例する形で厳しい処分をしていくという方針でこれからも進めてまいります。
  382. 春名直章

    ○春名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  383. 越智通雄

    越智委員長 これにて春名君の質疑は終了いたしました。  次に、石井郁子さん。
  384. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。残る持ち時間で質問をさせていただきます。  ことし一月、栃木県黒磯市での女性教師刺殺事件、学校の中で中学一年生が起こした事件、戦後教育の中でも初めての事件でございますけれども、その後、中高校生によるナイフ殺傷事件が相次いでおりまして、父母、教職員の皆さんはいたたまれない思いでいると思います。  子供たちを守るために私たちは何をすべきか、あらゆる施策を講じなければなりません。  総理は、二月十六日の施政方針演説で、「受験競争やいじめ、登校拒否、さらには青少年の非行問題が極めて深刻になっております。」という認識のもとで、「この問題を放置すれば将来に禍根を残すことは間違いありません。大変難しい課題でありますが、子供たちのために何をすればよいのか、皆様とともに考え、真正面から取り組んでまいります。」と表明されました。  官房長官においでいただいておりますけれども、この真正面から取り組むという決意に変わりはございませんでしょうか。
  385. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 青少年をめぐる問題の根本的な解決のためには、青少年が夢や希望を持って生きていける社会をつくることが必要と考えておりますが、先ほど委員が述べられたとおり、この問題は政府を挙げて、また社会全体で取り組むべき大きな課題と認識をいたしております。  したがいまして、三月六日には、総理の指示によりまして、次代を担う青少年について考える有識者会議を発足いたしまして、関係審議会の会長等に私ども閣僚も加わりまして、青少年をめぐる問題を幅広く議論し、今後、この有識者会議における御議論等を踏まえ、関係審議会で審議を深め、対策を順次実行に移していけるように努力してまいりたいと思います。  さらに、この有識者会議だけではなくて、文部大臣もおりますけれども文部省文部省として、あるいは国家公安委員長、それぞれ審議会で対策を今立てている。  しかし、いろいろ急場的な対策を立てても、本当にこういう問題が起きてくる根本的な原因を突きとめて、こういうものが根絶するような教育とかあるいは環境とか、そういうものも考えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  386. 石井郁子

    石井(郁)委員 また、松永大蔵大臣大臣は文部大臣の経験者でもございますので、真正面から取り組むという決意はお持ちかどうか、やはりお尋ねしておきたいと思います。
  387. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  私が文部大臣をしておりましたのは今から十三年前でした。そのときには、いわゆるいじめというのが、はやっているという言葉は適当かどうかわかりませんが、非常に多い年でありました。このいじめ問題解決のために一生懸命働かせていただいたという記憶、今でも新しゅうございます。  青少年を健全に育てていくことが、国の将来にとっても、国民の幸せにとっても極めて大事なことであると認識し、前からそういったことで政治活動をしてきたわけでありますが、今回のこの、あろうことか教え子が先生を刺して殺すなどということは、かつてなかったような嘆かわしい問題でありまして、これに対しては、今、官房長官からも御答弁がございましたけれども政府を挙げて、また社会を挙げて取り組まなければならぬということになっておりますので、私も政府の一員として、この問題、文部大臣が直接の担当者ではあろうと思いますけれども、御協力できるところは協力する形でこの問題の解決に努めてまいりたい、こう思っているところでございます。
  388. 石井郁子

    石井(郁)委員 政府を挙げてという御決意をいただきましたので、そういう方向でのお取り組みを後で私は具体的にお聞きをしたいというふうに思うのです。  ここで文部大臣、今、全国の教師たちは、大変困難な中で、必死に教育現場で立ち向かっているというふうに思うのですね。子供たちが変わった、なかなかつかめないというような中で、本音で父母を含めて話し合う、安全な学校づくりを進めていく、そういう教師の取り組みをしっかり励ましていくというのが行政の役割ではないかと私は考えるものであります。  教職員の皆さん、行政としてはこういう支援をするから、皆さんは大変でしょうけれども頑張ってください、こういう応援をし、励ますことが、今文部省に求められているのではないかというふうに思います。その際、あくまで教育の条理で対処していく、それが文部行政のあるべき姿ではないかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  389. 町村信孝

    ○町村国務大臣 今、官房長官及び前文部大臣としての大蔵大臣から、政府を挙げて取り組むというお話をいただきました。総理御自身も施政方針演説等でそういう基本認識を示しておられるのは、委員御承知のとおりでございます。  私どもといたしましても、最近の校内暴力、あるいはいじめ、登校拒否、ちょっとずつふえたり減ったりしておりますが、いずれにしても、大変高い水準であるという意味では憂慮すべき事態であるし、また、ナイフの使用といったようなこともございます。どういうことを考えていったらいいか。今委員指摘のとおり、確かに、現場で一番苦労しておられる先生方の御努力を支えていくということが必要なことは当然であろう、こう思っております。  そういう意味からも、まず、先生方のレベルアップをどう図っていくかというようなこともございまして、初任者研修を初め各種の研修で、例えばカウンセリングの基礎、基本を身につけていただくといったようなことも一つ必要だろう、こう思っておりますし、あるいは、学校で基本的にはそれは対応すべきものとは思いますが、もう少し開かれた学校という意味で、学校と地域あるいは家庭との連携をより密接にしていくためのいろいろな取り組みというのもあろうかと思います。  さらには、学校現場で例えば道徳教育をもっと充実していくことでありますとか、あるいは、なかなかこの点は委員とは意見がすぐには一致いたしませんが、教職員配置の計画的な改善というようなことも含めましてやっていきたいな、こう思っているところであります。  なお、今どこまで急に間に合うかどうかわかりませんが、もう新年度も目前でございますので、今後、少し具体的に詰めているところでありますが、それぞれの学校に空き教室などがあったりもいたしますので、そうしたところを、カウンセリングルームとでもいいましょうか、個別にゆっくりと話せるような場として確保し、そこに常時、先生方か、もし現職の先生が忙しければOBの先生であるとか、あるいは地域の青少年のリーダーでそういうのに適した方、あるいは学校の近くにおられるお医者さん、こうした方々に、忙しいでしょうが常時座っていただいて、心を開いた話ができるような、そんな環境整備も努めていきたい、かように考えております。
  390. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣の方からは大変丁寧に、お考え、とろうとしておられる施策を御説明いただいたわけでございますけれども、私は、子供と教師が今どんな状況になっているのか、その現場の実態、やはりそこからもっとしっかり見ていく必要があるのではないかというふうに考えているのです。  ここで、そういう実態の一部ですけれども、先生方のお声をちょっと御紹介したいと思うのです。これは東京世田谷のアンケート、六百人の先生方が回答されているものです。  一つは、最近の子供の様子が変わった、九〇%の先生方がそうとらえておられます。また、学校は忙しいかというふうに尋ねますと、非常に忙しい、少し忙しいを加えて、何と九五%の方がそう答えておられるわけです。そして、大変心配なことは、仕事をやめたいと思うことがあるかという問いに、時々ある、よくあるということを加えますと四八%、つまり、約半数の先生方がもうやめたいというふうに言われるような状況です。  こういうことは、教職の歴史の中でというか、なかったんじゃないかというふうに思うのです。  もう一つ、高知市で、これは市教委の調査でございまして、管理職の校長先生を含めての調査で、先生も含め五百人以上の方からの御回答ですけれども、学校にゆとりがあると思いますかという問いに、全くない、余りないを加えますと、九七%の方がないと答えておられる。それから、教育行政にどんなことを望みますかと、二つ以内のことですが、人的、物的な条件の整備充実が四一%でトップということであります。  こうした調査はいろいろなものがございますから、全部御紹介できませんけれども、やはり共通して出ているのは、ゆとりがないということがありますし、それから、子供の様子がとても変わっているもとで、ゆとりがないし、仕事をやめたい。それから、こういう状態を解決するには何が必要か、どのアンケートでもトップは定数増なのですね。  私は、こういう現場の声、実態、ここからやはり施策を考えるべきではないかというふうに思います。  子供たちがどんなふうに変わっているのかというのは、ここで詳しくリアルに申し上げる時間はないのですけれども、なかなか本当に授業に集中しないだとか、それから、いわゆる新しい荒れと言われているのは小学校から始まっていまして、本当に子供の心理が変わってきている、つかめないという状況が広がっているわけであります。  そういう点で、私は、これは先般文教委員会でも要求をいたしましたけれども、子供たち一人一人に向き合いたいという、これもまた先生方の共通の強い願いでございますので、直ちにその要求にこたえるべく、三十人学級の来年度実施のために今年度は悉皆調査を行う、これにぜひ踏み出してほしい。真正面から取り組むという先ほど来の御決意がございましたので、そういう決意を今示すときだというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  391. 町村信孝

    ○町村国務大臣 今、各学校の現場の実態に即したお話をいただきました。  私も、幾つかの学校現場を訪れ、あるいは先生方に夜集まっていただいて、いろいろなお話を聞きました。今石井委員が言われたような、やはり似たようなお答えも相当私も耳にしているところでございまして、確かに、ゆとりがない、ゆとりが感じられないというような実態があるようでございます。  昔であればもっと、五十人、六十人という戦後間もなくの時代から、生徒の数が現在二十人以下から四十人まで、四十人を上限とする四十人学級になっているわけでございまして、平均いたしますと小学校が二十七・七人、中学校三十二・九人ということですから、昔と比べれば生徒さんの数は一クラス当たり随分減っているなという感じもいたしますが、昔とまた違う生徒たちの実態も今委員指摘ございましたから、これで十分か、多いか少ないかというのは、なかなか難しい判断を要する問題であろう、こう思っております。  現在は、御承知のように、比較的大規模な学校を対象といたしまして、グループ別の指導でありますとか、習熟度別指導でありますとか、少人数の学習集団をつくってやりますとか、このようなきめ細かい指導ができるような教員配置の改善ということをやっておりまして、当初であれば、来年度、平成十年度末をもって完成という予定にしていたわけでございますが、御承知のとおり、極めて厳しい財政状況のもとでございますので、昨年の十二月に成立をいたしました財政構造改革法でこれを二年延長するということにしたわけでございます。  私どもとしては、当面は十二年度完成ということに向けて全力の努力をしていくことが今私どもに与えられた最大の仕事かな、かように考えております。  なお、小人数のクラス編制が、それは直観的に言えばいいのかもしれませんが、それがどういうふうな効果を与えるのか。クラスのサイズ、三十人というクラスのサイズで考えるのがいいのか、あるいはできるだけ複数配置という形で対応していったらいいのか、あるいはカウンセラーとか養護教諭をより多く配置するとか、仮に人数増を考える場合であっても、どういう形がいいのかというあたりはいま少し研究が不十分なのかなというような感じも持っておりまして、その辺は引き続き文部省内でもしっかり勉強してまいりたいと思っております。
  392. 石井郁子

    石井(郁)委員 いろいろ述べられましたけれども、現実に今、都市部では、とりわけ中学校、四十人近いクラスが大多数なんですよ。ですから、平均値で一学級当たりの人数は中学校三十人ぐらいだ、小学校で二十七・七とか言われますけれども、都市部は全然そういう実態ではありません。これは大臣よく御存じのとおりでございます。  それからまた、クラスの規模についても果たしてどうなのかということをよく文部省は言われるのですけれども、私は、そうおっしゃるのでしたら、文部省はまずまじめに研究していただきたい、そういう調査をみずからがしていただきたいと思うのですね。それをされないで、果たして規模がいいのかと、そういう答弁だけをいつまでも繰り返しているのは本当に無責任だと言わざるを得ません。  私はここで、先ほど松永大蔵大臣から、いじめの、十年ほど前の経験のことをお話しいただきましたので、ちょっと実は思い出すことがあるんですね。  十年ほど前に、いじめが初めて社会問題になりました。そのときに、中曽根首相がアメリカへ行かれまして、アメリカの小学校だったと思いますけれども、視察をされて、二十人のクラスだ、こういうところではいじめは起こらないだろうという発言をされたんですよ。  ですから、やはり認識としてはそうだと思うのですね。四十人のクラスと、本当に人数が少なくなったら行き届いた教育ができることはもう経験的にわかることであります。だから、そういうことにもう世界は流れているわけですから、日本は踏み切るべきだというふうに思います。  これは既に、一九七七年、世界教職員団体総連合の二十六回総会でのイバート会長の基調報告がございますけれども、こう言っているんですね。教員ならだれでもが経験から知っているように、四十人は群れである、二十人で集団だというふうに言われています。これは雲泥の差があるということなんですね。  だから、厳密に言えばどうなのかという点でいえば、それはいろいろあるかもしれません。しかし、世界のそういう流れ、あるいは学級規模を縮小していく、一人一人の子供たちに行き届いた教育をするという観点からすれば、それはもう縮小しなければいけないわけであります。そういう点では、私は、文部省にきちんとそういう方向でやはり取り組んでいただきたいというふうに思うのです。  ところが、ここで全体として昨年の財政構造改革法がネックとなって、定数改善の今年度じゅうの達成も二年延長ですね、三十人学級に踏み出せないということになっているわけであります。これは本当にとんでもないことだと言わなければならないと思うのです。  どうでしょうか。ここで財政構造改革法をやはり見直すというような御決意は、官房長官にはございませんでしょうか。
  393. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 石井委員、先ほど来いろいろ小中の先生方の実態の例を挙げてお話しになりましたが、私の時代は一学級六十二、三名でございました。もちろん男女共学などではありませんでした。  それから、ゆとりがないからやめたいと半数近くの先生がアンケートを出している。私としては、これはちょっと、ゆとりがないというのはどういうことなのか。文部大臣がおりますから一番わかっておると思いますが、ゆとりがなくてやめたいという人方が半数近くもいる、これはちょっと問題があるんじゃないかな。  じゃ、それを直すには増員すればいいのか。これはただ単に増員だけの問題ではない。青少年問題には私どもも真剣に取り組みますが、その解決策に二十人学級とか三十人学級にすればいいのかということは、私は、なかなか問題がある。二十人単位という話もしました。そういうことになれば、いじめも何も起きない、見張りもできる、監視もできると。  しかし、実はこういう問題は、まあ小学校では起きないんでしょうが、中学校では、全体が一年生から三年生まで二、三百人のところでは起きないけれども、マンモス学校、千人や千五百人、こういうところにむしろ起きてくるんじゃないか。私は今先生の御意見を聞きながら、専門家ではございません、調査しておるわけじゃないんですが、そういうような状況のところの方が大事だ。しかし、都会ではなかなか、小さな学校をやろうと思っても土地がないという問題もあります。  私は地方の出身でございますが、このような悲惨な事件が連発していることに驚いているわけであります。うちの方の地域ではめったに起きない、こういうことでございますが、しかし、地方にもだんだんうつっている問題もあります。いろいろな話を聞いてみますと、漫画とか雑誌とかあるいはテレビの放映、こういうようなものも相当影響があるんじゃないか。これらの点についても研究をしてみなければならぬ、こういうふうに思っているところでございます。  これによって財革法を見直す。財政再建はやっていかなければいけません、教員をふやすために財革法の見直しというのは考えておりません。
  394. 石井郁子

    石井(郁)委員 なぜか六十人のクラスの時代もあったという話に戻ってしまうんですけれども、それは本当に戦後のそういう時期でありまして、これだけ今時代が変わり、社会情勢が変わっているわけですから……(村岡国務大臣「戦後じゃない、戦前から」と呼ぶ)戦前からそうかもしれませんが、そういう時代の話を何で持ち出されなければいけないのかと思うのですけれども、世界的にはもう二十五人以下のクラスになっているというのが常識なんですよ。やはりその常識に立っていただきたいということが一つあります。  それから、今の子供の状況というのは、確かにいろいろな要因が絡まっているということも言うまでもありません。しかし私は、やはり政治の責任として、子供と教師のこうした困難、それはもう現場でうめき声が聞こえると言っていいほどですよ、そういう実態に私たちは何ができるかということを申し上げているわけであります。  それで、財革法は見直せないという話ですけれども、私は、この財革法がある限り、二十一世紀まで結局クラスの規模は今の四十人の定数でいくわけですよ。ですから、やはり早急にちゃんと見直すということが必要なのです。  私、きょうは委員長、ちょっとお許しをいただきまして、資料を用意しておるのですけれども、よろしいですか。
  395. 越智通雄

    越智委員長 回しました。配ってあります。
  396. 石井郁子

    石井(郁)委員 その財革法で、政府の方は財政事情というふうにすぐ言われますので、ではどれほどの財政需要なのか、本当に巨額なお金がかかるのだろうかということで、試算をしてみました。  来年度から小学校と中学校を並行して一年生から三十人学級を実施する、六カ年計画で行うというふうに考えたときの必要な予算、国庫負担分です。初年度三百十五億円です。二年度二百七十一億円。三年度で三百九億円です。四年度、五年度、マイナスになっていくのです。こういうわずかな額、これをわずかと言うかどうかはありますけれども、済むことがわかりました。  今銀行支援の三十兆円ということから見ますと、〇・一%ですよ。千分の一ではありませんか。これが実施できないというのは、子供から見たらこの国の政治はこれでいいのかということになりますよ、銀行には甘くて子供と学校には本当に冷たいという姿そのものですから。私は、こういう点でもきちんとやはり調査をしてほしいということで、お願いというか、申し上げているわけであります。  どうでしょうか。真剣に、誠実にこの点で対応していただきたいということを、重ねて文部大臣に申し上げたいと思います。
  397. 町村信孝

    ○町村国務大臣 財革法改正前提にしてこれを調査しろと言われてもなかなかそこは難しいところもございますが、ただ、先ほど来委員指摘のような世界の動きといったようなことも私どもも当然念頭に置いてございますので、どういう姿が教育効果が上がるかといったようなことにつきましては、当然、文部省の中で常日ごろ、これからもまた検討、勉強していかなければならない課題であろうし、また、そういう姿勢で臨んでいきたいと考えております。
  398. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、悉皆調査というのは、今年度の予算の組み替え、あるいは今、補正予算という話もございますから、そういう中でぜひ盛り込んでしていただけるのではないか、そうしていただきたいということなんです。  その際、中学校が今大変困難だということですから、中学校からまず三十人学級に踏み切る、こういうことも考えられるわけで、そういうことも含めてぜひ調査を至急に盛り込んでいただきたいということを、重ねて要求したいと思います。  では、次に養護教諭の役割について質問いたします。  黒磯北中の事件では、あの子供は保健室に通っていた子供でした。保健室登校ということが昨年から大変注目されておりますけれども、保健室登校が前回調査時の比で倍増しております。不登校や登校拒否も戦後最高を記録しているわけであります。事件のあった栃木県の教職員協議会の調査によりますと、同県内の小中学校の保健室登校は、一九九五年から九六年の一年間に一・三倍なんです。そういう状況ならば、本来、養護教諭も財革法で先送りされていますけれども、やはりきちんと計画どおりにやるべきだったというふうに思うのですね。  その点では、せめてというのは変ですけれども、養護教諭、二年延長しましたけれども、計画どおり実施するとしたら一体どのくらいかかっていたのかということをお示しください。
  399. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 お答え申し上げます。  養護教諭の改善数、残り百九十八人ということでございます。平成十年度は、現在予算でお願いしております数字では、その三分の一の六十六人ということを予定しているわけでございます。  およその計算でございますが、ちょっと数字を計算しておりませんけれども、一人頭、給与費が国庫負担上四百万円ということでございますので、四百万円掛ける残り百三十二人ということで、ちょっと暗算できませんで恐縮でございますけれども、それぐらいの金額になるかと存じます。
  400. 石井郁子

    石井(郁)委員 百九十八人ですから本当にわずかな先生だったのですよね。せめてこの年度内、計画どおりに手当てをすべきだったというふうに、私は今の事態を見るにつけやはりそのことを強調しなければなりません。  保健室がなぜ大事か。ここは、ほっとするオアシスだと言われているわけでしょう。点数をつけないから子供たちが相談に行きやすい。だから子供たちにとって本当に心のいやしの場なんですね。また、養護の先生はいろいろな信号を真っ先に受けとめる先生でもある。そしてまた、それを他の先生方にも返し、学校全体として取り組んでいくということも言われているわけであります。  今保健室に来る子供たちが本当に多くて、これは日本学校保健会の昨年の調査によりますけれども、保健室の利用状況は六年前の一・二倍です。平均して大体一日三十人から四十人だ。四百人の規模の学校で、一人の先生でこれだけの子供たちを受け入れている。時には延べ百人を超えるというふうにも言われているわけです。  養護の先生というのは学校の宿泊の行事にもついていくことがある。そのときには保健室は閉めなければいけないということもあります。それから日常の健康診断なんかの業務がございます。その上に、休みたい、疲れたといって子供たちが絶えず訪れる。それから保健室登校という不登校の子供たちが常時いるという中では、本当にもう今、手いっぱいの状況だというふうに言われています。  ですから、私はここでぜひお願いというか申し上げたいのは、養護教諭は三十学級以上複数配置ということになっていますね。ところが、今子供の数が減ったりしまして、二十九学級になったらたちどころに一人が吸い上げられてしまうというか、削られてしまうことになるのです。一学級減っただけで二人から一人になるというのは、もう大変な違いですよね。この複数配置ということを今真剣にやはり考えるべきだというふうに思うのです。  私どもは、三百人規模以上の学校では複数配置をということを主張したいと思いますけれども、二十九学級になった途端に引き揚げてしまうというのは余りにも実態に合いませんし、無慈悲なやり方だと言わなければなりません。文部大臣、いかがでしょうか。
  401. 町村信孝

    ○町村国務大臣 今委員指摘の、養護教諭のいわば新たな役割といいましょうか、そういう意味で大変重要な機能を学校の中で果たしてもらっているというのは委員指摘のとおりでありましょうし、またさらにスクールカウンセラー、これも数が少ないのでありますが、今約千校に巡回できるような体制をとっておりまして、これを平成十年度は千五百校を回れるようにしたい、このような対応にしてございます。  現在の第六次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画、平成五年度からやっている中では、一つの学校で三学級以上の学校については全校に一人の配置、さらに三十学級以上の大規模校においては複数配置、こういうことでございまして、それに向けて今着々と進めているわけであります。  なお、委員指摘の、三十学級が例えば二十九学級になったら直ちにそれを引きはがすのではないかということでございますが、ちなみに現実どうかといいますと、これは平成九年五月一日現在の複数配置の状況でございますが、小中合わせて、養護教諭が複数配置になっている学校が全体で三百五あるのでありますが、そのうち三十学級以上の学校、いわゆる大規模校でありますが、ここに百九十四校、それから、二十九学級以下校、大規模よりは少し下のところですが、これが百十一校ということ。  したがって、個々の具体の配置というのはそれぞれの都道府県教育委員会実態に応じて配置をやっておりまして、三十学級が二十九学級になったら直ちに引きはがすというほど無慈悲な対応はしていない、こう私は理解をいたしております。
  402. 石井郁子

    石井(郁)委員 そういう声も聞いておりますので、この点では額面どおりじゃなくて弾力的に対処されるということを言われましたので、そういうふうにぜひ御指導を強めていただきたいと思います。  さて、次の問題なんですが、事件は中学生に多発をしています。中学生の新しい荒れの大きな要因となっているのが内申書重視の高校入試ではないかと考えています。今問われているのは、高校入試においてやはり内申書が重視されまして、この内申書が中学生にとって大変な重圧になっているという問題でございます。これはもうストレスの原因ともなっているわけです。  高校に入学したての子供の作文をちょっと御紹介したいと思うのです。  中学生活は、高校入試という言葉がいつも頭の中にある状態でした。そして、何かあると内申書に響くと言われて、余りのびのびと過ごせなかったかもしれません。だから、本当に具合が悪くても、とりあえず学校に行って早退という形で帰ってくるということも時々ありました。おかげで欠席日数は三年間でたった一回。でも、少しもうれしいとは思えません。  もう一つ御紹介します。  学級委員長や生徒会会長などをやると内申点が上がると言われた。まじめに掃除をすると内申点が上がると言われた。掃除もまじめにやったし、ちゃんと勉強もやった。体育委員長までやって、内申点を気にしていた。けんかしたいときでも内申点のことを気にしてぐっとこらえた。健康にも気をつけた。入試をするまでは、なんか束縛されるみたいで嫌だった。我慢の連続だった。  こういう声でございまして、この声から読み取れると思うのですけれども、新しい入試のシステム、観点別評価とか、調査書、内申書重視ですね、これが中学生を閉塞的な心理状況、ストレスをいっぱい抱え込んだ状況に追い込んでいるし、これはもう生徒管理ともなっていると言わなければなりません。  大臣、このシステムが子供たちを追い込んでいる一つだというお考えはお持ちでしょうか。
  403. 町村信孝

    ○町村国務大臣 内申書を高校入学者選抜に使うということは、昔は、どっちかというと一発勝負型といいましょうか、一回の学力検査だけで合否を決めるというスタイルだったんだろうと思います。都道府県によって違いがありますが、いつかの時点から、内申書もあわせて使うと。今大体、それぞれ五分五分の感じで見るというところが多いようでございます。  結局それは何かというと、要するに、一回の試験で、たまたまその日は風邪を引いていたとか、たまたまぐあいが悪かったなどの諸般の事情で、平素はできるんだけれども、余りにもその一回の試験当日がうまくいかなかったので行きたい高校にも行けないというのは、やはり合理的ではなかろう。  やはり平素の努力を見る必要があるだろうし、その際、努力という場合に、いわゆる学力検査という試験の点数だけではなくて、どういう分野で努力をしたかとか、あるいは意欲があったかとか、あるいは思考、判断力があったかという、むしろそういった観点から見て、その子にもしいい点があれば、そういうこともむしろ評価した方が多面的な評価になるのではないかという意味で、こうした調査書というものができ上がってきたんだと私は思っております。  したがいまして、中には、私はそういうことを言う先生は本当にいい教師だとは思いませんが、言うならば、君たちの人生はおれの内申書が握っているんだぞと言わんばかりの態度をとる教師も中にはあるという話を聞いて、何とひどい先生だろうと思ったりもいたしますが、本来の調査書の趣旨というのは、決してそういうことではないということであります。  そして、あとは、それぞれの高等学校が、あるいはそれぞれの県でどういう対応をするかというのは、それぞれの設置者の判断ということになっているわけで、現実に香川県では調査書を用いない選抜もやっているというケースもあるようでございます。
  404. 石井郁子

    石井(郁)委員 私はここで二枚目の資料をちょっと御紹介したいのですけれども大臣は、こういうのをごらんになっているのでしょうか。  先ほどの作文も茨城県の高校の生徒なんですね、県立高校の生徒でございますが、その茨城県では、この内申書が使われているわけであります。ここには、皆さんのところでは白黒の印刷なんですけれども、赤い字で書かれているというのは小さい字のことですが、それが点数なんですよね。  これによりますと、学級活動をしたら二点、生徒会活動三点、ボランティア活動二点、校外の団体に表彰されれば十点、部活動を三年間続けたら五点、全国大会などに出場すれば二十点ということで、極めて具体的にこれは示されているでしょう。  先ほどの黒磯の話に戻りますけれども、やりたくない部活でも三年間続けるということがあるし、もしやりたい部活で、そこで挫折をしたら、これまたその子にとっては将来がそこで一つ閉ざされるということにもなりますので、これは、大臣が言われたような平素の日常の活動評価するということとはもう離れて、極めてがんじがらめに、行動、そしていろいろな活動、もちろん学習が、日常的にこうして点数化されているということなんですね。こういう事態にまでなっている。  ですから、高校生になって中学活動を振り返ると、自由がなかったとか、苦しかった、つらかった、そういうことを言わざるを得ないというのは、ここに起因しているわけであります。  私は、先ほど大臣の御答弁ありましたけれども、高校受験とか内申書に基づく生徒管理から子供たちをすぐにも解放しなければいけないというふうに考えているものですけれども、この資料をごらんになって、再度、大臣どうでしょうか。
  405. 町村信孝

    ○町村国務大臣 文部省で必ずしもすべてを承知しているわけじゃございませんが、ここまで点数化しているのは、どうも茨城県ただ一つのようでございます。  ただ、これをごらんいただきますと、例えば、学習の記録の所見、とても熱心な態度であったとか、生徒会の副会長として活躍したとか、野球部のキャプテンとして県大会に出たとか、むしろそうした、必ずしもテストの点数だけでない、評価すべきこの子のメリットというものをここにあらわしているわけでありまして、私がもし高校の校長さんならば、ああ、こういうすばらしい子ならむしろとろう、仮に多少学力検査の点数が悪くてもこういう子はぜひとりたいと思うメリットも、ここに記されているのもまた事実でございましょう。  したがいまして、私は、文部省として、こういう、全人格を点数化するとここにキャッチフレーズみたいなものが書いてございますが、これのよしあしは、それぞれの県において、あるいは設置者において、一番いいと思う方法でやってもらうのが文部省の基本的なスタンスであるということは申し上げさせていただきます。
  406. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、本当に文部大臣がそのようにお考えでしたら、そこをちゃんと貫いていただきたいと思うのですが、しかし、実際は、こういう方向を文部省が挙げて推進してきたのじゃないんですか。  これは、高等学校入学者選抜の改善等に関する状況ということで、ことし二月に出されたものです。だから、高校入試を多様化するんだ、そして観点別評価をするんだ、どの県がどこまでこれを実施しているかということを逐次報告しているわけでしょう。  これによりますと、調査書でボランティア活動についても評価をするというような県が三十八県になっているとか、こうして推進しているわけですよ。だから、県独自で、設置者の判断でと言われますけれども文部省がこれをやれやれと言っているわけで、ここのところは文部省は非常に責任が重いのですよ。
  407. 町村信孝

    ○町村国務大臣 私どもは、今の子供たちの多面的な能力をただ一回のテストだけで判断する、そういうやり方はやはりおかしいのではないか。むしろ、その子その子のいろいろ持っている、点数にあらわされた理解力ではない面で非常に評価すべき点があるのだろう。そういう多面的な評価をするための一つ方法としてこういうこともあるのじゃないでしょうかということで全国のやり方をいろいろな形で御紹介しているのであって、後、それを各県がそれぞれどういう形で多様な高校入試、さらに言えば私は大学入試もそうだろうと思いますが、多様な方法で入学試験に御努力をいただくというのは、私は、それぞれの県の試みがあっていい、こう考えております。  一斉に、これをやりなさい、これはやってはいけません、そういう統制的な文教行政は、少なくとも今後は、今まではどうか、余りそれを言うと先輩文部大臣がおられるのでいかがかと思いますが、今の文部省の方針というのは、できるだけの地方分権をやり、できるだけそれぞれの学校、それぞれの地域の主体性を重んじてやっていこうというのが今の方針でございます。  逆に、今もし委員が言われたような形で、こういうものを全部やめる、それは一案かもしれません。しかし、やめてどういうことが生ずるかというと、今度はまた、もとの一回きりの、一発勝負の入試に逆戻りいたします。それが本当にいいのだろうかなと思うと、やはり、こうした子供のメリットをむしろ積極的に書けるような、さまざまな欄のあるこういう調査書の意義というのもまたむしろあるのではないだろうか、こう私は考えております。
  408. 石井郁子

    石井(郁)委員 文部大臣に重ねて言わなければいけないのですけれども、一発勝負かそれとも日常の評価か、今そういう選択ではないのですよ。日常の評価というのが、この調査書というのが、関心とか意欲とか態度、これこそ人間の心に属する問題じゃないのですか。こういうところを日常的に評価するという、行動とか性格まで評価の対象になっているのですよ。それが新学力観と言われるものなんです。  だから、そこが本当に行き過ぎだということで、やはり是正をされるというふうに先ほど来の御答弁を受けとめていいのでしょうか、そこが一番肝心なところなんです。というのは、そういう学力観、新学力観と言われるものですけれども、そのもとで人格を点数で評価するということがもう現実に進んできているんですよ。それの極端なあらわれが茨城の、きょうお示ししたものですけれども。  ですから、中学生はいつでも先生に見られている、こういうもとで本音を出せない。いわゆるよい子競争と言われているでしょう、今。いつでもよい子にならなくてはいけないのですよ。中学生は一番反抗心旺盛なときじゃありませんか。ところが、それが許されない。ここが、ストレスがたまる、あるいは時には切れる状態にまでいくという、こういう問題なんです。  特別活動などを点数化する、あるいは行き過ぎた内申書重視の高校入試、あるいは推薦制というのもあるんですね。この茨城の場合は推薦制の枠が三〇%なんですよ。推薦といったらやはりそうでしょう、先生に推薦をもらうわけですから、その先生によく見てもらわなくてはいけないわけですよ。こういうことが物すごく子供たちを息苦しくさせている、これはあるでしょう。これは先ほど来作文でお示ししたとおりであります。だから、ここは、中学生の発達における本質的な障害になっているという認識をやはり持ってもらわないと困るのです。いかがでしょうか。
  409. 町村信孝

    ○町村国務大臣 例えば、高校入試の多様化ということを私どもは言ってまいりました。それは、先ほど申し上げたように、一回こっきりの試験の点数だけでは決めない方がいいと考えるからであります。例えば推薦という制度が、それが全部というのだと困りますが、一定割合であるならばそれもまたよし、あるいは内申書重視でいくのもよし、あるいはかなりその場の、当日の試験にウエートを置くのもよし、それはそれぞれの見方があると思うけれども、ただ、今の文部省の立場として考えておりますことは、多面的にその子供のよさを、いいところを伸ばしていこうという発想で言っているのであります。  ここまで点数化することの是非は、あえて私は、それは茨城県の判断ですから申し上げませんけれども、何も人格を点数化しようということが目的ではございませんで、当たり前のことでありますけれどももともと点数化できる話でもありませんし、そうではなくて、子供たちのいい点、伸ばしてあげたい点をどう評価して、それを中学から高校に伝えていくかという趣旨でいろいろな工夫をしているというふうに御理解をいただければ、こうした調査書、内申書というものがすべて悪であり、すべてストレスはここから来ているという言い方にはなってこないのではなかろうかな、こう私は考えます。
  410. 石井郁子

    石井(郁)委員 今回のいろいろな一連の中高校生の事件の中から、新聞などでもいろいろな投書がございます。大臣もごらんになっていると思いますけれども、やはり高校入試内申書重視路線というか、この弊害を訴えている声は多いのじゃないでしょうか。  私は一つ御紹介するのですけれども、二月二十五日ですけれども、高校の先生です。先生の立場で見てもこういうお訴えなんですけれども、内申書重視の弊害はよい子志向の人格管理になることだ、それは制度そのものから必然的に生じてくる問題なのだというふうに言われています。だから、決してもう個々の先生の考えでどうかできるという種類の問題じゃないんですね、今。制度がつくり出している弊害だということです。  そういう意味で、子供もがんじがらめというか、いつも見られている緊張感にさらされているけれども、こういう細かな採点というか点数化する、あるいは評価をするという、先生方もまた大変な御苦労をされている。より一層の困難をつくり出している。  先ほど官房長官が、どうしてゆとりがないのかというお話がありましたけれども、現場はこういうことで物すごい事務量なんです。だって、日常的に、授業で何回手を挙げたとか、そういうことまでカウントしていかなければいけないのですから、もう先生も緊張のしっ放しだということになるわけですね。それで、私どもは、もっと子供とゆったりと、ゆとりのある、そういう子供と接する時間を欲しいという意味でも人をふやさなければいけないと申し上げたのです。  再度伺いますが、やはりこれは、茨城のこういう例は行き過ぎた内申書重視だというふうに考え、この制度のあり方をもっと検討するという点で、いかがでしょうか。
  411. 町村信孝

    ○町村国務大臣 例えば手を挙げた回数で意欲をはかる、もしそういうようなやり方でその生徒の意欲を見ているとすれば、それは私は、正直言って、そんな方法でしか意欲なんてわかりませんかとあえて申し上げたいですね。そんなことでもし忙しいのなら、どうぞおやめください。だれが何回挙げたなんて回数を数えること自体が、そんなことまで私ども文部省、やれなんてもとより言っておりません。  それよりは、逆に今度、仮にこういうものをやめたら、そして、では高校入試は一回の試験だけにしましょうと言ったら、多分またごうごうたる反発、批判が出てくると思います。逆にそういう批判があったからこそ、内申書も、日常の子供の活動もやはり考えて高校入試をやった方がいいよといって今の制度が過去の反省においてできたので、これをやめたら、またもとの姿になって、また同じ批判が出てくるという意味で、私は、こうした内申書重視が一概に悪いとかということではなくて、何度も申し上げるようですが、むしろ多面的な評価ができる一つ方法であろう、こう思っております。  ただ、ではその調査書の書き方とか表現の仕方、それに改善、工夫の余地があるかないか。それはまたいろいろ議論の余地もあるでしょうし、そこはまさにそれぞれの県なり学校なりで大いに工夫をしていただいてよろしいのだろう、こう思っております。
  412. 石井郁子

    石井(郁)委員 きょうは労働大臣もおいでいただきまして、大変お待たせいたしましたが、あと残りの時間で、特に父母の教育参加の問題、とりわけ父親が教育にどうかかわっていくかということで、ちょっと御所見を伺いたいと思っているのです。  もう一枚の資料を持ってきておりますけれども、これを見ても、改めて日本の父親がいかに子供と接していないかというのがわかるのです。  国際的に見ても低い日本の夫の家事負担ということで、妻と夫でどのぐらいこういう問題でかかわっているかということですけれども、例えば乳幼児の世話を見ますと、日本は〇・九%ですね。圧倒的に日本が少ないということがわかります。ドイツやスウェーデンは一六%ですから、極端ですね。それから次のところで、男性の家事協力度の国際比較ですけれども、ここでも、子供の世話というのは日本は一二・一%です。ほかはもう三割台に大体届いているわけですね。  そういう点で、これはもういろいろと指摘されてきたところなんですけれども、今、学校の問題、そして子供たちのこんな困難な問題をやはり大人がかかわって解決していくというときには、父親がもっと家庭にも帰る、また学校にも出ていく、これが私は大変大事だというふうに思うのですね。そのためには何が必要なのかということになりますと、やはり日本の働くお父さんの長時間労働や残業の長さや、そういうことが問題にならざるを得ないわけであります。  労働大臣がその点の御認識をお持ちかどうかということを、つまり、長時間労働や労働日の多さなどが父親が教育参加をする上での障害になっているというような御認識をお持ちかどうかを伺いたいと思います。
  413. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 今先生のお話のように、私は、日本の子供が日本人として生きていく知恵といいますか、子供としてのしつけといいますか、これをきっちりと身につけていくのは、学校よりもやはり家庭だと思っております。そういう意味では、家庭の一員である、今御指摘の父親が学校の参観等に参加をして御一緒におやりになるということは、まことに私は結構というか、むしろそうなければならない。  そのために、不必要な長時間労働であるとか、あるいは有給休暇を完全に消化していないなどということが数字の上で出ているようでございますけれども、必要であれば、文部大臣とも御相談して、そういうものは十分消化していただけるように私は話してもいいと思っております。  ただ、時間の短縮というのは、賃金を下げずに時間を短縮するということは、これはやはりそれにたえられるだけの実体経済をつくらなければならないというのは、これは市場原理でございますので、そこのところだけはしっかりと押さえてやっていきたいと思っております。
  414. 石井郁子

    石井(郁)委員 先週土曜日の読売新聞の夕刊で、これは北海道の、大臣は北海道ですから、稚内南中学校の、父親参加による荒れた中学の再生という感動的な記事が一面トップでございました。  そういう意味で、今の教育の再生に本当に父親の役割が大きいということで、これはぜひ文部大臣として、今年休のお話もございましたから、年休をどんどんとって学校教育に参加をしていくということでは、労働大臣や通産大臣にも提案をして、そういう方向を推進されるという御決意、いかがでしょうか。
  415. 町村信孝

    ○町村国務大臣 委員の御指摘のとおりであろうと思っておりまして、私も、既に幾つかの経済団体とお話をしまして、残業を少なくしたりとか休暇をとりやすくしたりとか、あるいは単身赴任をできるだけ少なくするようにというようなお願いをしてございまして、父親が母親とともに子供の教育に当たるということに理解を求めていく。そのために、労働大臣あるいは通産大臣のお力もかりながら、ぜひそういうことでやっていきたい。  文部省全体でも、子供と話そうキャンペーンというのを前文部大臣のときから一生懸命やっておりまして、いろいろな面で、親子の触れ合いの場、あるいは自然体験活動の実施等によりまして、父親も母親もともに子育てを一生懸命やる、そういう社会的な雰囲気の醸成、またそのための具体的なプログラムも積極的に展開をしていこうと思っております。
  416. 石井郁子

    石井(郁)委員 最後になりましたけれども、橋本総理が今国会の所信表明で、「今こそ大人の責任で対策を考え、実行しなければなりません。」と演説をされたわけであります。  最後に官房長官、この総理の所信表明との関係で、子供たちのために政治が何ができるかということが緊急に求められているわけでありますので、ぜひ閣議で父親の参加の問題等々も御検討される、そしてまた、やはり財革法も、見直しを含めて、もっと教育の予算もふやしていくという点での御答弁をお願いしたいというふうに思います。
  417. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 青少年の問題については、内閣を挙げて対処をしていきたいと思っております。  先ほどから委員お話を聞いておりました。うなずけるところもございますが、そうでない部分もございまして、どうもあの作文聞いておりますと、今の少年全部じゃないなと。何か、よい子になるために学級委員もしたとか掃除もしたとか、それではもう子供自身が夢も希望もないのじゃないか。これはもう本当に、先生の方もそうだし生徒の方もそうだし、もうちょっと私ども、きょう初めて先生からその実態みたいな、あるいはその一端をお聞きいたしました。文部大臣とも協議をしながら、一生懸命やっていきたい。  財革法の方は、増員しろということでのあれでは、これは見直しはできないし、財政改革はやっていかなければならないと私は思っております。
  418. 石井郁子

    石井(郁)委員 終わります。
  419. 越智通雄

    越智委員長 これにて石井さんの質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  420. 上原康助

    ○上原委員 どうも大変遅い時間になって、関係大臣の皆さん、もうしばらくおつき合いください。  大蔵大臣、また大蔵委員会もあるようですから、本当は質問もあるのですが、きょうは四名の閣僚に絞ってお尋ねしますので、どうぞ少し体をいたわってください。  そこで、どうも沖縄問題について絞り込んでお尋ねする時間がなかなかありませんで、きょうは基地問題と振興策について、もう少し問題整理をしながら、できるだけ展望が開けるようにお願いをしたいのですね。  そこで、まず最初に、去る十一日、沖縄県側といわゆる審議官クラスの方々が、六時間にわたってちょうちょうはっし、いろいろ、海上へリ問題、振興策等々についてお話し合いをしたということです。断片的には聞いておりますが、この会談というか会議によって、政府側はどういう印象をお持ちになって、あるいは、これから基地問題、振興策、どういう筋立てで進めていかれようとするのか、その点からどなたか明らかにしてください。官房長官かな。
  421. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 上原先生、地元でございますから、今までの経緯はよく御存じだと思いますので、前置きはいたしません。  実は、岡本前総理補佐官が先月二十七日に大田知事と会談した際、知事が拒否表明以来初めて、知事から国に対しまして、早期会談の要望が寄せられたところでありまして、今おっしゃいましたように、十一日には、沖縄県において、内政審議室、外務省及び防衛庁の審議官、そして大田知事、副知事が出席をいたしまして、約六時間近くと聞いておりますが、意見交換を行った。  それについては、大田知事は拒否表明のいろいろな理由を述べられた。こちら側からは海上へリポートの必要性を述べた。簡単に言いますと平行線、こういうような状況で、なお私どもとしては沖縄県側と、最良の選択肢として出した海上ヘリポートでございますから、また会談を続けながら理解を得たい、こういうのが偽らざる現状であります。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  422. 上原康助

    ○上原委員 内容はまたもう少しお尋ねしますが。  それと、三月十三日、カート・キャンベル国防次官補代理が政府といろいろお話し合いをしたと思います。実は私も、先方からの御要望もありましたので、お会いする機会があったわけですが、そう長い時間ではありませんでしたがいろいろ意見交換をいたしました。そこは何かガイドラインのことが主題だったような報道もなされておるのですが、海上基地問題、沖縄のSACO案件についても意見交換なさったと思うのですが、そこではどういう会談で、何か双方のいい感触でもあったのかどうか。  まず、この二つの会議の模様を聞いてから、具体論に入りたいと思います。どなたか説明してください。
  423. 高野紀元

    ○高野政府委員 十三日に開催されました俗称ミニSSC及びSDC代理会合でございますが、先方から、国防総省からキャンベル次官補代理、国務省からデミング東アジア太平洋地域担当補佐官等が出席いたしまして、日本側外務省は田中北米局審議官、防衛庁から宝槻審議官等が出たわけでございます。  そこで沖縄問題についても意見交換がなされまして、日本側よりは、日本政府としては地元の理解を得られるよう引き続き最大の努力をしていくということを米側に伝え、米側よりは、日本政府の立場を理解する、今後とも日本政府をサポートしていく考えであるという発言がございました。日本国内で、米国が本件につき日本側の立場を非難している等の報道がなされているけれども、米政府の一人としてそのようなことを思っている者はいないという発言がございました。  さらに米側よりは、沖縄を含め地元住民とのよき隣人として、よい関係を保っていきたく、いろいろな意味での地域のプログラムにも積極的に参加していきたい、こういう趣旨の発言があったところでございます。
  424. 上原康助

    ○上原委員 どうも形式的なお答えで、結局今のところ、二つの会談とも余り沖縄の抱えている課題を解決していく上でのいい方向性は探れなかったというのが実情のようですね。  そこで官房長官、お時間の都合もあるでしょうから先にお尋ねしますが、平行線ではいかないわけですよ。私は、特にきょう、外務大臣にもぜひ、よくお答えもいただきたいし聞きたいこともあるのですが、やはりここまで問題が行き詰まってしまいますと、何らかのきっかけをつかむとか、あるいは別の角度から議論をする切り口を求めるとか。  これは公式的には、おっしゃるように、海上ヘリはキャンプ・シュワブ沖に移設するというのが現段階では最上のプランである、構想である、計画であるということでいいわけなんだが、これだけ県知事がきっぱり五つの理由をお挙げになってノーと言った以上、なかなか、受けましょうと、皆さんがどう粘り強く説得なさるといってもそうならないような気がして心配なんですね。  そういう意味で、基地問題が結局行き詰まるということは、私は何も、リンクさせるとかさせないとかいう議論もいろいろありますけれども、結果として、人間のやることですから、心情的にというか心理的に相当振興策問題にプレッシャーになる。あるいは、テーブルに着いても、誠心誠意というのか、従来精魂を打ち込んできたような方向にならない懸念も持たざるを得ない面もあるわけですよ。そこはぜひ、むしろ日本政府の方がもっと懐を深く広くしていただいて、長い間の沖縄の犠牲や県民感情に対して、積極的に打開策を講ずるということが私は必要ではないかと思っている一人なんです。  そこで具体的にお尋ねしますが、岡本補佐官もおやめになって、余計に沖縄側の意向を受けて政府とやりとりするのがどうなるか心配もいたしますが、しかし、それはそれなりの、審議官クラス、局長クラス、いろいろな方々がいらっしゃるから、そう心配はないのではないかとも思ったりします。  それで、橋本総理はこれまでしばしば、各党の御質問者に対しても、沖縄側から何か提案があるというよりも、沖縄県知事が会いたいというなら、いつでも私は、国会の都合等はあるが、お会いしたいということをおっしゃってきたわけですよ。今のところそういうあれはないのですか。  いつごろ、橋本総理と沖縄県知事の会談というか、そういうセッティング、セットをして、一遍はそれをやらないといかぬわけでしょう。一遍というか、まずスタートとしては。これまで、昨年の十二月二十四日以降なされていないわけですから。もうやがて三月も下旬に差しかかりますよね。そういうきっかけは今のところ政府としてお持ちではないのか、あるいは沖縄側から、まだそういうタイミングではないということなのか。  予算の問題なんかも、衆議院でもし片づくならば、私は私なりに努力もしてみたいと思っているのですが、官房長官の、官邸としての、総理のお気持ちも含めて、明らかにできる範囲で結構ですから、聞かせてください。
  425. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 二月でございますか、大田知事が拒否の表明をなされてからここまで来ているわけでございますが、衆議院の予算が上がりましてもまた参議院もございまして、日程調整というのはなかなか難しいわけでございますが、総理は、大田知事も総理自身も日程調整できればお会いをして意見も伺いたい、こう思っておりますけれども、私どももこの前、審議官の方々と数時間話しましたが、その折でも、大田知事の方から橋本総理にお会いしたいという声が出てくるものと期待しておりましたが、その場では出なかった、こう聞いておりまして、あの会談を受けて今後大田知事の方から意向が示されるものではないか、こういうふうに考えておるところであります。
  426. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、どちらから、どちらからというかそれは知事の方から御要望なさるのが手順として結構かと私は思いますので、政府の立場としては沖縄県知事から、大田知事から。それぞれの見解ははっきりしているわけなんだが、それでもこれはほっておくわけにはいきませんからね、この重要課題というのは。橋本首相に対してお会いしていろいろ意見交換したい、あるいはこれからなおまた基地振興策についてもお話をしたいという御要望があれば、いつでもお受けする、そういうお立場にあるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  427. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 双方の日程が合えば、これはお会いする。意見も伺いたいし、基地の問題も、海上へリポートの問題も、あるいはまた振興策についてもお話があろうかと思いますので、そういう意向であります。
  428. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ、ただそれを待つのではなくして、政府の方からも、いろいろのルートをお使いになって、環境が整うように御努力を願いたいと思います。  官房長官、もう結構です、どうぞ。またいろいろお忙しいようですから。  そこで私は、外務大臣防衛庁長官鈴木長官もそうですが、今お話をお聞きになって、ここまで問題が膠着状態になりますと、やはりこれはある意味では外交案件なんですよね、外務大臣。あなたに期待する。私も期待しているのに、何か最近余りお元気ないね。元気を出してやったらどうですか。外務省が時期が来るまで待つというわけにはいかない。私はいつも言うんだが、大蔵問題でもそうなんだが、余り官僚に任すからこういうのは行き詰まったり全然停滞する。これは防衛庁だってそう。  そういう意味で、外交を主管というか統括する外務大臣として、今の沖縄問題、沖縄の基地問題、ただSACOの最終報告をやれば二一%少なくなるのだから、五千ヘクタール少なくなるのだからというだけで待っておれる問題じゃないんだよ。あなたは今の事態をどうごらんになって、これからこれをどう打開していかれようとするのか。聞く機会がなかったので、きょうは少し聞かせてください。
  429. 小渕恵三

    小渕国務大臣 上原先生おっしゃるように、この問題に対しての大変厳しい状況については認識をいたしておるところでございます。ただ、普天間の移設問題というのは、まさに橋本総理、クリントン大統領、二人の首脳会談においてお約束のあった問題でございますので、橋本総理としても大変な思い入れがあろうかと思っております。  そういう意味におきまして、この問題はSACOの問題の中でも最も象徴的な問題でありますと同時に、普天間の基地の移設ということが行われますれば、まさにこれから大きく進展もしていくだろう、こういうことで見守ってきたわけでございますが、上原先生御指摘ではございまするけれども、なかなかこの問題については、残念ながら現時点では方向性が定まっておりません。  しかし、ここまで参っていることでございますので、地元の県知事さん初め皆さんの御協力を得ながら、せっかくまとめてきたこの移設の問題については、ぜひ政府としてはヘリポートの建設をもってこの問題を処理したいと思いますので、さらに努力をしていきたいと思っております。
  430. 上原康助

    ○上原委員 努力は結構ですが、何回も同じこと。  それでは、防衛庁長官にも鈴木長官にもお聞きしたいのですが、皆さんは海上基地が最善の選択肢だとおっしゃって、沖縄側の理解と協力をこれからも求めていく、それはいいですよ。しかし、沖縄はそれはノーと言っているわけね、県知事初め沖縄県側は。打開策はないわけでしょう、今の場合に。  当面、じゃ普天間返還問題はどうするんだ。そのことについては、外務省、防衛庁、沖縄開発庁、あるいは官邸を含めて、政府間で何か協議したことがあるのか。SACOの報告があるからということで、それができなければもうやむを得ないや、沖縄側が拒否しているんだからしようがないやというお立場なのか。お二人の御見解を聞いておきましょう。
  431. 久間章生

    久間国務大臣 確かに、これまで進めてまいりましたSACOの案件のうち、特にこの普天間の問題が暗礁に乗り上げているわけでございまして、これは本当にゆゆしきものであるというふうに思っております。  しかしながら、今委員も御指摘になりましたように、私どもは、海上につくることによって、しかも撤去可能な形でつくることによって、それが安全性、あるいはまた環境に与える影響、あるいはまた将来撤去できるというようなことからつくった。そして、それをもって一応基本案として県知事さんの方に、私は普天間対策本部長として、移設対策本部長として出かけていった。それがその後あのような形で、拒否という形の記者会見といいますか、そういう形がなされておりまして、とにかく私の方には正式にはその返答はいただいてないわけでございますけれども、しかしながら、記者会見で見ておりまして、やはりかなり意思はかたいなという気はいたしております。  しかしながら、私どもは、沖縄の今置かれておる、環境問題とかそういうことから考えてそうなったわけでございますから、それにかわってもし何かいい案でも、こういう形ならどうかというような動きでもまたあれば、それについていろいろ、まあ私たちの考えが間違っておったのかなということでありますけれども、その辺についても何らなく、県内移設はだめだというような形で一方的に記者会見されますと、打つ手がないといいますか、どうすればいいのかという、正直言ってそんな気持ちでございます。  だから、今度審議官等が行って、いろいろ忌憚ない意見交換をした。そういう中から何らかの方向を見出してくれれば、またそれをもとにしてやれるというような形でもございましたけれども、話の内容はお互いが平行線に終わったということでございまして、それは、ある意味ではそうかもしれぬと思いますと同時に、非常に残念なことだなというふうに思っているところでございます。  これは本当に、私どももまた考えなければなりませんけれども、沖縄の県知事さん初め皆さん方も、どうすれば解決するか、そういう方向に向かって、やはり一つの方向でも見せていただく、そういうふうなことがないとなかなか膠着状態が解けないという、そういうところに来ているわけでございます。
  432. 鈴木宗男

    鈴木国務大臣 上原先生もう御高承のとおりでありますけれども、あのSACOの最終報告も大田知事さんのアクションプログラムを十分頭に入れてまとめ上げたものだと思うのです。  同時に、私は平成八年の四月十二日の大田知事さんの記者会見を今でも覚えているのです。なぜ普天間か、普天間の基地が町のど真ん中にあり、その安全、人命のかかわり合いの面でもこの移設は大変なことなんだという、あの記者会見を私は今も忘れておりませんので、ぜひともあの基地の整理、縮小、統合、知事の言うアクションプログラムに沿ったSACOの最終報告、これを着実にやることが沖縄の振興にもつながっていくということで御理解をいただきたい、こう思っております。
  433. 上原康助

    ○上原委員 デッドロックに乗り上げているという印象を持たざるを得ませんね。  そうしますと、防衛庁長官の方がむしろ相当難しくなったなという印象をお持ちのようですが、私もそういう認識を持っております。  だが、ここで一言申し上げておきたいことは、沖縄県が策定をしているアクションプログラム、AP、あるいは国際都市形成構想、確かに普天間が返還されないとこれはいろいろな支障を来すことは間違いありません。だが、私はこの間も一言触れたんですが、SACOの最終報告というか、SACOで、沖縄の基地の整理、統合、縮小、まあ皆さんからいうと整理、統合、縮小、整理縮小というのは、沖縄県の代表も入って、あるいは沖縄県の意向を入れてあれはまとめられてはいないわけですよ。そこに沖縄県知事初め沖縄側と重大な認識の違いがあるということは、外務大臣初め防衛庁長官、特にこの実務者会議でやっておられる皆さんも理解をしていただかないと。そこに県知事の御不満、沖縄側の不満が強いということをね。  そこで具体的にお尋ねしますが、そうしますと、例えば九六年四月十七日の日米安全保障共同宣言で、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応して、両国政府の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢について日米間で引き続き緊密に協議する、こういうふうになっている。  さらに、九六年九月十日の閣議決定においても、沖縄問題についての内閣総理大臣談話で、アジア情勢の安定のための外交努力と米軍の兵力構成を含む軍事態勢について継続的に米国と協議してまいります、こうなっているんですね。  九七年四月十七日、沖縄問題に関する与党三党の合意においても、米軍の兵力配置のあり方等を含む軍事態勢について、SCC、いわゆる日米安全保障協議委員会、あるいはSSC、高級事務レベル協議の場で日米間の協議を進めるよう政府に要請する、こういう経緯があるわけですよね。  だから、ここまで行き詰まってしまうと、アメリカ側はこれに対して、いや、日本側から何かサジェスチョンがあれば、あるいは提案があれば検討してもいいということは、マスコミ等でしばしば反応が出ている。海上基地についても必ずしもこだわるものでないというキャンベルさんやその他の、アーミテージさんもそういうことを言ったとか言わなかったとか、それは政府見解じゃないからとまたおっしゃるかもしらぬが。  しかし、国民も県民も、そういう報道も見ながら、日本政府が本気にこの打開策をアメリカ側と非公式でもいいからおやりになれば何か糸口がつかめるんじゃないかという期待を持つのは、これは私はあると思うんですよ。そういうことはできないんですか、政府の皆さん、外務大臣。  何か非常に、このSACOの決定があるんだということを、沖縄側が拒否しているんだから後は沖縄がその気になるまで待とうやということでは、私はまた、沖縄県民の怒りというか気持ちというのは基地問題に対してそう甘くないと思いますよ。  今私が述べたことというか、そういう指摘について、外務大臣防衛庁長官、どうお考えですか。
  434. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今ほど防衛庁長官からも答弁されましたけれども、この問題について、県内の移設を前提としてでなくして何らかの考え方を沖縄大田知事さんもお示しをされるということであれば、またそこに一つ考え方として検討の余地があるのかもしれませんが、外務省として日米間の防衛の問題を考えましたときに、この日米安全保障共同宣言のときにまとめられた状況から現在この地域の状況が変化を特にしておらないということを考えますと、そのときまとめられたこの日米間の共同宣言、これを前提として対処しなければならないということが外務省としてはとるべき態度でございますので、御理解いただきたいと思います。
  435. 久間章生

    久間国務大臣 今外務大臣が述べられましたように、それとまた先ほど委員も御指摘になりましたが、ともかく日米間でいろいろ議論をしていった中で、その当時のSACOの最終報告を詰めましたときに、やはり米軍の、特に海兵隊の機能を維持するという、それを前提にして話を進めたわけでございます。だから、それをやはりどうしても我々としては崩すわけにはまいらないわけでございまして、そこのところがなかなか理解してもらえていないんじゃないかな、そういう気がしてしようがないわけでございます。  先般も、普天間の飛行場にやるのは二千五百人ぐらいだから、その人間が減ればいいじゃないかというような、そういう発言を新聞等で見ましたけれども、そうはまいらないわけでございまして、例えば今私のところにほかの方から、あなたのところに、普天間飛行場の代替のヘリポートぐらいなら島でつくれるじゃないかということで、うちの島でつくっていいぞというような話もあるわけでございます。  ところが、海上へリポート、これをよそにつくるということだけではなくて、やはり砲兵、歩兵、それから支援する部隊、物資の補給処、それからまた演習場、そういうものが全部一体的に機能して一つの海兵隊の能力が維持されているわけでございますから、そういうのを考えてやりますと、どうしても、沖縄の、まあ海上へリポートではなかったとしても、やはり何らかのそういうようなものを近くにつくらないといかぬ、そういう基本的な問題がございます。そのときに、どうせつくるならば撤去可能で、しかも安全性から環境に影響がないということで、海上へリポートならどうなんだということでまとめていったわけでございます。  しかも、先ほど県の方は入っていないとおっしゃられました。確かにSACOの委員会の中には入っておりません。しかしながら、その下に設けられましたタスクフォースという作業委員会がございましたけれども、ここには、副委員長としてはいわゆる副知事さんが入っておられまして、副知事以外の県の職員の方も委員として入っておられたわけでございますから、全くあずかり知らぬというふうな、そういうことを言われるわけではないと思います。それは、経過については御存じだったのだと思います。  ただ、その後のいろいろな経過の中で、沖縄県の民意というのを自分はこう受け取ったとかそういう形の中で、なかなかできないということで拒否表明されたんじゃないかなと私は私なりには見ているわけでございますけれども、決して、経過について県が全然知らなかった、あずかり知らなかったということにはならないんじゃないかと思います。
  436. 上原康助

    ○上原委員 問題が行き詰まったり難しくなれば、えてして、ああだった、こうだったという、禅問答だとは言わぬが、何も経過報告について白黒つけようと私も言っているわけじゃないので。だが、決して沖縄側がSACOの最終決定に、何といいますか、全面的というよりも合意をしておったことではない。移設条件づきについては問題があるということはもうずっと指摘をしてきたことでね。  そこで、そんなことだけやっておってもいけませんが、しかし問題は、一向に今の状況ではいかない。  しかし、では今私が言ったこういうものは、どういう時点になったら皆さんは兵力構成について協議できるんですか。これはただのリップサービスというか、何かそういったことをノートしてあるだけですか。アジア地域の安全保障環境が大きく変化するということは、どういうことを想定しているの。  これは外務大臣かね、防衛庁長官かね。アジア地域の安全保障環境が大きく変化をした時点ならこういう協議ができると。未来永劫にできないかもしらない、SACOの決定事項しか整理縮小しないんじゃないか、そういう不安があるからますます基地問題、整理縮小問題が進まないという原因もあるわけでね。それが一つですね。  もう一つ、アジア太平洋地域の十万人体制というのは一体地理的に言うとどこどこですか。二つ、お答えください。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  437. 高野紀元

    ○高野政府委員 現在この地域に展開しておりますいわゆる約十万人の米軍の兵力でございます。これは先ほど御紹介がございました日米安保共同宣言におきまして、日米両国政府がこの兵力構成を維持することが必要である、冷戦後の現時点におけるこの地域の国際情勢を前提とした場合には必要であるということで認識を共有しているものでございます。  そういう中でございますので、日本政府といたしましては、引き続き不安定要因が存在するこの地域の情勢にかんがみ、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に寄与しているという認識を在日米軍についてはしておりまして、この時点においてはその削減や撤退を求めることは考えていないということは、従来から申し上げているところでございます。  他方、これも共同宣言にございますとおり、国際的な安全保障情勢において起こり得る変化に対応して、両国の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢について米国政府と緊密に協議していくということは、当然のことでございます。  御質問で、それでは、いつの時点でそういうことをやるのかということでございますが、これは問題の性格上、その時点ということは具体的に申し上げることは難しいわけでございますが、いずれにいたしましても、この地域の安全保障環境が大きく変化すれば、当然それに最も適切に対応する軍事態勢について日米間で協議することになろうかと思います。  この兵力水準というのは、もう当然のことでございますが、それ自体がいわば日本及び米国の防衛政策あるいは安全保障政策を意味することでございますし、また、その変化そのものが国際情勢に重要な影響を与えるという性格のものでございますから、そういうものを総合的に考えながら、国際情勢が変化すれば当然日米間で協議することになるというふうに考えております。  二点目の御質問で、アジア太平洋とはどこかということでございますが、これはいろいろなところでいろいろな文書にこの言葉が用いられておりますが、その用いられております文脈によりいろいろな意味がございますので、具体的にどこからどこということは確定し得ないわけでございます。が、日米安全保障共同宣言において、アジア太平洋地域の表現を用いております。これに関しましては、安保条約により米軍我が国に駐留していることが結果としてアジア太平洋地域の平和と安定に寄与しているということを意味しているわけでございます。  そういう意味で、この場においても、ではアジア太平洋地域がどこを具体的に意味するかということは、定義し得るというふうには考えておりません。
  438. 上原康助

    ○上原委員 高野さん、そんな抽象論でこっちをごまかそうとしたってごまかせぬよ。大きく変化するのはどういう状況か。アジア太平洋といったらどこの国を、じゃ、どこに十万人いるんだよ。何で十万人と言っているんだよ。  じゃ、僕の方から具体的に伺う。  例えば、オーストラリア、ビルマ、カンボジア、中国、フィジー、インドネシア、日本、韓国、入るのは当然でしょうね。ラオス、マレーシア、マーシャル諸島、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、第七艦隊が展開する地域、これはアジア太平洋に入るのでしょう。  グアムはどうですか。これは明確に答えなさい。
  439. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 十万人体制というその中では、グアムは入っておりません。
  440. 上原康助

    ○上原委員 入っていませんか。
  441. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 十万人体制というときに、グアムはカウントされておりません。
  442. 上原康助

    ○上原委員 そのほかは入っている。これは一応米国の領土というか行政権下にあるわけですから、カウントされていない。しかし私は、アジア太平洋という場合に、防衛論というか、アメリカの戦略上はグアムも含まれていると思いますよ。その議論はまたいつかやります。  オーストラリアが入っているのは間違いないですね、十万人体制には。答えてください。
  443. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 オーストラリアの兵力は入っております。
  444. 上原康助

    ○上原委員 ですから、やはりこういった兵力構成のあり方とか安全保障の問題、アジア太平洋地域という場合の日米関係等、いろいろこれは議論をしていかないといけませんが、きょうは切り口だけ申し上げておきます。  そこで、これとの関係で私は前々から疑問を一つ持っているわけですが、外務大臣防衛庁長官。  もし一九九五年九月四日のあの不幸な少女暴行事件がなかりせば、恐らく日米間は、この新しい日米共同宣言をやって、今検討されているガイドラインを決めることで終わったと思うのですね。沖縄の基地の整理縮小問題というのは本気で取り組まなかったと僕は思う。これはもしそうでなければそうでないとおっしゃってもいいわけですが、それとの関連で聞いておきたいし、これからもいろいろ議論をしていかなきゃならない課題だと思うのですが、よく、日米間の防衛協力体制がもっと充実化すれば、基地問題についても、在日というか、あるいはアジア太平洋地域の兵力構成についての検討も可能だと言う日本側の評論家なり軍事専門家なりがいるわけですね。これはもちろんアメリカにもそういう方々がおられる。  ガイドラインの協力体制問題とこのSACO課題、あるいは在日米軍のこれからの整理縮小、または十万人体制というのは、関係しているの、していないの。どういうふうに政府は関連づけていろいろやろうとしているのか、御見解があれば聞いておきたい。
  445. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 日米の防衛の体制とガイドラインの関係でございますけれども、直接の関係はないと私ども考えております。米軍基地のあり方につきましては、もちろんその整理、統合、縮小について引き続き努力をすることは当然でございますけれども、このガイドラインの問題は直接の関係は持っていない、こういうふうに考えております。
  446. 上原康助

    ○上原委員 直接の関係はないというところがちょっとくせ球ですが、さっき防衛庁長官がおっしゃっておったように、SACOの取り決めでは確かに在日米軍の現在の機能維持を前提にしているわけですよね。だから、沖縄側なり私たちが、これは何も社民党だけが言っているわけじゃない、野党というか政党の中にはそういう御主張をなさっている党もあるわけですが、海兵隊の縮小を要求するのは、SACOプロセスの前提を変えるものだからできないとあなた方は言っている。  そうすると、ここではそういう状況が来ればという一つの文言があるにもかかわらず、SACOは何とあと十四、五年から十七、八年かかるのですよ、盛んにあなた方は二〇%削減云々とおっしゃるけれども。海兵隊の縮小を要求するのはSACOプロセスの前提を壊すことになる、変えることになるからできないというと、沖縄側との溝は永遠に埋まらぬじゃないですか。その埋める努力を外務大臣防衛庁長官もやりなさい、やっていただきたいというのが沖縄県知事やみんなの願いなんですよ。それに対してどうおこたえするかということ。  それと、さっき、外務大臣、重要といえば重要な御発言だったと私は受けとめたんですが、沖縄側から海上移設でなくして新たな何か提案があれば検討できるかもしらないがと。具体的に沖縄側から、海上ヘリ基地じゃなくして、それは県外移設ということが主になるかもしらぬが、何か提案があれば政府としては聞く耳はお持ちだというふうに理解していいですか、さっきの答弁は。
  447. 小渕恵三

    小渕国務大臣 答弁申し上げましたように、私の答弁の前に防衛庁長官がるる御説明を申し上げておるところでございまして、その点で、今移設については、海上ヘリポート建設というものが最も望ましいことであるということでございますが、それを決定する過程にいろいろの提案もあったやに聞いておりますが、沖縄県としてはそうした中で、県内においての移設に関して何らかの意味でいろいろ提案というものがもしあるとすれば、謙虚に承る必要はある、こういうことを申し上げたわけでございまして、県外移設も含めてということは申し上げたつもりはありません。
  448. 上原康助

    ○上原委員 それは理解しますよ、私も。政府の、外務大臣のお立場で県外移設も含めて検討するとここで言うと、これはもう大ヒットだよ。しかし、何らかの提案は、これはやらねばとんざするわけだから、私はあり得ると思いますがね。そこはぜひ、御検討をするゆとりというか、ゆとりとは言わぬでしょうね、あるいは寛容さを持っていただきたいと思いますね。  それと、もう一点確かめておきたいのですが、これは鈴木長官も、前倒しも結構じゃないかと。あなたの御見解としては、海上基地を仮につくったとしても、二〇一五年より前倒しして撤去してもいいのじゃないかと。盛んに総理も外務大臣防衛庁長官も、撤去可能だから何とか理解をと言うんだが、沖縄側としては二〇一五年という一つの目安があるわけね。私はそれまでにゼロになるというのはなかなか困難だと思っている一人なのではあるけれども、しかし、願望としてはそうしてもらいたいという希望がある。  そうしますと、沖縄側が二〇一五年までの期限をつけて何か妥協案を、拒否回答というか拒否表示をしない前にやろうとしたという非公式な情報が相当大きく報道されましたね。そういった考えはあったのか、あるいはまた可能なのか。それで、撤去可能という場合には、今皆さんが構想しているイメージ図の撤去費というものは一体幾らかかるのか。  この二点、ひとつお答えください。
  449. 久間章生

    久間国務大臣 委員もよく御存じと思いますけれども、国防とか防衛とかこういう関係であります場合に、いつごろになったらどうなるという、そういうシグナルを送ることが、ある意味では非常に政策上問題がある場合があるわけでございます。したがいまして、やはり私どもは、かねてから、国際情勢が大きく変化した場合にはと、そういうような表現はしておりますけれども、いろいろ、いつごろまでにどうだこうだというのはなかなか言えるような立場にないというのが、防衛を担当する立場としては、これは御理解いただきたいと思うわけでございます。  そういうようなことから、撤去可能というふうな言い方をしておりますのは、そういうような状態になったときには撤去ができるじゃないか、そういうような海上施設ならいいじゃないかというようなことで提案を申し上げさせていただいたわけでございますが、つくるということについてまだ御理解をいただいていないわけでございまして、つくるとなったら初めて、どういうものを今度はつくるか、詳細な、しかも二つの案を提示しておりますので、二つの案のうちのどちらがいいかということを、また詳細な実施計画をつくるわけでございます。  そして、それができ上がらないと、維持管理費がどうなるか、あるいは撤去するときには幾らかかるかというのは、まだつくるそのもの自体だって金額が定まらないわけでございますので、それはなかなかできないわけでございます。
  450. 上原康助

    ○上原委員 まあ、あるいは今の時点ではそれ以上のお答えはなかなか難しいでしょうね。  いずれにしましても、膠着状態だけ続けてもいかないと思いますから、何かのきっかけをつくるように、きょう私が申し上げたようなことも参考にできるところがあればひとつ聞いていただいて、御努力を願いたいと思います。  そこで、時間もだんだん迫ってまいりましたので、次に島田懇のことで、基地所在市町村の活性化のプロジェクトの件でちょっとお尋ねしておきたいのです。  これは、海上基地問題とかそういうこととは全く関係ないとは言えないかもしれませんが、あの方針で進めるおつもりでしょうか。これは明確にお答えしておいてください。
  451. 安達俊雄

    ○安達政府委員 お答え申し上げます。  島田懇事業でございますが、平成八年八月に官房長官のもとに設置されました沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会、この懇談会が同年の十一月に提言をされたわけでございます。  政府としては、この提言については重く受けとめるという姿勢でございまして、その後、平成九年度以降、プロジェクトの実現、予算化を逐次図ってきておるという状況にございまして、今後とも着実な推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  452. 上原康助

    ○上原委員 私は、物事というのは、いろいろ困難な事態にぶつかっても、できるものは動かしていく、進めていくという姿勢はぜひ必要だと思うんですね。一面だけ見てはいかないと思う、行政、政治というものは。  そこで、例えば嘉手納町のごときはもう大変な基地の被害を受けている。この嘉手納タウン構想の具体化については、内政審議室では今どうやっておられるかということですね。具体例でちょっと聞いておきたいと思うんですが、たくさんありますから、省きましょう。これが一つ。  もう一つ、沖縄市の制限水域解除問題があるんですね。これも中城湾港泡瀬地区の東部海浜開発計画プロジェクトと密接に関連しておる。問題は、泡瀬通信所の保安水域があって、この東部海浜開発計画というものの妨げになっているわけですよね。ですから、保安水域の五百メーターの解除を熱心に沖縄市長、沖縄市は要望してきたが、なかなか前進していない。  私は前にペリー前国防長官にお会いする機会があったんですが、できれば泡瀬の通信所はグアムへの移設も可能ではないかということをコメントしたことがあったんですよね。その後いろいろ探ってみたけれども、結局、移設費用をどうするのか、どこが持つかということで、ペリーさんもおやめになってこれも行き詰まって、いまだに解決しない。  だから私は、私のようなもう権限のない野党、あのときも与党か、もう既に。そういう者がいろいろやっても感触はあるわけよね。ですから、外務大臣とか防衛庁長官とか沖縄開発庁長官というのは偉いんだから、あなた方は権限もあるし、アメリカとは僕よりずっと仲よしなんだから、できると思うんですよね。  そういうことを、これはまあ余談ですが、この二つの件についてどういうふうに解決していかれようとするのか。これは施設庁長官ですか。
  453. 萩次郎

    ○萩政府委員 まず、嘉手納のタウンセンターの件でございますが、取りまとめを内政審議室でやっていただいておりますが、平成九年度、私ども防衛施設庁で調査に取りかかっております。約六千三百万で行っております。来年度も引き続き事業の推進に努めたいと思っております。  それから、沖縄市の泡瀬通信所でございます。  先生お話ございましたように、沖縄市東部海浜地区開発計画というものに沿ってここを開発したいという地元の強い御要望がありまして、最初は、先生よく御存じのように、平成元年に計画が出まして、平成二年から米側と話し合いを始めましたが、計画が変更になりまして、平成六年、沖縄市の方から一たん取り下げをしております。再び平成七年に、前よりも小規模ですが、改めて返還要請が出ました。そこで、平成八年に合同委員会の方に日本側から提案をしてございます。  現在、アメリカ側は、その日本側からの提案にのっとって、電波障害の影響、それから電磁波の人体に及ぼす影響、それから、埋め立てをいたしますので、それで機器に対してどういう影響があるかということを調査しておりまして、その調査が終わり次第再び調整を開始したい、今こういう現状でございます。
  454. 上原康助

    ○上原委員 少しずつ進展しているようですから、ほかの案件もありますが、よりお力を入れていただくように強く要望して、また後日、いろいろ要望を、直接お会いするなりしてやりたいと思います。  最後に、もう遅い時間ですから時間内にとめますが、振興策のところで、これは鈴木長官関係かもしれません。きょう、沖特の法案、沖振法も、一応衆議院は委員会で可決となりましたので、亜熱帯総合研究所の取り扱いですね。  これは長官の懇談会ですか、設置をしていろいろ御検討いただいているようですが、気になるのは、普天間飛行場が返還された跡地を利用して立地させようというのが県の国際都市構想にたしか入っているのじゃないかと思うのです。これの構想はやはり並行して進められるのか。  それともう一つ、新たにというかいろいろ検討されているもので、沖縄国際南北センターの設置と国際協力高度医療センターの立地ですね。こういうことなどは、ポスト三次振計がどうなるかわかりませんが、私はやはり、総理がおっしゃった二十一世紀プランにひとつちりばめて、そういうものも具体化をしていく中で、県民に、基地の整理縮小も政府としても誠意を持ってやるから、県民も協力できるところは協力していただきたいというメッセージを送った方がいいのじゃないかと考えておるのです。  今具体的に挙げた三つの大きな課題について、御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
  455. 安達俊雄

    ○安達政府委員 お答え申し上げます。  亜熱帯総合研究所の構想でございますけれども、現在、特別調整費を活用いたしまして、沖縄開発庁を中心に検討を進めていただいているところでございます。三月三十一日には、最後の本会議が、検討委員会が開かれる予定でございまして、最終報告をいただく予定でございます。これを受けまして、平成十年度でございますけれども、これも沖縄開発庁の予算のやりくりの中で、約三千万円でございますけれども調査費を計上いただいておりまして、予算が実現し次第、この調査をさらに進めていくという予定になっております。  続きまして、南北センターでございますが、これにつきましては、外務省を中心に鋭意検討をいただいているわけでございます。この検討も年度末には報告書がまとまるということでございますが、さらにこれを実際上も来年度から進めていくということで、所要の予算を、実際の交流の予算を外務省において予算案の中で計上させていただいておるという状況であります。  続きまして、国際医療協力でございますが、どういう形の医療協力が可能なのかどうか検討が必要でございまして、実は、普天間跡地対策ということで五十億円の調整費、一部残しておりましたが、これが使えないということもございまして、一部でございますけれども、医療協力構想の推進のための調査をこの五十億円の残余をもちまして進めていただくということで既に動いておるところでございます。中国、フィリピン、タイ等、各国の現地に出向いてそのニーズ調査等を行っていただくという予定で、現在、既に進めておるところでございます。
  456. 上原康助

    ○上原委員 もうこれで終えますが、今御答弁ありましたが、鈴木長官、沖縄振興策あるいは南北センター、これはもちろん外務省の御協力もお力も必要ですが、重要な政策課題ですので、推進をしていくというお立場だと思いますので、大臣の方からまとめてひとつ御見解を聞いて、終えたいと思います。
  457. 鈴木宗男

    鈴木国務大臣 沖縄の振興につきましては、上原先生もう長年携わってこられて十分御承知のことかと思いますけれども、少なくとも、昨年の十二月八日にも私は北部に行って振興策の発表もいたしましたし、新たな予算づけ等もしておりますので、厳しい財政事情ではあっても、沖縄は別格だという思いでやっていきたい。  ちなみに、二十五年間に五兆三千億、沖縄には資金投入しております。沖縄には全国平均の四・七倍であります。平成十年度の予算でも五・一倍、全国平均よりは沖縄に配慮しておりますから、この数字だけは正直でありますから、御理解をいただきたい。  同時に、上原先生、きょう先生のおかげで沖振法の一部改正案、沖北委員会を通させていただきました。これはもう感謝にたえません。  同時に、この沖振法の一部改正案も、大田知事さんのおっしゃる国際都市形成構想に基づくダイナミックな抜本的な施策であるということ、同時に、この国際都市形成構想の大きな骨格に普天間の返還が入っているということを、ぜひともこれはおわかりをいただきたい。さすれば、私は、大田知事さんにもいろいろ考える余地、部分があるのではないか、こう思っているのであります。
  458. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  459. 越智通雄

    越智委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十九日午前九時より委員会を開会いたします。  なお、午後一時三十分からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十八分散会