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1998-02-27 第142回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年二月二十七日(金曜日)    午前九時一分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君     理事 伊藤 公介君  理事 石川 要三君     理事 中山 利生君  理事 深谷 隆司君     理事 山本 有二君  理事 五島 正規君     理事 高木 義明君  理事 北側 一雄君     理事 加藤 六月君        相沢 英之君     甘利  明君        江藤 隆美君     小澤  潔君        大原 一三君     河村 建夫君        熊谷 市雄君     栗原 博久君        阪上 善秀君     関谷 勝嗣君        津島 雄二君     東家 嘉幸君        中川 昭一君     中山 正暉君        葉梨 信行君     萩野 浩基君        増田 敏男君     村田 吉隆君        村山 達雄君     綿貫 民輔君        岩國 哲人君     上田 清司君        生方 幸夫君     岡田 克也君        海江田万里君     小林  守君        原口 一博君     藤田 幸久君        松沢 成文君     山花 貞夫君        池坊 保子君     上田  勇君        遠藤 和良君     草川 昭三君        斉藤 鉄夫君     西川 知雄君        冬柴 鐵三君     前田  正君        丸谷 佳織君     鈴木 淑夫君        中井  洽君     西村 眞悟君        米津 等史君     木島日出夫君        中島 武敏君     春名 直章君        矢島 恒夫君     上原 康助君        北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣    橋本龍太郎君         法務大臣      下稲葉耕吉君         外務大臣      小渕 恵三君         大蔵大臣      松永  光君         文部大臣      町村 信孝君         厚生大臣      小泉純一郎君         農林水産大臣    島村 宜伸君         通商産業大臣    堀内 光雄君         運輸大臣      藤井 孝男君         郵政大臣      自見庄三郎君         労働大臣      伊吹 文明君         建設大臣      瓦   力君         自治大臣         国家公安委員会         委員長       上杉 光弘君         国務大臣         (内閣官房長官)  村岡 兼造君         国務大臣         (総務庁長官)   小里 貞利君         国務大臣         (北海道開発庁長官)          (沖縄開発庁長官) 鈴木 宗男君         国務大臣         (防衛庁長官)   久間 章生君         国務大臣         (経済企画庁長官) 尾身 幸次君         国務大臣         (科学技術庁長官) 谷垣 禎一君         国務大臣         (環境庁長官)   大木  浩君         国務大臣         (国土庁長官)   亀井 久興君  政府出席委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長         竹島 一彦君         内閣審議官     安達 俊雄君         内閣審議官     坂野 泰治君         内閣審議官     松田 隆利君         内閣法制局長官   大森 政輔君         内閣法制局第一         部長        秋山  収君         総務庁長官官房         審議官       西村 正紀君         総務庁人事局長   中川 良一君         防衛庁長官官房         長         大越 康弘君         防衛庁防衛局長   佐藤  謙君         防衛庁運用局長   太田 洋次君         防衛庁装備局長   鴇田 勝彦君         防衛施設庁長官   萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長        西村 一郎君         防衛施設庁施設         部長        首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長        塩谷 隆英君         経済企画庁調査         局長        新保 生二君         科学技術庁長官         官房長       沖村 憲樹君         環境庁企画調整         局地球環境部長   浜中 裕徳君         環境庁大気保全         局長        野村  瞭君         沖縄開発庁総務         局長        玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長        若林 勝三君         法務省民事局長   森脇  勝君         法務省刑事局長   原田 明夫君         法務省人権擁護         局長        横山 匡輝君         法務省入国管理         局長        竹中 繁雄君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官    阿部 信泰君         外務省アジア局長  阿南 惟茂君         外務省北米局長   高野 紀元君         外務省経済局長   大島正太郎君         外務省経済協力         局長        大島 賢三君         外務省条約局長   竹内 行夫君         大蔵大臣官房長   武藤 敏郎君         大蔵大臣官房総         務審議官      溝口善兵衛君         大蔵省主計局長   涌井 洋治君         大蔵省主税局長   尾原 栄夫君         大蔵省証券局長   長野 厖士君         大蔵省銀行局長   山口 公生君         大蔵省国際金融         局長        黒田 東彦君         国税庁次長     船橋 晴雄君         文部大臣官房長   小野 元之君         文部省初等中等         教育局長      辻村 哲夫君         文部省体育局長   工藤 智規君         厚生大臣官房総         務審議官      田中 泰弘君         厚生大臣官房障         害保険福祉部長   篠崎 英夫君         厚生省健康政策         局長        谷  修一君         厚生省保健医療         局長        小林 秀資君         厚生省生活衛生         局長        小野 明雄君         厚生省老人保健         福祉局長      羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長        横田 吉男君         厚生省年金局長   矢野 朝永君         農林水産大臣官         房長        堤  英隆君         通商産業大臣官         房商務流通審議官  岩田 満泰君         中小企業庁計画部長 荒井 正吾君         運輸省自動車交         通局長       楠木 行雄君         郵政大臣官房長   天野 定功君         郵政大臣官房総         務審議官      濱田 弘二君         郵政省郵務局長   長谷川憲正君         郵政省貯金局長   安岡 裕幸君         労働大臣官房長   渡邊  信君         労働省労政局長   澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長        伊藤 庄平君         労働省職業安定         局長        征矢 紀臣君         建設大臣官房長   小野 邦久君         建設省都市局長   木下 博夫君         建設省住宅局長   小川 忠男君         自治大臣官房長   嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官      香山 充弘君         自治省行政局長   鈴木 正明君         自治省行政局公         務員部長      芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長       牧之内隆久君         自治省税務局長   成瀬 宣孝君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長    深田 蒸治君         参考人         (日本銀行総裁)  松下 康雄君         予算委員会専門員  大西  勉君     ───────────── 委員の異動 二月二十七日  辞任           補欠選任   栗原 博久君       阪上 善英君   桜井  新君       熊谷 市雄君   岡田 克也君       上田 清司君   小林  守君       藤田 幸久君   上田  勇君       前田  正君   草川 昭三君       池坊 保子君   斉藤 鉄夫君       遠藤 和良君   鈴木 淑夫君       米津 等史君   志位 和夫君       春名 直章君   不破 哲三君       矢島 恒夫君 同日  辞任           補欠選任   熊谷 市雄君       桜井  新君   阪上 善秀君       栗原 博久君   上田 清司君       岡田 克也君   藤田 幸久君       小林  守君   池坊 保子君       冬柴 鐵三君   遠藤 和良君       斉藤 鉄夫君   前田  正君       上田  勇君   米津 等史君       鈴木 淑夫君   春名 直章君       志位 和夫君   矢島 恒夫君       中島 武敏君 同日  辞任           補欠選任   冬柴 鐵三君       丸谷 佳織君   中島 武敏君       不破 哲三君 同日  辞任           補欠選任   丸谷 佳織君       草川 昭三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計予算  平成年度特別会計予算  平成年度政府関係機関予算      ─────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算平成年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五島正規君。
  3. 五島正規

    五島委員 昨年の臨時国会、そして一月十二日から始まりましたこの国会においての補正予算審議等々を通じまして、今日の日本経済の大きな混乱、そしてアジア全体の金融の不安という状況の中において、野党の立場からもさまざまな御指摘をしてまいりました。  本日、その点についても触れていきたいと思うわけでございますが、先日来の各議員質疑の中におきまして、総理の方から、機会の、すなわちチャンスの公平性、それを中心に、そしてその中で、いわゆる言葉悪く言えば落ちこぼれということが起こってきた場合のセーフティーネットワークというものを整備していく、これを総理一つのお考えとしてお話しになってきたと思います。  私も、結果の公平ということを前提に置いてきた一つの悪癖というのが出てきて、それがさまざまな規制であってみたり、あるいは大きな変動期にはふさわしくないようなさまざまな問題が生まれてきている、そのことについては全く同感でございます。そういう意味において、機会公平性といいますか、公正というものを中心とした社会をつくっていかなければいけないということについては、よく理解いたします。そして、そういう状況の中においても、一人一人の国民の問題を考えた場合に、セーフティーネットというものが必要である、その論理についてはよく理解できるところでございます。  ただ、問題は、その中に、社会保障制度というのはそういうセーフティーネットとして総理がお考えなのか、それとも社会保障というのはもっと違った形で存在しているというふうに総理もお考えなのか、そこのところがどうも私にはわからないところでございます。  私は、今日の日本社会経済、この経済の成長を支えるのは、言いかえればやはり消費であるだろうと思います。そして、国民一人一人が、未来への不安というものがなくなったとき、その不安を大きく持たないとき、みずからの所得というものを消費という形でもって生活を豊かにしていくということができるのだろうというふうに思っています。そして、それを具体的に制度的に保障するものが社会保障であることは言うまでもない。  言いかえれば、この社会保障に対する不安が生まれてくるときには、実際の状況以上に、国民としては、それぞれ将来に備えての貯蓄に走ったり、あるいは将来に備えてのたんす預金をふやしていくという形で消費を抑制せざるを得ない、これは当然だろうと思っております。  そういう意味において、このような非常に日本経済の厳しい状況の中において、消費の拡大というものを考えた場合にも、先人のすぐれた知識として確立してまいりましたこの社会保障制度が、成熟した社会の基本的な柱として今日では存在しているのであろうというふうに考えます。  昨年、文化勲章を受章されました宇沢弘文先生が、社会的共通資本という議論の中において、自然的な資産とあわせまして制度資本というものを主張しておられます。その中において、教育社会保障医療といったようなものを社会的共通資本として指摘されております。私は全く賛成でございます。  これは、単なるセーフティーネットワークという、言いかえれば、明治以来の救貧思想をより今日的に言いかえた内容ではなく、今日においては重要な社会の基本的な骨格であると考えるわけでございますが、そういう認識については、総理、いかがでございましょうか。その点についてまずお伺いしたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、セーフティーネットという言葉を選んだのが、もしかすれば議員誤解を生じたのかなという懸念を今改めて持ちながら、御意見を拝聴しておりました。  と申しますのは、確かに、社会保障というものがスタートした時代において、まさに貧しい方を救うという対策が初めだったことは申し上げるまでもありません。しかし今日、既に成熟している社会の中で社会保障の果たす役割というのは、それとは当然ながら異質のものがあるはずです。  それは何かというならば、病気あるいは老後の不安、いろいろなことを考えてみてもわかるわけですが、個人の力だけでは対応し切れないようなさまざまな問題に対して、お互いの支え合いの仕組みとして存在をする。そして、お互いの支え合いの仕組みとしてこれが存在することによって、維持されることによって、国民生活の安定を果たすという役割を持つものだと思います。  同時に、社会保障というものは、生活の安定というものを通じて、ある場合には国民購買力を付与する役割も持ちます。あるいは、その中から生まれてくる新規産業あるいは労働需要というものを創出していく役割も果たします。そういう意味では、経済発展にも寄与すると申し上げてもよいでしょう。  私はそうした意味を込めてセーフティーネットという言葉を使いましたが、言葉の使い方がもし議員誤解を生じたようであれば、これは私は、内容は今申し上げたような、いわば社会の支え合いの仕組みとして国民生活の中に定着してきているのではないか、そしてそれが今後も維持されるような仕組みを今のうちに考えておくべきではないか、そのような思いで申し上げております。
  5. 五島正規

    五島委員 わかりました。私が懸念していたほどは意見の違いがないようにも思います。  ただ、問題は、こうしたセーフティーネット役割というものが、今日のように非常に大きな経済的な後退側面において、逆にこの社会保障制度というものの万全の体制、揺るぎなさというものが国民に示されること、そのことが実は国民にとって、日本という国、そして日本の将来的な経済のあり方に対して安心感を与え、今日の状況から一日も早く脱却できる原因ではないかというふうに思います。  事実、我が国の民間の流動資産だけでも千二百兆もある、そして、国全体の総資産ということになってまいりますと、もう七千数百兆という膨大な資産資本のあるこの国でございます。それが、言いかえれば、大変な時代ではあるけれども、たかだか経済がやや不調であるということだけで、ここまで国民の中において大きく将来に対して不安を感じている、そういう状況は珍しいのだろうと思います。  その最大の理由は、やはり近年、社会保障制度見直しの中において、医療保険の問題。あるいは、昨年の秋厚生省がお出しになりました年金改革の試算、五つの方法をお出しになりましたが、本当にあらゆる各界各階層の方々から、この五つの案だけはだめなんだ、別の案を考えてくれというのが圧倒的な国民の声。こういう不安が非常にふえてきている。すなわち、日本社会保障制度に対する不安というものが非常に増強されていること、そのことが、より大きく、今日の経済的な停滞状況により悪いものとして反映されているというふうに私には受け取れるわけでございます。  事実、九年度予算補正、そして、これは大蔵大臣にもお伺いしなければいけないことでございますが、この十年度予算が通った後、どうせ補正予算が組まれるんだろう、また、組まざるを得ない経済的な要因があるだろう。それであれば、我々が言っているように、この予算組み直したらどうかという議論、当然あるわけでございますが、いずれにしても、政府としても与党としても、十年度補正をお組みになるんだろう。そして、お組みになるときには、結果においてまた公共事業中心とした、経済刺激というものを中心とした補正をお組みになるのではなかろうかと考えています。  もしそのようなことになってくるとするならば、本年度予算の中において、いわゆる財政構造改革の中で、社会保障については大きなキャップをはめたまま、そしてそのほかのところについては非常に緩めてしまう。結果においては、財政全体のバランスとしては、やはり社会保障に極めて厳しい予算を運営していくということになっていくのではないか。そうしたことが、今日国民が持っている日本社会保障制度に対する不安感と完全に重なり合ったときに、大きな経済的な効果を上げられないという状況をつくるのではないか。  そのように考えるわけでございますが、大蔵大臣、あるいは総理補正予算はお組みになるんでしょう。
  6. 松永光

    松永国務大臣 お答え申し上げます。  今御提案申し上げておる十年度予算、これを一日も早く審議をして、そして上げていただいて、新年度から切れ目なく十年度予算に基づく事業というものを推進することができるように、同時にまた、関連法案減税法案、これも速やかに成立をさせていただいて、減税効果が出るような、そういう状況になることをひたすらお願いを申し上げる次第でございます。
  7. 五島正規

    五島委員 大臣予算委員長のときの方がもっと率直におもしろいお話をしておられたわけですが、だれが考えても大蔵大臣のお立場では今のこの予算委員会においてそう言わざるを得ないということも理解した上で、やはり、今の日本経済状況の中において、補正予算をお組みになるんだろうというのは、国民的にもあるいは我々も、常識的に考えている。そして、そのときには、結果において公共事業に偏重した予算になっていき、この十年度予算の中での社会保障というものに対する大きなキャップというものは、そのまま残されるのではないかというふうに考えるわけです。  もし、補正予算を組まなければいけないという状況になったときに、その点についても見直しをしてもらえるのかどうか、後ほどお伺いしたいと思いますが、事実、平成十二年度からは介護保険が導入されることになっています。そして、それまでには基盤整備、新ゴールドプラン等整備が終わっていなければいけません。しかし、今年度は、新ゴールドプラン達成状況から見ても非常に大きく圧縮されて、このままでは、平成十二年度までに新ゴールドプラン達成ということになりますと、来年度、現在の倍ぐらいの事業量を持ってこない限りは、どうしてもそれはできなくなってくる。現実問題として、そういう分野におけるしわ寄せというのは生まれてきているわけです。  そういうことを考えた場合に、大蔵大臣は、この予算審議の場においては、十年度予算について一日も早く成立させてほしい、関連法案を上げてほしい、それは大蔵大臣の職責からいうならばそのとおりだと思います。そのことについて、そうおっしゃっているということについて、私は、そうだろうなと理解はします。しかしながら、それだけで本当に、来年度予算補正を組まずに日本経済が回復するとお考えでしょうか。また、回復させるということになった場合に、そのことだけにとらわれて、結果において、社会保障部分に対しては、財政構造改革との関係もありという形で大きくキャップをはめたまま置いておくということになりかねないのではないか。  そのことについて再度、大蔵大臣、お答えいただけますか。
  8. 松永光

    松永国務大臣 委員よく御承知のとおり、社会保障関係予算につきましては、少子・高齢化が進行する中で、経済発展社会の活力を損なわないよう構造改革を推進し、制度効率化合理化を進めつつ、必要な給付を確保するという方針で編成をされたわけであります。十年度予算においても、実は、公共事業関係費については七・八%のマイナスとする一方、社会保障関係費については二・〇%の増額を確保したところでございます。
  9. 五島正規

    五島委員 私は、昨年の臨時国会におきましても総理に御指摘いたしましたが、財政構造改革をやらなければいけない、現在の日本の大きな財政状況赤字構造というのは、人間で言うならば悪性のがんだろう、同時に、日本経済状況というのは肺炎を起こしているよ、肺炎治療をせずにがんの手術だけを考える、これはとんでもない間違いだということを申し上げました。  ようやく肺炎にかかっているということについて政府お気づきになった、与党お気づきになった。肺炎にかかっているから何か抗生物質だけがばがば飲ませばいいというものではないだろう。やはり肺炎に対する治療とあわせて、その患者がんも持っている、そして一日も早く肺炎を治すとともに、同時に一日も早くがんに対する根治治療ができるようなことを考えていく、当たり前のことだろうと思います。  ところが、どうしても、やぶ医者ほどよくそうなるわけでございますが、がんを診断するとがんのことだけ、そしてその患者肺炎にかかって高熱でも続きますとその肺炎のことだけを考えてしまう。私は、財政構造改革とそして現在の経済状況とどのように矛盾さすことなく進めていくか、非常に難しい状況ではあるけれども、それはやらなければいけないことだ。  そうした中において、ともかく目先の状況に追われる中において、社会保障制度というものに対するやはりきちっとした対応、そのバランスというものが失われてしまうとすると、私は、国民のそういう消費というものは拡大しないのではないか、そして、そのことに対する不満というものがますます増大するのではないかというふうに考えています。  厚生大臣、今私は、新ゴールドプランの達成は介護保険までには当然できるという前提で介護保険は成立したと思っています。今年度予算状況の中で、新ゴールドプラン介護保険の発足までに達成可能でございますか。
  10. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 限られた予算の中で新ゴールドプランの計画を達成すべく今鋭意努力しておりますし、この財政構造改革の中におきましても、各省庁一律削減ということでなくて、厚生省関係予算については二%程度の増額を認めていただき、そしてその中で、新ゴールドプラン介護保険法成立までに基盤整備につきましては予算もつけておりますので、私は、この既存の計画を達成できるようにこれからも全力を尽くしていきたいと思っております。
  11. 五島正規

    五島委員 この介護保険議論の経過の中におきましては、私どもだけではなくて自民党さんの中でも、新々ゴールドプランをつくらないと介護保険は有効ではないのかという声すらある。しかし、今日の状況の中においては、新ゴールドプランについては、厚生大臣自身が努力するという言い方しかできない厳しい状況にあるわけです。  こうしたことを考えたときに、やはり社会保障に対する費用というのは、何か、単なる消費であるというお考えをもしお持ちになって、経済対策としてはそこを削減すればいいということを考えたとするならば、私は、それは間違いだろうということを指摘しておきたいと思います。  また、今日の社会保障費の増加、もちろん高齢化によって起こってくるわけでございますが、あるいは財政の悪化等々の問題として高齢社会という問題がよく言葉に出てまいります。  本日の新聞にも出ておりますが、また女性で一年強、男性で半年以上、平均寿命が延びました。大変めでたいことでございます。これは本当に、衛生状況や医学の進歩あるいは国民生活の向上の結果、ようやく我々の世代において天寿を全うできる時代として到達したすばらしい成果だろうと思っております。  そして同時に、こうした時代の中において、大変変わった時代が来たかのように言われるわけでございますが、実は、労働年齢と、すなわち就労しておられる人口と、それから従属年齢、昔でいえば子供、お年寄り、今もそうでしょう、との比率から見ますと、昭和三十五年ぐらいに異常に従属年齢が短くなった、少なくなったというのがございますが、それ以前と比べてみますと、今日の社会がそれほどむちゃくちゃ異常であるということは言えません。ただ、この関係については、これから先考えてみますと、二〇一五年、二〇二五年を考えてみますと、現状の思考のままでいくと大変問題が出てくること、これは間違いございません。  そこで、この点については厚生省、労働省にもお伺いしたいわけですが、私も大変気になりました。一体、今日の社会の中で、社会人として就職していく、仕事を持っていく、そういう年齢は何歳ぐらいからが平均になっているのか。そして、労働年齢は何歳ぐらいまで確保できるのか。  これは健康上の理由もございます。前回も申しましたが、今日の六十代は昔の五十代よりはるかにお元気です。加えまして、情報社会という形の中で、就労の形態も変わってまいりました。もちろん、今もなお、いわゆる額に汗する仕事という重労働に従事しておられる方々もおいでになります。しかしながら、全体として額に汗する仕事が少なくなって、何か運動してもらわないと健康が維持できないというような就労形態に変わってきていることも事実なんですね。言いかえれば、労働年齢はますます長くなっている、そういう時代になってきています。  そういう時代に応じた形でのいろいろな統計がどうなっているのか、調査してみました。厚生省の人口統計を見ても、労働省の統計を見ても、ほとんどが、十五歳というところが一つの区切り、そして六十五歳というところが区切り、七十五歳というところが区切り。何なんだ、これは。かつては十五歳で社会に入っていく人が多かった、その時代の統計手法がそのまま続いているんだ。あの数字を見ただけでは、これから先、日本の現役労働者がこれだけある、その労働力率をどう上げていくかということは全然検討がされていない。  昨日、労働省に、六十五歳以降の方の労働力率をどれくらいだと将来的に推計しているかという数字を出していただきました。二五%ですという数字が出てまいりました。本当なのと。それは今までの仕事しておられる人の数を言っているだけであって、これから先の労働の形態、そういうふうなものを押さえた形での推計値がとれていないということなんだ。  そういう基礎的な数字もないままに、何か、高齢社会になってくると、暗い、あるいは非常に経済が厳しくなっていく、そういうふうなニュアンスと、そして、社会保障が、何か、高齢社会になってくると年金も危うくなっていく、老人医療もおかしくなっていく、そういうふうなことだけが根拠なしにアナウンスされてしまって、国民は非常に閉塞感あるいは不況感を持っているような感じがいたします。  こうした厚生省や労働省の統計のあり方も含めて、どうお考えでしょうか。
  12. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員がみずから論議をされながら、むしろ高齢者雇用という問題を提起されたことには敬意を表します。その上で私は、従属人口の議論については多少議員考え方を異に、あるいはしていないのかもしれません、問題意識としては持っております。  確かに御指摘のように、現在の統計のとり方、これはまさに、中学を卒業して実社会に巣立ち、そして定年を迎えて労働世代としての終わりを告げる、その形態の時代から続いてきたとり方であります。  そして、その統計で見ましても、実は先ほど議員からも御指摘がありましたが、従属人口と労働人口との差というものは動いておりますが、実質的にここで一番大きな差が生じているのは何かといえば、若年労働力が減少し、高齢労働力に移行しつつあるという形であります。言いかえれば、従属人口の部分で年少人口が減少し、しかも大幅に、高齢人口が増大しているということであります。  そして、先ほど、本年度予算における社会保障関係諸費のキャップと、その他の項目についての点での御指摘がございましたけれども、まさに私どもが社会保障構造改革をと申し上げておりますその大きな部分は、議員が提起された、従属人口としては確かに昭和三十五年ぐらいがピークだったかもしれませんが、その後、次第次第に変わってきた。そして、ある意味での安定に達している。しかし、その従属人口の内容は全く異質のものになっている。そういう状況の中で、今の仕組みのままで果たしてもつのかという問題意識から社会保障構造改革をお願いし、これに対しての問題提起をいたしております。  私は、こうした視点で御議論をいただくことは、将来に向けて極めて大事な問題を提起していただいていると考えますし、その意味で、言いかえれば、どうすれば高齢者が意欲を持って健康で働いていただくことができるような社会仕組みに変えていけるのか。これは、雇用形態の変化もありましょうし、あるいは就労構造の変化も必要かもしれません。さらには、終身雇用制そのものにも響いてくる部分を持つと思います。  言いかえるならば、これから先、我々がどうやって高齢者の働きやすい環境の整備を行っていくか、その中において、従属人口の質の変化に対応した社会保障仕組み組み立てていくことがいかに大切か、その御指摘に関しては、私は同感であります。
  13. 五島正規

    五島委員 今総理が御指摘になりました少子化の問題につきましては、従属人口の問題とは違って、非常に大事な問題だと考えておりますし、その点は、時間の最後で実は文部大臣と少し論争したいなと思っている点がございます。  その問題の前に、私が申し上げたいのは、やはり従属人口の比率というのはそれほど大きく変わっているわけではない。そして、高齢社会というけれども、実は決して寝たきりのお年寄りがたくさんむちゃくちゃふえているというのではなくて、その中においてお元気な、もし六十代、六十五歳をもって高齢者というならば、その括弧づきのもとで高齢者がふえている。だけれども、本当に、今日の社会の健康度、あるいは現在の社会の中で必要とされている労働力の大きさ等から考えた場合に、仮に高齢者というのを七十五歳からに定義を変えれば、必ずしも高齢社会でもない。  なぜ六十五歳をもって高齢者といったり、六十歳退職をもって高齢者扱いしなければいけないのか。これは、これまでの時代背景の中で、今までがそうであったということでしかないわけでございまして、そこのところをどう変えていくか、そのことを前提とした社会制度をどのように変えていくか。私は、それはきょうあす変えなければいけないというせっぱ詰まった問題ではない。しかし、少なくても二〇一五年、高齢化のピークが始まるころまでにはその社会というものをつくり上げないと、これは大変なことになるだろうというふうに考えるわけでございます。  そういう意味では、私は、先ほどから申し上げております年金や医療の問題を含めまして、例えば基礎年金、あるいは老人医療介護保険、あるいは障害者対策の財源、こうしたものについて、総理は支え合いとおっしゃいましたが、そういう部分というのは、社会全体で支え合う方法というのはいろいろなものがございます。そういうふうなものはむしろ、消費税を財源とした、消費税の目的税化ということによって賄うべきではないかというふうに個人的には考えています。  また、そうした前提のもとで六十歳代をどのように現役化していくか、これが非常に大事である。これを現役化していくためには、日本では言葉だけはワークシェアとか平均労働時間という言葉が使われておりますが、これこそまさに言葉があって意味が使われていない。ワークシェアという以上は、本当にシェアしてほしい。高齢者に対して提供でき得る仕事の領域というものを明確に分けて、その方々が仕事ができるそういう場を積極的につくっていく。  あるいは、平均労働時間というのであれば、私も、おしかりを受ける方々もたくさんおられるかと思いますが、なぜ日本では平均労働時間といいながらほとんど均一労働時間なんだろう。三十歳代前半ぐらいまでの労働時間が仮に週四十二時間であっても、まあ六十五歳ぐらいになれば労働時間を週二十時間ぐらいに抑えてもいいんじゃないの。その結果として、国民全体の平均労働時間は短くなっていいんじゃないの。そういうことができない限りは、高齢者雇用なんてできないだろう。  そういうことを含めた大胆な六十代の方々の現役化ということについて、これは通産省ももちろん関係すると思いますが、労働省、どのようにお考えでしょうか。
  14. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 今、先生と総理とのやりとりを聞いておりまして、私は大変現実的なお話だろうと思っております。  御指摘のように、六十五歳以上の方々は、個人的な差が非常にありますが、従来に比べましてはるかに働く意欲、また健康を持っておられると思いますし、少子化ということも言われておりますから、長い目で見ると、実は労働人口というのは将来の日本経済のボトルネックになるかもわかりません。そういう意味からも、六十五歳以上の方が現役で働いていただくということは、御指摘のように私は大変重要だろうと思います。  そこで、例えば六十五歳以上の方々の健康状態あるいは働く意欲、資産状況等によって、いわゆる五十、四十、三十代の方と違って、はるかに多様な働き方をやはり提供しなければならない。それは、時にはパートであり、時には短時間働きたい、時には自分に仕事を与えてもらってその中で働きたい、いろいろな御期待があると思います。法律的にはその手だて、道をやはり講じておかねばなりません。  そこで、今国会にも、派遣業法の緩和のための法律、あるいは今申し上げた裁量労働や働き方の多様化を前提とした労働基準法等も出しておりますし、また、御希望の方に対しては、それにこたえ得るような職業紹介のあり方として、シルバー人材センターというものを全国に展開いたしております。ぜひそのような形で、まずワークシェアリングができる法的整備を目指しておりますので、提出いたしております諸法の御審議についてぜひ御協力を私はお願いしたいと思っております。
  15. 五島正規

    五島委員 一時間の時間で盛りだくさん質問したいと思いますので、今の話はまた改めての機会議論したいと思います。  いま一つ、厚生省関係について申し上げておきたいことがございます。  先日、坂口議員がインフルエンザの問題についてお話になっておられました。私も実はこの問題を取り上げようと思っていたわけですが、議員がお取り上げいただきましたので省略いたしますが、それに関連いたしまして、今回、伝染病予防法が感染症予防法と変わることになりました。五十年ぶりの変更でございます、私は大賛成でございますが、ただ、その中で一つだけ非常に心配がございます。  よく、あの中でも新感染症という言葉が使われています。新感染症というのは、エボラなんかのような海外から入ってくる危険性のある重篤なものを指しておられるのか、それとも文字どおり新感染症を指しているのかわかりません。そして、今日の医学の状況でいいますと、実はこういうものは、O157を思い起こしていただけばわかりますように、新しい感染症はいつ発生するかわからない。そして、発生したその一年、二年が大変です。一、二年もすれば、恐らく日本医療状況からいいますとそれを制圧することができます。  ところが、新感染症ということを挙げておきながら、疾病名で挙げますとこれは旧感染症なんですね。新感染症というのは、まだいつ起こるかわからない。例えばあのインフルエンザが、インフルエンザの特徴として、あと一、二年の間に人から人への感染をする、そういうふうに変性をするかもしれない。そういう意味において、新感染症というものは実は防疫体制、予防体制というものが非常に大事でございます。ところが、今回の感染症予防法を見ますと、ほとんどが治療体制でございまして、防疫ということについては非常に軽視されています。  防疫というのは、一定のより高度なインフラの整備を必要とします。今日のように各県で衛研を持ち、各府県の中に幾つかの保健所を持つというような形が適当なのか、あるいはそういう新しい感染症が出てきたときに、直ちにその菌を同定し、対応していけるような施設が必要なのかということを含めたこの防疫の体制というのは、これは私は国の責任においてやっていかないといけないことだと思っております。  その点について、新感染症の予防対策の中における防疫機能ということについてどのようにお考えか、もし御意見があればちょうだいしたいと思います。
  16. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 議員の御指摘は、今検討しております感染症予防法案においては、むしろ予防とか防疫が弱いのではないかという御懸念だと思うのです。しかし、この法案につきましては、感染症発生動向調査体制の整備等を通じまして、ふだんから感染症の発生に備えていく施策の構築を目指すとともに、新しく出現する感染症にも的確に対応できる仕組みを設けること等、さまざまな感染症の発生及び蔓延防止に必要な対応を図ることとしています。  ただ、防疫という字がないのではないかということなのですが、具体的な国及び地方公共団体の責務としては、感染症の予防のための施策が迅速かつ的確に実施されるよう、情報提供の推進や相互の連携を図ることを明記しております。さらに、特に総合的な対策を進める必要がある疾病については、国が指針を策定するとともに、関係試験研究機関の機能強化を図ることにより、国民が不安のないような感染症対策を今確立していきたいということで、法案の提出準備を進めているところであります。  若干、この名称につきまして今各党間で意見の違いがあるようでありますので、この調整が済み次第、今国会中には法案を提出していきたいと考えております。
  17. 五島正規

    五島委員 この法案は厚生委員会にかかるはずでございますので、その場においても議論したいと思います。それ以上きょう議論するつもりはございませんが、申し上げておきますのは、例えば、厚生大臣が基本指針をつくったり、都道府県知事が基本指針をつくったりというのは、従来あった感染症に対してはそれができます。しかし、新感染症に対してそんなものができるわけがないわけです。  あそこに書いてあるのは、やはり発想としては、従来あった感染症対策、伝染病対策、それを整理し直しただけであって、今日の事態であるあのO157のような発生とかあるいは香港におけるインフルエンザ等の問題に対してどう対応するのか、そして、場合によっては緊急に新たなワクチンを大量につくらなければいけないというふうな事態になったときにどうするのかというふうなことについての検討がなされていないように思われます。  申し上げておきますが、O157は、もう今日の状態において言えば、赤痢あるいはせいぜい食中毒事件と同じ程度の対応で十分対応できる病気になっておりますが、しかし、堺に起こったときは間違いなく新感染症でした。そこをどう乗り切るかということをやはりきちっと考えた感染症予防法でなければいけないと思っておりますので、これはまた委員会においても議論していきたいと思っております。  次に、規制緩和の問題について若干、時間もございませんので簡単に申し上げたいと思いますが、昨年の臨時国会におきましても、さまざまなそういう建築事業に参加する業者さんの指名願手続の簡素化についてお願いしたところでございますが、昨年の暮れあった指名願については、相変わらず本人持参を求められた政府関係の公社等々もあったようにもお聞きしております。この点についてどのような状態になっているのか、お伺いしたいと思います。  あわせまして、これはまた、今お見えになっておりませんが、深谷議員の方からお話がございましたが、東京都の容積率の緩和についての御意見が出ておりました。私は、東京都だけではない。とりわけ私は医療関係者として、医療機関において、御案内のように療養環境の改善ということが非常に大きな課題になっています。  これは厚生大臣御存じのように、療養環境を改善するためには、建物を基本的に増改築するしかないわけですね。増改築するために、現在の敷地の中にそのまま増改築できる医療機関は少のうございます。だからといって移転するとすれば、現在の法律のもとでは、一たんその病院は廃院にして新たに届けなければいけませんね。実際上それはできないということになってくると、やはりどうしてもそこのところに対する一定の緩和策が必要だ。そうでない限り療養環境の改善は進まないわけです。  そういう意味では、各都道府県の責任でということになっておりますが、建築基準法の中で、道路幅に応じて建造物の容積率というものを一定緩和するような方向ということができないのかどうか。  この二つについて、建設大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  18. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答えを申し上げます。  最初に、有資格業者の登録の問題でございますけれども、昨年の十一月にも御質疑を賜りました。  その後、私どもいろいろ検討いたしておりましたけれども、まず、平成十年から始まります平成十一年、十二年度の登録、これの有資格業者の登録につきましては、従来一部の機関等でやっておりました郵送の受け付け、これを、必ずしも文書の申請ではなくて郵送につきましてもこれを認めるということにしたいと思っております。また、郵送の受け付け以外にも、例えばインターネットを利用いたしました電子申請、これでございますと、一連の書類で、建設省関係、公団等も含めまして一括して受け付けが可能、こういうことにもなりますので、これも実施をしたい、こういうふうに考えているところでございます。  それから、容積率の問題でございますけれども、担当の都市局長の方から御答弁をさせていただきたいと思います。
  19. 木下博夫

    ○木下政府委員 お答えいたします。  容積率につきましては、先生御存じのように、生活環境も含めまして良好な市街地環境をつくるという点から決めさせていただいておりまして、先ほど御紹介ございましたように、昨年の十一月の経済対策に沿いまして、都心の商業地域の容積率緩和をやったわけでございます。  我々の時代認識といたしましては、現在のやはり都市のつくり方としては、今までのいわば投資、この既存ストックを生かしながら良好な環境をつくっていこうということでございますから、ある程度市街地が形成されているところにつきましては、私どもは、単に規制緩和という視点だけではなく、長い目で見た都市づくりとして必要なものはやってまいりたいということでございます。  御質問のもう一つございました医療環境のことにつきましては、昨年の秋もたしかこの点について先生の方から御質問がございました。  私ども、厚生省ともいろいろ御相談をさせていただきました。ただ、病院のことだけに限って容積を緩和するということはなかなか現在の制度では難しゅうございますが、しかしながら、時代の中で、やはり医療、福祉の問題は大変我々も重要だと思っておりますから、なお引き続き検討させていただきます。  それからもう一点。それに関連いたしまして、従来から容積率の問題につきましては、例えば総合設計とかあるいは特定街区という都市計画の手法を使いまして整備しておりますので、こういうことによって病院のいわば改善をやってきている例もございますから、なおそういう点なども一緒にあわせて我々勉強させていただきたいと思っております。
  20. 五島正規

    五島委員 ちなみに高知市なんかの場合は、ごく一部の地域を除きますと、いかに広い道路沿いでも容積率は二〇〇%ということになっております。  結果において、そういう病院や施設が改築したいと思ってもなかなか進まない。今のように非常に景気が低迷している中において、やはり時代の流れとしてそれを求められている以上、やりたいということがやれないそういう規制は一日も早く緩和して、むしろそういう面からも経済活性化を進めていただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。  時間がございませんので、あと幾つか規制緩和についても御質問する予定でございましたが、また次の機会にさせていただきまして、最後に、今日の少年犯罪の問題について、文部大臣に対して御意見をちょうだいしたいと思います。  この場におきましても、昨今ございます子供のいわゆる暴力行為、非行行為等々につきまして、さまざまな意見が出されてまいりました。そしてその中で、少年法の見直しの問題といったところに大きな議論が集中していたように思います。そういう側面が議論されることについては否定いたしません。しかし、基本的に、今日の子供たちを取り巻いている状況をそのようなところから議論していって本当に今の状況が改善できるのだろうかというふうに思っています。  私が親しくしております学校の養護教諭と話をいたしますと、現在、何回調査をしても、朝食を食べないで小学校に来る小学校一年生、二年生といった子供たちが三分の一はある。あるいは、子供に一家団らんというテーマで作文を書かすと、日曜日に両親と一緒にファミリーレストランへ行って食事をした、それが一家団らんとしてあるイメージとしての作文というのが非常にふえてきている。私、それを一家団らんじゃないと言うつもりはありません。文化が変わったのかなという感じはします。  しかし、そうしたことを含めまして、今日の子供の問題というのを考えた場合に、やはり子供の成長が肉体的には非常に早い。肉体的に成長が早いというのは、肉体的なストレスが強いということです。そして、外的にもさまざまな形でのストレスが多うございます。例えばテレビのようなもの、あるいはパソコンゲームのようなもの。いけないというわけではありません。しかし、あれをずっと見ているというのは、あのような画面の切りかわりに対して子供がストレスを感じずについていけるわけがない。そこには内在的なストレスは当然のこととして発生します。  私は、実は医者となって一番最初にやった仕事は、子供の発育や発達の調査を、集団に適応できるかどうかということを衛生学会に発表したのが最初の仕事でございました。そしてその多くの調査をしていく中で、子供の発育、発達を五つぐらいに分けまして、社会性の発育や言語の発育、知的発育、あるいは移動能力とか手の運動とか、そういうふうなものを全部チェックするわけですが、子供の発育というのは極めて演繹的であって、どこかでひっかかると全体として非常にひっかかるなということを実感として感じました。  例えば、二歳ぐらいで子供の反抗期が始まります。二、三歳で始まります。この二、三歳の反抗期で一番最初に子供の発育の障害が起こることが多うございます。通常の子供であれば半年以内でクリアできることが、そこにひっかかってしまって、一年半もひっかかり、全体の発育が何かいびつになるというケースが見られます。それは、親が、あるいはその子供の保護者が、親の感覚でもって第一次反抗期を弾圧した場合によく起こります。  御案内のように、第一次反抗期というのは二つの面の大きな特徴がございます。まず、子供が自分と他人とを区別できる能力ができてきた、それが第一次反抗期の一つの原因でございますし、もう一つは、ばかとか嫌とか、ああいう発音の簡単な単語を使って自分の意思を外部に向かって初めて出す。言語の発育の上からも、非常に使いやすいという意味でああいうふうなものが入ってくる。そのときに、そこを親の、保護者の感覚で、ばかと言ったらせっかんをする、嫌と言ったらいけない。あるいは、子供が、自分の表現が十分できないから、なかなか言うことを聞かずに泣く。泣くならばそれを無視するという形で対応していく場合に、そこで反抗期の時間が非常に長くなって、そのほかの発育、発達に非常に影響するということを観察していた経過がございます。  そして、そういう経験から見ましても、今日の子供たちに対してある問題というのは、非常に多くのストレスというもの、子供の肉体的な発育状況社会的な発育状況。そして、保護者が子供に対して、本当に子供の発育、発達に応じた対応をしているのかどうか。私はどうも、していない。  私たちの仲間の中では、手乗り文鳥症候群という言葉がございます。文鳥はもちろん子供を育てることができます。手乗り文鳥は、卵を産んでも子供を育てることができない。どうも、日本が高度経済成長時代に入ってきてから、子育て、もちろん子供がかわいいという気持ちには変わりがありません。しかし、子供の自然の発育、発達に応じたところのしかりとしつけと甘やかし、そして家族以外の、いわゆる幼児期に必要な、生物学的に必要な縦社会の経験、そういうものを全部保護の名前のもとで排除してきてしまった結果、そういう形で十分に経験しない親たちが、今、次の子供を産んで育てる時期に入ってきている。  社会全体として、手乗り文鳥症候群に近づいてきているのではないか。そのことが、子供を産むとしんどい、怖いという両親をつくってきているのではないか。少子化の原因として、そういう面というのは非常に多い。私は、日本が子供を育てられるだけ経済的ゆとりがないから子供を産まない、うそだと思います。貧しい国で子供がたくさんいる国はたくさんございます。  今そういうふうになってきているのは、子供を育てる自信がない親たちがふえてきている。そして、その自信がないということは、言いかえれば、その結果として、非常に家事を軽減することによって女性を労働現場に出し、そのことはよかったと思います、それにかわる何らかのものがどこかでいびつな形でしか提供できなかった、その結果なんだろうと思っています。  そしてさらに、そういうストレスの中で、暴力衝動が人間であれば当然起こります。  暴力について五つの段階があるとよく言われています。そして、直接的な内部的な衝動で起こった暴力行為に対しては、学校の先生も社会も糾弾することができる。しかし、その糾弾がされたとしても、そこから抑え込められて、閉じこもって自分の空虚な内部空間をつくり、さらに暴力の形態としては進行していき、例えばだれかにいじめられているのを見て喜ぶとか、より権力を持っている人からその子が処罰されるのを見て喜ぶ。そういう暴力の形態としてはより進行しているもの、そういうものに対しては、今の社会は対応するすべがない。  さらにそれを通り越してしまうと、今問題になっているような事件が起こってくる。  さらに加えて、思春期、皆さん方は秀才だったから経験がないのかもわかりません。私は、中学校時代というのは空想にふけっていました。授業中勉強せずに、いろいろな空想をしたり、本を読んだ。小学校のときには、ターザンの映画を見たらすぐターザンごっこになって、ターザンになったような気分がしていました。そして、うちの息子たちは、ジャッキー・チェンのテレビを見たら、ジャッキー・チェンになったような格好をして暴れていました。  まさに空想と現実との距離というものが非常に近いところに子供たちは存在し、思春期の中で自我が生まれるときには、そういうふうな空想と、今問題になっているバーチャルな世界と現実の世界と、より身近なものとして考えているところに思春期というものの特徴があるはずです。  そういうふうなときに、そうした暴力のコントロールというものがされていないという状況が重なった場合に、私は、あの不幸な神戸の事件というものは、たまたまある一人の子供の異常な行動、あそこまでなるのは異常かもしれないけれども、異常な行動とは言えないような、そういう危険性を感じます。  そうしたことについて、文部省、例えばゆとりのある休日ということで五日にされるのもいいけれども、残りの土曜日は子供たちが本当に、大臣がおっしゃっているように、ボーイスカウトやそういうところに行って過ごしているのかどうか。あるいは、親と子との接触の時間というのは、それは親御さんなんだという形で、文部省としては、そこは入っていけないんだというふうに放置しておられるのではないか。あるいは、もっと言えば、今の学校の若い先生方自身が手乗り文鳥になっていないのかどうか。それについて、いかがでしょうか。
  21. 町村信孝

    ○町村国務大臣 子育てから少子化の原因あるいは暴力の発生原因、先生の、医学的な見地から、あるいは社会学的、心理学的、幅広い見地からの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  大変共感を覚えるお話も多々いただきましたし、特に、何で子供がうまくできないのかというようなことについては全く私も、経済的な理由ということがしばしば言われますが、むしろそうではなくて、子育てそのものが自信がない、あるいは嫌だというようなことを私も考えて、感じておりましたが、ただいま五島委員のお話を聞いて、なるほどなと思ったところでございます。  いろいろな原因が重なっている。今の子供のいろいろな暴力の事件その他、これが一つ絶対の原因だということは多分なくて、今委員が言われたようなさまざまな原因があろうかと思います。  特に、学歴偏重というような風潮の中で、勉強勉強ということが盛んに言われ過ぎるということが子供のストレスになっているということは間違いないでしょうし、あるいは、やはり物が豊かになり、経済的に豊かになると、子供が欲するものは何でも小さいうちから与えてしまう、あるいはお金を与えるということによって、子供に自分をコントロールする自制心とかこういうものがなくなってしまうということが、また大きくなってくるとストレスの原因になってくるといったような、いろいろなことがあるのだろうと思います。  文部省も、今まで随分早い段階からいろいろな研究をしたり懇談会を開いたりやっておりますが、なかなか正直言ってこれはという答えがなかったのでありますが、ただいまの五島委員の御指摘なども踏まえて、これからさらに検討を加え、しかし、いつまでも検討ばかり言ってもいられませんので、具体的にやれることはやはりやっていかなければいけない。  必ずしも委員御賛成ではないかもしれませんが、週五日制ということを私ども一年早く実施に移したい、二〇〇二年から、こう思っております。そして土曜日、日曜日、総理も、土日に塾に行かれては何のための週五日かねという御指摘も私もいただいておりますが、そういうことではなくて、今まで、ややもすると、もうちょっと時代おくれだみたいなことを言う人もいる例えばボーイスカウト、ガールスカウト、各種のそういう青少年教育団体の活動をもう一度社会でも見直してもらって、そこで親子の触れ合い、あるいは年齢の異なった大きいお姉さん、小さい弟との触れ合いを深めていく。社会体験、自然体験、そういったことなどをやりながら豊かな心をはぐくんでいく。  もちろん、学校の現場も、単線的に勉強勉強と言うのではなくて、もっと、暗記力というよりは自分で物を考え、そして行動できるような、そういう教育の方法というのは現に幾つもあるわけでありまして、そういったことなどをしっかりやりながら、急な答えは確かにないと私も思っております。所持品検査をやったからといって、すぐ刃物がなくなるとも思いません。でも、そういうことは最低限のこととしてしっかり押さえながらも、さらにそうした豊かな心、たくましい心を持った青少年の育成に、文部省としてもこれから最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  22. 五島正規

    五島委員 終わります。
  23. 越智通雄

    越智委員長 これにて五島君の質疑は終了いたしました。  次に、高木義明君。
  24. 高木義明

    ○高木委員 民友連の高木義明でございます。  質問通告に基づきまして、総理初め関係閣僚に若干の質問をさせていただきます。  私は、橋本総理が満二年を経過して、今この国会に臨んでおるわけでございます。質問の冒頭でありますが、一言申し上げたいのは、言うまでもありませんが、国会という場は、それぞれの政党の政策をお互いにぶつけ合いながら、議論を十分にしながら、これを通じて国民の、国家の利益を一歩でも二歩でも前進をしていく、こういうところであろうと思っておるわけであります。  その中で、野党の意見も十分に耳を傾けて、取り入れるものは取り入れる、そのことによって少しでも物事の解決が早くはかどり、そして一つでも二つでも多くの成果が得られる、これが私たちに課せられた使命ではないかと思っております。とりわけ、メンツやプライドを超えて野党の主張も十分に反映をできる、また聞くことができる、そういう寛容と決断がまさに今橋本内閣に求められていると私は思っております。  しかし、この一年間の国会の姿を見ておりますと、必ずしもそのことは通っていない。まさに言われるところの、今国会が形骸化をしておるのではないかという指摘さえあるわけであります。議会軽視と思える事例が、この一年の間にも幾つもございました。  特に、まず一つは、何といいましても、昨年十二月の二兆円減税の発表でございました。減税は私たちの、国民の要望でもありますので、これについて進めることは、それは結構なことでございますけれども、あれほど、さきの通常国会臨時国会、ほぼ一年かかって、現下の経済状況、景気対策のために、野党を初め多くの方々が、いや、むしろ与党の中からもそういう声があった。しかし、ことごとく、国会議論の場ではそのことはすべて拒否をし続けてきたのでございました。  昨年の臨時国会が終了して一週間もたたないうちに、あっと驚く二兆円減税総理の口から出てきたのでございました。一体、この一年間、我々は国会の場で何をしてきたのであろうか。それぞれが真剣な論拠のもとに議論を交わしてきた、数々の貴重な議事録も散見されるわけであります。  そういう中で、橋本総理は、カナダのAPEC、そしてクアラルンプールのASEAN、これらの会議に出て初めて、海外の強い要請を胸に受けた、したがって、そのような決意をした、こういう御答弁がるる述べられてきたわけでございます。国会議論、それよりも外国の声を尊重するのか、私たちはそのような、率直に寂しい思いをしたわけでございました。  また、あと一つは、これも議論をされ尽くしてまいりましたが、住専国会で、公的資金の投入は住専と信用組合以外にはしないと、あれだけ激しい国会議論の中で政府は答弁してきたわけでございますが、ことしになって、金融安定化システムの関連法案、関連予算審議を通じて、また当時のそのような国会発言、国会答弁を百八十度翻すような対応になった。これまた一体何であろうかと率直に、私は国会に籍を置く一人として感じるわけでございます。まさに国会の権威というものは一体何だろうかと私はみずからに問い直した次第でございます。  こういったことについて、まず総理の御所見を賜りたいと思います。
  25. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 冒頭、大変強い内容を持つ御意見を拝聴をいたしました。そして、今、真剣に私は拝聴をいたしております。  そして、その時点、時点において判断をいたすこと、議員の御発言はそれを許さないという趣旨ではないと思います。  そして、確かに特別減税を、ASEANプラス3、ASEANプラス1の帰途に真剣に考え、決断をいたしましたことも事実でありますし、閉会中でありましたから、国会にお諮りをする前に記者会見という、それもけしからぬというおしかりもきのうございました。  そうした点で足りないところがあるならばおわびを申し上げますし、その時点その時点における政策判断というものが、必要な場合に必要な判断をすることを許されるという前提は置かせていただきたいと思いますが、お気にさわりましたことはおわびを申し上げます。
  26. 高木義明

    ○高木委員 経済は生き物、そして政治も生き物でございます。私は、今御指摘ありました硬直的な態度では決してございません。しかし、やはりこれまでの経過、そして議論の重み、これは今後とも私は大切にしていきたいし、だからこそ責任のあるリーダーの方々は先を十分に見誤らないように見ていく、そういうことも私は大切であろうと思っております。  さて、質問の具体的なものに移りますが、私は、景気対策、とりわけ減税を実施すべきだという観点からお尋ねをさせていただきたいと思います。  これは二月二十四日の日本経済新聞の一面でございます。「民間企業の九八年度の設備投資は、景気停滞の長期化、個人消費の落ち込みなどから、電機、自動車や通信の減額、電力の横ばい傾向が響き、四年ぶりにマイナスとなる見通しだ。」これは日本経済新聞社の中間まとめでございます。こういう記事が一つ。  それから、あの大手スーパーのダイエー、上場以来初めて赤字になったと。ここへ来て、生活必需品までなかなか買ってもらえない。まさに消費は冷え切っておる、こういうことになるわけでしょう。消費が冷え切るわけでありますから、物をつくることはしない。したがって、設備投資もこのような結果になっていく。  こういう厳しい現状が、まあ一週間前はオリンピックで非常に明るいニュースもたくさんございましたが、オリンピックを過ぎますと、こういう重苦しいニュースが昨今の報道をにぎわせておるのを私は忘れてはならないと思っております。  こういう中で、いよいよことしも、勤労者、サラリーマンはことしの賃金増額を目指して今それぞれ交渉に入っております。今からがいよいよ山場となってくるわけでございます。厳しいこういう環境の中で勤労者は、まさに賃上げか雇用か、この二者択一を経営サイドから迫られることになります。しかしながら、勤労者としては、やはり賃上げを抑制することは消費マインドにつながって我が国の経済にもいいことではない、だから、できる限りの力を結集して賃金増額の実現を競う、こういうのが今の状況であります。  片方で、雇用環境は非常に悪い。有効求人倍率は低迷したままであり、常用雇用指数は、とりわけ製造業で、リストラを反映して、一貫してレベルは減少しておるのであります。  まずは、そういう意味で、最近の雇用情勢について、労働大臣、どのように認識をされておるでしょうか。
  27. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 現在の雇用状況でございますが、きょう公表をいたしました有効求人倍率は〇・六四ということになっておりまして、先月は〇・六七でございます。  それから、完全失業率は、先進諸国の中では日本は終身雇用制という制度をとっておりますので、一番低いわけですが、しかし、過去の趨勢から見ますと、三・五という我が国としては非常に高い状況でございまして、大変厳しい状況にあると認識をいたしております。特に製造業につきましては、新規求人が前年同月と比べまして一六・七%減という数字になってきております。  これについては、経済状況、また、その経済状況を立て直すためにどのような経済政策が適切なのかについては、後ほどまたいろいろ御議論があり、私も必要ならばお答えをいたしたいと思いますが、いずれにしろ当面の雇用状況は非常に厳しいと認識をいたしております。
  28. 高木義明

    ○高木委員 まさに三・五%、高どまりでございます。  一方、これまで、昨年も九兆円の国民負担、これがよく言われておりますが、確実に可処分所得は低くなり、そして消費の低迷につながっておる、こういうことが言えると私は思います。  経済企画庁の試算では、消費税率引き上げが与えた平成年度の可処分所得への影響は、おおむね五兆二千億円とされております。それは、消費者物価が一・五%上昇するという仮定に基づくものであります。ところが、実際の消費者物価は、平成年度一・八%と総務庁は発表をしておられます。この辺から既に見通しが違い始めております。  経済企画庁としても、これからの経済の見通し、そしていわゆる私が今テーマとしておるこの春の賃金交渉、これが景気にどのような影響と動向を与えていくのか、このことについて御所見を賜っておきたい。
  29. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 今高木委員お話しのとおり、消費の動向は、消費税引き上げに伴います反動減というのが昨年ございまして、一時下がりました。そのことが一つございますのと、それから今お話しの可処分所得につきましては、これは私ども、消費税の引き上げあるいは特別減税の終了等の点から、年度当初は下がるであろうという予想をしていたわけでございまして、そのことがまた消費に影響したというふうに考えております。  それから、何よりも消費停滞の原因は、何回か申し上げておりますとおり、アジア状況それから大型の金融関係企業の破綻というようなことがございまして、消費者のいわゆるマインドが非常に悪くなった、先行きの不安感というものが強くなったことによるというふうに実は考えております。  具体的な数字で申し上げますと、消費性向がここのところ急に下がってきておりまして、九月時点では七二・五%でございました消費性向が、十二月には六九・〇というふうになってきておりまして、経済の将来に対する信頼感が下がってきたことに伴いまして、消費者の皆様の財布のひもの締め方が厳しくなってきた、そのこともかなりの原因ではないかというふうに考えている次第でございます。  したがいまして、従来から申し上げます各種の施策及び十年度予算をしっかりと予定どおり通して、経済の先行きに対する信頼感を回復することが大変に重要なことであるというふうに考えている次第でございます。
  30. 高木義明

    ○高木委員 経済企画庁長官は、昨年、緩やかな回復基調、こういうことを言われておりました。また、ことしの経済見通しにおきましても、政府経済見通しと民間の調査機関が行っておる見通しは、ことごとく民間の方が厳しいのですね。日本経済の成長率にしても、民間は、「民需の回復力が弱く、公共投資も引き続き落ち込むため一%前後」、こう言っておりますが、政府は一・九%。また、「個人消費の回復は緩やかなものに止まり、民間設備投資も製造業は比較的堅調だが、非製造業が低迷するため設備投資全体としては二%程度の伸び。また、民間住宅投資も急な回復は望めず、全体としては好況感に乏しい。」設備投資全体は二%程度とありますが、政府では三・五%に見込んでおります。  こういうふうな見通しの甘さが、今日までの景気の低迷を長引かせ、そして、適時なタイミングで景気対策を打ってこなかった、小出しで、そして遅くて、これがよく言われるところである、私はそのように思っております。  そこで、総務庁の最近の可処分所得の動向を見ても、昨年十二月ではマイナス二・四%、サラリーマン世帯の消費支出は実質四・八%減少しております。  民間の調査機関によりますと、昨年四月から消費税が二ポイント上がった、それに伴って消費者物価は前年比約二%上昇。労働省発表のこの四月以降半年間の実質賃金は平均してマイナス〇・六%、これは昨年ですね。所得税減税の廃止によって手取り賃金は一・五%から二%減少。さらに、健康保険料が平成九年、昨年ですが、九月から〇・〇六%、厚生年金が九年十月から〇・四二五%、これに特別保険料の引き上げがあって、合わせて〇・五%、労働者の負担分はふえておるわけです。手取りの減少分は二%から二・五%。トータルで見ますと、平均手取り賃金というのは、前年に比べて約三%強低下をしておる。そういう意味で、何としても三%以上の賃上げをしなければならぬ、こういうことで、生活の維持向上のために、そういう目標を掲げて今やっておるわけであります。  しかし、大変厳しい経済環境であります。だからこそ、減税を今求められる大きな理由があるわけであります。  減税については、もう私がここで述べる必要もございませんが、例えば、さきの補正予算審議の中で、参考人の一橋大学教授の石先生は、唯一減税のルートしか総需要喚起はない、心理的な効果が期待し得る。また、日本経済研究センターの顧問であります金森先生は、五兆円ぐらいの減税、これについては問題ない、一回では効果が減殺、とりあえずは二兆円を恒久減税に切りかえていくべきだと。  そして今回、さきの二十四日の本委員会では、与党の深谷理事が大変いいことを言っておられる。ちょっと繰り返します。  所得税減税問題について、私が昨年の十月の臨時国会、ここで質問しているのですね。それから、補正予算についてもつくるべきだということを強調したのでありますが、そのときは余りいい御返事ではありませんでしたが、このたびの二兆円の所得減税補正予算を感慨無量の思いで受けとめました。そこで、この際、もう一つ、私はこの機会に御要望申し上げたい。それは、所得税減税を一年だけで終わらせていいものかというテーマです。もちろん、これからの政治の流れや経済状況というものを判断していかなければならないと思うのですが、この二兆円の所得減税国民の皆さん方が御理解いただいて、これを消費に回していただくならば、必ず景気回復について前進するのであります。  こういうことでございます。  まさに今、与野党を通じて、減税をすべきだ、そして景気対策に活用すべきだ、こういうことを経済界なり、そして学者も国会も、そのような意思を示しておるのであります。  特に、二月の九日でありましたけれども、関西経済連は、政府に対して経済対策に関する緊急要望を行っております。「経済は一段と厳しさを増し、今や底割れ寸前の危機的状況にある。」として、五兆円規模の減税を早期に実施をしなさい、こういう要望です。詳細は省きます。  こういう中で、総理は、これまで本委員会の答弁におきましても、さらなる減税をしないで済むようにしたい……(橋本内閣総理大臣「特別減税は」と呼ぶ)さらなる特別減税はしないようにしたい、こういうことでございます。  減税の意思については含みを持たせた答弁をされておりますけれども、どうですか、この際、ひとつ決断をなされて、減税の実施をしてみてはどうでしょう。
  31. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先般来、たびたび同じような御質問をいただき、同じようにお答えをし、きょうも同じようなお答えをすることになろうと思います。  御指摘のような大規模な減税を実行する。これは、一つは、後世代への負担の先送りとなる特例公債の大量発行を伴います。これは、我が国の財政の信認を失わせるといった弊害があります。  また、我が国の租税負担率は、欧州諸国等に比べましてもかなり低い水準で推移してきております。税負担のあり方の問題として、これは慎重に考えなければならないことだと思います。  既に一方の数字は答弁で何回か申し上げましたけれども、主要国の租税負担率、国税と地方税を足しました場合、日本の場合には二四・五%であります。アメリカが二五・八、イギリスは三八・三、ドイツは三一・一、フランスは三三・五%、そのように聞いております。  また、我が国の所得税の課税最低限、夫婦子供二人の標準的なサラリーマン世帯、十年度税制改正後は三百六十一万円であります。ちなみに、アメリカの課税最低限は二百四十四万円でありますし、為替レートで多少の変わりはありますけれども、イギリスの場合は百五万円から所得税を負担しておられます。ドイツの課税最低限は、確かに三百七十三万円、日本より多少高くなっておりますが、フランスは三百二十万円。  こうしてみますと、我が国の場合には、他の国々、先進国において所得税を負担しておられる階層の方々の相当部分が所得税の負担をしておられない。それだけ税制上既に優遇されている部分があるということも申し上げなければなりません。  これに加えて、消費税率を引き上げたということで随分御注意をいただいてまいりましたけれども、こうした国々における我が国の消費税に当たりますような付加価値税の税率等を考えますと、私は慎重であるべきだと考えております。
  32. 高木義明

    ○高木委員 私ども民友連としましては、先日も海江田委員の方から詳しくお話がありましたように、今六兆円の減税を求めております。  私たちの目の前には、毎日毎日、大型の追加補正、あるいは補正予算という、早期に補正の含みとか、大型財政出動の方針とか、補正公共事業、景気追加対策、景気追加策四月上旬まで、こういう話が本当にマスコミの記事の中に見えております。  総理大蔵大臣立場上、この予算は最善のものだ、だから一日でも一分でも一秒でも早く通していただきたい、こういうことを一貫して言われております。しかし、これはこの場での話であって、世の中、世間としては、もう追加補正財政出動、もちろんいわゆる構造改革法をある程度緩めてでも、あるいは凍結してでも、そういうことをすべきだと。これは、与党の方々からも、あるいはまた市場もこれを織り込んでおられる。そういう中で我々がこの平成年度予算案を審議すること自体、非常にむなしい思いがするのです。  だから、もしそうであるならば、私は、急がば回れ。財政構造改革もあります。しかし、今この財政再建は経済の再建から、これによって財政再建を図る、王道を歩む。そういう意味で、まさに財政出動してでも減税や公共投資をやる、そういう方向転換を今すべきだと私は思うのです。  この国会が終わって、予算審議が終わって、これが通ると、すぐに補正予算。私が冒頭申し上げたような、あんなことになるに違いない。私は、そういうことを容認するわけにはいかない。したがって、確かにそういう御答弁はわかるのだけれども、もうこういう段階になったら、予算修正でも決断すべきじゃないのですか。  G7で大蔵大臣がいろいろなことを申されました。恐らく橋本総理は、ASEANに行って、アジアのあるいは世界の日本の景気対策の要請を強く受けた、肌で感じたと言っておられますが、恐らく大蔵大臣も、ロンドンのG7に行って、今までは予算委員長として御活躍でありましたけれども、大蔵大臣として行かれて、私は、また新たな気持ちになったのではないかと思うのです。  こういう状況の中で、額賀官房副長官が年明けにアメリカに行かれたり、あるいは大蔵省の榊原財務官がいろいろなことを言っておられる。我々国会として、こういうのを見ておって、やるなら今やらなければならぬではないかと。  総理、この問題については、私は、政党間協議をしてでも、今の日本の現下の重要な政治課題であることは間違いないのだから、そういう政党間協議をやって、堂々と取り入れるものは取り入れる。そして、そうすれば、この修正された予算というのは速やかに通って大きな力になるであろう、このように私は思うのですよ。総理、今じゃないですか、決断は。いかがでしょうか。
  33. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 冒頭、委員から、院における発言を大事にしろと言われました。私は大事にしてきたつもりでありますし、今、報道にどうあるということから私に対しての決断を迫られますが、政府はあくまでも、平成年度予算を一日も早く原案どおり成立をさせていただきたい、関連する法律案、殊に税制につきまして速やかに成立をさせていただきたい、年度においての切れ目を生じないようにぜひ院の御協力をいただきたいということを繰り返し御答弁を申し上げております。これは議員がお聞きをいただいておるとおりでありまして、今も同じことを申し上げます。
  34. 高木義明

    ○高木委員 現実に、橋本総理は自民党の総裁でもあります。与党の自民党の幹部が口々にそのことを各所で表明をしております。そのことと今総理の答えられた答弁が、私は、今決断のときだ、このように思っておりますので、そのことは申し添えておきます。  次に、私は、この問題はこの辺でおきまして、沖縄の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  普天間の移転、これはまさに、日米両国政府平成八年四月十二日にアメリカ軍基地の大幅な整理、縮小、統合を決定しました。その後、海上ヘリポート構想が登場し、平成八年十二月二日にSACOの最終報告が出たんです。それから今日までいろいろの経過がございまして、まさに今、国会議論を通じてもわかるように、この問題は手詰まりの状態にある、私はこのように認識をいたしております。  沖縄の苦しい、悲しい歴史、私たちは国民の一人として真摯に受けとめなければなりません。私は地元は長崎でございますから、長崎は原子爆弾の落ちたところでございます。長崎は長崎の思いもあります。したがって、同様に、私は、沖縄県民の皆さん方は、いわゆる全国の皆さん方とまた違った一つの心情があると思います。これは私は、大切にしていかなければならぬことだと思っております。  しかし、いろんな選択肢を考えて、この普天間の移転の問題、その対案として結果的に海上ヘリポートという案が出たんです。私は、これは沖縄における基地縮小につながる第一歩ではないかなと。一遍で基地を解消してもらいたい。しかし、それは現実的に、今の国際環境の中で、安全保障の中で、私は無理な話だと思う。だから、やっぱり段階的にやっていかなければならぬ。そういう意味の、一つのまた選択肢であろうと思っております。  しかし、沖縄県の大田知事がこれに反対の意向を表明しておられる。どうしようもない状態である。これは私は、橋本政権にとってゆるがせにできない重要な問題だと思うんです。事は、国民の平和と安全、しかも外交の話でもあるわけであります。  私は、これからどのような手を打つのか、お聞きをしていきたいと思いますけれども、結果的に、私は、大田知事を包み込む、まさに今までの総理と大田知事の信頼関係を大事にしながら、包み込む上でこの早期解決を図っていただきたいと私の意見を申し上げておきます。  そこで、SACOの見直しをすべきではないか、そういう話が地元ではありますので、これは私は大変なことだと思います。これはできるのかできないのか、この辺について御答弁いただきたい。
  35. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のとおり、SACOの行動委員会は、二年ほどかけましてあのような結論を、最終報告を出したわけでございます。しかも、その間には中間取りまとめもいたしまして、発表しながらやってきたわけでございます。  この最終報告は、これをやることによって沖縄の基地が整理縮小されるという、そういうふうな気持ちでずっとやってきたものでございますから、これを今また見直すとなりますと、そういう二年間かけてやった努力がまた無に帰すわけでございまして、とにかく今はもうSACOのこの最終報告を着実に一つずつ実行していく、そういうことで一生懸命努力をしてまいりたい、そういうふうに思っているところでございます。
  36. 高木義明

    ○高木委員 そのように一言で御答弁されますけれども、これは私は大変なことだと認識をしておるのです。昨日も上原委員からも率直な御指摘がございました。まさに我が国の平和と安全、日米安保条約、これに絡む問題だと思うんです。しかし、これをどのようにして克服をしていくのか。ただ難しい問題、難しい問題と言っても、問題は解決しないわけでございます。私は、そこでひとつ、どうかもう一回大田知事と会われて、率直に御議論をいただきたいと思うのであります。  そして、私は、特にこの際申し上げたいのは、あの沖縄に大きく関連をした特措法の国会のことでございまして、沖縄特措法の国会で附帯決議がなされました。あのとき、国民は、改めて沖縄の基地に苦しむ姿を国民一人一人が受けとめて、何とか沖縄の基地との共生、そしてできるだけ基地の移転、縮小をみんなが分担しながらやっていく、その上で、平和のコストということであるから沖縄の振興についてもこれは国民のコンセンサスの中でやっていくべきだ、こういうことを私たちは決議をしたと思うのであります。  ところが、私は、あの問題が解決をしたら、何だかあのときの熱は冷めたのではないか、本当にこの附帯決議の各状況、誠心誠意やってきたのか、こう言わざるを得ない。どうですか、防衛庁長官外務大臣も、そして開発庁の長官もおられますけれども。沖縄県民が、あるいは沖縄の知事が、市長が、本当に国は、あの特措法のときの沖縄に対する見方、思い、これが国民等しいものになった、そしてやってやろうじゃないか、こういう思いが今ちょっと冷めたのではないか、こういう感じがしてならぬのでありますが、総理、その辺はどうでしょうか。
  37. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一点、知事ともう一度じっくり話したらどうだ、この御提案は、私は素直に受けとめたいと思います。  といいますよりも、知事さんの方から、昨年末お目にかかりましたときに、一月の半ばまで県内の意見の取りまとめにかかるのでというお話がございまして、その後の再会をお約束をいたしました。  その後、私の方も国会が始まり、恐らく知事さんの方もいろいろ御都合がありましたでしょう、日程的に調整がつかぬまま今日に至っておりますけれども、今日も、何回か私は本院でも御答弁を申し上げましたように、知事さんから、お目にかかりお話、お話といいますかいろんなことを伺い、私の方もお話を申し上げたいということを全く変えておりません。この御提言は、私は素直にいただきたいと存じます。  それから、今附帯決議の実施状況ということでございました。これは、紙で私自身がとりましてもこれだけの膨大なものを、現に動いておりますので、政府委員から御説明をすることをお許しいただきたいと思います。
  38. 萩次郎

    ○萩政府委員 附帯決議、六項目と大変膨大でございますが、まとめて御説明をさせていただきたいと思います。  附帯決議の趣旨は、沖縄に米軍基地が集中している実態を緩和するためにできるだけの努力をしろということでございます。  それで、まず沖縄の基地の整理、縮小、統合、沖縄の過重な負担の軽減ということで、私どもやってまいりましたことを若干御紹介させていただきますと、まず、県道一〇四号線越え実弾射撃訓練、これは本土の演習場へ既に移転をいたしました。それから、KC130の岩国への移駐、これは地元の御了解を得て、今後具体的な作業を行っていきたいと思っております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  それから、SACOにございます嘉手納飛行場における遮音壁、これによって防音を行おうということでございますが、昨日の日米合同委員会において合意されまして、近々その建設に着手する予定でございます。  そのほか、沖縄に所在します米軍施設・区域の整理、縮小、統合、これらについては、現在私ども防衛施設庁、現地の市町村、県等々と鋭意相談をしておりまして、できるものから着実に実施をしてまいりたいということで、現在地元の御理解を図っていただいておるところでございます。  それから、この附帯決議の中で、アメリカは、演習とか直轄工事に対して日本の国内法令を尊重して、人権の保護、自然環境保全を行え、こういうことが書いてございます。  国際法上、外国軍隊というのは、接受国の公共の安全に妥当な考慮を払って、関係法令を尊重する義務を一般的に負っております。このことによって、日米地位協定でそれぞれ米軍が公共の安全に妥当な注意を払うこと、日本国内法を尊重すること、こういうことを定めておりまして、在日米軍はその行う直轄工事において一定の評価基準を作成して行っておるところであります。私どもも、日米合同委員会等を通じて、これらの法令の尊重を米側に常々考慮するよう要求をしておるところでございます。  そのほか、私どもの関連では、六番目の、整理・統合・縮小ということで、財政特別措置ということも書いてございまして、これは防衛関係費は前年度以下ということになっておりますが、それとは別にSACO関連経費ということで特段の措置がとられておるわけであります。  それから、駐留軍返還特措法の第八条において、返還給付金、これについて配慮をされるということになっておりますが、このことも三年間の実施が行われている、こういうようなことでございます。
  39. 高木義明

    ○高木委員 それは後で資料として下さい。時間が限られております。  そこで、沖縄振興対策とこのヘリポートの建設について、これをリンクさせていく、こういう考え方について、例えば北部地区の振興策あるいは沖縄全体の二十一世紀プランなどの振興策、あるいは既にこれは閣議決定をされておりましたが、沖縄振興特別措置法、そしてまた鈴木長官は、何か新たな優遇策を考えておるという話も伝わってくるわけでありますが、基地とヘリポートと沖縄振興のリンクはするのかさせないのか、この辺はどうなんでしょう。
  40. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この問題も何回か御論議をいただきましたけれども、私どもは、沖縄の今後の振興というものを考え発展考えましたとき、基地問題と地域振興が両方とも重要な課題だと考えておりますし、こうした認識のもとで、米軍基地問題の解決に着実な前進を図るように努力をいたしますとともに、振興策についても全力を傾けてまいりました。  沖縄県の将来を考えますとき、米軍基地の整理、統合、縮小を図るだけではなく、これに対応した基地依存型の経済から自立型の経済へ移行をする、この移行に向けての努力が不可欠でありますし、この両者は密接に関連した課題であるというのが、県の関係者の基本的な考え方として今日まで伝えられてまいりました。  普天間の跡地をどうするかといった大きな問題を考えましたときに、こうした県の考え方は十分理解のできるものでありますし、政府としてもこれを重く受けとめる中におきまして、沖縄県知事もメンバーであります沖縄政策協議会の中心に、政府と県が一体になりまして、協議会のもとに、幹事会あるいはプロジェクトチームにも県庁の関係者に入っていただいて、振興策の検討と事業の推進に取り組んできました。私どもは、北部振興策も含め、振興策についても、国民の御理解と協力を得ながら最大限努力をしていきたいと考えております。  もちろん、基地の整理、統合、縮小の進展を踏まえながらこれは進まなければなりません。  ただ、そこで問題になりますのは、海上へリポートの受け入れ拒否声明というものが出されました結果、逆に、基地問題の解決と地域振興を非常に密接に関連する形で取り上げてこられた県の国際都市形成構想を今後どう取り扱われるのかという課題がありまして、振興策を進める上での前提条件が大きく変化している、こうした点にも御留意はいただきたいと思うのであります。当然ながら、我々は、北部振興を初めとした振興策、進めるべきものを進めていくことに変わりはございません。
  41. 高木義明

    ○高木委員 普天間の返還、これはタイムリミットはいつなんでしょうか。今、例えば、沖縄県知事が拒否声明をしておる、このままずっと膠着状態、手詰まりでいくと、もう知事選までにはこれは解決できないのではないかという一部の予測もあります。しかし、私は、そんなことではいけないと思うのですね。そんなことであれば、もうこれは二度と普天間基地の返還は僕はできないんではないかという、そこまで思いがあるわけですが、そのタイムリミットについてはどうでしょう。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 久間章生

    ○久間国務大臣 タイムリミットと言われましても、どういうふうに言っていいかわかりませんが、昨年中に実は詳細な実施計画をつくるということでアメリカ側とは合意しておったわけでございます。それがもう既に延びておるわけでございまして、そういう意味ではもうタイムリミットは超えているようなわけでございまして、私どもは非常にその点ではまずいことだと思っております。これから先とにかくできるだけ早くこの問題について解決の方途を見出したいというふうに思っている、そういう御答弁しかできないのが現状でございます。
  43. 高木義明

    ○高木委員 長官としては、まず防衛庁の方々も、この件については一致結束をしてとにかく努力をしていくという姿勢はあるんでしょう。長官としては、どうすればいいのか、こういうお考えは持たぬのですか。
  44. 久間章生

    ○久間国務大臣 私どもとしましては、今の普天間のあのような状況からして、面積でも五分の一、しかも海上で、安全性からいっても、また環境に対する影響その他からいっても、とにかくキャンプ・シュワブ沖の名護市の沖合につくることがはるかにいいということで、先ほど委員が御指摘になりましたように、まずこれが前進になるじゃないか、しかも撤去可能だということで案をつくって、しかも、つくります間に、この間から総理も御答弁のとおり、作業委員会というものをつくりまして、そこの副委員長には沖縄県の副知事にもなってもらい、また、沖縄県の県の職員の方も三名入っていただいて、作業委員会をつくってやってきておったわけでございます。そういうことでできました案でございますから、私どもは、現時点で考えますならばこれは現在のやはり最良の選択肢だと、そう思っておりますので、やはりこの案について粘り強く御理解を得べく努力していきたい、そのように思っているところでございます。
  45. 高木義明

    ○高木委員 粘り強く努力をしていただかなきゃならぬわけですが、具体的に、総理、この問題というものの解決の糸口について、総理としては、どうした方がいい、どうすべきだ、今お考えでしょうか。
  46. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これはもう今までお答えを申し上げてまいりましたように、私自身も知事さんにもお目にかかりたいと考えておりますけれども、この作業のプロセスの中で県がいろいろな場面で情報を得ておられたことも考えますと、ぜひ御協力をいただきたいという一語に、そうした努力を続けるという一語に尽きると存じます。
  47. 高木義明

    ○高木委員 時間が参りましたので、また行政改革関係については別の機会にお尋ねをしてまいりたいと思います。  どうか、総理、私が前段申し上げました景気対策、大型の財政出動、財政改革法にとらわれずに、ひとつ減税の断行あるいは公共投資をもって経済の再建をまず図ってほしい、私はそのことを強く要請をしておきたいと思っております。  また、沖縄の問題につきましては、きょう外務大臣お答えをいただけませんでしたけれども、アメリカはこれはもう国内問題だと、まさに私はそのとおりと思うのですけれども、沖縄開発庁長官もおられますので、ひとつこれは、具体的に、早急に、会議でも開いていただいてやっていただきたい、私はそういう強い要望を申し上げておきたいと思います。  私の質問を終わります。
  48. 越智通雄

    越智委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  49. 生方幸夫

    ○生方委員 民友連の生方幸夫でございます。  まず冒頭、この間の委員会での論議をずっと聞いておりまして、私ども野党の方が、政府・自民党案に対して、政府案に対して、予算案、修正を行ってほしいという要望を行って、政府側はそれはできないというお答えがずっと続いておる。その間、新聞報道においては、本予算が通った後に補正予算案を出して大幅な景気対策を盛り込むのだという報道が連日なされております。  そこで、私は一点お伺いしたいのですが、本予算を修正するということは大変に時間もかかる、したがって、本予算を修正するというようなことになれば暫定予算を組まなければいけなくなる、これは景気に非常に悪い影響を与えるから、とにかく本予算を通していただいてから本格的な景気対策を盛り込んだ補正予算案を組むというのが総理の本音であるのか、あるいは、本予算そのものがこれはもう全く正しいものであって、補正予算を組まなくても大丈夫なものというふうにお考えになっているのか、まずそれを最初にお伺いしたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 政府として最善の予算考え、編成をし、提出をし、御論議をいただいております。  私どもは、報道の皆さんがいろいろ書かれることを、これは規制することはできません。しかし、議員、この席におられ、熱心に聞いておられて、私どもこれ以外のことを申したことがないことは御承知のとおりであり、私どもとしては、あくまでも、一刻も早く、十年度予算並びに関連する税制を初めとする法律案、これを年度内に成立をさせていただき、年度がわりすぐからこれが動けるようにぜひ院の御協力をお願い申し上げたいと、繰り返し申し上げております。
  51. 生方幸夫

    ○生方委員 こうしたことをお伺いしたのは、景気対策というのはやはり、一遍に、一度にどんと出した方が効果が大きいのではないか。少しずつ景気対策を出していくと、もちろんこれは我々の税金でございますから、なるたけ適正な額で大きな効果を生むというのが大事でございまして、予算を組んだ、暫定になるのかどうか知りませんが、その後また補正を組んだ、また補正を組むというようなことになって、小出しに景気対策をしていくことが最終的には本格的な日本の景気の回復というのをおくらせるような思いがありますので、もし本当に補正予算を出すというようなことがあるのであれば、暫定予算を組むのであっても本予算を修正するべきであるというふうに私は考えるのですが、大蔵大臣、その辺いかがでございましょうか。
  52. 松永光

    松永国務大臣 しばしば申し上げているところでございますが、平成年度予算審議をお願いしておる大蔵大臣立場としては、政府立場でございますけれども、とにかくこの予算を速やかに成立させていただきますように、ひたすらそれをお願いするところでございます。そして、新年度に入ると同時に新年度予算が施行できるというのが理想なのでございます。  そしてまた、十年度予算関連法案として幾つかの税法、税制改正があるわけでありまして、先ほどの委員のお話にもありましたけれども、二兆円の特別減税にしても、実は今月と来月で一兆円勤労者のもとに届くという仕組みになっておるわけですね。  十年度の所得税の措置としては、一番お金が要るのが高校生や大学生のいる家庭でありまして、そこに対する控除額を五万円引き上げるなどという教育減税、こういったものも実は新しい税制改正の中に入っておるわけであります。  すべてを成立させていただければ、大ざっぱに計算して八千四、五百億が十年度減税ということになるわけでありまして、そうした予算と、それから関連法案減税法案、それを速やかに成立させていただいて、新年度から直ちにそれが実行に移せるという状態に持っていかせていただきますように、心からお願いを申し上げる次第でございます。
  53. 生方幸夫

    ○生方委員 私ども野党としては、二兆円では不十分である、もっと大規模な減税をするべきだということはもう繰り返し申し上げておりますので、ここではもう一度繰り返しは申し上げません。  ところで、きのう、公的資金を導入するということについての審査基準が決められたということが本日の新聞に出ております。私もこれをきのうの夜遅くに拝見いたしまして、その前に出ていた案との比較をしてみました。これを見ますと、やはり、最初に審査基準が客観的に決められるということではなくて、マネーセンターバンクと言われている大手十八行が実質的に無条件で受け入れられるための審査基準というものをつくったのではないか、本末が転倒しているんじゃないかというふうに私はどうしても思えてならないわけです。  この審査基準をつくるまで、我々はここでたびたび、どんな審査基準になるんですかということを御質問させていただきましたが、これは審査委員会が決めることであって政府が口を出すべきことではないというようなことを繰り返し申しておられましたが、実質的に審査委員会は二回しか開かれていないわけですよね。たった二回の審査で審査基準がもちろん決まるとは思えないわけで、当然、その前に大蔵省がたたき台をつくり、それにのっとった審査基準というのがきのう発表されたのではないかというふうに私は思っております。  先ほど高木委員の質問にもございましたように、住専の処理の問題で税金を投入したことに対する国民の批判の声が非常に強かった、したがって、一時、公的資金というのは導入することはできないのではないかというふうに言われておったのが、昨年からことしにかけてだんだん状況が変わってきて、公的資金を預金保護のために導入するのはやむを得ないだろう、それからその次には、破綻した銀行の受け皿銀行に対してまで公的資金を導入するのは構わないであろうという意見になって、最終的には、大手銀行全部がそろって公的資金を導入してもいいのではないかというふうに変わってきてしまった。  これではまさに、ビッグバンを控えて大蔵省の護送船団方式をやめようと言ったにもかかわらず、またぞろ護送船団方式へ戻って、大手銀行、本当に東京三菱銀行が公的資金を導入する必要があるのかどうか、多くの国民の方は疑問に思っている。だけれども、東京三菱銀行のような優良銀行も手を挙げないと、手を挙げたところだけが何か信用不安があるのではないかというふうに言われてしまうから、全部挙げるんだというふうに巷間言われている。  これでは国民が、税金を投入するわけですから、なかなか納得がいかないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  54. 松永光

    松永国務大臣 委員御指摘のとおり、昨日の審査委員会で審査基準の案が決められて公表されたわけでありますが、私、その委員会に参加させてもらって、委員長以下の委員の人たち、それから預金保険機構の理事長あるいは事務局長、こういう方々の専門的な知識の深さといいますか、豊富さにびっくりいたしました。私も少しは法律を知っているつもりだったんだけれども、とてもじゃないけれども、あの人たちの知識の豊富さにはびっくりしたわけであります。  そういう方々が真剣に議論をしていただきまして、そこで、きのう委員長さんが記者会見をされたように、まずこの金融安定化法をもとにして、そして資本注入の要件をできる限り具体化するとともに、経営の健全性確保のための計画においては、申請金融機関が不良債権の処理を思い切ってやる、それから経営の合理化に積極的に取り組む、こういった条件。あるいはまた、銀行そのものが社会性、公共性を踏まえた適切な経営理念を発表すると同時に、それを実現するための具体的な措置を明確にする、こういった条件を定めて、そして明らかにしたわけであります。  それで、民間金融機関、これはそれぞれの金融機関がみずからの判断で公的資金による資本注入を受けるかどうか判断していただいて、申請をなさるわけでありまして、そうすると、委員会において決められた審査基準に基づいて厳密な審査をして、そして決める、こういう仕組みでございますので、あらかじめ大蔵省の方で案をつくっておったなどということはありませんし、また大蔵省の方で要請したなどという、そういった事実もないと私は承知しております。
  55. 生方幸夫

    ○生方委員 その投入した公的資金、これはもちろん税金でございますが、これは安全にもちろん回収されるということが条件になるわけですよね。そのために、最近三年間連続して赤字決算または無配当になっていないなどの厳しい条件はつくられております。また、発行条件についても市場実勢を反映されることがうたわれております。  つまり、安全に回収されるということが条件で優先株ないしは劣後債を買い取るということになっているのですけれども、私、一つ非常に最初から疑問に思うことがあるのですが、そういうものであれば、なぜ市場で消化をされないのか。何で公的資金を導入して買わなければいけないのか。まずそこの根本的なところがわからないのですが、どうしてこれは市場に売り出して買わせないのですか。
  56. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生がおっしゃいますように、自己資本充実のための増資あるいは劣後債、劣後ローン等の調達は、市場で可能であればそれはそれで問題がないわけでございますが、昨年の十一月の大型の破綻等をきっかけに、市場が大変なすくみ現象を起こしております。しかも、各金融機関は自己資本を償却財源等に使って、かなり自己資本比率が落ちてきている。そうすると、一斉にそれを市場で調達する、ところが一方でそういう破綻の経験をかいま見た出し手の方がなかなか出さない、こういう状況なんです。つまり、市場がそういったものを完全に吸収し切れないという状態に今あるということでございます。  したがいまして、今のそういった市場を、外の力といいましょうか、公的なもので解決してあげるということが大変重要になってきている、こういうことを御理解いただきたいと思います。
  57. 生方幸夫

    ○生方委員 そうであれば、例えば住友銀行なんかはアメリカで資金を調達したりしているわけですよね。一斉に全銀行が公的資金を導入するために申請をするということにはならないと思うのですけれども、現時点では、どう新聞報道を見ましても、全部の銀行が横並びで申請をするというようになっておるようなんですけれども、これだと今銀行局長が答えたことと違うのじゃないでしょうか。市場でみずからできるところはみずからやればいいのであって、すべてが公的資金を導入するということにならないのじゃないですか。
  58. 松永光

    松永国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、申請するかどうかは民間金融機関の自主的な判断なんです。そしてまた条件の中に、例えば人件費を、現在はこれ、二年後はこれだけに減らすとか、あるいはまた役員の報酬も、現在はこれ、二年後はこれだけ減らす、こういったことを明らかに計画を立てて出さなければいけませんから、それが嫌だという銀行もあるかもしれません。その意味では、文字どおり民間金融機関が自主的な判断で申請してくるもの、私はそういうふうに見ておるわけです。
  59. 生方幸夫

    ○生方委員 今、銀行のリストラへの取り組みということを言われましたが、きのうの新聞に出ておりました、興銀の給与を一〇%引き下げると。大蔵大臣は御存じかどうか知りませんが、興銀の平均の給与が幾らであるかというのは存じておりますか。いや、大蔵大臣、知っているかどうかだけ。知らなければ知らないでいいです。
  60. 松永光

    松永国務大臣 一般の例えば製造業その他の従業員よりも、どのくらいかな、二割あるいは三割かな、そのくらい高いのじゃないかなというふうな知識は私にはあるわけですけれども、もっと高いのかどうかは知りませんが。
  61. 生方幸夫

    ○生方委員 この間発表されました全産業の平均の給与が四百六十一万円です。これに対して興銀は、三十五・三歳で一千九十一万円です。一〇%仮に給与を引いたとしても、まだ九百八十二万円。これは、全銀行百四十六行の平均ですと七百九十九万円ですから、それよりもまだ高いわけですね。  ほかの銀行も一割程度給与を引き下げるというふうに言っておりますが、公的資金を導入される銀行の銀行員が、普通の平均の四百六十一万の倍ぐらいの給料を取っているというのでは、なかなか国民の皆様方は納得するとは思えないんですが、銀行のリストラへの取り組み、私は何も給料を全部下げればいいというようなことを言っているのじゃないんですけれども、一般常識から考えて、このリストラで十分だとはとても思えないんですが、いかがでございましょうか。
  62. 松永光

    松永国務大臣 リストラ計画についても相当厳しいことを要求する、そういう基準になっているというふうに私は見ました。特にきいてくるのは役員の数とか役員の報酬、これを相当縮減するということが要請されておると思うのでありまして、これも相当きいてくるんじゃないかな。  さようなわけで、民間金融機関がリストラをやる、あるいはまた、余り必要性のなくなった支店等も整理するなどということで、合理化を徹底してやってもらうということはいいことだというふうに私は思います。
  63. 生方幸夫

    ○生方委員 特に、大手都銀に対して公的資金を導入するということの一番の目的は、貸し渋り対策ということで解釈してよろしいんですか。
  64. 松永光

    松永国務大臣 詳細は局長にやらせますが、私の考え方は、要するに、我が国の金融システムを安定化させ、そして信頼を高める。しかし、同時にまた自己資本がふえますから、したがって貸し付ける余力が大きくなってきます。その結果として、貸し渋りにも相当貢献するものだというふうに思っておるわけです。
  65. 生方幸夫

    ○生方委員 貸し渋り対策ということであれば、現在予定をされている大手十八行でどれぐらいの貸し渋りというのが生じているのでしょうか。
  66. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  貸し渋りというものの概念というものがいろいろあろうかと思いますので一律には申し上げられないと思うのでございますが、最近の全国銀行の貸し出しを見ますと、余りふえていないということであります。その中には、恐らく貸し出しを非常に慎重にしているという面も原因としてあるのではないかと思います。  なぜそういう現象が起きるかと申し上げますと、格付を非常に重視している経営になってきております。格付を何で一番見ているかというと、不良債権をどれだけ処理したかということになります。そうしますと、利益を使って償却、引き当てをやりますので、自己資本比率が下がってくるわけです。それを一方でコミットメントせざるを得ない中で、株安、円安の予測があるわけです。貸し渋りに関して、そういった現象を通じて、心配の余り資産を減らそうという動きが出てきているということも私はあると思います。  しかし、どの部分が貸し渋りということではありません。したがって、数字的にいいますと、全国銀行の貸し出しが昨年十一月で〇・一%の減少で、十二月が〇・〇%、横ばい、本年の一月が速報値で〇・二%の減少であります。したがって、その中には貸し渋り現象というのも含まれていると言わざるを得ないのではないかという気がいたしております。
  67. 生方幸夫

    ○生方委員 中小企業が大手銀行から直接お金を借りるわけじゃないですから、中小企業の資金繰りが苦しくなった原因にはならないと思うのですけれども、この〇・一とか〇・二という数字は、中小企業の側から見ればかなり、そんなものじゃないというような数字だと思うのですね。そういう数字だというのだからそれは了解いたしますが、この〇・一とか〇・二という数字が、公的資金を導入することによってどの程度改善されるというふうに大蔵省としては把握しておるのでしょうか。
  68. 山口公生

    ○山口政府委員 申し上げます。  この公的資金の注入によりまして、例えば直近でいいますと三月期末の懸念というものが解消されていきますと、いわゆる社会的に問題のあるような貸し渋り現象というのは減ってくるというふうに、減ってくるべきだということになろうかと思いますし、そういう努力が金融機関でなされるというふうに思うわけでございます。  それから、少し中長期的に見ましても、自己資本比率が上がって自己資本が充実されるとなりますと、そうすると資金の供給力というのは増加していく。こういうふうに考えてみますと、貸し渋り対策に資するというふうに思っておるわけでございます。
  69. 生方幸夫

    ○生方委員 公的資金が導入されるわけですから、今のような抽象的なお答えではなくて、現実に、例えば、何千億円の貸し渋りがあって、二兆円の公的資金を導入することによってこれが幾ら幾ら解消される、したがって中小企業の皆さん方も安心してくださいぐらいな数字を示さなければ、とてもやはり国民は納得できないと思うのですね。住専のときは六千八百五十億円ですから、今度はもっとそれよりもずっと大きい額なのに、今の局長の答弁では、恐らくそうなるであろうというようなことのために二兆円ものお金が、二兆円じゃないですね、もっと大きな額ですね、投入されるというようなことはとても納得できないと思うのです。もうちょっと詳しい調査というのはないのですか。
  70. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今、先生、二兆円という仮の数字をおっしゃいましたが、もし自己資本比率を高めることに一切充てないでその分母をふやすということに仮定しますと、八%の逆数ですから十二・五倍の融資余力が出るということになります。  しかし、もともとこの政策は、一方で自己資本比率を上げて経営基盤をしっかりするという面もありますので、定量的に、では十二・五倍がすべて融資に回るというものではありませんが、しかし、今私が示したようなことでもって貸し渋りを起こさなくても済むようなことになるということは言えようかと思います。
  71. 生方幸夫

    ○生方委員 公的資金を導入するということでございますので、私は、横並びで結果が出ないことをぜひとも要望しておきます。これで三月五日になって申請になったら、私が指摘したとおり全都銀十八行がそろって、こぞって申請したということになれば、やはり一番最初に指摘したように、十八行が全部申請できるような審査基準をつくったのだと言われても仕方がないのではないかというふうに私は思って、注意喚起をしておきます。  その次に、大蔵省が今回の不祥事を招いたことでございまして、大蔵省の改革ということについて質問に移らせていただきたいと思います。  作家の堺屋太一さんが大蔵省の批判を書いたところ、数週間後に税務調査に入られたというのをどこかで私は見たことがございますが、このように、大蔵省は外庁である国税庁のいわば経済警察というような面を使って支配力を強めてきたというような面が、私はあるような気がしてなりません。  総理は昨年、行革会議の席の中で、国税庁を大蔵省から分離した方がいいのではないか、地方税の徴税組織と一体化させたらいいのではないかというような御発言をなさったのを、私、新聞で見ております。私も総理意見に賛成なんですが、その後、行革会議の中でこの論議というのが深められることなく、最終的に行革の答申の中では国税と大蔵省の分離というのは盛り込まれなかったわけですが、総理、今現在、この行革会議のときに総理が述べられました大蔵省から国税を分離した方がいいというお考えに変わりはございませんでしょうか。
  72. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今議員が引用されましたようなやり方というものがもし本当にあったとすれば、これは大変な問題だと思います。税の公平性を真っ向から否定するような話です。しかし、私は、そういった議員の言われたような意味からこの問題を挙げたのではありません。  そして、内部で議論がなかったと言われましたが、随分議論をいたしました。地方分権あるいは地方課税権、さまざまな論点の論議をいたしました上で、国税庁の問題について、行政改革会議最終報告において財務省の外局と位置づけられる、同時に、徴税の中立性、公正性の確保を図る観点から、税制の簡素化などの指摘がなされております。  政府は、行革会議最終報告の内容を忠実に盛り込んだ中央省庁等改革基本法案をまとめ、国会に提出をいたしましたが、その中におきましても、「国と地方を通じた徴税の一元化については、地方自治との関係及び国と地方を通ずる税制の在り方を踏まえて更に検討すること。」「徴税における中立性及び公正性の確保を図るため、税制の簡素化を進め、通達への依存を縮減するとともに、必要な通達は国民に分かりやすい形で公表すること。」こうした規定を置いております。
  73. 生方幸夫

    ○生方委員 重ねて失礼なのですが、総理がおっしゃいました大蔵省から国税を分離するというお考え方に、変わりがあったのですか、それとも変わりはないということなのですか。
  74. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、中央省庁等改革基本法案を、私は内閣の最高責任者として、国会に提案をさせていただいている政府の責任者であります。行政改革会議の結論が出るまでの論議、結論が出ました時点においてその報告を最大限尊重していく責任。今私は、行政改革会議最終報告というものを忠実に盛り込んだ法案を国会に御提案を申し上げている立場です。
  75. 生方幸夫

    ○生方委員 よくわからないのですが、国税の分離、私はこれは大事な問題であるというふうに思っておりますので、ぜひともこれも進めていただきたいというふうに考えています。  それから、大蔵省で一連の不祥事が起こっていることの最大の原因は、大蔵省にあらゆる権限が集中しているということが一番の原因であるということは、もう国民の皆さんみんなひとしく考えていることだと思います。したがって、大蔵省に集中し過ぎた権限を何とか分散しなければいけないということが行政改革の原点にもなっていると私は思います。その象徴的な問題として財政金融の分離ということが論議をされてまいりました。  先ごろ行われました与党協議の中での結論ということで、財政金融の分離は当分しないということで合意をしてしまいました。このままいきますと、六月に金融監督庁ができても、大蔵省に企画立案部門というのは残ってしまいます。二〇〇三年に金融監督庁が金融庁になっても、そしてその企画立案部門が取り込まれたとしても、なお大蔵省には当分の間、金融破綻の処理や金融危機管理に関する部分が残るということになっております。  すべての金融行政というのは危機管理に関する行政だというふうに言ってもいいぐらいでございますから、危機管理にかかわる部門を大蔵省に残すということは、最終的には、大蔵省が日常的に金融機関の情報を集め、日常的に行政指導をしていくという体質が変わらないことにもなってしまうのではないかというふうに私は懸念をいたします。したがって、一日も早く金融財政の分離というのを完全に実施しなくてはいけないというふうに思っております。  ここで使われました当分の間という言葉でございますが、例えば地方自治法では、昭和二十二年に法第二百五十条で、当分の間、地方債の発行許可制度を自治省に置くというふうになっていたのが、この規定が何と五十年も継続して、まだそのまま使われていた。これは地方分権推進委員会の答申の中で今回改められることにはなりましたが、その当分の間というのが非常に長い期間を意味することになっているわけです。  ちょっと国会図書館で調べたんですが、平成年度末で、何と、当分の間ということを使っている法律は三百三十七件あって、そのうち地方自治法も含め百四十九件、約半分の法律が昭和二十年代に制定され、現在もなお当分の間として有効に機能しているということがございますので、これはちょっと余談でございますが、当分の間という言葉を一刻も早く、金融財政の分離というところには当てはめないでいただきたいと思うのですが、その辺、金融財政の分離について、大蔵大臣、いかがお考えになっておられますか。
  76. 松永光

    松永国務大臣 委員にお答えする前に、先ほど総理からも答弁がありましたけれども、堺屋太一さんの話でございますが、そういったことは絶対あってはならぬことなんです、これは。私は、そういうこと、あるとは信じておりません。  というのは、実際の話ですから申し上げますが、今度の国会が始まって間もないころ、私は予算委員長でした。ある有名人が何かそれに近いことを言ったということが、ある人を通じて私の耳に入ったんです。私はここにおられる深谷筆頭理事と相談して、絶対そんなことがあってはならぬぞというわけで徹底して大蔵省に調べさせた。そうしたら、そういう事実は全くないということがわかりました。ある有名人自身が、調査などを受けてはおりませんよという話でした。  なぜそうなるのか。例えば、ある人が冗談に言ったことが次に伝わって本当になっちゃうということもあり得るわけなんでありまして、今言ったようなことは絶対にあってはならぬこと、絶対あってはならぬことだというふうに申し上げたいわけであります。  それから、今の財政金融の行政の分離のことでございますが、委員よく御承知のとおり、六月までの間に金融機関に対する検査部門、監督検査部門ですな、これは全部金融監督庁に行く。これはえらい数字なんでありまして、現在、金融の検査部は、大臣官房金融検査部が百五十名、証券取引等監視委員会九十一名、合計二百四十一名、これが六月までにごっそり金融監督庁に行くわけであります。これは相当な大蔵省のスリム化だろうと私は思います。  そしてさらに、証券局、銀行局、これは二つともなくなるんですね。そしてその合計人数は、これまた三百人近く、二百何十人おるわけでありますが、それが百人足らずの金融企画局という形にまずなるわけです。  そしてその次が、中央省庁再編の基本法にありますように、次の段階ではこの金融の企画に関する部門も、金融破綻あるいはまた金融危機に関する企画の立案だけがわずかに残るという形でみんな金融庁に行く、こういう仕組みになっておるわけです。  それがいつかという問題でありますが、これはもう、中央省庁再編基本法の精神どおり私はいかなきゃならぬ、こう思っております。
  77. 生方幸夫

    ○生方委員 税務調査の件ですけれども、本当にそうであればいいと思うんですが、そういううわさが絶えないで、実際そういうことも聞くと、あながち、大蔵大臣がおっしゃったように本当にないということではないと思うので、もしあるようでしたら、これはあっちゃ困るわけですから、大蔵大臣から強くそういうことがないように指導をしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。  大蔵省の予算編成権も内閣に移すべきであるというような行政改革の方向が打ち出されておりますが、予算編成に関して、私は、単年度主義というのをもうそろそろ見直す時期に来ているんじゃないかというふうに思うんです。  毎年三月末になるとそこらじゅうで工事が行われて、三月末は交通渋滞が起こるのが当たり前だというふうに言われているぐらい、予算を消化しなければいけないということで使ってしまう。予算をしっかりきちんとそのまま消化しなければ、その予算が不適当に請求されていたんだということで次の年度から減らされてしまうから、予算は全部単年度で消化してしまうということが起こっているというふうに聞いております。  これは、普通の企業でいえば、当然、少ない経費で大きな利益を上げたところが評価されるわけで、そうじゃない部分が、そのまま使い切っちゃった方が来年度予算についていいんだということになると、財政再建という面からも非常におかしいのではないかというふうに私は思います。  三重県などの例では、予算を全部使い切らなかった部局の方がむしろ評価が高くて、それには余計な予算を来年つけるというようなことも行っているので、政府もこうしたような形に予算の編成というのを変えていったらいいと思うんですが、建設大臣、何か御意見ございますでしょうか。
  78. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま、年度末におきましての道路工事につきまして、予算を消化するためにやっておるのではないか、こういう御質問でございましたから、そのことに対するお答えでございます。  これは、建設省が道路補修等に取り組んでおりますのは約二割でございまして、あと、ガスであるとか水道であるとか電気であるとか、いわゆるライフラインにかかわる各種の工事がそれぞれの自治体を通じてなされるわけでありますので、それらを効率的にやった方がいいということは、それぞれ関係省庁で、関係機関で協議をしながら効率的な執行というものを図っておるわけでございますので、予算を集中的に扱っておるということではございません。
  79. 生方幸夫

    ○生方委員 総理にお伺いしたいんですが、予算の単年度主義というのはこれがベストなんですか、それとも、これは将来的には見直した方がいいというふうにお考えになっていますでしょうか。
  80. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 突然の御質問なので、私自身十分に考え抜いたというお答えはできません。その上で、私は、人間のつくる制度はどれにも実は一長一短あると思います。そして、単年度主義はそれなりのよさを持っております。  同時に、長期のプロジェクトを推進していく上で、当初の目的がいつの間にか時代の要請に合わなくなったとき、単年度年度でこれをとっていきました場合には、問題を生ずる可能性もあります。そういった意味では、単年度主義というものの弊害もあるでしょう。そうしたことから、例えば公共事業に対する評価システムを採用するといった工夫をいたしておりますし、一方では、それぞれの事業固有の性格に着目した長期計画というものを並行しながらその部分を補っている。  私は、その意味では、最善であるかと言われますと、絶対に最善であるということを申し上げるほどの自信はありませんけれども、単年度主義というその予算編成の持つよさに着目し、これを中心としながら、同時に、その欠点を補う工夫は随時行いつつ今運営をされている、そう思います。
  81. 生方幸夫

    ○生方委員 大蔵改革の件で避けて通れないのが、天下りの問題でございます。この予算委員会に出された資料を見ましても、多くの大蔵官僚の方たちが金融機関に天下っていて、その金融機関と大蔵省の関係というものが不透明なものになっているというふうに指摘をされました。  私は、大蔵省という機関があって、ピラミッド形の組織を構成しているわけですから、いろいろな各出世レースを繰り広げていて、ある年齢になってそのレースから外れた人はどこかへ出ていかなければいけないというのは、これはある程度宿命というか仕組みとして理解をするのです。  そういうことを踏まえた上で、私は天下りを防止しろというのじゃなくて、大蔵省、有為な人材がたくさんそろっているということでございますから、むしろ大蔵省の中に人材バンクのようなものをつくって、大蔵省の側が自分たちが天下る先を決めるのではなく、大蔵省の人材バンクで、自分たちを欲しい人間がいるという民間企業がたくさんあったら、民間企業がそこから人材を引き出せるようにするというような格好にすれば、今天下りで起こっているような弊害というものが多少でも緩和されるのではないかというふうに考えます。  それともう一つ、大蔵省の側から民間企業に天下るだけではなく、民間企業の方から大蔵省に出ていくというような人材交流がもっとあってもいいと思うんですね。これ、日本の場合は非常に少ないのではないか。  したがって、この人事交流をいっぱい民間と進めていくことが大蔵省の体質を変えることになる。それから、その人材バンク的なものを大蔵省の中に設けることによって、大蔵省が一方的に天下り機関をつくって、選んで、そこへ下るということじゃないシステムができると思うのですが、総理、この意見について、御意見をお伺いしたいと思います。
  82. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 天下り問題が非常に問題だということは、これはもうだれも否定をすることはありませんし、皆同じような問題意識を持ち、同時に、公務員のライフサイクルというものを考えたときに、どういう立場からということで、今検討を進められている問題です。  そして私は、議員が今人材バンク的なものということを言われ、大蔵省の中にその人材バンクと言われたのですが、実は行政改革会議の最終報告の中で、「政府全体として統一的かつ公正・透明に行うための仕組み(人材バンク等)を導入する。」という提言が出ております。同様の構想は、その意味で我々としても検討の対象になり得るという考え方をしておりまして、公務員制度調査会にもこの行政改革会議の報告をもちろんお届けをし、議論をしていただいておりますので、委員の御提案も、既にその方策の一つという立場で検討がされていると思います。  また、民間人の受け入れ、同時に公務員が民間出向というお尋ねをいただいたわけです。  実は、大蔵省、金融機関から人材を受け入れていて、それがむしろ問題だとして、それを断ち切るということになりました。ただ、公共的な課題に公正に、また客観性、専門性を持って取り組んでいただく、そういう能力を強化するために、公務部門に多様な人材を確保する。そのためには、実は内外の人事交流というのは非常に大事になります。  そして、その意味では、民間企業等との人材交流、人事交流の活発化というのは非常に大事な課題でありますし、殊にもう一つのこれについての問題点は、海外で学位を取得してこられた方々をどういう形で公務員の社会に迎え入れるか。そうした点は、実は非常に問題意識を持って行革会議でも議論をし、提言をまとめていただいてまいりました。  こうした提言あるいは検討の基本的な方向、こういうものを受けまして、人事院からも実は意見の申し出があります、こうしたものを受けて具体的な検討を今進めておるところであります。
  83. 生方幸夫

    ○生方委員 民間からの人材が入っているのは知っておるのですけれども、それは大蔵省の情報をとるためというか、そうじゃなくて、もっと上の方にも、大蔵省に例えば局長クラスの方でも民間から来ていただくということをしないと、結局来ていただいても何もならない、そういうことでございます。  それと、今総理もちょっと申されましたが、大蔵省のいわゆるキャリアと言われている人たちの人材の育成の仕方にもやはり問題があるのではないか。よく指摘されていますように、二十代で地方の税務署長になって、いわば床の間を背負っていろいろな接待を受けるところから接待体質が始まっていく。大蔵省はそれを三十代に移すというようなことを言っておりますが、そもそもそういうことを知るのではなくて、エリートというのは、逆にもし税務署に出すのであれば一線の税務署員になって税金を実際に集めてくるというようなことから始めることがむしろ重要であって、税務署長になるということは弊害、むしろ逆なのではないかというふうに私は思うのですが、大蔵大臣、その辺いかがでございましょうか。
  84. 松永光

    松永国務大臣 大蔵省に採用された若い公務員、いわゆる上級職に合格して採用された若い公務員、これに税務行政の現場の経験をさせよう、そういったことから現場の税務署に行かせるというのが今までの例だったわけですね。  それが、今委員御指摘のとおり、余り若いうちに、税務署長さん、二十代後半だぐらいの場合には、知らず知らずのうちに特権意識的なものが身についたり、そういったことはその人本人にとっても実は幸せなことではないと思いますし、また、その人がずっと長く大蔵省で仕事をするとなれば、これも大蔵省にとってもいいことではない。  そういったことから、もう少し人間として経験を積んできた段階で現場に派遣した方がよかろうということから、署長として派遣するのを、もう少し人間としての経験を積んでからというふうに改善措置をやることに大蔵省はしておるようでありまして、この方が今までのよりもよりましだなというふうに思いまして、そういった方向で改善されることを私は期待しておるわけであります。
  85. 生方幸夫

    ○生方委員 私も若いころ新聞記者をやっておりまして、そのとき税務署に取材に行って、署長が私と同じぐらいですかね、私よりもちょっと上の方がいて、実務は全然わからないわけですね。実務は全部副署長さんがやっておって、その大蔵省の若い人がいるというような状態。結局、よくわかりませんが、仕事はほとんどしないで、ほとんど接待だけ受けて帰ってくるのじゃないかというような感じがする。  さっき申し上げましたように、それを二十代から三十代に引き上げるということよりも、むしろ重要なのは現場を知っていただく。それこそ新聞記者も販売店回りを最初にするというようなこともございますので、現場をむしろ知っていただく方が将来のためにはなるのじゃないかというふうに私は考えるのですが、大蔵大臣、そこについてはいかがでございましょうか。
  86. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先ほど大蔵大臣からお答えがありましたとおり、今までよりも経験を積んでから税務署長につけるという方針に現在改めつつあるわけでございますけれども、今委員も指摘されましたようなさまざまな御批判がありますので、そういう御批判を踏まえまして、若手職員の税務署長の任命のあり方をさらに見直していきたいというふうに考えております。
  87. 生方幸夫

    ○生方委員 質問を今度はちょっと変えていきたいと思います。  この予算委員会の場でも何回も論議をされておりますが、赤字国債と建設国債の見直しをするべきではないかというような意見についての御見解を伺いたいというふうに思います。  総理は、私、以前ここで質問させていただいたときに、これは時宜に適した質問であるというような御評価をいただき、その後、同僚の海江田議員の質問等に対しても、そういう論議は大いにしてほしいというようなことをたびたび述べられております。  しかし、大蔵省の方としては、イギリスで投資的経費以外の目的では借り入れをしないというゴールデンルールが九八年度から取り入れられたというようなことを引き合いに出して、むしろ建設と赤字国債は分けておいた方がいいのだというような意見があって、新聞報道によればですが、総理もその考えに近いようなことを考えているようなことが報じられておりますので、本当のところ総理は、赤字国債、建設国債の枠というのを見直した方がいいというふうに現時点でお考えになっているのか、いやそうではないというふうにお考えになっているのか、お考えをお伺いしたいのですが。
  88. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 新聞報道を前提にして御質問を受けるというのは、私、本当に好きじゃないのです。  そして、私は議員に、まさに財政法上の建前から従来のような議論をしていくとそこに壁ができる、やむを得ない向きがある。しかし、現実に我々は、建設公債であろうと赤字公債であろうと、国債残高そのものを何としても解決しなければならない状況に置かれている。その意味において、私は論議が行われることを何ら制約するものはないと思っておりますし、論議の行き着きます先について私が予測を今から申し上げるのはこれまた失礼だと思いますけれども、議員が提起された問題意識は時宜に適したものという答弁を申し上げてきました。また、海江田議員から同じ問題が提起されましたときに、という考え方、同時に、むしろ私は、実は、六十年ももたないものに対して、十年とか五年とかという、そういう考え方はとれないものかと、自分の頭の中にはそういうものもあるのだということを率直に申し上げました。  ただ、建前の答弁を求められますと、財政法はということから始まる、公共事業等の金額を限度として例外的に建設公債の発行を認めているという言い方にならざるを得ませんし、確かに私は、財政法の定めている、その規定する原則というものは、財政運営の健全性確保という観点から意味のあるものだということもそのとおりだと思うのです。  ですから、私はむしろ積極的に議論をしていただくことは大いに結構だと思いますし、私は実はこう思いますということを率直に申し上げたのですが、そこから先の報道機関の類推解釈の部分に基づいてのお尋ねは御勘弁ください。
  89. 生方幸夫

    ○生方委員 今総理もお述べになりましたように、償還期限が六十年というのが建設国債に設けられておって、今も総理もおっしゃいましたように六十年もたないものもある。実際、経企庁の調査だと平均耐用年数は三十七年だというふうに言われておりますから、三十七年でだめになってしまえば、あとの二十三年間というのはいわば借金を返すだけで赤字国債と同じものになっちゃうわけでございますから、この耐用年数、償還ルールというのも見直しをしていかなければいけないと思いますが、大蔵大臣、ここについてはいかがお考えになっていますでしょうか。
  90. 松永光

    松永国務大臣 私は、この財政法の規定、これを遵守しながらやっていかなければならぬ立場であります。今の建設公債の償還期限六十年、発行した国債に見合う資産といいますか、それの存続期間が大体それに近いところだろうということから六十年償還になっておるというふうに聞いておりますけれども、そういう考え方でいくのが現在のところ妥当ではないかというふうに思っております。
  91. 生方幸夫

    ○生方委員 この特例公債も、いつの間にか償還期限は六十年になってしまいましたですね。特例公債が償還期限六十年というのは、どういうところから来ているのでしょうか。
  92. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  特例国債については、これは六十年償還というのは本来的にはおかしいわけでございまして、特例債を発行した当初におきましては十年間で償還するという考え方で来たわけでございますが、その償還の時期になったときには引き続きまだ特例債依存体質の財政状況であったわけでございまして、十年で償還するとしたら発行額の十分の一を毎年償還しなくてはいけない、そうすると、その分だけまた特例債を今度歳入として増発しなければいかぬということになるものですから、これは建設国債の六十年償還ルールに合わせて、やむを得ざる措置として六十年償還ルールを現在も引き続き続けてきているわけでございます。
  93. 生方幸夫

    ○生方委員 財政構造を改革するということであれば、赤字国債ゼロというのももちろん大事ですが、国債そのものの額というのを減らしていかなければいけないというふうに考えますと、仮に二〇〇三年に赤字国債ゼロというのが達成されたとしても、前年に出された赤字国債の償還には六十年かかって、六十年後まで赤字国債が残るということになりますので、やはり赤字国債の償還期限というのはもっと短くするというふうに、ずるずる六十年で来ちゃったのではなく、財政再建という意味からも短くするべきじゃないかというふうに私は考えるのですが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  94. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  財政構造改革が進み、財政収支状況が改善して、六十年償還ルールから十年償還ルールができるような状況になることを我々は期待しているわけでございます。
  95. 生方幸夫

    ○生方委員 重ねて主計局長にお伺いしたいのですが、これは法的根拠というのはあるのですか、六十年にしたという。
  96. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 六十年ルールは、昭和四十一年ですかに国債を出した段階で、土地は償却資産じゃありませんので、これは本来耐用年数というのはないのですけれども、土地については百年、その他の施設物についてはそれぞれの耐用年数、税法で定める耐用年数に基づいて計算したところ、大体六十年ということになったわけでございます。(生方委員「いや、特例公債の方の六十年というものの法的根拠というのはあるのですか」と呼ぶ)はい、国債整理基金特別会計法の中で定めております。
  97. 生方幸夫

    ○生方委員 これは、以前から社会資本整備ということについても建設国債を適用するべきじゃないかというようなことが言われております。情報システムの整備とか情報インフラの整備とかいうことにも建設国債を充てられるようにしなければいけないというふうに私も考えておりますので、ぜひとも、この赤字国債、建設国債という区切り、そして、建設国債はいい国債で赤字は悪い国債だというような考え方そのものを改めていかなければいけないということを御指摘させていただきます。  次に、もう一問、時間が余りないのですが、ここで武部議員も質問いたしました中心市街地活性化法案について、ちょっと御質問させていただきたいと思います。  これは、まさに縦割り行政というものを外そうというようなことで、十一省庁が共同して中心市街地の活性化に当たろうということで、そういう意味では省庁の枠を超えた法案というのですか、システムというのですか、評価をしたいと思います。この予算が総額一兆円ぐらいになるだろうということが言われて、自民党の議員の方も含めて大変に期待が大きいというふうに聞いております。  しかし、実際に私も要綱を読ませていただきまして、総合的対策というものを読ませていただいたのですけれども、実際に自治体が、どういうふうにすればこの中心市街地活性化法案の対象になるのか、どんなことをすればお金がおりてくるのか、なかなかよくわからないというようなことがございますので、通産大臣から、どのようなお考え中心市街地活性化というのが考え出され、どういうふうにすればそれに基づく施策が受け入れられるのか、御説明をしていただきたいと思います。
  98. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  中心市街地の活性化対策につきましては、施策の効用が最大限に発揮できるように、市町村が作成する地域の特性を生かしたすぐれた計画事業に対して、施策を総合的に、一体的に行おうということになっております。  具体的に申し上げますと、市町村の独自性というものを尊重いたしまして、中心市街地の総合的な、計画的な整備を行うために、それぞれの市町村でタウンマネジメントという機関を設けまして、その市町村が設けたタウンマネジメント機関で自主的に計画されます。そして、その計画の内容、企画の内容を地元でひとつコンセンサスをしていただいて、そして、そのコンセンサスされたものを中央省庁の方に出していただくということになっております。  ですから、市町村は、このできた計画に基づいて、各省庁の出しておりますところのさまざまな支援メニューというのがあります、一兆円に及ぶもので十一省庁においてそれぞれいろいろとメニューをつくっておりますので、そのメニューの中から自分のところの計画の実施に必要なものを選んで、選択をして、そこに申請を出していただくということになってまいります。  市町村が選択をした支援メニューを持っておりますところの各省庁におきましては、互いに総合的に連絡をしっかりとりながらやってまいりますが、必要があれば都道府県の意思も聞きまして、そして、計画の先進性とか独自性だとかあるいは熟度というようなものを判断しながら、支援の対象とするかどうかということを客観的に、また同時に透明性を持って決定をしていきたいというような手順でまいることになっております。
  99. 生方幸夫

    ○生方委員 最終的に判断をするのは、各省庁が独自にやるということですか。通産は通産でやるし、郵政は郵政でやるし、建設は建設でやるということでございますか。
  100. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 最終的には、総合の連絡機関を設けておりまして、そこでよく連絡をとった後におきまして、各省庁において決定をいたしてまいります。
  101. 生方幸夫

    ○生方委員 そうしますと、幾つの市町村に与えるというようなことではないわけですか。
  102. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 全く、今のところ、市町村はどことどこというふうに決めているのではなくて、さっき申し上げたように、それぞれのところで出されたものを申請していただいて、その内容、熟度をしっかりと確かめまして、また都道府県にも連絡をとりながら最後の決定をしていくということでありますから、どこは入らない、どこは入るというものではございません。
  103. 生方幸夫

    ○生方委員 中心市街地が空洞化している、これは深刻な問題だというふうに私もよくわかっておるのですが、国のお金を投入して中心市街地を活性化させるということを今やるべきかどうかというのは、ちょっと違うんじゃないかな、地方の商店街に対しての施策というのはもっと別に考えられてしかるべきじゃないかなというふうに私は考えております。  それで、中心市街地というものの考え方も、これから将来にわたって随分私は変わってくるんじゃないか。これから情報化社会になっていけば、今までのように、中心地にみんなが集まって、そこから会社に行くとかというようなライフスタイルじゃないものに変わってくるんだと思うんですね。したがって、私は、行政というものはそういうものをもう少し早く先取りした形でいろいろなことをやっていかなければいけない。例えば、郵政省さんなんかがニューメディアに関していろいろな実験を行ったりしていましたけれども、そういうのよりもうちょっと先の考え方で中心市街地というようなものもとらえるべきじゃないか。  ちょっと先の話になっちゃうのですけれども、例えば首都圏移転なんかの話も、今は財政事情が非常に厳しいですからすぐに取り組むというわけにはいきませんが、これなども、やはり二十年とか三十年、五十年先を踏まえて、そういう都市をつくることによって、そこで実際それを運用させることによって、そこに新しいサービスとか新しい産業が生まれてくるんじゃないかというような考え方もありますので、中心市街地の活性化、当面はそれが大事であったとしても、もうちょっと先を含めた形の考え方というのを、明るい未来というような形で打ち出してもいいのではないか。  今はもちろん、財政再建、景気対策で大変なんですが、長期的に総理、そのようなお考えがあるかどうか、最後に一言だけお伺いしたいのですが。
  104. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これを一言と言われたのですが、あなたの提起されたのは大変大事な問題なんです。そして、私は必ずしもあなたの意見と同一ではありません。  というのは、私は、やはり中心市街地というのが一つの町の顔というものを築き上げてきた、そしてそこが空洞化をするということは決していいことではないと思います。それだけに、生活空間としての市街地を構築していく、これは、都市の再構築と同時に、地域経済の振興という視点からも非常に大事なことだと思います。  その上で、先ほど通産大臣がお答えを申し上げた点ですが、むしろ、議員が通産大臣に求められたような、読んでこういうふうな手順を踏めばこれでいいんだという式な、いわば政府の方で考えて、その考え方に沿ったものを採択するというやり方ではなく、それぞれの地域、そこに合った考え方を打ち出していただくものを各省庁がそろってバックアップをするという、この試みは私は成功してほしいと思いますし、そうした中から、私は、議員の言われるような将来型の町づくりというものもまた生まれてくるのじゃないかと思うのです。  その点は私は、議員議論とちょっと乖離を感じて今伺っておりました。
  105. 生方幸夫

    ○生方委員 どうもありがとうございました。
  106. 越智通雄

    越智委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  107. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鐵三君。
  108. 冬柴鐵三

    冬柴委員 平和・改革の冬柴鐵三でございます。  きょうは、永住外国人に対する地方参政権付与、このような問題に絞って、短い時間ではありますけれども、閣僚の、殊に総理のお考えなどを伺ってまいりたい、このように思います。  さて、私たちの周りには、実に多くの外国の方々が生活をされるようになりました。一億二千六百万の人口のうち一%を超える外国の方々、顔色も違う、そして言葉も違う方々が、同じ日本生活をされるようになりました。その中におきましても、何といっても在日韓国・朝鮮人の方々が、日本社会におきまして、重要な地域の構成員として地域に溶け込み、そして活躍をしていられる、そういうことは争いのない事実だと思います。そして、私たちとともに今日の日本の繁栄を築いてこられ、そしてまた発展させるのに大きな貢献もされてきた、これも間違いない事実であろう、私はこのように信じております。  この人たちは、その地域で営業をし、そして、もちろん国税や地方税も負担をしていられるわけでございまして、いわゆるタックスペイヤー、税金の負担者として、自分が払った税金の使い道についてその意思を表明する場が与えられていない、こういう事実が続いております。代表なければ課税なしという格言がございますけれども、この人たちは、自分たちの意思で代表を選ぶという道が閉ざされているわけでございます。  もちろんこの人たちは、日本で生まれて、そして日本教育を受け、長じては日本で結婚をし、そして子供をもうけ、そしてまた日本の地にその骨を埋めていく、このような人たちでございます。もちろん日本語を流暢に話しています。町内会のつき合い、あるいはPTAやその他のコミュニティーにおきましても、全く日本人と変わりありませんし、また日本人の妻となり、また夫となる、このような人たちもたくさん見受けられます。  何が違うのか。ただ一点、この人たちは日本国籍を持っていない、このようなところだけが違うわけでございます。  そこで、自治省の方にお伺いしたいのでございますけれども、私は、大阪で弁護士事務所を二十数年開業してまいりましたので、大阪のことはよく知っておりますが、大阪市に生野区という区がございます。ここは、一番日本でこの在日韓国・朝鮮人の方が多く住んでいられる地域だと思います。そこで、自治省の方にお伺いしますが、この生野区の人口と、それから外国人の人数、そしてその占める割合について御説明をいただきます。
  109. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 平成九年三月三十一日現在の生野区の住民基本台帳人口は十一万二千九百五十四人でございます。また、外国人登録者数は、大阪市に確認しましたところ、三万七千七百四十二人であると聞いております。
  110. 冬柴鐵三

    冬柴委員 日本人と外国人を足して、その数に対して外国人の割合というものを出すべきだろうと思うのですが、足しますと十五万六百九十六人になると思います。それに対する三万七千七百四十二人の割合は二五・〇四五%、四人に一人が在日の方だということがわかります。  そこで、もう一回、自治省、お教えいただきたいのですけれども、何でこんなに、この生野区というのは地域としては八・二四平方キロという狭いところですね、そういうところになぜこの在日の方がお住まいになることになったのか、その点について御説明ください。
  111. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  このことにつきましては、実は、昭和五十七年の外国人登録法の一部を改正する法律案の国会におきます審議に際しまして、当時の生野区長が参考人として概要を述べておられます。  それによりますと、大正年間に生野区の中央部を流れる平野川の改修工事が行われまして、韓国・朝鮮人の多くの方々がこの工事に従事され、改修後もこの町に住むことになったことが大きな理由の一つであると聞いているとのことでございました。
  112. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この大正年間に、韓国の地から屈強な働き手が、日本の河川の改修、治水工事に従事するために移住をされ、そしてそのときの飯場がつくられたところが生野区であったようでございます。  どのような方法で連れてこられたのか、希望者を募ったのかどうか、それは私はつまびらかにすることはできませんけれども、同じようなことが、現在のサハリン、当時の樺太開発のために多くの韓国の方が、日本政府によってというか、その地に移住をすることになりました。  終戦後、サハリンから日本人は引き揚げができましたけれども、そのように連れていかれた、連れていかれたというか、移住をした韓国、朝鮮の人たちは、そのままになりまして、望郷の念に駆られたという話があります。  今から十二年前ですか、我が党の国対委員長をやっている草川昭三議員がこの地に初めて足を踏み入れまして、そのような実態調査をし、以来、何回もこの地に足を運んで、サハリン残留の韓国・朝鮮人の方々を、母国である韓国へ一時帰国をさせ、また希望する人には永住するための運動を重ねてきたことは非常に周知の事実だと言ってもいいと思いますし、今、その日本政府の拠出によって韓国の地にこの人たちを収容する老人施設等がつくられている、そういうこともありますので、この生野区に来られた方々の、いきさつはわかりませんけれども、そういうことが原因になってこの大阪の地にたくさんの方が住むことになった、こういう事実でございます。  在日韓国・朝鮮人の人は、顔色も、背の高さも、目の色も、髪の毛も、みんな変わりませんから、その地に行きましても、これがそういう地域かわかりませんが、ただ、有名な焼き肉料理とかキムチとか、本場のものがそこへ行けば有名な店を連ねているというところに、そういう名残が残されております。  だから、こういう方々は、国籍は違うわけでございますけれども、自分たちの母国の言葉、韓国、朝鮮の言葉を解することができない人たちもたくさんいられるわけでありまして、日本語の方が読み書き、そしてまた話をする場合も流暢にされる、こういう人々でございますし、また、生涯自分の母国へ帰ることのない人もあるわけでございます。  私は、このような在日韓国・朝鮮人の人というのは、先ほど言いました多くの外国人、通過外国人といいましょうか、日本の国へ、最長五年の期間以内に母国へ帰るということを前提に、一定の目的、例えば勉学とか就職、そのようなことで入国をしてこられる外国人と同列に扱うことは許されないのではないか。私は、やはりこのような在日の方々については、可能な限り日本人と近い扱いというものをすべきではないか、限りなく日本人に近い扱いをすべきであろう、このように確信をするわけでございます。  そこで、この人たちの戦前戦後の国籍の得喪、変更について、法務大臣から、簡単でいいですから御説明をちょうだいしたいと思います。
  113. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答え申し上げます。  明治四十三年八月のいわゆる日韓併合条約によりまして当時の朝鮮人は日本国籍を取得することとなりましたが、昭和二十七年四月にいわゆるサンフランシスコ平和条約が発効したことにより、朝鮮に属すべき人に対する主権も放棄したことから、朝鮮人たる法的地位を有していた者はすべて日本国籍を喪失することになりました。
  114. 冬柴鐵三

    冬柴委員 すなわち、大正年間に平野川改修のためにこの生野区に移住した人は日本人なんですね。そして、その後、兵役の義務も負い、多くの戦傷病者も出しているわけでして、その後、我が国が終戦後、講和条約を締結し、植民地支配したところを放棄するということに伴って、彼らの意思を確かめることもなく、この人たちは、再びといいますか、日本国籍から朝鮮、韓国籍に戻ってしまった、それ以来、日本では外国人と扱われることになった、こういう沿革があるわけですね。  私は、こういう人たちは日本でもう四世がいられると思います。それから数えれば四世代が日本にいる。  これも法務省でしょうか。五歳以下で結構ですから、今何人いらっしゃるか教えていただけますか、五歳以下。
  115. 竹中繁雄

    ○竹中政府委員 お答えいたします。  ゼロ歳から四歳までという数字がございますが、それによりますと、二万一千八百四十九人でございます。
  116. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのような実態があります。日本で生まれ、そして結婚をし、ずっと世代を重ねて四世代、そして今四歳以下が二万人。私どもは、そういう人たちを十把一からげに、外国人、日本人にあらずということでそういう扱いをしていいのだろうかという思いがあります。  どんどん改善されてきました。厚生省の所管あるいは労働省の所管、そしてまた公務員として採用される国籍条項についての弾力的な扱い、あるいは特別永住権の付与とかいろいろなことが行われましたけれども、しかし、彼らは公営住宅の入居はどうなっているのでしょうか。建設大臣、わかりますでしょうか。
  117. 小川忠男

    ○小川政府委員 お答えいたします。  永住外国人の公営住宅の入居資格でございますが、ほとんどの地方公共団体におきましては、日本国民と全く同様の資格基準で入居を認めております。
  118. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっとそのまま受け取れないような事情も私はあるのですが、しかし、予算委員会の答弁でございます。そのようにあらゆる面で前進してきたということは受けとめ、そしてまた、韓国の人にも、朝鮮の人にもわかってもらうべきだろうというふうに思います。  しかし、日韓議員連盟というのに、私も議員に当選させていただいてから入らせていただきました。  実は私は、戦前は父の仕事の関係で満鉄へ行っておりましたので、当時の満州奉天、現在の瀋陽で生まれまして、そして転勤とともに小学校は朝鮮半島の北のつけ根にあります、今朝鮮民主主義人民共和国になっておりますが、羅津、ここの小学校に三年生までおりました。そういうことで、家には韓国人のねえやさんもおりましたし、私にとっては韓国は外国とは思えない思いがあります。  そんなこともありまして、日韓議連に入らせていただきまして、平成六年に、どういう風の吹き回しか、私に在日韓国人地位向上特別委員会の委員長をせいということで、現在までそれを務めさせていただいているのですけれども、ここの議論で、この終局的な権利確保というのは参政権というものがぜひ必要なのだということを韓国側から熱っぽく訴えられまして、私もそれに左袒する考えがあるものですから大いに意気投合しまして、向こうはなかなか有名な弁護士が韓国側の向上委員長でございまして、朴相干さんという人ですが、大変激論もしましたけれども同意するところもありまして、そのときの会議で確認をしたわけでございます。  それは、ちょうど九五年が国交正常化の三十周年に当たるものですから、国交正常化三十周年、戦後五十年という節目を迎えるに当たり、在日韓国人の法的、社会的地位の改善を目標に、在日韓国人の地方参政権確保のために最善の努力を尽くすという総意に達したということを、共同声明の中で盛り込んで、今日まで、自来三回の総会で同じような決議を続けてまいりました。  この日韓議連は、大変著名な先生方が、もう名前は省略いたしますが、入っていられて活躍をしていられまして、日本と韓国との友好親善のためにははかり知れない貢献をしてきた議連だと自負いたしておりますが、そのような中で、私はこういう合意をし、そしてまた共同声明を発したわけです。  ところが、日本の憲法では十五条で、公務員を選んだりあるいは罷免したりするのは国民固有の権利である、こう書いてあるわけですね。そうしますと、もちろん地方公共団体の長とか議員も公務員の概念に入ると思うわけですが、そういう規定が一つある。  それから九十三条にはまた違う規定があって、地方公共団体の長及びその議会の議員は当該地方公共団体の住民が直接これを選挙する、こういう規定もあります。  したがいまして、十五条と九十三条、どんな関係になるのかということで大変思い悩んだわけでございますが、私は、同じ憲法の中で違う言葉を使った以上、ここには、住民には住民の意味があるのではないか、こう感じました。  そして地方自治法の十条には住民の定義がありまして、市町村の区域に住所を有する者は当該市町村の住民とする、そのような趣旨の規定があります。また、その十一条には日本国民たる住民云々という規定もありますので、住民の中には日本国民たる住民とそうでない住民があるということがわかります。  そんなことから私は、こういう立論のもとに、平成七年二月二日に、この予算委員会で、当時村山内閣総理大臣でしたが、質問をいたしました。  それに対する当時の村山総理は、私が今言ったようなことをずっと言ってきたわけですが、答弁として、ずっと日本に居住をして、もう全く生活もつき合いも日本人と同じような暮らしをしておられる、その心情というものは私はよく理解できます。ただ、憲法九十三条、ただいま言ったことですが、それと地方自治法の十条と、住民という概念がどういうふうに違うのか、そこらのところはまだ最高裁も明らかにしていませんし、これはこれからの宿題として大いに検討させていただきたいと思いますという答弁をされたわけです。  ところが、偶然にもそれから二十六日後の平成七年二月二十八日に、最高裁判所はこの問題について判決の言い渡しをされたわけでございます。  法制局長官からお聞きしようと思ったのですが、私からちょっと読ませていただきますと、さわりは、憲法九十三条二項に言う住民とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民意味するものと解するのが相当であると。ですから、私の考えとは違いまして、住民は日本国民たる住民だ、こういうふうに最高裁は言い切っているわけですが、しかし、その傍論で大変重要なことを言いました。  このように、憲法九十三条二項は、我が国に在留する外国人に対し地方公共団体における選挙の権利を保障したものとは言えないが、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者について、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。  持って回ったいろいろな言い方ですが、要するにこれは、そういう外国人に地方参政権を与えても憲法違反とはならない、すなわち、国会で決めればそれは有効に決めることができるということを初めて示した画期的な判決である、私はそう思うのですが、ちょっと法制局長官、その私の考え方、それでいいかどうか、結論だけで結構ですが、お示しいただきたい。
  119. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたような記載が当該判決中にあることは、そのとおりでございます。
  120. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まあ法制局はそれでいいと思います。  それで、私は、時代の潮流ということを考えなければいけないと思います。  私は、二十世紀というのは、国家、国益、国権、国境、国民、国籍、このように、国というものが全面に出た世紀であったと思います。したがいまして、国籍を拡張するために多くの戦争がありました。多くの血が流されました。国益を確保するためにやはり多くの列強が植民地経営を行った、こういう事実もあります。  しかし、二十一世紀はそれではいけないと思います。やはり、グローバル、国際化と言われるのは、このような国というものがもう少し、もちろん国家が存在する以上必要ではありますけれども、もう少し後退をして、主役はそこに住む人間でなければならない、私はそのように思います。住民の福祉ということが非常に大事な世紀に二十一世紀はならなければならないと思っております。  私どもの、一月一日発足したまだよちよちの新党平和の綱領は、大要このように書いております。我が党は、我が国民だけではなく、全世界の人々が平和のうちに生存し、地域で差別を受けず、ひとしくゆとりと豊かさを実感できる社会の実現を目指す、これが我々の綱領の第一項であります。また、先ごろ規約を定めましたが、その中に、我が平和の党員資格としては、十八歳以上の者で、国籍の内外は問わないということを定めました。  そのような一環として、ぜひ私は、この地方参政権を外国人に与えるということについて前向きに対処をみんながしていきたい。また、この国会に私はこのような大部な立法準備をいたしまして、五章、三十六条、附則九条で一つの案をつくりました。これを多くの同意をされる人々とともに国会に提案をして、そして成立をさせたい、このように思っているわけでございます。  しかし、これは我々が言っているだけではなしに、地方自治体でもたくさんのそういうものを求める決議をしているということがあります。  自治省からその点についてお伺いしたいのですが、現在までにどのような数になっておりますでしょうか。
  121. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えをいたします。  お尋ねの件につきましては、昨日までに自治省が受理をいたしました定住外国人に対する地方選挙権の付与を求める意見書の数は、都道府県議会から二十七、政令指定都市議会から十二、その他の市区町村議会から九百八十六、合わせて一千二十五となっております。これは全体の三一%でございます。
  122. 冬柴鐵三

    冬柴委員 地方の議会が、地方公共団体の長、首長、そしてそこの議会の議員に、そこに住む住民である在日韓国・朝鮮人の人にも選挙権を与えるべし、このように決議をしているのがそんなにたくさんになっている。私の、民団で調べたのでは千三百五十、一月二十一日現在ですが、そのように報告されておりまして、若干数字が違うのですが、これは自治法上に定める決議と単なる決議との違いでしょう。いずれにしても、非常に大きな数だと思います。  私は、そういうことで、この点について賛同をいただける議員とともにこの実現に頑張っていきたいと思います。  最後になりましたが、総理から所感をお伺いして、終わりたいと思います。
  123. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 冬柴議員がこの問題を村山総理に提起をされました後、最高裁の判決が出ました。そして、それを受けまして、私はこのような御答弁をいたしたことがございます。  まず第一に、委員も引用されましたように、「憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。」というそのすぐ後ろに、「しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。」そのように記されております。  私は、この問題は、一つ国民主権の問題としてとらえることができる、同時に、まさに地方自治という観点から、あるいは地方の権利というものを国との対比においてどう固定するか、こうした議論一つ議論の展開としてあり得ると思います。本当に、実はさまざまな角度からこの問題については議論がなし得るものだと思いますし、非常に基本的な問題として幅広く検討されるべき課題だと思います。  与党三党におかれましてもこれまでも検討を進めてきておられると承知をし、また議員からも、今日までこの問題を追ってこられたプロセスを御紹介がありながら御論議がございました。私は、今後とも各党各会派におかれて、これは十分御検討いただきたい。  そして、まさにこの最高裁判決の中におきまして、我が国に在留する外国人のうちでも、永住者等その居住する区域の地方公共団体と特に密接な関係を有する者、そうした視点から、最高裁が一つの判断を示されたという点について留意をしたいと思っております。
  124. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  125. 越智通雄

    越智委員長 これにて冬柴君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤和良君。
  126. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 平和・改革の遠藤和良と申します。  最初に、総理は何でも大変詳しく御存じでございますからお伺いしたいのですけれども、インドにございますサンジャイ・ガンジー医学研究所というのがあるのですけれども、御存じでしょうか。
  127. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、実はその研究所自身は存じません。
  128. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 外務大臣はいかがでしょうか。
  129. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 直接は存じておりませんが、我が国のODAを通じまして協力をしてきた研究所と承っております。
  130. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 これは、我が国からODAをやっておりまして、無償資金援助が三十三億円ですか、それから技術協力が二億六千六百六十三万円ですかの協力をしているわけでございますが、最初に、この概要について若干説明を願いたいと思います。
  131. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 インドのサンジャイ・ガンジー医学研究所の概略について御説明をさせていただきます。  インドにおきましては、熟練医師、看護婦等が大変に不足をいたしておりますし、基礎的な医学研究もレベルが低い、こういう状況でございまして、八〇年代のインドの国家開発計画の中に、こうした諸問題の克服ということが組み入れられました。  そして、ウッタールプラデシュ州、これはインドの北部の州でございます、人口一億二千万でございます。日本とほぼ同じぐらいの人口、非常に貧しい州でもございますが、ここに高度な研究、教育それから治療、この三者をセットとした医学研究所をつくるという計画がございまして、基本的にはインド側が建物を建設する、機材もインド側が手当てできる限りは自分で手当てをする、一部分については外国の支援を頼む、こういう形でプロジェクトがスタートをいたしました。  日本政府もその協力の依頼を受けまして、一九八五年にラジブ・ガンジー首相が訪日をされた際にも、日本政府に要請がなされた経緯がございます。こういうことを受けまして、我が国としましても、これはインドの全体的な医療協力の見地で大変に意義があるという判断に立ちまして、機材に関する協力、それから技術協力、これをあわせて実施するということにいたしまして、このプロジェクトに参加をしたわけでございます。  最終的には、この医学研究所は、ベッド数で千八百ベッド、インド側予算は数百億円使っているはずでございます。定員は二千三百人と承知しております。大変に大きなプロジェクトでございます。  我が国の関与に関しましては、ただいま先生から御指摘ございましたように、機材の供与に関する部分につきましては、無償資金協力で一九八六年に十九・七億円、八七年に第二期分としまして十三・四億円、合わせまして三十三億円強の約束をいたしました。それから、技術協力につきましては、この機材の納入が終わった時点から直ちに開始をしまして、一九九〇年に本格化をしまして、五年間継続し、さらに二年間延長しまして、昨年、技術協力部分は一応成功裏に終わりました。  この間に、厚生省それから文部省にも全面的な協力をお願いしまして、特に、この協力については、八〇年中ごろの当初から技術協力を通じます十年以上にわたりまして、名古屋大学の全面的な協力を得ました。大学の総長それから医学部長、医学部を挙げて御協力をいただきまして、成果を上げることができました。私どもも大変感謝をいたしております。専門家の数は、延べで八十人以上がこのプロジェクトに参加をされて、医学研究、教育のあらゆる分野に参加をされました。我が国には二十六名のこの医学研究所の研究員を研修員ということで受け入れております。  以上でございます。
  132. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大変長い説明があっていらいらしたのですけれども。  今説明がありましたいわゆる第一次、第二次と交換公文の署名があった時期ですけれども、この時期に当時のインドのこの研究所の所長でございましたドクター・セティというのがいますが、この方が外国からの機材供与の関連で逮捕されておりますが、この事実、御存じですか。
  133. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 ただいまの無償資金協力によります機材の供与を検討している段階で、国際協力事業団から、二度にわたりまして、供与すべき機材の調査を行っております。二回これを行いました。  その当時、今名前が言及ございましたセティという人、当時はこのサンジャイ・ガンジー医学研究所の隣にございますキング・ジョージ医科大学の学長さんをなさっておりましたけれども、専門性の見地から、この日本政府から派遣した基礎調査団と一緒になりまして、全体の構想、機材の選定等にかかわる協議に参加をした経緯がございます。  それから、後ほど私どもが知りましたけれども、ただいま御指摘ございましたように、一九九〇年に外為法の違反の容疑を問われまして逮捕されたということも聞いております。この件につきましては、逮捕されて二カ月間拘束をされたということのようでございますけれども、私どもが確認している限りでは、起訴されたという事実はございません。
  134. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 逮捕の被疑容疑の中に、日本のODAとの関連は具体的にはないのですけれども、具体的には別の国ですね、よその国との関連でそういうのがあったということが確認されているわけでございますが、日本の額はその国に比べて大変巨額なわけでございまして、同じような手口でやはりそうしたことがあったのではないかという疑惑が持たれているわけですね。したがいまして、日本側としても、日本のODAについてそうした心配は全くないんだ、こういうことをきちっと説明する必要があると思うんですが、日本の関連と彼の逮捕とは全く関係なかったんでしょうか。
  135. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 お答え申し上げます。  このセティという人の件につきましては、今御説明申し上げたとおりでございますけれども、インドの雑誌等にこの逮捕の事実が報ぜられたことによって我々も知るに至りまして、調査をいたしました。  その結果わかりましたことは、一応、疑いをかけられている事実については、本人の在米の娘さんの口座にドルと、それからドイツ・マルクが振り込まれておった、ここに何かやましいことがあったのではないかというようなことが一つと、それから、この医学研究所が自己資金で北欧から医療機材を調達したことが何かこれに関係をしているんではないかといったような、これはあくまでもインドの国内における雑誌の報道でございますけれども、ございました。いずれにしましても、九〇年三月に逮捕されて二カ月勾留後に、結果的には不起訴ということになったわけでございます。  本件に関しまして、インド捜査当局その他の当局から、大使館を初め日本政府関係当局に対しまして何らかの照会がなされたということは一切ございませんし、私どもとしては、本人の逮捕という事実と我が国との協力については、関係があるということは全く考えておりません。  なお、先生御案内のとおり、日本の無償資金協力によります機材の調達につきましては、本件の場合には日本から調達されておりますけれども、機材を船積みをいたしまして、据えつけを確認をいたしまして、外務省が船積み書類等を審査をし、支払いを承認した上で、我が国の国庫から、東京にございます外為銀行に開設された、この場合にはインド政府の名義の口座を通じて、日本の調達業者に直接支払われる仕組みになっている、こういう仕組みで行われておりますので、この援助資金が相手国側に勝手に使用されたり、資金が直接相手に渡るというようなことはあり得ない仕組みになっております。
  136. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 その件はわかりました。  平成五年の十二月二日から平成七年の七月三十一日にかけて現地に派遣をされた塩野谷恵彦先生が、JICAに対してプロジェクト総合報告書を出しています。  このペーパー、私も写しを先生からいただいたわけでございますが、先生としては、いわゆる先人のいろいろなミスを揚げ足をとるような気持ちは全くありません、そうではなくて、日本のODAが本当に相手国の国民のためになるものになってほしい、そういう気持ちでこれを書かれたようでございますが、大変重要な指摘がたくさんあります。  特に、私、指摘したいことは、向こうで受け入れ体制が整っていない、いわゆる病院の建設がまだ完成していない、かつ技術者も十分に育成されていない、そういうときに大量の医療機材が日本から搬入されているわけですね。したがいまして、こん包したまま何年もほっておかれたり、あるいは、ほっておいたものですから故障してしまって使えなくなっている、こういう機材がたくさんあるんですね。  一番大きなものとしては、この報告書の中から見ますと、要するに、テクニコン・オートアナライザーというのがあるんですけれども、これは約一億円かかるものでございますが、いわゆる無用の長物になっている。現在では修理も不可能であるということで、いわゆる残骸をさらしている、こういう報告があるんですね。  そのほかいろいろ機材があるんですけれども、リストがございまして、ちょっとその数字だけ申し上げましても、これは平成七年五月現在の状況であるという報告ですが、調査した医療機材の数が千二百二十三、これは個数ですね。そのうち、未使用でほったらかしになっているというのが百五十三、一二・五%です。それから、使用することが不可能な故障機材が七十、五・七%ですね。それから、一部故障しておりまして、修理すれば使用することが可能であるというのが十七で、一・四%。  それを金額ベースでいうとどうなるかというと、全体の資材の総額が三十四億七千五百九十五万四千八百十三円。これを一〇〇%といたしますと、未使用の機材が二千四百十六万千三百八十円、〇・七%。それから、使い物にならない故障機材が四億七千六百八十万五百円、一二・六%ですね。それから、一部故障であるのが二億七千六百六十七万一千四百九十円、八・〇%ということでございます。  この故障機材も、最初から故障していたわけじゃないんですよね。最初日本から出したときはすぐ使えるものでございますが、それがそのままほっておかれたために、故障してしまって使えなくなったわけです。これが金額でいうと四億七千六百八十万円、かなり大きな額でございますね。こういう状態になっているというんですよ。  これについて、外務大臣、どういう見解を持ちますか。
  137. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 いずれにいたしましても、国民の貴重な税を活用してこうした協力を申し上げている案件につきまして、今先生の御指摘の主要な専門員の調査結果について私自身、詳細に承知をいたしておりませんが、今御指摘するような形でせっかくの機材が活用されておらないということであるとすれば、大変残念なことだと思っております。  したがいまして、こうした問題につきましては、その評価について十分行っていかなければならない、このように考えております。
  138. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 ODAは十年度予算でも約一兆円ついているわけですね。それは貴重な国民の税金でございますね。その税金がこうした形で、せっかく送ったのに四億七千万円もが全く使い物にならなくなってしまった。これは、税に対する本当に真剣な取り組みというものを考えた場合に捨てておけない問題だと思うんですが、大蔵大臣、どうですか。
  139. 松永光

    松永国務大臣 今、委員御指摘のサンジャイ・ガンジー医学研究所に供与されていた機材の中には、インドの不規則な電圧事情等いろいろな事情もあったようでありますけれども、いずれにせよ、故障し、スペアパーツの不足等の事情もあって修理も十分できないで利用頻度が少ない機材がある、こういったことを聞いておるわけでありますが、今後とも、より一層効果的かつ効率的に経済協力を実施していく必要がある、そういうふうに思います。  いずれにせよ、ODAの実施に当たっては、援助の適正かつ効果的な実施の確保が重要であります。我が国としても、量から質への転換を徹底するため、事前調査、事後評価及びフォローアップの充実等に努力することが重要であるというふうに考えるところでございます。
  140. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 まだこの報告書にはいろいろほかに問題がありまして、例えば脳神経外科研究棟というのがすべて倉庫になっていた。そして、関係者の強い抵抗を排除してその倉庫を開放して中に入ったら、総額一億円余りの機材が十数の部屋に未開封のままぎっしり詰まっていた。手術台とかモニターとか、いろいろ、消毒装置なんかにまじって四台カラオケセットがあった。何で医学研究所にカラオケセットが必要なんですかね。  私は、このリストをつくったのは、インド側でつくるわけですけれども、それに対してアドバイスをするのは日本側、今もお話がありました名古屋大学ですね、この名古屋大学に問題があるんじゃないかと思いますよ、いかがですか。
  141. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 ただいまカラオケセット供与云々のお話がございました。誤解があるとまずいので、御説明をさせていただきたいと思います。  まず、サンジャイ・ガンジー医学研究所にそもそもカラオケルームなるようなものは設けられておりません。確認をいたしました。  このいわゆるカラオケセットというのは、それでは、なぜこういうことになったのかということでございますが、日本においてはカラオケ用に販売されておりますアンプでございますとかマイクでございますとかモニター、こういったものが供与されたわけでございまして、これはカラオケ目的に調達されたということではさらさらございませんで、手術を行いながら執刀状況を録音、録画する、研修用に使う、こういう本来の機材のために調達されたものでございます。  なお、無償資金協力におきまして資機材の調達を行います場合には、一般競争入札でやっております。その場合に、入札図書に規定をされました一定の仕様を満たすということが求められるわけでございますけれども、この仕様を満たす限りにおいてはできるだけ価格が安いものを納入する、落札をさせるということになっておりますので、そういう見地から、たまたまカラオケに使われるそういうアンプとかマイクとかというものが納入されたということでございますが、これは目的が違うわけでございます。  それから、ちょっとお許しをいただきまして、先ほど外務大臣、それから大蔵大臣からも御説明がございましたけれども、未使用、それから故障中の機材については、先生から御指摘のございましたような調査結果が、これは一九九四年の時点でございました。確かにインド側の建設計画が予定よりはるかにおくれた、特に脳神経外科の手術室につきましては、設計ミスがございまして、相当おくれたというようなことがございまして、持ち込まれた機材がしばらく倉庫に置かれておったという状況がありました。それから、故障につきましては、電圧の変動が大変に激しい国でございますので、相当神経を使っていろいろな措置をとりましたけれども、故障がかなり日常的に起こるというのがインドの国情でございました。  いずれにしましても、そういうことで措置をとっておりまして、それから数年後の調査結果によりますと、今の未使用のもの、それから故障のものにつきましては改善をされまして、九四%という数字が九七年時点で報告されておりますけれども、改善を見ております。  しかし、いずれにしましても、こういう事態ができるだけ起こらないように事務当局、実施当局としましても最善の努力を尽くしてまいりたいと思います。
  142. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 これは大変いろいろな問題を含んでいるプロジェクトだったと思うのですね。本当は平成七年七月三十一日で終わる予定のものを無理に二年間延長しているわけですね。昨年の七月に終わっているわけですが、その時点で会計検査院が現地に行っていると聞いていますが、何か現地でその後こうなっているとか、あるいは外務省に指摘したことはありますか。
  143. 深田肇

    ○深田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  私ども、インドにおきますODA事業の現地調査は、昨年の七月に十三事業につきまして六名で二週間にわたって行いまして、御質問のサンジャイ・ガンジー医学研究所事業につきましてもその調査対象の一つとしております。  本件につきましては、先ほど先生も御指摘になりましたように、無償資金協力につきましては昭和六十一年と六十二年、それから技術協力につきましては、当初は平成二年から七年でしたが、その後二年間延長されている、そういうことでございます。  この間に、相手国実施機関によります施設建設等のおくれによりまして、先生が御指摘になりましたように、機材の設置が当初計画よりおくれまして未利用の状態が続いていた機材があったという報告も受けておりますが、技術協力の延長によりまして、私どもが現地調査を実施いたしました昨年の七月時点におきましては、一部の故障中のものもございましたが、未稼働のものは解消されていた、そういう状況でございます。  無償資金協力及び技術協力でこの研究所に供与された機材はすべて設置済みでございまして、このうちの一部に故障で修理中などのために稼働していないものもございましたが、ほかは目的どおりに使用されていた、そういう心証を得て帰ってきたものでございます。  検査院といたしましては、従来から、このように、施設建設とか機材供与、技術協力が時期等を考慮して適切になされるように日本側の援助実施機関に注意を喚起してきたところでございますが、先生の御指摘の趣旨を念頭に置きまして今後の検査に当たってまいりたい、そういうように考えております。
  144. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 会計検査院は、本当にこういう事案についてもっとびしびし外務省に注文をつけた方がいいと思うのです。  外務省の方も、当初の予定どおり終わらなくて二年間延長せざるを得なくなったという状況があるわけですね。それは何かというと、一番最初の計画そのものがずさんだったのじゃないかと思うのですね。一番最初に、やはりこういうものは、病院が完成し施設が完成された、そして技術研修が終わった、そういう状態のときにきちっと医療機材を入れなければいけないわけですね。それをいきなり、病院ができていないうちにぼんぼん送ったものですから、砂漠にハイテク機材を置いていくようなものだ、こういうふうに塩野谷さんは報告していますよ。  やはりその辺が、向こうの相手国の申請を素直に受けておこたえしたのでしょうけれども、実際に提供された機材がきちっと使われるようにするまで日本が丁寧に対応する、丁寧にアドバイスする。そういうものがなければ、せっかくのものが全部使われなくなっちゃって、何かインドでは、日本で送ったものが使えなくなっちゃったのでそれは捨てちゃって、インドの国で措置して買ったとか、そういうものがあるらしいですね。そういうことにならないようにやるべきだと私は思いますが、外務大臣、改めて見解をお願いします。
  145. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 本件につきましては、今経協並びに会計検査院から御報告申し上げましたとおりかと思います。これに至る間、数次にわたっての調査も行ったのだろうと思いますが、その後、インド側の対応につきましても十分でなかった点もあり、かつ送ったものがそのような処置になっておったことは残念であります。まあ、結果的には現在はこれを使用されているということでございますが。  いずれにいたしましても、こうしたケースが起こってはいけないことだろうと思います。したがいまして、予備の調査、あるいはその後の経過のフォロー、そして最終的な評価、こういうものをきちんといたしていく努力をしていかなければならないと考えております。
  146. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 終了後評価というシステムがあるのですけれども、これは去年の七月に終わっていますね。その調査団というのは既に派遣されていると思うのですが、どういうメンバーで派遣したのですか。
  147. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 終了時調査団の報告につきましては、二年延長を行った時点で行っております。調査団につきましては、事業関係者、それから大学関係者、政府関係者等が参加をいたして行いました。
  148. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 いわゆるこのプロジェクトにかかわってきた内輪の人が行って見てきて、よかったというのじゃ、本当に正確な評価はできないのじゃないかと思うのですね。やはり全く関係のない第三者が行って、NGOもいいでしょう、あるいは有識者だとか、中には外国人が入ってもらってもいい、そして日本のODAというものが実際どういうふうにでき上がっているのか、こういうものを客観的に評価してもらう必要があると思うのですが、そういう調査団の派遣は考えていますか。
  149. 大島賢三

    大島(賢)政府委員 ただいまの先生の御指摘につきましては、私どもも、当事者の評価にとどまりませず、第三者の参加を得る形の評価、最近随分行い始めております。その中には、NGOによる評価も含まれております。  したがいまして、今回の終了時評価、これは、直接このプロジェクトに当初から十年以上携わっていただいた名古屋大学の総長以下諸先生方を中心にやりましたけれども、しかるべき時点で、改めまして別の見地から評価をお願いするということも十分検討していきたいと思いますし、ぜひやりたいと思っております。
  150. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それは会計検査院にもお願いしたいのですけれども、やはりある程度時期がたって、日本の協力というものがその国民にとって本当に有益なものであったのかどうか、税金が本当に有効に使われたのか、こういう調査をやるべきだと思います。会計検査院、今後行く予定はありますか。
  151. 深田肇

    ○深田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  ODAの検査につきましては、数年サイクルで調査をいたしておりますので、そのサイクルの中で検討していきたいと思っております。
  152. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今、総理、お聞きになっていただいたわけでございますが、やはりODAというのは、ある意味では日本の国とか日本国民を映し出す鏡なんですね。どういうふうなものが実際に行われているのかというのは、日本の国の姿をそのまま映し出す鏡だ、こう言われております。  私、今のお話をさせていただきましたのは、どうしても日本のODAというのは物に偏重しがちではないのか。あるいは、相手国の申請はあるんですけれども、本当にその申請がその国の国民全般のためになっているものなのかどうかという視点、こういうものもきちっと考えて、日本として、やはり哲学のあるODAをやらなければいけないんじゃないか。  しかも、今財政の厳しいときでございます。ODAの予算も今回は大幅に少なくなっているわけですから、ある意味で、量から質、物から人だとか、そういった今後の、将来のあるべきODA像というものを出していかなければいけないんじゃないかと思うんですね。それで、総理のODAに対する哲学を聞きたい。
  153. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員の御指摘を受けましたケース、たまたま他の地域におきましてやはり医学関係のODAについて私自身が大変な不満をぶちまけたことがありまして、それと重ね合わせて伺っておりました。  と同時に、実は、私は外務省に対してこれは非常に高い評価をいたしましたけれども、日本皮膚科学会の協力を得て専門医研修を、第三国研修で行いましたもの、これは関係する相当数の地域の専門医研修の上で非常に高い評価を得たプロジェクトがございました。要は、議員が指摘をされましたように心の問題だと思います。  そして、その意味で、今、従来以上に資金的な協力と技術協力を連携をさせていく。つくりっ放し、置きっ放しではない。そして同時に、過去の日本の経験の中から、いいところだけを見せるのじゃなくて、例えば環境などの場合、我々は公害という非常に深刻な体験をかつてしたわけですし、それを克服する努力をしてきた。そうした失敗の記録を逆に移しかえていき、同じ失敗を繰り返さないようにすること、こうしたことが非常に大切ではないかと思っております。  きのう、アゼルバイジャンの大統領と予算委員会終了後、会談を持ちましたときにも、そうした意味で、我々は自国の失敗の記録も求められるなら提供する用意がある、これを活用して同じ失敗をしないでいただきたいということを申し上げたのもそのような気持ちからでありまして、議員から御指摘を受けるような案件が一つでも減りますように、そして資金協力と技術協力が連携し、心のあるものになるように努力をしていきたい、そのように思います。
  154. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 総理にもう一つお聞きしたいんですが、いわゆるODA基本法に対する考え方ですけれども、ODAが、法律がなくてされているわけですね。ですから、国会がどのように関与するかという部分も明確でありません。今回はたまたまそういった報告書が明らかにされましたものですから情報が開示されたわけですけれども、具体的には情報がほとんど開示されないまま形式的な報告書が上がって終わりというのが多いのじゃないかと思うんですね。  私は、やはりODAというのは大変大切なものでございますから、ODA基本法をつくって、そして国会に報告を義務づける、こうした仕組みをつくる、そして透明化する、そして評価をきちっと行う、こういう仕組みをぜひつくるべきだ、そんな思いで私たちは二回、過去にODA基本法を提出いたしましたが、いずれも審議未了、廃案になってしまいました。  このODA基本法について、その必要性を総理はどのように感じているかお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  155. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、実は基本法という御議論になりますとちょっと首をかしげる部分があります。少なくとも、相手国の動向、二国間関係といったものが総合的な判断のベースに入る、そして同時に、機動的な対応あるいは柔軟な対応を必要とするODAの性格から、私はこれは慎重な検討が必要だと思います。その上で、しかし、国会が事後のチェック等をいただくための工夫をするということは我々も考えてみなければいけないだろう、それはそう思います。  基本法ということになりますと、ちょっと私は首をかしげます。
  156. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 終わります。
  157. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて遠藤君の質疑は終了しました。  次に、前田正君。
  158. 前田正

    前田(正)委員 平和・改革の前田正でございます。総理並びに関係大臣に質問をさせていただきたいと思います。  まず一つは、オリンピックの件でございます。  実は、この間、長野市を中心とした日本で三回目となるオリンピックが、十六日間にわたる競技を終えまして、つい先日閉幕をいたしたところでございます。日本の選手の大変な大活躍によりまして、金メダルが五つ、銀が一個、銅が四個という冬季オリンピック史上最多のメダルを獲得したわけでございます。センターポールに日の丸が上がり、君が代が流れる。また、喜ぶ選手の顔を見ながら、実は自分のことのように感動し、そして思わず拍手したのは私だけではなかったと思うところであります。  参加された全選手、あるいはまたメダルをとった選手、あるいは大会関係者、また、地元でいろいろとボランティアで奉仕をしていただいたお手伝いの方々に、感動をありがとう、御苦労さまでしたとまず心から敬意を表したいと思っております。  まず、今回の長野オリンピックを無事終えて、私は大成功のうちに終えた大会だったと考えておるところでございますけれども、まず、総理の御感想をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 恐らく、あの大会を通じて感じたものは、議員感じられましたものと同じようなものを私ども皆が感じたのではないかと思います。  殊に、私にとりまして大変うれしかったこと、それは、ややもすると大舞台に弱いという日本選手の定評がありましたが、メダルの獲得いかんにかかわらず、今回競技種目に出た選手の中で、みずからの記録をオリンピックという大舞台で書きかえた諸君が、メダルを得たあるいは入賞したというラインに到達できなかった選手の中にも何人かありました。  私は、自分もスポーツをいたしますから、大きな大会で自分の持つ最高記録を書きかえることがいかに大変なことかというのはわかるつもりです。それだけの強さを持った青年たちの男女の活躍、それが国民に与えた感激というものは極めて大きなものがあったと思います。
  160. 前田正

    前田(正)委員 そこで、二〇〇八年の夏のオリンピックの開催地として、実は私の地元でもあります大阪市が、日本の立候補地として、昨年の八月に、横浜さんといろいろとして争った結果、正式に決定をさせていただいたところでございます。いわば三年後の開催地決定に向けて、これから、世界の各国に積極的な招致活動をしていかなければならないと思うのであります。  そこで、日本政府として、大阪オリンピック開催実現に向けてどのような姿勢で臨まれるのか。まだ閣議決定もされておられないとお聞きいたしておりますけれども、三年後を見定めてどういったプロセスで進めておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  161. 町村信孝

    ○町村国務大臣 前田委員にお答えいたします。  長野オリンピックの成果、私も担当大臣として、大変にすばらしい成果が上がったのではないか、こう思っております。  お尋ねの、二〇〇八年の夏のオリンピックでございます。  大阪招致ということで大阪の皆さん方が大変熱心に各般の準備を既に始めておられること、私もよく承知をいたしておりますが、閣議了解を得るためには、どういう施設をどこにどう整備をするか、その財源負担をどうするかといったようなことなどにつきまして、大阪市と関係省庁との間でいま少し調整をする必要があるのかな、このように思っておりまして、今後、そうした作業を精力的に進めまして、できるだけ早く閣議了解にこぎつけられれば、こう思っているところであります。  オリンピックの招致活動、これは基本的には招致委員会、すなわち大阪市及びその関係者を中心に行われるものでございますけれども、閣議了解が得られますれば、関係省庁あるいはJOCとも連携をして、できる限りのことはさせていただきたい、こう思っております。
  162. 前田正

    前田(正)委員 オリンピックというものは、一都市の開催ではございますけれども、平和の祭典というものでもあり、また国家的事業でもございます。  長野オリンピックによる経済効果というものは、この間、地元の銀行の研究所が二兆三千二百四十四億円と計算されておるところでございますが、夏のオリンピックの規模というのは冬のオリンピックの約二倍と言われておることからしても、経済効果が二倍となるまではいかなくても、三兆から四兆の景気対策になることは間違いがないというふうに信じております。  地元大阪の人間のみならず日本じゅうの人々が、あの長野の感動を再びという思いが大変強いと私は考えておるところでございます。どうか、大阪オリンピック実現に向けて、閣僚の皆様方には改めてひとつお願いをしておきたいと思っております。  総理並びに所管大臣文部大臣から、二〇〇八年はオリンピックをぜひ大阪に持ってくるぞという決意のほどをお聞かせいただきたいと思っております。
  163. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、文部大臣からもお答えを申し上げましたけれども、例えば長野オリンピックの場合、平成三年の開催決定に対して、閣議が了解をいたしましたのは元年、正式立候補は平成二年でありました。平成十三年に開催都市の決定が行われると承知をしておりますし、そのためには平成十二年に正式立候補ということになるでしょう。  今、文部大臣からもお答えをいたしましたように、過去のオリンピックの招致の際と同じように、政府としては大阪の招致を承認するかどうかということについての検討を行っております。招致活動というものについては、政府としても適切に対処していきたいと考えております。
  164. 町村信孝

    ○町村国務大臣 今、総理大臣お答えになったとおりで、そうした方針に沿って私どももしっかりやっていきたいと思っております。
  165. 前田正

    前田(正)委員 さて、長野オリンピックの話に戻りますけれども、長野オリンピックでは、いろいろな話題の中で、実は金メダルをおとりになったある選手が、表彰台の国旗掲揚の際に帽子を脱がなくて注意を受けたということがございました。一部のマスコミは、これが今の若者のファッションだという言い方をしておりましたけれども、私はちょっと問題が違うのではなかろうか。日の丸そのものの議論をここでするものではありませんけれども、国旗に対する意識というか認識ということにつきましては、私どもも含めて考えなければならない時期だと思っております。  文部省も今、日の丸の掲揚に対してはそれぞれの学校に指導しておられることだと、当然だと思っております。この状況について、再度ちょっとお聞きをいたしたいと思います。
  166. 町村信孝

    ○町村国務大臣 公立の小中高等学校におきます卒業式あるいは入学式の国旗の掲揚状況でございますが、小中高いずれも九八%前後の学校が国旗を掲げてございます。  国歌の方につきましては、八〇%前後の学校で実施をされているということのようでございます。
  167. 前田正

    前田(正)委員 昨年、私は野党の先生方数名とともに、実はアメリカ合衆国の国連協会の招きでニューヨークとワシントンへ行きまして、国連の本部とかあるいは米議会などを中心としたところへ視察に行ってまいりました。その際、上院とか下院議員とも意見を交換した折に、どの議員を訪ねても、それぞれの部屋の前には、自分の選挙区といいますか、カリフォルニアの選出だったらカリフォルニアの旗、あるいはまた合衆国の旗などを置いていらっしゃるのを非常に目にしたわけであります。  そこで、国旗に対する意識ということでは、諸外国と歴史的な背景とか民族的な物の考え方というのは違いがあるにせよ、やはり国を代表する旗に敬愛の念を持ち、平和を希求する心を抱くことは万国共通ではないかというふうに思います。  例えば、アメリカのクリントン大統領がプレスルームなどで記者会見をするときには、必ず後ろに星条旗なんかも立てておられるわけでございます。あるいはまた、アメリカの外務省なんかへ行きますと、アメリカの旗はもちろんのこと、世界の旗がずらっと実は並んでおるわけでございますけれども、残念ながら、今の外務省には、そういった旗が並ぶスペースがないのか予算がないのかわかりませんけれども、そういうこともございません。  あるいは、特に外国のお客さんが来られたときには、この周辺にそういった国の旗と日本の旗がよく上がっておることがあるわけでありますけれども、要するに、総理も記者会見をされるときのあの部屋の後ろにでも、国旗というものを当然私はそういう意味では飾ってもらうべきだ。あるいはまた予算委員会だとか本会議なんかも、外国へ行きますと結構日本の旗がずっと上がっておることをよく目にするわけであります。  政党の違いから国旗の掲揚についての問題がいろいろあろうと思いますけれども、私は、そういうところの観念から、平素我々自身がこの周りに国旗というものを掲揚するということを身をもってやることがまず大事なことではないかというふうに考えております。この件について、ひとつ総理のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  168. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、実は、議員の御質問に触発されるわけではないのですが、いつも大変奇異に感じながら、いつの間にかだんだんそうしなければいけないのかなという感じを持ち始めたことが一つございます。  今議員は国旗を例示に挙げられました。しかし、国旗とともに国歌、恐らく、例えば国歌吹奏、全員御起立を願いますというアナウンスが流れないと立たないという国は余りないのではないでしょうか。  私ども海外の暮らしがあるわけではなく、海外でそうした場面に遭遇する回数も必ずしも多くありません。しかし、国旗が掲揚される時点で不動の姿勢をとる、国歌が演奏される瞬間に身を正す、自然にそういう姿が出てくる。脱帽の上全員御起立願いますというアナウンスが流れても全員が立たないという、果たして子供だけを責められるのか。今議員の御質問を伺いながら、改めてそのような思いを持っておりました。  国旗とか国歌、当然のことながら私はそれを尊重する態度を育てるということは重要なことだと思いますし、大人の役割でもあると考えております。
  169. 前田正

    前田(正)委員 ぜひひとつ、この周辺にも国旗が上がっておる、それに対する平素の私どもの心構えといいますか、気持ちというものがそれによって変わってくるのだろう、私はそう思うところでございます。  それでは次に、地球温暖化対策についてお伺いをいたしたいと思います。環境問題でございますが、とりわけ地球温暖化の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  石油あるいは石炭等の化石燃料から排出される二酸化炭素とかメタン、フロンなどの温室効果ガス濃度の増加によって地表面の温度が上昇し、現在のまま推移すれば地球全体の平均気温は二十一世紀の末には三度上昇し、海面は六十五センチ、最大で一メートルまで上昇することが予測をされておるところでございます。これは大変なことでございまして、まさに人類の生存基盤にかかわる最も重要な環境問題の一つだと位置づけております。  世界各国もこの地球温暖化には大変積極的に取り組み、昨年の十二月、京都でのCOP3が開催をされ、二年余りの国際交渉を経て、先進国の温室効果ガスの排出の削減目標について、数値目標が決定いたしました。  そこで、まず、COP3を終えられた、議長の大変な大役を仰せつかりました環境庁長官に、その成果についての御所見をお伺いいたしたいと思います。
  170. 大木浩

    ○大木国務大臣 お答え申し上げます。  今お話がございましたように、先般の京都会議では、長年の懸案でございましたけれども、法的な拘束力がある削減の数量、目標値というものを、少なくとも先進国の間では合意いたしました。これは、実は京都会議の前に私どもがいろいろ検討しておりましたのとは多少、その対象となるガスとか、あるいはどういうことで削減をするかということについて、内容が少し違ってまいりました。  ということでありまして、御記憶かと思いますけれども、会議の前には日本としては削減値二・五%というのを一応出しておりましたけれども、京都会議の結果、対象となるガスというものが少し変わってまいりました。あるいは、いわゆる森林等の吸収力、これは排出を抑えるというのと、実際にその炭酸ガス等が大気中に含まれると今度はこれを吸収して減らす、こういう効果を森林等、新しい森林でありますが、持っております。というようなことで、その対象は多少変わりましたけれども、日本としては六%の削減ということに一応合意をしたわけでございます。  正直申し上げまして、これはまだ今すぐではありませんけれども、これから、一九九〇年に比べまして、二〇〇八年ないし一二年までに六%削減する、こういうことでございますが、実は現在、既に一九九〇年よりは相当大幅に排出がふえておりますから、実際には現在の時点から二〇一〇年前後までに一五、六%減らさなければいけないということで、非常にきつい、厳しい目標ではございますけれども、これからひとつあらゆる方法を考えて、何とかしてこの国際的な取り決め、合意というものを実現したいということで、現在いろいろと検討中でございます。  何とかしてこれを達成したいということで頑張っておるところでございますので、ひとつまたいろいろと、関係各省はもちろんいろいろと議論していただいておりますし、対策も練っていただいておりますが、広く国民お一人お一人に協力していただかないとなかなか実現しない目標でございますので、この場をかりて、ひとつ国民の皆様方にも御協力をお願いしていきたいと思います。ありがとうございます。
  171. 前田正

    前田(正)委員 大木環境庁長官、大変お疲れさまでございました。御苦労さまでございました。  これからも、我が国も、この温暖化防止のためにいろいろな努力をしていかなければならないわけでありますけれども、そこで、アイドリングストップなどの、国民のライフスタイルそのものの意識改革も必要になってくると思うところであります。  そこで、そのアイドリングストップについて、どのような効果があるか、またどのような対策を講じようとしているのか、お答えをいただきたいと思います。
  172. 大木浩

    ○大木国務大臣 今の、自動車のアイドリングのストップのお話でございますが、実は私も、これは非常に、個々のケースというのは少しの効果しかないのじゃないかという感じを持っておったのですが、最近いろいろと調べてみますと、これはやはり、ちりも積もれば山となるというわけじゃないのですけれども、かなりの、本当に日本じゅうでこのアイドリングのストップというのを協力していただきますと、実は既にいろいろ協力していただいておるのですが、全日本的に協力していただきますと相当な数字になる。  例えば今、日本じゅうで自動車と名のつくもの、五千七百万台ぐらいあるはずでございますが、この自動車が全部、仮に一日に十分間ずつアイドリングのストップということをしていただきますと、年間で十九億リットルの燃料の削減、あるいは、これを炭酸ガスの排出の削減に換算してみますと百八十八万トンぐらいになります。これは実は、日本人の今平均の年間の、これは一人当たりに換算してでございますが、二・五トンぐらいですから、そうしますと、七十万人分の排出がそれによって削減される。ということは、だから一億二千万の人口のうちの七十万人分の削減ができるということでございますから、〇・六%前後になるでしょうか。いずれにしてもかなり意味のある数字だと思いますので、これはひとつしっかりと実行していきたいと思っております。  実は政府の方でも平成七年に一応閣議決定いたしまして、まず隗より始めよということで、政府間としてもアイドリングを含めていろいろな対策を進めるということになっておりますけれども、それからまた、現在既に、例えば日本のトラック協会とかタクシー協会とかそういうところには、ごらんになった方もあるかと思いますけれども、いろいろなマークをつけまして、アイドリングを含めまして、いろいろと省エネということに協力していただいておるというようなことをやっておりますので、これからさらにこれを強化したいというふうに考えております。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  173. 前田正

    前田(正)委員 ちりも積もれば山となるという大変な数字でございます。これはやはり国民一人一人がやらなければならぬというふうに思うわけでありますけれども、それでは環境庁、先ほど長官も触れられましたけれども、国民に対してそのことをどのようにPRをして、国民にいかに実行してもらおうとしておるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  174. 大木浩

    ○大木国務大臣 今も申し上げましたように、いろいろと、自動車関係の会社等につきましては既にかなり御協力いただいておりまして、現実にアイドリングのストップを実施していただいておるというような会社もかなりふえております。それから、先ほどから申し上げておりますように、車にそういったサインを張っていただきまして、これを国民にひとつまた周知徹底させていただきたいというふうに思っております。  それから、先ほども申し上げましたけれども、既に内閣といたしましても平成七年に、アイドリングの問題を含めまして、まず政府からひとつやろうということでございますが、これを国民の皆様方に周知徹底していただきまして、さらにPRしたいと思っております。いろいろな形で今進めておりますが、さらにまた関係各省庁等も御協力いただきながら、このアイドリングの話を優先的に取り上げて、大いにPRをさせていただきたいというふうに考えております。
  175. 前田正

    前田(正)委員 ぜひひとつ、これは環境庁挙げて、あるいは閣僚挙げて、この問題については、全員がやはり協力をしていかなければならぬと思っておるところでございます。  そこで、一つ要望をここでしておきたいことは、このアイドリングストップについては、環境庁長官、これはもうみずから実行しておられるというふうに認識をいたしております。あるいはまた最近、都市バスも、途中で交差点になると自動的に切れたり、あるいはエンジンを切って、わずかな信号の間の時間も都市バスなんかはエンジンをとめてしまう、こういうことも努力されていると聞いておるわけでございます。  しかし私は、残念ながら、この予算委員会とかあるいは本会議があるときに、必ずそれぞれの閣僚の先生方はみんな大きな車を持って、ちょうど終わるころに、そこの中庭のところにずらっと並べて、十五分か二十分ぐらいはエンジンをバーンとかけたまま、運転手さんが中におってずっと先生方をお待ちしておる方が多いのです。これ、だれかとは、全部とは言いませんけれども、そういう黒い車で乗りつけて、そこでエンジンを十五分も二十分も。それは確かに運転手さんも、大臣がおりてこられたら早う乗ってもらわないかんという、そういう気持ちはわからいでもないですよ。わからいでもないが、四千ccのエンジンを十五分も二十分もバンバンかけっ放しにして、私はその廊下を通るたびに、一体どうなっているのと。  閣僚の皆さん方、総理以下の皆さん方が、国民に対してこのアイドリングストップというものを本当に宣言ができるのかどうかというと、やはりみずからが、申しわけないけれども、そういうつもりでやってもらわなければ、これは何ぼ国民にやれと言うたって、それはもうとてもとてもできるものではないと思うのです。  例えば夏なら夏に、それは運転手さんも気の毒です。エンジンかけぬと十五分、二十分間そこで待っていたら、汗も出るし大変だろう。あるいは冬は冬で寒いし、エンジンかけざるを得ぬ気持ちは、私も、自分もドライバーですから、それはわからないではないのですけれども、それならば、いっそのこと運転手さんの控え室でもおつくりになって、そこでお待ちをいただいて、そして出てこられたらさっと車を運転するという方法は、まあやればできるわけですし、またそれぐらいの予算は、この本予算には入っているかどうかは知りませんけれども、それぐらいの予算をぜひつくってもらって、ぜひそういう運転手さんに対しての配慮とあわせて、やはり我々も排ガス規制に対してのアイドリングストップというものはやっているんだと。  特に、国会周辺のこの周りと会館の周りでも、役所の皆さん方が乗ってこられた車も、運転手さんが運転席で待っているときも、全部エンジンをつけたままで、十五分、二十分、三十分、四十分待っていらっしゃるわけであります。それを見るたびに、我々としては本当にこの環境の問題で、今おっしゃるようにちりも積もれば山となる、こういうことを長官がみずからおっしゃっているわけでありますから、ぜひひとつ、総理以下全員、我々も含めて全員がこういう運動を展開していただいて、こういうことから改善をしていただくようにお願い、要望、まあ、言うたところで、いやすんまへんで終わるのかもしれませんけれども、ぜひひとつ、これは総理、よろしくまたお願いをいたしたいと私は思っております。総理、何かそれに……。
  176. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今よい御注意をいただきましたから、少なくとも私は、きょうこの委員会が終わりまして車に乗りました時点で、こういう御注意があったので頼むよということは運転手さんに言おうと思います。
  177. 前田正

    前田(正)委員 それでは、ぜひひとつよろしくお願いします。  それから次に、幼児教育のあり方について申し上げたいと思います。  このところ、少年による傷害事件が頻繁に起こっております。それから、刃物を持つことが一つの流行になっているそうで、殺人にまで発展しているこの現状はまことに危険な状態で、何とかしなければならないわけでございます。たまたま加害者のほとんどが中学生ということで、今どきの中学生はどうしようもないと言われるわけでございますけれども、確かに中学校や義務教育制度そのものにはいろいろと問題があるなと思うのでございますが、私は、むしろもっと幼い時代のしつけだとか教育に問題があるのではないかとも考えております。  その辺のことを実はお尋ねをしてまいりたいと思うのでございますけれども、その前に、少年犯罪のマスコミ報道を見るにつけ、疑問に思っていることが一つございます。  それは、少年犯罪が起こりますと、加害者の少年はいわゆる将来の身があるということで、氏名の公表をしないということになっておるようでございます。すなわち、プライバシーを守られているというのでございますけれども、一方、被害者の方は、氏名がマスコミに公表されたり、身内の方々がもう途方に暮れて悲しんでおられるにもかかわらず、ワイドショーとかあるいはレポーターがマイクを直接その方々に突きつけたり、あるいはまた、その周辺の家とかあるいはその周辺の聞き込みをされたりして、そういう被害者のプライバシーというものは一体どうなっておるのか。  あるいはまた、そういった方々で、随分泣いて、例えばその御両親の職業をやめざるを得なくなっておられる方、あるいはまた、たまたまそういうことが出たためにもうそこに住めなくなって、どこかへ引っ越さなければならないという、さらにそういう状況というものが過去にいろいろあるだろうと私は思っております。  私は、やはり手落ちだなという、そういうことには思っているわけでございますが、この点について、法務大臣、加害者と被害者のプライバシーの保護ということはどう考えていけばよいのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  178. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  最近の少年事件や刑事事件の被害者のプライバシーが侵害されると思われるような報道がなされていることは、被害者の人権擁護の立場から大変憂慮すべきものだと思います。  この問題につきましては、報道の自由にかかわることでもございますし、まず、報道の主体であるマスコミが、報道される側の人権に配慮して、自主規制をするなどの取り組みをしていただくことが基本的には一番望ましいと思います。  さはさりながら、マスコミの行き過ぎた報道によりまして、被害者を含め、個人の名誉、プライバシー等の人権が侵害されたと認められる場合には、法務省は、人権擁護機関といたしまして、例えば当該出版社等に対し、反省と再発防止を求める勧告を行うなどの措置を現在までやってきておるわけでございますし、今後もやりたいと思います。  委員御承知のとおりに、平成八年の暮れに人権擁護施策推進法が成立いたしまして、昨年から施行されております。それに基づきまして人権擁護推進審議会なるものが設けられまして、調査審議を始めているところでございます。  その審議の結果をも踏まえて考えたいと思いますけれども、やはり勧告だけでいいのかどうか、そういうふうな問題を含めまして、法的措置も必要ではなかろうかということも踏まえまして鋭意検討してまいりたい、そのように考えております。
  179. 前田正

    前田(正)委員 これは、法務大臣、報道の自由という面からもあるのかもしれませんけれども、ある程度やはり規制をしてあげて、被害者の保護というものをぜひひとつ何か法律で守ってあげていただきたいと思うのでございます。  それから次に、少子化と子育ての支援についてのお尋ねをしてまいりたいと思います。  少子化の原因というのは、晩婚化とか未婚率の上昇とか夫婦の出生の低下なるものが主なる原因であろうと思います。その背景には生活スタイルや家族観の変化などがあり、最終的には個人の判断に任せられるべきことではあります。しかし、行政としては、夫婦が安心して子供を産み育てていける環境づくりを進めていかなければなりませんし、また、保育とか教育、雇用あるいは住宅などの関係省庁が有機的かつ総合的に展開をしていかなければならないということであります。  今、私の大阪は、幼稚園に入園を希望する子供さんがどんどん減ってしまいまして、幼稚園そのものの存続問題にまで発展しそうな現状が実はございます。一方、保育所の方はといいますと、近くの希望している保育所に入りたいと思っておっても何カ月も待たされたりして、なかなか仕事の関係ですぐ入れない、あるいはまた入れるとしても、一時間以上もかかるような遠いところならあきがあるというのが今の現状でもございます。  こういうところで、幼稚園と保育所は、所轄官庁も違って、一見全く違った施設に思われるわけでございます。しかし、ゆとりのある教育と子供の健全な育成を目的とする点では、私は同じものであると認識をいたしております。  例えば、朝の七時に子供を施設に連れていって預ける。そして、九時からはほかの園児と一緒に、幼稚園児と一緒に幼稚園として使っていく。そしてまた、幼稚園が一時ごろに終わると、それからまた保育所として、後はそのように九時ごろまで預かっていくというふうなことにして、まさに保育所と幼稚園を一体化する、そういうエンゼルプランの進捗状況を、ひとつ厚生大臣文部大臣に御所見をお伺いいたしたいと思います。
  180. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 幼稚園と保育園を今すぐ一緒にすることはできませんが、お互い親の立場に立ちますと、子供を預かってもらう、保育にしても教育にしても似ている面があるのは事実ですが、必ずしも、年齢も別でありますし、保育園の場合はゼロ歳児も入っていますからね、それと預かる時間的な長さも違います。しかしながら、今言われましたように、幼稚園、保育園、ともに共通の面が一部にありますから、それを、厚生省としては文部省とよく連携をとりながら、親の立場に立って利用者の便宜を考えながら、共通に助け合いできるところがあるのではないかということで今検討を進めております。  直ちに幼保一元化はできませんが、その方向で今後お互い協力し合って、子供の保育なり養育に資する方策がないか、今後も鋭意検討を進めて、実現に向けて努力をしていきたいと思っております。
  181. 町村信孝

    ○町村国務大臣 委員御指摘のとおり、幼稚園、保育園、確かにもともとは違ったのかもしれませんが、現実に今果たしつつある機能というのは非常に似通ったものになってきているというのは、まさに御指摘のとおりだ、こう思っております。ただいま厚生大臣お答え申し上げましたように、今両省で、三月中にはまず施設の共用化という面で一定の結論を出し、その具体化を図っていこう、こう思っているところであります。  今後は、それにとどまらず、もう少し前広にやれないかな、こう思っておりまして、今後の検討課題といたしましては、例えば、保育の内容を幼稚園の教育要領によって共通化するということはできないだろうかとか、あるいは幼稚園の教諭と保母の研修を一緒にやるといったようなことができないだろうかとか、あるいは、幼稚園教諭と保母の養成の履修科目というのがあるわけでありますが、それを共通化できないだろうか。あるいは、家庭における子育ての支援を、幼稚園は幼稚園、保育所は保育所で、それぞれ今ばらばらにやっておるのですが、もう少し共通した内容で、ともに相携えてできることはないだろうか。  そういったことなどを含めて、今厚生大臣申し上げたように、一挙に制度をがちゃんと一元化するということにはならないかもしれませんが、まず連携強化ということで、どこまでやれるか、最大限の努力をこれからもまたしていきたい、こう考えているところであります。
  182. 前田正

    前田(正)委員 もう時間がだんだんなくなってきましたけれども、実は先日、夜分にタクシーに乗ったところ、ドライバーさんが女性でございまして、私には大変珍しいなと思えたわけでございます。しかし、聞くと最近ふえてきているという御返事が返ってきたわけでございますが、その方は、乗っている間にいろいろ話をしていると、昨年御主人と離婚をしたということだそうでございます。  自分の生活のために就職を探したけれども、なかなか見つからないし、子供を育てるということからして、手っ取り早い方法でタクシーの運転手という御職業を選ばれたわけでありますけれども、それで一番困るのは、子供さんを今の保育へ預けるということにしても、なかなか夜間、タクシードライバーというのは夜も運転するわけでありますけれども、夜、保育ということで預ける施設というのは、私でやっているところはあるのですけれども、公立的に朝までやるというのは非常に少ないわけであります。  今はもう、男女均等法という法律にのっとって、給料も同じにやるかわりに残業も一緒だというふうにして、どんどんこれから夜働く女性というものが多くなってくるというふうに感じておるのです。そのためには、やはり、ある程度夜の保育というものも、これからひとつ考えてもらわなければならぬ時代が来たのだろうというふうに考えておりますけれども、その辺、ひとつ厚生大臣の御所見をちょっとお伺いいたしたいと思います。
  183. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 夜間保育の点についても、最近はだんだん、何とか夜間保育を拡張してくれないかという声が強いのは事実でありますが、一方では、果たして夜間までお子さんを親の手元から外して子供のためによいのだろうかという意見もあるわけです。  そういう点も考えまして、できるだけ、ゼロ歳児から最近は夜間保育の延長支援策を考えておりますが、その点、ただただ親御さんが、保育所があるから、施設があるから、自分で保育、養育の責任を放棄していいのだというような考えを持っては困る。あくまでも一義的に保育なり養育の責任は親にあるんだという観念を持ってもらいながら、なおかつ女性の社会進出という面もありますから、そういう、いつもお子さんを自分の手元にしっかり抱くということができない方のことも考えまして、できるだけそういう夜間保育の支援策がないか、その点についても、今徐々にではありますけれども進めておりますので、今後の社会の変化に対応して手を打っていかなければならないなというふうに感じております。
  184. 前田正

    前田(正)委員 もう時間が参りましたのであれしますが、どうぞひとつ厚生大臣、民間でやるところがあるのですけれども、これはもうなかなか高くて、働いていても結局子供の保育のためにお金が行ってしまうし、あるいはまた、もちろん大臣の言われるように子供は自分で育てるということが基本ですけれども、しかし、食べていくために、生活するためにはやはりやむを得ないところもございますので、これは今後の課題として、ぜひ速急にひとつこういう問題も取り上げていただきたいということをお願い申し上げまして、終わります。
  185. 越智通雄

    越智委員長 これにて前田君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  186. 西川知雄

    ○西川(知)委員 平和・改革の西川知雄でございます。  きょうは、本予算補正関係、景気対策との関係について、焦点を絞って総理にお伺いをいたしたいというふうに思います。  まず、本予算というのは、私の理解しているところでは、当初予算、本予算を編成する際には可能な限り一会計年度のあらゆる事態を予測して対応すべきであって、安易に補正予算を計上して予算の追加を行うことは適切でないというふうにされております。  その趣旨が前々の国会から随分論議になりました財政法第二十九条でございまして、補正予算を作成することができるのは、要件の一つとして「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出」、そういうふうになっております。したがいまして、予算作成時に当然予想をされた、または予期された経費については、補正を計上することができないということになっております。また、昨年の三塚大蔵大臣は、景気対策のための補正予算を組まないというふうに言明をされております。  そこで、私は総理にお尋ねをしたいのですが、景気対策のための補正予算を組まない、景気対策は本予算でのみ対処するというこの財政法の考え方と、また三塚大蔵大臣の所見、これは内閣としての意見だと思いますが、それについて、そのとおりでいいかどうか、お答え願いたいと思います。
  187. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 決して揚げ足をとるのではありません。景気対策の予算は当初予算で組む、財政法と言われましたが、これは恐らく言い違いだろうと思います。  当初予算、言いかえれば本予算、これは、まさに年度の当初からその後の一年間、一会計年度をカバーすべき性質の予算、その意味で、間違いなしに財政法による会計年度全体を見渡していく予算であります。しかし、その場合に、事情の変更その他いろいろな状況の中で補正を必要とする場合に、どういうルールをもって臨むべきかということで財政法上の規定があることも議員御承知のとおりです。
  188. 西川知雄

    ○西川(知)委員 お答えをされておらないのですが、では具体的にお尋ねをいたします。  十年度予算作成というのは、総理のお考えでは、いつということでございましょうか。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政法二十九条に言う予算の作成というのは、予算書のいわゆる提出閣議の日を申します。ですから、十年度予算について申しますなら、一月十九日以降が予算作成後であります。
  190. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それでは、昨年来続いております景気の低迷ということは、これはことしの一月十九日以前に既に発生した事由でございます。したがいまして、今の総理の理解でありますと、昨年来の不況または景気低迷の対策としての補正予算は、すべて、一月十九日、ことしの、九八年の一月十九日以降のこの予算作成後に生じた事由に該当しない。したがって、この前々から続いている景気の低迷に対する補正予算は今後は組めない、こういう御理解でよろしゅうございますか。
  191. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 法律家の御論議というものはそういうものかと思いながら拝聴をいたしました。昨日、議員は、私は法律家でありますがということで述べられたわけであります。  しかし、経済状況に応じた臨機の対応が必要な場合に必要な措置をとるということは、今までも何度も申し上げてきております。
  192. 西川知雄

    ○西川(知)委員 概念的にはそのとおりでございますが、そうすると、ただ、財政法二十九条は、その文言からして、予算作成後に生じた事由に基づいて初めて、その事由があることに基づいて補正予算を組むことができる。当然臨機応変に対応しないといけないことはわかりますが、それでは財政の出動が余りにもルースになる可能性がある。そこで、当初の予算補正予算はどういうふうなときに組むかということが財政法二十九条に書いてあるわけです。私は、その解釈をここで確認しただけのことでございます。  したがって、総理が、今の状況では機動的な発動をするために財政法二十九条を変えないといけない、そういうふうに言われるならそれはそれとしての話でございますが、そういうふうな、財政法二十九条を変えるという御意見でよろしいのか、御確認をお願いします。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、私、ちょっと不毛の論議になりそうな感じがするのですけれども。  予算編成、議員も御承知のように、年度のある時期におきまして、次年度予算編成のための各省の要求のルールを決めます。そして、その要求のルールを決定したものに基づいて概算要求が行われます。そして、その概算要求を精査しつつ、一方では例えば経済見通しを編成し、年度のある時期において、その経済見通しに沿って次年度予算の編成をいたします。そして、その予算国会に提出をされ、今御審議をいただいております。  これが予算の事実であり、議員の言われるような難しい法律解釈に基づくものでは私はないと思いますが、当初予算は、当然のことながら、その一つの会計年度をカバーするためのものでありますし、同時に、必要とするときに必要な措置がとれるだけの、行動の自由という言い方もおかしいですね、施策をつくることは当然の政府の責務でありますし、法改正を要することと言われる議論が、私にはよく理解ができません。
  194. 西川知雄

    ○西川(知)委員 私は、これは決して不毛な議論ではなく、非常に重要な議論であるというふうに思います。  予算作成後生じた事由について必要な場合は補正予算を組むことができる、これは当然のことながら財政法二十九条に書いてあることでございます。先ほど総理は、予算作成、そのときはいつかということについて、ことしの予算については一月十九日であるというふうにおっしゃいました。したがって、一月十九日からこの予算が成立するその間に何かがあった、いろいろな経済状況が変わった、ことしの一月十九日から何か劇的な変化があった、そういうことであれば、この財政法二十九条によれば補正予算を組むことができるということになっているわけです。  そこで、具体的にお尋ねをします。  去年からいろいろな景気の低迷が現象として存在する、こういうことは総理も言っておられることでございます。こういう景気の悪さに対応するために、例えば補正予算を十年度で組むことができるかどうか、この点について私はお尋ねをしたいと思います。大蔵大臣でも結構です。
  195. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は今、十年度予算を御審議を願い、年度の切れ目を生じないように一刻も早く予算を通していただきたい、それが今一番大事なことだとお願いを申し上げております。
  196. 西川知雄

    ○西川(知)委員 私は、国民経済そして景気対策、これを十二分に遂行していく、こういうことについて何も反対をしているわけではございません。もし今、ことしの一月十九日以前から起きている景気低迷についていろんな対策を打とうということであれば、それであれば、十年度の当初予算からすべての、ことしのそういう今後のいろんな状況も予見して、そしてその中に景気対策も十二分に打っていくことが必要ではないか、そういうふうに私は言っているわけであります。したがって、決して景気対策をするなとか、そんなことは言っているつもりはありません。  私がお尋ねしたいのは、景気対策というものは本予算で、当初予算でやるべきものである、そして三塚大蔵大臣が言っておられたように、景気対策のための補正予算は組まない、そういうことは、今の現状では私としては総理のお考えがはっきりとしないということを申し上げたいのです。したがって、一月十九日から、提出された作成時から成立まで、そしてその後いろんなことが起きればそのときに対応する補正予算はいいけれども、今議論しているのは、その前からの景気低迷についてどんな予算を組めばいいかということを議論しているわけです。  今は、十年度予算はデフレ予算です。これが最善の景気対策を考慮した予算であると私は到底思わない。きのうの御議論では、これは最善の予算であると言われたけれども、国民は、また企業は、また次に補正予算をすべきじゃないかというふうに言っている。ということは、みんなが欠陥予算で最善の予算ではないというふうに言っている左証ではないかというふうに私は思うわけです。  これについて、もし総理大蔵大臣に御意見があれば言っていただきたいと思います。
  197. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 景気対策は、予算、それから全体として昨年の暮れから民間活力中心経済構造への変換をしようということでやってまいりました。  したがいまして、規制緩和、電気通信事業の規制緩和とか、あるいは土地流動化の規制緩和とか、あるいは予算の中といいますか予算関連法案の中に含まれておりますが、法人税の減税とか、あるいは有価証券取引税の減税とか、土地関係の税制の減税とか、そういうものを総合的に立体的に組み合わせて現在の景気状況に対応するという考え方でございまして、そういう政策を、私は、結果としては九年度補正予算が成立したことも景気にプラスになっていると思っております。  そういうものを全体として立体的に組み合わせた上で、徐々に景気を回復させていきたい、こういうふうに考えているわけでございまして、一月十九日をもって生き物である経済が突然変わったとか、それ以前一日でも先の話とか後の話とか、その種のものではないというふうに考えております。
  198. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ちょっと総理に御回答願いたいのですが、景気対策のための補正予算を組まないと三塚大蔵大臣は言われました。そこで私は、この点について総理に、ことしの一月二十日、お尋ねをいたしました。  そのときの総理の御回答は、直接的な回答ではなく、九年度補正予算についてですが、公共事業費約一兆円は、それが景気にプラスになることを願っていることは間違いない、そういうふうにだけお答えになったわけです。それは当然のことでしょう。  しかし、私がお尋ねしているのは、景気対策のために補正予算を組むということはありますかということをお尋ねしているのです。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今突然のお尋ねで、議員から何回か御質問をいただきましたので、何月何日の質問と言われましても、とっさに私、議事録を持ちません。その上で、お許しをいただいてお答えをしたいと思います。  恐らく、本年に入ってからの御質疑に対する論議だということでありますから、九年度補正予算あるいは特別減税等の審議に関連したときであろうと思います。  そして、九年度補正予算におきまして、災害復旧対策等を含めました公共事業一兆円を計上いたしましたこと、それは、当然ながらそれだけの必要性のあるものでありますけれども、同時に景気に資することも考えている、それは間違いないということは申し上げたと思います。また、ゼロ国債一兆五千億というものについても同じような申し方をしたのではなかろうかと思いますが、その際のやりとりにあったかどうかを私は覚えておりません。ただし、恐らく性格として同じようなことを申し上げたと思います。  そして、特別減税効果とともに、金融システム安定化策による効果というものを平成年度予算に結びつけていき、予算の切れ目なしにこれが執行されることにより、総合的に力を発揮して景気回復に持っていきたい。そのためにも、税法等を含めまして予算関連法案を、切れ目なしにこれが活用できるように国会における御審議をよろしくお願いを申し上げたい、成立をさせていただきたい。恐らく、その時点ではそのようなお答えをしたのだろうと思います。
  200. 西川知雄

    ○西川(知)委員 この問題は次に鈴木委員が続けてなされることと思いますが、私は、景気の低迷の現状というものは、昨年の秋以来続いている景気低迷の事由に連続しているものであるというふうに思います。もしそうであるならば、当然のことながら、今のデフレ予算ではこの景気対策というものは絶対にできない。そうであれば、景気対策は、例えば十年度補正でやる、そういうようなことはやらずに、この予算組み替えて、景気対策も十二分に含めたそういう予算を修正して提出をする、そういうようなことが正論であるというふうに思います。  私の時間が来ましたので、またこの議論の続きは鈴木委員にバトンタッチということにしたいと思います。どうもありがとうございました。
  201. 越智通雄

    越智委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  202. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  日銀の松下総裁、お忙しい中をお越しいただきまして、ありがとうございます。平成年度予算についての総括的な質疑を行わせていただきたいと思います。  初めに、村岡官房長官に質問させていただきたいと思います。昨日、民友連、平和・改革、自由党、三党の国対委員長が共同して自民党の国会対策委員長の保利耕輔議員に申し入れをしておりますが、その末尾に、最後の文章に、「政府と協議の上、速やかに誠実な回答をされるよう求めるものである。」と書いてございます。政府の方に、保利議員からこの件について御相談がありましたでしょうか。
  203. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 昨日の夕刻ありました。
  204. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  この申し入れというのは、こういうことなんですね。保利国対委員長は、二月五日付で、平成年度予算案は最善のものであり、補正については全く検討されていないと回答しておられますが、この予算委員会において、橋本総理は、例えば一昨日、財政構造改革法について、不況期に財政健全化の当面の目標、主要な経費の量的縮減目標等の達成義務を外すことは、立法政策上一つ考え方であり、評価するというふうに、明らかに財革法の一時的な棚上げを示唆する答弁をしている。この答弁は、さきの保利国対委員長の回答に明らかに反している。この予算案が最善であり、補正について全く考えていないという考え方は変わったのか、それとも変わっていないのかというのがこの申し入れ書でございます。  総理、これについてお答えいただけますでしょうか。
  205. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、北側議員が最初に提起をされたと記憶をいたしますが、その後、神崎議員が述べられた御議論に対して、立法政策上確かに一つ考え方であるという評価をいたしました。その上で、なかなかこれは難しいという御答弁を申し上げております。  私は、御質問の中でやはり敬意を表すべき御意見があったとき、これに対して敬意を表しつつ政府の判断を示すということが、おしかりを受ける材料であるとすれば、大変、国会の御質問というものにどのような立場でお答えをすべきかに苦しむと存じます。  よく議事録をお調べいただきますと、立法政策の上で一つ考えと評価をいたし、その上で、言うべくしてなかなか難しいとお答えをしたと私は記憶をしております。そういうことはいかぬでしょうか。
  206. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理はそういう趣旨でおっしゃったということでございますが、その翌日から、二十六日の朝刊それから夕刊、きょうの朝刊、一斉に、その総理のお言葉の解釈が今総理のおっしゃったことと違う。おしかりを受けるなんて総理はおっしゃったけれども、私はおしかりしているつもりは全然ないんで、一生懸命問いただしているんですね。質疑をしているわけでございますから、どうぞ御立腹されずにお答えをいただきたいというふうに思います。  それでは、総理は、この新聞に報道されているのは勝手に新聞が報道しているのであって、自分は、今出している当初予算が最善であって、全くそれを修正することなどは検討していないというふうにお考えだということで私は了解をいたしました。  ところで、私、昨日アメリカの有名な研究所の主任研究員と晩飯を食ったのであります。その人の話を聞いてびっくりしたんですが、私ども、国会で榊原発言を問題にした。つまり、昨年十二月に例の二兆円の特別減税を復活した時点で日本政府は政策の転換をした、これから先は、どのくらいのスピードで、どのくらいの規模で政策を変えていくかが残っているだけだと。これは榊原さんがテレビで言っただけかと思いきや、もうワシントンでは、日本の大使館筋が著名な研究所には全部そう言って回っていると言うんですね。  それから、その私の友人のアメリカ人は、日本に来て主な官庁を訪れたところ、官僚の皆さんはみんなそういう説明をした、もう既に日本政府は政策転換したという説明をしたと言うのであります。  小渕外務大臣にお伺いいたしますが、在外公館が、もう日本政府は政策転換したんだ、財政刺激に転じたと言って説明して回っているということについて、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  207. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 そのような情報に接しておりません。
  208. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 情報に接していないとおっしゃるから具体的に申し上げますが、米CNBCテレビとのインタビューに応じた日本斉藤駐米大使は、一九九八年度予算国会で成立すれば、新しい追加策を検討すると。テレビで放映されているんですよ。そんなことも報告していないんですか。  大臣、もう一度おっしゃってください。
  209. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 斉藤駐米大使が、先週、米CNBCのテレビインタビューを受けたということは、先生お調べせよということですから、そのとおり、受けていることは承知いたしております。  ただ、一部日本の新聞に、このことについて、平成年度予算成立後に補正を組む旨述べたとの報道がありますが、さようなことは申し上げておらないということで承知をいたしております。
  210. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 最初にも申しましたように、これは氷山の一角であって、在外公館の日本のお役人さんたちはあちらこちらでそういう説明をして回っているという事実は、これは幾らでも証拠は出てきます。  小泉厚生大臣大臣は大変率直に物をおっしゃる方で、きょう十二時からのNHKテレビにも登場されたんですが、御本人ごらんになったかどうか知らないけれども。そこで御意見を申された、今の景気の現状、そして景気対策について。何をおっしゃったかおわかりですか。率直に、そのインタビューを受けられたとき何とおっしゃったか、おっしゃってください。
  211. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私はそのテレビを見ていないんですが、そのテレビは、きょうの閣議後の記者会見のことを言っているわけですか。それだったらば、たしか私が言ったのは、今、財政構造改革に反対している議員は恐らくだれもいないだろう、景気対策の重要性を言っている人も財政構造改革を否定する人はいないだろうといった発言を私はしたと思います。  なおかつ、なぜ財政構造改革が必要か。それは、もう増税もしない、国債の増発もしない、だから行政改革、財政構造改革をしなきゃいかぬというのがこの財政構造改革の基本理念じゃないのか、そこの基本的な原点を忘れてもらっては困る。今のまま財政構造改革をしないで、やれ公共事業だ、やれ減税だと財源を考えないでやるんだったら、またバブルの二の舞で、後に、後世にツケを残すだけだろう、財政構造改革は重要だと言ったと私は思います。
  212. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 そうおっしゃったかもしれないけれども、そこは全然放映されていないんですね。そうではなくて、景気の状況に柔軟に対応するというお考えも同時に述べられているんです、そこが流れております。どうですか。
  213. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、今話したのが趣旨でありまして、財政構造改革を進めていかないと、これは結局増税路線に走ってしまう。国債増発、これも若い世代の増税と同じです。財政構造改革は重要だという点を言ったことをぜひとも御記憶いただきたい。
  214. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 それは、中期的に財政構造改革は大事だということを否定している人は野党側にもいないんですよ。そういう問題を言っているのじゃないんです。財政再建最優先で、短期的にもこうやって硬直的にがりがり財政赤字削減、財政赤字削減とやっているうちに今の日本経済危機は大変なことになってしまっている。それを踏まえての議論なんですね。  実は、伊吹労働大臣もお出になったんですよ。それで、伊吹大臣、きょう労働省から一月の統計が発表になりましたね。これはもう大変深刻な数字が出たと思います。失業率は四カ月連続して戦後最悪の三・五%です。そして実質賃金、もうどんどん去年の四—六から前年比マイナス幅は拡大しています。十—十二はマイナス一・三まで来ましたけれども、とうとう一月はマイナス三・〇だ。有効求人倍率も引き続き低下をしている。時間外労働時間も、一月は何と前年比マイナス三・一まで来てしまった。こういう深刻な雇用、賃金の数字が発表になっている。この関係でしょうか、ここで弾力的な景気対策が要るんじゃないですかというようなことについて、大臣はどういうふうにインタビューにお答えになりましたか。
  215. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 きょうは数字を御説明申し上げて、これについてどのような対策を講ずるかについてはいろいろな考えがあるだろう。そして、私が申し上げましたのは、一年を通じて損益計算書を締めれば、黒字になっている企業においてもいわゆる貸し渋り等で資金繰りがつかないから大変な事態になっているところもあるけれども、それについては、院の御承認が得られて金融安定化法が提出をされた、さらにまた、今、国会出している本予算及びその関連法案の成否を待てば、この状況がどうなっていくかということについては私は心配はしていないが、しかし、それまでの間、とりあえず新しい失業を摩擦的に出さないためにも新たな、特に高齢者の方々の働き口を見つけるために労働省としては全力を挙げましょうということを申し上げました。  すべての私の会見に立ち会っていただいていないのであれば、先ほど小泉厚生大臣からお答えしたように、一部だけの御判断では誤りがあるのを恐れております。
  216. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大臣はいずれも、現在の景気の深刻な状況に直面しても、なおかつ今ここに出ている当初予算で十分対応できる、その先の補正などは考えていないと口をそろえておっしゃったわけですが、どういうわけかジャーナリズムの方はそうではないのですね。  どこで皆さんがおっしゃるんだかは知らないけれども、実は、NHKテレビを見ていて思ったのは、これは、やはりさっきの小泉大臣みたいに、メーンストリームの話じゃないところでちょろっと言ったことを引用するからだろうとは思いますが、どうもちらちらとよろいが衣の下からのぞいているのをジャーナリストが敏感に報道しているのじゃないか。  例えば、けさの読売新聞のこれを見てくださいよ。複数の政府・自民党幹部が明らかにしたと言って、財政構造改革法を今国会中にも改正する方針を固めた、政府・自民党はその作業を始めた、こう言っているのですね。ですから、今のお答えをそのまま信用するわけにはいかない。政府がおっしゃっていることと、ジャーナリズム及び海外の日本の公館のスタッフが言っていることが全然違うのですね。違うけれども、国会ではかたくなにそのことを否定しておられるわけであります。  そこで、中身に入っていきますが、最善のものであるという意味は、これは今ここで審議をしております当初予算で景気は大丈夫だという意味だろうと思いますけれども、大蔵大臣、この当初予算の一般歳出というのは一体トータルでどのくらいのマイナスですか。額やパーセンテージでどのくらいですか。どうぞ。
  217. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたしますが、委員はもう常にこの十年度予算をデフレ予算、デフレ予算とおっしゃいます。そして、欠陥予算といったような非難もございますけれども、私ども国会予算を提出し審議を願う以上、これが今の段階では最良のものだということで御審議をお願いしておるわけでございます。  平成年度予算につきましては、御存じと思いますけれども、九年度補正、あの二兆円減税の分も、十年度であと一兆あるんですね。九年度で一兆、十年度で一兆、こうなるわけでありますが、そのほかに法人課税、これが基本税率の三%引き下げ、土地住宅税制、これの減税、そして金融関係税制、これらのものを全部合わせると、平成年度は、いわゆる政策減税制度減税で八千四百億の減税予算及び税法改正で実は行われる、こういうスキームになっておるわけであります。  そして、特に重要なのが、実は金融システムを強化するということが大事なことでございまして、G7の会議におきましても、日本経済活動は弱い、これを回復するためには金融システムを強化するための引き続いての行動及び金融その他のセクターの規制改革が必要、こういうふうに言われたわけでありまして、私どもは、それはそのとおりだ、現に法案を通していただきましたので、金融強化のための施策、急いで、かつ思い切ってやるという姿勢をとっているわけであります。  金融システムについての企業そしてまた家計の信頼度が高まってくれば、おのずからこのマインドも好転してくる、そういったことも念頭に置き、それぞれの施策が相乗効果を発揮してよくなってくるということで、今の予算の速やかなる成立をお願いをしておる、こういうところでございます。
  218. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 大臣は今、私の質問にお答えいただいていないですね。私は、一般歳出は何%減か、金額でどのくらい減かと言ったのですよ。  だけれども、繰り返していると時間がもったいないから申しますよ。一般歳出は、補正後の九年度予算に対してマイナス四・八%であり、金額的には二兆二千四百七十九億円の減少ですよ。今大臣は自慢げに減税がいろいろ合わせると八千幾らあるなんておっしゃいましたが、歳出の削減は二・二兆円ですよ。これは完全なデフレ予算じゃないですか。そうでしょう。  それから、建設大臣公共事業費も、これは補正後の前年度比だとすごいマイナスですね、大変なマイナスです。突然尋ねてもおっしゃれないと思いますから、もうよく御存じの数字だと思いますから言いますが、パーセンテージで一四・六%減ですね、一四・六%減。金額で一兆五千億落ちているんですよ。これがデフレ予算でなくて何でしょう。  それから減税も、まあばらまき減税でありますけれども、大蔵大臣、一番目玉になっているのが、法人課税のネットで三千二百六十億円の減税だと思いますが、これは平年度化していったらどうなるかということを御存じですか。たったの三千二百六十億円の減税で自慢げに言っておられるが、これは平年度化していくと、逆に課税ベース拡大という増税の方がきいてきて小さくなっちゃうんですよ。そういうことを御存じないですか、大蔵大臣。お答えください。
  219. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 法人税の課税ベースの拡大と税率引き下げの関係でどういうふうになるかという数字のお尋ねがございました。  初年度平成年度でございますが、三千二百六十億円の減税でございます。平年度で申し上げますと確かに課税ベースの適正化の分がまいりますが、平均で申し上げますと、二千五百八十億円から二千百四十億円の減収ということになっております。
  220. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 そのとおりでして、平年度化していくとどんどん増税になってくるのです。(松永国務大臣「そんなことない」と呼ぶ)そんなことないって、あなた、何を聞いていたんですか、今。  この予算では三千二百六十億円の減税だが、減税幅は平年度化すると、成長率一・七五%を仮定した場合に二千五百八十億、そして、成長率三・五%を仮定したとき、二千百四十億の減税です。減税幅が縮小していくということは、算術の問題ですよ。これは増税ですよ。  例えば、二兆円の減税をやめるといったら増税になるのと同じでしょう。どうしてそんな算術がわからない。だって、減税幅が縮小していくということは、十年度より十一年度以降はその分は増税になるということですよ。だから、こんな自慢げに言えるような減税幅じゃないということです。  だから、この減税をとってもそうだし、さっき申し上げた一般歳出の減少が実に二・二兆円であって、もう減税なんかに比べてはるかに大幅であるということですね。  以前、尾身長官がよくおっしゃっていました。歳出増加、公共投資増加の方が減税よりも乗数効果は大きい、これは経済学の常識だと言っておった。私は、それは短期の話で、長期的には人々が将来の日本経済をどう予想しているかによって全然違ってくると思っていますが、少なくとも短期の話としては、これは尾身長官の言葉を引くまでもなく、乗数効果の大きい歳出削減の方がはるかに大きい、減税よりも。ということは、マイナスの、デフレの効果、マイナスの乗数効果が非常に大きな予算だということですよ。おわかりですか、大蔵大臣。だから私、デフレ予算だと言っているのですよ。デフレ予算だということをお認めください。どうぞ。
  221. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 経済に与える影響という点でございますが、確かに、前の年に比べますると、歳出を財政構造改革の点から縮減をしております。他方、減税もしております。しかし、トータルとして見まして、八兆四千二百七十億円の建設公債を出しておりますし、七兆一千三百億円の特例公債を出しているわけでございまして、国、地方合わせてGDP対比で四・七%の赤字、こういうことになっているわけでございます。  したがいまして、その限りにおいては、政府全体としては支出の方が収入よりも多いわけでございまして、そういう意味で、景気全体は、前年度に比べれば刺激幅は少ないものの刺激的である、したがって、デフレ予算という批判は必ずしも妥当ではないのではないかと考えております。
  222. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 その前提になっている経済見通しそのものが大変おかしいのであります。来年度一・九%成長するという見通しで歳入の見積もりもやって、赤字幅を出しておられるわけですが、よく御承知のように、民間の金融機関は、平成年度に一・九%成長するなどと言っているところはほとんどありません。  私の手元に四十の調査機関の見通しの平均がありますが、これは平均しますとゼロ%台になります。そして、最も政府と違うところが個人消費と設備投資なんですね。この見通し、政府は個人消費二・五%実質でふえるなどと言っていますが、民間の平均は一・五です。設備の方は、政府は三・五と言っていますが、民間の平均は一・七、半分の伸び、それも、最近の数字を見て民間はさらに設備投資を下方修正してきているわけですね。  それで、この個人消費と設備投資について政府の見通しというのは、いずれも平成年度になると伸びが高まってくるという、理解しがたいことを言っておるわけであります。  個人消費についていいますと、政府は、何回も何回も見通しを誤り、勘違いをしてきておりますが、今またとんでもない予測を出しているというふうに思います。それは、最初政府は、消費税引き上げの反動減で消費が一時的に落ちただけで、昨年夏には回復すると言っている。それがだめになると、昨年の臨時国会冒頭には、いやいや、足元はしっかりしていないが、下期には回復すると言っている。それがまただめで、とうとう〇・一%成長に下方修正した現時点では、いろいろなことをやっているから桜の咲くころには何とかなると言ってこの一・九%成長を出しておりますが、先ほども一月の雇用、賃金関係の数字で御披露しましたように、いずれもマイナス幅は拡大しているのですね。  これは、本年度については九兆円の国民負担増と公共投資削減という超デフレ予算の影響で落ちてきましたが、来年度に向かってはいよいよ経済の自律的な不況、景気後退の力が働き始めている。つまり、過剰在庫減らしの生産調整をする、雇用が落ちる、時間外手当も落ちる、賃金も落ちる、それがまた個人所得を減らして消費を減らす、また在庫が積み上がるという自律的な下降局面に入っているということであります。  それから、設備投資について大変のんきな見通しを出しておられますね、十年度は伸び率が高まるのだと。企画庁長官、最近出てきた設備投資関係の数字を見て、長官はまだそんなのんきなお考えをお持ちですか。どうぞ。
  223. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 十年度の実質経済成長率一・九%と見ているところでございますが、そのうち、個人消費は二・五%、設備投資は三・五%程度と見込んでおります。  それで、この見通しについてでございますが、最近におきます我が国の経済状況、バブル崩壊後の不良債権処理のおくれが景気回復の足かせとなっておりまして、他方、昨年の秋口から、金融機関の経営破綻やアジア地域における通貨・金融市場の混乱等を背景として、家計や企業の将来の経済に対する信頼感というものが非常に低くなってまいりました。そういうところから、景気がこのところ低迷しているという現状でございます。  消費でございますが、二・五%と見ているわけでございますが、私ども、その理由は、一つは、九年度の四月—六月の消費税の増税に伴ういわゆる駆け込み需要の反動減というマイナス要因がありました。その要因がなくなるわけでございます。  それから、二兆円の特別減税や、あるいは金融システム安定化対策等によりまして、ここ最近における経済の先行きに対する信頼感というものがかなり回復してきておりますが、さらに規制緩和を進め、そして平成年度予算及びその関連の、減税も含めた税制改正を予定どおり通していただくことによりまして、経済は順調な回復軌道に乗ると考えている次第でございます。  それからまた、個人実質所得等でございますが、そういうわけで、全体としては上がってくるだろう。  ちなみに申し上げますが、消費が停滞している原因は、先ほど、将来の動向に対する消費者のコンフィデンスが不足してきているというふうに申し上げましたが、実は消費性向がここ数カ月目立って落ちてきておりまして、九五年度が七二・七%、同じく九六年度が七二・三%でございました。昨年の九月、九七年の九月の時点でも七二・五%でございましたのが、十月、十一月と下がりまして、十二月には、九月に七二・五%ありましたものが六九・〇%と、三・五ポイントもこの三カ月の間に下がっているという状況でございます。その間に何が変化があったといえば、アジアの問題と金融システムの問題でございます。  そういうところからコンフィデンスが非常に下がってきているわけでございまして、金融システムの安定化対策が実現され、補正予算が通りましたし、それから所得減税がなされ、そして順調に来年度予算及び関連法案が通過をし、そして四月からいわゆるクレジットクランチの問題が早期是正措置が終わった後でなくなるという状態を考えますと、私は、全体としては順調な回復軌道に乗ってまいりますし、そして先行きに対する信頼感も回復してくるというふうに考えているわけでございます。  それから、設備投資につきましては、ここしばらくの間、製造業の稼働率指数も上昇をしてきておりまして、むしろ同じような意味での景気の先行きに対する信頼感が回復すれば、いずれ順調な伸びを示してくるというふうに考えている次第でございます。  なお、私ども経済企画庁といたしましては、総理の御指示もございまして、自民党の第四次国民経済対策も受け、また昨年十一月の規制緩和を中心とする緊急経済対策のフォローアップ、あるいはさらに追加的な規制緩和等の経済活性化のための具体策について、関係各省と協力をしながら現在検討を開始しているところでございます。  もとより、今後とも、内外の経済金融状況に応じまして適時適切な運営に努め、全体としての成長率一・九%は達成していきたい、また達成できるというふうに考えている次第でございます。  それにつけましても、十年度予算及び関係法案の予定どおりの成立が必要な条件でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  224. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 その適時適切という中に、大規模な補正予算を四月にも出してくるというのが入っているなら、これは場合によっては一・九いくかなと思うけれども、閣僚の皆さん全部それを否定しているんだから、今の、春ごろからだんだん明るくなって一・九%成長なんというのは、またしてもとんでもない予測違いをするということをはっきりと私は予告をさせていただきます。  大体、なぜ間違ったかについて全然見当違いの説明をしておる。最初は、さっきも言いましたが、駆け込み需要の反動があってちょっと経済が弱いが、夏には回復と言ったのでしょう。これは大間違いで、九兆円の国民負担増加で実質可処分所得が減少したから消費が落ちた。だから、こんなものは夏になったって回復しない。ここのところがまるっきり間違っている。  それで、まるっきり間違って、夏になっても回復しない、秋になってもだめだということになったら、今度持ち出されたのが、これは、駆け込み需要の反動が予想外に長引いている上、金融不安が発生しました、予想せざるアジアの通貨危機が発生しました、それで落ちてきた。これ、金融不安だってアジアの通貨危機だって、超デフレ予算が引き起こした日本の政策不況の結果という面が物すごくある。特に金融不安は完全にそうです。  私、一年前のこの予算委員会ではっきり、予言と言ってはなんだけれども、指摘申し上げたでしょう。こんなデフレ予算をやったら、一・九%成長どころか、実質可処分所得の増加はとまっちゃうんだからゼロ成長ですぞと。そうしたら、不良債権処理が進んでないんだから、金融三法の枠組みでは手に負えない金融不安が起こりますぞと申し上げました。しきりとやじが飛んで、そんなことはないとかそんなことを言うと本当に起きるからとかなんとか言っていましたが、僕は北海道拓殖銀行という言葉も使わず、一生懸命そういうところは危ないとか逃げながら、御指摘申し上げた。  そのとおりのことが起きているのですね。それをもってきて、予想外のことが起きたから経済が弱くなったと言う。それは見当違いな、外の理由を持ってきて、それを口実にして自分の見通しの誤りをごまかしている説明だというふうに思いますよ。  そして、これから先の話でも、さっき言ったように、こんなデフレ予算で回復するわけはない。それどころか、自律的な景気後退がもう始まっています。特に、何とかことしの景気を支えていた設備投資がとうとう腰折れして落ち始めていますから、これが大変深刻なことになることは間違いない。  それからもう一つ、尾身長官、また大変楽観的なことを言っておられますが、実は今の貸し渋りというのは、一つは自己資本比率規制の関係ですが、もう一つ金融ビッグバンに備えて融資戦略を切りかえているのですよ。融資戦略を切りかえて、つき合い貸しみたいなのをどんどん整理してきているのですね。これは尾身長官、四月になったら終わりますなんて、とんでもない楽観論だ。もうあと二カ月でいかに楽観論だったかわかりますよ。そんな簡単な話ではない。ですから、四月以降夏に向かって間違いなく景気はさらに自律的に落ち込んでいくというふうに私は見ております。  特に設備投資は、これはひどいのですよ。企画庁自身が調査をした法人企業動向調査によれば、昨年の十—十二月期に前期比でマイナス三・九という実績見込みが出た。とうとう昨年十—十二月期から設備投資はマイナスになりました。その先の計画が、一—三マイナス二・二、四—六マイナス三・七、落ち始めているのですね。  家計調査も出ました、十—十二月。出そろった。これもマイナスですよ。残念ながら、十—十二月期はマイナス成長だという民間の予測がどんどんふえている。  そうしたら、これはやはり自律的な景気後退に弾みがつくのですね。設備投資の先行指標である機械受注だってとうとう、前年比マイナスになっただけじゃない、マイナス幅が一三・四%まで拡大しちゃったのですね。六カ月先の姿がこれじゃ、とても平成年度経済は四月から回復だなんていうのは全く考えられない状態であります。  これというのも根本的な原因は、もう何回も指摘しているように、超デフレ予算を強行した、その後に財政構造改革法案に従って平成年度の、ここへ出ているデフレ予算を当初予算として出しているということから来ているわけであります。この極端なデフレ的な財政政策のしわをまともに受けているのが金融政策でございます。  日銀総裁にお尋ねいたします。  超低金利政策が二年以上続いている、こんな状態では、金利生活者が困る、年金基金が破綻する。超低金利が国民の怨嗟の的になってきている。これもよく御承知のとおり。選挙区に先生方がいらっしゃればそういう声が聞こえてくるでしょう。今やもう国民はみんなそう言っているんですね。それに対して日本銀行は、ここで金利を引き上げたらますます金融危機と経済危機は深刻化しますから、まさかできないでしょう。  しかし、日銀総裁にお伺いいたしますが、このように超低金利政策をいつまでも続けなきゃならない状況というのはどこから起きていますか。  私は八〇年代後半を思い出します。あのときも財政再建一辺倒、そして黒字縮小等の内需刺激策は金融政策にしわを寄せた。その結果、やはり超低金利が続いて、あのときはバブルになってしまったんですね。そのバブルの崩壊、後始末の失敗で今日の日本経済の停滞があるわけですが、あのときと今そっくりだと総裁は思いませんか。すべての重荷は日銀の方へ来ている、金融政策の方へ来ている。やむを得ずしりぬぐいをしていると、国民の怨嗟の的になる。超低金利は直したいと思っても直せない、そういう感じを総裁はお持ちではございませんでしょうか。
  225. 松下康雄

    ○松下参考人 前段の御質問は、八〇年代のバブルの経験にかんがみて、今日の金融政策のあり方についてどう考えるかということであると思います。  そこで、私どもといたしましては、八〇年代のバブルの発生につきましては、それは自由化や国際化などの環境変化やあるいは首都圏への一極集中、土地取引にかかわるさまざまの法制、税制などの要因がいろいろと複雑に絡んでおりました中で、いわゆる土地神話などの幻想が生まれたものであると考えております。  ただ、当時におきましては、大幅な経常黒字の是正やあるいは円高の回避が優先的な課題とされます一方で物価の安定基調は維持されている中で、結果として金融の緩和が長期にわたりまして、これがバブル発生の一端になったということは私どもも否定できないところでございまして、これらの経緯を踏まえまして、私どもは、金融政策の運営に当たりましては、あくまでインフレなき持続的な成長というものを目標としてまいる、また、資産価格やマネーサプライの動向などにつきましても十分に留意をしていくということなどを教訓として受けとめまして、その後の適切な金融政策の運営に努めているところでございます。  それから、金融政策の運営に当たりまして、これが他の政策のしわ寄せということを受けているかという点でございます。  この点につきましては、金融政策の運営というものは、本来一国の経済は、財政面を含みますいろいろの経済政策のほか、構造調整圧力などのさまざまな要素が複雑に絡み合って変動しているものでありますから、私どもとしては、あくまでも、そういったそのときそのときの経済情勢全般の動きに対応して、インフレなき持続的成長という観点から適切な運営に努めていくべきものであると考えておりまして、どちらの政策がどちらにしわ寄せをするといったような関係のものではないというふうに考えているところでございます。  私ども、実際の政策運営に当たりましては、情勢判断につきましては、もちろん経済財政政策全般を含めてのいろいろな要因の結果も含めて判断をし、また、それらの判断につきましては関係当局との意思疎通や十分な理解の促進ということに日常努力をいたしまして、新しい日銀法で言う整合性を持った金融政策の実行ということに努めてまいる考えでございます。
  226. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  お立場もありまして、はっきり言えないこともあると思うのですが、日本銀行法、新しい法律がこの四月からいよいよ施行されます。その結果、独立した政策委員会がスタートいたします。もう大蔵大臣の政策指示がなくなるわけですね。  スタートすると同時に、この日銀法の第四条にはこういうことが書いてあるのですね。「政府経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」これは総裁、常に政府と連絡を密にして整合的な状態にするときに、これは私の希望でございますが、八〇年代後半のような財政政策が硬直的に財政再建をやる、あるいは現在、これまでのように、景気がこんなに落ち込んでいるのに財政政策は依然として赤字削減を見て動いておる、こういう状態だったらもう超低金利にせざるを得ない。しかし、その結果、社会的な不安がこんなに起きている。こういったことについても、大いに政府と連絡を密にしていただきたい。堂々とやっていただきたい。  私どもも、国会におきましても、これからは年に二回、日本銀行の政策を承って、国会議員がそれに対してレビューするわけでございますから、今までの戦時立法の日銀法のもとで政府に押しまくられていたようなこととは違って、しわ寄せを受けて金融政策が動けなくなっているときはその旨しっかりと言っていただきたい。また、陰で政府にしっかりとアドバイスをしていただきたい。第四条というのはそれを期待しているのだと私は思いますので、大先輩に大変口幅ったいことを申すようで恐縮でございますが、この席をかりて期待また希望をいたしておきます。  さて、本論に戻るのですが、最初に確認いたしましたように、これだけ日本経済が落ち込んできていても、今ここへ出しているデフレ的な当初予算で景気は立ち直るんだ、もうこの後補正予算考えていないんだというふうに公式見解としては閣僚の皆さん方はおっしゃる。その陰で、新聞は、そうではなくてもう転換の検討を始めたと各紙、海外の公館では、日本の官僚がもう転換したといって説明して回っている。こういう日本の姿は一体外国から見てどういうふうに映っているでしょうか。  ここに幾つかの最近の新聞の切り抜きがあるのです。蔵相、G7の直後に、例のステートメントでIMFが日本について財政刺激が必要だと言った、そういう文言になっていますが、私も三十四年間日本銀行に勤めて、G7の舞台裏における官僚の折衝というのをよく知っています。それはIMFがと、IMFが言った形にしているのは、いわばあとの六カ国の武士の情けであって、IMFだけがそう言ったということではないのですね。  それが証拠には、二十三日の外国の新聞には、一斉に日本がやられたんだという記事が出ているわけですね。アンダーファイアだと。日本が十字砲火にさらされたとか、あるいはG7の各国がエコノミック・チェンジ・イン・ジャパンをアージした、みんながそれをしろ、しろと言った、そういう記事がずらずらと出ております。  そういう中で、総理、私は、総理のためにも、そして日本のためにも本当に恥ずかしい記事が最近よく出てくる。どういうことかといいますと、例えば二月二十日のニューヨーク・タイムズ。総理のことをヘジタントスチュワードと書いてあるのですね。ヘジタントというのは煮え切らないようなことをいうわけですが、一国の総理をつかまえてスチュワードと言っていますよ。スチュワードというのはスチュワーデスの男性形ですからね、お世話をする役みたいなものであって、とてもリーダーということではないですね。けしからぬと私は思います。  しかし、なぜそういうことが出てくるかといいますと、ちょっと後、ニューヨーク・タイムズですね、二十二日、こういうことがあるのですよ。日本経済政策はバーチャル・ポリシーだと。クリティシズム・オブ・ジャパンズ・バーチャル・ポリシー・グローズ・ラウダーというふうに書いてあります。  バーチャルというのは、例のバーチャルリアリティーとかいうインターネットの世界での仮想の世界ですね。日本経済政策がバーチャル・ポリシーだそうですよ。繰り返し内需刺激をする、これだけやりましたと説明する、しかしそれが効かない、いやあ今度またやりますと言う、それが効かない。これは要するにバーチャルリアリティーだと言うんですね。今言っていることもまさにそういうふうに受け取られています。やります、やりますと言いながら小出しにしてくる。  これは、この席で言っていいのかどうかはばかられるんですが、何ときょう付のファイナンシャル・タイムズにけしからぬ表現が出た。ザ・ジャパニーズ・ポリシー・ストリップティーズと。日本の政策がストリップティーズだと言うんですよ。これ、日本語で言ったらストリップショーですよ。ストリップティーズだと。なぜだ。一枚一枚はぐように小出しにしてくる、経済政策を。それでちっとも効かないと。それで人の気を引いている。それで各国の気を引いているが、ちっともきちっとやらぬじゃないか。  これはまあ失礼千万。ファイナンシャル・タイムズですよ。実に失礼。私はもうこれを見て烈火のごとく怒ったが、同時に、恥ずかしい、こういう目で見られている、バーチャル・ポリシーだと、ストリップティーズ・ポリシーだと言っている。恥ずかしいことであります。  こういうふうに評価されているにもかかわらず、総理は、財政構造改革法案は改正しないんだ、もちろん補正予算を出さないんだと言い張っておられますが、新聞は、もうとうにその作業が始まっていると書いている。だからまさにバーチャルリアリティーですよ。こういう情けない話はない。  総理、さっき平和・改革の西川委員からの質問を聞いておりまして、私、ちょっと確認したいことがあります。  それは、財政法二十九条、予算編成後に、正確に言いますと、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出に限って補正予算を出せるというわけですね。それで、予算作成後というのはいつだと言ったら、総理は、予算を閣議決定してここへ出した一月十九日だというふうにおっしゃいましたね。私はそれを聞いていて、待てよと、それは予算案作成の話じゃないかなと、予算ができ上がるのは国会を通ったときじゃないのかねというふうにまず思いました。  しかし、この議論をしているとあっという間に時間がなくなりますから、これについては、百歩譲って、予算案編成じゃないかと僕は思うんですよ。一月十九日、編成して提出したんじゃないかと思います。予算ができ上がるのは国会を通ったときだというふうに思いますが……(発言する者あり)閣議決定で国会を通ったときなんですか、本当に。ちょっと確認させていただきましょう。
  227. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先ほど総理から御答弁がありましたように、財政法の予算提出というのは、予算提出閣議の日ということでございまして、十年度予算につきましては一月十九日ということでございます。(鈴木(淑)委員予算作成ですよ、予算作成。いいのね」と呼ぶ)いいんです、いいんです。(鈴木(淑)委員財政法二十九条の予算作成とは提出したことですか」と呼ぶ)
  228. 大森政輔

    ○大森政府委員 予算作成という言葉はそもそも憲法から来ている言葉でございまして、七十三条で「内閣は予算を作成して国会に提出すること」と。したがいまして、提出前に内閣で作成するという言葉を使っているわけでございます。
  229. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 そういう解釈だとするならば、この財政法二十九条というのは、提出した後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出であれば、補正予算を組んで出してきていいんですね。  何で、この当初予算を早く審議して通してくれとおっしゃるのですか。また、どうして党内でこれができ上がった後、補正予算をつくろうなんて言うのですか。今出してきたらいいじゃないですか、補正予算を。これはそういうことでしょう。  本当に必要なら、一月十九日以降今日まで四十日ぐらいたって、その間に経済について見通しが変わってきて心配になっているのだったら、何で出してこないのですか。補正予算をお出しなさいよ。両方一遍に審議しましょう。それで必要なら組み替えてもいいけれども、とにかく補正予算を出せるんですよ。何でこれが成立しなきゃ出せないなどということを言っておるのでしょう、総理
  230. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、ちょっと議員、どこか誤解をしていらっしゃるといけないと思うのですが、私、この審議が始まりましてから、あるいはその以前の補正予算の御審議、九年度補正予算の御審議をいただいているときから、平成年度予算を早く成立させていただきたいということを繰り返して申し上げておりますが、その後どうこうという話を一回もいたしておりません。今もいたしておりません。  そして、平成年度予算案御審議中、予算案と言われるなら予算案でもいいです、どうぞ早く通していただきたい、そして九年度補正、特別減税金融安定化策等々、その中に含まれておりますゼロ国あるいは一兆円の公共事業、こうしたものが相まって効果が出せるように、切れ目のない予算運営ができますように、成立をさせていただきたいと繰り返しお願いをしております。その後に云々ということを全く申しておりませんので、どうぞお間違いのないように。私は、その点だけは繰り返し御答弁を申し上げてきております。
  231. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理は全く言っていないそうですから、ぜひ新聞にはそう書いてほしいものですね。(橋本内閣総理大臣「いや、やるともやらないとも何も言っていないということです。十年度予算を成立させてくれとしか言っていないです」と呼ぶ)それじゃ、本当は今でも必要があれば補正予算を出せるんだけれども、全くそのつもりはない、なぜなら、今のこの十年度当初予算、デフレ予算で四月から景気がよくなると。さっきから言っていますように、あり得ないことを前提に、また国民をさらに経済的、社会的に苦しめるということになると思います。  さあ、それでは、総理が閣内で議論しているわけじゃないと言いますが、与党の自民党の中でじゃんじゃんじゃんじゃん議論が出てきてしまっているものですから申し上げますが、財政構造改革法案の解釈であります。  与党内の議論を聞いていると、あのキャップは当初予算にしかかからない、補正予算にはかからない。それからもう一つは、毎年減らさなきゃいけないのは赤字国債である、建設国債なら大丈夫だ、つまり、建設国債を財源とした景気刺激の補正予算を組む分には財政構造改革法案に抵触しない。また、こういう解釈が新聞でも何か行われております。  西川委員もさっきちょっと質問しておりましたが、私の手元に議事録があります、これは財政構造改革法案を審議した昨年の臨時国会でございます。このときに、総理ははっきりと否定しておられるんですね。  まず、これは十月二十日の、我々の野田幹事長の質問でございます。これは、このキャップというのは、当初予算だけで補正は別ということではありませんねと念を押して言っているのに対して、総理は、私もさように考えますとおっしゃっている。三塚大蔵大臣も、それが財革法にかなう原理である、こういうことでありますと答えているんですね。これが第一点。  第二点は、赤字国債を年々減少させると書いてあるが、この法の精神は、実は建設国債も含めた財政赤字全体を毎年削減していくということか。これは、私が十月二十一日に御質問させていただきました。それが法の精神でしょうか、これに対する総理のお答えは、「当然のことながら毎年の縮減に努めていく必要がある、これは私は議員の提起されたとおりだと思います。」それで、私、その直後に、「確認させていただきました。ありがとうございました。」と申し上げたのです。  ですから、財革法の解釈について、キャップ補正予算にもかかる、毎年縮減するのは赤字国債だけではなく赤字全体だ、このとき御確認いただいた解釈をもう一回確認させていただきます。その後変更でもあったのでしょうか。それとも、このとおりということでよろしゅうございますか、総理
  232. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員に対するその部分全体を、もう一度、私はそれでは読み上げさせていただきます。  「財政構造改革の推進に関する特例措置法案、これにおきましては、当面の目標として、平成十五年度までに国及び地方の財政赤字対GDP比を三%以下とする、平成年度から平成十四年度までの各年度において特例公債発行額の縮減を図りながら、平成十五年度までに特例公債依存から脱却するなどを規定をいたしております。ですから、この法律案そのものにおきましては、国及び地方の財政赤字対GDP比三%以下という目標に関しまして、その道筋を明示的に示しているものではありません。 しかし、同時に、」大変私は議員を褒め上げておりまして、「これはもうプロ中のプロである議員よく御承知のように、」と最高の敬意をもって表現をいたしております。「財政赤字の対GDP比三%以下という目標を達成することが一朝一夕にできることではない、当然のことながら毎年の縮減に努めていく必要がある、これは私は議員の提起されたとおりだと思います。」 これが正確な発言であります。
  233. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私のところにも正確な発言の記録があるからさっき読んだのですよ。(橋本内閣総理大臣「全部を読みますと、今のとおりです」と呼ぶ)いや、だって、そういう意味でしょう。「財政赤字をも年々削減していくというのがこの法の精神でしょうか。その点を、確認のためにまず総理にお伺いしたいと思います。」と言ったところ、「ですから、この法律案そのものにおきましては、国及び地方の財政赤字対GDP比三%以下という目標に関しまして、その道筋を明示的に示しているものではありません。 しかし、同時に、これはもうプロ中のプロである議員よく御承知のように、財政赤字の対GDP比三%以下という目標を達成することが一朝一夕にできることではない、当然のことながら毎年の縮減に努めていく必要がある、」当然のことながら財政赤字を毎年縮減していく必要があると、はっきり言っているじゃないですか。これは私は議員の提起されたとおりだと思いますと言っているじゃないですか。  ですから、この解釈が変わっていないのであれば、補正予算で建設国債を財源とする場合は財革法のキャップの対象にならないとか、財革法第四条の対象にならないという解釈は、総理の解釈とは違っておるし、私もその違っている方の総理の解釈を支持するものであります。  もしそれがだめなら、これは財革法を変えなければいかぬですよ。総理、どうですか、私だってちゃんと読み上げたのですよ、記録を。(橋本内閣総理大臣「今、努めるというところは省略されましたが」と呼ぶ)「縮減に努めていく必要がある」だって、これ、法の解釈じゃないですか。「当然のことながら毎年の縮減に努めていく必要がある、これは私は議員の提起されたとおりだと思います。」私が提起しているのは、法の解釈を提起しているのですから。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これも正確に、恐縮でありますが、議員は法の精神を質問しておられます。  「これに関連して質問いたしますが、年々削減していかなければいけないのは赤字国債だけでしょうか。それとも、この法の精神は、財政赤字、この法律ではSNA上の一般政府の投資貯蓄差額として定義されておりますが、この財政赤字をも年々削減していくというのがこの法の精神でしょうか。」と、精神を確認されました。そして私は、努めていく必要があると、精神に対して努めていく必要があるということは申し上げました。
  235. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 法の文言には赤字国債と書いてあるんですね。だから私は、文言は赤字国債と書いてあるが、この法の精神は赤字全体かと聞いているんです。  法の精神を踏みにじる行為を脱法行為という。それでは法に文言で書いてあることを踏みにじれば、これは違法行為になってしまう。だから、これは違法行為という話じゃなくて、精神を踏みにじったら脱法をしているということになってしまう。そこを言っているんですよ。だから、総理は、この法の精神がそうだということをお認めになった以上、脱法行為はしないでしょうなということを確認しているんです。  だから、今確認しましたよ。キャップ補正予算にかからないなどと、あるいは、財源に建設国債を使って赤字額全体を大きくしても法に抵触しないと言ったら、それは文言に抵触していないが法の精神には反しているということを今ここでもう一回総理と確認し合ったということを根拠にして、私は、そういう補正予算出してきたら脱法行為だと言って批判しますよ。いいですね。もしそれが嫌なら、手をお打ちなさい、財政構造改革法案を改正しなさい、それを一緒に出してこなきゃいけませんよ。  もう既に、平和・改革の方から弾力条項について詳しい説明がありました。実は私自身も、二月四日の大蔵委員会、これは大蔵大臣しかいらっしゃらないところで弾力条項の話をしておりますし、その翌日の本会議場で我が党の中村議員が、弾力条項を考えろ、廃案にするか弾力条項を考えろということを申し上げております。  この弾力条項のほかにももう一つ手はあるんですね。この米国の包括的財政調整法、九〇年法、九三年法を見ますと、赤字は日本の法律のようなリジッドなターゲットではないのであります。毎年毎年の経済情勢を踏まえて推計をし直したマキシマム・デフィシット・アマウント、MDAという概念であります。これは動くんですよ。そんな動いたら歯どめにならないじゃないかと思うかもしれないけれども、歳出のところは抑えておいて、経済情勢が変わってきて税収が予想外のことになったらMDAを動かしていくんですよ。こういうフレキシビリティーの導入の仕方だってあるんです。  ぜひそこのところを検討されて、法の精神に反するような補正予算は出さないようにしていただきたいというふうに思います。  時間もなくなってきましたが、総理、このまま記録に残ると思いますが、念のためにもう一度言っておきます。  さっき私が言いましたように、補正予算キャップがかからない、あるいは、建設国債を財源としている分には財政赤字全体がふえてもこれは赤字国債じゃないんだからいいんだ、こういうのは法の精神に反すると理解してよろしいですね。
  236. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それ以前に、議員から、アメリカの包括財政法、この財政赤字目標額が経済見通しの変更などについて額が改定されることになっている。これは確かに、アメリカにおいて財政赤字目標額が各年度ごとに規定をされて、各年度ごとの歳入歳出両面を縛る仕組みとなっていることから設けられたものだと思っております。  そして、冒頭の議員の、問いただすという言葉まで使って言われましたのは、実は、このアメリカの包括財政改革法ですか、この中にあります部分を立法政策上評価する、一つ考え方と評価をする、ただし言うべくして難しいのではないかと申し上げたことが、大変な問題のように、問いただすという言葉を使われましたので、お答えをしていいものかどうか本当に迷います。これは率直な私の感じです。
  237. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 問いただすと言ったらきつかったとすればおわびいたしますが、要するに、前回おっしゃったことは変わっていませんね、その確認であります。今、私は確認したと思います。  最後に、これは法の解釈を曲げて、仮にこのまま財革法も改正しないで補正予算をお組みになると、非常に妙な格好の補正予算になります。それは、きのう平和の太田委員が指摘しておられましたように、補正後の九年度予算に比べて、今度の当初予算の赤字国債というのは一兆三千八百八十億減っているんですね。逆に言うと、この赤字国債一兆三千八百八十億の範囲内でしか赤字国債を使った歳出は組めないのですよ。  つまり、減税とか、あるいは自民党さんの中で議論していて、私も方向としてはいいと思っていますが、情報通信関係の公共投資とか、こういうのは建設国債対象じゃないですからね、赤字国債。そういうやらなきゃいけない大事なところに一兆三千八百八十億という枠がかかったままになっちゃうのですね。そうすると、手っ取り早くやるのはどこかといったら、建設国債を財源にした在来型の一般の公共投資になっちゃうのですよ。ということは、大きく目指している中期的方向とは違う方向の補正予算が出てくるのです。  そういうことを考えても、もしやるなら、財政構造改革法の改正、あるいは廃止でもいいですよ、それをきちっとセットにして出してきていただきたい。そして、そのときは何も四月である必要はないですよ。さっき確認したでしょう。一月十九日以降に事情が変わって出すのならいつ出したっていいのですから、二つ並べて審議しましょう。そうしなければいけない。四月まで待つなんてとんでもないことだというふうに思います。  それで、こういう意見は、私は、実は自民党さんの中にもあるんだと思うのですよ。明らかにあります。ここに三月号の「ビジネス・インテリジェンス」という雑誌がある。この中で、亀井静香議員がこういうことを言っているのです。「橋本首相がお詫びをして、国民が許してくれたら、政策転換をして財政改革法を改正すればいいだけのこと。この三つの条件さえ満たしていれば、橋本政権が存続することに異存はない。」しかし、「このうち一つの条件でも欠けたら橋本政権の存続は難しく、」というくだりがあります。  この三つの条件というところだけ見て、僕はびっくりした。私どもが、野党がずっと言っていること、つまり、御自分の見通しの誤り、政策の誤りを認めなさい、その上で国民におわびをしなさい、その上で財革法を改正するか廃止しなさい。党内でもこういうことを言っているじゃありませんか。それから、二十一世紀をつくる会ですか、ここの先生方も、全くこれと同じ趣旨のことを自民党の幹部に提出しております。  私は、もし、仮にの話ですよ、バーチャルな話ですよ、仮に党議拘束を自民党さんが外してくれたら、恐らく財政構造改革法の改正ないし廃止は成立してしまうんじゃないかと思います。そして補正予算、この現時点で財政刺激の補正予算が成立してしまうんじゃないかと思いますよ。それぐらい今、国会の多数の意見はそちらに動いているときに、四月までまだ二カ月ぐらいあるんですよ、まあ来週から三月ですが。そんなことを言っている間に日本経済危機が深刻化したらどうするのですか。金融危機がまた出てきたらどうするのですか。そんなバーチャルな世界じゃない、ストリップティーズみたいにちょろちょろやったらだめですわ。  もっと真剣に日本を救うことを考えましょうよ。与野党でしっかりと議論しましょうよ。そのことを申し上げて、私のきょうの質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  238. 越智通雄

    越智委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、西村眞悟君。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  239. 西村眞悟

    西村(眞)委員 西村眞悟です。  質問者の雰囲気ががらっと変わって、気分転換になるかならぬかわかりませんが、私の質問の冒頭は、日本・ミャンマー議員連盟の小沢辰男会長もこちらにおられますが、一昨日の我が国政府のミャンマー・ヤンゴン空港工事再開の決定をお聞きいたしまして、敬意を表する次第でございます。  言うまでもなく、日本からの直行便がヤンゴン空港に入って一年以上を経過して、日本の観光客が急増しておる中で、空港の安全性を高めるのは急務でございまして、まだあの空港は加藤隼戦闘隊が使用しておったときとほぼ同じような有視界飛行でおりている飛行場でございます。この人道上の本当の支援でございまして、そこに御決断いただいたことに敬意を表する次第でございます。  ただ、昨日の報道では、与党連立の中でこの問題に反対する意見があるとお聞きしますけれども、そうであれば、空港の管制機能が落ちたグアム空港での大韓航空機のつい最近の墜落、また、十年ほど前のカトマンズ空港での飛行機墜落、こういう事態が起こりかねない空港で工事を再開しないならば、もし事故が起きれば、日本は、工事を中断したまま放置したので、この事故は日本の責任だという非難を受けかねない事態であります。したがって、この援助再開に反対する人は、事故が起きたときにその責任をとるのかとらぬのかということを私は明確にしていただきたいと思います。  少額から始まりましたけれども、言うまでもなく人道上の援助を、ミャンマーは最大の親日国でございますから、その親日国が人道上困っているときに与えるというのは、やはり我が国外交の一つの柱でなければなりませんし、ミャンマー国と日本国の歴史的なつながりの中で、その人道支援とそして親日国という関係が成り立っていますことを考えますならば、我が国の今回の決断は我が国外交に歴史に裏打ちされた風格を与えるものである、このように思うわけです。  少額から始まりました。二十五億では決して安全性を確保する空港は出現いたしません。これからこれを第一歩として、さらに人道支援に踏み込んでいかれるように私は希望いたしますが、大臣の御所見をこの点についてお伺いいたします。
  240. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 御指摘のヤンゴン空港に対しての案件でございますが、八八年の政変後、中断されたままになっておりまして、円借款の既往継続案件でございます。空港の老朽化が進む中で、安全面で緊急に必要とされる最小限の措置の実施につきまして、今ほど西村議員、決定と申されましたが、現在、政府部内で検討をしつつある、こういうことで、正確にはそういうことに相なっております。
  241. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ぜひそれを実現して、実施していただきたい、そのように思います。我が国、一つの国家としての信義が、ある意味ではかかっているのかなと思います。長くは申し上げません、大臣よく御承知のとおりでございます。  さて、私の今回の質問は、小渕外務大臣が十二月三日カナダで締結された地雷の全面禁止条約に関して、私の角度から御質問を申し上げます。  この地雷の禁止への動きは我が国の賛同するところでございますけれども、地雷の全面禁止条約というものを審議する前提では、この全面禁止条約がどうして生まれたのかということを検証しなければ、ちょっとわかりにくいことでございますから、私なりに整理したコメントをここで申し上げたい。それから御質問申し上げたい。  残存地雷での被害は昔からございまして、ヨーロッパでは、第一次世界大戦のベルダンに、まだ第一次世界大戦当時の地雷が残っております。一九六〇年代までは、独仏で、森に子供が入ったときに地雷に触雷するという事故が多発しておりまして、ヨーロッパでは地雷処理業者という業が成り立つほどでございます。我が国も、不発弾処理また掃海作業を現代までも時々しますが、ヨーロッパは地雷で非常な被害があった、現代もある。  その後、植民地国の独立戦争や内乱や内戦とともに地雷がばらまかれまして、現在まで累積した残存地雷、一億一千万個と言われております。御承知のように、カンボジア、ボスニアの民間人の被害がマスコミで伝えられておるという状態。  ちなみに、残存地雷が一番多い地域と、その残存地雷を一番多くまいた国はどこかと調べてみましたらば、現在ある残存地雷の五分の一以上の二千三百万個をイギリスがエジプトにまいております。そして今、放置されたままであります。つまり、エルアラメインでロンメルを迎え撃つときに、怖くてばらまいて、そのまま五十年間放置しておる。ついでに申しますが、そういう国が、我が国には、我が国がやったことが日英のとげであるというようなことを言って、謝罪をしてくれというようなことを言っておる。これが現状でございます。  制限への動きは、御承知のとおり一九七〇年代の末から、CCW、特定通常兵器禁止条約。議定書が締結されて、地雷は究極的にやめようということになりました。地雷原記録を残して、戦後はそれを交換し合おうということになりました。究極的という意味は、イベンチュアリーということで、究極的には必要だけれども現実は無理だなというふうな感じらしいです。  一九九六年、CCWの第二回の議定書の締結がありまして、我が国もアメリカも参加しておりまして、これは使用可能な地雷をここで定めたということです、原則は禁止ですが。つまり、信管に時限装置をつけまして、敵の進攻時間帯がわかれば、例えば二十四時間の時限装置をつけまして、散布する。二十四時間がたてば、それが自爆して後は無力化するというぐあいに、残存しない。この条約が結ばれました。  しかし、CCWの次の段階で、米国が、ジュネーブ軍縮会議、CDで協議を続行しようと。ロシアも中国もそれには同意しております。しかし、いきなりカナダが、同意できる国だけでまず全面禁止しようと、地雷全面禁止キャンペーン、ICBLという民間組織とともに記者会見して、このCD、ジュネーブ軍縮会議の席を立ってオタワ・プロセスを始めている。オタワ・プロセスというのは、これは九六年十月にカナダで、九七年末までの署名を目指すプロセスです。カナダはCDから退席して、オタワ・プロセスが始まった。オタワ・プロセスに対しては、日本もアメリカも初めは入っておりました。  日本の行動だけ申しますと、オタワで入って、次のウィーン、ボン。ブリュッセルで脱退します。そして、最後のオスロでまた日本はそのオタワ・プロセスに復帰していって、それで九七年、昨年の九月十八日でございます。ブリュッセルで一たんついていけないということで脱退して、最後のオスロで日本は、我が国は何をしたかといえば、米国と豪州とともに修正案を提出する。これは実現不可能ではないか、ロシアも中国も入らないではないか、CCW新議定書の線で現実的にやった方が本当に効果が上がるのではないかと言いますけれども、これは拒否されて、米国は席を立って国へ帰る。日本は、九月十八日みずからの修正案が否定されたにもかかわらず残って、御承知のとおり十二月に署名する。アメリカ、中国、ロシアはこの中に加盟しません。  この条約は四十カ国が批准の時点で六カ月後に効力を発効する。百二十三カ国署名しましたけれども、今、批准した国は四カ国だけ、カナダ、アイルランド、モーリシャス、トルクメニスタンという国だけでございます。  では、このオタワ・プロセスとは何か。少々長くなりますけれども、ここからはちょっとこのプロセスの本質を私は申し述べたい。  オタワ・プロセスとは何だ、これはカナダの思惑から始まっておるのです。カナダは、御承知のように、PKO創設の生みの親としてのベストピースキーパーとしての自負を持っておりました。しかし、我が国の報道でもありますように、例えばソマリア、例えばボスニアに行ったカナダのPKO部隊が何をしたかといえば、九三年ごろ、ソマリア派遣カナダ部隊、これは我が国の報道ですが、地元住民虐殺の疑惑というのが起こる。同じころボスニアに行ったカナダのPKO部隊は、ボスニア・ヘルツェゴビナでは民族浄化という本当に忌まわしいことが行われたのですが、本国においては病院の警備、名誉ある行動をしておると報道されていたにもかかわらず、その病院の入院女性患者、看護婦等々の凌辱を繰り返したという事態が発覚するわけです。カナダのいわゆる内閣が揺るいでくるわけです。  そこでカナダは、このボスニアに行ったPKOの空挺大隊を本国に召還して、その大隊を解散してしまう。カナダにとっては、ベストピースキーパーの一角が崩れるわけです。国内の政局もそれで不安になる。ここで平和構築のための新しいイニシアチブ、道徳的優位を保ち続けるためには何かというときに、オタワ・プロセスを始める。これが私は真相だと思うのです。  ICBLとともに、CDの席をけって記者会見して、たとえ十カ国でもこの全面禁止に署名するんだと。カナダはこの時点で、軍縮条約締結のいわゆる従来の枠組みから抜けて、ICBLという国際的キャンペーンと同調歩調をとり出すわけです。  このオタワ・プロセスの特徴は、今まで軍縮会議では全会一致を前提としておりました。なぜなら、軍縮で全会一致しなければ、警察官のピストルだけ取り上げて泥棒のピストルは放置するということになりかねませんから、全会一致が原則。CCWでは、アメリカ、ロシア、中国も参加しておったわけです。しかしカナダは、このオタワ・プロセスでは、ICBL、民間キャンペーン組織と一緒になって、全会一致ではなくて合意できる道徳的優位な国だけでまずつくっていこうとしておった。  そこにダイアナさんのキャンペーンがあった、ダイアナさんの死があった。そしてまた、ICBLにノーベル平和賞が与えられた。全面禁止の国際的ムードが高まっている、そしてとまらなくなった。そして、残存地雷除去努力への合意はともかく、私はそのことについては申しませんが、国防上の配慮をすることなく全面禁止ということになって、我が国が締結した。これは小渕外務大臣行かれて、御承知のとおりです。  では、なぜアメリカはオタワ・プロセスから離脱したのか。九月十八日の時点で、みずからの修正案が否決された時点で離脱したのか。これは明らかでございまして、アメリカはディフェンス・ニュースで、この離脱のころに試算を発表しておる。地雷がなくなる、地雷を使用できないならば、アメリカ軍将兵の死傷者は三五%アップする、地雷代替手段の開発に三百億ドルを要すると。この同じことを報じたアメリカのディフェンス・ニュースは、日本もサインを延期するだろう、こういうふうに書いていたわけです。これが九月の時点のことでございます。  我が国の自衛隊の予算を見ますと、平成年度も十年度も地雷調達費が計上されております。したがって、地雷調達費を予算に計上しながら地雷全面禁止条約を締結したのが我が国でございます。  オスロの修正案否決は九月十八日、そして十二月三日の締結まで、この二カ月半の間にいつ急な方向転換で、アメリカとともに修正案を提出した我が国が地雷を留保なく、この条約は留保条項は禁止しておりますから留保なくですが、締結したのか。いつそれが締結の方向に向かったのかという理由と、その国内的要因、また国外的要因を大臣にお聞かせいただければ幸いでございます。
  242. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 このたびの対人地雷全面禁止条約に対しまして、我が政府として署名を行いました。今、西村委員が御指摘のように、第一次世界大戦以降の段々の経過につきましては、私も署名に立ち会う立場でございますので、その経過につきましてもおおよそ承知をいたしておるつもりでございます。  ただ、オタワ・プロセスにつきましてのカナダ側の真意につきましては、確かめておりませんので、これは委員の御見解という気もしないでもありませんが、これは確かめてみたいと思いますが、要は、この対人地雷というものが悪魔の武器と言われて、戦争が終結した以降にもこれが多くの被害者を出しているという立場から、人道的な立場から考えますと、この問題に対して対処しなければならぬということでございました。  経過の中で、米国との関係も言われましたが、米国自身も、二〇〇三年に本国で、二〇〇六年に朝鮮半島でもこれを廃止していくという基本的な方向性は定めておるわけでございまして、かつまた、この除去につきましても、米国が主体的になりましてその廃棄のために努力をしているというような経過を考えますと、この存在そのものを否定し、かつこれを除いていくということは大きな流れだと私は考えております。  そこで、従前、政府としてもいろいろなこともございましたし、各国との関係もございまして、今お話しのようにオスロ会議まで来たわけでございますが、その後、私、大臣に就任いたしまして、つらつら考えてみまして、特に日本としては、カンボジアの問題についてその平和のために協力をいたしてまいりましたが、今日なおこの地雷をめぐっての悲劇が繰り返されるということでございまして、こうした点を勘案して、この大目的といいますか、平和の目的に我が国としても賛同すべきものというふうに理解をいたしました。  もとより、我が国の安全保障の問題、あるいは米国との関係等々につきまして、これは勘案しなければなりませんが、確かに我が国も地雷を持ってきてまいりました。しかし、地雷を保持し始めたのは、少なくとも、米ソを中心とした冷戦構造の中で我が国の防衛、安全保障をどう考えるかという立場で起こってきたことでございまして、いろいろ我が国の防衛に対してこの地雷の果たさなければならない役割も承知はいたしておるつもりでございますが、世界の大きな流れの中で、我が国としてもこの条約には賛成すべきものと考え政府部内の調整をいたしまして、これに賛成をいたした、こういう経緯でございます。
  243. 西村眞悟

    西村(眞)委員 アメリカのことを言われましたが、アメリカも我が国も、CCWをそのまま推し進めて、将来は地雷をなくそうと。アメリカは誠実でございまして、代替手段を開発しております。どういう代替手段かといえば、ごきぶりホイホイの親玉みたいなもので、ゴムみたいなものが、踏んだら固まって、ごきぶりホイホイに捕まったみたいに身動きできぬようになる、こういうことですね。非常にこれはある意味では、飢え死にするかもわからぬから、残酷なものでございますけれども。  アメリカは、しかし、全面禁止、今の時点ではだめだと。また、我が国の置かれた状況も、我が国周辺諸国はすべて全面禁止には参加していないのに、我が国だけが地雷全面禁止に参加している。こういう状況の中で、もし地雷がなくて有事が起これば、アメリカ将兵の三五%の死傷率アップを来す。  時間の御都合で端的に防衛庁長官にお聞きしますが、この地雷全面禁止の流れの中で、我が国が今の時点で地雷をなくせば、我が国がもし有事のときに、我が自衛隊諸君の死傷率は何%上がるのですか。
  244. 久間章生

    ○久間国務大臣 この問題を検討しますときに、自衛隊においていろいろとシミュレーションといいますか、るる検討はいたしております。その中身についてはこの場で言うのを差し控えさせていただきますけれども、死傷率ということよりも、撃破率とか、あるいは持久率といいますか、そういういろいろな形でやっておりますけれども、死傷率という形では出しておりません。
  245. 西村眞悟

    西村(眞)委員 死傷率を出さないということは無責任じゃないですか。持久するには物資の兵たんを整えればいい。しかし、現実に前線に立っている兵士が、アメリカのように三五%死傷率が上がるんだ、防御がなく、突然目の前にあらわれるわけですから。そういうことを、死傷率を計算せずにこの流れに乗るというのは、本当にガダルカナルの十字砲火の前に三八式歩兵銃をほうり込むような、同じようなものです。  それで、今、持久時間とかいろいろなことを申されましたね。ということはどういうことかといえば、地雷は防御に非常に有効な兵器なのです。つまり、敵の前進をとめるのです。そのとめた時間を利用して火力を集中できるのです。だから、少ない人数で敵を長時間食いとめることができる。だから、これがなくなれば持久時間が短くなる。しかし、短くなっては防御ができない。現在と同じ持久時間を保とうとすれば、兵力、火力、何割増強しなければならないのですか、一個師団当てにですよ。
  246. 佐藤謙

    ○佐藤(謙)政府委員 地雷の効果でございますけれども、おっしゃいますように、地雷につきましては、相手の進攻を抑制する等々、いろいろな効果を持ってございます。それがない場合どういうことかということで、いろいろな分析の手法がございます。  そういう中で、その死傷率というのも一つだろうとは思いますけれども、私どもとしては、いろいろなORをいたしまして、そういう中で一定の前提を置き、地雷がある場合とない場合で撃破率がどうなるか、あるいは残存率がどうなるかというような形で、防衛上の効力についていろいろ研究をしているわけでございます。  それで、代替手段を講じないで地雷というものが使えなければ、それだけ能力が低下するわけでございますから、そのためには必要な代替手段の開発が必要であるということで、この点につきましては、この署名に先立ちます安全保障会議におきまして、こういう御説明もし、また御了承もいただいているところでございます。
  247. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答えられなかったら答えられないと言ってくださいよ。  というのは、原発等の重要施設、また局地警備でも、鉄条網だけだったら持ちこたえる時間が少なくなる。だから、持ちこたえられる時間が少なくなるというのは、突破されるということですから、原発を爆破されるということですから、現在の能力を維持するためには兵力を上げねばならないということでしょう。(久間国務大臣「そうです」と呼ぶ)防衛庁長官、そうですとおっしゃいました。それで、そうなら支離滅裂じゃないですか。中期防を見直して減少する。我が国防衛政策は支離滅裂なことをやっておる、こういうふうに言わざるを得ない。何かございますか。そうでしょう。
  248. 久間章生

    ○久間国務大臣 いや、それだからこそ、代替手段をぜひ開発をしなければならない。それまでの間は、それにかわるべきものとして指向性散弾等を利用して、それで対処していかざるを得ないということでございまして、確かに、おっしゃるとおり、現在の状態の中で使えないということは大いなるマイナスであります。それはもうおっしゃるとおりでございます。
  249. 西村眞悟

    西村(眞)委員 今は我が国のことだけ申しましたけれども、我が国は予算にも地雷を計上しておる。したがって、我が国の地雷は、専守防衛を旨とする国民の財産と国土を守るための地雷である、この認識が前提としてある。これはまあ異論のないところでございますから、御質問をしません。兵器、また人間の使う道具は、この認識が前提にあって初めて、警察官のピストルと暴力団のピストルのいわゆる差異が明らかになる。  だから、私の考えから申しますと、我が国では毎年一万人の交通事故の死者が生じておる。一万人の交通事故の死者は、地雷で爆破される人たちと同じように悲惨だ。しかし、自動車全面禁止条約は世界で起こらない。なぜか。自動車は有用だから。こういうことです。我が国においては地雷は有用なんだ、今それは間接的にお認めになりました、水準が落ちるのですから。  次に、日米安保の根幹を揺るがしかねないのではないかという観点からお聞きします。  今お答えにくいとかいう御答弁でございましたけれども、アメリカは明確に、地雷をなくせば死傷率が三五%アップするんだ、朝鮮有事においてもどこにおいてもです。そして、代替手段の開発が重要だとおっしゃいますけれども、代替手段の開発なんて、アメリカでも三百億ドルかかるし、あしたできるわけではない。  さて、我が国は、防衛計画の大綱を平成七年に作成しまして、独力対処構想を捨てて、徹頭徹尾アメリカとの共同対処だ。防衛計画の大綱とは名ばかりで、独力対処構想を捨てた防衛計画の大綱などはあり得ないのであって、これは、我が国は保護領だということを宣言した大綱なんですね。したがって、徹頭徹尾アメリカとの共同対処だ。我が国有事ですよ。  アメリカに今頼んでいるのですか。我が国有事のときに御来援をお願いしますけれども、死傷率三五%上がるのを我慢してください、私どもの国は地雷全面禁止条約に参加しました、これで日米安保がもつのですか。また、我が国の防衛計画の大綱が本当にもつのですか。これが疑問なんです。
  250. 久間章生

    ○久間国務大臣 確かに、今回この条約に我が国が署名します場合に、安保体制上の問題、アメリカは条約に加わらないわけですから、アメリカはやれるわけですけれども、果たして条約に加盟している我が国を守るためにアメリカが使えるかどうか、そういう問題もございますから、アメリカとの関係についてはこれから先も調整を緊密にとっていかなきゃならないということで、その条約の署名に至るまでの間も何回となく日米間で会合を持ちながら、これまで、また引き続きこういう問題について調整を進めるということで進んできたわけでございます。  したがいまして、仮に使えないとなりましても、その場合どうやってそれをカバーするか、それは日米双方で研究していかなければならない問題であろうと考えております。
  251. 西村眞悟

    西村(眞)委員 アメリカは自国の軍隊の指揮権を他国には断じて譲らぬ国ですから、アメリカは使うと思いますよ。しかし、我が国は全面禁止条約に署名したんだから使えないということになるでしょう。どうしてアメリカとの共同対処が可能なのですか。この条約には国内措置を定めた九条があって、アメリカ軍と連携する我が国自衛官を、我が国は、地雷を使用するのを幇助したということで処罰しなければならないのでしょう。  こういうふうな詰めもせずに、何で、センチメンタルな、ダイアナさんが死んだとかいうムードで、我が国の国防のことを検討せずに流れてしまうのですか。これが私が今回この質問をしなければならないというふうに感じた最大のことなんです。  そしてこれは、米軍との共同対処が可能なのかどうかということ以上に、日米安保の本質的な部分に対して非常な疑念を投げかけるのではないでしょうか。  安保条約というものは、同盟国同士の、ともに肩と肩を並べて戦うという条約でしょう。肩と肩を並べて戦えないじゃないですか、我が国国内においても。どうして、安保条約の整合性を求めて、日米安保体制が極東アジアのためにも有用だという認識に立たれるのに、アメリカとの共同歩調をオタワで捨てて、のこのこ、オタワ・プロセスに残っていって、一たん脱退したのに、アメリカが離脱した後、結んでしまったのですか。これが私の最大の疑問なのです。  この点については先ほど外務大臣のお答えをいただいて、同じ御答弁をいただいても仕方がありませんけれども、防衛計画の大綱というものは専守防衛でアメリカと共同対処ですから、その代替手段がどういうことがあるかはまだわからないのですから、今のうちに見直さねばならないと私は思うのですが、どうですか。専守防衛型から攻撃型に見直さねばならないでしょう。
  252. 久間章生

    ○久間国務大臣 内部でもいろいろ議論いたしましたけれども、これにかわる代替手段を開発する、それまでの間は、先ほど言いましたような指向性散弾等を利用することによって、少しは経費がかかるかもしれませんけれども、これをカバーしていくというようなことで、防衛大綱全体は変えないでやっていけるというような結論に達したわけでございます。
  253. 西村眞悟

    西村(眞)委員 やはり、CCW、アメリカ、ロシア、中国とともに、地道に軍縮条約というものの基本を踏んで歩んでいた、あの歩みが正しかった。  このいわゆるオタワ・プロセスというものは、ICBL、民間キャンペーンはいいんです、民間キャンペーンは。悲惨なんですから。自動車の事故も悲惨なんですから、自動車全面禁止条約の締結に向けて民間キャンペーンがあればいいんです。このわき道にそれて、今我が国の防衛問題を詰めれば、私の指摘したような問題が起こっているということです。  したがって、この質問で私が申し上げたいのは、この予算委員会諸兄に対して、この条約は国会で批准してはならない条約だということを申し上げている。現実に、世界でも、あのダイアナさんが亡くなって、ノーベル平和賞だといって騒ぎまくって、百二十三カ国、これは、申しわけないですけれども、小さな国です。小さな、何か本当に名前を言ってもわからぬような国ですよ、これが百二十三カ国。その中でも批准したのは四カ国だけです。だから、これはこの条約の本質を如実に語っておるのです。  ついでに申し上げます。民間組織を非難するわけじゃないですけれども、報道されたことですから申し上げますと、ICBL、ノーベル平和賞をもらった。団体と個人にノーベル平和賞はもらって、個人はあの長野に来た女性なんですが、近くで見たら、まあそんなことはどうでもよろしいけれども、金の配分でもめておるのです。その程度のものだ。国家に対して責任を持つ、国家国民に対して責任を持つとかそういうふうなことではない。  私は、そのように強く、批准すべきでないと申し上げます。署名された大臣において、私の意見を説明申し上げるのみで御答弁は求めませんけれども、非常にこれは問題のあることだ。ただ、私は、小渕大臣が、犠牲者ゼロ・プログラム、このことを提唱されているのには非常に敬意を表します。  そしてまた、この「国際協力プラザ」を見ますと、地雷廃絶へ日本と世界の新たな連携、西田外務省経済協力審議官がこの問題にタッチされておるということはこれでわかりました。しかし、この中に書かれておるのは、残存地雷による被害をゼロにしようということばかりなんですよね。防御的な地雷をなくして、そして信管でもって時間的に一週間たてば無力化する地雷を開発した、そしてそれを保有しつつある我が国が地雷をなくせばどうなるかということをやる方じゃないのです。つまり、車でいえば、あしながおじさんとか、事故の被害を少なくしましょうというふうなセクションを担当しておられる方が、突然、自動車全面禁止の方にまで手を出してやってしまったというふうな感じですわ。  だから、私から言うならば、大臣日本には、計数は明確には言わないのが抑止力ですから言われないと思いますけれども、百万発以上あるとして、それを四年以内に廃棄しなければならない、この条約を国会が批准すれば。この廃棄費用も莫大なものがかかる。そして、代替手段と防衛庁長官は申されました、代替手段の開発にも莫大なものがかかる。我が国の地雷は、我が国の国民を守るための兵器なんですから、それをつぶすにも、代替手段を開発するにも、莫大な金がかかるのなら、その費用をもって犠牲者ゼロ・プログラムの費用に充てたらいかがですか、こう思うのですが、これはいかがでございましょうか。国会が批准しないならばです。
  254. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 既に署名をいたしましたので、国会の御同意を得て、できる限り早く批准をお願いいたしたいというのが立場でございます。  立ちました機会にちょっと申し上げたいと思いますが、今回の問題については、委員御指摘のように、日本の安全保障の問題にかかわる重要な問題という認識はいたしております。特に、日米間の問題についても、これも十分考慮しなければならぬということは承知をしておりまして、単にセンチメンタリズムでやっておるとは私は絶対考えておりません。  特に、米軍との協力につきましては、我が国においても当然でありますが、ヨーロッパ、ドイツを初めとしたNATO諸国もこれに署名をしておる、特に米国との関係を持つ国々にもそういう立場でおられるわけでございまして、そういったことを考えますと、この問題の基本と、それからそれぞれの国の生存の問題と、すべてはかってこれから対処していかなければならぬと思っておりますので、この点については十分今後とも、日米安保ということも考慮に入れながら、対処していかなければならぬと思っております。  また、死傷率の問題について触れられましたけれども、これはいろいろの見解もあると思いますが、先般コーエン国防長官が参られまして、いろいろ防衛庁長官ともお話ししました。確かにアメリカの考え方はアメリカの考え方でございますが、特に対戦車地雷を中心にして、その周辺にばらまかれる地雷の効力というものも非常に強調しておりました。  それから、飛びますけれども、ロシアが今回、エリツィン大統領も、当初はこれに署名するやに聞いておりましたが、結論的に参加されませんでした。この理由の一つには、やはり核兵器その他を貯蔵している周辺における安全保障の問題等もあったやに聞いておりまして、それぞれ、この問題に対する対処につきましては各国とも対応が異なっておるということでございまして、この点については御理解いただければありがたいと思います。  仮定の問題として、批准がされなかったらその費用を云々ということでございますが、申し上げましたように、ぜひ国会での批准をお願いいたしたいと思いますし、先生から評価されましたが、被害者ゼロのために我が国が果たさなければならない役割があると思いまして、これも総理も発言されておられますが、お約束しておりますが、百億円の基金を世界に、それぞれの地域に、その除去のためにも五年間にわたってこれを使用させていただく等々の努力を通じながら、責任を果たしていきたい、こう考えております。
  255. 西村眞悟

    西村(眞)委員 お話、よくわかりました。  対戦車地雷について触れられましたけれども、対戦車地雷は対人地雷がないと全く無益無能ですから。つまり、人間が踏んでも爆発しませんから、対人地雷がないと対戦車地雷は容易に撤去できる、したがって無力なんです。  それで、やはりこれは、私は熟慮した上で一議員として申し上げますと、この条約は、我が国国会は批准すべきではないのだろう。現実に四カ国しか批准していない。こういうことがある。現実に防衛のこと、オタワ・プロセスの流れを見ますならば、各国は、真に防衛ということを、カナダのように考える必要のない国か、それとも防衛を考える暇がなかった、そういう国が締結しているのだろうと私は思います。  それから一つ、あと、対人地雷のことで私が思い当たるのは、離島防衛というのは、やはりスキャタードマインというか散布地雷、そして散布されたら、上陸予定二日前に散布すれば、スイッチを押せば三日間で爆発して、後は無力化する、そういう地雷があれば、あらなければ我が国の人数では守れないな、こう思っているのですね。  それで、中国は、御承知のとおり、台湾武力解放をあきらめておりません。台湾を武力侵攻するシナリオは、台湾の西海岸、台北の高さ、緯度にある西海岸に上陸する。そして、台湾軍の防御戦略は、反対側の東海岸にある無傷な基隆付近からのいわゆる防御軍を迂回させて、上陸軍の腹を突くという防御戦略なのです。ただ、基隆沖百七十五キロにある尖閣諸島に中国軍が基地を置けば、基隆から迂回して台湾上陸軍の腹を突く台湾軍の腹を、尖閣諸島からのいわゆる部隊で突くことができるわけです。つまり、尖閣諸島は台湾海峡の運命を左右する橋頭堡なのです。  そして、どういうことを言いたいかといいますと、台湾も欲しいし、中国も欲しい。しかし、どちらかがとれば東アジアに動乱が起こる。したがって、我が国は断固として、尖閣諸島の実効支配を確実に自信を持って国際社会に明示し続けなければならない、このように思います。  したがって、私が「正論」二月号で読んだことで非常に気がかりなことがある。我が国は尖閣付近へのスクランブルを自粛している。我が国領海に国籍不明機が侵入するということに対してスクランブルをしないというふうな報道がなされて、報道というか論文があるのです。それで、スクランブルはなされておるのでしょうか。  また、総理大臣に、今私が尖閣ということを申し上げて、それがなぜアジアの動乱を回避するために日本が支配しなければならないのかということを申し上げました。このことについて総理の御認識をお伺いしたいのです。それから、スクランブルをやっておるのか、やっていないのか。
  256. 久間章生

    ○久間国務大臣 委員も御承知と思いますけれども、我が国固有の領土であるということで有効に支配しておることから、自衛隊としても、領空侵犯機に対して、自衛隊法八十四条に基づき、対領空侵犯措置を実施しているところであります。
  257. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 我が国の固有の領土として、現に実効上支配をしている地域、そして今後ともその姿勢を変える必要のない場所と、そのように思います。
  258. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
  259. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 これにて西村君の質疑は終了しました。  次に、春名直章君。
  260. 春名直章

    春名委員 日本共産党の春名直章でございます。橋本総理には初めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  総理は、施政方針演説の中で、不祥事を繰り返す土壌を根本から改める、こういうふうにお述べになりました。今資料を配らせてもらっております。それで、どうすれば不祥事を繰り返す土壌を改めることができるか、この問題に絞って質問をさせていただきたいと思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕  第一は、贈賄銀行、この疑惑の銀行に対する総理自身の姿勢の問題でございます。  一昨日の志位書記局長の贈賄銀行に資本を注入することが許されるのかという質疑に対しまして、総理は、贈賄問題は司直の手で裁かれる問題である、十三兆円の投入の基準は審査委員会がお決めになる、このように人ごとのような形で言われて、みずからの姿勢は明らかにされませんでした。  私は、贈賄銀行に対する政府最高責任者の総理としての姿勢が今問われていると思います。  接待をやって粉飾検査をやる、不良債権の無税償却等々、甘い汁を吸ってきたようなそういう銀行、また深くかかわってきた大蔵省、本当に根が深いと思いますが、総理は、贈賄側の銀行の方に対する重大な責任、これについてはどういう認識をまず持っていらっしゃるのか、このことをお聞きをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。(橋本内閣総理大臣「贈賄側の銀行に対する……」と呼ぶ)失礼、銀行についての、銀行の責任をどのように感じていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたい。
  261. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、審査委員会というものを公正中立なものとしてつくる以上は、そこの判断にゆだねる。どういう介入の仕方であれ、政治が介入することはよくないと思っております。そして、そういう考え方を申し述べました。  贈賄、確認しますが、贈賄側の銀行に対してどうかということですね。(春名委員「どう思っておられるかということです」と呼ぶ)これはもちろんけしからぬと思いますし、だからこそ、司直の手できちんと裁かれるべきは裁かれるべきと申し上げております。
  262. 春名直章

    春名委員 まことにそのとおりなんですけれども、私、その問題で一つ具体的に問うてみたいと思うのですね。  今回資本注入の対象となる一つの銀行で、第一勧銀がございますけれども、総会屋への利益提供問題などで既に大蔵省として行政処分をしているわけであります。  大蔵省のどなたでも結構なんですが、その中で、国内の営業所、海外営業拠点の新設、設置それから国内及び海外における新たな業務の展開、これを中止するという行政処分を既にされています。この中止の期間はいつか、御存じの方、ちょっとお答えいただけますか。
  263. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の行政処分は、今申された点につきましては、ことしの八月五日までの間でございます。
  264. 春名直章

    春名委員 今少し総理が席を立たれましたけれども、今お聞きになったとおり、この八月五日まで既に大蔵省として行政処分を科しているような銀行もあるわけです。そして、きのうお決めになった審査基準では、都銀十行は基本的に十三兆円の資本注入の対象銀行、全部で十八行で約二兆円近い公的資金を受け入れる、この中に当然、第一勧銀も入ると思います。  総理がおられないので、大蔵大臣にお願いしたいのですけれども、例えばこういう銀行にも公的資金が入る、私はこれはどう考えてもおかしいなと。公的支援どころか、あなた方がペナルティーを科せる対象だと私は思うのですね。そういう立場で臨むべきではないでしょうか。大蔵大臣の御見解を伺いたいと思いますけれども、どうですか。
  265. 松永光

    松永国務大臣 銀行自体が違法行為をしたことによって行政処分を受けておるのが第一勧業銀行だと思います。  そういう銀行に対する措置が審査基準ではどうなっておるのか、私はつまびらかではありませんが、きのう決められた基準によりますというと、不祥事のあった銀行、ただそれだけで受け付けの対象から排除するというようなことはしない。  ただしかし、同時に経営の健全性確保ということがあるわけでありまして、銀行が、その社会性、公共性を踏まえた適切な経営理念を明確に示すということが条件づけられております。  したがって、不祥事を起こした金融機関について、行政処分等が存続しておれば別ですけれども、そうでない場合については、当然のことながら、不祥事の再発防止等々のための、まじめなといいますか、真剣な措置が経営理念の中に盛り込まれてくるはずだと思います。そういった点を審査しながら、審査委員会で判断されるものだというふうに私は理解をしております。
  266. 春名直章

    春名委員 私はそのことはよく知っております。現在でも既に政府の手で処分をしている銀行もあるということも、今明らかにしました。その上で、処分をするような対象になっている銀行にも、まあ審査の基準からいえば二兆円の資金が入っていくわけでしょう。私、これがどうしても解せないといいますか、納得できないということを申し上げているわけです。  とりわけ、先ほど言われましたけれども、公共性が高いわけです、銀行は。私は、一般企業にも増して厳しい倫理や対応が求められているというふうに思いました。  銀行法をいろいろ、私ここに持ってきて、読ませていただきましたが、この銀行法の第二十七条に、「銀行が法令、定款若しくは法令に基づく大蔵大臣の処分に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、」大蔵大臣が、その銀行に対して、免許取り消しや業務停止命令を命じることができるという規定がございます。御存じのとおりです。  この二十七条解説は、大蔵省の銀行局の方や東京国税局の方が書いた本なんですが、この解説を読みますと、公益侵害の程度が極めて重大であるときは、その銀行の信用を毀損して、ひいては社会一般の金融機関に対する信用を揺るがせる。信用秩序に対して重大な影響を及ぼすことになる。このような事態においては、銀行の信用を回復して信用秩序の維持を図ることが喫緊の課題となる。だから、本条の処分を設ける趣旨は、このような観点から、重大な法令違反等をした銀行に対し、制裁を加え、業務運営態度の矯正を期すとともに、法令違反等の状態を速やかに排除しようというのがこの条文の目的である、こういうふうに明確に述べていました。  私、これを読んで、なるほどなと思いました。皆さんは、金融システムの安定ということがまず第一だということでずっと言ってこられました。しかし、この条文の精神を私なりに見ますと、こういう公益を侵害するひどいことをやったときには、まずやるべきことは、きちっとした制裁を加える、処分をやって、そのことを通じて一刻も早く信用を回復し、信用維持に努めていく、これが大事なんだ、法律でもそういう立場で書いてあるわけです。  私は、こういう精神からいっても、今やろうとされていることは、残念ながら逆の方向に進んでしまっているんじゃないかと感じるわけであります。金融システムの安定というのであれば、信頼を取り戻すことがどうしても必要だと思います。倫理なき体力増強だという批判の声も起こっています。  総理、そういう銀行法の精神とか一緒に考えていただいて、今やっているこういうやり方は本当に許されるのか。今、審査基準で厳正にやられると言いましたけれども、総理自身の政治姿勢、そのことを私は問うているわけでございまして、もう一度御答弁をぜひいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  267. 松永光

    松永国務大臣 私、先ほど申し上げましたのは、銀行が法令に違反した場合には銀行法二十六条、二十八条で厳しい行政処分がなされる。現に、第一勧銀についてなされたわけですね。それはそれでございます。  銀行の職員に何かの非違があった場合にどうするかということについては、現在起こっている事柄は検察当局で厳正な捜査が続いていることでありますので、この点については発言することを差し控えさせていただきますけれども、銀行の職員がやった非違と銀行そのものがやった違法行為とが少し、処分する場合の銀行法の二十六条、二十七条の処分の対象は違ってくるのじゃないかな、こういうふうに思います。
  268. 春名直章

    春名委員 私はそのこともよく知っているつもりです。職員がそういうふうにやった場合ですね。  しかし、今世間が大問題になっているのは、これはぐるみでやっているのだということが一番問われているわけでしょう。MOF担の資料を出してくださいと言ったら、七百九十四名でしたが、そういう数が出てきましたけれども、これは企画部に所属している数ということなんですけれども。だから、一人の人が勝手に独自にやるということなんかはあり得ないわけです。銀行全体でやってきたわけですよね。  でも、今それが逮捕されているかといったらそうではないから、すぐにというふうにならないかもしれないけれども、しかし、そういう政治的、道義的な今問題が問われておると私は思うのです。こういうやり方をやっておいて、一方で不祥事を繰り返す土壌は改めていくのだと言っても、なかなか実現できないのじゃないかと私は指摘をしておきたいと思います。  そこで、特にきょうお聞きしたい問題なんですけれども、不祥事を繰り返す土壌、つまり構造を断ち切っていくという問題について議論をしてみたいと思います。  今、資料を三枚のつづりで配らせていただきました。それを見ていただけたらありがたいのですが、やはり構造を断ち切っていくということを考える場合に、大蔵省と金融機関との根深い癒着の関係、いろいろ指摘もされ当委員会でも議論されてきましたけれども、このことを本当に断ち切っていくという確固とした政治のイニシアチブが今本当に求められていると思います。  その第一が、やはり天下りの問題でございます。  それで、私注目をしまして、松永大蔵大臣が二十四日の当委員会の質疑で、深谷議員だと思いますけれども、お答えの中で、今後は、少なくとも大蔵省があっせんするとかあるいは多少圧力はかけて派遣するとか、そういった弊害を生みかねないやり方というものは、これは自粛をしていかなきゃならぬ、こういうふうに私は思いますとおっしゃいましたよね。そのとおりです。  それで、それを聞きまして、私はまず疑問を呈したいのですけれども、こういう御答弁をされるということは、天下りが大蔵省でいわば組織的に行われているということを言っているのでしょうか。そのことを御答弁いただけますか、大臣
  269. 松永光

    松永国務大臣 大蔵省の職員が、人事の刷新とかあるいはまた人事の若返りとかあるいは人事の活性化とか、そういったことから、定年までおらずに途中でやめて民間に行くというのがいわゆる天下りということで言われることであるかもしれませんが、問題は、その民間企業への就職というものはやはり人事院の規則その他にのっとってなされなきゃならぬことでありますし、基本的にはその人と企業との間の個人的な雇用契約関係になるわけだと思います。  ただ、その場合に、大蔵省の方が、監督権限その他に基づいて圧力をかけて、これを採れ、こういったやり方は好ましくない、こういうふうに私は申し上げたわけであります。  ただ、大蔵省の職員だった者が退職後どこにも仕事ができないなどということもこれまた大きな問題でありますので、そこで、その点につきましては、総理のリーダーシップのもとで、公務員の一定年齢後の働き場所の、仕事口の問題として今検討がなされておるわけですね。その検討の結果をしっかり受けとめて、そして対応していくのが妥当であるというふうに思います。
  270. 春名直章

    春名委員 今おっしゃった話で、圧力をかけてやるのはだめだというふうにおっしゃったのですが、実際にそういうことがあるのですか。それを一言言うてください。
  271. 松永光

    松永国務大臣 私はないと思うのですけれども、あってはいかぬ、こう言ったわけです。
  272. 春名直章

    春名委員 一つ例を言いますけれども、九六年、ちょっと古くて恐縮なんですが、新聞の記事なのでこれを全部私はうのみにするつもりはないのですけれども、十月二十三日の朝日新聞にこんな記事が出ていたのですね。ことし春、東京近郊の中堅製造会社に税務署の担当職員が訪れ、社長にこう切り出しました。退職する幹部を二年契約で顧問税理士にしていただきたい。二年後にはまた別の人をお願いしたい。そのかわり、というのは私の言葉ですけれども、そのかわり、五年間は税務調査はしませんというような記事が出ていたのです。  これがどうかということはありますよ。例えばそういうことがまことしやかに新聞で語られているというようなことがあるわけで、私は、そういうことを知っていらっしゃるので、こんなことはやったらいかぬというふうにこの間の質問で言われたのじゃないかなと思ったわけであります。  それで、私もう一つ、今の資料をちょっと見ていただきたいのですけれども、三枚配らせてもらいました。一枚目の資料は有価証券報告書より作成をした資料でございます。二ページ目、三ページ目は、ことしの二月に大蔵省から当委員会に提出していただいた資料をちょっと整理し直してつくったものでございます。  この三枚の資料で、なるほどなと、つくっている間に思ったわけであります。二つほど特徴がございまして、一つは、いわゆる指定席といいますか、そういうふうになっているというところが幾つか浮かび上がってまいりました。  旧東京銀行の場合は、合併する前まで、これは一番上を見ていただければわかるのですが、会長職は大蔵省の財務官から、常務、専務は日銀の人事局から順送りにポストにはまるというふうに大体なっておるわけです。  それから、一ページ目の三番目の横浜銀行、これはよく言われていることですけれども、歴代の事務次官が頭取、会長を、これは二十年間の表ですけれども、独占しているというのが出ているわけであります。  それから次の、ページをはぐっていただいて二ページ目に、これは大蔵省離職者の主な天下り指定席ポストということで、主なというふうに言っていますので幾つか除いているところもございますけれども、先ほどの資料をもとにつくったものですけれども、例えば一番上の日本損害保険協会副会長、それから国民金融公庫副総裁、ここは歴代、国税庁の長官の指定席というふうに、残念ながらといいますか、大体なっているのが浮かび上がってきました。  そこで、大臣、もう一つお聞きしたいのですけれども、要するに、圧力をかけてやることもだめだ。再就職の問題だから最終的には個人とその会社との契約でやっている。しかし圧力をかけるようなやり方とかあっせんをどんどんやるとかというようなことは戒めなきゃいけないとおっしゃったのですが、私、それよりも、そんな甘いものじゃないというふうに思ったのですよ、これを見て。  つまり、指定席化しているということは、順送りに、組織的にやらないとこんなことはできないのじゃないでしょうか。だから、私は、組織的にやられているのではないかと最初にお尋ねをしたのですけれども、この点はいかがでしょう。
  273. 松永光

    松永国務大臣 組織的ということを私は言い切るほどの自信はありません。大蔵省の上の方の仕事をやっていて、相当見識もある、顔も広い、こういう人を我が社に迎えれば我が社のためにプラスになるだろう、こういったことで、企業と本人との間の交渉というか、それで決まるのではないかなというふうに思っておりますが、甘いですかな。
  274. 春名直章

    春名委員 大臣が甘いかなと言われるとは思いませんでしたので、済みません、私は思わず笑ってしまいましたけれども、確かに甘いんですよ。  それで、これ、もう一つ、私つくってみておもしろいなと思ったんですけれども、この二ページ目、三ページ目を大体俯瞰して見ていただければ、満遍なく行っているんですよ、これ。それから、三ページ目の表は、過去十年間に二名の大蔵省本省課長相当職以上の職員が天下っている天下りリストなんですけれども、これは、大体右斜め下へこういうふうに線が入るような感じになるでしょう。  言うたら、これはどういうことかといいますと、順送りに満遍なく、かちゃっかちゃっかちゃっと、二年間ないしは、まあ大体これを見たらわかるんですが、おおむね二年から三年ごとに新しい離職者が満遍なく天下っていく。言えば、ポストを振り分けていくというようにこの表では移っているわけですね。私がうがった見方をしているんでしょうか。  しかし、それぐらい、今までマスコミでも百六十四名、多いなとか、きのうも霞桜会の話が出たりとかいろいろ出ましたけれども、数も多いということはお認めになっていますけれども、私は、数だけではなくて、その質の問題だと思うんですよ。こういう形で満遍なく、まあ私から言わせてもらえば退職管理をするような形で、どんどんどんどん指定席もつくって送っていく、そういうことがもしやられていたら、まさに、大蔵支配と言ったら変ですけれども、そういうことにも行き着く、そういう問題じゃないでしょうか。  だから、大臣、甘いというふうにおっしゃったけれども、そこらあたりのところを、本当に私は、きちっと調べてといいますか、大蔵改革というのであればこういう問題にも本当にメスを入れることが大事なんじゃないでしょうか。  そのことについて、この表も参考にしていただきながら、ぜひ御意見をいただきたいと思うんですが、例としてもう一つだけ言っておきますと、これも朝日新聞ですけれども、こういう例を言っていました。  大蔵省の秘書課長から、国税局OBの方が顧問先の世話が必要かというふうに言われて、その方は、別のOBの税理士が大蔵省の秘書課長のところに、顧問先の任期が切れるからまたよろしくとよく訪ねているのを見ていておかしいなと疑問を感じていたので、顧問先の世話は必要かと言われたけれども、それは断りました。そんな話も出ているんですね。フィクションかどうかわかりませんけれども。  本当に、そういうことでいいますと、退職管理と言われるような順送り、指定席のようなやり方、こういうところにやはり目を向けて、最終的には個人の問題だというようにしないできちっと解決していく、必要な政治のイニシアチブを発揮していくということが私は問われているように思います。  総理、そういう、私のつくったつたない表ですけれども、見ていただきながら、こういう問題についてどうでしょうか。
  275. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 むしろ私は逆に、よくこれをつくられたなと、率直にそう感じました。そして、それぞれのところのこの線の引き方を見ておりまして、なるほど議員が言われるような疑問を世間が持っても仕方のない部分がこういうところにあるんだなというのを、改めてこの表を見ながら感じた次第です。  そして、先ほど来大蔵大臣がお答えをしておりますように、今の公務員制度のもとで、一定の年齢で退職が始まってしまう、そういう中で、その人々がそれでは公務員時代の収入だけで終生生きていけるのかといえば、第二の人生は求めざるを得ません。そして、私は、その場合に、民間企業も含めまして、再就職というものが、行政権限を背景としてその職員の再就職というものを受け入れ側に強要するものであってはならないというのは、これは当然のことだと思います。そして、退職公務員の再就職というものが、在職中の能力あるいは経験を再就職先の活動に活用するために両者の合意に基づいて行われているもの、そういうふうに従来から申し上げてきました。  しかし、この天下り問題というのが行政と業界の癒着あるいはもたれ合いの原因になっているという批判があることも事実ですし、その批判を私も承知しています。そこで、実は先般、官房長官を通じまして、この天下り問題に関連した公務員制度などの見直しについて、政府部内においての速やかな検討を指示したところです。  率直に今の状況をそのとおり申し上げておきたいと思います。
  276. 春名直章

    春名委員 公務員制度見直しとかも、事前に私もレクを聞きまして、どんなことをされているのかよく教えていただきました。それで、そういうことを実らせるためにも、私は非常に危惧の念を抱いているのは、こういう組織的なやり方をやっているのであれば大問題ですから、そこのところは大蔵大臣先頭に、ぜひ大蔵改革の重要な柱なんだということでやっていただきたい。  そして、私は、日本共産党としては、省庁の局長部長クラスは、離職前五年間の職務と指導監督関係にある業者あるいは契約関係にある業者や団体、これには永久に天下りしてはならないということを軸にした法案も前回提案もさせていただいております。抜本的な対策をぜひとっていただきたい。厳しく要求させていただきたいと思います。  そして私、次に、きょう問題提起をしたいのは、こうした組織的な、まあ組織的というふうに言うかどうかは別にして、天下りを核にして金融業界や大蔵省がやっぱり深く結びついている一つの例として、親睦団体というものをちょっとお話ししたいと思うんです。  我が党の佐々木憲昭議員が大蔵委員会で、大蔵省検査部の現役とOBが一体となって霞桜会というのをつくっているということを問題にしました。これは幾ら何でもひどいじゃないかということで、大蔵大臣は、検査部の現役とOBが一緒になるのはまずいということをお認めになったわけであります。  きょう、私はここに大蔵同友会という組織の名簿を持ってきたわけです。この大蔵同友会というのは一体どういう組織か。ちょっと、しゃれじゃないんですけれども、どういう組織か、これを説明していただけますか。
  277. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 大蔵同友会は、大蔵省を退職いたしました者が任意でつくっている親睦団体でございます。会員数は現在約一千名程度と承知しております。
  278. 春名直章

    春名委員 それで、任意でつくっているということを言っているんですけれども、その例会、総会、年何回ぐらいやられているか、それから、現職の幹部はこの例会、総会に参加しているのかどうか、これをお答えください。
  279. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 大蔵同友会は、会費制で年三、四回程度の会合を開いております。そのほか年数回のセミナーを開いているというふうに承知しております。ここに現役職員が参加しているかどうかというお尋ねでございますけれども、意見交換をするといったような目的で幹部職員が出席することはございます。
  280. 春名直章

    春名委員 総数は千十九名なんです。この中で金融機関に再就職されているのを見たら百七十三名いらっしゃいます。現役国会議員が二十四名いらっしゃいます。現役の大蔵委員の方が三名ともとが十五名で、もとを入れますと合計十八名なんですが、そういう組織なんですね。それで、事務局も財政経済協会という大蔵省の所管の財団法人に置かれています。  このことを知っておいていただきたいと思いますけれども、もちろん知っていると思いますけれども、こういう組織なんだということ。年四回、大体局長部長クラスがこれに参加をされているということを聞いております。現職も参加しているのですね、名簿には載っていないけれども。  それから、もう一つ聞きますけれども、各地方財務局のOBとその管内で居住している大蔵OBが集まってつくっている、そういう親睦団体の名簿も、私、名簿を集めるのが趣味じゃないのですけれども、集めてきました。近畿管区でなにわ会会員名簿、四国で四国財友会、それから東海でそとぼり会というのがあります。恐らくそれぞれのところの管内に全部こういうのがあるのじゃないかと思うのですが、こういう組織があるということは大蔵大臣は御存じだったでしょうか。
  281. 松永光

    松永国務大臣 存じません。
  282. 春名直章

    春名委員 それで、これはなぜ問題にしているかというと、親睦団体だからいいじゃないかということになるかもしれないのですけれども、この中の名簿は、特別会員という規約がありまして、特別会員は現職の幹部なのです。それで、重大なことは、なにわ会でいいますと、総勢三百二十八名中、金融機関に現職、今おられるのが八十七名、東海のそとぼり会では三百九十五名中、金融機関の現職が八十一名、四国の財友会では二百四十九名中、現職、金融機関にいらっしゃるのが五十五名。大体、聞いてみますと、年一回総会を開催して、親睦会やゴルフなどをやられる。そとぼり会の場合は、懇親会に次長、部長、課長クラスが出席するということもお聞きをしております。  私、なぜこういう四種類も名簿を持ってきて言ったかといいますと、親睦一般が悪いと言っているのじゃありません。しかし、九六年の十二月二十六日に例の公務員倫理規程を設けられまして、関係業者との間で次に掲げる行為はやってはならない、接待を受けること、会食やパーティーに参加すること、スポーツを含む遊技、旅行をすること、こういうことはやってはならないということが規定をされて、そしてこの規程が十分守られていないということで倫理法ということが今問題になっている。  現職の幹部が特別の会員として正会員になって、そしていろいろな交流をする、そして、そこにはOBとして金融機関の役員の人たちもたくさん参加をしている、そういう会合なんですよ、これは。だから、大蔵同友会というのが千十九名おられる、それから、各ブロックごとにもそういうことがつくられているということになっているのですね。  そして、これは、倫理法をつくるまでもなく、倫理規程そのものにも抵触するような中身が含まれておると思うのですよ。そういう点からやはり、こういうことは、初めて聞かれたという話もありますけれども、実態をしっかりお調べになって、抵触しているようなことがあれば正していくという姿勢が断固必要だと思いますので、そのことを申し上げているわけです。大臣、いかがでしょう。
  283. 松永光

    松永国務大臣 今申されたことは、私はみんな初めてのことでありますから、事務方の方からどういうことになっているのかよく聞いてみます。
  284. 春名直章

    春名委員 幾つか名簿も寄せさせていただいて問題にしてきましたけれども、やはりこういう世間から見ても癒着じゃないかと思われるようなものがいろいろな形で出てきているわけでありまして、少なくともそういう会食をしたりとかいうことはだめなわけでしょう、現職の銀行の役員の人などが一緒に参加をすると。そういうことに照らしても、今お話が出ましたけれども、きちっと調べていただきながら、本当に癒着をなくしていくという観点から立ち向かっていくことが求められておると私は思います。  それで、時間が来ましたので、最後の問題で総理に少しお聞きをしたいと思います。  私、この癒着を断ち切っていくというか、そういうことを考えたときに、どうしても行き着かざるを得ないなと思うのは、こういう癒着や不祥事を正すやはり政治家の問題がどうしても問われていると思います。政党や政治家が業界などとの癒着の関係をきっぱり断ち切ってこそ、不祥事をなくすリーダーシップを本当に発揮できると思います。  そこで、銀行からの献金のことについて私はお聞きしたいと思うのですけれども、総理は、この問題では、この間繰り返し、銀行からの献金を自粛します、ただ、借入金返済に充てる分は除くというふうにおっしゃってまいりました。この事実はもうよくわかりましたので、私は、問題は、借入金の返済に充てる分であっても、二十四日の議論の中でこれは政治資金だということもはっきりしましたので、この点で、こういう献金もきっぱりやめるという決断をぜひ下す必要があるのじゃないでしょうか。その点いかがでしょう。
  285. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これが政治資金規正法上寄附に当たりますことは以前から私も認めておりますし、自治省からもそういう答弁が行われたと承知しております。そして、過去の借入金の返済に充てますために、平成七年からの計画として、各方面から御協力をいただく政治資金を我が党の経費に充てるため通常の献金に関する一般会計に入れており、両者は性格が異なるものとして全く区別して扱われているものでありますので、そのように御理解をいただきたいと存じます。
  286. 春名直章

    春名委員 その意見はやはり通用しないということがこの間議論されているのじゃないのですか。九六年でも、第一勧銀などから千八百四十八万円、拓銀から千八百二十四万円、都銀十行で一億八千四百六十五万円、借入金返済ということで献金を受け取られている。これらの銀行は、今度資本注入を受け入れる銀行になるわけです。  それで、私、少し調べてみたのですけれども、政治資金規正法ですね。政治資金規正法の二十二条三の二項というのがありまして、これはそのまま読みます。「国から資本金、基本金その他これらに準ずるものの全部又は一部の出資又は拠出を受けている会社その他の法人は、政治活動に関する寄附をしてはならない。」という文章がございます。国から資本金、基本金などを受け取っている会社その他の法人は、政治活動に関する寄附をしてはならないという文章であります。  この規定からいいますと、資本注入を受けているそういう銀行は、政治献金をしてはならないということになるのじゃないでしょうか。当然そういうものを借入金の返済に充てるからといって受け入れることも私はできないのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょう。
  287. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 御指摘のように、政治資金規正法の二十二条の三の第二項には、ただいまお話ございましたような規定が置かれておりますが、今回の預金保険機構を通じましてのスキームがこの規定に該当するのかどうか、私どもも制度仕組みを詳しく存じておりませんけれども、一見した限りにおきましては、直接この規定に触れるというようなことにはならないのではなかろうかというふうに考えております。
  288. 春名直章

    春名委員 わからないなんていうのは大問題ですよ。わからないのにそんな結論出すなんて大問題じゃないですか。ちゃんと二十二条の三の二項というのはそういう条文になっていて、そういう抵触する可能性があるのじゃないかと言っているのです。  ちょっと時間がなくなりました。  それで、私が言いたいのは、いいですか、今度資本注入をするというようなことは初めてのケースなんです、銀行に対して。そうでしょう、初めてのケースなんです。だから、法律の中に、そういう銀行からというようなことはなかなか書けない。書いてないわけです、当然。しかし、法律の精神というのはそういうもので、これは、そういうところからお金をもらってはいけないということの精神をこの中身でしっかり私は受け取っていただきたいと思うのです。
  289. 越智通雄

    越智委員長 質疑時間が終了いたしました。
  290. 春名直章

    春名委員 国から出資を受ければ会社は国と特別な関係をつくることになる、そういう会社からの寄附は不明朗な政治献金となるおそれがある、だからそんな会社は寄附をしてはならない、この精神を守ろうと思えば、公的資金を投入された銀行からの献金は、私は許されるものではないと思います。その点を、総理、ぜひ最後に御見解をお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  291. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 政治資金規正法の二十二条の三の第二項は、国から直接出資とか拠出を受けた法人の寄附を禁止しているわけでございまして、今回のスキームの場合は、この規定に直接該当しないのではなかろうかという理解をしているわけでございます。
  292. 春名直章

    春名委員 こんなことでは全然納得できないということを申し上げて、質問を終わります。
  293. 越智通雄

    越智委員長 これにて春名君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る三月二日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十一分散会