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1998-01-19 第142回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年一月十九日(月曜日)    午前九時開議  出席委員    委員長 松永  光君     理事 伊藤 公介君  理事 石川 要三君     理事 西田  司君  理事 深谷 隆司君     理事 山本 有二君  理事 五島 正規君     理事 高木 義明君  理事 北側 一雄君     理事 加藤 六月君        相沢 英之君     江藤 隆美君        小澤  潔君     越智 通雄君        大原 一三君     河村 建夫君        栗原 博久君     桜井  新君        桜田 義孝君     菅  義偉君        関谷 勝嗣君     津島 雄二君        戸井田 微君     東家 嘉幸君        中川 昭一君     中山 正暉君        野中 広務君     葉梨 信行君        萩野 浩基君     増田 敏男君        村田 吉隆君     村山 達雄君        吉田左エ門君    綿貫 民輔君        伊藤 英成君     石井  一君        岩國 哲人君     生方 幸夫君        岡田 克也君     海江田万里君        小林  守君     原口 一博君        松沢 成文君     山花 貞夫君        石田 勝之君     上田  勇君        草川 昭三君     斉藤 鉄夫君        西川 知雄君     冬柴 鐵三君  鈴木 淑夫君     中井  洽君        西村 眞悟君     木島日出夫君        志位 和夫君     春名 直章君        矢島 恒夫君     上原 康助君        北沢 清功君     中川 智子君  出席国務大臣         内閣総理大臣    橋本龍太郎君         法務大臣      下稲葉耕吉君         外務大臣      小渕 恵三君         大蔵大臣      三塚  博君         文部大臣      町村 信孝君         厚生大臣      小泉純一郎君         農林水産大臣    島村 宣伸君         通商産業大臣    堀内 光雄君         運輸大臣      藤井 孝男君         郵政大臣      自見庄三郎君         労働大臣      伊吹 文明君         建設大臣      瓦   力君         自治大臣         国家公安委員会         委員長       上杉 光弘君         国務大臣         (内閣官房長官)  村岡 兼造君         国務大臣         (総務庁長官)   小里 貞利君         国務大臣         (北海道開発庁長官)         (沖縄開発庁長官) 鈴木 宗男君         国務大臣         (防衛庁長官)   久間 章生君         国務大臣         (経済企画庁長官) 尾身 幸次君         国務大臣         (科学技術庁長官) 谷垣 禎一君         国務大臣         (環境庁長官)   大木  浩君         国務大臣         (国土庁長官)   亀井 久興君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房人事課長    洞   駿君         内閣法制局長官   大森 政輔君         内閣法制局第一         部長        秋山  収君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長        田中 正章君         総務庁人事局長   中川 良一君         防衛施設庁長官   萩  次郎君         防衛施設庁施設         部長        首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長        塩谷 隆英君         経済企画庁調査         局長        新保 生二君         科学技術庁長官         官房長       沖村 憲樹君         沖縄開発庁総務         局長        玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長        若林 勝三君         国土防災局長    山本 正堯君         法務省刑事局長   原田 明夫君         外務省アジア局長  阿南 惟茂君         外務省北米局長   高野 紀元君         外務省条約局長   竹内 行夫君         大蔵大臣官房長   武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長     原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官      溝口善兵衛君                 大蔵省主計局長   涌井 洋治君         大蔵省主税局長   薄井 信明君         大蔵省証券局長   長野 厖士君         大蔵省銀行局長   山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長       福田  誠君         大蔵省国際金融         局長        黒田 東彦君         国税庁次長     船橋 晴雄君         文部大臣官房長   小野 元之君         文部省教育助成         局長        御手洗 康君         農林水産大臣官         房長        堤  英隆君         林野庁長官     高橋  勳君         水産庁長官     嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長      江崎  格君                 運輸省鉄道局長   小幡 政人君         郵政大臣官房総         務審議官      濱田 弘二君                 労働大臣官房長   渡邊  信君                 労働省職業安定         局長        征矢 紀臣君         建設省道路局長   佐藤 信彦君         建設省住宅局長   小川 忠男君         自治大臣官房長   嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官      香山 充弘君         自治省行政局公         務員部長      芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長       牧之内隆久君  委員外出席者         参考人         (日本銀行総裁)  松下 康雄君          予算委員会専門員 大西  勉君     ───────────── 委員の異動 一月十九日  辞任           補欠選任   大原 一三君       戸井田 微君   桜井  新君       吉田左エ門君   葉梨 信行君       桜田 義孝君   岩國 哲人君       石井  一君       小林  守君       伊藤 英成君   草川 昭三君       冬柴 鐵三君   西川 知雄君       石田 勝之君   志位 和夫君       春名 直章君   不破 哲三君       矢島 恒夫君   上原 康助君       北沢 清功君      北沢 清功君       中川 智子君 同日  辞任           補欠選任   桜田 義孝君       葉梨 信行君    戸井田 微君       菅  義偉君   吉田左エ門君      桜井  新君   伊藤 英成君       小林  守君   石井  一君       岩國 哲人君   石田 勝之君       西川 知雄君   冬柴 鐵三君       草川 昭三君   春名 直章君       志位 和夫君   矢島 恒夫君       不破 哲三君   中川 智子君       上原 康助君 同日  辞任       補欠選任   菅  義偉君  大原 一三     ───────────── 一月十九日  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計補正予算(第1号)  平成九年度特別会計補正予算(特第1号)  平成九年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ─────◇─────
  2. 松永光

    松永委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計補正予算(第1号)、平成九年度特別会計補正予算(特第1号)、平成九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤英成君。
  3. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 新党友愛伊藤英成でございますけれども統一会派民主友愛太陽国民連合民友連を代表して質問をいたします。  まず最初に、総理にお伺いしますけれども、先週、私ども統一会派民友連の六人の党首が、今日の厳しい経済情勢を踏まえまして、今後の景気対策あるいは金融不安対策等について総理会談をし、提言あるいは要請等をしようといたしましたところ、総理の方からは、その党首会談についてお断りになられました。  私としては、今、日本状況がこのように本当に厳しい状況のときこそ、党の責任者が十分に話し合うことが重要だ、こういうふうに思うわけでありますけれども、そういう意味で、お断りになられた総理の姿勢に対して、私としては極めて残念に思ったわけであります。  いかがでしょうか。あるいは、今後、そういうことをまたお考えになられるというおつもりはありますか。どのように思いますか。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 多少ちょっと事実に相違があるように思いますけれども、私も民友連党首から会談のお申し入れをいただいたことは承知をいたしております。  ただ、私の記憶では、当日、本会議等、時間が既に決定をいたしまして相当日程が詰まっておりました中で、やりくりをしてごあいさつを受ける時間を用意したと私は記憶をいたしております。しかし、短時間のあいさつではということになり、取りやめになったというふうに私は承知をいたしております。  予算委員会を初めとして、国会で活発な御論議民友連方々と行う、これは当然のことでありますし、当然のことながら、民友連との政策対話について異論があるわけではございません。そして、民友連を代表される方と私との会談を初めとして、さまざまなレベルで前向きに対応してまいりたいと考えております。  その当日は、確かに国会日程等の中であきの時間というものがそれほど余裕のあった日ではございませんでしたから、結果としてお取りやめになった、そのように私は承知をいたしております。
  5. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話は、私ども承知しておりますところですと、官邸の方にお願いをいたしました、要請をいたしました。しかし、それに対して官邸の方からは、自民党国対を通してほしいという話になりました。  そして、自民党国対の方からの話といたしまして、日程の問題ではなくて、総理と政策問題について、今お伺いをするということはできないといいましょうか、したくないといいましょうか、それで、ただあいさつならいいよというふうな形で言われてきたというふうに承知をしております。  今の総理お話ですと、自民党との、あるいは与党との話し合いも十分に意思疎通ができていなかったということなのかもしれません。  そのように私どもの方には正式のお話があって、ただあいさつだけですと、じゃ、それはまた別にいたしましょうというふうに私どもの方からは申し上げたわけであります。  どうか、先ほど総理がちょっと触れられましたように、ぜひ重要な問題についてそれぞれの党の責任者お話をするということをこれからは一層重視をされた方がいいのではないか、このように思いますので、冒頭申し上げておきたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今の議員からの御指摘は、私は素直に拝聴いたします。  その上で、当日、参議院の本会議があり、そして衆参の予算委員会、御承知のように提案理由説明等がありました、そういう一日であったことも事実でありまして、短時間のごあいさつという言葉の中に、そういった国会日程の中でとれる時間ということではなかったかと思いますけれども、少なくとも党と私どもの間に意思疎通を欠いていたということはございませんし、代表される方々とのお話というものを決して拒否するつもりはございません。
  7. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、総理が、政治生命をかけて、こう言って取り組んでこられた六大改革ですね。行政改革財政構造改革金融システム改革経済構造改革社会保障構造改革教育改革、この六つのテーマを取り上げて取り組んでこられたわけでありますが、私は、どうなったのかな、こういう感じを抱くわけであります。総理が約束をしたことを着実に実行していないこと、あるいはあいまいにしてきたこと、それが実は我が国と今起こっておりますアジア経済危機を私は一層深刻にしているものだ、こういうふうに思うのですね。  先般、京都大学中西輝政先生が「大英帝国衰亡史」というかなり厚い本を書いておりますが、私はこの間それを読みました。  その中に、ちょうど今から百年前、一九〇〇年前後に、大英帝国衰亡をいわば立て直す、衰亡しつつあるその状況を立て直す最も重要な時期はこの時期であったと中西教授は書いているわけですが、そのときに何が起こっていたかといいますと、当時、文字どおり改革改革という言葉が、あるいはそういうかけ声で大変な動きにありました。  そのときに、中西教授が述べておりますのは、ちょうど六つ改革がそこに取り上げられたという形で、その具体的な内容が、政治改革行政改革経済改革教育改革あるいは福祉改革、それに軍ですね、軍制改革六つが取り上げられておりました。そして、その六つ改革がそうあって取り上げられたのですが、結局は、実際にはそれは実行されなかった。そのために大英帝国は衰退をしていった、その状況について述べられておりました。  今、私は日本状況を見て、ああ、本当に日本もこういうことにならなければという思いで実際に見るわけであります。総理が、例えば行革やら経済構造改革にしても、火だるまになってと発言をされて、実は日本市場もそれに対して期待をして、御承知かと思いますが、去年の七月ぐらいには株価円相場も上がってまいりました。しかし、その後の改革の姿を見てみても、やはりこれはうまくいくかしらんという失望の念も出てくる、あるいは、最後には族議員ただだるまになった首相とさえ言われてきて、そしていわば市場が攻撃をする、こういうような状況になってきたと思うのですね。  今の日本株式市場にしても、あるいは為替相場市場にしても、そういうことがあらわれているのではないか、こう思いますが、総理、いかがですか。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 多少の時間をいただきまして、現況をお話し申し上げ、御理解もまた得たいと思いますし、御叱正、御激励もいただきたいと思います。  確かに、私は、この大競争時代というものを生き抜いていくために、そしてまた、個人の創造性チャレンジ精神の生かせるような社会を構築するために六つ改革を進めていきたい、そう訴え続けてまいりました。  同時に、経済の実態、あるいは金融システム状況、さらにアジアを初めとする世界経済状況を考えながら、そのときそのときに臨機の対応をしていかなければならないということも、これもまた事実でございますし、当然のことだと思います。  そして、今この新しい年に当たりまして、バブルの生成と崩壊から、その影響を脱し切れないこの十年来の困難というものを何とか克服をしていきたい、そして新しい将来に向けて六つ改革というものを確実に実行していきたい、そう考えておりますし、同時に、将来を見据えながら、日本発世界恐慌は絶対に起こさないということ、そして、この痛みを乗り越えて国民の皆様とともに必要な改革を進めていく、そうした強い決意を持って政策運営に当たりたい、そう考えております。  そして、今幾つかの点をお触れになりましたけれども六つ改革につきまして、例えば財政構造改革法国会は成立をさせていただきました。そして、行政改革という分野をとりましたとき、一方では官から民への規制緩和が進行しつつある。そして、その規制緩和の中からは、昨年十一月の規制緩和の中で、電機メーカーが例えば放送事業に参入する動きが出てきている、あるいは銀座のビルの建てかえなどが現実のものになっている。こういう経済構造改革に資する規制緩和の分、これも行政をスリム化する一つの手法でありますが、既に動き始めております。  そして、地方分権も、御承知のように第四次までの地方分権推進委員会の勧告が出され、これをベースにした分権推進計画ただいま作成中でありますけれども、こうしたものの上に立って中央省庁再編等基本法案、仮の名前でありますけれども、昨年の末にいただきました行政改革会議の御意見というものをプログラム法の形で国会に御審議をいただきたいと考えております。  また、企業が活動しやすい事業環境整備する、そういう観点から、電気料金などの引き下げ、あるいは産学官による共同研究の促進、こういったものも動いておりますし、税制面におきましても、法人税率の三%引き下げなど企業活動の行いやすい環境整備に踏み出しております。  あるいは、金融システム改革につきましても、昨年六月にプランを取りまとめたわけでありますが、外為法の改正を皮切りといたしまして、金融分野における持ち株会社制度整備あるいは証券総合口座の導入など具体的な進展が既に見られておりますし、これに加えまして、本年、株式売買委託手数料自由化、あるいは証券デリバティブ全面解禁、公正な証券取引ルールの拡大、あるいは不動産など資産の流動化等のために必要な法案を提出させていただきたいと考えております。  ぜひ、御審議をいただき、よき結論を導き出していただきたいと考えておりますし、有価証券取引税の半減など税制面での対応も既に御承知のとおりでありまして、それぞれ地道に実行の段階を進んでおる、私はそのように考えておりますし、今後ともに、各位の御協力を得ながら一層努力していきたい、そのように考えております。
  9. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最近の政府のとられてきた経済政策をずっと、この一、二年だけ見てみても、本当にわかりにくいことがいろいろ行われているなということを思います。  最近でいえば、九五年の九月には、十四兆二千億円の経済対策によって株価も上がりました。そして、九六年六月には二万二千円まで株価も上がりました。しかし、九六年六月には消費税の五%アップ閣議決定をいたしました。そのときには株価の下落が始まりました。そしてその後、二万円くらいまで回復はした。しかしながら、また消費税率の三%から五%へのアップやら、あるいは二兆円特別減税の打ち切りもし、そしてまた、九月以降の医療費値上げ等もいたしました。そして、標準世帯では年間十八万円くらいのデフレ効果、こういうことで、九七年、去年の六月からまた調整局面に入りました。そしてまた、その九七年の夏以降には、タイのバーツの問題に端を発してアジアの通貨不安はずっと始まりました。  にもかかわらず総理は、回復のテンポは緩やかになっているけれども、民間の需要を中心とする景気回復基調は続いている、こういう認識をしておりますと答えながら、そして、株安円安が進んでいるにもかかわらず、あくまで、経済企画庁月例経済報告では景気回復基調にある、こういう認識を変えませんでした。そして、そういう前提で、昨年十一月末には今お話のあった財政構造改革法も無理やりこれは通過をさせました。  しかし、市場はいわば橋本内閣のそうした経済政策に対してはノーというシグナルをずっと送り続けてきた。だから、去年の十二月十七日にはいわば全く突然という形で二兆円の特別減税を発表いたしました。それでもすぐに、市場は、日本経済に対してはやっぱりノーだ、こういうふうにシグナルを送り続けてきたわけですね。いわば、このことをずっと見てみれば、景気に対して、よく言われますように、アクセルとブレーキを文字どおり交互に踏んできている、こういう状況であるわけでありまして、まさによく言う、市場日本のそうした経済政策に対していわば信頼ができないという状況が続いているわけですね。  そして、今度はまた九八年度の予算も、御承知のように緊縮経済政策、こういう状況であるわけで、今申し上げたような状況を見てみて、そして今日の状況を見れば、市場が本当に信頼するわけがない、あるいは国民も、一体ここに信頼できるだろうか、こういう状況にあると思いますが、いかがですか。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 一連の施策の流れを追いながらの御論議でありますけれども、私は、消費税率引き上げさせていただきましたのも、確かに御指摘のとおり消費税率引き上げを行ったわけでありますけれども、これは、少子高齢化という状況の中におきまして、まさに我が国構造変化対応した税制改革の一環という立場で行ったものでありますし、医療保険制度改革は、医療保険制度の破綻を防ぐ、そして、安定した運営を確保していくために給付と負担の見直しなどを行ったものであるということを改めて申し上げなければなりません。  そして、これはいずれも我が国にとって必要なことであると思っております。なぜなら、まさに人口構造の大きな変化の中で、国民に税という形で御負担を願うその仕組みも、当然ながら変化を求められております。また、医療保険を初めとする社会保障制度というものは、国民の暮らしのセーフティーネットワークの役をするわけでありますから、将来ともに安定し、国民が寄りかかれる仕組みが続かなければなりません。  その場合に、従来と同じ仕組みで果たして対応ができるでしょうか。そして、その意味では、私はこうした改正が必要であるということはお認めをいただけると思うのであります。その手法等についてはさまざまな御議論はあると思います。それを私は否定するのではありません。しかし、従来からずっと重ねられてまいりました議論の中で、少子高齢社会に即対応した税体系あるいは社会保障構造というものは、やはり我々としてはきちんと対応していくべきものだと考えております。
  11. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 日本のこれからの中長期的な課題として何をしていかなきゃならない、そのためにどういうふうにしていかなきゃならないという話と、それはそれとして、今目の前で何が起こっているのだろう、そのために何をしなきゃいけないのだろうかという考え方が必要だと思うのですね。もちろんそのときに、当然ながら、中長期的な周りのことも皆念頭に置きながらやらなきゃならぬことは当然でありますが、現在、それじゃ、どうなっているのだろうかということを考えなきゃならぬということであります。  今の日本の起こっている状況について考えてみても、御承知のとおりに、例えば消費税引き上げの問題についても、私たちはあのときに、消費税引き上げはすべきでない、そのまま継続すべきだというふうに言ってまいりましたし、あるいは所得税住民税特別減税についてもそのまま継続すべしと主張してまいりました。あるいは法人税減税や有価証券取引税の軽減の問題でも、地価税の凍結の問題でも、当時私たちが、昨年も一昨年も、今申し上げたような形で、ぜひこのようにやるべきだというふうに申し上げてきた。そして、そのとおりにやっておれば、私たちの主張したとおりにやっておれば、今のような形で景気回復の芽を摘んでしまっているという状況にはならなかったはずであります。  そういう意味で考えれば、文字どおり、よく言われますように、これは橋本総理の招いた政策不況そのものだ、こういうことですね。これはどうしても認めていただきたい、こういうふうに思います。  そしてまた、さらにつけ加えれば、昨年の通常国会で私たちが二兆円の特別減税の継続や有価証券取引税の廃止を提言しましても、そのときに橋本総理は、これを否定し続けてきた、そして経済回復基調にあると言い張ってきたわけですね。  昨年の一月の予算委員会でも総理は、減税策というものを採用いたしました場合に、むしろ非常に深刻な状況になるだろうと存じますと、減税を否定してまいりました。にもかかわらず、昨年末には、まさに突然これを撤回いたしまして、特別減税二兆円を実施することとなったわけであります。総理は、通常国会でもあるいは臨時国会でも述べていた日本経済に対する認識が間違っていたのだ、あるいは経済財政政策は間違っていたとまず私は国民に対して謝罪をしなければならぬ話だと、どうですか。
  12. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 非常に幅の広い御指摘の中からの御意見でありますけれども、私は、財政構造改革というものは、危機的な状況にあります我が国の財政を健全化していくためにも、そしてその結果として安心して豊かな福祉社会をつくり上げていくためにも、また健全で活力のある経済の実現等の課題に対しても、十分対応できる財政構造というものを実現しなければならない。その必要性というものは何ら変わるものではないと思いますし、同時に、経済金融情勢の変化に機敏に対応しながら、国際状況に応じて財政あるいは税制などの措置を講じていくというのは当然のことだと思っております。二者択一の問題ではない。二〇〇三年までの中期の目標と同時に当面の対応という、タイムスパンの異なる問題だと思います。そして、そうした臨機の措置というものは、いつの時代にもそれなりに必要とされるものではないでしょうか。  そして、今、一体どういうふうに経済を見ているんだというお話をいただきましたが、我が国におきまして、昨年の秋、北海道拓殖銀行など大手の金融機関が相次いで破綻をいたしました。これらの金融機関それぞれに、バブル当時安易な貸し付けを行う等さまざまな原因がございますけれども、こうした中におきまして、金融システムに対する信頼感が低下をし、また、貸し渋りと言われますように、資産を圧縮する動きも出てきております。  こうした状況の中で、不安感をお持ちになる方々が消費に消極的になられて、あるいは企業によっては十分資金が得られない、思うように事業展開ができないといった現象が生まれております。そうしたことが、最近の我が国景気動向を見ましたとき、家計や企業の景況感により厳しさを増している、個人消費や設備投資にも影響を与えている、これはもう私どもよく承知をいたしております。  また、アジアにおきましても、昨年の夏以降、幾つかの国々で通貨・金融市場に大きな変動が生じました。そして、その中で、それぞれやはりその国ごとに状況は異なりますけれども、その経済状況が予想以上に深刻なものになっております。  そうした中でありますからこそ、今政府は、我が国経済回復軌道に乗せていくために、経済の動脈であります金融システムというものを安定させることが必要である。そして、そのためにも、我が国の金融に対する内外の信頼低下といった事態に断固として対処いたしますために、預金の全額保護、そして金融システム全体の危機管理のために、十兆円の国債と二十兆円の政府保証、合わせて三十兆円の資金を活用できるようにしたい。また、総額二十五兆円の資金を用意する貸し渋り対策も行っているわけであります。  同時に、先ほども一部例に引きましたように、景気回復のために、大規模な規制緩和を初めとする緊急経済対策を実施しております。  税制面における特別減税を実施すること、法人課税の税率の引き下げ有価証券取引税の半減、地価税の停止。幅広い措置をとり、九年度補正予算におきましても、さらに、災害復旧事業など約一兆円の公共事業を追加するほかに、一兆五千億円程度の国庫債務負担行為も確保をいたしているわけであります。  私どもは、こうしたものが相乗効果をもたらしていくであろう、そして我が国経済回復の軌道にきちんと乗せていくということを考えておりますし、同時に、我々が考えなければならないのはアジア金融システムの動揺でありまして、IMFが今中心として国際的な役割を果たしてくれておりますけれども、その中で我が国が大きな役割を果たしていることも御承知のとおりでありまして、こうした組み合わせの中で、きちんとした結果が生まれていくように全力を尽くしていきたい、そのように考えているところであります。
  13. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 総理は今いろいろ言われましたけれども、あれだけ減税をやらないやらないと言っていて、突然減税をやるようにしたんですね。なぜでしょうかね。認識が間違っていた、こういうふうにお認めされませんか。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょうど十一月にバンクーバーでAPECが行われました。そして、APEC参加国の首脳がバンクーバーに一堂に会し、既にその時点に発生しておりましたアジアにおける金融不安につき、まず、非常に真剣な議論をいたしました。当時、日本は山一証券の破綻が公表された直後でありまして、私自身もこれに対する説明を求められた会合でありました。  しかし、それからわずか二週間か三週間を置いて、クアラルンプールで開かれましたASEANプラス3、これはたまたまASEAN創立三十周年記念の年の行事であったわけでありますが、この時点で、ASEANの首脳たちの論議というものは、バンクーバーで会いましたときに比べて急速度に厳しい状況を語るようになっておりました。これは、私の予測していたものを超えるものであったことも事実であります。  そして、カリの群れの飛ぶような姿で進行してまいりました今日までのアジア経済発展の中で、一番最初に飛ぶカリの役割を果たしてきた、またこれからも期待をされております今、日本の立場として、必要な施策と信じ、私は特別減税を決意いたしました。
  15. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今、総理もちょっと言われましたけれども、要するに、アジアの情勢も含めて、いわば自分の予想を超えていた、だから減税をすることにしましたよと。私は経済認識の甘さだと思うのですね。甘さです。  これはタイ・バーツの動きです。タイ・バーツの対ドルレートの動きであります。あっという間に、去年の五月、六月、七月ぐらいからずっとこのように落ちています。これはことしの一月七日が最後ですが、その後の状況、もう皆さん御承知のとおりですね。  これはインドネシアのルピアです。インドネシアのルピア、もちろん、最近もうあっという間にさらにという状況である、御承知のとおり。  これはマレーシア・ドルであります。これももう御承知のとおり。まさにこの半年間、あるいはあっという間であります。  これは日本の円・ドル、日本の円の対ドル相場であります。(発言する者あり)全然安定しておりません。今、アジアに比べれば安定している。  ついでに申し上げます。これは日経平均の状況であります。去年の六月、七月ぐらいから、先ほど総理が幾つかの政策を、あれやりました、これやりましたという話を言われました。実は、日本株式市場は何をやっても、ちょっと微動はしたかもしれません、しかしそのままどんどんと、市場は結局、評価しませんよ、こういう状況がずっと出ております。こういう状況ですよ。  しかもこれは、実は、何もアジアの国々だけの問題ではなくて、これは日本経済状況がこういうものをさらに悪化させているということですね。いわば、日本アジアの危機の一端を担っているんだよ、このことの重要さを十分に私は認識をしておかないといけないと思います。そして、これが今どんどんまださらに悪化しているのです。  今私は、ただ、幾つかの国を申し上げました。御承知のように、今どういう状況にあるかというと、韓国はもう言うに及ばず、そして、韓国、香港、そしてそれが中国に波及するのではないかということを世界が心配している状況ですよ。そういう中で今日本はどうするかということにあるわけですね。  それで、では今日本はどんなふうになっているのだろうかということを私なりに申し上げますと、今日本経済とか金融の現状を物語る、あるいはそれを語るキーワードは何かというと、まさに信頼性の欠如。信頼性がないんですね、これは。  例えば、今、日銀の庭先にあるコール市場を見てみましても、翌日物の金利はどんなふうになっているか。これはちょっと前の私の数字でありますが、平均金利でも〇・三三%、最低が〇・〇三、最高一・一%という金利。要するにどういうことかといいますと、いい銀行はただのような金利で借りられるのですが、ちょっと低い銀行は物すごい高い金利でないと日銀の庭先でさえお金は得られないんだよという状況が起こっているということであります。  そしてまた、お金の動きを見ると、文字どおり、もうみんなが承知していますように、安心できるところにしかお金は回りません。郵便貯金とかあるいは東京三菱銀行云々というようなことが新聞に大きく報道されたりする。今そういうところにしか、そしてまた、たんす預金がどんどんふえるとかいう状況なんでしょう。  あるいは、クレジットクランチと言われる問題でもますます深刻化しています。さっき総理は、貸し渋り云々という話がありました。貸し渋りということもある。しかし、今やそんなことじゃなくて、資金の回収です。何千億という単位で回収をさせようというようなことが現実に今起こっているということですよね。あるいは、この間の東食のケースもありました。メーンバンクが頼りにならない。そうすると、準メーンバンク等が今度はざっと手を引くというのが今の状況であるし、それに、さっき申し上げたアジア状況がますます深刻化している、こういう状況にあるわけであります。こういう危機的な状況が今まさに進行しているんだというふうに認識をしなければいけないと思うのです。  先般、金融機関の不良債権として七十六兆円というのが発表されました。あの数字が正しいとしても、日本のGDP五百兆円余の中で七十六兆円というのがどんなに大きな数字であるかということです。  そういう意味で、景気株価と金融不安という三つのサイクルの状況を見たときに、今どんなに危機的な状況にあるかというふうに思うわけですが、総理はどう思いますか。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の御論議を真っ向から否定をするつもりはありません。  その上で、今、本日の市場の数字を眺めておりました。  そして、市場というもの、これはもう私が申し上げるまでもなく、議員もよく御承知のことであります。そして、当然ながら、さまざまな要素で変動をいたします。しかし、その中に織り込まれている材料というものがその期待どおりに動くかどうかというものが市場に非常に大きな影響を与えることは、御承知のとおりであります。  それだけに、我々は、この金融安定化のシステムにいたしましても、特別減税にいたしましても、また補正予算、さらには本予算等につきましても、その市場の期待する期間内にこれが実行に移せるように、国会の御協力を心からお願いを申し上げているわけであります。  私どもは、金融システムの安定が、あるいは市場の信認が必要であるという議員の御指摘、それが揺らいでいるんだ、危機だとおっしゃることを否定するつもりはありません。だからこそ、この国会の御審議の中において、政府がとろうといたしております預金の全額保護が完璧に行えるように、また、金融機関が金融収縮を起こすような状況から、少なくともそのような懸念を持とうとする空気から、安定化に向かえるような状況をつくり出すための施策を一日も早く現実のものとして活用できるようにさせていただきたい、そうお願いを申し上げている次第であります。
  17. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 金融問題の具体的なことについては後ほど触れたいと思っていますが、今の金融問題についてもそうでありますが、日本景気をよくしなければ、そして株価が上がるようにならなければ、金融問題の解決にならないというふうに思うのですね。そのことを十分に認識をしなきゃならぬ。まず日本景気をよくしなければこれは何ともならぬのですよということです。  総理、私ども民友連としましても、御承知かと思いますが、二兆円減税についても、これは特別減税、一時金だけだと、一過性のものだと意味がないよ、だからこれは恒久減税にしなければならぬというふうに主張もしております。そして同時に、それだけではなくて、六兆円の制度減税をすべきである、それも、今まで消費税引き上げの問題やら社会保障負担の問題等々で九兆円も引き上げているわけですから、その分を穴埋めするためにも、二兆円減税に加えて六兆円の恒久減税を実施するべきだ、こういうことを主張しているわけであります。  その六兆円についても、所得・住民税減税を三兆円、法人税減税を二兆円、その他一兆円ということで六兆円。これは、絶対に今こそこういうことをやっていかなければ日本景気はよくならぬ、こういうことであります。十分に御理解をいただきたい、そして、これを参考にして今後その方向で政策実行をしていただきたい、このように思います。  先ほど、私は、景気株価と金融不安の問題についてちょっと申し上げました。  今どういう状況になっておりますかというと、大手十九行の株式の含み益と株価状況を見れば、ざっとこんなふうになっていると思います。  日経平均が二万円ぐらいになっておりますと含み益が一兆二千億円くらい、株価が一万五千円ぐらいですと三千六百二十億円、一万四千円に株価がなりますと二兆三百二十億円のマイナスになるということですね。もちろん、これがもしも一万二千円くらいになりますと、六兆円から七兆円の含み損になります。いわばその自己資本喪失分を埋め合わせしようとすれば、一万二千円ですと六兆八千億必要になる、こういうことですね。だから、いかに早くやらなければならぬか、こういうことであります。  そこで、総理、伺います。  先週末の金曜日に東京市場株価が非常に上がりました。九百円余上がって一万六千円台を回復いたしました。その最大の理由は、新聞の報道にもありますように、総理が追加的景気対策を実施する可能性を示唆した、こういうことであります。  これからどうされますか。追加的な景気対策をとるのですか。あるいは、そして同時に、今までの景気に対する認識は甘かったと認識をして、そしてこれから景気対策を追加的にするのか。そして、財政構造改革路線はいわば一時延期というか棚上げにして、その景気対策をこれからやると答えられますか、どうしますか。総理が今ここでどういう発言をされるかは、私は本日以降の株価に、そしてまたアジアや、要するに、今の話は日本経済に対して……(発言する者あり)静かにしてください。日本経済に対して、どういう認識でやろうとしているかということであります。どのように思いますか。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさに今議員がお触れになりましたような状況の中で、政府が何を言っても影響の出るような神経質な相場の動きになっている。それだけに、私は、発言は十分今までも気をつけてお話を申し上げてまいりました。  その上で、もう一度申し上げたいと思いますけれども、私が申し上げていること、財政構造改革が必要だということは、議員も御否定にならないと思います。そして、そうした安定した財政構造を持つことによって、我が国が将来に向けての道を開けるということも、御否定にはならないと思います。同時に、その中において、それぞれの事態に機敏に対応して政府が行動することを、これは私は、目標との間に乖離があることではない。中期の目標と現時点における対応、当然のことながらこれは両立するものだということも申し上げてまいりました。  その上で、追加云々というお話がございましたけれども、それ以前の問題として、現に既に市場が織り込んでしまっているもの、市場としては当然これは約束どおりに行われると思っておりますものが、きちんとその期間内に実行に移せることの大切さも、今私は答弁の中で申し上げてまいりました。  むしろ私は、一日も早く、補正予算あるいは金融システム安定化対策、さらには来年度予算というものを現実のものとして施行できる状況をつくり出していただき、税制改正につきましても、既に政府として決定し、公表し、国会に御審議を願おうとしておりますものをきちんと実行できることが、今何よりも急ぐことだと考えております。
  19. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の我が国あるいはアジア状況について、私は、総理はやはり認識が甘いのじゃないか、こう思うのですね。そして、今までいろいろ言われている話がやはりわかりにくいということ。政策の一貫性がない。財政再建の問題についてどうするんだ、その路線を一時棚上げしてでも経済対策をやろうというふうにするのかどうか、そういうのもわからない。  だから、ここに、ワシントン・ポストのことし早々の記事にこういうのがあります。日本経済の真の危険性は現在の経済的苦境にあるのではない、むしろ、日本政府がこの経済的困難に対して依然として真剣に取り組む姿勢が見られないことだ。ワシントン・ポストのことしの一月の五日だったか六日だったか、そのころの記事であります。  要するに、日本状況について非常に心配するのですね。だから、アメリカの高官は日本に飛び、あるいは韓国にも飛び、アジアにも飛んでという状況、今この辺の状況がいかに世界の経済に対して危機的な状況になっているかということを危惧しているからですね。どうですか。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、アジア状況また日本の現況に対して認識が足りないというおしかりをいただきました。これは、おしかりを受けるには、議員もそれだけのデータをお持ちの上でお話しだろうと存じます。  私自身、少なくとも、昨年末、年が明けましてから、何人かのアジアの首脳と現実に電話でお話をする、手紙をやりとりする。残念ながら海外に出てお目にかかりお話をするだけの余裕は、国会もございまして、それだけの時間はとれませんでしたけれども、現実に連絡をとり合っておる状況でございます。その上で、私なりに判断をしながら物事を進めておるつもりでございますので、少なくともそれぞれの国の最新の状況を、首脳ベースで御連絡をいただいている範囲について認識はいたしておるつもりでございます。
  21. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、金融システム安定化の問題についてお伺いをいたします。  私、現在の金融不安の最大要因も、何かというと、これはすべてその根源は信頼性の欠如、よくクレジビリティーといいますが、その信頼性の欠如そのものだと思っております。これが大蔵省や日銀や政府や金融機関に対する国民の不信感、あるいは市場の不信感そのものだと思うのですね。  そこで伺いますが、先般、金融機関の不良債権額として七十六兆七千億という数字が発表されましたけれども、これは正確ですか。大蔵大臣
  22. 松永光

    松永委員長 銀行局長、答えなさい。数字の話だから。
  23. 山口公生

    ○山口政府委員 七十六兆七千億という発表をさせていただきましたが、これは、現在、早期是正措置を控えて各金融機関が資産の自己査定をやっております。それを一分類、二分類、三分類、四分類ということで分けまして、今合計した数字は、二分類の個別にリスク管理が必要な債権、それから三分類は回収に重大な懸念があるもの、それから四分類として回収が不能と見込まれるもの、この集計で申し上げますと七十六兆七千億という数字でございます。
  24. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 もう申し上げるまでもありませんけれども、この不良債権の額の問題については、今までも、情報開示をせよ情報開示をせよ、不良債権の額がどう、こういうふうに言ってきました。しかし、いつもいつも発表されるものは事実だとは思えない、こういう状況でありました。だからこうしてまた今、それぞれの銀行が自主的に出したといたしましょう。  しかし、今までの経緯を見れば、銀行が決算発表後のときに、不良債権処理は峠を越しましたと会見をされます。そして終わってしばらくたちますと、その峠はまた新しい峠ができ、その峠の向こうにはまた峠。峠の連続であります。これが今日の状況ですよね。そしてさらに、今日までの不良債権にはいつも隠れた不良債権が存在していた、こういうことであります。  例を申し上げれば、九五年八月に破綻した兵庫銀行の場合は、当初公表の破綻債権は六百十億であります。破綻した後明らかになった額は、六百十億円じゃなくて一兆五千億でした。九六年三月破綻した太平洋銀行のときは、当初公表分は二百七十五億円、破綻した後は二千八百億円。そして九六年十一月に業務停止命令を受けました阪和銀行の場合は、公表分四百九十五億円に対して破綻後は千九百億円。こんな状況であります。  では、こうした不良債権の塊というようなこういう銀行が何で生きてきたのだろう、そのときまでずっと生きてきたのだろう、なぜか。大蔵省が決算を承認しておったからであります。監査法人がそれを承認しておったのでしょう。いわば銀行と大蔵省、監査法人も一緒になってごまかしていたのです、国民に対して。こんなことで本当に信頼されるのだろうか。どうですか。
  25. 三塚博

    ○三塚国務大臣 過去の段々の順序で御指摘をいただきました。  債務超過ということが受け皿銀行がございません場合に破綻処理、こういうことになりますことは御承知のとおりでございます。そういう中で、受け皿銀行がないという内容はここで詳しくは申し上げませんが……(伊藤(英)委員大蔵大臣、済みません、数字がこんなに間違っているんだよということを言っているんですよ」と呼ぶ)ですから、破綻をしたということでございませんと内容的なものが最終的に確定いたしません。そういう意味で、破綻前の数字とのギャップは事実上ありました。そういうことについては、自後そのことのありませんように情報開示ということで今回自己査定に基づく発表をさせたわけでございます。
  26. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 銀行は今までも自己査定をして出してきた、そして発表してきたのですから、過去も。もちろん基準やら何やら中身は少しは違うかもしれませんが、自分でやってきたのですよ。そして数字はこのように、先ほど申し上げたように何倍という額の差なんですね。そういうのがいわば情報開示として公表されてきたものの実態なんです。それを認めてきたのも大蔵省そのものですよ、こういうことであります。  話は変わりますけれども、今回提案されている三十兆円に上る公的資金枠での投入問題、やっていますね。  伺いますが、一昨年の住専国会のときに、あのときに公的資金の投入の問題について、総理も含めて当時内閣が、住専以外のノンバンクには使わないよ、公的資金を使わない、あるいは信用組合以外の金融機関の破綻処理には使わないというふうに公約として言われてきたと思うのですが、今回のこの公的資金投入についてどういうふうに思うのですか。これは明らかに公約違反である。  それについて、当時私たちもいろいろなことを主張申し上げました。そのとおりにやっておればもっとよかった。金融システムや金融状況についての認識が甘かった、こういうふうに言うのですか。あるいは、あのときこういうふうに言ったのだけれども、申しわけありません、ごめんなさいと謝罪するのですか。あるいは、預金者保護にすべて充当すべきだった、そういう制度にしなかったというのはやっぱりまずかったなというふうに反省をされるのですか。今回どうすることになるんでしょうか。
  27. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 当時、信用組合の破綻が相次いでおりましたことから、信用組合のみを対象とするということを申し上げたことはそのとおりであります。  その後、一般の金融機関におきましても大規模な破綻が相次いで発生したことなどから、金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らいで、信用秩序と経済に重大な影響が懸念されております状況のもとにおいて、今般、公的資金の活用を含めて、預金の全額保護の徹底を図ると同時に金融システムの安定化を図る、そうした断固たる姿勢を内外に示すことが必要であると考えました。
  28. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先般、住専国会のときにああいう形で法律も無理やり通し、そして住専以外のノンバンクとかあるいは信用組合以外には使わないと言ったのは間違いでありました、見通しが甘かったでした、こういうふうにお認めになりますか。
  29. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 当時、例えば我が国の大型の金融機関が相次いで破綻をする状態というもの、あるいはアジアにおける金融不安が発生するといった状況、こうしたことは想定をしておりませんでした。
  30. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 当時私は新進党でありましたけれども、いかにこの金融問題について状況が重大なことであるか、だから、いかに本格的なしっかりしたシステムをつくっておかなければならぬということで提起もしたりしたわけであります。今総理が、それは予想もしておりませんでした、ごめんなさい、ごめんなさいと国民に謝られる。まあ、謝罪したことになるのでしょうかね。  本件についてはさらにまた求めますけれども、こうした今までのいろいろなやり方が、本当に日本は本格的なことをやっていない、しっかりした制度をつくらない、いつもあいまいなやり方をする。こういうやり方がいつも今日のような状況をつくり出したと私は思うのです。  さっき私は情報開示の話について伺いました。じゃ、今度責任という問題について伺いたいと思います。  その前に、言うまでもないことであり、あるいは多くの方が御承知の話でありますが、こういう金融システムに公的資金が投入された例としてよく言われますのは、アメリカの例が言われます。そして、アメリカの例でよく言われるのが、やはり一九三〇年代の大恐慌のときと一九八〇年代後半の問題であります。  前者の一九三〇年代のときには、有名なあのペコラ委員会をつくって調査をいたしました。そのときに、まさに厳しい調査をして、そして社会正義と公平性のために、そのためにそれに反する行為は次々と明らかにして、そして処罰をされました。刑事、民事の責任も追及されている。さらには道義的な責任も経営者もとられて、退職金なんかの返上等もしたというふうに伝えられます。そのくらいのことがアメリカは行われたんですね。  そして、八〇年代後半から九〇年代の、あの貯蓄貸付組合を中心とした不良債権問題のときには、あのRTCが猛烈にこの問題について取り組まれ、数字だけ申し上げますと、そのときに関係者の責任の明確化を厳正に進めて、訴追件数四千五百十三件、起訴被告人六千四百五人、うち有罪となった人五千五百六人、うち金融機関の役員、幹部だけでも千五百八十八人、こういうふうに言われます。そういう状況が行われております。  じゃ、今度日本が、私たちはこういった日本版RTCというようなものを、強くそれを、RTC構想を主張しておりますけれども、今回こうした意味での責任追及ということは、どういう体制で、何人ぐらいでやられるのですか。
  31. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今回、預金保険法の改正をお願いしておりまして、その中で、預金保険の機能の強化として、罰則つきの立入調査権を導入させていただきます。それで、貸出債権の回収業務に専念するわけでございますが、その際、民事あるいは刑事のいろいろな事件、そういったものが発覚した場合、それらを追及すべきというときにおきましては、預金保険機構の中において責任追及のための委員会を設けて、これから設けますので、そこで、専門家、弁護士あるいは検事さん、あるいは国税の方等を集めて、そこで厳正に対処するということにいたしております。(伊藤(英)委員「何人の体制ですか」と呼ぶ)  これは、今体制づくりをしておりまして、もちろん、人数としては預金保険の回収のときに当たる事実関係でもって上がってきますが、そこで判断する最終的な人には、立派な、見識のある、権威のある人を備え、それで……(伊藤(英)委員「どのくらいの人数ですかと聞いているのです」と呼ぶ)今、体制整備を図っておるところでございます。
  32. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 どのくらいの人数かという体制までもまだわからない、こういう状況であります。  先ほど申し上げたRTCが取り組んだときにはどういう体制であったかといいますと、当初の職員の数だけでも二千人、ピークのときには八千六百人の要員でもって徹底的に全国で調べました。政府のやっていることは、格好はつけるよ、しかし実際にはやらないじゃないかというくらいにさえ思える。だから今、中坊社長が頑張っているのがいろいろとみんなに報道されますでしょう。ああ、中坊さんはしっかりやっているじゃないか、だからあの人を総理大臣にした方がいいじゃないかという話までが出るぐらい。何かといいますと、正義のために彼は頑張っているからだと思うのですよね。  今の銀行局長の話を聞いていると、こういう専門家でやろうと思っています、なにしますと。どのくらいの体制かまだわからない。こんなので本当にできるのですかね。  では、聞きます。  今度、公的資金を投入して、自己資本充実のためにということで投入をすることにしております。その公的資金を自己資本を高めるために投入をするというのに、そのときに、まあまあ優良企業といいましょうか、そういうところから入れるんだという話が出たりします。  では、今日まで銀行経営者の皆さん方がやってきて、今日の日本の金融の不安の状況をつくり出してきて、このような経済的な状況をつくり出してきて、そしてアジアにまで、あるいは世界の経済にまでそういう影響をしてきたその人たちが、公的資金を入れてと、こう言うのですが、その人たちは一体どんな責任をとるんでしょうかね。どういう責任をとってもらうんでしょうか。総理大蔵大臣ですか。
  33. 三塚博

    ○三塚国務大臣 公的資金を入れるということについて、その前段が、御案内のとおり、国債十兆ということになっております。そして同時に、預金者保護の観点から十兆のうち七兆円、そして危機管理勘定ということで三兆円。委員が言われるのは、三兆円の公的資金そして政府保証十兆円、十三兆円の使途について、優先株の買い上げをした場合の責任いかん、こういうことなんでしょう。  そういうことで、それではお答えを申し上げさせていただきますが、金融システム安定は現下の最大の課題であります。金融は国民生活、産業の血液であることは御案内のとおりであります。黒字倒産は防がなければいけませんし、総理がいつも言われる、日本発の金融恐慌、経済恐慌は起こしてはならない、これは我が国の国益につながります。  そういう点で、この点に全力を傾けるということでございまして、破綻した銀行の救済ではございません。破綻した場合は、預貯金保護の一般勘定の中で、今度、特例業務特別勘定ということになりますけれども、こちらの預金者保護のところでまいります。破綻の責任は、経営者について、民事上、刑事上厳正に行われてまいります。また、借りた借り手の支払いの状態についても厳正に調査をし、対応するということになります。  こちらの十三兆、三兆プラス十兆の部分については、資本力を増強することによりまして、我が国の銀行は健在なりということで、内外の信認を得るために、申し入れに基づきこれを買い上げるということであります。優先株でございますから、市場にこれが出回ります。  こういう中で、全額返ってくるという見通しのもとにやらなければなりませんけれども、ロスが出た場合は三兆円の国債の中でこれを補てんしてまいりますということであり、経営上の問題で、破綻はしませんけれども、資本力を増強することにより、銀行としての業務が正しく、また期待されるとおりに展開することができますということでありますから、それでも公金でございますので、経営基本理念、経営の方針、内容、こういうものを法律によって定められて出ます審査委員会に提出をし、以下御案内のとおり、全員一致、閣議の決定を経て国会に報告をする、こういう手続の中で対応をする。  もう一度申し上げますと、金融システム国民経済の基本であり、これが安定することによって不安が解消してまいります。不安が解消しますと、経済は安定の中で前進をしてまいります。こういうことであります。
  34. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 いいですか、大蔵大臣。金融不安を解消するためにというふうに言われました。金融不安をもたらしたその張本人たちは銀行経営者だと私は思います。もちろん、それに関与をしているのは大蔵省ということでありますが、そういうことです。  だから、優先株を買っていただくときに経営健全化計画まで出してもらうんでしょう。健全だったら、健全化計画なんて出さなくてよさそうだと思うんですが、経営健全化計画を出してもらうのを義務づけて、そして公的資金、税金を投入するんでしょう。さっき言ったように、払えなくなったらというので三兆円の国債を用意しております、赤字国債ですよね、ということをやっているんですよ。  そんなお金を、そんなに責任のある銀行経営者が、そういう公的資金を、税金を入れてというときに、そして、自分たちの経営の足りなさを、あるいは自己資本の低さを高めるためにそのお金を入れるというときに、経営者に責任がないわけがないと私は思うんですよ。どうするんですか。全然ないんでしょうか。責任はないけれども今日の状況をつくり出したんでしょうか。彼らの責任じゃなかったんでしょうか。大蔵大臣。そんなこと、局長じゃないよ。
  35. 松永光

    松永委員長 大蔵省山口銀行局長、答えてください。
  36. 山口公生

    ○山口政府委員 資本注入の際の一般金融機関の責任追及についてのお尋ねでございますが、これは大臣からも御答弁ありましたように、個別金融機関の救済ではありません。これはシステムを守るためのものであります。したがって、先ほど御説明しましたような、経営が悪化して破綻した場合の責任追及とは同列には論じられないと思います。  ただし、将来に向けて責任ある経営体制をつくっていただく必要があるということは当然のことでありまして、そういった意味で、健全性確保のための計画を出していただくということにしておりまして、またこれを公表することにしております。審議委員がその内容について一人でも反対したら、これは議決には付せません。なお、履行状況をフォローし、委員会はそれをまた公表できるということで、そういった形での国民のチェックがきくという形にしてございます。
  37. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、実は住専国会のときにも言いました。あるいはもっと前のバブルのときの委員会でも、この場でも私は申し上げたんですよ。あのバブルのときでさえ、銀行経営者は銀行法第一条に違反していると私は申し上げたんです。銀行法第一条は、かつての銀行法から変わって銀行法に改正されたときに大きく変わったんです。なぜ変わったか。銀行は公共的性格がある、業務の公共性にかんがみて云々というのが第一条に入ったんですよ。あの第一条に銀行経営者は違反してさえいると私は思います。  そして、それが、先ほど申し上げたように、自分のところの経営が悪くて金融不安になってきた、あるいは自己資本比率もよくない、低いんだよ、そしてしかも、情報開示についてもいかにもいいかげんだというふうにやってきて今日公的資金を入れるというように、その責任は、破綻したところは別にして、責任は問いませんなんて冗談じゃないと私は思います。  じゃ、何でそんなことが起こるんだろうと思えば、私は思いますが、やはり今日まで大蔵省や金融機関は、天下りも含めていわば癒着そのものなんだ。結託をしている。自分たちが責任を追及し、銀行の責任を追及しようと思えば、自分たちのOBにも関係する、あるいは自分たちの権限にもということになるかもしれません。そういうことが、今日のように責任を明確にしない、わかりやすいシステムにしない、そして、いわばどさくさの中にいろいろなものを処理していこう。住専のときも同じです。先ほど申し上げた。今日の状況は、まさにそういうことの延長線上にある。  こんなことで、総理が最初言われた、まさに今、日本改革を、六大改革を、行政改革を、日本のシステムの改革を本当にできるんだろうか。私は、できない、こんなことでは。  今私が申し上げたように、官、業、ひょっとしたら政かもしれません、その癒着構造が、このように責任も明らかにしない、ディスクロージャーも十分にしないという状況をつくっていると思うんです。総理、どうですか。
  38. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどもお答えを申し上げたことでありますけれども改革は進んでいるのかというお尋ねがありましたとき、私は、既に動き始めているものの例の中に外為法の改正というものを申し上げました。そして、外為法の改正案が通過、成立をした瞬間から、いや応なしに金融行政というのは変わらざるを得なくなっていることは、議員承知のとおりであります。そして、まさに変わりつつあります。  そして、過去にさかのぼってさまざまな問題があったことを私も承知をいたしておりますし、殊に証券不祥事の際には私自身が、大蔵大臣として自分で責任の追及を受ける立場でありました。しかし、そうした事態の中から、変わりつつあるということも、既にいわゆる護送船団方式というものが通じなくなりつつある状況変化してきていることも、私は事実としてお認めをいただきたいと思うのであります。  そして、その護送船団方式と言われる行政の中から、今議員から、場合によっては政までも含めてかもしれない癒着というものが生まれたという御指摘を受けました。こうした御指摘を受けることは大変残念でありますけれども、それを、全くそんなものはないと言い切れない状況があることを私は本当に残念に思います。それだけに、今変化をしようとしている中で、このシステム安定化策を過去の状況から御判断をいただかないように、ぜひお願いをいたしたいと思います。  これを例示にすることがよいことかどうかわかりませんが、例えば北拓が業務譲渡をいたしました北洋、お考えをいただきたいと思うのであります。  北洋は批判を受けるような金融機関ではございません。しかし、北拓の業務譲渡を受けて、北海道内における、北拓を信頼し、ここから資金の供給を受けていた業者の方々に不安が起こらないようにしようとすれば、北洋は資本増強を図らなければならないわけであります。こうした部分に手をかすことが金融機関の責任者の追及を受けなければならないものかといえば、私はそうではないと思うんです。  そして、しかしその中で、将来に対する業務の計画を明らかにしていくということも、将来に対する責任として我々は求めます。しかし、金融機関の経営者として、他行の破綻の処理の中で地域の金融を安定させるためにみずから責任を負うという者が、私は指弾の対象になるとは思っておりません。
  39. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 もう一つ質問したいと思うのですが、貸し渋り対策ということで株式の評価方法を選択制にする云々というのがあります。  私はそのときに、株式評価方法を選択制にして、あるいは原価法に改める云々ということであるとするならば、おかしなことをしているなと。国民には自己責任原則云々という話をし、そしてディスクロージャーがどんなに重要かという話をしながら、この株式の評価方法の選択制、しかも原価法に云々というのは、まさに経営情報の私は隠ぺいを奨励するような政策だと思う。まさに時代に逆行したことをやっていると思うんですが、いかがですか。これは簿外債務を法律で認めようとしているんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  40. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  株式の評価でございますが、これまで銀行は、超安全、超保守的と言えるようなやり方で評価をやっております。それは、個別の株が簿価より安くなったらそれを全部利益でもって埋める。つまり含み損は一切置かない、手元に置かないという形でございます。益は益で、上回っている場合は、それは含みでとっておく、こういうやり方、つまり低価法でございます。商法の原則は、低価法または原価法となっております。一般の企業は、どちらかの選択でございます。  株式の場合、特に長期で持とうとする場合においては、株式を持っているがゆえに、株式市場変化で、自分は売るつもりはないのに株価が下がったことで損が出る、それを利益で埋めなきゃいけないとなると、BIS基準あるいは国内基準でいう分子がぐっと減るわけです。そうしますと、貸し渋りの現象すら起こり得るわけでございます。したがって、株式市場の変動で一喜一憂して、より銀行は慎重になっていくという経緯があります。したがって、長期に持っておるような株式については、これは原価法でいい。  しかし、今先生がおっしゃったように、実態がわからなくなるのじゃないかという御指摘については、必ずこれはディスクローズすることにしております、含み損が幾ら、含み益が幾ら、差っ引き幾らと。したがって御指摘のような、隠ぺいをするということは全くありません。より株式市場に左右されない銀行経営ができるようにその選択を与えるということでございます。金融機関は、それは自由でございます。そういうことでございます。
  41. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これで終わりますが、一言だけ。  きょう私がいろいろ申し上げたかったことは、本当に今国民から見ても信頼が失われている、そういうことであります。それを回復するために、あるいは国民が本当にフェアな社会だなというふうに思えるように、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。  きょうは触れませんでしたけれども、私は、銀行経営者というか、銀行にしてもそうですが、どんなに高い給料を得て、どんなに高い報酬を得てというふうなことも思ったりいたします。もう一つ見ても、きょうは触れませんでしたけれども、もっと責任をとる人は責任をとらなきゃならぬ。  きょうは日銀総裁にもおいでいただいておりますが、私は、日銀の総裁を初めとしてそうした幹部の皆さん方の報酬にしても、何で五千万以上の年間報酬なんだろうか。総理大臣よりも五百万以上多いんじゃないでしょうかね、そんな状況なんですね。何でそんな五千万円以上も日銀総裁が得ていいんだろうか。しかも、そのとき日本経済があるいは金融状況が世界に冠たる金融情勢だったならばまだいいかもしれません。こんな状況のときにどういうことなんだろう。  もう一つだけそれにつけ加えます。じゃあ言います。  まさに世界をリードしているアメリカは、もちろんいろいろの事情はあるとしても、連邦準備理事会のグリーンスパンの年俸は、私は聞きましたら、十三万六千七百ドルだそうであります。まあ、ざっと言えば千七百万円ぐらいでしょうかね、というぐらいのことであります。いかに今日本状況が奇妙なことになっているかということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  42. 松永光

    松永委員長 この際、石井一君から関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石井一君。
  43. 石井一

    石井(一)委員 民友連石井でございます。「国民の声」を代表して御質問を申し上げたいと存じます。  一昨日、一月十七日、今世紀最大とも言える阪神・淡路大震災の追悼式が行われました。総理みずから御出席をいただきましたし、閣僚の中でも、官房長官、国土庁長官建設大臣運輸大臣防衛庁長官等御列席をいただいて、そういう中で、復旧はかなり進んでおります。四兆円からの投資を復旧のためにいただいたわけでありますけれども、しかし、まだ傷跡が深く残っており、社会的に弱き立場の人々が取り残されておるということも御存じのとおりであります。  災害がいつ、どこへ来るのか、いつかは必ずやってくる。六千四百人という亡くなった人々のことを思っても、これを貴重な教訓としなければならないと私は思います。  そういうことで、この三年を振り返りましたら、その後何らかの新しい制度か立法ができたかということを考えましたときに、残念ながら見当たりません。危機管理の体制も少しは強化されたでしょう。公的支援の問題、個人補償の問題、保険制度の改善の問題、ボランティアの育成等々、まだまだこれを糧とし、風化させずに、今後の状況を、私は前向きに取り組んでいくという真剣な行政府としての取り組みが必要だと思います。  総理に強く御要望をしておき、所感があれば一言お伺いをしておきたいと存じます。
  44. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 あの日のことは、思い出しましても、私自身もさまざまな思いに駆られる日でありました。  当時、通産大臣でありましたけれども、当時の近畿通産局の諸君がライフライン関係から推察した情報を非常に早期に上げてきてくれておりましたものを、自分自身でも十分に活用できなかった思いを今も残しております。  私自身の遠縁の者も一人亡くなりました。その子供が十七日の追悼式に出席をさせていただいておったようであります。  そして、復旧の間にも何回か現場を拝見し、大変な努力の中で、多くのボランティアの方々の協力も得て復旧が進められておりますことにも感銘を受けました。  今、本当に同じような事件が二度と起こらないことを心から願いますけれども、あの阪神・淡路大震災の教訓というものは防災計画を初めさまざまなところに生かされ、今もまた生かされ続けていると思っておりますが、議員御自身もその体験を受けられたそのお地元の一人として、なお足りないという御指摘は、私はそのとおりにちょうだいをしたいと思いますし、この事件の中から我々が学んでいくべきものは、今日もなおすべてが完了したとは私も思っておりません。一層、今後の危機管理体制の上において、あるいは防災対策の上において、得られた教訓というものを生かしていこうという思いとともに、亡くなられた方々、またその御遺族に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。
  45. 石井一

    石井(一)委員 総理は、去る十二日、国会の冒頭、異例ともいうべき経済演説をされまして、その中で、金融システムに対する内外の信頼の低下を憂い、万全の対策を講じ、金融システムを断固として守るという決意を表明されました。その次のパラグラフでも、金融の根本は信頼、こういうことを主張されております。  金融政策を監督指導する政治行政への信頼というものがいかに重要かということを痛感いたしますとき、本日の一面トップの記事は、すべて元大蔵省の局長の逮捕の問題であります。しかも、これが単なる一事件ではございません。年末年始から報道されております大蔵官僚の特殊法人への天下り、業界との癒着等々、いわゆる接待を受け、供応を受けというふうな状況が起こっておる。総理がいかに演説で金融は信頼だと言われても、この事態をどう行政府の長として受けとめられておるか、まず基本的な御見解を承りたいと存じます。
  46. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今御指摘になりました事件につきましては、しばらく前から報道等においても散見をされておりました。しかし、率直に感想を申し上げるなら、信じたくない思いでいっぱいでありました。しかし、昨日の逮捕という事態になりまして、少なくとも捜査当局の疑惑というものがそれだけ裏づけられたものと思います。そして、こうした事件、本当に情けない思いでありますし、遺憾だと申し上げる以外に申し上げようがありません。  でも、これから捜査が進むことでありますから、これ以上のコメントは控えたいと存じますけれども、同時に、公団の外債発行事務手続等の中から出た事件のようにも報道されておりますので、そうした点も、正すべきところがあれば必要な措置を講ずるようにしてまいらなければならぬ、今そのように思っております。
  47. 石井一

    石井(一)委員 銀行・証券業界と政官界をめぐる一連の疑惑について、既に東京地検は大型の捜査陣を投入して現在捜査を行っておりますが、金融不安のこのさなかに、まさに異常の事態であると申し上げなければなりません。  浮上しておる疑惑は、まず第一に大蔵出身の政治家、第二に大蔵現官僚、そして第三に大蔵のいわゆるOB、特殊法人を初め護送船団方式の中であらゆる業界に天下りをしておる人々。これまで聖域と言われておったこの問題に関して、腐敗構造にメスを入れよということを言っておるこのときに、幾ら口先で金融の根本は信頼だと言っても、国民政府を信頼する気持ちにはならないのではないですか。その問題を一つの不祥事として取り上げるというふうな、そういう生易しい姿勢ではとても解決できないと思うのですが、総理、いかがですか。
  48. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から、起こりました事件についてどう思うというお尋ねでありましたから、率直に感じておるとおりのことを申し述べました。  そして今までに、官僚の不祥事の相次ぎました時点で、綱紀粛正についての倫理的なルールを既につくりましたが、従来、特殊法人に対しましては、当然それに倣うことを期待しつつも、特殊法人の綱紀粛正というものを真正面から倫理規程のような形でこれをまとめておりません。今回の事件の今後の進展を見ながら、官僚に対して求めると同様の倫理規程をみなし公務員である特殊法人に対しても求めなければならぬ、そのような思いでおります。
  49. 石井一

    石井(一)委員 自民党の新井将敬代議士は、昨年二月まで約一年半にわたって、大手証券会社日興証券から、株などの違法な一任勘定取引で利益を受けていたということが明らかになっております。新井代議士は、昨年十二月二十二日、みずから記者会見を行いまして、口座の開設と不正取引の事実を認めております。利益について日興証券の担当者に問い合わせたところ、不正な方法で利益を提供されていたことが初めてわかった、このように言っております。  自分の知らないうちに証券会社が勝手に利益を提供した。与党の国会議員、大蔵省出身、大蔵関係の委員会に携わっていた新井氏になぜ利益が供与されたのか、その意図をはっきりさせる必要があると思います。  手口は、四大証券会社を巻き込んだ総会屋事件と同じで、いわゆる利益のつけかえにすぎません。総会屋への利益供与事件は、本人だけでなく、証券会社経営陣が相次いで逮捕されるという業界ぐるみの問題になっております。  また、これに関連して、大手証券会社に一万近いVIP口座が存在するということが伝えられております。政治家や高級官僚が、証券取引法で禁じられておる一任勘定取引を大手証券が受託し、特に有利な商品を割り当て、もうけさせているのではないかという疑惑が起こっております。新井代議士の事件はその一つが表面化したにすぎない、こう申しても過言ではないと思うのであります。  新井代議士は利益を要求したことはないと言っておりますが、これを信じる人がおるでしょうか。それならば、なぜ新井氏だけが利益を提供されるのか。一般の顧客は何も受けていない。この株安の時期に、どれだけの人々が今泣いておるか。原資は一億円であったという。一年半の間に四千万をもうけたということが新聞に報道されております。  こんなことをやっておって、政治に対する不信、政治家に対する不信というものはどれだけ大きなものになるか。証券市場に対する信用性、透明性というものはどのようになっていくだろうか。金融のビッグバンを進めるのなら、こうした不明朗な事件をまず真相を解明し、けじめをつけるという必要があると思います。  私は、総理がこの問題に対してどういうお考えを持っておられるのか、御見解を伺いたい。
  50. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、冒頭申し上げたいこと、これは、法に反するようなことがあるならば、当然ながら当局は厳正な対応をするものと考えておりますし、その意味において私は捜査当局を信頼しているということであります。  そして、国民政治不信を払拭するために、政治家が常に自戒し、襟を正さなければならないという点では、議員の御指摘を私はそのとおりに思います。そして、明らかにされなければならないこと、それは、適切な場で、政治家みずからの立場で明らかにすべきものだと思っております。  そして、議員よく御記憶のように、海部内閣の大蔵大臣在職中、損失補てんということから、いわゆる証券不祥事というものが起こりまして、そして、私自身の当時の秘書の軽率な行動もあり、私は責任をとって、第一弾の防止策を講じて、その職を辞しました。そのとき、こうした不祥事がなくなるような体質を証券業界がつくってくれることを心から願っておりました。  しかし、総会屋への利益提供というものがまず発覚し、その中に補てんが出てきたり、あるいは大手証券会社の中で簿外資産の債務と化したものが出てきたりというような報道を聞くにつれまして、一たん戻りかけた証券市場への投資家の信頼というものが崩れることを本当に心配しておりました。  今御指摘を受けましたような問題が事実であるのかどうか、私自身承知をしておるわけではございませんけれども、これ以上市場の信頼を失うことの事件の相次がぬことを本当に祈るような思いであります。
  51. 石井一

    石井(一)委員 私もそれが事実でないことをこいねがいたいと思うのでありますが、事実は一つしかありません。それが何かということを解明することが、すなわち国民の信頼を取り戻すことであるということは間違いありません。  総理は、ある意味では他人事のような言いぶりに聞こえる。総理として無責任だ。これが国民政治行政への不信、株式市場への信頼性を損なう重要なゆゆしき問題である、そういう認識はありませんか。
  52. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、そういう認識は持っているつもりであります。  その上で、司法当局、捜査当局が捜査をいたしております中の、その実情を行政責任者が知ろうとすることはよいことではないと私は思っております。その内容を知ろうとし、その内容を聴取する、それは逆に捜査に対する好ましくない影響を与えることもあり得るでしょう。  ですから、報告を受けることは私はきちんと受けますけれども、それ以上に、その状況が現在どうなっているのかとか、細部まで私は聞かせてほしいというようなことも申しておりませんし、また、それはしてはならないことだと思っております。  ですから、私は世上に知られている範囲の知識しかありませんし、無責任と仰せられましたけれども、私は、行政の当局の責任者が捜査当局の捜査で知り得た機密を知ろうとすること、これはやってはならないことだと思います。
  53. 石井一

    石井(一)委員 無責任というよりも、責任回避と私は申し上げたい。  まあ、しばらくお休みください。  主管の大蔵大臣として、この問題の真相を解明することが国民の信頼を取り戻すことだというふうに思われませんか、三塚大蔵大臣
  54. 三塚博

    ○三塚国務大臣 市場は公正、透明でなければならぬ、こういうことで、信認を得るべく全力を尽くしておるところでございます。  具体的に、新井議員のことで御指摘であろうと思います。この件については、本人の記者会見で言明をされたこと、承知をいたしておるということにとどめさせていただきます。
  55. 石井一

    石井(一)委員 実に嫌な問題だから避けて通る、司法の方にお任せをする、そういう態度で私は国民が納得するかなと思いますよ。自民党の総裁として、このような問題が起こっておる場合には、一体これはどうなっておるのかというぐらいの真相を聞くのは当然でしょう。それを、自分は司法の方に任せておるのだから知らぬと言って、そんなことで国民に対する説明は私はつかないというふうに思います。いかがですか。
  56. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、私は、行政の最高責任者という立場でここで御答弁を申し上げております。自由民主党という立場でありますならば、党は、執行部、また総務会長等、それぞれに、そのつかさつかさが新井議員に対しその事情を聴取し、その結果を報告を私も受けております。  ただ、その上で申し上げたいことですが、無責任と言われましたけれども、私は現在、その新井さんの話されたことに対して捜査が行われているのかどうか、司法当局がどう考えておられるかどうかを本当に報告を受けておりません。また、報告を求めようとしておりません。それが無責任だとあなたは言われますけれども、司法あるいは捜査の内容を行政の長が知ろうとすることが本当にいいことなんでしょうか。私は、報告を受けております範囲から、それ以上に、捜査当局あるいは司法当局が報告をしようと思わない部分まで私自身が聞こうとはいたしておりません。
  57. 石井一

    石井(一)委員 私は、今の答弁には納得いたしかねます。しかし、これ以上やりとりをしても仕方がないでしょう。ただし、きょうは国民の皆さんが話を聞いておられて、私の聞いておることが国民の至純な声か、総理の御答弁が回りくどい言いわけかということは、賢明なる国民は理解しておると思います。  大蔵当局は、日興証券の担当者に対して、この問題がどうなっておるのかということを事情聴取しておりますか。いかがですか。ほっておるのですか。政治家のことだからさわらないということでほっておるのか。日興証券の、それはMOF担もおれば、いろいろおるでしょう。どういう状況かということを聞いておるのかどうか、簡単にお答えいただきたい。
  58. 長野厖士

    ○長野政府委員 証券会社をめぐります法令違反等の事実があるかどうかにつきましては、証券取引等監視委員会におきまして、司法当局と連携をとって常時監視しておるものと考えます。
  59. 石井一

    石井(一)委員 あれをもって、いわゆる典型的な官僚答弁なんですね。もう政府委員なんて要らぬですよ。大臣、副大臣でやるべきですよ。そういうことを我々は提案しております。そういう答弁なら出てこなくていいですよ。  法務・検察の当局にお伺いをしたいのですが、これは確かに証券取引法違反の疑いがあると思いますけれども、そして関心を持って対処すべき問題だというふうに思いますが、どうお考えになっておるか。総理の先ほどの回りくどい御答弁をも含めて、御答弁をいただきたい。しかも、官僚答弁でなく、簡潔にお願いしたい。
  60. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のケースを含めまして、さまざまな報道がなされ、また国会でも広い角度から御論議されていることは、検察当局としても十分承知していることと存じます。  ただ、検察当局が証拠に基づきましてどのような事件につき捜査するかという点につきましては、検察当局の判断に任せる面がございます。そういう点で、私どもとして、政府委員の立場であらかじめ、どのようなケースについて捜査すべきか、あるいはしているというようなことについては申し上げることができない点をどうぞ御理解いただきたいと思います。  しかし、事実に基づきまして、まさに検察当局としては法と証拠に基づき今後とも適正に対応していくものと考えております。
  61. 石井一

    石井(一)委員 金融の不安とその危機が最大の政治問題になっておるこの国会で、金融問題が中心で論議をされておるこのときに、今回の事件をあいまいにしたままで国会審議法案審議に応ずることはできません。  私は、本委員会に、まず第一点、新井氏を証人として喚問し、真相と政治的、道義的責任を明らかにするように要求したい。総理がおっしゃっておったように、そういう事実はなかったということを政治家の見識として明快にしていただきたいということ。  さらに、第二点は、この問題に関するパートナー、日興証券の担当責任者国会に招致して、この席で国民に明快に真相を明らかにしてほしい。一億の金をつぎ込み、隠し口座、仮名口座で四千万が入っており、それがぬくぬくと入っておる。政治資金としての届け出はどうなっておるかという問題もあるでしょう。  そうして、第三点として、私は総理にお願いを申し上げたいですが、与党の最高責任者として、行政の最高責任者として、金融の問題を議論するのであれば、このことに対して、司法に任せてあるというのでなしに、みずから積極的に調査をし、それを国民に報告するぐらいの誠意はあっていいんじゃないですか。  私は、第一点、第二点を委員長から、第三点を総理から御答弁いただきたいと思います。
  62. 松永光

    松永委員長 新井氏の証人喚問の申し出、それから日興証券の担当者の喚問の申し出、いずれも理事会で協議をすることにいたします。
  63. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 お答え申します前に、先ほど法制局長官から注意を受けましたので、一点、先ほど来の御答弁の中で司法当局という言葉を私が使いましたようでありますが、捜査当局に訂正をさせていただきたいと存じます。まだ司法の段階ではない、捜査の段階である、用語を適切にと言われましたので。  その上で、御要請がありましたので、党総裁、総理大臣としての立場ですることでは私はないと思います、党の総裁という立場で、党の機関を経てきちんと調査をいたしたいと思います。
  64. 石井一

    石井(一)委員 委員長が引き取られて、タイムリミットがなくこれを持ち越されては困ります。これは証券・金融の基本にかかわる問題であるという御認識のもとに、ひとつ積極的、精力的に結論を出していただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、大手銀行、証券会社の大蔵省担当者、MOF担というそうですが、これは、東大出のエリートが集まって情報集めに走っておる、そうして大蔵省の金融検査部の幹部職員を高級料亭に招く、ゴルフで接待をする、そういう中からこういうふうなしきたりがかなり広く広範囲に及んでおる、接待は長年にわたり慣行になっておる、新聞には連日こういう記事が書いてあります。  一々言っておったら切りがありません。「一人数百万円の例 贈収賄容疑立件も視野」「ヒラ検査官も「つけ回し」 「酔う前に…」と検査情報」など。  大蔵大臣、これを読んでおられますか、これをずっと。  「昼夜問わず”接触”」「MOF担が奔走」、そうしてMOF担で成功すれば出世する、こういうことまで書いてある。「検査日程そっと目配せ」、当てにならなければ反論してもらいたい。検査官が来たらあっと驚いてみせる、しかし準備万端、銀行側は抜き打ちを有名無実にする。こんなことで検査ができるでありましょうか。一々言っておったら切りがございません。  しかも、読売の一月一日の記事などは、日本興業銀行に始まって、日本長銀、東京三菱、住友、三和、第一勧銀、富士、さくら、そして野村証券、日興証券に至るまで、「主要銀行と証券会社の現・旧幹部が証言する大蔵接待の実態」というのが出ておる。これはどういうことですか。こういうふうな状況でやっておって本当の検査ができるのか。なれ合いの検査、手抜きの検査になるのは当然だと私は思います。  金融機関が次々に破綻をした。検査がまともに行われていたら、少しは不正行為の早期の発見やら健全経営というものが確保されておったのではないかという気持ちにもなります。金融危機がここまで叫ばれておる現在にその監督官庁である大蔵省は何をしておるのか。大蔵省の検査がずさんであったということが言われても仕方がない。不良債権の実態などわかるはずがない。  これだけの大きなことが報道されておりますが、大蔵大臣はこの事実を認めますか。いかがですか。
  65. 三塚博

    ○三塚国務大臣 報道につきまして全部は読んでおりませんが、御紹介の読売は拝見をさせていただきました。また、その都度、問題提起が議員各位からありました折にその指示をいたし、実態はどうか、これは申し上げておるところでございます。  そういう中にございまして、平成七年の五月に綱紀粛正の通達というのを出してあります。なお、一昨年、八年の十二月、さらに通達を倫理規程という形に変えまして、外部の皆さんとの接触、会食についての禁止等について厳しく厳命いたしたところであります。  一昨年十二月倫理規程発出後は、その後の報告は、さようなことは全くない、こういうことでございます。  以上であります。
  66. 石井一

    石井(一)委員 あなたは、事実はある程度知っておる、また、部下の皆様方にその問題を調査しておるというふうなことも言われました。しかし、重要な発言をされましたのは、一昨年倫理規程を出したからその後は一切そういうことが起こってないなんて、そんなことをこの席で今言われましたけれども、起こっておるのは去年、ことしにかけ、ことしにはまだないですが、去年にかけて続々とこういう問題が出てくるのですよ。大蔵大臣は監督ができないのか、大蔵大臣は何を言っているのかということになりますよ。これだけの事件が出ておるということを十分御認識をいただきたいと思います。  私は、この問題に関して責任者としてもっと明確に事実関係を調査するべきである、そして、事実がなければ事実がないということを、これだけ出ておるのですから、国民に反論すべきである。このまま看過するということが、どれだけ金融安定システムを議論しておるこの時期に重要なことかということを御認識ただきたいと思います。  あなたは今、調査をされたと言われましたが、読売も読まれたと言われましたけれども、この事実はおおむね事実か、そうでないのか、はっきりさせてください。
  67. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、調査を命じたことに対しまして、ただいまのところ、調査をした結果そういう行き過ぎた事実はありませんでした、こういうことであります。そういうことでございますので、御理解をいただければと思います。
  68. 石井一

    石井(一)委員 あなたは、ここに書いておる十数件のいわゆる不祥事、疑惑を持たれたもの、それは一件も、これは皆事実ではないということを言っておられるのですか、これは事実だということを言っておられるのですか。はっきりしませんから、これははっきり、名前こそ書いてございませんけれども、そのケース、証言の主な内容がこれに書いてある。銀行局なり証券局、その関係の検査部かで見れば、これはだれかということは一目瞭然、全部わかるはずだ。  否定をするなら、反論をし否定をしてもらいたい。そうであるならばそうであるということを調べる責任があるのじゃないですか。いかがですか。大蔵大臣
  69. 三塚博

    ○三塚国務大臣 当然、担当責任者が聞いておるわけでございまして、法に触れるようなことはないという報告であると、これは明確に報告を受けているわけであります。
  70. 石井一

    石井(一)委員 まあ、答えにくいんだと思いますけれども、こういう事実があるという場合は、常識的にこれはだれを指しておるかと。事実、きょうの日本道路公団の財務担当理事にしても、きょう逮捕に至るまで名前は出ておりませんでしたが、ずっと新聞報道が続けられ、そしてこの時期に至っておるわけですよ。それは捜査当局なり司法当局が今後どういう取り上げ方をするかわかりませんが、行政の監督庁として、司法、検察が取り上げるまでに、事前に、行政府の長として綱紀の粛正をするのは当然じゃないですか。司法に問題にならなきゃそれで通り過ごしていいと、そういうお考えじゃないと私は思うのであります。  そういうことを考えたら、このことに関して、例えばあなたの認められたこの十数件に関して、事実が、該当があるのかないのか、あるとすればどういう実名かということを、内容はこう違っておるということを報告していただきたい。いかがですか。なければないで結構です。あなたは調べる義務がある、責任があると思うのです。
  71. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、一昨年の十二月に大蔵省は倫理規程を出しましたが、それ以後におきましては、私どもはない、これは調査した結果ないと思っておりますが、それ以前の行為につきましてはいろいろなことが言われております。重大な疑惑がありますればそれは調べるということで考えていきたいと思っております。
  72. 石井一

    石井(一)委員 私が聞いておりますのは、それ以前のものであったら看過していいのか、そういう問題もあれば、この中には、細かく申し上げませんけれども、つい最近の問題もある。この記事を読んでみれば、外国へ出張すれば五日間のうちに検査をするのはたった一日だ、あとの四日はゴルフをし、観光に回りと書いてある。去年のことだよ。そういう倫理規程等々の後に出たことである。  したがって、大蔵大臣として、これだけの金融ビッグバンをやるときに、監督官庁として、検査の立場としてどうなっておるか。このマスコミの挑戦に対して、しっかりとした反論をし、そうして信用を高めるための努力をしなさい、こう申し上げておるのであって、同じような答弁は要りません。それをひとつ約束してください。
  73. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御指摘の点について、マスコミに出たものを全部点検するということ、私自身、わかりません。(石井(一)委員「わからぬでしょう。だから調べなさい、調べさせなさいよ」と呼ぶ)ですから、調べさせるということでありますが、特定のものを調べるということではなく、全体を、調べた結果を、今官房長が言ったとおりでございますし、私も前段申し上げましたのは、一昨年の十二月、倫理規程を出しました以降について、職員につき調査を、聞き取りをいたした結果として違法な事実はありませんでした、こういうことであったと率直に申し上げておるわけであります。
  74. 石井一

    石井(一)委員 この問題もこれ以上議論を繰り返しませんが、国民の皆さんはこのやりとりを見ておられまして、いかに後ろ向きな、弁解がましい話なのか、私はそう感じられると思いますよ。  私は無理なことを言っておると思いません。おととしのものであっても悪いものは悪いし、それ以降のもとで行われておるものか、してないのか。この記事を見たら、だれだってみんな、感ずるものを、感じ取る人がありますよ。何も昨日逮捕された日本道路公団の財務担当の理事だけが問題ではない、霞が関全般にこういう風潮が横行しておる、私はこう申し上げてもいいと思うのであります。  公務員、なかんずく高級官僚のあり方に徹底的にメスを入れるべきときが来ておると私は思います。金融ビッグバンとともに霞が関のビッグバンを進める必要がある。信賞必罰、高級官僚の思い上がり、権限のあり方、業界との癒着体質の点検、特殊法人の総点検、こういうことを抜本的にやる時期だと思います。  行政改革だと言って機構いじりして、数を統合するとかなんとかするといったって、その中におる人の精神を変えなければ、どうして行政改革が実行できるのか。動かすのは人である。そういうことを考えた場合に、先ほどの大臣の答弁のようなことを言っておったら、なめ切られますよ。何だ、あの大臣と。もう少し見識を持ってもらいたいと私は思うのです。いかがですか。総理、お答えください。
  75. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、大蔵大臣の御答弁を申し上げましたことに対し、議員議員としての御意見を述べられました。いずれにいたしましても、国民の目から疑惑を生ずるような事態というものは我々は絶対に避けなければなりませんし、そういう事態が起きておれば、それが調査をし事実であるかないかを明らかにするその責任はあると思います。
  76. 石井一

    石井(一)委員 ただいまの総理の答弁をお受けしまして、その責任があると言っておられるのでありますから、速やかに、大蔵省を中心にしたこの疑惑、その他の省にもあるでしょう。できれば、願わくば、ここにおられる大臣各位、それぞれの省でこれに類似したような問題はないか、御調査をいただいて、本委員会に御報告をいただきたい、これを委員長にお願いしたいと思います。
  77. 松永光

    松永委員長 その点も理事会でどうすべきか協議します。
  78. 石井一

    石井(一)委員 私は、もうこれは触れないでおこうと思いましたが、現職の警視庁の警部が、これも証券絡み、金融絡みでありますが、大和証券に情報を提供したということにより現金を受け取り、逮捕された、こういう事実が数日前報道をされております。しかも、金銭の授受は署内で行われたというふうにも言われております。  私は、この罪は、大蔵省の高級官僚よりももっともっと小さいかもしれません、そういう気持ちで見たい。しかも逮捕されておる。  私が言わんとしているのは、隠れた人々で、ぬくぬくと今でも権限を利用し、そこに君臨し、そうして政治家なり国民をなめ切っておる、こういう人々が余りにも多過ぎる、もう少しその辺の綱紀粛正というものをしっかりやってもらいたいということを言っておるわけであります。  しかし、国民から見て、大蔵省だけでなく警察に至ってまでもこういうことなのか、だれを信用していいのか。国民は九兆円の負担も耐えていこうと思うけれども総理が演説で、国民の皆さん、安心をしてくださいと言われたって、毎日見ているこういう記事を見て、どうして今の政府が信頼できるのですか、こういう気持ちになるんじゃないかと私は思うのであります。  警察の不祥事に関して御意見があったら、総理あるいは自治大臣自治大臣はこの間神戸へおいでいただいたようでありまして、冒頭に名前を欠落いたしましたから、国家公安委員長として御意見があれば承りたいと思います。
  79. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。  今回、このような事件が発生をいたしましたことはまことに遺憾でございます。特に、身内であるからどうだということではなくて、身内であればこそもっと厳しくこれらのことについては対処してまいりたいと考えております。  なお、本件につきましては、警視庁及び検察庁におきまして厳正な捜査がなされておるわけでございまして、事案の全容が解明をされるものと承知をいたしております。国家公安委員会といたしましては、綱紀の粛正は申すまでもなく、職業倫理の確立につきましても徹底をいたしまして、国民の皆様が警察に対する信頼が確保されるように配慮してまいる所存でございます。  なお、この責任問題については何らかの形でけじめをつけなければならぬ、国家公安委員長としてはそのように責任を痛感いたしておるところでございます。
  80. 石井一

    石井(一)委員 昨年来、本委員会で大きな問題になっております泉井の疑惑事件に関する山崎拓氏の証人喚問についてであります。  自民党サイドは、政治倫理審査会に申し入れをしておるので、それでけりをつけたいというふうな意向でありますけれども、私も今度政倫審の理事、幹事になりましたが、政倫審は駆け込み寺ではない。泉井問題は、当委員会において泉井氏を証人喚問として呼び出し、非常に疑惑が深まったという状況の中で、国会が終わって逃げてしまっておる。こんなことで政治不信はますます募ってきますよ。立派な政治家であれば堂々と出てきてもらいたい。  過去、中曽根康弘先生にしても、竹下登先生にしても、細川護熙氏にしても、総理経験者であったってだれであったって、証人喚問を受けた人はたくさんおる。堂々と自分の所信を説明し、そのことによって国民が納得するということになるんじゃないですか。適当なときには、日曜の討論にはべちゃべちゃしゃべって、そうして国会の肝心のところへは出てこぬというのは、一体どういうことですか。  これは絶対に多数で押し切ってはいけません。山崎君の将来のためにも、あなたも親しいお立場だ、これを受けてもらいたいということを私は要求をしたいと思います。
  81. 松永光

    松永委員長 その点についても理事会で協議をいたします。
  82. 石井一

    石井(一)委員 協議協議というように、オウムが何かを繰り返すようなことをやってもらっては困る。松永さん、あなたも堂々たる国会議員だ。委員長の中でも大委員長だ。今回は見識あるひとつ裁定を下していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  政治倫理の話を三十分ほどしようかなと思っておりましたところ、もうこれだけの時間が費やされました。これだけ問題が多いということでございます。それぞれの政治家のお立場で深くお考えをいただきたい。そして、きょう約束されましたもろもろの問題については、特に大蔵省を中心に速やかに調査をし、御報告を願いたいということをお願いしておきたいと思います。  そこで、残りました時間、何を取り上げようかというふうに考えるわけでございますが、私が提示いたしております問題は広義にわたっております。その中で、先ほどから議論もされた一点でありますけれども景気の低迷、株価の下落、金融不安という深刻な問題に関し、橋本内閣総理大臣は、自分の経済運営というのは正しくなかった、ここで方向転換をしよう、これまで拒否をし続けてきた減税というものに対しても、まあ我々が強く要請をしてきたわけですけれども、これを取り入れよう、政策転換をやろう、こういう判断をされたのか、いかがですか。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 余り御自分で組み立てられて、決めつけられてしまっても困るのです。  そして、私先ほども実は伊藤議員にお答えを申し上げましたけれども、私は、財政構造改革というものの必要性は今も何ら変わっていない。それは、危機的な状況にある我が国の財政を健全化する、そして安心で豊かな福祉社会をつくるためにも、また、健全で活力のある経済を実現していくためにも、そうした課題に十分対応できる財政構造を実現しておくことは必要なことだと私は今もそう申し上げております。  同時に、我が国経済あるいは金融情勢の変化に機敏に対応すること、国際状況に応じて財政、税制などの措置を講じていくこと、これもまた私は当然のことであり、これを二律背反の関係でとらえるという性格のものではないと思っております。  二〇〇三年までの中期目標としての財政構造改革、そして当面の対応、これはスパンの異なるものであります。そうした考え方で私は対処しているということを先刻も御答弁を申し上げたとおりであります。
  84. 石井一

    石井(一)委員 私も、財政構造改革の必要性というものは認識をいたしております。しかし、それならそれでそれを貫き通されたらいいのでありますが、突如、外国を旅行されたのか何か、帰ってこられて、これまで否定し続けておられた二兆円減税を打ち出される。財政構造改革との整合性はどうなるのか。  しかし、今お答えになりましたように、財政再建のデフレ政策に固執して、みずからの手足を縛るような状態で景気浮揚をされても、結局は、今の経済状態というのはまさに政権の命取りになりかねないほどの深刻な事態になっておるという、そういう認識が欠けておる。  私は、今のような二律背反することを同時に言っておる限り、株価も反応しなければ、経済も上昇しない。財政再建路線を一時期棚上げしてもやり抜くのだという決意がなかったら、ことし一年だけ、来年どうなるかわからぬという二兆円の減税をやったところで何の意味もない。結局は、残念ながら、橋本不況と言われておるように、この内閣はかわってもらわなきゃこの不景気はどうにもならぬ、そういう極論になってくるような議論になってくると思うんです。  厳しいことを言うようですが、いかがですか。
  85. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、本当に私がやめれば途端にぽんと景気回復して、株価も上昇し、すべてがよくなるというんだったら、即刻でもかわります。そんな種類の話ではありません。むしろ、市場というものをよくお考えをいただいたとき、既に市場が織り込んでいる施策がきちんと実行されて初めて事実をきちんと担保することになるのです。  そして、今、補正予算にいたしましても、特別減税にいたしましても、金融システム安定化策にいたしましても、いろいろ御意見はございましょう。しかし、市場はそれが実行されることを既に織り込んでおります。それを一日も早く実行し、それによって安定させていくということが本当に大事じゃないでしょうか。私は本気にそう思っております。
  86. 石井一

    石井(一)委員 まあ、努力をされましても、悪循環が加速し、円安が進行し、株価は下落し……(発言する者あり)事実そうです。金融の不安が増大し、三月にどれだけの倒産が出るかということが言われておるんじゃないですか。(発言する者あり)一生懸命やっておるけれども、仮に、もしそれができなければ重大な決意で臨まれる、そういう気持ちでやっておられるんですね。
  87. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 総理を拝命して以来、私は、一日も自分の気の緩んだことはありません。国政を預かるというものはそういうものです。
  88. 石井一

    石井(一)委員 中小企業、零細企業の人々が現在のこの金融情勢の中でどれだけの不安を持ってやっておるのか、景気の冷え込みというものは我々が思っておるよりもはるかに想像を絶するものがある。それが、そのような状況の延長線上の答弁で決して解決するものではないというふうに私は思います。  そのために、我々は六兆円減税であるとか消費税の問題であるとか、あるいはその他いろいろな問題についての提案をしておる。一切耳をかさなかったのが、最近ようやくその一部だけ耳をかすようになった。なぜ一体それなら減税を継続しなかったのか、なぜ消費税を二%上げたのか。二兆円を入れるだけで、そのような小手先のことだけで今の深刻な経済状態が改善するというふうには思えません。  しかし、今総理が、そのような決意で臨んでおる、事態が悪化した場合にはそれなりの、背水の陣で、厳しい決意で臨んでいく、こう言うのでありますから、数カ月拝見をさせていただきたいと思いますが、事態は必ずしも好転するということは言えないというふうに思います。  協力するべきときは協力をいたします。しかし、我々は具体的な提案をしておるわけでありますから、それに対しても柔軟に対応をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  あとわずかの時間しか残っておりませんので、沖縄の基地問題について一言申し述べさせていただきたいと存じます。  普天間の返還、一年ほど前でしたか、総理がクリントン大統領と握手をされ、いかにも鬼の首をとったように言われて帰ってこられましたけれども、私は直観的に、こんなむちゃくちゃな案はない、技術的にもコストの上からも環境破壊からも騒音からも何からも、沖縄の県民感情からもこんなことはできっこない。交渉事というのはお互いに譲り合うということもあるのに、相手が一〇〇%主張を通し、こちらがすべてそれを受け入れる。  私は、日米関係の重要性は考えております。したがって、それなりの提案もしてまいりましたけれども、今や、新たに厳しい局面に直面しておると言っていいでしょう。どうするのか。  私には私なりの考えがありますが、今、名護の住民投票、そして市長選挙等、また、大田知事の苦悩の日々というふうなものを見た場合に、これにどう対処されようとしておるのか、お伺いをしたいと思います。
  89. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この問題の原点から、改めてきちんと私はこの場をかりて申し上げてみたいと思います。  私は、総理になりました直後、大田知事に最初にお目にかかりましたときに、知事から、従来沖縄県として非常に重要視をしておられましたいわゆる三事案というものよりももっと急ぐテーマ、それは、市街地の中に存在をし、住民の暮らしと隣り合わせで存在をしており危険である、その普天間基地というものを一日も早く動かしてほしいという切々たるお話でありました。  そして、そのお話を承り、サンタモニカで初めてクリントン大統領にお目にかかりましたときに、私は、その問題を提起いたしました。そして、日米両政府は、その知事さんの気持ちというものにこたえるべく、一生懸命話し合いをし、その上で、現時点における最良の選択肢として、普天間飛行場よりも規模を大幅に縮小をする、しかも撤去可能な海上施設という提案を打ち出したわけであります。そして、地元の皆様にもそれをぜひ理解をしていただきたい、最大限努力をしてまいりました。  そうした中、昨年末、私との会談で、当時の名護市長でおられた比嘉さん、国益、県益、市益という言葉をお使いになりましたが、その国益、県益、市益を熟慮した上で、みずからの進退を賭して海上ヘリポートの受け入れという、本当に悩み抜かれた上での深い決断を示されました。私は、政治家として、本当に深い敬意を表しますと同時に、その決断を高く評価をいたしております。  政府としては、この比嘉市長の英断というものが無にならぬように、そして、知事御自身が冒頭私に指摘をされましたように、普天間基地の危険というものを除去していくために、今後とも、現時点では最良の選択肢である海上ヘリポートの実現に向けて全力で取り組んでいきたいと考えております。  この問題には、大田沖縄県知事のみずから提起をされた問題でもあり、その御協力を欠くことはできません。知事が提起をされました問題に対して、政府が現時点におけるぎりぎりの選択肢として提示をいたしました移設可能な施設である海上ヘリポートについて、ぜひ御理解がいただけるよう現在も最大限の努力を続けているところでありまして、ぜひともこの解決のためにお力をかしていただきたいと心から願う次第であります。
  90. 石井一

    石井(一)委員 ヘリポートの建設、普天間の移転と振興策とは絡めないということも言っておられますし、この一年間、それなりの努力をされてきたわけであります。名護市長のような国の姿勢に協力を示しておられる方もありますけれども、残念ながら過半数の人々がこれに対して反対を唱えられておる。こういう時期に、私は、これまで進められてきた政府の方針ではこの問題は解決できないと思います。  しからば強行するのか、県民の意思に反してまでやるのか、そういう決断がやってくると思いますが、私は、橋本総理はそういうことはやられないということを信じております。  何らかの形で方針を変更しない限り、現在の計画が進むとは思いません。あなたはそういうふうに思っておられるかもわかりませんが、それは大変な誤算であります。沖縄の県民の感情というものはそんなものでないということを申し上げまして、私、この問題についてはいずれ別の機会で質問をし、本日の質疑をこれで終了したいと思います。
  91. 松永光

    松永委員長 これにて伊藤君、石井君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  92. 松永光

    松永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鐵三君。
  93. 冬柴鐵三

    冬柴委員 平和・改革冬柴鐵三です。  私の選挙区は兵庫県の尼崎小選挙区でありまして、さきの阪神・淡路大震災では激甚被災地として指定された地域であります。  あの忌まわしい日から、一昨日、満三年の日が過ぎました。尼崎市にも、まだ千四百世帯という多くの方々が仮設住宅で不便な生活を余儀なくされているわけでございますけれども、この方々とお会いをいたしますと、大変な困窮状態を訴えられまして、このようなときこそ公的支援をお願いしたいんだ、このような訴えをよく耳にいたします。  私も被災地から選出をいただいた議員として、これまで三たび、阪神・淡路大震災の被災者の生活支援に関する法律案を衆議院に提案をいたしました。しかしながら、なかなか与党の壁厚く、ことごとく廃案として今日に至っております。  寒い四回目の冬を仮設住宅で迎える多くの人々、こういう人たちに対する公的支援、いろいろな理論上の問題はありましょうけれども、強く拒否してきた政府が、さきには、乱脈きわまりない営業をやった業者に多くの不良債権を抱えてしまった住宅金融専門会社、いわゆる住専に対しては、六千八百五十億円、大変な公的支援を行ったわけでございます。今このたびは、これを大銀行にまで広げまして、公的な意味での支援をしようとする法律案を政府が提案されたことに対して、次元が違うという反論があることは承知の上ではありますけれども、多くの被災地の住民とともに、私は強い憤りの気持ちを冒頭明らかにせざるを得ないわけでございます。  さて、我が国国民生活はかつてない危機に瀕していると思います。今まで堅実なもの、そしてまた安全なものの代名詞として通用してきた生命保険会社や、あるいは銀行というものに対する国民の厚い信頼、そういうものが、日産生命あるいは北海道拓殖銀行、あるいは創業百年を誇り四大証券の一角を築いていた山一証券の倒産等で、このような国民の信頼は全く地に落ちてしまいました。また、貸し渋り等による中小企業者の倒産件数も月を追って累増いたしておりますし、失業者問題も本当に深刻の度を加えていると思います。大変な世の中になってしまいました。  国民の多くは、その原因を、昨年四月の消費税率の二%のアップ、あるいは今まで継続しておりました二兆円の特別減税の打ち切りということに原因があるのではないか、このように思っておりますし、私もそのように思います。  当時、この消費税を二%上げるという前後の予算委員会における議論を見ましても、新進党は、このような大規模な国民負担、これは初年度の税制ベースで九兆六千八百九十七億円、前年比でございますけれども、そのような巨額な国民負担を強いる結果になるわけでございますから、こういうものがせっかくバブル崩壊後回復しつつある景気に対しデフレインパクトを与えて、そして、これが景気を低落しそして失速させるのではないか、このような主張を繰り返してまいりました。  そして現に、それは主張だけではなく、この衆議院に対して一昨年末には、二〇〇一年三月三十一日まで消費税率を三%に据え置くべきであるという法律案を提案いたしました。また、昨年の通常国会では、二兆円の特別減税平成九年度も、すなわち今年度も継続すべきであるという法案を提案いたしました。しかしながら、これも与党の厚い壁に阻まれまして、ことごとく期末には廃案という残念な結果に立ち至りました。  さて、このような国民及び野党の経済見通しというものと政府の当時の経済見通しには、大きな乖離があったように思われてなりません。  時間を節約する意味から、三塚大蔵大臣が参議院の予算委員会で昨年の三月六日に述べられた部分を中略をしながら読ませていただきますと、二%アップ特別減税の停止、廃止、こういうことでありますが、四—六の期間は、ということは平成九年の四月、五月、六月は、導入時でありますからそのことによってマイナスになるであろう、しかし後半は、七月以降はプラスに転換をするということで、一・九%の経済見通しでございますので、御理解をいただければと思います、このように述べられたことは間違いないと思うのです。  念のため大蔵大臣、一言、そのような認識であったかどうか、御確認ください。
  94. 三塚博

    ○三塚国務大臣 そのとおりの認識を申し上げました。
  95. 冬柴鐵三

    冬柴委員 委員長お断りしていた資料、これは、平成八年度、九年度の四半期別実質GDPの伸び率を表にしたものでございます。  平成八年度は平均三・二%という高い伸び率を示しましたが、平成九年度の第一・四半期、すなわち四、五、六は、大蔵大臣の予測どおりこんなに大きく落ち込みました。しかしながら、後半はずっと上って、そして、平均値はこの線ですが、政府見通し一・九%を達成するということの見通しを示されたとおりです。今も確認されたとおりですが、現実にはこういうふうに著しく後半落ちてきたということは事実でございまして、現在の見通しは一・九%からは大きく修正をされているというふうに私は見ているわけでございます。  大蔵大臣、これも間違いないですね。そういう、上がらなかった、下へ下がってしまったという事実はお認めになりますか。
  96. 三塚博

    ○三塚国務大臣 そのとおりであります。
  97. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは次に、尾身経済企画庁長官にお尋ねします。  長官は、御就任は昨年の九月でございますけれども、その御就任前のことでございます。ちょうど一年前、平成九年一月二十日、きょうが一月十九日ですからちょうど一年前に、平成九年度の経済見通し等に関する閣議決定がされていることは御存じのとおりだと思います。  これも時間を省略する意味で、そのさわりの部分を読み上げさせていただきます。平成九年度においては、消費税率引き上げの影響等により年度前半は景気の足取りは緩やかになるものの、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されるとともに、持続的成長への道が開かれてくると考えられる。個人消費については、雇用者所得の緩やかな回復が持続すると見込まれ、駆け込み需要の反動があるものの、総じて見れば緩やかな回復を続けていく。また、企業収益の改善による好影響が見込まれる。このように、生産、企業収益、所得などが相互に連鎖的に回復し、民間需要が軸となって経済全体を緩やかにリードしていく姿となるとされまして、結論として、平成九年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率は一・九%程度になると見通されると結論づけられています。  この事実、間違いないですね。間違いないとうなずいていられますので、それではグラフの二を。  ここにこの赤色に示したところが賃金の動きでございます。これは労働省の示す毎月勤労統計、毎勤統計と呼ばれますが、この数字をとってここへ落とし入れたものでございます。それから、青色のところは総務庁の家計調査報告の線を入れました。なお、平成九年度第三・四半期は今日まだ表掲されておりませんけれども、実数は十月、十一月出ております。これは民間シンクタンクの日本経済研究センター、大和総研、住友生命総研の予想値をここへ落とし入れたのですが、もっとひどいことになっております。  ここで長官にお尋ねするのは、第一・四半期の四—六月は、これは大きくマイナスの方へ落ち込んだということは事実ですが、後半は緩やかな回復を持続するという見方が誤っていた。それから、個人消費も同様上がっていって、そして通年では一・九%の成長をするという見方が誤っていたということは、やはりお認めになりますか。  そして現在、この平成九年度の修正見込み、GDPはどれぐらい伸びると予測していられるか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  98. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 昨年の今ごろ作成をいたしました今年度、九七年度の見通しにつきましては、GDP一・九%という伸びを想定していたわけでございます。その段階におきましては消費税率引き上げの影響につきまして、今考えてみますと、駆け込み需要が消費及び住宅建築の関係で昨年度の第四・四半期、つまり昨年の一月—三月に非常に大きかった。その反動もございまして、反動減もまた大変大きくございまして、昨年の四月—六月、消費及び住宅建築が大幅な反動減となりました。  しかしながら、全体として見ますと、その後七月—九月あるいは秋口にかけましても消費はそこそこの状況回復しつつあったように考えておりますし、住宅建築も反動減からやや立ち直りつつありました。他方、企業収益等につきましてはそこそこの伸びを示しておりまして、設備投資等も順調に伸びてくるかというふうに考えていたわけでございます。  ただ、昨年の秋口以降になりましていろいろな問題が出てまいりまして、私は、その非常に大きい原因はアジア経済の動向であるというふうに考えておりますが、アジア経済の動向が非常に問題が生じてきた。それからもう一つは、企業倒産、特に金融関係の企業倒産が生じることによりまして、金融システムそのものに対する不安感というものが非常に出てきた。それから株価の低迷もございました。そういう要因がございまして、消費者及び企業経済の先行きに対する信頼感といいますか、そういうものが非常に低くなってきたことがございます。  そういう状況が生じたために、それが消費あるいは生産の方に今度は逆にはね返ってきたという状況でございまして、これに対応して対策を立てなきゃならない、こういうことでございます。  したがいまして、一番大事なポイントは、経済政策の前提ともなります金融システムの安定化ということについての、国民の皆様それから外国からの関係者の方々の信頼感を回復する。私どもとしては、金融システムの安定化は絶対に守る、そこをはっきりすることが、今の当面の景気対策上、一番大事であるというふうに考えている次第でございます。(冬柴委員経済見通し、大事なことですから。何ぼですか、九年度の修正値」と呼ぶ)  経済見通しにつきましては、したがいまして、そういうことで一・九%は難しいということで、このたび〇・一%、ほぼその前の年と比べて横ばいというふうに修正をさせていただいたところでございます。
  99. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私が聞いたことは余り答えられませんでしたけれども、最後、一・九を〇・一に修正したということははっきり言われました。  それから、これは落とし込んでおりませんけれども、十月はマイナス一・三、十一月はマイナス二・二という確定値が報告されておりますから、すごく落ちています。そういうことを考えると、この見通しははっきり誤りであった。誤りを前提として、消費税の税率を上げ、そしてまた特別減税の打ち切りをしたということは事実だろうと思います。  総理にお伺いいたしますけれども、ちょうど一年前、一月二十日、あなたの内閣で閣議決定をされたこのような経済見通しに基づいて、このような二%上げるとか政治決断をされたわけでございます。政治は結果責任ということをよく言われます。また、憲法六十六条三項には、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」このように書かれております。  当時、一月二十日に署名された大臣は、総理のほか何人か残っていらっしゃいますけれども、今いられる方も、内閣は国会に対して、こういう見込み違いのために、冒頭私申し上げました、日本経済は大変な状況に、底割れ寸前にまで来ていると言われるような状況に至ったわけでございますから、これに対する責任を国会に対してどうとられるのか、明確に答弁を総理からいただきたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員指摘になり、また関係閣僚それぞれに認めましたように、昨年の今の時期、我々は平成九年度一・九%成長は達成し得るものという前提のもとに各種の計画を組んできた、これは御指摘のとおりであります。  同時に、その当時、また現在、これは将来にわたりましても一層その思いは増してくるわけでありますけれども少子高齢社会というものの中で財政構造を安定させ、将来本当に豊かな福祉社会というものを築き得る、また維持し得る、そうした財政構造を確保しておくこと、安定させておくことの必要性は、私どもは痛感をいたしておりました。今もその点の必要性はむしろ変わらない、これからも変わらないのではないかと考えております。  その上で、確かに当時も、国民に痛みを与えることになるということはある程度覚悟をしながらも、消費税の税率引き上げ等の政策選択をいたしました。そして、私どもが予測をいたしました状況とは異なった結果が現在生じておる。この責任を全く私は回避するつもりはございません。同時に、当時は予測し得なかったアジア経済の影響というものがあることは、お笑いになりますけれども、それがあることは事実として申し上げなければなりません。  そうした中で、中期的な目標とともに、現在、我々は機敏な対応を求められている分野を幾つも持っております。政府は、それぞれの対応に全力を尽くすことをもってその責任を果たしてまいりたい、そのように考えております。
  101. 冬柴鐵三

    冬柴委員 責任は感ずるとおっしゃいました。その責任のとり方は今後一生懸命頑張ることだとおっしゃいますが、国民がそれで納得するかどうかは国民の判断にゆだねざるを得ません。私は、もっと明快に国民に謝罪すべきである。こういう間違った判断のもとに重大な政策導入をやったのは、今にして思えば誤りであった、申しわけない、こういう言葉があってしかるべきではないか。  今、世の中には大変な失業者があふれております。被災地においては特にひどいわけでございます。そういう人たちの身になれば、今の総理の責任を感じますということだけで事足りるのかどうか、これは厳正な国民の審判に仰がざるを得ないことだと思います。  次に、減税について伺ってまいります。  平成九年度も二兆円の特別減税を続けるべきである、そのような主張とともに、それは底割れしてしまうじゃないかという予測を我々はしていました。先ほど示したとおりの予測を我々はしたわけでございます。しかし、それが六月十八日、廃案になりました。ちょうど今から七カ月前の話です。七カ月前。  しかも、その間には臨時国会が開かれました。そこで政府は、財政改革推進に関する特別措置法、こういうものを提案されまして、これから六カ年にわたる予算について上限を設けるという、そういう法律を出されました。我々は、これに対しても、今重病に陥っている人にすぐ外科手術をしては死んでしまうじゃないですか、むしろもう少し養生して体力を回復してから外科手術をやったらどうですか、このようなことも申し上げました。  総理は、そのときに、その病状についての認識が違うということを言われました。今はまだ外科手術に耐えられるだけの力がこの日本にはあるんだ、このようにおっしゃいました。そして、今やらなければ次の世代に大きな赤字を残してしまうから、赤字を出して減税するということは私はできないんだということを一貫しておっしゃいました。  私は、総理はもううなずいておられますので、議事録を用意しましたけれども、ここで読み上げることはいたしませんが、これは私は、私と考え方は違うけれども総理が一生懸命やっておられるということは一つの見識だというふうに思っていたわけでございます。ところが、我々の反対にもかかわらず、この財政構造改革推進法は昨年の臨時国会で衆参ともに通過し、成立をいたしました。  しかし、このときに、私は、十二月十二日に国会が終わりまして、たしか税制改革大綱は十二月十六日ごろにお決めになったんじゃないかと思うのですが、翌日ですよ、翌日、総理平成十年度分所得で二兆円の特別減税をやるということを言明されたのには驚きました。全く驚きました。  きのう言ったことときょう言ったことと違うじゃないか、我々がずっと言ってきたこと、七カ月前だけれども、廃案にしておいて、今大体同じようなことをやろうとしてもツーレート、遅過ぎる。こんなことを今やったって、我々の言っていたあのときこそ効果はあったと思われるけれども、これではだめじゃないか、私はそのように思いました。  これは大きな政策転換としか私は考えられないわけでございますが、このように今まで言ってきたことと違うことを決断された、こういうものにつきましては、総理国民に対し率直な説明義務があると思います。  そういう意味でこの場で、なぜ、今までこうなっていたのに、翌日、税制改革大綱を決められた中に二兆円が入っていたのですか、翌日違う決定をされた。一日の間に何があったのか、そういうことについて御説明をちょうだいしたいと思います。
  102. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、特別減税を継続すべきであるという御意見がございました。そしてまた、そのための法案議員立法として提案されたことも、そのとおりであります。その時点におきましてはその必要はないと判断をしておりましたことも、先ほど経済見通しの説明で申し上げましたように、それなりの根拠を持って判断をいたしておりました。  そして、議員が今お述べになりました時系列の中で抜けておりますのは、国際会議であります。そして、この時期におけるアジア経済状況というのは、極めて大きな変化を続けていた時期でございます。  ちょうど十一月の末にバンクーバーでAPECが行われ、そのときも既に各国の通貨状況、非常に深刻な状況を迎えつつありましたし、日本も山一証券の破綻という状況を受けて、この会議に私は臨む状況になりました。そして、その席上、議論をいたしました時点と、それから本当にわずかな時間差でありますけれども、クアラルンプールにおきましてASEANプラス3、ASEANプラス1が開かれました時点と、アジア状況というものは極めて加速的に深刻なものになっておりました。  これは事実関係としてお聞きをいただきたいのでありますが、バンクーバーにおける関係各国首脳の御発言と、そしてクアラルンプールの発言の間には有意の差が生じておりました。そしてその中で、APECの構成とASEANプラス3、プラス1の構成の違いもありましょう、非常に率直に、カリの群れの一番前を飛ぶ日本、ぜひ回復の足を踏み出してほしいという強い御要請を受けました。  その会議から帰国をいたしますまでの間考え、そして翌日御相談を申し上げ、与党の御同意もいただきまして、この特別減税に踏み切った次第であります。
  103. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、時系列的に言えば、総理が言われたこともそのとおりだろうと思います。しかし、国会で我々も熱心に真剣に議論をしているわけでございます。アジア状況、香港の暴落、それが世界に飛び火をしました。しばらくして回復しましたけれども、大変な心配をしていた事実があります。そういう中で開かれている臨時国会でも、総理は頑として、財政改革が先だ、景気回復のための処置というものは今はとるべきではない、こう言い続けられたわけでございます。  先ほど言いましたように、税制改革大綱を決められた翌日にこういう転換をされたということについて、今の説明だけでは私はわかりにくいと思います。新聞の中では、額賀副長官が首相の名代として新年早々アメリカへ行かれた、こういう記事が出ております。  この中では、もう今年度の、今平成九年度の補正を審議しているわけでございますが、平成十年度予算が通った後に言及をされたということが新聞で大問題になっております。もちろん、一部の新聞はちょっと踏み出し過ぎで訂正をしておりますけれども、しかし、おおむねそのようなことがアメリカで相当強く、歯にきぬ着せない発言がアメリカの政府高官からあったということは、総理も御報告を受けていられると思います。  私は、日本国会で、これだけいろいろ長時間にわたって審議を重ねて訴えている野党の言葉には耳はかさないけれども、外国のそういうような動きには敏感だということは不満であります。どういうことでしょう。一言御釈明をいただきたいと思います。
  104. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、額賀副長官が名代としてという御質問を受けましたが、この点は、休みを利用して訪米をしたいという個人的な申し出に対して許可を与えたということでありまして、名代云々ということではございません。この点は、まず正確に申し上げておきたいと存じます。  帰国後、その訪米報告は受けました。しかし、報道のような発言をしたということは聞いておりませんし、御本人は、報道に対しては抗議をしておられるという旨、報告を受けております。  しかし私は、いずれにいたしましても、まず補正、そして関連法案、これを一日も早く、既に市場が賛否は別にして織り込んでおりますもの、これが実現に向けられますように国会での御審議をお願い申し上げる、これが今一番急ぐことではないか、そのように考えております。
  105. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、総理も率直に、外国の事情等、特にASEANの会議等での認識等によって、従来の財政改革一辺倒では今はもたないという認識を持たれて、そして今回の、平成十年の所得に対する二兆円の特別減税を決断された。それも一つの見識ですが、今までと違うことをやられたわけですから、それを説明してほしいということを言っているわけです。  それについて、今まで我々はこう言ってきたけれども、ここでこういうふうな決断をするんだ、事情はこうだから決断するんだ、この説明なしにこういうものを出されたら、我々はびっくりします。総理の哲学をどう考えたらいいのか、このように思わざるを得ません。国民にもう少しわかりやすく説明していただきたいと思うんです、その点。  政策転換をされたんじゃないんですか。今まで、赤字国債で減税するということは子孫にそのツケを回す、それはできない。私もそう思いますけれども、しかし、今そのような状態かどうかということについての認識が違う。  その点についてもう一度、しつこいけれども総理のお言葉をいただいて次に移りたいと思いますので、どうぞよろしく。
  106. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、先ほども申し上げたことでありますけれども、財政をいかにして健全にするか、そして将来豊かな福祉社会を支えていき得るだけの財政構造を安定させるか、この必要性は変わらない、その意味において財政構造改革というものは必要だと今も信じておりますということを先ほど申し上げました。  同時に、臨機の措置というものが必要になることがあるということも、私は当然、金融、経済、その局面局面における対応というものは必要だと考えておりまして、私自身としてはスパンの違う問題という思いがございます。  確かに今まで、赤字国債をもって減税を行うこと、これは難しいということを私は申し上げてまいりました。それも議員の御指摘のとおりであります。そしてそのとき、そのとおりに思ったとおりのお答えを申し上げてきました。  そして、各国の内輪の話、非公式の首脳同士の話の内容を申し上げることは控えるべきであると思いますが、そうした中において、特別減税を必要とするという判断を私がしたことも、これもまた全くうそではない、そのとおりのことでございます。  この点は、国際的な会議で受けた考え方で判断を左右するのかと言われればおしかりを受けなければならないのかもしれませんが、その必要性のある状況という、少なくともAPECの時点で深刻に受けとめてはおりましたけれども、そのような判断を持たなかった。しかし、ASEANプラス3、プラス1から帰国をいたしますときには本気でこれを考えなければならなかった。率直に事実を申し上げて御理解を得る以外にございません。
  107. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に移りたいと思います。  国会における言葉というものが、今日ほど、軽くなってしまったということを痛感せざるを得ないわけでございます。議事録には本当にそのときそのときの発言が、方言も交えて記載されてあります。しかし、全く違うことが短い期間に行われる、しかも重大に行われるということについて、私は、本当に深く考えなければならないし、それほど世の中の動きが急激なのかどうかは別として、こういうものを変えるときにはやはりもっと慎重であるべきであるし、もっと国民にわかりやすく説明すべきであろうと思います。  次の問題もそうです。金融システム安定化二法というのはきょう提案されたはずです。私はその要綱しか読むいとまがありませんでしたけれども、これについても重大な、今までの大きな流れとは全く違う大きな第一歩を踏み出す法案の内容に驚く次第でございます。  住専国会というのがありました。私どもは本当に大変な抗議をした。一生忘れることのないことをやりました。平成八年六月のことですよ。そのときに政府は、税金の投入、こういうふうに言葉を言われましたけれども、いわゆる公的な支援を信用組合及びこのたびの住専問題以外の分野におきましては一切やらない、やるつもりはない、銀行等については金融システムの範囲内で、預金保険の範囲内で対処していく、このような考え方でおりますということをもう再々述べられて、そして最後、強行されたわけでございます。  ところが、きょう見てみますと、どういうことでしょう。預金保険法の一部を改正して、信用組合以外の金融機関、これは銀行じゃないですか、銀行が整理回収業務を行えることとする等所要の措置を講ずるためにこの法案を提案すると書いてあるんですよ。大変な政策転換じゃないのですか。  平成八年五月、当時の新進党からの求めに対し大蔵省は、当時の衆議院金融問題等に関する特別委員会委員長の求めに応じて資料を提出しておりますが、その中に、信用組合以外の金融機関については、事業の整理を行うことを目的とした整理回収銀行による処理の対象にはなじまないと考えています、だから、こういうところにはこういうシステムをつくらないと言われた。ところが今回の法律では、信用組合以外の金融機関についても整理回収業務を行えることとする等所要の措置を講ずる。どういうことですか。  総理、これはよく説明してもらわないと、今回の、預金保険機構へは交付国債十兆円、そしてここが日本銀行から借り入れる場合には二十兆円の巨額の保証をする、こういうことも言っていられるわけでございますが、もし整理回収銀行に不良債権が発生したとき、どうなるのでしょう。貸し倒れが生じたらどうなるのでしょう。最終的には国民の税金で穴埋めをしなければならないことになるのじゃないですか。政府が保証する以上は、それは国民が保証するのと同じことですよ。  そういうことを考えれば、住専国会における一貫した政府の答弁と今回の法律二法とは明らかに思想が違います。その点について、明確に説明を総理からお願いしたいと思います。
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 足りない部分は大蔵大臣からの補足をお許しいただきたいと存じますが、確かに、金融三法制定当時、信用組合の破綻が相次いで発生したことなどを踏まえまして、信用組合に限っての政府保証というものを措置いたしました。しかし、その後におきまして、一般の金融機関におきましても大規模な破綻が相次いで発生をし、我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぐという事態が発生をいたしました。今回、一般の金融機関をも含めまして、包括的に預金の全額保護の体制を整備する、そして内外の信頼を確保しよう、そう考えたというのがまず申し上げるべきことであります。  そして、まさに我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく低下したということ、これは信用秩序と国民経済に重大な支障を生ずる、そうした懸念は否定できないことでありますから、そういうことにならないための緊急の特例措置を用意したと申し上げることも必要なことであろうと存じます。そして、一般金融機関も含めて、預金の全額保護というものを徹底させる、徹底を図る体制を整備することによりまして、言いかえれば、包括的な危機管理体制を整備することによりまして、国民に安心していただくための措置を用意させていただきました。
  109. 冬柴鐵三

    冬柴委員 あと私、七、八分しか時間が残らなくなりましたので、それについては引き続きまた予算委員会で詳細な議論をさせていただくことにしまして、同僚もいたしますので、今回の政府が提出されました金融システムの安定化策について言及をしたいと思います。  ことしの一月十三日の日経新聞ですが、「トップに聞く」という欄で、東京三菱銀行頭取の岸頭取が、今銀行が抱えている一つの問題点という短い言葉の中に、金融の現場から発言をしておられるように思われる記事がありましたので、読み上げさせていただきたいと思います。  「貸し渋りが社会問題になっているが。」という質問に対して、「貸したくても貸せない状況にある。株の値下がりで自己資本比率の制約が急に強くなってきて、貸せる先なのに貸す余裕がない。一生懸命に債権流動化をしても窮屈。変化の方が急で産業界に迷惑をかけており、具合が悪いと思う」、こういう短いコメントですが、私は、この岸頭取の言葉の中から、現在銀行が抱えている問題として三つのことを示唆されているように思われます。  一つは、銀行の保有する有価証券の財務諸表における評価の問題でございます。二つ目は、銀行の自己資本の充実の問題であろうと思います。三つ目は、銀行の長期固定債権の流動化の問題だと思います。  これに対して私の考えを述べさせていただくならば、私は基本的に、今回の政府がパッケージとして示された金融システム安定化策というのは、安易に公金の投入から始められるけれども、私はこれはあってはならないことだと思っております。  これは、やはり金融機関が自己責任のもと、できるだけのことをした上で補完的に公金が投入されることは、私は認めざるを得ないと思います、保護のために。しかし、頭からこのように十兆、二十兆、三十兆、それは生の税金を投入するんじゃないんだという抗弁がありましょうけれども、いずれにしましても、そのような大規模なことを行うべきではないと考えております。  私の対策としましては、財務諸表による有価証券の評価の問題ですが、これは商法の原則に戻って、当面、取得原価主義で統一すべきだと考えております。  商法はどんな原則を立てているかというと、有価証券につきましては取得原価で記載せよと書かれております。二百八十五条ノ六第一項でございます。ただし、時価が著しく下がりましてその回復の見込みがない場合には、その低い方で記載しなさいということが書かれています。また、取引所の相場があるものについては、その低い方を採用することも妨げないと書かれております。したがって、原則は取得原価主義、取得価額主義、いわゆる原価、千円で買ったものは千円で書いておけということでございます。  ところが、銀行の財務諸表につきましては、大蔵省の銀行局長通達、基本通達と言われますが、その中で、低価法をとれと書いてあります。すなわち、千円で買ったものが二百円に下がれば二百円と書きかえなさい、すなわち八百円の損を出しなさいということです。ところが、これが二千円に上がっていてもこれは取得原価の千円で書いていきなさい、こういう原則が長く通用しているわけでございます。  したがいまして、これによって、決算期が迫りますと株の乱高下が、今やっておりますが、こういうものに対して銀行経営者は大変な関心を寄せております。一喜一憂をします。そして、余りにも大きい評価損が出るという見込みの場合には、上がっている株を大量に処分をして益出しをして、それで損を埋めるというような作業をやっているわけでございます。  これのために、決算期においては株の大量売却のために株が値下がりをしたりするわけでございますから、私はこの際、取得原価で記載しなさいという商法の原則に戻れば、銀行家は非常に安定した経営ができるわけでございます。これにはいろいろな議論があることはわかっております。わかっておりますが、今金融システムの安定ということを考えれば、この方法を採用すべきであると思います。  したがいまして、大蔵省のいわゆる基本通達の変更をやるべきでありまして、今貸し渋り対策の中では選択制を言っているのです。私は、選択制じゃなしに原価法で統一すべきだということを申し上げているわけでございます。  時間がありません。二番目に、銀行には大きな土地の含み益があります。明治三十一年、今から百年前に制定された商法では、不動産は取得価格で表示をしなさいと書かれてあります。したがいまして、明治期に設立された銀行の堂々たる本店の敷地は、一坪何十円で評価されたまま今日に至っていると思います。バブルがはじけたとはいえ、現在、一坪数千万円の価値をする土地がそのような常識外れな値段で表示されているわけですから、これを価格を再評価して、そしてその含み益をまず銀行から吐き出させて、これで不良債権を償却し、あるいはそれを一部資本に振りかえて、BIS規格の適用というものに一喜一憂しなくてもいい資産内容を、資本を充実すべきであると思います。  十六日の日に、自民党大原一三議員がここでそのような提案をされて、総理もそれに承諾を、前向きに検討されるようにされました。私は、これは本当に以前から、バブルがはじけて銀行が大きな不良債権を抱えてしまったときから、この資産再評価による資本充実を早急にやるべきだ。ドイツでもやっている。ドイツは九二年に銀行法の一部を改正しまして、九三年以来、今から五年前からずっとやっている。こういうことを考えれば、これをまず大きな含み益を銀行から吐き出させて、そしてそれを資本に振りかえる方法をとるべきである、私はそのように確信をいたしております。  最後に、もう一つは、その中で大原議員は、何か資本金五億以上とか負債額二百億以上の大企業に全部広げるというふうに言われましたが、私は、それはやるべきじゃない、それは慎重にやるべきだと思います。この際は、ドイツと同じように銀行に限って、金融システムの安定ということでこれをやるべきです。そうすれば、優先株の引き受けのような方法をとらなくても、十分これはしのぐことができると思います。(発言する者あり)そうです、公的資金は要りません。最後に、銀行が抱えている固定債権の流動化ということがこのパッケージにのっていないことは非常に残念であります。私は、銀行が今当面している問題として、資金の運用と調達のインバランスという大きな問題を抱えていると思います。したがいまして、固定債権を流動化する方法、例えば住宅ローン、五十八兆七百四十四億円あります。地方公共団体に対する与信も二十六兆、あるいは公社債も十六兆引き受けています。もっとおもしろいのは、国鉄清算事業団に対する協調融資というものが、二兆七千六百二十二億民間銀行は持っています。こういうものをやはり郵貯あるいは厚生年金等の積立金の運用先として、こういう優良債権を銀行から買い上げるという方法で流動化を図るべきであると考えます。  以上三つ、私提案をいたしますので、どうか総理におかれましては前向きに検討していただきたいと思いますが、感想だけ聞かせていただきまして、終わりたいと思います。
  110. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 三つの提案、それぞれ真剣に聞かせていただきました。そして、土地の時価再評価のように、既に私自身、党に対して指令をいたしておるものもございます。  それぞれの御意見、必ずしも私、専門家でありませんので、今、低価制と原価制の選択制が果たして現状に即さないものかどうか、即すると考え、両者の選択制を提案いたしておりますけれども、なおよく検討をさせていただきたいと存じます。
  111. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  112. 松永光

    松永委員長 この際、石田勝之君から関連質疑の申し出があります。冬柴君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石田勝之君。
  113. 石田勝之

    石田(勝)委員 石田勝之でございます。  昨年の暮れに、新進党の解党に伴いまして、私たちは小沢辰男代議士を中心として改革クラブを結成いたしました。そして、三年間培った信頼関係をもとに政策のすり合わせをいたしまして、今御質問をされましたのは新党平和の冬柴委員でありますが、新党平和の皆様方と統一会派を組むことになったわけでございます。平和・改革を代表いたしまして関連質問をさせていただきたいと存じます。  質問通告が、最初が景気対策と減税について、二番目が金融安定化緊急措置法についてということでありますが、二番目の金融安定化措置法の方から質問に入らせていただきたいと存じます。  この法案は、金融システムの安定化と貸し渋り解消などを大義名分にいたしまして、十三兆円もの公的資金を金融機関に注入をする、こういうことであります。政府は、これまで信用組合の破綻以外には公的資金はつぎ込まないということを公約してきたわけでありますが、今回のこの投入については明らかに公約違反であり、方針転換であろうと思います。  金融システムの維持という大義名分に基づいて、どうしても国民の血税、公的資金を投入するというならば、それは単なる銀行救済にあってはならないと思います。国民が納得する明確な基準に基づいて行われるものでなければなりません。  そこでお尋ねをいたしますが、どの銀行の優先株や劣後債を買い取るのか、まず審査基準を明確にしていただきたいと思います。
  114. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  審査基準につきましては、法律に考え方を示してございます。前提として、経営の状況が著しく悪化している金融機関ではないということが条件でございます。状況としては、システミックリスクを起こすような場合、あるいは地域におけるそういったもの、同様な現象が起きる場合というふうに規定されております。  また、審査基準そのものについては審査委員会が決めることになっておりまして、そのときにぜひ織り込むべき事項として幾つか法案に具体的に書いてございます。そういう点をなるべく具体化しながら審査委員会が決めて、それを適用するということでございます。
  115. 石田勝之

    石田(勝)委員 今の銀行局長の御答弁ですと、これからできる審査委員会の役割は大変大きい、こういうことになるわけであります。  しかし、一月十四日付の朝日新聞でありますが、この法案が成立すれば、東京三菱銀行が一千億円規模の永久劣後債を発行して預金保険機構に引き受けてもらう、そういう方向で検討に入ったと報道されております。そして、東京三菱は当初、公的資金による資本増強に頼っていたのでは海外の投資家などから厳しい目で見られかねないということで、受け入れに慎重であったわけであります。しかし、政府自民党から強く受け入れを要請される中で、方針を転換されたと報道されているわけであります。  事実だとすれば、公的資金の審査委員会委員の選び、審査をする前から既に結論が決まっているという話になろうかと思います。審査委員会をつくる意味がないと私は思うのです。審査委員会なるものは既に大蔵省主導で形骸化されているのではなかろうか、こういうふうに思いますが、大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  116. 三塚博

    ○三塚国務大臣 その報道を私も見ておりますが、党も、もちろん大蔵省、政府も、そういう要望もいたしておりませんし、話し合いもいたしておりません。
  117. 石田勝之

    石田(勝)委員 大蔵省は、これは口が裂けても本当だということは認めないと思います。しかし、これこそ、みんなで優先株を出せば怖くないという大蔵省主導による護送船団方式そのものじゃないですか。これこそ日本売りにつながったのじゃないですか。こういう体質が日本の金融界の発展の阻害要因になってきたと私は思います。  さらに今回の、きょうの事件でありますが、元大蔵官僚、道路公団の理事の逮捕は、大蔵省と金融業界の構造的な癒着が起こした事件ではないか。だから、こういうものと決別をしようということで金融改革を目指してきたのではないかと思いますが、大蔵大臣、重ねて御質問申し上げたいと思います。
  118. 三塚博

    ○三塚国務大臣 よく護送船団のお話が出ます。橋本内閣は護送船団からの決別ということで、一昨年暮れに、第二次橋本内閣の折、金融システム改革、ビッグバンを提唱し、その具体化に向けて全力を尽くしてきておるところでございます。  そういうことの中で、もう既に護送船団という形は全くと言っていいほどございません。そういうことは、昨今の破綻の状況等を見ましても、市場原理に基づいて、これに率直に従いながら、預金者保護の観点から預貯金の全額は保護をするという態勢をとりつつ取り組んでおるところでございます。  今回の金融システム安定は国民経済の安定につながります。また、雇用にもつながります。日本経済の今後の見通しの基盤もつくることになりますものでございますから、安定法ということで、国債十兆の交付、そして政府保証、それぞれの勘定に十兆ずつ計上し、やれる、流用できるものということで法の仕組みをつくらせていただきました。
  119. 石田勝之

    石田(勝)委員 今の大蔵大臣の答弁、護送船団方式ではないということを言っておりますが、これはやはりそういう要素は十分にはらんでいると、私はまず指摘をしたいと思います。  次に、経営責任の問題について御質問させていただきたいと思います。  これは、破綻した金融機関ではなく、破綻した金融機関は民事上、刑事上の責務は当然負うわけでありますが、破綻した金融機関ではなく、一般の金融機関に公的資金を入れる、そして自己資本の改善をする。つまり、民間企業が税金を投入してもらうに至った経営責任をどうするかが大事な点であって、それらの視点はこの法案には全く盛り込まれていないわけであります。  そこで、バブル時期に銀行は本来の銀行業務とは逸脱した行為をたくさんやってきた。例えばゴルフ場の会員権の売買だとか土地転がしだとか、いろいろなことをやってきたわけであります。それが今になって安易に、危なくなったから国の金で救ってもらえるというのはどういうことなのかなと、国民が素朴な疑問を持つのは当然だろうと思います。  私は、川口、鳩ケ谷が選挙区で、代表で出ておりますが、かつてはキューポラのある町ということで知られた、鋳物あるいは機械、それからまた安行の植木、苗木とか、そういった中小零細企業が多い選挙区であります。まさしく油まみれ、汗まみれになって働いている方々の声を聞きますと、十二月が越せるか、あるいは三月が越せるかと大変悲痛な声が聞こえる。  こうした他産業の人たちのことを考えると、公的資金を注入してもらった銀行経営者は何らかのけじめをつけるべきではないか、こういうふうに言われる話が出るのも、私は無理からぬことだろうと思います。総理大臣、どうお思いですか。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、御自身の選挙区の実情を踏まえての御質問ですから、私、真剣に伺い、それなりにそのお気持ちを理解のできるところも当然ながらあります。  しかし、例えば北拓が破綻をいたしました後、北海道拓殖銀行という伝統のある金融機関でありますから、北海道内は、非常に多くの企業がここから資金の供給を受けるという形で経営を続けてこられました。そしてその破綻が現実のものとなったときに、これを受けとめてくれたのは、北洋銀行が、道内の方々に対する責任を営業譲渡という形で受けてくれたわけであります。  しかし、北洋銀行の規模は、非常に健全な金融機関でありますし、よくやってこられたところですが、それほど大きくありません。とすれば、自己資本の増強をされなければ、道内に多数取引をしてこられた多くの方々を安心させることはできないと思います。こうしたところに対しても、私どもは自己資本の増強をしていく。そこに責任ということを言えるでしょうか。  むしろ、破綻するものは、我々は破綻させてまいります。当然ながら破綻させてまいります。そして同時に、金融機関の経営が将来に向けて責任のある体制で行われますように、審査機関に当然ながら、議決の前提として、経営の健全性確保のための計画を提出もさせますし、公表もさせていきます。そうした、いわば健全なものを支える、その役割をこの法案に負ってもらっている、これはぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
  121. 石田勝之

    石田(勝)委員 総理から御答弁をいただきましたが、今回のこのスキームは、午前中でも質疑されたわけでありますが、一九三〇年代の大恐慌のときにアメリカの復興金融公社、RFCが行った手法、あるいは八〇年に北欧諸国で行った手法の模倣と言っていいと私は思います。それらの各国は、公的資金を注入した銀行の経営者で退陣が求められたケースがかなりあったと報道されているわけであって、政府は都合のいいところだけ参考にしているんではなかろうかなと。  私は、この経営者責任については、また後刻の予算委員会でいろいろ質疑を重ねていきたいと思っております。  次に、審査委員会について御質問に入らせていただきたいと思いますが、この法案では、大蔵大臣、金融監督庁の長官、日銀総裁、それから預金保険機構の理事長の四人のほか三人の民間人を内閣が任命することになっている。この七人が審査して、全会一致をもってどの銀行の優先株を買うのかを決めるということであります。その場合に、大蔵省からの説明では、民間人には、経済または金融に関してすぐれた識見と経験を有する者という条件がついておる。  そこでお尋ねしたいのですが、どのような人を選ぶのか具体的に伺いたいと思います。例えば有名銀行の元頭取とか、あるいは大蔵省OBとか、あるいは大蔵省の御用学者とか、それから、要するに大蔵省の意向が反映しやすいメンバーばかりで構成されるのではないかということを強く危惧をするわけであります。  そこで、大蔵省のつくったこの「金融に関する緊急対策について」のパンフレットにも書かれておりますが、銀行員はいろいろ待遇も恵まれているけれども、どうしてそんな金融機関に税金を使う必要があるの、こういう設問があるわけであります。そういった疑問が多くの国民には私あろうと思います。  そこで、総理、その民間の、午前中の質疑ではこれから選ぶんだ、こういうことでありましたが、大蔵省のOBとかあるいは大蔵省の意向が通しやすい人ではなくて、そのメンバーの中には、国民の目線、消費者の立場をよくわかった民間人を私はメンバーに加えるべきだろうと思いますが、総理の御見解をいただきたいと思います。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 少なくとも申し上げられることとして、私は、大蔵省のOBという選択肢は今回の人選の中にはないと思います。  その上で、消費者の代表と言われましたけれども、消費者の代表という、果たしてこうした分野の専門家として消費者のということがいいことかどうか、必ずしも私はそこは、今消費者代表といった感じを持ってはおりません。その上で、学者であれ何であれ国民の目線で物事を見ていただけるような人を選びたい、そのように思います。
  123. 石田勝之

    石田(勝)委員 私の質問時間に制限がありますので次の質問に入らせていただきます。  この一番の方に戻るわけでありますが、先ほど来質疑を聞いている中で、財政構造改革路線から特別減税の実施について、これは総理、明らかに私は政策転換だろう、こういうふうに思います。  総理アジアのことを例に挙げたり、いろいろ言っておられますが、これは、先ほど来聞いておりますと言いわけに終始しておられます。私は、政策転換をしたならしたと認めるべきは認めて、本当の意味での景気回復とか金融システムの安定というのはそういったことから生まれてくるのじゃないか、私はそういうふうに思っております。つまり、景気認識の見通しが甘かったということは、これは私は率直に認めるべきではないか、そういうふうに思うわけであります。  そこで、私どもは六兆円の恒久減税を要求しているわけであります。しかし、政府はそれを拒否しているわけでありまして、そこで、六兆円の恒久減税は我々の主張として要求いたしますが、その一つの考え方として、今この冷え切った景気をどうやって回復させるか。  そういう中で、個人消費を上向かせるために、個人消費を活性化させるために、消費税の減税をやってはどうか。今五%でありますが、これを三%に戻してみてはどうか。そして、景気対策最優先路線へ転換をして、景気を一日も早く回復させるべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  124. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、率直に申しまして、消費税をもとに戻せという御主張には同意ができません。  むしろ、将来を考えますとき、税制の組み立て全体の中からまいりましても、本院におきましても直間比率の問題というものはしばしば議論をされてまいった問題であります。そして、そうした中で、私自身、衆議院の総選挙におきまして、消費税率を二%引き上げさせていただきたい、そのうちの一%は地方に回るということを率直に国民に訴えながら衆議院選を戦わせていただきました。  その影響というものを、私は決して先ほど来も否定をいたしておりませんけれども、どうぞ、将来を考えましても、消費税の税率はこのまま進めさせていただきたいと考えております。
  125. 石田勝之

    石田(勝)委員 最後に、新井将敬代議士の株の利益供与問題について、金融システムに関する問題であって、院として事実関係を明らかにすべきであろう。ぜひ予算委員会での証人喚問を要求をさせていただきたいと思います。  以上で終わります。
  126. 松永光

    松永委員長 これにて冬柴君、石田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  127. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。自由党を代表いたしまして質問をさせていただきたいと思います。  御承知のように、今の日本経済、戦後例を見ないような深刻な危機にありますし、金融システムも昭和二年の金融恐慌以来の大変な危機に直面しているわけであります。このことは、けさほど来の野党各委員の御指摘、そして御答弁の中にもそれをお認めになる政府、閣僚の皆様方のお言葉もありましたのでこれ以上申しませんが、私、一番今心配していることは、総理、去年の暮れまでの金融危機は、どちらかといえば金融機関レベルの危機であったわけです。  例えば、金融機関相互の貸し借りであるインターバンク、銀行間のマーケットで破綻金融機関が資金を調達できなくなるということから、三洋証券、北海道拓殖銀行、そして山一証券の破綻が起きた。しかし、この場合には、銀行間の問題なものですから、間髪を入れず日本銀行が流動性を供給する。お金を貸すことによって、破綻金融機関の支払い不能がその債権者である金融機関の支払い不能を呼んでドミノ現象のようなシステム混乱を起こすことは阻止できたわけであります。  しかし、今私が心配しているのは、もう一つ下のレベル、つまり金融機関のお客様のレベルで黒字倒産が出やせぬかということを、今企業経営者は真剣に心配をしております。  それは、申すまでもなく貸し渋り、あるいは、端的に言って貸し渋りの段階は過ぎておりまして、貸し出し回収をかけられている企業がたくさんございます。それらがこの年度末をどうやって越えたらいいかという状態にあるわけで、この一つ下のレベルの金融危機は、日本銀行が飛び込んでいって連鎖的なシステム混乱を防ぐことができないので、本来民間銀行が防ぐ役割を担っているのに、その民間銀行が自己資本比率を回復するために貸さないということですから、これは大変な危機の種を今はらんでいるわけですね。  ですから、私は、この予算委員会の中継を国民の皆さん、特に中小企業経営者の皆さんがかたずをのんでごらんになっていると思うのです。年度末までに一体どういう有効な対策が追加的に出てくるんだろうかということを心配して、このテレビ中継を見ておられると思います。  したがって、私は、きょうは、一体どういう有効な対策があり得るだろうかという観点から質問をしてまいりたいというふうに思いますので、どうぞ、総理大蔵大臣、率直な御答弁を賜りたいと思います。  さて、その有効な対策を考えるためには、今の危機の根本的な原因を確認してからスタートしなければならないと思いますが、私は、けさからの野党の各委員の御発言、あるいは昨年来のマスコミにおける識者の発言等から見て、これは根本的な原因はもうかなりはっきりしていると思います。それを私なりに整理いたしますと、三つあります。  第一は、本年度の九兆円の国民負担増と公共投資カットを含んだ超大型のマイナスのケインズ政策であります。マイナスの財政政策を打って、その結果、九六年度に三・二%成長まで回復していた、九六暦年は御存じですか、三・九%成長ですよ。ほとんど四%成長まで回復していた、せっかく長い不況のトンネルを通り抜けて自律的に回復しかかった日本経済を、この超デフレ予算によって、本年度は、政府御自身も〇・一%と認めているように、ゼロ成長にたたき落としちゃったわけですね。  それで、九兆円の国民負担増をやりますとこういうことが起きるというのは、もう目に見えておりました。私ども、新進党の時代から、一昨年の臨時国会のときから、そのことはるる御指摘申し上げた。御指摘申し上げただけじゃない。あの臨時国会、一昨年のときは、二%の消費税率引き上げは五兆円の負担増です、まだこれに耐えられるほど日本経済は強くなっておりませんと言って、この延期法案を出した。そして、昨年の通常国会では、二兆円特別減税の打ち切りは早過ぎますと言って、これの据え置きの、継続の法案も出した。  この七兆円の増税阻止という私ども法案に対して、申すまでもなく政府・与党三党、こぞって反対、あるいは廃案に追い込んだのであります。そのときは、民主党さんも残念ながら反対に回られましたために、多勢に無勢で、これは葬り去られたわけであります。  しかし、その結果、私たちが予見したとおり、国民の実質の可処分所得、物価は、消費税率を上げたものですから、今、前年比二%ですよ。そして、税金あるいは健康保険の負担もありますので、それを差し引かれますから、実質の個人可処分所得は完全に成長をとめちゃった。実質の個人可処分所得をとめちゃっては、これはゼロ%になるのは当たり前ですね。これが第一。  第二は、金融システム安定化対策における無策であります。  住専処理のときに、六千八百五十億円もの公的資金を預金を取り扱っていない住専の処理に入れたために、国民から強烈な批判を受けました後、金融三法をつくって、これで日本金融システムの安全は図れるということを政府・与党三党はおっしゃり続けたわけであります。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど、総理は御答弁で、最近になってアジア経済危機その他で事情が変わってきたと言っておられましたが、私どもは、もうあの時点で、金融三法に示されるような安全ネットでは穴があいちゃうよということがわかって、指摘申し上げた。  指摘申し上げただけじゃない。このときも、ちゃんと法案を準備しました。会社更生法を前提にした日本版のRTC、不良債権処理公社案というのも持っていた。ですから、頭から公的資金の投入を否定したんじゃなくて、これこれこういう形で経営者の責任を十分とらせた上で、そして不良債権回収の強化をした上で公的資金を入れましょうということを、あの住専処理の時点でもう言っていたわけです。  それから、私ははっきり覚えておりますけれども、一昨年の臨時国会あるいは昨年の通常国会で、この席あるいは大蔵委員会で、総理にも三塚大蔵大臣にも、この金融三法では足りませんねと何度も何度も申し上げましたよ。だって、あの金融三法を前提に、総理、そして三塚蔵相は何ておっしゃっていたでしょう。これで十分だ、信用組合以外公的資金を入れなくても大丈夫だ。他方、預金は全額保証します、大銀行は破綻させません。これが両立しっこないというのはわかり切っていた、そのことを言い続けてきた。  これで国民はすっかり不安になっちゃったんですね。これですっかり心理的に金融破綻に対する恐怖感を持ち、事実、ばたばたと大金融機関が倒れてきたので、これで一種のパニックに近い動揺が金融システムの中に起きたわけです。これが二番目の理由です。  そして、三番目の理由は、そのあげくの果てに、ついこの間、十二月ですよ、財政構造改革法案を成立させて、今後の財政政策に縛りをかけてしまったのですね。財革法の第四条には毎年毎年財政赤字を減らしていくと書いてありますが、総理、覚えていらっしゃいますでしょうか。私は、あの審議のときに総理にはっきりとお伺いをしたのであります。財革法の四条によれば、赤字国債を毎年減らすと書いてあるが、これは赤字国債だけでしょうか、それとも、財政赤字全体を年々削減していくというのがこの法の精神でしょうかとお伺いしました。  それに対して、総理ははっきりと、当然のことながら毎年の赤字縮減に努めていく必要がある、これは私は議員の提起されたとおりだと思いますとおっしゃいました。私はすぐ、はい、確認させていただきましたというふうに申し上げたわけですね。これによって、財政赤字の拡大につながるような景気対策は一切打てないという縛りをかけてしまったのですね。これが三つ目の不安であります。  この三つがそろったからこそ、その後、この深刻なる経済危機が発生をしたんだと思うのですね。  さあ、この三つに対して、政府はさすがに昨年末、二つはっきり手をお打ちになった。第一の、九兆円の国民負担増、公共投資削減、それによるゼロ%成長への経済の急激な悪化に対しては、二兆円の特別減税を復活させるということをおっしゃいました。それから、二番目の安全ネット、不十分であるというのに対しては、三十兆円規模の対策を出してこられたわけであります。  しかし、総理も御承知のように、この二つをお出しになった後、株価は一時上がりましたがその後どんどん下がってきてしまいまして、十二月二十二日から先週まで、これは十五日間ありますが、そのうちの九日間は株価は一万四千円台でありました。つまり、マーケットは、せっかくお出しになったこの二兆円の特別減税と三十兆円のシステム対策というのを評価していない、これだけじゃ不安だというシグナルをはっきり送ってきたと思います。  そして、このシグナルを送ってきたのは株式市場だけではありません。国債売買市場でもずるずると金利は下がった。長期金利が下がるということは、先行き金利が上昇するような経済発展はあり得ないねという予想が強まったときの現象でありまして、マーケットははっきりと、これではだめだというシグナルを送ってきたわけであります。  なぜ、これじゃだめなんでしょうね。国民の皆さんも恐らくだめだと思って見、だからこそ次の手を期待しているのだと思いますが、なぜこれじゃだめなんでしょう。  まず、二兆円の特別減税ですね。さっき総理は、お答えの中で、ASEANの会議に行ってみたら、やっぱり海外では大変だ、アジアは大変だ、日本への期待も大きい、だからここで決断をしたとおっしゃいましたけれども、しかし、これは二つ、ちょっとおかしいと私、思いますよ。  先ほども冬柴委員がるる批判されましたように、国会であれだけ二兆円特別減税打ち切ったらだめなんだと、財政赤字拡大につながる対策はびた一文とれないということに対して批判されておきながら、外国へ行った途端に、ああそうか、やはり大変なんだと思った。これはやはりおかしい。恐らく私は、総理は、聡明な総理が外国へ行くまでそんなこと知らなかったということはあり得ないと思うのですね。私は、そういう情報はちゃんと入っていたと思うのです。  そうすると、外国へ行く、ASEANに出るということをきっかけにしてぱかっと態度を変えたのだと思うのです。  しかし、せっかく変えたのに反応が芳しくない。なぜだと思いますか。なぜ二兆円の特別減税ではだめだと思いますか。これは、一言で言ってツーリトル・ツーレートだからです。小さ過ぎて、おまけに遅過ぎるからです。小さ過ぎるというのは、言うまでもなく、九兆円の負担増をやっておいて二兆円だけ戻してやろうというのだから、小さ過ぎる。  それから、ツーレート。これは、遅過ぎるというのが一番問題でありまして、私ども特別減税継続法案を出したあの時点で決めていただいておれば、昨年の六月、そして年末の調整で減税二兆円が実施されたはずであります。それが、この一年のおくれ。一年のおくれというのは、経済というのは生き物のように弾みがつきます。一たび下向いて突っ込み始めた経済に向かって、二兆円などというのは大した刺激にならないのですよ。だけれども、あのときは三・二%成長していたのですからね。あのようやく回復しかかった経済でマイナスのケインズ政策である二兆円の増税をやめれば、これは効果はあったけれども、ツーレートだね、遅過ぎるねということであります。  また、経済は先行き観で動きますからね。減税は継続するよという先行き観でこの一年、去年一年間やるのと、今になって戻すよと言われるのでは、もうやはりツーレートなんです。先が悪いと思って一年間動いてしまった後ですからね。これは、言うなれば安物買いの銭失いというやつですよ。  しかも、もう一つまずいのは、これは一年間だけということでしょう、特別減税。それで、きのうのNHKのテレビ討論会を見ていましたら、自民党の山崎政調会長は、様子を見て、景気がまだ悪かったらもう一回やるさと言いましたが、これは経済政策のイロハを知らない人の議論、とんでもない話なんですよ。一年一年減税やって、次の年は増税だと言ったら、これは増税予告つき減税ということなんですよ。  今の経済学の一番新しいポイント、ケインズ政策はきかないという理由は、幾ら景気刺激で減税してやったり公共投資ふやしたりしても、その財源を次の年増税で取ると言ったら、国民は増税に備えて貯蓄をふやしてしまうからきかないというわけですね。つまり、増税予告つき減税はきかないというのに、これは典型的な増税予告つき減税、しかもばらまき減税ですね。二兆円、ツースモールですよ。ですから、国民はこれに反応しなかったのだと思います。  さて、総理、今私がるる申し上げました中の、二兆円の特別減税を今さら一年たって慌てて、ああ、やはりやりましょうかと言ったって、ききっこないのだということについて、どういうふうに御判断されますか。
  128. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員の御見識は十分拝聴をいたしました。その上で、効果のあることを期待いたします。
  129. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 残念ながら、総理は、今の私の理由づけに対して一言も反論できないということであろうと思います。  さて、それではもう一つ違う角度から言いましょう。なぜもう少し大きな減税、今私ども野党三党、三会派といいますか、足並みをそろえて要求しております六兆円規模の減税、なぜもう少し大きな減税をお考えにならないのか。私どもは、新進党の時代から、そして現在の自由党におきましても、最低五兆円、最高十兆円という減税を言っております。  これは中身を言っていたら長くなるからちょっと略しておきますが、法人税減税が四兆円です、そして所得減税が二兆円から六兆円ですが、総理、どうして減税二兆円なんという、増税予告つきばらまき減税という貴重な税金のむだ遣いみたいなことをするんですか。やるならもっと大きくやらなければ。  よく軍事戦略で言うじゃありませんか、兵力の逐次投入は愚策中の愚策だ、どんどん兵力を消耗するだけだと。やるならどんと投入しなきゃいけませんよ、これだけ遅くなって、ゼロ成長にまで突っ込んじゃったんですから。どうしてもう少し大きな対策を打とうとされないのでしょうか。お答えください。
  130. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどは、議員は、御自身の見解を述べられた後、二兆円減税についてのみ答弁を求められましたから、私はそのとおりにお答えをいたしました。  その上で、一部繰り返しになりますけれども、今回の特別減税は、まさに、先ほど来申し上げてまいりましたような中で、私なりに、国政を預かる者としての責任と考え、決断をしたものでございます。  そして、この特別減税は、平成十年度税制改正における法人課税あるいは有価証券取引税、地価税の減税などの内容を盛り込みましたもの、また、金融システム安定化のための三十兆円の公的資金の活用といった財政、金融の両面にわたる措置と相まって、私は、我が国経済の大きな回復の原動力になると考えております。  長々と議論を申し上げるつもりはありませんけれども、むしろ議員市場をよく御存じの方でありますから、こうした論議とともに、政府決定をいたしました施策が市場に一日も早く届くことの重要性は、よく御理解がいただけると存じます。  そして、今私どもとして、この補正予算並びに関連法案を一日も早くどうぞ御審議を願いたいと申し上げておりますこと、それは、その施策が早く市場に届くことによって一つずつ安心材料をきちんと整備しておく。言っただけで終わってしまったのでは何にもならないわけでありまして、そうした強い気持ちを持っておることも、どうぞ御理解をいただきたいと存じます。
  131. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理に突っ込んでお伺いいたしますが、もっと大きな財政刺激を今打ち出さない理由ですね。さっきも言いましたように、年度末に金繰りがつくかどうかというところに追い込まれている経営者がこれを見ておられると思いますよ。どうして追加的な対策が打てないのか、こんな増税予告つきのばらまき減税、ツーレート・ツーリトルなのかということに対して、恐らく総理は、これは財政構造改革法との兼ね合いを考えて、これ以上大きなものが出せないというふうに考えていられるのではないですか。  しかし、総理は、朝からの御答弁の中でこういうことを言っておられますね、財政再建と目先の景気対策はタイムスパンが違うと。これは、私は、ああ、総理はいいことを言い始めたと思いますよ。だって、このことはずっと言っていたんですよ、私どもの方が、旧新進党が。  つまり、財政再建というのは中期のタイムスパンで考えることだ、だから、二〇〇三年に赤字の対GDP比率を三%以下に下げるということは、それはそれで結構だ、必ずしも反対じゃない。だけれども、短いタイムスパンの景気対策については、一度財政赤字が拡大するような手を打ってでも日本経済のこの危機を克服しないことには、中期的な財政赤字削減だってできなくなっちゃいますよと。タイムスパンが違うんだから、目先は財政赤字が拡大するような景気対策を打ってもいいんだということを、もう繰り返し繰り返し私どもは言っていた。  それが、総理のお言葉で、タイムスパンが違う、これは二律背反では必ずしもないというお言葉が出てきたので、私は、これは国民は喜ぶと思うのですが、それならば、何でこんな二兆円なんという、恐らく効果がほとんどないような税金のむだ遣いをされるのですか。兵力はまとめてぼんと投入しなければだめですよ。逐次投入なんてしたら戦いに負けます。  総理、せっかくタイムスパンが違うとおっしゃり、二律背反ではないとおっしゃるなら、どうしてもっと大きな財政対策をお打ちにならないんでしょうか、お答えください。
  132. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 タイムスパンという言葉、きょう初めて私は使ったわけではございません。これは、どうぞ、テレビを見ておられる国民にも誤解のないようにしていただきたいのですけれども財政構造改革の必要性を確かに私は訴え続けてきましたし、これが必要だということは今も申し上げております。同時に、そのときの経済金融情勢に対応すること、国際状況対応すること、これはまさに違った次元、時間差、タイムスパン、その問題であることは、別にきょう初めて私は申し上げたことじゃないんです。  それと同時に、特別減税の二兆円のみを先ほどからとらえて、兵力の逐次投入といった御指摘もいただいておりますが、法人課税あるいは地価税、有価証券取引税の税制改正平成十年度でお願いしておりますことも既に御承知であります。金融安定化システムのために、国債をもって十兆円、そして政府保証をもって二十兆円、三十兆円の支援のスキームを御審議を願っていることも御承知であります。また、その貸し渋りという問題につきまして、政府系金融機関に、信用保証も加えて二十五兆円の資金枠を用意し、これに対応しようとしておりますことも御承知のとおりでございます。  それぞれの施策、一つずつばらばらではございません。今申し上げましたように、一緒に、一つのパッケージとして御論議をいただきたい。そして、ぜひこれを活用できるように、法改正等を伴うものもございます、国会の御意見をちょうだいしたいと願っておるものもございます、ぜひ御協力を賜りたい。  これだけを、言いかえれば特別減税だけが対策ではないということを、改めてもう一度申し上げたいと存じます。
  133. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 特別減税だけが対策ではないというのは、私は十分承知をしております。ですから、時間の配分もございますから、この後は、金融安定化対策に話を移してまいりたいと思います。  この金融安定化対策の話をするに当たって、初めにはっきりと申し上げておかなければいけないことがございます。  それは、先ほども申し上げましたけれども、この二年間、金融のセーフティーネットは金融三法で大丈夫だ、すなわち、公的資金は信用組合以外投入しない、投入しないと言い続けてきて、今ころりと変わった。この無責任さ、それに対する政治責任の追及という点では、我が自由党も、民友連、平和・改革とともに、これからあらゆる機会をとらえて指摘し、追及してまいりたいと思いますし、また、山崎政調会長、新井議員の不正疑惑が今の政治不信の大きな背景になっておるということを踏まえて、この証人喚問をお願いする。けさほどから出ているこの点についても、我が自由党は全面的に一緒になって要求するものであります。  さらに、けさの大蔵省OBのとんでもない不正取引の報道、さらには新井議員も同じことでありますが、この手の不正な証券取引というものが、やはり証券界あるいは日本の証券市場に対する内外の不信の背景になっておる。これについても、私どもは引き続き追及をしていくつもりであるということを国民の皆さんの前ではっきり申し上げた上で、この三十兆円の対策の話に入りたいというふうに思います。  この三十兆円の対策、それから中小企業に対する貸し渋り対策で公的金融の方に資金をつけた。これは確かにパッケージとして出ているのですが、さっきも申しましたように、この話が二兆円の特別減税復活と一緒に出てきた時点で、マーケットはその後これに反応していないのですよ。なぜ、この対策についてもマーケットははっきり反応しないんだと思いますか。  大きな理由は三つあるのです。それについて御見解を伺います。  まず第一は、この三十兆円のうち十七兆円、これは預金支払い資金の不足に備えたものでありますが、しかし、そもそも不良債権全体がどのくらいあるかということについて、けさほど来野党の委員が追及しておりますように、その辺の情報開示が不十分である。とするならば、海外の投資家から見ても、また国内から見ても、この三十兆円のうちの十七兆円が預金を全額保証する上で十分な資金なのかどうか、見当がつきかねるねというのが一つの背景なんですね。  それからもう一つは、この十七兆円というのは、金融機関が破綻したとき、預金保険機構にある基金を払い出してもまだ預金を全額保証できないときに使うわけですから、これはやはり後ろ向きの対策ですね。これで景気をよくしようという話じゃなくて、金融破綻が起きたときにそれ以上ひどくならないように、だから後ろ向きの話だから、なかなかこれは、景気は反応をしない。  それから、先ほどの、中小企業に対する貸し渋り対策ですね。  これは、私はこのテレビをごらんになっている中小企業の経営者はよく御存じだと思いますが、また総理も御存じ、蔵相も御存じのはずですが、公的金融機関から中小企業がお金を借りようと思いますと、まず、抵当は一番抵当だと言われるのですよ。保証人は二人連れてこいと言われるのですよ。今ごろそんな、さらの、抵当権のついていない抵当物件、土地を持っているくらいなら、こんなところへ駆け込みませんよ。今、苦しい中小企業にとって、こんな厳しい条件のついた公的金融なんというのは余り利用できないのですよ。このところをしっかりと考えておいていただきたい。  金額ばかりおっしゃったってだめですよ。この金額は出てきません。これはもう数カ月たてばわかることですが、この金額、幾ら見せ金で出しておいたって、貸し出しで出ませんよ、こんなにどんどん。条件が厳し過ぎるのですから。  ですから、私ども自由党は、この貸し渋りで本当に参って、もうこの年度末は越えられない、こういう中小企業の経営者のために、中小企業に対する貸し渋りの相談室というのを、副党首と幹事長を頭に置いてつくりました。これは、相談室に来ていただいて、公的金融、よっぽどいろいろ相談に乗ってやらなきゃ、そう簡単にお金は出ないのですよ。そういう実情があるということを皆さん御存じです。  それから三番目、これが大分大事なことなんですけれども、海外の友達から私のところへ照会が来る。一番海外の投資家が疑っているのは、この三十兆円、本当に使う気かということです。見せ金じゃないの、本気なのということです。  なぜそういうところを疑われるのかなと思って聞きますと、やはり財政構造改革法ですよ。財政構造改革法で、毎年毎年びた一文財政赤字を拡大してはならぬと書いてあるのに、さっき最初に確認したようにそういう法の精神でできているのに、そんなときによくまあ三十兆円なんて言えるねと。これ、本当に使ったら、財政赤字拡大にはねてきますよね。そうでしょう。  交付公債の十兆円だって、あれを使ったら国債整理基金の減少になるでしょう、現金償還したら。これは赤字拡大ですよ。  それから、二十兆円の政府保証だって、実行に移されていったら、最初のうちは債務負担行為でこれは保証しているだけだと言っていられるかもしれないけれども、あれは一体何で返すのですか。返す財源というのは保険料でしょう。保険料というのは年間四千五百億ですよ。四千五百億の保険料で十七兆円返すといったら何年かかりますか、三十八年かかるじゃないですか。こんなものは、保険料でちゃんと返すよなんて言っていられるような、そんな話じゃないのです。これは明らかに財政赤字拡大にはねます。公的資金投入の予約ですね。  ですから、これと財革法の関係をはっきりしないことには、海外の投資家から見ていて、あの三十兆円は見せ金じゃないか、あんなものは怪しいねということになっちゃうんですよ。ここでもまた財政構造改革法にひっかかっちゃう。  さっきの二兆円のときと同じように、金融システム対策も財政構造改革法にひっかかってしまいます。この点についていかがお考えですか。この財政構造改革法と今度打ち出している金融システム安定化対策との関係、これは本当に、三十兆円使っていったら必ず財政構造改革法違反ですよ。いかがでしょうか。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 細かい点については事務当局の説明をお許しいただきたいと思いますし、貸し渋りについての政府系金融機関の実情について御指摘がございましたので、この点につきましても通産大臣からの補足答弁をお許しいただきたいと存じますが、私は、三十兆円を見せ金だと申し上げているつもりはございません。同時に、これを使わずに済む状態でこの苦境が乗り切れれば、それがベストだと思っております。  なかなかそういくかどうかわかりません。しかし、議員のようにこれを見せ金と決めつけるつもりはありません。必要ならばこれは使える仕組みであります。同時に、使わずに済めばそれが望ましいという性格のものであることも御承知のとおりであります。
  135. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 総理からの御指名でございますので、お答えを申し上げます。  貸し渋りが民間銀行の中で起きていることは確かでございます。そういう意味で、それに対応するために、中小企業政府系金融機関に特別の窓口を創設して貸し渋り対策を行っているわけでありまして、そういう意味で、今まで先生のお話のような平素の窓口とは全く変わっております。  それによりまして、特に抵当の問題がございますので、信用保証協会の基本財産を大幅に積み増しておりまして、この積み増しによって、平成九年度、十年度において三兆円の保証を行うようになっております。今まで一人二名保証人がいなければならないというような状態も解消をいたしております。  そういう意味合いで、現在、約十万件の融資の申し込みがなされておりまして、各機関に多くの融資相談が寄せられております。各機関の側においても、積極的に、年末も一切返上して取り組みをいたしておりまして、その結果、中小企業金融公庫などの政府系金融機関の昨年の十二月の融資実績は、関係七機関を合計して約一兆円に上っているところでございます。  さらに御説明申し上げることが必要ならば、政府委員の方から御説明を申し上げます。
  136. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  保証協会の枠の拡大というのは、これはある程度きいてくると思いますが、しかし、保証協会業務というのも、あれまた大変に手間のかかることでございます。もちろんこれは、やらないよりやった方がましという意味で私は評価いたしますが、これだけで中小企業に対する貸し渋りが解消すると思ったら大間違い。  そこで、もう一つ手を打たれましたよね。十三兆円の資本注入の話でございます。そちらに移ってまいりたいと思うのですが、現在、自己資本比率が八%を三月末に切りそうだ、あるいは、国内の銀行で、中小でありますと四%切りそうだということで、貸し出しを抑える、それどころか、貸し出しの回収をかけてきている銀行がかなりあるわけですね。私は、幾つかの具体的な例を知っています。  特に、地方に本店を持つ企業が中央で金を借りている。これはメーンバンクでないところから借りている。そういうところからの貸し出し回収が今強烈になってきた。びっくりして、メーンの地場の地方銀行に駆け込んでくる地場の企業が大変に多いわけです。ですから、この資本注入の話が出てきたということ自体は、私はその背景は十分に理解ができます。  それから、先ほど総理おっしゃいましたように、拓銀の受け皿銀行になる北洋銀行のような場合、これは、小が大をのみ込むような話になりますので、自己資本比率が著しく下がる。この資本調達を助けてやるというのは、北洋銀行は一プライベートバンクであるにもかかわらず、金融システムの安定に貢献するために受け皿銀行の役割を果たしたのですから、ここに私は公的資金を入れるというのはよろしいと思うのです。ですから、この法案の中の受け皿銀行のところは賛成いたします。自由党としても、ここの部分は賛成いたします。  しかし、問題はその他の一般銀行なんですね。先ほども野党委員から指摘がありました。優良行であれば、優良ならば市場で調達できるのですよ。資本を充実したかったら市場で調達できる。それから、さまざまの、こそくな手段ではありますが、低価法を原価法に切りかえるとか、CPをリスクアセットから外すとか、いろいろやっていいよという行政がございましたものですから、こそくな手段ではあるがそういうことを活用して、自助努力で、公的資金なんか頼らなくたって優良銀行は八%クリアできるのですよ。  他方、不良銀行の方はどうか。これは、のどから手が出るほど資本注入は欲しいが、優良銀行でないというレッテルを張られることを恐れて、これもうっかり手を挙げられないというのが最初の銀行界の反応でありました。そのように新聞にも報じられました。  ところが、しばらくたつと、いやこの資本注入は優良銀行から入れるんだ、したがってこれに手を挙げたからといって不良銀行のレッテルは張られないんだということが出てくるに及んで、私も、これはかつての護送船団型の過剰介入行政に逆戻りを始めたなというふうに思いました。  また、事実、私は幾つかの例を存じております。個別行に聞いてみました。かなりたくさん聞きました。だから幾つかの例を存じておりますが、これは優良行は本当は要らない。要らないどころか、二つ心配していますよ。  一つは、公的資金を受けたら、その公的資金を出したのだからといって、いろいろ経営に介入されやせぬかということを心配している。  もう一つは……(橋本内閣総理大臣「大蔵省が」と呼ぶ)そうです、大蔵省がね。だって、やはり公的資金を注入する以上はいろいろなものを出しなさいよと。これはそうです。デフォルトされたら大変ですからね。デフォルトされたら大変だ。だけれども、そういう形で、今までなら出す必要のなかったものまで徴求されるという意味で、行政の介入を怖がっています。  二番目。これは先ほど出ておりました。海外では、やはり優良行だと思っていたけれども公的資金に頼ったなということになりますから、これは、資本注入というところだけ見ればレーティングは上がると思うかもしれないけれども、公的資金に頼ったというところを見たらレーティングは下がるわけですよね。それを非常に心配していますよ。  だから、優良行は本音ベースではこんなものに頼りたくないのですね。それに対して、いやいや、おまえさんが受けてくれないと不良行が受けられないじゃないかというのが今の、密室行政指導型と私はあえて言いますよ、昔の、ビッグバンの中でやめようとしたスタイルの行政指導が、今全面的に出てきてしまっていると思うのですね。  総理、せっかくビッグバンをやろうとしているわけでしょう。護送船団型の過剰介入の密室行政はやめて、これからはルールを明示して、透明な形で市場型の行政に変えるんだ、金融行政に変えるんだと言っておるのですから、どうか総理、そういうビッグバンに沿った市場型の改革の方向でこの自己資本比率の問題を考えていただきたい。基本はやはり自助努力。自己責任に基づく経営の自助努力を基本にということになると思うのですよ。その意味で、何かほかに方法ないですかね。  例えば、この前大原委員が、金曜日に土地の再評価の話。これも実態は何も変わらない、お金は一文も入らない、こそくな手段だと言えば言えますが、しかし、公的資金注入よりはましな面もあるのですよ。これは自助努力ですから、経営の自分の努力ですから。それによって、何にも行政介入の心配がないし、海外から見たって、特に公的資金に頼っている弱い銀行だと思われないで済みますからね。これも一つの案なんです。  総理、護送船団方式に逆戻りするじゃないか、野党の各委員がみんな言っています。私もそう思います。そうじゃない形の自己資本充実策というのをなぜお考えにならないのか。総理のお考えを伺いたいと思います。
  137. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、今議員お話を伺っておりまして、一つだけひっかかった部分があります。それは、例えば優良行が手を挙げたくない、それは行政の介入を招きかねない、出したくない資料まで出さなきゃならぬというお言葉がありました。  私は、行政の介入が拡大するというのは、これは本当にいいことじゃない、議員が心配されるのと同じように私もそう思います。しかし同時に、資料を出すのが嫌だという言葉は、私はひっかかります。むしろ情報の開示が今以上に求められております。そうした中で、資料を出したくないというのであれば、これは私は本当に問題だと思うのです。  そして、むしろ審査機関に対して要請をいたします場合、その議決の前提として、経営健全性の確保のための計画を提出させる、これを公表させる、公表するということに決めているわけでありますから、いずれにしても、情報開示というのはこの仕組みを動かしていく上での前提でございます。私は、そこがひっかかるから、だから使いたくないというのであれば、それはむしろ金融機関側の姿勢として一層開示を求めなければならない。  先ほど議員からの御指摘の中にもありました。私は、その部分は議員の御主張をそれは確かにそうだと思いながら拝聴しておりましたけれども、今日の状況の遠因として、金融機関の不良資産の内容が開示されない、それがはっきりしない、これが不安の要因にあるということを言われました。  私は、本当にそれはそういう部分があったと思います。それだけに、情報開示の必要性というのが今まで以上にあると思うのです。そして、仮にこのスキームを使わない、使いたくない、その理由が情報開示が望ましくない、余りうれしくないということであるとすれば、私はこれは大変残念なことだと思っております。  そして、もう少し、恐縮です。  私は今議員から、土地の再評価についての御評価、あるいは原価法、低価法の選択制、こうしたやり方、こういうものが中心でいけないかという御意見をいただきました。  原価法、低価法につきましては、選択制、どちらがいいかという御意見が先刻ありましたし、同時に、これは私も専門家でありませんので、どっちがいいのかわかりません。しかし、この選択制の中で、より有利な方を選択できるということもプラスだと思います。  また、私は再評価も必要なことだと思います。そして、安定化のスキームも相まって、むしろ一分一秒でも早く金融システムの安定性を回復したい、そして安心をしていただきたい。そのためには、どのやり方も、使えるやり方は皆要るのじゃないだろうか、私は今そんな気持ちでおります。
  138. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私が申し上げました情報開示というのは、事前のルールで開示しなければいけないその情報、これを隠すような話をしたのじゃないのですよ。ちょっと揚げ足をとられてしまいましたけれども、私は、そうではなくて、ルールにより開示が必要じゃないような、経営のはしの上げおろしみたいなところまで介入されることを怖がっているという意味でございますから、訂正しておきます。  それから、低価法、原価法とか、リスクアセットをちょっと定義を変えるとか、あるいは土地の再評価とか、私はこれが全面的にいいと言っているのじゃないのです。ましなところもある。ましなところは、自助努力でいける、マーケットの中での自己責任でいけるところがましだと言っているのですが、しかし、これはこそくな手段であることは間違いない。  根本的な、私がここで申し上げたい自己資本の充実策というのは、ずばり言って実は景気対策なんです。景気対策なんですよ。私は、この点について率直に総理との見解の違いを申し上げます。  これはワンセットにして出しているとおっしゃって、確かにシステム安定対策三十兆円と景気対策二兆円、これはワンセットで出ている。そして、総理の本会議での演説やあるいは御答弁を伺っていると、現在の景気の落ち込みは金融不安からきているという点を強調される。私もそれは認めますよ。金融不安が貸し渋りや何かを通じて景気をおかしくした。しかしまた、景気の落ち込みが株価円相場を安くして、自己資本比率を下げて金融不安を起こしているという逆方向の因果関係もある。  さて、これが悪循環を起こしておりますが、どっちが始発的な、根本的な原因でしょうか。私は、明らかに始発的、根本的な原因は不況の方にあると思いますよ。それはなぜかといえば、不況を直せば金融システム不安も緩和します。しかし、金融システムの方を幾ら対策を打ってみても、不況のままだったらこれはだめですし、この不況は、金融システムが安定したからといってひゅうっとよくなってくるという保証はない。なぜなら、今の不況の原因は、金融システム不安以外に幾つもあるからです。  それは最初に言ったように、一つは大型のマイナスのケインズ政策、大デフレ予算でゼロ%にたたき落とされちゃったということとか、一たびそうなると減産、減産ですから、今度は自律的に、時間外手当が減っちゃう、ボーナスが減っちゃう、失業がふえるという形で自律的に所得が減り、消費が減る、こういう危険な段階がもう芽生えていますよ。時間外手当だってボーナスだって減っているし、失業者はふえている。そういう自律的な落ち込みも残念ながら始まっている。  それに、根っこにバブルの崩壊に伴うバランスシート・デフレーションもあるのですね。だから、金融システムの方に対策を打っただけでは景気はよくなりません。逆に、景気の方に対策を打てば、金融システムはかなりの程度安定してくる。  具体的に一つお伺いします。  総理は、下から御報告を受けておる、あるいは大蔵大臣でしょうかと思いますが、日経平均株価で千円、上がっても下がってもいいのですが動いたら、大銀行十九行の自己資本比率はどれだけ動くか御存じですか。それから、円相場が十円高くなったり安くなったりしたら、大銀行の自己資本比率が何%ぐらい動くか御存じでしょうか。  これは私、事前に役人の方に言ってありますから答えられるはずですよ。どうぞ。あるいはもう御報告を受けておられるならと思って聞いている。
  139. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな要素をかなり捨象しての話でございますが、あえて機械的に計算いたしますと、日経平均株価が千円下落した場合、主要十九行で株式含み益が約二・三兆円減少すると見込まれ、これを単純に計算しますと、〇・二%減少いたします。  それから、為替相場が十円円安となった場合につきまして、外貨建て資産の割合が全体の資産の約二五%でございますから、これも大まかに言いますと、〇・二%減少という感じでございます。  あくまでこれは試算でございまして、ほかに自己資本の勘定で外貨建てもございますし、一概に言えないということを頭に置いてお聞き賜りたいと思います。
  140. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今伺った数字は、細かいようでいて実は大変大事なこととつながっているから、あえて総理大蔵大臣記憶にとどめていただきたくて言ったわけです。  私も、昨年の九月の中間決算の短信を使って試算しました。ここに十九行、各行全部あります。そして、答えは大体銀行局長が言ったのと同じです。私の試算ですと、千円動きますと二・四兆円含み益がふえるとか含み損が減るとか、二・四兆円単位で動きます。そして、十円動くと、これはもうぴったり銀行局側の試算と私の試算は一致しましたが、〇・二%自己資本比率が動きます。  私がなぜこれを言い出したのか、賢明な総理はもうお気づきだと思います。金融システム対策の基本は景気対策だということ。景気対策を打って、これで日本経済危機がとまるな、景気回復するなと思えば、マーケットは正直にシグナルを出します。株価回復し、円高に動きます。  今株式相場は、きょうの前場の終わりで一万六千五百円ぐらいですね。そして、実は、今度の九兆円の負担増の予算が決まる直前の、一昨年の六月ごろの回復したピークは二万二千円台ですね。二万二千円台から現在の相場まで下がっちゃっているわけですが、これは六千円違うのですね。回復した今の一万六千五百円から二万二千円台を見て、六千円違う。  この六千円というのはばかにならないですよ。二・四兆円を六倍していただければ十四・四兆円ですから。今政府が用意されているのは、十三兆円の資本注入を考えているのでしょう。そのぐらいのお金はぽんと出ちゃう。しかも、実は大銀行十九行だからこんなものであって、地銀まで入れると、私の試算では、六千円株価が上がれば二十兆円の資本注入に相当します。はるかに大きい。  さらに円相場が、私は今の円安は行き過ぎていると思いますから、二十円ぐらい円高で百十円台に動いたとしましょう。これで自己資本比率が〇・四%ポイント上がりますから、こちらで〇・三で、三、六、十八、両方足しますと、自己資本比率は二%強回復するんですね。この方がよっぽど確かで強烈なキャピタルインジェクションになるんですよ。そして、言うまでもなく、八%の自己資本比率を前提とすれば、この二十兆円の十二・五倍の貸し出しが可能になってくる。ですから、私はそのことを言いたかった。  総理政府、そして与党の皆様は、不況と金融システムの関係を一つ勘違いしていないか。それはさっき言ったことです。実は、不況の方を直す対策を打ったら、同時に金融システムは安定するんですよ。自己資本比率、ばっと上がりますから。だけれども、こっちの金融システムばかりいじったって、こっちは動かないんですよ。だから私は、最初に二兆円の特別減税の話から入ったのは、どうしてあそこでもっと大きな対策を打たないのかということであります。  現在、総理承知のように、株価は二日連続して回復しましたよね。一万四千円台に入っていたのが、先週の金曜日、そしてきょうも回復をしています。なぜ回復をしているか。実は外人買いが物すごく入ってきた。外人がなぜ今ごろ日本の株を買いに入ってきたか。それは、先ほど話題に出ておりましたように、額賀副長官がアメリカで、この年度を越したら、つまり今の補正予算が成立し、そして年度を越したら直ちに来年度の予算を前倒し執行して、そして足りなくなる下期には早目に補正予算を組む。あれがまことしやかにマーケットに流れたからです。  私は、その真偽を今聞いているんじゃないんですよ。そういう情報があるからこそ、外人買いが入ってこうなっているということ。逆に言えば、それがなかったら、それがうそだとわかったら大変なことになりますよ。もう一回ばんと来ますよ。そのことを私は警告申し上げたい。  そして、さっきから言っていますように、この三月末は大変です。この三月末を乗り切るのに、今お出しの対策だけでは危ないです。今マーケットは、うその話かもしれないけれども、とにかく額賀副長官が言ったというあれを信用して回復しているだけです。このマーケットの回復シグナルをうっかり読み違えて、今の二兆円減税と三十兆円で、これで年度末が越えられると思ったら大違い、危ないですよ。  もしそうなっても、それは政府の責任です。はっきり指摘しておきたい。私はここで、自由党を代表して、今のあの対策ではだめだと申し上げているわけですから、それをしっかりと覚えておいていただきたいと思います。  委員長、どうもありがとうございました。
  141. 松永光

    松永委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、志位和夫君。
  142. 志位和夫

    志位委員 日本共産党を代表して、橋本総理に質問いたします。大変限られた時間ですので、今政府が進めようとしている三十兆円の銀行支援策について質問いたします。  この計画に対して、今、多くの国民からやりきれない怒りの声が伝わってまいります。例えば、毎日新聞の投書では、こういう声を紹介していました。「政府はあれほど国民がこぞって反対した消費税率を五%に上げ、医療費の大幅な負担増を強いた。特に老人の負担増は深刻である。 このような負担増を国民に強いて、一方では破たんした金融機関の処理などに膨大な公的資金を投入する。 これでは政治はいったいだれのためにあるのか、と憤りたくなる。」  私は、十三日の本会議質問でこの計画の道理のなさをただしましたが、総理からはまともな答弁がありませんでした。そこで、改めてこの場で、三つの角度から問題点を究明したいと思います。  まず第一は、この計画が、銀行の破綻処理には国民の税金を使わないという住専国会の際の総理政府の公約をじゅうりんするものではないかという点であります。  ここに議事録を持ってまいりましたが、総理は、一年半前の九六年五月二十一日の衆議院本会議の答弁で、金融機関の破綻処理は金融システム内の負担により賄われるのが原則、すなわち、銀行が破綻しても、預金者保護を初めとする破綻処理は銀行業界内部の負担で行う、国民の税金は使わないと言明されていました。  まず、事実の確認をしたいのですが、そういう言明をされたことは間違いありませんね。
  143. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 金融三法を制定いたしました当時、信用組合の破綻が相次いで発生していたことなどを踏まえまして、信用組合に限った政府保証を措置したことはそのとおりであります。その後、一般の金融機関においても大規模な破綻が相次いで発生をしている、我が国金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぐといった事情の変化が出てまいりました。  今回、一般の金融機関も含め、包括的に預金の全額保護の体制を整えようといたしております。そして、預金の全額保護の体制を整備して内外の信頼を確保することにしたい、そのように考え、包括的な危機管理体制を示すことによって国民に御安心をいただこうといたしております。
  144. 志位和夫

    志位委員 私は、どういう状況のもとで総理がそういう言明をしたのかということを思い起こしていただきいと思うのですよ。  総理の答弁というのは、我が党の議員が、住専処理への税金投入が他の金融機関の税金投入への道を開くのではないかと追及したことに対する答弁なんです。住専処理に対する国民のごうごうたる非難の中で、税金を使うのはこれが最後だと言明したことの意味は重いんですよ。これは国会国民に対する重大な公約です。それを踏み破るというのは背信行為だと考えませんか。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに私は、基本的にという言葉をつけ、今議員が御指摘になりましたようなやりとりをしたことを覚えております。  そして、まさに金融機関の預金保険機構に対する保険料を平成八年度から、それまでの預金保険機構の保険料率につきまして七倍への引き上げをいたしました。この水準というものは、当時、金融機関の利益に対する保険料の負担の割合といたしましては、米国における同種の措置のピーク時とほぼ同じ程度のものになっております。  今、何よりもシステムの安定というものを確保し、預金者に安心をしていただき、金融機関のシステムの安定を確保しようとして御審議をいただくような安定化システムを国会に御提案を申し上げております。
  146. 志位和夫

    志位委員 結局総理は、事情が変化した、緊急の事態への対応だということで、公約をほごする姿勢をとっておられるわけですが、緊急の事態と言いますが、預金者保護のために、一体、税金を使わなければならない状況なのか。この問題について、事実に即して吟味をしてみる必要があると私は思います。  これは大蔵省が九六年の五月に衆議院金融特別委員会に提出した資料ですが、ここでも、銀行が破綻した際の預金者保護を初めとする破綻処理は特別な制度は必要ない、すなわち税金を使わなくてもできるとしています。そして、その最大の理由として、金融機関が全体として不良債権額に対し十分な償却財源があること、こう言っています。私が本会議質問で総理に、この理由は今日では通用しなくなったんですか、こう伺ったのに対して、総理からは答弁がありませんでした。  私は総理に改めてお聞きしたい。  金融機関が全体として不良債権額に対し十分な償却財源があるという、一年半前に述べた状況が今日では変わったという御認識ですか。それとも、不良債権が全体として銀行の自力では処理できない状況になってしまったという認識なんですか。この点、伺いたい。いかがでしょう。総理に伺いたい。総理に御認識を伺いたいと思います。総理の答弁を求めています。
  147. 山口公生

    ○山口政府委員 金融機関が、全体として見た場合、結局自分の体力、それを総体として見た場合におきましては、十分な償却財源は持っていると思います。  しかし、破綻というのは個別銀行の話でございます。個別銀行がいろいろ資金繰り等、あるいは難しい状況に立ち至って破綻するというのは全体の話ではございません。これは個々の銀行の話でございます。したがって、そこでの財源問題というのは出てくるわけでございます。
  148. 志位和夫

    志位委員 銀行業界が総体として体力を持っているということはお認めになりました。個々の問題について問題が起こったとしても、それは銀行業界の共同の責任で対処できるということになるではありませんか。  そうしますと、全体として償却財源があるということは、預金者保護は銀行業界の体力でできるということなんですから、これは税金を使わないという公約を変える理由は何もなくなることになる。これは明瞭じゃありませんか。私は、まともな理由もなしに公約をほごすることは許されないということをまず第一に指摘したいと思います。  その上で、第二の問題です。  銀行業界が全体として体力を持っているのだとしたら、預金者保護をどうして銀行の共同責任でやらせないのか。政府の三十兆円の銀行支援策のうち、十七兆円は預金者保護を名目に預金保険機構の財政強化に充てるとされています。しかし、今起こっているのは、金融機関の破綻はみずから引き起こしたバブルの不始末の結果であります。自業自得の結果ですよ。それなら、その穴は税金でなく銀行業界の責任で埋めるのは当然じゃありませんか。預金保険機構の財源が仮に不足するというのであれば、その強化が必要というのであれば、まず、銀行が払っている保険料率を引き上げればいいと私は思います。  アメリカでは、八〇年代後半から九〇年代初めにかけて商業銀行の倒産が相次ぎ、連邦預金保険公社の基金が底をついたときに、保険料率をそれまでの三倍の平均〇・二五四%まで引き上げました。銀行の破綻処理と預金者保護は、税金を使わずに銀行業界の共同負担で行うという大原則で対処いたしました。日本の保険料率は、引き上げたといっても〇・〇八四%です。アメリカの三分の一の水準です。財源が不足するというのであれば、銀行に負担を求めるのが私、筋だと思います。  総理に伺いたいのですが、先ほど総理は別の尺度を持ち出してきて、銀行の利益に対する負担の割合で見れば米国のピーク時と同規模の負担を行っている、七倍にしたことでそうなったとおっしゃいましたが、そういう認識ですか。米国のピーク時と同規模の水準に引き上げた。保険料率では三分の一、これは明瞭ですが、利益に対する負担の割合では米国と同規模に引き上げた、こういう認識ですか。先ほどの御答弁なので伺いたい。
  149. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど御答弁を申し上げましたように、平成八年度から、それまでの預金保険の保険料率につきまして、七倍、すなわち〇・〇八四%に引き上げたという御指摘はそのとおりでありますし、この水準が、当時金融機関の利益に対する保険料負担の割合として、米国のピークとほぼ同程度となることを目途としているとお答えをしたこともそのとおりであります。
  150. 志位和夫

    志位委員 私、こういう試算を計算してまいりましたが、当時の、確かに九三、四年の水準でいえば八%という水準に行ったのかもしれませんが、九六年度の数字はそうならないんですよ。  このパネルの左側半分は保険料率の日米比較です。これはアメリカの半分、三分の一しか日本負担しておりません。右側は利益に対する保険料負担率です。これは九六年の数字ですが、アメリカのピークの八%に比べて、全国銀行ベースで五・二%、大手銀行では三・八%ですよ。これは、業務純益が九四年から九六年に引き上がっているんですから、当然これは下がってくるんです。負担率、下がっているんです。引き上がっていないんですよ、八%まで。  政府は、米国のピーク時の、この右側の利益に対する保険料負担率で見ても、米国の八%ぐらいまではぎりぎり払える、こう言って引き上げたつもりだったけれども、五・二%までしか全国銀行ベースでは上がっていない。都市銀行は三・八%しか払っていない。もっと払わせて当たり前じゃないですか。これは総理、いかがですか。総理認識を伺っているのです。
  151. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  七倍に引き上げるときの算定でございますが、当時、その一倍の水準を、利益で見ますと一・一から二ぐらいでございました。一・二%、それを七倍するということでやっております。(志位委員「当時のことでしょう。今のことを聞いているのです」と呼ぶ)今、比率を業務純益と比べた場合には、業務純益は年によっていろいろ変わります。金利が下がってくる局面……(志位委員「九六年はどうですか」と呼ぶ)九六年も、金利が下がっている場合、そこでは業務純益は広がりますから、そのときは下がることはあります。  しかし、そのときでも一つだけお聞きいただく必要がありますのは、中小金融機関の業務純益に対する比率はもう九%近くなっております。当時もそういう議論がありました。例えば、特定の業界のことを言うわけではありませんが、小さいところは、これ以上負担をするとそれだけで赤字になってしまうという事情がありました。それで、法律によりますと、差別的であってはならないというふうになっておりますから、そういうことでございます。
  152. 志位和夫

    志位委員 九六年度はこういう数字であることは間違いないわけです。今否定されなかった。  中小の問題について言われました。確かに信金とか信組とか労金とか、そういうところの負担が大手銀行に比べて重くなっていることは事実です。しかし、全国銀行が五・二、大手銀行が三・八というのは間違いのない数字なんですよ。  私は、中小の金融機関が重いというのであれば、それは考えてもいいと思いますよ。しかし、全国銀行、大手銀行はもっと払わせて当たり前じゃないですか。  総理、はっきりお答えください。いかがですか。総理に伺っているのですよ。もうあなたに聞いたってしようがない。総理、答えてくださいよ。政策の判断の問題を聞いているんだから。総理
  153. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど銀行局長から八%という数字、すなわちこの料率を計算いたしました当時の一・二を七倍して約八という……(志位委員「当時のでしょう」と呼ぶ)いや、数字を、当時の話をきちんと御説明を申し上げました。その上で、預金保険の保険料負担につきましては、遅くとも十年度末までに検討を行うとされております。  我が国の金融機関が置かれている現状あるいは国際的な信認との関係などにも留意しながら、中長期的な負担水準等の観点から検討することになろうと思います。
  154. 志位和夫

    志位委員 今の総理の答弁でも、当時の数字ではそうだったけれども、九六年の数字については否定できませんでした。  九六年に引き上げたつもりだったけれども、八%まで上がっていないのですから、負担の増を求めるのは当たり前のことであります。  総理、中長期的な展望で平成十年度末までに検討するとおっしゃったのですが、これは引き上げる方向で検討するのですか。いかがですか。総理ですよ。銀行局長だったら答弁要らない。
  155. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 事務的なことでありますので、銀行局長から答弁をさせます。
  156. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  保険料については、政令によりまして、十年度末までに見直すということになっておりますが、その際考えるべきことは、どれだけのこれから負担が起きるかということもありますが、現在の置かれている銀行の立場、先ほど中小金融機関の立場を申し上げました。また、大手銀行について申し上げますと、これは国際競争裏での競争が待っております。ここに余りにも大きい負担をかけた場合、我が国の金融機関、マネーセンターバンクスがみんなだめになってしまうおそれだってあるわけでございます。そのときには日本経済全体に大きな影響が及びます。しかし、保険料の見直しは十年度末までに行うということにしてございます。
  157. 志位和夫

    志位委員 国民には三十兆の計画をわずか一週間、二週間の国会審議で認めろと言っておきながら、銀行の負担増の方は一九九九年の三月までにゆっくり見直そう、こんな話はない。国民負担増を求めておきながら、銀行の負担増は求めない。  国際競争力と言いましたけれども、自分の力で預金も守れないような銀行が国際競争をやっていく資格がありますか。やはりそういう問題があるのです。(発言する者あり)
  158. 松永光

    松永委員長 拍手はやめてください。御静粛に願います。
  159. 志位和夫

    志位委員 もう一つの問題を指摘したいと思うのですね。  政府は、万が一のために万全の措置が必要ということを繰り返しています。しかし、私は銀行の保険料負担をもっと引き上げるのは当然だと考えますが、それでもなお預金保険機構に穴があくような事態、すなわち当座の資金がなくなる事態になったとしたら、預金保険機構として必要な借り入れを行い、銀行業界の共同の責任で借金を計画的に返済すればいい、それだけの話だと思うのです。  政府の三十兆円の計画というのは、二〇〇一年までに預金保険機構に穴があいたら、国民の税金で穴埋めするというものです。ところが、その一方で、銀行の払っている保険料は、特別保険料が二〇〇一年三月までの時限措置ですから、二〇〇一年四月以降は七分の四に大幅に引き下げられるというレールだけは敷かれている。国民には巨額の税金を払わせておきながら、銀行の保険料は上げるどころか下げてやるレールが敷かれている。これも納得できないことです。  アメリカでは、一九九一年に連邦預金保険公社の穴があいたときに、連邦資金調達銀行から九一年、九二年と合計二百九億ドルの借り入れを行っており、そしてその借りた金は、銀行が預金保険料を引き上げるとともに、不良債権の回収を必死になって行って、九三年八月にはすべて返済しているのです。当たり前のことなんですよ。  穴があいたら、税金ではなくて銀行業界で借金をしてでも負担をし、何年かかけて無理のない形で返済したらいいじゃないですか。総理、何でそれができないのでしょうか。総理、どうですか。総理
  160. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいまの志位委員の論点は、まさに銀行は悪であるという前提の中で基本が展開をされておる。要すれば、破綻処理というのは、これからのこの安定化策を万全なものにすることによりまして国民各位に御安心をいただくことから、破綻の問題が、経営上の基本的な問題を持った銀行のみがそういう状況になるわけでございまして、大方が預貯金に対する万全の安心を得るということで金融は動いてまいります。  そういう点で、十兆の国債の交付はまさに万全の備えをやるということであり、不安感の払拭にあるわけです。そういう点で、七兆円というのが、積み上げた方式ではございませんで、それぞれのデータに基づいて、万が一に備えて七兆円、こういうことにさせていただいておるところであります。
  161. 志位和夫

    志位委員 銀行が悪であるという前提で話しているということをおっしゃいました。私はすべての銀行が悪いと言っているわけじゃありません。  しかし、大手銀行、都市銀行などについては、あのバブルの時代に、すべてあのバブルの乱脈に参加した、バブルの饗宴に参加した。これはやはり、そういう点では不良債権をつくり出した共犯ですよ。それはみんなで責任を負っているのです。ですから、そのバブルのツケをみずから返すのが当たり前であります。  あなたは不安感を払拭するために必要だということをおっしゃられたけれども、私は、だから、仮に穴があいても、そのときのセーフティーネット、不安感を払拭するための仕掛けは、やはり銀行業界のコストでやったらいいではないかという当たり前のことを言ったのに対して、あなたはお答えにならない。  私、預金者保護というのは銀行の最も重要な公共的責任だと思うのです。ですから、この問題について、私たちもこうすれば解決できるということを今申しました。必要があれば保険料の負担引き上げればいい。それでも足らなければ、借り入れをして責任を持って返したらいい。ところが、その問題についてまともな答弁をしない。銀行業界の自己責任の原則、これを貫かせてこそ金融システムへの信頼が回復すると私は思いますよ。  アメリカでもそういうことをやって、銀行は随分重い保険料を払ったけれども、システムの安定と信頼を回復させたのですから、日本でできない道理は私はないと思う。総理も、つい最近までは金融システム内の負担が原則とおっしゃっておられたのですから、私は、それをやらずに、預金者保護という銀行の本来の仕事、バブルの乱脈のツケ、これを税金で肩がわりするということは一かけらの道理もない、このことをはっきり申し上げておきたいと思います。  第三の角度の問題なんですが、貸し渋りの問題であります。  中小企業への貸し渋り対策について、三十兆円のうち十三兆円を使って銀行から優先株等を引き受け、銀行の体力増強を図ってやる、こういう計画がもうあと半分の問題だと思います。そうすれば貸し渋り対策にも役立つということも言われております。貸し渋りの実態は大変深刻なものです。帝国データバンクの調査でも、貸し渋り倒産は昨年だけで百六十九件発生しております。  先日、私は、倒産に追い込まれた中小企業、建設設計と内装業を営んでいた会社の社長さんに会って話を伺いましたが、銀行のやり方のあくどさには驚きました。  十二月の決済資金の融資をメーンバンクであった三和銀行に申し込んだところ、追加融資をしてやるから九億六千万円の担保を急いで差し出せ、こう言われた。担保の手続を終えると、手のひらを返すように融資ができないと通告された。担保だけひったくられて倒産に追い込まれたという話です。この会社は、三和銀行からの借り入れに対してきちんと利払いもし、その返済の計画も示し、まじめに働いている会社であります。社長さんは、融資をしないことをとっくの前に決めておきながら、融資をするようなそぶりを見せて担保をとるだけとって倒産に追い込む、これでは詐欺ではないかという強い怒りを述べておられました。  これは決して、総理、特別の話ではありません。私、この社長さんがこういうことをおっしゃっていたことを大変印象深く聞きました。普通だったら、企業が倒産すれば経営者の責任が厳しく非難される、しかし今は違うというのです。おたくも銀行にやられましたか、こういう同情が寄せられるという、それほど大手銀行の横暴勝手が荒れ狂っている。これは今の日本の現状であります。銀行が自分の利益だけ考えて、まじめに働いている中小企業をつぶすようなことがあっていいものかと私は思いました。  私は、本会議でこの問題について、現行法でもこうした横暴を正す行政指導ができるはずだ、一体どのような実効ある行政指導を行っているのかと質問いたしましたが、総理はこの問題についてお答えになりませんでした。ここできちんとお答え願いたい。いかがでしょう、総理
  162. 山口公生

    ○山口政府委員 貸し渋りについていろいろな御議論をちょうだいいたしましたけれども、貸し渋りの一番大きな原因は何かということを昨年の暮れの例で申し上げますと、特定の……
  163. 志位和夫

    志位委員 行政指導をやっているかと聞いているのです。その問題にちゃんと答えてください。
  164. 松永光

    松永委員長 答えなさい。
  165. 山口公生

    ○山口政府委員 特定の銀行の株価の下落等によってその危機の報道があり、そこでコール市場の逼迫、海外での資金調達難というような悪循環が起きまして不安が増殖しました。不安が増殖しますと、各銀行は貸し渋りあるいは回収という非常に警戒的な動きをとるわけでございます。それが企業の倒産等、あるいは雇用不安というような悪循環をまた招くわけでございます。これは自然の、経済原則として、そういう悪循環を招くプロセスでございます。  それを我々行政としてどうすべきか、それをどこで断ち切るかの問題であります。一つ一つの行為を、ここには貸すべきだ、ここには貸すべきではないという行政指導をやるのではなくて、そういった悪循環をどういう形で断ち切るかということでございます。そのために、危機対応としてのこういう方策をお願いしているということでございます。
  166. 志位和夫

    志位委員 結局、行政指導をやらないということを言っているわけですよ。あなた方は、銀行局長が立ったので、私、どんな指導をやっているのかなと思って調べてみましたら、これは通達であります。  去年の十二月三日、各金融関係団体代表者殿、銀行局長の名前で出ておりますが、こう書いてありますよ。「貴協会におかれては、従来より中小企業金融の円滑化について適切に対応していただいているところであるが、」「引き続き適切に対応されたく、貴傘下金融機関に周知徹底方よろしくお取り計らい願いたい。」従来も適切にやっている、今後もこのとおりやってくれ。貸し渋りのさなかにこれをやっているわけですよ。これだったら、従来もやっている貸し渋りをこのままやっていいということを言っているに等しい通達ではないですか。これは、こういうことしかやらない。  あなたは自然なプロセスと言いましたよ。貸し渋りは自然なプロセスだ、しようがない、そのためにいろいろな措置をとっている。しかし、政府のとっている措置、どれを見たって、例えば早期是正措置の弾力化ということを言っていますが、今一番猛烈に貸し渋りをやっているのは、いわゆる海外業務をやっている大手都銀ですよ。そこのところをきちんとやらないで、この問題は解決しない。優先株引き受けてやると言いますけれども、問題になっているのは銀行の無法な体質なんですよ。  中小企業基本法にはこう書いてあります。民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資の指導等の施策を講ずるものとする、中小企業の憲法にはこう書いてあるのです。銀行法を活用すれば、業務の改善命令とか、必要な資料の報告の徴収とか、立入検査とかできるはずであります。一切やらないで、やることといったら、優先株引き受けてやる、体力つけてやる。体質の悪いものに体力つけてどうなるのか。ますます横暴がひどくなるだけですよ。こういう面からいっても本当に道理がない。銀行が貸し渋れば渋るほど体力をつけてやるというのだから、こんな逆さまな話は私はないと思います。  預金者保護のため、貸し渋り対策のため、いろいろ言っておりますが、ことごとく税金投入の理由にはならない。偽りのそういう口実を取り払ってみれば、この計画が、国民のためでも中小業者のためでもなく、大銀行の体力増強のために税金を使って三十兆円もの支援をやる。先ほど国際競争力のためだと言いました。国際競争力をつけてやるために何で税金を払わなければならないのか。私はこの目的は本当に間違っていると思います。  そういう政府国民に対してやっていることは何か。負担増の政策であります。体力を奪う政策であります。  私、もう一枚図式をつくってまいりましたが、この間、政府が超低金利政策を続けてきた六年間で、この青い棒が家計の利子所得でありますが、十三兆六千億円から六兆一千億円、約半分に減りました。赤い棒は銀行の業務純益でありますが、全国銀行ベースで三・七兆から六・四兆に、約倍になりました。こういう、家計から体力を奪って銀行の体力をつけてやる、私はこれは本当に逆さまの政治だ。この逆さまの政治の根本にあるのは、やはり癒着の構造だと思いますよ。金融業界をめぐる政官財癒着の構造だと私は思います。  この問題を指摘した私の本会議質問に対して、総理はこうおっしゃった。金融業界と金融行政の癒着、もたれ合いという批判は真摯に受けとめ、改善すべき点は改善していかなければならない。  癒着の問題については、我が党は既に証人喚問を要求している新井議員の利益供与疑惑、昨日逮捕された元大蔵省OBの贈収賄問題の解明はこれは当然でありますが、私は、さまざまな癒着の大もとにあるのは、やはり金融業界からの自民党への巨額の政治献金にあると思います。  総理はこの点も改善すべき点の中に入れているのですか、いかがでしょう。
  167. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、幾つかの問題点を触れていかれましたけれども政治献金というものに対しての御質問でありますなら、これは自発的なものですし、それによって政治とか行政が、その持つ公正さをゆがめられてはならないということは当然のことであります。
  168. 志位和夫

    志位委員 それによって行政の公正さがゆがめられる、そういう問題点が指摘されたからこそ、住専国会の際に、あなた方も一たんは自粛を言ったのです。  この問題は、二年前の住専国会で、総理と何度もこの場で議論した問題でした。あのときも、大銀行から政治献金をもらい、その見返りに大銀行を救済するというあなた方自民党の姿勢が問われました。私が大銀行からの献金は返上せよとただしたのに対して、総理は一たんは、住専母体行からの自民党への献金について、九六年については自粛すると約束されました。主要母体行から金をもらっていたら、問題に手かげんをしているように国民に見られてしまうことを自粛の理由として、あなたは京都で、ちょうど市長選挙のさなかでしたが、お述べになりました。  ところが、昨年九月に公表された政治資金収支報告書を見ますと、自民党が九六年中に金融関連業界から受けている献金は約七億円です。依然として巨額献金を集めているじゃありませんか。調べてみましたら、破綻した北海道拓殖銀行からも一千八百二十四万円献金を受け取っているのであります。これも公約違反ではありませんか。住専国会での総理の約束、これはどうなったのでしょうか。
  169. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 自由民主党が、過去の借入金返済に充当するものを除いて、党の経費に充てるための通常の献金につきましては、九六年以降、住専問題等によりまして、地銀、都銀などからのものは自粛しておることを申し上げます。
  170. 志位和夫

    志位委員 借入金の返済に充てるものはもらっているということですね。
  171. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今きちんと申し上げたとおりであります。
  172. 志位和夫

    志位委員 そんな理屈がありますか。自粛と言いながら、借入金の返済として献金をもらっているという事実は、これは否定できないのです。  これは、銀行からあなた方自民党は借金して、その金を返せないので、その穴埋めに献金をもらって返す。これは結局、借金返済を銀行に肩がわりしてもらっているわけじゃありませんか。自民党の借金の穴埋めを銀行にやらせ、銀行の不良債権の穴埋めは国民の税金でやらせる、これはあなたの言うまさに癒着、もたれ合いそのものじゃありませんか。どうでしょう。
  173. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、党についての御質問についてはお答えを申し上げました。  そして、今、日本金融システムの安定を確保し、信認を回復するために必要なシステムとして、私どもは十兆円の国債、二十兆円の政府保証枠、合わせて三十兆円のスキームでこれを守ろうといたしております。
  174. 志位和夫

    志位委員 金融システムと一言言えば、税金を打ち出の小づちのように使っていいということにはならないのですよ。この問題についていかに道理がないかは、預金者保護という口実も貸し渋り対策という口実も一切通用しないということは、もう既に質疑で明らかにしたとおりであります。  私、もう一回総理にここで考えていただきたい。  金融不安をなくすために求められているのは、やはり銀行の公共的責務をきちんと果たさせる政治の強いリーダーシップですよ。預金者保護だって中小企業への融資だって、これはもともと銀行の公共的責務なのですから、これをきちんと果たさせる政治の側のリーダーシップがきちんとあれば、金融システムの問題を本当に道理のある形でこれを安定させ、信頼を回復していく道は開かれる、私はこう思います。  大銀行から巨額の献金もらいながらどうして、銀行にそういう公共的責任を果たさせていく政治のリーダーシップが発揮できるでしょうか。私は、この銀行業界からの献金、これは借入金を賄うための献金だなんという、そんなこと言わないで、きっぱりやめる、このことをはっきりさせるべきだと思いますが、改めて問います。どうでしょう。
  175. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻来繰り返し申し上げておりますように、我々は、金融システムを安定させる、預金者の保護を完全に行える、徹底する、これは大事なことだと思っております。そして、そのためにこのシステムを考え、このスキームを国会で御審議をいただこうといたしております。  その中には、国債によって拠出される十兆円、政府保証枠での二十兆円、合わせて三十兆円のスキームがあります。そして、預金者保護に充てるその土台は保険料率の引き上げによって、先ほど、七倍に引き上げた、十年度内に次の計算をするということも申し上げております。そうした努力を積み重ねた上で、我々は本当に安心できるスキームをつくりたい。そして、国民に安心をしていただきたい。  同時に、過去の返済分を除いた政治献金は受けていませんということをもう一度申し上げて、御答弁を終わります。
  176. 志位和夫

    志位委員 金融システムの安定というものを、それを図るときにだれのコストでやるかが問題なんです。私たちは、銀行のコストでやるべきだし、それはできる。最初にあなたが言ったように体力もある、これでやらせるべきだ。あなたたちは、それはすぐ税金でやらせる。しかし、その道理がないことはこれだけ明瞭になったのですから、この暴挙はきっぱり撤回するというのが筋道だと思います。  私は、公的支援と言うのだったら、庶民の懐にこそ今思い切った公的支援が必要だと思います。消費税を三%に戻すなど思い切った庶民減税、社会保障の充実、そして今なお苦しみ続けている大震災の被災者にこそ公的支援が必要だということを私たちは主張し、質問を終わります。
  177. 松永光

    松永委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  178. 上原康助

    上原委員 私は、社会民主党を代表して、総理、関係大臣に質問をさせていただきたいと存じます。  総理、きょうは、けさほど来野党の方々の厳しい御質問をお受けしております。もちろん、社民党は閣外協力として与党の一角におりますが、野党の皆さんが御指摘しておることに謙虚に耳をかさねばならないということも一面考えながら質問をさせていただきます。  まず、目下の政治経済それから金融、外交関係も山積をいたしております。この難局をぜひ橋本内閣として切り抜けてといいますか、切り開いて国民の期待にこたえていただきたい。そのことが、私は、けさほど来いろいろ御指摘のあった金融、財政、景気等々の課題にこたえていく目下の重要な政治課題だと思いますので、改めて橋本総理の御決意をまずお聞かせを願いたいと存じます。
  179. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、非常に大きな立場からの御質問をいただきましたが、この金融システムの安定、景気回復を初めとする当面する課題、そして、それを乗り越えて進めていかなければならない六つ改革、そして、お互いいろいろな議論を進めてまいりましたもののまだ結論を得るに至っていない沖縄県の抱える問題、その意味では、私どもの前に課題は本当に山積みをいたしております。その一つ一つに、誠心誠意できる限りの努力をしてまいります。
  180. 上原康助

    上原委員 そこで、総論的なことは相当お尋ねがありましたので、補正予算ですから、若干、社民党がどう対応してきたかということも含めて具体論でお尋ねをいたします。  今回の補正予算では、厳しい財政状況ながら、特別減税を初めとして最大限の対策が講じられていると見てよいかと思うのです。特別減税に関連して特別給付金の措置も配慮するなど、現状でとり得る適切な措置が用意されたものと社民党としても一定の評価をいたしております。しかも、今回の減税は、いろいろ議論がありましたが、定額控除方式である九六年まで実施されていた特別減税と比較しても、さらに低所得者層に手厚い減税でございます。  もともと社民党は、強力な景気対策になり得るものとして、所得税住民税の二兆円規模の特別減税実施を要求してまいりました。当初は多勢に無勢で、まあいろいろ総理も御苦労なさり、本当に苦渋の決断だったと思うのですが、よくぞ特別減税を実現する運びに至ったものと思っております。  しかし、ではなぜもっと早期に減税の決断ができなかったという指摘がございます。疑問もあります。今の段階では景気対策として遅過ぎるし、二兆円では少ないのでないかという批判も先ほど来ありましたのは、総理も御承知のとおりであります。  これらの疑問や批判に答えるためにも、現段階で減税を実施した場合、どのような効果が見込めるのか、景気回復に役立つという確かな方向性といいますか、そういう希望というものを国民に私は与えてもらわなければならないと思うのですね。その意味で、どのような経済効果あるいは景気対策に役立っていくのか、総理の御所見を伺わせていただきたいと存じます。
  181. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先刻来、他の委員ともしばしば同じような論議を交わしたところでありますけれども、この特別減税だけの効果をというのは、私は必ずしも景気全体を議論する場合に有効な話ではないと思います。  なぜなら、引き続いて平成十年度の税制改正の中で、法人課税あるいは有価証券取引税、地価税等、政策的に税制を見直し、減税を行い、御審議を願おうとしておるものがございます。また、金融システム安定化に関連いたします諸制度、さらには規制緩和によって既に動きつつある新たな分野における企業の発足、あるいはそれに向けての動き、さらに、容積率の緩和による都市部における再開発、いろいろな施策が今並行して動きつつあります。  私は、これらが相乗的な効果を発揮する、そうかたく信じておりますけれども、一つ一つの効果を云々ということは、先刻来の御議論の際にも私は同じように申し上げました、相乗効果というものをぜひ発揮できるように、院の、国会の御協力をもお願いを申し上げるところであります。
  182. 上原康助

    上原委員 確かに、今総理お答えのように、補正予算あるいは十年度本予算、また金融システムの安定化等々の諸施策が総合的に相乗効果を出さなければ、なかなか景気浮揚、あるいは今の難局そのものが乗り切れるということにはならないと思います。それはそのとおりだと思いますね。  しかし、申し上げたいことは、特別減税二兆円を、今年度限りということに非常に疑問を持っておられる、また、これでは不十分じゃないのか。その点については、総理も既に含みを持たす御答弁も本会議、この委員会でも大蔵大臣を含めてなさっております、経企庁長官もですね。そういう意味では、もう少し踏み込んで制度減税にやっていく、あるいは、必要に応じてはもっと手厚い対策をしなければいかないということをこの際御答弁をなさった方がいかがなものかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  183. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今一番必要なこと、それは、少なくともきちんと政府として市場に公表いたしました施策、それが着実に実施される、また実施されつつあるというその証明だと思います。  そして、今議員からも一定の御評価をいただきましたように、九年度補正予算、御審議をいただき、関連法案の御審議もいただこうとしております。これに引き続いて十年度の予算があり、税制改正がございます。市場が織り込んでいるその期間の中にこれらの施策が実現されることがまず大切なこと。  そして、私は、特別減税を継続しないで済むような状態にしたいと本当に思いますし、むしろ先のこと先のことと語り合い議論をいたします時間に、一つでも具体的なものを動かしてまいりたい、それが今大切ではなかろうか、本当にそう思っております。
  184. 上原康助

    上原委員 そうしますと、念を押すようで恐縮ですが、推移を見て、必要があれば新たな措置もお考えだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員が御指摘のような必要の生じないように全力を尽くしてまいります。
  186. 上原康助

    上原委員 なかなかそうはならないかもしれませんので、その点は社民党の主張として、要望を含めて申し上げておきます。  次に、確かに、消費税率引き上げ医療費の増大等の影響を強く受けたと思いますね、九兆円と言われている、昨年来。それで、そこが社会的弱者対策の充実の一環として、私たち社民党は、給付金制度の堅持を強く求めるとともに、住民税の非課税の障害基礎年金受給者も対象枠に加えるよう要求をしてまいりました。その実現が図られたことは一定の前進だと見ております。  そこで、そのことによって給付金制度の内容はさらに高められることになったわけでございますが、これらの施策の位置づけという意義をどう御認識しておられるのか。社会的弱者対策のより一層の充実と結びつけて、これは大蔵大臣に御答弁いただきたいわけですが、こういう措置についても継続して政策化していくことを考えていただきたい、またやるべきだと思うのですが、その御見解あるいは決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
  187. 三塚博

    ○三塚国務大臣 九年度に引き続き十年度もということで、これは九年度補正でございました、措置をさせていただいたところでございます。  先ほど来御論議ありますように、特別減税、そして制度減税、そして災害対策費、ゼロ国債一・五兆円等々、総合で五兆円を超える特別措置が補正の中に、緊急性という要素も加味しながらスタートを切っておるわけでございまして、今後の問題につきましては、補正及び年度予算成立後に御協議をまた賜る、こういうことといたします。
  188. 上原康助

    上原委員 今申し上げたことについても、総理大蔵大臣、ぜひ前向きに今後も諸策を講じていただきたいと存じます。  時間が限られますので、若干金融問題について、次にお尋ねをさせていただきたいと思います。  いろいろ貸し渋り問題もございましたが、一つは、金融システム安定化策について既に法案も提出され、また大蔵省の法案の要綱等の説明も受けましたが、問題は、住専国会から私も随分そこに座って苦労をさせられましたが、公的資金投入についてはいろいろ議論がありました。だが、今振り返ってみて、もしあのときに住専処理の受け皿をつくって対策を講じなければ一体どうなっておったであろうという気もしないでもありません。その場合に最も大切なことは、やはり今回の金融破綻との関連においては、預金者保護を第一義的に考えるということは当然であります。  だが、証券、保険を含めて、銀行、金融機関の経営責任というものの追及をもっと徹底するということが、私は国民の非常に望んでいらっしゃる点だと思うのですね。そこがまだ極めて不十分じゃないのか。それと、情報開示の問題。不良債権が一体どのくらいあるのか。七十六兆円なのか、それ以上なのか。第一から第四分類までの資料は自主公表されているけれども、それが果たして信憑性のあるものなのかどうか。そういうこととも関連をして、要するに経営者のモラルハザードを招く懸念があるような公的資金の導入であっては絶対にならない、私たちはそう考えます。  そういう意味で、公的資金三十兆円を用意をして金融システムの安定化を図る場合に、これだけ投入を、もちろんこれは準備金であって、対策費であって、丸々それが利用されるということにはならないと思うのですが、こういう対策を講ずることによって、今国民が不安を持っていることを払拭できるのかどうか。このあたりの点についてしっかりした内閣あるいは大蔵省の指導体制というものがないと、今の不祥事等を含めて、ますます政府や大蔵省に対する不信や不満というものは強くなることになりかねない。  今私が指摘をしたこと等についてどういう考えでやっていかれようとするのか、総理からお答えを願いたいと存じます。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、委員から冒頭、破綻金融機関の経営者あるいはその機関の中心であった者の経営責任というものに対しての言及がございました。当然ながら、破綻金融機関の経営者あるいは借り手、この民事上、刑事上の責任を解明して、その責任を厳正に追及することが大切なことは御指摘のとおりでありますし、そうした思いの中から、今般、預金保険機構に罰則つきの財産調査権を付与いたしました。そして、回収の過程におきまして実態の解明を行い、機構の中で責任追及のための体制を整備することといたしております。  そして、同時にここで強調させていただきたいこと、それは、まさにいかなる事態が起きても対応できますように、我が国金融システムに対する内外の不安というものを取り払っていただけますように、そうした観点から十兆円の国債と二十兆円の政府保証を合わせた三十兆円の公的資金を活用できるような措置をいたし、考えました。  ですから、今回提出をいたしました金融安定化二法が速やかに成立いたしますことを私は心から願っておりますけれども、預金が保護されるんだろうかという国民の不安、あるいは我が国金融システムが機能不全に陥りはしないかという国民の不安、これは解消されると私は確信をいたしております。  言いかえますならば、このシステムを早く完成をいたしたい、そのためにも関連法案の御審議をとお願いを申し上げている次第であります。
  190. 上原康助

    上原委員 ぜひ金融機関の責任問題、情報開示、責任問題というのは必ずしも経営責任だけじゃないと思うのですね。大蔵省の監督責任を含めて申し上げておりますのでね。  特に、けさも大きな暗いニュースとして報道されております。こういう不祥事が次から次へと続きますと、どういう安定化システムをつくろうとしたって、国民は、またか、信用できるかいと、こういうことにもなりかねませんので、大蔵大臣、一連の不祥事の問題を含めて、この種の癒着といいますか、野党からも指摘がありましたように、後を絶つという、今後起こさないという、そのためにはしっかりした私は大蔵省の姿勢というものが確立をされなければいかないと思うのですが、所見があればお聞かせ願いたいと思います。
  191. 三塚博

    ○三塚国務大臣 このような不祥事がまた起きるなどということを考えただけで、御指摘のとおり、政治の根本も問われる、また行政政治に対する信頼の問題も出てまいります。  そういう点で、さらに八年十二月の厳しい倫理規程の施行、実施させておるわけでございますが、再点検をしながら、きっちりとした調査等も考えながら対応に尽くしてまいらなければならぬ、こう思っております。
  192. 上原康助

    上原委員 そういう倫理規程を改めたり、あるいはつくっていろいろ指示をなさっても後を絶たないというところに問題があるわけで、やはりここは与党間あるいは野党から指摘をされるまでもなく、率先して、私は、大蔵省の自主改革というか自浄能力を発揮していただきたい、このことを強く申し上げておきたいと存じます。  そこで、時間がありませんので、国民の皆さんもこの質疑応答は見ていらっしゃると思いますので、よく社民党が、閣外協力とはいえ、与党の一角におって自民党と政権をともにしているということで、顔が見えない、社民党の主張がよくわからないという御指摘もありますので、これは本予算審議の場合にもっと議論をすべき点だと思うのですが、先ほども申し上げましたように、低所得者の点であるとか、あるいは医療費の問題であるとか、そういう面では、社民党は常に、与党の中でも野党的立場もとりながら、弱者の立場というものを強く主張して、政策、予算編成等に当たっているということを御理解を願いたいと思います。  その二、三の例を挙げておきますと、社会保障全体が、マイナス予算の中で二・二%増にしたということなども、やはり社民党が与党におったればこそだと私は思うのですね。  また、少子化対策の点につきましても、これも名前だけがあって予算がないというのはおかしい、これは幹事長や政審会長も与党協議の中で強く主張して、まあ不十分ではありますが四十億円を計上させ、保育料の値上げ等を抑えておる。こういうことについては、社民党に対する大変温かい国民の激励の声もあるということを、この際、つけ加えておきたいと存じます。  医療問題、薬価の九・七%の大幅引き下げなど、医療費の伸び幅を三千六百四十億円縮減させた、患者負担増を回避させたということ、もちろん、これも不十分でございますが、いろいろ最善の努力を払って、診療報酬改定額を医師会の三・三%当初要求を人件費相当の一・五%に抑制をしたということ、こういうことなどもやはり社民党が努力をした、もちろん、自民党さんの理解もあればこそではありますが。  防衛費の面にしましても、〇・二%減というのは実に一九五五年以来のマイナス予算になっております。二〇〇〇年度までの中期防衛力整備計画は、正面整備費の三千百億円の減を初め、総額でも九千二百億円の減額となったということ、これも社民党の強い主張で、相当けんけんがくがくの中で、こういう、わずかではありますが前進をさせているということ。  先ほど申し上げましたように、臨時給付金、昨年に続き、低所得者層一千四百二十三万人を対象に一千五百七十四億円を確保した。来年度以降も制度化するよう私たちは、先ほども申し上げたように強く主張をしておるということ。  あるいは貸し渋り、信用保証協会の保証枠拡大と事故率の一〇%への引き上げ等々についても、中小企業対策、その緊急性の必要性から、こういう対策の強化も主張し、予算化をしているという点。  これは十年度予算ですが、社民党がいろいろと、閣外協力とはいえ、与党にいるという面で努力をしているという四、五点の例を挙げましたので、御理解を願いたいと存じます。  これについて何か御所見があれば、大蔵大臣なり総理大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  193. 三塚博

    ○三塚国務大臣 与党三党の中で、社民党、上原委員を初め及川政審会長、熱心な御協議の御提示をいただきました。特に、沖縄の問題も含め、お年寄り、弱い立場にある各位に対する愛情はしっかりと進めてほしいと。そのことが実現でき得ましたこと、御党の熱誠に敬意を表しながら、報告を申し上げます。
  194. 上原康助

    上原委員 いろいろ雑音もありますが、しかし、私たちも誠心誠意、苦労しながら努力している点は国民の皆さんにも御理解を願いたいと私は考えております。  そこで次に、今も大蔵大臣がお触れになりましたし、冒頭、総理もお触れになったんですが、橋本内閣の行財政改革あるいは景気回復等々の重要課題とあわせて、もう一つの重要課題と言われている沖縄の米軍基地問題についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  これは私が多くを触れる必要はないと思うんですが、御承知のように、県民の圧倒的多数といいますか、多数は、普天間の代替施設としてのキャンプ・シュワブ沖への海上基地の建設に反対である、こういう県民、沖縄側の意向というものが日増しに高まっていることは御承知のとおりであります。大田知事も、県民世論を尊重するお立場から、近々、政府に対し反対の意思表示をされるとの報道が再三なされております、私も報道の域以上はわかりませんが。  詳しいことは申し上げませんが、総理は、こ の事態についてどういう受けとめ方をしておられるのか。SACOの決定というものが政府が日米間で取り決められたような形で進捗する、解決できるとは、今の沖縄側の空気では非常に厳しい、困難であると私も認識をしている一人でありますが、これについての御所見があれば改めてお聞かせを願いたいと存じます。
  195. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変大事な問題でありますので、多少の時間をちょうだいし、きちんとこの問題の原点から申し上げたいと私は思います。  私が村山総理からバトンを引き継ぎました時点、最初の段階で、大田沖縄県知事とお目にかかりました。そして、このとき知事から、従来沖縄県が非常に重要視をしておられましたいわゆる三事案という問題がございます。しかし、その問題よりももっと急ぐテーマ、すなわちその市街地の中に存在をし、住民の暮らしと隣り合わせになっているこの普天間という基地の所在がいかに危険なものであるか、そしてこれを一日も早く動かしてほしいという切実なお話がございました。  私はそれを、本当にそうだなと、かつて見た記憶を思い起こしながら承り、アメリカ側に、その後の日米初めての首脳会談の際にテーマとしてこれを取り上げ、そして米側との返還合意にたどり着きました。そして、その代替ヘリポートというものの必要性、これはもう今さら申し上げなくてもよいと思いますけれども、いろいろな条件というものをさまざまに考え合わせたあげく、自然環境あるいは騒音、安全、こうしたことを考えながら、同時に撤去可能という条件をもう一つ加え、現状において最良の選択肢として、普天間飛行場から規模を大幅に縮小し、海上施設として撤去可能なものをという考え方を打ち出したわけでございます。  地元の御理解を得たい、また御協力を得たい、そう願いながら最大限の努力をしてまいりましたが、住民投票の結果も存じておらぬわけではございません。しかし、そうした中で、昨年末、比嘉名護市長さんが、国益、県益、市益という言葉をお使いになり、その国益、県益、市益というものを熟慮した上、みずからの進退を賭して海上ヘリポートを受け入れるという決断をお示しいただきました。私は、政治家として本当に深い敬意を表しております。この比嘉市長の英断というものが無にならないことを、そして、何より申し上げたいことは、知事が本当に繰り返し述べられました普天間基地の危険というものを除去していくということを考えましたときに、現時点で実現可能性のある最上の選択肢と、私はこの海上ヘリポートの考え方を持っております。  これには大田沖縄県知事の御協力がなければ進まないことは当然のことでありますし、私は、知事が提起をされた問題に対して、政府としてぎりぎりの選択肢としてお示しをしたこの海上ヘリポートというものについて、問題を提起されました知事としてこれを受けとめていただくことを心から願っております。
  196. 上原康助

    上原委員 今の御答弁は私もしばしば聞いております。また、けさほど石井委員のお尋ねにもその趣旨の御答弁はあったようであります。  そうはいっても、県民世論調査を見ても、海上基地建設に反対というのが実に七割。これは、一月十四、十五日の両日、成人有権者五百人の電話調査といいますから、それが全体をカバーするかどうかはともかくとして、そういう結果。県民の七割が海上基地の建設に反対。絶対反対が三二・二%、どちらかといえば反対三八%、合計七〇・二%ですね。賛成は、絶対賛成が四・八%、どちらかといえば賛成二一・二%、合計二六%。  そのほかいろいろあります。同時に、昨年十二月二十一日に行われた名護市の市民投票においても、反対票が五三%、賛成票との差は二千三百七十二票。  沖縄側の民意というものは方向性が出ているわけですね。そこを打開する方向はあるのですか。  また、近々大田知事とお会いしてお話をするという報道もありますが、大田知事はこの間、MOBではどうかということをおっしゃったとかいう話もあるのですが、そういう可能性などは、一体政府はどうお考えですか。
  197. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今私が申し上げられますこと、それは、昨年末知事と会談をいたしました際に、知事は、県内の意見集約に一月中旬ごろまでかかる、時間が必要だということを申し述べておられました。そして、現在、私の知ります限り、そうしたプロセスを行っておられるということのようであります。  そうした中でありますけれども、私は、知事さんが本件で協議のため御上京になるということでありますなら、いつでもお目にかかる用意があることを改めて申し上げたいと思います。
  198. 上原康助

    上原委員 移動方式についての政府は何か御検討をなさったことがあるんですか、日米間のあれを。沖縄側との話し合いをなさったことがあるんですか。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この方式のお話というもの、これ、いかがなものでしょう。私どもは、県からもそういうお話を承っておらないわけでありますし、さまざまな論議の中から、移設可能な海上ヘリポートという考え方をおおむね方向づけとしてお示しをしながら、最初の調査をさせていただいた経緯がございます。こうした中で、我々としては、現在の案を県に、また地元に御提示をし、お答えを待っているところでありまして、それを超えて今申し上げることは控えるべきではないかと思います。
  200. 上原康助

    上原委員 まあ、御心中はわかります。わかりますが、同意というわけではありませんから、その点は。  そこで、総理はしばしば、沖縄側あるいは地元の意思を無視して頭越しにはやらないということを強調してこられました。このお考えというのは今も変わっていないかということは、御答弁いただけるんじゃないですか。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 例えば、公有水面の使用のお願い一つにしても、県の協力がなければ、知事さんの協力がなければできない、これは議員よく御承知のとおりであります。私は、あくまでも御協力をいただき、理解をいただきながら、この問題の解決に取り組んでいきたいと願っております。
  202. 上原康助

    上原委員 そこで、もう時間があと三分、四分程度しかありませんので、私は、この予算委員会、九年ですが、昨年ですが、四月三日の本委員会、ここで、これは会議録がありますから、できましたら外務大臣防衛庁長官、関係大臣はお目通しをいただければありがたいと思うんですが、SACOの合意事項の再検討が必要じゃないかということを強く指摘をいたしました。  その時点から、今日こういう推移になるんじゃないかということが予想されましたので、狭い沖縄で県内移設をどれだけ苦労してやろうとしたって、それは無理ですよ。ですから、海外、本土、アメリカ本国含めてもう一遍本当に真剣に、兵力構成問題含めて日米間の協議を、もちろんどの時点でやるかは、それは外交案件ですから総理外務大臣の御判断、防衛庁長官の御判断もあるでしょうが、そういうことをして、真剣に沖縄側の声に耳をかしていただかないと、今すぐはなかなか容易じゃないでしょうが、いかないと思うんですよ。そのお考えはありますかね、総理、ございませんか。  それが一つと、ついでにもう一点。この間、復帰二十五周年のときにわざわざ沖縄に足を運んでいただいて、沖縄振興計画、二十一世紀プランというものを春までに策定する。これはやはり、この普天間問題が仮に沖縄側との協議が調わないにしても進めていかれるのかどうか。この二点。  その場合に、私は、もう少し、十年先あるいは二十年先、三十年ぐらいのスパンで沖縄全体の振興策、北部の振興策というものを考えてみる。空港立地というものは単なる海兵隊基地の移設だけではなく、沖縄全体から見て、もう少し知恵やしたたかな構想というのは生まれないのかどうかを含めて、私は、開発庁や全体で検討してもいいと思うんですね。これを二十一世紀プランの中に織り込んでもらいたい。その点を申し上げておきたいと思うんですが、お聞かせ願いたいと存じます。
  203. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 SACOの最終報告というものは、議員はどう御評価かは私にはわかりませんけれども、少なくとも日米両政府の関係者は、沖縄県の皆さんの御要望というものを伺い、それも踏まえながら最大限の努力を払った結果まとまったものだということは、ぜひ改めて申し上げたいと思うんです。  そして、私どもは、今、最終報告の内容というものを本当に着実に実施していくこと、これが、今非常に財政が厳しく、先ほど来財政がいろいろな角度から御議論になっているときでも、SACOのものは別とあくまで申し上げ、進めていこうとしている内容であり、沖縄県民の方々負担というものを一歩ずつ軽減していくための最も確実な道だと考えておりますし、この最終報告の実施に向けて、今後ともに地元の皆さんの御理解、御協力が得られるように、最大限の努力をしていきたいと思います。  また、沖縄振興策、改めてまたお問いかけがございました。何回も申し上げておりますように、一昨年九月、総理談話においても明らかにしたとおりでありますが、政府といたしまして、沖縄の今後の発展にとっては、基地問題と地域振興の双方がともに重要な課題だと考えております。そして、こうした認識のもとに、これまでも米軍基地の問題の解決につけても着実な進展を図ろうと、最大限の努力を払うとともに、振興策についても全力を傾注し、取り組んでまいりました。  政府として改めて申し上げますならば、大田知事から一日も早く動かしてほしいという御要請を受けて、アメリカ側との返還合意にこぎつけました普天間飛行場の返還を初めとする沖縄における米軍基地の整理、統合、縮小の進展を踏まえながら、振興策についても、国民各位の理解と協力を得ながら最大限努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  204. 上原康助

    上原委員 終わります。
  205. 松永光

    松永委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、村田吉隆君。
  206. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 自由民主党の村田吉隆でございます。  本日は、私がお配りいたしました予算委員会における質問要旨に従いまして、総理及び関係大臣に御質問をさせていただきます。続きまして、同僚議員の河村建夫君が残余の時間を質問をさせていただくことになっております。  まず第一に、阪神・淡路大震災でございますけれども、あの大震災、私も隣の県におりまして、他人事でないような大きな災害を見るにつけ、本当に今もって心に深く残っております。死者が六千四百三十名、そして全半壊の家屋が三十万軒に近いというような大きな災害でありました。  特に、今回の補正予算では、一千二百八億円という阪神・淡路大震災関連の復旧対策費が予算に盛られておりますし、その中で、五百億円近い公営住宅への補助金も計上されているわけでありまして、今なお四万人を超える方が仮設住宅に住んでおられる、苦労されているという現実を顧みますときに、私どもは、ぜひともこの補正予算を一刻も早く通過させる努力をしなければいけないというふうに思うわけであります。  ところで、総理、あの阪神・淡路大震災が我が国にとりましても防災についての原点のような、エポックだったというふうに私も考えるわけでありますが、総理は、とりわけ災害対策を含みます危機管理について大変御熱心に取り組まれてこられたというふうに思います。したがいまして、総理は、あの阪神・淡路大震災を踏まえて、これを一つの教訓として、いかに考えて防災体制あるいは危機管理体制の整備に努めてこられたか、その御意見をお伺いいたしたいと思います。
  207. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ついこの十七日、三周年を記念し神戸で行われました追悼式に私も参列をさせていただきました。そして、その中には私の遠縁の者も、東京から戻りまして参加をさせていただきました。遠縁の者、倒壊家屋の下敷きになり、幸いに数時間後に救出をされましたけれども、その中の一人は結局助かりませんでした。  そうした中で、当時、ライフラインを預かる通産大臣という立場、また救援物資を調達し現地に送り込む立場、復旧に当たるその後方基地を提供する立場、いろいろな姿でこの問題にかかわってまいりました。そして、いかに兵庫県警あるいは兵庫県の消防の関係者等全力を挙げて、しかも、ある意味ではみずからの御家族の安全も確認しないような状態の中で努力をされたかを見てまいりましただけに、こうした災害時における通信、情報伝達の経路をいかに確保することが大切であるか、またそれにどう機動的に対処し、必要な救援措置を組み立て、現地にこれを届けるか、そして、そのためにも輸送路をどう確保するか。殊に総合交通体系の結節点でありました神戸で起きた事件、これは非常に大きな反省の材料を、総合交通体系という視点からも我々に与えました。  こうした点を含めまして、この事件から得られた教訓は非常に多くのものがございます。既に防災計画等に織り込んでおるもの、あるいは官邸自体の危機管理対応のメカニズムに取り入れているものもたくさんございますけれども、なお、この事件は、細かく点検していきますならば、我々に多くの教訓を与えるものになるでありましょう。今後ともに、全力を挙げて、より安全な日本をつくるために努力をしたいと存じます。
  208. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 ありがとうございました。  私も党の交通部会の一員として、あれから、昨年の初めにはナホトカ号の油流出事故がございまして、その現場に行きまして、大変な事故だなというふうにびっくりしたわけでございますが、その中で、民間ボランティアが本当に献身的に働いておられる姿というものに大変心打たれたものであります。  阪神・淡路大震災の後で防災基本計画というものが、分厚いものがつくられたわけでありますが、あの当時、震災の当時も振り返ってみまして、外国からの救援をなかなかスムーズに受け入れるという体制になっていなかったこと等を考えますと、やはり防災計画というのも官製であって、だから、その官の仕組みの外にあるそういうお助けをしてくださる人たちをどうやって計画、救援体制の中に組み込んでいくかというのは、いまだ私ども課題ではないかというふうに思っておるのです。  防災計画の中に確かに項目は設けられました。しかし、まだまだ、私は、救援計画の中での民活ということについても考えていかなければいけない時代に入った、こういうふうに思っておりますので、そういうことにつきまして、国土庁長官の御見解を承りたいというふうに思います。
  209. 亀井久興

    ○亀井国務大臣 ただいま委員からボランティア活動の重要性についての御質疑がございましたが、総理からも御答弁申し上げましたように、阪神・淡路大震災、ちょうど丸三年になるわけでございますけれども、あの当時、阪神・淡路大震災に関連をいたしましては、延べで百四十万人の方々にボランティアとして御協力をいただいたわけでございますし、また、御指摘のございましたナホトカ号の重油流出事故に際しましても、延べで約二十八万人の方々に御協力をいただいたわけでございます。  こうした災害におきまして、ボランティアの方々の活動が、より柔軟なきめ細かい災害対策を講じていく上におきまして大きな役割を果たしてきたということは、申し上げるまでもないわけでございます。  政府といたしまして、今お話ございました防災基本計画の改定、そしてまた災害対策基本法の改正を行いまして、このボランティア活動がより的確な環境のもとで行われていくようなそういう整備をする事項等も盛り込んだところでございますし、また、御承知のとおり一月十七日、阪神・淡路大震災の発生の日でございますが、毎年この日を防災とボランティアの日というように決めておりますし、また一月十五日から二十一日までの一週間を防災とボランティア週間、このように位置づけをいたしまして、国土庁ばかりではなく、関係機関や地方公共団体と一緒になって防災ボランティアの活動が円滑に進んでいくような環境整備に、今取り組んでおるところでございます。  また、海外からのボランティアの受け入れというお話でございましたが、確かに海外から大変ありがたいそうした申し出があるわけでございますが、これに柔軟に対応するということが非常に大事でございまして、当然どのような規模のどのような性格のボランティアの支援というものが望めるか、そうしたこともいち早くキャッチする必要があるわけでございまして、それに応じて関係機関、地方公共団体と十分に御相談をしながら、今御指摘ございましたような柔軟なきめ細かい対応をしながらボランティアの活動に備えてまいりたい、かように考えております。
  210. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 ありがとうございました。  それから危機管理に関しましてですが、本日のテーマでありませんからお答えは要りませんが、気象庁のことでございます。  行政改革の関連で気象庁を民間にという、そういう話が浮きつ沈みつされたわけでありますけれども、私は、気象の情報というのは危機管理にとっても大変重要だし、また食糧問題にとっても大変重要な一つの情報だというふうに考えておりますから、今後の行政改革を進めるに当たっても、この気象情報というものをどういうふうに大事にしていくかということを国家の危機管理の中に組み込んで考えていってもらいたいということを、私の意見としてこの機会に申し述べさせていただきたいというふうに思います。  次に入りますが、質問も二巡目に入りましたので、違った観点から私も申し上げさせていただきたいというふうに思います。  朝から野党の先生方の質問を聞かせていただきました。中には、もう改革は後回しだ、とにかく当面の景気対策、これにとにかく打ち込め、あるいは、もう改革はやめるべきではないかに近いような意見も出ていたというふうに思います。私は、議論がそういうふうに一色になってしまうというのは大変危険だろうというふうに思います。私は、今日本経済社会が抱えている構造問題、それを改革しながら今の当面する課題というものを解決していく態度というのをどうしても捨て去ることはできないんだろうというふうに思います。  だから、すべて、ながらでございまして、景気対策をやりながら財政再建、財政構造改革という目的も達成していく、あるいは金融システム不安の解消をしながら金融ビッグバンも進めていって我が国の金融機関の競争力もつけていく、あるいは雇用不安を引き起こさないように行政改革なり規制緩和を進めていくということで、すべて、ながら、これをやりながら中長期的な目標も達成していくという態度が必要であって、二者択一、どっちかにしろという議論というのは、私はくみしないのであります。  この点、総理が本会議場におきまして、財政構造改革景気対策は、中期の目標とそれから当面の目標というタイムスパンの問題だということでお答えになり、またきょうも繰り返しそのようにお答えになっておられたというのは、私は、態度として大変好ましい態度だというふうに思っております。  当面の景気対策等について、我々が直面する課題の困難さというのは大変なものでございまして、私は、総理には蛮勇を振るって、今国民が抱えている、あるいは我が国経済社会が抱えている、そうした問題について全力で取り組んでもらいたい。  しかし、我が国が同時に抱えている構造問題についても、これは真剣に取り組まなければ、中長期的に我が国経済社会に対する市場の、それこそ市場の信頼性を失わせる結果になるということでございますから、どうかひとつ難しい問題ですけれども、二者択一ではなくて両方を同時に達成できるように努力をしていただきたいというふうに思います。  この点について総理の御見解を賜りたいと思います。
  211. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今委員から、タイムスパンという言葉を使いました私の答弁を引用されながら、一つの例を、財政構造改革と当面の景気対策金融システム安定化策、これをその状況に応じて機敏な対応をしていくことは矛盾しない、難しいかじ取りだけれど頑張れ、そう言っていただきました。  それぞれの問題が同じような難しさを持つ課題ばかりでありますが、私なりに、ぶきっちょではありますけれども、全力を尽くして一つずつの問題に取り組んでまいりたい、そのように考えております。
  212. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 私は、当面の課題というのはとても大事でございますけれども、今世界というか、この社会全体が大きく動いているうねりというのは、この前、中川昭一先生と総理の間の市場をめぐっての御議論がございましたけれども、もう少し広い意味での市場という意味で、やはり市場原理の貫徹ということ、それから情報社会が本当に進展しているということ、それからグローバリゼーション、この大きな三つぐらいのうねりというものが、これからの二十一世紀に向けて我々の社会経済をリードしていく一つの潮流になっている。これは否定できない事実なんだろうというふうに思います。  我々、行政とか政治の力でその動きを多少なりともおくらせることは仮に可能であっても、この三つの大きなうねりに逆らうことはついぞ私はできないんだろうというふうに思います。  かつて、市場原理とかあるいは情報化という問題で国家社会体制も崩れたことがあったということを私どもが思い返せば、我々は、この流れをうまく実現していくこと、その中で、我が国社会あるいは国民が安心してあるいは効率的に住める世の中をつくっていくということが大変重要でないかというふうに思うわけであります。  そこで次に、金融ビッグバンの話に移ります。  私は、友人から一つの、アメリカの財務省の議会報告を読みなさいということで、暮れに手渡されました。財務省が十一月の十一日にまとめられまして、それを議会に出されたものであります。大変長い、大部のペーパーなんでございますけれども、財務省は、今の金融、二十一世紀の金融のあり方として、過去を振り返りまして、十九世紀という時代はレッセフェールのポリシーであった。二十世紀は一九二九年に大恐慌が起きましたから、二十世紀の金融政策というのは大恐慌という事態を二度と起こさないということに非常に注意が向いていた時代。  しかし、二十一世紀、どういうふうに考えていくかということは、いろんな資産管理とかリスク管理のための情報技術というものが進みましたし、だからそういう意味で、二十一世紀の金融政策というのは競争をベースにして大変効率的な金融政策というものを打ち立てなければいけない。その結果、アメリカという国を世界の一大金融サービスを提供する国として仕立てたいという、ざっと言ってしまえばそんな内容でございますけれども、私ども、二十一世紀を近々迎えるに当たって、我が国にとってもこの金融サービスというのは大変重要な産業になるに違いないというふうに思います。  国際金融市場というのは、今や二十一世紀を目がけてアメリカがそういう戦略をとっている。したがいまして、我が国も同じようにその国際金融市場でプレーヤーの一つとしてアメリカと戦っていかなければいけない。そういうふうに考えたときに、我々も金融ビッグバンで日本の金融機関を効率化しなければいけないというのも、大変急がされる課題ではないかというふうに私は思うわけであります。  先ほど野党の先生から、金融の本質は安全だというたしか意見があったと思いますけれども、そうではなくて、本来は、金融の本質はリスクなんだろうというふうに思います。だから、そのリスクというものをどうやって最小化していくかというのが、これからの政策に与えられる非常に大きな命題ではないか。しかし、そのリスクをただ単に最小化するのではなくて、競争をやりつつ最小化していく、こういうことではないかというふうに思うわけでありますが、大蔵大臣、いかがでしょうか、御見解を伺いたいと思います。
  213. 三塚博

    ○三塚国務大臣 委員の言われるとおり、リスクをいかに回避するかということ、それは経営の中における原点であろうと思いますが、競争時代でございますから、そのリスクの安全を図るということ、ハイリスク・ハイリターンという商品もあるわけでございます。それぞれの状況の中で、使い勝手のいい、自分の希望に合ったものが取引をされていく、こういうことであろうかと思います。
  214. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 それで、国民が抱える不安は金融システム不安あるいは景気とかそういうことだけではなくて、私は、雇用不安というのが国民の一番大きな不安のまた一つだというふうに考えております。リストラあるいは規制緩和を進めてまいりますと、中には、私どもはちょうど中高年でございますけれども、予期せざる失業にぶつかってしまうかもしれない。  しかし、労働省はかつて、平成七年度だったと思いますけれども、失業なき労働移動、そういうテーマで雇用対策に取り組んだというふうに思います。あれから一年、二年たちまして、労働大臣にお伺いしたいと思いますが、その成果はいかんということをお伺いいたしたいというふうに思います。
  215. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 まず、短期的には、これは経済政策よろしきを得て有効需要が適切に確保されなければ、雇用というものは維持できません。したがって、最も健全であるべき日本経済でございますから、これが金融に鼻面を引き回されないように、また金融機関が証券市場の動向に一喜一憂しなくてもいいように、補正予算やいろいろな法律をお願いしておりますので、総理初め関係閣僚がるる申し上げておりますように、一刻も早くこれらを国会の御審議を経て通過させていただくことが当面の最大の景気対策だ、雇用対策だと思っております。  同時に、やや中長期的には、先生が御指摘のように、新しい技術と、それから資金と、そしてそれをうまく使う労働力というか良質な人材とがマッチをいたしまして、新しい雇用の道が開かれてまいります。  そこで、御指摘のように中小企業労働力確保法という法律がございまして、ベンチャー関係の企業が人材を雇用する場合あるいは育成する場合については、それへの支援を行っておりますが、既に千二百の企業が同法によって支援の対象となっております。  それから、同時にまた、失業なき労働移動のためには業種雇用安定法という法律がございまして、構造的に雇用回復が見込めない業種について、その労働力を新たに出向あるいは再就職の形で受け入れてくれる、そういう企業についても、今御指摘のように平成七年七月に業種雇用安定法の制度を導入いたしまして、既に四百の企業がこの対象になっております。  したがって、今後とも、雇用というのは今生きていくための安心でございます。それと老後の、将来の安心、この二つを橋本内閣の重要な課題として懸命に取り組んでいきたいと思っております。
  216. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員 最大の雇用の安定化対策は景気対策だということでありますけれども、しかし同時に、我々、総理六つ改革の中でいろんな改革を進めていくわけでありますから、そういう中で長期的な課題にも同時に取り組む姿勢というのは、大いに評価されるものであるというふうに私は思います。  最後になりますが、アジア経済、通貨危機というものが突然起こりました。同僚の河村先生がこのことについて質問をされるということでありますが、振り返ってみますと、アメリカが金融危機で大変悩んだのが一九八〇年代の後半から九〇年代の初頭でございます。そのころにまたメキシコ危機というのが起こっておりまして、何か非常に歴史の類似性みたいなものを私は思うわけでありますが、以下の質問は河村先生に譲りたいというふうに思います。  どうもありがとうございました。
  217. 松永光

    松永委員長 この際、河村建夫君から関連質疑の申し出があります。村田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。河村建夫君。
  218. 河村建夫

    ○河村(建)委員 自民党の河村建夫でございます。村田委員の持ち時間の範囲内で質問をさせていただきたいと存じます。  日本発経済恐慌あるいは金融恐慌は絶対に起こさない、橋本総理の強い決意のもとに、三塚大蔵大臣を初め、政府、また与党一体となって、金融システムの安定化対策あるいは景気対策、この一連の経済対策を積極果敢に推進されておりますこと、心から敬意を表しますとともに、この動きというものに対して市場も好感を持ってこれに応じておるというふうに思うわけであります。  予算委員会が始まりましたあの日の株価も九百円以上上がり、きょうの株価につきましても、あの日にあんなに上がったんだから次はと、上がったり下がったりと、こういう懸念もあったわけでありますが、きょうも最後の終わり値は一万六千二百六十二円四銭、二百十五円五十九銭、二日合わせますと一千二百円近く、こういうことになっておるわけであります。さらに、この質疑を通しながら、早く補正予算を通してこの上昇機運を上げたい、そういう思いでありますし、私は国民もまたそれを願っておるというふうに思っておるわけであります。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕  さて、村田委員からも御指摘がありましたが、今日のアジア経済危機、こう言われるもの、これは単に日本だけの問題ではなくて、もうアジア諸国の経済状況と密接不可分になっておることは既に御承知のとおりであります。日本経済アジア経済が一体化している、この現実の中にあるわけでございますが、なかんずく隣国の韓国の経済動向というもの、日本経済への影響、そういうものを考えますと、全く目が離せない状況にあるというふうに思うわけでございます。  その韓国経済が昨年の秋あたりから、いわゆるウォン安あるいは物価高、さらに外貨不足、こういう深刻な危機に直面をいたしておるところでありまして、ついに十一月にはIMF、国際通貨基金に支援を要請いたして、十二月の初めにIMFの支援がスタートしたと聞いておるわけであります。  今韓国では、IMF時代に入っている、国民は忍耐で頑張ろうということが一つの国民のスローガンになっているような記事も見かけるわけでございますが、このような状況の中で、日本としてもこの韓国の通貨・金融情勢をどのような形で認識をされておるであろうか。これは大蔵大臣にお聞きすべきことであろうかと存じますが。  またあわせて、これまで日本は対韓国の支援というものについて積極的にやってきたと思うわけでありますが、どのような役割を果たしてきておるのかお伺いをしたい、このように思います。
  219. 三塚博

    ○三塚国務大臣 日韓は指呼の間にございまして、極めて長い歴史と文化のある意味の共有などもございまして、今日まで両々相助け取り組んできたところであります。  経済認識でございますが、急激な発展は御承知のとおりでございましたが、相次ぐ財閥の経営危機、アジア各国の通貨、株式の大幅な下落の影響を受けまして、九七年後半には、金融部門の対外債務支払い能力に関する不安が生じまして大幅なウォン安になりますなど、経済、金融、通貨が混乱するという事態に相なりました。  しかしながら、韓国は、貯蓄率も高く、勤勉な労働力を有することなど、経済の基本的条件は良好であります。なお高い潜在成長率を維持していると分析をいたしております。  また、最近の動向を見ますと、ウォン安の背景として輸出の増加傾向が継続しておりまして、経常収支、九七年十一月、十二月と二カ月連続で黒字に相なりました。さらに、IMFを中心とした国際支援、その前提としての金融セクターを中心とする経済構造改革措置の発表、実施等の結果、通貨は比較的安定を示しております。  我が国は、同盟国という立場もこれあり、IMFとの連携もとりながら、またG7の主要な国とも、電話G7という形で韓国支援の合意を取りつけ、サポートをしておるところでございます。
  220. 河村建夫

    ○河村(建)委員 アジア地域のこれからの二十一世紀のことを考えますと、やはり韓半島、いわゆる朝鮮半島の平和的統一、また安定的発展というものがこれからの大きな一つの課題になるというふうに私は考えておるわけでありますが、その根底に、やはり日本と韓国、過去の歴史を乗り越えて、そして直視をしながら、未来志向的な緊密な日韓関係をつくり上げていく、信頼関係を構築していくということが非常に重要になってきておるわけであります。  そのためには、やはりこれは一朝一夕でできることではありません。日ごろから地道な努力というものを積み重ねていくしかない、私はそういうふうに思うわけであります。特にワールドカップ二〇〇二年を間近に控えておる、こういう時代を迎えておるわけでありまして、これに向けて、これからの根本的な日韓関係のあり方というものを求めていかなければいかぬ、このように思っておるわけであります。  そういうことを考えますと、ただいま大蔵大臣から、韓国の情勢については必ずしも悲観するものではないというお話ではありましたが、今言われている韓国の経済危機の現況というものは、これまでにない、特に経済成長七、八%ということで隆盛の勢いを誇っておった韓国にしては、大変ショックな状況にあるわけであります。  そこで私は、日本の状態も決してこれは容易ではないことは承知の上でございますが、韓国に対して日本がどのようなことを果たし得るかということを今ここで真剣に考えていかなきゃいかぬ、そのときが来ておると思うわけであります。  来月、二月二十五日には金大中新大統領の就任式、新政権が発足するわけでございます。その中で、先週、新政権の首相候補と目されておりますキム・ジョンピル、金鍾泌さんが来日をされました。総理も会見されたと伺っておるわけでありますが、その際に、日本に対して追加金融支援の打診があって、日本側としては、IMFの枠組みというものがあるんだ。慎重な姿勢という新聞の見出しも出ておったわけでありますが、私は、今日の韓国の状況を、一番にこの窮地を救えるのは日本しかない、こういうふうに思っておるわけでございまして、率直に申し上げて、この際、私は思い切った韓国に対する支援を行うべきときではないかというふうに思うわけであります。日本主導型による、いわゆるアジアに対する経済危機、これを脱出する第一歩がここにあるように私は思うわけであります。  総理は、これまでも何度も口にされておりますが、まさにガンの群れがアジア一帯となってあるんだ、日本がその先頭に立っている。そうしたことを考えますと、その先頭に立っている日本のすぐそばに韓国が立っておるわけでありまして、その韓国の羽が今まさに傷つかんとしている。これを助け上げて編隊飛行を組んでいく、これは日本の私は大きな役割だというふうに考えるわけであります。  そして、今日この厳しい状況の中で、日本の状態というものも決して巷間言われるようなものではないんだ、ファンダメンタルズは強いんだということ。そして国民の皆さんに、元気を出してこの危機を乗り切っていこう、皆さんが持っておられる金融資産というものは一千二百兆あるんだ、あるいは外貨準備高も、あるいは世界に対する債権国として一番を誇っているんだ、元気を出そうということを言っているわけでありますから、それを証明する意味においても、このアジア危機に立って、日本がその先導的役割を私は果たしていかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。  このことを考えますと、アジアにおける日本の立場というものも、日本の危機はアジアの危機であり、同時にアジアの危機は日本の危機であると言われておるわけでありますが、先般、自民党の党大会でハーバード大学のジェフリー・サックス教授がお見えになりまして講演、私もお話を聞いたわけであります。  教授は、日本経済の潜在力というのは非常に大きいんだ、そして技術力にしても、日本が最近の特許権の申請等も今一番になってきた、あるいは債権国としても一番ではないか。今政府がやろうとしている金融システムの立て直しをきちっとやって、そして日本版のビッグバンをやり遂げたならば必ず日本はもう一度よみがえるんだから、その気持ちでやってもらいたい、そして資金調整に難渋をしているアジアの国々に対してその支援に立ち上がるべきだ、こういうお話であったわけでありまして、日本はまさに歴史的な役割を果たすべきときに来ておるという指摘もあったわけであります。  そのようなことを考えながら、私は、今回韓国側からの打診に対して、日本がこれに積極的に応じていくべきだというふうに思うわけでありますし、IMFの問題にしてもワシントンに任せきりではなくて、日本日本の独自の考え方で、また日韓という特別な関係を背景にしながら、日本がイニシアチブをとっていくべきではないかと思うわけであります。  かつて、お金さえ出せばというようなこともあって、湾岸戦争、苦い思い出もあるわけであります。お金だけ出せばよかった、評価されなかった、こういう苦い思い出もあるわけでありますが、今回は逆にこの金融支援というものが問われておるわけでありまして、私は国民的な理解も生まれるのではないかというふうに思っておるわけであります。  一連のこの韓国の状況アジア経済危機の中に立って、私は、総理はこれからどのような方針で対韓国との関係を築いていかれ、また今回のこの支援に対してどのように考えておられるか、お聞きしたいと思うわけであります。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員がるる述べられましたように、私は、韓国が隣国であり、しかも友邦として極めて日本にとって大切な国だと思っております。それだけに、この韓国の通貨・金融問題が起きましたときから、大変心配もいたしておりました。そして、バンクーバーにおきまして、金泳三大統領と何回か、いろいろな機会をとらえて話し合いをいたしました。  そのとき私が強調いたしましたのは、IMFとの間の枠組みをきちんと合意することによって、民間の資金をいかに韓国の市場に呼び戻すかを考えないと大変なことになる、そして、IMFの枠組みというのは多分厳しいものになるだろうけれども、それは逆に民間の資金を呼び戻すきっかけになるんだから、そういうつもりでこれを受けとめろということでありました。  昨年十二月、IMFを中心とした総額五百八十億ドルを超える金融支援策が取りまとめられたわけであります。我が国もその中で、第二線準備として百億ドルという各国の中で最大の支援を表明し、既にその一部を用立てております。今後も、韓国の市場に民間資金が戻るためには、そしてそれが韓国経済を支えていく柱になりますだけに、我々は緊密な協調体制を維持していきたい、そのように考えております。
  222. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ぜひ、アジアのガンの群れの先頭に立つ日本として、韓国の経済に十分な注意を払いながら、密接な連携のもとに、そして日本ができるだけの助力といいますか、そういうものをお願いしたいと重ねて申し上げるわけであります。  そしていま一つ、日韓の間の懸案事項として、当面する問題として日韓の漁業交渉の問題があるわけでございます。  一九九六年の七月二十日から、日本も国連海洋法条約、発効いたしたわけでございます。これに伴いまして、現行の日韓の漁業協定、これは日中もあるわけであり、また日ロもあるわけでありますが、これを国連海洋法条約の精神といいますか、その趣旨にのっとったものに変えていく、改定をしていかなきゃいかぬ、これが日本政府の方針であります。二百海里経済水域内の漁業等の資源については、みずから守り、みずから管理をする、この精神に基づいて協定を改定していく、こういうことであります。  日中また日ロ漁業協定、これは外務省御当局を初め、あるいは農林水産省、関係者の皆さん、大変な御努力をいただきまして、おかげさまで昨年十一月、日中は署名調印になりました。日ロもその方向で解決ができる。これは、漁業関係者にとりましても大変意義のあることでありまして、心から敬意と、私からも感謝を申し上げる次第でございます。  しかし残念ながら、日本と韓国との間の協定は、一九九六年の五月に第一回の日韓漁業実務者会議が持たれて以来今日まで、幾多の大臣折衝あるいは首脳会談、これは二年有余繰り広げられてきておるわけでありますが、また昨年末には、小渕外務大臣みずから暮れに訪韓をされまして、ぎりぎりの交渉もなさったわけでありますが、それにもかかわらず妥結に至っていないということであります。  そもそも、この日韓漁業協定というのは、一九六五年、昭和四十年に締結をされておるわけでありますから、もう三十年以上経過をいたしております。この協定そのものは、領海十二海里の外は原則として自由にお魚がとれるという状況でありますから、この結果、韓国側の船が日本海水域、あるいは北海道海域もそうでありますが、やってまいりまして、大変な無謀操業をやっている現実があるわけであります。  日本にないような大型トロール船を持ってきて、資源管理どこ吹く風で一網打尽に持っていく。あるいはその結果、漁具の被害も出てしまう。あるいは、悪い船になりますと、捕まることを想定するのか、船名を抹消している船まであらわれる、このような現状が繰り広げられておるわけであります。  一方、その協定と別に、それぞれの国にはお互いに話し合いの中で自主規制もあるわけでありまして、お互いに禁漁期間とか禁漁区を持っておるわけであります。しかし、それが現実にほとんど守られておらない。だから目の前で日本の禁漁区へ入ってくる。  しかし、領海内に入ればこれはもうもちろんやれるわけでありますが、それ以外は、これまでの協定は旗国主義、自分のところの違反は自分のところで取り締まる、こういうことになっておりますから、韓国船に手が出せない状況もあるわけであります。この結果、日本海側といいますか、北海道側もそうでありましょうが、漁業資源が枯渇状態にだんだんなってきている。最近は漁獲高も非常に減ってきた。そのようなこともあって、日本の漁業者のいらいらといいますか、まさに限界状況にある、こう言われておるわけでございます。  そんなことで、これまでも首脳会談でそういうことも指摘し、申し上げてまいりますと、一時的には動きがとまるようなこともあるわけでありますが、またすぐに戻るという状況は今日繰り返されてきておるわけでございます。  私は、これの解決は、いわゆる二百海里時代を迎えて排他的経済水域を設定する、これしか改善策がないというふうに思っておるわけでありますが、農水大臣の島村大臣のもとにも全国の漁業者からいろいろな要請、また悲鳴も寄せられておるというふうに思うわけでございます。現実に、今韓国の違反操業状態等々、どのように認識をされておるのか、改善策については大臣はどのようにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  223. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  我が国周辺水域における韓国漁船の日韓漁業協定や自主規制措置に違反した操業は依然として根絶しておらず、昨年の違反件数は一昨年の件数を上回っております。また、韓国国内法違反の漁船の操業も依然として続いており、これら違反操業船は、ただいま委員指摘のとおり、船名等を隠ぺいしたり、また日本漁船の操業を妨害するなど、その内容は悪質化しております。また、こうした韓国漁船の操業により、我が国沿岸漁業者の漁具に被害も生じております。  このような状況を受けまして、韓国側に対して、累次にわたり取り締まりの強化及び関係漁業者への指導の徹底を要請してまいりましたが、顕著な改善は今のところ見られておりません。  このため、国連海洋法条約の趣旨に基づきまして、韓国漁船に対しましても、我が国における資源管理や取り締まりが一刻も早くできるよう、現行漁業協定の改定を行うことが必要と考えております。
  224. 河村建夫

    ○河村(建)委員 韓国側は東海、日本側は日本海、こう言っておるわけでありますが、同じ海なのですね。だから、これはお互いにとっておりますと、魚は本当に資源はなくなることはもう目に見えておるわけでございます。  実は韓国側にそのことを言いますと、かつて日本が韓国沿岸にも随分来たのだ、そしてとっていったのだから、なくなって今こっちへ来ているのだ、こういう話になっておるわけでありますが、お返しだからということでやっておりますと、本当にお互いの同じ資源でありまして、これはお互いの国の漁業者のために、協定を結びながら資源管理をやっていかなきゃいけない時代が来ておるわけであります。  そこで、漁業交渉の経緯と現状についてでありますが、外務大臣を初め、農水省もそうであります、担当者の皆さんは、これまで本当に御努力をいただいてきて、おかげさまであの竹島の問題も含みながら、暫定水域の問題にも触れながら、大方歩み寄りができた、こういうふうに言われながらここに至っておる現状があるわけでございます。  私は、御努力をされた歴代の外務大臣、そして今の小渕外務大臣、なぜ、どの点でまだ妥協できないのか、どこに問題があるのか、お差し支えないところで、その現状、経緯、お触れをいただきたいと思います。
  225. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 委員指摘のように、日韓漁業協定につきましては、たび重なる日韓首脳会談の合意に基づきまして交渉を続けてまいりました。双方とも真剣にこの問題に取り組んでまいりまして、現在この線引きの問題につきまして、日本、韓国といま少しくのところで妥協が成り立っておらないという状況でございます。  この点につきましては、私も昨年十二月二十九日に韓国に参りまして柳長官とも話し合いをいたしましたが、残念ながら合意に至っておらないということでございます。
  226. 河村建夫

    ○河村(建)委員 これから最終的な詰めの段階に入るわけでありますが、その方針について総理にお伺いをしたいと思いますが、その前にちょっと確認をさせていただきたいと思うのであります。  これはもう、何が何でも妥結をしなきゃいかぬ、あらゆる手段で、こういうような話もあるわけでありまして、中には、先ほど御指摘を申し上げましたいわゆる経済支援、こういうものにもひとつ絡ませてやったらどうかというような話まである。あるいは、韓国側はそういうことを懸念しているというような話もあるわけであります。  私は、漁業交渉というものと、そしてそうした経済支援というものは完全に別のもの、切り離してやらなきゃいけない問題、テーマであろうというふうに思っておるわけでありますが、この点につきましては政府としてどのようにお考えなのか、確認をさせていただきたいと思うのであります。
  227. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 全く御指摘のとおりでございまして、日韓漁業交渉は、国際海洋法条約に基づいて両国が批准した段階で、旧来の協定を改めようということで出発をいたしておるわけであります。  通貨・金融問題は昨年の冬に発生いたしたことでございまして、全くこの問題と関係ない話でございまして、それぞれに決着を見なきゃならない課題だと思っております。
  228. 河村建夫

    ○河村(建)委員 今日、日韓間の漁場をめぐるいろいろな問題点、それから交渉の経緯、交渉事でありますから具体的なことまで私も突っ込んでまいりませんが、しかし少なくとも、ここまで積み上げながら妥結できないという現状がある。しかし、これをこのままずうっと、ずるずる引っ張っていくというわけにはいかないわけでありまして、既に中国側とは協定ができるわけでありますね。法案もできている。そうすると、中国と日本の間は漁獲量を決めながらお互いに資源管理をやる。一方、協定のない日本と韓国の間、特に韓国が自由に海に入ってきてということになりますと、これは日中との協定も意味がなくなる、こういう問題にもなってくるわけでありまして、何としてもこの妥結を図っていかなきゃならぬ。  漁業者の間からもぜひという声が非常に強いわけでありますし、一方では、今申し上げましたように、このままずるずるといくんだろうか、あるいは、協定ができないでお互いに拿捕合戦みたいなことになるのであろうか、このような懸念の声も出ておるわけであります。これを踏まえながら、国民の声を踏まえて、我が自民党もそうでありますが、これを受けて既に昨年の九月に与党三党合意をいたしまして、現行の日韓の漁業協定の終了通告を行うべきである、こういうことの申し入れを政府側にいたしてあるところでございます。  何も、大事な一衣帯水の韓国と事を構えてと、こういうことではないのでありまして、終了通告をすることができるということは、これは協定にもあるわけでありまして、そして、通告をいたしたならば一年間は有効なわけでありますから、この一年の間にいわゆる退路を断って真剣にこの期間でもう決める、こういう覚悟でこれからの交渉に臨むべきであろう、こういうことなのであります。  橋本総理も、本件に関しまして、両国間の膠着状態、これを打破するためにお互いの言い分をもう一回整理をして、そして、これを切り抜けていくためには一度仕切り直しも必要ではないか、このような御意見も述べられたやに伺っておるわけであります。  私も、これまでの日韓の経緯を考えますと、新政権も生まれるわけであります。そういうことを考えますと、一度デッドラインといいますか期限をこの際切って、まさに日韓、真剣な思いでこの協定の妥結に向けてやっていくということが、もうこの時期になりますと私は妥当なことであろうというふうに思うわけでありまして、私は、橋本総理にぜひ、日ロの問題についてもエリツィンさんと胸襟を開いてお話しになった、これから韓国の金大中新大統領とも、長い日本と韓国のいろいろな歴史があるわけでありますが、そういうものをしっかり語り合いながら、この日韓の漁業協定も、お互いの国のためにという立場に立って妥結を図っていただきたい。  私は、橋本総理ならそれができるというふうに期待をいたしておるわけでありますが、この仕切り直しの問題、総理どのようにお考えで、これからどのような形で進めていくべきだとお考えでありましょうか、お伺いしたいと思います。総理に。
  229. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど外務大臣からも御説明を申し上げましたように、日韓漁業協定交渉は、一生懸命関係者がここまで妥結に向けて努力をしてまいりましたけれども、残念ながらまだその意見の一致を見るに至っておりません。  こうした状況を踏まえて、近く政府としても最終的な判断を行わなければならなくなる、その必要が生じると考えておりますが、現時点におきましてはまだその結論を出しておらない。糸一筋でも妥結の可能性が残っておるなら、事務的な努力であってもさせたい、きょうの時点ではそのようにお答えすることをお許しいただきたいと思います。  しかし、いずれにしても、このような状況を踏まえますと、近く政府としての最終的な判断は行わなければならなくなるであろう、そのように考えております。
  230. 河村建夫

    ○河村(建)委員 日韓間の漁業の問題、先ほど述べましたように長い歴史があるわけでありまして、まさに二百海里時代に入ってきた。残念ながら極めて変則な状況にあるわけでありまして、今回の国連海洋法の批准、締結、これにのっとった形でやることが、まさにこれからの資源管理時代を迎えて、日本と韓国、また中国も含めてお互いの漁業関係者の利益につながる問題になるわけであります。  ただいま総理から、いずれにしても日本としても決断をしなきゃならないときがもう来ておる、このようなお話でありますから、私は早晩、先ほど申し上げましたようにいわゆる仕切り直しと申しますか、今までのことを踏まえながら、そして期限をある程度、通告すれば一年ということになるわけでありますから、そのような形で取り組んでいただけるものだというふうに思っておるわけであります。  総理がお触れになりました仕切り直しというお話を伺っておるわけでありますが、この仕切り直しということについては、総理が今おっしゃったように、いずれ決断をしなきゃいけないだろう、その範疇に入るというふうに理解をしてよろしいものでありましょうか。
  231. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 正確を期すために申し上げますが、私はそのような言葉を使っておりません。そして、そういう言葉を使ったと報道されましたときも、正確には、外務大臣とよく、これからお会いになるのですから話し合っていただきたいということを関係者に申し上げました。そして、外務大臣以下、また農林水産大臣以下、関係者一生懸命に議論をしてくれてまいりましたし、今もその状況にあります。  現在の金泳三大統領と何回か、他の問題とは切り離して、国連海洋法条約に基づくものなのだからこの話だけは決めようよと申し上げ、彼もそれを受けて支持をしてくれましただけに、随分話し合いに努力をいたしました結果、しかし、ある程度もう時間の限界が近づきつつある、そのような中で御質問をいただきました。
  232. 河村建夫

    ○河村(建)委員 総理がこの問題を真剣にお考えをいただいていることに、私は、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。  確かに、残された時間というもの、このままずるずるというわけにいかないことも現実でございますので、外務省御当局もさらに一層の御努力をいただきまして、私は、最終的には総理の決断において、先方側との真摯な、胸襟を開いた真剣な話し合いのもとに円満な解決ができますように心からお願いをし、祈願をいたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  233. 松永光

    松永委員長 これにて村田君、河村君の質疑は終了いたしました。  次に、中川智子君。
  234. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子でございます。きょうは、阪神・淡路大震災の被災者に対する公的支援について御質問をさせていただきたいと思っております。  一昨日、三度目の一月十七日を迎えました。私も、やはり一月十七日が近づいてきますと、本当にあの日のことを、また悪夢のあの時間を思い出します。  あの震災で六千四百三十名の方が亡くなりまして、また、その後、仮設住宅の中でだれにもみとられずに亡くなった、いわゆる孤独死と呼ばれる方々が百九十人を超えました。最近その顕著な部分で、特に四十代と五十代、このような年代の方が亡くなられるという現実がふえております。そして、自殺される方は、九五年よりも九六年、九六年よりも九七年、年を追うごとにふえています。昨年の十二月八日は四十四歳の女性の方が焼身自殺をなさいました。そしてまた、その直後、三十三歳の男性の方がみずからの命を絶たれました。  さまざまそのような形で、日を追うに従っていわゆる孤独死やら自殺がふえている。四年目に入った現状の中で、今なお被災地は当初よりもより悲惨な状態になっているということを、まず、被災地の出身議員として週末には被災地に帰る私自身の、現実を見ている言葉として認識していただきたい、このように思います。  また、仮設以外の一般住宅に住む人々の七人のうちの一人が、今も住宅復興のための二重ローンに苦しんでおります。震災前と比較した家計の増減調査でも、住居費の増加が突出しています。ですから、非常にこの景気不安の中での不安と、より増して、被災地で二重ローンを抱え、また仮設住宅から出られない将来への不安を抱えたたくさんの被災者が、今なお仮設住宅の中に四万三千人暮らしていらっしゃいます。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕  先ほどからずっとこの予算委員会議論をしております金融機関の税金投入は、座り込みもなさらずに、デモもなさらずに、署名もなさらずに三十兆円がスムーズに決まっていく。もしも今、被災地に公的支援として、全壊家屋に五百万、半壊家屋に二百五十万出していただきますと、一兆一千億です。これだけ、三年たった今なお、この現実を救うにはもう政治の力しかない、そのように思いまして、きょうはたった十分ですが質問に立たせていただきました。  やはり自助努力を始めるためには、生活基盤というものが必要です。決して財産の補てんではないんです。アンケートをとりますと、もしも公的支援が今実現すると何に使いますかというアンケートのまず第一は、ちょっとでも借金を返す。次は食費、家計費に入れる。そしてまた医療費に使うというふうに言われています。  このような現実の中で、今なお公的支援はできないという論理は一体どこから来ているのかということを、まず橋本総理にお伺いしたいと思います。
  235. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 中川先生とは、阪神・淡路のプロジェクトで、いろいろなインフラの整備、あるいは仮設住宅に入ったこと、あるいは一緒に視察もいたしました。今の五百万、二百五十万、一兆円ちょっとだということもございました。  しかし、いろいろその当時、これは阪神・淡路のプロジェクトで話し合うべき問題ではない、これはひとつ自然災害について、こういうような話もいたしまして、この阪神・淡路のことでは、仮設住宅やら今のインフラやらいろいろな問題で、そして基金として六千億にプラス三千億いたしまして、県の方ともいろいろな協議をいたしました。そして、県の方で、また市も基金を出していただきまして、この阪神・淡路の方々についての支援は今やられておる。  額の方は先生がおっしゃるとおり少ない、こういうことでございますが、県とも地元とも十分話してやっております。これは、現状ではこれが精いっぱい、こういうことで、県の方からもあるいは市からも、私もその担当をしてまいりました。中川先生の言い分は言い分でございますけれども、県からも何回も私も聴取をいたしまして、当初六千億のものが三千億、九千億にして、その得る益金でこれの支援ということが今現在やられておる。  同時にまた、阪神・淡路の、三年たちまして、住宅その他、その手当ても着々と進んでいる。家賃の対策もいたしました。現状ではこれでやっていってもらう。地元の知事からあるいは市からも、私も十分に状況も聞いているところであります。  以上でございます。
  236. 中川智子

    中川(智)委員 基金のこと、そしてまた基金でたくさんの方が助かっているのは事実でございます。それに関しては感謝しております。でも、今なお被災地では、被災者が本当に生活基盤そのものを失って自助努力ができない人がたくさんいるという現実の中で、それで足りないということを私は申しているわけでございます。  例えば、生活再建の早い時期に、雲仙・普賢岳では個人に千百五十万が義援金等によりまして出されました。奥尻の災害の際には一千二百五十万です。でも、阪神・淡路は余りにも大規模災害であったために四十万円です。もう個人の、皆さんの善意で大規模災害に対して補償していくということはできないということが、この阪神・淡路大震災において明らかになった。それに対して今なお公的支援ができない。  もうこれだけやっているから、後はそれぞれ死のうが生きようが頑張れよということをおっしゃるんですか。三十兆円に対してはあんなにスムーズに言いながら、一兆一千億、これを出してほしいという被災地の叫びに対してそのようなお答えしか返ってこないんでしょうか。総理にお伺いします。
  237. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員が被災地域の代表者としておっしゃる、そのお気持ちがわからないと申し上げるのではありません。しかし、村山内閣以来今日まで、一生懸命復興の努力、復旧の努力をしてきたことも私はお認めをいただきたいと存じます。そして、率直に申しまして、全く異質の問題を組み合わせられ御論議をいただきますことには、私は困惑を感じます。  雲仙・普賢岳の事件のときの大蔵大臣としてあの基金をつくりました一人でありますから、そのとき国民から寄せられました浄財というものを、関係者が皆相談をしてあの基金をつくりました。この阪神・淡路大震災におきましても、多くの国民が寄せられましたそのお金、自治体と御相談をし、議員はわずかという言葉を使われましたが、それはやはり多くの国民が寄せられた善意というものをおわかりをいただきたいと思うのです。  今日、既にいろいろと努力をしてきたといいながら、まだ二万四千世帯の方々が仮設住宅におられること、そして、全体として震災に伴う大きな落ち込みから回復しつつあるといいながら、業種、業態によって依然厳しい状況が産業構造の面でも見られるということも承知をいたしております。解決すべき課題が存在することも事実です。だからこそ、平成九年度の補正予算の中に所要の復興関連経費は盛り込んでまいりました。  今後も、兵庫県当局、関係市町とも御相談をしながら、私どもは私どもとしての努力を続けてまいりたい、そのようにお答えをさせていただきます。
  238. 中川智子

    中川(智)委員 つい、やはり被災地から来ているものですから感情的になりまして、申しわけございませんでした。  ぜひとも、今後の災害に向けては、今自民党内で作業していらっしゃるあれをいいものに仕上げて、私は被災地にいつもいる女と言われておりますが、雲仙・普賢のときもすぐ隣の熊本にいまして、兵庫県に引っ越ししましたら、その後すぐに兵庫のこの大震災がありました。今、月曜から金曜までは東京に暮らしております。ですから、東京は非常に危ないというのが私の実感でございますので、ぜひとも東京に来たときに心配のないような、今後の災害に向けての、いわゆる基金法案のよりよい中身でもっての成立をお願いしたいと思いますが、うなずいていただけますでしょうか。はい、では、ぜひともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  239. 伊藤公介

    伊藤(公)委員長代理 この際、北沢清功君から関連質疑の申し出があります。中川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。北沢清功君。
  240. 北沢清功

    北沢委員 実は私、きょう割り当てを三十分受けたのですが、中川さんが、ぜひ三年を経過した中でやはり現地の議員として訴えたいということでありました。一番中川さんが心配した点は、このことを持ち出すとつぶれるのではないかという心配をしていましたね。それは私はどういうことかというふうに質問をしましたら、なかなか大蔵の反対があってということであります。  私ども、私も災害特別委員会で、この間理事会で現地を視察しまして、全く中川さんと同じ考え方を持っているし、現地の知事も市長も、私どもは、遡上効果はないかもしれぬが、基金制とか、ひとつこれからの日本国民が安心して災害の中で生き延びていくためにつくってくださいということを強くまた言われました。  問題は、額のことは私はあれしませんけれども、実態というのは相当私は深刻だろうと思っております。したがって、ぜひこのことは、もう現地では全国的にそういう制度さえできれば、私ども独自でもそのことは遡上しなくてやりたいというくらいに熱意を持っておりますから、ぜひそのことを、党派を超えて実現に向かって御努力をお願いし、また御理解をいただきたいというふうに私は強く要請をしておきたいと思います。  私は、今国民の間に一番問題になっている点は、いわゆる不安と不信ですね。不安ということは、私もこれから質問を申し上げますこの税制の上にもあるわけでありまして、そういう面では、不安が解消されれば、消費はある程度、財布のひもを緩めるのではないか、私はそう思っております。  そういう意味で、以下質問をいたしたいと思いますが、ある面では矛盾した点もあります。  よく今回の野党側、それから自民党や与党や政府首脳の一部から六兆円減税や恒久減税化の話が聞かされますが、財源の裏づけのない提起には私は非常に危惧を覚えます。これは笑っておりますけれども国民は、減税すれば景気はよくなる、使うんだという方もあるけれども、やはり足が地についた将来展望を求めている方も半数以上あります。法人税の軽減、三兆円というのは論外ですが、そうした案の行き着くところは、我が国が抱えている赤字の現状の大きさを考えたときに、結局最後は消費税アップということにつながるのではないか。  消費税は、持てる者がより豊かで、持てない者がより貧しく、厳しくというふうな性格を持っておりますから、きちんとした健全な意識を持った国民であるならば、その赤字が将来にわたって我が身に降りかかってくることが明らかなのでありますから、安易な減税が消費の意欲につながるということになるのか。また、従来型の景気対策が、対処がよいものなのかどうか。  やはり財源の、予算の中の削減を含めて大きな発想の転換が必要だと思っておりますので、大蔵大臣から、このことについてのお考えをいただきたいと思っております。
  241. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大型減税の財源ということになりますと、歳出カットを毎年めり張りをつけてやっていくわけでございますが、なかなか直ちに、赤字公債を財源ということにつきましては、大蔵大臣とすれば極めて慎重でなければなりません。  そういう点で、今後の減税面についての北沢委員の御見解でございますが、既に御案内のとおり、二兆円減税法案の御審議をお願いいたしておるところ、そのほか法人税、有価証券取引税、地価税等を含む財政、金融両面にわたる減税措置を、制度減税としてこれまた税法の中で、法案の中で提出をさせていただきました。八千四百億円の財源を要しますが、歳出カットの中で捻出いたしたところでございます。  我が国の租税負担率は、欧州諸国に比べてかなり低い水準でありますことは北沢委員も御案内のとおりと存じます。さらに、中堅的なサラリーマンの税金をアメリカと対比いたしましても、七百万以下の我が国の課税水準ということになりますと、米国はこの倍になります。こういう例もございます。  今後、グローバルスタンダードに法人税、ビッグバンの関係、市場税制、これは十一年度税制において真剣な論議を行い、取り決めをしていただく、こういうことになると存じます。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  242. 北沢清功

    北沢委員 実は、昨日の公団理事の収賄といいますか、先ごろの現職幹部警察官の逮捕、それから証券の一任取引をする現職の議員への疑惑、そういう幾多の問題が矢継ぎ早に出まして、これはまさに驚愕の一語に尽きるわけでありまして、すべてが官庁の中枢である大蔵省に集中しているということですね。  財政金融機関の権力が集中しているという弊害が、事態が深刻なつながりを持っているという点でありまして、私は、大蔵改革の中における財政・金融分離の必然性と倫理の早急な確立こそ、不信に次ぐ不信の国民政府なり議会側の明確な決断を示すときであるという、実は確信を持っております。  金融分離について、実施状況ですが、総理にお尋ねをいたします。  ここら辺については、今すぐやるというのか、予定年度といいますか、その点について前段でお尋ねをしたいと思います。これは、やるという意味でなくて、金融監督庁と、いわゆる金融の分離というものが、正式に年度的にお示しをいただきたいと思います。
  243. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 金融監督庁は、本年、本年と申しますより次年度になるわけでありますが、スタートを切ろうといたしております。  その上で、財政と金融の分離の問題につきましては、今まで、日銀法の改正によりまして日銀の独立性を強める、また、御指摘のありました金融監督庁の設置による、検査、監督を大蔵省から分離するということまでを終わったわけであります。  そして、行政改革会議の中で、市場信用秩序という言葉を初め使い、誤解を生ずることから、金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案というものを大蔵省の所管とするという考え方で分掌上の整理をされました。  そのプロセスにおきまして、よく御承知のように与党三党が、この問題については与党三党として議論をし決める、案をまとめるという意思表示を受け、政府側としては、その与党三党の話し合いというもの、議論というものの結論を待っておるというのが姿であります。  現時点におきまして、与党三党間において御論議が行われておりますことを承知いたしております。
  244. 北沢清功

    北沢委員 私は、その論拠といいますか、もしも分離が行われるとした意味での実施年度というのは二〇〇一年ではないかというふうに理解をしているのです。  今言われている幾つかの説がございますが、大蔵省の皆さんの士気に関すること、士気が上がらないこと、それから、今の困難な金融不安の中で緊急にそのことが必要だというふうに言われています。しかし、二〇〇一年というのはビッグバンがある程度定着をし、そして今の金融不安がそこまで続くということになると大変なことになるのですね。だから、そういう意味で論点のすりかえじゃないか、私はそのように実は考えております。  したがって、このことには、現状の幾つかの、住専処理も含めて幾つかの、いわゆるこの財政と金融の処理ということについては、改めて私は、分離を二〇〇一年に向かってやはり実施すべきではないか、取り組みをすべきではないか。  それから、もう一つ大事なことは、いわゆる財政と金融の分離ということが、今からそういう決定をするということでありますから、そういうことが今与党間で問われているわけであります。だから、そういう意味で、今の幾つかのあらゆる不信な事象の中で、大蔵省の権限というものをやはりそこではっきり分けるべきではないか、そういうふうに考えておりますが、これは将来にわたって、二十一世紀を見据えた考えでありますから、そういう意味での論点のすりかえは残念でありますが、総理のこのことに対する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  245. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、私お答えを申し上げたつもりでありましたけれども行政改革会議の中間報告の中でも議論をいたしました。そして、最終報告の中におきまして、金融破綻処理制度、または危機管理に関する企画立案という表現をこの中で用いたわけでありますが、同時に、与党三党をもって構成される十者協が、十者協議の場で論議をする、結論を出すので政府側の意思表示を待ってほしいという指示をされ、その最終の議論が現在行われているところであります。  それとこれとは別の話として、私は、これ以上問題が起きることのないように公務員の倫理というものは高く持ってもらいたいと思いますし、その大蔵省の諸君、既に大蔵省としてのルールのもとで今身を慎んでおると思いますけれども、けさもお答えをしたところでありますが、みなし公務員である特殊法人に対してもこうした、その態様のあり方によって違いは当然ありましょうけれども、何らかのルールを考えなければならないのだろうか、そのような思いを持っておるところであります。  それとは別に、公庫、公団を含め、退職後天下りをしなければ生きていけない今の公務員の引退の時期というもの自体も、むしろ公務員制度、人事制度の中で考えておくべきことではないか、そのような思いを持っております。
  246. 北沢清功

    北沢委員 最後に、今度の経験を踏まえて、大蔵省の職員の士気にかかわるということであるが、むしろ士気にかかわることは、あのような高官の皆さんの不祥事ということが非常に士気にかかわる問題、後輩の皆さんにとってはそういうことですね。ですから、そういう意味で、公務員の倫理規程というものを、心得とかそういう形でなくて、やはりそこら辺についてははっきりと決めるべきだ。  それから、もう一つ大事なことは、議員についても、いわゆるあっせん利得罪というような問題で私ども提案をし、土井党首政治倫理の問題を提案しております。そういうことを示さないと国民が、幾ら声高に声を政府なり議会が発信をしても、これはやはり納得しないのです。  納得のしない政治が成り立つはずがないわけでありますから、そのことを真摯に受けとめて、私は、あっせん利得罪でなくても名前は変えてもいいし、政治腐敗防止法でもいいし、また、証券や銀行協会からは政治献金はもらわぬという、各政党間のそういう態度といいますか、そういうものを明確にすることも一つのステップだろう、そう思っております。  だから、そういう意味でもっともっと前向きにこの問題に取り組んで、国民の不信を払拭するために私どもは努力をしなければいけないのではないか、そのことを強く要請をいたしますので、総理においてのお考えを、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  247. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員が公務員倫理規程の厳格な遵守を超えてどういう姿をお考えなのかわかりませんが、政府としては、公務員倫理規程の遵守、厳格な遵守を図っていきたい、そう考えておるところであります。  また、今、政治改革に関する部分についても幾つかお触れになりました。  与党三党の政治改革協議会が精力的に論議を続けておりますこと、議員承知のとおりであります。その中で一定の合意を得てまいりましたけれども、昨年中にすべての問題に結論を出すことができなかったことから、本年も引き続き協議を続けておること、御承知のとおりであります。自由民主党としても、できるだけ早く方向性を出すという方針でこの議論に臨んでおる、そう努力をしておると報告を受けております。  また、企業・団体献金については、三党それぞれに意見がございます。この議論の推移を見たいと考えておりますし、社民党が御提案になっておりますあっせん利得罪というものを導入するかどうか。これは、法制化ができるかどうかは別といたしまして、現在その構成要件につきまして三党で厳密な検討を加えながら論議を続けている、私はそのように理解をいたしております。
  248. 北沢清功

    北沢委員 総理におかれましても、リーダーシップをとられて、ひとつ前向きにお取り組みをいただくことを要請いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  249. 松永光

    松永委員長 これにて中川君、北沢君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会