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鈴木(淑)
委員 自由党の
鈴木淑夫でございます。自由党を代表いたしまして質問をさせてい
ただきたいと思います。
御
承知のように、今の
日本経済、戦後例を見ないような深刻な危機にありますし、
金融システムも昭和二年の金融恐慌以来の大変な危機に直面しているわけであります。このことは、けさほど来の野党各
委員の御
指摘、そして御答弁の中にもそれをお認めになる
政府、閣僚の皆様方のお
言葉もありましたのでこれ以上申しませんが、私、一番今心配していることは、
総理、去年の暮れまでの金融危機は、どちらかといえば金融機関レベルの危機であったわけです。
例えば、金融機関相互の貸し借りであるインターバンク、銀行間のマーケットで破綻金融機関が資金を調達できなくなるということから、三洋証券、北海道拓殖銀行、そして山一証券の破綻が起きた。しかし、この場合には、銀行間の問題なものですから、間髪を入れず
日本銀行が流動性を供給する。お金を貸すことによって、破綻金融機関の支払い不能がその債権者である金融機関の支払い不能を呼んでドミノ現象のようなシステム混乱を起こすことは阻止できたわけであります。
しかし、今私が心配しているのは、もう一つ下のレベル、つまり金融機関のお客様のレベルで黒字倒産が出やせぬかということを、今
企業経営者は真剣に心配をしております。
それは、申すまでもなく貸し渋り、あるいは、端的に言って貸し渋りの段階は過ぎておりまして、貸し出し回収をかけられている
企業がたくさんございます。それらがこの年度末をどうやって越えたらいいかという状態にあるわけで、この一つ下のレベルの金融危機は、
日本銀行が飛び込んでいって連鎖的なシステム混乱を防ぐことができないので、本来民間銀行が防ぐ役割を担っているのに、その民間銀行が自己資本比率を
回復するために貸さないということですから、これは大変な危機の種を今はらんでいるわけですね。
ですから、私は、この
予算委員会の中継を
国民の皆さん、特に中小
企業経営者の皆さんがかたずをのんでごらんになっていると思うのです。年度末までに一体どういう有効な対策が追加的に出てくるんだろうかということを心配して、このテレビ中継を見ておられると思います。
したがって、私は、きょうは、一体どういう有効な対策があり得るだろうかという観点から質問をしてまいりたいというふうに思いますので、どうぞ、
総理、
大蔵大臣、率直な御答弁を賜りたいと思います。
さて、その有効な対策を考えるためには、今の危機の根本的な原因を確認してからスタートしなければならないと思いますが、私は、けさからの野党の各
委員の御発言、あるいは昨年来のマスコミにおける識者の発言等から見て、これは根本的な原因はもうかなりはっきりしていると思います。それを私なりに整理いたしますと、三つあります。
第一は、本年度の九兆円の
国民負担増と公共投資カットを含んだ超大型のマイナスのケインズ政策であります。マイナスの財政政策を打って、その結果、九六年度に三・二%成長まで
回復していた、九六暦年は御存じですか、三・九%成長ですよ。ほとんど四%成長まで
回復していた、せっかく長い不況のトンネルを通り抜けて自律的に
回復しかかった
日本経済を、この超デフレ
予算によって、本年度は、
政府御自身も〇・一%と認めているように、ゼロ成長にたたき落としちゃったわけですね。
それで、九兆円の
国民負担増をやりますとこういうことが起きるというのは、もう目に見えておりました。私
ども、新進党の時代から、一昨年の臨時
国会のときから、そのことはるる御
指摘申し上げた。御
指摘申し上げ
ただけじゃない。あの臨時
国会、一昨年のときは、二%の
消費税率引き上げは五兆円の
負担増です、まだこれに耐えられるほど
日本経済は強くなっておりませんと言って、この延期
法案を出した。そして、昨年の通常
国会では、二兆円
特別減税の打ち切りは早過ぎますと言って、これの据え置きの、継続の
法案も出した。
この七兆円の増税阻止という私
どもの
法案に対して、申すまでもなく
政府・与党三党、こぞって反対、あるいは廃案に追い込んだのであります。そのときは、民主党さんも残念ながら反対に回られましたために、多勢に無勢で、これは葬り去られたわけであります。
しかし、その結果、私たちが予見したとおり、
国民の実質の可処分所得、物価は、
消費税率を上げたものですから、今、前年比二%ですよ。そして、税金あるいは健康保険の
負担もありますので、それを差し引かれますから、実質の個人可処分所得は完全に成長をとめちゃった。実質の個人可処分所得をとめちゃっては、これはゼロ%になるのは当たり前ですね。これが第一。
第二は、
金融システム安定化対策における無策であります。
住専処理のときに、六千八百五十億円もの公的資金を預金を取り扱っていない住専の処理に入れたために、
国民から強烈な批判を受けました後、金融三法をつくって、これで
日本の
金融システムの安全は図れるということを
政府・与党三党はおっしゃり続けたわけであります。
〔
伊藤(公)
委員長代理退席、
委員長着席〕
先ほど、
総理は御答弁で、最近になって
アジアの
経済危機その他で事情が変わってきたと言っておられましたが、私
どもは、もうあの時点で、金融三法に示されるような安全ネットでは穴があいちゃうよということがわかって、
指摘申し上げた。
指摘申し上げ
ただけじゃない。このときも、ちゃんと
法案を準備しました。会社更生法を前提にした
日本版のRTC、不良債権処理公社案というのも持っていた。ですから、頭から公的資金の投入を否定したんじゃなくて、これこれこういう形で経営者の責任を十分とらせた上で、そして不良債権回収の強化をした上で公的資金を入れましょうということを、あの住専処理の時点でもう言っていたわけです。
それから、私ははっきり覚えておりますけれ
ども、一昨年の臨時
国会あるいは昨年の通常
国会で、この席あるいは大蔵
委員会で、
総理にも三塚
大蔵大臣にも、この金融三法では足りませんねと何度も何度も申し上げましたよ。だって、あの金融三法を前提に、
総理、そして三塚蔵相は何ておっしゃっていたでしょう。これで十分だ、信用組合以外公的資金を入れなくても大丈夫だ。他方、預金は全額保証します、大銀行は破綻させません。これが両立しっこないというのはわかり切っていた、そのことを言い続けてきた。
これで
国民はすっかり不安になっちゃったんですね。これですっかり心理的に金融破綻に対する恐怖感を持ち、事実、ばたばたと大金融機関が倒れてきたので、これで一種のパニックに近い動揺が
金融システムの中に起きたわけです。これが二番目の理由です。
そして、三番目の理由は、そのあげくの果てに、ついこの間、十二月ですよ、
財政構造改革法案を成立させて、今後の財政政策に縛りをかけてしまったのですね。財革法の第四条には毎年毎年財政赤字を減らしていくと書いてありますが、
総理、覚えていらっしゃいますでしょうか。私は、あの
審議のときに
総理にはっきりとお伺いをしたのであります。財革法の四条によれば、赤字国債を毎年減らすと書いてあるが、これは赤字国債だけでしょうか、それとも、財政赤字全体を年々削減していくというのがこの法の精神でしょうかとお伺いしました。
それに対して、
総理ははっきりと、当然のことながら毎年の赤字縮減に努めていく必要がある、これは私は
議員の提起されたとおりだと思いますとおっしゃいました。私はすぐ、はい、確認させてい
ただきましたというふうに申し上げたわけですね。これによって、財政赤字の拡大につながるような
景気対策は一切打てないという縛りをかけてしまったのですね。これが三つ目の不安であります。
この三つがそろったからこそ、その後、この深刻なる
経済危機が発生をしたんだと思うのですね。
さあ、この三つに対して、
政府はさすがに昨年末、二つはっきり手をお打ちになった。第一の、九兆円の
国民負担増、公共投資削減、それによるゼロ%成長への
経済の急激な悪化に対しては、二兆円の
特別減税を復活させるということをおっしゃいました。それから、二番目の安全ネット、不十分であるというのに対しては、三十兆円規模の対策を出してこられたわけであります。
しかし、
総理も御
承知のように、この二つをお出しになった後、
株価は一時上がりましたがその後どんどん下がってきてしまいまして、十二月二十二日から先週まで、これは十五日間ありますが、そのうちの九日間は
株価は一万四千円台でありました。つまり、マーケットは、せっかくお出しになったこの二兆円の
特別減税と三十兆円のシステム対策というのを評価していない、これだけじゃ不安だという
シグナルをはっきり送ってきたと思います。
そして、この
シグナルを送ってきたのは
株式市場だけではありません。国債売買
市場でもずるずると金利は下がった。長期金利が下がるということは、先行き金利が上昇するような
経済発展はあり得ないねという予想が強まったときの現象でありまして、マーケットははっきりと、これではだめだという
シグナルを送ってきたわけであります。
なぜ、これじゃだめなんでしょうね。
国民の皆さんも恐らくだめだと思って見、だからこそ次の手を期待しているのだと思いますが、なぜこれじゃだめなんでしょう。
まず、二兆円の
特別減税ですね。さっき
総理は、お答えの中で、ASEANの
会議に行ってみたら、やっぱり海外では大変だ、
アジアは大変だ、
日本への期待も大きい、だからここで決断をしたとおっしゃいましたけれ
ども、しかし、これは二つ、ちょっとおかしいと私、思いますよ。
先ほ
ども冬柴委員がるる批判されましたように、
国会であれだけ二兆円
特別減税打ち切ったらだめなんだと、財政赤字拡大につながる対策はびた一文とれないということに対して批判されておきながら、外国へ行った途端に、ああそうか、やはり大変なんだと思った。これはやはりおかしい。恐らく私は、
総理は、聡明な
総理が外国へ行くまでそんなこと知らなかったということはあり得ないと思うのですね。私は、そういう情報はちゃんと入っていたと思うのです。
そうすると、外国へ行く、ASEANに出るということをきっかけにしてぱかっと態度を変えたのだと思うのです。
しかし、せっかく変えたのに反応が芳しくない。なぜだと思いますか。なぜ二兆円の
特別減税ではだめだと思いますか。これは、一言で言ってツーリトル・ツーレートだからです。小さ過ぎて、おまけに遅過ぎるからです。小さ過ぎるというのは、言うまでもなく、九兆円の
負担増をやっておいて二兆円だけ戻してやろうというのだから、小さ過ぎる。
それから、ツーレート。これは、遅過ぎるというのが一番問題でありまして、私
どもが
特別減税継続
法案を出したあの時点で決めてい
ただいておれば、昨年の六月、そして年末の調整で減税二兆円が実施されたはずであります。それが、この一年のおくれ。一年のおくれというのは、
経済というのは生き物のように弾みがつきます。一たび下向いて突っ込み始めた
経済に向かって、二兆円などというのは大した刺激にならないのですよ。だけれ
ども、あのときは三・二%成長していたのですからね。あのようやく
回復しかかった
経済でマイナスのケインズ政策である二兆円の増税をやめれば、これは効果はあったけれ
ども、ツーレートだね、遅過ぎるねということであります。
また、
経済は先行き観で
動きますからね。減税は継続するよという先行き観でこの一年、去年一年間やるのと、今になって戻すよと言われるのでは、もうやはりツーレートなんです。先が悪いと思って一年間動いてしまった後ですからね。これは、言うなれば安物買いの銭失いというやつですよ。
しかも、もう一つまずいのは、これは一年間だけということでしょう、
特別減税。それで、きのうのNHKのテレビ討論会を見ていましたら、
自民党の山崎政調会長は、様子を見て、
景気がまだ悪かったらもう一回やるさと言いましたが、これは
経済政策のイロハを知らない人の
議論、とんでもない話なんですよ。一年一年減税やって、次の年は増税だと言ったら、これは増税予告つき減税ということなんですよ。
今の
経済学の一番新しいポイント、ケインズ政策はきかないという理由は、幾ら
景気刺激で減税してやったり公共投資ふやしたりしても、その財源を次の年増税で取ると言ったら、
国民は増税に備えて貯蓄をふやしてしまうからきかないというわけですね。つまり、増税予告つき減税はきかないというのに、これは典型的な増税予告つき減税、しかもばらまき減税ですね。二兆円、ツースモールですよ。ですから、
国民はこれに反応しなかったのだと思います。
さて、
総理、今私がるる申し上げました中の、二兆円の
特別減税を今さら一年たって慌てて、ああ、やはりやりましょうかと言ったって、ききっこないのだということについて、どういうふうに御判断されますか。