○中村鋭一君 私は、自由党を代表いたしまして、
総理の
サミット会議出席の件につき
質問をいたします。
総理、あなたは
日本国民の代表として
バーミンガム・
サミットに出席をなさいました。あなたの行動の
一つ一つが、すべて
日本国民を代表する行為であり、意思表示であり、あなたの
発言の一言一言が
日本国の国益を左右するのであります。
その
意味で、
サミットは先進国の
首脳同士の真剣勝負の場であり、まさにおのおのの国の最高リーダーとしての資質、力量、貫禄が問われる場であります。
「外国の交際は国の安危に関し、使節の能否は国の栄辱に係る」とは、明治四年に岩倉具視が特命全権大使として米欧回覧に出発をしたときに、三条実美公がはなむけとして贈った言葉でありますが、
橋本総理が一国の
総理として国の安危と栄辱を一身に担って、
日本の代表たる自覚と気概と矜持を持って
サミットに
参加されたとは、私にはとても思えないのであります。
これは今回の
サミットだけに当てはまるものではありません。失礼ながら、
総理の資質が根本的に問われる問題なのであります。両手を広げて肩をすくめてみたり、他国の
首脳に片目をつぶってウインクをしてみせたり、ボリスと私はとか、ビルにこう言ったらリュウと答えたとか、
総理独特のパフォーマンスのつもりかもしれませんが、そのような瑣末な態度を見せるのが
首脳外交ではないのであります。
去る二月五日の本
会議で、私は、あなたは
日本の
総理としてこの難局を乗り切るにはいかにも軽過ぎると苦言を呈しました。この日の
質問に対して、自由民主党から、私を懲罰に付するとの動議が提出されておりますが、たまたまそのままになっているように承知をいたしますが、あえて、私は
総理のその場限りの軽々しさについて、再び同様のことを申し上げねばなりません。
単に、格好をつけてと苦笑いで済ませる問題であればまだ許すこともできましょうが、
日本国民として看過できない過ちを
橋本総理は既に幾つも犯しているのであります。夫のいる
中国人女性と交際をし、その夫からそれが離婚の
原因だと裁判で
指摘をされたり、その女性を通じて特定の病院に二十六億円もの巨額のODAを供与したとの疑惑が持たれたり、
英国の大衆紙に簡単に謝罪文を投稿したり、
橋本総理の
姿勢は
日本国の国家としての尊厳、
日本人としての誇りを傷つけるものであり、国益を損なうものであると
指摘せざるを得ないのであります。いずれこれらの問題につきましては、友党ともども腰を据えて取り組ませていただくことを、この際
指摘をいたしておきたいと思います。
さて、
サミットでは
ロシアのエリツィン
大統領が、
日本で
開催される予定の二〇〇〇年
サミットを
ロシアに譲ってほしいと提案したことについて、
総理は真剣に検討する
考えを示したと伝えられますが、なぜ
総理はその場で明確に拒否の意思表示をしなかったのですか。
考えてもみてください。今回から正式メンバーになった
ロシアに、
開催順を変更できる資格が備わっているはずはないじゃないですか。自分の任期の残るうちに
サミットを
開催したいという権力を私視するような提案に乗ることは、
橋本総理自身が権力を私することにほかなりません。二国間の懸案の
解決と
サミット議長国の問題は全くこれは別の問題であり、国際的にも
説明のつくことではありません。理不尽な要求を断固その場ではねつける気概がなければ、あなたは、そしてあなたに代表される
日本国民は、
世界からなめられ続けるのであります。
以上の点について、
総理の御
所見があれば伺います。
この際、北方領土の返還問題について
お尋ねをいたします。
先般の川奈での会談において、北方領土についていかにも光明を見出したように喧伝されておりますが、実は、
事態は何も変わっておりません。
ロシアの議会も
国民も、
ロシアの報道もその気配を示していないのであります。これらが政権基盤の軟弱なエリツィン
大統領と政権末期の
橋本総理との二人だけの演技とするならば、
国民にとってこんな不幸なことはございません。
なるほど、九月に回答すると言われたようでありますが、それは問題を先送りし、ニンジンをぶら下げ、
日本の
経済協力をかち取ろうとする巧妙な
ロシア外交に乗せられて、
総理自身が一方的にいわゆるいいふうに
考えているのにすぎないのではありませんか。
さきの日ロ
首脳会談に同席したネムツォフ・
ロシア第一副首相は、日ロの世論が全く食い違っている
現状では妥協を探るのはほとんど不可能だ、このように述べ、また、エリツィン
大統領が首相代行に指名したキリエンコ氏も領土返還反対を明言したと言われています。四月初めに全
ロシア世論調査センターが行った全国調査によりましても、回答者の七六%が北方領土の
日本への返還に反対という結果が出ております。
総理、五十数年前、
我が国の敗色が濃厚となり、軍も
国民も疲弊のどん底を行進しております最中に、ソ連は一方的に相互不可侵条約を破棄し、後ろから襲いかかるという卑劣な行為によって、多くの
日本国民はその犠牲となったのであります。さらに、歴史的にも国際法上も完璧な
日本の領土である北方の島々を、
ロシアは、理不尽にも一方的にじゅうりんし、これを奪ったのであります。
このことに対し、
ロシアの
大統領からきちっとおわびがあったのか。極寒の地でとらわれの身となり、長く強制労働を余儀なくされた同胞の屈辱の涙に対して、あなたは思いをいたされたことがありますか。エリツィン
大統領と一緒にはっぴを着て太鼓をたたいているあなたの姿を見て、私は、苦い思いを禁ずることができませんでした。あなたは、これが体を張った外交だと思っておられるかもしれないが、
国民の多くは、どんなに情けない思いでこれを見ていることでしょう。
日ソ不可侵条約の一方的な破棄に対し、橋本・エリツィン・プランを進める上でも、このことが最初の出発点でなければならないのであります。これらについて、
総理の見解をお伺いしたい。実際に問題は前進すると
考えておられるのか、そうであるならばその根拠は何なのか、明確にお示しをいただきたいと思います。
さて、今回の
バーミンガム・
サミットは、
アジアの
経済危機、
インドの
核実験、
インドネシア情勢と、
アジア問題が中心
課題となったにもかかわらず、
アジア唯一の
参加国である
我が国の
主張を十分反映させることができなかったことは、まことに遺憾であります。
アジアの
経済危機克服の最重要
課題は、言うまでもなく、
我が国自身の
経済再建、
景気回復であります。
総理は、G8終了後、
日本の
経済対策に批判があるかと思ったが、よく思い切った、できるだけ早く
国会の
承認を得て
実行に移してほしいと応援を受けたと記者会見で語ったそうでありますが、この
対策は規模だけを売り物にしており、それだけを見れば、
各国首脳が評価するのはこれは当然であります。それを素直に喜んでいる
総理大臣に
日本経済のかじ取りができるか。答えは否であります。
議長声明には、
我が国の不良債権問題の早期
解決、
金融システムの
強化が盛り込まれましたが、
政府が金融三法の枠組みによる
処理の仕方を改め、
経済政策を根本的に転換しない限り、この問題の
解決を図ることは不可能であります。
いずれにせよ、市場からの
信頼を失った橋本内閣の退陣と
経済再建戦略の構築こそが
経済再建の第一歩でなくてはなりませんが、この点について、
総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
次に、
インドの
核実験への
対応について伺います。
インドが、地下
核実験を二十四年ぶりに
実施し、さらに、
核実験根絶のための呼びかけを
各国が行ったにもかかわらず、再度
核実験を強行したことは、
世界の
核軍縮、核管理の流れに逆行した極めて遺憾な行為であると言わざるを得ません。
この見地から自由党は、五月十五日に
政府に対し、
アジア唯一の
参加国として、
インドの行為を
バーミンガム・
サミットの主要
議題として率先して取り上げるよう求めたところであります。
しかるに、
サミット直前になって、
国際社会へ挑戦するかのように行われた今回の
インドの
核実験に対し、当然、断固たるG8の意思を特別
声明に盛り込み、主要国が一致して、これ以上の核
開発を断固阻止する構えを打ち出す必要があったにもかかわらず、
インド非難は、地域問題の特別
声明の一項目として扱われ、独立した
声明とはなりませんでした。そればかりか、ペナルティーが必要だと
総理自身が強調しておられたにもかかわらず、制裁
措置についても何の合意も行うことができなかったのであります。
インドは、早速、この結果に満足を表明いたしました。
核実験の正当化に動く
姿勢を見せる一方で、
パキスタンは、対抗
措置といたしまして、
核実験に踏み切る
姿勢を一層強めていると言われています。私自身、村岡官房長官にお目にかかって、しっかりやってくださいと御激励申し上げたにもかかわらず、このような結果には、まさに失望の念を禁じ得ないのであります。
また、私どもが
インド大使の召還を申し入れ、官房長官は近々帰国させるとのお話でありましたが、十六日に帰ってきた大使は、五日間滞在しただけできのうまた
インドへ帰った、こういうことでありますが、これではとても召還と言えるものではありません。
政府は何のために
インド大使を呼び戻し、また帰したのか。
また、
総理は、当初の
目的どおり、
インド政府に対して断固たる意志を示すことができたとお
考えか、また、今後この問題にどのように取り組むのか、お
考えをお聞かせいただきたいと思います。
次に、
インドネシア情勢について伺います。
緊迫する
インドネシア情勢は、
サミットの主要
議題の
一つとなりました。
サミットでは、
インドネシアの
危機を乗り越えるために政治
改革を求める特別
声明を採択し、第一に
当局と民衆双方に自制を求め、第二にIMFの
改革プログラムを
実施することが信認と
成長回復のための唯一の
方法とし、第三に
経済改革だけではなく政治
改革もまた求めているところであります。
橋本総理は、
スハルト大統領を助けるとか助けないとかではなくてこれは
世界経済の問題だとして、
改革支援継続の必要性を強調されたと言われますが、折から、本日午前、
スハルト大統領は
辞任の意思を表明し、ハビビ副
大統領が新
大統領に就任をされました。こういった状況の急変を踏んで、
インドネシアに対する特別
声明等をどのように評価されておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
また、
インドネシアの
邦人の帰国について、
政府はまたも、準備行為という法治国家としてあるまじき
対応によって自衛隊機を海外に派遣をいたしました。
私どもは、カンボジアの
邦人帰還が問題となり、自衛隊機を準備行為として派遣したときも、このような行動を法律に基づかないで行うのは問題であるとして
政府の
対応を批判し、この見地から、我が党独自の自衛隊法の改正案を提案をいたしました。しかし、
政府・与党はこれを一顧だもせず廃案にしたのであります。そして、今回またも、準備行為というあいまいな形で自衛隊に任務遂行を命じたのであります。
さらにまた、適用法の根拠もあいまいな海上保安庁の巡視艇を既に海域に派遣しております。
経済といわず、外交といわず、
国民の安全といわず、
政府は、いつまでこのような場当たり的な
措置を繰り返すのか。継ぎはぎだらけのパッチワークはもういいかげんにしていただきたい。支離滅裂はもうたくさんであります。
総理のお
考えがあるならば、お聞かせを願いたい。
橋本総理、あなたの政権は、まさに沈まんとするタイタニック号であり、あなたはその船長であります。あなたを支えるべき一部の船員たちは、船長の目を盗んで逃げ出そうとして、ボートに乗るタイミングをうかがっております。あなたの
政府の支持率は、今や大きく喫水線を割っているではありませんか。
外交は別もの、政争は水際までといいますが、水際までも何も、沈没寸前の橋本内閣に、政権担当能力は既に失われたというべきであります。いずれ、我々は、心ある議員集団の意思を示す
機会はあると思いますが、まず、先立って、一刻も早い
橋本総理の
辞任を要求いたしまして、私の
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕