○大口善徳君 私は、平和・
改革を代表して、
内閣提出の
行政機関の保有する
情報の
公開に関する
法律案等並びに
民主党、平和・
改革、自由党野党三会派
提出の
行政情報の
公開に関する
法律案に対し、
総理及び関係大臣並びに野党
提出者に対し質問を行います。
その前に、まず、昨日、金融
機関から接待を受けた大蔵
官僚の処分が発表になりました。金融関連部局に在籍した幹部
職員五百五十名のうち百十二人の
職員が関係業界の接待にまみれていたことに強い憤りを感じます。
官僚と業界の癒着は
大蔵省の金融部門だけにとどまりません。今こそ公務員倫理を確立しなければ、
行政への
国民の信頼は回復いたしません。公務員の公正中立を確保し、
国民の信頼を回復するために、我々野党四会派は
国家公務員の倫理の保持に関する
法律案を既に国会に
提出しております。
国家公務員倫理法を今国会で成立させるべきであると私は考えますが、
総理のお考えをお伺いいたします。
民主
政治は、主権者たる
国民が正確な
情報を豊富に得られる環境が存在して初めて有効に機能します。
アメリカ合衆国の憲法起草者の一人、ジェームス・マディソンは、「
人民が
情報を持たず、
情報を入手する手段を持たないような
人民の
政府というものは、喜劇への序章か悲劇への序章か、あるいは恐らく双方への序章にすぎない」と語っています。
アメリカ合衆国では、既に三十年以上も前に
情報自由法が
制定されております。
昨今のバブル経済の発生と崩壊、住専問題、そして大蔵
官僚や日銀エリート幹部のこっけいなまでの接待漬け、恐るべき額の不良債権問題などの金融危機、その実態が明らかになるにつれ、
日本政府はまさに喜劇と悲劇を同時に演じているのであります。カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、その著書で、「
日本の
官僚は支配階級に属している。そして彼らが権力を振るえる
理由の一部は、普通の人の知らないことを知っているという事実に由来する。」と述べています。今こそ
国民が正しい
情報を手に入れ、行き詰まった官主導の統治システムに対し、変革を求める時代が到来いたしました。
このようなときに、遅きに失したとはいえ、
政府において
情報公開法案が
提出されました。地方においては、要綱等を含めればすべての
都道府県と三百四十八の市町村において
情報公開制度が先行して実施され、
市民オンブズマンは、これを武器に
官官接待や
空出張の追及で実績を上げ、一方、国会におきましても十数年前から野党は
議員立法として
法案を
提出し、昨年の時点で、当時の新進、民主、太陽の野党三党が
議員立法によって
法案を
提出し、これに後押しされる形で、
政府もこのたびようやく
法律案提出にこぎつけたのが実態でございます。
そこで、野党案と
政府案について、それぞれの基本的
立場はどうか検証をいたします。
第一に、この
法律を主権者たる
国民の
立場から利用者本位でつくるのか、官主導の
立場から
行政本位でつくるかによって、
内容も運用も異なってまいります。
国民主権の
立場に徹すれば、
国民が税の使い道や配分、政策決定のあり方がゆがめられていないか
行政を監視し
参加することは当然の
権利であり、原則
公開を徹底し、利用者本位の制度とすべきであります。他方、この制度を
行政本位という
立場で考えれば、原則
公開が過ぎると副作用が大きく、利用者本位では
行政の円滑な遂行が阻害されるという考えになります。
第二に、
行政が保有する
情報をだれのものと考えるかによって、
公開の
範囲も異なります。
行政が保有する
情報は、どのような
情報であっても税金を
使用して収集した
国民の共有財産だとすれば、
国民が知るのも見るのも当然であります。他方、
行政情報は
行政機関のものであって、
行政の円滑な遂行のために集めたものであるという
立場では、
行政が円滑に行われるか否か、それが
公開の重要な
判断基準となります。
第三に、冒頭で述べた
大蔵省金融関連部局の一連の不祥事にも見られるように、肥大化した
行政の裁量権をどう考えるかということであります。
行政改革の論議で指摘されるように、
行政が事前
管理型から事後チェックルール型、
管理からルールへと変わらなければならないとしたら、裁量の幅はできるだけ小さくする必要があります。当然、
行政情報の
公開にあっても
行政裁量の極小化が実現されなければなりません。
以上三つの基本的
立場で、野党案はいずれも
情報開示に積極的であるのに対し、
政府案はいかなる
立場に立つのか、
総理の明快なる答弁を求めます。
次に、
法案の個々の論点について、
総理及び関係大臣並びに野党
提出者に明確な答弁を求めます。
第一に、
情報公開法の
目的規定に知る
権利を明記するか否かであります。
政府案は、知る
権利は多くの見解があり、まだその概念が定まっておらず、
請求権的
権利ではないとして明記しておりません。しかし、知る
権利は、抽象的な
権利であるとしても、
法律の制度化によって具体的な
権利となるものであり、国会が憲法の
趣旨を生かして
権利の中身を具体化するのは、まさに立法府たる国会自身の役割であります。よって、
情報公開を求める
権利は、
国民主権原理とともに、憲法上の
権利である知る
権利に基づくものであることを明記すべきであると考えますが、この点について
総理及び野党
提出者の答弁を求めます。
第二は、
公開の
対象機関に
特殊法人を加えるか否かであります。
動燃の事故隠しや道路公団理事の不祥事、天下り問題を見ても、
情報開示の必要性は極めて高く、私は
特殊法人も
対象とすべきであると考えます。百歩譲っても、
特殊法人の
情報公開は
情報公開法と同時に実施すべきと考えますが、この点について
総理及び野党
提出者の答弁を求めます。
第三に、不
開示情報は明確であるべきです。
政府案には六分野の不
開示情報の
規定がありますが、おそれとか相当の
理由など、語句自体が不明確あいまいであるため、
行政機関の長の裁量の幅が大きく、乱用の危険があります。明白性の原則によって修正されるべきであると考えますが、この点について
総理の答弁を求めます。
第四に、
情報公開制度では、
個人のプライバシーがどう守られるべきかということも議論する必要があります。
行政固有の
情報、
法人等の民間
情報、
個人情報が混在して議論されてはならないし、基本的人権が侵害されてはならないと考えますが、
総理及び野党
提出者の見解をお伺いいたします。
第五は、政策形成過程に関する
情報の
開示の問題です。
政府案では、
行政の内部または相互間における
審議、
検討、協議に関する
情報について、率直な
意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるということで、不
開示としています。しかし、
国民は、政策意思決定の過程を知らなければ、必要な批判ができなくなります。この
規定は密室
行政の現状を是認するものであって、
行政の透明化に逆行するものであり、削除されるべきであると考えますが、この点について
総理の答弁を求めます。
第六は、手数料や
公開実務のあり方の問題です。
国民主権の
立場、利用者本位の考えに立てば、
開示請求自体及び
閲覧については無償とすべきであります。写しの
交付に係る手数料についても、実費の
範囲内ででき得る限り低廉でなければならないし、経済的困難や公益上の
理由による減免も認める必要があります。
開示方法や
開示場所等も、利用者の利便を考慮し、
整備されるべきであります。
開示の担当者がお上意識で、見せてやるのだから不便は我慢しろ的態度で臨まれたら、
国民主権と知る
権利は不毛となると考えますが、これらの点につき
総理及び野党
提出者の答弁を求めます。
第七は、
文書の
管理、分類、
保存の問題についてであります。
文書管理と
情報公開は車の両輪、
管理なくして
公開なしと言われております。
文書及び電磁的記録の
情報管理のあり方について
情報公開法自体に基本ルールを明記するとともに、
情報文書管理の前提として、公務員が職務について必要かつ十分な
説明ができる程度の
情報文書の
作成義務を負わせる必要があると考えます。
開示請求された当該
文書は既に廃棄されたというのではどうしようもないし、
文書の特定も簡単にできるように、縦割りでなく統一的な
文書管理、分類と
保存のルールが示されなくてはならないと思います。この点について
総理及び野党
提出者に答弁を求めます。
第八は、
裁判管轄に関する問題です。
政府案は、現行
行政事件
訴訟法の体系にこだわり、被告
住所地の
裁判管轄しか認めていません。しかし、費用の点を考えれば、不
開示決定等に係る
抗告訴訟については原告
住所地で提起できるよう、現行法の特則としての
規定を置く必要があると考えます。ある
市民団体の試算では、沖縄県那覇市在住の人が厚生省を相手に裁判を起こして最高裁まで争った場合、原告本人の交通費だけで百万円かかるということであります。地方在住者が旅費や宿泊費等の費用負担のゆえに
抗告訴訟を断念することのないようにすべきと考えますが、この点につき
総理及び野党
提出者の答弁を求めます。
第九に、
情報公開制度を電子
情報化時代にいかに対応させるべきかであります。
アメリカ合衆国においては、連邦
政府が公費で収集した膨大な
情報をインターネット上で
開示し、
情報の電子化に積極的に取り組んでおります。アジア地域で初めての
情報公開法施行国である韓国においても、電子メールによる
請求が認められております。
我が国においても、
情報開示の制度を実効あらしめるため、
行政情報の電子化やシステム化されたレコードマネジメント、検索の容易化・
公開手段の迅速化に直結するインターネットその他の電子手段による
情報提供に取り組むべきと考えますが、この点について総務庁長官の答弁を求めます。
第十に、野党案では
平成十一年四月一日
施行でありますが、
政府案では公布後
施行までの期間を二年を超えない
範囲としております。私は、期間はなるべく置かないで速やかに
施行すべきと考えますが、この点について
総理の答弁を求めます。
最後に、私どもとして最も気にかかるのは、一部に、わざわざ譲歩してまで成立させる
法案ではないという声が早くも飛び交っておることでございます。しかし、これは
情報公開法を久しく待望してきた
国民の期待を完全に裏切る言葉であると考えます。ここで
法案がとんざした場合、内心最も喜ぶのはどこのだれでしょうか。
行政情報を独占し、そのことによって裁量
行政や
権限を振りかざす
官僚諸君ではないかと私は考えるのであります。
ここは、各党ともお互いに、民主
政治のため、
国民の知る
権利の確保のために真剣なる
審議を行い、ぜひとも今国会中に成立させるべきだと考えますが、
総理並びに野党
提出者に法成立への決意を伺い、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕