○石井紘基君 私は、統一会派
民友連を代表して、
防衛庁設置法等の一部を
改正する
法律案につき、
総理、外務大臣並びに防衛庁長官に
質問をいたします。
初めに、
我が国の安全保障について、
総理のお
考えと決意を聞きたいと思います。
世界は、八〇年代から九〇年代にかけての冷戦終結によって、圧倒的な軍事力を持つ超大国同士の世界的規模の衝突は、その可能性が大きく遠のいたと
考えられております。同時に、その反面、
地域紛争、あるいは核や大量破壊兵器の拡散、組織的テロ活動などが国際社会の平和を脅かす要素として顕在化してまいりました。
我が国にとっても、直接的侵略の脅威は大幅に減少する一方、東アジア
地域に残っている不安定要素、軍事技術革命や各国間の軍事バランスの変動によって生じ得る危機、オウム事件などのような組織的テロの危険が増しており、こうした事態に備える危機管理の
整備が急務であると言えます。
世界構造の変化につれて、各国はさまざまな形で戦略
転換を図ってまいりました。
NATOは、東西冷戦終結後の一九九一年に新戦略構想を
策定し、多面的脅威に対処できる安全保障システムの構築を目指してきました。すなわち、安全保障機構を重層化し、抑止・防衛型から危機管理型への機能
転換、対象
地域も加盟国領域内から周辺
地域へと拡大するなどであります。
アメリカは、総兵力を二百十万から百五十万に縮小し、国防費の縮減を行っている。九〇年の東アジア戦略構想では、アジア太平洋
地域における戦力の再編合理化を打ち出し、アジア十万人体制を掲げてきた。九五年の東アジア・太平洋
地域における米国の安全保障戦略においては、二国間の安全保障関係を補完する多国間安保という規定を行っております。
以上のような国際情勢の基本的な変化の中で、
我が国の防衛戦略はいかにあるべきか。
もとより
我が国の防衛の基本的枠組みは日米安全保障条約であります。しかし、今日、この日米安保体制のもとにおける日米の協力の目的、具体的な協力のあり方は、当然国際情勢の大きな変化に対応した質的
転換を伴うものでなければなりません。
冷戦
時代に設けられてきた広大な米軍の基地や演習場などが、従来どおり、将来ともそのまま
我が国の領土になくてはならないものなのか。新しい
時代背景のもとにおける日米安全保障のあり方、地位協定の実情、全般的軍縮などについて米国と率直な
議論をすべきではないのか。将来にわたる日米の緊密なパートナーシップを
考えるとき、アメリカに対して物言わぬ、使い走りのような橋本内閣の姿勢で、真の日米の友好と協力のきずなは育たないでありましょう。対米交渉に当たって、
政策変更の権限を持たない外務官僚に任せていたのではらちが明きません。
総理自身が首脳同士の
議論を持ちかけるべきであります。その決意はあるのでしょうか。冷戦後の
我が国の防衛戦略とともに、
総理の具体的な御所見をいただきたい。
今後の防衛
政策遂行に当たっても、憲法の精神にのっとり、非核三原則及び専守防衛、武器輸出三原則、集団自衛権の不行使、大量破壊兵器の不保持、海外派兵の禁止、徴兵制の不採用、シビリアンコントロールなどの諸原則を引き続き遵守することが重要であることに変わりはありません。
次に、
我が国の防衛戦略について、
法案との関係において触れてみたいと思います。
我が国では、ヨーロッパにおくれること四年、約二十年ぶりに防衛
計画の大綱が
策定され、防衛力の合理化、コンパクト化が提唱されましたが、それらをどういう
考えで、どういう方向で推し進めていくのかさっぱり見えてこないのであります。
自衛隊の部隊配置や装備
内容、人員、規模等は、それぞれどういう戦略に基づいて組み立てられているのか、あるいは組みかえられていくのか。本
法案における旅団の創設、編成で機動性が高まると言うのですが、それに伴う装備はどう変わるのか。また、中期防見直しの中における三自衛隊の装備削減額はほとんど横並びになっているわけですけれども、防衛力の重点をどう
位置づけていくのか。さきに申し上げました防衛力の質的
転換という観点からいうならば、今日の
我が国の防衛力展開は、陸上
中心から海空
中心型の装備や
情報機能の強化への移行が必要ではないのか。防衛庁長官のお
考えを伺いたいと思います。
次に、本
法案における統幕
会議の機能強化についてでありますが、統幕
会議に
情報が一元化され、
縦割りから横断的な体制ができることは、防衛力の質的向上にとってこれは必要であろうと思われます。
さて、現行では、いわゆる
日本有事の際の防衛出動、治安出動の場合にのみ認められている統幕
会議の指揮命令権が、長官が定めるその他の場合にも適用されることになります。統幕
会議の権限が新たに適用される事態は、大規模災害やPKO、国際救援活動で、複数の自衛隊が一緒に活動する場合を想定していると言われます。しかし、同時に、こうした事態に加えて、日米ガイドラインのもとで行われる平時や周辺事態における対米協力も、本
法案によって統幕
会議が権限を持つ
事項になるのではないでしょうか。日米ガイドラインの最終
報告が発表された昨年九月二十三日の直後に
政府が安全保障
会議で本
法案の
国会提出を決めたというのは、偶然だったとは思えないのであります。周辺事態及び平素からの対米協力においても統幕
会議が対応することになるのか、
総理及び防衛庁長官の
考えを伺います。
さらに、統幕
会議は新たに統合警備
計画の作成と調整も行うことになって、対象は大規模震災を想定していると言われます。しかし、私には、日米ガイドラインの周辺事態における協力項目として取り上げられている
日本周囲の海域における捜索・救難活動、国内輸送経路上の警備、米軍施設・区域における周辺海域の警備や、いわゆる船舶の臨検は、この統合警備
計画の対象となるのではないかと思えるわけであります。これについて防衛庁長官の御見解をお述べいただきたい。
また、日米ガイドラインは、平素から行う防衛協力の一環として、包括メカニズムを構築し運営することを求めておりますが、この枠組みの中に統幕
会議がどのようにかかわっていくのか、あわせてお尋ねをいたします。
こう
考えてまいりますと、統幕
会議の運用される範囲が広がってまいりまして、機能が強化されるように思えるのであります。統幕
会議の機能を強化するのであれば、それに相応したシビリアンコントロールを確立する必要がございます。自衛隊、統幕
会議に対する監督権限者である
総理と防衛庁長官は、統幕
会議の
内容について、今まではどのような方法で把握してきたのか、また今回の
改正に伴いどのような方策を
考えているのか、
説明を求めます。
次に、本
法案に関連して、
政府の日米ガイドライン問題への取り組み方について指摘をいたします。
ガイドラインのもとで実施する対米協力は、まさに統幕
会議の調整機能を生かすことによって円滑に進められることになるのではないでしょうか。また、そのことは
政府においても想定されているのではありませんか。日米ガイドラインの最終
報告が
提出されてから半年以上たったわけでありますけれども、この間、ガイドライン関連の法
整備作業の
進捗状況について何度も伺ってまいりましたけれども、いつまでたっても鋭意検討中という返答しか返ってまいりません。
さて、日米ガイドラインにおける周辺事態の定義につきまして、
政府は、この「周辺」ということについて、これは地理的な概念ではない、事態の性質に着目した概念であると
説明して、どのような事態が該当するのか特定することから逃げているわけでありますが、しからば、
政府の言われる事態の性質というのは一体何なのか、その中に地理的な要素というものは入らないのか入るのか、入るとすればそれはどの範囲を指すのか、
総理、明確なお答えをお願いします。
ガイドラインで言う周辺事態の範囲が地理的にあいまいであるということになりますと、日米安全保障条約の適用範囲を事実上広げていくということになるのではないでしょうか。それならそれで、橋本
総理、はっきりしていただきたい。
また、日米ガイドラインの最終
報告におきましては、周辺事態の対米協力を、いつ、どの時点で、だれが決定するのかが明確にされておりません。
行政の独断と暴走を防ぎ、またシビリアンコントロールを維持するには
国会にチェック機能を持たせるということが重要であると
考えるわけです。対米協力
事項のうち、市民
生活に影響が大きいと思われる
事項やあるいは危険を伴う
事項については特に
国会の承認の必要があり、その方法について
議論を深めることが重要であります。
国会の関与について、見解を
総理と防衛庁長官にお尋ねをいたします。
さて、今回の
法案について、
政府は、ガイドラインの対米協力を想定した法
改正ではないとしているわけでありますけれども、実際には、ガイドラインとの関連は明らかにあるのであります。あたかもガイドラインとの関係を隠すような
法案の出し方では、
国民の政治への信頼を失墜させ、安全保障問題への理解を損なうことになります。ガイドラインに示されている周辺事態における協力項目は、市民
生活に大きくかかわる
事項ですから、
政府は
国民に誠意を持って
説明し、開かれた
議論をする
責任があるのではないでしょうか。
ここに改めて、
総理、外務大臣、防衛庁長官に、ガイドラインの法
整備について、現在検討されている案、そして、その作業がどこまで進んでいるのか、
説明を求めます。
最後に申し上げたいことは、防衛のよって立つ
基盤は、何といっても
国民の国防に対する意識であるということであります。
国防意識というものは何か。それは、自衛隊が滅私奉公で頑張るということでもなければ、金をかけてすぐれた装備を備えるということでもない。それもよいが、何よりも大切なことは、この国はみんなの国なんだという
国民の意識でありましょう。守るべき大切な価値のある国なんだという思いでありましょう。つまり、そういう思いを
国民が持つことのできるような国でなければならないということであります。
銀行や証券会社あるいは特殊法人などには
税金をつぎ込んで手を差し伸べるけれども、一般の
国民が路頭に迷っても知らぬ顔。
総理大臣はさっぱり未来を語ってくれない。文化や人間の心を語らない。語らないどころか、
国民の負担と未来へのツケを積み増しするばかり。
政官財の不正が噴出をしている。中小企業がばたばたと倒れ、経済はついにマイナス成長に転落。若者は、いたたまれない境遇の中でもがき苦しんでいるではないか。右を向いても左を向いても真っ暗やみ。橋本
総理にはこの最大の危機を打開する自信がおありなのかどうか、ぜひ聞いておかなければならないと思います。
橋本
総理、かつてあなたが打ち出された六大改革は、今や見る影もないけれども、火だるまになってやると言われたその気持ちをもう一度思い起こしてもらいたい。
我が国の未来に少しでも希望が持てるようなリーダーシップを発揮されますように御祈念を申し上げまして、私の
質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕