○白保台一君 私は、平和・改革を代表して、ただいま
議題となりました
沖縄振興開発特別措置法の一部を改正する
法律案に対し、
総理に
質問を行うものであります。
総理は、昨年の予算委員会
沖縄集中審議の際に、私の
質問に、
沖縄振興策と
基地問題はリンクするものではない旨の
答弁をされました。また、十一月二十一日の
復帰二十五周年式典で、
二つの問題を一緒にされるのは悲しいと声を詰まらせたと報道されています。
総理は、
沖縄振興策と
基地問題は常にリンクしないと明言してきたのであります。
ところが、本
改正案の閣議決定、
国会提出に至る手続の過程を見るとき、
総理のこれまでの御
見解とは大きく違い、紆余曲折をたどったと報じられました。
ヘリポートの建設に対する大田県知事の反対表明によって本
改正案の閣議決定をおくらせたり、選挙の結果を見て提出したりといった報道で、
県民は複雑な
思いとともに強い不快感を抱いています。
沖振法の目的は、言うまでもなく、戦争による犠牲と長年の
米軍支配、また遠隔地に位置するなど、
沖縄県の特殊
事情を
配慮して、
本土との格差を是正しようというものであります。決して
基地の代償ではありませんし、ましてや
政府・与党として方針を決定し、行政のレールに乗って推進しているものを
政治的駆け引きの材料に使うなどということは、
沖縄県民の心情を全く無視した言語道断の
対応と言わなければなりません。
総理の御
所見を伺いたいのであります。
さて
総理、
総理御自身が、
二つの問題を一緒にされるのは悲しいと声を詰まらせたと言われる
二つの問題についてであります。
当然のことですが、
一つは
基地問題であり、
一つは
沖縄の
振興策であります。これは、
復帰の際に掲げた、
基地については「核抜き・
本土並み」、
経済については
本土との格差是正、
自立経済であります。
今、四半世紀を経過して、改めて
復帰時点のこの
県民の目標を
思い起こします。
基地問題では、
本土並みになったと言えるでしょうか。むしろ
基地の
整理縮小は、
本土の
整理縮小に比べてわずかなものでしかありません。
SACOの合意による
返還、
整理が順調に推移したとしても、
基地の島という実態は変わらないのであります。それは、那覇軍港の
返還に見られる移設
条件つきでは一向に
解決しないのです。狭隘な
沖縄県内に新たな
基地を建設するのは無理があります。新たな建設を前提としない
整理縮小を国の
責任で行うべきであります。
沖縄の先人は、琉球王朝時代に顕著なように、一貫して、平和な人的交流、信頼の交易を盛んにした貴重な
歴史を有する、武器を持たない平和の民であります。第二次
大戦、
米軍支配という忌まわしい悲惨な体験をしたとはいえ、平和の民の本質は不変であります。平和を発信する
地域であることを誇りとしている伝統文化であります。とはいえ、現実を厳しく見きわめていることも事実であります。だからこそ、九六年九月八日の
県民投票は、
基地の
整理縮小と地位協定の見直しを強く求めたものであり、安保条約を認める人も認めない人も、
基地の
整理縮小を求めたのであります。
基地の新たな建設を伴わない
基地の
整理縮小についての
総理の明快な御
所見をお伺いいたします。
あわせて、普天間の代替海上
ヘリポート建設問題に関し伺います。
報道によれば、米
国会計検査院は、日米
特別委員会の
最終報告に関する
報告書を発表し、普天間飛行場にかわる
三つの海上ヘリ
基地構想には技術上、
環境上の問題点が多いとし、さらに、
建設費は四十億ドル、
維持費は、耐用年数四十年と仮定すれば総
維持費は八十億ドル、年間
維持費は二億ドルとなると公表しております。この
報告書の
内容は事実かどうか伺いたい。
さらに、これまで
政府はこの海上
ヘリポート建設に関する
費用について全く発表していないが、なぜ
米国で積算でき、
費用を
負担する
日本側が、積算し、公表できないのか理解できません。直ちに
国会に
建設費及び
維持費に関する積算資料の提出を要求いたします。あわせて、
総理の明確な御
答弁を求めるものであります。
次に、もう
一つの
課題であります
沖縄の
振興策についてであります。
本土との格差是正、
経済の
自立のため、三次にわたる
振興開発計画の着実な推進の結果、
社会資本の
整備がなされてきたとはいえ、そもそも脆弱な
経済基盤では、
自立への道は甚だ遠いものがあります。私自身も、
経済自立へ向けて、
沖縄の地理的
条件や、かつての琉球の大交易時代に学び、琉球のロマンを今にと、多くの仲間とともに模索してまいりました。そのような中で、
沖縄経済振興策の切り札として、一九八八年に
自由貿易地域那覇地区が設置され、総合保税
地域制度のもとで運用が開始しました。しかし、結果としては極めて厳しいものとなっております。これは、
制度が不十分であったからと言わざるを得ません。したがって、
改正案は、その貴重な経験を踏まえて、十分なものでなければなりません。
改正案について
沖縄県は一定の評価をしているとはいえ、
課題も少なくないと
考えます。
まず、
特別自由貿易地域の
創設についてであります。
既存の那覇地区
自由貿易地域とは別に特別の
自由貿易地域を
創設するのはどのような意向があってのことか、伺いたいのであります。既存の那覇地区
自由貿易地域の運営が厳しく、
制度の抜本的な見直しを行うよう、県や
経済界からも要請がなされてきておりました。
自由貿易地域を
拡充するのであれば、まず那覇地区こそが直ちに運用開始できると
思いますが、いかがでしょうか。
創設される
特別自由貿易地域については、その運用が開始されるのはいつごろと想定しているのか、明らかにしていただきたいのであります。
次に、
地域指定という
制度の問題点についてであります。
自由貿易地域は全県として、一国二
制度的な形をとることによって、既存の
建物、施設、工場などを使用することができ、直ちに運用が開始できることになります。新たに施設、工場等を
地域内に持つのでは、県内
企業にとって荷が重いものとなります。また、指定
地域内と指定
地域外に格差が生ずることになることを懸念いたします。
全県フリーゾーンという面的な広がりこそ、交易も
観光入域においても
活性化につながると
考えます。御
所見を伺います。
一方、県やNIRAの中間
報告にも見られるように、本
改正案に盛り込まれた
内容は、実は段階的に全県フリーゾーンへ移行する第一歩であるということであり、この
地域指定は当分の間の
措置であって、将来的には全県、全島フリーゾーンへ移行すると受けとめてよいのか、御
所見を伺います。
あわせて、
入居条件あるいは対象についてであります。
伝えられるところによれば、
雇用効果の面から相当程度ということではよく見えてきません。確かに、
沖縄における
雇用問題は深刻です。常に
本土の倍近い
失業率で推移しており、特に若年層の
失業率の高さは大きな問題であります。そのため、相当程度の
雇用機会の創出という
考えは重要でありますが、むしろ、
地域限定で対象
法人を絞り込むよりも、面的な広がりを持たせた全島フリーゾーンこそ
雇用機会の創出につながると
考えます。同時に、
地域限定であっても、面的な広がりがない以上、
入居対象については一定の
配慮が必要であると
考えますが、御
所見を伺いたい。
次に、既存の
自由貿易地域制度の
拡充と
強化についてであります。
那覇地区
自由貿易地域について、改めて新たに
立地促進投資減税の
創設を認め、事業所税の非
課税等の
措置に係る事業者要件の緩和、
関税の
課税の
選択制を認めております。それはそれで結構なことではありますが、なぜ
特別自由貿易地域と区別しなければならないのか、その理由について重ねて伺いたいのであります。
さて、本
改正案は、
工業等開発地区の活用
促進、
情報通信産業振興税制の
創設等、それぞれに
立地促進投資減税を認めるなど、
制度の
創設により
沖縄振興を図ろうとしております。しかしながら、その実効性について疑問の声が上がっていることも事実であります。
そこで伺いますが、県が県
経済界や県
議会と精力的に調整して提案した県案はほぼ満たされたとの認識に立っていられるかどうか。
また、
改正案はあくまでも
特別自由貿易地域の
制度や
投資特別減税など
優遇税制の骨格を示しただけで、
特別自由貿易地域への
入居条件や
関税の
条件、
免税店の取り扱い
条件、設置場所など、具体的な中身は政令や省令で定められる
実施細則に規定されるため、細則が厳しくなれば絵にかいたもちになるということであります。
真に
振興策であるならば、これらの声に耳を傾け、既存の
自由貿易地域那覇地区の轍を踏まないようにしなければなりません。御
所見を伺います。
さて、
総理は、
沖縄の
本土復帰二十五周年の際、
沖縄二十一世紀プランを策定する構想を発表されました。
復帰後、今や第三次
振興開発計画も後期に入りました。しかしながら、なお
解決を急がれる問題が山積しております。
県民所得の格差の問題、
雇用の問題、
産業振興の
問題等々であり、
基地問題しかりであります。そのため、
総理が示す二十一世紀プランには
県民の大きな関心が寄せられています。今回の
改正案も、
自立経済の切り札として
県民に期待されているものであります。
そこで、二十一世紀プランにおける今回の
自由貿易地域はどのように位置づけられていくのか、
総理の御
所見を伺います。
次に、国際都市形成構想との関連についてであります。
沖縄県は、
基地の過重な
負担を解消するため、二〇一五年目標に、段階的に
基地を
返還し、その跡地を国際都市として活用する、いわゆる国際都市形成構想を策定し、その実現に取り組んでいることは御存じのとおりであります。戦争で占領された
米軍基地を
返還し、平和な国際交流の拠点に転換させようとする壮大な構想と評価するものであります。
総理の言われる二十一世紀プランと国際都市形成構想と重なる部分はあるのか、伺います。
沖縄振興開発計画は、過去の
歴史を踏まえた、
日本国の
沖縄県民に対する当然の
責任であり義務であります。
基地の
整理縮小や
返還問題は、
県民の生命の尊厳と安全と平和への切なる願いであり、
政府の当然の
責任である
振興開発計画とは別次元の問題であります。
振興策は
振興策として着実に
実施し、格差の是正と
経済自立を成就する。
基地は、過重
負担のゆえに確実に
整理縮小する。それも、単に軍事的、戦略的見地からの議論だけではなく、我が家のそばにある
基地を
整理してほしいという当然過ぎるほど当然で、かつ切実な
生活者の強い要求に沿った
解決こそ、国の
政治に携わる者の最大の
責任であることを強く申し上げ、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕